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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】層状材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20230308BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20230308BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B7/027
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541893
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021051760
(87)【国際公開番号】W WO2021151892
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】20153908.7
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】コルクマン, アード
(72)【発明者】
【氏名】ドゥイセンス, アルマンド アルフォンス マリー アグネス
(72)【発明者】
【氏名】オーステルラーケン, アンドレアス アントニウス
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK03C
4F100AK41C
4F100AK42B
4F100AK45B
4F100AK46C
4F100AK51C
4F100AK54B
4F100AL01C
4F100AL02B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100JA04B
4F100JA06B
4F100JB16C
4F100JL11B
4F100JL11C
4F100YY00B
(57)【要約】
本発明は、基材と、少なくとも1つの層Aとを含む層状材料であって、少なくとも1つの層Aは、少なくとも50重量%の分岐コポリエステルを含み、重量%は、層Aの総重量に対するものであり、分岐コポリエステルは、125℃~185℃の融解温度、少なくとも3.5のMz/Mwを有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する、層状材料に関する。本発明は、少なくとも1つの層Aを含むフィルムにも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、少なくとも1つの層Aとを含む層状材料であって、前記少なくとも1つの層Aは、少なくとも50重量%の分岐コポリエステルを含み、重量%は、層Aの総重量に対するものであり、前記分岐コポリエステルは、125℃~185℃の融解温度、少なくとも3.5のMz/Mwを有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する、層状材料。
【請求項2】
前記層Aは、前記基材に接着される、請求項1に記載の層状材料。
【請求項3】
前記少なくとも1つの層Aは、1*10-5mm~100*10-3mmの最大厚さを有する、請求項1に記載の層状材料。
【請求項4】
ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン及びこれらの組み合わせを含む更なる層Bを含む、請求項1に記載の層状材料。
【請求項5】
層Bは、層Aに接着される、請求項4に記載の層状材料。
【請求項6】
層Aは、前記基材に接着される、請求項5に記載の層状材料。
【請求項7】
層Aは、少なくとも80重量%の前記分岐コポリエステルを含み、重量%は、層Aの総重量に対するものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の層状材料。
【請求項8】
層Aは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンイソフタレート(PBI)のハードセグメントと、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)とのブロックコポリマー、直鎖脂肪族ポリカーボネート、ポリブチレンアジペート(PBA)及び二量体脂肪酸又は二量体脂肪酸ジオールの誘導体、直鎖脂肪族ポリエステル並びにこれらの組み合わせのソフトセグメントとを含む分岐コポリエステルを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の層状材料。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の層状材料を調製するための方法であって、層Aを含むフィルムを基材に積層する工程を含む方法。
【請求項10】
層Aを含む前記フィルムは、インフレーションフィルムプロセスによって調製される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも50重量%の分岐コポリエステルを含む少なくとも1つの層Aを含むか又はそれからなるフィルムであって、重量%は、前記層の総重量に対するものであり、前記分岐コポリエステルは、125℃~185℃の融解温度、少なくとも3.5のMz/Mwを有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する、フィルム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの層Aは、少なくとも80重量%の前記分岐コポリエステルを含み、重量%は、前記層の総重量に対するものである、請求項11に記載のフィルム。
【請求項13】
前記分岐コポリエステルは、140℃~160℃の融解温度を有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも5g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する、請求項11又は12に記載のフィルム。
【請求項14】
前記分岐コポリエステルは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンイソフタレート(PBI)のハードセグメントと、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)とのブロックコポリマー、直鎖脂肪族ポリカーボネート、ポリブチレンアジペート(PBA)及び二量体脂肪酸又は二量体脂肪酸ジオールの誘導体、直鎖脂肪族ポリエステル並びにこれらの組み合わせのソフトセグメントとを含む、請求項11~13のいずれか一項に記載のフィルム。
【請求項15】
前記ソフトセグメントは、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)を含むか又はそれからなる、請求項14に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、層状材料、層状材料の調製プロセス、層状材料における適用に適したフィルム及び層状材料の適用に関する。
【0002】
層状材料は、既知であり、例えばエアバッグとしても知られている車両の膨張可能な保護クッションに適用されている。保護クッションは、乗客の正面又は横方向の衝撃を防ぐ。これらのクッションは、多くの要件に従う必要がある。特に横方向の用途では、これらのクッションは、特定の量の時間にわたり、特定の圧力を抑えることができる必要がある。車両が横転した場合、クッション内のガスは、クッション内に長期間留まる必要があり、これにより乗客が車両から放り出されることを防ぎ、且つ/又は乗客の負傷を防ぐ。
【0003】
エアバッグで現在使用されている層状材料は、例えば、米国特許第6607797号明細書に記載されている、布地層にホイルを積層することによって調製される。このガスバッグ材料の欠点は、使用される材料が不十分な耐加水分解性及び/又は耐熱性を示すことである。別の解決策は、例えば、国際公開第18230721号パンフレットに記載されているようにコポリエステルを使用することである。この解決策の不利な点は、支持層が使用されるインフレーションフィルムプロセスによってホイルが調製される必要があるか、又は3層フィルムが使用される必要があることである。この支持層は、製造後に廃棄する必要があり、このため、プロセスが高価になるか、又はより高粘度の溶液を使用する必要があり、その結果、費用が高くなり、必要な材料が増える。
【0004】
従って、本発明の目的は、支持層を必要とせず、且つ/又はより薄い厚さで存在し得る、インフレーションフィルムプロセスによって調製することができる層を含む層状材料を提供することである。
【0005】
この物体は、基材と、少なくとも1つの層Aとを含む層状材料で得られ、この場合、少なくとも1つの層Aは、少なくとも50重量%の分岐コポリエステルを含み、重量%は、層Aの総重量に対するものであり、分岐コポリエステルは、125℃~185℃の融解温度、少なくとも3.5のMz/Mwを有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有する。
【0006】
驚くべきことに、本発明の層状材料は、基材への十分な接着を得ることができる一方、容易な製造、高いインフレーション比及び優れた溶融安定性を有する安定なブローフィルム特性を可能にする。
【0007】
「多層」は、本明細書では、少なくとも2つの層、潜在的には少なくとも3つ又は更に少なくとも4つの層を含むと理解され、層状材料の使用目的に応じて5つ以上の層を更に含み得る。多層における層の最大量は、使用目的によって異なり、最大10層であり得る。
【0008】
「(コ)ポリエステル」は、本明細書では、ポリエステル及びコポリエステルの両方を含むと理解される。
【0009】
「(コ)ポリアミド」は、本明細書では、ポリアミド及びコポリアミドの両方を含むと理解される。
【0010】
熱可塑性材料、特にコポリエステルの融解温度(T)は、窒素雰囲気下でISO 11357-3:2011に従って示差走査熱量測定(DSC)を使用して規定通りに決定される。融解温度は、ピーク温度、即ち第2の加熱で10℃/分の加熱速度を使用して決定された最も高い温度の融解ピークの関連クロマトグラムからの吸熱における最大高さとして定義される。機器は、インジウム標準で校正する必要がある。アルミニウムパンは、少量の熱可塑性コポリエステルエラストマー、好ましくは5~10mgを保持するために使用される。試料は、10℃/分の一定速度において、最も高い融点より少なくとも20℃高い温度、好ましくは少なくとも240℃の温度に加熱される。次いで、試料を10℃/分の速度で多くとも0℃の温度、より好ましくは多くとも-50℃の温度に冷却して、任意の変動する熱履歴を消去する。次いで、試料を10℃/分の一定速度において、最も高い融点より少なくとも20℃高い温度、好ましくは少なくとも240℃の温度に再度加熱する。
【0011】
図1~6は、層状材料のいくつかの実施形態を概略的に表す。点線は、それぞれ図5及び6に更に示されているように、部分的又は実質的に完全に埋め込まれ得る表面を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】基材と、1つの層Aとを含む層状材料を表す。
図2】基材と層Aとの間に更なる層Bが存在する層状材料を表す。
図3】基材の反対側に更なる層Bが存在する、図1と同様の層状材料を表す。
図4】基材が層A及び更なる層Bと接触する層状材料を表す。
図5】層Aが部分的に基材に埋め込まれている概略図を表し、これは、特に、織布又は不織布の場合のように基材が空孔を含む場合に当てはまり得る。基材は、円で示され、矢印は、層Aの最大厚さを示す。
図6】層Aが基材にほぼ完全に埋め込まれている概略図を表し、これは、特に、織布又は不織布の場合のように基材が空孔を含む場合に当てはまり得る。基材は、円で示され、矢印は、層Aの最大厚さを示す。
図7】屈折率(RI)及び微分粘度クロマトグラム(IV-DP)に基づく、モル質量モーメント及びモル質量分布の値を決定するための積分限界(垂直線)及びベースライン(水平線)の設定を用いたSECクロマトグラムの例を提供する。
【0013】
[基材]
本発明による層状材料は、基材を含む。
【0014】
「基材」は、本明細書では、層状材料を作製するためのプロセスが実施される材料として定義され、好ましくは、プロセスは、フィルムの接着、より好ましくは層状材料を作製するためのフィルムの積層である。
【0015】
基材は、様々な材料及び形態から選択することができ、層状材料の使用目的に依存する。基材は、例えば、織布、不織布、フィルム、積層体、布地、プレート、シート、発泡体及びこれらの組み合わせの形態であり得る。好ましくは、基材は、例えば、エアバッグに適用される場合、より好ましくはサイドカーテンエアバッグに適用される場合、例えば繊維製品などの織布である。
【0016】
基材は、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン及びコポリマー並びに/又はこれらの混合物を含むプラスチックなどの様々な材料を含み得る。基材は、例えば、木材、綿、亜麻、ガラス、金属及びまたプラスチックと他の材料との組み合わせを含む材料などの他の材料も含み得る。エアバッグで使用する場合、リサイクルを容易にすることから、基材は、好ましくは、ポリアミド、コポリアミド、ポリエステル又はコポリエステル、より好ましくはポリエステル又はコポリエステルを含む織布であり、より好ましくは、基材は、(コ)ポリエステルを含むワンピース織布であり、より好ましくは、基材は、実質的に(コ)ポリエステルからなる。
【0017】
「ワンピース織布」(OPW)は、縫製プロセスを迂回することができる特殊な織り技術で作られた製品であり、それ自体知られている。OPWは、単一の織り構造においてブローされ得るバッグの作成を可能にする。
【0018】
好ましくは、基材の材料は、ISO 11357-3:2011に従ってDSCによって測定される融解温度を有し、その融解温度は、層Aの分岐コポリエステルの融解温度よりも高く、好ましくは少なくとも20℃高く、より好ましくは少なくとも30℃高い。これにより、層Aの基材への積層が容易になる。基材が様々な材料を含む場合、基材の融解温度は、好ましくは、個々の材料の最も高い融解温度として定義される。
【0019】
基材は、例えば、その形態が織布若しくは不織布又は発泡体若しくはワンピース織布である場合、空孔を含み得る。層Aは、基材に直接適用される場合、その場合、部分的に基材に埋め込まれ得、これは、図5に概略的に表されている。この場合、層Aの厚さは、図5の矢印で示される最大の厚さとして定義される。更なる層Bが基材に直接適用される場合、この層も基材に部分的に埋め込まれ得る。
【0020】
[層A]
本発明による層状材料は、「層A」とも呼ばれる少なくとも1つの層Aを含む。層Aは、ISO 11357-3:2011に従ってDSCによって測定される125℃~185℃の融解温度、少なくとも3.5のMz/Mwを有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のMFIを有する分岐コポリエステルを含む。
【0021】
層Aは、少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも65重量%、更により好ましくは少なくとも80重量%の分岐コポリエステルを含み、重量パーセントは、層Aの総重量に対するものである。層Aはまた、実質的に分岐コポリエステルからなり得る。
【0022】
層Aは、好ましくは、130℃~175℃、より好ましくは140℃~165℃、更により好ましくは145℃~160℃の融解温度を有する分岐コポリエステルを含む。分岐コポリエステルの融解温度は、ハードセグメント及び/又はソフトセグメントの量並びにハードセグメント及び/又はソフトセグメントのタイプによって調整することができる。好ましくは、分岐コポリエステルは、ハードセグメントとしてPBT及びPBIを含み、これは、ハードセグメントとしてPBTのみを含む分岐コポリエステルと比較して分岐コポリエステルの融解温度を低下させる。
【0023】
層Aは、例えば、熱安定剤、着色剤、核剤、UV安定剤、潤滑剤、可塑剤などの更なる添加剤を含み得る。通常、これらの更なる添加剤は、層Aの総重量に対して多くとも10重量%、好ましくは多くとも5重量%の量で層Aに存在する。
【0024】
層Aは、図1に示すように基材と接触し得るが、図2に示すように更なる層Bによって分離されていてもよい。層Aは、基材に部分的にも埋め込まれ得、これは、好ましくは、基材が織布である場合に当てはまる。この特定の状況は、図5に概略的に表されている。層Aは、基材にほぼ完全にも埋め込まれ得、これは、図6に概略的に表されている。
【0025】
層Aは、例えば、押出しコーティング、キャストフィルムプロセス、インフレーションフィルムプロセスを含む様々な方法によって調製することができる。好ましくは、層Aは、インフレーションフィルムプロセスによって調製される。驚くべきことに、層Aは、少なくとも50重量%の分岐コポリエステルを含み、この場合、重量%は、層Aの総重量に対するものであり、分岐コポリエステルは、125℃~185℃の融解温度を有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のMFI及び少なくとも3.5のMz/Mwを有し、簡易なインフレーションフィルムプロセスによる作製を可能にする。インフレーションフィルムプロセスによって調製される層Aの利点は、支持層を省略することができ、層Aの作製時により高いプロセス速度を使用することができ、より薄い厚さを得ることができ、且つ/又はより高いインフレーション比を達成することができ、その結果、フィルムの幅が広くなり得ることである。層Aは、単層として調製され得るが、層Aは、多層としても調製され得、これにより少なくとも1つの更なる層Bを含む。
【0026】
[分岐コポリエステル]
層Aは、125℃~185℃の融解温度、少なくとも3.5のMz/Mwを有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のMFIを有する分岐コポリエステルを含む。
【0027】
「コポリエステル」は、本明細書では、ポリエステルのハードセグメントと、ソフトセグメントとを含むポリマーであると理解される。ポリエステルのハードセグメントは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンイソフタレート(PBI)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート及びポリプロピレンナフタレート並びにこれらの組み合わせであり得る。好ましくは、ハードセグメントは、PBTとPBIとの組み合わせであり、なぜなら、これは、容易に入手可能であり、コポリエステルのより低い融解温度を可能にするからである。
【0028】
ソフトセグメントは、広範囲のポリマーから選択することができ、例えばポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)とのブロックコポリマー、直鎖脂肪族カーボネート、ポリブチレンアジペート(PBA)及び二量体脂肪酸又は二量体脂肪酸ジオールの誘導体、直鎖脂肪族ポリエステル並びにこれらの組み合わせを含む。好ましくは、十分な加水分解安定性を提供することから、ソフトセグメントは、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)を含む。
【0029】
分岐コポリエステルは、少なくとも3.5、好ましくは少なくとも3.7、より好ましくは少なくとも3.9のMz/Mwを有する。分岐コポリエステルは、好ましくは、少なくとも2.1、より好ましくは少なくとも2.2、更により好ましくは少なくとも2.3、最も好ましくは少なくとも2.4のMw/Mnを有する。Mz/Mwの値が高いほど分岐が高いことを示し、これは、分岐コポリエステルをフィルムに加工するのに役立つ。
【0030】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)は、以下で説明するように、サイズ排除(SEC)法によって決定することができる。モル質量決定のためのSEC法は、一般的に、ASTM:D5296-11(2011)に記載されている。更に、ASTM規格D 5226-98(2010)は、ポリマー分析に使用することができる溶媒を定義している。熱可塑性コポリエステルエラストマーの場合、0.1重量%のトリフルオロ酢酸カリウムを含む溶媒ヘキサフルオロイソプロパノールが使用される。全てのサイズ排除クロマトグラフィー測定は、TDA305トリプル検出器アレイを備えたViscotek GPCMax VE2001溶媒/試料モジュールシステムで実行される。クロマトグラフィー分離には、PSS Polymer Standards Service GmbHの3つのPFGリニアXLカラムを使用する。検出器とカラムは、35℃で動作する。事前のサイズ排除クロマトグラフィーでは、ポリマーは、1.0~1.5mg/mlの範囲の濃度において、0.8ml/分の流速でSEC分析の溶離液としても使用される、0.1重量%のトリフルオロ酢酸カリウムを含むヘキサフルオロイソプロパノールに溶解される。モル質量及びモル質量分布は、屈折率、微分粘度及び直角光散乱シグナルを使用して三重検出法で決定される。分子量平均とモル質量分布の計算には、0.22~0.24ml/gの範囲の屈折率(dn/dc’s)が使用される。モル質量モーメント及びモル質量分布の計算は、OmniSECソフトウェアバージョン4.7を使用して実行される。屈折率指数は、屈折率クロマトグラム全体の積分によって決定される。モル質量モーメント及びモル質量分布の計算の積分限界は、対象の試料について記録された微分粘度クロマトグラムの開始及び終了を考慮して設定される。図7は、積分限界の設定の例を提供する。これらの計算の更なる詳細については、Niehaus,D.E.,Jackson,C.“Size exclusion chromatography of step-growth polymers with cyclic species:theoretical model and data analysis methods”,Polymer 41(2000),259-268に見出すことができる。
【0031】
複数の分岐コポリエステルが層Aに存在する場合、分岐コポリエステルの総量は、層Aに対して少なくとも50重量%である必要があり、Mz/Mw、Mw/Mn、融解温度及びMFI値は、分岐コポリエステルの総量に対して測定される必要がある。
【0032】
分岐コポリエステルのMFIは、190℃において2.16kgで測定されて多くとも10g/10分である。MFIは、ISO 1133-1、手順Bに従って測定することができる。測定は、直径約2mmの開口部を備えた標準のダイを使用して実行され、溶融時間は、300秒である。計量される試料の量は、4.5~5.0グラムである。計量する前に、材料を150℃で2時間乾燥する。好ましくは、分岐コポリエステルは、多くとも7g/10分のMFIを有し、更により好ましくは、MFIは、190℃において2.16kgで測定されて多くとも5g/10分であり、最も好ましくは多くとも3g/10分であり、なぜなら、特にインフレーションフィルムプロセスで調製した場合、取り扱いが容易になるからである。190℃において2.16kgで測定されるMFIが非常に低い場合、メルトフローの安定性は、この重量で測定するには不十分であり、10kgのより高い重量を適用する必要がある。この場合、MFIは、好ましくは、190℃において10kgで測定されて多くとも25g/10分、より好ましくは多くとも20g/10分である。
【0033】
分岐コポリエステルは、それ自体知られているプロセスによって調製することができ、これには、溶融重合が含まれ、通常、その後に溶融仕上げが続き、所望のMFIが得られる。他の調製技術には、例えば、溶融重合、それに続く、コポリエステルに対して2つ以上の反応性基を有する化合物、例えばエポキシ、カルボジイミド又はイソシアネート基を有する化合物を使用する反応性押出しが含まれる。イソシアネート化合物には、例えば、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、液化メチレンジフェニルジイソシアネート(l-MDI)、高分子MDI、トリレンジイソシアネート、ジアニシドジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリイソシアネートフェニルチオホスフェート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアナート、リシンジイソシアナートメチルエステル、メキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートジメレート、イソプロピリデンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどが含まれる。2つ以上のイソシアネートを使用することもできる。これらは、分岐コポリエステルに対して例えば0.01重量%~2.00重量%の量で使用することができる。分岐は、分岐コポリエステルを調製するプロセスで分岐剤を使用することによって得られる。
【0034】
「分岐剤」は、それ自体知られており、本明細書ではモノマー、オリゴマー又はポリマーと反応してポリマーに分岐を導入することができる少なくとも3つの官能基を有する分子であると理解される。分岐剤には、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、ジ(トリメチロールプロパン)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリチトロール、トリペンタエリチトロール、トリメチルトリメリテート、トリブチルトリメリテート、2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリオクチルトリメリテート(TOTM)、トリヘキシルトリメリテート(THTM)が含まれる。分岐剤は、分岐コポリエステルに対して0.01重量%~2.00重量%の量で使用することができ、必要な分岐の度合いに依存する。
【0035】
[層状材料]
層状材料は、任意選択で、1つ以上の更なる層Bを含むことができる。1つ以上の更なる層Bは、基材と層Aとの間に配置され得るが(図2)、層Aと基材とが互いに接触する場合、1つ以上の更なる層Bは、層Aの反対側(図3)又は基材の反対側(図4)に配置される。層状材料は、複数の更なる層B、例えば層Aの両側の反対側及び/又は基材の両側の反対側の両方の位置も含み得る。複数の更なる層Bは、同じ材料であり得るが、異なる材料も含み得る。
【0036】
層Bは、層Aとともに、従って少なくとも2つの層を含むフィルムとして調製することができる。層Bは、個別に調製することもでき、その後、層状材料の作製時に追加することができる。
【0037】
層Bは、例えば、ポリエステル、コポリエステル、ポリアミド、コポリアミド、熱可塑性ポリウレタン、ポリオレフィン、グラフトされたポリオレフィン及びこれらの組み合わせなどの様々な材料を含み得、単層であり得るが、多層でもあり得る。好ましくは、インフレーションフィルムプロセス中の溶融安定性を更に安定化するという利点を有することから、層Bは、分岐コポリエステルを含む。更により好ましくは、層Bは、層Aで使用される分岐コポリエステルのTよりも高い融解温度TmBを有する材料を含み、なぜなら、これは、基材に積層すると、層Aが溶融し、図5及び図6にそれぞれ例示されているように、基材の開放構造に部分的又は潜在的に完全に流れ込むが、層Bが変形せず、その強度を維持する利点を有するからである。
【0038】
層Bは、例えば、熱安定剤、着色剤、核剤、UV安定剤、潤滑剤、可塑剤などの更なる添加剤を含み得る。通常、これらの更なる添加剤は、層Bの総重量に対して多くとも10重量%、好ましくは多くとも5重量%の量で層Bに存在する。
【0039】
層Bは、上記の層Aと同様に開示される方法によって調製することができる。好ましくは、層A及びBは、インフレーションフィルムプロセスによる多層フィルムプロセスによってともに調製される。
【0040】
本発明による層状材料は、層Aを基材に積層するなど、それ自体知られているプロセスにより又は接着剤を使用して層Aを基材に適用することにより調製することができる。
【0041】
「積層」は、本明細書では、加熱する工程及び圧力を加える工程を含むと理解され、この場合、基材又は層Aのいずれかが溶融される。好ましくは、層A及び/又はBは、溶融され、基材は、実質的に固体のままである。最も好ましくは、層Aは、溶融され、基材は、実質的に固体のままである。
【0042】
[層Aを含むフィルム]
本発明は、基材を含む層状材料における適用に適したフィルムにも関し、このフィルムは、125℃~185℃の融解温度、少なくとも3.5のMz/Mwを有し、且つ190℃において2.16kgで測定される多くとも10g/10分のMFIを有する分岐コポリエステルを含む少なくとも1つの層Aを含むか又はそれからなる。上記で開示された全ての選好及び実施形態は、このフィルム、特に分岐コポリエステルに関連する選好及び実施形態にも明示的に言及する。
【0043】
好ましくは、フィルムは、1*10-5~100*10-3mm、より好ましくは1*10-5mm~60*10-3mm、更により好ましくは1*10-5mm~50*10-3mm、最も好ましくは1*10-5mm~40*10-3mmの厚さを有する。
【0044】
好ましくは、容易な作製を可能にすることから、フィルムは、インフレーションフィルムプロセスによって調製される。一実施形態では、フィルムは、層Aからなる。別の実施形態では、少なくとも1つの層Aを含むフィルムは、以下で層Bと呼ばれる別の層を更に含む。層Bに言及する上記の実施形態は、少なくとも1つの層Aを含み、且つ層Bを更に含む本発明によるフィルムにも関する。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明によるフィルムは、少なくとも1つの層Aと、層Bとを含み、インフレーションフィルムプロセスによって調製される。より好ましくは、本発明によるフィルムは、上記で開示された少なくとも1つの層Aと、層Bとを含み、この場合、層Bは、層Aで使用される分岐コポリエステルのTよりも高い融解温度TmBを有する材料を含む。これは、それぞれ図5及び図6に例示されているように、層Aと層Bとを含むフィルムを基材に積層すると、層Aが溶融し、基材の開放構造に部分的又は潜在的に完全に流れ込む一方、層Bが変形せず、その強度を維持する利点を有する。最も好ましくは、層Bは、(コ)ポリエステルであり、なぜなら、これは、フィルムのリサイクルを容易にするからである。
【0046】
本発明によるフィルムは、例えば、ガス及び/若しくは液体に対する保護又は例えば機械的影響に対する保護が必要とされる用途、より好ましくはエアバッグ製造、最も好ましくはサイドカーテンエアバッグの製造において有利に使用され得る。
【0047】
好ましくは、本発明によるフィルムは、分岐コポリエステルを含むか又はそれからなり、この場合、分岐コポリエステルは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリブチレンイソフタレート(PBI)のハードセグメントと、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリ(エチレンオキシド)とポリ(プロピレンオキシド)とのブロックコポリマー、直鎖脂肪族ポリカーボネート、ポリブチレンアジペート(PBA)及び二量体脂肪酸又は二量体脂肪酸ジオールの誘導体、直鎖脂肪族ポリエステル並びにこれらの組み合わせのソフトセグメントとを含む。より好ましくは、ソフトセグメントは、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)である。
【0048】
層状材料は、例えば、エアバッグ、特にサイドカーテンエアバッグ、屋根ふき、ハウスラップ用途、保護フィルム及びドレープなどの医療用途を含む幅広い用途に適している。
【0049】
[実施例]
比較材料Aは、Hytrel(登録商標)4056であり、Dupontから入手可能である。Hytrel(登録商標)4056は、PBT/PBIのハードセグメントと、分子量1000のポリテトラメチレンオキシド(PTMO)のソフトセグメントとに基づく熱可塑性コポリエステルである。Hytrel(登録商標)4056の融解温度は、150℃、MFIは、5g/10分(2.16kg、190℃、ISO1133-1、手順B)である。
【0050】
比較材料Bは、PBT/PBIのハードセグメントと、ソフトセグメントとして分子量1000のポリテトラメチレンオキシド(PTMO)とを備えたコポリエステルである。比較材料Bの融解温度は、162℃、MFIは、4.5(2.16kg、190℃、ISO1133-1、手順B)である。比較材料Bは、2段階のプロセスで作製した。最初に、当業者に知られている溶融重合プロセスを使用して比較的低粘度でベースポリマーを作製した。第2の工程では、様々な量の液化ジフェニルメチレンジイソシアネート(1-MDI)を使用して反応性押出しを行って粘度を上げて、表1に示される所望のMFIを達成した。反応性押出しプロセスは、200rpmで動作するZSK40MC+押出し機で実行され、処理能力は、54kg/時間であり、及びバレル温度は、250℃であった。比較材料Bは、0.56重量%のl-MDI含有量を有した。
【0051】
材料1~4は、反応性押出し装置の供給管において分岐剤を比較材料Bに添加し、l-MDIの量を増やすことによって調製した。
【0052】
材料1には、分岐剤として0.4m/m%のトリメチロールプロパン、1.3~1.5m/m%のl-MDI及び100-0.4-[l-MDI-材料1]+[l-MDI-比較B]m/m%の比較材料Bが含まれている。
【0053】
材料2、3及び4には、分岐剤として0.3m/m%のペンタエリスリトール、1.2~1.6m/m%のl-MDI及び100-0.3-[l-MDI-材料]+[l-MDI-比較B]m/m%の比較材料Bが含まれている。
【0054】
材料2は、1.55重量%のl-MDIを有し、材料4は、1.25重量%のl-MDIを有し、材料1及び3の両方は、1.45重量%のl-MDIを有し、この場合、重量%は、材料の総量に対するものである。
【0055】
試験された材料の溶融強度は、ISO 16790:2005に従ってRheotens試験を使用して規定通りに決定した。Rheotens試験は、溶融ポリマーの伸線性を表し、これは、押出し、繊維紡糸、フィルムインフレーション、ブロー成形などの多くの工業プロセスにとって重要である。高い溶融強度は、フィルムインフレーションプロセス中、良好な気泡安定性及び/又はより高いインフレーション比を示す。
【0056】
溶融強度を測定するための実験装置は、キャピラリー押出しレオメーター、Goettfert Rheograph 75及び巻き取り装置としてのRheotens装置、Rheotens 71.97、製造業者:Goettfertからなった。Rheotens 71.97の力の測定範囲は、0~2.0Nであり、分解能は、1mNである。ここで示される溶融強度の結果は、以下の測定プロトコルに従った。最初に、試料を80℃で少なくとも14時間真空乾燥した。次いで、顆粒をキャピラリーレオメーターの予熱したレオメーターオーブン(T=190℃、直径=12mm)に供給し(充填時間、1分未満)、次いで5分間待ち、顆粒を溶融した。L/D=30/2mmで入口角度がフラット(180°)で全ての材料にキャピラリーダイを使用し、これにより溶融物をフィラメントに押出した。レオメーターのピストン速度をVpiston=0.049mm/秒に設定し、これにより、フィラメント速度は、1.8mm/秒になった。ダイの出口と巻き取りホイールとの間のドローダウン距離を、等温状態を可能にするために10cmに設定した。ホイールギャップを0.2mmに設定し、押出しストランドの固着を防ぐためにシリコンオイルをホイールにスプレーした。実験室の温度及び湿度をそれぞれ22±2℃、45±5rHに制御した。実験の開始時、Rheotensホイールの巻き取り速度をフィラメントの出口速度に設定し、これにより、引張り力は、ゼロになった。巻き取りホイールの加速度を1.2mm/sに設定し、その結果、ポリマーフィラメントが破損するまで速度がゆっくりと増加し始めた。得られる引張り力対ドローダウン速度を分析し、対応する溶融強度の値を報告した。各試料について、溶融強度の測定を少なくとも3回繰り返し、溶融強度の値の平均偏差及び標準偏差を表1に報告する。溶融強度の温度依存性も検討し、レオメーターオーブン内のより高い温度での溶融強度の予想される低下が認められた。
【0057】
これらの材料のドロー特性、即ち溶融強度は、正常に測定されたが、全てのフィラメントが高速でホイールに付着し始めたため、ドローダウン比を報告できなかった。全ての実験で安定した引張り力が得られたため、絶対溶融強度の値を報告することができた。フィラメントの破断は、観察されなかったため、いずれの材料についてもドローダウン比を報告できなかった。
【0058】
【表1】
【0059】
材料1~4は、支持層を必要とせず、且つ/又は本発明によるフィルムを得るためにより薄い厚さで存在し得、インフレーションフィルムプロセスに適切に使用することができる。驚くべきことに、フィルムは、支持層を必要とせずにインフレーションフィルムプロセスによって調製することができるか、又はフィルムは、より薄い厚さを示すように調製することができる。これらのフィルムは、基材に対して積層することができ、これにより本発明による層状材料を得ることができる。
【0060】
驚くべきことに、材料1及び2の溶融強度は、比較材料A及びBと比較してはるかに高かった。溶融強度は、材料がインフレーションフィルムプロセスで使用される場合の予想されるインフレーション比及び気泡安定性の指標である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】