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特表2023-510777光ファイバにおける高温耐水素散乱増強
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】光ファイバにおける高温耐水素散乱増強
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
G02B6/02 356
G02B6/02 416
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542113
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 US2021012985
(87)【国際公開番号】W WO2021142452
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/959,235
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509094034
【氏名又は名称】オーエフエス ファイテル,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】ストロフ,アンドレイ,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウェストブルック,ポール,エス.
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AA07
2H250AB05
2H250AC35
2H250AE02
2H250AG05
2H250AG18
2H250AG72
2H250AG80
2H250AH27
2H250AH38
2H250BA32
2H250BA36
(57)【要約】
本明細書では、ファイバに沿った空間的に不均一な散乱プロファイルのためのシステム、方法、および製造品が説明され、その後方散乱信号は、センシング環境内の条件に起因してファイバ減衰が増加した後でさえ、センシングのために使用することができる。一実施形態では、ファイバは、減衰を生じる条件に事前に曝露されており、空間的に不均一なプロファイルがこれを補償する。次いで、その後の曝露は、非常にわずかなまたは少なくとも許容可能なレベルのさらなる減衰をもたらす。例示的なファイバは、ファイバ長と、ファイバにわたるレイリー後方散乱よりも大きいファイバに沿った光後方散乱とを含むことであって、光後方散乱は、所与の圧力および所与の温度を有する水素リッチな第1の環境に曝露された後、ファイバに沿って3dBを超えて減少しない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバ長と、
前記ファイバ長にわたるレイリー光後方散乱よりも大きな、前記ファイバ長に沿った光後方散乱であって、前記光後方散乱は、所与の圧力および所与の温度を有する水素が豊富な第1の環境に曝露された後、前記ファイバに沿って3dBを超えて減少しない光後方散乱とを備える光ファイバ。
【請求項2】
前記第1の環境よりも低い水素圧力または前記第1の環境よりも低い温度のうちの少なくとも1つを特徴とする第2の環境に前記光ファイバが曝露される場合、前記光ファイバは、前記第1の環境に曝露される前の前記光ファイバと比較して、経時的な光後方散乱の減少が小さいことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記水素が豊富な第1の環境における前記光ファイバは、4dB/kmよりも大きい減衰を特徴とし、前記光ファイバが前記第2の環境に曝露される場合、前記減衰は6dB以下である請求項2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記第1の環境は、150℃の温度および75psiの水素圧力を特徴とする請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項5】
前記光後方散乱は、前記ファイバ長にわたるレイリー後方散乱よりも5dB大きい請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項6】
光ファイバであって、
ファイバ長と、第1の端部と、反対側の端部と、
前記ファイバ長に沿って増加する光後方散乱であって、所与の温度および所与の圧力を有する第1の環境内で水素分子に曝露された場合、前記光ファイバの前記第1の端部からの前記光後方散乱が、前記光ファイバの前記反対側の端部における前記光後方散乱に対して3dB以内であり、前記光後方散乱が前端および後端の間の任意の点からの光後方差散乱が3dB以内である光後方散乱とを備える光ファイバ。
【請求項7】
前記第1の環境よりも低い水素圧力または前記第1の環境よりも低い温度のうちの少なくとも1つを特徴とする第2の環境に前記光ファイバが曝露される場合、前記光ファイバは、前記第1の環境に曝露される前の前記ファイバと比較して、経時的な光後方散乱の減少が小さい請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記水素が豊富な第1の環境における光ファイバは、4dB/kmより大きい減衰を特徴とし、前記光ファイバが前記第2の環境に曝露されたとき、前記減衰は6dB/km以下であることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記第1の端部から前記反対側の端部への反射率は、前記反射率が各長さ間で約1~2dBだけ前記反射率が増加するような個別の長さにおいて漸増的に増加される請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項10】
前記水素が豊富な第1の環境は、150℃の温度および75psiの水素圧力を特徴とする請求項6に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年1月10日付の米国仮特許出願第62/959,235号の優先権を主張し、その出願は引用することにより本明細書の一部をなす。
【0002】
分散音響センシング(DAS)などの弾性後方散乱によるセンシング方法において適用可能であり得る、光ファイバセンサの水素耐性を増加させるためのシステム、方法、および製造品が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0003】
分散センシングに使用される光ファイバにおいて、信号はファイバに沿った位置から近位端に戻るように反射される。一般に、ファイバ長またはシステム感度のいずれかを最大にすることが望ましい。しかしながら、光学減衰が時間とともに増加すると、信号は減少し、それによってセンシング性能を損なう。典型的なDASシステムは、ファイバ減衰の変化を低減することに焦点を当てている。しかし、これらはしばしば満足のいくものではない。ファイバ減衰の変化にもかかわらずセンシング性能を保持するための改善された手段が望まれる。
【0004】
光ファイバセンサの重要な利点の1つは、例えば、高温、放射線、および様々な化学物質への曝露などの過酷な条件に対する耐性である。しかしながら、そのような耐性は、あるクリティカルな制限を有することが知られている。ファイバのいくつかの特性は、過酷な条件下で劣化し得る。これらの特性は、ファイバの機械的強度および光学的減衰を含み得る。光学的減衰の場合、いくつかの効果がファイバ損失を増加させる。これらには、ガンマ線、X線、UV照射などの放射線、さらには太陽光への曝露が含まれる。他の要因は、マイクロベンド損失を誘発するファイバコーティングの機械的変動を含む。さらに追加の要因は、水、水素、および異なる腐食性化学物質を含む様々な化学物質の存在である。これらの要因のいずれかからの減衰は、センサファイバを不透明にし、センシング用途において使用不可能にし得る。
【0005】
特に興味深いのは、光ファイバからの弾性後方散乱(例えば、レイリー散乱)を使用する用途である。ファイバ減衰が高すぎる場合、そのような光学後方散乱の強度は、使用可能なレベルを下回って低減されるであろう。例えば、もし減衰が5dB/kmに増加すると、2kmの距離で散乱する光の往復減衰は20dBとなる。そのような信号の損失は、DASセンサなどのセンサが正しく機能することを妨げる可能性がある。
【0006】
水素分子の存在下での減衰の増加は、光ファイバの著しい制限をもたらすことがよく知られている。水素は、所与の光ファイバセンサに近接した様々なポリマーおよび腐食金属によって生成される可能性があり、したがって、特定の用途では不可避である。水素分子は、ほとんどのコーティングを通して拡散することができ、ファイバを充填するシリカマトリックスに溶解する。室温でも、水素分子は、比較的短時間(例えば数週間)でファイバの光ガイドコアに到達し得る。水素がファイバのコアに到達すると、水素は可逆的減衰と永続的減衰の両方を誘発する。水素の一部は、未反応の水素分子としてシリカマトリックス中に溶解したままである。この減衰は、例えば、ファイバを取り囲む水素濃度を減少させることによって、水素がファイバから再び拡散することができる場合、逆転させることができる。しかしながら、水素とファイバのゲルマノシリケートコアとの反応によるファイバ減衰の永続的な増加も存在する。ファイバにおけるOHの形成は、特定の離散波長、主に1390nmおよび1240nmにおける減衰ピークをもたらす。より顕著には、ファイバ減衰の短い波長端は、より長い波長に移動し、近赤外領域に広がる。この減衰は、短波長端(SWE)減衰と呼ばれる。永久減衰機構は、元のファイバの10倍を超える減衰をもたらすことができる。永久減衰は、水素が高温でファイバに入る場合、さらに増加する可能性があり、シリカマトリックスとの反応は、より迅速に進行する。
【0007】
光ファイバの水素耐性を高めるためのいくつかの方法が以前に研究されている。例えば、ファイバは、シリカへの水素の拡散を遮断する炭素コーティングによって囲まれてもよい。代替として、光ファイバは、金属コーティングによって囲まれるか、またはファイバの中への水素侵入を防止するために金属管の内側に設置されてもよい。様々な水素ゲッタリング材料をファイバと外部環境との間に配置して、コアへの水素拡散の開始を遅らせることもできる。最終的に、ファイバはゲルマニウムなしで製造することができる。このような「Geフリー」コアは、水素の侵入に伴って生じる永久的な変化の多くに耐性を有することが知られている。しかしながら、Geフリーファイバでさえも、水素分子からの減衰に依然として影響を受けやすい。水素の大きな圧力のため、これは1550nmで多くのdB/kmを超える可能性があり、したがって、水素に富む環境における光ファイバの実現性を制限する。したがって、特に高温環境下において、光ファイバにおける耐水素性後方散乱の改善が望まれている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、当技術分野における必要性に対処し、ファイバに沿って空間的に不均一な散乱プロファイルを有するファイバに関し、その後方散乱信号は、センシング環境における条件に起因してファイバ減衰が増加した後でさえ、センシングのために使用することができる。一実施形態では、ファイバは、減衰を生じる条件に事前に曝露されており、空間的に不均一なプロファイルがこれを補償する。次いで、その後の曝露は、非常にわずかなまたは少なくとも許容可能なレベルのさらなる減衰をもたらす。ファイバに沿って増加する後方散乱が増強された例示的なファイバは、所与の温度で水素に曝露され、より高い減衰をもたらす。空間的に増加する後方散乱は、増加した減衰を補償し得る。その後、ファイバが、おそらくより低い水素圧力およびより低い温度で、別の環境に曝露される場合、後方散乱は、標準的なファイバの後方散乱と比較して、経時的に最小限の減少を有する。多くの他の減衰誘発効果もまた、本発明を使用して補償され得ることが理解される。
【0009】
本発明の例示的な実施形態は、所定の温度および圧力で水素に曝露されたときに変化しない所定のレベルの光後方散乱を提供するように構成された製造品の形態をとる。例として、水素への曝露は、100℃の温度で10psiの圧力であり得る。ファイバ入力で収集される光後方散乱は、ファイバの全長にわたって3dB以下だけ減少するであろう。
【0010】
本発明のさらなる例示的な実施形態は、水素への曝露後に光ファイバにおける増強された光後方散乱を維持するように構成された方法の形態をとり、この方法は、レイリー散乱よりも大きい増強された光後方散乱をもたらすインデックス変調を導入するステップであって、光後方散乱がファイバに沿って増加するステップを含む。次いで、ファイバを分圧75psiおよび温度150℃で所定の時間(例えば、3日間、5日間など)、水素に曝露する。
【0011】
代替として、ファイバは、ファイバに沿って増加する光学後方散乱を伴って製作されてもよく、いかなる水素にも曝露され得ない。光学的後方散乱は、75psi、150℃で5日間の水素への曝露による減衰を打ち消すのに充分であろう。
【0012】
例示的なファイバは、ファイバ長と、ファイバ長にわたるレイリー後方散乱よりも大きいファイバに沿った光後方散乱とを含み、光後方散乱は、所定の圧力および温度を有する水素リッチな第1の環境に曝された後、ファイバに沿って3dBを超えて減少しない。さらなる例示的なファイバは、ある長さのファイバと、第1の端部と、反対側の端部と、ファイバに沿って増加する光後方散乱とを備え、光後方散乱は、所定の温度および圧力を有する第1の環境において水素分子に晒されると増加し、光ファイバの第1の端部からの光後方散乱は、光ファイバの反対側の端部における光後方散乱に対して3dB以内であり、光後方散乱は、前端と後端との間の任意の点からの光後方散乱の3dB以内である。例示的な方法は、ファイバを線引きするステップと、UVコーティングを適用するステップと、インターフェログラムを使用してファイバを後処理するステップと、UV線量に基づいて光後方散乱増強依存性を測定するステップと、反射率を漸増的に増加させるステップと、ファイバを水素リッチな第1の環境に曝すステップとを含む。
【0013】
本発明の他のさらなる実施形態および態様は、以下の議論の過程で、添付の図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで図面を参照する。
図1図1は、本発明の一実施形態による75psiの水素圧力と150℃で3日の後、続いて100℃で長期曝露した後の1550nmにおいて推定されるファイバ減衰を示すグラフである。
図2A図2Aは、本発明の一実施形態による後方散乱増強を制御するための例示的な方法を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による増強散乱ファイバの調製中にファイバを処理するために使用されるおよそのUV線量に対するネイティブレイリー後方散乱(0dBに設定される)を超える空間反射率レベルを示すグラフである
図4A図4Aは、本発明の一実施形態による、150℃、1500psi、および5%水素/95%窒素曝露の、0.9kmの増強散乱ファイバに対する効果を実証するグラフを示す。
図4B】4Bは、本発明の一実施形態による、150℃、1500psi、および5%水素/95%窒素曝露の、0.9kmの増強散乱ファイバに対する効果を実証するグラフを示す。
図5図5は、本発明の一実施形態による、150℃、75psiのH分圧、および5日間のエージング時間での水素リッチ環境への曝露前後のG652ファイバの例示的な減衰スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下で詳細に論じられるように、本発明は、水素環境における規格光ファイバの従来の制限を超える光ファイバセンサの水素耐性を増加させるための代替方法に関する。本明細書に説明される例示的実施形態は、DAS等の弾性後方散乱に依拠するセンシング方法に適用可能であり得る。そのようなセンサでは、クリティカルなパラメータは、検出器に到達する後方散乱信号の量である。したがって、そのような後方散乱がファイバに沿って充分な量だけ増加され得る場合、後方散乱信号は、ファイバの減衰が増加しても有用なセンシングを可能にするように充分に強いままである。
【0016】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、DAS用途における後方散乱の増加を可能にする光ファイバのUV処理方法に関する。これらの方法によれば、後方散乱レベルは、ファイバを処理するために使用されるUV線量を変化させることによって20dBを超えて制御することができる。次いで、ファイバは、後方散乱レベルを漸増的に増加させるように増加的に処理されてもよい。例えば、900mの長さのファイバを処理して、100mごとにおよそ1~2dBのステップで後方散乱を増加させることができる。最後に、ファイバは、次いで、高温水素リッチ環境に曝露され、定常状態水素侵入を達成した後でさえも後方散乱の増強を実証し得る。これらの例示的な実施形態は、増加した後方散乱が水素誘起減衰をどのように克服し得るかの例を提供する。さらに、本明細書に記載される方法および製造品はまた、水素減衰が始まった後でさえも、信号がネイティブレイリー散乱を超えて増加し得ることを示す。
【0017】
ファイバが、以前の環境よりも低い温度を有する別の水素環境に曝露されると、ファイバ減衰が微小変化し、センシングに使用される後方散乱信号は、大きいファイバ減衰にもかかわらず、レイリー散乱を上回る増加した値に維持されるであろう。したがって、ファイバに沿って増加する増強された散乱を有するこの事前調整されたファイバは、水素減衰に対して耐性がある。例えば、例示的なファイバは、水素の分圧75psiで5日間150℃の水素に曝露されていてもよい。そのようなファイバの1550nmでの減衰は、当業者によって理解される式を使用して計算され得る。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、以下の式を利用して、O-Hピークの温度、圧力、および時間依存性、ならびに短波長損失(飽和限界から遠い)を説明することができる:
【数1】
ここで、ΔαはO-H減衰増加であり、Aはファイバタイプに固有のスペクトル関数であり、xは定数であり、E*は活性化エネルギーであり、pは水素圧力であり、tは曝露時間である。
【0019】
標準的なGeドープファイバの典型的な活性化エネルギーは約60kJ/molであり、xは約0.39であり得る。上記の式を用いて、150℃および分圧75psiで5日間水素に曝露することによって1550nmでの減衰の増加を推定することが可能である。次いで、格子間水素および反応水素などの2つの減衰機構の追加を仮定することによって、より低い温度での追加の減衰増加を計算することができる。75psiで100℃の水素に曝露した後の減衰を考慮することによって、結果として生じる減衰の増加が図1のグラフ100に示されている。具体的には、グラフ100は、本発明の一実施形態による、75psiの水素を用いて150℃で5日後、続いて100℃で長期曝露した後の1550nmでの推定されるファイバ減衰を示す。この例によれば、100℃で100日後、減衰は約4dB/kmから約6dB/kmに増加することが分かる。したがって、例示的なセンサファイバが12dB/kmだけ増加する散乱を有する場合、センサ信号の往復減衰は、6dB/kmへの減衰の増加後にゼロになる。
【0020】
より一般的には、任意の他のタイプの光減衰機構に関して、ファイバに沿って増加した光後方散乱は、そのような損失に対抗するように設計され得る。例えば、ガンマ線を有する環境に配置された光ファイバセンサは、ガンマ線への特定の曝露後に減衰を示し得る。この減衰が3dB/kmである場合、DASで使用される信号などの後方散乱信号の往復減衰は、合計6dB/kmの損失を経験し得る。ファイバの長さが3kmであった場合、ファイバ全長の総往復損失は18dBであり得る。このような損失は、分散型音響センサインテロゲータの有効性を著しく低下させる可能性がある。
【0021】
ファイバに沿った後方散乱の増加に加えて、傾斜増加部分のほかに追加の増強された散乱レベルを加えることが可能であることに留意されたい。例示的な一実施形態によれば、後方散乱増強は、ファイバ入力におけるレイリー散乱を5dB上回り、1kmのレイリー後方散乱を15dB上回り得る。本実施形態において減衰メカニズム(例えば、水素侵入)が5dB/kmの減衰を誘導した場合、後方散乱増強は、減衰が導入された後のファイバの全長にわたるレイリー散乱に対して5dBであり得る。
【0022】
図2Aは、本発明の一実施形態による後方散乱増強を制御するための例示的な方法200を示す。本発明者らの増強された後方散乱ファイバを製造するために、ステップ205において、シングルモードファイバは、G.652適合性のゲルマノシリケートコアプリフォームを使用して線引きされ得る。さらに、ステップ210において、例示的なファイバは、紫外線(UV)透明コーティングを適用しながら線引きされてもよい。
【0023】
ステップ215において、後処理は、248nmパルスチャープインターフェログラムを使用してファイバ内で実行され得る。当業者は、そのような後処理が達成される様式を理解するであろう。典型的なファイバは、10~20nmの帯域幅にわたって空間的に均一な10~13dBの増大した後方散乱を有することができ、ファイバ減衰はほとんど増大しない。しかしながら、これらの典型的なファイバとは異なり、本明細書に記載される例示的な方法200は、ファイバに沿った後方散乱のレベルを変化させ得る。UV感光応答は、ドープされたコアを照射するUV線量に依存し得ることが理解される。この応答は、数桁にわたって単調であり、UV曝露プロファイルの正確な制御を可能にする。一例は、ファイバ格子の反射率が数cmの長さにわたって0からほぼ100%に増加する高性能アポダイズファイバブラッグ格子を含み得る。
【0024】
例示的な方法200によれば、このUV線量への依存性は、格子の入力側で数dBの増強および出力側で10~15dBより大きい増強を有する増強プロファイルを得ることを目的として、ファイバの0.9kmにわたって後方散乱を増加させるために利用され得る。後方散乱のそのような10~15dBの増加は、5~7.5dB/kmのファイバ減衰を完全に打ち消してもよく、これは、ある厳しいセンサ用途における水素誘起減衰に典型的である。
【0025】
ステップ220において、後方散乱増強の依存性は、ファイバを処理しこの増強プロファイルを達成するために使用されるUV線量のレベルに基づいて測定され得る。長さの短いファイバにわたって適用されるUV線量の範囲は、この依存性の測定を可能にし得る。具体的には、レイリー散乱に対する増強の測定は、光後方散乱反射率計(OBR)を用いて記録することができる。
【0026】
図3は、本発明の一実施形態による増強散乱ファイバの調製中にファイバを処理するために使用されるおおよそのUV線量に対するネイティブレイリー後方散乱(0dBに設定される)を上回る、結果として生じる空間反射率レベルを示すグラフ300である。グラフ300では、0dBのレベルがレイリー後方散乱のレベルに割り当てられる。反射率は、印加されたパルス線量の範囲内で約25dBの範囲わたって変化した。
【0027】
高温水素曝露に関して、散乱増強のフルエンスへの依存性は、ファイバに沿ってゆっくりと増加する増強された散乱を有する、ファイバを作成するために使用され得る。例えば、ステップ225では、フルエンスは、各ステップにおいて反射率を約1~2dB増加させるように、個別的な段階において(例えば、長さ100m毎に)漸増的に増加させられてもよい。UV処理の後、ステップ230において、ファイバは、次いで、130℃で24時間アニールされ得る。ステップ235において、OBRは、振幅およびレイリーレベルを監視するために拡張レンジモードで動作している間に使用され得る。例示的な一実施形態によれば、振幅測定は、1546nmの中心波長および0.807nmの走査範囲で行うことができる。
【0028】
さらに、2つのファイバが使用され、4回目と5回目の曝露の間の400m点で一緒にスプライスされてもよい。図4Aおよび4Bは、150℃、1500psi、および5%水素/95%窒素曝露が0.9kmの増強散乱ファイバに及ぼす影響を示すグラフ400および450を示す。具体的には、図4Aのグラフ400は、150℃での水素への曝露前(上側のプロット410)および曝露後(下側のプロット420)の位置に対する反射率の増強を示す。400m付近のディップは、露出していないファイバの短い部分である。図4Bのグラフ450は、高温水素への曝露の前(上側のプロット460)および後(下側のプロット470)に高散乱帯域幅の外側で測定された反射率を示す。400mにおける不連続性は、ファイバの中央におけるスプライスの減衰である。
【0029】
レイリー散乱を上回る散乱増強は、9dB~22dBの範囲であり得る。ステップ240では、次いで、例示的なファイバを、5%のHおよび95%のNを含有するガスなどの形成ガスで充填された密閉チャンバ内に配置することができる。ガス圧力および温度設定は、ファイバのさらなる適用についての知識に基づき得る。例えば、最終用途において、ファイバがTapp未満の温度およびPapp未満の水素圧力で使用される場合、曝露温度(Texp)および圧力(Pexp)は、それぞれTappおよびPappを超えるべきである。例えば、ガス圧は1500psiに設定されてもよく、これは75psiの水素分圧に等しい。ステップ245において、ファイバは、最終的なファイバ用途に基づいて適切な水素圧力および温度設定でエージングされ得る。ある例示的な実施形態によれば、ファイバは、チャンバ内において150℃で5日間エージングされ得る。水素エージング後に得られた減衰スペクトルを図5のグラフ500に示す。具体的には、グラフ500は、150℃、75psiのH分圧および5日間のエージング時間での水素リッチ環境への曝露前後のG652ファイバの例示的な減衰スペクトルを示す。1550nmでの減衰は5dB/kmに近く、水素への曝露前の減衰に対して10を超える因子である。1550nm付近の弱い散乱の効果は明らかではない。
【0030】
上述のように、水素への曝露後にOBRを用いてファイバ後方散乱を再度測定した。水素処理の前後のトレースを図4Aのグラフ400および図4Bのグラフ450に示す。また、OBRは高散乱帯域外の波長とした。これらの走査は、ファイバの減衰の測定値を与えた。全てのプロットにおいて、ファイバの中心でのスプライス損失が明らかである。この損失は、減衰を計算する目的で無視することができる。さらに、OBR測定は、水素誘起減衰が5dB/km(例えば、10dB/km)のレベルであることも示していることに留意されたい。格子散乱の増加は、この減衰が、ファイバにわたる曝露レベル変動の増加による相殺よりも大きかったことを示す。OBR走査はまた、増強された散乱が、150℃の水素雰囲気への曝露後に約4dB減少し、ファイバの入力におけるレイリー散乱レベルを5dB上回ったことを示す。このレベルは、ファイバの端部におけるレイリー散乱レベルを18dB上回って増加した。ファイバ減衰および散乱の低減の両方が、図4Aの上のプロットにおいて観察される。9dB/kmの往復水素誘起減衰は、後方散乱強度の13dBの増加によって補償される減衰よりも大きい。
【0031】
本明細書に記載の例示的な方法300は、増強散乱ファイバを使用して水素誘起減衰を克服することができる。光ファイバに沿った散乱増強の段階的増加に起因して、センサファイバ(例えば、DASファイバ)からの後方散乱信号は、900mの長さのファイバサンプルにわたって5dB/kmの減衰を誘発する高温水素処理(例えば、75psiで5日間150℃)に耐性がある。
【0032】
本開示は、その例示的な実施形態を参照して説明されている。本開示に開示される全ての例示的な実施形態及び条件付き説明は、本開示が属する技術分野の当業者による本開示の原理及び概念の理解を助けることを意図して説明された。したがって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の思想及び領域から逸脱しない範囲内で本発明を変形して実施できることを理解できるであろう。種々の特徴を有する多数の実施形態が本明細書に説明されているが、本明細書に議論されない他の組み合わせにおけるそのような種々の特徴の組み合わせは、本開示の実施形態の範囲内であると想定される。
図1
図2A
図3
図4A
図4B
図5
【国際調査報告】