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特表2023-510614インピーダンス信号処理を用いた医療用分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】インピーダンス信号処理を用いた医療用分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/00 20060101AFI20230307BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20230307BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20230307BHJP
   C12M 1/42 20060101ALN20230307BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
G01N15/00 B
G01N33/483 E
C12M1/34 D
C12M1/42
C12Q1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543447
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 FR2021050078
(87)【国際公開番号】W WO2021144546
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】2000439
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313015649
【氏名又は名称】ホリバ アベイクス エス アー エス
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【住所又は居所原語表記】Parc Euromedecine, Rue du Caducee, BP 7290, F-34184 MONTPELLIER cedex 4, France
(71)【出願人】
【識別番号】515011944
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ドゥ・モンペリエ
(71)【出願人】
【識別番号】506310061
【氏名又は名称】セントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・サイエンティフィーク・セエヌアールエス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE CNRS
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トラコナート,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】イセベ,ダミエン
(72)【発明者】
【氏名】メンデス,シモン
(72)【発明者】
【氏名】ニクー,フランク
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G045BB31
2G045CA02
2G045FA37
2G045GC30
2G045JA03
4B029AA07
4B029AA27
4B029CC02
4B029FA03
4B063QA18
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QS39
4B063QX04
(57)【要約】
本発明は、細胞インピーダンス信号処理を用いた医療用分析装置に関する。該装置は、パルスデータセットを受け取るように配置されたメモリ(4)を備え、パルスデータセットの各々は、時間マーカーに毎回関連付けられるインピーダンス値データを含み、これらのデータは、共に、極性をもつ開口を細胞が通過した際に測定される細胞インピーダンス値の曲線を表す。該装置は、パルスデータセットを入力として受け取る畳み込みニューラルネットワークを含む分類器(6)をさらに備える。畳み込みニューラルネットワークには、3以上の深さを有する少なくとも1つの畳み込み層と、少なくとも2つの全結合層と、パルスデータセットの元となる細胞分類をレンダリングする出力層と、が設けられる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞インピーダンス信号処理を用いた医療用分析装置であって、
パルスデータセットを受け取るように配置されたメモリ(4)を備え、
前記パルスデータセットの各々は、時間マーカーに毎回関連付けられるインピーダンス値データを含み、
前記インピーダンス値データは、共に、極性をもつ開口を細胞が通過した際に測定される細胞インピーダンス値の曲線を表し、
前記パルスデータセットを入力(100)として受け取る畳み込みニューラルネットワークを含む分類器(6)をさらに備え、
前記畳み込みニューラルネットワークには、3以上の深さを有する少なくとも1つの畳み込み層(110,120)と、少なくとも2つの全結合層(130)と、前記パルスデータセットの元となる細胞分類をレンダリングする出力層(140,150)と、が設けられることを特徴とする、
装置。
【請求項2】
前記畳み込みニューラルネットワーク(6)は、2つの畳み込み層(110,120)を備え、そのうちの一方(110)は、前記パルスデータセットを受け取る入力層に結合される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記全結合層は、4層のニューロンを含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記分類器(6)のすべての層の活性化関数は、シグモイド関数である、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記メモリ(4)が受け取る前記パルスデータセットは、極性をもつ開口を赤血球が通過した際に測定されるインピーダンス測定値から得られる、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記出力層は、所与のパルスに関連する細胞が正常であるか異常であるかを示す値を返す、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記出力層は、細胞の形態学的特徴を示すトリプレット値を返す、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記出力層は、所与のパルスに関連する細胞がマラリアまたは鎌状赤血球症などの疾患の存在を示しているかどうかを示す値を返す、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記出力層は、前記パルスデータセットの元となる試料の経時変化に関する情報を示す値を返す、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
血液試料の分類方法であって、
(a)パルスデータセットを受け取るステップであって、前記パルスデータセットの各々は、時間マーカーに毎回関連付けられるインピーダンス値データを含み、前記インピーダンス値データは、共に、極性をもつ開口を細胞が通過した際に測定される細胞インピーダンス値の曲線を表し、前記細胞は、前記血液試料から採取されたものである、ステップと、
(b)前記パルスデータセットの各々について、
・ (b1)前記パルスデータセットの最大インピーダンス値を決定するステップと、
・ (b2)前記最大インピーダンス値に[0.7;0.95]の範囲から選択された上限係数を掛けて上限インピーダンス値を算出し、前記パルスデータセット内の関連するインピーダンス値が前記上限インピーダンス値に等しくなる前記時間マーカーを前記パルスデータセット内で決定し、前記時間マーカー間の最大持続時間に対応する上限持続時間を算出し、前記最大インピーダンス値に[0.1;0.6]の範囲から選択された下限係数を掛けて下限インピーダンス値を算出し、前記パルスデータセット内の関連するインピーダンス値が前記下限インピーダンス値に等しくなる前記時間マーカーを前記パルスデータセット内で決定し、前記時間マーカー間の最大持続時間に対応する下限持続時間を算出するステップと、
・ (b3)前記最大インピーダンス値に関連する時間と前記下限インピーダンス値に対応する第1の時間との差と、前記下限持続時間とを割って得られた値に等しいピーク位置の値(PP)を算出し、任意選択で、前記上限持続時間を前記下限持続時間で割って得られた値に等しい回転値(WR)を算出するステップと、
(c)前記下限持続時間/前記ピーク位置の値(PP)の組、または前記回転値/ピーク位置の値(WR)の組に従って、前記パルスデータセットの統計的分布を決定するステップであって、その統計結果は、前記組の値の範囲セット(Box1,Box2,Box3,Box4,Box5,Box6,Box7,Box8,Box1’,Box2’,Box3’,Box4’,Box5’,Box6’)に関して確立される、ステップと、
(d)前記ステップ(c)の分布と健康な血液試料の基準分布とを比較して、前記血液試料を分類するステップと、
を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液学の分野に関し、より詳細には、細胞の計数・分類装置に関する。
【背景技術】
【0002】
1950年代以降、血液分析装置を用いた様々な血球の計数および体積測定は、コールター原理として知られている方法に従って、インピーダンスを測定することで行われてきた。この方法は、導電性の液体中に懸濁させた細胞を微小な極性をもつ開口に通し、粒子がオリフィスを通過することで生じる電気抵抗の変化(またはインピーダンスの変化)を検出するものである。このようにして発生した様々なパルスを検出することで、要素の計数を行うことができる。
【0003】
オリフィス内の通過に関連する問題点(エッジ効果または流体力学的効果による回転、ダブレットのマスキングなど)に対処するために、様々な解決策が開発されてきた。いずれの解決策も満足のいくものではないため、流体力学的集束(またはハイドロフォーカス)技術が開発された。この解決策によって、分析対象の細胞の流れを流体力学的に覆うことで、その流れをオリフィス内に集中させ、エッジにおける通過に伴う影響を制限することができる。しかしながら、この技術は、実装が非常に複雑であり、特にコストがかかる。
【0004】
本出願人は最近、ハイドロフォーカスの必要なく、非常に満足のいく結果を得られる解決策を開発した。この解決策は、フランス共和国特許出願第1904410号で保護されている。この開発の過程で、本出願人は、インピーダンス信号から細胞を特性評価して、正常または異常に関する情報を返すために、またはこれらの細胞の形態を特性評価するために、この研究が使用できることに気付いた。
【0005】
赤血球の変形能を測定するための既存の最新技術は、大きく分けて2つの系列があることが分かっている。
【0006】
1つ目の系列は、精密であるが、実装に時間がかかり且つ複雑である測定技術に関する。そのうちの一部については、弾性係数および膜粘度係数などのレオロジーパラメータを分析モデルで追跡することが可能になる。その方法の1つとして、マイクロピペットによる吸引法が挙げられる。これは、既知の真空をかけることでピペット内の赤血球の一部を吸引する方法である。吸引後の赤血球の形状に関連する特定の量を測定することで、せん断係数またはせん断粘度を推測することができる(例えば、E. A. Evansによる論文「New membrane concept applied to the analysis of fluid shear and micropipette deformed red blood cells」(Biophysical Journal、1973年)を参照)。また、「光ピンセット」法(例えば、Brandaoらによる論文「Optical tweezers for measuring red blood cell elasticity: application to the study of drug response in sickle cell disease」(European Journal of Haematology、70:207~211、2003年)を参照)、または光レーザで血球を引き伸ばしてその形状を観察する「光ストレッチャ」法(例えば、Guckらによる論文「The optical stretcher: a novel laser tool to micromanipulate cells」(Biophysical Journal、81:767~784、2001年)を参照)などの他の方法が存在する。
【0007】
2つ目の系列は、多数の細胞をより迅速且つ自律的に処理して、試料中の赤血球の変形能を統計的に把握する技術を含む。このタイプの技術は、変形指数(DI)と呼ばれる形状パラメータを使用して赤血球の変形を研究するものであり、実際、よく知られている機械的応力を受けた赤血球の伸びを測定するものである。変形指数は、赤血球の力学的パラメータと形態学的パラメータを組み合わせたものであり、研究が容易になるが、正確なレオロジー情報を得ることができない。これらの技術の中でも、Chaらによる論文「Cell stretching measurement utilizing viscoelastic particle focusing」(Analytical chemistry、2012年)に記載されている、伸長流の中で赤血球を引き伸ばし、カメラで観察する技術が特筆に値する。同じ原理であるが、せん断流中で赤血球に応力を加える方法として、Dobbeらによる論文「Analyzing red blood cell-deformability distributions」(Blood Cells, Molecules, and Diseases、28:373~384、2002年)に記載されている方法によって、特定の病態が赤血球の変形指数の分布に与える影響を示すことができる。Mohandasらによる論文「Analysis of factors regulating erythrocyte deformability」(Journal of Clinical Investigations、66:563~573、1980年)には、せん断流中で赤血球に応力を加え、光の回折スペクトルを観察して変形指数を測定する赤血球計が記載されている。懸濁液の浸透圧に応じた変形指数の曲線を研究することで(例えば、Clarkらによる論文「Osmotic gradient ektacytometry: comprehensive characterization of red cell volume and surface maintenance」(Blood、61:899~910、1983年)を参照)、特定のレオロジーパラメータおよび/または形態学的パラメータを測定できることが示された。
【0008】
1つ目の系列の方法は、得られる情報量が豊富だが、高速の血液学的分析を実施することができない。実際、実装には時間がかかり、複雑であり、専門のマニピュレータの介入を必要とする。その一方で、2つ目の系列は、実装が容易であり、変形指数に関してより全体的な反応を研究することができるため、病的な赤血球の亜集団を分離することができるようになるが、医療分析室の枠組みの中で産業化することは依然として困難である。
【0009】
上述したすべての方法は、光学式またはビデオマイクロスコープ式の画像取得システムを必要とする。これは、インピーダンス測定システムよりもかなり複雑であり、実装コストが高い。しかしながら、コールター原理で動作するカウンターは、変形指数またはその簡易的な値を決定することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのため、細胞母集団の形態学的特徴に応じてそれらを識別することができる簡単な測定装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、この状況を改善するものである。この目的のために、本発明は、細胞インピーダンス信号処理を用いた医療用分析装置を提案する。該装置は、パルスデータセットを受け取るように配置されたメモリを備える。パルスデータセットの各々は、時間マーカーに毎回関連付けられるインピーダンス値データを含む。これらのデータは、共に、極性をもつ開口を細胞が通過した際に測定される細胞インピーダンス値の曲線を表している。また、該装置は、パルスデータセットを入力として受け取る畳み込みニューラルネットワークを含む分類器をさらに備える。畳み込みニューラルネットワークには、3以上の深さを有する少なくとも1つの畳み込み層と、少なくとも2つの全結合層と、パルスデータセットの元となる細胞分類をレンダリングする出力層と、が設けられる。
【0012】
本装置は、コールター原理を用いたサイトメーターによるインピーダンスの測定に基づいて、簡単な測定装置で細胞を分類することができる点が特に有利である。また、既存のサイトメーターに本発明の利点を組み込むことができるため、新たな装置を購入する必要がない。
【0013】
様々な実施形態によれば、本発明は、以下の特徴を1つまたは複数有することができる。
・ 畳み込みニューラルネットワークは、2つの畳み込み層を備え、そのうちの一方は、パルスデータセットを受け取る入力層に結合される。
・ 全結合層は、4層のニューロンを含む。
・ 分類器のすべての層の活性化関数は、シグモイド関数である。
・ メモリが受け取るパルスデータセットは、極性をもつ開口を赤血球が通過した際に測定されるインピーダンス測定値から得られる。
・ 出力層は、所与のパルスに関連する細胞が正常であるか異常であるかを示す値を返す。
・ 出力層は、細胞の形態学的特徴を示すトリプレット値を返す。
・ 出力層は、所与のパルスに関連する細胞がマラリアまたは鎌状赤血球症などの疾患の存在を示しているかどうかを示す値を返す。
・ 出力層は、パルスデータセットの元となる試料の経時変化に関する情報を示す値を返す。
【0014】
また、本発明は、血液試料の分類方法に関する。該方法は、
(a)パルスデータセットを受け取るステップであって、パルスデータセットの各々は、時間マーカーに毎回関連付けられるインピーダンス値データを含み、これらのデータは、共に、極性をもつ開口を細胞が通過した際に測定される細胞インピーダンス値の曲線を表し、細胞は、血液試料から採取されたものである、ステップと、
(b)パルスデータセットの各々について、
・(b1)パルスデータセットの最大インピーダンス値を決定するステップと、
・(b2)最大インピーダンス値に[0.7;0.95]の範囲から選択された上限係数を掛けて上限インピーダンス値を算出し、パルスデータセット内の関連するインピーダンス値が上限インピーダンス値に等しくなる時間マーカーをパルスデータセット内で決定し、これらの時間マーカー間の最大持続時間に対応する上限持続時間を算出し、最大インピーダンス値に[0.1;0.6]の範囲から選択された下限係数を掛けて下限インピーダンス値を算出し、パルスデータセット内の関連するインピーダンス値が下限インピーダンス値に等しくなる時間マーカーをパルスデータセット内で決定し、これらの時間マーカー間の最大持続時間に対応する下限持続時間を算出するステップと、
・(b3)最大インピーダンス値に関連する時間と下限インピーダンス値に対応する第1の時間との差と、下限持続時間とを割って得られた値に等しいピーク位置の値を算出し、任意選択で、上限持続時間を下限持続時間で割って得られた値に等しい回転値を算出するステップと、
(c)下限持続時間/ピーク位置の値の組、または回転値/ピーク位置の値の組に従って、パルスデータセットの統計的分布を決定するステップであって、その統計結果は、組の値の範囲セットに関して確立される、ステップと、
(d)ステップ(c)の分布と健康な血液試料の基準分布とを比較して、血液試料を分類するステップと、
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面に示される例示的且つ非限定的な実施例に基づく以下の説明から明確になるであろう。
図1】本発明の範囲における測定用オリフィスと、その中で細胞が取り得る軌道の概要を示す図である。
図2図1に示す軌道に対するパルス測定値を示す図である。
図3図1に示す配置において測定した赤血球のインピーダンスパルスの特性を示す図である。
図4図1に示す配置において測定した赤血球のインピーダンスパルスの特性を示す図である。
図5】対象領域の特性を示す図である。
図6図5に示す対象領域の一部におけるパルスの割合を示す図である。
図7図5に示す対象領域の一部におけるパルスの割合を示す図である。
図8図5に示す対象領域の一部におけるパルスの割合を示す図である。
図9図5に示す対象領域の一部におけるパルスの割合を示す図である。
図10】本発明による装置の一実施形態を示す図である。
図11図10に示す実施形態に実装されたニューラルネットワークを示す図である。
図12】本発明の別の実施形態に実装されたニューラルネットワークを示す図である。
図13】対象領域の特性を示す図である。
図14図13に示す対象領域の一部におけるパルスの母集団統計量を表す図である。
図15図13に示す対象領域の一部におけるパルスの母集団統計量を表す図である。
図16図13に示す対象領域の一部におけるパルスの母集団統計量を表す図である。
図17】2つの健康な血液試料を11日間にわたって分析した結果を示す図である。
図18図5のBox3’に対応する図17の測定値における統計的経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面および以下の説明には、本発明の特定の性質の要素が本質的に含まれる。これらは、本発明をよりよく理解するのに役立つだけでなく、その定義にも適宜貢献することができる。
【0017】
図1は、本発明の枠組みにおける測定用オリフィスと、その中で細胞が取り得る軌道の概要を示している。オリフィスの壁は点線で表され、横座標と縦座標はμmで表されている。
【0018】
図2は、図1に示す軌道の各々について測定されたインピーダンスパルスを示している(これは、細胞が微細なオリフィスを通過したことによるシステムのインピーダンスの変化に対応する信号から得られる)。横座標はμsで表され、縦座標はohmで表されている。図に示すように、細胞の入射軌道がオリフィスの壁の1つに近いほど、測定はより混沌とし、上述したような問題が生じる。
【0019】
フランス共和国特許出願第1904410号に記載された本出願人による研究は、インピーダンスパルスを特性評価するための新しい大きさの単位を開発することにつながった。この大きさは、WRと呼ばれ、2つのパルス幅の間の比率である。これらの幅によって、パルスにピークが存在すること、あるいはベル型のパルスが存在することを示すことができるようになる。
【0020】
そのために、まず、パルスデータセット内の最大パルス高が決定される。最大パルス高は、上限インピーダンス値および下限インピーダンス値を算出するために使用される。
【0021】
上限インピーダンス値は、最大インピーダンス値(最大パルス高に対応する)に上限係数を掛けることで得られる。この上限係数を使用することで、一般的に、パルスのインピーダンスピークの幅を正確に近似することができる2つの時間を決定することができる。そのために、上限係数は、[0.7;0.95]の範囲から選択され、好ましくは[0.8;0.9]の範囲から選択される。これにより、少なくとも2つの時間を得ることができ、これらの時間が(複数のピークが存在する状況を制限するように)実際にパルスのピークに対応することを保証することができる。
【0022】
したがって、上限インピーダンス値は、最大インピーダンス値よりも小さく、その70%よりも大きい。本出願人の研究によれば、この範囲であれば、生成されたパルスのピークを正確に捉えることができることがわかった。本出願人は、0.875という値が特に有利であり、最良の結果をもたらすことを確認した。これにより、パルスのピークを可能な限り正確に推定することができる。実際、最大パルス高付近のピークは、一般的に比較的狭い。
【0023】
下限インピーダンス値は、最大インピーダンス値に下限係数を掛けることで得られる。この下限係数を使用することで、一般的に、インピーダンスパルスの幅を正確に近似することができる2つの時間を決定することができる。そのために、下限係数は、[0.1;0.6]の範囲から選択され、好ましくは[0.3;0.6]の範囲から選択される。これにより、2つの時間を得ることができ、これらの時間が一般的なパルスの幅に対応することを保証することができる。
【0024】
したがって、下限インピーダンス値は、最大インピーダンス値の30%~60%の範囲である。本出願人の研究によれば、この範囲であれば、ノイズを除去して生成されたパルスの幅を正確に捉えることができることがわかった。本出願人は、0.5という値が特に有利であり、最良の結果をもたらすことを確認した。ここでは、最大パルス高の50%を下回るパルスの傾斜は非常に急であり、この値によって、測定がノイズの影響を受けるリスクを回避することができる。
【0025】
上限インピーダンス値と下限インピーダンス値が決定されると、パルスデータセットにおいて最も時間的に離れていて、上限インピーダンス値または下限インピーダンス値をそれぞれもつ2つの時間の間の持続時間が決定される。上限インピーダンス値に関連する持続時間を上限持続時間と呼び、下限インピーダンス値に関連する持続時間を下限持続時間と呼ぶ。直感的には、上限持続時間がパルスデータセットにおけるインピーダンスピークの幅に実質的に対応し、下限持続時間がパルス幅に実質的に対応するように見える。最後に、上限持続時間と下限持続時間との比率をとることで、大きさWRが決定される。
【0026】
PPと呼ばれる第2の大きさは、パルスのピークに関連するものである。そのために、この大きさは、パルスが最大となる時間と下限インピーダンスに対応する第1の時間との差と、下限持続時間との比率をとることで算出される。その結果は、後者における最大パルスの位置を示す割合となる。
【0027】
本出願人は、特に典型的なグラフ(PP;WR)を確立することで、パルスの表現に取り組んできた。実際、本出願人は、このタイプのグラフによって、特に回転させた細胞の特徴的なパルスなどの興味深い挙動を見出すことができることを発見した。
【0028】
この仮説を検証するために、本出願人は、電解質溶液に特定の分子を加えて赤血球の形態を変化させた。
【0029】
希釈試薬に濃度の異なるグルタルアルデヒドとN-ドデシル-N、N-ジメチル-3-アンモニオ-1-プロパンスルホン酸(別名スルホベタイン3-12、以下SB3-12)を加え、これらの溶液に浸した健康な血液に由来する赤血球のインピーダンスを測定した。より詳細には、0%~0.5%の範囲の濃度のグルタルアルデヒドを含む製剤を調製し、また、0mg/L~90mg/Lの範囲の濃度のSB3-12を含む溶液を個別に調製した。すなわち、これらはグルタルアルデヒドとSB3-12だけをそれぞれ添加したものである。
【0030】
グルタルアルデヒドを使用することで、固定効果を得ることができ、赤血球が円盤状の形状を保持したまま硬直化することができることが知られている。実際、SB3-12を使用することで、細胞が球状化しやすいことが知られている。
【0031】
健康な患者から採取された血液試料(異常がないことが確認されているもの。以下「健康な血液」と呼ぶ)を異なる濃度のSB3-12で分析し、別の試料をすべての異なる濃度のグルタルアルデヒドで分析した。分析はそれぞれ2回行い、提案した開発方法における再現性を予備的に評価した。
【0032】
最後に、本出願人は、各製剤について、発生したパルスのグラフ(PP;WR)を算出した。図3は、SB3-12を配合した製剤に関して得られた結果を示すグラフであり、図4は、グルタルアルデヒドを配合した製剤に関して得られた結果を示すグラフである。
【0033】
これらのグラフは、赤血球の形態学的特徴に関する情報を含んでいるという本出願人の考えを立証するものであった。そこで、本出願人は、図5に示すように、健康な血液のグラフ(PP;WR)から検討対象となるパルス領域(Box1’~Box6’)を設定した。図5に示すパルス領域は、グルタルアルデヒドとSB3-12の結果の違いを強調するために選択したものである(図3および図4参照)。
【0034】
図5において、パルス領域を以下のように定義した。これらは、PP(最小;最大)とWR(最小;最大)の範囲で表現されている。
【0035】
Box1’:(25;60)~(58;76)
Box2’:(60;83)~(65;76)
Box3’:(25;85)~(76;86)
Box4’:(5;20)~(5;70)
Box5’:(5;25)~(70;85)
Box6’:(20;85)~(10;58)
図5に示す各領域において、本出願人は、パルスの割合と、大きさPPおよびWRの平均を算出した。したがって、1つの試料に対して、合計18のパラメータが存在することになる(6つの領域にそれぞれ3つのパラメータ)。
【0036】
次いで、Box3’およびBox5’の領域におけるパルスの割合の変化を、SB3-12の濃度の関数として(それぞれ図6および図7に)、またグルタルアルデヒドの濃度の関数として(それぞれ図8および図9に)記載した。
【0037】
図6図9の各々において、正常値は横線で表されている。誤差は破線で表され、標準偏差の2倍と定義されている。破線の間の実線は、正常値を定義する22人分の健康な血液で評価した平均を示している。
【0038】
図6図9に示す分析結果は、SB3-12またはグルタルアルデヒドの濃度が増加すると、算出されたパラメータが正常な範囲から外れていくことを示している。これらの図は、SB3-12およびグルタルアルデヒドが赤血球に与える影響と、それらがパルスの中で赤血球の形態学的特徴をどのように変化させているかを目に見える形で明確に示している。
【0039】
グルタルアルデヒドの濃度とSB3-12の濃度が赤血球の硬さと球形に相関していると仮定すれば、これらのパラメータを測定することが可能だと考えられる。実際、領域3’におけるパルスの割合のパラメータと大きさPPの平均値とをグラフ上で組み合わせることで、グルタルアルデヒドの製剤と混合した赤血球と、SB3-12の製剤と混合した赤血球とを定量的に区別することができるようになる。
【0040】
これらのことから、インピーダンスパルスには赤血球の形態学的特徴に関する情報が含まれていることが経験的に立証することができたが、赤血球の正常性を測定することができる簡単な機能、または適宜形態学的異常を精密に特性評価することができる機能はないようである。
【0041】
そのため、本出願人は、インピーダンスパルスに基づいて細胞の正常または異常を示すように学習および構成された第1のニューラルネットワークを用いた装置と、正常な形態学的特徴、硬さをもつ細胞の形態学的特徴、または球状化した細胞の形態学的特徴を有するかどうかを示すことで細胞を分類するように学習および構成された第2のニューラルネットワークを用いた装置とを開発することを考えた。
【0042】
図10は、本装置を模式的に示す図である。該装置は、メモリ4と、分類器6と、を備える。
【0043】
メモリ4は、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ(SSD)、任意の形態のフラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気ディスク、ローカルに分散したストレージ、またはクラウドなど、数値データを受け取ることができる任意のタイプのデータストレージであり得る。装置が算出したデータは、メモリ4と同様のタイプの任意のメモリ、またはメモリ4自体に格納され得る。このデータは、装置がそのタスクを完了した後に削除されるか、そこに保持され得る。
【0044】
本実施例において、メモリ4は、パルスデータセットを受け取る。パルスデータセットとは、図2に示すようなインピーダンスパルスを特性評価することができるすべてのデータを意味する。これは、図2に示すような曲線を定義する組(インピーダンスの測定値と時間マーカー)のセットである。実際、パルスデータセットは、オリフィスにおける出力の検出のサンプリングとなるのが一般的である。パルスデータセットは、連続した曲線であり得る。この場合、分類器6が適合される。
【0045】
分類器6は、メモリ4に直接または間接的にアクセスする要素である。これは、1つまたは複数のプロセッサ上で実行される適切なコンピュータコードの形態で実現され得る。「プロセッサ」という用語は、後述する計算に適した任意のプロセッサを意味する。このようなプロセッサは、パーソナルコンピュータ用のマイクロプロセッサ、FPGAまたはSoC(システムオンチップ)タイプの専用チップ、グリッドまたはクラウド上の演算リソース、マイクロコントローラ、または後述する構成に必要な演算能力を提供することができる他の任意の形態を含む既知の方法で実現することができる。また、1つまたは複数のこれらの要素は、ASICなどの特殊な電子回路の形態で実現することができる。また、プロセッサと電子回路の組み合わせも考えられる。
【0046】
有利には、本発明による装置は、血液学的分析装置に統合することができ、または遠隔にすることができることに留意されたい。したがって、血液学的分析装置に完全に統合することができるか、あるいは必要に応じて血液学的分析装置が接続するウェブサービスとすることができる。
【0047】
上述したように、分類器6は、ニューラルネットワークである。実際、パルスは画像に同化することができ、適切な学習を行えば、ニューラルネットワークは、パルスを回転ありまたは回転なしのパルスデータセットに分類するのに特に効果的であり得ると本出願人は考えた。
【0048】
より詳細には、本出願人は、畳み込みニューラルネットワークが最も適していることを確認した。図11は、第1のニューラルネットワークのアーキテクチャを示しており、図12は、第2のニューラルネットワークを示している。
【0049】
いずれの場合も、ニューラルネットワークは、2つの畳み込み層を備える畳み込みニューラルネットワークである。したがって、パルスデータセット100(50の変数を含む)は、6つの特徴を抽出する第1の畳み込み層110で処理され、次いで、第2の畳み込み層120が層110から3つの特徴を抽出する。
【0050】
第1の畳み込み層110のフィルタ(または畳み込みカーネル)の大きさは8であり、第2の畳み込み層120のフィルタの大きさは3である。
【0051】
畳み込み層120は、それぞれ80個、40個、20個および10個のニューロンを含む4層のニューロンの連鎖を含むニューラルネットワークの全結合層130に結合される。
【0052】
第1のニューラルネットワークの場合、全結合層130は出力層で値140を返す。本実施例において、値140は、細胞が正常である場合は1であり、異常である場合は0である。
【0053】
モデルの各層を構成するすべてのニューロンについて、保持される活性化関数はシグモイド関数である。
【0054】
この第1のニューラルネットワークについて、正常値を定義する健康な血液の取得データ、50mg/L~90mg/Lの範囲の濃度のSB3-12の取得データ、および0.3%~0.5%の範囲の濃度のグルタルアルデヒドの取得データを用いて学習を行った。このようにして、大きく影響を受けた細胞を検出するようにニューラルネットワークを学習させた。それぞれの場合において、学習パルスは、関連する細胞が正常である場合は値1、関連する細胞が異常である場合は値0とラベル付けされた。
【0055】
学習の妥当性検証は、学習データから特定のデータを抜き出し、学習済みニューラルネットワークに投入することで行った。その結果、出力層の閾値を0.5とした場合(すなわち、出力層が0.5よりも大きい値を返した場合は値1を、それ以外は0を返す)、パルスの検証セットで偽陽性率が4.3%、偽陰性率が3.1%と優れた結果を得ることができた。
【0056】
第2のニューラルネットワークの場合、全結合層130は、出力層でトリプレット値150を返す。本実施例において、トリプレット値の3つの要素は、0または1の値をとる。
【0057】
この第2のニューラルネットワークについて、所与のパルスが正常である([1;0;0])か、球形化の形態学的特徴を有する([0;1;0])か、硬直化の形態学的特徴を有する([0;0;1])か、を示すトリプレット値で学習パルスがラベル付けされる以外は、第1のニューラルネットワークと同様の方法で学習を行った。
【0058】
学習の妥当性検証は、学習データから特定のデータを抜き出し、学習済みニューラルネットワークに投入することで行った。その結果、出力層の各要素は、[0.92;0.02;0.06]がトリプレット値[1;0;0]を返し、[0.01;0.99;0]がトリプレット値[0;1;0]を返し、[0.05;0.25;0.7]がトリプレット値[0;0;1]を返すように、最大成分まで減少するという優れた結果を得ることができた。この条件下で、検証用パルスセットにおいて、正常と分類された細胞の偽陽性率は4%であり、球形化の形態学的特徴を有すると分類された細胞の偽陽性率は7.5%であり、硬直化の形態学的特徴を有すると分類された細胞の偽陽性率は8.2%であった。
【0059】
これらの結果は優れたものであり、ハイドロフォーカスを用いない簡単なインピーダンス測定で極めて精密な結果を得ることができる本発明による装置の妥当性を示すものである。
【0060】
本出願人の研究により、一意の畳み込み層で十分であり、2層以下の全結合層でも十分であることが立証された。
【0061】
代替的に、本出願人は、上述した畳み込みニューラルネットワークの代わりに、多層パーセプトロン(MLP)を使用することも可能であると考えている。実際、このタイプのニューラルネットワークは、同等の数のパラメータでより精度の低い結果を出すとしても(通常、5%~8%の偽陽性率の増加)、もっともらしい代替案となる。
【0062】
その結果、マラリアまたは鎌状赤血球症など、赤血球またはその他の細胞の形態学的特徴を変化させる病態の検出について道が開かれた。いずれの場合も、健康な血液と病気の血液をテストして対応するパルスをラベル付けし、これらのデータで図11または図12のニューラルネットワークを学習させるだけで十分である。
【0063】
例えば、すべての赤血球がマラリアに寄生されている培養試料を分析することで、この病態にラベル付けされた一連のシグネチャが得られ、この感染症に特化する分類器を刺青することができる。
【0064】
また、本出願人は、下限持続時間と大きさPP、または大きさWRと大きさPPとの組み合わせにより、正常な細胞と異常な細胞とを統計的に簡単に区別することができることを確認した。これにより、例えば後述するニューラルネットワークを使用することなく、本発明を実現することができる。
【0065】
このように、健康な血液に関する一連の測定結果に基づいて、本出願人は図13を作成した。この図において、本出願人は、パルスからのすべての大きさをグループ化し、パルス領域Box1~Box8を画定した。
【0066】
図13において、パルス領域を以下のように定義した。これらは、PP(最小;最大)とWR(最小;最大)の範囲で表現されている。
【0067】
Box1:(70;80)~(15.5;18)
Box2:(69;79)~(18.5;21)
Box3:(50;58)~(19;24)
Box4:(36;42)~(20;27)
Box5:(26;32)~(22;32)
Box6:(8;22)~(26;32)
Box7:(8;22)~(32;38)
Box8:(8;22)~(38;44)
次いで、本出願人は、図3および図4に示すパルスデータセットで同様の操作を繰り返し、一方では健康な血液について、他方では図3および図4に示す血液について、各パルス領域に関する母集団統計量を比較することで、正常性に関する2つの基準を確立した。実際、母集団統計量を比較することで、パルス領域ごとに有意な差を確立した。
【0068】
したがって、図14において、本出願人は、健康な血液について各パルス領域に関する統計的母集団分布(実線で示し、領域を塗りつぶして定義)と、破線で健康な血液の値を示している。
【0069】
図15(および図16)において、本出願人は、健康な血液について各パルス領域に関する統計的母集団分布(実線で示し、図14と同様に領域を塗りつぶして定義)を再現し、これらと同じ分布であるがグルタルアルデヒド(およびSB3-12)を含む血液から得られたパルスに関する分布(破線で示す)を再現した。
【0070】
図14図16は、血液試料からのパルスの母集団統計量をとり、図14図15および図16で再現)で定義した正常な包絡線と比較することで、試料が健康であるか、球形化または硬直化する傾向を示すかを判断すれば十分であることを明確に示している。
【0071】
このように、試料の十分な部分(例えば10,000個程度の細胞)を分析することで(血液の分析量は計数条件に依存する)、ニューラルネットワークを使用することなく、「健康な血液試料」または「異常な血液試料」に関する情報を迅速に返すことができる。
【0072】
代替的に、「下限持続時間/PP」のグラフの代わりに、「WR/PP」のグラフを使用して、正常性に関する基準を定義するパルス領域を確立することもできる。
【0073】
図17は、2つの健康な血液試料を11日間にわたって分析した結果を示している(各分析で二重に実施)。この図は、WR/PPのグラフにおけるパルスデータセットに関する分布が、試料の年代によって変化していることを示している。
【0074】
各分析において、WPPとWR/PPの組に応じたパルスデータセットの統計的分布を算出し、図5および図13に示す指標の範囲に対して統計結果を確立した。
【0075】
図18において、図を簡潔にするために、Box3’の結果のみを示している。この図は、図5に示すBox3’に関連するパルスの統計的経時変化を、試料の年代に応じて示しており、その時間的起点は、患者から試料を採取した日となっている。
【0076】
この図から、血液試料が7日間にわたって「正常」(変化なし)を維持した後、統計マーカーが大きく逸脱し始めるという点で「異常」になったことを示している。
【0077】
このように、本発明を使用することで、血液試料における経時変化をモニタリングすることができる。この図は、当該技術分野における科学文献に準拠している。すなわち、試料が古くなると、試料中に存在する赤血球の生体力学的特性が劣化する。特に、赤血球は、時間の経過とともに弾性が低下することが知られている。試料における経時変化は、保存期間や保存条件などの影響を受ける場合がある。いずれにしても、図17および図18に示すように、本発明による配置によって、例えば試料の妥当性を示す、この試料の経時変化に関する情報を導き出すことができることを示している。
【0078】
上記では主に赤血球の研究に言及しているが、本発明は、例えば血小板など、形態学的特徴が変化する可能性があるその他のタイプの細胞にも適用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】