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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】超音波結合シュー
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/28 20060101AFI20230307BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20230307BHJP
   H04R 1/34 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G01N29/28
G01N29/24
H04R1/34 330Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543420
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 EP2021050863
(87)【国際公開番号】W WO2021144455
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】2000723.3
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】521181596
【氏名又は名称】ドルフィテック、アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】DOLPHITECH AS
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】エスキル、スコグルンド
(72)【発明者】
【氏名】トーレ、マグネ、スカール
(72)【発明者】
【氏名】フレードリク、リングバル
【テーマコード(参考)】
2G047
5D019
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BA03
2G047BC07
2G047CA01
2G047GB02
2G047GB27
2G047GB28
2G047GE01
2G047GF06
2G047GH06
5D019AA21
5D019AA22
5D019FF05
5D019GG01
(57)【要約】
超音波結合シュー振動子モジュールに取り付けて、前記振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューであって、振動子係合部と、カプラントを保持するように構成されるカプラント室と、ターゲット物体に向かい合う探触子面を、少なくとも部分的に画定する可撓性薄膜であって、可撓性薄膜を通してカプラント室からのカプラントが染み出し、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合することが可能な、可撓性薄膜と、を備える結合シュー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動子モジュールに取り付けて、前記振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューであって、
振動子係合部と、
カプラントを保持するように構成されるカプラント室と、
前記ターゲット物体に向かい合う探触子面を、少なくとも部分的に画定する可撓性薄膜であって、前記可撓性薄膜を通して前記カプラント室からのカプラントが染み出し、前記振動子モジュールによって送信される超音波を前記ターゲット物体に結合することが可能な、可撓性薄膜と、
を備える結合シュー。
【請求項2】
前記薄膜が、前記探触子面の、実質的に全体を画定する、請求項1に記載の結合シュー。
【請求項3】
前記薄膜は、前記カプラント室の少なくとも一部を画定する、請求項1または2に記載の結合シュー。
【請求項4】
前記薄膜は多孔性である、および/または、複数の穴を有している、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項5】
前記複数の穴は、前記薄膜の、実質的に全体に渡って配置されている、請求項4に記載の結合シュー。
【請求項6】
前記穴の前記寸法は、最大幅が50マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲にある、請求項4または5に記載の結合シュー。
【請求項7】
前記薄膜の前記穴の密度は、1平方ミリメートルあたり1個から、1平方センチメートルあたり1個の範囲にある、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項8】
前記薄膜は、超音波伝送路から離して置かれる、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項9】
前記カプラント室はカプラント源と連通している、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項10】
前記結合シューは、前記カプラント室と連通してカプラントを前記室に供給するための入口部を有する、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項11】
前記結合シューは、前記カプラント室と連通している出口部であって、前記出口部を取ってカプラントが前記カプラント室が流れ出ることができる、前記出口部を有する、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項12】
前記結合シューは、前記カプラント室へのカプラントの送り出しを制御するための、接触反応型アクチュエータを備える、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項13】
前記入口部が前記接触反応型アクチュエータを有する、請求項10に直接的あるいは間接的に従属する請求項12に記載の結合シュー。
【請求項14】
前記接触反応型アクチュエータは接触力の閾値を超える力の検知に応じてカプラントの送り出しを制御するように構成されている、請求項12または13に記載の結合シュー。
【請求項15】
前記薄膜の周辺にある部分の前記結合シューは、弾性部である、請求項1ないし14のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項16】
前記振動子係合部は、前記振動子モジュールの超音波放射面に当接して超音波を前記結合シュー結合するための振動子結合面を有する、請求項1ないし15のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項17】
前記振動子係合部は、複数の位置で前記結合シューを前記振動子モジュールに取り付けるように構成される、請求項1ないし16のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項18】
前記振動子係合部は、複数の向きで前記結合シューを前記振動子モジュールに取り付けるように構成される、請求項1ないし17のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項19】
前記振動子係合部は、摩擦適合機構を有する、請求項1ないし18のいずれか一項に記載の結合シュー。
【請求項20】
振動子モジュールに取り付けて、前記振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューであって、
振動子係合部と、
前記振動子モジュールによって送信される超音波を前記ターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように構成されるカプラント室であって、前記ターゲット物体の境界面へカプラントを供給するための出口を有する、前記カプラント室と、
前記カプラント室と連通し、カプラントを前記カプラント室に供給するための入口であって、前記カプラント室へのカプラントの送り出しを制御するための接触反応型アクチュエータを有する前記入口と、
を備える結合シュー。
【請求項21】
振動子モジュールに取り付けて、前記振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューであって、
前記振動子モジュールによって送信される超音波を前記ターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように構成されるカプラント室であって、前記ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口を有する、前記カプラント室と、
前記振動子モジュールを係合してカプラント室内に向くように保持する係合機構であって、少なくとも2つの異なる位置で前記カプラント室に対して前記振動子モジュールを保持するように配置される、前記係合機構と、
を備える結合シュー。
【請求項22】
振動子モジュールに取り付けて、前記振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューであって、
前記振動子モジュールによって送信される超音波を前記ターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように構成されたカプラント室であって、前記ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口を有し、前記出口は前記ターゲット物体に向かい合う探触子面上に設けられる、前記カプラント室、
を備える結合シュー。
【請求項23】
振動子モジュールに取り付けて、前記振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューであって、
前記振動子モジュールによって送信される超音波を前記ターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように構成されたカプラント室であって、前記ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口を有する、前記カプラント室を備え、
前記結合シューは、前記結合シューを流れるカプラント内の気泡形成を減少させるように構成され、前記結合シューを流れるカプラント内の乱流を減少させるように構成される流れ調整体を備える、
結合シュー。
【請求項24】
請求項1ないし23のいずれか一項に記載の結合シューと、
振動子モジュールと、
を備える走査装置。
【請求項25】
カプラント源を備える、請求項24に記載の走査装置。
【請求項26】
周囲圧力、前記ターゲット物体に対する前記結合シューの速度、前記カプラント室内のカプラントの温度、周囲温度、および超音波走査のピーク振幅の1つ以上に基づいて、前記カプラント室内のカプラントの前記圧力と、前記カプラント室へおよび/または前記カプラント室からのカプラントの流量と、の1つ以上を制御するように構成されるコントローラを備える、請求項24または25に記載の走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波振動子とターゲット物体との間で、超音波を結合するための超音波結合シューに関する。特に、本開示は、カプラントを保持するためのカプラント室を備える、結合シューに関する。
【背景技術】
【0002】
結合シューは、振動子モジュールに取り付けて、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するためのものである。結合シューは、振動子モジュールによって送られた超音波をターゲット物体に結合するように構成することが可能であり、また前記物体から受け取った反射を振動子モジュールに結合するように構成することが可能である。
【0003】
振動子モジュールは、物体を適切に撮像し、例えば、物体の表面下の構造的特徴を撮像する。振動子モジュールは、層間剥離、剥離、および剥落などの表面下の材料欠陥を撮像するのに特に有用であり得る。
【0004】
超音波は、物体の特定の構造的特徴を識別するために用いることができる。例えば、超音波は、試料中の欠陥のサイズおよび位置を検出することによって、非破壊試験に使用することができる。非破壊試験が役に立つ用途は広範であり、積層構造内の異なる層、衝撃損傷、ボアホールなど、構造的特徴の様々な材料、試料深度、および種類などに渡る。
【0005】
超音波は、物体を検出し、距離を測定するために用いることができる振動音圧波である。送信された音波は、異なる音響インピーダンス特性を有する材料に遭遇すると、反射および屈折する。これらの反射および屈折が検出および分析されると、結果として得られるデータを使用して、音波が伝わった環境を記述することができる。超音波振動子と試験される物体との間の超音波結合効率を向上させることが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、振動子モジュールに取り付けて、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューが提供され、この結合シューは、
振動子係合部と、
カプラントを保持するように構成されたカプラント室と、
ターゲット物体と向かい合う探触子面を、少なくとも部分的に画定する可撓性薄膜であって、この可撓性薄膜を通してカプラント室からのカプラントが染み出し、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合することが可能な、可撓性薄膜と、
を備える。
【0007】
薄膜は、探触子面のほぼ全体を画定してもよい。また、薄膜はカプラント室の少なくとも一部を画定してもよい。薄膜は多孔性であってもよい、および/または、複数の穴を有していてもよい。複数の穴は、薄膜のほぼ全体に渡って配置されていてもよい。
【0008】
穴の寸法は、最大幅が50マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲にあればよい。薄膜における穴の密度は、1平方ミリメートルあたり1個から、1平方センチメートルあたり1個の範囲にあればよい。
【0009】
薄膜は、超音波伝送路から離して置かれてもよい。
【0010】
カプラント室は、カプラント源に通じていてもよい。結合シューは、カプラント室と連通して、カプラントをカプラント室に供給するための、入口部を有していてもよい。また、結合シューは、カプラント室と連通して、カプラントがカプラント室から流れ出るための出口部を有していてもよい。
【0011】
結合シューは、カプラント室へのカプラントの送り出しを制御するための、接触反応型アクチュエータを備えていてもよい。入口部が接触反応型アクチュエータを有していてもよい。接触反応型アクチュエータは、接触力の閾値を超える力の検知に応じてカプラントの送り出しを制御するように構成されていてもよい。
【0012】
結合シューの薄膜の周辺部にある部分は、弾性部である。
【0013】
振動子係合部は、振動子モジュールの超音波放射面に当接して超音波を結合シューに結合するための、振動子結合面を有していてもよい。振動子係合部は、複数の位置で結合シューを振動子モジュールに取り付けるように構成されていてもよい。振動子係合部は、複数の向きで結合シューを振動子モジュールに取り付けるように構成されていてもよい。振動子係合部は、摩擦適合機構を有していてもよい。
【0014】
本発明の別の態様によれば、振動子モジュールに取り付けて、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューが提供され、この結合シューは、
振動子係合部と、
振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するのカプラントを保持するよう構成されたカプラント室であって、ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口を有するカプラント室と、
カプラント室と連通し、カプラントをカプラント室に供給するための入口であって、カプラント室へのカプラントの送り出しを制御するための接触反応型アクチュエータを有する入口と、
を備える。
【0015】
本発明の別の態様によれば、振動子モジュールに取り付けて、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューが提供され、この結合シューは、
振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように構成されたカプラント室であって、ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口と、振動子モジュールを係合してカプラント室を向くように保持する係合機構であって、少なくとも2つの異なる位置でカプラント室に対して振動子モジュールを保持するように配置される、係合機構と、
を備える。
【0016】
本発明の別の態様によれば、振動子モジュールに取り付けて、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューが提供され、この結合シューは、
振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように構成されたカプラント室であって、ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口を有し、出口はターゲット物体に向かい合う探触子面上に設けられる、カプラント室を備える。
【0017】
出口は、結合シューの探触子面の周囲に、または周囲に向かって設けられてもよい。結合シューは、振動子モジュールによって送信される超音波を伝送路に沿ってターゲット物体に結合するように構成されてもよく、出口は、伝送路から離れて設けられてもよい。好適には、伝送路は結合シューを直接通る。伝送路は、振動子モジュールが結合シューに保持される面に対して垂直であってもよい。結合シューは、振動子モジュールの超音波放射面が第1の平面に沿って配置され、伝送路が概ね第1の平面に垂直になるように、振動子モジュールを保持するべく構成されてもよい。
【0018】
カプラント室は、探触子面上に設けられる複数の出口を有していてもよい。複数の出口の少なくともいくつかは、探触子面の周囲に、または周囲に向かって設けられてもよい。好ましくは、複数の出口のすべてが周囲に、または周囲に向かって設けられてもよい。複数の出口のそれぞれは、伝送路から離れて設けられてもよい。複数の出口は、結合シューに対して対称に設けられてもよい。結合シューは多角形の外形を有していてもよく、各出口は多角形の各面に設けられていてもよい。複数の出口は、多角形の1つ以上の面に設けられていてもよい。
【0019】
カプラント室は、伝送路から離れて設けられてもよい。好適には、カプラント室は、部分的に結合シューの一部分を包含し、伝送路を形成するチャネルを有している。カプラント室は、結合シューの一部分を取り囲んで伝送路を形成してもよい。
【0020】
本発明の別の態様によれば、振動子モジュールに取り付けて、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するための結合シューが提供され、この結合シューは、
振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように構成されたカプラント室であって、ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口を有するカプラント室を備え、
当該結合シューを流れるカプラント内の気泡形成を減少させるように結合シューは構成されており、また結合シューは、当該結合シューを流れるカプラント内の乱流を減少させるように構成される流れ調整体を備える。好適には、流れ調整体は、気泡抑制体を有する。
【0021】
流れ調整体は、1つ以上の面取り部を有し、それにより、カプラントの流れが通る角部の少なくとも1つの角度を減少させてもよい。流れ調整体は、1つ以上の滑らかな湾曲部を有し、それによりカプラントの流れが通る角部の数および/または角部の角度を減少させてもよい。流れ調整体は、縁部に丸みをつけた開口部を有していてもよい。流れ調整体は、カプラントの流れの速度を減少させる流量調整器を有し、それにより乱流を減少させてもよい。流量調整器は、開口部および/または流路を有し、開口部または流路は、当該開口部または流路を通る流れの方向に沿って増加する幅を有していてもよい。流れ調整体は、滑らかな表面を有していてもよい。
【0022】
本発明の別の態様によれば、本明細書に記載される結合シューと、振動子モジュールとを備える走査装置が提供される。走査装置は、カプラント源を備えていてもよい。走査装置は、周囲圧力、ターゲット物体に対する結合シューの速度、カプラント室内のカプラントの温度、周囲温度、および超音波走査のピーク振幅の、1つ以上に基づいてカプラント室内のカプラントの圧力を制御するように構成されるコントローラを備えていてもよい。走査装置は、周囲圧力、ターゲット物体に対する結合シューの速度、カプラント室内のカプラントの温度、周囲温度、および超音波走査のピーク振幅の、1つ以上に基づいて、カプラント室へ、および/または、カプラント室からのカプラントの流量を制御するように構成されるコントローラを備えていてもよい。
【0023】
任意の態様の任意の1つまたは複数の特徴が、任意の他の態様の1つまたは複数の特徴と組み合わされてもよい。これらは、記載を簡潔にするために、本明細書に完全には記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
次に、例として添付の図面を参照して本発明を説明する。
図1】物体を撮像するためのデバイスを示す図。
図2】走査装置および物体の例を示す図。
図3】走査装置の機能ブロックの例を示す図。
図4】振動子モジュールを概略的に示す図。
図5】振動子モジュールと係合する結合シューの例を示す図。
図6a】結合シューの側壁の端部に位置する弾性部の例を示す図。
図6b】結合シューの側壁の端部に位置する弾性部の例を示す図。
図7】振動子モジュールと係合する結合シューの別の例を示す図。
図8】振動子モジュールと係合する結合シューのさらに別の例を示す図。
図9】結合シューと隣り合うカプラント源を有する走査装置の例を示す図。
図10】結合シューから離れた位置にあるカプラント源を有する走査装置の例を示す図。
図11】出口部を有する結合シューの例を示す図。
図12】接触反応型電子駆動の結合シューの例を示す図。
図13】接触反応型機械駆動の結合シューの例を示す図。
図14a】結合シューの別の例における底面図。
図14b図14aの結合シューの側面図。
図15】ブリスタを有する結合シューの例を示す図。
図16a】ブリスタを有する結合シューの例を示す図。
図16b】ブリスタを有する結合シューの例を示す図。
図17】振動子モジュールと係合する結合シューの別の例を示す図。
図18a図17の結合シューの斜視図。
図18b図17の結合シューの斜視図。
図19】結合シューの別の例の斜視図。
図20】結合シューの別の例を示す図。
図21a図20の結合シューを異なる方向から見た図。
図21b図20の結合シューを異なる方向から見た図。
図21c図20の結合シューを異なる方向から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
走査装置は、物体を撮像するために用いることができる。走査装置は振動子モジュールなどの超音波振動子を有し、超音波振動子は、ターゲット物体に向けて第1の方向に超音波信号をを送信するように構成される送信機と、物体から反射された超音波信号を受信するように構成される受信機と、を有する。物体から反射された超音波信号を分析することにより、物体を分析することが可能である。反射を検知することにより、物体の表面下の構造を分析することができる。
【0026】
ターゲット物体内へ送信される超音波エネルギーの量を増すことにより、細部および/または精度を向上させることが可能である。ターゲット物体内へ送信される超音波エネルギーの量を増すことにより、反射パルスのエネルギー量を増すことが可能である。
【0027】
本技術では、ターゲット物体への超音波エネルギーの結合効率を増すカプラントが提供される。カプラントは、振動子モジュールとターゲット物体との間に層を形成する。結合シューは振動子モジュールに取り付け可能で、カプラントを収容するカプラント室を備える。結合シューは、カプラントをターゲット物体に向かって放射させ、振動子モジュールから放出された超音波がターゲット物体に到達する前にカプラント(例えば、ターゲット物体の表面上のカプラント膜)を通過するようにする。同様に、ターゲット物体の表面からの反射パルスは、カプラントを通って振動子モジュールまで移動し、そこで検知される。
【0028】
カプラントは、振動子とターゲット物体との間の空気の少なくとも一部を取り除くことが可能な物質を提供する。好適には、カプラントは音響インピーダンスを有し、それは、振動子モジュールとターゲット物体との間の音響境界反射を減少させる。例えば、カプラントが有する音響インピーダンスが、振動子モジュールの表面の音響インピーダンスとターゲット物体の表面の音響インピーダンスの間である、あるいは振動子モジュールの表面の音響インピーダンスとターゲット物体の表面の音響インピーダンスの一方に近い音響インピーダンスであることがあり得る。
【0029】
好適には、結合シューは、ターゲット物体に対向する探触子面の少なくとも一部を画定し得る可撓性薄膜を有する。薄膜は多孔性であってよい、および/または複数の穴を有していてよい。好適には、薄膜は液体透過性である。薄膜を通してカプラント室からのカプラントが染み出すことができる。このように、結合シューがターゲット物体に押しつけられると、カプラントが振動子モジュールとターゲット物体との間に供給される。
【0030】
結合シューは、カプラント室と連通していて、カプラントをカプラント室に供給するための、入口を有していてもよい。入口は、カプラント室へのカプラントの送り出しを制御するための、接触反応型アクチュエータを有していてもよい。接触反応型アクチュエータは、結合シューとターゲット物体との接触を検知すると、カプラントがカプラント室に供給され得るように構成される。この手法は、超音波走査処理のために必要なときにカプラントがカプラント室にあるようにし、結合シューが使用されていないときにカプラントが無駄になる危険を減らす。
【0031】
結合シューは、振動子モジュールをカプラント室に向けて保持するために振動子モジュールと係合する係合機構を備えてもよい。係合機構は、少なくとも2つの異なる位置で振動子モジュールがカプラント室に対して固定されるような保持のために配置される。振動子モジュールは、超音波がカプラントおよび/または結合シューを通って伝達される距離および/または角度を変化させるように、異なる位置でカプラント室に対して保持され得る。
【0032】
例えば、係合機構は、振動子モジュールが結合シュー内に突き出る距離を変更可能に振動子モジュールと係合することが可能である。これにより、結合シューを通る超音波伝送路の長さを変えることができる。振動子モジュールは、超音波がカプラント室を通ってターゲット物体へ送信されるように取り付けることが可能である。カプラント室内に振動子モジュールが突き出る量は、変更可能である。よって、カプラント室内にカプラントを通る超音波伝送路の長さが変更可能となる。伝送の長さが変更できることにより、超音波を送信する時間を制御または遅延することが可能になり、それにより振動子が送信から受信に切り替わる、および/または、透過エコーなどの望ましくない反射を分析用のパルス信号から取り除くような時間ゲーティングを可能にする、ための時間が制御できるようになる。
【0033】
上述の手法を組み合わせることが可能である。本明細書の他の箇所に、他の詳しい記載がある。
【0034】
走査装置は、振動子モジュールと結合シューとを備え得る。走査装置は、物体の表面下の、いくつかの異なる位置での構造的特徴について、情報を集めることができる。情報を集める方法のひとつとして、物体へ音波パルスを送信し、反射を検知する方法がある。人間のオペレータが物体の表面下の構造的な欠陥の大きさや形、深さを認識したり評価したりできるように、集めた情報を描写する画像を生成することが有用である。これは、表面下の構造的欠陥が危険となり得る多くの産業用途にとって、不可欠な機能である。一例として、航空機の整備があげられる。
【0035】
見たい構造が物体の表面下にあると、通常オペレータは装置に生成される画像に完全に依存することになる。したがって、オペレータが物体の構造を効果的に評価できるように情報の撮像が行われることが重要である。
【0036】
超音波振動子は、電気信号による駆動で振動し超音波信号を生成する、圧電材料を利用する。逆に、音波信号が受信されると、超音波振動子は圧電材料を振動させ、検出可能な電気信号を発生させる。
【0037】
物体の表面下を撮像するための、本明細書に記載される走査装置などの手持ち式デバイスの例が図1に示されている。デバイス101は、一体型ディスプレイを有することもできるが、この例では、タブレットコンピュータ102に画像を出力する。タブレットとの接続は、図示のように有線とすることもでき、または無線とすることもできる。デバイスは、超音波信号を送信および受信するためのマトリックスアレイ103を有する。好適には、アレイは、振動素子のアレイを形成するように交差パターンで配列された複数の電極を有する超音波振動子によって実装される。振動素子は、送信と受信との間で切り替えることができる。図示の手持ち式装置は、超音波信号を物体に結合するための乾式結合層104などの結合層を備える。結合層はまた、振動子が送信から受信に切り替わる時間を与えるために本明細書の他の部分に記載されるような、振動子の前面に取り付けられる結合シューを備えることが可能である。
【0038】
マトリックスアレイ103は二次元であるため、画像を取得するために物体を横切って移動させる必要はない。典型的なマトリックスアレイは、約30mm×30mmであることが考えられるが、マトリックスアレイのサイズおよび形状は、用途に合わせて変えることができる。デバイスは、オペレータによって、物体に対して真っ直ぐに保持され得る。一般に、オペレータは、物体のどこに表面下の欠陥または材料欠陥があり得るかをすでによく理解しているであろう。例えば、ある構成要素が衝撃を受けているかもしれないし、あるいはそのドリルまたはリベット穴の1つまたは複数に応力集中を引き起こす可能性があるかもしれない。デバイスは反射パルスをリアルタイムで適切に処理するので、オペレータはデバイスを任意の関心領域に配置するだけでよい。
【0039】
手持ち式デバイスはまた、オペレータがパルス形状および対応するフィルタを変更するために使用することができるダイヤル105または他のユーザ入力デバイスも備える。他の例では、ダイヤルは設けられなくてもよい。パルス形状および/またはフィルタの選択は、ソフトウェアで行われてもよい。最も適切なパルス形状は、撮像されている構造的特徴の種類、およびそれが物体内のどこに位置するかに依存する可能性がある。オペレータは、ディスプレイを介してタイムゲーティングを調整することによって、異なる深さで物体を見ることができる。タブレット102などの手持ち式ディスプレイに、または一体型ディスプレイに、装置が出力するようにさせることは有益である。オペレータがディスプレイ上で見えるものに応じて物体上で振動子を容易に移動させ、または装置の設定を変更し、瞬時に結果を得ることができるからである。他の配置では、物体上の新しい設定または位置が試験されることになるたびに、オペレータは手持ち式ではないディスプレイ(PCなど)と物体との間を歩いて再走査し続けなければならないであろう。
【0040】
物体の表面下の構造的特徴を撮像するための走査装置が図2に示されている。装置の全体は201で示されており、送信機202と、受信機203と、信号プロセッサ204と、画像生成器205とを備える。いくつかの例では、送信機および受信機は、超音波振動子によって実装され得る。例示を容易にするために、送信機および受信機は図2において互いに隣接して示されている。送信機202は、撮像対象の物体206に向けて特定の形状を有する音波パルスを送信するように適切に構成される。受信機203は、送信音波パルスの物体からの反射を受信するように適切に構成される。物体の表面下の特徴が、207に示されている。
【0041】
装置の一実施形態に含まれる機能ブロックの例が図3に示されている。この例では、送信機および受信機は、振動素子312のマトリックスアレイを有する超音波振動子301によって実装される。振動素子は、超音波を送信および/または受信する。マトリックスアレイは、交差パターンで配列された、平行で細長い電極を多数備えることができ、その交点は、振動素子を形成する。送信機電極は、特定の形状を有するパルスパターンを特定の電極に供給する送信機モジュール302に接続される。送信機制御部304は、作動される送信機電極を選択する。所与の時点に作動される送信機電極の数は変動し得る。送信機電極は、個別にまたはグループ単位で順に作動され得る。好適には、送信機制御部は送信機電極に、一連の音波パルスを物体に送信させ、生成された画像が連続的に更新されることを可能にする。送信機電極はまた、特定の周波数を使用してパルスを送信するようにも制御され得る。周波数は、100kHzないし30MHzであり得、好ましくは0.5MHzないし15MHzであり、最も好ましくは0.5MHzないし10MHzである。
【0042】
受信機電極は、物体から放射される音波を感知する。音波は、物体に送信された音波パルスの反射である。受信機モジュールは、これらの信号を受信および増幅する。信号は、AD変換器によってサンプリングされる。受信機制御部は、送信機電極が送信した後に受信するように、受信機電極を適切に制御する。装置は、送信と受信を交互に行い得る。一実施形態では、電極は、送信と受信の両方が可能であり、その場合、受信機制御部および送信機制御部は、送信状態と受信状態との間で電極を切り替える。好ましくは、送信される音波パルスと装置において受信されるそれらの反射との間に多少の遅延がある。装置は、電極が送信から受信に切り替わるのに必要な遅延を提供するための(乾式結合および/または結合シューによって提供される)結合層を含み得る。遅延は、相対深度が計算されるときに補償され得る。結合層は、好ましくは、送信された音波に低減衰をもたらす。
【0043】
各振動素子は、画像内の画素に対応し得る。言い換えれば、各画素は、振動素子のうちの1つで受信された信号を表し得る。これは、1対1対応である必要はない。単一の振動素子が2つ以上の画素に対応し得うるし、その逆も可能である。各画像は、1つのパルスから受信された信号を表し得る。「1つ」のパルスは、通常、多くの異なる振動素子によって送信されることが理解されなければならない。「1つ」のパルスのこれらのバージョンはまた、異なる時点にも送信され得、例えば、マトリックスアレイを、その各行を順に作動させることによって振動素子の「波」を作動させるように構成することもできる。しかしながら、試料の単一の画像を生成するために使用されるのはパルスの反射であるため、この送信パルスの集合は依然として「1つ」のパルスを表すと考えることができる。試料の画像のビデオストリームを生成するために使用される一連のパルス内のすべてのパルスについても同じことが当てはまる。
【0044】
パルス選択モジュール303は、送信されるべき特定のパルス形状を選択する。これは、振動子によって超音波パルスに変換される電子パルスパターンを送信機モジュールに供給するパルス発生器を含み得る。パルス選択モジュールは、メモリ314に格納されている、複数の予め定義されたパルス形状にアクセスすることができる。パルス選択モジュールは、自動的にまたはユーザ入力に基づいて送信されるパルス形状を選択し得る。パルスの形状は、撮像されている構造的特徴の種類、その深さ、材料の種類などに応じて選択され得る。一般に、パルス形状は、オペレータに物体の高品質画像を提供するために、信号プロセッサ305が収集することができ、かつ/または画像エンハンスメントモジュール310が改善することができる情報を最適化するように選択されるべきである。
【0045】
図4は、振動子モジュールを概略的に示す。振動子モジュール(TRM)の全体は400で示されている。ケーブル401のような電気的な接続が、TRMを遠隔システムに結合する。遠隔システムは駆動信号を供給でき、検知信号を受信できる。振動子モジュールはテスト下の物体402に対して置かれていることが示されている。TRMは、振動子404を有する。振動子404は、送信機を有する。振動子は受信機も有する。送信機および受信機は、別個に設けられてもよい。図を明確にするために、振動子の構造の詳細と、その電気的な接続は図から省略されている。振動子は、撮像されるべき物体に向かって超音波信号を送信するよう構成される。好適には振動子は406と示される方向に超音波信号を送信するように構成される。
【0046】
図5は、振動子モジュール500に取り付けられた結合シューを示す。好適には結合シューは振動子モジュールと係合する振動子係合部を備える。振動子係合部は係合機構を有してもよい。結合シューは、水やカップリングゲルなどのカプラントを保持するカプラント室512を有する。他にも適当な液体カプラントを使用することができる。カプラント室の境界は、側壁514と可撓性薄膜516である。薄膜は、ターゲット物体に面する探触子面を画定する。
【0047】
薄膜は、カプラントが通過できるように構成されている。例えば、薄膜は、カプラントが染み出すことができるように構成されている。カプラントが薄膜を透過する速さは、適切に選択される。例えば、薄膜の材料や構成は、望ましい流速のカプラント流路が得られるように選択できる。カプラント流路の流速は、温度、粘度、密度、圧力のような、カプラントの特性に依存させることができる。また、カプラント流路の流速は、カプラント室のカプラントと、薄膜に隣接する結合シューの外部の周囲圧力との間の圧力差に依存させることができる。さらに、カプラント流路の流速は、カプラント室内のカプラントの温度および/または結合シューの外部の周囲温度に依存させることができる。
【0048】
可撓性薄膜は、結合シューが押しつけられるターゲット物体の表面に適合する。これにより、結合シューの探触子面がターゲット物体の表面に適合し、超音波がより効果的にターゲット物体に結合されるようになる。薄膜が表面に適合し、カプラントが薄膜を透過するあるいは薄膜から染み出すため、カプラントが振動子モジュールとターゲット物体の表面との間に供給される。このように、可撓性薄膜は、ターゲット物体の表面の形状が多岐に渡っても、カプラントがターゲット物体の表面全体に供給されるようにする。
【0049】
薄膜は、ビニル、ラテックス、テフロン、またはこれらの材料の2つ以上を組み合わせたものから成ってもよい。他の可撓性材料もまた適当な材料になり得る。
【0050】
好適には、薄膜は多孔性および/または液体透過性などの透過性である。それにより、カプラントは薄膜の孔(開口部)から染み出すことができる。薄膜は、カプラントが染み出すことができる開口部を複数有してもよい。開口部は、薄膜の材料を特定のサイズの1つ以上の針で刺すことによって設けられてもよい。このように、特定のサイズの1つ以上の針を選ぶことにより、薄膜の開口部のサイズを制御することができる。そして、薄膜からカプラントが染み出す速度を制御することができる。
【0051】
好適には、開口部は薄膜のほぼ全体に渡って配置される。いくつかの例では、開口部は薄膜の、振動子モジュールと対向する部分に渡って設けられる。このことは図5に示される。結合シュー510の側壁514に近い部分の薄膜516には開口部がないことが概略的に示されている(しかしながら、その部分には、小さいサイズの開口部を設けたり、密度を低くして開口部を設けたりしてもよい)。薄膜の振動子モジュール直下(図5の向きにおいて)の部分518は開口部を有することが概略的に示されている(しかしながら、その部分には、大きなサイズの開口部を設けたり、密度を高くして開口部を設けたりしてもよい)。代案として、振動子モジュール直下(図5の向きにおいて)など、振動子モジュールに面する部分に開口部を設けなくてもよい。その代わりに、開口部は薄膜のその他の部分、つまり結合シューの側壁に近い部分、に設けられてもよい。振動子モジュール直下の部分の薄膜は、多くの開口部および/またはある密度で設けられる開口部および/またはあるサイズの開口部であって、薄膜の他の部分の開口部よりも小さい開口部が設けられてもよい。
【0052】
薄膜の孔または開口部は、特定のパターンで設けられてもよい。パターンは、格子状に配置された孔など、反復パターンでよく、格子は多角形であってもよい。格子は、正方形や長方形であってもよい。開口部や孔は、薄膜の少なくとも一部分に渡って、ランダムに設けられてもよい。
【0053】
好適には、開口部は一定の寸法を有する、あるいは特定の寸法の範囲内におさまるように形成される。例えば、開口部の最大幅は、同じであるか、ほぼ同じであってよい。開口部の形状は、円形あるいはほぼ円形のように、一定のものであってよい。開口部は楕円形であってもよい。いくつかの例では、開口部は異なる形状および/または寸法を有していてもよい。最大幅は、50マイクロメートルから1000マイクロメートルの範囲にあればよい。
【0054】
薄膜の開口部の密度は、好適には1平方ミリメートルあたり1つから、1平方センチメートルあたり1つの範囲にある。開口部の密度は、1平方センチメートルあたり1つ未満であってもよい。
【0055】
カプラント室は大きいものである必要はない。カプラント室は、結合シューがターゲット物体に押しつけられたときに、接触子面とターゲット物体との間にカプラント膜がもたらされるのに十分な量のカプラントを保持できればよい。ほとんどの場合、比較的少量、例えば約5ミリリットルより少量のカプラントでこれを達成できる。好適には、カプラント室の容積は、5ミリリットル以下、約2ミリリットル以下、約1ミリリットル以下、約0.5ミリリットル以下である。好適には、カプラント室の容積は、約0.2ミリリットルから約0.5ミリリットルである。カプラント室の容積は、約0.2ミリリットルから約1ミリリットルであってもよい。
【0056】
図5に示されるように、薄膜516はカプラント室512の一部を画定する。薄膜は、カプラント室の1つの面を画定してもよい。
【0057】
図6aを参照すると、結合シューは薄膜616に隣接してあるいはその近くに、弾性部620を有する。図示のように、弾性部は結合シューの側壁614の一端に設けられる。弾性部は、結合シューの側壁に結合される、あるいはその一部を形成する、弾性材料を有していてもよい。図6aは、側壁614の一端に取り付けられる可撓性嚢部を示している。嚢部は、弾性材料で構成されていてもよい。嚢部は可撓性の壁部を有し、流体で満たされていてもよい。結合シューのターゲット物体との結合面を押すと、弾性部がシューの残りの部分とターゲット物体との間で圧縮される。図6bは、嚢部620の圧縮を示す。かくして、結合シューとターゲット物体との間に、有用な密閉材が形成され、密閉材は、カプラントが結合シューの探触子面に近接し続けられるように補助する。
【0058】
弾性部は、ターゲット物体の表面の変化を受け止めることができるようにする。好適には、弾性部は結合シューとターゲット物体との間を、少なくとも部分的に封止し、それによって薄膜から染み出たカプラントを保持するように構成される。結合シュー610の側壁614は、カプラント室を少なくとも部分的に画定する。好適には、側壁はカプラント室の外側に設けられる。側壁の少なくとも一部は、弾性材料からなってもよい。
【0059】
弾性部は、アクアリーン、アクアシーラックス(aquasealux)、ゴム、およびエラストマーのうち、1つ以上のものから形成されてもよい。弾性部は、流体で満たされた嚢部またはOリングの形状であってもよい。
【0060】
側壁、あるいは側壁の残りの部分は、レキソライト(rexolite)のような、弾性が弱めの材料で形成されてもよい。
【0061】
振動子係合部は、振動子モジュールの超音波放射面に隣接して超音波を結合シューに結合する、振動子結合面を有していてもよい。図7を参照すると、振動子結合面730は、振動子モジュール710を受け止めることが可能な凹部の一部を結合シュー710に形成してもよい。振動子結合面は、結合シューに構造的安定をもたらすことができる。図7に示されるように、振動子結合面は結合シュー構造の残りの部分と一体化していてもよい。これは必須のことではない。いくつかの場合では、振動子結合面は、例えばエラストマーガスケット、ゴムガスケット、金属ガスケット、ファイバーガスケットなどのガスケットによって、側壁714など、結合シューの一部に結合されることが可能である。
【0062】
図8に例が示される、他の場合では、振動子結合面を設ける必要がない。結合シュー810の振動子係合部は振動子モジュール800の側部と係合することが可能である。例えば、係合機構が振動子モジュールと係合するように構成することが可能である。振動子モジュールとの係合は、摩擦適合、クリップ係合、スナップ留め係合、つかみまたは締め係合、滑らせ係合などの1つ以上の形態でよい。振動子モジュールの正面にある超音波放射面は、カプラント室812内のカプラントと接触することが可能である。この配置により、振動子モジュールとターゲット物体との間の境界面の数を減らすことが可能となる。図7図8を比べると、図8では、振動子モジュールから振動子結合面への境界面と、それに続くカプラント室への境界面が存在しなくなっているのが見てとれる。
【0063】
カプラントは薄膜を通ってカプラント室から染み出し、あるいは他の方法でカプラント室を離れるが、その際、失われたカプラントを交換したり、カプラント室にカプラントを補充したりするのが望ましい。
【0064】
再び図7および図8を参照して、結合シューはカプラント源と連通するように構成されている。カプラント室はカプラント源と連通している。カプラント室は、カプラント源と流体連通している。カプラント室はカプラント源と通じることができるので、カプラントをカプラント室に補充できる。カプラント室はカプラント源と通じていて、薄膜を介してカプラント室から染み出したカプラントを補充する。
【0065】
カプラント源は、カプラント室の近くあるいは隣にあってもよく、あるいは離れた位置にあってもよい。カプラント源は、結合シューと離れた位置にあってもよい。例えば、カプラント源934および1034が走査装置に搭載可能であり、つまり結合シュー910の位置または隣に置くことが可能である(図9参照)。カプラント源は、別のモジュールの中やその一部として設けられるなど、結合シューや振動子モジュールと離れた位置にあってもよい(図10参照)。
【0066】
結合シューは、カプラント室と通じていて、カプラントを供給するための、入口部731、831、931、1031を有する。例えばリモートカプラント源のようなカプラント源934、1034にカプラント室を接続するための管732、832、932、1032に、入口部を結合されることが可能である。このようにしてカプラントはカプラント室に供給され得る。入口部がカプラント室をカプラント源に結合してもよい。それにより、システムのサイズを小さくする、および/または、管の長さ全体に渡って起こり得る、カプラント源とカプラント室の間の圧力低下の可能性を小さくすることが可能となる。図7ないし10では、結合シューは1つの入口部を有することが示されているが、他の例では、複数の入口部が設けられてもよい。各入口部は異なるカプラント源に結合されてもよいし、複数の入口部が単一のカプラント室に結合してもよい。
【0067】
カプラント源1034は、リモートプロセッサや他の電子制御部とともに設けられてもよい。電線1036が管1032に沿うように、適切に設けられてもよい。
【0068】
図11を参照すると、結合シューはカプラント室1112と連通する出口部1133を備えてもよく、カプラントは出口部1133を通ってカプラント室から流れ出る。必要に応じて、複数の出口部が設けられてもよい。出口部により、カプラントがカプラント室から出る、別の出口流路が提供される。この別の流路は、カプラント室内の圧力を調整したり制御したりするために用いられてもよい。例えば、カプラントがカプラント室から染み出すのを待つよりも速くカプラント室内のカプラントの圧力を下げるのが望ましい場合、出口部によりこれを行うことが可能になる。出口部の下流で圧力低下を起こすことにより、カプラントは出口部を通ってカプラント室から移動されることになる。そのような圧力低下を起こすために、ポンプが設けられてもよい。
【0069】
出口部はまた、カプラントが保存できるようにもする。結合シューがターゲット物体から外されるとき、カプラント室のカプラントはまだカプラント室から流れ出ている。これによりカプラントの無駄が出る可能性がある。出口部に設けられた機構により、カプラントはカプラント室から取り除かれ、再利用され得る。例えば、取り除かれたカプラントをカプラント源に戻すことができる。
【0070】
結合シューは、カプラント室へのカプラントの送り出しを制御するための、接触反応型アクチュエータを備えてもよい。これにより、カプラントは必要に応じてカプラント室へ供給され、カプラントの無駄を減らすことが可能になる。接触反応型アクチュエータは、カプラント源とカプラント室との間の流路に設けられ、カプラント室へのカプラントの流れを制御してもよい。例えば、接触反応型アクチュエータを結合シューの一部として設けることが可能である。いくつかの例では、入口部が接触反応型アクチュエータを有していてもよい。
【0071】
好適には、アクチュエータは、結合シューとターゲット物体が接触すると、あるいは接触したことに反応して、動作することができる。結合シューは、結合シューとターゲット物体が接触したことを感知または検知するように構成することが可能である。結合シューは、当該結合シューがターゲット物体に押しつけられる力を感知または検知するように構成することが可能である。例えば、結合シューは、結合シューとターゲット物体との接触を感知する接触センサを有することができる。接触センサは、結合シューが他の物体に向けられたときに感知する光センサを有することが可能である。光センサは、LEDセンサおよび/またはレーザセンサを有していてもよい。好適には、結合シューは、結合シューがターゲット物体に押しつけられる力を感知する力センサを備えている。接触反応型アクチュエータは、力センサのような接触センサを有してもよく、および/または、感知された接触および/または感知された力に反応可能であってもよい。
【0072】
好適には、接触反応型アクチュエータは、接触力の閾値を超える力の検知に応じて、カプラントの送り出しを制御するように構成される。接触力の閾値は、例えばユーザによって必要に応じて選択されることが可能である。
【0073】
接触反応型アクチュエータは、例えば図12に示されるように、電子的に制御されてもよい。接触センサ1240を結合シュー1210の側壁1214の遠位端に設けて、結合シューとターゲット物体との接触を感知することが可能である。接触センサは、有線および/または無線接続によって、制御システム(図示せず)に通信可能に接続することができる。接触を検知すると、制御システムはアクチュエータを制御して、カプラントをカプラント室に送ることができる。
【0074】
アクチュエータは、カプラント源とカプラント室との間のバルブを制御することにより、カプラントを送るように構成されてもよい。アクチュエータは、容積ポンプなどのポンプを制御することによってカプラントを送るように構成されてもよい。アクチュエータは、可動式作動体が動作する量を制御することによってカプラントを送るように構成されてもよい。量とは、例えば、直線式の作動体が移動することができる距離や、回転式作動体が移動することができる角度のことである。作動体は、例えば作動体がプランジャと結合されるかプランジャを形成し、カプラントが胴体部に保持される、シリンジ型送り出しシステムの一部を形成することが可能である。
【0075】
接触センサは、結合シューがターゲット物体に押しつけられる力を感知する、力センサを有することができる。制御システムは、接触力の閾値を超える力を検知するとアクチュエータを制御してカプラントをカプラント室へ送ることが可能である。
【0076】
接触反応型アクチュエータを機械的に制御することが可能である。図13に機械的制御の例が示される。この例では、結合シュー1310には側壁1314に収容される接触反応型アクチュエータ1350が設けられている。アクチュエータは、開口部を持つバルブを有し、バルブは延伸位置と引っ込み位置との間で移動可能である。ばねなどの付勢体が、延伸位置の方へバルブに付勢する。バルブはチャネル内を移動して、カプラント室への流路を選択的に閉じたり開いたりすることができる。図示のように、流路は側壁1314を通っている。
【0077】
延伸位置では、バルブの本体が流路を塞ぎ、カプラントがカプラント室に流れ込むのを防ぐ。引っ込み位置では、バルブの開口部が流路の位置と一致し、それによりカプラントがカプラント源から流路を通ってカプラント室へ向かって流れることが可能になる。結合シューを物体に押しつけると、バルブを延伸位置から引っ込み位置へ移動することが可能となる。物体へ押しつけられると、バルブの突き出した部分が物体と接触し、接触の力が、付勢体に働いてバルブを引っ込み位置へ送る。好適には、接触の力がその閾値に到達するかそれ以上になると、バルブの開口部が流路と揃うように付勢体とバルブは配置される。
【0078】
電子的制御と機械的制御の組み合わせもまた可能である。
【0079】
接触反応型アクチュエータは作動中、カプラントを選択した圧力でカプラント室へ送るよう構成することが可能である。接触反応型アクチュエータは作動中、選択した量のカプラントをカプラント室へ送るよう構成することが可能である。
【0080】
再び図13を参照すると、カプラント源1334は2つの区画を持つことが示されている。カプラント源をシューに接続している管1332に近いところに位置する第1の区画1352には、水などのカプラントが供給される。管1332から遠い第2の区画1354には、加圧された流体が供給される。第1の区画と第2の区画の間の仕切り1356は移動可能であって、2つの区画の間の相対的な容積を変更する。接触反応型アクチュエータが作動すると、カプラントがカプラント源から流れ出る流路が開通する。カプラントは、第2の区画内の加圧された流体の作用によって、第1の区画から流れ出ることができる。例えば、第2の区画には二酸化炭素ガスのような加圧ガスを入れることができる。ガスの圧力は水を押して管を取ってカプラント室に向かわせ、それにより一定量のカプラントをカプラント室に入れることができる。
【0081】
アクチュエータおよび/またはカプラント源は、アクチュエータの差動によってカプラント源へ運ばれるカプラントの量を制限するような機構を有していてもよい。例えば、流路は特定の期間開くようにされてもよい。カプラントが流路を流れる速度は、カプラント室へカプラントが運ばれる量を制御する。流路は、流れ計測構造を有するかそれに連通していてもよく、流れ計測構造により流路の流れを計測できる。流れ計測構造の一例として変位計がある。流れ計測構造は、カプラント流によって発生する力を計測してもよい。流れ計測構造は、カプラント流の速度を計測してもよい。他にも適当な流れ計測構造が用いることができる。流れ計測構造は、単体で用いられても、適当に組み合わされて用いられてもよい。
【0082】
接触反応型アクチュエータは、結合シューとターゲット物体との接触に応じて、適切に差動されることができ、その結果、結合シューがターゲット物体に押しつけられると、特定の量のおよび/または特定の圧力のカプラントが、カプラント室に「チャージ」される。この手法により、超音波分析のために適当な量のカプラントが提供され、結合シューがターゲット物体に隣接していないときに失われるカプラントの量を減らすことが可能になる。
【0083】
好適には、カプラント室内のカプラントの圧力は、周囲圧力よりも大きい。周囲圧力は、薄膜に隣接する結合シューの外部の圧力でよく、例えば結合シューの周りの空気の圧力である。カプラント室内のカプラントの圧力を周囲圧力より大きく保つことにより、薄膜を通ってカプラントを染み出させることができる。よって、カプラントの染み出しは結合シューとターゲット物体との間のカプラント膜を保ち、超音波がターゲット物体に結合するのを助ける。
【0084】
カプラント室内のカプラントの圧力は、周囲圧力に応じて制御可能である。周囲圧力は、センサの出力に応じて決定することができる。センサは、結合シューの上にあるいはその一部として設けてもよい。センサは、結合シューと離れた位置に設けられてもよい。センサは、周囲圧力を感知する圧力センサを有してもよい。センサは結合シューの位置を決めてもよく、周囲圧力は、位置とそれに対応する周囲圧力とを有するデータベースを参照して決定されてもよい。これにより、試験をする場所の地理的な位置や、超音波分析が実行される高さに基づいて圧力を決定することが可能になる。
【0085】
カプラントの圧力の変化により、カプラントの音響特性に影響が出る可能性がある。ゆえに、カプラント室の圧力を制御できるようにすることで、結合シューを用いて行われる超音波分析を最適化する助けとなる。
【0086】
カプラント室内のカプラントの圧力は、ターゲット物体に対する結合シューの速度に応じて制御することが可能である。局所位置決めシステムが、ターゲット物体に対する、結合シューを含む走査装置の動きを制御または検知することができる。局所位置決めシステムは、例えばトラックボール(マウスのトラックボールと似たもの)の回転をモニタしたり、赤外線や無線の追跡システムを用いたり、あるいはGPS追跡システムを使ったりすることで、結合シューとターゲット物体との間の相対的な動きの速さを決定するように構成されてもよい。
【0087】
カプラント室内のカプラントの圧力は、薄膜を通るカプラントの染み出し速度に影響を与え、さらに超音波をターゲット物体へ結合させるために供給されるカプラントの量に影響を与える。結合シューがターゲット物体に対してより速く動くと、結合膜の厚みを適当に保つために、薄膜を通って染み出すカプラントの量の増加が必要になる可能性がある。これは、ターゲット物体の表面を結合シューが動くと、カプラントが失われることによるものである。そこで、カプラントの圧力を結合シューとターゲット物体との間の相対的な動きに基づいて制御することにより、結合膜を適切に保持することができるようになり、転じて、相対的な動きの速度のある範囲に対しては、超音波分析が効果的であり続けるようになる。
【0088】
カプラント室内のカプラントの圧力は、周囲温度および/またはカプラント室内のカプラントの温度に応じて制御することが可能である。周囲温度および/またはカプラントの温度は、温度センサの出力に応じて決定することができる。温度センサは、結合シューの上に、あるいは結合シューの一部として、設けることができる。温度センサを結合シューから離れた位置に設けてもよい。カプラントの温度が上がると、その粘度は低くなり、よって(例えば、カプラントの圧力が変わらなければ)染み出しの速度は速くなる。染み出しの速度の変動を小さくするためには、カプラント室内のカプラントの圧力を温度の変動に応じて制御することが望ましい。例えば、カプラント室内のカプラントの温度が上がると、圧力を下げて染み出しの速度を同じまたはほぼ同じに保つことが可能である。カプラントの温度が下がると、圧力を上げて染み出しの速度を同じまたはほぼ同じに保つことが可能である。
【0089】
好適には、走査装置は、結合膜の厚さがそのとき行われている分析に適当かどうかを決定するように構成されるフィードバック機構を備える。例えば、選択された超音波パルスの振幅をモニタすることにより、超音波が効果的にターゲット物体に結合されているかを評価することが可能である。選択された超音波パルスの振幅が所定のレベル以上に変化すると、超音波のターゲット物体との結合がそれほど効果的ではなく、それに対して改善措置が取り得ることが決定できる。改善措置としては、カプラント室内のカプラントの圧力を増して薄膜を通るカプラントの染み出しを増し、それにより結合シューとターゲット物体との間のカプラントの量を増すことが可能である。また改善措置として、カプラント室内のカプラントの圧力を減じることにより薄膜を通るカプラントの染み出しを減じ、それにより結合シューとターゲット物体との間のカプラントの量を減らすことが可能である。
【0090】
改善措置は、カプラント室へおよび/またはカプラント室からのカプラントの流れを制御し、それにより結合シューとターゲット物体との間のカプラントの量を制御することも含むことができる。カプラント室へおよび/またはカプラント室からのカプラントの流れを制御することにより、カプラント室内のカプラントの圧力を制御する効果もある。
【0091】
選択された超音波パルスは、透過エコーを有していてもよい。透過エコーの振幅が増すことは、(例えば、より多くの超音波エネルギーが結合シューとターゲット物体との境界から反射しているなどで)ターゲット物体を貫通する超音波エネルギーが少なくなっていることを示す。これは、結合シューとターゲット物体との間のカプラントが減っているかなくなっていることによって起こる。この場合、透過エコーの振幅が増して閾値を超えることは、十分な量のカプラントが供給されていないことを意味する。これに対して、カプラント室内のカプラントの圧力を増すことにより、結合シューとターゲット物体との間に供給されるカプラントの量を増すことが可能である。結合シューとターゲット物体との間のカプラントの量は、(例えば入口部を通って)カプラント室へ入るカプラントの流れを増すことにより、および/または、(例えば出口部を通って)カプラント室から出て行くカプラントの流れを減らすことにより、増やすことができる。
【0092】
選択された超音波パルスは、表面下反射を含んでいてもよい。表面下反射の振幅が小さくなることは、(例えば、表面下のものから反射する超音波エネルギーが少なくなっているなどで)ターゲット物体を貫通する超音波エネルギーが少なくなっていることを示す。これは、結合シューとターゲット物体との間のカプラントが減っているかかなくなっていることによって起こる。この場合、表面化反射の振幅がその閾値よりも小さくなることは、十分な量のカプラントが供給されていないことを意味する。これに対して、カプラント室内のカプラントの圧力を増すことにより、結合シューとターゲット物体との間に供給されるカプラントの量を増すことが可能である。結合シューとターゲット物体との間に供給されるカプラントの量は、(例えば入口部を通って)カプラント室へ入るカプラントの流れを増すことにより、および/または、(例えば出口部を通って)カプラント室から出て行くカプラントの流れを減らすことにより、増やすことができる。
【0093】
再び図5を参照すると、薄膜は振動子モジュールの正面に配置される。つまり、薄膜は振動子モジュールからターゲット物体へ送信される超音波の超音波伝送路に沿って配置される。薄膜の少なくとも一部が超音波伝送路に沿って配置されると、カプラント室の少なくとも一部が概して振動子モジュールと探触子面との間に配置される。しかし、これは必要なことではない。
【0094】
いくつかの配置では、薄膜は超音波伝送路から離して置くことが可能である。つまり、薄膜は、振動子モジュールからターゲット物体へ送信される超音波の経路上にある必要はない。図14aおよび図14bはそのような配置を示す。結合シュー1400は、結合シュー前面1402が振動子モジュール前面1404とほぼ同一平面にあるように、振動子モジュールに取り付け可能である。結合シューは探触子面1406を有する。探触子面は、少なくとも部分的に可撓性薄膜で画定されている。結合シューはカプラント室1408を有する。図示のように、薄膜はカプラント室の壁を画定する。図示の例では、カプラント室は振動子モジュールを囲むように設けられる。カプラント室が完全に振動子モジュールを囲む必要はない。いくつかの例では、カプラント室は部分的に振動子モジュールを囲む。カプラント室は振動子モジュールの一方の側に設けられてもよい。
【0095】
この配置により、振動子モジュールから送信される超音波の超音波伝送路上にカプラント室を置くことなしに、カプラントが薄膜を通って染み出してカプラント膜を振動子モジュールとターゲット物体との間に供給することができる。このように、カプラント室の寸法は必ずしも超音波送信路に影響を与えない。この手法には、結合シューと振動子モジュールとを備える走査装置をコンパクトにできるという利点もある。
【0096】
そのような配置によるカプラント室は、図14aに示されるように振動子モジュールの周りに設けられることが望ましい。この手法は、走査装置がどの方向でターゲット物体の表面を動くかに関わらず、振動子モジュールとターゲット物体との間に適当なカプラント膜が設けられるように、カプラントが薄膜を通って染み出すことを可能にする。
【0097】
薄膜は、結合シュー下部の全体あるいは大部分に渡って設けられる必要はない。少なくともいくつかの例では、薄膜は、さらに限定的に設けられる。図15を参照すると、結合シュー1500はプレート1504から突き出るブリスタ(膨らみ部)1502を有する。見やすさのために、この図にはカプラント室は示されていないが、カプラント室と、カプラントをカプラント室に供給するための入口が設けられているものとする。カプラント室からブリスタ1502への通路もまた設けられる。
【0098】
好適には、ブリスタは、本明細書の他の部分に記載されている薄膜のような弾性材料で囲まれ、流体で満たされたブリスタである。好適には、弾性材料はプレートよりも弾性が高い。例えば、プレートはレキソライト(rexolite)を含む。
【0099】
カプラントはブリスタ内に供給され、その材料から染み出すことが可能である。こうしてブリスタは、本明細書に記載された結合シューの少なくともいくつかの例よりも限られた領域にカプラントを供給できる。ブリスタを有する結合シュー1500は、スポット溶接部、および/または、横方向が限られている場合の撮像に有用である。
【0100】
少なくとも1つの構成において、ブリスタは密封ブリスタであってもよい。そのような構成においては、ブリスタからのカプラントの染み出しを制御することがないため、ブリスタへの補給路を用意する必要がない。
【0101】
ブリスタを有する結合シューの構成の例を示す、図16aおよび図16bを参照する。プレート1604は、窪み部または貫通孔を有する。ブリスタ1602がその窪み部または貫通高から突き出すことが可能である。カプラント供給路1606がプレート1604の内部などに設けられ、ブリスタ内部にカプラントを供給する。その代わりに、ブリスタ1603がプレート1605の表面上に設けられてもよい。カプラント供給路1607がプレート内部あるいは表面に沿って設けられ、ブリスタ内部にカプラントを供給する。プレート1604、1605は、結合シューに構造的な安定をもたらす。振動子モジュール1601は、ブリスタが突き出している面とは反対側の面でプレート1604、1605と係合可能である。
【0102】
上述のように、結合シューは、振動子モジュールと係合する振動子係合部を有し、これにより、結合シューと振動子モジュールとは、互いに対して異なる位置で係合することができる。結合シューと振動子モジュールが相対的に異なる位置で係合可能なので、カプラントおよび/または結合シューを通る超音波の送信距離を変化させることができる。
【0103】
好適には、係合機構は、振動子モジュールが結合シューに対して複数の位置で据え付けられるように、振動子モジュールを係合するように構成される。係合機構は好適には、カプラント室の方を向くように振動子モジュールを保持し、それにより振動子モジュールから送信される超音波がカプラント室に向かうように構成される。係合機構は、振動子モジュールを相対的に異なる向きに保持して、結合シューを通る超音波の送信方向を変化させるように構成されてもよい。係合機構は、薄膜からの距離が異なるように振動子モジュールを保持して、結合シューを通る超音波の送信距離が変化するように構成されてもよい。
【0104】
超音波送信の方向および/または距離を変化させることにより、超音波経路の長さおよび/または超音波信号の送受信の間の遅延時間を制御することが可能になる。送信方向および/または距離は、振動子モジュールから送信される超音波の周波数(あるいは平均周波数、あるいは最大振幅の周波数)および/または関連するものの深さに応じて適切に変えられる。
【0105】
好適には、係合機構は摩擦適合機構、クリップ係合、スナップ留め係合、つかみまたは締め係合、滑らせ係合などのうち、1つ以上を行う。係合機構は、好適には振動子モジュールの側部と係合するよう構成される。係合機構は、好適には振動子モジュールの側部と密封係合されてカプラントをカプラント室内に保持するように構成される。
【0106】
図17は、振動子1704を有する振動子モジュール1702と係合する結合シュー1700を示す。結合シューは、カプラント室1706を有する。結合シュー1700と振動子モジュール1702とを係合するために、振動子係合部1708が設けられる。カプラント室へカプラントを供給する入口1710が示される。振動子係合部1708は、振動子モジュールの側部と摩擦係合する。好適には、振動子係合部は、振動子モジュールを密封係合するための弾性部を有する。例えば、振動子係合部は、振動子モジュールに押しつけるための弾性表面を有することができる。弾性表面はエラストマーを含んでもよい。
【0107】
振動子係合部1708は、結合シューに対して異なる高さで振動子モジュールが据え付けられることを可能にする。図17は、振動子モジュールがカプラント室1706に突き出さないように(あるいは著しく突き出さないように)据え付けられていることを示す。図示の配置は、図18a(切り欠き斜視図を示す)に示される配置と対応する。図18aと図18bを比較すると、振動子モジュールは、比較的大きくカプラント室1706へ突き出すように結合シューに対して移動可能であることが示される。
【0108】
図19は、振動子モジュール1702と係合する結合シュー1700の、別の斜視図である。振動子係合部1708は、振動子係合部を振動子モジュールに固定することが可能な、固定機構1712を有する。図示の例では、固定機構は、締め付け可能なホースクランプ型の環部を有する。このように、望ましい位置に振動子モジュールを取り付けるように振動子係合部を用いることが可能であり、結合シューと振動子モジュールの間の相対的な動きを制限するように固定機構を締めることが可能である。
【0109】
図20を参照する他の例では、結合シュー2000は、ターゲット物体との境界面へカプラントを供給するための出口2004を少なくとも1つ持つ、カプラント室2002を有する。出口は、結合シューの探触子面2006上に設けられる。図21aは結合シュー2000の下部を示す。図21bは、結合シュー2000の側部断面図を示す。図21cは、結合シュー2000の平面断面図を示す。
【0110】
結合シューは、振動子を係合するための係合機構2008を有する。図20において、係合機構2008は、ねじ穴の形態をとる。結合シューは、振動子モジュールを受け止める窪み部2010を有する。結合シューと係合すると、振動子モジュールの超音波放射面が結合シュー2012の振動子結合面と接触する。好適には、振動子結合面は平面である。これにより、振動子結合面の全面が振動子モジュールの超音波放射面と常に接触するようになる。
【0111】
図示の例では、カプラント室2002は、結合シューに掘られたチャネルの形態を持つ。その穴の断面は円形でよく、つまりカプラント室はドリルビットで形成された穴でよい。これにより、製造が簡易になる。カプラント室は、結合シューに複数回穴を開けることで形成が可能である。図20、21a、21b、21cに示される結合シューは、平面図の断面が概ね正方形となる。この例では、4つの穴が入口点2014、2016、2018、2020から結合シューに開けられている。各穴は隣接する穴と接続しており、結合シュー内部を取り囲む連続したチャネルを形成している。穴の入口点を封止してカプラント室2002を形成することができる。穴の入口点は、例えば、入口点に封止ねじをねじ込む(さらにガスケットやOリングを加えてもよい)などの適当な方法で封止可能である。穴の入口点の1つ以上を、カプラントをカプラント室に供給するための入口部として形成してもよい。穴の入口点の1つ以上を、カプラントをカプラント室から取り除くための出口部として形成してもよい。好適には、穴の入口点のひとつ、2014が入口部となり、2018が出口部となる。好適には、入口部となる穴の入口点は、出口部となる穴の入口点とは反対側か、一番遠くにあるとよい。この配置により、カプラントがカプラント室の入口部と出口部との間で概ね同じ流路を流れることになる。図示の例では、ひとつの流路が穴の入口点2016を通り、他方の流路が2020を通る。入口部は、本明細書の他の部分に記載の通り、例えば管を通してカプラント源と結合できる。通常、この例における結合シューの入口部と出口部は、結合シューの他の例に関して本明細書の他の部分に記載されるシステムに結合することができる。
【0112】
カプラントはカプラント室2002の出口2004を通ってターゲット物体に向かって流れるが、その出口2004は、カプラント室2002の探触子面2006に設けられる。出口は、探触子面から結合シュー2000に穴を開けることで設けられる。例えば、穴は探触子面からドリルで結合シューの中に開けられ、出口穴がカプラント穴と連通するような深さとなるよう形成されてもよい。図21bはこれを示している。
【0113】
出口2004は、結合シュー2000の探触子面2006の周縁部に向かって設けられる。結合シューは、内部を通る伝送路に沿って、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するように構成されており、出口は伝送路を形成する結合シューの材料とは離れているように設けられる。出口をこのように設けることにより、伝送路に沿って望ましくない超音波反射が起こらないようにすることができる。好適には、伝送路は、例えば振動子モジュールが結合シューに保持される面に垂直に、直接結合シューを通る。図示の例では、振動子モジュールの超音波放射面は、結合シュー2012の、平面である振動子結合面と係合する。この例では、伝送路は(概略的に矢印2022で示されるように)面に対してほぼ垂直である。
【0114】
出口2004は、結合シューに対して対称となるように設けられているが、すべての例でそうである必要はない。出口を対称に設けると、結合シューとターゲット物体との間にカプラントを広げる助けとなる。結合シューがいろいろな方向でターゲット物体の表面全体を動くような場合、これは有益である。出口を結合シューの周縁部のあたりに配置することにより、出口の少なくともひとつが動きの方向にほぼ対向することになり、よってカプラントをスキャンされるターゲット物体の領域に供給できる。たいていの場合、結合シューは多角形の外形を有していてもよく、それぞれの出口は多角形の各面に設けられていてもよい。多角形の1つ以上の面に、複数の出口が設けられてもよい。この配置は、結合シューがターゲット物体の表面を移動する方向にかかわらず、適当なカプラントを結合シューとターゲット物体との間に供給する助けとなる。
【0115】
図示の例では、出口の開口部はすべて同じサイズであるが、常にそうである必要はない。出口は異なるサイズであってもよい。例えば、結合シューの角部にある出口は、結合シューの面の中間部にある出口より小さくてもよいし、その反対でもよい。出口の直径は1ミリメートルから5ミリメートルである。好適には、出口の直径は1ミリメートルから3ミリメートルである。このサイズの出口は、さらに大きな開口部で気泡形成を減らすことと、さらに小さい開口部でカプラントが無駄になりすぎないようにすることとの間のよいバランスをとれる。このサイズの出口にすると、出口の数をさらに増やす必要性もなくすことができる。というのは、この例では、十分な量のカプラントが比較的少ない数の、比較的大きな出口から供給され得るからである。出口の数が比較的少ないと、製造時間を短縮することができる。
【0116】
カプラント室2002は伝送路から離れて置かれる。この配置により、結合シュー内にあるカプラントを超音波伝送路が通るのを避けることができる。超音波伝送路がカプラントを通ると、(例えば超音波がカプラント室に入り込むため)超音波伝送路に沿ってさらに反射を起こす可能性がある。
【0117】
他の例では、結合シューは、振動子モジュールによって送信される超音波をターゲット物体に結合するためのカプラントを保持するように配置されるカプラント室を備える。カプラント室は、ターゲット物体との境界面にカプラントを供給する出口を有する。結合シューは、結合シュー内を流れるカプラントに形成される気泡を減少するように構成されており、また、結合シュー内を流れるカプラントの乱流を減少するように構成される流れ調整体を有する。好適には、流れ調整体は、気泡抑制体を有する。
【0118】
流れ調整体は1つ以上の面取り部を有することが可能である。面取り部を設けることにより、各角部の角度を小さくすることができる。例えば、90度の角部に45度の面取りをすることにより、1つの90度角部を2つの45度角部にすることができる。このように、面取りをすることにより、カプラントが流れる部分の角部の少なくとも1つの角度を小さくすることができる。流れ調整体は滑らかな湾曲部を1つ以上有していてもよく、それにより、角部の数および/またはカプラントが流れる部分の角部の角度を小さくすることができる。流れ調整体は、縁が丸められた開口部を有していてもよい。これらの手法により、渦など、カプラント内の乱流を少なくできる。流れ調整体は、カプラントの流れの速さを減少させる流量調整器を有して、これにより乱流を減少させてもよい。流量調整器は開口部および/または流路を有していてもよく、その幅は、開口部または流路を通る流れの方向に沿って大きくなる。流れ調整体は滑らかな表面を有していてもよい。滑らかな表面は、粗い表面に比べて、表面上の気泡核生成箇所を減らすことができる。
【0119】
乱流を減らすことにより、カプラント内の気泡形成を少なくすることが可能である。これは転じて、超音波をターゲット物体に出し入れするために結合するカプラント内の気泡を減少させ、その結果超音波走査を改善する。
【0120】
本明細書に記載の結合シューの任意の1つ以上のものは、少なくとも一部分においては、透明材料で形成されてもよい。例えば、透明材料は透明アクリルのような、アクリル系材料を含んでいてもよい。好適には、結合シューは(i)結合シュー内でのカプラントの流路と、(ii)結合シューの外表面と、の間に透明材料を有する。これにより、ユーザは使用中に結合シュー内のカプラントを目視できるようになり、カプラント内の気泡の存在と数を確認できるようになる。気泡の存在と数を確認することにより、気泡形成を減少させたり結合シューから気泡をなくしたりするために、結合シューを通るカプラントの流量を変更するなどの必要に応じた行動をとることができるようになる。好適には、結合シューは透明材料を、カプラント室と外表面との間に有する。好ましくは、結合シューは全体が透明材料で構成される。
【0121】
本明細書に記載の装置および方法は、炭素繊維強化ポリマー(CFRP)などの複合材料の剥離や層間剥離を検知するのに特に適している。これは、航空機の保守には重要なことである。また、応力が集中しがちなリベット穴周辺の剥落を検知するために用いることもできる。装置は、金属や金属構造物の腐食、溶着、亀裂などの検知に特に有用である。装置はまた、かなり大きな部品における小領域の撮像を行うのが望ましい用途に特に適している。装置は軽量で持ち運び可能であり、使いやすい。オペレータが簡単に手で運ぶことができ、物体上の必要なところに置くことができる。
【0122】
図に示される構造は、装置のいくつかの機能ブロックに対応させることが意図されている。これは、例示のためのものにすぎない。図示の機能ブロックは、装置が実行するように構成されている異なる機能を表しているが、装置の物理的構成要素を厳密に分け定義することは意図されていない。いくつかの機能の能力は、いくつかの異なる物理的構成要素に分割されてもよい。ある特定の構成要素がいくつかの異なる機能を実行してもよい。図は、チップ上のハードウエアを異なる部分に厳密に分け定義するものではなく、またソフトウエアの異なるプログラム、処理、あるいは機能を厳密に分け定義するものではない。機能は、ハードウエアで実行されてもよく、ソフトウエアで実行されてもよく、その組み合わせで実行されてもよい。好ましくは、用いられるソフトウエアは、メモリ(RAM、キャッシュ、フラッシュ、ROM、ハードディスクなど)やその他の記憶手段(USBスティック、フラッシュ、ROM、CD、ディスクなど)といった、コンピュータで読み出し可能な不揮発性の媒体に保存される。装置は、ただ1つの物理的デバイスを備えてもよく、いくつもの異なるデバイスを備えてもよい。例えば、信号処理や画像生成の一部の処理が携帯可能な手持ち式デバイスによって実行されてもよく、また他の処理がPC、PDA、タブレットなど、別のデバイスで実行されてもよい。いくつかの例では、画像生成全体が別のデバイスで実行されてもよい。本明細書に記載された機能ユニットはいずれもクラウドの一部として実装され得る。
【0123】
本出願人は、ここに、各個別の特徴および2つ以上の特徴の任意の組み合わせを他と切り離して開示する。それは、そのような特徴やその組み合わせが本明細書に開示される問題のいずれかを解決するかどうかにかかわらず、また請求項の範囲に限定されることなく、特徴や組み合わせが当業者の一般常識に照らして、全体として本明細書に基づいて実行され得る限りにおいてということである。本出願人は、本発明の態様がそのような個別の特徴あるいは特徴の組み合わせからなり得ることを示している。上の記載を考慮すれば、本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが、当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14a
図14b
図15
図16a
図16b
図17
図18a
図18b
図19
図20
図21a
図21b
図21c
【国際調査報告】