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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】移動防止ステント
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/848 20130101AFI20230307BHJP
【FI】
A61F2/848
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542688
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 US2020065583
(87)【国際公開番号】W WO2021146021
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/960,470
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ギルマーティン、ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】マクナーン、ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ、マイケル
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA45
4C267AA50
4C267BB06
4C267BB12
4C267BB26
4C267CC12
4C267CC20
4C267CC21
4C267CC22
4C267CC23
4C267CC26
4C267EE01
4C267GG03
4C267GG05
4C267GG08
4C267GG24
4C267GG34
4C267GG42
4C267GG43
(57)【要約】
例示のステントは、細長チューブ状部材を含む。細長チューブ状部材は、厚さ部分を貫通して延びる複数のセルを有するチューブ状の壁を形成する少なくとも1つのストラット又はフィラメントを備える。細長チューブ状部材は、半径方向に潰れた形態と半径方向に拡張した形態との間で動くように構成され得る。コーティングが、細長チューブ状部材に配置されるとともに複数のセルにわたる。コーティングは、複数のセルのうちの少なくともいくつかのセル内にポケットを形成するとともに、空隙を画成するようにチューブ状の壁の半径方向内側に延びている。いくつかの例において、パーティション又は壁が、少なくともいくつかのポケット内に配置されるとともに空隙を横断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステントであって、
前記ステントは、細長チューブ状部材を備え、該細長チューブ状部材は、少なくとも1つのストラットを備え、該ストラットはチューブ状の壁を形成し、該チューブ状の壁は、複数のセルを有し、該複数のセルは、前記チューブ状の壁の厚さ部分を貫通して延びており、該細長チューブ状部材は、半径方向に潰れた形態と半径方向に拡張した形態との間で動くように構成されており、
前記ステントは、前記細長チューブ状部材に設けられるとともに前記複数のセルにわたるコーティングを備え、該コーティングは、前記複数のセルのうち少なくともいくつかの内にポケットを形成するとともに、空隙を画成するように前記チューブ状の壁の半径方向内側に延びており、
前記ステントは、少なくともいくつかの前記ポケット内に配置されたパーティションを備え、各パーティションは、前記ポケットの底面から半径方向外側に延びるとともに、前記空隙を横断する、
ステント。
【請求項2】
少なくともいくつかの前記パーティションは、前記細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対してほぼ直角に延びる、請求項1に記載のステント。
【請求項3】
少なくともいくつかの前記パーティションは、前記細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対してほぼ平行に延びる、請求項1又は2に記載のステント。
【請求項4】
少なくともいくつかの前記パーティションは、前記細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対して傾斜した角度に延びる、請求項1~3のいずれか1項に記載のステント。
【請求項5】
前記パーティションの高さは、前記コーティングが設けられた前記少なくとも1つのストラットの高さとほぼ等しい、請求項1~4のいずれか1項に記載のステント。
【請求項6】
前記少なくとも1つのストラットは複数の交差点を形成する、請求項1~5のいずれか1項に記載のステント。
【請求項7】
少なくともいくつかの前記パーティションは、隣接する交差点間に延びる、請求項6に記載のステント。
【請求項8】
少なくともいくつかの前記パーティションは、当該パーティションが配置された前記ポケットの第1側から前記ポケットの第2側まで延びる、請求項1~7のいずれか1項に記載のステント。
【請求項9】
少なくとも1つのポケットは2つ以上のパーティションを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のステント。
【請求項10】
前記コーティングは、前記ステントを通って長手方向に延びるルーメンの表面全体を画成する、請求項1~9のいずれか1項に記載のステント。
【請求項11】
少なくともいくつかの前記ポケットは、当該ポケットを貫通して形成されたアパーチャを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のステント。
【請求項12】
前記コーティング及び前記パーティションは、単一のモノリシックな構造として形成される、請求項1~11のいずれか1項に記載のステント。
【請求項13】
前記コーティングは、前記細長チューブ状部材の内面若しくは外面又は前記内面及び前記外面を覆って設けられる、請求項1~12のいずれか1項に記載のステント。
【請求項14】
ステントであって、
前記ステントは、細長チューブ状部材を備え、該細長チューブ状部材は、少なくとも1つのストラットを備え、該ストラットはチューブ状の壁を形成し、該チューブ状の壁は、複数のセルを有し、該複数のセルは、前記チューブ状の壁の厚さ部分を貫通して延びており、該細長チューブ状部材は、半径方向に潰れた形態と半径方向に拡張した形態との間で動くように構成されており、
前記ステントは、前記細長チューブ状部材に設けられるとともに前記複数のセルにわたるコーティングを備え、該コーティングは、前記複数のセルのうち少なくともいくつかの内にポケットを形成するとともに、空隙を画成するように前記チューブ状の壁の半径方向内側に延びており、
前記ポケットは、4つの収束する側壁と、前記4つの収束する側壁のそれぞれと交わるベース壁とを備えるピラミッド形状である、ステント。
【請求項15】
少なくともいくつかの前記ポケット内に配置されたパーティションをさらに備え、各パーティションは、前記ポケットのベース面から半径方向外側に延びるとともに、前記空隙を横断する、請求項14に記載のステント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療装置、医療装置の製造方法、及びその使用に関する。より詳細には、本開示は、生体管腔に移植するための移動防止(anti-migration)ステント、及び関連の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移植可能なステント(Implantable stent)は、生体管腔、例えば食道管(esophageal tract)、胃腸管(gastrointestinal tract)(腸、胃及び結腸を含む)、気管気管支管(tracheobronchial tract)、尿路、胆管、脈管系など内に配置されて、支持し、且つ生体管腔を開放状態に維持する装置である。これらのステントは、様々な異なる製造方法のうちのいずれか1つによって製造され、且つ様々な方法のうちのいずれか1つに従って使用され得る。公知のステント、送達システム、及び方法には、それぞれ、いくつかの利点及び不都合な点がある。例えば、いくつかのステントでは、ステント送達を支援する圧縮特性及び可撓特性はまた、その元の展開位置から移動する傾向のあるステントを生じ得る。例えば、食道又は胃腸管に配置されるように設計されるステントは、蠕動(すなわち、食道、腸、及び結腸の筋肉の不随意の収縮及び弛緩であり、それにより、管の内容物を通過させる)に起因して、移動する傾向があり得る。それゆえ、移動防止起伏を有する代替的なステント及び関連の送達システム、並びに移動防止起伏を有するステント及び関連の送達システムを製造及び使用するための代替的な方法を提供することが継続的に必要とされる。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、医療装置のための設計、材料、製造方法、及び使用代替例を提供する。例示的な医療装置は、ステントを含み得る。
第1例において、ステントは、細長チューブ状部材を備え、該細長チューブ状部材は、少なくとも1つのストラットを備え、該ストラットはチューブ状の壁を形成し、該チューブ状の壁は、複数のセルを有し、該複数のセルは、チューブ状の壁の厚さ部分を貫通して延びており、該細長チューブ状部材は、半径方向に潰れた形態と半径方向に拡張した形態との間で動くように構成されており、ステントは、細長チューブ状部材に配置されるとともに複数のセルにわたるコーティングを備え、該コーティングは、複数のセルのうち少なくともいくつかの内にポケットを形成するとともに、空隙を画成するようにチューブ状の壁の半径方向内側に延びており、ステントは、少なくともいくつかのポケット内に配置されたパーティションを備え、各パーティションは、ポケットの底面から半径方向外側に延びるとともに、空隙を横断する。
【0004】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのパーティションは、細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対してほぼ直角に延び得る。
【0005】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのパーティションは、細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対してほぼ平行に延び得る。
【0006】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのパーティションは、細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対して傾斜した角度で延び得る。
【0007】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、パーティションの高さは、コーティングが設けられた少なくとも1つのストラットの高さとほぼ等しいとし得る。
【0008】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくとも1つのストラットは、複数の交差点(cross-over points)を形成し得る。
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのパーティションは、隣接する交差点間に延び得る。
【0009】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのパーティションは、当該パーティションが配置されたポケットの第1側からポケットの第2側まで延び得る。
【0010】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくとも1つのポケットは、2つ以上のパーティションを含み得る。
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、コーティングは、ステントを通って長手方向に延びるルーメンの表面全体を画成し得る。
【0011】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのポケットは、当該ポケットを貫通して形成されたアパーチャを含み得る。
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、コーティング及びパーティションは、単一のモノリシックな構造として形成され得る。
【0012】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、コーティングは、細長チューブ状部材の内面若しくは外面又は内面及び外面を覆って設けられ得る。
別の例において、ステントは、細長チューブ状部材を備え、該細長チューブ状部材は、少なくとも1つのストラットを備え、該ストラットはチューブ状の壁を形成し、該チューブ状の壁は、複数のセルを有し、該複数のセルは、チューブ状の壁の厚さ部分を貫通して延びており、該細長チューブ状部材は、半径方向に潰れた形態と半径方向に拡張した形態との間で動くように構成されており、ステントは、細長チューブ状部材に配置されるとともに複数のセルにわたるコーティングを備え、該コーティングは、複数のセルのうち少なくともいくつかの内にポケットを形成するとともに、空隙を画成するようにチューブ状の壁の半径方向内側に延びている。ポケットは、4つの収束する側壁と、4つの収束する側壁のそれぞれと交わるベース壁とを備えるピラミッド形状とし得る。
【0013】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、ステントは、少なくともいくつかのポケット内に配置されたパーティションをさらに備え得、各パーティションは、ポケットのベース面から半径方向外側に延び、及び空隙を横断する。
【0014】
別の例において、ステントは、チューブ状の壁を形成する少なくとも1つの織り合わされたフィラメントを備えた細長チューブ状部材を備え、少なくとも1つの織り合わされたフィラメントは、複数の交差点を形成するとともに、それらの間にチューブ状の壁の厚さ部分を貫通して延びる複数のセルを画成し、該細長チューブ状部材は、半径方向に潰れた形態と半径方向に拡張した形態との間で動くように構成されており、ステントは、細長チューブ状部材に配置されたポリマーコーティングを備え、該コーティングは、複数のセルのうち少なくともいくつかの内にポケットを形成するとともに、空隙を画成するようにチューブ状の壁の半径方向内側に延びており、ステントは、少なくともいくつかのポケット内に形成されたパーティションを備え、各パーティションは、ポケットの底面から半径方向外側に延びるとともに、ポケットが配置されるセルを形成する少なくとも1つのストラットの対向する交差点間で空隙を横断する。
【0015】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのパーティションは、細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対してほぼ直角に延び得る。
【0016】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、少なくともいくつかのパーティションは、細長チューブ状部材の中心長手方向軸線に対してほぼ平行に延び得る。
【0017】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、コーティングは、ステントを通って長手方向に延びるルーメンの表面全体を画成し得る。
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、コーティング及びパーティションは、単一のモノリシックな構造として形成され得る。
【0018】
上述の例のいずれかの代わりに又はそれに加えて、別の例において、パーティションの半径方向最も外側の範囲が、チューブ状の壁の外面と同一平面に又は半径方向内側に置かれ得る。
【0019】
いくつかの実施形態の上記の概要は、開示した各実施形態又は本開示の全ての実装例を説明するものではない。下記の図面及び詳細な説明は、より詳細には、これらの実施形態を例示する。
【0020】
本発明は、添付図面と併せて、様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮して、より完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】移動防止システムを有する、例示のステントの側面図。
図2A図1の例示のステントの部分斜視図。
図2B図1の例示のステントの部分側面図。
図3】生体管腔内に配置される、図1の例示のステントの断面図。
図3A】生体管腔内に配置される、図1のステントの代替的な変形例の断面図。
図4】移動防止システムを有する、別の例示のステントの側面図。
図5A】別の例示のステントの部分斜視図。
図5B図4Aの例示のステントの部分側面図。
図6】生体管腔内に配置される、図4の例示のステント断面図。
図6A】生体管腔内に配置される、図4のステントの代替的な変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は様々な修正例及び代替形態に適しているが、その詳細事項は、図面に例として示され、且つ詳細に説明される。しかしながら、本発明の態様を、説明する特定の実施形態に限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。それどころか、本発明の趣旨及び範囲内に入る全ての修正例、等価物、及び代替例を網羅することを意図する。
【0023】
以下の定義した用語に関し、これらの定義は、異なる定義が特許請求の範囲又は本明細書の他のどこかで与えられない限り、当てはまる。
本明細書の全ての数値は、明白に示されるか否かに関わらず、用語「約」によって修正されると考えら得る。用語「約」は、一般的に当業者が、列挙した値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考える数字の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効桁に丸められた数字を含むとして示され得る。
【0024】
端点による数値範囲の列挙は、その範囲内の全ての数字を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
様々な構成要素、特徴及び/又は仕様に関わるいくつかの好適な寸法、範囲、及び/又は値が開示されるが、本開示によって刺激された当業者は、所望の寸法、範囲、及び/又は値が明白に開示されたものから逸脱し得ることを理解するであろう。
【0025】
本明細書及び特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明白に他の意味を指示する場合を除いて、複数の指示対象を含む。本明細書及び特許請求の範囲では、用語「又は、若しくは」は、全体的に、文脈上明白に他の意味を指示する場合を除いて、「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0026】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、図面では、異なる図面において、同様の要素に同じ符号が付される。詳細な説明及び必ずしも縮尺通りではない図面は、説明に役立つ実施形態を描写し、且つ本発明の範囲を限定するものではない。描写される説明に役立つ実施形態は、例示にすぎない。いずれかの説明に役立つ実施形態のうちの選択された特徴は、特段の記載が明白にない限り、追加的な実施形態に組み込まれ得る。
【0027】
いくつかの例において、食道狭窄部又は他の医学的状態のある患者の管腔の開存性を達成できる、管腔内インプラント、又はステントを提供することが望ましいとし得る。そのようなステントは、食道癌に起因することもある嚥下障害を起こしている患者において使用され得る。食道ステントは、患者が、癌の治療又は緩和の期間中に経口摂取によって栄養を維持することができるようにする。しかしながら、胃腸(GI:gastrointestinal)ステントによく見られる合併症は、ステントがさらされる蠕動運動に起因するステントの移動である。コーティングされていないステントは、食道の肉芽組織がステントを包囲し、且つステントのワイヤを効果的に掴むことができるようにする。この組織の内方成長(ingrowth)は、ステントの移動を防止するのを助け得るが、ステントは、除去することが困難となり得る。管腔の開存性を達成できる一方で、ステントの移動を最小限にするステントを提供し、且つステントを除去できるようにすることが望ましいとし得る。本明細書で開示する実施形態は、食道ステントを参照して説明される一方、本明細書で説明するステントは、例えば、限定されるものではないが、冠血管系、末梢血管系、気管、気管支、結腸、小腸、胆管、尿路、前立腺、脳、胃などにおける他の箇所、例えば、限定されるものではないが、身体組織、身体器官、血管腔、非血管腔、及びこれらの組み合わせなどにおいて、使用され、且つそこで使用するようなサイズにされ得ることが想定される。
【0028】
図1は、例示の管腔内インプラント10、例えば、限定されるものではないが、ステントの側面図を示す。いくつかの例において、ステント10は、細長チューブ状部材12から形成され得る。ステント10は、全体的にチューブ状として説明されるが、ステント10は、所望の任意の横断面形状を取り得ることが想定される。ステント10は、第1端部すなわち近位端14、第2端部すなわち遠位端16、及び第1端部14と第2端部16との間に配置される中間領域18を有し得る。ステント10は、第1端部14に隣接する第1開口から、第2端部16に隣接する第2開口まで延びるルーメン32を含み得、食物、流体などの通過を可能にする。
【0029】
ステント10は、半径方向に潰れた第1形態(明示せず)から半径方向に拡張した第2形態まで拡張可能とし得る。場合によっては、ステント10は、潰れた形態と十分に拡張した形態との間の形態まで展開され得る。ステント10は、狭窄部を横切って延びて、管腔内の狭窄部に半径方向外向きの圧力を加え、管腔を開いて、食物、流体、空気などの通過を可能にするように構造され得る。
【0030】
いくつかの実施形態において、ステント10の近位端14は、複数のループ38を含み得る。ループ38は、そこを通して織り合わされた、又は他の方法でのループ38の1つ以上を通過する、回収用テザー(retrieval tether)又は縫合糸(明示せず)を受け入れるように構成され得る。回収用縫合糸は、そのように望まれる場合、ステント10を潰して回収するために使用され得る。例えば、回収用縫合糸は、生体管腔からのステント10の除去を容易にするために、ステント10の近位端14を半径方向に潰すように、引きひものように引かれ得る。
【0031】
ステント10は、チューブ状の壁を形成するいくつかのフィラメント又はストラット36から製作された、織り構造を有し得る。いくつかの実施形態において、ステント10は、単一のフィラメント又はストラットがそれ自体に織り込まれ、ステント10のチューブ状壁の厚さを通って延びるオープンセル46を画成する編物又は編組であり得る。他の実施形態において、ステント10は、一緒に織り合わされるとともにステント10のチューブ状の壁の長さに沿って及び周囲に延びるオープンセル46を画成する複数のフィラメント又はストラットで編組されたものであり得る。オープンセル46は、それぞれ、チューブ状の壁の外面からチューブ状の壁の内面までの(例えば、その厚さ部分を貫通して)開口を画成し得、そこにはフィラメント又はストラット36がない。編組のフィラメントを含むいくつかの例示的なステントは、ボストン・サイエンティフィックコーポレーション(Boston Scientific,Corporation)によって製造され且つ卸される、ウォールフレックス(WallFlex)(登録商標)、ウォールステント(WALLSTENT)(登録商標)、及びポリフレックス(Polyflex)(登録商標)ステントを含む。別の実施形態において、ステント10は、編みとし、例えばボストン・サイエンティフィックコーポレーション(Boston Scientific,Corporation)製のウルトラフレックス(Ultraflex)(商標)ステントとし得る。さらに別の実施形態において、ステント10は、結び目型、例えばボストン・サイエンティフィックコーポレーション(Boston Scientific,Corporation)製のプレシジョン・コロニック(Precision Colonic)(商標)ステントとし得る。さらに別の実施形態において、ステント10は、レーザ切断されたチューブ状部材、例えばボストン・サイエンティフィックコーポレーション(Boston Scientific,Corporation)製のエピック(EPIC)(商標)ステントとし得る。レーザ切断されたチューブ状部材は、オープンセル及び/又はクローズドセルの幾何学的形状を有し得る。該幾何学的形状は、1つ以上の相互接続されたモノリシックなフィラメント又はストラットを含み、該フィラメント又はストラットは、オープンセル46を画成し、オープンセル46は、チューブ状の壁の長さ及び周に沿って延びる。オープンセル46は、それぞれ、チューブ状の壁の外面からチューブ状の壁の内面までの(例えば、その厚さ部分を貫通して)開口を画成し、これには、相互接続されたモノリシックなフィラメント又はストラットがない。いくつかの例において、ステント10のチューブ状の壁の内面及び/又は外面は、本明細書でより詳細に説明するように、全体的に、実質的に、又は部分的に、ポリマーカバー又はコーティング40によって覆われ得る。カバー又はコーティング40は、ストラット又はフィラメント36によって画成された1つ以上、又は複数のセル46にわたって延び得る及び/又はそれを閉塞し得る。カバー又はコーティング40は、食物圧入及び/又は腫瘍若しくは組織の内方成長を減少させることを助け得る。場合によっては、ステント10は、自己拡張型ステント(SES:self-expanding stent)とし得るが、これは必須ではない。
【0032】
いくつかの例において、半径方向に拡張した形態において、ステント10は、近位端14のすぐ近くに第1端領域20、及び第2端部16のすぐ近くに第2端領域22を含み得る。いくつかの実施形態において、第1端領域20及び第2端領域22は、中間部分18と比べて拡大直径を有する保持起伏すなわち移動防止フレア付領域24、26を含み得る。ステント10の第1端部14及び第2端部16に隣接して配置され得る移動防止フレア付領域24、26は、食道又は他の生体管腔の壁の内部部分に係合するように構成され得る。いくつかの実施形態において、保持起伏すなわちフレア付領域24、26は、ステント10のシリンダ状中間領域18よりも大きい直径を有してもよく、ひとたび食道又は他の生体管腔内に配置されると、ステント10が移動するのを防止する。中間領域18の断面領域から保持起伏すなわちフレア付領域24、26への移行部28、30は、要望に応じて、緩やかであっても、傾斜していても、又は急峻な階段状であってもよいことが想定される。
【0033】
いくつかの実施形態において、第1移動防止フレア付領域24は第1外径を有し得、及び第2移動防止フレア付領域26は第2外径を有し得る。いくつかの例において、第1及び第2外径はほぼ同じとしてもよいが、他の例において、第1及び第2外径は異なってもよい。いくつかの実施形態において、ステント10は、移動防止フレア付領域24、26のうちの一方のみを含んでも、又はそれらを全く含まなくてもよい。例えば、第1端領域20は、移動防止フレア24を含み得るが、第2端領域22は、中間領域18と同様の外径を有してもよい。さらに、第2端領域22は移動防止フレア26を含み得るが、第1端領域20は、中間領域18の外径と同様の外径を有してもよいことが想定される。いくつかの実施形態において、ステント10は、第1端部14から第2端部16まで均一な外径を有してもよい。いくつかの実施形態において、中間領域18の外径は、約15~25ミリメートルの範囲内にあるとし得る。移動防止フレア24、26の外径は、約20~30ミリメートルの範囲内にあるとし得る。ステント10の外径は、所望の応用に合わせるために、変えられ得ることが想定される。
【0034】
ステント10の細長チューブ状部材は、要望に応じて、いくつかの異なる材料、例えば、限定されるものではないが、金属、金属合金、形状記憶合金及び/又はポリマーから作製され得、体内に正確に配置されるときに、ステント10を形状に拡張できるようにすることが想定される。いくつかの例において、材料は、ステント10を比較的簡単に除去できるようにするようにも選択され得る。例えば、ステント10の細長チューブ状部材は、合金、例えば、限定されるものではないが、ニチノール(nitinol)及びエルジロイ(Elgiloy)(登録商標)から形成され得る。作製に選択された材料によって、ステント10は、自己拡張型としても、又はステント10を拡張させるために外力を必要としてもよい。いくつかの実施形態において、複合フィラメントがステント10を作製するために使用され得、これは、例えば、ニチノール製の外側シェル又はクラッディングと、白金又は他の放射線不透過性材料で形成されたコアとを含み得る。ステント10の細長チューブ状部材は、ポリマー、例えば、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成され得ることがさらに想定される。いくつかの例において、ステント10又はその複数の部分のフィラメントは、生体吸収性又は生分解性とし得るが、他の例において、ステント10又はその複数の部分のフィラメントは、生体安定性とし得る。
【0035】
図2Aは、図1の例示のステント10の部分斜視図を示し、図2Bは、図1の例示のステント10の部分側面図を示す。上述の通り、ステント10のチューブ状の壁の内面及び/又は外面は、全体的に、実質的に、又は部分的に、ポリマーカバー又はコーティング40によって覆われ得る。コーティング40は、シリコーン、ポリウレタン又は他の可撓性ポリマー材料とし得る。コーティング40は、余剰材料又はストラット36間に延びる材料のポケット44が存在するように、塗布され得る。例えば、ストラット36と同じ平面に全体的にぴんと張って延びる代わりに、コーティング40は、緩く、且つ空隙を形成するように、ストラット36から半径方向内側に、半径方向距離すなわち高さ42に延び得る。いくつかの例において、ポケット44は、全体的にピラミッド形状であり、4つの収束する(例えば、角度の付けられた)平らな側壁と、平らな底すなわちベース壁とを備える。ポケット44は、全体的に、ストラット36のセル46のダイアモンド形状と同様のひし形の断面形状を有するとして示されるが、ポケット44は、所望の任意の形状を取り得る。例えば、いくつかの例において、ポケット44は、ベース壁を有し得る。該ベース壁は全体としてアーチ形状を有する。該アーチ形状は、球状に凹状の半径方向外側に向いた面と球状に凸状の半径方向内側に向く面とを備えた、全体的に球状形状などである。ポケット44は、ポケット44の半径方向外側面(例えば、ベース面)と、ストラット36によって形成されたステント10のチューブ状の壁の周囲との間に空隙を形成し得る。
【0036】
いくつかの例において、ポケット44は、マンドレル及び/又は型を使用して形成され得る。例えば、マンドレルは、ポケット44の所望のサイズ及び形状の突起又は凹部を有して形成され得る。ストラット36は、マンドレルの周りに巻かれ、編組され、織られ、又は他の方法で配置され得、チューブ状の壁のセルは、突起又は凹部と位置合わせされる。例えば、シリコーン又は他のポリマー材料製のスリーブは、マンドレル及びストラット36に被せて配置され得る。スリーブは、ストラット36間にポケット44を含むコーティングされたステント10を形成するために、加熱されても、又は他の方法でマンドレルの形状へ成形されてもよい。或いは、ポリマー材料は、マンドレル及びストラット36上に吹き付け塗布又は浸漬被覆され得、ポリマー材料が、マンドレルの突起の上側を及び/又は凹部内へ流れるようにする。ポケットがマンドレルの突起によって形成される場合には、ポケットは、その後、マンドレルからステント10を除去した後にステント10のチューブ状の壁の半径方向内側に延びるように、逆にされ得る。
【0037】
図3は、血管壁52を有する生体管腔50内に展開された図1の例示のステント10の部分的な断面図を示す。ポケット44を含むコーティング40は、ステント10と血管壁52との間の摩擦力を増し得るが、ストラット36の周り及びステント10のルーメン内への組織の内方成長をなくす又は実質的に減少させることが想定される。例えば、コーティング40は、ステント10の内面全体を形成する連続的な層とし得る。換言すると、コーティング40は、ステント10を通って長手方向に延びるルーメンの内面全体を画成し得る。それゆえ、ストラット36は血管壁52に入り得るが、ストラット36はコーティング40によって十分に覆われており、及びコーティング40はステント10のチューブ状の壁のセルに広がっているため、組織の内方成長は、ストラット36の周り又はステント10のルーメン内に発生し得ない。換言すると、組織は、ストラット36の周りで増殖してそれを取り囲むことができない。さらに、血管壁52の組織は、ポケット44によって画成され且つストラット36を半径方向に越える(例えば、ステント10のルーメン32の方へ向かって内向きに)空隙内へ延び得、これにより、ステント10が移動率を下げることを助け得る。例えば、ポケット44は、摩擦を増やすテクスチャー又は輪郭をもたらし得る。対照的に、ストラット36とほぼ同じ平面又は同じ円周位置にあるコーティング40は、全体的に滑らかな表面をもたらし得、これは、より低い摩擦力、及びより高い移動率を有し得る。
【0038】
ポケット44によって画成された空隙を埋める組織の量は、ポケット44の体積を変更することによって、操作され得ることが想定される。ポケット44は、ほぼ均一の寸法を有する(例えば、全てがほぼ同じサイズ、形状、及び/又は体積である)として示されるが、ポケット44は、必ずしも、全てが同じ寸法を有していない。例えば、いくつかのポケット44は、他のもよりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、ポケット44のうちの1つ以上は、例えば、限定されるものではないが、限定された組織内方成長を可能にするアパーチャ又はスリットのような開口54を有し得る。限定された組織内方成長は、ステント10の移動をさらに減らすが、依然として、ステント10の除去は、苦もなく可能にする。その代わりに、又はそれに加えて、スリット又はアパーチャ54は、末梢脈管が管腔50に流出させることができるように(例えば、限定されるものではないが、膨大部において、胆汁が十二指腸に流入できるようにする)、又はステント10内にドレナージチャンネルを作るように、設けられ得る。場合によっては、医師は、ポケット44を貫通して切断するか又は穿孔することによって、スリット又はアパーチャ54を作り得る。
【0039】
図3Aは、血管壁52を有する生体管腔50に展開された図1の例示のステント10の変形例の部分的な断面図を示す。図3Aでは、ポケット44は、全体的にアーチ形状を有するように形成され得ることが分かる。該アーチ形状は、球状に凹状の半径方向外側に向く面と球状に凸状の半径方向内側に向く面とを備えた、全体的に球状形状などである。
【0040】
図4は、別の例示の管腔内インプラント100、例えば、限定されるものではないが、ステントの側面図を示す。ステント100は、本明細書で説明するステント10と形及び機能が同様であり得る。いくつかの例において、ステント100は、チューブ状の壁を画成する細長チューブ状部材112から形成され得る。ステント100は、全体的にチューブ状として説明されるが、ステント100は、所望の任意の横断面形状を取り得ることが想定される。ステント100は、第1端部すなわち近位端114、第2端部すなわち遠位端116、及び第1端部114と第2端部116との間に配置された中間領域118を有し得る。ステント100は、第1端部114に隣接する第1開口から、第2端部116に隣接する第2開口まで延びるルーメン132を含み得、食物、流体などの通過を可能にする。
【0041】
ステント100は、半径方向に潰れた第1形態(明示せず)から、半径方向に拡張した第2形態まで拡張可能とし得る。場合によっては、ステント100は、潰れた形態と十分に拡張した形態との間の形態へ展開され得る。ステント100は、狭窄部を横切って延び、管腔内の狭窄部に半径方向外向きの圧力を加え、管腔を開いて、食物、流体、空気などの通過を可能にするように構造され得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、ステント100の近位端114は、複数のループ138を含み得る。ループ138は、そこを通して織り合わされた、又は他の方法でのループ138の1つ以上を通過する、回収用テザー又は縫合糸(明示せず)を受け入れるように構成され得る。回収用縫合糸は、そのように望まれる場合、ステント100を潰して回収するために使用され得る。例えば、回収用縫合糸は、生体管腔からのステント100の除去を容易にするために、ステント100の近位端114を半径方向に潰すように、引きひものように引かれ得る。
【0043】
ステント100は、チューブ状の壁を形成するいくつかのフィラメント又はストラット136から製作された、織り構造を有し得る。いくつかの実施形態において、ステント100は、それ自体と織り合わされた単一のフィラメントで編まれても又は編組されてもよく、且つステント100チューブ状の壁の長さ部分に沿って及び周囲に延びるオープンセル146を画成する。オープンセル146は、それぞれ、チューブ状の壁の外面からチューブ状の壁の内面までの(例えば、その厚さ部分を貫通して)開口を画成し得、そこにはフィラメント又はストラット136がない。他の実施形態において、ステント100は、一緒に織り合わされ且つオープンセル146を画成するいくつかのフィラメント又はストラットで編組され得る。別の実施形態において、ステント100は編まれ得る。さらに別の実施形態において、ステント100は、結び目型とし得る。さらに別の実施形態において、ステント100は、レーザ切断されたチューブ状部材とし得る。レーザ切断されたチューブ状部材は、オープン及び/又はクローズドセルの幾何学的形状を有し得る。該幾何学的形状は、1つ以上の相互接続されたモノリシックなフィラメント又はストラットを含み、該フィラメント又はストラットは、オープンセル146を画成し、オープンセル146は、チューブ状の壁の長さ部分に沿って及び周囲に延びる。オープンセル146は、それぞれ、チューブ状の壁の外面からチューブ状の壁の内面までの(例えば、その厚さ部分を貫通して)開口を画成し得、ここには、相互接続されたモノリシックなフィラメント又はストラットがない。いくつかの例において、ステント100のチューブ状の壁の内面及び/又は外面は、本明細書でより詳細に説明するように、全体的に、実質的に、又は部分的に、ポリマーカバー又はコーティング140によって覆われ得る。カバー又はコーティング140は、ストラット又はフィラメント136によって画成された1つ以上又は複数のセル146にわたって延び得る及び/又はそれを閉塞し得る。カバー又はコーティングは、食物圧入及び/又は腫瘍若しくは組織の内方成長を減少させるのを助け得る。場合によっては、ステント100は、自己拡張型ステント(SES)であり得るが、これは必須ではない。
【0044】
いくつかの例において、半径方向に拡張した形態において、ステント100は、近位端114のすぐ近くにある第1端領域120と、第2端部116のすぐ近くにある第2端領域122とを含み得る。いくつかの実施形態において、第1端領域120及び第2端領域122は、中間部分118と比べて拡大した直径を有する保持起伏すなわち移動防止フレア付領域124、126を含み得る。ステント10の第1端部114及び第2端部116に隣接して配置され得る移動防止フレア付領域124、126は、食道又は他の生体管腔の壁の内部部分に係合するように構成され得る。いくつかの実施形態において、保持起伏すなわちフレア付領域124、126は、ステント100のシリンダ状中間領域118よりも大きい直径を有してもよく、ひとたび食道又は他の生体管腔内に配置されたら、ステント100が移動するのを防止し得る。中間領域118の断面領域から保持起伏すなわちフレア付領域124、126への移行部128、130は、要望に応じて、穏やかであっても、傾斜していても、又は急峻な階段状であってもよいことが想定される。
【0045】
いくつかの実施形態において、第1移動防止フレア付領域124は第1外径を有し得、及び第2移動防止フレア付領域126は第2外径を有し得る。いくつかの例において、第1及び第2外径はほぼ同じとしてもよいが、他の例において、第1及び第2外径は異なってもよい。いくつかの実施形態において、ステント100は、移動防止フレア付領域124、126のうちの一方のみを含んでも、又はそれらを全く含まなくてもよい。例えば、第1端領域120は移動防止フレア124を含み得るが、第2端領域122は、中間領域118と同様の外径を有してもよい。さらに、第2端領域122は移動防止フレア126を含み得るが、第1端領域120は、中間領域118の外径と同様の外径を有してもよいことが想定される。いくつかの実施形態において、ステント100は、第1端部114から第2端部116まで均一な外径を有してもよい。いくつかの実施形態において、中間領域118の外径は、約15~25ミリメートルの範囲内にあるとし得る。移動防止フレア124、126の外径は、約20~30ミリメートルの範囲内にあるとし得る。ステント100の外径は、所望の応用に合わせるために、変えられ得ることが想定される。
【0046】
ステント100の細長チューブ状部材は、要望に応じて、いくつかの異なる材料、例えば、限定されるものではないが、金属、金属合金、形状記憶合金及び/又はポリマーから作製され得、体内に正確に配置されるときに、ステント100を形状に拡張できるようにすることが想定される。いくつかの例において、材料は、ステント100を比較的簡単に除去できるようにするようにも選択され得る。例えば、ステント100の細長チューブ状部材は、合金、例えば、限定されるものではないが、ニチノール及びエルジロイ(Elgiloy)(登録商標)から形成され得る。作製に選択された材料に依存して、ステント100は、自己拡張型としても、又はステント10を拡張させるために外力を必要としてもよい。いくつかの実施形態において、複合フィラメントが、ステント10を作製するために使用され得、これは、例えば、ニチノール製の外側シェル又はクラッディングと、白金又は他の放射線不透過性材料で形成されたコアとを含み得る。ステント100の細長チューブ状部材は、ポリマー、例えば、限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)から形成され得ることがさらに想定される。いくつかの例において、ステント10又はその複数の部分のフィラメントは、生体吸収性又は生分解性とし得るが、他の例において、ステント10又はその複数の部分のフィラメントは、生体安定性とし得る。
【0047】
図5Aは、図4の例示のステント100の部分斜視図を示し、及び図5Bは、図4の例示のステント100の部分側面図を示す。上述の通り、ステント100のチューブ状の壁の内面及び/又は外面は、全体的に、実質的に、又は部分的に、ポリマーカバー又はコーティング140によって覆われ得る。コーティング140は、シリコーン、ポリウレタン又は他の可撓性ポリマー材料とし得る。コーティング140は、過度の材料又は材料のポケット144がストラット136間に延びるように、塗布され得る。例えば、ストラット136と同じ平面に全体的にぴんと張って延びる代わりに、コーティング140は、緩く、且つ空隙を形成するために、ストラット136から半径方向内側に、半径方向距離又は高さ42に延び得る。いくつかの例において、ポケット144は、全体的にピラミッド形状であり、4つの収束する(例えば、角度の付けられた)平らな側壁と、平らな底又はベース壁とを備える。ポケット144は、全体的に、ストラット136によって形成されたセル146のダイアモンド形状と同様のひし形の断面形状を有するとして示されるが、ポケット144は、所望の任意の形状を取り得る。例えば、いくつかの例において、ポケット144は、全体的にアーチ形状、例えば、球状に凹状の半径方向外側に向く面及び球状に凸状の半径方向内側に向く面を備えて、全体的に球状を有する、ベース壁を有し得る。ポケット144は、ポケット144の半径方向外側面(例えば、ベース面)と、ストラット136によって形成されたステント100のチューブ状の壁の周囲との間に空隙を形成し得る。
【0048】
場合によっては、ポケット144は、パーティション又は壁148を使用して分割され得る又は分けられ得る。パーティション又は壁148は、要望に応じて、コーティング140と同じ材料又はそれとは異なる材料から形成され得ることが想定される。各パーティション又は壁148は、ポケット144を横切って延び、ポケット144によって形成された空隙を横断し得る。例えば、各パーティション又は壁148は、それが置かれているポケット144の第1側からポケット144の第2側まで空隙を全体的に横切るとともに、その底面から半径方向外側に延び得る。例えば、各パーティション又は壁148は、それが置かれているポケット144の第1側壁からポケット144の第2側壁まで空隙を全体的に横切るとともに、そのベース壁から半径方向外側に延び得る。他の例において、各パーティション又は壁は、空隙の一部分のみを横切って延びるとともに、ポケット144の側壁から離間して1つ以上の端があってもよい。パーティション又は壁148は、コーティング140及びポケット144のある、単一のモノリシックな構造として形成され得る。他の実施形態において、パーティション又は壁148は、別個の構造として形成され、それに続いて、例えば、熱及び/又は接着剤を使用して、ポケット144内に固定され得る。場合によっては、パーティション又は壁148は、交差しているストラット136の対向する交差点160間に延びるように構成され得る。例えば、いくつかの例において、パーティション又は壁148は、ピラミッド形状ポケット144の第1隅部から対向する隅部まで延び得る。これにより、ポケット144によって形成された空隙をほぼ半分に分割し得る。場合によっては、パーティション又は壁148は、ステント100の中心長手方向軸線162(例えば、図4参照)に対してほぼ直角に延び得る。しかしながら、これは必須ではない。いくつかの実施形態において、パーティション又は壁148は、ステント100の中心長手方向軸線162に対してほぼ平行に延び得る。さらに他の実施形態において、パーティション又は壁148は、中心長手方向軸線162に対して傾斜した角度で延び得る。例えば、パーティション又は壁148の第1端部は、2つの隣接する交差点160間に配置され得、及び同じパーティション又は壁148の第2端部は、セル146の対向する側で、2つの隣接する交差点160間に配置され得る。それゆえ、パーティション又は壁148は、ピラミッド形状ポケット144の第1隅部から対向する隅部まで延び得る。場合によっては、パーティション又は壁148は、異なる方向に向けられ得る。例えば、いくつかのパーティション又は壁148は、中心長手方向軸線162に対してほぼ直角に延び得る、いくつかのパーティション又は壁148は、中心長手方向軸線162に対してほぼ平行に延び得る、及び/又はいくつかのパーティション又は壁148は、長手方向軸線162に対して傾斜した角度に延び得る、又はこれらのいずれかの組み合わせとし得る。パーティション又は壁148は、ポケット144を均等に分割しない場合もあることがさらに想定される。いくつかの実施形態において、1つ以上のポケット144は、例えば、2つ以上の壁148を含み得る。
【0049】
パーティション又は壁148は、空隙の第1及び第2分割された領域にそれぞれ対面する、第1及び第2対向する側面を有し得る。パーティション又は壁148は、ポケット144のベース壁に接合されたベースと、そこから半径方向外側に延びる、対向する自由端とを有し得る。
【0050】
いくつかの例において、ポケット144及び/又はパーティション又は壁148は、マンドレル及び/又は型を使用して形成され得る。例えば、マンドレルは、ポケット144の所望のサイズ及び形状の凹部を有して形成され得、突起が、凹部から外向きに延びて、パーティション又は壁148を形成している。ストラット136は、マンドレルの周りに巻かれ、編組され、織られ、又は他の方法で配置され得、チューブ状の壁のセルは、凹部と位置合わせされる。例えば、シリコーン又は他のポリマー材料で作製されたスリーブは、マンドレル及びストラット136に被せて配置され得る。スリーブは、ストラット136間にポケット144及びパーティション又は壁148を含むコーティングされたステント100を形成するために、加熱されても、又は他の方法でマンドレルの形状へ成形されてもよい。或いは、ポリマー材料は、マンドレル及びストラット136上に吹き付け塗布又は浸漬被覆され得、ポリマー材料が、マンドレルの突起の上側を及び/又は凹部内へ流れるようにする。
【0051】
図6は、組織壁152を有する生体管腔150内に展開された図4の例示のステント100の部分的な断面図を示す。ポケット144及びパーティション又は壁148を含むコーティング140は、ステント100と組織壁152との間の摩擦力を増し得るが、ストラット136の周り及びステント100のルーメン内への組織の内方成長をなくす又は実質的に減少させることが想定される。例えば、コーティング140は、ステント100の内面全体を形成する連続的な層とし得る。換言すると、コーティング140は、ステント100を通って長手方向に延びるルーメンの内面全体を画成し得る。それゆえ、ストラット136は組織壁152に入り得るが、ストラット136はコーティング140によって十分に覆われており、及びコーティングは、ステント100のチューブ状の壁のセルに広がっているため、組織の内方成長は、ストラット136の周り又はステント100のルーメン内に発生し得ない。換言すると、組織は、ストラット136の周りで増殖してそれを取り囲むことができない。さらに、組織壁152の組織は、ポケット144内へ、及び時にはストラット136を半径方向に越えて(例えば、ステント100のルーメン132の方へ向かって内向きに)延び得、これにより、ステント10の移動率を下げるのを助け得る。例えば、ポケット144は、摩擦を増やすテクスチャー又は輪郭をもたらし得る。対照的に、ストラット136とほぼ同じ平面又は同じ円周位置にあるコーティング140は、全体的に滑らかな表面をもたらし得、これは、より低い摩擦力、及びより高い移動率を有し得る。パーティション又は壁148は、コーティング140の表面領域を増大させて、ステント100の摩擦特性をさらに高め得ることが想定される。パーティション又は壁148の幅164及び/又は高さ142は、コーティング140の表面領域を増減させるために、変えられ得ることが想定される。例えば、ステント100は、全体的に、コーティング140が配置されるストラット136の高さとほぼ等しい高さ142を有する壁148であるとして示されるが、高さ142は、コーティング140が配置されるストラット136の高さを上回っても又は下回ってもよい。さらに、パーティション又は壁148は同じ高さ142を有し得ることが想定される。高さ142は、ステント100の長さ及び/又は周囲で、均一に、不均一に、パターン配置構成で、又は偏心して変わり得ることが想定される。パーティション又は壁148は、全体的に長方形の立方形を有していると示されるが、他の形状、例えば、限定するものではないが、半球、円錐、ピラミッド形などが使用され得る。
【0052】
ポケット144の空隙を埋める組織の量は、ポケット144の体積及び/又は壁又はパーティション148のサイズを変更することによって、操作され得ることが想定される。ポケット144及びパーティション又は壁148は、それぞれ、ほぼ均一の寸法を有する(例えば、全てがほぼ同じサイズ、形状、及び/又は体積である)として示されるが、ポケット144及び/又はパーティション又は壁148は、必ずしも、全てが同じ寸法を有していない。例えば、いくつかのポケット144及び/又はパーティション又は壁148は、他のもよりも大きくてもよい。いくつかの実施形態において、ポケット144のうちの1つ以上は、開口、例えば、限定されるものではないが、限定された組織内方成長を可能にするアパーチャ又はスリットを含み得る。限定された組織内方成長は、ステント100の移動をさらに減らし得るが、依然として、ステント100の除去は、苦もなく可能にする。その代わりに、又はそれに加えて、スリット又はアパーチャは、末梢脈管が管腔150に流出させることができるように、又はステント100内にドレナージチャンネルを作るように、設けられ得る。場合によっては、医師は、ポケット144を貫通して切断するか又は穿孔することによって、スリット又はアパーチャを作り得る。
【0053】
図6Aは、血管壁52を有する生体管腔50に展開された図4の例示のステント100の変形例の部分的な断面図を示す。図6Aでは、ポケット144は、全体的にアーチ形状を有して形成され得ることが分かる。該アーチ形状は、例えば、球状に凹状の半径方向外側に向く面及び球状に凸状の半径方向内側に向く面を備えた、全体的に球状形状などである。パーティション又は壁148は、球状に凹状の外側に向く面から半径方向外側に延び得る。
【0054】
ステント、送達システム、及びその様々な構成要素は、金属、金属合金、ポリマー(そのいくつかの例を下記に説明する)、金属-ポリマー複合材、セラミック、これらの組み合わせなど、又は他の好適な材料から作製され得る。好適な金属及び金属合金のいくつかの例は、ステンレス鋼、例えば304V、304L、及び316LVステンレス鋼;軟鋼;ニッケル-チタン合金、例えば線形弾性及び/又は超弾性ニチノール;他のニッケル合金、例えばニッケル-クロム-モリブデン合金、ニッケル-銅合金、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金、ニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-クロム合金、他のニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-コバルト合金、他のニッケル-鉄合金、他のニッケル-銅合金、他のニッケル-タングステン又はタングステン合金など;コバルト-クロム合金;コバルト-クロム-モリブデン合金;白金富化ステンレス鋼;チタン;これらの組み合わせ;他;又は任意の他の好適な材料を含む。
【0055】
ステント又は送達システム用の好適なポリマーのいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、デュポン(DuPont)から入手可能であるデルリン(DELRIN)(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、ポリウレタン(Polyurethane)85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリエーテル-エステル(例えば、DSMエンジニアリングプラスチックス(DSM Engineering Plastics)から入手可能であるアーニテル(ARNITEL)(登録商標))、エーテル若しくはエステルベースのコポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート及び/又は他のポリエステルエラストマー、例えばデュポン(DuPont)から入手可能であるハイトレル(HYTREL)(登録商標))、ポリアミド(例えば、バイエル(Bayer)から入手可能であるデュレタン(DURETHAN)(登録商標)又はエルフ・アトケム(Elf Atochem)から入手可能であるクリスタミド(CRISTAMID)(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば商品名ペバックス(PEBAX)(登録商標)で入手可能である)、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、マーレックス(MARLEX)(登録商標)高密度ポリエチレン、マーレックス(MARLEX)(登録商標)低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(例えばレクセル(REXELL)(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、ケブラー(KEVLAR)(登録商標))、ポリスルホン、ナイロン、ナイロン-12(例えば、EMSアメリカン・グリロン(EMS American Grilon)から入手可能であるグリルアミド(GRILAMID)(登録商標))、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリビニリデンクロライド(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBS及び/又はSIBS 50A)、ポリカーボネート、イオノマー、生体適合性ポリマー、他の好適な材料、又はそれらの混合物、組み合わせ、コポリマー、ポリマー/金属複合材などを含み得る。
【0056】
少なくともいくつかの実施形態において、ステント又は送達システムの複数の部分又は全ては、放射線不透過性材料でドープされ得る、作製され得る、又はそうでなければそれを含み得る。放射線不透過性材料は、一般的に、x線からガンマ線に及ぶ波長範囲内のRFエネルギーに対して不透明である材料であると理解される(<0.005”(0.127mm)の厚さで)。これらの材料は、医療処置中に、組織が生じるような非放射線不透過性材料の明るい(light)画像と比較して、X線透視検査スクリーン上に比較的暗い画像を生じることができる。この比較的明るい(bright)画像は、ステント及び/又は送達システムの位置をそのユーザが決定するのを支援する。放射線不透過性材料のいくつかの例は、限定されるものではないが、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性充填剤が入っているポリマー材料などを含み得る。さらに、他の放射線不透過性マーカバンド及び/又はコイルがまた、ステント又は送達システムの設計に組み込まれて、同じ結果を達成し得る。
【0057】
本開示は、多くの点で、説明にすぎないことが理解されるべきである。本開示の範囲を逸脱せずに、詳細事項、特に、ステップの形状、サイズ、及び配置構成に関して、変更がなされ得る。これは、適切な範囲で、1つの例示的な実施形態の特徴のうちのいずれかの使用が、他の実施形態において使用され得ることを含み得る。当然ながら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
図1
図2A
図2B
図3
図3A
図4
図5A
図5B
図6
図6A
【国際調査報告】