(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】腫瘍サンプルの単一細胞病理解析
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20230307BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20230307BHJP
C12Q 1/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230307BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G01N33/574 A
G01N33/48 M
C12Q1/00 C
A61P35/00
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543398
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2021050971
(87)【国際公開番号】W WO2021144474
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】515098691
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,ハートランド
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ボーデンミラー,ベルント
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA24
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
2G045FA19
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QS33
4B063QX01
4C084AA17
4C084NA05
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC511
(57)【要約】
本発明は、がんサンプルを標識分子プローブで標識し、複数の生体分子の発現を単一細胞の分解能でアッセイし、そしてその発現パターンに基づいてサンプル中の各単一細胞に細胞同一性(CI:cellular identity)を割り当て;次に、サンプルが含有する各CIの割合にしたがって単一細胞病理(SCP:single cell pathology)患者群を割り当てることによってがん患者の臨床アウトカムを示す方法に関するものである。
本発明は、他の態様では、特定のSCPへの患者の割り当てに応じて抗がん剤で患者を治療する方法に関する。あるいは、この態様は、特定のSCPに割り当てられた腫瘍を特徴とする患者のがんの治療のために、特定の薬剤を提供することとして編成することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳がん患者の腫瘍を特徴づける方法であって、特に乳がん患者の臨床アウトカム又は薬剤感受性を示す方法の一部としての前記方法であって、
以下の工程:
a. 患者から得られるがん組織サンプルを提供する工程であり;特に前記がん組織がヒト乳房又はヒト乳腺上皮に由来するものである、前記工程;
b. 前記がん組織サンプルを、各プローブが生体分子に特異的である複数の分子プローブで標識する工程であり、前記分子プローブの各々は検出可能なマーカーによって特徴づけられ、かつ前記生体分子は:
i. 上皮性カドヘリン(E-カドヘリン)、
ii. サイトケラチン(CK)18及び/又は19、
iii. CK7、
iv. エストロゲン受容体(ER)及び/又はプロゲステロン受容体(PR)、
v. 細胞増殖のマーカー、特にKi-67及び/又はPCNA、
vi. CK5及び/又はp63及び/又はCK14、
vii. p53、
viii. ホルモン受容体(HR)、特にエストロゲン及び/又はプロゲステロンの受容体(それぞれ、ER及びPR)、
ix. アポトーシスのマーカー、特にポリADP-リボースポリメラーゼの切断型(cPARP)及び/又はカスパーゼ3の切断型(cC3)、
x. 上皮成長因子受容体(EGFR)、
xi. 低酸素のマーカー、特に炭酸脱水酵素(CAIX);及び
xii. DNA含有量のマーカー、特にDNAインターカレーティング色素;
を含むか、又はそれからなるリストから選択される、前記工程;
c. 読み取り工程において、単一細胞の分解能にて前記複数の生体分子の各々の発現に関する情報を取得する工程;
d. 細胞割り当て工程において、前記複数の生体分子の発現に基づいて前記標識組織サンプル中の各単一細胞に細胞同一性(CI:cellular identity)を割り当てる工程であり、前記細胞同一性は、以下のリスト:
CI1. CIAX
hi、EGFR-、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+;
CI2. p53
hi、(cC3及び/又はcPARP)+、(ER及び/又はPR)-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI3. (Ki-67及び/又はPCNA)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI4. p53
hi、EGFR+、CIAX
hi、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI5. (CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-;
CI6. E-カドヘリン
hi、(CK18及び/又はCK19)
hi、CK7+、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI7. CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI8. E-カドヘリン-、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-、(ER及び/又はPR)-;
CI9. (E-カドヘリン
lo又はE-カドヘリン-)、((CK18及び/又はCK19)-又は(CK18及び/又はCK19)
lo)、(ER及び/又はPR)
lo、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI10. ((CK18及び/又はCK19)
hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)
hi、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI11. ((CK18及び/又はCK19)
hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)+、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI12. (E-カドヘリン
lo又はE-カドヘリン+)、((ER及び/又はPR)
lo又は(ER及び/又はPR)-)、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI13. p53
hi、EGFR+、(ER及び/又はPR)
hi、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)
lo及び/又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI14. CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、(ER及び/又はPR)-
に従うマーカーにより識別される生体分子の細胞の発現に応じて割り当てられる、前記工程、
e. 病理群の割り当て工程において、前記細胞割り当て工程で割り当てられた前記サンプルが含有する各々の細胞同一性の割合に応じて、前記がん組織サンプルを単一細胞病理(SCP:single cell pathology)患者群に割り当てる工程であり、前記SCP患者群のリストは:
SCP1. 単一細胞の(>)70%超過がCI10であること;
SCP2. 単一細胞の(>)70%超過がCI11であること;
SCP3. 単一細胞の(≦)70%以下がCI10であること;
SCP4. CI12に対して単一細胞が(>)70%超過であること;
SCP5. 単一細胞の(≦)70%以下がCI12であること;
SCP6. 単一細胞の(>)80%超過がCI9であること;
SCP7. 単一細胞の(>)80%超過がCI8であること;
SCP8. 単一細胞の(≦)70%以下がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP9. 単一細胞の(>)60%超過がCI9であること;
SCP10. 単一細胞の(>)70%超過がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP11. 単一細胞の(>)60%超過がCI7であること;
SCP12. 単一細胞の(>)70%超過がCI6であること;
SCP13. 単一細胞の(>)50%超過がCI5であること;
SCP14. 単一細胞の(>)60%超過がCI3であること;
SCP15. 単一細胞の(>)70%超過がCI4であること;
SCP16. 単一細胞の(>)50%超過がCI2であること;
SCP17. 単一細胞の(>)50%超過がCI1であること;
SCP18. 単一細胞の(>)90%超過がCI14であること、
を含むか、又はそれからなる、前記工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法は、前記がん組織サンプルの画像を構築することを含む、請求項1に記載の乳がん患者の腫瘍を特徴づける方法。
【請求項3】
前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法は、亜細胞の分解能での、特に(≦)5μm以下、又はさらには(≦)1μm以下の分解能でのイメージングマスサイトメトリーである、請求項1又は2に記載の乳がん患者の腫瘍を特徴づける方法。
【請求項4】
前記方法は、以下の工程:
a. 前記標識工程において:
xiii. CD3又はCD90;
xiv. CD20又はCD19;
xiv. CD68;
xv. CD44及び/又はCD45;
xvi. フィブロネクチン;
xvii. ビメンチン、及び
xviii. CD31及び/又はフォン・ヴィレブランド(von Willibrand)因子(vWF)及び/又はCD34;
から選択されるさらなるマーカーを含む、前記工程;
b. 前記細胞割り当て工程において:
CI15. CD44+、CD45+、(CD3又はCD90)+、フィブロネクチン-、E-カドヘリン-、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)
lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI16. CD20+、(フィブロネクチン
lo又はフィブロネクチン-)、((E-カドヘリン
lo又はE-カドヘリン-)、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)
lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI17. (CD3又はCD90)+、(CD20又はCD19)+;
CI18. CD68+;
CI19. ビメンチン+、(CD34及び/又はVWF及び/又はCD31)+;
CI20. ビメンチン-、(フィブロネクチン+又はフィブロネクチン
hi)、(CD3又はCD90)-、(CD20又はCD19)-、CD45-、CD44-;
から選択されるさらなる細胞同一性を含む、前記工程、
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の乳がん患者の腫瘍を特徴づける方法。
【請求項5】
前記単一細胞は、前記がん組織サンプルの画像の断片であり、特に、膜結合分子が単一核を取り囲む領域内のピクセルからなる断片である、請求項2~4のいずれか一項に記載の乳がん患者の腫瘍を特徴づける方法。
【請求項6】
前記方法は、以下の工程:
a. 細胞コミュニティ検出工程において、がん組織サンプルの画像を多細胞領域に区画する工程であり、前記多細胞領域内の各単一細胞は、隣接細胞と高度に相互接続されて、細胞コミュニティを提供する、前記工程;
b. 細胞コミュニティ割り当て工程において、各細胞コミュニティに細胞コミュニティ同一性(CCI:cellular community identity)を、細胞コミュニティ内の細胞の数、及び含有する各細胞コミュニティ(CI)の割合にしたがって割り当てる工程であり、前記CCIのリストは:
CCI1. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の(>)10%超過がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(>)25超過の細胞であること;又は
CCI2. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の(>)10%超過がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(≦)25以下の細胞であること;又は
CCI3. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の(>)10%超過がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(>)25超過の細胞であること;又は
CCI4. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の(>)10%超過がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(≦)25以下の細胞であること;又は
CCI5. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、細胞の(>)10%超過がCI3であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(≦)25以下の細胞であること;又は
CCI6. 全細胞の(>)5%超過がCI19であり、かつ細胞の(>)10%超過がCI20であり、かつ細胞の(>)3%超過がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(<)50未満の細胞であること、又は
CCI7. 全細胞の(>)80%超過がCI1~CI15のいずれかの同一性であり、かつ(<)10%未満がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(<)75未満の細胞であること、又は
CCI8. 全細胞の(>)20%超過がCI15、及び/又はCI16、及び/又はCI17であり、かつ(<)40%未満の細胞がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが75超過の細胞であること;又は
CCI9. 全細胞の(>)5%超過がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(>)25%超過であること;又は
CCI10. 全細胞の(>)80%超過がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ(<)2%未満の細胞がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが(>)115超過の細胞、かつ(<)125未満の細胞であること、
を含むか、又はそれからなる、前記工程、
を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の乳がん患者の腫瘍を特徴づける方法。
【請求項7】
前記患者割り当て工程において、患者は、前記病理群割り当て工程におけるサンプルのSCP分類にしたがって、及び/又は前記細胞コミュニティ割り当て工程におけるサンプルのCCI分類にしたがって、推定アウトカム群:
- SCP1,良好なアウトカムの可能性が高く、かつ以下の:
・ 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:selective oestrogen receptor modulator)の抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
・ 選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD:selective estrogen receptor degrader)の抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラントから選択されるSERD薬;
・ アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235SCP2から選択されるPI3K経路阻害薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP2,以下の:
・ 抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、サリドマイド及びレナリドマイドから選択される抗血管新生の抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102、H2NVAC、HER2.taNK細胞、HER2パルス化樹状細胞、及びHER2標的化T細胞から選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP3,不良なアウトカムの可能性が高く、以下の:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)及びトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特にアザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサートから選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬;
・ 選択的SERM抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
・ SERD抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラントから選択されるSERD抗悪性腫瘍薬;
・ アロマターゼ阻害剤薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235から選択されるPI3K経路阻害薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP4,ERを標的とする抗悪性腫瘍薬に感受性を欠く可能性が高く、特に以下の:
・ SERM抗悪性腫瘍薬、より特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
・ SERD抗悪性腫瘍薬、より特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラントから選択されるSERD抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬
に感受性を欠く可能性が高いこと;
- SCP5,以下の:
・ EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特に3-デアザネプラノシンA(DZNep)、タゼメトスタット、EPZ005687、EI1、GSK126、又はUNC199から選択されるEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP6,不良なアウトカムの可能性が高く、以下の:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP7,以下の:
・ 抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、サリドマイド及びレナリドマイドから選択される抗血管新生の抗悪性腫瘍薬
に感受性を欠く可能性が高いこと、
及び以下の:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP8,悪いアウトカムの可能性が高いこと;
- SCP9,以下の:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP10,以下の:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP11,良好なアウトカムの可能性が高く、かつ以下の:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬、及び/又は
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235から選択されるPI3K経路阻害薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP12,不良なアウトカムの可能性が高く、以下の:
・ EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特に3-デアザネプラノシンA(DZNep)、タゼメトスタット、EPZ005687、EI1、GSK126、及びUNC199から選択されるEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP13,以下の:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP14,悪いアウトカムの可能性が高く、かつ以下の:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)及びトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特にアザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサートから選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP15,以下の:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)及びトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特にアザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサートから選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ EGFR生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にゲフェチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシミブ(cetuxumib)、ネラチニブ、オシメラチブ(osimeratib)、パニツマミブ(panitumamib)、バンデタニブ、ネシツムマブ、及びダコミチニブから選択されるEGFR生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP16,良好なアウトカムの可能性が高く、以下の:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)又はトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;又は
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特にアザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート又はフォトトレキサートから選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP17,悪いアウトカムの可能性が高く、かつ以下の:
・ キノンアルキル化抗悪性腫瘍薬、特にキノンアルキル化抗悪性腫瘍薬のマイトマイシンC
に感受性がある可能性が高いこと;
- SCP18,ERを標的とする抗悪性腫瘍薬に感受性を欠く可能性が高く、特に以下の:
・ SERM抗悪性腫瘍薬、より特にラロキシフェン、トレミフェン又はタモキシフェンから選択されるSERM薬;
・ SERD抗悪性腫瘍薬、より特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラント;及び/又は
・ アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬;
に感受性を欠く可能性が高く、かつ以下の:
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235から選択されるPI3K経路阻害薬
に感受性がある可能性が高いこと;
- CCI1、CCI3、CCI5、CCI8、CCI9、又はCCI10:良好なアウトカムの可能性が高いこと、
- CCI2、CCI4、CCI6、又はCCI7:悪いアウトカムの可能性が高いこと
に割り当てられる、請求項1~6のいずれか一項に記載の乳がん患者の腫瘍を特徴づける方法。
【請求項8】
がんの患者は、SCP3、SCP14、SCP15、及びSCP16から選択されるSCPに割り当てられている、
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;又は
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;又は
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、四硝酸トリプラチン;又は
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)又はトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;又は
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特にアザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート又はフォトトレキサートから選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬
を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【請求項9】
がんの患者はSCP1、又はSCP3から選択されるSCPに割り当てられている、
a. 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:selective oestrogen receptor modulator)抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
b. 選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD:selective estrogen receptor degrader)の抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)又はエラセストラント;及び/又は
c. アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬
を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【請求項10】
がんの患者はSCP2に割り当てられている、
抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、サリドマイド又はレナリドマイドから選択される抗血管新生の抗悪性腫瘍薬を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【請求項11】
がんの患者はSCP5、又はSCP12から選択されるSCPに割り当てられている、
EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特に3-デアザネプラノシンA(DZNep)、タゼメトスタット、EPZ005687、EI1、GSK126、又はUNC1999から選択されるEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【請求項12】
がんの患者はSCP15に割り当てられている、
EGFR生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にゲフェチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシミブ(cetuxumib)、ネラチニブ、オシメラチブ(osimeratib)、パニツマミブ(panitumamib)、バンデタニブ、ネシツムマブ、及びダコミチニブから選択されるEGFR生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【請求項13】
がんの患者はSCP17に割り当てられている、
キノンアルキル化抗悪性腫瘍薬、特にマイトマイシンCを含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【請求項14】
がんの患者はSCP2、SCP6、SCP7、SCP9、SCP10、SCP11又はSCP13から選択されるSCPに割り当てられている、
HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102、H2NVAC、及びHER2.taNK細胞、HER2パルス化樹状細胞、HER2標的化T細胞から選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【請求項15】
がんの患者は、SCP1、SCP3、SCP11、又はSCP18から選択されるSCPに割り当てられている、
PI3K経路阻害剤、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、NVPBE235を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞レベルのがん特異的生体分子に特異的なリガンド、特に抗体によるサンプルの多重染色による腫瘍組織サンプルの解析と、その後に起こりうる臨床アウトカム(clinical outcome)を割り当てる方法に関するものである。本発明を実施する上で特に有利な解析方法は、イメージングマスサイトメトリーである。
【0002】
本発明はさらに、本発明の方法によって特定の群に割り当てられた患者のがんの治療のための抗悪性腫瘍薬の使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
腫瘍間の組織学的及び表現型の違いは、がんの診断、予後、及び治療法の選択の指針となる。現在、乳がん患者は腫瘍の構造及び細胞形態学に基づいて等級付けされ、腫瘍細胞の1%を超えるものがホルモン受容体を含有するか、又は10%を超えるものがヒト上皮成長因子受容体2型(HER2)を高レベルで発現するか、又はHER2遺伝子が増幅されているかの場合にサブカテゴリーに分類される。これによりさらなる分子サブクラス及び形態学的特徴が予後として識別されているが、細胞の大部分が特徴づけられていない(Curtisら,Nature 486,346-352(2012);Sorlieら,Proc Natl Acad Sci USA 98,10869-10874(2001);Nature 490,61-70(2012),Beckら,Sci.Transl.Med.3,108ra113(2011))。
【0004】
高度に多重化されるイメージングを用いることで、腫瘍の微小環境の状況における複雑な多細胞表現型が識別され、臨床組織サンプルの精緻な組織病理学的分類が可能になった(Schapiroら;Nat.Methods 14,873-876(2017);Kerenら;Cell 174,1373-1387.e19(2018);Carvajal-Hausdorfら,Clin.Cancer Res.25,3054-3062(2019);Damondら,Cell Metab.29,755-768.e5(2019))。
【0005】
単一細胞解析により、がん組織サンプル間の広範な患者内外の不均一性(heterogeneity)が明らかにされているが、複雑な単一細胞の表現型とその空間的背景は、臨床判断の基礎となる組織学的層別化にはまだ反映されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Curtisら,Nature 486,346-352(2012)
【非特許文献2】Sorlieら,Proc Natl Acad Sci USA 98,10869-10874(2001)
【非特許文献3】Nature 490,61-70(2012)
【非特許文献4】Beckら,Sci.Transl.Med.3,108ra113(2011)
【非特許文献5】Schapiroら;Nat.Methods 14,873-876(2017)
【非特許文献6】Kerenら;Cell 174,1373-1387.e19(2018)
【非特許文献7】Carvajal-Hausdorfら,Clin.Cancer Res.25,3054-3062(2019)
【非特許文献8】Damondら,Cell Metab.29,755-768.e5(2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の先行技術に基づき、本発明の目的は、本組織学的サブカテゴリーより臨床アウトカムについてより正確な情報を提供するために、がん患者、特に乳がん患者を新規の亜群に層別化するために使用できる腫瘍微小環境の多細胞特徴を識別する手段及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本明細書の独立請求項の主題によって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、IHC画像とIMC画像との間の比較と再現性の解析結果を示す図である。散布図は、同じ腫瘍コアの切片における総定量化されたIMCシグナル(イオンカウント/μm
2)を、IHCシグナルの定量化(光学密度/μm
2)、又は同じ腫瘍コア(n=319のコア)からの切片における陽性染色細胞数のいずれかと比較した相関関係を示す。
【
図2】
図2は、同じ腫瘍の異なる領域からの画像間で、陽性に染色された細胞におけるIMCシグナルの再現性を示すブランド-アルトマンプロットを示し、X軸に4つのサンプル間の平均を、Y軸に腫瘍平均に対する個々のサンプルごとの差を視覚化するように適応されている。この解析では、陽性に染色された細胞、かつ合計200を超える細胞を含有する画像のみが考慮された(ER:72人の患者からのn=280のコア、PR:66人の患者からのn=213のコア、HER2:72人の患者からのn=291のコア、Ki67:72人の患者からのn=281のコア、E/P-カドヘリン:65人の患者からのn=200のコア)。赤線は腫瘍平均値に対する差の全体平均を表し、青線は95%信頼区間(1.96×標準偏差)を表す。信頼区間内に入る観測値の割合は、各プロットの上部に表示されている。
【
図3】
図3は、乳がん患者281名のマルチプレックス画像をIMCで取得し、単一細胞の表現型、細胞コミュニティ、腫瘍及び患者の亜分類、及び全患者の生存率を解析するワークフローを説明する模式図を示す。
【
図4】
図4は、細胞メタクラスタ識別子、患者同一性、腫瘍又は間質の分類、腫瘍間質界面までの各細胞の距離、及び各細胞の隣接細胞の数にしたがって色付けされた乳房腫瘍の高次元画像からの、171,288個のサブサンプリングされた単一細胞のtSNEマップによって示される、乳がんの高次元組織病理における単一細胞表現型を示す図である。
【
図5】
図5は、各細胞メタクラスタについて、マーカー発現量又は腫瘍-間質界面までの距離の平均値をzスコア化したヒートマップを示す図である。各細胞メタクラスタの絶対細胞数は棒グラフで表示される。バブルプロットでは、円の大きさは、各クラスタに由来する臨床サブタイプの全細胞の相対的な割合を示し、円の不透明度は、異なる臨床サブタイプに存在する各クラスタの割合を示している。細胞メタクラスタは、
図9と
図10に示した色で示されている。
【
図6】
図6は、PhenoGraphによって定義された多様な腫瘍群を階層的にクラスタリングして、患者の様々な種類を14の共通腫瘍細胞サブタイプ(上皮細胞メタクラスター14~27)に縮小することによって、腫瘍細胞メタクラスタのカットオフをどのように定義したかを示す図である。ヒートマップは、PhenoGraphによって識別された単一細胞の表現型クラスタの平均マーカー発現のzスコアを表示している。カラーバーと階層型クラスタリングは対応するメタクラスタを示す。階層的クラスタリングツリーの赤い星印は、マルチスケールブートストラップリサンプリング(R関数pvclust、p<0.05)を使用して個別の群として堅牢に再表示される14個の亜群を示す。
【
図7-1】
図7は、異なる臨床サブタイプ及びSCP患者の亜群における細胞メタクラスタの密度を示す図である。(a)各臨床サブタイプ(HR+HER2-:n=173、HR+HER2+:n=29、HR-HER2+:n=23、トリプルネガティブ(TripleNeg):n=48)及び(b)各SCP亜群における患者の細胞メタクラスタ密度を箱ひげ図にしたものである(中心線、中央値;ボックス限界、第1及び第3四分位数;ひげ、四分位範囲の1.5倍;ひげを超えた点、外れ値;SCP1:n=17、SCP2:n=21、SCP3:n=20、SCP4:n=12、SCP5:n=32、SCP6:n=10、SCP7:n=13、SCP8:n=11、SCP9:n=20、SCP10:n=24、SCP11:n=31、SCP12:n=14、SCP13:n=15、SCP14:n=11、SCP15:n=8、SCP16:n=10、SCP17:n=9、SCP18:n=3)。
【
図7-2】
図7は、異なる臨床サブタイプ及びSCP患者の亜群における細胞メタクラスタの密度を示す図である。(a)各臨床サブタイプ(HR+HER2-:n=173、HR+HER2+:n=29、HR-HER2+:n=23、トリプルネガティブ(TripleNeg):n=48)及び(b)各SCP亜群における患者の細胞メタクラスタ密度を箱ひげ図にしたものである(中心線、中央値;ボックス限界、第1及び第3四分位数;ひげ、四分位範囲の1.5倍;ひげを超えた点、外れ値;SCP1:n=17、SCP2:n=21、SCP3:n=20、SCP4:n=12、SCP5:n=32、SCP6:n=10、SCP7:n=13、SCP8:n=11、SCP9:n=20、SCP10:n=24、SCP11:n=31、SCP12:n=14、SCP13:n=15、SCP14:n=11、SCP15:n=8、SCP16:n=10、SCP17:n=9、SCP18:n=3)。
【
図7-3】
図7は、異なる臨床サブタイプ及びSCP患者の亜群における細胞メタクラスタの密度を示す図である。(a)各臨床サブタイプ(HR+HER2-:n=173、HR+HER2+:n=29、HR-HER2+:n=23、トリプルネガティブ(TripleNeg):n=48)及び(b)各SCP亜群における患者の細胞メタクラスタ密度を箱ひげ図にしたものである(中心線、中央値;ボックス限界、第1及び第3四分位数;ひげ、四分位範囲の1.5倍;ひげを超えた点、外れ値;SCP1:n=17、SCP2:n=21、SCP3:n=20、SCP4:n=12、SCP5:n=32、SCP6:n=10、SCP7:n=13、SCP8:n=11、SCP9:n=20、SCP10:n=24、SCP11:n=31、SCP12:n=14、SCP13:n=15、SCP14:n=11、SCP15:n=8、SCP16:n=10、SCP17:n=9、SCP18:n=3)。
【
図8】
図8は、定義された細胞メタクラスタに基づく、乳房腫瘍組織における多細胞構造の異なるパターンを示す。細胞コミュニティは、トポロジー的な隣接細胞相互作用ネットワークを構築し、Louvainアルゴリズムを使用してグラフベースのコミュニティ検出アプローチを適用することによって識別した。腫瘍細胞にのみ適用され、コミュニティ検出は、腫瘍コミュニティ(TC:tumour community)と呼ばれる様々なサイズの高密度上皮パッチを識別した。全ての細胞に適用される場合、腫瘍及び間質細胞成分を含有する微小環境コミュニティ(MC)が識別された。代表的な画像により、空間分析における様々な段階を示す。左から右へ、疑似着色したIMC、細胞メタクラスタ識別子によって標識した同じ視野の単一細胞マスク、トポロジー的細胞相互作用ネットワークによって検出された隣接する細胞相互作用、色で標識した上皮コミュニティを識別する腫瘍ネットワークのモジュラー領域、及び腫瘍微小環境コミュニティとして識別される腫瘍間質ネットワークのモジュラー領域である。スケールバー=100μm。
【
図9】
図9は、コミュニティのサイズと腫瘍細胞の表現型(腫瘍コミュニティ、TC)に応じた多細胞コミュニティの群別けを示す。特有の色の腫瘍コミュニティ(n=8495)は、各細胞メタクラスタからの細胞の最小・最大正規化した絶対数に基づいてPhenoGraphでクラスタリングされ、各細胞メタクラスタからの平均細胞数を示すtSNEマップと積み上げ棒グラフの両方で可視化した。
【
図10】
図10は、
図9のように多細胞コミュニティを群別けする第2の方法を示すが、全ての細胞を参照し、腫瘍細胞タイプに対して不可知(アグノスティック(agnostic))である(微小環境コミュニティ、MC(Microenvironment Community))。特有の色の微小環境コミュニティ(n=12,854)は、各細胞メタクラスタからの最小・最大正規化した絶対数に基づいてPhenoGraphでクラスタリングし、tSNEマップと各細胞メタクラスタからの平均細胞数を示す積み上げ棒グラフの両方で可視化した。
【
図11】
図11は、教師なしクラスタリングを用いて腫瘍細胞のメタクラスタ構成に基づいて群別けされた患者の腫瘍を示し、古典的な臨床サブタイプを分割する18個の単一細胞病理(SCP)亜群を識別した図である。(a)階層的にクラスタ化した積み上げ棒グラフは、各腫瘍サンプルの細胞メタクラスタ密度を示す。色のついた列は、古典的な臨床サブタイプ、及び新規のSCP亜群を示す。(b)ヒートマップは、各画像に存在する異なる上皮性腫瘍コミュニティの割合を示している。
【
図12】
図12は、SCP乳がん群と組織学に基づく臨床分類との間の比較と濃縮度を示している。バブルプロットは、SCP乳がん患者の亜群(SCP1:n=17、SCP2:n=21、SCP3:n=20、SCP4:n=12、SCP5:n=32、SCP6:n=10、SCP7:n=13、SCP8:n=11、SCP9:n=20、SCP10:n=24、SCP11:n=31、SCP12:n=14、SCP13:n=15、SCP14:n=11、SCP15:n=8、SCP16:n=10、SCP17:n=9、SCP18:n=3(n値が小さいため除外))と、臨床サブタイプ(HR+HER2-:n=173、HR+HER2+:n=29、HR-HER2+:n=23、トリプルネガティブ(TripleNeg):n=48)との間の重複を視覚化している。濃縮度についての片側フィッシャーの正確検定。・p<0.1、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001。
【
図13ab】
図13は、SCP群の臨床アウトカムが異なることを示している。カプラン・マイヤー曲線は、(a)臨床亜群、(b)臨床等級(グレード)、(c~f)SCP亜群に基づく各患者群(n=278人の患者の合計)の全生存率を示す。両側ログランク検定にて、他の全てのサンプルと比較して
*p<0.05、同様の亜群と比較して
*p<0.05、他のHR
+/HER2
-患者と比較して
*p<0.05。
【
図13cd】
図13は、SCP群の臨床アウトカムが異なることを示している。カプラン・マイヤー曲線は、(a)臨床亜群、(b)臨床等級(グレード)、(c~f)SCP亜群に基づく各患者群(n=278人の患者の合計)の全生存率を示す。両側ログランク検定にて、他の全てのサンプルと比較して
*p<0.05、同様の亜群と比較して
*p<0.05、他のHR
+/HER2
-患者と比較して
*p<0.05。
【
図13ef】
図13は、SCP群の臨床アウトカムが異なることを示している。カプラン・マイヤー曲線は、(a)臨床亜群、(b)臨床等級(グレード)、(c~f)SCP亜群に基づく各患者群(n=278人の患者の合計)の全生存率を示す。両側ログランク検定にて、他の全てのサンプルと比較して
*p<0.05、同様の亜群と比較して
*p<0.05、他のHR
+/HER2
-患者と比較して
*p<0.05。
【
図14ab】
図14は、全生存期間と無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。(a~b)特定の間質環境に対する全生存期間、及び(c)臨床サブタイプ、(d)等級(グレード)、(e~h)SCP亜群、及び(i~l)間質環境に基づく各患者群の(c~l)無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線である。他の全てのサンプルと比較した両側logrank検定
*p<0.05。
【
図14cd】
図14は、全生存期間と無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。(a~b)特定の間質環境に対する全生存期間、及び(c)臨床サブタイプに基づく各患者群の(c~l)無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線である。(d)等級(グレード)、(e~h)SCP亜群、(i~l)間質環境。他の全てのサンプルと比較した両側logrank検定
*p<0.05。
【
図14ef】
図14は、全生存期間と無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。(a~b)特定の間質環境に対する全生存期間、及び(c)臨床サブタイプ、(d)等級(グレード)、(e~h)SCP亜群、及び(i~l)間質環境に基づく各患者群の(c~l)無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線である。他の全てのサンプルと比較した両側logrank検定
*p<0.05。
【
図14gh】
図14は、全生存期間と無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。(a~b)特定の間質環境に対する全生存期間、及び(c)臨床サブタイプ、(d)等級(グレード)、(e~h)SCP亜群、及び(i~l)間質環境に基づく各患者群の(c~l)無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線である。他の全てのサンプルと比較した両側logrank検定
*p<0.05。
【
図14ij】
図14は、全生存期間と無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。(a~b)特定の間質環境に対する全生存期間、及び(c)臨床サブタイプ、(d)等級(グレード)、(e~h)SCP亜群、及び(i~l)間質環境に基づく各患者群の(c~l)無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線である。他の全てのサンプルと比較した両側logrank検定
*p<0.05。
【
図14kl】
図14は、全生存期間と無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線を示す。(a~b)特定の間質環境に対する全生存期間、及び(c)臨床サブタイプ、(d)等級(グレード)、(e~h)SCP亜群、及び(i~l)間質環境に基づく各患者群の(c~l)無病生存期間のカプラン・マイヤー生存曲線である。他の全てのサンプルと比較した両側logrank検定
*p<0.05。
【
図15】
図15は、空間的に定義された細胞コミュニティが患者のアウトカムと関連していることを示している。グラフは、Cox比例ハザードモデルで推定した腫瘍(T)及び微小環境(ME)の細胞コミュニティの密度、並びに臨床カテゴリー(分子サブタイプ及び等級)の疾患特異的全生存の相対ハザード比と95%信頼区間とを示す(n=266人の患者、<10の細胞コミュニティのみを含有するn=15の患者を除外した)。
【
図16-1】
図16は染色パネルに使用した抗体コンジュゲートを示す。
【
図16-2】
図16は染色パネルに使用した抗体コンジュゲートを示す。
【
図17a】
図17は、各単一細胞病理亜群とそれ以外の患者との間の全生存期間の差について、(a~c)Coxph及び(d~f)logrank検定を示したものであり、(a、d)はコホート内、(b、e)は類似SCP亜群内、(c、f)は臨床的にHR+/HER2-に分類された患者内のものである。
【
図17bc】
図17は、各単一細胞病理亜群とそれ以外の患者との間の全生存期間の差について、(a~c)Coxph及び(d~f)logrank検定を示したものであり、(a、d)はコホート内、(b、e)は類似SCP亜群内、(c、f)は臨床的にHR+/HER2-に分類された患者内のものである。
【
図17de】
図17は、各単一細胞病理亜群とそれ以外の患者との間の全生存期間の差について、(a~c)Coxph及び(d~f)logrank検定を示したものであり、(a、d)はコホート内、(b、e)は類似SCP亜群内、(c、f)は臨床的にHR+/HER2-に分類された患者内のものである。
【
図17f】
図17は、各単一細胞病理亜群とそれ以外の患者との間の全生存期間の差について、(a~c)Coxph及び(d~f)logrank検定を示したものであり、(a、d)はコホート内、(b、e)は類似SCP亜群内、(c、f)は臨床的にHR+/HER2-に分類された患者内のものである。
【
図18】
図18は、臨床的に定義されたサブタイプと比較した場合、SCP群別け又は腫瘍と間質とのコミュニティ情報を追加することにより、ネストされたcoxphモデル間の尤度比検定をモデル化するCox比例ハザードを使用して患者の全生存期間を予測する能力が向上したことを示す。帰無仮説は、大きいモデル(より多くの変数)は小さいモデルより優れていないというものである。P値<0.05は帰無仮説を棄却する。
【
図19-1】
図19は、単一細胞病理(SCP)群と標準治療の臨床組織病理群との間の関係を示したものである。
【
図19-2】
図19は、単一細胞病理(SCP)群と標準治療の臨床組織病理群との間の関係を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の概要
本発明の第1の態様は、形態学的特徴にしたがって腫瘍を分類する方法、特にがん患者の臨床アウトカム又は薬剤感受性を示すための方法に関し、該方法は以下の工程を含む:
a. 患者から得られたがん組織サンプルを提供する工程;
b. がん組織サンプルを複数の分子プローブで標識する工程であり、各プローブは生体分子に特異的であり、前記分子プローブの各々は、検出可能なマーカーによって特徴づけられる、前記工程;
c. 単一細胞の分解能にて、前記複数の生体分子の各々の発現に関する情報を取得する工程;
d. 細胞割り当て工程において、前記複数の生体分子の発現に基づいて前記標識組織サンプル中の各単一細胞に細胞同一性(CI:cellular identity)を割り当てる工程であり、ここで前記細胞同一性は、特定の生体分子の細胞の発現に応じて割り当てられる、前記工程;
e. 病理群の割り当て工程において、前記細胞割り当て工程で割り当てられた前記サンプルが含有する各々の細胞同一性の割合に応じて、前記がん組織サンプルを単一細胞病理(SCP:single cell pathology)患者群に割り当てる工程。
【0011】
本発明による方法は、がん組織サンプルの画像を構築することを含み得る。
【0012】
さらに、特定の実施形態において、本方法は以下の工程を含む:
f. がん組織サンプルの画像を多細胞領域に区画する工程であり、ここで前記多細胞領域内の各単一細胞は、隣接する細胞と高度に相互接続し細胞コミュニティをもたらす、前記工程、
g. 細胞コミュニティにおける細胞の数及び含有する各CIの割合にしたがって、細胞コミュニティ同一性(CCI:cellular community identity)を各細胞コミュニティに割り当てる工程。
【0013】
本発明のこの態様は、細胞コミュニティの種類及び数に応じて、推定されるアウトカム群に患者を割り当てることをさらに含むことができる。
【0014】
本発明は、他の態様では、特定のSCP(単一細胞病理学)への患者の割り当てに応じて抗癌剤で患者を治療する方法に関するものである。あるいは、この態様は、特定のSCPに割り当てられた腫瘍を特徴とする患者のがんの治療のために、特定の薬剤を提供することとして編成することができる。
【0015】
本発明者らは、乳がん患者の大規模コホートにおいて、本方法の並外れた有用性と、がん患者の治療決定の情報を与えるために得られる豊富な情報を実証しており、他方で当業者は、適切な臨床情報があれば、一般的な方法学が他の多くのがん種に適用できることを認識しているであろう。
【0016】
発明の詳細な説明
用語と定義
この明細書の解釈のために、以下の定義が適用され、適切な場合には、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆もまた同様とする。以下に定めるいずれの定義が、参照することにより本書に組み込まれる文書と矛盾する場合、この定められた定義が優先されるものとする。
【0017】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び他の同様の形態、並びにそれらの文法的に同等の用語は、本明細書で使用されるとおり、これらの単語のいずれか1つに続く1つ又は複数の項目が、かかる1つ又は複数の項目の完全なリストであると意図されていないか、又はリストされた1つ又は複数の項目のみに限定されると意図される点で、同等の意味及びオープンエンドであることが意図されている。例えば、成分A、B及びCを「含む(comprising)」品目は、成分A、B及びCからなる(すなわち、成分A、B及びCのみを含有する)こともでき、又は成分A、B及びCのみならず、1つ又は複数の他の成分を含むこともできる。そのため、「含む(comprise)」及びその類似の形態、並びにその文法的に同等の用語には、「から本質的になる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」の実施形態の開示が含まれると意図及び理解される。
【0018】
値の範囲が与えられている場合、文脈上明らかにそうでない場合を除き、その範囲の上限と下限との間に下限の単位の10分の1の各中間値、及びその記載範囲内の任意の他の記載又は中間の値は、本開示内に包含されると理解され、記載の範囲のいずれの具体的に除外される限定下にある。記載の範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除いた範囲も開示に含まれる。
【0019】
本明細書において、ある値又はパラメータに関する「約」の言及は、その値又はパラメータそれ自体に対するバリエーションを含む(及びそれを記載する)。例えば、「約X」という記述は、「X」という記述を含む。
【0020】
添付の特許請求の範囲を含み、本明細書で使用されるとおり、単数形の「a」、「or(又は)」及び「the」は、文脈によって明らかに指示されない限り、複数形の参照語を含む。
【0021】
特記されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、ハイブリダイゼーション技術及び生化学)により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。分子的、遺伝的、生化学的な手法には標準的な技術(一般に以下を参照:Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第4編(2012)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.及びAusubelら,Short Protocols in Molecular Biology(2002)第5編,John Wiley & Sons,Inc.)や化学的手法が用いられる。
【0022】
本明細書の文脈における「膜結合性(membrane-associated)」という用語は、生体膜の一部であるか、又は生体膜と相互作用する分子に関する。一般的な例としては、細胞の表現型決定に用いられる細胞表面分子である分化抗原群(CD:Cluster of Differentiation)タンパク質などが挙げられる。
【0023】
「遺伝子発現」又は「発現」、又は代替的に「遺伝子産物」という用語は、核酸(RNA)の生成、又はペプチド若しくはポリペプチドの生成のプロセス、及びその産物のいずれか又は両方を指し得、それぞれ転写及び翻訳を指すか、又は遺伝情報のプロセスを調節してポリペプチド産物を生成する中間プロセスのいずれかを指し得る。「遺伝子発現」という用語は、RNA遺伝子産物、例えば調節RNA又は構造(リボソームなど)RNAの転写及びプロセシングにも適用される場合がある。発現したポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現には真核細胞におけるmRNAのスプライシングを含むことができる。発現は、転写及び翻訳のレベル、すなわちmRNA及び/又はタンパク質産物の両方で評価することができる。
【0024】
本明細書において、「陽性(positive)」という用語は、マーカーの発現の文脈で使用される場合、標識(特に蛍光又はアイソタイプ標識)抗体によってアッセイされる抗原の発現を指し、ここで、この「陽性」とされる構造体(例えば、細胞)における標識のシグナル(蛍光又はその他)は、同じ標的に特異的に結合しないアイソタイプが一致する標識抗体での染色と比較してシグナル(蛍光又はその他)強度の中央値が少なくとも30%高く(≧30%)、特に≧50%又は≧80%高い。このようなマーカーの発現は、マーカー名の後に、上付き文字「プラス」(+)を付けるか(例えばCD4+)、又はマーカー名の後にプラス記号を追加することによって示される(「CD4+」)。本明細書において、「発現」という用語が「遺伝子発現」又は「マーカー若しくは生体分子の発現」の文脈で用いられ、「発現」にさらなる限定が言及されない場合、これは上記で定義されるとおりの「陽性の発現」を意味する。
【0025】
本明細書において、「陰性(negative)」という用語は、マーカーの発現の文脈で使用される場合、標識(特に蛍光又はアイソタイプ標識)抗体によってアッセイされる場合、抗原の発現を指し、ここで、同じ標的に特異的に結合しないアイソタイプが一致する抗体の中央値標識(蛍光)強度よりも中央値標識(蛍光)強度が30%未満高く、特に15%未満高くなる。このようなマーカーの発現は、マーカー名の後に、上付き文字のマイナス(-)を付けるか(例えばCD4-)、又はマーカー名の後にマイナス記号を付けることによって示される(「CD4-」)。
【0026】
マーカーの「高発現」、例えばホルモン受容体(例えばプロゲステロン又はエストロゲン受容体、HR)の高発現とは、例えばFACSによって検出され、細胞あたりのシグナル強度が低いことを特徴とする他の集団と比較して、細胞あたりのシグナル強度が最も高いことを示すような明確に区別できる細胞集団における当該マーカーの発現レベルを意味する。高発現の場合は、マーカー名の後に上付き文字で「high」又は「hi」と表示される(例えばHRhigh)。「高く発現される」という用語は、これと同じ特徴を指す。
【0027】
マーカーの「低発現」、例えばHRの低発現とは、FACSによって検出され、細胞あたりのシグナル強度が、細胞あたりのシグナル強度が高いことを特徴とする他の集団と比較して最も低いことを示すような明確に区別される細胞集団における当該マーカーの発現レベルを意味する。低発現の場合は、マーカー名の後に上付き文字「low」又は「lo」で表示される(例えばHRlow)。「低く発現される」という用語は、これと同じ特徴を指す。
【0028】
マーカーの発現は、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、ELISPOT、ELISA、マルチプレックス分析などの手法でアッセイすることができる。本明細書では、特に有用なマーカー検出の手段として、質量分析サイトメトリーを包含する。本明細書に包含される別の特に有用な分析手段は、イメージングマスサイトメトリーである。イメージングマスサイトメトリー(IMC:imaging mass cytometry)の例示的なワークフロー(Giesenら、Nature Methods、2014 Apr;11(4):417-22を参照)には、IHCプロトコルを用いた金属キレート抗体標識のための組織切片の調製が含まれる。次に、組織サンプルをレーザーアブレーションチャンバーに配置する。組織はアブレーションされ、ガス流によってマスサイトメトリー解析用のCyTOF(Fluidigm)などの飛行時間型質量分析計に輸送される。測定された同位体シグナルは、各単一レーザーショットの座標を使用してプロットされ、多次元組織画像が生成される。単一細胞の特徴及びマーカー発現を測定することで、分析組織内の細胞亜集団特性を調査することができる。
【0029】
本明細書の文脈における「分子プローブ」という用語は、特定のリガンド、特に抗体、抗体断片、抗体様分子又はアプタマー、より特に抗体又は抗体断片であって、T細胞の特定の表面タンパク質又は特定の転写因子などの標的分子に≦10-7mol/l、特に≦10-8mol/lの解離定数で結合することができるものに関連する。分子プローブには、粒子、ビーズ、色素、又は酵素などの検出可能なマーカーが含まれる。
【0030】
「分子プローブのセット」という用語は、マーカー発現の陽性及び/又は陰性の選択のための分子プローブのパネル(群)に関する。
【0031】
本明細書の文脈における「蛍光色素」という用語は、可視又は近赤外スペクトルで蛍光を発することができる小分子に関する。蛍光標識又は可視色を示す標識の例には、これらに制限されないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC:fluorescein isothiocyanate)、ローダミン、アロフィコシアニン(APC:allophycocyanine)、ペリジニンクロロフィル(PerCP)、フィコエリトリン(PE)、alexa Fluor(Life Technologies、カールスバッド、カリフォルニア州、米国)、dylight fluor(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)、ATTO Dye(ATTO-TEC GmbH、ジーゲン、ドイツ)、BODIPY Dye(4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセンベースの染料)などが挙げられる。
【0032】
「アプタマー」という用語は、特定の標的分子に結合するオリゴヌクレオチド分子又はペプチド分子に関連する。アプタマーは、大規模なランダム配列プールからそれを選択することで作成することができる。核酸アプタマーは、in vitro選択の繰り返しによって、又は同等に、非共有相互作用を介して小分子、タンパク質、又は核酸などの分子標的に結合するSELEX(Systematic Evolution of Ligands by Exponential enrichment)(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化)によって生成することができる。アプタマーは、抗体に匹敵する分子認識特性を有している。
【0033】
本発明の文脈における「特異的結合」という用語は、特定の親和性及び標的特異性によりその標的に結合するリガンドの特性を指す。このようなリガンドの親和性は、リガンドの解離定数により示される。特異的反応性リガンドは、標的との結合時の解離定数が≦10-7mol/Lであるが、標的と化学組成がほぼ同じであるが立体構造が異なる分子との相互作用では、少なくとも3桁高い解離定数を有する。
【0034】
本明細書で使用されるとおり、任意の疾患又は障害(例えば、がん)の「治療する」又は「治療」という用語は、一実施形態において、疾患又は障害を改善すること(例えば、疾患又はその臨床症状の少なくとも1つの発症を遅らせる、又は阻止する、又は低減すること)を意味する。別の実施形態では、「治療する」又は「治療」は、患者が認識できない物理的パラメータを含む少なくとも1つの物理的パラメータを緩和又は改善することを指す。さらに別の実施形態では、「治療する」又は「治療」は、物理的に、(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に、(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれか、又はその両方で、疾患又は障害を調節することを指す。疾患の治療及び/又は予防を評価する方法は、以下に特に記載しない限り、当該技術分野において一般的に知られている。
【0035】
本発明の第1の態様は、単一細胞の特徴にしたがってがん患者の腫瘍サンプルを特徴づける方法に関し、特に、がん患者の予後又は臨床アウトカムの可能性を示す方法の一部とするものである。本発明の方法は、がんを発現するホルモン受容体を有する患者にとって特に有利であり、乳がん又は卵巣がんの患者にとってさらにより特に有利である。
【0036】
本発明の方法の特定の態様は、生存アウトカムが異なる乳がん患者の識別を可能にするか、又は臨床医が特定の腫瘍サブタイプに対して最も効果的な治療法を選択することを支援する。
【0037】
最も一般的な条項では、本発明の方法は、以下の工程を含む:
a. 患者から得られたがん組織サンプルを提供する工程であり、前記サンプルは細胞を含む、前記工程。
本発明の方法の多くの実施形態において、サンプルはスライド又は組織学的調製物の形態であるであろう。しかしながら、本発明は、任意の工程において、細胞サンプルから単一細胞調製物を取得し、この単一細胞調製物に対して細胞型についての情報を取得し、その後の分析を実行する実施形態を包含する。
b. 標識工程において、がん組織サンプル又は単一細胞調製物を複数の分子プローブで標識する工程。各プローブは、サンプルに存在する可能性のある又は存在しない可能性のある確認対象の生体分子に特異的である。「分子プローブ」という用語は、「検出可能な固有の標識を持つリガンド」と同義に用いられ、ここで、標識とは、例えば、区別できる質量の原子又は区別できる分光学的性質を持つ色素であってもよい。また、プローブは、細胞内に存在するmRNAに特異的な核酸配列であってもよい。前記分子プローブの各々は、検出可能なマーカー(プライマー、色素、同位体)により特徴づけられ、それによりサンプルの細胞を標識することができる。この標識工程により、「標識組織サンプル」が得られる。
【0038】
標識工程でプローブによって標的化される生体分子は、以下のものを含むか、又はそれからなるリストから選択される:
i. 上皮性カドヘリン(E-カドヘリン)、
ii. サイトケラチン(CK)18及び/又は19、
iii. CK7、
iv. エストロゲン受容体(ER)及び/又はプロゲステロン受容体(PR)、
v. 細胞増殖性マーカー、特にKi-67及び/又はPCNA、
vi. CK5及び/又はp63及び/又はCK14、
vii. p53、
viii. ステロイド性ホルモン受容体(HR)、特にエストロゲン及び/又はプロゲステロンに対する受容体(それぞれ、ER及びPR)、
ix. アポトーシスのマーカー、特にポリADP-リボースポリメラーゼの切断型(cPARP)及び/又はカスパーゼ3の切断型(cC3)、他のアポトーシスのマーカー、これらに限定されないが、アネキシンV、又は他の透過性色素がFACSで用いられる、
x. 上皮成長因子受容体(EGFR)、及び
xi. 低酸素のマーカー、特に炭酸脱水酵素(CAIX)。その他のマーカーとしては、HIF1a又は酸素を感知する化学プローブが考えられる。
【0039】
任意に、この工程で使用することができる追加のマーカーは以下のものを含む:
i. トリメチル化H3K27、
ii. リン酸化リボソームタンパク質S6(p-S6)、
iii. ラパマイシンmTOR(p-mTOR)のリン酸化された機械論的な標的、
iv. ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、
v. c-myc、
vi. ヒストン3(H3)、及び/又は
vii. DNA量のマーカー、特に、臭化エチジウム、ヨウ化プロピジウム又はシアニン二量体 CAS番号169454-15-3、169454-13-1、143413-84-7を含むがこれに限らないDNAインターカレーション染料。
【0040】
その後の工程で有用なその他のマーカーとして、以下のものを含む:TWIST(Uniprot ID Q15672)、SLUG(Uniprot ID O43623)、胎盤型カドヘリン(P-カドヘリン)、GATA3、及びSMA。
【0041】
特定の実施形態では、この段階で、4ピクセル以内と定義され、約4uMに相当する、面積、サイズ、範囲偏心、及び隣接又は接触する細胞の数などの空間パラメータも取得することが有利である。
【0042】
その後の読み取り工程では、標識された組織サンプルの前記複数の生体分子のそれぞれの細胞あたりの発現に関する情報を、単一細胞の分解能で取得する。発現は、当該生体分子が発現している陽性対照組織サンプルの(平均)発現を基準として、あるいは当該生体マーカーが発現していない陰性対照組織サンプル(健康組織、あるいはホルモン受容体が陰性の肝臓などの臓器、プローブ陰性サンプル)に対して評価することができる。
【0043】
特定の実施形態において、前記細胞読み取り工程における前記生体分子の陰性、低発現、陽性及び高発現の分類は、前記分類工程において使用される全ての生体分子を含む参照サンプル、特にSCP2、並びにSCP1及び/又はSCP3、並びにSCP4及び/又はSCP5、並びにSCP6、SCP9及び/又はSCP10に事前に割り当てられたサンプルからの絶対測定値に対して、又はそれを基準にして分類される。
【0044】
その後の細胞割り当て工程では、前記複数の生体分子の発現(DNAの場合は存在、p53の場合は高発現又は陽性発現)の高次元クラスタリング解析に基づいて、相互排他的な細胞同一性(CI)を、前記標識組織サンプル中の本質的にそれぞれの単一細胞に割り当て、ここで細胞同一性は、以下のリストによるマーカーによって識別される生体分子の細胞の発現の作用として割り当てられる:
CI1:CIAXhi、EGFR-、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+;
CI2:p53hi、(cC3及び/又はcPARP)+、(ER及び/又はPR)-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI3:(Ki-67及び/又はPCNA)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI4:p53hi,EGFR+、CIAXhi、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI5:(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-;
CI6:E-カドヘリンhi、(CK18及び/又はCK19)hi、CK7+、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI7:CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI8:E-カドヘリン-、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-、(ER及び/又はPR)-;
CI9:(E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン-)、((CK18及び/又はCK19)-又は(CK18及び/又はCK19)lo)、(ER及び/又はPR)lo、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI10:((CK18及び/又はCK19)hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)hi、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI11:((CK18及び/又はCK19)hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)+、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI12:(E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン+)、((ER及び/又はPR)lo又は(ER及び/又はPR)-)、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI13:p53hi、EGFR+、(ER及び/又はPR)hi、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo及び/又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI14:CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、(ER及び/又はPR)-。
【0045】
クラスタは、高次元のマーカー空間において、互いに類似した細胞群を表す。
【0046】
特定の実施形態では、クラスタのアノテーションは、互いに対するクラスタの平均マーカー発現に基づくものであった。いくつかの集団は比較的低いマーカー平均値を示し、このためほとんどのマーカーが陰性(ノイズのみ)の集団を表し、そしてその他の集団は陽性とされる比較的高い平均値を示す。これらの実施形態では、ある細胞群を陽性と同定するためには、このマーカーに対して陰性/低値である別の細胞群が存在する必要がある。+とhiとの違いはより微妙で、例えば、陰性細胞集団と、一方の陽性細胞集団の平均値が他方の陽性細胞集団より高い2つの異なる集団が存在する場合にのみ区別が可能である。
【0047】
次に、病理群の割り当て工程において、前記がん組織サンプルは、前記細胞割り当て工程で割り当てられた各細胞同一性をサンプルが含む割合又は頻度にしたがって、単一細胞病理(SCP)患者群に割り当てられ、ここで、SCP患者群のリストは、以下を含むか、又は以下からなる:
SCP1.単一細胞の>70%がCI10であること;
SCP2.単一細胞の>70%がCI11であること;
SCP3.単一細胞の≦70%がCI10であること;
SCP4.CI12に対して単一細胞>70%であること;
SCP5.単一細胞の≦70%がCI12であること;
SCP6.単一細胞の>80%がCI9であること;
SCP7.単一細胞の>80%がCI8であること;
SCP8.単一細胞の≦70%がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP9.単一細胞の>60%がCI9であること;
SCP10.単一細胞の>70%がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP11.単一細胞の>60%がCI7であること;
SCP12.単一細胞の>70%がCI6であること;
SCP13.単一細胞の>50%がCI5であること;
SCP14.単一細胞の>60%がCI3であること;
SCP15.単一細胞の>70%がCI4であること;
SCP16.単一細胞の>50%がCI2であること;
SCP17.単一細胞の>50%がCI1であること;
SCP18.単一細胞の>90%がCI14であること。
【0048】
特定の実施形態では、がん組織サンプルは、ステロイドホルモン受容体の発現を特徴とする組織に由来する新生細胞、特に乳房、卵巣又は子宮内膜組織に由来の新生物細胞、より特にヒト乳房又はヒト乳腺上皮に由来の新生物細胞を含むか、又は本質的にそれからなる。
【0049】
特定の実施形態では、前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法は、がん組織サンプルの画像を構築することを含む。これは、例えば、色素標識リガンドを用いた免疫組織化学、又はこれらに限定されないがイメージングマスサイトメトリーなどの質量分析に基づく方法によって達成することができる。
【0050】
特定の実施形態では、がん組織サンプルは切片であり、特に組織学的スライドである。
【0051】
特定の実施形態では、がん組織サンプルは、接着細胞の単層であるか、そうでなければ固体表面上に固定化された細胞である。
【0052】
特定の実施形態では、複数の生体分子は、複数の金属結合又は蛍光色素結合抗体及び/又は核酸プローブとサンプルを接触させることによって標識化される。
【0053】
特定の実施形態において、前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法は、亜細胞の分解能で、特に≦5μm、さらには≦1μmの分解能でイメージングマスサイトメトリーを対象とするものである。
【0054】
参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2015128490号(A1)は、標識組織サンプルの複数の細胞を、4μm以下のレーザーのスポットサイズを用いて複数の既知の位置でレーザーアブレーションに供し、複数のプルームを形成すること;及びプルームを誘導結合プラズマ質量分析に供し、それによってプルーム中の標識原子を検出することで組織サンプルの画像の構築を可能にすることを開示している。
【0055】
特定の実施形態では、標識工程は、以下から選択されるさらなるマーカーを含む:
- CD3又はCD90、及び
- CD20又はCD19、及び
- CD68、及び
- CD44及び/又はCD45、及び
- フィブロネクチン、及び
- ビメンチン、及び
- CD31及び/又はフォン・ヴィレブランド(von Willibrand)因子(vWF)及び/又はCD34。
【0056】
特定の実施形態では、細胞割り当て工程において、以下のリストに従ったマーカーによって識別される生体分子の細胞の発現に応じて、追加の細胞同一性が割り当てられる:
CI15. CD44+、CD45+、(CD3又はCD90)+、フィブロネクチン-、E-カドヘリン-、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI16. CD20+、(フィブロネクチンlo又はフィブロネクチン-)、((E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン-)、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI17. (CD3又はCD90)+、(CD20又はCD19)+;
CI18. CD68+;
CI19. ビメンチン+、(CD34及び/又はVWF及び/又はCD31)+;
CI20. ビメンチン-、(フィブロネクチン+又はフィブロネクチンhi)、(CD3又はCD90)-、(CD20又はCD19)-、CD45-、CD44-。
【0057】
特定の実施形態では、細胞同一性の割り当てに使用されるような単一細胞画像は、がん組織サンプルの画像の断片である。ある特定の実施形態では、単一細胞画像は、断片であり、これは膜結合分子が単一の核を囲む領域内のピクセルからなる。
【0058】
単一細胞のセグメンテーションは、プログラムIlastik及びCellProfilerを使用して実行することができる。Ilastikは、全てのマーカーに基づいて核、膜、バックグラウンド領域を区別するピクセル分類器を訓練するために使用される。得られた確率マップ(全てのピクセルが3つのカテゴリのいずれかに割り当てられている画像)を、CellProfilerを用いて単一セルマスク(全てのピクセルが個々の細胞に割り当てられている)にセグメンテーションされる。
【0059】
特定の実施形態では、前記方法は、個々の細胞が位置する細胞コミュニティ又はネットワークを考慮する2つの工程を含む。以下、これらの工程を「細胞コミュニティ検出工程」、及び「細胞コミュニティ割り当て工程」と呼ぶ。
【0060】
細胞コミュニティ検出工程では、がん組織サンプルの画像を多細胞領域に区画する工程であり、ここで多細胞領域内の各単一細胞が、隣接細胞(複数)に対して適切なグラフベースのコミュニティ検出アルゴリズム、例えばLouvainアルゴリズムによってある細胞に割り当てられた最も外側のピクセルである4ピクセル/4uM以内の物理的に近接内にある細胞コミュニティを提供するように決定されるように高度に相互接続されている。特に特定の実施形態では、前記細胞コミュニティ内の単一細胞は、自身の細胞コミュニティ内の単一細胞領域と比較して、隣接細胞コミュニティ由来の単一細胞領域には、わずかにしか接続されていない。
【0061】
細胞コミュニティ割り当て工程においては、臨床アウトカムに関連する各細胞コミュニティに細胞コミュニティ同一性(CCI:cellular community identity)を、細胞コミュニティ内の細胞数、及び含有する各CIの割合にしたがって割り当てる工程であり、CCIのリストは、以下を含むか、又は以下からなる:
CCI1.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25の細胞であること(ハザード比良好);又は
CCI2.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること(ハザード比不良);又は
CCI3.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25の細胞であること(ハザード比良好);又は
CCI4.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、>10%の単一細胞がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること(ハザード比不良);又は
CCI5.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、細胞の>10%がCI3であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること(ハザード比良好);又は
CCI6.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、>5%の細胞がCI19であり、かつ>10%の細胞がCI20であり、かつ>3%の細胞がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが<50の細胞であること(ハザード比不良);又は
CCI7.全細胞の>80%がCI1~CI15のいずれかの同一性であり、かつ<10%がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが<75の細胞であること(ハザード比不良);又は
CCI8.全細胞の>20%がCI15、及び/又はCI16、及び/又はCI17であり、かつ<40%の細胞がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが75を超える細胞であること(ハザード比良好;圧縮された伸長核を持つ小さな線維芽細胞(又は周皮細胞)を含む);又は
CCI9.全細胞の>5%がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25%であること(ハザード比良好);又は
CCI10.全細胞の>80%がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ<2%の細胞がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>115の細胞、かつ<125の細胞であること(ハザード比良好)。
【0062】
単一の患者サンプル(サンプルの細胞調製物、切片、又は画像)には、CCI1~10のコミュニティの定義の多くの組み合わせが存在する可能性がある。このような組み合わせが全て患者群に反映されるわけではないが、患者のアウトカムは、各コミュニティの数の増加がハザード比の増加又は減少に関連するという意味で、特定の状況におけるこれらの構造体の有無に関連づけることができる。
【0063】
本発明の別の態様では、SCP(単一細胞病理)情報は、前記生存アウトカムの患者に対して最も適切な治療コースを選択するために使用される。
【0064】
特定の実施形態では、患者は、病理群の割り当て工程におけるサンプルの分類にしたがって、SCP群に特異的な薬剤耐性又は推定アウトカムに割り当てられる:
- SCP4又はSCP18:ERを標的とする抗悪性腫瘍薬に感受性を欠く可能性が高い;
- SCP7:抗血管新生の抗悪性腫瘍薬に対する感受性を欠く可能性が高い:
- SCP1、SCP11:良好なアウトカムの可能性が高く、臨床的HR+HER-群と比較して有意に良好なアウトカムの可能性が高い、ログランクスコアp<0.05。
- SCP8、SCP14、SCP17:悪いアウトカムの可能性が高く、他の全てのSCP群と比較してログランクスコアP<0.05。
【0065】
上記の良好な臨床アウトカムと関連するSCPについては、例えばいずれのHR+HER-又はHR+HER+などの臨床的群、又は他の全てのSCP群と比較してログランクスコアP<0.05を示し得る。上記の不良な臨床アウトカムと関連するSCPについては、他の全てのSCP群、又はHR+HER-群若しくはHR+HER+群と比較して、ログランクスコアP<0.05を示し得る。
【0066】
特定の実施形態では、患者割り当て工程において、患者は、病理群の割り当て工程におけるサンプルのSCP分類にしたがって、薬物感受性群、又は推定アウトカムに割り当てられる:
- SCP1,良好なアウトカムの可能性が高く、かつ以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:selective oestrogen receptor modulator)の抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬剤;
・ 選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD:selective estrogen receptor degrader)の抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラントから選択されるSERD薬剤;
・ アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235SCP2から選択されるPI3K経路阻害薬;
- SCP2,以下に感受性がある可能性が高い:
・ 抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、サリドマイド及びレナリドマイドから選択される抗血管新生の抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102、H2NVAC、HER2.taNK細胞、HER2パルス化樹状細胞、HER2標的化T細胞から選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬;
- SCP3,不良なアウトカムの可能性が高く、以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)及びトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特に、以下から選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬:アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサート;
・ 選択的SERM抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
・ SERD抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント及びエラセストラントから選択されるSERD抗悪性腫瘍薬;
・ アロマターゼ阻害剤薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235から選択されるPI3K経路阻害薬;
- SCP4,ERを標的とする抗悪性腫瘍薬に感受性を欠く可能性が高く、特に以下に感受性を欠く可能性が高い:
・ SERM抗悪性腫瘍薬、より特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
・ SERD抗悪性腫瘍薬、より特にフルベストラント、ブリラネストラント及びエラセストラントから選択されるSERD抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;
- SCP5,以下に感受性がある可能性が高い:
・ EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬、特に3-デアザネプラノシンA(DZNep)、タゼメトスタット、EPZ005687、EI1、GSK126、又はUNC199から選択されるEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;
- SCP6,不良なアウトカムの可能性が高く、以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬;
- SCP7,以下に感受性を欠く可能性が高く:
・ 抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、サリドマイド及びレナリドマイドから選択される抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、
かつ以下に感受性がある可能性が高い:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬;
- SCP8,不良なアウトカムの可能性が高い;
- SCP9,以下に感受性がある可能性が高い:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬;
- SCP10,以下に感受性がある可能性が高い:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬;
- SCP11,良好なアウトカムの可能性が高く、かつ以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬、及び/又は
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235から選択されるPI3K経路阻害薬;
- SCP12,不良なアウトカムの可能性が高く、以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬、特に3-デアザネプラノシンA(DZNep)、タゼメトスタット、EPZ005687、EI1、GSK126、及びUNC199から選択されるEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;
- SCP13,以下に感受性がある可能性が高い:
・ HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102及びH2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬;
SCP14:不良なアウトカムの可能性が高く、かつ以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)及びトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特に、以下から選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬:アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサート;
- SCP15,以下に感受性がある可能性が高い:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)及びトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特に、以下から選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬:アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート及びフォトトレキサート;及び/又は
・ EGFR生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にゲフェチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシミブ(cetuxumib)、ネラチニブ、オシメラチブ(osimeratib)、パニツマミブ(panitumamib)、バンデタニブ、ネシツムマブ、及びダコミチニブから選択されるEGFR生理活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬;
- SCP16:良好なアウトカムの可能性が高く、以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬;
・ 分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;
・ 抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、トリプラチン、及び四硝酸塩から選択される抗悪性腫瘍白金錯体;
・ アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)又はトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;又は
・ 代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特に、以下から選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬:アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート又はフォトトレキサート;
- SCP17,不良なアウトカムの可能性が高く、かつ以下に対して感受性がある可能性が高い:
・ キノンアルキル化抗悪性腫瘍薬、特にキノンアルキル化抗悪性腫瘍薬のマイトマイシンC;
- SCP18,ERを標的とする抗悪性腫瘍薬に感受性を欠く可能性が高く:特に以下に感受性を欠く可能性が高く:
・ SERM抗悪性腫瘍薬、より特にラロキシフェン、トレミフェン又はタモキシフェンから選択されるSERM薬;
・ SERD抗悪性腫瘍薬、より特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラントから選択されるSERD抗悪性腫瘍薬;及び/又は
・ アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;
かつ以下に感受性がある可能性が高い:
・ PI3K経路阻害薬、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、及びNVPBE235から選択されるPI3K経路阻害薬。
【0067】
SCP分類は、臨床医や患者に2種類の情報、すなわち、全生存の観点での予後の予測、及び/又は場合によっては、あるSCPクラスの腫瘍が1つ又は複数のクラスの抗悪性腫瘍薬治療に対して感受性又は耐性を示す可能性の予測を提供する。
【0068】
SCPに対する薬物治療の推奨を、このクラスの腫瘍で観察される特異的な細胞の特徴によって知ることができる。いくつかの実施形態では、1つのSCP群の患者には1つのクラスの薬剤のみが推奨される。SCP17を例にとると、これらの患者の予後不良の予測に加えて、この群を定義する低酸素のマーカー(CIAXなど)を発現する高い有病率のEGFR細胞は、これらの腫瘍がキノンアルキル化抗悪性腫瘍薬クラスなどの低酸素環境で活性化されるように設計された薬剤に感受性がある可能性があることを示唆している。いくつかの実施形態では、SCP分類により、特定のクラスの薬剤の試験に参加する候補者をより効果的に選択することができ、例えば、SCP17の患者は、新規の低酸素標的薬剤の良好な候補者となるであろう。
【0069】
別の実施形態では、SCPの割り当てにおいては、感受性ではなく、薬剤耐性の可能性が割り当てられる。ホルモン受容体陽性又はトリプルネガティブなど、ER標的薬を割り当て又は除外するために使用される本腫瘍分類には、臨床アウトカムが有意に異なるものか、又は独自の薬剤感受性を示すことができる識別マーカーによるいくつかの新規SCP群別けを含むことが示されている。本明細書で提供される新規の閾値は、ER薬剤耐性を有する可能性の高い多くのER陰性細胞を含む患者のSCP4、又はSCP18サブセットを区別し、これらは本臨床分類の小サブセットを代表するものである。本発明者らは、SCP4又はSCP18のように、感受性ではなく薬剤耐性の可能性で分類することで、示された製剤を含む薬剤試験又は治療計画から患者を除外することにより重要な臨床的利益を提供することを提案する。EGFR+肺がんにおけるチロシンキナーゼ療法耐性を予測するためのKRAS変異の検出は、臨床医が使用する薬剤耐性のバイオマーカーの別の例である。
【0070】
いくつかの実施形態では、SCPには複数の推奨薬剤が割り当てられ、これらは単独で、又は組み合わせて、あるいは連続して処方されてもよい。SCP3を例にとると、第1に、このSCPに属する患者を親HR+HER2-/+の臨床分類内で生存率を比較すると、SCP1及びSCP3ともに多くのCK+HRhigh細胞を含むが、SCP1患者は良好なアウトカムであるのに対し、SCP3は不良なアウトカムの可能性があることがわかる。SCPは、SCP1とSCP3を区別しない従来の群分けと比較し、微妙に異なる予後を提供し、そして、例えば、症例の扱いの観点における臨床医の緊急性、より積極的な薬物治療の選択、又は併用療法若しくは一連の標的薬剤の使用の検討などに影響を与える可能性がある。
【0071】
第2に、SCP3は、複数の腫瘍細胞がそれぞれ異なる薬剤に対する感受性を示すマーカーを発現する不均一性の混合型であることを特徴とする。SCP3腫瘍は、細胞同一性10の70%を超える細胞がホルモン受容体(HR)を高レベルで発現していることで定義される。高いHR発現とは、これらの腫瘍細胞がホルモンを標的とした薬剤、例えばアロマターゼ阻害剤、SERM又はSERD薬剤(請求項9でSCP3に割り当てられる)に対して感受性がある可能性が高いことを示す。しかし、SCP3はなお予後不良であるため、薬剤の併用が有効で有り得ることを示す。SCP患者におけるHR+HER2-細胞のさらなる存在は、SCP3腫瘍細胞の割合がPIK3経路阻害剤(請求項15においてSCP3に割り当てられる)に応答することを示唆するものである。最後に、SCP3腫瘍は、HR-である細胞の割合はより少ないが、有意な割合で存在することも特徴とする。攻撃的なHR-腫瘍の患者には、有糸分裂阻害剤又は代謝拮抗剤など、細胞増殖を標的とする薬剤(請求項8でSCP3に割り当てられている)を処方されることが多い。SCP3という分類は、3つの異なる種類の治療と関連しているため、臨床医は、上記の薬剤による単一治療、併用療法、又は連続治療を検討する必要がある。
【0072】
ある状況下では、SCP群は相対的であり、かつ相互に排他的であるため、分類は薬剤の選択の情報を与える臨床アウトカムに関する暗示された情報を提供することが可能である。SCP2の例では、高リスク又は低リスクの臨床アウトカムは明示的に割り当てられないが、非常に良好なアウトカムに関連する同様のSCP1からは患者が除外され、生存の中間的な可能性を示している。これにより、臨床医は、HR+細胞が存在するにもかかわらず、第1選択のホルモン標的療法の代わりに、抗血管新生薬(請求項10でSCP2に割り当てられる)など、SCP2の形態学に適した積極的な第2選択の薬剤を選択することにつながり得る。
【0073】
薬剤の入手可能性又はコスト、突然変異、腫瘍の重症度、年齢、又は併存疾患などの情報も、そのような患者の治療方針を選択する際に、広範囲な薬剤感受性として本発明による腫瘍の特徴づけと組み合わせて考慮され得る。
【0074】
SCP8に関連するもののような予後不良の高い可能性だけでも、臨床の場では有用である。予後不良の状況下でも確実性が増すことは、患者にとってなお有用であり、たとえ患者を治癒する可能性が低くても(SCP6など)、生存期間の延長に最も適した代替治療の選択が可能となり、又は不均一性の高いSCP8腫瘍など予後不良のリスクが非常に高い特定のケースでは、多くの乳がん治療レジメン又は併存疾患による不快な副作用を考慮して緩和ケアを選択することができる場合もある。
【0075】
特定の実施形態では、患者は、前記細胞コミュニティ割り当て工程で割り当てられた細胞コミュニティの存在に従い推定アウトカム群に割り当てられる:
- CCI1、CCI3、CCI5、CCI8、CCI9、又はCCI10:良好なアウトカムの可能性が高い。これらのCCIの存在は、全サンプルの平均値よりも有意に良好なアウトカムを示すことが可能である。
- CCI2、CCI4、CCI6、又はCCI7:不良なアウトカムの可能性が高い。これらのCCIがより多く存在することは、全サンプルの平均値よりも有意により不良なアウトカムを示すことが可能である。
【0076】
患者のアウトカムの最も適切な指標を決定するために、臨床的な下位群分けと等級付けと共に、Log変換したコミュニティ又は単一細胞の密度をcoxph生存モデルに導入し、特定のコミュニティ又は単一細胞の型と患者リスクとの有意な関連性を見出し、そしてハザード比を調査した。
【0077】
本発明のさらなる態様は、がん、特にステロイドホルモン受容体の発現を特徴とする組織由来のがん、特に乳房、卵巣又は子宮内膜組織由来の新生物細胞、より特にヒト乳房又はヒト乳腺上皮由来の新生物細胞の治療における使用のための医薬製剤に関し、ここで前記がんの患者は、本明細書に記載の方法にしたがってSCP又は腫瘍同一性によって定義される患者の下位群に割り当てられている。
【0078】
さらなる一連の実施形態は、患者サンプルのSCP群別けを特徴づける形態学的特徴によって知ることができる、がん、特に乳がんの治療のための医薬製剤の使用に関するものである。
【0079】
本発明のこの態様の一連の実施形態は、がん、特に乳がんの治療において使用するための医薬製剤に関し、ここで前記がんの患者は、本明細書に記載の方法にしたがって、SCP3、SCP14、SCP15、及びSCP16から選択されるSCPに割り当てられている。
【0080】
一実施形態では、SCP3、SCP14、SCP15、又はSCP16に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、アントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン及びピクサントロンから選択されるアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬を含む。
【0081】
一実施形態では、SCP3、SCP14、SCP15、又はSCP16に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、分裂阻害剤型タキサン系抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビンから選択される分裂阻害剤型タキサン系抗悪性腫瘍薬を含む。
【0082】
一実施形態では、SCP3、SCP14、SCP15、又はSCP16に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンフルニン、クリプトフィシン52、ハリコンドリン、ドラスタチン及びヘミアスタリンから選択される抗悪性腫瘍薬、又はコルヒチン、ポドフィロトキシン、リゴセルチブ、ステガナシン、ABT-751、コンブレタスタチン及び2-メトキシエストラジオールを含む群から選択される抗悪性腫瘍薬を含む。
【0083】
別の実施形態では、SCP3、SCP14、SCP15、又はSCP16に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、四硝酸トリプラチンを含む。
【0084】
さらに別の実施形態では、SCP3、SCP14、SCP15、又はSCP16に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)又はトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬を含む。
【0085】
別の実施形態では、SCP3、SCP14、SCP15、又はSCP16に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬、特に、以下から選択される代謝拮抗型抗悪性腫瘍薬:アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート又はフォトトレキサートを含む。
【0086】
本発明の上記態様に従う方法によって得られたSCP情報は、増殖及び細胞分裂を標的とする化学療法的介入が有益で有り得る患者を識別するために使用される。
【0087】
本発明のこの態様の別の態様は、がんの治療において使用するための医薬製剤に関し、ここで前記がんの患者は、本明細書に記載の方法にしたがって、SCP1、又はSCP3から選択される高HR発現を特徴とするSCPに割り当てられている。
【0088】
一実施形態では、SCP1又はSCP3に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン又はタモキシフェンから選択されるSERM薬を含む。
【0089】
一実施形態では、SCP1又はSCP3に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilanestrant)及びエラセストラントを含む。
【0090】
一実施形態では、SCP1又はSCP3に割り当てられたがんの治療における使用のための医薬製剤は、アロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬を含む。
【0091】
本発明のこの態様の別の代替の態様は、がんの治療において使用するための医薬製剤に関し、ここで前記がんの患者は、本明細書に記載の方法にしたがってSCP2に割り当てられている。この代替の態様による医薬製剤は、抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、サリドマイド又はレナリドマイドから選択される抗血管新生の抗悪性腫瘍薬を含む。
【0092】
同様に、本発明は、SCP、特にSCP5、又はSCP12から選択されるSCPから、H3K27me3+細胞、又は中間HR発現を特徴とするSCPに割り当てられたがんの治療における使用のための、EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬、特に3-デアザネプラノシンA(DZNep)、タゼメトスタット、EPZ005687、EI1、GSK126、又はUNC1999から選択されるEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬を含む医薬製剤に関する。
【0093】
本発明のこの態様の別の代替の態様は、がんの治療において使用するための、EGFR生物活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にゲフェチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシミブ(cetuxumib)、ネラチニブ、オシメラチブ(osimeratib)、パニツマミブ(panitumamib)、バンデタニブ、ネシツマブ、又はダコミチニブから選択されるEGFR生物活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬を含む医薬製剤に関し、ここで前記がんの患者は、SCP15に割り当てられている。
【0094】
本発明のこの態様のさらなる別の代替の態様は、がんの患者がSCP17に割り当てられている、がんの治療における使用のための低酸素活性化薬、例えばキノンアルキル化抗悪性腫瘍薬、特にマイトマイシンCを含む医薬製剤に関する。
【0095】
本発明のこの態様のさらなる別の代替の態様は、がんの患者は、SCP2、SCP6、SCP7、SCP9、SCP10、SCP11又はSCP13から選択されるHER2+細胞を含むSCPに割り当てられている、がんの治療における使用のための、HER2標的抗悪性腫瘍薬、治療法又はワクチン、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102、H2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬、及び/又はHER2標的細胞治療のHER2.taNK細胞、HER2パルス化樹状細胞、HER2標的化T細胞を含む医薬製剤に関連するものである。実施例における当該技術分野の現状を示す臨床分類と比較して、本発明は、HER2+腫瘍を、異なる臨床アプローチの効果を予測するために使用できるさらなるマーカーをそれぞれ含むSCP11、6、7、9、10、13、及び2に再分類する。
【0096】
本発明のこの態様のさらなる別の代替の態様は、PI3K経路阻害剤、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、NVPBE235を含むがんの治療における使用のための医薬製剤に関するものであり、前記がんの患者はSCP1、SCP3、SCP11、又はSCP18から選択されるHR high/+HER2-細胞を含むSCPに割り当てられている。
【0097】
同様に、本発明の範囲内には、上記の説明による特定の下位群への患者の割り当てにしたがって、患者に有効量の抗がん剤を投与することが含まれる。
【0098】
別の態様は、診断の方法に関するものであり、それによりある患者は化学療法の中止が推奨される群に割り当てられる。本発明者らは、SCP1では、現在の評価ではこれらの患者を従来の化学療法が推奨される群に分類されるにもかかわらず、治療を必要としない可能性があると推察する。
【0099】
本発明の別の態様は、乳がん患者を類似の細胞特徴を共有する群に分類又は層別化するために、乳がん患者の腫瘍を特徴づけるために使用するシステムに関するものである。このシステムは、本明細書に開示される腫瘍の層別化のための方法を実施するように構成される。
【0100】
前記システムの構成要素は、以下を含むことができる:患者から得られたがん組織サンプルを分析するためのデバイスであって;特に、前記がん組織がヒト乳房又はヒト乳腺上皮に由来する、前記デバイス;がん組織サンプルを標識するための複数の分子プローブであって、各プローブは生体分子に特異的であり、前記分子プローブの各々は検出可能マーカーによって特徴づけられ、かつ前記(標識された)生体分子は本発明の第1の態様にしたがって規定されるとおり生体分子i~xiiを含むか又はそれからなるリストから選択される前記複数の分子プローブ。前記デバイスにより、単一細胞の分解能で前記複数の生体分子の各々の発現に関する情報を得ることができ、細胞割り当て工程において、前記複数の生体分子の発現に基づいて、前記標識化組織サンプル中の各単一細胞に細胞同一性(CI)を割り当てるように構成されており、ここで前記細胞同一性は、本発明の第1の態様にしたがって規定されるCI1~CI14によるマーカーによって識別される生体分子の細胞の発現に応じて割り当てられる。
【0101】
前記システムは、任意に、病理群割り当て工程において、上記本発明の第1の態様において規定されたSCP1~18を特徴とする構成細胞の種類にしたがって、サンプルに対してサンプルが含有する細胞割り当て工程で割り当てられたそれぞれの細胞同一性の割合により単一細胞病理(SCP)患者群を割り当てるようにさらに構成されてもよい。
【0102】
同様に、本発明は、上記で規定された本発明の態様によるSCP患者群の1つに関連する薬剤感受性がある可能性の高いことを特徴とするがん疾患と診断された患者を治療する方法を包含する。この方法は、本明細書において詳細に規定されるとおり、上記で規定される本発明のいずれかの態様にしたがって特定されるとおり患者群に有効である可能性が高い抗悪性腫瘍薬、又はその薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与することを伴う。
【0103】
本発明は、薬剤感受性及び/又は臨床アウトカムの尤度が異なるがん患者のサブセットを検出するためのキットにおける、又はキットの製造における、以下の特徴の使用をさらに包含する。第1には、以下を含むか、又はそれからなるリスト:
E-カドヘリン、CK18及び/又は19、CK7、ER及び/又はPR、細胞増殖のマーカー、特にKi-67及び/又はPCNA、CK5及び/又はp63及び/又はCK14、p53、HR、特にER及び/又はPR、アポトーシスのマーカー、特にcPARP及び/又はcC3、EGFR、低酸素のマーカー、特にCAIX;及びDNA含有量のマーカー、特にDNAインターカレーティング色素;並びに任意にCD3又はCD90;CD20又はCD19;CD68;CD44及び/又はCD45;フィブロネクチン;ビメンチン、並びにCD31及び/又はvWF及び/又はCD34;
の生体分子に特異的な分子プローブの使用であり、
ここで、前記分子プローブは、同位体又は蛍光色素に結合され、特に、前記分子プローブは、以下を含むか、又はそれからなるリスト:
インジウム113、ランタン139、プラセオジム141、ネオジム142、ネオジム143、ネオジム144、ネオジム145、ネオジム146、ネオジム148、ネオジム150、サマリウム147、サマリウム149、サマリウム152、ユーロピウム151、ユーロピウム153、ガドリニウム155、ガドリニウム156、ガドリニウム158、ガドリニウム160、テルビウム159、ジスプロシウム162、ジスプロシウム163、ジスプロシウム164、エルビウム166、エルビウム167、エルビウム168、ツリウム169、イッテルビウム170、イッテルビウム172、イッテルビウム173、イッテルビウム174、イッテルビウム176、ルテチウム175、
の同位体に結合される。
【0104】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態は、分子プローブとしての抗体の使用に関するものである。別の実施形態は、分子プローブとしての核酸の使用に関するものである。
【0105】
本明細書において、単一の分離可能な特徴に対する代替のものが「実施形態」として記載されている場合は常に、そのような代替は自由に組み合わせて、本明細書に開示される本発明の分離した実施形態を形成することができると理解されるものとする。
【0106】
本発明は、以下の項目をさらに包含する:
【0107】
A. がん患者の臨床アウトカムを示す方法であって、以下の工程を含む前記方法:
a. 患者から得られたがん組織サンプルを提供する工程;
b. がん組織サンプルを各プローブが生体分子に特異的である複数の分子プローブで標識する工程。ここで前記分子プローブの各々は検出可能なマーカーによって特徴づけられ、かつ前記生体分子は、以下を含むか、又はそれからなるリストから選択される:
i. 上皮性カドヘリン(E-カドヘリン)、
ii. サイトケラチン(CK)18及び/又は19、
iii. CK7、
iv. エストロゲン受容体(ER)及び/又はプロゲステロン受容体(PR)、
v. 細胞増殖のマーカー、特にKi-67及び/又はPCNA、
vi. CK5及び/又はp63及び/又はCK14、
vii. p53、
viii. ホルモン受容体(HR)、特にエストロゲン及び/又はプロゲステロンに対する受容体(それぞれ、ER及びPR)、
ix. アポトーシスのマーカー、特にポリADP-リボースポリメラーゼの切断型(cPARP)及び/又はカスパーゼ3の切断型(cC3)、
x. 上皮成長因子受容体(EGFR)、及び
xi. 低酸素のマーカー、特に炭酸脱水酵素(CAIX);及び
xii. DNA含有量のマーカー、特にDNAインターカレーティング色素;
c. 読み取り工程において、単一細胞の分解能で、前記複数の生体分子の各々の発現に関する情報を取得する工程;
d. 細胞割り当て工程において、前記複数の生体分子の発現に基づいて前記標識化組織サンプル中の各単一細胞に細胞同一性(CI:cellular identity)を割り当てる工程。ここで前記細胞同一性は、以下のリストに従うマーカーにより識別される生体分子の細胞の発現に応じて割り当てられる;
CI1. CIAXhi、EGFR-、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+;
CI2. p53hi、(cC3及び/又はcPARP)+、(ER及び/又はPR)-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI3. (Ki-67及び/又はPCNA)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI4. p53hi、EGFR+、CIAXhi、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI5. (CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-;
CI6. E-カドヘリンhi、(CK18及び/又はCK19)hi、CK7+、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI7. CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI8. E-カドヘリン-、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-、(ER及び/又はPR)-;
CI9. (E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン-)、((CK18及び/又はCK19)-又は(CK18及び/又はCK19)lo)、(ER及び/又はPR)lo、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI10. ((CK18及び/又はCK19)hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)hi、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI11. ((CK18及び/又はCK19)hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)+、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI12. (E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン+)、((ER及び/又はPR)lo又は(ER及び/又はPR)-)、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI13. p53hi、EGFR+、(ER及び/又はPR)hi、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo及び/又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI14. CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、(ER及び/又はPR)-、
e. 病理群の割り当て工程において、前記細胞割り当て工程で割り当てられた前記サンプルが含有する各々の細胞同一性の割合に応じて、前記がん組織サンプルを単一細胞病理(SCP:single cell pathology)患者群に割り当てる工程。ここで前記SCP患者群のリストは、以下を含むか、又はそれからなる:
SCP1. 単一細胞の>70%がCI10であること;
SCP2. 単一細胞の>70%がCI11であること;
SCP3. 単一細胞の≦70%がCI10であること;
SCP4. CI12に対して単一細胞の>70%であること;
SCP5. 単一細胞の≦70%がCI12であること;
SCP6. 単一細胞の>80%がCI9であること;
SCP7. 単一細胞の>80%がCI8であること;
SCP8. 単一細胞の≦70%がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP9. 単一細胞の>60%がCI9であること;
SCP10. 単一細胞の>70%がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP11. 単一細胞の>60%がCI7であること;
SCP12. 単一細胞の>70%がCI6であること;
SCP13. 単一細胞の>50%がCI5であること;
SCP14. 単一細胞の>60%がCI3であること;
SCP15. 単一細胞の>70%がCI4であること;
SCP16. 単一細胞の>50%がCI2であること;
SCP17. 単一細胞の>50%がCI1であること;
【0108】
B. 前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法が、前記がん組織サンプルの画像を構築することを含む、項目Aに記載の方法。
【0109】
C. がん組織サンプルが切片である、項目A又はBに記載の方法。
【0110】
D. がん組織サンプルが、接着細胞の単層であるか、又はそうれなければ固体表面に固定化された細胞である、項目B又はCのいずれか一項に記載の方法。
【0111】
E. 複数の生体分子が、複数の金属コンジュゲート型又は蛍光色素コンジュゲート型の抗体及び/又は核酸プローブとサンプルを接触させることによって標識される、項目A~Dのいずれか一項に記載の方法。
【0112】
F. 前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法が、亜細胞の分解能での、特に≦5μm、さらには≦1μmの分解能でのイメージングマスサイトメトリーである、項目C~Eのいずれか一項に記載の方法。
【0113】
G. 前記方法は、
a. 標識工程において、以下の:
xiii. CD3又はCD90;
xiv. CD20又はCD19;
xv. CD68;
xvi. CD44及び/又はCD45;
xvii. フィブロネクチン;
xviii ビメンチン、及び
xix. CD31及び/又はフォン・ヴィレブランド因子(vWF)及び/又はCD34;
から選択されるさらなるマーカーを含む、工程:
b. 細胞割り当て工程において、以下の:
i.CI15. CD44+、CD45+、(CD3又はCD90)+、フィブロネクチン-、E-カドヘリン-、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
ii.CI16. CD20+、(フィブロネクチンlo又はフィブロネクチン-)、(E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン-)、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
iii.CI17. (CD3又はCD90)+、(CD20又はCD19)+;
iv.CI18. CD68+;
v.CI19. ビメンチン+、(CD34及び/又はVWF及び/又はCD31)+;
vi.CI20. ビメンチン-、(フィブロネクチン+又はフィブロネクチンhi)、(CD3又はCD90)-、(CD20又はCD19)-、CD45-、CD44-、
から選択されるさらなる細胞同一性を含む、工程
を含む、項目C~Fのいずれか一項に記載の方法。
【0114】
H. 単一細胞が、前記がん組織サンプルの画像の断片であり、特に、膜結合分子が単一核を取り囲む領域内のピクセルからなる断片である、項目C~Gのいずれか一項に記載の方法。
【0115】
I. 前記方法は、以下の工程:
a. 細胞コミュニティ検出工程において、がん組織サンプルの画像を多細胞領域に区画する工程であり、ここで細胞コミュニティを提供するために前記多細胞領域内の各単一細胞が隣接する細胞と高度に相互接続されている、前記工程;
b. 細胞コミュニティ割り当て工程において、各細胞コミュニティに細胞コミュニティ同一性(CCI)を、細胞コミュニティ内の細胞の数、及びそれが含む各細胞コミュニティの割合にしたがって割り当てる工程であり、ここでCCIのリストは以下を含むか、又はそれからなる、前記工程:
CCI1.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25の細胞であること;又は
CCI2.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること;又は
CCI3.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25の細胞であること;又は
CCI4.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること;又は
CCI5.同一性がCI1~CI14の細胞のうち、細胞の>10%がCI3であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること;又は
CCI6.全細胞の>5%がCI19であり、かつ細胞の>10%がCI20であり、かつ細胞の>3%がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが<50の細胞であること、又は
CCI7.全細胞の>80%がCI1~CI15のいずれかの同一性であり、かつ<10%の細胞がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが<75の細胞であること;又は
CCI8.全細胞の>20%がCI15、及び/又はCI16、及び/又はCI17であり、かつ<40%の細胞がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが75を超える細胞であること;又は
CCI9.全細胞の>5%がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25%であること;又は
CCI10.全細胞の>80%がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ<2%の細胞がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>115の細胞、かつ<125の細胞であること、
を含む、項目C~Hのいずれかに記載の方法。
【0116】
J. 病理群割り当て工程において、サンプルのSCP分類にしたがって、前記患者を推定アウトカム群:
- SCP4又はSCP18:ERを標的とする抗悪性腫瘍薬に感受性を欠く可能性が高いこと;
- SCP7:抗血管新生の抗悪性腫瘍薬に対する感受性を欠く可能性が高いこと;
- SCP1、SCP11:良好なアウトカムの可能性が高いこと;
- SCP8、SCP14、又はSCP17:悪いアウトカムの可能性が高いこと;
に割り当てる、項目A~Hのいずれか一項に記載の方法。
【0117】
K. 前記細胞コミュニティ割り当て工程において割り当てられた細胞コミュニティの数にしたがって、前記患者が、推定アウトカム群:
- CCI1、CCI3、CCI5、CCI8、CCI9、又はCCI10:良好なアウトカムの可能性が高いこと、
- CCI2、CCI4、CCI6、又はCCI7:不良なアウトカムの可能性が高いこと、
に割り当てられる、項目Iに記載の方法。
【0118】
L. がん組織サンプルは、ステロイドホルモン受容体の発現を特徴とする組織に由来する新生細胞、特に乳房、卵巣又は子宮内膜組織に由来の新生物細胞、より特にヒト乳房又はヒト乳腺上皮に由来の新生物細胞を含むか、又は本質的にそれからなる、項目A~Kのいずれか一項に記載の方法。
【0119】
M. 医薬製剤であって、
a.アントラサイクリン系抗腫瘍薬、特にダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、及びイダルビシンから選択されるアントラサイクリン系抗腫瘍薬;又は
b.分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬、特にカバジタキセル、ドセタキセル、ナブパクリタキセル、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及びビノレルビン(uz341wo参照)から選択される分裂阻害剤型抗悪性腫瘍薬;又は
c.抗悪性腫瘍白金錯体、特にカルボプラチン、サトラプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、四硝酸トリプラチン;又は
d.アルキル化抗悪性腫瘍薬、特にアルトレタミン、ベンダムスチン、ブスルファン、カルボプラチン、カルムスチン、シスプラチン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバイン(dacarbayine)、イフォスファミド、ロムスチン、メクロレタミン、メルファラン、オキサリプラチン、テモゾロマイド、チプテパ(thiptepa)又はトラベクテジンから選択されるアルキル化抗悪性腫瘍薬;又は
e.代謝拮抗型抗腫瘍薬、特に、以下から選択される代謝拮抗型抗腫瘍薬:アザシチジン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、カペシタビン、クロファラビン、シタラビン、デシタビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、メトトレキサート、ネララビン、ペメトレキセド、ペントスタチン、プララトレキサート又はフォトトレキサート;
を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤であり、
f. ここでがん患者が、SCP3、SCP14、SCP15、及びSCP16から選択されるSCPに割り当てられている、前記医薬製剤。
【0120】
N. 医薬製剤であって、
a. 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM:selective oestrogen receptor modulator)抗悪性腫瘍薬、特にラロキシフェン、トレミフェン及びタモキシフェンから選択されるSERM薬;
b. 選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD:selective estrogen receptor degrader)の抗悪性腫瘍薬、特にフルベストラント、ブリラネストラント(brilandestrant)及びエラセストラント;及び/又は
c. アロマターゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にエキセメスタン、レトロゾール、ボロゾール、ホルメスタン、ファドロゾール及びアナストロゾールから選択されるアロマターゼ阻害剤抗悪性腫瘍薬;
を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤であり、ここで前記がんの患者はSCP1、又はSCP3から選択されるSCPに割り当てられている、前記医薬製剤。
【0121】
O. がんの治療において使用するための、抗血管新生の抗悪性腫瘍薬、特にベバシズマブ、サリドマイド又はレナリドマイドから選択される抗血管新生の抗悪性腫瘍薬を含む医薬製剤であって、ここで前記がんの患者は、SCP2に割り当てられている、前記医薬製剤。
【0122】
P. EZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特に3-デアザネプラノシンA (DZNep)、タゼメトスタット、EPZ005687、EI1、GSK126、又はUNC1999から選択されるEZH2メチルトランスフェラーゼ阻害剤抗腫瘍薬を含む、がんの治療における使用のための医薬製剤であって、ここで前記がんの患者は、SCP5、又はSCP12から選択されるSCPに割り当てられている、前記医薬製剤。
【0123】
Q. EGFR生物活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬、特にゲフェチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、セツキシミブ(cetuxumib)、ネラチニブ、オシメラチブ(osimeratib)、パニツマミブ(panitumamib)、バンデタニブ、ネシツマブ、又はダコミチニブから選択されるEGFR生物活性阻害剤の抗悪性腫瘍薬を含む、がんの治療において使用するための医薬製剤であって、ここで前記がんの患者はSCP15に割り当てられている、前記医薬製剤。
【0124】
R. がんの治療において使用するための、キノンアルキル化抗腫瘍薬、特にマイトマイシンCを含む医薬製剤であって、ここで前記がんの患者はSCP17に割り当てられている、前記医薬製剤。
【0125】
S. がんの治療における使用のための、HER2標的化抗悪性腫瘍薬、特にトラスツズマブ、ペルツズマブ、SYD985、RC48、A166、HER2ALT-P7、T-DM1、ARX788、KN026、BVAC-B、MT-5111、AVX901、TAS0728、MP0274、MM-302、FS102、H2NVACから選択されるHER2標的化抗悪性腫瘍薬、及びHER2標的化NK細胞(HER2.taNK cell)、HER2パルス化樹状細胞、HER2標的化T細胞を含む医薬製剤であり、ここで前記がんの患者は、SCP2、SCP6、SCP7、SCP9、SCP10、SCP11又はSCP13から選択されるSCPに割り当てられている、前記医薬製剤。
【0126】
T. がんの治療において使用するための、PI3K経路阻害剤、特にラパマイシン、ダクトリシブ、BGT226、SF1126、PKI-587、NVPBE235を含む医薬製剤であって、ここで前記がんの患者は、SCP1、SCP3、SCP11又はSCP18から選択されるSCPに割り当てされている、前記医薬製剤。
【0127】
項目1.がん患者の臨床アウトカムを示す方法であって、以下の工程:
a. 患者から得られたがん組織サンプルを提供する工程;
b. がん組織サンプルを複数の分子プローブで標識する工程であり、ここで各プローブは生体分子に特異的であり、前記分子プローブの各々は検出可能なマーカーにより特徴づけられ、特に複数の分子プローブが少なくとも20種類の異なる生体分子を区別することができ、より特に複数の分子プローブが少なくとも25種類の異なる生体分子を区別することができる、前記工程;
c. 読み取り工程において、単一細胞の分解能で、前記複数の生体分子の各々の発現に関する情報を取得する工程;
d. 細胞割り当て工程において、前記複数の生体分子の発現に基づいて前記標識組織サンプル中の各単一細胞に細胞同一性(CI:cellular identity)を割り当てる工程であり、ここで前記細胞同一性は、マーカーによって識別される生体分子の細胞の発現に応じて割り当てられる、前記工程;
e. 病理群割り当て工程において、前記細胞割り当て工程で割り当てられた前記サンプルが含有する各々の細胞同一性の割合に応じて、前記がん組織サンプルを単一細胞病理(SCP:single cell pathology)患者群に割り当てる工程
を含む、前記方法。
【0128】
項目2.前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法は、前記がん組織サンプルの画像を構築することを含む、項目1に記載の方法。
【0129】
項目3.前記がん組織サンプルは、切片、又は接着細胞の単層であるか、又はそうれなければ固体表面に固定化された細胞である、項目1又は2に記載の方法。
【0130】
項目4.前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法は、亜細胞の分解能で、特に≦5μm、さらには≦1μmの分解能でのイメージングマスサイトメトリーである、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
【0131】
項目5.前記複数の生体分子は、複数の金属コンジュゲート型又は蛍光色素コンジュゲート型の抗体及び/又は核酸プローブとサンプルを接触させることによって標識される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
項目6.前記複数の生体分子の平均発現に関する情報を得る方法は、亜細胞の分解能での、特に≦5μm、さらには≦1μmの分解能でのイメージングマスサイトメトリーである、項目3~5のいずれか一項に記載の方法。
【0133】
項目7.前記単一細胞は、前記がん組織サンプルの画像の断片、特に、膜結合分子が単一核を取り囲む領域内のピクセルからなる断片である、項目2~6のいずれか一項に記載の方法。
【0134】
項目8.前記方法は、以下の工程:
a. 細胞コミュニティ検出工程において、がん組織サンプルの画像を多細胞領域に区画する工程であり、ここで、細胞コミュニティを提供するために前記多細胞領域内の各単一細胞が隣接する細胞と高度に相互接続されている、前記工程;
b. 細胞コミュニティ割り当て工程において、細胞コミュニティ同一性(CCI:cellular community identity)を、細胞コミュニティにおける細胞の数、及びそれが含有する各CIの割合にしたがって、各細胞コミュニティに割り当てる工程、
を含む、項目2~7のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
項目9.病理群割り当て工程において、サンプルのSCP分類にしたがって、前記患者を推定アウトカム群に割り当てる、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
項目10.前記分子プローブが特異的である生体分子は、以下の:
i. 上皮性カドヘリン(E-カドヘリン)、
ii. サイトケラチン(CK)18及び/又は19、
iii. CK7、
iv. エストロゲン受容体(ER)及び/又はプロゲステロン受容体(PR)、
v. 細胞増殖のマーカー、特にKi-67及び/又はPCNA、
vi. CK5及び/又はp63及び/又はCK14、
vii. p53、
viii. ホルモン受容体(HR)、特にエストロゲン及び/又はプロゲステロンに対する受容体(それぞれ、ER及びPR)、
ix. アポトーシスのマーカー、特にポリADP-リボースポリメラーゼの切断型(cPARP)及び/又はカスパーゼ3の切断型(cC3)、
x. 上皮成長因子受容体(EGFR)、及び
xi. 低酸素のマーカー、特に炭酸脱水酵素(CAIX);及び
xii. DNA含有量のマーカー、特にDNAインターカレーティング色素;
xiii. CD3又はCD90;
xiv. CD20又はCD19;
xv. CD68;
xvi. CD44及び/又はCD45;
xvii. フィブロネクチン;
xviii. ビメンチン、及び
xix. CD31及び/又はフォン・ヴィレブランド(von Willibrand)因子(vWF)及び/又はCD34
を含むか、又はそれからなるリストから選択される、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
【0137】
項目11. 前記細胞割り当て工程で割り当てられた細胞同一性は、以下の:
CI1. CIAXhi、EGFR-、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+;
CI2. p53hi、(cC3及び/又はcPARP)+、(ER及び/又はPR)-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI3. (Ki-67及び/又は PCNA)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI4. p53hi、EGFR+、CIAXhi、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI5. (CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(ER及び/又はPR)-;
CI6. E-カドヘリンhi、(CK18及び/又はCK19)hi、CK7+、(ER及び/又はPR)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI7. CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(ER及び/又はPR)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI8. E-カドヘリン-、CK7-、(CK18及び/又はCK19)-、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-、(ER及び/又はPR)-;
CI9. (E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン-)、((CK18及び/又はCK19)-又は(CK18及び/又はCK19)lo)、(ER及び/又はPR)lo、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI10. ((CK18及び/又はCK19)hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)hi、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI11. ((CK18及び/又はCK19)hi又は(CK18及び/又はCK19)+)、E-カドヘリン+、(ER及び/又はPR)+、CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI12. (E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン+)、((ER及び/又はPR)lo又は(ER及び/又はPR)-)、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-;
CI13. p53hi、EGFR+、(ER及び/又はPR)hi、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo及び/又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI14. CK7+、(CK18及び/又はCK19)+、(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)+、(ER及び/又はPR)-
CI15. CD44+、CD45+、(CD3又はCD90)+、フィブロネクチン-、E-カドヘリン-、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI16. CD20+、(フィブロネクチンlo又はフィブロネクチン-)、(E-カドヘリンlo又はE-カドヘリン-)、((CK5及び/又はp63及び/又はCK14)lo又は(CK5及び/又はp63及び/又はCK14)-);
CI17. (CD3又はCD90)+、(CD20又はCD19)+;
CI18. CD68+;
CI19. ビメンチン+、(CD34及び/又はVWF及び/又はCD31)+;
CI20. ビメンチン-、(フィブロネクチン+又はフィブロネクチンhi)、(CD3又はCD90)-、(CD20又はCD19)-、CD45-、CD44-
を含むか、又はそれからなるリストから選択される、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
項目12. 前記病理群割り当て工程で割り当てられたSCP患者群は、以下の:
SCP19. 単一細胞の>70%がCI10であること;
SCP20. 単一細胞の>70%がCI11であること;
SCP21. 単一細胞の≦70%がCI10であること;
SCP22. CI12に対して単一細胞>70%であること;
SCP23. 単一細胞の≦70%がCI12であること;
SCP24. 単一細胞の>80%がCI9であること;
SCP25. 単一細胞の>80%がCI8であること;
SCP26. 単一細胞の≦70%がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP27. 単一細胞の>60%がCI9であること;
SCP28. 単一細胞の>70%がCI9であるか;又はCI10であるか、又はCI12であること;
SCP29. 単一細胞の>60%がCI7であること;
SCP30. 単一細胞の>70%がCI6であること;
SCP31. 単一細胞の>50%がCI5であること;
SCP32. 単一細胞の>60%がCI3であること;
SCP33. 単一細胞の>70%がCI4であること;
SCP34. 単一細胞の>50%がCI2であること;
SCP35. 単一細胞の>50%がCI1であること;
SCP36. 単一細胞の>90%がCI14であること
を含むか、又はそれからなるリストから選択される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
項目13. 前記細胞コミュニティ割り当て工程で割り当てられた細胞コミュニティ同一性(CCI)は、以下の:
CCI1. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25の細胞であること;又は
CCI2. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI6であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること;又は
CCI3. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25の細胞であること;又は
CCI4. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、単一細胞の>10%がCI2であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること;又は
CCI5. 同一性がCI1~CI14の細胞のうち、細胞の>10%がCI3であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが≦25の細胞であること;又は
CCI6. 全細胞の>5%がCI19であり、かつ細胞の>10%がCI20であり、かつ細胞の>3%がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが<50の細胞であること、又は
CCI7. 全細胞の>80%がCI1~CI15のいずれかの同一性であり、かつ<10%がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが<75の細胞であること、又は
CCI8. 全細胞の>20%がCI15、及び/又はCI16、及び/又はCI17であり、かつ<40%の細胞がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが75を超える細胞であること;又は
CCI9. 全細胞の>5%がCI18であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>25%であること;又は
CCI10. 全細胞の>80%がCI1~CI14のいずれかの同一性であり、かつ<2%の細胞がCI20であり、かつ細胞コミュニティの平均サイズが>115の細胞、かつ<125の細胞であること
を含むか、又はそれからなるリストから選択される、項目3~9のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
項目14. 前記がん組織サンプルは、ステロイドホルモン受容体の発現を特徴とする組織に由来する新生細胞、特に乳房、卵巣又は子宮内膜組織に由来する新生物細胞、より特にヒト乳房又はヒト乳腺上皮に由来する新生物細胞を含むか、又は本質的にそれからなる、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
本発明は、以下の実施例及び図によってさらに説明され、そこからさらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明するためのものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0142】
方法
臨床データ
腫瘍サンプルと患者のメタデータは、バーゼル大学病院とチューリッヒ大学病院により得られたコホートから収集した。バーゼル大学病院のコホートには、いずれの臨床的又は組織学的特徴に対して選択されなかった281名の患者が含まれた。病理学者が組織マイクロアレイ(TMA:tissue microarray)構築のための組織切片の適合性を評価した(Kononen,J.ら.Nat.Med.4,844-847(1998))。TMAには、患者ごとに1個の0.8mmの腫瘍コアと、場合によってはそれに適合した健常乳房組織サンプル、及び少数のコントロールサンプル(肝組織)を含有した。チューリッヒ大学病院からのコホートは72人の患者から構成され、サンプルは、記載のとおり、各腫瘍の4つの異なる領域から4個の0.6mmのコアが含まれた(Kundig,Pら.J Translat.Med.,16(1),118(2018))。腫瘍コアを、領域間の距離が平均1cmである中心部2カ所と周辺部2カ所から打ち抜いた。サンプルは、リンパ節転移のある患者とない患者だけでなく、異なる腫瘍等級(グレード)を等しい割合で含有するように選択した。腫瘍の大きさ及び位置が異なる合計720枚の画像を取得した。このプロジェクトは、現地の倫理委員会による承認を得ていた(レファレンス番号:2014-397及び2012-0553)。
【0143】
抗体パネル
乳がんに特異的なエピトープ、並びに細胞周期及びリン酸化シグナル伝達のマーカーを標的とし、かつ上皮、内皮、間葉、及び免疫細胞のタイプを区別する抗体パネルを設計した(
図16)。
【0144】
組織の調整と染色
組織サンプルは、バーゼル大学病院及びチューリッヒ大学病院でホルマリン固定及びパラフィン包埋されたものである。抗体パネルを使用し組織切片を染色した。組織切片をキシレンで一晩脱脂し、段階的なアルコール(エタノール:脱イオン水 100:0、90:10、80:20、70:30、50:50、0:100;各5分)で再水和させた。95℃の水浴で、pH 9のTris-EDTAバッファーを用いて20分間、熱誘導性エピトープ賦活化を行った。組織マイクロアレイを直ちに冷却し、TBS中の3%BSA、5%ヤギ血清で1時間ブロッキングした。サンプルを、TBS/0.1%Triton X-100/1%BSAで希釈した7.5g/Lの一次抗体で4℃にて一晩インキュベートした。組織サンプルは、TBS/0.1%Triton X-100で2回、TBSで2回洗浄し、イメージングマスサイトメトリー測定前に乾燥させた。
【0145】
免疫蛍光染色とイメージングマスサイトメトリーによる複合染色では、組織を金属コンジュゲートしたマウスHER2(151Eu)及びウサギ汎サイトケラチン(175Lu)の一次抗体で4℃にて一晩染色し、その後洗浄し、蛍光コンジュゲート及び金属コンジュゲートした抗マウス(AF488、165Ho)及び抗ウサギ(AF555、159Tb)の二次染色を室温で1時間混合添加して行った。カバーガラスを付加して、組織の蛍光シグナルを画像化した。その後、カバーガラスを除去し、サンプルを洗浄、乾燥させ、マスサイトメトリーレーザーアブレーションに供して取得した。
【0146】
イメージングマスサイトメトリー
画像はHyperionイメージングシステム(Fluidigm)を用いて取得した。TMAの各コアから最大の正方形領域を200Hzのラスターパターンでレーザーアブレーションし、市販の取得ソフトウェア(Fluidigm)を用いて生データの前処理を完了した。IMCの取得安定性を、同位体含有ポリマー(Fluidigm)の散在した取得によりモニターした。成功した画像取得を全て処理し、TMAの位置に特異的な汎マーカー染色の変動を含む画像を削除した。この取得が中断され、その後継続した場合は、同一患者の腫瘍画像2枚を含めた。そのため、281人の患者コホートでは、腫瘍289枚、健康な乳房87枚、肝臓5枚のコントロール画像が得られた。適用できる場合、チャネル間のシグナル漏れ込み(spillover)は、CATALYST Rパッケージ(バージョン1.5.6,Chevrier,Sら Cell Syst.6,612-620(2018))の関数を使用して補正した。72人の患者コホートでは、腫瘍263枚、健康な乳房68枚、コントロール6枚の画像が得られ解析に使用した。
【0147】
データ処理
データを.tiff形式に変換し、https://github.com/BodenmillerGroup/ImcSegmentationPipelineで利用可能なフレキシブルな解析パイプラインを使用して単一細胞にセグメント化した。簡潔には、 個々の細胞及び腫瘍/間質領域を、Ilastik 1.1.9(Sommer,Cら From Nano to Macro230-233(IEEE,2011))及びCellProfiler2.1.1(Carpenterら Genome Biol.7:R100(2006))を組み合わせて使用してセグメント化した。Ilastikを使用して、膜と核を識別する抗体染色の組み合わせに基づいてピクセル(単一細胞-核、膜及びバックグラウンド;腫瘍/間質-腫瘍、間質及びバックグラウンド)を分類することにより確率マップを作成した。次いで確率マップにより、CellProfilerを使用して、単一細胞、又は腫瘍及び間質のオブジェクトマスクにセグメント化した。
【0148】
単一細胞セグメンテーションマスクと35チャンネルのtiff画像を重ね合わせ、histoCATに実装されているとおり、Matlabツールボックスのregionpropsを用いて単一細胞マーカー発現手段と空間特徴を抽出した(Schapiro,D.ら Nat.Biotechnol.31,545-552(2013))。
【0149】
各細胞の目的細胞から4ピクセル(4μm)内にある直接の近傍の単一細胞同一性(ID)を検出し、histoCATソフトウェアを用いて記録した。近傍探索のために拡張するピクセル数は、セグメンテーションの小さなギャップを埋め、直接近傍の後のセルは記録しないように選択した(セル短軸の長さ:5~95パーセンタイルの4.84~14.59ピクセル、平均9.51ピクセル)。
【0150】
腫瘍マスクの内側又は外側の個々の細胞の位置を特定し、各細胞の(腫瘍領域の内側と外側からの)腫瘍境界までの距離をMatlabツールボックスのregionpropsを使用して計算した。距離は、対象となっているオブジェクトの最も近いピクセルの間で計測した。
【0151】
データの変換と正規化
示されたデータは変換されておらず、全ての解析は生のIMC測定値に基づいて行われた。単一細胞マーカー発現は、各チャンネルの平均ピクセル値でまとめられている。単一細胞のデータは、外れ値を取り除くために99パーセンタイルで打ち切り、Zスコア付きのクラスタ平均をヒートマップで可視化した。t分布型確率的近傍埋め込み法(T-distributed Stochastic Neighbor Embedding:t-SNE)とPhenoGraphについては、データを99パーセンタイルに正規化した。画像又は患者ごとの細胞数を視覚化し、生存率モデリングを行うために、カウントを画像面積(総ピクセル数)で正規化し、細胞密度として表示した。coxph生存率モデリングでは、1より大きな値を得るためにこれらの密度に1031の係数を掛け、次いで対数変換を行った。
【0152】
クラスタリングとメタクラスタリング
バーゼル大学病院からの大規模コホートの単一細胞を、初期の教師なしクラスタリングと、これらのクラスタを平均マーカー相関に基づいてより大きな群に集約し、細胞メタクラスタを特定するためにPhenoGraph(Levine,J.H.ら Cell 162,184-197(2015)、(Bodenmiller,Cell Syst.2,225-238(2016))の組み合わせを使用して表現型が類似した細胞群にクラスタリングした。第1の工程では、データをオーバークラスタリングし、希少な細胞亜集団を検出及び分離した。PhenoGraph(バージョン2.0)をデフォルトのパラメータ(histoCAT/Cytで実装されているもの)、及び20個の最近傍を用いて使用した。高次元のクラスタリングには、29個のマーカーと4個の細胞形状特徴を使用した:イリジウム、ヒストン、ホスホヒストン、CK14、CK5、CK8/18、CK19、CK7、汎CK(panCK)、E/P-カドヘリン、ER、PR、HER2、GATA3、SMA、ビメンチン、フィブロネクチン、vWF/CD31、CD44、CD45、CD68、CD3、CD20、切断型カスパーゼ3/切断型PARP、炭酸脱水酵素(Carbonic Anhydrase)、ホスホ-S6、Ki67、p53、EGFR、面積、偏心、範囲、及び近傍の数。得られた71個のクラスタのうち、59個の上皮/腫瘍群が、平均マーカー相関の階層的クラスタリング(ユークリッド距離とウォード連結)により、より大きな群へと集約された。マルチスケール・ブートストラップの再サンプリング法により各サブツリーの不確実性を評価し(Rパッケージpvclust、バージョン2.0)、有意な上皮のサブツリーが維持され、かつ既知の生物学的差異が分離されるように階層の分離を割り当てた。その結果、サイズとサブツリーの堅牢性が異なる14個の腫瘍細胞メタクラスタが得られた。間質細胞及び免疫細胞の典型的なマーカー発現を示すクラスタは、腫瘍マーカーに焦点を当てたパネルのために制限され、オリジナルのPhenoGraphクラスタリングと同様に保持され、より大きな群に集約されなかった。このメタクラスタリングにより、様々な免疫細胞、間質細胞、及び上皮/腫瘍細胞のタイプを代表する27個の細胞の亜群を得た。研究される細胞タイプの表現型がどのレベルで詳細に分類されているか又はクラスタ化されているかは、パネルの選択とパラメータの選択との両方による。細胞のタイプをより細かく分類すれば、細胞のマーカー発現の微妙な違いも明らかになるかもしれないが、多くの腫瘍細胞のタイプは患者に固有であるため、腫瘍間の比較可能性が制限されるであろう。
【0153】
コホート間のクラスターマッチング
チューリッヒ大学病院の第2のコホートからの単一細胞は、PhenoGraphを用いて、上記第1のコホートと同じ設定及び最近傍パラメータ30により教師なし及び独立してクラスタ化した。これらのクラスタを、z-スコア化平均マーカー発現のピアソン相関を用いて、前回のコホートの最も類似したメタクラスタとマッチングした。2つの特殊なケース(クラスター8及び15)では、対象のクラスタは全てのメタクラスタとの相関はやや低いが、間質細胞タイプとの相関は最も高く、画像の目視検査で、これらのクラスタは明確な腫瘍塊を形成している細胞を表していたため、これらのクラスタ-を手動で再割り当てした。
【0154】
高次元データの可視化のためのbh-tSNEアルゴリズム
可視化のために、高次元単一細胞データを非線形次元削減アルゴリズムt分布型確率的近傍埋め込み法(t-distributed stochastic neighbour embedding)(tSNE)を用いて2次元に削減した(Amir A.D.ら Nat Biotechnol.31,545-552(2013))。tSNEのバーンズハット(Barnes-Hut)実装(bh-tSNE)を99パーセンタイルの正規化データにデフォルトパラメータ(初期次元,110;perplexity(パープレキシティ),30;theta(シータ),0.5)を用いて適用した。このアルゴリズムを、密集したプロットの可視パターンを不明瞭にしないため、かつ計算性能を高めるために、ランダムにサブサンプリングされた細胞のセット(各画像から20%)に対して実行した。
【0155】
近傍分析
細胞タイプ間の有意に濃縮又は枯渇したペアワイズ隣接相互作用を特定するために、histoCAT関数を使用して、空間的な単一細胞隣接の並べ替え検定(permutation test)ベースの分析を実行した(Shapiro,2017)。隣接細胞は、4ピクセル(4μm)以内の細胞と定義した。有意性には、p値のカットオフ<0.01を使用した。
【0156】
単一細胞の病理患者の群別け
患者を、8個の最隣接とデフォルトパラメータを用いたPhenoGraphのcytofkit R実装(version 1.10.0,Levine,2015)を用いて、腫瘍細胞メタクラスタの割合に基づいて群別けした。最隣接のパラメータ数は、区別できる優勢な細胞タイプからなる患者の小群を分離できるように選択した。このパラメータにより高い値を選択すると、群の数が少なくなり、その結果、全く関係のない優勢な表現型の患者が一緒にグループ化されることになる。最隣接パラメータの値が低ければ、腫瘍の種類による細胞組成の微妙な違いを捉えることができるかもしれないが、群間比較及び生存率解析のための統計的検出力が著しく制限されるであろう。患者群18は、まれなHR+/CK-細胞タイプが強力に優勢である明確な腫瘍を持つ患者3人のみを含有するために統計的検出力が不足しているため、さらなるダウンストリーム解析から除外した。
【0157】
単一細胞の病理患者のマッチング
チューリッヒ大学病院の第2のコホートからの腫瘍コアを、一致(マッチング)した腫瘍細胞タイプの成分に基づいて、最も類似した以前に定義した単一細胞病理群に割り当てた。距離の計量として、ピアソン相関の逆数を用いた。
【0158】
空間的コミュニティ
画像をトポロジー的隣接グラフに変換し、このグラフでは全ての細胞はノード(重心で可視化)で表され、ノード同士は細胞が直接隣接している場合はエッジで結ばれている。隣接細胞とは、細胞に割り当てられた最外周のピクセルから4ピクセル(4μm)以内の細胞と定義した。その後、ルーバンコミュニティ検出アルゴリズム(Louvain community detection algorithm)(Blondel,V.D.ら J.Stat.Mech.P 10008(2008))(Lefebvre及びGuillaumeによるC実装、バージョン0.2、histoCAT/Cytにより使用されるPhenoGraph2.0の実装により使用されるようにMatlabによってラップされる)を適用し、組織グラフにおいて高度に相互接続された空間サブユニットを識別した。空間的に制約のあるネットワークにコミュニティ検出アルゴリズムを用いると、その根底にある非空間駆動型の解が隠れてしまうことが知られているが、ここでアルゴリズムを適用した目的は、空間情報を抽出し、物理的近接性に基づいてコミュニティを識別することだけであった(Expert P.ら PNAS108(19),7663-7668(2011))。この解析は、腫瘍コミュニティを識別するために上皮細胞単独で行い(グラフに間質細胞又は免疫細胞を含めない)、かつ腫瘍微小環境コミュニティを識別するために組織の全ての細胞で再度行った。識別した腫瘍コミュニティの平均サイズに基づいて、腫瘍固有の凝集性スコアを算出した。個々の切断された細胞ではなく、凝集した細胞パッチに焦点を当てるために、10未満の細胞を含むコミュニティをさらなる解析から除外した。15人の患者は、画像化された領域に少なくとも10の細胞からなるいずれの腫瘍コミュニティが含まれていなかったため、腫瘍コミュニティに基づく解析から除外した。反復性の類似の空間的な細胞型コミュニティを識別するために、最小・最大正規化した、各コミュニティにおける各細胞メタクラスタの細胞の絶対数に対して、cytofkit PhenoGraph(Levine、2015、バージョン1.10.0)を実行した。この解析は、上皮細胞タイプのみに基づく腫瘍コミュニティ(k=80)と、全ての細胞に基づくが個々の間質細胞タイプのみを考慮し、かつ全ての腫瘍細胞タイプを1つの標識に集約した微小環境コミュニティ(細胞タイプ群100:全ての腫瘍細胞を含む、k=30)とに分けて実施した。この解析は、各コホートについて別々に行なったが、一致したメタクラスタ細胞タイプに基づいて行なった。
【0159】
間質環境
微小環境コミュニティの成分に基づき、階層的クラスタリング(ユークリッド距離とウォード連結)を用いて、画像を11種類の間質環境に群別けした。この解析は、各コホートについて別々に行なったが、一致したメタクラスタ細胞タイプに基づいて行なった。
【0160】
重複する分類とエンリッチメント(濃縮)
特定の間質環境に濃縮された単一細胞病理患者群を識別するために、フィッシャーの正確検定を使用した。この検定には、R関数fisher.test(パラメータenrichment=「greater」)を用い、患者群の潜在的な間質領域全てについて行った。p値は多重検定のためにボンフェローニ法を用いて補正した。このエンリッチメント解析は、単一細胞病理亜群、間質環境、及び臨床分類の異なる組み合わせにおいても行われた。
【0161】
生存曲線とcoxph回帰モデル
カプラン・マイヤー生存曲線及びcoxph生存回帰モデルは、Rのsurvivalパッケージ(バージョン2.42-4)を用いて作成した。臨床的又は単一細胞で定義された異なる亜群の患者の全生存期間並びに無病生存期間を分析した。患者の亜群が、残りの患者の生存率、あるいは類似のSCP群若しくは同じ臨床分類の他の患者の生存率から有意に逸脱しているかどうかを調べるために、logrank検定とcoxphモデルの両方を採用した。特定のコミュニティ又は単一細胞のタイプと患者リスクとの有意な関連性を見出し、かつハザード比を調べるために、臨床的亜群の群別けと等級付けと共に対数変換したコミュニティ又は単一細胞の密度をcoxph生存モデルに適用した。ネストされたcoxphモデルを、尤度比検定(Rパッケージanova.coxph)を用いて比較し、追加変数が生存モデルを改善するかどうかを評価した。
【0162】
例1:
イメージングマスサイトメトリーを使用して、35種類のバイオマーカーを同時に定量して、長期生存データが利用可能な乳がん患者352名の腫瘍組織の高次元免疫組織化学病理画像720枚を得た。空間的な単一細胞解析により、腫瘍及び間質の単一細胞の表現型、その構成(organization)及び不均一性を識別し、かつ細胞組成と組織構成に基づく乳がん細胞構造のカテゴライズを可能にした。この解析により、腫瘍の微小環境の多細胞の特徴及び異なる臨床アウトカムに関連する新規の乳がん亜群が明らかになった。したがって、空間的に分解された単一細胞解析により、患者固有の診断の情報を得ることが可能な疾患と関連した様式で腫瘍内の表現型の不均一性を特徴づけることができる。
【0163】
空間的に分解された単一細胞の表現型
乳がん組織の細胞不均一性及び空間的構成を包括的に定量するために、乳がん組織特異的イメージングマスサイトメトリー(IMC)パネルを、全ての臨床サブタイプ及び病理学的等級を代表する281種の腫瘍のサンプルを画像化するために設計した。IMCは、金属同位体標識抗体を用いた免疫組織化学染色と、レーザーアブレーション及び質量分析に基づく検出とを組み合わせて、高次元画像を生成する(Giesenら,Nat.Methods11,417-422(2014))。この35種類の抗体のパネルにより、臨床的に確立された乳がん標的であるエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PR)、及びHER2、増殖マーカーのKi-67、上皮細胞、間葉細胞、免疫細胞、及び内皮細胞系列のマーカー、並びにシグナル伝達経路、がん遺伝子、及びエピジェネティクスに関する洞察をもたらす標的を同時に定量した(
図16)。IMCは、免疫蛍光法又は免疫組織化学法に匹敵する画像を生成し、高度に多重化された染色が可能である(
図1、
図2)。
【0164】
画像は、ランダムフォレストピクセル分類器(Ilastik)、及びCellProfiler(Bodenmiller、2016)を用いて、単一細胞、腫瘍領域及び間質領域にセグメント化した。381枚の画像(腫瘍289枚、健常乳房87枚、肝臓コントロール5枚)中の855,668個の細胞を識別し、各細胞のマーカー発現と空間的特徴を定量した(
図3)。PhenoGraph(Levineら、2015)によるクラスタリングにより、内皮細胞、T細胞及びB細胞、マクロファージ、並びに間質細胞集団の細胞表現型のクラスタ(以下、表現型と呼ぶ)と、59種類の多様な腫瘍細胞の表現型を識別した(
図4、
図5)。いくつかの腫瘍の表現型は、個々の患者に固有のものであった(
図4)。この多様なものの中から共通の細胞サブタイプを識別するために、PhenoGraphで定義された腫瘍の単一細胞表現型を階層的クラスタリングすることで、14種の腫瘍細胞メタクラスタを定義した(
図6)。
【0165】
全ての臨床サブタイプの腫瘍は、線維芽細胞、内皮細胞、及び免疫細胞集団を同程度の密度で含有していたが、臨床サブタイプに応じてサイトケラチン、ホルモン受容体、及びHER2の発現が変動する腫瘍細胞集団中に濃縮されていた(
図5、7a)。全ての患者にわたって、免疫細胞は腫瘍の凝集塊から排除されていたが、免疫細胞及び線維芽細胞は腫瘍塊にまれに浸潤し、かつサイトケラチンを欠くまれなHR
low/-細胞は一部のサンプルで腫瘍-間質前線を超えて侵入していた(
図5及び7a)。腫瘍領域には、ER、PR、GATA3、E-カドヘリン、及び複数のサイトケラチンの組み合わせによって識別される様々な管腔HR
+上皮細胞の表現型が含まれたが、ホルモン受容体はまた、数例(メタクラスタ26)でサイトケラチンなしに発現していた(
図5、7b)。管腔サイトケラチン(CK7、CK8/18、CK19)のうち、CK7のみが特定の管腔腫瘍細胞サブセット(メタクラスタ19、20)に関連していた(
図5)。「HER2発現はメタクラスタを定義する特徴ではなく」、複数の表現型において様々なレベルで観察された。ホルモン受容体及びHER2受容体の発現がない表現型(トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の特徴)には、Ki-67、p53、EGFR、及び低酸素マーカーCAIX(メタクラスタ15~17)、基底サイトケラチン(メタクラスタ18)、さらに管腔サイトケラチン(メタクラスタ19、22内のPGクラスタ)が高レベルのメタクラスタが含まれた(
図5)。
【0166】
多細胞乳がん構造
乳房腫瘍組織における多細胞構造のパターンを、これらの単一細胞表現型に基づいて評価した。組織機能は、1つ又は複数の細胞表現型間のペアではなく高次の相互作用からなる多細胞ユニット又はコミュニティによって実現される。最初にトポロジー的隣接細胞相互作用ネットワークを構築し、次にルーバン(Louvain)アルゴリズムを使用してグラフベースのコミュニティ検出アプローチ(Blondel、2008年)を適用することによってコミュニティを識別した。腫瘍細胞にのみ適用されたコミュニティ検出により、腫瘍コミュニティ(tumour community:TC)と呼ばれる様々なサイズの高密度上皮のパッチを識別した:全ての細胞に適用される場合、腫瘍細胞及び間質細胞成分を含有する微小環境コミュニティ(microenvironment community:MC)が識別された(
図8)。PhenoGraphを用いて、多細胞コミュニティを、コミュニティサイズ及び腫瘍細胞の表現型にしたがって群別けするか(
図9 TC)、又は全ての細胞を、腫瘍細胞のタイプに不可知(アグノスティック(agnostic))に群別けした(
図10 MC)。腫瘍コミュニティは、単一細胞のメタクラスタがほとんど優勢であり、細胞の絶対数に基づいて分離された(
図9)(TC 4、7、18;補足画像)。いくつかの微小環境コミュニティには、様々な腫瘍細胞と相互作用する線維芽細胞からなるもの(MC 2、5、8)もあれば、他は希薄な間質含有量を示すもの(MC 14、17、18、20、21、22)があり、又はT細胞(MC19、25、30)、マクロファージ(MC27)、T細胞とB細胞の大きなネットワーク(MC1)、又は内皮細胞(MC13、6、30、25、7)が濃縮されたものがあった(
図10)。線維芽細胞が濃縮されたコミュニティでは、相互作用する免疫細胞が少なく、これは腫瘍線維増生(desmoplasia)と免疫排除の作用因子として知られている線維芽細胞の役割と一致している。
【0167】
単一細胞の病理亜群は臨床アウトカムと関連している
単一細胞のコミュニティへの構成は、乳がんの組織構造に寄与する。したがって異なる臨床アウトカムを有する腫瘍のサブタイプを調査した。臨床的に定義された全ての乳がんサブタイプにおいて、多細胞メタクラスタ由来の細胞が検出され(
図7)、これより一般的な病理分類では患者間及び患者内の細胞不均一性を十分に解明できないという結論が支持された。単一細胞病理学的景観(ランドスケープ)が古典的な組織学ベースの臨床サブタイプよりも高い分解能で患者を分類できるかどうかを判断するために、教師なしのクラスタリングを用いて腫瘍細胞のメタクラスタ組成に基づいて患者の腫瘍を群別けし、古典的な臨床サブタイプを分割する18種の単一細胞病理(SCP)亜群を特定した(
図11a及び
図12)。SCP亜群は、様々な割合の上皮性腫瘍コミュニティを有しており(
図11b)、個々のSCP亜群は、他の全ての患者、同じ臨床分類のSCP亜群、及び類似の細胞メタクラスタを含有するが異なる構造を有する他のSCP亜群と比較した場合、異なる臨床アウトカムを有した(
図12及び13、表2及び3)。
【0168】
HR
+の臨床的に定義された腫瘍は、ホルモン受容体を高発現する細胞に強力に濃縮される腫瘍(SCP1~5、12)と、HRを低レベルしか発現しないか、又はHRを欠く多くの細胞に囲まれた少数のHR
hi/+細胞を有する腫瘍(SCP6~10、11)とに分類され、これらは現在臨床的に分類されていない(
図11a、7、12)。メタクラスタ23(CK
+/HR
hi腫瘍細胞)を優勢に含有するSCP1は、疾患で死亡していない(succumb)患者にのみ関連していた。逆に、同じ細胞メタクラスタを含有するが構造が異なり、コミュニティが小さく、CK
low/HR
lowのメタクラスタ22及び25の細胞の割合が比較的高いSCP3は、CK
low/HR
low細胞が優勢に含まれるSCP6及び9と同様に予後不良と関連していた(
図11a、13c、13e及び14)。CK
+/HR
+細胞を含有するSCP2は、HR
+/HER2
+臨床サブタイプに有意に濃縮されており、それ以外はCK
low/HR
lowのメタクラスタ22に支配されていた(
図11a、7、及び12)。SCP11と12とは、それぞれ主にメタクラスタ20と19とに由来するCK7
+細胞によって特徴づけられた。SCP11は臨床的に割り当てられるHR
-/HER2
+腫瘍タイプと重複し、この臨床サブタイプは通常不良なアウトカムであるが(Coates,A.S.,ら Ann,Oncol.26,1533-1546(2015))、SCP11の患者はこのコホート内の他の患者よりも有意に良好なアウトカムを有した。一方、臨床的にHR
+/HER2
-と割り当てられる少数のCK7
+のSCP12患者は、長期生存しなかった(
図11a、12、13a、13c、13e、及び14)。高リスクTNBC患者の腫瘍には、筋上皮細胞ではなく管腔細胞の起源を示すサイトケラチン発現を持つ細胞など、異なる細胞タイプを含有していた(
図4、5、11a、及び12)。管腔上皮マーカーがなく、低酸素、p53
+/EGFR
+、基底、又は増殖マーカーが高レベルのTNBC表現型は、不良なアウトカムを伴うSCP13、14、15、及び17を区別した(
図4、5、11a、及び13)。SCP16の腫瘍はp53
+であり、かつアポトーシスマーカーを発現しており、興味深いことに、この群の腫瘍を持つ患者は、臨床的にTNBCに分類されるにもかかわらず、疾患で死亡しなかった(
図13、及び
図14f)。
【0169】
これらの腫瘍の細胞空間構成をマッピングすることで、変化する構造及び細胞密度、並びに細胞の表現型と組織構成との間の関係を観察した(
図11)。不均一性腫瘍は、ヒートマップ上で多くのバンドで示される複数の表現型的に純粋なコミュニティからなるが、1つの上皮層又は異なるサイズの類似コミュニティに構成された均一性腫瘍では、少数のクラスタ化したバンドのみを有した(
図11b)。ほとんどの腫瘍は単一の腫瘍細胞のメタクラスタと少数のコミュニティタイプによって支配されていたが、SCP8の腫瘍とSCP10の一部の腫瘍とは異常に不均一で、これは空間的に異なるコミュニティに局在する同様の比率の複数の上皮細胞メタクラスタからなっていた(
図11b)。SCP8でこのような不均一性腫瘍を持つ患者は非常に不良なアウトカムを有した。全体として、腫瘍内表現型の不均一性は、不均一な腫瘍塊とは対照的に、別々の腫瘍コミュニティに空間的に分離されており、空間表現型の不均一性が大きい腫瘍を持つ患者は、より不良なアウトカムを有した。
【0170】
臨床的に定義されたサブタイプと比較して、SCP群別けはCox比例ハザードモデリングを用いて患者の全生存を予測する能力を向上させた(
図18)。臨床的な等級付け及び分類では捉えられない患者リスクに関連する特徴を識別するために、このモデルに対する上皮と間質の単一細胞及びコミュニティの寄与を調査した。単一細胞の表現型又は細胞メタクラスタがアウトカムと独立して関連することはほとんどなかったが(図示せず)、空間的に定義された細胞コミュニティは独立して関連した(
図15)。特定の細胞タイプでは、腫瘍細胞コミュニティが大きいと良好なアウトカムに関連し、一方、同様のネットワークが小さいサイズであると不良のアウトカムに関連した(
図9、15、TC 12対13、17対23、5対15)。さらに、T細胞の関与を伴う血管新生を特徴とする微小環境コミュニティMC6は、他の亜群に比べて低リスクのHR
+臨床亜群でより多く見られたにもかかわらず、死亡リスクの上昇と有意に関連していた(
図10、15)。一方、高T細胞浸潤のMC19とマクロファージ濃縮のMC27は、炎症が他の臨床亜群よりも高リスクのTNBC腫瘍に多いにもかかわらず、患者の良好なアウトカムと有意に関連していた(
図10、15)。SCPで定義された腫瘍のタイプ、及び腫瘍と間質の構造により、現在の臨床分類を超えた予後の情報が得られた。腫瘍の形態学、薬剤感受性、薬剤耐性、有意に高リスク又は低リスクの割り当て、あるいは有意に高リスク又は低リスクからの除外は全て、臨床的な状況においてSCPから得られる潜在的に有用な情報である。これらの情報は、
図19にまとめられている。
【0171】
要約すると、本発明は、系統的で多次元的な乳がんの組織構造が、疾患に関連する単一細胞の表現型と細胞コミュニティとの詳細な空間マップを生成することを可能にする。この単一細胞病理学は、現在、当技術分野で利用可能な臨床サブタイピング戦略よりも、異なる臨床アウトカムを持つ患者をより良く分別することを可能にする。本明細書の実施例では、どのように多細胞構造の解析により、腫瘍の表現型の不均一性が異なる領域又は病巣に空間的に局在していることを明らかにしたかを示す。さらに、この多細胞構造により、単一細胞のデータ単独よりも優れた患者のアウトカムに関連する情報を得ることができた。同時発生する乳がんの表現型が識別され、表現型と空間的不均一性は臨床的に確立されたサブタイプ間で異なった。したがって、多細胞の空間情報は医学的に関連性があり、空間的表現型の組織の特徴が患者の疾患の進行にどのように影響するかについての基礎を提供する。
【国際調査報告】