(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】流量測定用電気光学装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
G01N15/14 D
G01N15/14 B
G01N15/14 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543448
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 FR2021050077
(87)【国際公開番号】W WO2021144545
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】313015649
【氏名又は名称】ホリバ アベイクス エス アー エス
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【住所又は居所原語表記】Parc Euromedecine, Rue du Caducee, BP 7290, F-34184 MONTPELLIER cedex 4, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェネヴォー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ロンゲート,ネリー
(57)【要約】
流量測定用電気光学装置は、特性評価対象の流体が流れる測定槽と、別々のスペクトルを有する光を発光するための少なくとも2つの発光ガンと、小角回折の測定を可能にするトリガーガンと、減衰および少なくとも1つの蛍光の測定を可能にする受信ガンと、を備える。第1の発光ガンは、流体の流れに垂直な主光軸を画定する光源を備え、第2の発光ガンは、主光軸および流体の流れに実質的に直交する副光軸を画定する第2の光源を備える。第1の発光ガンおよび第2の発光ガンは、測定槽の一方の側に配置されており、受信ガンは、主光軸に沿って測定槽の他方の側に配置されており、トリガーガンは、副光軸に沿って測定槽の他方の側に配置される。受信ガンは、減衰を測定するための検出チャネルと、少なくとも1つの蛍光信号を測定するための少なくとも1つの検出チャネルと、第1の発光ガンおよび第2の発光ガンと流体の流れの中の粒子との間の光ビームの相互作用によるビームを集めるための単一の集光レンズと、を備え、集光レンズは、減衰を測定するための検出チャネルに向けて主光軸に沿って、透過した光ビームが実質的に平行化されたビームとなるように配置されており、受信ガンは、少なくともその一部が測定槽に対して移動可能な単一の機械的ユニットを構成する。受信ガンは、光ビームが実質的に平行化される位置で、集光レンズの下流側に配置された第1のダイクロイックミラーをさらに備え、該ミラーは、減衰を測定するための検出チャネルに向けて、第1の発光ガンと流体の流れの中の粒子との間の相互作用による光ビームを部分的に透過させるように、および少なくとも1つの蛍光信号を測定するための少なくとも1つの検出チャネルに向けて、第2の発光ガンと流体の流れの中の粒子との間の相互作用による光ビームを部分的に反射するように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流量測定用電気光学装置であって、
特性評価対象の流体が流れる測定槽(8)と、別々のスペクトルを有する光を発光するための少なくとも2つの発光ガン(4,6)と、小角回折の測定を可能にするトリガーガン(9)と、減衰および少なくとも1つの蛍光の測定を可能にする受信ガン(10)と、を備え、
・ 前記第1の発光ガン(4)は、580nm超の中心波長を有する光源(40)を備え、前記光源(40)は、前記流体の流れに垂直な主光軸を画定し、
・ 前記第2の発光ガン(6)は、580nm未満の中心波長を有する第2の光源(60)を備え、前記第2の光源(60)は、前記主光軸および前記流体の流れに実質的に直交する副光軸を画定し、
・ 前記第1の発光ガン(4)および前記第2の発光ガン(6)は、前記測定槽(8)の一方の側に配置されており、前記受信ガン(10)は、前記主光軸に沿って前記測定槽(8)の他方の側に配置されており、前記トリガーガン(9)は、前記副光軸に沿って前記測定槽(8)の他方の側に配置されており、
・ 前記受信ガン(10)は、減衰を測定するための検出チャネル(12)と、少なくとも1つの蛍光信号を測定するための少なくとも1つの検出チャネル(14)と、前記第1の発光ガン(4)および前記第2の発光ガン(6)と前記流体の流れの中の粒子との間の光ビームの相互作用によるビームを集めるための単一の集光レンズ(11)と、を備え、前記集光レンズ(11)は、前記減衰を測定するための検出チャネル(12)に向けて前記主光軸に沿って、透過した前記光ビームが実質的に平行化されたビームとなるように配置されており、前記受信ガン(10)は、少なくともその一部が前記測定槽(8)に対して移動可能な単一の機械的ユニットを構成し、
前記受信ガン(10)は、前記光ビームが実質的に平行化される位置で、前記集光レンズ(11)の下流側に配置された第1のダイクロイックミラー(18)をさらに備え、前記第1のダイクロイックミラー(18)は、前記減衰を測定するための前記検出チャネル(12)に向けて、前記第1の発光ガン(4)と前記流体の流れの中の粒子との間の前記相互作用による前記光ビームを部分的に透過させるように、および前記少なくとも1つの蛍光信号を測定するための前記少なくとも1つの検出チャネル(14)に向けて、前記第2の発光ガン(6)と前記流体の流れの中の粒子との間の前記相互作用による前記光ビームを部分的に反射するように配置される、
流量測定用電気光学装置。
【請求項2】
前記受信ガン(10)は、広角回折を測定するための検出チャネル(16)と、前記集光レンズ(11)の下流側に配置された第2のダイクロイックミラー(20)と、を備え、前記第2のダイクロイックミラー(20)は、前記少なくとも1つの蛍光を測定するための前記少なくとも1つの検出チャネル(14)および前記広角回折を測定するための前記検出チャネル(16)のうちの少なくとも一方に向けて、前記第2の発光ガン(6)と前記流体の流れの中の粒子との間の前記相互作用による前記光ビームを部分的に反射するように配置される、請求項1に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項3】
前記減衰を測定するための前記検出チャネル(12)は、赤色光の量を測定するように配置された検出器(126)を備え、前記少なくとも1つの蛍光を測定するための前記少なくとも1つの検出チャネル(14)は、緑色光の量、およびオレンジ色光の量または近赤外光を測定するように配置された検出器(144)を備え、前記広角回折を測定するための前記検出チャネル(16)は、青色光の量を測定するように配置された検出器(164)を備える、請求項1または2に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項4】
前記赤色光の量を測定するように配置された前記検出器(126)は、フォトダイオードであり、前記緑色光の量を測定するように配置された前記検出器(144)は、光電子増倍管またはシリコン光電子増倍管であり、前記青色光の量を測定するように配置された前記検出器(164)は、フォトダイオードである、請求項3に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項5】
前記受信ガン(10)は、一体的に形成され、前記測定槽(8)に対して一体的に移動可能である、請求項1~4のいずれか1項に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項6】
前記第2のダイクロイックミラー(20)は、反射したビームの経路において前記第1のダイクロイックミラー(18)の下流側に配置されており、蛍光を測定するために前記検出チャネル(14)に向けて前記ビームを部分的に反射するように、および広角回折を測定するために前記検出チャネル(16)に前記ビームを部分的に透過させるように配置される、請求項5に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項7】
前記減衰を測定するための前記検出チャネル(12)、前記少なくとも1つの蛍光信号を測定するための前記少なくとも1つの検出チャネル(14)、および前記広角回折を測定するための前記検出チャネル(16)の各々は、それぞれの前記検出器(126,144,164)の上流側に光学系(122,140,160)およびダイアフラム(124,142,162)を順に備える、請求項6に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項8】
前記集光レンズ(11)は、2つのレンズ(110,112)と、前記2つのレンズ(110,112)の下流側に配置されたダイアフラム(114)と、を備え、前記レンズ(110,112)の一方は、前記測定槽(8)に対して移動可能であり、前記受信ガン(10)の残りの部分は、前記測定槽(8)に対して移動性を有さない、請求項1~4のいずれか1項に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項9】
前記第2のダイクロイックミラー(20)は、前記反射したビームの経路において前記第1のダイクロイックミラー(18)の上流側に配置されており、広角回折を測定するために前記検出チャネル(16)に向けて前記ビームを部分的に反射するように、および前記第1のダイクロイックミラー(18)に前記ビームを部分的に透過するように配置される、請求項8に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項10】
前記第1の発光ガン(4)は、赤色LEDである第1の発光源(42)を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項11】
前記第2の発光ガン(6)は、青色レーザである第2の発光源(62)を備える、請求項1~10のいずれか1項に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項12】
前記受信ガン(12)のすべてまたは一部を移動させることで前記装置の調整を可能にするように、および前記検出チャネル(12)における測定を可能にするように配置された1つまたは複数の調整要素をさらに備える、請求項1~11のいずれか1項に記載の流量測定用電気光学装置。
【請求項13】
1つまたは複数の実質的に平行化された前記ビームをオフセットするように配置された1つまたは複数のミラーをさらに備える、請求項1~12のいずれか1項に記載の流量測定用電気光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子、特に生体細胞を特性評価するための流量測定用電気光学装置の分野に関する。該装置は、特性評価対象の流体の流れが循環し、特性評価対象の細胞を収容する測定チャンバを備える。当該技術分野は、分析対象の試料中に存在する細胞を数えて分化するための電気的および光学的測定に基づく分析方法の使用に依存している。
【0002】
より詳細には、本発明は、細胞の計数および特性評価のためのマルチパラメトリック電気光学装置に関する。特性評価対象の流体は、好ましくは血液試料であるが、脳脊髄液、尿、胸膜液、滑液、細胞懸濁液、骨髄などを含む別の性質の生体液体であってもよい。また、試料には、分化および数える必要があるあらゆる性質の粒子(細胞、タンパク質、生物指標など)が含まれてもよい。
【0003】
より正確には、本発明は、少なくとも2つの光源と、抵抗率またはインピーダンスを測定するための装置と、光学パラメータ、典型的には減衰、広角回折および蛍光を測定するための複数の検出器と、を備える装置に関する。
【背景技術】
【0004】
これらの測定によって、流体中に存在する生体細胞または粒子の特性評価および計数を行うことができる。
【0005】
電気インピーダンス測定によって、粒子を数えてその大きさに関する情報を得ることができる。
【0006】
光学パラメータ(屈折、拡散、吸収および屈曲)によって、細胞の形状、体積、大きさおよび内部構造などの細胞に関する形態情報を抽出することができる。光源(レーザ、ハロゲン源または発光ダイオードなど)によって、レンズで集束されて、測定槽内を通過する生体細胞を照射する光を発生させることができる。生体細胞に接触した光は、細胞に相互作用する。光ビームの入射軸において、光は、複数のレンズによって集められ、ダイアフラムによって空間的にフィルタリングされることで、フォトダイオード検出器によって検出される。この測定により、選択された角度範囲において、構造情報と組み合わされた生物学的要素の大きさが示される。また、別の測定が、光ビームの入射軸で行われてもよい。入射光は、ストッパ(ビームストッパ)によって遮断されて、細胞によって拡散された信号は、フォトダイオード型のセンサで検出されて、前方散乱光(FSC)測定が行われる。この測定により、選択された角度範囲において、生物学的要素の大きさが示されるか、小さい粒子の測定がトリガーされるように機能することができる。光の別の部分が、直交方向に集められ、別のレンズセットと半反射ミラーのセットとを通過して、側方散乱光(SSC)信号を生成するためのセンサで測定される。この直交方向の光の測定により、生物学的要素の密度、粒度(構造)または細胞内の含有量が示される。
【0007】
蛍光の測定は、細胞マーカーとして、または生物学的要素の構造または機能に特有の分子プローブとして使用される蛍光染料を明らかにするために使用される。例えば、特異的細胞クラスに特有の抗体を蛍光色素と結合して使用した場合、この細胞クラスを明らかにすること、すなわち細胞の正確な特性評価を行うことができ、それを数えることができる。複数の蛍光を同時に使用することで、対象となる生体細胞の特性評価をより良好に行うことができる。
【0008】
流体が血液試料の場合、赤血球、白血球および血小板の系統である血液の代表的要素が定量的(計数)および定性的(数式)に測定される。この分析を血球計数または全血球計算(BFC)と呼ぶ。BFCの異常は、潜在的な病態(貧血、癌など)を医師に警告することができる。
【0009】
これらの細胞はすべて、骨髄にある血球芽細胞と呼ばれる同じ幹細胞から派生している。これらの幹細胞は、その後、いくつかの亜母集団に分化する。
【0010】
例えば、造血細胞の場合、当業者には、インピーダンス、回折または吸収によって得られる細胞の分析によって、赤血球、血小板および白血球を含む主要な細胞系統を識別できることが知られている。後者の集団はそれ自体、例えば、リンパ球、単球、好中球、好酸球および好塩基球などのいくつかのカテゴリーに細分化される。血液は、通常、もはや分裂しない成熟した細胞から構成される。
【0011】
本出願人による米国特許第5,138,181号に記載されているように、体積および見かけの白色光の減衰を同時に測定することにより、細胞計数および分化を実現することができる。例えば国際公開第2006/053960号には、一実施形態において、準単色光で開発された装置が記載されている。
【0012】
上述した各細胞タイプについて、様々な成熟レベルが知られている。赤血球は、まず、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球の順に作られ、好酸性赤芽球へと進化し、好酸性赤芽球から核を除去して網状赤血球が得られる。残存RNAを完全に消失させた後に、循環血液中で赤血球に分化するのは、この網状赤血球である。
【0013】
白血球は、骨髄から骨髄芽球という形で生まれ、その後、前顆粒球が生まれ、好塩基性、好酸性または好中性の顆粒球に変化し、最初は分化されていないが、成熟するにつれて核がより細分化されていく。
【0014】
これらの骨髄芽球は、単球系統も生み出し、これは、単芽球、前単球、および末梢血を通過する単球を生み出す。
【0015】
骨髄芽球が生み出す多能性幹細胞は、リンパ系幹細胞の形で分化することによってリンパ球系を生み出し、その系統の一部であるTリンパ球の系統は、胸腺と神経節で成熟を続け、他の部分は骨髄に留まってBリンパ球の系統を生み出す。これらのBリンパ球は、形質細胞の形で活性化されると、病原性抗原と闘うための抗体を産生する。
【0016】
血液中の血小板は、その一部が巨核芽球に由来する。巨核芽球自体は、骨髄芽球が生み出す骨髄球系前駆体に由来し、その成熟の最終段階である血小板形成性巨核球に達すると、その細胞質が分裂して血小板が産生される。もう1つの血小板である架橋血小板は、元の細胞の名残であるRNA負荷を含んでいる。
【0017】
一部の病態の診断には、循環血液中の造血細胞の計数および特性評価をより細かく行う必要がある。特に、未成熟型の赤血球である網状赤血球および赤芽球などの特異的集団を識別することが必要になる。同様に、未成熟のリンパ球、単球または顆粒球と呼ばれる、白血球の前駆体である未成熟細胞を検出することも非常に重要である。また、活性化リンパ球または架橋血小板の分類および計数によって、患者の診断がより正確に行えるようになる。
【0018】
細胞の特異的な蛍光標識によって、高い特異性と未成熟細胞または異型細胞の検出とを提供することができる。このように、蛍光色素と結合した特異的な抗体を用いて、様々なタイプのリンパ球を正確に特性評価し、数えることができる。また、異型リンパ球および未成熟前駆細胞などの血液中に存在する他の異常細胞も、蛍光標識後に検出することができる。同様に、架橋血小板を蛍光色素で特異的に標識することができる。
【0019】
試料に含まれる微粒子集団のそれぞれを最も良好に分化するために、本出願人は、フランス共和国特許出願第2971337号において、流量測定用電気光学装置を提案した。この装置は、多くの利点を有している。しかしながら、この装置は、その構成のために、調整が複雑であり、測定槽へのアクセスが非常に制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、この状況を改善するものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的のために、本発明は、流量測定用電気光学装置を提案する。該装置は、特性評価対象の流体が流れる測定槽と、別々のスペクトルを有する光を発光するための少なくとも2つの発光ガンと、小角回折の測定を可能にするトリガーガンと、減衰および少なくとも1つの蛍光の測定を可能にする受信ガンと、を備える。
【0022】
この電気光学装置は、以下のように構成される。
・ 第1の発光ガンは、580nm超の中心波長を有する光源を備え、光源は、流体の流れに垂直な主光軸を画定する。
・ 第2の発光ガンは、580nm未満の中心波長を有する第2の光源を備え、第2の光源は、主光軸および流体の流れに実質的に直交する副光軸を画定する。
・ 第1の発光ガンおよび第2の発光ガンは、測定槽の一方の側に配置されており、受信ガンは、主光軸に沿って測定槽の他方の側に配置されており、トリガーガンは、副光軸に沿って測定槽の他方の側に配置される。
・ 受信ガンは、減衰を測定するための検出チャネルと、少なくとも1つの蛍光信号を測定するための少なくとも1つの検出チャネルと、第1の発光ガンおよび第2の発光ガンと流体の流れの中の粒子との間の光ビームの相互作用によるビームを集めるための単一の集光レンズと、を備え、集光レンズは、減衰を測定するための検出チャネルに向けて主光軸に沿って、透過した光ビームが実質的に平行化されたビームとなるように配置されており、受信ガンは、少なくともその一部が測定槽に対して移動可能な単一の機械的ユニットを構成し、受信ガンは、光ビームが実質的に平行化される位置で、集光レンズの下流側に配置された第1のダイクロイックミラーをさらに備え、第1のダイクロイックミラーは、減衰を測定するための検出チャネルに向けて、第1の発光ガンと流体の流れの中の粒子との間の相互作用による光ビームを部分的に透過させるように、および少なくとも1つの蛍光信号を測定するための少なくとも1つの検出チャネルに向けて、第2の発光ガンと流体の流れの中の粒子との間の相互作用による光ビームを部分的に反射するように配置される。
【0023】
この装置は、測定槽への自由なアクセスを実現し、受信ガンが単一の機械的ユニットとして作製されているために、調整が容易であるという利点を有する。また、フランス共和国特許出願第2971337号の装置と比較して、堅牢性が向上している。
【0024】
様々な変形例において、本発明は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を有することができる。
・ 受信ガンは、広角回折を測定するための検出チャネルと、集光レンズの下流側に配置された第2のダイクロイックミラーと、を備え、第2のダイクロイックミラーは、蛍光を測定するための少なくとも1つの検出チャネルおよび広角回折を測定するための検出チャネルのうちの少なくとも一方に向けて、第2の発光ガンと流体の流れの中の粒子との間の相互作用による光ビームを部分的に反射するように配置される。
・ 減衰を測定するための検出チャネルは、赤色光の量を測定するように配置された検出器を備え、少なくとも1つの蛍光を測定するための少なくとも1つの検出チャネルは、緑色光の量、およびオレンジ色光の量または近赤外光を測定するように配置された検出器を備え、広角回折を測定するための検出チャネルは、青色光の量を測定するように配置された検出器を備える。
・ 赤色光の量を測定するように配置された検出器は、フォトダイオードであり、緑色光の量を測定するように配置された検出器は、光電子増倍管またはシリコン光電子増倍管であり、青色光の量を測定するように配置された光検出器は、フォトダイオードである。
・ 受信ガンは、一体的に形成され、測定槽に対して一体的に移動可能である。
・ 第2のダイクロイックミラーは、反射したビームの経路において第1のダイクロイックミラーの下流側に配置されており、蛍光を測定するために検出チャネルに向けてビームを部分的に反射するように、および広角回折を測定するために検出チャネルにビームを部分的に透過させるように配置される。
・ 減衰を測定するための検出チャネル、1つまたは複数の蛍光信号を測定するための1つまたは複数の検出チャネル、および広角回折を測定するための検出チャネルの各々は、それぞれの検出器の上流側に光学系およびダイアフラムを順に備える。
・ 集光レンズは、2つのレンズと、2つのレンズの下流側に配置されたダイアフラムと、を備え、2つのレンズの一方は、測定槽に対して移動可能であり、受信ガンの残りの部分は、測定槽に対して移動性を有さない。
・ 第2のダイクロイックミラーは、反射したビームの経路において第1のダイクロイックミラーの上流側に配置されており、広角回折を測定するために検出チャネルに向けてビームを部分的に反射するように、および第1のダイクロイックミラーにビームを部分的に透過するように配置される。
・ 第1の発光ガンは、赤色LEDである第1の発光源を備える。
・ 第2の発光ガンは、青色レーザである第2の発光源を備える。
・ 装置は、受信ガンのすべてまたは一部を移動させることで装置の調整を可能にするように、および検出チャネルにおける測定を可能にするように配置された1つまたは複数の調整要素をさらに備える。
・ 装置は、1つまたは複数の実質的に平行化されたビームをオフセットするように配置された1つまたは複数のミラーをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して非限定的に例示する以下の説明により、より明確になるであろう。
【
図1】本発明による装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による装置の第2の実施形態を示す図である。
【
図3】本発明による装置の第3の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面および以下の説明には、本発明の特定の性質の要素が本質的に含まれる。これらは、本発明をよりよく理解するのに役立つだけでなく、その定義にも適宜貢献することができる。
【0027】
図1は、本発明による装置の第1の実施形態を示している。
【0028】
装置2は、測定槽8の一方の側に配置された第1の発光ガン4および第2の発光ガン6と、測定槽8の他方の側に配置されたトリガーガン9および受信ガン10と、を備える。受信ガン10は、集光レンズ11と、3つの検出チャネル12、14および16と、後述するダイクロイックミラー18および20と、を備える。ダイクロイックミラー18および20は、測定槽8内に伝播する光ビームを、3つの検出チャネル12、14および16それぞれに特異的な、異なる波長(ここでは赤色、青色、緑色)を有する複数の光ビームに分離する。検出チャネル12は、減衰を測定するために使用され、検出チャネル14は、蛍光を測定するために使用され、検出チャネル16は、90°回折を測定するために使用される(SSCとも呼ぶ)。
【0029】
本実施例において、第1の発光ガン4は、第1の発光源40と、成形光学系42と、レチクル44と、レチクル44から測定槽8に投影される長方形の大きさを小さくするように機能する集束光学系45と、を備える。
【0030】
本実施例において、第1の発光源40は、Epitex社のSMB660NR-1100赤色LEDであり、ランバート光源と同様の光度分布を有する。これにより、必要な均一性を得ることができる。LED40の発光スペクトルは、660nmを中心とした広いスペクトルである。LED40のチップは、1.1mm2の活性表面積を有する。第1の発光ガン4の出力において、すなわち測定槽8の中心においてLED40から供給される光パワーは、45μWである。一般的に、この第1の発光源は、中心波長が580nm超の発光スペクトルを有する。その一方で、後述するように、第2の発光源は、中心波長が580nm未満の発光スペクトルを有する。これは、赤色の測定と青色または緑色の測定を分離できるように実装された構成である。
【0031】
本実施例において、成形光学系42は、LED40とレチクル44との間に配置された2つの集光レンズを備える。これらの2つのレンズが開口ダイアフラムに投影することで、測定槽8内を伝播する生体細胞の流れに照射されるビームの均一性を確保することができる。LED40のスペクトルがチアゾールオレンジの蛍光スペクトルの一部と重なることを考慮するために、および蛍光を測定する検出チャネル14に結果として生じるノイズを制限するために、光ビームが平行化される位置で、成形光学系42の2つのレンズ間にカラーフィルタまたは干渉フィルタを任意選択で配置することができる。これにより、LED40の緑色成分をカットすることができる。
【0032】
本実施例において、レチクル44は、長方形の形状(150×500μm2)を有する。このように、LED40と成形光学系42とともに使用することで、細胞に対するシステムの近軸倍率は0.172となる。したがって、細胞の流れに対するレチクル44の近軸像は、86μm×25.8μm(それぞれ500μm×0.172と150μm×0.172)の長方形である。また、Zemaxでのシミュレーションでは、完全な「実」システム(回折により制限有り)は、90μm×28.8μmのスポット(ZemaxでクロスXとクロスYを曲線のふもとで得られた大きさ)が得られることが示された。実験的に測定された画像寸法は、完全な「実」システムが作り出す画像寸法に非常に近いものだった。
【0033】
測定槽8では、LED40上の1点(LED40の像に対応し、レチクルがない)からのビームが平行化する。これは、開口ダイアフラムが無限遠に投影されることを意味する。また、これは、その画像をシステムの焦点と一致させように設計されている。
【0034】
第1の発光ガン4および検出ガン12によって、移動する生体細胞による約660nmのLEDビームの減衰を測定することができる。この測定は、細胞におけるビームの形態と照射の均一性を精密に制御することで向上させることができる。
【0035】
本実施例において、減衰を測定するための検出ガン12は、受信チャネル10のダイクロイックミラー18の下流側に配置されており、集束レンズ122と、ダイアフラム124と、検出器126と、を備える。
【0036】
本実施例において、ダイクロイックミラー18は、Semrock社のFF605-Di02フィルタであり、集光レンズ11で平行化したビームのうち、605nm超の波長を有する部分を検出チャネル12に透過させ、集光レンズ11で平行化したビームの他の部分、すなわち605nm未満の波長を有する部分を検出チャネル14および検出チャネル16に向けて反射する。ここで、ダイクロイックミラー18は、赤色を98%透過させ青色および緑色を99%反射する。ダイクロイックミラー18の仕様により、集光レンズ11は、2°未満の半角でフィルタ18に到達するように測定槽8からのビームを平行化する。
【0037】
本実施例において、バンドパスフィルタ120は、Semrock社のFF01-655/40バンドパス干渉フィルタであり、LED40からの赤色波長(635nm~675nm)のみを透過させることができる。本実施例において、集束レンズ122は、直径1mmを有し、そこから22mmの位置にあるダイアフラム124に光ビームを集束させる。本実施例において、集束レンズ122は、オーダーメイドのモデルである。この平凸レンズは、N-BK7材料から作製されており、12.42mmの曲率半径を有する。ただし、他のレンズを使用することもできる。最後に、本実施例における検出器126は、Hamamatsu社のS1223フォトダイオードであり、ダイアフラム124から、つまり焦点位置から6.75mmの位置に配置される。検出チャネル12に入るビームの半角は、バンドパスフィルタ120で規定された7°未満であり、測定槽からのこのビームの開口数は、受信ガン12のダイアフラムにより、0.31に制限されている。
【0038】
本実施例において、第2の発光ガン6は、第2の発光源60と、成形光学系62と、を備える。
【0039】
本実施例において、第2の発光源60は、Osram社により、488nmで発光する50mWのレーザダイオードを備える青色レーザ光源であり、その出力は、アナモルフィックレンズによって、レーザ光源60の出力においてビームが楕円形になるように成形される。
【0040】
本実施例において、成形光学系62は、焦点距離が75mmの球面レンズを備え、例えば、Thorlabs社のAC127-075-Aの対である。焦点距離が比較的長いレンズを使用することで、生体細胞と光ビームとの間の相互作用において、より深い被写界深度を得ることができる。この楕円は、測定槽内で約200μm×30μm(1/e2において)の大きさを有し、垂直偏光である。
【0041】
レーザ光源60は、測定槽8の細胞の流れ中の焦点位置にあるという利点を有する。これにより、ビームの高い品質と高い再現性を得ることができる。また、横方向と縦方向の位置決めに対する高い公差を得ることもできる。これは、横方向の位置決めが測定槽内のレーザビームの長さ(扁平な楕円)により有利であり、縦方向の公差がレーザと測定槽との間の距離に依存するためである。
【0042】
レーザ光源60は、蛍光測定用検出チャネル14、および90°回折を測定するための検出チャネル16によって使用される。この2つの検出チャネルは、集光レンズ11で平行化されたビームのうち、波長が605nm未満であり、ダイクロイックミラー18で反射した部分を処理する。ダイクロイックミラー20は、ダイクロイックミラー18の下流側で、このビームを2つに分離するために使用されるビームの経路内に配置される。本実施例において、ミラー20は、506nm未満の波長を反射し、506nm超の波長を透過するSemrock社のFF506-Di03フィルタである。
【0043】
このように、蛍光を測定するための検出チャネル14は、生体細胞の核酸を標識したチアゾールオレンジの蛍光からの緑色の波長を測定する。このように、検出チャネル14は、ダイクロイックミラー18で反射したビームの軸上に配置される。検出チャネル14は、1対のレンズ140と、ダイアフラム142と、検出器144と、を備える。1対のレンズ140により、ダイクロイックミラー20で透過したビームをダイアフラム142で集束することができる。これは、1.5mmの直径を有する。ダイアフラム142は、空間的なフィルタリングを行い、これにより、高いS/N比を得ることができる。その後、本実施例においてHamamatsu社のH10723光電子増倍管である検出器144によって、蛍光信号が測定される。検出チャネル14の開口数は、0.6である。
【0044】
ダイクロイックミラー20で反射したビームの部分は、青色におけるレーザと生体細胞との間の相互作用から90°回折の測定のための検出チャネル16に向けられる。
【0045】
本実施例において、検出チャネル16は、集束レンズ160と、ダイアフラム162と、検出器164と、を備える。本実施例において、集束レンズ160は、Thorlabs社のLA-1270-A参照レンズであり、ダイアフラム162は、1.5mmの直径を有し、フォトダイオード164は、Hamamatsu社のS1223フォトダイオードである。ここでも、ダイアフラム162は、空間的なフィルタリングを行い、これにより、高いS/N比を得ることができる。
【0046】
上述したように、測定槽8の下流側の集光レンズ11は、検出チャネル12、14および16と共通である。本実施例において、集光レンズ11は、測定槽8から放出される流れを最大限に集めるために、0.6という非常に大きい開口数を有する。この集光レンズの焦点距離は、測定槽へのアクセスを容易にするために十分に大きいように選択される(本実施例において、測定槽とレンズとの間の距離は5.2mmである)。本実施例において、集光レンズ11は、1対のレンズであり、これにより、存在する波長を変化させることができるため(488nm~700nm)、色収差を制限することもできる。
【0047】
受信ガン10は、検出ガン12のダイアフラム124に代えて導入される0.3mmの直径を有するダイアフラムで調整される(
図1に図示せず)。小さい直径(0.3mm)を有するダイアフラムを使用することで、高い調整精度を得ることができる。受信ガン10の最適な位置は、フォトダイオード126で検出される最大光度に対応する。そのために、受信ガン10に対する測定槽8の位置は、受信チャネル10の要素をすべて受ける機械的ユニットを移動させる装置によって3軸で調整される。これにより、1回の精密な調整で3つの検出器を調整することができるようになる。この調整は、減衰用検出器126と同じ検出器を使用するため、簡略化されている。これにより、例えばカメラなどの大きい機器を使用する必要がなくなり、これは、アフターサービスに携わる者にとって特に有利である。
【0048】
任意選択で、それぞれの検出チャネル12、14および16に、85%、90%および96%の透過率をそれぞれ有する減衰120(赤色)、90°回折(SSC)(青色)および蛍光(緑色)専用のバンドパスフィルタを追加することができる。このように、ダイクロイックミラー18および20の特性を考慮すると、レンズの界面での反射率が1%の場合、透過率は減衰において78%、回折において83%、蛍光において86%となる。
【0049】
減衰において、寄生光の割合は青色および緑色で2.10-6%である。90°回折において、この割合は、赤色で2.10-6%、緑色で9.10-3%である。蛍光信号が弱いため、光電子増倍管144のゲインが非常に高い。そのため、このチャネルにおける寄生光、特にレーザに関連する青色光を考慮することが重要であり、ここで、青色および赤色で3.10-4%となっている。
【0050】
トリガーチャネル9は、ビームブロッカー90と、検出器92と、を備える。本実施例において、488nmにおける軸上の信号検出がトリガー信号として使用される。トリガーチャネル9は、レーザの入射ビームを排除するためのビームブロッカーを備える。本実施例において、ビームブロッカーは、0.8mmの幅を有する垂直なバーであり、レーザ光源60の軸方向に測定槽8から5.5mmの位置に配置される。その幅は、光源60からのレーザビームをブロックするのに十分であり、横軸におけるその大きさは、非常に安定しており、300μm未満を維持している。本実施例において、検出器92は、Hamamatsu社のS1223であり、これにより、小角回折測定(FSCとも呼ぶ)を行うことができる。
【0051】
本出願人による臨床試験では、本装置によって、次のように白血球の識別が可能であることが示された:LMNE(リンパ球、単球、好中球、好酸球)、Baso(好塩基球)、IG(未熟顆粒球)、LYA(異型リンパ球)、HRC(高RNA含有)、ERB(赤芽球)。本装置によって、赤血球と、網状赤血球の3つの成熟度指標、および血小板の識別をすることができる。
【0052】
また、本装置は、一体型の受信ガン10を有しているため、従来の装置よりも調整が非常に容易である。また、測定槽8へのアクセスが非常に容易であるため、そのメンテナンスが非常に容易になり、長期にわたる測定の品質の維持と使用コストの最適化の両方を実現することができる。
【0053】
図2に示す装置は、一体型の受信ガンの概念をさらに発展させた第2の実施形態を示しており、これにより、調整手順をさらに簡略化し、装置の製造コストを削減することができる。
【0054】
本実施形態において、第1の発光ガン4、測定槽8およびトリガーガン9は、
図1に示す装置のものと同一である。
【0055】
本実施例において、第2の発光ガン6は、そのレーザ光源60が10mW程度の出力のレーザダイオードである点が異なる。出力が10mWと低いため、ペルティエ効果による温度調節が不要であり、省スペースと低コストを実現することができる。それにもかかわらず、パワー密度を上げるために、測定槽内の光ビームの高さは低くなっている。レーザダイオードからの光ビームは、アナモルフィックレンズによって、レーザの出力においてビームが楕円形になるように成形される。光ビームは、同じ成形光学系62によって、測定槽8内の生体細胞の流れに集束される。
【0056】
後述するように、装置の可動部分を単一のレンズに限定するために、検出チャネル12、14および16は、ダイクロイックフィルタ18および20を含む共通の軸を有する。ダイクロイックフィルタ20は、検出チャネル12を第1の発光源4の軸に維持されるように、ダイクロイックフィルタ18の上流側に配置される。集光レンズ11の設計により、ダイクロイックフィルタ18および20の大きさは、第1の実施形態のダイクロイックフィルタの大きさよりも小さくなっている。これは、大幅なコスト削減になるとともに、よりコンパクトで小型の光学システムを実現することができる。また、検出チャネル12を介して調整が行われるため、検出器144を検出器124に近づけることで、検出器144上の光ビームの位置決めをより精密に行うことができる。ここで、ダイクロイックフィルタ18は変更しておらず、ダイクロイックフィルタ20はSemrock社のFF518-Di01フィルタであり、その分離波長は518nmである。このように、青色放射は検出チャネル16に送られ、緑色放射は検出チャネル14に送られ、赤色放射は検出チャネル12に送られる。
【0057】
ビームの大きさを小さくすることで、減衰用検出チャネル12は、フォトダイオード126のみを備えるように簡略化されている。任意選択で、発光源40の発光波長を実質的に中心とする集束レンズおよび/またはバンドパスフィルタを設けることもできる。
【0058】
同様に、蛍光用検出チャネル14は、入力側にSemrock社のFF01-550/49干渉フィルタ(任意選択且つ図示せず)、およびそれに続く集束レンズ140のみを備えるように簡略化されている。集束レンズ140は、光電子増倍管144(ここではシリコン光電子増倍管(SiPM)に簡略化されている)にビームを集束する。
【0059】
ビームの大きさを小さくすることで、90°回折用検出チャネル16は、フォトダイオード164のみを備えるように簡略化されている。任意選択で、検出波長を中心とする集束レンズおよび/またはバンドパスフィルタ(例えば、Semrock社のFF01-482/35フィルタ)を設けることもできる。
【0060】
ダイクロイックミラー18および20とバンドパスフィルタが同じ機械的部分に固定されている(すなわち受信ガン10に固定されているが、可動レンズ112から離れている)ため、精度が向上している。実際、ダイクロイックフィルタの角度をより良好に制御することができ、公差をより小さくすることができる。
【0061】
上述したように、本実施形態における主な変更点は、集光レンズ11である。ここで、集光レンズ11は、測定槽8の下流側で、測定槽8の近傍において、第1の発光チャネル4の発光軸上の2つのレンズ110および112と、ダイアフラム114と、ダイアフラム114がその焦点面にあるように、ダイアフラム114の下流側に配置されたレンズ116と、を含む構成で実現されている。
【0062】
レンズ110は、非常に大きい開口数(ここでは0.6)と大きい直径(25.4mm)とを有する。その焦点距離は、測定槽とレンズ110との間に空間を確保するために非常に大きい。これにより、レンズ110の第1の表面の中心が測定槽8から4.6mmの位置になるため、測定槽へのアクセスが容易になる。本実施例において、レンズ110は、非球面レンズであり、これにより、球面収差を制限することができる。
【0063】
次いで、レンズ112は、空間的なフィルタリングを行うダイアフラム114で光ビームを集束し、このようにフィルタリングされたビームは、6mmの直径を有するレンズ116で無限遠に反射する。本実施例において、ダイアフラム114は、1.5mmの直径を有する。レンズ112によって、光ビームの大きさを小さくすることができ、よりコンパクトな光学システムを得ることができ、光学要素の価格を低減することができる。
【0064】
レンズ110および112の後にビームを集束することで、光ビームの大きさを小さくしながら空間的なフィルタリングを実施することができる。そのため、装置の他の部分のフィルタおよび検出器も従来よりも小さいものを選択することができ、機構もよりコンパクトにすることができる。焦点距離および集光レンズの直径を大きくすることで、測定槽8から遠ざけることができ、特に交換時のアクセスを容易にすることができる。
【0065】
この集光レンズ11の実現は、第1の実施形態よりも調整をより簡単且つ確実に行うことができるようになるため、非常に有利である。実際、測定槽8に対して受信ガン10全体を移動させる必要がある第1の実施形態の場合とは異なり、第2の実施形態の場合は、可動式にしたレンズ112のみを移動させればよい。調整は、検出チャネル12のフォトダイオード126を取り除き、集束レンズと、直径0.3mm、厚さ1mmのダイアフラムとを備える調整ツールを、集束レンズの焦点面に配置し、フォトダイオードを戻すことで行われる。ダイアフラムの直径が非常に小さいため、調整の際の動作点は1か所のみであり、これは、フォトダイオードで測定された最大光度に対応する。そのために、ダイアフラム114に対するレンズ112の位置は、3軸で調整される。また、フォトダイオード126は、調整を行うための電子機器を構成しているため、信頼性が高く、使用も簡単である。また、調整ツールを追加することで、よりコンパクトで光学ベンチをもつことができるようになる。
【0066】
この第2の実施形態で実装される装置は、第1の実施形態よりもコンパクトであり、製造コストが低い。それにもかかわらず、測定槽へのアクセス性という同じ利点を有し、特に、装置の可動部分がレンズ112のみなので、機械的設計が非常に単純になる。
【0067】
図3に示す装置は、2つの蛍光信号が測定される第3の実施形態を示すものである。測定を加えながら一体型の受信ガンの概念が基本であることに変わりはない。
【0068】
本実施形態において、第1の発光ガン4、測定槽8およびトリガーガン9は、
図1および
図2の装置のものと同一である。発光ガン6は、
図1の装置のものと同一であり得、あるいは
図2の装置のものと同一であり得る。この選択は、例えば使用される抗体および蛍光色素に応じて、測定槽に必要な光エネルギーに依存していてもよい。
【0069】
本実施形態において、集光レンズ11および受信ガンの調整方法は、
図2の装置のものと同一である。
【0070】
ここで、ダイクロイックフィルタ18は変更しておらず、ダイクロイックフィルタ20はSemrock社のFF500-Di01フィルタであり、その分離波長は500nmである。本構成において、ダイクロイックフィルタが追加されている。このダイクロイックフィルタはSemrock社のFF555-Di03フィルタであり、その分離波長は555nmを中心としている。このように、青色放射は検出チャネル16に送られ、緑色放射は検出チャネル14に送られ、黄色放射は検出チャネル22に送られ、赤色放射は検出チャネル12に送られる。
【0071】
減衰用検出チャネル12、集光レンズ11、90°回折用検出チャネル16および光学ベンチの調整方法は、
図2の装置のものと同一である。蛍光用検出チャネル14は、使用する検出器が光電子増倍管またはシリコン光電子増倍管(SiPM)である点以外は、
図2のものと同一である。
【0072】
装置は、蛍光用検出チャネル22をさらに備える。蛍光用検出チャネル22は、入力側にFF01-585/40干渉フィルタ(任意選択且つ図示せず)、およびそれに続く集束レンズ240を備える。集束レンズ240は、光電子増倍管またはシリコン光電子増倍管(SiPM)244にビームを集束するレンズ140と同一である。
【0073】
以上、上記部分について、正確に参照して本発明の構成を説明した。言うまでもなく、本発明は、これらの部分に限定されるものではなく、レーザの波長、フィルタ、光学系、集光レンズ、またはレンズおよび検出器に関連して、当業者が適宜選択および適合することができる他の同等の要素を使用することができる。また、トリガーガンは、大きさに関する測定を行うための軸で回折を測定するために使用され得る。なお、上述した実施形態によって、2つの発光チャネルをともに使用することができることに留意されたい。これにより、すべての測定を同時に行うことができる。その結果、測定率が高いシステムを得ることができる。変形例において、発光ガンを順次作動させることもできる。また、上記および特許請求の範囲において、特にビームが軸に沿って実質的に平行化されることが言及されている場合、ビームは、1つまたは複数のミラーによってその後オフセットされ得る。
【国際調査報告】