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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】アルテルナンオリゴ糖の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/04 20060101AFI20230308BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20230308BHJP
   C12P 1/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C12P19/04 Z
C12N9/24
C12P1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542403
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2021050287
(87)【国際公開番号】W WO2021140208
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】20150977.5
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522275599
【氏名又は名称】エヴォックス テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】evoxx technologies GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100106404
【弁理士】
【氏名又は名称】江森 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100112977
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 有子
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク テルフェール
(72)【発明者】
【氏名】ラウフ フェルトマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル プルス
【テーマコード(参考)】
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
4B050KK08
4B050LL02
4B050LL05
4B064AF04
4B064AF12
4B064CA21
4B064CB07
4B064CD09
4B064CE06
4B064DA10
(57)【要約】
従来の製造方法の問題点を解決すべく、所定ステップ(S1)を含むアルテルナンオリゴ糖(8)の製造方法であって、反応器(11)において、スクロース(9)を、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素(13)及びアクセプター分子(12)と接触させる処理を含み、これらは水性液体(4)の状態で反応器(11)の内部に存在し、スクロース(9)は、反応器(11)に供給されるとともに、スクロース(9)及びアクセプター分子(12)は、アルテルナンオリゴ糖(8)に変換され、フルクトース(6)が副産物として生成され、更に、膜濾過(17)により反応器(11)からフルクトース(6)を除去する処理を含むことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ステップ(S1)を含むアルテルナンオリゴ糖(8)の製造方法であって、
前記所定ステップ(S1)が、
反応器(11)において、スクロース(9)を、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素(13)及びアクセプター分子(12)と接触させる処理を含み、
前記アルテルナンスクラーゼ酵素(13)及び前記アクセプター分子(12)が、水性液体(4)の状態で前記反応器(11)の内部に存在し、前記スクロース(9)が、前記反応器(11)に連続的又は半連続的に供給され、
前記スクロース(9)及び前記アクセプター分子(12)は、アルテルナンオリゴ糖(8)に変換され、フルクトース(6)が副産物として生成され、
更に、膜濾過(17)により、前記反応器(11)から前記フルクトース(6)の少なくとも一部を連続的又は半連続的に除去する処理を含むことを特徴とするアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項2】
前記膜濾過(17)が、膜を用いたダイアフィルトレーションであることを特徴とする請求項1に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項3】
前記フルクトース(6)の少なくとも一部を連続的又は半連続的に除去することが、前記反応器(11)の内容物を、膜を含む装置(16)を通して連続的又は半連続的に循環させ、かつ、前記反応器(11)の前記内容物を前記膜に接触させる処理を含み、前記フルクトース(6)の少なくとも一部及び水性液体(4´´)の一部が、前記膜を通過するとともに、残りが前記反応器(11)に戻されることを特徴とする請求項1又は2に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項4】
前記所定ステップ(S1)が、前記反応器(11)に、更なる水性液体を連続的又は半連続的に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項5】
前記所定ステップ(S1)が、前記反応器(11)と、膜を含む前記装置(16)と、を含む反応器システムに、更なる水性液体を連続的又は半連続的に供給するステップを更に含むことを特徴とする請求項3記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項6】
前記アルテルナンオリゴ糖の製造方法において、更なる副産物として生成されるアルテルナン多糖類(14)の少なくとも一部、及び前記アルテルナンスクラーゼ酵素(13)の少なくとも一部を、更なる膜濾過(3)により除去するステップ(S2)を更に含み、前記更なる膜濾過(3)において、前記アルテルナンオリゴ糖(8)が透過液に含まれることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項7】
前記アルテルナンオリゴ糖の製造方法が、前記アルテルナンオリゴ糖(8)を濃縮するステップ(S3)を更に含むことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項8】
前記アルテルナンオリゴ糖(8)の重量平均重合度(DPw)又は数平均重合度(DPn)が、前記反応器(11)に供給される前記スクロース(9)の量によって調節されることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項9】
前記アルテルナンオリゴ糖(8)の所望の重量平均重合度(DPw)又は、所望の数平均重合度(DPn)に達したときに、前記スクロース(9)の供給を停止することを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項10】
前記アルテルナンオリゴ糖(8)の前記重量平均重合度(DPw)が、GPC-RIで測定して5~30の範囲内の値であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項11】
前記アルテルナンオリゴ糖(8)の前記重量平均重合度(DPw)が、GPC-RIで測定して10~20の範囲内の値であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項12】
前記アクセプター分子(12)が、マルトース分子であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項13】
前記スクロース(9)が連続的に供給され、時間当たりのスクロースのモル量でのスクロース(9)の供給速度が、時間当たりのフルクトースのモル量でのフルクトース(6)の連続除去速度に等しい、又はスクロース(9)の前記供給速度とフルクトース(6)の前記除去速度との比率が、1.2:1~1:1の範囲内の値であることを特徴とする請求項1~12のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項14】
前記製造方法において使用されるアクセプター分子(12)の総量に対して、供給されるスクロース(9)の総量である、スクロース(9):アクセプター分子(12)のモル比率が、10:1~30:1の範囲内の値であることを特徴とする請求項1~13のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項15】
更なるアルテルナンスクラーゼ酵素を、前記反応器(11)へ供給するステップを含むことを特徴とする請求項1~14のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【請求項16】
アルテルナンスクラーゼ酵素:供給されるスクロース(9)の総量であるスクロース(9)の比率が、1000~10000単位(酵素活性):1000gのスクロース(9)であることを特徴とする請求項1~15のいずれか一項に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルテルナンオリゴ糖の製造方法(以下、アルテルナンの製造方法、又は、アルテルナンの製造プロセス等と称する場合がある。)に関する。
【背景技術】
【0002】
アルテルナンオリゴ糖(alternan-oligosccharide)は、プレバイオティクス成分(prebiotic ingredients)として記載されている。すなわち、特許文献1によれば、スクロースと様々なアクセプター糖(以下、受容体糖と称する場合がある。)とのアルテルナンスクラーゼ(alternansucrase)酵素触媒反応によって生成されるオリゴ糖が、腸内細菌病原体(enteric bacterial pathogens)を制御するためのプレバイオティクスとして有効であることを開示している。そして、腸内病原性細菌(beneficial bacteria)の集団は、例えば、乳酸菌、ビフィズス菌等の有益な細菌の増殖を促進するのに有効な量のこれらのオリゴ糖の1つ以上を含む組成物で、動物を処理することによって、実質的に減少又は阻害されることが好ましい。
【0003】
又、特許文献2によれば、アルテルナンスクラーゼをコードする核酸分子が提供される。
更に、記載された核酸分子によって形質転換されたベクター、宿主細胞、植物細胞、及びそれらを含む植物が提供される。
更に、アルテルナンスクラーゼをコードする核酸分子の挿入により、炭水化物アルテルナン(carbohydrate alternan)を合成するトランスジェニック植物を調製するための方法が記載されている。
更に、アルテルナンの調製方法及びそこから得られる生成物が提供される。
【0004】
又、特許文献3によれば、酸性食品の成分としてのアルテルナン多糖類及びアルテルナンオリゴ糖の使用、及び成分としてアルテルナンを含む酸性食品を対象としていることを開示している。
かかる開示は又、食品配合物中の熱安定性成分としてのアルテルナンの使用、及び食品がその製造中に加熱工程に供された、アルテルナンを成分として含む食品も対象としている。
【0005】
特許文献2及び特許文献3において、アルテルナンオリゴ糖の製造方法が提案されており、当該製造方法では、
a)スクロース含有溶液を、スクロースのアルテルナンオリゴ糖及びフルクトースへの変換を可能にする条件下で、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素及びアクセプター分子(以下、受容体分子と称する場合がある。)と接触させ、
b)スクロース含有溶液からアルテルナンオリゴ糖とフルクトースを分離する。
【0006】
かかるスクロース含有溶液からアルテルナンオリゴ糖とフルクトースを分離する反応は、全ての抽出物を含むバッチ式反応器の内部で行われるが、反応温度を室温~37℃の範囲内、pHを約4.7~7の範囲内で行うことが好ましく、そして、スクロースが本質的に消費されて、なくなるまで進行させることが好ましい。
又、得られた生成物は、通常、シロップとして得られるが、これは更に、すなわち膜濾過によって精製することが好ましく、しかも、それを更に乾燥等することも好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7182954号(特許請求の範囲等)
【特許文献2】国際公開第2000/47727号(特許請求の範囲等)
【特許文献3】国際公開第2009/095278号(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述の特許文献2及び特許文献3における製造方法(製造プロセス)では、副産物(副生成物)の生成や蓄積が問題となっていた。
更に言えば、より長鎖のマルトースアルテルナンオリゴ糖の製造においては、所望の平均鎖長が全く得られない、或いはほとんど得られないため、これまで用いられてきたプロセスは用いることができないという問題が見られた。
【0009】
そこで、本発明の目的は、アルテルナンオリゴ糖の、従来の製造方法の問題を解決する代替製造方法を提供することである。
すなわち、本発明のアルテルナンオリゴ糖の製造方法によれば、副産物の生成を最小限に抑えるとともに、かかる副産物のより効率的な除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、特許請求の範囲の請求項1等に記載のアルテルナンオリゴ糖の製造方法を提供することができる。
そのため、本発明は、アルテルナンオリゴ糖の製造方法において、所定ステップを含むことを特徴とする。
すなわち、かかる所定ステップによれば、反応器において、スクロースを、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素(以下、単に、アルテルナンスクラーゼと称する場合がある。)及びアクセプター分子と接触させる処理を含んでいることを特徴とする。
又、アルテルナンスクラーゼ酵素及びアクセプター分子が、水性液体(水性液体の状態)で反応器の内部に存在し、スクロースを、連続的又は半連続的に反応器に供給することを含んでいることを特徴とする。
そして、スクロースとアクセプター分子は、アルテルナンオリゴ糖に変換され、フルクトースは副産物として生成され、更に、膜濾過により、反応器からフルクトースの少なくとも一部を連続的又は半連続的に除去する処理も含んでいることを特徴とする。
【0011】
本発明によって、アルテルナンオリゴ糖の製造方法に関する一般的な又は特定の実施形態において、以下の利点のうちの1つ以上を達成することができる。
より具体的には、一定の低いフルクトース濃度において、アルテルナンオリゴ糖を製造することができる。
又、本発明によれば、アルテルナンポリマー又はロイクロース等、更なる不要な副産物の生成を低減し、又は、最小化することができる。
従って、副産物は、必ずしもフルクトースだけではなく、ほかに考えられるものとして、以下に説明するように、アルテルナンポリマー又はロイクロースも対象としており、それらを除去することも含んでいる。
よって、本発明によれば、従来よりも長鎖であって、重量平均分子量(Mw)等が大きなアルテルナンオリゴ糖を製造することができる。すなわち、製造時におけるスクロースの添加量により、アルテルナンオリゴ糖の鎖長を調整することができる。
又、本発明によれば、所定ステップで得られたアルテルナンオリゴ糖自身も効率的に提供することができる。
なお、更なる利点は、以下の特定の実施形態に記載されている。
【0012】
[アルテルナンオリゴ糖]
アルテルナンオリゴ糖の重合度(DP)、又は重量平均重合度(DPw)である平均重合度は、代替法として、GPC-RI(屈折率検出付きゲル浸透クロマトグラフィー)、又はHPAEC-PAD(パルスアンペロメトリック検出付き高速アニオン交換クロマトグラフィー)を用いて測定することができる。
【0013】
アルテルナン、すなわち、アルテルナンオリゴ糖は、グルコース単位から構成される糖類、或いはグルコース又はグルコース単位以外の構造からなるアクセプター分子が存在する場合には実質的にグルコース単位から構成される糖類である。
かかるグルコース単位は、α-1-3-及びα-1-6-グリコシド結合(単に結合と称する場合がある。)を介して互いに結合しており、これら2種類の結合は主に交互に現れる。
又、マルトース等のグルコース(単位)を含むアクセプター分子が存在する場合、これらは別の方法で結合していることも好ましい。
又、アルテルナンは、分子鎖中に、分岐を含んでいることが好ましい(参照文献:Seymourら、Carbohydrate Research 74、(1979)、41-62)。
又、アルテルナン多糖類とアルテルナンオリゴ糖は、重合度によって区別されるアルテルナンの一種である。
又、アルテルナン多糖類分子は、アクセプター分子を含む場合も、含まない場合があるが、いずれにしても、アクセプター分子を含んでいることが好ましい。
【0014】
本発明におけるアルテルナン、特に、アルテルナンオリゴ糖は、グルコースベース糖類(glucose-based saccharide)と規定することが好ましい。
かかるグルコースベース糖類は、還元末端とα-1-6及びα-1-3のグリコシド結合を交互に有するD-グルコースモノマーを有している。
そして、「アクセプター分子ユニット」とも呼ばれるアクセプター分子(受容体分子)、特にマルトースユニットは、還元末端に存在するか、言い換えれば還元末端に結合されている。
【0015】
又、アルテルナンオリゴ糖分子は、少なくとも一つのアクセプター分子を含んでいることが好ましい。
【0016】
又、本発明の製造方法によって製造されるアルテルナンオリゴ糖の重量平均重合度(DPw)は、所望の用途等に応じて、5~30の範囲、又は5~25の範囲内であることが好ましい。
更に、アルテルナンオリゴ糖の重量平均重合度(DPw)は、別な所望の用途等に応じて、10~30の範囲、又は10~20の範囲内であることがより好ましい場合もある。
その上、アルテルナンオリゴ糖の重量平均重合度(DPw)は、別な所望の用途等に応じて、10~18の範囲、又は12~18の範囲内であることが更に好ましい場合がある。
更に言えば、アルテルナンオリゴ糖の重量平均重合度(DPw)は、別な所望の用途等に応じて、18~30の範囲、又は20~30の範囲内であることが最も好ましい場合がある。
これらのアルテルナンオリゴ糖の重量平均重合度は、GPC-RIで測定することができるが、より詳細な測定方法については、後述の実施例の項に記載する。
【0017】
本発明の製造方法により製造されたアルテルナンオリゴ糖は、HPAEC-PADで測定した重量平均重合度(DPw)が、7~32の範囲内であることが好ましく、12~30の範囲内であることより好ましく、12~20の範囲内であることが更に好ましく、12~18の範囲内であることが最も好ましい。
そして、HPAEC-PADによる、重量平均重合度(DPw)の詳細な測定方法は、後述の実施例の項において記載する。
そして、HPAEC-PADで測定した重量平均重合度は、13、14、15、又は16より大きいことが好ましい。
但し、いくつかの実施形態では、所望の用途等に応じて、HPAEC-PADで測定した重量平均重合度は、17より大きいことが好ましい。
一方、別な所望の用途等に応じて、HPAEC-PADで測定した重量平均重合度は、20未満、19未満、又は18未満(HPAEC-PAD)であることが好ましい。
【0018】
上記のGPC-RI値とHPAEC-PAD値は、それぞれ独立して検討されるべき数値(分子量特性)である。
すなわち、重量平均重合度(DPw)の異なる測定方法を比較する場合、上記の値や範囲を互いに、対応させて割り当てることはできない。
よって、独立的に、異なる重量平均重合度(DPw)を持つ生成物を製造したり、重量平均重合度(DPw)を操作したり、異なる生成物の重量平均重合度(DPw)を異なる方法で測定したりすることが可能である。
【0019】
又、本発明において、単数形用語である「アルテルナンオリゴ糖」は、重合度(DP)が1つのみの分子を有する単分散アルテルナンオリゴ糖と、重合度が異なる分子を有する多分散アルテルナンオリゴ糖の両方を意味する。
【0020】
又、本発明のアルテルナンオリゴ糖は、重合度(DP)が3~30の範囲にあるアルテルナン分子からなることが好ましく、又はアルテルナンオリゴ糖は、実質的に重合度(DP)が3~30の範囲にあるアルテルナン分子を含むか、或いは、実質的に重合度(DP)が3~30の範囲にあるアルテルナン分子からなることが好ましい。
なお、これらの重合度(DP)の上限や下限の端点の数値は、平均値ではなく、単一の数値そのものを意味するものである。
【0021】
又、「実質的に含んでいる(comprise)、又は実質的になる(consist)」という用語は、3~30の範囲の重合度(DP)を有するアルテルナン分子の、アルテルナンオリゴ糖の総重量に基づいて、特に乾燥ベースで90.0重量%以上の量、好ましくは95.0重量%以上又は97.0重量%以上、より好ましくは98.0重量%以上、更に好ましくは99.0重量%以上、最も好ましくは99.5重量%以上であることを意味する。
又、アルテルナンオリゴ糖には、30より高い重合度を持つアルテルナン分子が少量含まれることがある。
ここで、「少量」という用語は、アルテルナンオリゴ糖の総重量に基づいて10.0重量%未満、又は5.0重量%未満の量、好ましくは3.0重量%未満、より好ましくは2.0重量%未満、更に好ましくは1.0重量%未満、最も好ましくは0.5重量%未満の量を意味している。
【0022】
又、アルテルナンオリゴ糖の重合度(DP)は、アクセプター分子に直接又は間接的に結合したD-グルコシル単位の数に、アルテルナンオリゴ糖に残存するアクセプター分子の単糖単位の数を加えたものとして規定される。
【0023】
又、本発明の規定に従ったアルテルナン多糖類は、30より高いDPを有することが好ましい。そして、かかる重合度(DP)の下限の数値は、平均値ではなく、単一の数値そのものを意味するものである。
本発明では、単数形用語である「アルテルナン多糖類」は、重合度(DP)が1つのみの分子を有する単分散アルテルナン多糖類と、重合度が異なる分子を有する多分散アルテルナン多糖類の両方を意味する。
【0024】
又、本発明の規定に従ったアルテルナン多糖類は、GPC RI又はGPC MALLSを用いて決定されるが、5000g/mol以上の重量平均分子量(Mw)を有していることが好ましい。
本発明の別の実施形態によれば、アルテルナン多糖類は、10000000g/mol~60000000g/mol(GPC MALLSを用いて決定される。)の範囲内の重量平均分子量(Mw)を有していることが好ましく、12000000g/mol~50000000g/molの範囲内の重量平均分子量(Mw)を有していることがより好ましい。
【0025】
[アルテルナンスクラーゼ酵素]
本明細書で使用するためのアルテルナンスクラーゼは、例えば、特許文献2に開示されているように、種々の微生物、好ましくはロイコノストック属(Leuconostoc)の株(strains)、特にロイコノストックメセンテロイデス属(Leuconostoc mesenteroides、以下、L. mesenteroides)の株から得ることが好ましい。
本発明の一実施形態によれば、アルテルナンスクラーゼ酵素は、Leathersらの米国特許第5702942号に記載されているような、デキストラスクラーゼ(dextransucrase)に対して高い割合のアルテルナンスクラーゼを分泌する株(菌株)によって生産される。
又、本発明の別の実施形態によれば、アルテルナンオリゴ糖を生成するために使用することができるアルテルナンスクラーゼ酵素には、ロイコノストックメセンテロイデス属の株であるNRRL B 1355、23185、23186、23188、23311、21297、30821、30894が含まれる。
これらの酵素は、Gilles Jouclaの博士論文(Ingenier INSA、Toulouse、France、2003)に記載されているように、更にクローニングして、組換え発現させることができる。
又、アルテルナンスクラーゼ酵素は、ロイコノストックメセンテロイデス属以外の生物で生産することができる。その生物はアルテルナンスクラーゼ酵素をコードする組換え核酸を含んでおり、好ましい生物として、大腸菌(eschericha coli 以下、E. coli)が挙げられる。
【0026】
アルテルナンスクラーゼの生産は、従来技術を用いて、Leathersらの米国特許第5702942号に記載されているようなアルテルナンスクラーゼ酵素の増殖及び生産を促進するのに有効な好気性条件下で、上記の微生物のいずれかを、培養することにより行うことが好ましい。
そして、培養後、アルテルナンスクラーゼ酵素は、従来技術を用いて、例えば遠心分離又は濾過により微生物から単離又は分離することが好ましい。
【0027】
又、本発明の一実施形態において、「アルテルナンスクラーゼ酵素が水性液体(水性液体の状態)で反応器に存在する」という用語は、アルテルナンスクラーゼ酵素が水性液体に溶解、乳化、又は懸濁されていること、好ましくは溶解されていることを意味する。
又、本発明の一実施形態において、アルテルナンスクラーゼ酵素は、キャリア材料(担体材料)に固定化されていない。
【0028】
[アクセプター分子]
アクセプター分子とは、アルテルナンスクラーゼを触媒として、鎖延長反応(chain-extending reaction)を生じさせる分子を意味する。
従って、アルテルナンオリゴ糖分子は、アクセプター分子を含むことが好ましいが、1つのアクセプター分子を含むことがより好ましいと言える。
又、アルテルナン多糖類分子についても、アクセプター分子を含むことが好ましいが、1つのアクセプター分子を含むことがより好ましいと言える。
更に、分子という単数形の用語が用いられる場合でも、本発明では複数のアクセプター分子が用いられる場合を含んでおり、これらは化学的に同一であっても、或いは、異なっていても好ましい。
【0029】
又、アルテルナン、特にアルテルナンオリゴ糖は、アクセプター分子とスクロースを、スクロースからアクセプター分子へとグルコース単位を転移させ、フルクトースとアルテルナン、特にアルテルナンオリゴ糖を放出する1以上のアルテルナンスクラーゼ酵素と反応させて、生成させることが好ましい。
なお、アクセプター分子は、スクロースからグルコース単位を受け入れて、生成されることが好ましい。
【0030】
又、反応混合物に加えることができるアクセプター分子は、炭水化物又は炭水化物誘導体であることが好ましい。
外部アクセプターを使用すると、低分子アルテルナンオリゴ糖が生成される。
又、アクセプター分子は、スクロースからグルコース単位を受け入れることが好ましく、炭素位置番号で2、3及び6の1つ以上に遊離ヒドロキシル基を有する糖又は糖アルコールから選択することが好ましい。
又、炭水化物アクセプター(炭水化物受容体)は、マルトース、イソマルトース、マルチトール、(イソ)マルトトリオース及びメチル-α-D-グルカンからなる群より選択される糖類であることが好ましい。
又、他の好ましいアクセプター分子は、グルコース、ゲンチオビオース、ラフィノース、メリビオース、イソマルチトール、イソマルトオリゴ糖、テアンデロース(theanderose)、コジビオース、グルコシルトレハロース、セロビオース、マルトテトラオス、ニゲロース、ラクトース、パノース、又はこれらの混合物である。
更に言えば、アクセプター分子は、マルトース(マルトース分子)であることがより好ましい。
【0031】
又、選択された特定のアクセプターに応じて、グルコシル単位は一般的に、α(1,6)結合を介して、或いはα(1,6)結合がすでに存在する場合にはα(1,3)結合を介して付加される。
この反応により、典型的には、異なる重合度(DP)を有するオリゴ糖の混合物が生成される。
【0032】
又、本発明の一実施形態において、「アクセプター分子が水性液体(水性液体の状態)で反応器内に存在する」という用語は、アクセプター分子が水性液体に溶解、乳化、又は懸濁されている、好ましくは溶解されていることを意味する。
【0033】
[水性液体]
又、本発明における「水性液体」という用語は、少なくとも80vol%の水、好ましくは、少なくとも90vol%の水、又は少なくとも95vol%の水を含む液体を意味し、上限は100vol%である。そして、水性液体は水であることが好ましい。
【0034】
[反応器]
本発明において、反応器(リアクタ)は、タンク反応器であることが好ましい。
かかる反応器での反応工程は、攪拌機などを用いてなる攪拌下で行われることが好ましい。
すなわち、本発明の一実施形態において、反応器は、攪拌機能付き反応器であることが好ましい。
又、前述の実施形態と組み合わせることができる、更に別の実施形態において、撹拌処理は、反応器の内容物を移動させることによって、行うことも好ましい。
例えば、ポンピングによって攪拌することも好ましく、より具体的には、この明細書の他の箇所に記載されているように、ポンプによって反応器の内容物を循環移動させることによって、所定の攪拌が行われる。
撹拌処理、特に、撹拌機による攪拌を行うと、反応器の内部において、スクロースと、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素及びアクセプター分子との接触が生じやすくなる。
すなわち、アルテルナンスクラーゼ酵素及びアクセプター分子は水性液体(水性液体の状態)で反応器に存在すべく、反応器に対して、連続又は半連続的に供給されるスクロースと、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素及びアクセプター分子との接触が、撹拌機による撹拌を伴いながら行われる。
又、本発明の別の実施形態において、フルクトースの除去及び/又はスクロースの添加により、反応器の内部に乱流が生じ、配合成分のより均一混合を引き起こすことができる。
そして、かかるスクロース(基質)は、連続的又は半連続的に添加されても良い。
【0035】
又、スクロースの供給に関して「半連続的に」という用語は、スクロースの供給が1回以上、好ましくは2回以上中断されることを意味する。
すなわち、「半連続的に」という用語は、少なくとも2つの供給の時間期間、好ましくは、少なくとも3つの供給の時間期間、又は少なくとも4つの供給の時間期間があり、各供給の時間期間は、以下の、供給の時間期間と供給の中断の時間期間とによって、区切られていることを意味する。
より具体的には、スクロース供給の時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、又は、非一定の時間期間であることも好ましい(すなわち、時間期間は長さが互いに異なっていることも好ましい)。
又、供給中断の時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、又は、非一定の時間期間であることも好ましい。
そして、スクロース供給の時間期間及び供給の中断の時間期間は、同じ長さの期間であることが好ましく、又は、異なる長さの時間期間であることも好ましい。
【0036】
又、フルクトースの除去に関して「半連続的に」という用語は、フルクトースの除去が1回以上、好ましくは2回以上中断されることを意味する。
すなわち、「半連続的に」という用語は、除去(removal)又は除去すること(removing)の少なくとも2つの時間期間、好ましくは、少なくとも3つの時間期間、又は少なくとも4つの時間期間があり、各除去の時間期間は、以下の、除去の時間期間と除去の中断の時間期間とによって、区切られていることを意味する。
より具体的には、フルクトース除去の時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、又は、非一定の時間期間であることも好ましい。
又、フルクトース除去の中断時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、非一定の時間期間であることも好ましい。フルクトース除去の時間期間とフルクトース除去の中断時間期間とは、同じ長さの時間期間であることが好ましく、又は、異なる長さの時間期間であることも好ましい。
【0037】
半連続運転では、スクロースが供給される時間期間とフルクトースが除去される時間期間とは、同一であるか、重複するか、又は、重複しないことが好ましい。
又、半連続運転の一実施形態において、フルクトースの除去が中断されたときにスクロースの供給が行われ、フルクトースの除去が行われたときにスクロースの供給が中断される。これは特に、スクロース供給とフルクトース除去が交互に行われることを意味する。
【0038】
又、反応器へのスクロースの供給は、直接的に又は間接的に行うことが好ましい。
より具体的には、直接供給は、例えば、スクロース又はスクロース溶液が、反応器又は反応器の内部で直接終端する供給管を介して添加される場合に行われる。
一方、間接供給は、例えば、スクロース又はスクロース溶液が、反応器と、流体連通している別の装置、例えば更なるパイプ、又は更なる装置、例えば本明細書で後述する膜を含む装置(以下、単に膜装置と称する場合がある。)、で終わる供給パイプを介して加えられる場合に行われる。又は、供給は、反応器及び本明細書で後述する膜を含む装置からなる反応器システムに対して行われることが好ましい。
又、スクロースの供給(又は配給)は、膜を介して行われない。すなわち、スクロースの供給において、スクロースは膜を貫通しない。
従って、スクロースが、膜を含む上記装置に供給される場合、スクロースの供給は装置の膜を通さない。すなわち、スクロースは装置の膜を貫通しない。フルクトースを除去するための膜濾過に使用される上述の膜は、フルクトース及び水性液体の一部を貫通させるが、スクロースを貫通させない膜である。
【0039】
又、触媒有効量のアルテルナンスクラーゼ酵素及びアクセプター分子は、スクロースが添加される前に反応器の内部に存在していることが好ましい。
又、スクロースは、固体状態で添加することも好ましいが、水性液体中の溶液、懸濁液として添加することがより好ましい。
すなわち、供給されたスクロースは、アルテルナンスクラーゼによって直接接触して、変換することができる。
【0040】
又、本発明のアルテルナンオリゴ糖の製造方法において、生物変換(以下、生物的変換と称する場合がある。)、すなわち酵素によるアルテルナンオリゴ糖の生成は、連続的又は半連続的なフルクトースの除去の下で行われることが好ましい。
従って、かかるフルクトースの除去は、アルテルナンオリゴ糖の生成が始まった後、副産物としてフルクトースが生成された時点で行われることが好ましい。
【0041】
又、本発明の一実施形態において、フルクトースの除去は、スクロースが反応器に供給されると同時に行われることが好ましい。
ここで、同時とは、スクロースを添加する1つ以上の期間とフルクトースを除去する1つ以上の期間とが少なくとも一部で重なることを意味する。
この点、フルクトースは、スクロースが添加される少なくとも全期間において除去されることが好ましい。
又、フルクトースの除去は、スクロースの添加を停止した後でも、スクロースの添加を終了した後でも、継続することが好ましい。
【0042】
又、フルクトースの少なくとも一部を除去することは、製造プロセスにおいて、副産物として生成されたフルクトースの全量に関連するものである。
より具体的には、フルクトースの少なくとも一部を除去することは、生成される全フルクトースの好ましくは70mol%以上、より好ましくは80mol%以上、更に好ましくは90mol%以上であることを意味する。
又、除去の上限は100mol%であり、生成されたフルクトースの全量(100mol%)又は実質的に全量が除去されることが最も好ましい。
ここで、実質的に全量が除去されるとは、生成される全フルクトースが95mol%以上除去されることを意味する。
【0043】
すなわち、このようなフルクトースの除去は、フルクトースの消滅や低減(depletion)を意味している場合もある。
【0044】
又、フルクトースの除去は、本発明の一実施形態において、膜を用いてなるダイアフィルトレーション(膜透析濾過とも称する場合がある、diafiltration)によって濾過することが好ましい。
すなわち、かかる膜透析濾過は、膜を用いたダイアフィルトレーションであるか、又はダイアフィルトレーションの一部として実行されることが好ましい。
【0045】
又、本発明の一実施形態において、フルクトースの少なくとも一部を除去することは、反応器の内容物を、膜を含む装置を通して連続的又は半連続的に循環させ、反応器の内容物を膜に接触させることを含むことが好ましい。
そして、フルクトースの少なくとも一部と水性液体の一部は、透過液として膜を通過し、保持液(retentate)である残余分は、反応器に戻されることが好ましい。
【0046】
又、循環に関して「半連続的に」という用語は、循環が1回以上、好ましくは2回以上中断されることを意味する。
すなわち、「半連続的に」とは、循環する少なくとも2つの時間期間、好ましくは、少なくとも3つの時間期間、又は少なくとも4つの時間期間があり、循環する各時間期間は、循環する次の時間期間から循環の中断の時間期間によって、区切られていることを意味する。
又、循環の時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、非一定の時間期間であることも好ましい。
又、循環中断の時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、非一定の時間期間であることも好ましい。
更に又、循環の時間期間と循環中断の時間期間は、同じ長さの時間期間であることが好ましく、異なる長さの時間期間であることも好ましい。
【0047】
又、反応器の内部における温度は、本発明の特定の実施形態において、30~45℃、又は30~40℃の範囲内であることが好ましい。
【0048】
又、膜を含む装置は、膜セル(membrane cell)、膜を含む膜モジュール、又は、膜を含む濾過セル(filtration cell)等の少なくとも一つであることが好ましい。
【0049】
又、膜を含む装置は、反応器との間で、流体が流れるように連通して設けられている。従って、反応器の内容物は、膜を含む装置に導かれ、その装置から反応器へ戻されることになる。
しかしながら、フルクトースの一部と水性液体の一部は、透過液として膜を通過し、反応器に戻されることはない。
【0050】
又、膜を含む装置は、チューブ、パイプ、又はパイプラインのような液体の輸送に適した接続部によって反応器と接続されていることが好ましい。
そして、第1の接続部は、反応器の出口と膜を含む装置の入口との間に存在していることが好ましい。
更に、第2の接続部は、膜を含む装置の出口と反応器の入口との間に存在していることが好ましい。
又、反応器の内容物を循環させるためのポンプが存在していることが好ましい。
反応器の内容物を循環させることは、反応器自体及び膜装置を介して行われる。両者は、「反応器システム」とも呼ばれ、反応器と、膜を含む装置と、を含むシステムである。
反応器の内容物の循環流により、特に乱流において、液相での成分の混合を引き起こすことが好ましい。
【0051】
又、本発明の一実施形態において、反応器からフルクトースの少なくとも一部を連続的又は半連続的に除去することは、ナノ濾過によって行われる。
かかるナノ濾過で用いられる膜は、ナノ濾過膜であることが好ましい。
【0052】
又、膜を含む装置を通る連続的又は半連続的な循環によって、フルクトース及び水性液体が連続的又は半連続的に除去される。
【0053】
又、本発明の一実施形態において、フルクトースを除去するための膜濾過に適用される圧力は、5~30bar(SI単位:0.5~3MPa)の範囲内であることが好ましい。そして、膜濾過する際の温度は、30~40℃の範囲内であることが好ましい。
【0054】
本発明の更なる実施形態において、本製造方法は、反応器、又は、反応器と、膜を含む装置と、を含む反応器システムに、更なる水性液体を連続的又は半連続的に供給することを含むことが好ましい。
この処置により、透過液の一部として反応器又は反応器システムから出る水性液体を交換することができる。
ここで「更なる水性液体」とは、プロセスの過程で反応器に添加される水性液体を意味する。
すなわち、更なる水性液体とは、別添付の特許請求の範囲における請求項1に記載の水性液体に加えて添加される別の水性液体を意味する。
更なる水性液体の供給に関して「半連続的に」という用語は、更なる水性液体の供給が1回以上、好ましくは2回以上、中断されることを意味する。
すなわち、「半連続的に」とは、少なくとも2つの供給時間期間、好ましくは、少なくとも3つの供給時間期間、又は少なくとも4つの供給時間期間があり、各供給の時間期間は、給供中断の時間期間によって次の供給の時間期間から分離されていることを意味する。
更なる水性液体を供給する時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、非一定の時間期間であることも好ましい。
又、更なる水性液体の供給を中断する時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、非一定の時間期間であることも好ましい。
更に又、更なる水性液体を供給する時間期間と、更なる水性液体の供給を中断する時間期間とは、同じ長さの時間期間であることが好ましく、異なる長さの時間期間であることも好ましい。
【0055】
又、本発明の一実施形態において、本製造方法は、副産物として生成されるアルテルナン多糖類の少なくとも一部、及びアルテルナンスクラーゼ酵素の少なくとも一部を、除去するステップを更に含み、この除去は、フルクトースを除去するための膜濾過とは異なる更なる膜濾過によって行われることが好ましい。
プロセスの副産物でもあるフルクトースに加えて、アルテルナン多糖類は、フルクトースとは異なる更なる副産物として生成される。
このステップは、副産物を分離するために任意で実行される。
膜濾過の場合、アルテルナンオリゴ糖は透過液で得られる。一方、アルテルナン多糖類とアルテルナンスクラーゼは保持液に含まれる。
又、本発明の一実施形態において、この膜濾過は限外濾過(UF)の構成である。そして、限外濾過に使用される膜は、限外濾過膜(UF膜)であることが好ましい。
又、本発明の一実施形態において、このような膜濾過、特に限外濾過に適用される圧力は、2~15bar(SI単位:0.2~1.5MPa)の範囲内であることが好ましい。そして、この更なる膜濾過における温度(処理温度)は、30~60℃の範囲内であることが好ましい。
【0056】
又、アルテルナン多糖類の少なくとも一部及びアルテルナンスクラーゼ酵素の少なくとも一部を除去するための更なる膜濾過は、フルクトースを除去するための膜を含む濾過装置とは異なる膜を含む更なる、別の濾過装置で行われることも好ましい。
【0057】
又、本発明の一実施形態において、本製造方法は、アルテルナン多糖類の少なくとも一部を除去した後、及びアルテルナンスクラーゼ酵素の少なくとも一部を除去した後に得られる生成物を濃縮することを更に含み、かかる生成物は、アルテルナンオリゴ糖を含む。
特に、この製造方法は、前述の更なる膜濾過で得られる透過液においてアルテルナンオリゴ糖を濃縮することを更に含んでいることが好ましい。
【0058】
又、フルクトースを除去するための膜濾過、又は、アルテルナン多糖類の少なくとも一部及びアルテルナンスクラーゼ酵素の少なくとも一部を除去するための任意選択の更なる膜濾過において、任意の公知又は通常の材料の膜を使用することが好ましい。
膜材料の構成材料は、非限定的ではあるが、例えば、ポリアミド、ポリサルフォン、又はポリ(ビニリデン)フルオライド等の少なくとも一つが挙げられる。
【0059】
又、本発明の一実施形態において、本製造方法は、得られた生成物を乾燥させる処理を更に含むことが好ましい。
前述したように、濃縮とは、生成物がまだ液相であることを意図している。一方、乾燥とは、固形の生成物を得ることを意図している。
【0060】
又、副産物として生成されるアルテルナン多糖類の少なくとも一部と、アルテルナンスクラーゼ酵素の少なくとも一部を除去した後に得られる生成物を乾燥させることが好ましい。
なお、前述の濃縮と乾燥は、連続して行うことも好ましい。
【0061】
又、乾燥生成物は、乾燥ベースで少なくとも65%(w/w)、又は少なくとも70%(w/w)、又は少なくとも75%(w/w)又は少なくとも80%(w/w)のアルテルナンオリゴ糖を含むことが好ましく、少なくとも85%(w/w)又は少なくとも95%(w/w)のアルテルナンオリゴ糖を含むことが更に好ましい。
又、各下限値と組み合わせることができる上限値は、99.0%又は99.9%(w/w)であることが好ましい。
【0062】
又、乾燥生成物は、乾燥ベースでフルクトース等価物を、所望の用途等に応じて、0.1~15%(w/w)、又は0.1~10%(w/w)、又は0.1~9%(w/w)、又は0.1~8%(w/w)、又は0.1~7%(w/w)、又は0.1~6%(w/w)、又は0.1~5%(w/w)、又は0.1~3%(w/w)、又は0.1~2%(w/w)、又は0.1~1%(w/w)、又は0.1~0.5%(w/w)の範囲で含むことが好ましい。
この点、本発明のいくつかの実施形態において、乾燥生成物は、乾燥ベースでフルクトース等価物を、10%(w/w)未満含んでいる。
かかる乾燥生成物(組成物)は、乾燥ベースでフルクトース等価物を、9%未満(w/w)、8%未満(w/w)、7%未満(w/w)、6%未満(w/w)、5%未満(w/w)3%未満(w/w)、2%未満(w/w)、1%未満(w/w)、又は0.5%未満(w/w)含むことが好ましい。
【0063】
又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、ロイクロース、フルクトース、及び/又は、スクロースである。
又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、ロイクロースである。
又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、フルクトースである。
又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、スクロースである。
又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、ロイクロース及びフルクトースである。
又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、ロイクロース及びスクロースである。
又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、フルクトース及びスクロースである。
更に又、本発明のいくつかの実施形態において、前述のフルクトース等価物は、ロイクロース、フルクトース、及びスクロースである。
【0064】
又、副産物であるフルクトース等価物は、本発明の製造方法において除去することができる。
この点、フルクトースに関しては既に説明した。
又、本発明の一実施形態において、本製造方法は、副産物として生成されたロイクロースの少なくとも一部を、膜濾過によって反応器から連続的又は半連続的に除去することを含んでいる。
かかる膜濾過は、フルクトースの除去に使用されるものと同じであることが好ましい。そのため、フルクトースとロイクロースを同じ膜濾過のステップで除去することができる。
【0065】
又、本発明の製造方法における抽出物に属するフルクトース等価物は、本発明の製造方法において除去することができる。
本発明一実施形態において、本製造方法は、膜濾過によって、未反応の抽出物として、スクロースの少なくとも一部を反応器から連続的又は半連続的に除去することを含んでいる。
かかる膜濾過は、フルクトースの除去のために使用されるものと同じであることが好ましい。そのため、フルクトースとスクロースを同じ膜濾過のステップで除去することができる。
【0066】
本発明の製造方法の1つの実施形態において、アルテルナンオリゴ糖の重量平均重合度(DPw)又は数平均重合度(DPn)は、反応器に供給されるスクロースの量によって調節されることが好ましい。
【0067】
又、本発明の更なる実施形態において、スクロースの供給は、アルテルナンオリゴ糖の所望の重量平均重合度(DPw)又は数平均重合度(DPn)に達したときに、達成途中に、又は、達した後に、停止されることが好ましい。
【0068】
又、スクロースの添加を停止した後、フルクトースの除去は、所望のフルクトース濃度に達するまで、又は、達した後まで、継続することが好ましい。
【0069】
又、スクロースの添加量によって、生成される反応生成物における分子鎖の鎖長を調整し、平均重量分子量を制御することができる。
すなわち、重合度の程度や、平均重量分子量は、スクロースとアクセプター分子の濃度や相対比率によって変化することが好ましい。
又、反応生成物は、一般的に、異なる重合度を有するアルテルナンオリゴ糖の混合物から構成されている。
スクロース:アクセプター比率が比較的高い場合には、より多くのグルコシル単位がグルカンに転移され、より重合度の高い生成物が得られやすくなる。すなわち、生成物中の高DPオリゴ糖の相対量が増加することになる。
一方、スクロース:アクセプター比率が低い場合には、アクセプターへの単一のグルコシル単位の転移による反応生成物が支配的となる。
【0070】
従って、スクロース:アクセプター比率(以下、スクロース対アクセプター比率と称する場合がある。)を変えることによって、所望の重合度や、平均重量分子量のオリゴ糖の生産量(生産効率)を最適化することが好ましい。
【0071】
又、スクロース:アクセプター分子の比率とは、本発明の製造方法で使用されるアクセプター分子の総量に対する、当該製造方法で添加されるスクロースの総量を意味する。この比率は質量比率又はモル比率で示されることが好ましい。
【0072】
又、スクロースが一度に供給されるのではなく、連続的又は半連続的に供給され、供給されたスクロースが消費されるため、反応器内の実際の比率は前述の比率より低くなる。
【0073】
又、スクロース:アクセプター分子の比率は、質量比率(例えば、kgスクロース:kgアクセプター分子)で、10:1~30:1の範囲内であることが好ましく、15:1~23:1の範囲内であることがより好ましい。
かかるアクセプター分子は、マルトースであることが好ましいが、この範囲で他のアクセプターも適用することも好ましい。
【0074】
又、スクロース:アクセプター分子の比率は、モル比率(例えば、Molスクロース分子:Molアクセプター分子)で、10:1~30:1の範囲内であることが好ましく、15:1~23:1の範囲内であることがより好ましい。
かかるアクセプター分子は、マルトースであることが好ましいが、この範囲で他のアクセプターも適用することも好ましい。
【0075】
又、スクロースの供給速度又は供給方式は、例えば連続的又は半連続的に、反応器内のフルクトースの濃度が、本発明の製造プロセス中に増加しないように、又はフルクトースが蓄積されないように選択することが好ましい。
【0076】
又、スクロースの供給速度は、反応器内のスクロースの濃度が、本発明の製造プロセス中に増加しないように、又はスクロースが蓄積されないように選択されることが好ましい。
かかるスクロースの供給速度は、供給されたスクロースが反応において直接消費されるように選択されることが好ましい。
【0077】
又、スクロースの供給速度は、50~1500g/hr、又は50~1000g/hr、又は50~800g/hr、又は50~500g/hr、又は50~250g/hr、又は50~200g/hr、又はそれぞれの供給速度を、mol/hr(スクロースのモル質量342.30g/mol)で表したときの速度であることが好ましい。
スクロースが溶液又は懸濁液に添加されている場合、この速度は、スクロースの重量のみを意味し、溶液又は懸濁液全体の重量を意味するものではない。
【0078】
又、本発明の製造方法の一実施形態において、更なるアルテルナンスクラーゼ酵素が、連続的又は半連続的に、反応器に供給されることが好ましい。
従って、反応器の内部に以前から存在していたアルテルナンスクラーゼ酵素(別添付の特許請求の範囲における請求項1に記載のアルテルナンスクラーゼ酵素)に、このアルテルナンスクラーゼ酵素とは別の更なるアルテルナンスクラーゼ酵素が添加される。
この方法により、より高い総単位のアルテルナンスクラーゼ酵素活性を達成することができ、反応時間を短縮することができる。
又、スクロース量も増加させることにより、より高い酵素の総単位に適合させることも好ましい。
【0079】
又、アルテルナンスクラーゼ酵素の供給に関して、「半連続的に」という用語は、酵素の供給が1回以上、好ましくは2回以上中断されることを意味する。
すなわち、「半連続的に」という用語は、少なくとも2つの供給の時間期間、好ましくは、少なくとも3つの供給の時間期間、又は少なくとも4つの供給の時間期間があり、各供給の時間期間は、中断の時間期間によって次の供給の時間期間から区切られていることを意味する。
そして、酵素供給の時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、非一定の時間期間であることも好ましい。すなわち、時間期間は長さが互いに異なっていることが好ましい。
一方、供給の中断の時間期間は、一定の時間期間であることが好ましく、非一定の時間期間であることも好ましい。
そして、酵素を供給する時間期間と供給を中断する時間期間は、同じ長さの時間期間であることが好ましく、異なる長さの時間期間であることも好ましい。
【0080】
又、アルテルナンスクラーゼ酵素:スクロース(供給されたスクロースの総量)の比率は、1000~10000単位(酵素活性):1000gのスクロース、又は1000~7000単位(酵素活性):1000gのスクロース、又は1000~5000ユニット(酵素活性):スクロース1000g、又は1000~2500単位(酵素活性):スクロース1000gであることが好ましく、1200~2300単位(酵素活性):スクロース1000gであることがより好ましく、1500~2000単位(酵素活性):スクロース1000gであることが更に好ましい。
これらの比率は、アルテルナンスクラーゼの酵素活性の総単位に関連するものである。
かかる単位(酵素活性)は、本発明の製造方法で使用されるアルテルナンスクラーゼ酵素の総単位を意味する。
例えば、反応器の内部に以前から存在していたアルテルナンスクラーゼ酵素とは別の更なるアルテルナンスクラーゼ酵素を反応器に供給する場合、(i)最初に存在するアルテルナンスクラーゼ酵素と(ii)更に反応器に供給される全てのアルテルナンスクラーゼ酵素の合計が、総単位を意味する。
【0081】
上記のパラメータを用いると、オリゴ糖の好ましい重量平均重合度(DPw)又は数平均重合度(DPn)に到達することが特に可能であり、その一部はここで明細書において言及されている。
【0082】
より具体的には、添付の特許請求の範囲における請求項1の製造方法に関連する反応時間は、選択したスクロース:アクセプターの比率、選択したスクロースの供給速度、選択した酵素活性、及び/又は選択したスクロースの総量に依存することが好ましい。
典型的な反応時間は、10~150時間、又は10~30時間、又は10~24時間、又は10~20時間の範囲内である。
副産物として生成されるアルテルナン多糖類、及びアルテルナンスクラーゼ酵素を、更なる膜濾過によって除去する、又は更なる膜濾過で得られる保持液を濃縮する、といった本明細書の別の箇所で言及される更なるプロセスステップは、ここでは含まれない。
【0083】
又、特許請求の範囲(請求項1等)に記載されたアルテルナンオリゴ糖の製造方法において、反応温度を30~60℃の範囲内とすることが好ましい。
一方、かかる反応温度は、特定の温度範囲又は異なる温度であってもよく、異なるプロセスフェーズ又はステップで適用されることが好ましい。
【0084】
又、本発明の一実施形態において、スクロースは連続的に供給され、スクロースの供給速度が、時間当たりのスクロースのモル量で、フルクトースの連続除去速度に等しいか、実質的に等しく、又はスクロースの供給速度とフルクトースの除去速度との比率が、1:2~1:1の範囲内であることが好ましい。
又、アルテルナンオリゴ糖の生成に消費されるスクロース1モル量あたり、同モル量のフルクトースが生成され、当該モル量のフルクトースを連続的に除去することが好ましい。
【0085】
以下、本発明を実施例によって例示するが、これらの実施例は、前述に、及び、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の一般的な思想を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0086】
図1図1(a)及び図1(b)は、それぞれ、先行技術と本発明に準拠した製造方法(製造プロセス)の構成を示すための図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、それぞれ、先行技術と本発明の製造方法(製造プロセス)におけるプロセスデザインを示するための図である。
図3図3は、スクロースの供給量を一定にした場合の、プロセス時間に対する、重量平均分子量(Mw)の増加を示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0087】
[測定方法]
(HPAEC-PADを用いたDPの測定)
DPの値は、グルコースベース糖類を還元及び加水分解した後、HPAEC-PADを用いて測定された。
より具体的には、6g/mLの消化性炭水化物組成物を含む2ミリリットルの溶液を、0.2mLのNaBH4溶液(40mg/mL)を用いて、0.5Mのアンモニア中で、40℃、30分間の条件で処理した。
次いで、還元された試料を、121℃で1時間加熱した0.5mLの2Mのトリフルオロ酢酸を用いて加水分解し、モノマーを遊離させた。
遊離されたモノマーは、CarboPac(商標) MA1を搭載したThermo Scientific(商標) Dionex(商標) ICS-6000イオンクロマトグラフシステムに対して、試料(サンプル)溶液を注入し、溶離液(水と1000mMのNaOH)を0.4mL/minで供給して定量化された。DP値は、下記式(1)で算出される。
【0088】
【数1】
【0089】
(GPC-RIによるDPの測定)
DP値はGPC-RIで代替測定した。試料は水で希釈し、カラムとしてTSK GEL G2500 PWXL(東ソー株式会社製)を2本直列に連結した水中ゲル浸透クロマトグラフィー(流速:0.5mL/min)にかけた。
オリゴ糖は透過中に相対分子量により分離され、屈折率検出(refractometric detection)を用いて定量される。分子量の定量化は、342~5000Daの範囲の標準物質(PSS-Polymer Standards)を用いた外部標準法に基づいて行われた。
又、キャリブレーションと計算のために、Chromeleon Extension Pack V2.0(Dionex社製)を、Dionex社の使用説明書に従って使用した。
【実施例
【0090】
[実施例1]
先行技術の製造方法(製造プロセス)は、例えば前述の特許文献2~3から知られており、図1(a)に示すように以下の4つのステップP1~P4を含む。
【0091】
すなわち、ステップP1では、スクロースとマルトースの生物変換2が、バッチ式反応器1において、温度T=37℃で、約20時間の間、行われる。
又、スクロース:マルトースの比率は、7:1(w/w又はmol/mol)に選択される。
ステップP1は、図2(a)に示す生物変換2のためのバッチ式反応器1において行われる。
【0092】
次いで、ステップP2は、アルテルナンポリマー(アルテルナン多糖類)及びアルテルナンスクラーゼ酵素(AlSu)を除去するための限外濾過3のステップである。
このステップは、図2(a)に示す限外濾過装置3´で行われる。
【0093】
次いで、ステップP3では、ナノ濾過装置5によってフルクトースが除去される。
このステップは、図2(a)に示すナノ濾過装置5´で行われる。ここでは、水性液体4´としての水が加えられ、水性液体4´´としての水とフルクトース6との混合物が除去される。
【0094】
最終ステップとしてのステップP4では、ステップP3からの生成物が蒸発脱水7で濃縮される。これは図2(a)の蒸発脱水装置7´で行われ、マルトースアルテルナンオリゴ糖(MAOS)8が得られる。
【0095】
一方、本発明の製造方法(製造プロセス)は、特定の実施形態において、図1(b)に示す3つのステップS1~S3を含む。
【0096】
より具体的には、図1(a)の先行技術の製造方法(製造プロセス)と比較して、ステップS1における生物変換2(図示せず)は、スクロース9の連続的な供給物10とフルクトース6の連続除去からなる。
従って、半連続的な供給と除去が可能である。スクロース9(総添加量)とマルトース12の質量比は、19:1(1kgのマルトースに対して19kgのスクロース)、期間は約72時間である。そして、ステップS1で既にフルクトース6を除去しているので、先行技術の製造方法におけるステップP3は省略することができる。
更に、フルクトース6を除去することにより、マルトース12に対してより高い比率のスクロース9を使用することが可能となり、マルトースアルテルナンオリゴ糖8の重合度をより高めることができる。
【0097】
生物変換であるステップS1は、図2(b)の反応器11で行われ、マルトース12とアルテルナンスクラーゼ酵素(AlSu)13は、水性液体4としての水の内部に存在する。
上述のように、生物変換が、スクロース9の連続的な供給物10、フルクトース6の連続除去、期間約72h(可変)、温度T=37℃、スクロースとマルトースとの比は、19:1(w/w又はmol/mol)で行われる。
そして、スクロース9を、水に溶解させたスクロース9の連続的な供給物10として、反応器11に添加し、反応器11の内容物を攪拌する。
次いで、反応器11での生物変換において、マルトースアルテルナンオリゴ糖8(MAOS)とも呼ばれる、アクセプター分子であるマルトースを含むアルテルナンオリゴ糖が主生成物として生成される。そして、それとともに、アルテルナンポリマー14、フルクトース6及びロイクロース15が副産物として生成される。
次いで、反応器11からの内容物は、膜セル(ダイアフィルトレーションセル)16を通って連続的に循環される。そして、ナノ濾過である膜濾過17において、水性液体4´´としての水、フルクトース6、及びロイクロース15が、膜濾過17において除去される。
この例では、膜濾過17は、ナノ濾過であり、定容積ダイアフィルトレーションとして行われる。
ロイクロース15の含有量は、先行技術と比較して、約30%から10%未満へと低減される。除去された水性液体4´´としての水は、水性液体4´としての水の供給流に置き換えられる。
【0098】
又、反応器11と膜セル16は、生物変換とナノ濾過装置を組み合わせた装置を構成しており、反応器システムとも呼ばれる。
【0099】
又、本実施形態の製造方法におけるステップS2は、先行技術のステップP2に相当する。
ここでは、副産物としてのアルテルナン多糖類(アルテルナンポリマー)14、及びアルテルナンスクラーゼ酵素(AlSu)13が、限外濾過装置3´における限外濾過3によって除去される。
従って、このステップS2は、所望されるより多くのアルテルナンポリマー14が生成された場合に有益であり、又は残存するアルテルナン種の所望の重量平均重合度(DPw)を操作するために有益である。
【0100】
又、本実施形態の製造方法におけるステップS3は、先行技術のステップP4に相当する。
ここでは、生成物は、蒸発脱水装置7´における蒸発脱水7によって濃縮される。
【0101】
製造時に使用した反応液の組成を表1に示す。
2.1Lの溶液(水)は、反応器システム内部の水(デッドボリューム)と合わせて約5.6Lとなる。
このプロセスは、膜を通過するマルトースの潜在的な損失を最小限に抑えるために、最初の1時間は、枯渇することなく実行される。
その後、ナノ濾過膜(DOW社製、製品名「Filmtec NF270-2540」)を介してフルクトースを常に枯渇させる。
鎖延長の完了後、ナノ濾過モジュールを限外濾過モジュール(Microdyn Nadir社製、製品名「TRISEP 2540-UE50-QXF」)に交換した。この交換により、マルトースアルテルナンオリゴ糖(MAOS)画分が、より長い老化鎖及びアルテルナンスクラーゼ酵素から分離された。
このプロセスで使用した膜と使用したプロセスパラメータを表2にまとめる。濾液は最終的に乾物含量が72%を超えるまで濃縮された。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
又、図3は、プロセス時間の増加、すなわち、プロセスの経過に従って、重量平均分子量(Mw)の増加に伴う重量平均重合度(DPw)の増加、すなわち、鎖長の増加を示している。
かかる重量平均重合度(DPw)につき、GPC-RI測定により記録された、図3の重量平均分子量(Mw)から重量平均重合度(DPw)を計算するための関係は、下記式(2)の通りである。
【0105】
【数2】
【0106】
従って、プロセスの終盤では、約15.4の重量平均重合度(DPw)に達していることが理解される(2500/162)。
【0107】
よって、重量平均重合度(DPw)が約15である平均鎖長になるように、例えば、マルトース1kgに対してスクロース19kg(合計)を使用することが有効であると言える。
【0108】
[比較例]
図1(a)に示すようなプロセスに従ってアルテルナンオリゴ糖を製造した。
より具体的には、kgスクロースと、kgマルトースとを、21:1の比率で使用し、9.9の重量平均重合度(DPw)を得た。
重量平均重合度(DPw)の測定には、GPC-RIを用いたが、上述の測定方法の項で述べたように、測定方法の手順(プロトコル)を、必ずしも厳格にトレースしているわけではない。
それにもかかわらず、図3の結果と比較して、本発明によれば、より高い重量平均重合度(DPw)を有するアルテルナンが得られることが示されている。
【0109】
本発明の製造方法で得られた2つの試料について、HPAEC-PAD法で分析した重量平均重合度(DPw)の値を以下の表3にまとめた。
【0110】
【表3】
【0111】
試料DCC-2及びDCC-3は、本発明の製造方法によって製造されたものである。
【0112】
又、表4に示すように、グルコースベースのオリゴ糖のグリコシド結合プロファイルは、部分的にメチル化したアルジトールアセテートを用いてGC-MSにより測定した。
簡単に説明すると、試料を無水DMSOに溶解し、n-ブチルリチウム(Sigma 230707)を添加して脱プロトン化し、ヨウ化メチル(Sigma 289566)でメチル化した。
次いで、メチル化した試料を2N TFAで加水分解した(121oC で60分間)。
次いで、加水分解した試料を窒素エアドラフト下で蒸発させ、1M水酸化アンモニウムに再溶解し、重水素化ほう素ナトリウム(20mg/ml)を含むDMSO溶液でアルデヒド基を還元した。
次いで、氷酢酸を滴下して反応を停止させ、1-メチルイミダゾールと無水酢酸を加えてアセチル化した。
次いで、アセトン中の部分的にメチル化されたアルジトールアセテートは、Supelco 24111-U SP-2380 キャピラリーカラム(インジェクター容量:0.5μl、インジェクター温度:250℃、検出器温度:250℃、キャリアガス:ヘリウム30mL/min、スプリット比:40対1、温度プログラム:100oC、3分、4oC/minから270oC、20分)を用いたGC-MS(7890A-5975C MSD、Agilent Technologies、Inc.、Santa Clara、CA、USA)で定量測定された。
又、電子衝撃スペクトルは、50~550Daの質量範囲にわたって、69.9eVで取得された。
【0113】
【表4】
【0114】
1,6-グリコシド結合のより高い値は、観察される1,5,6-トリ-O-アセチル-1-デウテリオ-2,3,4-トリ-O-メチル-D-グルシトールの量に寄与する消化性炭水化物組成物中のロイクロース含有量によって説明される。
更に、ロイクロースは、単量体グルコースと同様に、消化性炭水化物組成物中の末端Glc量に寄与する。
【0115】
[実施例2]
実施例2において、製造条件のパラメータを以下の表5に示すように変化させ、アルテルナンスクラーゼを4等分して反応器に与え、4等分した初回の供給分は、スクロースが反応器に供給される前に存在するようにした。
【0116】
【表5】
【0117】
表5に示すように、本発明の製造方法におけるプロセス反応時間は、スクロース量の増加、スクロース供給速度の増加、酵素活性の増加及び温度の上昇によって短縮できることが理解される。
なお、かかるプロセス時間には、更なる膜濾過によってアルテルナン多糖類及びアルテルナンスクラーゼ酵素を除去する処理時間、或いは更なる膜濾過で得られる保持液を濃縮するなどの更なる処理時間は、それぞれ含まれていない。
【符号の説明】
【0118】
P1:バッチでの生物変換
P2:限外濾過
P3:ナノ濾過
P4:濃縮
S1:生物変換
S2:限外濾過
S3:濃縮
1:バッチ式反応器
2:生物変換
3:膜濾過(実施例では限外濾過)
3´:膜濾過装置(実施例では限外濾過装置)
4、4´、4´´:水性液体(実施例では水)
5:ナノ濾過
5´:ナノ濾過装置
6:フルクトース
7:蒸発脱水
7´:蒸発装置
8:アルテルナンオリゴ糖(実施例ではマルトースアルテルナンオリゴ糖(MAOS))
9:スクロース
10:スクロースの連続的な供給物
11:反応器
12:アクセプター分子(実施例ではマルトース)
13:アルテルナンスクラーゼ(AlSu)
14:アルテルナンポリマー(アルテルナン多糖類)
15:ロイクロース
16:膜を含む装置(実施例では膜セル)
17:膜濾過(実施例では生物変換とナノ濾過(定容積ダイアフィルトレーション)の組み合わせ)

図1
図2
図3
【国際調査報告】