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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ヒンジアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   E05D 7/12 20060101AFI20230307BHJP
   E05D 3/14 20060101ALI20230307BHJP
   E05D 7/086 20060101ALI20230307BHJP
   E05D 7/04 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
E05D7/12 D
E05D3/14 A
E05D7/086
E05D7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543590
(86)(22)【出願日】2021-01-14
(85)【翻訳文提出日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 AT2021060014
(87)【国際公開番号】W WO2021142503
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】A50032/2020
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597140501
【氏名又は名称】ユリウス ブルーム ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Julius Blum GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 6973 Hoechst, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン グシュトライン
【テーマコード(参考)】
2E030
【Fターム(参考)】
2E030AB02
2E030BB03
2E030GA01
2E030GB04
2E030GC06
(57)【要約】
ヒンジアセンブリであって、家具キャビネット(2)、特に該家具キャビネット(2)のフレーム(2a)に固定すべき組付け体(7)と、少なくとも1つ、特に正確に1つの枢動軸(14)を介して互いに結合された2つの金具部分(5,6)を有する家具ヒンジ(4)と、家具ヒンジ(4)の金具部分(5,6)のうちの一方を組付け体(7)に、特に解除可能にロックすることができるロック装置(18)と、を備えており、ロック装置(18)は、外側輪郭部(19a)を有する少なくとも1つの保持部材(19)と、この外側輪郭部に対応するロック輪郭部(20)と、を備えており、ロック輪郭部(20)は、不動に形成された少なくとも1つの第1の部分(20a)と、第1の部分(20a)に対して相対的に可動の、好ましくは旋回可能な少なくとも1つの第2の部分(20b)とを有しており、少なくとも1つの保持部材(19)は、ロック位置でロック輪郭部(20)の両方の部分(20a,20b)の間に収容されている、ヒンジアセンブリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジアセンブリであって、
- 家具キャビネット(2)、特に該家具キャビネット(2)のフレーム(2a)に固定すべき組付け体(7)と、
- 少なくとも1つ、特に正確に1つの枢動軸(14)を介して互いに結合された2つの金具部分(5,6)を有する家具ヒンジ(4)と、
- 前記家具ヒンジ(4)の前記金具部分(5,6)のうちの一方を前記組付け体(7)に、特に解除可能にロックすることができるロック装置(18)と、
を備え、
前記ロック装置(18)は、外側輪郭部(19a)を有する少なくとも1つの保持部材(19)と、前記外側輪郭部(19a)に対応するロック輪郭部(20)とを備えており、前記ロック輪郭部(20)は、不動に形成された少なくとも1つの第1の部分(20a)と、前記第1の部分(20a)に対して相対的に可動の、好ましくは旋回可能な少なくとも1つの第2の部分(20b)とを有しており、前記少なくとも1つの保持部材(19)は、ロック位置で前記ロック輪郭部(20)の前記両方の部分(20a,20b)の間に収容されている
ことを特徴とする、ヒンジアセンブリ。
【請求項2】
前記ロック輪郭部(20)の前記両方の部分(20a,20b)は前記組付け体(7)に配置されていて、前記少なくとも1つの保持部材(19)は、前記家具ヒンジ(4)の前記ロックすべき金具部分(5,6)に配置されている、請求項1記載のヒンジアセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの保持部材(19)の前記外側輪郭部(19a)は、少なくとも所定の領域で円筒形に形成されている、請求項1または2記載のヒンジアセンブリ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの保持部材(19)が、円筒形のピンとして形成されており、好ましくは、前記家具ヒンジ(4)の前記ロックすべき金具部分(5,6)は、互いに離間させられた少なくとも2つの側方ウェブ(21a,21b)を有していて、前記側方ウェブの間に前記円筒形のピンが配置されている、請求項3記載のヒンジアセンブリ。
【請求項5】
前記ロック輪郭部(20)の前記少なくとも1つの不動の第1の部分(20a)は、フック要素(22)に形成されており、好ましくは、前記ロック輪郭部(20)の前記第1の部分(20a)は、前記少なくとも1つの枢動軸(14)を介して、前記ロックすべき金具部分(5,6)に結合されている前記金具部分(5,6)の方向で開かれている、請求項1から4までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項6】
前記ロック輪郭部(20)の前記少なくとも1つの不動の第1の部分(20a)は、横断面で凹状の、好ましくは半円形の区分を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項7】
前記ロック輪郭部(20)の前記両方の部分(20a,20b)は、横断面で見て共に3/4円を形成しており、かつ/または前記少なくとも1つの枢動軸(14)に対して平行な方向に互いにずらされて配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項8】
前記ロック輪郭部(20)は、前記少なくとも1つの枢動軸(14)に対して平行な方向で互いに離間されている少なくとも2つの不動の第1の部分(20a)を有しており、前記ロック輪郭部(20)の前記少なくとも1つの第2の部分(20b)は、前記少なくとも2つの不動の第1の部分(20a)の間に配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項9】
前記ロック輪郭部(20)の前記少なくとも1つの第2の部分(20b)は、レバー(23)に形成されており、好ましくは、
- 前記レバー(23)は一方の端部で、回動軸(24)を中心として回動可能に支持されていて、かつ/または
- 前記レバー(23)にロック位置の方向で力を加えるばね要素(25)、好ましくはねじりコイルばねまたは板ばねが設けられていて、かつ/または
- 前記レバー(23)は、前記ロック輪郭部(20)の前記第2の部分(20b)が配置されている自由端部(26)を有していて、かつ/または
- 前記レバー(23)は、前記ロック装置(18)を手動でロック解除するための操作要素(26a)が配置されている自由端部(26)を有している、
請求項1から8までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項10】
前記ロック装置(18)をロック解除するための少なくとも1つのロック解除レバー(37)が設けられており、好ましくは前記少なくとも1つのロック解除レバー(37)は、
- 前記ロック輪郭部(20)の第2の部分(20b)とは別個の構成部分として形成されていて、かつ/または
- 前記ロック解除レバー(37)には、手動の操作のために、または工具により行われる操作のために、媒体を介さず直接に接近することができ、かつ/または
- 前記ロック解除レバー(37)は、少なくとも1つの連結装置(39)を介して、前記ロック輪郭部(20)の前記第2の部分(20b)に、前記少なくとも1つのロック解除レバー(37)と、前記ロック輪郭部(20)の前記第2の部分(20b)とが、逆の回転方向で旋回可能であるように連結されている、
請求項1から9までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項11】
前記ロック装置(18)は、少なくとも1つの別の保持部材(27)を含んでいて、前記ロック装置(18)の前記両保持部材(19,27)は、前記少なくとも1つの枢動軸(14)に対して直交方向で互いに離間させられており、好ましくは、
- 前記ロック装置(18)の前記両保持部材(19,27)がそれぞれ1つの長手方向(L1,L2)を有していて、前記両保持部材(19,27)の前記長手方向(L1,L2)が実質的に互いに平行に延在していて、かつ/または
- 前記少なくとも1つの別の保持部材(27)が、円筒形のピンとして形成されており、好ましくは、前記家具ヒンジ(4)の前記ロックすべき金具部分(5,6)は、互いに離間させられた少なくとも2つの側方ウェブ(21a,21b)を有していて、前記側方ウェブの間に前記円筒形のピンが配置されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの別の保持部材(27)が配置可能な少なくとも1つの収容装置(28)が設けられており、好ましくは、
- 前記少なくとも1つの収容装置(28)は、前記少なくとも1つの枢動軸(14)を介して前記ロックすべき金具部分(5,6)に結合されている前記金具部分(5,6)の方向で開かれていて、かつ/または
- 前記ロック装置(18)の前記両保持部材(19,27)は、1回の共通の接合運動(FB)、好ましくは並進接合運動によって、前記ロック輪郭部(20)内にかつ前記少なくとも1つの収容装置(28)内に配置可能となる、
請求項11記載のヒンジアセンブリ。
【請求項13】
前記家具ヒンジ(4)の、前記組付け体(7)にロックすべき前記金具部分(5,6)は、互いに上下に配置された少なくとも2つ、好ましくは正確に3つのプレート(29a,29b,29c)を有しており、好ましくは
- 少なくとも1つの調整装置(9a,9b,9c)が設けられており、前記調整装置によって、前記少なくとも2つのプレート(29a,29b,29c)が互いに相対的に移動可能かつ/または互いに相対的に旋回可能であり、かつ/または
- 少なくとも2つのピン状の保持部材(19,27)が設けられていて、前記保持部材に沿って、前記少なくとも2つのプレート(29a,29b,29c)が互いに相対的に線形に移動可能となる、
請求項1から12までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項14】
前記家具ヒンジ(4)の前記両方の金具部分(5,6)は、前記両方の金具部分(5,6)と別体の少なくとも1つの枢動レバー(12)を介して互いに結合されており、好ましくは少なくとも1つの調整装置(9a,9b,9c)が設けられており、前記調整装置によって、前記少なくとも1つの枢動レバー(12)の位置が、前記組付け体(7)にロックすべき前記金具部分(5,6)に対して相対的に調整可能となる、請求項1から13までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【請求項15】
前記少なくとも1つの枢動軸(14)を介して、前記ロックすべき金具部分(5,6)に結合されている金具部分(5,6)は、ヒンジポット(6a)として形成されており、好ましくは前記ヒンジポット(6a)の中空室(6b)内には、前記家具ヒンジ(4)の前記両方の金具部分(5,6)の相互の相対運動を減衰するための減衰装置(10)が配置されており、特に好ましくは、前記減衰装置(10)の減衰出力は、好ましくはスイッチ(11)によって調整可能である、請求項1から14までのいずれか1項記載のヒンジアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジアセンブリであって、
- 家具キャビネット、特に該家具キャビネットのフレームに固定すべき組付け体と、
- 少なくとも1つ、特に正確に1つの枢動軸を介して互いに結合された2つの金具部分を有する家具ヒンジと、
- 家具ヒンジの金具部分のうちの一方を組付け体に、特に解除可能にロックすることができるロック装置と
を備える、ヒンジアセンブリに関する。
【0002】
オーストリア国特許発明第383852号明細書には、ヒンジアームを備えた家具ヒンジが示されており、このヒンジアームは、家具キャビネットに固定すべきベースプレートに、ロック装置によって解除可能にロック可能である。これにより、第1の組付けステップで、2つ以上のベースプレートを家具キャビネットに予め組み付けることができ、かつ2つ以上の家具ヒンジを可動の家具部分に予め組み付けることができる快適な可能性が提供される。後続の組付けステップでは、家具部分に予め組み付けられた家具ヒンジのヒンジアームを、家具キャビネットに予め組み付けられたベースプレートに、工具を使用せずに組み付けることができ、工具を使用せずに取り外すこともできる。ヒンジアームには、ばね負荷された緊締レバーが設けられており、ばね負荷された緊締レバーのフックは、ロック位置で、ベースプレートの突起に下方から係合する。ばね負荷された緊締レバーの手動の持上げにより、ヒンジアームとベースプレートとの間のロックは再び解除することができる。
【0003】
公知のロック装置の欠点は、緊締レバーに力を加える際にロックが直ちに解除されることにある。つまり、緊締レバーの(意図しない場合も含む)操作後、ロックすべき構成部分が突然互いに解除される場合があり、移動させるべき家具部分が落下する危険性がある。この場合、物や人の被害だけでなく、可動の家具部分自体において損傷が生じる危険もある。
【0004】
本発明の課題は、上述した欠点を回避する冒頭で述べた形式のヒンジアセンブリを提供することである。
【0005】
この課題は、本発明によれば、特許請求項1の特徴により解決される。本発明の好適な別の実施例は、従属請求項に規定されている。
【0006】
本発明によれば、ロック装置は、外側輪郭部を有する少なくとも1つの保持部材と、外側輪郭部に対応するロック輪郭部とを備えており、ロック輪郭部は、不動に形成された少なくとも1つの第1の部分と、第1の部分に対して相対的に可動の、好ましくは旋回可能な少なくとも1つの第2の部分とを有しており、少なくとも1つの保持部材は、ロック位置でロック輪郭部の両方の部分の間に収容されていることが想定されている。
【0007】
言い換えると、ロック輪郭部は、少なくとも2つの部分から形成されていて、不動の第1の部分と、この第1の部分に対して相対的に可動の少なくとも1つの第2の部分とを備え、ロック輪郭部の第1の部分と第2の部分とは、ロック位置において、固定すべき保持部材を取り囲んでいる。つまり、この保持部材は、ロック位置において、ロック輪郭部の第1の部分と第2の部分とによって力接続的にも形状接続的にも保持される。
【0008】
このことは、ロック輪郭部の可動の第2の部分が操作されたときに、保持部材が、ロック輪郭部の不動の第1の部分によって引き続き形状接続的に位置保持され、その際、保持部材が、ロック輪郭部の第1の部分に対して相対運動を実施することはないという特別な利点を有している。意図的に実施された解除運動によって初めて、ロックすべき構成部分同士(つまり、組付け体と金具部分の保持部材と)が互いに分離可能となる。このことは、安全な側面を成している。なぜならば、ロック装置の不本意な解除および家具部分の落下の危険が大幅に減じられるからである。
【0009】
本発明の好ましい実施例によれば、ロック輪郭部の両方の部分は組付け体に配置されていて、少なくとも1つの保持部材は、家具ヒンジのロックすべき金具部分に配置されていることが想定されていてよい。
【0010】
少なくとも1つの保持部材の外側輪郭部は少なくとも所定の領域で円筒形に、例えば円筒形のピンとして形成されていてよい。家具ヒンジのロックすべき金具部分は、互いに離間させられた少なくとも2つの側方ウェブを有していてよく、これらの側方ウェブの間に円筒形のピンが配置されている。
【0011】
ロック輪郭部の少なくとも1つの不動の第1の部分は、例えばフック要素に形成されていてよい。好ましくは、ロック輪郭部の第1の部分は、少なくとも1つの枢動軸を介して、ロックすべき金具部分に結合されている金具部分の方向で開かれている。
【0012】
ロック輪郭部の少なくとも1つの不動の第1の部分は、横断面で凹状の、好ましくは半円形の区分を有していてよい。
【0013】
本発明の実施例によれば、ロック輪郭部の両方の部分は、横断面で見て共に3/4円を形成しており、かつ/または少なくとも1つの枢動軸に対して平行な方向に互いにずらされて配置されていることが想定されていてよい。このようにして組付け体と保持部材との間の安定的かつ特に傾動防止された結合が得られる。
【0014】
ロック輪郭部は、少なくとも1つの枢動軸に対して平行な方向で互いに離間されている少なくとも2つの不動の第1の部分を有していてよく、ロック輪郭部の少なくとも1つの第2の部分は、少なくとも2つの不動の第1の部分の間に配置されている。
【0015】
好ましい実施例によれば、ロック輪郭部の少なくとも1つの第2の部分は、レバーに形成されていることが想定されていてよい。この場合、
- レバーは一方の端部で、回動軸を中心として回動可能に支持されていて、かつ/または
- レバーにロック位置の方向で力を加えるばね要素、好ましくはねじりコイルばねまたは板ばねが設けられていて、かつ/または
- レバーは、ロック輪郭部の第2の部分が配置されている自由端部を有していて、かつ/または
- レバーは、ロック装置を手動でロック解除するための操作要素が配置されている自由端部を有している、
ことが想定されていてよい。
【0016】
本発明のその他の詳細および利点は、以下の図面の説明により明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】家具キャビネットと、この家具キャビネットに対して相対的に可動に支持された家具部分とを備えた家具の斜視図である。
図1b】家具部分を可動に支持するための家具ヒンジの斜視図である。
図2】組付け体に固定すべき家具ヒンジの分解図である。
図3】家具ヒンジの別の実施例を示す分解図である。
図4a】第1の金具部分を組付け体に組み付ける経過を示す横断面図である。
図4b】第1の金具部分を組付け体に組み付ける経過を示す横断面図である。
図4c】第1の金具部分を組付け体に組み付ける経過を示す横断面図である。
図4d】第1の金具部分を組付け体に組み付ける経過を示す横断面図である。
図5a】組付け体と保持部材との間のロックを解除するための付加的なロック解除レバーを備えた別の実施形態を示す図である。
図5b】組付け体と保持部材との間のロックを解除するための付加的なロック解除レバーを備えた別の実施形態を示す図である。
図5c】組付け体と保持部材との間のロックを解除するための付加的なロック解除レバーを備えた別の実施形態を示す図である。
【0018】
図1aには、家具キャビネット2と、この家具キャビネット2に対して相対的に2つまたはそれ以上の家具ヒンジ4によって旋回可能に支持された家具部分3とを備えた家具1の斜視図が示してある。家具ヒンジ4は、互いに枢動自在に結合された2つの金具部分5,6を有している。家具ヒンジ4の第1の金具部分5は、家具キャビネット2に固定することができ、家具ヒンジ4の第2の金具部分6は、可動の家具部分3に固定することができる。
【0019】
図示の実施例では、家具ヒンジ4は、いわゆるフレームヒンジとして形成されている。家具ヒンジ4の第1の金具部分5は、家具キャビネット2のフレーム2aに固定することができる曲げられたヒンジアーム5a(図1b)として形成されてよい。
【0020】
図1bには、家具ヒンジ4が、家具キャビネット2のフレーム2aへの組付け状態で示してある。ヒンジアーム5aの形態の第1の金具部分5は、実質的にL字形に形成されている。L字形のヒンジアーム5aの第1の脚部は、フレーム2aの狭幅面8aに当付け可能であり、L字形のヒンジアーム5aの第2の脚部は、フレーム2aの側面8bに当付け可能である。
【0021】
ヒンジアーム5aの形態の第1の金具部分5は、家具キャビネット2に組付け体7を介して固定することができる。この組付け体7は、最初の組付けステップで家具キャビネット2、好ましくはフレーム2aに固定することができる。後続の組付けステップでは、第1の金具部分5が、家具キャビネット2に予め組み付けられた組付け体7に工具なしでロック可能かつ工具なしでロック解除可能となる。
【0022】
少なくとも1つまたはそれ以上の調整装置9a,9b,9cによって、家具キャビネット2への組付け状態で家具部分3の位置が調整可能となる。好ましくは、家具キャビネット2に対して相対的な家具部分3の三次元の調整を実現することができる3つの調整装置9a,9b,9cが設けられていることが特定されている。第1の調整装置9aによって、可動の家具部分3の奥行き調整を実施することができ、第2の調整装置9bによって、高さ調整を実施することができ、第3の調整装置9cによって、側方調整を実施することができる。少なくとも1つ、好ましくは全ての調整装置9a,9b,9cは、回動可能に支持された調整ホイール(例えば偏心体、スパイラルディスクまたは調整ねじ)を有している。
【0023】
家具ヒンジ4の第2の金具部分6は、ヒンジポット6aとして形成されていてよい。このヒンジポット6aは、少なくとも1つの枢動軸14(図2)、好ましくは正確に1つの枢動軸14を介して第1の金具部分5に旋回可能に結合されている。ヒンジポット6aは中空室6bを有している。この中空室6b内には、家具ヒンジ4の両方の金具部分5,6相互の相対運動を減衰するための減衰装置10が配置されている。この減衰装置10は、少なくとも1つの、好ましくは液圧式のピストンシリンダユニットを備えていてよい。このピストンシリンダユニットには、金具部分5,6相互の相対位置が予め設定されている場合、家具ヒンジ4の旋回可能な枢動レバー12が作用可能である。少なくとも2つの切換位置を有する可動に支持されたスイッチ11によって、減衰装置10の減衰出力が制限可能または停止可能となる。
【0024】
図2には、図1bに示した家具ヒンジ4が示してある。この家具ヒンジ4は、家具キャビネット2に固定すべき組付け体7に解除可能にロック可能である。家具ヒンジ4の第2の金具部分6は、ヒンジポット6aとして形成されていてよい。このヒンジポット6aは、可動の家具部分3の孔内に格納することができる。この場合、ヒンジポット6aは、少なくとも1つの固定手段13(例えば、ねじまたは少なくとも1つの拡開部材)によって、可動の家具部分3に固定することができる。
【0025】
ヒンジポット6aの中空室6b内には、家具ヒンジ4の運動を減衰するための減衰装置10が配置されている。第2の金具部分6は、少なくとも1つ、好ましくは正確に1つの枢動軸14を介して第1の金具部分5に旋回可能に結合されている。
【0026】
家具ヒンジ4はばね装置15を有している。このばね装置15によって、第2の金具部分6が、第1の金具部分5に対して相対的に、閉鎖された終端位置および/または開放された終端位置に運動可能となる。図示の実施例では、ばね装置15はねじりコイルばねとして形成されている。このねじりコイルばねの両方の端部は、それぞれ1つのプラスチック被覆体16を有している。このプラスチック被覆体16は、家具ヒンジ4の組立て状態でそれぞれ第1の金具部分5の制御カム32a,32bに接触している。これによって、摩擦が減じられ、金具部分5,6が、易動性にかつ実際に騒音発生なしに互いに相対的に運動可能となる。
【0027】
組付け体7は、例えば少なくとも1つのねじ17を介して家具キャビネット2、好ましくはフレーム2aに固定することができる。組付け体7は、少なくとも2つの突出部34a,34bを有している。これらの突出部34a,34bは、組付け体7の事前位置決めを改善するために、フレーム2aの互いに反対側の面に当付け可能である。
【0028】
ロック装置18によって、第1の金具部分5が組付け体7に解除可能にロック可能となる。ロック装置18は、好ましくは円筒形の外側輪郭部19aを有する少なくとも1つの保持部材19と、外側輪郭部19aに対応するロック輪郭部20とを備えている。このロック輪郭部20は、不動に形成された少なくとも1つの第1の部分20aと、この第1の部分20aに対して相対的に可動の、好ましくは旋回可能な少なくとも1つの第2の部分20bとを有している。少なくとも1つの保持部材19は、ロック位置でロック輪郭部20の両方の部分20a,20bの間に収容されている。
【0029】
少なくとも1つの保持部材19は、円筒形のピンとして簡単に形成されていてよい。ロックすべき金具部分5は、互いに離間させられた少なくとも2つの側方ウェブ21a,21bを有していてよく、これらの側方ウェブ21a,21bの間に円筒形のピンが配置されている。
【0030】
ロック輪郭部20の可動の第2の部分20bには、ばね要素25、好ましくはねじりコイルばねまたは板ばねによって予荷重が加えられている。このばね要素25は、ロック輪郭部20の第2の部分20bにロック位置の方向で力を加える。ロック輪郭部20の可動の第2の部分20bは、このロック輪郭部20の可動の第2の部分20b用の回動軸24を成すピン30を中心として回動可能に支持されている。
【0031】
家具ヒンジ4の両方の金具部分5,6は、これら両方の金具部分5,6と別体の少なくとも1つの枢動レバー12を介して互いに結合されていてよい。調整装置9cによって、少なくとも1つの枢動レバー12の位置が、組付け体7にロックすべき金具部分5,6(この場合にはヒンジアーム5a)に対して相対的に調整可能となる。この目的のために、第1の金具部分5は、枢動レバー12を調整可能に支持するための少なくとも1つのリニアガイド31a,31bを有していてよい。
【0032】
家具ヒンジ4の、組付け体7にロックすべき金具部分5は、互いに上下に配置された少なくとも2つ、好ましくは正確に3つのプレート29a,29b,29cを有していてよい。少なくとも1つの調整装置9a,9b,9cによって、少なくとも2つのプレート29a,29b,29cが互いに相対的に移動可能かつ/または互いに相対的に旋回可能となる。プレート29a,29b,29cを互いに線形に調整するために、少なくとも2つのピン状の保持部材19,27,33が設けられていてよい。この保持部材19,27,33に沿って、少なくとも2つのプレート29a,29b,29cが互いに相対的に線形に移動可能となる。
【0033】
図示の実施例では、調整装置9a,9b,9cは、それぞれ1つの偏心体を有している。第1の調整装置9aの偏心体は、支持箇所40aを介して第2のプレート29bに回動可能に結合(好ましくは揺動加締め)されていて、その偏心的な制御輪郭部によって第3のプレート29cに支持されている。
【0034】
第2の調整装置9bの偏心体は、支持箇所40bを介して第1のプレート29aに回動可能に結合(好ましくは揺動加締め)されていて、その偏心的な制御輪郭部によって第2のプレート29bに支持されている。
【0035】
第3の調整装置9cの偏心体は、支持箇所40cを介して第1のプレート29aに回動可能に結合(好ましくは揺動加締め)されていて、その偏心的な制御輪郭部によって枢動レバー12に支持されている。
【0036】
当然ながら、調整装置9a,9b,9cが、偏心体の代わりに、調整すべき構成部分の互いに離間させられた突出部と協働するウォーム伝動機構または回動可能なスパイラルディスクを有していることも可能である。
【0037】
図3には、僅かに変更された家具ヒンジ4が分解図で示してある。図2に示した家具ヒンジ4とは異なり、枢動レバー12は、第1の金具部分5の第3のプレート29cに一体に結合されている。好ましくは実質的に正方形のカバー35によって、調整装置9a,9b,9cの少なくとも1つの調整ホイールを、好ましくは少なくとも2つの調整ホイールをカバーすることができる。
【0038】
ロック装置18は、少なくとも1つの別の保持部材27を含んでいてよく、この場合、ロック装置18の両保持部材19,27は、少なくとも1つの枢動軸14に対して直交方向で互いに離間させられており、好ましくは、
-ロック装置18の両保持部材19,27がそれぞれ1つの長手方向L1,L2を有していて、両保持部材19,27の長手方向L1,L2が実質的に互いに平行に延在していて、かつ/または
-少なくとも1つの別の保持部材27が、円筒形のピンとして形成されており、好ましくは、家具ヒンジ4のロックすべき金具部分5,6は、互いに離間させられた少なくとも2つの側方ウェブ21a,21bを有していて、これらの側方ウェブの間に円筒形のピンが配置されている
ことが想定されている。
【0039】
ロック輪郭部20の少なくとも1つの不動の第1の部分20aは、フック要素22に形成されていてよい。好ましくは、ロック輪郭部20の第1の部分20aは、少なくとも1つの枢動軸14を介して、ロックすべき金具部分5に結合されている金具部分6の方向で開かれている。ロック輪郭部20の少なくとも1つの不動の第1の部分20aは、横断面で凹状の、好ましくはほぼ半円形の区分を有していることが見て取れる。
【0040】
図示した実施例では、ロック輪郭部20は、少なくとも1つの枢動軸14に対して平行な方向で互いに離間されている少なくとも2つの不動の第1の部分20aを有しており、ロック輪郭部20の少なくとも1つの第2の部分20bは、ロック輪郭部20の少なくとも2つの不動の第1の部分20aの間に配置されている。
【0041】
ロック輪郭部20の少なくとも1つの第2の部分20bは、レバー23に形成されていてよい。好ましくは、
-レバー23は一方の端部で、回動軸24を中心として回動可能に支持されていて、かつ/または
-レバー23にロック位置の方向で力を加えるばね要素25、好ましくはねじりコイルばねまたは板ばねが設けられていて、かつ/または
-レバー23は、ロック輪郭部20の第2の部分20bが配置されている自由端部26を有していて、かつ/または
-レバー23は、ロック装置18を手動でロック解除するための操作要素26aが配置されている自由端部26を有している、
ことが想定されている。
【0042】
第2のプレート29bは、後方から、すなわちX方向で、第3のプレート29cの側方ウェブ21a,21bの間に挿入可能であって、第3のプレート29cは、第2のプレート29bの運動を制限するために、好ましくはエンボス加工部の形態の、内側に向けられたストッパ36を有している。第1の調整装置9aの偏心体は、支持箇所40aを介して第2のプレート29bに回動可能に結合されていて、その偏心的な制御輪郭部によって第3のプレート29cに支持されている。第1の調整装置9aの操作により、第3のプレート29cは、第2のプレート29bに対して相対的に方向(X)で調整可能である。
【0043】
第2の調整装置9bの偏心体は、支持箇所40bを介して第1のプレート29aに回動可能に結合されていて、その偏心的な制御輪郭部によって第2のプレート29bに支持されている。第2の調整装置9bの操作により、プレート29b,29cは共に、第1のプレート29aに対して相対的に方向(Y)で調整可能である。
【0044】
第3の調整装置9cは、図示した実施例では、調整ねじを有しており、この調整ねじはその下端部で、第1のプレート29aの支持箇所40cに支持されている。第3の調整装置9cの調整ねじには、第2のプレート29bの雌ねじ山41と協働する雄ねじ山が設けられている。第3の調整装置9cの操作により、第2のプレート29bは、第1のプレート29aに対して相対的にピン状の保持部材19を中心として方向(Z)で旋回可能である。
【0045】
ロック輪郭部20の両不動の第1の部分20aは、それぞれフック要素22に形成されており、ロック輪郭部20の可動の第2の部分20bは、ロック輪郭部20の両第1の部分20aの間に配置されている。可動の第2の部分20bは、第2の部分20b用の回動軸24を成すピン30を中心として旋回可能に支持されている。好ましくは、少なくとも1つの枢動軸14の方向と、回動軸24の方向とは互いに平行に延在することが想定されている。
【0046】
組付け体7を家具キャビネット2に取り付けているねじ17は、家具キャビネット2における家具ヒンジ4の組立て状態および組付け状態で、工具、好ましくはドライバによって常に操作可能であることを述べておく。このために、プレート29a,29b,29cには、家具ヒンジ4の全ての作動位置で、工具の導入および工具によるねじ17の回転運動が可能であるように、凹部が配置されている。
【0047】
図4a~図4dには、家具ヒンジ4の第1の金具部分5を組付け体7に組み付ける経過が示してある。組付け体7は、最初の組付けステップでねじ17を介して家具キャビネット2、特に家具キャビネット2のフレーム2aに固定することができる。突出部34a,34bによって、家具キャビネット2のフレーム2aに対して相対的な組付け体7の事前位置決めの改善が可能となる。
【0048】
第1の金具部分5は、互いに離間させられた2つの保持部材19,27を備えている。これら2つの保持部材19,27は、図示の実施例では、円筒形の外側輪郭部を有している。両方の保持部材19,27は、少なくとも1つの枢動軸14に対して横方向に互いに離間させられていて、それぞれ1つの長手方向L1,L2を有している。この長手方向L1,L2は、互いに実質的に平行に延びている。
【0049】
組付け体7はロック輪郭部20を備えている。このロック輪郭部20は、両方の不動の第1の部分20aと、可動の第2の部分20bとを有している。この第2の部分20bは、両方の不動の部分20aの間に可動に支持されている。組付け体7のロック輪郭部20は、金具部分5の保持部材19に解除可能にロック可能である。組付け体7は、さらに、第1の金具部分5の別の保持部材27を収容するための収容装置28を有している。
【0050】
図4aに示した位置から出発して、金具部分5は、組付け体7に載置され、接合運動(FB)の方向に運動させられる。接合運動(FB)の方向への金具部分5の運動によって、ロック輪郭部20の第2の部分20bが、ばね要素25の力に抗して回動軸24を中心として運動させられる(図4b)。
【0051】
両方の保持部材19,27は、1回の共通の接合運動(FB)、好ましくは並進接合運動によって、ロック輪郭部20内にかつ少なくとも1つの収容装置28内に配置可能となる(図4c)。金具部分5を接合運動(FB)の方向に引き続き運動させることによって、ロック輪郭部20の第2の部分20bが、ばね要素25の力によってスナップバックし、これによって、保持部材19を力接続的にかつ形状接続的にロックする。ロック輪郭部20の両方の部分20a,20bは、横断面で見て共に3/4円を形成しており、かつ/または少なくとも1つの枢動軸14に対して平行な方向に互いにずらされて配置されている。
【0052】
組付け体7と金具部分5との間のロックは、ばね要素25の力に抗してロック輪郭部20の第2の部分20bに力を加えることによって再び解除可能となる。ロックを解除する目的で第2の部分20bに力を加えることは、例えば手によって、つまり、工具の使用なしに行うことができる。代替的には、組付け体7と金具部分5との間のロックを解除する目的で、第2の部分20bに力を加えるために工具が使用されてもよい。
【0053】
図5a~図5cには、組付け体7と金具部分5との間のロック状態が示してあり、この場合、ロック装置18は、組付け体7と家具ヒンジ4の金具部分5との間のロックを解除するための付加的なロック解除レバー37を有している。
【0054】
ロック装置18は、図示した実施例では、ロック解除レバー37に配置された、保持部材19の外側輪郭部19aに少なくとも所定の区分で適合する第3のロック輪郭部20cを含んでいる。図示した実施例では、第3のロック輪郭部20cは実質的に半円形に形成されている。
【0055】
ロック解除レバー37は、ロック輪郭部20の第2の部分20bとは別個の構成部分として形成されており、ロック解除レバー37には、手動の操作のために、または工具により行われる操作のために、媒体を介さず直接に接近することができる。
【0056】
ロック解除レバー37は、手動の持上げ運動により、回動軸38を中心として旋回可能であり、これによりロック輪郭部20の第3の部分20cは、保持部材19との係合から解除可能である(図5b)。
【0057】
ロック解除レバー37は、少なくとも1つの連結装置39を介して、ロック輪郭部20の第2の部分20bに、少なくとも1つのロック解除レバー37と、ロック輪郭部20の第2の部分20bとが、逆の回転方向で旋回可能であるように連結されている。
【0058】
連結装置39は、図示した実施例では、ロック解除レバー37に配置された突起により形成され、この突起は、組付け体7と金具部分5との間のロック状態で、ロック輪郭部20の第2の部分20bにルーズに当接する(図5a)。回動軸38を中心としたロック解除レバー37の運動の際に、連結装置39の突起は、ロック輪郭部20の第2の部分20bに対して押し付けられ、これにより、第2の部分20bは、回動軸24を中心として逆の回転方向で旋回させられ、ひいては保持部材19を解放する。
【0059】
図5cには、組付け体7と金具部分5との間のロック解除状態が示されている。図示した実施例では、ロック解除レバー37が金具部分5に可動に配置されており、好ましくは、ロック解除レバー37の回動軸38と、家具ヒンジ4の少なくとも1つの枢動軸14とが互いに平行に延在することが想定されている。
図1a
図1b
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5a
図5b
図5c
【国際調査報告】