(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】膜絶縁高電圧バルーンワイヤを備えた不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022534767
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 IB2020050678
(87)【国際公開番号】W WO2021116773
(87)【国際公開日】2021-06-17
(32)【優先日】2019-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス・クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ビークラー・クリストファー・トーマス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK12
4C160KK18
4C160MM38
(57)【要約】
医療用プローブは、シャフト及び拡張可能なバルーンを含む。シャフトは、患者の器官の中に挿入するように構成されている。拡張可能なバルーンは、シャフトの遠位端に連結され、拡張可能なバルーンは、(a)外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜であって、拡張可能な膜は、畳み込まれた形状からバルーン形状の部材に拡張されるように構成されている、拡張可能な膜と、(b)拡張可能な膜の外側表面上に配設された複数の電極と、(c)複数の電極に接続された1本以上のワイヤであって、ワイヤは、遠位端から電極まで延在する、1本以上のワイヤと、(d)拡張可能なカバーであって、ワイヤはカバーと拡張可能な膜との間に拘束されるが、電極は周囲環境に露出されるように、ワイヤを拡張可能なカバーと拡張可能な膜との間に封入する、拡張可能なカバーと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆的エレクトロポレーションのための医療用プローブであって、前記医療用プローブは、
患者の器官の中に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端に連結された拡張可能なバルーンであって、前記拡張可能なバルーンは、
外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜であって、前記拡張可能な膜は、畳み込まれた形状から球状のバルーン形状に拡張されるように構成されている、拡張可能な膜と、
前記拡張可能な膜の前記外側表面上に配設された複数の電極と、
前記複数の電極に接続された1本以上のワイヤであって、前記ワイヤは、前記遠位端から前記電極まで延在する、1本以上のワイヤと、
前記拡張可能な膜が前記球状のバルーン形状に拡張されるとき、前記拡張可能な膜の近位半球を覆う半球形状を有する、拡張可能なカバーと、を含み、前記拡張可能なカバーは、前記ワイヤが前記カバーと前記拡張可能な膜との間に拘束されるが、前記電極が周囲環境に露出されるように、前記ワイヤを前記拡張可能なカバーと前記拡張可能な膜との間に封入する、拡張可能なバルーンと、を備える、医療用プローブ。
【請求項2】
前記カバー膜の遠位縁上に広がり、前記カバーを前記拡張可能な膜に封止するように構成されているシール部を更に備える、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項3】
前記シール部は、前記電極のそれぞれの近位縁を覆う、請求項2に記載の医療用プローブ。
【請求項4】
前記電極は、前記拡張可能な膜の長手方向軸を中心として等角に配設されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項5】
前記電極のそれぞれは、基板を介して前記拡張可能な膜の前記外側表面に連結されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項6】
前記電極のうちの少なくとも1つは、その他の電極上の他の放射線不透過性マーカーとは異なる構成を有する放射線不透過性マーカーを含む、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項7】
前記複数の電極は、前記拡張可能な膜の遠位半球部分上に配設されている、請求項1に記載の医療用プローブ。
【請求項8】
不可逆的エレクトロポレーションのための医療用プローブの製造方法であって、前記方法は、
拡張可能なバルーンを組み立てることであって、
外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜を組み立てることであって、前記拡張可能な膜は、畳み込まれた形状から球状のバルーン形状に拡張されるように構成されている、ことと、
前記拡張可能な膜の前記外側表面上に複数の電極を配設することと、
前記複数の電極にワイヤを接続することと、
前記拡張可能な膜が前記球状のバルーン形状に拡張されるとき、前記拡張可能な膜の近位半球を覆う半球形状を有する、拡張可能なカバーを使用して、前記ワイヤが前記カバーと前記拡張可能な膜との間に拘束されるが、前記電極が周囲環境に露出されるように、前記ワイヤを前記カバーと前記拡張可能な膜との間に封入することと、によって、組み立てることと、
前記拡張可能なバルーンをシャフトの遠位端に連結することと、を含む、製造方法。
【請求項9】
前記カバーの遠位縁上に広がるシール部を使用して、前記カバーを前記拡張可能な膜に対して封止することを更に含む、請求項8に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には侵襲的な医療用プローブに関するものであり、具体的には不可逆的エレクトロポレーションのためのバルーンカテーテルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
組織への不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)エネルギーの送達は、特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2019/0030328号は、組織の領域をエレクトロポレート(電気穿孔)するように構成された医療用デバイスを記載しており、医療用デバイスは、遠位部分及び近位部分を有するバルーンと、バルーンの遠位部分上に配設された複数の電極と、を含み、複数の電極のそれぞれは、組織の領域にエレクトロポレーションエネルギーを送達するように構成されている。
【0003】
別の例として、米国特許第10,285,755号は、拡張可能な要素を実質的に取り囲む長手方向スプラインのメッシュ又はアレイを備えたカテーテル本体に連結された、遠位の拡張可能な要素を有するカテーテルを記載しており、メッシュ又はスプラインの少なくとも一部分は導電性である。一実施形態では、電気的に絶縁される部分は、メッシュの2つの導電部分の間に配設される。導電部分は、メッシュの隣接する導電部分、又はそうでなれば離間した導電部分間の拡張可能な要素の長手方向軸に実質的に平行な経路に沿って、絶縁部分の周囲に、組織を通して電流を伝導するように、双極様式で動作され得る。
【0004】
PCT国際公開第2019/055512号は、バルーンなどの膨張可能な部材、及び組織へのパルス送達による焦点アブレーション用の少なくとも1つの電極を含む心内膜アブレーションデバイスを含む、エレクトロポレーションアブレーション療法のためのシステム、デバイス、及び方法を記載している。一実施形態では、アブレーションデバイスは、バルーン上に配設された電極のセットを含む。電極は、バルーンの遠位端の表面上に形成され得、焦点アブレーションを介して心内膜表面上に損傷を形成するのに有用であり得る。使用中、電極は、パルス波形を送達して組織をアブレーションするために、心室内に配設され得る。電極はそれぞれ、対応の絶縁電気リードに連結し得、それぞれのリードは、絶縁破壊なしにその厚さにわたって電位差を維持するのに十分な電気絶縁性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態は、シャフトと、拡張可能なバルーンと、を含む医療用プローブを提供する。シャフトは、患者の器官の中に挿入するように構成されている。拡張可能なバルーンは、シャフトの遠位端に連結され、拡張可能なバルーンは、(a)外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜であって、拡張可能な膜は、畳み込まれた形状からバルーン形状の部材に拡張されるように構成されている、拡張可能な膜と、(b)拡張可能な膜の外側表面上に配設された複数の電極と、(c)複数の電極に接続された1本以上のワイヤであって、ワイヤは、遠位端から電極まで延在する、1本以上のワイヤと、(d)拡張可能なカバーであって、ワイヤはカバーと拡張可能な膜との間に拘束されるが、電極は周囲環境に露出されるように、ワイヤを拡張可能なカバーと拡張可能な膜との間に封入する、拡張可能なカバーと、を含む。
【0006】
いくつかの例示的な実施形態では、医療用プローブは、カバー膜の遠位縁上に広がり、カバーを拡張可能な膜に封止するように構成されているシール部を更に含む。他の例示的な実施形態では、シール部は、電極のそれぞれの近位縁を覆う。
【0007】
いくつかの実施形態では、電極は、拡張可能な膜の長手方向軸を中心として等角に配設される。別の例示的な実施形態では、電極のそれぞれは、基材を介して拡張可能な膜の外側表面に連結される。
【0008】
いくつかの例示的な実施形態では、電極のうちの少なくとも1つは、その他の電極上の他の放射線不透過性マーカーとは異なる構成を有する放射線不透過性マーカーを含む。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態では、複数の電極は、拡張可能な膜(expendable membrane)の遠位半球部分上に配設される。
【0010】
本発明の例示的な実施形態によれば、医療用プローブの製造方法であって、方法は、外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜を組み立てることによって拡張可能なバルーンを組み立てることを含み、拡張可能な膜は、畳み込まれた形状からバルーン形状の部材に拡張されるように構成されている、方法も提供される。複数の電極は、拡張可能な膜の外側表面上に配設される。ワイヤは、複数の電極に接続され、拡張可能なカバーを使用して、ワイヤはカバーと拡張可能な膜との間に拘束されるが、電極は周囲環境に露出されるように、カバーと拡張可能な膜との間のワイヤが封入される。膨張可能なバルーンは、シャフトの遠位端に連結される。
【0011】
いくつかの例示的な実施形態では、本方法は、カバーの遠位縁上に広がるシール部を使用して、カバーを拡張可能な膜に対して封止することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの不可逆的エレクトロポレーション(IRE)システムの概略描画図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、
図1の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテルの分解斜視図である。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による、
図2の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
侵襲的治療法として使用される不可逆的エレクトロポレーション(IRE)は、組織を高電圧パルスに供することによって組織細胞を死滅させる。バルーンカテーテルなどの医療用プローブは、バルーン上に配設された複数の電極を使用して、組織に高電圧パルスを印加するために使用され得る。バルーン上の電極に高電圧電気信号を伝導するために使用されるワイヤの場合、ワイヤを周囲生物学的組織環境(例えば、生物学的組織又は血液)、並びにバルーンの内部に露出させることは弊害をもたらすと思われる。したがって、バルーン電極への配線は、絶縁破壊を防止するために十分に電気的に絶縁される必要がある。
【0014】
本発明の例示的な実施形態は、絶縁電線を含むIREバルーンカテーテルを提供する。しかしながら、ワイヤはそれ自体の絶縁性を有しているが、この絶縁性は、高い水分含有量を有する環境において十分ではない場合がある。したがって、ワイヤは、バルーンカテーテルの拡張可能な膜の外側表面上に配設されており、そのため、ワイヤは、例えば、拡張可能な膜を膨張させるために典型的に使用される導電性生理食塩水溶液から十分に分離される。
【0015】
同じく導電性である血液などの周囲環境からの十分な電気絶縁を達成するために、ワイヤは、拡張可能な膜と封入するカバー膜との間に配設され、2つの膜は、ワイヤが2つの膜の間に捕捉され、ワイヤに接続された電極のみが周囲環境に露出されるような方法で、互いに取り付けられる。
【0016】
開示されるIREバルーンカテーテルは、患者の器官の中に挿入するために中空シャフトの遠位端に連結される。拡張可能な膜は、シャフトの遠位端の長手方向軸を中心として配設され、その遠位端で伸長ロッドに連結される。中空シャフトの中へと近位に引っ張られると、伸長ロッドは、拡張可能な膜を、細長く畳み込まれた形状からバルーン形状の部材へと拡張させる。
【0017】
複数の電極のそれぞれは、2つの膜の間に配設された前述のワイヤのうちの1つ以上を介してIREパルス発生器の出力に接続され、これらの高度に絶縁されたワイヤは、バルーンカテーテルの近位端で連結されて、中空シャフトの内側に延びるワイヤを供給する。
【0018】
いくつかの例示的な実施形態では、カバー膜は、カバー膜の遠位縁上に広がるシール部を使用して、拡張可能な膜に対して封止される。追加的又は代替的に、カバー膜は、例えば、カバー膜をその全領域にわたって拡張可能な膜の外側表面に接着することによって、拡張可能な膜の外側表面に接着される。
【0019】
IREバルーンカテーテルはまた、様々な組み合わせ又は順列に組み合わされ得る以下の特徴を有するように構成されている。例えば、複数の電極のそれぞれは、IREに対して最適化された形状を画定し、それぞれの電極は、基材を介して拡張可能な膜の外側表面に配設され、それぞれの電極は、その他の電極上の他の放射線不透過性マーカーとは異なる構成を有する放射線不透過性マーカーを含み、拡張可能な膜は、概ね球状の部材を含み、拡張可能なカバー膜は、半球状の部材を含む。
【0020】
開示されたIREバルーンカテーテルは、電気的に安全な様式でIRE治療を適用することを可能にし、したがって、心不整脈のIRE治療などの侵襲的IRE治療の臨床結果を改善し得る。
【0021】
システムの説明
図1は、本発明の例示的な実施形態による、カテーテルベースの不可逆的エレクトロポレーション(IRE)システム20の概略描画図である。システム20はカテーテル21を含み、カテーテルのシャフト22は、シース23を通って患者28の心臓26に挿入される。カテーテル21の近位端部は、コンソール24に接続されている。
【0022】
コンソール24は、心臓26の左心房45内の肺静脈の小孔組織を不可逆的にエレクトロポレートするために、カテーテル21を介してIREパルスを印加するためのIRE発生器38を含む。本明細書に記載される例示的な実施形態では、カテーテル21は、心臓26内の他の組織を電気的に検知する及び/又は不可逆的にエレクトロポレートするなどの、任意の他の好適な治療及び/又は診断目的で使用され得る。
【0023】
医師30は、患者28の脈管系を通してカテーテル22を挿入する。インセット25に見られるように、シャフト22の遠位端22aに装着された拡張可能なバルーンカテーテル40は、
図2に詳細に記載されている、半球の形態の高電圧絶縁カバー膜50を含む。シャフト22の挿入中に、バルーン40は、シース23の内側に畳み込まれた構成で維持される。バルーン40を畳み込まれた構成で収容することにより、シース23はまた、標的位置までの経路に沿って血管外傷を最小限に抑える働きをする。医師30は、シャフト22の遠位端を心臓26内の標的位置へとナビゲートする。
【0024】
シャフト22の遠位端22aが標的位置に到達すると、医師30はシース23を後退させ、とりわけ、前述の拡張可能な膜によって画定される内部容積に生理食塩水を圧送することによって、バルーン40を拡張する。次いで、医師30は、バルーンカテーテル40上に配設された電極55を小孔の内壁と係合させるようにシャフト22を操作し、電極55を介して高電圧IREパルスを小孔組織に印加するようにコンソール24を動作させる。
【0025】
コンソール24は、典型的には患者26の胸の周りに配置されるカテーテル21及び外部電極49から信号を受信するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路37を備えたプロセッサ41、典型的には汎用コンピュータを含む。この目的のために、プロセッサ41は、ケーブル39を通るワイヤによって外部電極49に接続されている。
【0026】
プロセッサ41は、典型的には、本明細書に記載の機能を実施するようにプログラム(ソフトウェア)されている。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0027】
図示されている例示的な実施形態は、具体的には、心臓組織のIRE用のバルーンの使用に関するが、本明細書に記載されているシステム20の要素及び方法は、代替として、マルチアームアブレーションカテーテルなどの、他の種類の多電極アブレーションデバイスを使用したアブレーションの制御に適用されてもよい。
【0028】
膜絶縁高電圧バルーンワイヤを有するIREバルーンカテーテル
図2は、本発明の例示的な実施形態による、
図1の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテル40の分解斜視図である。
【0029】
バルーンカテーテル40の拡張可能な膜44は、膜44の近位膜部分46でシャフト22の遠位端22aに取り付けられる。膜44は、長手方向軸42を中心として配設され、外側表面44a及び内側表面44bを有する。外側表面44aは周囲環境に露出される一方、内側表面44bは、膜44によって画定されるバルーンの内部体積に露出される。
【0030】
拡張可能な膜44は、畳み込まれた形状(概ね細長い管状構成)からバルーン(又は、概ね球状)形状の部材まで拡張されるよう構成されている。複数の電極55が、拡張可能な膜44の外側表面44a上に配設される。電極55は、膜44の遠位半球部分上に等距離で配置される。図示されている例示的な実施形態では、電極55のそれぞれは、電極に高電圧を伝導するように電気的に接続された絶縁電線60に接続される。それぞれのワイヤ60は、電気的に絶縁するスリーブによって囲まれた導電性コアを含む。電線60は、中空シャフト22を介してコンソール24まで延びる配線(図示せず)によって、IRE発生器24の出力部に連結される。
【0031】
それぞれの電極55の下面は、周囲環境に露出されておらず、典型的には膜44の外側表面44aに接合されている電極表面である。
【0032】
境界52を有する拡張可能なカバー膜50は、ワイヤ60が膜44とカバー膜50との間に拘束されるように、ワイヤ60をカバー膜50と拡張可能な膜44との間に封入する。拡張可能なカバー膜50は、簡潔にするため、及び膜44との混乱を回避するために、本明細書では単に「カバー」、「カバー膜」、又は「拡張可能なカバー」とも称される。このようにして、ワイヤ60は、IRE処置中に伝導する高電圧電気信号による絶縁破壊に対して弾力的である。言い換えれば、ワイヤ60のコアと周囲環境との間の総電気絶縁性は、ワイヤ60の絶縁スリーブの絶縁性とカバー膜50の絶縁性との両方を含む。例示的な実施形態では、カバー膜50は、接着剤(図示せず)で拡張可能なバルーンに固定される。
【0033】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、
図2の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)バルーンカテーテル40の側面図である。見られるように、複数の電極55のそれぞれは、電極が周囲環境に露出されることを可能にするために拡張可能なカバー膜50によって覆われていない領域を画定する。
【0034】
複数の電極55は、カバー膜50がそれぞれの電極55の近位縁を封入するように、長手方向軸42を中心として等角に配設される。シール部54は、カバー膜50の境界52(すなわち、電極55の近位縁)上に広がり、電極55の外側表面の近位部分上に最大数ミリメートル延在すると同時に、電極が周囲環境に露出されることを可能にし得る。一実施形態では、シール部54は、ポリウレタン又はエポキシシールの形態で提供され得る。
【0035】
典型的には、それぞれの電極55は、拡張可能な膜44の外側表面に、それ自体が膜44の外側表面に接続又は接合されている基材53を介して連結される。
【0036】
図3に見られ得るように、膜44上のそれぞれのワイヤ60は、それぞれのワイヤが膜44のトポグラフィックな外側表面をたどるように、遠位端22aから対応の電極55まで延在する。
【0037】
それぞれのワイヤ60は、高電圧電気信号を伝導するために使用され得るので、ワイヤ44が周囲の生体組織環境(例えば、生体組織又は血液)に露出することは弊害をもたらすと思われる。それぞれのワイヤ60は、それ自体の絶縁スリーブを有するが、この絶縁性は、特に関与する高電圧を考慮すると、高湿度環境では十分ではない場合がある。このように、拡張可能なカバー膜50は、ワイヤと周囲環境との間の潜在的な電気的破壊を排除する。電極は、電極がそれらの意図した目的を果たし得るように、生体組織に露出されたままとなる。更に、ワイヤ60は、2つの膜の間に拘束又は捕捉されるので、組み立て中に、ワイヤが絡まったり、誤った電極に間違って接続されたりする可能性はほとんどない。
【0038】
膜44及び50の外壁は、典型的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン又はPEBAX(登録商標)などのプラスチック(例えば、ポリマー)から形成される生体適合性材料で作製される。これらのプラスチックは、IREパルスで発生する強い電界下の絶縁破壊に対して十分な電気絶縁性を提供する。
【0039】
本明細書に記載の実施例又は例示的な実施形態のいずれも、上記のものに加えて又はそれらの代わりに様々な他の特徴を含み得る。具体的に言えば、
図2及び
図3に示される例示的な構成は、概念を明確化する目的のみで選択されている。例えば、カバー膜50は、その内側表面が拡張可能な膜44の外側表面に接着されてもよい。
【0040】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、主にIRE処置に関するものであるが、開示された技術は、電気生理学的(electrophysiological、EP)検知などの他の好適な用途で用いることもできる。EPカテーテルの例は、例えば、本特許出願の出願人に譲渡され、その開示が参照により本明細書に援用されている、2018年11月19日に出願された米国特許仮出願第62/769,424号に記載されている。
【0041】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、主に心臓用途に関するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経学、耳鼻咽喉科、一般外科処置などの他の医療用途で用いることもできる。
【0042】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0043】
〔実施の態様〕
(1) 不可逆的エレクトロポレーションのための医療用プローブであって、前記医療用プローブは、
患者の器官の中に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端に連結された拡張可能なバルーンであって、前記拡張可能なバルーンは、
外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜であって、前記拡張可能な膜は、畳み込まれた形状からバルーン形状の部材に拡張されるように構成されている、拡張可能な膜と、
前記拡張可能な膜の前記外側表面上に配設された複数の電極と、
前記複数の電極に接続された1本以上のワイヤであって、前記ワイヤは、前記遠位端から前記電極まで延在する、1本以上のワイヤと、
拡張可能なカバーであって、前記ワイヤが前記カバーと前記拡張可能な膜との間に拘束されるが、前記電極が周囲環境に露出されるように、前記ワイヤを前記拡張可能なカバーと前記拡張可能な膜との間に封入する、拡張可能なカバーと、を含む、拡張可能なバルーンと、を備える、医療用プローブ。
(2) 前記カバー膜の遠位縁上に広がり、前記カバーを前記拡張可能な膜に封止するように構成されているシール部を更に備える、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(3) 前記シール部は、前記電極のそれぞれの近位縁を覆う、実施態様2に記載の医療用プローブ。
(4) 前記電極は、前記拡張可能な膜の長手方向軸を中心として等角に配設されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(5) 前記電極のそれぞれは、基板を介して前記拡張可能な膜の前記外側表面に連結されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
【0044】
(6) 前記電極のうちの少なくとも1つは、その他の電極上の他の放射線不透過性マーカーとは異なる構成を有する放射線不透過性マーカーを含む、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(7) 前記複数の電極は、前記拡張可能な膜の遠位半球部分上に配設されている、実施態様1に記載の医療用プローブ。
(8) 不可逆的エレクトロポレーションのための医療用プローブの製造方法であって、前記方法は、
拡張可能なバルーンを組み立てることであって、
外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜を組み立てることであって、前記拡張可能な膜は、畳み込まれた形状からバルーン形状の部材に拡張されるように構成されている、ことと、
前記拡張可能な膜の前記外側表面上に複数の電極を配設することと、
前記複数の電極にワイヤを接続することと、
拡張可能なカバーを使用して、前記ワイヤが前記カバーと前記拡張可能な膜との間に拘束されるが、前記電極が周囲環境に露出されるように、前記ワイヤを前記カバーと前記拡張可能な膜との間に封入することと、によって、組み立てることと、
前記拡張可能なバルーンをシャフトの遠位端に連結することと、を含む、製造方法。
(9) 前記カバーの遠位縁上に広がるシール部を使用して、前記カバーを前記拡張可能な膜に対して封止することを更に含む、実施態様8に記載の製造方法。
(10) 不可逆的エレクトロポレーションのための医療用プローブであって、前記医療用プローブは、
患者の器官の中に挿入するためのシャフトと、
前記シャフトの遠位端に連結された拡張可能なバルーンであって、前記拡張可能なバルーンは、
外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜であって、前記拡張可能な膜は、畳み込まれた形状から球状のバルーン形状に拡張されるように構成されている、拡張可能な膜と、
前記拡張可能な膜の前記外側表面上に配設された複数の電極と、
前記複数の電極に接続された1本以上のワイヤであって、前記ワイヤは、前記遠位端から前記電極まで延在する、1本以上のワイヤと、
前記拡張可能な膜が前記球状のバルーン形状に拡張されるとき、前記拡張可能な膜の近位半球を覆う半球形状を有する、拡張可能なカバーと、を含み、前記拡張可能なカバーは、前記ワイヤが前記カバーと前記拡張可能な膜との間に拘束されるが、前記電極が周囲環境に露出されるように、前記ワイヤを前記拡張可能なカバーと前記拡張可能な膜との間に封入する、拡張可能なバルーンと、を備える、医療用プローブ。
【0045】
(11) 前記カバー膜の遠位縁上に広がり、前記カバーを前記拡張可能な膜に封止するように構成されているシール部を更に備える、実施態様10に記載の医療用プローブ。
(12) 前記シール部は、前記電極のそれぞれの近位縁を覆う、実施態様11に記載の医療用プローブ。
(13) 前記電極は、前記拡張可能な膜の長手方向軸を中心として等角に配設されている、実施態様10に記載の医療用プローブ。
(14) 前記電極のそれぞれは、基板を介して前記拡張可能な膜の前記外側表面に連結されている、実施態様10に記載の医療用プローブ。
(15) 前記電極のうちの少なくとも1つは、その他の電極上の他の放射線不透過性マーカーとは異なる構成を有する放射線不透過性マーカーを含む、実施態様10に記載の医療用プローブ。
【0046】
(16) 前記複数の電極は、前記拡張可能な膜の遠位半球部分上に配設されている、実施態様10に記載の医療用プローブ。
(17) 不可逆的エレクトロポレーションのための医療用プローブの製造方法であって、前記方法は、
拡張可能なバルーンを組み立てることであって、
外側表面及び内側表面を有する拡張可能な膜を組み立てることであって、前記拡張可能な膜は、畳み込まれた形状から球状のバルーン形状に拡張されるように構成されている、ことと、
前記拡張可能な膜の前記外側表面上に複数の電極を配設することと、
前記複数の電極にワイヤを接続することと、
前記拡張可能な膜が前記球状のバルーン形状に拡張されるとき、前記拡張可能な膜の近位半球を覆う半球形状を有する、拡張可能なカバーを使用して、前記ワイヤが前記カバーと前記拡張可能な膜との間に拘束されるが、前記電極が周囲環境に露出されるように、前記ワイヤを前記カバーと前記拡張可能な膜との間に封入することと、によって、組み立てることと、
前記拡張可能なバルーンをシャフトの遠位端に連結することと、を含む、製造方法。
(18) 前記カバーの遠位縁上に広がるシール部を使用して、前記カバーを前記拡張可能な膜に対して封止することを更に含む、実施態様17に記載の製造方法。
【国際調査報告】