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特表2023-510461液体トリチウム含有放射性廃棄物を処理する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】液体トリチウム含有放射性廃棄物を処理する方法
(51)【国際特許分類】
   G21F 9/06 20060101AFI20230307BHJP
   G21F 9/16 20060101ALI20230307BHJP
   G21F 9/12 20060101ALI20230307BHJP
   G21F 9/08 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G21F9/06 591
G21F9/16 521C
G21F9/06 G
G21F9/12 511
G21F9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022528599
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(85)【翻訳文提出日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 RU2020000619
(87)【国際公開番号】W WO2021107811
(87)【国際公開日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】2019138258
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522192931
【氏名又は名称】レメズ アロンソ,ヴィクター
【氏名又は名称原語表記】REMEZ ALONSO,Victor
(74)【代理人】
【識別番号】100188411
【弁理士】
【氏名又は名称】阪下 典子
(72)【発明者】
【氏名】レメズ アロンソ,ヴィクター
(57)【要約】
本発明は、様々な原子力産業プラントで生成され、また、そのようなプラントの廃止措置中にも生成される、特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理するための技術に関する。請求項に係る発明の技術的結果として、不活化された液体放射性廃棄物から生成されたコンクリート混合物の試験に関連する複雑で長い作業を排除することによって特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理するための技術的手順が簡素化され、並びに液体放射性廃棄物の処理中に生成される廃棄物の貯蔵面積の大きさを縮小することによって生態学的安全性が高められる。請求項に係る技術的成果は、特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、液体放射性廃棄物から放射性物質を除去して、低レベル廃棄物溶液を生成することと、生成された低レベル廃棄物溶液に結合剤を導入して、構造的、放射線生態学的、及び環境衛生的要件に適合するコンクリート混合物を調製することとを含み、結合剤を添加する前に、低レベル廃棄物溶液から、生成されるコンクリート混合物の技術的特性に悪影響を及ぼす成分を除去する方法によって達成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記液体放射性廃棄物から放射性物質を除去して、除染された低レベル廃棄物溶液を生成することと、生成された前記低レベル廃棄物溶液に結合剤を導入して、構造的、放射線生態学的、及び環境衛生的要件に適合するコンクリート混合物を調製することとを含み、前記結合剤を添加する前に、前記低レベル廃棄物溶液から、前記生成されるコンクリート混合物の技術的特性に悪影響を及ぼす成分を除去することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記コンクリート混合物のためのモルタルとして使用する前に、前記低レベル廃棄物溶液の組成をpH補正して要求されるパラメータを確保する方法。
【請求項3】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記低レベル廃棄物溶液が、更に、水道水、凝縮水、海水によって希釈される方法。
【請求項4】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、セメント、ケイ酸塩、石膏、歴青コンクリート、ポリマコンクリート、硫黄コンクリート、灰、ベントナイトを結合剤として使用し、砂、砕石、小石を骨材として使用する方法。
【請求項5】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記低レベル廃棄物溶液には、更に、添加剤、すなわち、鉱物骨材、減水剤、安定剤が導入される方法。
【請求項6】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記生成されるコンクリート混合物を使用して、建設ブロック及び種々の構造物に使用される一般コンクリート及び特殊コンクリートを製造する方法。
【請求項7】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、軽水炉から除去された前記放射性物質を、処分のための許容基準を満たす形態にコンディショニングする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記低レベル廃棄物溶液は、前記結合剤が添加される前に、イオン交換、蒸発、機械的又はメンブレンフィルタ、又はこれらの方法の組み合わせを使用することによって、前記生成されるコンクリート混合物の品質に悪影響を及ぼす成分から処理される方法。
【請求項9】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記低レベル廃棄物溶液は、前記結合剤を添加する前に、前記生成されるコンクリート混合物の品質、例えば、圧縮強度、軸方向伸び強度、耐霜性、水密性、平均密度等に悪影響を及ぼす成分から処理される方法。
【請求項10】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記溶液は、前記結合剤が前記除染された溶液に添加される前に、前記生成されるコンクリート混合物の技術的特性を損なう可溶性塩から処理される方法。
【請求項11】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、前記溶液は、前記結合剤が前記除染された溶液に添加される前に、前記生成されるコンクリート混合物の技術的特性を損なう懸濁固形物から処理される方法。
【請求項12】
請求項1に記載の特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、軽水炉除染前に、前記生成されるコンクリート混合物の品質に悪影響を及ぼす成分を除去する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な原子力産業プラントで生成され、また、そのようなプラントの廃止措置中にも生成される、特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理するための技術に関する。
【0002】
全世界で130基以上の研究実証用及び産業用の原子炉が老朽化しており、2024年までに200基以上の発電ユニットが廃止される予定である。専門家の予測によれば、EEC加盟国の125基の廃炉後、放射性廃棄物の総量は、160万トンになる。大部分の原子力施設は、液体放射性廃棄物を長期貯蔵に耐えられない形態(主灰(bottoms)、可溶性塩水融合ケーキ(soluble saline fusion cakes)等)で一時的に貯蔵する。このため、この問題に取り組み、経済的、技術的に許容される技術を用いて、長期貯蔵の対象となる廃棄物の量を最小化する必要が生じている。トリチウムで汚染された水溶液の処理は、非常に複雑で高価なエネルギ集約的設備を必要とするため、最も困難である。トリチウムは、放出エネルギ5.7keVの非常に弱いベータ放出体であり、環境に放出される溶液中のトリチウム濃度の衛生基準は、7,000Bq/kgに制限されている。
【0003】
放射性廃棄物を安定な固体媒体中でコンディショニングすることによって処理する方法、すなわちセメント固化法が知られている(ロシア特許第2132095号、第2218618号、第2309472号参照)。放射性廃棄物は、確実にコンディショニングされるが、セメント化合物を貯蔵するために使用される容器の容積を考慮すると、これらの容積は、セメント固化の間に2.5倍以上に増加し、この結果、固体放射性廃棄物を確実に分離し、特別な貯蔵所に貯蔵するためのコストが高くなり、包括的な環境安全性が低下する。
【0004】
また、液体放射性廃棄物を処理して、最大限の減容化を図り、放射性汚泥を生成し、処分に適した形態の吸収剤を使用し、液体非放射性廃棄物(低レベル廃棄物溶液)を後に更に処理(コンディショニング)する処理方法もある。
【0005】
ある放射性廃棄物処理方法(ロシア特許第2122753号、米国特許US8753518号参照)は、放射性核種からの溶液を処理した後、放射性核種から処理された低レベル廃棄物溶液の蒸発によるコンディショニングを行い、非放射性化学廃棄物として貯蔵されるべき乾燥塩又は塩水融合ケーキを生成することを含む。
【0006】
これらの方法は、非放射性化学廃棄物の蒸発により大量の化学廃棄物が発生することと、これらの輸送と特別な埋立地での貯蔵が特別な監視を必要とし、これにより環境安全性が低下するといった共通の問題がある。
【0007】
トリチウムからの液体放射性廃棄物を処理するある方法は、蒸発及びコンディショニング、冷熱同位体化学交換、水素を生成する電気分解、トリチウム処理水(残留トリチウム含有量7,500Bq/l以下)、トリチウム濃縮、及び食塩水濃縮を含む(ロシア実用新案特許第126185号、「Unit for Treatment of Liquid Radioactive Wastes from Tritium」、8 IPC G21F 9/04、優先日2012年8月27日、公開日2013年3月20日)。
【0008】
この方法は、非常に複雑で、エネルギを多く消費し、高価であるという問題がある。また、複雑な多段エネルギ集約技術が用いて、複数の最終生成物を生成する方法もあるが、これらの最終生成物は、それぞれ、独自の処分、すなわち、トリチウム含有濃縮液の大気への放出を防ぐための電解水素(electrolysis hydrogen)の焼却、水素化チタンの形態にコンディショニングされたトリチウム濃縮液の容器処分、塩水濃縮液(放射性廃棄物)の処分のためのセメント固化及び移送等が必要であり、このため、この方法は、一般的に複雑であり、環境安全性が低い。トリチウムは、(安全限界の範囲内であっても)環境に有害で予測できない影響を及ぼすため、トリチウムから処理された生成水(残留トリチウム含有量7,600Bq/l以下)を排出することによっても、この方法の環境安全性が改善される。
【0009】
液体放射性廃棄物から大部分の放射性物質を除去した後の低レベル廃棄物溶液を電気分解により酸成分とアルカリ成分に分離する方法があり、ここで、酸性成分は、セトラー(settler)に送られ、更に液体放射性廃棄物の処理に利用され、アルカリ成分は、スラグセメントをベースにしたコンクリート容器の製造に利用される(「Youth Speaking to the Nuclear Industry of Ukraine: Collection of the 2nd Conference in Odessa, September 12-13, 1995, edited by S. V. Barabashev. Odessa: Ukraine Nuclear Community, 1995. p. 15」参照)。
【0010】
この方法は、低レベル廃棄物溶液の分離が、液体放射性廃棄物を処理するための手順で使用されるアルカリ成分及び酸成分を生成するため、非常に複雑なエネルギ集約型であり、特に産業規模では汎用性がないという問題がある。
【0011】
液体放射性廃棄物を処理するある方法は、廃棄物の酸化、液相からのスラッジ、コロイド、及び懸濁固形物の分離、並びに選択的吸収剤及びフィルタを用いた更なる処分のための液相からの放射性核種の除去を含み、ここで、放射性核種から処理された低レベル廃棄物溶液は、蒸発によってコンディショニングされ、非放射性化学廃棄物として貯蔵される固体塩を形成する(ロシア発明特許第2577512号「Method for Processing Liquid Radioactive Wastes and Their Disposal」、8 IPC G21F 9/00、優先日2014年12月29日、公開日2016年3月20日参照)。
【0012】
この方法は、特別な埋立地に貯蔵され、特別な監視を必要とする二次化学廃棄物(固体非放射性塩)を生成し、環境安全性を低下させるという問題がある。
【0013】
請求項に係る発明に最も類似する方法は、特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法(優先日2018年9月21日のロシア特許第2706019号)であり、この方法は、液体放射性廃棄物から放射性物質を除去して低レベル廃棄物溶液を生成することと、除去された放射性廃棄物を、処分の許容基準を満たす形態にコンディショニングすることと、生成される低レベル廃棄物溶液に結合剤及び骨材を導入して、建設、放射線生態学的及び環境衛生的要件に適合するコンクリート混合物を製造することとを含む。
【0014】
この方法は、生成されるコンクリート混合物の試験片の建設、放射線生態学的及び環境衛生的要件への適合性についての複雑で長期的な試験が必要であるという問題がある。これらの試験は、数週間かかり、機械的強度、耐霜性、水密性、有害物質の浸出等を調べる必要がある。このような試験を行わなければ、放射性核種から処理されたLRW(液体放射性廃棄物)から製造された商業用コンクリート混合物を製造することは、不可能である。各貯蔵容器において、様々な組成を有するNPP(原子力発電所)の除染排水及び主灰の高品質コンクリート混合物を製造するための条件を選択することは、極めて複雑である。NPPラボで行われているこのような試験は、かなりの量の固体廃棄物(試験されたコンクリート供試体の残留物)を生じる。
【0015】
請求項に係る発明の目的は、特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物の処理における廃棄物の体積を最小にする手順を開発することである。
【0016】
請求項に係る発明の技術的結果として、不活化された液体放射性廃棄物から生成されるコンクリート混合物の試験に関連する複雑で長い作業を排除することによって特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理するための技術的手順が簡素化され、並びに液体放射性廃棄物の処理中に生成される廃棄物の貯蔵面積の大きさを縮小することによって生態学的安全性が高められる。
【0017】
請求項に係る技術的結果は、特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物を処理する方法であって、液体放射性廃棄物から放射性物質を除去して、低レベル廃棄物溶液を生成することと、生成された低レベル廃棄物溶液に結合剤を導入して、構造的、放射線生態学的、及び環境衛生的要件に適合するコンクリート混合物を調製することとを含み、結合剤を添加する前に、低レベル廃棄物溶液から、生成されるコンクリート混合物の技術的特性に悪影響を及ぼす成分を除去する方法によって達成される。
【0018】
軽水炉(LWR)から除去された放射性物質は、処分のための許容基準を満たす形態にコンディショニングされる。
【0019】
結合剤を添加する前に、低レベル廃棄物溶液は、イオン交換、蒸発、機械的又はメンブレンフィルタ、又はこれらの方法の組み合わせを使用することによって、生成されるコンクリート混合物の品質に悪影響を及ぼす成分から処理される。これらの成分には、圧縮強度、軸方向伸び強度、耐霜性、水密性、平均密度等のコンクリート特性に悪影響を及ぼす懸濁液及び可溶性塩が含まれる。
【0020】
生成されるコンクリート混合物の品質に悪影響を及ぼす成分は、軽水炉(LWR)除染前に除去できる。生成された低レベル廃棄物溶液の組成は、必要なパラメータを確保するために、コンクリート混合物のための溶液として使用する前にpH補正される。低レベル廃棄物溶液は、水道水、凝縮水、海水等で更に希釈してもよい。
【0021】
セメント、ケイ酸塩、石膏、歴青コンクリート、ポリマコンクリート、硫黄コンクリート、灰、ベントナイト等が結合剤として使用でき、砂、砕石、小石等が骨材として使用される。更に、低レベル廃棄物溶液には、添加剤、すなわち、鉱物骨材、減水剤、安定剤等を導入してもよい。
【0022】
生成されるコンクリート混合物は、建設ブロックや各種構造物に使用される一般コンクリートや特殊コンクリートの製造に使用できる。
【0023】
低レベル廃棄物溶液をコンクリートのような安定した固体形態にすることによって、生成されるコンクリート混合物は、構造的、放射線生態学的、及び環境衛生的要件に適合し、貯蔵中及び更なる使用時に特別な監視を必要としないため、液体放射性廃棄物から大部分の放射性物質を除去した後に、生成された低レベル廃棄物溶液に結合剤及び骨材を導入することによって、複雑でエネルギ集約的なコンディショニング手順が回避され、これにより、特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物の処理が大幅に単純化され、また、廃棄物の貯蔵面積を減少させることによって、環境安全性が改善される。
【0024】
特にトリチウム同位体を含有する液体放射性廃棄物から放射性核種を除去する前に行われる液体放射性廃棄物の処理には、廃棄物の酸化、液相からのスラッジ、コロイド及び懸濁固形物の分離、並びに選択的吸収剤及びフィルタを用いた更なる処分のための液相からの放射性核種の除去、更にこれらに続く、除去された放射性物質の処分のための許容基準を満たす形態へのコンディショニング等を含ませることができる。処分のための許容基準を満たすコンディショニングされた放射性廃棄物は、特別貯蔵に処分するために輸送される。これらの処理及び処分の全ての段階は、任意の公知の方法を用いて行うことができる。
【0025】
生成される低レベル廃棄物溶液は、液体の形態で貯蔵すると、広範囲に広がり、化学的に活性であるため、環境に有害である(土壌や水域に浸透する可能性がある)ことから、液体の形態での貯蔵は不合理であり、このため、例えば、蒸発によってコンディションされる。乾燥塩を製造する前の(例えば、蒸発による)低レベル廃棄物溶液の複雑でエネルギ集約的なコンディショニングの後、乾燥塩中の放射性物質の濃度は、数倍に上昇するため、これらの廃棄物は、特別な埋立地に保管する必要がある。液体放射性廃棄物から放射性物質を除去した後に溶液が100Bq/kgの量の放射性核種を含む場合、化学廃棄物埋立地に送られる乾燥塩を得るために10倍蒸発させた後の乾燥物質活性は、1,000Bq/kgであり、これは、許容できないので、液体放射性廃棄物は、10~20Bq/kgに処理する必要があり、これには、多くの吸収剤、試薬及び複雑な技術が必要である。幾つかの場合、液体放射性廃棄物を100~200回蒸発させて、化学廃棄物埋立地に送られる乾燥物質を生成する必要があり、これにより、液体放射性廃棄物の処理が更に複雑になる。
【0026】
請求項に係る方法によれば、液体放射性廃棄物の除染後に得られ、例えば100Bq/kgの量の放射性核種を含む低レベル廃棄物溶液は、濃縮されずに、放射能及び放射性核種の規制が免除されるレベル(IAEA安全基準、GSRパート3、「Radiation Protection and Safety, p. 148, Table 1.2」)に相当する数十Bq/kgを含む高品質コンクリート混合物を製造するのに必要な種々の成分(結合剤、骨材、添加剤)によって希釈される。
【0027】
また、特にトリチウム同位体を含有し、原子力発電所に蓄積された軽水炉(LWR)は、主にホウ酸塩(水冷式原子炉を有する原子力発電所)や硝酸塩(高出力圧力管式原子炉を有する原子力発電所)を含んでおり、これらの物質は、コンクリートの品質向上や殺菌性(生物破壊防止)の付与、特に低温での硬化時間の補正等の目的で産業建設において広く使用されている。
【0028】
軽水炉(LWR)除染後に得られた溶液を、コンクリート混合物を製造するための混合水として使用するためには、コンクリート混合物試験片は、長期に亘って複雑な試験を受ける必要がある。除染された溶液は、得られるコンクリート混合物の品質に影響する種々の成分を含みうる。コンクリートの種類によっては、混合水から懸濁液を除去しなければならないものもあり、塩素イオン等の処理が必要なものものある。除染された溶液から有害成分を除去するには、イオン交換、機械的濾過、蒸発、希釈、膜ユニット又はこれらの方法の組み合せが用いられる。
【0029】
請求項に係る発明の本質的特徴の組み合せを有する技術的解決策はこれまで存在しないため、本発明は、新規性に関する特許基準を満たす。
【0030】
ここに技術的結果を示唆する、請求項に係る本質的特徴は、現在の技術水準において明示的に発見されていないので、本発明は、発明水準に関する特許基準を満たす。
【0031】
産業上の利用可能性に関する特許条件は、以下の実施例によって確認される。
【0032】
実施例1
【0033】
トリチウム、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素、アンチモン、及びウランの放射性核種を含む液体放射性廃棄物を、ロシア特許第2577512号に記載された方法に従って処理した。除染された溶液(decontaminated solution)は、3.2g/lの塩化物、4.1×10Bq/kgのトリチウムからなりγ及びα放出同位体の合計放射能は、100Bq/kg以下であった。プレストレスト鉄筋コンクリート構造物(prestressed reinforced concrete structures)を製造する場合、混合水は、500mg/l以下の塩化物イオンを含むことができるため(GOST 23732-2011)、除染された溶液を膜ユニットで更に処理して塩化物イオン濃度を50mg/l以下にした。この溶液を用いて、全ての必要な基準に適合するプレストレスト鉄筋コンクリート構造用コンクリート混合物を製造した。これにより得られた構造物中のトリチウム濃度は、IAEA基準(GSR Part3)に適合する9.2×10Bq/kg以下であった。
【0034】
実施例2
【0035】
7.2g/lのホウ素酸、トリチウム、セシウム、銀、コバルト、及びアンチモンの同位体を含むNPPに貯蔵された燃料要素の貯蔵プールからの溶液の処分によって生じる液体放射性廃棄物を、ロシア特許第2577512号に記載された方法を用いて除染した。除染された溶液は、4.2g/lのホウ素酸、4.8×10Bq/kgのトリチウムからなり、γ及びα放出同位体の合計放射能は、100Bq/kg以下、pH=3.1であった。GOST 23732-2011(Water for Concrete and Mortars)によれば、混合水のpHは、4未満であってはならないので、pH=7.9の水道水を除染された溶液に加え(溶液1kg当たり水200g)、除染された溶液のpHを4.7とし、この溶液を用いて、細菌によるコンクリート構造物の破壊を防止する殺菌性を有するコンクリート混合物を製造できた。
【0036】
実施例3
【0037】
3g/kgの懸濁固形物、14.2g/kgの可溶性塩、トリチウム、セシウム、ストロンチウム、コバルト、及びウランの同位体を含む、地下水の回収によって生成された液体放射性廃棄物を、ロシア特許第2577512号に記載された方法を用いて除染した。除染された溶液を蒸発装置で蒸発させた結果、得られた凝縮液は、4.2×10Bq/kgのトリチウムを含み、鉄筋なし構造のコンクリート及びプレストレスト鉄筋なし構造を製造するためのコンクリート混合物の混合水に対するGOST 23732-2011要件に適合した。
【0038】
実施例1~3で得られたコンクリート供試体を調査した結果、強度等級は、B35(42~46MPa)、耐霜性等級は、F200、吸湿率(重量%)は、1.23÷1.25、水密性(MPa)は、1.73÷1.75(W4)であった。標準的な方法を用いて評価した試験片からの放射性核種の溶出は、規制限度を下回っている。
【0039】
生成されるコンクリート混合物の特性により、このコンクリートは、一般コンクリート(工業用および土木用建物)、特殊コンクリート(油圧、道路、断熱、装飾)、及び特殊目的コンクリート(耐薬品性、耐熱性、吸音性、放射性廃棄物貯蔵用等)として使用できることが確認された。
【0040】
ここに提案する方法を使用して、特にトリチウム同位体を含有する100mの液体放射性廃棄物を処理すると、約3.5m(パッケージを含む)のコンディショニングされた放射性廃棄物が産生され、これは、使い捨て容器に収められて放射性廃棄物の特別な貯蔵所に送られ、及び約450mの一般及び特殊コンクリートとして、建設ブロックや様々な構造物に使用される。
【0041】
このようにして、請求項に係る発明、すなわち、特にトリチウムを含有する液体放射性廃棄物を処理する方法は、放射性核種から処理された低レベル廃棄物溶液の複雑でエネルギ集約的なコンディショニングを回避することによって、液体放射性廃棄物の処理を確実に単純化し、液体放射性廃棄物の処理において生成される廃棄物の貯蔵面積を減少させることによって、環境安全性を向上させる。
【国際調査報告】