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特表2023-510889バクテリオファージ手段及びバクテリオファージ適用デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】バクテリオファージ手段及びバクテリオファージ適用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/76 20150101AFI20230308BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230308BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230308BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230308BHJP
   A61L 33/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A61K35/76
A61K9/06
A61K9/48
A61K9/00
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/72
A61P31/00
A61P31/04
A61L33/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543126
(86)(22)【出願日】2020-11-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 DE2020100988
(87)【国際公開番号】W WO2021143962
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】102020100725.6
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522281419
【氏名又は名称】ファテック ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】PHATEC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ユンハンス, サイモン フランク
(72)【発明者】
【氏名】グロス, ユストゥス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA11
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA56
4C076CC31
4C081AC02
4C081BA14
4C081CD31
4C081DA01
4C081DA04
4C081DA12
4C081DA15
4C081DB01
4C081DC14
4C087BC83
4C087MA13
4C087MA16
4C087MA27
4C087MA37
4C087MA43
4C087MA57
4C087NA10
4C087ZB32
4C087ZB35
(57)【要約】
本発明は、バクテリオファージ手段、すなわち身体内バクテリオファージ手段、鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段、皮膚バクテリオファージ手段並びにバクテリオファージ縫合糸手段、加えて、2シリンジバクテリオファージ手段、鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段デバイス及びバクテリオファージ感受性試験アプリケーションに関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出-モジュレート可能である滅菌バクテリオファージゲル;又は
ゲルを含む滅菌バクテリオファージ軟カプセル剤;又は
モノフィラメントの加水分解的に分解可能なフィラメント上に若しくは非分解性材料上にゲルを有するバクテリオファージ軟カプセル剤を含む、滅菌軟カプセル鎖;又は
滅菌バクテリオファージスポンジであり、スポンジにバクテリオファージ溶液若しくはバクテリオファージゲルがスプレーされているか、若しくはバクテリオファージゲルがフリーズドライされている、滅菌バクテリオファージスポンジ
として形成されていることを特徴とする、身体内バクテリオファージ手段。
【請求項2】
バクテリオファージ溶液又はバクテリオファージ粉末として形成されていることを特徴とし、
以下のバリアント:
ファージ噴霧デバイスを使用した呼吸器を介する噴霧;
加圧ガス定量噴霧エアロゾルを介する噴霧;
ジェット噴霧器を介する噴霧;
膜噴霧器を介する噴霧;
粉末吸入器を介する噴霧
のうちの少なくとも1つを使用して噴霧可能である、鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段。
【請求項3】
滅菌バクテリオファージ粉末、又は
バクテリオファージゲル若しくはバクテリオファージ粉末を創傷包帯として含む滅菌バクテリオファージスポンジ
として形成されていることを特徴とする、皮膚バクテリオファージ手段。
【請求項4】
モノフィラメント縫合糸材料に、バクテリオファージ溶液又はバクテリオファージゲルが環状にスプレーされているか、
又は
ポリフィラメント縫合糸材料がバクテリオファージ溶液又はバクテリオファージゲルで濡らされており、前記溶液若しくはゲルが前記縫合糸材料上及び/又は接触域中に用意されている
ことを特徴とする、バクテリオファージ縫合糸手段。
【請求項5】
第1のシリンジがバクテリオファージ溶液を用いて調製されており、第2のシリンジがゲルを用いて調製されており、前記2つのシリンジが互いに接続可能であり、前記ゲルと前記バクテリオファージ溶液との混合が可能であり、この混合物がその後、適用の準備の整ったシリンジ中に存在することを特徴とする、2シリンジバクテリオファージ手段。
【請求項6】
異なるゲル及び/又は異なるバクテリオファージ溶液が、互いの異なる組合せのためにストックで保たれ、互いに適宜混合されて専用のバクテリオファージ溶液ゲルを形成することができることを特徴とする、請求項5に記載の2シリンジバクテリオファージ手段。
【請求項7】
バクテリオファージ溶液又はバクテリオファージ粉末が以下のデバイスのうちの少なくとも1つを使用して噴霧可能であり、バクテリオファージ噴霧デバイスが、
噴霧デバイス又は加圧ガス投薬エアロゾルチャンバーを含むベンチレーター;
加圧ガス定量噴霧式エアロゾルアプリケーター、
噴霧チャンバー及びジェット噴霧器又は膜噴霧器を含む容器吸入配置;
加圧ガス定量噴霧式吸入器を含む吸入デバイス;
粉末吸入器
として形成されていることを特徴とする、鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段デバイス。
【請求項8】
バクテリオファージ、細菌栄養液及び染料が容器中に配置され、前記染料が細菌の細胞壁と相互作用することができることを特徴とする、バクテリオファージ感受性試験アプリケーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バクテリオファージ手段、すなわち身体内バクテリオファージ手段、鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段、皮膚バクテリオファージ手段並びにバクテリオファージ縫合糸手段、さらには2シリンジバクテリオファージ手段、鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段デバイス及びバクテリオファージ感受性試験アプリケーション(testing application)に関する。
【背景技術】
【0002】
バクテリオファージ、又は簡潔にはBPH若しくはファージは、宿主細胞としての細菌に特異的であり、すなわち細菌を特異的に冒す、様々な群のウイルスである。これは、宿主、例えば哺乳動物、特にヒトを冒さないであろうことを示す。病原性のファージによる細菌又は他の病原微生物の感染は、溶菌サイクル、及び最終的には細菌の溶解及び崩壊を生じる。内毒素は、外毒素と対照的に、生存している細菌により分泌されないが自己溶解によってのみ放出される細菌の毒素である。
【0003】
ファージには、医学、獣医学、生物学、農学、食物加工、特に遺伝子工学の分野における広範な適用が認められる。例えば、ファージはこれらの宿主特異性に起因して、医学において病原菌を同定するために使用される。細菌感染の治療におけるファージの使用は、ペニシリン及び抗生物質の発見のはるか前に、Felix d’Herelleにより発見された。しかし後に、抗生物質による化学療法の導入に伴い、ファージ療法は非実用的と考えられ、忘れ去られた。複数の抗生物質耐性の発生率の増大に起因して、ヒト医学における抗生物質の代替品としてのバクテリオファージの使用についての集中的な研究が、現在再び行われている。
【0004】
バクテリオファージは自然から得ることができる。この目的のために、水試料、血液試料、スワブ、ヒト若しくは動物の分泌物、又は他の試料が採取され、栄養素プレート(nutrient plate)上に広げられる。これらのプレート(36℃~37℃で24時間)インキュベートすることにより、溶解領域により示されるように、存在しているバクテリオファージが発見される。存在する原核生物を検出することにより、発見したファージがどの細菌に対して溶解性に活性であるかについて最初に述べることができる。
【0005】
精製のために、菌叢中のプラークは切除され、液体の栄養液を含有するスナップキャップ管(snap cap tube)中で少なくとも10分ボルテックスされる。液体の栄養液は除去され、滅菌濾過され、前に適切な微生物を播種した栄養培地プレートに塗布され、さらに24時間36℃~37℃で再インキュベートされる。プラークを再び切除し、記載するように処理する。このサイクルは、存在する単離したファージが1種のファージのクローンのみであることを保証するために、少なくとも5回繰り返すべきである。
【0006】
より大量の1種のファージのファージクローンを産生するために、スナップキャップ管からの滅菌濾過したファージ溶液は、少なくとも5回の精製後に播種したプレート上に置かれ、記載するように再びインキュベートされる。抽出緩衝液は次にプレートに添加され、震盪器により30分、培養培地上で撹拌される。抽出緩衝液は除去され、滅菌濾過され、滅菌ファージ溶液が得られる。
【0007】
バクテリオファージ溶液は、安定剤、例えばCaClを添加することにより安定化することができ、pH調節物質、例えば生理学的に調節されたHCl、CHCOOH、CHCOO-により安定化することができる。一次包装が微生物の浸透に対して保護されていないと示している場合には(おそらくは非滅菌生成物の場合)、保存剤のさらなる添加が指示され得る。保存剤、例えばソルビン酸カリウムが採用される。
【0008】
抗菌剤耐性は、世界中のヘルスケア部門についての重大な問題となっている。数十年の間、全く新しい抗生物質の研究に対しては十分な取り組みがなされず、結果として市場にはごく僅かな手段しか現れなかった。それ以来、難しい病原菌により引き起こされる感染を減少させるための新たな有効な概念を行うための労力が非常に増大している。政治家はこの必要性を認識しており、大規模な資金援助プログラムが国家的に且つ国際的に開始されている。多数の公的資金による手段の基幹は、効果が新たな機構及び/又は耐性の発現の最小化に基づくものである治療剤を探索及び開発することである。
【0009】
医学的状況では、異物感染(foreign object infection)は合併症及び死亡率の増大に関連し、この観点において、現在の及び見込みのある抗生物質療法はその限界に達している。
【発明の概要】
【0010】
代替の抗生物質についての緊急の必要性は、本発明の目的である。
【0011】
ファージは比較的短時間で食細胞により異物として除去されるため、身体内のファージの低い安定性に起因して問題が生じる。
【0012】
本発明の目的は、技術的なバクテリオファージ送達方法、及びバクテリオファージデポーとしても称され、技術的デバイスにより適用することができるバクテリオファージ手段、並びに適切なバクテリオファージ手段を空間時間的に投与可能な方法で適用するための、この目的のための適切な適用デバイスを提供することである。
【0013】
詳細には、目的は、感染治療において、異物並びに異なる凝集状態の同種及び異種の組織に対して、感染予防として、バクテリオファージ及び生物学的に活性なガレヌス組成物を適用することである。
【0014】
別の従属的な目的は、導入されるバクテリオファージの改善を可能とすることである。この二次的な目的は、バクテリオファージと内毒素との併用により解決されるであろう。
【0015】
この目的(複数可)は、本発明によるバクテリオファージ手段/デポー、並びにそれぞれ主請求項及び独立請求項による、バクテリオファージ手段適用デバイス及びバクテリオファージ手段作製方法により解決されるであろう。
【0016】
身体内バクテリオファージ手段は、放出-モジュレート可能である滅菌バクテリオファージゲルとして、又はゲルを含む滅菌バクテリオファージ軟カプセル剤として、又は例えば吸い上げ作用が意図される場合にはモノフィラメントの加水分解的に分解可能な糸上に若しくは非分解性材料上にゲルを含むバクテリオファージ軟カプセル剤を有する滅菌軟カプセル鎖として、又はバクテリオファージ溶液若しくはバクテリオファージゲルをスプレーされるか、若しくはバクテリオファージゲルがゲルのフリーズドライ、例えば凍結乾燥により製造される滅菌バクテリオファージスポンジとして形成される。
【0017】
鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段は、バクテリオファージ溶液又はバクテリオファージ粉末として形成され、上述のバクテリオファージ手段は以下のバリアント、すなわちファージ噴霧デバイスを使用した呼吸器を通した噴霧、加圧ガス定量噴霧式吸入器を使用した噴霧、ジェット噴霧器を使用した噴霧、膜噴霧器を使用した噴霧、又は粉末吸入器を使用した噴霧のうちの少なくとも1つを使用して噴霧可能である。
【0018】
皮膚バクテリオファージ手段は、滅菌バクテリオファージ粉末としてか、又はバクテリオファージゲル若しくはバクテリオファージ粉末を創傷包帯としてか若しくはフリーズドライのバクテリオファージゲルの形態のスポンジとして含む滅菌バクテリオファージスポンジとして、形成される。
【0019】
バクテリオファージ縫合糸手段は、バクテリオファージ溶液又はバクテリオファージゲルを環状にスプレーする方法で形成されたモノフィラメント縫合糸であるか、又はバクテリオファージ縫合糸手段はバクテリオファージ溶液若しくはバクテリオファージゲルで濡らされたポリフィラメント縫合糸であり、ここで溶液又はゲルは縫合糸材料上及び/又は接触域中に用意されている。
【0020】
2シリンジバクテリオファージ手段は、第1のシリンジがバクテリオファージ溶液を用いて調製されており、第2のシリンジがゲルを用いて調製されており、2つのシリンジが、特に接続器を通して互いに接続可能であり、ゲルとバクテリオファージ溶液との混合が可能であり、混合物がシリンジ中で適用のために利用可能となることを特徴とする。本明細書において、ゲル及びバクテリオファージ溶液も、必要に応じて適合させることができる。特に、異なるゲル及び/又は異なるバクテリオファージ溶液は、互いに異なる組合せのためにストックで保たれ、互いに適宜混合されて個別の(indivitwo)バクテリオファージ溶液ゲルを形成することができる。
鼻咽頭及び肺バクテリオファージ手段送達デバイスは、バクテリオファージ溶液又はバクテリオファージ粉末が以下のデバイスのうちの少なくとも1つを使用して噴霧可能であり、バクテリオファージ噴霧の配置が(以下のうちの1つの少なくとも1つのバリアント実施形態):
噴霧デバイス又は加圧ガス投薬エアロゾルチャンバーを含むベンチレーターデバイス;
加圧ガス定量噴霧式吸入アプリケーター;
噴霧チャンバー及びジェット噴霧器又は膜噴霧器を含む容器-吸入器配置;
加圧ガス定量噴霧式吸入器を含む吸入デバイス;
粉末吸入器
として形成されていることを特徴とする。
【0021】
バクテリオファージ感受性試験アプリケーションは、バクテリオファージ、細菌栄養液及び染料が容器中に位置し、染料が細菌の細胞壁と相互作用することができることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1のバクテリオファージ適用デバイスの一実施形態の概略図である。
図2】第2の肺バクテリオファージ適用デバイスの一実施形態の概略図である。
図3】バクテリオファージ及び担体材料で適切に充填され、好適な操作デバイスのために設計された硬カプセル剤を示す図である。
図4】身体内バクテリオファージ適用を本明細書に示す、別の適用バリアントの図である。
図5】滅菌バクテリオファージ軟カプセル剤適用を表す、別の適用を示す図である。
図6】バクテリオファージ軟カプセル鎖適用を示す図である。
図7】バクテリオファージスポンジゲル適用バリアントを示す図である。
図8】初期状態で示される、バクテリオファージ感受性試験アプリケーションの一実施形態の概略図である。
図9】試験段階における、図9のバクテリオファージ感受性試験アプリケーションの一例の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、上述の本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0024】
バクテリオファージデポー又はファージ手段若しくはデポーは、それぞれ、少なくとも1つのバクテリオファージ又はファージが身体への導入後の定義可能な期間において安定性を維持するファージ適用として用意されるユニットである。
【0025】
特に、バクテリオファージは、特に関連する非常に低い有害作用のために、細菌性疾患又は炎症又は真菌性疾患の処置及び予防の両方に好適であることが認識されている。宿主の適切な細菌又は真菌への感染が発生した際にのみ活性なバクテリオファージの増殖を伴う作用機序に起因して、宿主生物を傷害しないが制御すべき細菌又は真菌の発生の際に短時間で増殖する少量のバクテリオファージ及び内毒素を、予防的に投与することが可能である。一般的に、高用量のバクテリオファージの投与は、宿主生物、例えば哺乳動物を傷害することなく病原微生物を選択的に溶解するため、急性感染において実現可能である。
【0026】
今まで、内毒素の免疫刺激効果は患者の生物に対して有害作用、例えば温度上昇(発熱)及び無数の他の病態生理学的効果を引き起こし、高用量の内毒素の放出は不可逆的な内毒素ショックさえももたらすことがあると考えられてきた。この理由から、内毒素は今まで、医薬組成物、例えば細菌と闘うように使用されるものにおいては所望されないものであった。内毒素は比較的有害であり少なくともいかなる治療の成功にも関係しないと考えられてきたため、内毒素を有しない手段が適用に好適であると今まで考えられた。対照的に、驚くべきことに、バクテリオファージと組み合わせた内毒素は治療の成功に対する良好な効果を有することが判明した。
【0027】
バクテリオファージと内毒素との併用は、特に創傷治癒において相乗効果をもたらす。これは、多数の炎症性疾患、例えば糖尿病性足病変が、3つの過程、すなわち血管中の変化、神経伝導の変化及び感染に基づくという事実を原因とする。バクテリオファージの適用は感染と闘うことができ、それにより全体の治癒過程を開始させる。追加の内毒素の存在は、全体の治癒過程に対して良好な効果を有する。この良好な効果は、内毒素の免疫刺激特性に基づく。
【0028】
以下に、バクテリオファージ適用の技術的な実現の例を提供する。列挙は、適用の経路に基づく。示される全てのバクテリオファージの適用の目的は、細菌感染の予防及び/又は治療及び/又は最小化のための治療的に活性なバクテリオファージの導入であり、ここで焦点を合わせるのは、治療法手順ではなく、むしろそのために必要とされる生成物/適用である。加えて、バクテリオファージの製造、安定化、又は存在するバクテリオファージへの細菌の感受性の試験に関する技術が提供される。
【0029】
バリアントA-鼻咽頭及び肺バクテリオファージ適用-噴霧のためのバクテリオファージ溶液
肺バクテリオファージ適用は、いくつかの経路を介して行うことができる。3つの主要な経路は、
1.ファージ噴霧デバイスを使用したベンチレーターを介したバクテリオファージ溶液(複数可)の噴霧。
2. a.加圧ガス定量噴霧式吸入器
b.噴霧
b1.ジェット噴霧器
b2.膜噴霧器
を介したバクテリオファージ溶液(複数可)の噴霧。
3.粉末吸入器を介した肺適用
である。
【0030】
選択肢1:
ベンチレーターを介したバクテリオファージの噴霧は、ベンチレーションホースの中間部材として適合され、ベンチレーションフィルターの下流に接続される、ファージ噴霧デバイスを使用して行われる。フラッター弁は、患者がベンチレーションを受けている間、BPHが取り込まれることを可能とする。設定されたベンチレーション圧に起因して、同量のバクテリオファージ溶液がベンチレーション毎に常に適用される。フラッター弁は呼気の間に圧力が逆転することにより閉じるため、いかなるバクテリオファージ溶液も呼気の間に送達されない。BPH溶液とフラッター弁との間には、噴霧の滴径を定義するメッシュが位置する。異なる治療標的及びBPH標的領域のために異なるメッシュを用意することができ、よって異なる滴径を生成することができる。
【0031】
ファージ噴霧デバイスの使用は気流を妨げないため、CO測定並びに他の治療剤の噴霧は、限定されることなく可能である。
選択肢2:
バクテリオファージ溶液は、加圧ガスエアロゾルに好適な容器中に保持される。操作の様式は、一般的に公知の加圧ガスエアロゾルと同様である。
【0032】
他の噴霧器の実施形態では、バクテリオファージ溶液は単回用量で安定な溶液として包装され、吸入の前に適切なデバイス中へと挿入される。
【0033】
バクテリオファージの治療量は、全ての上述の適用様式を通して、環境から密封された方法で吸入されることができる。溶液は、<5マイクロメートルの滴径へと噴霧され、よって、適切な吸入により気管支樹、肺胞まで到達する。
選択肢3:
バクテリオファージは担体材料、例えばラクトースへと適用され、適切な吸入のための原体又は単回用量(カプセル剤、ブリスター剤等)として利用可能となる。吸入デバイスは、以下のように市場で入手可能な粉末吸入器と同様に操作される。
【0034】
デバイスの機構は、カプセル剤、ブリスター剤等を突き刺し、よって粉末を放出するように使用される。粉末は、患者による激しい吸入により、デバイス中で気流に沿うように障害物により渦巻いた後、吸入される。
【0035】
スプレー乾燥
好適な担体材料、例えばラクトースを、バクテリオファージ溶液中に溶解する。スプレー乾燥により、溶液は固体の凝集状態へと再変換される。これにより、固体のアモルファス状態の担体材料が生じる。この状態により、材料はバクテリオファージの放出を伴って細胞外液中に即時に溶解する。
【0036】
適切な担体材料へのバクテリオファージのスプレー
適切なバクテリオファージ溶液をそれぞれの担体材料に適用する別の第2の選択肢はスプレーであり、ここで担体材料は、バクテリオファージ溶液がスプレーされるノズルの下に動かされ輸送される。重要なことには、担体材料は全ての側面から均一な濡れ性を得るために流動する。
【0037】
バリアントB-身体内適用:
1)滅菌バクテリオファージゲル(放出-モジュレート)。
【0038】
滅菌バクテリオファージゲルは、身体内で全ての場所で適用することができる。これは、適切なバクテリオファージ溶液から調製される。
【0039】
ゲルは、いかなる水部分も添加されずにゲルビルダー(gel builder)(例えばHPMC等)により調製及び滅菌され、続いてバクテリオファージ溶液として添加される。異なる材料(PTFE、セラミック、Dacron、チタン等)への接着を改善するために、接着剤物質を添加することができる。バクテリオファージ溶液は滅菌条件下で滅菌濾過され、シリンジ中、滅菌状態で維持される。滅菌ゲルも、滅菌条件下でシリンジ中に保たれる。より良好な保存のために、2つの成分は、適用の直前に外科チームによる2シリンジ技術により混合される。
【0040】
結果として生じたゲルの特性、よってゲルからのバクテリオファージ放出速度は、使用されたゲルビルダーの量により定義される。この理由のために、異なるゲル基剤をシリンジ中に保持する必要がある。バクテリオファージ組成が異なる全てのバクテリオファージ溶液は、2シリンジ技術を使用して全てのゲル基剤と合わせることができる。
【0041】
したがって、外科医は、手術の間にどの粘度/放出及びどのバクテリオファージ組成を適用するかを決定することができる。低粘度のゲルにおける放出は速く、高粘度のバクテリオファージゲルにおける放出は長い期間にわたる。個別のシリンジ(ゲル基剤及びバクテリオファージ溶液のための)は、各々滅菌包装され、必要のあり次第、滅菌状態で滅菌していない外科スタッフへと手渡される。滅菌していないORスタッフは、成分を、2シリンジ技術を使用して所定の期間にわたり混合する。バクテリオファージゲルは、ここで適用の準備が整えられている。
【0042】
他の作製選択肢:
機械的製造を使用して、バクテリオファージ溶液はゲルの最初の部分と混合され、滅菌濾過される。基剤ゲルのモジュレーションは、下流の製造ステップにおいて、滅菌条件下でゲルビルダーを適切に混合することにより達成される;
バクテリオファージ溶液及び基剤ゲルの機械的な滅菌充填。基剤ゲルを、次に最終容器中で滅菌する。組合せは、柔軟に、且つ上述の最初の手動の手順と同様に行う。
【0043】
滅菌バクテリオファージゲルの他の選択肢:
A.バクテリオファージは、均一に埋め込まれる方法でヒドロゲルマトリックス中に分布する。ヒドロゲルからの放出は、水の割合に対するヒドロゲルビルダーの割合により決定されるであろう。生成物は皮膚又は粘膜の細胞と相互作用せず、ヒト生物に対して不活性であり、身体内及び身体外で使用することができ、可能性のあるゲルビルダーには、カルボマー、セルロースエーテル、ゼラチン、アルギネート、ベトニド(betonide)、高分散性シリカが挙げられる。
【0044】
B.ファージは親油性ゲルマトリックス中に埋め込まれる。ヒドロゲルからの放出は、水の割合に対する親油性ゲルビルダーの割合により決定されるであろう。抗菌機構に加えて、生成物は非常に保湿性があり、抗菌療法/予防に加わるものとして、自然の創傷治癒過程を支持する。生成物は特に身体外、特に皮膚に適用することができる。
【0045】
可能性のある親油性ゲル化剤は、特に各々が適切な親油性塩基、例えば鉱物油又は液体のトリグリセリドを有する、高分散性シリカ、アルミニウム石鹸、亜鉛石鹸である。
【0046】
C.バクテリオファージは両親媒性のゲルマトリックス中に埋め込まれる。ヒドロゲルからの放出は、水の割合に対する両親媒性のゲル化剤の割合により決定されるであろう。生成物は、身体外で適用することができる(「B」を参照されたい)。特に、生成物はさらなる加工のためのものである。
【0047】
全てのゲルは、最少侵襲性の方法でシリンジを介して導入することもできる。よって、例えば膿瘍中への経皮的適用も可能である。
【0048】
2)滅菌バクテリオファージ軟カプセル剤
第1に、ゲルは上記のように調製される。ここでは、最終生成物、すなわち「最終ゲル」が調製される点が異なる。次に、粘度、BPH含有量及びBPH組成が自由に変動し得るこのゲルは、ロータリーダイプロセス、落下プロセス(dropping process)又は軟カプセル剤を生成するための他の好適な技術的プロセスを使用して、軟カプセル剤中へと滅菌充填される。例えば、ゼラチンはカプセル材料として考えられる。カプセル材料は、要件に従って選択される。適用可能な要件は、放出速度及び治療の範囲であることができる。より低粘度の形態は、体液及び体温の存在下ではより急速且つより強力に液化し、よって適用部位からの低粘度の形態の流出はより強力であり、より広い範囲にわたることが、本明細書において意味される。BPH製剤が適用部位に保持される可能性がより高い場合、体温及び体液によってはあまり急速に液化せず、よってより長期間適用部位に残留する、より高粘度の形態が使用されるべきである。さらに、カプセルシェルの厚さ及びカプセル自体のサイズも、プロセスにより変動することができる。
【0049】
3)滅菌軟カプセル鎖
上記のように、軟カプセル剤は必要に応じて作製される。適切な作製の後、カプセル剤は、モノフィラメントの加水分解的に分解可能な糸上に、その間を一定の距離で取り付けられる。これは、体腔内でさえも、手術中の適用を可能とする。例えば吸い上げ効果を伴う適用のために、カプセル剤は非分解性の材料上に取り付けられる。
【0050】
4)滅菌バクテリオファージスポンジ
既に示されたゲルが、ベースとしての役割を有する。これらは、影響を与えるパラメーターの正確な調節及び制御下で、且つ滅菌条件下でフリーズドライ(=凍結乾燥)される。さらに、適切なゲルからの固体のバクテリオファージ適用の作製のために、任意の乾燥選択肢が可能である。
【0051】
a.フリーズドライの後、ファージは固体のマトリックス中に埋め込まれる。放出は放射状の様式で、すなわち外側から内側に生じ、持続放出機構に対応する。放出は、水の割合に対するゲルビルダーの割合により決定されるであろう。
【0052】
b.バクテリオファージは、ここでは固体の親油性ゲルマトリックス中に埋め込まれる。放出は放射状、すなわち外側から内側であり、これは持続放出機構に対応する。放出は、水の割合に対するゲルビルダーの割合により決定されるであろう。
【0053】
c.バクテリオファージは、ここでは固体の両親媒性ゲルマトリックス中に埋め込まれる。放出は放射状、すなわち外側から内側であり、これは持続放出機構に対応する。これは、水の割合に対するゲルビルダーの割合により決定されるであろう。
【0054】
このガレヌス形態は、抗生剤の持続放出を生じる。放出速度は、表面積の体積に対する比により決定されるであろう。さらに、適切なゲルマトリックスを安定剤として支持するために、コラーゲン繊維を出発ゲルに添加することができる。
【0055】
バリアントC-皮膚バクテリオファージ適用/創傷包帯
滅菌バクテリオファージ粉末
バクテリオファージ生成物、例えば吸入のためのバクテリオファージ粉末は滅菌状態で製造され、湿気から保護された緊密に密封した外部包装中に保たれる。この生成物は、滲出液を出す創傷、例えば火傷に特に好適である。
【0056】
創傷包帯としての滅菌バクテリオファージスポンジ
前に説明したバクテリオファージスポンジに適切である。バクテリオファージスポンジは、寸法がスポンジの寸法を超える接着性マトリックス/接着性層で覆われる。これらの接着性縁は、例えば接着剤成分としてのポリアクリルアミドからなり、健康な皮膚への適応機構としての役割を有する。
【0057】
バリアントD-バクテリオファージ縫合糸材料
縫合糸作製では、例えば、縫合糸材料を緩めるために、モノフィラメント縫合糸材料は作製に続けて35℃の最大温度まで再加熱されることができ、さらなる熱の適用を使用して、縫合糸はバクテリオファージ溶液又はバクテリオファージゲルを環状にスプレーされ、バクテリオファージ溶液は次に冷却プロセスの間に吸収される。
【0058】
ポリフィラメント縫合糸材料、すなわち1種を超えるフィラメントからなる縫合糸材料の場合、溶液又はゲルは個別のフィラメントの接触域中に定着し、その後の冷却作用下で縫合糸材料上に残留するため、加熱は適用されず、バクテリオファージ溶液又はバクテリオファージゲルでのスプレーのみが適用される。
【0059】
作製にかかわらず、任意の縫合糸材料は適切なゲル中に入れて包装され、よって、保存の間全体を通してゲルがフィラメントを包むこともできる。
【0060】
特に加水分解的に切断可能な縫合糸材料の場合、ゲルが親油性ゲルビルダーを含むこと、及びゲル生成のためのファージがW/Oエマルション中に存在することを保証するために、特別なケアが行われなければならない。バクテリオファージ溶液は、油により捕捉された水を提供する。このW/O形成は、ミセル又は乳化剤を活用して行うことができる。
【0061】
以下に、バクテリオファージ適用の技術的な実現の例を提供する。これらは、適用の経路に基づく。示される全てのバクテリオファージの適用の目的は、細菌感染の予防及び/又は最小化のための治療的に活性なバクテリオファージを導入することである。加えて、バクテリオファージの回収、安定化、又は存在するバクテリオファージへの細菌の感受性の試験を容易とする技術が提供される。
【0062】
本発明の例の実施形態を、図面の説明において添付の図面を参照しながら詳細に説明し、図面に示されていない追加の実施形態を以下に示す。これらの実施形態は本発明を説明するためのものであり、限定であるようには意図されない。
【0063】
図1は第1の適用の一例の実施形態の概略図であり、ここで肺及び気道に使用される肺バクテリオファージ適用が示され、噴霧のためのバクテリオファージ溶液が肺バクテリオファージ適用デバイスを通して提供される。
【0064】
この観点において、肺バクテリオファージ適用は、使用者の気道に対して直接保持されるか又は既存の呼吸器供給デバイスに接続可能であるいくつかの種類の肺バクテリオファージ適用デバイスを使用して行われる。
【0065】
第1の肺バクテリオファージ適用デバイスは、バクテリオファージ溶液(複数可)を呼吸器デバイスにカップリング可能である、加圧ガス定量エアロゾルチャンバーを含む。バクテリオファージ溶液は、加圧ガスエアロゾルと適合性である容器中に保持される。
【0066】
図2は、バクテリオファージ溶液(複数可)を呼吸器デバイスにカップリングすることができジェット噴霧器及び/又は膜噴霧器を有する噴霧チャンバーを含む、第2の肺バクテリオファージ適用デバイスを示す。
【0067】
呼吸器を介したバクテリオファージの噴霧は、呼吸管の中間部材として適合され、呼吸器フィルターの下流に接続される、ファージ噴霧デバイスを使用して行われる。バクテリオファージは、患者のベンチレーションの間、フラッター弁により取り込まれる。設定されたベンチレーション圧に起因して、同量のBPH溶液がベンチレーション毎に一定して適用される。フラッター弁は呼気の間に圧力が逆転することにより閉じるため、いかなるバクテリオファージ溶液も呼気の間に送達されない。BPH溶液とフラッター弁との間には、噴霧の滴径を設定するメッシュがある。異なる治療標的及びバクテリオファージ標的領域のために異なるメッシュを用意することができ、よって異なる滴径を生成することができる。ファージ噴霧デバイスは気流を妨げないため、CO測定及び他の治療剤の噴霧は、依然として制限されない。バクテリオファージ溶液は、好ましくは、単回用量で安定な溶液として包装され、吸入の前に適切なデバイス中に添加される。
【0068】
別の肺バクテリオファージ適用デバイス(図面に示さず)は、粉末吸入器を有する。バクテリオファージは担体材料へと適用され、適切な吸入のための原体又は単回用量(カプセル剤、ブリスター剤等)として維持される。吸入粉末吸入器はスプレー乾燥を使用し、それにより好適な担体材料、例えばラクトースを、バクテリオファージ溶液中に溶解する。スプレー乾燥により、溶液を固体の凝集状態へと再変換されると、固体のアモルファスな担体材料状態が生じる。この状態は、細胞外液による材料の即時の溶解を引き起こし、バクテリオファージの放出を伴う。
【0069】
適切なバクテリオファージ溶液をそれぞれの担体材料に適用する別の方法はスプレー式の方法によるものであり、ここで担体材料は、バクテリオファージ溶液がスプレーされるノズルの下に運ばれる。これは、担体材料が流動して全面的な濡れを引き起こすのに特に有利である。
【0070】
上述した全ての肺バクテリオファージ適用は、環境から密封された治療量のバクテリオファージを吸入するのに使用することができる。溶液は、特に5マイクロメートルより小さな滴径で噴霧され、よって、適切に吸入することにより気管支樹、肺胞まで到達する。
【0071】
図3は、バクテリオファージ及び担体材料で適切に充填され、好適な操作デバイスのために設計された硬カプセル剤を示す。
【0072】
図4は別の適用バリアントを示し、ここで身体内バクテリオファージ適用は、バクテリオファージ溶液から、身体内で全ての場所でバクテリオファージ適用デバイスを使用して適用することができる滅菌バクテリオファージゲルを製造することが示される。
【0073】
作製の間、ゲルは、ゲルビルダー、例えばHPMC等を使用して、その後のバクテリオファージ溶液のいかなる水部分も有さずに調製され、滅菌される。異なる材料(PTFE、セラミック、Dacron、チタン、酸化亜鉛等)への接着を改善するための接着剤物質を添加することができる。
【0074】
バクテリオファージ溶液は滅菌条件下で滅菌濾過され、例えばシリンジ中、滅菌状態で維持される。滅菌ゲルは、滅菌条件下で、例えばシリンジ中で維持される。より良好な保存のために、2つの成分は、2シリンジ技術を使用して、適用の直前以降のちょうどよい時に混合される。
【0075】
結果として生じたゲルの特性、及びゲルからのバクテリオファージ放出速度は、使用されたゲルビルダーの量により設定される。この理由のために、異なるゲル基剤は、ストックで、例えばシリンジ中に保たれる。バクテリオファージ組成が異なる全てのバクテリオファージ溶液は、2シリンジ技術を使用して全てのゲル基剤と合わせることができる。
【0076】
ゲルの用意の他の方法は、例えば段階的な手順であり、ここで、自動化された製造を使用して、例えばバクテリオファージ溶液がゲルの第1の部分と混合され、滅菌濾過され、下流の製造ステップにおける滅菌条件下でのゲルビルダーの適切な混合による、このベースとなるゲルのモジュレーションがその後に行われる。
【0077】
さらに、BPH溶液及び基剤ゲルの自動化された滅菌充填を行い、続いて、基剤ゲルを最終容器中で滅菌することが可能である。BPHと基剤ゲルとの接触は、次に必要に応じて行うことができる。
【0078】
その上、機械によりBPH溶液及び基剤ゲルを滅菌充填し、次に基剤ゲルを最終容器中で滅菌することも可能である。BPHと基剤ゲルとの接触は、次に必要に応じて行うことができる。
【0079】
滅菌バクテリオファージゲルを提供する他の方法には、ヒドロゲルマトリックス中に均一に分布したファージを埋め込むことが挙げられる。ヒドロゲルからの放出は、水の割合に対するヒドロゲルビルダーの割合により規定される。生成物は皮膚又は粘膜の細胞と相互作用せず、ヒト生物中に組み込まれ、身体内及び身体外で使用することができるか、又はファージを親油性ゲルマトリックス中に埋め込むことができる。ヒドロゲルからの放出は、水の割合に対する親油性ゲルビルダーの割合により決定されるであろう。抗菌機構に加えて、生成物は非常に保湿性があり、抗菌療法/予防に加えて、本来備わっている創傷治癒過程を支持する。これは身体外、特に皮膚で適用することができ、又はファージを両親媒性のゲルマトリックス中に埋め込むことができる。この場合では、ヒドロゲルからの放出は、水の割合に対する両親媒性のゲルビルダーの割合により決定されるであろう。生成物は、身体外で使用することもできる。
【0080】
全てのゲルは、最少侵襲的な方法でシリンジを介して導入することもできる。例えば膿瘍中への経皮的適用は、ここで初めて可能となった。
【0081】
粘度、放出速度及びBPH組成は、適用の前に即時に調節することができる。より低粘度のゲルにおける放出は速く、高粘度のBPHゲルの放出はより長い期間にわたる。
【0082】
図5は、滅菌バクテリオファージ軟カプセル剤適用を示す別の適用を示し、ここで最初にゲルが製造され、前に記載したゲルとは対照的に、最終生成物をゲルとして既に用意し、すなわちさらなる製造ステップは必要とされない。粘度、バクテリオファージの含有量及び組成が変動し得るこのゲルを、必要に応じて、ロータリーダイプロセス、滴下プロセス又は軟カプセル剤を生成するのに好適な他の技術的プロセスを使用して、軟カプセル剤中に滅菌充填する。例えば、ゼラチンはカプセル材料として使用される。カプセル材料は、要件に従って選択される。適用可能な要件は、放出速度及び治療の範囲であることができる。低粘度の形態は、例えば体液及び体温に起因してより急速且つより強力に液化し、よって適用部位からの低粘度の形態の流出はより強力であり、より広い範囲にわたることが、本明細書において意味される。BPH製剤が適用部位に保持される可能性がより高い場合、体温及び体液によってはあまり急速に液化せず、より長期間適用部位に残留する、より高粘度の形態が使用されるべきである。
【0083】
その上、カプセルシェルの異なる厚さ及びカプセル自体の異なるサイズを、プロセスにおいて使用することができる。
【0084】
バクテリオファージ軟カプセル剤適用は、よって、バクテリオファージデポー又はファージデポーを、それぞれ、少なくとも1つのバクテリオファージ又はファージが、身体への導入後に、時間を定義可能な方法で安定性を保持するファージ適用として用意されるユニットとして提供する。
【0085】
前の実施形態に加えて、図6は、滅菌バクテリオファージ軟カプセル鎖適用が提供される別の適用を示す。バクテリオファージ軟カプセル剤適用におけるように、軟カプセル剤は適切な要件に従って調製される。適切な作製に続けて、カプセル剤は、特にモノフィラメントの加水分解的に分解可能な糸上に、互いに一定の距離で取り付けられる。カプセル剤は、体腔内でさえも、手術の間の適用を可能とする。
【0086】
図7は、バリアントのバクテリオファージスポンジゲル適用を示す図である。別の適用は、既に示されたゲルをベースとする滅菌バクテリオファージスポンジゲル適用を示す。これらは、影響を与えるパラメーターの精密な調節及び制御下で、且つ滅菌条件下でフリーズドライ/凍結乾燥される。さらに、適切なゲルからの固体のバクテリオファージ適用の製造のために、全ての乾燥選択肢が可能である。
【0087】
ファージは、フリーズドライの後に、固体のマトリックス中に埋め込まれているか、ここでは固体の親油性ゲルマトリックス中に埋め込まれているか、又はバクテリオファージスポンジゲル適用としてここでは固体の親油性ゲルマトリックス中に埋め込まれている形態で用意することができる。各場合では、放出は、外側から内側への放射状である。放出は持続放出機構に対応する。放出は、水の割合に対するゲルビルダーの割合により決定されるであろう。
【0088】
このガレヌス形態は、抗生剤の持続放出をもたらす。放出速度は、表面積の体積に対する比により決定されるであろう。さらに、対応するゲルマトリックスを安定剤として支持するために、コラーゲン繊維を出発ゲルに添加することができる。
【0089】
図8及び図9は、バクテリオファージ感受性試験アプリケーションを示し、ここで容器は適切なバクテリオファージ、細菌栄養液(液体)及び細菌の細胞壁と相互作用する染料を保持する。相互作用する場合、染料は、A.目視可能である。/染料は、B.無色である。試料、例えばスワブ(サンプラーはセット中に含まれる)は、試験試料として容器中に直接入れられる。染料は細菌と相互作用し、A.目視可能である/B.目視可能でない。試験物は、12時間~24時間、36℃でインキュベートされる。この後、存在するBPHに対する細菌の感受性は、溶液がA.あまり強力には染色されない/B.染色されるという点で示される。
他の適用:
バクテリオファージ適用の列挙は、網羅的ではない。バクテリオファージ適用の組合せを提供することもでき、材料を使用前にバクテリオファージ適用でコーティングし、よってさらなる適用を生成することができる。
【0090】
特定のファージ適用について特に特筆すべき適用例は、補綴学である。
【0091】
今日でさえ、プロテーゼ感染は再建手術の最も重篤な合併症のうちの1つを表す。特に大動脈が冒されているプロテーゼ感染は、多くの場合致死的な経過を有し、特にこの技術分野は、非常に複雑であるだけでなく、使用された多数のプラスチックプロテーゼに起因する合併症を特に生じやすい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】