(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】車両の移動に課される動的制約に基づいて、車両ステアリングラックの位置を位置設定点に従属させるように設計された方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230308BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D113:00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542445
(86)(22)【出願日】2021-01-11
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 FR2021050041
(87)【国際公開番号】W WO2021144525
(87)【国際公開日】2021-07-22
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴティエ クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】オビエ ジョアン
【テーマコード(参考)】
3D232
【Fターム(参考)】
3D232CC46
3D232DA03
3D232DA05
3D232DA10
3D232DA14
3D232DA62
3D232DA63
3D232DD08
3D232DD17
3D232DE06
3D232EB11
3D232EC21
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】パワーステアリングシステム(100)のアシストモータ(12)を制御するための方法(1)であって、前記パワーステアリングシステム(100)は、ラック(S)にモータトルク(C
M)を印加するように構成されたアシストモータ(12)と、少なくとも1つのステアリングコンピュータ(20)とを備え、前記方法(1)は、ラック(S)の位置(X
S)を位置設定点(T
X)にサーボ制御するように設計され、前記方法(1)は、アシストモータ(12)が、モータトルク設定点(T
CM)に従って、モータトルク(C
M)をラック(S)に及ぼす操縦ステップ(3)を備え、方法(1)は、ステアリングコンピュータ(20)が、位置設定点(T
X)及びラック(S)の位置(X
S)に従ってラック(S)の速度設定点(T
VS)を決定するサーボ制御ステップ(2)と、ステアリングコンピュータ(20)が、最大速度閾値(SV
S)以下の制限速度設定点(T
VSL)を発行する制限ステップ(4)と、ステアリングコンピュータ(20)が、制限速度設定点(T
VSL)及びラック(S)の速度(V
S)に従ってモータトルク設定点(T
CM)を決定する制御ステップ(5)とをさらに有することを特徴とする方法。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーステアリングシステム(100)のアシストモータ(12)を制御するための方法(1)であって、
前記パワーステアリングシステム(100)は、ラック(S)にモータトルク(C
M)を印加するように構成されたアシストモータ(12)と、少なくとも1つのステアリングコンピュータ(20)とを備え、前記方法(1)は、前記ラック(S)の位置(X
S)を位置設定点(T
X)にサーボ制御するように設計され、前記方法(1)は、
前記アシストモータ(12)が、モータトルク設定点(T
CM)に従って、モータトルク(C
M)を前記ラック(S)に及ぼす操縦ステップ(3)を備え、
前記方法(1)は、前記ステアリングコンピュータ(20)が、前記位置設定点(T
X)及び前記ラック(S)の前記位置(X
S)に従って前記ラック(S)の速度設定点(T
VS)を決定するサーボ制御ステップ(2)と、
前記ステアリングコンピュータ(20)が、最大速度閾値(SV
S)以下の制限速度設定点(T
VSL)を発行する制限ステップ(4)と、
前記ステアリングコンピュータ(20)が、前記制限速度設定点(T
VSL)及び前記ラック(S)の速度(V
S)に従って前記モータトルク設定点(T
CM)を決定する制御ステップ(5)とをさらに有することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法(1)において、
前記サーボ制御ステップ(2)は、前記ラック(S)の前記位置(X
S)と前記位置設定点(T
X)とに基づいて位置ずれを算出する比較フェーズと、前記位置ずれを低減するように前記速度設定点(T
VS)を決定する修正フェーズとを含む方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法(1)において、
前記制御ステップ(5)は、前記ラック(S)の前記速度(V
S)及び前記制限速度設定点(T
VSL)に従って速度偏差を算出する偏差フェーズと、前記速度偏差を低減するように前記モータトルク設定点(T
CM)を決定する補償フェーズとを含む方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法(1)において、
前記制限ステップ(4)は、車両(21)に及ぼされる少なくとも1つの運動学的制約に従って前記ラック(S)の前記最大速度閾値(SV
S)を決定する方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法(1)において、
前記制限ステップ(4)は、最大加速度閾値(SA
S)に従って前記制限速度設定点(T
VSL)を決定する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法(1)において、
前記最大加速度閾値(SA
S)は、車両(21)に及ぼされる少なくとも1つの運動学的制約に従って決定される方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法(1)において、
前記ラック(S)の前記位置(X
S)が、位置センサ、ハンドル(30)の角度測定(θ3)、及び前記アシストモータ(12)のシャフト(24)の角度測定(θ12)を用いた数学的計算のうちのいずれかによって得られる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパワーステアリングシステムの分野に関し、より詳細には、ラックの位置を位置設定点にサーボ制御するように設計された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のステアリングシステムの目的は、運転者がハンドルに力を加えることによって車両の軌道を制御することを可能にすることである。
【0003】
一般に、ステアリングシステムは、ステアリングコラムに接続されたハンドルと、ラックと、タイロッドにそれぞれ接続された2つのホイールとを含むいくつかの要素を備える。ラックはハンドルをステアリングコラムを介し、タイロッドを介して車輪に接続することを可能にする部分であり、すなわち、ラックは、運転者がハンドルに及ぼす力を車両の車輪の回転に変換する。より具体的には、ラックが、移動車両が直線軌道を進む中立位置と、直線位置、すなわち、車両が右側に、左側にそれぞれ曲線軌道を進む左側の直線位置との間で直線移動を行う。次に、ラックの位置を、中立位置に対するラックの中心の距離(ミリメートル単位)として定義する。
【0004】
車両の電動パワーステアリングシステムは、ステアリングコンピュータによって制御されるアシストモータを使用し、特に、車両のホイールを回転させるために運転者がハンドルに加える労力を低減する。ハンドルに加えられる力、すなわちハンドルトルクに基づいて、アシストモータはハンドルを回転させるように、補助力、すなわちモータトルクをラックに加える。
【0005】
パワーステアリングシステムはまた、駐車支援機能(「シティパーク」)又は車線維持支援機能(「車線維持」)等の運転支援機能を備えてもよい。この機能は、車両の軌道(以下、実軌道と呼ぶ)を自動的に制御する。換言すれば、運転支援機能は基準軌道を決定し、車両の実際の軌道が基準軌道に近いままであることを要求する。
【0006】
車両の実際の軌道は、ラックの位置を基準軌道に依存する位置設定点にサーボ制御することによって、運転支援機能によって強いられる。このようにして、車両の実際の軌道は、基準軌道に近づけられる。
【0007】
このようなサーボ制御を実行することを可能にする
図1に示す方法1’が知られており、それは、
ステアリングコンピュータが位置設定点T
X及びラック位置X
Sに従って、モータトルク設定点T
CMを決定する位置サーボ制御ステップ2’と、
アシストモータが、モータトルク設定点T
CMに従って、モータトルクC
MをラックSに及ぼす操縦ステップ3とを備える。
【0008】
このような方法1’はラックSの位置XSの閉ループ制御を有する。すなわち、この方法は、ラックSの位置XSが位置設定点TXと等しくない限り、アシストモータのモータトルクCMによって、ラックSの位置XSを修正する。このように、方法1’は位置設定点TXによって示される基準軌道の近くに、ラックSの位置XSの制御によって、車両の実際の軌道を維持することを可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ステアリングシステムの動的反応は、前記ステアリングシステムの環境の構造の変動、特に車両の交通面の負担及び状態の変動に直接依存する。車両の動的反応は、車両に及ぼされる運動学的制約に依存する。
【0010】
上記の方法1’では、ステアリングシステムの環境の構造に依存して、ラックSの突然かつ急速な移動を観察することができる。これは、運転者の感覚及び車両の安全性を低下させる。この方法は、少なくとも1つのパラメータを変更することなく、環境の構造の変化を管理することができない。
【0011】
本発明の目的は、パワーステアリングシステムの環境の構造の変化にかかわらず、ラックの速度及び/又は加速度を所定の閾値未満にしたままでラックの位置をサーボ制御するための方法を提案することによって、前述の欠点の全てまたは一部を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の主題は、パワーステアリングシステムのアシストモータを制御するための方法であって、前記パワーステアリングシステムは、モータトルクをラックに印加するように構成されたアシストモータと、少なくとも1つのステアリングコンピュータとを備え、前記方法は、前記ラックの位置を位置設定点にサーボ制御するように設計され、前記方法は、
前記アシストモータが、モータトルク設定点に従って、モータトルクを前記ラックに及ぼす操縦ステップを備え、
前記方法は、
前記ステアリングコンピュータが、前記位置設定点及び前記ラックの前記位置に従って前記ラックの速度設定点を決定するサーボ制御ステップと、
前記ステアリングコンピュータが、最大速度閾値以下の制限速度設定点を発行する制限ステップと、
前記ステアリングコンピュータが、前記制限速度設定点及び前記ラックの速度に従って前記モータトルク設定点を決定する制御ステップとを有することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る制御方法は、一方が他方の内側に、すなわちカスケード状に入れ子(ネスト)にされた2つの閉ループ制御を含む。
【0014】
第1の閉ループ制御は、サーボ制御ステップによって実行される。実際、サーボ制御ステップはラックの位置が位置設定点に等しくなるように、大きさ、ここでは速度設定点を決定する。ラックの現在位置を考慮することによって、サーボ制御ステップは、パワーステアリングシステムのフィードバックを積分する。
【0015】
サーボ制御ステップはラックの位置が位置設定点と実質的に等しいことを要求するように、速度設定点を修正する。したがって、本発明に係る方法は、位置設定点によって示される基準軌道の近くに、ラックの位置の制御によって、車両の実際の軌道を維持することを可能にする。
【0016】
第2の閉ループ調整は、制御ステージによって実行される。実際、制御ステップは、ラックの速度が制限速度設定点と等しくなるように、大きさ、ここではモータトルク設定点を決定する。ラックの現在の速度を考慮することによって、制御ステップは、パワーステアリングシステムのフィードバックを積分する。
【0017】
制御ステップは、ラックの速度が制限速度設定点と鋭敏な状態で等しくなることを要求するように、モータトルク設定点を修正する。したがって、本発明に係る方法は、制限速度設定点の近くに、ラックの速度を維持することを可能にする。
【0018】
制限ステップは、制限速度設定点が、速度設定点が最大速度閾値よりも低いときに速度設定点と等しく、速度設定点が最大設定点閾値以上であるときに最大速度閾値と等しくなることを要求する。言い換えれば、制限ステップは、最大速度閾値に対応する最大境界をラックの速度設定点に課す。
【0019】
このように、ラックの制限速度設定点は、再生可能かつ調整可能であることが知られている。
【0020】
本発明に係る方法は、ラック速度が制限速度設定点と等しくなることを要求することによって、ラックが運転者の感覚及び車両の安全性を維持するように、連続的で、予測可能で、かつ漸進的な移動を行うことを確実にする。
【0021】
本発明の特徴によれば、前記サーボ制御ステップは、前記ラックの前記位置と前記位置設定点とに基づいて位置ずれを算出する比較フェーズと、前記位置ずれを低減するように前記速度設定点を決定する修正フェーズとを含む。
【0022】
比較フェーズは、例えば、位置設定点からラックの位置を減算することによって、位置ずれを計算する。
【0023】
修正フェーズは、所定の数学的な関係によって、位置ずれに基づいて速度設定点を決定する。
【0024】
したがって、サーボ制御ステップは、閉ループ制御である。
【0025】
本発明の特徴によれば、前記制御ステップは、前記ラックの前記速度及び前記制限速度設定点に従って速度偏差を算出する偏差フェーズと、前記速度偏差を低減するように前記モータトルク設定点を決定する補償フェーズとを含む。
【0026】
偏差フェーズは、例えば、制限速度設定点からラックの速度を減算することによって、位置ずれを計算する。
【0027】
補償フェーズは、所定の数学的な関係によって、速度偏差に基づいてモータトルク設定点を決定する。
【0028】
したがって、制御ステージは、閉ループ調整である。
【0029】
本発明の特徴によれば、制限ステップは、車両に及ぼされる少なくとも1つの運動学的制約に従って、ラックの最大速度閾値を決定する。
【0030】
したがって、制限ステップは、少なくとも1つの運動学的制約を考慮することによって、方法をステアリングシステムの動的反応に適応させることを可能にする。この方法は、異なる車両に適応するだけでなく、車両の交通面の状態の変化にも適応する。
【0031】
ラックの速度設定点は、少なくとも1つの運動学的制約に適応する。
【0032】
本発明に係る方法は、車両重量の変化、より一般的には運動学的制約の変化が制限ステップ中に自動的に考慮されるので、変更することなく異なる車両にインストールすることができる。
【0033】
本発明の特徴によれば、制限ステップは、最大加速度閾値に従って制限速度設定点を決定する。
【0034】
したがって、速度設定値は制限されるが、ラックの最大加速度も制限される。
【0035】
速度及び加速度を制限することによって、ラックの移動のダイナミクスを正確に定義することが可能である。
【0036】
本発明の特徴によれば、最大加速度閾値は、車両に及ぼされる少なくとも1つの運動学的制約に従って決定される。
【0037】
したがって、車両のダイナミクスは、少なくとも1つの運動学的制約に従って適応させられる。この方法は、異なる車両に適応するだけでなく、車両の交通面の状態の変化にも適応する。
【0038】
本発明の特徴によれば、ラックの前記位置が、位置センサ、ハンドルの角度測定、アシストモータのシャフトの角度測定を用いた数学的計算のうちのいずれかによって得られる。
【0039】
したがって、この方法は、ラックの位置を決定するための方法によって制約されない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明は、非限定的な例として与えられ、添付の概略図を参照して説明される、本発明に係るいくつかの実施形態に関する以下の説明のおかげで、より良く理解されるであろう。
【
図1】
図1は、従来技術に係るアシストモータの制御方法の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るアシストモータの制御方法の概略図である。
【
図3】
図3は、ラックの位置、最大速度閾値、及び最大加速度閾値の経時的な概略図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る位置設定点に対するラックの応答を示す図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る位置設定点に対するラックの応答を示す図である。
【
図6】
図6は、第3の実施形態に係る位置設定点に対するラックの応答を示す図である。
【
図7】
図7は、車両のステアリングシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明は、車両21のためのパワーステアリングシステム100のアシストモータ12を管理するための方法1に関し、より詳細には、人の輸送を目的とするモータ車両21に関する。
【0042】
それ自体公知の方法で、
図7に示されるように、前記パワーステアリングシステム100は、ハンドル30を備え、それは、運転者が前記ハンドル30に力を加えることによって前記パワーステアリングシステム100を操縦することを可能にする。
【0043】
前記ハンドル30は、好ましくはステアリングコラム40に取り付けられ、車両21上で回動するように案内され、ステアリングピニオン50によって、前記車両21に固定されたステアリングケーシング7内で並進するように案内されるラックSと噛み合う。
【0044】
好ましくは前記ステアリングラックSの各端部が操舵輪10、11(それぞれ左ホイール10及び右ホイール11)のステアリングナックルに接続されたステアリングタイロッド8、9に接続され、それにより、ラックSの並進長手方向の移動が操舵輪の操舵角(ヨー角)を変更することを可能にする。
【0045】
更に、操舵輪10、11は、好ましくは駆動輪であってもよい。
【0046】
パワーステアリングシステム100はまた、前記パワーステアリングシステム100の操縦を支援するために、モータトルクCMを提供するように意図されたアシストモータ12を備える。
【0047】
アシストモータ12は、2つの動作方向を有する電気モータであることが好ましく、ブラシレスタイプの回転電気モータであることが好ましい。アシストモータ12は、いわゆる「シングルピニオン」機構を形成するために、ステアリングコラム40自体に、必要に応じてギヤ減速機タイプの減速機を介して噛み合うこと、又は
図7に示されるように、いわゆる「ダブルピニオン」機構を形成するために、例えばステアリングコラム40がラックSと噛み合うことを可能にするステアリングピニオン50とは別個の第2のピニオン13によって、さもなければ又は、ステアリングピニオン50から離れたところで、前記ラックSの対応するねじ山と協働するボールねじによって、ラックS上に直接的に噛み合うことができる。
【0048】
ステアリングシステムは、本発明に係る方法1を実施するステアリングコンピュータ20をさらに備える。より具体的には、ステアリングコンピュータ20は、位置センサ、角度センサ23によって実行されるハンドル30の角度測定θ3、及びアシストモータ12のシャフト24の角度測定θ12を用いた数学的計算のうちのいずれかによって、ラックSの位置XSの情報を受信する。
【0049】
ステアリングシステム100は、
図2に示すように、制御方法1を備える。
【0050】
パワーステアリングシステム100のアシストモータ12を制御するための方法1は、ステアリングコンピュータ20が位置設定点TX及びラックSの位置XSに従ってラックSの速度設定点TVSを決定するサーボ制御ステップ2を含む。
【0051】
具体的には、サーボ制御ステップ2は、ラックSの位置XSと位置設定点TXとに基づいて位置ずれを算出する比較フェーズを有する。
【0052】
比較フェーズは、位置設定点TXからラックSの位置XSを減算することにより、位置ずれを算出する。
【0053】
そして、サーボ制御ステップ2は、算出される位置ずれを低減するように、速度設定点TVSを決定する修正フェーズを含む。したがって、サーボ制御ステップ2はラックSの位置XSが位置設定点TXと等しくなるように、速度設定点TVSを決定する第1の閉ループ制御である。
【0054】
次に、本発明に係る方法1は、ステアリングコンピュータが制限速度設定点TVSLを発行する制限ステップを含む。
【0055】
速度設定点TVSは、車両21に及ぼされる速度及び加速度の運動学的制約によって調整される。このために、速度設定点TVSは最大速度閾値SVSによって制限され、時間に関するその導関数、言い換えればその加速度は最大加速度閾値SASによって制限される。最大速度閾値SVSおよび最大加速度閾値SASは、少なくとも1つの運動学的制約に依存する。
【0056】
該方法1は、ステアリングコンピュータ20が制限速度設定点TVSL及びラックSの速度VSに従ってモータトルク設定点TCMを決定する制御ステップ5も含む。
【0057】
制御ステップは、制限速度設定点TVSLからラックSの速度VSを減算することにより速度偏差を算出する偏差フェーズを有する。
【0058】
制御ステップは、速度偏差を低減するようにモータトルク設定点が決定される補償フェーズも含む。
【0059】
制御ステップ5は、第1の制御ループと並列に配置された第2の閉ループ制御に対応する。実際、制御ステップ5は、第1の制御ループの出力である制限速度設定点TVSLを入力として用い、かつラックSの位置XSと同時に測定されるラックSの速度VSを用いて、モータトルク設定点TCMを決定する。
【0060】
制御ステップ5は、ラックSの速度VSが制限速度設定点TVSLと実質的に等しくなるように、モータトルク設定点TCMを修正する。
【0061】
最後に、方法1は、アシストモータ12が、モータトルク設定点TCMに従ってモータトルクCMをラックSに及ぼす操縦ステップ3を含む。
【0062】
方法1は、制限4及び制御5のステップによってラックSのスピードVSを閾値よりも低い値に保ちながら、サーボ制御ステップ2によって、ラックSの位置XSを位置設定点TXにサーボ制御するように設計される。
【0063】
したがって、本発明に係る方法1は、一方では、ラックSの位置XSの制御によって、車両21の実際の軌道を、位置設定点TXによって示される基準軌道の近くに維持し、他方では、ラックSの速度VSを制限速度設定点TVSLの近くに維持することを可能にする。
【0064】
図3は、時刻tに応じたラックSの位置X
S、最大速度閾値SV
S及び最大加速度閾値SA
Sを示している。
【0065】
図3において、速度設定点T
VSは、最大速度閾値SV
Sよりも高い値を有し、最大加速度閾値SA
Sよりも高い、時間に関する導関数を有する。したがって、制限ステップ4は、制限速度設定点T
VSLが一方では最大速度閾値SV
Sによって、他方では最大加速度閾値SA
Sによって制約されることを決定する。
【0066】
図3では、最大加速度閾値SA
Sは、第1の持続時間Iにわたって、一定であり、値A
maxと等しく、第3の持続時間IIIにわたって値-A
maxと等しく、第1の持続時間Iと第3の持続時間IIIとの間に含まれる第2の持続時間IIにわたって0と等しい。したがって、最大速度閾値S
VSは、第1I及び第3IIIの存続期間にわたって一定の勾配係数を有する直線であり、第3の存続期間IIIにわたって0である。
【0067】
最後に、ラックの位置XSは第1の持続時間I及び第3の持続時間IIIにわたってゆっくりと進展し、そして、第2の持続時間IIにわたってより急速に進展する。
【0068】
図4~
図6は、本発明に係る方法1によって制御されるラックSの応答を示す。
【0069】
具体的には、
図4に示すレスポンスでは、最大速度閾値SV
Sは70mm/Sと等しく選択されており、最大加速度閾値SA
Sには値が決定されていない。加えて、該方法は、傾斜の形態の位置設定点T
Xを課す。
【0070】
図4は、ラックSの位置X
Sがわずかにずれた位置設定点T
Xに従うのに対し、ラックの速度V
Sは、調整オーバーランを除いて制限速度設定点T
VSLに従うことを示している。モータトルク設定点T
CMは、ラックの速度V
Sが制限速度設定点T
VSLを超えると自動的に低下する。したがって、本発明に係る方法1は、調整誤差を除いて、ラックSの速度V
Sが制限速度設定点T
VSLを超えないことを保証する。
【0071】
図5に示すレスポンスでは、最大速度閾値SV
Sは20mm/Sと等しく選択されており、最大加速度閾値SA
Sは決定されていない。さらに、該方法は、ステップの形態の位置設定点T
Xを課す。
【0072】
図5は、ラックSの位置X
Sが傾斜に沿って位置設定点T
Xに合流し、一方、ラックSの速度V
Sは、調整オーバーランを除いて制限速度設定点T
VSLに追従することを示している。ラックSの位置X
Sのレスポンスは、走行すべき軌道とは無関係である。最大速度閾値SV
Sの制約に従い、ラックSが所望の位置T
Xに到達する。このように、本発明に係る方法1は、走行すべき距離が著しい場合であっても、ラックの速度V
Sが制限速度設定点T
VSLを超えないことを保証する。
【0073】
図6に示すレスポンスでは、最大速度閾値SV
Sは20mm/Sと等しく選択され、最大加速度閾値SA
Sは156mm/S
2と等しく選択される。さらに、該方法は、ステップの形態の位置設定点T
Xを課す。
【0074】
図6は、ラックSの位置X
Sがカーブに沿って位置設定点T
Xに合流し、一方、ラックSの速度V
Sは、調整オーバーランを除いて制限速度設定点T
VSLに追従することを示している。調整誤差を除いて、最大速度閾値SV
S及び最大加速度閾値SA
Sの制約に従いながら、ラックSは所望の位置T
Xに達する。このように、本発明に係る方法1は、走行すべき距離が著しい場合であっても、ラックSの速度V
Sが制限速度設定点T
VSLを超えないこと、及び、ラックの加速度が、移動の終わりまで、最大加速度よりも低いままであることを保証する。
【0075】
もちろん、本発明は、添付の図面に記載され、表された実施形態に限定されない。特に、様々な要素の構造に関して、又は技術的均等物の置換によって、本発明の保護範囲から逸脱することなく、変形が依然として可能である。
【国際調査報告】