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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】HBcAgの検出方法及び抗体
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/576 20060101AFI20230307BHJP
   C07K 16/08 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230307BHJP
   G01N 33/569 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 5/12 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G01N33/576 B
C07K16/08 ZNA
C12N15/13
G01N33/569 L
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N5/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543376
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 CN2021072483
(87)【国際公開番号】W WO2021143902
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】202010059190.X
(32)【優先日】2020-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520192784
【氏名又は名称】シァメン・イノドックス・バイオテック・カンパニー・リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519326323
【氏名又は名称】シァメン・ユニヴァーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ジミン
(72)【発明者】
【氏名】ション、ジュンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ジアチー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャオファン
(72)【発明者】
【氏名】ゲ、シェンシァン
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、キュアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、リウウェイ
(72)【発明者】
【氏名】スン、シュドン
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AB04
4B065BA02
4B065BA08
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA52
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
B型肝炎ウイルス(HBV)検出分野において、二重抗体サンドイッチ法を使用する手段によってHBcAgを検出する方法、並びにHBcAgを検出するための抗体及びキットが開示され、また、組織又は細胞試料におけるHBcAgの免疫学的検出において使用され得るモノクローナル抗体も含まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)HBcAgタンパク質の150位~183位に含まれるエピトープに特異的に結合可能である抗体又はその抗原結合断片より選択される、第1の抗体と、
(ii)HBcAgタンパク質の141位~154位に含まれるエピトープに特異的に結合可能である抗体又はその抗原結合断片より選択される、第2の抗体と、
を含むキット。
【請求項2】
前記第2の抗体が、HBcAgタンパク質の141位~152位に含まれるエピトープに特異的に結合可能な抗体又はその抗原結合断片より選択される、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
前記第1の抗体が、以下の抗体又はその抗原結合断片:
(i)以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号3に示される配列を有するHCDR1と、配列番号4に示される配列を有するHCDR2と、配列番号5に示される配列を有するHCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号6に示される配列を有するLCDR1と、配列番号7に示される配列を有するLCDR2と、配列番号8に示される配列を有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(ii)配列番号1に示されるVH中に含まれる3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号2に示されるVL中に含まれる3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは前記VH中に含まれる前記3つのCDR、及び/又は前記VL中に含まれる前記3つのCDRがKabat、Chothia若しくはIMGT番号付け系によって定義される、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(iii)China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019303号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株18B2-2によって産生されるモノクローナル抗体である、抗体若しくはその抗原結合断片、
より選択される、請求項1又は2に記載のキット。
【請求項4】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
(a)(i)配列番号1に示される配列、(ii)配列番号1に示される前記配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(iii)配列番号1に示される前記配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、
及び/又は、
(b)(iv)配列番号2に示される配列、(v)配列番号2に示される前記配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(vi)配列番号2に示される前記配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載される前記置換は保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1に示される前記配列を有するVH、及び配列番号2に示される前記配列を有するVLを含む、
請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記第2の抗体が、以下の抗体又はその抗原結合断片:
(i)以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号11に示される配列を有するHCDR1と、配列番号12に示される配列を有するHCDR2と、配列番号13に示される配列を有するHCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号14に示される配列を有するLCDR1と、配列番号15に示される配列を有するLCDR2と、配列番号16に示される配列を有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(ii)配列番号9に示されるVH中に含まれる3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号10に示されるVL中に含まれる3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは前記VH中に含まれる前記3つのCDR、及び/又は前記VL中に含まれる前記3つのCDRがKabat、Chothia若しくはIMGT番号付け系によって定義される、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(iii)China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019302号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株2A7によって産生されるモノクローナル抗体である、抗体若しくはその抗原結合断片、
より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載のキット。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合断片が、
(a)(i)配列番号9に示される配列、(ii)配列番号9に示される前記配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(iii)配列番号9に示される前記配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、
及び/又は、
(b)(iv)配列番号10に示される配列、(v)配列番号10に示される前記配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(vi)配列番号10に示される前記配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載される前記置換は保存的置換であり、
好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、配列番号9に示される前記配列を有するVH、及び配列番号10に示される前記配列を有するVLを含む、
請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記第1の抗体及び/又は前記第2の抗体が、重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)とを含み、
好ましくは、前記第1の抗体及び/又は前記第2の抗体が、ネズミ重鎖定常領域とネズミ軽鎖定常領域とを含み、
好ましくは、前記第1の抗体及び/又は前記第2の抗体が、IgG、IgM、IgE、IgD又はIgA抗体である、
請求項1~6のいずれか一項に記載のキット。
【請求項8】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、ディアボディ及び単一ドメイン抗体(sdAb)からなる群より選択される、及び/又は前記抗体がネズミ抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載のキット。
【請求項9】
前記第2の抗体が検出可能標識を有するか、又は前記キットが、前記第2の抗体に特異的に結合可能な第3の抗体を更に含み、前記第3の抗体が検出可能標識を有し、
好ましくは、前記検出可能標識が、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えばアクリジニウムエステル化合物)、蛍光色素又はビオチンより選択される、
請求項1~8のいずれか一項に記載のキット。
【請求項10】
前記キットが固形キャリアーを更に含み、
好ましくは、前記固形キャリアーが、磁気ビーズ又はマイクロタイタープレート(例えばマイクロウェルプレート又はELISAプレート)より選択され、
好ましくは、前記第1の抗体が前記固形キャリアーの表面上にコーティングされている、
請求項1~9のいずれか一項に記載のキット。
【請求項11】
前記キットが、標準(例えば、HBcAgの異なる既知の量を含む一連の試料)、陽性対照試料(例えば、HBcAgの既知の量を含む試料)、陰性対照試料(例えば、HBcAgを含まない試料)、HBVウイルスを溶解するために使用される溶解剤、及び試験しようとする試料の収集及び保管のためのデバイス(例えば血液収集デバイス)からなる群より選択される1つ以上の試薬又はデバイスを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のキット。
【請求項12】
(i)第1の抗体、前記第1の抗体をコードする単離核酸分子、前記単離核酸分子を含むベクター、又は前記第1の抗体を発現する組換え細胞であって、前記第1の抗体が請求項1~8のいずれか一項におけるように定義される、第1の抗体、単離核酸分子、ベクター、又は組換え細胞と、
(ii)第2の抗体、前記第2の抗体をコードする単離核酸分子、前記単離核酸分子を含むベクター、又は前記第2の抗体を発現する組換え細胞であって、前記第2の抗体が請求項1~8のいずれか一項におけるように定義される、第2の抗体、単離核酸分子、ベクター、又は組換え細胞と、
を含む、キット。
【請求項13】
前記第1の抗体を発現する前記組換え細胞が、前記第1の抗体をコードする単離核酸分子又は前記単離核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞であり、
前記第2の抗体を発現する前記組換え細胞が、前記第2の抗体をコードする単離核酸分子又は前記単離核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞である、
請求項12に記載のキット。
【請求項14】
前記第1の抗体を発現する前記組換え細胞が、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019303号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株18B2-2であり、
前記第2の抗体を発現する前記組換え細胞が、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019302号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株2A7である、
請求項12に記載のキット。
【請求項15】
試料中のHBcAgタンパク質の存在又はレベルを検出する方法であって、
(1)第1の抗体と前記試料を接触させて、抗体-抗原複合体を形成する工程であって、前記第1の抗体が請求項1~8のいずれか一項におけるように定義される、工程と、
(2)第2の抗体と前記抗体-抗原複合体を接触させて、抗体-抗原-抗体複合体を形成する工程であって、前記第2の抗体が請求項1~8のいずれか一項におけるように定義される、工程と、
(3)前記抗体-抗原-抗体複合体の量を決定する工程と、
を含む、方法。
【請求項16】
前記第2の抗体が検出可能標識を有するか、又は工程(3)に記載されるような前記決定が検出可能標識を含む第3の抗体を使用することを含み、
好ましくは、前記検出可能標識が、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えばアクリジニウムエステル化合物)、蛍光色素又はビオチンより選択される、
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程(3)において、前記決定が、酵素イムノアッセイ又は化学発光イムノアッセイより選択される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の抗体が、固形キャリアー表面上にコーティングされ、
好ましくは、前記固形キャリアーが、磁気ビーズ又はマイクロタイタープレート(例えばマイクロウェルプレート又はELISAプレート)より選択される、
請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が、全血、血漿及び血清からなる群より選択される、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
工程(1)の前に、前記方法が、前記試料を処理する工程を更に含み、前記処理が、ウイルスを溶解するように、前記試料と溶解剤を混合することを含む、及び/又は、
工程(2)及び/又は工程(3)の前に、前記方法が洗浄工程を更に含む、
請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
試料中のHBcAgタンパク質の存在又はレベルを検出するための検出キットの製造における、請求項1~14のいずれか一項に記載のキットの使用。
【請求項22】
HBcAgに特異的に結合可能なモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、
(i)前記モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片が、以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号11に示される配列を有するHCDR1と、配列番号12に示される配列を有するHCDR2と、配列番号13に示される配列を有するHCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号14に示される配列を有するLCDR1と、配列番号15に示される配列を有するLCDR2と、配列番号16に示される配列を有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又は、
(ii)配列番号9に示される重鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号10に示される軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは重鎖可変領域中に含まれる3つのCDR、及び/又は軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRがKabat、Chothia若しくはIMGT番号付け系によって定義される、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(iii)China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019302号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株2A7によって産生されるモノクローナル抗体である、抗体若しくはその抗原結合断片、
である、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項23】
前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片が、
(a)(i)配列番号9に示される配列、(ii)配列番号9に示される前記配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(iii)配列番号9に示される前記配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、
及び/又は、
(b)(iv)配列番号10に示される配列、(v)配列番号10に示される前記配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(vi)配列番号10に示される前記配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)、
を含み、
好ましくは、(ii)又は(v)に記載される前記置換は保存的置換であり、
好ましくは、前記モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号9に示される前記配列を有するVH、及び配列番号10に示される前記配列を有するVLを含む、
請求項22に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項24】
前記モノクローナル抗体が、重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)とを含み、
好ましくは、前記モノクローナル抗体が、IgG、IgM、IgE、IgD又はIgA抗体である、
請求項22又は23に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項25】
前記抗原結合断片が、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、ディアボディ及び単一ドメイン抗体(sdAb)からなる群より選択される、及び/又は前記モノクローナル抗体がネズミ抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項22~24のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片。
【請求項26】
試料中のHBcAgを検出するための試薬製造における、請求項22~25のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体又はその抗原結合断片の使用であって、
好ましくは、前記試料が組織試料(例えば組織切片)又は細胞試料であり、
好ましくは、前記検出が免疫学的検出であり、好ましくは、前記免疫学的検出が、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、免疫蛍光(IF)及びウェスタンブロットより選択され、
好ましくは、前記モノクローナル抗体又は前記その抗原結合断片が、検出可能標識を有するか、又は、前記試薬が検出可能標識を有する二次抗体を更に含み、
好ましくは、前記検出可能標識が、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、蛍光色素又はビオチンより選択され、
好ましくは、前記二次抗体が抗免疫グロブリン抗体である、
使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)検出の分野に関する。特に、本発明は、二重抗体サンドイッチ法を使用することによるHBcAgの検出方法、並びに検出のために使用される抗体及びキットを提供する。本発明はまた、組織又は細胞試料のHBcAg免疫学的検出のために使用され得るモノクローナル抗体も提供する。
【背景技術】
【0002】
B型肝炎ウイルス感染、特に慢性HBV感染は、世界的に最も重要な公衆衛生問題の1つである(非特許文献1)。
【0003】
現在のところ、HBV血清マーカー(例えばHBsAg、HBsAb、HBeAg、HBeAb、HBcAbのB型肝炎血清学的試験)が、進行中のHBV感染及び過去のHBV感染に関して、ルーチンの検出標準として広く使用されている。しかし、突然変異率が高いこととHBVキャリアーが多数であることとが組み合わさった結果、HBsAg、HBsAb、HBeAg、HBeAb、及びHBcAbの慣用的なB型肝炎血清学的試験には、偽陰性が高率で生じる。さらに、HBsAg、HBsAb、HBeAg、HBeAb及びHBcAbのB型肝炎血清学的試験は、ウイルス複製及び感染力の度合いを定量的に反映できず、しばしば疑わしく、説明が困難な結果を生じ、また、試験された個体がHBVに感染しているかどうかを直接決定できない。
【0004】
HBV DNAは、HBV複製の直接の指標であり、そのドットブロット試験(又はPCR試験)は、B型肝炎患者及びHBVキャリアーにおける感染及び感染力を判断するための判断基準である。PCR試験及びドットブロット試験はどちらも、HBV感染及び感染力の直接指標として使用され得るが、これらは大規模スクリーニング及びルーチンの使用に適していない。
【0005】
HBV DNAに非常に関連し得る、全ての血清マーカー抗原(HBVプレS1、HBcAg、HBxAg、DNAP、HBVプレS2等)のうち、HBcAgは、常に、HBV DNAに直接関連する抗原と見なされてきており、HBcAgの検出は、複製性ウイルスの定量化、並びにHBsAg陰性HBV感染患者及びHBV患者の診断に特有の重要性を有する。現在のところ、市場では、特異的HBcAg検出試薬は開発されていない。報告されているか又は開発されているHBcAg免疫診断試薬は、通常、検出前の試料の前処理(ウイルス溶解、膜の破裂及びHBcAbの不活性化)又はHBcAg-HBcAb免疫複合体の検出を採用する。しかし、前者の方法は複雑な処置であり、臨床の顧客には容易には許容されず、血液ドナーの大規模スクリーニング及び疫学的調査には適していない一方、後者の方法は、検出法の特殊性のため、理想的な特異度及び感度を達成することが困難である。2006年、特許文献1において、sAg抗体を使用した後、膜を破壊し、ウイルスを溶解させ、HBcAg検出のためコア粒子中のcAgを検出することによって、ウイルス粒子が捕捉されたことが報告されたが、その感度は満足のいくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】Method and diagnostic kit for combined detection of hepatitis B virus pre-S1 antigen and core antigen
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dienstag JL. Hepatitis B virus infection. N Engl J Med 2008 Oct 2;359(14):1486-1500
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
単純、正確で高感度のHBcAg発光検出試薬を開発することは、抗ウイルス有効性及びHBV患者の予後の評価において、喫緊の実用的な重要性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
広範な実験研究後、本発明者らは、予期せぬことに、特定のエピトープに結合する一対の抗体を発見したが、これらは二重抗体サンドイッチ法によるHBcAgの検出に特に適したものであった。これに基づいて、本発明者らは、新規HBcAg定量的検出キット及び検出法を開発した。この検出法は、DNA法のものに匹敵するレベルの感度に到達し、迅速でハイスループットの検出を実現するため、大きな臨床適用価値を有する。
【0010】
キット
したがって、第1の態様において、本発明は、
(i)第1の抗体、第1の抗体をコードする単離核酸分子、単離核酸分子を含むベクター、又は第1の抗体を発現する組換え細胞であって、第1の抗体がHBcAgタンパク質の150位~183位に含まれるエピトープに特異的に結合可能である抗体又はその抗原結合断片より選択される、第1の抗体、単離核酸分子、ベクター、又は組換え細胞と、
(ii)第2の抗体、第2の抗体をコードする単離核酸分子、単離核酸分子を含むベクター、又は第2の抗体を発現する組換え細胞であって、第2の抗体がHBcAgタンパク質の141位~154位に含まれるエピトープに特異的に結合可能である抗体又はその抗原結合断片より選択される、第2の抗体、単離核酸分子、ベクター、又は組換え細胞と、
を含むキットを提供する。
【0011】
本明細書において、「HBcAgタンパク質の150位~183位に含まれるエピトープ」という表現、又は類似の表現は、エピトープがHBcAgタンパク質のアミノ酸150~アミノ酸183内にあるか又はこれと重複して存在することを意味する。言い換えると、HBcAgタンパク質の150位~183位に含まれるエピトープに特異的に結合可能である抗体又はその抗原結合断片は、HBcAgタンパク質又はその断片のアミノ酸150~アミノ酸183に特異的に結合可能な抗体又はその抗原結合断片である。
【0012】
或る特定の例示的な実施の形態において、HBcAgタンパク質は、配列番号17に示される配列を有する。
【0013】
或る特定の実施の形態において、第2の抗体は、HBcAgタンパク質の141位~152位に含まれるエピトープに特異的に結合可能な抗体又はその抗原結合断片より選択される。
【0014】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体は、以下の抗体又はその抗原結合断片:
(i)以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号3に示される配列を有するHCDR1と、配列番号4に示される配列を有するHCDR2と、配列番号5に示される配列を有するHCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号6に示される配列を有するLCDR1と、配列番号7に示される配列を有するLCDR2と、配列番号8に示される配列を有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(ii)配列番号1に示される重鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号2に示される軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは重鎖可変領域中に含まれる3つのCDR、及び/又は軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRがKabat、Chothia若しくはIMGT番号付け系によって定義される、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(iii)China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019303号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株18B2-2によって産生されるモノクローナル抗体である、抗体若しくはその抗原結合断片、
より選択される。
【0015】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体は、
(a)(i)配列番号1に示される配列、(ii)配列番号1に示される配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(iii)配列番号1に示される配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、
及び/又は、
(b)(iv)配列番号2に示される配列、(v)配列番号2に示される配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(vi)配列番号2に示される配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)、
を含む。
【0016】
或る特定の実施の形態において、(ii)又は(v)に記載される置換は保存的置換である。
【0017】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体は、配列番号1に示される配列を有するVH、及び配列番号2に示される配列を有するVLを含む。
【0018】
或る特定の実施の形態において、第2の抗体は、以下の抗体又はその抗原結合断片:
(i)以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号11に示される配列を有するHCDR1と、配列番号12に示される配列を有するHCDR2と、配列番号13に示される配列を有するHCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号14に示される配列を有するLCDR1と、配列番号15に示される配列を有するLCDR2と、配列番号16に示される配列を有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(ii)配列番号9に示される重鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号10に示される軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは重鎖可変領域中に含まれる3つのCDR、及び/又は軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRがKabat、Chothia若しくはIMGT番号付け系によって定義される、抗体若しくはその抗原結合断片、又は、
(iii)China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019302号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株2A7によって産生されるモノクローナル抗体である、抗体若しくはその抗原結合断片、
より選択される。
【0019】
或る特定の実施の形態において、第2の抗体は、
(a)(i)配列番号9に示される配列、(ii)配列番号9に示される配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(iii)配列番号9に示される配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、
及び/又は、
(b)(iv)配列番号10に示される配列、(v)配列番号10に示される配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(vi)配列番号10に示される配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)、
を含む。
【0020】
或る特定の実施の形態において、(ii)又は(v)に記載される置換は保存的置換である。
【0021】
或る特定の実施の形態において、第2の抗体は、配列番号9に示される配列を有するVH、及び配列番号10に示される配列を有するVLを含む。
【0022】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体及び/又は第2の抗体は、重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)とを含む。
【0023】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体及び/又は第2の抗体は、マウス重鎖定常領域とマウス軽鎖定常領域とを含む。
【0024】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体及び/又は第2の抗体は、IgG、IgM、IgE、IgD又はIgA抗体である。或る特定の実施の形態において、第1の抗体及び/又は第2の抗体は、IgG抗体である。
【0025】
或る特定の実施の形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、ディアボディ及び単一ドメイン抗体(sdAb)からなる群より選択される。
【0026】
或る特定の実施の形態において、抗体はネズミ抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0027】
いくつかの実施の形態において、第2の抗体は検出可能標識を有する。
【0028】
他の実施の形態において、キットは、第2の抗体に特異的に結合可能な第3の抗体を更に含み、第3の抗体は検出可能標識を有する。
【0029】
本明細書において使用される場合、検出可能標識は、蛍光、分光、光化学、生化学、免疫学、電気、光学又は化学手段によって検出可能な、任意の物質であり得る。こうした標識が、免疫学的検出(例えば酵素連結イムノアッセイ、ラジオイムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ等)に適していることが特に好ましい。こうした標識は、当該技術分野に既知であり、限定されるわけではないが、酵素(例えばセイヨウワサビ(horseradish)ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、ウレアーゼ、グルコースオキシダーゼ等)、放射性核種(例えばH、125I、35S、14C、又は32P)、蛍光色素(例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセイン、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、フィコエリトリン(PE)、テキサスレッド、ローダミン、量子ドット又はシアニン誘導体(例えばCy7、Alexa 750))、化学発光物質(例えばアクリジニウムエステル化合物)、及び上記標識によって修飾されたアビジン(例えばストレプトアビジン)に結合するためのビオチンを含む。本発明によって含まれる標識は、当該技術分野に知られる方法によって検出され得る。例えば、放射性標識は、写真フィルム又はシンチレーション計算装置を使用して検出可能であり、蛍光標識は、放出された光を検出する光検出装置を使用して検出可能である。酵素標識は、一般的に、酵素に基質を提供し、基質に対する酵素の作用によって生じる反応産物を検出することによって検出される。比色標識は、着色標識を単純に視覚化することによって、検出される。化学発光物質(例えばアクリジニウムエステル化合物)は、典型的には、トリガー溶液及び/又は触媒を発光物質に提供することによって放出された光で検出される。ビオチンは、典型的には、上記のような標識によって修飾されたアビジン(例えばストレプトアビジン)をビオチンに提供し、ビオチンに連結されたアビジンが所持する標識を検出することによって検出される。或る特定の実施の形態において、上述のような検出可能標識は、潜在的な立体障害を減少させるため、多様な長さを有するリンカーを通じて、本発明の抗体又はその抗原結合断片に付着され得る。
【0030】
或る特定の実施の形態において、検出可能な標識は、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えばアクリジニウムエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンより選択される。
【0031】
或る特定の実施の形態において、キットは、対応する検出可能標識の検出を可能にするための試薬を更に含み得る。例えば、検出可能標識が酵素である場合、キットは、対応する酵素のための色素原性物質、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼのためのо-フェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンジジン(TMB)、ABTS若しくはルミノール化合物、又はアルカリホスファターゼのためのp-ニトロフェニルリン酸(p-NPP)若しくはAMPPDを更に含み得る。例えば、検出可能標識が化学発光試薬(例えばアクリジニウムエステル化合物)である場合、キットは、化学発光のためのプレトリガー溶液及び/又はトリガー溶液を更に含み得る。
【0032】
或る特定の実施の形態において、キットは、固形キャリアーを更に含む。或る特定の実施の形態において、固形キャリアーは、ポリマー材料(例えば塩化ポリビニル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド又はセルロース)で作製されたか若しくはコーティングされたウェルプレート、試験管、ビーズ(例えばラテックス粒子)若しくは膜(例えばニトロセルロース膜)、又は官能基(例えばアミノ、カルボキシル、ビオチン又はアビジン)でプレコーティングされた磁気ビーズを含む。或る特定の実施の形態において、固形キャリアーは、磁気ビーズ又はマイクロタイタープレート(例えばマイクロウェルプレート又はELISAプレート)より選択される。
【0033】
或る特定の実施の形態において、キットは、固形キャリアー上に第1の抗体をコーティングするためのコーティング試薬、例えばコーティング緩衝剤(例えば、炭酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、Tris-HCL緩衝剤、又はホウ酸緩衝剤)を更に含む。固形キャリアー上にタンパク質又はポリペプチドをコーティングする方法は当該技術分野に既知であり、例えば物理的吸着、アミン化若しくはカルボキシル化表面を介した共有カップリング、又はアビジン-ビオチン系、ポリリジンプレコーティング表面、プロテインA若しくはプロテインGプレコーティング表面によって仲介される結合を含む。
【0034】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体は、固形キャリアー表面上にコーティングされる。
【0035】
或る特定の実施の形態において、キットは、別個のコンテナ中に、又は単一コンテナユニットの別個の区画中に、少なくとも固形キャリアーと第1の抗体とを含む。
【0036】
或る特定の例示的な実施の形態において、キットは、第1の抗体と、検出可能標識を有する第2の抗体とを含む。或る特定の例示的な実施の形態において、キットは、固形キャリアー表面上にコーティングされた第1の抗体と、検出可能標識を有する第2の抗体とを含む。或る特定の例示的な実施の形態において、キットは、1種類以上の第1の抗体と、検出可能標識を有する二次抗体とを含む。或る特定の例示的な実施の形態において、キットは、固形キャリアー表面上にコーティングされた1種類以上の第1の抗体と、検出可能標識を有する二次抗体とを含む。或る特定の実施の形態において、第1の抗体の更なる種類は、HBcAgタンパク質の150位~183位に含まれる、異なるエピトープを認識する。
【0037】
或る特定の実施の形態において、キットは、HBVビリオンを溶解するための溶解剤を更に含む。本明細書において、HBVビリオンを溶解するための溶解剤は、デーン粒子を溶解して(すなわちウイルスエンベロープを破壊して)、HBcAg抗原を露出することが可能な任意の作用物質を指す。こうした作用物質は、当業者に知られ、例えば表面活性剤、例えばNP40、LDS又はSDSを含む。
【0038】
或る特定の実施の形態において、溶解剤は、LDS又はSDSを含む。或る特定の実施の形態において、キットは、中和剤を更に含み、中和剤はCHAPSを含む。或る特定の実施の形態において、溶解剤は、20%LDS又は20%SDSを含む。或る特定の実施の形態において、溶解剤は、20%LDS又は20%SDS及び平衡のための水(balance water)を含む。或る特定の実施の形態において、中和剤は10%CHAPSを含む。或る特定の実施の形態において、中和剤は、10%CHAPS、20mM PBSを含む。或る特定の実施の形態において、中和剤は、10%CHAPS、20mM PBS、及び平衡のための水を含む。
【0039】
或る特定の実施の形態において、キットは、標準(例えば、HBcAgの異なる既知の量を含む一連の試料)、陽性対照試料(例えば、HBcAgの既知の量を含む試料)、陰性対照試料(例えば、HBcAgを含まない試料)、HBVウイルスを溶解するための溶解剤(及び任意選択で中和剤)、及び試験しようとする試料の収集及び保管のためのデバイス(例えば血液収集デバイス)からなる群より選択される1つ以上の試薬又はデバイスを更に含む。
【0040】
抗体の調製
第1の態様に記載される第1の抗体及び第2の抗体は、当該技術分野に知られる多様な方法によって、例えば遺伝子操作組換え技術によって、調製され得る。例えば、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖遺伝子をコードするDNA分子は、化学合成又はPCR増幅によって得られ得る。生じたDNA分子を発現ベクター内に挿入して、次いで宿主細胞内にトランスフェクションしてもよい。次いで、トランスフェクションされた宿主細胞を、特定の条件下で培養して、本発明の抗体を発現させてもよい。
【0041】
第1の態様に記載される抗原結合断片は、インタクトな抗体分子の加水分解によって得られ得る(Morimoto et al., J. Biochem. Biophys. Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan et al., Science 229:81 (1985)を参照されたい)。或いは、これらの抗原結合断片はまた、組換え宿主細胞によって直接産生されてもよい(Hudson, Curr. Opin. Immunol. 11:548-557 (1999)、Little et al., Immunol. Today, 21:364-370 (2000)によって概説される)。例えば、Fab’断片は宿主細胞から直接得られてもよく、Fab’断片は化学的にカップリングされて、F(ab’)断片を形成し得る(Carter et al., Bio/Technology, 10: 163-167 (1992))。さらに、Fv、Fab又はF(ab’)断片はまた、組換え宿主細胞の培地から直接単離され得る。これらの抗原結合断片を調製するための他の技術は、当業者に既知である。
【0042】
したがって、第2の態様において、本発明は、
(i)第1の抗体、第1の抗体をコードする単離核酸分子、単離核酸分子を含むベクター、又は第1の抗体を発現する組換え細胞であって、第1の抗体が第1の態様におけるように定義される、第1の抗体、単離核酸分子、ベクター、又は組換え細胞と、
(ii)第2の抗体、第2の抗体をコードする単離核酸分子、単離核酸分子を含むベクター、又は第2の抗体を発現する組換え細胞であって、第2の抗体が第1の態様におけるように定義される、第2の抗体、単離核酸分子、ベクター、又は組換え細胞と、
を含む、キットを提供する。
【0043】
或る特定の実施の形態において、ベクターは、クローニングベクター又は発現ベクターである。或る特定の実施の形態において、ベクターは、例えばプラスミド、コスミド、ファージ等である。
【0044】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体を発現する組換え細胞は、第1の抗体をコードする単離核酸分子又は単離核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞であり、第2の抗体を発現する組換え細胞は、第2の抗体をコードする単離核酸分子又は単離核酸分子を含むベクターを含む宿主細胞である。こうした宿主細胞には、限定されるわけではないが、原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)細胞、並びに真核細胞、例えば酵母細胞、昆虫細胞、植物細胞、及び動物細胞(例えば哺乳動物細胞、例えばマウス細胞、ヒト細胞等)が含まれる。或る特定の実施の形態において、本発明の宿主細胞は、哺乳動物細胞、例えばCHO(例えばCHO-K1、CHO-S、CHO DG44)である。
【0045】
或る特定の実施形態において、第1の抗体を発現する組換え細胞は、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019303号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株18B2-2であり、第2の抗体を発現する組換え細胞は、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019302号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株2A7である。
【0046】
検出法及び使用
第3の態様において、本発明は、試料中のHBcAgタンパク質の存在又はレベルを検出する方法であって、
(1)第1の抗体と試料を接触させて、抗体-抗原複合体を形成する工程であって、第1の抗体が第1の態様におけるように定義される、工程と、
(2)第2の抗体と抗体-抗原複合体を接触させて、抗体-抗原-抗体複合体を形成する工程であって、第2の抗体が第1の態様におけるように定義される、工程と、
(3)抗体-抗原-抗体複合体の量を決定する工程と、
を含む、方法を提供する。
【0047】
この方法を、診断目的で、又は非診断目的で使用してもよい。或る特定の実施の形態において、本発明の方法は、非診断目的のために使用される。こうした実施の形態において、試験される試料は、HBcAgを含むことが知られており、すなわち、試料の被験体は、本発明の方法による検出の前に診断されており、したがって、本発明の方法は、試料の診断には役立たない。したがって、本発明の方法の直接の目的は、試料の被験体の診断結果を得ることではなく、既知の診断情報を伴う試料に対する更なる正確で定量的な検出を実行することである。
【0048】
いくつかの実施の形態において、第2の抗体は検出可能標識を有する。或る特定の実施の形態において、工程(3)に記載される決定は、(3a)検出可能標識の量を検出する工程と、(3b)工程(3a)で得られた検出可能標識の量と、HBcAgの既知の量と検出可能標識の量との間の関係の標準曲線とを比較して、それによってHBcAgの含量を得る工程とを含む。或る特定の実施の形態において、工程(3)で記載される決定は、(3a)検出可能標識の量(例えば発光値)を検出する工程と、(3b)工程(3a)で得られた検出可能標識の量(例えば発光値)と、カットオフ値とを比較して、比が1未満である場合、試料は陰性と見なされ、比が1以上である場合、試料はHBcAg陽性と見なされる工程とを含む。或る特定の実施の形態において、検出可能標識がアクリジニウムエステル化合物である場合、カットオフ値は9000である。
【0049】
他の実施の形態において、第2の抗体は検出可能標識を持たない。こうした実施の形態において、工程(3)で記載される決定は、検出可能標識を有する第3の抗体を使用して、抗体-抗原-抗体複合体を検出することを含む。或る特定の実施形態において、第3の抗体は、第2の抗体に特異的に結合可能である(例えば第2の抗体の定常領域に特異的に結合可能である)。或る特定の実施の形態において、工程(3)で記載される決定は、(3a)抗体-抗原-抗体複合体を、検出可能標識を有する第3の抗体と接触させる工程と、(3b)検出可能標識の量を決定する工程と、(3c)工程(3b)で得られた検出可能標識の量と、HBcAgの既知の量と検出可能標識の量との間の関係の標準曲線とを比較し、それによってHBcAgの含量を得る工程とを含み得る。或る特定の実施の形態において、工程(3)で記載される決定は、(3a)抗体-抗原-抗体複合体を、検出可能標識を有する第3の抗体と接触させる工程と、(3b)検出可能標識の量(例えば発光値)を検出する工程と、(3c)工程(3b)で得られた検出可能標識の量(例えば発光値)と、カットオフ値とを比較して、比が1未満である場合、試料は陰性と見なされ、比が1以上である場合、試料はHBcAg陽性と見なされる工程とを含む。或る特定の実施の形態において、検出可能標識がアクリジニウムエステル化合物である場合、カットオフ値は9000である。
【0050】
或る特定の実施の形態において、検出可能標識は、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、化学発光試薬(例えばアクリジニウムエステル化合物)、蛍光色素、又はビオチンからなる群より選択される。
【0051】
或る特定の実施の形態において、工程(3)では、決定は、酵素イムノアッセイ又は化学発光イムノアッセイより選択される。
【0052】
或る特定の実施の形態において、工程(1)の前に、方法は、試料を処理する工程を更に含み、処理は、試料と溶解剤を混合して、ウイルスを溶解させることを含む。或る特定の実施の形態において、処理は、溶解反応を中和剤で終結させることを更に含む。
【0053】
或る特定の実施の形態において、溶解剤、中和剤は、第1の態様におけるように定義される。
【0054】
或る特定の実施の形態において、第1の抗体は、固形キャリアーの表面上にコーティングされる。或る特定の実施の形態において、固形キャリアーは、磁気ビーズ又はマイクロタイタープレート(例えばマイクロウェルプレート又はELISAプレート)からなる群より選択される。
【0055】
或る特定の実施の形態において、工程(2)及び/又は工程(3)の前に、洗浄工程が更に含まれる。洗浄工程は未反応物質を除去し得る。
【0056】
或る特定の実施の形態において、試料は、全血、血漿、及び血清より選択される。
【0057】
別の態様において、本発明はまた、試料中のHBcAgタンパク質の存在又はレベルを検出するための検出キット製造における、第1の態様に従ったキットの使用にも関する。
【0058】
或る特定の実施の形態において、キットを使用して、第3の態様に従った方法によって、試料中のHBcAgタンパク質の存在又はレベルを検出する。
【0059】
2A7 mAb及びその使用
組織又は細胞試料のHBcAg免疫学的検出(例えば免疫組織化学又は免疫蛍光)で現在使用される抗HBcAg抗体は、ポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、検出感度を改善し得るが、しばしば、高いバックグラウンド及びより低い特異性等の欠点を有し、免疫組織化学結果の標準化が困難である。しかし、組織又は細胞試料におけるHBcAgの免疫学的検出のための抗HBcAgモノクローナル抗体の使用に関する報告はない。
【0060】
本発明者らは予期せぬことに、組織又は細胞試料におけるHBcAgの免疫学的検出に適したモノクローナル抗体を見出し、このモノクローナル抗体に基づく検出効果は、市販のポリクローナル抗体のものと匹敵するレベルに到達可能であり、これは驚くべき、予期せぬことであり、非常に好ましい技術的効果である。
【0061】
したがって、第4の態様において、本発明はまた、HBcAgに特異的に結合可能なモノクローナル抗体又はその抗原結合断片であって、
(i)モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片が、以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号11に示される配列を有するHCDR1と、配列番号12に示される配列を有するHCDR2と、配列番号13に示される配列を有するHCDR3とを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は以下の3つの相補性決定領域(CDR):配列番号14に示される配列を有するLCDR1と、配列番号15に示される配列を有するLCDR2と、配列番号16に示される配列を有するLCDR3とを含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、又は、
(ii)モノクローナル抗体若しくはその抗原結合断片が、配列番号9に示される重鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号10に示される軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRを含む軽鎖可変領域(VL)を含み、好ましくは重鎖可変領域中に含まれる3つのCDR、及び/又は軽鎖可変領域中に含まれる3つのCDRがKabat、Chothia若しくはIMGT番号付け系によって定義されるか、又は、
(iii)モノクローナル抗体が、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に寄託され、CCTCC番号第C2019302号の寄託番号を有するハイブリドーマ細胞株2A7によって産生されるモノクローナル抗体である、
モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0062】
或る特定の実施の形態において、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、
(a)(i)配列番号9に示される配列、(ii)配列番号9に示される配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(iii)配列番号9に示される配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、
及び/又は、
(b)(iv)配列番号10に示される配列、(v)配列番号10に示される配列と比較した際、1つ若しくはいくつかのアミノ酸の置換、欠失若しくは付加(例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのアミノ酸の置換、欠失又は付加)を有する配列、又は(vi)配列番号10に示される配列と比較した際、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは100%の配列同一性を有する配列からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)、
を含む。
【0063】
或る特定の実施の形態において、(ii)又は(v)に記載される置換は保存的置換である。
【0064】
或る特定の実施の形態において、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、配列番号9に示される配列を有するVH、及び配列番号10に示される配列を有するVLを含む。
【0065】
或る特定の実施の形態において、モノクローナル抗体は、重鎖定常領域(CH)と軽鎖定常領域(CL)とを含む。或る特定の実施の形態において、モノクローナル抗体は、IgG、IgM、IgE、IgD又はIgA抗体である。
【0066】
或る特定の実施の形態において、抗原結合断片は、Fab、Fab’、(Fab’)、Fv、ジスルフィド連結Fv、scFv、ディアボディ及び単一ドメイン抗体(sdAb)からなる群より選択される。或る特定の実施の形態において、モノクローナル抗体は、ネズミ抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0067】
別の態様において、本発明はまた、試料中のHBcAgを検出するための試薬の製造における、第4の態様に従ったモノクローナル抗体又はその抗原結合断片の使用にも関する。
【0068】
或る特定の実施の形態において、試料は組織試料(例えば組織切片)又は細胞試料である。
【0069】
或る特定の実施の形態において、検出は免疫学的検出である。或る特定の実施の形態において、免疫学的検出は、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、免疫蛍光(IF)及びウェスタンブロットからなる群より選択される。
【0070】
1つの実施の形態において、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片は、検出可能標識を有する。
【0071】
別の実施の形態において、試料中のHBcAgを検出するための試薬は、検出可能標識を有する二次抗体を更に含む。
【0072】
或る特定の実施の形態において、二次抗体は、モノクローナル抗体又はその抗原結合断片に含まれる定常領域が得られた種(例えばマウス)の抗体に特異的である。
【0073】
或る特定の実施の形態において、二次抗体は、抗免疫グロブリン抗体、例えば抗IgG抗体である。
【0074】
或る特定の実施の形態において、検出可能標識は、酵素(例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ)、蛍光色素、又はビオチンより選択される。
【0075】
或る特定の例示的な実施の形態において、免疫学的検出が免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、又はウェスタンブロットより選択される場合、検出可能マーカーは酵素より選択される。
【0076】
或る特定の例示的な実施の形態において、免疫学的検出が免疫蛍光(IF)より選択される場合、検出可能標識は蛍光色素より選択される。
【0077】
用語の定義
本発明において、別に明記しない限り、本明細書で使用される科学的及び技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、本明細書で使用されるウイルス学、生化学、及び免疫学の実験処置は、全て、対応する分野で広く用いられるルーチンの処置である。一方、本発明のよりよい理解のために、関連する用語の定義及び説明を以下に提供する。
【0078】
本明細書で使用した際、「HBcAg」という用語は、B型肝炎ウイルス(HBV)のコア抗原を指し、これはヌクレオカプシドタンパク質としても知られ、当業者に既知である(例えばNCBI GENBANKデータベース寄託番号第GU357842.1号を参照されたい)。HBcAgタンパク質は、VLP組み立てに関与する組み立て領域をN末端に、アルギニンリッチドメイン(Arginine Rich Domain、ARD)をC末端に含む。
【0079】
本明細書で使用した際、HBcAgのアミノ酸配列に言及する際には、配列番号17に示される配列を使用して記載される。例えば、「HBcAgのアミノ酸残基150~183」という表現は、配列番号17に示されるポリペプチドの150位~183位のアミノ酸残基を指す。しかし、当業者は、突然変異又は変異(限定されるわけではないが、置換、欠失及び/又は付加を含む、例えば異なる遺伝子型又はサブ遺伝子型(subgenotypes)のHBcAg)は、生物学的機能に影響を及ぼすことなく、天然に生成され得るか、又はHBcAgのアミノ酸配列中に人工的に導入され得ることを理解する。したがって、本発明において、「HBcAg」という用語は、例えば配列番号17に示される配列及びその天然又は人工変異体を含む、全てのこうした配列を含むものとする。さらに、HBcAgの配列断片を記載する際、配列番号17の配列断片だけではなく、その天然又は人工変異体における対応する配列断片もまた含む。例えば、「HBcAgのアミノ酸残基150~183」という表現は、配列番号17のアミノ酸残基150~183、及びその変異体(天然又は人工)中の対応する断片を含む。本発明に従って、「対応する配列断片」又は「対応する断片」という表現は、最適整列、すなわち最高の同一性パーセントを得るための配列の整列のために比較される配列の同等の位置に位置する断片を指す。
【0080】
本明細書において使用される場合、巨大球体粒子としても知られる「デーン粒子」という用語は、二重層構造を持つインタクトな感染性B型肝炎ウイルス粒子を指す。HBcAgは、通常、デーン粒子のコア中に存在する。したがって、HBcAgを検出するためには、典型的には、HBcAgが露出され遊離し得るように、デーン粒子の外殻をまず溶解する必要がある。
【0081】
本明細書において使用される場合、「特異的結合」という用語は、2つの分子(すなわち結合分子及びターゲット分子)の間の非ランダム結合反応、例えば抗体と、抗体が向けられている抗原との間の反応を指す。2つの分子間の結合アフィニティは、K値によって記載され得る。K値は、モル濃度(M)として表される、kd(特異的結合分子-ターゲット分子相互作用の解離率、koffとしても知られる)対ka(特異的結合分子-ターゲット分子相互作用の会合率、konとしても知られる)の比、すなわちkd/kaから得られる解離定数である。K値が小さければ小さいほど、2つの分子間の結合はより緊密であり、アフィニティはより高い。或る特定の実施の形態において、抗原に特異的に結合する抗体(又は抗原に対して特異的である抗体)は、約10-5M未満、例えば約10-6M、10-7M、10-8M、10-9M又は10-10M又はそれ未満のアフィニティ(K)で抗原に結合する抗体を指す。K値は、当該技術分野に既知の方法によって、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)を使用してBIACORE装置中で決定され得る。
【0082】
本明細書において使用される場合、「免疫学的アッセイ」という用語は、抗原と抗体との間の特異的相互作用/結合アフィニティを利用するアッセイを指し、こうしたアッセイは、一般的に、試料中の特異的抗原又は抗体の存在又はレベルを検出するために使用され得る。こうした免疫学的アッセイは、当業者に既知であり、限定されるわけではないが、酵素イムノアッセイ(EIA)、化学発光イムノアッセイ(CLIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)、ウェスタンブロッティング、免疫比濁法、表面プラズモン共鳴法等を含む。免疫学的アッセイの詳細な説明に関しては、例えば、Fundamental Immunology, Ch. 7 Paul, W., ed., 2nd ed., Raven Press, N.Y. (1989)を参照されたい。
【0083】
本明細書において使用される場合、「抗体」という用語は、一般的に、各対が1つの軽鎖(LC)及び1つの重鎖(HC)を有する、2対のポリペプチド鎖で構成される免疫グロブリン分子を指す。抗体軽鎖は、κ(カッパ)軽鎖及びλ(ラムダ)軽鎖と分類され得る。重鎖は、μ、δ、γ、α、又はεと分類され得て、したがって、抗体のアイソタイプは、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEと定義される。軽鎖及び重鎖内で、可変領域及び定常領域は、約12以上のアミノ酸の「J」領域によって連結され、重鎖はまた、約3以上のアミノ酸の「D」領域も含む。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)からなる。重鎖定常領域は3つのドメイン(CH1、CH2及びCH3)からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与はせず、多様なエフェクター機能、例えば免疫系の多様な細胞(例えばエフェクター細胞)及び古典的補体系第1成分(C1q)を含む宿主組織又は因子と免疫グロブリンとの結合の仲介を示す。VH領域及びVL領域はまた、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が散在する、非常に多様性のある領域(相補性決定領域(CDR)と称される)に細分され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に、以下の順序に配置された3つのCDR及び4つのFR:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4からなる。各重鎖/軽鎖対の可変領域(VH及びVL)は、抗原結合部位を形成する。アミノ酸の領域又はドメインへの割り当ては、Kabat, Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1987 and 1991))、又はChothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196 :901-917の定義、又はChothia et al. (1989) Nature 342:878-883による定義に従い得る。
【0084】
本明細書において使用される場合、「相補性決定領域」すなわち「CDR」という用語は、抗原結合に関与する抗体の可変領域中のアミノ酸残基を指す。重鎖及び軽鎖の可変領域は、各々、CDR1、CDR2及びCDR3と称される3つのCDRを含む。これらのCDRの正確な境界は、当該技術分野に知られる多様な番号付け系に従って、例えばKabat番号付け系(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991)、Chothia番号付け系(Chothia & Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917、Chothia et al. (1989) Nature 342:878-883)、又はIMGT番号付け系(Lefranc et al. al., Dev. Comparat. Immunol. 27:55-77, 2003)に従って定義され得る。所定の抗体に関して、当業者は、各番号付け系によって定義されたCDRを容易に同定するであろう。また、異なる番号付け系の間の対応は当業者に既知である(例えば、Lefranc et al., Dev. Comparat. Immunol. 27:55-77, 2003を参照されたい)。
【0085】
本発明において、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、当該技術分野に知られる多様な番号付け系に従って決定され得る。或る特定の実施の形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、好ましくは、Kabat、Chothia又はIMGT番号付け系によって決定される。或る特定の実施の形態において、本発明の抗体又はその抗原結合断片に含まれるCDRは、好ましくはKabat番号付け系によって同定される。
【0086】
本明細書において使用される場合、「フレームワーク領域」すなわち「FR」残基という用語は、上に定義するようなCDR残基以外の抗体の可変領域中のアミノ酸残基を指す。
【0087】
「抗体」という用語は、抗体を産生するいかなる特定の方法によっても限定されない。例えば、抗体は、組換え抗体、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体を含む。抗体は、異なるアイソタイプのもの、例えばIgG(例えばIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4サブタイプ)、IgA1、IgA2、IgD、IgE、又はIgM抗体であってもよい。
【0088】
本明細書において使用される場合、抗体の「抗原結合断片」という用語は、全長抗体が結合するものと同じ抗原に特異的に結合する能力を保持する、及び/又は抗原に特異的に結合する全長抗体と競合する、全長抗体の断片を含むポリペプチドを指し、これはまた、「抗原結合部分」とも称される。一般的には、Fundamental Immunology, Ch.7 (Paul, W., ed., 2nd ed., Raven Press, NY (1989)(全ての目的のためにその全体が引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい。抗体の抗原結合断片は、組換えDNA技術によって、又はインタクトな抗体の酵素的若しくは化学的切断によって、産生され得る。抗原結合断片の限定されない例には、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、相補性決定領域(CDR)断片、scFv、ディアボディ、単一ドメイン抗体、キメラ抗体、直線状(linear)抗体、ナノボディ(この技術はDomantisに由来する)、及びポリペプチドに特異的抗原結合能を与えるために十分な抗体の部分を少なくとも含むポリペプチドが含まれる。操作された抗体変異体は、Holliger et al., 2005; Nat Biotechnol, 23: 1126-1136に概説される。
【0089】
本明細書において使用される場合、「全長抗体」という用語は、2つの「全長重鎖」及び2つの「全長軽鎖」からなる抗体を指す。ここで、「全長重鎖」は、重鎖可変領域(VH)、重鎖定常領域CH1ドメイン、ヒンジ領域(HR)、重鎖定常領域CH2ドメイン、重鎖定常領域CH3ドメインからなるポリペプチド鎖を指し、全長抗体がIgEアイソタイプのものである場合、抗体は、任意選択で、重鎖定常領域CH4ドメインを含む。好ましくは、「全長重鎖」は、N末端からC末端方向に、VH、CH1、HR、CH2及びCH3からなるポリペプチド鎖である。「全長軽鎖」は、N末端からC末端方向に、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなるポリペプチド鎖である。全長抗体鎖の2対は、CLとCH1との間のジスルフィド結合及び2つの全長重鎖のHR間のジスルフィド結合によって共に連結される。本発明の全長抗体は、単一種、例えばヒトに由来してもよく、また、キメラ抗体又はヒト化抗体であってもよい。本発明の全長抗体は、同じ抗原を特異的に認識する/同じ抗原に特異的に結合するVH及びVL対によって形成される2つの抗原結合部位を含む。
【0090】
本明細書において使用される場合、「Fd」という用語は、VHドメイン及びCH1ドメインからなる抗体断片を指し、「dAb断片」という用語は、VHドメインからなる抗体断片を指し(Ward et al., Nature 341:544546 (1989))、「Fab断片」という用語は、VLドメイン、VHドメイン、CLドメイン及びCH1ドメインからなる抗体断片を指し、「F(ab’)断片」という用語は、ヒンジ領域のジスルフィド結合を通じて連結された2つのFab断片を含む抗体断片を指し、「Fab’断片」という用語は、F(ab’)断片中の2つの重鎖断片を連結するジスルフィド結合を還元することによって得られる断片を指し、インタクトな軽鎖及び重鎖Fd断片(VHドメイン及びCH1ドメインからなる)からなる。
【0091】
本明細書において使用される場合、「Fv」という用語は、抗体の1つのアームのVLドメイン及びVHドメインからなる抗体断片を意味する。Fv断片は、一般的に、完全抗原結合部位を形成し得る最小の抗体断片と見なされる。一般的に、6つのCDRは、抗体に抗原結合特異性を与えると考えられる。しかし、1つの可変領域のみ(例えば3つの抗原特異的CDRしか含まないFd断片)は、インタクトな結合部位よりもおそらくより低いアフィニティではあるが、抗原を認識して抗原に結合することが可能である。
【0092】
本明細書において使用される場合、「Fc」という用語は、抗体の第1の重鎖の第2の定常領域及び第3の定常領域と、第2の重鎖の第2の定常領域及び第3の定常領域とを、ジスルフィド結合によって連結することによって形成される抗体断片を指す。抗体のFc断片は、多くの異なる機能を有するが、抗原結合には関与しない。
【0093】
本明細書において使用される場合、「scFv」という用語は、VLドメイン及びVHドメインを含み、VL及びVHがリンカーによって連結されている、単一ポリペプチド鎖を指す(例えばBird et al., Science 242:423-426 (1988)、Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988)、及びPluckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, Vol. 113, Eds. Roseburg and Moore, Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照されたい)。こうしたscFv分子は、一般構造:NH-VL-リンカー-VH-COOH又はNH-VH-リンカー-VL-COOHを有し得る。適切な従来技術のリンカーは、反復GGGGSアミノ酸配列又はその変異体からなる。例えば、アミノ酸配列(GGGGS)又はその変異体を含むリンカーが使用され得る(Holliger et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448)。本発明で有用な他のリンカーが、Alfthan et al. (1995), Protein Eng. 8:725-731、Choi et al. (2001), Eur. J. Immunol. 31:94-106、Hu et al. (1996), Cancer Res. 56:3055-3061に記載され、Kipriyanov et al. (1999), J. Mol. Biol. 293:41-56及びRoovers et al. (2001), Cancer Immunolに記載される。いくつかの場合、ジスルフィド結合はまた、scFvのVHとVLとの間にも存在し得る。
【0094】
本明細書において使用される場合、「ディアボディ」という用語は、そのVHドメイン及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、使用されるリンカーが、同じ鎖の2つのドメイン間で対形成を可能にするには短すぎ、それによって、ドメインが、別の鎖の相補ドメインとの対形成を強いられて、2つの抗原結合部位を生じるものを意味する(例えば、Holliger P. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)、及びPoljak RJ et al, Structure 2:1121-1123 (1994)を参照されたい)。
【0095】
本明細書において使用される場合、「単一ドメイン抗体(sdAb)」という用語は、当業者に一般的に理解される意味を有し、全長抗体が結合するものと同じ抗原に特異的に結合する能力を保持する、単一単量体可変抗体ドメイン(例えば単一重鎖可変領域)で構成される抗体断片を指す。単一ドメイン抗体はまた、ナノボディとしても知られる。
【0096】
前述の抗体断片は各々、全長抗体が結合するものと同じ抗原に特異的に結合する能力、及び/又は抗原への特異的結合に関して、全長抗体と競合する能力を保持する。
【0097】
抗体の抗原結合断片(例えば上述の抗体断片)は、当業者に知られる慣用技術(例えば組換えDNA技術又は酵素的若しくは化学的断片化法)を使用して、所定の抗体(例えば本明細書に提供される抗体)から得ることができ、抗体の抗原結合断片は、インタクトな抗体に関して使用されるものと同じ方式によって、特異性に関してスクリーニングされ得る。
【0098】
本明細書において、正確に明記しない限り、用語「抗体」が言及される場合、抗体はインタクトな抗体だけでなく、抗体の抗原結合断片も含む。
【0099】
本明細書において使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、その軽鎖及び/又は重鎖の部分が1つの抗体(特定の種由来であってもよく、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属していてもよい)由来である一方、軽鎖及び/又は重鎖の別の部分が別の抗体(同じ若しくは異なる種由来であってもよく、又は同じ若しくは異なる抗体クラス又はサブクラスに属してもよい)由来であるが、にもかかわらずターゲット抗原への結合活性をなお保持する、抗体を指す(Cabilly et al.に対する米国特許第4,816,567号、Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851 6855 (1984))。例えば、「キメラ抗体」という用語は、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域が第1の抗体(例えばネズミ抗体)由来であり、抗体の重鎖及び軽鎖可変領域が第2の抗体(例えばヒト抗体)由来であるような抗体(例えばヒト-ネズミキメラ抗体)を含み得る。
【0100】
本明細書において使用される場合、「ヒト化抗体」という用語は、遺伝子操作された非ヒト抗体を指し、こうした抗体のアミノ酸配列は、ヒト抗体の配列に対する相同性が増加するよう修飾されている。一般的に、ヒト化抗体のCDR領域の全て又は一部は、非ヒト抗体(ドナー抗体)由来であり、非CDR領域(例えば可変FR及び/又は定常領域)の全て又は一部は、ヒト免疫グロブリン(受容体抗体)に由来する。ヒト化抗体は、一般的に、限定されるわけではないが、抗原特異性、アフィニティ、反応性等を含む、ドナー抗体の予期される特性を保持する。ドナー抗体は、所望の特性(例えば抗原特異性、アフィニティ、反応性等)を持つ、ネズミ、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類(例えばカニクイザル(cynomolgus monkey))抗体であり得る。
【0101】
本発明のキメラ抗体又はヒト化抗体は、上で調製されたネズミモノクローナル抗体の配列に基づいて調製され得る。重鎖及び軽鎖をコードするDNAは、ターゲットネズミハイブリドーマから得ることができ、標準的分子生物学技術を用いて、非ネズミ(例えばヒト)免疫グロブリン配列を含むように操作され得る。
【0102】
キメラ抗体を調製するため、当該技術分野に知られる方法を用いて、ネズミ免疫グロブリン可変領域を、ヒト免疫グロブリン定常領域に連結してもよい。例えば、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域をコードする別のDNA分子に機能可能であるように連結して、全長重鎖遺伝子を得てもよい。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野に知られ(例えば、Kabat, EA et al. (1991), Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を含むDNA断片は標準的PCR増幅によって得られ得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であってもよいが、一般的に、好ましくはIgG1又はIgG4定常領域である。例えば、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に機能可能であるように連結して、全長軽鎖遺伝子(及びFab軽鎖遺伝子)を得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野に知られ(例えば、Kabat, EA et al. (1991), Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照されたい)、これらの領域を含むDNA断片は、標準的PCR増幅によって得られ得る。軽鎖定常領域は、κ定常領域又はλ定常領域であり得るが、一般的に、好ましくはκ定常領域である。
【0103】
ヒト化抗体を調製するため、当該技術分野に知られる方法を使用して、ネズミCDR領域をヒトフレームワーク配列内に移植してもよい(例えば、Winterに対する米国特許第5,225,539号;Queen et alに対する米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,693,762号及び同第6,180,370号、並びにLo, Benny, KC, editor, in Antibody Engineering: Methods and Protocols, volume 248, Humana Press, New Jersey, 2004を参照されたい)。
【0104】
本明細書において使用される場合、「ベクター」という用語は、ポリヌクレオチドを挿入可能である核酸送達ビヒクルを指す。ベクターが、挿入されたポリヌクレオチドにコードされるタンパク質を発現可能である場合、ベクターは発現ベクターと称される。ベクターによって運ばれる遺伝物質要素が宿主細胞において発現され得るように、ベクターを形質転換、形質導入又はトランスフェクションによって宿主細胞に導入してもよい。ベクターは当業者に既知であり、限定されるわけではないが、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体、例えば酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1由来人工染色体(PAC)、ファージ、例えばλファージ又はM13ファージ及び動物ウイルスを含む。ベクターとして使用され得る動物ウイルスには、限定されるわけではないが、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(例えば単純ヘルペスウイルス)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、パピローマウイルス、パポバウイルス(例えばSV40)が含まれる。ベクターは、限定されるわけではないが、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素、及びレポーター遺伝子を含む、発現を制御する多様な要素を含み得る。さらに、ベクターはまた、複製起点部位も含み得る。
【0105】
本明細書において使用される場合、「宿主細胞」という用語は、ベクターを導入することができる細胞を指し、大腸菌若しくは枯草菌(Bacillus subtilis)等の原核細胞、酵母細胞若しくはアスペルギルス等の真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞若しくはSf9等の昆虫細胞、又は線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK 293細胞若しくはヒト細胞等の動物細胞が含まれるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書において使用される場合、「同一性」という用語は、2つのポリペプチド間又は2つの核酸間の一致度を指す。比較される2つの配列が、或る特定の部位に塩基又はアミノ酸の同じモノマーサブユニットを有する(例えば、2つのDNA分子の各々が或る特定の部位にアデニンを有するか、又は2つのポリペプチドの各々が或る特定の部位にリジンを有する)場合、2つの分子はその部位で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、比較される部位の総数に対する2つの配列で共通する同一の部位の数×100の関数である。例えば、2つの配列の10個の部位のうち6個が一致している場合、これら2つの配列は、60%の同一性を有する。例えば、DNA配列:CTGACT及びCAGGTTは、50%の同一性を有する(6個の部位のうち3個が一致している)。概して、2つの配列の比較は、最大の同一性が得られるように行われる。かかるアラインメントは、Needleman, et al. (J. Mol. Biol. 48:443-453, 1970の方法に基づくAlignプログラム(DNAstar, Inc.)等のコンピュータプログラムを用いて行うことができる。2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE. Meyers and W. Miller (Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))のアルゴリズムを用い、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12及びギャップペナルティ4を用いて決定することもできる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれたNeedleman and Wunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムにより、Blossum 62マトリックス又はPAM250マトリックスのいずれかを用い、ギャップ重量16、14、12、10、8、6又は4及び1、2、3、4、5又は6の長さ重量を用いて決定することができる。
【0107】
本明細書において使用される場合、「保存的置換」という用語は、アミノ酸配列を含むタンパク質/ポリペプチドの予期される特性に不都合に影響を及ぼさない、又はこうした特性を変化させないアミノ酸置換を指す。例えば、保存的置換は、当該技術分野に知られる標準技術、例えば部位特異的突然変異誘発及びPCR仲介突然変異誘発によって導入され得る。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が、類似の側鎖を持つ別のアミノ酸残基、例えば対応するアミノ酸残基と物理的又は機能的に類似である(例えば類似のサイズ、形状、電荷、共有結合又は水素結合を形成する能力を含む化学特性等を有する)残基で置換される置換が含まれる。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、当該技術分野に定義されてきている。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、対応するアミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置換される。アミノ酸保存的置換を同定する方法は、当該技術分野に既知である(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1187 (1993)、Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10): 879-884 (1999)、及びBurks et al., Proc. Natl Acad. Set USA 94: 412-417 (1997)(これらは引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい)。
【0108】
本明細書に含まれる20の慣用的アミノ酸は、慣用的使用に従って表記される。例えば、Immunology-A Synthesis (2nd Edition, E. S. Golub and D. R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland, Mass. (1991))(引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい。本発明において、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語は、同じ意味を有し、交換可能に用いられる。本発明において、アミノ酸は、一般的に、当該技術分野に既知である一文字及び三文字略語によって示される。例えば、アラニンは、A又はAlaによって表され得る。
【0109】
本明細書において使用される場合、「被験体」という用語は、限定されるわけではないが、多様な動物、特に哺乳動物、例えばヒトを含む。
【発明の効果】
【0110】
本発明は、特異的抗体に基づくHBcAg検出のためのキット、及びキットに基づいて確立された二重抗体サンドイッチ法を提供する。従来技術と比較して、本発明の技術的解決は、DNA法のものに匹敵する検出感度を達成することができ、大きな臨床適用価値を有する迅速なハイスループット検出を実現し得る。
【0111】
さらに、本発明はまた、多様な組織又は細胞試料に関する免疫学的検出、例えば免疫組織化学及び免疫蛍光の分野で使用することができ、市販のポリクローナル抗体のものと類似の検出効果を有し、したがって広い適用可能性を有する、抗HBcAgモノクローナル抗体も提供する。
【0112】
本発明の実施形態を以下で図面及び実施例を参照して詳細に説明するが、当業者であれば、以下の図面及び実施例は、本発明の範囲を限定するのではなく、本発明を例示するためにのみ使用されることを理解するであろう。本発明の様々な対象及び有利な態様は、当業者には添付の図面及び以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図1】異なる長さのHBV抗原を含む真核発現プラスミドの模式図を示す。
図2】一次抗体として2A7を使用することによる、異なる長さのHBV抗原のウェスタンブロット分析の結果を示す図である。
図3】本発明の酵素イムノアッセイによる、異なる試料中のHBcAgの検出結果を示す図である。
図4】本発明の化学発光検出法の結果とPCR検出の結果との間の相関を示す図である。
図5】HBcAg免疫蛍光検出抗体として2A7を使用することによる、細胞試料の免疫蛍光検出の結果を示す図である。
図6】HBcAg免疫組織化学検出抗体として2A7を使用することによる、組織切片の免疫組織化学検出の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0114】
配列情報
本出願で言及されるいくつかの配列の情報を、以下の表に記載する。
【0115】
【表1】
【0116】
生物学的物質の寄託
本発明は、China Center for Type Culture Collection(CCTCC、武漢大学、中国・武漢)に寄託されている、以下の生物学的物質に関する。
1)CCTCC第C2019303号の寄託番号を有し、寄託日が2019年11月28日である、ハイブリドーマ細胞株18B2-2、
2)CCTCC第C2019302号の寄託番号を有し、寄託日が2019年11月28日である、ハイブリドーマ細胞株2A7。
【実施例
【0117】
ここで、以下の実施例を参照して本発明を説明するが、これらの実施例は、本発明を例示することを意図するものであり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0118】
別に明記しない限り、本発明で使用される分子生物学実験法及びイムノアッセイは、基本的に、J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989、及びFM Ausubel et al., Refined Laboratory Manual for Molecular Biology, 3rd Edition, John Wiley & Sons, Inc., 1995を参照し、製品製造者によって推奨される条件に従って、制限酵素を使用した。実施例中で供給源を示されていない試薬は全て、当該技術分野で慣用的な試薬であるか、又は市販の入手可能な試薬である。当業者は、実施例が、例によって本発明を記載しており、保護されるよう求められるような本発明の範囲を限定することは意図されないことを認識する。
【0119】
実施例1:c183抗原の調製
1.1 C183クローン(その配列は配列番号17に示された)を構築し、大腸菌発現系を用いることによって、C183B抗原を調製した。
【0120】
1.2 C183抗原の精製
細菌液を収集し、超音波処理して、超音波処理した液体を12000rpm及び10℃で10分間遠心分離し、上清を収集した。次いで、水槽中に65℃で20分間静置させ、上清を収集した。
【0121】
試料を1×PB7.4に対して透析し、その後、中程度の圧のDEAE-FFクロマトグラフィ(GE媒体)を行った。
【0122】
ブレークスルーピーク溶液(ターゲットタンパク質)を収集した後、Capto Core700によって精製した。次いで、第1の試料ピークを収集した。
【0123】
実施例2:抗HBcAgマウスモノクローナル抗体の調製
2.1 マウス免疫
2.1.1 免疫原の調製。免疫原は、大腸菌で組換え的に発現されたHBcAg(C183抗原)タンパク質であった。組換え抗原を0.4mg/mLに希釈し、等体積のフロイントのアジュバントと混合して、油中水エマルジョンを形成した(混合物が完全に乳化されたかどうかを判断する方法。混合物の小滴を水の表面上に滴下し、混合物が集積したままで分散しないならば、実質的にホモジナイズされていると見なした)。最初の免疫にフロイントの完全アジュバントを使用する一方、続くブースター免疫にはフロイントの不完全アジュバントを使用し、融合72時間前の最後のブースター免疫に関しては、アジュバントを添加しなかった。
【0124】
2.1.2 マウスの基本免疫。6~8週齢のBALB/c雌マウスを、500μL/マウス/時点の注射用量にて、上記免疫原を皮下マルチポイント注射することによって免疫し、後の力価決定のため、200μLの眼の静脈血を各免疫前に収集した。ブースター免疫を2週ごとに与えた。間接的ELISAによって、血清力価を測定した。マウスの血清力価がプラトーに到達したら、免疫を停止し、融合まで2ヶ月間マウスを休ませた。
【0125】
2.1.3 融合72時間前のブースター免疫(最終ブースト)。マウス脾臓細胞及びマウス骨髄腫細胞の融合72時間前に、脾臓のブースター免疫を行った。このブースターのための免疫原はアジュバントを含まず、0.5mg/mL組換えタンパク質の100μlを注射した。脾臓免疫前に、マウスをエーテルで麻酔し、次いで、腹部皮膚を開いて脾臓を露出し、100μLの抗原を脾臓の長軸方向に沿って注射し、次いで、腹部切開を迅速に縫合した。
【0126】
2.2 融合ハイブリドーマの調製及びスクリーニング
融合72時間前のブースター免疫後、マウス脾臓を採取して細胞懸濁物を作製し、マウス骨髄腫細胞Sp2/0との融合に供して、ハイブリドーマ細胞を得た。その前にフィーダー細胞を調製した。ハイブリドーマ細胞の培養中、融合後の多数の骨髄腫細胞及び脾臓細胞は、1640-HAT培地中で次々に死に、単一の細胞又はわずかな分散した細胞は生存が容易ではなく、したがって、他の細胞を添加して生存させる必要がある。添加される生存細胞はフィーダー細胞と称された。この実験室では、マウス腹腔マクロファージ又は13日齢マウス胸腺細胞をフィーダー細胞として用いた。
【0127】
2.2.1 マウスマクロファージの調製。以下の工程に従って行った。(i)1匹の6週齢BALB/cマウスを頚椎脱臼(stretching neck)によって屠殺し、水道水でリンスし、75%エタノール溶液中に5分間浸した。ウルトラクリーン作業台に腹部を上にしてマウスを置き、マウスの腹部皮膚をピンセットで持ち上げ、小さく切断し、大きなピンセットで皮膚を上方及び下方に裂き、腹部を完全に露出した。(ii)腹膜を無菌眼科鉗子で持ち上げ、次いで、5mLシリンジで適切な量の培地を腹腔内に注入し、マウスの肢を別の無菌眼科鉗子でわずかに持ち上げ、最後にシリンジを用いて培地を吸引し、遠心管内に入れた。(iii)腹腔細胞液をHAT培地又はHT培地中で溶解して、2×10/mLの濃度でマクロファージフィーダー細胞を形成した。(iv)ウェルあたり0.1mLで96ウェル細胞培養プレートに添加し、インキュベーター中で培養するか、又は融合細胞と直接混合し、96ウェル細胞培養プレートに添加することも可能であった。
【0128】
2.2.2 マウス胸腺の調製。以下の工程に従って行った。(i)1匹の13日齢BALB/cマウスを頚椎脱臼によって屠殺し、水道水でリンスし、75%エタノール溶液中に5分間浸した。ウルトラクリーン作業台に腹部を上にしてマウスを置いた。(ii)マウスの腹部皮膚を鉗子で持ち上げ、腹部及び胸部の外皮を切断した。(iii)別の対の清浄なハサミで胸腔を開き、乳白色の胸腺をピンセットで引き出し、200メッシュの細胞篩を通じてホモジナイズ及び濾過に供して、胸腺フィーダー細胞液を得た。
【0129】
2.2.3 マウス骨髄腫細胞の調製。以下の工程に従って行った。(i)マウス骨髄腫細胞株Sp2/0-Ag14(Sp2/0)は培養が容易であり、高い融合率を有するため、現在、最も理想的な融合細胞であるが、Sp2/0ハイブリドーマ細胞株は、NS-1よりも培養条件により感受性であり、過剰な希釈(3×10/mL未満の密度)及びアルカリpH(7.3を超えるpH)の条件では増殖が劣っていた。(ii)対数増殖期の細胞を融合用に選択した。(iii)融合前に、骨髄腫細胞を培養フラスコから遠心管内に移し、RPMI-1640培地で3回洗浄した(1000rpm×5分間)。細胞をRPMI-1640培地中に再懸濁し、計数した。(iv)一般的に、マウス骨髄腫細胞は融合の5日前に蘇生させるべきであり、各融合には約6つのフラスコの35cm Sp2/0細胞が必要であった。
【0130】
2.2.4 免疫脾臓細胞の調製。以下の工程に従って行った。(i)融合用のBALB/Cマウスの眼球を除去した後、放血によってマウスを屠殺し、収集した血液試料を抗血清にし、これは抗体検出用の陽性対照として使用可能であった。マウスを水道水でリンスし、75%エタノール溶液中に5分間浸し、次いで、ウルトラクリーンベンチ中のマウス解剖板に右側臥位で置いた。(ii)腹腔を無菌的に開き、脾臓を取り出し、ハサミで切って小片にし、200メッシュ細胞スクリーン上に置き、次いで、絞って、すりつぶし棒(grinding rod)(シリンジの内部コア)ですりつぶすと同時にRPMI-1640培地をピペットで1滴ずつ添加した。(iii)適切な量のRPMI-1640培地を補充し、3~5分間静置させ、上部懸濁物の2/3を50mLプラスチック遠心管に移した。上記プロセスを2~3回繰り返した。(iv)細胞をRPMI-1640培地で3回洗浄した(1000rpm×10分間)。(v)細胞をRPMI-1640培地中に再懸濁し、計数した。
【0131】
2.2.5 PEG仲介融合によるハイブリドーマの調製。以下の工程に従って行った。(1)融合前に、1mLのPEG-1500、10mLのRPMI-1640血清不含培地及び200mLの完全培地を37℃にあらかじめ加熱した。(ii)調製された骨髄腫細胞及び脾臓細胞を、50mL遠心管中で混合し(1×10脾臓細胞+1×10骨髄腫細胞、約10:1)、1500rpmで8分間遠心分離した。遠心分離後、チューブの底を穏やかに弾いて細胞をほぐしてペーストを形成した。(iii)0.8mL(1×10脾臓細胞+0.8mL PEG)を1mLピペットで遠心管に添加し、添加しながら穏やかに攪拌し、PEGを平均して60秒以内に添加し、次いで37℃にあらかじめ加熱した10mLのRPMI-1640完全培地を、穏やかに攪拌しながら添加した。最後に、RPMI-1640培地を40mLまで補充し、1000rpmで5分間遠心分離した。(iv)上清を廃棄し、少量のHT培地を添加して細胞を注意深く分散させ、調製したHT培地内に細胞を移し、ウェルあたり0.1mLで96ウェル細胞培養プレートに添加し、COインキュベーター中で培養した。(v)12時間後、適切な量のHAT完全培地を調製し、各ウェルにウェルあたり0.1mLを1滴ずつ添加した。5日後、HT完全培地を使用して、ウェル中の細胞上清の50%~100%を置換した。約9日~14日後、検出のために上清を収集した。
【0132】
2.2.6 ハイブリドーマのスクリーニング。間接的ELISAをスクリーニングに使用し、100ng/mLの組換え抗原でのコーティングをウェルあたり0.1mLで行い、次いで、50μLの細胞上清を検出のために添加し、陽性クローンウェルを選択した。
【0133】
2.2.7 ハイブリドーマ細胞のクローニング。限界希釈法を使用することによって、細胞をまず、或る特定の濃度に従って連続希釈し、次いで、可能な限り多くのウェルで単一の細胞のみが増殖するように、96ウェル細胞培養プレートの各ウェル内に接種した。ハイブリドーマの陽性クローンは、100%陽性となり、安定クローンと確認されるまで、一般的に2~3回のクローニングを必要とした。
【0134】
2.3 モノクローナル抗体腹水の産生
2匹~3匹のBALB/cマウスの腹腔内に0.5mLの液体パラフィン油を注入した。1週間後、対数増殖期のハイブリドーマ細胞を1000rpmで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。ハイブリドーマ細胞を血清不含培地に懸濁し、細胞の数を(1~2)×10/mLに調整し、細胞0.5mLを各マウスの腹腔内に注入した。7日~10日後、マウス腹部は明らかに肥大しており、マウスを頚椎脱臼により屠殺し、水道水でリンスし、75%エタノール中に5分間浸し、腹部を上にして、マウス解剖台上にマウスの肢を注射針で固定した。マウスの腹部皮膚をピンセットで持ち上げ、切断して小さい開口部を作り、次いで、マウスの両側部から背中まで切断して切開を行い、大きなピンセットで皮膚を上下に引き裂いて、腹部を完全に露出した。無菌眼科鉗子で腹膜を持ち上げ、腹膜中央に小さいスリットを作り、次いで、1mLピペットを使用して、小さいスリットを通じて、腹腔中の全ての腹水を採取した。収集した腹水を混合し、遠心管中、3000rpmで20分間遠心分離した。遠心分離後、上清を収集した。
【0135】
2.4 モノクローナル抗体腹水の精製
硫酸アンモニウム沈殿、及びプロテインAアフィニティクロマトグラフィ(GE、米国より購入)による精製によって、精製したモノクローナル抗体を得た。
【0136】
上記方法により、以下のモノクローナル抗体:1B11、2A7、6E1、14C6、18B2-2、14C7、5H4、1F9を得た。これらのうち、得られたハイブリドーマ細胞株2A7及び18B2-2を、China Center for Type Culture Collection(CCTCC)に上述のように寄託した。
【0137】
実施例3:抗HBcAgマウスモノクローナル抗体のin vitroエピトープ同定
3.1 ペプチド合成
HBV配列GenBank ID:CAA59669.1を参照配列として使用して、31個のポリペプチドを合成した(Shanghai Sangon Biotechnology Co., Ltdに委託)。これらの31個のポリペプチド(s1~s31)は共に、HBcAgの全長183アミノ酸を含んだ。S1~S31のポリペプチド情報は以下の表1に示され、HBcAgの全長アミノ酸配列は、GenBank:GU357842.1に示された。
【0138】
【表2】
【0139】
3.2 ポリペプチドS1~S31と、抗HBcAgマウスモノクローナル抗体との反応性の分析
3.2.1 反応プレートの調製
ポリペプチドを、50mM CB緩衝液(NaHCO/NaCO緩衝剤、最終濃度50mM、pH9.6)、pH9.6で、5μg/mLの最終濃度に希釈し、100μLのコーティング溶液を96ウェルELISAプレートの各ウェルに添加し、2℃~8℃で16時間~24時間、次いで、37℃で2時間、コーティングを行った。PBST洗浄溶液(20mM PB7.4、150mM NaCl、0.1%Tween20)で1回洗浄を行い、次いで200μLのブロッキング溶液(20%ウシ血清及び1%カゼインを含む20mM NaHPO/NaHPO緩衝溶液、pH7.4)を各ウェルに添加し、ブロッキングのため、37℃で2時間静置させた。ブロッキング溶液を廃棄した。乾燥後、後の使用のためにアルミニウムホイルの袋中、2℃~8℃で保管した。
【0140】
3.2.2 抗HBcAgマウスモノクローナル抗体のELISA検出
2.1で得られた抗HBcAgマウスモノクローナル抗体を、定性的ELISA検出のため、20%新生ウシ血清を含むPBS溶液で、1μg/mLに希釈した。
【0141】
試料反応。ポリペプチドでコーティングされている36枚のELISAプレートを取り、各ウェルに100μLの希釈試料を添加し、インキュベーター中に入れて37℃で30分間反応させた。
【0142】
酵素標識反応。試料反応工程が完了した後、ELISAプレートを、PBST洗浄溶液(20mM PB7.4、150mM NaCl、0.1%Tween20)で5回洗浄し、HRP標識ヤギ抗マウスIgG(GAM)の100μL反応溶液を各ウェルに添加し、インキュベーター中に入れて、37℃で30分間反応させた。
【0143】
発色反応。酵素標識反応工程が完了した後、ELISAプレートを、PBST洗浄溶液(20mM PB7.4、150mM NaCl、0.1%Tween20)で5回洗浄し、50μLのTMB発色剤(Beijing Wantai Bio-pharmaceutical Co., Ltd.より購入)を各ウェルに添加し、インキュベーター中に入れて、37℃で15分間反応させた。
【0144】
反応終結及び読み取り値の測定。発色反応工程が完了した後、50μLの停止溶液(Beijing Wantai Bio-pharmaceutical Co., Ltd.より購入)をELISAプレートの各ウェルに添加し、各ウェルのOD450/630値をマイクロプレート読み取り装置によって測定した。
【0145】
36種類のポリペプチドと、抗HBcAgマウスモノクローナル抗体との反応性の判定。反応後の読み取り値に従って判定を行った。測定値/バックグラウンド値の比が5より大きい場合、陽性と判定された。
【0146】
3.2.3 抗HBcAgマウスモノクローナル抗体の認識特性の分析
結果を表2に示した。得られた抗HBcAgマウスモノクローナル抗体の認識タイプは(認識特性に従って)5つの群、すなわちsA、sB、sC、sD、sEに分けることができ、このうち、sA群抗体によって認識されるポリペプチドはS29/S30であり、2A7、14C6、及び14C7はsA群に属した。sB群抗体によって認識されるポリペプチドはS31であり、1F9及び18B2-2はsB群に属した。sC群抗体によって認識されるポリペプチドはS1であり、sD群抗体によって認識されるポリペプチドはs26、s27であり、sE群抗体によって認識されるポリペプチドはs15及びs16であった。
【0147】
【表3】
【0148】
対応するエピトープと抗体2A7、18B2-2の検出結果を表3に示し、この表は、2A7のエピトープが141aa~152aaにあり、18B2-2のエピトープが150aa~183aaにあることを示した。
【0149】
【表4】
【0150】
実施例4:in vivoのエピトープ同定
4.1 真核プラスミド構築
HBV遺伝子のHBcAg配列及びそのN末端の-29~-1の配列からなる、総数222アミノ酸を含む断片中の配列を、真核発現ベクター(EHRPベクター、厦門大学、National Research Center of Infectious Disease Diagnostic Reagent and Vaccine Engineering Technology Research Centerより得た)中のCMVプロモーター下流に構築し、その構造の模式図を図1に示し、ここで、C149~C183は、C末端からそれぞれの数字に対応するアミノ酸位まで一部切除された(truncated)HBcAg配列(+1位より始まる)を指し、pca-C183は-29~183断片を指し、pcb-C183は-20~183断片を指し、pcc-C183は-10~183断片を指した。
【0151】
4.2 真核発現及びウェスタンブロット評価
293β5細胞を6ウェルプレートに入れ、接着12時間後に細胞密度が約80%~90%に到達したら、トランスフェクションを行い、lipo3000トランスフェクション試薬を用いて、構築された真核発現プラスミドを293β5細胞内にトランスフェクションした。トランスフェクション12時間後に培地(DMEM+10%Gibco FBS)での置換を行い、培養を48時間続けた。細胞上清を廃棄し、細胞をPBSで1回洗浄し、300μLの細胞溶解溶液を各ウェルに添加し、4℃で1時間静置させて溶解を行った。溶解物を1.5ml EP試験管中に収集し、12000rpm、4℃で10分間遠心分離し、上清を清浄な1.5ml EP試験管内に収集し、溶解した試料をウェスタンブロット分析に供した(二次抗体はproteintec社より購入したヤギ抗マウスHRPであった)。
【0152】
4.3 結果の分析
in vivo真核発現によって構築された、異なる長さの抗原を用いてモノクローナル抗体を評価し、結果を図2に示した。結果は、2A7-21の認識部位が141aa~152aaであることを立証した。
【0153】
実施例5:二重抗体サンドイッチ法における、磁気ビーズコーティングモノクローナル抗体及びアクリジニウムエステル標識モノクローナル抗体のスクリーニング
本実施例において、慣用的な二重抗体サンドイッチ法の実験条件を採用して、磁気ビーズをコーティングするためのモノクローナル抗体及びアクリジニウムエステルで標識するためのモノクローナル抗体の最適な対形成をスクリーニングした。
【0154】
5.1 HBcAg磁気ビーズコーティングモノクローナル抗体の調製
磁気微粒子溶液を調製し、磁気微粒子は、1.5μm~3μmの粒子サイズを持ち、表面上を親水性ポリマー及びカルボキシル基でコーティングされた磁気ビーズであった。調製法は以下の通りであった。1:1:1の質量比の磁気微粒子、EDC及びNHSに、pH5.0の50mM MES溶液を添加して、磁気微粒子濃度を4mg/mLにした。これを次いで、活性化のため、25℃の環境温度で20分間、垂直回転装置上に装填した。活性化された磁気微粒子及び抗HBcAgモノクローナル抗体を、磁気微粒子mgあたり15μgの抗HBcAgモノクローナル抗体の比で、標識のため垂直回転装置上に装填し、25℃の環境温度で3時間、反応を行った。反応後の磁気微粒子を洗浄溶液で3回洗浄し、次いで、グリシン、0.5%ウシ血清アルブミン及び0.05%Triton X-100を含むpH7.4のリン酸緩衝液を添加して、磁気微粒子が4mg/mLの濃度を有するようにし、終結のため、25℃の反応温度で2時間、垂直回転装置上に装填した。終結後、磁気微粒子を洗浄溶液で3回洗浄し、0.5%(W/V)ウシ血清アルブミン、0.5%(W/V)カゼイン、0.05%(W/V)Triton X-100、及び保存剤を含むpH7.4のリン酸緩衝液を添加して、磁気微粒子が4mg/mLの濃度を有するようにし、後の使用のために2℃~8℃で保存した。
【0155】
aa150~aa183を認識するモノクローナル抗体(18B2-2、1F9)で、上述の方法に従って、MS300磁気ビーズをコーティングして、磁気微粒子溶液を調製した。
【0156】
5.2 HBcAgアクリジニウムエステル標識モノクローナル抗体の調製
アクリジニウムエステル標識抗体溶液を調製し、調製法は以下の通りであった。50μgの標識しようとする抗HBcAgモノクローナル抗体に、300μLの体積に到達するようにNaCl含有リン酸緩衝液を添加し、次いで、5μLのアクリジニウムエステルストック溶液を添加し、振盪し、混合して、暗所中、室温で30分間反応を行った。反応後、NaCl及びグリシンを含むリン酸緩衝液200μLを添加し、手動で20回上下を反転させることによって混合し、反応を暗所中、室温で30分間行った。反応後、産物を透析バッグに移し、暗所中、20mM PBS緩衝液、pH7.4である透析液に対して2℃~8℃で透析し、PBS緩衝液を2時間ごとに全部で3回交換して、非標識アクリジニウムエステルを除去した。ウシ血清アルブミンが0.1%(V/V、1:100)の最終濃度を有するように、標識産物に、実際の体積に従って、10%(W/V)ウシ血清アルブミンを添加し、次いで、等体積のグリセロールを添加し、手動で上下を反転させることによって混合し、後の使用のため、暗所中、-15℃で保管した。
【0157】
6つのHBcAgモノクローナル抗体(1B11、2A7、6E1、14C6、14C7、5H4)を上述の方法によってアクリジニウムエステルで標識した。
【0158】
5.3 実験法
5.3.1 試料:
HBVウイルス陽性(PCR検出)臨床血清試料を準備し、1×10、1×10、1×10、1×10、1×10の異なるDNA装填に達するように20%NBSで希釈して、検出用の陽性試料を得た。HBVウイルス陰性(PCR検出)臨床血清試料も準備した。
【0159】
5.3.2 試料の装填:
25μlの試料に12.5μlの20%LDSを添加し、混合し、次いで37℃で30分間インキュベーションした。30μlの10%CHAPSを添加し、混合して中和し、次いで、50μlの磁気ビーズコーティングモノクローナル抗体を添加し、37℃で15分間インキュベーションした。インキュベーション完了後、0.05%~0.08%Tween20を含むリン酸緩衝液で洗浄を行い、次いで、50μlのアクリジニウムエステル標識モノクローナル抗体を添加し、振盪し、混合して、37℃で10分間インキュベーションした。インキュベーション後、0.05%~0.08%Tween20を含むリン酸緩衝液で洗浄を行い、100μl~200μlのプレトリガー溶液を添加してプレトリガーを行った。プレトリガー溶液を除去した後、100μl~200μlのトリガー溶液を添加して、トリガー及び検出を行った。
【0160】
上述の方法によって、各アクリジニウムエステル標識モノクローナル抗体と対形成した各磁気ビーズコーティングモノクローナル抗体の直交検出を行い、P/N(陽性試料の平均値対陰性試料の平均値の比)を計算した。結果を以下の表に示した。
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
表4-1及び表4-2は、HBcAg aa150~aa183を認識する(すなわちHBcAgのアルギニンリッチドメイン(ARD)を認識する)抗体を使用して磁気ビーズをコーティングし、標識抗体としてHBcAgの1aa~149aa中の異なるエピトープを認識するモノクローナル抗体を使用することによって、異なるDNA装填を含む試料の検出結果を示した(P/N>3は陽性に相当した)。結果は、HBcAg 141aa~154aaエピトープを認識する3つの抗体(2A7、14C6、14C7)を標識抗体として使用した場合、異なるHBV DNA装填を含む試料の検出効果は、他の抗体対のものよりも有意に優れていることを示した。
【0164】
実施例6:酵素イムノアッセイ及びHBcAgを検出するための検出試薬
モノクローナル抗体18B2-2をリン酸緩衝液(20mmol/LPB、pH7.4)で希釈し、ポリ塩化ビニルプレート上にコーティングし、モノクローナル抗体2A7をセイヨウワサビペルオキシダーゼ(Beijing Wantai Bio-pharmaceuticals, Co., Ltd.)で標識した。試験しようとする試料は、1μg/mlの濃度のC183抗原希釈物、1μg/mlの濃度のC149抗原(厦門大学のLaboratory of National Infectious Disease Diagnostic Reagent and Vaccine Engineering Technology Research Centerによって開発)希釈物、陽性試料1/2、陰性試料1/2、及び20%nbsを含んだ。
【0165】
試料を実施例5におけるものと同じ方法で処理して、ウイルスを溶解した。続いて、2A7-HRP(1/500希釈)を添加して、40分間インキュベーションし、プレートを5回洗浄し、各50μlの色素原溶液A及びB(Beijing Wantai Bio-Pharmaceuticals, Co., Ltd.)を添加し、15分間インキュベーションした。最後に、停止溶液(2M HSO)を添加し、穏やかに振盪し、よく混合して、450~620の波長の値をマイクロプレート読み取り装置上で読み取った。結果を図3に示し、本発明の酵素イムノアッセイ検出試薬は、HBcAgを特異的に検出し得たが、c149(すなわちHBeAg)を検出せず、優れた特異性を有することが示された。
【0166】
実施例7:化学発光検出法及びHBcAgを検出するための試薬
7.1 検出キットの調製
7.1.1 磁気ビーズコーティングモノクローナル抗体の調製
磁気微粒子は、1.5μm~3μmの粒子サイズを持ち、表面上を親水性ポリマー及びカルボキシル基でコーティングされた磁気ビーズであった。調製法は以下の通りであった。1:1:1の質量比の磁気微粒子、EDC及びNHSに、pH5.0の50mM MES溶液を添加して、磁気微粒子濃度を4mg/mLにして、次いで、活性化のため、25℃の環境温度で20分間、垂直回転装置上に装填した。活性化された磁気微粒子及び18B2-2モノクローナル抗体を、磁気微粒子mgあたり15μgのHBcAgモノクローナル抗体の比で、標識のため垂直回転装置上に装填し、25℃の環境温度で3時間、反応を行った。反応した磁気微粒子を洗浄溶液で3回洗浄し、グリシン、0.5%ウシ血清アルブミン、0.05%Triton X-100を含むpH7.4のリン酸緩衝液を添加して、磁気粒子が4mg/mLの濃度を有するようにし、終結のため、25℃の反応環境温度で2時間、垂直回転装置上に装填した。終結後、磁気粒子を洗浄溶液で3回洗浄し、0.5%(w/v)ウシ血清アルブミン、0.5%(w/v)カゼイン、0.05%(w/v)Triton X-100、及び保存剤を含むpH7.4のリン酸緩衝液を添加して、磁気微粒子が4mg/mLの濃度を有するようにし、後の使用のために2℃~8℃で保存した。
【0167】
7.1.2 アクリジニウムエステル標識モノクローナル抗体の調製
調製法は以下の通りであった。50μgの標識しようとする2A7モノクローナル抗体に、300μLの体積に到達するようにNaCl含有リン酸緩衝液を添加し、次いで、5μLのアクリジニウムエステルストック溶液を添加し、振盪し、よく混合して、暗所中、室温で30分間反応を行った。反応後、NaCl及びグリシンを含むリン酸緩衝液200μLを添加し、手動で20回上下を反転させることによって混合し、反応を暗所中、室温で30分間行った。反応後、産物を透析バッグに移し、暗所中、20mM PBS緩衝液、pH7.4である透析液に対して2℃~8℃で透析し、PBS緩衝液を2時間ごとに全部で3回交換して、非標識アクリジニウムエステルを除去した。ウシ血清アルブミンが0.1%(V/V、1:100)の最終濃度を有するように、標識産物に、実際の体積に従って、10%(W/V)ウシ血清アルブミンを添加し、等体積のグリセロールを添加し、手動で上下を反転させることによって混合し、後の使用のため、暗所中、-15℃で保管した。
【0168】
7.2 検出法
1.調製。7.1で得られたキットを静置させ、室温(18℃~30℃)で15分~30分間平衡化した。
2.液体調製。後の使用のため、50mlの濃縮洗浄溶液(20×)を蒸留水又は脱イオン水で1000mlに希釈した。
3.試料添加。試験しようとする試料25μlを、それぞれ、対応するウェルに添加した。
4.溶解。実施例5で記載するものと同じ方法を採用してウイルスを溶解した。
5.反応。50μlの磁気ビーズコーティングモノクローナル抗体18B2-2を試料ウェルに添加し、よく混合した後、プレートを密封フィルムで密封し、37±1℃で15分間インキュベーションした。15分~20分間インキュベーションした後、0.05%~0.08%Tween20を含むリン酸緩衝液で洗浄を行い、次いで、50μlのアクリジニウムエステル標識抗体2A7を添加し、10分~15分間インキュベーションした。インキュベーション後、0.05%~0.08%Tween20を含むリン酸緩衝液で洗浄を行い、次いで、100μl~200μlのプレトリガー溶液を添加してプレトリガーを行った。次いで、プレトリガー溶液を除去し、100μl~200μlのトリガー溶液を添加して、トリガー及び検出を行った。
【0169】
結果判定
閾値:カットオフ(C.O.)=9000
結果判定:(S=各ウェルの発光値)
陰性結果:(S/C.O.<1):試料の発光値がカットオフ値未満である場合、陰性と決定し、これは、HBVコア抗原が試料中に検出されないことを意味した。
陽性結果:(S/C.O.≧1):試料の発光値がカットオフ値以上である場合、陽性と決定し、これは、HBVコア抗原が試料中で検出されることを意味した。
【0170】
実施例8:HBcAg検出キットの特異度及び感度分析
8.1 コア抗原検出キットの特異度分析
8.1.1 キットの調製
HBVコア抗原を検出するための発光診断キット(発光検出試薬法)を、実施例7に記載されるような方法に従って調製した。
【0171】
8.1.2 試料の検出
B型肝炎血清学試験のHBsAg、HBsAb、HBeAg、HBeAb及びHBcAb5の全ての項目で陰性結果を有する、2019年4月から現在までに収集された総数80の試料を、-20℃で凍結保存した。
【0172】
8.1.3 検出項目
血清試料各々を、B型肝炎ウイルスコア抗原に関する化学発光検出に供し、この方法は実施例7に示された。
【0173】
8.1.4 検出結果
全ての試料を検出した後、キットの特異度に関して結果を分析した。各試料の検出結果を以下の表に示した。
【0174】
【表7】
【0175】
8.1.5 結果及び分析
表7中の結果から、S/C.O.<1は、HBVコア抗原が試料中で検出されなかったことを示し、特異度が優れていることが見て取れる。
【0176】
8.2 コア抗原検出キットの感度分析
8.2.1 キットの調製
(発光検出試薬法によって)HBVコア抗原を検出するための発光診断キットを、実施例7に記載されるような方法に従って調製した。
【0177】
8.2.2 試料の検出
8.2.2.1. B型肝炎ウイルス核酸定量的PCR検出試薬によって検出される、1.60E+08コピー/mLのDNA装填を含む1つの新鮮な血清試料を、3倍勾配、11ポイントで、20%NBSでの線形希釈に供し、20%NBSを陰性対照として使用した。実施例8に記載される方法に従って検出を行い、参照曲線を作成した。
【0178】
8.2.2.2. C183B抗原を20%NBSで1μg/mlに希釈し、3倍勾配、11ポイントで希釈に供し、C183B抗原を含まない20%NBSを陰性対照として使用した。実施例8に記載される方法に従って検出を行い、上記参照曲線を使用して、各ポイントでの抗原検出に対応する値を変換した。結果を以下の表に示した。
【0179】
【表8】
【0180】
8.2.2.3. 結果及び分析
表8のデータにおいて、1より大きいS/C.Oは陽性に相当する一方、1未満は陰性に相当した。結果は、c183の抗原検出感度が0.05ng/mlであり、試料検出感度が約10コピー/ml(DNA装填)であることを示した。
【0181】
実施例9:HBcAg検出キット及びPCR検出法の比較
9.1 キットの調製
9.1.1 (発光検出試薬法によって)HBVコア抗原を検出するための発光診断キットを、実施例7に記載されるような方法に従って調製した。
【0182】
9.1.2 B型肝炎ウイルス核酸定量的PCR検出試薬を、Shenzhen Piji Bioengineering Co., Ltd.より購入した。
【0183】
9.2 検出試料
2019年4月から現在までに収集された総数82のB型肝炎ウイルス感染血清試料を、-20℃で凍結保存した。
【0184】
9.3 検出項目
各血清試料に対して、B型肝炎ウイルス核酸の定量的PCR検出を行った。
【0185】
各血清試料に対して、B型肝炎ウイルスコア抗原の化学発光検出を行った。
【0186】
9.4 検出結果
HBVコア抗原検出とHBVウイルス核酸検出との間の相関を、全ての項目の検出結果を比較することによって、分析した。結果を以下の表に示した。
【0187】
【表9-1】
【表9-2】
【0188】
9.5 結果の分析
表9において、S/C.O.>1は、コア抗原が試料中で検出されることに相当し、S/C.O.<1は、コア抗原が試料中で検出されないことに相当した。HBcAg検出の結果と、PCR法によって得られたDNA装填結果との間で相関分析を行った。特に、ウイルス含量の対数及び各試料の発光強度を取り、線形相関分析を行った。図4に示すように、Rは0.8368であり、この結果は、本発明のHBcAg検出法の検出成績が優れており、試料のDNA装填を評価するために使用され得ることを示した。
【0189】
実施例10:他の免疫学的アッセイにおける2A7モノクローナル抗体の使用
10.1 HBcAg免疫蛍光検出抗体としての2A7の使用
HepG2(厦門大学、Laboratory of National Infectious Disease Diagnostic Reagent and Vaccine Engineering Technology Research Centerより得た)及びHBV 1.1倍ゲノムを安定に組み込んだHepG2-N10細胞(厦門大学、Laboratory of National Infectious Disease Diagnostic Reagent and Vaccine Engineering Technology Research Centerより得た)を、ウェルあたり60000細胞で24ウェルプレート中にプレーティングした。細胞接着のため12時間置いた後、培地を除去し、20mM PBSで洗浄を1回行った。4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した後、細胞を0.02%Triton x-100で10分間透過処理し、2%BSAで1時間ブロッキングした。次いで、2%BSAによって1:1000の希釈比で希釈した2A7モノクローナル抗体(1mg/ml)を添加し、室温で1時間インキュベーションし、PBSで4回洗浄した。蛍光二次抗体、ヤギ抗マウスAlexa488(Beyotime、カタログ番号第A0428号)を添加し、室温で40分間インキュベーションを行った。PBSで4回洗浄した後、核に関してDAPI染色を行った。実験完了後、Opera phenixレーザー共焦点ハイコンテントイメージング系を用い、63×水浸対物レンズ(water objective)で細胞の写真撮影を行った。
【0190】
結果を図5に示し、2A7は、細胞質において、HBVゲノムが組み込まれたHepG2-N10細胞に明確な免疫反応を有したが、HBVゲノムが組み込まれていない細胞には結合を示さず、優れた特異性を示した。上記結果は、2A7が正確な検出のため、HBcAgの免疫蛍光抗体として使用され得ることを示した。
【0191】
10.2 HBcAg免疫組織化学検出のためのモノクローナル抗体としての2A7の使用
現在、HBcAg免疫組織化学検出に使用される抗HBcAg抗体はポリクローナル抗体であるが、ポリクローナル抗体は、しばしば、高いバックグラウンド及び低い特異性を有し、これらを使用した免疫組織化学結果は標準化が容易ではない。免疫組織化学検出のための抗HBcAgモノクローナル抗体の使用に関する報告はない。本実験において、免疫組織化学検出抗体としての2A7モノクローナル抗体の性能を調べた。
【0192】
HBVトランスジェニックマウスHBV-TG(厦門大学、Laboratory of National Infectious Disease Diagnostic Reagent and Vaccine Engineering Technology Research Centerより得た)及び正常C57BL/6マウス(Shanghai SLAC Laboratory Animal Co., Ltd.より得た)の肝臓組織パラフィン切片を、脱ワックス、再水和、抗原回収、洗浄、ブロッキングに供し、次いで、室温で1時間反応させるため、抗HBc市販ポリクローナル抗体及び2A7モノクローナル抗体を添加した。洗浄後、二次抗体を添加し、室温で10分間反応させた。洗浄後、発色溶液を添加して染色を行った後、塩酸識別(hydrochloric acid differentiation)、対比染色、及びマウントを行った。
【0193】
結果を図6に示した。市販のポリクローナル抗体同様、2A7モノクローナル抗体は、HBVトランスジェニックマウスの組織パラフィン切片を正確に検出可能であり、正常マウスの組織パラフィン切片に結合せず、2A7もまた、正確な検出のため、HBcAgの免疫組織化学抗体として使用され得ることが示された。
【0194】
本発明の特定の実施形態が詳細に説明されるが、当業者は、公開された全ての教示に照らして、詳細に様々な修正及び変更を加えることができること、並びにこれらの変更が全て本発明の範囲内にあることを理解する。本発明の全範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれに相当するものによって与えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023510589000001.app
【国際調査報告】