(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】超音波外科用システムを制御するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/32 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
A61B17/32 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022540842
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 US2021012062
(87)【国際公開番号】W WO2021146069
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512269650
【氏名又は名称】コヴィディエン リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, ジン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, クリストファー ティー.
(72)【発明者】
【氏名】チューディ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ディマン, アンジャリ
(72)【発明者】
【氏名】ワム, ロバート エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】グッドマン, ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン トル, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー, クリステン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ17
4C160JJ46
4C160MM33
(57)【要約】
超音波外科用システムを制御するためのコンピュータで実施される方法は、超音波発生器と、超音波トランスデューサと、超音波ブレードと、を含む超音波外科用システムを作動させることを含む。本方法は、データを超音波外科用システムから収集することと、データを機械学習アルゴリズムに通信することと、データに基づいて血管径を決定することと、機械学習アルゴリズムを使用することと、決定された血管径を、超音波発生器と関連付けられた計算装置に通信することと、作動された超音波外科用システムを血管径に従って制御することと、をさらに含む。データには、作動された超音波外科用システムに関連する電気的パラメータが含まれ得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波外科用システムを制御するためのコンピュータで実施される方法であって、
超音波発生器と、超音波トランスデューサと、超音波ブレードと、を備える超音波外科用システムを作動させることであって、前記超音波外科用システムが作動されると、前記超音波発生器は、前記超音波トランスデューサを駆動するための駆動信号を作り出し、次に、前記超音波ブレードと接触している血管を治療するための、前記超音波ブレードに伝達される超音波エネルギーを作り出し、前記血管が、血管サイズを画定する、作動させることと、
データを前記超音波外科用システムから収集することであって、前記データが、前記作動された超音波外科用システムに関連する少なくとも1つの電気的パラメータを含む、収集することと、
前記データを少なくとも1つの機械学習アルゴリズムに通信することと、
前記少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを使用して、前記データに基づいて前記血管サイズを決定することと、
前記決定された血管サイズを、前記超音波発生器と関連付けられた計算装置に通信することと、
前記血管サイズに従って、前記作動された超音波外科用システムを制御することと、を含む、コンピュータで実施される方法。
【請求項2】
前記作動された超音波外科用システムを制御することが、
前記超音波発生器によって、前記駆動信号の生成をいつ停止するかを決定することであって、前記駆動信号が、前記血管を封止するためのものである、決定することと、
前記決定に基づいて、前記超音波発生器によって、前記血管を切断するための第2の駆動信号を生成することと、を含む、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項3】
前記超音波外科用システムからの前記データが、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの機械学習アルゴリズムが、ニューラルネットワークを含む、請求項1に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項5】
前記ニューラルネットワークが、時間畳み込みネットワークまたはフィードフォワードネットワークのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項6】
前記方法が、超音波外科用システムデータにアクセスすること、またはデータのパターンを識別することのうちの1つ以上を使用して、前記ニューラルネットワークを訓練することをさらに含む、請求項4に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項7】
前記方法が、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtのうちの少なくとも1つを含む訓練データを使用して、前記ニューラルネットワークを訓練することをさらに含む、請求項4に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項8】
前記訓練することが、教師あり訓練、教師なし訓練、または強化学習のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項9】
超音波外科的処置を制御するためのシステムであって、
超音波発生器と、
超音波トランスデューサと、
超音波ブレードであって、前記超音波外科用システムが作動されると、前記超音波発生器が、前記超音波トランスデューサを駆動するための駆動信号を作り出し、次に、前記超音波ブレードと接触している血管を治療するための、前記超音波ブレードに伝達される超音波エネルギーを作り出し、前記血管が、血管サイズを画定する、超音波ブレードと、
1つ以上のプロセッサと、
前記1つ以上のプロセッサに結合された少なくとも1つのメモリであって、命令を記憶している、少なくとも1つのメモリと、を備え、前記命令が、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、前記システムに、
作動されたときに前記超音波外科用システムに関連する少なくとも1つの電気的パラメータを含むデータを収集することと、
前記データを少なくとも1つの機械学習アルゴリズムに通信することと、
前記少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを使用して、前記データに基づいて前記血管サイズを決定することと、
前記決定された血管サイズを、前記超音波発生器と関連付けられた計算装置に通信することと、
前記血管サイズに従って、前記超音波外科用システムの作動を制御することと、を行わせる、システム。
【請求項10】
前記作動された超音波外科用システムを制御することが、
前記超音波発生器によって、前記血管を封止するための第1の駆動信号の生成をいつ停止するかを決定することと、
前記決定に基づいて、前記超音波発生器によって、前記血管を切断するための第2の駆動信号を生成することと、を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記データを前記超音波外科用システムから収集することが、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtのうちの少なくとも1つを測定することを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの機械学習アルゴリズムが、ニューラルネットワークを含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記ニューラルネットワークが、時間畳み込みネットワークまたはフィードフォワードネットワークのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記命令が、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、前記システムに、超音波外科用システムデータにアクセスすること、またはデータのパターンを識別することのうちの1つ以上を使用して、前記ニューラルネットワークを訓練することをさらに行わせる、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記命令が、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、前記システムに、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtのうちの少なくとも1つを含む訓練データを使用して、前記ニューラルネットワークを訓練することをさらに行わせる、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記訓練することが、教師あり訓練、教師なし訓練、または強化学習のうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
コンピュータに方法を実行させるプログラムを記憶する非一時的な記憶媒体であって、前記方法が、
超音波発生器と、超音波トランスデューサと、超音波ブレードと、を備える超音波外科用システムを作動させることであって、前記超音波外科用システムが作動されると、前記超音波発生器が、前記超音波トランスデューサを駆動するための駆動信号を作り出し、次に、前記超音波ブレードと接触している血管を治療するための、前記超音波ブレードに伝達される超音波エネルギーを作り出し、前記血管が、血管サイズを画定する、作動させることと、
データを前記超音波外科用システムから収集することであって、前記データが、前記作動された超音波外科用システムに関連する少なくとも1つの電気的パラメータを含む、収集することと、
前記データを少なくとも1つの機械学習アルゴリズムに通信することと、
前記少なくとも1つの機械学習アルゴリズムを使用して、前記データに基づいて前記血管サイズを決定することと、
前記決定された血管サイズを、前記超音波発生器と関連付けられた計算装置に通信することと、
前記血管サイズに従って、前記作動された超音波外科用システムを制御することと、を含む、非一時的な記憶媒体。
【請求項18】
前記作動された超音波外科用システムを制御することが、
前記超音波発生器によって、前記駆動信号の生成をいつ停止するかを決定することであって、前記駆動信号が、前記血管を封止するためのものである、決定することと、
前記決定に基づいて、前記超音波発生器によって、前記血管を切断するための第2の駆動信号を生成することと、を含む、請求項17に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項19】
前記超音波外科用システムからの前記データが、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtのうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のコンピュータで実施される方法。
【請求項20】
前記少なくとも1つの機械学習アルゴリズムが、ニューラルネットワークを含む、請求項17に記載のコンピュータで実施される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、電気外科的処置に関し、特に超音波外科用システムを制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外科用器具は、組織構造に対して様々な機能を行うために利用される。そのような外科用器具の一例は、組織を治療するために、超音波エネルギー、すなわち超音波振動を利用する超音波外科用器具である。より具体的には、典型的な超音波外科用器具は、超音波周波数で伝達される機械的振動エネルギーを利用して、組織を凝固させる、焼灼する、融合する、封止する、切断する、乾燥させる、放電治療する、またはその他の方法で治療する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書で使用するとき、「遠位」という用語は、ユーザからより遠くにあると説明される部分を指し、一方で、「近位」という用語は、ユーザのより近くにあると説明される部分を指す。さらに、矛盾しない程度に、本明細書に記載される態様のいずれかを、本明細書に記載される他の態様のいずれかまたはすべてと併せて使用することができる。
【0004】
本開示の態様によれば、外科用システムを制御するためのコンピュータで実施される方法が提供される。コンピュータで実施される方法は、超音波発生器と、超音波トランスデューサと、超音波ブレードと、を備える、超音波外科用システムを作動させることを含む。本方法は、作動された超音波外科用システムに関連する電気的パラメータを含むデータを超音波外科用システムから収集することをさらに含む。本方法は、データを機械学習アルゴリズムに通信することと、機械学習アルゴリズムを使用したデータに基づいて、血管サイズを決定することと、決定された血管サイズを、超音波発生器と関連付けられた計算装置に通信することと、血管サイズに従って、作動された超音波外科用システムを制御することと、をさらに含む。超音波外科用システムが作動されると、超音波発生器は、超音波トランスデューサを駆動するための駆動信号を作り出し、次に、超音波ブレードと接触している血管を治療するための、超音波ブレードに伝達される超音波エネルギーを作り出す。
【0005】
本開示の一態様では、作動された超音波外科用システムを制御することは、超音波発生器によって、駆動信号の生成をいつ停止するかを決定することを含み、駆動信号は、血管を封止するためのものである。この決定に基づいて、超音波発生器によって、血管を切断するための第2の駆動信号が生成される。
【0006】
本開示の別の態様では、超音波外科用システムからのデータは、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtを含み得る。
【0007】
本開示の一態様では、機械学習アルゴリズムは、ニューラルネットワークを含み得る。
【0008】
本開示のさらに別の態様では、ニューラルネットワークは、時間畳み込みネットワークまたはフィードフォワードネットワークを含み得る。
【0009】
本開示のさらなる態様では、コンピュータで実施される方法は、超音波外科用システムデータにアクセスするか、またはデータのパターンを識別することによって、ニューラルネットワークを訓練することをさらに含み得る。
【0010】
本開示の一態様では、コンピュータで実施される方法は、訓練データを使用するようにニューラルネットワークを訓練することをさらに含み得、この訓練データは、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtを含み得る。
【0011】
本開示のさらなる態様では、ニューラルネットワークを訓練することは、教師あり訓練、教師なし訓練、または強化学習を含み得る。
【0012】
本開示の態様によれば、超音波外科的処置を制御するためのシステムが提示される。このシステムは、超音波発生器と、超音波トランスデューサと、超音波ブレードと、プロセッサと、プロセッサに結合されたメモリと、を備える。超音波外科用システムが作動されると、超音波発生器は、超音波トランスデューサを駆動するための駆動信号を作り出し、次に、超音波ブレードと接触している血管を治療するための、超音波ブレードに伝達される超音波エネルギーを作り出す。プロセッサに結合されたメモリは、命令を含み、命令が、プロセッサによって実行されたときに、システムに、データを超音波外科用システムから収集することと、データを機械学習アルゴリズムに通信することと、データに基づいて、機械学習アルゴリズムによって血管サイズを決定することと、決定された血管サイズを計算装置に通信することと、血管サイズに従って、作動された超音波外科用システムを制御することと、を行わせる。データには、作動された超音波外科用システムに関連する電気的パラメータが含まれる。計算装置は、超音波発生器と関連付けられている。
【0013】
本開示のさらなる態様では、作動された超音波外科用システムを制御することは、超音波発生器によって、血管を封止するための第1の駆動信号の生成をいつ停止するかを決定することと、この決定に基づいて、超音波発生器によって、血管を切断するための第2の駆動信号を生成することと、を含み得る。
【0014】
本開示のまたさらなる態様では、データを超音波外科用システムから収集することは、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtを測定することを含み得る。
【0015】
本開示のさらに別の態様では、機械学習プログラムは、ニューラルネットワークを含み得る。
【0016】
本開示のさらなる態様では、ニューラルネットワークは、時間畳み込みネットワークまたはフィードフォワードネットワークを含み得る。
【0017】
本開示のまたさらなる態様では、命令は、プロセッサによって実行されたときに、システムに、超音波外科用システムデータにアクセスするか、またはデータのパターンを識別することによって、ニューラルネットワークを訓練することをさらに行わせ得る。
【0018】
本開示のさらに別の態様では、命令は、プロセッサによって実行されたときに、システムに、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtを含み得る訓練データを使用するようにニューラルネットワークを訓練することをさらに行わせ得る。
【0019】
本開示のさらなる態様では、ニューラルネットワークの訓練は、教師あり訓練、教師なし訓練、または強化学習を含み得る。
【0020】
本開示の態様によれば、プログラムを記憶し、コンピュータに方法を実行させる非一時的な記憶媒体が提示される。本方法は、超音波外科用システムを作動させることを含む。超音波外科用システムは、超音波発生器と、超音波トランスデューサと、超音波ブレードと、を備える。本方法は、データを超音波外科用システムから収集することと、データを機械学習アルゴリズムに通信することと、データに基づいて、血管サイズを決定することと、機械学習アルゴリズムを使用することと、決定された血管サイズを、超音波発生器と関連付けられた計算装置に通信することと、血管サイズに従って、作動された超音波外科用システムを制御することと、をさらに含む。超音波外科用システムが作動されると、超音波発生器は、超音波トランスデューサを駆動するための駆動信号を生成し、次に、超音波ブレードと接触している血管を治療するための、超音波ブレードに伝達される超音波エネルギーを生成する。データには、作動された超音波外科用システムに関連する電気的パラメータが含まれる。
【0021】
本開示の一態様では、作動された超音波外科用システムを制御することは、超音波発生器によって、駆動信号の生成をいつ停止するかを決定することを含み、駆動信号は、血管を封止するためのものである。この決定に基づいて、超音波発生器によって、血管を切断するための第2の駆動信号が生成される。
【0022】
本開示の別の態様では、超音波外科用システムからのデータは、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtを含み得る。
【0023】
本開示の一態様では、機械学習アルゴリズムは、ニューラルネットワークを含み得る。
【0024】
本開示のさらに別の態様では、ニューラルネットワークは、時間畳み込みネットワークまたはフィードフォワードネットワークを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本開示の様々な態様および特徴を、図面を参照しながら、本明細書で説明する。
【0026】
【
図1】本開示に従って提供される、オンボード発生器、電源、およびトランスデューサを有する超音波外科用器具を含む超音波外科用システムの斜視図である。
【
図2】本開示による、
図1の外科用システムの発生器のブロック図である。
【
図3】本開示に従って提供され、本開示による、
図1の外科用システムとともに使用するように構成された、コントローラのブロック図である。
【
図4】本開示による、機械学習アルゴリズムの論理図である。
【
図6】本開示による、
図1の外科用システムの発生器のエネルギープロファイルの図である。
【
図7】本開示による、訓練なしの外科用システムの作動時間と血管径との図である。
【
図8】本開示による、血管径を推定するための方法のフローチャートである。
【
図9】本開示に従って訓練された外科用システムの実際の血管径と予測された血管径との図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
組織封止は、組織を加熱して、組織中のコラーゲンおよびエラスチンを液化させ、それにより、対向する組織構造間の境界を大幅に低減させた溶融質量に再形成する。手術部位の組織の不要な損傷または隣接組織の副次的損傷を生じさせることなく組織封止を達成するために、組織へのエネルギーの印加を制御し、それによって、封止プロセス中に組織の温度を制御することが必要である。
【0028】
組織へのエネルギーの印加を制御して、組織封止を達成するために、血管サイズの情報をリアルタイムで利用することに関して、測定データに基づいて封止品質を改善するために、組織封止プロセスの初期段階中に血管サイズを決定することが望ましくなる。下で詳述するように、これは、外科用システムから利用可能なデータを利用し、機械学習アルゴリズムを動作させて、そのデータに基づいて血管サイズを推定することによって達成され得る。次いで、推定された血管サイズは、それに従って組織へのエネルギーの印加を制御する際に使用するために、コントローラに送り返され得る。血管サイズには、血管径、血管質量、組織の表面積、および/または組織質量が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書のシステムおよび方法は、血管径の推定に限定されない。様々な実施形態では、システムおよび方法は、血管質量(または組織質量)を推定し、次いで、血管質量(または組織質量)を利用して、組織タイプを検出および調整することができる。例えば、組織タイプは、血管および非血管の両方、動脈と静脈などを含み得る。様々な実施形態では、システムは、薄い組織および厚い組織、小さな血管および大きな血管(静脈、動脈)、肺血管系などを調整し得る。
【0030】
下で詳述するように、本開示のシステムおよび方法は、例えば、後述する超音波外科用システムなどの、組織を治療するための任意のタイプの外科用システムに組み込まれ得る。例示を目的とし、かつ決して添付の特許請求の範囲を限定することなく、組織へのエネルギーの印加を制御する際の使用において血管径を推定するためのシステムおよび方法は、超音波外科用システムの文脈で本開示に記載されている。
【0031】
「人工知能」、「データモデル」、または「機械学習」という用語は、他のデータ科学および人工科学技術の中でも、限定されるものではないが、ニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、リカレントニューラルネットワーク(RNN)、敵対的生成ネットワーク(GAN)、ベイジアン回帰、ナイーブベイズ、最近傍、最小二乗法、平均、およびサポートベクター回帰を含み得る。
【0032】
「アプリケーション」という用語は、ユーザの利益のために特定の機能、タスク、またはアクティビティを行うように設計されたコンピュータプログラムを含み得る。アプリケーションは、例えば、スタンドアロンプログラムとして、またはウェブブラウザ内でローカルまたはリモートで動作するソフトウェア、または当業者によってアプリケーションであると理解される他のソフトウェアを指し得る。アプリケーションは、コントローラ、例えば、コントローラ500(
図1)で、または例えば、モバイル装置、IoT装置、もしくはサーバシステムを含むユーザ装置で動作させることができる。
【0033】
ここで
図1を参照すると、本開示に従って提供される超音波外科用システムは、一般にハンドルアセンブリ412、細長い本体部分414、およびツールアセンブリ416を含む超音波外科用器具410を備える。ツールアセンブリ416は、ブレード432およびクランプ部材458を含む。ハンドルアセンブリ412は、電池アセンブリ418と、超音波発生器470および超音波トランスデューサ480を含む、超音波トランスデューサおよび発生器アセンブリ(「TAG」)420とを支持するが、発生器470および超音波トランスデューサ80は、代替として別個の構成要素であってもよい。ハンドルアセンブリ412は、回転可能なノズル422と、作動ボタン424と、クランプトリガ426と、をさらに含む。電池アセンブリ418およびTAG420は、ハンドルアセンブリ412に各々解放可能に固定されており、電池アセンブリ418およびTAG420を除いて、装置全体の廃棄を容易にするためにハンドルアセンブリ412から取り外し可能である。しかしながら、超音波外科用器具410の構成要素のいずれかまたはすべては、使い捨ての単回使用の構成要素または滅菌可能な複数回使用の構成要素をとして構成されることが想到される。さらに、超音波外科用器具410は、そのようなオンボードの構成要素を有するのではなく、リモート発生器および/または電源に接続するように構成され得る。
【0034】
図1を引き続き参照すると、細長い本体部分414は、外側シャフトアセンブリ415と、ハンドルアセンブリ412から外側シャフトアセンブリ415を通ってツールアセンブリ416まで遠位に延在している導波路(図示せず)と、を含む。導波路の遠位端は、ブレード432を画定する。導波路の近位端は、TAG420の超音波トランスデューサ480と係合するように構成されている。導波路および外側シャフトアセンブリ415は、回転可能なノズル422に回転可能に結合され、その結果、ノズル422の回転は、外側シャフトアセンブリ415および導波路の対応する回転に影響を与える。外側シャフトアセンブリ415は、いずれかの構成で互いに周りに配置された支持管およびアクチュエータ管を含む。
【0035】
外側シャフトアセンブリ415のアクチュエータ管は、外側シャフトアセンブリ415の支持管に対して動いて、クランプ部材458がブレード432から離間している開位置と、クランプ部材458がブレード432に対して近似されている閉位置との間で、クランプ部材458の旋回を可能にするように構成されている。クランプ部材458は、クランプトリガ426の作動に応答して、開位置と閉位置との間で動かされる。
【0036】
引き続き
図1を参照すると、作動ボタン424は、ハンドルアセンブリ412上で支持されている。作動ボタン424が適切な方法で作動されると、作動ボタン424の様式に応じて、下にある2モードスイッチアセンブリが作動されて、「低」電力モードまたは「高」電力モードのいずれかで電池アセンブリ418とTAG420との間の通信をもたらす。
【0037】
上記のように、TAG420は、発生器470および超音波トランスデューサ480を含む。発生器470は、メモリを有するTAGマイクロコントローラ500を収容する外部ハウジング460を含む。TAG420は、その上に超音波トランスデューサ480を支持している。超音波トランスデューサ480は、圧電スタックを含み得、導波路の近位端に係合するように構成された前方に延在しているホーンを画定する。TAG420に関連する一連の接点(明示的に示されていない)は、TAG420と、電池アセンブリ418と、2モードスイッチアセンブリと間の電力および/または制御信号の通信を可能にするが、それらの間の非接触通信もまた想到される。
【0038】
一般に、使用中、電池アセンブリ418およびTAG420がハンドルアセンブリ412および導波路にそれぞれ取り付けられ、超音波外科用器具410が作動されると、電池アセンブリ418は、TAG420の発生器470に電力を提供し、次に、この電力を使用して、TAG420の超音波トランスデューサ480にAC信号を印加する。次に、超音波トランスデューサ480は、AC信号を高周波の機械的運動に変換する。超音波トランスデューサ480によって作り出されたこの高周波の機械的運動は、導波路に沿ってブレード432に伝達され、組織を治療するために、ブレード432とクランプ部材458とに隣接するか、またはそれらの間にクランプされる組織に、そのような超音波エネルギーを印加する。
【0039】
ここで
図2を参照すると、本開示による、
図1の外科用システムの発生器470のブロック図が示されている。様々な実施形態では、発生器470は、複数のセンサ、例えば、電流センサおよび電圧センサを含む、センサモジュール444を含み得る。発生器470の様々な構成要素、すなわち、センサモジュール444のAC出力段440ならびにAC電流および電圧センサは、プリント回路基板(PCB)上に配置され得る。センサモジュール444のAC電流センサは、超音波トランスデューサ480(
図1)上のアクティブ端子に結合され得、AC出力段440によって供給されるAC電流の測定値を提供する。実施形態では、センサモジュール444のAC電流センサは、超音波トランスデューサ480(
図1)上の戻り端子に結合され得る。センサモジュール444のAC電圧センサは、超音波トランスデューサ480(
図1)上のアクティブ端子および戻り端子に結合され、AC出力段440によって供給されるAC電圧の測定値を提供する。
【0040】
センサモジュール444のAC電流および電圧センサは、AC電圧および電流信号を感知し、感知されたAC電圧および電流信号を発生器470のコントローラ500にそれぞれ提供し、次いで、感知されたAC電圧および電流信号に応答して、電池アセンブリ418および/またはAC出力段440の出力を調整し得る。コントローラ500は、下でより詳細に説明されている(
図3参照)。
【0041】
センサモジュール444からの感知された電圧および電流は、アナログデジタル変換器(ADC)442に送られる。ADC442は、感知された電圧および電流をサンプリングして、AC出力段440の電圧および電流のデジタルサンプルを取得する。デジタルサンプルは、コントローラ500によって処理されて、AC出力段440のDC/ACインバータを制御するように制御信号を生成するために使用される。ADC442は、さらなる処理のために、デジタルサンプルをコントローラ500に通信する。
【0042】
様々な実施形態では、コントローラ500は、電圧、電流、電力、周波数、速度、またはトランスデューサに印加されるAC電圧(トランスV)、トランスデューサに印加されるAC電流(トランスI)、トランスVと位相基準信号との間の位相角(トランスV位相)、モーショナルフィードバックブリッジ(MFB)、インピーダンス位相(Z_ph)、もしくはdf/dtなどのこれらの信号から導出された任意のパラメータを含む、使用中の発生器470に関連するデータを収集し得る。例えば、
図1の超音波外科用システムに関して、超音波外科用システムを使用して、組織に超音波エネルギーを印加して組織を治療し得る。より具体的には、
図1をさらに参照すると、組織(図示せず)は、ブレード432とクランプ部材458との間にクランプされ、AC信号は、TAG420の超音波トランスデューサ480に印加され、次に、AC信号を高周波の機械的運動に変換する。超音波トランスデューサ480によって作り出されたこの高周波の機械的運動は、導波路に沿ってブレード432に伝達され、そこで、高周波運動は、ブレード432とクランプ部材458との間にクランプされた組織を治療するために使用される。
【0043】
そのような組織治療の間、発生器470のセンサ回路、例えば、センサモジュール444は、組織、システム、および/または、例えば、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、および/またはdf/dtなどのエネルギー(超音波エネルギー)のパラメータを感知し得る。これは、スナップショットとして、または時間間隔にわたって発生し得、組織治療の初めに、例えば、組織治療の開始から250ミリ秒以内に決定され得る。感知データには、例えば、電力が超音波トランスデューサ480に印加された時間が含まれ得る。センサモジュール444は、システムからのデータ、例えば、超音波トランスデューサ480に送達されている駆動信号の電圧および/または電流を測定し得る。下で詳述するように、センサ回路によって得られたこの感知データは、さらなる処理のために、(実施形態では、ADCの442を介して)コントローラ500にリレーされる。
【0044】
様々な実施形態では、コントローラ500は、記憶された設定およびパラメータを、機械学習アルゴリズムの訓練データとして使用する。様々な実施形態では、機械学習アルゴリズムを訓練することは、発生器470の外部で計算装置によって行われ得、結果として生じるアルゴリズムは、発生器470のコントローラ500に通信され得る。様々な実施形態では、コントローラ500は、組織封止アルゴリズムを作成する、例えば、切り替える、確認する、修正する、生成するなどの際に使用するために、機械学習アルゴリズムから出力された、決定された血管径を、例えば、コントローラ500の計算装置に通信する。様々な実施形態では、コントローラ500は、発生器470上で、機械学習アルゴリズムの出力に基づいて、(発生器470から超音波トランスデューサ480への駆動信号を調整することによって)封止サイクルを制御するアルゴリズムを調整する。様々な実施形態では、機械学習アルゴリズムネットワークは、教師あり学習、教師なし学習、または強化学習を使用することができる。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、1つ以上の完全に接続された層を備えた時間畳み込みネットワーク、またはフィードフォワードネットワークを含み得る。様々な実施形態では、訓練は、別個のシステムで行われ得る。様々な実施形態では、コントローラ500は、機械学習アルゴリズムの記憶された設定および感知されたパラメータを使用して、血管径を推論することができる。
【0045】
図3を参照すると、コントローラ500が示されている。コントローラ500は、揮発性タイプのメモリ、例えば、RAM、または不揮発性タイプのメモリ、例えば、フラッシュ媒体、ディスク媒体などであってもよいコンピュータ可読記憶媒体もしくはメモリ530に接続されたプロセッサ520を含む。様々な実施形態では、プロセッサ520は、限定されるものではないが、デジタル信号プロセッサ、マイクロプロセッサ、ASIC、グラフィックス処理ユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または中央処理装置(CPU)などの別のタイプのプロセッサであってもよい。様々な実施形態では、プロセッサとは対照的に、メミスターとして、化学的に、または他の推論計算として実装される重みを有し得る、ネットワーク推論もまたシステム内で達成され得る。
【0046】
様々な実施形態では、メモリ530は、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリ、磁気ディスクメモリ、固体メモリ、光学的ディスクメモリ、および/または別のタイプのメモリであり得る。様々な実施形態では、メモリ530は、コントローラ500とは別個とすることができ、回路基板の通信バスを通して、および/またはシリアルATAケーブルもしくは他のタイプのケーブルのなどの通信ケーブルを通して、プロセッサ520と通信することができる。メモリ530は、コントローラ500を動作させるためにプロセッサ520によって実行可能である、コンピュータ可読命令を含む。様々な実施形態では、コントローラ500は、他のコンピュータまたはサーバで通信するネットワークインターフェース540を含み得る。実施形態では、データを記憶するために、ストレージ装置510が使用され得る。様々な実施形態では、コントローラ500は、1つ以上のFPGA550を含み得る。下で詳述するように、本開示に従って提供されるものなどの様々な機械学習アルゴリズムを実行するために、FPGA550が使用され得る。
【0047】
メモリ530は、感知データを、例えば、ADC442(
図2参照)を介してセンサモジュール444から感知データを受信するために、コントローラ500の記憶装置510にアクセスするために、記憶装置510に記憶された感知データおよび情報に基づいて、1つ以上の組織パラメータ、例えば、血管径を決定するために、および決定した組織パラメータに基づいて、フィードバックを提供するために、プロセッサ520によって実行される好適な命令を記憶している。発生器470の一部として例示されているが、コントローラ500が発生器470から離れていること、例えば、リモートサーバ上にあること、および有線または無線接続を介して発生器470によってアクセス可能であることも想到される。コントローラ500が離れている実施形態では、コントローラ500が複数の発生器470によってアクセス可能であり得、かつそこに接続され得ることが想到される。
【0048】
コントローラ500の記憶装置510は、感知回路から、例えば、ADC442(
図2参照)を介してセンサモジュール444から受信された感知データに基づいて、1つ以上の組織パラメータ、例えば、血管径、血管質量、および/または組織質量を推定するように構成された、1つ以上の機械学習アルゴリズムおよび/またはモデルを記憶している。機械学習アルゴリズムは、実験データおよび/または1つ以上の機械学習アプリケーションに最初に入力された以前の処置からのデータによって訓練および学習させて、機械学習アプリケーションがそのようなデータに基づいて血管径(または血管質量)を予測することを可能にし得る。このようなデータには、電圧(例えば、トランスデューサ電圧)、電流(例えば、トランスデューサ電流)、周波数(例えば、作動周波数)、速度(例えば、ブレード速度)、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、df/dt、経時的な作動の変化、および/または任意の他の好適なデータが含まれ得る。
【0049】
図2を全般的に参照すると、機械学習アルゴリズムは、少なくとも、複雑なセンサ構成要素ならびに予め定義された分類ルールおよび/またはアルゴリズムを必要としない点で、血管径(血管質量および/または組織質量)を予測する際の使用において有利である。むしろ、機械学習アルゴリズムは、最初に入力されたデータ、例えば、以前の処置データおよび/または実験データを利用して、そこからのデータを分析することによって、血管径(血管質量および/または組織質量)の予測を可能にする、統計特徴および/または相関を決定する。したがって、1つ以上の機械学習アルゴリズムが上で詳述するように訓練されているので、そのような機械学習アルゴリズムを使用して、超音波外科用器具410を使用して治療される組織の血管径(または血管質量および/または組織質量)を決定することができる。より具体的には、コントローラ500のプロセッサ520は、感知回路から、例えば、ADC442を介してセンサモジュール444から感知データを受信することに応答して、治療される組織の血管径を決定するために、記憶装置510に記憶された機械学習アルゴリズムに感知データを入力するように構成されている。超音波外科用システムに関して記載されているが、コントローラ500およびそれとともに使用するように構成された機械学習アルゴリズムの態様および特徴は、他の好適な外科用システム、例えば、電気外科用システムとともに使用するのに等しく適用可能である。
【0050】
血管径、設定、ユーザ入力などに応じて、血管径がコントローラ500によって決定されると、コントローラ500は、例えば、電池アセンブリ418の電池セルおよびAC出力段440が超音波トランスデューサ480にエネルギーを提供し、超音波トランスデューサ480に提供されたエネルギーを修正し、かつ/または超音波トランスデューサ480へのさらなるエネルギー送達を禁止することに基づいて、アラートおよび/または警告をユーザインターフェースに出力し、特定の組織封止アルゴリズムを実装し、切り替え、または修正し得る。
【0051】
図4を参照すると、本開示による、機械学習アルゴリズム908の論理図が示されている。機械学習アルゴリズム908の訓練は、機械学習アルゴリズム908への入力としてセンサ測定値902および発生器制御パラメータ904を使用することを含み得る。機械学習アルゴリズム908は、血管径910(血管質量、および/または組織質量)の予測を出力する。データ記録918(
図5)は、機械学習アルゴリズム908を訓練するために使用される複数のセンサ測定値902、および/または関連する発生器制御パラメータ904を含み得る。様々な実施形態では、訓練は、超音波外科用システムデータにアクセスすること、またはデータのパターンを識別することを含み得る。
【0052】
様々な実施形態では、訓練中に、特定のセンサ測定値902と相関する発生器制御パラメータ904が、機械学習アルゴリズムへの入力として使用される。様々な実施形態では、発生器制御パラメータ904は、例えば、時間、傾き、または他の発生器470のパラメータを含んでもよい。様々な実施形態では、コントローラ500は、例えば、機械学習アルゴリズムの調整された制御パラメータ、テキストデータ、および/または出力を記憶している、リモートサーバに通信してもよい。
【0053】
様々な実施形態では、ニューラルネットワークの出力は、教師あり学習、教師なし学習、または強化学習のための訓練データとして使用され得る。訓練が、別個のシステム、例えば、GPUワークステーション、高性能コンピュータクラスタなどで行われ、次いで、訓練されたネットワークが、超音波外科用システム内に展開されることが想到される。様々な実施形態では、コントローラ500は、機械学習アルゴリズムから、入力に基づいて血管径(血管質量および/または組織質量)の予測を出力する。
【0054】
ここで
図6を参照すると、本開示による、
図1の外科用システムの発生器のエネルギープロファイルの図が示されている。例えば、発生器は、組織に印加される超音波エネルギーを作り出すために、超音波トランスデューサに好適な駆動信号を提供する。最初に、例えば、組織封止アルゴリズムに従って、組織封止を達成するための駆動信号が印加される。エネルギーが組織に印加されると、組織温度が上昇する。一定期間が経過し、組織封止が完全に形成された後、次に、発生器は、例えば、組織切断アルゴリズムに従って、組織を切断するための駆動信号を印加するように切り替える。治療される組織の血管径に応じて、組織の封止および切断に関連付けられたパラメータは異なり得る。例えば、封止駆動信号、切断駆動信号、封止駆動信号および/または切断駆動信号の印加の持続時間などは、治療される組織の血管径に応じて異なり得る。血管を切断する前に、血管が十分に封止されていることを確認することが重要である。一方、組織を封止して切断するために必要な全体的な時間を短縮することは有益である。
【0055】
ここで
図7の器具2を参照すると、本開示による、血管径の知識がない外科用システムの作動時間と血管径との図が示されている。様々な実施形態では、満足な封止(例えば、最小破裂圧力強度を有する封止)を達成するために必要とされる最小作動時間は、器具1などの既知の直径を有する血管について経験的に決定され得る。様々な実施形態では、機械学習アルゴリズムを使用して、血管径(血管質量および/または組織質量)を早期に(例えば、作動から最初の5秒以内に)予測して、封止駆動信号をいつ停止し、切断駆動信号にいつ移行するかを決定することができる。したがって、血管径の関数としての合計した装置作動時間は、安全マージンを含む
図7Aの破線によって近似され得る。
【0056】
ここで
図8を参照すると、血管径を推定するためのコンピュータで実施される方法800のフロー図が示されている。当業者は、方法800の1つ以上の動作が、本開示の範囲から逸脱することなく、異なる順序で行われ、繰り返され、かつ/または省略されてもよいことを理解するであろう。様々な実施形態では、例示される方法800は、コントローラ500(
図3)で、リモート装置で、または別のサーバもしくはシステムで動作させることができる。様々な実施形態では、例示される方法800の動作のいくつか、もしくはすべては、超音波外科用システム、例えば、器具410を使用して動作させることができる。他の変形例も、本開示の範囲内にあると想到される。
図8の動作は、コントローラ、例えば、発生器470のコントローラ500(
図2および
図3)に関して記載されるが、例示される動作も同様に、他のシステムおよびその構成要素に適用可能であることが理解されるであろう。
【0057】
最初に、ステップ802において、コントローラ500は、超音波外科用システムを作動させることができる。超音波外科用システムは、超音波発生器470と、超音波トランスデューサ480と、超音波ブレード432と、を備える。超音波外科用システムが作動されると、超音波発生器470は、超音波トランスデューサ480を駆動するための駆動信号を作り出し、次に、超音波ブレード432と接触している血管を治療するための、超音波ブレード432に伝達される超音波エネルギーを作り出す。血管は、血管径を画定する。
【0058】
ステップ804において、コントローラ500は、データを超音波外科用システムから収集することができる。様々な実施形態では、データには、作動された超音波外科用システムに関連する電気的パラメータが含まれる。様々な実施形態では、コントローラ500は、発生器470に関連するデータ、例えば、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtを収集することができる。データは、作動の初期段階、例えば、作動から最初の5秒以内に収集され得る。ステップ806において、コントローラ500は、データを機械学習アルゴリズム908(例えば、ニューラルネットワーク)に通信し得る。様々な実施形態では、ニューラルネットワークは、時間畳み込みネットワークまたはフィードフォワードネットワークを含み得る。様々な実施形態では、機械学習アルゴリズム908は、発生器470に関連するデータ、例えば、電圧、電流、周波数、速度、トランスV、トランスV位相、MFB、Z_ph、またはdf/dtを使用して訓練され得る。様々な実施形態では、訓練は、教師あり訓練、教師なし訓練、または強化学習を含み得る。様々な実施形態では、強化学習は、報酬または罰を含み得る。
【0059】
ステップ808において、コントローラ500は、機械学習アルゴリズム908を使用して、データに基づいて血管サイズを決定し得る。血管サイズには、例えば、血管径、血管質量、組織の表面積、および/または組織質量が含まれ得る。例えば、機械学習アルゴリズム908の出力に基づいて、コントローラ500は、血管径がおよそ6mmであると決定してもよい。ステップ810において、コントローラ500は、決定された血管径を、超音波発生器470と関連付けられた計算装置に通信し得る。
【0060】
ステップ812において、コントローラ500は、血管サイズに従って、作動された超音波外科用システムを制御し得る。様々な実施形態では、コントローラ500は、超音波発生器470によって、超音波トランスデューサ480を駆動して血管を封止するための第1の駆動信号(例えば、「封止」駆動信号)の生成をいつ停止するかを決定し得る。様々な実施形態では、コントローラ500は、超音波発生器470によって、決定に基づいて、超音波トランスデューサを駆動して血管を切断するための第2の駆動信号(例えば、「切断」駆動信号)を生成し得る。例えば、コントローラ500は、およそ13秒で「封止」駆動信号の生成を停止することを決定し、次に、「切断」駆動信号を生成し得る。
【0061】
ここで
図9を参照すると、本開示に従って訓練された外科用システムの実際の血管径と予測された血管径との図が示されている。様々な実施形態では、機械学習アルゴリズム908によって予測された血管径は、実際に測定された血管径と比較され得る。
【0062】
前述のことから、また、様々な図面を参照すると、当業者は、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示に対してある程度の修正が行われ得ることも理解するであろう。本開示のいくつかの実施形態が図面に示されているが、本開示の範囲が当技術分野が許容する程度に広く、本明細書が同様に解釈されることを意図するのであって、本開示はこれらの図面に限定されることを意図するものではない。したがって、上記の説明は、限定として解釈されるべきではなく、特定の実施形態の単なる例示として解釈されるべきである。当業者は本明細書に添付されている特許請求の範囲の範囲および主旨内での他の修正を想定するであろう。
【国際調査報告】