(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】複合材料の自動化された機械的成形
(51)【国際特許分類】
B29C 70/38 20060101AFI20230307BHJP
B29C 70/54 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
B29C70/38
B29C70/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543414
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 US2021013144
(87)【国際公開番号】W WO2021146223
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517318182
【氏名又は名称】サイテック インダストリーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホリス, リチャード
【テーマコード(参考)】
4F205
【Fターム(参考)】
4F205AC03
4F205AD16
4F205AJ03
4F205AJ08
4F205HA14
4F205HA23
4F205HA45
4F205HB01
4F205HK23
4F205HT26
(57)【要約】
本明細書では、複合材料を成形するための完全に自動化された方法が開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料を成形するための完全に自動化された方法であって、
(a)任意選択的に、上面と下面とを有する少なくとも1つの複合材料層を所定のパターンに機械加工すること;
(b)ダイアフラム又はフレームを把持するように構成されたエンドエフェクタを備えた第1のロボットアームを用いて、周囲を規定する下部フレームをコンベア上に配置することであって、前記コンベアが加熱装置及びプレスツールを通過すること;
(c)前記第1のロボットアームを用いて上面と下面とを有する下側ダイアフラムを前記下部フレームに対して位置決めし、前記下側ダイアフラムの前記下面が前記下部フレーム周囲の前記上面に接触するようにすること;
(d)前記複合材料層を把持するように構成されたエンドエフェクタを備える第2のロボットアームを用いて、少なくとも1つの複合材料層を前記下側ダイアフラム上に配置して、少なくとも1つの複合材料層の前記下面が前記下側ダイアフラムの前記上面の一部と接触し、且つ前記複合材料層が前記下部フレームによって規定された前記周囲内に配置されるようにすること;
(e)前記第2のロボットアームを用いて、前記周囲を規定する前記中央フレームを前記下側ダイアフラムの前記上面に配置して、前記中央フレーム周囲の前記下面が前記下側ダイアフラムの前記上面に接触し、前記下部フレームと前記中央フレームが積層配置になるようにすること;
(f)前記第2のロボットアームを用いて上面と下面とを有する上側ダイアフラムを前記中央フレームに対して位置決めして、前記上側ダイアフラムの前記下面が前記中央フレーム周囲の前記上面と接触するようにすること;
(g)前記第2のロボットアームを用いて、周囲を規定する上部フレームを前記上側ダイアフラムに対して位置決めして、前記上部フレーム周囲の前記下面が前記上側ダイアフラムの上面に接触し、前記センターフレームと前記上部フレームが積層配置になり、その結果前記下側及び上側ダイアフラムの間に前記少なくとも1つの複合材料層を収容するポケットが形成されるようにすること、
(h)前記ポケットから空気を除去し、それによって層状構造体を形成し、熱、力、又はそれらの組み合わせが加えられるまで、前記少なくとも1つの複合材料が前記ポケット内で動かない状態で保持されること;
(i)前記層状構造体を加熱装置内に搬送し、前記層状構造体を、前記複合材料の粘度を下げるか前記ダイアフラムを軟化させるのに十分な温度まで加熱すること;
(j)雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール内に前記層状構造体を搬送することであって、前記雄型及び前記雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有すること;
(k)前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を閉じることにより、前記雄型と前記雌型との間の前記層状構造体を圧縮すること;
(l)成形された形状を維持するのに十分なレベルに前記層状構造体の粘度が到達するまで前記雄型及び前記雌型を閉位置で維持して、成形された構造体を形成すること;
(m)前記雄型と前記雌型との間の隙間を開き、前記成形された構造体を前記プレスツールの外に運ぶこと;
(n)フレームを把持するように構成されたエンドエフェクタを備えた第3ロボットアームを用いて、前記ダイアフラムから前記上部フレーム、前記下部フレーム、又は前記中央フレームのうちの1つ以上を取り外すこと;及び
(o)任意選択的に、第3のロボットアームを用いて、フレームを第1のロボットアーム近傍まで搬送する第2のコンベヤ上に、前記上部フレーム、前記下部フレーム、又は前記中央フレームのうちの1つ以上を配置すること;
を含む方法。
【請求項2】
実質的に平面状の複合材料の複数のプライが所定のパターンに機械加工され;
前記複数のプライが、前記第2のロボットアームを使用して前記下側ダイアフラムの前記上面に積層配置で配置される;
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(h)が、前記上側ダイアフラムと前記下側ダイアフラムとの間に真空圧力を加えることを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記雄型及び前記雌型が周囲温度よりも高い温度で維持される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記雄型及び前記雌型が100℃より高い温度に維持される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(k)が、前記鋳型の間により小さな隙間が形成されるように、前記雄型と前記雌型との間の前記隙間を部分的に閉じることを含み、このより小さな隙間がその後所定の時間の後又は粘度に到達した後に閉じられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程(l)が、前記複合材料の粘度が1.0×10
8mPa未満になるまで行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記雄型及び前記雌型が、約10秒~約30分間、閉位置で維持される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記成形された構造体が前記複合材料の軟化温度よりも高い間に前記ツールから取り出される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(m)、(n)、及び(o)が、
前記ダイアフラムから前記上部フレームを取り外し、前記第3のロボットアームを使用して前記上部フレームを前記第2のコンベヤ上に配置すること;
前記中央フレームと前記ダイアフラムを前記下部フレームから取り外し、中に前記成形された構造体を有する前記ダイアフラムをレセプタクルの中に置き、前記第3のロボットアームを使用して前記中央フレームを前記第2のコンベヤ上に配置すること;及び
前記第3のロボットアームを使用して、前記下部フレームを前記第2のコンベヤ上に配置すること;
を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のロボットアーム、前記第2のロボットアーム、及び前記第3のロボットアームが、一定の期間、同時に連続して作動し、その結果、一定の期間中に成形された構造体の連続生産を提供する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記上側ダイアフラム及び前記下側ダイアフラムが、ゴム層、シリコーン層、及びプラスチック層、又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムからそれぞれ独立して選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱装置が接触式ヒーター又はIRヒーターである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記複合材料が、アラミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、炭素、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、玄武岩、天然繊維、及びこれらの組み合わせから選択される材料の構造繊維を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記複合材料が、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びこれらの組み合わせから選択されるバインダー又はマトリックス材料を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
繊維強化ポリマー複合材料は、多くの産業(航空宇宙、自動車、船舶、工業、建設、及び多様な消費者製品を含む)で広く使用されており、軽量でありながらも特に過酷な環境での高い強度及び耐食性を示すため、選ばれることが多い。繊維強化ポリマー複合材料は、典型的には、予め含浸された材料又は樹脂注入プロセスのいずれかから製造される。
【0002】
予め含浸された材料、又は「プリプレグ」は、一般的には硬化性マトリックス樹脂(エポキシなど)で含浸された繊維(炭素繊維など)を指す。プリプレグ中の樹脂の含有率は比較的高く、典型的には40体積%~65体積%である。プリプレグの複数のプライは積層するための大きさに切断され、その後引き続き組み立てられて成形ツールで成形され得る。プリプレグを成形ツールの形状に合わせることが簡単にはできない場合には、成形面の形状に徐々に変形させるためにプリプレグに熱がかけられる場合がある。繊維強化ポリマー複合材料は、樹脂注入技術を含む液体成形プロセスによって製造することもできる。典型的な樹脂注入プロセスでは、バインダーで結合した乾燥繊維がプリフォームとして鋳型内に配置され、その後液体マトリックス樹脂がその場で直接注入(injection、又はinfusion)される。注入(injection、又はinfusion)後、樹脂が注入されたプリフォームが硬化されることで、完成した複合物品が得られる。
【0003】
両方のタイプの材料に関して、複合材料の三次元成形(shaping)(又は成形(molding))のプロセスは、最終的に成形された製品の外観、特性、及び性能に重要である。例えば、プリフォームはハンドレイアッププロセスを使用して精緻な形状へと成形されることが依然として一般的であり、これには時間がかかり、パーツごとのばらつきが大きくなることが多い。複合材料を成形するための、他のそれほど手作業ではない方法も存在するものの(パーツ形成を助けるためにピン、ロボット、及び/又はアクチュエータを使用する場合もある真空形成法など)、そのような方法は独自の欠点及び短所を有している。例えば、真空法は、形成と硬化が異なる処理工程で行われるため、「オフライン」とみなされる。加えて、そのような方法は時間がかかることが多く、複合材料のレオロジー挙動及び硬化特性が考慮に入れられていない。更に、そのようなプロセスの製品は、依然として皺及びその他の欠陥を有する傾向がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において、複合材料を成形するための新規な完全に自動化された方法が開示され、これは、既存のインフラストラクチャ及び装置の自動化並びに利用の欠如に関して当該技術分野で公知の他の方法の欠点に対処するだけでなく、パーツ間の非常に低いばらつき及び優れた表面特性を有するパーツを得るために、複合材料の成形のための非常に迅速及び一貫した手段も提供する。
【0005】
したがって、一態様では、本教示は、複合材料を成形するための完全に自動化された方法を提供し、この方法は、
(a)任意選択的に、上面と下面とを有する少なくとも1つの複合材料層を所定のパターンに機械加工すること;
(b)ダイアフラム又はフレームを把持するように構成されたエンドエフェクタを備えた第1のロボットアームを用いて、周囲を規定する下部フレームをコンベア上に配置することであって、コンベアが加熱装置及びプレスツールを通過すること;
(c)第1のロボットアームを用いて上面と下面とを有する下側ダイアフラムを下部フレームに対して位置決めし、下側ダイアフラムの下面が下部フレーム周囲の上面に接触するようにすること;
(d)複合材料層を把持するように構成されたエンドエフェクタを備える第2のロボットアームを用いて、少なくとも1つの複合材料層を下側ダイアフラム上に配置して、少なくとも1つの複合材料層の下面が下側ダイアフラムの上面の一部と接触し、且つ複合材料層が下部フレームによって規定された周囲内に配置されるようにすること;
(e)第2のロボットアームを用いて、周囲を規定する中央フレームを下側ダイアフラムの上面に配置して、中央フレーム周囲の下面が下側ダイアフラムの上面に接触し、下部フレームと中央フレームが積層配置になるようにすること;
(f)第2のロボットアームを用いて上面と下面とを有する上側ダイアフラムを中央フレームに対して位置決めして、上側ダイアフラムの下面が中央フレーム周囲の上面と接触するようにすること;
(g)第2のロボットアームを用いて、周囲を規定する上部フレームを上側ダイアフラムに対して位置決めして、上部フレーム周囲の下面が上側ダイアフラムの上面に接触し、センターフレームと上部フレームが積層配置になり、その結果下側及び上側ダイアフラムの間に少なくとも1つの複合材料層を収容するポケットが形成されるようにすること、
(h)ポケットから空気を除去し、それによって層状構造体を形成し、熱、力、又はそれらの組み合わせが加えられるまで、少なくとも1つの複合材料がポケット内で動かない状態で保持されること;
(i)層状構造体を加熱装置内に搬送し、層状構造体を、複合材料の粘度を下げるかダイアフラムを軟化させるのに十分な温度まで加熱すること;
(j)雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含むプレスツール内に層状構造体を搬送することであって、雄型及び雌型がそれぞれ独立して非平面状の成形面を有すること;
(k)雄型と雌型との間の隙間を閉じることにより、雄型と雌型との間の層状構造体を圧縮すること;
(l)成形された形状を維持するのに十分なレベルに層状構造体の粘度が到達するまで雄型及び雌型を閉位置で維持して、成形された構造体を形成すること;
(m)雄型と雌型との間の隙間を開き、成形された構造体をプレスツールの外に運ぶこと;
(n)フレームを把持するように構成されたエンドエフェクタを備えた第3ロボットアームを用いて、ダイアフラムから上部フレーム、下部フレーム、又は中央フレームのうちの1つ以上を取り外すこと;及び
(o)任意選択的に、第3のロボットアームを用いて、フレームを第1のロボットアーム近傍まで搬送する第2のコンベヤ上に、上部フレーム、下部フレーム、又は中央フレームのうちの1つ以上を配置すること;
を含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、複数の複合材料層が所定のパターンに機械加工され、複数の層は、第2のロボットアームを使用して、下側ダイアフラムの上面に積層配置で配置される。
【0007】
いくつかの実施形態では、工程(h)は、上側ダイアフラムと下側ダイアフラムとの間に真空圧力を加えることを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、周囲温度よりも高い温度、例えば100℃を超える温度に維持される。
【0009】
いくつかの実施形態では、工程(k)は、鋳型の間により小さな隙間が形成されるように雄型と雌型との間の隙間を部分的に閉じることを含み、このより小さな隙間はその後指定の時間又は粘度に到達した後に閉じられる。
【0010】
いくつかの実施形態では、工程(l)は、複合材料の粘度が1.0×108mPa未満になるまで行われる。
【0011】
いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、約10秒間~約30分間、閉位置で維持される。
【0012】
いくつかの実施形態では、成形された構造体は、それが複合材料の軟化温度を超えている間にツールから取り出される。
【0013】
いくつかの実施形態では、工程(n)及び(o)は、以下を含む:
ダイアフラムから上部フレームを取り外し、第3のロボットアームを使用して上部フレームを第2のコンベヤ上に配置すること;
中央フレームとダイアフラムを下部フレームから取り外し、ダイアフラムとその中の成形された構造体をレセプタクルの中に置き、第3のロボットアームを使用して中央フレームを第2のコンベヤ上に配置すること;及び
第3のロボットアームを使用して、下部フレームを第2のコンベヤ上に配置すること。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1のロボットアーム、第2のロボットアーム、及び第3のロボットアームは、一定の期間、同時に連続して作動し、その結果、この方法は、一定の期間中に成形構造体の連続生産を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、上側ダイアフラム及び下側ダイアフラムは、ゴム層、シリコーン層、及びプラスチック層、又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムからそれぞれ独立して選択される。
【0016】
いくつかの実施形態では、加熱装置は接触式ヒーター又はIRヒーターである。
【0017】
いくつかの実施形態では、複合材料は、アラミド、高弾性ポリエチレン(PE)、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、炭素、ガラス、石英、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、玄武岩、天然繊維、及びこれらの組み合わせから選択される材料の構造繊維を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、複合材料は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びこれらの組み合わせから選択されるバインダー又はマトリックス材料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本教示による例示的な方法を視覚的に描写する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
処理時間、パーツ間のばらつき、及び外観欠陥を含む複合材料処理の潜在的な欠点を考慮して、より速く、改善された、より信頼性の高いアセンブリ及び方法を開発する必要性が依然として存在する。これは、視覚的に受け入れられることが必要なだけでなく、毎分数十個も、更には数百個ものパーツを必要とする組立ラインで利用される可能性もある自動車パーツに特に当てはまる。視覚的に受け入れられることと生産速度の適切なバランスを見つける一方で、既存の設備(例えば金属スタンプ又はプレス)を最大限に活用することも望まれる。しかしながら、従来の金属スタンピング装置は、複合材料に直接使用すると、典型的には不完全、不均一な表面になる。本開示は、自動化された機械的熱成形プロセスを使用して複合材料を成形する方法を提供し、これは、パーツ間の非常に低いばらつき及び優れた表面特性を有する成形されたパーツを迅速及び一貫して製造するために、金属スタンピングツールを使用することができる。
【0021】
複合材料を成形するための自動化されたプロセス
本教示は、複合材料を成形するための自動化された方法を含む。
【0022】
ここで
図1を参照すると、この方法は、任意選択的に、1つ以上の複合材料層(「プライ」とも呼ばれる)が所定のパターンに機械加工されることから開始することができる(101)。例えば、成形される構造体の周囲の無駄を最小限に抑えるために、コンピュータ駆動のカッターを使用することができる。この方法では、例えば、入れ子状又はその他の配置の様々な形状にコンピュータアルゴリズムを使用して、1つの大きな複合材料のピースから複数の層又はプライを形成することができ、その結果材料の利用量を最大化することができる。その後、切断されたプライの位置を、例えばコンピュータによって、本明細書で規定されるフレーム構造内に配置するためのロボットに翻訳することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、複合材料の層は、実質的に平面である。本明細書において使用される「実質的に平面」という用語は、他の2つの平面よりも明らかに大きい(例えば少なくとも2、3、4、又は5倍、又はそれ以上大きい)1つの平面を有する材料を指す。いくつかの実施形態では、実質的に平面の材料は、最も大きい平面に沿って厚さの変動を有する。例えば、複合材料は、パッドアップ(すなわちプライの量の局所的な増加)又はプライドロップ(すなわちプライの量の局所的な減少)、材料の変化、及び/又は複合材料が例えば生地へ移行する領域などの強化材料を含んでいてもよい。別の実施形態では、実質的に平面の材料は、複合材料の領域に沿って最小限しか厚さの変動を示さない。例えば、実質的に平面という用語は、複合材料が、面積の90%超で+/-15%以下の全体の厚さの変動を有することを意味し得る。いくつかの実施形態では、厚さの変動は、面積の90%超で±10%以下である。実質的に平面は、完全に平らな材料を示すことを意図しておらず、凹状及び/又は凸状にわずかな変動を有する材料も含まれる。
【0024】
ダイアフラム又はフレームを把持するように構成されたエンドエフェクタを備えた第1のロボットアームが、コンベヤ上に下部フレームを配置するために利用される(102)。このコンベヤは、組み立てられたフレームが成形の様々な段階を通してコンベヤ上を移動するように、加熱装置及びプレスツールを通過する。下部フレームは、例えば周囲に所定の間隔でクランプ又は他の固定手段を配置することにより、ダイアフラムの形状を維持する周囲を規定する。そのようなフレームは、成形される複合材料のサイズ及び形状に基づいて製造することができる。任意選択的には、従来の金属又は複合プレスツール(例えばLangzauner又はSchubertなどの製造業者からのもの)で使用するための予め製造された構造支持フレームが当該技術分野で公知である。
【0025】
その後、第1のロボットアームが、上面及と下面とを有する下側ダイアフラムを下部フレームに対して位置決めする(103)。下側ダイアフラムは、その下面が下部フレームの周囲の上部に接触するように配置される。下部フレーム及び下側ダイアフラムの移動は、複合材料層の機械加工の前に、それと同時に、又はその後に行われ得る。いくつかの実施形態では、これらの2つの工程は、方法が可能な限り最小限の時間で進行するように、同時に又は実質的に同時に行われる。ダイアフラムは、第1のロボットアームの近傍(すなわち届く範囲)にあるディスペンサーによって保持される。ダイアフラムディスペンサーは、例えば、ダイアフラム材料のロールから予め決められたサイズに上側及び下側ダイアフラムを測定して切断する自動ディスペンサーであってよい。いくつかの実施形態では、第1のロボットアームは、例えばダイアフラムの上面と下面が異なる場合、ディスペンサーの異なる側から下側ダイアフラムと上側ダイアフラムを掴む(以降で説明)。
【0026】
その後、複合材料層を把持するように構成されたエンドエフェクタを備えた第2のロボットアームが、1つ以上の複合材料層を下側ダイアフラム上に配置する(104)。複合材料層は、下部フレームによって規定された周囲の内部に配置される。これは、複合材料層の下面が下側ダイアフラムの上面の一部に接触するようにも配置される。いくつかの実施形態では、複数の複合材料層が、所定のパターンに機械加工され、これらの複数の層は、記載の通りに下側ダイアフラム上に積層配置で配置される。そのような積層配置では、配置された最初の複合材料層が下側ダイアフラムに接触することができ、その後に追加された層がその前に配置された層、下側ダイアフラム、又はその両方に接触することが理解される。
【0027】
その後、第2のロボットアームは、中央フレームを下側ダイアフラムの上面に配置する(105)。中央フレームは、下部のフレームと同じ周囲を規定するように選択される。中央フレームは、中央フレーム周囲の下面が下側ダイアフラムの上面に接触するように且つ下部フレームと中央フレームが積層配置になるように配置される。いくつかの実施形態では、中央フレームは、空気を除去するための手段、例えば真空口又は他のバルブを含んでいてもよい。真空口(存在する場合)は、真空源(例えば真空ポンプ)に接続される。
【0028】
その後、第2のロボットアームは、上面と下面とを有する上側ダイアフラムを中央フレーム対して位置決めする(106)。上側ダイアフラムは、上側ダイアフラムの下面が中央フレーム周囲の上部に接触するように配置される。次いで、第2のロボットアームが上部フレームを上側ダイアフラムに対して位置決めする(107)。上部フレームも、下部フレームと同じ周囲を規定するように選択される。上部フレームは、上部フレーム周囲の下面が上側ダイアフラムの上面に接触し、且つ中央フレームと上部フレームが積層配置になるように配置される。この配置は、複合材料層を収容する下側ダイアフラムと上側ダイアフラムとの間のポケットを形成する。いくつかの実施形態では、複合材料を収容するポケットは、封入ポケット、例えば気密封入ポケットであってもよく、それによって上部フレーム、中央フレーム、及び下部フレームは複合材料層の周囲全体に配置され、空気や汚染物質がポケットに入るのを妨げる。
【0029】
その後、空気がポケットから除去され、それによって層状構造体を形成し、その結果、熱、力、又はそれらの組み合わせが加えられるまで、少なくとも1つの複合材料層がポケット内で動かない状態で保持される(108)。いくつかの実施形態では、ポケットから空気を除去するために真空圧力が望ましい場合がある。真空圧力を使用すると、成形性能を妨げる可能性がある残留空気の大部分を抜き出すように作用するため、複合材料層(又はその構成要素)の変形や皺を最小限に抑えることができる。真空圧力の使用は、繊維の整列の維持を支援すること、プロセス中及び成形中の材料を支持すること、及び/又は高温において層の望まれる厚さを維持することも可能にする。本明細書で使用される「真空圧力」という用語は、1気圧未満(又は1013mbar未満)の真空圧力を指す。いくつかの実施形態では、ダイアフラム間の真空圧力は、約1気圧未満、約800mbar未満、約700mbar未満、又は約600mbar未満に設定される。いくつかの実施形態では、ダイアフラム間の真空圧力は約670mbarに設定される。この時点で、複合材料層は、真空又は他の手段によって、ダイアフラム間にしっかりと保持され、その結果熱及び/又は力が加えられるまで動かない状態にされる。そのような動かない状態の構造体は、例えば層状構造体内に保持された複合材料層がX軸及びY軸を横切って十分な張力を有した状態でその位置で動かないように維持されるだけでなく、インデックス付けもされるため、有利な場合がある。すなわち、第2のロボットアームは、ダイアフラム間のX軸とY軸に沿った特定の位置に複合材料層を配置する。その後、このインデックス付けされた層状構造体は、プレスツールが複合材料層の所定の領域に一貫してはめ込まれるように、プレスツール(以下でより詳細に説明される)の特定の位置に配置することができる。したがって、各複合材料ブランクに個別にインデックス付けを行う必要なしに、成形された製品の複数のコピーを形成することができる。
【0030】
層状構造体は、その後、加熱装置に運ばれる(すなわちコンベヤにより)(109)。構造体は、複合材料の粘度を下げるか、ダイアフラムを軟化するのに十分な温度に加熱された加熱装置内に留まる。この加熱装置は、金属又は複合材料製品の形成又は成形に使用できる任意のヒーター、例えば接触式ヒーター又は赤外線(IR)ヒーターであってもよい。いくつかの場合には、この予熱によってダイアフラムが軟化し、例えばその結果最終成形製品の形成中にこれらがより柔軟になる。いくつかの場合には、この予熱によって、層状構造体内に保持された複合材料層が望まれる粘度又は温度にされる。予熱は、約75℃、100℃、125℃、150℃、175℃、200℃より高い、更にはそれ以上の温度に加熱された加熱装置で行うことができる。この温度は、例えば複合材料のダイアフラム及び/又は構成要素の性質に応じて調整することができる。そのような予熱は、例えば、プレスツールの加熱を最小化するかなくすこと、及び/又は層状構造体がプレスツール内にある時間を最小化することが望まれる場合に有利である。
【0031】
その後、層状構造体は、プレスツールに運ばれる(110)。本教示との関係において、プレスツールは、雄型と、隙間により隔てられた対応する雌型とを含む。各鋳型は、非平面状の成形面を有する。いくつかの実施形態では、雄型、雌型、又はその両方に離型剤が添加され得る。そのような離型剤は、例えば、周囲温度を超える温度にある間に成形されたパーツを鋳型から取り出すのに有用な場合がある。成形面は固定されている。すなわち、これは再構成可能ではない。成形面も典型的には一致している。すなわち、雄型は雌型の逆にほぼ対応しており、いくつかの実施形態では完全に一致することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、雄型及び雌型は、閉じた際にこれらの間の厚さが変化するようにされている。特定の実施形態では、層状構造体は、雄型と雌型との間が特定の所定の距離で隙間に配置される。いくつかの実施形態では、プレスツールのどの部分にも真空圧力は加えられない。別の実施形態では、例えば層状構造体とツールとの間に閉じ込められている空気を除去するために、ツール表面が局所的に真空にされる。しかしながら、そのような実施形態では、真空は典型的には最終的に成形された製品の形状を形成するための力としては使用されない。層状構造体は、手作業で、又は例えば自動化されたシャトルを使用するなどの自動化された手段によって、プレスツールに配置することができる。
【0032】
その後、層状構造体は、鋳型の間の隙間を閉じることによって、雄型と雌型との間で圧縮される(111)。いくつかの実施形態では、これは、雄型と雌型との間の隙間を部分的に閉じて、鋳型の間により小さい隙間を形成することによって達成される。このより小さい隙間は、その後特定の時間又は粘度に達した後に閉じられる。「隙間を閉じる」は、Z軸に沿って所定の最終キャビティ厚が鋳型間で得られるように鋳型を圧縮することを意味すると理解される。最終キャビティ厚は、例えば鋳型が互いに対して停止する場所を制御することによって調整することができ、厚さの選択は鋳型を操作する者が行うことができ、これは最終的に成形された製品の性質に依存する。いくつかの実施形態では、最終的な空洞の厚さは実質的に均一である。すなわち、プロセスにより、厚さが5%未満しか変化しない両面が成形された最終製品が製造される。いくつかの実施形態では、プロセスにより、約4%未満、例えば、約3%未満、約2%未満、更には約1%未満で変動する厚さを有する最終的に成形された製品が製造される。別の実施形態では、雄及び雌のツールは、X軸及びY軸を横切って意図的に変化するキャビティ厚を与えるように構成されていてもよい。
【0033】
特定の実施形態では、雄型及び雌型は周囲温度よりも高い温度で維持される。例えば、これらは約75℃超、100℃超、125℃超、150℃超、175℃超、200℃超、又はそれ以上の温度で維持されてもよい。この温度は、複合材料の構成要素の性質(及び粘度)に応じて調整することができる。鋳型は、例えば複合材料で使用されるバインダー又はマトリックス材料の軟化点を超える温度で維持することができる。いくつかの実施形態では、複合材料は熱硬化性材料を含み、鋳型は約100℃~200℃の温度に維持される。別の実施形態では、複合材料は熱可塑性材料を含み、鋳型は約200℃を超える温度に維持される。複合材料中のバインダー又はマトリックス材料は、周囲温度(20℃~25℃)で固相であるが、加熱すると軟化する。この軟化によって、プレスツールで複合材料を成形することが可能になる。
【0034】
雄型及び雌型は、成形された構造体を形成するために、所定の時間、閉位置で維持される。例えば、いくつかの実施形態では、鋳型は加熱され、望まれる粘度又は温度に到達するまで閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、複合材料の粘度が約1.0×108mPa未満になるまで鋳型は閉位置で維持される。いくつかの実施形態では、鋳型は加熱され、バインダー又はマトリックス材料の架橋が開始するまで閉位置で維持される。別の実施形態では、鋳型は加熱されないが、材料が成形された形状を維持するのに十分な時間閉位置で維持される。鋳型は、例えば約5秒~約60分、例えば、約10秒~約30分、又は約15秒~約15分、閉位置で維持されてもよい。鋳型が閉位置で維持される時間の長さは、複合材料の性質や鋳型の温度などの多くの因子に依存する。
【0035】
特定の実施形態では、雄型は層状構造体を通って動かされ、雌型は動かないままである。別の実施形態では、雌型は動かないままではなく、雄型よりも遅い速度で移動する(雄型が依然として主に形成面として機能するように)。また別の実施形態では、両方の鋳型がほぼ同じ速度で移動して、鋳型間の隙間を閉じる。鋳型は、複合材料を変形/成形するのに十分な速度及び最終圧力で動かされる。例えば、鋳型は、約0.4mm/秒~約500mm/秒、例えば約0.7mm/秒~約400mm/秒、例えば約10mm/秒~約350mm/秒又は約50mm/秒~300mm/秒の速度で動かされてもよい。更に、鋳型は、約100psi~約1000psi、例えば約250psi~約750psiの最終圧力まで動かされてもよい。いくつかの実施形態では、鋳型は、皺の形成及び構造繊維の歪みを回避しながら最終的に成形された製品の厚さを制御するために選択された速度及び最終圧力で動かされる。更に、鋳型は、最終的に成形されたパーツの迅速な形成を可能にするために選択された速度及び最終圧力まで動かされてもよい。
【0036】
その後、雄型と雌型との間の隙間が閉じられ、成形された構造体が鋳型から搬送される(112)。成形された構造体がプレスツール上に残っている間、成形された構造体は、バインダー又はマトリックス材料の軟化温度未満まで冷却することができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、成形された構造体は、バインダー又はマトリックス材料の軟化温度未満に冷却される前にプレスツールから取り出される。バインダー又はマトリックス材料が軟化温度未満に冷却されると、バインダー又はマトリックス材料は固相に戻り、複合材料は新しく形成された形状を保持する。複合材料がプリフォームの場合、そのようなプリフォームは、その後の樹脂注入のためにその望ましい形状を保持する。
【0037】
成形された構造体が鋳型から搬送された後、フレームを把持するように構成されたエンドエフェクタを備えた第3のロボットアームが、ダイアフラムから1つ以上のフレームを取り外す(例えば分離する)(113)。いくつかの実施形態では、第3のロボットアームは、取り外されたフレームを第2のコンベヤ上に配置し、第2のコンベヤはフレームを第1のロボットアームの近傍まで搬送する。例えば、いくつかの実施形態では、第3のロボットアームは、ダイアフラムから上部フレームを取り外して上部フレームを第2のコンベヤ上に配置し;中央フレームとダイアフラムを下部フレームから取り外して中に成形された構造体を有するダイアフラムをレセプタクルの中に置き、中央フレームを第2のコンベヤ上に配置し;下部フレームを第2のコンベヤ上に配置する。
【0038】
この方式では、本発明は、閉ループを形成して連続運転を提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、第1のロボットアーム、第2のロボットアーム、及び第3のロボットアームは、一定の期間、同時に連続して作動し、その結果、この方法は、一定の期間中に成形構造体の連続生産を提供する。したがって、本明細書に記載の方法は、完全に自動化された方式で優れた表面特性を有する複雑な三次元複合構造体を製造するための効果的且つ効率的な手段を提供する。三次元の成形された複合構造体は、手作業をほとんど又は全く必要とせずに、迅速に、繰り返し、そして大規模に製造することができる。例えば、三次元複合構造体は、非常に短い、例えば1~10分、好ましくは5分未満、更には3分未満のサイクルで、実質的に平面状の複合材料ブランクから形成することができる。そのような迅速で繰り返し可能なプロセスは、ボンネット、トランク、ドアパネル、フェンダー、ホイールウェルなどの自動車パーツやパネルの製造に適している。
【0039】
ダイアフラム材料及びダイアフラム構造体
本明細書で使用される「ダイアフラム」という用語は、2つの異なる物理的領域を分割又は分離する任意の障壁を指す。ダイアフラムは可撓性を有しており、弾性又は非弾性のいずれかの変形可能な材料のシートであってもよい。本明細書で使用される「可撓性」という用語は、有意な戻り力なしで変形することができる材料を指す。可撓性材料は、典型的には約1,000N/m~約2,500,000N/mの可撓性係数(パスカル単位で測定されたヤング率とメートル単位で測定された全体の厚さの積)を有する。典型的には、ダイアフラムの厚さは、約10ミクロン~約200ミクロン、例えば約20ミクロン~約150ミクロンの範囲である。特に有利なダイアフラムは、約30ミクロン~約100ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は特に限定されず、例えばゴム、シリコーン、プラスチック、熱可塑性プラスチック、又は同様の材料であってもよい。しかしながら、特定の実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は、プラスチック層又は弾性層からそれぞれ独立して選択される1つ以上の層を含むフィルムを含む。ダイアフラムは、単一の材料から構成されていてもよく、或いは例えば層状に配置された複数の材料を含んでいてもよい。例えばダイアフラム構造体の上側ダイアフラム及び下側ダイアフラムは、ダイアフラムの他の層と同じ又は異なるそれぞれ独立した1つ以上の層を含むフィルムからそれぞれ独立して選択することができる。ダイアフラム材料は、従来のキャスティング又は押し出し手順を使用してフィルムへと形成することができる。いくつかの実施形態では、フィルムは使い捨てである。別の実施形態では、フィルムは再利用可能である。
【0040】
ダイアフラム材料は、望まれる機能に応じて、多くの特性を有するように選択することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、ダイアフラムは自己解放性である。すなわち、ダイアフラムを最終成形パーツから容易に解放することができ、及び/又は成形されたアセンブリをツーリングから容易に解放することができる。別の実施形態では、ダイアフラムは、成形された複合材料に一時的に(又は軽く)接着するように設計される。そのような一時的な接着は、例えば後続の処理、輸送、及び/又は保管中に最終成形パーツを保護するのに有利な場合がある。また別の実施形態では、ダイアフラムは、成形複合材料に永久に接着するように設計される。そのような一時的な接着は、最終成形パーツに永久的な保護コーティング及び/又は塗料コーティングを付与するために有利な場合がある。ダイアフラム材料は、その特定の物理的特性に基づいて選択することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は、100%を超える破断伸びを有する。いくつかの実施形態では、ダイアフラムを製造するために使用される材料は、複合材料の成形温度に近い(例えばその10℃以内)融解温度を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、ダイアフラムは空気透過性である。別の実施形態では、ダイアフラムは空気を通さないため、これらは組み合わされて封入ポケットを形成することができる。封入ポケットは、汚染物質(例えば空気、微粒子、油など)が一定期間封入ポケットに入ることを妨げる。いくつかの実施形態では、不透過性ダイアフラムは、気密封入ポケットを形成する。本明細書で使用される「気密」という用語は、ツーリングプロセスの期間中に真空を保持する材料の能力を指す。この気密封入ポケットは、例えば上側及び下側のダイアフラムを複合材料と密接に接触させるために真空が利用される場合に有利である。
【0042】
いくつかの実施形態では、一方又は両方のダイアフラムは、織布又は不織布のベールで置き換えることができる。本明細書において使用される「ベール」という用語は、連続した又は細断されたポリマー繊維の薄いマットを指す。繊維は、紡糸されたストランドの糸又はモノフィラメントであってよい。典型的には、ベールは樹脂に可溶性であり、通常、織布(例えば制御された配置で)であっても不織布(例えば部分的又は完全にランダム)であってもよい。本発明の方法に関連して使用されるベールの重量は様々な場合があるが、典型的には約5g/m2~約100g/m2であり、ベール重量の選択は、成形される複合材料の特性に基づいて決定することができる。例えば、より粘度の高いバインダー又はマトリックス材料は、より重いベール(又は複数のベール)を必要とする場合がある一方で、より粘度の低いバインダーは、より軽いベールを利用することができる。同様に、複合材料の表面に樹脂が多く存在する場合、樹脂がベールを透過し過ぎないようにベールを選択することができる。ベールに使用される材料は特に限定されず、複合材料に関連して使用することが公知の任意のベールであってよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、織布又は不織布のベールは、ポリエステル繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、又はこれらの組み合わせを含む。別の実施形態では、織布又は不織布のベールは、LoFaroらの米国特許出願公開第2006/0252334号明細書で特定されているものなどの樹脂可溶性ポリマーの繊維を含み、この文献は本参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
いくつかの実施形態では、1つ以上のダイアフラム及び/又はベールは、一時的に又は永久的に成形された構造体上に維持される。例えば、一時的な層は、例えば剥離コーティングのために望まれる場合がある一方で、永久コーティングは、例えばコロナ処理又はダイアフラム材料の成形されたパーツへの接着のために望まれる場合がある。ダイアフラムの機能は、使用されるダイアフラムの材料に依存する。
【0044】
複合材料
本明細書で使用される「複合材料」という用語は、構造繊維とバインダー又はマトリックス材料との集合体を指す。構造繊維は、有機繊維、無機繊維、又はそれらの混合物であってもよく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維(例えばケブラー)、高弾性ポリエチレン(PE)繊維、ポリエステル繊維、ポリp-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、石英繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、炭化ケイ素繊維、他のセラミック繊維、玄武岩、天然繊維、及びこれらの混合物などの市販の構造繊維が挙げられる。なお、高強度複合構造体を必要とする最終用途では、典型的には高い引張強さ(例えば≧3500MPa又は≧500ksi)を有する繊維が用いられるであろう。そのような構造繊維は、例えば、一方向テープ(ユニテープ)ウェブ、不織マット又はベール、織り生地、編み生地、ノンクリンプ生地、繊維トウ、及びこれらの組み合わせを含む、任意の従来の構成における繊維材料の1つ以上の層を含んでいてもよい。構造繊維は、複合材料の全体若しくは一部にわたる1つ若しくは複数のプライとして、又はパッドアップ若しくはプライドロップの形で、局所的な厚さの増加/減少を伴って含まれる場合があることに留意すべきである。
【0045】
繊維質材料は、バインダー又はマトリックス材料によって所定の位置で保持及び安定化され、その結果繊維質材料の配列が維持され、ほころび、ほつれ、引き裂け、座屈、皺、又はその他の繊維質材料の完全性の低下なしに、安定化された材料の保管、輸送、及び取り扱い(例えば成形又は他の変形)を行うことができる。少量のバインダー(例えば典型的には約10重量%未満)によって保持された繊維質材料は、典型的には繊維質プリフォームと呼ばれる。そのようなプリフォームは、RTMなどの樹脂注入用途に適しているであろう。繊維質材料は多量のマトリックス材料によって保持されていてもよく(マトリックスを含浸させた繊維を指す場合、一般には「プリプレグ」と呼ばれる)、そのため樹脂を更に添加せずに最終製品を形成するのに適しているであろう。特定の実施形態では、バインダー又はマトリックス材料は、少なくとも約30%、少なくとも約45%、少なくとも約40%、又は少なくとも約45%の量で複合材料中に存在する。
【0046】
バインダー又はマトリックス材料は、通常、熱可塑性ポリマー、熱硬化性樹脂、及びそれらの組み合わせから選択される。プリフォームを形成するために使用される場合、そのような熱可塑性ポリマー及び熱硬化性樹脂は、粉末、スプレー、液体、ペースト、フィルム、繊維、及び不織ベールなどの様々な形態で導入することができる。これらの様々な形態を利用するための手段は、一般的に当該技術分野で公知である。
【0047】
熱可塑性材料としては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ芳香族、ポリエステルアミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリアリーレート、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリアクリレート、ポリ(エステル)カーボネート、ポリ(メチルメタクリレート/ブチルアクリレート)、ポリスルホン、ポリアリールスルホン、これらのコポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、熱可塑性材料は、エポキシド又は硬化剤に対する反応性を有するアミン又はヒドロキシル基などの1つ以上の反応性末端基も含んでいてもよい。
【0048】
熱硬化性材料としては、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミド樹脂、ホルムアルデヒド縮合樹脂(ホルムアルデヒド-フェノール樹脂を含む)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物が挙げられる。エポキシ樹脂は、芳香族ジアミン、芳香族一級モノアミン、アミノフェノール、多価フェノール、多価アルコール、及びポリカルボン酸からなる群から選択される1種以上の化合物のモノ又はポリグリシジル誘導体であってもよい。エポキシ樹脂は、多官能性(例えば二官能性、三官能性、及び四官能性エポキシ)であってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリマーと熱硬化性樹脂との組み合わせが複合材料に使用される。例えば、特定の組み合わせは、流動制御と可撓性に関して相乗効果で作用し得る。このような組み合わせでは、熱可塑性ポリマーはブレンドに対して流動制御と可撓性を付与し、典型的には低粘度で脆い熱硬化性樹脂を支配する。
【国際調査報告】