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特表2023-510489細胞サイズ及び向きを補正するための配向された不可逆電気穿孔法(IRE)パルス
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  • 特表-細胞サイズ及び向きを補正するための配向された不可逆電気穿孔法(IRE)パルス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】細胞サイズ及び向きを補正するための配向された不可逆電気穿孔法(IRE)パルス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534766
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2020050679
(87)【国際公開番号】W WO2021116774
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】16/707,371
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス・クラウディオ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK47
(57)【要約】
システムは、不可逆電気穿孔法(IRE)パルス発生器と、スイッチングアセンブリと、プロセッサとを含む。IREパルス発生器は、IREパルスを生成するように構成されている。スイッチングアセンブリは、IREパルスを器官の組織に印加するために、組織と接触して配置されたカテーテルの拡張可能な遠位端上に配設された複数の電極にIREパルスを送達するように構成されている。プロセッサは、(a)組織内の電場がIREパルスによって生成されることになる1つ又は2つ以上の事前指定された向きを受信し、(b)事前指定された向きでIREパルスを印加する電極の1つ又は複数の対を選択し、(c)スイッチングアセンブリを使用して、電極の選択された対にIREパルス発生器を接続する、ように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆電気穿孔法のためのシステムであって、
不可逆電気穿孔法(IRE)パルスを生成するように構成されたIREパルス発生器と、
前記IREパルスを器官の組織に印加するために、前記組織と接触して配置されたカテーテルの拡張可能な遠位端上に配設された複数の電極に前記IREパルスを送達するように構成された、スイッチングアセンブリと、
プロセッサであって、
前記組織内の電場が前記IREパルスによって生成されることになる1つ又は複数の事前指定された向きを受信し、
前記事前指定された向きで前記IREパルスを印加する前記電極の1つ又は複数の対を選択し、
前記スイッチングアセンブリを使用して、前記IREパルス発生器を前記電極の選択された前記対に接続する、ように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記電極の各々が複数個の電極セグメントを備え、前記スイッチングアセンブリ及び前記プロセッサが、前記1つ又は複数の対の前記電極セグメントのいずれかを個別に含むように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記電極が、前記遠位端の長手方向軸の周りに等角に配設されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、相互に直交する向きに沿って前記電極の第1の対及び第2の対を選択するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ又は複数の事前指定された向きが、前記遠位端の長手方向軸に対して事前指定されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサが、二相IREパルスを印加することによって前記IREパルスを印加するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
不可逆電気穿孔法のためのシステムであって、
不可逆電気穿孔法(IRE)パルスを生成するように構成されたIREパルス発生器と、
前記IREパルスを器官の組織に印加するために、前記組織と接触して配置されたカテーテルの拡張可能な遠位端上に配設された複数の電極に前記IREパルスを送達するように構成された、スイッチングアセンブリと、
プロセッサであって、
互いに平行ではない2つの向きで組織の同じ領域に前記IREパルスを印加する前記電極の第1の対及び第2の対を選択し、
前記スイッチングアセンブリを使用して、前記IREパルス発生器を前記電極の選択された前記第1の対及び前記第2の対に接続する、ように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、ほぼ相互に直交する向きに沿って前記電極の前記第1の対及び前記第2の対を選択するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、侵襲的な医療用プローブに関するものであり、具体的には不可逆電気穿孔法のためのバルーンカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
多電極カテーテルを使用した組織への不可逆電気穿孔法(irreversible electroporation、IRE)のエネルギーの送達は、特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許第9,289,606号は、狭い線形損傷及び分散した広範囲の損傷を生成するための構成を含む、電気穿孔法媒介療法、電気穿孔法誘発性原発壊死療法、及び電場誘発性アポトーシス療法のための向きを感知する多重極性先端電極アセンブリを含むカテーテルシステムを記載している。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2019/0030328号は、組織のある面積を電気穿孔するように構成された医療デバイスを記載し、医療デバイスは、遠位部分及び近位部分を有するバルーンと、バルーンの遠位部分上に配設された複数個の電極と、を含み、複数個の電極の各々は、組織の当該面積に電気穿孔法のエネルギーを送達するように構成されている。
【0004】
米国特許第8,992,517号は、細胞増殖性障害のインビボ治療の方法、デバイス、及びシステムを記載している。発明は、脳腫瘍などの固形腫瘍を治療するために使用することができる。方法は、非熱不可逆電気穿孔法(IRE)に依存して、治療された腫瘍の細胞死を引き起こす。方法は、組織アブレーションのための電場の三次元形状を正確に制御するための、複数の電極の使用と各電極に異なる電圧を印加することを包含する。より具体的には、治療される組織に配置された異なる電極によって放出される電気エネルギーの量を変化させることにより、施術者が、細胞膜を不可逆的に破壊し、細胞死を引き起こす電場の三次元形状を細かく調整することが可能になることが見出された。同様に、電極の極性を変化させて、異なる三次元電場を得ることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の例示的な実施形態は、不可逆電気穿孔法(IRE)パルス発生器と、スイッチングアセンブリと、プロセッサとを含むシステムを提供する。IREパルス発生器は、IREパルスを生成するように構成されている。スイッチングアセンブリは、IREパルスを器官の組織に印加するために、組織と接触して配置されたカテーテルの拡張可能な遠位端上に配設された複数の電極にIREパルスを送達するように構成されている。プロセッサは、(a)組織内の電場がIREパルスによって生成されることになる1つ又は複数の事前指定された向きを受信し、(b)事前指定された向きでIREパルスを印加する電極の1つ又は複数の対を選択し、(c)スイッチングアセンブリを使用して、IREパルス発生器を電極の選択された対に接続する、ように構成されている。
【0006】
いくつかの例示的な実施形態では、電極の各々が複数個の電極セグメントを含み、スイッチングアセンブリ及びプロセッサは、1つ又は複数の対の電極セグメントのいずれかを個別に含むように構成されている。
【0007】
いくつかの例示的な実施形態では、電極は、遠位端の長手方向軸の周りに等角に配設されている。
【0008】
例示的な実施形態では、プロセッサは、相互に直交する向きに沿って電極の第1の対及び第2の対を選択するように構成されている。別の例示的な実施形態では、1つ又は複数の事前指定された向きが、遠位端の長手方向軸に対して事前指定されている。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態では、プロセッサは、二相IREパルスを印加することによってIREパルスを印加するように構成されている。
【0010】
本発明の例示的な実施形態によれば、器官の組織と接触してカテーテルの拡張可能な遠位端の複数の電極を配置して、組織にIREパルスを印加することを含む方法が加えて提供されている。不可逆電気穿孔法(IRE)パルスは、IREパルス発生器を使用して生成される。組織内の電場がIREパルスによって生成されることになる1つ又は複数の事前指定された向きが受信される。事前指定された向きでIREパルスを印加する電極の1つ又は複数の対が選択される。IREパルス発生器を電極の選択された対に接続することによって、IREパルスは事前指定された向きで組織に印加される。
【0011】
本発明の例示的な実施形態によれば、不可逆電気穿孔法(IRE)パルス発生器と、スイッチングアセンブリと、プロセッサとを含むシステムが更に提供されている。IREパルス発生器は、IREパルスを生成するように構成されている。スイッチングアセンブリは、IREパルスを器官の組織に印加するために、組織と接触して配置されたカテーテルの拡張可能な遠位端上に配設された複数の電極にIREパルスを送達するように構成されている。プロセッサは、互いに平行ではない2つの向きで組織の同じ領域にIREパルスを印加する電極の第1の対及び第2の対を選択し、スイッチングアセンブリを使用して、IREパルス発生器を電極の選択された第1の対及び第2の対に接続する、ように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
図1】本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの不可逆電気穿孔法(IRE)システムの概略描画図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による、肺静脈(pulmonary vein、PV)及びその心門の領域内に配備された図1の不可逆電気穿孔法(IRE)バルーンカテーテルの概略的な側面描写図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による、図2のIREバルーンカテーテルを使用して、指向性IREパルスを印加するための方法を模式的に示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
パルスフィールドアブレーション(Pulsed Field Ablation、PFA)とも呼ばれる不可逆電気穿孔法(IRE)は、高電圧パルスにさらすことによって組織細胞を死滅させるための侵襲性治療様式として使用され得る。IREは、DCパルス又は一相パルスと関連付けられてもよく、IREアブレーションがPFA(パルスフィールドアブレーション)と呼ばれる場合、二相IREパルスが使用される。しかしながら、IREという用語は、任意のタイプの上述のパルス形状を指すために使用され得る。
【0014】
具体的には、IREパルスは、心臓不整脈を治療するために心筋組織細胞を死滅させる潜在的用途がある。特に注目に値するのは、双極電気パルスを使用(例えば、組織と接触している、一対の電極を使用して)して、電極間の組織細胞を死滅させることである。細胞破壊は、膜内外電位差が閾値を超えて細胞死をもたらし、ひいては組織損傷の発生をもたらす場合に生じる。
【0015】
心筋組織は、電気生理学的信号を伝導する特殊な心筋細胞を含む。例えば、これらの特殊な心筋細胞の集合体である洞結節は、心拍を起こす。各心筋細胞は、典型的には長く、かつ薄い。心組織は、伝導組織のいわゆる筋線維に凝集した複数の心筋細胞を含む。伝導組織の筋線維の空間における整列(すなわち、心筋細胞の向き)は、心臓内のそれらの位置に大きく依存する。
【0016】
細胞死は、印加された電場によって引き起こされ、異なる細胞は、異なるフィールドレベルに対して異なって反応し、すなわち、死滅させるための異なる閾値を有する。加えて、非球形細胞が印加された電場に応答する方法は、電場に対する細胞の幾何学的配向に依存する。心筋細胞は比較的大きな楕円形偏心を有し、約100μmの長さで、直径は10~25μmである。したがって、IREを使用して心筋細胞を死滅させることができるが、細胞の非球形細胞形状は、最適な致死電場を設定するために細胞配向の知識が必要であることを意味する。
【0017】
以下に記載される本発明の例示的な実施形態は、異なる電場(大きさ及び方向において)を生成するように選択され得る複数の電極を有するカテーテルを使用する。電極の近くの心筋細胞の向きを知らないことを克服するために、いくつかの例示的な実施形態では、電場は、典型的には互いに直交する少なくとも2つの異なる向きで印加される。これは、必要とされるパルス電圧振幅を低減し、そうでない場合は、細胞の細長い方向に沿った電場細胞整列の「最悪の場合」のシナリオを克服するために高パルス電圧が必要になるためである。心筋細胞の向きが既知である場合(典型的には、他の手段によって)、死滅電場を生成するために使用される電極の構成が最適化され得る。
【0018】
いくつかの例示的な実施形態では、バルーンカテーテル又はバスケットカテーテルなどの複数個の電極が配設された拡張可能なフレームを有する医療用プローブが、以下に記載するように、拡張可能なフレームの上の複数の位置で2つのほぼ直交する向きに沿って高電圧パルスを印加するために使用される。指向性電場の印加を可能にするために、複数個の電極が、プロセッサ制御スイッチングボックス(スイッチングアセンブリとも呼ばれる)を介してIREパルス発生器の出力に接続される。
【0019】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は範囲に対する「約」又は「ほぼ」という用語は、構成要素の一部又は集合が本明細書に記載される意図された目的のために機能することを可能にする好適な寸法公差を示すものである。より具体的には、「約」又は「ほぼ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指し得る、例えば「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指し得る。
【0020】
一実施形態では、複数の電極の対による双極IREパルスの印加前に、プロセッサは、組織内の電場がIREパルスによって生成されることになる1つ又は複数の事前指定された向き(例えば、遠位端の長手方向軸に対して)を受信する。それに応じて、プロセッサは、拡張可能なフレームの上の電極対の構成を決定する。次いで、プロセッサは、決定された構成に従って電極を接続する、すなわち、電極をIREパルス発生器に接続するためにスイッチングボックスを制御し、1つ又は複数の事前指定された向きに沿って電極間にIREパルスを印加する。
【0021】
例えば、血管の管腔の組織の筋線維が、管腔の壁組織の周囲全体にわたって長手方向に(すなわち、管腔に沿って)整列されることが知られている場合、電極対は、各電極対間に局所的に横方向の電場を生成するように構成される。
【0022】
直交配向に沿って、又は事前指定された方向に沿って電場のIREパルスを印加することにより、開示されたカテーテルベースのIRE治療技法は、治療に対する組織選択性を高め、したがって、心臓不整脈のIRE治療などの侵襲的IRE治療の臨床成果を改善し得る。
【0023】
システムの説明
図1は、本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの不可逆電気穿孔法(IRE)システム20の概略描画図である。システム20はカテーテル21を含み、カテーテルのシャフト22は、シース23を通って患者28の心臓26に挿入される。カテーテル21の近位端は、コンソール24に接続されている。
【0024】
コンソール24は、IREパルスを生成するように構成されたIRE発生器38を備える。IREパルスは、カテーテル21を介して送達されて、心臓26の左心房45内の組織をアブレーションする。例えば、IREパルスは、正のパルスセクション(例えば、+1000V)と、それに続く負のパルスセクション(例えば、-1000V)として形成された二相パルスであり得る。
【0025】
本明細書に記載する例示的な実施形態では、カテーテル21は、心臓26の左心房45における肺静脈の心門51の組織の電気的感知及び/又はIRE隔離などの、任意の好適な治療及び/又は診断目的のために使用され得る。
【0026】
医師30は、患者28の脈管系を通してシャフト22を挿入する。挿入図25に見られるように、シャフト22の遠位端22aに取り付けられた拡張可能なバルーンカテーテル40は、図2に更に説明されている複数のIRE電極50を備える。シャフト22の挿入中に、バルーン40は、シース23の内側で畳み込まれた構成で維持されている。バルーン40を畳み込まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的位置までの経路に沿って血管外傷を最小限に抑える働きをする。医師30は、シャフト22の遠位端を心臓26内の標的位置へとナビゲートする。
【0027】
シャフト22の遠位端22aが標的位置に到達すると、医師30はシース23を後退させ、典型的には生理食塩水をバルーン40に圧送することによってバルーン40を拡張する。次いで、医師30は、バルーンカテーテル40上に配設された電極55が心門の内壁と係合して、電極50を介して指向性高電圧IREパルスを心門51の組織に印加するように、シャフト22を操作する。図2に更に説明するように、指向性IREパルスを印加するために、電極50はセグメント55に分割されて、バルーン40の上の各位置の周りに電極セグメントの主に二次元アレイを形成する。
【0028】
コンソール24は、以下に説明するように、所与の方向に、又は所与の方向にほぼ直交する方向に電場を印加する電極セグメントの対の一部として作用する間、セグメント化された電極50の任意のセグメント55を切り替えることができるスイッチングボックス46(スイッチングアセンブリとも呼ばれる)を含む。
【0029】
電極50は、コンソール24内のインターフェース回路37のスイッチングボックス46を制御するプロセッサ41に、シャフト22を通るワイヤによって接続される。電極セグメント対構成などのIREパラメータを含む指向性IREプロトコルが、コンソール24のメモリ48に記憶されている。
【0030】
コンソール24は、典型的には患者28の胸の周りに配置される、カテーテル21及び外部電極49から信号を受信するための適切なフロントエンド及びインターフェース回路37を備えた、典型的には汎用コンピュータであるプロセッサ41を備える。この目的のために、プロセッサ41は、ケーブル39を通るワイヤによって外部電極49に接続されている。
【0031】
プロセッサ41は、通常、本明細書に記載の機能を実行するようにプログラムされている(ソフトウェアである)。ソフトウェアはコンピュータに、例えばネットワーク上で、電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0032】
図示されている例示的な実施形態は、心臓組織のIRE用のバルーンの使用に具体的に関するが、本明細書に記載されているシステム20の要素及び方法は、代替として、拡張可能なフレームの背に複数の電極を担持するバスケットカテーテルなどの、他の種類の多電極アブレーションデバイスを使用してアブレーションを制御するために適用されてもよい。
【0033】
細胞サイズ及び向きを補正するための配向されたIREパルス
図2は、本発明の例示的な実施形態による、肺静脈(PV)及びその心門51の領域内に配備された図1の不可逆電気穿孔法(IRE)バルーンカテーテル40の概略的な側面描写図である。バルーンカテーテル40は、不整脈の原因を隔離するために心門51の組織をアブレーションするために使用される。バルーン40は、バルーンの膜71の上に配設された10個のセグメント化された電極50(50...5010)を有する。
【0034】
双極IREパルスは、同じ電極のセグメント間又は隣接する電極のセグメント間のいずれかに、IRE発生器38から10個の電極50の各々のセグメント55(55...55)の各対に独立して送達することができる。双極IREパルスが同じ電極50のセグメント間に印加されると、シャフト22の遠位端22aによって画定される長手方向軸61とほぼ平行な電場を作成する。例えば、電極5010のセグメント55と55との間に印加された双極パルス、及び電極50のセグメント55と55の間に印加された双極パルスは、バルーン40の周囲にわたってバルーン40と接触している異なる組織位置で電場E60を生成する。これらの電場は両方とも、長手方向軸61に平行である。
【0035】
双極IREパルスが、隣接する電極50の対応するセグメント55間に印加されると、筝曲IREパルスは、方位軸又は局所的に横軸yにほぼ平行な電場を作り出す。例えば、電極5010のセグメント55と電極50のセグメント55との間に印加された双極パルス、及び電極5010のセグメント55と電極50のセグメント55との間に印加された双極パルスは、バルーン40の周囲にわたってバルーン40と接触する異なる組織位置で電場E62を生成する。これらのフィールドは両方とも、長手方向軸61に直交している。
【0036】
いくつかの例示的な実施形態では、セグメントは、スイッチングボックス46を使用して、長手方向軸61に対して傾斜した直交フィールドを作成するように接続される。例えば、電極5010のセグメント55と電極50のセグメント55との間に印加される双極パルスは、電極50のセグメント55と電極5010のセグメント55との間に印加される双極パルスによって作り出された電場65にほぼ直交である電場63を作成し、2つのフィールドは、長手方向軸61に対してそれぞれほぼ(+45)度及び(-45)度回転している。
【0037】
図2に示す例示的な実施形態では、バルーンカテーテルは、40個のセグメント55(1電極あたり4つ)を備えるが、セグメントの数及び形状は異なり得る。
【0038】
プロセッサ41は、例えば、所与の心臓組織のIREバルーン治療プロトコルに適用される事前指定された構成に従って、セグメント対を接続するようにスイッチングボックス46を制御する。
【0039】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、図2のバルーンを使用して、指向性IREパルスを印加するための方法を模式的に示すフロー図である。提示された例示的な実施形態によるアルゴリズムは、バルーンカテーテルナビゲーションステップ80において、例えば、ACL感知電極として電極50を使用して、医師30が、心門51など、患者の器官の標的組織位置にバルーンカテーテルをナビゲートするときに開始するプロセスを実行する。
【0040】
次に、バルーンカテーテル配置ステップ82において、医師30は、バルーンカテーテルを心門51に配置する。次に、バルーン膨張ステップ84において、医師30は、バルーン40を完全に膨張させて、管腔の全周にわたって標的組織を電極50と接触させる。
【0041】
次に、IRE計画ステップ86において、プロセッサ41は、IREパルスが組織内に電場を生成することになる1つ又は複数の事前指定された向き(例えば、遠位端の長手方向軸に対して)を受信する。例えば、初期配向はプロトコルから受信され、プロセッサで受信される前に位置追跡システムによって調整される。事前指定された向きは、心門51の周りの領域ごとに異なり得る。
【0042】
電極構成セットアップステップ88において、必要とされる向きに基づいて、プロセッサ41は電極接続構成を決定し、その例は、図2で説明されている。
【0043】
次に、電極接続ステップ90において、プロセッサ41は、スイッチングボックス46を制御して、決定された構成に従って電極を接続する。
【0044】
最後に、IRE治療ステップ92において、プロセッサ41は、指向性IREパルスを組織に印加する。
【0045】
図3のフロー図は、純粋に明確にするために示されている例示的なフローである。代替的な実施形態では、任意の他の好適な方法のフローが使用され得る。例えば、図2の方法は、心筋細胞の向きが既知であること、すなわち、ステップ86でIREパルスの配きを指定するのに十分な情報があることを想定している。代替の例示的な実施形態では、例えば、心筋細胞の向きに関する十分な情報がない場合には、プロセッサ41は、スイッチングボックス46を制御して、組織の同じ領域に対して複数の(典型的には2つの)異なる向きで、IREパルスを印加させてもよい。例えば、プロセッサ41は、スイッチングボックス46を制御して、直交する向きを有するIREパルス、例えば、電極5010のセグメント55と電極50のセグメント55との間の1つの双極パルス、及び電極50のセグメント55と電極5010のセグメント55との間の別の双極パルスを印加し得る。任意の他の好適な構成もまた、適用することができる。
【0046】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、主に心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムはまた、様々なタイプの癌、例えば肺癌又は肝臓癌を治療するため、及び神経科及び耳鼻咽喉科において、など、他の医療用途で使用することもできる。
【0047】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、本出願の不可欠な部分と見なすものとするが、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される限りでは、本明細書における定義のみを考慮するものとする。
【0048】
〔実施の態様〕
(1) 不可逆電気穿孔法のためのシステムであって、
不可逆電気穿孔法(IRE)パルス(pluses)を生成するように構成されたIREパルス発生器と、
前記IREパルスを器官の組織に印加するために、前記組織と接触して配置されたカテーテルの拡張可能な遠位端上に配設された複数の電極に前記IREパルスを送達するように構成された、スイッチングアセンブリと、
プロセッサであって、
前記組織内の電場が前記IREパルスによって生成されることになる1つ又は複数の事前指定された向きを受信し、
前記事前指定された向きで前記IREパルスを印加する前記電極の1つ又は複数の対を選択し、
前記スイッチングアセンブリを使用して、前記IREパルス発生器を前記電極の選択された前記対に接続する、ように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(2) 前記電極の各々が複数個の電極セグメントを備え、前記スイッチングアセンブリ及び前記プロセッサが、前記1つ又は複数の対の前記電極セグメントのいずれかを個別に含むように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記電極が、前記遠位端の長手方向軸の周りに等角に配設されている、実施態様1に記載のシステム。
(4) 前記プロセッサが、相互に直交する向きに沿って前記電極の第1の対及び第2の対を選択するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記1つ又は複数の事前指定された向きが、前記遠位端の長手方向軸に対して事前指定されている、実施態様1に記載のシステム。
【0049】
(6) 前記プロセッサが、二相IREパルスを印加することによって前記IREパルスを印加するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(7) 不可逆電気穿孔法のための方法であって、
器官の組織と接触してカテーテルの拡張可能な遠位端の複数の電極を配置して、組織にIREパルスを印加することと、
不可逆電気穿孔法(IRE)パルス発生器を使用してIREパルスを生成することと、
組織内の電場が前記IREパルスによって生成されることになる1つ又は複数の事前指定された向きを受信することと、
前記事前指定された向きで前記IREパルスを印加する前記電極の1つ又は複数の対を選択することと、
前記IREパルス発生器を前記電極の選択された前記対に接続することによって、前記IREパルスを前記事前指定された向きで前記組織に印加することと、を含む、方法。
(8) 前記電極の各々が複数個の電極セグメントを備え、前記対を選択することが、前記1つ又は複数の対の前記電極セグメントのいずれかを個別に含むことを含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記電極が、前記遠位端の長手方向軸の周りに等角に配設されている、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記対を選択することが、相互に直交する向きに沿って前記電極の第1の対及び第2の対を選択することを含む、実施態様7に記載の方法。
【0050】
(11) 前記IREパルスを印加することが、二相IREパルスを印加することを含む、実施態様7に記載の方法。
(12) 不可逆電気穿孔法のためのシステムであって、
不可逆電気穿孔法(IRE)パルスを生成するように構成されたIREパルス発生器と、
前記IREパルスを器官の組織に印加するために、前記組織と接触して配置されたカテーテルの拡張可能な遠位端上に配設された複数の電極に前記IREパルスを送達するように構成された、スイッチングアセンブリと、
プロセッサであって、
互いに平行ではない2つの向きで組織の同じ領域に前記IREパルスを印加する前記電極の第1の対及び第2の対を選択し、
前記スイッチングアセンブリを使用して、前記IREパルス発生器を前記電極の選択された前記第1の対及び前記第2の対に接続する、ように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(13) 前記プロセッサが、ほぼ相互に直交する向きに沿って前記電極の前記第1の対及び前記第2の対を選択するように構成されている、実施態様12に記載のシステム。
図1
図2
図3
【国際調査報告】