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特表2023-510864グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有する三重活性体の持続型結合体の肺疾患の治療的使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有する三重活性体の持続型結合体の肺疾患の治療的使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20230308BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20230308BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230308BHJP
   C07K 14/575 20060101ALI20230308BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230308BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/381 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/426 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 38/46 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/185 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/775 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61K38/16
C07K16/00 ZNA
C07K19/00
C07K14/575
C07K14/605
A61P11/00
A61K47/68
A61P43/00 105
A61P31/04
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/22
A61P31/16
A61P31/18
A61K45/00
A61K31/136
A61K31/198
A61K31/137
A61K31/381
A61K31/426
A61K38/46
A61K31/185
A61K31/775
A61K31/495
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542765
(86)(22)【出願日】2020-11-20
(85)【翻訳文提出日】2022-07-12
(86)【国際出願番号】 KR2020016535
(87)【国際公開番号】W WO2021145552
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0004379
(32)【優先日】2020-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134344
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】イ ソン ミョン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン グク
(72)【発明者】
【氏名】イ サン ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】オ ウ リム
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョ サン
(72)【発明者】
【氏名】パク ウン ジン
(72)【発明者】
【氏名】イム チョン ユン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC15
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA19
4C084DC22
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA59
4C084ZB21
4C084ZB32
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZC55
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BB02
4C086BC50
4C086BC82
4C086FA02
4C086MA01
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4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB21
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC55
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206FA53
4C206JA06
4C206JA26
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA59
4C206ZB21
4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZC55
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA41
4H045BA56
4H045CA40
4H045DA30
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA22
4H045GA23
4H045GA25
(57)【要約】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有する三重活性体及び/又はその結合体の肺疾患に対する予防又は治療的使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺疾患の予防又は治療のための薬学的組成物であって、
薬学的に許容される賦形剤と、
配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドとを薬学的有効量で含む薬学的組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、下記化学式(1)で表される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【化1】
ここで、Xは配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列のペプチドであり、
Lはエチレングリコールの繰り返し単位を含有するリンカーであり、
Fは免疫グロブリンFc領域であり、
-はXとL間、LとF間の共有結合連結を示す。
【請求項3】
前記ペプチドは、そのC末端がアミド化されたものである、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記ペプチドは、配列番号21、22、42、43、50、64、66、67、70、71、76、77、96、97及び100からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記ペプチドは、配列番号21、22、42、43、50、77及び96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記ペプチド配列は、N末端から16番のアミノ酸と20番のアミノ酸は互いに環を形成する、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記L内のエチレングリコール繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にある、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記Fは、IgGFc領域である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記肺疾患は、間質性肺疾患(interstitial lung disease, ILD)、進行性線維化間質性肺疾患(progressive fibrosing Interstitial Lung Disease, PF-ILD)、特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias, IIP)、非特異性間質性肺炎(non-specific interstitial pneumonia, NSIP)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、間質性肺線維症(fibrosing interstitial lung diseases, FILD)、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)、肺胞炎(alveolitis)、肺炎(pneumonia)、肺気腫(emphysema)、気管支炎(bronchitis)、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、複合肺線維化と肺気腫(combined pulmonary fibrosis and emphysema, CPFE)、喘息(asthma)、又は呼吸器感染疾患である、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記呼吸器感染疾患は、呼吸器ウイルス、細菌、マイコプラズマ(mycoplasma)、又は真菌感染疾患である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記呼吸器ウイルスは、アデノウイルス(adenovirus)、ワクチニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ライノウイルス(rhinovirus)、水痘ウイルス(varicella Zoster Virus)、麻疹ウイルス(measle virus)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratorysyncytial virus)、デングウイルス(Dengue virus)、HIV(human immunodeficiency virus)、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(coronavirus)、重症急性呼吸器症候群ウイルス(severe acute respiratory syndrome associated virus; SARS-associated virus)、及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(middle east respiratory syndrome coronavirus; MERS-CoV)からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項10に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である、請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記薬学的組成物は、投与時に、(i)マクロファージ(macrophage)の活性阻害、又は(ii)IL-1β、IL-6、IL-12,又はTNF-αの発現を減少させる、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記薬学的組成物は、投与時に、下記特性中の一つ以上を有する、請求項1又は2に記載の薬学的組成物:
(i)筋線維芽細胞(myofibroblast)の分化阻害;
(ii)α-SMA, collagen1α1,又はフィブロネクチン(fibronectin)の発現減少;
(iii)肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell)の上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition, EMT)の阻害;及び
(iv) collagen1α1,又は collagen1α3の発現減少。
【請求項15】
前記薬学的組成物は、粘液溶解剤(mucolytic agents)又はその薬学的に許容可能な塩と追加で投与される、請求項1又は2に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記粘液溶解剤は、アンブロキソール(ambroxol)、N-アセチルシステイン(N-acetylcystein)、N-アセチリン(N-acetylin)、カルボシステイン(carbocysteine)、ドミオドール(domiodol)、フドステイン(fudosteine)、ブロムヘキシン(bromhexine)、エルドステイン(erdosteine)、レトステイン(letostine)、リゾチーム(lysozyme)、メスナ(mesna)、ソブレロール(sobrerol)、ステプロニン(stepronin)、チオプロニン(tiopronin)、チロキサポール(tyloxapol)、カルボシステイン(carbocisteine)、ドルナーゼアルファ(dornase alfa)、エプラジノン(eprazinone)、レトステイン(letosteine)、ネルテネキシン(neltenexine)、及びメチステイン(mecysteine)からなる群から選択される一つ以上である、請求項15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記ペプチドと粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩は、同時、順次、又は逆順で投与される、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記肺疾患は、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)による肺炎(肺炎症)又は肺線維症である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記領域Fは、2つのポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一方の末端が前記両ポリペプチド鎖の一つのポリペプチド鎖にのみ連結されている、請求項2に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の全てに対して活性を有する三重活性体及び/又はその結合体の肺疾患に対する予防又は治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
肺は、呼吸を主に担当する器官であり、有害物質、ウイルス、免疫異常などにより肺疾患が発病する。肺疾患は、肺機能の減少と呼吸困難などを引き起こすため、発病原因による適切な治療が求められる。
【0003】
肺に関連する疾患としては、間質性肺疾患、進行性線維化間質性肺疾患、特発性間質性肺炎、非特異性間質性肺炎、肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、肺胞炎、肺炎、肺気腫、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、複合肺線維化と肺気腫(CPFE)、喘息、そして呼吸器感染疾患(例えば、コロナウイルス感染症(COVID-19))が挙げられる。このような肺疾患は、互いに連関し、いくつかの症状が混在して現れるため、治療剤の選択に注意が必要であることが知られている。肺疾患の主要発病機序としては、肺損傷及び炎症反応、そして線維化が挙げられる。
【0004】
具体的には、肺においてウイルス、微生物、有害物質などによる炎症反応が起こると、肺胞のマクロファージによる炎症サイトカイン(例えば、IL-1、IL-6、TNF-α)の分泌、好中球の誘引、プロテアーゼの分泌などが進行し、肺組織を構成する線維を分解するプロテアーゼ(例えば、エラスターゼ)の分泌により肺組織の弾力性及び構造が損なわれ、肺の線維化につながることが知られている。肺の炎症と線維化は、多くの肺疾患の過程で先行するため、肺疾患の予防及び治療において根本的な機序と言える。
【0005】
肺線維症は、肺疾患の代表的な例であり、線維症(fibrosis)は、器官又は組織において過剰な線維質結合組織を形成する疾患である。線維症は、人体内の組織が様々なストレス(感染、化学的刺激、放射線など)による損傷を受けた後、創傷治癒(wound healing)の過程中に正常な制御が不可能な状態をいう。線維症は、肺、心臓、肝臓など、多様な臓器に発生し、まだ根本的な治療剤が開発されないため、未充足の需要が高い分野の一つである。
【0006】
原因不明の線維性間質性肺炎が慢性的に進行する、原因不明の肺線維症の一つである特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)は、肺胞上皮細胞の持続的な損傷による線維化が進行する疾病であり、ピルフェニドン(pirfenidone)とニンテダニブ(nintedanib)の薬物投与による治療方法が研究されてきたが、食欲減少、脱力感、消化器系副作用、肝毒性の可能性、光過敏性発疹などの副作用が知られている。
【0007】
また、肺疾患の他の代表的な例である慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease, COPD)は、タバコ、大気汚染又は毒性吸入物質により肺の非正常な炎症反応で気道が狭くなり、徐々に気道閉鎖が起きる疾患を意味し、大きく慢性気管支炎と肺気腫(emphysema)に分けられる。特に、喫煙が慢性閉塞性肺疾患の主要原因として知られている。喫煙は、肺組織内に強力な刺激物質として作用し、さまざまな感染症因子、成長因子、酸化物質及び化学走化性因子の生成を増加させ、炎症性信号伝達体系を活性化し、好中球及びマクロファージをはじめとした多くの炎症細胞の遊走を促進させて肺炎症をさらに悪化させ、これは、最終的に肺組織の非正常な変化、例えば、気道壁の肥厚、肺線維化を引き起こして肺機能を低下させる。したがって、慢性閉塞性肺疾患の予防及び治療のために肺炎症の改善が一つの治療方法として理解されている。
【0008】
肺疾患の他の代表的な例には、最近発病している新型コロナウイルス(2019-nCoV あるいは SARS-CoV-2)感染による肺損傷及びこれに伴う急性呼吸器疾患(COVID-19)がある。呼吸器を通じて伝播する新型コロナウイルスは、type II肺胞上皮細胞で主に発現するACE2、TMPRSS2を通じて細胞内に浸透するため、肺が主な脆弱性臓器(organ)として知られている。主な症状としては、発熱、咳などがあり、健康な成人は時間が経過すれば回復する可能性が高い。しかし、初期免疫力が低下して肺に該当ウイルス感染がひどかった場合には、肺損傷に伴う深刻な炎症反応を誘発し、線維化の進行が促進され、急性呼吸困難症候群(ARDS)及び肺血症などの症状を伴うことが知られている。現在、COVID-19の治療は、ウイルスの感染及び増殖を抑制させたり、肺炎症を調節する薬物が主に使用されている。これに対し、COVID-19の予防及び治療のために、肺炎症及び線維化の改善が一つの治療方法として理解されている。
【0009】
このように、肺炎症及び線維化は、肺疾患の発病及び発展の主要な原因となるため、肺炎症及び線維化の改善は、様々な肺疾患の治療機序として研究されてきている。
【0010】
一方、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)は、代表的な胃腸ホルモンであると共に、神経ホルモンとして食物摂取による血中の糖成分の調節に関与する物質である。グルカゴン(Glucagon)は、膵臓から分泌されるペプチドホルモンであり、前述した2つの物質と共に血中糖濃度の調節作用に関与する。GLP-1受容体、GIP受容体、及びグルカゴン受容体にそれぞれ又は同時に活性を示す薬物を用いた治療剤の開発が行われている(US 10,370,426, US 10,400,020)。
【0011】
現在まで、肺疾患に関する様々な研究が進められているが、実質的かつ効果的な治療剤の開発は不備な状態であるところ、持続的な治療剤の開発の必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第10370426号
【特許文献2】米国特許第10400020号
【特許文献3】国際公開第97/034631号
【特許文献4】国際公開第96/032478号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H.Neurath, R.L.Hill, The Proteins, Academic Press, New York, 1979
【非特許文献2】Proc Am Thorac Soc., 9(3):111-116 (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、又はそのようなペプチドの持続型結合体を含む肺疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、前記ペプチド又はそのようなペプチドの持続型結合体を含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、肺疾患の予防又は治療方法を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、肺疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における、前記ペプチド又はそのようなペプチドの持続型結合体を含む組成物の使用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一実施態様は、グルカゴン受容体、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体に対して活性を有するペプチドを含む、肺疾患の予防又は治療用薬学的組成物である。
【0018】
一具体例において、前記肺疾患の予防又は治療のための薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤と、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を有するペプチドとを薬学的有効量で含むことを特徴とする。
【0019】
前述した具体例のいずれかによる薬学的組成物において、前記ペプチドは、持続型結合体の形態であり、前記持続型結合体は、下記化学式(1)で表されることを特徴とする。
【0020】
X-L-F・・・(1)
【0021】
ここで、Xは配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列のペプチドであり、
Lはエチレングリコールの繰り返し単位を含有するリンカーであり、
Fは免疫グロブリンFc領域であり、
-はXとL間、LとF間の共有結合連結を示す。
【0022】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドは、そのC末端がアミド化されたものであることを特徴とする。
【0023】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドは、そのC末端がアミド化しているか、又は遊離カルボキシル基(-COOH)を有することを特徴とする。
【0024】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドは、配列番号21、22、42、43、50、64、66、67、70、71、76、77、96、97及び100からなる群から選択されるアミノ酸を含むことを特徴とする。
【0025】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドは、配列番号21、22、42、43、50、77及び96からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことを特徴とする。
【0026】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、ペプチド配列は、N末端から16番のアミノ酸と20番のアミノ酸が互いに環を形成することを特徴とする。
【0027】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記L内のエチレングリコールの繰り返し単位部分の化学式量は、1~100kDaの範囲にあることを特徴とする。
【0028】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記FはIgG Fc領域であることを特徴とする。
【0029】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記肺疾患は、間質性肺疾患(interstitial lung disease, ILD)、進行性線維化間質性肺疾患(progressive fibrosing Interstitial Lung Disease, PF-ILD)、特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias, IIP)、非特異性間質性肺炎(non-specific interstitial pneumonia, NSIP)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、間質性肺線維症(fibrosing interstitial lung diseases, FILD)、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)、肺胞炎(alveolitis)、肺炎(pneumonia)、肺気腫(emphysema)、気管支炎(bronchitis)、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、複合肺線維化と肺気腫(combined pulmonary fibrosis and emphysema, CPFE)、喘息(asthma)、又は呼吸器感染疾患であることを特徴とする。
【0030】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記呼吸器感染疾患は、呼吸器ウイルス、細菌、マイコプラズマ(mycoplasma)、又は真菌感染疾患であることを特徴とする。
【0031】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記呼吸器ウイルスは、アデノウイルス(adenovirus)、ワクチニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ライノウイルス(rhinovirus)、水痘ウイルス(varicella Zoster Virus)、麻疹ウイルス(measle virus)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratorysyncytial virus)、デングウイルス(Dengue virus)、HIV(human immunodeficiency virus)、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(coronavirus)、重症急性呼吸器症候群ウイルス(severe acute respiratory syndrome associated virus; SARS-associated virus)、及び中東呼吸器症候群コロナウイルス(middle east respiratory syndrome coronavirus; MERS-CoV)からなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする。
【0032】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2であることを特徴とする。
【0033】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記薬学的組成物は、投与時に(i)マクロファージ(macrophage)の活性阻害、及び/又は(ii)IL-1β、IL-6、IL-12,又はTNF-αの発現を減少させることを特徴とする。
【0034】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記薬学的組成物は、投与時に下記特性中の1つ以上を有することを特徴とする。:
【0035】
(i)筋線維芽細胞(myofibroblast)の分化阻害;
(ii)α-SMA, collagen1α1又はfibronectinの発現減少;又は
(iii)肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell)の上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition, EMT)の阻害;及び
(iv)collagen1α1又はcollagen1α3の発現減少
【0036】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記薬学的組成物は、粘液溶解剤(mucolytic agents)又はその薬学的に許容可能な塩が追加で投与されることを特徴とする。
【0037】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記粘液溶解剤は、アンブロキソール(ambroxol)、N-アセチルシステイン(N-acetylcystein)、N-アセチリン(N-acetylin)、カルボシステイン(carbocysteine)、ドミオドール(domiodol)、フドステイン(fudosteine)、ブロムヘキシン(bromhexine)、エルドステイン(erdosteine)、レトステイン(letostine)、リゾチーム(lysozyme)、メスナ(mesna)、ソブレロール(sobrerol)、ステプロニン(stepronin)、チオプロニン(tiopronin)、チロキサポール(tyloxapol)、カルボシステイン(carbocisteine)、ドルナーゼアルファ(dornase alfa)、エプラジノン(eprazinone)、レトステイン(letosteine)、ネルテネキシン(neltenexine)、及びメチステイン(mecysteine)からなる群から選択される一つ以上であることを特徴とする。
【0038】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記ペプチドと粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩は、同時、順次、又は逆順で投与されることを特徴とする。
【0039】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記肺疾患は、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)による肺炎症及び線維症であることを特徴とすることができる。
【0040】
前述した具体例のいずれかによる組成物において、前記領域Fは、2つのポリペプチド鎖からなる二量体であり、Lの一方の末端が前記両ポリペプチド鎖の一つのポリペプチド鎖にのみ連結されていることを特徴とする。
【0041】
本発明の他の実施態様は、前記ペプチド又はそれを含む組成物を、それを必要とする個体に投与するステップを含む、肺疾患の予防又は治療方法である。
【0042】
本発明のさらに他の実施態様は、肺疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における前記ペプチド又はそれを含む組成物の使用である。
【0043】
本発明のさらに他の実施態様は、肺疾患の予防又は治療のための前記ペプチド又はそれを含む組成物の使用である。
【発明の効果】
【0044】
本発明による三重活性体又はその持続型結合体は、グルカゴン受容体、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体、及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体に対して活性を有し、肺疾患に対する予防又は治療効果を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】三重活性体持続型結合体の処理による肺組織内炎症性サイトカイン発現レベルの変化をin vivoで確認した図である。
図2】三重活性体持続型結合体の処理による肺気腫改善効果をin vivoで確認した図である。
図3】三重活性体持続型結合体の処理による肺線維芽細胞(lung fibroblast, MRC5 cell)における筋線維芽細胞(myofibroblast)分化マーカー(α-SMA, collagen1α1, fibronectin)発現レベルの変化を確認した図である。
図4】三重活性体持続型結合体の処理による肺胞上皮細胞(lung alveolar epithelial cell, A549 cell)における上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition, EMT)マーカー(collagen1α1, collagen1α3)の発現レベルの変化を確認した図である。
図5】三重活性持続型結合体の処理によるBLMマウスの肺組織線維化の改善効果をin vivoで確認した図である。
図6】三重活性体持続型結合体の処理によるBLMマウスの生存率変化を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0047】
なお、本願で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本願で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0048】
本明細書全体を通して、天然に存在するアミノ酸に対する通常の1文字及び3文字コードが用いられるだけでなく、Aib(2-アミノイソブチル酸、2-aminoisobutyric acid)、Sar(N-methylglycine)、α-メチルグルタミン酸(α-methyl-glutamic acid)などの他のアミノ酸に対して一般に許容される3文字コードが用いられる。また、本明細書において略語で言及したアミノ酸は、IUPAC-IUB命名法に従って記載したものである。
アラニン Ala,A
アルギニン Arg,R
アスパラギン Asn,N
アスパラギン酸 Asp,D
システイン Cys,C
グルタミン酸 Glu,E
グルタミン Gln,Q
グリシン Gly,G
ヒスチジン His,H
イソロイシン Ile,I
ロイシン Leu,L
リシン Lys,K
メチオニン Met,M
フェニルアラニン Phe,F
プロリン Pro,P
セリン Ser,S
トレオニン Thr,T
トリプトファン Trp,W
チロシン Tyr,Y
バリン Val,V
【0049】
本発明の一実施態様は、グルカゴン受容体、GLP-1(Glucagon-like peptide-1)受容体及びGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)受容体に対して活性を有するペプチドを含む、肺疾患の予防又は治療用薬学的組成物である。
【0050】
一実施形態では、前記ペプチドは、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むことができる。
【0051】
他の実施形態では、前記肺疾患の予防又は治療のための薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤と、配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドとを薬学的有効量で含む薬学的組成物であってもよい。
【0052】
前記「グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド」は、本発明において「三重活性体」という名称でも混用される。
【0053】
このようなペプチドには、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体に対して有意なレベルの活性を有する様々な物質、例えば様々なペプチドが含まれる。
【0054】
前記グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体に対して有意なレベルの活性を有する三重活性体は、グルカゴン、GLP-1及びGIP受容体のうち1つ又はそれ以上の受容体、具体的には2つ又はそれ以上の受容体、より具体的には3つの受容体の全てに対するin vitro活性が、当該受容体の天然リガンド(天然グルカゴン、天然GLP-1及び天然GIP)に比べて、約0.001%以上、約0.01%以上、約0.1%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上であるが、有意に増加する範囲であれば特にこれらに限定されるものではない。
【0055】
ここで、受容体に対する活性は、天然のものに比べて、受容体に対するin vitro活性が0.1%以上、1%以上、2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%以上、約200%以上である例が挙げられる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0056】
本発明における「約」とは、±0.5、±0.4、±0.3、±0.2、±0.1などが全て含まれる範囲であり、約という用語の後に続く数値と同等又は同程度の範囲の数値が全て含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
このような三重活性体のin vitro活性を測定する方法を本願明細書の実験例1に示すが、特にこれに限定されるものではない。
【0058】
一方、前記ペプチドは、次のi)~iii)の1つ以上、2つ以上、特に3つの活性を有すること、具体的には有意な活性を有することを特徴とする。
i)GLP-1受容体の活性化
ii)グルカゴン受容体の活性化
iii)GIP受容体の活性化
【0059】
ここで、受容体を活性化するとは、天然のものに比べて、受容体に対するin vitro活性を約0.1%以上、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約6%以上、約7%以上、約8%以上、約9%以上、約10%以上、約20%以上、約30%以上、約40%以上、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約100%以上にすることを意味する。しかし、これらに限定されるものではない。
【0060】
また、前記ペプチドは、天然GLP-1、天然グルカゴン及び天然GIPのいずれかに比べて、体内半減期が延長されたものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0061】
このような前記ペプチドは、非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0062】
前記ペプチドは、天然グルカゴンのアナログであってもよいが、特にこれに限定されるものではない。具体的には、前記天然グルカゴンのアナログには、天然グルカゴンと比較してアミノ酸配列に少なくとも1つの差異のあるペプチド、天然グルカゴン配列を修飾(modification)することにより改変されたペプチド、天然グルカゴンの模倣体が含まれる。
【0063】
一方、天然グルカゴンは、次のアミノ酸配列を有するが、特にこれに限定されるものではない。
His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr(配列番号118)
【0064】
具体的には、前記ペプチドは、天然グルカゴン配列において少なくとも1つのアミノ酸の置換(substitution)、付加(addition)、除去(deletion)、修飾(modification)及びそれらの組み合わせからなる群から選択される改変が行われた天然グルカゴンのアナログであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0065】
また、前記アミノ酸の置換には、アミノ酸への置換や、非天然化合物への置換が全て含まれる。
【0066】
さらに、付加は、ペプチドのN末端及び/又はC末端において行われてもよい。なお、付加されるアミノ酸は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11以上のアミノ酸が付加されてもよいが、特にこれらに限定されるものではなく、広義にはポリペプチドの付加が含まれるが、特にこれに限定されるものではない。
【0067】
より具体的には、前記ペプチドは、天然グルカゴンのアミノ酸配列において、1番、2番、3番、7番、10番、12番、13番、14番、15番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、27番、28番及び29番からなる群から選択される、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上又は20個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものであってもよく、また、独立して又は追加でそのC末端に1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上のアミノ酸が付加されたものであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0068】
より具体的には、前記ペプチドは、天然グルカゴンのアミノ酸配列において、1番、2番、3番、10番、12番、13番、14番、15番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、27番、28番及び29番からなる群から選択される、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものであってもよく、また、独立して又は追加でそのC末端に1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上又は11個以上のアミノ酸が付加されたものであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0069】
より具体的には、前記ペプチドは、天然グルカゴンのアミノ酸配列において、1番、2番、3番、10番、13番、14番、15番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、28番及び29番からなる群から選択される、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものであってもよく、また、独立して又は追加でそのC末端に1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上又は11個以上のアミノ酸が付加されたものであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0070】
より具体的には、前記ペプチドは、天然グルカゴンのアミノ酸配列において、1番、2番、13番、16番、17番、18番、19番、20番、21番、23番、24番、27番、28番及び29番からなる群から選択される、1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上又は14個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものであってもよく、また、独立して又は追加でそのC末端に1個以上、2個以上、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上のアミノ酸が付加されたものであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0071】
前述したように導入されるアミノ酸は、チロシン、α-メチルグルタミン酸、Aib、メチオニン、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、ロイシン、イソロイシン、グルタミン、バリン、グリシン、アラニン、システイン、セリン、アラニン、アスパラギン酸及びアルギニンからなる群から選択されてもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0072】
例えば、前述したように付加されるアミノ酸配列は、天然GLP-1、天然GIP又は天然エキセンジン-4のアミノ酸配列に由来する1つ以上のアミノ酸配列であってもよい。
【0073】
このようなペプチドは、分子内架橋(intramolecular bridge)を含んでもよく(例えば、共有結合的架橋又は非共有結合的架橋)、具体的には環を含む形態であってもよい。例えば、ペプチドの16番目のアミノ酸と20番目のアミノ酸間に環が形成された形態であってもよいが、特にこれに限定されるものではない。
【0074】
前記環の例として、ラクタム架橋(又はラクタム環)が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0075】
また、前記ペプチドには、目的とする位置に環を形成するアミノ酸を含むことにより環を含むように改変されたものが全て含まれる。
【0076】
例えば、ペプチドの16番目と20番目のアミノ酸対がそれぞれ環を形成するグルタミン酸又はリシンに置換されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0077】
このような環は、前記ペプチド内のアミノ酸側鎖間に形成され、例えばリシンの側鎖とグルタミン酸の側鎖間にラクタム環が形成される形態であってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0078】
前記方法の組み合わせにより作製されるペプチドの例として、天然グルカゴンとアミノ酸配列が少なくとも1つ異なり、N末端のアミノ酸残基のα炭素が除去された、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、アナログ作製のための様々な方法の組み合わせにより、本発明に用いられるペプチドを作製することができる。
【0079】
また、本発明のペプチドは、活性体分解酵素の認識作用を回避して体内半減期を延長させるために、一部のアミノ酸を他のアミノ酸又は非天然化合物に置換するが、特にこれらに限定されるものではない。
【0080】
具体的には、前記ペプチドのアミノ酸配列のうち2番目のアミノ酸配列の置換により、分解酵素の認識作用を回避して体内半減期を延長させたペプチドであってもよいが、体内の分解酵素の認識作用を回避するためのアミノ酸の置換又は変更であればいかなるものでもよい。
【0081】
また、ペプチドの作製のためのこのような改変には、L型もしくはD型アミノ酸及び/又は非天然アミノ酸を用いた改変、並びに/又は天然配列の修飾、例えば側鎖官能基の改変、分子内の共有結合、一例として側鎖間の環形成、メチル化、アシル化、ユビキチン化、リン酸化、アミノヘキサン化、ビオチン化などの修飾による改変が全て含まれる。
【0082】
さらに、天然グルカゴンのN及び/又はC末端に少なくとも1つのアミノ酸が付加されたものが全て含まれる。
【0083】
前記置換されるか、付加されるアミノ酸としては、ヒトタンパク質において通常観察される20種のアミノ酸だけでなく、異常又は非自然発生アミノ酸を用いることができる。異常アミノ酸の市販元には、Sigma-Aldrich、ChemPep、Genzyme pharmaceuticalsが含まれる。これらのアミノ酸が含まれるペプチドと定型的なペプチド配列は、民間のペプチド合成会社、例えば米国のAmerican peptide companyやBachem、又は韓国のAnygenにおいて合成及び購入することができる。
【0084】
アミノ酸誘導体も同じ方式で入手することができ、一例として4-イミダゾ酢酸(4-imidazoacetic acid)などが挙げられる。
【0085】
また、本発明によるペプチドは、生体内のタンパク質切断酵素から保護して安定性を向上させるために、そのN末端及び/又はC末端などが化学的に修飾された形態、有機基により保護された形態、又はペプチド末端などにアミノ酸が付加されて改変された形態であってもよい。
【0086】
特に、化学的に合成したペプチドの場合、N及びC末端が電荷を帯びているので、その電荷を除去するために、N末端のアセチル化(acetylation)及び/又はC末端のアミド化(amidation)を行ってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0087】
また、本発明によるペプチドには、ペプチド自体、その塩(例えば、前記ペプチドの薬学的に許容される塩)又はその溶媒和物の形態が全て含まれる。さらに、ペプチドは、薬学的に許容されるものであれば、いかなる形態であってもよい。
【0088】
前記塩の種類は、特に限定されるものではない。もっとも、個体、例えば哺乳類に安全かつ効果的な形態であることが好ましいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0089】
前記「薬学的に許容される」とは、医薬学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などを誘発することなく所望の用途に効果的に使用できる物質を意味する。
【0090】
本発明における「薬学的に許容される塩」には、薬学的に許容される無機酸、有機酸又は塩基から誘導された塩が含まれる。好適な酸の例としては、塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。好適な塩基から誘導された塩には、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アンモニウムなどが含まれる。
【0091】
また、本発明における「溶媒和物」とは、本発明によるペプチド又はその塩が溶媒分子と複合体を形成したものを意味する。
【0092】
一つの具体例において、前記ペプチドは、下記一般式1で表されるアミノ酸配列を含むことができる。
【0093】
Xaa1-Xaa2-Xaa3-Gly-Thr-Phe-Xaa7-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Xaa12-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Xaa27-Xaa28-Xaa29-Xaa30-R1(一般式1,配列番号103)
【0094】
一般式1において、Xaa1はヒスチジン、4-イミダゾアセチル又はチロシンであり、Xaa2はグリシン、α-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa3はグルタミン酸又はグルタミンであり、Xaa7はトレオニン又はイソロイシンであり、Xaa10はロイシン、チロシン、リシン、システイン又はバリンであり、Xaa12はリシン、セリン又はイソロイシンであり、Xaa13はグルタミン、チロシン、アラニン又はシステインであり、Xaa14はロイシン、メチオニン又はチロシンであり、Xaa15はシステイン、アスパラギン酸、グルタミン酸又はロイシンであり、Xaa16はグリシン、グルタミン酸又はセリンであり、Xaa17はグルタミン、アルギニン、イソロイシン、グルタミン酸、システイン又はリシンであり、Xaa18はアラニン、グルタミン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xaa19はアラニン、グルタミン、システイン又はバリンであり、Xaa20はリシン、グルタミン又はアルギニンであり、Xaa21はグルタミン酸、グルタミン、ロイシン、システイン又はアスパラギン酸であり、Xaa23はイソロイシン又はバリンであり、Xaa24はアラニン、グルタミン、システイン、アスパラギン、アスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Xaa27はバリン、ロイシン又はリシンであり、Xaa28はシステイン、リシン、アラニン、アスパラギン又はアスパラギン酸であり、Xaa29はシステイン、グリシン、グルタミン、トレオニン、グルタミン酸又はヒスチジンであり、Xaa30はシステイン、グリシン、リシンもしくはヒスチジンであるか、又は存在せず、R1はシステイン、GKKNDWKHNIT(配列番号106)、m-SSGAPPPS-n(配列番号107)もしくはm-SSGQPPPS-n(配列番号108)であるか、又は存在せず、ここで、mは-Cys-、-Pro-又は-Gly-Pro-であり、nは-Cys-、-Gly-、-Ser-もしくは-His-Gly-であるか、又は存在しない。
【0095】
前記三重活性体の例として、配列番号1~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むもの、配列番号1~11、13~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むもの、配列番号1~11、13~102からなる群から選択されるアミノ酸配列(必須)からなるものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
もう一つの具体例において、前記三重活性体は、配列番号21、22、42、43、50、64、66、67、70、71、76、77、96、97及び100からなる群から選択されるアミノ酸配列 で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0097】
もう一つの具体例において、前記三重活性体は、配列番号21、22、42、43、50、66、67、77、96、97及び100からなる群から選択されるアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0098】
もう一つの具体例において、前記三重活性体は、配列番号21、22、42、43、50、77及び96からなる群から選択されるアミノ酸配列で(必須で)構成されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0099】
また、本発明に特定配列番号で「構成される」ペプチドと記載されていても、当該配列番号のアミノ酸配列からなるペプチドと同一又は相当する活性を有するものであれば、当該配列番号のアミノ酸配列の前後の無意味な配列付加、自然発生する突然変異、又はその非表現突然変異(silent mutation)を除外するものではなく、このような配列付加又は突然変異を有するものも本発明に含まれることは言うまでもない。
【0100】
以上の内容は、本発明の他の具体例又は他の態様にも適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
具体的には、一般式1において、Xaa14はロイシン又はメチオニンであり、Xaa15はシステイン、アスパラギン酸又はロイシンである。
【0102】
このようなペプチドの例として、配列番号1~11、14~17及び21~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、当該アミノ酸配列(必須)からなるペプチドが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0103】
このようなペプチドは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体の少なくとも1つを有意に活性化させることができるが、特にこれらに限定されるものではない。具体的には、GLP-1を有意に活性化させるものであるか、さらにグルカゴン受容体及び/又はGIP受容体を有意に活性化させるものであるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0104】
より具体的には、一般式1において、Xaa2はグリシン、α-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa7はトレオニンであり、Xaa10はチロシン、システイン又はバリンであり、Xaa12はリシン又はイソロイシンであり、Xaa13はチロシン、アラニン、グルタミン又はシステインであり、Xaa14はロイシン、システイン又はメチオニンであり、Xaa15はシステイン、ロイシン、グルタミン酸又はアスパラギン酸であり、Xaa17はグルタミン、アルギニン、イソロイシン、システイン、グルタミン酸又はリシンであり、Xaa18はアラニン、グルタミン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xaa19はアラニン、グルタミン、バリン又はシステインであり、Xaa20はリシン、アルギニン又はグルタミンであり、Xaa21はグルタミン酸、グルタミン、ロイシン、システイン又はアスパラギン酸であり、Xaa23はイソロイシン又はバリンであり、Xaa24はシステイン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸又はアスパラギン酸であり、Xaa27はロイシン又はリシンであるペプチドであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0105】
より具体的には、一般式1において、Xaa2はグリシン、α-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa7はトレオニンであり、Xaa10はチロシン、システイン又はバリンであり、Xaa12はリシン又はイソロイシンであり、Xaa13はチロシン、アラニン又はシステインであり、Xaa14はロイシン又はメチオニンであり、Xaa15はシステイン又はアスパラギン酸であり、Xaa17はグルタミン、アルギニン、イソロイシン、システイン又はリシンであり、Xaa18はアラニン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xaa19はアラニン、グルタミン又はシステインであり、Xaa20はリシン又はグルタミンであり、Xaa21はグルタミン酸、システイン又はアスパラギン酸であり、Xaa23はバリンであり、Xaa24はアラニン、グルタミン、システイン、アスパラギン又はアスパラギン酸であり、Xaa27はロイシン又はリシンであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0106】
より具体的には、一般式1において、Xaa2はα-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa7はトレオニンであり、Xaa10はチロシン又はシステインであり、Xaa12はリシン又はイソロイシンであり、Xaa13はチロシン、アラニン又はシステインであり、Xaa14はロイシン又はメチオニンであり、Xaa15はシステイン又はアスパラギン酸であり、Xaa16はグルタミン酸であり、Xaa17はアルギニン、イソロイシン、システイン又はリシンであり、Xaa18はアラニン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xaa19はアラニン、グルタミン又はシステインであり、Xaa20はリシン又はグルタミンであり、Xaa21はグルタミン酸又はアスパラギン酸であり、Xaa23はバリンであり、Xaa24はグルタミン、アスパラギン又はアスパラギン酸であり、Xaa27はロイシンであり、Xaa28はシステイン、アラニン、アスパラギン又はアスパラギン酸であってもよい。
【0107】
具体的には、一般式1において、Xaa1はヒスチジン又は4-イミダゾアセチルであり、Xaa2はα-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa3はグルタミンであり、Xaa7はトレオニンであり、Xaa10はチロシンであり、Xaa12はイソロイシンであり、Xaa13はアラニン又はシステインであり、Xaa14はメチオニンであり、Xaa15はアスパラギン酸であり、Xaa16はグルタミン酸であり、Xaa17はイソロイシン又はリシンであり、Xaa18はアラニン又はヒスチジンであり、Xaa19はグルタミン又はシステインであり、Xaa20はリシンであり、Xaa21はアスパラギン酸であり、Xaa23はバリンであり、Xaa24はアスパラギンであり、Xaa27はロイシンであり、Xaa28はアラニン又はアスパラギンであり、Xaa29はグルタミン又はトレオニンであり、Xaa30はシステインもしくはリシンであるか、又は存在しなくてもよい。
【0108】
より具体的には、一般式1において、Xaa2はグリシン、α-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa3はグルタミンであり、Xaa7はトレオニンであり、Xaa10はチロシン、システイン又はバリンであり、Xaa12はリシンであり、Xaa13はチロシンであり、Xaa14はロイシンであり、Xaa15はアスパラギン酸であり、Xaa16はグリシン、グルタミン酸又はセリンであり、Xaa17はグルタミン、アルギニン、システイン又はリシンであり、Xaa18はアラニン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xaa19はアラニン又はグルタミンであり、Xaa20はリシン又はグルタミンであり、Xaa21はグルタミン酸、システイン又はアスパラギン酸であり、Xaa23はバリンであり、Xaa24はアラニン、グルタミン又はシステインであり、Xaa27はロイシン又はリシンであり、Xaa29はグリシン、グルタミン、トレオニン又はヒスチジンであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0109】
このようなペプチドは、GLP-1受容体及びグルカゴン受容体の活性化の程度が有意に高く、GIP受容体の活性化の程度に比べて高いか、GLP-1受容体、グルカゴン受容体及びGIP受容体の活性化の程度が全て有意に高いか、GLP-1受容体及びGIP受容体の活性化の程度が有意に高く、グルカゴン受容体の活性化の程度に比べて高いものであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0110】
このようなペプチドの例として、配列番号8、9、21~37、39、42、43、49~61、64~83、85、86、88、89、91~93、95~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、当該アミノ酸配列(必須)からなるペプチドが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0111】
具体的な態様として、前記ペプチドは、一般式2で表されるアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0112】
Xaa1-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Xaa10-Ser-Lys-Xaa13-Xaa14-Xaa15-Xaa16-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Xaa20-Xaa21-Phe-Xaa23-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-Xaa40(一般式2,配列番号104)
【0113】
前記式において、Xaa1は4-イミダゾアセチル、ヒスチジン又はチロシンであり、Xaa2はグリシン、α-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa10はチロシン又はシステインであり、Xaa13はアラニン、グルタミン、チロシン又はシステインであり、Xaa14はロイシン、メチオニン又はチロシンであり、Xaa15はアスパラギン酸、グルタミン酸又はロイシンであり、Xaa16はグリシン、グルタミン酸又はセリンであり、Xaa17はグルタミン、アルギニン、イソロイシン、グルタミン酸、システイン又はリシンであり、Xaa18はアラニン、グルタミン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xaa19はアラニン、グルタミン、システイン又はバリンであり、Xaa20はリシン、グルタミン又はアルギニンであり、Xaa21はシステイン、グルタミン酸、グルタミン、ロイシン又はアスパラギン酸であり、Xaa23はイソロイシン又はバリンであり、Xaa24はシステイン、アラニン、グルタミン、アスパラギン又はグルタミン酸であり、Xaa28はリシン、システイン、アスパラギン又はアスパラギン酸であり、Xaa29はグリシン、グルタミン、システイン又はヒスチジンであり、Xaa30はシステイン、グリシン、リシン又はヒスチジンであり、Xaa31はプロリン又はシステインであり、Xaa40はシステインであるか、又は存在しない。
【0114】
より具体的には、一般式2において、Xaa13はアラニン、チロシン又はシステインであり、Xaa15はアスパラギン酸又はグルタミン酸であり、Xaa17はグルタミン、アルギニン、システイン又はリシンであり、Xaa18はアラニン、アルギニン又はヒスチジンであり、Xaa21はシステイン、グルタミン酸、グルタミン又はアスパラギン酸であり、Xaa23はイソロイシン又はバリンであり、Xaa24はシステイン、グルタミン又はアスパラギンであり、Xaa28はシステイン、アスパラギン又はアスパラギン酸であり、Xaa29はグルタミン、システイン又はヒスチジンであり、Xaa30はシステイン、リシン又はヒスチジンであってもよい。
【0115】
このようなペプチドの例として、配列番号21、22、42、43、50、64~77及び95~102からなる群から選択されるアミノ酸配列、より具体的には配列番号21、22、42、43、50、64~77及び96~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、当該アミノ酸配列(必須)からなるペプチドが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0116】
具体的な態様として、前記ペプチドは、一般式3のアミノ酸配列を含むものであってもよい。
【0117】
Xaa1-Xaa2-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Xaa13-Leu-Asp-Glu-Xaa17-Xaa18-Xaa19-Lys-Xaa21-Phe-Val-Xaa24-Trp-Leu-Leu-Xaa28-Xaa29-Xaa30-Xaa31-Ser-Ser-Gly-Gln-Pro-Pro-Pro-Ser-Xaa40(一般式3,配列番号105)
【0118】
一般式3において、Xaa1はヒスチジン又はチロシンであり、Xaa2はα-メチルグルタミン酸又はAibであり、Xaa13はアラニン、チロシン又はシステインであり、Xaa17はアルギニン、システイン又はリシンであり、Xaa18はアラニン又はアルギニンであり、Xaa19はアラニン又はシステインであり、Xaa21はグルタミン酸又はアスパラギン酸であり、Xaa24はグルタミン又はアスパラギンであり、Xaa28はシステイン又はアスパラギン酸であり、Xaa29はシステイン、ヒスチジン又はグルタミンであり、Xaa30はシステイン又はヒスチジンであり、Xaa31はプロリン又はシステインであり、Xaa40はシステインであるか、又は存在しなくてもよい。
【0119】
このようなペプチドの例として、配列番号21、22、42、43、50、64~71、75~77及び96~102からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むペプチド、当該アミノ酸配列(必須)からなるペプチドが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0120】
また、一般式1において、R1はシステイン、GKKNDWKHNIT(配列番号106)、CSSGQPPPS(配列番号109)、GPSSGAPPPS(配列番号110)、GPSSGAPPPSC(配列番号111)、PSSGAPPPS(配列番号112)、PSSGAPPPSG(配列番号113)、PSSGAPPPSHG(配列番号114)、PSSGAPPPSS(配列番号115)、PSSGQPPPS(配列番号116)又はPSSGQPPPSC(配列番号117)であるか、又は存在しないが、特にこれらに限定されるものではない。
【0121】
また、本発明のペプチドは、その長さに応じてこの分野で周知の方法、例えば自動ペプチド合成機により合成することができ、遺伝子操作技術により生産することができる。
【0122】
具体的には、本発明のペプチドは、標準合成方法、組換え発現システム又は任意の他の当該分野の方法により作製することができる。よって、本発明によるペプチドは、例えば(a)ペプチドを固相もしくは液相法で段階的に又はフラグメント組立により合成し、最終ペプチド生成物を分離及び精製する方法、(b)ペプチドをコードする核酸作製物を宿主細胞内で発現させ、発現生成物を宿主細胞培養物から回収する方法、(c)ペプチドをコードする核酸作製物を無細胞試験管内で発現させ、発現生成物を回収する方法、又は(a)、(b)及び(c)の任意の組み合わせによりペプチドのフラグメントを得て、次にフラグメントを連結してペプチドを得ることにより当該ペプチドを回収する方法が含まれる多くの方法で合成することができる。
【0123】
また、前記グルカゴン受容体、GLP-1受容体、及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドは、グルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチドに、その生体内半減期を延長させるための生体適合性物質が結合された持続型結合体の形態であってもよい。本発明における前記生体適合性物質は、キャリアと混用される。
【0124】
本発明における前記ペプチドの結合体は、キャリアが結合されていない前記ペプチドより効力の持続性が向上したものであり、本発明においては、このような結合体を「持続型結合体」という。
【0125】
なお、このような結合体は、非自然発生の(non-naturally occurring)ものであってもよい。
【0126】
本発明の一つの具体例において、前記持続型結合体は、化学式(1)で表されるものであるが、これに限定されるものではない。
【0127】
X-L-F・・・(1)
【0128】
ここで、Xは配列番号1~102のいずれかのアミノ酸配列を含むペプチドであり、Lはエチレングリコールの繰り返し単位を含有するリンカーであり、Fは免疫グロブリンFcフラグメント又はその誘導体であり、-はXとL間、LとF間の共有結合連結を示す。
【0129】
前記結合体において、FはX、すなわちグルカゴン受容体、GLP-1受容体及びGIP受容体に対して活性を有するペプチド、具体的には配列番号1~102のアミノ酸配列のいずれかの配列を含むペプチドの半減期を延長させることのできる物質であり、本発明の前記結合体の一部をなす一構成である。
【0130】
前記Fは、Xに共有化学結合又は非共有化学結合により互いに結合されたものであってもよく、共有化学結合、非共有化学結合、又はそれらの組み合わせとしてLを介して、FとXが互いに結合されたものであってもよい。
【0131】
具体的には、前記Lは非ペプチド性リンカー、例えば、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーであってもよい。
【0132】
本発明において「非ペプチド性リンカー」は、繰り返し単位が2個以上結合した生体適合性重合体を含む。前記繰り返し単位は、ペプチド結合ではなく任意の共有結合を通じて互いに連結される。前記非ペプチド性リンカーは、本発明の結合体の一部をなす一構成であってもよく、前記化学式(1)においてLに該当する。
【0133】
本発明で用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のある重合体であれば、制限なく用いられてもよい。本発明において前記非ペプチド性リンカーは、非ペプチド性重合体と混用され得る。
【0134】
特にこれに制限されないが、前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカー、例えば、ポリエチレングリコールであってもよく、また、当該分野において既に知られているこれらの誘導体及び当該分野の技術レベルで容易に製造できる誘導体も本発明の範囲に含まれる。
【0135】
前記非ペプチド性リンカーの繰り返し単位は、エチレングリコール繰り返し単位であってもよく、具体的には、前記非ペプチド性リンカーは、エチレングリコール繰り返し単位を含みながら、結合体の製造に用いられる作用基を末端に含んでもよい。本発明による持続型結合体は前記作用基を通じてXとFが連結された形態であってもよいが、これに制限されない。本発明において、前記非ペプチド性リンカーは2個、又は3個以上の作用基を含んでもよく、各作用基は同一又は互いに異なってもよいが、これに制限されない。
【0136】
具体的には、前記リンカーは下記化学式(2)で表されるポリエチレングリコール(PEG)であってもよいが、これに制限されるものではない:
【0137】
・・・ (2)
【0138】
ここで、n=10~2400、n=10~480、又はn=50~250であるが、これに制限されない。
【0139】
前記持続型結合体でPEGの一部は、-(CH2CH2O)n-構造だけでなく、連結要素と、この-(CH2CH2O)n-の間に介在する酸素原子も含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0140】
また、一つの具体的な実施形態において前記結合体は一般式1のアミノ酸配列を含むペプチド(X)と免疫グロブリンFc領域(F)がエチレングリコール繰り返し単位を含有するリンカーを通じて共有結合で連結された構造であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0141】
前記ポリエチレングリコールは、エチレングリコール同種重合体、PEG共重合体、又はモノメチル置換されたPEG重合体(mPEG)の形態をいずれも包括する用語であるが、特にこれに制限されるものではない。
【0142】
本発明で用いられる非ペプチド性リンカーは、生体内タンパク質分解酵素に抵抗性のあるエチレングリコール繰り返し単位を含む重合体であれば制限なく用いられる。前記非ペプチド性重合体の分子量は0超約100kDaの範囲、約1~約100kDaの範囲、具体的に約1~約20kDaの範囲、又は約1~約10kDaの範囲であるが、これに制限されない。また、前記Fに該当するポリペプチドと結合する本発明の非ペプチド性リンカーは、一種の重合体だけでなく相違する種類の重合体の組合わせが用いられてもよい。
【0143】
一つの具体的な実施形態において前記非ペプチド性リンカーの両末端は、それぞれF、例えば、免疫グロブリンFc領域のアミン基又はチオール基及びXのアミン基又はチオール基に結合できる。
【0144】
具体的には、前記非ペプチド性重合体は、両末端にそれぞれF(例えば、免疫グロブリンFc領域)及びXと結合され得る反応基、具体的には、X,あるいはF(例えば、免疫グロブリンFc領域)のN末端又はリシンに位置したアミン基、又はシステインのチオール基と結合され得る反応基を含んでもよいが、これに制限されない。
【0145】
また、F,例えば、免疫グロブリンFc領域及びXと結合され得る、前記非ペプチド性重合体の反応基はアルデヒド基、マレイミド基及びスクシンイミド誘導体で構成された群から選択されてもよいが、これに制限されない。
【0146】
前記において、アルデヒド基としてプロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基を例として挙げることができるが、これに制限されない。
【0147】
前記において、スクシンイミド誘導体としては、スクシンイミジル吉草酸 、スクシンイミジルメチルブタン酸、スクシンイミジルメチルプロピオンエート、スクシンイミジルブタン酸、スクシンイミジルプロピオネート、N-ヒドロキシスクシンイミド、ヒドロキシスクシンイミジル、スクシンイミジルカルボキシメチル又はスクシンイミジルカーボネートが用いられてもよいが、これに制限されない。
【0148】
非ペプチド性リンカーは、このような反応基を通じてXとFに連結され得るが、特にこれに制限されるものではない。
【0149】
また、アルデヒド結合による還元性アミン化で生成された最終産物は、アミド結合で連結されたものより遥かに安定している。アルデヒド反応基は、低いpHでN末端に選択的に反応し、高いpH、例えば、pH9.0の条件ではリシン残基と共有結合を形成できる。
【0150】
また、前記非ペプチド性リンカーの両末端の反応基は互いに同一又は互いに異なってもよく、例えば、一方の末端にはマレイミド基を、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基、又はブチルアルデヒド基を有することができる。しかし、非ペプチド性リンカーの各末端にF、具体的には、免疫グロブリンFc領域とXが結合されるのであれば、特にこれに制限されない。
【0151】
例えば、前記非ペプチド性リンカーの一方の末端には反応基としてマレイミド基を含み、他方の末端にはアルデヒド基、プロピオンアルデヒド基又はブチルアルデヒド基などを含んでもよい。
【0152】
両末端にヒドロキシ反応基を有するポリエチレングリコールを非ペプチド性重合体として用いる場合には、公知の化学反応により前記ヒドロキシ基を前記多様な反応基で活性化したり、商業的に入手可能な変形された反応基を有するポリエチレングリコールを用いて本発明の持続型タンパク質結合体を製造できる。
【0153】
一つの具体的な実施形態において前記非ペプチド性重合体はXのシステイン残基、より具体的には、システインの-SH基に連結されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0154】
例えば、前記Xに該当するペプチドにおいて10番のシステイン残基、13番のシステイン残基、15番のシステイン残基、17番のシステイン残基、19番のシステイン残基、21番のシステイン残基、24番のシステイン残基、28番のシステイン残基、29番のシステイン残基、30番のシステイン残基、31番のシステイン残基、40番のシステイン残基、又は41番のシステイン残基に前記非ペプチド性重合体が連結されたものであってもよいが、特にこれに制限されない。
【0155】
具体的には、前記システイン残基の-SH基に非ペプチド性重合体の反応基が連結されてもよく、反応基に対しては前述した内容がいずれも適用される。もし、マレイミド-PEG-アルデヒドを用いる場合、マレイミド基はXの-SH基とチオエーテル(thioether)結合で連結し、アルデヒド基はF、具体的に免疫グロブリンFcのNH2基と還元的アミン化反応を通じて連結できるが、これに制限されず、これは一例に該当する。
【0156】
また、前記結合体において、非ペプチド性重合体の反応基が免疫グロブリンFc領域のN末端に位置した-NH2と連結されたものであってもよいが、これは一例に該当する。
【0157】
一方、前記Fは、免疫グロブリンFc領域であり、より具体的には、前記免疫グロブリンFc領域は、IgG由来のものであってもよいが、特にこれらに限定されるものではない。
【0158】
本発明における「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除いたものであり、重鎖定常領域2(CH2)及び/又は重鎖定常領域3(CH3)部分を含む部位を意味する。前記免疫グロブリンFc領域は、本発明の結合体の一部をなす一構成であってもよい。前記免疫グロブリンFc領域は、「免疫グロブリンFcフラグメント」と混用することができる。
【0159】
本発明において、Fc領域と言えば、免疫グロブリンのパパイン消化により得られる天然配列だけでなく、その誘導体、例えば天然配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより置換されて天然のものとは異なる配列も含まれる。
【0160】
前記Fは、2つのポリペプチド鎖がジスルフィド結合で連結されている構造であり、前記2つの鎖のうち1つの鎖の窒素原子を介してのみ連結されている構造であるが、これに限定されるものではない。前記窒素原子を介する連結は、リシンのεアミノ原子やN末端のアミノ基に還元的アミノ化により連結されるものであってもよい。
【0161】
還元的アミノ化反応とは、反応物のアミン基又はアミノ基が他の反応物のアルデヒド(すなわち、還元的アミノ化が可能な官能基)と反応してアミンを生成し、次いで還元反応によりアミン結合を形成する反応を意味し、当該技術分野で周知の有機合成反応である。
【0162】
一具体例において、前記Fは、そのN末端のプロリンの窒素原子を介して連結されたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0163】
免疫グロブリンFc領域は、本発明の化学式(1)の結合体の一部をなす一構成であり、具体的には、前記化学式(1)中のFに該当し得る。
【0164】
このような免疫グロブリンFc領域は、重鎖定常領域にヒンジ(hinge)部分を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0165】
本発明における免疫グロブリンFc領域は、N末端に特定のヒンジ配列を含んでもよい。
【0166】
本発明における「ヒンジ配列」とは、重鎖に位置してジスルフィド結合(inter disulfide bond)により免疫グロブリンFc領域の二量体を形成する部位を意味する。
【0167】
本発明における前記ヒンジ配列は、次のアミノ酸配列を有するヒンジ配列中の一部が欠失して1つのシステイン残基のみ有するように変異したものであってもよいが、これに限定されるものではない。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号119)
【0168】
前記ヒンジ配列は、配列番号119のヒンジ配列中の8番目又は11番目のシステイン残基が欠失して1つのシステイン残基のみ含むものであってもよい。本発明のヒンジ配列は、1つのシステイン残基のみ含む、3~12個のアミノ酸からなるものであるが、これに限定されるものではない。より具体的には、本発明のヒンジ配列は、次の配列を有するものであってもよい。
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号120)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser-Pro(配列番号121)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号122)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Pro(配列番号123)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro-Ser(配列番号124)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号125)
Glu-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号126)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号127)
Glu-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号128)
Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号129)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号130)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号131)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号132)
Glu-Ser-Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys(配列番号133)
Lys-Tyr-Gly-Pro-Pro-Cys-Pro(配列番号134)
Glu-Ser-Lys-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号135)
Glu-Ser-Pro-Ser-Cys-Pro(配列番号136)
Glu-Pro-Ser-Cys(配列番号137)
Ser-Cys-Pro(配列番号138)
【0169】
より具体的には、前記ヒンジ配列は、配列番号129(Pro-Ser-Cys-Pro)又は配列番号138(Ser-Cys-Pro)のアミノ酸配列を含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0170】
本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列の存在により免疫グロブリンFc鎖の2つの分子が二量体を形成した形態であり、また、本発明の化学式(1)の結合体は、リンカーの一末端が二量体の免疫グロブリンFc領域の1つの鎖に連結された形態であるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
本発明における「N末端」とは、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端を意味し、アミノ末端の最末端、又は最末端から1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個もしくは10個以上のアミノ酸まで含まれる。本発明の免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ配列をN末端に含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0172】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域は、天然のものと実質的に同等又は向上した効果を有するものであれば、免疫グロブリンの重鎖と軽鎖の可変領域を除き、一部又は全部の重鎖定常領域1(CH1)及び/又は軽鎖定常領域1(CL1)を含む拡張されたFc領域であってもよい。さらに、CH2及び/又はCH3に相当する非常に長い一部のアミノ酸配列が除去された領域であってもよい。
【0173】
例えば、本発明の免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン、2)CH1ドメイン及びCH2ドメイン、3)CH1ドメイン及びCH3ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメインの少なくとも1つのドメインと免疫グロブリンヒンジ領域(又はヒンジ領域の一部)との組み合わせ、6)重鎖定常領域の各ドメインと軽鎖定常領域の二量体である。しかし、これらに限定されるものではない。
【0174】
また、本発明の持続型結合体の一つの実施形態として、前記免疫グロブリンFc領域Fは2つのポリペプチド鎖からなる二量体(dimer)であり、この時、前記Fc領域二量体FとXはエチレングリコール繰り返し単位を含有する一つの同一のリンカーLを通じて共有結合的に連結されている。この実施形態の一具体例において、XはこのようなFc領域二量体Fの両ポリペプチド鎖中の一つのポリペプチド鎖にのみリンカーLを通じて共有結合で連結されている。この実施形態のさらに具体的な例示において、このようなFc領域二量体Fの両ポリペプチド鎖中、Xが連結された一つのポリペプチド鎖には一分子のXのみがLを通じて共有結合的に連結されている。この実施形態の最も具体的な例示において前記Fはホモ二量体(homodimer)である。
【0175】
本発明の持続型結合体の他の実施形態では、二量体形態の一つのFc領域にX2分子が対称に結合されたものであってもよい。ここで、前記免疫グロブリンFcとXは、非ペプチド性リンカーにより互いに連結されてもよい。しかし、これらに限定されるものではない。
【0176】
また、本発明の免疫グロブリンFc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列誘導体も含まれる。アミノ酸配列誘導体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。
【0177】
例えば、IgG Fcの場合、結合に重要であることが知られている214~238、297~299、318~322又は327~331番目のアミノ酸残基が修飾に適した部位として用いられてもよい。
【0178】
また、ジスルフィド結合を形成する部位が除去された誘導体、天然FcからN末端のいくつかのアミノ酸が除去された誘導体、天然FcのN末端にメチオニン残基が付加された誘導体など、様々な誘導体が用いられる。さらに、エフェクター機能をなくすために、補体結合部位、例えばC1q結合部位が除去されてもよく、ADCC(antibody dependent cell mediated cytotoxicity)部位が除去されてもよい。このような免疫グロブリンFc領域の配列誘導体を作製する技術は、特許文献1、2などに開示されている。
【0179】
分子の活性を全体的に変化させないタンパク質及びペプチドにおけるアミノ酸交換は、当該分野で公知である(非特許文献1)。最も一般的な交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Thy/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。場合によっては、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、グリコシル化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)などにより修飾(modification)されてもよい。
【0180】
前述したFc誘導体は、本発明のFc領域と同等の生物学的活性を示し、Fc領域の熱、pHなどに対する構造的安定性を向上させたものであってもよい。
【0181】
また、このようなFc領域は、ヒトや、ウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物の生体内から分離した天然のものから得てもよく、形質転換された動物細胞もしくは微生物から得られた組換えたもの又はその誘導体であってもよい。ここで、天然のものから得る方法は、全免疫グロブリンをヒト又は動物の生体から分離し、その後タンパク質分解酵素で処理することにより得る方法であってもよい。パパインで処理するとFab及びFcに切断され、ペプシンで処理するとpF’c及びF(ab)2に切断される。これらは、サイズ排除クロマトグラフィー(size-exclusion chromatography)などを用いてFc又はpF’cを分離することができる。より具体的な実施形態において、ヒト由来のFc領域は、微生物から得られた組換え免疫グロブリンFc領域である。
【0182】
また、免疫グロブリンFc領域は、天然糖鎖、天然のものに比べて増加した糖鎖、天然のものに比べて減少した糖鎖、又は糖鎖が除去された形態であってもよい。このような免疫グロブリンFc糖鎖の増減又は除去には、化学的方法、酵素学的方法、微生物を用いた遺伝工学的手法などの通常の方法が用いられてもよい。ここで、Fcから糖鎖が除去された免疫グロブリンFc領域は、補体(c1q)との結合力が著しく低下し、抗体依存性細胞傷害又は補体依存性細胞傷害が低減又は除去されるので、生体内で不要な免疫反応を誘発しない。このようなことから、糖鎖が除去されるか、非グリコシル化された免疫グロブリンFc領域は、薬物のキャリアとしての本来の目的に適する。
【0183】
本発明における「糖鎖の除去(Deglycosylation)」とは、酵素で糖を除去したFc領域を意味し、非グリコシル化(Aglycosylation)とは、原核動物、より具体的な実施形態においては大腸菌で産生されてグリコシル化されていないFc領域を意味する。
【0184】
一方、免疫グロブリンFc領域は、ヒト起源、又はウシ、ヤギ、ブタ、マウス、ウサギ、ハムスター、ラット、モルモットなどの動物起源であってもよく、より具体的な実施形態においてはヒト起源である。
【0185】
また、免疫グロブリンFc領域は、IgG、IgA、IgD、IgE、IgM由来のものであってもよく、それらの組み合わせ(combination)又はそれらのハイブリッド(hybrid)によるFc領域であってもよい。より具体的な実施形態においては、ヒト血液に最も豊富なIgG又はIgM由来のものであり、さらに具体的な実施形態においては、リガンド結合タンパク質の半減期を延長させることが知られているIgG由来のものである。一層具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はIgG4 Fc領域であり、最も具体的な実施形態において、前記免疫グロブリンFc領域はヒトIgG4由来の非グリコシル化されたFc領域であるが、これらに限定されるものではない。
【0186】
また、具体的な一実施形態における免疫グロブリンFc切片は、ヒトIgG4 Fcフラグメントであり、各単量体(monomer)の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合(inter-chain形態)により2個の単量体が連結されたホモ二量体(homodimer)形態であってもよく、ここで、ホモ二量体の各単量体は、独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番目と199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、すなわち2つの内部のジスルフィド結合(intra-chain形態)を有するものである/有するものであってもよい。各単量体のアミノ酸は、221個のアミノ酸からなり、ホモ二量体を形成するアミノ酸は、全体で442個のアミノ酸からなるが、これらに限定されるものではない。具体的には、免疫グロブリンFc切片は、配列番号139のアミノ酸配列(221個のアミノ酸からなる)を有する2個の単量体が各単量体の3番目のアミノ酸であるシステイン間のジスルフィド結合によりホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立して35番目と95番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合、及び141番目と199番目のシステイン間の内部のジスルフィド結合を形成するものであるが、これに限定されるものではない。
【0187】
一方、本発明における免疫グロブリンFc領域に関連する「組み合わせ(combination)」とは、二量体又は多量体を形成する際に、同一起源の単鎖免疫グロブリンFc領域をコードするポリペプチドが異なる起源の単鎖ポリペプチドに結合することを意味する。すなわち、IgG Fc、IgA Fc、IgM Fc、IgD Fc及びIgE Fcフラグメントからなる群から選択される少なくとも2つのフラグメントから二量体又は多量体を作製することができる。
【0188】
本発明において「ハイブリッド(hybrid)」とは、単鎖の免疫グロブリン定常領域内に2個以上の相違する起源の免疫グロブリンFcフラグメントに該当する配列が存在することを意味する用語である。本発明の場合、種々の形態のハイブリッドが可能である。即ち、IgG Fc、IgM Fc、IgA Fc、IgE Fc及びIgD FcのCH1、CH2、CH3及びCH4からなるグループより1個~4個のドメインからなるドメインのハイブリッドが可能であり、ヒンジを含んでもよい。
【0189】
一方、IgGもIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4のサブクラスに分けることができ、本発明ではこれらの組合わせ又はこれらのハイブリダイゼーションも可能である。具体的には、IgG2及びIgG4サブクラスであり、最も具体的には補体依存性細胞傷害(CDC, Complement dependent cytotoxicity)のようなエフェクタ機能(effector function)がほとんどないIgG4のFc切片である。
【0190】
さらに、前述した結合体は、天然GLP-1、GIPもしくはグルカゴンより、又はFが修飾されていないものより効力の持続性が向上したものであってもよく、このような結合体には、前述した形態だけでなく、生分解性ナノ粒子に封入された形態などが全て 含むが、これに限定されない。
【0191】
前記ペプチド(例えば、前記ペプチド自体又はこれに生体適合性物質が結合した持続型結合体形態)を含む組成物は肺疾患の予防又は治療用であってもよい。
【0192】
本発明において用語「予防」とは、前記ペプチド(例えば、前記ペプチド自体又はこれに生体適合性物質が結合した持続型結合体形態)又はこれを含む組成物の投与により肺疾患の発病を抑制又は遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、前記ペプチド(例えば、前記ペプチド自体又はこれに生体適合性物質が結合した持続型結合体の形態)又はこれを含む組成物の投与により肺疾患の症状が好転したり有益になる全ての行為を意味する。
【0193】
本発明において用語「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は特にこれに制限されないが、前記組成物が生体内標的に到達できる任意の一般的な経路を通じて投与されてもよく、例えば、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、又は直腸内投与などであってもよい。
【0194】
本発明のグルカゴン、GLP-1及びGIP受容体の両方に活性を有する三重活性体又はこの持続型結合体の使用は、血中半減期及び生体内効力持続効果の画期的な増加により毎日投与しなければならない慢性患者に投与回数を減少させて患者の生活の質を向上させる大きな長所があり、肺疾患の治療に大きな助けを与える。さらに、前記三重活性体又はその持続型結合体は肺疾患の症状の再発時期を遅延させるなど、肺疾患の予防効果及び/又は肺疾患の症状を有意に減少させる効果があるなど、肺疾患の予防及び/又は治療に大きな助けを与える。
【0195】
本発明における用語、「肺疾患」は、肺の組織や機能に異常が生じる全ての疾患を意味し、具体的には、本発明の三重活性体又はその持続型結合体は炎症及び線維化反応を損なうことがあるため、本発明の目的上、前記肺疾患は、肺炎症及び線維化を伴う疾病又は線維化に進行による疾病、例えば、間質性肺疾患(interstitial lung disease, ILD)、進行性線維化間質性肺疾患(progressive fibrosing Interstitial Lung Disease, PF-ILD)、特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias, IIP)、非特異性間質性肺炎(non-specific interstitial pneumonia, NSIP)、肺線維症(pulmonary fibrosis)、間質性肺線維症(fibrosing interstitial lung diseases, FILD)、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)、肺胞炎(alveolitis)、肺炎(pneumonia)、肺気腫(emphysema)、気管支炎(bronchitis)、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease)、複合肺線維化と肺気腫(combined pulmonary fibrosis and emphysema, CPFE)、喘息(asthma)、又は呼吸器感染疾患などを含むことができるが、これらに限定されない。
【0196】
本発明の三重活性体は、肺炎症の主な機序であるマクロファージ(macrophage)の活性を阻害し、肺線維症の主要機序である線維芽細胞の筋線維芽細胞への分化及び肺胞上皮細胞の上皮間葉移行を阻害することにより肺疾患に対する予防又は治療効果を奏するものであってもよいが、これに制限されない。
【0197】
具体的には、本発明の薬学的組成物は、投与時に(i)マクロファージ(macrophage)の活性阻害、及び/又は(ii)IL-1β、IL-6、IL-12、又はTNF-αの発現を減少させることにより、炎症を抑制するものであってもよいが、これに限定されない。また、これらに限定されないが、本発明の薬学的組成物は、投与時に下記特性の一つ以上を有するものであってもよい:
(i)筋線維芽細胞(myofibroblast)の分化阻害;
(ii)α-SMA、コラーゲン1α1又はフィブロネクチン(fibronectin)の発現減少;
(iii)肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell)の上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition, EMT)の阻害;
(iv)collagen1α1又はcollagen1α3の発現減少。これを通じて、本発明の薬学的組成物は線維化を抑制するものであってもよいが、これに制限されない。
【0198】
肺における炎症反応では、肺胞のマクロファージが関与し、前記マクロファージが分泌する炎症サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)により好中球が誘引され、プロテアーゼが分泌される。特に、肺組織を構成し、弾力性に関与する線維の一種であるエラスチンを分解するエラスターゼ(elastase)が分泌される。前記エラスターゼにより肺胞の弾性組織であるエラスチンが損傷し、最終的に、肺胞も損傷し、組織の線維化につながることが知られている。肺における炎症及び線維化は、それ自体でも肺疾患になるが、炎症及び線維化の進行及び深刻化により他の肺疾患にもつながる可能性があり、したがって、肺疾患の予防及び治療においては炎症及び線維化を抑制することが要求される。
【0199】
本発明の前記のような三重活性体の特性は、肺の炎症及び線維化の抑制及び改善効果を意味し、これは、肺の炎症又は線維化を伴う肺疾患に対する予防又は治療効果も示唆する。
【0200】
本発明において用語、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease, COPD)は、非可逆的な気道閉鎖を示す疾患を意味し、慢性的な炎症と損傷による肺実質の破壊、肺線維化が現れることが知られている。慢性閉塞性肺疾患患者の気道では様々な炎症細胞の浸潤が観察され、特にマクロファージの数が疾患の重症度とともに増加することが知られているため、これは、慢性閉塞性肺疾患の発病機序に炎症が重要な役割を果たすことを示唆する。有害物質が吸い込まれた時、先天免疫が反応して上皮細胞が多くの炎症媒介物質を分泌し、これは、肺胞マクロファージと好中球を活性化させる役割をするため、炎症反応の制御は慢性閉塞性肺疾患の治療において重要な要因である。一般に、慢性閉塞性肺疾患は、肺気腫と慢性気管支炎の2類型に区別するが、実際の患者では、肺気腫と慢性気管支炎が同時に存在する場合が多いことが知られている。
【0201】
本発明において用語、慢性気管支炎は、慢性的に気管支に炎症が生じて気道内の粘液腺の肥大及び増加が引き起こされたり、炎症による構造損傷が起こり、その結果、粘液層が厚くなり繊毛運動が低下し、空気の流れを防いで呼吸困難などを引き起こす呼吸器疾患を意味する。
【0202】
本発明において用語、肺気腫は、種々の原因により気管支や肺に炎症が生じ、これによりプロテアーゼが分泌され、肺胞の基本骨格が破壊され、血管構造が損傷されながら気体交換機能を喪失する疾患を意味する。
【0203】
本発明において用語、肺胞炎は、酸素交換を担当する肺胞に炎症が生じた疾患を意味する。カビ、ホコリ、石油、トルエン、アセトン、化学薬品などにより肺胞内にマクロファージが蓄積し、肺胞の中隔が厚くなると、肺胞炎に進行することがあり、肺胞炎の進行に従って肺胞は破壊され、傷跡が生じて硬くなり、呼吸困難が発生することが知られている。
【0204】
本発明において用語、喘息(asthma)は、慢性閉塞性肺疾患とは異なり、可逆的な病変を示す、気道炎症により誘発される呼吸困難を引き起こす炎症性気道閉塞の疾患である。喘息患者の気道では、IL-4、IL-5、IL-13などのサイトカイン分泌が多く行われ、気管支平滑筋の増殖及び肥厚が顕著であることか知られている。慢性閉塞性肺疾患と同様に炎症反応の制御が治療にとって重要である。
【0205】
本発明において用語、肺炎は、肺の実質組織又は肺胞に炎症が生じる疾病を意味する。細菌感染、ウイルス、原虫、カビ、化学物質などが原因となり、種々の合併症を伴う危険性が大きい疾患である。呼吸器官が有している病原体に対する免疫機序(代表的に肺胞マクロファージ)が正しく機能しなかったり、病原体のレベルが正常な免疫機序で防御できる限度を超えて肺炎が発病することが知られている。喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺気腫、気管支拡張症など、慢性肺疾患者で肺炎発病の可能性が高いことが知られている。本発明において、肺炎症又は肺炎は、他の肺疾患に起因したり、又は他の肺疾患に伴う肺炎症又は肺炎を含んでもよいが、これに制限されない。
【0206】
本発明において用語、呼吸器感染疾患は、病源体(ウイルス、細菌、真菌など)の感染による呼吸器疾患を意味する。呼吸器感染疾患は、原因となる病原体により区別され得るが、代表的な呼吸器感染の原因としては、呼吸器ウイルス、細菌、マイコプラズマ(mycoplasma)、真菌(fungi)などを挙げることができる。前記病源体の感染による呼吸器感染疾患には炎症を伴うため、炎症の改善を通じた治療効果を期待することができる。
【0207】
本発明において用語、呼吸器ウイルス感染疾患は、病原性ウイルス感染による呼吸器疾患を意味し、軽症の上気道感染から肺炎と気管支炎を伴う重度の下気道感染を誘発することがあり、心肺機能が低下した人は、呼吸器ウイルス感染が致命的なことが知られている。呼吸器ウイルスに感染すると、肺を含む呼吸器に炎症が起こり、長期間炎症が抑制されなければ線維化につながり、より深刻な肺疾患につながるため、炎症及び線維化を抑制しながら呼吸器ウイルス感染疾患を治療することが重要である。
【0208】
呼吸器ウイルス感染疾患の原因となる前記呼吸器ウイルスは、アデノウイルス(adenovirus)、ワクチニアウイルス(vaccinia virus)、単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)、ライノウイルス(rhinovirus)、水痘ウイルス(varicella Zoster Virus)、麻疹ウイルス(measle virus)、呼吸器合胞体ウイルス(respiratorysyncytial virus)、デングウイルス(Dengue virus)、HIV(human immunodeficiency virus)、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(coronavirus)、重症急性呼吸器症候群ウイルス(severe acute respiratory syndrome associated virus; SARS-associated virus)、又は中東呼吸器症候群コロナウイルス(middle east respiratory syndrome coronavirus; MERS-CoV)であってもよいが、これらに限定されない。
【0209】
前記コロナウイルスの制限されない一例として、SARS-CoV-2を挙げることができ、SARS-CoV-2感染によりコロナウイルス感染症-19(coronavirus disease 2019、COVID-19)が発病することがある。
【0210】
本発明において、コロナウイルス感染症-19(coronavirus disease 2019、COVID-19)は、コロナウイルス(2019-nCoV又はSARS-CoV-2)の感染によるウイルス感染性疾患であり、まだ明確な感染源と感染経路は確認されていないが、伝播力が非常に強く、全世界的なパンデミック事態を引き起こした。コロナウイルスは、ヒトと多様な動物に感染するウイルスであり、遺伝子サイズ27~32kbのRNAウイルスであり、発熱を伴う咳、呼吸困難、息切れ、痰など呼吸器症状を主に示すことが知られている。
【0211】
特に、コロナウイルス感染症19に重度の肺炎が伴う理由は、コロナウイルスが気管支の繊毛上皮細胞やTypeII肺胞上皮細胞(肺胞内の2型上皮細胞)を攻撃するためである。この細胞には、コロナウイルスがよく付着するようにする酵素受容体が多量に存在する。「ACE2」、「TMPRSS2」などの受容体がコロナウイルスの細胞内浸透能力を強化する。
【0212】
呼吸中に浸透した異物や病原菌は気管支の繊毛上皮細胞にある粘膜に付着する。繊毛上皮細胞は名前の通り多数の繊毛を有しており、粘膜に付いているコロナウイルスをはじめとした病原菌を口と鼻の方向に排出させる。しかし、毛上皮細胞の繊毛運動だけで一度に多くのウイルスを追い出すには限界がある。また、喫煙、ホコリ、乾燥した天気、低温などは繊毛運動を低下させる。乾燥した寒い冬季は繊毛運動が低下するため、コロナウイルス感染症-19を含むインフルエンザウイルス性感染病が増加する。
【0213】
他のウイルスと同様に、コロナウイルスは、宿主細胞の資源とシステムを奪取して旺盛に増殖し、感染した細胞外に噴出する。この時、幾何級数的に増殖したウイルスが抜け出して周辺の健康な繊毛上皮細胞とTypeII肺胞上皮細胞に急速に浸透する。感染した細胞は、強い炎症を誘発するサイトカイン物質を分泌し、炎症細胞に変わるようになる。
【0214】
TypeII肺胞上皮細胞の本来の機能は、界面活性剤(surfactant)を分泌して肺胞を緩みなく維持するとともに、TypeI肺胞上皮細胞を通じたガス交換を円滑にさせることにある。コロナウイルスの攻撃を受けたTypeII肺胞上皮細胞が炎症細胞に変わり、主機能を喪失しながら肺に炎症(肺炎)が生じ、これにより二次的症状(熱、咳、呼吸困難など)が発生するのである。
【0215】
本発明の三重活性体は、マクロファージ活性阻害及び/又は肺組織における炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、IL-12、又はTNF-α)の発現レベルの減少を通じて炎症反応を抑制できるため、炎症に起因したり炎症を伴う肺疾患(例えば、肺胞炎、肺炎、肺気腫、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患,喘息、又は呼吸器感染疾患)に予防又は治療効果を奏することができる。
【0216】
一方、線維症は、器官又は組織において過剰な線維質結合組織を形成する疾患である。線維症は、人体内で組織が様々な原因(感染、化学的刺激、放射線等)による炎症反応で損傷を受けた後、創傷治癒(wound healing)の過程中に正常な統制が不可能な状態を意味する。特に、肺では、肺の炎症が発生して治療されていない状態で長く持続し、組織が再生できず、固まる線維化につながり、深刻な肺疾患につながる場合が多い。これに対し、線維症の治療には炎症を抑制して線維化の進行を防ぐことが必要であることが知られているため、治療剤も免疫抑制剤(例えば、ステロイド剤、シトキサン)などが用いられる。本願において線維症は線維化と混用され得る。
【0217】
本発明において用語、肺線維症は、肺に線維性結合組織の増殖が起こり、正常肺構造の破壊、肺組織の硬化・荒廃をもたらした状態をいう。実質性、間質性及び混合型があるが、特に問題となるのは間質性肺線維症であり、肺胞壁、細気管支の周囲に線維性結締組織の増殖が現れる。一般に、TGF-β(TGF-β(Transforming growth factor-β)が肺胞マクロファージ(alveolar macrophage)、活性化肺胞上皮細胞、線維芽細胞、筋線維芽細胞のような多様な細胞で生成され、線維芽細胞増殖及びマクロファージと線維芽細胞の移動を誘導し、TNF-α, PDGF, IL-1β, IL-13のような炎症性及び線維性サイトカインの発現を刺激して線維化反応をさらに強化させることが知られている(Proc Am Thorac Soc., 9(3):111-116 (2012)(非特許文献2))。本発明の肺線維症は、他の肺疾患に起因したり、又は他の肺疾患に伴う肺線維症を含み得るが、これに制限されない。
【0218】
本発明において用語、複合肺線維化と肺気腫(combined pulmonary fibrosis and emphysema; CPFE)は、肺気腫に線維化が共存する代表的な疾患である。
【0219】
本発明において用語、間質性肺疾患(interstitial lung disease, ILD)は、びまん性間質性肺疾患(diffuse parenchymal lung disease, DPLD)としても知られており、肺間質部(interstitial compartment)の増殖、炎症細胞の浸潤及び線維化(fibrosis)が伴って非正常なコラーゲンの沈着を示す疾患を総称する。前記間質性肺疾患は、原因によって職業性、環境性、医因性、欠体組織疾患、又は特発性などに分類される。
【0220】
本発明において用語、進行性線維化間質性肺疾患(Progressive Fibrosing Interstitial Lung Disease, PF-ILD)は、進行性表現型を示す慢性線維性間質性肺疾患を意味し、自己免疫性間質性肺疾患、全身性硬化症に伴う間質性肺疾患、混合性結合組織疾患に伴う間質性肺疾患、非特異性特発性間質性肺炎、分類されていない特発性間質性肺炎などを含み得るが、これに制限されない。
【0221】
前記間質性肺疾患中、特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias, IIP)は、原因不明であり、肺間質を侵す組織学的形態に区分される肺疾患を意味し、代表的に、非特異性間質性肺炎(Non-specific interstitial pneumonia, NSIP)、及び特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)が挙げられる。
【0222】
本発明において用語、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis, IPF)は、特発性間質性肺炎中、最も一般的な疾病であり、正確な原因が確認されない肺線維化と定義される。肺胞上皮細胞が多様な露出により反復的な炎症反応により損傷を受けた後、正常に傷が治らずに線維化が誘発されて発病し、遺伝的素因、環境的因子、肺感染間に複雑な相互作用により肺線維化が進行されることが知られている。具体的には、損傷した肺胞上皮細胞及び浸潤された炎症細胞から分泌された多様な因子による肺内線維芽細胞/筋線維芽細胞の増殖とそれによる膠質(collagen)の分泌及び蓄積、及び細胞外気質(extracellular matrix, ECM)の過度な沈着などが発病機序として知られている。
【0223】
本発明の三重活性体は(i)筋線維芽細胞(myofibroblast)の分化阻害;(ii)α-SMA、collagen1α1,又はフィブロネクチン(fibronectin)の発現減少;(iii)肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell)の上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition, EMT)の阻害;及び(iv)collagen1α1又はcollagen1α3の発現減少の一つ以上の特性を有するため、線維化を抑制して改善することができ、線維化に起因したり線維化を伴う肺疾患(例えば、間質性肺疾患、進行性線維化間質性肺疾患、特発性間質性肺炎、非特異性間質性肺炎、肺線維症、間質性肺線維症、特発性肺線維症、複合肺線維化と肺気腫)に予防又は治療効果を奏することができる。
【0224】
一方、本発明による三重活性体は、コロナウイルス感染症-19に治療効果を奏するだけでなく、コロナウイルス感染症-19は完治後にも後遺症として肺線維化症状が残ることが知られており、本発明の三重活性体は肺線維化の改善効果を奏するため、三重活性体はコロナウイルス感染症-19による肺炎症及び/又は肺線維症に対して効能を示すことができる。
【0225】
本発明の薬学的組成物は、粘液溶解剤(mucolytic agents)又はその薬学的に許容可能な塩と追加で投与されるものであってもよいが、これに制限されない。本発明の目的上、前記薬学的組成物は三重活性体及び粘液溶解剤を併用投与するためのもので、三重活性体及び粘液溶解剤が同時、順次、又は逆順で投与されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0226】
本願において、「併用」という用語が用いられる場合、これは同時、個別又は順次投与を示すことが理解されるべきである。前記投与が順次又は個別の場合、2次成分投与の間隔は、前記併用の有益な効果を失わないようにするものでなければならない。三重活性体及び粘液溶解剤の併用投与は、次のような形態で構成されるものであってもよいが、これらに限定されない:
【0227】
a)(i)三重活性体又はその結合体及び(ii)粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩が混合された一つの混合物(mixture)で投与されるものであるか;又は
b)(i)三重活性体又はその結合体及び(ii)粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩が分離された形態で投与される。
【0228】
三重活性体及び粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩が分離された形態の場合、三重活性体及び粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩が別個の製剤に製剤化されて同時、個別、順次、又は逆順で投与するものであってもよい。
【0229】
本発明において、併用投与は単に同時の投与を意味するだけではなく、三重活性体及び粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩が個体に共に作用し、各物質が本来の機能と同等又はそれ以上のレベルを行うことができる投与形態で理解されるべきである。
【0230】
具体的な一例として、三重活性体及び粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩は、混合されて一つの製剤で併用投与されるものであってもよく、又は、三重活性体及び粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩が個別に製剤化されて同時、順次、又は逆順に併用投与されるものであってもよいが、これに制限されない。個別に製剤化されて併用投与される場合に各製剤は互いに異なる経路で投与されてもよいが、これに制限されない。また、これに制限されないが、三重活性体及び粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩は個別に製剤化されて一つのキットに含まれてもよい。粘液溶解剤の薬学的に許容可能な塩は薬学的に許容される無機酸、有機酸、又は塩基から誘導された塩を含む。適した酸の例としては塩酸、臭素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、フマル酸、マレイン酸、リン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、コハク酸、トルエン-p-スルホン酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、安息香酸、マロン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ベンゼンスルホン酸などを挙げることができる。適した塩基から誘導された塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、及びアンモニウムなどを含み得る。
【0231】
本発明において用語、「粘液溶解剤(mucolytic agents)」は呼吸器から喀痰、痰又は粘液の分泌、液化又は排出を促進する薬物を意味し、特に、肺にある粘液を分解して呼吸器分泌物を希釈するまでだけの役割をする薬を意味する。本発明において、粘液溶解剤は去痰剤と混用され得る。
【0232】
本発明の粘液溶解剤の具体的な例としては、アンブロキソール(ambroxol)、N-アセチルシステイン(N-acetylcystein)、N-アセチリン(N-acetylin)、カルボシステイン(carbocysteine)、ドミオドール(domiodol)、フドステイン(fudosteine)、ブロムヘキシン(bromhexine)、エルドステイン(erdosteine)、レトステイン(letostine)、リゾチーム(lysozyme)、メスナ(mesna)、ソブレロール(sobrerol)、ステプロニン(stepronin)、チオプロニン(tiopronin)、チロキサポール(tyloxapol)、カルボシステイン(carbocisteine)、ドルナーゼアルファ(dornase alfa)、エプラジノン(eprazinone)、レトステイン(letosteine)、ネルテネキシン(neltenexine)、及びメチステイン(mecysteine)からなる群から選択されるいずれか一つ以上であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0233】
一方、三重活性体及び粘液溶解剤の併用投与は、呼吸器感染疾患(例えば、コロナウイルス感染症-19)に治療効果を奏することができる。本発明の三重活性体は肺炎症及び肺線維化の改善効果を奏するため、三重活性体と粘液溶解剤の併用投与は呼吸器感染疾患(例えば、コロナウイルス感染症-19(COVID-19))又はこれによる肺炎症及び肺線維症に対して効能を示すことができる。
【0234】
本発明の薬学的組成物は薬学的に許容可能な担体、又は希釈剤をさらに含んでもよい。このような薬学的に許容可能な担体、又は希釈剤は非自然的に発生したものであってもよい。
【0235】
本発明における「薬学的に許容される」とは、治療効果を発揮する程度の十分な量と副作用を起こさないことを意味し、疾患の種類、患者の年齢、体重、健康状態、性別、薬物に対する感受性、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、同時用いられる薬物などの医学分野における公知の要素により当業者が容易に決定することができる。
【0236】
本発明のペプチドを含む薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含んでもよい。前記賦形剤は、経口投与の場合は、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを用いることができ、注射剤の場合は、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して用いることができ、局所投与用の場合は、基剤、賦形剤、滑沢剤、保存剤などを用いることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0237】
本発明の組成物の剤形は、前述したような薬学的に許容される賦形剤と混合して様々な形態に製造することができる。例えば、経口投与の場合は、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤などの形態に製造することができ、注射剤の場合は、使い捨てアンプル又は複数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル剤、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0238】
なお、製剤化に適した担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシア、アルギン酸塩、ゼラチン、リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油などが挙げられる。また、充填剤、抗凝集剤、滑沢剤、湿潤剤、香料、防腐剤などをさらに含んでもよい。
【0239】
さらに、本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌水溶液剤、非水性溶剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれかの剤形を有してもよい。
【0240】
さらに、前記組成物は、薬学的分野における通常の方法による患者の体内投与に適した単回投与型の製剤、具体的にはタンパク質医薬品の投与に有用な製剤形態に剤形化し、当該技術分野で通常用いる投与方法を用いて経口、又は皮膚、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、髄膜腔内、心室内、肺、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、消化管内、局所、舌下、膣内もしくは直腸経路が含まれる非経口投与経路で投与することができるが、これらに限定されるものではない。
【0241】
さらに、前記結合体は、生理食塩水や有機溶媒のように薬剤に許容される様々な担体(carrier)と混合して用いることができ、安定性や吸収性を向上させるために、グルコース、スクロース、デキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸(ascorbic acid)、グルタチオンなどの抗酸化剤(antioxidants)、キレート剤、低分子タンパク質、他の安定化剤(stabilizers)などを薬剤として用いることができる。
【0242】
本発明の他の側面では、配列番号1~102のいずれか一つのアミノ酸配列を含むペプチド又はその持続型結合体を薬学的有効量で含有する薬学的組成物を個体に投与する段階を含む肺疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0243】
本発明の薬学的組成物の投与量と回数は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、疾患の重症度などの様々な関連因子と共に、活性成分である薬物の種類により決定される。具体的には、本発明の組成物は、前記三重活性体又はそれを含む持続型結合体を薬学的有効量で含むものであるが、これらに限定されるものではない。
【0244】
前記ペプチド又は持続型結合体を薬学的有効量で含むとは、三重活性体又は持続型結合体により目的とする薬理活性(例えば、肺疾患の予防、改善又は治療)が得られる程度で含むことを意味し、また投与される個体に毒性や副作用がないか、僅かなレベルであって、薬学的に許容されるレベルで含むことを意味するが、これらに限定されるものではない。このような薬学的有効量は、投与回数、患者、剤形などを総合的に考慮して決定される。
【0245】
特にこれに制限されないが、本発明の前記薬学的組成物は、前記成分(有効成分)を0.01~99%の重量対体積で含有できる。
【0246】
本発明の組成物の総有効量は、単回投与量(single dose)で患者に投与してもよく、複数回投与量(multiple dose)で長期間投与する分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与してもよい。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度に応じて有効成分の含有量を変えてもよい。具体的には、本発明の三重活性体又はその持続型結合体の総用量は、1日体重1kg当たり約0.0001mg~500mgであることが好ましい。しかし、前記三重活性体又はその結合体の用量は、薬学的組成物の投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌、排泄率などの様々な要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、これらを考慮すると、当該分野における通常の知識を有する者であれば、前記本発明の組成物の特定の用途に応じた適切な有効投与量を決定することができるであろう。本発明による薬学的組成物は、本発明の効果を奏するものであれば、その剤形、投与経路及び投与方法が特に限定されるものではない。
【0247】
本発明の薬学的組成物は、生体内持続性及び力価に優れるので、本発明の薬学的製剤の投与回数及び頻度を大幅に減少させることができる。
【0248】
本発明の他の実施態様は、前記三重活性体(ペプチド)及び/又は三重活性体の持続型結合体又はそれを含む組成物を必要とする個体に投与するステップを含む、肺疾患の予防又は治療方法を提供する。
【0249】
前記三重活性体及び/又は三重活性体の持続型結合体又はそれを含む組成物、肺疾患、予防及び治療については前述した通りである。
【0250】
本発明における前記個体とは、肺疾患の疑いのある個体であり、前記肺疾患の疑いのある個体とは、該当する疾患が発症したか、発症するリスクのある、ヒトをはじめとしてマウス、家畜などが含まれる哺乳動物を意味するが、本発明の三重活性体及び/又は 結合体又はそれを含む前記組成物で治療可能な個体であればいかなるものでもよい。 特に、肺に炎症及び/又は線維症を有する個体であってもよく、又は炎症及び/又は線維症に起因する、又は炎症及び/又は線維症を伴う肺疾患を有する個体であってもよいが、これらに限定されない。
【0251】
本発明における「投与」とは、任意の適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味し、前記組成物の投与経路は、前記組成物を生体内標的に送達できるものであれば、一般的なあらゆる経路で投与することができ、例えば腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与などが挙げられる。
【0252】
本発明の方法は、前記三重活性体又はその持続型結合体を含む薬学的組成物を薬学的有効量で投与するステップを含んでもよい。好適な総1日使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医により決定され、1回又は数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否か、具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食餌、投与時間、投与経路、組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物と共に又は同時に投与される薬物をはじめとする様々な因子や、医薬分野で周知の類似の因子に応じて異なる量であることが好ましい。
【0253】
これに限定されないが、本発明の薬学的組成物は、1週間に1回、2週間に1回、又は4週間に1回投与することができるが、これらに限定されない。
【0254】
本発明の肺疾患の予防又は治療方法の一具体例として、三重活性体(ペプチド)及び/又は三重活性体の持続型結合体、又はこれを含む組成物と粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩を同時、順次、又は逆順で併用投与する方法があるが、これに制限されない。前記併用投与は前述した通りである。
【0255】
本発明のさらに他の実施態様は、肺疾患の予防又は治療のための薬剤の製造における、前記三重活性体又はその持続型結合体を含む組成物の使用である。
【0256】
前記三重活性体及び/又はその結合体又はそれを含む組成物、肺疾患、予防及び治療については前述した通りである。
【0257】
本発明を実施する他の一態様は、肺疾患の予防又は治療のための前記三重活性体又はその持続型結合体、又はそれらを含む組成物の使用を提供することである。
【0258】
上記三重活性体及び/又はその結合体、又はそれを含む組成物、肺疾患、予防及び治療については、前述した通りである。
【0259】
本発明の肺疾患の予防又は治療のための用途は三重活性体(ペプチド)及び/又は三重活性体の持続型結合体、又はこれを含む組成物と粘液溶解剤又はその薬学的に許容可能な塩の併用投与のための用途であってもよいが、これに制限されない。前記併用投与は前述した通りである。
【0260】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示するものにすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0261】
実施例1: 三重活性体の製造
GLP-1、GIP及びグルカゴン受容体の全てに対して活性を有する三重活性体を製造した。表1にその配列を示す。
【0262】
【表1】













【0263】
表1に示す配列において、Xで表記したアミノ酸は非天然アミノ酸であるAib(aminoisobutyric acid)であり、下線を引いたアミノ酸は下線を引いたアミノ酸が互いに環を形成することを意味する。また、表1において、CAは4-イミダゾアセチル(4-imidazoacetyl)を意味し、Yはチロシンを意味する。
【0264】
実施例2:三重活性体持続型結合体の製造
両末端にそれぞれマレイミド基及びアルデヒド基を有する10kDaのPEG、すなわちマレイミド-PEG-アルデヒド(10kDa,NOF, 日本)を実施例1の三重活性体(配列番号21、22、42、43、50、77及び96)のシステイン残基にペグ化するために、三重活性体とマレイミド-PEG-アルデヒドのモル比を1:1~3とし、タンパク質の濃度を1~5mg/mlとし、低温で0.5~3時間反応させた。ここで、反応は、50mM Tris緩衝液(pH7.5)に20~60%イソプロパノールを添加した環境下で行った。反応終了後に、前記反応液をSPセファロースHP(GE healthcare, 米国)に適用し、システインにモノペグ化された三重活性体を精製した。
【0265】
次に、前記精製したモノペグ化した三重活性体と免疫グロブリンFc(配列番号139のホモ二量体)をモル比 1:1~5とし、タンパク質の濃度を10~50mg/mlとし、4~8℃で12~18時間反応させた。反応は、100mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に還元剤である10~50mMシアノ水素化ホウ素ナトリウムと10~30%イソプロパノールを添加した環境下で行った。反応終了後に、前記反応液をブチルセファロースFF精製カラム(GE healthcare, 米国)とSource ISO精製カラム(GE healthcare, 米国)に適用し、三重活性体と免疫グロブリンFcとを含む結合体を精製した。精製されたその持続型結合体は分子内で三重活性体ペプチド、ポリエチレングリコール(PEG)リンカーとFc二量体が1:1:1のモル比で共有結合連結された構造であり、PEGリンカーはFc二量体の両ポリペプチド鎖中の一本鎖だけに連結されている。
【0266】
一方、前記免疫グロブリンFcは配列番号139のアミノ酸配列(221個のアミノ酸で構成される)を有する単量体2つが各単量体の3番のアミノ酸であるシステイン間にジスルフィド結合を通じてホモ二量体を形成し、前記ホモ二量体の単量体は、それぞれ独立に35番の及び95番のシステイン間の内部のジスルフィド結合及び141番及び199番のシステイン間の内部のジスルフィド結合が形成されたものである。
【0267】
製造後に逆相クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー及びイオン交換クロマトグラフィーで分析した純度は95%以上であった。
【0268】
ここで、配列番号21の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGリンカーを介して連結された結合体を、「配列番号21と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号21の持続型結合体」と命名した。これらは、本願において混用される。
【0269】
ここで、配列番号22の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGリンカーを介して連結された結合体を、「配列番号22と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号22の持続型結合体」と命名した。これらは、本願において混用される。
【0270】
ここで、配列番号42の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を、「配列番号42と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号42の持続型結合体」と命名した。これらは、本願において混用される。
【0271】
ここで、配列番号43の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を、「配列番号43と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号43の持続型結合体」と命名した。これらは、本願において混用される。
【0272】
ここで、配列番号50の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を、「配列番号50と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号50の持続型結合体」と命名した。これらは、本願において混用される。
【0273】
ここで、配列番号77の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を、「配列番号77と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号77の持続型結合体」と命名した。これらは、本願において混用される。
【0274】
ここで、配列番号96の三重活性体及び免疫グロブリンFcがPEGを介して連結された結合体を、「配列番号96と免疫グロブリンFcとを含む結合体」又は「配列番号96の持続型結合体」と命名した。これらは、本願において混用される。
【0275】
実験例1:三重活性体及びその持続型結合体のin vitro活性の測定
実施例1及び2で製造した三重活性体とその持続型結合体の活性を測定するために、GLP-1受容体、グルカゴン(GCG)受容体及びGIP受容体がそれぞれ形質転換された細胞株を用いて、in vitroで細胞活性を測定する方法を用いた。
【0276】
前記各細胞株は、CHO(chinese hamster ovary)にヒトGLP-1受容体、ヒトGCG受容体及びヒトGIP受容体遺伝子をそれぞれ発現するように形質転換されたものであり、GLP-1、GCG及びGIPの活性を測定するのに適している。よって、それぞれの形質転換細胞株を用いて各部分の活性を測定した。
【0277】
実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体のGLP-1活性の測定のために、ヒトGLP-1を50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1及び2で製造した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前記培養したヒトGLP-1受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。前記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer, USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGLP-1に対する相対力価を表2と表3に示す。
【0278】
実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体のGCG活性の測定のために、ヒトGCGを50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前記培養したヒトGCG受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。前記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer, USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGCGに対する相対力価を表2と表3に示す。
【0279】
実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体のGIP活性の測定のために、ヒトGIPを50nMから0.000048nMまで4倍連続希釈し、実施例1と2で製造した三重活性体とその持続型結合体を400nMから0.00038nMまで4倍連続希釈した。前記培養したヒトGIP受容体を発現するCHO細胞から培養液を除去し、連続希釈した各物質を5μlずつ前記細胞に添加し、次いでcAMP抗体を含む緩衝液を5μlずつ追加し、その後常温で15分間培養した。次に、細胞溶解緩衝液(cell lysis buffer)を含むdetection mixを10μlずつ加えて細胞を溶解させ、常温で90分間反応させた。前記反応が終了した細胞溶解物をLANCE cAMP kit(PerkinElmer, USA)に適用し、蓄積されたcAMPからEC50値を算出し、相互比較した。ヒトGIPに対する相対力価を表2と表3に示す。
【0280】
【表2】




【0281】
【表3】
【0282】
上記で製造した新規な三重活性体持続型結合体は、GLP-1受容体、GIP受容体及びグルカゴン受容体を全て活性化することができる三重活性体として機能を有するところ、肺疾患の治療剤物質として用いることができる。
【0283】
実験例2:三重活性体持続型結合体の肺における炎症改善効果の確認
前記実施例で製造された本発明による三重活性体持続型結合体が肺における炎症改善効果を奏するか、エラスターゼ(elastase, ELA)が投与されたマウスを用いて確認した。
【0284】
具体的には、C57BL/6マウス(ORIENT Bio, Busan, Korea)にELA0.2U/匹を処理したマウスを賦形剤対照群、配列番号42の持続型結合体(以下、三重活性体持続型結合体;6.5 nmol/kg、Q2D、皮下)投与群、抗炎症剤でCOPD治療剤であるロフルミラスト(roflumilast)(10 mg/kg、QD、経口)投与群に分け、3週間反復投与を行った。その後、賦形剤、三重活性体持続型結合体及びロフルミラスト投与による肺組織内炎症性サイトカインの発現変化の程度をqPCRを通じて確認した。統計処理は1元ANOVAを用いて三重活性体持続型結合体の効能を評価した((*~**p<0 .05~0.01)。
【0285】
その結果、三重活性体持続型結合体の反復投与時に、賦形剤対照群及びロフルミラスト投与群比、肺組織内IL-1β、IL-6、IL-12、そしてTNF-α発現が有意で同等以上にそれぞれ減少したことを確認した(図1)。
【0286】
これを通じて本発明の三重活性体持続型結合体が肺における炎症を抑制し、改善する効果を奏する事実を確認した。
【0287】
実験例3:三重活性体持続型結合体の肺気腫及び慢性閉塞性肺疾患の治療効果の確認
本発明者らは三重活性体持続型結合体が代表的な肺疾患であるとともに、肺炎症による疾患である肺気腫と慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療効果をin vivoで示すことができるのか確認することにした。
【0288】
そのために、エラスターゼの器官内(intratracheal)投与により肺組織を損傷させ、慢性閉塞性肺疾患が誘発された動物モデルを用いた。具体的には、C57BL/6マウス(ORIENT Bio, Busan, Korea)にエラスターゼを0.2U/匹で処理したCOPDマウスを賦形剤対照群、三重活性体持続型結合体(6.5 nmol/kg、Q2D、皮下)投与群、ロフルミラスト(10 mg/kg, QD、経口)投与群に分け、3週間反復投与を行った。3週間反復投与後に剖検により各マウスの肺組織を取り、H&E stainingを通じて肺組織の肺気腫の程度を評価した。
【0289】
その結果、三重活性体持続型結合体を反復投与時に、賦形剤対照群及びCOPD治療剤として知られているロフルミラスト投与群に比べて優れた肺気腫の改善効能を確認することができた((*~**p<0 .05~0.01)(図2)。
【0290】
これを通じて本発明の三重活性体持続型結合体は肺組織内炎症及び肺気腫改善効果を奏し、これを通じて慢性閉塞性肺疾患に対して優れた治療効能を有することを確認した。
【0291】
実験例4:三重活性体持続型結合体の肺線維化の改善効果の確認
前記実施例で確認した肺組織内炎症の改善効果に加えて、本発明による三重活性体持続型結合体が肺線維化の改善効果も有するか確認することにした。これに、肺線維化の過程に重要であると知られている肺線維芽細胞(lung fibroblast)の筋線維芽細胞(myofibroblast)への分化及び肺胞上皮細胞(alveolar epithelial cell)の上皮間葉移行(epithelial mesenchymal transition, EMT)に及ぼす影響を確認するために肺線維芽細胞であるMRC5細胞株と肺胞上皮細胞であるA549細胞株を用いた。
【0292】
実験例4-1:肺線維芽細胞の筋線維芽細胞分化抑制効果の確認
まず、肺線維芽細胞であるMRC5細胞を賦形剤(vehicle)処理群と三重活性体持続型結合体の処理群に分け、筋線維芽細胞への分化を誘導するためにTGF-β1を同時処理した。陰性対照群としてはTGF-β1及び三重活性体持続型結合体をいずれも処理していない群を用いた。
【0293】
48~72時間同時処理後、それぞれの群において筋線維芽細胞分化マーカーであるα-SMA、collagen1α1及びフィブロネクチン(fibronectin)の発現程度を定量的(quantitative)PCRを通じて確認した。統計処理は1元ANOVAを用いて三重活性体持続型結合体の効能を評価した。((*~** p <0 .05~0.01)
【0294】
その結果、三重活性体持続型結合体をTGF-β1と同時処理時に、筋線維芽細胞分化マーカーの発現が賦形剤処理群に比べて減少したことを確認した(図3)。
【0295】
実験例4-2:肺胞上皮細胞の上皮間葉移行(EMT)抑制効果の確認
次に、A549細胞を賦形剤処理群と三重活性体持続型結合体の処理群に分けて前処理した後、TGF-β1及びLPSを順次処理してEMTを誘導した。陰性対照群としては三重活性体持続型結合体、TGF-β1、及びLPSをいずれも処理していない群を用いた。
【0296】
48時間後、それぞれの群においてEMTマーカーであるcollagen1α1及びcollagen3α1の発現程度を定量的PCRを通じて確認した。統計処理は1元ANOVAを用いて三重活性体持続型結合体の効能を評価した。(*~*** p <0 .05~0.001)
【0297】
その結果、三重活性体持続型結合体前処理時に、肺胞上皮細胞のEMTマーカー発現が賦形剤処理群に比べて有意に減少したことを確認した(図4)。
【0298】
実験例4-3:線維化改善のin vivo効果の確認
前記実施例で製造された三重活性体持続型結合体の肺線維症、特に代表的肺線維症である特発性肺線維症(IPF)改善効能をin vivoで確認するために、ブレオマイシン(bleomycin, BLM)マウスを用いた。ブレオマイシンは器官内投与時に肺胞上皮細胞のDNAを損傷させることにより上皮間葉移行(epithelial-mesenchymal transition)が発生し、特発性線維化が誘導されることが知られている。また、BLM処理容量を一定レベル以上に増量時に、特発性線維化による深刻な肺損傷により当該マウスの生存率が低下することが知られている。
【0299】
これに、BLMを処理したマウスにおいて三重活性体持続型結合体の肺線維化の改善効果を確認し、さらに肺線維化の改善を通じて生存率を高めることができるかを確認した。
【0300】
C57BL/6マウス(ORIENT Bio, Busan, Korea)にBLM1.5U/匹を処理したIPFマウスを賦形剤対照群、三重活性体持続型結合体(3.9nmol/kg、Q2D,皮下)投与群、ピルフェニドン(pirfenidone;300mg/kgQD,経口)投与群、アンブロキソール(ambroxol;45mg/kg、BID,腹腔)投与群に分け、2週間反復投与を行った。2週間反復投与後に剖検により各マウスの肺組織を取り、肺組織内線維化の程度をマッソントリクローム染色(masson trichrome staining)で評価した。統計処理は1元ANOVAを用いて三重活性体持続型結合体の効能を評価した(*~***p<0 .05~0.001)
【0301】
その結果、三重活性体持続型結合体を反復投与時に、賦形剤対照群及びIPF治療剤として知られているピルフェニドン投与群比、優れた肺組織内マッソントリクローム染色(masson trichrome staining)positivearea減少効能を確認することができた(*~***p<0 .05~0.001)。また、鎮咳去痰剤として知られているアンブロキソールの場合、三重活性体の持続型結合体と同等のレベルの効能を示すことを確認した(図5)。
【0302】
また、C57BL/6マウス(ORIENT Bio, Busan, Korea)にBLM3.0U/匹を処理したIPFマウスを賦形剤対照群、三重活性体の持続型結合体(3.9nmol/kg、Q2D,皮下)投与群、ピルフェニドン(300mg/kg、QD,経口)投与群、アンブロキソール(45mg/kg、BID,腹腔)投与群に分け、2週間反復投与を行い、反復投与中に生存率を確認した。
【0303】
その結果、三重活性体の持続型結合体を反復投与時に、賦形剤対照群、ピルフェニドン投与群及びアンブロキソール投与群に比べて優れた生存率を示すことを確認することができた(図6)。
【0304】
これを通じて三重活性体の持続型結合体が肺線維症又は特発性肺線維症(IPF)に治療効果を奏し、これによる生存率の改善に効能があることを確認した。
【0305】
本発明による三重活性体持続型結合体が肺線維芽細胞の筋線維芽細胞分化及び肺胞上皮細胞のEMTを抑制することにより肺線維化を改善できることを確認しただけでなく、in vivoでも肺線維化の改善効果を通じて肺線維症、特に、特発性肺線維症の予防及び治療に効能を示すことを確認した。
【0306】
総合すれば、前記のような結果は本発明の三重活性体結合体が効果的に肺炎症及び肺線維化の改善を通じて関連した肺疾患を予防又は治療できることを示唆するものであり、新たな肺疾患治療剤として提供され得ることを意味する。
【0307】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、前記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2023510864000001.app
【国際調査報告】