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特表2023-5104932つの歯部を有するワークを加工する方法、ワークの基準回転角度位置を求める位置決め装置、及びそのような位置決め装置を備える動力工具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】2つの歯部を有するワークを加工する方法、ワークの基準回転角度位置を求める位置決め装置、及びそのような位置決め装置を備える動力工具
(51)【国際特許分類】
   B23F 23/08 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B23F23/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535098
(86)(22)【出願日】2020-07-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2020070542
(87)【国際公開番号】W WO2021148147
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】00065/20
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599172531
【氏名又は名称】ライシャウァー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エガー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブ,ローナルト
(57)【要約】
第1の歯部61及び第2の歯部62を有するワーク60を加工する方法において、第1の歯部61の基準歯構造を識別する。次いで、ワークの基準回転角度位置を求めるために、基準測定装置140を用いて基準歯構造を測定する。その後、第2の歯部に、求められた基準回転角度位置と所定の関係にある回転角度位置をもたらすようにして、第2の歯部62を加工する。位置決め装置100は、ワークの基準回転角度位置を求め、動力工具は、この位置決め装置を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の歯車機構(61)及び第2の歯車機構(62)を有するワーク(60)を加工する方法であって、前記ワーク(60)は、ワーク軸(C1)の周りに回転するように取り付けられ、前記方法は、
非接触で動作する基準識別装置によって前記第1の歯車機構(61)の少なくとも1つの基準歯構造を識別することと、
前記ワーク(60)の基準回転角度位置を求めるために、基準測定装置(140)によって少なくとも1つの前記基準歯構造を測定することと、
前記第2の歯車機構(62)が、求められた前記基準回転角度位置に対して所定の関係にある回転角度位置を得るようにして、加工工具(31)によって前記第2の歯車機構(62)を加工することと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ワーク(60)は、マーク(63)を有し、前記基準識別装置は、非接触で動作するマーク検出装置(130)を含み、前記第1の歯車機構(61)の少なくとも1つの前記基準歯構造を識別することは、
前記マーク検出装置(130)によって前記ワーク(60)の前記マーク(63)を検出することと、
検出された前記マーク(63)によって前記第1の歯車機構(61)の少なくとも1つの前記基準歯構造を識別することと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マーク検出装置(130)は、第1のマークセンサー(131)及び第2のマークセンサー(132)を備え、前記マーク(63)を検出することは、前記第1のマークセンサー(131)及び前記第2のマークセンサー(132)から信号間の差分を形成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準識別装置は、非接触の第1の歯合わせセンサー(121)及び非接触の第2の歯合わせセンサー(122)を含み、前記第1の歯車機構(61)の少なくとも1つの前記基準歯構造を識別することは、
前記第1の歯合わせセンサー(121)によって前記第1の歯車機構(61)の歯構造の回転角度位置を求めることと、
前記第2の歯合わせセンサー(122)によって前記第2の歯車機構(62)の歯構造の回転角度位置を求めることと、
求められた前記回転角度位置から、前記第1の歯車機構(61)の歯構造から前記第2の歯車機構(62)の歯構造までの回転角度距離を求めることと、
前記回転角度距離と特定の公称距離との比較に基づいて、前記第1の歯車機構の少なくとも1つの前記基準歯構造を識別することと、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記基準測定装置(140)は、
触覚センサー、又は、
光学センサー、
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記基準測定装置(140)は、触覚センサーを含み、
前記触覚センサーは、センサーベース部及びプローブチップ(141)を備え、前記プローブチップ(141)は、挿入方向(E)に沿って前記第1の歯車機構(61)と係合するように、前記センサーベース部に対して伸長し、又は前記触覚センサーは、前記触覚センサーが前記第1の歯車機構(61)と係合するように、センサーキャリア(112)に対して変位若しくは旋回する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の歯車機構(62)を、創成加工プロセスによって、特に創成研削プロセスによって加工し、前記創成加工プロセスの回転結合角度を、前記ワーク(60)の事前に求められた前記基準回転角度位置を用いて求める、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記ワーク(60)が前記ワーク軸(C1)の周りで回転する間に、非接触の第1の歯合わせセンサー(121)によって前記第1の歯車機構(61)を検査する、及び/又は非接触の第2の歯合わせセンサー(122)によって前記第2の歯車機構(62)を検査することを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記基準測定装置(140)は、センサーキャリア(112)上に取り付けられ、前記方法は、
前記センサーキャリア(112)を、特に、好ましくは前記ワーク軸(C1)に対して垂直若しくは平行に延在する旋回軸(C5、C6)の周りに旋回させるか、又は、好ましくは前記ワーク軸(C1)に対して径方向若しくは平行に延在する変位方向(V)に沿って変位させることによって、待機位置と測定位置との間で移動させることを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの更なるセンサー装置、特に前記基準識別装置の少なくとも一部が、前記センサーキャリア(112)に取り付けられる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
位置基準装置(151、152、153、154)によって、前記測定位置における少なくとも1つの空間方向、特に接線方向、軸方向、及び/又は径方向に対する前記センサーキャリア(112)の位置を求めることと、
前記センサーキャリア(112)の求められた前記位置を用いて、求められた前記基準回転角度位置を補正することと、
を含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の歯車機構(61)及び前記第2の歯車機構(62)は、外接歯車機構であるか、
前記第1の歯車機構(61)及び前記第2の歯車機構(62)は、内接歯車機構であるか、
前記第1の歯車機構(61)は内接歯車機構であり、前記第2の歯車機構(62)は外接歯車機構であるか、又は、
前記第1の歯車機構(61)は外接歯車機構であり、前記第2の歯車機構(62)は内接歯車機構である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
第1の歯車機構(61)及び第2の歯車機構(62)を有するワーク(60)の基準回転角度位置を求める位置決め装置(100)であって、前記位置決め装置(100)は、
前記第1の歯車機構(61)の少なくとも1つの基準歯構造を非接触で識別するように構成される基準識別装置と、
前記ワーク(60)の前記基準回転角度位置を求めるために、前記基準識別装置によって識別された前記第1の歯車機構(61)の前記基準歯構造を測定するように構成される基準測定装置(140)と、
を備える、前記位置決め装置。
【請求項14】
前記基準識別装置は、前記ワーク(60)のマーク(63)を非接触で検出するように構成されるマーク検出装置(130)を備える、請求項13に記載の位置決め装置(100)。
【請求項15】
前記マーク検出装置(130)は、第1のマークセンサー(131)及び第2のマークセンサー(132)を備え、前記第1のマークセンサー(131)及び前記第2のマークセンサー(132)は、前記ワーク(60)の周方向に対して連続して又は横並びに配置される、請求項14に記載の位置決め装置(100)。
【請求項16】
前記基準識別装置は、
前記第1の歯車機構(61)の歯構造の回転角度位置を求める非接触の第1の歯合わせセンサー(121)と、
前記第2の歯車機構(62)の歯構造の回転角度位置を求める非接触の第2の歯合わせセンサー(122)と、
を備える、請求項13~15のいずれか1項に記載の位置決め装置(100)。
【請求項17】
前記第1の歯合わせセンサー(121)及び/又は前記第2の歯合わせセンサー(122)は、前記ワーク(60)の周方向に沿って前記基準測定装置(140)からオフセットして配置される、請求項16に記載の位置決め装置(100)。
【請求項18】
前記基準測定装置(140)は、
触覚センサー、又は、
光学センサー、
を備える、請求項13~17のいずれか1項に記載の位置決め装置(100)。
【請求項19】
前記基準測定装置(140)は、触覚センサーを備え、
前記触覚センサーは、センサーベース部及びプローブチップ(141)を備え、
前記プローブチップ(141)は、挿入方向(E)に沿って前記第1の歯車機構(61)と係合するように、前記センサーベース部に対して伸長可能である、請求項18に記載の位置決め装置(100)。
【請求項20】
前記基準測定装置(140)が取り付けられるセンサーキャリア(112)を備える、請求項13~19のいずれか1項に記載の位置決め装置(100)。
【請求項21】
前記基準測定装置(140)は、触覚センサーを含み、
前記触覚センサーは、前記触覚センサーが前記第1の歯車機構(61)と係合するように、前記センサーキャリア(112)上に変位可能又は旋回可能に配置される、請求項20に記載の位置決め装置(100)。
【請求項22】
前記基準識別装置の少なくとも一部が、前記センサーキャリア(112)に取り付けられる、請求項20又は21に記載の位置決め装置。
【請求項23】
前記センサーキャリア(112)は、前記センサーキャリア(112)を、特に、好ましくは前記ワーク軸(C1)に対して垂直若しくは平行に延在する旋回軸(C5、C6)の周りに旋回させるか、又は、好ましくは前記ワーク軸(C1)に対して径方向若しくは平行に延在する変位方向(V)に沿って変位させることによって、待機位置と測定位置との間で移動させるために、ベース部材(110)に可動に接続される、請求項20~22のいずれか1項に記載の位置決め装置(100)。
【請求項24】
前記測定位置における少なくとも1つの空間方向、特に接線方向、軸方向、及び/又は径方向に対する前記センサーキャリア(112)の位置を求める位置基準装置(151、152、153、154)を更に備える、請求項23に記載の位置決め装置(100)。
【請求項25】
請求項13~24のいずれか1項に記載の位置決め装置(100)と、
ワークキャリア(40)と、
前記ワークキャリア(40)上に配置され、前記ワーク軸(C1)の周りに回転する前記ワーク(60)を受けるように構成される少なくとも1つのワークスピンドル(50)と、
を備える、加工機。
【請求項26】
前記位置決め装置(100)は、請求項24に従って構成され、
前記位置基準装置は、少なくとも1つの位置基準ターゲット(151)及び少なくとも1つの位置基準センサー(152、153、154)を含み、
少なくとも1つの前記位置基準ターゲット(151)が前記ワークキャリア(40)に接続され、少なくとも1つの前記位置基準センサー(152、153、154)が前記センサーキャリア(112)に接続されるか、又は、少なくとも1つの前記位置基準ターゲット(151)が前記センサーキャリア(112)に接続され、少なくとも1つの前記位置基準センサー(152、153、154)が前記ワークキャリア(40)に接続される、請求項25に記載の加工機。
【請求項27】
前記加工機は、機械ベッド(10)を備え、前記ワークキャリア(40)は、前記機械ベッド(10)に対して可動、特にワークキャリア軸(C3)の周りに旋回可能であり、
前記位置決め装置(100)は、請求項23又は24に従って構成され、
前記ベース部材(110)は、前記機械ベッド(10)に配置される、請求項25又は26に記載の加工機。
【請求項28】
前記ワークキャリア(40)は、前記機械ベッド(10)に対してワークキャリア軸(C3)の周りに旋回可能であり、
前記センサーキャリア(112)は、前記ワークキャリア軸(C3)と前記ワーク軸(C1)との間に径方向に位置する領域において前記ワークキャリア(40)上に配置される、請求項25又は26に記載の加工機。
【請求項29】
工具軸の周りに回転する加工工具(31)を受けるように構成される工具スピンドル(30)と、
請求項1~12のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される制御装置(70)と、
を備える、請求項25~28のいずれか1項に記載の加工機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の歯車機構及び第2の歯車機構を有するワークを加工する方法、そのような方法において使用する位置決め装置、及びその方法を行うのに好適な加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車製造において、2つ以上の歯車機構を共通のシャフト上に有するワークが時折使用される。そのようなワークは、以下で、ダブル歯車機構又はツイン歯車機構とも称する。そのようなワークは、例えば、電気駆動装置において用いられることが多い。
【0003】
多くの場合、ワークは、まず、軟加工プロセスによって事前加工され、その後、硬化される。この後に、硬化微細加工プロセスが行われる。硬化微細加工では、多くの場合、2つの歯車機構のうちの一方が、回転角度位置に関して他方の歯車機構(以下、基準歯車機構と称する)と所定の方法で正確に位置合わせされるようにして、この歯車機構を加工するという課題が生じる。例えば、加工対象の歯車機構の歯構造、例えば、歯又は歯溝を、基準歯車機構の特定の基準歯構造と正確に位置合わせすべきであることが指定されることが多い。
【0004】
歯車機構の歯構造(例えば、歯先又は歯溝)の回転角度位置を、非接触式歯合わせセンサーを用いて求めることが既知である。歯合わせセンサーは、誘導式センサー又は静電容量式センサーとすることができる。歯合わせセンサーは、ワークが歯合わせセンサーを通過して回転している間に、非接触で歯構造の位置を求める。
【0005】
しかしながら、従来の歯合わせセンサーは、2つの歯構造における2つの歯溝が所望の精度で位置合わせされることを確実にするのに十分な精度で、歯構造の回転角度位置を求めることが不可能であることが多い。このことは、歯車機構の歯面と歯先との間の移行部において、面取り部、すなわち、ベベル又は丸みが設けられる場合に特に当てはまる。面取り部により、歯合わせセンサーが歯構造の位置を検出することが困難になる。さらに、面取り部が全ての歯に対して同一であることは常に保証されるわけではない。
【0006】
特許文献1は、2つの測定装置を備える歯車測定器具を開示している。2つの測定装置のうちの一方は、タッチプローブであり、他方は、非接触式センサー装置である。第1の測定装置は、測定軸に沿って可動である。第2の測定装置は、第1の測定装置に対して「ピギーバック(piggyback)」構成で2つの位置間を移動することができる。この文献は、ダブル歯車機構の課題には対処していない。
【0007】
特許文献2は、機械可読のワーク固有のマークを有する歯付きワークの自動位置決めを行う方法を開示している。マークが検出されると、これに基づいてワークの実際の位置が求められる。その後、ワークが目標位置にもたらされる。この文献は、ダブル歯車機構の課題には対処していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国実用新案第202017105125号
【特許文献2】欧州特許出願公開第3518058号
【発明の概要】
【0009】
本発明の課題は、少なくとも2つの歯車機構を備えるワークを加工する方法を提供し、2つの歯車機構のうちの一方が、回転角度位置に関して他方の歯車機構と所定の方法で正確に位置合わせされるようにして、この歯車機構を加工することを可能にすることである。本方法は、歯車機構が面取り部を有する場合でも精密な位置合わせを可能にするものとする。
【0010】
この課題は、請求項1に係る方法によって解決される。更なる実施形態は、従属請求項において提供される。
【0011】
第1の歯車機構及び第2の歯車機構を有するワークを加工する方法が提供される。ワークは、ワーク軸の周りに回転するようにクランプされる。本方法は、
基準識別装置によって第1の歯車機構の少なくとも1つの基準歯構造を識別することと、
ワークの基準回転角度位置を求めるために、基準測定装置によって基準歯構造を測定することと、
第2の歯車機構が、求められた基準回転角度位置に対して所定の関係にある回転角度位置を得るようにして、加工工具によって第2の歯車機構を加工することと、
を含む。
【0012】
したがって、まず、第1の歯車機構(基準歯車機構)の少なくとも1つの基準歯構造(例えば、基準歯又は基準歯溝)を一意に識別する。次いで、基準歯構造を精密に測定する。これにより、ワークの基準回転角度位置を迅速かつ高精度で求めることが可能である。任意選択として、基準回転角度位置を特に精密に求めるために、基準歯車機構の複数の基準歯構造を測定してもよい。ここで、このようにして求められた基準歯車機構の基準回転角度位置に基づいて、第2の歯車機構を加工することができる。これにより、第2の歯車機構が、加工プロセスの結果として、求められた基準回転角度位置に対して高精度で所望の関係にある回転角度位置を得ることが確実になる。例えば、加工後に、第2の歯車機構の少なくとも1つの歯構造が、第1の歯車機構の少なくとも1つの所定の基準歯構造と正確に位置合わせされるか、又はこの基準歯構造に対して所定の回転角度差を有することが確実になり得る。通常の慣例とは対照的に、この歯車機構を加工する方法は、第2の歯車機構の歯構造の位置によって決まるのではなく、第1の歯車機構の歯構造の位置によって決まる。
【0013】
第2の歯車機構の加工は、例えば、創成加工プロセス、特に、創成歯車研削プロセス、ギアスカイビングプロセス、又はホブホーニングプロセスによって行うことができる。この場合、創成加工プロセスの回転結合角度は、ワークの事前に求められた基準回転角度位置を用いて求められることが好ましい。これは、加工対象の歯車機構の回転角度位置が、通常の場合のように、回転結合角度を規定するために求められず、回転結合角度が、基準歯車機構の事前に測定された基準歯構造の位置に基づいて求められることを意味する。しかしながら、創成加工方法以外の他の加工方法、例えば、成形研削等の不連続方法も想定可能である。
【0014】
有利な実施形態において、ワークは、少なくとも1つのマークを有し、基準識別装置は、非接触式マーク検出装置を含む。ここで、第1の歯車機構の少なくとも1つの基準歯構造の識別は、
マーク検出装置によってワーク上の少なくとも1つのマークを検出することと、
検出されたマークに基づいて第1の歯車機構の少なくとも1つの基準歯構造を識別することと、
を含むことができる。
【0015】
マークは、非接触で検出することができる任意のタイプのマークとすることができる。例えば、マークは、ワークの一部に、フロンタルボア(frontal bore)によって形成することができる。このボアは、止まり穴又は貫通穴を形成することができる。ボアは、開放されていても、充填材料によって充填されていてもよい。マークは、刻印部、面取り部、突出部、又は印刷部等によって形成することもできる。他の多くのタイプのマークが想定可能である。マーク検出装置は、マークのタイプに応じて、例えば、誘導式センサー、静電容量式センサー、又は光学センサーを含むことができる。
【0016】
マークは、ワーク上の任意の位置に配置することができる。最もシンプルな例では、例えば、第1の歯車機構の径方向内側におけるワークの面にマークを設け、基準歯構造と直接位置合わせすることができる。しかしながら、マークは、基準歯構造とは異なる第1の歯車機構の歯構造と位置合わせすることもできる。マークは、ワークの基準歯構造から比較的遠くに離れた位置、例えば、シャフト上に又は第2の歯構造の領域内に設けることもできる。マークの位置を用いてどのように基準歯構造の位置についての明確な結論を導くことができるかがわかっていれば十分である。基準歯構造はマークに基づいて識別するだけでよく、正確な位置は後で別個の測定において求められるため、この位置を求める際に高精度である必要はない。
【0017】
有利な実施形態において、マーク検出装置は、第1のマークセンサー及び第2のマークセンサーを備え、第1のマークセンサー及び第2のマークセンサーは、例えば、ワークの周方向に対して前後に並ぶか又は横並びで配置することができる。ここで、ワークのマークの検出は、マークをより確実に検出するために、第1のマークセンサー及び第2のマークセンサーの信号間の差分を形成することを含むことが有利であり得る。
【0018】
マークセンサーに代えて又はマークセンサーに加えて、基準識別装置は、非接触の(すなわち、接触なしで動作する)第1の歯合わせセンサー及び非接触の第2の歯合わせセンサーを含むことができる。ここで、第1の歯車機構の少なくとも1つの基準歯構造の識別を、いわゆる「ベストフィット」方法を用いて行うことができる。これは、
第1の歯合わせセンサーによって第1の歯車機構の歯構造の回転角度位置を求める工程と、
第2の歯合わせセンサーによって第2の歯車機構の歯構造の回転角度位置を求める工程と、
求められた回転角度位置から、第1の歯車機構の歯構造から第2の歯車機構の歯構造までの回転角度距離を求める工程と、
回転角度距離と特定の公称距離(距離設定点)との比較に基づいて、第1の歯車機構の少なくとも1つの基準歯構造を識別する工程と、
を含むことができる。
【0019】
基準歯構造を測定する基準測定装置として、特に、触覚センサー又は光学センサーを用いることができる。そのようなセンサーは、基準歯構造を特に高精度で測定することを可能にする。基準測定装置が触覚センサーを含む場合、基準測定装置は、センサーベース部及びプローブチップを備えることができる。いくつかの実施形態において、触覚センサー全体を移動させる必要なく、プローブチップを、好ましくは径方向の挿入方向に沿って第1の歯車機構と係合させるために、センサーベース部に対して伸長させることができる。これは、触覚センサーが、他のセンサー、特に基準識別装置と共通のセンサーキャリア上に配置される場合に特に有利である。他の実施形態において、触覚センサー全体を、第1の歯車機構と係合させるために、センサーキャリアに対して移動又は旋回させることができる。
【0020】
触覚センサーによる測定は、特に、プローブチップを基準歯構造の歯面の隣に位置付けながら、ワークの回転角度位置を前後に僅かに変更することによって行うことができる。次いで、基準歯構造の左右の歯面がプローブチップに接触するワークの角度位置をそれぞれ求め、例えば、これらの角度位置から平均値を計算する。これは、任意選択として歯面方向及び/又は外形方向のいくつかの位置において行うことができる。しかしながら、基準歯構造の測定には、歯車検査の分野から一般的に既知のような他の触覚的又は光学的方法を用いることもできる。
【0021】
加えて、この方法は、ワークがワーク軸の周りに回転する間に、非接触の第1の歯合わせセンサーによって第1の歯車機構を及び/又は非接触の第2の歯合わせセンサーによって第2の歯車機構をチェックすることを含むことができる。これは、基準歯構造がマークによって識別される場合に特に有用である。特に、これにより、整合性チェックを実行することが可能になる。
【0022】
特に、基準測定装置によって基準歯構造を測定する前に、例えば、基準歯構造の識別における誤差又は第1の歯車機構の事前加工誤差を検出するために、第1の歯合わせセンサーを用いて第1の歯車機構をチェックすることができる。歯合わせセンサーによる第1の歯車機構の検査は、特に、予期されるタイプの歯構造(例えば、歯溝)が、基準識別装置によって求められた位置に実際に存在するか否かをチェックするのに用いることができる。予期されるタイプの歯構造が求められた位置に存在しない場合、エラーが存在し、プロセスを停止することができる。第1の歯合わせセンサーを用いて、マーク単独でできるよりも精密に基準歯構造の回転角度位置を求めることもできる。次いで、基準測定装置による基準歯構造の測定を、非常に具体的に、相応して高速で行うことができる。
【0023】
第2の歯合わせセンサーを用いて、第2の歯車機構の事前加工誤差を検出するために、第2の歯車機構をチェックすることができる。特に、事前加工誤差が大きすぎるために意図された加工を行うことができない又は所望の結果をもたらすことができないワークを検出することが可能である。特に、極端な場合では、求められた基準回転角度に基づいて求められた回転角度位置において加工工具がワークと噛み合う際、事前加工誤差が大きすぎることが原因で加工工具が損傷することを防ぐことができる。
【0024】
有利な実施形態において、基準測定装置がセンサーキャリアに取り付けられる。更なるセンサー装置、特に、例えばマークセンサー及び/又は1つ以上の歯合わせセンサー等の基準識別装置の少なくとも一部を、センサーキャリアに取り付けることができる。この結果、ワークに対して全体として移動することができる小型ユニットが得られる。
【0025】
センサーキャリアは、例えば、ワークの非衝突の着脱を可能にするため、又は上述のセンサー装置をワーク加工中の削り屑及び冷媒による有害な影響から保護するために、測定位置と待機位置との間で可動とすることができる。センサーキャリアのこの移動は、特に、例えば、ワーク軸に対して垂直若しくは水平に延在することができる旋回軸の周りの旋回移動によって、又は、例えば、ワーク軸に対して径方向若しくは平行とすることができる直線方向に沿った平行移動によって達成することができる。
【0026】
関連する構成要素が熱の影響によって膨張又は歪曲する場合でも、基準角度位置を求める際の最大限の正確さを保証するために、本方法は、測定位置において少なくとも1つの空間方向に対してセンサーキャリアの位置を求めることを含むことができる。特に、ワークに対するセンサーキャリアの位置は、測定位置において、以下の空間方向、すなわち、ワークに対して接線方向に延在する接線方向、ワーク軸に対して平行に延在する軸方向、及びワーク軸に対して径方向に延在する径方向のうちの1つ以上に対して求めることができる。このために、対応する位置基準装置を設けることができる。可能な位置基準装置は、以下により詳細に記載する。次いで、求められた基準角度位置を、空間におけるセンサーキャリアの求められた位置によって補正することができる。
【0027】
ワークの回転角度位置は、基準識別装置及び基準測定装置が必ずしも互いに位置合わせされないため、基準歯構造の識別と基準歯構造の測定との間で異なる場合がある。対応する回転角度差は、マスターワーク、すなわち、意図されるワーク設計に正確に対応するワークを用いて較正することができる。基準歯構造の測定中及びワークの加工中のワークの相対回転角度位置、並びに工具の相対回転角度位置も、このようにして較正することができる。更なるセンサーの角度位置も、マスターワークによって較正することができる。
【0028】
センサーキャリア上の様々なセンサー装置(基準識別装置、基準測定装置等)の位置決めは、ゲージを用いて行うことができる。ゲージは、例えば、ワークブランクに幾何学的に対応することができ、ワークブランクの幾何形状は、加工対象のワークと同様のものが選択されるが、事前加工された歯車機構を有せず、センサー装置の方向において、例えば0.1mmという特定の許容差がある。次いで、センサー装置は、このゲージと接触させることによって位置決めすることができる。
【0029】
提案される方法は、外接歯車機構及び内接歯車機構に等しく好適である。特に、以下の組合せが可能である。
第1の歯車機構及び第2の歯車機構の双方が外接歯車機構である。この場合、基準測定装置は、測定位置において内方、すなわち、ワーク軸の方向を指し、歯合わせセンサーが存在する場合、歯合わせセンサーも測定位置において内方を指す。
第1の歯車機構及び第2の歯車機構の双方が内接歯車機構である。この場合、基準測定装置は、測定位置において外方、すなわち、ワーク軸の反対を指し、歯合わせセンサーが存在する場合、歯合わせセンサーも測定位置において外方を指す。
第1の歯車機構が内接歯車機構であり、第2の歯車機構が外接歯車機構である。この場合、基準測定装置は、測定位置において外方を指し、歯合わせセンサーが存在する場合、第1の歯合わせセンサーが測定位置において外方を指し、第2の歯合わせセンサーが測定位置において内方を指す。
第1の歯車機構が外接歯車機構であり、第2の歯車機構が内接歯車機構である。この場合、基準測定装置は、測定位置において内方を指し、歯合わせセンサーが存在する場合、第1の歯合わせセンサーが測定位置において内方を指し、第2の歯合わせセンサーが測定位置において外方を指す。
【0030】
第2の態様において、本発明は、ワークの基準回転角度位置を求める位置決め装置を提供する。ここでも、ワークは、第1の歯車機構及び第2の歯車機構を有する。位置決め装置は、
第1の歯車機構の少なくとも1つの基準歯構造を非接触で識別するように構成される基準識別装置と、
ワークの基準回転角度位置を求めるために、基準識別装置によって識別された第1の歯車機構の基準歯構造を測定するように構成される基準測定装置と、
を備える。
【0031】
位置決め装置は、上述した方法において用いられるように特に設計することができる。
【0032】
既に言及したように、基準識別装置は、ワーク上のマークを非接触で検出するように構成されるマーク検出装置を含むことができる。マーク検出装置は、第1のマークセンサー及び第2のマークセンサーを備えることができ、第1のマークセンサー及び第2のマークセンサーは、ワークの周方向に対して前後に並ぶか又は横並びで配置することができる。
【0033】
既に言及したように、基準識別装置は、代替的又は付加的に、
第1の歯車機構の歯構造の回転角度位置を求める非接触の第1の歯合わせセンサーと、
第2の歯車機構の歯構造の回転角度位置を求める非接触の第2の歯合わせセンサーと、
を備えることができる。
【0034】
上述したように、基準測定装置は、触覚センサー又は光学センサーを備えることができる。触覚センサーは、プローブチップを備えることができ、プローブチップは、好ましくは径方向の挿入方向に沿って第1の歯車機構と係合するように、センサーベース部に対して伸長することができる。代替的又は付加的に、触覚センサーは、第1の歯車機構と係合するように、センサーベース部に対して直線移動可能又は旋回可能とすることができる。
【0035】
位置決め装置が第1の歯合わせセンサー及び/又は第2の歯合わせセンサーを含む場合、第1の歯合わせセンサー及び/又は第2の歯合わせセンサーがワークの周方向に沿って基準測定装置からオフセットされると有利である。これにより、歯合わせセンサーの使用と基準測定装置の使用との間で位置決め装置を移動させる必要性が回避される。特に、第1の歯合わせセンサー及び/又は第2の歯合わせセンサーが、プローブチップの挿入方向に対して角度の付いた径方向測定方向を規定し、好ましくは、プローブチップの径方向挿入方向及び径方向測定方向の双方が、ワーク軸に対して垂直な平面に対して平行であると有利である。
【0036】
マーク検出装置は、存在する場合、プローブチップの挿入方向とは異なる、例えば、プローブチップの挿入方向に対して垂直の検出方向を規定することができる。しかしながら、他の構成も可能であり、正確な構成は、ワーク上のマークの位置に強く左右される。
【0037】
既に言及したように、位置決め装置は、基準測定装置が取り付けられるセンサーキャリアを備えることができる。基準識別装置の少なくとも一部も、センサーキャリアに取り付けられることが好ましい。センサーキャリアは、特に、例えば、ワーク軸に対して垂直若しくは平行に延在する旋回軸の周りに旋回させることによって、又は、例えば、ワーク軸に対して径方向若しくは平行に延在する直線方向に沿って直線移動させることによって、センサーキャリアを待機位置と測定位置との間で移動させるために、ベース部材に可動に接続することができる。
【0038】
位置決め装置は、第2の歯車機構を加工する加工機の一部とすることができる。加工機は、ワークキャリアと、ワークキャリアに取り付けられる少なくとも1つのワークスピンドルとを備えることができ、ワークスピンドルは、ワーク軸の周りに回転するワークを受けるように構成される。加工機はまた、機械ベッドを備えることができる。ワークキャリアは、機械ベッドの一部とするか、若しくは機械ベッドに強固に接続することができ、又は、ワークキャリアは、機械ベッドに対して可動であり、特に、ワークキャリア軸の周りに旋回することができる。
【0039】
ワークキャリアが機械ベッドに対して可動であり、センサーキャリアがベース部材に対して可動に接続される場合、ベース部材が機械ベッド上に配置される、すなわち、位置決め装置がワークキャリアとともに移動しないと有利であり得る。
【0040】
位置基準装置が利用可能な場合、位置基準装置は、少なくとも1つの位置基準ターゲット及び少なくとも1つの位置基準センサーを備えることができる。この場合、少なくとも1つの位置基準ターゲットがワークキャリアに接続され、少なくとも1つの位置基準センサーがセンサーキャリアに接続されるか、又は、少なくとも1つの位置基準ターゲットがセンサーキャリアに接続され、少なくとも1つの位置基準センサーがワークキャリアに接続されると有利である。
【0041】
位置決め装置、特にセンサーキャリアをワークキャリア上に配置し、ワークキャリアとともに移動するようにすることも想定可能である。これは、ワークキャリアが静止している間だけでなく、ワークキャリアが移動している間にも基準歯構造の識別及び測定を行うことができるという利点を有する。したがって、非生産時間を最小限にすることができる。ワークキャリアが機械ベッドに対してワークキャリア軸の周りに旋回することができる場合、センサーキャリアが、ワークキャリア軸とワーク軸との間に径方向にある位置においてワークキャリア上に位置決めされると有利であり得る。
【0042】
加工機は、工具軸の周りに回転する加工工具を受けるように構成される工具スピンドルを備えることもできる。加工機はまた、上述した動作を行うように構成される制御装置を備えることができる。特に、制御装置は、センサーキャリアを待機位置と測定位置との間で移動させる、特に、センサーキャリアを旋回又は直線移動させるように構成することができる。制御装置は、測定位置においてワークに対するセンサーキャリアの位置を、位置基準装置によって、少なくとも1つの空間方向、特に、上述の接線方向、軸方向、及び/又は径方向に対して求めるように構成することもできる。制御装置は、プローブチップを第1の歯車に挿入するために、触覚センサーのプローブチップをセンサーキャリアに対して挿入方向に沿って移動させるように構成することもできる。加えて、制御装置は、触覚センサーが第1の歯車と係合する前に、非接触の第1の歯合わせセンサーによって第1の歯車機構を測定し、及び/又は、第2の歯車の事前加工誤差を検出するために、非接触の第2の歯合わせセンサーによって第2の歯車を測定するように構成することができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態について、以下で図面を参照しながら説明する。図面は、説明のためのものであり、限定として解釈すべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1図1は、測定位置における第1の実施形態に係る位置決め装置を備える仕上げ機の概略斜視図である。
図2図2は、待機位置における第1の実施形態に係る位置決め装置の斜視図である。
図3図3は、測定位置における第1の実施形態に係る位置決め装置の斜視図である。
図4図4は、図3の細部IVの拡大図である。
図5図5は、プローブチップが後退している、測定位置における第1の実施形態に係る位置決め装置の平面図である。
図6図6は、プローブチップが伸長している、測定位置における第1の実施形態に係る位置決め装置の平面図である。
図7図7は、ワークを加工する例示的な方法のフローチャートである。
図8図8は、測定位置における第2の実施形態に係る位置決め装置の平面図であり、待機位置が破線で示されている。
図9図9は、測定位置における第3の実施形態に係る位置決め装置の側面図である。
図10図10は、測定位置における第4の実施形態に係る位置決め装置の側面図である。
図11図11は、測定位置における第4の実施形態の位置決め装置の平面図である。
図12図12は、待機位置における第4の実施形態の位置決め装置の平面図である。
図13図13は、第5の実施形態に係る位置決め装置を備える仕上げ機の概略斜視図である。
図14図14は、プローブチップが後退している第5の実施形態の位置決め装置の拡大図である。
図15図15は、プローブチップが伸長している第5の実施形態の図である。
図16図16は、第6の実施形態に係る位置決め装置の斜視図である。
図17図17は、図16の細部XVIIの拡大図である。
図18図18は、第7の実施形態に係る位置決め装置の斜視図である。
図19図19は、図18の細部XIXの拡大図である。
図20図20は、第6の実施形態に係る位置決め装置のマーク検出装置のセンサー信号の時間推移を示す図である。
図21図21は、一例として図20のセンサー信号間の差分の時間推移を示す図である。
図22図22は、「ベストフィット」方法を示すダブル歯車機構の概略図である。
図23図23は、待機位置における第8の実施形態に係る位置決め装置の概略斜視図である。
図24図24は、図23の細部Aの拡大図である。
図25図25は、測定位置における図23の位置決め装置の概略側面図である。
図26図26は、測定位置における第8の実施形態の位置決め装置の概略平面図である。
図27図27は、追加の位置基準装置を備える、待機位置における第8の実施形態に係る位置決め装置の概略斜視図である。
図28図28は、待機位置における第9の実施形態に係る位置決め装置の概略斜視図である。
図29図29は、測定位置における第9の実施形態に係る位置決め装置の概略斜視図である。
図30図30は、外方旋回位置(swiveled-out position)における基準測定装置を示すために切欠き部を伴う、測定位置における第9の実施形態に係る位置決め装置の概略側面図である。
図31図31は、内方旋回位置(swung-in position)における基準測定装置を示すために切欠き部を伴う、測定位置における第9の実施形態に係る位置決め装置の概略側面図である。
図32図32は、待機位置における第10の実施形態に係る位置決め装置の概略斜視図である。
図33図33は、測定位置における第10の実施形態に係る位置決め装置の概略斜視図である。
図34図34は、測定位置における第11の実施形態に係る位置決め装置を備えるギアスカイビング機械の概略斜視図である。
図35図35は、図34の領域XXXVにおける拡大細部図である。
図36図36は、待機位置における第12の実施形態に係る位置決め装置の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
<例示的な仕上げ機の構造>
図1は、創成研削による歯車の硬化仕上げ用の仕上げ機を示している。この機械は、機械ベッド10を備え、機械ベッド10の上に、工具キャリア20が、水平送り方向Xに沿って可動であるように配置される。Z方向スライド21が、工具キャリア20上に配置され、鉛直方向Zに沿って移動することができる。Y方向スライド22が、Z方向スライド21上に配置され、Y方向スライド22は、一方では、X軸に対して平行に延在する図1に示されていない水平旋回軸の周りに、Z方向スライド21に対して旋回することができ、他方では、X軸に対して垂直かつZ軸に対して調整可能な角度で延在するシフト方向Yに沿って移動することができる。Y方向スライド22は、工具スピンドル30を保持し、工具スピンドル30には、研削ウォーム31の形態の仕上げ工具がクランプされる。工具スピンドル30は、研削ウォーム31を工具スピンドル軸の周りに回転させるように駆動する工具スピンドル駆動部32を備える。
【0046】
タレット40の形態の旋回ワークキャリアが、機械ベッド10上に配置される。タレット40は、鉛直旋回軸C3の周りで複数の回転位置間を旋回することができる。タレット40は、2つのワークスピンドル50を保持し、2つのワークスピンドル50のそれぞれにワーク60をクランプすることができる。カウンターコラム51が、各ワークスピンドルに対して、鉛直方向に可動な心押台52を保持する。ワークスピンドル50のそれぞれは、ワーク軸の周りに回転するように駆動することができる。図1では、見えているワークスピンドル50のワーク軸にC1が付されている。2つのワークスピンドルは、タレット40において、径方向に対向する位置(すなわち、旋回軸C3に対して180°オフセットした位置)に位置している。このようにして、2つのワークスピンドルのうちの一方を、他方のワークスピンドル上でワークが研削ウォーム31によって加工されている間に着脱することができる。これにより、不要な非生産時間が大部分回避される。このような機械構想は、例えば、国際公開第00/035621号から既知である。
【0047】
ワーク60は、2つの外接歯車機構を有する。以下により詳細に説明する位置決め装置100を用いて、2つの歯車機構のうちの大きい方を研削ウォーム31と非衝突で係合させることができるように、ワーク60をワーク軸C1の周りの角度位置に対して位置合わせし、次いで、この歯車機構を、加工後に、他方の歯車機構に対して高精度に予め定められた角度位置となるようにして加工することができる。
【0048】
この機械は、複数の制御モジュール71及び制御パネル72を備える、記号的に表示された機械コントローラー70を備える。制御モジュール71のそれぞれは、機械軸を制御し、及び/又はセンサーから信号を受信する。この例では、制御モジュール71のうちの少なくとも1つは、以下により詳細に記載する位置決め装置100のセンサーと相互作用するように構成される。
【0049】
<2つの外接歯車機構を有するワーク:水平旋回軸を備える位置決め装置>
図2図6は、第1の実施形態に係る位置決め装置100を、ワークスピンドル50上にクランプされたワーク60とともに示している。
【0050】
特に図2及び図3に示されているように、ここで例として示されているワーク60は、シャフトを有し、シャフト上には、サイズが異なる2つの平歯車が、軸方向に異なる位置において形成される。平歯車は、シャフトと一体部品として形成される。2つの平歯車のうちの小さい方は、第1の歯車機構61を有する。この歯車機構は、以下で、基準歯車機構とも称する。2つの平歯車のうちの大きい方は、第2の歯車機構62を有する。この歯車機構が、仕上げ機によって加工される。この例では、歯車機構61、62は、歯先円直径だけでなく歯数も異なる。この例は、平歯車を示しているが、歯車は、はすば歯車とすることもできる。この例では、双方の歯車機構がワーク軸の周りの全周にわたるが、一方又は双方の歯車機構を複数の区画にのみ形成することもできる。
【0051】
ワーク60は、マークも有する。この例では、マークは、穴63によって形成され、穴63は、2つの平歯車のうちの大きい方において第2の歯車機構62の径方向内側の領域に形成され、ワーク軸C1に対して平行に延在する。他のタイプのマーク、例えば、刻印部、面取り部、突出部、色マーク等も想定可能である。マークは、ワークの異なる位置に形成することもできる。例えば、穴がシャフトを通って直径方向に延在してもよく、又はシャフトが面取り部を有してもよい。他の多くの変形形態が想定可能である。
【0052】
位置決め装置100は、図1に示されている仕上げ機の機械ベッド10に接続されるベース部材110を備える。旋回アームの形態のセンサーキャリア112が、ベース部材110に取り付けられる。センサーキャリア112は、ベース部材110に対して、したがって機械ベッド10に対して、水平軸C5の周りで待機位置(図2)と測定位置(図3図6)との間を旋回することができる。
【0053】
センサーキャリア112は、2つの歯合わせセンサー121、122を保持する。第1の歯合わせセンサー121は、基準歯車機構61に向かって径方向測定方向Rに沿って向けられ、第2の歯合わせセンサー122は、加工対象の歯車機構62に向かって径方向測定方向Rに沿って整列されている。歯合わせセンサー121、122は、例えば、誘導式又は静電容量式の距離センサーであり、これらのセンサーは、距離測定によって、センサーが歯先又は歯溝に対して位置合わせがなされているか否かを検出する。したがって、歯合わせセンサー121、122は、ワーク60が回転している間に、歯車機構61、62の迅速な検査、及び全ての歯溝の位置の確定を可能にする。
【0054】
センサーキャリア112は、本例では単一のマークセンサー131(図4を参照)からなるマーク検出装置130を更に保持する。本例では、マークセンサー131は、歯合わせセンサー121、122と同様に、誘導式又は静電容量式の距離センサーとして構成される。マークセンサー131は、ワーク60の穴63が形成される面と位置合わせされる。ワーク60が回転すると、マークセンサー131は、穴がマークセンサー131を通過するときの、マーク検出方向Mに沿った距離の変化を記録する。これに基づいて、機械制御部70は、穴63がマークセンサー131の位置と一致するワーク60の回転角度を求めることができる。マークのタイプ及び位置に応じて、他のマークセンサー、例えば光学センサーを用いることもできる。マークセンサーは、マークの位置に基づいて、基準歯車機構61における基準歯構造、特に基準歯又は基準歯溝を一意に識別することを可能にする。
【0055】
センサーキャリア112は、基準歯構造を測定し、したがって、ワーク60の基準角度位置を高精度で求めるために、基準測定装置140を更に保持する。基準測定装置140は、ワーク軸C1に向かって径方向に向けられる。本例では、基準測定装置140は、触覚センサーとして構成される。触覚センサーは、センサーキャリア112に接続されるベース部と、後退位置(図5を参照)と伸長位置(図6を参照)との間でベース部に対して伸長及び後退することができるプローブチップ141とを備える。これにより、センサーキャリア112を移動させる必要なく、プローブチップ141が挿入方向Eに沿って基準歯車機構61内に移動することが可能になる。挿入方向Eは、ここではワーク軸C1に対する径方向に一致する。しかしながら、基準測定装置140は、別の方法で、例えば、光学センサーとして設計することもできる。
【0056】
最後に、センサーキャリア112は、接線位置センサー152を保持し、接線位置センサー152は、基準キャリア42を介してタレット40上に配置される位置基準ターゲット151と位置合わせされる。接線位置センサー152は、歯合わせセンサー121、122及びマークセンサー131と同様の距離センサーとして構成される。測定位置において、接線位置センサー152は、ワーク60に対する接線方向Tに沿って接線位置センサー152から位置基準ターゲット151までの距離を測定する。測定距離に基づき、基準測定装置140がワーク軸C1に向かって正確に径方向に向けられなくなるという事態を招く、熱の影響によって生じる長さ変化及び歪みに起因する基準角度位置の測定誤差を補正することができる。これにより、求められる基準角度位置の正確さを向上することができる。代替的に、接線位置センサー152及び位置基準ターゲット151を入れ替えてもよい。
【0057】
<ワークの加工>
図7は、図1に示されている仕上げ機を用いてワーク60を加工する例示的なフローチャートを示している。
【0058】
工程301において、ワーク60をワークスピンドル50上にクランプする。工程302において、センサーキャリア112を図2の待機位置から図3図6の測定位置に移動させる。工程303において、接線位置センサー152を用いてセンサーキャリア112の接線位置を求め、求められる基準回転角度位置に対する補正値をそこから導出する。工程304において、マーク検出装置130を用いて穴63の位置を求める。工程305において、これに基づいて基準歯構造を識別する。
【0059】
工程306において、歯合わせセンサー121、122を用いて2つの歯車機構61、62をチェックする。一方では、整合性チェックを実行し、所望のタイプの歯構造が、マークに従って基準歯構造が位置すべき位置に実際に存在するか否かを求める。基準歯構造が然るべき位置に存在しない場合、プロセスを停止し、エラーメッセージを出力する。他方では、第2の歯車機構が第1の歯車機構に対してどのように位置合わせされているかを見るために、チェックを実行する。このために、一方では、第2の歯車機構の歯構造が許容可能な公差内で基準歯構造に対して位置合わせされているか否かを見るために、チェックを行う。他方では、事前加工誤差に関するチェックを行う。このチェックにより、第2の歯車機構を首尾よく加工することができることが示されると、プロセスは継続する。そうでない場合、動作は停止し、ワークはNIO(不良(not in order))部品として処分される。
【0060】
ここで、工程307において、基準歯構造を測定する。測定を行うために、ワークスピンドル50を用いて、ワーク60を、プローブチップ131が基準歯構造内に移動することができる回転角度位置にもたらす。ここで、基準歯構造は、歯車検査から既知の手法を用いて、ワークのいずれの角度位置でプローブチップ131が基準歯構造の左右のフランクに接触するかをチェックすることによって測定される。これにより、ワークの基準角度位置を求める。
【0061】
工程308において、上記に基づき、ワーク60と研削ウォーム31との間の回転結合角度を求める。センサーキャリア112は、待機位置に再び移動し、タレット40は、C3軸の周りに180°旋回し、ワークスピンドル50を加工位置に移動させる。ここで、工程309において、研削ウォーム31を用いてワーク60の加工対象の歯車機構62を加工する。タレット40は、ここで、再び180°旋回し、工程310において、加工済みのワーク60を取り外す。加工済みの歯車機構62は、ここで、基準歯車機構61に対して所望の方法で正確に位置合わせされる。
【0062】
当然ながら、この例示的なフローチャートに対する様々な変更が想定可能である。
【0063】
<2つの外接歯車機構を有するワーク:鉛直旋回軸を有する位置決め装置>
図8は、第2の実施形態に係る位置決め装置を示している。同じ又は同様の機能を有する構成要素には、図1図6と同じ参照符号が付されている。この位置決め装置は、センサーキャリア112が水平軸の周りではなく鉛直軸C6の周りでベース部材110に対して旋回することができるという点で、図1図6の位置決め装置とは異なる。これは、ワーク60を、2つの歯車機構61、62のうちの大きい方が小さい方の歯車機構の上方に位置するようにしてクランプする場合に特に有利である。この場合、センサーキャリア112が水平軸の周りに非衝突で旋回することはできない。
【0064】
これは、第3の実施形態に係る位置決め装置を示す図9に示されている。同じ又は同様の機能を有する構成要素には、ここでも図1図6と同じ参照符号が付されている。ここで、ワーク60は、図8に示されている実施形態に対して上下反転している。センサーキャリア112上の様々なセンサー装置の配置もこれに応じて適合されている。センサーキャリア112が、鉛直軸C6の周りに非衝突で内外に旋回することができることを見ることができる。
【0065】
<2つの外接歯車機構を有するワーク:直線変位軸を有する位置決め装置>
代替的に、センサーキャリアを移動させることも可能である。これは、第4の実施形態に係る位置決め装置を示す図10図12に示されている。センサーキャリア112は、測定位置(図11)と待機位置(図12)との間で直線移動することができる。直線変位方向Vは、ここでは、プローブチップ141の挿入方向Eと一致する。しかしながら、プローブチップ141の後退及び伸長動作は、センサーキャリア112の変位とは依然として独立している。
【0066】
<2つの外接歯車機構を有するワーク:タレット上の位置決め装置>
位置決め装置をタレット40に取り付けることも可能である。これにより、非生産時間を更に最小限にすることが可能である。これは、第5の実施形態に係る位置決め装置を備える仕上げ機を示す図13図15に示されている。同じ又は同様の機能を有する構成要素には、ここでも図1図6と同じ参照符号が付されている。ここでは、センサーキャリア112は、タレット40に取り付けられ、タレット40に対して鉛直方向に沿って移動することができる。また、プローブチップ141は、ここでは、ワーク軸C1に対して径方向に、すなわち水平に、基準歯車機構に挿入することができる。
【0067】
<異なる形態によるマーク検出>
図16及び図17は、マーク検出装置130が2つのマークセンサー131、132を備える、第6の実施形態に係る位置決め装置を示している。マークセンサーは、ここでも、それぞれのセンサーの前側からワークの対向表面までの距離を求める誘導式又は静電容量式の距離センサーである。センサーは、測定した距離を示す信号をそれぞれ出力する。2つのマークセンサー131、132は、ワークの周方向に対して横並びに、すなわち、径方向に対して前後に並んで配置される。ワークが回転すると、穴63は、外側マークセンサー131を通過するが、内側マークセンサー132は穴の影響を受けないままである。
【0068】
代替的に、マークセンサー131、132は、ワークの周方向に対して前後に並んで、すなわち、ワーク軸に対して同じ半径上に配置することもできる。対応する第7の実施形態が図18及び図19に示されている。この場合、2つのマークセンサーが順々に穴を検出する。
【0069】
第6の実施形態の結果として得られる出力信号が、例として図20に示されている。この例では、ワークが比較的大きな軸方向振れ誤差を有してクランプされている。軸方向振れ誤差に起因して、2つのマークセンサーのそれぞれが正弦波信号210、220を記録し、その周波数は、ワークの回転周波数に対応する。第1のマークセンサー131の信号210は、穴63を通過することによって生じるピーク211も有する。このピークは、穴63がマークセンサー131に対向する回転角度位置を示している。穴63が、センサー131の有効領域よりも小さい比較的小さな直径を有することから、この信号は、正弦波成分の振幅に比べて比較的小さい。したがって、従来の信号処理方法によって明確にピークを検出することは常に容易ではない。
【0070】
ピークの一意の識別を容易にするために、2つのマークセンサー131、132の信号210、220間の差分を形成することができる。差分信号が図21に示されている。ここでは、差分信号230は、重畳された残差正弦波信号及びノイズを明確に超えるピーク231を有する。このピークは、ここでは、例えば、単純な閾値処理によって検出することができる。
【0071】
第7の実施形態において、差分の形成により、時間的に互いに続いた反対の符号を有する2つのピークがもたらされる。これらの2つのピークも、確実に検出することができる。
【0072】
<「ベストフィット」方法を用いる基準歯構造の識別>
マークを用いる代わりに、「ベストフィット」方法を用いて基準歯構造を識別することができる。これは、図22に示されている。
【0073】
まず、第1の歯車機構61の歯構造の回転角度位置を第1の歯合わせセンサーによって求め、第2の歯車機構62の歯構造の回転角度位置を第2の歯合わせセンサーによって求める。次に、第1の歯車機構61の歯構造と第2の歯車機構62の歯構造との間の回転角度距離を求める。これらの回転角度距離は、特定の距離設定点と比較される。システムは、第2の歯車機構62の任意の歯構造に対する回転角度距離が特定の距離設定点と最も正確に一致する(「ベストフィット」)、第1の歯車機構61の歯構造を探す。例えば、システムは、第2の歯車機構62の歯構造に対する最小回転角度距離を有する、すなわち、第2の歯車機構62の歯構造と可能な限り精密に位置合わせされる第1の歯車機構61の歯構造を探す。図22では、これは、第2の歯車機構62の歯溝302と略完全に位置合わせされる歯溝301であり、第1の歯車機構61の他の全ての歯溝から第2の歯車機構62の次の歯溝までの回転角度距離は、歯溝対301、302に対するものよりも大きい。したがって、歯溝301が基準歯溝として識別される。
【0074】
2つの歯構造の歯数の比率を低減することができる場合、理想的条件下では、第2の歯車機構の歯構造に対して同じ回転角度距離を有する第1の歯車機構の歯構造が複数存在する。換言すれば、例えば、第1の歯車機構が歯数kNを有し、第2の歯車機構が歯数kNを有する場合(ここで、k、N及びNは1よりも大きい自然数であり、N及びNは1を除く共通の素因数を有しない)、理論上、第1の歯車機構及び第2の歯車機構の歯構造が同じ回転角度距離を有するワークの回転角度はk個存在する。この場合、「ベストフィット」を求めると、距離設定点からの回転角度距離の偏差は、2π/kの回転角度距離においてk個の歯構造にわたって平均化することができる。
【0075】
<2つの内接歯車機構を有するワーク:水平旋回軸を有する位置決め装置>
図23図27は、第8の実施形態に係る位置決め装置を示している。同じ又は同様の機能を有する構成要素には、ここでも図1図6と同じ参照符号が付されている。第8の実施形態の位置決め装置は、基準歯車機構61及び加工対象の歯車機構62の双方が内接歯車機構として構成されるダブル歯車機構ワーク60の基準回転角度位置を求めるように構成される。
【0076】
ワーク60は、ここでも穴の形態のマーク63を有する(図24を参照)。この例では、この穴は、基準歯車機構61の径方向外側かつ加工対象の歯車機構62の径方向内側に形成され、ワーク軸C1に対して平行に延在する。
【0077】
第8の実施形態の位置決め装置は、第1の実施形態の位置決め装置と基本的に同様である。位置決め装置は、ここでも、仕上げ機の機械ベッド又はワークキャリアに接続されるベース部材110を備える。旋回アームの形態のセンサーキャリア112は、このベース部材110に取り付けられる。センサーキャリア112は、ここでも、ベース部材110に対して水平旋回軸C5の周りで待機位置(図22図27)と測定位置(図25図26)との間を旋回することができる。
【0078】
センサーキャリア112は、ここでも、2つの歯合わせセンサー121、122を保持し、2つの歯合わせセンサー121、122は、内方に向いた歯車機構61、62に向かって径方向外方に向けられる。
【0079】
センサーキャリア112は、マーク検出装置130を更に保持し、ここでは、マーク検出装置130は、第1の形態と同様に、単一のマークセンサーのみを備える(図25図27を参照)。
【0080】
さらに、センサーキャリア112は、ここでもプローブチップ141を備える触覚センサーとして構成される基準測定装置140を保持する。第1の実施形態の真っ直ぐなプローブチップとは対照的に、プローブチップ141は、ここでは角度が付けられている。プローブチップ141の自由端部の方向において、プローブチップ141は、測定位置において水平に向けられ、基準歯車機構61の歯溝に径方向に挿入されるように意図されたプローブセクションを有する。プローブチップ141は、測定位置において鉛直に向けられ、プローブチップを基準測定装置140のベース部に接続する接続セクションも有する。接続セクション及びプローブセクションは、湾曲セクションによってつながっている。プローブチップ141のプローブセクションを基準歯車機構の歯溝に挿入するために、基準測定装置のベース部がリニアスライド142上に配置される。リニアスライド142は、センサーキャリア112上を挿入方向Eに沿って直線移動することができる。挿入方向は、測定位置における径方向である。
【0081】
図27は、任意選択の位置基準装置も示している。上述した実施形態と同様に、センサーキャリア112上の接線位置センサー152は、ここでは、基準キャリア42上の位置基準ターゲット151と相互作用し、ワーク60に対する接線である接線方向に対してセンサーキャリア112の位置を求める。ここでも、接線位置センサー152及び位置基準ターゲット151の役割は入れ替えることもでき、すなわち、接線位置センサーを基準キャリア上に設置することができ、位置基準ターゲットをセンサーキャリア上に設置することができる。
【0082】
基準測定装置を用いて基準歯構造を測定することによる基準歯車機構61の基準歯構造の識別及びワーク60の基準回転角度位置の確定は、第1の実施形態と同様の方法で行われる。次いで、加工対象の歯車機構62は、内接歯車の加工に好適な仕上げプロセス、例えばギアスカイビングによって仕上げ加工することができる。このために、求められた基準回転角度位置に基づいて回転結合角度を再び設定することができる。
【0083】
図23図27において、基準歯車機構61の内径は、加工対象の歯車機構62の内径よりも小さく、それにより、センサーキャリア112は、単純な旋回移動によって問題なく非衝突で測定位置に移動させることができる。
【0084】
一方で、基準歯車機構61が加工対象の歯車機構62よりも大きい内径を有する場合、以下の点を考慮に入れるべきである。加工工具のアクセス性の理由から、加工対象の歯車機構62は、通常、依然として上部に位置しなければならない。これは、センサーキャリア112を水平軸の周りの単純な旋回移動のみによって非衝突で測定位置に移動させることができなくなることを意味する。この場合、いくつかの選択肢がある。第1の選択肢は、位置決め装置に追加の軸、例えば追加の直線変位軸を設けることである。例えば、センサーキャリア112全体を、ホルダー上のワーク軸に対して径方向に変位可能なリニアスライドに取り付けることができ、このホルダーをさらに、軸C5の周りに旋回することができるように固定ベース部材110に取り付けるか、又は、ベース部材110自体を機械ベッドに対して直線変位可能とすることができる。第2の選択肢は、既存の機械軸によっていずれにせよ可動である機械要素、例えば工具キャリアに、センサーキャリア112を取り付けることである。これは、図34及び図35を参照して以下でより詳細に説明する。当然ながら、他の選択肢も想定可能である。
【0085】
<2つの内接歯車機構を有するワーク:直線変位軸を有する位置決め装置>
図28図31は、第9の実施形態に係る位置決め装置を示している。同じ又は同様の機能を有する構成要素には、ここでも図1図6と同じ参照符号が付されている。第8の実施形態の位置決め装置と同様に、第9の実施形態の位置決め装置は、基準歯車機構61及び加工対象の歯車機構62の双方が内接歯車機構として構成されるダブル歯車機構ワーク60の基準回転角度位置を求めるように構成される。
【0086】
第8の実施形態とは対照的に、センサーキャリア112は、センサーキャリア112を待機位置(図28)から測定位置(図29)に移動させるように、ベース部材110に対して変位方向Vに沿って直線移動することができる。2つの歯合わせセンサー121、122及びマーク検出装置130は、センサーキャリア112上に取り付けられる。接線位置センサー152も、センサーキャリア112上又はセンサーキャリア112内に取り付けられ、図示されていない位置基準ターゲットと相互作用する。
【0087】
ここでもまた、センサーキャリア112は、湾曲したプローブチップ141を有する触覚センサーの形態の基準測定装置140を保持する。プローブチップ141を基準歯車機構61と係合させるために、基準測定装置140のベース部は、センサーキャリア112に旋回式に接続される。対応する旋回軸C7は、ここでは水平に延在する。したがって、基準測定装置140は、プローブチップ141が基準歯車機構61と係合しない外方旋回位置(図30)と、プローブチップ141が基準歯車機構61と係合する内方旋回位置(図31)との間で旋回することができる。水平方向に延在する旋回軸C7の代わりに、鉛直又は傾斜した軸も想定可能である。
【0088】
この実施形態は、加工対象の上側歯車機構62が下側の基準歯車機構61よりも小さい内径を有する場合でも、センサーキャリア112を非衝突で測定位置に移動させることができるように変更することもできる。特に、このために、ベース部材110を機械ベッドに対してワーク軸に対する径方向に沿って変位させることができる追加の直線変位軸を設けることが想定可能である。
【0089】
<1つの外接歯車機構及び1つの内接歯車機構を有するワーク>
図32及び図33は、第10の実施形態に係る位置決め装置を示している。同じ又は同様の機能を有する構成要素には、ここでも図1図6と同じ参照符号が付されている。この位置決め装置は、基準歯車機構61が内接歯車機構であり、加工対象の歯車機構62が外接歯車機構であるダブル歯車機構ワーク60の基準回転角度位置を求めるように構成される。
【0090】
第10の実施形態の位置決め装置は、第9の実施形態の位置決め装置と非常に類似している。唯一の顕著な相違点は、歯合わせセンサー122が、ここでは、加工対象の歯車機構62を測定するために径方向内方に位置合わせされることである。
【0091】
<ギアスカイビング機械における使用>
いくつかの実施形態において、位置決め装置は、いずれにせよ存在する機械軸によってワークに対して移動することができる、加工機の構成要素に取り付けることができる。特に、位置決め装置は、加工機の可動な工具キャリア上に取り付けることができ、工具キャリアは、工具スピンドルを保持する。
【0092】
これは、図34及び図35に示されている。これらの図は、2020年7月6日に出願された国際出願PCT/EP2020/068945号に従って構築され、第11の実施形態に係る位置決め装置を保持するギアスカイビング(ホブピーリング)機械を示している。2020年7月6日に出願された国際出願PCT/EP2020/068945号の内容は、参照により本開示に援用する。
【0093】
この機械は、機械ベッド310を備える。機械ベッド310は、側面がおおよそL字形状であり、水平セクション311及び鉛直セクション312を有する。
【0094】
Y方向スライド340の形態の可動なワークキャリアが、水平セクション311上に配置される。Y方向スライド340は、機械ベッド310に対してY方向に沿って移動することができる。Y方向は、空間において水平に延在する。Y方向スライド340は、ワークスピンドル50を保持し、ワークスピンドル50上に、プレ歯付きワーク60がクランプされる。ワーク60は、ワークスピンドル50上でワーク軸(C軸)の周りに回転する。C軸は、空間において鉛直に延在する。この例では、ワーク60は、2つの内接歯車機構、すなわち、基準歯車機構61及びその上に配置される加工対象の歯車機構62を有する。
【0095】
Z方向スライド320が、機械ベッド310の鉛直セクション312に配置される。Z方向スライド320は、機械ベッド310に対して、鉛直のZ方向に沿って移動することができる。X方向スライド322の形態の工具キャリアが、Z方向スライド320上に配置される。X方向スライドは、工具スピンドル30を保持する。X方向スライド322は、Z方向スライド320に対してX方向に沿って移動することができる。X方向は、空間において水平に、かつY方向及びZ方向に対して垂直に延在する。Z方向スライド320及びX方向スライド322は、ともにクロススライドを形成し、その上に取り付けられた工具スピンドル30が、互いに垂直であるZ方向及びX方向に沿って移動することを可能にする。
【0096】
工具スピンドル30は、工具スピンドル30上にクランプされたギアスカイビング工具を工具軸の周りに回転するように駆動する。図34及び図35において、ギアスカイビング工具は、X方向スライド322によって隠れており、したがって見えていない。工具スピンドル30は、X方向スライド322に対して、X方向に対して平行に延在する水平旋回軸(A軸)の周りに旋回することができる。
【0097】
X方向スライド322は、図35に拡大して示されている位置決め装置100も保持する。位置決め装置は、ベース部材110と、変位方向Vに沿って移動することができるセンサーキャリア112とを備える。変位方向Vは、Y方向及びZ方向に対して斜めであり、X方向に対して垂直である。機械軸X、Y、及びZ並びに変位軸Vを用いて、図34及び図35に示されている測定位置にセンサーキャリア112を移動させることができる。
【0098】
このようにして、特に、加工対象の歯車機構62が基準歯車機構61よりも小さい内径を有する場合でも、センサーキャリア112を非衝突で測定位置に移動させることが可能である。
【0099】
位置決め装置100は、ギアスカイビング工具から十分遠くに離れたX方向スライド322の領域に取り付けられ、位置決め装置100がワーク60の加工中にギアスカイビング工具に干渉しないようになっている。
【0100】
<位置基準装置>
上記で説明した全ての例示的な実施形態において、位置基準装置を、位置決め装置のワークキャリアに対する空間位置を求めるのに用いることができる。上記で説明した例示的な実施形態のうちのいくつかにおいて、接線位置センサーのみを含む位置基準装置が示されているが、位置基準装置は、他の空間方向に対する位置基準センサーを含むこともできる。
【0101】
これは、第12の実施形態に係る位置決め装置を示す図36に示されている。図36の位置決め装置は、第8の実施形態の位置決め装置に本質的に対応する。異なるのは位置基準装置の設計のみである。
【0102】
この実施形態において、位置基準装置は、ここでも、基準キャリア42上に位置基準ターゲット151を含む。位置基準ターゲット151は、直方体状又は立方体状であり、互いに垂直な少なくとも3つの基準面を形成する。基準キャリア42は、ワークスピンドル50を保持するワークキャリアに強固に接続される。ここでは、3つの位置基準センサー152、153、及び154がセンサーキャリア112に配置される。測定位置において、これらの3つの位置基準センサー152、153、及び154は、位置基準ターゲット151の異なる基準面の方に向けられる。第1の位置基準センサー152は、接線位置センサーを形成する。このセンサーは、ワークに対して接線方向に延在する方向に沿って、位置基準ターゲット151の対応基準面の方に向けられる。この基準面は、接線方向の面法線を有する。第2の位置基準センサー153は、軸方向位置センサーを形成する。このセンサーは、ワーク軸に対して平行な方向に沿って、位置基準ターゲット151の対応基準面の方に向けられる。この基準面は、軸方向に延在する面法線を有する。第3の位置基準センサー154は、径方向位置センサーを形成する。このセンサーは、ワーク軸に対して径方向に延在する方向において、位置基準ターゲット151の対応基準面の方に向けられる。この基準面は、径方向に延在する面法線を有する。複数の基準面を有する単一の位置基準ターゲットの代わりに、複数の位置基準ターゲットが存在することもでき、これらの位置基準ターゲットのそれぞれは、測定方向のうちの1つに、対応基準面を形成する。
【0103】
位置基準センサー152、153、154及び位置基準ターゲット151の役割は逆にすることもでき、すなわち、位置基準センサーを基準キャリア上に位置付けることができ、位置基準ターゲットをセンサーキャリア上に位置付けることができる。
【0104】
位置基準センサーは、従来技術からそれ自体既知であるレーザー距離センサーであることが好ましい。
【0105】
<変更形態>
本発明をいくつかの例示的な実施形態によって説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、多数の変更形態が可能である。いくつかの変更形態は、既に上述した。本発明は、歯車研削又はギアスカイビング等の上述の例示的な歯車切削プロセスの範囲内の用途に限定されない。むしろ、本発明を、ダブル及び複数歯車の他の仕上げプロセスの範囲内で用いることも可能である。これらのプロセスは、例えば、歯車ホーニング等の他の歯車加工プロセス又は成形研削等の不連続プロセスとすることができる。センサーキャリアがベース部材に旋回可能に接続される場合、旋回軸は、空間において水平又は鉛直だけでなく、傾斜させることもできる。センサーキャリアがベース部材に対して直線変位可能である場合、変位方向は、上記で説明した実施形態のうちのいくつかにおけるように、プローブチップの挿入方向から逸脱する場合がある。弧に沿った湾曲した変位方向も想定可能である。全ての実施形態において、穴の代わりに別のタイプのマークを用いるとともに、そのマークを図示のものとは異なる位置に位置付けることが想定可能である。したがって、マークのタイプに適合される別のタイプのマークセンサーが用いられる場合があり、マーク検出装置は、異なる方法でセンサーキャリアに接続される場合がある。様々な他の変更形態が可能である。
【符号の説明】
【0106】
10 機械ベッド
20 工具キャリア
21 Z方向スライド
22 Y方向スライド
30 工具スピンドル
31 研削ウォーム
32 工具スピンドル駆動部
40 タレット/ワークキャリア
42 基準キャリア
50 ワークスピンドル
51 カウンターコラム
52 心押台
60 ワーク
61 第1の歯車機構(基準歯車機構)
62 第2の歯車機構(加工対象の歯車機構)
63 マーク(ボア/穴)
70 機械コントローラー
71 制御モジュール
72 制御パネル
100 位置決め装置
110 ベース部材
112 センサーキャリア
121 第1の歯合わせセンサー
122 第2の歯合わせセンサー
130 マーク検出装置
131 (第1の)マークセンサー
132 第2のマークセンサー
140 基準測定装置(触覚センサー)
141 プローブチップ
142 リニアスライド
151 位置基準ターゲット
152 接線位置センサー
153 径方向位置基準センサー
154 軸方向位置基準センサー
210 第1のマークセンサーの信号
211 ピーク
220 第2のマークセンサーの信号
230 差分信号
231 位置信号
301 基準歯溝
302 対応する歯溝
310 機械ベッド
311 水平セクション
312 鉛直セクション
320 Z方向スライド
322 X方向スライド/工具キャリア
340 Y方向スライド/ワークキャリア
C、C1 ワーク軸
C3 鉛直旋回軸
C5 水平旋回軸
C6 鉛直旋回軸
C7 水平旋回軸
E 挿入方向
M マーク検出方向
R 径方向測定方向
T 接線方向
V 変位方向
X、Y、Z 直線軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
【国際調査報告】