(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】物体を成形するための方法及び製造ライン
(51)【国際特許分類】
C21D 1/04 20060101AFI20230308BHJP
B21D 28/02 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C21D1/04
B21D28/02 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537839
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2020087102
(87)【国際公開番号】W WO2021123225
(87)【国際公開日】2021-06-24
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522143531
【氏名又は名称】オートテック エンジニアリング エス.エレ.
【氏名又は名称原語表記】AUTOTECH ENGINEERING S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】パロ,ダニエル
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048BA02
4E048BA06
(57)【要約】
本開示は、金属部品(20)を成形する方法に関し、当該方法は、保護層で被覆された金属素材(20)の加熱をする工程と、限定空間(14)において金属素材(20)の冷却をする工程であって、冷却は、ガスによる冷却を含み、ガスは、限定空間(14)の内部のヒートシンク(22)の冷却面での熱交換によって冷却され、ガスと1以上のヒートシンク(22)の冷却面との間、及びガスと金属部品(20)との間の双方の熱交換を向上させるべく、低周波音の音波は、限定空間(14)に提供され、加熱済みの被覆された素材は、保護層の融点未満の温度に冷却される工程と、被覆された素材の部品への成形を行う工程とを含む。本開示は更に、当該方法を行うための製造ラインに関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品(20)を成形する方法であって、
保護層で被覆された金属素材(20)の加熱を行う工程と、
限定空間(14)において前記金属素材(20)の冷却を行う工程であって、前記冷却は、ガスによる冷却を含み、前記ガスは、前記限定空間(14)の内部のヒートシンク(22)の冷却面での熱交換によって冷却され、前記ガスと1以上の前記ヒートシンク(22)の冷却面との間、及び前記ガスと前記金属部品(20)との間の双方の熱交換を向上させるべく、低周波音の音波は、前記限定空間(14)に提供され、加熱済みの前記被覆された素材は、前記保護層の融点未満の温度に冷却される工程と、
前記被覆された素材の部品への成形を行う工程と
を含む
方法。
【請求項2】
前記保護層は、亜鉛を含む
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保護層は、アルミニウムを含む
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記保護層は、シリコンを更に含む
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
加熱済みの被覆された部品は、約550℃まで冷却される
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記成形を行う工程は、最終成形の部品まで複数の成形を行う副工程を含む
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記成形を行う副工程は、前記素材の切断及び/又は打抜きを更に含む
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属素材は、空気硬化性のある鋼合金を含む
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記金属素材は、前記加熱を行う工程において、約890℃まで加熱される
請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記冷却を行う工程の音波の周波数は、好適には50Hz未満であり、更に好適には20Hz未満である
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記音波は、前記限定空間(14)を介して伝播させるべく、前記限定空間の第1端部から提供され、前記第1端部と反対側の位置にある前記限定空間(14)の第2端部で前記限定空間(14)から離れるように提供される
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記限定空間において冷却すべき部品は、前記音波の方向に対して概して横断する方向に、第1端部での前記加熱を行う工程から第2端部へと搬送され、前記第2端部から前記成形を行う工程へと搬送される
請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
加熱装置(201)と、
冷却装置(202)と、
成形装置(203)と、
当該装置の間にあるコンベアと
を備えた
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を行うための製造ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属部品を成形するための方法及び製造ラインに関し、この金属部品は、自動車製造における部品として用いる場合がある。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車産業における部品の製造においては、部品は多くの場合、熱間圧延工程から冷却工程を経て、成形工程及び周囲温度への最終冷却工程まで、複数の工程において処理される。効率を最良にするため、及び時間の損失を回避するために、全ての工程は迅速に行われるべきであり、全体的な効率は、最も低速な工程によって抑制されるため、各々の工程は、可能な限り効率的に維持すべきである。
【0003】
通常、成形工程の前に細部を冷却する冷却工程は、空気冷却を含むが故に、最も時間を浪費する工程となっている。したがって、冷却工程の時間を低減できれば、各々の工程の処理を等しく短縮できるため、冷却工程の低減時間の倍数だけ、全体の時間を低減できる。
【0004】
上述したように、空気冷却は、一般的には速度が遅すぎるため、特に数回の工程が相互の後に実行される処理においては、効率的な冷却ができない。しかしながら、空気冷却における冷却速度を向上させる方法はある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】スウェーデン国特許出願公告第462374号明細書(SE 462 374 B)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に、周囲の空気との熱交換を向上させるべく、超低周波音を適用することにより、空気冷却が改善されることが知られている。特許文献1においては、低周波音の発生装置が記載されている。上述は有効であるが、従前において、産業上の用途においては実装に成功していない。
【0007】
高温の金属部品の冷却に関連する更なる問題は、例えば金属板に由来する高温の金属が、酸素への曝露のために、酸化物スケールの外層を形成することである。酸化物スケールは、多くの場合、冷間硬化との組み合わせで、様々な形状に押圧することによる後の成形など、金属板の後の加工に影響を与えるため望ましくない。更に、金属部品の押圧及び冷間硬化の前に、酸化物スケールの除去を要する。したがって、酸化物スケールの蓄積が低減されるように、材料を急速に冷却できれば好都合である。
【0008】
金属部品の処理に関する別の態様は、金属素材が保護層で被覆されている場合にある。
保護層は例えば、環境による腐食又は他の影響に対する保護を向上できるため、多数の用途において、多くの場合有効である。保護層は、多くの場合、亜鉛若しくはアルミニウム、又はアルミニウムとシリコーンとの組み合わせを含む。製造の面で、素材を加熱工程及び成形工程の前に被覆できれば有効である。上述についての問題は、素材が、亜鉛又はアルミニウムの保護層の融点を超える温度に加熱されることにある。更に、加熱済みの素材が、当該温度で成形装置に配置される場合、保護層の材料は、押圧及び延伸などの成形中に、素材の鋼の粒界に入り、いわゆる液体金属脆化を引き起こす。上述を回避するためには、素材は、保護層の融点未満の温度で一定期間、加熱工程と成形工程との間に冷却される状態に維持しなければならず、通常、当該期間は、製造の観点からは長すぎる期間である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の目的は、部品、特に金属部品の冷却の弱点を改善することである。本目的は、独立請求項の特徴を有する方法及び製造ラインによって達成される。本開示の好適な実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0010】
本願によると、本開示は、金属部品を成形する方法に関する。本方法は、保護層で被覆された金属素材の加熱を行う工程を含むことができる。更なる工程は、限定空間において金属素材の冷却を行う工程にでき、冷却は、ガスによる冷却を含み、ガスは、限定空間の内部のヒートシンクの冷却面での熱交換によって冷却できる。
【0011】
好適な解決策によると、ガスと1以上のヒートシンクの冷却面との間、及びガスと金属部品との間の双方の熱交換を向上させるべく、低周波音の音波は、限定空間に提供されうる。好適には、加熱済みの被覆された素材は、保護層の融点未満の温度に冷却され、更に、被覆された素材は、成形工程において部品への成形を行われうる。
【0012】
これにより、冷却ボックスのガスとその少なくとも1つのヒートシンクとの間に乱流及び熱交換を生じさせる低周波音波による急速冷却が追加される。このために、構成要素を作製するためのプロセスの加熱及びプレス工程の前に、金属ブランクを保護層でコーティングすることが可能になり、これにより、冷却時間を低減できる。したがって、保護層でコーティングされた構成要素を形成するためのサイクル時間が大幅に低減される。
【0013】
1つの実現可能な解決策によると、保護層は、例えば腐食に対して良好な保護特性のある亜鉛を含むことができる。代替として、保護層は、アルミニウムを含むことができ、更にアルミニウムにシリコンを添加できる。当該保護層は、アルミニウム/ケイ素の薄層のため、腐食に対して更に高耐性となり、金属素材の鋼が酸化するのを防ぐ。
【0014】
好適には、加熱済みの被覆された部品は、約550℃まで冷却できる。当該温度は、保護層の融点未満の温度であり、冷却を可能にすることによって、成形工程における後の押圧工程での冷間硬化を可能にする。代替として、成形工程は、最終成形の部品までの複数の成形を行う副工程を含むことができる。当該副工程は、保護層で被覆された部品に形成された場合に、金属素材の材料の最適な強度特性が得られるように行われる。上述において、成形を行う副工程は、素材の切断及び/又は打抜きを含むことができる。
【0015】
本開示の重要な一態様によると、金属素材は、空気硬化性のある鋼合金を含むことができる。空気硬化性により、押圧機の型に配置された際の冷却中の金属部品の硬化と比較して、押圧機の期間を相当に短くすることができる。保護層で被覆された金属素材は、更に、型による押圧時の加熱の際に成形され、次いで、型から除去され、周囲空気中で硬化できる。上述によると、急速冷却及び空気硬化の双方により、保護層を有する部品を製造するためのサイクル時間が大幅に低減される。
【0016】
一般的には、加熱を行う工程は、金属素材を約890℃に加熱できる。更に、冷却を行う工程の音波の周波数は、好適には50Hz未満であり、更に好適には20Hz未満である。音波は、限定空間を介して伝播させるべく、限定空間の第1端部から提供され、第1端部とは反対側の位置にある限定空間の第2端部で限定空間から離れるように提供できる。
【0017】
上述は、部品が扁平な金属素材である場合に特に有効であり、音波は素材の両側で伝播し、素材の両側で同時に効果的な冷却を提供できる。上述に関連して、限定空間において冷却すべき部品は、音波の方向に対して概して横断する方向に、第1端部から第2端部に搬送できる。ここでは、部品の連続的な移動は、定在波が伝播する一方向において、横断する方向とすることができる。
【0018】
更なる態様によると、上述の方法を行うために提供される製造ラインは、加熱装置と、冷却装置と、形成装置と、上記装置の間にあるコンベアとを備える。
【0019】
本開示の上述の態様及び利点、並びに他の態様及び利点は、以降の本開示の詳細な説明及び添付の図面から明確となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示の以下の詳細な説明においては、添付の図面を参照する。
【0021】
【
図1】
図1は、高温の物体を冷却するための実施形態の装置の概略的な断面図である。
【
図2】
図2は、高温の物体を冷却するための代替的な実施形態の装置の概略的な斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1~2の装置において用いられた鼓動装置の第1実施形態を示している。
【
図5】
図5は、
図1~2の装置において用いられた鼓動装置の第2実施形態を示している。
【
図6】
図6は、様々な動作モードにおける鼓動装置の第3実施形態を示している。
【
図7】
図7は、様々な動作モードにおける鼓動装置の第3実施形態を示している。
【
図8】
図8は、様々な動作モードにおける鼓動装置の第3実施形態を示している。
【
図9】
図9は、様々な動作モードにおける鼓動装置の第3実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、例えば、空気又は任意の他のガスであって、蒸気を含む又は蒸気を含まない冷却ガスで、自動車部品20などの部品を冷却する装置10を示している。装置が配置される湿度に応じて、冷却ガスは乾燥空気にでき、乾燥空気は、湿潤環境において重要となりうる。装置は、冷却すべき部品20を受容するための開口部18を有する冷却箱16の内部に配置された限定空間14を有している。好適には、開口部は、再閉止が可能である。冷却箱16には、好適にはガスを冷却すべく、冷却箱16の内部に複数のヒートシンク22が配置されている。ヒートシンク22は、冷却媒体の流れがヒートシンク22を介して循環するように、導管24及び26を介して冷却媒体に連結可能である。ヒートシンク22は更に、冷却面全体を増加させる冷却フランジ28(
図3参照)を含むことができる。冷却効率は、1以上のヒートシンク22の冷却面全体の増加と共に増加するが、冷却の効果は、1つのヒートシンク22のみの小さな冷却面においても生じることは当業者に明白である。装置10は、冷却ガスと1以上のヒートシンク22の冷却面との間、及び冷却ガスと冷却すべき部品20との間の熱交換を向上させるべく、冷却箱16に超低周波音を提供するように配置された1以上の超低周波音の鼓動装置30及び32を更に備える。
【0023】
図2及び
図3は、装置及び冷却箱16の一例を概略的に開示している。冷却箱16は、略矩形であり、4つの側壁34、頂部36、及び底部38を有し、限定空間14を形成する。側壁の1つにおいては、第1開口部40’が配置され、1以上の細長い開口部、すなわちスリット形状の開口部からなり、冷却箱16の限定空間10に鋼素材20等を横方向に受容するように配置される。更に、冷却箱16は、同様の第2開口部40’’を備えることができ、2つの開口部40’及び40’’は、冷却すべき物体20が、冷却箱16の一方の側に入れられ、冷却後、冷却箱16の反対側で取り出されることができるように、好適には
図3に示されるように、冷却箱16に相互に対向して配置される。したがって、上述の実施形態は特に、金属板などの素材の効率的な冷却に適用される。開口部40’及び40’’には、開口部を覆い、金属素材の出入りを可能にするように配置された可撓性のカーテン又は揺動可能な扉(図示せず)を設けることができる。当該カーテン又は扉は、冷却効果を最大化すべく、音の混合を最小化し、限定空間14の内部において超低周波音の定在波を可能な限り完全な状態で維持するように配置される。
【0024】
図2及び
図3に示すように、複数の案内要素42は、各々の開口部12に配置され、案内要素42の間で、自動車部品などの部品20を案内できる。図示した実施形態においては、複数の案内要素42は、当該案内要素42の間で素材を受容及び案内するように配置されたコンベアロールからなる。コンベアロールの代替としては、高温の金属素材が摺動することを可能にする任意の表面が採用されうるものであり、好適には、冷却箱16の限定空間14を介して金属素材を搬送するための装置との組み合わせが可能である。更に、
図1及び
図3に示すように、コンベアロール44又は任意の他の型式の案内要素は、冷却箱の内側に配置できる。コンベアロール又は他の型式の案内要素は、冷却すべき部品20の長さよりも小さい間隔で相互に等間隔に配置する必要があることは明白である。更に、冷却箱は、冷却工程における移動を停止すべく、部品20が接触可能な停止要素45を備えることができる。部品が所望の温度に冷却された場合、停止要素45は、部品を次の処理位置に搬送可能なように接触を解除するように移動しうる。
図2及び
図3に示した冷却箱には、1以上のヒートシンク22又は同様の冷却装置が更に配置される。ヒートシンクの効率を向上させるために、冷却フランジ28を設けることができる。
図1に示した実施形態と同様に、冷却導管24及び26は、好適には当該ヒートシンク22を冷却すべく、冷却流体、例えば、水を提供するように配置される。
【0025】
図1及び
図2に示すように、超低周波音の発生装置50が設けられており、超低周波音の発生装置50は、第1共振器導管52を介して冷却箱16に連結された第1超低周波音鼓動装置30を有し、第1超低周波音鼓動装置30は、第1共振器導管52の第1外端部54に配置される。超低周波音の発生装置50には、第2共振器導管56を介して冷却箱16に連結された第2超低周波音鼓動装置32が更に配置されており、第2超低周波音鼓動装置56は、第2共振器導管56の第2外端部58に配置される。第1共振器導管52及び第2共振器導管56は、
図2に示したように、第1共振器導管52及び第2共振器導管56の全長に沿って実質的に同一断面の管状にできる。しかしながら、上述の通路は、様々な断面にできる。ある断面積から別の断面積への移行部は、ディフューザと称される場合がある。図示した
図1の実施形態においては、上述のディフューザは、第1共振器導管52及び第2共振器導管56の各々の外端部54及び58、並びに、共振器導管52及び56と冷却箱16の限定空間14との間の移行部60及び62の双方に配置される。管状の共振器導管52及び56は、屈曲していてもよいし、直管形状であってもよい。
図1及び
図2の実施形態、特に
図2の矢印において示されるように、律動的な冷却空気CAが、冷却すべき物品の供給方向FDに対して概ね横切る方向に、特に物品の上方及び下方にわたって移動する。
【0026】
図4~9においては、3つの異なる型式の鼓動装置が示されている。超低周波音鼓動装置30及び32は、P型の鼓動装置又はS型の鼓動装置にできる。P型の鼓動装置は、空気の律動を送入する鼓動装置であり、S型の鼓動装置は、空気の律動を送出又は放出する鼓動装置である。空気の律動を交互に送入又は送出する鼓動装置は、PS型鼓動装置と称される。1つのP型鼓動装置及び1つのS型鼓動装置が、システムの対向する端部に配置されるか、あるいはPS鼓動装置が双方の端部に配置されるかのいずれかである。対向する端部の鼓動装置は、定在波の音波が鼓動装置の間に留保可能なように、相互に同期の必要がある。通常、当該同期は、定在波の音波によって規制される自然な速度で鼓動装置を揺動させ、また自然な速度の方向に力を印加することにより動きを増進させることで実現される。
【0027】
図4においては、第1型式のPS型鼓動装置30’が示されている。シリンダの内部を前後に移動するピストン70は、PS型鼓動装置として作用するように配置されている。図示した鼓動装置30’は、管状の第1共振器導管52の第1外端部54において、導管72に連結される。好適には、対応するPS型鼓動装置は、逆位の端部に、管状の第2共振器導管7の第2外端部5において設けられる。対向するPS型鼓動装置は、PS型鼓動装置の他方が、最外側の位置にある場合に、PS型鼓動装置の一方が最内側の位置にあるように、相互の位相が不一致となるように配置される。相互作用により、鼓動装置は、相互に対して半波長分、位相が不一致となる。上述によると、管状の共振器導管52及び56の各々の外端部54及び58の間にそれぞれ、半波長の定在波が生成される。
【0028】
図5においては、代替の鼓動装置30’’が示されており、当該鼓動装置は、導管72を介した第1共振器導管52の第1外端部54、及び導管74を介した第2共振器導管56の第2外端部58の双方に連結される。上述の構成においては、ピストン70は、共振器導管の一方の外端部54又は58に圧力を供給し、同時に、他方の共振器導管の外側部58又は54から圧力を解放する。
【0029】
図6~9においては、強度の高い音波を生成する特有の型式の鼓動装置30’’’が様々なモードで示されている。鼓動装置30’’’は、ばねで付勢されたピストン80を含む。鼓動装置30’’’は、弁入口開口部84を有する入口チャンバ82と、弁出口開口部88を有する出口チャンバ86とを含む。ばねで付勢されたピストン80は、弁入口開口部84及び弁出口開口部88に面するように配置されたピストンポート90を有する。入口チャンバ82は、連続式の圧力源(図示せず)に連結され、出口チャンバ86は連続式の負圧源(図示せず)に連結される。
【0030】
ばねで付勢されたピストン80が移動すると、ピストンポート90は、弁入口開口部84を介して入口チャンバ82をピストン80の内部に、あるいは、弁出口開口部88を介して出口チャンバ86をピストン80の内部に交互に連結する。弁入口開口部84と入口チャンバ82との間のピストン80の内部への連結は、ばねで付勢されたピストン80の位置によって定まる。弁入口開口部84及び弁出口開口部88のうちの1つのみが、ピストンポート90と一致するように配置される。
【0031】
図6においては、ばねで付勢されたピストン80は、最内側の位置にあり、ばねで付勢されたピストン80を保持するばね92は、最も圧縮された状態である。上述の位置では、ばね92は、第1共振器導管52において、冷却箱16を経由して、第2の共振器導管56を通る律動を生成すべく、ピストン80を内部に押下して、第1の共振器導管52の外端部54において空気を圧縮するように、ばねで付勢されたピストン80に作用する。
【0032】
図6に示される位置では、ピストンポート90が弁入口ポート84と一列に配置されて、入口チャンバ82をピストン80の内側に接続し、共振器導管内の圧力を更に増加させ、前記共振器導管内の定在波上に構築する。
【0033】
図7に示される位置においては、ピストン80は、最外側の位置から移動し、共振器導管において空気を更に圧縮すべく、共振器導管の内側への移動が更に加速する。ピストンポート90は、少なくとも部分的に弁入口ポート84に沿って配置されていて、共振器導管における圧力を更に増大すべく、入口チャンバ82をピストン80の内部に連結する。
【0034】
図8に示す位置においては、ピストン80の移動を減速させるべく、ピストン80は、ばね92が外側に、すなわちピストン80の移動と逆方向に作用し始める位置に移動している。更に、空気がピストン80の内側から弁出口ポート88を介して出口チャンバに吸い込まれ、負圧源(図示せず)に吸い込まれるように、ばねが付勢されない位置を横切るのと実質的に同一の位置で、ピストンポート90は、弁入口ポート84との連結から弁出口ポート88との連結へと移る。
【0035】
図9に示す位置においては、ピストン80は、最内側の位置まで移動しており、当該位置から戻って、外側に移動し始める。ばね92は伸長され、共振器導管において圧力を緩和すべくピストン80を外側に引っ張るように作用し、空気がピストン80の内側から出口チャンバ86に向かって吸い込まれるように、ピストンポート90は弁出口ポート88に連結されるため、作用が増大する。
【0036】
図9に示される位置から、ピストン80は、
図8及び
図7にそれぞれ示される位置を介して、
図6に示される位置に向かって逆方向に移動する。したがって、鼓動装置30’’’及び共振器導管の逆位の端部における対応する鼓動装置によって、半波長の定在波が生成及び留保されるように鼓動装置30’’’は自己調整を行い、他の鼓動装置は、第1鼓動装置30’’’と位相が半波長ずれるように自己調整が行われる。
【0037】
図1及び
図2に示すように、第1共振器導管52及び第2共振器導管56は、好適には同様の長さであり、定在波は、第1超低周波音鼓動装置30と第2超低周波音鼓動装置32との間に生成され、第1超低周波音鼓動装置30は、半波長が第1共振器導管52及び第2共振器導管56と冷却箱16とを組み合わせた長さに対応する定在波を生成するように配置される。したがって、第1鼓動装置30及び第2鼓動装置32は、相互に位相が半波長ずれている。
【0038】
定在波の波長は、上述から明白なように、システムの長さ、すなわち、第1鼓動装置30と第2鼓動装置32との間の長さに各々が依存する。好適には、周波数は、50Hz以下であり、上述により、波長が6.8メートルの音を産生するが故に、鼓動装置の間に3.4メートルの長さが求められる。しかしながら、冷却効果は、更に低い周波数で増大し、特定の実施形態においては、約20Hzの周波数の音波を産生する鼓動装置の間の長さは約8.5メートルである。非常に高い冷却効率を達成するために、周波数は、20Hz以下、好適には16Hzに維持できる。そのような非常に高い冷却効率を得るために、第1共振器導管6及び第2共振器導管7と冷却箱11との組み合わせの長さは、約8.5メートル以上にすべきである。
【0039】
本開示の超低周波音の冷却装置は、
図2に示したように、保護用のガスのための1以上の入口100を更に有することができる。一実施形態によると、入口は、共振器導管52及び56の一方又は双方に配置される。入口100は、導管102に連結されたノズルとして配置可能であり、当該ノズルは更に保護用のガス供給源104に連結され、ガスは、共振器導管52及び56に供給又は注入できる。ガスの種類は、好適には上述の環境と化学反応しない不活性ガスにできる。最も用いられるガスの1つは、費用効率が高く、環境に対して無害な窒素である。しかしながら、他のガス又はガスの混合物は、同一の目的のために用いることができることは理解すべきである。例えば、冷却工程に有益となりうる熱伝達特性の増大を呈するガス及びその混合物は可能である。更に、粒子捕捉器106が、共振器導管52又は56に配置されうる。粒子捕捉器106は、冷却箱の内部において処理及び冷却された部品由来の任意の粒子が、鼓動装置に入るのを防止可能である。粒子捕捉器は好適には、真空供給源108に、好適な導管110を介して連結された一部の種類のノズル装置である。
【0040】
図10は、好適な解決策による本方法を行うための製造ラインを示している。素材は、亜鉛層若しくはアルミニウム層、又はアルミニウムシリコーン層などの保護層で事前に被覆される。製造ラインは、例えば、加熱要素が設けられた炉などの加熱装置201を備える。炉は、好適には加熱すべき金属素材用の入口と、加熱済みの素材用の出口とを有する。一般的には、金属素材は、800~900℃、好適には890℃に加熱される。次いで、素材は、搬送手段205によって、炉201の出口から上述のような機能のある冷却装置202に搬送される。
【0041】
冷却装置202においては、加熱済みの被覆された素材は、保護被膜の融点未満の温度に冷却される。Zn及びAl/AlSiの被覆については、後の成形工程での液体金属脆化を回避すべく、温度は好適には、550℃未満にすべきである。上述の点については、冷却装置には、好適には金属素材の表面温度を測定可能なセンサが配置される。必要に応じて、冷却装置には、金属素材を所望の温度まで冷却可能にすべく、連続して配置される多数の冷却箱が設けられうる。
【0042】
次いで、冷却済みの金属素材は、コンベア手段205によって成形装置203に搬送される。成形装置203は、図示の実施形態においては、形状が相補的な2つの半分の型を有する押圧機にできる。金属素材は、半分の型の間に配置され、半分の型は最終部品を成形すべく、特定の時間にわたり共に押圧される。押圧時間中に、部品は冷却及び硬化される。
【0043】
更なる利点は、金属素材が、空気硬化性を示す鋼合金を含む場合に得られる。次いで、金属素材は、工程204において、特定の温度まで冷却され、成形装置において押圧されて除去され、最終冷却中に周囲空気で硬化される。上述は、成形装置において冷却されながら硬化されるような、例えば、自動車産業において通常用いられる従来の鋼合金とは対照的である。更に、本実施の形態の押圧装置におけるサイクル時間は、従来の鋼合金と比較して大幅に短縮される。
【0044】
押圧については、成形装置203は、多数のいわゆる副次的な装置を含むことができ、各々の副次的な装置は、最終形態ではない成形を行う。上述のようにして、素材は、副次的装置による多段階成形によって、最終部品に成形される。更に、当該副次的な装置は、部品に、切欠き及び穴を形成するための切削工具及び打抜き工具を備えることができる。
【0045】
上述され、図面に示された実施形態は、本開示の非限定的な例示としてのみ解釈すべきであり、特許請求の範囲内で、多数の方法において改良可能なことは理解すべきである。
【国際調査報告】