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特表2023-510538ガスクロマトグラフアセンブリにより分析されるガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化する方法およびそのためのクロマトグラフアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフアセンブリにより分析されるガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化する方法およびそのためのクロマトグラフアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/06 20060101AFI20230307BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20230307BHJP
   G01N 30/74 20060101ALI20230307BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20230307BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20230307BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G01N30/06 C
G01N30/86 J
G01N30/74 E
G01N30/26 M
G01N30/88 M
G01N1/00 101T
G01N1/00 101S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542300
(86)(22)【出願日】2020-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 EP2020085259
(87)【国際公開番号】W WO2021139953
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】20151114.4
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500469855
【氏名又は名称】インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【弁理士】
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ヘルグレーン・ヨーアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンネルバリ・ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】エンクイスト・フレドリク
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA07
2G052AB01
2G052AB11
2G052AB26
2G052AB27
2G052AC23
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052CA11
2G052CA35
2G052FD01
2G052GA11
2G052GA27
(57)【要約】
【課題】ガスクロマトグラフ分析のために、ガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化する方法を提供する。
【解決手段】a)サンプルガスをサンプルガス導入口(20)から導入する工程と、b)第2のガスを第2のガス導入口(40)から導入する工程と、c)前記サンプルガスと前記第2のガスとを混合してガス混合物とし、当該ガス混合物を、ガスクロマトグラフ用バイパス(28)を経由して案内する工程と、d)前記ガス混合物を、前記ガスクロマトグラフ用バイパス(28)及びガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)を含み、かつガスクロマトグラフ用カラム(26)を含まない、ガス導通ループ(52)において循環させる工程と、e)得られたガス混合物を、前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)及び前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)を用いて、ガスクロマトグラフ法により分析する工程と、を有する方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスクロマトグラフアセンブリ(10)により分析される、ガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化する方法であって、当該ガスクロマトグラフアセンブリ(10)は、
分析されるサンプルガスを導入するためのサンプルガス導入口(20)と、
第2のガス導入口(40)と、
ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)、ガスクロマトグラフ用カラム(26)、及び当該カラム(26)に対して並列に設けられたガスクロマトグラフ用バイパス(28)と、
を備え、
a)一定量のサンプルガスを前記サンプルガス導入口(20)から導入する工程と、
b)一定量の第2のガスを前記第2のガス導入口(40)から導入する工程と、
c)前記サンプルガスと前記第2のガスとを混合してガス混合物とし、当該ガス混合物を、前記ガスクロマトグラフ用バイパス(28)を経由して案内する工程と、
d)前記ガス混合物を、前記ガスクロマトグラフ用バイパス(28)及び前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)を含み、かつ前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)を含まない、ガス導通ループ(52)において循環させる工程と、
e)こうして得られたガス混合物を、前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)及び前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)を用いて、ガスクロマトグラフ法により分析する工程と、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記d)工程の間またはそれ以前に、前記サンプルガスの濃度を測定し、前記サンプルガスの濃度が所定レベルに到達したか否かを判断する、方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法において、前記d)工程の間またはそれ以前において前記サンプルガスの濃度を測定する工程を、第2のセンサ(24)を用いて行う、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記a)工程の間において、前記サンプルガス導入口(20)から導入される前記サンプルガスを、前記第2のセンサ(24)を経由して前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)へと導入する、方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載の方法において、前記ガス導通ループ(52)が更に前記第2のセンサ(24)を備える、方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記d)工程における循環を、前記サンプルガスの濃度を測定することなく所定の回数にわたり繰り返す、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法において、前記ガス導通ループ(52)は、前記サンプルガス導入口(20)および前記第2のガス導入口(40)のいずれかを選択的に該ガス導通ループ(52)に接続するように設けられた、ガス調節バルブ(42)を備える、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記a)工程の間において、前記ガス調節バルブ(42)は、前記第2のガス導入口(40)を前記ガス導通ループ(52)から分離しながら、前記サンプルガス導入口(20)を前記ガス導通ループ(52)と接続する、方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法において、前記b)工程の間において、前記ガス調節バルブ(42)は、前記サンプルガス導入口(20)を前記ガス導通ループ(52)から分離しながら、前記第2のガス導入口(40)を前記ガス導通ループ(52)に接続する、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法において、前記c)工程の間において、前記サンプルガス導入口(20)および前記第2のガス導入口(40)の両方が、前記ガス導通ループ(52)から分離される、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法により、分析されるガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化するガスクロマトグラフアセンブリ(10)において、
分析されるサンプルガスを導入するためのサンプルガス導入口(20)と、
第2のガス導入口(40)と、
ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)、ガスクロマトグラフ用カラム(26)、及び当該カラム(26)をバイパスするために当該カラム(26)に対して並列に設けられたガスクロマトグラフ用バイパス(28)と、
前記ガスクロマトグラフ用バイパス(28)を含み、かつ前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)を含まないガス導通ループ(52)と、
を備える、ガスクロマトグラフアセンブリ。
【請求項12】
請求項11に記載のガスクロマトグラフアセンブリ(10)において、前記d)工程の間またはそれ以前において前記サンプルガスの濃度を測定するための第2のセンサ(24)を更に備える、ガスクロマトグラフアセンブリ。
【請求項13】
請求項11または12に記載のガスクロマトグラフアセンブリ(10)において、前記ガス導通ループ(52)は、前記サンプルガス導入口(20)および前記第2のガス導入口(40)のいずれかを選択的に前記ガス導通ループ(52)に接続するガス調節バルブ(42)を備える、ガスクロマトグラフアセンブリ。
【請求項14】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法または請求項11から13のいずれか一項に記載のガスクロマトグラフアセンブリ(10)において、前記ガス導通ループ(52)は、ガスを前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)または前記ガスクロマトグラフ用バイパス(28)のいずれかを経由して前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)へと導入するために、前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)と前記ガスクロマトグラフ用バイパス(28)との間で切り替えるように設けられた、ガスクロマトグラフ用バルブ(30)を備える、方法またはガスクロマトグラフアセンブリ。
【請求項15】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法または請求項11から14のいずれか一項に記載のアセンブリ(10)において、前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)が、前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)に対して直列に、かつ前記ガスクロマトグラフ用バイパス(28)に対して並列に接続される、方法またはアセンブリ。
【請求項16】
請求項1から10若しくは15のいずれか一項に記載の方法または請求項11から14若しくは15のいずれか一項に記載のアセンブリ(10)において、前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)は、上流バッファーボリューム(66)及び/又は下流バッファーボリューム(68)に対して直列に接続される、方法またはアセンブリ。
【請求項17】
請求項1から10、15若しくは16のいずれか一項に記載の方法または請求項11から14、15若しくは16のいずれか一項に記載のアセンブリ(10)において、前記ガス導通ループ(52)から前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)および前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)へのガスの移動が、好ましくは第1のバルブ(62)によって防止される、方法またはアセンブリ。
【請求項18】
請求項1から10若しくは15から17のいずれか一項に記載の方法または請求項11から14若しくは15から17のいずれか一項に記載のアセンブリ(10)において、前記ガスクロマトグラフアセンブリがスタンドバイ状態にあるときに、前記ガスクロマトグラフ用カラム(26)に残存するガスの前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサ(12)への到達が、好ましくは第2のバルブ(64)によって防止される、方法またはアセンブリ。
【請求項19】
請求項1から10または15から18のいずれか一項に記載の方法において、前記ガス混合物中のサンプルガスの濃度が望ましい所定レベルに到達するまで、ガス混合物内のサンプルガスの濃度を徐々に減少させるために、前記工程b)、c)、及びd)を、前記工程a)を伴うことなく繰り返す、方法。
【請求項20】
請求項1から10または15から18のいずれか一項に記載の方法において、前記工程a)、b)及びc)が、前記サンプルガスの導入量と、前記第2のガスの導入量とが、特定の比率となるレシオメトリック連続混合の形態で行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフアセンブリにより分析される、ガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化する方法、および、分析されるサンプルガスの濃度を最適化するガスクロマトグラフアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィーは、ガス混合物からガス成分を分離し、これらの分離されたガス成分を検出するために用いられる。これは、チューブ状のカラムに少量のガス混合物を注入することで実現される。カラムは一般的に、内面に表面活性コーティングを施した細いキャピラリーチューブか、あるいは表面活性粉末を充填したやや太めのチューブであり、これらのコーティングや粉末は、いずれも「固定相」と称される。水素、ヘリウム、空気などのキャリアガスは、カラムを経由して分析対象のガス混合物を運ぶために用いられる。キャリアガスは一般的に、「移動相」と称される。こうして、分析対象のガス混合物は移動相に従って固定相を通過し、それによりガス混合物が固定相を通過しながらゆっくりと押し出される。ガス混合物中の軽い成分ほど速く移動するため、注入されたガスパルスの異なるガス成分は、異なる時間でカラムから出てくることとなり、その結果、一成分ずつ検出することができる。ガス成分の到達時間または移動時間は、これらを識別するために用いられる。ガスクロマトグラフのセンサは、各ガス成分の到達時間または移動時間を測定するために使用される。ガスクロマトグラフィーは、犯罪科学、医学、環境保全の分野で使用されている。
【0003】
ガスクロマトグラフィーは、ガス漏れ検知の分野でも使用され、特に、地表で測定されたあるガス成分が、天然ガスを輸送する地下パイプラインの漏れに由来するものか否かを評価するために使用される。天然ガスや生物学的腐敗工程で生成するガス(「沼沢ガス」)の主要な成分はメタンである。沼沢ガスは、微生物が生物の廃棄物を消化する際に生じる。埋設された地下パイプラインの漏れを修復する作業を開始する前に、地表で検出されたガスが沼沢ガスの放出に由来するものではないことを確認する必要がある。
【0004】
これは、ガスクロマトグラフィーを用いて実現することができる。これに関し、天然ガスには必ずある量のエタンが含まれているが、沼沢ガスにはエタンが全く含まれていないことを、考慮する必要がある。したがって、ガスクロマトグラフィーでエタンが検出されれば、地表で検出されたガスが沼沢ガスに由来するものではなく、メタンなどの天然ガスを輸送する地下パイプラインのガス漏れに由来するものであることの指標となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガスクロマトグラフで分析するガスサンプルにおけるサンプルガスの濃度は非常に重要である。一方で、十分な測定シグナルを得るために、濃度を十分に高くする必要がある。他方で、ガスクロマトグラフのカラムの固定相にオーバーロードされてしまうことを避けるために、濃度はある値を超えてはならない。オーバーロードされてしまうと、測定シグナルに歪んだピークが生じ、ガスの種類を誤認したり、複数のガス成分のピークが互いに重なって一方のピークが覆い隠されたりする虞がある。特に、温度制御のないシンプルなカラムでは、この点が非常に重要である。
【0006】
本発明の目的は、ガスクロマトグラフアセンブリにより分析される、ガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化する方法を提供することである。また、分析されるガス混合物中のサンプルガスの濃度を最適化するガスクロマトグラフアセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主題は、独立請求項1および11のそれぞれによって定義される。
【0008】
本発明のガスクロマトグラフアセンブリは、分析されるサンプルガスを導入するためのサンプルガス導入口と、第2のガス導入口と、ガスクロマトグラフ用赤外線センサ、ガスクロマトグラフ用カラム、及び当該カラムに対して並列に設けられたガスクロマトグラフ用バイパスとで、構成される。
【0009】
本発明によれば、
a)ある量のサンプルガスが前記サンプルガス導入口からガスクロマトグラフアセンブリへ導入され、
b)ある量の第2のガスが前記第2のガス導入口から導入され、
c)前記サンプルガスと前記第2のガスが混合されてガス混合物とされ、当該ガス混合物が前記ガスクロマトグラフ用バイパスを経由して案内され、
d)前記ガス混合物は、前記ガスクロマトグラフ用バイパス及び前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサを含み、かつ前記ガスクロマトグラフ用カラムは含まない、ガス導通ループにおいて循環され、
e)こうして得られたガス混合物が、前記ガスクロマトグラフ用カラム及び前記ガスクロマトグラフ用赤外線センサを用いて、ガスクロマトグラフ法により分析される。
【0010】
別の言い方をすれば、ガス混合物は、サンプルガス導入口から導入されたサンプルガスと、第2のガス導入口から導入された第2のガスとから形成される。ガス混合物は、ガスクロマトグラフ用バイパスを経由して案内されるので、ガス混合物はカラムによって阻害されることなく、ガスクロマトグラフアセンブリ内を実際に流通することができる。ガスクロマトグラフ用バイパスは、2つのガス成分の混合を容易にする。
【0011】
本発明の重要な側面は、ガスクロマトグラフ用センサが赤外線センサであり、好ましくは赤外線吸収キュベットのような広帯域赤外線センサからなることである。ガスクロマトグラフ用センサと、第2の赤外線センサアセンブリとの、利点を組み合わせるために、別途の第2の赤外線センサは不要なほどである。
【0012】
本発明では、サンプルガスをさらに導入することなく、第2のガスの導入と、ガスクロマトグラフアセンブリ内に既に存在するガス混合物と新たに導入された第2のガスとの混合と、を繰り返すことによって、ガス混合物内のサンプルガスの濃度を徐々に減らすことができる。サンプルガスの濃度の低減は、ガス混合物内のサンプルガスの濃度が、カラムの固定相に試料がオーバーロードされることなく、ガスクロマトグラフ用センサからの十分な測定シグナルが生成される程度の、望ましい所定のレベルに到達するまで実行してもよい。
【0013】
サンプルガス濃度を漸減するためのサンプルガスと第2のガスとの混合は、サンプルガスと第2のガスとの適切な比率を設定する2つの流量調整器などを介して、レシオメトリック連続混合により得ることができる。これら2つの流量調整器のうちの1つは第2のガス導入口に接続され、2つの流量調整器のうちの他の1つはサンプルガス導入口に接続される。レシオメトリック連続混合は、上述したガスモジュレーションバルブで実現してもよいし、ガスモジュレーションバルブの代替として、上述した2つの流量調整器で実現してもよい。レシオメトリック連続混合は、サンプルガスと第2のガスのガス混合物が、特定の比率に対応する量のサンプルガスと第2のガスからなるように、導入されたサンプルガスと導入された第2ガスの特定の比率によって達成される。
【0014】
サンプルガス濃度が既に所定のレベルに達しているかどうかを判断するため、前記d)工程の間またはそれ以前に、すなわちサンプルガスまたは第2のガスの導入が繰り返される前にサンプルガス濃度を測定することが好ましい。この測定は、赤外線センサで行うことができる。
【0015】
前記d)工程の間またはそれ以前にサンプルガス濃度を測定する代わりに、前記工程a)を行わず、サンプルガス濃度を測定せずに、工程b)、c)およびd)を所定回数繰り返してもよい。
【0016】
ガスクロマトグラフアセンブリは、ループを循環する間にサンプルガスと第2のガスとが混合されるように、ガスクロマトグラフ用バイパスとガスクロマトグラフ用センサを含み、ガスクロマトグラフ用カラムを含まないガス導通ループを備える。ループが第2のセンサアセンブリも含む場合、サンプルガス濃度の漸増または漸減を測定および制御し得るように、サンプルガス濃度をサイクルごとに、あるいは連続的に測定することができる。
【0017】
ループは、サンプルガス導入口と第2のガス導入口のいずれかをループと選択的に接続するように設けられたガス調節バルブを含んでいてもよい。この例では、第2のガス導入口は、通常、ガスサンプルを基準ガスと比較するために採用される基準ガス導入口とすることができる。特に、ガス調節バルブは、前記a)工程の間、サンプルガス導入口をループと接続する一方、第2の/基準ガス導入口をループから分離することができる。同様に、前記b)工程の間では、サンプルガス導入口をループから分離しながら、ガス調節バルブは第2のガス導入口をループに接続する。
【0018】
典型的な実施形態では、ガス調節バルブは、サンプルガス導入口と、第2の/基準ガス導入口とを、ガスクロマトグラフ用赤外線センサアセンブリに接続する。
【0019】
ガスクロマトグラフ用赤外線センサアセンブリは、赤外線センサの第1の端にあるセンサ入口と、赤外線センサの第2の端にあるセンサ出口とを含む。前記a)工程の間、センサ入口はサンプルガス導入口に接続され、一方、基準ガス導入口はセンサ入口から分離されてもよい。その後、ガスはサンプルガス導入口から赤外線センサを通して吸引され、ガスクロマトグラフ用バイパスを経由してガスクロマトグラフ用センサに導入される。同様に、ステップb)では、センサ入口を基準ガス導入口に接続し、サンプルガス導入口をセンサ入口から分離してもよい。その後、ガスは基準ガス導入口から赤外線センサを経由して吸引される。
【0020】
サンプルガスと第2のガス(基準ガス)のガス混合物は、ガスクロマトグラフ用センサバイパス、ガスクロマトグラフ用赤外線センサ、ガス調節バルブ、ガスクロマトグラフ用バルブからなるガス導通ループを循環させることができる。
【0021】
ガスクロマトグラフ用バルブは、ガスクロマトグラフ用カラムとガスクロマトグラフ用バイパスを切り替えて、ガスをガスクロマトグラフ用カラムまたはガスクロマトグラフ用バイパスを経由してガスクロマトグラフ用赤外線センサに導入するための切替えバルブとすることができる。
【0022】
好ましくは、前記工程c)の間、サンプルガス導入口と第2の導入口の両方がループから分離される。特に、サンプルガス導入口をセンサ入口から分離したまま、第2のセンサアセンブリ入口を基準ガス入口から分離してもよい。
【0023】
一般的には、ガス混合物をループ内でしばらく循環させ、第2のガスとサンプルガスとを混合させることが好ましい。特に、第2のガスは空気であってもよい。これを実現するために、第2の導入口は、開放雰囲気からの入口、すなわち、大気に開放されている入口であってもよい。
【0024】
ガスクロマトグラフ用バルブを所定時間開くことにより、所定量のガス混合物をガスクロマトグラフ用カラムに注入してもよい。ガスクロマトグラフ用バルブを閉じた後、サンプルガス導入口または第2の/基準ガス導入口から空気を導入し、ガスクロマトグラフ用バイパスを経由してガスクロマトグラフ用赤外センサに導入することにより、ガスクロマトグラフ用センサをパージすることができる。その後、ガスクロマトグラフ用バルブを開き、空気をガスクロマトグラフ用カラムを通してガスクロマトグラフ用センサに引き込み、または注入して、ガスクロマトグラフによってガス混合物を分析することができる。
【0025】
概して、本発明では、サンプルガスを繰り返し周期的に、すなわち徐々に、制御された状態で希釈することが可能である。サンプルガス濃度を測定した後、まずシステム全体をパージし、次にガス調節バルブを使用してサンプルガス導入口から多数の短いパルスを導入し、それによって第2の導入口から導入したガス混合物、または空気流の流れにサンプルガスを注入してもよい。その後、サンプルガスと第2のガスの流れをループ内で循環させて混合し、得られたガス混合物をガスクロマトグラフ用カラムに少量ずつ注入する。
【0026】
以下では、図を参照しながら本発明の例示的な実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、第1実施形態の一般配置図を示している。
図2図2は、第2実施形態の一般配置図を示している。
図3図3は、第3実施形態の一般配置図を示している。
図4図4は、第4実施形態の一般配置図を示している。
図5図5は、第5実施形態の一般配置図を示している。
図6図6は、第6実施形態の一般配置図を示している。
図7図7は、第7実施形態の一般配置図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
全ての図は、分析対象のサンプルガスを導入するためのサンプルガス導入口20と、大気に開放されている基準ガス導入口である第2ガス導入口40とを含む、ガスクロマトグラフアセンブリ10を示す。ガスクロマトグラフアセンブリ10は、ガスクロマトグラフ用赤外線センサ12と、ガスクロマトグラフ用カラム26と、当該カラム26に並列に設けられたガスクロマトグラフ用バイパス28とをさらに備える。
【0029】
ガスクロマトグラフ用バルブ30は、ガスクロマトグラフ用カラム26とガスクロマトグラフ用バイパス28とを切り替えて、ガスクロマトグラフ用カラム26またはガスクロマトグラフ用バイパス28のいずれかを通してガスクロマトグラフ用赤外線センサ12にガスを導入するように、設けられている。
【0030】
サンプルガス濃度の測定のために、固体センサ、可燃性ガスセンサ、ペリスタまたは金属酸化物センサ(MOS)の形態の二次センサ24が設けられる。
【0031】
ガスクロマトグラフ用赤外線センサ12は、第1の端部にセンサ入口16を有し、第2の端部にセンサ出口18を有している。
【0032】
サンプルガス導入口20および第2のガス導入口40は、ガス調節バルブ42に並列に接続されており、このガス調節バルブ42は、サンプルガス導入口20および第2のガス導入口40のいずれかを二次センサアッセンブリ12に選択的に接続するように構成されている。サンプルガス導入口20は、逆止弁50を介して、ガス調節バルブ42に接続されている。
【0033】
ガスクロマトグラフ用センサ12は、排気ライン32を介して排気口22に接続されている。排気ライン32は、サンプルガス導入口20とガス調節バルブ42とを結ぶガス流路に接続されており、それによってループ52を形成している。特に、ループ52は、ガス調節バルブ42と、ガスクロマトグラフ用バルブ30と、センサ出口18と排気ライン32とを接続するガス流路における追加のガスポンプ54とを備えている。あるいは、排気ライン32とループ52は、それぞれ別に設けられたセンサ12の出口に接続されてもよい。
【0034】
ループ52は、ガスセンサ12でサンプルガス濃度を測定する前に、サンプルガスと第2のガスとのガス混合物を、複数回循環させるように構成される。サンプルガス濃度が十分に低下すると、ガスクロマトグラフ用バルブ30は、ガス混合物の短いガスパルスをカラム26に注入するために、所定時間、ガスクロマトグラフ用バイパス28からガスクロマトグラフ用カラム26に切り替える。
【0035】
全ての実施形態において、ガスクロマトグラフ用バルブ30は、カラム26とバイパス28とを切り替える。図1の実施形態では、ガスクロマトグラフ用バルブ30、カラム26,およびバイパス28が、センサ出口18と排気ライン32とを接続する流路に設けられている。また、このガス流路には、追加のガスポンプ54が設けられている。
【0036】
図2の実施形態では、ガス調節バルブ42とセンサ入口16とを結ぶガス流路に、ガスクロマトグラフ用バルブ30、カラム26およびバイパス28が設けられている。
【0037】
図1において、エレメント62は、ループからGC(ガスクロマトグラフ)センサおよびカラムへのガスの移動を防止する「手段」として好適に記述される逆流防止弁/チェックバルブである。
【0038】
エレメント64は、装置がスタンドバイ状態のときに、カラム26に残存しているサンプルガスがセンサ24に到達するのを防止している。そのように漏れたサンプルガスは、さもなければ、GCセンサ12の周りに逃げ場なく捕捉される可能性がある。そのような残留ガスが蓄積されると、GCセンサ12がオーバーロードとなる可能性がある。
【0039】
一実施形態を図2により説明する。GCカラム26の上流66と下流68に小さなボリュームを追加している。これらのボリューム66,68は、バルブが閉じられているときでも、GCカラム26を通るガスの伝播がしばらくの間、継続できるように、カラム26上の圧力差を維持する目的に役立つものである。それはまた、ポンプが切替えの各期間で引き込むことのできるGCからのガスの体積を増加させることになる。ガス調節が使用される場合、IRキュベット12内のガスは、切替えの各期間において交換されなければならない。そして、カラム26からのガスの体積は、GCセンサとしてIRセンサを使用して設計する場合の重要なパラメータである。さらに、体積は、ポンプ54に起因する圧力振動を抑制する。ポンプはその構造上振動するが、ポンプをパルスモードで動作させ、実効流量を下げることも行っている。カラム26の下流側の圧力は、カラム内の抵抗のためにポンプ24の作動中に低下し、ポンプを停止すると、圧力は再び大気圧に接近する。ボリュームはこれを減衰させる。
【0040】
上流側のボリューム66は、ポンプが非作動のときに下流側のボリューム68を「再充填」するために、カラムを介して空気を押し出す。
【0041】
圧力振動はシグナルにノイズを与える可能性があるため、これは重要なことである。特に、その振動がバルブの変調周波数に近いか等しい場合は、ノイズを与える可能性が高くなる。
【0042】
図2のカラム26の配置は、(ループ52が完全にパージされたときに)サンプルガスまたは空気が逆流防止弁62を通ってカラム26の入力端に入り込む危険性を多少有する。
【0043】
これは、2つの問題を生じる可能性がある。
問題A)サンプルガスを押し込むと注入量が増え、異なるガスピークの定量精度に影響が出る。
問題B)空気やサンプルガスが漏れるとピークが遅れ、溶出時間を基準にガス種を判断しているため、ガス種の違いを誤認する可能性がある。
問題Aと問題Bは、それぞれ単独で発生することもあれば、複合的に発生することもある。
【0044】
図2の実施形態の変形例を、図3に示す。ここでは、固体センサ、可燃性ガスセンサ、ペリスタまたは金属酸化物センサの態様でさらなる別のGCセンサ24を追加し、IRセンサ12を二次的なものにしている。
【0045】
IRソリューションの他の実施形態を図4で説明する。
図2との差異は、カラム26がGCバルブ30の下流側ではなく、2つのバルブ30,42の間に配置されていることである。
【0046】
この解決策の利点は、逆流防止弁62からガスが漏れ出ている可能性があると、GCカラム26の出口端にいくらかのサンプルガスが浸み込むことである。その端にあるガスは、キャリアガスがカラム26を押し始めると、センサ12を素早く通過する。これにより最初に出てくることで、このガスは、カラム26を通って供給されるサンプルの最初の部分よりも前に出てくるので、このガスを無視することが容易である。
【0047】
図2の実施形態では、逆流防止弁62を通るときに漏れるサンプルガスは入口端に行き着く。これは定量(上記問題A)には影響しないが、溶出タイミング(上記問題B)には影響する可能性がある。
【0048】
キャリアガスは、通常は空気であり、GCではキャリアガスは「移動相」と称される。
【0049】
図4の実施形態の変形例が図5に示されている。ここでは、固体センサ、可燃性ガスセンサ、ペリスタまたは金属酸化物センサの態様の別の更なるGCセンサ24が追加され、IRセンサ12は二次的なものとなっている。
【0050】
ボリューム66,68は、容器の対向する端部に入口と出口を有し、ガス導通ラインに接続された容器の形態のバッファーボリュームであってもよい。容器の直径又は内寸は、ガス導通ラインの直径よりも大きい。
【符号の説明】
【0051】
10 ガスクロマトグラフアセンブリ
12 ガスクロマトグラフ用赤外線センサ
20 サンプルガス導入口
24 第2のセンサ
28 ガスクロマトグラフ用バイパス
40 第2のガス導入口
42 ガス調節バルブ
52 ガス導通ループ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】