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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】癌の治療方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20230308BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230308BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20230308BHJP
   C12Q 1/6825 20180101ALI20230308BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20230308BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P37/04
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6825 Z
C12N15/13
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542714
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(85)【翻訳文提出日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 US2021013266
(87)【国際公開番号】W WO2021146303
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/960,337
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520444638
【氏名又は名称】ジャウンス セラピューティックス, インク.
【氏名又は名称原語表記】JOUNCE THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】780 Memorial Drive Cambridge, MA 02139 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ラムジー, ヤスミン
(72)【発明者】
【氏名】フェレツキー, ダニエル ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ, シャオイェン
(72)【発明者】
【氏名】コー, ヒュー エム.
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR56
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
4C084AA20
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC01
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、癌の治療方法を提供する。本発明はまた、その癌が、ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト併用療法に応答する可能性が高い対象を特定する方法を提供し、本方法は、対象の癌の試料のRNAシグネチャー(表1)スコアを決定することを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象を治療する方法であって、前記対象にICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストを投与することを含む、方法。
【請求項2】
その癌が、ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト併用療法に応答する可能性が高い対象を特定する方法であって、前記対象の前記癌の試料の前記RNAシグネチャースコアを決定することを含み、前記試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出が、前記対象が前記併用療法に応答する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項3】
癌を有する対象に対する癌療法を選択する方法であって、前記対象の前記癌の試料の前記RNAシグネチャースコアを決定することを含み、前記試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出が、前記対象に対するICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの併用療法の選択を示す、方法。
【請求項4】
ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの併用療法に対する癌を有する対象を選択する方法であって、前記対象の前記癌の試料の前記RNAシグネチャースコアを決定することを含み、前記試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出が、前記併用療法の対象の選択を示す、方法。
【請求項5】
癌を有する対象が、ICOShi CD4+ T細胞集団を発現し得るかどうかを決定する方法であって、前記対象の前記癌の試料の前記RNAシグネチャースコアを決定することを含み、前記試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出が、前記対象がICOShi CD4+ T細胞集団を発現し得ることを示す、方法。
【請求項6】
ICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニストを前記対象に投与することをさらに含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
癌を有する対象においてPD1アンタゴニストに対する奏効期間を延長する方法であって、前記対象にICOSアゴニストを投与することを含み、前記対象の前記癌が上昇したRNAシグネチャースコアを有する、方法。
【請求項8】
上昇したRNAシグネチャースコアを有する癌を有する対象が、ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの併用により治療された場合、改善された腫瘍退縮、奏効期間、またはRECIST基準を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象が改善された全奏効率、無増悪生存期間、安定、または全生存期間を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、増加したレベルのICOShi CD4+ T細胞を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記対象からの前記癌の試料の前記RNAシグネチャースコアを決定することをさらに含む、請求項1および7~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記RNAシグネチャースコアが、前記RNAシグネチャーの構成要素のRNAレベルの評価によって決定される、請求項2~6および11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記RNAシグネチャースコアが、ナノストリング技術によって決定される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記RNAシグネチャースコアの決定が、表1に列挙された各RNAのレベルを検出すること、表1に列挙されたRNAのレベルを表2の規格のレベルに対して正規化すること、および表1の第四列を使用して前記正規化されたレベルを重み付けすることを含む、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記RNAシグネチャースコアが、約2.97以上と測定される場合に、上昇している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.39以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.40以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記上昇したRNAシグネチャースコアが3.40である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.58以上である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記上昇したRNAシグネチャースコアが約2.97~約3.58である、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ICOSアゴニストが抗体である、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ICOSアゴニスト抗体が、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、または(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
抗ICOS抗体アゴニストが、(a)配列番号1の前記アミノ酸配列を含む重鎖、および(b)配列番号2の前記アミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ICOSアゴニスト抗体が、JTX-2011、BMS-986226、およびGSK3359609からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記PD1アンタゴニストがPD1に対するものである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記PD1アンタゴニストがPD-L1に対するものである、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記PD1アンタゴニストが抗体である、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記PD1アンタゴニスト抗体が、JTX-4014、ニボルマブ、ピディリズマブ、ランブロリズマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ・チスレリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、ゲノリムズマブ、BGB-A317、RG-7446、AMP-224、BMS-936559、AMP-514、MDX-1105、AB-011、RG7446//MPDL3280A、KD-033、AGEN-2034、STI-A1010、STI-A1110、TSR-042、CX-072、JNJ-63723283、およびJNC-1からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記PD1アンタゴニスト抗体がJTX-4014である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記対象の前記癌が、胃癌、任意にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)である乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、子宮内膜癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肛門癌、胆管癌、大腸癌、および食道癌からなる群から選択される、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
癌を有する対象にICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニスト併用療法を投与するかどうかを決定する際に使用するキットであって、前記対象の前記癌の試料において本明細書に記載されるRNAシグネチャーの構成要素を検出するためのプライマーおよび/またはプローブを含む、キット。
【請求項32】
上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象の治療に使用するためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト。
【請求項33】
上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する前記対象が、
(a)ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの併用で治療された場合に、改善された腫瘍退縮、奏効期間、またはRECIST基準を有する、
(b)改善された全奏効率、無増悪生存期間、安定、または全生存期間を有する、または
(c)増加したレベルのICOShi CD4+ T細胞を有する、請求項32に記載の使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト。
【請求項34】
前記対象からの前記癌の試料の前記RNAシグネチャースコアが決定され、
(a)前記RNAシグネチャースコアが、前記RNAシグネチャーの前記構成要素のRNAレベルの評価によって決定される、
(b)前記RNAシグネチャースコアが、ナノストリング技術によって決定される、または
(c)前記RNAシグネチャースコアの決定が、表1に列挙された各RNAの前記レベルを検出すること、表1に列挙されたRNAの前記レベルを表2の規格の前記レベルに対して正規化すること、および表1の第四列を使用して前記正規化されたレベルを重み付けすることを含む、請求項32または33に記載の使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト。
【請求項35】
(a)前記RNAシグネチャースコアが、約2.97以上であると測定された場合に、上昇している、
(b)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.39以上である、
(c)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.40以上である、
(d)前記上昇したRNAシグネチャースコアが3.40である、
(e)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.58以上である、または
(f)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約2.97~約3.58である、請求項32~34のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト。
【請求項36】
(a)前記ICOSアゴニストが抗体である、
(b)前記ICOSアゴニスト抗体が、(i)配列番号1の前記アミノ酸配列を含む重鎖、または(ii)配列番号2の前記アミノ酸配列を含む軽鎖を含む、
(c)前記抗ICOS抗体アゴニストが(i)配列番号1の前記アミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号2の前記アミノ酸配列を含む軽鎖を含む、または
(d)前記ICOSアゴニスト抗体が、JTX-2011、BMS-986226、およびGSK3359609からなる群から選択される、請求項32~35のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト。
【請求項37】
(a)前記PD1アンタゴニストがPD1に対するものである、
(b)前記PD1アンタゴニストが、PD-L1に対するものである、
(c)前記PD1アンタゴニストが抗体である、
(d)前記PD1アンタゴニスト抗体が、JTX-4014、ニボルマブ、ピディリズマブ、ランブロリズマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ・チスレリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、ゲノリムズマブ、BGB-A317、RG-7446、AMP-224、BMS-936559、AMP-514、MDX-1105、AB-011、RG7446/MPDL3280A、KD-033、AGEN-2034、STI-A1010、STI-A1110、TSR-042、CX-072、JNJ-63723283、およびJNC-1からなる群から選択される、または
(e)前記PD1アンタゴニスト抗体がJTX-4014である、請求項32~36のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト。
【請求項38】
前記対象の前記癌が、胃癌、任意にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)である乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、子宮内膜癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肛門癌、胆管癌、大腸癌、および食道癌からなる群から選択される、請求項32~37のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト。
【請求項39】
上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象において、PD1アンタゴニストに対する前記奏効期間を延長するために使用するICOSアゴニスト。
【請求項40】
上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する前記対象が、
(a)ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの併用で治療された場合に、改善された腫瘍退縮、奏効期間、またはRECIST基準を有する、
(b)改善された全奏効率、無増悪生存期間、安定、または全生存期間を有する、または
(c)増加したレベルのICOShi CD4+ T細胞を有する、請求項39に記載の使用のためのICOSアゴニスト。
【請求項41】
前記対象からの前記癌の試料の前記RNAシグネチャースコアが決定され、
(a)前記RNAシグネチャースコアが、前記RNAシグネチャーの前記構成要素のRNAレベルの評価によって決定される、
(b)前記RNAシグネチャースコアが、ナノストリング技術によって決定される、または
(c)前記RNAシグネチャースコアの決定が、表1に列挙された各RNAの前記レベルを検出すること、表1に列挙されたRNAの前記レベルを表2の規格の前記レベルに対して正規化すること、および表1の第四列を使用して前記正規化されたレベルを重み付けすることを含む、請求項39または40に記載の使用のためのICOSアゴニスト。
【請求項42】
(a)前記RNAシグネチャースコアが、約2.97以上であると測定された場合に、上昇している、
(b)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.39以上である、
(c)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.40以上である、
(d)前記上昇したRNAシグネチャースコアが3.40である、
(e)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約3.58以上である、または
(f)前記上昇したRNAシグネチャースコアが約2.97~約3.58である、請求項39~41のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニスト。
【請求項43】
(a)前記ICOSアゴニストが抗体である、
(b)前記ICOSアゴニスト抗体が、(i)配列番号1の前記アミノ酸配列を含む重鎖、または(ii)配列番号2の前記アミノ酸配列を含む軽鎖を含む、
(c)前記抗ICOS抗体アゴニストが(i)配列番号1の前記アミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号2の前記アミノ酸配列を含む軽鎖を含む、または
(d)前記ICOSアゴニスト抗体が、JTX-2011、BMS-986226、およびGSK3359609からなる群から選択される、請求項39~42のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニスト。
【請求項44】
(a)前記PD1アンタゴニストがPD1に対するものである、
(b)前記PD1アンタゴニストが、PD-L1に対するものである、
(c)前記PD1アンタゴニストが抗体である、
(d)前記PD1アンタゴニスト抗体が、JTX-4014、ニボルマブ、ピディリズマブ、ランブロリズマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ・チスレリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、ゲノリムズマブ、BGB-A317、RG-7446、AMP-224、BMS-936559、AMP-514、MDX-1105、AB-011、RG7446/MPDL3280A、KD-033、AGEN-2034、STI-A1010、STI-A1110、TSR-042、CX-072、JNJ-63723283、およびJNC-1からなる群から選択される、または
(e)前記PD1アンタゴニスト抗体がJTX-4014である、請求項39~43のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニスト。
【請求項45】
前記対象の前記癌が、胃癌、任意にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)である乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、子宮内膜癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肛門癌、胆管癌、大腸癌、および食道癌からなる群から選択される、請求項39~44のいずれか一項に記載の使用のためのICOSアゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願には、ASCII形式で電子的に提出された配列表が含まれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。前述のASCIIコピーは、2021年1月13日に作成され、51266-010WO2_Sequence_Listing_1_13_21_ST25という名前で、サイズは42,430バイトである。
【0002】
本発明は、癌を治療する方法、および癌の治療アプローチを選択するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ICOS(誘導性T細胞共刺激分子;CD278)は、B7/CD28/CTLA-4免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、T細胞上に特異的に発現する。構造的にT細胞上に発現し、休止T細胞の完全な活性化に必要な共刺激シグナルを提供するCD28とは異なり、ICOSは最初のT細胞の活性化後にのみ発現する。
【0004】
ICOSは、T細胞応答の多様な側面に関与している(Simpson et al.,Curr.Opin.Immunol.22:326-332,2010に概説)。これは、胚中心の形成、T/B細胞の協働、および免疫グロブリンクラスの切り替えにおいて役割を果たす。ICOS欠損マウスは、胚中心形成の障害を示し、インターロイキンIL-10の産生が低下する。これらの欠損は、特にT濾胞ヘルパー細胞の欠損と関連している。ICOSはまた、Th1、Th2、およびTh17を含む他のT細胞サブセットの発達および機能にも役割を果たす。特に、ICOSは、Th1細胞およびTh2細胞の両方に関連するT細胞増殖およびサイトカイン分泌を共刺激する。したがって、ICOSノックアウトマウスは、糖尿病モデル(Th1)、気道炎症モデル(Th2)、およびEAE神経炎症モデル(Th17)を含む、さまざまな疾患モデルにおいて自己免疫表現型の発達障害を示す。
【0005】
ICOSは、エフェクターT(Teff)細胞機能を調節する役割に加えて、制御性T細胞(Treg)も調節する。ICOSはTregで高レベルで発現し、Tregの恒常性および機能に関与している。
【0006】
活性化すると、ジスルフィド連結ホモ二量体であるICOSは、PI3KおよびAKT経路を介してシグナルを誘導する。後続のシグナル伝達現象は、系統特異的な転写因子(例えば、T-bet、GATA-3)の発現をもたらし、T細胞の増殖および生存に影響を及ぼす。
【0007】
B7スーパーファミリーのメンバーでもあるICOSリガンド(ICOSL;B7-H2;B7RP1;CD275;GL50)は、ICOSの唯一のリガンドであり、B細胞、マクロファージ、および樹状細胞の細胞表面上に発現する。ICOSLは、ICOSとの相互作用において、細胞表面上で非共有結合ホモ二量体として機能する。マウスICOSLではないが、ヒトICOSLは、ヒトCD28およびCTLA-4に結合すると報告されている(Yao et al.,Immunity 34:729-740,2011)。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象を治療する方法を提供し、方法は、対象にICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストを投与することを含む。
【0009】
本発明はまた、その癌がICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト併用療法に応答する可能性が高い対象を特定する方法を提供し、方法は、対象の癌の試料のRNAシグネチャースコアを決定することを含み、試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出は、対象が併用療法に応答する可能性が高いことを示す。
【0010】
本発明はさらに、癌を有する対象に対して癌療法を選択する方法を提供し、方法は、対象の癌の試料のRNAシグネチャースコアを決定することを含み、試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出は、対象に対するICOSアゴニストとPD1アンタゴニスト療法の組み合わせの選択を示す。
【0011】
本発明はさらに、ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニスト併用療法のための癌を有する対象を選択する方法を提供し、方法は、対象の癌の試料のRNAシグネチャースコアを決定することを含み、試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出は、併用療法の対象の選択を示す。
【0012】
本発明はまた、癌を有する対象がICOShi CD4+ T細胞集団を発現するかどうかを決定する方法を提供し、方法は、対象の癌の試料のRNAシグネチャースコアを決定することを含み、試料中の上昇したRNAシグネチャースコアの検出は、対象がICOShi CD4+ T細胞集団を発現し得ることを示す。
【0013】
一部の実施形態では、方法は、対象にICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニストを投与することをさらに含む。
【0014】
本発明はまた、癌を有する対象においてPD1アンタゴニストに対する奏効期間を延長する方法を含み、方法は、ICOSアゴニストを対象に投与することを含み、対象の癌は上昇したRNAシグネチャースコアを有する。
【0015】
一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアを有する癌を有する対象は、ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの組み合わせで治療された場合、改善した腫瘍退縮、奏効期間、またはRECIST基準を有する。
【0016】
一部の実施形態では、対象は、改善した全奏効率、無増悪生存期間、安定、または全生存期間を有する。
【0017】
一部の実施形態では、対象は、増加したレベルのICOShi CD4+ T細胞を有する。
【0018】
一部の実施形態では、方法は、対象からの癌の試料のRNAシグネチャースコアを決定することをさらに含む。
【0019】
一部の実施形態では、RNAシグネチャースコアは、RNAシグネチャーの構成要素のRNAレベルを評価することによって決定される。
【0020】
一部の実施形態では、RNAシグネチャースコアは、ナノストリング技術によって決定される。
【0021】
一部の実施形態では、RNAシグネチャースコアの決定は、表1に列挙された各RNAのレベルを検出すること、表1に列挙されたRNAのレベルを表2の規格のレベルに対して正規化すること、および表1の第四列を使用して正規化されたレベルを重み付けすることを含む。
【0022】
一部の実施形態では、約2.97以上と測定される場合に、RNAシグネチャースコアは上昇している。
【0023】
一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアは、約3.39以上である。
【0024】
一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアは約3.40以上である。
【0025】
一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアは3.40である。
【0026】
一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアは約3.58以上である。
【0027】
一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアは約2.97~3.58である。
【0028】
一部の実施形態では、ICOSアゴニストは、抗体である。
【0029】
一部の実施形態では、ICOSアゴニスト抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、または(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖、を含む。
【0030】
一部の実施形態では、抗ICOS抗体アゴニストは、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、および(b)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を、含む。
【0031】
一部の実施形態では、ICOSアゴニスト抗体は、JTX-2011、BMS-986226、およびGSK3359609からなる群から選択される。
【0032】
一部の実施形態では、PD1アンタゴニストは、PD1に対するものである。
【0033】
一部の実施形態では、PD1アンタゴニストは、PD-L1に対するものである。
【0034】
一部の実施形態では、PD1アンタゴニスト抗体は抗体である。
【0035】
一部の実施形態では、PD1アンタゴニスト抗体は、JTX-4014、ニボルマブ、ピディリズマブ、ランブロリズマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ・チスレリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、ゲノリムズマブ、BGB-A317,RG-7446,AMP-224,BMS-936559,AMP-514,MDX-1105,AB-011,RG7446/MPDL3280A、KD-033,AGEN-2034,STI-A1010,STI-A1110,TSR-042、CX-072,JNJ-63723283、および JNC-1からなる群から選択される。
【0036】
一部の実施形態では、PD1アンタゴニスト抗体は、JTX-4014である。
【0037】
一部の実施形態では、対象の癌は、胃癌、任意にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)である乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、子宮内膜癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肛門癌、胆管癌、大腸癌、および食道癌からなる群から選択される。
【0038】
本発明はまた、癌を有する対象にICOSアゴニストとPD-1アンタゴニスト療法の組み合わせを投与するかどうかを決定するために用いるキットも提供し、キットは、対象の癌の試料において本明細書に記載されるRNAシグネチャーの構成要素を検出するためのプライマーおよび/またはプローブを含む。
【0039】
本発明はさらに、上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象の治療に使用するためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストを提供する。
【0040】
使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象は、(a)ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの組み合わせで治療された場合に腫瘍退縮、奏効期間、またはRECIST基準が改善、(b)全奏効率、無増悪生存期間、安定、または全生存期間が改善、または(c)ICOShi CD4+ T細胞のレベルが増加した。
【0041】
使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの一部の実施形態では、対象からの癌の試料のRNAシグネチャースコアが決定され、(a)RNAシグネチャースコアは、RNAシグネチャーの構成要素のRNAレベルの評価によって決定される、(b)RNAシグネチャースコアは、ナノストリング技術によって決定される、または(c)RNAシグネチャースコアの決定は、表1に列挙された各RNAのレベルを検出すること、表1に列挙されたRNAのレベルを表2の規格のレベルに対して正規化すること、および表1の第四列を使用して正規化されたレベルを重み付けすることを含む。
【0042】
使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの一部の実施形態では、(a)RNAシグネチャースコアは、約2.97以上であると測定された場合、上昇している、(b)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.39以上である、(c)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.40以上である、(d)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.40である、(e)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.58以上である、または(f)上昇したRNAシグネチャースコア上昇は約2.97~約3.58である。
【0043】
使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの一部の実施形態では、(a)ICOSアゴニストが抗体である、(b)ICOSアゴニスト抗体は、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖を含む、または(ii)配列番号2のアミノ酸配列の軽鎖を含む、(c)抗ICOS抗体アゴニストは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号2のアミノ酸配列の軽鎖を含む、または(d)ICOSアゴニスト抗体は、JTX-2011、BMS-986226、およびGSK3359609からなる群から選択される。
【0044】
使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの一部の実施形態では、(a)PD1アンタゴニストはPD1に対しするものである、(b)PD1アンタゴニストはPD-L1に対しするものである、(c)PD1アンタゴニストは抗体である、(d)PD1アンタゴニスト抗体は、JTX-4014、ニボルマブ、ピディリズマブ、ランブロリズマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ・チスレリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、ゲノリムズマブ、BGB-A317、RG-7446、AMP-224、BMS-936559、AMP-514、MDX-1105、AB-011、RG7446/MPDL3280A、KD-033、AGEN-2034、STI-A1010、STI-A1110、TSR-042、CX-072、JNJ-63723283、およびJNC-1からなる群から選択される、または(e)PD1アンタゴニスト抗体はJTX-4014である。
【0045】
使用のためのICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの一部の実施形態では、対象の癌は、胃癌、任意にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)である乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、子宮内膜癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肛門癌、胆管癌、大腸癌、および食道癌からなる群から選択される。
【0046】
本発明はさらに、上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象において、PD1アンタゴニストに対する奏効期間の延長に使用するためのICOSアゴニストを提供する。
【0047】
使用のためのICOSアゴニストの一部の実施形態では、上昇したRNAシグネチャースコアによって特徴付けられる癌を有する対象は、(a)ICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの組み合わせで治療された場合に、腫瘍退縮、奏効期間、またはRECIST基準が改善、(b)全奏効率、無増悪生存期間、安定、または全生存期間が改善、または(c)ICOShi CD4+ T細胞のレベルが増加した。
【0048】
使用のためのICOSアゴニストの一部の実施形態では、対象からの癌の試料のRNAシグネチャースコアが決定され、(a)RNAシグネチャースコアは、RNAシグネチャーの構成要素のRNAレベルの評価によって決定される、(b)RNAシグネチャースコアは、ナノストリング技術によって決定される、または(c)RNAシグネチャースコアの決定は、表1に列挙された各RNAのレベルを検出すること、表1に列挙されたRNAのレベルを表2の規格のレベルに対して正規化すること、および表1の第四列を使用して正規化されたレベルを重み付けすることを含む。
【0049】
使用のためのICOSアゴニストの一部の実施形態では、(a)RNAシグネチャースコアは、約2.97以上であると測定された場合、上昇している、(b)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.39以上である、(c)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.40以上である、(d)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.40である、(e)上昇したRNAシグネチャースコアは約3.58以上である、または(f)上昇したRNAシグネチャースコア上昇は約2.97~約3.58である。
【0050】
使用のためのICOSアゴニストの一部の実施形態では、(a)ICOSアゴニストは抗体である、(b)ICOSアゴニスト抗体は、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、または(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、(c)抗ICOS抗体アゴニストは、(i)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、および(ii)配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、および(d)ICOSアゴニスト抗体はJTX-2011、BMS-986226、およびGSK3359609からなる群から選択される。
【0051】
使用のためのICOSアゴニストの一部の実施形態では、(a)PD1アンタゴニストはPD1に対するものである、(b)PD1アンタゴニストはPD-L1に対するものである、(c)PD1アンタゴニストは抗体である、(d)PD1アンタゴニスト抗体は、JTX-4014、ニボルマブ、ピディリズマブ、ランブロリズマブ、ペンブロリズマブ、セミプリマブ、アベルマブ、アテゾリズマブ・チスレリズマブ、デュルバルマブ、スパルタリズマブ、ゲノリムズマブ、BGB-A317、RG-7446、AMP-224、BMS-936559、AMP-514、MDX-1105、AB-011、RG7446/MPDL3280A、KD-033、AGEN-2034、STI-A1010、STI-A1110、TSR-042、CX-072、JNJ-63723283、およびJNC-1からなる群から選択される、または(e)PD1アンタゴニスト抗体はJTX-4014である。
【0052】
使用のためのICOSアゴニストの一部の実施形態では、対象の癌は、胃癌、任意にトリプルネガティブ乳癌(TNBC)である乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、子宮内膜癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、肛門癌、胆管癌、大腸癌、および食道癌からなる群から選択される。
【0053】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1図1は、腫瘍応答を予測するRNAシグネチャースコアを示す。
図2図2Aは、ICOS hiの出現との関連におけるRNAシグネチャースコアを示す。6.47および7.72の平均値は、それぞれ、本明細書の他の箇所で記載した2.97および3.35のRNAシグネチャースコアに対応する。 図2Bは、腫瘍減少率に基づく治療に対する応答者/非応答者として分類された対象と関連するRNAシグネチャースコアを示す。平均値7.00および8.27は、それぞれ、本明細書の他の箇所で記載した3.13および3.51のRNAシグネチャースコアに対応する。
図3図3Aは、PD-1iナイーブ対象におけるICOS hiの出現との関連におけるRNAシグネチャースコアを示す。6.49および7.54の平均値は、それぞれ、本明細書の他の箇所で記載した2.98および3.29のRNAシグネチャースコアに対応する。 図3Bは、PD-1iナイーブ対象における腫瘍減少率に基づく治療に対する応答者/非応答者として分類された対象との関連におけるRNAシグネチャースコアを示す。6.81および8.42の平均値は、それぞれ、本明細書の他の箇所で記載した3.07および3.56のRNAシグネチャースコアに対応する。
図4図4は、RNAシグネチャースコアについて評価された、新鮮な治療前腫瘍生検を有する、すべての以前の抗PD-1/抗PD-L1ナイーブ対象に対する腫瘍減少を示す。低、中、および高RNAシグネチャースコアのカットオフは、6.46、7.85、および8.5であり、それぞれ、本明細書の他の箇所に記載される2.97、3.39、および3.58のRNAシグネチャースコアに対応する。
図5図5は、RNAシグネチャースコアについて評価された、新鮮な治療前腫瘍生検を有する、すべての以前の抗PD-1/抗PD-L1ナイーブ対象について計算された臨床評価項目を示す。本明細書の他の箇所に記載されるように、6.46、7.85、および8.5の低、中、および高RNAシグネチャースコアのカットオフは、それぞれ2.97、3.39、および3.58のRNAシグネチャースコアに対応する。
図6A図6Aは、RNAシグネチャースコアについて評価した新鮮な治療前腫瘍生検を有する対象の腫瘍減少およびスイマープロットを示す。7.9のカットオフは、本明細書の他の箇所に記載した3.40のRNAシグネチャースコアに対応する。
図6B図6Bは、RNAシグネチャースコアについて評価された新鮮な治療前腫瘍試料を有する対象について評価した、無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)の臨床評価項目のカプランマイヤープロットを示す。
図7図7は、RNAシグネチャー閾値の感度と特異性との間の関係を示す、受信者動作特性(ROC)曲線である。7.914のカットオフは、本明細書の他の箇所に記載されるように、3.40のRNAシグネチャースコアに対応する。
【発明を実施するための形態】
【0055】
ICOSアゴニストとPD-1アンタゴニストの併用療法を用いて上昇したRNAシグネチャースコアを有する対象を治療する方法が本明細書に提供される。また、対象がICOSアゴニストとPD-1アンタゴニストの併用療法に応答するかどうかを決定し、かかる対象を特定する方法が提供される。さらに、本明細書に記載の方法を実施する際に使用するための組成物およびキットが提供される。本発明のこれらおよび他の方法、組成物、およびキットは、以下のようにさらに記述される。
【0056】
これらの発明は、部分的には、本明細書に記載される方法によって計算される上昇したRNAシグネチャースコアを有する対象が、以下の傾向があるかについての観察に基づく:
・ ICOSアゴニストとPD-1アンタゴニストの併用療法に応答する(すなわち、客観的反応を有する)
・ 併用療法の結果として臨床的利益を経験する
・ CD4+T細胞のICOShi集団の存在を示す
・ 併用療法の結果として、少なくとも6カ月の無増悪生存期間(PFS)を経験する、および
・ 併用療法の結果として、より長い全生存期間を経験する。
【0057】
さらに、データは、上昇したRNAシグネチャーは、PD-1アンタゴニスト療法に対する反応と以前に関連していたバイオマーカー(例えば、本明細書に報告された併用療法の臨床試験では、反応と相関することが見出されなかったPD-L1 IHCバイオマーカー)よりも、反応についての予測性がより高かったことを示唆し、PD-1アンタゴニスト療法単独に対する反応の予測とは異なる併用療法に対する反応を予測する際のRNAシグネチャーの有用性を示唆している。この仮説をさらに裏付けるものとして、PD-1アンタゴニスト療法がICOShi CD4+ T細胞の出現と関連していないことが注目される。
【0058】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、構成的な目的のためのみであり、記載される主題を制限するものとして解釈されるべきではない。
【0059】
特許出願、特許公報、およびGenbank登録番号を含む、本明細書に引用されるすべての参考文献は、各個別の参考文献が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。登録番号(表1および2を参照)は、2020年1月13日の登録番号によって利用可能なそれぞれの配列を指す。
【0060】
I.定義
別途定義されない限り、本開示に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈上別段の必要がない限りまたは明示的に示されていない限り、単数形用語は複数形を含み、複数形用語は単数形を含むものとする。さまざまな情報源または参考文献の間で定義に矛盾がある場合は、本明細書に提供される定義が優先される。
【0061】
本明細書に記載される本発明の実施形態は、「からなる」実施形態および/または「本質的にからなる」実施形態を含むことが理解される。
【0062】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段の指示がない限り、複数の参照を含む。
【0063】
本明細書の「または」という用語の使用は、代替物が相互に排他的であることを意味するものではない。
【0064】
本出願では、「または」の使用は、当業者によって明示的に記載または理解されない限り、「および/または」を意味する。複数の従属請求項の文脈において、「または」の使用は、複数の先行する独立請求項または従属請求項を遡って指す。
【0065】
当業者に理解されるように、本明細書における値またはパラメータの「約」への言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた実施形態を含む(および説明する)。例えば、「約X」を参照する説明は、「X」の説明を含む。RNAシグネチャースコア値との関連においては、用語「約」は、その示されたスコアおよびその0.1%の範囲を含む。
【0066】
「核酸分子」、「核酸」、および「ポリヌクレオチド」という用語は、互換的に使用されてもよく、ヌクレオチドのポリマーを指してもよい。ヌクレオチドのこのようなポリマーは、天然および/または非天然ヌクレオチドを含有してもよく、限定されないが、DNA、RNA、およびPNAを含む。「核酸配列」とは、核酸分子またはポリヌクレオチドを含むヌクレオチドの直鎖配列を指す。
【0067】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用され、最小の長さに限定されない。アミノ酸残基のこのようなポリマーは、天然または非天然のアミノ酸残基を含有することができ、ペプチド、オリゴペプチド、アミノ酸残基の二量体、三量体、および多量体を含むが、これらに限定されない。全長タンパク質およびその断片の両方が、定義により包含される。用語はまた、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、シアリル化、アセチル化、リン酸化なども含む。さらに、本開示の目的のために、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限り、天然配列に対する欠失、付加、および置換(一般的に保存的性質の)などの修飾を含むタンパク質を指す。これらの修飾は、部位特異的突然変異誘発を介して、意図的であってもよく、または、例えば、タンパク質を生成する宿主の突然変異またはPCR増幅によるエラーを介してなど、偶発的であってもよい。
【0068】
本明細書で使用される場合、ペプチド、ポリペプチドまたは抗体配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」および「相同性」は、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義され、必要に応じて配列を調整し、ギャップを導入した後、最大パーセントの配列同一性を達成し、配列同一性の一部として保存的置換を考慮しない。アミノ酸配列同一性の割合を判定する目的のためのアライメントは、当技術分野の範囲内のさまざまな方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者であれば、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0069】
アミノ酸置換は、ポリペプチド中の一つのアミノ酸を別のアミノ酸と置換することを含みうるが、これに限定されない。置換の例を以下に示す。アミノ酸置換を目的の抗体に導入してもよく、生成物は、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについてスクリーニングされる。
【表1】
【0070】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従ってグループ化されうる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0071】
非保存的な置換は、これらのクラスの一つのメンバーを別のクラスに交換することを伴う。
【0072】
「ICOS」および「誘導性T細胞共刺激」は、本明細書で使用される場合、細胞内でのICOSの発現および処理から生じる任意の天然ICOSを指す。用語は、特に指示がない限り、霊長類(例えば、ヒトおよびカニクイザル)および齧歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物源由来のICOSを含む。用語はまた、例えば、スプライスバリアントまたはアレルバリアントなどの、ICOSの天然に存在するバリアントを含む。シグナル配列(アミノ酸1~20)を有する例示的なヒトICOS前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号11に示される。例示的な成熟ヒトICOSのアミノ酸配列は、配列番号12に示される。ICOSの細胞内部分は、配列番号11および12内に下線を引くことによって表4に示される。シグナル配列(アミノ酸1~20)を有する例示的なマウスICOS前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号13に示される。例示的な成熟マウスICOSのアミノ酸配列は、配列番号14に示される。シグナル配列(アミノ酸1~20)を有する例示的なラットICOS前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号15に示される。例示的な成熟ラットICOSのアミノ酸配列は、配列番号16に示される。シグナル配列(アミノ酸1~20)を有する例示的なカニクイザルICOS前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号17に示される。例示的な成熟カニクイザルICOSのアミノ酸配列は、配列番号18に示される。
【0073】
抗原またはエピトープに「特異的に結合する」という用語は、当該技術分野でよく理解される用語であり、かかる特異的結合を決定する方法も当該技術分野で周知である。分子は、代替の細胞または物質とよりも、特定の細胞または物質と、より頻繁に、より速く、より長い持続時間で、および/またはより高い親和性で反応または会合する場合、「特異的結合」または「優先結合」を示すと言われる。抗体は、他の物質に結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、および/またはより長い持続時間で結合する場合、標的に「特異的に結合する」または「優先的に結合する」。例えば、ICOSエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他のICOSエピトープまたは非ICOSエピトープに結合するよりも、より高い親和性、結合力、より容易に、および/またはより長い持続時間でこのエピトープに結合する抗体である。また、この定義を読むことにより、例えば、第一の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部分またはエピトープ)は、第二の標的に特異的または優先的に結合する場合がある、または結合しない場合があることも理解される。したがって、「特異的結合」または「優先結合」は、必ずしも排他的結合(それを含むことができるが)を必要としない。一般的に、必ずしもそうとは限らないが、結合への言及は優先結合を意味する。「特異性」とは、抗原に選択的に結合する結合タンパク質の能力を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋」とは、少なくとも50%純粋(すなわち、汚染物質を含まない)、より好ましくは少なくとも90%純粋、より好ましくは少なくとも95%純粋、さらにより好ましくは少なくとも98%純粋、最も好ましくは少なくとも99%純粋である物質を指す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗原結合分子(例えば、抗体、抗体断片、または抗体結合領域を含有する足場タンパク質)が結合する標的分子(例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、または脂質などの抗原)上の部位を指す。エピトープは、アミノ酸、ポリペプチド、または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群を含むことが多く、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。エピトープは、標的分子の隣接および/または並置された非隣接残基(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、または脂質部分)の両方から形成され得る。直鎖状エピトープ(例えば、アミノ酸、ヌクレオチド、糖、または脂質部分)とも呼ばれる隣接残基から形成されるエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露時に保持されるが、非隣接残基から形成されるエピトープは、非直鎖状または立体構造エピトープとも呼ばれ、三次フォールディングによって形成され、典型的には、変性溶媒での処理時に失われる。エピトープは、少なくとも3個、少なくとも5個、または8~10個の残基(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)を含み得るが、これらに限定されない。一部の例では、エピトープは、長さが20残基未満(例えば、アミノ酸またはヌクレオチド)、15残基未満、または12残基未満である。
【0076】
二つの抗体は、抗原に対して競合結合を示す場合、抗原内の同じエピトープに結合するか、または重複するエピトープに結合してもよい。したがって、一部の実施形態では、抗体は、同じエピトープまたは重複エピトープへの抗体の結合に特異的に干渉する場合、別の抗体と「交差競合」すると言われる。
【0077】
本明細書の「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体(二重特異性T細胞誘導など)および三重特異性抗体)、ならびに抗体断片を含むがこれらに限定されない、さまざまな抗体構造を包含する。
【0078】
抗体という用語は、Fv、一本鎖Fv(scFv)、Fab、Fab'、di-scFv、sdAb(単一ドメイン抗体)、および(Fab')2(化学的に連結されたF(ab')2を含む)などの抗原に結合することができる断片を含むが、これらに限定されない。抗体のパパイン消化により、それぞれが単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と称される二つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化できることが名称に反映されている残りの「Fc」断片とが生じる。ペプシン処理は、二つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができるF(ab')2断片を生成する。抗体という用語はまた、限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、およびマウス、ヒト、カニクイザルなどのさまざまな種の抗体を含む。さらに、本明細書に提供されるすべての抗体構築物について、他の生物からの配列を有するバリアントも企図される。したがって、抗体のヒトバージョンが開示される場合、当業者であれば、ヒト配列ベースの抗体をマウス、ラット、ネコ、イヌ、ウマなどの配列へと形質転換する方法を理解するであろう。抗体断片はまた、一本鎖scFv、タンデムdi-scFv、ダイアボディ、タンデムtri-sdcFv、ミニボディなどのいずれかの配向も含む。抗体断片はまた、ナノボディ(軽鎖を含まない重鎖の可変ドメインの対などの単一の単量体ドメインを有する抗体である、sdAb)を含む。一部の実施形態では、抗体断片を、特異的な種(例えば、ヒトscFvまたはマウスscFv)と呼ぶことができる。これは、構築物の源ではなく、非CDR領域の少なくとも一部の配列を示す。
【0079】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体集団の一抗体を指し、すなわち、その集団を含む個々の抗体は、わずかな量で存在し得る自然に発生する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原部位に向けられている。さらに、異なる決定因子(エピトープ)に向けられている異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調合剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原の単一の決定因子に向けられている。したがって、モノクローナル抗体の試料は、抗原の同じエピトープに結合することができる。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein,1975,Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製されてもよく、または米国特許第4,816,567号に記載されるように組換えDNA法によって作製されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えばMcCafferty et al.,1990,Nature 348:552-554に記載される技術を使用して生成されたファージライブラリから単離することもできる。
【0080】
「CDR」という用語は、当業者に対する少なくとも一つの識別方法によって定義される相補性決定領域を示す。一部の実施形態では、CDRは、Chothia番号付けスキーム、Kabat番号付けスキーム、KabatとChothiaとの組み合わせ、AbM定義、接触定義、ならびに/またはKabat、Chothia、AbM、および/もしくは接触定義の組み合わせのいずれかに従って定義され得る。例示的なCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)は、L1のアミノ酸残基24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の31~35B、H2の50~65、およびH3の95~102において生じる(Kabat et al.,Sequences of Proteins of lmmunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD (1991))。AbM定義は、例えば、CDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を、アミノ酸残基L1の24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1のH26~H35B、H2の50~58、およびH3の95~102において、含み得る。接触定義は、例えば、CDR(CDR-L1、CDR-L2,CDR-L3,CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を、アミノ酸残基L1の30~36、L2の46~55、L3の89~96、H1の30~35、H2の47~58、およびH3の93~101において、含み得る。Chothiaの定義は、例えばCDR(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3)を、アミノ酸残基L1の24~34、L2の50~56、L3の89~97、H1の26~32...34、H2の52~56、およびH3の95~102において、含み得る。V中のCDR1を除き、CDRは、一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。抗体内のさまざまなCDRを適切な数字および鎖の種類によって指定することができ、限定されることなく、a)CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、およびCDR-H3、b)CDRL1、CDRL2、CDRL3、CDRH1、CDRH2、およびCDRH3、c)LCDR-1、LCDR-2、LCDR-3、HCDR-1、HCDR-2、およびHCDR-3、またはd)LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2、およびHCDR3などが含まれる。本明細書で使用される「CDR」という用語は、超可変ループを含むHVRまたは「超可変領域」を包含する。例示的な超可変ループは、アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)(H1)、53-55(H2)、および96-101(H3)に生じる(ChothiaおよびLesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。
【0081】
「重鎖可変領域」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも三つの重鎖CDRを含む領域を指す。一部の実施形態では、重鎖可変領域は、三つのCDRと、少なくともFR2およびFR3とを含む。一部の実施形態では、重鎖可変領域は、少なくとも重鎖HCDR1、フレームワーク(FR)2、HCDR2、FR3、およびHCDR3を含む。一部の実施形態では、重鎖可変領域はまた、FR1の少なくとも一部および/またはFR4の少なくとも一部を含む。
【0082】
「重鎖定常領域」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも三つの重鎖定常ドメインのCH1、CH2、およびCH3を含む領域を指す。当然ながら、ドメイン内の非機能変更的欠失および変更は、別段の指定がない限り、「重鎖定常領域」という用語の範囲内に包含される。非限定的な例示的重鎖定常領域は、γ、δ、およびαを含む。非限定的な例示的重鎖定常領域は、ε、およびμも含む。各重定常領域は、抗体アイソタイプに対応する。例えば、γ定常領域を含む抗体はIgG抗体であり、δ定常領域を含む抗体はIgD抗体であり、α定常領域を含む抗体はIgA抗体である。さらに、μ定常領域を含む抗体はIgM抗体であり、ε定常領域を含む抗体はIgE抗体である。特定のアイソタイプは、サブクラスにさらに細分化することができる。例えば、IgG抗体には、IgG1(γ定常領域を含む)抗体、IgG2(γ定常領域を含む)抗体、IgG3(γ定常領域を含む)抗体、およびIgG4(γ定常領域を含む)抗体が含まれるが、これらに限定されず、IgA抗体には、IgA1(α定常領域を含む)抗体およびIgA2(α定常領域を含む)抗体が含まれるがこれらに限定されず、IgM抗体にはIgM1およびIgM2が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
「重鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、少なくとも重鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態では、重鎖は、重鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「完全長重鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0084】
「軽鎖可変領域」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも三つの軽鎖CDRを含む領域を指す。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、三つのCDRと、少なくともFR2およびFR3とを含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、少なくとも軽鎖LCR1、フレームワーク(FR)2、LCD2、FR3、およびLCD3を含む。例えば、軽鎖可変領域は、軽鎖CDR1、フレームワーク(FR)2、CDR2、FR3、およびCDR3を含むことができる。一部の実施形態では、軽鎖可変領域はまた、FR1の少なくとも一部および/またはFR4の少なくとも一部を含む。
【0085】
「軽鎖定常領域」という用語は、本明細書で使用される場合、軽鎖定常ドメイン、Cを含む領域を指す。非限定的な例示的軽鎖定常領域は、λおよびKを含む。当然ながら、ドメイン内の非機能変更的欠失および変更は、別段の指定がない限り、「軽鎖定常領域」という用語の範囲内に包含される。
【0086】
「軽鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、少なくとも軽鎖可変領域を含むポリペプチドを指す。一部の実施形態では、軽鎖は、軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む。「完全長軽鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、リーダー配列を伴う、または伴わない、軽鎖可変領域および軽鎖定常領域を含むポリペプチドを指す。
【0087】
本明細書の目的における「受容体ヒトフレームワーク」は、以下に定義されるように、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(V)フレームワークまたは重鎖可変ドメイン(V)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する受容体ヒトフレームワークは、その同じアミノ酸配列を含み得るか、またはアミノ酸配列変化を含み得る。一部の実施形態では、アミノ酸変化の数は、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、または2個以下である。一部の実施形態では、V受容体ヒトフレームワークは、Vヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0088】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(KD)によって表され得る。親和性は、当該技術分野で公知の一般的方法によって測定することができる(例えば、ELISA KD、KinExA、生体層干渉計(BLI)、および/または本明細書に記載されるものを含む表面プラズモン共鳴デバイス(BIAcore(登録商標)デバイスなど)など)。
【0089】
本明細書で使用される場合、「KD」、「Kd」、「Kd」、または「Kd値」という用語は、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指す。
【0090】
「生物学的活性」という用語は、分子の任意の一つまたは複数の(インビボで天然に存在するか、または組み換え手段によって提供される、もしくは可能になる)生物学的特性を指す。生物学的特性としては、限定されないが、受容体に結合すること、細胞増殖を誘導すること、細胞増殖を阻害すること、他のサイトカインを誘導すること、アポトーシスを誘導すること、および酵素活性が挙げられる。一部の実施形態では、ICOSタンパク質の生物活性としては、例えば、Th1細胞およびTh2細胞に関連するT細胞増殖およびサイトカイン分泌の共刺激、Treg細胞の調節、転写因子遺伝子発現の調節を含むT細胞分化への影響、PI3KおよびAKT経路を介したシグナル伝達の誘導、およびADCCの媒介が挙げられる。
【0091】
用語「実質的に類似している」または「実質的に同じ」は、本明細書で使用される場合、当業者が、二つ以上の値の差に、当該値によって測定される生物学的特性の文脈内で、生物学的および/または統計的有意性がほとんどまたは全くないと見なすような、二つ以上の数値の間の十分に高度な類似性を示す。一部の実施形態では、二つ以上の実質的に類似した値は、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、または約50%以下のうちのいずれか一つによる差がある。
【0092】
語句「実質的に異なっている」は、本明細書で使用される場合、当業者が、二つの値の差に、当該値によって測定される生物学的特性の文脈内で、統計的有意性があると見なすような、二つの数値の間の十分に高度な差を示す。一部の実施形態では、二つの実質的に異なる数値は、約10%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約100%超のうちのいずれか一つによる差がある。
【0093】
語句「実質的に低減された」は、本明細書で使用される場合、当業者が、二つの値の差に、当該値によって測定される生物学的特性の文脈内で、統計的有意性があると見なすような、数値と基準数値との間の十分に高度な低減を示す。一部の実施形態では、実質的に低減された数値は、基準値と比較して、約10%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約100%超のうちのいずれか一つによる低減がある。
【0094】
語句「実質的に増加した」は、本明細書で使用される場合、当業者が、二つの値の差に、当該値によって測定される生物学的特性の文脈内で、統計的有意性があると見なすような、数値と基準数値との間の十分に高度な増加を示す。一部の実施形態では、実質的に増加した数値は、基準値と比較して、約10%超、約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、または約100%超のうちのいずれか一つによる増加がある。
【0095】
「単離された」という用語は、本明細書で使用される場合、それが一般的に天然に見られる、または生成される構成要素の少なくとも一部から分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の構成要素の少なくとも一部から分離されたときに「単離された」と称される。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌され、ポリペプチドを含有する上清を、それを産生した細胞から物理的に分離する場合、ポリペプチドを「単離する」と見なされる。同様に、ポリヌクレオチドは、それが典型的に天然に見出される大きなポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合には、ゲノムDNAまたはミトコンドリアDNAなど)の一部ではないとき、または、例えば、RNAポリヌクレオチドの場合、産生された細胞の少なくとも一部の構成要素から分離されるとき、「単離された」と称される。したがって、宿主細胞内のベクターに含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と呼称され得る。
【0096】
「個体」、「患者」、または「対象」という用語は、本明細書では、動物、例えば哺乳動物を指すために互換的に使用される。一部の実施形態では、ヒト、齧歯類、サル、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、哺乳類実験動物、哺乳類家畜、哺乳類競技用動物、および哺乳類愛玩動物を含むがこれに限定されない、哺乳動物を治療する方法が提供される。一部の例では、「個体」または「対象」は、疾患または障害の治療を必要とする個体または対象を指す。一部の実施形態では、治療を受ける対象は、対象が治療に関連する障害を有する、または障害を発症する十分なリスクがあると特定されたという事実を指定する患者であり得る。
【0097】
「試料」または「患者試料」という用語は本明細書で使用される場合、例えば、物理的、生化学的、化学的、および/または生理学的特性に基づいて、特徴付けられるおよび/または特定される細胞および/または他の分子実体を含む、関心のある対象から得られるまたは誘導される組成物を指す。例えば、「検査試料」という語句およびその変形は、特徴付けられるべき細胞および/または分子実体を含むことが予想される、または知られている、関心のある対象から得られた任意の試料を指す。「組織または細胞試料」とは、対象または患者の組織から得られた類似の細胞の集まりを意味する。組織または細胞試料の供給源は、血液(例えば、末梢血)または任意の血液成分;新鮮、凍結および/または保存された器官または組織試料または生検もしくは吸引物からの固形組織;脳脊髄液、羊水、腹膜液、または間質液などの体液;対象の妊娠中または発達中の任意の時点の細胞であり得る。組織試料はまた、初代細胞または培養細胞または細胞株であってもよい。任意で、組織または細胞試料は、疾患組織/器官から得られる。組織試料は、保存剤、抗凝固剤、緩衝剤、固定剤、栄養剤、抗生物質など、自然界では組織と自然に混合されない化合物を含み得る。一部の実施形態では、試料は、CD4+細胞を含む、対象または患者から得られた末梢血を含む。一部の実施形態では、試料は、末梢血から単離されたCD4+細胞を含む。一部の実施形態では、試料は、末梢血単核細胞(PBMC)の試料である。
【0098】
本明細書で使用される場合、「対照」、「対照試料」、「参照」、または「参照試料」は、比較の目的で使用される任意の試料、標準、またはレベルを指す。対照または参照は、健常および/または疾患のない試料から得ることができる。一部の例では、対照または参照は、未処理の試料または患者から得ることができる。一部の例では、参照は、対象個体の非疾患または非治療試料から得られる。一部の例では、参照は、対象または患者ではない一つまたは複数の健康な個体から得られる。一部の実施形態では、対照試料、参照試料、参照細胞、または参照組織は、治療(例えば、一つまたは複数の抗癌治療)の一回または複数回の投与の前、または本発明の方法のいずれかを受ける前の時点で、患者または対象から得られる。
【0099】
「疾患」または「障害」は、本明細書で使用される場合、治療が必要および/または望ましい状態を指す。一部の実施形態では、疾患または障害は、癌である。
【0100】
「癌」および「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、動物における任意の異常な細胞または組織の成長または増殖を指す互換性のある用語である。本明細書で使用される場合、「癌」および「腫瘍」という用語は、固形癌および血液/リンパ性癌を包含し、また悪性、前癌性、および異形成などの良性の増殖も包含する。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより特定の非限定的な例としては、胃癌、乳癌(例:トリプルネガティブ乳癌(TNBC))、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮癌、小細胞肺癌、下垂体癌、食道癌、星状細胞腫、軟部組織肉腫、肺腺癌、肺扁平上皮癌、腹膜癌、肝細胞癌、消化器癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌(子宮体部子宮内膜癌を含む)、唾液腺癌、腎臓癌、腎癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、脳癌、精巣癌、胆管癌、胆嚢癌、黒色腫、およびさまざまなタイプの頭頸部癌が挙げられる。これらの癌、およびその他の癌は、本発明の方法に従って治療または分析することができる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「治療」は、有益なまたは望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。本明細書で使用される場合、「治療」は、ヒトを含む哺乳動物における疾患に対する治療薬の任意の投与または適用を網羅する。本開示の目的上、有益な、または望ましい臨床結果としては:一つまたは複数の症状の緩和、疾患の程度の減少、疾患の拡散(例えば、転移、例えば 肺またはリンパ節への転移)の予防または遅延、疾患の再発の予防または遅延、疾患の進行の遅延または緩徐、病状の改善、疾患または疾患の進行の阻害、疾患またはその進行の阻害または遅延、発生の阻止、および緩解(部分または完全)のいずれか一つまたは複数を含まれるが、これらに限定されない。また、「治療」には、増殖性疾患の病理学的結果の低減も含まれる。本明細書に提供される方法は、治療のこれらの態様のうちのいずれか一つまたは複数を企図する。上記に沿って、治療という用語は、障害のあらゆる側面の100%の除去を必要としない。
【0102】
「寛解」とは、抗癌療法を投与しないことと比較して、一つまたは複数の症状の軽減または改善を意味する。「寛解」には、症状の持続時間の短縮または低減も含まれる。
【0103】
癌の文脈において、「治療する」という用語は、癌細胞の増殖の抑制、癌細胞の複製の抑制、全体的な腫瘍量の減少、および疾患に関連する一つまたは複数の症状の寛解のいずれかまたはすべてを含む。
【0104】
「防止」は、本明細書で使用される場合、疾患にかかりやすいが、まだ疾患と診断されていない対象における疾患の発生または再発に関して、予防を提供することを含む。特に明記されていない限り、「低減する」、「抑制する」または「防止する」という用語は、常に完全な防止を示すものではなく、または要求とするものでもない。
【0105】
「所定のカットオフ」および「所定のレベル」とは、一般に、所定のカットオフ/レベルがすでにさまざまな臨床パラメータ(例えば、疾患の重症度、進行/非進行/改善など)と関連または関係づけられている所定のカットオフ/レベルに対するアッセイ結果を比較することにより、診断/予後/治療有効性の結果を評価するために用いられる、アッセイカットオフ値を指す。本開示は、例示的な所定のレベルを提供し得るが、カットオフ値が、免疫測定法の性質(例えば、用いられる抗体など)に応じて変化し得ることは周知である。さらに、本明細書の開示を他の免疫測定法に適合させて、本開示に基づいて、それらの他の免疫測定法のために免疫測定法特異的カットオフ値を得ることは、十分に当業者の範囲内である。所定のカットオフ/レベルの正確な値は、アッセイ間で変化し得るが、本明細書に記載される相関関係(ある場合)は、概して適用可能であり得る。
【0106】
本明細書に記載される「RNAシグネチャースコア」は、表1の遺伝子シグネチャーの各遺伝子および正規化遺伝子セット(例えば、表2;最初の10個の遺伝子、または全11個の遺伝子を参照)に対するRNAレベルを決定することによって計算される。一部の実施形態では、RNAレベルは、log2変換される。正規化遺伝子のlog2変換されたRNAレベルの算術平均が取得され、この数は、各シグネチャー遺伝子のlog2変換されたRNAレベルから減算され、この値が10に加算される。これにより、各シグネチャー遺伝子に対して、ハウスキーパーで正規化され、log2変換された値を得る。次に、これらの値を指数として用いて変換し(各値の指数として2を取る)、その後にlog10変換し、重みを付けない、log10変換された、ハウスキーパー正規化発現レベルを求める。次に、各シグネチャー遺伝子の重み付けは、表1の第四列の各遺伝子に示されたそれぞれの因子に対して、非重み化、log10変換されハウスキーパーで正規化された発現レベルを乗じることによって行われる。次いで、最終加重スコアは、シグネチャーの各遺伝子に対して加重数を加算することによって取得される。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約2.97以上である場合に、「上昇した」とみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約3.39以上である場合に、「上昇した」とみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、3.40であるか、または約3.40以上である場合に、「上昇した」とみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約3.58以上である場合に、「上昇した」とみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約2.97~3.58以上である場合に、「上昇した」とみなされる。
【0107】
一部の実施形態では、「上昇したICOSのレベル」、「上昇したICOSレベル」、「上昇したレベルのICOS」、「ICOSHIGH」、および「ICOShi」という用語は、例えば、一つまたは複数の抗癌療法で対象を治療した後、対象の末梢血試料中の対象の細胞(例えば、CD4+ T細胞)でICOSレベルが増加したことを指す。増加したレベルは、例えば、治療されている対象からの末梢血試料であり得る対照と比較して決定することができるが、一つまたは複数の抗癌療法による任意の治療の前、または一つもしくは複数の抗癌療法の二回目以降のサイクルによる治療の前のいずれかに決定することができる。あるいは、対照は、健康な個体の一致した試料(例えば、末梢血試料)からのレベルとすることができる。一部の実施形態では、ICOSのレベルは、発現されたタンパク質のレベルで決定され、これは、一部の実施形態では、ICOSの細胞内部分に向けられた抗体を使用して検出され得る。一部の実施形態では、かかる抗体を使用した検出は、フローサイトメトリーの使用によって行われる。一部の実施形態では、対照と比較して平均蛍光強度(MFI)が少なくとも2倍(例えば、少なくとも3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、または15倍)に増加していることは、上昇したICOSレベルが検出されたことを示す。一部の実施形態では、末梢血試料中のCD4+ T細胞の少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)でICOSレベルの増加が検出されたことは、対象がICOS hi試料を有することを示す。一部の実施形態では、末梢血液試料中のCD4+ T細胞の少なくとも5%(例えば、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%)で、対照と比較して平均蛍光強度(MFI)が少なくとも2倍(例えば、少なくとも3倍、4倍、5倍、7.5倍、10倍、または15倍)に増加していることは、上昇したICOSレベルが検出されたことを示す。一部の実施形態では、上昇したICOSレベルは、末梢血検査試料中のCD4+ T細胞における全ICOS発現レベル(例えば、mRNAレベルまたはタンパク質レベル)が、対照試料と比較して、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、100%、またはそれ以上に増加することを意味する。一部の実施形態では、上昇したICOSレベルは、末梢血試料中のCD4+ T細胞における全ICOS発現レベル(例えば、mRNAレベルまたはタンパク質レベル)が、対照試料と比較して、少なくとも約1.1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、500倍、1000倍、またはそれ以上に増加することを意味する。
【0108】
「抑制」または「抑制する」という用語は、任意の表現型特性の減少もしくは停止、またはその特性の発生率、程度、もしくは可能性の減少または停止を指す。「低減する」または「抑制する」とは、基準と比較して、活性、機能、および/または量を減少させる、低減する、または阻止することである。一部の実施形態では、「低減する」または「抑制する」とは、20%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。一部の実施形態では、「低減する」または「抑制する」とは、50%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。一部の実施形態では、「低減する」または「抑制する」とは、75%、85%、90%、95%以上の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。一部の実施形態では、上述の量は、同じ期間にわたる対照用量(プラセボなど)と比較して、一定期間にわたって抑制または減少する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「疾患の発症を遅延する」は、疾患(癌など)の発症を延期、阻害、緩徐、遅延、安定化、抑圧、および/または順延することを意味する。この遅延は、疾患および/または治療される個体の病歴に応じて、さまざまな時間の長さであり得る。当業者には明らかであるように、十分または有意な遅延は、実質的に、個体が疾患を発症しないことにおいて予防を包含し得る。例えば、転移の発生などの後期ステージの癌を遅延させることができる。
【0110】
本明細書で使用される場合、機能または活性を「抑圧する」ことは、目的の条件またはパラメータを除く以外は、同一の条件で比較して、あるいは別の条件で比較して、機能または活性を低減することである。例えば、腫瘍増殖を抑圧する抗体は、抗体の非存在下での腫瘍の増殖速度と比較して、腫瘍の増殖速度を低減する。
【0111】
物質/分子、アゴニスト、またはアンタゴニストの「治療有効量」は、個体の病態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において所望の反応を誘発するための物質/分子、アゴニスト、またはアンタゴニストの能力などの要因によって変化し得る。治療有効量はまた、物質/分子、アゴニスト、またはアンタゴニストの任意の毒性または有害効果を、治療有益効果が上回るものである。治療有効量は、一回または複数回の投与で送達され得る。治療有効量は、望ましい治療および/または予防結果を、必要な用量および期間で達成するための有効な量を指す。本発明の治療の治療有効量は、癌治療の評価に一般的に使用されるさまざまな評価項目によって測定することができ、生存期間の延長(OSおよびPFSを含む)、客観的応答(CRまたはPRを含む)の結果、腫瘍の退縮、腫瘍の重量またはサイズの縮小、疾患進行までの時間の延長、生存期間の延長、PFSの延長、OS率の改善、奏効期間の延長、およびクオリティ・オブ・ライフ(QOL)の改善、および/または癌の症状の改善を含むが、これらに限定されない。
【0112】
「薬学的に許容可能な担体」とは、対象に投与するための「医薬組成物」を一緒に含む治療剤と共に、当技術分野で従来的に使用される非毒性の固体、半固体、または液体充填剤、希釈剤、封入材料、製剤補助剤、または担体を指す。薬学的に許容可能な担体は、使用される用量および濃度でレシピエントにとって非毒性であり、製剤の他の成分と適合性がある。薬学的に許容可能な担体は、使用される製剤に適切である。
【0113】
「滅菌」製剤は、無菌であるか、または生きた微生物およびその胞子を本質的に含まない。
【0114】
一つまたは複数のさらなる治療剤を「組み合わせた」投与には、同時(同時発生的)投与および任意の順序での連続投与または順次投与が含まれる。
【0115】
「同時発生的」という用語は本明細書では、投与の少なくとも一部が時間的に重複する場合、または一つの治療剤の投与が他の治療剤の投与と比較して短期間(例えば、一日以内)に収まる場合の、二つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、二つ以上の治療剤は、ほぼ指定の分数以下の時間間隔で投与される。
【0116】
「順次に」という用語は本明細書では、一つまたは複数の薬剤の投与が一つまたは複数の他の薬剤の投与を中断した後も続く、または一つまたは複数の薬剤の投与が一つまたは複数の他の薬剤の投与前に開始される、二つ以上の治療剤の投与を指すために使用される。例えば、二つ以上の治療剤の投与は、ほぼ指定の分数を超える時間間隔で投与される。
【0117】
本明細書で使用される場合、「併用」とは、ある治療法を別の治療法に加えて投与することを指す。したがって、「併用」とは、ある治療法を他の治療法の投与前、間、または後に、個体に投与することを指す。
【0118】
「標識」および「検出可能な標識」という用語は、反応(例えば、ポリヌクレオチド増幅または抗体結合)を検出可能にするために、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに付着した部分を意味する。標識を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「検出可能に標識された」と称され得る。したがって、「標識結合タンパク質」という用語は、結合タンパク質の同定を提供する標識が組み込まれたタンパク質を指す。「標識オリゴヌクレオチド」、「標識プライマー」、「標識プローブ」などの用語は、標識オリゴヌクレオチド、プライマー、またはプローブを含むか、またはそれらにハイブリダイズする核酸の同定を提供する、標識が組み込まれたポリヌクレオチドを指す。一部の実施形態では、標識は、例えば、放射性標識アミノ酸の組み込み、または標識アビジン(例えば、光学的または比色法によって検出され得る蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出され得るビオチニル部分のポリペプチドへの付着など、視覚的または器具的手段によって検出可能なシグナルを生成できる、検出可能なマーカーである。標識の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:放射性同位体または放射性核種(例えば、H、14C、35S、90Y、99Tc、111ln、125I、131I、177Lu、166Ho、または153Sm);色原体、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニドリン光体)、酵素標識(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);化学発光マーカー;ビオチニル基;二次レポーターにより認識された所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ);およびガドリニウムキレートなどの磁性造影剤。免疫測定法に一般的に用いられる標識の代表例には、例えば、アクリジニウム化合物などの光を生成する部分、および例えばフルオレセインなどの蛍光を生成する部分が含まれる。一部の実施形態では、部分自体は検出可能に標識化されなくてもよいが、さらに別の部分との反応時に検出可能になり得る。
【0119】
「抱合体」という用語は、治療剤または細胞傷害剤などの第二の化学部分に化学的に連結される抗体を指す。「薬剤」という用語は、化合物、化合物の混合物、生体高分子、または生体材料から作製された抽出物を含む。一部の実施形態では、治療剤または細胞傷害剤は、百日咳毒素、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシン(anthracin)ジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-ジヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ならびにピューロマイシンおよびその類縁体または相同体を含むが、これらに限定されない。免疫測定法の文脈において用いられる場合、抱合抗体は、検出抗体として使用される検出可能に標識された抗体であってもよい。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「フローサイトメトリー」は、一般に、全細胞または細胞成分などの生物学的粒子をフローサイトメトリーによって特徴付けるための技術を指す。免疫細胞の試料に対してフローサイトメトリーを実施するための方法は当技術分野で周知である(例えば、Jaloszeski et al.,Method in Molecular Biology(1998),vol.91:Flow Cytometry Protocols,Humana Press;Longobanti Givan,(1992)Flow Cytometry,First Principles,Wiley Lissを参照)。フローサイトメトリーのすべての公知の形態、特に蛍光標識分子がフローサイトメトリーによって評価される、蛍光活性化細胞分類(FACS)を含むことが意図される。
【0121】
「増幅」という用語は、核酸配列またはその相補体の一つまたは複数のコピーを生成するプロセスを指す。増幅は、線形または指数関数的(例えば、PCR)であってもよい。
【0122】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」の技術は、本明細書で使用される場合、一般に、例えば米国特許 第4,683,195号に記載されるように、RNAおよび/またはDNAなどの核酸の特定の領域が増幅される手順を指す。一般に、オリゴヌクレオチドプライマーは、増幅されるテンプレートの反対側の鎖に、所望の距離だけ離れてハイブリダイズするように設計される。PCRは、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列、および全細胞RNA、バクテリオファージまたはプラスミド配列などから転写されたcDNAを増幅するために使用することができる。
【0123】
「定量的リアルタイムPCR」または「qRT-PCR」は、増幅された産物の量または相対量を定量化できるようにPCRを実施するPCRの形態を指す。この技術は、Cronin et al.,Am.J.Pathol.164(l):35-42(2004);およびMa et al.,Cancer Cell 5:607-616(2004)を含む、さまざまな出版物に記載されている。
【0124】
「標的配列」、「標的核酸」、または「標的核酸配列」という用語は、一般に、目的のポリヌクレオチド配列、例えば、qRT-PCRを用いた増幅のために標的とされるポリヌクレオチド配列を指す。
【0125】
「検出」という用語は、直接的および間接的検出を含む、任意の検出手段を含む。
【0126】
II.RNAシグネチャーの決定
一部の実施形態では、本発明の方法は、対象の癌の試料のRNAシグネチャースコアを決定することを含む。したがって、RNAシグネチャースコアは、対象から取得された癌を含む組織の試料(例えば、腫瘍試料、血液試料、または組織が癌細胞を含む組織試料)において決定され得る。
【0127】
a.試料調製
本発明に従って分析され得る癌は、任意に、初発の、転移性、または再発性であってもよく、および任意のタイプであってもよい(例えば、本明細書の他の箇所に列挙されるように)。さらに、癌は、例えば、ステージI、II、III、またはIVを含む任意のステージ、および/または任意の組織構造であってもよい。癌を有する対象は、任意の年齢または性別であってもよく、任意の治療歴および/または疾患または寛解の程度または期間を有してもよい。
【0128】
癌試料は、例えば、癌のタイプ、位置、およびサイズを含む因子に基づいて選択される様々な異なる手順を使用して取得することができる。例示的な方法には、組織生検、例えば、針生検(例えば、細針吸引、コア針生検、および画像誘導生検)、外科生検(例えば、切開生検または切除生検)、液体生検(例えば、循環腫瘍細胞を得ることによって)、内視鏡生検、およびスクレイプまたはブラシ生検が含まれる。
【0129】
試料は、例えば、癌のタイプおよび使用されるアッセイフォーマットに基づいて選択される標準的な方法を使用して、RNAシグネチャーの検出のために処理される。特定の実施形態では、腫瘍組織は、RNAの単離前に、残りの試料から顕微解剖されてもよい。例えば、試料は、例えば、中性緩衝ホルマリン、グルタルアルデヒド、またはパラホルムアルデヒドを使用して固定することができる。いくつかの実施例では、ホルマリン内に固定された組織試料は、パラフィン中にも埋め込まれ、ホルマリン固定パラフィン包埋(またはFFPE)組織試料を調製する。組織試料を切片化し、新鮮な標本としてアッセイすることができる。あるいは、組織試料は、さらなる処理、例えば、切片化または核酸抽出のために凍結されてもよい。他の実施例では、試料は、組織もしくは細胞抽出物の形態であってもよく、または単離された個々の細胞の形態であってもよい。したがって、試料は、固形組織試料または切片、腫瘍、断片、もしくは抽出物由来の液体、リンパ組織、血液、または癌細胞を含む他の組織であってもよい。さらに、癌細胞は、試料から非癌性細胞を除去するために、培養、洗浄、または、さもなければ選択されてよく、および、任意に、癌細胞は、蛍光活性化細胞分類または他の細胞分類技術によって分類することができる。検出は、組織、細胞、組織抽出物、細胞抽出物、全細胞溶解物、タンパク質抽出物、および核酸抽出物(例えば、RNA抽出物)上で実施することができる。後者については、RNAは、例えば、グアニジン酸-酸-フェノール抽出物(TRIzolおよびTRI試薬)、フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzolB Biogenesis)、シリカ技術およびグラスファイバーフィルター(例えば、RNeasy RNA調製キット(Qiagen))、磁気ビーズ技術(例えば、dynabeads mRNA DIRECT micro)、塩化リチウムおよび尿素単離、オリゴ(dt)-セルロースカラムクロマトグラフィー、および非カラムポリ(A)+精製などの、標準的なRNA抽出技術およびキットを使用して、細胞から抽出することができる。
【0130】
b.検出方法
RNAシグネチャーの構成要素は、転写ポリヌクレオチド、バリアント、部分、またはその逆転写物(例えば、mRNA前駆体、mRNA、スプライスバリアント、またはcDNA;例えば、表1に記述される例示的標的領域を参照)の分析によって、試料中に検出され得る。使用できるRNA検出法には、例えば、分子ビーコン検出分子と組み合わせた核酸配列ベース増幅(NASBA)(Compton、Nature 350(6313):91~92、1991)、フラップエンドヌクレアーゼベースのアッセイ(例えば、InvaderTM、Third Wave Technologies)、分岐DNA(QuanitGeneTM、Panomics)またはHybrid CaptureTM(Digene)を有する直接mRNAキャプチャー、RNA-seq、RT-PCR、定量的PCR、マイクロアレイ分析、リガーゼ鎖反応、RNAse保護、アレイ検出と組み合わせたヌクレアーゼ保護(例えば、ArrayPlateTM、HTGMolecular、Tucson,Arizona;Martel et al.,Assay and Drug Dev.Tech.1(1):61-72,2002)、ノーザンブロッティング、および核ランオンアッセイ、が含まれる。他のアプローチには、捕捉プローブおよびレポータープローブを用いるハイブリダイゼーションベースの方法が含まれ、捕捉プローブは、捕捉プローブ、検体、分析のための検出プローブ(例えば、nCounter(登録商標)解析システムなどのNanoString(登録商標)システム、NanoString(登録商標) Technologies、ワシントン州シアトル)を含む複合体の固定化のための固定化タグに結合された配列を含む。あるいは、RNAは、標識化されたプローブを用いた組織試料のハイブリダイゼーションによって分析することができる。バイオマーカーの発現はまた、例えば、免疫学ベースの方法(例えば、免疫組織化学法(IHC)、ELISA、FACS、キャピラリー電気泳動、HPLC、TLC、RIA、ウェスタンブロッティング、免疫蛍光法、およびプロテオミクス法(例えば、質量分析法)を使用して、タンパク質レベルで分析することができる。RNAの検出のために使用できる例示的な方法に関する追加の詳細は、以下に提供される。
【0131】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、RNA(例えば、mRNA)レベルを測定することを含む。一部の実施形態では、本明細書に提供される方法は、例えば、本明細書に記載されるICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニストの併用療法に対する応答の改善を予測する、または応答の改善に相関する複数のRNAレベルなどの、RNAシグネチャーを測定することを含む。一部の実施形態では、RNAシグネチャーは、少なくとも二つの、少なくとも三つの、少なくとも四つの、少なくとも五つの、少なくとも六つの、少なくとも七つの、少なくとも八つの、少なくとも九つの、少なくとも十の、少なくとも十一の、少なくとも十二の、少なくとも十三の、少なくとも十四の、少なくとも十五の、少なくとも十六の、少なくとも十七の、または少なくとも十八のRNAレベルを含み、RNAレベルは表1から選択されるRNAのレベルである。
【0132】
RNA(例えば、mRNA)レベルを決定する任意の適切な方法を使用し得る。RNAの評価方法には、例えば、相補的核酸プローブを使用したハイブリダイゼーションアッセイ(標的配列に特異的な標識リボプローブを用いたin situハイブリダイゼーション、ノーザンブロット、および関連技術など)、さまざまな核酸増幅アッセイ(標的配列に特異的な相補的プライマーを用いたRT-PCR、および例えば、分岐DNA、SISB A、TMAなどの他の増幅型検出方法など)、およびシークエンシングベースのアッセイ(例えば、RNA配列)が含まれる。
【0133】
したがって、一部の実施形態では、RNA(例えば、mRNA)レベルは、ナノストリング技術の使用によって決定される。
【0134】
一部の実施形態では、RNA(例えば、mRNA)レベルは、定量的RT-PCRによって決定される。一部の実施形態では、mRNAレベルは、デジタルPCRによって決定される。一部の実施形態では、mRNAレベルは、RNA-Seqによって決定される。一部の実施形態では、mRNAレベルは、RNase保護アッセイ(RPA)によって決定される。一部の実施形態では、mRNAレベルは、ノーザンブロットによって決定される。一部の実施形態では、mRNAレベルは、in situハイブリダイゼーション(ISH)によって決定される。一部の実施形態では、mRNAレベルは、定量的RT-PCR、マイクロアレイ、デジタルPCR、RNA-Seq、RNase保護アッセイ(RPA)、ノーザンブロット、およびin situハイブリダイゼーション(ISH)から選択される方法によって決定される。
【0135】
RNA-seqは、次世代シークエンシング方法論を使用したRNA転写物の列挙に基づく技術である。mRNAのレベルは、その配列の断片の観察頻度を使用して決定される(Wang et al.,Nat.Genet.10:57-63,2009参照)。
【0136】
ノーザンブロット法は、電気泳動法を使用してサイズ別にRNA試料を分離し、標的配列の一部または全体に対して相補的なハイブリダイゼーションプローブを用いて検出することを伴う(例えば、Trayhurn,Northern Blotting.Pro.Nutrition Soc.55:583-589,1996参照)。
【0137】
定量的RT-PCRは、mRNAを逆転写し、その後、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって得られたcDNAを増幅することを含み、これは、例えば蛍光を測定することによってリアルタイムで監視することができ、染料シグナルは、生成物の量の読み取りである。染料は、例えば、挿入染料、またはクエンチャーをも含むプローブに付着した染料であってもよく、プローブの分解は染料を放出し、蛍光を生じ、分解はTaqMan(登録商標)アッセイのように、生成物形成によって駆動されるエキゾヌクレアーゼ活性によって触媒される。一部の実施形態では、生物学的試料中の標的mRNAを検出するための方法は、少なくとも一つのプライマーを使用して逆転写により試料からcDNAを産生すること、センスおよびアンチセンスプライマーとして標的ポリヌクレオチドを使用して得られたcDNAを増幅して、その中の標的cDNAを増幅すること、および増幅された標的cDNAの存在を検出することを含む。さらに、こうした方法は、生物学的試料中の標的mRNAのレベルを決定することを可能にする(例えば、本明細書に記載される参照RNAなどの「ハウスキーピング」遺伝子、例えば、参照mRNA配列レベルを同時に調べることによって)、一つまたは複数の工程を含み得る。任意で、増幅された標的cDNAの配列を決定することができる。
【0138】
デジタルPCRでは、試料は複数の反応領域に分割され、PCRは領域内で実施される。陽性である、すなわち検出可能な生成物形成が起こる領域の数を使用して、元の試料中の標的配列のレベルを決定することができる。
【0139】
RPAでは、ハイブリダイゼーション条件下で試料をプローブと接触させ、次いで一本鎖RNAヌクレアーゼと接触させる。標的とプローブの二本鎖複合体の形成は、プローブを分解から保護し、その結果、プローブの残り量を使用して標的のレベルを決定することができる。
【0140】
ISHでは、細胞または組織試料を、標的RNAにハイブリダイズするプローブと接触させ、ハイブリダイゼーションを検出して標的のレベルを決定する。
【0141】
一部の実施形態では、方法は、標的mRNAなどのmRNAが、組織もしくは細胞試料、またはそこから抽出されたRNAにおいて、マイクロアレイを使用して検出されるプロトコルを含む。これらのアッセイでは、試験および対照組織または細胞試料からの試験および対照mRNA試料は、逆転写され標識化され、cDNAプローブを生成する。次に、プローブは、固体支持体上に固定化された核酸のアレイにハイブリダイズされる。アレイは、アレイの各メンバーの配列および位置が既知であるように構成される。特定のアレイメンバーを有する標識化されたプローブのハイブリダイゼーションは、プローブが得られた試料がその遺伝子を発現することを示す。マイクロアレイ技術は、核酸ハイブリダイゼーション技術および計算技術を利用して、単一の実験内の何千もの遺伝子のmRNA発現プロファイルを評価する(例えば、WO01/75166、米国特許第5,700,637号、米国特許第5,445,934号、米国特許第5,807,522号、Lockart、Nature Biotechnology 14:1675-1680、1996;Cheung et al.,Nature Genetics 21(Suppl):15-19,1999、参照) DNAマイクロアレイは、ガラスまたは他の基質上に直接合成されるか、またはスポットされる遺伝子断片を含むミニチュアアレイである。何千もの遺伝子は通常、単一のアレイで表される。一般的なマイクロアレイ実験には、1)試料から単離されたRNAからの蛍光標識された標的の調製、2)標識された標的のマイクロアレイへのハイブリダイゼーション、3)アレイの洗浄、染色、およびスキャン、4)スキャンされた画像の分析、および5)遺伝子発現プロファイルの生成、の工程が含まれうる。2種類のDNAマイクロアレイは、オリゴヌクレオチド(通常は25~70mer)アレイと、cDNAから調製されたPCR生成物を含む遺伝子発現アレイである。アレイを形成する際に、オリゴヌクレオチドは、表面(in situ)上に予め作製され表面にスポットされるか、または直接合成され得る。一部の実施形態では、DNAマイクロアレイは、一塩基多型(SNP)マイクロアレイ、例えば、Affymetrix(登録商標)SNP Array 6.0である。
【0142】
Affymetrix GeneChip(登録商標)システムは、ガラス表面上でのオリゴヌクレオチドの直接合成によって作製されたアレイを含む、市販のマイクロアレイシステムである。プローブ/遺伝子アレイでは、通常は25merであるオリゴヌクレオチドは、半導体ベースのフォトリソグラフィーおよび固相化学合成技術の組み合わせによって、ガラスウエハー上で直接合成される。各アレイは、最大400,000の異なるオリゴを含み、各オリゴは、何百万のコピーで存在する。オリゴヌクレオチドプローブはアレイ上の既知の場所で合成されるため、ハイブリダイゼーションパターンおよびシグナル強度は、遺伝子同一性および相対レベルの観点から、Affymetrix Microarray Suiteソフトウェアによって解釈され得る。各遺伝子は、一連の異なるオリゴヌクレオチドプローブによってアレイ上に表される。各プローブ対は、完全一致オリゴヌクレオチドとミスマッチオリゴヌクレオチドからなる。完全一致プローブは、特定の遺伝子に対して正確に相補的な配列を有し、したがって遺伝子の発現を測定する。ミスマッチプローブは、中心塩基位置での単一塩基置換によって完全一致プローブと異なり、標的遺伝子転写の結合を妨害する。これは、完全一致オリゴに対して測定されたシグナルに寄与するバックグラウンドおよび非特異的ハイブリダイゼーションの決定に役立つ。Microarray Suiteソフトウェアは、ミスマッチプローブのハイブリダイゼーション強度を完全一致プローブのそれから減算して、各プローブセットの絶対または比強度の値を決定する。プローブは、Genbankおよび他のヌクレオチドリポジトリからの現在の情報に基づいて選択される。配列は、遺伝子の3'末端の固有の領域を認識すると考えられる。GeneChipハイブリダイゼーションオーブン(「ロテスリ―」オーブン)を使用して、一度に最大64のアレイのハイブリダイゼーションを実施する。流体ステーション(Fluidics Station)は、プローブアレイの洗浄および染色を行う。これは、完全に自動化されており、四つのモジュールを含み、各モジュールは一つのプローブアレイを有する。各モジュールは、事前にプログラムされた流体プロトコルの使用により、Microarray Suiteソフトウェアを介して独立して制御される。スキャナは、プローブアレイに結合された標識されたcRNAによって放射される蛍光強度を測定する共焦点レーザー蛍光スキャナである。Microarray Suiteソフトウェアを搭載したコンピューターワークステーションは、流体ステーション(Fluidics Station)およびスキャナを制御する。Microarray Suiteソフトウェアは、プローブアレイに対して、事前にプログラムされたハイブリダイゼーション、洗浄、および染色プロトコルを使用して、最大八つの流体ステーション(Fluidics Station)を制御できる。ソフトウェアはまた、適切なアルゴリズムを使用して、ハイブリダイゼーション強度データを取得し、各遺伝子の有無の判定に変換する。最後に、ソフトウェアは、比較解析によって実験間の遺伝子発現の変化を検出し、出力をtxtファイルにフォーマットし、これはさらなるデータ解析のために他のソフトウェアプログラムと共に使用することができる。
【0143】
一部の実施形態では、少なくとも一つのmRNAのレベルが正規化される。一部の実施形態では、少なくとも二つのmRNAのレベルが正規化され、互いに比較される。一部の実施形態では、かかる正規化は、レベルが同時におよび/または同じアッセイ反応で決定されない場合、mRNAレベルの比較を可能にし得る。当業者であれば、アッセイに応じて、少なくとも一つの参照mRNAまたは他の因子などの正規化のための適切なベースを選択することができる。
【0144】
一部の実施形態では、少なくとも一つの参照mRNAはハウスキーピング遺伝子を含む。一部の実施形態では、少なくとも一つの参照mRNAは、一つまたは複数の表2に列挙された正規化遺伝子を含む。一部の実施形態では、少なくとも一つの参照mRNAは、表2に列挙された正規化遺伝子のうち、二個以上、三個以上、四個以上、五個以上、六個以上、七個以上、八個以上、九個以上、十個以上、または十一個すべての正常化遺伝子を含む。一部の実施形態では、表2に列挙された最初の十個の遺伝子が使用される。一部の実施形態では、表2に列挙された十一個の遺伝子すべてが使用される。
【0145】
c.RNAシグネチャースコアの決定
一部の実施形態では、RNAシグネチャースコアは、各試料について以下のように決定される。遺伝子シグネチャー(表1)および正規化遺伝子セット(例えば、表2の最初の10個の遺伝子、または11個すべての遺伝子を参照)の各遺伝子に対する未加工のRNAレベルは、例えば、nCounter(登録商標)解析システム(NanoString(登録商標)Technologies、ワシントン州シアトル)を使用して決定され、これらのレベルは、log2変換によって変換される。正規化遺伝子のlog2変換されたRNAレベルの算術平均が取得され、この数は、各シグネチャー遺伝子のlog2変換されたRNAレベルから減算され、この値が10に加算される。これにより、各シグネチャー遺伝子に対して、ハウスキーパーで正規化され、log2変換された値を得る。次に、これらの値を指数として用いて変換し(各値の指数として2を取る)、その後にlog10変換し、重みを付けない、log10変換された、ハウスキーパー正規化発現レベルを求める。次に、各シグネチャー遺伝子の重み付けは、表1の第四列の各遺伝子に示されたそれぞれの因子に対して、非重み化、log10変換されハウスキーパーで正規化された発現レベルを乗じることによって行われる。次いで、最終加重スコアは、シグネチャーの各遺伝子に対して加重数を加算することによって取得される。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約2.97以上である場合に、上昇したとみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約3.39以上である場合に、上昇したとみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、3.40である場合に、または約3.40以上である場合、上昇したとみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約3.58以上である場合に、上昇したとみなされる。一部の実施形態では、遺伝子シグネチャーは、約2.97~3.58以上である場合に、上昇したとみなされる。
【0146】
上述の方法は、例示にすぎず、上記に記載された情報と同等であるが異なる表現である情報を取得するために、他のアプローチを使用できることが理解される。したがって、例えば、表1の遺伝子シグネチャーと同じ遺伝子、上述と同じ正規化遺伝子セット、および表1の第四列に記載されるものと比例的に同じである重みを使用することが理解されるが、例えば、異なる変換が使用され得る。得られた情報は、上述の方法を使用して得られた情報と同等であるだろうから、したがって、例えば、カットオフ数値が異なっていても、本発明に含まれる。
【0147】
d.キットおよび組成物
本明細書では、本明細書に記載される方法での使用に適したポリヌクレオチド、キット、医薬品、および組成物も提供される。
【0148】
一部の実施形態では、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは単離される。一部の実施形態では、本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、検出可能に標識化され、例えば、放射性同位体、蛍光剤、または発色剤で標識化される。別の実施形態では、ポリヌクレオチドはプライマーである。別の実施形態では、ポリヌクレオチドはオリゴヌクレオチド、例えばmRNA特異的オリゴヌクレオチドである。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、例えば、7~60ヌクレオチド長、9~45ヌクレオチド長、15~30ヌクレオチド長、または18~25ヌクレオチド長でありうる。別の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、例えば、PNA、モルホリノ-ホスホロアミド酸、LNA、または2'-アルコキシアルコキシであってもよい。本明細書に提供されるポリヌクレオチドは、例えば、RNAシグネチャー内に含まれる配列などの標的配列、または上述の参照mRNAなどの参照mRNAの検出に有用である。
【0149】
検出は、上述のように、ハイブリダイゼーション、増幅、および/またはシークエンシングを伴いうる。
【0150】
一部の実施形態では、複数のポリヌクレオチドを含む組成物が提供され、当該複数は、第一のmRNAに特異的な少なくとも第一のポリヌクレオチド、および第二のmRNAに特異的な第二のポリヌクレオチドを含み、第一および第二のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第三のmRNAに特異的な第三のポリヌクレオチドをさらに含み、第三のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第四のmRNAに特異的な第四のポリヌクレオチドをさらに含み、第四のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第五のmRNAに特異的な第五のポリヌクレオチドをさらに含み、第五のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第六のmRNAに特異的な第六のポリヌクレオチドをさらに含み、第六のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第七のmRNAに特異的な第七のポリヌクレオチドをさらに含み、第七のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第八のmRNAに特異的な第八のポリヌクレオチドをさらに含み、第八のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第九のmRNAに特異的な第九のポリヌクレオチドをさらに含み、第九のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十のmRNAに特異的な第十のポリヌクレオチドをさらに含み、第十のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十一のmRNAに特異的な第十一のポリヌクレオチドをさらに含み、第十一のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十二のmRNAに特異的な第十二のポリヌクレオチドをさらに含み、第十二のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十三のmRNAに特異的な第十三のポリヌクレオチドをさらに含み、第十三のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十四のmRNAに特異的な第十四のポリヌクレオチドをさらに含み、第十四のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十五のmRNAに特異的な第十五のポリヌクレオチドをさらに含み、第十五のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十六のmRNAに特異的な第十六のポリヌクレオチドをさらに含み、第十六のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十七のmRNAに特異的な第十七のポリヌクレオチドをさらに含み、第十七のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十八のmRNAに特異的な第十八のポリヌクレオチドをさらに含み、第十八のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。ポリヌクレオチドまたはmRNAを指定するための順序(「第一」、「第二」など)の使用は、場合により、ポリヌクレオチドまたはmRNAが互いに同一でないことを示すと理解される。また、「第一」、「第二」などのポリヌクレオチドがプライマー(例えば、増幅反応を実施するためのプライマー、例えばPCRは関連する方法である)である実施形態では、組成物は、増幅を促進するために逆鎖にハイブリダイズする一つまたは複数の対応するプライマーも任意に含み得ると理解される。さらに、「第一」、「第二」などのポリヌクレオチドが捕捉プローブである実施形態では、組成物は、検出および定量を容易にするために、同じ標的にハイブリダイズする一つまたは複数の対応する検出プローブも任意に含み得ると理解される。
【0151】
一部の実施形態では、組成物は、対象から得られた細胞または組織を含む。一部の実施形態では、組成物は、対象から単離されたmRNAを含む。一部の実施形態では、組成物は、対象から単離されたmRNAから合成されたcDNAを含む。一部の実施形態では、組成物は、対照細胞、組織、mRNA、またはcDNAを含む。
【0152】
一部の実施形態では、組成物は、少なくとも一つの参照mRNAの検出の使用に好適な少なくとも一つのポリヌクレオチドまたは複数のポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、組成物は、定量的RT-PCR、マイクロアレイ、デジタルPCR、RNA-Seq、RPA、ノーザンブロット、またはin situハイブリダイゼーションISHなどのハイブリダイゼーションおよび/または増幅を行うための試薬を含む。かかる試薬は、逆転写酵素活性を有する酵素、DNAポリメラーゼ(好熱性であってもよい)、挿入染料、dNTP、緩衝液、一本鎖RNAヌクレアーゼ、洗剤、固定剤(例えば、ホルムアルデヒド)、共溶媒(例えば、ホルムアミド)などの一つまたは複数を含み得る。
【0153】
一部の実施形態では、RNAシグネチャーまたは複数のポリヌクレオチド中のmRNAから選択されるmRNAに特異的な少なくとも一つのポリヌクレオチド、または複数のポリヌクレオチドを含む、一つまたは複数の容器を含むキットが提供され、当該複数は、少なくとも第一のmRNAに特異的な第一のポリヌクレオチド、および第二のmRNAに特異的な第二のポリヌクレオチドを含み、第一および第二のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第三のmRNAに特異的な第三のポリヌクレオチドをさらに含み、第三のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第四のmRNAに特異的な第四のポリヌクレオチドをさらに含み、第四のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第五のmRNAに特異的な第五のポリヌクレオチドをさらに含み、第五のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第六のmRNAに特異的な第六のポリヌクレオチドをさらに含み、第六のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第七のmRNAに特異的な第七のポリヌクレオチドをさらに含み、第七のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第八のmRNAに特異的な第八のポリヌクレオチドをさらに含み、第八のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第九のmRNAに特異的な第九のポリヌクレオチドをさらに含み、第九のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十のmRNAに特異的な第十のポリヌクレオチドをさらに含み、第十のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十一のmRNAに特異的な第十一のポリヌクレオチドをさらに含み、第十一のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十二のmRNAに特異的な第十二のポリヌクレオチドをさらに含み、第十二のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十三のmRNAに特異的な第十三のポリヌクレオチドをさらに含み、第十三のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十四のmRNAに特異的な第十四のポリヌクレオチドをさらに含み、第十四のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十五のmRNAに特異的な第十五のポリヌクレオチドをさらに含み、第十五のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十六のmRNAに特異的な第十六のポリヌクレオチドをさらに含み、第十六のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十七のmRNAに特異的な第十七のポリヌクレオチドをさらに含み、第十七のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。一部の実施形態では、当該複数は、第十八のmRNAに特異的な第十八のポリヌクレオチドをさらに含み、第十八のmRNAは、RNAシグネチャー中のmRNAから選択される。ポリヌクレオチドまたはmRNAを指定するための順序(「第一」、「第二」など)の使用は、場合により、ポリヌクレオチドまたはmRNAが互いに同一でないことを示すと理解される。また、「第一」、「第二」などのポリヌクレオチドがプライマー(例えば、増幅反応を実施するためのプライマー、例えばPCRは関連する方法である)である実施形態では、キットは、増幅を促進するために逆鎖にハイブリダイズする一つまたは複数の対応するプライマーも任意に含み得ると理解される。さらに、「第一」、「第二」などのポリヌクレオチドが捕捉プローブである実施形態では、キットは、検出および定量を容易にするために、同じ標的にハイブリダイズする一つまたは複数の対応する検出プローブも任意に含み得ると理解される。
【0154】
一部の実施形態では、キットは、少なくとも一つの参照mRNAの検出に好適な少なくとも一つのポリヌクレオチドまたは複数のポリヌクレオチドを含む、一つまたは複数の容器を含む。一部の実施形態では、キットは、定量的RT-PCR、マイクロアレイ、デジタルPCR、RNA-Seq、RNase保護アッセイ(RPA)、ノーザンブロット、およびin situハイブリダイゼーション(ISH)などのハイブリダイゼーションおよび/または増幅を行うための試薬を含む、一つまたは複数の容器を含む。かかる試薬は、逆転写酵素活性を有する酵素、DNAポリメラーゼ(好熱性であってもよい)、挿入染料、dNTP、緩衝液、一本鎖RNAヌクレアーゼ、洗剤、固定剤(例えば、ホルムアルデヒド)、共溶媒(例えば、ホルムアミド)などの一つまたは複数を含み得る。本発明のキットは、任意に、試験試料のRNAシグネチャースコアが、試験試料のRNAシグネチャースコアが上昇したかどうかを判断するために比較することができる、対照試料を含み得る。
【0155】
RNAシグネチャー構成要素の検出に使用するための成分に加えて、本発明のキットは、例えば、対象の試料が上昇したRNAシグネチャースコアを有することが判明した場合に、対象に投与するための一つまたは複数の治療剤を任意に含んでもよい。これらの治療剤は、一つまたは複数のICOSアゴニストおよび/または本明細書に記述したものなどの一つまたは複数のPD-1アンタゴニストを含み得る。これらの構成要素は、投与を容易にするために、任意に投薬形態でキット中に存在し得る。例えば、一部の実施形態では、このような単位用量は、注射用の単回使用のプレフィルド注射器で供給される。一部の実施形態では、単位用量に含まれる組成物は、生理食塩水、スクロースなど;リン酸塩などの緩衝剤;を含み、および/または安定かつ有効なpH範囲内で製剤化され得る。一部の実施形態では、組成物は、例えば滅菌水などの適切な液体の添加時に再構成され得る凍結乾燥粉末として提供され得る。一部の実施形態では、組成物は、例えばスクロースおよびアルギニンを含む、タンパク質凝集を阻害する一つまたは複数の物質を含む。一部の実施形態では、組成物は、ヘパリンおよび/またはプロテオグリカンを含む。一部の実施形態では、単位用量で使用されるICOSアゴニストおよび/またはPD-1アンタゴニストの量は、本明細書に記載される様々な方法および/または組成物に対して本明細書に提供されるいずれかの量であり得る。
【0156】
一部の実施形態では、キットは、RNAシグネチャースコアの決定、および任意に、ICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニスト療法による癌の治療における使用のための指示をさらに含む。キットはさらに、治療に適した対象の選択の説明を含みうる。キットに付属の説明書は、通常、ラベルまたは添付文書(例えば、キットに含まれる紙シート)に書かれた説明書であるが、機械可読の説明書(例えば、磁気または光学保存ディスクに収容される説明書)も許容される。キットは、適切な包装材料にいれられ、それは、例えば、バイアル、ボトル、瓶、軟質包装(例えば、密封されたマイラーまたはビニール袋)などを含みうる。キットは任意に、緩衝剤および解釈情報などの追加の構成要素を提供し得る。したがって、本出願は、バイアル(密封バイアルなど)、ボトル、瓶、軟質包装材料などを含む、製造品も提供する。
【0157】
III.治療方法
上昇したRNAシグネチャースコアを有する対象は、本明細書に記載されるように、ICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニスト療法を投与される。この治療は、対象における癌を予防、改善、または治療する方法に使用することができる。
【0158】
本明細書に記載されるように治療され得る対象は、よって、癌を有する患者を含む。癌のタイプは、本明細書に列挙された、または当技術分野で公知の任意のタイプの癌とすることができる。例示的な癌のタイプには、胃癌、乳癌(例えば、トリプルネガティブ乳癌(TNBC))、肺癌(例えば、非小細胞肺癌(NSCLC))、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、膀胱癌、子宮内膜癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ホジキンリンパ腫、卵巣癌、および頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明の方法に従って治療できる追加の癌のタイプについては、上記の癌の定義を参照されたい。
【0159】
本明細書に記載するように治療が可能である患者は、異なる抗癌療法を以前に受けたことがない患者、および、例えば一回または複数回のICOSアゴニストおよび/またはPD-1アンタゴニスト(または本明細書で記載する他の製剤)を含む治療を含む、一回または複数回の(例えば、1、2、3、4、5回以上の)異なる抗癌療法を以前(例えば、1、2、3、4、5回以上の)用量またはサイクルで受けたことがある患者を含む。
【0160】
本明細書に記載される方法の組み合わせ治療は、当業者によって適切であると判断されるように、同時または順次であり得る。したがって、一部の実施形態では、一つまたは複数のICOSアゴニスト(例えば、本明細書に記載されるように)は、一つまたは複数のPD-1アンタゴニスト(例えば、本明細書に記載されるように)と同時に、その前、または後に投与することができる。投与の前または後に投与された場合、ICOSおよびPD-1標的薬剤の投与は、少なくとも部分的に時間的に重複してもよく、従って同時である。その代わりに、投与は、それらが重複しなくてもよく、従って順次であってもよい。他の実施形態では、一つまたは複数のPD-1アンタゴニスト(例えば、本明細書に記載されるように)は、一つまたは複数のICOSアゴニスト(例えば、本明細書に記載されるように)の前または後に、同時または順次に投与され得る。
【0161】
ICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニスト療法を用いた治療に加えて、本明細書に列挙された抗癌療法(以下を参照)およびその他の当技術分野で公知の任意の一つまたは複数の方法が、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。一部の実施形態では、一つまたは複数の追加の抗癌療法は、二つ以上の抗癌療法である。一部の実施形態では、一つまたは複数の追加の抗癌療法は、三つ以上の抗癌療法である。例えば、とりわけ、免疫療法、化学療法、および癌ワクチンなど、本発明で使用されうる追加の抗癌療法の特定の非限定的な例を以下に示す。一部の実施形態では、一つまたは複数の追加の抗癌療法は、本発明の併用療法の前に投与される。一部の実施形態では、一つまたは複数の追加の抗癌療法は、本発明の併用療法と同時に投与される。一部の実施形態では、一つまたは複数の追加の抗癌療法は、本発明の併用療法の後に投与される。
【0162】
一部の実施形態では、本発明の併用療法(および/または一つまたは複数の抗癌療法)は、定期的な間隔で患者に複数回投与される。これらの複数回の投与は、投与サイクルまたは療法サイクルとも称され得る。一部の実施形態では、併用療法(および/または一つまたは複数の抗癌療法)は、患者に、二サイクル超、三サイクル超、四サイクル超、五サイクル超、十サイクル超、十五サイクル超、または二十サイクル超の間投与される。
【0163】
一部の実施形態では、定期的な間隔は、週一回の用量、二週間に一回の用量、三週間に一回の用量、四週間に一回の用量、五週間に一回の用量、六週間に一回の用量、七週間に一回の用量、八週間に一回の用量、九週間に一回の用量、十週間に一回の用量、十一週間に一回の用量、または十二週間に一回の用量である。
【0164】
治療用抗ICOS抗体
本発明で使用され得る治療用抗ICOS抗体には、ヒト化抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、および本明細書に記載される重鎖および/または軽鎖CDRのいずれかを含む抗体が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、抗体は、単離された抗体である。一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗ICOS抗体は、抗ICOSアゴニスト抗体である。WO2016/154177およびWO2017/070423を参照のこと。これらはそれぞれ参照により本明細書に具体的に援用される。
【0165】
一部の実施形態では、治療用抗ICOSアゴニスト抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(f)配列番号10のアミノ酸配列を含むLCDR3から選択される、少なくとも一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、または六つのCDRを含む。さまざまな実施形態では、一つまたは複数のCDRは、ICOSへの特異的結合を破壊しない置換または欠失を含む。一部の実施形態では、一つまたは複数のCDRは、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の置換を含み、これは任意で保存的アミノ酸での置換を含んでもよい。一部の実施形態では、一つまたは複数のCDRは、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の欠失を含む。
【0166】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR3、(d)配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(f)配列番号10のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む六つのCDRを含む。
【0167】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域とを含む。一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、重鎖可変領域と重鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも一つの重鎖、および軽鎖可変領域と軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む少なくとも一つの軽鎖を含む。一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、各重鎖が重鎖可変領域および重鎖定常領域の少なくとも一部を含む、二つの重鎖と、各軽鎖が軽鎖可変領域および軽鎖定常領域の少なくとも一部を含む、二つの軽鎖とを含む。本明細書で使用される場合、一本鎖Fv(scFv)、または例えば、六つすべてのCDR(三つの重鎖CDRおよび三つの軽鎖CDR)を含む単一のポリペプチド鎖を含む任意の他の抗体は、重鎖および軽鎖を有すると見なされる。一部の実施形態では、重鎖は、三つの重鎖CDRを含む抗ICOS抗体の領域である。一部の実施形態では、軽鎖は、三つの軽鎖CDRを含む治療用抗ICOS抗体の領域である。
【0168】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR3から選択されるVH CDR配列のうちの少なくとも一つ、少なくとも二つ、または三つすべてを含む。
【0169】
一部の実施形態では、治療用抗体は、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むLCDR3から選択されるVL CDR配列のうちの少なくとも一つ、少なくとも二つ、または三つすべてを含む。
【0170】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR3から選択されるVH CDR配列のうちの少なくとも一つ、少なくとも二つ、または三つすべてを含む(I)VHドメインと、(d)配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(f)配列番号10のアミノ酸配列を含むLCDR3から選択されるVL CDR配列のうちの少なくとも一つ、少なくとも二つ、または三つすべてを含む、(II)VLドメインとを含む。
【0171】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗ICOS抗体は、ICOSに結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号3において、合計1~10個のアミノ酸が、置換、挿入、および/または欠失されている。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域(すなわち、FR内)で発生する。任意で、治療用抗ICOS抗体は、配列番号3のVH配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
【0172】
一部の実施形態では、VHは、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む。
【0173】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体が提供され、この抗体は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗ICOS抗体は、ICOSに結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号4において、合計1~10個のアミノ酸が、置換、挿入、および/または欠失されている。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域(すなわち、FR内)で発生する。任意で、治療用抗ICOS抗体は、配列番号4のVL配列を含み、その配列の翻訳後修飾を含む。
【0174】
一部の実施形態では、VLは、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR1、(b)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(c)配列番号10のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む。
【0175】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列と、配列番号4のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む。一部の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に対して置換(たとえば、保存的置換)、挿入、または欠失を含み、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に対して置換(たとえば、保存的置換)、挿入、または欠失を含むが、その配列を含む抗ICOS抗体は、ICOSに結合する能力を保持する。一部の実施形態では、配列番号3において、合計1~10個のアミノ酸が、置換、挿入、および/または欠失されている。一部の実施形態では、配列番号4において、合計1~10個のアミノ酸が、置換、挿入、および/または欠失されている。一部の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、CDRの外側の領域(すなわち、FR内)で発生する。任意で、治療用抗ICOS抗体は、配列番号3のVH配列と、配列番号4のVL配列とを含み、一方または両方の配列の翻訳後修飾を含む。
【0176】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、(b)配列番号6のアミノ酸配列を含むHCDR2、および(c)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR3を含む(I)VHドメインと、(d)配列番号8のアミノ酸配列を含むLCDR1、(e)配列番号9のアミノ酸配列を含むLCDR2、および(f)配列番号10のアミノ酸配列を含むLCDR3を含む(II)VLドメインとを含む。
【0177】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、本明細書に提供される実施形態のいずれかにおけるVHと、本明細書に提供される実施形態のいずれかにおけるVLとを含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号3および配列番号4のVH配列およびVL配列をそれぞれ含み、これらの配列の翻訳後修飾を含む。
【0178】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖、またはそのバリアントを含む。
【0179】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖、またはそのバリアントを含む。
【0180】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号2のアミノ酸配列を含む軽鎖、またはそれらのバリアントを含む。
【0181】
一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、上述の六つのCDRを含み、ICOSに結合する。一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、上述の六つのCDRを含み、ICOSに結合し、Teff細胞の数を増加させ、および/またはTeff細胞を活性化し、および/またはTreg細胞の数を減少させ、および/またはヒトなどの哺乳類におけるTeff細胞対Treg細胞の比率を増加させる。一部の実施形態では、Treg細胞は、CD4+ FoxP3+ T細胞である。一部の実施形態では、Teff細胞はCD8+T細胞である。一部の実施形態では、Teff細胞は、CD4+FoxP3-T細胞および/またはCD8+T細胞である。
【0182】
例示的な治療用抗ICOS抗体としては、限定されないが、JTX-2011(Jounce Therapeutics;米国特許出願公開第2016/0304610号;WO2016/154177号;WO2017/070423号)およびBMS-986226(Bristol-Myers Squibb)が挙げられる。
【0183】
概して、治療用抗ICOS抗体は、用量当たり、約10μg/kg体重~約100mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、用量当たり、約50μg/kg体重~約5mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、用量当たり、約100μg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、用量当たり、約100μg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。一部の実施形態では、治療用抗ICOS抗体は、用量当たり、約0.5mg/kg体重~約20mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。一部の実施形態では、抗ICOS抗体は、用量当たり、約0.05mg/kg体重~約10mg/kg体重の範囲の量で投与され得る。一部の実施形態では、抗ICOS抗体は、約5mg/kg体重以下、例えば4mg/kg未満、3mg/kg未満、2mg/kg未満、または1mg/kg未満の抗体の範囲の量で投与されてもよい。具体的な例では、治療用抗ICOS抗体は、0.1mg/kg、0.3mg/kg、または1.0mg/kgで、3、6、9、または12週間に一回投与される。
【0184】
PD-1療法
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、PD-1療法である。PD-1療法は、PD-L1および/またはPD-L2へのPD-1結合を調節する任意の療法を包含する。PD-1療法は、例えば、PD-1および/またはPD-L1と直接相互作用し得る。一部の実施形態では、PD-1療法は、PD-1の活性に直接結合する、および/または影響を及ぼす分子を含む。一部の実施形態では、PD-1療法は、PD-L1の活性に直接結合する、および/または影響を及ぼす分子を含む。したがって、PD-1またはPD-L1に結合し、PD-1とPD-L1の相互作用を阻害する抗体は、PD-1治療薬である。PD-1療法の望ましいサブタイプが意図される場合、PD-1と直接相互作用する分子が関与する療法については「PD-1特異的」、またはPD-L1と直接相互作用する分子については「PD-L1特異的」という語句によって、必要に応じて指定される。別途指定されない限り、PD-1療法に関する本明細書に含まれるすべての開示は、PD-1特異的および/またはPD-L1特異的療法と同様に、PD-1療法に一般的に適用される。
【0185】
非限定的で、例示的なPD-1療法は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、BMS-936558、MDX-1106、ONO-4538);ピディリズマブ、ランブロリズマブ/ペンブロリズマブ(KEYTRUDA、MK-3475);BGB-A317、チスレリズマブ(BeiGene/Celgene);デュルバルマブ(抗PD-L1抗体、MEDI-4736;AstraZeneca/Medlmmune);RG-7446、アベルマブ(抗PD-L1抗体;MSB-0010718C;Pfizer);AMP-224;BMS-936559(抗PD-L1抗体);AMP-514;MDX-1105;A B-011;抗LAG-3/PD-1;スパルタリズマブ(CoStim/Novartis);抗PD-1抗体(Kadmon Pharm.);抗PD-1抗体(Immunovo);抗TEVI-3/PD-I抗体(AnaptysBio);抗PD-L1抗体(CoStim/Novartis);RG7446/MPDL3280A(抗PD-L1抗体、Genentech/Roche);KD-033(Kadmon Pharm.);AGEN-2034(Agenus);STI-A1010;STI-A1110;TSR-042;アテゾリズマブ(TECENTRIQ(商標));およびプログラム死1(PD-1)またはプログラム死リガンド1(PD-L1)に対する他の抗体を含む。
【0186】
PD-1療法は、当技術分野で公知のレジメン、例えば、米国FDA承認のレジメンに従って投与される。一例では、ニボルマブは、二週間毎に240mg(切除不能または転移性黒色腫、黒色腫の補助薬物療法、非小細胞肺癌(NSCLC)、進行性腎細胞癌、局所進行性腎細胞癌、MSI-HまたはdMMR転移性結腸直腸癌および肝細胞癌)、または三週間毎に3mg/kg(古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部の再発性または転移性扁平上皮癌)の量を60分かけて点滴静注で投与する。別の例では、ペンブロリズマブは、三週間に一回、200mgの量を30分かけて点滴静注により投与される。別の例では、アテゾリズマブは、三週間毎に、1200mgの量を60分かけて点滴静注により投与される。別の例では、アベルマブは、二週間毎に、10mg/kgの量を60分かけて点滴静注により投与される。別の例では、デュルバルマブは、二週間毎に、10mg/kgの量を60分かけて点滴静注により投与される。
【0187】
IV.ICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニスト治療と併用するための例示的な抗癌療法
例として、本明細書に列挙された、または当技術分野で公知の任意の抗癌療法を、本明細書に記述されたICOSアゴニストおよびPD-1アンタゴニスト療法と組み合わせて、または治療前もしくは治療後として使用することができる。さまざまな例では、組み合わせの構成要素は、本明細書に記載の投与レジメン(例えば、米国FDA承認の投与レジメン、上記参照)に従って、または当業者によって適切であると判断された他のレジメンを使用して投与される。例示的な抗癌療法を以下に説明する。
【0188】
a.免疫療法
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は免疫療法である。癌と免疫系の相互作用は複雑で多面的である。de Visser et al.,Nat.Rev.Cancer(2006)6:24-37を参照。多くの癌患者は抗腫瘍免疫反応を起こすように見えるが、癌は免疫の検出および破壊を回避するための戦略も開発する。近年、癌やその他の障害の治療や予防のために免疫療法が開発されている。免疫療法は、他の治療法にはない細胞特異性の利点を提供する。したがって、免疫ベース療法の有効性を高める方法は、臨床的に有益であり得る。
【0189】
i.抗CTLA-4アンタゴニスト抗体
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、抗CTLA-4アンタゴニスト抗体である。抗CTLA-4アンタゴニスト抗体は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)の活性を阻害し、それによって免疫系を活性化することができる薬剤を指す。CTLA-4アンタゴニストは、CTLA-4に結合し、CTLA-4媒介性免疫抑制を逆転させる可能性がある。非限定的で例示的な抗CTLA-4抗体は、イピリムマブ(YERVOY(登録商標)、BMS)であり、これは、例えば、米国FDAによって承認された、当技術分野で公知の方法に従って投与され得る。例えば、イピリムマブは、3mg/kgの量を三週間毎に90分かけて計4回(切除不能または転移性黒色腫)、または10mg/kgを三週間毎に90分かけて計4回、その後、10mg/kgを12週間毎に、最長3年間、または再発もしくは許容できない毒性が確認されるまで、静脈内投与することができる(アジュバント黒色腫)。
【0190】
ii.OX40アゴニスト抗体
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、アゴニスト抗OX40抗体である。OX40アゴニスト抗体は、OX40の活性を誘導し、それによって免疫系を活性化し、抗腫瘍活性を強化する薬剤を指す。非限定的で、例示的なアゴニスト抗OX40抗体は、Medi6469、Medlmmune、およびMOXR0916/RG7888、Rocheである。これらの抗体は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0191】
iii.TIGITアンタゴニスト
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、TIGITアンタゴニストである。TIGITアンタゴニストとは、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)の活性を拮抗または阻害し、それによってTIGIT介在性免疫抑制を逆転させることができる薬剤を指す。非限定的で例示的なTIGITアンタゴニストは、BMS-986207(Bristol-Myers Squibb/Ono Pharmaceuticals)である。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0192】
iv.IDO阻害剤
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、IDO阻害剤である。IDO阻害剤とは、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の活性を阻害し、それによってIDO介在性免疫抑制を逆転することができる薬剤を指す。IDO阻害剤は、IDO1および/またはID02(INDOL1)を阻害し得る。IDO阻害剤は、可逆的または不可逆的なIDO阻害剤であってもよい。可逆的IDO阻害剤は、触媒部位または非触媒部位のいずれかでIDO酵素活性を可逆的に阻害する化合物である一方、不可逆的IDO阻害剤は、酵素との共有結合を形成することによってIDO酵素活性を不可逆的に阻害する化合物である。非限定的で例示的なIDO阻害剤は、例えば、米国特許出願公開第2016/0060237号、および米国特許出願公開第2015/0352206号に記載される。非限定的で例示的なIDO阻害剤としては、Indoximod(New Link Genetics)、INCB024360(Incyte Corp)、1-メチル-D-トリプトファン(New Link Genetics)、およびGDC-0919/navoximod(Genentech/New Link Genetics)が挙げられる。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0193】
v.RORγアゴニスト
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、RORγアゴニストである。RORγアゴニストは、レチノイン酸関連オーファン受容体ガンマ(RORγ)の活性を誘導し、それによって免疫抑制機構を減少させることが可能な薬剤を指す。非限定的で例示的なRORγアゴニストとしては、限定されないが、LYC-55716(Lycera/Celgene)およびINV-71(Innovimmune)が挙げられる。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0194】
b.化学療法
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、化学療法剤である。使用され得る例示的な化学療法剤としては、カペシタビン、シクロホスファミド、ダカルバジン、テモゾロミド、シクロホスファミド、ドセタキセル、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、エピルビシン、エリブリン、5-FU、ゲムシタビン、イリノテカン、イクサベピロン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、ABRAXA E(登録商標)(タンパク質結合パクリタキセル)、ペメトレキセド、ビノレルビン、ビンクリスチン、エルロチニブ、アファチニブ、ゲフィチニブ、クリゾチニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、ベムラフェニブ、およびコビメタニブ(cobimetanib)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0195】
c.癌ワクチン
一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、癌ワクチンである。癌ワクチンは、樹状細胞の抗原移動および活性化に対する潜在的なアプローチとして研究されている。特に、免疫チェックポイントまたは共刺激経路のアゴニストと組み合わせたワクチン接種は、耐性を克服し、抗腫瘍応答の増加をもたらすエビデンスを示している。腫瘍に対する免疫応答を促進するための異なるアプローチを用いたさまざまな癌ワクチンが試験されている(例えば、Emens LA、Expert Opin Emerg Drugs 13(2):295-308(2008)を参照)。アプローチは、腫瘍に対するB細胞、T細胞、またはプロフェッショナル抗原提示細胞の応答を強化するように設計されている。癌ワクチンの例示的な型としては、ペプチド/タンパク質として、または遺伝子操作されたDNAベクター、ウイルス、細菌などとして送達され得る、異なる腫瘍抗原を標的とすることを採用するペプチドベースのワクチン、および例えば、患者由来の樹状細胞、自家腫瘍細胞または腫瘍細胞溶解物、同種腫瘍細胞などから開発されたワクチンを含むが、これらに限定されない、あまり明確に定義されていない標的に対する癌ワクチン開発のための細胞生物学的アプローチが含まれるが、これらに限定されない。
【0196】
例示的な癌ワクチンとしては、限定されないが、樹状細胞ワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、腫瘍細胞ワクチンなどが挙げられる。一部の実施形態では、かかるワクチンは、抗腫瘍応答を増強する。癌ワクチンの例には、MAGE3ワクチン(例えば、黒色腫および膀胱癌)、MUC1ワクチン(例えば、乳癌)、EGFRv3(Rindopepimut、例えば、多形性膠芽腫を含む脳癌)、またはALVAC-CEA(例えば、CEA+癌)が含まれるが、これらに限定されない。
【0197】
非限定的で例示的な癌ワクチンはまた、抗原提示細胞を含む自家末梢血単核細胞(PBMC)に由来する、Sipuleucel-Tを含む(例えば、Kantoff PW et al.,N Engl J Med.363:411-22 (2010)を参照)。Sipuleucel-T世代では、患者のPBMCは、前立腺酸性ホスファターゼ(前立腺抗原)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(免疫細胞活性化因子)の組換え融合タンパク質であるPA2024を用いてex vivoで活性化される。癌ワクチン候補への別のアプローチは、黒色腫などの腫瘍組織で変異した特定のペプチドに対する免疫応答を生成することである(例えば、Carreno et al.,Science 348:6236,2015を参照)。かかる変異ペプチドは、一部の実施形態では、ネオ抗原と称され得る。腫瘍ワクチンにおけるネオ抗原の使用の非限定的な例として、主要組織適合性複合体タンパク質HLA-A*02:01に結合すると予測される腫瘍内のネオ抗原が、黒色腫などの癌を有する個々の患者について特定される。患者由来の樹状細胞をex vivoで成熟させ、その後ネオ抗原と共にインキュベートする。次いで、活性化した樹状細胞を患者に投与する。一部の実施形態では、癌ワクチンの投与後、ネオ抗原に対する頑強なT細胞免疫が検出可能である。
【0198】
一部のこのような実施形態では、癌ワクチンは、ネオ抗原を使用して開発される。一部の実施形態では、癌ワクチンは、DNAワクチンである。一部の実施形態では、癌ワクチンは、PROSTVAC(rilimogene galvacirepvec/rilimogene glafolivec)などの癌抗原を含む操作されたウイルスである。一部の実施形態では、癌ワクチンは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)遺伝子をトランスフェクトした腫瘍細胞ワクチンである、GVAXなどの操作された腫瘍細胞を含む(例えば、Nemunaitis、Expert Rev.Vaccines 4:259-274、2005を参照)。
【0199】
ワクチンは、当業者によって適切であると判断される方法およびレジメンに従って投与され得る。
【0200】
d.追加の例示的な抗癌療法
さらなる非限定的で例示的な抗癌療法としては、Luspatercept(Acceleron Pharma/Celgene)、Motolimod(Array BioPharma/Celgene/VentiRx Pharmaceuticals/Ligand)、GI-6301(GlobeImmune/Celgene/NantWorks)、GI-6200(GlobeImmune/Celgene/NantWorks)、BLZ-945(Celgene/Novartis)、ARRY-382 (Array BioPharma/Celgene)、または表3に示すいずれかの抗癌療法が含まれる。これらの薬剤は、当業者によって適切であると判断された方法およびレジメンに従って投与され得る。一部の実施形態では、一つまたは複数の抗癌療法は、手術および/または放射線療法を含む。したがって、抗癌療法は、アジュバントまたはネオアジュバント設定で任意に利用することができる。
【0201】
V.医薬組成物および投与
ICOSアゴニスト、PD-1アンタゴニストまたはそれらの併用を含む組成物(または、本明細書で記載の一つまたは複数の抗癌療法)は、当業者により適切であると判断される、さまざまな薬学的に許容可能な担体を有する製剤で提供される(例えば、Gennaro,Remington:The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons:Drugfacts Plus,20th ed.(2003);Ansel et al.,Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems,7th ed.,Lippincott,Williams and Wilkins(2004);Kibbe et al.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,3rd ed.,Pharmaceutical Press(2000)を参照)。賦形剤、アジュバント、および希釈剤を含む、さまざまな薬学的に許容可能な担体が利用可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、等張化調整剤、安定剤、湿潤剤などのさまざまな薬学的に許容可能な補助物質も利用可能である。非限定的で例示的な担体としては、生理食塩水、緩衝生理食塩水、ブドウ糖、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0202】
抗癌療法は、当技術分野で公知であるように(例えば、FDA承認レジメンに従って)、または本明細書の他の箇所に示されるように(例えば、上記参照)、本発明の方法の実践において投与される。一部の実施形態では、本発明の抗癌療法は、癌の治療に有効な量で投与される。治療有効量は、典型的には、治療される対象の体重、対象の身体的状態または健康状態、治療される状態の広がり、治療される対象の年齢、医薬製剤方法、および/または投与方法(例えば、投与時間および投与経路)に依存する。
【0203】
一部の実施形態では、抗癌療法は、静脈内、動脈内、非経口、腫瘍内、腹腔内、または皮下を含むが、これらに限定されないさまざまな経路によりin vivoで投与され得る。適切な製剤および投与経路は、意図される用途に従って当業者によって選択され得る。
【0204】
VI.実施例
以下で考察する実施例は、本発明の純粋な例示であることを意図しており、いかなる方法でも本発明を制限すると見なされるべきではない。実施例は、以下の実験がすべてであるか、または実施される唯一の実験であることを示すことを意図していない。使用した数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するために努力してきたが、実験上の誤差や偏差はある程度考慮する必要がある。別段の指示がない限り、部品は重量部、分子量は重量平均分子量、温度は摂氏温度、圧力は大気圧またはその付近である。
【0205】
RNA試料を、表1に列挙されたRNAのレベルについて分析し、RNAシグネチャースコアを得た。図1は、加重RNAシグネチャースコアが腫瘍応答を予測することを示す。
【0206】
新鮮な治療前の腫瘍試料からRNAを抽出し、遺伝子発現をNanoStringにより評価し、上述のようにRNAシグネチャーを計算した。ICOShiの出現は、記載の通り、対象と合致した末梢血試料上で評価され(Hanson et al、ICOS hi CD4 T細胞サブセットの出現は、ICOSアゴニスト抗体であるJTX-2011、SITC 2018posterで治療された対象の腫瘍減少と相関する)、対象は「ICOShi」(ICOS hi CD4 T細胞集団の持続的な出現を示すもの)または「ICOS low」(ICOS hi CD4 T細胞集団の持続的な出現を示さない対象)に分類された。RNAシグネチャースコアの分布を、ウェルチの2試料t検定を使用して、Rの「t.test」関数を使用して、二つの群間で比較した(図2A)。図に示される6.47および7.72の平均値は、それぞれ、本明細書の他の箇所に記載される2.97および3.35のRNAシグネチャースコアに対応する。RNAシグネチャースコアの分布を、腫瘍減少率に基づいて、治療に対する応答者/非応答者として分類された対象間で比較した。少なくとも30%の腫瘍減少を示す対象は、応答者として分類され、30%未満の腫瘍減少を示す対象は、非応答者として分類される。統計量は、ウェルチの2試料t検定を使用して、Rの「t.test」関数を使用して、計算された(図2B)。図に示される7.00および8.27の平均値は、それぞれ、本明細書の他の箇所に記載される3.13および3.51のRNAシグネチャースコアに対応する。結果は、RNAシグネチャーが、ICONICサブセット解析における応答を予測することを示す。
【0207】
上述の同じ実験を、以前の抗-PD-1療法または抗-PD-L1療法を受けていない対象に実施した(図3Aおよび3B参照)。図3Aに示される6.49および7.54の平均値は、それぞれ、本明細書の他の箇所に記載される2.98および3.29のRNAシグネチャースコアに対応する。図3Bに示される6.81および8.42の平均値は、それぞれ、本明細書の他の箇所に記載される3.07および3.56のRNAシグネチャースコアに対応する。結果は、RNAシグネチャーが、これらの対象においても、ICONICサブセット解析に対する応答を予測することを示す。
【0208】
新鮮な治療前腫瘍生検を有する、すべての以前の抗-PD-1/抗PD-L1ナイーブ対象に対する腫瘍減少を、RNAシグネチャースコアについて評価した(図4)。棒は、RNAシグネチャースコアの様々な閾値に基づいて、対象の腫瘍試料がバイオマーカー陽性であるか陰性であるかによって網掛けされる。バイオマーカーの閾値は、左パネルがもっとも低く(6.46)、中央パネル(7.85)は中位、右パネルは高く(8.5)である。図4で示す6.46、7.85、および8.5の低、中、および高RNAシグネチャースコアのカットオフは、それぞれ、本明細書の他の箇所に記述される2.97、3.39、および3.58のRNAシグネチャースコアに相当する。
【0209】
臨床評価項目は、RNAシグネチャースコアについて評価した、新鮮な治療前腫瘍生検を有する、すべての以前の抗-PD-1/抗PD-L1ナイーブ対象について計算された(図5)。図5で示す6.46、7.85、および8.5の低、中、および高RNAシグネチャースコアのカットオフは、本明細書の他の箇所に記載されるように、それぞれ2.97、3.39、および3.58のRNAシグネチャースコアに相当する。
【0210】
RNAシグネチャースコアについて評価した新鮮な治療前腫瘍生検を有する全対象に対する腫瘍減少およびスイマープロットを図6Aに示す。RNAシグネチャー閾値=7.9に基づいて、対象の試料がバイオマーカー陽性か陰性かによって棒が網掛けされる。スイマープロットは、治療前の腫瘍試料でRNAシグネチャースコアが評価された対象、および治療過程で末梢CD4 T細胞で評価されたICOSの出現についてのみ示されている。RNAシグネチャースコアについて評価した新鮮な治療前腫瘍試料を有する対象について評価した、臨床評価項目である無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)のカプランマイヤープロットを図6Bに示す。対象は、その腫瘍RNAシグネチャースコアが閾値7.9より大きいか、またはそれと等しいかに基づいて、バイオマーカー陽性または陰性として分類される。図6Aおよび6Bに関して記載される7.9のカットオフは、本明細書の他の箇所に記載されるように、3.40のRNAシグネチャースコアに対応する。
【0211】
RNAシグネチャー閾値の感度と特異性との間の関係を示す受信者動作特性(ROC)曲線が図7に示される。ICOS hi出現(高、低)は、バイナリ結果変数であり、RNAシグネチャーは様々なカットを有する予測変数である。Youden指数によって決定される最適カットオフ値は、7.914であると計算され、これは、真陽性率と偽陽性率との間の差を最大化する。これらの計算は、関数「PROC LOGISTIC」を使用してSASで実行された。7.914のカットオフは、本明細書の他の箇所に記載されるように、3.40のRNAシグネチャースコアに対応する。最適なカットオフを使用した正の予測値は78%であり、このカットオフを使用した負の予測値は83%であり、ICOS hi出現を応答出力として使用した。ROC曲線の曲線下面積(AUC)は0.79である。ROC曲線のAUC値は、0~1の範囲を取り、バイオマーカーは、ROC曲線のAUCが0.5である場合、ランダム予測因子であるとみなされる。したがって、選択されたカットオフは、本明細書に記載されるICOSアゴニストおよびPD1アンタゴニストの組み合わせ療法に応答して、ICOS hi CD4陽性T細胞出現を呈する可能性が高い患者を識別することに関して、陽性および陰性の両方の予測能力に対して最適化されている。
【0212】
本開示は、その精神またはその本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。したがって、前述の実施形態は、本開示を限定するものではなく、あらゆる点において例示的であると見なされるべきである。したがって、本開示の範囲は、前述の説明よりもむしろ添付の特許請求の範囲によって示されており、したがって、特許請求の意味および範囲と同等の範囲内に入るすべての変更は、本明細書に包含されることが意図されている。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
【配列表】
2023510847000001.app
【国際調査報告】