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特表2023-510798個別化靭皮繊維を含む柔軟なソフトワイプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】個別化靭皮繊維を含む柔軟なソフトワイプ
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20230308BHJP
   D04H 1/4382 20120101ALI20230308BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20230308BHJP
   A47L 13/16 20060101ALI20230308BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20230308BHJP
   A41D 13/11 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/4382
D04H1/732
A47L13/16 A
A61F13/00 301A
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542409
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 EP2021050310
(87)【国際公開番号】W WO2021140224
(87)【国際公開日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】2000208
(32)【優先日】2020-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515237119
【氏名又は名称】エスウェーエム・ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】グートゥ,アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ゴンベール,ローラン
【テーマコード(参考)】
3B074
4L047
【Fターム(参考)】
3B074AA01
3B074AA02
3B074AA04
3B074AA08
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA28
4L047AB02
4L047BA01
4L047BA04
4L047CC16
(57)【要約】
本発明は、特定のセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの含有量を含む個別化亜麻繊維を含む、不織基材に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織基材であって、
前記基材の繊維の総重量に対して木質繊維40重量%から95重量%、および
前記基材の繊維の総重量に対して個別化靭皮繊維5重量%から60重量%
を含み、前記個別化靭皮繊維が、前記個別化靭皮繊維の乾燥重量に対して、セルロース含有量80%以上、ヘミセルロース含有量10%以下、およびリグニン含有量9.5%以下を有することを特徴とする、不織基材。
【請求項2】
前記靭皮繊維が、麻繊維、インド麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、クズ繊維、コインバイン繊維、亜麻繊維、オクラ繊維、イラクサ繊維、パピルス繊維、ラミー繊維、サイザル麻繊維、エスパルト繊維、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の不織基材。
【請求項3】
リヨセル繊維、ビスコース繊維、酢酸セルロース繊維、生分解性ポリマー繊維、およびそれらの混合物から選択される追加の繊維もまた含む、請求項1または2に記載の不織基材。
【請求項4】
追加の繊維の量が、前記基材の繊維の総重量に対して15重量%以下である、請求項3に記載の不織基材。
【請求項5】
前記繊維が絡み合っている、請求項1から4のいずれか一項に記載の不織基材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の基材を含む、ワイプ。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の不織基材を製造する方法であって、以下のステップ:
a)溶媒中加圧下で靭皮繊維を処理して、前記個別化靭皮繊維を得るステップ、
b)前記個別化靭皮繊維と木質繊維とを混合して、繊維混合物を得るステップ、ならびに
c)ウエットレイド法によって、ドライレイド法によって、またはエアレイド法によって前記繊維混合物から不織基材を製造するステップ
を含む、方法。
【請求項8】
前記処理ステップa)が、500kPa(5bar)から1000kPa(10bar)の間の圧力で実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記処理ステップa)の間の前記溶媒の温度が、50℃から250℃の間である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が、水性溶媒である、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、添加剤を含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記添加剤が、酸または塩基である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項5に記載の不織基材を製造する方法であって、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法のステップc)の間に製造された不織基材が、交絡処理のステップd)を経る、方法。
【請求項14】
ワイプを製造する方法であって、請求項7から13のいずれか一項に記載の方法によって製造された基材を切断するステップe)を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の主題は、木質繊維および個別化靭皮繊維を含む不織基材である。
【背景技術】
【0002】
[0002]使い捨てワイプは、例えば、ポリエステル繊維および熱可塑性繊維などの非生分解性合成樹脂繊維から従来構成される。従来の使い捨てワイプは、使用者によってリサイクルされることは稀である。したがって、従来の使い捨てワイプは、ワイプが含有する長い合成樹脂繊維が原因で、環境にかなりの影響を及ぼす。
【0003】
[0003]使い捨てワイプの環境への影響を制限するために、合成または人工繊維を靭皮繊維に置き換えることが提案された。しかし、これらのワイプは粗く、化粧用ワイプの使用者の顔に容易になじむほど充分柔軟でない。したがって、ワイプが使用者に与える感覚は、満足のいくものではない。さらに、これらのワイプは、靭皮繊維が本来硬く、ほとんど柔軟でないので、製造が困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0004]したがって、柔軟で、触り心地が良く、製造が容易なワイプが求められている。
[0005]したがって、製造が容易で、特定のセルロース、リグニン、およびヘミセルロース含有量を特徴とする個別化靭皮繊維によって、この要求に応えることが可能であること発見したことは、本発明者らの功績である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006]
- 基材の繊維の総重量に対して木質繊維40重量%から95重量%、および
- 基材の繊維の総重量に対して個別化靭皮繊維5重量%から60重量%
を含む不織基材であって、個別化靭皮繊維が、個別化靭皮繊維の乾燥重量に対して、セルロース含有量75%以上、ヘミセルロース含有量10%以下、およびリグニン含有量7%以下を有することを特徴とする、不織基材が提案される。
【0006】
[0007]有利なことに、本発明の不織基材は、触り心地が良く、柔軟で、天然の色を有し、機械的特性、特に、個別化靭皮繊維を含まない不織素材と同じ程度の大きさの乾燥および湿潤引張強さを有する。
【0007】
[0008]別の態様によれば、本発明の不織基材を製造する方法であって、以下のステップ:
a)溶媒中加圧下で靭皮繊維を処理して、個別化靭皮繊維を得るステップ、
b)個別化靭皮繊維と木質繊維とを混合して、繊維混合物を得るステップ、ならびに
c)ウエットレイド法によって、ドライレイド法によって、またはエアレイド法によって、特にウエットレイド法によって繊維混合物から不織基材を製造するステップ
を含む、方法が提案される。
【0008】
[0009]有利なことに、本発明の方法の処理ステップa)は、特別なセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの含有量を有する個別化靭皮繊維を簡単に得ることを可能にする。したがって、この抽出ステップa)は、触り心地が良く、化学的に未処理の靭皮繊維を含む不織基材と同じ程度の大きさの機械的特性を有する、柔軟な不織基材を簡単に製造することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0010]本発明に従って加圧下での処理を経た亜麻繊維の顕微鏡画像を示す図である。
図2】[0011]本発明に従って加圧下での処理を経た亜麻繊維の顕微鏡画像を示す図である。
図3】[0012]本発明に従って加圧下での処理を経た亜麻繊維の顕微鏡画像を示す図である。
図4】[0013]本発明に従って加圧下での処理を経た亜麻繊維の顕微鏡画像を示す図である。
図5】[0014]本発明に従って加圧下での処理を経た亜麻繊維の顕微鏡画像を示す図である。
図6】[0015]比較処理を経た亜麻繊維の顕微鏡画像を示す図である。
図7】[0016]対照基材、比較基材、および本発明の基材の乾燥引張強さを示すグラフである。
図8】[0017]対照基材、比較基材、および本発明の基材の破断点歪みを示すグラフである。
図9】[0018]本発明による基材の光学顕微鏡画像を示す図である(光学ズーム×200、円を2つ加筆)。
図10】[0019]比較基材の光学顕微鏡画像を示す図である(光学ズーム×200、円を3つ加筆)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0020]一主題によれば、本発明は、
- 基材の繊維の総重量に対して木質繊維40重量%から95重量%、および
- 基材の繊維の総重量に対して個別化靭皮繊維5重量%から60重量%
を含む不織基材であって、個別化靭皮繊維が、個別化靭皮繊維の乾燥重量に対して、セルロース含有量80%以上、ヘミセルロース含有量10%以下、およびリグニン含有量9.5%以下を有することを特徴とする、不織基材に関する。
【0011】
[0021]本出願において、「不織基材」という用語は、摩擦および/または凝集および/または接着によって一緒に結合された、一方向または無作為の方向の繊維のウェブまたは層からなる、製造されたシートを意味し、例外としては、紙、および織る、編む、タフティング、または縫うことによって得られた製品があり、それら製品は、結束する糸もしくはフィラメントを組み込む、またはニードルパンチされているか否かにかかわらず、湿潤縮充によってフェルト状にされる。
【0012】
[0022]本出願において、「靭皮繊維」という用語は、植物の二次師部に含有される植物繊維を意味する。
[0023]靭皮繊維として、麻繊維、インド麻繊維、ジュート繊維、ケナフ繊維、クズ繊維、コインバイン(coin vine)繊維、亜麻繊維、オクラ繊維、イラクサ繊維、パピルス繊維、ラミー繊維、サイザル麻繊維、エスパルト繊維、またはそれらの混合物、特に、麻繊維、亜麻繊維、またはそれらの混合物、とりわけ、亜麻繊維が挙げられてよい。
【0013】
[0024]典型的に、靭皮繊維は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、ならびその他の化合物、例えば、ペクチン、タンパク質、ロウ、および無機化合物からなる。本出願において、「個別化靭皮繊維」という用語は、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの含有量が、98.5%以上、特に98.75%、とりわけ99%である、基本的な靭皮繊維を意味する。個別化靭皮繊維は、溶媒中加圧下で靭皮繊維を処理する簡単なステップの間に得られる。
【0014】
[0025]いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、溶媒中加圧下での簡単な処理が、ペクチンセメントの溶解を可能にして、特定のセルロース、リグニン、およびヘミセルロースの含有量を有する本発明の個別化靭皮繊維を得るという見解である。
【0015】
[0026]溶媒中加圧下での処理はまた、本発明の個別化靭皮繊維を非常に柔軟にする。有利なことに、個別化靭皮繊維がうまく集められるので、個別化靭皮繊維のこの高い柔軟性は、本発明の不織基材にしなやかさおよび機械的特性を与える。
【0016】
[0027]さらに、これらの個別化靭皮繊維は、非個別化靭皮繊維より良く互いに絡み合い、その結果、本発明の不織基材は、非個別化靭皮繊維を含む基材より、触り心地が良く、特に、柔らかくて粗くない。
【0017】
[0028]本発明の不織基材の個別化靭皮繊維は、特定のセルロース、リグニン、およびヘミセルロースの含有量を特徴とする。特に、個別化靭皮繊維は、個別化靭皮繊維の乾燥重量に対して、
セルロース含有量80%から98%の間、とりわけ89%から97%の間、
ヘミセルロース含有量0.5%から10%の間、とりわけ1%から5.5%の間、および
リグニン含有量1%から9.5%の間、とりわけ1.5%から5%の間
を有することができる。
【0018】
[0029]セルロース、リグニン、およびヘミセルロースの含有量は、靭皮繊維の性質によって決まり得る。
[0030]例えば、個別化亜麻繊維は、個別化亜麻繊維の乾燥重量に対して、
セルロース含有量80%以上、特に85%から98%の間、とりわけ95%から97%の間、
ヘミセルロース含有量9%以下、特に0.75%から7.5%の間、とりわけ1%から3%の間、および
リグニン含有量5%以下、特に1%から4%の間、とりわけ1.5%から2%の間
を有することができる。
【0019】
[0031]個別化麻繊維は、例えば、個別化麻繊維の乾燥重量に対して、
セルロース含有量80%以上、特に80%から98%の間、とりわけ89%から93%の間、
ヘミセルロース含有量10%以下、特に0.5%から10%の間、とりわけ2%から5.5%の間、および
リグニン含有量10%以下、特に2.5%から9%の間、とりわけ3%から5%の間
を有することができる。
【0020】
[0032]SCAN-CM71(2009)法が、個別化靭皮繊維の乾燥重量に対する個別化繊維中のセルロースおよびヘミセルロースの含有量を測定するのに使用されることになる。
【0021】
[0033]本発明において、個別化靭皮繊維の乾燥重量に対する個別化繊維中のリグニン含有量は、不溶性リグニンの含有量と可溶性リグニンの含有量との合計に相当し、不溶性リグニンの含有量は、TAPPI222(2006)法に準拠して測定され、可溶性リグニンの含有量は、UV分光光度法を使用する従来の方法によって測定される。
【0022】
[0034]個別化靭皮繊維は、長さ1mmから150mmの間、特に1.5mmから100mmの間、とりわけ2mmから50mmの間を有することができる。
[0035]一実施形態によれば、個別化靭皮繊維は、長さ4mmから20mmの間、特に6mmから15mmの間、とりわけ8mmから14mmの間、さらに10mmから12mmの間を有することができる。
【0023】
[0036]一代替実施形態によれば、個別化靭皮繊維は、長さ20mmから150mmの間、特に30mmから100mmの間、とりわけ35mmから50mmの間を有することができる。
【0024】
[0037]別の代替実施形態によれば、個別化靭皮繊維は、長さ1mmから10mmの間、特に1.5mmから8mmの間、とりわけ2mmから5mmの間を有することができる。
[0038]靭皮繊維は、上述の範囲に含まれる長さを有するように、加圧下での処理の前に切断することができる。使用され得る従来の切断技術は、靭皮繊維のギロチン切断、または極端に短いおよび極端に長い繊維を除去するためのエアサイクロンもしくは篩システムを用いるもしくは用いない、靭皮繊維の粉砕である。
【0025】
[0039]靭皮繊維、特に、亜麻または麻繊維は、上記の範囲の長さを有するように改質され、綿紡績機を通るように細くされた靭皮繊維である、「綿化」靭皮繊維であってもよい。
【0026】
[0040]本発明の不織基材中の個別化靭皮繊維の量は、基材の繊維の総重量に対して10重量%から50重量%、とりわけ15重量%から30重量%であってよい。
[0041]個別化靭皮繊維は特定の特徴を有し、本発明の主題は、上に記載された個別化靭皮繊維である。本発明の個別化靭皮繊維は、その乾燥重量に対して、セルロース含有量80%以上、ヘミセルロース含有量10%以下、およびリグニン含有量9.5%以下を有する。
【0027】
[0042]典型的に、木質繊維は、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、またはそれらの混合物、特に、針葉樹パルプに由来する。
[0043]本発明の不織基材中の木質繊維の量は、基材の繊維の総重量に対して、特に60重量%から90重量%、とりわけ80重量%から85重量%であってよい。
【0028】
[0044]本発明の不織基材はまた、リヨセル繊維(当業者が要件に応じて選択できる、較正された線密度および長さを有し様々な形の断面(丸形、楕円形、十字形、円形、層状の断面)を有する繊維を得るために、粉砕され、N-メチルモルホリンN-オキシド一水和物中に溶解されたセルロース繊維)、ビスコース繊維(当業者が要件に応じて選択できる、較正された線密度および長さを有し様々な形の断面(丸形、楕円形、十字形、円形、層状の断面)を有する繊維を得るために、二硫化炭素(CS)によるヒドロキシル基の修飾によってセルロースを溶解し、次に硫酸(HSO)の存在下の沈殿によって得られる)、酢酸セルロース繊維、生分解性ポリマー繊維、およびそれらの混合物から選択される追加の繊維、特に、リヨセル繊維を含んでよい。
【0029】
[0045]有利なことに、リヨセル繊維は、本発明による植物紙の柔らかさおよび乾燥強度を高め得る。
[0046]本出願において、「生分解性ポリマー繊維」は、天然のまたは誘発された細菌作用が急速に腐敗させるポリマー繊維を意味し、植物によって使用できる単純な分子に転換することによって、環境から消滅させる。生分解性ポリマー繊維の例は、ポリ乳酸(PLA)繊維、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)繊維、およびそれらの混合物である。ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)として、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)(PHB)が挙げられてよい。
【0030】
[0047]例えば、本発明の不織基材中の追加の繊維の量は、基材の繊維の総重量に対して、15重量%以下、特に1重量%から10重量%、とりわけ4重量%から6重量%であってよい。
【0031】
[0048]典型的に、追加の繊維は、長さ1mm以上、特に4mmから20mm、とりわけ9mmから11mmを有してよい。
[0049]追加の繊維は、繊度0.5dTexから2.5dTex、特に1dTexから2dTex、とりわけ1.25dTexから1.75dTexを有してよい。
【0032】
[0050]追加の繊維はまた、繊度2.5dTexから30dTex、特に2,75dTexから10dTex、とりわけ3dTexから3.5dTexを有してよい。
[0051]1つの特別な実施形態によれば、不織基材は、
基材の繊維の総重量に対して、木質繊維75重量%から85重量%、および
基材の繊維の総重量に対して、個別化靭皮繊維、特に個別化亜麻繊維15重量%から20重量%、
基材の繊維の総重量に対して、追加の繊維、特にリヨセル繊維4重量%から6重量%
を含み、
個別化靭皮繊維は、個別化靭皮繊維の乾燥重量に対して、セルロース含有量88%から99%、ヘミセルロース含有量0.5%から6%、とりわけ1%から4%、およびリグニン含有量1%から4%、とりわけ1.5%から3%を有する。
【0033】
[0052]本発明の不織基材はまた、新規の特性、例えば、化学的、光学的、知覚的、または機械的特性、例えば乾燥強度、湿潤強度、および/または耐折性を発展させるまたは基材に付与するために、紙生産用に通常使用される添加剤を含んでよい。
【0034】
[0053]添加剤として、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、軟化剤、活性成分、ローション組成物、湿潤剤、ラテックス、またはそれらの混合物、特に、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、活性成分、ローション組成物、またはそれらの混合物、とりわけ、湿潤紙力増強剤および活性成分が挙げられてよい。
【0035】
[0054]例えば、添加剤の量は、基材の固体の3重量%未満、特に基材の固体の0.5重量%から2重量%、とりわけ基材の固体の1.3重量%から1.7重量%である。
[0055]湿潤紙力増強剤は、本発明の不織基材が水などの液体に接触させられる場合、本発明の不織基材が分解する可能性を低下させることを可能にする。例えば、湿潤紙力増強剤は、ポリアミド、例えば、エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂、ポリアミド-エピクロロヒドリン樹脂、ポリ(アミノアミド)-エピクロロヒドリン樹脂、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、アルキル-ケテンダイマー、アルキルコハク酸無水物、ポリビニルアミン、酸化ポリサッカライド、およびそれらの混合物から選択されてよい。
【0036】
[0056]乾燥紙力増強剤は、本発明の不織基材が実質的な機械的負荷を受ける場合、本発明の不織基材の強度を高めることを可能にする。乾燥紙力増強剤は、デンプンおよび改質ゴム、セルロースポリマー、合成ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ならびにそれらの混合物から選択されてよい。
【0037】
[0057]軟化剤は、本発明の不織基材の柔らかさを改良することを可能にする。典型的に、軟化剤は、脂肪酸、シロキサン化合物、シリコーン化合物、アミノシリコーン化合物、アロエベラ(Aloe vera)抽出物、スイートアーモンド抽出物、カモミール抽出物、四級アンモニウム化合物、およびそれらの混合物である。
【0038】
[0058]活性成分は、皮脂調節剤、艶消し剤、収斂剤、酸性化剤、治癒剤、角層剥離剤もしくは角質調節剤、閉塞剤、保護剤、皮膚軟化剤、栄養剤、モイスチャライザー、抗老化剤、鎮静剤、鬱血除去剤もしくは静脈収縮剤(venotonics)、UV遮断剤、吸湿剤、ゲル化剤、フリーラジカル消去剤、細胞再生もしくは細胞刺激剤、安定剤、引き締め剤、抗糖化剤、美白剤、またはそれらの混合物から選択されてよい。
【0039】
[0059]殺生物性化合物として、抗微生物剤、抗菌剤、消毒剤、またはそれらの混合物が挙げられてよい。
[0060]鬱血除去剤の例は、メントール抽出物および/またはユーカリ属抽出物である。
【0040】
[0061]ビタミンEは、モイスチャライザーの例である。
[0062]ヒューメクタントは、グリセロールもしくはソルビトールなどの糖アルコール、グリコール、例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、もしくはジプロピレングリコール、もしくはポリエチレングリコール、またはそれらの混合物、特に、グリセロールであってよい。
【0041】
[0063]有利なことに、ヒューメクタントは、本発明の不織基材に、順応性、柔らかさ、風合い、および耐マーキング性(resistance to marking)を与える。さらに、本発明の不織基材には、有利なことに、化粧用ローションを満足のいくように、吸収し、保持し、放出する能力がある。
【0042】
[0064]典型的に、本発明の不織基材は、坪量15g/mから90g/m、特に35g/mから75g/mを有する。
[0065]有利なことに、これらの値の範囲の坪量は、本発明の不織基材に、順応性(使用者の顔の形に合わせる本発明の不織基材の能力)ならびに化粧用途にとって満足のいく吸収能力および放出能力を与える。
【0043】
[0066]本発明の不織基材はまた、水流交路処理などの製紙産業にとって既知の追加の処理を経てもよい。
[0067]したがって、本発明の一実施形態は、上に記載された不織基材であり、不織基材中で、繊維は絡み合っている。
【0044】
[0068]繊維が絡み合っている不織基材の嵩は、繊維が絡み合っていない不織基材の嵩より高い。その結果、有利なことに、繊維が絡み合っている不織基材は、より触り心地が良く、特に、より柔らかく、あまり粗くなく、そしてより高い吸収能力を有する。
【0045】
[0069]本発明の不織基材は、その特性のおかげで、化粧用ワイプ、衛生用ワイプ、美顔マスク、または家庭用ワイプとして使用できる。
[0070]一態様によれば、本発明は、本発明の不織基材を含むワイプ、特に化粧用ワイプ、衛生用ワイプ、または家庭用ワイプに関する。
【0046】
[0071]本発明の不織基材は、以下のステップを含む方法に従って製造される。
a)溶媒中加圧下で靭皮繊維を処理して、個別化靭皮繊維を得るステップ、
b)個別化靭皮繊維と木質繊維とを混合して、繊維混合物を得るステップ、ならびに
c)ウエットレイド法によって、ドライレイド法によって、またはエアレイド法によって、特にウエットレイド法によって、繊維混合物から不織基材を製造するステップ。
【0047】
[0072]本発明の方法の処理ステップa)において、靭皮繊維は、例えば、加圧下で作動する反応器中で溶媒と混合され、次に、この混合物は、加圧下に置かれて、個別化靭皮繊維を得る。次に、個別化靭皮繊維は、例えば、スクリュープレスまたは遠心分離機を通過させることにより溶媒から分離されて、一方で個別化靭皮繊維を、他方で溶媒を得る。
【0048】
[0073]処理ステップa)は、加圧下、すなわち、大気圧を超える圧力、特に、500kPa(5bar)から1000kPa(10bar)の間、とりわけ700kPa(7bar)から850kPa(8.5bar)の間で実行される。有利なことに、圧力は、繊維の個別化を促進することを可能にする。
【0049】
[0074]一実施形態によれば、ステップa)の間の溶媒の温度は、外気温度を超えてよい。溶媒の温度は、例えば、50℃から250℃の間、特に100℃から200℃の間、とりわけ160℃から170℃の間であってよい。
【0050】
[0075]処理ステップa)の持続時間は、靭皮繊維によって決まることになる。典型的に、この持続時間は、5分以上、特に、60分以上、とりわけ120分から300分であってよい。
【0051】
[0076]一実施形態によれば、溶媒は水性溶媒であり、とりわけ、溶媒は水である。
[0077]ステップa)の間、溶媒の重量は、典型的に、靭皮繊維の乾燥重量より大きい。したがって、溶媒の重量と靭皮繊維の乾燥重量との比は、1.1から20の間、特に2から10の間、とりわけ2.5から3.5の間であってよい。
【0052】
[0078]本発明の方法の処理ステップa)は、アルカリ処理または酸処理、特にアルカリ処理であってよい。
[0079]溶媒は、酸または塩基などの添加剤を含んでよい。
【0053】
[0080]酸は、亜硫酸水素ナトリウムまたは亜硫酸水素カルシウムなどの亜硫酸水素塩であってよい。
[0081]塩基は、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムとアントラキノンとの混合物、またはそれらの混合物、特に、水酸化ナトリウム、または亜硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物であってよい。
【0054】
[0082]溶媒中の添加剤の重量濃度は、添加剤によって決まる。例えば、亜硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物の濃度は、亜硫酸ナトリウム1%から20%および炭酸ナトリウム0.25%から10%、特に亜硫酸ナトリウム2%から8%および炭酸ナトリウム0.8%から3%であってよい。溶媒中の水酸化ナトリウムの重量濃度は、例えば、0.5%から20%の間、特に1%から15%の間、とりわけ2%から7%の間、さらに5.5%から6.5%の間であってよい。
【0055】
[0083]第一の特別な変形形態によれば、処理ステップa)は、溶媒温度165℃から170℃の間、圧力800kPa(8bar)から850kPa(8.5bar)の間、110分から120分の時間で実行され、溶媒は、亜硫酸ナトリウムと炭酸ナトリウムとの混合物を含む水であり、溶媒中の亜硫酸ナトリウム濃度は2%から8%の間であり、溶媒中の炭酸ナトリウム濃度は0.8%から3%の間である。
【0056】
[0084]第二の特別な変形形態によれば、処理ステップa)は、溶媒温度160℃から165℃の間、圧力650kPa(6.5bar)から750kPa(7.5bar)の間、170分から190分の時間で実行され、溶媒は、水酸化ナトリウムを含む水であり、水中の水酸化ナトリウム濃度は、1%から10%の間、特に5.5%から6.5%の間である。
【0057】
[0085]靭皮繊維は、本発明の方法の処理ステップa)の前に、浸漬などの前処理ステップを経てよい。
[0086]処理ステップa)の前に、靭皮繊維は、切断ステップa1)を経て、切断された靭皮繊維を得てよく、切断された靭皮繊維の長さは、1mmから150mmの間、特に1.5mmから100mmの間、とりわけ2mmから50mmの間である。
【0058】
[0087]一実施形態によれば、切断された靭皮繊維は、長さ4mmから20mmの間、特に6mmから15mmの間、とりわけ10mmから12mmの間を有してよい。
[0088]一代替実施形態によれば、切断された靭皮繊維は、長さ20mmから150mmの間、特に30mmから100mmの間、とりわけ35mmから50mmの間を有してよい。
【0059】
[0089]一代替実施形態によれば、切断された靭皮繊維は、長さ1mmから10mmの間、特に1.5mmから8mmの間、とりわけ2mmから5mmの間を有してよい。
[0090]切断ステップa1)は、従来技術、例えば、ギロチン切断、または極端に短いおよび極端に長い繊維を除去するためのエアサイクロンもしくは篩システムを用いるもしくは用いない、靭皮繊維の粉砕によって実行できる。
【0060】
[0091]本発明の方法の混合ステップb)において使用される靭皮繊維、特に、亜麻または麻繊維は、上記の範囲の長さを有するように改質され、綿紡績機を通るように細くされた靭皮繊維である、「綿化」靭皮繊維であってもまたよい。
【0061】
[0092]その後、個別化靭皮繊維は、例えば水中で、洗浄ステップを経ることができ、場合によって、乾燥ステップが続く。
[0093]追加の繊維は、例えば、混合ステップb)の間に個別化靭皮繊維および木質繊維に加えられて、繊維混合物を得ることができる。
【0062】
[0094]ステップc)は、紙を生産するための従来のウエットレイド法、特に、傾斜台を要するウエットレイド法を実施できる。当業者は、不織基材を製造するためにウエットレイド法のパラメーターを調整する方法を知ることになる。
【0063】
[0095]ウエットレイド法は、長さ4mmから20mmの間、特に6mmから15mmの間、とりわけ10mmから12mmの間を有する個別化靭皮繊維にとって特に適切である。
【0064】
[0096]ドライレイド法は、長さ20mmから150mmの間、特に30mmから100mmの間、とりわけ35mmから50mmの間を有する個別化靭皮繊維にとって特に適切である。
【0065】
[0097]エアレイド法に関しては、長さ1mmから10mmの間、特に1.5mmから8mmの間、とりわけ2mmから5mmの間を有する個別化靭皮繊維にとって特に適切である。
【0066】
[0098]ステップc)は、代替方法として、紙を生産するためのドライレイドまたはエアレイド法を実施できる。ドライレイドまたはエアレイド法は、典型的にウェブを形成することを可能にし、ウェブは、次に、固結ステップを経て、本発明の不織基材を形成することができる。有利なことに、固結ステップは、繊維の凝集を改良し、したがって、本発明の不織基材の構造を固結することを可能にする。固結技術として、機械的固結、熱による固結、化学的固結、およびそれらの混合、特に、機械的固結が挙げられてよい。
【0067】
[0099]紙のドライレイドまたはエアレイド生産のためのステップc)を経る個別化靭皮繊維は、ステップb)の前に、乾燥ステップb1)を経ることができる。
[0100]乾燥ステップb1)は、温度50℃から120℃の間、特に60℃から90℃の間で実行できる。これらの範囲の温度は、有利なことに、この乾燥ステップb1)の持続時間を最小化することを可能にし、その一方で同時に繊維の劣化を最小化し、したがって、本発明の方法を最適化する。有利なことに、この乾燥ステップb1)は、乾燥した個別化靭皮繊維の集塊を制限することまたは回避することさえ可能にする。したがって、本発明の方法は、繊維の集塊の細分化という、長く、費用のかかるステップを必要としない。乾燥ステップb1)は、例えば、トンネル中で、回転式エアドライヤ中で、または繊維を巻き付け、スルーエア乾燥することによって実行できる。有利なことに、乾燥ロールを用いる従来の乾燥に反して、これらの乾燥技術はまた、乾燥した個別化靭皮繊維の集塊を最小化することまたは制限することさえ可能にする。
【0068】
[0101]ステップc)の間に製造された不織基材は、交絡処理を経て、繊維が絡み合っている不織基材を調製してよい。
[0102]したがって、本発明の一態様は、繊維が絡み合っている不織基材を調製する方法であり、方法は、本発明による方法のステップc)の間に製造された不織基材が、交絡処理ステップd)、例えば、機械的固結、熱による固結、化学的固結、またはそれらの混合、特に、機械的固結、化学的固結、またはそれらの混合、とりわけ機械的固結に続いて最終的に化学的固結を経るステップを含む。
【0069】
[0103]熱による固結は、合成繊維の熱可塑性の特性を使用して、不織基材の繊維を絡み合わせる。
[0104]化学的固結は、カチオン性デンプンまたはスチレンブタジエンゴムのラテックスなどの、溶液中のバインダーをコーティングして不織基材の繊維を絡み合わせることにある。
【0070】
[0105]機械的固結は、不織基材の繊維の物理的交絡からなる。機械的固結の例は、ニードルパンチングおよび水流交絡、特に水流交絡である。
[0106]特定の実施形態によれば、ステップd)の交絡処理は、水流交絡処理である。
【0071】
[0107]典型的に、水流交絡処理は、例えば、2000kPa(20bar)から80000kPa(800bar)の間であり得る加圧下でウォータージェットを使用して、不織基材の繊維を絡み合わせる。不織基材は、1つまたは複数の台上を循環するまたはローラーからローラーへ運搬され、その表面に加圧水を注入するインジェクターが設置されている。典型的に3mmから5mm離れた1つまたは複数の列の上に1ミリメートル当たり孔1から3個の割合で配置された、孔の開いたストリップまたは例えば直径80μmから150μmのノズルを、加圧水が通過するときに、ウォータージェットは作り出される。典型的に、水圧は、最初から最後のインジェクターまで上昇可能である。これらの非常に細かいウォータージェットは、不織基材を貫通し、台もしくはローラーからまたは中間ベルトから立体的に跳ね返って、繊維を互いに絡み合わせる。不織基材の2側面は、この水流交絡処理を1回または複数回経ることができる。不織基材を水浸しにすることを回避するために、吸引ボックスが、(1つまたは複数の)台の下、またはローラーの内側に設置されてよい。次に、吸引ボックスによって吸い上げられた残留水は、再循環され、いずれの不純物も取り除かれて、再使用できる。次に、このように固結された不織基材を、乾燥ロール、トンネル、またはスルーエア乾燥ロールによって乾燥できる。
【0072】
[0108]有利なことに、水流交絡処理を経た本発明の不織基材の知覚的特性、特に柔らかさ、および吸収能力が改良される。さらに、水流交絡処理を経た本発明の不織基材は、吊るされた場合、調和のとれたひだを形成でき、この不織基材は、より大きい引張強さを有し、容易に成形される。知覚的特性、特に、柔らかさおよび順応性における改良によって、水流交絡処理を経た本発明の不織基材はまた、有利なことに、以前に記載した化粧用製品および衛生用製品のための基材として使用できる。
【0073】
[0109]典型的に、添加剤は、ステップc)の前、間、もしくは後に、またはステップd)の後に、繊維混合物に加えられてよい。例えば、添加剤は、サイズプレス、コーティング、吹き付けを用いて、ステップc)の後またはステップd)の後に加えられてよい。特に、湿潤紙力増強剤は、湿潤紙力増強剤と木質繊維との間の相互作用を改良するために、繊維混合物がステップc)を経る前に、前記混合物に加えられてよい。
【0074】
[0110]典型的に、ステップc)の後またはステップd)の後に、本発明の不織基材は、乾燥ロール、スルーエアロール、またはトンネルなどの乾燥デバイスによって乾燥できる。
【0075】
[0111]本発明の不織基材はまた、製紙産業にとって既知の追加の処理を経てもよい。典型的に、これらの処理の1つは、複数のヘッドボックスを使用して多層不織基材を製造させる。
【0076】
[0112]本発明の不織基材はまた、切断ステップe)を経て、上に記載されたワイプを製造してもよい。
[0113]したがって、本発明の一態様は、本発明による方法によって調製された不織基材または本発明による方法によって調製された、繊維が絡み合っている不織基材を切断するステップe)を含む、ワイプを調製する方法である。
【0077】
[0114]この切断ステップe)は、従来のステップである。当業者にとって、所望のワイプを得るために切断ステップを調整する方法は既知であろう。
【実施例
【0078】
実施例1
[0115]本発明による方法によって個別化された靭皮繊維
【0079】
実施例1.1
[0116]亜麻繊維の処理は、圧力700kPa(7bar)、温度164℃で実行され、溶媒は純水である。
【0080】
[0117]個別化亜麻繊維は、加圧下、以下の処理に従って得られる。
亜麻繊維が長さ8mmを有するように、亜麻繊維を切断する。切断された亜麻繊維および溶媒、すなわち水を、亜麻繊維の乾燥重量と水の体積との比が0.33になるような、加圧および温度下で作動する反応器中で混合する。溶媒/繊維混合物を、26分にわたって164℃に加熱し、反応器中の圧力は、700kPa(7bar)に上げられる。温度164℃および圧力700kPa(7bar)は、120分間維持される。この処理の後で、亜麻繊維を、溶媒から分離し、60分間水で洗浄し、遠心分離し、最後に、105℃で16時間乾燥する。
【0081】
実施例1.2
[0118]亜麻繊維の処理は、圧力700kPa(7bar)、温度164℃で実行され、溶媒は、水および6%の水酸化ナトリウムを含む。
【0082】
[0119]個別化亜麻繊維を得ることを可能にする加圧下での処理は、実施例1.1に記載されたものと同様であり、違いは、溶媒が水および6%の水酸化ナトリウムを含むことならびに溶媒/繊維混合物が15分にわたって164℃に加熱されることである。
【0083】
実施例1.3
[0120]亜麻繊維の処理は、圧力700kPa(7bar)、温度164℃で実行され、溶媒は、水および2%の水酸化ナトリウムを含む。
【0084】
[0121]個別化亜麻繊維を得ることを可能にする加圧下での処理は、実施例1.1に記載されたものと同様であり、違いは、溶媒が水および2%の水酸化ナトリウムを含むことならびに溶媒/繊維混合物が22分にわたって164℃に加熱されることである。
【0085】
実施例1.4
[0122]亜麻繊維の処理は、圧力820kPa(8.2bar)、温度170℃で実行され、溶媒は、水、7.5%の亜硫酸ナトリウム、および2.5%の炭酸ナトリウムを含む。
【0086】
[0123]個別化亜麻繊維は、加圧下で以下の処理に従って得られる。
束の亜麻繊維の長さが8mmを有するように、亜麻繊維を切断する。切断された亜麻繊維および溶媒、すなわち、水、7.5%の亜硫酸ナトリウム、および2.5%の炭酸ナトリウムを、亜麻繊維の乾燥重量と水の体積との比が0.33になるような、加圧および温度下で作動する反応器中で混合する。溶媒/繊維混合物を、7分にわたって170℃に加熱し、反応器中の圧力は、820kPa(8.2bar)に上げられる。温度170℃および圧力830kPa(8.3bar)は、180分間維持される。この処理の後で、亜麻繊維を、溶媒から分離し、60分間水で洗浄し、遠心分離し、最後に、105℃で16時間乾燥する。
【0087】
[0124]加圧下でこの処理を経た亜麻繊維のセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの含有量を、表1に示す。
【0088】
実施例1.5
[0125]亜麻繊維の処理は、圧力820kPa(8.2bar)、温度170℃で実行され、溶媒は、水、2.5%の亜硫酸ナトリウム、および0.83%の炭酸ナトリウムを含む。
【0089】
[0126]個別化亜麻繊維を得ることを可能にする加圧下での処理は、実施例1.4に記載されたものと同様であり、違いは、溶媒が水、2.5%の亜硫酸ナトリウム、および0.83%の炭酸ナトリウムを含むこと、溶媒/繊維混合物が14分にわたって170℃に加熱されること、ならびに圧力が850kPa(8.5bar)であることである。
【0090】
実施例1.6
[0127]麻繊維の処理は、圧力700kPa(7bar)、温度164℃で実行され、溶媒は純水である。
【0091】
[0128]プロトコルは、実施例1.1に記載されたものと同様であり、違いは、亜麻繊維を麻繊維に置き換えることである。
【0092】
実施例1.7
[0129]麻繊維の処理は、圧力820kPa(8.2bar)、温度170℃で実行され、溶媒は、水、7.5%の亜硫酸ナトリウム、および2.5%の炭酸ナトリウムを含む。
【0093】
[0130]プロトコルは、実施例1.4に記載されたものと同様であり、違いは、亜麻繊維を麻繊維に置き換えることである。
【0094】
実施例1の比較例
[0131]加圧下での処理を経なかった亜麻繊維。
【0095】
[0132]この実施例1の比較例において、亜麻繊維は、以下の処理を経る。
束の亜麻繊維が長さ8mmを有するように、亜麻繊維を切断する。切断された亜麻繊維および溶媒、すなわち水を、亜麻繊維の乾燥重量と水の体積との比が0.05になるような温度で作動する反応器中で混合する。溶媒/繊維混合物を、70℃に加熱し、圧力は大気圧である。温度70℃は、20分間維持される。この処理の後で、亜麻繊維を、溶媒から分離し、80℃で16時間乾燥する。
【0096】
実施例2
[0133]実施例1.1から1.5および実施例1の比較例の間に得られた亜麻繊維の特性評価。
【0097】
実施例2.1
[0134]亜麻繊維中のセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの含有量
[0135]亜麻繊維中のセルロースおよびヘミセルロースの含有量を、上述のSCAN-CM71に準拠して測定する。
【0098】
[0136]亜麻繊維中のリグニン含有量を、上述の方法の通り測定する。
[0137]実施例1.1から1.5および実施例1の比較例の処理を経た亜麻繊維のセルロース、ヘミセルロース、およびリグニンの含有量を、表1に示す。
【0099】
[0138]
【0100】
【表1】
【0101】
[0139]表1は、加圧下で処理を経た亜麻繊維が、前記亜麻繊維の乾燥重量に対して、本発明の個別化亜麻繊維の特別なセルロース、リグニン、およびヘミセルロースの含有量を有することを示す。実施例1の比較例において得られた亜麻繊維は、表1によれば、セルロース含有量80%未満を有する、すなわち、本発明の個別化亜麻繊維の特別なセルロース含有量から外れている。
【0102】
実施例2.2
[0140]亜麻繊維の光学顕微鏡観察
[0141]実施例1.1から1.5および実施例1の比較例において得られた亜麻繊維は、濃度3g/Lで3分間パルプ化され、次に、20分間懸濁を保つ。
【0103】
[0142]次に、このように処理された亜麻繊維を、光学顕微鏡によって観察する。
[0143]図1から6は、繊維の光学顕微鏡画像を示す。
[0144]図1から5は、実施例1.1から1.5において得られた亜麻繊維が個別化されていることを示し、実際に、繊維束が図1から5には見られない。さらに、図1から5は、これらの個別化亜麻繊維が、曲がっているので、柔軟であることを示す。
【0104】
[0145]逆に、いくつかの亜麻繊維束が図6において見られる。したがって、この図6は、実施例1の比較例において得られた亜麻繊維が個別化されていないことを例証する。さらに、これらの亜麻繊維は、一緒にグループを作って束を形成しているので、柔軟でない。
【0105】
実施例3
[0146]本発明による絡み合った不織基材
【0106】
実施例3.1
[0147]実施例1.1において得られた亜麻繊維15%、リヨセル繊維5%、および木質繊維80%を含む基材。
【0107】
[0148]実施例1.1において得られた亜麻繊維、木質繊維(Sodra Black85Z)、およびリヨセル繊維(10mm、1.7dTex)を、混合して、繊維混合物を得る。次に、繊維混合物は、排液用ガーゼの上を通過して、不織基材を得る。
【0108】
[0149]次に、この不織基材は、それぞれ2000kPa(20bar)の圧力の、2列を含むストリップを有する、2本のインジェクションレールの下を通過することによって、水流交絡処理を経る。
【0109】
[0150]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0110】
実施例3.2
[0151]実施例1.2において得られた亜麻繊維15%、リヨセル繊維5%、および木質繊維80%を含む基材。
【0111】
[0152]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1.2において得られた亜麻繊維に置き換えることである。
【0112】
[0153]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0113】
実施例3.3
[0154]実施例1.4において得られた亜麻繊維15%、リヨセル繊維5%、および木質繊維80%を含む基材。
【0114】
[0155]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1.4において得られた亜麻繊維に置き換えることである。
【0115】
[0156]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0116】
実施例3.4
[0157]実施例1.4において得られた亜麻繊維20%および木質繊維80%を含む基材。
【0117】
[0158]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1.4において得られた亜麻繊維に置き換えることおよびリヨセル繊維を加えないことである。
【0118】
[0159]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0119】
実施例3.5
[0160]実施例1.4において得られた亜麻繊維50%、リヨセル繊維5%、および木質繊維45%を含む基材。
【0120】
[0161]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1.4において得られた亜麻繊維に置き換えることである。
【0121】
[0162]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0122】
実施例3.6
[0163]実施例1.4において得られた亜麻繊維55%および木質繊維45%を含む基材。
【0123】
[0164]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1.4において得られた亜麻繊維に置き換えることおよびリヨセル繊維を加えないことである。
【0124】
[0165]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0125】
実施例3.7
[0166]実施例1.6において得られた麻繊維20%および木質繊維80%を含む基材。
【0126】
[0167]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1.6において得られた麻繊維に置き換えることおよびリヨセル繊維を加えないことである。
【0127】
[0168]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0128】
実施例3.8
[0169]実施例1.7において得られた麻繊維20%および木質繊維80%を含む基材。
【0129】
[0170]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1.7において得られた麻繊維に置き換えることおよびリヨセル繊維を加えないことである
[0171]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0130】
実施例3の比較例
[0172]実施例1の比較例において得られた亜麻繊維15%、リヨセル繊維5%、および木質繊維80%を含む基材。
【0131】
[0173]プロトコルは、実施例3.1において記載されたものと同様であり、違いは、実施例1.1において得られた亜麻繊維を、実施例1の比較例において得られた亜麻繊維に置き換えることである。
【0132】
[0174]不織基材は、坪量60g/mを有する。
【0133】
実施例4
[0175]実施例3.1から3.8、実施例3の比較例の基材、および対照基材の特性評価。
【0134】
実施例4.1
[0176]乾燥引張強さ。
[0177]乾燥引張強さを、実施例3.1から3.8の基材について測定し、リヨセル繊維20%および木質繊維80%(Sodra Black85Z)を含む対照基材および実施例3の比較例の基材と比較する。
【0135】
[0178]乾燥引張強さを、EN29073-3方法(1992)に準拠して測定する。
[0179]結果は図7に提示され、個別化靭皮繊維の含有量が何であれ、靭皮繊維の性質が何であれ、全ての基材が同じ程度の大きさの乾燥引張強さを有することを示す。
【0136】
実施例4.2
[0180]湿潤引張強さ。
[0181]湿潤引張強さを、実施例3.1および3.3から3.8の基材についてISO12625-5方法(2017)に準拠して測定し、リヨセル繊維20%および木質繊維80%(Sodra Black85Z)を含む対照基材および実施例3の比較例の基材と比較される。
【0137】
[0182]全ての基材の湿潤引張強さは、満足いくものであり、個別化靭皮繊維の含有量が何であれ、靭皮繊維の性質がどうであれ、全ての基材が同じ程度の大きさである。
【0138】
実施例4.3
[0183]歪み。
【0139】
[0184]歪みを、実施例の4つの基材および対照基材について測定する。
[0185]歪みを、EN29073-3方法(1992)に準拠して測定する。
[0186]結果は図8に提示され、全ての基材が同じ程度の大きさの歪みを有することを示す。
【0140】
実施例4.4
[0187]実施例3.3および実施例3の比較例の基材の光学顕微鏡観察。
[0188]図9および10は、比較例3.3の基材および実施例3の比較例の基材のそれぞれの光学顕微鏡画像を示す(光学ズームX200)。
【0141】
[0189]図9は、比較例3.3の基材がいずれの亜麻繊維束も含まないことを示す。亜麻繊維束は、その一方で、実施例3の比較例の基材に見られる(図10の円の中)。
[0190]さらに、実施例3.3の基材の繊維は、実施例3の比較例の基材の繊維より良好な交絡を示す。
【0142】
[0191]これらの結果は、実施例3.3の基材の亜麻繊維の個別化および柔軟性の特徴である。
【0143】
実施例4.5
[0192]実施例3.1から3.3、3.7、3.8、および実施例3の比較例の基材の知覚的評価。
【0144】
[0193]実施例3.1から3.3、3.7、3.8、および実施例3の比較例の基材の知覚的特性は、数人のパネリストで組織される化粧品研究班によって評価される。
[0194]各基材について、各パネリストは、柔らかさ、色、引裂強さ、および展開能力を審査する。
【0145】
[0195]実施例3.1から3.3、3.7、3.8の基材は、触り心地が柔らかく、色が非常に自然であり、最も柔らかいのは、実施例3.3の基材である。
[0196]実施例3の比較例の基材は、繊維束に相当する小さい粒子が見えるので、柔らかくない。
【0146】
[0197]実施例3.1、3.3、3.7、3.8および実施例3の比較例の基材は、手による引裂の場合、ばらばらに引き裂かれない。
[0198]試験された全ての基材は、よく展開する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】