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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】コーヒーベースの飲料
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/135 20160101AFI20230307BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20230307BHJP
   A23L 33/14 20160101ALI20230307BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20230307BHJP
   A23F 5/24 20060101ALI20230307BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A23L33/135
A23L2/38 G
A23L2/38 C
A23L33/14
A23L33/105
A23F5/24
A23L2/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543426
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 SG2021050028
(87)【国際公開番号】W WO2021145828
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】10202000411V
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャオ チュエン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,メイ ジー,アルシン
(72)【発明者】
【氏名】トー,ミンジャン
【テーマコード(参考)】
4B018
4B027
4B117
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE05
4B018MD08
4B018MD18
4B018MD48
4B018MD81
4B018MD86
4B018MD87
4B018ME06
4B018ME14
4B018MF13
4B027FB24
4B027FC01
4B027FC06
4B027FE06
4B027FK04
4B027FK10
4B027FK19
4B027FK20
4B027FQ06
4B027FQ20
4B027FR20
4B117LC02
4B117LC04
4B117LG17
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK14
4B117LK21
4B117LK23
4B117LL01
4B117LL02
4B117LL09
4B117LP05
(57)【要約】
本発明は、プロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料であって、該プロバイオティクスが6.0 log CFU/mLを上回るプロバイオティクス生細胞数を有する飲料に関する。本発明はさらに、6.0 log CFU/mLを上回るプロバイオティクス生細胞数を有するコーヒーベースの飲料の調製方法であって、コーヒーブリューを糖および不活性化酵母誘導体と混合して、混合物を形成する工程;該混合物にプロバイオティクスを添加して植菌した混合物を形成する工程;および該植菌した混合物を予め定められた期間発酵させて該飲料を調製する工程;を含んでなる方法に関する。前記プロバイオティクスは、ラクトバチルス・ラムノサス、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・プランタルム、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・フェルメンツム、ビフィドバクテリウム・ラクティス、サッカロミセス・ブラウディ、サッカロミセス・セレビシエ、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【選択図】図7のA
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料であって、該プロバイオティクスが6.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有する、飲料。
【請求項2】
前記プロバイオティクスが7.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
3ヶ月の保存後に、該飲料に含まれるプロバイオティクスが6.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有する、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
前記飲料が発酵飲料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
前記プロバイオティクスが、プロバイオティクス細菌、プロバイオティクス酵母、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
前記プロバイオティクスが、乳酸菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、非サッカロミセス属酵母、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
乳酸菌が、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス(Lactobacillus (Lb.) rhamnosus)、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ(Lactobacillus (Lb.) paracasei)、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム(Lactobacillus (Lb.) plantarum)、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ(Lactobacillus (Lb.) gasseri)、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム(Lactobacillus (Lb.) fermentum)、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項6に記載の飲料。
【請求項8】
サッカロミセス属酵母が、サッカロミセス(S.)ブラウディ(Saccharomyces (S.) boulardii)、サッカロミセス(S.)セレビシエ(Saccharomyces (S.) cerevisiae)、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項6に記載の飲料。
【請求項9】
前記プロバイオティクスが、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス(Bifidobacterium (B.) lactis)、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の飲料。
【請求項10】
前記飲料が添加物をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の飲料。
【請求項11】
添加物が、甘味料、安定剤、香料、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の飲料。
【請求項12】
6.0 log CFU/mL以上の生細胞数を有するプロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料の調製方法であって、以下の工程:
- コーヒーブリュー(coffee brew)を糖および不活性化酵母誘導体と混合して、混合物を形成する工程;
- 該混合物にプロバイオティクスを添加して、植菌した混合物を形成する工程;および
- 該植菌した混合物を予め定められた期間発酵させて、該飲料を調製する工程;
を含んでなる方法。
【請求項13】
前記飲料が7.0 log CFU/mL以上の生細胞数を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
糖が、該混合物の総体積に対して0.01~10%w/vの濃度で該混合物中に存在する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
不活性化酵母誘導体が、該混合物の総体積に対して0.005~5%w/vの濃度で該混合物中に存在する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記プロバイオティクスが、プロバイオティクス細菌、プロバイオティクス酵母、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記プロバイオティクスが、乳酸菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属酵母、非サッカロミセス属酵母、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
乳酸菌が、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
サッカロミセス属酵母が、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせを含む群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記プロバイオティクスが、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
添加する工程が、少なくとも6 log CFU/mLの初期プロバイオティクス生菌数を得るためにプロバイオティクスを添加することを含む、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
予め定められた期間が4~100時間である、請求項12~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
発酵させる工程が15~45℃の温度である、請求項12~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記混合物に添加物を添加することをさらに含む、請求項12~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
添加物が、甘味料、安定剤、香料、またはこれらの組み合わせから選択される、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーヒーベースの飲料およびその調製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
背景
消費者の健康志向の高まりとともに、機能性食品・飲料の人気が上昇しつつある。こうした傾向は、プロバイオティクス食品市場に強力な技術革新をもたらし、乳製品、穀物、大豆、果物、野菜、肉を含めて、数多くのプロバイオティクスデリバリー形態が登場することになった。
【0003】
コーヒーもまた、世界中で多く消費されている飲料である。消費者の糖分に対する懸念と、気になる添加物が少なく、自然な官能性を有する飲料への注目が高まる中、コーヒーをベースとした機能性飲料が求められている。しかし、プロバイオティクスで発酵させたコーヒー飲料の開発には、いくつかの課題がある。まず、コーヒーブリュー(coffee brew)には発酵性基質が不足しており、そのため、プロバイオティクスを成長させることが困難である。しかし、栄養分を過剰に添加することは乳酸の蓄積につながり、これは、コーヒーの感覚的・物理化学的特性に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
したがって、機能性飲料と見なすことができる、改良されたコーヒーブリューが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、このような課題を解決し、かつ/またはコーヒーベースの飲料を提供することを目的としている。
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、プロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料を提供し、この場合、該プロバイオティクスは、6.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有する。特に、該飲料は発酵飲料であり得る。
【0007】
特定の態様によれば、前記飲料に含まれるプロバイオティクスは、3ヶ月の保存後に、6.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有する。特に、該飲料は、7.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有する。
【0008】
前記飲料に含まれるプロバイオティクスは、任意の適切なプロバイオティクスであってよい。特に、該プロバイオティクスは、プロバイオティクス細菌、プロバイオティクス酵母、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。特定の態様によれば、該プロバイオティクスは、乳酸菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属(Saccharomyces)酵母、非サッカロミセス属酵母、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0009】
特に、乳酸菌は、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス(Lactobacillus (Lb.) rhamnosus)、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ(Lactobacillus (Lb.) paracasei)、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム(Lactobacillus (Lb.) plantarum)、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス(Lactobacillus (Lb.) acidophilus)、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ(Lactobacillus (Lb.) gasseri)、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム(Lactobacillus (Lb.) fermentum)、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0010】
特に、サッカロミセス属酵母は、サッカロミセス(S.)ブラウディ(Saccharomyces (S.) boulardii)、S.セレビシエ(S. cerevisiae)、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0011】
特定の態様によれば、前記プロバイオティクスは、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス(Bifidobacterium (B.) lactis)、サッカロミセス(S.)ブラウディ、S.セレビシエ、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0012】
前記飲料は添加物をさらに含むことができる。添加物は、任意の適切な添加物であってよい。例えば、添加物は、甘味料、安定剤、香料、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0013】
第2の態様によれば、本発明は、6.0 log CFU/mL以上の生細胞数を有するプロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料の調製方法を提供し、この方法は、以下の工程:
- コーヒーブリューを糖および不活性化酵母誘導体と混合して、混合物を形成する工程;
- 該混合物にプロバイオティクスを添加して、植菌した混合物を形成する工程;および
- 該植菌した混合物を予め定められた期間発酵させて、該飲料を調製する工程;
を含んでなる。
【0014】
混合する工程は、糖および不活性化酵母誘導体を適量混合することを含む。特定の態様によれば、該混合工程は、糖を、混合物の総体積に対して0.01~10%w/vの濃度で混合することを含む。
【0015】
特定の態様によれば、該混合工程は、不活性化酵母誘導体を、混合物の総体積に対して0.005~5%w/vの濃度で混合することを含む。
【0016】
プロバイオティクスを添加する工程は、任意の適切なプロバイオティクスを添加することを含むことができる。例えば、プロバイオティクスは、本発明の第1の態様に関連して上述したようなものであってよい。
【0017】
特定の態様によれば、添加する工程は、初期プロバイオティクス生菌数が少なくとも6 log CFU/mLとなるように、プロバイオティクスを添加することを含む。特に、該添加工程は、初期プロバイオティクス生菌数が少なくとも7 log CFU/mLとなるように、プロバイオティクスを添加することを含む。
【0018】
発酵させる工程は、適切な予め定められた期間であり得る。例えば、予め定められた期間は4~100時間であってよい。
【0019】
発酵させる工程は、適切な温度であり得る。例えば、該発酵工程は15~45℃の温度であってよい。
【0020】
前記方法は、混合物に添加物を添加することをさらに含むことができる。添加物は任意の適切な添加物であってよい。例えば、添加物は、甘味料、安定剤、香料、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0021】
本発明が十分に理解され、容易に実施され得るように、以下に、非限定的な例として、単に例示にすぎない実施形態を、添付の説明図を参照しながら、説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、0%、0.03%、および0.3%の(図1A)Optiwhite(登録商標)、(図1B)Optired(登録商標)、(図1C)Noblesse(登録商標)で、異なるレベルのグルコースを補給することが24時間後にL.ラムノサスGGの成長に及ぼす影響を示す。異なる小文字は、同じIYDレベルでの、グルコースレベル間の有意差(P<0.05)を示す。初期植菌量:約7 Log CFU/mL。
図2図2は、異なるタイプのIYDを補給することが24時間後にL.ラムノサスGGの成長に及ぼす影響を示す。異なる小文字は、同じIYDレベルでのIYDタイプ間の有意差(P<0.05)を示す。初期植菌量:約7 Log CFU/mL。
図3図3は、異なるレベルの(図3A)Optiwhite(登録商標)および(図3B)Noblesse(登録商標)を補給することが24時間後にL.ラムノサスGGの成長に及ぼす影響を示す。異なる小文字は、IYDレベル間の有意差(P<0.05)を示す。初期植菌量:約7 Log CFU/mL。
図4図4は、異なるレベルの(図4A)Optiwhite(登録商標)および(図4B)Noblesse(登録商標)を補給することがpHに及ぼす影響を示す。異なる小文字は、IYDレベル間の有意差(P<0.05)を示す。
図5図5は、(図5A)4℃での補給済みコーヒー、(図5B)4℃での非補給コーヒー、(図5C)25℃での補給済みコーヒー、(図5D)25℃での非補給コーヒーにおける発酵および保存期間中のL.ラムノサスGG、L.プランタルム299v、L.パラカゼイLpc-37、またはL.アシドフィルスNCFMの成長および生存を示す。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図6図6は、(図6A)3-メチルブタン酸、(図6B)ジアセチル、および(図6C)アセトインのヘッドスペースの揮発性物質レベルの変化を示す。異なる小文字が付いた平均値は、同じプロバイオティクス株内の、異なる時点間の統計的有意差(P<0.05)を示す。#は、検出されなかったことを示す。
図7図7は、コーヒーブリューの発酵と4℃および25℃での保存中の、(図7A)L.ラムノサスGG、および(図7B)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の成長および生存を示す。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図8図8は、L.ラムノサスGGまたはS.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物を用いたコーヒーブリューの発酵および保存期間中の、選択されたアルカロイドおよびフェノール系化合物の変化を示す - (図8A)カフェイン、(図8B)トリゴネリン、(図8C)カフェ酸、および(図8D)クロロゲン酸。異なる小文字が付いた平均値は、同じ時点における、異なる発酵セットアップ間の統計的有意差(P<0.05)を示す。*は、痕跡レベルであることを示す。
図9A-B】図9は、L.ラムノサスGGまたはS.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物を用いたコーヒーブリューの発酵および保存期間中の抗酸化能の変化を示す - (図9A)総フェノール含量、(図9B)2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル、および(図9C)酸素ラジカル消去アッセイ。異なる小文字が付いた平均値は、同じ時点における、異なる発酵セットアップ間の統計的有意差(P<0.05)を示す。
図9C図9は、L.ラムノサスGGまたはS.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物を用いたコーヒーブリューの発酵および保存期間中の抗酸化能の変化を示す - (図9A)総フェノール含量、(図9B)2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル、および(図9C)酸素ラジカル消去アッセイ。異なる小文字が付いた平均値は、同じ時点における、異なる発酵セットアップ間の統計的有意差(P<0.05)を示す。
図10A-B】図10は、(図10A)L.プランタルム299v、(図10B)L.アシドフィルスNCFM、(図10C)L.フェルメンツムPCC、(図10D)L.ガセリLAC-343、(図10E)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の4℃における成長および生存を示す。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図10C-E】図10は、(図10A)L.プランタルム299v、(図10B)L.アシドフィルスNCFM、(図10C)L.フェルメンツムPCC、(図10D)L.ガセリLAC-343、(図10E)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の4℃における成長および生存を示す。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図10F-H】(図10F)L.プランタルム299v、(図10G)L.アシドフィルスNCFM、(図10H)L.フェルメンツムPCC、(図10I)L.ガセリLAC-343、(図10J)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の25℃における成長および生存。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図11A-C】図11は、(図11A)L.プランタルム299v、(図11B)L.アシドフィルスNCFM、(図11C)L.フェルメンツムPCC、(図11D)L.ガセリLAC-343、(図11E)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の4℃におけるpHを示す。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図11D-F】図11は、(図11A)L.プランタルム299v、(図11B)L.アシドフィルスNCFM、(図11C)L.フェルメンツムPCC、(図11D)L.ガセリLAC-343、(図11E)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の4℃におけるpHを示す。(図11F)L.プランタルム299v、(図11G)L.アシドフィルスNCFM、(図11H)L.フェルメンツムPCC、(図11I)L.ガセリLAC-343、(図11J)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の25℃におけるpH。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図11G-I】(図11F)L.プランタルム299v、(図11G)L.アシドフィルスNCFM、(図11H)L.フェルメンツムPCC、(図11I)L.ガセリLAC-343、(図11J)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の25℃におけるpH。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図11J】(図11F)L.プランタルム299v、(図11G)L.アシドフィルスNCFM、(図11H)L.フェルメンツムPCC、(図11I)L.ガセリLAC-343、(図11J)S.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物の25℃におけるpH。値は3つ組の実験(n=3)の平均値であり、エラーバーは平均値の標準偏差を表す。
図12図12は、プロバイオティクスLABおよびS.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物を用いたコーヒーブリューの発酵および保存中の乳酸の変化を示す。*は、同じ時点における、ブランクと比較した統計的有意差(P<0.05)を示す。
図13-1】図13は、プロバイオティクスLABおよび/またはS.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物を用いたコーヒーブリューの発酵および保存中のトリゴネリン、カフェインおよびクロロゲン酸の変化を示す。*は、同じ時点における、ブランクと比較した統計的有意差(P<0.05)を示す。
図13-2】図13は、プロバイオティクスLABおよび/またはS.ブラウディCNCM-I745の単独培養物と混合培養物を用いたコーヒーブリューの発酵および保存中のトリゴネリン、カフェインおよびクロロゲン酸の変化を示す。*は、同じ時点における、ブランクと比較した統計的有意差(P<0.05)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
詳細な説明
先に説明したように、コーヒーベースの機能性飲料が求められている。本発明は、機能性のコーヒーベースの飲料を調製する方法を提供する。
【0024】
一般論として、本発明は、付加価値の高い、機能特性を有するコーヒーベースの飲料を提供する。特に、本発明は、高いプロバイオティクス生菌数を有するコーヒーベースの飲料を提供する;その生菌数を適切な温度で一定期間持続させることができるため、長期の輸送または保存が可能な飲料となっている。さらに、カフェイン、トリゴネリン、クロロゲン酸などであるがこれらに限定されない、内在性のコーヒー生理活性成分は、該飲料中に保持されている。したがって、本発明の飲料は、通常のコーヒーベースの飲料と比較して、さらなる治療上の利益を提供する。
【0025】
第1の態様によれば、本発明は、6.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有する、プロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料を提供する。提供されるプロバイオティクス生細胞数は、生きていて活性のあるプロバイオティクスの細胞数であり得る。提供されるプロバイオティクス生細胞数は、該飲料が調製された時点の細胞数であり得る。
【0026】
前記飲料は発酵飲料であってよい。特に、該飲料は、発酵させたプロバイオティクス飲料である。本発明において、プロバイオティクス飲料という用語は、生きていて活性のある増殖性(vegetative)プロバイオティクス細胞を含む飲料を指す。特に、プロバイオティクス細胞は代謝的に活性である。
【0027】
本発明において、プロバイオティクスには、特定の数で摂取されると、本来の一般的な栄養を超えて健康上の効果を発揮する、生きた活性微生物が含まれる。プロバイオティクスがもたらす健康上の効果は、主に、それらが胃腸管に生息して、健康でバランスのとれた腸内細菌叢の確立に貢献する能力によると考えられる。
【0028】
前記飲料の調製からその保存可能期間(shelf-life)中いつでも、該飲料は適切な量のプロバイオティクスを含むことができる。例えば、プロバイオティクスは、5.0 log CFU/mL以上の生細胞数を有し得る。特定の態様によれば、プロバイオティクスは、6.0 log CFU/mL以上、7.0 log CFU/mL以上の生細胞数を有する。さらに特定すると、プロバイオティクスは、8.5 log CFU/mL以上の生細胞数を有する。
【0029】
特に、前記飲料に含まれるプロバイオティクスは、5.0~9.0 log CFU/mL、5.5~8.5 log CFU/mL、6.0~8.0 log CFU/mL、6.5~7.5 log CFU/mL、7.0~7.3 log CFU/mLの生細胞数を有し得る。さらに特定すると、該飲料に含まれるプロバイオティクスは、約6.0~9.0 log CFU/mLの生細胞数を有する。
【0030】
特定の態様によれば、前記飲料は、一定期間の保存後であっても、安定した飲料であり得る。例えば、該飲料に含まれるプロバイオティクスは、3ヶ月の保存後でさえ、6.0 log CFU/mL以上のプロバイオティクス生細胞数を有することが可能である。特に、プロバイオティクス生細胞数は、6.0~9.0 log CFU/mL、6.5~8.5 log CFU/mL、7.0~8.0 log CFU/mL、7.2~7.5 log CFU/mLであり得る。さらに特定すると、プロバイオティクス生細胞数は、6.0~8.0 log CFU/mLである。その結果、該飲料の製造から一定期間経過した後でも、該飲料は依然として消費者に健康上の効果をもたらし得ることがわかる。したがって、該飲料は、好適な保存可能期間(貯蔵寿命)を有し得る。
【0031】
前記飲料に含まれるプロバイオティクスは、任意の適切なプロバイオティクスであってよい。例えば、プロバイオティクスは、プロバイオティクス細菌、プロバイオティクス酵母、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。特定の態様によれば、該飲料に含まれるプロバイオティクスは、少なくとも1種類のプロバイオティクス細菌であり得る。別の特定の態様によれば、該飲料に含まれるプロバイオティクスは、少なくとも1種類のプロバイオティクス酵母であり得る。別の特定の態様によれば、該飲料に含まれるプロバイオティクスは、少なくとも1種類のプロバイオティクス細菌と少なくとも1種類のプロバイオティクス酵母であり得る。例えば、プロバイオティクスには、乳酸菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属酵母、非サッカロミセス属酵母、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
乳酸菌は、任意の適切な乳酸菌であってよい。例えば、乳酸菌は、限定するものではないが、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、またはこれらの組み合わせであり得る。特に、乳酸菌は、Lb.ラムノサスGG、Lb.パラカゼイLpc-37、Lb.プランタルム299v、Lb.アシドフィルスNCFM、Lb.ガセリLac-343、Lb.フェルメンツムPCC、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0033】
サッカロミセス属酵母は、任意の適切なサッカロミセス属酵母であってよい。例えば、サッカロミセス属酵母は、限定するものではないが、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせであり得る。特に、サッカロミセス属酵母は、S.ブラウディCNCM-I745、S.セレビシエCNCM I-3856、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0034】
特定の態様によれば、プロバイオティクスには、限定するものではないが、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせが含まれる。特に、プロバイオティクスには、限定するものではないが、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス、またはこれらの組み合わせが含まれる。とりわけ、プロバイオティクスは、Lb.ラムノサスGG、Lb.パラカゼイLpc-37、Lb.プランタルム299v、Lb.アシドフィルスNCFM、Lb.ガセリLac-343、Lb.フェルメンツムPCC、B.ラクティスBB-12、S.ブラウディCNCM-I745、S.セレビシエCNCM I-3856、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0035】
特定の態様によれば、プロバイオティクスは、サッカロミセス属酵母と少なくとも1種のプロバイオティクス細菌との組み合わせを含むことができる。プロバイオティクス細菌は、上述したようなものであってよい。特に、プロバイオティクスは、サッカロミセス属酵母と、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つとの組み合わせを含み得る。例えば、プロバイオティクスは、サッカロミセス属酵母と、Lb.ラムノサスGG、Lb.パラカゼイLpc-37、Lb.プランタルム299v、Lb.アシドフィルスNCFM、Lb.ガセリLac-343、Lb.フェルメンツムPCC、B.ラクティスBB-12のうちの少なくとも1つとの組み合わせを含む。サッカロミセス属酵母は、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせであってよい。特に、サッカロミセス属酵母は、S.ブラウディCNCM-I745、S.セレビシエCNCM I-3856、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0036】
前記飲料はさらに、添加物を含むことができる。添加物は、任意の適切な添加物であってよい。添加物は、より完成度の高い消費者向け製品を与えるための、該飲料のフレーバープロファイルを高めるための、および/または該飲料の官能特性を増強するための、任意の好適な添加物であり得る。例えば、添加物は、甘味料、安定剤、香料、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0037】
第2の態様によれば、本発明は、6.0 log CFU/mL以上の生細胞数を有するプロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料の調製方法を提供し、この方法は、以下の工程:
- コーヒーブリューをプロバイオティクスの栄養素と混合して、混合物を形成する工程;
- 該混合物にプロバイオティクスを添加して、植菌した混合物を形成する工程;および
- 該植菌した混合物を予め定められた期間発酵させて、該飲料を調製する工程;
を含んでなる。
【0038】
前記方法は、上述した第1の態様に係るコーヒーベースの飲料の調製方法であり得る。
【0039】
前記方法は、7.0 log CFU/mL以上の生細胞数を有するプロバイオティクスを含むコーヒーベースの飲料の調製方法であり得る。
【0040】
プロバイオティクスの栄養素は、プロバイオティクス細胞の成長を促すのに適した環境を提供する任意の適切な栄養素であってよい。例えば、プロバイオティクスの栄養素には、糖、不活性化酵母誘導体、酵母抽出物、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
特定の態様によれば、混合する工程は、コーヒーブリューを糖および不活性化酵母誘導体と混合することを含み得る。
【0042】
コーヒーブリューは、任意の適切なコーヒーブリューであってよい。
不活性化酵母誘導体(inactivated yeast derivative:IYD)は、任意の適切なIYDであってよい。本発明において、IYDは、熱的または酵素的に不活性化された酵母抽出物を含み得る。IYDには、酵母細胞壁および酵母自己消化物(yeast autolysate)が含まれるが、これらに限定されない。
【0043】
混合する工程は、不活性化酵母誘導体を適量混合することを含む。特定の態様によれば、該混合工程は、不活性化酵母誘導体を、混合物の総体積に対して0.005~5%w/vの濃度で混合することを含む。特に、混合される不活性化酵母誘導体は、混合物の総体積に対して0.01~5.0%w/v、0.02~3%w/v、0.03~2.5%w/v、0.04~2.0%w/v、0.05~1.5%w/v、0.06~1.0%w/v、0.07~0.9%w/v、0.08~0.8%w/v、0.09~0.7%w/v、0.1~0.6%w/v、0.2~0.5%w/v、0.3~0.4%w/vの濃度であり得る。さらに特定すると、混合される不活性化酵母誘導体は、混合物の総体積に対して0.03~0.06体積%の濃度である。
【0044】
糖は、任意の適切な糖であってよい。例えば、糖は発酵性糖(fermentable sugar)であり得る。特定の態様によれば、糖はグルコースである。
【0045】
混合する工程は、糖を適量混合することを含む。特定の態様によれば、該混合工程は、糖を、混合物の総体積に対して0.01~10%w/vの濃度で混合することを含む。特に、混合される糖は、混合物の総体積に対して0.05~9%w/v、0.1~8%w/v、0.2~7%w/v、0.25~6%w/v、0.3~5%w/v、0.4~4%w/v、0.45~3%w/v、0.5~2%w/v、0.6~1.0%w/v、0.7~0.9%w/v、0.75~0.8%w/vの濃度であり得る。さらに特定すると、混合される糖は、混合物の総体積に対して0.25~0.5体積%の濃度である。
【0046】
特定の態様によれば、混合する工程は、任意の適切な手段によるものであってよい。例えば、該混合工程は、混合物の撹拌を含むことができる。
【0047】
前記方法は、プロバイオティクスを添加する工程の前に、該混合物を冷却することをさらに含んでもよい。特に、冷却は、該混合物を常温、例えば約25℃に冷却することを含む。
【0048】
プロバイオティクスを添加する工程は、任意の適切なプロバイオティクスを該混合物に添加することを含み得る。例えば、プロバイオティクスには、プロバイオティクス細菌、プロバイオティクス酵母、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様によれば、混合物に添加されるプロバイオティクスは、少なくとも1種類のプロバイオティクス細菌であり得る。別の特定の態様によれば、混合物に添加されるプロバイオティクスは、少なくとも1種類のプロバイオティクス酵母であり得る。別の特定の態様によれば、混合物に添加されるプロバイオティクスは、少なくとも1種類のプロバイオティクス細菌と少なくとも1種類のプロバイオティクス酵母であり得る。例えば、添加されるプロバイオティクスには、乳酸菌、ビフィズス菌、サッカロミセス属酵母、非サッカロミセス属酵母、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
添加される乳酸菌は、任意の適切な乳酸菌であってよい。例えば、乳酸菌は、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。特に、乳酸菌は、Lb.ラムノサスGG、Lb.パラカゼイLpc-37、Lb.プランタルム299v、Lb.アシドフィルスNCFM、Lb.ガセリLac-343、Lb.フェルメンツムPCC、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0050】
添加されるサッカロミセス属酵母は、任意の適切なサッカロミセス属酵母であってよい。例えば、サッカロミセス属酵母は、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。特に、サッカロミセス属酵母は、S.ブラウディCNCM-I745、S.セレビシエCNCM I-3856、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0051】
特定の態様によれば、添加されるプロバイオティクスには、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特に、プロバイオティクスには、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス、またはこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。特に、プロバイオティクスは、Lb.ラムノサスGG、Lb.パラカゼイLpc-37、Lb.プランタルム299v、Lb.アシドフィルスNCFM、Lb.ガセリLac-343、Lb.フェルメンツムPCC、B.ラクティスBB-12、S.ブラウディCNCM-I745、S.セレビシエCNCM I-3856、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0052】
特定の態様によれば、添加されるプロバイオティクスは、サッカロミセス属酵母と少なくとも1種のプロバイオティクス細菌との組み合わせを含み得る。プロバイオティクス細菌は、上述したようなものであってよい。特に、添加されるプロバイオティクスは、サッカロミセス属酵母と、ラクトバチルス(Lb.)ラムノサス、ラクトバチルス(Lb.)パラカゼイ、ラクトバチルス(Lb.)プランタルム、ラクトバチルス(Lb.)アシドフィルス、ラクトバチルス(Lb.)ガセリ、ラクトバチルス(Lb.)フェルメンツム、ビフィドバクテリウム(B.)ラクティス、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つとの組み合わせを含むことができる。例えば、添加されるプロバイオティクスは、サッカロミセス属酵母と、Lb.ラムノサスGG、Lb.パラカゼイLpc-37、Lb.プランタルム299v、Lb.アシドフィルスNCFM、Lb.ガセリLac-343、Lb.フェルメンツムPCC、B.ラクティスBB-12のうちの少なくとも1つとの組み合わせを含む。サッカロミセス属酵母は、サッカロミセス(S.)ブラウディ、サッカロミセス(S.)セレビシエ、またはこれらの組み合わせであり得る。特に、サッカロミセス属酵母は、S.ブラウディCNCM-I745、S.セレビシエCNCM I-3856、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0053】
添加する工程がプロバイオティクスの組み合わせを添加することを含む場合、2種以上のプロバイオティクスを、混合物中に同時にまたは順次添加することができる。特定の態様によれば、2種以上のプロバイオティクスが順次添加される。特に、プロバイオティクスを添加する工程は、第1のプロバイオティクスを混合物に添加し、第1のプロバイオティクスを添加してから予め定められた期間の後に、第2または後続のプロバイオティクスを添加することを含む。
【0054】
特定の態様によれば、2種以上のプロバイオティクスを、混合物に同時に添加することができる。特に、第1のプロバイオティクスと第2または後続のプロバイオティクスは、全て同時に添加される。
【0055】
プロバイオティクスを添加する工程は、プロバイオティクスを適量添加することを含む。特定の態様によれば、プロバイオティクスを添加する工程は、初期プロバイオティクス生菌数が少なくとも1 log CFU/mLとなるように、プロバイオティクスを添加することを含む。例えば、添加されるプロバイオティクスの量は、少なくとも4 log CFU/mLであってよい。特に、添加されるプロバイオティクスの量は、約5~7 log CFU/mL、5.5~6.5 log CFU/mL、5.7~6 log CFU/mLであり得る。さらに特定すると、添加されるプロバイオティクスの量は、4.5~7.0 log CFU/mLである。
【0056】
特定の態様によれば、添加する工程は、初期プロバイオティクス生菌数が少なくとも6 log CFU/mLとなるように、プロバイオティクスを添加することを含み得る。特に、添加する工程は、初期プロバイオティクス生菌数が少なくとも7 log CFU/mLとなるように、プロバイオティクスを添加することを含む。
【0057】
プロバイオティクスを添加する工程は、適切な条件下で行うことができる。例えば、プロバイオティクスを添加する工程は、無菌操作の状況下であり得る。
【0058】
前記方法は、プロバイオティクスを添加する工程の前に、混合物を適切な温度でインキュベートすることをさらに含むことができる。特に、その温度は、発酵が起こる温度であってよい。このような方法では、プロバイオティクスの均質な成長が混合物中で起こり得る。
【0059】
発酵工程は、任意の適切な条件下で実施することができる。例えば、発酵工程は、予め定められた期間であり得る。予め定められた期間は、本発明の目的のために好適な任意の期間であってよい。予め定められた期間は、プロバイオティクスの添加工程で添加されるプロバイオティクスに依存し得る。特定の態様によれば、予め定められた期間は、4~100時間であり得る。特に、予め定められた期間は、4~96時間、5~72時間、6~60時間、12~54時間、18~48時間、24~42時間、30~36時間であり得る。さらに特定すると、予め定められた期間は、約12~14時間である。
【0060】
発酵工程は、予め定められた温度であり得る。予め定められた温度は、本発明の目的のために好適な任意の温度であってよい。特定の態様によれば、予め定められた温度は、15~45℃であり得る。特に、予め定められた温度は、20~40℃、25~37℃、30~35℃であり得る。さらに特定すると、予め定められた温度は、約30℃である。温度は、発酵期間中のどの時点でも変更することができる。
【0061】
前記方法は、混合物に添加物を添加することをさらに含み得る。添加物は任意の適切な添加物であってよい。特に、添加物は、該飲料のフレーバープロファイルを高めるためのもの、および/または該飲料の官能特性を増強するためのものであり得る。例えば、添加物は、甘味料、安定剤、香料、またはこれらの組み合わせであるが、これらに限定されない。
【0062】
特定の態様によれば、調製されたコーヒーベースの飲料は、発酵後、適切な温度で保存することができる。例えば、該飲料は、30℃以下の温度で保存され得る。特に、該飲料は、約25℃以下、1~25℃、2~20℃、4~15℃、5~12℃、7~10℃の温度で保存され得る。さらに特定すると、該飲料は約4~25℃の温度で保存される。
【0063】
以上、本発明について一般的に説明してきたが、本発明は、以下の実施形態を参照することによって、より容易に理解されるであろう;こうした実施形態は、例示として提供され、限定することを意図したものではない。
【実施例
【0064】
実施例1
コーヒーブリューへの栄養素の補給がプロバイオティクスの成長に及ぼす影響を検討した。
【0065】
特に、この実施例の目的のために、グルコースと不活性化酵母誘導体の形の栄養素を選択した。特に、共通の炭素源としてグルコースを添加し、プロバイオティクスの成長に必要なATPの形でエネルギーを供給した。この実施例の目的のために使用した3つの異なるタイプの不活性化酵母誘導体(IYD)は、Optiwhite(登録商標)、Optired(登録商標)、およびNoblesse(登録商標)(全てLallemand Pty.社製)であったが、これらは、プロバイオティクスの成長を促すことができるペプチド、アミノ酸、ビタミン、ミネラル、および酵母細胞壁成分を培地に供給するものである。
【0066】
方法
250mLガラス製キャップ付きボトルに入れたコーヒーブリューに、グルコース(0%、0.25%、0.5%、1%)と、Optiwhite(登録商標)、Optired(登録商標)、またはNoblesse(登録商標)(0%、0.03%、0.06%、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、および0.6%)を補給した。次に、補給済みのコーヒーブリューにGG(Chr. Hansen A/S)を植え付け(約7 Log CFU/mL)、続いて40mLアリコートを50mLプロピレン製遠心チューブに分注した。その後、発酵を30℃で24時間進めた;これは3つ組で実施した。
【0067】
結果
図1は、GGの成長に及ぼす様々なレベルのグルコースの影響を示す。非補給コーヒー(グルコース0%、IYD 0%)では、プロバイオティクスの成長は見られなかった(約7 Log CFU/mLの初期植菌量)。0%のIYDレベルでグルコースレベルを増加させても、プロバイオティクスの成長は有意に増加しなかった。ところが、IYDを存在させると(0.03%または0.3%のOptiwhite(登録商標)、Optired(登録商標)、またはNoblesse(登録商標))、グルコースの添加(0.25%、0.5%、および1%)によりプロバイオティクスバイオマスが有意に増加した。これらの結果から、プロバイオティクスの成長を可能にするには、グルコースとIYDの両方の存在が必要であることが示唆され、コーヒーブリュー中の発酵性基質の不足と、栄養素補給の必要性が再確認された。
【0068】
また、IYDの存在下では(0.03%または0.3%のOptiwhite(登録商標)、Optired(登録商標)、またはNoblesse(登録商標))、グルコースレベルが0.25%を超えて増加しても、プロバイオティクスの成長はそれ以上有意に増加することはなかったことが観察された。したがって、後続の実施例では、このレベルのグルコース補給を利用した。
【0069】
3つの異なるタイプのIYD(Optiwhite(登録商標)、Optired(登録商標)、またはNoblesse(登録商標))が24時間の発酵後にGGの成長に及ぼす影響を検討した。その結果は、図2に示す通りである。
【0070】
IYD濃度0.03%、および0.3~0.6%では、GG細胞数に有意な差は見られなかった。しかし、IYDレベル0.06%、0.1%、および0.2%では、Optired(登録商標)を補給したコーヒーブリューは、Optiwhite(登録商標)およびNoblesse(登録商標)と比較して、有意に低いプロバイオティクス細胞数を示した。最小限度の栄養素補給で最大のプロバイオティクスバイオマスを達成することを前提に、その後の試験ではOptired(登録商標)を排除した。その後は、異なるレベルのOptiwhite(登録商標)とNoblesse(登録商標)の補給がL.ラムノサスGGの成長およびpHレベルに及ぼす影響を調べた。
【0071】
Optiwhite(登録商標)とNoblesse(登録商標)は、図2でL.ラムノサスGGの成長を同程度に高めたため、L.ラムノサスGGの最大成長に必要なOptiwhite(登録商標)/Noblesse(登録商標)の最小レベルを特定しようとして、図3および図4ではそれらのレベルを変えた。図3に示されるように、Optiwhite(登録商標)では、補給量を0%から0.06%に上げると、プロバイオティクスバイオマスの有意な増加が観察され、最終的な細胞数は7.99 Log CFU/mL(0.85 Log増加)に達した。Optiwhite(登録商標)をさらに添加しても、バイオマスのそれ以上の有意な増加は起こらなかった。Noblesse(登録商標)では、使用量レベルを0%から0.2%に上げると、プロバイオティクス細胞数が8.15 Log CFU/mL(1.1 Log増加)に有意に増加した。0.2%を超えてOptired(登録商標)を補給しても、それ以上の細胞数の増加は認められなかった。
【0072】
0.06%のOptiwhite(登録商標)使用量レベルは、より高い使用量の0.2%Noblesse(登録商標)を用いることに比べて、原材料費の節約につながるため、有利であり得る。さらに、IYDの使用量が増えると、補給済みコーヒーブリューの沈降が増加することが肉眼で観察された;これは、望ましくない感覚的影響を与える可能性がある。さらに、0.06%のOptiwhite(登録商標)で得られた最終pH(pH4.29)は、0.2%のNoblesse(登録商標)で得られたpH(pH4.13)と比較して、有意に高かった(図4)。最終pHが高いほど、プロバイオティクスに対する酸ストレスの程度が低くなり、そのため製品保存中のプロバイオティクス生存率の低下を防止できる可能性がある。したがって、実用的かつ感覚的な理由から、後続の実施例では、最終的に0.06%のOptiwhite(登録商標)の補給レベルが選択された。
【0073】
実施例2
プロバイオティクス培養物の単独培養による発酵の効果を検討した。
特に、0.25%のグルコースと0.06%のOptiwhite(登録商標)を含むコーヒーブリュー処方物を用いて、この実施例では、発酵および保存期間中の4種の異なるプロバイオティクス株の成長と生存を評価した。これは、プロバイオティクスで発酵させたコーヒーブリューの保存中に最も長い期間生存できるプロバイオティクス細菌株(>7 Log CFU/mL)を特定することを目的としていた。
【0074】
方法
非補給コーヒーブリューと、それらの補給済み対応物(0.25%(w/v)グルコース、0.06%(w/v)Optiwhite(登録商標))におけるプロバイオティクス成長を、24時間の発酵期間にわたって評価した。次に、4℃および25℃で保存している間のプロバイオティクスの生存をモニタリングした。これを達成するために、まず、L.ラムノサスGG(GG)、L.アシドフィルスNCFM(NCFM)(Danisco A/S)、L.プランタルム299v(299v)(Probi AB)、またはL.パラカゼイLpc-37(Lpc37)(Danisco A/S)の単独プロバイオティクス細菌培養物を、250mLガラス製キャップ付きボトルに入れた補給済み(S-)または非補給(N-)コーヒーブリューに植え付けた。初期植菌量を約7 Log CFU/mLに標準化した。次いで、植菌済みコーヒーの40mLまたは12mLアリコートを、それぞれ50mLまたは15mLのポリプロピレン製遠心チューブに分注した。その後、3つ組のバッチを30℃で24時間発酵させてから、4℃および25℃で保存した。
【0075】
結果
L.ラムノサスGGとL.パラカゼイLpc-37は、保存期間中に最高の生存率を示したので、揮発性・不揮発性物質のさらなる分析にかけた。分析の時点は、0時間、24時間、25℃で2週間、および4℃で10週間とし、最終保存可能期間の基準(7 Log CFU/mL)に対応させた。分析測定には、揮発性・不揮発性物質の測定(糖、有機酸、アミノ酸、フェノール系化合物、アルカロイド)、ならびに総フェノール含量(total phenolic content:TPC)、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)、および酸素ラジカル吸収能(Oxygen Radical Absorbance Capacity:ORAC)としての抗酸化能アッセイが含まれる。
【0076】
図5は、非補給(N-)および補給済み(S-)コーヒーブリューにおける個々のプロバイオティクス株の成長と生存を示す。非補給コーヒーでは、4種全てのプロバイオティクス株が成長を示さなかった。一方、補給済みコーヒーでは、プロバイオティクスバイオマスの有意な増加が観察され、L.ラムノサスGG(S-GG)、L.プランタルム299v(S-299v)、L.パラカゼイLpc-37(S-Lpc37)、およびL.アシドフィルスNCFM(S-NCFM)は、それぞれ24時間後に7.93、8.28、7.67、および7.58 Log CFU/mLの定常期細胞数に達した。
【0077】
保存期間中、プロバイオティクスの生細胞数は、非補給コーヒーブリューと比較して、補給済み対応物では有意に長い期間にわたって7 Log CFU/mL超に維持された。非補給コーヒーでは、4種全てのプロバイオティクス株の生細胞数が、いずれの温度でも保存1週間以内に基準点を下回った。例外はL.ラムノサスGGであり、これは4℃で保存2週間まで基準点を超える細胞数を示した。補給済みコーヒーブリューでは、L.ラムノサスGGおよびL.パラカゼイLpc-37の生細胞数が、それぞれ、25℃および4℃での保存の2週間および10週間以内に7 Log CFU/mLを下回った。L.プランタルム299vおよびL.アシドフィルスNCFMで発酵させたコーヒーブリューの保存可能期間は、いずれの温度でも、それぞれ4週間と3週間であった。これらの結果は、プロバイオティクスの成長と生存の両方をサポートするために、コーヒーブリュー(brewed coffee)に栄養素を補給する必要性があることを強調している。
【0078】
表1は、コーヒーブリューの発酵および保存期間中の不揮発性成分(pH、グルコース、乳酸、アラニン、およびグルタミン酸)の変化を示し、図6は、ジアセチル、アセトイン、および3-メチルブタン酸のヘッドスペースレベルの変化を示す。
【0079】
表1において、異なる小文字が付いた同じ行の平均値は、同じプロバイオティクス株内の、補給状況が異なるコーヒー間の統計的有意差(P<0.05)を示しており、異なる大文字が付いた同じ行の平均値は、L.ラムノサスGGおよびL.パラカゼイLpc-37で発酵させた補給済みコーヒー間の統計的有意差(P<0.05)を示している。さらに、分析の時点は、0時間、24時間、25℃で2週間、および4℃で10週間とし、最終保存可能期間の基準(7 Log CFU/mL)に対応させた。当初、非補給コーヒーブリューはグルコースと遊離アミノ酸を欠いており、コーヒーブリュー中の栄養素の不足を補強した。
【0080】
【表1】
【0081】
補給済みコーヒーブリューには、グルコースとOptiwhite(登録商標)(特にグルタミン酸)の形で栄養素を供給することで、プロバイオティクス細菌の成長に必要な基質を提供した。グルコース、アラニン、およびグルタミン酸は、発酵および保存期間全体を通して、L.ラムノサスGGおよびL.パラカゼイLpc-37によって徐々に利用された。成長の結果として、細菌の代謝産物(乳酸、ジアセチル、アセトイン、3-メチルブタン酸)の同時産生が観察された。発酵中、乳酸産生はpHの有意な低下に対応し、pHは保存の過程でさらに低下したが、これは、グルコースの継続的利用に起因した。乳酸以外にも、細菌の揮発性代謝産物が産生され(図6)、発酵および保存期間中に3-メチルブタン酸、ジアセチル、およびアセトインのレベルが有意に増加した。
【0082】
これらの細菌代謝産物の生産は、通常のコーヒーブリューと比較して、フレーバーの変化および異なる味覚プロファイルをもたらす可能性がある。例えば、乳酸は酸っぱい味を与え、3-メチルブタン酸は(濃度に応じて)チーズ臭または汗臭を与え、一方ジアセチルとアセトインはバターのような香りを付与する。
【0083】
コーヒーブリューのクロロゲン酸、アルカロイド、および抗酸化能のレベルを表2に示す。コーヒーに内在性のアルカロイドとフェノール系化合物は、一般的にコーヒー摂取の治療上の利益に関連しているため、それらを分析するように努めた。一般的に、コーヒーブリューの生理活性成分および全体的な抗酸化能のレベルは、栄養素の補給、プロバイオティクス細菌の発酵によって、または保存期間中に影響を受けなかった。これらの結果は、プロバイオティクスコーヒーには、コーヒー本来の治療効果が保持されている可能性があることを示唆している。表2において、異なる小文字が付いた同じ行の平均値は、同じプロバイオティクス株内の、補給状況が異なるコーヒー間の統計的有意差(P<0.05)を示している。異なる大文字が付いた同じ行の平均値は、L.ラムノサスGGおよびL.パラカゼイLpc-37で発酵させた補給済みコーヒー間の統計的有意差(P<0.05)を示している。
【0084】
【表2】
【0085】
実施例3
プロバイオティクス培養物の単独培養および共培養による発酵の効果を検討した。
【0086】
L.ラムノサスGGは、0.25%のグルコースと0.06%のOptiwhite(登録商標)を補給したコーヒーブリュー中で優れた成長と生存を示した。細胞バイオマスの0.8 Logの増加が観察され、これは冷蔵下で10週間、常温下で2週間、7 Log CFU/mLを超えて維持された。10週間の冷蔵保存可能期間は妥当であるが、コールドチェーン物流はコストがかかるだけでなく、特に適切なコールドチェーンシステムがない農村地域では、より広い市場への物流を制限する。常温での保存期間が短い製品は商業的実現可能性がないため、プロバイオティクスの生存を常温で2週間超に延長する戦略を模索する必要がある。
【0087】
したがって、L.ラムノサスGGとの共培養物として使用される酵母の潜在能力を調べて、それが、プロバイオティクス発酵コーヒーブリューの保存可能期間をさらに延長できるかを検討した。この実施例では、プロバイオティクス酵母であるS.ブラウディCNCM-I745と共培養することによるコーヒーブリュー中のL.ラムノサスGGの生存を調べた。
【0088】
方法
4つの異なる発酵セットアップを準備した:L.ラムノサスGGの単独培養(GG)、S.ブラウディCNCM-I745の単独培養(Sb)、プロバイオティクス細菌と酵母の混合培養(GG+Sb)、および対照(ブランク)。後者は、プロバイオティクス植菌なしのコーヒーブリューからなるものであった。前3者の発酵セットアップでは、250mLガラス製キャップ付きボトルに入れた200mLのコーヒーブリューに植菌を行った;植菌量は、L.ラムノサスGGでは約7 Log CFU/mLに、S.ブラウディCNCM-I745では約6 Log CFU/mLに標準化した。
【0089】
次に、植菌済みコーヒーの40mLまたは12mLアリコートを、それぞれ50mLまたは15mLのポリプロピレン製遠心チューブに分注した。その後、チューブを発酵期間中は30℃で24時間保持し、保存期間中は25℃または4℃に保持した。未発酵および発酵コーヒーブリュー、ならびに両温度で1ヶ月間保存したサンプルについて、さらなる分析(不揮発性・揮発性物質の測定と抗酸化能アッセイ)を行った。全ての発酵は3つ組のバッチで実施された。
【0090】
結果
図7は、コーヒーブリューでの発酵期間中とその後の4℃および25℃での保存期間中のL.ラムノサスGGとS.ブラウディCNCM-I745の単独培養物および混合培養物の成長を示す。L.ラムノサスGGは、6.9 Log CFU/mLの初期細胞数から、24時間の発酵後に、単独培養物(GG)および混合培養物(GG+Sb)でそれぞれ7.8および7.5 Log CFU/mLまで成長した。同じ期間中に、S.ブラウディCNCM-I745の細胞数は、6.1 Log CFU/mLの初期値から、単独培養物(Sb)および混合培養物(GG+Sb)でそれぞれ7.1および7.2 Log CFU/mLまで増加した。単独培養物のプロバイオティクス細胞数を混合培養物のものと比較したところ、S.ブラウディCNCM-I745では有意差は認められなかったが、L.ラムノサスGGでは有意差が検出された。しかし、L.ラムノサスGGの成長は、7 Log CFU/mLを超えた数であったので、依然として満足のゆくものであったことが認識される。
【0091】
保存期間中、L.ラムノサスGGの生存率は、混合培養に比べて、単独培養ではかなり速い速度で減少した。4℃では、単独培養のL.ラムノサスGGは10週間でもはや検出されなかったが、混合培養では14週間の保存後に7 Log CFU/mLという高いバイオマスが維持された。25℃では、単独培養のL.ラムノサスGGの細胞数は3週間の保存で6 Log CFU/mLを下回り、10週間ではもはや検出できなかった。一方、混合培養での同じプロバイオティクス株は、14週間の常温保存後に6.8 Log CFU/mLという極めて高い生存率を記録した。したがって、L.ラムノサスGGの生存は、常温および冷却温度で、酵母によって大幅に高められた。
【0092】
S.ブラウディCNCM-I745は、保存期間中にL.ラムノサスGGよりも強靭であることが判明した。単独培養と混合培養の両方でのプロバイオティクス酵母の生細胞数は、4℃と25℃での14週間の保存期間中、6 Log CFU/mLを超えて維持された。興味深いことに、常温保存の14週目には、混合培養と比較して、単独培養ではプロバイオティクス酵母の有意に低い生菌数(約0.5 Logの差)が検出された。このことは、S.ブラウディCNCM-I745の生存もまた、L.ラムノサスGGによって有利に高められる可能性があることを示し得る;とはいえ、このプロバイオティクス細菌の生存率向上効果は、保存期間の延長によって実証されると考えられる。
【0093】
発酵および保存期間中のpHと不揮発性成分の変化を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
S.ブラウディCNCM-I745を含むコーヒーブリューでは、発酵期間中にグルコースが完全に利用された。一方、L.ラムノサスGGの単独培養物では、利用がより緩やかで、発酵後に元のレベルの45%が残存していた。プロバイオティクスLABによるグルコースの消費は、乳酸の有意な増加と、それに伴うpHの有意な低下と一致した。保存中に、L.ラムノサスGGの単独培養物で発酵させたコーヒーブリューでは、pHがさらに低下したが、これは、該プロバイオティクス細菌による残留グルコースの取り込みによるものであった。
【0096】
また、乳酸は、混合培養でもL.ラムノサスGGによって産生されたが、その収量は有意に低く、結果として、単独培養と比較して、有意に高いpHとなった。これは、酵母によるグルコースの獲得競争が起こり、L.ラムノサスGGが乳酸産生に利用できるグルコースの量が制限されたことに起因すると考えられる。保存期間中、乳酸産生に利用できるグルコースが存在しなかったため、混合培養では、それ以上の乳酸の産生は観察されなかった。
【0097】
S.ブラウディCNCM-I745を含むコーヒーブリューでは、14週間の低温保存期間全体を通して、pHが比較的一定に保たれた。興味深いことに、常温では保存中にpHが徐々に上昇し、その影響は混合培養コーヒーブリューでより顕著に現れた。混合培養では、pHは4.54から徐々に上昇し、4週間後には4.64に、14週間後には4.97の値に達した。S.ブラウディによるコーヒーブリューの脱酸性化は、酵母によるクエン酸の消費が原因であると考えられ、クエン酸は保存中に酵母の生存を支える代替炭素源としての役割を果たしたと推定される。
【0098】
S.ブラウディCNCM-I745によるコーヒーブリューの脱酸性化は、クエン酸消費または乳酸産生制限のいずれかにより、酸ストレスを緩和し、その結果、単独培養に比べて混合培養ではL.ラムノサスGGの生存が向上したと考えられる。さらに、酵母による後酸性化(post-acidification)の防止は官能的(organoleptically)に好ましいと考えられることにも言及する価値がある。
【0099】
表4は、30℃での発酵後にコーヒーブリューで検出され、選択されたヘッドスペースの揮発性物質のクラスを示す。L.ラムノサスGGは主にジアセチルとアセトインの放出に関与していたのに対して、S.ブラウディCNCM-I745は主にアルコール、エステル、およびフェノール系化合物を産生した。それぞれの揮発性化合物は固有の芳香を付与し、例えば、高級アルコールはフローラルな香りを、エステルはフルーティーな香りをそれぞれ付与する。したがって、プロバイオティクスの異なる菌株で発酵させたコーヒーブリューは、様々なフレーバーをもたらす可能性がある。
【0100】
【表4】
【0101】
図8は、発酵および保存後のコーヒーの生理活性成分の変化を示す。一般に、測定されたアルカロイド(カフェイン、トリゴネリン)およびフェノール系化合物(クロロゲン酸、カフェ酸)のレベルは未変化のままであった。トリゴネリンとクロロゲン酸のレベルは、常温保存後、ブランクよりも混合培養物において有意に高いレベルで検出されたが、これらの変化はわずかであって、実質的には意味がないかもしれない。コーヒーの内在性生理活性成分は、生理学的効果を付与する傾向がある強力な生理活性コーヒー成分としてよく引き合いに出されるため、発酵および保存後にこうした成分を保持することが望ましい。
【0102】
図9は、コーヒーブリューの発酵および保存後の抗酸化能の変化を示す。TPCアッセイでは、時点にかかわらず、コーヒーブリュー間に有意でない変化が見られた。DPPHアッセイでは、混合培養したコーヒーブリューは、ブランクと比較して、わずかではあるが有意に高い抗酸化活性を一貫して示した。有意ではあったが、その差はわずかであり、実質的には意味がないかもしれない。ORACアッセイから、常温保存後のプロバイオティクスコーヒーブリューでは、ブランクと比較して、トロロックス(Trolox)当量値が有意に低く、これはペルオキシルラジカル消去能の低下を示している。
【0103】
実施例4
S.ブラウディCNCM-I745と共培養されたプロバイオティクス培養物の発酵の効果を検討した。
【0104】
L.ラムノサスGGの生存は、セクション3でS.ブラウディCNCM-I745と共培養したとき、大幅に向上した。しかし、S.ブラウディCNCM-I745を他のプロバイオティクス株と共培養することによって同様の効果が観察されるかどうかを調べることは、さらに興味深いことであろう。このことは、様々なプロバイオティクス株が摂取時に異なる生理学的効果を発揮するため、特に重要である。さらに、酵母がもたらすプロバイオティクスの生存率向上効果は菌株依存性であり、酵母とプロバイオティクスLABとの共培養は必ずしも後者の生存率を高めないため、適合性のあるプロバイオティクス-酵母の組み合わせを特定することには興味がもてる。
【0105】
それゆえ、本実施例では、L.プランタルム299v、L.アシドフィルスNCFM、L.フェルメンツムPCC、L.ガセリLAC-343の成長および生存に対するS.ブラウディCNCM-I745の共培養の影響を調べることを目的としている。
【0106】
方法
0.25%のグルコースと0.06%のOptiwhite(登録商標)を補給したコーヒーブリューを、プロバイオティクスの単独培養物であるL.プランタルム299v(299v)、L.アシドフィルスNCFM(NCFM)、L.フェルメンツムPCC(PCC)(Chr. Hansen A/S)、L.ガセリLAC-343(LAC343)(Morinaga)、S.ブラウディ(Sb)(Biocodex)、およびそれらの共培養物である299vSb、NCFMSb、PCCSb、LAC343Sbにより発酵させた。未発酵のコーヒーからなるブランクを対照として含めた。プロバイオティクスを250mLガラス製キャップ付きボトルに入れた200mLのコーヒーブリューに植え付けた;植菌量は、プロバイオティクスLABでは約6.6~7 Log CFU/mLに、S.ブラウディCNCM-I745では約6 Log CFU/mLに標準化した。次に、植菌済みコーヒーの40mLまたは12mLアリコートを、それぞれ50mLまたは15mLのポリプロピレン製遠心チューブに分注した。その後、チューブを発酵期間中は30℃で24時間保持し、続いて保存期間中は25℃または4℃で保持した。24時間発酵させて、両温度で1ヶ月間保存したコーヒーについて、さらなる分析(不揮発性物質の測定)を行った。全ての発酵は3つ組のバッチで行った。
【0107】
結果
図10は、コーヒーブリューでの発酵と、その後の4℃および25℃での保存中の、L.プランタルム299v、L.アシドフィルスNCFM、L.フェルメンツムPCC、L.ガセリLAC-343、およびS.ブラウディCNCM-I745の単独および混合培養物の成長を示す。
【0108】
全てのプロバイオティクスは、単独培養、共培養にかかわらず、7 Log CFU/mLを超えて成長することができた。これは、プロバイオティクス酵母であるS.ブラウディCNCM-I745と他の4種のプロバイオティクスLAB株との適合性を示している。さらに、推奨使用量である7 Log CFU/mLを超える優れた成長は、コーヒーブリュー処方物(0.25%のグルコースと0.06%のOptiwhite(登録商標))が、プロバイオティクス酵母とLABの他の組み合わせの成長を支えるために応用できることを示唆している。
【0109】
保存期間中、プロバイオティクス酵母は、コーヒー中の生きたプロバイオティクスLAB集団を維持するために不可欠であることが明らかになった。温度に関係なく、全ての共培養されたプロバイオティクスLABは、6~7 Log CFU/mLを上回る生きた集団を少なくとも3ヶ月間維持した。対照的に、単独のLABプロバイオティクス集団は、6 Log CFU/mLを上回って3ヶ月以上維持されることがなく、大半は3 Log CFU/mLを下回った。
【0110】
興味深いことに、単独培養したS.ブラウディCNCM-I745の生存率は、他のプロバイオティクスLABと培養した場合と比べて、有意差がなかった。このことは、プロバイオティクス酵母がプロバイオティクスLABの存在による影響を受けないままであったことを示しており、それゆえに、S.ブラウディCNCM-I745と他のプロバイオティクスLAB株との優れた適合性を強調している。
【0111】
図11および図12は、それぞれ、単一および混合コーヒー発酵物の、発酵および保存中のpHおよび乳酸の変化を示す。一般に、単独および共発酵させたコーヒーブリューのpH低下の程度は、24時間の発酵後に同様であった;例外として、L.プランタルム299vは、その単独培養物が共培養物に比べて有意に低いpHをもたらした。発酵中のpHの低下は、プロバイオティクスLABによる乳酸産生の結果である。共培養されたL.プランタルム299vコーヒーブリューにおける乳酸収量の低下とそれに伴うpHの上昇は、酵母による栄養素(グルコース、Optiwhite(登録商標))の獲得競争の結果である可能性が最も高い。したがって、発酵後に酸味の少ないコーヒーブリューが望まれる場合、生きたプロバイオティクス集団を維持しながら、プロバイオティクスLABとS.ブラウディCNCM-I745とを共培養することが非常に重要である。
【0112】
3ヶ月間の低温保存中、pHのさらなる変化は観察されなかったが、これはプロバイオティクスの代謝活性の低下に起因する。しかし、常温条件下では、L.プランタルム299v、L.アシドフィルスNCFM、およびL.ガセリLAC-343の単独培養物では、乳酸蓄積と一致して、さらなるpHの低下が観察された(図12)。例外は、単独培養されたL.フェルメンツムPCCで観察され、これは、常温保存中にpHと乳酸産生の有意な低下を示さなかった。プロバイオティクスLABの単独培養物を使用する場合は、過度のpH変化(望ましくない酸味を生じる可能性がある)を制限するために、このような状況下では冷蔵保存が好適であり得る。
【0113】
プロバイオティクスLABの単独培養物とは対照的に、それらの共培養物では、乳酸のさらなる増加は観察されなかった。したがって、コールドサプライチェーンを利用できない場合には、望ましくない酸味を与える可能性のある過剰の乳酸産生とpH低下を制限するために、S.ブラウディCNCM-I745を効果的に使用できると考えられる。
【0114】
図13は、発酵および保存後のコーヒーの生理活性成分の変化を示す。一般に、測定されたアルカロイド(カフェイン、トリゴネリン)およびフェノール系化合物(クロロゲン酸)の大幅な損失は観察されなかった。コーヒーブリューの発酵と保存は、内在性のコーヒー生理活性成分のレベルを変化させなかった;このことは、コーヒーに本来備わっている健康上の利益が保たれていることを示している。
【0115】
前述の説明では、例示的な実施形態を説明してきたが、当技術分野の当業者であれば、本発明から逸脱することなく、多くの変形形態が可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A-B】
図9C
図10A-B】
図10C-E】
図10F-H】
図11A-C】
図11D-F】
図11G-I】
図11J
図12
図13-1】
図13-2】
【国際調査報告】