(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】不可逆的エレクトロポレーションのためのパルス発生器
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022533154
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2020050680
(87)【国際公開番号】W WO2021111194
(87)【国際公開日】2021-06-10
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス・クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK17
4C160KK23
4C160KK37
4C160KK64
4C160MM33
(57)【要約】
医療装置は、患者の身体に挿入するように構成されたプローブを含む。プローブは、身体内の組織と接触するように構成された複数の電極を含む。医療装置は、第1の種類の信号及び第2の種類の信号を1つ以上の電極対の間に交互に印加するように構成された電気信号発生器を更に含む。第1の種類の信号は、電極が接触する組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスのシーケンスを含む。第2の種類の信号は、電極が接触する組織を熱的にアブレーションするのに十分な力を有する高周波(RF)信号を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織のアブレーションのための医療装置であって、
患者の身体内部に挿入されるように構成されており、前記身体内部の組織と接触するように構成された複数の電極を含む、プローブと、
第1の種類の信号及び第2の種類の信号を1つ以上の電極対の間に交互に印加するように構成された電気信号発生器であって、前記第1の種類の前記信号は、前記電極が接触した前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスのシーケンスを含み、前記第2の種類の前記信号は、前記電極が接触した前記組織を熱アブレーションするのに十分な力を有する高周波(RF)信号を含む、電気信号発生器と、を含む、医療装置。
【請求項2】
前記電気信号発生器が、前記第2の種類の前記信号と交互とならずに、前記第1の種類の前記信号を印加するように更に構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記電気信号発生器が、前記第1の種類の前記信号と交互とならずに、前記第2の種類の前記信号を印加するように更に構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
双極性パルスの前記シーケンスが、少なくとも200Vの振幅を有するパルスを含み、前記双極性パルスの各々の持続時間は20μs未満である、請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記RF信号が、350~500kHzの周波数、及び10~200Vの振幅を有する、請求項1に記載の医療装置。
【請求項6】
制御信号を前記電気信号発生器に送信するように構成されたコントローラを含み、前記電気信号発生器が、
パルス発生アセンブリであって、前記コントローラから前記制御信号を受信し、前記制御信号に応答する振幅及び持続時間を有する双極性パルスのシーケンスを送信するように構成された、パルス発生アセンブリと、
前記コントローラから前記制御信号を受信し、前記パルス発生アセンブリから双極性パルスの前記シーケンスを受信し、また、前記受信された制御信号に応答して、双極性パルスの前記シーケンスを前記複数の電極に送信するように構成されている、複数の互いに接続された高速スイッチ及び低速リレーの構成可能なネットワークを含む、パルスルーティング及び計測アセンブリと、を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記電気信号発生器が、ローパスフィルタを含み、前記ローパスフィルタは、前記パルス発生アセンブリからパルス列を受信してフィルタリングし、前記パルス列を前記RF信号に変換し、それによって前記第2の種類の前記信号を生成するように構成されている、請求項6に記載の医療装置。
【請求項8】
前記第1の種類の前記信号が、パルスの対を含み、各対が正のパルス及び負のパルスを含み、前記第2の種類の前記信号が、前記対の前記正のパルスと前記負のパルスとの間にインターリーブされる、請求項1に記載の医療装置。
【請求項9】
前記第1の種類の前記信号が、パルスの対を含み、各対が正のパルス及び負のパルスを含み、前記第2の種類の前記信号が、前記パルスの連続する対の間にインターリーブされる、請求項1に記載の医療装置。
【請求項10】
前記電気信号発生器が、複数のパルス列を発生させるように構成されており、各パルス列は、前記第1の種類の前記信号及び前記第2の種類の前記信号を含み、前記パルス列が、前記信号が印加されない間隔によって分離されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項11】
前記プローブが、前記電極に隣接する複数の温度センサを含み、前記電気信号発生器が、前記温度センサによって測定された温度に応答して前記信号を印加するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項12】
前記プローブが、前記患者の心臓内の前記組織に接触し、前記心臓内の前記組織をアブレーションするために前記信号を印加するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項13】
前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して非同期的に前記信号を印加するように構成されている、請求項10に記載の医療装置。
【請求項14】
前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して同期的に前記信号を印加するように構成されている、請求項13に記載の医療装置。
【請求項15】
前記電気信号発生器が、前記プローブが前記組織内の場所と接触している間の第1の期間中、各電極と、前記配列内の前記電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に、各電極と前記隣接する第1の電極との間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する前記双極性パルスの第1のシーケンスを印加し、また、前記プローブが前記組織内の前記場所との接触を保っている第2の期間中、各電極と、前記配列内の前記第1の側の反対側の前記電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に、前記電極と前記隣接する第2の電極との間の前記組織内にIREを引き起こすことができる前記双極性パルスの第2のシーケンスを印加するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項16】
組織のアブレーションのための医療装置であって、
患者の身体内への挿入のために構成されたプローブであって、前記プローブに沿って配設され、かつ前記身体内の組織に接触するように構成された電極の配列を含む、プローブと、
電気信号発生器であって、前記プローブが前記組織内の場所と接触している間の第1の期間中、各電極と、前記配列内の前記電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に、各電極と前記隣接する第1の電極との間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスの第1のシーケンスを印加し、また、前記プローブが前記組織内の前記場所との接触を保っている第2の期間中、各電極と、前記配列内の前記第1の側の反対側の前記電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に、前記電極と前記隣接する第2の電極との間の前記組織内にIREを引き起こすことができる双極性パルスの第2のシーケンスを印加するように構成されている、電気信号発生器と、を含む、医療装置。
【請求項17】
双極性パルスの前記シーケンスが、少なくとも200Vの振幅を有するパルスを含み、前記双極性パルスの各々の持続時間は20μs未満である、請求項16に記載の医療装置。
【請求項18】
前記電気信号発生器が、双極性パルスの前記第1のシーケンス及び前記第2のシーケンスを含む複数のパルス列を発生させるように構成されており、前記パルス列が、前記双極性パルスが印加されない間隔によって分離されている、請求項16に記載の医療装置。
【請求項19】
前記プローブが、前記患者の心臓内の前記組織に接触し、前記心臓内の前記組織をアブレーションするために前記双極性パルスの前記シーケンスを印加するように構成されている、請求項16に記載の医療装置。
【請求項20】
前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して非同期的に前記信号を印加するように構成されている、請求項19に記載の医療装置。
【請求項21】
前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して同期的に前記信号を印加するように構成されている、請求項19に記載の医療装置。
【請求項22】
前記プローブが、前記電極に隣接する複数の温度センサを含み、前記電気信号発生器が、前記温度センサによって測定された温度に応答して前記双極性パルスを印加するように構成されている、請求項16に記載の医療装置。
【請求項23】
前記電気信号発生器が、前記配列内の少なくとも1つの他の電極によって分離された電極の対の間に、前記対の前記電極間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する前記双極性パルスのシーケンスを印加するように更に構成されている、請求項16に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には医療機器に関し、特に不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不可逆的エレクトロポレーション(IRE)は、強い電界の短パルスを印加して細胞膜内に恒久的、それゆえ致死的なナノ細孔を形成し、それにより細胞恒常性(内部の物理的条件及び化学的条件)を崩壊させる軟組織アブレーション技術である。IRE後の細胞死は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)に起因し、全ての他の熱又は放射線ベースのアブレーション技術におけるような壊死(細胞自体の酵素の作用を通じて細胞の破壊をもたらす細胞傷害)に起因しない。IREは一般的に、正確さ、並びに細胞外マトリックス、血流、及び神経の保全が重要な領域における腫瘍のアブレーションで使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
下記に記載される本発明の例示的な実施形態は、不可逆的エレクトロポレーションのための改良されたシステム及び方法を提供する。
【0004】
したがって、本発明の例示的実施形態によれば、患者の身体内への挿入のために構成されたプローブであって、身体内の組織に接触するように構成された複数の電極を含む、プローブと、第1の種類の信号及び第2の種類の信号を1つ以上の電極対の間に交互に印加するように構成された電気信号発生器と、を含む、医療装置が提供される。第1の種類の信号は、電極によって接触された組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスのシーケンスを含み、第2の種類の信号は、電極によって接触された組織を熱アブレーションするのに十分な力を有する高周波(RF)信号を含む。
【0005】
開示される例示的実施形態では、電気信号発生器は、第2の種類の信号と交互とならずに、第1の種類の信号を印加するように更に構成されている。追加的に又は代替的に、電気信号発生器は、第1の種類の信号と交互とならずに、第2の種類の信号を印加するように構成される。
【0006】
いくつかの例示的実施形態では、双極性パルスのシーケンスは、少なくとも200Vの振幅を有するパルスを含み、双極性パルスの各々の持続時間は20μs未満である。追加的に又は代替的に、RF信号は、350~500kHzの周波数、及び10~200Vの振幅を有する。
【0007】
いくつかの例示的実施形態では、医療装置は、制御信号を電気信号発生器に送信するように構成されたコントローラを含む。電気信号発生器は、制御信号をコントローラから受信し、制御信号に対応する振幅及び持続時間を有する双極性パルスのシーケンスを送信するように構成されたパルス発生アセンブリを含む。電気信号発生器は、複数の互いに接続された高速スイッチ及び低速リレーの構成可能なネットワークを含む、パルスルーティング及び計測アセンブリを更に含み、これらは、コントローラから制御信号を受信し、パルス発生アセンブリから双極性パルスのシーケンスを受信し、受信された制御信号に応答して、双極性パルスのシーケンスを複数の電極に送信するように構成されている。開示される例示的実施形態では、電気信号発生器はローパスフィルタを含み、ローパスフィルタは、パルス発生アセンブリからパルス列を受信してフィルタリングし、パルス列をRF信号に変換し、それによって第2の種類の信号を生成するように構成されている。
【0008】
開示される例示的形態では、第1の種類の信号は、パルスの対を含み、各対は正のパルス及び負のパルスを含み、第2の種類の信号は、対の正のパルスと負のパルスとの間にインターリーブされる。あるいは、第2の種類の信号は、パルスの連続する対の間にインターリーブされる。
【0009】
いくつかの例示的実施形態では、電気信号発生器は、複数のパルス列を発生させるように構成されており、各パルス列は、第1の種類の信号及び第2の種類の信号を含み、パルス列は、信号が印加されない間隔によって分離されている。
【0010】
更なる例示的実施形態では、プローブは、電極に隣接する複数の温度センサを含み、電気信号発生器は、温度センサによって測定された温度に応答して信号を印加するように構成されている。
【0011】
開示される例示的実施形態では、プローブは、患者の心臓内の組織に接触し、心臓内の組織をアブレーションするために信号を印加するように構成されている。例示的な一実施形態では、電気信号発生器は、心臓の拍動に対して非同期的に信号を印加するように構成されている。あるいは、電気信号発生器は、心臓の拍動に対して同期的に信号を印加するように構成されている。
【0012】
別の例示的実実施形態では、電気信号発生器は、プローブが組織内の場所と接触している第1の期間中に、各電極と、配列内の電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に双極性パルスの第1のシーケンスを印加するように構成され、双極性パルスの第1のシーケンスは、各電極と隣接する第1の電極との間の組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する。電気信号発生器は、プローブが組織内の場所と接触している第2の期間中に、各電極と、配列内の第1の側の反対側の電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に双極性パルスの第2のシーケンスを印加するように更に構成され、双極性パルスの第2のシーケンスは、電極と隣接する第2の電極との間の組織内にIREを引き起こすことができる。
【0013】
本発明の例示的実施形態によれば、患者の身体内への挿入のために構成されたプローブを含む医療装置も提供され、プローブは、プローブに沿って配設され、身体内の組織に接触するように構成された電極の配列を含む。電気信号発生器は、プローブが組織内の場所と接触している第1の期間中に、各電極と、配列内の電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に双極性パルスの第1のシーケンスを印加するように構成され、双極性パルスの第1のシーケンスは、各電極と隣接する第1の電極との間の組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する。電気信号発生器は、プローブが組織内の場所と接触している第2の期間中に、各電極と、配列内の第1の側の反対側の電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に双極性パルスの第2のシーケンスを印加するように更に構成され、双極性パルスの第2のシーケンスは、電極と隣接する第2の電極との間の組織内にIREを引き起こすことができる。
【0014】
開示される例示的実施形態では、電気信号発生器は、配列内の少なくとも1つの他の電極によって分離された電極の対の間に、対の電極間の組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスのシーケンスを印加するように更に構成されている。
【0015】
本発明の例示的実施形態によれば、患者の身体内の組織をアブレーションするための方法が更に提供される。本方法は、プローブを身体内に挿入することを含み、プローブは、組織に接触するように構成された複数の電極を含む。本方法は、第1の種類の信号及び第2の種類の信号を、複数の電極のうちの1つ以上の対の間に交互に印加することを更に含む。第1の種類の信号は、電極によって接触された組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスのシーケンスを含み、第2の種類の信号は、電極によって接触された組織を熱アブレーションするのに十分な力を有する高周波(RF)信号を含む。
【0016】
本発明の例示的実施形態によれば、患者の身体内の組織をアブレーションするための方法が更に提供される。本方法は、プローブを身体内に挿入することを含み、プローブは、プローブに沿って配設され、組織に接触するように構成された複数の電極を含む。本方法は、プローブが組織内の場所と接触している第1の期間中に、各電極と、配列内の電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に双極性パルスの第1のシーケンスを印加することを更に含み、双極性パルスの第1のシーケンスは、各電極と隣接する第1の電極との間の組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する。プローブが組織内の場所との接触を保っている第2の期間中に、各電極と、配列内の第1の側の反対側の電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に、双極性パルスの第2のシーケンスを印加し、双極性パルスの第2のシーケンスは、組織内にIREを引き起こすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、IREアブレーション処置で使用されるマルチチャネルIREシステムの概略的な絵図である。
【
図2】本発明の例示的な一実施形態による、双極性IREパルスの概略図である。
【
図3】本発明の例示的な一実施形態による、双極性パルスのバーストの概略図である。
【
図4A】本発明の例示的な一実施形態による、組み込まれたRF信号を有するIRE信号の概略図である。
【
図4B】本発明の例示的な一実施形態による、組み込まれたRF信号を有するIRE信号の概略図である。
【
図5】本発明の例示的な一実施形態による、IREモジュール、及びIREモジュールと他のモジュールとの接続を概略図示するブロック図である。
【
図6】
図5のIREモジュール内のパルスルーティング及び計測アセンブリの電気概略図である。
【
図7】
図6のパルスルーティング及び計測アセンブリ内の2つの隣接するモジュールの電気概略図である。
【
図8】本発明の例示的な一実施形態による、パルス発生回路、変圧器、及び高電圧電源の電気概略図である。
【
図9】本発明の例示的な一実施形態による、スイッチの電気概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
概論
IREは、主に非熱プロセスであり、組織温度を数ミリ秒間、高くても数度上昇させる。したがって、IREは、組織温度を20~70℃上昇させ、加熱により細胞を破壊するRF(高周波)アブレーションとは異なる。IREは、DC電圧による筋収縮を回避するために、双極性パルス、すなわち、正のパルス及び負のパルスの組み合わせを利用する。パルスは、例えば、カテーテルの2つの双極電極間に印加される。
【0019】
IREパルスが組織内に必要なナノ細孔を生成するためには、パルスの電界強度Eが、組織依存閾値Ethを超える必要がある。したがって、例えば、心臓細胞については閾値が約500V/cmであり、骨については3000V/cmである。閾値電界強度のこの差が、IREが異なる組織に選択的に適用されることを可能にする。必要な電界強度を達成するために、一対の電極に印加される電圧は、標的組織及び電極間の分離の両方に依存する。印加される電圧は最大2000Vに達することがあり、これは、熱RFアブレーションにおける10~200Vの典型的な電圧よりもはるかに高い。
【0020】
双極性IREパルスは、0.5~5μsのパルス幅、及び0.1~5μsの正のパルスと負のパルスとの間の分離を有する、2つの電極間に印加される正パルス及び負パルスを含む。本明細書において、「正」及び「負」という用語は、2つの電極間の任意選択的に選択された極性を指す。双極性パルスはパルス列にまとめられ、各列は、1~20μsのパルス間周期を有する、1~100個の双極性パルスを含む。所与の位置でIREアブレーションを実施するために、1~100個のパルス列が、その位置における一対の電極間に、0.3~1000msの連続するパルス列間の間隔をおいて印加される。1つのIREアブレーションで送達されるチャネル(電極対)当たりの総エネルギーは、典型的には60J未満であり、アブレーションは、最大10秒持続し得る。
【0021】
多電極カテーテルがIRE処置で使用される場合、電極の連続する対は、処置の間を通じて循環され得る。10電極カテーテルを例に挙げると、電極対は、隣接する様式(1-2、2-3、...9-10)、又はインターリーブ様式(1-3、2-4、...8-10)で通電され得る。しかしながら、例えば、隣接する対の通電は2段階で行う必要があり、最初に奇数-偶数の電極1-2、3-4、5-6、7-8、及び9-10に通電し、次いで偶数-奇数の電極2-3、4-5、6-7、及び8-9に通電する。電極を駆動するために、信号発生器又は除細動器などの一般的に利用可能な供給源を使用すると、電極のあるセット(奇数-偶数)から電極の別のセット(偶数-奇数)への必要な切り替えは、手動で又は低速スイッチを使用して行われる。
【0022】
本明細書に記載される本発明の例示的な実施形態は、高速切り替え及び様々な治療信号発生の能力を有する、IREのための汎用の電気信号発生器を含む医療装置を提供することによって、電極のセット間の切り替え要件に対処する。信号発生器は、カテーテルに沿って配列された複数の電極を有するカテーテルを含むプローブと共に動作し、カテーテルは、電極が身体内の組織と接触するように患者の身体内に挿入される。
【0023】
カテーテルに沿った各電極(配列内の第1の電極及び最後の電極を除く)は、両側に隣接する電極を有する。いくつかの例示的な実施形態では、第1の期間中、信号発生器は、各電極と、その2つの隣接部のうちの第1のものとの間に、例えば、1-2、3-4、...9-10の対の間に、IREパルスを印加する。次いで、第2の期間中、信号発生器は、各電極と、その第2の隣接電極との間に、例えば、2-3、4-5、...8-9の対の間に、IREパルスを印加する。言い換えると、「第1の隣接電極」及び「第2の隣接電極」という標記を適切に定義することによって、上記のIREパルスの印加は、第1の期間中、奇数-偶数の電極に通電し、第2の期間中、偶数-奇数の電極に通電する。
【0024】
開示される例示的な実施形態では、IRE発生器として構成された信号発生器は、高速スイッチのネットワークを含み、数ミリ秒のうちに奇数-偶数の電極と偶数-奇数の電極との切り替えを可能にする。ネットワーク内に追加のリレーを組み込むことによって、例えばインターリーブされた電極などの、電極の他の構成にIREパルスを、インターリーブされた電極のセットの間の同時(concomitant)高速切り替えを伴って印加するように、信号発生器を構成することができる。
【0025】
先に述べたように、2つの一般に使用されるアブレーション法であるIREアブレーション及びRFアブレーションは、異なるモダリティを実施し、IREアブレーションは、細胞膜に穴を穿孔することによって細胞を破壊する一方、RFアブレーションは、加熱によって細胞を破壊する。同じ組織を治療する際に、これらの2つの方法を組み合わせることが有利である場合がある。
【0026】
したがって、本明細書に記載される本発明のいくつかの例示的な実施形態では、電気信号発生器は、IREアブレーション及びRFアブレーションの2つのモダリティを迅速に切り替えることができる。したがって、電気信号発生器は、電極の1つ以上の対間に、IREパルスとRFパルスとの交互シーケンスを印加する。
【0027】
開示される例示的な実施形態では、IRE発生器として構成された信号発生器は、2つの迅速に切り替え可能なモダリティで機能し、IREモダリティでは、IREアブレーションのためのIREパルスを発生させ、RFモダリティでは、信号発生器は、RFアブレーションに好適な周波数で、IREパルスよりも低い振幅を有するパルス列を発生させる。このパルス列は、低域フィルタを通してパルス列をフィルタリングすることによって、正弦波RFアブレーション信号に変換される。IREアブレーション信号及びRFアブレーション信号の両方を同じ電極に結合しながら、これら2つのモダリティ間で迅速な切り替えを行うことは、低域フィルタと並列にバイパススイッチを交互に閉鎖及び開放することによって達成される。RFアブレーション信号は、2つの連続する双極性IREパルス間、又は単一の双極性IREパルスの正パルスと負パルスとの間に挿入され得る。後者の場合、正パルスと負のパルスとの間隔は、1~10msに伸張される。
【0028】
IRE発生器は、アブレーションプロトコルを実装するIREコントローラによって制御される。プロトコルは、標的組織及びカテーテルの電極構成に適合するために、場合によっては、追加的に組み込まれたRFアブレーションを含む、IREアブレーションのパラメータの全てに対する値を定義する。これらのパラメータ値は、医師などの医療専門家によるIRE処置の開始時に設定され、処置を制御する。医師は、必要な組織体積、電界強度、カテーテル構成、及びパルス又はパルス列当たりのエネルギー、並びに処置全体にわたって送達されるエネルギーに基づいてパラメータを設定する。
【0029】
IREアブレーションシステム及びIREパルス
図1は、本発明の例示的な実施形態による、IREアブレーション処置で使用されるマルチチャネルIREシステム20の概略的な絵図である。以下の説明では、IREアブレーション処置は、「IREアブレーション」又は「IRE処置」とも呼ばれる。示された例示的な実施形態では、医師22は、IREシステム20を使用して、マルチチャネルIREアブレーション処置を実施している。医師22は、遠位端28が、カテーテルの長さに沿って配列された複数のアブレーション電極30を含むアブレーションカテーテル26を使用して、被験者24に対して処置を実施している。
【0030】
IREシステム20は、プロセッサ32及びIREモジュール34を含み、IREモジュールは、IRE発生器36及びIREコントローラ38を含む。以下で更に詳述するように、IRE発生器36は、IRE処置を実行するための選択された電極30に指向された電気パルスの列を発生させる。電気パルスの列の波形(タイミング及び振幅)は、IREコントローラ38によって制御される。プロセッサ32は、以下に詳述するように、IREシステム20と医師22との間の入力及び出力インターフェースを処理する。
【0031】
プロセッサ32及びIREコントローラ38はそれぞれ、典型的には、プログラマブルプロセッサを含み、プログラマブルプロセッサは、本明細書に記載される機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はファームウェアでプログラムされている。代替的に又は追加的に、それらのそれぞれ、これらの機能の少なくとも一部を実行する、ハードワイヤード及び/又はプログラム可能なハードウェア論理回路を含んでもよい。プロセッサ32及びIREコントローラ38は、単純化のために、別個のモノリシックな機能ブロックとして図に示されているが、実際には、これらの機能の一部は、図に示され、テキストに記載されている信号を受信及び出力するための好適なインターフェースを有する単一の処理及び制御ユニット内で組み合わされてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、IREコントローラ38は、高速制御信号がIREコントローラからIRE発生器36に送信されるので、IREモジュール34内に常駐する。しかしながら、十分に高速の信号がプロセッサ32からIRE発生器36に送信され得る限り、IREコントローラ38は、プロセッサ内に常駐してもよい。
【0032】
プロセッサ32及びIREモジュール34は典型的には、コンソール40内に常駐する。コンソール40は、キーボード及びマウスなどの入力装置42を含む。ディスプレイスクリーン44は、コンソール40に近接して(又はそれと一体で)位置する。ディスプレイスクリーン44は、任意選択的にタッチスクリーンを含んでもよく、それにより別の入力装置を提供することができる。
【0033】
IREシステム20は、システム20内の好適なインターフェース及びデバイスに接続された、以下のモジュール(典型的には、コンソール40内に常駐する)のうちの1つ以上を更に含んでもよい。
・心電図(electrocardiogram、ECG)モジュール46は、被験者24に取り付けられたECG電極50に、ケーブル48を介して結合されている。ECGモジュール46は、被験者24の心臓52の電気活動を測定するように構成されている。
・温度モジュール54は、カテーテル26の遠位端28上の各電極30に隣接して位置する、熱電対56などの任意の温度センサに結合され、隣接する組織58の温度を測定するように構成されている。
・追跡モジュール60は、遠位端28内の1つ以上の電磁位置センサ(図示せず)に結合されている。1つ以上の磁場発生器62によって発生された外部磁場の存在下で、電磁位置センサは、センサの位置と共に変化する信号を出力する。これらの信号に基づいて、追跡モジュール60は、心臓52内の電極30の位置を確認し得る。
【0034】
上記のモジュール46、54、及び60は、典型的には、アナログ構成要素及びデジタル構成要素の両方を含み、アナログ信号を受信し、デジタル信号を送信するように構成されている。各モジュールは、モジュールの機能の少なくとも一部を実行する、ハードワイヤード及び/又はプログラム可能なハードウェア論理回路を更に含んでもよい。
【0035】
カテーテル26は、ポート又はソケットなどの電気的インターフェース64を介してコンソール40に連結されている。したがって、IRE信号は、インターフェース64を介して遠位端28に搬送される。同様に、遠位端28の位置を追跡するための信号、及び/又は組織58の温度を追跡するための信号は、インターフェース64を介してプロセッサ32によって受信され、IRE発生器36によって発生されたパルスを制御する際に、IREコントローラ38によって印加され得る。
【0036】
外部電極65、すなわち「リターンパッチ」は、被験者24、典型的には被験者の胴体の皮膚上、と、IRE発生器36との間の外部に追加的に結合されてもよい。
【0037】
プロセッサ32は、IRE処置の前、及び/又は処置中に、医師22から(又は他のユーザーから)、処置のためのセットアップパラメータ66を受信する。1つ以上の好適な入力装置42を使用して、
図2~
図4及び表1を参照して以下に説明するように、医師22は、IREパルス列のパラメータを設定する。医師22は更に、(IREパルス列を受信するために)活性化させるアブレーション電極30の対、及びそれらが活性化される順序を選択する。
【0038】
IREアブレーションをセットアップする際、医師22はまた、心臓52のサイクルに対するIREパルスのバーストの同期のモードを選択することができる。「同期モード」と呼ばれる第1のオプションは、心臓が再充電しており、外部電気パルスに応答しない場合に、IREパルスバーストを、心臓52の不応状態の間に起こるように同期させることである。バーストは、心臓52のQRS群後に起こるように時間が合わせられるが、この遅延は、P波の前に、心臓52のT波の間にバーストが起こるように、心臓のサイクル時間の約50%である。同期モードを実施するために、IREコントローラ38は、以下の
図5に示すECGモジュール46からのECG信号414に基づいて、IREパルスのバースト(単数)又はバースト(複数)の時間を合わせる。
【0039】
第2の同期のオプションは非同期モードであり、IREパルスのバーストは、心臓52のタイミングとは独立して発射される。最大長さ500msを有し、典型的には200msの長さのIREバーストは、心臓が反応しない1つの短パルスとして心臓によって感じられるため、このオプションは可能である。この種の非同期的な動作は、IRE処置の簡略化及び合理化に有用であり得る。
【0040】
セットアップパラメータ66を受信したことに応答して、プロセッサ32は、IREコントローラ38にこれらのパラメータを伝達し、IREコントローラ38は、医師22によって要求されたセットアップに従ってIRE信号を発生させるよう、IRE発生器36に命ずる。更に、プロセッサ32は、ディスプレイスクリーン44上にセットアップパラメータ66を表示することができる。
【0041】
いくつかの例示的な実施形態では、プロセッサ32は、追跡モジュール60から受信された信号に基づいて、例えば、遠位端28の現在の位置及び向きを示すように注釈付けされた、被験者の解剖学的構造の関連画像68をディスプレイ44上に表示する。代替的に又は追加的に、温度モジュール54及びECGモジュール46から受信した信号に基づいて、プロセッサ32は、各電極30における組織58の温度及び心臓52の電気活動をディスプレイスクリーン44に表示してもよい。
【0042】
処置を開始するために、医師22は、カテーテル26を被験者24に挿入し、次いで、カテーテルを、制御ハンドル70を用いて、心臓52の内部又は外部の適切な部位までナビゲートする。続いて、医師22は、遠位端28を、心臓52の心筋又は心外膜組織などの組織58と接触させる。次に、IRE発生器36は、
図3を参照して以下に説明されるように、複数のIRE信号を発生させる。IRE信号は、IREパルスによって発生された電流72が、各対の電極の間を流れ(双極性アブレーション)、要求された不可逆的エレクトロポレーションを組織58上で実行するように、異なるそれぞれのチャネルを介して、アブレーション電極30の対までカテーテル26を通して搬送される。
【0043】
図2は、本発明の例示的な一実施形態による、双極性IREパルス100の概略図である。
【0044】
曲線102は、IREアブレーション処置における時間tの関数としての双極性IREパルス100の電圧Vを示す。双極性IREパルスは、正のパルス104及び負のパルス106を含むが、用語「正」及び「負」は、双極性パルスが印加される2つの電極30の任意に選択された極性を指す。正のパルス104の振幅はV+と表記され、パルスの時間幅は、t+と表記される。同様に、負のパルス106の振幅はV-と表記され、パルスの時間幅は、t-と表記される。正のパルス104と負のパルス106との間の時間幅は、t間隔と表記される。双極性パルス100のパラメータの典型的な値を、以下の表1に示す。
【0045】
図3は、本発明の例示的な一実施形態による、双極性パルスのバースト200の概略図である。
【0046】
IRE処置において、IRE信号は、曲線202によって示される1つ以上のバースト200として電極30にもたらされる。バースト200は、各列がNP個の双極性パルス100を含む、NT個のパルス列204を含む。パルス列204の長さはtTと表記される。パルス列204内の双極性パルス100の周期はtPPと表記され、連続する列間の間隔はΔTと表記され、その間、信号は印加されない。バースト200のパラメータの典型的な値を、以下の表1に示す。
【0047】
図4A及び
図4Bは、本発明の例示的な実施形態による、組み込まれたRF信号を有するIRE信号302及び304の概略図である。
図4A及び
図4Bに示される例示的な実施形態では、これらのアブレーションモダリティの両方から利益を得るために、RFアブレーションがIREアブレーションと組み合わされる。
【0048】
図4Aでは、曲線306は、
図2の双極性パルス100と同様に、2つの双極性パルス310と312との間のRF信号308の、時間tの関数としての電圧Vを示す。RF信号308の振幅はV
RFと表記され、その周波数はf
RFと表記され、双極性パルス310と312との間の分離はΔ
RFと表記される。典型的には、周波数f
RFは350~500kHzであり、振幅V
RFは10~200Vであるが、より高い又はより低い周波数及び振幅が代替的に使用されてもよい。
【0049】
図4Bでは、曲線314は、正のIREパルス318と負のIREパルス320との間のRF信号316の、時間tの関数としての電圧Vを示す。IREパルス318及び320は、
図2のパルス104及び106と同様である。この例示的実施形態では、正のパルス318と負のパルス320との間隔t
間隔は、表1に示されるように伸張されている。
【0050】
RF信号308及び316の振幅及び周波数の典型的な値を表1に示す。RF信号がIRE信号に挿入されると、
図4A又は
図4Bのいずれかに示されるように、2つの信号の組み合わせがアブレーション処置の終了まで繰り返される。
【0051】
【0052】
IREモジュール
図5は、本発明の例示的な一実施形態による、IREモジュール34、及びIREモジュール34とシステム20内の他のモジュールとの接続の詳細を概略的に示すブロック図である。
【0053】
図1を参照すると、IREモジュール34は、IRE発生器36及びIREコントローラ38を含む。
図5では、IREモジュール34は、外側の破線のフレーム402によって描かれている。フレーム402内で、IRE発生器36は、内側の破線のフレーム404によって描かれている。IRE発生器36は、パルス発生アセンブリ406と、パルスルーティング及び計測アセンブリ408と、を含み、これらは両方とも以下の
図6~
図9に更に詳述される。
【0054】
IREコントローラ38は、双方向信号410を介してプロセッサ32と通信し、プロセッサは、セットアップパラメータ66を反映するコマンドをIREコントローラに伝達する。IREコントローラ38は更に、パルスルーティング及び計測アセンブリ408からデジタル電圧及び電流信号412、ECGモジュール46からデジタルECG信号414、並びに温度モジュール54からデジタル温度信号416を受信し、これらの信号を、双方向信号410を介してプロセッサ32に伝達する。
【0055】
IREコントローラ38は、上記の
図3~
図5に示されるものなどのIREパルスを発生させるために、IRE発生器36に命令するセットアップパラメータ66から導出されたデジタルコマンド信号418をパルス発生アセンブリ406に伝達する。これらのIREパルスは、アナログパルス信号420として、パルスルーティング及び計測アセンブリ408に送信される。パルスルーティング及び計測アセンブリ408は、出力チャネル422を介して電極30に結合されるだけでなく、接続部424を介してリターンパッチ65に結合される。
図5は、CH1~CH10と表記された10個の出力チャネル422を示している。以下の説明において、特定の電極は、それに結合された特定のチャネルの名前で呼ばれる。例えば、電極CH5は、チャネル422のCH5に結合された電極を指す。
図5は、10個のチャネル422を示しているが、IRE発生器36は代替的に、例えば、8個、16個、若しくは20個のチャネル、又は任意の他の好適な数のチャネルなど、異なる数のチャネルを含んでもよい。
【0056】
図6は、本発明の例示的な一実施形態による、
図5のパルスルーティング及び計測アセンブリ408の電気概略図である。分かりやすくするために、電流及び電圧の測定に関与する回路は省略されている。これらの回路は、以下の
図7で詳述される。出力チャネル422及び接続部424は、
図6において、
図5と同じ標記を使用して示されている。
【0057】
パルスルーティング及び計測アセンブリ408は、各出力チャネル422のための1つのモジュールを有するモジュール502を含む。隣接するモジュール502の対504が、以下の
図7に詳細に示されている。
【0058】
各モジュール502は、i番目のモジュールについてFOi、SOi、Ni、及びBPiと表記されたスイッチを含む。スイッチFOiは全て、IREアブレーションをチャネル間で切り替えるための高速スイッチである一方、スイッチSOi、Ni、及びBPiは、より低速のリレーであり、所与のモードのIREアブレーションのためにパルスルーティング及び計測アセンブリ408をセットアップするのに使用される。高速スイッチFOiの典型的な切替時間は、0.3μsよりも短い一方、低速リレーSOi、Ni、及びBPiは、単に3msの切替時間を要する。以下に示す実施例は、スイッチ及びリレーの使用を示す。
【0059】
実施例1は、奇数-偶数スキームCH1-CH2、CH3-CH4、CH5-CH6、CH7-CH8、及びCH9-CH10に従った、電極の対の間のIREアブレーションのためのスイッチ及びリレーの使用を示す。(ここで、双極性パルスは、各電極と第1の隣接部との間に印加される。)スイッチ及びリレーの設定を以下の表2に示す。
【0060】
【0061】
実施例2は、偶数-奇数スキームCH2-CH3、CH4-CH5、CH6-CH7、及びCH8-CH9に従った、電極の対の間のIREアブレーションのためのスイッチ及びリレーの使用を示す(ここで、双極性パルスは、各電極とその第2の隣接電極との間に印加される)。第1の電極と最後の電極とが隣り合って位置する円形カテーテル26では、対CH10-CH1が偶数-奇数の対に追加されてもよい。スイッチ及びリレーの設定を下の表3に示す。
【0062】
【0063】
実施例1及び実施例2を組み合わせると、実施例1の奇数-偶数スキームで最初にアブレーションを行い、次いで各高速スイッチFOiを反対の状態に(オンからオフ、及びオフからオンへ)切り替え、その後、実施例2の奇数-偶数スキームでアブレーションを行うことによって、電極30の全ての対間の高速IREアブレーションが遂行され得る。低速リレーSOi、Ni、及びBPiは、それらの状態を切り替える必要がないため、切り替えはFOiスイッチの速度で起こる。
【0064】
実施例3は、非隣接電極30間、この実施例ではCH1-CH3、CH4-CH6、及びCH7-CH9間のIREアブレーションを示す。このような構成は、組織58内により深い損傷を引き起こすために利用され得る。スイッチ及びリレーの設定を下の表4に示す。
【0065】
【0066】
更に、スイッチFOiを再構成することによって、電極の他の対を迅速に選択することができる。
【0067】
実施例4は、チャネルCH1とCH3との間でアブレーションを行うための代替的な方法を示す。この実施例では、アブレーション回路を閉じるためにBPライン506が利用される。スイッチ及びリレーの設定を下の表5に示す。
【0068】
【0069】
実施例4では、パルスルーティング及び計測アセンブリ408内の電気経路は、変圧器二次側508及び510を直列に結合する。電極CH1とCH3との間の距離は、隣接する電極(例えば、CH1とCH2との)間の距離の2倍であるため、それぞれの電極間に同じ電界強度を有するためには、CH1とCH3との間の電圧は、隣接する電極間の電圧の2倍である必要がある。これは、これら2つの二次側に対する一次側を反対の相で駆動することによって達成される。低速スイッチSOiは全て、電極の別の対の間、例えば、CH2とCH4との間の次のアブレーションの準備の間、ON状態のままとされる。
【0070】
上記の実施例に示されるように、リレー及び高速スイッチを使用するパルスルーティング及び計測アセンブリ408の実装により、電極30へのIREパルスのフレキシブルで高速の分配、並びに印加されるIREパルス振幅のフレキシブルな再構成が可能になる。
【0071】
図7は、本発明の例示的な一実施形態による、パルスルーティング及び計測アセンブリ408の2つの隣接するモジュール601及びモジュール602の電気概略図である。
【0072】
モジュール601及びモジュール602が、
図6のペア504を、同じ標記(504)を有する一点鎖線の枠によって示されるように構成する。モジュール601及びモジュール602はそれぞれ、
図5に関するパルス発生アセンブリ406の一部分を含むパルス発生回路603及びパルス発生回路604によって供給される。次いで、モジュール601及びモジュール602は、
図6のペア504のモジュール502と同様に、それぞれチャネルCH1及びチャネルCH2に供給する。
図7には、モジュール間の接続605を示すために、2つのモジュール601及びモジュール602が示されている。2つのモジュールは同一である(並びにパルスルーティング及び計測アセンブリ408内の追加のモジュールと同一である)ため、モジュール601についてのみ以下に詳細に説明する。
【0073】
パルス発生回路603及びパルス発生回路604の更なる詳細を以下の
図8及び
図9に示す。パルス発生アセンブリ406は、IRE発生器36の各チャネルのための回路603及び回路604と同様の1つのパルス発生回路を含む。パルス発生アセンブリ406は、
図8に詳述される高電圧電源607を更に含む。
【0074】
パルス発生回路603は、変圧器606によってモジュール601に結合される。高速スイッチFO
1並びに低速リレーSO
1、N
1、及びBP
1は、
図6と同様に表記される。低域フィルタ608は、パルス発生回路603によって送信されたパルス列を、変圧器606及びスイッチFO
1を介して正弦波信号に変換し、CH1をRFアブレーションに使用することを可能にする。(同様に、IRE発生器36の各チャネルは、RFアブレーションに独立して使用され得る。)フィルタ608の係合はリレー610によって制御される。所与の周波数f
RF及び振幅V
RFを有するRF信号は、双極性パルスの列を周波数f
RFで低域フィルタ608を介して放出するパルス発生回路603によって生成され、低域フィルタ608がこのパルス列を、周波数f
RFを有する正弦波信号に変換する。双極性パルスの列の振幅は、正弦波信号の振幅がV
RFとなるように調整される。
【0075】
CH1に結合された電圧V
1及び電流I
1は、チャネルCH1とCH2との間の電圧、及びCH1へと流れてCH2から戻る電流として、
図7に示されている。
【0076】
V
1及びI
1は、電圧を測定するための演算増幅器614と、電流検知抵抗器618にわたる電流を測定する差動増幅器616と、を含む計測モジュール612によって測定される。電圧V
1は、抵抗器R
1、R
2、及びR
3並びにアナログマルチプレクサ622を含む分圧器620から測定される。アナログマルチプレクサ622は、抵抗器R
1又はR
2のいずれかに結合するため、その結果、分圧器620の電圧分割比は、R
1/R
3又はR
2/R
3のいずれか一方である。計測モジュール612は、測定されたアナログ電圧V
1及び電流I
1をデジタル信号DV
1及びDI
1に変換するためのアナログデジタル変換器(analog-to-digital converter、ADC)624を更に含む。これらのデジタル信号は、デジタルアイソレータ626を介して、信号412(
図5)としてIREコントローラ38に送信される。デジタルアイソレータ626は、被験者24(
図1)を不必要な電圧及び電流から保護する。
【0077】
スイッチFO
1、リレーSO
1、BP
1、N
1及び610、並びにアナログマルチプレクサ622は、IREコントローラ38によって駆動される。単純化のために、それぞれの制御線は、
図7には示されていない。
【0078】
図8は、本発明の例示的な一実施形態による、パルス発生回路603、変圧器606、及び高電圧電源607の電気概略図である。
【0079】
パルス発生回路603(
図7)は、内部の詳細が以下の
図9に更に示される2つのスイッチ702及びスイッチ704を含む。スイッチ702は、コマンド入力706、ソース708、及びドレイン710を含む。スイッチ704は、コマンド入力712、ソース714、及びドレイン716を含む。スイッチ702及びスイッチ704は共にHブリッジの半分を形成し(当該技術分野において既知であるように)、「ハーフブリッジ」とも呼ばれる。
【0080】
高電圧電源607は、IREコントローラ38からの高電圧コマンド入力724によって受信された信号に応答して、±(10~2000)Vのそれぞれ正及び負の範囲内で調整可能な正電圧V+及び負電圧V-を、それぞれの出力720及び722に供給する。高電圧電源607は、接地接続723も提供する。単一の高電圧電源607が、パルス発生アセンブリ406の全てのパルス発生回路に結合されている。代替的に、各パルス発生回路が、別個の高電圧電源に結合されてもよい。
【0081】
スイッチ702のドレイン710は正電圧出力720に結合され、スイッチのソース708は、変圧器606の入力726に結合される。コマンド入力706がコマンド信号CMD+を受信すると、正電圧V+が、正電圧出力720からスイッチ702を介して変圧器入力726に結合される。スイッチ704のソース714は、負電圧出力722に結合され、スイッチのドレイン716は、変圧器入力726に結合される。コマンド入力712がコマンド信号CMD-を受信すると、負電圧V-が、負電圧出力722からスイッチ704を介して変圧器入力726に結合される。したがって、2つのコマンド信号CMD+及びCMD-を交互にアクティブ化することにより、正及び負のパルスがそれぞれ変圧器入力726に結合され、次いで変圧器606によってその出力728に送信される。パルスのタイミング(パルスの幅及び分離)は、コマンド信号CMD+及びCMD-によって制御され、パルスの振幅は、高電圧コマンド入力724への高電圧コマンド信号CMDHVによって制御される。3つのコマンド信号CMD+、CMD-、及びCMDHVは全て、IREコントローラ38から受信され、IREコントローラ38は、これにより、パルスルーティング及び計測アセンブリ408のそれぞれのチャネルに供給されるパルスを制御する。
【0082】
代替の例示的な一実施形態(図示せず)では、フルHブリッジが、単極性高電圧電源を用いて使用される。この構成はまた、フルHブリッジを制御する信号に応答して、単極性源から正のパルス及び負のパルスの両方を発生させるために使用することができる。この実施形態の利点は、より単純な高電圧電源を使用することができることである一方、ハーフブリッジ及びデュアル高電圧電源の利点は、固定された接地電位、並びに独立して調整可能な正電圧及び負電圧を提供することである。
【0083】
図9は、本発明の例示的な一実施形態による、スイッチ702の電気概略図である。スイッチ704は、スイッチ702と同様の様式で実装される。
【0084】
スイッチ702の切り替え機能は、ゲート804、ソース708、及びドレイン710を含む電界効果トランジスタ(field-effect transistor、FET)802によって実装される。コマンド入力706は、
図8に示すように結合されたソース708及びドレイン710を有するゲート804に結合される。ツェナーダイオード、ダイオード、抵抗器、及びコンデンサを含む追加の構成要素806は、回路保護器として機能する。
【0085】
上に記載される実施形態は例として挙げたものであり、本発明は本明細書の上記で具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、前述の本明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0086】
〔実施の態様〕
(1) 組織のアブレーションのための医療装置であって、
患者の身体内部に挿入されるように構成されており、前記身体内部の組織と接触するように構成された複数の電極を含む、プローブと、
第1の種類の信号及び第2の種類の信号を1つ以上の電極対の間に交互に印加するように構成された電気信号発生器であって、前記第1の種類の前記信号は、前記電極が接触した前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスのシーケンスを含み、前記第2の種類の前記信号は、前記電極が接触した前記組織を熱アブレーションするのに十分な力を有する高周波(RF)信号を含む、電気信号発生器と、を含む、医療装置。
(2) 前記電気信号発生器が、前記第2の種類の前記信号と交互とならずに、前記第1の種類の前記信号を印加するように更に構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(3) 前記電気信号発生器が、前記第1の種類の前記信号と交互とならずに、前記第2の種類の前記信号を印加するように更に構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(4) 双極性パルスの前記シーケンスが、少なくとも200Vの振幅を有するパルスを含み、前記双極性パルスの各々の持続時間は20μs未満である、実施態様1に記載の医療装置。
(5) 前記RF信号が、350~500kHzの周波数、及び10~200Vの振幅を有する、実施態様1に記載の医療装置。
【0087】
(6) 制御信号を前記電気信号発生器に送信するように構成されたコントローラを含み、前記電気信号発生器が、
パルス発生アセンブリであって、前記コントローラから前記制御信号を受信し、前記制御信号に応答する振幅及び持続時間を有する双極性パルスのシーケンスを送信するように構成された、パルス発生アセンブリと、
前記コントローラから前記制御信号を受信し、前記パルス発生アセンブリから双極性パルスの前記シーケンスを受信し、また、前記受信された制御信号に応答して、双極性パルスの前記シーケンスを前記複数の電極に送信するように構成されている、複数の互いに接続された高速スイッチ及び低速リレーの構成可能なネットワークを含む、パルスルーティング及び計測アセンブリと、を含む、実施態様1に記載の医療装置。
(7) 前記電気信号発生器が、ローパスフィルタを含み、前記ローパスフィルタは、前記パルス発生アセンブリからパルス列を受信してフィルタリングし、前記パルス列を前記RF信号に変換し、それによって前記第2の種類の前記信号を生成するように構成されている、実施態様6に記載の医療装置。
(8) 前記第1の種類の前記信号が、パルスの対を含み、各対が正のパルス及び負のパルスを含み、前記第2の種類の前記信号が、前記対の前記正のパルスと前記負のパルスとの間にインターリーブされる、実施態様1に記載の医療装置。
(9) 前記第1の種類の前記信号が、パルスの対を含み、各対が正のパルス及び負のパルスを含み、前記第2の種類の前記信号が、前記パルスの連続する対の間にインターリーブされる、実施態様1に記載の医療装置。
(10) 前記電気信号発生器が、複数のパルス列を発生させるように構成されており、各パルス列は、前記第1の種類の前記信号及び前記第2の種類の前記信号を含み、前記パルス列が、前記信号が印加されない間隔によって分離されている、実施態様1に記載の医療装置。
【0088】
(11) 前記プローブが、前記電極に隣接する複数の温度センサを含み、前記電気信号発生器が、前記温度センサによって測定された温度に応答して前記信号を印加するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(12) 前記プローブが、前記患者の心臓内の前記組織に接触し、前記心臓内の前記組織をアブレーションするために前記信号を印加するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(13) 前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して非同期的に前記信号を印加するように構成されている、実施態様10に記載の医療装置。
(14) 前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して同期的に前記信号を印加するように構成されている、実施態様13に記載の医療装置。
(15) 前記電気信号発生器が、前記プローブが前記組織内の場所と接触している間の第1の期間中、各電極と、前記配列内の前記電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に、各電極と前記隣接する第1の電極との間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する前記双極性パルスの第1のシーケンスを印加し、また、前記プローブが前記組織内の前記場所との接触を保っている第2の期間中、各電極と、前記配列内の前記第1の側の反対側の前記電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に、前記電極と前記隣接する第2の電極との間の前記組織内にIREを引き起こすことができる前記双極性パルスの第2のシーケンスを印加するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
【0089】
(16) 組織のアブレーションのための医療装置であって、
患者の身体内への挿入のために構成されたプローブであって、前記プローブに沿って配設され、かつ前記身体内の組織に接触するように構成された電極の配列を含む、プローブと、
電気信号発生器であって、前記プローブが前記組織内の場所と接触している間の第1の期間中、各電極と、前記配列内の前記電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に、各電極と前記隣接する第1の電極との間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスの第1のシーケンスを印加し、また、前記プローブが前記組織内の前記場所との接触を保っている第2の期間中、各電極と、前記配列内の前記第1の側の反対側の前記電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に、前記電極と前記隣接する第2の電極との間の前記組織内にIREを引き起こすことができる双極性パルスの第2のシーケンスを印加するように構成されている、電気信号発生器と、を含む、医療装置。
(17) 双極性パルスの前記シーケンスが、少なくとも200Vの振幅を有するパルスを含み、前記双極性パルスの各々の持続時間は20μs未満である、実施態様16に記載の医療装置。
(18) 前記電気信号発生器が、双極性パルスの前記第1のシーケンス及び前記第2のシーケンスを含む複数のパルス列を発生させるように構成されており、前記パルス列が、前記双極性パルスが印加されない間隔によって分離されている、実施態様16に記載の医療装置。
(19) 前記プローブが、前記患者の心臓内の前記組織に接触し、前記心臓内の前記組織をアブレーションするために前記双極性パルスの前記シーケンスを印加するように構成されている、実施態様16に記載の医療装置。
(20) 前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して非同期的に前記信号を印加するように構成されている、実施態様19に記載の医療装置。
【0090】
(21) 前記電気信号発生器が、前記心臓の拍動に対して同期的に前記信号を印加するように構成されている、実施態様19に記載の医療装置。
(22) 前記プローブが、前記電極に隣接する複数の温度センサを含み、前記電気信号発生器が、前記温度センサによって測定された温度に応答して前記双極性パルスを印加するように構成されている、実施態様16に記載の医療装置。
(23) 前記電気信号発生器が、前記配列内の少なくとも1つの他の電極によって分離された電極の対の間に、前記対の前記電極間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する前記双極性パルスのシーケンスを印加するように更に構成されている、実施態様16に記載の医療装置。
(24) 患者の身体内の組織をアブレーションするための方法であって、
プローブを前記身体に挿入することであって、前記プローブが、前記組織に接触するように構成された複数の電極を含む、挿入することと、
第1の種類の信号及び第2の種類の信号を、前記複数の電極の1つ以上の対の間に交互に印加することであって、前記第1の種類の前記信号は、前記電極が接触した前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスのシーケンスを含み、前記第2の種類の前記信号は、前記電極が接触した前記組織を熱アブレーションするのに十分な力を有する高周波(RF)信号を含む、印加することと、を含む、方法。
(25) 双極性パルスの前記シーケンスが、少なくとも200Vの振幅を有するパルスを含み、前記双極性パルスの各々の持続時間は20μs未満である、実施態様24に記載の方法。
【0091】
(26) 前記RF信号が、350~500kHzの周波数、及び10~200Vの振幅を有する、実施態様24に記載の方法。
(27) 前記信号を印加することが、選択された振幅及び持続時間を有する双極性パルスのシーケンスを生成することと、複数の互いに接続された高速スイッチ及び低速リレーのネットワークを構成して、前記複数の電極に双極性パルスの前記シーケンスを送信することと、を含む、実施態様24に記載の方法。
(28) 前記信号を印加することが、ローパスフィルタを適用して、パルスの前記シーケンスを前記RF信号に変換し、それによって前記第2の種類の前記信号を生成することを含む、実施態様27に記載の方法。
(29) 前記第1の種類の前記信号を印加することが、パルスの対を印加することを含み、各対が、正のパルス及び負のパルスを含み、前記第2の種類の信号を印加することが、前記対の前記正のパルスと前記負のパルスとの間に前記第2の種類の前記信号をインターリーブすることを含む、実施態様24に記載の方法。
(30) 前記第1の種類の前記信号を印加することが、パルスの対を印加することを含み、各対が、正のパルス及び負のパルスを含み、前記第2の種類の信号を印加することが、前記パルスの連続する対の間に前記第2の種類の前記信号をインターリーブすることを含む、実施態様24に記載の方法。
【0092】
(31) 前記信号を印加することが、複数のパルス列を印加することであって、各パルス列が前記第1の種類の前記信号及び前記第2の種類の前記信号を含む、複数のパルス列を印加することと、前記信号が印加されていない間隔によって前記パルス列を分離することと、を含む、実施態様24に記載の方法。
(32) 前記電極に隣接する複数の温度センサを使用して前記組織の温度を測定することを含み、前記信号を印加することが、前記温度センサによって測定された前記温度に応答して前記信号を制御することを含む、実施態様24に記載の方法。
(33) 前記プローブを挿入することが、前記患者の心臓内の前記組織に前記電極を接触させることを含み、前記信号を印加することが、前記心臓内の前記組織をアブレーションすることを含む、実施態様24に記載の方法。
(34) 前記信号を印加することが、前記心臓の拍動に対して非同期的に前記信号を印加することを含む、実施態様33に記載の方法。
(35) 前記信号を印加することが、前記心臓の拍動に対して同期的に前記信号を印加することを含む、実施態様33に記載の方法。
【0093】
(36) 前記プローブが前記組織内の場所と接触している間の第1の期間中、各電極と、前記配列内の前記電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に、各電極と前記隣接する第1の電極との間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する前記双極性パルスの第1のシーケンスを印加することと、前記プローブが前記組織内の前記場所との接触を保っている第2の期間中、各電極と、前記配列内の前記第1の側の反対側の前記電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に、前記電極と前記隣接する第2の電極との間の前記組織内にIREを引き起こすことができる前記双極性パルスの第2のシーケンスを印加することと、を含む、実施態様24に記載の方法。
(37) 患者の身体内の組織をアブレーションするための方法であって、
プローブを前記身体内に挿入することであって、前記プローブは、前記プローブに沿って配設され、かつ前記組織に接触するように構成された複数の電極を含む、挿入することと、
前記プローブが前記組織内の場所と接触している間の第1の期間中、各電極と、前記配列内の前記電極の第1の側の隣接する第1の電極との間に、各電極と前記隣接する第1の電極との間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する双極性パルスの第1のシーケンスを印加することと、前記プローブが前記組織内の前記場所との接触を保っている第2の期間中、各電極と、前記配列内の前記第1の側の反対側の前記電極の第2の側の隣接する第2の電極との間に、前記電極と前記隣接する第2の電極との間の前記組織内にIREを引き起こすことができる双極性パルスの第2のシーケンスを印加することと、を含む、方法。
(38) 双極性パルスの前記シーケンスが、少なくとも200Vの振幅を有するパルスを含み、前記双極性パルスの各々の持続時間は20μs未満である、実施態様37に記載の方法。
(39) 第1の種類の信号及び第2の種類の信号を印加することが、双極性パルスの前記第1のシーケンス及び前記第2のシーケンスを含む複数のパルス列を印加することを含み、前記パルス列が、前記双極性パルスが印加されない間隔によって分離されている、実施態様37に記載の方法。
(40) 前記プローブを挿入することが、前記患者の心臓内の前記組織に前記電極を接触させることを含み、前記信号を印加することが、前記心臓内の前記組織をアブレーションすることを含む、実施態様37に記載の方法。
【0094】
(41) 前記信号を印加することが、前記心臓の拍動に対して非同期的に前記信号を印加することを含む、実施態様40に記載の方法。
(42) 前記信号を印加することが、前記心臓の拍動に対して同期的に前記信号を印加することを含む、実施態様40に記載の方法。
(43) 前記電極に隣接する複数の温度センサを使用して前記組織の温度を測定することを含み、前記信号を印加することが、前記温度センサによって測定された前記温度に応答して前記信号を制御することを含む、実施態様37に記載の方法。
(44) 前記配列内の少なくとも1つの他の電極によって分離された電極の対の間に、前記対の前記電極間の前記組織内に不可逆的電気泳動(IRE)を引き起こすのに十分な振幅を有する前記双極性パルスのシーケンスを印加することを更に含む、実施態様37に記載の方法。
【国際調査報告】