IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーティー ホールディングス リミテッドの特許一覧

特表2023-510661窒素酸化物を生成するための方法及び組成物、並びにそれらの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】窒素酸化物を生成するための方法及び組成物、並びにそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/00 20060101AFI20230308BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 9/08 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230308BHJP
   C01B 21/24 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61K33/00
A61P17/02
A61P17/00
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P9/08
A61P33/00
A61K9/08
A61P31/14
A61P31/06
A61P31/16
A61K47/26
A61K47/12
C01B21/24 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021572282
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-02-02
(86)【国際出願番号】 GB2020051328
(87)【国際公開番号】W WO2020245573
(87)【国際公開日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】1907969.8
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1915280.0
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2005980.4
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIPLOC
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521529569
【氏名又は名称】サーティー ホールディングス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】THIRTY HOLDINGS LIMITED
【住所又は居所原語表記】1 Red Place, London W1K 6PL, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ヒュー センプル ムンロー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー バリー ウッド
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076BB21
4C076BB22
4C076BB25
4C076BB27
4C076BB31
4C076CC11
4C076CC18
4C076CC19
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC35
4C076DD38
4C076DD43Z
4C076FF02
4C076FF12
4C076FF61
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA04
4C086HA07
4C086HA21
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA56
4C086MA57
4C086MA59
4C086MA63
4C086NA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA39
4C086ZA89
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
(57)【要約】
本発明は、(i)1つ以上の亜硝酸塩;(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び(iii)1つ以上の有機ポリオールを含む、組み合わせ、キット又は組成物を提供する。前記1つ以上の有機ポリオールの存在下で前記1つ以上亜硝酸塩を前記プロトン源と反応させると、前記組み合わせ、キット又は組成物は、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を含む反応生成物を提供する。これらは、例えば、様々な障害の治療に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための方法であって、
1つ以上の亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、を一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するのに適した反応条件で行われる反応を含み、
当該反応は1つ以上の有機ポリオールの存在下で行われ;
以下の1つ以上によって特徴付けられる:
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって調製された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体。
【請求項3】
一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体の反応の出力を増強する方法であって、
有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源を用いること、及び、反応出力増強量の1つ以上の有機ポリオールの存在下で反応すること、を含み、
前記反応の出力の増強は、1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される、方法。
【請求項4】
反応の出力を増強するための反応混合物中での1つ以上の有機ポリオールの使用であって、
前記反応混合物は、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するためのプロトン源と、1つ以上の亜硝酸塩と、の混合物であり、
前記プロトン源は、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含み、
前記反応の出力の増強は、1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される、使用。
【請求項5】
プロトン源と1つ以上の亜硝酸塩との反応により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するため組み合わせであって、
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
を含み、
以下の1つ以上によって特徴付けられる:
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在し、前記反応出力増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エ
チルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロールお及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
組み合わせ。
【請求項6】
プロトン源と1つ以上の亜硝酸塩との反応により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するためのキットであって、
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
を含み、
以下の1つ以上によって特徴付けられる:
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在し、前記反応出力増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロールお及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
キット。
【請求項7】
プロトン源と1つ以上の亜硝酸塩との反応により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための組成物であって、
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
を含み、
以下の1つ以上によって特徴付けられる:
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在し、前記反応出力増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミ
ン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロールお及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
組成物。
【請求項8】
請求項5に記載の組み合わせ、又は、請求項6に記載のキットであって、
前記プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルを含み、
前記組み合わせ又はキットが2つ以上の別個の組成物を含み、前記1つ以上のポリオールが前記ヒドロゲルと直接接触又は混合して前記別個の組成物中に存在しない、組み合わせ又はキット。
【請求項9】
請求項5ないし請求項8のいずれか一項に記載のキット又は組成物であって、
前記キット又は組成物が、前記成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに任意選択で水及び/又はpH緩衝液から実質的になる、キット又は組成物。
【請求項10】
請求項5ないし請求項8のいずれか一項に記載のキット又は組成物であって、
前記キット又は組成物が、前記成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに任意選択で水及び/又はpH緩衝液及び/又は前記キット又は前記組成物の約20重量%又は体積%未満の量の1つ以上の追加成分からなる、キット又は組成物。
【請求項11】
請求項5ないし請求項10のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット又は組成物を調製する方法であって、
前記組み合わせ又は前記キットを形成するために、前記成分(i)、(ii)及び(iii)を相互近接に持ち込むか、前記組成物を形成するために混合することを含む、方法。
【請求項12】
一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を、標的位置、例えば任意の細胞、器官、表面、構造又は対象、又は、その内部空間に送達する治療的又は非治療的方法であって、
(a)標的位置又はその近傍に、請求項5又は請求項7に記載の組み合わせ又は組成物、又は、請求項5又は請求項7に従属する請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物、を投与すること;又は
(b)請求項1又は請求項3に記載の方法を使用すること、又は請求項4に記載の使用を実施すること、又は、請求項5又は請求項7に記載の組み合わせ、キット又は組成物を用いること、請求項5又は請求項7に従属する請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、それによって生成された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を標的位置又はその近傍に送達すること;又は
(c)請求項2に記載の一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又はそれらの前駆体を送達すること、を含む、
治療的又は非治療的方法。
【請求項13】
それを必要とする被験体、例えばヒト被験体又は他の哺乳類被験体の、例えば細菌、ウイルス、真菌、微生物学的感染又はそれらの任意の組み合わせである微生物感染を治療する方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
被験体、例えばヒト被験体又は他の哺乳類被験体に対して行われる血管拡張の方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
例えば、被験体のある場所での微生物、例えば細菌、ウイルス、真菌細胞及び/又は微小寄生虫の数を減少させるため、その増殖を防止するため、又はその増殖速度を制限するための抗菌方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
外科的方法又は治療及び手術の両方を含む方法である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
治療及び/又は手術のために用いられる、請求項5ないし請求項10のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット又は組成物、又は、請求項2に記載の一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又はそれらの前駆体。
【請求項18】
(a)標的とされる微生物、若しくはその近傍、又は微生物に感染した被験体若しくはそのような被験体の内部空間に、請求項5又は請求項7に記載の組み合わせ又は組成物を投与すること;又は
(b)請求項1若しくは請求項3に記載の方法を使用すること、又は請求項4に記載の使用を実施すること、又は請求項5若しくは請求項7に記載の組み合わせ、キット若しくは組成物を使用すること、又は請求項5又は請求項7に従属する請求項8ないし請求項10のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物を使用すること、により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、生成物を標的とされる微生物、若しくはその近傍、又は微生物に感染した被験体若しくはそのような被験体の内部空間に送達すること;又は
(c)請求項2に記載の一酸化窒素、任意選択で窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を、標的とされる微生物、若しくはその近傍、又は微生物に感染した被験体若しくはそのような被験体の内部空間に送達すること、
を含み、
ただし、pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよい、
請求項15に記載の抗菌方法の改変。
【請求項19】
請求項5ないし請求項8のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット又は組成物が、一酸化窒素、任意選択で窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するために用いられ、
ただし、pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよい、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
それを必要とする被験体、例えばヒト被験体又は他の哺乳類被験体の、微生物感染を治療する方法である、請求項18又は請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記微生物感染が、細菌、ウイルス、真菌、微生物学的感染又はそれらの任意の組み合わせである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記微生物感染が、被験体の皮膚、例えば粘膜、又は被験体の内部空間、例えば被験体の鼻、口、気道もしくは肺、又は被験体の肺胸膜の内膜にある、請求項20又は請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記1つ以上の亜硝酸塩が、LiNO、NaNO、KNO、RbNO、CsNO、FrNO、AgNO、Be(NO、Mg(NO、Ca(NO、Sr(NO、Mn(NO、Ba(NO、Ra(NO、及びそれらの任意の混合から選択される、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項24】
前記1つ以上の亜硝酸塩が、NaNO、KNO、又はそれらの混合物である、請求項23に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項25】
前記1つ以上の亜硝酸塩、又は1つ以上の亜硝酸塩を含有するNOx生成反応系の任意の成分が、乾燥形態、例えば粒子状乾燥形態で存在する、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項26】
前記1つ以上の亜硝酸塩、又は1つ以上の亜硝酸塩を含有するNOx発生反応系の任意の成分が、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在する、請求項1、3-24のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項27】
前記溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度が約0.001M~約5Mの範囲内である、請求項26に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項28】
前記1つ以上の亜硝酸塩、又は前記1つ以上の亜硝酸塩を含有するNOx生成反応系の任意の成分のpHが、好ましくは約6~約9のpHに緩衝される、請求項23ないし請求項27のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項29】
前記プロトン源の前記1つ以上の有機カルボン酸が、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、α-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ-β-酪酸、ナフトエ酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ酸(エンボニン酸)、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、ラクトビオン酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、オロチン酸、グリセリン酸、グリチルリチン酸、ソルビン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、シュウ酸、これらの塩、及びこれらの組み合わせ;1つ以上の高分子又は重合カルボン酸、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー;前記ヒドロゲルの三次元ポリマーマトリックスを形成するポリマー分子に共有結合したペンダント-COOH基を含む1つ以上の酸ヒドロゲル;プロトン源として作用し得るそれらの部分的又は完全なエステル及び部分的又は完全な塩;並びにそれらの任意の混合物又は組み合わせから選択される、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項30】
1つ以上のカルボン酸が、クエン酸、その塩、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項29に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項31】
前記プロトン源の前記1つ以上の非カルボン酸還元酸が、アスコルビン酸;パルミチン酸アスコルビル(アスコルビルパルミテート);3-O-エチルアスコルビン酸、他の3-アルキルアスコルビン酸、6-O-オクタノイルアスコルビン酸、6-O-ドデカノイルアスコルビン酸、6-O-テトラデカノイルアスコルビン酸、6-O-オクタデカノイルアスコルビン酸及び6-O-ドデカンジオイルアスコルビン酸などのアスコルビン酸誘導体;還元酸などの酸性還元体;エリソルビン酸;シュウ酸;それらの塩;及びそれらの組み合わせから選択される、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項32】
前記有機非カルボン酸還元酸が、アスコルビン酸又はその塩である、請求項31に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項33】
前記プロトン源、又はその成分の一部、又は前記プロトン源を含有するNOx生成反応系の任意の成分が、乾燥形態、例えば粒子乾燥形態で存在する、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項34】
前記プロトン源、又はその成分の一部、又は前記プロトン源を含有するNOx生成反応系の任意の成分が、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在する、請求項1、3-33のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項35】
前記溶液中のプロトン源のモル濃度が約0.001M~約5Mの範囲内である、請求項34に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項36】
前記プロトン源のpHが、好ましくは約3~約9、例えば約4~約8、例えば約5~約8のpHに緩衝される、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項37】
前記1つ以上の有機ポリオールが、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する糖アルコール、例えば4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有するアルジトールから選択される、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項38】
前記1つ以上の有機ポリオールが、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、グリセロール及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項39】
前記1つ以上の有機ポリオールが、アラビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項37又は請求項38に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項40】
前記1つ以上の有機ポリオール、又は前記1つ以上の有機ポリオールを含有するNOx生成反応系の任意の成分が、乾燥形態、例えば粒子状乾燥形態で存在する、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項41】
前記1つ以上の有機ポリオール、又は前記1つ以上の有機ポリオールを含有するNOx生成反応系の任意の成分が、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在する、請求項1、3-39のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項42】
前記溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度が約0.001M~約5Mの範囲内である、請求項41に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項43】
(a)NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の任意の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、前記亜硝酸塩成分中又は前記反応溶液中の前記亜硝酸イオンの総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば約0.1~約2倍、例えば約0.25~約1.5倍である;又は
(b)NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の任意の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、前記プロトン源成分中又は前記反応溶液中の前記プロトン源の総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば約0.1~約2倍、例えば約0.25~約1.5倍である、
請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項44】
1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応によって一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための組み合わせ又は組成物が、希釈剤、担体、賦形剤、甘味料、味マスキング剤、増粘剤、粘稠化剤、湿潤剤、フィルム形成剤、潤滑剤、結合剤、乳化剤、可溶化剤、安定化剤、着色剤、着臭剤、塩、コーティング剤、抗酸化剤、活性薬剤、防腐剤、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ以上の追加成分をさらに含む、請求項2を除く先行請求項のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項45】
NOx生成反応の開始時のプロトン源のpHは、5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよく、
組成物、キット又は組み合わせが、請求項18ないし請求項22のいずれか一項に記載の抗菌方法に用いられる、
請求項18-22以外の請求項に従属する請求項5-10、17、23-44のいずれか一項に記載の組成物、キット又は組み合わせの改変。
【請求項46】
前記(i)、(ii)及び存在する場合には(iii)の化学物質成分に加えて、使用前に前記成分を保持するための容器;前記成分を混合し、反応混合物及び/又は放出されたガスを分配し、前記混合及び分配を制御するための少なくとも1つの装置又は他の手段、使用説明書、及び使用説明書を見つけることができる場所への指示書、例えばオンライン使用説明書のうちの少なくとも1つを含む、請求項6、8-10、17、23-45のいずれか一項に記載のキット。
【請求項47】
一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、及び/又は、請求項5、7-10、17、23-45のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物を、分配するためのディスペンサーであって、
前記請求項に定義された前記(i)、(ii)及び存在する場合には(iii)の化学物質成分と、
使用前に前記成分を保持するための少なくとも1つの容器と、
前記成分の混合及び反応混合物の分配を制御するための少なくとも1つの装置又は他の手段と、
前記ディスペンサーからのその1つ以上の成分及び/又は放出されたガスと、
を含み、それを標的に向ける、ディスペンサー。
【請求項48】
前記ディスペンサーは、前記反応混合物、その1つ以上の成分、前記反応混合物を含む担体、前記反応混合物の1つ以上の成分を含む担体、及び/又は前記放出されたガスを分
配する繰り返される同様の動作に適合される、請求項47に記載のディスペンサー。
【請求項49】
前記ディスペンサーは、前記NOx生成反応混合物、その成分の1つ以上、又は放出されたガスを含む組成物を前記ディスペンサーから運び、それを標的に向けるためのポンプ又は噴射システムを含む、請求項47又は請求項48に記載のディスペンサー。
【請求項50】
前記ディスペンサーは、前記反応混合物、その1つ以上の成分、前記反応混合物を含む担体、前記反応混合物の1つ以上の成分を含む担体、及び/又は前記放出されたガスを、細胞、器官、表面、構造又は対象、又はその内部空間、例えば、ヒト又は動物被験体の皮膚、鼻、口、気道又は肺に導くように適合されている、請求項47ないし請求項49のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項51】
一酸化窒素ガスの加圧シリンダーと、前記加圧シリンダーに接続可能であり、前記一酸化窒素ガスを前記加圧シリンダーから標的に送達するように適合された送達デバイスと、を含み、
前記一酸化窒素は、請求項2に記載の一酸化窒素、又は、請求項1、3、23-44のいずれか一項に記載の方法により生成された一酸化窒素、又は、請求項5-10、17、23-46に記載の組み合わせ、キット又は組成物を用いて生成された一酸化窒素である、一酸化窒素ディスペンサー。
【請求項52】
前記ディスペンサーは、前記一酸化窒素ガスを、細胞、器官、表面、構造又は対象、又はその内部空間、例えば、ヒト又は動物被験体の皮膚、鼻、口、気道又は肺に導くように適合されている、請求項51に記載の一酸化窒素ディスペンサー。
【請求項53】
請求項3、23-44のいずれか一項に記載の方法により生成されたとき、又は、請求項5-10、17、23-46に記載の組み合わせ、キット又は組成物を用いて生成されたとき、及び/又は、請求項47-52のいずれか一項に記載のディスペンサーを用いて分配されたときの、請求項2に記載の一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体。
【請求項54】
請求項1-17、23-44、46-52のいずれか一項に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、使用又はディスペンサー、及び、それらによって生成又は分配された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体であって、
- 1つ以上の亜硝酸塩は、1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- プロトン源は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液;クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液;又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 前記アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液、クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液、又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子は、ポリマー又は高分子に共有結合していない;
- 1つ以上の有機ポリオールは、1分子あたり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコール又はアルジトール;例えば、ソルビトール;マンニトール;アラビトール;キシリトール;又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、亜硝酸イオンの総モル濃度の0.05~3倍である;
- NOx生成反応の開始時のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、プロトン源成分中又は反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.
05~3倍である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を伴わない用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは3.0~9.0の範囲である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を含む用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは4.0~8.0の範囲である;
- 反応混合物と、動物(ヒトを含む)被験体の鼻、口、気道又は肺との接触を含む用途では、NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは5.0~8.0の範囲である。
【請求項55】
請求項18-22、45のいずれか一項、及びこれに従属する範囲のその他の請求項に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、使用又はディスペンサー、並びに、それらによって生成又は分配された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体であって、
- 1つ以上の亜硝酸塩は、1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- プロトン源は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液;クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液;又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 前記アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液、クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液、又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子は、ポリマー又は高分子に共有結合していない;
- 1つ以上の有機ポリオールは、1分子あたり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコール又はアルジトール;例えば、ソルビトール;マンニトール;アラビトール;キシリトール;又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、亜硝酸イオンの総モル濃度の0.05~3倍である;
- NOx生成反応の開始時のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、プロトン源成分中又は反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を伴わない用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは3.0~9.0の範囲である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を含む用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは4.0~8.0の範囲である;
- 反応混合物と、動物(ヒトを含む)被験体の鼻、口、気道又は肺との接触を含む用途では、NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは5.0~8.0の範囲である;
- 標的とする微生物は、アクチノマイセス、バシラス、バルトネラ、ボルデテラ、ボレリア、ブルセラ、カンピロバクター、クラミジア、クラミドフィラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エンテロコッカス、エスケリキア、フランシセラ、ヘモフィルス、ヘリコバクター、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ナイセリア、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、赤痢菌、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、トレポネーマ、ウレアプラズマ、ビブリオ、エルシニア属、又はこれらの組み合わせのリストにある細菌種;インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、コロナウイル
ス、RSウイルス(RSV)、アストロウイルス、肝炎ウイルス、及びこれらの組み合わせのリストにあるウイルス;並びに肉質虫、鞭毛虫、繊毛虫、胞子虫、及びそれらの任意の組み合わせのリストにある原虫群;例えば、SARS-CoV、SARS-CoV-2、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessusを含む非tuberculosisマイコバクテリウム、Pseudomonas aeruginosa、それらの抗生物質耐性株から選択される。
【請求項56】
以下を含む2成分系であって、
a)1つ以上の亜硝酸塩(例えば、NaNO)で吸収され、含浸され、又はコーティングされた1つ以上のメッシュ;及び
b)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上を含有するプロトン源を含むヒドロゲル;
ここで、成分(a)は成分(b)とは別であり、1つ以上の成分(a)及び(b)は1つ以上の有機ポリオールをさらに含み、
以下の1つ以上によって特徴づけられる、
(a)1つ以上の有機ポリオールは、反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロー
ル及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
2成分の系。
【請求項57】
請求項1ないし請求項56のいずれか一項に記載の方法、組み合わせ、キット、使用、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、又は、系であって、前記有機ポリオールは、存在する場合には、還元剤を含まない(すなわち排除する)。
【請求項58】
前記治療が、被験体におけるライノウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、Mycobacterium tuberculosis、又はインフルエンザ、の感染の治療又は予防である、請求項12-16、18-22又はそれらのいずれかに従属する請求項のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項59】
前記治療が、被験体におけるライノウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、Mycobacterium tuberculosis、又はインフルエンザ、の感染の治療又は予防である、請求項1-11、17、23-57のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、又は、系で、治療に用いられるもの、又は、請求項4に記載の方法及び請求項4に従属するいずれかの請求項に記載の治療的方法。
【請求項60】
前記治療が、被験体におけるライノウイルスの感染の治療又は予防である、請求項58又は請求項59に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項61】
前記治療が、被験体におけるSARS-CoV(SARS)の感染の治療又は予防である、請求項58又は請求項59に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項62】
前記治療が、被験体におけるSARS-CoV-2(COVID-19)の感染の治療又は予防である、請求項58又は請求項59に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項63】
前記治療が、被験体におけるMycobacterium tuberculosis(結核菌)の感染の治療又は予防である、請求項58又は請求項59に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項64】
前記治療が、被験体におけるインフルエンザの感染の治療又は予防である、請求項58又は請求項59に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項65】
前記被験体がヒトである、請求項58ないし請求項64のいずれか一項に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための方法及び組成物、並びに、例えば一酸化窒素に応答する障害を治療するために、生物及び微生物に一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を送達するためのようなその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素(NO)及び一酸化窒素前駆体は、潜在的な医薬品として広く研究されている。一一酸化窒素は血管内皮細胞によって合成・放出される強力な血管拡張物質であり、特に血管局所抵抗や血流の調節に重要な役割を果たしている。哺乳動物細胞において、一酸化窒素は主に、L-アルギニンの酵素的酸化によってL-シトルリンと共に産生される。一一酸化窒素はまた、NOシンターゼ酵素とは独立しているように見えるメカニズムによって皮膚から放出される。一一酸化窒素はまた、血小板や白血球の凝集及び接着の両方の阻害、細胞増殖の阻害、スーパーオキシドラジカルの捕捉、並びに内皮層透過性の調節にも関与する。癌治療における一酸化窒素の役割は、Biochemistry(Moscow),63(7),802-809(1998)で考察されており、その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる。一酸化窒素は、J. Clin. Invest.99(12),2818-2825(1997)のF C Fangによって概説され、国際公開第95/22335号及び国際公開第02/20026号(アバディーン大学)に記載されるように、抗菌特性を有することが示されており、その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる。一酸化窒素、他の窒素酸化物及びそれらの前駆体の生成のためのシステムの他の公知の使用及び適用は、本発明の説明において以下に与えられる。
【0003】
一酸化窒素、他の窒素酸化物、及びそれらの前駆体の、処理のための生物及び細胞への効率的な生成並びに送達に関連して、実質的な問題が残っている。一酸化窒素を生成するために広く採用されているシステムは、無機酸を用いて亜硝酸塩を酸性化して、最初は出発亜硝酸塩と比べて等モル量の亜硝酸(HNO)を生成することに依拠しており、次いで、この亜硝酸は、水素イオン及び水とともに一酸化窒素及び硝酸塩に容易に分解する。この分解は、下記式(1)で表される:
3HNO → 2NO+NO +H+HO (1)
【0004】
NOの収率を最大にしようとするために、亜硝酸の形成が一般的に好まれる約4未満のpHで、亜硝酸塩の酸性化を実施することが従来続けられていた。しかしながら、pH<4の使用は、酸が動物組織と接触しているin vivoでの使用には適していない。より高いpHは細胞及び生体系に対してより安全であるが、4を超えるpHでは従来の系がNOの満足な収率が得られなかった。pH4を超えて生成されるNOの量を増加させようとするためには大量の亜硝酸塩が必要とされ、これは治療用途において非実用的であり、非経済的である。また、亜硝酸の半減期が短いため、式(1)で表される変換は容易に制御できず、治療用の一一酸化窒素の制御放出は困難である。1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の反応は一一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、本明細書では「NOx生成反応」又は「NOxを生成する反応」などと呼ばれ、「NOx」は亜硝酸塩、特に一一酸化窒素、他の窒素酸化物、及びそれらの前駆体の酸性化の生成物を、個々に及び集合的に任意の組み合わせで言及するために使用される。生成されたNOxの各成分はガスとして放出され得るか、又は反応混合物中の溶液中に通過し得るか、又は最初に溶液中に通過し、続いてガスとして放出され得るか、又はそれらの任意の組み合わせであることが理解される。
【0005】
国際公開第00/53193号(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、プロトン源がアスコルビン酸であり、皮膚虚血を治療し、そして創傷治癒を促進するためのクリーム又は軟膏が記載されている。実施例1には、KY JellyTMに基づくゲルが記載されており、実施例7では、ゲルを皮膚と直接接触させた場合と、皮膚を膜で保護した場合の両方で試験した。アスコルビン酸の使用は有意な皮膚炎症を回避すると主張した(国際公開第00/53193号、第2頁)。しかしながら、実際には、ゲルが皮膚に直接接触した場合、ゲルの低いpHによる皮膚炎症の程度は不十分であり、膜が存在する場合、皮膚保護膜はゲルの効果を弱めた。その結果、ゲルは市販されていない。国際公開第00/53193号の組成物は、ポリオールを含まない。
【0006】
国際公開第02/20026号(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、プロトン源がクエン酸又はサリチル酸であり、皮膚の薬物耐性感染症を治療するための皮膚製剤が記載されている。亜硝酸塩含有組成物及び酸含有組成物はツインバレルディスペンサーから分配され、次いで、これらの組成物は混合されて、酸を亜硝酸塩と反応させ、その後、皮膚上に広げられる。プロピレングリコール及びポリエチレングリコールは任意の防腐剤であることが教示されており、グリセリン(グリセロール)は亜硝酸塩組成物とともに使用するための任意のチキソトロピー剤であることが教示されている。プロピレングリコールを、それぞれクエン酸及び亜硝酸塩の一対のクリーム中で使用し、これらをin situで混合して、酸と亜硝酸塩との間の反応を開始させた(例えば、国際公開第02/20026号、実施例3、製剤1)。グリセロールを、セトステアリルアルコールと共に、クエン酸及び亜硝酸塩それぞれの一対のローション中で使用し、これをin situで混合して、酸と亜硝酸塩との反応を開始させた(例えば、国際公開第02/20026号、実施例3、製剤3)。反応混合物の好ましいpHは、望ましくない皮膚炎症を引き起こすと予想される5以下、特に4以下のpHである。鼻スプレーもまた教示されており、これは、より高いpHを使用して敏感な鼻粘膜を刺激することを避けることができるように、アスコルビン酸塩又はアスコルビルパルミテートなどの還元酸を使用することができる。しかしながら、より高いpHはその反応を遅くすることが認められている(国際公開第02/20026号、第16頁、第2段落)。
【0007】
米国特許第6103275号明細書(2000年8月15日公開)(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、亜硝酸塩を酸性化するために、マレイン酸などのpKaが1~4の有機酸とともにアスコルビン酸などの還元剤を使用することが記載されている。粘性(ゲル)組成物は、局所使用のための反応生成物の放出を遅らせるために使用される。酸及び亜硝酸塩は一一酸化窒素の生成が開始されるまで分離したままであり、還元剤は第1及び第2のゲルの少なくとも1つに含まれると記載されている。この方法を使用すべきpH範囲は特定されていない。しかしながら、緩衝液成分が酸と呼ばれるという事実はこれらの化合物が主としてプロトン化形態で存在することを示し得、従って、組成物のpHは実質的に4未満であるべきである。1~4のpKaを有する酸の存在はそのpHでの製剤の良好な緩衝能力を保証するが、そのような酸の組み込みは亜硝酸塩を一酸化窒素に変換する連続効率が維持されるようなレベルでpHが維持されることを保証する便利な方法であり、低いpHは皮膚との接触で実質的な望ましくない皮膚刺激を引き起こすことが予想される。米国特許第6103275号明細書の組成物は、ポリオールを含まない。
【0008】
国際公開第2003/013489号(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)において、3%ポリビニルアルコール(PA)がin situで一緒に混合されるべき、クエン酸及び亜硝酸塩それぞれのゲルベースとして提案された(国際公開第2003/013489号、実施例7)。しかしながら、試験データ(国際公開第2003/013489号、表11及び12)は、PA及びPA組成物を一緒に混合又は使用することなく、安定なゲルを形成することができなかったことを示す。最終組成物に至らなかった上記
の提案とは別に、国際公開第2003/013489号の組成物はポリオールを含まない。
【0009】
米国特許出願公開第2005/0037093号明細書(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、亜硝酸反応に基づく一酸化窒素生成組成物が記載されており、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールを含む任意の賦形剤に言及している。
【0010】
中国特許出願公開第101028229号明細書(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、亜硝酸塩と酸との反応によって一一酸化窒素を生成する化粧品が記載されている。とりわけグリセリン、プロピレングリコール及びモノステアリン酸グリセリンを添加剤として任意に使用することが教示されている。トリヒドロキシエチルアミンは、特定の実施例における成分としてさらに言及されている。
【0011】
中国特許出願公開第101062050号明細書(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、亜硝酸塩と酸との反応によって一一酸化窒素を生成する毛髪成長促進剤が記載されている。とりわけグリセリン、プロピレングリコール及びモノステアリン酸グリセリンを添加剤として任意に使用することが教示されている。D-パントテニルアルコール及びパンテノールとイノシトールとの組み合わせは、特定の実施例における成分として言及されている。
【0012】
国際公開第2008/110872号(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、例えば、ポリオール及びポリエチレングリコールから選択される極性溶媒を任意に含有する発泡性一酸化窒素供与体組成物が記載されている(段落[0055]及び[0056])。特定のポリオールは、プロピレングリコール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、グリセリン、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール及びヘキサン-1,2,6-トリオールであると記載されている。ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール1000(PEG1000)、PEG4000、PEG6000及びPEG8000は、任意のさらなる成分として多くのポリマー剤のリストに記載されている(段落[0062])。グリセロール(グリセリン)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコールなどのポリオール、並びにエチレングリコール、ヘキシレングリコール、他のグリコール、並びにポリエチレングリコールも、段落[0190]及び[0191]において任意の浸透促進剤として言及されている。
【0013】
国際公開第2009/019498号(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、亜硝酸塩及びプロトン源に追加の成分として、1~4のpKaを有さない非チオール還元剤の使用が記載されている。非チオール還元剤の例は、ヨウ化物アニオン、ブチル化ヒドロキノン、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン及びβ-カロテンであると述べられている。ブチル化ヒドロキノンとは別に、国際公開第2009/019498号の組成物はポリオールを含まない。
【0014】
国際公開第2014/188174号及び国際公開第2014/188175(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、プロトン源が三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸及びスルホネート基を含むヒドロゲルであり、皮膚病変のための包帯システム及び経皮送達システムが記載されている。皮膚接触一次層は、亜硝酸塩が吸収されるポリプロピレンメッシュである。メッシュを皮膚上に置き、
ヒドロゲルを最上層としてメッシュ上に重ねると、酸及び亜硝酸塩の反応生成物は、許容できない皮膚刺激なしに皮膚に良好に送達されることが見出される。国際公開第2014/188175号には、例えば、ポリビニルアルコールから形成され、亜硝酸塩を含有する溶解性フィルムで代替の皮膚接触一次層が開示されている。両方の参考文献において、ヒドロゲルがグリセロールを含み得ることが教示されており、その目的は記載されていない。しかしながら、グリセロールが可塑剤としてこのタイプのヒドロゲルに添加されることは周知である(例えば、国際公開第00/06215号、第14頁参照、その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)。これらの文献には、特定のヒドロキシル含有成分、特に1-チオグリセロール、エリソルベート、アスコルビン酸及びブチル化ヒドロキノンが存在しないことが好ましいことが開示されている。
【0015】
米国特許出願公開第2014/0335207号明細書(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、「亜硝酸塩媒体」と「酸性化媒体」との混合時に一酸化窒素を生成する局所混合物が記載されている。「亜硝酸塩媒体」の特定の実施形態が段落[0050]~[0055]に個々に記載され、亜硝酸塩は1つ以上のポリオール成分と共に存在する。段落[0054]及び[0055]に記載される一般的な亜硝酸塩媒体は、グリセリン、ステアリン酸グリセリル、カプリリルグリコール、エチルヘキシルグリセリン及びヘキシレングリコールから選択されるポリオールを含有し、他のパラグラフに記載される特定の実施形態は上記のいくつか及びブチレングリコールを含有する。これらのポリオールが段落[0056]~[0062]に記載される「酸性化媒体」の実施形態の成分でもある。
【0016】
米国特許出願公開第2015/0030702号明細書(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、亜硝酸塩-酸反応に基づく皮膚包帯剤が記載されている。皮膚包帯剤は、ヒドロキノン又はブチル化ヒドロキノンなどの非チオール還元剤を含む。皮膚包帯剤は、例えばポリビニルアルコール又はポリエチレングリコールなどの親水性ポリマーを含むヒドロゲルを含み得る。
【0017】
米国特許出願公開第2017/0209485号明細書(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、発泡体又は血清担体中で一酸化窒素を局所的に適用するための装置及び方法が記載されている。表面張力及び/又はより低い蒸気圧を増加させるための任意の添加剤としてのグリセロール及び(特定されていない)「グリセロール様成分」の使用は、段落[0070]に記載されている。
【0018】
米国特許出願公開第2019/0134080号明細書(その開示は参考文献として本明細書に組み込まれる)には、少なくとも1つの亜硝酸塩反応物を含む第1の溶液と、少なくとも1つの酸性反応物を含む第2の溶液とを含む複数部分の組み合わせから形成される発泡体として、一酸化窒素生成システムを皮膚に局所的に適用するための組成物及び方法が記載されている。発泡体として組み合わせの成分を保持し、通気し、分配するための装置も記載されている。表面張力及び/又はより低い蒸気圧を増加させるための任意の添加剤としてのグリセロールの使用が言及されている(段落[0068])。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、1種以上の有機ポリオールの存在下で、亜硝酸塩酸性化剤として有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1種以上の酸を含むプロトン源を使用して、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体(まとめてNOxと呼ぶ)を、これまでよりも効率的に、かつ高められた反応出力で生成することができるという本発明者らの驚くべき発見に基づく。さらに、亜硝酸塩酸性化剤として有機還元酸を使用するこのような反応系の抗菌的に有効な反応生成物は、生理学的に許
容可能なpH、例えば、1つ以上の有機ポリオールの使用の有無にかかわらず、約5~約8の間のpHで送達可能であることが見出され、in vivo抗菌活性などの有益な生理学的活性を有する組成物として、このようなpHで作動する反応系を、直接送達のために利用可能にする。本発明の基礎をなす一酸化窒素生成方法は生理学的に有効な量の一酸化窒素、任意に窒素の他の酸化物、及び/又は任意にそれらの前駆体を、長期間、例えば約2時間を超えて、例えば約5時間を超えて、例えば約10時間を超えて、任意にNOx生成の最初の強いバーストの後に生成し、医学及び他の用途において潜在的に有意な使用をもたらすことが見出された。初期の強いバーストが必要とされない場合、対象への反応混合物の投与はNOx生成反応の開始後のある期間、例えば、NOx生成反応の開始後約10分、30分、又は1時間以上後に行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、一酸化窒素及び任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するためのシステム、方法、組み合わせ、キット、及び組成物を提供する。そのシステム、方法、組み合わせ、キット及び組成物は、反応物として、1つ以上の亜硝酸塩及び有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含有するプロトン源を含む。そのシステム、方法、組み合わせ、キット及び組成物は、1つ以上の有機ポリオールをさらに含む。還元酸(すなわち、カルボン酸還元酸及び非カルボン酸還元酸)の使用は、一酸化窒素及び任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を、4よりいくらか高いpH、例えば5~8の範囲で生成することを可能にする。本発明はさらに、抗菌使用のためのシステム、方法、組み合わせ、キット、及び組成物を提供し、ここで、1つ以上の有機ポリオールは任意であり、反応は5~8の範囲のプロトン源の出発pHで行われる。
【0021】
第1の態様によれば、本発明は一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための方法であって、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するのに適した反応条件下で、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と1つ以上の亜硝酸塩を反応させることを含み、該反応が1つ以上の有機ポリオールの存在下で行われる方法を提供する;
以下の1つ以上によって特徴付けられる:
(a)1つ以上の有機ポリオールは、反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テト
ラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない。
【0022】
本発明の第1の態様に係る方法によって調製される一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体は、本発明の第2の態様を構成する。
【0023】
第3の態様によれば、本発明は、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源を使用し、1つ以上の有機ポリオールの反応出力増強量の存在下で反応を実施することを含む、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応の出力を増強して、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体の他の酸化物を生成する方法を提供する。反応の出力の増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件下で行われる反応と比較される。
【0024】
第4の態様によれば、本発明は、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するために、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応混合物中で、1つ以上の有機ポリオールを使用して、その反応の出力を増強することを提供する。ここで、プロトン源は、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含む。反応の出力の増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件下で行われる反応と比較される。
【0025】
第5の態様によれば、本発明は、1つ以上の亜硝酸塩をプロトン源と反応させることによって、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための組み合わせ、キット又は組成物を提供する。この組み合わせ、キット又は組成物は以下を含む:
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
以下の1つ以上によって特徴付けられる:
(a)1つ以上の有機ポリオールは、反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロー
ルのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない。
【0026】
プロトン源が3次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルを含み、組み合わせ又はキットが2つ以上の別個の組成物を含む場合、1つ以上のポリオールは、ヒドロゲルと直接接触又は混合して別個の組成物中に存在しないことが好ましい。
【0027】
本発明の第5の態様の組み合わせ、キット又は組成物の化学物質は、例えば、上記の成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに任意選択で水及び/又はpH緩衝液から本質的になり得る。「から本質的になる」という表現は、例えば、上記の成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに任意選択で水及び/又はpH緩衝液の効果が悪影響を受けない限り、少量の1つ以上の追加の成分の存在を可能にすることができる。そのような1つ以上の追加成分の総量は、適切には、組み合わせ、キットの化学成分、又は組成物の約20重量又は体積%未満、例えば約15重量又は体積%未満、例えば約10重量又は体積%未満、例えば約5重量又は体積%未満であってもよい。
【0028】
組み合わせ、キット又は組成物の化学物質は、例えば、上記の成分(i)、(ii)及び(iii)、任意選択で水及び/又はpH緩衝液、及び/又は組み合わせ、キットの化学成分、又は組成物の約20重量又は体積%未満、例えば約15重量又は体積%未満、例
えば約10重量又は体積%未満、例えば約5重量又は体積%未満の量の1つ以上の追加成分からなってもよい。
【0029】
第6の態様によれば、本発明は、以下を含む組み合わせ、キット又は組成物を調製する方法を提供する:
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
これは、成分(i)、(ii)及び(iii)を相互に近接させて組み合わせ又はキットを形成するか、又は混合物にして組成物を形成することを含む;
以下の1つ以上によって特徴付けられる:
(a)1つ以上の有機ポリオールは、反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない。
【0030】
本明細書で使用される「組み合わせ」という表現は、近接させて一緒に使用される別個の物質又は組成物(「成分」と呼ばれる)を指す。成分を近接させることは、複数の段階で達成することができ、それによって最初に一部であるが全てではない成分が一緒にサブコンビネーション又は部分的な組み合わせにし、その後、1つ以上のさらなる成分又は他のサブコンビネーション又は部分的な組み合わせと近接させる。「近接」は、密接な混合物、溶液又は懸濁物を含むことができ、又は密接な混合物、溶液又は懸濁物にならない物理的近接を意味することができ、例えば、キット内の別個の容器中で、後の便利な使用のために一緒に提供される。例えば、亜硝酸塩成分及びプロトン源成分はそれぞれ、1つ以上の亜硝酸塩(又はそれらのいくつか)及び有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸(又はそれらのいくつか)から選択される1つ以上の酸を含み、別々に又はキットの別個の容器中に貯蔵され得、混合によって使用するために一緒にされて、NOx生成反応を開始し得る。1つ以上の有機ポリオールは、亜硝酸塩成分及びプロトン源成分の一方又は両方において供給されてもよく、又はNOx生成反応が開始されるときにも混合される有機ポリオール成分において別々に供給されてもよい。1つ以上のいずれの成分も、それ自体、複数の部分及び複数の容器中に存在し得る。例えば、亜硝酸塩とプロトン源が同じ溶液中にあり、したがって反応することができるので、NO生成反応が直ちに開始されるように、組み合わせを近接させることができる。あるいは、例えば、亜硝酸塩及びプロトン源が乾燥粉末混合物中にあるか、又はNOx生成反応が開始する前に(例えば、組み合わせが接触する粘膜からの)水を必要とするカプセル化粒子として存在するために、NOx生成反応が直ちに開始されず、開始前に1つ以上のさらなる工程又は作用が起こるように、組み合わせを近接させてもよい。
【0031】
実施形態において、発明の第1~第6の態様は互いに独立して、上述の特徴(a)のみ、特徴(b)のみ、特徴(c)のみ、特徴(d)のみ、特徴(e)のみ、特徴(f)のみ、特徴(g)のみ、(b)のみを指す特徴(h)、(c)のみを指す特徴(h)、(d)のみを指す特徴(h)、(e)のみを指す特徴(h)、(f)のみを指す特徴(h)、(g)のみを指す特徴(h)、特徴(a)と(b)のみ、特徴(a)と(b)のみを指す特徴(h)、特徴(a)と(c)のみ、特徴(a)と(c)のみを指す特徴(h)、特徴(a)と(d)のみ、特徴(a)と(d)のみを指す特徴(h)、特徴(a)と(e)のみ、特徴(a)と(e)のみを指す特徴(h)、特徴(a)と(f)のみ、特徴(a)と(f)のみを指す特徴(h)、特徴(a)と(g)のみ、特徴(a)と(g)のみを指す特徴(h)、特徴(b)と(c)のみ、特徴(b)と(c)のみを指す特徴(h)、特徴(b)と(d)のみ、特徴(b)と(d)のみを指す特徴(h)、特徴(b)と(e)のみ、特徴(b)と(e)のみを指す特徴(h)、特徴(b)と(f)のみ、特徴(b)と(f)のみを指す特徴(h)、特徴(a)と(b)と(c)と(f)のみ、特徴(a)と(b)と(c)と(f)のみを指す特徴(h)、(a)~(g)の特徴のすべて、又は特徴(a)及び(b)と特徴(c)~(g)のすべてを指す特徴(h)、によって特徴付けられてもよい。
【0032】
他の実施形態では、本発明の第1から第6の態様が互いに独立して、上述の特徴(c)と(f)と(i)のみ、特徴(c)と(f)と(j)のみ、特徴(i)と特徴(c)及び(f)を指す特徴(h)、特徴(j)と特徴(c)及び(f)を指す特徴(h)、特徴(d)と(g)と(i)のみ、特徴(d)と(g)と(j)のみ、特徴(i)と特徴(d)及び(g)を指す特徴(h)、特徴(j)と特徴(d)及び(g)を指す特徴(h)、特徴(e)と(f)と(i)のみ、特徴(e)と(f)と(j)のみ、特徴(i)と特徴(e)及び(f)を指す特徴(h)、又は特徴(j)と特徴(e)及び(f)を指す特徴(h)、によって特徴付けられてもよい。
【0033】
本発明の第1~第6の態様は、特徴(a)~(g)のすべて、特徴(a)と(b)と特徴(c)~(g)のすべてを指す特徴(h)、特徴(c)と(f)と(i)のみ、特徴(
c)と(f)と(j)のみ、特徴(i)と特徴(c)及び(f)を指す特徴(h)、特徴(j)と特徴(c)及び(f)を指す特徴(h)、特徴(d)と(g)と(i)のみ、特徴(d)と(g)と(j)のみ、特徴(i)と特徴(d)及び(g)を指す特徴(h)、特徴(j)と特徴(d)及び(g)を指す特徴(h)、特徴(e)と(f)と(i)のみ、特徴(e)と(f)と(j)のみ、特徴(i)と特徴(e)及び(f)を指す特徴(h)、特徴(j)と特徴(e)及び(f)を指す特徴(h)、によって特徴付けられることが好ましい。特徴(c)と(f)がその発明を特徴付ける場合、特徴(d)、(e)及び(g)は不必要であり、その場合、特徴(d)、(e)及び(g)(又は特徴(d)、(e)及び(g)を指す特徴(h))はリストから省略され、特徴(c)と(f)(又は特徴(c)及び(f)を指す特徴(h))を特徴とする例として考慮されてもよい。
【0034】
本明細書で使用される「1つ以上の有機ポリオールの反応出力増強量」とは、1つ以上の有機ポリオールの量が、NOx生成反応からの一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体の少なくとも1つの量及び/又は出力期間を、同じ条件下ではあるが1つ以上の有機ポリオールなしで反応が行われた場合よりも高くすることを意味する。「量」とは特に、出発反応系において反応するために利用可能な亜硝酸塩1グラム当たりの、放出されたガスの一酸化窒素の総質量を意味する。本発明の基礎をなす実験研究は、放出されたガスの一酸化窒素、任意選択で他のガスの量を測定し、これらも増強されることを見出した。このことから、発生したNOxの総質量は本発明によって増強されると考えられるので、「量」は反応混合物中の溶液中に通過する一酸化窒素の総質量並びにNOx反応生成物の総質量も含むと理解される。「出力時間」とは特に、反応が完了する前の反応において、ガス状の一酸化窒素、任意選択で他のガスの少なくとも1つが放出される時間の長さを意味する。「1つ以上の有機ポリオールの反応出力増強量」という用語の詳解において上で説明したのと同じ理由のために、「出力期間」という用語は、一酸化窒素が反応混合物中の溶液中を通過する時間の長さ、及びNOx反応生成物が生成される時間の長さも含むと考えられる。よく知られているように、最終的に亜硝酸塩はプロトン源との反応によって使い果たされ、NOx生成反応中に上昇するpHはその最大値に達し、反応は停止する。本発明の第1の態様の方法は、NOx生成反応の収率を、特に、しかし排他的ではなく、生成されるNOの量、例えば生成されるNOの量を、例えば少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%、例えば少なくとも約25%、例えば最大で約150%、例えば最大で約125%、例えば最大で約100%、例えば最大で約75%の向上度まで向上させることが好ましい。本発明の第1の態様の方法は、反応が完了する前に、少なくとも1つの一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体、好ましくは一酸化窒素が、反応が少なくとも約5%、例えば少なくとも約10%完了する前に、反応中に発生する時間の長さを増強することが好ましい。本発明を用いて、少なくとも1つの一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体、好ましくは一酸化窒素、及び最も好ましくはガス状の一酸化窒素が放出され、特に有効量で放出される時間を、少なくとも約2時間、例えば少なくとも約5時間、例えば最大で約10時間以上まで増強することができる。一酸化窒素の発生のこの時間の増強は、例えば、ポリオール成分を使用せずに同量の一酸化窒素を発生させる期間の約150%までの増強度以上まで、例えば約125%までの増強度まで、例えば約100%までの増強度まで、例えば約75%までの増強度まで、を表すことができる。
【0035】
一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択で前駆体の生成は、任意の目的のためであってよい。治療目的及び非治療目的の両方が、以下に例示され、詳解される。
【0036】
第7の態様によれば、本発明は、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を標的位置、例えば任意の細胞、器官、表面、構造、対象、又はその内部空間に送達する治療的又は非治療的方法を提供する。この方法は、(a)標的位
置又はその近傍に、本発明の第5の態様による組み合わせ又は組成物を投与すること;又は(b)本発明の第1又は第3の態様による方法を使用すること、又は発明の第4の態様による使用を実施すること、又は発明の第5の態様による組み合わせ、キット又は組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、それによって生成された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を標的位置又はその近傍に送達すること;又は(c)本発明の第2の態様による一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又はそれらの前駆体をターゲット位置又はその近傍へ送達すること、を含む。
【0037】
本発明の第7の態様の方法は、例えば、それを必要とする被験体における微生物感染を治療する方法であってもよい。被験体は、例えば、ヒト被験体又は他の哺乳動物被験体であってもよい。微生物感染は、例えば、細菌、ウイルス、真菌、微生物、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0038】
本発明の第7の態様の方法は、例えば、被験体に対して行われる血管拡張の方法であってもよい。被験体は、例えば、ヒト被験体又は他の哺乳動物被験体であってもよい。
【0039】
本発明の第7の態様の方法は、例えば、抗菌方法であってもよい。抗菌方法は、ある場所で微生物、例えば細菌、ウイルス、真菌細胞及び/又は微小寄生生物の数を減少させること、その増殖を防止すること、又はその増殖速度を制限することであり得る。このような方法の標的となる微生物は、例えば、プランクトン細胞又は粒子であってもよく、又はバイオフィルム又は他のコロニーとして存在してもよい。本発明によって標的とされる微生物の任意の集団は、プランクトン性であろうとなかろうと、1つの微生物種又は菌株からなることができ、又は2つ以上の種又は菌株を含むことができる。
【0040】
第8の態様によれば、本発明は治療に使用するための、本発明の第5の態様による組み合わせ、キット又は組成物、あるいは本発明の第2の態様による一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を提供する。
【0041】
本発明の第8の態様による使用のための、組み合わせ、キットもしくは組成物、又は一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体は、例えば、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を被験体又はその内部空間に送達する治療方法において使用するためのものであってもよい。この方法は、(a)被験体もしくはその内部空間、又はその近傍に、本発明の第5の態様による組み合わせ又は組成物を投与すること;又は(b)本発明の第1又は第3の態様による方法を使用すること、又は発明の第4の態様による使用を実施すること、又は発明の第5の態様による組み合わせ、キット又は組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、それによって生成された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を被験体もしくはその内部空間、又はその近傍に送達すること;又は(c)本発明の第2の態様による一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又はそれらの前駆体を被験体もしくはその内部空間、又はその近傍へ送達すること、を含む。
【0042】
本発明によれば、我々は、驚くべきことに、3日後にM.abscessusが100%まで殺菌されること、及び/又はM.tuberculosis、H1N1インフルエンザウイルス、SARS-CoVウイルス及びSARS-CoV-2ウイルスが死滅することは、プロトン源が5~8の範囲の初期pHを有するクエン酸(有機カルボン酸)又はアスコルビン酸(有機非カルボン酸還元酸)である場合にも提供されることから明らかなように、静菌効果及び殺生物効果の点で良好な抗菌活性があることがわかった。本明細書における「初期pH」という用語は、その初期pHに影響を与える反応混合物の他の成分が存在する前の、任意の所
望のpH緩衝液を含む、プロトン源の最初に形成された水溶液のpHを指す。この抗菌効果は、1つ以上の有機ポリオール、例えばマンニトール又はソルビトールの存在によって増強されるように見えるが、1つ以上の有機ポリオールの存在に依存しない。酸(例えばクエン酸又はアスコルビン酸)が5~8の範囲の初期pHを有するNOx生成反応生成物からの強力な抗菌効果の発見は特に驚くべきことであり、結核、多剤耐性結核及び非結核性マイコバクテリア感染症を含む、治療が困難なもの及び/又は抗生物質に耐性のあるものを含む呼吸器及び肺感染症の治療における有望な適用を提供する。このような感染症の治療は、反応混合物又はその成分もしくは前駆体を含有する噴霧水性組成物を5~8の範囲のpHで吸入することによって提案されることができる。「広域スペクトル」治療(治療的及び/又は予防的治療、並びに病原体の拡散を防止するための生物及び無生物の表面及び空間のin vitro治療を含む)として知られる、細菌、ウイルス、真菌、及び寄生虫の群のうちの1つ以上からの病原体を含む可能性のある複数の病原体を含む感染の治療もまた、本発明によって可能になる。
【0043】
第9の態様によれば、本発明は、(a)標的とされる微生物、もしくはその近傍、又は微生物に感染した被験体もしくはそのような被験体の内部空間に、本発明の第5の態様による組み合わせ又は組成物を投与すること;又は(b)本発明の第1又は第3の態様による方法を使用すること、又は本発明の第4の態様による使用を実施すること、又は本発明の第5の態様による組み合わせ、キット又は組成物を使用して、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、それによって生成される一酸化窒素、任意選択で窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を、標的とされる微生物、もしくはその近傍、又は微生物に感染した被験体もしくはそのような被験体の内部空間に送達すること;又は(c)本発明の第2の態様による一酸化窒素、任意選択で窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を、標的とされる微生物、もしくはその近傍、又は微生物に感染した被験体もしくはそのような被験体の内部空間に送達すること、を含む第7の態様による抗菌方法の改変を提供する。
ただし、pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよい。
ただし、pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよい。
【0044】
本発明の第9の態様の方法は、例えば、それを必要とする被験体における微生物感染を治療する方法であってもよい。被験体は、例えば、ヒト被験体又は他の哺乳動物被験体であってもよい。微生物感染は、例えば、細菌、ウイルス、真菌、微小寄生虫感染、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。微生物感染は、粘膜を含む被験体の皮膚上にあってもよい。微生物感染は、被験者の内部空間、例えば、被験者の鼻、口、気道、肺、又は肺胸膜の内膜にあってもよい。
【0045】
ヒト又は動物の体に投与される本発明のすべての態様において使用される成分及び混合物、並びにヒト又は動物の体に投与される任意の担体及び賦形剤は、好ましくは、投与時の組織の刺激及び炎症を最小限にするために、生体適合性及び/又は薬学的に受容可能である。
【0046】
本発明による組み合わせ、キット及び組成物は、以下により詳細に記載される、様々な適切な装置及びデバイスとともに保存及び使用され得る。本発明による方法は、以下でより詳細に説明されるように、そのような装置及びデバイスを使用して適切に実行され得る
【0047】
本発明の任意の1つ以上の態様に関して、具体的に説明されるすべての実施形態、例、及び選好は、本発明の任意の1つ又は複数の他の態様に適用可能であると理解されるべきである。さらに、本発明の一態様による任意の方法又は使用は必要に応じて、任意の他の態様による組み合わせ、キット又は組成物を使用して実施されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】実施例1の異なる反応条件における、経時的に放出された一酸化窒素(亜硝酸mg当たりのnmol NO)の累積プロットを示す。
図2】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図3】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図4】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図5】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図6】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図7】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図8】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図9】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図10】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図11】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図12】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図13】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図14】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図15】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図16】実施例2に記載される種々の試験の結果を示す。
図17】SIFT-MS測定に使用される装置の概略を示す。
図18】公知の抗生物質、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の組み合わせのM.abscessusに対する抗菌活性に関する、実施例3に記載される種々の試験の結果を示す。
図19】公知の抗生物質、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の組み合わせのM.abscessusに対する抗菌活性に関する、実施例3に記載される種々の試験の結果を示す。
図20】公知の抗生物質、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の組み合わせのM.abscessusに対する抗菌活性に関する、実施例3に記載される種々の試験の結果を示す。
図21】公知の抗生物質、カルボン酸溶液、カルボン酸-亜硝酸塩溶液及びカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の組み合わせのM.abscessusに対する抗菌活性に関する、実施例3に記載される種々の試験の結果を示す。
図22-1】クエン酸、亜硝酸ナトリウム及びマンニトールを含有する溶液についての多数の臨床分離株培養物(clinical isolate cultures)に対する最小発育阻止濃度(MIC)に関する、実施例4に記載の試験の結果を示す。
図22-2】クエン酸、亜硝酸ナトリウム及びマンニトールを含有する溶液についての多数の臨床分離株培養物(clinical isolate cultures)に対する最小発育阻止濃度(MIC)に関する、実施例4に記載の試験の結果を示す。
図23】ポリオールを含む及び含まないカルボン酸-亜硝酸塩溶液についての緑膿菌に対する抗菌活性に関する、実施例5に記載の試験の結果を示す。
図24】THP-1細胞におけるM. tuberculosis HN 878に対する抗菌活性に関する、実施例6に記載の試験の結果を示す。
図25】THP-1細胞におけるM. tuberculosis HN 878に対する抗菌活性に関する、実施例6に記載の試験の結果を示す。
図26】THP-1細胞におけるM. tuberculosis HN 878に対する抗菌活性に関する、実施例6に記載の試験の結果を示す。
図27】THP-1細胞におけるM. tuberculosis HN 878に対する抗菌活性に関する、実施例6に記載の試験の結果を示す。
図28】MDCK細胞中のH1N1インフルエンザAウイルスに対する細胞毒性(LDH細胞毒性アッセイ)及び抗菌活性に関する、実施例7に記載の試験の結果を示す。(a)MOI=0.002(●)及びMOI=0.02(■)の希釈範囲(横軸は亜硝酸塩モル濃度である)で、細胞毒性が灰色で示され、細胞毒性スケールは右側にある(0.015Mまでの測定亜硝酸塩濃度での細胞毒性はLDHコントロールの1%以下であった);(b)オセルタミビル(1μM)と比較した、MOI=0.002及び亜硝酸塩濃度0.15M、0.015M及び0。0015Mでのプレート写真を示す。前文に列挙したプレートの順序は、図中のプレートの左から右への順序と同じである(2つの実験があり、それぞれの対応する実験のプレートを上下に示す)。プレートのオセルタミビル対のすぐ右側にあるプレートの右端の対は、ウイルスコントロールである。細胞毒性を、LDHコントロールの%(感染後24時間での3回のLDHアッセイの平均)として、試験プレートの各対の下に示す。
図29】類似の条件下(実施例3に記載)で、アミカシン及び陰性コントロールと比較した、水酸化ナトリウムを使用してpH5.8に緩衝化された亜硝酸ナトリウム、クエン酸、及びマンニトールの酸性溶液のM.abscessusを死滅させる有効性の試験の結果を示す。
図30】ヒト被験体における肺感染症の治療に使用するための実施例10に記載される本発明の実施形態を概略的な形態で示す。
図31】吸入されたガス状一酸化窒素(図31の左側)と比較した、本発明による液体NO生成製剤と肺組織との間の接触点(図31の右側)を示す。
図32】実施例8のLDH細胞毒性アッセイの結果を示す(実験1及び2)。データは、2つの実験の平均+標準偏差(SD)として表される。SDは灰色のエラーバーとして示されている。最大LDH活性(細胞+溶解緩衝液)を100%に設定し、すべてのサンプル結果をこの値と比較した。LDH陽性コントロールは、キットからの陽性コントロールであった。黒色のバー(2時間のインキュベーション)はそれぞれの場合におけるバーの各対の左手のバーであり、赤色のバー(24時間のインキュベーション)は、それぞれの場合におけるバーの各対の右手のバーである。
図33】MOI 3.0での実施例8(実験1)のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果を示す。実験1では、SARS-CoV-2を用いて4つの感染多重度(MOIs)で1つのウイルス収量減少アッセイを実施し、接種ウイルスの逆滴定を用いて確認した。MOI 3で接種された細胞の場合、滴定後、ウイルスコントロールウェル中で2.1 log10 TCID50/mlが検出された。SARS-CoV-2収率の減少は、試験した条件のいくつかについて観察され得る。24時間のインキュベーション後、最低3種類のMOIs(すなわち、0.3、0.03及び0.003)では、ほとんどウイルスが検出されなかった。おそらく、Vero E6細胞上での24時間の複製は、高レベルの子孫ウイルスを得るのに十分ではない。データは、2回の滴定の平均+標準偏差(SD)として表される。SDはエラーバーとして示されている。クロロキン及び細胞コントロールlog10 TCID50/ml値を有する水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
図34】実施例8のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果(実験2)を示す。(a)がMOI 3.0であり、(b)がMOI 0.3である。この方法は、製剤が実験2の製剤であり、子孫ウイルスのレベルを増加させるために24時間ではなく48時間インキュベーションを行ったこと以外は、これらのMOIsにおける実験1の部分に対応する。データは、2回の滴定の平均+標準偏差(SD)として表される。SDはエラーバーとして示されている。クロロキン及び細胞コントロールlog10 TCID50/ml値を有する水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
図35】MOI 3.0での実施例9のSARS-CoVに対する抗ウイルス試験の結果を示す。クリスタルバイオレットでの細胞単層染色の前に、2枚のプレートを顕微鏡でチェックし、細胞変性効果(CPE)についてスコア付けした。CPEは、下にある単層の頂部上の細胞破片の形態で、これらのプレート中に存在することが検出された。顕微鏡で検査した2枚のプレートの結果を示す。データは、条件当たりの単一滴定である。残りのプレートについては、クリスタルバイオレット染色後には細胞単層の密度が高すぎるために、CPEをスコア化することができなかった。細胞コントロールlog10 TCID50/ml値を有する水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
ここで、本発明の態様を、特定の実施形態を参照して詳細に説明する。以下に記載される特定の実施形態は、そのような態様と明らかに不適合でない限り、本発明の態様のいずれにも適用され得る。特定の実施形態はまた、そうすることができない場合を除いて、他のすべての特定の実施形態と組み合わせることができる。
【0050】
亜硝酸塩及び亜硝酸塩成分
本発明の態様は、1つ以上の亜硝酸塩の使用を含む。以下において、「亜硝酸塩成分」は、1つ以上の亜硝酸塩自体、及び1つ以上の亜硝酸塩を含む一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための反応系の任意の成分を包含する。
【0051】
亜硝酸塩の選択は特に限定されない。本発明の組成物において使用され得る亜硝酸塩の具体例としては、アルカリ金属亜硝酸塩又はアルカリ土類金属亜硝酸塩が挙げられる。いくつかの実施形態において、1つ以上の亜硝酸塩は、LiNO、NaNO、KNO、RbNO、CsNO、FrNO、AgNO、Be(NO、Mg(NO、Ca(NO、Sr(NO、Mn(NO、Ba(NO、Ra(NO、及びそれらの任意の混合から選択される。
【0052】
特定の実施形態では、亜硝酸塩は、NaNO又はKNOである。一実施形態では、亜硝酸塩は、NaNOである。
【0053】
一実施形態では、亜硝酸塩成分は、乾燥形態で、任意選択で粉末などの粒子形態で、本発明で使用するために提供されてもよい。必要に応じて、亜硝酸塩成分は、例えば、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との間の反応を制御又は遅延させる目的で、カプセル化又はマイクロカプセル化されてもよい。乾燥形態及び/又はカプセル化は、単独で、又は本発明による一酸化窒素を生成するための反応の他の成分との混合物で、亜硝酸塩成分の貯蔵を補助し得る。さらに、乾燥形態及び/又はカプセル化は、単独で、又は本発明による一酸化窒素を生成するための反応の他の成分との混合物で、亜硝酸塩成分の、医療デバイスなどの小さな物体への組み込みを補助し得る。このような物体としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科用ねじ及びピン、並びに他の薄い医療用及び/又は移植可能な物品及び吸入器(ハンドヘルド及び噴霧器)が挙げられる。詳細については、以下の「成分の任意選択でのカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」と題するセクションを参照されたい。
【0054】
必要に応じて、亜硝酸塩成分は、任意選択でカプセル化又はマイクロカプセル化されて、乾燥粉末又は結晶として、又はゲル又は他の担体系、例えば水性担体、例えば水性ゲル又はその溶液とともに存在することができる。乾燥又は粉末形態の亜硝酸塩成分は、便宜上、水の添加によって使用前に溶液に調製することができる。NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加前(例えば、直前)、特に酸性化前(例えば、直前)における亜硝酸
塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、約0.001M~約5Mの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加前(例えば、直前)、特に酸性化前(例えば、直前)における亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は約0.01M~約2Mの範囲である。いくつかの実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加前(例えば、直前)、特に酸性化前(例えば、直前)における亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は約0.1M~約2Mの範囲である。より具体的な実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加前(例えば、直前)、特に酸性化前(例えば、直前)の亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は約0.2M~約1.6Mの範囲である。実施形態において、NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加の前(例えば、直前)、及び特に酸性化の前(例えば、直前)の亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、0.8~1.2Mの範囲であり得る。例えば、NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加の前(例えば、直前)、及び特に有機カルボン酸成分との組み合わせの前(例えば、直前)における亜硝酸塩溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度は、約0.8M、約0.9M、約1.0M、約1.1M、約1.2M、約1.5M又は約1.7Mであり得る。
【0055】
NOx生成反応混合物の2つ以上の前駆体溶液を組み合わせることは、当業者に周知のように、各溶液中の各溶質の濃度の希釈又は溶質の組み合わせを引き起こすことに留意されたい。例えば、溶質A及びBの2つの1M溶液の等量を混合することは、Aの濃度を0.5Mに変化させ、Bの濃度を0.5Mに変化させる。特に明記しない限り、本明細書に記載される亜硝酸塩の濃度は、液体、すなわち溶液として添加されるNOx生成反応混合物の任意の他の成分を添加する前(例えば直前)の初期溶液中の亜硝酸塩の濃度である。NOx生成反応混合物中の実際の濃度は、反応混合物の成分及びそれがどのように調製されたかを知ることによって容易に導き出すことができる。
【0056】
必要に応じて、亜硝酸塩成分は、乾燥形態又は担体液体で、1つ以上のポリオール又はそのようなポリオールのいくつかを含むことができる。
【0057】
亜硝酸塩成分が、ゲル又は他の担体系、例えば水性担体中に、例えば水性ゲル又は水溶液として貯蔵されることが望まれる場合、亜硝酸塩を含有する系は、貯蔵中の亜硝酸塩の分解を防止するために適切なpHに緩衝されることが好ましい。約6~9、例えば約7のpHが好ましい。
【0058】
亜硝酸塩成分は、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成することが望まれるまで、プロトン源と接触させないことが好ましい。このため、亜硝酸塩成分は、好ましくはキット、装置又はデバイスのリザーバー又は容器内に保持される。しかしながら、代わりに、亜硝酸塩成分の乾燥成分、プロトン源、及び1つ以上のポリオールを乾燥組成物、例えば粒子状混合物として保持し、水又は他の適切な溶媒もしくは液体担体を単に添加することによって反応を開始することが可能である。
【0059】
亜硝酸塩は、薬学的に許容される等級の亜硝酸塩であってもよい。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩は薬局方グレードである。言い換えれば、亜硝酸塩は、亜硝酸塩についての1つ以上の現行の薬局方承認基準に準拠し得る。例えば、亜硝酸塩は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方又は日本薬局方のうちの1つ以上の亜硝酸塩の承認基準に準拠し得る。
【0060】
特定の実施形態では、使用される亜硝酸塩がその特性に以下の制限のうちの1つ以上を有する:
(i)亜硝酸塩は、約0.02重量%、約0.01重量%又は約0.001重量%以下の炭酸ナトリウムを含有する;
(ii)亜硝酸塩は、約10ppm(0.001重量%)以下のアンチケーキング剤、例えばアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムを含有する;
(iii)亜硝酸塩は、白色からオフホワイトの固体である;
(iv)亜硝酸塩は、関連する米国薬局方の関連する方法に従って測定された陽イオンについての同定で陽性を有する;
(v)亜硝酸塩は、関連する米国薬局方の該当する方法に従って測定された亜硝酸塩の同定試験で陽性を有する;
(vi)亜硝酸塩は、亜硝酸塩を約97重量%以上又は98重量%以上、及び/又は亜硝酸塩を102重量%以下又は101重量%以下含有し、これは、例えば、イオンクロマトグラフィー(例えば、抑制された導電率検出と組み合わせたイオンクロマトグラフィー)によって決定されるような、関連するUSP熱量測定法によって任意に決定される;
(vii)亜硝酸塩は、25℃の10%溶液中で測定した場合、約7~約9、又は約8~約9のpHを有し、任意選択で、関連する米国薬局方に従って及び/又はpH計を使用して測定される;
(viii)亜硝酸塩の乾燥減量は、約0.25重量%以下又は約0.01重量%以下である;
(ix)亜硝酸塩は、カールフィッシャー法で測定した場合に、約0.5重量%以下の含水量を有する;
(x)亜硝酸塩中の重金属含量は、約10ppm以下であり、任意選択で、亜硝酸塩中の重金属含量は、約10ppm以下である;
(xi)亜硝酸塩は、約0.4重量%以下の硝酸塩を含有し、亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウムである場合には約0.4重量%以下の硝酸ナトリウムを含有し、亜硝酸塩が亜硝酸カリウムである場合には約0.4重量%以下の硝酸カリウムを含有する;
(xii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下又は約0.001重量%以下の不溶性物質を含有する;
(xiii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下の塩化物を含有する;
(xiv)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下の硫酸塩を含有する;
(xv)亜硝酸塩は、約0.001重量%以下の鉄を含有する;
(xvi)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下のカルシウムを含有する;
(xvii)亜硝酸塩が亜硝酸カリウムでない場合、亜硝酸塩は約0.005重量%以下又は約0.001重量%以下のカリウムを含有し、亜硝酸塩が亜硝酸ナトリウムでない場合、約0.005重量%以下又は約0.001重量%以下のナトリウムを含有する;
(xviii)亜硝酸塩は、約0.1重量%以下、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下又は約10ppm以下の有機揮発性化合物を含有する;
(xix)亜硝酸塩は、約0.1重量%以下、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下又は約10ppm以下のエタノールを含有する;
(xx)亜硝酸塩は、約3000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下又は約10ppm以下のメタノールを含有する;
(xxi)亜硝酸塩は、約50ppm以下、約25ppm以下、約20ppm以下、約10ppm以下、約7.9ppm以下、約8ppm以下、約6ppm以下、約5.6ppm以下、又は約2.5ppm以下の不揮発性有機炭素を含有する;
(xxii)亜硝酸塩は、約0.05ppm以下の水銀を含有する;
(xxiii)亜硝酸塩は、約2ppm以下又は約0.2ppm以下のアルミニウムを含有する;
(xxiv)亜硝酸塩は、約3ppm以下又は約1ppm以下のヒ素を含有する;
(xxv)亜硝酸塩は、約0.003重量%以下又は約0.001重量%以下のセレンを含有する;
(xxvi)亜硝酸塩中の微生物負荷の総好気性菌数は、約100CFU/g以下であ
る;
(xxvii)硝酸塩中の酵母及びカビの総数は、約20CFU/g以下である;
(xxviii)亜硝酸塩は、約0.25EU/mg以下又は0.018EU/mg以下の細菌内毒素を含有し;そして
(xxix)亜硝酸塩は約0.1ppm未満のリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム又はリン酸三ナトリウム)を含有し、好ましくは、亜硝酸塩は検出可能な量のリン酸塩を含有しない。
【0061】
特定の実施形態では、亜硝酸塩が(i)~(xxix)の特徴のうちの2つ以上を有する。さらなる実施形態では、亜硝酸塩が(i)~(xxix)の特徴のうちの5つ以上を有する。なおさらなる実施形態では、亜硝酸塩が(i)~(xxix)の特徴のうちの10以上を有する。なおさらなる実施形態では、亜硝酸塩が(i)~(xxix)の特徴のうちの15以上を有する。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩が(i)~(xxix)の特徴のうちの20以上を有する。特定の実施形態では、亜硝酸塩が(i)~(xxix)の特徴の全てを有する。より具体的な実施形態では、亜硝酸塩が(i)~(xxix)の特徴の全てを有する亜硝酸ナトリウムである。
【0062】
いくつかの実施形態では、亜硝酸塩は、任意選択で、関連するUSP熱量測定法によって決定されるように、例えば抑制された導電率検出と組み合わせたイオンクロマトグラフィーなどのイオンクロマトグラフィーによって決定されるように、亜硝酸塩を約97重量%~約101重量%の範囲で含有する。別の実施形態では、亜硝酸塩は、任意選択で、関連するUSP熱量測定法によって任意に決定されるように、例えば抑制された導電率検出と組み合わせたイオンクロマトグラフィーなどのイオンクロマトグラフィーによって決定されるように、約98重量%~約102重量%の範囲の亜硝酸塩を含有する。
【0063】
特定の実施形態において、亜硝酸塩は、以下の特徴を有する:
(i)亜硝酸塩は、約0.02重量%以下の炭酸ナトリウムを含有する;
(ii)亜硝酸塩は、約10ppm以下のアンチケーキング剤を含有する;
(vi)亜硝酸塩は、USP熱量測定法によって測定した場合に、亜硝酸塩を約97重量%以上及び/又は亜硝酸塩を101重量%以下含有する;
(viii)亜硝酸塩の乾燥減量は、約0.25重量%以下である;
(ix)亜硝酸塩は、約0.5重量%以下の含水量を有する;
(x)亜硝酸塩中の重金属含量は、約10ppm以下である;
(xi)亜硝酸塩は、約0.4重量%以下の硝酸塩を含有する;
(xii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下の不溶性物質を含有する;
(xiii)亜硝酸塩は、約0.005重量%以下の塩化物を含有する;
(xiv)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下の硫酸塩を含有する;
(xv)亜硝酸塩は、約0.001重量%以下の鉄を含有する;
(xvi)亜硝酸塩は、約0.01重量%以下のカルシウムを含有する;
(xviii)亜硝酸塩は、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下又は約10ppm以下の有機揮発性化合物を含有する;
(xxi)亜硝酸塩は、約10ppm以下又は約2.5ppm以下の不揮発性有機炭素を含有する;
(xxii)亜硝酸塩は、約0.05ppm以下の水銀を含有する;
(xxiii)亜硝酸塩は、約2ppm以下のアルミニウムを含有する;
(xxiv)亜硝酸塩は、約3ppm以下のヒ素を含有する;
(xxv)亜硝酸塩は、約0.003重量%以下のセレンを含有する;
(xxvi)亜硝酸塩中の微生物負荷の総好気性菌数は、約100CFU/g以下である;
(xxvii)硝酸塩中の酵母及びカビの総数は、約20CFU/g以下であり;そし

(xxviii)亜硝酸塩は、約0.25EU/mg以下の細菌内毒素を含有する。
【0064】
これらの実施形態では、亜硝酸塩は、亜硝酸ナトリウムであってもよく、約0.005重量%以下のカリウムを含有する。好ましくは、亜硝酸ナトリウムはまた、以下の制限の1つ以上を有する:
(iii)亜硝酸ナトリウムは、白色からオフホワイトの固体である;
(iv)亜硝酸ナトリウムは、関連する米国薬局方の関連する方法に従って測定されたナトリウムについての同定で陽性を有する;
(v)亜硝酸ナトリウムは、関連する米国薬局方の該当する方法に従って測定された亜硝酸塩の同定試験で陽性を有する;
(vii)亜硝酸ナトリウムは、25℃の10%溶液中で測定した場合に、約7~約9、又は約8~約9のpHを有し、任意選択で、関連する米国薬局方に従って及び/又はpH計を使用して測定される;
(xix)亜硝酸ナトリウムは、約0.1重量%以下、約5000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下又は約10ppm以下のエタノールを含有する;
(xx)亜硝酸塩は、約3000ppm以下、約1000ppm以下、約500ppm以下、約100ppm以下又は約10ppm以下のメタノールを含有し;そして
(xxix)亜硝酸塩は、約0.1ppm未満のリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、又はリン酸三ナトリウム)を含有し、好ましくは、亜硝酸塩は検出可能な量のリン酸塩を含有しない。
【0065】
(i)~(xxix)の特徴は、米国薬局方XXXII(2009)の関連方法に従って決定することができる。(i)~(xxix)の特徴を決定するための方法は、国際公開第2010/093746号に提供されており、その開示はその全体の参照により本明細書に組み込まれる。(i)~(xxix)の特徴の1つ以上を有する亜硝酸ナトリウムを調製する方法は、国際公開第2010/093746号にも記載されている。
【0066】
1つ以上の有機カルボン酸及びプロトン源成分を含むプロトン源
本発明の態様は、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含有するプロトン源を含む。以下において、「プロトン源成分」という用語は、プロトン源自体、及びプロトン源を含有する、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物、及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための反応系の任意の成分を包含する。
【0067】
このセクションでは、有機カルボン酸をより詳細に例示する。
【0068】
本明細書における「有機カルボン酸」は、分子中に1個以上の-COOH基を含有する任意の有機酸を指す。有機カルボン酸は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。カルボン酸は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。カルボン酸は、脂肪族であってもよく、芳香族であってもよい。カルボン酸は、非環式であってもよく、環式であってもよい。カルボン酸は、ビニル性カルボン酸であってもよい。
【0069】
有機カルボン酸は、1個以上の置換基、例えば1個以上のヒドロキシル基を有していてもよい。本発明で使用することができるヒドロキシル置換有機カルボン酸の例には、α-ヒドロキシカルボン酸、β-ヒドロキシカルボン酸及びγ-ヒドロキシカルボン酸が含まれる。
【0070】
1つ以上の有機カルボン酸、又は2つ以上の場合はそれらの各々は、好ましくは約7未満、より好ましくは7.0未満のpKaを有するべきである。
【0071】
1つ以上のカルボン酸は、1つ以上の還元カルボン酸を含んでいてもよく、又は1つ以上の還元カルボン酸から構成されていてもよい。
【0072】
カルボン酸は、ヒドロゲルの三次元ポリマーマトリックスを形成するポリマー分子に共有結合したペンダント-COOH基を含有する酸ヒドロゲルであってもよい。このようなヒドロゲルを含有するカルボン酸の例としては、例えば、国際公開第2007/007115号、国際公開第2008/087411号、国際公開第2008/087408号、国際公開第2014/188174号及び国際公開第2014/188175号に記載されており、それらの開示はすべて参照により本明細書に組み込まれる。このようなヒドロゲルは、典型的には、三次元ポリマーマトリックスに共有結合した酸又は塩形態のペンダントカルボン酸及びスルホニル基を含む。さらなる詳解については、以下の「成分のための他のリザーバー:ヒドロゲル」と題するセクションを参照されたい。
【0073】
しかしながら、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸の少なくとも1つは、ポリマー又は高分子、例えばヒドロゲルの三次元ポリマー又は高分子マトリックスを形成するポリマー又は高分子に共有結合していないことが一般に好ましい。理論に束縛されることを望むものではないが、証拠、例えば、「有機ポリオール」と題されたセクションで以下に詳解される、ポリオールの立体異性に対する効果の依存性の証拠は、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応の出力を増強するための本発明の効果が少なくとも部分的には酸性化反応の際に亜硝酸塩及びプロトンと相互作用する有機ポリオール分子の効果によって達成されることを示唆し、これはポリオール分子の影響下での反応中に配向及び再配置するための反応分子の移動性が重要であり得ることを意味する。本発明の第8の態様におけるように、ポリオールが必ずしも存在しなくても、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応における反応物間の同じ移動度が重要であると推測される。
【0074】
有機カルボン酸は、例えば、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、α-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ-β-酪酸、ナフトエ酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ酸(エンボニン酸)、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、ラクトビオン酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、オロチン酸、グリセリン酸、グリチルリチン酸、ソルビン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、シュウ酸、これらの塩、及びこれらの組み合わせから選択され得る。特定の実施形態では、有機カルボン酸は、クエン酸、その塩、及びそれらの組み合わせから選択される。特定の一実施形態では、有機カルボン酸は、クエン酸又はその塩である。カルボン酸は、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、又は乳酸とグリコール酸とのコポリマーなどのポリマー又は重合カルボン酸であってもよく、又はそれらを含んでもよい。本明細書で使用される「有機カルボン酸」という用語は、有機カルボン酸の一部又は全部のエステル、又はそれらの一部又は全部の塩も包含するが、それらは本発明による使用の際にプロトン源として作用することができる。
【0075】
1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との接触直前のプロトン源のpHを緩衝して、pHを既知の範囲内に制御し、亜硝酸塩が消費されるに伴いpHの上昇速度を制限することが好ましい。詳細については、以下の「pH制御;任意の緩衝系」と題するセクションを参照されたい。特に、プロトン源である少なくとも1つの有機カルボン酸が、その共役塩基とともに適切に存在し得ることが想定される。酸及びその共役塩基は、水性担体中で適切に緩衝液を形成し得る。緩衝液は、NOx生成反応が進行するにつれて、それによって所望のpHが維持されるように、好ましくは約3~9、例えば約4~8、好ましくは生理学的
接触のために又は生細胞及び生物との接触のために約5~約8の範囲のpHが選択され得る。共役塩基は、存在する場合、別々に添加されてもよく、又は酸及び/又は塩基、好ましくは無機酸及び/又は無機塩基を使用してpHを調整することによってプロトン源からin situで生成されてもよい。
【0076】
pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が添加される前(例えば、直前)に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、約3~9、例えば約4~8、例えば約5~8の範囲が適切である。プロトン源に関連して本明細書で使用される「初期pH」とは、pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分(一部を含むがその全ての成分ではない)が添加される前(例えば、直前)の任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液のpHを意味する。乾燥粉末プロトン源材料又はプロトン源の水溶液の他の前駆体は、所望の初期pHを有する水溶液をもたらす適切な量で使用される。
【0077】
プロトン源成分をゲル又は他の担体系、例えば水性担体中に、例えば水性ゲル又は水溶液として貯蔵することが望まれる場合、プロトン源を含有する系を適切なpHに緩衝して、酸性度を維持するのを防ぎ、貯蔵中のプロトン源の分解を防止することが好ましい。約3~6、例えば約3~5のpHが好ましい。必要に応じて、プロトン源成分を使用する直前に塩基を添加することによってpHを上昇させることができる。
【0078】
例えば、クエン酸に対する不耐性を有する患者もいる。患者は治療前に酸に対する不耐性の可能性について試験されるべきであり、それに応じて酸成分が選択されるべきである。
【0079】
一実施形態では、プロトン源成分又はその一部は、本発明で使用するために、乾燥形態で、任意選択で粉末などの粒子形態で提供することができる。必要に応じて、プロトン源成分又はその一部は、例えば、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応を制御又は遅延させる目的で、カプセル化又はマイクロカプセル化されてもよい。カプセル化形態は、プロトン源が通常、室温で液体又はゲル状態を有する場合に特に使用され得る。乾燥形態及び/又はカプセル化は、単独で、又は本発明による一酸化窒素を生成するための反応の他の成分との混合物中で、プロトン源の貯蔵を補助し得る。さらに、乾燥形態及び/又はカプセル化は、単独で、又は本発明による一酸化窒素を生成するための反応の他の成分との混合物中で、プロトン源成分の医療デバイスなどの小さい物体への組み込みを補助し得る。このような物体としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科用ねじ及びピン、並びに他の薄い医療用及び/又は移植可能な物品が挙げられる。詳細については、以下の「成分の任意選択でのカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」と題するセクションを参照されたい。
【0080】
必要に応じて、任意選択でカプセル化又はマイクロカプセル化された、1つ以上の有機カルボン酸は、乾燥粉末又は結晶として、又はゲル又は他の担体系、例えば水性担体、例えば水性ゲル又はその溶液ととともに、プロトン源成分中に存在することができる。乾燥又は粉末形態の有機カルボン酸を含有するプロトン源成分は、水を添加することにより、便宜上使用前に溶液に調製されることができる。NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加前(例えば、直前)、及び特に亜硝酸塩との反応の開始前(例えば、直前)の、このような溶液中の全プロトン源(存在する任意の有機非カルボン酸還元酸を含む)のモル濃度は、約0.001M~約5Mの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、NOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加前(例えば、直前)、及び特に亜硝酸塩との反応の開始前(例えば、直前)の、このような溶液中の全プロトン源のモル濃度は、約0.01M~約2Mの範囲である。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のこ
のような溶液中の全プロトン源のモル濃度は、約0.1M~約2Mの範囲である。より具体的な実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の全プロトン源のモル濃度は、約0.2M~約1.6Mの範囲である。実施形態において、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の全プロトン源のモル濃度は、0.8~1.2Mの範囲であってもよい。例えば、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の全プロトン源のモル濃度は、約0.8M、約0.9M、約1.0M、約1.1M、約1.2M、約1.5M又は約1.7Mであってもよい。
【0081】
本明細書で使用される「全プロトン源のモル濃度」、「全プロトン源の濃度」などは、プロトン(H)供与体部分又はプロトン(H)供与体部分の少なくとも1つ(2つ以上存在する場合)が主にプロトン化される、すなわちモル基準で50%を超えてプロトン化されるpHで、本発明によるプロトン源として使用される有機カルボン酸及び/又は有機非カルボン酸のいずれかの濃度を指すものと理解されるべきである。言い換えれば、NOx生成反応の開始前にpHをより高いpHに調整し、それによってプロトン化の程度を低下させた場合、全プロトン源のモル濃度又は濃度は、それに応じて低下したとみなされるべきではない。
【0082】
NOx生成反応混合物の2つ以上の前駆体溶液を組み合わせることは、当業者に周知のように、各溶液中の各溶質又は溶質の組み合わせの濃度の希釈を引き起こすことに留意されたい。例えば、溶質A及びBの2つの1M溶液の等量を混合することは、Aの濃度を0.5Mに変化させ、Bの濃度を0.5Mに変化させる。特に明記しない限り、本明細書に記載されるプロトン源の濃度は、液体、例えば溶液として添加されるNOx生成反応混合物の任意の他の成分の添加前(例えば、直前)の初期溶液中の濃度である。NOx発生反応混合物中の実際の濃度は、反応混合物の成分及びそれがどのように調製されたかを知ることによって容易に導き出すことができる。
【0083】
乾燥又は粉末形態のプロトン源成分は、水を添加することによって、便宜上使用前に溶液に調製することができる。
【0084】
必要に応じて、1つ以上の有機カルボン酸は、乾燥形態又は担体液体で、1つ以上のポリオール又はそのようなポリオールのいくつかとの混合物又は溶液中に存在してもよい。
【0085】
亜硝酸塩成分は、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成することが望まれるまで、プロトン源と反応性接触させないことが好ましい。このため、プロトン源成分又はその一部は、好ましくはキット、装置又はデバイスのリザーバー又は容器内に保持される。しかしながら、代替的に、1つ以上の亜硝酸塩又は亜硝酸塩成分、プロトン源及び1つ以上のポリオールの乾燥成分を、乾燥組成物、例えば微粒子混合物として保持し、水又は他の適切な溶媒又は液体担体を単に添加することによって反応を開始することができる。
【0086】
1つ以上の有機非カルボン酸還元酸を含むプロトン源成分
1つ以上の有機カルボン酸を含むか又はそれからなるプロトン源成分の上記の詳解は、1つ以上の有機非カルボン酸還元酸を含むか又はそれからなるプロトン源成分に同様に適用される。本セクションでは、有機非カルボン酸還元酸をより詳細に例示する。
【0087】
本明細書における「有機非カルボン酸還元酸」とは、分子中に-COOH基を含まない任意の有機還元酸を指す。有機非カルボン酸還元酸は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。非カルボン酸還元酸は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。非カルボン酸還元酸は、脂肪族であってもよく、芳香族であってもよい。非カルボン酸還元酸は、非環式であってもよく、環式であってもよい。非カルボン酸還元酸は、ビニル性であ
ってもよい。
【0088】
1つ以上の有機非カルボン酸還元酸、又は2つ以上の場合はそれらの各々は、好ましくは約7未満、より好ましくは7.0未満のpKaを有するべきである。
【0089】
上記で説明した理由のため、一般に、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸の少なくとも1つが、ポリマー分子、例えばヒドロゲルの三次元ポリマーマトリックスを形成するポリマー分子に共有結合していないことが好ましい。
【0090】
有機非カルボン酸還元酸は、例えば、アスコルビン酸;パルミチン酸アスコルビル(アスコルビルパルミテート);3-O-エチルアスコルビン酸、他の3-アルキルアスコルビン酸、6-O-オクタノイルアスコルビン酸、6-O-ドデカノイルアスコルビン酸、6-O-テトラデカノイルアスコルビン酸、6-O-オクタデカノイルアスコルビン酸及び6-O-ドデカンジオイルアスコルビン酸などのアスコルビン酸誘導体;還元酸などの酸性還元体;エリソルビン酸;シュウ酸;それらの塩;及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。特定の一実施形態では、有機非カルボン酸還元酸は、アスコルビン酸又はその塩である。
【0091】
有機非カルボン酸還元酸は、1個以上の置換基、例えば1個以上のヒドロキシル基を有していてもよい。本発明で使用することができるヒドロキシル置換有機非カルボン酸還元酸の例には、酸性還元体、例えば還元酸(2,3-ジヒドロキシ-2-シクロペンタノン)が含まれる。
【0092】
1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との接触後のプロトン源及び/又は反応混合物のpHは、既知の範囲内のpHを制御し、亜硝酸塩が消費されるに伴ってpHの上昇を制御するために緩衝されることが好ましい。詳細については、以下の「pH制御;任意の緩衝系」と題するセクションを参照されたい。特に、プロトン源である少なくとも1つの有機非カルボン酸還元酸が、その共役塩基とともに適切に存在し得ることが想定される。酸及びその共役塩基は、水性担体中で適切に緩衝液を形成し得る。緩衝液は、NO生成反応が進行するにつれて、それによって所望のpHが維持されるように、好ましくは約3~9、例えば約4~8の範囲のpH、好ましくは生理学的接触のために又は生細胞及び生物との接触のために約5~約8の範囲のpHが選択され得る。共役塩基は、存在する場合、別々に添加されてもよく、又は酸及び/又は塩基、好ましくは無機酸及び/又は無機塩基を使用してpHを調整することによってプロトン源からin situで生成されてもよい。
【0093】
pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が添加される前(例えば、直前)に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、約3~9、例えば約4~8、例えば約5~8の範囲が適切である。乾燥粉末プロトン源材料又はプロトン源の水溶液の他の前駆体は、所望の初期pHを有する水溶液をもたらす適切な量で使用される。
【0094】
プロトン源成分をゲル又は他の担体系、例えば水性担体中に、例えば水性ゲル又は水溶液として貯蔵することが望まれる場合、プロトン源を含有する系を適切なpHに緩衝して、酸性度を維持するのを防ぎ、貯蔵中のプロトン源の分解を防止することが好ましい。約3~6、例えば約3~5のpHが好ましい。必要に応じて、プロトン源成分を使用する直前に塩基を添加することによってpHを上昇させることができる。
【0095】
シュウ酸のようないくつかの還元酸は有毒である。酸成分は、それに応じて選択されるべきである。
【0096】
1つ以上の有機非カルボン酸還元酸は、上記の方法で、1つ以上の有機カルボン酸に加えて、又はその代わりに、1つ以上の有機非カルボン酸還元酸をプロトン源成分に使用することができる。詳細については、「1つ以上の有機カルボン酸及びプロトン源成分を含むプロトン源」のセクションを参照されたい。
【0097】
有機ポリオール及び有機ポリオール成分
本発明の態様は、1つ以上の有機ポリオールを含む。以下では、「有機ポリオール成分」又は「ポリオール成分」という用語は、有機ポリオール自体、及び有機ポリオールを含有する、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための反応系の任意の成分を包含する。
【0098】
本明細書における「有機ポリオール」とは、特に亜硝酸塩反応のためのプロトン源ではなく、糖又は多糖ではない2つ以上のヒドロキシル基を有する有機分子を指す。ここで、「糖」及び「多糖」という用語は、オリゴ糖、グリカン及びグリコサミノグリカンを含む。したがって、有機ポリオールは、約7以上、例えば7.0以上のpKaを有する。
【0099】
ここで、「有機ポリオール」は、還元剤を除くことが好ましい。したがって、全ての態様の中の本発明の一実施形態において、有機ポリオールは還元剤を除く。2つ以上のヒドロキシル基を有し、糖類又は多糖類ではない有機分子である還元剤の例は、チオグリセロール(例えば、1-チオグリセロール)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、アスコルビン酸、アスコルビン酸塩、エリソルビン酸及びエリソルビン酸塩である。チオグリセロール(例えば、1-チオグリセロール)、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、アスコルビン酸塩及びエリソルビン酸塩は還元剤であるため、「有機ポリオール」から除くことが好ましい。とにかく、アスコルビン酸及びエリソルビン酸は、特に亜硝酸塩反応のプロトン源であるため、「有機ポリオール」から除かれる。誤解を避けるために、我々はプロトン源、例えばアスコルビン酸及び/又はエリソルビン酸である還元剤が、本発明のプロトン源から、又はプロトン源成分、組み合わせ、キット、組成物、使用、方法、もしくは本発明の任意の他の部分から、並びにそれらがプロトン源として存在する場合に実施される手段から除かれないことを確認する。
【0100】
有機ポリオールは、環式であってもよく、非環式であってもよく、又は1つ以上の環式有機ポリオールと1つ以上の非環式有機ポリオールとの混合物であってもよい。例えば、1つ以上の有機ポリオールは、2つ以上のOH基によって置換された1つ以上のアルカン、2つ以上のOH基によって置換された1つ以上のシクロアルカン、2つ以上のOH基によって置換された1つ以上のシクロアルキルアルカン、及びそれらの任意の組み合わせから選択されてもよい。最も好ましくは、有機ポリオールは、OH以外のいずれの置換基も有しない。
【0101】
好ましくは、1つ以上の有機ポリオールは、1つ以上の非環式有機ポリオールである。好ましい1つ以上の非環式有機ポリオールは、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する糖アルコールから選択される。好ましい1つ以上の非環式有機ポリオールは、アルジトール、例えば4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有するアルジトールから選択される。1つ以上の有機ポリオールは、サポニン、サポゲニン、ステロイド又はステロイド配糖体を含まないことが好ましい。
【0102】
あるいは、1つ以上の有機ポリオールは、1つ以上の環式有機ポリオールであってもよい。これらの実施形態において、1つ以上の環式有機ポリオールは、環式糖アルコール又は環式アルジトールであってもよい。例えば、1つ以上の環式ポリオールは、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する環式糖アルコール、又は4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する環式アルジトールであって
もよい。環式ポリオールの具体例は、イノシトールである。
【0103】
いくつかの実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、7つ以上のヒドロキシル基を有する。特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、7個以上のヒドロキシル基を有する糖アルコール又はアルジトールである。より特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、9個以上のヒドロキシル基を有する。さらなる実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、9個以上のヒドロキシル基を有する糖アルコール又はアルジトールである。いくつかの実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、20個以下のヒドロキシル基を有する。特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、20個以下のヒドロキシル基を有する糖アルコール又はアルジトールである。より特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、15個以下のヒドロキシル基を有する。さらなる実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、15個以下のヒドロキシル基を有する糖アルコール又はアルジトールである。1つ以上の有機ポリオールは、7~20の範囲、より具体的には9~15の範囲の数のヒドロキシル基を有してもよい。特定の実施形態では、1つ以上の有機ポリオールは、9、12、15又は18個のヒドロキシル基を含む。
【0104】
好ましくは、1つ以上の有機ポリオールは、例えば、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位を含む(からなる)糖アルコール化合物である。1つ以上の有機ポリオールは、例えば、1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位の直鎖、又は1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位の分岐鎖を含む(からなる)糖アルコール化合物であってもよい。
【0105】
本明細書で使用される単糖単位は、化合物中の少なくとも1つの他の単位(別の単糖単位又は非環式糖アルコール単位)に共有結合された単糖を指す。本明細書で使用される非環式糖アルコール単位は、化合物中の少なくとも1つの他の単位(単糖単位又は別の非環式糖アルコール単位)に共有結合された非環式糖アルコールを指す。化合物中の単位は、エーテル結合を介して結合されていてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の単糖単位は、グリコシド結合を介して化合物の他の単位に共有結合している。特定の実施形態において、単糖単位の各々は、グリコシド結合を介して化合物の他の単位に共有結合される。特定の実施形態では、糖アルコール化合物は、単糖又はオリゴ糖グリコン及び非環式糖アルコールアグリコンを有するグリコシドである。
【0106】
好ましい非環式糖アルコール単位は、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する糖アルコール単位である。特定の実施形態では、非環式糖アルコール単位は、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール及びボレミトールの単位からなる群より選択される。
【0107】
特定の実施形態では、1つ以上の単糖単位は、C又はCの単糖単位である。言い換えれば、単糖単位の1つ以上は、ペントース又はヘキソース単位である。より特定の実施形態では、それぞれの単糖単位は、C又はCの単糖単位である。特定の実施形態では、1つ以上の糖アルコール単位は、C又はCの糖アルコール単位である。より特定の実施形態では、それぞれ糖アルコール単位は、C又はCの糖アルコール単位である。
【0108】
特定の実施形態では、糖アルコール化合物は、例えば、n個の単糖単位及びm個の非環式糖アルコール単位からなり、ここで、nは1以上の整数であり、mは1以上の整数であり、(n+m)は10以下である。特定の実施形態では、糖アルコール化合物は、例えば、1つの非環式糖アルコール単位で末端化されたn個の単糖単位の鎖を含み(からなり)、ここで、nは1~9の整数である。これらの実施形態において、単糖単位の鎖は、グリコシド結合によって共有結合されてもよい。特定の実施形態では、各単糖単位は、グリコ
シド結合によって別の単糖単位又は非環式糖アルコール単位に共有結合している。特定の実施形態において、糖アルコール化合物は、例えば、1つの非環式アルコール単位で末端化された1、2又は3の単糖単位の鎖を含む(からなる)。1、2、3つ又はそれぞれの単糖単位は、C5又はC6の単糖単位であってもよい。非環式アルコール単位は、C5又はC6の糖アルコール単位であってもよい。糖アルコール化合物の例としては、イソマルト、マルチトール及びラクチトール(n=1);マルトトリイトール(n=2);及びマルトテトライトール(n=3)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
このような糖アルコール化合物は、二糖類又はオリゴ糖類に由来する糖アルコールとして説明することができる。本明細書で使用されるオリゴ糖とは、3~10個の単糖単位からなる糖をいう。二糖類又はオリゴ糖類に由来する糖アルコールは、二糖類、オリゴ糖類又は多糖類(例えば、加水分解及び水素化から)から(例えば、水素化によって)合成され得るが、二糖類、オリゴ糖類又は多糖類から合成される化合物に限定されない。例えば、二糖類に由来する糖アルコールは、単糖及び糖アルコールの脱水反応から形成され得る。1種以上の有機ポリオールは、二糖類、三糖類又は四糖類に由来する糖アルコールであってもよい。二糖類に由来する糖アルコールの例としては、イソマルト、マルチトール及びラクチトールが挙げられるが、これらに限定されない。三糖類に由来する糖アルコールの例としては、マルトトリイトールが挙げられるが、これに限定されない。四糖類に由来する糖アルコールの例としては、マルトテトライトールが挙げられるが、これに限定されない。
【0110】
適切な有機ポリオールとしては、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、及びそれらの任意の組み合わせから選択される任意のものが挙げられる。グリセロールを使用することができ、存在する場合、好ましくは1つ以上の他の有機ポリオール、例えばエリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、又はそれらの任意の組み合わせとともに存在する。
【0111】
多くの有機ポリオールは、1つ以上のキラル中心を有するので、立体異性体の形態で存在する。有機ポリオールのすべての立体異性体及び光学異性体及び異性体混合物は、本発明及び特許の範囲内に含まれることが意図される。特に、すべてのキラル有機ポリオール及びそれらのすべての混合物のD体及び/又はL体を使用することができる。
【0112】
興味深いことに、本発明におけるポリオールの使用の効果は、立体化学に依存することが見出された。したがって、本発明において使用するための1つ以上の有機ポリオールの光学異性体形態又は光学異性体混合物の選択は、亜硝酸塩とプロトン源との反応の結果に、少なくとも生成されるNOの量に関して影響を及ぼし得る。
【0113】
例えば、ソルビトールは、マンニトールの立体異性体であり、1つのヒドロキシル基の配向が互いに異なる。以下の実施例2D及び2E(図5及び6)に示すように、亜硝酸塩とプロトン源との反応の出力に対するソルビトール及びマンニトールの効果は、他の点では同一の反応系において異なる。
【0114】
特定の実施形態では、有機ポリオールは、アラビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール及びそれらの任意の組み合わせの群から選択される。アラビトールは、D又はL-アラビトール又はそれらの混合物であってもよい。キシリトールは、D又はL-
キシリトール又はそれらの混合物であってもよい。ソルビトールは、D又はL-ソルビトール又はそれらの混合物であってもよい。マンニトールは、D又はL-マンニトール又はそれらの混合物であってもよい。
【0115】
特定の実施形態では、1つ以上のポリオールは、本明細書に記載のシステム、方法、組み合わせ、キット、及び組成物が結核感染症又は結核菌の数を減少させるための抗菌法の処置において使用される場合、例えば、本明細書に記載の1つ以上の単糖単位及び1つ以上の非環式糖アルコール単位(二糖類又はオリゴ糖類に由来する糖アルコールを含む)を含む(からなる)糖アルコール化合物である。
【0116】
一実施形態では、有機ポリオール成分は、乾燥形態で、任意選択で粉末などの粒状形態で、本発明に使用するために提供されてもよい。必要に応じて、有機ポリオールは、例えば、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応におけるポリオールの関与を制御又は遅延させる目的で、カプセル化又はマイクロカプセル化されてもよい。カプセル化形態は、有機ポリオールが通常、室温で液体又はゲル状態を有する場合に特に使用され得る。乾燥形態及び/又はカプセル化は、単独又は本発明による一酸化窒素を生成するための反応の他の成分との混合物中で、有機ポリオール成分の貯蔵を補助することができる。さらに、乾燥形態及び/又はカプセル化は、単独又は本発明による一酸化窒素を生成するための反応の他の成分との混合物中で、有機ポリオール成分の医療デバイスなどの小さい物体への組み込みを補助することができる。このような物体としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科用ねじ及びピン、並びに他の薄い医療用及び/又は移植可能な物品が挙げられる。詳細については、以下の「成分の任意選択でのカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」と題するセクションを参照されたい。
【0117】
あるいは、有機ポリオール成分は、担体媒体、例えば水性担体液体又はゲル担体を含んでもよい。有機ポリオールが室温で通常液体である場合、それは、追加の担体成分なしでそのまま使用されてもよく、又は1つ以上の担体添加剤、例えば水と混合して使用されてもよい。
【0118】
必要に応じて、任意選択でカプセル化又はマイクロカプセル化された、1つ以上の有機ポリオールは、乾燥粉末又は結晶として、又はゲル又は他の担体系、例えば水性担体、例えば水性ゲル又はその溶液と組み合わせて、ポリオール成分中に存在することができる。乾燥又は粉末形態の有機ポリオールを含有するポリオール成分は、便宜上、水の添加によって使用前に溶液に調製することができる。亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の1つ以上のポリオールの合計のモル濃度は、溶液中の各ポリオールの飽和限界までの任意の濃度であり得る。例えば、1つ以上のポリオールの総モル濃度は、約0.001M~約5Mの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の1つ以上のポリオールの総モル濃度が約0.01M~約2Mの範囲である。いくつかの実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の1つ以上のポリオールの総モル濃度が約0.1M~約2Mの範囲である。より特定の実施形態では、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の1つ以上のポリオールの総モル濃度が約0.2M~約1.6Mの範囲である。実施形態において、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の1つ以上のポリオールの総モル濃度が0.8~1.2Mの範囲であり得る。例えば、亜硝酸塩との反応の開始前のこのような溶液中の1つ以上のポリオールの総モル濃度は、約0.8M、約0.9M、約1.0M、約1.1M、約1.2M、約1.5M又は約1.7Mであり得る。
【0119】
NOx生成反応混合物の2つ以上の前駆体溶液を組み合わせることは、当業者に周知のように、各溶液中の各溶質の濃度の希釈又は溶質の組み合わせを引き起こすことに留意さ
れたい。例えば、溶質A及びBの2つの1M溶液の等量を混合することは、Aの濃度を0.5Mに変化させ、Bの濃度を0.5Mに変化させる。特に明記しない限り、本明細書に記載される有機ポリオールの濃度は、液体として添加されるNOx生成反応混合物の任意の他の成分、例えば溶液の添加前(例えば、直前)の初期溶液中の濃度である。NOx発生反応混合物中の実際の濃度は、反応混合物の成分及びそれがどのように調製されたかを知ることによって容易に導き出すことができる。
【0120】
乾燥又は粉末形態のポリオール成分は、便宜上、水を添加することによって使用前に溶液に調製することができる。
【0121】
必要に応じて、ポリオールは、乾燥形態又は担体液体で、1つ以上の亜硝酸塩又はプロトン源もしくはそのようなプロトン源のいくつかとの混合物又は溶液中に存在することができる。
【0122】
亜硝酸塩が使用前に、反応の他の成分から分離して一酸化窒素を生成するように保たれる特定の実施形態では、亜硝酸塩成分が1つ以上のポリオールを含むことができる。これらの実施形態において、有機カルボン酸成分は、ポリオールを実質的に含まなくてもよい。代替の実施形態では、有機カルボン酸成分は、1つ以上のポリオールを含む。これらの実施形態において、亜硝酸塩成分は、ポリオールを実質的に含まなくてもよい。さらなる実施形態では、有機カルボン酸成分及び亜硝酸塩成分がそれぞれ、1つ以上のポリオールを含んでいてもよく、これらは2つの成分の間と同じであっても異なっていてもよい。
【0123】
別の実施形態では、有機カルボン酸成分及び亜硝酸成分は、ポリオールを実質的に含まなくてもよく、1つ以上のポリオールは、別個のポリオール成分に含まれてもよい。
【0124】
反応混合物中の亜硝酸塩、プロトン源及び任意選択のポリオールの相対濃度
NOx生成反応の開始時(又は開始前)のポリオール成分又は反応溶液中の任意選択の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、亜硝酸イオンの総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば、亜硝酸成分又は反応溶液中の亜硝酸イオンの総モル濃度の約0.1~約2倍、例えば約0.25~約1.5倍、例えば約0.3~約1.2倍であってもよい。1つ以上の有機ポリオールと亜硝酸イオンとの間の同じ相対モル濃度は、本発明による組み合わせ又はキットの構成要素において、又は本発明による組成物において、NOx生成反応の開始前(例えば、直前)に適切に提供される。
【0125】
NOx生成反応の開始時(又は開始前)のポリオール成分又は反応溶液中の任意選択の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、プロトン源の総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば、プロトン源成分又は反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の約0.1~約2倍であることが適切であり得る。1つ以上の有機ポリオールとプロトン源との間の同じ相対モル濃度は、本発明による組み合わせ又はキットの構成要素において、又は本発明による組成物において、NOx発生反応の開始前(例えば、直前)に適切に提供される。
【0126】
任意選択の添加成分
本発明で使用するための組み合わせ、キット又は組成物は、一連の希釈剤、担体及び賦形剤に組み込まれてもよく、及び/又は1つ以上の追加成分、特に、それが使用される組み合わせ、キット又は組成物に1つ以上の特定の利益を提供することを目的とした機能的成分とともに提供されてもよい。このような希釈剤、担体、賦形剤及び/又は追加成分は、一般に、in vivoでの使用が所望される場合、生理学的に適合性である。
【0127】
適切な生理学的に適合する希釈剤、担体及び/又は賦形剤の例としては、ラクトース、デンプン、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タ
ルク、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
一般的に言えば、目的とされる投与様式に応じて、医薬製剤は、本発明の組み合わせもしくは組成物、又はその成分を約0.005重量%~約95重量%、好ましくは約0.5重量%~約50重量%含有する。このような投薬形態を調製する実際の方法は、公知であるか、又は当業者に明らかである。
【0129】
賦形剤は、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体の送達のために、反応体及び/又は反応生成物が標的部位に送達されることになる、目的とされる使用又は投与経路に応じて、公知の賦形剤から選択されてもよい。例えば、クリーム、ローション及び軟膏は、亜硝酸塩を、クリーム、ローション及び軟膏基剤又は他の増粘剤及び粘稠化剤(例えば、Eudragit L100、カーボポール、カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシメチルセルロース)などの賦形剤に組み込むことによって処方されてもよい。プロトン源は、カーボポール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エタノール、ラクトースから選択される賦形剤中に、又は水性基剤中に組み込まれてもよい。フィルムを形成することが所望される場合、フィルム形成賦形剤、例えばプロピレングリコール、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、ゼラチン、グアーガム及びセラックが使用されてもよい。
【0130】
任意の追加成分は、例えば、甘味剤、味マスキング剤、増粘剤、粘稠化剤、湿潤剤、潤滑剤、結合剤、フィルム形成剤、乳化剤、可溶化剤、安定化剤、着色剤、着臭剤、塩、コーティング剤、抗酸化剤、活性薬剤及び防腐剤から選択され得る。このような成分は、当技術分野で周知であり、それらの詳細な説明は当業者にとって必要ではない。湿潤剤、乳化剤、潤滑剤、結合剤、可溶化剤等の補助物質の例としては、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アカシアゴム、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンアセテート、トリエタノールアミンオレエート等が挙げられる。甘味剤又は味マスキング剤は、例えば、味、後味、知覚される不快な塩味、酸味又は苦味に有益に影響する、糖、サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ネオテーム又は他の化合物を含んでもよく、これは、経口又は吸入製剤がレシピエントを刺激する傾向を減少させる(例えば、咳や喉の痛み、又は他の望ましくない副作用(例えば、送達用量を減少させ得るか、又は処方された治療レジメンに対する患者のコンプライアンスに悪影響を及ぼし得る))。特定の味マスキング剤は、1つ以上の亜硝酸塩と錯体を形成し得る。増粘剤、粘稠化剤及びフィルム形成剤の例は、上記に与えられている。
【0131】
活性薬剤及び他の追加成分、例えば希釈剤、担体及び賦形剤として役立つものの選択は、関連する疾患又は病状の治療レジメンに対する適合性、並びに本発明による組み合わせ又は組成物の所望の投与経路によって決定され得る。Martindale、第39版(2017年)、Merck Index、第15版(2013年)、Goodman & Gilmanの“The Pharmacological
Basis of Therapeutics”、第13版(2017年)、The British National Formulary
on line(https://bnf.nice.org.uk/)、Remington:「The Science & Practice of Pharmacy」、第22版(2012年)、又はPhysician’s Desk Reference、第71版(2017年)などの標準参考文献を参考にすることができる。
【0132】
本発明による成分及び組成物を治療目的で動物(ヒトを含む)被験体に投与することができる投与経路の例としては、局所(例えば、クリーム、ローション、ゲル、軟膏、ペースト、エモリエント、スプレー)、耳、鼻(例えば、スプレー)、膣、直腸(例えば、座薬)、経口(例えば、ミスト、スプレー、マウスウォッシュ、エアロゾル)、経腸(例え
ば、錠剤、パステル、トローチ剤、カプセル、シロップ剤、エリキシル剤)及び非経口(例えば、注射液)、眼、耳、鼻又は咽喉(例えば、点滴)、又は気道又は肺を介するもの(例えば、ミスト、エアロゾル、粉末吸入)が含まれる。
【0133】
本発明による成分及び組成物に組み込まれるか、又は本発明による成分及び組成物とともに投与することができる活性薬剤の例は、抗生物質、ステロイド、麻酔薬(例えば、リグノカイン(リドカイン)、アメトカイン(テトラカイン)、キシロカイン、ブピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、ベンゾカイン、メピバカイン、コカイン、又はそれらの任意の組み合わせ)、鎮痛剤、抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs))、抗感染症薬、ワクチン、免疫抑制剤、抗けいれん薬、抗認知症薬、プロスタグランジン、解熱剤、抗真菌薬、抗ウイルス薬、血管拡張剤又は血管収縮剤、日焼け止め剤(例えば、PABA)、抗ヒスタミン剤、エストロゲン、プロゲステロン又はアンドロゲンなどのホルモン、抗脂漏薬、α又はβ遮断薬(blockers)、ビタミン、皮膚軟化剤、酵素、マスト細胞安定剤(Mast cell stabilizers)、殺疥癬虫薬(scabicides)、殺シラミ薬、瘢痕化剤、角質溶解剤、潤滑剤、麻薬、シャンプー、抗にきび剤、やけど治療剤、クレンジング剤、脱臭剤、脱色剤、おむつ発疹治療製品、エモリエント剤、保湿剤、光増感剤、ポイズンアイビー又はポイズンオークもしくはウルシ(sumac)製品、日焼け治療剤、タンパク質、ペプチド、プロテオグリカン、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド(DNA、RNAなど)、ミネラル、成長因子、タール含有製剤、蜂蜜含有製剤(例えば、マヌカハニーを含有する製剤)、いぼ治療剤、湿潤包帯、創傷ケア製品、又はそれらの任意の組み合わせがを含む。
【0134】
特定の例は、イブプロフェン、インドメタシン、ジクロフェナク、アセチルサリチル酸、アセトアミノフェン、プロプラノロール、メトプロロール、及びオキシコドンなどの鎮痛薬;甲状腺放出ホルモン;エストロゲン、プロゲステロン及びテストステロンなどの性ホルモン;インスリン;ベラパミル;バソプレッシン;ヒドロコルチゾン;スコポラミンン;ニトログリセリン;硝酸イソソルビド;テルフェナジンなどの抗ヒスタミン;クロニジン;ニコチン;シクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェニル酸、シクロホスファミド、TNF-αアンタゴニスト及び抗IL5、抗IL4Ra、抗-IL6、抗-IL13、抗-IL17、抗-IL23サイトカインモノクローナル抗体などの非ステロイド性免疫抑制剤;抗けいれん薬;及びアパモルヒネやリバスチグミンなどのアルツハイマー病、認知症、及び/又はパーキンソン病用の薬を含む。必要に応じて、任意の追加成分のいずれかを、例えばその放出を制御又は遅延させる目的で、カプセル化又はマイクロカプセル化してもよい。詳細については、以下の「成分の任意選択でのカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)」と題するセクションを参照されたい。
【0135】
成分の任意選択でのカプセル化(例えば、マイクロカプセル化)
本発明において使用するための組み合わせ、キット及び組成物の成分の少なくともいくつかは、カプセル化されてもよく、例えばマイクロカプセル化されてもよい。
【0136】
NO生成のためのマイクロカプセル化成分の使用は、化学的に安定な形態である前駆体からの比較的不安定な化合物(例えば、NO)が生成することを引き延ばすので、有用である。複数のマイクロカプセル化された反応物及び/又は1つ以上の任意の追加成分は、乾燥環境で容易に混合及び互いに接触させることができ、NOの生成は、単に、前駆体混合物に少量の水を供給することによって開始することができる。あるいは、マイクロカプセル化された反応物及び/又は1つ以上の任意の追加成分のこのような混合物は、被験体(例えば、皮膚、粘膜表面)に直接適用されてもよく、又は、被験体の鼻、口、気道及び/又は肺に適用されてもよい。ここで、生理学的環境自体は、治療量のNOの放出を引き起こすために十分な水を提供する。さらなる利点は、マイクロカプセル化された反応物及び/又は1つ以上の任意選択での追加成分によって占められる体積が比較的小さく、その
結果、それらは医療デバイスのような小さい物体に容易に組み込まれ得ることである。このような物体としては、例えば、創傷包帯、包帯、血管及び他のステント、カテーテル、ペースメーカー、除細動器、心臓補助デバイス、人工弁、電極、整形外科用ねじ及びピン、並びに他の薄い医療用及び/又は移植可能な物品が挙げられる。
【0137】
反応物及び/又は1つ以上の任意選択での追加成分のカプセル化又はマイクロカプセル化のための製造方法の一例は、反応物の溶融物又はポリマー溶液及び/又は1つ以上の任意選択での追加成分の噴霧乾燥であり、ポリマーマトリックス内に分散された材料を含む個々の粒子の微砕粉末を製造する。パンコーティング、空気懸濁コーティング、遠心押出、繊維紡糸、繊維押出、ノズル振動、イオノトロピックゲル化、コアセルベーション相分離、界面架橋、in-situ重合、及びマトリックス重合などの他のカプセル化又はマイクロカプセル化方法を使用することもできる。カプセル化ポリマーは、好ましくは生体適合性である。このようなポリマーには、エチルセルロース、ゼイン(トウモロコシ及びトウキビを含む特定の草種に見出されるプロラミン種子貯蔵タンパク質)、キトサン、ヒアルロン酸及びアルギン酸などの天然ポリマー、又は生分解性ポリエステル、ポリ無水物、ポリ(オルトエステル)、ポリホスファゼン、又は多糖が含まれる(Parkら、Molecules 10(2005)、第141~161頁を参照されたい)。上記のように1つの化学物質がマイクロカプセル化された組成物は、医薬及び他の薬剤の送達として周知である。Shalaby及びJamiolkowskiらの米国特許第4130639号明細書;Buchholz及びMeduskiらの米国特許第6491748号明細書を参照されたい。しかしながら、このような組成物の実質的に全てにおいて、マイクロカプセル化されるのは治療剤であり、治療剤はマイクロカプセル化された試薬の反応によって生成されない。しかしながら、従来技術の教示の適切な修正は、当業者の技術の範囲内である。一酸化窒素放出ポリマーは、NO付加物/供与体を含む医療用物品として記載されている。例えば、Arnoldの米国特許第7829553号明細書(疎水性ポリマーに結合した炭素系ジアゼニウムジオレート);Knappの米国特許第7135189号明細書(ニトロソチオール前駆体及び一酸化窒素供与体)を参照されたい。
【0138】
pH制御;任意選択での緩衝系
組成物は、制御されたpH値を有してもよい。特に、組成物は、3.0~8.0の範囲、より具体的には4.0~8.0の範囲のpH値を有してもよい。より具体的な実施形態では、組成物は、4.0~7.4の範囲のpH値を有する。さらにより具体的な実施形態では、組成物が4.0~6.0の範囲のpHを有してもよい。これらの実施形態において、組成物は、4.5~6.0の範囲のpHを有してもよい。
【0139】
組成物のpHは、任意の公知の方法で制御されてもよい。特定の実施形態において、有機カルボン酸成分又は有機還元酸成分のpHは、亜硝酸成分と組み合わせる前に制御される。いくつかの実施形態では、有機カルボン酸成分又は有機還元酸成分は、緩衝液を含む。緩衝液は、薬理学的に許容される緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)であってもよい。
【0140】
いくつかの実施形態では、緩衝液は、有機カルボン酸又は有機非カルボン酸還元酸と、その塩対応物とを混合することによって形成される。例えば、有機カルボン酸成分は、有機カルボン酸及び有機カルボン酸の塩を含むことができる。有機非カルボン酸還元酸成分は、有機非カルボン酸還元酸及び有機非カルボン酸還元酸の塩を含むことができる。特定の実施形態では、有機カルボン酸成分は、クエン酸及びクエン酸塩を含む。他の実施形態では、有機カルボン酸成分又は有機還元酸成分は、アスコルビン酸及びアスコルビン酸塩を含む。いくつかの実施形態では、有機カルボン酸成分は、有機カルボン酸及びさらなる有機酸の塩を含む。例えば、有機カルボン酸成分は、クエン酸及びアスコルビン酸塩を含むことができる。なおさらなる実施形態では、有機カルボン酸成分は、有機カルボン酸、有機カルボン酸の塩、及び有機カルボン酸の塩をさらに含むことができる。例えば、有機カルボン酸成分としては、クエン酸、クエン酸塩及びアスコルビン酸塩が挙げられる。
【0141】
他の実施形態では、緩衝液は、酸(プロトン化形態)がその塩対応物と混合して共存するように、有機カルボン酸又は有機非カルボン酸還元酸のpHを調整することによって形成される。これは、in situで緩衝系を生成するような量で、強無機塩基及び任意選択で強無機酸を、有機カルボン酸又は有機非カルボン酸還元酸に添加することによって適切に達成される。適切な強無機塩基の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムが挙げられる。適切な強無機酸の例としては、塩酸、硫酸、臭化水素酸及び硝酸が挙げられる。
【0142】
緩衝液は、特に、本発明による組み合わせ又は組成物が、鼻、口、気道又は肺への投与の場合のように、細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚、粘膜又は他の組織と接触する場合、1つ以上の生理学的緩衝液を含むことができる。適切な生理学的に適合する緩衝剤の例としては、約5~約9のpH範囲の緩衝液、例えば、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、N-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、N-(2-アセトアミド)-イミノジ酢酸(ADA)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(BICINE)、2-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(BIS-TRIS)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-プロパン(BIS-TRISプロパン)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、3-(N,N-ビス[2-ヒドロキシエチル]アミノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)、ジグリシン、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N’-(4-ブタンスルホン酸)(HEPBS)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシ-3-プロパンスルホン酸無水物(POPSO)、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパンスルホン酸(TAPS)、2-ヒドロキシ-3-[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸(TAPSO)、2-[(2-ヒドロキシ-1,1-ビス(ヒドロキシメチル)エチル)アミノ]エタンスルホン酸(TES)、N-[トリ(ヒドロキシメチル)-メチル]グリシン(トリシン)、又は2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(TRIZMA)が挙げられる。
【0143】
組成物の浸透圧
特に、皮膚、粘膜、又は、ヒト又は動物被験体の鼻、口、気道又は肺との接触を生じる経路によって、生理学的系に送達される亜硝酸塩、プロトン源、有機ポリオール、又はそれらの任意の組み合わせの任意の溶液の溶質強度は、被験体の器官及び組織のいずれも望ましくない脱水を回避するように制御されるべきである。
【0144】
1キログラムの溶媒に溶解した溶質のモル数として定義される浸透圧(Osm)は、キログラム当たりの浸透圧(Osmol/kg)として表すことができる。本発明に従ってヒト又は動物被験体に投与されるいずれの溶液の浸透圧は、一般に、約100~約5000mOsmol/kg、例えば、約100、200、300、400、500、600、700、800、900又は1000~約2000、2250、2500、2750、3000、3250、3500、3750、4000、4250、4500、4750又は5000mOsmol/kgの範囲であるべきである。
【0145】
NOxの生成を開始する成分の混合
NOxの生成を開始するためにNOx生成システムの成分が混合される順序は、それによって生成するNOxを使用する結果に影響を及ぼし得ることが分かった。この効果の証拠を以下の実施例6に示す。
【0146】
この実施例では、本発明者らは、THP-1細胞中の細菌M. tuberculosis HN878を死滅させるための本発明による組成物の効力が、一方では亜硝酸塩、プロトン源及び有機ポリオール成分が使用される形態の組成物において所望されるよりも高い濃度で所望される割合で最初に混合され、次いで、その濃縮物が使用される組成物となるように適切に水で希釈されるか、他方では亜硝酸塩、プロトン源及び有機ポリオール成分が使用される形態の組成物について所望される濃度で所望される割合で最初に混合されるかによって、異なることを実証する。
【0147】
さらに、成分をどのように混合するかは、抗菌効果に関してより良好な結果をもたらすことは予測不可能である。一般に、使用される組成物となるように相対的に濃縮されたプレミックスを希釈することは、THP-1細胞中のM. tuberculosis HN878に対してより良好な抗菌効果を生じ得ると思われるが、いくつかの場合には成分が使用のために所望の濃度で最初に混合される方法ほど良好でない結果を生じる。
【0148】
したがって、本発明の一実施形態では、NOx生成組成物を調製する方法は、亜硝酸塩、プロトン源及び有機ポリオール成分を、使用されるべき形態の組成物において所望よりも高い濃度で所望の割合で混合して、濃縮物プレミックスを形成し、続いて、その濃縮物プレミックスを、適切に水で希釈して、使用される組成物を提供することを含む。
【0149】
したがって、本発明の別の実施形態では、NOx生成組成物を調製する方法は、使用される組成物を提供するために、亜硝酸塩、プロトン源及び有機ポリオール成分を、使用される形態の組成物について所望の濃度で所望の割合で混合することを含む。
【0150】
好ましい実施形態
本発明の第1から第8の態様の好ましい実施形態は、以下のうちの1つ以上が存在するものである:
- 1つ以上の亜硝酸塩は、1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- プロトン源は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液;クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液;又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 前記アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液、クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液、又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子は、ポリマー又は高分子に共有結合していない;
- 1つ以上の有機ポリオールは、1分子あたり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコール又はアルジトール;例えば、ソルビトール;マンニトール;アラビトール;キシリトール;又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 1つ以上の有機ポリオールは、例えば、1つの非環式アルコール単位で末端化された1、2、又は3個の単糖単位の鎖を含む(例えば、からなる)糖アルコール化合物であり、任意選択で、1、2、3個又はそれぞれの単糖単位は、C又はCの単糖単位であり、及び/又は非環式アルコール単位は、C又はCの糖アルコール単位、例えばイソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールである

- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、亜硝酸塩成分中又は反応溶液中の亜硝酸塩イオンの総モル濃度の0.05~3倍である;
- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、プロトン源成分中又は反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を伴わない用途では、NOx生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは3.0~9.0の範囲である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を含む用途では、NOx生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは4.0~8.0の範囲である;
- 反応混合物と、動物(ヒトを含む)被験体の鼻、口、気道又は肺との接触を含む用途では、NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは5.0~8.0の範囲である;
- 標的とする微生物は、「抗菌薬使用のための標的」とのセクションの下に列挙される微生物、例えば、これらに限定されないが、インフルエンザウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessus、Pseudomonas aeruginosa、それらの抗生物質耐性株から選択される。
【0151】
本発明の第9の態様の好ましい実施形態は、以下のうちの1つ以上が存在するものである:
- 1つ以上の亜硝酸塩は、1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- プロトン源は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液;クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液;又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 前記アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液、クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液、又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子は、ポリマー又は高分子に共有結合していない;
- 1つ以上の有機ポリオールは、1分子あたり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコール又はアルジトール;例えば、ソルビトール;マンニトール;アラビトール;キシリトール;又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 1つ以上の有機ポリオールは、例えば、1つの非環式アルコール単位で末端化された1、2、又は3個の単糖単位の鎖を含む(例えば、からなる)糖アルコール化合物であり、任意選択で、1、2、3個又はそれぞれの単糖単位は、C又はCの単糖単位であり、及び/又は非環式アルコール単位は、C又はCの糖アルコール単位、例えばイソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトールである;
- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、亜硝酸塩成分中又は反応溶液中の亜硝酸塩イオンの総モル濃度の0.05~3倍である;
- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、プロトン源成分中又は反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を伴わない用途では、NOx生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは
3.0~9.0の範囲である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を含む用途では、NOx生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは4.0~8.0の範囲である;
- 反応混合物と、動物(ヒトを含む)被験体の鼻、口、気道又は肺との接触を含む用途では、NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは5.0~8.0の範囲である;
- 標的とする微生物は、「抗菌薬使用のための標的」とのセクションの下に列挙される微生物、例えば、これらに限定されないが、インフルエンザウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessus、Pseudomonas aeruginosa、それらの抗生物質耐性株から選択される。
【0152】
組み合わせ及び組成物
NOx生成反応は、多くの方法で開始することができる。それらは、一般に、NOx生成反応が開始できる条件下で、1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源とを接触させることを特徴とする。
【0153】
反応は、組み合わせの別々の成分を組み合わせることによって開始することができる。この組み合わせは、in vitroで達成されることができ、得られた組成物は、被験体に投与されてもよく、又は本発明に従って処置される任意の表面に適用されてもよい。あるいは、放出ガスが被験体に投与されてもよく、又は本発明に従って処置される任意の表面に適用されてもよい。さらに、得られる組成物の両方の使用は、組成物が被験体に投与されるか、又はガスのいくらかの発生が起こった後に処置される任意の表面に適用されるように、時間的に間隔を置いて進行してもよい。
【0154】
この組み合わせは、例えば、最初に混合される成分の乾燥粉末形態とともに段階的であってもよく、次いで、水又は別の液体担体媒体と混合されて、反応を開始させてもよい。あるいは、成分の乾燥粉末形態は、最初に水又は別の液体担体媒体と個別に混合され、続いて2つ以上の液体が混合されて、反応を開始させてもよい。
【0155】
あるいは、本発明によるNOx生成反応の成分の少なくともいくつかは、単一の組成物中に混合物として存在してもよく、NOx生成反応は組成物上で開始される。NOx生成反応を開始させる1つの可能な方法は、例えば、反応を開始する重要な成分又は添加剤、例えば組成物の成分が乾燥形態又はカプセル化形態である場合には水;又は組成物の成分がプロトン源を欠いている場合にはプロトン源、を添加することであることができる。
【0156】
本発明によるキットは、典型的にはNOx生成反応が起こらない状況下で、本発明による組合せ又は本発明による組成物の1つ以上の成分を含む。キットの各剤は、典型的には容器内に保持され、容器はNOx生成反応を開始するために必要とされる混合を容易にするために、別個であってもよく、又は適合されてもよい。キットのユーザーによって他の必要な成分に導入される必要がある、NOx生成反応を開始するための重要な開始成分は、例えば、亜硝酸塩成分、プロトン源成分、又はポリオール成分のうちの1つであってもよく、又は追加成分、典型的には、ユーザーによって供給されてもよい水などの一般に入手可能な成分であってもよい。
【0157】
本特許において定義及び記載される、組み合わせ及び組成物のパラメータは、典型的にはpH、濃度、及び浸透圧などの物理的パラメータを含む。可能な限り、これらは、NOx生成反応の開始前に測定されるべきである。pHパラメータは、特に明記しない限り、NOx生成反応の開始を目的とした濃度での脱イオン水中のプロトン源のpHを指す。溶液の濃度は、特に明記しない限り、他の成分と混合してNOx生成反応を開始する前の濃
度を指す。典型的には、亜硝酸塩と有機カルボン酸又は有機還元酸とが混合時に反応して一酸化窒素ガスを生成する場合、NOx生成反応が進行している間にそのようなパラメータを容易に測定することはできない。
【0158】
さらに、反応混合物中の成分の濃度は、混合前の組み合わせの各成分の濃度に必ずしも対応しないことに留意されたい。例えば、本発明によるNOx生成反応を開始させるための組成物は、予め調製された溶液として一緒に添加されたほぼ等しい体積の亜硝酸塩成分及びプロトン源成分から形成されると仮定する。その実施形態では、混合したときの反応組成物は、亜硝酸塩成分の濃度の半分の亜硝酸塩濃度及びプロトン源成分の濃度の半分のプロトン源濃度を有する。
【0159】
組み合わせ及び組成物の各成分は、NOx生成反応の間又は後に、系の目的とされる使用に従って、任意の適切な物理的形態であることができる。例えば、組み合わせ及び組成物の各成分は、各々、液体、ゲル、又はフィルムの形態であってもよく、その結果、NOx生成反応混合物は同様に、液体、ゲル、又はフィルムの形態である。液体は、気道又は肺への吸入のために噴霧され得るように適合されてもよい。NOx生成混合物が口又は咽喉に適用されることを目的とする場合、組み合わせ及び組成物の各成分は、マウスウォッシュ又は飲料の形態であってもよい。あるいは、NOx生成反応混合物が局所投与において皮膚に適用されることを目的とする場合、組み合わせ及び組成物の各成分は、軟膏、ローション、又はクリームの形態であってもよい。
【0160】
多成分系、キット及びディスペンサー
本明細書中に記載される多成分系は、本発明に従って定義され、及び本明細書中に記載されるように、任意選択でポリオール成分とともに、亜硝酸塩成分及びプロトン源成分を含むことができる。多成分系中の成分は、互いに接触するように適合され、反応混合物及び/又は放出ガスは、使用前に成分を保持するための適切な容器又はリザーバーの手段によって、及び成分を混合し、反応混合物及び/又は放出ガスを分配し、一般に前記混合及び分配を制御するための手段によって分配される。1つの好ましい実施形態では、反応混合物は、気流に同伴される液滴のミスト又はエアロゾルの形態で分配されてもよい。
【0161】
本発明のキット及びディスペンサーは、一般に、使用前に成分を保持するための容器の少なくともいくつか、成分を混合し、反応混合物及び/又は放出ガスを分配し、一般に前記混合及び分配を制御するための少なくとも1つのデバイス又は他の手段、並びに使用前にキット又はディスペンサーの容器に含まれる成分(存在する場合)を含む。使用のための指示、又は使用のための指示が見出され得る場所への指示(例えば、使用のためのオンライン指示)は、適切に存在し得る。このようなキット及びディスペンサーは、本発明のさらなる態様を構成する。
【0162】
本発明のキットは、成分を混合し、反応混合物及び/又は放出ガスを分配し、そして一般に前記混合及び分配を制御するための容器及び手段の比較的単純な集合物であってもよい。このようなキットは、研究目的で、又は混合及び分配操作における広範囲の変動が予想され、許容される場合に適切に提供され得る。
【0163】
本発明の他のキットは、本発明の1つ以上のディスペンサーとともに、(任意選択でユーザーによって供給される水又は他の一般に入手可能な成分とともに、NOx生成反応を開始するためにユーザーによって必要とされる組み合わせ及び/又は組成物である)消耗品を含む、1つ以上の容器のより複雑化された集合物であってもよい。
【0164】
本発明のディスペンサーは、一般に、反応混合物、反応混合物を含む担体、及び/又は放出ガスを分配する繰り返される同様の動作に適合される。ディスペンサーは、NOxを
生成する反応混合物又は放出ガスを含む組成物をディスペンサーから運び出し、それをターゲットに導くためのポンプ又は噴射システムを含むことができる。噴射システムは、加圧及び/又は液化ガスを使用することができ、医療用には、例えば加圧空気又は加圧/液化ブタンなど、薬学的に許容されるか又は生体適合性であることが適切である。あるいは、使用者の肺からの吸引を使用して、NOxを生成する反応混合物又は放出ガスを含む組成物をディスペンサーから運び出し、それをターゲットに向けてもよい。本発明において使用されるディスペンサーは、ユーザーがディスペンサーを作動させることができる、手動で操作可能なトリガー又はボタンなどのアクチュエーター装置を好適に備えてもよい。このようなディスペンサーは、専門家、研究者、消費者、又は患者の使用に適合させることができ、それに対応して、ターゲットが治療される意図された経路を容易にするように適合させることができる。
【0165】
広範囲のキット及びディスペンサー装置が原則として知られており、これは、使用前に成分を保持し、成分を混合し、又は前記混合を容易にし、反応混合物及び/又は放出ガスを含む組成物を分配し、一般に前記混合及び分配を制御し、又は前記制御を容易にするために使用又は容易に適合させることができる。
【0166】
例:
- シリンジ、例えばツインバレル分配シリンジ。
- 少なくとも亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを混合し、NOx生成反応又は放出ガスを含む組成物を分配するための、例えばポンプ作用容器、圧搾作用容器又は振とう作用容器、例えば2つの容器を含む、容器システム。そのようなシステムは、米国特許出願公開第2019/0134080号明細書に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
- 水溶液中で使用する前に成分を保持し、その成分を混合し、液体反応混合物を噴霧化し、ヒトの肺に吸入するために液体反応混合物を噴霧し、これを分配し、前記混合及び分配を一般に前記混合及び分配を制御するための装置。例としては、ソフトミスト吸入器、ジェット噴霧器、超音波噴霧器及び振動メッシュ噴霧器が挙げられる。亜硝酸塩の酸性化による噴霧NOx生成反応媒体の吸入に適した噴霧器、液滴サイズ、助剤、包装形態などの選択は、国際公開第03/032928号及び国際公開第2009/086470号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
- 上記装置は、予め混合された液体反応混合物が噴霧器に装填された後、それを噴霧し、ヒトの肺に吸入するためにこれを分配し、前記混合及び分配を一般に制御するように配置されることができる。
- 水溶液中で使用する前に成分を保持し、その成分を混合し、ヒトの肺に吸入するために液体反応混合物をエアロゾル化し、これを分配し、前記混合及び分配を一般に制御するための装置。例としては、定量吸入器が挙げられる。亜硝酸塩の酸性化による噴霧NOx生成反応媒体の吸入に適した液滴サイズ、助剤、包装形態などの選択は、国際公開第03/032928号及び国際公開第2009/086470号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
- 一酸化窒素放出溶液を上気道に噴霧するための技術及び装置は、米国特許第9730956号明細書に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
- 乾燥粉末形態で使用する前に成分を保持し、それをヒトの肺に吸入するために分配するための装置。例としては、乾燥粉末吸入器(DPI)が挙げられ、これは単回用量カプセルとして、又は複数回用量乾燥粉末吸入器として、リザーバー粉末又は複数回用量の別個のブリスターのいずれかとして処方することができる。亜硝酸塩の酸性化によってin situでNOを生成するための、肺内の反応媒体を提供するための乾燥粉末組み合わせの吸入に適した粉末粒径、助剤、包装形態などの選択は、国際公開第2009/086470号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
- 溶液形態で使用する前に成分を保持し、それらを通気し、皮膚消毒剤の使用又は皮膚
障害を治療するための泡状として分配するためのディスペンサーは、米国特許出願第2013/0200109号明細書、米国特許第7066356号明細書、及び米国特許出願第2019/0134080号明細書に記載されており、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる;
- 成分を保持し、それらを被験体の皮膚に分配するための経皮パッチアセンブリは、国際公開第2014/188175号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0167】
本発明の組み合わせ及び組成物又は放出ガスの用量は、治療される疾患、障害もしくは病態(医学的治療の場合)又は所望の効果(非医学的治療の場合)、必要とされる治療の重症度、並びに治療される被験体の病態、年齢及び健康、又は非医学的治療の場合、治療される標的の性質に応じて、広い範囲で変化し得る。医学的治療の場合、最終的に、医師は、使用されるべき適切な投薬量を決定する。非医学的治療の場合、当業者は、妥当な試験による関連文献のレビューによって、適切な用量及び治療方法を研究することができるのであろう。
【0168】
いくつかの実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物、又はそこから放出されたガスは、亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを組み合わせた後600秒以内に、標的位置、例えば、微生物細胞、生体組織、器官、構造、又は被験体に投与することができる。このようにして、ターゲット位置は、一酸化窒素の大きなバーストに曝されることができる。
【0169】
いくつかの実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物は、in situで、又は無生物の表面及び空間を含む、微生物細胞、生体組織、器官、構造又は被験体の上、内部、又は近傍などの標的位置もしくはその近傍で、形成することができる。これらの実施形態では、投与は、亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを組み合わせた後、実質的に0秒である。他の実施形態では、組成物は、亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを組み合わせた後、0秒を超え600秒未満の範囲で標的位置又はその近傍に投与される。より具体的な実施形態では、組成物は、0~120秒の範囲で投与される。なおさらなる実施形態において、組成物は、0~60秒の範囲で投与される。
【0170】
他の実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物、又はそこから放出されたガスは、亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを組み合わせた後、標的位置又はその近傍、例えば、微生物細胞、生体組織、器官、構造、又は被験体に600秒を超えて、例えば2000秒を超えて、例えば4000秒を超えて、例えば8000秒を超えて投与することができる。その場合、標的位置、例えば微生物細胞、生体組織、器官、構造、又は被験体は、必ずしも一酸化窒素の大きなバーストに曝されなくてもよいが、抗菌効果などの有益な特性を依然として経験し得る。これらの実施形態では、NOx生成反応が起こっている組成物、又はそこから放出されたガスは、亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを合わせてから48時間後まで投与することができる。特定の実施形態では、組成物又はそれから放出されるガスは、亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを組み合わせた後、数週間又は数ヶ月まで、例えば約6ヶ月まで、又は約2ヶ月まで、又は約1ヶ月まで、又は約3週間まで、又は約2週間まで、又は約1週間まで、又は約3日まで、又は24時間まで投与することができる。
【0171】
NOx生成反応が起こっている組成物、又はそこから放出されたガスは、適切に貯蔵されている場合には、亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを組み合わせから48時間を超えて経過した後に投与することができる。例えば、組成物は、例えば真空下で、密閉された容器内に貯蔵されてもよい。密閉容器中での貯蔵は、典型的には亜硝酸塩と有機カルボン酸又は有機還元酸とを組み合わせた後、24時間以内に行われる。組成物は、亜硝酸塩成分
とプロトン源成分とを組み合わせた後、600秒以内に、密閉容器内に貯蔵されてもよい。このようにして、ある割合の一酸化窒素ガスを保持することができる。NOx生成組成物が低温、例えば約-30℃~約+10℃の範囲の温度、例えば約1℃~約10℃の範囲の温度で貯蔵される場合、ガスの発生速度を実質的に遅くすることができ、組成物の非常に長い貯蔵時間を利用可能にする。
【0172】
特定の実施形態では、エアロゾルディスペンサーは、液体形態の亜硝酸塩成分(例えば、水溶液)を含有する第1のリザーバーと、液体形態のプロトン源成分(例えば、水溶液)を含有する第2のリザーバーとを有する複数のリザーバーを含むことができる。この実施形態では、各成分が前記亜硝酸塩及びプロトン源成分が混合される前、その間、又はその後に、噴射剤と適切に混合されてもよい。
【0173】
別の特定の実施形態では、ディスペンサーは、本発明の組成物を含むシングルバレルシリンジであってもよい。組成物の粘度は、手動操作によって、又はシリンジの動力操作によって、シリンジから分配され得るように選択されてもよい。例えば、組成物は、液体又はゲルであってもよい。
【0174】
別の特定の実施形態では、ディスペンサーは、亜硝酸塩成分を含有する第1のバレルと、プロトン源成分を含有する第2のバレルとを有するマルチバレルシリンジであってもよい。成分の粘度は、手動動作によって、又はシリンジの動力操作によって、シリンジから分配され得るように選択されてもよい。例えば、各成分は、独立して、液体又はゲルであってもよい。
【0175】
成分のための他のリザーバー:ヒドロゲル
本発明のいくつかの態様において、分子リザーバー、例えばヒドロゲルを使用することができる。ヒドロゲルは、その乾燥重量の何倍もの水、他の水性液体又は他の非水親水性液体を吸収及び保持する能力を有する、高度に水和され、通常は架橋された、三次元ポリマー(ホモポリマー又はコポリマー)又は高分子ネットワークである。液体の吸収は、通常、ヒドロゲルの膨潤を伴う。ポリマー又は高分子に共有結合した成分の化学基を適切に選択することによって、他の特別な化学的特性を有する酸性ヒドロゲル又はヒドロゲルを調製することができる。
【0176】
本発明においてプロトン源成分として作用することができるヒドロゲルは公知である。このような酸性-COOH基含有ヒドロゲルの例は、例えば、国際公開第2007/007115号、国際公開第2008/087411号、国際公開第2008/087408号、国際公開第2014/188174号、及び国際公開第2014/188175号、並びにそれらにおいて参照される文献に記載されており、これらの全ての発明は参照により本明細書に組み込まれる。NOx生成と併せた医薬の経皮送達を含む、NOx生成を使用するスキンケアにおけるこのようなヒドロゲルの使用は、特に、国際公開第2014/188174号及び国際公開第2014/188175号に記載されている。このようなヒドロゲルの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS、Vinati Organics Ltdから入手可能)及びそれらの塩の、ホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。(メタ)アクリル酸を含むか又はそれからなるモノマーから形成されるポリマーは、本発明に従ってプロトン源として使用するためのペンダントカルボン酸基を含む。
【0177】
したがって、例えば、多成分系は、プロトン源成分を含み、任意選択で有機ポリオールをさらに含む第1の酸性ヒドロゲルパッド又は層成分を含むことができ、他の成分は亜硝酸塩成分であってもよい。亜硝酸塩成分は、例えば、溶解した亜硝酸塩を含有する液体媒体であってもよい。このようにして、ヒドロゲルパッド又は層の表面を亜硝酸塩成分と接
触させて、NOx生成反応を開始させることができる。あるいは、亜硝酸塩成分は、固体担体とヒドロゲルとの間の接触時に、ヒドロゲルの吸収された液体中に溶解することができる形態の亜硝酸塩を含むパッド又は層のような固体担体であってもよい。
【0178】
典型的には、固体担体パッド又は層は、一酸化窒素の拡散に対して透過性(完全に透過性又は少なくとも半透過性)である。このようにして、固体担体パッド又は層とヒドロゲルとを組み合わせて亜硝酸塩成分とプロトン源成分とを組み合わせると、一酸化窒素が治療領域に拡散することができる。固体担体パッド又は層は、例えば、メッシュ、不織布バット、フィルム、発泡体、アルギン酸塩層又は膜であってもよい。
【0179】
特定の実施形態では、固体担体層はメッシュである。メッシュは、特定の物質が通過する穴又は間隙の格子を形成する、固体、典型的には可撓性の、多数の接続されたストランドであってもよい。メッシュは、織布であってもよく、不織布であってもよい。いくつかの実施形態では、メッシュは不織布である。
【0180】
固体担体層、例えばメッシュは、ポリマー材料で作ることができる。適切なポリマー材料の例としては、ビスコース、ポリアミド、ポリエステル、ポリプロピレン又はそれらの混紡が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー材料は、例えば、その親水性を増加させるために処理されてもよい。特定の実施形態では、固体キャリア層は、ポリプロピレンメッシュである。
【0181】
特定の実施形態では、固体担体は吸収性であり、亜硝酸塩成分は固体担体中に少なくとも部分的に吸収され(absorbed)、吸収(imbibed)又は含浸される(impregnated)。吸収された(absorbed)、吸収された(imbibed)、又は含浸された(impregnated)亜硝酸塩成分は、(乾燥された)固体であってもよく、又は固体担体内の水溶液中にあってもよい。
【0182】
特定の実施形態では、固体担体は2つ以上の層を含み、亜硝酸塩成分は少なくとも1つの層に吸収され(absorbed)、吸収され(imbibed)、又は含浸され(impregnated)、又は少なくとも1つの外層上にコーティングされる。例えば、固体担体は、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上の層(例えば、ポリプロピレンメッシュ層)を含むことができ、これは、乾燥形態及び/又は溶液形態の1つ以上の亜硝酸塩で吸収され(absorbed)、吸収され(imbibed)、含浸され(impregnated)、又はコーティングされる。
【0183】
酸性ヒドロゲルは、内部のプロトン化されたペンダント酸性基の大量供給により自然の緩衝作用を持ち、そこからHイオンが吸収された水性媒体を介して移動し、NOx生成反応中にヒドロゲル構造の表面のペンダント酸性部分が脱プロトン化されるにつれて、その表面で相対的に酸性のpHを維持することができる。
【0184】
非酸性(例えば、中性又は塩基性)ヒドロゲルも知られており、本発明で使用するために、亜硝酸塩成分及び/又はポリオール成分を吸収させ、含有させることができる。プロトン源成分は、ヒドロゲルと接触させた液体媒体中に提供されるプロトン源によって、及び/又は固体担体中に吸収され(absorbed)、吸収され(imbibed)、含浸され(impregnated)、又はその上にコーティングされるプロトン源によって、そのようなヒドロゲルと接触させることができる。このようなヒドロゲルでは、亜硝酸塩成分、プロトン源成分、又はポリオール成分のいずれも、ヒドロゲルのポリマー又は高分子ネットワークに共有結合していないことが提供されてもよく、例えば、本発明に必要なすべての成分は、亜硝酸塩成分及びプロトン源成分がNOx生成反応の開始が望まれるまで一緒に反応してはならないことを考慮して、ヒドロゲル中に吸収され、ヒドロゲル内の水性媒体中に含有されてもよいが、ヒドロゲルのポリマー又は高分子に共有結合していない。
【0185】
ヒドロゲルパッド又は層の厚さは、0.5~2mmの範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、ヒドロゲルパッド又は層の厚さは、1~2mmの範囲である。特定の実施形態では、ヒドロゲルパッド又は層の厚さは、1.0~1.6mmの範囲である。
【0186】
プロトン源成分に関して上述した特徴は、一般にプロトン源成分として作用する任意の酸性ヒドロゲルに同様に適用される。従って、例えば、ヒドロゲルは、ヒドロゲルのpHを4.0~9.0、又は5.0~8.0の範囲に維持するための緩衝液を含んでもよい。
【0187】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルはバリア層を含んでもよい。バリア層は、典型的にはポリウレタンフィルムなどのポリマーフィルムであり、ヒドロゲルの外表面上に配置される。使用に際して、バリア層は、典型的には組み合わされた多成分系と大気との間のバリアを提供するために、例えば被験者の皮膚に対してヒドロゲルの反対側の表面上に配置される。ヒドロゲルに隣接するバリアフィルムの表面は、典型的には隣接するヒドロゲル表面よりも大きな表面積を有する。このようにして、バリア層は、ヒドロゲルの周囲を越えて延在することができる。これらの実施形態では、バリア層は、使用時にヒドロゲルを、例えば被験者の皮膚に接着するために、その周辺縁部の周りに接着剤を有してもよい。
【0188】
特定の実施形態では、本発明は以下を含む2成分系を提供する:
a)1つ以上の亜硝酸塩(例えば、NaNO)で吸収され、含浸され、又はコーティングされた1つ以上のメッシュ;及び
b)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上を含有するプロトン源を含むヒドロゲル;
ここで、成分(a)は成分(b)とは別であり、1つ以上の成分(a)及び(b)は1つ以上の有機ポリオールをさらに含む。
(a)1つ以上の有機ポリオールは、反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
(i)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロー
ル及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、のみではない;
(j)1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない。
【0189】
疑いを避けるために、本発明の態様に関連して上述した特徴(a)~(j)の実施形態及び選好は、この実施形態にも同様に適用されることがここで確認される。
【0190】
このようなシステムは、例えば、成分(a)及び(b)を組み合わせてNOx生成反応を開始することによって使用されてもよい。次いで、このような組み合わせは、ヒト又は動物の体の治療又は他の処置(例えば、局所適用による)において使用されてもよい。その使用は、国際公開第2014/188174号及び国際公開第2014/188175号に記載の通りであってもよく、又は以下に記載の通りであってもよい。このシステムは、以下に記載されるように、非医療用途において使用されてもよい。そのシステムが被験体の皮膚(粘膜を含む)に接触する局所医療用途に使用される場合、1つ以上のメッシュは、皮膚接触層であってもよい。
【0191】
治療又は手術における使用
本発明に従ってNOx生成反応が進行している組成物、及びそれから放出したガスは、治療及び/又は予防療法、疾患、障害及び病態を矯正するための手術、美容整形、ヒト、獣医学及び手術を含む再建手術を含む、治療及び手術における多くの用途を有する。組成物又はそれから放出したガスによる治療に応答する身体的な不調又は異常が不安、うつ病又は別の精神疾患もしくは障害を引き起こすか又は悪化させる場合、身体状態の治療、予防又は緩和はそれに対応して精神状態を治療、予防又は緩和することができ、それによって、本発明の使用は精神保健分野にも及ぶ。
【0192】
一酸化窒素及び一酸化窒素生成組成物の多くの生理学的効果及びそれに基づく医療法が文献に報告されており、その結果、多くの治療法が開発されている。以下の非網羅的なリストは、例示として提供される。列挙された使用並びに列挙されていない他の使用は、本発明及び特許に包含される。
一酸化窒素による血管の拡張による血液供給の上昇及び/又は血圧の低下(van Faassen et al、Med. Res. Rev.、 2009年9月; 29(5)、 683-741頁を参照);
高血圧患者における血圧を低下させ、血管コンプライアンスを改善し、上皮機能を回復させるための経口一酸化窒素サプリメントの急性効果は、Houston et al. in J. Clin. Hypertens. (Greenwich)、2014年7月、16(7)、524-529頁に記載されている;
血液供給の低下による損傷からの組織の一酸化窒素による保護(van Faassen et al、Med. Res. Rev.、 2009年9月; 29(5)、 683-741頁を参照);
一酸化窒素含有神経ニューロン、例えば消化管や勃起組織などの平滑筋上で活性を示す一酸化窒素含有神経ニューロンにおける神経伝達物質としての一酸化窒素の作用(Toda et al、Pharmacol. Ther、 2005年5月; 106(2)、 233-266頁を参照);
血管の恒常性を助ける、血管平滑筋の収縮と成長、血小板凝集及び内皮への白血球の付
着の一酸化窒素による阻害(Dessey and Ferron、Current Medical Chemistry - Anti-inflammatory and Anti-allegy Agents in Medical Chemistry、 2004年; 3(3)、 207-216頁参照);
心収縮性及び心拍数を減少させるための一酸化窒素の作用(Navin et al、J. Cardiovascular Pharmacology、2002年; 39(2)、298-309頁を参照);
毛細血管及び肺拡張を促進するためのクリティカルな新生児ケア、例えば新生児患者における原発性肺高血圧症の治療、及び胎便吸引後(Barrington et al、The Cochrane Database of Systematic Reviews、2017年; 1、CD000399(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17375630);また、Chotigeat et al.、J. Med. Assoc. Thai、2007年; 90(2)、266-271頁;また、Hayward et al、Cardiovascular Research、1999年; 43(3)、628-638頁を参照);
糖尿病患者における血管障害、内皮機能障害、血管炎症、神経障害、非治癒性潰瘍の予防、及び下肢切断を必要とする危険性の軽減(nfb University Studdies - “Nitric Oxide Holds Promise for Dibetes”、http://www.nfb.org/Images/nfb/Publications/vod/vod212/vodspr0613.htmを参照);
急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群及び重症肺高血圧症における低酸素血症の改善、可逆的な低酸素血症性呼吸窮迫の原因に対する治療(Mark et al、N. Eng. J. Med、2005年12月22日、 353(25)、2683-2695頁を参照);
肺塞栓症に続発した急性右室不全患者における救済療法としての一酸化窒素の投与(Summerfield et al、 2011年; Respir. Care 57(3)、444-448頁を参照);
狭心症の治療、パラコート中毒及び他の心血管障害の作用(Abrams、The American Journal of Cardiolody、1996年、 77(13)、31C-37C頁を参照);
膀胱収縮機能不全の治療(Moro et al、Eur. J. Pharmacol、2012年1月、445-449頁;また、Andersson et al、Br. J. Pharmacol、2008年、153(7)、1438-1444頁を参照);
急性及び慢性肺感染及び敗血症の治療(Fang et al、Nature Reviews. Microbiology、2004年10月; 2(10)、820-832頁;また、Goldfarb et al、Critical Care Medicine、2007年1月; 35(1)、290-292頁を参照);
一酸化窒素を含む毒性反応性窒素中間体(RNIs)は、Mycobacterium tuberculosisに対する活性化マウスマクロファージの抗マイコバクテリア作用におけるエフェクター分子として示唆されている(Chan et al、J. Exp. Med、1992年4月、1111-1122頁を参照);
ガス状一酸化窒素は、嚢胞性線維患者における抗生物質耐性菌及び真菌性肺感染症の治療に有効である可能性がある(Deppisch et al., 2016年2月9日;“Gaseous nitric oxide to treat antibiotic resistant bacterial and fungal lung infections in patients
with cystic fibrosis: a Phase I clinical study”、 DOI 10.1007/s15010-016-0879-xを参照);
一酸化窒素は皮膚疾患のための潜在的な局所用広域スペクトル抗菌剤として報告されており、耐性発現の可能性は低い(B L Adler and A J Friedman、Future Sci. OA、2015年; 1(1)、FSO37を参照);
一酸化窒素は神経伝達物質であり、神経活動や、雌雄の回避学習から生殖器勃起に至るまで様々な機能に関連している(Kim et al、 J. Nutrition、2004年、134、28735頁を参照);
男性のインポテンス及び勃起機能不全を治療するための一酸化窒素の使用は、Sullican
et al、Cardiovascular Research、1999年8月、43(3)、658-665頁に記載されている;
創傷治癒を補助し、虚血再かん流傷害を軽減し、手術からの心臓及び肺の回復を補助し、血管手術からの回復を補助し、整形外科手術からの術後回復を補助するための外科的補助剤として一酸化窒素が使用される可能性が報告されている(A Krausz and A J Friedman、Future Sci. OA、2015年; 1(1)、FSO56を参照);
NOの抗菌効果及び創傷治癒効果は、国際公開第95/22335号及びHardwicket al、2001年、Clin, Sci. 100、395-400頁に記載されている;
欧州特許第1411908号明細書(アバディーン大学)は、一酸化窒素がアスペルギ
ルス・ニガー(Aspergillus niger)を含む爪下感染を治療するのに有効であることを示すと言われているデータを報告している;
Tinea Pedis (Athlete's Foot)(Weller et al、J. Am. Acad. Dermatol、1998年4月、38(4)、559-563頁を参照)のような真菌性皮膚感染症の治療のための皮膚へのNOx生組成物の局所適用;
ウイルス性皮膚感染症の治療のための皮膚へのNOx生成組成物の局所適用(国際公開第99/44622号を参照);
血管収縮が根本的な問題である病態、例えばレイノー症候群(レイノー現象としても知られている)の治療のための皮膚へのNOx生成組成物の局所適用(Tucker et al、Lancet、1999年11月13日、354、9191、1670-1675頁を参照);
末梢虚血及びレイノー現象、手術後の創傷及びやけどのような創傷のような関連する病態の治療のための皮膚表面での一酸化窒素の局所産生を生じるための薬剤としての酸性化亜硝酸塩の使用は、国際公開第2000/053193号に記載されている;
ヒトの創傷を治療するための液体一酸化窒素放出溶液(NORS)の使用は、米国特許第9730956号明細書(Stenzlerら)によって特許請求されている。NORSはまた、抗細菌、抗真菌及び/又は抗ウイルス特性を有すると主張され、Acetobacter baumanii、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、Escherichia coli及びMannheimia haemolyticaに対する抗細菌効果を示すといわれるデータが提供される。H1N1インフルエンザウイルス、感染性牛鼻気管炎ウイルス、牛呼吸器合胞体ウイルス及び牛パラインフルエンザ-3ウイルスに対するNORSの抗ウイルス効果を示すといわれるデータが提供される。Trichophyton rubrum及びTrichophyton mentagrophytesに対するNORSの抗真菌効果を示すといわれるデータが提供される;
Chou S-H et al、左心室圧負荷ラットにおけるET-1-、eNOS及びcGMPの肺発現に対するバンド除去の影響、Exp. Biol. Med. 2005年、231、954-959頁;
Gladwin MT et al、低酸素シグナル伝達、細胞保護、及び血管拡張に寄与する血管内分泌一酸化窒素リザーバーとしての亜硝酸塩、Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 2006年、291、H2026-H2035頁;
Hunter CJ、et al、吸入噴霧亜硝酸塩(Inhaled nebulized nitrite)は、低酸素感受性NO依存性選択的肺血管拡張薬である、Nat. Med. 2004年、10、1122-1127頁;
Ozaki M et al、内皮からの一酸化窒素による低酸素肺血管リモデリングの減少、Hypertension、2001年、37、322-327頁;
Rubin LJ、2006年、肺動脈性肺高血圧症、Proc. Am. Thorac. Soc. 3、111-115頁;
Yellon D.M. et al、2007年、心筋再かん流障害(Myocardinal Reperfusion Injury)、N. Engl. J. Med.、357、1121-35頁;
Duranski M. R. et al、心臓及び肝臓のin vivo虚血・再かん流時の亜硝酸塩の細胞保護効果、J. Clin. Invest.、2005年、115、1232-1240頁;
Jung K-H et al、亜硝酸ナトリウムの早期静脈内注入は、in vivo虚血・再かん流損傷から脳を保護する、Stroke、2006年、37、2744-2750頁;
Esme H. et al、再かん流誘発性肺損傷における再かん流期間中に与えられる補足的な一酸化窒素ドナーの有益な効果、Thorac. Cardiovase. Surg.、2006年、54、477-483頁;
ヒトの皮膚品質を改善するための薬剤としてNOを放出するための酸性化亜硝酸塩の使用は、中国特許出願第101028229号明細書に記載されている;
ヒトの毛髪成長を促進し、脱毛症を予防又は治療するための薬剤としてNOを放出するための酸性化亜硝酸塩の使用は、中国特許出願第101062050号明細書に記載されている。
【0193】
一酸化窒素の生理学的効果の他の一般的な詳解は、例えば、Lancaster et al、Proc Natl Acad Sci、1996年、91、8137-8141頁;Ignarro et al、Proc Natl Acad Sci、1987年、84、9265-9269頁に記載されており;Brent、J Cell Science、2003年、116、9-15頁;Murad、N Engl J Med、2006年、355、2003-2011頁に概説されている。
【0194】
NOの送達のために公表されている薬理学的形態は、Butler and Feelisch、Circulation、2008年、117、2151-2159頁に概説されている。
【0195】
上記で引用した刊行物の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
本発明は、一酸化窒素及び一酸化窒素生成システムの全ての治療的及び外科的使用に適用可能であり、これには上記の参考文献に公開された特定の治療及び外科的使用、並びに全ての他の公開された治療及び外科的使用、並びに一酸化窒素の生理学的効果及び一酸化窒素生成反応の生成物の基礎となる知識に基づく治療及び外科的使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0197】
血管拡張
血管拡張を誘導する一酸化窒素の特性は、本発明の組み合わせ及び組成物、並びにそれらから放出される気体を使用する多くの治療を特徴づける。
【0198】
血管拡張に反応する疾患、障害及び病態の特定の例には、虚血及び皮膚病変に関連する病態が含まれるが、これらに限定されない。
【0199】
組織虚血に関連する病態には、レイノー症候群、重度の原発性血管けいれん、及び組織虚血、例えば手術、敗血症性ショック、放射線照射又は末梢血管疾患(例えば、糖尿病及び他の慢性全身性疾患)によって引き起こされる組織虚血が含まれる。
【0200】
手術の結果としての組織虚血に関連する病態の治療又は予防において使用される場合、本発明の組み合わせ又は組成物、又は本発明を使用してNOx生成反応から放出される一酸化窒素は、手術の前、間、又は後に被験体に投与されてもよい。組み合わせ、組成物、又は放出ガスは、手術部位に、又は手術部位の近傍に投与することができる。この組織虚血の治療又は予防を使用できる外科的処置の例には、移植手術、組織又は臓器移植手術、冠状動脈手術、けい動脈カテーテル法、化学薬品等の全身薬を投与するための留置動脈又は静脈カテーテルを提供する手術、有茎又は回転皮弁を含むがこれらに限定されない美容整形手術、以前の外科手術と同じ部位で切開が行われる再手術、皮膚及び/又は下層組織のかん流が不十分な領域で、又は併発疾患(動脈硬化症又は糖尿病患者など)の結果としてかん流が不十分と予想される場合に行われる外科手術、血管を損傷又は外傷した場合の手術、皮膚又は皮下の動静脈奇形を除去又は矯正する手術が含まれる。
【0201】
例えば、組み合わせ、組成物、又は放出ガスは、本発明による組み合わせ、組成物、又は放出ガスを器官に投与することによって、器官の虚血性再かん流損傷の治療又は予防において使用され得る。器官は、心臓(例えば、心筋虚血を予防又は治療するため)、脳(例えば、脳虚血及び梗塞(脳卒中)を治療又は予防するため)、肺(例えば、肺の虚血性再かん流障害を治療又は予防するため)、腎臓(例えば、腎臓の虚血性再かん流障害を治療又は予防するため)、及び肝臓(例えば、肝臓の虚血性再かん流障害を治療又は予防するため)から選択される1つ以上であってよい。手術は、器官の移植であってもよい。組み合わせ、組成物又は放出ガスの投与は、虚血の発症後に行われてもよく、又は予防的であってもよい。
【0202】
経皮薬物送達の用途
薬物の経皮送達を誘導する一酸化窒素の特性は、本発明の組み合わせ及び組成物、並びにそれらから放出されるガスの別の重要な有用性を表す。
【0203】
国際公開第02/17881号及び国際公開第2014/188175号(これらの開
示は参照により本明細書に組み込まれる)には、一酸化窒素及びそれから放出されるガスを生成するための組み合わせ及び組成物の経皮薬物送達のための使用が記載されており、このような使用のためのこれらの刊行物に記載される同じ条件、好み、及び例は、本発明の組み合わせ及び組成物、並びにそれから放出されるガスにも適用可能である。
【0204】
典型的には、本発明の組合せ及び組成物は、被験体に経皮的に送達される1つ以上の薬学的に活性な薬剤を含み、被験体の皮膚に適用するための局所用の組み合わせ又は組成物の形態として提供される。使用することができる薬学的に活性な薬剤の例については、上記の「任意の追加成分」と題されたセクションを参照されたい。
【0205】
適切な局所用の組み合わせは、亜硝酸塩含有メッシュ及び別個のプロトン源含有ヒドロゲルを含むことができ、上記の「組成物又は組成物系のための他のリザーバー;ヒドロゲル」のセクションで説明されているように、この2つは被験体の皮膚上で一緒に使用されるように適合される。ポリオール及び薬学的に活性な薬剤は、組み合わせの1つ以上の別個の成分中に提供されてもよく、又はヒドロゲル中に組み込まれてもよく、又はこれらの選択肢の任意の組み合わせがポリオール及び薬学的に活性な薬剤のためにそれぞれ使用されてもよい。
【0206】
創傷、皮膚病変、及びやけどの治療
血管拡張及び薬物の経皮送達を誘導し、微生物の増殖を死滅又は予防する一酸化窒素の特性は、創傷、皮膚病変及びやけどの治療において、本発明の組み合わせ及び組成物並びにそこから放出されるガスの別の重要な有用性をもたらした。
【0207】
本発明を用いて治療可能な病態には、潰瘍、皮膚ドナー部位、手術創(術後)熱傷(熱傷、表層熱傷、部分層熱傷及び全層熱傷など)、裂傷及び擦過傷が含まれる。創傷は、慢性のことも急性のこともある。潰瘍は、動脈又は静脈起源など、様々な起源のものがある。潰瘍の例には、脚潰瘍、例えば慢性脚潰瘍又は急性脚潰瘍、褥瘡、例えば慢性褥瘡又は急性褥瘡、静脈性潰瘍及び糖尿病性足潰瘍のような糖尿病に関連する潰瘍が含まれる。
【0208】
国際公開第2014/188174号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)には、一酸化窒素及びそれから放出されるガスを生成するための組み合わせ及び組成物の創傷、皮膚病変、及びやけどを治療するための使用が記載されており、この公報に記載される同じ条件は、本発明の組み合わせ及び組成物並びにそれから放出されるガスにも適用可能である。
【0209】
典型的には、本発明の組み合わせ及び組成物は、1つ以上の薬学的に活性な薬剤を含み、被験体の皮膚に適用するための局所用の組み合わせ又は組成物の形態として提供される。使用することができる薬学的に活性な薬剤の例については、上記の「任意の追加成分」と題されたセクションを参照されたい。創傷、皮膚病変及びやけどの治療のために、1つ以上の薬学的に活性な薬剤は、鎮痛剤及び/又は麻酔剤(例えば、局所麻酔剤)(例えば、慢性疼痛、急性疼痛又は神経障害性疼痛を軽減するための鎮痛剤及び/又は麻酔剤)、抗菌剤、消毒剤、抗炎症剤及び抗瘢痕剤から適切に選択され得る。
【0210】
適切な局所用の組み合わせは、亜硝酸塩含有メッシュ及び別個のプロトン源含有ヒドロゲルを含むことができ、上記の「組成物又は組成物系のための他のリザーバー;ヒドロゲル」のセクションで説明されているように、この2つは被験体の皮膚上で一緒に使用されるように適合される。ポリオール及び薬学的に活性な薬剤は、組み合わせの1つ以上の別個の成分中に提供されてもよく、又はヒドロゲル中に組み込まれてもよく、又はこれらの選択肢の任意の組み合わせがポリオール及び薬学的に活性な薬剤のためにそれぞれ使用されてもよい。
【0211】
抗菌薬の局所使用
抗菌用途では治療的に有効なNO用量が少なく、例えば数百ppmと低く、例えば100~600ppmとすることができるが(例えば、Ghaffari et al、Nitric Oxide Biology and Chemistry、2009年、14、21-29頁、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)、一酸化窒素の有効性は皮膚接触が維持される時間に実質的に依存する(Ormerod et al、BMC Research Notes、2011年、4、458-465頁、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0212】
一酸化窒素のゆっくりとした局所放出のための提案が公表されている(例えば、米国特許第6103275号明細書を参照)。しかしながら、得られる局所NO用量は1時間未満持続し、これは、乏しい局所抗菌作用を提供する。「多成分系、キット及びディスペンサー」と題するセクションで上述したように、また以下の実施例に示すように、本発明は局所及び非局所投与システムの両方において、はるかに長いNO投薬期間を可能にし、実質的な臨床的利点をもたらす。
【0213】
特に、本発明の組み合わせ及び組成物は、NOx生成反応が始まった後(「初期バースト」)、最初の約200~500秒で一酸化窒素の強力な出力を提供することを可能にし、続いて、ガスの発生が停止するか又は有効レベル未満に低下する前に、任意選択で、長時間にわたって延在する一酸化窒素のよりゆっくりとした放出(「テール」)を提供することを可能にすることが見出された。本発明の組み合わせ及び組成物によって放出されるNO用量は、公表された最小有効抗菌用量を超え、本発明の組み合わせ及び組成物並びにそれから放出されるガスの潜在的に有効な局所抗菌使用をもたらす。
【0214】
局所用抗菌剤適用のためのNOx生成組み合わせ及び組成物の製剤は、先行技術、例えば米国特許出願公開第2014/0056957号明細書に十分に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれ、そのような製剤は、本発明の組み合わせ及び組成物にも適用可能である。別の適切な局所用組み合わせは、亜硝酸塩含有メッシュ及び別個のプロトン源含有ヒドロゲルを含むことができ、上記の「組成物又は組成物系のための他のリザーバー;ヒドロゲル」のセクションで説明されているように、この2つは被験体の皮膚上で一緒に使用されるように適合される。ポリオール及び薬学的に活性な薬剤は、組み合わせの1つ以上の別個の成分中に提供されてもよく、又はヒドロゲル中に組み込まれてもよく、又はこれらの選択肢の任意の組み合わせがポリオール及び薬学的に活性な薬剤のためにそれぞれ使用されてもよい。
【0215】
その他の経皮的又は局所的治療
一酸化窒素及び一酸化窒素生成組成物の他の局所適用は、発毛を刺激すること、並びにインポテンス及び勃起不全を治療することを含む。
【0216】
本発明の組み合わせ及び組成物は、このような治療のための局所適用のために処方されることができる。
【0217】
局所用包帯及び包帯システム、例えば創傷包袋
局所的治療では、治療が適用されている間、皮膚の治療された領域を覆うか又は保護することが望ましいことが多い。これは、創傷の汚染を防止するのを助け、治癒過程から膿又は残屑を除去するのを助け、入浴又はシャワーの際に、又は衣服との接触を通して、又は被験者の通常の活動の結果として、治療組成物の損失を防止又は制限し、処置領域をノック又は擦れに対して緩衝することができる。
【0218】
この目的のために、局所用包帯又は包帯システム、例えば、創傷包帯又は包帯システム
に治療を組み込むことが一般的である。包帯、又は包帯システムの少なくとも1つの構成の一部は、典型的には水不透過性又は水透過性であってもよく、任意選択で皮膚接着部分、及び任意選択でガーゼ又はパッド層などの他の層を備えることができるバッキングシートを含む。
【0219】
さらなる態様では、本発明は、本発明の第5の態様による組み合わせ又は組成物を含む、局所包帯、例えば創傷又は皮膚包帯、又は包帯システムを提供し、包帯又は包帯システムの少なくとも1つの構成は、バッキングシートと、任意選択で1つ以上の他の層、例えばガーゼ及びパッド層から選択される層とを含む。本発明の第5の態様による組み合わせ又は組成物は、適切にはバッキングシートの皮膚に向けられた側に配置され、包帯が皮膚に適用され、NOx生成反応が開始されると、所望の皮膚領域がNOx生成反応混合物又はそこから放出されるガスで治療されるように配置される。
【0220】
包帯又は包帯システムは、使用前に、密封された無菌パックで適切に提供されてもよい。
【0221】
鼻、口、気道及び肺への使用
血管拡張及び薬物の経皮送達を誘導し、微生物を殺すか又はその増殖を防止するという一酸化窒素の性質は、鼻、口、気道及び肺の粘膜及び組織の治療、及び/又はヒト又は動物被験体に本発明の組み合わせ及び組成物を送達するための投与経路としての鼻、口、気道及び肺の使用において、本発明の組み合わせ及び組成物並びにそれから発生したガスの別の重要な有用性をもたらした。
【0222】
本発明を用いて治療可能な病態は、例えばインフルエンザ、SARS-CoV又はSARS-CoV-2のようなウイルス感染、肺動脈高血圧、移植に関与する心臓、脳及び臓器の虚血性再かん流障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(特に肺気腫、慢性気管支炎)、重度の喘息、ウイルス性及び細菌性誘発増悪を含む喘息、難治性(非可逆性)喘息、肺炎、結核、非結核性マイコバクテリア感染症、他の細菌性及びウイルス性肺感染症、例えば気道のウイルス感染後の二次的細菌感染を含む。
【0223】
国際公開第2009/086470号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)には、一酸化窒素を生成させるための噴霧された液体の組み合わせ及び組成物並びにそれから放出されるガスの、鼻、口、気道及び肺の疾患を治療するための使用、及び/又はそのような組み合わせ及び組成物をヒト又は動物被験体に送達するための投与経路としての鼻、口、気道及び肺の使用が記載されており、そのような使用についてその公表に記載される同じ条件、好み及び例は、本発明の組み合わせ及び組成物並びにそれから放出されるガスにも適用可能である。
【0224】
典型的には、鼻、口、気道及び肺への送達のための本発明の組み合わせ及び組成物は、1つ以上の薬学的に活性な薬剤を含む。使用することができる薬学的に活性な薬剤の例については、上記の「任意の追加成分」と題されたセクションを参照されたい。
【0225】
鼻、口、気道又は肺の送達経路を介して本発明を実施するために、2つの原理的な送達方法が可能である。第1は、本発明の組み合わせ又は組成物が、鼻、口、気道又は肺に直接送達される方法である。第2は、本発明を用いてNOx生成反応から放出されたガスが、本発明の組み合わせ又は組成物が患者の身体に入ることなく、鼻、口、気道又は肺に送達される方法である。
【0226】
1.鼻、口、気道、もしくは肺への直接的な組み合わせ又は組成物の送達
組み合わせ又は組成物、又はそれらの成分は、乾燥固体形態で鼻、口、気道、又は肺に
直接送達されてもよく、それによって粘膜の流体が固体成分材料を溶解し、NOx生成反応を開始する。
【0227】
組み合わせの成分は、別々に又は一緒に投与されてもよい。1つの好ましい実施形態では、プロトン源又はその少なくとも1つの成分は、残りの成分の前に投与されてもよく、その結果、相対的に酸性の環境が粘膜において確立され、これは、亜硝酸塩成分がin situでプロトン源成分と接触する場合に、NOx生成反応の迅速な開始を補助する。
【0228】
組み合わせの任意の乾燥成分、又は乾燥組成物の鼻、口、気道、又は肺への直接的な送達は、乾燥粉末吸入器を使用する乾燥粉末吸入によって適切に行われてもよく、1つ以上の乾燥粉末成分(例えば、1つ以上の、亜硝酸塩成分、プロトン源成分及びポリオール成分)、又はその乾燥粉末組成物の治療有効用量を被験体に送達し、乾燥粉末吸入器は、6ミクロン未満の体積平均直径の粒子を含むエアロゾルを被験体に送達する。乾燥粉末吸入器は、乾燥粉末吸入器が1つ以上の乾燥粉末成分又は乾燥粉末組成物の吸入呼吸あたり約0.1mg~約100mgを、6ミクロン未満の体積平均直径の粒子で被験体に送達するように、乾燥粉末を装填した単回又は複数回投与を実施するようにされてもよい。
【0229】
さらに、又は代わりに、その組み合わせもしくは組成物、又はそれらの成分は、亜硝酸塩成分、プロトン源成分及びポリオール成分のうちの1つ以上の溶液の液滴のミスト又はスプレーとして、鼻、口、気道、又は肺に直接送達されてもよい。
【0230】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、一般に、被験体の鼻、口、気道又は肺への直接送達に適用可能である。限定するものではないが、例えば組み合わせもしくは組成物、又はそれらの成分は、1つ以上の生理学的に適合する希釈剤、担体及び/又は賦形剤とともに、及び/又は1つ以上の追加成分、1つ以上の特定の利益を提供することを目的とする特定の機能成分とともに提供されて、被験体の鼻、口、気道又は肺に直接投与されてもよい。適切な生理学的に適合する希釈剤、担体及び/又は賦形剤の例としては、ラクトース、デンプン、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、セルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、グルコース、ゼラチン、スクロース、炭酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。必要に応じて、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、潤滑剤、結合剤、及び可溶化剤、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、酢酸トリエタノールアミン、オレイン酸トリエタノールアミンなどが存在してもよい。一般的に言えば、目的とされる投与様式に応じて、医薬製剤は、本発明の組み合わせもしくは組成物又はその成分を約0.005重量%~約95重量%、好ましくは約0.5重量%~約50重量%含有する。このような投薬形態を調製する実際の方法は、公知であるか、又は当業者に明らかである。例えば、Martindale、第39版(2017年)、the Merck Index、第15版(2013年)、Goodman & Gilmanの“The Pharmacological Basis of Therapeutics”、第13版(2017年)、the British National Formulary on-line (https://bnf.nice.org.uk/)、Remington:“The science & Practice of Pharmacy”、第22版(2012年)、又はthe Physician’s Desk Reference、第71版(2017年)を参照されたい。
【0231】
1つの好ましい実施形態では、被験体の鼻、口、気道又は肺に送達するための組み合わせ又は組成物は、液体、懸濁されるべき固体、乾燥粉末、凍結乾燥物、又は他の組成物を含むバイアルのような単位投薬形態の形態をとり、この組み合わせ又は組成物は、NOx生成反応の成分とともに、希釈剤(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウムなど);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムなど);結合剤(例えば、デンプン、アラビアガム、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体な
ど)を適切に含むことができる。
【0232】
組み合わせの成分、又は液滴形態の組成物を含むいずれの液滴の、鼻、口、気道又は肺への直接的な送達は、噴霧器を使用する吸入によって、1つ以上の液体成分(例えば、亜硝酸塩成分、プロトン源成分及びポリオール成分の1つ以上)の治療有効用量、又は液体形態の組成物を被験体に送達することによって適切に行われてもよく、ここで、噴霧器は、5ミクロン体積平均直径未満の粒子を含有するエアロゾルを被験体に送達する。噴霧器は、噴霧器が5ミクロン未満の体積平均直径の液滴、好ましくは約2~約5μmの範囲のサイズを有する液滴で、1つ以上の液体成分又は液体形態の組成物の吸入呼吸当たり約0.1mg~約100mgを被験体に送達するように、組み合わせ又は液体組成物の液体成分を装填した単回又は複数回投与に適合されてもよい。
【0233】
一実施形態では、噴霧器は、組み合わせの成分を含む液滴のエアロゾルの形成、又は主に約2~約5ミクロンの空力学的直径(MMAD)を有する液滴形態の組成物の形成を可能にすることに基づいて選択される。
【0234】
一実施形態では、組み合わせの成分を含む液滴の送達量、又は液滴形態の組成物は、肺外疾患及び全身性疾患も治療するために、肺病理学、呼吸器感染症及び/又は肺外、全身性分布に対する治療効果を提供する。
【0235】
以前には、2つのタイプの噴霧器、ジェット及び超音波は、2~4μmのサイズを有するエアロゾル粒子を生成し、送達することができることが示されている。これらの粒子サイズは、中気道沈着、したがって、緑膿菌、大腸菌、エンテロバクター属、肺炎桿菌、クレブシエラ・オキシトカ、プロテウス・ミラビリス、シュードモナス・エルギノーザ、セラチア・マルセッセンス、インフルエンザ菌、バークホルデリア・セパシア、ステノトロホモナス・マルトフィリア、アルカリゲネス・キシロソキシダンス、黄色ブドウ球菌及び多剤耐性緑膿菌のようなグラム陰性菌によって引き起こされる肺細菌感染症の治療に最適であることが示されている。しかしながら、特別に処方された溶液が使用されない限り、これらの噴霧器は、典型的には治療効果を得るために十分な量の薬物を投与するために、より大きな容量を必要とする。ジェット噴霧器は、水溶液のエアロゾル液滴への空気圧破壊を利用する。超音波噴霧器は、圧電結晶による水溶液の剪断を利用する。しかしながら、典型的にはジェット噴霧器は臨床条件下では約10%しか効率的ではなく、一方、超音波噴霧器は約5%しか効率的ではない。従って、噴霧器内に多量の薬物が配置されているにもかかわらず、肺に蓄積され、吸収される医薬の量は10%の一部である。より小さい粒子サイズ又は遅い吸入速度は、深部肺沈着を可能にする。適応症、例えば、抗菌活性のための中気道沈着、又は肺動脈高血圧及び全身送達のための中及び/又は肺胞沈着に応じて、中肺及び肺胞沈着の両方が、本発明のために所望され得る。噴霧器を使用する製剤送達のための組成物及び方法の例示的な開示は、例えば、振動メッシュ噴霧器を使用するエアロゾル化ミスト送達の技術、プロトコル及び特徴付けの説明を含む、米国特許出願公開第2006/0276483号明細書に見出すことができる。米国特許出願公開第2006/0276483号明細書の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0236】
したがって、一実施形態では、振動メッシュ噴霧器を使用して、好ましい実施形態では組み合わせの成分を含む液体液滴のエアロゾル又は液滴形態の組成物を送達する。振動メッシュ噴霧器は、ダイヤフラムと流体接触する液体貯蔵容器と、吸気弁及び呼気弁とを備える。一実施形態では、送達される液体製剤の約1~約5mlを貯蔵容器に入れ、エアロゾル発生器を駆動させて、約1~約5μmの体積平均直径の間で選択された粒子サイズの霧化エアロゾルを生成する。
【0237】
したがって、例えば、好ましい実施形態では、任意選択で本発明による1つ以上の有機
ポリオールを含む、亜硝酸塩成分配合物又はプロトン源成分、これらの1つ又は両方は、液体噴霧化吸入器中に配置され、約1~約5μmの体積平均直径の粒子サイズが生成されている約1~約5mlの投薬溶液から約7~約700mg、好ましくは約1~約5ml中約17.5~約700mg、より好ましくは約1~約5ml中約17.5~約350mg、好ましくは約1~約5ml中約0.1~約300mg、より好ましくは約1~約5ml中約0.25~約90mg、を送達する用量で調製される。
【0238】
非限定的な例によって、組み合わせの成分を含む噴霧液体、又は液滴形態の組成物は、記載された呼吸可能な送達用量で、約20分未満、好ましくは約10分未満、より好ましくは約7分未満、より好ましくは約5分未満、より好ましくは約3分未満、場合によっては最も好ましくは約2分未満で、投与されてもよい。
【0239】
非限定的な例によって、他の状況では、組み合わせの成分を含む噴霧化された液体、又は液滴形態の組成物は、より長い期間にわたって投与された場合、改善された忍容性を達成してもよく、及び/又は曲線下面積(AUC)の形状増強特性を示してもよい。これらの条件下で、記載された呼吸可能な送達用量は、約2分を超え、好ましくは約3分を超え、より好ましくは約5分を超え、より好ましくは約7分を超え、より好ましくは約10分を超え、場合によっては約10~約20分である。
【0240】
別個の成分製剤の例は、(i)約6より大きいpH、例えば約6~約8の範囲、例えば約7のpHを有する水溶液中の亜硝酸塩;及び(ii)水溶液中のプロトン源成分を含んでもよく、少なくとも2つの別個の液体溶液成分(i)及び(ii)を混合してNOx生成組成物を形成することができ、これはヒト患者又は獣医の被験体への送達のために噴霧器を装填するために使用され得る。
【0241】
水性及び他の非加圧液体システムについては、組み合わせ又は組成物の成分をエアロゾル化するために、種々の噴霧器(小容量噴霧器を含む)が利用可能である。圧縮駆動噴霧器は、ジェット技術を組み込み、圧縮空気を使用して液体エアロゾルを生成する。このようなデバイスは、例えば、Healthdyne Technologies社; Invacare社; Mountain Medical Equipment社; Pari Respiratory社(Midlothian, VA); Mada Medical社; Puritan-Bennet; Schuco社、DeVilbiss Health Care社、及びHospitak社から市販されている。超音波噴霧器は、呼吸可能な液滴を生成するために圧電結晶の振動の形態の機械的エネルギーに依存し、例えばOmron Heathcare社及びDeVilbiss Health Care社から市販されている。振動メッシュ噴霧器は、呼吸可能な液滴を生成するために圧電パルス又は機械パルスのいずれかに依存する。本明細書に記載される亜硝酸塩(nitrite)、亜硝酸塩(nitrite salt)、又は亜硝酸塩供与化合物もしくは一酸化窒素供与化合物とともに使用するための噴霧器の他の例としては、米国特許第4268460号明細書;米国特許第4253468号明細書;米国特許第4046146号明細書;米国特許第3826255号明細書;米国特許第4649911号明細書;米国特許第4510929号明細書;米国特許第4624251号明細書;米国特許第5164740号明細書;米国特許第5586550号明細書;米国特許第5758637号明細書;米国特許第6644304号明細書;米国特許第6338443号明細書;米国特許第5906202号明細書;米国特許第5934272号明細書;米国特許第5960792号明細書;米国特許第5971951号明細書;米国特許第6070575号明細書;米国特許第6192876号明細書;米国特許第6230706号明細書;米国特許第6349719号明細書;米国特許第6367470号明細書;米国特許第6543442号明細書;米国特許第6584971号明細書;米国特許第6601581号明細書;米国特許第4263907号明細書;米国特許第5709202号明細書;米国特許第5823179号明細書;米国特許第6192876号明細書;米国特許第6644304号明細書;米国特許第5549102号明細書;米国特許第6083922号明細書;米国特許第6161536号明細書;米国特許第62
64922号明細書;米国特許第6557549号明細書;米国特許第6612303号明細書が挙げられ、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0242】
本明細書中に記載される液滴形態の組み合わせ又は組成物の成分を含む液滴ととっもに使用され得る噴霧器の市販品の例は、Aerogen(Aerogen社製、ゴールウェイ、アイルランド)によって製造される、Respirgard II(登録商標)、Aeroneb(登録商標)、Aeroneb(登録商標) Pro、AeroEclipse XL(登録商標)及びAeroneb(登録商標) Go;Aradigmによって製造されるAERx(登録商標)及びAERx EssenceTM; Respironics社(マリーズビルmペンシルバニア州、アメリカ合衆国)によって製造される、Porta-neb(登録商標)、Freeway FreedomTM、SideStream、SideStream Plus、Ventstream及びI-neb、並びにPARI, GmbH(PARI Respiratory Equipment社、ミッドロジアン、バージニア州、アメリカ合衆国;PARI GmbH、シュタルンベルク、ドイツ国)によって製造される、PARI LC-Plus(登録商標)、PARI LC-Star(登録商標)、PARI LC-Sprint(登録商標)及びe-FlowTMを含む。これらの噴霧器のいずれも、製造業者の仕様に従って、フェースマスク又はマウスピースのいずれかとともに使用することができる。さらなる非限定的な例により、米国特許第6196219号明細書は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0243】
一実施形態では、可溶性又はナノ薬剤粒子を含有する水性製剤が提供される。水性エアロゾル製剤の場合、薬剤は、約0.67mg/ml~約700mg/mlの濃度で存在してもよく;特定の好ましい実施形態では、亜硝酸塩が1ml当たり約0.667mg亜硝酸アニオン~約100mg亜硝酸アニオンの濃度で存在する。このような製剤は、肺の適切な領域への効果的な送達を提供し、より濃縮されたエアロゾル製剤は、大量の薬剤が非常に短時間で肺に送達されることを可能にするというさらなる利点を有する。一実施形態では、製剤は、十分に耐性のある製剤を提供するように最適化される。したがって、特定の好ましい実施形態は、亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム又は亜硝酸マグネシウムなど)を含み、良好な味、pHが約4.7~約6.5、浸透圧が約100~約3600mOsmol/kg、及び任意の特定のさらなる実施形態では、約30~約300mMの浸透圧イオン(例えば、塩化物、臭化物)濃度を有するように製剤化される。
【0244】
一実施形態では、エアロゾル製剤の調製に使用される溶液又は希釈剤は、約4.5~約9.0、好ましくは約4.7~約6.5(例えば、酸性混合物として)、又は単一バイアル構成として約7.0~約9.0のpH範囲を有する。このpH範囲は、本明細書の他の箇所に記載されるような特定の実施形態による味マスキング剤の含有と同様に、忍容性を改善する。エアロゾルが酸性又は塩基性のいずれかである場合、それは気管支けいれん及び咳を引き起こし得る。pHの安全な範囲は相対的であり、一部の患者は軽度の酸性エアロゾルに耐えることができるが、他の患者は気管支けいれんを経験する。約4.5未満のpHを有するいずれのエアロゾルも、典型的には気管支けいれんを誘発する。約4.5~約5.5のpHを有するエアロゾルは、時折気管支けいれんを引き起こす。約8を超えるpHを有するいずれのエアロゾルも、身体組織が一般にアルカリ性エアロゾルを緩衝することができないので、低い忍容性を有し得る。約4.5未満及び約8.0を超える制御されたpHを有するエアロゾルは、典型的には重篤な気管支けいれん咳及び炎症反応を伴う肺刺激を生じる。これらの理由及び患者における気管支けいれん、咳又は炎症の回避のために、エアロゾル製剤の最適pHは、約5.5~約8.0であると決定された。
【0245】
その結果、一実施形態では、本明細書に記載されるような使用のためのエアロゾル製剤は、約4.5~約7.5のpHに調整され、酸性混合物の最も好ましいpH範囲は約4.7~約6.5であり、単一バイアル構成の最も好ましいpH範囲は約7.0~約8.0である。非限定的な例として、本明細書に開示される特定の実施形態によって、組成物はまた、pH緩衝液又はpH調整剤、典型的には有機酸又は塩基から調製される塩、及び好ましい実施形態において、本明細書に記載されるような酸性賦形剤(例えば、クエン酸など
の非還元酸又はクエン酸ナトリウムなどのクエン酸塩)又は上記及び表1を参照して記載されるクエン酸又は他の緩衝剤などの緩衝剤を含んでもよい。したがって、これら及び他の代表的な緩衝液は、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の有機酸塩、Tris、トロメタミン、塩酸塩、又はリン酸緩衝液を含んでもよい。
【0246】
多くの患者は、苦味、塩味、甘味、金属感覚を含む様々な化学的味覚に対する感受性が増大している。十分に耐性のある薬剤の製品を作製するために、味マスキング剤及び賦形剤、浸透圧調整剤、並びに甘味料を添加することによって、味マスキングを達成することができる。
【0247】
多くの患者は、様々な化学薬品に対する感受性が高く、気管支けいれん、喘息又はその他の咳の偶発症の発生率が高い。それらの気道は、特に、低張性又は高張性及び酸性又はアルカリ性の条件、並びに塩化物などのいずれの透過性イオンの存在に対しても敏感である。これらの状態の不均衡又は特定の濃度値を超える塩化物の存在は、気管支けいれん又は炎症事象及び/又は咳をもたらし、これは、吸入可能な製剤での治療を大きく損なう。これらの条件の両方は、本明細書中に開示される特定の実施形態によって、調節されたpH、浸透圧及び味マスキング剤の有利な使用なしに、気管支内空間へのエアロゾル化された薬剤の効率的な送達を妨げ得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される亜硝酸塩化合物(又は別個の実施形態では、亜硝酸塩供与化合物又は一酸化窒素供与化合物)の水溶液の浸透圧は、賦形剤を提供することによって調節される。場合によっては、塩化物、臭化物、又は別のアニオンなどのある量の透過性イオンは、エアロゾル化された亜硝酸塩の成功した有効な送達を促進することができる。しかしながら、本明細書中に開示される亜硝酸塩成分について、そのような透過性イオンの量は、他の薬剤化合物のエアロゾル化投与に典型的に使用される量よりも低くてもよいことが発見された。
【0249】
気管支けいれん又は咳反射は、すべての場合において、所与の浸透圧を有するエアロゾル化のための希釈剤の使用によって改善されるわけではない。しかしながら、これらの反射はしばしば、希釈剤のオスモル濃度が特定の範囲内である場合、十分に制御及び/又は抑制され得る。安全かつ許容される治療化合物のエアロゾル化のための好ましい溶液は、約30mM~約300mM、好ましくは約50mM~約150mMの範囲の塩化物濃度で、約100~約3600mOsmol/kgの総浸透圧を有する。この浸透圧は、気管支けいれんを制御し、透過性アニオンとしての塩化物濃度は咳を制御する。これらは両方とも透過性イオンであるので、臭化物又はヨウ化物アニオンを塩化物の代わりに用いることができる。さらに、重炭酸塩は、塩化物イオンに置換されてもよい。
【0250】
ナノ粒子薬物分散液はまた、凍結乾燥されて、経鼻又は肺送達に適した粉末を得ることができる。このような粉末は、表面改質剤を有する凝集ナノ薬剤粒子を含有してもよい。このような凝集体は、呼吸可能な範囲内のサイズ、例えば約2~約5ミクロンのMMADを有することができる。
【0251】
2.NOx生成反応から放出されたガスの鼻、口、気道又は肺への送達
患者の肺に計量された量の一酸化窒素を送達するための吸入器は周知である。一般的に言えば、一酸化窒素は、オフサイトで生成され、使用のために特殊な送達デバイスに接続された加圧シリンダー中で病院又は診療所に送達される。INOmax Therapy systemは、例えば、(BOC Healthcare、UK、https://www.bochealthcare.co.uk/en/products-and-services/products-and-services-by-category/medical-gases/inomax/inomax.html)に記載されている。略語INOmax(吸入一酸化窒素)は、一般に、INOmax Therapy systemのシリン
ダーに使用され、そして送達デバイスのためのINOventに使用される。INOmax Therapy systemの評価は、例えばKimse et al、Chest、1998年6月、113(6)、1650-1657頁に公開されている。この刊行物の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0252】
本発明の第1の態様による方法は、専用のNO製造設備で適切に実施することができ、本発明の第2の態様によるガス生成物は、通常の方法で加圧シリンダー内にユーザーへ提供される。次いで、加圧ガスシリンダーは、公知の方法で、分配、モニタリング、投与、混合及び送達装置とともに使用される。
【0253】
抗菌薬使用の標的
上述したように、本発明のNOx生成反応及びそれから放出されるガスは、潜在的に広範囲の微生物に対して殺菌効果又は静生物効果を有し、多くの抗菌用途につながる。
【0254】
微生物は、例えば、細菌細胞、ウイルス粒子及び/又は真菌細胞、又は微小寄生虫から選択される任意の1つ以上であることができ、個々の細胞、生物、又はコロニーであることができる。細菌細胞、ウイルス粒子及び/又は真菌細胞又は微小寄生虫は、宿主生物上又は宿主生物中に、例えば、ヒト又は他の動物の腸内微生物として、又はヒト又は他の動物の細菌感染において存在することができる。細菌、及び/又は真菌細胞、及び/又はウイルス粒子、及び/又は微小寄生虫は、in vitro、in vivo、又はex vivoであってもよい。
【0255】
本発明は、被験体の皮膚病変部位における微生物感染症の治療又は予防に特に有用であることができる。本発明は、免疫抑制された被験体における微生物感染症の予防の処置において特に有用であり得る。
【0256】
微生物が細菌感染、真菌感染、ヒト又は他の動物のウイルス性又は微小寄生虫性感染で存在する場合、その感染は、例えば、感冒、インフルエンザ、結核、SARS、COVID-19、肺炎又は麻疹のような疾患との関連であってもよい。
【0257】
1.細菌細胞
本細菌は、病原性細菌種であってもよい。微生物感染症は、グラム陽性及びグラム陰性、好気性及び嫌気性、抗生物質感受性及び抗生物質耐性細菌を含む病原性細菌種によって引き起こされる感染症であってもよい。
【0258】
本発明を使用して標的とすることができる細菌種の例には、アクチノマイセス、バシラス、バルトネラ、ボルデテラ、ボレリア、ブルセラ、カンピロバクター、クラミジア、クラミドフィラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エンテロコッカス、エスケリキア、フランシセラ、ヘモフィルス、ヘリコバクター、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ナイセリア、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、赤痢菌、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、トレポネーマ、ウレアプラズマ、ビブリオ、又はエルシニア属の種が含まれる。それらの任意の組み合わせもまた、本発明によって標的化されることができる。
【0259】
特定の実施形態では、微生物は、コリネバクテリウム、マイコバクテリウム、レンサ球菌、ブドウ球菌、シュードモナス、又はそれらの任意の組み合わせの病原性種であってもよい。
【0260】
より特定の実施形態では、標的とされる微生物は、アクチノマイセス・イスラエリ、炭疽菌、バクテロイデス・フラジリス、百日咳菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、ボレリア・ガリニ;ボレリア・アフゼリ;ボレリア・レカレンティス;ブルセラ・アボルタス;ブ
ルセラ・カニス;ブルセラ・メリテンシス;ブルセラ・スイス;カンピロバクター・ジェジュニ;肺炎クラミジア;クラミジア・トラコーマ;オウム病クラミジア;ボツリヌス菌;クロストリジウム・ディフィシル;ウェルシュ菌;破傷風菌;コリネバクテリウム・ジフテリア;エーリキア・カニス;エーリキア・チャフェンシス;エンテロコッカス・ファエカリス;エンテロコッカス・フェシウム;腸管毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管病原性大腸菌、腸管侵入性大腸菌(EIEC)、及び腸管出血性大腸菌(EHEC)などの大腸菌O157を含む大腸菌;H7;野兎病菌;インフルエンザ菌;ヘリコバクター・ピロリ;肺炎桿菌;レジオネラ・ニューモフィラ;レプトスピラ属細菌;リステリア・モノサイトゲネス;マイコバクテリウム・レプラエ;マイコバクテリウム・ツベルクロシス;マイコバクテリウム・アブセサス;マイコバクテリウム・ウルセランス;肺炎マイコプラズマ;淋菌;髄膜炎菌;緑膿菌;ノカルディア・アステロイデス;リケッチア・リケッチア;チフス菌;サルモネラ・ティフィムリウム;ソンネイ赤痢菌;志賀赤痢菌;黄色ブドウ球菌;表皮ブドウ球菌;スタフィロコッカス・サプロフィティカス;B群溶血性レンサ球菌;肺炎レンサ球菌;A群溶血性レンサ球菌;ストレプトコッカス・ビリダンス;梅毒トレポネーマ;ビブリオ・コレレ(コレラ菌);ペスト菌;及びこれらの組み合わせから選択されることができる。
【0261】
特に、微生物は、肺炎クラミジア、炭疽菌、コリネバクテリウム・ジフテリア、インフルエンザ菌、マイコバクテリウム・レプラエ、マイコバクテリウム・ツベルクロシス、マイコバクテリウム・アブセサス、マイコバクテリウム・ウルセランス、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、肺炎レンサ球菌、又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0262】
微生物は、抗生物質耐性又は抗生物質感受性の病原性細菌種、又は細菌種の抗生物質耐性又は抗生物質感受性株であってもよい。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)を処置するための一酸化窒素の使用は、例えば、国際公開第02/20026号に記載され、その開示は参照によって本明細書に組み込まれる。本発明を用いて殺菌又は処置され得る抗生物質耐性又は抗生物質感受性病原性細菌種の例としては、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)又はメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)が挙げられる。
【0263】
2.真菌細胞
微生物は、病原性真菌種であってもよい。微生物感染は、病原性酵母を含む病原性真菌種によって引き起こされる感染であってもよい。
【0264】
本発明を使用して標的化され得る真菌種の例としては、アスペルギルス、ブラストミセス、カンジダ(例えば、カンジダ・オーリス)、コクシジオイデス、クリプトコッカス(特に、クリプトコッカス・ネオフォルマンス又はクリプトコッカス・ガッティ)、ヒストプラズマ、ムコルミセテス、ニューモシスチス(例えば、ニューモシスチス・イロベチイ)、スポロトリクス、タラロマイセス、又はこれらの任意の組み合わせの種が挙げられる。
【0265】
真菌感染症の例には、アスペルギルス症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症など)、足白癬(水虫)、病原性カンジダ属による感染症、腟酵母菌感染症、足の爪の真菌感染症やおむつかぶれ、股部白癬(ジョックかゆみ)、体部白癬(白癬)などがある。
【0266】
3.ウイルス粒子
微生物は、ウイルス粒子であってもよい。感染は、病原性ウイルスによって引き起こされることがある。
【0267】
本発明を使用して標的とされ得るウイルスの例には、インフルエンザウイルス、パライ
ンフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス(RSV)、アストロウイルス、及び肝炎ウイルスが含まれる。特に、本発明の組成物は、H1N1インフルエンザウイルス、感染性牛鼻気管炎ウイルス、牛呼吸器合胞体ウイルス、牛パラインフルエンザ-3ウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、及びこれらの任意の組合せから選択される群の1つによって引き起こされる感染の治療又は予防に使用されてもよい。
【0268】
特に、本発明は、ウイルス感染によって引き起こされる疾患又は障害の治療に適用されることができる。本発明によって標的とされ得るこのような疾患の例には、呼吸器ウイルス疾患、胃腸ウイルス疾患、発疹性ウイルス疾患、肝ウイルス疾患、皮膚ウイルス疾患、出血性ウイルス疾患、及び神経ウイルス疾患が含まれる。
【0269】
呼吸器ウイルス感染症には、インフルエンザ、ライノウイルス(すなわち、感冒ウイルス)、RSウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス感染症(例えばCOVID-19など)、及び重症急性呼吸器症候群(SARS)がある。胃腸ウイルス疾患には、ノロウイルス感染症、ロタウイルス感染症、アデノウイルス感染症及びアストロウイルス感染症が含まれる。発疹性ウイルス疾患には、麻疹、風疹、水痘、帯状疱疹、バラ疹、天然痘、第5病及びチクングンヤウイルス病が含まれる。肝ウイルス疾患には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎及びE型肝炎がある。皮膚のウイルス性疾患には、性器疣贅、口腔ヘルペス、性器ヘルペス及び伝染性軟属腫などの疣贅がある。出血性ウイルス疾患には、エボラ、ラッサ熱、デング熱、黄熱、マールブルグ出血熱及びクリミア・コンゴ出血熱がある。本発明を用いて標的化され得る神経ウイルス疾患には、ポリオ、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性脳炎及び狂犬病が含まれる。
【0270】
4.寄生微生物
微生物は、寄生微生物(ミクロパラサイト)であってもよい。感染は、病原性の寄生微生物によって引き起こされることがある。
【0271】
本発明を用いて標的とされ得る寄生微生物の例には、原虫が含まれる。
【0272】
特に、本発明は、肉質虫(例えばアメーバ、例えばEntamoeba histolytica又はEntamoeba disparなどのエントアメーバ属)、鞭毛虫(例えば、Giardia及びLeishmaniaなどの鞭毛虫)、繊毛虫(例えば、Balantidiumなどの繊毛虫)、胞子虫(例えば、Plasmodium及びCryptosporidium)、及びそれらの任意の組み合わせの原虫群を標的とすることができる。
【0273】
本発明を用いて治療され得る寄生虫感染には、マラリア、アメーバ赤痢及びリーシュマニア症(例えば、皮膚リーシュマニア症、粘膜皮膚リーシュマニア症又は内臓リーシュマニア症)が含まれる。
【0274】
ヒト/動物の宿主又は被験体
被験体は、動物又はヒト被験体であることができる。本明細書における「動物」という用語は、一般にヒトを含むことができるが、「動物」という用語が「動物又はヒト被験体」などの語句に現れる場合、文脈から特に非ヒト動物を指すこと、又は「ヒト」という言及は単に、疑いを避けるために動物がヒトかもしれないというという選択肢を特定するものであることが理解されるであろう。
【0275】
特定の実施形態では、被験体は、ヒト被験体である。ヒト被験体は、乳児又は成人被験体であってもよい。
【0276】
特定の実施形態では、被験体は、脊椎動物被験体である。脊椎動物は、Agnatha(無顎魚)、Chondrichthyes(軟骨魚)、Osteichthyes(骨魚)、Amphibia(両生類)、Reptilia(は虫類)、Aves(鳥類)、Mammalia(哺乳類)のいずれかであってもよい。特定の実施形態では、被験体は、哺乳類又は鳥類の動物被験体である。
【0277】
特定の実施形態では、被験体は、動物の家畜種である。動物の家畜種は、次のいずれかに該当する:
- ヒトの生態的地位に適合した共生動物(例えば、イヌ、ネコ、モルモット)
- 食料のために求められ又は飼育されている餌動物又は家畜(例えば、牛、羊、豚、ヤギ);及び
- 主としてドラフト目的の動物(例えば、ウマ、ラクダ、ロバ)
【0278】
家畜の例としては、アルパカ、アダックス、バイソン、ラクダ、カナリア、カピバラ、ネコ、ウシ(バリウシを含む)、ニワトリ、クビワペッカリー、シカ(ダマジカ、ニホンジカ、クチジロシカ、及びオジロシカを含む)、イヌ、ロバ、ハト(dove)、カモ、エランド、エルク、エミュー、フェレット、ガヤル、ヤギ、ガチョウ、ホロホロチョウ、モルモット、ネジツノカモシカ、ウマ、ラマ、ミンク、ムース、ネズミ、ラバ、ジャコウウシ、ダチョウ、オウム、ブタ、ハト(pigeon)、ウズラ、ウサギ、ラット(アフリカアシネズミを含む)、トナカイ、シロオリックス、ヒツジ、シチメンチョウ、シチメンチョウ、水牛、ヤク、及びコブウシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0279】
動物/ヒト宿主又は被験体の器官、構造及び内部空間
本発明の組成物又は多成分系が投与される器官は限定されない。器官の例としては、皮膚、及び呼吸器系、泌尿生殖器系、心血管系、消化器系、内分泌系、排泄器系、リンパ系、免疫系、外皮系、筋肉系、神経系、生殖系、及び骨格系の器官が挙げられる。
【0280】
心血管系の器官の例としては、心臓、肺、血液及び血管が挙げられる。消化器系の例としては、唾液腺、食道、胃、肝臓、胆嚢、膵臓、腸、結腸、直腸及び肛門が挙げられる。内分泌系の器官の例は、視床下部、下垂体、松果体又は松果腺、甲状腺、副甲状腺及び副腎、すなわち副腎(adrenal glands)を含む。排泄器系の器官の例としては、腎臓、尿管、膀胱及び尿道が挙げられる。リンパ系の器官の例としては、リンパ液、リンパ節及び血管が挙げられる。免疫系の器官の例としては、扁桃腺、アデノイド、胸腺及び脾臓が挙げられる。外皮系の器官の例としては、哺乳類の皮膚、毛髪及び爪、並びに魚、は虫類、及び鳥類のうろこ、鳥類の羽が挙げられる。神経系の器官の例としては、脳、脊髄及び神経が挙げられる。生殖系の器官の例としては、卵巣、卵管、子宮、外陰部、膣、精巣、精管、精嚢、前立腺及び陰茎などの性器が挙げられる。骨格系の器官の例としては、骨、軟骨、靭帯及び腱が挙げられる。
【0281】
ヒト被験体の空洞は、限定されるものではないが、口、鼻、耳、咽喉、呼吸器、肺、胃腸管、頭蓋腔又は脊椎腔のような背側体腔、又は胸腔、腹腔又は骨盤腔のような腹側体腔を含む。
【0282】
表面のin vitro抗菌治療
本発明の成分及び組成物、並びに本発明によるNOx生成反応からの放出ガスは、in vitroで抗菌処理を適用するために使用されてもよい。「in vitro」とは、たとえそれが最終的に医療用途を意図しているとしても、治療される表面が生物ではないことを意味する。
【0283】
そのような有用性の例には、病原体の拡散を低減又は防止するために、外科用器具、皮下注射針、及び他の医療デバイスを使用前に滅菌するための方法、並びに病院又は診療所
又は他のどこかでの表面の洗浄又は処置が含まれる。
【0284】
他の例は、人工器官、及びステント(例えば、冠状動脈ステント)、外科用スクリュー、ロッド、プレート及びスプリント、整形外科用インプラント、心臓ペースメーカー、インスリン注入デバイス、カテーテル、オストミー器具、眼内レンズ、人工内耳、電気的疼痛軽減インプラント、埋め込み型避妊具、神経刺激装置、人工心臓弁、電極、静脈内点滴及び薬物送達デバイスなどの埋め込み型デバイスを、該デバイスを被験体の体内に配置する前に滅菌するための方法を含む。
【0285】
必要に応じて、本発明の成分又は組成物は、人工器官又は埋め込み型デバイスの表面上にコーティングされることができる。それによって、NOx生成反応において放出されたNOは、他の組織又は器官にかん流するか、又は人工器官又は埋め込み型デバイスの近傍において他の生理学的効果を発揮することができる。
【0286】
本発明の成分又は組成物を含むコーティングなどの機能性コーティングの組み込みを含む、人工器官又は埋め込み型デバイスの表面を生体適合性にするための技術は、当業者に周知である。例えば、Gultepe et al、Advanced Drug Delivery Reviews、2010年3月8日、62(3)、305-315頁;並びに米国特許第5702754号明細書及び米国特許第6270788号明細書を参照されたい。その中で言及される刊行物のすべての開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0287】
無生物表面のより一般的な抗菌処理のための組成物及び方法は、当技術分野で周知であり、本明細書での詳細な説明を必要としない。抗菌組成物は、例えば、ヘルスケア産業、食品サービス産業、肉加工産業、及び個人消費者による民間セクターにおいて使用される。抗菌性クレンジング組成物は、典型的には水及び/又はアルコール担体中に、1つ以上の活性抗菌剤又はその成分、界面活性剤、及び1つ以上の他の成分、例えば、染料、香料、pH調整剤、増粘剤、皮膚調整剤などを含有する。広域スペクトル消毒剤又は抗菌剤組成物は、表面上の一連の病原体の病原体量を減少させることを目的とする。典型的には、組成物は液体であり(又は使用前に固体プレミックスから液体となるように構成され)、液体は任意の所望の濃度に調節後、適切には水の添加によって、処理されるべき表面上に、しばしば布又は他の拭き取り装置の補助により、広げられるか又は噴霧され、次いで、乾燥させるために放置されてもよく、又は拭き取られてもよい。従来の組成物及び表面処理方法は、原則として本発明とともに使用されることで適用可能であり、活性抗菌剤は、本発明によるNOx生成組成物又はその成分であるか、又はそれを含む。
【0288】
本発明に関連して使用され得る公知の抗菌性組成物及び使用方法のさらなる詳解及び例については、例えば、米国特許第6110908号明細書;米国特許第5776430号明細書;米国特許第5635462号明細書;米国特許第6107261号明細書;米国特許第6034133号明細書;米国特許第6136771号明細書;米国特許第8034844号明細書;欧州特許出願公開第0505935号明細書;及び国際公開第98/01110号;国際公開第95/32705号;国際公開第95/09605号;及び国際公開第98/55096号;を参照されたい。これらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0289】
ヒト及び/又は動物の幸福を改善するための使用
上述の医療用途に加えて、本発明は、ヒト又は動物被験体における非治療的適用において使用されることができる。非治療的適用は、被験体が健康であるか、又はその適用が被験体の診断された疾患、障害、又は状態を治療することを標的としないという点で、治療的適用と区別される。
【0290】
非治療的適用には、被験体の幸福又は幸福感を改善すること、又は被験体の代謝効率又は免疫活性を高めることを目的とし、その結果、被験体が正常に機能し、又は将来の感染と闘うことがより良好にできるようにする処置が含まれ得る。非治療的適用はまた、被験体の認知機能を補助するか、又は信頼感及び制御感を生じさせる処置を包含する。
【0291】
このような非治療的適用における使用のために、本発明の組み合わせ及び組成物は、医薬製剤と同様に、又は非医薬的方法で製剤化されてもよい。医薬製剤に類似した製剤のさらなる詳細については、上記の「任意の追加成分」と題されたセクションを参照されたい。非医薬製剤は、適切には食品添加物、栄養補助食品製剤、食品、飲料及び飲料添加物を含むことができる。食品及び飲料に添加されるように適合された製剤は、適切には液体又は粉末の形態であることができる。栄養補助製剤は、適切には錠剤、カプセル又は経口摂取可能な液体の形態であることができる。
【0292】
上述の「治療又は手術における使用」と題されたセクションで述べたように、本発明の内科的及び/又は外科的使用は、より高い幸福又は自信の観点から、患者に二次的利益を提供することができる。
【0293】
植物用途
生きている植物又は死んでいる植物に対する一酸化窒素の有益な効果が知られている。本発明は、方法、装置、組み合わせ、キット、組成物、使用、及びそこから放出されるガスの、生きている植物又は死んでいる植物に有益な効果を提供するための適用を含む。
【0294】
植物における一酸化窒素及び一酸化窒素生成システムの公知の使用の例には、以下のものが含まれる:
切り花及び植物の萎れの一酸化窒素による予防又は遅延(Siegel-Itzkovich、BMJ、1999年;319(7205)、274頁;Mur et al、2013年;“Nitric oxide in plants: an assessment of the current state of knowledge”、AoB PLANTS doi:10.1093/aobpla/pls052 (https://doi.org/10.1093%2Faobpla%2Fpls052)を参照されたい);
植物と病原体の相互作用の一酸化窒素による調節、植物の過敏反応の促進、窒素固定根粒における生物との共生、側根及び不定根と根毛の発生、並びに気孔開口の制御(Mur et
al、2013年;上記参照);
植物における抗酸化剤及び活性酸素種応答における一酸化窒素の役割(Verma et al、2013年;“Nitric oxide (NO) counteracts cadmium-induced cytotoxic processes mediated by reactive oxygen species (ROS) in Brassica juncea: cross-talk between ROS,
NO and antioxidant responses”;BioMetalsを参照されたい);
オーキシン、サイトカイニン及び他の植物ホルモンのシグナル伝達経路における一酸化窒素の役割(Liu et al、Proceedings of National Academy of Sciences、2013年;110(4)、1548-1553頁を参照されたい)。
【0295】
上記で引用した刊行物の各々の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0296】
さらに、本発明の一酸化窒素生成システム及びそれから放出されるガスの抗菌効果は、「治療又は手術における使用」、「抗菌薬の局所使用」、「鼻、口、気道及び肺への使用」及び「抗菌薬使用の標的」と題されるセクションに特に記載されているが、これらに限定されず、植物の微生物感染の標的化に等しく適用可能であり、本発明はまた、このような使用にも及ぶ。
【0297】
植物における一酸化窒素及び一酸化窒素生成システムの、上記の公知の使用及び他のすべての使用は、本発明及び/又は一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれによって生成されるそれらの前駆体を使用する一酸化窒素生成反応とともに使
用される場合、本発明のさらなる態様を構成する。
【0298】
処理される植物は、特に作物又は家庭用植物、すなわちヒトによって栽培される植物種であってもよい。
【0299】
作物には、穀物、野菜、果物などの食用作物、キニーネなどの薬学的に活性な成分のための作物、綿又は亜麻などの繊維用作物、ゴム及び木材などの他の材料のための作物、並びにバラ及びチューリップなどの花のための作物が含まれるが、これらに限定されない。
【0300】
ヒトの食物消費のための作物のさらなる例としては、イネ、コムギ、サトウキビ及び他の糖類作物、トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn))、大豆油、ジャガイモ、パーム油、キャッサバ、食用豆(legume pulses)、ヒマワリ種子油、ナタネ油、マスタード油、ソルガム、キビ、落花生、豆、サツマイモ、バナナ、大豆、綿実油、ピーナッツ、落花生油、ヤムイモ、トマト、ブドウ、タマネギ、リンゴ、コーヒー、マンゴー、マンゴスチン、グアバ、チリ、コショウ、お茶、キュウリ、オレンジ、クルミ、アーモンド、ニンジン、カブ、ココナッツ、タンジェリン、レモン、ライム、イチゴ、及びヘーゼルナッツの作物を生産するための作物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0301】
実施例
以下の非限定的な実施例は、本発明のさらなる例示のために提供される。
【0302】
実施例1及び2で使用した材料、装置及び方法
溶液
0.1及び1Mクエン酸(Health Supplies Limited、Thornton Heath、UK)、0.1Mクエン酸ナトリウム(Fisher Scientific、Loughborough、UK)、1M亜硝酸ナトリウム(Sigma Aldrich、Dorset、UK)、0.5及び1Mソルビトール(Special Ingredients、Chesterfield、UK)、0.5及び1M D-マンニトール(Sigma Aldrich、Dorset、UK)、3M水酸化ナトリウム(Fisher Scientific、Loughborough、UK)、及び0.1及び1M L-アスコルビン酸(ICN、Biomedicals Inc、Oshio、US)は、適切な質量を脱イオン水に溶解することにより調製した。脱イオン水(18.2MΩ)は、Arium Mini lab
water system(Sartorius、Germany)から入手した。
【0303】
クエン酸/クエン酸塩緩衝液を2つの方法によって調製した:
1.Sigma Aldrich、2018年(https://www.sigmaaldrich.com/life-science/core-bioreagents/biological-buffers/learning-center/buffer-reference-center.html)に記載された容量を用いて、0.1Mクエン酸及び0.1Mクエン酸ナトリウムの原液を滴下する;
2.0.1M又は1M調製用の既知の質量のクエン酸を少量の脱イオン水に溶解し、次いで3M水酸化ナトリウム及び脱イオン水の原液を滴下して、所望の緩衝溶液pH(pH3~pH6.2)を達成する。
【0304】
アスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液を、方法1では、クエン酸及びクエン酸ナトリウムの代わりにアスコルビン酸及びアスコルビン酸ナトリウムを用いて同様に調製した。
【0305】
ポリオールの含有は、既知の質量の亜硝酸ナトリウムをポリオールの原液(例えば、ソルビトール又はマンニトール)で溶解することによって達成された。
【0306】
緩衝溶液及び原液の成分の添加順序は重要ではなく、任意の混合順序を使用することができる。
【0307】
すべての標準溶液を調製から48時間以内に使用した。較正緩衝液は、脱イオン水に溶解したフタル酸塩(pH4)及びリン酸塩(pH7)の錠剤(Fisher Scientific UK Ltd、Leicestershire、UK)を用いて調製された。
【0308】
選択イオンフローチューブ質量分析(SIFT-MS)のスタートアップ及び検証
Voice200選択イオンフローチューブ質量分析(SIFTMS)(Syft Technologies Ltd、New Zealand)を、本報告書に記載されるすべてのガス分析に使用した。この装置は、キャリアガスとしてヘリウム(BOC、Surrey、UK)を使用する。
【0309】
分析の前に、SIFT-MSは、簡単なスタートアップ手順で使用できるように準備された。装置を待機モードから解除され、毛細管現象が動作の許容範囲内にあることを確認するために、一連の圧力チェックを行った。その後、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、及びキシレンを含有する製造業者の較正ガス標準(Syft Technologies Ltd、New Zealand)を用いて、自動検証手順を行った。最後に、10ppmの二酸化窒素標準(Air Products PLC、Surrey、UK)を用いて、社内の性能チェックを行った。
【0310】
NO生成の手順
SIFT-MS装置、反応チャンバー及びガス経路を、図17に示すように設定した。
【0311】
反応チャンバー内の温度を、HT1温度スマートセンサー(SensorPush、New York、US)を用いて連続的にモニターした。反応チャンバー、シリコーンシール付きの670mLプラスチック(ビスフェノールAフリー(BPAフリー))クリップロックタブ(Tesco、Welwyn Garden City、UK)をポンプに取り付け、湿った空気をチャンバー内及びSIFT-MS入口キャピラリー上で連続的に循環させた。加湿は、Vernon、W.、及びWhitby、L.、1931年、The quantitative humidification of air in laboratory experiments、Trans. Faraday Soc. 27、248-255頁に記載されているのと同様の方法で、脱イオン水を含有する2つのDreschelボトルを通して空気をポンプ輸送することによって達成した。このシステムを、使用前に30分間均等化させた。NO、NO及びHONOのリアルタイム検知及び定量化のために、連続的なSIFT-MSスキャンを開始した。これらの化合物について安定したベースライン読み取り値(>2分間の一定濃度)が観察されたら、サンプルを反応チャンバーに入れ、3時間モニターした。
【0312】
SIFT-MSの検証後、120℃に加熱された毛細管入口延長部を、T接合部を介して反応チャンバーの出口に取り付け、SIFT-MSが反応チャンバーから流出するガスをリアルタイムでサンプリングすることを可能にした。
【0313】
サンプルは、RKW-Group(Frankenthal、Germany)製の約0.3cm×0.3cmのカーデッド不織布20グラム/平方メートル(20gsm)ポリプロピレンメッシュを秤量ボート(~3mg)中で秤量することによって調製した。これを、10μLの試験溶液又はコントロール溶液の液滴をメッシュの中心に添加した後に再秤量した(液滴がメッシュに浸漬されることを確実にした)。最後に、秤量ボート内の装填されたメッシュを反応チャンバー内に配置し、緩衝溶液の最終的な10μLの液滴をメッシュの中心にピペットで移した。反応チャンバーを迅速に密封し、SIFT-MS界面で窒素種の生成を瞬時に観察した。
【0314】
発生ガスの解析
生成されたガスを、SIFT-MSの選択されたイオンモードを使用して分析し、スキャンをそれぞれ1000秒間続く連続バッチで行った。次の生成物の質量を繰り返しスキャンした:亜硝酸については30m/z、亜硝酸については48m/z、二酸化窒素については
46m/z、及び一酸化窒素については30m/z。これらの測定は、ヒドロニウム(H)、ニトロシウム(NO)、及びジオキシゲニル(O )の3種のカチオン前駆体を用いて行った。空気は660ml/分でチャンバーを通じて流れ、SIFT-MS入口は2.7ml/分の流速でこの空気流をサンプリングした。
【0315】
すべての実施例におけるpH測定
ガラス電極、LE438プローブを有する5つの簡易pHメーター(Mettler Toledo、Switzerland)を、すべてのpH測定に使用した。この電極の精度は、第2のpHメーター、ハンドヘルド205プローブ(Testo、Alton、US)を用いて保証した。新鮮な較正緩衝液を、pHメーターの毎日の較正のために使用した。
【0316】
実施例1
1Mポリオールを含む及び含まない、斜方晶系1M亜硝酸ナトリウムを含有するメッシュと接触させる、1M/c.pH3のクエン酸を用いた一酸化窒素の生成
SIFT-MS装置、反応チャンバー、及びガス経路は、上述のように、図17に示すように設定した。
【0317】
1Mマンニトール及び1Mソルビトールをそれぞれ含有する1M亜硝酸ナトリウムの2つの試験溶液を、上記のようにメッシュに吸収させて、2つの試験メッシュを作製した。
【0318】
ポリオールを含まない1M亜硝酸ナトリウムのコントロール溶液を、上記のようにメッシュに吸収させてコントロールメッシュを作製した。
【0319】
上記の2つの方法1及び2のいずれかによって調製され、約3のpHを有する1Mクエン酸/クエン酸塩緩衝液の緩衝溶液を、各試験における試験メッシュ及びコントロールメッシュにそれぞれ添加して、上記のようにガス生成を開始した。
【0320】
その結果を表1に示す。
【0321】
データは、1M/c. pH3のクエン酸と接触させた1M亜硝酸ナトリウム吸収メッシュは、メッシュに1Mマンニトール又は1Mソルビトールが含まれている場合(マンニトールはソルビトールよりも大きな効果を有する)、ポリオールが存在しない場合よりも著しく大量の一酸化窒素を生成したことを示す。
【0322】
実施例2
一酸化窒素の生成に及ぼす種々のカルボン酸、酸濃度、pH及びポリオールの効果に関する研究
有機酸、pH及びポリオールを以下のように変化させて、試料を上記のように調製した:
【0323】

【表1】
【0324】
SIFT-MS装置、反応チャンバー、及びガス経路は、上述のように、図17に示すように設定した。
【0325】
上記の試験溶液を上記のようにメッシュに吸収させて、試験メッシュを作製した。
【0326】
使用する場合、ポリオールを含まない1M亜硝酸ナトリウムのコントロール溶液を上記のようにメッシュに吸収させてコントロールメッシュを作製した。
【0327】
上記の2つの方法1及び2のいずれかによって調製され、上記のpHを有する上記の緩衝溶液又は各緩衝溶液を、各試験で添加し、使用される場合、各試験においてコントロールメッシュを添加して、上記のガスの生成を開始した。
【0328】
その結果を図2図13に示す。図中の「通常(normal)」とは、ポリオールが存在しないことを示す。
【0329】
図2は、ポリオールの非存在下でクエン酸/クエン酸塩緩衝液又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液(pH約3)によって生成されるNO放出速度を比較する。グラフは、クエン酸/クエン酸緩衝液がより高い初期バーストを生成し、放出がアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液よりも高いレベルでより長く持続することを明確に示している。クエン酸/クエン酸塩緩衝液は約55000ppbにピークを示すが、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液は約28000ppbにピークを示す。
【0330】
図3は、ポリオールを含む及び含まないクエン酸/クエン酸塩緩衝液及び亜硝酸塩系に関する。ポリオール濃度は1Mである。ポリオールの存在下では、ポリオールが存在しない場合と比較して、放出速度、初期バースト、及びその結果としての経時的放出が変化する。キシリトール及びマンニトールが最も高いピークを生成し、次にソルビトール、ポリオールなし、アラビトールが続く。500~1000秒の領域では、キシリトール及びアラビトールが最も高い出力を有し、次にマンニトール、ソルビトール、ポリオールなしが続く。バーストのピーク;マンニトール=キシリトール(約64000ppb)>ソルビトール(約53000ppb)>ポリオールなし(約50000ppb)>アラビトール(約40000ppb)。
【0331】
図4は、ポリオールを含む及び含まない場合の、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液及び亜硝酸塩系に関する。ポリオール濃度は1Mである。バーストのピーク;マンニトール(約40000ppb)>アラビトール(約35000ppb)>キシリトール=ポリオールなし(約30000ppb)>ソルビトール(約23000ppb)、すなわち図3のクエン酸/クエン酸緩衝系とは異なる順列となっている。
【0332】
図5は、ポリオールを含む及び含まない場合の、クエン酸/クエン酸塩緩衝液及び亜硝酸塩系に関する(マンニトールの線とほぼ同じバーストのピークを有する「ポリオールなし」の線は、明確にするために省略されている)。ポリオール濃度は0.5Mである。バーストのピーク;アラビトール(約76000ppb)>ポリオールなし=マンニトール(約48000ppb)>キシリトール=ソルビトール(約40000ppb)。これは
、類似の1Mポリオール・クエン酸/クエン酸塩緩衝系(図3)と比較して異なる順列であり、ポリオール効果がポリオール濃度依存性であることを示していることが分かるであろう。
【0333】
図6は、ポリオールを含む及び含まない場合の、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液及び亜硝酸塩系に関する(ソルビトールの線とほぼ同じバーストのピークを有する「ポリオールなし」の線は、明確にするために省略されている)。ポリオール濃度は0.5Mである。バーストのピーク;キシリトール(約50000ppb)>マンニトール(約38000ppb)>ソルビトール=ポリオールなし(約30000ppb)>アラビトール(約23000ppb)。類似のクエン酸/クエン酸塩緩衝液(0.5Mポリオール)及びアスコルビン酸/アスコルビン酸塩(1Mポリオール)系と比較して、再び異なる順列が観察される(それぞれ図5及び図4)。したがって、ポリオールの効果は、ポリオール化学/立体化学及びポリオールモル濃度依存性であることが実証される。
【0334】
図7及び図8は、クエン酸/クエン酸塩緩衝液又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液及びポリオール(0.5M)の存在によるNO放出速度を比較する。これらのグラフは、図2図6で観察された違いのいくつかを強調している。図7のクエン酸/クエン酸塩緩衝液は約76000ppbでピークに達するが、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液は約22000ppbでピークに達する。図8のクエン酸/クエン酸塩緩衝液は約48000ppbでピークに達するが、アスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液は約38000ppbでピークに達する。
【0335】
図9は、1Mポリオール濃度についての累積出力を比較する。アスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液の場合、例えば3000秒での差は小さく、マンニトール>ソルビトール=アラビトール>キシリトールの順である。3000秒でのクエン酸/クエン酸塩緩衝液では、キシリトール>アラビトール>マンニトール>ソルビトール>ポリオールなしの順である。データは、一酸化窒素の出力が例えば、ポリオールなし(3000秒後に亜硝酸塩1mg当たり約10000nmolの累積一酸化窒素の発生を得る曲線E、これは、さらに上昇している)とキシリトール(同じ時間後に亜硝酸塩1mg当たり約20000nmolの累積一酸化窒素の発生を得る曲線A、これもまた上昇している)との間のように、約100%まで、又はそれ以上増加させることができることを示している。
【0336】
図10は、0.5Mポリオール濃度についての累積出力を比較する。3000秒でのクエン酸/クエン酸塩緩衝液については、アラビトール>マンニトール=キシリトール>ソルビトール>ポリオールなしの順列である(ソルビトールの線より下にあるクエン酸/クエン酸塩緩衝液についての「ポリオールなし」の線は、明確にするために省略されている)。3000秒でのアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液では、キシリトール>マンニトール>ソルビトール>アラビトールの順列である。再び、この順列は、1Mポリオールと比較して異なっている(図9)。
【0337】
図11図13は、1Mクエン酸/クエン酸塩緩衝液及び亜硝酸ナトリウム(1M)、マンニトール(0.5M)及び異なるpHでの累積プロットを比較する。pHが上昇するにつれて、差はより小さくなり、pH6.2では、差は消失した。従って、これらの実験から、ポリオールの効果もpH依存性であることが分かる。
【0338】
図14は、1M亜硝酸ナトリウム溶液中に存在するグリセロール(1M及び2M)を含む及び含まない場合の、クエン酸/クエン酸塩緩衝液(1M、pH約2)についての累積NO(nmol/cmメッシュ面積)出力を示す。最初の2000秒にわたって、1M及び2MグリセロールのNO出力は、ポリオールなしの場合よりもわずかに低い。より長時間では、グリセロール含有製剤は、より大きな出力を有し、2Mグリセロールはより大き
な出力を有する。
【0339】
図15は、亜硝酸塩溶液中のポリオールを含む及び含まない場合の、クエン酸/クエン酸塩緩衝液(1M、pH約2)及び1M亜硝酸ナトリウム溶液についての累積NO(nmol/cmメッシュ面積)出力を示す。プロットは、マンニトール/亜硝酸塩溶液中にグリセロールを含有させると、グリセロールが存在しない場合と比較して出力が減少することを示している。しかしながら、驚くべきことに、マンニトールの場合とは異なり、ソルビトール/亜硝酸塩溶液中にグリセロールを含有させると、グリセロールが存在しない場合の出力と比較してNO出力が増大する。
【0340】
グリセロールを使用した場合、最初に1Mグリセロール溶液を調製し、1Mソルビトール又は1Mマンニトール溶液を調製するために使用し、次いで1M亜硝酸塩溶液を調製するために使用した。
【0341】
図16は、亜硝酸ナトリウム(1M)溶液中に存在するマンニトール(0.5M)を含む及び含まない場合の、クエン酸/クエン酸塩緩衝液(1M、pH5.8)についての累積NO出力(mol/mg亜硝酸塩)を示す。プロットは、ポリオールの含有が約2000秒の反応時間後に、より大きなNO出力を生じることを示している。
【0342】
図16は、約5を超える、特に約5.5を超える生理学的に重要なpHレベルにおいて、マンニトールはマンニトールを含まない同様の系と比較して一酸化窒素の生成を増強し、10000秒(167分)後に亜硝酸塩1mg当たり1400nmolのNOの累積レベルを提供することを示している。
【0343】
実施例3
ポリオールを含む及び含まない種々の有機酸及び亜硝酸塩溶液を用いたM.abscessus培地に対する活性
材料
4.7gのミドルブルック7H9ブロスベース(Sigma-Aldrich)を900mlの蒸留水でもどし、121℃で15分間オートクレーブした。ミドルブルックADC成長サプリメント(Sigma-Aldrich)をオートクレーブ処理した7H9溶液に添加した(450ml当たり50ml、合計100mlを添加)。
【0344】
1M亜硝酸ナトリウム(Emsure):清浄なスクリュートップガラス瓶中で、6.9gの亜硝酸ナトリウム粉末を100mlの蒸留水に溶解する。混合物を121℃で15分間オートクレーブする。
【0345】
1Mクエン酸(Sigma-Aldrich):清浄なスクリュートップガラス瓶中で、19.2gのクエン酸粉末を100mlの蒸留水に溶解する。混合物を121℃で15分間オートクレーブする。
【0346】
1Mアスコルビン酸(Sigma-Aldrich):17.6gのアスコルビン酸粉末を滅菌ガラス瓶に添加する。滅菌した蒸留水100mlに完全に溶解する。それは、その短い半減期のために、厳密な滅菌技術を用いて毎日調製された。それは、その固有の不安定性のためにオートクレーブ処理されなかったが、使用前に0.2μフィルターを通して濾過された。
【0347】
1Mクエン酸ナトリウム三塩基性二水和物(Sigma-Aldrich):清浄なスクリュートップガラス瓶中で、29.4gのクエン酸ナトリウム粉末を100mlの蒸留水に溶解する。混合物を121℃で15分間オートクレーブする。
【0348】
1M L-アスコルビン酸ナトリウム塩(Acros Organics):清浄なスクリュートップガラス瓶中で、19.8gのアスコルビン酸ナトリウム粉末を100mlの蒸留水に溶解する。混合物を121℃で15分間オートクレーブする。
【0349】
ポリオールを用いた実験のために、D-マンニトール(Sigma-Aldrich)を使用した。ポリオールを上記亜硝酸ナトリウム原液に添加して、以下の原液を調製した:
原液A-1M亜硝酸ナトリウム及び0.5Mマンニトール
原液B-1.5M亜硝酸ナトリウム及び0.5Mマンニトール
【0350】
1.5Mクエン酸の原液も調製した。
【0351】
各成分のモル濃度は、各実験溶液の正確な最終モル濃度を確実にするために希釈因子について調整した。
【0352】
Mycobacterium abscessus (MAB)
実験室リファレンス株であるMycobacterium abscessus ATCC 19977luxを、この実施例におけるすべての実験条件に使用した。
【0353】
方法
50mlのファルコン管に、チューブT(試験懸濁液)、チューブA(酸コントロール)、チューブC(コントロール)のラベルを付けた。
【0354】
8mlの7H9+ADCサプリメントを各チューブに添加した。次いで、100μlの(予め約3~4のマクファーランド標準まで成長させた)MAB懸濁液を添加した。MAB懸濁液のベースライン相対発光量(RLU)の読み取りを行った。内容物をボルテックスにより混合した。
【0355】
ポリオール(マンニトール)が存在しない場合のチューブ内容物
チューブT:1mlの亜硝酸ナトリウム(1M)溶液をチューブに加え、直ちに1mlのクエン酸溶液(1M)又はアスコルビン酸溶液(1M)を加えて、10ml中0.1Mの最終濃度を得た。内容物を穏やかに反転させて混合し、37℃で24時間インキュベートした。
チューブA:1mlのクエン酸溶液(1M)又はアスコルビン酸溶液(1M)をチューブに加え、滅菌蒸留水1mlを加えて最終容量を10mlとし、酸に対する0.1M濃度を試験した。内容物を穏やかに反転させて混合し、37℃で24時間インキュベートした。チューブC:2mlの滅菌蒸留水をチューブに加え、総容量を10mlとした。これは、最適条件下での増殖を評価するためのコントロールである。内容物を穏やかに反転させて混合し、37℃で24時間インキュベートした。
【0356】
ポリオール(マンニトール)が存在する場合のチューブTの内容物
マンニトールが存在する場合、管Tの内容物は以下の通りであった:
1.チューブT:1mlの亜硝酸ナトリウム(1M)+マンニトール(0.5M)及び1mlのクエン酸(1M)
2.チューブT:1mlの亜硝酸ナトリウム(1.5M)+マンニトール(0.5M)及び1mlのクエン酸(1M)
3.チューブT:1mlの亜硝酸ナトリウム(1M)+マンニトール(0.5M)及び1mlのクエン酸(1.5M)
【0357】
RLUを30分、60分及び24時間のインキュベーションで測定して、T、A及びC
溶液の活性を評価した。
【0358】
24時間のインキュベーション後、チューブC、チューブA及びチューブTをコロンビア血液寒天(VWR Chemicals)上にプレーティングした。プレートを37℃で72時間インキュベートした。コロニー形成単位(CFU)を、インキュベーションの3、5及び7日目に読み取った。全ての作業は、CL2実験室施設内のCL2生物学的安全キャビネットの中で行われた。
【0359】
その結果を図18図21に示す。
【0360】
図18は、0.1Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液(チューブT)が、pH値6.0、6.5、7.0及び7.4の0.1Mクエン酸のみの溶液(チューブA)と比較して、pH5及び5.5の7日後にM.abscessusの培養を撲滅し、M.abscessusの培養を減少させるのに有効であることを示している。また、図18は、0.1Mアスコルビン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液(チューブT)が、pH値6.5、7.0及び7.4でアスコルビン酸のみの溶液(チューブA)と比較して、pH値5.0、5.5及び6.0で7日後にM.abscessusの培養を撲滅し、M.abscessusの培養を減少させるのに有効であることを示している。
【0361】
図19a)は、0.1Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、3日間のインキュベーション後にM.abscessusの培養物のCFUを減少させるのに有効であり、0.05Mマンニトールを含む0.1Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、3日間のインキュベーション後にM.abscessusの培養をほぼ完全に撲滅するのに有効であることを示している。図19b)は、マンニトールを含まない0.1Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、5日間のインキュベーション後にM.abscessusの減少したCFUを維持するのに有効であることを示している。また、この図は、0.05Mマンニトールを含む0.1Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、5日間のインキュベーション後のM.abscessusのCFUを減少させるのに有効であることを示す。
【0362】
図20a)は、0.15Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、3日間のインキュベーション後にM.abscessusの培養物のCFUを減少させるのに有効であり、0.05Mマンニトールを含む0.15Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、3日間のインキュベーション後にM.abscessusの培養物を撲滅するのに有効であることを示している。図20b)は、マンニトールを含まない0.15Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、5日間のインキュベーション後にM.abscessusの減少したCFUを維持するのに有効であることを示している。また、この図は、0.05Mマンニトールを含む0.15Mクエン酸及び0.1M亜硝酸塩の溶液が、5日間のインキュベーション後にM.abscessusの培養物を撲滅するのに有効であることを示している。
【0363】
図21は、0.1Mクエン酸及び0.15M亜硝酸塩の溶液が、3日間のインキュベーション後にM.abscessusの培養物のCFUを減少させ、5日間のインキュベーション後にM.abscessusの培養物のCFUの減少を維持するのに有効であることを示している。また、この図は、0.05Mマンニトールを含む0.1Mクエン酸及び0.15M亜硝酸塩の溶液が、インキュベーションの3日及び5日後にM.abscessusの培養物を撲滅するのに有効であることを示している。
【0364】
実施例4
一連の臨床分離株培養物におけるMycobacterium abscessus (Mabs)及びMycobacterium tuberculosis(Mtb)に対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の最小発育阻止濃度(MIC)
健常ボランティア
末梢血試料は、書面によるインフォームドコンセント(倫理承認参照REC No.12/WA/148)を提供した健常ボランティアから採取した。
【0365】
マイコバクテリア株
Mycobacterium abscessus (ATCC 19977)及びMycobacterium tuberculosis(H37RV)株の両方は、相対発光量(RLU)の測定を可能にする細菌ルシフェラーゼ(lux)遺伝子カセット(luxCDABE)、並びに細菌生存の従来のコロニー形成単位(CFU)測定を含んだ。
【0366】
【表2】
【0367】
処置条件
処置1:クエン酸0.15M、亜硝酸ナトリウム0.1M及びマンニトール0.05M
処置2:クエン酸0.1M、亜硝酸ナトリウム0.15M及びマンニトール0.05M
【0368】
微量液体希釈法最小発育阻止濃度(MIC)
M.abscessus及びM.tuberculosisに対する各処置のMICは、抗菌薬感受性試験のための臨床検査標準協会が作成したガイドライン(M07-A9)に従って行った。各処置の倍数希釈をプレート全体で行い、プレートを37℃でインキュベートし、Mabについては3日目及び7日目、Mtbについては14日目及び21日目に読み取った。試験は、二重に行った。
【0369】
全ての作業は、CL2実験室施設内のCL2生物学的安全キャビネットで行った。
【0370】
M.abscessusに対する1.5Mクエン酸、1M亜硝酸ナトリウム及び0.5Mマンニトール溶液の最小発育阻止濃度は、4.7mMであることがわかった。さらに、M.tuberculosisに対する1.5Mクエン酸、1M亜硝酸ナトリウム及び0.5Mマンニトール溶液の最小発育阻止濃度は、2.3mMであることがわかった。
【0371】
M.abscessusに対する1Mクエン酸、1.5M亜硝酸ナトリウム及び0.5Mマンニトール溶液の最小発育阻止濃度は、3.1mMであることがわかった。さらに、M.tuberculosisに対する1Mクエン酸、1.5M亜硝酸ナトリウム及び0.5Mマンニトール溶液の最小発育阻止濃度は、1.6mMであることがわかった。
【0372】
最小発育阻止濃度(MIC)は、英国ケンブリッジ大学のフロート研究所(https://www.flotolab.com/)のM.abscessus臨床分離株ライブラリーから入手した分離株No.570、571、573、575、578、579、580、581、582、583、584、585、589、591、592、593、594、595、596、597、598、599、600、601、602、603、604、605、606、607、608、616、617、619、812、825、829、839、845、848、853、857、858、873、894、898、909、919、928、932、942、944、955、956、959、963、964、965、968、975、980、982、985、993、995、1000、1001、1007、1011、1017、1023、1024、1026、1027、1042、1043、1045、1047、1049、1054、1063、1066、1067、1070、1072、1073、1074、1075、1076、1077、1078、1079、1082、1086、1094、1096、1101、1103、1104及び1106を用いた微量液体希釈によっても実施した。各個々の分離株を二重に評価した。
【0373】
臨床分離株の試験結果を図22a)、b)に示す。これらのグラフは、分離株のインキュベーションの3、4及び5日後に得られた読み取り値を用いて、M.abscessusに対する一酸化窒素のMICを二重に示したものである。プレートをインキュベーションの7日目にも読み取ったが、5日目と比較して差は見られなかった。実験室株ATCC 19977 luxを両方の実験においてコントロールとして使用し、臨床分離株との比較結果を示している。
【0374】
図22は、クエン酸-亜硝酸塩-マンニトール溶液が広範囲の臨床分離株にわたって効果を有することを示している。臨床分離株の大部分についての最小発育阻止濃度は、0.1Mクエン酸、0.15M亜硝酸塩及び0.05Mマンニトール溶液について0.02M以内であり(図22a)、臨床分離株の大部分についての最小発育阻止濃度は、0.15Mクエン酸、0.1M亜硝酸塩及び0.05Mマンニトール溶液について0.04M以内であった(図22b)。
【0375】
両方の図において、特定のサンプルのMICは、異なる日で異なった。これらは、分離サンプルの識別コードの上に複数のドットが表示されているサンプルである。一般的に言えば、この状況では、より低いMICよりもインキュベーションの遅い日により高いMI
Cが観察された。全体として、低クエン酸(0.1M)と高亜硝酸ナトリウム(0.15M)との組み合わせ(図22(a))は、高クエン酸(0.15M)と低亜硝酸ナトリウム(0.1M)との組み合わせ(図22(b))よりも効果的である。
【0376】
カルボン酸-亜硝酸-ポリオール溶液によるin vitroでのM.abscessusの殺菌を示す追加データを図29に示す。この図では、亜硝酸ナトリウム、水酸化ナトリウム溶液を用いてpH5.8に緩衝化したクエン酸、及びマンニトールの水性製剤のM.abscessus殺菌有効性を、類似の条件下で24時間にわたるアミカシン及び陰性コントロールと比較して示している。
【0377】
実施例5
ポリオールを含む及び含まないカルボン酸-亜硝酸塩溶液のPseudomonas aeruginosaに対する抗菌活性
装置及び培地
UKAS校正済みピペット(100~1000μL範囲)-Proline(登録商標) Plus
UKAS校正済みマルチチャネルピペット(P300及びP20)-Gilson(登録商標)、英国
ユニバーサルチューブ-SLS社、英国
校正済み天びん-HR-100A
微生物インキュベーター-HerathermTM、ThermoFisher Scientific社、英国
トリプトンソイ寒天(TSA)-Southern Group Laboratories社、英国
トリプトンソイブイヨン(TSB)-Acumedia(登録商標)、SLS社、英国
麦芽寒天-Acumedia(登録商標)、Acumedia(登録商標)、SLS社、英国
ブレインハートインフュージョンブイヨン(BHIB)-Acumedia(登録商標)、SLS社、英国
サブローデキストロースブイヨン(SDB)-Acumedia(登録商標)、SLS社、英国
Dey-Engley中和剤(DE-N)-Acumedia(登録商標)、SLS社、英国
クエン酸-Sigma社、英国
亜硝酸ナトリウム-Sigma社、英国
マンニトール-Sigma社、英国
ソルビトール-Sigma社、英国
【0378】
微生物試験
嚢胞性線維症患者から分離されたPseudomonas aeruginosa NCTC 13618
【0379】
【表3】
濃度1-1Mクエン酸+1M亜硝酸ナトリウム(0.5Mポリオールあり又はなし)
濃度2-0.5Mクエン酸+1M亜硝酸ナトリウム(0.5Mポリオールあり又はなし)濃度3-0.5Mクエン酸+0.5M亜硝酸ナトリウム(0.5Mポリオールあり又はなし)
【0380】
Dey-Engley中和剤検証
Pseudomonas aeruginosaの24時間培養物をトリプトンソイ寒天(TSA)から採取し、1×10±5×10CFUmL-1懸濁液を調製するために使用した。これをブレインハートインフュージョンブイヨン(BHIB)中でさらに希釈して、1×10±5×10CFUmL-1の作業用懸濁液を調製した。
【0381】
開始接種物を連続希釈及び広げたプレーティングによって確認した。コントロール(9mLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び1mLの接種物)、毒性(9mLのDey-Engley中和剤(DE-N)及び1mLの接種物)、並びに中和剤効力(8mLの中和剤、1mLの試験薬剤及び1mLの接種物)試料を使用して、中和剤の検証を行った。5分間の処理の後、200μLの懸濁液を各チューブから取り出し、連続希釈し、100μLをTSA上にプレーティングした。寒天プレートを37±2℃で18~24時間インキュベートした。
【0382】
プランクトン生物に対する抗菌効果
P.aeruginosaの24時間培養物をTSAから採取し、1×10±5×10CFUmL-1懸濁液を調製するために使用した。これをさらにBHIBで希釈し、1×10±5×10CFUmL-1の作業用懸濁液を調製した。ユニバーサルチューブに8mLの細菌溶液を充填した。
【0383】
クエン酸溶液1mL及び亜硝酸ナトリウム溶液1mLを各試験剤に添加して、上記のように必要な濃度を得た。溶液を37±2℃で24時間インキュベートした。インキュベーション期間の後、各チューブから1mLを取り出し、9mLの中和剤を含むチューブに移した。連続希釈及びプレート計数を使用して、生存可能な生物を定量した。
【0384】
その結果を図23に示す。
【0385】
データは、以下のP.aeruginosaに対する抗菌効果を示している:
- ポリオール(0.5M)を含む又は含まない、亜硝酸塩(1M)と混合したクエン酸(1M)(「濃度1」)
- ポリオール(0.5M)を含む又は含まない、亜硝酸塩(1M)と混合したクエン酸(0.5M)(「濃度2」)
- ポリオール(0.5M)を含む又は含まない、亜硝酸塩(0.5M)と混合したクエン酸(1M)(「濃度3」)
【0386】
クエン酸溶液は、pH5.2(製剤1、3及び5)及び6.0(製剤2、4及び6)である。製剤1及び2はポリオールを含まない;製剤3及び4はマンニトールを含む;製剤5及び6はソルビトールを含む。
【0387】
pH5.2では、全ての製剤について良好な効果が示されている。pH6では、マンニトールを含む製剤がわずかに有効である。
【0388】
実施例6
THP-1細胞におけるM.tuberculosis HN 878に対する亜硝酸塩、有機酸及びポリオールを含む製剤の効力を評価した。
【0389】
製剤
製剤は、以下の表に示すように調製した。調製方法が参照サンプルにおいて接尾辞FCによって示される「濃縮液」として記載される場合、これは、最初に製剤が亜硝酸ナトリウム(0.75M)、ポリオール(0.25M)及び酸(0.5M)の3つの成分すべてを含有する濃縮プレミックスとして作製され、次いで、蒸留水で希釈されて、表に記載されるように、それぞれの所望の濃度に到達したことを意味する。調製方法が参照サンプルにおいて接尾辞FDによって示される「希釈液」として記載される場合、これは、最初に製剤が所望の濃度で3つの成分すべてを含有するプレミックス、すなわち亜硝酸ナトリウム(0.15M)、ポリオール(0.05M)及び酸(0.1M)として調製され、次いで、蒸留水で希釈されて、表に記載されるように、それぞれの所望の濃度に到達したことを意味する。
【0390】
各製剤内で、一連の濃度の亜硝酸ナトリウム、すなわちM.tuberculosis HN878に対するin vitro細菌阻害アッセイのための16、8、4、2、1、0.5、0.25及び0.125μg/mlを連続希釈によって調製した。
【0391】
【表4】
【0392】
MICマクロファージ試験は、THP-1マクロファージ(1)化合物スクリーニングアッセイを用いて行った。
【0393】
マクロファージの調製と培養:THP-1細胞を2週間増殖させた。その後、THP-
1細胞を、5×10細胞/mLの濃度でマクロファージ用の完全DMEM培地に懸濁した。24ウェル組織培養プレートに、細胞を1ウェルあたり2ml(1ウェルあたり1×10)で播種した。細胞の1つの24ウェルプレートは、7つの薬物濃度+未処理コントロールの範囲を3連で試験することを可能にする。薬剤アッセイプレートに加えて、感染日の細菌取り込みを決定するために、1つの追加のプレート(又は少なくとも3つの追加のウェル)を播種した。加湿チャンバー中、5%CO、37oCで細胞をインキュベートした。3日間のアッセイの間、DMEM抗生物質/抗真菌剤を含まない完全培地は変更されなかった。
【0394】
マクロファージ用完全DMEM培地:
ダルベッコ改変イーグル培地(Cellgro 15-017-cv)には、以下が追加されている:
熱不活化ウシ胎児血清(Atlas Biologicals社、Fort Collins、CO、F-0500-A)(10%)
L-929調整培地(10%)
L-グルタミン(Sigma社 G-7513)(2mM)
HEPES緩衝液(Sigma社 H-0887)(10mM)
抗生物質/抗真菌剤(Sigma社 A-9909)(1X)
MEM非必須アミノ酸(Sigma社 M-7145)(1X)
2-メルカプトエタノール(Sigma社 M-6250)(50nM)
【0395】
L-929調整培地:
ATCCのL-929(CCL-1)細胞を、75cmフラスコ中の55mLのDMEM+10%ウシ胎児血清中に4.7×10細胞で播種した。細胞をTHP-1細胞で3日間増殖させた。3日目に、上清を回収し、0.45μmフィルターでろ過し、分注して、-20℃で凍結した。無細胞ろ液を、THP-1感染用のDMEM培地で使用した。
【0396】
THP-1細胞の感染:
0日目に、培地を細胞から除去し、そしてM.tuberculosis HN878を1マクロファージ対10細菌比のMOIで含有する0.2mlの抗生物質/抗真菌剤を含まないDMEMと交換した。組織培養プレートを、インキュベーターに戻すために、閉じたZiplocバッギー内に置いた。インキュベーターに入れたら、バギーを開封した。細胞を細菌とともに2時間インキュベートした。感染後、細胞の外側に付着した細菌を除去し、各ウェルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、種々の薬物濃度の抗生物質/抗真菌剤を含まない完全DMEM培地2mLを添加した。薬物濃度を調製するために、前の懸濁液10mlを次のチューブの完全培地+血清10mlに添加することにより、連続2倍希釈を行った。組織培養プレートを37℃+5%COでインキュベーターに戻した(薬物は3日間ウェルに残った)。各薬物濃度を3連のウェルで試験した。
【0397】
細胞溶解物のプレーティング及びTHP-1細胞についての細胞生存率の評価を、感染の2時間後、1日後、2日後及び5日後に行った。組織培養培地を全てのウェルから除去し、細胞を1mlのPBSで2回洗浄した。次に、1mlの滅菌二重蒸留水+0.05%Tween-80を各ウェルに添加し、細胞を室温で5~10分間放置した。細胞溶解物を、24ウェル組織培養プレート中の無菌生理食塩水で1:10に連続希釈した。希釈した細胞溶解物を、1/1000希釈工程を経てから、7H11/OADC寒天上にプレーティングした。(細胞の各24ウェルTCプレートには、連続希釈を行うための4つの24ウェルTCプレート、及び24の寒天「クワッド」プレートを必要とする)。プレートを32℃で30日間インキュベートし、コロニーを数えてCFU/mlを決定した。
【0398】
結果
In vitroでのTHP-1 HN878の光学密度結果
細菌を阻害する最も希釈された組成物(すなわち、16、8、4、2、1、0.5、0
.25、0.125μg/mlとして示されるスケールでの特定の製剤の最大希釈レベル)として報告される最小発育阻止濃度(MIC)
【表5】
【0399】
その結果を図24図27に示す。
【0400】
図24:M.tuberculosis HN878に対する30RESP001FC及びFD(濃縮物及び希釈物)の有効性を、THP-1細胞において評価した。30RESP001FC(濃縮物)(A)、及び30RESP001FD(希釈物)(B)の製剤の効能を、感染後2時間(0日目)、1日目、2日目、及び5日目、並びに16μg/ml(△)、8μg/ml(▽)、4μg/ml(◇)、2μ
g/ml(○)、1μg/ml(□)、0.5μg/ml(●)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処置後、THP-1マクロファージ中のM.tuberculosis HN878(□)の細胞内殺菌について評価した。図24の各プロットにおいて、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合の△及び▽プロット線はそれぞれ、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合の▲及び▼プロット線と区別することができ、これは、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより効果的であるためである。言い換えれば、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合のプロット線は、特に5日目において、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合よりも有意に低いCFU値を示している。同様に、1μg/mlでの処理はより有効であるので、1μg/mlで処理した場合のプロット線□は、処理なしの場合のプロット線□と容易に区別することができる。処置なしの場合のプロット線□のCFU値は、1日後には上昇し、1×10を超えたままである。
【0401】
上記のMIC表及び図24において「16μg/ml」と記載されている30RESP001FC及びFD組成物は、0.15M亜硝酸ナトリウム、0.05Mマンニトール及び0.1Mクエン酸/クエン酸塩(希釈後の最終モル濃度)を含み、8、4、2、1、0.5、0.25及び0.125μg/mlの組成物は、それぞれ16~0.125μg/mlのオーダーの前の組成物の50%希釈(すなわち、濃度を半分にする)である。
【0402】
THP-1マクロファージを1:10のMOIでM.tuberculosisに感染させ、感染から2時間後(0日目)、1、2及び5日後に細菌コロニーカウント法(CFU)を用いて細胞内細菌数を測定した。示されている値は、1回の独立した実験から得られた平均値±標準偏差である。特に、未処理のコントロールと比較して、M.tuberculosis HN878に対する30RESP001FC及びFD(濃縮物及び希釈物)16μg/ml及び8μg/mlでの処理において、有効性が増大した(、p<0.05)。
【0403】
図25:M.tuberculosis HN878に対する30RESP002FC及びFD(濃縮物及び希釈物)の有効性を、THP-1細胞において評価した。30RESP002FC(濃縮物)(A)、及び30RESP002FD(希釈物)(B)の製剤の効能を、感染後2時間(0日目)、1日目、2日目、及び5日目、並びに16μg/ml(△)、8μg/ml(▽)、4μg/ml(◇)、2μg/ml(○)、1μg/ml(□)、0.5μg/ml(●)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処置後、THP-1マクロファージ中のM.tuberculosis HN878(□)の細胞内殺菌について評価した。図25の各プロットにおいて、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合の△及び▽プロット線はそれぞれ、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合の▲及び▼プロット線と区別することができ、これは、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより効果的であるためである。言い換えれば、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合のプロット線は、特に5日目において、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合よりも有意に低いCFU値を示している。同様に、1μg/mlでの処理はより有効であるので、1μg/mlで処理した場合のプロット線□は、処理なしの場合のプロット線□と容易に区別することができる。処置なしの場合のプロット線□のCFU値は、1日後には上昇し、1×10を超えたままである。
【0404】
上記のMIC表及び図25において「16μg/ml」と記載されている30RESP002FC及びFD組成物は、0.15M亜硝酸ナトリウム、0.05Mラクチトール及び0.1Mクエン酸/クエン酸塩(希釈後の最終モル濃度)を含み、8、4、2、1、0.5、0.25及び0.125μg/mlの組成物は、それぞれ16~0.125μg/mlのオーダーの前の組成物の50%希釈(すなわち、濃度を半分にする)である。
【0405】
THP-1マクロファージを1:10のMOIでM.tuberculosisに感染させ、感染から
2時間後、1、2及び5日後に細菌コロニーカウント法(CFU)を用いて細胞内細菌数を測定した。示されている値は、1回の独立した実験から得られた平均値±標準偏差である。未処理のコントロールと比較して、M.tuberculosis HN878に対する、30RESP002FC(濃縮物)16μg/ml、並びに30RESP002FD(希釈物)16μg/ml及び8μg/mlでの処理において、有効性が増大した(、p<0.05)。
【0406】
図26:M.tuberculosis HN878に対する30RESP003FC及びFD(濃縮物及び希釈物)の有効性を、THP-1細胞において評価した。30RESP003FC(濃縮物)(A)、及び30RESP003FD(希釈物)(B)の製剤の効能を、感染後2時間(0日目)、1日目、2日目、及び5日目、並びに16μg/ml(△)、8μg/ml(▽)、4μg/ml(◇)、2μg/ml(○)、1μg/ml(□)、0.5μg/ml(●)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処置後、THP-1マクロファージ中のM.tuberculosis HN878(□)の細胞内殺菌について評価した。図26の各プロットにおいて、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合の△及び▽プロット線はそれぞれ、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合の▲及び▼プロット線と区別することができ、これは、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより効果的であるためである。言い換えれば、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合のプロット線は、特に5日目において、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合よりも有意に低いCFU値を示している。同様に、1μg/mlでの処理はより有効であるので、1μg/mlで処理した場合のプロット線□は、処理なしの場合のプロット線□と容易に区別することができる。処置なしの場合のプロット線□のCFU値は、1日後には上昇し、1×10を超えたままである。
【0407】
上記のMIC表及び図26において「16μg/ml」と記載されている30RESP003FC及びFD組成物は、0.1M亜硝酸ナトリウム、0.05Mマンニトール及び0.1Mクエン酸/クエン酸塩(希釈後の最終モル濃度)を含み、8、4、2、1、0.5、0.25及び0.125μg/mlの組成物は、それぞれ16~0.125μg/mlのオーダーの前の組成物の50%希釈(すなわち、濃度を半分にする)である。
【0408】
THP-1マクロファージを1:10のMOIでM.tuberculosisに感染させ、感染から2時間後、1、2及び5日後に細菌コロニーカウント法(CFU)を用いて細胞内細菌数を測定した。示されている値は、1回の独立した実験から得られた平均値±標準偏差である。未処理のコントロールと比較して、M.tuberculosis HN878に対する、30RESP003FC(濃縮物)16μg/ml及び8μg/ml、並びに30RESP003FDの16μg/mlでの処理において、有効性が増大した(、p<0.05)。
【0409】
図27:M.tuberculosis HN878に対する30RESP004FC及びFD(濃縮物及び希釈物)の有効性を、THP-1細胞において評価した。30RESP004FC(濃縮物)(A)、及び30RESP004FD(希釈物)(B)の製剤の効能を、感染後2時間(0日目)、1日目、2日目、及び5日目、並びに16μg/ml(△)、8μg/ml(▽)、4μg/ml(◇)、2μg/ml(○)、1μg/ml(□)、0.5μg/ml(●)、0.25μg/ml(▲)、及び0.125μg/ml(▼)での処置後、THP-1マクロファージ中のM.tuberculosis HN878(□)の細胞内殺菌について評価した。図27の各プロットにおいて、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合の△及び▽プロット線はそれぞれ、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合の▲及び▼プロット線と区別することができ、これは、16μg/ml及び8μg/mlでの処理がより効果的であるためである。言い換えれば、16μg/ml及び8μg/mlで処理した場合のプロット線は、特に5日目において、0.25μg/ml及び0.125μg/mlで処理した場合よりも有意に低いCFU値を示している。同様に、1μg/mlでの処理はより有効であるので、1μg/mlで処理した場合のプロット線□は、処理なしの場合のプロット線□
と容易に区別することができる。処置なしの場合のプロット線□のCFU値は、1日後には上昇し、1×10を超えたままである。
【0410】
上記のMIC表及び図27において「16μg/ml」と記載されている30RESP004FC及びFD組成物は、0.1M亜硝酸ナトリウム、0.05Mマンニトール及び0.1Mアルコルビン酸/アスコルビン酸塩(希釈後の最終モル濃度)を含み、8、4、2、1、0.5、0.25及び0.125μg/mlの組成物は、それぞれ16~0.125μg/mlのオーダーの前の組成物の50%希釈(すなわち、濃度を半分にする)である。
【0411】
THP-1マクロファージを1:10のMOIでM.tuberculosisに感染させ、感染から1、2及び5日後に細菌コロニーカウント法(CFU)を用いて細胞内細菌数を測定した。示されている値は、1回の独立した実験から得られた平均値±標準偏差である。未処理のコントロールと比較して、M.tuberculosis HN878に対する、30RESP004FC(濃縮物)16μg/ml及び8μg/mlでの処理において有効性が増大した(、p<0.05)。
【0412】
製剤は、MICを超える適切な用量で、M.tuberculosis HN878のin vitro阻害を示すと結論付けられる。
【0413】
製剤を製造する方法は、実施例6の試験において、M.tuberculosis HN878に対するそれらのin vitroでの抗菌効力に影響を及ぼすことにも留意されたい。
【0414】
これは、製剤1の8μg/ml濃度の効力を、FCバージョンとFDバージョンとの間で比較することによって例示される(図24A図24B)。FCバージョンの効力は、インキュベーション後少なくとも5日間は強く増加するが、FDバージョンの効力は、同じ期間ではそれほど強く増加しない。これは16μg/ml濃度とは対照的であり、これはFCバージョンとFDバージョンとの間と同様に、同じ期間にわたって非常に類似した優れた効力を示している。
【0415】
製剤2では、異なる挙動が観察される(図25A図25B)。FDバージョンの16μg/ml濃度の効力は、インキュベーション後の最初の2日間はFCバージョンよりも強く増加し、その後変化しないが、インキュベーション後5日までその効力はFDバージョンにおいて優れており、FCにおいて非常に優れている。8μg/ml濃度の場合、FDバージョンの効力は、インキュベーション後少なくとも5日間、強く優れた効力まで増加するが、FCバージョンの効力は、同じ期間で、それほど強く増加しない。
【0416】
したがって、少なくともより高い濃度では、水が添加されて最終的な阻害製剤に到達する段階が、初期の抗菌作用及び5日間にわたる殺菌の程度の両方の観点から、製剤の抗菌作用に実質的に影響を及ぼし得ることが示される。一般的に言えば、普遍的ではないが、最初に、亜硝酸ナトリウム、ポリオール及び酸成分とを所望の相対モル比で、使用に所望されるよりも高い濃度(例えば使用に所望されるよりも少なくとも3倍、例えば使用に所望されるよりも少なくとも5倍多い濃度、例えば使用に所望されるよりも約3倍~約80倍多い濃度)で濃縮されたプレミックスとして製剤を作製し、その後、その濃縮物を希釈して使用する製剤を得ると、インキュベーション後0~5日の期間にわたって、より優れた抗菌作用をもたらす。
【0417】
実施例7
H1N1インフルエンザAウイルスに対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の細胞毒性及び抗ウイルス活性
実施例6の製剤30RESP001FCにそれぞれ対応するF1C1、F1C2及びF1C3と命名された試験製剤、それらの10倍希釈物及びそれらの100倍希釈物を、オセルタミビ
ル溶液(1μM)及びウイルスコントロールとともに使用して、MDCK細胞中で24時間後に比較細胞毒性及びH1N1インフルエンザAウイルス死滅効果を得た。細胞毒性は実施例8と同様に、LDH細胞毒性アッセイによって評価した。MDCK細胞中のH1N1インフルエンザAウイルスに対する抗菌活性は、MOI=0.002(●)及びMOI=0.02(■)で、様々な希釈率(横軸は亜硝酸塩モル濃度)で測定され、細胞毒性を灰色で示し、右側に細胞毒性スケール(0.015Mまでの測定された亜硝酸塩濃度での細胞毒性はLDHコントロールの1%以下であった)を示している。プレート写真を、オセルタミビル(1μM)と比較して、MOI=0.002及び亜硝酸塩濃度0.15M、0.015M及び0.0015Mで得た。その結果を図28に示す。最後の文章に記載されたプレートの順序は、図中のプレートの左から右への順序と同じである(2つの実験があり、対応する各実験のプレートが上下に示されている)。プレートのオセルタミビル対のすぐ右側にあるプレートの最も右側の対は、ウイルスコントロールである。細胞毒性を、LDHコントロールの%(感染後24時間での3LDHアッセイの平均)として、試験プレートの各対の下に示す。
【0418】
その結果は、亜硝酸塩/クエン酸/ポリオール製剤の適切な用量において、ウイルスが完全に撲滅しており、それがオセルタミビルより明らかに優れていることを示している。亜硝酸塩/クエン酸/ポリオール製剤の同様の抗ウイルス活性が、ライノウイルス及びRSウイルス(respiratory syncytial virus)でも示されている。
【0419】
これらの結果は、ヒト及び動物被験体における呼吸器ウイルス感染症の治療的及び予防的処置が本発明による亜硝酸塩/酸/ポリオール製剤によって提供されることを示している。
【0420】
実施例8
コロナウイルスSARS-CoV-2に対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の細胞毒性及び抗ウイルス活性
材料
試験製剤F1(pH5.8)
pH5.8の亜硝酸ナトリウム、クエン酸及びマンニトール(ポリオール)の水溶液で製剤1(F1)の6つの試験濃度を、1.5M亜硝酸ナトリウム、pH5.8の0.91Mクエン酸/クエン酸塩緩衝液、及び0.5Mマンニトール溶液の原液から、以下に記載の方法により調製し、以下の試験組成物を得た:
【0421】
【表6】
【0422】
F1で使用されるコントロール
pH5.8コントロール製剤を、0.1Mクエン酸+アッセイ緩衝液+細胞から調製した。
【0423】
陰性コントロールは、アッセイ緩衝液+細胞であった。
【0424】
陽性コントロールは、クロロキン+細胞であった。
【0425】
試験製剤F2(pH5.4)
亜硝酸ナトリウム、pH5.4のクエン酸及びマンニトール(ポリオール)の水溶液である製剤2(F2)の6つの試験濃度を、1.5M亜硝酸ナトリウム、0.91Mクエン酸/クエン酸塩緩衝液(pH5.4)、及び0.5Mマンニトール溶液の原液から、以下に記載する方法によって調製し、以下の試験組成物を得た:
【0426】
【表7】
【0427】
F2で使用されるコントロール
pH5.4コントロール製剤を、0.1Mクエン酸+アッセイ緩衝液+細胞から調製した。
【0428】
陰性コントロールは、アッセイ緩衝液+細胞であった。
【0429】
陽性コントロールは、クロロキン+細胞であった。
【0430】
化学試薬
亜硝酸ナトリウム:
グレード:亜硝酸ナトリウム超高純度 Ph Eur、USP、亜硝酸ナトリウムCAS No.7632-00-0、EC番号 231-555-9、超高純度 Ph Eur、USP、Sigma Aldrich社製、製品コード 1.065441000.
クエン酸:
グレード:クエン酸無水粉末 EMPROVE(登録商標)ESSENTIAL Ph Eur、BP、JP、USP、E 330、FCC、Sigma Aldrich社製、製品コード 1.002425000.
D-マンニトール:
グレード:EP、FCC、USP適合性試験を満たすD-マンニトール、Sigma Aldrich社製、製品コード M8429-100G.
リン酸クロロキン:
グレード:医薬二次標準、Sigma Aldrich社製、製品コード PHR1258-1G.
【0431】
原液の調製
クエン酸溶液を調製するには、19.2gのクエン酸に90mlの蒸留水を加え、続いて10mlの3M水酸化ナトリウムを加え、蒸留水で希釈してpHを調整する(pH5.4の場合は160ml、pH5.8の場合は190ml)。別の方法では、19.2gのクエン酸に20mlの蒸留水を加え、続いて1.2gの固体水酸化ナトリウムを加え、その後、10M水酸化ナトリウム及び蒸留水を用いてpHを調整し、100mlとする。溶液は、0.22μmフィルターを使用するシリンジろ過によって滅菌される。
【0432】
1.0M亜硝酸ナトリウム溶液を調製するには、6.9gの亜硝酸ナトリウムに100mLの蒸留水を加えた。1.5M亜硝酸ナトリウム溶液を調製するには、10.35gの亜硝酸ナトリウムに100mLの蒸留水を加えた。
【0433】
特定の場合には、9.1gのマンニトールを加えて、0.5Mの濃度を得た。0.22μMフィルターを用いたシリンジ濾過により溶液を滅菌する。
【0434】
製剤の調製
亜硝酸塩及びマンニトール溶液と混合する前に、緩衝クエン酸溶液のpHを所望の値に制御する。製剤について述べたpHは、亜硝酸塩及びマンニトール溶液と混合する前に調製した緩衝クエン酸溶液のpHである。
【0435】
製剤を構成するための1つの適切な方法は以下の通りである:0.5Mマンニトールを含む亜硝酸ナトリウム(1.5M)を混合容器に加え、すぐに1:1混合物(亜硝酸塩+ポリオール:クエン酸)のpHが制御されたクエン酸溶液を加える。溶液を穏やかに反転させて混合する。混合したら、混合物を密閉容器(例えば、50mlファルコン管)中で周囲温度で5分間保持する。次いで、0.75M亜硝酸塩、マンニトール0.25M、及びクエン酸を含む得られた溶液を、アッセイ緩衝液(1.2倍濃縮)で5倍に希釈して、アッセイにおいて亜硝酸塩0.15M、マンニトール0.05M、及び例えばクエン酸0.1Mの最終試験濃度を得る。1:1混合物の連続希釈(例えば、亜硝酸塩0.75M、マンニトール0.25M、クエン酸0.5Mとして出発する混合物)は、蒸留水及び/又はアッセイ緩衝液を用いて調製される。全ての製剤濃度は、周囲温度で保存することができる。溶液は、実験ごとに新たに調製される。
【0436】
追加のコントロール
追加のコントロールとして、その目的に適していることが知られており、SNAP50、SNAP100、SNAP200、SNAP300及びSNAP400と示される濃度範囲のS-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP)を使用した。SNAPは、NOがin vitroで細胞毒性を示さないことを検証するために、これらの試験において陽性のNO供与コントロールとして機能する公知のNO供与体である。SNAP分子のN-アセチルペンシラミン(NAP)部分のアッセイに対する潜在的な影響を制御するために、対応する濃度のNAPをNOブランクコントロールとして使用し、NAP50、NAP100、NAP200、NAP300及びNAP400と表記した。
【0437】
ウイルス
SARS-CoV-2臨床分離株
【0438】
細胞株
Vero E6
【0439】
アッセイ
LDHアッセイ(細胞毒性):
CyQUANTTM LDH細胞毒性アッセイキット、Invitrogen社; Cat No.C20300及びC20301。
組織培養感染量(TCID50)は、細胞変性効果(CPE)スコアリングを読み取り値として使用して測定された(ウイルス滴定)。
【0440】
亜硝酸塩製剤(全ての濃度)、pH5.8又はpH5.4クエン酸コントロール、陰性コントロール及び陽性コントロール(Keyaerts、E、Biochem Biophys Res Commun、323、264-268頁(2004年)に記載されているようなクロロキン、その内容は参照により本明細書に組み込まれる)の細胞毒性を、Vero E6細胞に対する亜硝酸塩/コントロール添加の2時間後及び24時間後に試験した。LDH放出を、2時間及び24時間の時点での読み取り値として測定した。各化合物/製剤を、実験当たり3回試験した。
【0441】
SARS-CoV-2阻害:
0時間の時点で、Vero E6細胞を製剤又はコントロールの存在下でウイルスに感染させ、1時間インキュベートした。このインキュベーション期間の後、接種物を除去し、細胞を洗浄した。次に、新鮮な製剤又はコントロールを洗浄した細胞に添加した。感染後24時間で、Vero E6細胞上清を回収して滴定し、ウイルス滴定を6日間インキュベートしてから読み出して、ウイルス収量の減少を測定した。3.0及び0.3を含む4つのMOIで別々の試験を行ったが、これら2つのMOIのみを滴定した。読み出しは、クリスタルバイオレット(細胞単層)染色、続いてCPEスコアリングによって行った。
【0442】
結果
その結果を図32図34に示す。
【0443】
図32は、LDH細胞毒性アッセイの結果を示している(それぞれ試験製剤1及び2を用いた実験1及び2のグラフを組み合わせたもの)。データは、2つの実験の平均+標準偏差(SD)として表される。SDは灰色のエラーバーとして示されている。最大LDH活性(細胞+溶解緩衝液)を100%に設定し、すべてのサンプル結果をこの値と比較した。LDH陽性コントロールは、キットの陽性コントロールであった。黒色のバー(2時間のインキュベーション)は、それぞれの場合のバーの各対の左側のバーであり、赤色のバー(24時間のインキュベーション)は、それぞれの場合のバーの各対の右側のバーである。
【0444】
図33は、MOI3.0での実験1のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果を示している。実験1では、SARS-CoV-2を用いて4つの感染多重度(MOI)で1つのウイルス収量減少アッセイを実施し、接種ウイルスの逆滴定を用いて確認した。MOIが3で接種された細胞については、滴定後、2.1 log10 TCID50/mlがウイルスコントロールウェル中に検出された。試験した条件のいくつかでは、SARS-CoV-2収量の減少が観察され得る。24時間のインキュベーション後、最も低い3つのMOI(すなわち、0.3、0.03及び0.003)ではほとんどウイルスは検出されなかった。おそらく、Vero E6細胞での24時間の複製は、高レベルの子孫ウイルスを得るのに十分ではない。データは、2回の滴定の平均+標準偏差(SD)として表される。SDはエラーバーとして示されている。クロロキン及び細胞コントロールlog10 TCID50/ml値の水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【0445】
図34は、(a)MOI3.0及び(b)MOI0.3での実験2のSARS-CoV-2に対する抗ウイルス試験の結果を示している。この方法は、製剤が実験2の製剤(種々の濃度での試験製剤2)であること以外は、これらのMOIにおける実験1の部分に対応し、子孫ウイルスのレベルを増加させるために、24時間ではなく48時間インキュベ
ーションを行った。データは、2回の滴定の平均+標準偏差(SD)として表される。SDはエラーバーとして示されている。クロロキン及びコントロールlog10 TCID50/ml値の水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【0446】
考察
NOを生成する水性製剤は、LDHアッセイでは細胞毒性を示さない(図32)。特に、亜硝酸塩、酸、ポリオールの濃度が高い場合、SARS-Cov-2に対するin vitro抗ウイルス作用は印象的であり、クロロキンに匹敵する(図33及び図34)。
【0447】
NOを生成する水性製剤は、驚くほど高いpHで有効である。pH5.4及び5.8を試験したが、5.2以下のより低いpHでも有効性を有すると予想される。
【0448】
さらに、データは、有機カルボン酸(例えば、pH5.4又は5.8に緩衝化されたクエン酸)が、NOを生成する製剤の非存在下で、驚くほど低い細胞毒性とSARS-CoV-2に対する高いin vitro抗ウイルス作用を有することを明らかにしている(図32図34;「クエン酸pH5.8」及び「クエン酸pH5.4」のバー)。カルボン酸製剤のpHが比較的高いため、それらが気道及び肺組織表面に対して非毒性であると予想されるので、肺内活性剤として魅力的な製剤になる。SARS-CoV-2は、SARS-CoVと同じコロナウイルスファミリーに属しており、ウイルス間に類似性があるため、このような有機カルボン酸がSARS-Covウイルスに対して対応する有効性を示すことも予測することができる。SARS-Covウイルスは重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因となるコロナウイルスであり、2002年と2003年に十分に立証された大流行があった。
【0449】
実施例9
コロナウイルスSARS-CoVに対するカルボン酸-亜硝酸塩-ポリオール溶液の抗ウイルス活性
SARS-CoV-2に対する本発明によって提供される抗ウイルス活性と、SARS-CoVに対する本発明によって提供される抗ウイルス活性との間の類似性を調査するために、以下の実験を行った。
【0450】
製剤F1C1、F1C2、F1C3及びF1C4を、MOI3.0でSARS-CoVに対する抗ウイルス活性について試験した。この方法は、実施例8に記載された抗ウイルス試験に類似する。クリスタルバイオレットで細胞単層を染色する前に、2枚のプレートを顕微鏡でチェックし、細胞変性効果(CPE)についてスコアを付けた。下にある単層の上の細胞破片の形態のCPEが、これらのプレートに存在することがわかった。
【0451】
顕微鏡でチェックした2枚のプレートの結果を図35に示す。データは条件ごとの単一滴定である。残りのプレートについては、細胞単層が密すぎるため、クリスタルバイオレット染色後にCPEをスコア化することができなかった。細胞コントロールlog10 TCID50/ml値の水平点線レベルは、アッセイの検出限界(LOD)である。
【0452】
図35に示すように、少なくとも製剤F1C1及びF1C2は、SARS-CoVに対して優れたin vitro抗ウイルス活性を示した。
【0453】
実施例10
ヒト用吸入器
本発明による液体組成物を使用するヒト用吸入器の一実施形態を図30及び図31に概略的に示す。
【0454】
吸入器は、圧縮ガスによって適切に駆動され、一般に従来の方法で、吸入器の1回の手動作動に応答して、吸入器内のリザーバーから亜硝酸塩/酸/ポリオール製剤の同伴液滴の1用量を送達するように構成される。被験体は、通常、吸入器を使用するときに喘息患者によって従来行われているように、吸入器を作動させると同時に吸入する。図30に示されるように、1用量当たり約3分の治療時間が適切であり、適切な用量の活性組成物で最大約2時間の効果の持続時間を与える。
【0455】
空気中の飛沫は被験体の感染した肺に入り、そこで感染した(例えばウイルスに感染した)肺の膜に接触する。図31の右側に、肺粘膜に水性一酸化窒素(NO)生成組成物(「水性NO」)の複数の液摘を堆積させた場合の本発明の効果を示している。図31の左側に、水性一酸化窒素(NO)生成組成物の代わりに、ガス状一酸化窒素を被験体によって吸入(「吸入一酸化窒素」)場合の対応する効果を示している。
【0456】
示されるように、吸入一酸化窒素が使用される場合、効力は大幅に低減される可能性がある。吸入一酸化窒素の一部は、肺粘膜を通って血流に入る前に被験体によって吐き出されるだけでなく、吸入一酸化窒素の別の一部が吸入された空気中の酸素によって有毒な二酸化窒素(NO)に酸化される。二酸化窒素は、被験体を治療するためのガス状一酸化窒素の利用可能性を枯渇させることに加えて、被験体の肺に悪影響を及ぼす。
【0457】
その結果、本発明による亜硝酸塩/酸/ポリオール製剤を使用することによって、患者の肺への、及び肺を介した患者の血流への一酸化窒素のより効率的かつ効果的な送達が達成される。
【0458】
結論
以上、本発明を広く説明したが、これに限定されるものではない。当業者に容易に明らかであるような変形及び修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。本発明に特許が付与されている特定の管轄区域の法律が添付の特許請求の範囲に相当する技術の不正使用に対する特許の実施を規定している範囲において、特許権者は、当該特許が当該同等の技術を対象としていることを意図している。
【0459】
添付の特許請求の範囲の保護範囲の等価物も、適用法により許容される範囲で特許請求の範囲によってカバーされる。例えば、一般的に言えば、本明細書に記載されるNOx生成反応の成分又は成分の一部を混合する順序は、NOx生成反応が早期に開始されない限り、重要ではない。本発明の任意の組み合わせ、キット又は組成物の必須及び非必須成分の任意の混合順序は、カバーされることが意図される。1つ以上の成分が液体形態で、例えば溶液として使用される場合、反応混合物又は反応混合物の任意の成分の一部中の溶質(その成分又はそれらの成分を含むが、これらに限定されない)の濃度に対するその成分又はそれらの成分の混合物の効果は、その1つ以上の成分が異なる体積又は濃度で固体形態又は液体形態で使用される場合と比較して、異なる可能性がある。本発明の組合せ、キット及び組成物を形成するための成分のすべての等価な濃度及び/又は物理的形態(固体、液体、溶液)、並びに前記組み合わせ、キット及び組成物を調製するための工程のすべての等価な工程及び工程の順序の使用は、本明細書に記載又は具体的に特許請求されていない場合であっても、適用法によって許容される範囲内で、本特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22-1】
図22-2】
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
【手続補正書】
【提出日】2021-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷、皮膚病変及び/又はやけどを治療するために、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための方法であって、
1つ以上の亜硝酸塩と、有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源と、を一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するのに適した反応条件で行われる反応を含み、
当該反応は1つ以上の有機ポリオールの存在下で行われ;
1つ以上の亜硝酸塩、プロトン源又は有機ポリオールが、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在し、
以下によって特徴付けられる:
前記1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
方法。
【請求項2】
以下の1つ以上によってさらに特徴づけられる、請求項1に記載の方法。
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる。
【請求項3】
創傷、皮膚病変及び/又はやけどを治療するために、プロトン源と1つ以上の亜硝酸塩との反応により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するため組み合わせであって、
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
を含み、
1つ以上の亜硝酸塩、プロトン源又は有機ポリオールが、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在し、
以下によって特徴付けられる:
前記1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロールお及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
組み合わせ。
【請求項4】
以下の1つ以上によってさらに特徴づけられる、請求項3に記載の組み合わせ。
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在し、前記反応出力増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる。
【請求項5】
創傷、皮膚病変及び/又はやけどを治療するために、プロトン源と1つ以上の亜硝酸塩との反応により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するためのキットであって、
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
を含み、
1つ以上の亜硝酸塩、プロトン源又は有機ポリオールが、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在し、
以下によって特徴付けられる:
前記1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロールお及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
キット。
【請求項6】
以下の1つ以上によってさらに特徴づけられる、請求項5に記載のキット。
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在し、前記反応出力増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる。
【請求項7】
創傷、皮膚病変及び/又はやけどを治療するために、プロトン源と1つ以上の亜硝酸塩との反応により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための組成物であって、
(i)1つ以上の亜硝酸塩;
(ii)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上の酸を含むプロトン源;及び
(iii)1つ以上の有機ポリオール;
を含み、
1つ以上の亜硝酸塩、プロトン源又は有機ポリオールが、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在し、
以下によって特徴付けられる:
前記1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロールお及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
組成物。
【請求項8】
以下の1つ以上によってさらに特徴づけられる、請求項7に記載の組成物。
(a)1つ以上の有機ポリオールは反応出力増強量で存在し、前記反応出力増強は1つ以上の有機ポリオールを含まないが、同じ条件で行われる反応と比較される;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはグリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールはポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる。
【請求項9】
請求項3に記載の組み合わせ、又は、請求項5に記載のキットであって、
前記プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルを含み、
前記組み合わせ又はキットが2つ以上の別個の組成物を含み、前記1つ以上のポリオールが前記ヒドロゲルと直接接触又は混合して前記別個の組成物中に存在しない、組み合わせ又はキット。
【請求項10】
請求項3ないし請求項9のいずれか一項に記載のキット又は組成物であって、
前記キット又は組成物が、前記成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに任意選択で水及び/又はpH緩衝液から実質的になる、キット又は組成物。
【請求項11】
請求項3ないし請求項9のいずれか一項に記載のキット又は組成物であって、
前記キット又は組成物が、前記成分(i)、(ii)及び(iii)、並びに任意選択で水及び/又はpH緩衝液及び/又は前記キット又は前記組成物の約20重量%又は体積%未満の量の1つ以上の追加成分からなる、キット又は組成物。
【請求項12】
請求項3ないし請求項11のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット又は組成物を調
製する方法であって、
前記組み合わせ又は前記キットを形成するために、前記成分(i)、(ii)及び(iii)を相互近接に持ち込むか、前記組成物を形成するために混合することを含む、方法。
【請求項13】
一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を、標的位置、例えば任意の細胞、器官、表面、構造又は対象、又は、その内部空間に送達する、創傷、皮膚病変及び/又はやけどを治療するための治療的又は非治療的方法であって、
(a)標的位置又はその近傍に、請求項3、請求項4、請求項6又は請求項7に記載の組み合わせ又は組成物、又は、請求項3、6又は7に従属する請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物、を投与すること;又は
(b)請求項1又は請求項2に記載の方法を使用すること、又は、請求項3、4、6又は7に記載の組み合わせ又は組成物を用いること、請求項3、4、6又は7に従属する請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物を使用すること、により一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、それによって生成された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を標的位置又はその近傍に送達すること、を含む、
治療的又は非治療的方法。
【請求項14】
それを必要とする被験体、例えばヒト被験体又は他の哺乳類被験体の、例えば細菌、ウイルス、真菌、微生物学的感染又はそれらの任意の組み合わせである微生物感染を治療する方法である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
被験体、例えばヒト被験体又は他の哺乳類被験体に対して行われる血管拡張の方法である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
例えば、被験体のある場所での微生物、例えば細菌、ウイルス、真菌細胞及び/又は微小寄生虫の数を減少させるため、その増殖を防止するため、又はその増殖速度を制限するための抗菌方法である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
外科的方法又は治療及び手術の両方を含む方法である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
治療及び/又は手術のために用いられる、請求項3ないし請求項11のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット又は組成物。
【請求項19】
(a)標的とされる微生物、若しくはその近傍、又は微生物に感染した被験体若しくはそのような被験体の内部空間に、請求項3、請求項4、請求項6又は請求項7に記載の組み合わせ又は組成物を投与すること;又は
(b)請求項1若しくは請求項2に記載の方法を使用すること、又は請求項3、4、6又は7に記載の組み合わせ、キット又は組成物を使用すること、又は請求項3、4、6又は7に従属する請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物を使用すること、により、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成し、生成物を標的とされる微生物、若しくはその近傍、又は微生物に感染した被験体若しくはそのような被験体の内部空間に送達すること、
を含み、
ただし、pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよい、
請求項16に記載の抗菌方法の改変。
【請求項20】
請求項4ないし請求項9のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット又は組成物が、一酸化窒素、任意選択で窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するために用いられ、
ただし、pHに影響を及ぼすNOx生成反応混合物の他の成分が存在する前に、任意の所望の緩衝液を含むプロトン源の水溶液の初期pH、又は1つ以上の亜硝酸塩との反応の開始時の反応混合物のpHは、5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよい、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
それを必要とする被験体、例えばヒト被験体又は他の哺乳類被験体の、微生物感染を治療する方法である、請求項19又は請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記微生物感染が、細菌、ウイルス、真菌、微生物学的感染又はそれらの任意の組み合わせである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記微生物感染が、被験体の皮膚、例えば粘膜、又は被験体の内部空間、例えば被験体の鼻、口、気道もしくは肺、又は被験体の肺胸膜の内膜にある、請求項21又は請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の亜硝酸塩が、LiNO、NaNO、KNO、RbNO、CsNO、FrNO、AgNO、Be(NO、Mg(NO、Ca(NO、Sr(NO、Mn(NO、Ba(NO、Ra(NO、及びそれらの任意の混合から選択される、請求項1ないし請求項23のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項25】
前記1つ以上の亜硝酸塩が、NaNO、KNO、又はそれらの混合物である、請求項24に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項26】
前記1つ以上の亜硝酸塩、又は1つ以上の亜硝酸塩を含有するNOx生成反応系の任意の成分が、乾燥形態、例えば粒子状乾燥形態で存在する、請求項1ないし請求項25のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項27】
前記1つ以上の亜硝酸塩、又は1つ以上の亜硝酸塩を含有するNOx発生反応系の任意の成分が、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在する、請求項1ないし請求項25のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項28】
前記溶液中の亜硝酸イオンのモル濃度が約0.001M~約5Mの範囲内である、請求項27に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項29】
前記1つ以上の亜硝酸塩、又は前記1つ以上の亜硝酸塩を含有するNOx生成反応系の任意の成分のpHが、好ましくは約6~約9のpHに緩衝される、請求項24ないし請求項28のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項30】
前記プロトン源の前記1つ以上の有機カルボン酸が、サリチル酸、アセチルサリチル酸、酢酸、クエン酸、グリコール酸、マンデル酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、安息香酸、ギ酸、プロピオン酸、α-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシプロパン酸、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシ-β-酪酸、ナフトエ酸、オレイン酸、パルミチン酸、パモ酸(エンボニン酸)、ステアリン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルクロン酸、ラクトビオン酸、ケイ皮酸、ピルビン酸、オロチン酸、グリ
セリン酸、グリチルリチン酸、ソルビン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸、シュウ酸、これらの塩、及びこれらの組み合わせ;1つ以上の高分子又は重合カルボン酸、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、乳酸とグリコール酸のコポリマー;前記ヒドロゲルの三次元ポリマーマトリックスを形成するポリマー分子に共有結合したペンダント-COOH基を含む1つ以上の酸ヒドロゲル;プロトン源として作用し得るそれらの部分的又は完全なエステル及び部分的又は完全な塩;並びにそれらの任意の混合物又は組み合わせから選択される、請求項1ないし請求項29のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項31】
1つ以上のカルボン酸が、クエン酸、その塩、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項30に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項32】
前記プロトン源の前記1つ以上の非カルボン酸還元酸が、アスコルビン酸;パルミチン酸アスコルビル(アスコルビルパルミテート);3-O-エチルアスコルビン酸、他の3-アルキルアスコルビン酸、6-O-オクタノイルアスコルビン酸、6-O-ドデカノイルアスコルビン酸、6-O-テトラデカノイルアスコルビン酸、6-O-オクタデカノイルアスコルビン酸及び6-O-ドデカンジオイルアスコルビン酸などのアスコルビン酸誘導体;還元酸などの酸性還元体;エリソルビン酸;シュウ酸;それらの塩;及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1ないし請求項31のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項33】
前記有機非カルボン酸還元酸が、アスコルビン酸又はその塩である、請求項32に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項34】
前記プロトン源、又はその成分の一部、又は前記プロトン源を含有するNOx生成反応系の任意の成分が、乾燥形態、例えば粒子乾燥形態で存在する、請求項1ないし請求項33のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項35】
前記プロトン源、又はその成分の一部、又は前記プロトン源を含有するNOx生成反応系の任意の成分が、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在する、請求項1ないし請求項34のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項36】
前記溶液中のプロトン源のモル濃度が約0.001M~約5Mの範囲内である、請求項35に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項37】
前記プロトン源のpHが、好ましくは約3~約9、例えば約4~約8、例えば約5~約8のpHに緩衝される、請求項1ないし請求項36のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項38】
前記1つ以上の有機ポリオールが、4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する糖アルコール、例えば4、5、6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有するアルジトールから選択される、請求項1ないし請求項37のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項39】
前記1つ以上の有機ポリオールが、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、マンニトール、ソルビトール、ガラクチトール、フシトール、イジトール、イノシトール、ボレミトール、イソマルト、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、ポリグリシトール、グリセロール及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1ないし請求項38のいずれか一項に記載
の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項40】
前記1つ以上の有機ポリオールが、アラビトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、及びそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項38又は請求項39に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項41】
前記1つ以上の有機ポリオール、又は前記1つ以上の有機ポリオールを含有するNOx生成反応系の任意の成分が、乾燥形態、例えば粒子状乾燥形態で存在する、請求項1ないし請求項40のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項42】
前記1つ以上の有機ポリオール、又は前記1つ以上の有機ポリオールを含有するNOx生成反応系の任意の成分が、水性担体、例えば水性液体又はゲルの溶液中に存在する、請求項1ないし請求項40のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項43】
前記溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度が約0.001M~約5Mの範囲内である、請求項42に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項44】
(a)NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の任意の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、前記亜硝酸塩成分中又は前記反応溶液中の前記亜硝酸イオンの総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば約0.1~約2倍、例えば約0.25~約1.5倍である;又は
(b)NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の任意の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、前記プロトン源成分中又は前記反応溶液中の前記プロトン源の総モル濃度の約0.05~約3倍、例えば約0.1~約2倍、例えば約0.25~約1.5倍である、
請求項19ないし請求項23のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項45】
1つ以上の亜硝酸塩とプロトン源との反応によって一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体を生成するための組み合わせ又は組成物が、希釈剤、担体、賦形剤、甘味料、味マスキング剤、増粘剤、粘稠化剤、湿潤剤、フィルム形成剤、潤滑剤、結合剤、乳化剤、可溶化剤、安定化剤、着色剤、着臭剤、塩、コーティング剤、抗酸化剤、活性薬剤、防腐剤、及びそれらの任意の組合せから選択される1つ以上の追加成分をさらに含む、請求項1ないし請求項44のいずれか一項に記載の方法、組成物、キット、組み合わせ又は使用。
【請求項46】
NOx生成反応の開始時のプロトン源のpHは、5~8の範囲であり、1つ以上のポリオールは任意であり、省略されてもよく、
組成物、キット又は組み合わせが、請求項19ないし請求項23のいずれか一項に記載の抗菌方法に用いられる、
請求項19-23以外の請求項に従属する請求項3-11、18、24-45のいずれか一項に記載の組成物、キット又は組み合わせの改変。
【請求項47】
前記(i)、(ii)及び存在する場合には(iii)の化学物質成分に加えて、使用前に前記成分を保持するための容器;前記成分を混合し、反応混合物及び/又は放出されたガスを分配し、前記混合及び分配を制御するための少なくとも1つの装置又は他の手段、使用説明書、及び使用説明書を見つけることができる場所への指示書、例えばオンライン使用説明書のうちの少なくとも1つを含む、請求項5、6、9-11、18、24-46のいずれか一項に記載のキット。
【請求項48】
創傷、皮膚病変及び/又はやけどを治療するために、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、及び/又は、請求項3、4、7-11、18及び24-46のいずれか一項に記載の組み合わせ又は組成物を、分配するためのディスペンサーであって、
前記請求項に定義された前記(i)、(ii)及び存在する場合には(iii)の化学物質成分と、
使用前に前記成分を保持するための少なくとも1つの容器と、
前記成分の混合及び反応混合物の分配を制御するための少なくとも1つの装置又は他の手段と、
前記ディスペンサーからのその1つ以上の成分及び/又は放出されたガスと、
を含み、それを標的に向ける、ディスペンサー。
【請求項49】
前記ディスペンサーは、前記反応混合物、その1つ以上の成分、前記反応混合物を含む担体、前記反応混合物の1つ以上の成分を含む担体、及び/又は前記放出されたガスを分配する繰り返される同様の動作に適合される、請求項48に記載のディスペンサー。
【請求項50】
前記ディスペンサーは、前記NOx生成反応混合物、その成分の1つ以上、又は放出されたガスを含む組成物を前記ディスペンサーから運び、それを標的に向けるためのポンプ又は噴射システムを含む、請求項48又は請求項49に記載のディスペンサー。
【請求項51】
前記ディスペンサーは、前記反応混合物、その1つ以上の成分、前記反応混合物を含む担体、前記反応混合物の1つ以上の成分を含む担体、及び/又は前記放出されたガスを、細胞、器官、表面、構造又は対象、又はその内部空間、例えば、ヒト又は動物被験体の皮膚、鼻、口、気道又は肺に導くように適合されている、請求項48ないし請求項50のいずれか一項に記載のディスペンサー。
【請求項52】
請求項1-18、24-45、47-51のいずれか一項に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、使用又はディスペンサー、及び、それらによって生成又は分配された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体であって、
- 1つ以上の亜硝酸塩は、1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- プロトン源は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液;クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液;又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 前記アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液、クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液、又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子は、ポリマー又は高分子に共有結合していない;
- 1つ以上の有機ポリオールは、1分子あたり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコール又はアルジトール;例えば、ソルビトール;マンニトール;アラビトール;キシリトール;又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、亜硝酸イオンの総モル濃度の0.05~3倍である;
- NOx生成反応の開始時のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、プロトン源成分中又は反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を伴わない用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは3.0
~9.0の範囲である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を含む用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは4.0~8.0の範囲である;
- 反応混合物と、動物(ヒトを含む)被験体の鼻、口、気道又は肺との接触を含む用途では、NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは5.0~8.0の範囲である。
【請求項53】
請求項19-23、46のいずれか一項、及びこれに従属する範囲のその他の請求項に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、使用又はディスペンサー、並びに、それらによって生成又は分配された一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体であって、
- 1つ以上の亜硝酸塩は、1つ以上のアルカリ金属又はアルカリ土類金属亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、又はそれらの任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- プロトン源は、アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液;クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液;又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- 前記アスコルビン酸又はアスコルビン酸/アスコルビン酸塩緩衝液、クエン酸又はクエン酸/クエン酸塩緩衝液、又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせの分子は、ポリマー又は高分子に共有結合していない;
- 1つ以上の有機ポリオールは、1分子あたり4~12個の炭素原子及び4~12個のOH基を有する直鎖糖アルコール又はアルジトール;例えば、ソルビトール;マンニトール;アラビトール;キシリトール;又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む(例えば、含有する、又はそれらから本質的になる、又はそれらのみからなる);
- NOx生成反応の開始時又は開始前のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、亜硝酸イオンの総モル濃度の0.05~3倍である;
- NOx生成反応の開始時のポリオール成分中又は反応溶液中の1つ以上の有機ポリオールの総モル濃度は、プロトン源成分中又は反応溶液中のプロトン源の総モル濃度の0.05~3倍である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を伴わない用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは3.0~9.0の範囲である;
- 反応混合物と細胞又は動物(ヒトを含む)の皮膚(粘膜を含む)、器官又は他の組織との接触を含む用途では、特にNO生成反応の開始直前のプロトン源のpHは4.0~8.0の範囲である;
- 反応混合物と、動物(ヒトを含む)被験体の鼻、口、気道又は肺との接触を含む用途では、NO生成反応の開始前、特に直前のプロトン源のpHは5.0~8.0の範囲である;
- 標的とする微生物は、アクチノマイセス、バシラス、バルトネラ、ボルデテラ、ボレリア、ブルセラ、カンピロバクター、クラミジア、クラミドフィラ、クロストリジウム、コリネバクテリウム、エンテロコッカス、エスケリキア、フランシセラ、ヘモフィルス、ヘリコバクター、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア、マイコバクテリウム、マイコプラズマ、ナイセリア、シュードモナス、リケッチア、サルモネラ、赤痢菌、黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、トレポネーマ、ウレアプラズマ、ビブリオ、エルシニア属、又はこれらの組み合わせのリストにある細菌種;インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、RSウイルス(RSV)、アストロウイルス、肝炎ウイルス、及びこれらの組み合わせのリストにあるウイルス;並びに肉質虫、鞭毛虫、繊毛虫、胞子虫、及びそれらの任意の組み合わせのリストにある原虫群;例えば、SARS-CoV、SARS-CoV-2
、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium abscessusを含む非tuberculosisマイコバクテリウム、Pseudomonas aeruginosa、それらの抗生物質耐性株から選択される。
【請求項54】
以下を含む、創傷、皮膚病変及び/又はやけどを治療するための2成分系であって、
a)1つ以上の亜硝酸塩(例えば、NaNO)で吸収され、含浸され、又はコーティングされた1つ以上のメッシュ;及び
b)有機カルボン酸及び有機非カルボン酸還元酸から選択される1つ以上を含有するプロトン源を含むヒドロゲル;
ここで、成分(a)は成分(b)とは別であり、1つ以上の成分(a)及び(b)は1つ以上の有機ポリオールをさらに含み、
以下によって特徴づけられる、
(a)前記1つ以上の有機ポリオールは、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンモノステアレート(グリセリルステアレート)、トリヒドロキシエチルアミン、D-パントテニルアルコール、パンテノール、イノシトールと組み合わせたパンテノール、ブタンジオール、ブテンジオール、ブチンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール、ここに挙げたもの以外のグリコール、ヒドロキノン、ブチル化ヒドロキノン、1-チオグリセロール、エリソルベート、エチルヘキシルグリセリン、それらの任意の組み合わせ、又は上記のいずれかとグリセロール及び/又はポリビニルアルコールとの任意の組み合わせ、を含まない、
2成分の系。
【請求項55】
請求項54に記載の2成分の系であって、
以下の1つ以上によってさらに特徴づけられる、
(a)1つ以上の有機ポリオールは、反応出力増強量で存在する;
(b)プロトン源は、三次元ポリマーマトリックスに共有結合したペンダントカルボン酸基を含むヒドロゲルのみではない;
(c)1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(d)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(e)1つ以上の可塑剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、グリセロールのみではない;
(f)1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(g)1つ以上の増粘剤が使用される場合、1つ以上の有機ポリオールは、ポリビニルアルコールのみではない;
(h)上記(b)~(g)のいずれか1つ以上において、「のみではない」という用語は「含まない」と置き換えられる;
2成分の系。
【請求項56】
請求項1ないし請求項55のいずれか一項に記載の方法、組み合わせ、キット、使用、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、又は、系であって、前記有機ポリオールは、存在する場合には、還元剤を含まない(すなわち排除する)。
【請求項57】
前記治療が、被験体におけるライノウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、Mycobacterium tuberculosis、又はインフルエンザ、の感染の治療又は予防である、請求項13-17、19-23、又は、請求項13-17、19-23のいずれかに従属
する請求項、のいずれか一項に記載の治療方法。
【請求項58】
前記治療が、被験体におけるライノウイルス、SARS-CoV、SARS-CoV-2、Mycobacterium tuberculosis、又はインフルエンザ、の感染の治療又は予防である、請求項1-12、18、24-56のいずれか一項に記載の組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、又は、系で、治療に用いられるもの。
【請求項59】
前記治療が、被験体におけるライノウイルスの感染の治療又は予防である、請求項57又は請求項58に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項60】
前記治療が、被験体におけるSARS-CoV(SARS)の感染の治療又は予防である、請求項57又は請求項58に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項61】
前記治療が、被験体におけるSARS-CoV-2(COVID-19)の感染の治療又は予防である、請求項57又は請求項58に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項62】
前記治療が、被験体におけるMycobacterium tuberculosis(結核菌)の感染の治療又は予防である、請求項57又は請求項58に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項63】
前記治療が、被験体におけるインフルエンザの感染の治療又は予防である、請求項57又は請求項58に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【請求項64】
前記被験体がヒトである、請求項47ないし請求項63のいずれか一項に記載の方法、組み合わせ、キット、組成物、改変、一酸化窒素、任意選択で他の窒素酸化物及び/又は任意選択でそれらの前駆体、ディスペンサー、系、又は使用。
【国際調査報告】