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  • 特表-大麻ナノ製剤の調製及び使用 図1
  • 特表-大麻ナノ製剤の調製及び使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】大麻ナノ製剤の調製及び使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/185 20060101AFI20230308BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230308BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61K36/185
A61K31/352
A61K9/10
A61K9/51
A61K47/14
A61K47/26
A61P25/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541669
(86)(22)【出願日】2021-01-05
(85)【翻訳文提出日】2022-07-04
(86)【国際出願番号】 EP2021050089
(87)【国際公開番号】W WO2021140101
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】20150397.6
(32)【優先日】2020-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522268465
【氏名又は名称】カンナクサン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラント ヴェルナー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076AA65
4C076BB22
4C076CC01
4C076DD09F
4C076DD15F
4C076DD38N
4C076DD41R
4C076DD43Z
4C076DD46
4C076DD49
4C076DD59S
4C076DD63F
4C076EE23F
4C076EE58
4C076FF16
4C076FF34
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF51
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BA08
4C086GA17
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA38
4C086MA57
4C086NA11
4C086ZA08
4C088AB12
4C088AC03
4C088AC05
4C088BA07
4C088BA23
4C088BA32
4C088MA23
4C088MA38
4C088MA57
4C088NA11
4C088ZA08
(57)【要約】
本願は、少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤とを含む製剤であって、該製剤が、500nm未満の粒径(D90)を有する液体懸濁物である、製剤と、疾患の治療における該製剤の使用とに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤とを含む製剤であって、前記製剤が、500nm未満の粒径(D90)を有する液体懸濁物である、製剤。
【請求項2】
前記少なくとも1種の天然大麻材料がアサ科の材料であり、好ましくは前記天然大麻材料がアファナンセ、カンナビス、セルティス、カエタクメ、ジロンニエラ、フムルス、ロザネラ、パラスポニア、プテロセルティス、及びトレマからなる群より選択される属の材料であり、好ましくは前記天然大麻材料がカンナビス属の材料である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記少なくとも1種の天然大麻材料がカンナビス属の材料であり、前記カンナビスがカンナビス・サティバ、カンナビス・インディカ、及びカンナビス・ルデラリスからなる群より選択される種であり、好ましくは前記少なくとも1種の天然大麻材料が前記カンナビス・サティバ種の材料である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記少なくとも1種の天然大麻材料が前記天然大麻材料の一部又は全部であり、好ましくは前記天然大麻材料の一部が葉、茎、種子、花、根、及びこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記天然大麻材料が前記天然大麻材料を含むか又はその花である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記少なくとも1種の天然大麻材料が、前記製剤の全質量に対して、0.1%~20%(重量/重量)、前記製剤の全質量に対して、好ましくは0.1%~10%(重量/重量)、好ましくは0.2%~5%(重量/重量)、好ましくは0.3%~4%(重量/重量)であり、好ましくは0.5%~3%(重量/重量)、更に好ましくは0.5%~1%(重量/重量)、1%~2%(重量/重量)、又は2%~4%(重量/重量)の量で前記製剤中に分散されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
前記溶媒が、水、エタノール、脂質、非極性有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記溶媒が水と脂質との混合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記脂質が、固体脂質、液体脂質、ワックス、及びこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記脂質が液体脂質と固体脂質との混合物である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記脂質が、グリセリドであり、好ましくはモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドからなる群より選択され、好ましくは前記脂質がトリグリセリドであり、より好ましくは前記グリセリドが中鎖トリグリセリドと飽和C12~C18脂肪酸のグリセロールエステル(Gelucire(商標)39/01)との混合物である、請求項6又は7に記載の製剤。
【請求項9】
前記安定剤が、リン脂質;ポリソルベート;ホモポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーを含むポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む);ポロクサマーを含む非イオン性トリブロックコポリマー;コポリビニルピロリドン;Labrasol(商標);ゼラチン;レシチン(ホスファチド);アカシアゴム;キサンタンガム;アラビアゴム;コレステロール;トラガカント;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンステアレート;コロイド状二酸化ケイ素;ドデシル硫酸ナトリウム;モノグリセリド及びジグリセリド;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;トリエタノールアミン;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム;モノステアリン酸グリセロール;セトステアリルアルコール;セトマクロゴール乳化ワックス;短鎖アルコール及び中鎖アルコール;Labrafil(商標);Purol-oleique;プロパン-1,2,3-トリオール(グリセリン);ポリビニルアルコール;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS);カルメロースナトリウム;カラゲーン;カルボマー;ヒプロメロース;並びにこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
前記安定剤が、リン脂質、界面活性剤、及びポリマーからなる群より選択され、好ましくは前記安定剤が、ポリソルベート、多糖、及びポロクサマーからなる群より選択されるポリマーである、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.5%~4.5%(重量/重量)の量で、1%~4.5%(重量/重量)の量で、又は1.5%~4%(重量/重量)の量で、より好ましくは2~3%(重量/重量)の量で、又は3%~4%(重量/重量)の量で、最も好ましくは2.5%~4%(重量/重量)の量で、安定剤としてポリソルベートを含み、及び/又は前記製剤が、ポリソルベート80(Tween(商標)80)又はポリソルベート20(Tween(商標)20)として選択されるポリソルベート、好ましくはポリソルベート80(Tween(商標)80)を安定剤として含む、請求項9又は10に記載の製剤。
【請求項12】
前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.2%~1.5%(重量/重量)の量で、より好ましくは0.5%~1%(重量/重量)の量で、安定剤としてポロクサマーを含み、及び/又は前記製剤が、ポロクサマー407(Kolliphor(商標)P407)、又はポロクサマー188として選択されるポロクサマーを安定剤として含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、0.5%~10%(重量/重量)の量で、好ましくは1%~4%(重量/重量)の量で、安定剤としてリン脂質を含み、及び/又は前記リン脂質が、前記リン脂質の全質量に対して、40%~100%(重量/重量)のホスファチジルコリンを含有し、及び/又は前記製剤が、Lipoid(商標)P45として選択されるリン脂質を安定剤として含む、請求項9~12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記製剤が添加剤を更に含み、好ましくは前記添加剤が、防腐剤、抗酸化剤、及び浸透剤からなる群より選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
緩和ケア、及び/又は疾患の治療若しくは軽減に使用される請求項1~14のいずれか一項に記載の製剤であって、好ましくは、前記疾患が、疼痛、特に急性又は慢性疼痛、体性疼痛、内臓痛、神経因性疼痛、癌性疼痛、慢性腰痛、慢性中枢神経痛;神経障害、神経変性疾患、不眠症、精神障害、吐き気、食欲不振、化学療法によって引き起こされる嘔吐及び吐き気、糖尿病性多発ニューロパチー、線維筋痛症、トゥレット症候群、多発性硬化症、多発性硬化症での痙攣、不安障害、統合失調症、社会恐怖症、睡眠障害、乾癬及び神経皮膚炎のような皮膚関連疾患、緑内障、下肢静止不能症候群、癲癇、アルツハイマー病、ジストニア、ハンチントン病、パーキンソン病のような運動疾患、並びにエンドカンナビノイド系によって影響を受け、カンナビノイドによって影響を受ける任意の他の受容体(例えばGPR18、GPR119、GPR55)によって影響を受ける他の医学的適応症からなる群より選択される、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤とを含む製剤であって、該製剤が、500nm未満の粒径(D90)を有する液体懸濁物である、製剤と、疾患の治療における該製剤の使用とに関する。
【背景技術】
【0002】
医学及びの薬学の分野で天然素材としての大麻の使用の歴史は古く、2500年にも及ぶ。しかしながら、大麻製品の使用は、副作用又は中毒の可能性に対する恐怖とも関連している。それにもかかわらず、大麻は、有利な効果を有する医薬として使用され得る天然物として同定された。概要は非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Bridgeman et al., Pharmacy & Therapeutics, vol. 42, 3 (2017), pages 180-188
【発明の概要】
【0004】
大麻製品の使用に関する議論の賛否の分かれていること、及び現在利用可能な製品がニーズに対処することができないことに鑑み、それを必要とする患者への活性作用物質の絶え間ない送達があり、利用可能な製品と比較して、より低い用量で薬理学的効果を示す、安全に適用され得る天然大麻材料を含む製品のニーズが依然としてある。
【0005】
本開示は、これらのニーズに対処する。第1の態様において、少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤とを含む製剤であって、該製剤が、500nm未満の粒径(D90)を有する液体懸濁物である、製剤が提供される。
【0006】
第2の態様は、緩和ケアに及び/又は疾患の治療若しくは軽減に使用される製剤に関する。
【0007】
詳細及び更に好ましい実施形態を以下に開示する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の製剤とSativex(商標)との単回投与後のCBD血漿濃度の比較を示す図である。
図2】実施例2の製剤とSativex(商標)との単回投与後のTHC血漿濃度の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様において、本開示は少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤とを含む製剤であって、該製剤が、500nm未満の粒径(D90)を有する液体懸濁物である、製剤に関する。
【0010】
本開示の製剤は、溶媒中の天然大麻材料の安定な懸濁液に関する。天然大麻材料の小さな粒径に基づいて、製剤は、哺乳動物、特にヒトへの適用に特に適している。
【0011】
第2の態様において、本開示は、緩和ケア、及び/又は疾患の治療若しくは軽減に使用される製剤であって、好ましくは、該疾患が、疼痛、特に急性又は慢性疼痛、体性疼痛、内臓痛、神経因性疼痛、癌性疼痛、慢性腰痛、慢性中枢神経痛;神経障害、神経変性疾患、不眠症、精神障害、吐き気、食欲不振、化学療法によって引き起こされる嘔吐及び吐き気、糖尿病性多発ニューロパチー、線維筋痛症、トゥレット症候群、多発性硬化症、多発性硬化症での痙攣、不安障害、統合失調症、社会恐怖症、睡眠障害、乾癬及び神経皮膚炎のような皮膚関連疾患、緑内障、下肢静止不能症候群、癲癇、アルツハイマー病、ジストニア、ハンチントン病、パーキンソン病のような運動疾患、双極性疾患、並びにエンドカンナビノイド系によって影響を受け、カンナビノイドによって影響を受ける任意の他の受容体(例えばGPR18、GPR119、GPR55)によって影響を受ける他の医学的適応症からなる群より選択される、製剤に関する。
【0012】
以下で更に詳述するように、本開示の製剤における天然大麻材料の使用に基づいて、製剤は、医薬として、特に緩和ケアに及び/又は疾患の治療若しくは軽減に使用され得る。
【0013】
以下では、本開示の第1の態様及び第2の態様の好ましい実施形態を詳細に概説する。実施形態は互いに独立しており、明示的に述べられていなくても、又は当業者にとって明白であれば、自由に組み合わせることができることが理解される。一例として、天然大麻材料に関する好ましい実施形態は、一般に、溶媒又は安定剤についての好ましい実施形態とは無関係であり、したがって、これらの実施形態は自由に組み合わせることができる。
【0014】
製剤
本開示は、少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤とを含む製剤であって、該製剤が、500nm未満の粒径(D90)を有する液体懸濁物である、製剤に関する。製剤は液体懸濁液として存在し、したがって懸濁液又はナノ懸濁液と称されることもある。ナノ懸濁液は、ナノメートルオーダーのサイズを有する粒子を含むことから、ナノ懸濁液と称される。懸濁液中に存在する粒子は、500nm未満の粒径(D90)を有する。
【0015】
本開示の好ましい実施形態において、それらの懸濁液の粒径(D90)は、450nm未満、更に好ましくは400nm未満、更により好ましくは300nm未満、更により好ましくは250nm未満、更により好ましくは220nm未満である。本開示の製剤における天然大麻材料の粒径がより小さいため、天然大麻材料はより容易に吸収され得て、したがって、体内、特に血漿中でより容易に利用可能である。
【0016】
好ましい実施形態において、本開示の製剤は、単数又は複数のシクロデキストリンを含まない。
【0017】
天然大麻材料
本開示の製剤には、天然大麻材料が存在する。製剤中に存在する天然大麻材料は、天然材料であり、すなわち、自然界で栽培された材料である。上記物質は、アサ(Cannabaceae)科の植物から採取され、アファナンセ(Aphananthe)、カンナビス(Cannabis)、セルティス(Celtis)、カエタクメ(Chaetachme)、ジロンニエラ(Gironniera)、フムルス(Humulus)、ロザネラ(Lozanella)、パラスポニア(Parasponia)、プテロセルティス(Pteroceltis)、及びトレマ(Trema)からなる群より選択される属の植物から採取されることが好ましい。特に好ましい実施形態において、該材料は、カンナビス属の植物から採取される。
【0018】
特に好ましい実施形態において、少なくとも1種の天然大麻材料はカンナビス属の材料であり、カンナビスは、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)、カンナビス・インディカ(Cannabis indica)、及びカンナビス・ルデラリス(Cannabis ruderalis)からなる群より選択される種である。言い換えれば、上記実施形態によれば、天然大麻材料を提供する植物は、上記種のカンナビス・サティバ、カンナビス・インディカ、又はカンナビス・ルデラリスの植物である。少なくとも1種の天然大麻材料が、カンナビス・サティバ種の植物から採取された材料であることが特に好ましい。
【0019】
上で概説したように、少なくとも1種の天然大麻材料は、アサ科の植物から採取される。この文脈では、天然大麻材料は、植物全体、すなわち、植物の全部、又はその他の部分であり得る。植物の任意の部分、特に大麻植物の生理学的部分全体を、天然の大麻材料として用いてもよい。植物の部分は、好ましい実施形態によれば、葉、茎、種子、花、根、及びこれらの混合物からなる群より選択され得る。CBD及び/又はTHCの含有量が高い植物の部分を使用することが好ましい。特に好ましい実施形態において、上記植物の部分は、上記天然大麻材料の花である。
【0020】
好ましい実施形態において、少なくとも1種の天然大麻材料は、少なくとも2つの天然大麻材料の混合物である。言い換えれば、植物の様々な部分、特に花若しくは葉等の生理学的部分を、天然大麻材料として使用してもよく、又は異なる植物の全体若しくは部分も天然大麻材料として使用してもよい。次いで、2つの異なる植物又はその部分は、共に天然大麻材料を形成し、本明細書において2つの天然大麻材料として表現される。少なくとも2つの大麻材料は、上記で定義した属又は種から独立して選択される。特に好ましい実施形態において、天然大麻材料は、カンナビス・サティバとカンナビス・インディカ又はカンナビス・ルデラリスとの混合物である。カンナビス・インディカとカンナビス・ルデラリスの混合物はあまり好ましくない。CBD及び/又はTHCの含有量は、カンナビス・サティバにおいて特に高く、これは、本開示による天然大麻材料としてこの種を特に好ましいものにする。
【0021】
天然大麻材料は、特に高いCBD又はTHCの含有量を有する場合があり、カンナビジオールに富む材料(CBDに富む材料)、又はテトラヒドロカンナビノールに富む材料(THCに富む材料)とも呼ばれる。天然大麻材料はまた、例えば、乾燥及び/又は脱炭酸によって、植物から直接誘導される材料を指すことが理解される。
【0022】
天然カンナビジオールに富む材料は、好ましくは、天然大麻材料中のカンナビノイドの全質量に対して、5%~40%(重量/重量)、好ましくは10%~30%(重量/重量)の範囲のカンナビジオール濃度を有する。
【0023】
天然テトラヒドロカンナビノールに富む材料は、好ましくは、天然大麻材料中のカンナビノイドの全質量に対して、5%~40%(重量/重量)、好ましくは10%~30%(重量/重量)の範囲のテトラヒドロカンナビノール濃度を有する。別の好ましい実施形態において、天然テトラヒドロカンナビノールに富む材料は、好ましくは、大麻の花の全乾燥質量に対して、5%~40%(重量/重量)、好ましくは10%~30%(重量/重量)の範囲のテトラヒドロカンナビノール濃度を有する。
【0024】
天然大麻材料中のカンナビノイドの量は変化し得る。カンナビス・サティバを採取するとき、植物の異なる部分のカンナビノイドの量には既にばらつきがある。カンナビス・サティバの花におけるカンナビノイドの量は、例えば、天然大麻材料の全乾燥質量に対して10重量%~30重量%の範囲であり得る。或いは、カンナビス・サティバの花におけるカンナビノイドの量は、例えば、大麻の花の全乾燥質量に対して10重量%~30重量%の範囲であり得る。
【0025】
天然大麻材料は、単なる抽出物、すなわち天然大麻材料の液体又は可溶性画分ではなく、大麻植物の全体又は一部の天然組成物中に天然に存在する大麻材料であり、500nm未満の粒径に製粉又は粉砕される。抽出物との違いは、抽出物は、溶媒が除去されたときに固体になる可能性があるにもかかわらず、溶媒に再溶解され得ることである。本開示の天然大麻材料は、本開示の製剤中に固体ナノ粒子材料として存在し、すなわち、本開示の製剤は懸濁液であり、すなわち小さな固体粒子が液体媒体中に懸濁されている。固体粒子は、親水性コーティングを有する複雑なナノ担体として設計される。天然大麻材料は、したがって、固体粒子として本開示の懸濁液のナノ粒子中に存在する。これは、例えば脂質及び/又はリン脂質に封入され得るカンナビノイド等の封入された液体(油性)材料とは対照的に、(室温で)それによって封入された液滴を形成する。
【0026】
懸濁液は、固体粒子が溶解しないが、溶媒の大部分全体に懸濁され、媒体中に自由に浮遊したままになる不均一な混合物である。本開示の懸濁液中に存在するナノ粒子は、親水性コーティングを有する複雑なナノ担体に封入される。
【0027】
しかしながら、本開示の好ましい実施形態において、製剤はまた、抽出物、特に天然大麻材料の抽出物を含有することを排除するものではない。かかる抽出物は、製剤中のカンナビノイドの量、特にTHC又はCBDの量を更に増加させるために使用され得る。かかる抽出物は、上記で概説したような天然大麻材料の存在に加えて存在することが理解される。
【0028】
好ましい実施形態において、天然大麻材料は、製剤の全質量に対して、0.1%~20%(重量/重量)、製剤の全質量に対して、好ましくは0.1%~10%(重量/重量)、好ましくは0.2%~5%(重量/重量)、好ましくは0.3%~4%(重量/重量)であり、好ましくは0.5%~3%(重量/重量)、更に好ましくは0.5%~1%(重量/重量)、1%~2%(重量/重量)、又は2%~4%(重量/重量)の量で本開示の製剤中に存在する。
【0029】
天然大麻材料の粒子
本開示による製剤中には、少なくとも1種の天然大麻材料の粒子が存在する。本開示のナノ懸濁液の調製のために、少なくとも1種の天然大麻材料の一部又は全部が使用される。
【0030】
本製剤は、少なくとも1種の安定剤の使用による溶媒中の少なくとも1種の天然大麻材料の安定懸濁液である。したがって、製剤は、液体溶媒と固体天然大麻材料との不均一な混合物である。天然大麻材料は、500nm未満の粒径を有するナノ粒子の形態であり、少なくとも1種の安定剤によって溶媒中で安定化される。
【0031】
本開示の製剤は、国際公開第2015/114164号又は国際公開第2017/021491号に開示される方法に従って調製され得る。
【0032】
実験セクションにおいて以下にも概説するように、天然大麻材料は、320μm未満の粒径(D100)を有する粒子の形態で提供され得る。天然大麻材料、すなわち、粒子は、乾燥形態で、新鮮な形態で(すなわち、自然界に存在するように)、又は特定の含水量を含んで提供され得る。天然大麻材料の粉末又は粒子は、調製方法では指定されるいずれかの形態で溶媒に添加され得る。
【0033】
別の好ましい実施形態において、ナノ懸濁液の調製に使用される天然大麻材料は、乾燥されてもよく、好ましくは凍結乾燥(フリーズドライ)及び/又は熱乾燥され得る。
【0034】
ナノ懸濁液の調製に使用される天然大麻材料の粒子は、好ましくは、低い含水量を有する。本開示において使用される「含水量」又は「残留水分」という用語は、下記式を使用して、湿潤(moist or wet)材料の質量m湿潤と、水分のない乾燥材料の質量m乾燥と、残留水分を有する材料の質量m残留とから計算される天然大麻材料等の材料の含水量wを指す:
残留水分含量[%]w=(m残留-m乾燥)/(m湿潤-m乾燥)×100%
【0035】
別の好ましい実施形態において、ナノ懸濁液の調製に使用される天然大麻材料は、15%未満(w<15%)、好ましくは10%未満(w<10%)、より好ましくは5%未満(w<5%)、最も好ましくは3%未満(w<3%)の含水量wを有する。
【0036】
かかる低い含水量は、ナノ懸濁液を調製する際に有利であり得る。さらに、天然大麻材料を320μm未満の粒径(D100)にする場合に役立つ場合がある。天然大麻材料の含水量を低下させるために当該技術分野で知られている様々な方法があり、これらの方法のいずれかを本開示と組み合わせて使用してもよい。一例として、天然大麻材料は、凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)又は熱乾燥され得る。乾燥工程の前に天然大麻材料の種類に応じて、天然大麻材料を洗浄する、皮をむく及び/又は芯を抜く(core)ことが有利な場合がある。
【0037】
天然大麻材料は、残留水分含有量wが5%又は更には3%と低くなるまで、例えば30℃~140℃の温度で空気中又はオーブンで乾燥させることもできる。好ましくは、乾燥工程を、天然大麻材料中の活性作用物質、特にTHC及びCBDを脱炭酸する工程と組み合わせる。これは、好ましくは110℃~150℃、好ましくは120℃~140℃の温度のオーブンにおいて達成され得る。天然大麻材料は、30分~5時間、好ましくは40分~1時間、更に好ましくは45~55分の範囲の期間、高温に維持され得る。
【0038】
別の好ましい実施形態において、ナノ懸濁液の調製に使用される少なくとも1種の天然大麻材料を、乾燥の前及び/又は後に、好ましくはナイフミルで予備粉砕され、任意に320μm未満の粒径(D100)に篩にかける。天然大麻材料のかかる粉砕は、天然大麻材料をそのまま、すなわち、事前の切断若しくは乾燥なしに行うことができるか、又は天然大麻材料を上記のように断片に切断しても及び/又は乾燥させてもよい。さらに、天然大麻材料を、320μm未満の粒径(D100)を有する天然大麻材料の粉末を提供するために篩にかけてもよい。
【0039】
製剤に含まれる「天然大麻材料の総量」とは、乾燥質量の量、すなわち、溶媒又は安定剤を全く含まない乾燥天然大麻材料の質量を指す。したがって、製剤の乾燥質量は、少なくとも1種の天然大麻材料の粒子の乾燥質量の合計である。これは製剤の固形物とも称される。
【0040】
溶媒
本開示の製剤は、少なくとも1種の天然大麻材料とは別に、少なくとも1種の溶媒、及び少なくとも1種の安定剤を含む。
【0041】
好ましい実施形態において、溶媒は、水、エタノール、脂質、非極性有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、溶媒は水と脂質との混合物、例えばエマルジョンである。本開示の製剤は医薬製剤であることが好ましいため、用いられる溶媒は、薬学的に許容され得る溶媒であることが好ましい。この観点から、特に好ましい溶媒は、水、エタノール及び水と脂質との混合物であり、好ましくは水と脂質とのかかる混合物である。本明細書において使用される場合、「脂質」という用語は、単一の脂質又は脂質の混合物を指す。
【0042】
更に好ましい実施形態において、脂質は、固体脂質、液体脂質、ワックス、及びこれらの混合物からなる群より選択され、脂質が液体脂質と固体脂質との混合物であり、特に溶媒として水と組み合わせる場合がなお更に好ましい。
【0043】
したがって、得られる製剤は、水性ナノ脂質製剤、又は溶媒(例えば水、脂質、エタノール)の混合物に基づくナノ脂質製剤であってもよい。本明細書において使用される場合、「溶媒」という用語は、単一の溶媒又は溶媒の混合物を指す。
【0044】
別の好ましい実施形態において、溶媒は、水、好ましくは蒸留水、又は水と脂質との混合物、又は水とエタノールとの混合物、又は水と、脂質と、エタノールとの混合物である。溶媒として用いる水としては、いかなる種類の水でもよく、例えば、通常の水、精製水、蒸留水、2回蒸留水若しくは3回蒸留水、又は脱塩水が挙げられる。精製水、又は滅菌溶媒の基準を満たす任意のタイプの蒸留水を使用することが好ましい。
【0045】
同様に、使用される脂質は、純粋な脂質、又は水と脂質との混合物、水と混合された脂質の混合物、又は水及びエタノールと混合された脂質の混合物に基づくナノ脂質製剤であってもよい。したがって、ナノ脂質製剤は、液体脂質、固体脂質、又は固体脂質と液体脂質との混合物を様々な割合で含有することができる。
【0046】
ナノスマート脂質製剤(nano smart-lipid formulation)は、水と脂質との混合物に基づくことが最も好ましい。
【0047】
かかる脂質は、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸、脂肪アルコール、ワックス、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、ステロール及びステリルエステル、リン脂質、並びにそれらの誘導体、又は極性溶媒に不溶性であるか若しくは容易に溶解しない任意の他の適切な有機化合物のサブカテゴリから選択され得る。
【0048】
トリグリセリドの群から、好ましくは、液体脂質、固体脂質、グリセロールと飽和脂肪酸若しくは不飽和脂肪酸との合成誘導体若しくは半合成誘導体、又はこれらの混合物が選択され得る。油としても知られる液体脂質は、典型的には室温で液体である。脂肪とも呼ばれる固体脂質は、通常、室温で固体であり、不飽和脂肪酸の割合が高い。
【0049】
好ましい実施形態において、脂質は、グリセリド、好ましくはモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドからなる群より選択され、好ましくは、脂質はトリグリセリドであり、より好ましくは、グリセリドは中鎖トリグリセリドと飽和C12~C18脂肪酸のグリセロールエステル(Gelucire(商標)39/01)との混合物である。
【0050】
特定の好ましい実施形態において、液体脂質は、中鎖トリグリセリドを含む。他の液体脂質、例えば、トリカプリリン、カプリル酸/カプリン酸/リノール酸トリグリセリド、及びアセチル化モノグリセリド等も選択され得る。
【0051】
別の好ましい実施形態において、液体脂質としては、ゴマ油、麻油、ヒマワリ油、大豆油、サフラワー油、菜種油(キャノーラ油を含む)、亜麻仁油、ナッツ油(例えばアーモンド油、カシュー油、クルミ油、落花生油)、綿実油、米糠油、コーン油、パーム油(ココナッツ油を含む)、パーム核油、海洋油(魚油等)、及びその他の食用油からなる群より選択される天然油が挙げられる。
【0052】
固体グリセリドとしては、例えば、硬質脂肪(固形脂肪(adeps solidus))、Gelucire(商標)43/01(Gatefosse、フランス国)、トリカプリン、トリラウリン、トリミリスチン、トリパルミチン、トリステアリン酸グリセリル、及び最も好ましくはGelucire(商標)39/01(Gatefosse、フランス国)が挙げられる。しかしながら、他の固体脂質、例えばCompritol(商標)、Softisan(商標)378、及びパルミチン酸セチルも選択され得る。
【0053】
脂質がトリグリセリドの群から選択されることが特に好ましい。したがって、特定の好ましい実施形態において、ナノ脂質製剤の調製のための脂質の混合物は、中鎖トリグリセリド油(Lipoid GmbH、ドイツ国)及びGelucire(商標)39/01(Gatefosse、フランス国)を含むか、又はそれらからなる。(最終)製剤の全質量に対して、中鎖トリグリセリドを0.1%~30%(重量/重量)、好ましくは0.5%~10%(重量/重量)、更に好ましくは0.1%~8%(重量/重量)の濃度で添加すること、及びGelucire(商標)39/01を3%~20%(重量/重量)、好ましくは5%~15%(重量/重量)の濃度で添加することが特に好ましい。他の全てのモノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド、それらの混合物、並びに他の適切な脂質もまた、本製剤の調製のために選択され得る。
【0054】
部分グリセリド(例えばモノステアリン酸グリセリル、モノカプリル酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル)及びオレイン酸の誘導体もまた、本開示による製剤の調製のために選択され得る。
【0055】
ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びグリセロホスホコリンを含むリン脂質のカテゴリーから、大豆レシチンを使用することが最も好ましく、Lipoid(商標)P45(Lipoid GmbH、ドイツ国)を使用することが好ましい。本開示の製剤は、リン脂質の誘導体、合成経路に由来するリン脂質、及び天然に存在する食物源(例えば家禽の卵、大豆、菜種、ヒマワリ、牛乳、魚の卵、及びこれらの任意の組合せから選択される)を含み得る。
【0056】
特定の好ましい実施形態において、本開示の製剤は、リン脂質、好ましくはLipoid(商標)P45を、(最終)製剤の全質量に対して、1%~15%(重量/重量)、好ましくは2%~9%(重量/重量)の濃度で含む。特定の好ましい実施形態において、リン脂質は、40%~100%(重量/重量)ホスファチジルコリン、例えば、ドイツ国のLipoid GmbHのLipoid(商標)H100、Lipoid(商標)P75、Lipoid(商標)P100、及び最も好ましくはLipoid(商標)P45を含有する。他の割合のホスファチジルコリンも可能である。
【0057】
安定剤
本開示の製剤は、少なくとも1種の天然大麻材料とは別に、少なくとも1種の安定剤、及び少なくとも1種の溶媒を含む。
【0058】
安定剤は、リン脂質;ポリソルベート;ホモポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーを含むポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む);ポロクサマーを含む非イオン性トリブロックコポリマー;コポリビニルピロリドン;Labrasol(商標);ゼラチン;レシチン(ホスファチド);アカシアゴム;キサンタンガム;アラビアゴム;コレステロール;トラガカント;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンステアレート;コロイド状二酸化ケイ素;ドデシル硫酸ナトリウム;モノグリセリド及びジグリセリド;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;トリエタノールアミン;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム;モノステアリン酸グリセロール;セトステアリルアルコール;セトマクロゴール乳化ワックス;短鎖アルコール及び中鎖アルコール;Labrafil(商標);Purol-oleique;プロパン-1,2,3-トリオール(グリセリン);ポリビニルアルコール;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS);カルメロースナトリウム;カラゲーン;カルボマー;ヒプロメロース;並びにこれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0059】
好ましい実施形態において、安定剤は、リン脂質、界面活性剤、及びポリマーからなる群より選択され、好ましくは、安定剤は、ポリソルベート、多糖、及びポロクサマーからなる群より選択されるポリマーである。
【0060】
別の好ましい実施形態において、安定剤は、リン脂質、ポリソルベート、プロパン1,2,3-トリオール静電的又は立体的安定剤、非イオン性界面活性剤(ポリオールエステル、ポリオキシエチレンエステル、ポロクサマーを含む)、アニオン性界面活性剤(例えばカルボン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエトキシレート、硫酸塩及び硫酸イオン)、カチオン性界面活性剤(例えば第四級アンモニウム化合物)、及び両性イオン界面活性剤からなる群より選択される。
【0061】
幾つかの安定剤、例えばリン脂質、界面活性剤及び乳化剤(例えばポリソルベート)を製剤に添加することが好ましい。好ましい実施形態において、安定剤は、リン脂質;ポリソルベート、ポリマー、例えば、ホモポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマー(例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びポリビニルピロリドン(PVP));非イオン性トリブロックコポリマー、例えばポロクサマー(例えばKolliphor(商標)P407又はポロクサマー188);コポリビニルピロリドン;Labrasol(商標);ゼラチン;レシチン(ホスファチド);アカシアゴム(gum acacia);キサンタンガム;アラビアゴム;コレステロール、トラガント;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンステアレート;モノグリセリド及びジグリセリド;マグネシウムアルミニウムシリケート;短鎖アルコール及び中鎖アルコール;Labrafil(商標)(Gattefosse、フランス国)、Labrafil(商標)(Gattefosse、フランス国)、プロパン-1,2,3-トリオール及びポリビニルアルコールからなる群より選択される。
【0062】
好ましい実施形態において、製剤は、該製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.5%~4.5%(重量/重量)の量で、1%~4.5%(重量/重量)の量で、又は1.5%~4%(重量/重量)の量で、より好ましくは2%~3%(重量/重量)の量で、又は3%~4%(重量/重量)の量で、最も好ましくは2.5%~4%(重量/重量)の量で、安定剤としてポリソルベートを含み、及び/又は該製剤は、ポリソルベート80(Tween(商標)80)又はポリソルベート20(Tween(商標)20)として選択されるポリソルベート、好ましくはポリソルベート80(Tween(商標)80)を安定剤として含む。
【0063】
別の好ましい実施形態において、製剤は、該製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.5%~4.5%(重量/重量)の量で、1%~4.5%(重量/重量)の量で、又は1.5%~4%(重量/重量)の量で、より好ましくは2%~3%(重量/重量)の量で、又は3%~4%(重量/重量)の量で、最も好ましくは2.5%~4%(重量/重量)の量で、安定剤として界面活性剤を含み、及び/又は該製剤はソルビタンモノオレエート(Span(商標)80)として選択される界面活性剤を安定剤として含む。
【0064】
更に別の好ましい実施形態において、製剤は、該製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.2%~1.5%(重量/重量)の量で、より好ましくは0.5%~1%(重量/重量)の量で、安定剤としてポロクサマーを含み、及び/又は該製剤は、ポロクサマー407(Kolliphor(商標)P407)、又はポロクサマー188として選択されるポロクサマーを安定剤として含む。
【0065】
更なる好ましい実施形態において、製剤は、該製剤の全質量に対して、最大5%(重量/重量)の量で、好ましくは0.02%~0.5%(重量/重量)の量で、0.04%~0.1%(重量/重量)の量で、より好ましくは0.05%~0.08%(重量/重量)の量で、安定剤として多糖を含み、及び/又は該製剤は、キサンタンガムとして選択される多糖を安定剤として含む。
【0066】
更なる好ましい実施形態において、製剤は、該製剤の全質量に対して、0.5%~10%(重量/重量)の量で、好ましくは1%~3%(重量/重量)の量で、安定剤としてリン脂質を含み、及び/又はリン脂質は、該リン脂質の全質量に対して、40%~100%(重量/重量)のホスファチジルコリンを含有し、及び/又は該製剤は、Lecithin(商標)P45として選択されるリン脂質を安定剤として含む。
【0067】
製剤は、少なくとも1種の安定剤、好ましくは少なくとも2種の安定剤の混合物を含んでいてもよい。製剤化のための安定剤の混合物は、ポリソルベート80(Tween(商標)80)、Kolliphor(商標)P407及びLipoid(商標)P45の混合物であることが特に好ましい。
【0068】
非イオン性安定剤を選択する場合、好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを含むポリソルベート等の非イオン性界面活性剤;モノパルミテート、モノステアレート、モノオレエート、トリステアレート、トリオレエート、好ましくはモノオレエートからなる群より選択される。したがって、製剤の調製に特に好ましい例は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween(商標)80)である。
【0069】
他の特に好ましい非イオン性界面活性剤は、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、及び最も好ましくはソルビタンモノオレエート(Span(商標)80)から選択することができる。
【0070】
ポリソルベート80(Tween(商標)80)又はソルビタンモノオレエート(Span(商標)80)等の非イオン性界面活性剤は、製剤の全質量に対して、それぞれ個別に最大10%(重量/重量)の量で添加することが好ましく、2%~8%(重量/重量)の範囲で添加することが更に好ましく、2%~6%(重量/重量)の範囲で添加することが最も好ましい。
【0071】
立体安定剤が安定剤として使用される場合、それらはナノ粒子の表面に吸着又は付着し、大きくて緻密な立体障壁を提供する。立体安定剤の目的は、引力のあるファンデルワールス力を克服し、したがって粒子の凝集、凝塊形成又は融合を減少させることである。立体安定剤は、ホモポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びポルビニルピロリドン(PVP)等のポリマーから選択され得る。
【0072】
特に好ましい立体安定剤は、非イオン性トリブロックコポリマーであるKolliphor(商標)P407であり、製剤の全量(質量)に対して、好ましくは最大4%(重量/重量)の量で、更に好ましくは0.5%~3%(重量/重量)の量である。
【0073】
本開示の製剤において使用され得る別の特定の好ましい安定剤は、グリセリン(プロパン-1,2,3-トリオール)である。グリセリンは、好ましくは、製剤の全質量に対して、10%~30%(重量/重量)、好ましくは10%~20%(重量/重量)又は15%~25%(重量/重量)の量で添加される。
【0074】
グリセリンに加えて、又はそれに代わるものとして、増粘剤及び安定剤、例えばキサンタンガム、アラビアゴム、カルメロースナトリウム、カラゲーン、カルボマー、ヒドロキシエチルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、トラガントも使用され得る。
【0075】
特定の好ましい実施形態において、キサンタンガムが安定剤として使用される。増粘剤キサンタンガムは、好ましくは、製剤の全質量に対して、0.05%~1%(重量/重量)の濃度で製剤に添加される。
【0076】
後述の実施例からも収集できるように、本開示の製剤は、安定剤の組合せ、すなわち、2以上の安定剤を含有することが特に好ましい。
【0077】
添加剤
少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤の3つの必須成分とは別に、本開示の製剤は、好ましい実施形態として1種以上の添加剤を含有してもよい。添加剤は、製剤の長期安定性を更に加えることができる。
【0078】
好ましい実施形態において、添加剤は、防腐剤、抗酸化剤、及び浸透剤からなる群より選択される。
【0079】
微生物汚染から製剤を保護するために、製剤は、防腐剤、又は防腐剤の混合物を追加的に含有し得る。
【0080】
好ましい実施形態において、添加剤は防腐剤であり、該防腐剤は、製剤の全質量に対して、0.1%~1%(重量/重量)の量で、好ましくは0.10%~0.15%(重量/重量)の量で製剤中に存在し、及び/又は該製剤は、ソルビン酸カリウム及び/又は安息香酸ナトリウムとして選択される防腐剤を添加剤として含む。
【0081】
特に好ましい防腐剤は、ソルビン酸カリウム等のソルビン酸塩、及び安息香酸ナトリウム等の安息香酸塩である。最も好ましくは、製剤は、防腐剤であるソルビン酸カリウム及び/又は安息香酸ナトリウムを、それぞれ個々に、製剤の全量に対して、0.1%~2%、好ましくは0.5%~1%(重量/重量)の範囲の量で含有することができる。
【0082】
好ましい防腐剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、チオメルサール、安息香酸、及びプロピレングリコールが挙げられる。あまり好ましくない防腐剤としては、ビグアナイド(例えばクロルヘキシジン)、フェノール、ベンジルアルコール、メチルパラベン、エチルパラベン、及びプロピルパラベンが挙げられる。
【0083】
本開示の製剤は、酸化に感受性であるカンナビノイドを含有する。したがって、本開示の製剤中に、抗酸化剤、又は好ましくは少なくとも2以上の抗酸化剤の混合物を更に含むことが好ましい場合がある。
【0084】
好ましい実施形態において、添加剤は抗酸化剤であり、該抗酸化剤は、製剤の全質量に対して、0.001%~3%(重量/重量)の量で、好ましくは0.001%~0.1%(重量/重量)の量で、0.005%~0.1%(重量/重量)の量で、0.001%~0.1%(重量/重量)、0.1%~1%(重量/重量)の量で、又は最大0.02%(重量/重量)の量で製剤中に存在し、及び/又は該製剤は、EDTA、トコフェロール、クエン酸、及びパルミチン酸アスコルビルからなる群より選択される抗酸化剤を添加剤として含む。別の好ましい実施形態において、添加剤は抗酸化剤であり、該抗酸化剤は、製剤の全質量に対して、0.01%~3%(重量/重量)の量で製剤中に存在する。
【0085】
最も好ましい抗酸化剤としては、ベンゼン環上のメチル基の数及び位置が異なる種々のタイプのトコフェロール(例えばα-トコフェロール(E307)、γ-トコフェロール(E308))を含むトコフェロールが挙げられ、特に好ましくはそれらの混合物(例えば、ドイツ国のGustav Parmentier GmbHから入手可能)が挙げられる。
【0086】
さらに、特に好ましい抗酸化剤としては、アスコルビン酸及びL-アスコルビン酸塩(例えば、パルミチン酸L-アスコルビル、ステアリン酸L-アスコルビル、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カルシウム)を含むアスコルビン酸及びその誘導体が挙げられる。アスコルビン酸塩の群からは、パルミチン酸L-アスコルビルが特に好ましい。
【0087】
さらに、他の好ましい抗酸化剤は、エチレンジアミン四酢酸、及びエチレンジアミン四酢酸の誘導体、例えばエチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムである。エチレンジアミン四酢酸を用いる場合、パルミチン酸アスコルビル又はその誘導体と組み合わせて添加することが最も好ましい。
【0088】
エチレンジアミン四酢酸は、好ましくは、製剤の全量に対して、0.01%~1%(重量/重量)、好ましくは0.05%~0.6%(重量/重量)の範囲の量で添加され、パルミチン酸アスコルビルは、0.01%~0.3%(重量/重量)の量で添加される。
【0089】
特に好ましい実施形態において、製剤は、相乗的な抗酸化効果を達成するための抗酸化剤の混合物を含有する。
【0090】
別の好ましい実施形態において、製剤は、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル及びエチレンジアミン四酢酸の抗酸化剤の混合物を含有する。
【0091】
或いは、コエンザイムQ10、ガレート(例えば没食子酸プロピル)、及びフェノールのあまり好ましくない誘導体、例えばブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシルトルエン、及びt-ブチルヒドロキノンも製剤に添加され得る。
【0092】
本開示の製剤はまた、そのpHを調節するための添加剤を含有してもよい。かかるpH調節剤は、既知の任意のバッファーであってもよく、好ましい実施形態において、クエン酸が使用される。別の好ましい実施形態において、製剤は、乳酸及び乳酸塩、リン酸及びリン酸塩、塩酸、及び水酸化物塩からなる群より選択される化合物を含有し得る。クエン酸が使用される場合、製剤の全量に対して、0.1%~3%(重量/重量)、好ましくは0.2%~1.5%(重量/重量)の量で製剤に添加され得る。
【0093】
本開示の製剤は、好ましくはグリセリン、グルコース、スクロース、ソルビトール、リン酸ナトリウム及びこれらの任意の組合せからなる群より選択される浸透剤を更に含み得る。
【0094】
疾患
本願の製剤は、動物、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトにおける疾患又は状態の治療又は軽減のために使用され得る。本開示による製剤で治療することができる疾患は、製剤中の天然大麻材料の存在に基づくカンナビノイド関連の疾患又は状態である。
【0095】
大麻は、幸福感、外部経験に対する感受性の高まり、及びリラクゼーションを含む、ヒトの複雑な一連の経験を引き起こす。現在使用されている医療用大麻の薬理学的効果は、主に麻植物の2つの主要成分である植物性カンナビノイドテトラヒドロカンナビノール(THC)、並びに主要な非陶酔性及び非中毒性化合物カンナビジオール(CBD)によるものである。これまで、大麻の研究は主にこれら2つの成分に焦点を当ててきた。THCとCBDの含有量、及び互いの比率は、植物の変種によって異なる。例えば、THCが約22%で利用可能な大麻植物種があるが、1%未満のTHC及び20%のCBDの含有量を有する種もある。THCとCBDは異なる薬理学的効果を有することから、これらの大麻植物種は異なる治療アルゴリズムに使用される。THC及びCBD等の分子は、多くの疾患に対する効果的で耐久性のある治療法の開発のための新規な標的を提供する可能性がある。THCとCBDに加えて、大麻の花は、カンナビクロメン(CBC)、カンナビゲロール(CBG)、テトラヒドロカンナビバリン(THCV)、カンナビジバリン(CBDV)、及びカンナビノール(CBN)等、多くの追加の薬理学的に活性な植物化学物質を含有する。この植物は、D-リモネン、β-ミルセン、α-ピネン、D-リナロール、β-カリオフィレン等の治療可能性を有する様々なテルペンを含有する。テルペンは非常に不均一な物質群である。テルペンは、植物性カンナビノイドと相乗的に作用し得る。大麻植物は、異なる薬理学的特性を有する200を超えるテルペン及びテルペノイドを含有する。テルペンは大麻に特徴的な香りと味を加える。
【0096】
カンナビノイド受容体は、植物性カンナビノイド、合成カンナビノイド、及びエンドカンナビノイドによって活性化される。カンナビノイドは、カンナビノイド受容体に可逆的かつ立体選択的に結合する。カンナビノイド受容体は全身に位置し、多種多様な生理学的プロセスに関与するエンドカンナビノイド系の一部である。カンナビノイド受容体は、7つの膜貫通ドメインを含むGタンパク質共役型受容体である。CB1受容体は、主に中枢神経系において発現されるが、肺、肝臓及び腎臓においても発現される。CB2受容体は、主に免疫系及び造血細胞において発現される。エンドカンナビノイド系のシグナル伝達に関与する他の(Gタンパク質共役型)非CB1及び非CB2カンナビノイド受容体(GPR18、GPR119及びGPR55)もあるという証拠がある。アナンダミド(AEA)及びアラキドノイルエタノールアミド(2-AG)等のエンドカンナビノイドは、シナプス後膜の脱分極及び/又はシナプス後代謝型受容体の活性化に続いて、神経細胞膜脂質前駆物質から産生及び切断される。エンドカンナビノイドは、求心性神経線維に位置するそれらの受容体に逆行的に拡散する。エンドカンナビノイドシグナル伝達は、トランスポータータンパク質を含む可能性が高い細胞取り込みプロセスによって終了され、シナプス前モノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)による2-AGの細胞内加水分解及びシナプス後脂肪酸アミド加水分解酵素(FAAH)によるAEAの細胞内加水分解が続く。CB1受容体を発現する全ての異なるニューロン集団に同じプロセスが適用されることはまだ示されていないままである。注目すべきは、AEAがシナプス後局在一過性受容器電位バニロイド1型(TRPV1)チャネルの細胞質ゾルドメインに更に結合し、それによってシナプス後末端の活性化を促進し得ることである。CBD及びTHCはマルチターゲットリガンドであり、AEA及び2-AGのアロステリックモジュレーターとして振る舞う。最近の研究は、CBDはCB1及びCB2に直接結合しないことを示した。CBDはモルヒネの抗侵害受容を高め、NMDA媒介性発作を減少させ、シグマ1受容体を介した脳卒中損傷を減少させる。特に、シグマ1受容体(σ1R)アンタゴニストは、グルタミン酸N-メチル-D-アスパラギン酸受容体(NMDAR)活性を阻害する。シグマ-1受容体(σ1R)は、IP3受容体によるカルシウムシグナル伝達を調節する小胞体においてシャペロンタンパク質として作用する。このσ1-受容体は膜貫通タンパク質であり、多くの異なる組織型で発現する。σ1-受容体は特に中枢神経系の或る特定の領域に集中している。合成化合物であるアミンと並んで、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)及びプレグネノロン等の神経活性ステロイドは受容体を活性化する。in vitroアッセイにおいて、CBDは、BD1063及びプロゲステロン等のσ1Rアンタゴニストによって共有される効果であるNMDARのNR1サブユニットとのσ1Rの調節性の関連を混乱させ、4-IBP、PPCC及びPRE084等のσ1Rアゴニストによって妨げられた。CBDは、NMDAR過活性の悪影響を減らすために、σ1Rに対するアンタゴニスト様活性を示し、CBDはNMDA誘発性痙攣症候群を軽減し、永久的な片側中大脳動脈閉塞によって引き起こされる梗塞サイズを減少させ、モルヒネ誘発上脊髄性抗侵害受容作用を増強する。
【0097】
疼痛病態生理学は、末梢及び中枢ニューロンの変化、及び炎症反応中により顕著になる神経免疫相互作用を含む。侵害受容(急性疼痛)は、脳の感覚及び報酬回路に持続的な効果をもたらす。慢性疼痛は嫌悪状態の異常な持続記憶(痛みの記憶)であり、自伝的記憶は我々の過去の亡霊(the ghosts of our past)として描かれるかもしれない。最も重要なのは、慢性疼痛は、より長く続く急性侵害受容と同じではないということである。慢性疼痛は、不安及び鬱病に関連する異なるメカニズムを有する疾患プロセスである。
【0098】
カンナビノイドによる機能不全の認知の改変は、慢性疼痛状態の治療における新規な治療アプローチである。有害な刺激は、エンドカンナビノイドによって操作される中央回路に関わる。より高い認知プロセスにおいて、及びストレス誘発活性の調節において重要な役割を果たす脳領域は、高密度の様々なカンナビノイド受容体を含む。ヒトの脳イメージング研究は、皮質及び皮質下恐怖条件付け経路が慢性疼痛の基本である可能性があることを示す。感情関連大脳辺縁系回路は、より高い認知プロセスにおいて、及びストレス誘発性視床下部-下垂体-副腎(HPA)活性の調節において重要な役割を果たす。過度の恐怖及び不安は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)及び恐怖症等の障害の特徴でもある。PTSDは、恐怖記憶の持続性と不適応ストレス反応を特徴とする。カンナビノイド化合物の潜在的な治療上の利点はまた、恐怖障害における曝露療法の有益な効果の根底にある分子メカニズムを理解することへの関心を高めている。曝露療法へのCBDの追加は、治療の効果を強化することが期待される。
【0099】
ヒトの脳イメージング研究は、脳が以前に信じられていたよりも可塑性であり、新たなシナプスの形成及び神経細胞の新たな樹状突起、いわゆるスパインが連続的に生じることを示す。スパインは、脳内のほとんどの興奮性シナプスの標的構造であり、発達中だけでなく成人期においても機能的及び構造的に非常に動的である。社会的疼痛と身体的疼痛に関与する脳構造は類似している。慢性疼痛は、樹状突起退縮及び脳ニューロンにおける樹状突起スパインの喪失等の慢性ストレス応答を引き起こし、シナプス可塑性及び記憶の欠損を伴う。これは、患者を認知障害に罹患しやすくする可能性がある。
【0100】
古典的なGタンパク質シグナル伝達成分を超えたカンナビノイド1型(CB1)受容体複合体の分子組成は知られていない。CB1受容体は、WAVE1複合体及びRhoGTPase Rac1の複数のメンバーと集合し、それらの活性を調節する。CB1受容体の活性化レベルは、発達中のニューロンの成長円錐におけるWAVE1を介したアクチン重合及び安定性に直接影響し、それらの崩壊をもたらし、並びに成熟ニューロンのシナプススパインにおいて、それらの退縮をもたらす。成体マウスにおいて、CB1受容体アゴニストは、in vivoで脊髄ニューロンにおける樹状突起スパインの活性依存性リモデリングを減弱させ、WAVE1複合体を調節することによって炎症性疼痛を抑制した。この研究は、神経系のカンナビノイド作動性調節のための新規なシグナル伝達機構を報告し、カンナビノイドの治療的適用におけるWAVE1複合体のこれまで報告されていなかった役割を実証する。疼痛研究におけるこれらの最近の進歩は、以前はシステム生物学の方法しか利用できなかった分野における分子及び細胞生物学的技術の分析力を示している。疾患又は傷害に続く異常な樹状突起スパイン構造は、例えばスパイン機能のカンナビノイド調節に敏感な慢性疼痛状態を維持するための「分子記憶」を表し得る。概念レベルでは、カンナビノイドによる樹状突起スパインのリモデリングに従事する記憶機構は、広範囲の難治性神経学的状態に寄与するであろう。
【0101】
長期記憶の形成と記憶は複雑で動的なプロセスである。分子機構及び細胞機構は、この複雑さ、例えば、多様な細胞型におけるそれらの発現、それらの時間的ダイナミクス、長期記憶形成及び記憶におけるそれらの役割、並びに記憶想起によって誘発される変化の根底にある。嫌悪事象がない状態で恐怖刺激に繰り返し曝露されると、恐怖反応が徐々に減少する(再学習による消去(Extinction by Re-learning))。GABA作動性介在ニューロンに特異的に位置するCB1の活性化は、外側扁桃体においてLTDを阻害する。これらの知見は、グルタミン酸作動性ニューロン又はGABA作動性ニューロンのいずれかに発現するCB1受容体が、シナプス伝達及び可塑性の制御において異なる役割を果たすことを示唆する。この結果は、AEAが扁桃体における抑制性介在ニューロンの活性を低下させることを示す。この非阻害は、共通の出力ニューロンの活性を増加させ、新たな記憶の形成による「消滅」の前提条件を提供する可能性がある。
【0102】
最近の研究は、環境ニーズに適応するためにニューラルネットワークアーキテクチャ(neural network architecture)を再編成するための脳の能力をより詳しく述べている。脳ネットワークのコアセットは、一般的に慢性疼痛で乱される。慢性疼痛状態の治療のための全ての戦略は、快楽状態の変更、認知障害、並びに恐怖、不安及び鬱病等の異常な行動等のストレス関連の併存状態を考慮しなければならない。慢性疼痛の感情的基盤は、信念、期待及び以前の経験等の認知要因が疼痛知覚の重要な調節因子であり、治療介入の有効性及び忍容性を実質的に調節することができることから、新たな治療戦略を開発する機会の新たな地平を開く。蓄積された証拠は、この否定的に誘発される(valenced)情動状態を有する脳の再編成(ニューロン可塑性)を指す。慢性疼痛は、ニューロン可塑性の暗い側面として現れる。疼痛記憶は、その最初の経験よりも多くの損傷を与える可能性がある。
【0103】
ヒトの研究及び複数の動物の疼痛モデルは、カンナビノイドによる治療的介入は、できるだけ早く慢性化プロセスを妨害すべきであるという見解を支持する。カンナビノイドの抗不安作用及び抗ストレス作用は、例えば、経験に基づく期待の適応(痛みの記憶)が肯定的な新たな関連と重ね合わせることによって最もよく対抗されるため、成功した集学的療法への入口を提供する。それらはニューロン回路に新たなリンクを作り出し、状況に応じた(context-specific)安全シグナルの再学習に役立つ。平凡な活動から喜びを引き出す能力を取り戻すことは非常に重要である。徐々に薄れていく記憶(gradual fading of memories)は、記憶処理の重要な部分である。しかしながら、恐怖の記憶は、様々な脳構造で積極的に保護されている場合がある。恐怖条件付けは明らかに記憶痕跡を誘発し、消去に対してより回復力(resilient)があり、条件付けられた恐怖応答は、嫌悪刺激に再曝露した後に自発的に回復し得る。脳は単純な消去機能を持たない。
【0104】
上記から結論づけると、大麻、すなわち、本開示の製剤中に存在するような天然大麻材料は、以下の疾患を治療することに関連する:
体性疼痛:疼痛について考えるときにほとんどの人が想像する感覚:怪我が起こるたびに全身にある受容体によって送られるメッセージ。体性疼痛シグナルは末梢神経を介して脳に伝わり、典型的には損傷領域において絶えず続く鈍い痛みとして経験される。
内臓痛:疾患又は怪我で腹腔内の組織又は臓器が引き伸ばされたとき、或いは乱れたときに起こる。疼痛シグナルは、腸内に存在する特定のクラスの受容体から発生し、腹部の深部に圧迫感をもたらす。内臓痛は、しばしば身体の実際の原因とは異なる部分から来ているように見え、これは関連痛と呼ばれる現象である。
神経因性疼痛:神経自体が損傷を負ったときに起こる。しばしば軽く触るだけでも反応して起こり得る灼熱感として経験される。神経因性疼痛は、通常、他の多くのタイプの疼痛を和らげる麻薬性鎮痛剤に反応しない。抗鬱薬又は抗痙攣薬、並びに或る特定の外科的処置は、神経障害の幾つかの症例を改善する可能性がある。
癌性疼痛
化学療法によって引き起こされる嘔吐及び吐き気
慢性腰痛
糖尿病性多発ニューロパチー
線維筋痛症
緩和ケア
トゥレット症候群
慢性中枢神経痛
多発性硬化症時の痙攣
不安障害
統合失調症
社会恐怖症
睡眠障害
乾癬及び神経皮膚炎のような皮膚関連疾患
緑内障
下肢静止不能症候群
癲癇
アルツハイマー病
ジストニア、ハンチントン病、パーキンソン病のような運動疾患
【0105】
したがって、本開示の製剤は、特に、上記に列挙した疾患のうちの1つの治療又は軽減において有用となり得る。
【0106】
好ましい実施形態において、本開示の製剤は、緩和ケア、及び/又は疾患の治療に使用することができ、好ましくは、疾患は、疼痛、特に急性又は慢性疼痛、体性疼痛、内臓痛、神経因性疼痛、癌性疼痛、慢性腰痛、慢性中枢神経痛;神経障害、神経変性疾患、不眠症、精神疾患、吐き気、食欲不振、化学療法によって引き起こされる嘔吐及び吐き気、糖尿病性多発ニューロパチー、線維筋痛症、トゥレット症候群、多発性硬化症、多発性硬化症での痙攣、不安障害、統合失調症、社会恐怖症、睡眠障害、乾癬及び神経皮膚炎のような皮膚関連疾患、緑内障、下肢静止不能症候群、癲癇、アルツハイマー病、ジストニア、ハンチントン病、パーキンソン病のような運動疾患、並びにエンドカンナビノイド系によって影響を受け、カンナビノイドによって影響を受ける任意の他の受容体(例えばGPR18、GPR119、GPR55)によって影響を受ける他の医学的適応症からなる群より選択される。
【0107】
製剤中の天然大麻材料の小さい粒径に基づいて、本開示は、動物、好ましくは哺乳動物、更に好ましくはヒトへの特に口腔、粘膜、口腔粘膜、局所若しくは経口適用のための医薬の調製に使用される、又は動物、好ましくはヒトへの非経口、髄腔内、静脈内、経皮若しくは経粘膜適用、好ましくは口腔内、局所若しくは経口適用のための医薬の調製に使用される、第1の態様による製剤を提供する。
【0108】
定義
以下では、幾つかの用語の定義が、本開示の文脈において使用されるものとして与えられる。
【0109】
「含む("comprising")」という用語が、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、他の要素を排除するものではない。本発明の目的上、「からなる("consisting of")」という用語は、「含む」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。以下、或る群が、少なくとも或る特定の数の要素を含むと定義される場合、好ましくはそれらの要素のみからなる群を開示しているとも理解される。
【0110】
単数名詞に言及する際に、不定冠詞又は定冠詞、例えば、「a」、「an」、又は「the」が使用される場合、具体的に他に何か言及がない限り、その名詞の複数形を含む。
【0111】
「少なくとも1種」という用語は、以下の用語の幾つかの1種以上の表現、特に天然大麻材料、溶媒及び安定剤を指す。それぞれの材料の表現は、2回以上、すなわち、2回、3回、4回又はそれ以上存在する場合、それぞれの材料の定義内で互いに独立して選択され得る。特に、少なくとも1種は、それぞれの材料の1回、2回、3回、4回又は5回の、独立して選択された表現を指し、特に好ましいのは1回又は2回である。
【0112】
「得られ得る」又は「定義され得る」、及び「得られる」又は「定義される」のような用語は、言い換え可能に用いられる。これは、例えば、文脈から明確にそうではないと読み取れない限り、「得られる」という用語は、例えば、或る実施形態が、例えば、「得られる」という用語の前に記載された(following)一連の工程によって得られなければならないことを示すことを意味するものではないが、そのような限定的な理解は、好ましい実施形態として、「得られる」又は「定義される」という用語に常に含まれる。
【0113】
「THC」は、テトラヒドロカンナビノールを指し、テトラヒドロカンナビノールの全てのタイプの異性体を含むが、特にΔ-THCを指す。
【0114】
「CBD」はカンナビジオールを指す。カンナビジオールは大麻の主要なカンナビノイドの1種であり、コミュニティの中で最も関心がある活性作用物質である。
【0115】
90は、製剤の粒度分布に関する。これは、粒子の全体積の90%(体積、DV90)が所与の数よりも小さいサイズを有し、体積の10%が所与の数よりも大きいサイズを有する粒子からなる粒子の体積を指す。言い換えれば、粒子の全体積の90%がD90より小さい直径の粒子で形成され、粒子の全体積の残りの10%がD90より大きい直径の粒子で形成される。一例として、D90が500nmの場合、500nm以下のサイズを有する粒子は試料の全体積の90%を構成し、500nmより大きい粒径を有する粒子は試料の全体積の10%を構成する。
【0116】
100は、粒子の最大サイズを指す。言い換えれば、粒子の100%が、所与の粒径以下のサイズを有する。
【0117】
Tween(商標)80はポリソルベート80の商品名であり、ポリオキシエチレン(20)-ソルビタン-モノオレエートとも呼ばれる。
【0118】
Span(商標)80は、ソルビタンモノオレエートの同義語であり、ソルビタン又は1,4-ソルビット無水物(ソルビタン)と、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、又はパルミチン酸等の脂肪酸とのソルビタン脂肪酸エステルである。
【0119】
Kolliphor(商標)P407(ポロクサマー407)とポロクサマー188はどちらもポロクサマーのグループに属し、それらはEuropaeisches Arzneibuch, Deutscher Apotheker Verlag Stuttgart, 6thedition, 2008, pages 3713-3715に定義される。ポロクサマーは、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーである。
【0120】
Lipoid(商標)P45は、ホスファチジルコリンの量が45%(重量/重量)の無脂肪大豆レシチンである。
【0121】
Labrafil(商標)は、オレオイルポリオキシル-6グリセリドの商品名(Gattefosse)である。
【0122】
Labrasol(商標)は、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリドの商品名(Gattefosse)である。
【0123】
Gelucire(商標)39/01は、中鎖モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの混合物、すなわち飽和C12~C18脂肪酸のグリセロールエステルである。
【実施例
【0124】
以下において、本発明を、以下の実施例を参照して更に詳細に説明する。以下の実施例は、開示の理解を助けるために記載されており、本明細書に記載及び請求される開示を具体的に限定するものとして用いられるべきではない。現在知られているか、又は後に開発される全ての等価物の置換を含む本開示のかかる変形は、当業者の権限に含まれ、製剤の変更又は実験計画の変更は、本明細書に組み込まれる開示の範囲内に入るとされるべきである。
【0125】
実施例1:カンナビジオールに富むカンナビス・サティバ(1%(重量/重量))の安定な製剤
カンナビジオールに富むカンナビス・サティバ株(A6FS10 flos、AI Fame、スイス国、D90<320μm、残留水分<10%)から予め粉砕及び蒸気滅菌した花植物材料を大麻粉末として使用した。
【0126】
大麻粉末を135℃で予熱したオーブンチャンバーに入れた。大麻粉末が120℃のコア温度に達したとき、粉末を、有効成分の脱炭酸を達成するために、続いて135℃で更に55分間加熱した。この工程は、大麻粉末中の残留水分を更に減少させる。
【0127】
全ての成分の量は、最終的なナノ懸濁液の総量(質量)に対して、%(重量/重量)で与えられる。
【0128】
10.5%(重量/重量)Gelucire(商標)39/01を70℃の調節水浴中で1時間30分間予熱した。
【0129】
別途、0.7%(重量/重量)安息香酸ナトリウム、0.6%(重量/重量)ソルビン酸カリウム、0.1%(重量/重量)エチレンジアミン四酢酸、及び0.5%(重量/重量)クエン酸を分散させ、56.69%(重量/重量)の2回蒸留水に充分に混合し、更に70℃で1時間予熱した。
【0130】
1.2%(重量/重量)中鎖トリグリセリド油、2%(重量/重量)Kolliphor(商標)P407、0.05%(重量/重量)パルミチン酸アスコルビル、0.06%(重量/重量)混合トコフェロール(Vitapherole(商標))、4.8%(重量/重量)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(Tween(商標)80)、及び5.8%(重量/重量)Lipoid(商標)P45を別の容器内で混合した。
【0131】
上記に列挙した全ての化合物(大麻粉末を除く)を、70℃の温度で適切な容器内で合わせた。
【0132】
続いて、上記で調製したように1%(重量/重量)の脱炭酸し滅菌済みの予め粉砕したカンナビス・サティバ粉末材料(D90<320μm、残留水分<3%)を脱気混合物に注意深く加え、連続撹拌下で分散させた。大麻材料を溶媒中に分散させる場合、製剤中の大麻材料は、製剤の全質量に対して1%(重量/重量)の濃度を有した。
【0133】
再度、全ての成分の入った容器を、1.5hPa未満の酸素分圧が達成されるまで脱気した。続いて、分散液を、サイズ0.4mm~0.5mmのイットリウム安定化ジルコニアボールを用いて、湿式ボール撹拌機ミル(タイプX1、Buehler AG、スイス国;1000rpm~1200rpm、45℃)で製粉した。製粉を、0.4μm(D100)未満の単峰の粒度分布が達成されるまで継続した。続いて、16%(重量/重量)グリセリンを加え、レーザー回折装置Beckman-Coulter LS13320によって測定した場合に0.2μm(200nm)未満の製剤の最終粒径(D90)に達するまで製粉を続けた。
【0134】
【表1】
【0135】
実施例2:テトラヒドロカンナビノールに富むカンナビス・サティバ(2%(重量/重量))の安定製剤
テトラヒドロカンナビノールに富むカンナビス・サティバ株(Bedrocan flos、Bedrocan、オランダ国、D90<320μm、残留水分<10%)から予め粉砕し蒸気滅菌した花植物材料を大麻粉末として使用した。
【0136】
大麻粉末を135℃で予熱したオーブンチャンバーに入れた。大麻粉末が120℃のコア温度に達したとき、粉末を、有効成分の脱炭酸を達成するために、続いて135℃で更に55分間加熱した。この工程は、大麻粉末中の残留水分を更に減少させる。
【0137】
全ての成分の量は、最終的なナノ懸濁液の総量(質量)に対して、%(重量/重量)で与えられる。
【0138】
13.5%(重量/重量)Gelucire(商標)39/01を70℃の調節水浴中で1時間30分間予熱した。
【0139】
別途、0.7%(重量/重量)安息香酸ナトリウム、0.6%(重量/重量)ソルビン酸カリウム、0.15%(重量/重量)エチレンジアミン四酢酸、及び0.6%(重量/重量)クエン酸を分散させ、48.42%(重量/重量)の2回蒸留水に充分に混合し、更に70℃で1時間予熱した。
【0140】
1.6%(重量/重量)中鎖トリグリセリド油、2.3%(重量/重量)Kolliphor(商標)P407、0.07%(重量/重量)パルミチン酸アスコルビル、0.06%(重量/重量)混合トコフェロール(Vitapherole(商標))、5.2%(重量/重量)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(Tween(商標)80)、及び6.8%(重量/重量)Lipoid(商標)P45を別の容器内で混合した。
【0141】
上記に列挙した全ての化合物(大麻粉末を除く)を、70℃の温度で適切な容器内で合わせた。
【0142】
続いて、上記で調製したように2%(重量/重量)の脱炭酸し滅菌済みの予め粉砕したカンナビス・サティバ粉末材料(D90<320μm、残留水分<3%)を脱気混合物に注意深く加え、連続撹拌下で分散させた。大麻材料を溶媒中に分散させる場合、製剤中の大麻材料は、製剤の全量に対して2%(重量/重量)の濃度を有した。
【0143】
再度、全ての成分の入った容器を、1.5hPa未満の酸素分圧が達成されるまで脱気した。続いて、分散液を、サイズ0.4mm~0.5mmのイットリウム安定化ジルコニアボールを用いて、湿式ボール撹拌機ミル(タイプX1、Buehler AG、スイス国;1000rpm~1200rpm、45℃)で製粉した。製粉を、0.4μm(D100)未満の単峰の粒度分布が達成されるまで継続した。続いて、18%(重量/重量)グリセリンを加え、レーザー回折装置Beckman-Coulter LS13320によって測定した場合に0.2μm(200nm)未満の製剤の最終粒径(D90)に達するまで製粉を続けた。
【0144】
【表2】
【0145】
実施例3:カンナビジオールに富む、及びテトラヒドロカンナビノールに富むカンナビス・サティバの混合物の安定製剤
カンナビス・サティバの主な活性作用物質は、CBD、THC又はそれらの組合せの群から選択されるカンナビノイドである。したがって、これらのカンナビノイドは、カンナビス・サティバ植物材料を含有する異なるナノ脂質製剤の濃度を比較するための基準物質として使用され得る。CBDに富む株(例えばA6FS10 flos、AI Fame、スイス国)又はTHCに富む株(例えばBedrocan flos、Bedrocan、オランダ国)、又はそれらの任意の組合せは、前述のナノ脂質製剤の調製に使用され得る。
【0146】
一例として、CBDに富むカンナビス・サティバ株A6FS10 flos(AI Fame、スイス国)とTHCに富むカンナビス・サティバ株Bedrocan flos(Bedrocan、オランダ国)との混合物を2:1(重量/重量)の比率で含有する製剤(総大麻濃度2%(重量/重量)で1.33%(重量/重量)のA6FS10及び0.67%(重量/重量)のBedrocanを意味する)を調製した。したがって、前述の株の混合物を含む、2%(重量/重量)の脱炭酸及び滅菌され、予め粉砕されたカンナビス・サティバ粉末(D90<320μm、残留水分<3%)を調製した。異なるタイプのカンナビス・サティバ材料とは別に、開示されたナノ脂質製剤を、純粋なカンナビジオールに富む大麻粉末の代わりに混合大麻粉末を用いて、実施例2と同様に調製した。
【0147】
実施例4:テトラヒドロカンナビノールに富むカンナビス・サティバ(1%(重量/重量))の安定製剤
テトラヒドロカンナビノールに富むカンナビス・サティバ株(Bedrocan flos、Bedrocan、オランダ国、D90<320μm、残留水分<10%)から予め粉砕し蒸気滅菌した花植物材料を大麻粉末として使用した。
【0148】
異なるタイプのカンナビス・サティバ材料とは別に、実施例4の製剤を実施例1と同様に調製した。
【0149】
実施例5:カンナビス・サティバ(1%(重量/重量))の安定製剤
THCに富むカンナビス・サティバ株Bedrocan flos(Bedrocan、オランダ国)(D90<320μm、残留水分<10%)から予め粉砕し蒸気滅菌した花植物材料を大麻粉末として使用した。大麻粉末を135℃で予熱したオーブンチャンバーに入れた。大麻粉末が128℃のコア温度に達したとき、粉末を、有効成分の脱炭酸を達成するために、続いて135℃で更に45分間加熱した。この工程は、大麻粉末中の残留水分を更に減少させる。
【0150】
全ての成分の量は、最終的なナノ懸濁液の総量(質量)に対して、%(重量/重量)で与えられる。
【0151】
7.8%(重量/重量)Gelucire(商標)39/01を60℃の調節水浴中で1時間予熱した。
【0152】
別途、0.9%(重量/重量)安息香酸ナトリウム、0.6%(重量/重量)ソルビン酸カリウム、0.45%(重量/重量)エチレンジアミン四酢酸、0.75%(重量/重量)クエン酸、及び0.1%(重量/重量)キタンサンガム(Xanthural 11K、CP Kelko、アメリカ国)を分散させ、56.34%(重量/重量)の2回蒸留水に充分に混合し、更に60℃で1時間予熱した。
【0153】
6.5%(重量/重量)中鎖トリグリセリド油、0.1%(重量/重量)パルミチン酸アスコルビル、0.06%(重量/重量)混合トコフェロール(Vitapherole(商標))、5.1%(重量/重量)ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80(Tween(商標)80)、及び4.3%(重量/重量)ソルビタンモノオレエート(Span(商標)80)を別の容器内で混合した。
【0154】
上記に列挙した全ての化合物(大麻粉末を除く)を、70℃の温度で適切な容器内で合わせた。
【0155】
続いて、上記で調製したように1%(重量/重量)の脱炭酸し滅菌済みの予め粉砕したカンナビス・サティバ粉末材料(D90<320μm、残留水分<3%)を脱気混合物に注意深く加え、連続撹拌下で分散させた。大麻材料を溶媒中に分散させる場合、製剤中の大麻材料は、製剤の全質量に対して1%(重量/重量)の濃度を有した。
【0156】
続いて、分散液を、サイズ0.4mm~0.5mmのイットリウム安定化ジルコニアボールを用いて、湿式ボール撹拌機ミル(タイプX1、Buehler AG、スイス国;1500rpm、45℃)で製粉した。製粉を、0.4μm(D100)未満の単峰の粒度分布が達成されるまで継続した。続いて、16%(重量/重量)グリセリンを加え、レーザー回折装置Beckman-Coulter LS13320によって測定した場合に0.2μm(200nm)未満の製剤の最終粒径(D90)に達するまで製粉を続けた。
【0157】
【表3】
【0158】
実施例6:薬物動態学的研究におけるカンナビノールの血漿濃度の決定
3人の健康な男性ボランティアにおける臨床試験を、カンナビジオールに富む大麻製剤の薬物動態学的効果を決定するために実施した(実施例1)。1.3mgのCBDを含有する大麻製剤の単回用量を口腔粘膜投与により投与した。血液試料を、投薬の直前、及び大麻製剤の投与に続いて10分後、20分後、30分後、45分後、60分後及び90分後、並びに2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後、8時間後及び24時間後に採取した。血液試料中のCBDの血漿濃度をLC-MS/MSによって測定した。
【0159】
大麻製剤の投与後、CBDは急速に吸収され、単回用量の口腔粘膜投与後10分以内に血漿中に存在する。平均最大濃度(Cmax)は1.96ng/ml、0時間~24時間の曲線下面積(AUC0h~24h)は9.31ng/mlhに達した。製剤のCmax及びAUCレベルを、Sativex(商標)Oromucosal Spray(GW Pharma Ltd)と比較し、表4(Stott et al., Eur J Clin Pharmacol 69 (2013), pages 1135-1147)に列挙した。Sativex(商標)の正規化された単回用量と比較した大麻製剤の薬物動態プロファイルを図1に見ることができる。Sativex(商標)と比較して、実施例1のCBDに富む製剤は、AUCレベルの増加(22.71倍)及びCmax濃度の増加(19.60倍)を示す。
【0160】
【表4】
【0161】
実施例7:薬物動態学的研究におけるテトラヒドロカンナビノール及び主要代謝物の血漿濃度の決定
3人の健康な男性ボランティアにおける臨床試験を、テトラヒドロカンナビノールに富む大麻製剤の薬物動態学的効果を決定するために実施した(実施例4)。3.0mgのテトラヒドロカンナビノールを含有する大麻製剤の単回用量の口腔粘膜投与を行った。血液試料を、投薬の直前、及び大麻製剤の投与に続いて2分後、5分後、10分後、15分後、20分後、30分後、45分後、60分後及び90分後、並びに2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後及び24時間後に採取した。血液試料中のTHCの血漿濃度を、LC-MS/MSによって測定した。
【0162】
大麻ナノ製剤の投与後、THCは吸収され、単回口腔粘膜投与後15分以内に血漿中に急速に現れる。平均最大濃度(Cmax)は0.57ng/ml、0時間~24時間の曲線下面積(AUC0h~24h)は6.94ng/mlhに達した。THC血漿濃度の平均濃度及びAUCレベルを、正規化用量のSativex(商標)口腔粘膜スプレー(GW Pharma Ltd)と比較し、表5(Stott et al., Eur J Clin Pharmacol 69 (2013), pages 1135-1147)に列挙した。Sativex(商標)の正規化された単回用量と比較した実施例4のTHCに富む大麻製剤の薬物動態プロファイルを図2に見ることができる。
【0163】
口腔粘膜スプレーSativex(商標)と比較して、実施例4のTHCに富む製剤は、AUCレベルの増加を示す(3.62倍)。THCは親油性が高く、体脂肪に急速に吸収され、分布する。製剤の口腔粘膜投与後にもたらされる血液中の濃度及び最大濃度は、製剤の組成に応じて変化し得る。しかしながら、24時間にわたるAUC値は、Sativex(商標)と比較して、実施例4の製剤の増強されたバイオアベイラビリティを明確に実証する。
【0164】
【表5】
【0165】
実施例8:実施例4の製剤で治療した、線維症異形成による慢性疼痛に罹患している男性患者による症例研究
線維症異形成及び多発性手術骨矯正のために40年間慢性疼痛に苦しむ54歳の男性患者は、静脈内の36.000μgの1日用量の強力なオピオイドフェンタニルによる疼痛療法を受けた。慢性疼痛患者の通常の投与量は、パッチとして100μg~300μgのフェンタニルであり、3日ごとに交換され、1日当たり約100μgのフェンタニルをもたらす。患者はオピオイドに高度に中毒であり、高いフェンタニル投与量のために車椅子に座っていた。オピオイド離脱後、患者は1日当たり800mgのTHC投与量の大麻油性抽出物に変更した。ここで患者は、0(0の痛みを意味する)~10(最大痛み)の数値評価尺度(NRS)で疼痛レベルを4に減らすことができた。NRS=4の疼痛レベルを以下ではベースラインと呼ぶ。カンナビノイド薬物治療がなければ、患者は疼痛レベル9にあった。しかしながら、毎日800mgの非常に高いTHC投与量は、重度の向精神性副作用を引き起こした。ドイツでは、最大許容処方THC量は1ヶ月当たり1000mgである。
【0166】
患者は、800mgのTHCの投与量でのカンナビノイド油性抽出物と引き換えに、実施例4の製剤に変更し、1日目から1日当たり28mgのTHCの投与量で服用した。14日以内に、患者は、実施例4の製剤の投与量を1日当たり14.9mgのTHCに減少させ、疼痛レベルを4から1に減らし(ベースラインから75%減少)、THC投与量を800mgから14.9mgに減らし、これはTHC投与量を98%減らしたことを意味する。患者を12ヶ月にわたってモニターしたところ、12ヶ月の期間の終わりに、実施例4の製剤のTHCの投与量14.9mgで、1の疼痛レベルであった。
【0167】
実施例9:実施例4の製剤で治療した多発性硬化症による痙攣に罹患している男性患者による症例研究
多発性硬化症、12ヶ月超の不安障害、12ヶ月超の鬱病、12ヶ月超の社会恐怖症、及び12ヶ月超の多発性神経損傷の確定診断を受けた36歳の男性患者を、以下の薬物スキームの下で治療した:神経因性疼痛に対してプレガバリンを2×300mg/日、不安障害に対してベンラファキシン1×150mg/日、多発性硬化症に対してデクリストール2000IU(国際単位)を週2回、多発性硬化症に対して週3回のコパキサン20mlの注射。患者には1日に5回~9回の痙攣発作があり、痙攣発作の重症度は0~10(最大重症度10)のNRSで4であり、神経因性疼痛の疼痛レベルは3であった。
【0168】
患者は、上記の基本薬物治療に対する共投薬として実施例4の製剤を服用し、12.1mgのTHCの投与量から始めて、これを5週間以内に7.5mgのTHC/日に減らした。5週間以内に、患者は痙攣性発作を1日当たり0回~2回の発作(ベースラインから75%減少)、痙攣性発作の重症度を2(ベースラインから50%減少)、疼痛レベルを1(ベースラインから67%減少)に減少させることができ、患者の基本薬物治療であるプレガバリンは2×300mg/日から0mg/日に100%減少した。
【0169】
実施例10:実施例4の製剤で治療された線維筋痛症に罹患している女性患者による症例研究
線維筋痛症と確定診断され、不安障害及び鬱病の併存疾患を有する51歳の女性患者で、ドロキセチンを100mg/日及び1日当たり24.3mgのTHC(Sativex(商標))を服用。患者はNRS=2の疼痛レベルにあった。薬物治療がなければ、患者の痛みレベルはNRS=8であった。患者は、口腔粘膜の潰瘍のためにSativex(商標)の変更を望んでいた。口腔粘膜の潰瘍形成は、アルコール含有量が高いためにSativex(商標)のよく知られた副作用である。患者はSativex(商標)と引き換えに実施例4の製剤を服用した。患者は、実施例4の製剤を用いて2.8mgのTHCの投与量で開始し、この投与量を治療の間維持した。患者は、THC投与量をSativex(商標)の24.3mgから実施例4の製剤の2.8mgのTHCに減少させて(88%減少)、疼痛レベルをNRS=1(ベースラインから50%減少)に減少させることができた。
【0170】
実施例11:実施例4の製剤で治療された原発性慢性多発性関節炎に罹患している女性患者による症例研究
ベースライン薬物治療:1日2回のセレコキシブ200mg(疼痛に対して)、トラマドール100mg(疼痛に対して)、5滴のアミトリプチリン40mg/ml(不安障害及び鬱病に対して)、1日1回のアエリウス5mg(慢性蕁麻疹に対して)を伴う、42歳から原発性慢性多発性関節炎の確定診断を受け、不安障害及び鬱病の併存疾患を有する62歳の女性患者。患者は次の併存疾患を有していた:12ヶ月超の腸麻痺、乳癌後の左乳房の切除術、12ヶ月超の慢性気管支炎、12ヶ月超の鬱病、12ヶ月超の両膝関節の重度の関節炎。患者はNRS=7の疼痛レベル(ベースライン)にあった。薬物治療がなければ、患者の疼痛レベルはNRS=10であった。
【0171】
患者は上記の基本薬物治療に対する共投薬として実施例4の製剤を服用した。患者は2週間の滴定段階で3.1mgのTHC/日を服用した。2週間以内に、患者は疼痛レベルをNRS=7からNRS=4に減少させることができた(ベースラインから43%減少させ、基本薬物治療のセレコキシブを400mg/日から200mg/日に50%減らし、トラマドールを37.5mg/日から0mg/日に100%減らした)。
【0172】
実施例12:実施例4の製剤による11-OH THCレベルの減少
肝臓におけるCYP450によるC(9)におけるTHCのヒドロキシル化は、薬理学的活性代謝物11-OH-THCの産生をもたらす。もともと、11-OH-THCは主要な精神活性物質であることが知られていたが(Huestis et al., 2007)、ヒトにおける精神活性効果に関する信頼できるデータは乏しい。幾つかの薬理学的動物実験において、11-OH-THCはTHCよりも3倍~7倍多くの向精神性副作用を誘発することが見出された(Grotenhermen et al., 2003、Lemberger et al., 1973)。さらに、脳への11 OH-THCの浸透は、THCと比較して、より速く、より高い量で現れた(Perez-Reyes et al., 1976、Grotenhermen et al., 2003)。カジュアルなマリファナ喫煙者における静脈内投与されたTHC及び11-OH-THCの心理的及び生理学的効果を調べた。研究は、頻脈及び心理的「ハイ(high)」が、11-OH-THC(用量:1mg)の静脈内の単回用量の投与後3分~5分以内に起こったことを示した。
【0173】
THC及び11-OH-THCの割合、並びにピーク濃度の開始は、医療大麻の効果及び副作用プロファイルに劇的な影響を与える可能性がある。喫煙後、ピーク11-OH-THC濃度は、適用後およそ13分で生じた(Huestis et al., 1992)。吸入投与(例えば喫煙、気化)に続いて、肝臓初回通過効果が回避されるため、77%THCと比較してかなり少量の活性代謝物11-OH-THC(23%)が報告された(Meyer et al, 2018、Spindle et al, 2016、Eisenberg et al., 2014)。
【0174】
経口投与(ドロナビノールカプセル及び溶液)の場合、THCと比較して3倍高い11-OH-THCの形成を見ることができる(Parikh et al., 2016)。これは、経口投与後の広範な肝初回通過代謝に起因し得る。Hunt et al.は、ナイーブTHC使用者でおよそ36L/時、定期的な使用者で60L/時という非常に高い平均血漿クリアランス率を報告し、これは肝血流の量に類似している。これは、代謝速度の制限段階が肝血流によって制御されることを示す。高いクリアランス率は、吸入と比較して経口投与後の高い程度の初回通過代謝及び11-OH-THCのかなり高い濃度を説明する(Hunt et al, 1980、Grotenhermen et al., 2003)。Sativex(商標)の投与後、経口送達と同様に、THCと比較して3倍高い11-OH-THCの形成を見ることができる。
【0175】
3人の健康な男性ボランティアにおける臨床試験を、テトラヒドロカンナビノールに富む大麻製剤の薬物動態学的効果を決定するために実施した(実施例4)。3.0mgのテトラヒドロカンナビノールを含有する大麻製剤の単回用量の口腔粘膜投与を行った。血液試料を、投薬の直前、及び大麻製剤の投与に続いて2分後、5分後、10分後、15分後、20分後、30分後、45分後、60分後及び90分後、並びに2時間後、3時間後、4時間後、5時間後、6時間後、7時間後及び24時間後に採取した。血液試料中のTHCの血漿濃度を、LC-MS/MSによって測定した。
【0176】
実施例4の大麻ナノ製剤の投与に続いて、11-OH-THCレベルは、Sativex(商標)又はドロナビノール製剤と比較して有意に低かった。THC血漿濃度の平均濃度及びAUCレベルを、正規化用量のSativex(商標)口腔粘膜スプレー(GW Pharma Ltd.)(Stott et al., Eur J Clin Pharmacol 69 (2013), pages 1135-1147)及びドロナビノール(Parikh N, Kramer WG, Khurana V, Cognata Smith C, Vetticaden S (2016) Bioavailability study of dronabinol oral solution versus dronabinol capsules in healthy volunteers. Clin Pharmacol 8:155-162)と比較し、表6に列挙した。
【0177】
口腔粘膜スプレーSativex(商標)及びドロナビノールと比較して、実施例4のTHCに富む製剤は、有意に低い11-OH-THC AUCレベルを示す(それぞれ2.48倍及び3.37倍)。24時間にわたって有意に低い11-OH-THC AUC値は、実施例4の製剤が口腔粘膜を介して吸収され、Sativex(商標)及びドロナビノールと比較して初回通過効果を回避することを明らかに実証する。
【0178】
【表6】
【0179】
実施形態
本開示はまた、以下の番号が付与された実施形態に関する。
1. 少なくとも1種の天然大麻材料と、少なくとも1種の溶媒と、少なくとも1種の安定剤とを含む製剤であって、前記製剤が、500nm未満の粒径(D90)を有する液体懸濁物である、製剤。
2. 前記少なくとも1種の天然大麻材料がアサ科の材料であり、好ましくは前記天然大麻材料がアファナンセ、カンナビス、セルティス、カエタクメ、ジロンニエラ、フムルス、ロザネラ、パラスポニア、プテロセルティス、及びトレマからなる群より選択される属の材料であり、好ましくは前記天然大麻材料がカンナビス属の材料である、実施形態1に記載の製剤。
3. 前記少なくとも1種の天然大麻材料がカンナビス属の材料であり、前記カンナビスがカンナビス・サティバ、カンナビス・インディカ、及びカンナビス・ルデラリスからなる群より選択される種であり、好ましくは前記少なくとも1種の天然大麻材料が前記カンナビス・サティバ種の材料である、実施形態2に記載の製剤。
4. 前記少なくとも1種の天然大麻材料が、少なくとも2つの天然大麻材料の混合物、好ましくは2つ又は3つの天然大麻材料、好ましくはカンナビス・サティバとカンナビス・インディカ又はカンナビス・ルデラリスとの混合物である、上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
5. 前記少なくとも1種の天然大麻材料が前記天然大麻材料の一部又は全部であり、好ましくは前記天然大麻材料の一部が葉、茎、種子、花、根、及びこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記天然大麻材料が前記天然大麻材料を含むか又はその花である、上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
6. 前記少なくとも1種の天然大麻材料が、前記製剤の全質量に対して、0.1%~20%(重量/重量)、前記製剤の全質量に対して、好ましくは0.1%~10%(重量/重量)、好ましくは0.2%~5%(重量/重量)、好ましくは0.3%~4%(重量/重量)であり、好ましくは0.5%~3%(重量/重量)、更に好ましくは0.5%~1%(重量/重量)、1%~2%(重量/重量)、又は2%~4%(重量/重量)の量で存在する、上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
7. 前記溶媒が、水、エタノール、脂質、非極性有機溶媒、及びこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記溶媒が水と脂質との混合物である、上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
8. 前記脂質が、固体脂質、液体脂質、ワックス、及びこれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記脂質が液体脂質と固体脂質との混合物である、実施形態7に記載の製剤。
9. 前記脂質が、グリセリドであり、好ましくはモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドからなる群より選択され、好ましくは前記脂質がトリグリセリドであり、より好ましくは前記グリセリドが中鎖トリグリセリドと飽和C12~C18脂肪酸のグリセロールエステル(Gelucire(商標)39/01)との混合物である、実施形態7又は8に記載の製剤。
10. 前記安定剤が、リン脂質;ポリソルベート;ホモポリマー、ブロックコポリマー及びグラフトコポリマーを含むポリマー(ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びポリビニルピロリドン(PVP)を含む);ポロクサマーを含む非イオン性トリブロックコポリマー;コポリビニルピロリドン;Labrasol(商標);ゼラチン;レシチン(ホスファチド);アカシアゴム;キサンタンガム;アラビアゴム;コレステロール;トラガカント;ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコール;ポリオキシエチレンステアレート;コロイド状二酸化ケイ素;ドデシル硫酸ナトリウム;モノグリセリド及びジグリセリド;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;トリエタノールアミン;ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム;モノステアリン酸グリセロール;セトステアリルアルコール;セトマクロゴール乳化ワックス;短鎖アルコール及び中鎖アルコール;Labrafil(商標);Purol-oleique;プロパン-1,2,3-トリオール(グリセリン);ポリビニルアルコール;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(DOSS);カルメロースナトリウム;カラゲーン;カルボマー;ヒプロメロース;並びにこれらの混合物からなる群より選択される、上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
11. 前記安定剤が、リン脂質、界面活性剤、及びポリマーからなる群より選択され、好ましくは前記安定剤が、ポリソルベート、多糖、及びポロクサマーからなる群より選択されるポリマーである、上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
12. 前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.5%~4.5%(重量/重量)の量で、1%~4.5%(重量/重量)の量で、又は1.5%~4%(重量/重量)の量で、より好ましくは2%~3%(重量/重量)の量で、又は3%~4%(重量/重量)の量で、最も好ましくは2.5%~4%(重量/重量)の量で、安定剤としてポリソルベートを含み、及び/又は前記製剤が、ポリソルベート80(Tween(商標)80)又はポリソルベート20(Tween(商標)20)として選択されるポリソルベート、好ましくはポリソルベート80(Tween(商標)80)を安定剤として含む、実施形態10又は11に記載の製剤。
13. 前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.5%~4.5%(重量/重量)の量で、1%~4.5%(重量/重量)の量で、又は1.5%~4%(重量/重量)の量で、より好ましくは2%~3%(重量/重量)の量で、又は3%~4%(重量/重量)の量で、最も好ましくは2.5%~4%(重量/重量)の量で、安定剤として界面活性剤を含み、及び/又は前記製剤がソルビタンモノオレエート(Span(商標)80)として選択される界面活性剤を安定剤として含む、実施形態10~12のいずれか1つに記載の製剤。
14. 前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、最大10%(重量/重量)の量で、好ましくは0.2%~1.5%(重量/重量)の量で、より好ましくは0.5%~1%(重量/重量)の量で、安定剤としてポロクサマーを含み、及び/又は前記製剤が、ポロクサマー407(Kolliphor(商標)P407)、又はポロクサマー188として選択されるポロクサマーを安定剤として含む、実施形態10~13のいずれか1つに記載の製剤。
15. 前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、最大5%(重量/重量)の量で、好ましくは0.02%~0.5%(重量/重量)の量で、0.04%~0.1%(重量/重量)の量で、より好ましくは0.05%~0.08%(重量/重量)の量で、安定剤として多糖を含み、及び/又は前記製剤が、キサンタンガムとして選択される多糖を安定剤として含む、実施形態10~14のいずれか1つに記載の製剤。
16. 前記製剤が、前記製剤の全質量に対して、0.5%~10%(重量/重量)の量で、好ましくは1%~4%(重量/重量)の量で、安定剤としてリン脂質を含み、及び/又は前記リン脂質が、前記リン脂質の全質量に対して、40%~100%(重量/重量)のホスファチジルコリンを含有し、及び/又は前記製剤が、Lipoid(商標)P45として選択されるリン脂質を安定剤として含む、実施形態10~15のいずれか1つに記載の製剤。
17. 前記製剤が添加剤を更に含み、好ましくは前記添加剤が、防腐剤、抗酸化剤、及び浸透剤からなる群より選択される、上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤。
18. 前記添加剤が防腐剤であり、前記防腐剤が、前記製剤の全質量に対して0.1%~1%(重量/重量)の量で、好ましくは0.10%~0.15%(重量/重量)の量で前記製剤中に存在し、及び/又は前記製剤が、ソルビン酸カリウム及び/又は安息香酸ナトリウムとして選択される防腐剤を添加剤として含む、実施形態17に記載の製剤。
19. 前記添加剤が抗酸化剤であり、前記抗酸化剤が、前記製剤の全質量に対して、0.01%~3%(重量/重量)の量で、好ましくは0.001%~0.1%(重量/重量)の量で、0.005%~0.1%(重量/重量)の量で、0.001%~0.1%(重量/重量)の量で、0.1%~1%(重量/重量)の量で、又は最大0.02%(重量/重量)の量で前記製剤中に存在し、及び/又は前記製剤が、EDTA、トコフェロール、クエン酸、及びパルミチン酸アスコルビルからなる群より選択される抗酸化剤を添加剤として含む、実施形態17又は18に記載の製剤。
20. 緩和ケア、及び/又は疾患の治療若しくは軽減に使用される上述の実施形態のいずれか1つに記載の製剤であって、好ましくは、前記疾患が、疼痛、特に急性又は慢性疼痛、体性疼痛、内臓痛、神経因性疼痛、癌性疼痛、慢性腰痛、慢性中枢神経痛;神経障害、神経変性疾患、不眠症、精神障害、吐き気、食欲不振、化学療法によって引き起こされる嘔吐及び吐き気、糖尿病性多発ニューロパチー、線維筋痛症、トゥレット症候群、多発性硬化症、多発性硬化症での痙攣、不安障害、統合失調症、社会恐怖症、睡眠障害、乾癬及び神経皮膚炎のような皮膚関連疾患、緑内障、下肢静止不能症候群、癲癇、アルツハイマー病、ジストニア、ハンチントン病、パーキンソン病のような運動疾患、双極性障害、並びにエンドカンナビノイド系によって影響を受け、カンナビノイドによって影響を受ける任意の他の受容体(例えばGPR18、GPR119、GPR55)によって影響を受ける他の医学的適応症からなる群より選択される、製剤。
図1
図2
【国際調査報告】