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  • 特表-組成物および過敏症のための指示 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】組成物および過敏症のための指示
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/04 20060101AFI20230307BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230307BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230307BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230307BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230307BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20230307BHJP
   A61K 47/08 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K33/04
A61P27/02
A61P27/04
A61K9/06
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/06
A61K47/42
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022536602
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(85)【翻訳文提出日】2022-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2021000005
(87)【国際公開番号】W WO2021140417
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/959,738
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518104223
【氏名又は名称】アズーラ オフサルミックス エルティーディー.
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】アルスター,ヤイル
(72)【発明者】
【氏名】ボスワース,チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】エプスタイン-バラッシュ,ヒラ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエリ,オマー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD21
4C076DD34
4C076DD36
4C076DD37
4C076DD51
4C076DD59
4C076EE37
4C076EE41
4C076FF70
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA08
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA58
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
【解決手段】本明細書に提供されるのは、眼の中、または周囲の疾患あるいは障害を、二硫化セレン(SeS)を含む医薬組成物で処置する方法、および医薬組成物の有害作用を低減するために、投与後に光への曝露を制限するか、または回避するように処置された個体に指示する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体において眼の中または周囲の疾患または障害を処置する方法であって、該方法は、
治療上有効な量の医薬組成物を個体の眼表面、周囲の眼組織、またはその組み合わせに投与する工程を含み、
ここで、前記医薬組成物は、治療上有効な量の二硫化セレン(SeS)を含み、
および前記個体は、投与後に光への曝露を制限するか、回避するか、または投与後に光への曝露を制限するか、または回避するなどの手法で指示される、方法。
【請求項2】
前記医薬組成物の投与後に光への曝露を制限するか、または回避することは、光線過敏症に関連した角膜炎を軽減する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光への曝露は、少なくとも30分間制限されるか、または回避される、請求項1~2のいずれか1つに記載の方法。
【請求項4】
光への曝露は、少なくとも60分間制限されるか、または回避される、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
光への曝露は、少なくとも6時間制限されるか、または回避される、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記医薬組成物は、良好な光条件下で投与される、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記医薬組成物の投与後の一定の期間、前記医薬組成物が投与された部位は、一般的に低光量条件で維持されるか、または、前記個体は、前記医薬組成物が投与された部位を低光量条件で維持するように指示される、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記低光量条件は、約100ルクス以下、約50ルクス以下、または約25ルクス以下である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記医薬組成物の投与後の一定の期間、前記医薬組成物が投与された部位は、一般的に高光量条件に曝露されないか、または、前記個体は、前記医薬組成物が投与された部位の高光量条件への曝露を制限するか、または回避するように指示される、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記高光量条件は、約100ルクス以上、約500ルクス以上、または約1000ルクス以上である、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記個体は、前記医薬組成物を特定の時間に投与すること、または前記医薬組成物を特定の時間に投与するように指示されることによって、投与後の光への曝露を制限するか、回避するか、または制限するか、または回避するなど手法で指示される、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記特定の時間は、日没の約1時間前よりも遅い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記特定の時間は日没後である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記特定の時間は就寝前である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記個体は、投与中または投与後、前記医薬組成物が投与される部位に一部または全ての光を遮る、または遮るように指示されることによって、投与後の光への曝露を制限するか、回避するか、または制限するまたは回避するなどの手法で指示される、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
光を遮ることは、光を少なくとも部分的に遮るヘッドウェアまたはアイウエアを着用することによって達成される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ヘッドウェアは帽子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記アイウエアはサングラスまたはゴーグルである、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記個体は前記医薬組成物を自己投与する、請求項1~18のいずれか1つに記載の方法。
【請求項20】
前記光への曝露を制限することは、光の少なくとも一部の波長への曝露を制限することを含む、請求項1~19のいずれか1つに記載の方法。
【請求項21】
前記光への曝露を制限することは、紫外線(UV)光への曝露を制限することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記光への曝露を制限することは、太陽光への曝露を制限することを含む、請求項1~21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記個体は、屋内に留まるように指示される、請求項1~22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記個体は、太陽光または紫外線(UV)光を回避するように指示される、請求項1~23のいずれか1つに記載の方法。
【請求項25】
前記眼の中または周囲の疾患または障害は、マイボーム腺機能障害(MGD)、眼瞼炎、脂漏性眼瞼炎、ニキビダニ属感染、ドライアイ症候群、過角化症、皮膚炎、角膜炎、コンタクトレンズ不快感、リッドワイパー結膜上皮症(LWE)、乾性角結膜炎、シェーグレン症候群、または眼酒さである、請求項1~24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
前記眼の中または周囲の疾患または障害は、眼瞼炎、または脂漏性眼瞼炎である、請求項1~25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物は、二硫化セレンを治療上有効な濃度で含む、請求項1~26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
前記治療上有効な濃度は、約0.1重量%~約10重量%である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物は、25μL未満の量で投与される、請求項1~28のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物は、約1μL~約20μLの量で投与される、請求項1~29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
前記医薬組成物が半固形である、請求項1~30のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
前記半固形は、軟膏、ゲル、クリーム、またはペーストである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
(i)前記医薬組成物は、十分に低容量で投与される、(ii)投与後に前記医薬組成物が投与された部位の光への曝露は、角膜炎が軽減されるか、または回避されるように、十分に低い、請求項1~32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
濃度をさらに低くすることで、光毒性のリスクを最小限にしてより多くの光暴露を支持することができる、請求項1~33のいずれか1つに記載の方法。
【請求項35】
許容される光曝露量と光曝露の回避期間は、投与されるSeSの用量と濃度に相関する、請求項1~34のいずれか1つに記載の方法。
【請求項36】
個体において眼の中または周囲の疾患または障害を処置する方法であって、該方法は、
前記個体の眼表面をバリアで保護する工程と、
治療上有効な量の医薬組成物を前記個体の眼表面に投与する行程を含み、ここで、前記医薬組成物は治療上有効な量の二硫化セレン(SeS)を含む、方法。
【請求項37】
前記個体の眼表面の保護は、眼表面にヒアルロン酸(HA)を投与することを含む(例えば、この投与により、眼表面上でのヒアルロン酸(HA)とムチンとの相互作用によりバリアを形成する)、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒアルロン酸(HA)は、分子量が少なくとも900kDaである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記個体の眼表面を保護する工程は、フリーラジカルまたは感光性SeSを捉え得るか、または捉えることに適している添加分子を投与することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記フリーラジカルは、活性酸素種(ROS)である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記添加物は、フェノール化合物、ビタミンE、ビタミンC、カロテン、フェリチン、セルロプラスミン、セレン、還元型グルタチオン(GSH)、マンガン、ユビキノン、亜鉛、フラボノイド、コエンザイムQ、メラトニン、ビリルビン、タウリン、またはシステインを含む、請求項39~40のいずれか1つに記載の方法。
【請求項42】
前記バリアはコンタクトレンズである、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記バリアは、SeSと前記眼表面との接触を防ぐ、請求項36~42のいずれか1つに記載の方法。
【請求項44】
前記個体の眼表面、周囲の眼組織、またはその組み合わせに治療上有効な量の医薬組成物を投与する工程は、前記医薬組成物を指で適用することを含む、請求項1~43のいずれか1つに記載の方法。
【請求項45】
前記指は、前記個体の指である、請求項44に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2020年1月10日に出願された米国仮特許出願第62/959,738号の利益を主張し、その出願は全体を引用することで本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
硫化セレン(SeS)は、脂漏性皮膚炎、癜風、およびフケなどの皮膚疾病の処置を適応症とする。硫化セレンは、典型的に1%および2.5%の市販濃度でシャンプー、フォーム、またはローションとして使用され、数分間適用された後に洗い流される。SeSの使用は、添付文書に列記されている既知の副作用と関連している可能性があり、それには刺激、灼熱感、まれに髪の毛の喪失や変色が含まれる場合がある。高濃度の硫化セレンを含む大量の調製物が眼の粘膜に接触すると、刺激(例えば、刺痛)が生じるおそれがあり、SeSを含む調製物を皮膚に長時間接触(例えば、一晩の塗布)させると、局所刺激が生じるおそれがある。
【0003】
硫化セレン含有産物を眼に局所的に使用した後に報告された有害事象として、処置の中止後に解消した表在性点状角膜炎や結膜炎が挙げられる。SeSが癜風の処置に局所的に適用されると、生殖器領域および/または皮膚のひだに皮膚刺激が生じるおそれがある。SeSローション剤は、さらに頭皮の油を再び生じさせる(rebound oiliness)おそれもある。AHFS Drug Information 2010。
【0004】
SeSローションの局所適用後、さまざまな色合いの自然な髪と染めた髪に、変色が生じる。髪の変色は稀であり、これは通常、SeSローションでシャンプーをした後のすすぎが不十分であるか、まったく行われないことに関連している。製造業者は、この薬物で処置した後、髪を注意深くすすぐことで髪の変色を最小限に抑えることができると述べている。この薬物の2.5%ローションでシャンプーをすると、脱毛が広がるが、これは薬物の中止後1~2週間で解消したと報告されている。
【0005】
SeSローションは、損傷を受けた皮膚に局所適用した後、全身毒性を引き起こすと報告されている。頭皮にある傷が開いている女性にローションを長期間局所的に使用した後、震え、激しい発汗、ニンニク臭い息(garlicky breath)、下腹部の疼痛、脱力感、嗜眠、食欲不振を含む全身的な毒性の兆候と症状、および時折嘔吐が生じた。毒性の兆候および症状は、薬物中止後10日内に回復した。セレンは、高用量(1日400μg超)で、または長期間服用すると毒性となる場合がある。急性セレン中毒は、心循環障害および/または肺水腫が原因で死に至る可能性がある。一般的に急性セレン中毒に見られる最初の症状は、胃腸への影響である。急性の影響として、嘔吐、唾液分泌過多、下痢、腹痛、鼻腔および/または口腔粘膜の灼熱感、消化管の化学的火傷、およびニンニク臭い息が挙げられる。長期使用による中毒はヒ素中毒に似ており、症状として、脱毛、爪の白い横縞、爪の炎症、倦怠感、刺激、悪心、嘔吐、ニンニク臭い息、および金属味が挙げられる。セレンはまた、筋肉の圧痛、震え、意識朦朧、顔面紅潮、血液凝固障害、肝臓および腎臓の障害、ならびにその他の副作用を引き起こす可能性もある。セレンによる急性の全身的影響は、投薬レジメンを提唱した対象患者集団では予期されない。
【0006】
発疹や蕁麻疹を含む非特異的アレルギー反応は、めったに報告されていない。セレン化合物にはUV保護効果がある。具体的に、局所セレン化合物は、皮膚の発赤を引き起こして、UVB曝露(約290nm~約320nmの波長の照射)により皮膚が損傷するのを回避するのに必要な最小UV照射量を増加させる。いくつかの例では、このことは、細胞内セレンの主な機能が、抗酸化剤としての酵素グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)のアップレギュレーションであるためである。
【0007】
1950年代から1960年代初頭にかけて、一部の研究者らにより、SeSの眼科用調製物としての使用により脂漏性眼瞼炎を処置しようする試みがなされた。脂漏性眼瞼炎は、典型的に眼瞼縁の鱗屑に関連するものであり、脂漏性皮膚炎を患う患者の多くに影響を及ぼす。臨床医らは、院内での適用、自宅での適用、毎日の適用、または隔日での適用を含む様々な方法を使用して、1か月~1年に及ぶ期間、数百人の患者を処置した。
【0008】
Cohenらは、患者にSeSの眼科用調製物を使用し、ヒトへの使用に安全な濃度を判定するべく動物を対象とした眼科用調製物を最初に調査し、0.5%が安全であると結論付けた。その経験を記載するレポートでは、大半の研究者が、0.5%のSeSが脂漏性眼瞼炎の処置に有効であると結論付け、主に角膜炎に焦点を当てた副作用を報告した。角膜炎は角膜の炎症反応であり、典型的には角膜フルオレセイン染色を使用して特定可能な表在性上皮細胞に重大な疼痛と損傷を引き起こす。
【0009】
過量の材料のすすぎを伴う院内での慎重な適用から、短期間での完全なすすぎを伴う家庭での適用までを含む様々な適用手段が、研究者らによって記述された。有害な影響を避けるために慎重な適用とすすぎが重要であることが明確に述べられた。さらに、重度の反応を示した患者では、眼への処置の適用が不適切であったか、徹底的なすすぎ手順を観察できなかったことが理解された。
【0010】
Lavyel 1960には、Abbottが製造した0.5%SeS軟膏であるSelsunef(登録商標)軟膏の使用について記載された。臨床試験(clinic)においてSelsunef(登録商標)が被験者80名に使用され、医師はこの軟膏を優しくかつ制御して適用し、30分後に脱脂綿棒で除去した。結膜嚢に軟膏がいずれも入らないように常に細心の注意が払われた。患者が医師の忠告に反して自身にSelsunef(登録商標)を投与した症例では、かなり重度の角膜炎が直ちに発症した。
【発明の概要】
【0011】
眼瞼炎に関連する別の眼疾病としては、マイボーム腺機能障害(MGD)がよく見られる疾患であり、この疾患では、患者のマイボーム腺から、本来は眼の乾燥を防止するのに十分なマイバム(meibum)が産生されない。マイバムは、主に脂質で構成される油性物質であって、涙液の蒸発または貯留を防ぐことで眼の涙膜を維持するのに役立つ物質である。MGDでは、マイボーム腺の閉塞によりマイボーム腺の分泌が防止されるため、多くの患者にドライアイ、疼痛、眼瞼炎が生じる。マイボーム腺の閉塞を緩和して脂質産生(例えば、マイバム産生)を回復するために、SeSの眼科用調製物は、眼瞼、眼瞼縁、眼表面、または周囲組織に適用される場合がある。本明細書に記載されるのは、特に眼角膜炎などの副作用が低減または排除される、SeSを含有する眼科用調製物の使用方法である。いくつかの例では、投与は、患者が自宅で(例えば長期的に)(例えば、毎日、または適切な場合にはより少ない頻度で)眼瞼または眼瞼縁に対して行われる場合がある。
【0012】
有害作用(例えば、疼痛、局所刺激、炎症、発赤、角化症など)は、特に高濃度のSeSが利用される場合、眼の中または周囲のSeSの適用で確認されている。ある例では、治療上有効な濃度のSeSの(例えば、眼瞼縁への)投与は、有害作用を最小限に抑えつつ、治療上の利益も提供することが見出されている。さらに、二硫化セレン組成物の投与後に光(例えば、UV光)への曝露を減らすことで、眼科適用(例えば、個体の眼瞼縁への投与を含む方法)における副作用の発生がさらに減ることが見出されている。
【0013】
本明細書で提供されるある実施形態は、個体の眼の中もしくは周囲の疾患または障害を処置する方法である。いくつかの実施形態では、この方法は、治療上有効な量の医薬組成物を、個体の眼表面、周囲の眼組織、眼瞼、眼瞼縁、またはそれらの組み合わせに投与することを含む。ある実施形態では、医薬組成物は、それを必要とする個体の眼瞼縁など、個体に対して治療上有効量の二硫化セレン(SeS)を含む。いくつかの実施形態では、個体は、投与後に(例えば、少なくとも組成物が投与された場所、片眼、または両眼などでの)光への曝露を制限し、回避し、または光への暴露を制限もしくは回避するように(例えば、口頭伝達および/または書面による指示を介して)指示される。
【0014】
いくつかの実施形態では、組成物の投与後に光への曝露を制限または回避することは、眼の中または周囲などにおける角膜炎(例えば、その発生率および/または割合)を、(例えば、光への曝露を制限または回避しない投与と比較して)低減させる。いくつかの例では、角膜炎は光線過敏症に関連付けられる。いくつかの実施形態では、光への曝露は、少なくとも30分間など、あらゆる適切な時間にわたり制限または回避される。いくつかの実施形態では、光への暴露は、少なくとも60分間制限または回避される。いくつかの実施形態では、光への暴露は、少なくとも2時間制限または回避される。いくつかの例では、組成物中の二硫化セレンの濃度および/または量を増加することで、角膜炎または他の有害作用の割合および/または発生率が上昇する。したがって、ある実施形態では、光は、より低濃度および/または少量の活性物質を伴う組成物が投与されるときよりも長期間にわたり回避される。
【0015】
いくつかの実施形態では、組成物は個体の眼瞼縁に投与される。ある実施形態では、眼表面への組成物の投与は、回避される。いくつかの実施形態では、投与後に光が回避される場合があるが、組成物は、眼表面への組成物の望ましくない投与を回避するなどのために、良好な光条件下で投与される。
【0016】
いくつかの実施形態では、組成物の投与後一定の期間にわたり、組成物が投与された部位が概ね維持されるか、または個体が、組成物が低光量条件で投与された部位を維持するように指示される。いくつかの実施形態では、低光量条件は、約100ルクス以下、約50ルクス以下、または約25ルクス以下である。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物の投与後一定の期間にわたり、組成物が投与された部位が概ね曝露されないか、または個体が、組成物が投与された部位への高光量条件の曝露を制限または回避するように指示される。いくつかの実施形態では、高光量条件は、約100ルクス以上、約500ルクス以上、または約1000ルクス以上である。
【0018】
いくつかの実施形態では、個体は、特定の時間に組成物を投与するか、または投与するように指示されることによって、投与後の光への曝露を制限する、回避する、または光への暴露を制限もしくは回避するように指示される。いくつかの実施形態では、特定の時間は、日没の約1時間前よりも遅い。いくつかの実施形態では、特定の時間は、日没後(夜間)である。いくつかの実施形態では、特定の時間は、就寝前(例えば、その1時間以内、30分以内など)である。
【0019】
いくつかの実施形態では、個体は、投与中または投与後、組成物が投与された部位に一部または全ての光(例えば、太陽光)を遮るか、または遮るように指示されることによって、投与後に(例えば、組成物が投与された場所、片眼、または両眼などでの)光への曝露を制限する、回避するか、または光への暴露を制限もしくは回避するように指示される。いくつかの実施形態では、光を遮ることは、光を少なくとも部分的に遮るヘッドウエアおよび/またはアイウエアを着用することによって達成される。いくつかの実施形態では、ヘッドウエアは帽子である。いくつかの実施形態では、アイウエアは、サングラスまたはゴーグルである。
【0020】
いくつかの実施形態では、個体は医薬組成物を自身で投与する。
【0021】
いくつかの実施形態では、光への曝露を制限することは、少なくとも一部の波長の光への曝露を制限することを含む。いくつかの実施形態では、光への曝露を制限することは、紫外線(UV)光への曝露を制限することを含む。いくつかの実施形態では、光への曝露を制限することは、太陽光への曝露を制限することを含む。いくつかの実施形態では、個体は、屋内に留まるように指示される。いくつかの実施形態では、個体は、(例えば、少なくとも医薬組成物が投与される場所で)太陽光または紫外線(UV)光を回避するように指示される。
【0022】
いくつかの実施形態では、眼の中または周囲の疾患あるいは障害は、マイボーム腺機能障害(MGD)、眼瞼炎、脂漏性眼瞼炎、ニキビダニ属感染、ドライアイ症候群、過角化症、皮膚炎、角膜炎、コンタクトレンズ不快感、リッドワイパー結膜上皮症(lid wiper epitheliopathy)(LWE)、乾性角結膜炎、シェーグレン症候群、または眼酒さである。いくつかの実施形態では、眼の中または周囲の疾患あるいは障害は、眼瞼炎または脂漏性眼瞼炎である。
【0023】
いくつかの実施形態では、組成物は、SeSを治療上有効な濃度で含む。いくつかの実施形態では、治療上有効な濃度は、約0.1重量%~約10重量%(例えば、約0.1重量%~約10重量%、または約0.5重量%~約1重量%)である。いくつかの実施形態では、組成物は、25μL未満の量で投与される。いくつかの実施形態では、組成物は、約1μL~約20μL(例えば、約2μL~約15μL、または約10μL~約3μL)の量で投与される。
【0024】
いくつかの実施形態では、組成物または調製物は、半固形(例えば、ゲル、クリーム、ペースト)、ストリップ、エマルジョン、懸濁液、フォーム、ローション、スプレー、パッチ、植込錠(例えば、徐放性、生分解性、半分解性、または非分解性)、脂質系(例えば、固形脂質ナノ/マイクロ粒子、リポソーム、エキソソーム、ミセル、マイクロ/ナノエマルジョン、キュボソーム、コクレアート(cochleate)、ニオソーム、リポスフィア)、シリカ系(例えば、メソポーラス)、ポリマー系、ナノおよび/またはミクロスフェア、ナノおよび/またはマイクロカプセル、ナノおよび/またはマイクロ粒子などである。いくつかの実施形態では、半固形は軟膏である。いくつかの実施形態では、(i)組成物は十分に低容量で投与され、および(ii)投与後、組成物が投与された部位の光への曝露は十分に低く、そのため(例えば、個体の眼表面の)角膜炎が軽減または回避される。いくつかの実施形態では、濃度をさらに低くすることで、光毒性のリスクを最小限にしてより多くの光暴露を支持することができる。いくつかの実施形態では、許容される光曝露量と光曝露の回避期間は、投与されるSeSの用量と濃度に相関する。
【0025】
本明細書に提供されるある実施形態は、処置を必要とする個体の眼の中もしくは周囲の疾患または疾病を処置する方法であって、個体の眼表面をバリアで保護する工程を含む方法である。特定の実施形態では、かかるプロセスは、治療上有効な量の医薬組成物を個体の眼表面に投与する工程をさらに含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、治療上有効な量の二硫化セレン(SeS)を含む。いくつかの実施形態では、個体の眼表面の保護は、眼表面に軟膏またはヒアルロン酸(HA)を投与することを含む(例えば、この投与により、眼表面上でのヒアルロン酸(HA)とムチンとの相互作用によりバリアを形成する)。いくつかの実施形態では、ヒアルロン酸(HA)は、分子量が少なくとも900kDaである。いくつかの実施形態では、バリアはコンタクトレンズである。
【0026】
いくつかの実施形態では、眼表面の保護は、(例えば、医薬組成物の投与前および/または投与と同時に)添加分子を眼表面に投与することを含み、添加分子は、フリーラジカルまたは感光性SeSを捉えるように構成された分子を含む。いくつかの実施形態では、フリーラジカルは、活性酸素種(ROS)である。いくつかの実施形態では、添加分子は、フェノール化合物、ビタミンE、ビタミンC、カロテン、フェリチン、セルロプラスミン、セレン、還元型グルタチオン(GSH)、マンガン、ユビキノン、亜鉛、フラボノイド、コエンザイムQ、メラトニン、ビリルビン、タウリン、またはシステインを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、バリアは、SeSが眼表面と接触するのを防ぐ。
【0028】
いくつかの実施形態では、個体の眼表面、周囲の眼組織、またはその組み合わせに医薬組成物を治療上有効な量で投与する工程は、医薬組成物を指で適用することを含む。指は個体の指であり得る。
【0029】
セレン含有シャンプーは広く商業的に使用されているが、有害作用は観察されないか、またはほとんど観察されない。本明細書に記載されているような眼科用途において、光線過敏症などの有害作用が蔓延していることは驚くべきことである。いくつかの例では、有害作用におけるそのような有病率は、曝露期間の増加(例えば、シャンプーの短縮)、異なる曝露場所(例えば、局所/頭皮対眼)、異なる調製物(例えば、シャンプー対本明細書に記載される調製物)、またはそのような違いの組み合わせに起因する。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、組成物がシャンプーではない、組成物および組成物を投与する方法である。
【0030】
本開示のさらなる態様および利点は、以下の詳細な記載から当業者に容易に明白となるので、本開示の例示的な実施形態のみが示され、記載されている。理解されるように、本開示は、他の実施形態および異なる実施形態においても可能であり、その様々な詳細は、そのすべてが本開示から逸脱することなく様々な明白な点で修正することができる。したがって、図面および説明は本来、例示的なものとしてみなされ、限定的なものであるとはみなされない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の新規な特徴はとりわけ添付の請求項で説明されている。本発明の特徴と利点は、本発明の原理が用いられる例示的実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面(本明細書では「図(FigureおよびFIG.)」とも称される)とを参照することにより、より良く理解されるであろう。
図1図1は、光が感光性化学物質と相互作用し、前記感光性化学物質と接触している個体に光毒性を生じさせ得るメカニズムを示すフローチャートを例示する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
定義
本明細書で使用される用語は、特定の事例のみを記載することを目的としており、本発明を限定することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が他に明白に示していない限り、複数形を同様に含むことが意図されている。さらに、「含むこと(including)」、「含む(includes)」「有すること(having)」、「有する(has)」、「とともに(with)」という用語またはその変形が、詳細な説明および/または請求項のいずれかで使用される程度まで、そのような用語は、用語「含むこと(comprising)」に類似した方法で包括的であるように意図されている。
【0033】
「約(about)」または「およそ(approximately)」との用語は、当業者によって決定されるような特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、その値がどのように測定または決定されるかに、例えば、測定システムの制約に部分的に依存している。例えば、「約」とは、任意の値での実践につき1または1を超える標準偏差を意味し得る。特定の値が本出願と請求項に記載されている場合、特段の定めのない限り、「約」との用語は、特定の値の許容可能な誤差範囲を意味するものであると仮定されなければならない。
【0034】
「個体」、「患者」、または「被験体」との用語は互換的に使用される。いかなる用語も、医療従事者(例えば、医師、正看護師、診療看護師、医師助手、用務係、またはホスピス職員)の監督(例えば、持続的または断続的)によって特徴付けられた状態を要求せず、またはそれに限定されない。
【0035】
本明細書で使用されるように、用語「含む(comprise)」またはその変化形「含む(comprises)」あるいは「含むこと(comprising)」は、任意の詳述された特徴を含むことを示すものであるが、任意の他の特徴を除外することを意味するものではない。したがって、本明細書で使用されるように、用語「含むこと(comprising)」は包括的であり、追加の詳述されていない特徴を除外するものではない。本明細書に提供される組成物および方法のいずれかのいくつかの実施形態では、「含むこと」は、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」または「からなる」に置き換えられ得る。句「本質的に~からなる」は、指定された特性や、本開示の特徴や機能に実質的に影響を与えない特性を要求するために本明細書で使用される。本明細書で使用されるように、用語「からなる」は、詳述された特性のみの存在を示すために使用される。
【0036】
ある実施形態では本明細書に提供されるのは、個体の眼の中、または周囲の疾患あるいは障害を、医薬組成物の治療上有効な量で処置する方法である。特定の実施形態では、組成物は二硫化セレン(SeS)を含む。いくつかの実施形態では、個体は、投与後の光への曝露を制限するか、回避するか、あるいは制限するまたは回避するなどの方法で指示される。本明細書で議論されるように、いくつかの例では、角膜炎などの副作用のリスク、発生率および/または発生を防止、低減、または制限するために、処置領域の光、特に太陽光または他の紫外線源への曝露することである。いくつかの例では、SeS組成物が高濃度のSeSを有する場合、および/またはSeS組成物が高用量で提供される場合、SeSの副作用の予防、低減または制限がより大きくおよび/またはより可能性が高い。
【0037】
ある実施形態では、眼の中、または周囲の疾患または障害は、本明細書に記載されるなどの組成物で処置される、または処置可能な疾患または障害である。いくつかの実施形態では、疾患あるいは障害は、マイボーム腺機能障害(MGD)、眼瞼炎、脂漏性眼瞼炎、ニキビダニ属感染、ドライアイ症候群、過角化症、皮膚炎、角膜炎、コンタクトレンズ不快感、リッドワイパー結膜上皮症(LWE)、乾性角結膜炎、シェーグレン症候群、または眼酒さを含む群から選択される1つ以上の疾病であってもよい。いくつかの実施形態では、眼の中、または周囲の疾患あるいは障害は、マイボーム腺機能障害(MGD)である。いくつかの実施形態では、眼の中、または周囲の疾患あるいは障害は、眼瞼炎である。いくつかの実施形態では、眼の中、または周囲の疾患あるいは障害は、脂漏性眼瞼炎である。いくつかの実施形態では、眼の中、または周囲の疾患あるいは障害は、MGD関連の眼瞼炎である。いくつかの実施形態では、眼の中、または周囲の疾患あるいは障害は、ドライアイ症候群である。いくつかの実施形態では、眼の中、または周囲の疾患あるいは障害は、脂質の不十分な分泌を特徴とする疾病である。
【0038】
ある実施形態では、本明細書で提供される任意の方法に従って回避される光は、眼の中または周囲に本明細書で提供される組成物の治療的投与と組み合わせた場合に光毒性および/または他の有害作用を引き起こし得る光である。特定の実施形態では、光の波長のすべては、部分的に、または完全に遮断される。他の実施形態では、光の選択した波長は、部分的に、または完全に遮断される。いくつかの実施形態では、光は赤外線、可視光、紫外線、それらのとある波長、および/またはそれらの組み合わせを含む。特定の実施形態では、光は可視光および/または紫外線を含む。いくつかの実施形態では、光は可視光を含む。いくつかの実施形態では、光は紫外線を含む。いくつかの実施形態では、紫外線はUVA光およびUVB光の両方を含む。いくつかの実施形態では、光はUVA光またはUVB光を含む。いくつかの実施形態では、光は太陽の光(太陽光)である。いくつかの実施形態では、光は太陽光ではない。
【0039】
ある実施形態では、本明細書で提供される方法は、光感受性反応(例えば、光と本明細書で提供される組成物の治療的投与の組み合わせから生じる有害作用)、または光線過敏症(記載は本明細書で交換可能に使用される)の低減(例えば、発生または発生率)または排除を含む治療を提供する。いくつかの例では、そのような有害作用は、非限定的な例として、角膜炎、炎症、疼痛、刺激作用、フレーキング、発赤、変色、またはそれらの任意の組み合わせなどの有害な生理反応を指す。いくつかの例では、そのような有害作用は、ザラザラ感、個体の眼内の異物感、不明瞭な視覚、発赤、疲れた目、ドライアイ障害の症状、刺痛、流涙、刺激作用、眼瞼異常、角膜の擦過傷、角膜炎、羞明、染色、またはそれらの任意の組み合わせを指す。光反応性化学物質は、図1に記載されるような直接的または間接的メカニズムを介して、前記光反応性化学物質と接触している個体に光線過敏症を引き起こす可能性がある。光線過敏症は光毒性および光アレルギー性効果を含む。
【0040】
図1は、光反応性化学物質(010)が個体に光毒性(100)を誘発し得る例示的なメカニズムの非限定的な概略図を示している。紫外線(UV)放射線(020)または任意の他の十分にエネルギーのある光子が光反応性化学物質(010)と相互作用するとき、前記光反応性化学物質(010)は励起状態(030)に上昇し、その結果、光子からのエネルギーが光反応性化学物質(010)に与えられる。励起状態(030)の種は、蛍光(025)の形でエネルギーを放出することができ、あるいは間接モード(040)または直接モード(080)によってさらに説明されるように、第2の分子にエネルギーを与えることができる。
【0041】
光毒性(040)の間接モードは酸素(055)によって促進され、励起状態(030)種は、エネルギー移動またはフリーラジカル生成(050)を介して酸素(055)にエネルギーを与えることができる。エネルギー伝達および酸素(055)へのフリーラジカル生成(050)の両方は、図1に一重項酸素およびスーパーオキシド(060)の2つの一般的な種による例示される、いわゆる活性酸素種(ROS)を生成する。(060)などのROSは反応性が高く、薬物やDNA(070)などを含み得るさまざまな分子の酸化を引き起こす場合がある。酸化後、新しく形質転換された分子(070)は、光反応性化学物質(010)と接触している個体において生理学的効果を発揮することができる。特定の実施形態では、光反応性化学物質(010)は、光反応性化学物質(010)と接触する位置でROS(060)の形成を触媒することによって、UV放射線(020)の本質的に損傷を与える(例えば、酸化する)特性を増強する。したがって、UV放射線、または他の十分にエネルギーのある光子が光反応性化学物質(010)と相互作用するのを防ぐことは、光毒性(100)および関連する光線過敏症からの保護を提供し得る。
【0042】
光毒性(080)の直接モードは酸素に依存しない。直接モード(080)において、本明細書に記載される励起状態(030)種は、小分子、ペプチド、タンパク質、および核酸を含むが、これらに限定されない内因性分子(090)と相互作用する(例えば、光結合する)ことができる。内因性分子(090)の光結合は、以前に記載されたものと同様の方法で光毒性(100)を直接発揮することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、SeSが光と相互作用する可能性を回避するために、患者は、適用後に眼表面および周囲の組織が光に曝露されるのを回避するように指示される。光を回避する時間は、適用される用量および濃度に基づいて決定され得る。光暴露を回避するための手段は下記を含んでもよい:(1)就寝時の適用、その後、被験体は光暴露されることなくベッドにとどまる、(2)個体が処置後に薄暗いまたは暗い環境にとどまるような日中の適用、また(3)処置部位を光から保護するために保護用のヘッドウエアまたはアイウエア(例えば、濃いサングラスまたはUV防止サングラス)を着用する。
【0044】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、SeSを治療上有効濃度で含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、SeSを治療上有効濃度未満で含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物はSeSをホメオパシー濃度で含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、SeSを治療上有効濃度より大きい濃度で含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、治療上有効濃度は、約0.1重量%~約2.5重量%(例えば、約0.5重量%~約1重量%)である。いくつかの実施形態では、治療上有効濃度は、二硫化セレン(SeS)を少なくとも約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.15重量%、約0.2重量%、約0.25重量%、約0.3重量%、約0.35重量%、約0.4重量%、約0.45重量%、約0.5重量%、約0.55重量%、約0.6重量%、約0.65重量%、約0.7重量%、約0.75重量%、約0.8重量%、約0.85重量%、約0.9重量%、約0.95重量%、約1.0重量%、約1.25重量%、約1.5重量%、約1.75重量%、約2.0重量%、約2.5重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約4.5重量%、約5.0重量%、約5.5重量%、約6.0重量%、約6.5重量%、約7.0重量%、約7.5重量%、約8.0重量%、約8.5重量%、約9.0重量%、約9.5重量%、約10.0重量%、約10.5重量%、約11.0重量%、約11.5重量%、約12.0重量%、約15.0重量%、またはそれ以上を含む。いくつかの実施形態では、治療上有効濃度は、最大で約11.0重量%、約10.0重量%、約9.0重量%、約8.0重量%、約7.0重量%、約6.0重量%、約5.0重量%、約4.0重量%、約3.0重量%、約2.5重量%、約2.0重量%、約1.75重量%、約1.5重量%、約1.25重量%、約1.0重量%、約0.95重量%、約0.9重量%、約0.85重量%、約0.8重量%、約0.75重量%、約0.70重量%、約0.65重量%、約0.60重量%、約0.55重量%、約0.5重量%、約0.45重量%、約0.4重量%、約0.35重量%、約0.3重量%、約0.25重量%、またはそれ以下を含む。いくつかの実施形態では、治療上有効濃度は、約0.01重量%~約15.0重量%、0.01重量%~約10.0重量%、0.01重量%~約9.0重量%、0.01重量%~約8.0重量%、0.01重量%~約7.0重量%、0.01重量%~約6.0重量%、0.01重量%~約5.0重量%、0.01重量%~約4.0重量%、約0.01重量%~約3.0重量%、約0.01重量%~約2.0重量%、約0.01重量%~約1.5重量%、約0.01重量%~約1.0重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、約0.01重量%~約0.1重量%、約0.01重量%~約0.05重量%、約0.05重量%~約4.0重量%、約0.05重量%~約3.0重量%、約0.05重量%~約2.0重量%、約0.05重量%~約1.5重量%、約0.05重量%~約1.0重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、約0.05重量%~約0.1重量%、約0.1重量%~約4.0重量%、約0.1重量%~約3.0重量%、約0.1重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約1.5重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約0.5重量%、約0.5重量%~約4.0重量%、約0.5重量%~約3.0重量%、約0.5重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、約1.0重量%~約4.0重量%、約1.0重量%~約3.0重量%、約1.0重量%~約2.5重量%、約1.0重量%~約2.0重量%、約1.0重量%~約1.5重量%、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの例では、SeSのより低い濃度(例えば0.5重量%)の投与、または使用によって、有害作用が少なくなる。いくつかの例では、SeSのより低い濃度(例えば0.5重量%)の投与、または使用によって、夕方または夜間の投与など、投与後に光を回避される場合の有害作用が少なくなる。
【0046】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、25μL未満の量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約1μL~約20μL(例えば、約2μL~約15μL、または約3μL~約10μL)の量で投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物の量、または本明細書に提供される方法を使用して(例えば、スワブまたは指を使用して)投与される医薬組成物の量は、最大で約30μL、最大で約25μL、最大で約20μL、最大で約15μL、最大で約10μL、または最大で約5μLである。いくつかの実施形態では、量は少なくとも約0.01マイクロリットル(μL)、少なくとも約0.05μL、少なくとも約0.1μL、少なくとも約0.5μL、少なくとも約1μL、少なくとも約5μL、少なくとも約10μL、少なくとも約15μL、少なくとも約20μL、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、量は約0.01μL~約50μL、約0.1μL~約30μL、約0.5μL~25μL、約1μL~25μL、約10μL~25μL、または約2.5μL~約10μLである。
【0047】
いくつかの実施形態では、SeSの治療上有効な量は、少なくとも約0.1ミリグラム(mg)、少なくとも約0.2mg、少なくとも約0.3mg、少なくとも約0.5mg、少なくとも約1mg、少なくとも約2mg、少なくとも約2.5mgなどである。いくつかの実施形態では、二硫化セレン(SeS)の治療上有効な量は、約25mg以下、約15mg以下、約10mg以下、7.5mg以下、約5mg以下である。いくつかの実施形態では、SeSの治療上有効な量は、約0.5mg、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約8mg、約10mgなどである。いくつかの実施形態では、SeSの治療上有効な量は約4mgである。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、半固形である。いくつかの実施形態では、組成物は軟膏である。いくつかの実施形態では、組成物は指を使用して適用される。いくつかの実施形態では、組成物はスワブを使用して適用される。
【0049】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、眼表面、周囲の眼組織、眼瞼、眼瞼縁、眼瞼ワイパー、マイボーム腺、粘膜皮膚の辺縁、まつ毛、睫毛線、睫毛小胞、瞼板腺、眼瞼の境界線、内眼角、涙乳頭および涙点、眼表面の1cm以内の皮膚または表皮組織、眼表面の2cm以内の皮膚または表皮組織、あるいはその任意の組み合わせに適用される。
【0050】
いくつかの例では、組成物は自己投与される。組成物はスワブまたは指によって投与され得る。代替的におよび/または、追加的に、組成物は、個体に医療従事者(例えば、医師、看護婦、熟練した医療技術者など)によって投与される。代替的におよび/または、追加的に、組成物は、個体に別の個体、または機械によって投与される。いくつかの実施形態では、指投与は好ましい。いくつかの例では、本明細書に提供される組成物を指で投与することは、例えば、スワブを用いて投与することより改善された治療用有効性をもたらす。
【0051】
いくつかの例では、組成物は、良好な光条件下で(例えば、太陽光下で、少なくとも50ルックス以上、少なくとも100ルックス以上、約500ルックス以上、または約1,000ルックス以上を有する光の下で)で投与される。いくつかの例では、組成物の投与後に光への曝露を制限するまたは回避することは、光への曝露を制限しないまたは回避しないことに比較して、または相対して(例えば、光への曝露があるまたはない同じ個体、あるいは光への曝露があるまたはない同様の疾病を有する別々の個体のいずれか)、光線過敏症に関連した角膜炎を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも80%、少なくとも90%軽減する。
【0052】
光への曝露を制限するまたは回避する期間は、個体の疾病、組成物の投与量、組成物中のSeSの濃度、個体の以前の治療歴などに応じて変動してもよい。いくつかの例では、光への曝露は、少なくとも30分、少なくとも60分、少なくとも90分、少なくとも120分、少なくとも3時間、少なくとも6時間など制限される、または回避される。
【0053】
組成物の投与後に許可される、または防止される(例えば、制限される、回避される、またはそうするように指示されるなど)光量も、個体の疾病、組成物の投与量、組成物中のSeSの濃度、個体の以前の治療歴などに応じて変動してもよい。いくつかの例では、個体は、いかなる高照度光(例えば、約100ルックス以上、約500ルックス以上、または約1,000ルックス以上)も制限される、回避される、または制限する、回避するように指示される。いくつかの例では、個体は、低光量条件(例えば、約100ルックス以下、約50ルックス以下、約25ルックスなど以下)への曝露が許可される、または、組成物が投与された部位は、低光量条件へ曝露される、または低光量条件で維持される。いくつかの実施形態では、化合物の投与後の期間、組成物が投与された部位は、本明細書に記載されるように、一般的に組成物が低光量条件で維持されるか、または個体は、組成物が投与された部位を低光量条件で維持するように指示される。いくつかの実施形態では、個体は、組成物が投与された部位を低光量条件で維持する。いくつかの実施形態では、個体は、組成物が投与された部位を低光量条件で維持する印刷された指示を読む。いくつかの実施形態では、個体は、組成物が投与された部位を低光量条件で維持する印刷された指示が提供される。いくつかの実施形態では、個体は、組成物が投与された部位を低光量条件で維持する聴覚指示が提供される。いくつかの実施形態では、個体は、組成物が投与された部位を低光量条件で維持する聴覚以外の指示が提供される。
【0054】
いくつかの実施形態では低光量条件は、前記光量条件の観察者の生理反応によって特徴づけられる。いくつかの実施形態では、低光量条件は、波長、ルックス(ルーメン/m)またはその組み合わせに関連して特徴づけられる。いくつかの実施形態では、低光量条件は、夜によって提供される。いくつかの実施形態では、低光量条件は、太陽の妨害によって提供される。いくつかの実施形態では、低光量条件は、屋内であることによって提供される。いくつかの実施形態では、低光量条件は、自然発生条件(例えば、曇天)によって提供される。いくつかの実施形態では、低光量条件は、光の特定波長、または波長の範囲の排除によって提供される。いくつかの実施形態では、低光量条件は、暗室によって提供される。いくつかの実施形態では、低光量条件は、セーフライトの使用によって提供される。
【0055】
いくつかの実施形態では、低光量条件は、最大で約1000ルックス、約250ルックス、約100ルックス、約50ルックス、約25ルックス、約10ルックス、約1ルックス、約0.1ルックス、約0.01ルックス、約0.001ルックス、またはそれ以下である。いくつかの実施形態では、低光量条件は、少なくとも約0.001ルックス、約0.01ルックス、約0.1ルックス、約1ルックス、約10ルックス、約25ルックス、約50ルックス、約100ルックス、約250ルックス、約1000ルックス、またはそれ以上である。いくつかの実施形態では、低光量条件は、約0.001~約1000ルックス、約0.001~約250ルックス、約0.001~約100ルックス、約0.01~約1000ルックス、約0.01~約250ルックス、約0.01~約100ルックス、約0.1~約1000ルックス、約0.1~約250ルックス、約0.1~約100ルックス、約1~約1000ルックス、約1~約200ルックス、約1~約100ルックス、約10~約1000ルックス、約10~約200ルックス、約10~約100ルックス、約25~約1000ルックス、約25~約250ルックス、約25~約100ルックス、約50~約1000ルックス、約50~約250ルックス、または約50~約100ルックスである。
【0056】
いくつかの実施形態では、個体は、投与中および/または投与後に組成物が投与された部位に、1つ以上、または任意の光源(例えば、太陽光)からの光の一部またはすべてを少なくとも部分的に遮る、または遮るように(例えば、直接的にまたは間接的に)指示されることによって、投与後に光への曝露を制限するか、回避するか、あるいは制限または回避するなどの手法で指示される。いくつかの実施形態では、個体は、投与中および/または投与後に組成物が投与された部位および周囲組織に対する、投与後の光への曝露を少なくとも部分的に遮る、または遮るように指示されることによって、制限するか、回避するか、あるいは制限または回避するように指示される。
【0057】
いくつかの実施形態では、個体は、組成物が投与された部位に、一部または全部の光(例えば、太陽光)を少なくとも部分的に方向付ける、または方向付けるように指示されることによって、投与後に光を方向付ける、投与後に光を方向付けるおよび制限/回避するように指示される。
【0058】
いくつかの実施形態では、個体は、特定の時間に組成物を投与するか、または投与するように指示されることによって、投与後の光への曝露を制限するか、回避するか、あるいは制限または回避するような方法で指示される。いくつかの実施形態では、特定の時間は、日没前約1時間より遅い。いくつかの実施形態では、特定の時間は、日没前約2時間より遅い。いくつかの実施形態では、特定の時間は、およそ日没より遅い。いくつかの実施形態では、特定の時間は、日没後約1時間より遅い。いくつかの実施形態では、特定の時間は、日没後約2時間より遅い。いくつかの実施形態では、特定の時間は、日没後(夜間)である。いくつかの実施形態では、特定の時間は、就寝前約1時間以上である。いくつかの実施形態では、特定の時間は、就寝前約1時間未満である。いくつかの実施形態では、特定の時間は、就寝前約30分未満である。いくつかの実施形態では、投与は夜間に行われる。特定の実施形態では、夜時間の投与は、午後4:00以降の時間、午後5:00以降の時間、午後6:00以降の時間等である。
【0059】
いくつかの実施形態では、光を遮ることは、少なくとも部分的に光を遮るヘッドウエアおよび/またはアイウエアを着用することによって達成される。いくつかの実施形態では、光を遮ることは、光を完全に遮るヘッドウエアおよび/またはアイウエアを着用することによって達成される。いくつかの実施形態では、光を遮ることは、光の特定波長を少なくとも部分的に遮るヘッドウエアまたはアイウエアを着用することによって達成される。いくつかの実施形態では、ヘッドウエアおよび/またはアイウエアによって遮られる光は、可視光ではない。いくつかの実施形態では、ヘッドウエアおよび/またはアイウエアによって遮られる光は、可視光とともに放射線の他の形態の両方を含む。いくつかの実施形態では、光を遮ることは、紫外線、可視光、赤外線、X線、および/またはガンマ線を少なくとも部分的に遮るヘッドウエアおよび/またはアイウエアを着用することによって達成される。
【0060】
いくつかの実施形態では、ヘッドウエアは帽子である。いくつかの実施形態では、ヘッドウエアはひさしまたはつばを備えた帽子である。いくつかの実施形態では、ヘッドウエアはひさしまたはつばのない帽子である。
【0061】
いくつかの実施形態では、アイウエアはサングラスまたはゴーグルである。いくつかの実施形態では、アイウエアはコンタクトレンズである。いくつかの実施形態において、アイウエアは1以上のレンズを含む。いくつかの実施形態では、アイウエアは、1個以上の偏光レンズを含む。いくつかの実施形態では、アイウエアは、1個以上の反射レンズを含む。いくつかの実施形態では、アイウエアは、1個以上の色の濃いレンズ(shaded lens)を含む。いくつかの実施形態では、アイウエアは、目隠しである。いくつかの実施形態では、アイウエアは、天然繊維または合成繊維、あるいはその組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、アイウエアは反射面を含む。いくつかの実施形態では、アイウエアはレンズまたは鏡を含む。いくつかの実施形態では、アイウエアは、布、ポリマー、プラスチック、金属、非金属、植物材料、植物由来材料、合成素材、またはその任意の組み合わせを含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、角膜炎の軽減または回避は、2つの条件を組み合わせることによって達成される:i)(高濃度であっても)十分に少量で組成物を投与すること、およびii)投与後、組成物が投与された部位の光への曝露は十分に低い。いくつかの例では、SeSのより低い濃度によって、光毒性の最小限または軽減されたリスクでより高い光暴露を維持することができる。いくつかの実施形態では、許容される光曝露の量および光曝露を回避する期間は、投与されるSeS組成物の用量および/または濃度に少なくとも部分的に相関する。
【0063】
いくつかの実施形態では、光と相互作用するSeSの有害作用は、バリアで個体の眼表面を保護することによって防止または軽減される。特定の実施形態では、プロセスは、治療上有効な量の医薬組成物を、個体の眼表面への投与することをさらに含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、二硫化セレン(SeS)の治療上有効な量を含む。いくつかの実施形態では、眼表面は、眼表面に医薬組成物を投与する前にバリアで保護される。代替的に、および/または、追加的に、眼表面は、眼表面への医薬組成物投与するプロセスと同時にバリアで保護される。バリアは、眼表面に適用する前に事前に形成された任意の物理的または化学的バリアであってもよい。代替的に、および/または、追加的に、バリアは、眼表面に適用された後に眼表面上で形成される。
【0064】
いくつかの例では、個体の眼表面の保護は、軟膏、ポリビニルアルコール(PVA)マイクロエマルジョン、ポリマーの他のマイクロまたはナノエマルジョン、あるいはバリアとして機能し得るポリマーの液晶形態の投与を含む。代替的に、および/または、追加的に、個体の眼表面の保護は、眼表面または角膜を覆うことができる脂質あるいは糖質ベース化合物の投与を含む。例えば、そのような脂質あるいは糖質ベース化合物は、架橋デキストランまたは高密度リポソームを含む。代替的に、および/または、追加的に、個体の眼表面の保護は、ヒアルロン酸(HA)、あるいは、個体の眼表面および/または周囲の眼組織上のムチンと相互作用し、バリアを形成する任意の適切なHA含有化合物の投与を含む。好ましくは、そのような形成されたバリアは、光増感されたSeSが個体の眼表面に接触するのを防ぐ。任意の適切なヒアルロン酸、ヒアルロン酸ポリマー、または眼表面に適用するのに適したHA含有化合物が企図されるが、好ましいヒアルロン酸またはヒアルロン酸ポリマーは、少なくとも700kDa、少なくとも800kDa、少なくとも900kDa、少なくとも1000kDa、少なくとも1100kDa、少なくとも1200kDa、少なくとも1300kDa、少なくとも1400kDa、少なくとも1500kDa、少なくとも2000kDa、少なくとも2500kDa、少なくとも3000kDa、または少なくとも3500kDa、あるいは700~3500kDa、700~3000kDa、700~2500kDa、700~2000kDa、700~1500kDa、700~1300kDa、または700~1200kDaの分子量を有するものが含む。
【0065】
いくつかの例では、眼表面の保護は、眼表面へバリアとして添加分子を投与することを含む。添加分子は、フリーラジカルまたは光増感SeSを捕捉するように構成され、適切であり、または捕捉することができるので、捕捉されたフリーラジカルまたは光増感SeSは到達せず、直接接触せず、それによって眼表面への有害作用が低減される。いくつかの実施形態では、添加分子、眼表面に適用されたとき、フリーラジカルまたは光増感SeSの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%を捕捉する。いくつかの例では、添加分子は、フェノール化合物、ビタミンE、ビタミンC、カロチン、フェリチン、セルロプラスミン、セレン、還元グルタチオン(GSH)、マンガン、ユビキノン、亜鉛、フラボノイド、コエンザイムQ、メラトニン、ビリルビン、タウリン、またはシステインの1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、添加分子は、医薬組成物(例えば、SeS含有医薬組成物)を投与する前に、個体の眼表面に適用されるために、適切な賦形剤(例えば、緩衝液)と共に任意の適切な形態(例えば、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、クリーム、ローション、フォーム、スプレー、パッチ、植込錠(例えば、徐放性、生分解性、半分解性、または非分解性)、脂質系(例えば、固形脂質ナノ/マイクロ粒子、リポソーム、エキソソーム、ミセル、マイクロ/ナノエマルジョン、キュボソーム、コクレアート(cochleate)、ニオソーム、リポスフィア)、シリカ系(例えば、メソポーラス)、ポリマー系、ナノおよび/またはミクロスフェア、ナノおよび/またはマイクロカプセル、ナノおよび/またはマイクロ粒子など)で調製物される。代替的に、および/または、追加的に、添加分子は、SeS含有医薬組成物と同時に該当添加分子を眼表面に適用できるように、SeS含有医薬組成物に添加される。
【0066】
いくつかの例では、バリアは、コンタクトレンズ、または他のタイプの透明または不透明な層であり、光増感されたSeSまたは他の活性酸素種(すなわち、SeSの光反応から生成される)から眼表面を保護するために眼表面に物理的バリアを作成する。コンタクトレンズ、または他のタイプの透明または不透明な層のサイズは、保護の領域に応じて変動する。例えば、コンタクトレンズ、または他のタイプの透明または不透明な層のサイズは、個体の眼表面の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を覆うために決定される。
【0067】
個体の眼表面を光増感SeSまたは他の活性酸素種からバリアで保護するプロセスは、SeS含有医薬組成物の投与時の光増感SeSの有害作用、または他の活性酸素種からの光毒性を防止または軽減することによって、SeS含有医薬組成物を良好または高光量条件下で(例えば、太陽光下で、少なくとも50ルックス以上、または少なくとも100ルックス以上、または少なくとも500ルックス以上、または少なくとも1,000ルックス以上を有する光下で)投与することを可能にする。さらに、SeS含有医薬組成物の投与中に光増感SeSまたは他の活性酸素種の眼表面へのアクセスを防止することによって、そのような投与工程は、投与後に光への曝露のさらなる制限、回避、または制限または回避するために指示の必要性を除去または少なくとも低減する。
【実施例
【0068】
実施例1
SeSを含む調製物に関するインビボのウサギ研究。
ウサギで実施された前臨床試験では、最大2.5重量%の濃度のSeSの低用量(約4mg)が安全であると観察された。軟膏で提供され、眼瞼縁上に適用されるこの用量は、忍容性が高く、処置を受ける個体に角膜炎を引き起こさない。投与量を約20mgに増加させると、被験者に角膜炎が観察される。これらの知見は、角膜炎および関連するSeS処置の副作用が、SeSの濃度だけでなく、総投与量にも依存する可能性があることを示していると理解される。
【0069】
実施例2
臨床研究では、3つの異なる濃度を使用した;0.1重量%(10の被験体)、0.5重量%(12の被験体)および1重量%(26の被験体)。一部の患者は事前に指定されたプロトコル基準に基づいて毎日の適用に移行した一方、ほとんどの適用を隔週で行った。研究に参加した被験体のうち、4人が角膜炎、角膜炎関連の症状、または角膜炎関連の症状を発症した。すべての4人の被験体を、1重量%濃度を使用して処置した。ある例では、患者は1か月間処置され、複数の眼科の健康指標に従って改善していたが、1か月の来院後に角膜炎を発症した。1か月の来院中に、患者に朝の時間帯に院内の評価の一部として薬物を適用した。約7時間後に、患者は著しい疼痛を感じ始めた。翌朝の診察で、患者は、眼瞼裂に帯状の角膜染色を示し、角膜炎と診断された。患者は、週に2回(自宅で、就寝前に)薬物を適用している間、最初の月に有害事象はなく、総眼表面疾患指数(OSDI)、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)、および眼の乾燥の標準的な患者評価(SPEED)に有意な改善が見られた。角膜炎の解消後、この患者は就寝時に投薬を続け、その後の角膜炎の発症はなかった。
【0070】
自宅で薬物を適用している間に有害作用がなく改善し、クリニックで適用してから数時間後に角膜炎を発症するという驚くべき患者の発生率が観察された。この再発のパターンは、院内での日中のSeSの適用後の毒性反応を示唆した。さらに3人の患者は、適用後6~20時間の間に疼痛の開始を報告し、これが実際に毒性反応のパターンに従っていることを示す。患者のうちの2人は、院内で日中に行われた単回の適用-試験の初日に行われた第1の適用、の後に角膜炎を発症した。最後の被験者は、研究の14日目に院内での適用が行われた後に角膜炎を発症した。この最後の被験者も、第1の患者と同様に、有害作用なしに隔週で自宅で治療を適用した。
【0071】
SeSが光と反応して感光性反応を引き起こすという提案は、以下の要因によって告知された:(1)院内での日中の適用後の角膜炎の一貫した発症、(2)角膜炎が1回も発症することなく400回を超える就寝時に1重量%のSeSの適用の実施、および(3)1重量%のSeS軟膏の日中の適用と、角膜炎の症状の発症との間の時間経過。0.1重量%および0.5重量%院内での日中の適用も、角膜炎を発症することなくそれぞれ9人と7人の患者で行われたこと、および角膜炎はウサギにおいて約20mgの高用量で発症したが、約4mgの低用量では発症しなかったことを考えると、この現象は、用量と濃度の両方に関連しているであろう。
【0072】
薬物製品が眼の上で視覚化することができる期間もテストされた。5時間後に、薬物製品が明白に存在しないことが結論付けられた。
【0073】
SeS(2.5重量%)は、刺激作用などによって、接触性皮膚炎を引き起こす可能性がある。癜風の処置として、GiordanoはかつてSeSを一晩(例えば、一晩の効果のために夜間または就寝前に)日光曝露の懸念のためではなく、皮膚へのその長期曝露を可能にするために、適用した。RobinsonとYaffeは、同じ適応症のためにSeSクリーム(1重量%)を1日2回、2週間使用した。RobinsonとYaffeによって記載された32のケースは、SeSクリームを除去するために3日に1回だけシャワーを浴びることが推奨されたため、日中の曝露は問題ではなかったことを示す。調査者の誰も、接触性皮膚炎または光接触性皮膚炎のいずれかの単一の症例にも遭遇することなく、SeSの潜在的な光毒性効果への言及はない。いくつかの例では、SeSの濃度が低い場合、例えば、約0.1重量%~2.5重量%(たとえば、0.5重量%)の場合、一晩の塗布が重要である。
【0074】
1つの例では、患者は、顔、首、および上肢の無症候性の低色素性斑点を処置するために、医師の処方に従ってSeSシャンプーを3晩連続して適用した。3回目の処置の5日後、患者は顔、首、上肢の光に曝露された領域に限局性の湿疹性プラークを発症した。いくつかの例では、最後の適用から5日後に皮膚炎が発症したため、SeSによって誘発された皮膚炎は光アレルギー性である可能性がある。増感プロセスが完了するまでの最小時間は5日間である。さらに、光反応性化学物質の濃度が高い場合、光毒性および一次刺激反応が見られる。このような光毒性または刺激性の反応は、いかなる局所用薬剤の中止後のタイムラグの後にも発生する可能性は低い。前述の湿疹性プラークは、患者が全身にシャンプーを適用したにもかかわらず、主に太陽曝露された領域に発生し、このことによって、反応が一次刺激性皮膚炎ではなかったことが示される。3週間後でも太陽光への曝露の悪化は、アレルギーメカニズムを支持していることも示す。薬剤の副作用としての感光性皮膚炎は、典型的に、問題のある薬剤と太陽光の中止後1~2週間で治まる。いくつかの例では、問題のある薬剤が真皮に存続するか、またはタンパク質もしくは細胞が変化して、光線過敏症が持続する可能性がある。
【0075】
セレン組成物(例えば、SeS)に応答する光線過敏症の発症は、特にUVA(約320nm~約400nmの波長の放射線)曝露に関して、いくつかのセレン化合物の既知の皮膚保護効果とは対照的である。以前に観察されたUVA保護効果は、線維芽細胞とケラチノサイトの重要な成分であるグルタチオンの合成を促進するセレンの能力によって促進される可能性がある。いくつかの例では、UV保護効果と光線過敏症の対比はセレン溶解性に由来することがある。セレン化合物のUV保護効果を示す以前のデータは、典型的に、可溶性セレン化合物に相当する。セレン化合物の保護効果は低用量から始まる。本明細書に記載される眼処置において、活性化合物は、最小濃度の可溶性セレン(<5ppm)を有する不溶性二硫化セレンである。本明細書に記載される眼科的の研究の1つで観察された光毒性効果は、少なくとも約0.5重量%および1重量%という低濃度で観察される。
【0076】
いくつかの例では、SeSの特定の濃度レベルは、保護効果と感作効果のバランスを崩す可能性がある。ある例では、高レベルの非溶解性セレンは、グルタチオンまたは他のタンパク質のレベルの上昇により光毒性を引き起こし、酸化的不均衡および細胞毒性を誘発する可能性がある。この細胞の毒性および酸化的不均衡は、UVA曝露によってさらに引き上げられる場合がある。
【0077】
実施例3
さらなる7人の被験体は、実施例2に記載されたのと同様の方法での1重量%二硫化セレンを受けた。有害作用のさらなる2つ、または3つのさらなるケースである。これらの被験体のうち、2人は1回目の院内での適用後に角膜炎を患い、別の患者は2回目の院内での適用後に悪化したが、被験体は検査する疼痛を伴う前に自宅で別の用量を1~2回続けた(角膜炎が進行する典型的なシナリオ)。
【0078】
実施例4
SeSを含む調整物のヒト研究。
SeSの3つの濃度(0.1重量%、0.5重量%、および1重量%)の1つを、安全性および有効性を判断するためにヒト被験体に適用する。軟膏ベースのSeS組成物である処置を、処置を受ける個体(すなわち、自己投与)によって眼瞼縁上に適用する。ほとんどの例では、処置は隔週で適用されるが、一部の患者は事前に指定されたプロトコル基準に基づいて毎日の適用に移行する。軟膏ベースの組成物は涙液と混合して視界不良を引き起こすことが知られているため、本研究の個体は、視力低下に関連するリスクを回避するために、就寝前に治療を適用することを奨励する。研究の追加の構成要素は、設計された研究と一致する適切な自己投与技術を実証するために、眼科医の存在下で個体が軟膏を適用することを要求する。院内適用は、特定の、事前に定めた時点で実施される。これらの例では、処置は就寝前には適用されず、日中の時間帯に実施される。
【0079】
角膜炎は、0.1重量%、または0.5重量%いずれかの濃度で処置を受けるいずれの患者にも観察されない。しかしながら、4人の患者が、1重量%濃度コホートにおいて角膜炎の症状に気付く。角膜炎の症状を説明している4人の患者全員が、処方された院内での評価に従ってそうしているのに対し、400回以上の就寝時の処置の適用はいずれも角膜炎を引き起こさないことに注目する必要べきである。角膜炎が発症した後の院内評価の前に、少なくとも1人の患者が、総眼表面疾患指数(OSDI)、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)、および眼の乾燥の標準的な患者評価(SPEED)によって測定されるように、1か月の処置後に健康結果の改善を実証する。しかし、院内での評価を行ってから7時間以内に、患者は処置部位の近くに重大な疼痛を訴える。その後のフルオレセインによる角膜染色は角膜炎を示し、眼瞼裂に帯状に観察される。
【0080】
少なくとも3つの他の個体が、最初に記載された個体と一致するパターンに従って角膜炎の症状を示す。4人全員が、院内での評価の6~20時間、すなわち、SeSの1重量%濃度が適用される間に疼痛が始まったことを報告する。この発生パターンは、角膜炎の発症と、処置が投与される状況と投与される処置の濃度の両方との相関関係を示唆する。
【0081】
処置が明白に存在する期間の決定。
医薬品が個体の眼の上またはその近くに目に明白に存在する期間が評価される。研究者は、医薬品が5時間後に明白に存在しなくなったことをと結論付ける。
【0082】
実施例5
重複する部位で同じ濃度のSeS(すなわち、0.5%)を使用した2つの進行中の研究におけるマスキングをかけたデータの分析は、夜間にのみ医薬品を投与することの明確で予想外の忍容性の利点を示す。第1の試験では、患者は、研究プロトコルの一部として、夕方、訪問の間、および定期的な予定された診療所訪問中の昼間の両方に投与するように指示された。試験患者は、2週間にわたって週2回投与されたプラセボで2週間の流れ込みを受けた。包含/除外基準を満たすと、患者は、SeS軟膏/半固形薬物(すなわち、0.1%、0.5%、または1.0%)またはプラセボを、週2回の3ヶ月間または1日1回の3ヶ月間の投与のいずれかを含む用量レジメンで投与されるようにランダム化された。
【0083】
第2の試験で、第1の試験とほぼ同じであるが、日中の訪問はすべて排除され、軟膏/半固形SeS(例えば、0.5%)が週2回、夕方に就寝時に3か月間投与された。第1の試験と比較して、第2の(夜間投与のみ)の試験では、眼の有害事象が明らかに有意に減少した(有害事象の発生率が75%減少)。有害事象は、ザラザラ感、異物感覚、刺痛、視界不良、赤色、疲れた眼、涙くんだ眼、刺激作用、眼瞼異常、熱傷、角膜擦過傷、羞明、着色、またはドライアイ障害(DED)を含む。有害事象は主に、適用後の灼熱感や刺痛などの耐容性に関連する事象で構成される。
【0084】
眼の有害事象(眼のAE)およびより重要な有害事象の中止(AEについてのDC、主に眼の耐容性に関連する)の割合は、午前ではなく夕方にのみ投薬を許可した場合、少なくとも50%減少するように見える。
【0085】
実施例6
マイボーム腺障害(MGD)患者におけるSeSの有効性をテストする研究では、被験体は指または脱脂綿アプリケーター(綿棒など)のどちらかを選択して、眼瞼縁に軟膏を適用することが許可された。
【0086】
22人のマイボーム腺障害(MGD)患者のうち、9人が指を使用することを選択し、13人がアプリケーターを使用した。薬剤は週に2回適用され、最終評価はマイボーム腺スコア(MGS)の主要な結果が評価された3ヶ月の時点で行われた。指を使用した9人の患者のMGSのベースラインからの平均変化は、アプリケーターを使用した13人の患者の2.3(+/-4.4)に対して、10(+/-8.2)であった。この違いは統計的に有意であった(p=0.03)。典型的に、眼瞼縁に使用されるクリーム、化粧品、軟膏はアプリケーターを使用して塗布されるため、指を使用すると薬物の効果が高まるというのは予想外の発見打であった。
【0087】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され、記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されているに過ぎないことが当業者に明らかであろう。本発明が明細書内で提供される特定の例によって限定されることは意図していない。本発明は前述の明細書に関して記載されているが、本明細書中の実施形態の記載および例示は、限定的な意味で解釈されることを意味していない。当業者であれば、多くの変更、変化、および置換を、本発明から逸脱することなく思いつくであろう。さらに、本発明のすべての態様は、様々な条件および変数に依存する、本明細書で説明された特定の描写、構成、または相対的な比率に限定されないことが理解されよう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代替案が、本発明の実施に際して利用され得ることを理解されたい。それゆえ、本発明はまた、任意のそのような代替物、修正物、変形物、または同等物にも及ぶことが企図される。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を規定するものであり、これらの特許請求の範囲とその均等物の範囲内の方法、および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
図1
【国際調査報告】