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特表2023-510853GM-CSFをコードするポリヌクレオチドと追加薬剤を用いてがんを治療する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】GM-CSFをコードするポリヌクレオチドと追加薬剤を用いてがんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20230308BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/47 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 35/02 20060101ALN20230308BHJP
   C07D 213/81 20060101ALN20230308BHJP
   C07D 215/233 20060101ALN20230308BHJP
   C07D 401/10 20060101ALN20230308BHJP
   C07D 237/32 20060101ALN20230308BHJP
   C07D 487/06 20060101ALN20230308BHJP
   C07D 471/06 20060101ALN20230308BHJP
   C07D 471/22 20060101ALN20230308BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20230308BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61K31/7088
A61K48/00
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K9/08
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/44
A61K31/47
A61K31/454
A61K31/502
A61K31/55
A61K31/5025
A61K31/551
A61P35/02
C07D213/81
C07D215/233
C07D401/10
C07D237/32
C07D487/06
C07D471/06
C07D471/22
C12N15/113 130Z
C12N15/113 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542739
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 US2021013130
(87)【国際公開番号】W WO2021146213
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/960,583
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/034,868
(32)【優先日】2020-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/061,634
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522278176
【氏名又は名称】グラダリス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ネムナイティス
(72)【発明者】
【氏名】アーネスト ボグナー
【テーマコード(参考)】
4C050
4C055
4C063
4C065
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA02
4C050AA07
4C050BB04
4C050CC10
4C050DD10
4C050EE02
4C050FF05
4C050GG02
4C050GG03
4C050HH01
4C055AA01
4C055BA02
4C055BA58
4C055BB02
4C055CA01
4C055DA42
4C055DB04
4C055DB10
4C063AA01
4C063BB06
4C063CC22
4C063DD10
4C063EE01
4C065AA07
4C065BB04
4C065BB10
4C065CC03
4C065CC09
4C065DD03
4C065DD04
4C065EE02
4C065EE04
4C065HH02
4C065HH03
4C065HH06
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL02
4C065LL04
4C065PP01
4C065PP03
4C065PP09
4C076AA11
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC27
4C076CC29
4C076FF11
4C076FF68
4C084AA13
4C084AA22
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC75
4C085AA03
4C085EE03
4C085GG02
4C085GG05
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC28
4C086BC37
4C086BC50
4C086CB09
4C086CB11
4C086EA16
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC75
(57)【要約】
卵巣がんの再発を予防するためと、BRCA1/2-野生型卵巣がんを治療するための組成物と方法が本明細書に開示されている。いくつかの実施形態では、前記組成物は、フーリンノックダウンとGM-CSF発現のために遺伝子改変された細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンを含んでいる。いくつかの実施形態では、前記方法は、自家腫瘍細胞ワクチンを投与した後、前記自家腫瘍細胞ワクチンとアテゾリズマブの組み合わせを投与することを含む。本明細書には、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを含んでいて、相同組み換え修復異常(HRD)-陰性と同定された個体におけるがんを治療する方法も開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であって、
a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;並びに
b.それぞれがmiR-30aループを有する2つのステム-ループ構造を含み、第1のステム-ループ構造は完全に相補的なガイド鎖およびパッセンジャー鎖を有し、一方で第2のステム-ループ構造は前記パッセンジャー鎖の9~11位に3つの塩基対(bp)ミスマッチを有する、第2のインサート、
を含む発現ベクターを前記個体に投与することを含み、
前記個体が相同組み換え修復異常(HRD)陰性である、かつ/または
前記個体が、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを有する方法。
【請求項2】
前記第1のステム-ループ構造の中の前記ガイド鎖が配列番号6の配列を含み、前記第1のステム-ループ構造の中の前記パッセンジャー鎖が配列番号5の配列を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のステム-ループ構造の中の前記ガイド鎖が配列番号6の配列を含み、前記第2のステム-ループ構造の中の前記パッセンジャー鎖が配列番号7の配列を持つ、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であって、
a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;並びに
b.配列番号4または2に記載の配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターを前記個体に投与することを含み、
前記個体が相同組み換え修復異常(HRD)陰性である、かつ/または
前記個体が、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを有する方法。
【請求項5】
前記がんの選択が、固形腫瘍がん、卵巣がん、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管癌、結腸直腸がん、食道がん、膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、リンパ腫、肺がん、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がん、甲状腺がん、および血液がんからなる群からなされる、請求項1または4に記載の方法。
【請求項6】
前記固形腫瘍がんの選択が、子宮内膜がん、胆管がん、膀胱がん、肝細胞癌、胃/食道がん、卵巣がん、黒色腫、乳がん、膵臓がん、結腸直腸がん、神経膠腫、非小細胞肺癌、前立腺がん、子宮頸がん、腎臓がん、甲状腺がん、神経内分泌がん、小細胞肺がん、肉腫、頭頸部がん、脳がん、腎明細胞癌、皮膚がん、内分泌腫瘍、甲状腺がん、原発不明の腫瘍、および消化管間質腫瘍からなる群からなされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、卵巣がん、乳がん、黒色腫、または肺がんである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記個体で卵巣がんが実質的に根絶され、かつ前記方法が前記実質的に根絶された卵巣がんの再悪化を予防または遅延する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記発現ベクターが、前記発現ベクターをトランスフェクトされる自家がん細胞の中にある、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記実質的に根絶された卵巣がんがステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記個体の無再発生存期間(RFS)が、卵巣がんが実質的に根絶されているが前記トランスフェクトされた腫瘍細胞を投与されていない個体と比べて延長される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記個体が最初の療法を受けた、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記最初の療法が、腫瘍減量手術、化学療法、またはこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法が、白金製剤とタキサンを投与することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記白金製剤がカルボプラチンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記タキサンがパクリタキセルを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記GM-CSFがヒトGM-CSF配列である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記発現ベクターがプロモータをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記発現ベクターが、さらにCMVエンハンサ配列及びCMVイントロン配列を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のインサート及び前記第2のインサートが前記プロモータに作用可能式に連結されている、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記発現ベクターが、さらに前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
BRCA1/2野生型卵巣がんを、それを必要とする個体において治療する方法であって、前記方法は、
a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;および
b.配列番号2または4に記載の配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項28】
前記卵巣がんがステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記卵巣がんが難治性卵巣がんである、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記難治性卵巣がんが化学療法に対して難治性である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化学療法が白金製剤またはタキサンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記白金製剤がカルボプラチンを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記タキサンがパクリタキセルを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
追加治療剤を投与することをさらに含む、請求項27~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記追加治療剤が、前記個体への、血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記血管新生阻害剤が血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記VEGF阻害剤が、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、およびレバチニブからなる群から選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記VEGF阻害剤がベバシズマブである、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記PARP阻害剤が、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記PARP阻害剤がニラパリブである、請求項35に記載の方法。
【請求項41】
前記チェックポイント阻害剤が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
前記チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびイピリムマブからなる群から選択され、静脈内注入によって投与される、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記GM-CSFがヒトGM-CSF配列である、請求項27~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記発現ベクターがプロモータをさらに含む、請求項27~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記発現ベクターが、CMVエンハンサ配列およびCMVイントロン配列をさらに含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記第1のインサートおよび前記第2のインサートが前記プロモータに作用可能式に連結されている、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記発現ベクターが、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、請求項27~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する、請求項27~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する、請求項27~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
実質的に根絶された卵巣がんの再悪化を、それを必要とする個体で予防する方法であって、前記方法は、
a.i.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;および
ii.配列番号2または4に従う配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量;および
b.前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む方法。
【請求項54】
前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量が1100 mg~1300 mgである、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量が約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む、請求項53~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量が約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記自家腫瘍細胞の前記少なくとも1つの第1の用量を皮内注射によって前記個体に投与する、請求項53~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量を皮内注射によって前記個体に投与する、請求項53~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量を皮内注射によって前記個体に投与する、請求項53~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量が2つの用量を含む、請求項53~59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する、請求項53~60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する、請求項53~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量の各用量を前記個体に1ヶ月に少なくとも1回投与する、請求項53~62のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量と、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量が、合計で少なくとも12回の用量を含む、請求項53~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
BRCA1/2野生型卵巣がんを、それを必要とする個体で治療する方法であって、
a.i.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;および
ii.配列番号2または4に従う配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量;および
b.前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の相互参照
本出願は、2020年1月13日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第62/960,583号;2020年6月4日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/034,868号;および2020年8月5日に出願されたアメリカ合衆国仮出願第63/061,634号の優先権と恩恵を主張する。上記の仮出願のすべてがあらゆる目的で参照によって本明細書に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
卵巣がんは女性の悪性腫瘍の中で死亡率が高い。高い死亡率は、卵巣がんの化学療法耐性と頻繁な再発の結果として生じる。卵巣がんを治療するための薬剤が開発されているが、卵巣がんの死亡率と再発率は高いままである。典型的には、進行した卵巣がんの治療は手術と化学療法の組み合わせに基づく。手術の後にアジュバントである白金に基づく化学療法が続く。進行した卵巣がんを有する患者にとっての2つの最も重要な予後因子は、手術の後に残された疾患の量と、白金に基づく化学療法に対する応答である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に開示されているのは、がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと、b.それぞれがmiR-30aループを有する2つのステム-ループ構造(第1のステム-ループ構造は完全に相補的なガイド鎖とパッセンジャー鎖を持つのに対し、第2のステム-ループ構造は前記パッセンジャー鎖の9~11位に3つの塩基対(bp)ミスマッチを持つ)を含む第2のインサートを含む発現ベクターを前記個体に投与することを含み、前記個体は相同組み換え修復異常(HRD)陰性である、および/または前記個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを持つ。
【0004】
いくつかの実施形態では、前記第1のステム-ループ構造の中の前記ガイド鎖は配列番号6の配列を含み、前記第1のステム-ループ構造の中の前記パッセンジャー鎖は配列番号5の配列を持つ。
【0005】
いくつかの実施形態では、前記第2のステム-ループ構造の中の前記ガイド鎖は配列番号6の配列を含み、前記第2のステム-ループ構造の中の前記パッセンジャー鎖は配列番号7の配列を持つ。
【0006】
いくつかの実施形態では、前記miR-30aループは配列番号8の配列を含む。
【0007】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと、b.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターを前記個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記個体は相同組み換え修復異常(HRD)陰性である。いくつかの実施形態では、前記個体は卵巣がんが実質的に根絶されていて、前記方法により前記実質的に根絶された卵巣がんの再悪化またはぶり返しが予防または遅延される。「再悪化」という用語は「再発」と交換可能に用いられる。
【0008】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、実質的に根絶された卵巣がんの再発の予防または再発の予防的治療を、それを必要とする個体で実施する方法であり、この方法は、(a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;(b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記実質的に根絶された卵巣がんはステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記個体の無再発生存期間(RFS)は、卵巣がんが実質的に根絶されているが前記トランスフェクトされた腫瘍細胞を投与されていない個体と比べて延長される。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記個体は最初の療法を受けた。いくつかの実施形態では、前記最初の療法は、腫瘍減量手術、化学療法、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記化学療法は白金製剤とタキサンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記白金製剤はカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、前記タキサンはパクリタキセルを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記GM-CSFはヒトGM-CSF配列である。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはプロモータをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記プロモータはサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記第1のインサートと前記第2のインサートは前記プロモータに作用可能式に連結されている。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターは、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月間など)。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する。
【0012】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、(a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと(b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記卵巣がんはステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記卵巣がんは再発卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記卵巣がんは難治性卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記難治性卵巣がんは化学療法に対して難治性である。いくつかの実施形態では、前記化学療法は白金製剤またはタキサンを含む。いくつかの実施形態では、前記白金製剤はカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、前記タキサンはパクリタキセルを含む。いくつかの実施形態では、前記卵巣がんは再発/難治性(r/r)卵巣がんである。いくつかの実施形態では、再発または再発/難治性卵巣がんを再悪化した卵巣がんと呼ぶ。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記方法は追加治療剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の選択は、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記血管新生阻害剤は血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である。いくつかの実施形態では、前記VEGFの選択は、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、およびレバチニブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記VEGFはベバシズマブである。いくつかの実施形態では、前記PARP阻害剤の選択は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記PARP阻害剤はニラパリブである。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤の選択は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤の選択は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびイピリムマブからなる群からなされる。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記GM-CSFはヒトGM-CSF配列である。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはプロモータをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記プロモータはサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記第1のインサートと前記第2のインサートは前記プロモータに作用可能式に連結されている。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターは、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する。
【0016】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、実質的に根絶された卵巣がんの再発の予防または再発の予防的治療を、それを必要とする個体で実施する方法であり、この方法は、a.i.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと、ii.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量と、b.前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記実質的に根絶された卵巣がんはステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを持つ。いくつかの実施形態では、前記個体の無再発生存期間(RFS)は、卵巣がんが実質的に根絶されているが前記トランスフェクトされた腫瘍細胞を投与されていない個体と比べて延長される。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記個体は最初の療法を受けた。いくつかの実施形態では、前記最初の療法は、腫瘍減量手術、化学療法、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記化学療法は白金製剤とタキサンを投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記白金製剤はカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、前記タキサンはパクリタキセルを含む。いくつかの実施形態では、前記GM-CSFはヒトGM-CSF配列である。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはプロモータをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記プロモータはサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記第1のインサートと前記第2のインサートは前記プロモータに作用可能式に連結されている。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターは、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の選択は、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記血管新生阻害剤は血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である。いくつかの実施形態では、前記VEGFの選択は、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、およびレバチニブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記VEGFはベバシズマブである。いくつかの実施形態では、前記PARP阻害剤の選択は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記PARP阻害剤はニラパリブである。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤の選択は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤の選択は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびイピリムマブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量は1100 mg~1300 mgである。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量は約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量は約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞の前記少なくとも1つの第1の用量を皮内注射によって前記個体に投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量を皮内注射によって前記個体に投与する。いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量を皮内注射によって前記個体に投与する。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量は2つの用量(2、3、4、または5用量、またはそれよりも多く)を含む。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する。いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量の各用量を前記個体に1ヶ月に少なくとも1回投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量と、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量が、合計で少なくとも12回の用量を含む。
【0022】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、a.i.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと、ii.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量と、b.前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、前記卵巣がんはステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記卵巣がんは難治性卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記難治性卵巣がんは化学療法に対して難治性である。いくつかの実施形態では、前記化学療法は白金製剤またはタキサンを含む。いくつかの実施形態では、前記白金製剤はカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、前記タキサンはパクリタキセルを含む。いくつかの実施形態では、前記GM-CSFはヒトGM-CSF配列である。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはプロモータをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記プロモータはサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記第1のインサートと前記第2のインサートは前記プロモータに作用可能式に連結されている。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターは、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の選択は、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記血管新生阻害剤は血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である。いくつかの実施形態では、前記VEGFの選択は、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、およびレバチニブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記VEGFはベバシズマブである。いくつかの実施形態では、前記PARP阻害剤の選択は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記PARP阻害剤はニラパリブである。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤の選択は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤の選択は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびイピリムマブからなる群からなされる。いくつかの実施形態では、前記チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量は1100 mg~1300 mgである。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量は約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量は約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞の前記少なくとも1つの第1の用量を皮内注射によって前記個体に投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量を皮内注射によって前記個体に投与する。いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量を静脈内注入によって前記個体に投与する。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量は2つの用量を含む。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する。いくつかの実施形態では、前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量の各用量を前記個体に1ヶ月に少なくとも1回投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも第1の用量と、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも第2の用量が、合計で少なくとも12回の用量を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法を特徴とし、この方法は、a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと、b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターを前記個体に投与することを含み、前記個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを持ち、相同組み換え修復異常(HRD)陰性であると同定されている。
【0028】
いくつかの実施形態では、前記GM-CSFはヒトGM-CSF配列である。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはプロモータをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記プロモータはサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターはCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、前記第1のインサートと前記第2のインサートは前記プロモータに作用可能式に連結されている。いくつかの実施形態では、前記発現ベクターは、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、前記がんはHRD陰性の野生型BRCA1/2がんである。いくつかの実施形態では、前記がんの選択は、固形腫瘍がん、卵巣がん、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管癌、結腸直腸がん、食道がん、膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、リンパ腫、肺がん、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がん、甲状腺がん、および血液がんからなる群からなされる。特別な実施形態では、前記固形腫瘍がんの選択は、子宮内膜がん、胆管がん、膀胱がん、肝細胞癌、胃/食道がん、卵巣がん、黒色腫、乳がん、膵臓がん、結腸直腸がん、神経膠腫、非小細胞肺癌、前立腺がん、子宮頸がん、腎臓がん、甲状腺がん、神経内分泌がん、小細胞肺がん、肉腫、頭頸部がん、脳がん、腎明細胞癌、皮膚がん、内分泌腫瘍、甲状腺がん、原発不明の腫瘍、および消化管間質腫瘍からなる群からなされる。ある実施形態では、前記がんは卵巣がんである。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記方法は、実質的に根絶された卵巣がんの再悪化を予防するか遅延させる。特別な実施形態では、前記実質的に根絶された卵巣がんはステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは乳がんである。いくつかの実施形態では、前記がんは黒色腫である。いくつかの実施形態では、前記がんは肺がんである。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記発現ベクターは、その発現ベクターをトランスフェクトされる自家がん細胞の中にある。特別な実施形態では、前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記個体は最初の療法を受けた。特別な実施形態では、前記最初の療法は、腫瘍減量手術、化学療法、またはこれらの組み合わせを含む。ある実施形態では、前記化学療法は白金製剤とタキサンを投与することを含む。ある実施形態では、前記白金製剤はカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、前記タキサンはパクリタキセルを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記方法は、追加治療剤を投与することをさらに含む。ある実施形態では、前記追加治療剤は、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群から選択されるメンバーである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本開示の新たな特徴は、特に添付の請求項に記載されている。本開示の特徴と利点のよりよい理解は、本開示の原理が用いられている例示としての実施形態を示す以下の詳細な説明と添付の図面を参照することによって得られよう。
【0036】
図1図1は、それぞれがmiR-30aを持つ2つのステム-ループ構造を含むbi-shRNAfurin(配列番号2)の模式図であり;第1のステム-ループ構造は完全に相補的なガイド鎖とパッセンジャー鎖を持つのに対し、第2のステム-ループ構造はパッセンジャー鎖の9~11位に3つの塩基対(bp)ミスマッチを持つ。
【0037】
図2A図2A図2Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図2Aは、BRCA1/2野生型(wt)集団での手術/採取からのRFSを示す。図2Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでのBRCA1/2野生型(wt)集団の無作為化からのRFSを示す。図2Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図2Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0038】
図2B図2A図2Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図2Aは、BRCA1/2野生型(wt)集団での手術/採取からのRFSを示す。図2Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでのBRCA1/2野生型(wt)集団の無作為化からのRFSを示す。図2Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図2Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0039】
図2C図2A図2Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図2Aは、BRCA1/2野生型(wt)集団での手術/採取からのRFSを示す。図2Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでのBRCA1/2野生型(wt)集団の無作為化からのRFSを示す。図2Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図2Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0040】
図2D図2A図2Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図2Aは、BRCA1/2野生型(wt)集団での手術/採取からのRFSを示す。図2Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでのBRCA1/2野生型(wt)集団の無作為化からのRFSを示す。図2Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図2Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0041】
図3A-B】図3A図3Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでのあらゆる再発疾患の割合を示す。図3Aは、Vigil(登録商標)(n=24)とプラセボ(n=24)のBRCA1/2-wt患者でのあらゆる再発疾患の割合を示す。図3Bは、プロトコル遵守患者n=91人全員のVigil(登録商標)(n=46)とプラセボ(n=45)でのあらゆる再発疾患の割合を示す。
【0042】
図4図4は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0043】
図5図5は、それぞれがmiR-30aを有する2つのステム-ループ構造を含むbi-shRNAfurin(配列番号2)の模式図であり;第1のステム-ループ構造は完全に相補的なガイド鎖とパッセンジャー鎖を持つのに対し、第2のステム-ループ構造はパッセンジャー鎖の9~11位に3つの塩基対(bp)ミスマッチを持つ。
【0044】
図6A図6A図6Fは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)を示す。図6Aは、無作為化からの全患者のRFSを示す。図6Bは、手術/採取からの全患者のRFSを示す。図6Cは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Dは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Eは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。図6Fは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0045】
図6B図6A図6Fは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)を示す。図6Aは、無作為化からの全患者のRFSを示す。図6Bは、手術/採取からの全患者のRFSを示す。図6Cは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Dは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Eは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。図6Fは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0046】
図6C図6A図6Fは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)を示す。図6Aは、無作為化からの全患者のRFSを示す。図6Bは、手術/採取からの全患者のRFSを示す。図6Cは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Dは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Eは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。図6Fは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0047】
図6D図6A図6Fは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)を示す。図6Aは、無作為化からの全患者のRFSを示す。図6Bは、手術/採取からの全患者のRFSを示す。図6Cは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Dは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Eは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。図6Fは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0048】
図6E図6A図6Fは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)を示す。図6Aは、無作為化からの全患者のRFSを示す。図6Bは、手術/採取からの全患者のRFSを示す。図6Cは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Dは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Eは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。図6Fは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0049】
図6F図6A図6Fは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)を示す。図6Aは、無作為化からの全患者のRFSを示す。図6Bは、手術/採取からの全患者のRFSを示す。図6Cは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Dは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図6Eは、無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。図6Fは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のOSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0050】
図7A図7A図7Bは、フォレストプロットを示す。図7Aは、無作為化の時点から再発または死亡が文書で最初に記録された日付までで計算されたRFSを有するPPの主要サブグループのフォレストプロットを示す。図7Bは、無作為化の時点から再発または死亡が文書で最初に記録された日付までで計算されたRFSを持つBRCA-wt集団の主要サブグループのフォレストプロットを示す。
【0051】
図7B図7A図7Bは、フォレストプロットを示す。図7Aは、無作為化の時点から再発または死亡が文書で最初に記録された日付までで計算されたRFSを有するPPの主要サブグループのフォレストプロットを示す。図7Bは、無作為化の時点から再発または死亡が文書で最初に記録された日付までで計算されたRFSを持つBRCA-wt集団の主要サブグループのフォレストプロットを示す。
【0052】
図8図8は、試験パート2におけるVigil(登録商標)-1stとAtezo-1stでのすべてのアテゾリズマブ関連有害事象(AE)を示す。グレード1、2のアテゾリズマブ関連AEは、Atezo-1st群では24件、Vigil(登録商標)-1st群では50件であった。グレード1、2のVigil(登録商標)関連AEは、Atezo-1st群では1件、Vigil(登録商標)-1st群では31件であった。グレード3、4のアテゾリズマブ関連AEは、Atezo-1st群では5件、Vigil(登録商標)-1st群では1件であった。グレード3、4のVigil(登録商標)関連AEは、Atezo-1st群では0件、Vigil(登録商標)-1st群では1件であった。
【0053】
図9A-B】図9A図9Dは、試験で無作為化した時点からの有効性解析を示す。図9Aは、Vigil(登録商標)-1st(n=11)とAtezo-1st(n=10)における全研究対象の全生存期間(OS)を示しており、OS中央値(mOS)はNR対10.8ヶ月、ハザード比(HR)は0.33(95%CI[0.064~1.7]、p=0.097)である。図9Bは、Vigil(登録商標)-1st(n=6)とAtezo-1st(n=7)を比較したBRCA1/2-wtのOSを示しており、OS中央値はNR対5.2ヶ月、HRは0.16(95%CI[0.026~1.03]、p=0.027)である。図9Cは、治験担当医師がRECIST1.1によって評価した、Vigil(登録商標)-1st(n=11)とAtezo-1st(n=10)における全研究対象の無増悪生存期間(PFS)を示しており、PFS中央値(mPFS)は3.4ヶ月対2.8ヶ月、HRは0.76(95%CI[0.28~2.0]、p=0.29)である。図9Dは、Vigil(登録商標)-1st(n=6)とAtezo-1st(n=7)を比較したBRCA1/2-wtのPFSを示しており、PFS中央値は3.5ヶ月対2.8ヶ月、HRは0.60(95%CI[0.16~2.2]、p=0.22)である。
【0054】
図9C-D】図9A図9Dは、試験で無作為化した時点からの有効性解析を示す。図9Aは、Vigil(登録商標)-1st(n=11)とAtezo-1st(n=10)における全研究対象の全生存期間(OS)を示しており、OS中央値(mOS)はNR対10.8ヶ月、ハザード比(HR)は0.33(95%CI[0.064~1.7]、p=0.097)である。図9Bは、Vigil(登録商標)-1st(n=6)とAtezo-1st(n=7)を比較したBRCA1/2-wtのOSを示しており、OS中央値はNR対5.2ヶ月、HRは0.16(95%CI[0.026~1.03]、p=0.027)である。図9Cは、治験担当医師がRECIST1.1によって評価した、Vigil(登録商標)-1st(n=11)とAtezo-1st(n=10)における全研究対象の無増悪生存期間(PFS)を示しており、PFS中央値(mPFS)は3.4ヶ月対2.8ヶ月、HRは0.76(95%CI[0.28~2.0]、p=0.29)である。図9Dは、Vigil(登録商標)-1st(n=6)とAtezo-1st(n=7)を比較したBRCA1/2-wtのPFSを示しており、PFS中央値は3.5ヶ月対2.8ヶ月、HRは0.60(95%CI[0.16~2.2]、p=0.22)である。
【0055】
図10A図10A図10Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図10Aは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図10Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0056】
図10B図10A図10Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図10Aは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図10Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0057】
図10C図10A図10Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図10Aは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図10Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0058】
図10D図10A図10Dは、Vigil(登録商標)とプラセボでの手術/採取または無作為化からの患者の無再発生存期間(RFS)を示す。図10Aは、手術/採取からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのBRCA1/2野生型(wt)集団のRFSを示す。図10Cは、BRCA1/2の状態に関係なく、手術/採取からのRFSを示す。図10Dは、BRCA1/2の状態に関係なく、Vigil(登録商標)とプラセボでの無作為化からのRFSを示す。リスクありの数は、生存曲線においてまだ無再発および/または生存中であり、追跡が曲線において少なくともそこまで続いている患者の数を意味する。
【0059】
図11A図11Aおよび図11Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでの全再発疾患の割合を示す。図11Aは、Vigil(登録商標)(n=24)とプラセボ(n=24)でのBRCA1/2-wt患者の全再発疾患の割合を示す。図11Bは、プロトコル遵守患者n=91人全員のVigil(登録商標)(n=46)とプラセボ(n=45)の全再発疾患の割合を示す。
【0060】
図11B図11Aおよび図11Bは、Vigil(登録商標)とプラセボでの全再発疾患の割合を示す。図11Aは、Vigil(登録商標)(n=24)とプラセボ(n=24)でのBRCA1/2-wt患者の全再発疾患の割合を示す。図11Bは、プロトコル遵守患者n=91人全員のVigil(登録商標)(n=46)とプラセボ(n=45)の全再発疾患の割合を示す。
【0061】
図12図12は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0062】
図13図13は、プラセボを投与された個体とVigil(登録商標)を投与された個体のBRCA変異状態とHRD状態を示す。
【0063】
図14図14および図15は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0064】
図15図14および図15は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0065】
図16図16は、プラセボを投与された個体とVigil(登録商標)を投与された個体のBRCA変異状態とHRD状態を示す。
【0066】
図17図17図20は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0067】
図18図17図20は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0068】
図19図17図20は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0069】
図20図17図20は、Vigil(登録商標)/プラセボ患者でのフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0070】
図21図21および図22は、手術/採取(図13)と無作為化(図14)からの患者集団のRFSを示す。
【0071】
図22図21および図22は、手術/採取(図13)と無作為化(図14)からの患者集団のRFSを示す。
【0072】
図23図23および図24は、手術/採取(図15)と無作為化(図16)からの患者集団の全生存期間(OS)を示す。
【0073】
図24図23および図24は、手術/採取(図15)と無作為化(図16)からの患者集団の全生存期間(OS)を示す。
【0074】
図25図25は、無作為化からの患者集団のRFSの確率を示す。
【0075】
図26図26は、無作為化からの患者集団のOSの確率を示す。
【0076】
図27図27は、Vigil(登録商標)と他の薬剤を投与された患者のBRCA状態、HRD状態、およびOSを示す。
【0077】
図28図28は、さまざまなタイプのがんにおけるHR-DDR変異頻度を示す。
【0078】
図29図29は、BRCA状態、HRD状態、および他のタンパク質発現の間の関係を示す。
【0079】
図30図30および図31は、HRD陰性患者とHRD陽性患者のフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0080】
図31図30および図31は、HRD陰性患者とHRD陽性患者のフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0081】
図32図32および図33は、BRCA1/2-WT患者とHRD陽性患者のフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0082】
図33図32および図33は、BRCA1/2-WT患者とHRD陽性患者のフォレストプロット主要人口統計を示す。
【0083】
図34図34は、治験患者のプロファイルを示す。BRCAWT=BRCA野生型。BRCAmut=BRCA変異。
【0084】
図35A-F】図35A図35Fは、無作為化(35A)と組織採取(35B)からの全患者の無再発生存期間を示す。無作為化(35C)と組織採取(35D)からのBRCA野生型疾患を持つ患者の無再発生存期間。無作為化(35E)と組織採取(35F)からの全患者の全生存期間。HR=ハザード比。
【0085】
図36A図36Aおよび図36Bは、プロトコル遵守集団(36A)とBRCA野生型集団(36B)の主要サブグループについて無作為化の時点から再発または死亡が文書で最初に記録された日付までで計算された無再発生存期間を示す。特に断わらない限り、データは事象の数/患者の数である。HR=ハザード比。* 30%超のノックダウン。† 106個の細胞当たり30 pgの放出域値を超えている。
【0086】
図36B図36Aおよび図36Bは、プロトコル遵守集団(36A)とBRCA野生型集団(36B)の主要サブグループについて無作為化の時点から再発または死亡が文書で最初に記録された日付までで計算された無再発生存期間を示す。特に断わらない限り、データは事象の数/患者の数である。HR=ハザード比。* 30%超のノックダウン。† 106個の細胞当たり30 pgの放出域値を超えている。
【0087】
図37A-B】図37A図37Dは、ITT集団のカプラン-マイヤー解析を示す。組織採取(A)と無作為化(B)からの、治療の意思があるBRCA野生型患者の無再発生存期間。組織採取(C)と無作為化(D)からの、治療の意思がある全患者の無再発生存期間。
【0088】
図37C-D】図37A図37Dは、ITT集団のカプラン-マイヤー解析を示す。組織採取(A)と無作為化(B)からの、治療の意思があるBRCA野生型患者の無再発生存期間。組織採取(C)と無作為化(D)からの、治療の意思がある全患者の無再発生存期間。
【0089】
図38図38は、無作為化の時点からの患者集団の全生存期間のフォレストプロットを示す。
【0090】
図39図39は、プロトコル遵守集団とBRCA野生型集団の全生存期間フォレストプロットを示す。
【0091】
図40A-B】図40A図40Dは、無作為化(図40A)と組織採取(図40B)の時点からのBRCA野生型患者の全生存期間を示す。無作為化(図40C)と組織採取(図40D)の時点からのBRCA変異患者の全生存期間。
【0092】
図40C-D】図40A図40Dは、無作為化(図40A)と組織採取(図40B)の時点からのBRCA野生型患者の全生存期間を示す。無作為化(図40C)と組織採取(図40D)の時点からのBRCA変異患者の全生存期間。
【0093】
図41A-B】図41Aおよび図41Bは、無作為化の時点(図41A)と組織採取の時点(図41B)からのBRCA変異患者の無再発生存期間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0094】
卵巣のがんを有すると診断された女性の大半は進行した段階にある。最適な標準治療はステージによって異なる5年生存率を実現し、41%(ステージIIa)から20%(ステージIV)までである。新たに診断された卵巣がん(ステージIII/IV)の標準治療は、最適な腫瘍減量手術と、パクリタキセルとカルボプラチンを用いたフロントライン化学療法を含む。たいていの患者は完全寛解を達成するが、ほぼ75%がほぼ12ヶ月以内に再悪化し、その中には病理学的完全奏功を達成した70%の患者が含まれる。多数の研究において、患者が完全奏功を達成した後に維持療法を投与し、それに続けてパクリタキセルとカルボプラチンを用いて強化することにより、最初に治療された卵巣がんの転帰を改善することが試みられてきたが、どの研究も無再発生存期間(RFS)または全生存期間(OS)において有意な利点を実証できていない。
【0095】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;b.それぞれがmiR-30aループを有する2つのステム-ループ構造(第1のステム-ループ構造は完全に相補的なガイド鎖とパッセンジャー鎖を持つのに対し、第2のステム-ループ構造は前記パッセンジャー鎖の9~11位に3つの塩基対(bp)ミスマッチを持つ)を含む第2のインサートを含む発現ベクターを前記個体に投与することを含み、前記個体は相同組み換え修復異常(HRD)陰性である、および/または前記個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを持つ。miR-30aループとその配列の記述は本分野で知られており、例えばRao et al., Cancer Gene Ther. 17(11):780-91, 2010;Jay et al., Cancer Gene Ther. 20(12):683-9, 2013;Rao et al., Mol Ther. 24(8):1412-22, 2016;Phadke et al., DNA Cell Biol. 30(9):715-26, 2011;Barve et al., Mol Ther. 23(6):1123-1130, 2015;Rao et al., Methods Mol Biol. 942:259-78, 2013;およびSenzer et al., Mol Ther. 20(3):679-86, 2012を参照されたい。いくつかの実施形態では、miR-30aループはGUGAAGCCACAGAUG(配列番号8)の配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のステム-ループ構造の中のガイド鎖は配列番号6を含み、第1のステム-ループ構造の中のパッセンジャー鎖は配列番号5を持つ。いくつかの実施形態では、第2のステム-ループ構造の中のガイド鎖は配列番号6を含み、第2のステム-ループ構造の中のパッセンジャー鎖は配列番号7を持つ。
【0096】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、実質的に根絶された卵巣がんの再悪化の予防を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む。本明細書のある実施形態にさらに開示されているのは、BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む。
【0097】
卵巣のがんを有すると診断された女性の大半は進行した段階にある。最適な標準治療はステージによって異なる5年生存率を実現し、41%(ステージIIa)から20%(ステージIV)までである。新たに診断された卵巣がん(ステージIII/IV)の標準治療は、一次腫瘍減量手術とその後のパクリタキセルとカルボプラチンを用いたアジュバント化学療法、またはネオアジュバント化学療法とその後の腫瘍減量手術を含む。たいていの患者は完全寛解を達成するが、ほぼ75%が2年以内に再悪化する。多数の研究において、患者が完全奏功を達成した後に維持療法を投与することにより、フロントラインで治療された卵巣がんの転帰を改善することが試みられてきたが、無増悪生存期間(PFS)での利益にかかわらず、どの研究もRFSまたはOSにおいて有意な利点を実証できておらず、毒性が用量を制限する。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤がフロントライン維持のための新たなプラットフォームを臨床に提供したが、活性はBRCA-m患者で顕著であった。PARP阻害剤は、BRCAの状態に関係なく再発白金感受性維持でも認可されているが、利益の大きさは、BRCA-mであるか相同組み換え修復異常(HRD)を示す患者で最大である。
【0098】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、実質的に根絶された卵巣がんの再発の予防または再発の予防的治療を、それを必要とする個体で実施する方法であり、この方法は、a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む。さらに、本明細書のある実施形態に開示されているのは、BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体で実施する方法であり、この方法は、a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む。いくつかの実施形態では、BRCA1/2野生型卵巣がんはBRCA遺伝子の中に生殖細胞系列変異を持たない。いくつかの実施形態では、BRCA1/2野生型卵巣がんはBRCA遺伝子の中に体細胞変異を持たない。いくつかの実施形態では、BRCA遺伝子は、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、またはBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子である。
【0099】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、がんの治療を、それを必要とする個体において、a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターを前記個体に投与することによって実施する方法であり、前記個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを持ち、相同組み換え修復異常(HRD)陰性であると同定されている。
【0100】
定義
特に断わらない限り、本明細書で用いられているあらゆる科学技術用語は、請求項の主題が属する分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を持つ。
【0101】
本明細書では、範囲と量は、具体的な値または範囲に「約」を付けて表示される。約には正確な量も含まれる。したがって「約5 μg」は、「約5 μg」を意味するとともに「5 μg」も意味する。一般に、「約」という用語には、実験誤差の範囲内であると予想される量が含まれる。いくつかの実施形態では、「約」は、記載されている数または値、その数または値の「+」または「-」20%、10%、または5%を意味する。
【0102】
「有効量」または「治療有効量」という表現は、本明細書では、投与される薬剤または化合物に関し、治療中の疾患または状態の症状の1つ以上をある程度緩和するか、治療中の疾患または状態の症状の1つ以上の発症または再発を予防するのに十分な量を意味する。いくつかの実施形態では、結果は、疾患の徴候、症状、または原因の低減および/または緩和、または生体系の他の任意の望ましい変化である。例えば治療の用途での「有効量」は、過度の有害な副作用なしに疾患の症状の臨床的に有意な軽減を提供するのに必要な自家腫瘍細胞ワクチンの量である。別の一例では、治療の用途での「有効量」は、過度の有害な副作用なしに疾患の症状の再発を予防するのに必要な、本明細書に開示されている自家腫瘍細胞ワクチンの量である。任意の個々の場合における適切な「有効量」は、用量漸増研究などの技術を利用して決めることができる。「治療有効量」という表現には、例えば予防有効量が含まれる。本明細書に開示されている化合物の「有効量」は、過度の有害な副作用なしに望む効果または治療上の改善を実現するのに有効量である。いくつかの実施形態では、「有効量」または「治療有効量」は、対象の自家腫瘍細胞ワクチン代謝、年齢、体重、全体的な状態、治療中である状態、治療中である状態の重症度、および処方する医師の判断がさまざまであるため、対象ごとに異なる。
【0103】
本明細書では、「対象」、「個体」、および「患者」という用語は交換可能に用いられる。どの用語も、医療の専門家(例えば医師、看護師、医師のアシスタント、病棟勤務者、ホスピスの従業員)の指示を必要とすると解釈されるべきではない。本明細書では、対象は動物であり、その中に哺乳類(例えばヒトまたは非ヒト動物)と非哺乳類が含まれる。本明細書に提示されている方法と自家腫瘍細胞ワクチンの一実施形態では、哺乳類はヒトである。
【0104】
本明細書では、「治療する」、「治療している」、または「治療」という用語と、他の文法的に同等な用語の非限定的な例に含まれるのは、ある疾患または状態の1つ以上の症状を緩和、軽減、または改善すること、ある疾患または状態の1つ以上の追加症状の出現、重症度、または頻度を改善、予防、または軽減すること、ある疾患または状態の1つ以上の症状の裏にある代謝的原因を改善または予防すること、その疾患または状態を抑制すること(例えばその疾患または状態の進行を停止させること、その疾患または状態を緩和すること、その疾患または状態の退行を引き起こすこと、その疾患または状態によって起こる状態を緩和すること、その疾患または状態の再発を予防すること、または予防的に治療すること、またはその疾患または状態の症状を予防的および/または治療的に抑制することなど)である。非限定的な一例では、予防の利益を得るため、本明細書に開示されている自家腫瘍細胞ワクチンを、特定の疾患または状態が進行するリスクがある個体、特定の疾患または状態が進行する傾向がある個体、または以前にその疾患または状態を患ったか治療したことがある個体に投与する。いくつかの実施形態では、その疾患または状態は卵巣がんである。
【0105】
本明細書では、「予防」という用語は、対象が疾患を患う前、または以前に診断された疾患が悪化する前に実施されることにより、その対象がその疾患の症状または関連疾患の可能性を回避、予防、または軽減する予防的治療を意味する。対象として、ある疾患が進行するリスクが上昇している対象、または以前に診断された疾患が悪化するリスクが上昇している対象が可能である。
【0106】
本明細書では、「皮内注射」という用語は、表皮と皮下組織の間に位置する真皮の中に、ある物質を表面的に注射することである。
【0107】
本明細書では、「トランスフェクション」という用語は、外来DNAを真核細胞の中に導入することを意味する。いくつかの実施形態では、トランスフェクションには適切な任意の技術(例えばリン酸カルシウム-DNA共沈降、DEAE-デキストランを媒介としたトランスフェクション、ポリブレンを媒介としたトランスフェクション、電気穿孔、微量注入、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染、またはバイオリスティックなど)が付随する。
【0108】
本明細書では、「核酸」または「核酸分子」という用語は、ポリヌクレオチド(デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)など)、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成する断片、および連結、分割、エンドヌクレアーゼ作用、およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成する断片を意味する。いくつかの実施形態では、核酸分子は、天然のヌクレオチド(DNA、RNAなど)である単量体、または天然のヌクレオチドの類似体(例えば天然のヌクレオチドのα-鏡像異性体形態)、またはこれらの組み合わせからなる。いくつかの実施形態では、修飾されたヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジン塩基またはプリン塩基の部分に変化を有する。糖修飾に含まれるのは、例えばハロゲン、アルキル基、アミン、アジド基による1つ以上のヒドロキシル基の置換である。あるいは糖は、エーテルまたはエステルとして機能化することができる。さらに、いくつかの実施形態では、糖部分全体が立体的または電子的に類似した構造(アザ-糖と炭素環糖類似体など)で置換されている。塩基部分の修飾の例に含まれるのは、アルキル化されたプリントピリミジン、アシル化されたプリンまたはピリミジン、または他の周知の複素環置換基である。いくつかの実施形態では、核酸単量体はホスホジエステル結合またはそのような連結の類似体によって連結されている。ホスホジエステル連結の類似体に含まれるのは、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニリデート、ホスホロアミデートなどである。いくつかの実施形態では、「核酸」または「核酸分子」という用語に、ポリアミド骨格に結合した天然の、または修飾された核酸塩基を含むいわゆる「ペプチド核酸」も含まれる。いくつかの実施形態では、核酸は一本鎖または二本鎖である。
【0109】
本明細書では、「発現ベクター」という用語は、宿主細胞の中で発現する遺伝子をコードする核酸分子を意味する。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、転写プロモータ、遺伝子、および転写ターミネータを含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現はプロモータの制御下に置かれ、そのような遺伝子はそのプロモータに「作用可能式に連結され」てると言われる。いくつかの実施形態では、調節エレメントとコアプロモータが作用可能式に連結されているのは、その調節エレメントがコアプロモータの活性を調節する場合である。本明細書では、「プロモータ」という用語は、宿主酵母細胞の中の構造遺伝子と会合したときに1)転写、2)翻訳、または3)mRNA安定性が、適切な増殖条件において、そのプロモータ配列の不在下での転写、翻訳、またはmRNA安定性と比べて増大する(mRNAのより長い半減期)任意のDNA配列を意味する。
【0110】
本明細書では、「二機能性」という用語は、作用の2つの機構的経路、すなわちsiRNAの経路とmiRNAの経路を持つshRNAを意味する。「伝統的な」shRNAという用語は、siRNA機構の作用によって作用するRNAに由来するDNA転写を意味する。「二重」shRNAという用語は、それぞれが2つの異なる遺伝子の発現を妨げるが「伝統的な」siRNAモードで作用する2つのshRNAを意味する。
【0111】
追加の治療剤は、1100 mg~1300 mg(1100、1125、1150、1175、1200、1225、1250、1275、または1300 mgなど)が可能である。
【0112】
自家腫瘍細胞ワクチンは、1×106個の細胞~約5×107個の細胞(1×106個の細胞、2×106個の細胞、3×106個の細胞、4×106個の細胞、5×106個の細胞、6×106個の細胞、7×106個の細胞、8×106個の細胞9×106個の細胞、1×107個の細胞、2×107個の細胞、3×107個の細胞、4×107個の細胞、または5×107個の細胞など)を含む。
【0113】
ステージIIIの卵巣がんは、一方または両方の卵巣の中に見いだされるがんを意味し、骨盤外へと広がり腹部の他の部分および/またはリンパ節近傍に達している。肝臓の表面まで広がっているときにもステージIIIの卵巣がんと考えられる。ステージIVの卵巣がんでは、がんは腹部を超えて身体の他の部分(肺、または肝臓内の組織など)まで広がっている。肺周辺の体液内のがん細胞もステージIVの卵巣がんと考えられる。
【0114】
卵巣がんを治療する方法
本明細書のある実施形態に開示されているのは、実質的に根絶された卵巣がんの再発の予防または再発の予防的治療を、それを必要とする個体で実施する方法であり、この方法は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をコードする第1の核酸と、フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる少なくとも1つの短鎖ヘアピンRNA(shRNA)をコードする第2の核酸を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンを前記個体に投与し、そのことによってRNA干渉を通じてフーリンの発現を阻害することを含む。本明細書のある実施形態にさらに開示されているのは、BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体で実施する方法であり、この方法は、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をコードする第1の核酸と、フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる少なくとも1つの短鎖ヘアピンRNA(shRNA)をコードする第2の核酸を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンを前記個体に投与し、そのことによってRNA干渉を通じてフーリンの発現を阻害することを含む。いくつかの実施形態では、第2の核酸は、配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、bishRNAフーリン/GMCSF発現ベクターである。いくつかの実施形態では、フーリン発現の阻害により、トランフフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)の発現が阻害される。TGFβには、TGFβアイソフォーム、すなわちTGFβ1とTGFβ2が含まれる。
【0115】
本明細書のある実施形態にさらに開示されているのは、実質的に根絶された卵巣がんの再発の予防、または予防的な治療を、それを必要とする個体で実施する方法であり、この方法は、(a)(i)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をコードする第1の核酸と、(ii)フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる少なくとも1つの短鎖ヘアピンRNA(shRNA)をコードする第2の核酸を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量(それによりRNA干渉を通じてフーリンの発現を阻害する)と、(b)前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む。本明細書のある実施形態にさらに開示されているのは、BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であり、この方法は、(a)(i)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)をコードする第1の核酸と、(i)フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる少なくとも1つの短鎖ヘアピンRNA(shRNA)をコードする第2の核酸を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量(それによりRNA干渉を通じてフーリンの発現を阻害する)と、(b)前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、第2の核酸は配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む。いくつかの実施形態では、発現ベクターはbishRNAフーリン/GMCSF発現ベクターである。いくつかの実施形態では、フーリン発現の阻害によってトランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFβ)の発現が阻害される。いくつかの実施形態では、TGFβにTGFβのアイソフォームであるTGFβ1とTGFβ2が含まれる。
【0117】
本明細書のある実施形態に開示されているのは、がんの治療を、それを必要とする個体において、a)顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサートと;b)配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサートを含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することによって実施する方法であり、前記個体は。野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを持ち、相同組み換え修復異常(HRD)陰性であると同定されている。
【0118】
相同組み換え(HR)は、細胞が相同な鋳型を用いて二本鎖DNA切断を修復するのに用いる機構である。HR修復異常はDNA修復に影響を与える可能性がある。しかしHRだけが修復異常であるとき、他のDNA修復機構の活性が過剰なDNAの損傷とアポトーシスの蓄積を阻止することができる。本明細書では、「相同組み換え修復異常-陽性」、「HRD-陽性」、および「HRD」という用語は交換可能に用いられ、HRが修復異常である状態を意味する。逆に、「相同組み換え陰性」、「HRD-陰性」、「相同組み換え熟達」、および「HRP」という用語は交換可能に用いられ、HRが修復異常でない状態を意味する。
【0119】
いくつかの実施形態では、HRDは、HR修復に関係する遺伝子の生殖細胞系列変異または体細胞変異のスクリーニングによって評価することができる。例えば血液またはそれ以外の組織からのDNAを次世代シークエンシングによって解析することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、ある個体がHRD-陽性であるかHRD-陰性であるかを特徴づけるためHRDスコアを求めることができる。いくつかの実施形態では、HRDスコアは、ヘテロ接合性の喪失(LOH)、テロメアアレル不均衡(TAI)、および大規模状態遷移(LST)のスコアに基づいて計算することができる。いくつかの実施形態では、LOHは単一アレルの存在によって示される。いくつかの実施形態では、LOHは15 Mbよりも長いヘテロ接合性領域の染色体喪失の数と定義される。いくつかの実施形態では、TAIは染色体の末端における1対1アレル比の不一致によって示される。いくつかの実施形態では、LSTは、異常なDNAと正常なDNAの領域の間、または異常な2つの異なる領域の間の遷移点によって示される。いくつかの実施形態では、LSTは、3 Mbよりも短い領域を除外した後の10 Mbよりも長い領域間の切断点の数として定義される。ある実施形態では、HRDスコアは、LOHスコア、TAIスコア、およびLSTスコアの和として計算される。HRDスコアを求める方法は本分野で利用可能であり、例えばTakaya et al., Sci Rep. 10(1):2757, 2020, Telli et al., Clin Cancer Res 22(15):3764-73, 2016と、Marchetti and McNeish, Cancer Breaking News 5(1):15-20, 2017に記載されている。さらに、HRDスコアを求める商用サービスも利用できる(例えばAmbry Genetics, Caris Life Sciences、Counsylgenetic、Foundation Medicine、GeneDX、Integrated Genetics、Invitae、Myriad Genetics、およびNeogenomicsによって提供されるサービス)。
【0121】
本明細書に記載されている方法では、個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを有する。いくつかの実施形態では、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを持つ個体は、HRD-陰性またはHRD-陽性である可能性がある。別の実施形態では、BRCA1/2遺伝子の変異がHRDにつながる可能性がある。言い換えると、BRCA1/2遺伝子の変異は、HRD-陽性状態を有する個体につながる可能性がある。特別な実施形態では、HRD-陽性状態を有すると同定された個体は、42以上(例えば42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、またはそれよりも大きな値)のHRDスコアを有する。他の機構(他の相同組み換え遺伝子の中の生殖細胞系列変異と体細胞変異や、エピジェネティックな修飾など)も相同組み換えに関与する可能性がある。
【0122】
発現ベクター
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのshRNAは少なくとも1つの二機能性shRNA(bi-shRNA)である。いくつかの実施形態では、bi-shRNAは、siRNA成分を含む第1のステム-ループ構造と、miRNA成分を含む第2のステム-ループ構造を含む。いくつかの実施形態では、二機能性shRNAは、作用の2つの機構的経路、すなわちsiRNAの経路とmiRNAの経路を持つ。したがっていくつかの実施形態では、本明細書に記載されている二機能性shRNAは、伝統的なshRNA、すなわちsiRNA機構の作用によって作用するDNA転写由来のRNAとは異なる、あるいは、それぞれが2つの異なる遺伝子の発現を妨げるが「伝統的な」siRNAモードで作用する2つのshRNAを意味する「二重shRNA」とは異なる。いくつかの実施形態では、bi-shRNAは、siRNA(切断に依存する)モチーフとmiRNA(切断とは独立な)モチーフを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、発現ベクターの中のGM-CSFはヒトGM-CSF配列である。いくつかの実施形態では、発現ベクターはプロモータをさらに含み、例えばプロモータはサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである。いくつかの実施形態では、哺乳類CMVプロモータは、CMV前初期(IE)5' UTRエンハンサ配列とCMV IEイントロンAを含む。さらなる実施形態では、発現ベクターは、CMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む。
【0124】
発現ベクターの中の第1のインサートと第2のインサートはプロモータに作用可能式に連結させることができる。特別な実施形態では、発現ベクターは、第1と第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、発現ベクターは少なくとも1つの二機能性shRNA(bi-shRNA)を含む。いくつかの実施形態では、bi-shRNAは、siRNA成分を含む第1のステム-ループ構造と、miRNA成分を含む第2のステム-ループ構造を含む。いくつかの実施形態では、二機能性shRNAは、作用の2つの機械的経路、すなわちsiRNAの経路とmiRNAの経路を持つ。したがっていくつかの実施形態では、本明細書に記載されている二機能性shRNAは、伝統的なshRNA、すなわちsiRNA機構の作用によって作用するDNA転写由来のRNAとは異なる、あるいは、それぞれが2つの異なる遺伝子の発現を妨げるが「伝統的な」siRNAモードで作用する2つのshRNAを意味する「二重shRNA」とは異なる。いくつかの実施形態では、bi-shRNAは、siRNA(切断に依存する)モチーフとmiRNA(切断とは独立な)モチーフを含む。
【0126】
いくつかの実施形態では、前記少なくとも1つのbi-shRNAは、フーリンをコードするmRNA転写産物のより多くの領域の1つにハイブリダイズすることができる。いくつかの実施形態では、フーリンをコードするmRNA転写産物は配列番号1の核酸配列である。いくつかの実施形態では、フーリンをコードするmRNA転写産物の前記1つ以上の領域は、配列番号1の塩基配列300~318、731~740、1967~1991、2425~2444、2827~2851、および2834~2852から選択される。いくつかの実施形態では、発現ベクターは、フーリンmRNA転写産物のコード領域、フーリンmRNA転写産物の3' UTR領域、または同時にフーリンmRNA転写産物のコード配列と3' UTR配列の両方を標的とする。いくつかの実施形態では、bi-shRNAは配列番号2または4(配列番号4)を含む。いくつかの実施形態では、フーリンをコードするmRNA転写産物の1つ以上の領域にハイブリダイズすることができるbi-shRNAを本明細書ではbi-shRNAフーリンと呼ぶ。いくつかの実施形態では、bi-shRNAフーリンは、それぞれがmiR-30aループを持つ2つのステム-ループ構造を含む、またはそれらからなる。いくつかの実施形態では、前記2つのステム-ループ構造の第1のステム-ループ構造は相補的なガイド鎖とパッセンジャー鎖を含む(図1)。いくつかの実施形態では、前記2つのステム-ループ構造の第2のステム-ループ構造はパッセンジャー鎖の中に3つのミスマッチを含む。いくつかの実施形態では、それら3つのミスマッチはパッセンジャー鎖の9~11位にある。
【表1-1】
【表1-2】
【0127】
GM-CSFをコードする第1の核酸と、フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる少なくとも1つの二機能性短鎖ヘアピンRNA(bi-shRNA)をコードする第2の核酸を含む発現ベクターをbishRNAフーリン/GMCSF発現ベクターと呼ぶ。
【0128】
いくつかの実施形態では、第1の核酸と第2の核酸はプロモータに作用可能式に連結されている。いくつかの実施形態では、プロモータはサイトメガロウイルス(CMV)プロモータである。いくつかの実施形態では、CMVプロモータは哺乳類CMVプロモータである。いくつかの実施形態では、哺乳類CMVプロモータはCMV前初期(IE)5' UTRエンハンサ配列とCMV IEイントロンAを含む。
【0129】
いくつかの実施形態では、GM-CSFはヒトGM-CSFである。いくつかの実施形態では、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチド配列をコードする核酸配列は、第1と第2の核酸インサートの間にインターカレートされている。
【0130】
いくつかの実施形態では、発現ベクタープラスミドは、配列番号3の配列と少なくとも90%(例えば90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)一致する配列を持つことができる。ベクタープラスミドは、プロモータに作用可能式に連結された第1の核酸インサート(この第1の核酸インサートはGM-CSF cDNAをコードしている)と、そのプロモータに作用可能式に連結された第2の核酸インサート(この第2の核酸インサートは、フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる1つ以上の短鎖ヘアピンRNA(shRNA)をコードしている)を含み、そのことによってRNA干渉を通じてフーリンの発現を阻害することができる。
配列番号3
GGCCATTGCATACGTTGTATCCATATCATAATATGTACATTTATATTGGCTCATGTCCAACATTACCGCCATGTTGACATTGATTATTGACTAGTTATTAATAGTAATCAATTACGGGGTCATTAGTTCATAGCCCATATATGGAGTTCCGCGTTACATAACTTACGGTAAATGGCCCGCCTGGCTGACCGCCCAACGACCCCCGCCCATTGACGTCAATAATGACGTATGTTCCCATAGTAACGCCAATAGGGACTTTCCATTGACGTCAATGGGTGGAGTATTTACGGTAAACTGCCCACTTGGCAGTACATCAAGTGTATCATATGCCAAGTACGCCCCCTATTGACGTCAATGACGGTAAATGGCCCGCCTGGCATTATGCCCAGTACATGACCTTATGGGACTTTCCTACTTGGCAGTACATCTACGTATTAGTCATCGCTATTACCATGGTGATGCGGTTTTGGCAGTACATCAATGGGCGTGGATAGCGGTTTGACTCACGGGGATTTCCAAGTCTCCACCCCATTGACGTCAATGGGAGTTTGTTTTGGCACCAAAATCAACGGGACTTTCCAAAATGTCGTAACAACTCCGCCCCATTGACGCAAATGGGCGGTAGGCGTGTACGGTGGGAGGTCTATATAAGCAGAGCTCGTTTAGTGAACCGTCAGATCGCCTGGAGACGCCATCCACGCTGTTTTGACCTCCATAGAAGACACCGGGACCGATCCAGCCTCCGCGGCCGGGAACGGTGCATTGGAACGCGGATTCCCCGTGCCAAGAGTGACGTAAGTACCGCCTATAGACTCTATAGGCACACCCCTTTGGCTCTTATGCATGCTATACTGTTTTTGGCTTGGGGCCTATACACCCCCGCTTCCTTATGCTATAGGTGATGGTATAGCTTAGCCTATAGGTGTGGGTTATTGACCATTATTGACCACTCCAACGGTGGAGGGCAGTGTAGTCTGAGCAGTACTCGTTGCTGCCGCGCGCGCCACCAGACATAATAGCTGACAGACTAACAGACTGTTCCTTTCCATGGGTCTTTTCTGCAGTCACCGTCGTCGACGGTATCGATAAGCTTGATATCGAATTCCGCTGGAGGATGTGGCTGCAGAGCCTGCTGCTCTTGGGCACTGTGGCCTGCAGCATCTCTGCACCCGCCCGCTCGCCCAGCCCCAGCACGCAGCCCTGGGAGCATGTGAATGCCATCCAGGAGGCCCGGCGTCTCCTGAACCTGAGTAGAGACACTGCTGCTGAGATGAATGAAACAGTAGAAGTCATCTCAGAAATGTTTGACCTCCAGGAGCCGACCTGCCTACAGACCCGCCTGGAGCTGTACAAGCAGGGCCTGCGGGGCAGCCTCACCAAGCTCAAGGGCCCCTTGACCATGATGGCCAGCCACTACAAGCAGCACTGCCCTCCAACCCCGGAAACTTCCTGTGCAACCCAGACTATCACCTTTGAAAGTTTCAAAGAGAACCTGAAGGACTTTCTGCTTGTCATCCCCTTTGACTGCTGGGAGCCAGTCCAGGAGTGAGACCGGCCAGATGAGGCTGGCCAAGCCGGGGAGCTGCTCTCTCATGAAACAAGAGCTAGAAACTCAGGATGGTCATCTTGGAGGGACCAAGGGGTGGGCCACAGCCATGGTGGGAGTGGCCTGGACCTGCCCTGGGCCACACTGACCCTGATACAGGCATGGCAGAAGAATGGGAATATTTTATACTGACAGAAATCAGTAATATTTATATATTTATATTTTTAAAATATTTATTTATTTATTTATTTAAGTTCATATTCCATATTTATTCAAGATGTTTTACCGTAATAATTATTATTAAAAATATGCTTCTAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAACGGAATTCACGTGGGCCCGGTACCGTATACTCTAGAAGATCTGGCAGCGGAGAGGGCAGAGGAAGTCTTCTAACATGCGGTGACGTGGAGGAGAATCCCGGCCCTAGGATGTCTAGAGCGGCCGCGGATCCTGCTGTTGACAGTGAGCGCGGAGAAAGGAGTGAAACCTTAGTGAAGCCACAGATGTAAGGTTTCACTCCTTTCTCCTTGCCTACTGCCTCGGAAGCAGCTCACTACATTACTCAGCTGTTGACAGTGAGCGCGGAGAAAGATATGAAACCTTAGTGAAGCCACAGATGTAAGGTTTCACTCCTTTCTCCTTGCCTACTGCCTCGGAAGCTTAATAAAGGATCTTTTATTTTCATTGGATCCAGATCTTTTTCCCTCTGCCAAAAATTATGGGGACATCATGAAGCCCCTTGAGCATCTGACTTCTGGCTAATAAAGGAAATTTATTTTCATTGCAATAGTGTGTTGGAATTTTTTGTGTCTCTCACTCGGAAGGACATATGGGAGGGCAAATCATTTAAAACATCAGAATGAGTATTTGGTTTAGAGTTTGGCAACATATGCCCATTCTTCCGCTTCCTCGCTCACTGACTCGCTGCGCTCGGTCGTTCGGCTGCGGCGAGCGGTATCAGCTCACTCAAAGGCGGTAATACGGTTATCCACAGAATCAGGGGATAACGCAGGAAAGAACATGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGGCCAGGAACCGTAAAAAGGCCGCGTTGCTGGCGTTTTTCCATAGGCTCCGCCCCCCTGACGAGCATCACAAAAATCGACGCTCAAGTCAGAGGTGGCGAAACCCGACAGGACTATAAAGATACCAGGCGTTTCCCCCTGGAAGCTCCCTCGTGCGCTCTCCTGTTCCGACCCTGCCGCTTACCGGATACCTGTCCGCCTTTCTCCCTTCGGGAAGCGTGGCGCTTTCTCATAGCTCACGCTGTAGGTATCTCAGTTCGGTGTAGGTCGTTCGCTCCAAGCTGGGCTGTGTGCACGAACCCCCCGTTCAGCCCGACCGCTGCGCCTTATCCGGTAACTATCGTCTTGAGTCCAACCCGGTAAGACACGACTTATCGCCACTGGCAGCAGCCACTGGTAACAGGATTAGCAGAGCGAGGTATGTAGGCGGTGCTACAGAGTTCTTGAAGTGGTGGCCTAACTACGGCTACACTAGAAGAACAGTATTTGGTATCTGCGCTCTGCTGAAGCCAGTTACCTTCGGAAAAAGAGTTGGTAGCTCTTGATCCGGCAAACAAACCACCGCTGGTAGCGGTGGTTTTTTTGTTTGCAAGCAGCAGATTACGCGCAGAAAAAAAGGATCTCAAGAAGATCCTTTGATCTTTTCTACGGGGTCTGACGCTCAGTGGAACGAAAACTCACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAGATTATCAAAAAGGATCTTCACCTAGATCCTTTTAAATTAAAAATGAAGTTTTAAATCAATCTAAAGTATATATGAGTAAACTTGGTCTGACAGTTACCAATGCTTAATCAGTGAGGCACCTATCTCAGCGATCTGTCTATTTCGTTCATCCATAGTTGCCTGACTCGGGGGGGGGGGGCGCTGAGGTCTGCCTCGTGAAGAAGGTGTTGCTGACTCATACCAGGCCTGAATCGCCCCATCATCCAGCCAGAAAGTGAGGGAGCCACGGTTGATGAGAGCTTTGTTGTAGGTGGACCAGTTGGTGATTTTGAACTTTTGCTTTGCCACGGAACGGTCTGCGTTGTCGGGAAGATGCGTGATCTGATCCTTCAACTCAGCAAAAGTTCGATTTATTCAACAAAGCCGCCGTCCCGTCAAGTCAGCGTAATGCTCTGCCAGTGTTACAACCAATTAACCAATTCTGATTAGAAAAACTCATCGAGCATCAAATGAAACTGCAATTTATTCATATCAGGATTATCAATACCATATTTTTGAAAAAGCCGTTTCTGTAATGAAGGAGAAAACTCACCGAGGCAGTTCCATAGGATGGCAAGATCCTGGTATCGGTCTGCGATTCCGACTCGTCCAACATCAATACAACCTATTAATTTCCCCTCGTCAAAAATAAGGTTATCAAGTGAGAAATCACCATGAGTGACGACTGAATCCGGTGAGAATGGCAAAAGCTTATGCATTTCTTTCCAGACTTGTTCAACAGGCCAGCCATTACGCTCGTCATCAAAATCACTCGCATCAACCAAACCGTTATTCATTCGTGATTGCGCCTGAGCGAGACGAAATACGCGATCGCTGTTAAAAGGACAATTACAAACAGGAATCGAATGCAACCGGCGCAGGAACACTGCCAGCGCATCAACAATATTTTCACCTGAATCAGGATATTCTTCTAATACCTGGAATGCTGTTTTCCCGGGGATCGCAGTGGTGAGTAACCATGCATCATCAGGAGTACGGATAAAATGCTTGATGGTCGGAAGAGGCATAAATTCCGTCAGCCAGTTTAGTCTGACCATCTCATCTGTAACATCATTGGCAACGCTACCTTTGCCATGTTTCAGAAACAACTCTGGCGCATCGGGCTTCCCATACAATCGATAGATTGTCGCACCTGATTGCCCGACATTATCGCGAGCCCATTTATACCCATATAAATCAGCATCCATGTTGGAATTTAATCGCGGCCTCGAGCAAGACGTTTCCCGTTGAATATGGCTCATAACACCCCTTGTATTACTGTTTATGTAAGCAGACAGTTTTATTGTTCATGATGATATATTTTTATCTTGTGCAATGTAACATCAGAGATTTTGAGACACAACGTGGCTTTCCCCCCCCCCCCATTATTGAAGCATTTATCAGGGTTATTGTCTCATGAGCGGATACATATTTGAATGTATTTAGAAAAATAAACAAATAGGGGTTCCGCGCACATTTCCCCGAAAAGTGCCACCTGACGTCTAAGAAACCATTATTATCATGACATTAACCTATAAAAATAGGCGTATCACGAGGCCCTTTCGTCTCGCGCGTTTCGGTGATGACGGTGAAAACCTCTGACACATGCAGCTCCCGGAGACGGTCACAGCTTGTCTGTAAGCGGATGCCGGGAGCAGACAAGCCCGTCAGGGCGCGTCAGCGGGTGTTGGCGGGTGTCGGGGCTGGCTTAACTATGCGGCATCAGAGCAGATTGTACTGAGAGTGCACCATATGCGGTGTGAAATACCGCACAGATGCGTAAGGAGAAAATACCGCATCAGATTGGCTATT
【0131】
GM-CSFをコードする第1の核酸と、フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる少なくとも1つの二機能性短鎖ヘアピンRNA(bi-shRNA)をコードする第2の核酸を含む発現ベクターをbishRNAフーリン/GMCSF発現ベクターと呼ぶ。
【0132】
腫瘍細胞
いくつかの実施形態では、細胞は、自家腫瘍細胞、異種移植増殖自家腫瘍細胞、同種異系腫瘍細胞、異種移植増殖同種異系腫瘍細胞、またはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、細胞は自家腫瘍細胞である。いくつかの実施形態では、同種異系腫瘍細胞は確立された細胞系である。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞は、それを必要とする個体から得られる。いくつかの実施形態では、細胞が自家腫瘍細胞であるとき、組成物を自家腫瘍細胞ワクチンと呼ぶ。
【0133】
いくつかの実施形態では、細胞は個体から採取される。いくつかの実施形態では、細胞は個体の組織から採取される。いくつかの実施形態では、組織は腫瘍組織である。いくつかの実施形態では、腫瘍組織は卵巣腫瘍組織である。いくつかの実施形態では、腫瘍組織はその個体に対する生検または腫瘍減量手術の間に採取される。いくつかの実施形態では、腫瘍組織、または腫瘍組織からの細胞は、殺菌容器の中の抗生剤溶液の中に入れられる。いくつかの実施形態では、抗生剤溶液は、ゲンタマイシン、塩化ナトリウム、またはこれらの組み合わせを含む。
【0134】
使用法
いくつかの実施形態では、卵巣がんは、ステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである。いくつかの実施形態では、ステージIIIの卵巣がんは、ステージIIIbまたはそれよりも悪い。いくつかの実施形態では、卵巣がんは、高グレードの漿液性卵巣がん、明細胞卵巣がん、類内膜卵巣がん、粘液性卵巣がん、または低グレードの漿液性卵巣がんである。
【0135】
いくつかの実施形態では、個体は、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、または野生型BRCA1遺伝子と野生型BRCA2遺伝子の両方を持つ。いくつかの実施形態では、野生型BRCA1遺伝子は生殖細胞系列BRCA1遺伝子に変異を含まない。いくつかの実施形態では、野生型BRCA2遺伝子は生殖細胞系列BRCA2遺伝子に変異を含まない。いくつかの実施形態では、野生型BRCA1遺伝子と野生型BRCA2遺伝子を持つ個体の卵巣がんを本明細書では、BRCA1/2-wt卵巣がん、BRCA-wt卵巣がん、またはBRCA1/2野生型卵巣がんと呼ぶ。逆に、いくつかの実施形態では、変異BRCA1遺伝子、変異BRCA2遺伝子、または変異BRCA1遺伝子と変異BRCA2遺伝子の両方を持つ個体の卵巣がんを本明細書では、BRCA1/2-m卵巣がん、またはBRCA-m卵巣がんと呼ぶ。いくつかの実施形態では、変異BRCA1遺伝子または変異BRCA2遺伝子は生殖細胞系列の変異を含む。いくつかの実施形態では、変異BRCA1遺伝子または変異BRCA2遺伝子は体細胞の変異を含む。いくつかの実施形態では、個体の無再発生存期間(RFS)は、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されたことがなくて卵巣がんが実質的に根絶された個体と比べて延長されている。
【0136】
いくつかの実施形態では、がんはHRD陰性の野生型BRCA1/2がんである。いくつかの実施形態では、がんの選択は、固形腫瘍がん、卵巣がん、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管癌、結腸直腸がん、食道がん、膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、リンパ腫、肺がん、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がん、甲状腺がん、および血液がんからなる群からなされる。固形腫瘍がんの非限定的な例に含まれるのは、子宮内膜がん、胆管がん、膀胱がん、肝細胞癌、胃/食道がん、卵巣がん、黒色腫、乳がん、膵臓がん、結腸直腸がん、神経膠腫、非小細胞肺癌、前立腺がん、子宮頸がん、腎臓がん、甲状腺がん、神経内分泌がん、小細胞肺がん、肉腫、頭頸部がん、脳腫瘍、腎明細胞癌、皮膚がん、内分泌腫瘍、甲状腺がん、原発不明の腫瘍、および消化管間質腫瘍である。
【0137】
本明細書では、「無再発生存期間」は「無再悪化生存期間」という用語と交換可能に用いられ、がんを治療するための初期療法を適用した後、そのがんが検出不能な状態にとどまっている(すなわちがん再発までの)時間を意味する。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンを投与された個体の無再発生存期間は、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されていない個体の無再発生存期間よりも5ヶ月~11ヶ月長い。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンを投与された個体の無再発生存期間は、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されていない個体の無再発生存期間よりも少なくとも5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、または11ヶ月長い。
【0138】
本明細書では、「実質的に根絶された」という表現は、卵巣がんを治療するための初期療法の後の個体で検出できない(例えば検出可能なレベル未満、または検出限界(LOD)未満の)卵巣がんを意味する。いくつかの実施形態では、卵巣がんの検出、またはその欠如は、胸部X線、コンピュータトモグラフィ(CT)スキャン、磁気共鳴イメージング(MRI)、がん抗原125(CA-125)のレベルの検出、身体検査、または活性ながんを示唆する症状の存在、またはこれらの任意の組み合わせによる。いくつかの実施形態では、35単位/ml以下のレベルのがん抗原125(CA-125)の検出は、その個体に卵巣がんが存在しないことを示す。いくつかの実施形態では、実質的に根絶された卵巣がんは臨床的な完全奏功(cCR)を達成したと言われる。いくつかの実施形態では、対象の卵巣がんが以前に実質的に根絶された後にその対象で検出される卵巣がんは、再発または再悪化した卵巣がんと呼ばれる。
【0139】
いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンを投与された個体の無再発生存期間は、BRCA1, BRCA2、またはこれらの任意の組み合わせの状態(すなわち変異体であるか非変異体であるか)に関係なく、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されていない個体の無再発生存期間よりも少なくとも5ヶ月長い。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されたBRCA-wt個体の無再発生存期間は、腫瘍減量手術の時点から15ヶ月よりも長く、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されていない個体の無再発生存期間は、腫瘍減量手術の時点から15ヶ月未満である。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されたBRCA-wtの個体の無再発生存期間は、自家腫瘍細胞ワクチンを投与されていない個体の無再発生存期間よりも少なくとも11ヶ月長い。
【0140】
いくつかの実施形態では、個体は初期療法を受けた。いくつかの実施形態では、初期療法を受けた結果としてがんがその療法に対して臨床的に完全奏功する。いくつかの実施形態では、初期療法は、腫瘍減量、化学療法の適用、治療剤の投与、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、化学療法は、白金製剤、タキサン、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、白金製剤は、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、トリプラチン、四硝酸塩、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、白金製剤はカルボプラチンを含む。いくつかの実施形態では、タキサンは、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、タキサンはパクリタキセルを含む。いくつかの実施形態では、治療剤は、血管新生阻害剤、PARP阻害剤、チェックポイント阻害剤、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、レバチニブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤はベバシズマブである。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、パミパリブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤はニラパリブである。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、卵巣がんは化学療法または療法剤に対して耐性または難治性である。
【0141】
いくつかの実施形態では、前記方法は、個体におけるBRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせの状態(すなわち野生型または変異体)を判断することをさらに含む。いくつかの実施形態では、判断は、BRCA1遺伝子、BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせのシークエンシングを含む。いくつかの実施形態では、シークエンシングはサンガーシークエンシングまたは次世代シークエンシングを含む。いくつかの実施形態では、次世代シークエンシングは超並列シークエンシングを含む。いくつかの実施形態では、判断は、個体から抽出された核酸をアレイにハイブリダイズさせることを含む。いくつかの実施形態では、アレイはマイクロアレイである。いくつかの実施形態では、判断は、個体から抽出された核酸のアレイ比較ゲノムハイブリダイゼーションを含む。
【0142】
投与、製剤、および用量
いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは、本明細書に記載されているようにトランスフェクトされた約1×106個または約1×107個の自家腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは、本明細書に記載されているようにトランスフェクトされた少なくとも1×106個または少なくとも1×107個の自家腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは、本明細書に記載されているようにトランスフェクトされた約1×106~約1×107個の自家腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは、本明細書に記載されているようにトランスフェクトされた約1×106~約2.5×107個の自家腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは、本明細書に記載されているようにトランスフェクトされた約1×106~約5×107個の自家腫瘍細胞を含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは1つ以上のワクチンアジュバントをさらに含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは単位剤形にされている。「単位剤形」という用語は、本明細書では、所定量の本明細書に記載されている自家腫瘍細胞ワクチンを他の諸成分(例えばワクチンアジュバント)と組み合わせて含有する物理的に離散した単位を記述する。いくつかの実施形態では、所定量は多数の細胞である。
【0145】
いくつかの実施形態では、個体は1ヶ月に1用量の自家腫瘍細胞ワクチンを投与される。いくつかの実施形態では、1用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に1ヶ月に1回、1ヶ月間~12ヶ月間投与される。いくつかの実施形態では、個体は少なくとも1用量の自家腫瘍細胞ワクチンを投与される。いくつかの実施形態では、個体は12用量以下の自家腫瘍細胞ワクチンを投与される。いくつかの実施形態では、個体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12用量の自家腫瘍細胞ワクチンを投与される。いくつかの実施形態では、用量は1単位剤形の自家腫瘍細胞ワクチンである。いくつかの実施形態では、1用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に3ヶ月ごとに、2ヶ月ごとに、1ヶ月に1回、1ヶ月に2回、または1ヶ月に3回投与される。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは個体に1ヶ月まで、2ヶ月まで、3ヶ月まで、4ヶ月まで、5ヶ月まで、6ヶ月まで、12ヶ月まで、18ヶ月まで、24ヶ月まで、または36ヶ月まで投与される。いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは注射によって個体に投与される。いくつかの実施形態では、注射は皮内注射である。いくつかの実施形態では、第1の用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に、その個体が臨床的な完全奏功(cCR)を達成したことが確認された後に投与される。いくつかの実施形態では、第1の用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に、初期療法の最終治療と同じ日よりも前に投与されることはない。いくつかの実施形態では、第1の用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に、初期療法の最終治療の8週間後以降に投与されることはない。
【0146】
組み合わせ
いくつかの実施形態では、自家腫瘍細胞ワクチンは個体に追加治療剤とともに投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの第1の用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に追加治療剤なしに投与され、少なくとも1つの第2の用量の自家腫瘍細胞ワクチンがその個体に少なくとも1用量の追加治療剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、本明細書で用いられている「と組み合わせて」は、1用量の追加治療剤を、1用量の自家腫瘍細胞ワクチンから1日以内、2日以内、3日以内、4日以内、5日以内、6日以内、1週間以内、2週間以内、3週間以内、または4週間以内に、またはそれと同日に投与することを意味する。追加治療剤は、自家腫瘍細胞ワクチンよりも前、それと同時に、またはそれよりも後に投与することができる。
【0147】
代表的な一例では、個体は、皮内注射により2用量の自家腫瘍細胞ワクチンを1ヶ月の間隔を空けて投与され、3ヶ月目から、静脈内注入により、(i)それぞれ1ヶ月の間隔を空けた追加の10用量の腫瘍細胞ワクチンと、(ii)それぞれ3週間の間隔を空けた12用量のアテゾリズマブの両方を投与される。
【0148】
別の1つの代表的な例では、個体は、皮内注射により2用量の自家腫瘍細胞ワクチンを1ヶ月の間隔を空けて投与され、3ヶ月目から、静脈内注入により、(i)それぞれ1ヶ月の間隔を空けた追加の10用量の腫瘍細胞ワクチンと、(ii)その追加の10用量の腫瘍細胞ワクチンと同じ日の10用量のアテゾリズマブを投与される。
【0149】
いくつかの実施形態では、個体への自家腫瘍細胞ワクチンの後、自家腫瘍細胞ワクチンと追加治療剤の組み合わせを最初に投与すると、追加治療剤だけの投与と比べて毒性が低下する。いくつかの実施形態では、個体への自家腫瘍細胞ワクチンの後、自家腫瘍細胞ワクチンとチェックポイント阻害剤の組み合わせを最初に投与すると、チェックポイントだけの投与と比べて毒性が低下する。
【0150】
いくつかの実施形態では、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に投与された後、その自家腫瘍細胞ワクチンが追加治療剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、少なくとも2用量の自家腫瘍細胞ワクチンが個体に投与された後、その自家腫瘍細胞ワクチンが追加治療剤と組み合わせて投与される。
【0151】
いくつかの実施形態では、追加治療剤は、血管新生阻害剤、PARP阻害剤、チェックポイント阻害剤、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、レバチニブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤はベバシズマブである。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、パミパリブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤はニラパリブである。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、追加治療剤はチェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤はアテゾリズマブである。いくつかの実施形態では、追加治療剤はVEGF阻害剤である。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤はベバシズマブである。いくつかの実施形態では、追加治療剤はPARP阻害剤である。いくつかの実施形態では、追加治療剤は静脈内注入によって投与される。
【0152】
いくつかの実施形態では、追加治療剤は治療に有効な用量のアテゾリズマブを含む。いくつかの実施形態では、治療に有効な用量のアテゾリズマブは、約900 mg~約1500 mg、または約1100 mg~約1300 mgである。いくつかの実施形態では、治療に有効な用量のアテゾリズマブは、約900 mg、1000 mg、1100 mg、1200 mg、1300 mg、1400 mg、または1500 mgである。いくつかの実施形態では、治療に有効な用量のアテゾリズマブは約1200 mgである。いくつかの実施形態では、アテゾリズマブは静脈内注入によって投与される。
【0153】
いくつかの実施形態では、追加治療剤は治療に有効な用量のγIFN(ガンマインターフェロン)を含む。いくつかの実施形態では、治療に有効な用量のγIFNは約50 μg/m2~約100 μg/m2である。いくつかの実施形態では、治療に有効な用量のγIFNは、約50 μg/m2、約60 μg/m2、約70 μg/m2、約80 μg/m2、約90 μg/m2、または約100 μg/m2である。
【0154】
いくつかの実施形態では、発現ベクターまたは自家腫瘍細胞ワクチンは追加治療剤とともに投与される。いくつかの実施形態では、追加治療剤は治療に有効な用量のγIFN(ガンマインターフェロン)を含む。いくつかの実施形態では、治療に有効な用量のγIFNは約50 μg/m2~約100 μg/m2である。いくつかの実施形態では、治療に有効な用量のγIFNは、約50 μg/m2、約60 μg/m2、約70 μg/m2、約80 μg/m2、約90 μg/m2、または約100 μg/m2である。いくつかの実施形態では、追加治療剤は、血管新生阻害剤、PARP阻害剤、チェックポイント阻害剤、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、血管新生阻害剤は血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤は、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、レバチニブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、VEGF阻害剤はベバシズマブである。いくつかの実施形態では、PARP阻害剤は、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、パミパリブ、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、またはこれらの組み合わせを含む。
【0155】
製造
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている自家腫瘍細胞ワクチンを製造する方法は、(i)1個以上のがん細胞を個体から無菌で採取する工程、(ii)採取した細胞を殺菌容器内の抗生剤溶液に入れる工程、(iii)その採取溶液から細胞懸濁液を形成する工程、そのとき、その細胞、(iv)懸濁液の形成が、酵素による細分、機械的分割、またはその両方によって達成される工程、(v)前記細胞懸濁液の電気穿孔によって細胞を遺伝子改変し、bishRNAフーリン/GMCSF発現ベクタープラスミドを有するワクチンを製造する工程(そのベクタープラスミドは、プロモータに作用可能式に連結された第1の核酸インサート(ただしこの第1のインサートはGM-CSF cDNAをコードする)と、前記プロモータに作用可能式に連結された第2の核酸インサート(ただしこの第2のインサートは、フーリンをコードするmRNA転写産物の1つの領域にハイブリダイズすることのできる1つ以上の短鎖ヘアピンRNA(shRNA)をコードする)を含み、そのことによってRNA干渉を通じてフーリンの発現を阻害する)、(vi)前記ワクチンを回収する工程、(vii)前記ワクチンに照射する工程、および(viii)前記ワクチンを凍結させる工程を含む。いくつかの実施形態では、前記抗生剤溶液はゲンタマイシンを含む。いくつかの実施形態では、前記1個以上のがん細胞は、卵巣がんを患っている患者から採取される。いくつかの実施形態では、前記遺伝子改変された細胞は照射によって増殖不能にされている。いくつかの実施形態では、前記遺伝子改変された細胞は、自家細胞、同種異系細胞、または異種移植増殖細胞である。いくつかの実施形態では、前記方法は、前記遺伝子改変された細胞をトランスフェクションの後にγIFNとともにインキュベートする工程をさらに含む。いくつかの実施形態では、トランスフェクション後の前記遺伝子改変された細胞に適用されるγIFNの用量は約250 U/ml(24時間で500 U/mlから48時間で100 U/mlまで)である。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンは培地の中に入れられた後に凍結される。いくつかの実施形態では、凍結前に前記自家腫瘍細胞ワクチンが入れられる培地は、DMSO、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはこれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチン(場合によりDMSOとHSAを含む)は最終充填体積を1.1~1.3 mL、または約1.2 mLにして凍結される。いくつかの実施形態では、前記自家腫瘍細胞ワクチンは約-80℃で凍結される。
【0156】
代表的な実施形態
以下は本発明の非限定的な実施形態である。
【0157】
実施形態1。実質的に根絶された卵巣がんの再悪化の予防を、それを必要とする個体で実施する方法であって、
a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;と
b.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む方法。
【0158】
実施形態2。前記実質的に根絶された卵巣がんがステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである、実施形態1の方法。
【0159】
実施形態3。前記個体が、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態1または実施形態2の方法。
【0160】
実施形態4。前記個体の無再発生存期間(RFS)が、卵巣がんが実質的に根絶されているが前記トランスフェクトされた腫瘍細胞を投与されていない個体と比べて延長される、実施形態1~3のいずれか1つの方法。
【0161】
実施形態5。前記個体が最初の療法を受けた、実施形態1~4のいずれか1つの方法。
【0162】
実施形態6。前記最初の療法が、腫瘍減量手術、化学療法、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態5の方法。
【0163】
実施形態7。前記化学療法が白金製剤とタキサンを投与することを含む、実施形態6の方法。
【0164】
実施形態8。前記白金製剤がカルボプラチンを含む、実施形態7の方法。
【0165】
実施形態9。前記タキサンがパクリタキセルを含む、実施形態7の方法。
【0166】
実施形態10。前記GM-CSFがヒトGM-CSF配列である、実施形態1~9のいずれか1つの方法。
【0167】
実施形態11。前記発現ベクターがプロモータをさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つの方法。
【0168】
実施形態12。前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである、実施形態11の方法。
【0169】
実施形態13。前記発現ベクターがCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む、実施形態12の方法。
【0170】
実施形態14。前記第1のインサートと前記第2のインサートが前記プロモータに作用可能式に連結されている、実施形態11~13のいずれか1つの方法。
【0171】
実施形態15。前記発現ベクターが、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態1~14のいずれか1つの方法。
【0172】
実施形態16。前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する、実施形態1~15のいずれか1つの方法。
【0173】
実施形態17。前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する、実施形態16の方法。
【0174】
実施形態18。前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する、実施形態17の方法。
【0175】
実施形態19。前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する、実施形態1~18のいずれか1つの方法。
【0176】
実施形態20。BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であって、
a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;と
b.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を前記個体に投与することを含む方法。
【0177】
実施形態21。前記卵巣がんがステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである、実施形態20の方法。
【0178】
実施形態22。前記卵巣がんが難治性卵巣がんである、実施形態20または実施形態21の方法。
【0179】
実施形態23。前記難治性卵巣がんが化学療法に対して難治性である、実施形態22の方法。
【0180】
実施形態24。前記化学療法が白金製剤またはタキサンを含む、実施形態23の方法。
【0181】
実施形態25。前記白金製剤がカルボプラチンを含む、実施形態24の方法。
【0182】
実施形態26。前記タキサンがパクリタキセルを含む、実施形態24の方法。
【0183】
実施形態27。追加治療剤を投与することをさらに含む、実施形態20~26のいずれか1つの方法。
【0184】
実施形態28。前記追加治療剤の選択が、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群からなされる、実施形態27の方法。
【0185】
実施形態29。前記血管新生阻害剤が血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である、実施形態28の方法。
【0186】
実施形態30。前記VEGFの選択が、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、およびレバチニブからなる群からなされる、実施形態29の方法。
【0187】
実施形態31。前記VEGFがベバシズマブである、実施形態29の方法。
【0188】
実施形態32。前記PARP阻害剤の選択が、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブからなる群からなされる、実施形態28の方法。
【0189】
実施形態33。前記PARP阻害剤がニラパリブである、実施形態28の方法。
【0190】
実施形態34。前記チェックポイント阻害剤の選択が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群からなされる、実施形態28の方法。
【0191】
実施形態35。前記チェックポイント阻害剤の選択が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびイピリムマブからなる群からなされ、静脈内注入によって投与される、実施形態28の方法。
【0192】
実施形態36。前記GM-CSFがヒトGM-CSF配列である、実施形態20~35のいずれか1つの方法。
【0193】
実施形態37。前記発現ベクターがプロモータをさらに含む、実施形態20~36のいずれか1つの方法。
【0194】
実施形態38。前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである、実施形態37の方法。
【0195】
実施形態39。前記発現ベクターがCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む、実施形態38の方法。
【0196】
実施形態40。前記第1のインサートと前記第2のインサートが前記プロモータに作用可能式に連結されている、実施形態37~39のいずれか1つの方法。
【0197】
実施形態41。前記発現ベクターが、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態20~40のいずれか1つの方法。
【0198】
実施形態42。前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する、実施形態20~41のいずれか1つの方法。
【0199】
実施形態43。前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する、実施形態42の方法。
【0200】
実施形態44。前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する、実施形態43の方法。
【0201】
実施形態45。前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する、実施形態20~44のいずれか1つの方法。
【0202】
実施形態46。実質的に根絶された卵巣がんの再発の予防または再発の予防的治療を、それを必要とする個体で実施する方法であって、
a.i.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;と
ii.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量;と
b.前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む方法。
【0203】
実施形態47。前記実質的に根絶された卵巣がんがステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである、実施形態46の方法。
【0204】
実施形態48。前記個体が、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態46または実施形態47の方法。
【0205】
実施形態49。前記個体の無再発生存期間(RFS)が、卵巣がんが実質的に根絶されているが前記トランスフェクトされた腫瘍細胞を投与されていない個体と比べて延長される、実施形態46~48のいずれか1つの方法。
【0206】
実施形態50。前記個体が最初の療法を受けた、実施形態46~49のいずれか1つの方法。
【0207】
実施形態51。前記最初の療法が、腫瘍減量手術、化学療法、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態50の方法。
【0208】
実施形態52。前記化学療法が白金製剤とタキサンを投与することを含む、実施形態51の方法。
【0209】
実施形態53。前記白金製剤がカルボプラチンを含む、実施形態52の方法。
【0210】
実施形態54。前記タキサンがパクリタキセルを含む、実施形態52の方法。
【0211】
実施形態55。前記GM-CSFがヒトGM-CSF配列である、実施形態46~54のいずれか1つの方法。
【0212】
実施形態56。前記発現ベクターがプロモータをさらに含む、実施形態46~55のいずれか1つの方法。
【0213】
実施形態57。前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである、実施形態56の方法。
【0214】
実施形態58。前記発現ベクターがCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む、実施形態57の方法。
【0215】
実施形態59。前記第1のインサートと前記第2のインサートが前記プロモータに作用可能式に連結されている、実施形態56~58のいずれか1つの方法。
【0216】
実施形態60。前記発現ベクターが、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態46~59のいずれか1つの方法。
【0217】
実施形態61。前記追加治療剤の選択が、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群からなされる、実施形態46~60のいずれか1つの方法。
【0218】
実施形態62。前記血管新生阻害剤が血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である、実施形態61の方法。
【0219】
実施形態63。前記VEGFの選択が、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、およびレバチニブからなる群からなされる、実施形態62の方法。
【0220】
実施形態64。前記VEGFがベバシズマブである、実施形態62の方法。
【0221】
実施形態65。前記PARP阻害剤の選択が、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブからなる群からなされる、実施形態61の方法。
【0222】
実施形態66。前記PARP阻害剤がニラパリブである、実施形態61の方法。
【0223】
実施形態67。前記チェックポイント阻害剤の選択が、PD-1 阻害剤、PD-L1 阻害剤、およびCTLA-4 阻害剤からなる群からなされる、実施形態61の方法。
【0224】
実施形態68。前記チェックポイント阻害剤の選択が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびイピリムマブからなる群からなされる、実施形態61の方法。
【0225】
実施形態69。前記チェックポイント阻害剤がアテゾリズマブである、実施形態61の方法。
【0226】
実施形態70。前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量が1100 mg~1300 mgである、実施形態46~69のいずれか1つの方法。
【0227】
実施形態71。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量が約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む、実施形態46~70のいずれか1つの方法。
【0228】
実施形態72。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量が約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む、実施形態46~71のいずれか1つの方法。
【0229】
実施形態73。前記自家腫瘍細胞の前記少なくとも1つの第1の用量を皮内注射によって前記個体に投与する、実施形態46~72のいずれか1つの方法。
【0230】
実施形態74。前記自家腫瘍細胞の前記少なくとも1つの第2の用量を皮内注射によって前記個体に投与する、実施形態46~73のいずれか1つの方法。
【0231】
実施形態75。前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量を静脈内注入によって前記個体に投与する、実施形態46~74のいずれか1つの方法。
【0232】
実施形態76。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量が2つの用量を含む、実施形態46~75のいずれか1つの方法。
【0233】
実施形態77。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する、実施形態46~76のいずれか1つの方法。
【0234】
実施形態78。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する、実施形態46~77のいずれか1つの方法。
【0235】
実施形態79。前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量の各用量を前記個体に1ヶ月に少なくとも1回投与する、実施形態46~78のいずれか1つの方法。
【0236】
実施形態80。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量と、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量が、合計で少なくとも12回の用量を含む、実施形態46~79のいずれか1つの方法。
【0237】
実施形態81。BRCA1/2野生型卵巣がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であって、
a.i.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;と
ii.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターをトランスフェクトされた自家腫瘍細胞を含む自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第1の用量;と
b.前記自家腫瘍細胞ワクチンの少なくとも1つの第2の用量を、追加治療剤の少なくとも1つの用量と組み合わせて前記個体に投与することを含む方法。
【0238】
実施形態82。前記卵巣がんがステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである、実施形態81の方法。
【0239】
実施形態83。前記卵巣がんが難治性卵巣がんである、実施形態81または実施形態82の方法。
【0240】
実施形態84。前記難治性卵巣がんが化学療法に対して難治性である、実施形態83の方法。
【0241】
実施形態85。前記化学療法が白金製剤またはタキサンを含む、実施形態84の方法。
【0242】
実施形態86。前記白金製剤がカルボプラチンを含む、実施形態85の方法。
【0243】
実施形態87。前記タキサンがパクリタキセルを含む、実施形態85の方法。
【0244】
実施形態88。前記GM-CSFがヒトGM-CSF配列である、実施形態81~87のいずれか1つの方法。
【0245】
実施形態89。前記発現ベクターがプロモータをさらに含む、実施形態81~88のいずれか1つの方法。
【0246】
実施形態90。前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである、実施形態89の方法。
【0247】
実施形態91。前記発現ベクターがCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む、実施形態90の方法。
【0248】
実施形態92。前記第1のインサートと前記第2のインサートが前記プロモータに作用可能式に連結されている、実施形態89~91のいずれか1つの方法。
【0249】
実施形態93。前記発現ベクターが、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態81~92のいずれか1つの方法。
【0250】
実施形態94。前記追加治療剤の選択が、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群からなされる、実施形態81~93のいずれか1つの方法。
【0251】
実施形態95。前記血管新生阻害剤が血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤である、実施形態94の方法。
【0252】
実施形態96。前記VEGFの選択が、ソラフェニブ、スニチニブ、ベバシズマブ、パゾパニブ、アキシチニブ、カボザンチニブ、およびレバチニブからなる群からなされる、実施形態95の方法。
【0253】
実施形態97。前記VEGFがベバシズマブである、実施形態95の方法。
【0254】
実施形態98。前記PARP阻害剤の選択が、ニラパリブ、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、タラゾパリブ、ベリパリブ、およびパミパリブからなる群からなされる、実施形態94の方法。
【0255】
実施形態99。前記PARP阻害剤がニラパリブである、実施形態94の方法。
【0256】
実施形態100。前記チェックポイント阻害剤の選択が、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、およびCTLA-4阻害剤からなる群からなされる、実施形態94の方法。
【0257】
実施形態101。前記チェックポイント阻害剤の選択が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、およびイピリムマブからなる群からなされる、実施形態94の方法。
【0258】
実施形態102。前記チェックポイント阻害剤がアテゾリズマブである、実施形態94の方法。
【0259】
実施形態103。前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量が1100 mg~1300 mgである、実施形態81~102のいずれか1つの方法。
【0260】
実施形態104。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量が約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む、実施形態81~103のいずれか1つの方法。
【0261】
実施形態105。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量が約1×106個の細胞~約5×107個の細胞を含む、実施形態81~104のいずれか1つの方法。
【0262】
実施形態106。前記自家腫瘍細胞の前記少なくとも1つの第1の用量を皮内注射によって前記個体に投与する、実施形態81~105のいずれか1つの方法。
【0263】
実施形態107。前記自家腫瘍細胞の前記少なくとも1つの第2の用量を皮内注射によって前記個体に投与する、実施形態81~106のいずれか1つの方法。
【0264】
実施形態108。前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量を静脈内注入によって前記個体に投与する、実施形態81~107のいずれか1つの方法。
【0265】
実施形態109。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量が2つの用量を含む、実施形態81~108のいずれか1つの方法。
【0266】
実施形態110。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する、実施形態81~109のいずれか1つの方法。
【0267】
実施形態111。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量の各用量を前記個体に1ヶ月に1回投与する、実施形態81~110のいずれか1つの方法。
【0268】
実施形態112。前記追加治療剤の前記少なくとも1つの用量の各用量を前記個体に1ヶ月に少なくとも1回投与する、実施形態81~111のいずれか1つの方法。
【0269】
実施形態113。前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第1の用量と、前記自家腫瘍細胞ワクチンの前記少なくとも1つの第2の用量が、合計で少なくとも12回の用量を含む、実施形態81~112のいずれか1つの方法。
【0270】
実施形態114。がんの治療を、それを必要とする個体において実施する方法であって、
a.顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)配列をコードする核酸配列を含む第1のインサート;と
b.配列番号2または4(配列番号4)に従う配列を含む第2のインサート
を含む発現ベクターを前記個体に投与することを含み、
前記個体が、野生型BRCA1遺伝子、野生型BRCA2遺伝子、またはこれらの組み合わせを含み、相同組み換え修復異常(HRD)陰性であると同定されている方法。
【0271】
実施形態115。前記GM-CSFがヒトGM-CSF配列である、実施形態114の方法。
【0272】
実施形態116。前記発現ベクターがプロモータをさらに含む、実施形態114の方法。
【0273】
実施形態117。前記プロモータがサイトメガロウイルス(CMV)哺乳類プロモータである、実施形態116の方法。
【0274】
実施形態118。前記発現ベクターがCMVエンハンサ配列とCMVイントロン配列をさらに含む、実施形態114の方法。
【0275】
実施形態119。前記第1のインサートと前記第2のインサートが前記プロモータに作用可能式に連結されている、実施形態114の方法。
【0276】
実施形態120。前記発現ベクターが、前記第1と前記第2の核酸インサートの間に、ピコルナウイルス2Aリボソームスキップペプチドをコードする核酸配列をさらに含む、実施形態114の方法。
【0277】
実施形態121。前記がんがHRD陰性の野生型BRCA1/2がんである、実施形態114の方法。
【0278】
実施形態122。前記がんの選択が、固形腫瘍がん、卵巣がん、副腎皮質癌、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胆管癌、結腸直腸がん、食道がん、膠芽腫、神経膠腫、肝細胞癌、頭頸部がん、腎臓がん、白血病、リンパ腫、肺がん、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、膵臓がん、褐色細胞腫、形質細胞腫、神経芽腫、前立腺がん、肉腫、胃がん、子宮がん、甲状腺がん、および血液がんからなる群からなされる、実施形態114の方法。
【0279】
実施形態123。前記固形腫瘍がんの選択が、子宮内膜がん、胆管がん、膀胱がん、肝細胞癌、胃/食道がん、卵巣がん、黒色腫、乳がん、膵臓がん、結腸直腸がん、神経膠腫、非小細胞肺癌、前立腺がん、子宮頸がん、腎臓がん、甲状腺がん、神経内分泌がん、小細胞肺がん、肉腫、頭頸部がん、脳がん、腎明細胞癌、皮膚がん、内分泌腫瘍、甲状腺がん、原発不明の腫瘍、および消化管間質腫瘍からなる群からなされる、実施形態122の方法。
【0280】
実施形態124。前記がんが卵巣がんである、実施形態122の方法。
【0281】
実施形態125。実質的に根絶された卵巣がんの再悪化を予防するか遅延させる、実施形態124の方法。
【0282】
実施形態126。前記実質的に根絶された卵巣がんがステージIIIまたはステージIVの卵巣がんである、実施形態125の方法。
【0283】
実施形態127。前記がんが乳がんである、実施形態122の方法。
【0284】
実施形態128。前記がんが黒色腫である、実施形態122の方法。
【0285】
実施形態129。前記がんが肺がんである、実施形態122の方法。
【0286】
実施形態130。前記発現ベクターが、その発現ベクターをトランスフェクトされる自家がん細胞の中にある、実施形態114の方法。
【0287】
実施形態131。前記自家腫瘍細胞を約1×106個の細胞~約5×107個の細胞の用量として前記個体に投与する、実施形態130の方法。
【0288】
実施形態132。前記自家腫瘍細胞を前記個体に1ヶ月に1回投与する、実施形態131の方法。
【0289】
実施形態133。前記自家腫瘍細胞を前記個体に1~12ヶ月間投与する、実施形態131の方法。
【0290】
実施形態134。前記自家腫瘍細胞を前記個体に皮内注射によって投与する、実施形態114の方法。
【0291】
実施形態135。前記個体が最初の療法を受けた、実施形態114の方法。
【0292】
実施形態136。前記最初の療法が、腫瘍減量手術、化学療法、またはこれらの組み合わせを含む、実施形態135の方法。
【0293】
実施形態137。前記化学療法が白金製剤とタキサンを投与することを含む、実施形態135の方法。
【0294】
実施形態138。前記白金製剤がカルボプラチンを含む、実施形態137の方法。
【0295】
実施形態139。前記タキサンがパクリタキセルを含む、実施形態137の方法。
【0296】
実施形態140。追加治療剤を投与することをさらに含む、実施形態1~139のいずれか1つの方法。
【0297】
実施形態141。前記追加治療剤が、前記個体に対する血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤からなる群から選択されるメンバーである、実施形態140の方法。
【実施例
【0298】
実施例1 - Vigil(登録商標)を用いたBRCA1/2野生型フロントラインステージIII/IV卵巣がんの無再発生存と全生存期間の利点
進行した卵巣がんのためのフロントライン治療の限界、卵巣がんにおける高TGF-β発現と免疫阻害の関係、およびBRCA1/2-wt患者における限られた治療選択肢を理由として、卵巣がんを持つ患者におけるフロントライン維持療法としてのVigil(登録商標)の使用を調べるために研究を開始した。
【0299】
材料と方法
試験の設計と治療
Vigil(登録商標)とプラセボを比較するこの第2b相二重盲検試験には25施設が含まれた。手術と、カルボプラチンとパクリタキセルを含む化学療法の組み合わせの後に臨床的な完全奏功(cCR)が得られたステージIII/IV高グレード漿液性卵巣がんを持つ患者が含まれた。登録された患者は、初回腫瘍減量手術とその後のアジュバント化学療法を受けたか、ネオアジュバント化学療法とその後のインターバル腫瘍減量手術とアジュバント化学療法を受けたかのいずれかの可能性があった。組織/血液の生殖細胞系列および/または体細胞BRCA1/2分子プロファイリングを収集して解析した(Ocean Ridge Biosciences、ディアフィールド・ビーチ、フロリダ州)。患者は、1×107個の細胞/Vigil(登録商標)またはプラセボの皮内注射を(最後の化学療法の終了後、8週間以内に)1ヶ月に1回、12用量まで投与された。治療は、疾患が再発するか、治療品の供給が尽きるまで続けた。毒性はCTCAE v 4.03を用いて評価した。
【0300】
患者
手術と化学療法の組み合わせの後にcCRが得られ、組織学的に確認されたステージIIIまたはIVの高グレード漿液性卵巣がん(HGSC)を持つ女性が試験に含まれた。
【0301】
腫瘍採取と製造の関係
Gradalis, Inc.(キャロルトン、テキサス州)が、採取された腫瘍組織からVigil(登録商標)を製造した。Vigil(登録商標)のバイアルの数に基づき同じ用量のプラセボ(冷凍培地)を製造した。10~30グラムの組織がワクチンの製造に必要とされた。腸管腔へと延びる病巣は除外された(細菌感染のリスク)。
【0302】
治験薬とプラセボの製造
外科的に切除した腫瘍組織を採取し、1/4インチの切片に切断した後、ゲンタマイシン(Fresenius Kabi)を補足した試料容器に入れ、一晩輸送するため氷の中に包装した。1日目、輸送媒体と腫瘍試料で無菌であることを調べた(BacT/Alert 3D Microbial Identification System, BioMerieux)。腫瘍組織をメスによって切り取り、分離した後、酵素で解離させ(I型コラゲナーゼ溶液)、37℃でインキュベートして単一細胞懸濁液の形成を容易にした。この懸濁液の濃度を4000万個の細胞/mLに調節し、Gene Pulser XL(BioRad)を用いて電気穿孔することによりプラスミドの挿入を容易にした。
【0303】
2日目、一晩培養物を収集し、新鮮なX-VIVO培地に再懸濁させた。処理を進める前にQCサンプルと患者一人につき最低4用量が必要とされた。細胞を、1%のヒト血清アルブミン(HSA)(Octapharma)を補足したPlasmaLyte(Baxter)で洗浄し、QCサンプルを取り出した。細胞を、10%のDMSO(ジメチルスルホキシド;Cryoserv USP;Mylan)、1%のHSA(Octapharma)を含むpH 7.4のPlasmaLyte(Baxter)からなる凍結培地に入れ、殺菌した2.0 mLのホウケイ酸ガラス製バイアル(Algroup Wheaton PharmaceuticalとCosmetics Packaging)に無菌状態にて1×107個の細胞/mLで分配し;最終充填体積を1.2 mLにしてFlurotec(登録商標)バリアファイル(West Pharmaceutical Services)で被覆したブチルゴム製ストッパで封止した。最終的に製造されたバイアルをCoolCell(登録商標)凍結容器(Biocision)を用いて制御された速度で凍結させ、-80℃の冷凍庫(Sanyo)に入れた。
【0304】
プラセボは、10%のDMSO(Cryoserv USP;Mylan)、1%のHSA(Octapharma)を含むpH 7.4のPlasmaLyte(Baxter)からなる凍結培地で構成した。この培地をゆっくりと-80℃まで下げて凍結させた後、無菌性とエンドトキシンに関する出荷試験の間はバイアルを気相の液体窒素の中で保管した。プラセボバイアル製品は、対象のために製造された利用可能な製品の用量と一致していた。
【0305】
疾患の評価
対象は、疾患が再発するか、対象のVigil(登録商標)またはプラセボの供給が尽きるまで治療を続けた。疾患の再発は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumorsバージョン1.1(RECIST 1.1)を用いてWorldCare Clinical(WCC)(ボストン、マサチューセッツ州)が評価した。
【0306】
エンドポイントと統計的評価
主要エンドポイントは、Vigil(登録商標)とプラセボを比較した、無作為化からの無再発生存期間(RFS)であった。盲検解除前に計画されたすべての統計解析は独立になされた(Stat Beyond Consulting、アーヴァイン、カリフォルニア州。優先順位の順序における副次的エンドポイントには、採取の時点からのBRCA-wtのRFS、無作為化の時点からのBRCA-wtのRFS、採取の時点からの全患者のRFS、無作為化の時点からの全患者のOS、および採取の時点からの全患者のOSが含まれていた。無作為化と採取の時点からのBRCA-wtのOSは、あらかじめ計画された部分解析であった。(少なくとも1用量のVigil(登録商標)またはプラセボを投与された)全患者が安全性解析に含まれていた。プロトコル遵守例について、片側p値が0.05以下(層化ログ-ランク検定)を、解析において統計的に有意であることを示すと見なした。サンプルサイズの計算に基づくと、合計54件の事象がこの解析に必要とされた。RFSのハザード比は、無作為化層化因子[残留疾患(巨視的/微視的)、フロントライン化学療法(ネオアジュバント、アジュバント)]によって層別Cox比例ハザードモデルによって評価した。RFSの分布はカプラン-マイヤー法を利用して評価した。計画されたサブグループ解析は、全患者とBRCA-wt患者についてフォレストプロットによって評価した。サブグループには、注射の数、年齢、ECOG、BRCA-wt/m、人種、ステージ、および製造出荷基準(TGFβ1、GMCSF、生存率)が含まれていた。ベースライン人口統計変数のバランスをチェックするためのp値は、カテゴリカルデータのための両側フィッシャーの直接確率検定と、多重性調節なしの連続データのための両側t検定を利用して計算する。GrambschとTherneauの検定を実施し、層別Coxモデルに関する比例ハザード推定をチェックした。
【0307】
結果
患者
2015年2月から2017年3月まで、310人の患者が22施設で同意した。128人の患者が、組織学またはスクリーニング脱落のパラメータを理由として不適格と見なされた。製造がなされた残る181人のうちで92人の対象(56%)で製造がうまくいって無作為化されたが、1人が無作為化の後かつ治療の前に健康状態良好という個体的な理由で辞退した。17人は無作為化に同意の署名をせず、72人は製品出荷基準に合致しなかった(65人は細胞が不十分)。91人の対象がVigil(登録商標)(n=46)またはプラセボ(n=45)を投与され、安全性と有効性が解析された。67人の対象がBRCA-wt(Vigil(登録商標):39人のBRCA-wt、プラセボ:28人のBRCA-wt)であり、24人がBRCA-mであった。55件の再発事象がこの試験で独立な第三者放射線評価(WCC)によって2019年8月までに観察された。人口統計を表2に示す。コホート間で有意差は検出されなかったが、例外として、45.7%のVigil(登録商標)患者はECOGが1の全身状態であったのに対し、プラセボでは20%であった。
【表2-1】
【表2-2】
【0308】
有効性
全患者を無作為化した時点から計算したRFS中央値という主要エンドポイントは、Vigil(登録商標)とプラセボを比較すると12.7対8.4ヶ月であった(HR 0.67、90%CIは[0.432~1.042]、片側p=0.065)。手術/採取の時点からのRFSは18.3対15.9ヶ月(Vigil(登録商標)対プラセボ)HRは0.63であった(90%CI[0.403~0.971]、片側p=0.038)(図6A~6B)。Vigil(登録商標)とプラセボでの再発は54%対76%であった(フィッシャーの直接確率p=0.048)。さらに、無作為化の時点からの1年RFS率はVigil(登録商標)では51%であったのに対してプラセボでは38%であり(p 0.13、片側Z検定)、2年RFS率はVigil(登録商標)では33%であったのに対してプラセボでは25%であった(p 0.22、片側Z検定)。第1の用量のGemogenovatucel-Tからの追跡中央値は38.5ヶ月であり、プラセボは38.6ヶ月であった。PP解析とITT解析の両方で同じ結果が明らかになった。手術から無作為化までの時間の中央値は7.0対6.7ヶ月であり、化学療法の終了から治療の開始までの期間の中央値は1.6と1.5ヶ月であった(それぞれ、Gemogenovatucel-T、プラセボ)。
【0309】
BRCAの状態による層化でVigil(登録商標)BRCA-wt患者の改善が実証された。Vigil(登録商標)BRCA-wtにおける無作為化からのRFS中央値(図6C)は12.7ヶ月であったのと比べてプラセボでは8.0ヶ月であり(HR 0.493、90%CI[0.287~0.846]、片側p=0.014)、手術/採取の時点からはVigil(登録商標)で19.4ヶ月、プラセボでは14.4ヶ月であった(HR 0.459、90%CI[0.268~0.787]、片側p=0.007)(図6D)。Vigil(登録商標)BRCA-wt1/2患者の51%で疾患が再悪化したのと比べてプラセボBRCA1/2-wt患者の79%で疾患が再発した(フィッシャーの直接確率p=0.039)。全生存期間の利点が、無作為化と手術/採取の時点からのVigil(登録商標)BRCA-wt患者の計画された部分解析においてプラセボとの比較で観察された(図6E~6F)。無作為化と手術/採取の時点から計算したRFSと生存期間を解析して似た結果が明らかになった。BRCA-m患者の無作為化からのRFS中央値はVigil(登録商標)では10.5ヶ月、プラセボでは13.3ヶ月であった。あらかじめ同定された層化(残留疾患、化学療法のスケジュール)と製品出荷基準を含め、疾患効果と関係する予備研究人口統計(計画された部分解析)が、無作為化の時点からのRFSに対するBRCA-wtと全患者の影響を探るために図7A~7Bに示されている。
【0310】
BRCA-m患者の手術/採取の時点からのRFS中央値という副次的エンドポイントをVigil(登録商標)とプラセボで比較すると、Gemogenovatucel-Tで19.4ヶ月、プラセボで14.4ヶ月であった(HR 0.459、90%CI[0.268~0.787]、片側p 0.007)(図6D)。有効性評価の時点でVigil(登録商標)BRCA1/2-wt患者の51%が再悪化した疾患を示したのと比べてプラセボBRCA-wt患者では79%であった(p 0.0195、片側フィッシャーの直接確率t検定)。手術/採取の時点からの1年RFS率はVigil(登録商標)BRCA-wt患者で80%であったのに対してプラセボBRCA-wt患者では64%であり(p 0.075、片側Z検定)、2年RFS率はVigil(登録商標)で43%であったのに対してプラセボでは23%であった(p 0.5、片側Z検定)。無作為化からのVigil(登録商標)BRCA-wt患者のRFS中央値は12.7ヶ月であったのと比べてプラセボでは8.0ヶ月であった(HR 0.493、90%CI[0.287~0.846]、片側p 0.014)(図6C)。BRCA-wt患者では、無作為化の時点からの1年RFS率はVigil(登録商標)52%であったのに対してプラセボでは27%であり(p 0.02、片側Z検定)、2年RFS率はVigil(登録商標)で34%であったのに対してプラセボでは13%であった(p 0.035、片側Z検定)。無作為化と手術/採取の時点から計算したRFSを解析して似た結果が明らかになった(図5A~D)。全患者での手術/採取の時点からのRFS中央値は18.3対15.9ヶ月(Vigil(登録商標)対プラセボ)HRは0.63であった(90%CI[0.403~0.971]、片側p 0.038)(図6B)。
【0311】
BRCA-wt患者に関してRMSTに基づく感度解析を実施してVigil(登録商標)をプラセボと比較すると、結果は層別ログ-ランク検定に基づく結果と合致していた。Vigil(登録商標)とプラセボの間のRMST差は、BRCA-wt患者の無作為化からのRFSについては7.8ヶ月(p 0.021)、OSについては7.1ヶ月(p 0.020)であった。どちらかの群の最長追跡時間の最小値に等しい打ち切り点をRMST解析で用いた。
【0312】
安全性
中央値で6回のVigil(登録商標)(範囲1~12)または6回のプラセボ(範囲3~12)の注射を患者ごとに投与した。おそらく治験薬に関連して記録された骨盤感染に起因するプラセボ患者の1回の治療遅延。2人のプラセボ患者がグレード3関連毒性を経験し;Vigil(登録商標)ではグレード3治療関連有害事象は観察されなかった。報告された有害事象の9%がVigil(登録商標)におけるグレードグレード2、3有害事象であったのに対してプラセボでは2.9%であった。7人(4人がプラセボ;3人がVigil(登録商標))の患者で11件の深刻な有害事象(SAE)が報告された。1人を除く全員が、研究治療に関係していない可能性が大きいか、関係していなかった。
【0313】
製品出荷結果
84人(92%)の対象がすべての製品出荷基準に合致した。採取した腫瘍の質量中央値は52グラムであった(範囲8~137グラム)。製品出荷の生存率中央値は88%であった(72~98%、n=91)。91人のうちの7人(8%、5人のVigil(登録商標)、RFS無作為化7.4ヶ月/2人のプラセボ)はプラスミド導入後にGMCSF発現の十分な増加を示さなかった。しかしこれら7人の患者のうちの6人(6/7)は十分なTGFβ1ノックダウンを示した。追加の製品出荷結果が表3に示されている。評価可能なGMCSF産生中央値(pg/106個の細胞)は860(36~37669、n=84)であり、評価可能なTGFβ1ノックダウン中央値は100%であった(66~100%、n=84)。TGFβ1ノックダウンの結果は7人の患者でも明確にならなかった(6人は十分なGMCSF発現出現、3人のVigil(登録商標)、RFS無作為化5.6ヶ月/4人のプラセボ)が、78人(86%)の患者はTGFβ1ノックダウンが90%以上であり、フーリンbi-shRNAiノックダウンに関係するロバストな活性を実証している。しかしRFSに有意差はなかった。プラスミドをトランスフェクトする前のベースラインTGFβ1産生が全患者で検出可能なレベルであることから、TGFβ1発現の中央値が164 pg/106個の細胞(平均値241、範囲52~882)であることが明らかになった。両方の群でBRCA1/2-wt TGFβ1発現は中央値が181(平均値249、範囲60~662)pg/106個の細胞であることが明らかになり、BRCA1/2-m TGFβ1は中央値が146(平均値219、範囲52~882) pg/106個の細胞であることが明らかになった。(表4)
【表3】
【表4】
【0314】
有効性
91人の評価可能な患者のうちで、62人の患者が局所部位解析でBRCA1/2分子プロファイルを有していた。BRCA1/2-wt患者のサブグループはVigil(登録商標)コホートでプラセボコホートと比べてRFSで利点を示した。結果が図2A~2Bに示されている。手術/採取の時点から計算したRFS中央値は、Vigil(登録商標)コホートのBRCA-wt卵巣患者では未到達であったのに対し、プラセボコホートでは14.8ヶ月であった(HR=0.49、90%CI、0.25~0.97、片側p=0.038)。同様に、RFSを無作為化の時点から計算したとき、BRCA-wtサブグループにおけるRFS中央値はVigil(登録商標)では19.4ヶ月であったのと比べてプラセボ群では8.0ヶ月であった(HR=0.51、90%CI、0.26~1.01、片側p=0.050)。Vigil(登録商標)で治療したBRCA1/2-wt患者の38%が再悪化した疾患を示したのと比べ、プラセボBRCA1/2-wt患者では71%であった(カイ二乗0=0.021)(図3A)。Vigil(登録商標)患者の62%がBRCA-wtであり、現在(2019年10月31日)まで再発・再悪化なしの状態を続けている。
【0315】
BRCA1/2の状態に関係なく、腫瘍減量手術の時点と無作為化の時点から計算したRFSが図2C~2Dに示されている。無作為化の時点から計算したRFS中間値はVigil(登録商標)コホートでは13.67ヶ月(416日)であったのと比べてプラセボコホートでは8.38ヶ月(255日)であった(HR=0.69、片側ログ・ランクp=-.054)。腫瘍減量手術の時点から計算したRFSは改善されてHRが0.64になった(片側p=0.054)。再悪化はVigil(登録商標)で治療した患者の48%で報告されたのと比べてプラセボ患者では73%であった(カイ二乗p=0.013)(図3B)。Vigil(登録商標)応答に対する利点の傾向と関連する他の因子は、65歳以下のより若い年齢であること(p 0.057)、後期ステージIIIb~IVであること(p 0.075)、および微視的な残留疾患(10 mm未満)があること/疾患の証拠がないこと(p=0.066)であった(図4)。
【0316】
考察
BRCA1/2-wt患者は、Vigil(登録商標)でプラセボを上回る有意な(腫瘍減量手術の時点から計算した)RFSの利点を実証し(未到達対14.8ヶ月;HR=0.49、片側p=0.038)、治療後の再悪化の発生はより少なかった(38%対71%、p=0.021)。これらの結果は、完全な腫瘍減量手術とアジュバントまたはネオアジュバント化学療法の後のBRCA1/2-wt卵巣がん患者においてVigil(登録商標)が維持と見なされることを支持した。安全性解析から、Vigil(登録商標)にプラセボを上回る毒性効果の証拠がないことが実証された。
【0317】
増えつつある証拠は、GMCSFが樹状細胞(DC)による腫瘍抗原提示の増加に関与していることを示唆する。GMCSFはアポトーシス性腫瘍細胞の食作用に優れるCDのサブセットを誘導することが示されている。GMCSFはより高レベルの共刺激分子を誘起し(それは、より大きな機能的成熟とより効率的なT細胞刺激に特徴的である)、そのことによって誘導されるリンパ球エフェクタ機構の武器庫を拡張する。GMCSFは樹状細胞による脂質抗原の提示も促進し、それが今度は、腫瘍に対する内在的応答と治療応答の両方で重要である可能性があるリンパ球の集団であるナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)の活性化につながる。樹状細胞は抗原特異的免疫応答を開始させ、真皮などの末梢組織における抗原の認識と捕獲を可能にするさまざまな受容体を発現させる。樹状細胞はこの材料を効率的に処理してMHCクラスIとIIの提示経路に送り、共刺激分子を成熟時に上方調節し、二次的リンパ組織に移動させ、その場所で樹状細胞は抗原をT細胞に提示する。Vigil(登録商標)GMCSFタンパク質は上方調節され、1806/826 pg/106個の細胞というロバストな平均値/中間値となる。製造された91人(91%)の患者のうちの84人において、これはGMCSFプラスミド導入にだけ関係していた。
【0318】
TGFβの卵巣悪性細胞での発現が悪性卵巣がん組織では非悪性卵巣がん組織よりもはるかに多いことも以前に示されている。1500人を超える卵巣がん患者で実施された遺伝子発現メタ解析により、いくつかの遺伝子の発現に基づいて高リスク群と低リスク群が同定され、その結果がIHCまたはqRT-PCRによって検証された。遺伝子シグネチャの経路解析から、予後が悪い患者におけるTGFβの富化が示された。TGFβシグナルはセリン/トレオニンキナーゼ受容体TGFβRIとIIへの結合を通じて伝えられ、細胞内エフェクタSmad2とSmad3のリン酸化と活性化につながる。Smad2/3はSmad4と転写複合体を形成して核へと転移し、TGFβによって調節される遺伝子の遺伝子発現を調節する。TGFβは非侵襲性漿液性卵巣腫瘍から侵襲性漿液性卵巣腫瘍への進行に関与する。TGFβはSmadに依存した経路とSmadとは独立な経路によって活性化させることができ、卵巣がんにおいて腫瘍の転移を促進すると考えられている。TGFβの過剰発現と、腫瘍細胞の増殖および転移との相関は、前立腺、大腸、および腎細胞の癌でも記載されている。
【0319】
卵巣がん細胞から分泌されるTGFβは、腫瘍微小環境において免疫抑制性の制御性T細胞(Treg)(CD4+CD25+)増殖を生じさせる。これは、フロントラインで治療した高グレードの漿液性卵巣がんを持つ患者における悪い予後と関係していることが示されている。TGFβは、骨髄由来の樹状細胞(DC)の成熟のほか、MHCクラスII分子と共刺激分子の発現をGMCSFが誘導するのを阻害する。TGFβは、活性化されたマクロファージをその抗原提示機能も含めて阻害するほか、卵巣がんと腫瘍関連骨髄細胞によるPD-L1リガンドの発現(これはさらに、卵巣がんにおける全生存期間の短さとも結びついている)も阻害する。証拠は、関連する抗腫瘍免疫の調節がTGFβに関係する免疫監視を修復できることを明らかにしている。
【0320】
また、TGFβ1はmiR181/BRCA1軸を下方調節し、そのことによってDNA修復異常を調整し、野生型BRCA遺伝子を持つ乳がんにおいて「BRCAらしさ」を誘導することも示されている。「BRCAらしさ」という用語は、BRCA1/2生殖細胞系列変異(DNA修復抑制)に関連する腫瘍と似た臨床病理学的特徴と分子的特徴を持つ散発性腫瘍を同定するのに利用されてきた。それに加え、NF-kB活性化を誘導し、リンパ球における抗腫瘍免疫応答を誘起することのできる低HRD腫瘍におけるTGFβシグナル伝達の増加が実証されている。したがってBRCA分子シグナルに加え、相同組み換え修復異常(HRD)スコアもTGFβ調節免疫療法に対する転帰と応答の予測に関係している可能性がある。
【0321】
この試験におけるBRCA-wt集団での改善されたRFSの結果は、TGFβ抑制と免疫応答性の関係をさらに支持し、そのことによってBRCA-wt患者と高TGFβ発現であるおそらくは他の組織学的タイプの他のがん部分集団(前立腺がん、腎細胞癌、および結腸直腸がんなど)におけるVigil(登録商標)の使用を支持すると考えられる。高レベルのフーリンmRNAとフーリンタンパク質も、卵巣がんにおいてと、その遺伝子の発現が悪性(高)と非悪性(低)の細胞集団の間で異なる他の多くのヒト腫瘍において広く発現している。TGFβ1、TGFβ2の変換酵素であるフーリンの発現は生存期間と逆相関しているように見え、腫瘍に向かうTGFβ媒介末梢免疫寛容の維持に有意に寄与している可能性が大きい。bi-shRNAi法を利用したフーリンの下方調節は、この試験で検証されたように、顕著なTGFβ1の発現低下を誘導した。注目すべきことに、構成されたVigil(登録商標)ワクチンの73%は、トランスフェクトされなかった同じ患者の腫瘍細胞と比べてTGFβ1ノックダウンが90%以上であった。
【0322】
BRCA-wtかつ低HRDの卵巣がんも、がん微小環境における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合上昇、高PD-L1発現、単核細胞内での高1型IFNガンマシグナル活性、および高パーフォリン1発現を示し、そのことが、一般に改善された免疫応答を示唆すると考えられる。しかしチェックポイント阻害剤療法に対するフロントライン応答と再発/難治性卵巣応答の両方を増強するためのいくつかの試みは失敗した。仮説だが、これは、以前に記載されているように、局所的な腫瘍微小環境内における高いTGFβ抑制効果にも関係している可能性がある。
【0323】
PARP阻害剤は、DNA表面のPARPタンパク質の触媒作用を阻止することに加え、このタンパク質に結合してこのタンパク質を捕獲する。すると多数の二本鎖DNA切断につながり、最終的に細胞が死ぬ。Lynparza(登録商標)(オラパリブ)は、生殖細胞系列BRCA変異がある高グレード漿液性卵巣がんを持つ患者のために承認された最初のPARP阻害剤の1つであった。以前の研究は、BRCA1/2-mu卵巣がんにおける無増悪生存期間の延長を示した(HR 0.3、p<0.0001)。白金感受性再発卵巣がん患者におけるオラパリブの最近の長期追跡(研究19)はOSで好ましい結果を示しており、登録された全患者でHRが0.73である(p=0.0138)が、活性はBRCA-mu集団に限定されているように見えてHRは0.62であり(p=0.02140)、BRCA-wtでのHRが0.84(p=0.34)と利益を示さなかったBRCA-wt集団とは対照的である(82)。しかし相同組み換え修復異常(HRD)を持つ再発または難治性の疾患がある何人かのBRCA-wt患者は、PARP阻害剤から利益を得られる可能性がある。最近の報告は、いくつかの高HRD腫瘍がニラパリブに対するよりよい応答と関連することを示している。さらに、最近の複数の研究は、BRCA-wtかつ低HRDの腫瘍が上昇した免疫原性シグナル(その中にはTILの量の増加が含まれる)を持つことを示したため、IFNガンマシグナル伝達が多いことを実証している。これは、BRCA-wt集団で最も有意に実証されたRFSに関するVigil(登録商標)の利益で観察されたことと整合している。PARPを阻害するVigil(登録商標)をBRCA-wt卵巣がんでさらに臨床試験することを考慮することが正当化される。
【0324】
ベバシズマブはフロントラインで治療した卵巣がんで推奨される維持療法だが、維持としてベバシズマブだけが関与する無再発生存期間または全生存期間の利点の証拠は観察されていない。血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤(すなわちベバシズマブ)は、腫瘍の血管新生の主要な調節因子であるだけでなく免疫系も抑制する多形性増殖因子VEGFを標的とする。低酸素腫瘍微小環境は、受容体チロシンキナーゼVEGF受容体(VEGFR)-1(FLT1)および-2(FLK1/KDR)とVEGFR共受容体ニューロピリン(NRP)1および2に結合する血管新生促進因子VEGF-A(VEGFとして知られる)の分泌を促進する。腫瘍微小環境におけるこの血管新生促進スイッチは、腫瘍血管新生、腫瘍成熟、および転移播種を促進するだけでなく、樹状細胞(DC)成熟の阻害、制御性T細胞機能の促進と腫瘍関連マクロファージ発達の増進、および骨髄由来サプレッサ細胞の蓄積などの免疫抑制効果も及ぼす。CD8+ T細胞の表面でのPD-1発現も増加する。卵巣がんでは、VEGF-Aとその受容体VEGFR1、VEGFR2、およびNRP1は共通して上方調節される。
【0325】
しかし卵巣がんにおけるベバシズマブの臨床での有効性は、限定された臨床応答および中程度の毒性プロファイルとの関係からだけでなく、血管新生阻害を開始した後の抗がん耐性の比較的迅速な活性化から、難題に直面したままである。しかし可能性のある方向が抗血管新生阻害剤の使用において探索されており、それは免疫療法活性の強化である。ベバシズマブを治療用ワクチンと組み合わせると浸潤性Tリンパ球応答を誘導できる可能性があり、免疫抑制のバランスがT制御性抑制からCD8 T細胞活性化へとシフトしてT細胞浸潤(inflamed)腫瘍微小環境(「ホットな腫瘍」)を作り出し、それが免疫療法に対してより免疫学的に応答するであろうという証拠が存在する。
【0326】
BRCA1/2-wt集団における利点を実証する結果はクローナルネオアンチゲン曝露と関係している可能性があるが、それは、増加した修復異常との関係でBRCA1/2-m患者におけるサブクローナルネオアンチゲン曝露と比べて希釈される可能性がある。BRCA-wt卵巣がんは、BRCA欠損卵巣がんと比べると、がん微小環境における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合上昇、高PD-L1発現、単核細胞内での高1型IFNガンマシグナル活性、および高パーフォリン1発現を示しており、このことも、より大きな割合のクローナルネオアンチゲンと整合している。BRCA1-wtの発現は、オートファジーと、腫瘍抗原のMHC発現との関連にも有意な影響を与える。そのためBRCA1-mは、ネオアンチゲンの可視性とVigil(登録商標)の活性を制限する可能性があるこのプロセスを破壊する。
【0327】
GMCSFは樹状細胞(DC)による腫瘍抗原提示の増加に関与してより高レベルの共刺激分子を誘起し、それら共刺激分子がより効率的なT細胞刺激を誘導する。GMCSFは樹状細胞による脂質抗原の提示も促進し、それが今度はナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)の活性化につながる。
【0328】
それに加え、TGFβは、悪性卵巣組織の中では非悪性卵巣組織の中よりも高レベルである。1500人を超える卵巣がん患者での遺伝子発現メタ解析により、いくつかの遺伝子の発現に基づいて高リスク群と低リスク群が同定され、その結果がIHCまたはqRT-PCRによって検証された。遺伝子シグネチャの経路解析は、予後が悪い患者においてTGFβシグナル伝達が豊富であることを示した。TGFβは非侵襲性漿液性卵巣腫瘍から侵襲性漿液性卵巣腫瘍への進行に関与する。さらに、TGFβの過剰発現は腫瘍細胞の増殖および転移と相関している。
【0329】
卵巣がん細胞から分泌されるTGFβは、腫瘍微小環境において免疫抑制性の制御性T細胞(Treg)(CD4+CD25+)増殖を生じさせる。これは、フロントラインで治療した高グレードの漿液性卵巣がんを持つ患者における悪い予後と関係していることが示されている。TGFβは、骨髄由来のDCの成熟のほか、MHCクラスII分子と共刺激分子の発現をGMCSFが誘導するのを阻害する。TGFβは、活性化されたマクロファージをその抗原提示機能も含めて阻害するほか、卵巣がんと腫瘍関連骨髄細胞によるPD-L1リガンドの発現(これはさらに、卵巣がんにおける全生存期間の短さとも結びついている)も阻害する。TGFβ1のノックダウンは、この試験で実証されたように、BRCA-wt患者においてより重要である可能性があるTGFβ効果の抑制に寄与する可能性がある。
【0330】
Vigil(登録商標)は、よく忍容され、投与が容易であり、有望な有効性を示すことを考慮すると、卵巣がん患者のための理想的な維持療法になる。示された結果の強みに含まれるのは、BRCA-wt患者における安全性と、臨床で検証されたRFSとOSの利点である。しかしBRCA-wtサブセットは副次的エンドポイントであり、製品製造の1つの構成要素としての自家腫瘍回収物の使用は製品の用途に制限をもたらす。ベバシズマブおよび/またはニラパリブとの組み合わせをさらに評価するのが合理的である。
【0331】
結論として、Vigil(登録商標)は、BRCA1/2-wt分子プロファイルを持つフロントライン卵巣(ステージIII/IV)がん患者における単剤維持療法として説得力のあるRFSの利点と低い毒性効果を実証した。単剤としての、そして血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤との組み合わせとしてのさらなる研究も正当化される。
【0332】
実施例2 - 再悪化した卵巣がんにおけるアテゾリズマブとVigil(登録商標)の逐次的組み合わせの原理検証研究
多くのタイプのがんにおいてチェックポイント阻害剤(CI)療法よりも免疫調節が有利である印象的な証拠があるが、OCでは利点がほとんど示されていない。理論は、この不十分さが、OCにおいてCIの特異性の欠如が顕著な異種性および遺伝子不安定性と組み合わされたことに起因する可能性が大きいことを指摘する。最近の報告はいかにして卵巣がん(OC)細胞が潜在的な逃避機構を獲得し、いくつかの免疫抑制因子を通じて宿主の免疫を逃れることができるかを詳述している(MHC発現の喪失と、免疫抑制因子(TGF-ベータ(TGFβ)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、およびシクロオキシゲナーゼ(COX-1とCOX-2)が含まれる)の上方調節が含まれる)。
【0333】
Vigil(登録商標)は自家腫瘍細胞ワクチンであり、このワクチンでは、腫瘍減量手術のときに腫瘍細胞が患者から採取され、その細胞には、GMCSF遺伝子、免疫刺激サイトカイン、および二機能性の短鎖ヘアピンRNA(bi-shRNA)(2つのTGFβアイソフォームであるTGFβ-1とTGFβ-2(がん免疫エフェクタサプレッサ)の活性化に責任がある極めて重要な変換酵素であるフーリンの発現を特異的にノックダウンする)をコードするプラスミドが電気穿孔を通じてトランスフェクトされている。TGFβの発現を下方調節することにより、がん細胞は宿主の免疫応答を逃れる能力が低下する。Vigil(登録商標)は個別化された「ネオアンチゲンを教育する」免疫療法であり、2.5×107個の細胞/注射までの用量で安全に投与されてOCを含むがん患者の第2相試験で利益があった証拠が示されている。クローナル腫瘍ネオアンチゲンの改善された発現とTGFβの低下した腫瘍抑制効果は、チェックポイント阻害剤治療の活性を相乗的に増大させることが仮定される。さらに、臨床前の証拠は、サイクル1(C1)の前にネオアンチゲン教育療法を事前に適用するとC1の免疫療法抗がん活性が増強されることを支持している。安全性と、利益の予備的な証拠を評価するため、以前に臨床的に検証された安全な用量レベルでVigil(登録商標)とアテゾリズマブの単剤を逐次的に用いる最初の臨床組み合わせが、最初にVigil(登録商標)を使用する場合(Vigil(登録商標)-1st)と最初にアテゾリズマブを使用する場合(Atezo-1st)を比較して調べられた。
【0334】
方法
試験の設計と治療
この相のパート1、2の非盲検試験は、アメリカ合衆国全土の6施設で実施された。パート1ではVigil(登録商標)とアテゾリズマブの安全性が調べられた。パート2は、最初にVigil(登録商標)を使用する場合と最初にアテゾリズマブを使用する場合を比べる無作為化研究であり、その後、Vigil(登録商標)+アテゾリズマブの組み合わせを続けた。卵巣がんが関与するVigil(登録商標)ワクチン構成プロトコルに入る患者が、この試験に適格であった。組織と末梢血単核細胞のサンプルを収集して解析し、コールの品質40、最小アレル深度5を用いてBRCA1/2分子プロファイリングを求めた(Ocean Ridge Biosciences, Deerfield Beach, FL)。患者は、Vigil(登録商標)(皮内に1×106~107個の細胞/用量)とアテゾリズマブ(静脈内注入で1200 mg/用量)を3週間に1回、12用量まで投与された。インフォームド・コンセントが、採取前と、主要な研究登録/無作為化の前に得られた。どの施設であれ、患者が登録できるには、プロトコルの全面的IRB承認の書面と同意文書が必要とされた。
【0335】
患者
再悪化した卵巣がんを持ち、安定な医学的状態であり、再発の設定または白金耐性疾患の状態で少なくとも1回の以前の全身療法の失敗がある女性が、本試験にとって適格であった。対象は、製造された少なくとも4バイアルのVigil(登録商標)の投与、ECOG全身状態(PS)≦1が要求され、臓器と骨髄の正常な機能がプロトコル遵守に必要とされ、プロトコル遵守と規定された(絶対好中球カウント≧1,500/mm3;血小板≧100,000/mm3;ヘモグロビン≧5.59 mmol/L;血清ビリルビン≦1.5×制度上の正常値上限;AST/ALT≦2.5×制度上の正常値上限;クレアチニン>50 mL/分;TSHが制度上限界内)。以前の免疫療法と活性な自己免疫疾患がある患者は除外された。
【0336】
腫瘍採取と製造
Gradalis, Inc.(キャロルトン、テキサス州)が、採取された腫瘍組織からVigil(登録商標)を製造した。製造は2日間のプロセスであった。「ゴルフボールサイズ」の塊(10~30 gの組織、累積)と同等であることがワクチン製造に必要とされた(放射線スキャンにより3 cm)。細菌感染のリスクを理由として腸管腔へと延びる病巣は除外された。
【0337】
治験薬とプラセボの製造
腫瘍減量手続きの間に外科的に切除した腫瘍組織を採取し、切断して1/4~1/2インチの切片にした後、ゲンタマイシン(Fresenius Kabi)を補足した殺菌0.9%塩化ナトリウム(Baxter)を含有する4つまでの試料容器に入れ、製造施設に一晩かけて輸送するため氷の上で包装した。1日目、各容器内の輸送媒体と腫瘍試料の無菌性を調べた(BacT/Alert 3D Microbial Identification System, BioMerieux)。腫瘍組織をトリミングして脂肪、結合/壊死組織、縫合糸/ステープルを除去し、メスによって機械的に解離させた後、酵素で解離させ(I型コラゲナーゼ溶液)、37℃で45分間までインキュベートして単一細胞懸濁液を形成した。この細胞懸濁液を殺菌した100 um濾過器(Corning)を通過させて濾過し、細胞を細胞片から分離し、自由になった細胞を、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を補足したPlasmaLyte(Baxter)で洗浄し、血球計算盤(InCyto)によって手作業でカウントした。品質管理(QC)サンプルを、保持して免疫をモニタするため取り出し、トランスフェクション前の培養を開始してベースラインのサイトカインレベルをGMCSF(R&D Systems)とTGFβ1(R&D Systems)についてELISAにより取得した。この細胞懸濁液の濃度を4000万個の細胞/mLに調節し、Gene Pulser XL(BioRad)を用いて電気穿孔してプラスミドDNAを細胞に挿入した。トランスフェクトされたこれら細胞を、殺菌したT-225cm2フラスコ(Corning)の中のゲンタマイシン(Fresenius Kabi)を補足したX-VIVO 10培地(Lonza)の中に1×106個の細胞/mLで入れ、37℃、5%CO2オーバーレイ(Sanyo)で一晩(14~22時間)インキュベートし、bi-shRNAフーリンとGMCSFのmRNAを腫瘍細胞の中に組み込めるようにした。
【0338】
2日目、各フラスコから細胞を剥がすことによって一晩培養物を収集し、遊離して浮かんでいる細胞を含有する培地を集め、新鮮なX-VIVO培地の中に再懸濁させた。細胞を手作業でカウントし、処理を進める前に、QCサンプルと最少で4回の用量のために最少で8000万個の細胞を利用できることを確認した。細胞を含有する2つの1-mLのマイコプラズマサンプルを採取し、-80℃で凍結させた。細胞にガンマ線照射装置を用いて4×25 Gyサイクルを照射し、複製/増殖を停止させた。細胞を、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を補足したPlasmaLyte(Baxter)で洗浄し、QCサンプルを、保持して免疫をモニタするため取り出し、トランスフェクション後の培養を開始してトランスフェクトされたサイトカインのレベルをGMCSFとTGFβ1についてELISA(または1人の患者のためのELLA機械)により取得した。細胞を、10%のDMSO(ジメチルスルホキシド;Cryoserv USP;Mylan)、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を含むpH 7.4のPlasmaLyte(Baxter)からなる凍結培地に入れ、1×106個の細胞/mLまたは1×107個の細胞/mLで、殺菌した2.0 mLのホウケイ酸ガラス製バイアル(Algroup Wheaton Pharmaceutical and Cosm etics Packaging)の中に無菌状態で分配し;最終充填体積を1.2 mLにし、Flurotec(登録商標)バリアファイル(West Pharmaceutical Services)で被覆したブチルゴム製ストッパで封止した。最終製品バイアルを、-80℃の冷凍機(Sanyo)の中に入れたCoolCell(登録商標)凍結容器(Biocision)を用いて制御された速度で凍結させた。凍結させた後、出荷試験の間は細胞を蒸気相の液体窒素タンクの中で保管した。凍結した製品バイアルを、ゲル化(Limulus Amoebocyte Lysate, Lonza)による無菌性(USP <71>)とエンドトキシンの試験で使用した。
【0339】
アテゾリズマブはRoche/Genentechから提供され、Gradalis, Inc.によって頒布された。アテゾリズマブは、20 mMの酢酸ヒスチジン、120 mMのスクロース、0.04%のポリソルベート20の中の60 mg/mLのアテゾリズマブ(pH 5.8)として製剤化された(第III相製剤)。アテゾリズマブは保存剤を含まず、単回使用だけのために提供された。製剤F03の中のアテゾリズマブ(バイアル1つにつき1200 mg)は250 mLの0.9%NaCl IV輸液バッグに入れて投与され、調製され、無菌条件下で希釈された。
【0340】
疾患の評価
対象は、疾患進行または死亡まで、または製品の毒性効果まで、治療に残った。疾患進行は、各地の治験担当医師がResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors Version 1.1(RECIST 1.1)を用いてX線写真から判断した。パート1では、疾患進行はベースラインで、そしてその後は3番目のサイクルごとに評価した。パート2では、疾患は、ベースライン、単剤療法のサイクル2の終了時、そしてその後は3番目のサイクルごとに評価した。
【0341】
エンドポイントと統計的評価
主解析のためのデータカットオフの日付は任意で2019年12月20日であった。主要エンドポイントは安全性であった。有効性の評価とエンドポイントには、Vigil(登録商標)-1st群とAtezo-1st群の間の無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)が含まれていた。進行までの時間は、無作為化の日付から進行または死亡が書面にされている最初の日付までとして計算した。PFSとOSをBRCA1/2-wtサブグループで逐次的に解析し、Vigil(登録商標)-1stとAtezo-1stで比較した。追跡時間中央値は、治療開始の時点から差し引いたデータカットオフの日付から計算した。片側p値が0.05以下(ログ-ランク)を、解析における統計的有意性を示すと見なした。PFSとOSのハザード比(HR)は、Mantel-Haenszelハザードモデルによって推定した。PFSとOSの分布はカプラン-マイヤー法を利用して推定した。毒性はNCI CTCAE v 4.03を用いて評価した。
【0342】
結果
患者
2017年6月2日から2019年2月13日まで、3人の患者が本試験のパート1に入り、21人が本試験のパート2のために無作為化された(n=11 Vigil(登録商標)-1st:n=10 Atezo-1st)。全患者で少なくとも1回、以前の全身療法が失敗していた(パート1/Vigil(登録商標)-1st/ Atezo-1st:0 / 5 / 2人が1つの治療を受け、1 / 4/ 3人が2つの治療を受け、1/ 2 / 4人が3つの治療を受け、1 / 0 / 1人が4つの治療を受けていた)、個体(パート2だけ)と全患者についてまとめた人口統計が表5に示されている。生殖細胞系列と体細胞のBRCA (g/sBRCA)状態が24人の患者全員について明らかにされた。追跡時間中央値は、パート1については29.3ヶ月、パート2については21.3ヶ月であった。
【表5】
【0343】
安全性
グレード3または4の治療関連毒性はパート1では観察されなかった。したがってパート2で発生する可能性があった。Atezo-1st群には30件の治療関連有害事象が、Vigil(登録商標)-1st群には83件の事象が存在していた。30件のAtezo-1st事象のうちの25件(83.3%)がグレード1、2であり、大半はアテゾリズマブ治療に帰せられた(24/25)。Vigil(登録商標)-1st治療群における83件の事象のうちの81件(97.6%)はグレード1、2の事象であり、61.7%(50/81)がアテゾリズマブ治療に帰せられ、38.3%(31/81)はVigil(登録商標)治療に関係していた。
【0344】
Vigil(登録商標)-1st群とAtezo-1st群の間でのアテゾリズマブ関連の全事象とグレード3、4事象の比較が図8に示されている。グレード3、4の治療関連事象はAtezo-1st群(17.2%)のほうがVigil(登録商標)-1st(5.1%)よりも多かった。Atezo-1st群におけるグレード3アテゾリズマブ関連事象には、血液およびリンパ系障害(6.9%)、一般的な障害(3.5%)、傷害(3.5%)、呼吸器、胸郭、および縦隔膜障害(3.5%)が含まれていた。Vigil(登録商標)関連グレード3事象はAtezo-1st群では観察されなかった。Vigil(登録商標)-1st群では2件のグレード3事象が泌尿器障害であった(1件はアテゾリズマブに関係し、1件はVigil(登録商標)に関係していた)。さらに、アテゾリズマブ関連有害事象(すべてのグレード)は、Atezo-1st群(96.7%)においてVigil(登録商標)-1st群(61.3%)よりもはるかに多かった。
【0345】
製品出荷結果
20人の対象(83.3%)からのVigil(登録商標)ワクチンがすべての製品出荷基準を満たしていた。採取された腫瘍の体積中央値は51.65 g(11.52 g~114.23 g)であった。4人の対象(16.7%)がプラスミド導入後にGMCSF発現の十分な増加を示さなかったが、本研究の例外であった(n=1 パート1、n=3 パート2)。主要な製品出荷結果が表6に示されている。有意なTGFβ1ノックダウンを23/24(95.8%)の対象で検出することができた。15人(62.5%)の患者が、フーリンbi-shRNAiノックダウンに関係するロバストな活性を実証する90%以上のTGFβ1ノックダウンを持っていた。プラスミドをトランスフェクトする前の全患者の検出可能なレベルのベースラインTGFβ1産生から、TGFβ1発現の中間値が158 pg/106個の細胞(平均値206、範囲93~445)であることが明らかになった。BRCA1/2-wtでのTGFβ1発現(n=13 パート2)から、Atezo-1st群とVigil(登録商標)-1st群に関する中間値が139 pg/106個の細胞(平均値188、範囲93~361)であることが明らかになり、BRCA1/2-mでのTGFβ1発現(n=8 パート2)から、中間値が223 pg/106個の細胞(平均値215、範囲111~307)であることが明らかになった。
【表6】
【0346】
有効性
OS中央値はVigil(登録商標)-1stコホートでは未到達、Atezo-1stコホートでは10.8ヶ月であった(HR 0.33;95%信頼区間(CI)[0.064~1.7];p=0.097)(図9A)。追跡期間中央値はパート2について21.3ヶ月であった。BRCA状態によるサブセット解析から、BRCA1/2-wt患者における卵巣がんがVigil(登録商標)-1stではAtezo-1stと比べて改善されることが実証された(HR 0.16、95%CI[0.026~1.03];p=0.027、図9B)。BRCA-mコホートでは、Vigil(登録商標)-1stコホートとAtezo-1stコホートの間でOSの利益はなかった。PFSで有意な利益は観察されなかった(図9C~9D)。
【0347】
考察
たいていの卵巣がん患者は一次手術と組み合わせ化学療法で臨床的完全奏功を実現するにもかかわらず、これら患者の圧倒的多数(75%)は残念なことに16~24週間以内に再悪化し、最終的に自らの疾患に屈することになる。再発したこれら患者の治療はたいてい無再発期間に基づく。白金に基づく化学療法が完了してから6ヶ月以上後に再悪化する女性は伝統的に白金感受性であると見なされており、通常は、白金ダブレットと、しばしばベバシズマブまたはPARP阻害剤を用いた維持療法で治療される。白金に基づく化学療法が完了してから6ヶ月以内に再発する(白金耐性)患者は、通常は、ベバシズマブあり、またはなしの非白金に基づく療法で対処される。PARP阻害剤は、最初の化学療法の後と白金感受性再発OC療法の後の維持療法として、無増悪生存期間(PFS)の改善を示した。ベバシズマブは、最初の化学療法または再悪化後の化学療法と組み合わされたときにPFSを改善することが見いだされており、一般に再悪化したOCで組み合わせ治療に一般に使用される。
【0348】
ここで実証された結果は、再発卵巣がんにおけるVigil(登録商標)とアテゾリズマブの組み合わせ試験の継続を正当化し、Vigil(登録商標)の後にVigil(登録商標)/アテゾリズマブの組み合わせ療法を続けることがAtezo-1stよりも臨床的な利点を持つことを示唆した。有望な臨床的利益を持つこのより好ましい毒性プロファイルは、特にBRCA-野生型患者でのVigil(登録商標)-1stの送達で優れた治療指数を示唆した。卵巣がんが関与する単剤チェックポイント阻害剤療法にとって利益は限られているため、これは特に勇気づけられる。
【0349】
卵巣がん組織ではTGFβの発現が他の多くのがん(特に再発疾患が含まれる)と比べて増加しており、Vigil(登録商標)の直接的活性がフーリンの阻害を通じてTGFβ1とTGFβ2をノックダウンさせる作用をするため、Vigil(登録商標)は、卵巣がんにおいてTGFβ1発現を通じて媒介される耐性の機構に直接作用している可能性がある。これらの結果に基づくと、Vigil(登録商標)はネオアンチゲン曝露とT細胞活性化を改善する実用的な機構である可能性があり、それによってTGFβにもかかわらずチェックポイント阻害剤療法が最適に機能することを可能にする。卵巣がん細胞から分泌されるTGFβは腫瘍微小環境内で末梢CD4+CD25-細胞から免疫抑制性Treg細胞(CD4+CD25+)を生成させる。Tregの腫瘍浸潤は、ネオアジュバント化学療法で治療した高グレードの漿液性卵巣がんを持つ患者の悪い予後と関係している。したがってCD8/Treg比も1つの予後指標である。この研究を開始するとき、Vigil(登録商標)+アテゾリズマブの組み合わせの前のVigil(登録商標)-1st治療では、チェックポイントの機能的活性の前に関連する腫瘍ネオアンチゲンの免疫エフェクタ細胞の可視化に焦点を当てることで標的外毒性が制限され、免疫エフェクタ細胞の利用可能性と応答が潜在的に最大になると仮定した。これらの観察結果は、この仮説と、臨床前モデルにおける他の研究者の仕事(チェックポイント阻害剤に対する耐性の克服における選択的TGFβノックダウンの証拠が含まれる)を支持する。
【0350】
有効な抗腫瘍免疫応答を生じさせるには、腫瘍のネオアンチゲンレパートリーに対してT細胞を教育する必要がある。T細胞はさらにメモリT細胞に分化するため、長期免疫記憶とおそらくは持続可能な疾患制御を提供する。ネオアンチゲンの不均一性が低い腫瘍はペムブロリズマブを用いたチェックポイント阻害によりよく応答すると報告されている。その同じ報告は、T細胞がサブクローナルネオアンチゲンを認識できず(これは、認識にとって可視的なネオアンチゲンが豊富であることが重要であることを示す)、クローナルネオアンチゲンの可視性を希釈している可能性があることも示した。同じ患者の疾患に対する腫瘍特異的クローナルネオアンチゲンをT細胞が認識する可能性は、同種異系腫瘍組織ではなく自家腫瘍組織(個別化された)を用いるときにより大きい。
【0351】
1,400超の用量のVigil(登録商標)が臨床試験で投与されてきた。Vigil(登録商標)で操作した細胞の投与に帰される最も多く報告された有害反応は、強度が弱から中の注射部位の反応であり、主に注射部位の発赤と腫れからなる。これは注射部位における免疫活性化に関係すると考えられる。Vigil(登録商標)治療に帰される深刻な、または生命を脅かす(CTCグレード3または4の)有害事象はこれまでなかった。新たな、または予想外の毒性効果は、アテゾリズマブと組み合わせたVigil(登録商標)では観察されなかった。
【0352】
結論として、個別化された自家卵巣がんワクチンの後にチェックポイント阻害剤(アテゾリズマブ)を組み合わせると、毒性が少ない勇気づけられる有効性が実証された。
【0353】
実施例3 - Vigil(登録商標)の使用によるBRCA1/2野生型フロントラインステージIII/IV卵巣がん無再発生存期間の利点
進行した卵巣がん、特に高TGFβ発現卵巣がんのためのフロントライン治療の選択肢は限られているため、そしてBRCA1/2-wt集団(卵巣がん患者の85%)が関与しているため、ステージIII/IVの疾患を持つ卵巣がん患者で、腫瘍減量手術と、パクリタキセルとカルボプラチンの組み合わせの後に、フロントライン維持療法としてのVigil(登録商標)の二重盲検プラセボ対照試験を実施した。
【0354】
1.材料と方法
試験の設計と治療
この第IIb相二重盲検試験は25施設で実施された。これは、NCCNガイドライン(バージョン3.2015)でレベル1カテゴリーとして分類され、手術と、カルボプラチンとパクリタキセルを含む(5~8サイクルの)地固め化学療法の後に臨床的完全奏功(cCR)であったステージIIIa-cまたはIVの高グレード漿液性、明細胞、または類内膜卵巣がんを持つ患者におけるVigil(登録商標)のプラセボ対照試験であった。腫瘍組織は腫瘍減量手術のときに採取した。組織は、ワクチンの構成と、現地の病理学部門による疾患の組織学的確認に使用した。入手できるときには、生殖細胞系列および/または体細胞のBRCA1/2分子プロファイリングを収集した。末梢血単核細胞サンプルを解析し、生殖細胞系列でBRCA1/2、分子プロファイルを調べた(Ocean Ridge Biosciences、ディアフィールド・ビーチ、フロリダ州)。一次腫瘍減量手術と白金/タキサンアジュバント化学療法の後にcCRを達成した患者をVigil(登録商標)(Vigil(登録商標)群、VG)コホートまたはプラセボ(対照群、CG)コホートに1:1で無作為化した。無作為化は、i)腫瘍減量手術の程度(完全/微視的NED対巨視的残留疾患)と、ii)ネオアジュバント対アジュバント化学療法によって層化した。患者は1×107個の細胞/Vigil(登録商標)またはプラセボの皮内注射を(最後の化学療法の後8週間以内に)1ヶ月に1回、12用量まで投与された。治療は、疾患が再発するか、患者のワクチンまたはプラセボの供給が尽きるまで続けた。Drug Safety Monitoring Boardが試験開始前に設置されて全試験患者の安全性を維持した。許容できない毒性効果があるとは判断されなかった。インフォームド・コンセントが採取前に取得された。どの施設であれ、患者が登録できるには、プロトコルの全面的なIRB承認に関する書面と同意文書が必要とされた。
【0355】
患者
組織学的に確認されたステージIIIa-cまたはIVの高グレード乳頭状漿液性、明細胞、または類内膜卵巣がんを持つ女性が試験に含まれていた。腫瘍減量手術と化学療法の完了後に、胸部X線(CTスキャンが許容された)と、腹部と骨盤のCTスキャンまたはMRIで悪性の証拠がないこと、CA-125抗原のレベルが35単位/ml以下であること、および身体検査で何も見つからないか活性ながんを示唆する症状がないことが、無作為化の時点で必要とされた。許容可能な化学療法計画には、ネオアジュバント療法とアジュバント療法に分割された5~8サイクルの標準的な白金/タキサンが含まれていた。対象は一次腫瘍減量手術の後8週間以内にアジュバント化学療法を開始している必要があった。ECOG全身状態(PS)0~1、および臓器と骨髄の正常な機能がプロトコル遵守に必要とされ、プロトコル遵守と規定された(絶対顆粒球カウント≧1,500/mm3;絶対リンパ球カウント≧500/mm3;血小板≧75,000/mm3;全ビリルビン≦2 mg/dL;AST(SGOT)/ALT(SGPT)≦2×制度上の正常値上限;クレアチニン<1.5 mg/dL)。全患者が、理解する能力と、書面によるプロトコル固有のインフォームド・コンセントに署名する意思を持つことが必要とされた。
【0356】
腫瘍採取と製造
Gradalis, Inc.(キャロルトン、テキサス州)が、採取された腫瘍組織からVigil(登録商標)を製造した。Vigil(登録商標)のバイアルの数に基づいて同じ用量のプラセボ(凍結培地)を製造した。製造は2日間のプロセスであった。「ゴルフボールサイズ」の塊(10~30 gの組織、累積)と同等であることがワクチン製造に必要とされた(放射線スキャンにより3 cm)。細菌感染のリスクを理由として腸管腔へと延びる病巣は除外された。
【0357】
治験薬とプラセボの製造
腫瘍減量時に外科的に切除した腫瘍組織(平均値=55 g)を採取し、1/4インチの切片に切断した後、ゲンタマイシン(Fresenius Kabi)を補足した0.9%塩化ナトリウム(Baxter)を含有する4つまでの試料容器に入れ、製造施設に一晩かけて輸送するため氷の中に包装した。1日目、各容器内の輸送媒体と腫瘍試料の無菌性を調べた(BacT/Alert 3D Microbial Identification System, BioMerieux)。腫瘍組織をトリミングして脂肪、結合/壊死組織、縫合糸/ステープルを除去し、メスによって機械的に解離させた後、酵素で解離させ(I型コラゲナーゼ溶液)、37℃で45分間までインキュベートして単一細胞懸濁液を形成した。この細胞懸濁液を殺菌した100 um濾過器(Corning)を通過させて濾過し、細胞を細胞片から分離し、自由になった細胞を、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を補足したPlasmaLyte(Baxter)で洗浄し、血球計算盤(InCyto)によって手作業でカウントした。品質管理(QC)サンプルを、保持して免疫をモニタするため取り出し、トランスフェクション前の培養を開始してベースラインのサイトカインレベルをGMCSF(R&D Systems)とTGFβ1(R&D Systems)およびTGFβ2(R&D Systems)についてELISAにより取得した。この細胞懸濁液の濃度を4000万個の細胞/mLに調節し、Gene Pulser XL(BioRad)を用いて電気穿孔してプラスミドDNAを細胞に挿入した。トランスフェクトされたこれら細胞を、殺菌したT-225cm2フラスコ(Corning)の中のゲンタマイシン(Fresenius Kabi)を補足したX-VIVO 10培地(Lonza)の中に1×106個の細胞/mLで入れ、37℃、5%CO2オーバーレイ(Sanyo)で一晩(14~22時間)インキュベートし、bi-shRNAフーリンとGMCSFのmRNAを腫瘍細胞の中に組み込めるようにした。
【0358】
2日目、各フラスコから細胞を剥がすことによって一晩培養物を収集し、遊離して浮かんでいる細胞を含有する培地を集め、新鮮なX-VIVO培地の中に再懸濁させた。細胞を手作業でカウントし、処理を進める前に、QCサンプルと最少で4回の用量のために最少で8000万個の細胞を利用できることを確認した。細胞を含有する2つの1-mLのマイコプラズマサンプルを採取し、-80℃で凍結させた。細胞にRS-3400 X線(RadSource)を用いて4×25 Gyサイクルを照射し、複製/増殖を停止させた。細胞を、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を補足したPlasmaLyte(Baxter)で洗浄し、QCサンプルを、保持して免疫をモニタするため取り出し、トランスフェクション後の培養を開始してトランスフェクトされたサイトカインのレベルをGMCSF、TGFβ1、およびTGFβ2について取得した。細胞を、10%のDMSO(ジメチルスルホキシド;Cryoserv USP;Mylan)、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を含むpH 7.4のPlasmaLyte(Baxter)からなる凍結培地に入れ、1×107個の細胞/mLで、殺菌した2.0 mLのホウケイ酸ガラス製バイアル(Algroup Wheaton Pharmaceutical and Cosm etics Packaging)の中に無菌状態で分配し;最終充填体積を1.2 mLにし、Flurotec(登録商標)バリアファイル(West Pharmaceutical Services)で被覆したブチルゴム製ストッパで封止した。最終製品バイアルを、-80℃の冷凍機(Sanyo)の中に入れたCoolCell(登録商標)凍結容器(Biocision)を用いてゆっくりと凍結させた。凍結させた後、出荷試験の間は細胞を蒸気相の液体窒素タンクの中で保管した。凍結した製品バイアルを、ゲル化(Limulus Amoebocyte Lysate, Lonza)による無菌性(USP <71>)とエンドトキシンの試験で使用した。研究の後、(GMCSF、TGFβ1、TGFβ2)に関するアッセイの検証が完了した。示されているデータは適切な検証されたパラメータを用いて計算されている。
【0359】
プラセボは、10%のDMSO(ジメチルスルホキシド;Cryoserv USP;Mylan)、1%のHSA(Octapharma)を含むpH 7.4のPlasmaLyte(Baxter)からなる凍結培地で構成した。この培地をゆっくりと-80℃まで下げて凍結させた後、無菌性とエンドトキシンだけに関する出荷試験の間はバイアルを気相の液体窒素の中で保管した。プラセボバイアル製品は、対象のために製造された利用可能な製品の用量と一致していた。治験薬(Vigil(登録商標)またはプラセボ)は、携帯液体窒素容器によって施設に毎月配布した。製品を引き取った後、施設の薬局スタッフは、盲検であることを維持するため、注射器の筒に目隠しテープを貼り、Vigil(登録商標)とプラセボの違いが目で見てわかる可能性をすべて隠すよう指示された。
【0360】
疾患評価
対象は、疾患が再発するか、対象のVigil(登録商標)またはプラセボの供給が尽きるまで治療を続けた。疾患の再悪化は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumorsバージョン1.1(RECIST 1.1)を用いてWorldCare Clinical(WCC)(ボストン、マサチューセッツ州)が実施した。2人の審査者が各ケースに割り当てられ、必要なときには裁定者が割り当てられた。データは解析のため第三者の統計学者に渡された。治療群の割り当てはQA部門と統計学者の間で議論され、他の部門にはわからない状態にされた。疾患再発は、少なくとも1ヶ月間空けた2回の連続的な測定において、何らかの測定または評価が可能な病巣、または非症状性CA-125のレベルが35 U/ml超の出現として、RECIST 1.1によって定義された。
【0361】
エンドポイントと統計的評価
主要エンドポイントは、プラセボ群と比較したVigil(登録商標)群における無再発生存期間(RFS)であった。腫瘍の評価は、無作為化の時点(ベースライン)と、疾患再発または死亡までプロトコルに規定された間隔で、WorldCare Clinical(WCC)(ボストン、マサチューセッツ州)がResponse Evaluation Criteria in Solid Tumorsバージョン1.1(RECIST 1.1)に従って実施した。再発までの時間は、1)無作為化の日付と、2)腫瘍減量手術/採取の日付から再悪化または死亡が書面にされている最初の日付までから計算した。RFSをBRCA-wtサブグループで逐次的に解析し、Vigil(登録商標)とプラセボの間で比較した。少なくとも1用量のVigil(登録商標)またはプラセボを投与された全患者が安全性解析に含まれた。片側p値が0.05以下(ログ-ランク)を、解析で統計的に有意であることを示すと見なした。無再発生存期間のハザード比は、共変量なしのCox比例ハザードモデルによって評価した。RFSの分布はカプラン-マイヤー法を利用して推定した。フィットのよさに関するカイ二乗検定を利用し、プラセボ群で再悪化した患者の数がVigil(登録商標)群で再悪化した患者の数と異なるかどうかを評価した。BRCA-wtサブグループの患者は、プラセボ群で再悪化した患者の数が、Vigil(登録商標)群で再悪化した患者の数と比べて有意差があるかどうかを評価された。
【0362】
2.結果
患者
2015年2月から2017年3月まで、310人の卵巣がん患者が22施設で同意し、Vigil(登録商標)を製造するため組織が採取された。128人の患者が、病理学またはスクリーニング脱落のパラメータ(すなわちステージ判断)を理由として不適格と見なされた。製造が完了した残る181人のうちで92人の対象(56%)で製造がうまくいって無作為化されたが、17人は他の治療の選択肢を選び、72人は製品出荷基準に合致しなかった(65人は細胞が不十分)。1人が、無作為化の後だが治療の前に、健康状態良好という個体的な理由で辞退した。この患者は解析に含めなかった。91人の対象が安全性と応答を解析され、46人の患者が無作為化でVigil(登録商標)になり、45人の患者が無作為化でプラセボになった。55件の再悪化事象が独立な第三者放射線評価(WCC)によって2019年8月までに観察された。人口統計を表7に示す。コホート間で有意差は検出されなかったが、例外として、21/46、すなわち45.7%のVigil(登録商標)患者が、プラセボ(9/45、20.0%)と比べて低い全身状態スコア(ECOGが1)を持っていた(p=0.0093)。
【表7-1】
【表7-2】
【0363】
安全性
中央値が6回のVigil(登録商標)(範囲は1~12)注射または6回のプラセボ(範囲は3~12)の注射を患者ごとに投与した。治療関連毒性効果を理由とした治療の遅延または辞退は報告されなかった。Vigil(登録商標)群の1人の患者はグレード3の薬関連毒性効果(悪心と嘔吐)を経験し、プラセボ群の2人の患者はグレード3関連の毒性(1人は骨痛、全体的な筋肉衰弱、呼吸困難、および失神、他方は関節痛)を経験した。プラセボ群ではVigil(登録商標)と比べてより多くのグレード2、3有害事象が観察された(18%対8%)。7人の患者(4人のプラセボ、3人のVigil(登録商標))で14件の深刻な有害事象(SAE)が報告された。2人では、そのSAEはおそらく関連していた(1人のプラセボ/1人のVigil(登録商標))。それ以外は、SAE事象は試験治療と関係していない可能性が大きいか、無関係であった。
【0364】
製品出荷結果
84人(92%)の対象がすべての製品出荷基準に合致した。採取された腫瘍の質量中央値は52グラムであった(範囲8~137グラム)。91人のうちの7人(8%)はプラスミド導入後にGMCSF発現の十分な増加を示さなかった。しかしこれら7人の患者のうちの6人はロバストなTGFβ1ノックダウンを示した。追加の製品出荷の結果が表8に示されている。TGFβ1ノックダウンの結果は7人の患者でも決まらなかった(6人は十分なGMCSF発現出現)が、66人(73%)の患者はTGFβ1ノックダウンが90%以上であり、フーリンbi-shRNAiノックダウンに関係するロバストな活性を実証している。プラスミドをトランスフェクトする前のベースラインTGFβ1産生が全患者で検出可能なレベルであることから、TGFβ1発現の中央値が166 pg/106個の細胞(平均値241、範囲52~882)であることが明らかになった。両方の群でBRCA1/2-wt TGFβ1発現は中央値が212(平均値255、範囲71~662) pg/106個の細胞であることが明らかになり、BRCA1/2-mu TGFβ1発現は中央値が122(平均値231、範囲52~882) pg/106個の細胞であることが明らかになった。(表9)
【表8】
【表9】
【0365】
有効性
91人の評価可能な患者のうちで、62人の患者が局所部位解析でBRCA1/2分子プロファイルを持っていた。BRCA1/2-wt患者のサブグループはVigil(登録商標)コホートではプラセボコホートと比べてRFSで利点を示した。結果が図10A~10Bに示されている。手術/採取の時点から計算したRFS中央値は、Vigil(登録商標)コホートのBRCA-wt卵巣患者では未到達であったのに対し、プラセボコホートでは14.8ヶ月であった(HR=0.49、90%CI、0.25~0.97、片側p=0.038)。同様に、RFSを無作為化の時点から計算したとき、BRCA-wtサブグループにおけるRFS中央値はVigil(登録商標)では19.4ヶ月であったのと比べてプラセボ群では8.0ヶ月であった(HR=0.51、90%CI、0.26~1.01、片側p=0.050)。Vigil(登録商標)で治療したBRCA1/2-wt患者の38%が再悪化した疾患を示したのと比べ、プラセボBRCA1/2-wt患者では71%であった(カイ二乗0=0.021)(図11A)。Vigil(登録商標)患者の62%がBRCA-wtであり、現在(2019年10月31日)まで再発・再悪化なしの状態を続けている。
【0366】
BRCA1/2の状態に関係なく、腫瘍減量手術の時点と無作為化の時点から計算したRFSが図10C~10Dに示されている。無作為化の時点から計算したRFS中間値はVigil(登録商標)コホートでは13.67ヶ月(416日)であったのと比べてプラセボコホートでは8.38ヶ月(255日)であった(HR=0.69、片側ログ・ランクp=-.054)。腫瘍減量手術の時点から計算したRFSは改善されてHRが0.64になった(片側p=0.054)。再悪化はVigil(登録商標)で治療した患者の48%で報告されたのと比べてプラセボ患者では73%であった(カイ二乗p=0.013)(図11B)。Vigil(登録商標)応答に対する利点の傾向と関連する他の因子は、65歳以下のより若い年齢であること(p 0.057)、後期ステージIIIb~IVであること(p 0.075)、および微視的な残留疾患(10 mm未満)があること/疾患の証拠がないこと(p=0.066)であった(図12)。
【0367】
3.考察
BRCA1/2-wt患者は、Vigil(登録商標)でプラセボを上回る有意な(腫瘍減量手術の時点から計算した)RFSの利点を実証し(未到達対14.8ヶ月;HR=0.49、片側p=0.038)、治療後の再悪化の発生はより少なかった(38%対71%、p=0.021)。これらの結果は、完全な腫瘍減量手術とアジュバントまたはネオアジュバント化学療法の後のBRCA1/2-wt卵巣がん患者においてVigil(登録商標)が維持と見なされることを支持した。安全性解析から、Vigil(登録商標)にプラセボを上回る毒性効果の証拠がないことが実証された。
【0368】
増えつつある証拠は、GMCSFが樹状細胞(DC)による腫瘍抗原提示の増加に関与していることを示唆する。GMCSFはアポトーシス性腫瘍細胞の食作用に優れるCDのサブセットを誘導することが示されている。GMCSFはより高レベルの共刺激分子を誘起し(それは、より大きな機能的成熟とより効率的なT細胞刺激に特徴的である)、そのことによって誘導されるリンパ球エフェクタ機構の武器庫を拡張する。GMCSFは樹状細胞による脂質抗原の提示も促進し、それが今度は、腫瘍に対する内在的応答と治療応答の療法で重要である可能性があるリンパ球の集団であるナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)の活性化につながる。樹状細胞は抗原特異的免疫応答を開始させ、真皮などの末梢組織における抗原の認識と捕獲を可能にするさまざまな受容体を発現させる。樹状細胞はこの材料を効率的に処理してMHCクラスIとIIの提示経路に送り、共刺激分子を成熟時に上方調節し、二次的リンパ組織に移動させ、その場所で樹状細胞は抗原をT細胞に提示する。Vigil(登録商標)GMCSFタンパク質は上方調節され、1806/826 pg/106個の細胞というロバストな平均値/中間値となる。製造された91人(91%)の患者のうちの84人において、これはGMCSFプラスミド導入にだけ関係していた。
【0369】
TGFβの卵巣悪性細胞発現が悪性卵巣がん組織では非悪性卵巣がん組織よりもはるかに多いことも以前に示されている。1500人を超えるOvC患者で実施された遺伝子発現メタ解析により、いくつかの遺伝子の発現に基づいて高リスク群と低リスク群が同定され、その結果がIHCまたはqRT-PCRによって検証された。遺伝子シグネチャの経路解析から、予後が悪い患者におけるTGFβの富化が示された。TGFβシグナルはセリン/トレオニンキナーゼ受容体TGFβRIとIIへの結合を通じて伝えられ、細胞内エフェクタSmad2とSmad3のリン酸化と活性化につながる。Smad2/3はSmad4と転写複合体を形成して核へと転移し、TGFβによって調節される遺伝子の遺伝子発現を調節する。TGFβは非侵襲性漿液性卵巣腫瘍から侵襲性漿液性卵巣腫瘍への進行に関与する。TGFβはSmadに依存した経路とSmadとは独立な経路によって活性化させることができ、卵巣がんにおいて腫瘍の転移を促進すると考えられている。TGFβの過剰発現と、腫瘍細胞の増殖および転移との相関は、前立腺、大腸、および腎細胞の癌でも記載されている。
【0370】
卵巣がん細胞から分泌されるTGFβは腫瘍微小環境において免疫抑制性のTreg細胞(CD4+CD25+)の増殖を生じさせる。これは、フロントライン腫瘍減量手術/化学療法で治療された高グレードの漿液性卵巣がんを持つ患者の悪い転帰と関連することが示されている。TGFβは、骨髄由来の樹状細胞(DC)の成熟のほか、MHCクラスII分子と共刺激分子の発現をGMCSFが誘導するのを阻害する。TGFβは、活性化されたマクロファージをその抗原提示機能も含めて阻害するほか、卵巣がんと腫瘍関連骨髄細胞によるPD-L1リガンドの発現(これはさらに、卵巣がんにおける全生存期間の短さとも結びついている)も阻害する。証拠は、関連する抗腫瘍免疫の調節がTGFβに関係する免疫監視を修復できることを明らかにしている。
【0371】
TGFβ1はmiR181/BRCA1軸を下方調節し、そのことによってDNA修復異常を調整し、野生型BRCA遺伝子を持つ乳がんにおいて「BRCAらしさ」を誘導することも示されている。「BRCAらしさ」という用語は、BRCA1/2生殖細胞系列変異(DNA修復抑制)に関連する腫瘍と似た臨床病理学的特徴と分子的特徴を持つ散発性腫瘍を同定するのに利用されてきた。それに加え、低HRD腫瘍におけるTGFβシグナル伝達の増加がNF-kB活性化を誘導し、リンパ球における抗腫瘍免疫応答を誘起することが実証されている。したがってBRCA分子シグナルに加え、相同組み換え修復異常(HRD)スコアもTGFβ調節免疫療法に対する転帰と応答の予測に関係している可能性がある。
【0372】
この試験におけるBRCA-wt集団での改善されたRFSの結果は、TGFβ抑制と免疫応答性の関係をさらに支持し、そのことによってBRCA-wt患者と高TGFβ発現であるおそらくは他の組織学的タイプの他のがん部分集団(前立腺がん、腎細胞癌、および結腸直腸がんなど)におけるVigil(登録商標)の使用を支持すると考えられる。高レベルのフーリンmRNAとフーリンタンパク質も、卵巣がんにおいてと、その遺伝子の発現が悪性(高)と非悪性(低)の細胞集団の間で異なる他の多くのヒト腫瘍において広く発現している。TGFβ1、TGFβ2の変換酵素であるフーリンの発現は生存期間と逆相関しているように見え、腫瘍に向かうTGFβ媒介末梢免疫寛容の維持に有意に寄与している可能性が大きい。bi-shRNAi法を利用したフーリンの下方調節は、この試験で検証されたように、顕著なTGFβ1の発現低下を誘導した。注目すべきことに、構成されたVigil(登録商標)ワクチンの73%は、トランスフェクトされなかった同じ患者の腫瘍細胞と比べてTGFβ1ノックダウンが90%以上であった。
【0373】
BRCA-wtかつ低HRDの卵巣がんも、がん微小環境における腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の割合上昇、高PD-L1発現、単核細胞内での高1型IFNガンマシグナル活性、および高パーフォリン1発現を示し、そのことが、一般に改善された免疫応答を示唆すると考えられる。しかしチェックポイント阻害剤療法に対するフロントライン応答と再発/難治性卵巣応答の両方を増強するためのいくつかの試みは失敗した。仮説だが、これは、以前に記載されているように、局所的な腫瘍微小環境内における高いTGFβ抑制効果にも関係している可能性がある。
【0374】
PARP阻害剤は、DNA表面のPARPタンパク質の触媒作用を阻止することに加え、このタンパク質に結合してこのタンパク質を捕獲する。すると多数の二本鎖DNA切断につながり、最終的に細胞が死ぬ。Lynparza(登録商標)(オラパリブ)は、生殖細胞系列BRCA変異がある高グレード漿液性卵巣がんを持つ患者のために承認された最初のPARP阻害剤の1つであった。以前の研究は、BRCA1/2-mu卵巣がんにおける無増悪生存期間の延長を示した(HR 0.3、p<0.0001)。白金感受性再発卵巣がん患者におけるオラパリブの最近の長期追跡(研究19)はOSで好ましい結果を示しており、登録された全患者でHRが0.73である(p=0.0138)が、活性はBRCA-mu集団に限定されているように見えてHRは0.62であり(p=0.02140)、BRCA-wtでのHRが0.84(p=0.34)と利益を示さなかったBRCA-wt集団とは対照的である(82)。しかし相同組み換え修復異常(HRD)を持つ再発または難治性の疾患がある何人かのBRCA-wt患者は、PARP阻害剤から利益を得られる可能性がある。最近の報告は、いくつかの高HRD腫瘍がニラパリブに対するよりよい応答と関連することを示している。さらに、最近の複数の研究は、BRCA-wtかつ低HRDの腫瘍が上昇した免疫原性シグナル(その中にはTILの量の増加が含まれる)を持つことを示したため、IFNガンマシグナル伝達が多いことを実証している。これは、BRCA-wt集団で最も有意に実証されたRFSに関するVigil(登録商標)の利益で観察されたことと整合している。PARPを阻害するVigil(登録商標)をBRCA-wt卵巣がんでさらに臨床試験することを考慮することが正当化される。
【0375】
ベバシズマブはフロントラインで治療した卵巣がんで推奨される維持療法だが、維持としてベバシズマブだけが関与する無再発生存期間または全生存期間の利点の証拠は観察されていない。血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤(すなわちベバシズマブ)は、腫瘍の血管新生の主要な調節因子であるだけでなく免疫系も抑制する多形性増殖因子VEGFを標的とする。低酸素腫瘍微小環境は、受容体チロシンキナーゼVEGF受容体(VEGFR)-1(FLT1)および-2(FLK1/KDR)とVEGFR共受容体ニューロピリン(NRP)1および2に結合する血管新生促進因子VEGF-A(VEGFとして知られる)の分泌を促進する。腫瘍微小環境におけるこの血管新生促進スイッチは、腫瘍血管新生、腫瘍成熟、および転移播種を促進するだけでなく、樹状細胞(DC)成熟の阻害、制御性T細胞機能の促進と腫瘍関連マクロファージ発達の増進、および骨髄由来サプレッサ細胞の蓄積などの免疫抑制効果も及ぼす。CD8+ T細胞の表面でのPD-1発現も増加する。卵巣がんでは、VEGF-Aとその受容体VEGFR1、VEGFR2、およびNRP1は共通して上方調節される。
【0376】
しかし卵巣がんにおけるベバシズマブの臨床での有効性は、限定された臨床応答および中程度の毒性プロファイルとの関係からだけでなく、血管新生阻害を開始した後の抗がん耐性の比較的迅速な活性化から、難題に直面したままである。しかし可能性のある方向が抗血管新生阻害剤の使用において探索されており、それは免疫療法活性の強化である。ベバシズマブを治療用ワクチンと組み合わせると浸潤性Tリンパ球応答を誘導できる可能性があり、免疫抑制のバランスがT制御性抑制からCD8 T細胞活性化へとシフトしてT細胞浸潤腫瘍微小環境(「ホットな腫瘍」)を作り出し、それが免疫療法に対してより免疫学的に応答するであろうという証拠が存在する。
【0377】
結論として、Vigil(登録商標)は、BRCA1/2-wt分子プロファイルを持つフロントライン卵巣(ステージIII/IV)がん患者における単剤維持療法として説得力のあるRFSの利点と低い毒性効果を実証した。単剤としての、そして血管新生阻害剤、PARP阻害剤、およびチェックポイント阻害剤との組み合わせとしてのさらなる研究も正当化される。
【0378】
実施例4 - 相同組み換え熟達(HRP)卵巣がん:効率的な維持療法の探索における1つの選択肢であるGemogenovatucel-T(Vigil(登録商標))
卵巣がん患者の最近のメタ解析(Xu et al., Oncotarget, 8(1):285-302, 2017)から、BRCA変異(-m)腫瘍において結果として生じる非効率な修復機構はBRCA野生型(-wt)腫瘍と比べて白金化学療法に対する改善された応答率を予測することが確認される。直感には反するが、BRCAとそれ以外の相同組み換え(HR)遺伝子における生殖細胞系列の変異の結果としての遺伝子不安定性は卵巣がんが発達する確率を有意に増加させる。しかしHR修復異常(HRD)のがん(BRCA-mとHR-mの両方)を持つ患者は改善された生存期間も示す。これは、化学療法によって誘導されるDNA損傷を修復する能力が損なわれていることに起因するだけでなく、BRCAによって調節されるオートファジーが破壊され、その後がん幹細胞維持と薬剤耐性に対して効果が及ぶことにも起因する。PARP阻害(PARP-i)の治療への応用は、HRDがんにおいてネットワーク生体分子解析によって予想される合成致死性を活用しており、卵巣がん療法における重要なプラスのシフトを表わす。治療パラダイムに対する大きな貢献にもかかわらず、PARP-iはHRDがんを持つ患者に選択的に利益をもたらし、HR熟達(HRP)卵巣がんを持つ患者では生存期間の利益がより少ない(Gonzalez-Martin et al., New England Journal of Medicine, 381(25):2391-2402, 2019)。問題があるが、PARP阻害剤は中程度の毒性を誘導していくつかの薬剤を用いた長期維持療法に関する治療指数を狭くするため、65%までの患者がグレード3/4の有害事象を示す。それに加え、71%の薬削減率と12%の薬中断率が観察されているため、特にHRP腫瘍を持つ患者にとっては毒性:利益の比という治療指数がより不利になる(Gonzalez-Martin et al., N Engl J Med, 381(25):2391-2402, 2019)。帰結として、HRP腫瘍は、生存期間に対する一次治療と維持の有効性が劣る卵巣がんのサブセットである状態が続いている。
【0379】
ベバシズマブも、腫瘍減量手術後の地固めおよび維持として、再発疾患を持つ卵巣がん患者と、切除可能なステージIII/IVの疾患を持つ新たに診断された患者において統計的に改善された無増悪生存期間(PFS)を示すことが実証されたが、長期追跡はOSの利益を実証するのに失敗した。興味深いことに、HRDおよびHRPとベバシズマブ活性の関係の認識が限定されていることに関し、GOG-0218試験(NCT00262847)において、BRCA-wt/HRP卵巣がんコホートは、地固めと維持の両方でベバシズマブあり、またはなしのBRCA-wt/HRDコホートと比べて生存期間がほぼ20ヶ月短いことが実証されたことにより、BRCA-wt/HRP卵巣がんを含め、ベバシズマブを用いた有効性が限定されることも支持される(Tewari et al., J Clin Oncol, 37(26):2317-2328, 2019)。
【0380】
われわれは、腫瘍減量手術の間に採取された組織から構成される新規な自家腫瘍細胞ワクチンGemogenovatucel-T(Vigil(登録商標))を新たに診断された卵巣がんにおける維持として使用することについて以前に記載した(Oh et al., Gynecol Oncol, 143(3):504-510, 2016)。Vigil(登録商標)には、ヒト免疫刺激GMCSF遺伝子をコードする多遺伝子プラスミドと、二機能性の短鎖ヘアピンRNAコンストラクトが組み込まれていて、このコンストラクトはプロタンパク質変換酵素フーリンとその下流標的であるTGFβ1およびTGFβ2を特異的にノックアウトする(Maples et al., BioProcessing Journal, 8:4-14, 2010;Senzer et al., Mol Ther, 20(3):679-86, 2012;およびSenzer et al., Journal of Vaccines & Vaccination, 4(8):209, 2013)。Vigil(登録商標)は、MHC-IIの上方調節と樹状細胞のプロセシングを通じてがん関連ネオアンチゲンの発現を増強する設計にされることで、求心性免疫応答を増加させて全身抗腫瘍免疫応答を生じさせる。
【0381】
25施設が関与する第2相無作為化二重盲検プラセボ対照維持試験において、Vigil(登録商標)は有利な治療指数をさらに実証し、有効で療法に関連する深刻なグレード3/4の有害事象がないことが記録された(Rocconi et al., Lancet Oncology, 2020)。Vigil(登録商標)を投与された全患者では、プラセボと比べると、主要エンドポイントである無再発生存期間(RFS)の統計的に有意でない改善があると判断された;それぞれ11.5と8.4ヶ月(n=91、HR=0.688、90%CI 0.443~1.068;p=0.078)。しかし前向き副次的エンドポイントであるBRCA-wt患者におけるRFSのあらかじめ計画された測定は、RFSが12.7対8.0ヶ月と、仮説を生み出す改善を明らかにした(n=67、HR=0.514;90%CI 0.3~0.88;p=0.020)。それに加え、BRCA-wt患者の計画されたサブセット解析において、全生存期間(OS)中央値は未到達であったのと比べてプラセボでは41.4ヶ月であった(n=67、HR=0.493;CI 0.24~1.009;p=0.049)。さらに、BRCA-wt患者のうちの21人だけ(52%)が解析の時点でVigil(登録商標)の後に再悪化した疾患を示したのと比べ、27人のプラセボBRCA-wt患者のうちでは20人(78%)であった(p=0.021、フィッシャーの直接確率)。無作為化からの2年RFS率をVigil(登録商標)(33%)とプラセボ(14%)で観察し(p=0.045、片側Z検定)、プラセボ(67%)と比べたVigil(登録商標)(90%)の2年OSの利点(p=0.020、片側Z検定)も実証された。
【0382】
BRCA-wt集団におけるVigil(登録商標)免疫療法に対する増強された免疫応答とHRP集団における標準治療の限定された利点は関連しているため、われわれは、最近公開された第2相試験に登録されて治療された全患者の相同組み換え状態(HRDとHRP)を明らかにした(Rocconi et al., Lancet Oncology, 2020)。この試験では、HRP集団に対するVigil(登録商標)の効果を明らかにするため、Vigil(登録商標)とプラセボを、腫瘍減量手術と、白金に基づく化学療法を伴うアジュバント治療を受けて切除可能なステージIII/IV疾患を持つ新たに診断された卵巣がん患者における維持療法として評価した。
【0383】
最近、Vigil(登録商標)は、BRCA野生型分子プロファイルを持つステージIII/IVの新たに診断された卵巣がん患者であらかじめ計画されたサブグループ解析において、無増悪生存期間と全存在期間の改善を伴う有意な臨床的利益を示した。ここでは、われわれは、第2b相VITAL研究に登録された患者の相同組み換え状態を解析し、HRP患者におけるVigil(登録商標)の臨床的利益を明らかにする。
【0384】
1.方法
1.1 患者集団と研究設計
Vigil(登録商標)プラスミド構築、cGMP製造、組織処理、およびトランスフェクションを以前に記載されているようにして実施した(Maples et al., BioProcessing Journal, 8:4-14, 2010;Senzer et al., Mol Ther, 20(3):679-86, 2012;およびOh et al., Gynecologic Oncology, 143(3):504-510, 2016)。VITAL研究は、無作為化第2b相二重盲検プラセボ対照試験であった。患者集団と研究設計は以前に公開されている(Rocconi et al., Lancet Oncology, 2020)。簡単に述べると、患者は、ステージIII/IV高グレードの漿液性、類内膜、または明細胞卵巣がんに対する外科的腫瘍減量と5~8サイクルの化学療法の後に完全奏功の状態であった。研究に登録される時点で患者はEastern Cooperative Oncology Group(ECOG)全身状態が0または1であることと、臓器と骨髄の十分な機能を持つことを要求された。患者は1×107個の細胞/Vigil(登録商標)またはプラセボの注射を1ヶ月に1回、最少で4用量、最大で12用量投与された。治療は、製品が尽きるか、疾患が進行するまで続けられた。有害事象が第1の用量の治療の後に記録され、最後の治療の後30日間続けられた。疾患再発は、わからないようにされた独立な審査者によって評価され、2回の連続した測定での測定可能なあらゆる病巣、または35 U/mL超に上昇したCA-125レベルと定義された。
【0385】
1.2 HRP解析
BRCA1/2変異状態は以前に記載されているようにして判定された(Rocconi et al., Lancet Oncology, 2020)。BRCA1/2野生型と同定された患者は、MyChoice(登録商標)CDx(Myriad, Inc、ソルト・レイク・シティ、ユタ州)を用いた相同組み換え修復異常試験に送られた。アッセイガイドラインごとに42以上のスコアがHRDである患者の同定に使用され、42超がHRPであった。
【0386】
1.3 統計解析
VITAL研究の主要エンドポイントは、無作為化の時点からの無再発生存期間であった。HRP患者におけるVigil(登録商標)とプラセボでの無再発生存期間と全生存期間の事後解析をカプラン-マイヤー解析によって実施した。ハザード比と信頼区間は90%CIを用いて計算し、p値は片側であった。層化因子には残留疾患と化学療法のスケジュールが含まれていた。境界内平均生存時間差(RMST)解析を、各群の最長追跡時間の最小値に等しい打ち切り点を用いて感度解析として実施し、共変量の調節なしで実施した。
【0387】
2.結果
2.1 ベースラインの特徴と人口統計
この評価では、BRCA-wt腫瘍を持つ67人の患者(患者の60%がVigil(登録商標)群、40%がプラセボ群)がHRD解析を受けた。腫瘍組織のHR解析から、Vigil(登録商標)群の62.5%(n=25)とプラセボ群の74.1%(n=20)が、アッセイによって判定された[域値<42(Myriad MyChoice(登録商標))]HRP腫瘍を持つことが明らかになった。患者の人口統計が表10に掲載されている。人口統計から、全身状態スコアが小さい(ECOGが1)より多数の患者が無作為化されてVigil(登録商標)を投与されたことが明らかになった。
【表10】
【0388】
2.2 安全性
各治療群での有害事象が表11に示されている。Vigil(登録商標)群ではグレード3以上の有害事象の患者は報告されなかった。治療関連死もなく、有害事象が理由で研究から離脱する患者もおらず、用量の変更は起こらなかった。患者は平均で7.12用量のVigil(登録商標)(範囲1.00~12.00)を投与されたのと比べ、プラセボは6.90(範囲3.00~12.00)用量であった。
【表11】
【0389】
2.3 エンドポイント解析
カプラン-マイヤー解析は、HRP Vigil(登録商標)治療サブセットにおける無作為化からのRFS HR=0.386(90%CI 0.199~0.750)、p=0.007とOS HR=0.342(90%CI 0.141~0.832)、p=0.019の両方で有利な改善を示した(図22と24)。時間とともに変化し、事象の数に基づく相対リスクを比較するハザード比例とは異なり、指定された時間にわたる曝露を比較する代替評価を提供するRMSTを用いたOSとRFSのさらなる評価も、RFS(p=0.017)とOS(p=0.008)の両方でプラセボよりもVigil(登録商標)が有利な利点を持つことを支持した(図25と26)。
【0390】
3.結果
悪性組織の中でのBRCA-wt発現のBRCA-mに対する関係(Morand et la., JNCI Cancer Spectrum, 2020)は、より多いクローナルネオアンチゲン(McGranahan et al., Science, 351(6280):1463-9, 2016)発現と関係しているため、Vigil(登録商標)によって誘導される免疫活性化に関して「ホットな」腫瘍微小環境を特徴とする誘導された免疫エフェクタ応答のより適切なネオアンチゲン標的が同定される可能性がある(Kraya, A.A., et al. Clin Cancer Res, 25(14):4363-4374, 2019)。より大きな腫瘍変異量とより大きなネオアンチゲン量中央値がHRPと比べてHRDの高グレード卵巣がんで観察されるが、汎腫瘍スペクトルのより下端においてである。しかしHRDではサブクローン変異率が高く(約40%)、腫瘍内不均一性がより大きいため、「ホットな」浸潤された腫瘍微小環境および増加した腫瘍浸潤細胞と関係する高クローナルネオアンチゲン腫瘍で記載されている免疫原性効果はおそらく低下する(McGranahan et al., Science, 351(6280):1463-9, 2016)。これは、高ネオアンチゲン/高ヒト白血球抗原(HLA)発現のHRP腫瘍の設定において特に当てはまる。これらのHRP腫瘍はエフェクタメモリT細胞の中にも豊富でIFNγ応答を増強するのに対し、BRCA1変異腫瘍はI/II型IFN応答の減少と関係している(McGranahan et al., Science, 351(6280):1463-9, 2016)。Vigil(登録商標)の機構の評価は、ELISPOTアッセイによって評価されるように、臨床的利益と相関するVigil(登録商標)治療後の循環単核細胞による抗腫瘍応答誘導の機能増大を支持する(Oh et al., Gynecol Oncol, 143(3):504-510, 2016)。さらに、循環しているCD3+/CD8+単核細胞は、特に小グループの治療患者においてVigil(登録商標)治療の後に全身で上方調節されることが示された(Herron et al., Cancer Science and Research, 2020)。それに加え、BRCA-mを発現するがんにおけるより多いサブクローナルネオアンチゲン発現は悪性細胞の「巣」の部分集団の割合をより大きくし、そのことによって(BRCA-wt集団において増強されている可能性が大きい)クローナルネオアンチゲンの可視性と、クローナルネオアンチゲンを標的とする免疫応答の効率を希薄化する可能性がある(McGranahan et al., Science, 351(6280):1463-9, 2016)。Vigil(登録商標)の後に増加したELISPOT活性の持続的発現も観察されており、Vigil(登録商標)の中断を超えて誘導された抗腫瘍活性が数ヶ月持続する(Senzer et al., Journal of Vaccines & Vaccination, 4(8):209, 2013)。これらの結果は、メモリT細胞の誘導を示唆する(Craig et al., Vaccines (Basel), 8(4), 2020)。
【0391】
以前に記載されているように、PARP-iを卵巣がんにおけるわれわれの治療機会に追加すると影響があった。しかし個々の卵巣がんの分子プロファイルは多彩であるため、RFS、PFS、およびOSと分子プロファイルの関係は、卵巣がんを含むがんスペクトル全体で詳細に評価されている段階である。新たに診断された卵巣がんの治療と卵巣がんの二次治療の一連の療法に関するこの報告と他のPARP-i報告に基づきいくつかの治療適応に資金が与えられたが、利益の過半は、BRCA-m HRD腫瘍またはBRCA-wt HRD腫瘍を持つ卵巣がん患者で見られる。
【0392】
BRCA-wt/HRP集団では、BRCA-m/HRD集団およびBRCA-wt/HRD集団と比べると、抗血管新生剤とPARP-iの両方に中程度の毒性プロファイルと限定された有効性から生じる臨床上の困難があるため、HRP卵巣がん集団でVigil(登録商標)を考慮することが保証される。PARP-iはかなりの割合のグレード3/4の薬関連毒性効果と関連しており、その結果として75%もの患者が投与中止となる可能性がある(Gonzalez-Martin et al., N Engl J Med, 381(25):2391-2402, 2019)。毒性プロファイルは抗血管新生剤ではより少ないが、毒性は、致命的でないにしても深刻である可能性があり、出血、高血圧、腸穿孔のほか、静脈と動脈の血栓のリスクがある。ニラパリブがHRP腫瘍を持つ患者を含む「全希望者」のための維持として最近認可されたこと(Gonzalez-Martin et al., N Engl J Med, 381(25):2391-2402, 2019)を考慮するとともに、定量的と定性的の両方での毒性制限をHRP集団における限定された利益と比較検討すると、Vigil(登録商標)と他の潜在的に有効なより広い治療指数のアプローチのほか、他の感受性分子サブセット集団のさらなる開発が正当化される。
【0393】
Vigil(登録商標)免疫療法は、HRP上皮卵巣がんにおける免疫療法の有効性に関する最初の無作為化された原理検証研究である(Rocconi et al., Lancet Oncology, 2020)。再発疾患の遅延延長と全生存期間の利点の両方を広い治療指数で達成したことに加えて毎月の皮内注射の簡単さが、臨床的に無疾患の患者における最適な維持療法の主要な要素である。原発HRP卵巣がんにおけるVigil(登録商標)ワクチン維持療法の研究は、このサブセットの卵巣がんを標的とする療法を開発して適用するためのNRG Oncologyからの奨励分野に対応する。したがってVigil(登録商標)の第3相研究は、特にHRP卵巣がん集団においてと、おそらくはHRPプロファイルを持つ他の固形腫瘍集団において正当化される。
【0394】
実施例5:フロントラインステージIII/IV卵巣がんにおける維持としてのGemogenovatucel-T(Vigil(登録商標))免疫療法(VITAL):無作為化二重盲検プラセボ対照第2b相試験
本研究よりも前の証拠
われわれは、PubMedを1999年1月1日から2020年3月1日まで、「現在の標準治療」という検索用語で検索し、英語で発表された臨床試験、研究、および研究論文を探した。
【0395】
「卵巣がん維持」、「PARP阻害剤」、「BRCA変異状態卵巣がん」、および「相同組み換え修復異常」。われわれの検索で21159件の論文が得られた。文献の検討から、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤が関与していて改善された無増悪生存期間を示すいくつかの研究が明らかになったが、全身維持療法を含むフロントライン卵巣がんでは無再発生存期間または全生存期間の利点はなかった。進行したフロントライン卵巣がん管理のための選択肢はほとんどない。一次腫瘍減量手術とそれに続くアジュバント化学療法、またはネオアジュバント化学療法とその後の腫瘍減量手術のいずれかの一次標準治療での管理から最初の2年以内に、遅延しているが持続的な再悪化がほぼ75%の割合で起こる。地固め治療または維持治療は、標準的な管理と比べて無再発生存期間または全生存期間の改善を示さなかった。いくつかの研究が相同組み換え熟達である患者において無増悪生存期間の利益を示したが、ARP阻害剤の生存期間の利益には、生殖細胞系列と体細胞のBRCA変異または相同組み換え修復異常分子プロファイルを持つ患者が優先的に関与している。ARP阻害は、全生存期間に対しても有効性をほとんど示さず、BRCA変異または相同組み換え修復異常を持つ患者で最大の利益が観察され、相同組み換え熟達である患者では利益がより少なかった。さらに、骨髄抑制に関係する毒性効果と、稀だが治療に関係する白血病が、用量の投与を制限する。卵巣がんを持つ患者の5年生存率は低いまであり、これは医療の必要性が満たされていないことを示す。したがって第1相の安全性と免疫応答機構に関する確固とした結果と、第2a相臨床試験における利益の有意な証拠とに支持されて、われわれは、一次腫瘍減量手術の候補者であってステージIII/IVの卵巣がんを持つ新たに診断された患者におけるGemogenovatucel-Tの安全性と有効性を評価するためのVITAL試験を開始した。
【0396】
本研究の追加価値
われわれが知る限り、VITAL研究は、卵巣がんのフロントライン維持治療としての三重機構免疫調節自家腫瘍ワクチンの効果を調べる最初のものであり、この集団における免疫療法の利益の最初の証拠を示す。この研究の結果は、Gemogenovatucel-Tが非毒性であることと、治療がBRCA1とBRCA2(BRCA)に関して野生型である進行した卵巣がんを持つ患者における無再発生存期間と全生存期間の改善につながることを示している。卵巣がんであると新たに診断された大半の患者はBRCAである。
【0397】
入手可能な全証拠の意味
Gemogenovatucel-Tは、単剤活性を持つ画期的な免疫療法プラットフォーム技術である。Gemogenovatucel-Tの将来の研究は、チェックポイント阻害剤、PARP阻害剤、および血管新生阻害剤との組み合わせで正当化される。
【0398】
背景
Gemogenovatucel-Tは、採取された腫瘍組織から製造される自家腫瘍細胞ワクチンであり、フーリンと下流のTGF-I31およびTGF-I32の発現を特異的に低下させる。本研究の目的は、フロントライン卵巣がん維持におけるGemogenovatucel-Tの安全性と有効性を明らかにすることであった。
【0399】
方法
この無作為化二重盲検プラセボ対照第2b相試験にはアメリカ合衆国内の25箇所の病院が関与した。手術と、カルボプラチンとパクリタキセルを含む5~8サイクルの化学療法の組み合わせの後に臨床的に完全奏功になり、Eastern Cooperative Oncology Group状態が0または1であった、ステージIII/IVの高グレード漿液性、類内膜、または明細胞卵巣がんを持つ18歳以上の女性が、本研究に含まれるのに適格であった。患者は、無作為置換ブロックのサイズを2と4にしてうまくスクリーニングされた後に独立な第三者自動応答システムによって無作為にGemogenovatucel-Tまたはプラセボに割り当てられ(1:1)、外科的減量の程度と、ネオアジュバント化学療法対アジュバント化学療法によって層化された。Gemogenovatucel-T(1回の注射につき1×107個の細胞)またはプラセボを(1ヶ月に1回)、最少で4用量かつ12用量まで、皮内に投与した。患者、治験担当医師、および臨床スタッフは、統計解析が終わるまで患者の割り当てを知らされなかった。主要エンドポイントは無再発生存期間であり、プロトコル遵守集団で解析された。少なくとも1用量のGemogenovatucel-Tを投与された全患者が安全性の解析に含まれた。本研究はClinicalTrials NCT02346747で登録されている。
【0400】
知見
2015年2月11日と2017年3月2日の間、310人の患者が22施設で本研究に同意した。217人が除外された。91人の患者がGemogenovatucel-T(n=47)またはプラセボ(n=44)を投与され、安全性と有効性に関して解析された。追跡中央値は、Gemogenovatucel-Tの最初の投与から40.0ヶ月(IQR 35.0~44.8)、プラセボの最初の投与から39.8ヶ月(35.5~44.6)であった。無再発生存期間は、Gemogenovatucel-T に割り当てられた患者では11.5ヶ月(95%CI 7.5~未到達)であったのに対し、プラセボに割り当てられた患者では8.4ヶ月(7.9-15.5)であった(HR 0.69、90%CI 0.44~1.07;片側p=0.078)。Gemogenovatucel-Tではグレード3または4の毒性効果はなかった。プラセボ群の2人の患者で5件のグレード3の毒性事象があり、その中には関節痛、骨痛、全体的な筋肉衰弱、失神、および呼吸困難が含まれていた。7人の患者(4人がプラセボ群、3人がGemogenovatucel-T群)で11件の深刻な有害事象があった。治療関連死はどちらの群でも報告されなかった。
【0401】
維持としてのGemogenovatucel-T免疫療法の解釈フロントラインでの使用はよく忍容されたが、主要エンドポイントは達成されなかった。BRCA変異状態によって層化された患者におけるGemogenovatucel-Tのさらなる研究が正当化される。
【0402】
卵巣がんがあると診断された大半の女性は進行した段階にある。最適な標準治療は、ステージによって異なる5年生存率を達成することができ、41%(ステージIIIa)から20%(ステージIV)までである。新たに診断された卵巣がん(ステージIIIまたはIV)の標準治療は、一次腫瘍減量手術に続くパクリタキセルとカルボプラチンを用いたアジュバント化学療法、またはネオアジュバント化学療法とその後の腫瘍減量手術を含む。大半の患者はどちらかのアプローチで完全寛解を達成するが、約75%は2年以内に再悪化することになる。
【0403】
ベバシズマブとポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤を含むいくつかの研究が試みられ、患者が完全奏功を達成した後に維持療法を適用することによりフロントラインで治療された卵巣がんにおける転帰が改善されているが、無増悪生存期間の利益にもかかわらず、われわれが知る限り、無再発生存期間または全生存期間の有意な利益を示した研究は存在しない。それに加え、ベバシズマブとPARP阻害剤両方の中程度の薬関連毒性効果が投与を制限する。PARP阻害剤は臨床医に卵巣がんに関するフロントライン維持のための新たなプラットフォームを提供したが、活性は、BRCAの生殖細胞系列と体細胞の変異を持つ患者で主に見られている。PARP阻害剤は、BRCAの状態に関係なく、再発した白金感受性維持でも認可されている。しかし利益の大きさはBRCAが変異した(BRCAmut)腫瘍を持つ患者、または相同組み換え修復異常の証拠がある患者で最大である。
【0404】
Gemogenovatucel-Tは、採取された腫瘍組織から製造された自家腫瘍細胞ワクチンであり、ヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)遺伝子、免疫刺激サイトカイン、および二機能性短鎖ヘアピンRNA(bi-shRNA)コンストラクトをコードする多遺伝子プラスミドを生体外でトランスフェクトされていて、フーリンと下流のTGβ1およびTGFβ2. 4の発現を特異的に低下させる。TGFβ1とTGFβ2の活性化はフーリンの唯一の機能ではない。フーリンの切断によって他のいくつかのタンパク質(増殖因子、サイトカイン、ホルモン、および受容体が含まれる)が活性化される。しかしTGF-βタンパク質は、悪性卵巣組織では非悪性卵巣組織と比べてはるかに多く発現している。5遺伝子シグネチャの経路解析は、予後が悪い卵巣がんを持つ患者でTGF-βシグナル伝達が増えていることを示した(6)。TGF-βは非侵襲性の漿液性卵巣腫瘍から侵襲性の漿液性卵巣がんへの進行に関与する。
【0405】
さらに、TGF-βの過剰発現はBRCAの生殖細胞系列と体細胞の変異と関係している。PARP阻害剤腫瘍細胞増殖と転移、増加しているは、準最適な腫瘍減量がなされた卵巣がんを持つ患者で再発した白金感受性腫瘍でも認可されている。
【0406】
TGF-β DNA製品、GMCSF DNA製品を調べる初期の臨床試験では、利益の大きさは、BRCAを持つ患者(変異した(BRCAmut)腫瘍におけるGemogenovatucel-Tの第1相試験を含む)、または再発または難治性の固形腫瘍の証拠がある患者で最も大きく、酵素結合免疫スポットアッセイにより、安全な皮内投与が1ヶ月当たり1用量につき1×107個の細胞であることと、自己腫瘍抗原に対して応答して自家末梢血単核細胞γインターフェロン応答が上方調節されることが示された。(9~11)。無再発生存期間の利益と相関性治療関連免疫応答が、ステージIIIまたはIVの切除可能な卵巣がんを持つ患者でGemogenovatucel-Tをフロントライン維持療法として用いた第2a相試験において示された。特にBRCA野生型(BRCA)疾患を持つ患者における進行した卵巣がんのフロントライン治療には限界があるため、われわれはVITAL研究を開始した。本研究の目的は、フロントライン卵巣がん維持におけるGemogenovatucel-の安全性と有効性を明らかにすることであった。
【0407】
方法
研究設計と参加者
この第2b相無作為化二重盲検プラセボ対照試験にはアメリカ合衆国内の25箇所の病院が関与し、そのうちの22箇所の病院が患者を登録した。他の3箇所は、治験審査委員会承認の後に患者を登録しなかった)。手術と、カルボプラチンとパクリタキセルを含む5~8サイクルの化学療法の組み合わせの後に臨床的に完全奏功であった、ステージIII/IV高グレードの漿液性、類内膜、または明細胞卵巣がんを持つ18歳以上の女性が、本研究に含まれるのに適格であった。患者は、Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)全身状態が0~1で、臓器と骨髄が正常な機能でなければならなかった。並行したPARP阻害剤またはベバシズマブによる維持療法は遵守プロトコルであると認められなかった。患者が研究登録に不適格であったのは、慢性ステロイド計画または免疫抑制計画を必要とし、うっ血性心不全、不安定狭心症、心室性不整脈または血行動態的に有意な心房性不整脈、心血管疾患、心筋梗塞、脳転移、HIV、慢性のB型またはC型肝炎感染、以前の固形臓器または骨髄の移植、または活性な自己免疫疾患があるかその履歴がある場合である。子宮の乳頭状漿液性腺癌が組織学的に確認されるか、子宮筋層または内皮が関与するあらゆる疾患、または脳転移がある患者も除外される。
【0408】
ワクチン製造のための腫瘍の採取は、ネオアジュバント療法の前の腹腔鏡による腫瘍減量の間に、またはネオアジュバント療法を受けない患者の腫瘍減量手術のときになされた。すべての腫瘍採取手続きが、あらゆる化学療法の前になされた。
【0409】
休薬期間が、化学療法の後には3週間、全身麻酔を含む手術、放射線療法、免疫療法、または治験薬の後には4週間、免疫抑制療法の後には14日間必要とされた。全患者が組織採取前に書面のインフォームド・コンセントを提出した。薬安全性モニタリング委員会(BSMB)が研究開始前に設置されて全地検患者の安全性を維持した。グレード3または4以上の毒性効果は観察されなかった。DSMBの推奨は、研究を計画通り継続するというものであった。個々の施設で、治験審査委員会とプロトコルの倫理的承認の書面と、書面のインフォームド・コンセントが、患者の登録が可能になる前に必要とされた。
【0410】
無作為化とマスキング
適格な研究参加者は、Gemogenovatucel-Tまたはプラセボを投与されるために無作為に割り当てられた(1:1)。患者は、研究全体でClinipace(モリスヴィル、ノースカロライナ州、アメリカ合衆国)により自動応答システム(Tempoシステム;Clinipace;モリスヴィル、ノースカロライナ州、アメリカ合衆国)を通じ、無作為置換ブロックのサイズを2つと4つにして無作為に割り当てられた。これは、化学療法が完了してから3~8週間後に実施された。無作為化は外科的腫瘍減量の程度(微視的または巨視的)と、ネオアジュバント化学療法対アジュバント化学療法によって層化された。マスキングが維持されたことを保証するため、施設の薬剤師は、治療用投与に使用した注射器の筒の周囲に隠しテープを巻いて薬をプラセボから識別できなくする必要があった。試験スタッフ、治験担当医師、および患者の全員が、どの研究に割り当てられたかわからない状態にされた。スポンサーの研究チームは、品質保証スタッフを除き、患者の治療割り当てがわからない状態にされた。
【0411】
手続き
Gradalis(キャロルトン、テキサス州、アメリカ合衆国)が、採取された腫瘍組織からGemogenovatucel-Tを製造した。ワクチン製造のための腫瘍の採取は、あらゆる化学療法の前になされた。Gemogenovatucel-Tのバイアルの数に基づく同じ用量のプラセボが製造された。10~30 gの腫瘍組織がワクチンの製造に必要とされた。細菌感染のリスクゆえ、腸管腔へと延びる病巣は除外された。プラセボは凍結培地からなり、殺菌した2.0 mLのホウケイ酸ガラス製バイアルに分配して最終充填体積を1.2 mLにした。培地をゆっくりと-80℃まで下げて凍結させた後、無菌性とエンドトキシンに関する出荷試験の間はバイアルを蒸気相の液体窒素の中で保管した。プラセボバイアル製品は、患者のために製造された入手可能な製品用量と合致していた。プロトコル登録の例外は、部分的プラスミドにより増加したGMCSF発現または低下した(ノックダウン)TGF-β1発現(それがプラスミド導入の証拠を十分に示す)に基づいて認められた。さらなる詳細が下記の表12に示されている。
【表12】
【0412】
患者は、(最後の化学療法の後8週間以内に)皮内注射1回につき1×10個の細胞のGemogenovatucel-Tまたはプラセボを1ヶ月に1回、少なくとも4用量かつ12用量まで投与された。以下の事象の後にプロトコルに規定された治療を停止した。それは、治療に関連すると患者の担当医が考える受容できない(グレード3以上の)毒性効果、治療と無関係だが4週間以内に解決しなかったグレード3または4の毒性効果、治験薬に対するグレード3以上のアレルギー反応、臨床的利益の証拠がある場合を除くグレード2の自己免疫反応、グレード3以上の自己免疫反応、研究のエンドポイントの評価に影響する可能性のあるあらゆる病気、プロトコルにない療法(化学療法を含む)、患者の非コンプライアンス、または同意の撤回が患者にあった場合である。用量変更の基準には、National Cancer Institute Common Toxicity Criteriaによるグレードまたはそれよりも悪い毒性効果が含まれるが、研究治療に関連する注射部位の反応(グレード2または3)は除外された(その時点で用量が50%減らされることになろう)。
【0413】
4週間までの治療遅延は回復を可能にするために許容可能であった。毒性事象に関係のない他の因子による治療遅延の場合には、3日以内に注射がなされた。遅延が感染症または疾患の症状に起因する場合には、2週間の遅延が許容された。
【0414】
全血球差異カウント、 C-125、および血清化学からなるベースライン検査を、胸部、腹部、および骨盤のCTとともに実施した。組織と血液の全サンプルについて生殖細胞系列または体細胞のBRCA1とBRCA2の分子プロファイリングデータを収集し、次世代シークエンシング(Ocean Ridge Biosciences;ディアフィールド・ビーチ、フロリダ州、アメリカ合衆国)を利用して一箇所で解析した。
【0415】
患者は、最初の3年間にわたって3ヶ月ごとに、そして治療の終了時または再発時に、胸部、腹部、および骨盤のCTによって疾患の進行をモニタされた。追跡の間、CTスキャンを6ヶ月ごとに実施し、5年後まで計画した。患者は、マスクされた独立な中央審査者(World Care Clinical;ボストン、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国;Response Evaluation Criteria in Solid Tumorsバージョン1.1を使用)によって規定される疾患進行まで、またはGemogenovatucel-Tまたはプラセボの供給が枯渇するまで(以前の臨床免疫応答に基づき最少で4用量)、研究治療にとどまった。12すべての検査評価(全血球差異カウント、 C-125、および血清化学)を研究に登録されている間は1ヶ月に1回実施した。疾患が再発するか治療が終了したとき、検査評価を繰り返し、その後、追跡中は6ヶ月ごとに継続した。
【0416】
第1の用量のGemogenovatucel-Tの後に有害事象を記録し、最後の研究治療から30日後まで続けた。有害事象のグレードをCommon Toxicity Criteria for Adverse Eventsバージョン4.03を用いて判断し、報告した。研究治療との因果関係の有無に関係なく、すべての有害事象を記録した。
【0417】
転帰
主要エンドポイントは、無作為化の時点からの無再発生存期間であった。優先順位における副次的エンドポイントは、BRCA疾患を持つ患者の腫瘍組織採取の時点からの無再発生存期間、無作為化の時点からのBRCA疾患の再発、全患者の腫瘍組織採取の時点からの無再発生存期間、全患者の無作為化の時点からの全生存期間、および全患者の腫瘍組織採取の時点からの全生存期間であった。採取の時点は、手術後に自家腫瘍細胞を採取する時点であった。無作為化または腫瘍組織採取の時点からの無再発生存期間は、無作為な割り当てまたは採取の日付から、(患者が毒性効果を理由として治療を停止した場合でさえ)患者が疾患再発を最初に記録された日付、またはその対象が疾患再発の前に何らかの原因で死亡した場合には死亡の日付までの時間と定義される。疾患再発は、少なくとも1ヶ月間を空けた2回の連続的な測定において、何らかの測定または評価が可能な病巣、または非症状性CA-125のレベルが35 U/ml超の出現として定義された。全生存期間は、無作為な割り当てまたは腫瘍組織採取の日付から死亡の日付までの期間と定義された。
【0418】
統計解析
90%の効力、推定される真のハザード比(HR)が0.45、および片側αのレベルが0.05であるためには、サンプルサイズの計算に基づき、54件の無再発生存事象が必要とされた。主要エンドポイントを解析した後、副次的エンドポイントが、統計解析計画に掲載されている順序に従って階層試験法を利用して調べられることになる。この方法は多重性調節のために利用された。一次有効性解析はプロトコル遵守集団に基づいており、その中には、無作為に割り当てられて、自分たちに割り当てられた研究治療の1つ以上の用量を投与され、研究来院者の少なくとも80%が参加し、プロトコルからの大きな逸脱がなかった患者が含まれていた。少なくとも1用量のGemogenovatucel-Tまたはプラセボを投与された全患者が安全性解析に含まれていた。感度解析として、治療企図集団(無作為に割り当てられた合計92人の患者)で無作為化からの無再発生存期間と全生存期間も解析した。無再発生存期間と全生存期間の分布はカプラン-マイヤー法を利用して推定し、層化ログ-ランク検定を利用して比較した。片側p値が0.05以下(残留疾患と化学療法のスケジュールの無作為化層化因子によって層化される層化ログ-ランク検定)を、有意であることを示すと見なした。90%CIは、治療効果を比較するために、95%CIは、個々の統計のために示されている。HRは、無作為化層化因子による層別Cox比例ハザードモデルによって評価した。GrambschとTherneauの検定を両側0.05有意レベルで実施し、層別Coxモデルに関する比例ハザード推定をチェックした。
【0419】
1年間と2年間の無再発生存期間と全生存期間の追加の探索的事後解析は、カプラン-マイヤー法で推定され、漸近Z検定を用いて比較され、割合の差の分散はGreenwood法を利用して推定された。境界内平均生存時間差は感度解析として計算された(打ち切り点はいずれかの研究群の最長追跡時間の最小値に等しい)。境界内平均生存時間差は、共変量の調整なしで計算された。生殖細胞系列と体細胞のBRCA1またはBRCA2の変異を持つ患者とBRCAを持つ患者(非変異群)の無作為化または腫瘍組織採取からの無再発生存期間と全生存期間は、あらかじめ計画されたサブグループ解析であった。両方の生存期間エンドポイントを含めることにした理由は、維持療法あり、またはなしの併用療法の両方を含む群が組み込まれた以前の維持療法試験をより正確に反映させるためであった。疾患が再悪化した患者の割合はフィッシャーの正確t検定によって解析した。フォレストプロットを、全患者とBRCA疾患を持つ患者に関する計画されたサブグループ解析のために構成した(年齢、疾患のステージ、ECOG全身状態、化学療法のタイミング、残留疾患の状態、BRCA変異の状態、TGF-β1(%ノックダウン)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子の発現、生存率、および製造されたワクチンの数による)。P相互作用を計算してBRCAサブグループ間の効果変更を評価した。無再発生存期間について変更の効果をBRCAサブグループ間で評価するため、Cox比例ハザードモデルに相互作用項を含めることにより、BRCA状態と治療の間の相互作用項のp値の事後解析を実施した。
【0420】
盲検化前に計画されたすべての統計解析は独立になされた(Stat Beyond Consulting、アーヴァイン、カリフォルニア州、アメリカ合衆国)。すべての統計解析がRバージョン4.0.0でなされた。本研究は、ClinicalTrials.gov, NCT02346747で登録されている。
【0421】
結果
2015年2月11日と2017年3月2日の間、310人の患者が22施設で本研究に同意し、そこから309個のサンプルが製造された。217人が除外された(図34)。91人の患者がGemogenovatucel-T(n=47)またはプラセボ(n=44)を投与され、安全性と有効性に関して解析された。67人の患者がBRCAであり、24人がBRCAmutであった(付録16ページ)。患者のベースラインの特徴が表13に示されている。
【表13-1】
【表13-2】
【0422】
91人の患者のうちの84人(92%)が、すべての製品出荷基準を満たした。採取された腫瘍の質量中央値は50 gであった(IQR 31~75)。製品出荷の生存率中央値は88%であった(IQR 83~90;91人の患者で評価)。91人の患者のうちの7人(8%)(Gemogenovatucel-Tに割り当てられた5人の患者と、プラセボに割り当てられた2人の患者)が、プラスミド導入後にGMCSF発現が106個の細胞当たり30 pg/mLを超える増加を示すことがなかった。しかしこれら7人の患者のうちの6人(86%)は少なくとも30%という十分なTGF-β1ノックダウンを持っていた。評価可能なGMCSF産生中央値は106個の細胞当たり860 pg/mLであり(IQR 254~2506、84人の患者;7人の患者は域値未満であった)、評価可能なTGF-β1中央値は100%であった(100~100、84人の患者;表12)。TGF-β1ノックダウンの結果を7人の患者(6人は十分なGMCSF発現出現;4人の患者はGemogenovatucel-Tに割り当てられ、3人はプラセボに割り当てられた)で判断できなかった。91人の患者のうちの78人(86%)は少なくとも80%のTGF-β1ノックダウンを持っていた。TGF-β1シグナル伝達はフーリン発現の下流であるため、これらの結果はフーリンbi-shRNAノックダウンに関係するロバストな活性を支持する。プラスミドをトランスフェクトする前のベースラインTGF-β1産生は、106個の細胞当たり164 pgというTGF-β1発現中央値を示した(IQR 119~336;平均値241[SD 162])。BRCA1とBRCA2が野生型であった(BRCA)患者のTGF-β1発現は、106個の細胞当たり164 pgという中央値を示した(IQR 125~350;平均値249[154])。BRCA1またはBRCA2が変異した(BRCAmut)患者のTGF-β1発現は、106個の細胞当たり146 pgという中央値を示した(IQR 115~267;平均値219[183])。
【0423】
追跡中央値は、Gemogenovatucel-Tの最初の投与から40.0ヶ月(IQR 35.0~44.8)、プラセボの最初の投与から39.8ヶ月であった(35.5~44.6)。手術から無作為な割り当てまでの時間の中央値は、Gemogenovatucel-T群の患者で7.0ヶ月(IQR 6.5~7.4)、プラセボ群の患者で6.7ヶ月(5.9~7.1)であった。以前の化学療法治療の終了から治療の開始までの期間の中央値は、Gemogenovatucel-T群の患者で1.6ヶ月(IQR 1.4~1.8)、プラセボ群の患者で1.5ヶ月(1.2~1.9)であった。2020年1月21日までに本試験で独立な第三者X線写真評価によって59件の再発事象が観察された。Gemogenovatucel-Tに割り当てられた患者の無作為化の時点から計算した無再発生存期間をプラセボに割り当てられた患者と比較すると、11.5ヶ月(95%CI 7.5~未到達)対8.4ヶ月(7.9~15.5;HR 0.69、90%CI 0.44~1.07;片側p=0.078;図2A)であった。Gemogenovatucel-T群の26人の患者とプラセボ群の33人の患者で再発事象があった。
【0424】
GrambschとThernauの検定に基づき比例ハザード推定が満たされた。有効性評価の時点で44人の患者のうちの33人(75%)がプラセボ群では再悪化した疾患を持っていたのと比べてGemogenovatucel-T群では47人の患者のうちの26人(55%)であった。事後検定では、無作為な割り当ての時点からの1年無再発生存率はGemogenovatucel-T群の患者では49%(95%CI 36~68)であったのに対してプラセボ群の患者では39%(27~58)であった(p=0.18)。事後検定では、無作為な割り当ての時点からの2年無再発生存率はGemogenovatucel-T群の患者では32%(95%CI 19~53)であったのに対してプラセボ群の患者では25%(15~44)であった(p=0.26)。
【0425】
全患者における組織採取の時点からの無再発生存期間は、Gemogenovatucel-Tを投与された患者ではプラセボを投与された患者よりも長かった(図35B)。
【0426】
BRCA疾患を持つ患者の組織採取の時点から計算した無再発生存期間という副次的エンドポイントは、Gemogenovatucel-Tを投与された患者ではプラセボを投与された患者よりも有意に長かった(図35D)。有効性評価の時点でGemogenovatucel-T群の中のBRCA疾患を持つ40人の患者のうちの21人(52%)が再悪化した疾患を示したのと比べ、プラセボ群の中のBRCA疾患を持つ27人の患者のうちでは21人(78%)であった。事後解析において、手術または組織採取の時点からの1年無再発生存率は、Gemogenovatucel-T群の中のBRCA疾患を持つ患者では81%(95%CI 69~95)であったのと比べ、プラセボ群の中のBRCA疾患を持つ患者では63%(47~84)であった(p=0.056)。BRCA疾患を持つ患者の手術または組織採取の時点からの2年無再発生存率は、Gemogenovatucel-T群の患者では42%(95%CI 28~64)であったのに対し、プラセボ群の患者では24%(11~49)であった(p=0.073)。BRCA疾患を持つ患者の無作為化からの無再発生存期間は、Gemogenovatucel-Tを投与された患者ではプラセボを投与された患者よりも有意に長かった(Gemogenovatucel-T群の40人の患者のうちの21人[52%]に対し、プラセボ群の27人の患者のうちの21人[78%]に無再発生存事象があった;図35C)。またはBRCA疾患を持つ患者、事後解析では、無作為化の時点からの1年無再発生存率は、Gemogenovatucel-T群の患者では51%(95%CI 36~71)であったのに対し、プラセボ群の患者では28%(15~53)であった(p=0.036)。事後解析では、BRCA疾患を持つ患者の無作為化の時点からの2年無再発生存率は、Gemogenovatucel-T群の患者では33%(95%CI 20~57)であったのに対し、プラセボ群の患者では14%(5~39)であった(p=0.048)。
【0427】
事後検定でのBRCA1またはBRCA2の変異疾患を持つ患者における無作為な割り当ての時点と手術または組織採取の時点からの無再発生存期間が図41A図41Bに示されている。無作為な割り当ての時点と手術または組織採取の時点から計算したあらかじめ計画された治療企図解析は、プロトコル遵守例(per protocol)解析と同様の結果を示した(図37A~37D)。
【0428】
無作為化の時点または採取の時点からの全生存期間がGemogenovatucel-Tにおいてプラセボよりも有意に長くなることはなかった(図35E図35F)。Gemogenovatucel-T群では47人の患者のうちの13人(28%)が死亡したのに対し、プラセボ群では44人の患者のうちの17人(39%)であった。無作為な割り当ての時点と手術または組織採取の時点から計算した全生存期間の治療企図解析は、プロトコル遵守例解析と同様の結果を示した。GrambschとThernauの検定に基づき副次的エンドポイント解析における比例ハザード推定がすべて満たされた。
【0429】
われわれは、BRCA疾患を持つ患者の計画された部分解析でGemogenovatucel-Tに割り当てられたワクチン群において、無作為化からの全存在期間(全生存期間中央値に未到達、95%CI 35.6~未到達であったのに対し41.4ヶ月、26.9~未到達;HR 0.49、90%CI 0.24~1.01であった;p=0.049)と、組織採取の時点からの全存在期間(全生存期間中央値に達せず、95% 41.6~未到達であったのに対して48.3ヶ月、32.3~未到達;0.49、0.24~1.00であった;p=0.047)の利点を観察した。事後検定では、無作為化の時点からの1年全生存率は、Gemogenovatucel-T群のBRCA疾患を持つ患者では100%(95%CI 100~100)であったのに対し、プラセボ群のBRCA疾患を持つ患者では89%(78~100)であった(p=0.033)。事後検定では、無作為な割り当ての時点からの2年全生存率は、Gemogenovatucel-T群のBRCA疾患を持つ患者では90%(95%CI 79~100)であったのに対し、プラセボ群のBRCA疾患を持つ患者では67%(51~89)であった(p=0.021)。BRCAmut疾患を持つ患者では、Gemogenovatucel-T群の患者とプラセボ群の患者の間に全生存期間の差は観察されなかった(図40A~40D)。BRCAサブグループ間の効果の変化を評価するための患者のBRCAの状態と治療の間のp相互作用値は、無作為化の時点からの無再発生存期間については0.173であり、無作為化の時点からの全生存期間については0.072であり、組織採取の時点からの全生存期間については0.090であった。疾患の効果(計画された部分解析)に関するベースライン人口統計(あらかじめ同定された層化因子と製品出荷基準を含む)が、BRCA疾患を持つ患者と全患者の無作為化の時点からの無再発生存期間(図36A~36B)と、無作為化の時点からの全生存期間(図38図39)について示されている。
【0430】
Gemogenovatucel-T群とプラセボ群におけるBRCAWT疾患を持つ患者間の境界内平均生存時間差は、無作為な割り当ての時点からの無再発生存期間が7.2ヶ月(90%CI 0.8~13.5;p=0.032)、無作為な割り当ての時点からの全存在期間が5.6ヶ月(0.2~11.5;p=0.057)であった。いずれかの研究群の最長追跡時間の最小値に等しい打ち切り点を境界内平均生存時間解析で使用した。
【0431】
中央値が6回(範囲1~12、IQR 5~10)のGemogenovatucel-T注射または6回(3~12、6~9)のプラセボ注射が患者ごとに投与された。プラセボ群において、おそらく治験薬関連の骨盤感染に起因する1人の患者の治療遅延が記録された。試験の間、Gemogenovatucel-T群では疾患に起因する2人の死亡が発生したのと比べ、プラセボ群では8人の死亡であり、どちらの群でも治療関連死は発生しなかった。有害事象と用量変更は報告されなかったため、患者が試験から除外されることはなかった。患者の安全性に影響するプロトコルからの大きな逸脱は報告されなかった。
【0432】
各治療群におけるグレードによる有害事象の数が表14に報告されている。プラセボ群の2人の患者でグレード3の治療関連毒性(1人の患者は関節痛、1人の患者は骨痛、全体的な筋肉衰弱、失神、および呼吸困難[これらは深刻な有害事象であった])があった。Gemogenovatucel-Tではグレード3の治療関連有害事象は報告されなかった。7人の患者(4人がプラセボ群、3人がGemogenovatucel-T群)で11件の深刻な有害事象があった。これらの事象のうちの1件を除くすべてが、研究治療に関係する可能性が小さいか、無関係であると報告された。
【表14-1】
【表14-2】
【0433】
考察
Gemogenovatucel-Tは無再発生存期間という主要エンドポイントで改善を示さなかった。しかしいくつかの副次的エンドポイントは、仮説を生成させると考えられ、、特にBRCA腫瘍を持つ患者においてGemogenovatucel-Tでプラセボと比べて無再発生存期間と全生存期間に関して有意な改善を示した。これらの結果は、BRCA卵巣がんを持つ患者がBRCA変異卵巣がんを持つ患者よりもGemogenovatucel-Tに対してより感受性である可能性があることを示唆する。
【0434】
進行した段階の卵巣がんのフロントライン治療に関する現在の光景は過去25年以上にわたって実質的に変わっていない。多大な努力にもかかわらず、組み合わせ療法または維持療法のいずれかとしての代替アプローチの追加は、大部分が、卵巣がんを持つ全患者の標準治療の全体的な変化につながっていない。しかし1つの例外はPARP阻害剤の開発である。例えばステージIIIまたはIVの卵巣がんを持つ患者における維持療法としてのニラパリブは、無増悪生存期間(HR 0.62、95%CI 0.50~0.76;p<0.001)と2年全生存期間において、プラセボ(HR 0.70、95% 0.44~1.11)と比べて改善を示した。しかしグレード3または4の薬関連毒性効果と、毒性に関係する投与中断の割合の多さが懸念されていた。
【0435】
GMCSFは樹状細胞による腫瘍抗原提示の増加に関与して共刺激分子の濃度をより大きくすることで、より効率的な細胞刺激を誘導する。GMCSFは樹状細胞による脂質抗原の提示も促進し、そのことで今度はナチュラルキラーT細胞の活性化につながる。卵巣がん細胞から分泌されるTGF-βは腫瘍微小環境において免疫抑制性の制御T細胞(CD4+、CD25+)の増殖を生じさせる。(26)この応答はフロントラインで治療された高グレードの漿液性卵巣がんを持つ患者の悪い予後と関連づけられてきた。TGF-βは、GMCSFが誘導する樹状細胞由来の骨髄の成熟と、MHC-IIおよび共刺激分子の発現を阻害する。TGF-βは、活性化されたマクロファージをその抗原提示機能も含めて阻害するほか、卵巣がんと腫瘍関連骨髄細胞によるPD-L1発現(これは、卵巣がんを持つ患者における全生存期間の短さと結びついている)も阻害する。TGF-β1のノックダウンは、この試験で示されたように、TGFβの効果の抑制に寄与する可能性があり、それはBRCA疾患を持つ患者においてより重要である可能性がある。
【0436】
卵巣がんにおける免疫療法を調べている研究はほとんどない。ごく最近、チェックポイント阻害剤を用いた卵巣がんにおける応答のケース報告と第1/2相試験の証拠があるが、フロントラインにおけるアベルマブの組み合わせと再発卵巣がんが関与するいくつかの試験で利益は示されなかった。それでも別の1つの試験において、再悪化した卵巣がんを持つ38人の女性のうちの11人が、ニボルマブにベバシズマブを加えた組み合わせで客観的応答を達成した。卵巣がんを持つ患者におけるチェックポイント阻害剤療法が関与するさらなる研究が進行中である。
【0437】
Gemogenovatucel-Tは、よく忍容され、投与が容易であり、有望な有効性を示すことを考慮すると、卵巣がんを持つ患者のための理想的な維持療法になる。われわれの研究結果の1つの強みは、BRCA疾患を持つ患者における安全性と、臨床での無再発生存期間と全生存期間の利点の観察である。しかしBRCAサブセットは副次的エンドポイントであり、製品製造の1つの構成要素としての自家腫瘍採取物の使用は、製品の用途にタイミングと製造成功率の制限を課す。不十分な腫瘍組織は製造失敗に関係していたが、製造されたワクチンの数が患者に投与されたワクチンの数または健康状態と相関することを示唆する証拠は存在しない。不十分な細胞の失敗率は、切除された腫瘍組織の重量が小さいほど増加した。
【0438】
BRCAmut疾患を持つ患者の小集団だけがGemogenovatucel-Tを投与されたため、そのような患者における負の効果に関するわれわれの結論はさらに研究する必要がある。ベバシズマブまたはそれ以外のPARP阻害剤と組み合わせたGemogenovatucel-Tのさらなる評価が計画されている。さらに、チェックポイント阻害剤療法との組み合わせはGemogenovatucel-T免疫応答をさらに増加させると考えられよう。
【0439】
結論として、Gemogenovatucel-Tは、BRCA腫瘍分子プロファイルを持つ卵巣がんがある患者におけるフロントライン維持療法として利益を示した。この発見は、さらなる研究を正当化する。
【0440】
実施例6:補足情報
研究設計と参加者
臓器と骨髄の正常な機能がプロトコル遵守に必要とされ、プロトコル遵守と規定された(絶対顆粒球カウント≧1,500/mm3;絶対リンパ球カウント≧500/mm3;血小板≧75,000/mm3;全ビリルビン≦2 mg/dL;AST(SGOT)/ALT(SGPT)≦2×制度上の正常値上限;クレアチニン<1.5 mg/dL)。すべての患者が、理解する能力を持つことと、書面で通知されるプロトコル専用同意書に署名する意思があることを必要とされた。
【0441】
手続き
外科的に切除した腫瘍組織を採取し、1/4~1/2インチの切片に切断した後、ゲンタマイシン(Fresenius Kabi)を補足した試料容器に入れ、一晩輸送するため氷の中に包装した。1日目、輸送媒体と腫瘍試料の無菌性を調べた(BacT/Alert 3D Microbial Identification System, BioMerieux)。1日目、腫瘍組織をメスによってトリミングして解離させた後、酵素で解離させ(I型コラゲナーゼ溶液)、37℃でインキュベートして単一細胞懸濁液を形成した。この細胞懸濁液を殺菌した100 um濾過器(Corning)を通過させて濾過し、細胞を細胞片から分離し、自由になった細胞を、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を補足したPlasmaLyte(Baxter)で洗浄し、血球計算盤(InCyto)によって手作業でカウントした。品質管理(QC)サンプルを、保持して免疫をモニタするため取り出し、トランスフェクション前の培養を開始してベースラインのサイトカインレベルをGMCSF(R&D Systems)、TGFβ1(R&D Systems)、およびTGFβ2(R&D Systems)についてELISAにより取得した。懸濁液を4000万個の細胞/mLの濃度に調節し、Gene Pulser XL(BioRad)を用いて電気穿孔してプラスミドの挿入を容易にした。トランスフェクトされたこれら細胞を、殺菌したT-225cm2のフラスコ(Corning)の中のゲンタマイシン(Fresenius Kabi)を補足したX-VIVO 10培地(Lonza)の中に1×106個の細胞/mLで入れ、37℃、5%CO2オーバーレイ(Sanyo)で一晩(14~22時間)インキュベートし、bi-shRNAフーリンとGMCSFのmRNAを腫瘍細胞の中に組み込めるようにした。
【0442】
2日目、一晩培養物を収集し、新鮮なX-VIVO培地の中に再懸濁させた。処理を進める前に、QCサンプルと、患者ごとに最少で4用量が必要とされた。
【0443】
細胞を含有する2つの1-mLのマイコプラズマサンプルを採取し、-80℃で凍結させた。細胞にガンマ線照射装置を用いて4×25 Gyサイクルを照射し、複製/増殖を停止させた。細胞を、1%のヒト血清アルブミン(Octapharma)を補足したPlasmaLyte(Baxter)で洗浄し、QCサンプルを保持のため取り出した。細胞を、10%のDMSO(ジメチルスルホキシド;Cryoserv USP;Mylan)、1%のHSA(Octapharma)を含むpH 7.4のPlasmaLyte(Baxter)からなる凍結培地に入れ、1×106個の細胞/mLまたは1×107個の細胞/mLで、殺菌した2.0 mLのホウケイ酸ガラス製バイアル(Algroup Wheaton Pharmaceutical and Cosm etics Packaging)の中に無菌状態で分配し;最終充填体積を1.2 mLにし、Flurotec(登録商標)バリアファイル(West Pharmaceutical Services)で被覆したブチルゴム製ストッパで封止した。最終製品バイアルを、-80℃の冷凍機(Sanyo)の中に入れたCoolCell(登録商標)凍結容器(Biocision)を用いて制御された速度で凍結させた。製品出荷試験の仕様は付録の表3に記載されている。凍結させた後、出荷試験の間は細胞を蒸気相の液体窒素タンクの中で保管した。凍結した製品のバイアルを、ゲル化(Limulus Amoebocyte Lysate, Lonza)による無菌性(USP <71>)とエンドトキシンの試験で使用した。個々の患者のための製品出荷試験の仕様が上の表12にまとめられている。(GMCSF、TGFβ1、TGFβ2)に関するアッセイ検証が研究後に完了し、示されているデータは適切に検証されたパラメータを用いて計算された。結果として、TGFβ2ノックダウンはもはや製品出荷基準として使用されない。
【0444】
プラセボは、10%のDMSO(Cryoserv USP;Mylan)、1%のHSA(Octapharma)を含むpH 7.4のPlasma-Lyte A(Baxter)からなる凍結培地で構成した。この培地をゆっくりと-80℃まで下げて凍結させた後、無菌性とエンドトキシンに関する出荷試験の間はバイアルを気相の液体窒素の中で保管した。プラセボバイアル製品は、対象のために製造された利用可能な製品の用量と一致していた。
【0445】
NGSシークエンシングのためのサンプル処理
低温で保管したサンプルから、Qiagen MagAttract HMW DNAキットを用いて高分子量(HMW)DNAを単離した。200~300 ntの範囲の核酸を標的とするdsDNA Fragmentaseを用いてHMW DNAの断片化を実施した。断片化されたHMW DNAを用いてDNAライブラリを生成させた。そのとき入力5 ngでSMARTer ThruPLEX DNA-Seq Kitを利用した。これらライブラリを組み合わせて5~6重のプールにしてハイブリダイズさせ、SeqCap EZ Human Oncology Panel(981個の遺伝子、2.75 Mbのエキソン領域)にHyperCap Target Enrichment Kitを組み合わせて用いていくつかの遺伝子配列を選択した。遺伝子が選択されたライブラリをプールし、NextSeq 500 Mid Output v2.5(300サイクル)キットを用いてシークエンシングした。
【0446】
NextSeq 500上をサンプルを走らせた。バリアント細胞はGATK HaplotypeCaller v 4.1.2.0を用いて作製した。GATK SelectVariants v 4.1.2.0を用いて.vcfファイルをSNP部分とIndel部分に分割し、各ファイルをGATK CountVariants v 4.1.2.0を用いてカウントした。バリアントのリストをIVAソフトウエアから取り出した後、バリアントをさらにフィルタし、IVA(33)で実現されてClinVar1によって補足されたAmerican College of Medical Genetics and Genomics(ACMGG)分類ガイドラインに基づいて特定のクラスの多型を保持した。ACMGG分類ガイドラインは、予測された悪化バリアントを5つの可能なカテゴリーに、すなわち病原性である、病原性である可能性が大きい、意義不明、良性である可能性が大きい、および良性であるにグループ分けする。分類は、ミスセンス予測、スプライス部位予測、ヌクレオチド保存予測、よく確立された機能研究、および多くの他の因子に基づく。表IVの予測される悪化の列には、上述の全部で5つあるIVA病原性分類に属する17個のサンプルそれぞれにおいて同定されたBRCAと非BRCA HRD変異の総数が含まれる。ORBによって割り当てられたこの最終分類は、IVAまたはClinVarから、IVAによって病原性である、病原性である可能性が大きい、または意義不明として元々割り当てられたバリアントに関して最も厳しい分類を選択することに基づいていた。IVAによって良性である可能性が大きい、または良性であると呼ばれるバリアントは、ORB分類ではそのまま維持された。20%超のサンプル(PBMCサンプルと腫瘍サンブルの両方)で見られるバリアントは、Allele Frequency Community(AFC)データベース、1000ゲノムデータベース、EXacデータベース、またはGnomADデータベースの中の一般集団の5%超に出現するバリアントとともにフィルタで除外された。バリアントは、腫瘍サンプル中の各バリアントのアレルの割合をPBMCサンプルと比較することによって生殖細胞系列または体細胞に分類された。バリアントが、0である腫瘍サンプルアレルの割合を持つ場合には、そのバリアントは生殖細胞系列に分類された。バリアントが、ゼロよりも大きい腫瘍サンプルアレルの割合を持ち、PBMCサンプルアレルの割合がゼロである場合には、そのバリアントは体細胞と分類された。両方のアレルの割合がゼロよりも大きい場合には、そのバリアントは生殖細胞系列と分類されたが、腫瘍サンプルのアレルの割合が10倍超大きい場合にはバリアントは体細胞と分類された。
【表15-1】
【表15-2】
【0447】
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【0480】
本開示の好ましい実施形態を本明細書に示して記述してきたが、当業者には、そのような実施形態が単に例示として提示されていることは明らかであろう。今や、本開示から逸脱することなく、多数のバリエーション、変化、および置き換えが当業者に思い浮かぶであろう。本明細書に記載されている本開示の実施形態に対するさまざまな代替例を利用して本開示を実践できることを理解すべきである。以下の請求項が本開示の範囲を規定していることと、これら請求項の範囲内の方法と構造、ならびにその等価物がこれら請求項によってカバーされることが想定されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A-B】
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図8
図9A-B】
図9C-D】
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35A-F】
図36A
図36B
図37A-B】
図37C-D】
図38
図39
図40A-B】
図40C-D】
図41A-B】
【配列表】
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【国際調査報告】