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特表2023-510763化粧表面被覆部材、表面被覆部材被覆材、およびこのような化粧表面被覆部材を製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】化粧表面被覆部材、表面被覆部材被覆材、およびこのような化粧表面被覆部材を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/02 20060101AFI20230308BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
E04F15/02 A
E04F15/02 B
E04F15/02 F
E04F13/08 A
E04F13/08 E
E04F13/08 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022541897
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 IB2021050164
(87)【国際公開番号】W WO2021140492
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】2024631
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521446624
【氏名又は名称】ノーザン ビルディング ソリューションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】NORTHANN BUILDING SOLUTIONS LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】リ,リン
【テーマコード(参考)】
2E110
2E220
【Fターム(参考)】
2E110AA57
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110BA02
2E110BB04
2E110BB22
2E110BC12
2E110BD22
2E110DB03
2E110DB22
2E110DC06
2E110GA05W
2E110GA07W
2E110GB43Z
2E110GB46Z
2E110GB54Z
2E110GB62Z
2E220AA33
2E220AB12
2E220AB14
2E220BB02
2E220BB04
2E220BC02
2E220DA11
2E220DB03
2E220FA02
2E220FA05
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GB33X
2E220GB34X
2E220GB37X
2E220GB43X
(57)【要約】
本発明は、化粧表面被覆部材に関し、詳細には床パネル、天井パネル、または壁パネルに関する。本発明はまた、本発明による複数のパネルを含む、床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材などのパネル被覆材にも関する。本発明はさらに、本発明による化粧表面被覆部材を製造する方法に関する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧表面被覆部材であって、特に、床パネル、天井パネルまたは壁パネルなどの化粧パネルであり、
- 上面および下面が与えられた芯材と、
- 前記芯材の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物とを備え、前記化粧上部構造物が、
・ 少なくとも1つの化粧像を形成する少なくとも1つの化粧印刷層と、
・ 前記印刷層を少なくとも部分的に覆う、実質的に透明または半透明の三次元エンボス構造物とを含み、前記エンボス構造物が、
○ 複数の凹部が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化されたベース層と、
○ 前記ベース層の上にデジタル印刷された複数の隆起部によって形成されている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化された隆起パターン層とを含む多層エンボス構造物であり、
前記エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部に粗面化テクスチャが形成されており、好ましくは、
- 前記粗面化エンボス構造物を少なくとも部分的に覆う少なくとも1つの仕上げ層
を備える、化粧表面被覆部材。
【請求項2】
前記ベース層の上面がエンボス・ベース・レベルを画定し、前記凹部と前記隆起部の少なくとも一部とが、前記エンボス・ベース・レベルの反対側に位置する、請求項1に記載の表面被覆部材。
【請求項3】
前記ベース層の上面がベース・レベルを画定し、前記凹部と前記隆起部の少なくとも一部とが、前記ベース・レベルと同じ側に位置する、請求項1または2に記載の表面被覆部材。
【請求項4】
前記ベース層の一部に前記複数の凹部が設けられており、前記ベース層の別の部分には凹部がない、請求項1から3のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項5】
前記隆起部の少なくとも一部が、前記ベース層のうちの凹部がない前記部分に印刷される、請求項4に記載の表面被覆部材。
【請求項6】
前記ベース層の前記複数の凹部が不連続凹部パターンを形成する、請求項1から5のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項7】
前記ベース層が印刷ベース層である、請求項1から6のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項8】
前記ベース層に設けられた前記凹部は、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある、請求項1から7のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項9】
前記隆起パターン層の前記隆起部は、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある、請求項1から8のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項10】
前記ベース層の前記凹部の少なくとも一部が、前記化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、請求項1から9のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項11】
前記隆起パターン層の前記隆起部の少なくとも一部が、前記化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、請求項1から10のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項12】
少なくとも1つの追加の化粧印刷層が、少なくとも1つのベース層および少なくとも1つの隆起パターン層に位置している、請求項1から11のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項13】
着色コーティングが前記凹部の中および前記ベース層の上に施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項14】
前記凹部の少なくとも一部が、化学的にエンボス加工された凹部である、請求項1から13のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項15】
前記ベース層の坪量が少なくとも40g/m、好ましくは少なくとも50g/mである、請求項1から14のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項16】
前記ベース層がアクリル樹脂を含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項17】
前記ベース層が、エトキシル化されたプロピリジネトリメタノール、アクリル酸とのエステルを含む、請求項16に記載の表面被覆部材。
【請求項18】
前記ベース層が少なくとも1つのエポキシ・アクリレート・オリゴマーを含む、請求項16または17に記載の表面被覆部材。
【請求項19】
前記ベース層が少なくともジアクリレートを含む、好ましくはトリシクロデカンジメタノール・ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレート、および3-メチル1,5-ペンタンジオール・ジアクリレートからなる群から選択された少なくとも1つのジアクリレートを含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項20】
前記隆起パターン層の坪量が、少なくとも60g/m、好ましくは少なくとも70g/mである、請求項1から19のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項21】
前記隆起パターン層がアクリル樹脂を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項22】
前記隆起パターン層が、バイアクリレート、好ましくはトリプロピレン・グリコール・バイアクリレートを含む、請求項21に記載の表面被覆部材。
【請求項23】
少なくとも1つの仕上げ層が付着され、前記エンボス構造物の前記上部表面が仕上げ層によって、特にラッカー層によって全体的に覆われている、請求項1から22のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項24】
少なくとも1つの仕上げ層が付着され、少なくとも1つの仕上げ層にはいかなる粗面化テクスチャもない、請求項1から23のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項25】
前記化粧層の少なくとも一部が前記芯材の前記上面に直接印刷されている、請求項1から24のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項26】
前記芯材の前記上面に、好ましくはプライマーまたはフィルムによって形成された支持体層が設けられ、前記化粧層の少なくとも一部が前記支持層に直接印刷される、請求項1から25のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項27】
前記印刷化粧層と前記エンボス構造物の間に少なくとも1つの中間層が位置している、請求項1から26のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項28】
少なくとも1つの中間層が、透明または半透明で光反射性の熱可塑性層によって、好ましくはポリエステル層によって、より好ましくはポリエチレン・テレフタレート層によって形成される、請求項27に記載の表面被覆部材。
【請求項29】
前記光反射性の熱可塑性層が前記印刷化粧層に接着される、請求項28に記載の表面被覆部材。
【請求項30】
前記ベース層が、前記光反射性の熱可塑性層の上部に直接付着される、請求項28または29に記載の表面被覆部材。
【請求項31】
裏打ち層が前記芯材の下面に貼り付けられる、請求項1から30のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項32】
第1のパネル縁部が第1の結合輪郭を備え、好ましくは前記第1のパネル縁部と対向する第2のパネル縁部が、水平方向および垂直方向の両方で隣接するパネルの前記第1の結合輪郭とインターロック係合するように設計された第2の結合輪郭を備え、前記第1の結合輪郭と前記第2の結合輪郭が好ましくは、下げる動きによってこのような表面被覆部材の2つを互いに結合できるように構成される、請求項1から31のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項33】
前記表面被覆部材が、第3のパネル縁部および第4のパネル縁部にそれぞれ配置された、少なくとも1つの第3の結合輪郭および少なくとも1つの第4の結合輪郭を備え、前記第3の結合輪郭が、
・ 前記芯材の前記上面と実質的に平行な方向に延びる横向き舌部と、
・ 前記横向き舌部からある距離をおいたところにある少なくとも1つの第2の下向き側面と、
・ 前記横向き舌部と前記第2の下向き側面の間に形成された第2の下向き溝とを備え、
前記第4の結合輪郭が、
・ 隣接する表面被覆部材の前記第3の結合輪郭の前記横向き舌部の少なくとも一部を収容するように構成された第3の溝を備え、前記第3の溝が上方リップおよび下方リップによって画定され、前記下方リップに上向きロック要素が設けられ、
前記第3の結合輪郭および前記第4の結合輪郭は、このような表面被覆部材の2つが回転させる動きによって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1の表面被覆部材の前記横向き舌部の少なくとも一部が、隣接する第2の表面被覆部材の前記第3の溝に挿入され、前記第2の表面被覆部材の前記上向きロック要素の少なくとも一部が、前記第1の表面被覆部材の前記第2の下向き溝に挿入されている、請求項1から32のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項34】
前記芯材が実質的に剛性である、請求項1から33のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項35】
前記芯材が少なくとも部分的に発泡されている、請求項1から34のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項36】
前記芯材が、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリイソシアヌレート(PIR)、またはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1から35のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項37】
前記芯材が少なくとも1つの木質材料を含む、請求項1から36のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項38】
前記芯材が、少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの非ポリマー材料からなる少なくとも1つの複合材料を含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項39】
少なくとも1つの非ポリマー材料が、タルク、チョーク、木材、炭酸カルシウム、および無機充填剤からなる群から選択される、請求項38に記載の表面被覆部材。
【請求項40】
前記芯材が酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含む、請求項1から39のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項41】
前記エンボス構造物が、複数のベース層および/または複数の隆起パターン層を含む、請求項1から40のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項42】
前記芯材の前記上面が実質的に平坦である、請求項1から41のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項43】
前記粗面化テクスチャがブラシ粗面化テクスチャである、請求項1から42のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項44】
前記エンボス構造物の前記上部表面の前記粗面化テクスチャが、隣り合う実質的に平坦な、ある角度を相互に囲む複数の表面小平面を含む、請求項1から43のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項45】
前記エンボス構造物が少なくとも1つのチキソトロピー剤を含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項46】
前記ベース層および/または前記パターン層が水性インク組成物から成る、請求項1から45のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項47】
前記ベース層および/または前記パターン層が、a)少なくとも1つの有機および/または水性のインク媒体と、(b)少なくとも1つのエタノールアミン化合物と、(c)顔料などの少なくとも1つの着色材料とを含むインク組成物から成る、請求項1から46のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項48】
前記エンボス構造物の上部表面全体に粗面化テクスチャが形成されている、請求項1から47のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項49】
前記粗面化テクスチャが前記ベース層の少なくとも一部と、前記パターン層の少なくとも一部との両方に形成される、請求項1から48のいずれか一項に記載に記載の表面被覆部材。
【請求項50】
前記粗面化テクスチャが前記中間層の少なくとも一部に形成されている、請求項27から30のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項51】
前記粗面化テクスチャが複数のかき傷および/または鋭い縁部を含む、請求項1から50のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項52】
前記エンボス構造物が印刷エンボス構造物であり、前記印刷エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部に機械粗面化テクスチャが形成されている、前記請求項1から51のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項53】
前記粗面化テクスチャが形成されている前記エンボス構造物が天然木目の外観を有する、前記請求項1から52のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項54】
前記表面被覆部材が、ロールとして供給され前記ロールから繰り出すことによって配置されるストリップである、前記請求項1から53のいずれか一項に記載の表面被覆部材。
【請求項55】
請求項1から54のいずれか一項に記載の、相互結合した表面被覆部材で構成される、特に床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材である、表面被覆部材被覆材。
【請求項56】
請求項1から54のいずれか一項に記載の化粧表面被覆部材を製造する方法であって、
A)少なくとも1つの化粧像を前記芯材の前記上面に印刷によって、好ましくはデジタル印刷によって形成するステップと、
B)液体ベース層を、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部に付着させるステップと、
C)複数のエンボス液滴を、依然として液体のベース層の上に、エンボス液滴が噴霧されている位置で前記ベース層の厚さが変化するようにして、これらの位置で凹部が前記液体ベース層に形成されるように、位置選択的に印刷するステップと、
D)前記凹部が設けられた前記ベース層を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
E)複数の隆起部によって形成される隆起パターン層を前記ベース層に、好ましくは、ステップD)の間に少なくとも部分的に硬化されている前記ベース層に、位置選択的に印刷するステップと、
F)前記パターン層を部分的に硬化させるステップであって、前記ベース層と前記パターン層が一緒にエンボス構造物を形成するステップと、
G)前記エンボス構造物の前記上部表面の少なくとも一部を機械的に処理して前記エンボス構造物に粗面化テクスチャを形成するステップと、
K)前記エンボス構造物の前記粗面化上部表面に、好ましくは少なくとも1つのラッカー層を含む、少なくとも1つの仕上げ層を付着させるステップと
を含む方法。
【請求項57】
ステップG)の間に材料が前記エンボス構造物から除去される、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ステップD)の間に前記ベース層の60%から90%が硬化される、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
ステップF)の間に前記パターン層の60%から90%が硬化される、請求項56から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
ステップG)の間に前記エンボス構造物の前記上部表面の少なくとも一部が、少なくとも1つの軸方向に回転するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して処理される、請求項56から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
ステップG)の間に前記エンボス構造物の前記上部表面の少なくとも一部が、軸方向に回転する少なくとも2つの連続するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して少なくとも2回処理される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
ステップG)の間に少なくとも2つのブラシ・ローラが互いに反対方向に回転する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記方法が、ステップG)を実行することに続いて、前記表面被覆部材、特に前記エンボス構造物を機械的にクリーニングする前記ステップを含むステップH)を含む、請求項56から62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
ステップK)が適用され、ステップH)がステップG)の後に、かつステップK)の前に実行される、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記方法が、前記表面被覆部材を複数の小さい表面被覆部材に切断する前記ステップを含むステップI)を含む、請求項56から64のいずれか一項に記載の方法。
【請求項66】
前記方法が、少なくとも1つの表面被覆部材の少なくとも1つの縁部を賦形することを含むステップJ)を含む、請求項56から65のいずれか一項に記載の方法。
【請求項67】
ステップC)の間に、前記エンボス液滴が、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第1のデジタルテンプレートに従って、前記液体ベース層に印刷される、請求項56から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
ステップE)の間に、前記隆起パターンが、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第2のデジタルテンプレートに従って、前記ベース層に印刷される、請求項56から67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
前記第1のデジタルテンプレートが前記第2のデジタルテンプレートとは異なる、請求項56から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
ステップD)による前記ベース層の硬化、および/またはステップF)による前記パターン層の硬化が、好ましくはUV放射および/または電子放射および/またはIR放射および/またはエキシマ放射による放射線硬化で行われる、請求項56から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
ステップK)が適用され、前記方法が、ステップK)の間に付着される前記少なくとも1つの仕上げ層、特に前記少なくとも1つのラッカー層を放射線硬化によって、好ましくはUV放射および/またはIR放射および/またはエキシマ放射によって硬化する前記ステップを含むステップL)を含む、請求項56から70のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
ステップL)とF)が同時に行われる、請求項71に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧表面被覆部材に関し、詳細には床表面被覆部材、天井表面被覆部材、または壁表面被覆部材に関する。本発明はまた、本発明による複数の表面被覆部材を含む、床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材などの表面被覆部材被覆材にも関する。本発明はさらに、本発明による化粧表面被覆部材を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層パネルは、通常は外観が木目模様である化粧パターンを有する化粧層を備える。化粧層は、化粧層を保全および保護するための透明層で覆われている。化粧層の化粧パターンの視覚的および触覚的な見かけを改善するために、透明層に凹部を実現させることができ、これは、たとえば、本物の木材の表面に存在し得る木材の穴および他の凹凸を模倣したものを得るためである。知られているパネルでは、これを得るのは、単に床パネルに一連の凹部を設けることによって行われ、これらの凹部は、実質的に同一の方向に沿って延びる。このような、エンボスとも呼ばれる凹部が用いられるにもかかわらず、知られているパネルは、模倣効果がまだ最善ではないという不利点を示す。したがって、たとえば、そのような床パネルを比較的小角で見た場合に、合成物からなる透明層において光の屈折が生じ、その結果、実際の印刷のいかなる視覚効果も知覚されずに、光沢のある表面だけが見えるという不利点をこれらの表面被覆部材は示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、エンボス効果が改善されている、改善された表面被覆部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、上面および下面が与えられた芯材と、芯材の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物とを備える、前文に記載の表面被覆部材を提供することによって達成することができ、前記化粧上部構造物は、少なくとも1つの化粧像を形成する少なくとも1つの化粧印刷層と、前記印刷層を少なくとも部分的に覆う、実質的に透明または半透明の三次元エンボス構造物とを含み、エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部には粗面化テクスチャが形成されている。
【0005】
三次元エンボス構造物は、好ましくは、1つまたは複数の印刷エンボス層を含む印刷エンボス構造物であり、各エンボス層は、より詳細に以下で説明するように、実質的に(エンボス加工)インクから成る。好ましくは、エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部のテクスチャ粗面化は、エンボス加工インクが部分的に硬化しており、それゆえに部分的に(まだ)柔らかく、エンボス加工インクを比較的容易に機械的に変形させること、および/または機械的に処理することが可能なときに行われている。通常、粗面化テクスチャは、前記上部表面との機械的相互作用によって、好ましくは、金属、特に鋼のブラシ・ローラなどの1つまたは複数の(回転)ブラシ・ローラを利用することによって、エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部に形成される。エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部のこの機械的処理の間に、材料が最初のエンボス構造物から除去および/または移されて、エンボス構造物のテクスチャ粗面化(研削)がもたらされることになる。この粗面化効果により、天然木目の外観および感触に近づく浮き彫りがもたらされ、通常ではまた、従来の滑らかで丸みを帯びた縁部(これは通常、機械的な凹部によって実現される)ではなく、鮮鋭な縁部(見分けがつかない、不連続縁部)もまた有しながらもたらされ、これにより、本発明による表面被覆部材の外観および/またはハプトニック(触感)特性が向上する。それゆえに、従来の機械的な凹部を用いても粗面化テクスチャは得られず、境界が滑らかに湾曲している浮き彫りが得られるにすぎない。これとは別に、ある種のエンボス構造物を実現するために化粧層を覆う層に機械的に凹部を付けると、被覆層だけでなく化粧層もしばしば変形するが、この後者の変形は、化粧層の外観に通常では視覚的な影響を及ぼし、また化粧層の外観の歪み、通常では形状不良をもたらすので、非常に好ましくない。材料堆積を用いて(好ましくは印刷によって)、任意選択で材料エッチングを用いて(好ましくはやはり印刷によって)、エンボス構造物を構築することにより、この重大な欠点は克服することができる。本明細書に関しては、印刷エンボス構造物が、所望のエンボス構造物を設計するための無限の可能性および柔軟性をもたらすが、この印刷エンボス構造物の欠点およびリスクは、このエンボス構造物が、印刷直後に(ある程度)比較的容易に流れる液体インクを使用して印刷されるので、意図したよりも滑らかな(丸みのある)テクスチャになることである、ということを考慮に入れなければならない。この欠点は、印刷エンボスを、好ましくは印刷のすぐ後/直後に機械的に粗面化して、より本物に近いエンボス構造物(エンボス・テクスチャ)、および/または当初意図された/望まれたエンボス構造物により合致しているエンボス構造物を得ることによって、克服することができる。通常、エンボス構造物の上部表面の粗面化テクスチャは、隣り合う(つながっている)、通常は実質的に平坦な、ある角度を相互に囲む複数の表面小平面を含む。これにより、1つまたは複数の鋭い縁部がもたらされ、そのため通常では、ユーザが経験する表面被覆部材の外観および感触が改善する。粗面化テクスチャは、複数のかき傷および/または溝を含む。これらは、たとえば機械ブラシ、特にブラシ・ローラによって実現することができる。
【0006】
表面被覆部材は、好ましくは、ボード、クラッディング、シート、タイル、または、床パネル、天井パネル、壁パネル、もしくは家具被覆パネルなどのパネルである。これらのパネルは、通常では正方形または長方形である。表面被覆部材は、ロールとして供給され前記ロールから繰り出すことによって配置されるストリップ(またはシート)であると考えられる。このようなストリップの長さは、通常4mから30mまでの間である。本明細書の文脈では、「表面被覆部材」という表現と「パネル」という表現は交換可能である。
【0007】
場合により、エンボス構造物は、少なくとも1つのチキソトロピー剤を含むことが好ましい。通常、このチキソトロピー剤は、印刷エンボス構造物を形成するためのインク組成物の一部を構成する。チキソトロピーとは、時間依存性のずり減粘特性のことである。これにより、エンボス構造物(の少なくとも一部)を構築するために使用されるエンボス加工インクは、静的な条件下で濃厚に、すなわち粘性になることができ、インクの粘性は、機械的圧力または力が作用すると減少して、インクがより容易に流れること、および変形することが可能になる。機械的な圧力または力が解除された後、インクはより粘性の状態に戻る。エンボス加工インクとして使用される可能性のあるインク組成物は、a)少なくとも1つの有機および/または水性のインク媒体と、(b)少なくとも1つのエタノールアミン化合物と、(c)顔料などの少なくとも1つの着色材料とを含み得る。エタノールアミン化合物は、十分な濃度の有機インク媒体および顔料と一緒にされて、所望のチキソトロピー特性、ならびに、意図する用途に適した物理的、化学的な特性、および視覚/色特性を示す組成物が得られる。本発明のインク組成物に使用可能な有機インク媒体には、様々な(a)インクオイル、および(b)有機樹脂、および/またはこれらの組み合わせが含まれる。本発明で使用されるのが好ましいインクオイルの例としては、ナフテン系インクオイルが挙げられる。本発明に使用できるエタノールアミンチキソトロピー剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、および/またはトリエタノールアミンがある。これらのうち、トリエタノールアミンが現在、油および/または樹脂ベースの印刷インク組成物中のチキソトロピー添加剤として使用するのに好ましい。望ましいレオロジー特性を付与するその能力に加えて、TEAなどのエタノールアミン化合物を本発明のインク組成物中に含むことは、利用される印刷インクの耐摩擦性の改善をもたらすことが判明している。耐摩擦性がこのように向上することは、こすれ落ちることが典型的な問題である用途に使用されるインク組成物に本発明のエタノールアミン化合物を混合することによって得られるべき、さらなる利点として明らかにされる。本発明のインク組成物に使用可能な着色添加剤には、様々な顔料および/または顔料含有ペーストが含まれる。予分散顔料ペーストは一般に、媒体および/または溶媒中に分散された1つまたは複数の着色顔料を含む。このような予分散顔料ペーストに使用される媒体は、本発明のインク組成物の基本成分として本明細書に記載された有機インク媒体のうちの1つ以上、および/または上記の有機インク媒体とは異なる他の媒体を含み得る。本発明による表面被覆部材を実現するのに使用できるエンボス加工インク組成物は、余分な熱を加えなくても室温で調製することができる。このような印刷インク組成物は、望ましいチキソトロピー性、ならびに耐摩擦性の向上を示すことが知られている。使用されるべきエンボス加工インク中に用いることができる他のチキソトロピー剤としては、たとえば、ヒュームドシリカおよび/または粘土型チキソトロピー剤がある。
【0008】
好ましくは、エンボス構造物の上部表面全体に粗面化テクスチャが形成される。好ましくは、エンボス構造物の上部表面の各粗面化部分は複数回粗面化され、より好ましくは、複数の連続した機械粗面化処置を施すことによって粗面化される。各粗面化処置では、エンボス構造物の表面を同じ方向に粗面化することができるが、少なくとも2つの粗面化処置によりエンボス構造物の上部表面を互いに異なる方向に処理することも考えられる。
【0009】
好ましくは、エンボス構造物は、複数の凹部が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化されたベース層と、前記ベース層の上部に印刷された複数の隆起部によって形成されている、少なくとも1つの少なくとも部分的に硬化された隆起パターン層とを含む、多層エンボス構造物である。粗面化テクスチャは、ベース層の少なくとも一部とパターン層の少なくとも一部との両方に形成される。
【0010】
好ましくは、表面被覆部材は、粗面化エンボス構造物を少なくとも部分的に覆う少なくとも1つの仕上げ層を含む。少なくとも1つの仕上げ層は、好ましくは、ラッカー層、特にUVラッカー層(すなわち、紫外線(UV)照射によって少なくとも部分的に硬化されるラッカー層)によって形成される。エンボス構造物の上部表面を覆うことによって、表面被覆部材がより適切に保護される。ラッカー層および/または他の仕上げ層は、たとえば、エンボス構造物の上部表面に形成されている粗面化テクスチャを保持することができる。通常、そのような少なくとも1つの仕上げ層には、好ましくは粗面化テクスチャが形成されていなく、したがって、好ましくは粗面化テクスチャがない。通常、前記仕上げ層は、エンボス構造物の粗面化後に付着させる。前記仕上げ層は通常、粗面化エンボス構造物を保護および保存するための一種のブランケットとして、粗面化エンボス構造物を覆う。好ましくは、粗面化エンボス構造物は、仕上げ層を付着させる前にクリーニングされる。ラッカー層は、その下の層にコーティングされた耐摩耗性高分子材料などの任意の適切な既知の耐摩耗性材料、または知られているセラミック・ビーズ・コーティングを含み得る。ラッカー層は、それが層の形で仕上げられている場合、その下の層に接着させることができる。ラッカー層はまた、紫外線コーティングなどの有機ポリマー層および/もしくは無機材料層、または別の有機ポリマー層と紫外線コーティングの組み合わせを含むこともできる。たとえば、製品の表面かき傷耐性、光沢、抗菌性(この塗料に少なくとも1つの抗菌剤が含まれる場合)および他の特性を改善できる紫外線塗料がある。ポリ塩化ビニル樹脂を含む他の有機ポリマー、またはビニル樹脂などの他のポリマー、および適量の可塑化剤と他の処理添加剤が、必要に応じて含まれ得る。
【0011】
本発明による表面被覆部材は、凹部(くぼみ)がベース層に付けられている少なくとも1つのネガティブ・エンボス層と、隆起部(突起)が前記ネガティブ・エンボス層の上部に設けられている少なくとも1つのポジティブエンボス層とを含む、多層エンボス構造物を備える。この結果、より明白な(粗く起伏に富む)エンボス構造物が得られ、相対的に深いエンボスを作り出すことができ、そのような表面被覆部材がより本物のように見えることになる。複数レベルの層状エンボス構造物を付着させることによって作り出せる相対的に深いエンボスの故に、より本物のような照明効果、ならびにより良い奥行き効果を得ることができ、化粧像の色が一般に、より望ましく知覚できる。一般に、ベース層の上面がエンボス・ベース・レベルを画定し、凹部と、隆起部の少なくとも一部および/または少なくともいくつかとが、前記エンボス・ベース・レベルの反対側に位置している。凹部と、隆起部の少なくとも一部および/または少なくともいくつかとが、前記ベース・レベルの同じ側に位置することもまた考えられる。
【0012】
通常では、ベース層の一部に前記複数の凹部が設けられ、ベース層の他の部分には凹部がない。それゆえに、この実施形態では、ベース層は部分的にしかエンボス加工されていない。隆起部は、少なくともその一部および/またはそのいくつかが、好ましくは、ベース層のうちの凹部がない部分に印刷され、こうすることにより、そのようなエンボス構造物の奥行き効果が増大することになる。
【0013】
ベース層の複数の凹部が不連続および/または連続の凹部パターンを形成することが考えられる。ベース層の複数の凹部が規則的な凹部パターンを形成することもまた考えられる。一般に、実現されるべき凹部パターンは、化粧層の少なくとも1つの化粧像に強く依存し、さらには完全に依存する。
【0014】
ベース層は、好ましくはデジタル印刷されたベース層であり、かつ/または、最初は液体の物質を化粧層の上に直接または間接的に噴霧、注入、または練り伸ばすことによって付着されているベース層であることが好ましい。印刷ベース層の場合、これは、最初は液体状態のベース層が、化粧層の上部に直接または間接的に印刷されることを意味する。ベース層がまだ液体状態にあるときに、1つまたは複数の凹部をベース層に設けることができ、かつ/または、ベース層を硬化(固化)させる間および/またはその後に、1つまたは複数の凹部をベース層に設けることができる。液体のベース層に1つまたは複数の凹部を設けることは、好ましくは化学的にエンボス加工することによって行われる。この目的のために、好ましくはエンボス液の(小さな)液滴が液体ベース層の上に、好ましくはデジタル印刷技法によって、位置選択的に印刷(噴霧)されて、印刷液滴の材料と依然として液体のベース層との間で化学反応が起こり、その後の反応生成物が、この位置のベース層の構造を光学的および/または触覚的に変化させる。つまり、凹部は、ベース層の上または中に(デジタル)印刷することもできる。ベース層はまた(デジタル)印刷層とすることもできるので、エンボス構造物全体を(デジタル)印刷構造にすることもできる。硬化中または硬化後にベース層に1つまたは複数の凹部を設けることは、(上述の)化学的エンボス加工によって、および/または機械的エンボス加工によって、たとえば、水ビームなどの、レーザーまたは粒子ビームを使用することによって行うことができる。
【0015】
好ましくは、ベース層に設けられた凹部は、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間にあり、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある。好ましくは、隆起パターン層の隆起部は、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間にあり、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある。全エンボス深さは、最大凹部深さと最大隆起部高さの合計によって決まる。複数のベース層および/または複数の隆起パターン層が付着される場合に、全エンボス深さの増大を達成することができる。
【0016】
好ましい一実施形態では、ベース層の凹部の少なくとも一部が、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される。好ましくは、隆起パターン層の隆起部の少なくとも一部が、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される。より好ましくは、ベース層の凹部の少なくとも一部は、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整され、隆起パターン層の隆起部の少なくとも一部もまた、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される。こうすることにより、二重同期エンボスとも呼ばれる、位置合わせされた二重エンボスが得られる。このような位置合わせ調整を適用することによって、非常に本物に近い、かつ/または芸術的な表面被覆部材のデザインおよび外観、ならびに触感特性を実現することができる。化粧像は、オーク木目模様などの木目模様によって形成することができる。エンボス構造物は、特にその粗面化テクスチャにより、この木目模様と合致することができ、その結果、本発明による表面被覆部材が非常に本物に近い外観および見かけになる。しかし、木目模様の代わりに、化粧像が、たとえば、カスタマイズされた絵および/またはモザイクパターンもしくはタイルパターンなどの、別の種類のパターンであることも十分に考えられる。モザイクパターンまたはタイルパターンの場合、1つまたは複数のグラウトによって美的に分離されている人工的なタイルが描かれることもある。ここで、付着されるエンボス構造物は、人工タイルを覆う厚い層の部分と、1つまたは複数のグラウトを覆う薄い層の部分とを有するベース層を含み得る。ここで、隆起パターンの隆起部が、人工タイルを主に、またはただ単に覆い、また、人工タイルをあまり、または全く覆わないことも考えられる。このようにして、本物のタイルおよびグラウトを使用したときに得られる表面浮き彫りと実質的に同等の、本物のような表面浮き彫りを実現することができる。
【0017】
少なくとも1つの追加の化粧印刷層が、少なくとも1つのベース層および少なくとも1つの隆起パターン層に位置していることが考えられる。このようにして、多層化粧パターンを実現することができる。これにより、エンボス構造物および複数の化粧層を含む化粧上部構造物を作り出す設計の自由度がさらに高まり、これによりまた、たとえば、化粧像全体に立体効果を生じさせることも可能になる。凹部の中またはベース層の上に着色コーティングが施されることもまた考えられる。この着色コーティングは、追加の化粧印刷層と考えることができる。
【0018】
好ましくは、ベース層の坪量は、少なくとも40g/m、好ましくは少なくとも50g/mである。通常では、ベース層は放射線硬化材料で作られる。好ましくは、ベース層は、少なくとも初期の液体状態において、エポキシ・アクリレート、ポリエステル・アクリレート、ポリエーテル・アクリレート、アミノ・アクリレート、シリコーン・アクリレート、ウレタン・アクリレート、ポリイソプレン・アクリレート、ポリブタジエン・アクリレートおよびアクリレート・モノマーからなる群から選択された少なくとも1つの樹脂で作られる。用語のアクリレートは、アクリル樹脂とも呼ばれ、アクリレート樹脂とメタクリレート樹脂の両方を含む。先に説明した各樹脂は、たとえば、一般にはUVレーザーであるレーザー、赤外線源、および/または水銀(Hg)光源から照射される電磁エネルギーによって重合および硬化するという点で関連している。好ましい一実施形態では、(メタ)アクリレート樹脂は、樹脂の重量に対して、たとえば20~30重量%に等しい高い固形成分含有量を有しており、これにより一般に、ベース層の所望の体積増加がもたらされる。任意選択で、ベース層は、ベース層の硬化を促進するための1つまたは複数の光開始剤を含み得る。(透明および/または半透明の)ベース層は、(i)ベース層の耐摩耗性を向上させるための酸化アルミニウム、(ii)ベース層のレオロジーを修正するためのタルク、(iii)ベース層の光沢を低減するためのシリカ、炭酸カルシウム、および/または(iv)レオロジー修正剤などの他の添加剤、および/または着色剤などの、フィラーを含み得る。任意選択で、ベース層は、エンボスの深さを増大させることができるシリコーンを含み得る。一般には、シリコーンは、ベース層の0.01~20重量%の量で、好ましくは0.01%~10%の量で、より好ましくはベース層の0.01~2重量%の量で添加される。適切なシリコーンには、たとえば、シリコーン、シリコーン・ポリエーテル、シリコーン・アクリレート、およびシリコーン・ポリエーテル・アクリレートが含まれる。
【0019】
好ましくは、ベース層は、少なくとも初期の液体状態において、エトキシル化されたプロピリジネトリメタノール、アクリル酸とのエステル、および好ましくはさらにN-エチルアミン、より好ましくはN-エチルタナミンを含む。これらの生成物は一般に、互いに反応して、フリーラジカルによって重合することができるアミン修飾アクリル・オリゴマーになる。また、この後者の特性は、ベース層を放射線硬化させるのに利用される。
【0020】
ベース層は、少なくとも初期の液体状態では、好ましくはエポキシ・アクリレート・オリゴマーを含み、より好ましくはビスフェノールAエポキシ・ジアクリレートを含む。ビスフェノールA型エポキシ・ジアクリレートは、無色の液体である。このエポキシ・アクリレート・オリゴマーは、高い光沢をもたらし、優れた反応性を与え、放射線硬化性ベース層の突出した化学的および機械的に堅牢な特性を特徴として持つ。
【0021】
好ましくは、少なくとも液状のベース層は、少なくともジアクリレートを含み、好ましくは、トリシクロデカンジメタノール・ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレート、ヘキサメチレン・ジアクリレート、オキシビス(メチル-2,1-エタンジイル)ジアクリレート、および3-メチル1,5-ペンタンジオール・ジアクリレートからなる群から選択された少なくとも1つのジアクリレートを含む。これらの2官能性アクリル・モノマーは非常に反応しやすく、通常は、ベース層に位置選択的に凹部を作り出すために元のベース層(液体状態)の上に、エンボス液(エンボスインク)として印刷および/またはスプレーされる。このエンボスインクの液滴は、ベース層に非常に正確に、通常は約500~1,000dpi(またはそれ以上)の解像度で付着させることができる。
【0022】
隆起パターン層の坪量は、少なくとも60g/m、好ましくは少なくとも70g/mである。隆起パターン層の坪量は、好ましくはベース層の坪量よりも大きい。隆起パターン層は、好ましくはアクリル樹脂を含む。より好ましくは、隆起パターン層は、少なくとも液体状態において、ビアクリレート、好ましくはトリプロピレン・グリコール・ビアクリレートを含む。隆起パターン層は、ベース層の上に位置選択的に印刷および/または噴霧することができる。この印刷プロセスはまた、好ましくは非常に正確に、通常では約500~1,000dpi(またはそれ以上)の解像度で実行される。
【0023】
エンボス構造物の上部表面は、好ましくは、ラッカー層および/または摩耗層などの少なくとも1つの仕上げ層によって全体的に覆われる。通常、少なくとも1つのラッカー層(上部仕上げ層として機能する)の下にある1つまたは複数の仕上げ層は、摩耗層として機能するように構成される。この摩耗層は、任意選択で酸化アルミニウム粒子が富化されているポリウレタンで少なくとも部分的に構成することができる。上述のように、エンボス構造物を全体的に覆うことによって、エンボス構造物の粗面化テクスチャは、少なくとも1つの仕上げ層によって保護および保存することができる。表面被覆の上に落下する鋭利な、および/または重い物体は、表面被覆部材、特にエンボス構造物を損傷する可能性がある。エンボス構造物を損傷することは、化粧印刷層を適切に表さない深いすり傷がエンボス構造物に生じ得るので、望ましくない。さらに、これらのすり傷は、角が鋭いことがあり、あるいはエンボス構造物上に形成されている粗面化テクスチャよりもかなり深いことがある。こうしたことが生じるのを防ぐために、または少なくともそのような事象による結果を抑制するために、1つまたは複数の仕上げ層で、特に仕上げ層のラミネートで、好ましくはエンボス構造物の上部表面全体を覆う。好ましくは、少なくとも1つの仕上げ層には、より好ましくはそれぞれの仕上げ層にはいかなる粗面化テクスチャもない。好ましくは、少なくとも1つの仕上げ層は、より好ましくはそれぞれの仕上げ層は、連続的な(途切れない)層である。好ましくは、少なくとも1つの仕上げ層は、より好ましくはそれぞれの仕上げ層は、その仕上げ層を通して化粧層が依然として見える透明な層である。1つまたは複数の仕上げ層の合計厚さは、好ましくは1.0mm未満、より好ましくは0.6mm未満である。ラッカーだけが仕上げ層として付着される場合、仕上げ層の厚さは通常、数十ミクロンのオーダに制限される。本発明による表面被覆部材の一実施形態では、ベース層の凹部の少なくとも一部がラッカー層で覆われないままになっている。このようにして、さらなるエンボス効果(浮き彫り効果)を達成することができ、さらに、光沢領域および無光沢領域をこのようにして作り出すことができ、これらの領域は、そのような表面被覆部材の所望の美的外観にさらに寄与し得る。ここで、たとえば、グラウトで分離された人工タイルによって化粧像が形成されている場合に、人工タイルは、ラッカー層で覆われて、これらのタイルに光沢効果をもたらすことができ、一方、グラウトは、実質的にラッカー層で覆われないままにされて、より無光沢な外観が維持される。
【0024】
少なくとも1つの化粧層の少なくとも一部が、芯材の上面に直接印刷され、好ましくはデジタル印刷されることが考えられる。芯材の上面に、好ましくは少なくとも1つのプライマーまたはフィルムによって形成された少なくとも1つの支持体層が設けられることもまた考えられ、化粧層の少なくとも一部が支持体層の上に直接印刷され、好ましくはデジタル印刷される。支持体層は、芯材の上に直接または間接的に(1つまたは複数の中間層を介して)貼り付けることができる。プライマーが付けられる場合、光沢プライマーおよび無光沢プライマーなどの少なくとも2つの異なるプライマーを付けることが考えられ、これらのプライマーは、芯材の上に位置選択的に並べて(隣り合わせて)付けられ、好ましくは、前記プライマーの上部に付けられる化粧印刷層と位置合わせ調整されて付けられる。このようにしてまた、そのような表面被覆部材の所望の、本物のような、および/または人工的な外観(および感触)にさらに寄与できる光沢効果および無光沢効果が、位置選択された場所で実現され得る。
【0025】
本発明による表面被覆部材の一実施形態では、印刷化粧層とエンボス構造物の間に少なくとも1つの中間層が位置している。この中間層は一般に透明であり、好ましくは非常に透明であり、および/または半透明である。好ましくは、少なくとも1つの中間層は、透明または半透明で光反射性の熱可塑性層によって、好ましくはポリエステル層によって、より好ましくはポリエチレン・テレフタレート層(PET層)によって形成される。この光反射性の熱可塑性樹脂層は、昼光(または人工光)の照射による劣化から化粧像を保護する保護層として機能する。さらに、この光反射性の熱可塑性層はまた、昼光(または人工光)に曝されることによる表面被覆部材の加熱を防止し、したがって、熱作用(膨張および収縮)を抑制し、このことは、そのような表面被覆部材と、複数の好ましくは相互に結合した表面被覆部材で構成される床被覆材との両方の耐久性および信頼性に有利である。光反射性の熱可塑性樹脂層は、好ましくは印刷化粧層の上に接着され、より好ましくはホットメルト接着剤を用いて接着される。ベース層は、光反射性の熱可塑性層の上部に直接付着されてもよい。
【0026】
通常では、裏打ち層が芯材の下面に貼り付けられる。裏打ち層の材料の非限定的な例には、ポリエチレン、コルク、ポリウレタン、エチレン・ビニル・アセテートで作ることができるものがある。ポリエチレン裏打ち層の厚さは、たとえば通常で2mm以下である。裏打ち層は一般に、そのような各タイルに付加的な堅牢性および耐衝撃性をもたらし、タイルの耐久性を向上させる。さらに、(可撓性の)裏打ち層は、タイルの音響(音減衰)特性を向上させることができる。
【0027】
好ましい実施形態では、第1のパネル縁部(第1の表面被覆部材縁部)は第1の結合輪郭を備え、好ましくは第1のパネル縁部と対向する第2のパネル縁部(第2の表面被覆部材縁部)は、水平方向および垂直方向の両方で隣接する表面被覆部材の前記第1の結合輪郭とインターロック係合するように設計された第2の結合輪郭を備え、第1の結合輪郭と第2の結合輪郭が好ましくは、下げる動き(折り畳む動き)によってこのような表面被覆部材の2つを互いに結合できるように構成される。表面被覆部材が長方形である場合、第1のパネル縁部および第2のパネル縁部は通常、表面被覆部材の対向する短辺に位置している。表面被覆部材は、好ましくはまた、第3のパネル縁部および第4のパネル縁部にそれぞれ配置された、少なくとも1つの第3の結合輪郭および少なくとも1つの第4の結合輪郭を備え、第3の結合輪郭は、芯材の上面と実質的に平行な方向に延びる横向き舌部と、横向き舌部からある距離をおいたところにある少なくとも1つの第2の下向き側面と、横向き舌部と第2の下向き側面の間に形成された第2の下向き溝とを備え、
第4の結合輪郭は、隣接する表面被覆部材の第3の結合輪郭の横向き舌部の少なくとも一部を収容するように構成された第3の溝を備え、前記第3の溝が上方リップおよび下方リップによって画定され、前記下方リップに上向きロック要素が設けられ、
第3の結合輪郭および第4の結合輪郭は、このような表面被覆部材の2つが回転させる動き(曲げる動き)によって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1の表面被覆部材の横向き舌部の少なくとも一部は、隣接する第2の表面被覆部材の第3の溝に挿入され、前記第2の表面被覆部材の上向きロック要素の少なくとも一部は、前記第1の表面被覆部材の第2の下向き溝に挿入されている。
【0028】
芯材は、可撓性でも、半剛性でも、実質的に剛性でもよい。芯材は、固形でも、少なくとも部分的に発泡されていてもよい。芯材は、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリイソシアヌレート(PIR)、またはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのポリマーを含み得る。芯材は、少なくとも1つの木質材料を含み得る。芯材は、少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの非ポリマー材料からなる少なくとも1つの複合材料を含み得る。少なくとも1つの非ポリマー材料は、好ましくは、タルク、チョーク、木材、炭酸カルシウム、および無機充填剤からなる群から選択される。芯材は、酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含み得る。芯材の上面は、好ましくは実質的に平坦である。
【0029】
本発明はまた、パネル被覆材などの表面被覆部材被覆材に関し、特に、本発明による、好ましくは相互結合した複数の表面被覆部材で構成される、床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材に関する。ここで、少なくとも2つの表面被覆部材が別個の化粧像を有し、各化粧像が部分的な像であり、前記化粧像を組み合わせたものが単一の像(絵または写真)を形成することが考えられる。
【0030】
本発明はさらに、本発明による化粧表面被覆部材を製造する方法に関し、この方法は、A)少なくとも1つの化粧像を芯材の上面に印刷によって、好ましくはデジタル印刷によって形成するステップと、B)液体ベース層を、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部に付着させるステップと、C)複数のエンボス液滴を、依然として液体のベース層の上に、エンボス液滴が噴霧されている位置でベース層の厚さが変化するようにして、これらの位置で凹部が液体ベース層に形成されるように、位置選択的に印刷するステップと、D)前記凹部が設けられた前記ベース層を少なくとも部分的に硬化させるステップと、E)複数の隆起部によって形成される隆起パターン層を前記ベース層に、好ましくは、ステップD)の間に少なくとも部分的に硬化されている前記ベース層に、位置選択的に印刷するステップと、F)前記パターン層を少なくとも部分的に硬化させるステップとを含み、前記ベース層と前記パターン層は一緒にエンボス構造物を形成し、さらに、G)エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部を機械的に処理してエンボス構造物に粗面化テクスチャを形成するステップと、K)エンボス構造物の上部表面にラッカー層を付着させるステップとを含む。ステップG)の間に材料が、好ましくはエンボス構造物から除去され、および/またはエンボス構造物により変形される。ベース層を十分に硬く(剛性に)保持して容易に流れることを防止し、ベース層を十分に柔らかく保持してベース層を粗面化しやすいようにするには、ステップD)の間にベース層の60%から90%が硬化される場合が有利である。同じことが、パターン層にも当てはまる。ステップG)の間に、好ましくはエンボス構造物の上部表面の少なくとも一部は、軸方向に回転する少なくとも1つのブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して処理される。これらのローラの回転速度は異なり得るが、好ましくは400から800回転/分までの間である。ローラの直径は異なり得るが、好ましくは20から40センチメートルまでの間である。好ましくは、ステップG)の間に、エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部は、軸方向に回転する少なくとも2つの連続するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して少なくとも2回処理される。好ましくは、ステップG)の間に、少なくとも2つのブラシ・ローラは互いに反対方向に回転する。好ましくは、各ローラは、切断された材料(ダスト)が無秩序に分散しないように個別または共有のケージまたはハウジングに収容され、より好ましくは、このケージまたはハウジングは、ブラッシング動作中に切断材料をできるだけ多く除去するために真空排気導管に連結される。
【0031】
この方法が、ステップG)を実行することに続いて表面被覆部材、特にエンボス構造物を機械的にクリーニングするステップを含むステップH)を含む場合には、有利である。ステップH)によるこのクリーニング動作は、たとえば、クリーニング・ブラシ、特に布ローラおよび/またはナイロン・ローラなどのクリーニング・ブラシ・ローラを用いて、機械的に行うことができる。このクリーニング動作は通常、ステップG)の間に、切断材料(ダスト)をエンボス構造物から除去(排出)するために主に適用される。
【0032】
好ましい一実施形態では、ステップH)は、ステップG)の後に、かつステップK)の前に実行される。その理由は、ラッカー層がエンボス構造物上に残された汚れおよび/またはダスト残留物を包み込む可能性があり、これは汚れおよび/またはダストがラッカー層を通して見えるので望ましくないからである。
【0033】
好ましくは、この方法は、表面被覆部材をたとえば板またはパネルのような複数の小さい表面被覆部材に切断するステップを含むステップI)を含む。好ましくは、この方法は、ステップI)の間に形成された少なくとも1つの表面被覆部材、および/または少なくとも1つのパネルもしくは板の少なくとも1つの縁部を賦形することを含むステップJ)を含む。
【0034】
表面被覆部材のさらなる利点および実施形態について、すでに広範囲にわたって以上で論じた。ステップC)の間に、エンボス液滴は、好ましくは、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第1のデジタルテンプレートに従って、液体ベース層に印刷される。ステップE)の間に、隆起パターンは、好ましくは、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第2のデジタルテンプレートに従って、ベース層に印刷される。より好ましくは、第1のデジタルテンプレートは第2のデジタルテンプレートとは異なる。好ましくは、ステップD)によるベース層の硬化、および/またはステップF)によるパターン層の硬化は、好ましくはUV放射および/または電子放射および/またはIR放射および/またはエキシマ放射による放射線硬化で行われる。エキシマ放射を用いることによって、硬化層には、好ましくは位置選択的な、美観の観点から魅力的であり得るマット外観を与えることができる。
【0035】
好ましくは、この方法は、ステップK)によるラッカー層を放射線硬化によって、好ましくはUV放射および/またはIR放射および/またはエキシマ放射によって硬化させるステップを含むステップL)を含む。しかし、好ましい実施形態では、ステップL)とF)は同時に行われる。
【0036】
本発明の別の好ましい実施形態について以下の一連の非限定的な条項で説明する。
【0037】
1.化粧表面被覆部材であって、特に、床パネル、天井パネルまたは壁パネルなどの化粧パネルであり、
- 上面および下面が与えられた芯材と、
- 芯材の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物とを備え、前記化粧上部構造物が、
・ 少なくとも1つの化粧像を形成する少なくとも1つの化粧印刷層と、
・ 前記印刷層を少なくとも部分的に覆う、実質的に透明または半透明の三次元エンボス構造物とを含み、エンボス構造物が、
○ 複数の凹部が設けられている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化されたベース層と、
○ 前記ベース層の上に印刷された複数の隆起部によって形成されている、少なくとも1つの、少なくとも部分的に硬化された隆起パターン層とを含む多層エンボス構造物であり、
エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部に粗面化テクスチャが形成されている、化粧表面被覆部材。
【0038】
2.ベース層の上面がエンボス・ベース・レベルを画定し、凹部と隆起部の少なくとも一部とが、前記エンボス・ベース・レベルの反対側に位置する、条項1に記載の表面被覆部材。
【0039】
3.ベース層の上面がベース・レベルを画定し、凹部と隆起部の少なくとも一部とが、前記ベース・レベルと同じ側に位置する、条項1または2に記載の表面被覆部材。
【0040】
4.ベース層の一部に前記複数の凹部が設けられており、ベース層の別の部分には凹部がない、条項1から3の一項に記載の表面被覆部材。
【0041】
5.隆起部の少なくとも一部が、ベース層のうちの凹部がない部分に印刷される、条項4に記載の表面被覆部材。
【0042】
6.ベース層の複数の凹部が不連続凹部パターンを形成する、条項1から5の一項に記載の表面被覆部材。
【0043】
7.ベース層が印刷ベース層である、条項1から6の一項に記載の表面被覆部材。
【0044】
8.ベース層に設けられた凹部は、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある、条項1から7の一項に記載の表面被覆部材。
【0045】
9.隆起パターン層の隆起部は、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある、条項1から8の一項に記載の表面被覆部材。
【0046】
10.ベース層の凹部の少なくとも一部が、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、条項1から9の一項に記載の表面被覆部材。
【0047】
11.隆起パターン層の隆起部の少なくとも一部が、化粧印刷層によって形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整される、条項1から10の一項に記載の表面被覆部材。
【0048】
12.少なくとも1つの追加の化粧印刷層が、少なくとも1つのベース層および少なくとも1つの隆起パターン層に位置している、条項1から11の一項に記載の表面被覆部材。
【0049】
13.着色コーティングが凹部の中およびベース層の上に施される、条項1から12の一項に記載の表面被覆部材。
【0050】
14.凹部の少なくとも一部が、化学的にエンボス加工された凹部である、条項1から13の一項に記載の表面被覆部材。
【0051】
15.ベース層の坪量が少なくとも40g/m、好ましくは少なくとも50g/mである、条項1から14の一項に記載の表面被覆部材。
【0052】
16.ベース層がアクリル樹脂を含む、条項1から15の一項に記載の表面被覆部材。
【0053】
17.ベース層が、エトキシル化されたプロピリジネトリメタノール、アクリル酸とのエステルを含む、条項16に記載の表面被覆部材。
【0054】
18.ベース層が少なくとも1つのエポキシ・アクリレート・オリゴマーを含む、条項16または17に記載の表面被覆部材。
【0055】
19.ベース層が少なくともジアクリレートを含む、好ましくはトリシクロデカンジメタノール・ジアクリレート、1,6-ヘキサンジオール・ジアクリレート、および3-メチル1,5-ペンタンジオール・ジアクリレートからなる群から選択された少なくとも1つのジアクリレートを含む、条項16から18の一項に記載の表面被覆部材。
【0056】
20.隆起パターン層の坪量が、少なくとも60g/m、好ましくは少なくとも70g/mである、条項1から19の一項に記載の表面被覆部材。
【0057】
21.隆起パターン層がアクリル樹脂を含む、条項1から20の一項に記載の表面被覆部材。
【0058】
22.隆起パターン層が、バイアクリレート、好ましくはトリプロピレン・グリコール・バイアクリレートを含む、条項21に記載の表面被覆部材。
【0059】
23.エンボス構造物が少なくとも部分的にラッカー層で覆われている、条項1から22の一項に記載の表面被覆部材。
【0060】
24.ベース層の凹部の少なくとも一部がラッカー層で覆われないままになっている、条項23に記載の表面被覆部材。
【0061】
25.化粧層の少なくとも一部が芯材の上面に直接印刷されている、条項1から24の一項に記載の表面被覆部材。
【0062】
26.芯材の上面に、好ましくはプライマーまたはフィルムによって形成された支持体層が設けられ、化粧層の少なくとも一部が支持層に直接印刷される、条項1から25の一項に記載の表面被覆部材。
【0063】
27.印刷化粧層とエンボス構造物の間に少なくとも1つの中間層が位置している、条項1から26の一項に記載の表面被覆部材。
【0064】
28.少なくとも1つの中間層が、透明または半透明で光反射性の熱可塑性層によって、好ましくはポリエステル層によって、より好ましくはポリエチレン・テレフタレート層によって形成される、条項27に記載の表面被覆部材。
【0065】
29.前記光反射性の熱可塑性層が印刷化粧層に接着される、条項28に記載の表面被覆部材。
【0066】
30.ベース層が、光反射性の熱可塑性層の上部に直接付着される、条項28または29に記載の表面被覆部材。
【0067】
31.裏打ち層が芯材の下面に貼り付けられる、条項1から30の一項に記載の表面被覆部材。
【0068】
32.第1のパネル縁部が第1の結合輪郭を備え、好ましくは第1のパネル縁部と対向する第2のパネル縁部が、水平方向および垂直方向の両方で隣接するパネルの前記第1の結合輪郭とインターロック係合するように設計された第2の結合輪郭を備え、第1の結合輪郭と第2の結合輪郭が好ましくは、下げる動きによってこのような表面被覆部材の2つを互いに結合できるように構成される、条項1から31の一項に記載の表面被覆部材。
【0069】
33.表面被覆部材が、第3のパネル縁部および第4のパネル縁部にそれぞれ配置された、少なくとも1つの第3の結合輪郭および少なくとも1つの第4の結合輪郭を備え、第3の結合輪郭が、
・ 芯材の上面と実質的に平行な方向に延びる横向き舌部と、
・ 横向き舌部からある距離をおいたところにある少なくとも1つの第2の下向き側面と、
・ 横向き舌部と第2の下向き側面の間に形成された第2の下向き溝とを備え、
第4の結合輪郭が、
・ 隣接する表面被覆部材の第3の結合輪郭の横向き舌部の少なくとも一部を収容するように構成された第3の溝を備え、前記第3の溝が上方リップおよび下方リップによって画定され、前記下方リップに上向きロック要素が設けられ、
第3の結合輪郭および第4の結合輪郭は、このような表面被覆部材の2つが回転させる動きによって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1の表面被覆部材の横向き舌部の少なくとも一部が、隣接する第2の表面被覆部材の第3の溝に挿入され、前記第2の表面被覆部材の上向きロック要素の少なくとも一部が、前記第1の表面被覆部材の第2の下向き溝に挿入されている、条項1から32の一項に記載の表面被覆部材。
【0070】
34.芯材が実質的に剛性である、条項1から33の一項に記載の表面被覆部材。
【0071】
35.芯材が少なくとも部分的に発泡されている、条項1から34の一項に記載の表面被覆部材。
【0072】
36.芯材が、エチレン・ビニル・アセテート(EVA)、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、ポリイソシアヌレート(PIR)、またはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つのポリマーを含む、条項1から35の一項に記載の表面被覆部材。
【0073】
37.芯材が少なくとも1つの木質材料を含む、条項1から36の一項に記載の表面被覆部材。
【0074】
38.芯材が、少なくとも1つのポリマー材料および少なくとも1つの非ポリマー材料からなる少なくとも1つの複合材料を含む、条項1から37の一項に記載の表面被覆部材。
【0075】
39.少なくとも1つの非ポリマー材料が、タルク、チョーク、木材、炭酸カルシウム、および無機充填剤からなる群から選択される、条項38に記載の表面被覆部材。
【0076】
40.芯材が酸化マグネシウムおよび/または水酸化マグネシウムを含む、条項1から39の一項に記載の表面被覆部材。
【0077】
41.エンボス基盤が、複数のベース層および/または複数の隆起パターン層を含む、条項1から40の一項に記載の表面被覆部材。
【0078】
42.芯材の上面が実質的に平坦である、条項1から41の一項に記載の表面被覆部材。
【0079】
43.粗面化テクスチャが、エンボス構造物の上部表面をブラッシングすることによって形成される、条項1から42の一項に記載の表面被覆部材。
【0080】
44.エンボス構造物の上部表面の粗面化テクスチャが、隣り合う実質的に平坦な、ある角度を相互に囲む複数の表面小平面を含む、条項1から43の一項に記載の表面被覆部材。
【0081】
45.エンボス構造物が少なくとも1つのチキソトロピー剤を含む、条項1から44の一項に記載の表面被覆部材。
【0082】
46.ベース層および/またはパターン層が水性インク組成物から成る、条項1から45の一項に記載の表面被覆部材。
【0083】
47.ベース層および/またはパターン層が、a)少なくとも1つの有機および/または水性のインク媒体と、(b)少なくとも1つのエタノールアミン化合物と、(c)顔料などの少なくとも1つの着色材料とを含むインク組成物から成る、条項1から46の一項に記載の表面被覆部材。
【0084】
48.エンボス構造物の上部表面全体に粗面化テクスチャが形成されている、条項1から47の一項に記載の表面被覆部材。
【0085】
49.粗面化テクスチャが、ベース層の少なくとも一部とパターン層の少なくとも一部との両方に形成される、条項1から48の一項に記載に記載の表面被覆部材。
【0086】
50.粗面化テクスチャが中間層の少なくとも一部に形成される、条項27から30の一項に記載の表面被覆部材。
【0087】
51.粗面化テクスチャが複数のかき傷および/または鋭い縁部を含む、条項1から50の一項に記載の表面被覆部材。
【0088】
52.エンボス構造物が印刷エンボス構造物であり、印刷エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部に機械粗面化テクスチャが形成されている、条項1から51の一項に記載の表面被覆部材。
【0089】
53.前記粗面化テクスチャが形成されているエンボス構造物が天然木目の外観を有する、条項1から52の一項に記載の表面被覆部材。
【0090】
54.表面被覆部材が、ロールとして供給され前記ロールから繰り出すことによって配置されるストリップである、条項1から53の一項に記載の表面被覆部材。
【0091】
55.条項1から54のいずれかに記載の、相互結合した表面被覆部材で構成される、特に床被覆材、天井被覆材、または壁被覆材である、表面被覆部材被覆材。
【0092】
56.条項1から54の一項に記載の化粧表面被覆部材を製造する方法であって、
A)少なくとも1つの化粧像を芯材の上面に印刷によって、好ましくはデジタル印刷によって形成するステップと、
B)液体ベース層を、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部に付着させるステップと、
C)複数のエンボス液滴を、依然として液体のベース層の上に、エンボス液滴が噴霧されている位置でベース層の厚さが変化するようにして、これらの位置で凹部が液体ベース層に形成されるように、位置選択的に印刷するステップと、
D)前記凹部が設けられた前記ベース層を少なくとも部分的に硬化させるステップと、
E)複数の隆起部によって形成される隆起パターン層を前記ベース層に、好ましくは、ステップD)の間に少なくとも部分的に硬化されている前記ベース層に、位置選択的に印刷するステップと、
F)前記パターン層を部分的に硬化させるステップであって、前記ベース層と前記パターン層が一緒にエンボス構造物を形成するステップと、
G)エンボス構造物の上部表面の少なくとも一部を機械的に処理してエンボス構造物に粗面化テクスチャを形成するステップと
を含む方法。
【0093】
57.ステップG)の間に材料がエンボス構造物から除去される、条項56に記載の方法。
【0094】
58.ステップD)の間にベース層の60%から90%が硬化される、条項56または57に記載の方法。
【0095】
59.ステップF)の間にパターン層の60%から90%が硬化される、条項56から58の一項に記載の方法。
【0096】
60.ステップG)の間にエンボス構造物の上部表面の少なくとも一部が、少なくとも1つの軸方向に回転するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して処理される、条項56から59の一項に記載の方法。
【0097】
61.ステップG)の間にエンボス構造物の上部表面の少なくとも一部が、軸方向に回転する少なくとも2つの連続するブラシ・ローラ、好ましくは金属ブラシ・ローラ、特に鋼ブラシ・ローラを使用して少なくとも2回処理される、条項60に記載の方法。
【0098】
62.ステップG)の間に少なくとも2つのブラシ・ローラが互いに反対方向に回転する、条項61に記載の方法。
【0099】
63.方法が、ステップG)を実行することに続いて、表面被覆部材、特にエンボス構造物を機械的にクリーニングするステップを含むステップH)を含む、条項56から62の一項に記載の方法。
【0100】
64.方法が、表面被覆部材を複数の小さい表面被覆部材に切断するステップを含むステップI)を含む、条項56から63の一項に記載の方法。
【0101】
65.方法が、少なくとも1つの表面被覆部材の少なくとも1つの縁部を賦形することを含むステップJ)を含む、条項56から64の一項に記載の方法。
【0102】
66.ステップC)の間に、エンボス液滴が、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第1のデジタルテンプレートに従って、液体ベース層に印刷される、条項56から65の一項に記載の方法。
【0103】
67.ステップE)の間に、隆起パターンが、ステップA)の間に形成された少なくとも1つの化粧像の少なくとも一部と位置合わせ調整されている第2のデジタルテンプレートに従って、ベース層に印刷される、条項56から66の一項に記載の方法。
【0104】
68.第1のデジタルテンプレートが第2のデジタルテンプレートとは異なる、条項56から67の一項に記載の方法。
【0105】
69.ステップD)によるベース層の硬化、および/またはステップF)によるパターン層の硬化が、好ましくはUV放射および/または電子放射および/またはIR放射による放射線硬化で行われる、条項56から68の一項に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0106】
図1a】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1b】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1c】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1d】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1e】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1f】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図1g】本発明による方法の順次ステップを示す説明図である。
図2a】本発明による化粧パネルの別の例の概略図である。
図2b】本発明による化粧パネルの上面図である。
図3】本発明による化粧パネルのさらなる例の概略図である。
図4a】本発明による化粧パネルに使用される結合輪郭を示す側面概略図である。
図4b】本発明による化粧パネルに使用される結合輪郭を示す側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本発明を、以下の図に示される非限定的な例示的実施形態に基づいて説明する。
【0108】
図1a~1gは、本発明による方法の順次ステップを示す。図1aは、本発明による表面被覆部材の一例としての化粧パネル(110)の断面の概略図を示す。この図は、パネル(110)の芯材(100)を示す。芯材(100)は通常、実質的に剛性であり、場合によっては少なくとも1つのポリマーおよび/または少なくとも1つの木質材料を含み得る。化粧像が芯材(100)の上面(100A)に印刷によって、特にデジタル印刷によって形成されている。図1bは、パネル(110)の上面(100A)に形成された化粧像に液体ベース層(101)が塗布されていることを示す。液体ベース層(101)を形成する液体は、たとえば、UVシーラーである。液体ベース層(101)は一般に、液体ベース層(101)での正確なエンボス加工を可能にするために、表面張力が比較的高い。図1cは、複数のエンボス液滴(102)が、依然として液体のベース層(101)の上に、位置選択的に印刷されていることを示している。この印刷は、エンボス液滴(102)が噴霧されている各位置でベース層(101)の厚さが変化するように行われる。図1dは、この結果として位置凹部(103)が、エンボス液滴(102)が噴霧されている位置で液体ベース層(101)に形成されることを示す。ベース層(101)は、前記凹部(103)がベース層(101)に設けられた後に少なくとも部分的に硬化される。続いて隆起パターン層が、複数の隆起部をベース層(101)の上に位置選択的に印刷することによって形成される。パネル(110)の上に付着させる隆起液滴(104)が図1dに示されている。隆起部(105)を位置選択的に印刷することによって得られたパターン層は、続いて少なくとも部分的に硬化される。好ましくは、エンボス液滴(102)および/または隆起液滴(104)は、液体ベース層(101)の表面張力よりも高い表面張力を有する。任意選択で、1つまたは複数の仕上げ層(図示せず)をパネル(110)に付着させることができる。図1a~1eに示すステップによって、芯材(100)と、芯材(100)の上面(100A)に貼り付けられた化粧上部構造物とを備える化粧パネル(110)が得られる。化粧上部構造物は、少なくとも1つの化粧像を形成する化粧印刷層と、前記印刷層を少なくとも部分的に覆う実質的に透明または半透明の三次元エンボス構造物とを備える。このエンボス構造物は、複数の凹部(103)が設けられたベース層(101)と、前記ベース層(101)の上部に印刷された複数の隆起部(105)によって形成された隆起パターン層とを備える多層エンボス構造物である。高さが不規則な構造物を有するパネル(110)が得られるように、凹部(103)と隆起部(105)が重なり合えることが分かる。ベース層(101)の複数の凹部(103)は、不連続な凹部パターンを形成する。パネル(110)は、場合によっては、複数のパネル(110)を結合するための複数の結合輪郭を含み得る。パネル(110)はまた、芯材(100)の下面に貼り付けられた裏打ち層(図示せず)を備えることもある。図1fには、エンボス構造物が、複数の連続して配向された回転円筒形ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)によって機械的に処理され、隣り合うブラシ・ローラ(120a、120b、120c)は軸方向に互いに反対方向に回転することが示されている。ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)は通常、好ましくは少なくとも部分的に金属で作られた、より好ましくは鋼および/または鋼と炭素の複合体で作られた比較的堅牢な、および/または剛性のブラシ・ワイヤを有する。この例示的な実施形態のブラシ・ローラ(120a、120b、120c)の直径は、おおよそ30センチメートルである。ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)の回転速度は、通常は550から650回転/分(rpm)の間であり、好ましくはおおよそ600rpmに等しい。ブラシ・ローラ(120a、120b、120c)は、最初は(完全に)滑らかなパネル(110)の上部表面のテクスチャを、より粗面化されたパネル(110)の上部表面のテクスチャに変えるために使用される。エンボス構造物のこの粗面化テクスチャは通常、より鋭い縁部を有し、図1gにより詳細に示すように、天然木目に近づく外観および見かけを有する。このことは、化粧像もまた木目模様を成しており、その化粧木目がエンボス加工木目と位置合わせされている場合に、特に有利である。この機械的動作の間、材料はエンボス構造物から、また任意選択でエンボス構造物と化粧像の間の中間透明層(該当する場合)の位置からも除去され、この材料はダスト粒子として放出される。この機械的なブラッシング動作(粗面化動作)中に生成されたダスト粒子の少なくとも一部を排出するために、各ブラシ・ローラ(120a、120b、120c、130)は、ハウジングまたはケージとも呼ばれるカバー(140a、140b、140c、140d)で囲まれており、このカバー(140a、140b、140c、140d)は真空システム(図示せず)に連結されている。パネル(110)が搬送方向Tへさらに移動する間、パネル(110)は、布および/またはナイロン・ワイヤなどのより柔らかいワイヤを有する、軸方向に回転する円筒形のクリーニング・ブラシ・ローラ(130)を通過して、パネル(110)からダスト粒子がさらに除去される。通常、粗面化およびクリーニングの後、パネル(110)は複数の小さいパネルに切断され、2つまたは4つのパネル縁部(図示せず)が賦形される。
【0109】
図2aは、本発明による化粧パネル(220)の別の例の概略図を示す。パネル(220)は、上面および下面が与えられた芯材(200)と、芯材(200)の前記上面に直接または間接的に貼り付けられた化粧上部構造物(201)とを備える。化粧上部構造物(201)は、少なくとも1つの化粧像を形成する化粧印刷層を備える。パネル(220)はまた、実質的に透明または半透明の、前記印刷層(201)を覆う三次元エンボス構造物(202)も備える。図示の実施形態では、エンボス構造物(202)は、複数の凹部(203)が設けられたベース層(204)と、前記ベース層(204)の上に印刷された複数の隆起部(205)によって形成された隆起パターン層とを備える。前記隆起部は、ラッカー層(205)の一部を形成する。支持体層(206)が、特にプライマー層(206)が、上部構造物(201)とエンボス構造物(202)の間に密封されて存在する。図示の実施形態では、プライマー層(206)は、無光沢プライマー(206A)と光沢プライマー(206B)からなるパターンを備える。凹部(203)は、プライマー層(206)が無光沢プライマー(206A)で形成されているところに存在する。構造化隆起部(205)は、プライマー層(206)の光沢プライマー(206B)を覆う。エンボス構造物(202)が実質的に透明であるので、プライマー層(206)内の違いが見える。プライマー層(206)が芯材(200)の上面に貼り付けられ、化粧上部構造物(201)がプライマー層(206)の上に貼り付けられることもまた考えられる。
【0110】
図2bは、図2aに示されたパネル(220)の上面図を示す。ベース層の一部には前記複数の凹部(203)が設けられ、また、ベース層の一部には凹部がないために、視覚的に目に見えるパターンが得られていることが分かる。この効果は、エンボス構造物(202)と合致しているパターンで無光沢と光沢の両方のプライマー(206A、206B)を備えるプライマー層(206)によって、さらに強調される。
【0111】
図3は、本発明による化粧パネル(330)のさらなる例の概略図を示す。この図は、化粧パネル(330)、特に床パネル(330)の断面を示す。パネル(330)は、上面および下面が与えられた芯材(300)を備える。化粧印刷層(301)が、芯材(300)の上面に間接的に貼り付けられている。プライマー(302)で形成された支持体層(302)が、化粧層(301)の接着性を良くするために芯材(300)と化粧層(301)の間に存在する。中間層(303)が、印刷化粧上部層(301)の上部に存在する。中間層(303)は、透明または半透明の、光反射性の熱可塑性層(303)で形成されている。光反射性の熱可塑性層(303)は、ホットメルト接着剤層(304)を用いて印刷化粧層(301)の上に接着されている。実質的に透明または半透明の三次元エンボス構造物(305)が、前述の層(300、301、302、303、304)の上部に配置されている。エンボス構造物(305)は、多層エンボス構造物(305)であり、複数の凹部が設けられた、少なくとも部分的に硬化されている2つのベース層(306A、306B)を備える。各ベース層(306A、306B)の一部には、凹部がない。エンボス構造物(305)はまた、上側ベース層(306B)の上部に印刷された複数の隆起部によって形成された隆起パターン層(307)も備える。隆起部は、凹部がそれぞれ設けられているベース層(306B)の部分にも、凹部がない部分にも印刷されている。図示されていないが、エンボス層が下方ベース層(306A)の上部に存在することもまた考えられる。二次印刷化粧層(308)が、下部ベース層(306A)に貼り付けられている。この印刷化粧層(308)は、ベース層(306A)のうちの凹部がない部分に貼り付けられる。パネル(330)全体は、仕上げ層(309)で、特にラッカー層(309)で覆われている。パネル(330)は、独特の視覚パターンが得られることになる2つの印刷化粧層(301、308)が存在するという利益を得る。ベース層(306A、306B)に設けられた凹部は通常、深さが2マイクロメートルから100マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから50マイクロメートルの間にある。隆起パターン層(307)の隆起部は通常、高さが2マイクロメートルから500マイクロメートルの間、好ましくは3マイクロメートルから300マイクロメートルの間にある。エンボス構造物、特に一方または両方のベース層(306A、306B)および/またはパターン層(307)および/または仕上げ層(309)には、これらの1つまたは複数の層を付着後に(直接)機械的にブラッシングすることによって、粗面化テクスチャが形成される。ここで、前記粗面化層の上に1つまたは複数の別の層を付着させる前に、1つの層が機械的に粗面化される(また任意選択でクリーニングされる)ことが考えられる。
【0112】
図4aおよび4bは、たとえば上記の図で議論および図示された、上部表面が機械的に粗面化されたエンボス構造物を有する、本発明によるパネル(400A、400B)に使用される結合輪郭(401A、401B、402A、402B)の非限定的な例を示す。第1のパネル縁部(440A)が第1の結合輪郭(401A)を備え、第1のパネル縁部(440A)と対向する第2のパネル縁部(440B)が、水平方向および垂直方向の両方で隣接するパネルの前記第1の結合輪郭(401A)とインターロックして係合するように設計された第2の結合輪郭(401B)を備え、第1の結合輪郭(401A)と第2の結合輪郭(401B)は、下げる動きによってこのようなパネルの2つを互いに結合できるように構成されている。この構成は、図4aに示されている。図4bは、第3のパネル縁部(441A)および第4のパネル縁部(441B)にそれぞれ配置された第3の結合輪郭(402A)および結合輪郭(402B)を備えるパネルを示す。第3の結合輪郭(402A)および第4の結合輪郭(402B)は、このようなパネルの2つ(440A、440B)が回転させる動きによって互いに結合できるように構成され、結合状態では、第1のパネルの横向き舌部の少なくとも一部が、隣接する第2のパネルの第3の溝に挿入されており、前記第2のパネルの上向きロック要素の少なくとも一部が、前記第1のパネルの第2の下向き溝に挿入されている。
【0113】
こうして、上述の本発明の概念は、いくつかの例示的な実施形態によって説明されている。個々の発明概念は、適用する際に、説明された例の他の細部もまた適用しなくても適用できると考えられる。当業者には、特定の適用例に到達するために多数の発明概念を(再)結合できることが理解されるので、上述の発明概念から成るすべての考えられる組み合わせの例を詳述する必要はない。
【0114】
本発明は、本明細書に示され記載された実施例に限定されず、当業者には明らかな多数の変形が添付の請求項の範囲内で可能であることが明らかであろう。
【0115】
本特許公開で使用される動詞「備える(comprise)」およびその活用型は、「備える」だけでなく、語句の「含む(contain)」、「から実質的に成る(substantially consist of)」、「によって形成された(formed by)」、およびこれらの活用型を意味するとも理解される。

図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
【国際調査報告】