IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フロレオン−トランスフォーミング パッケージング リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】ポリ乳酸耐燃性ブレンド
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20230308BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C08L67/04
C08K3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543656
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 GB2021050094
(87)【国際公開番号】W WO2021144584
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】2000678.9
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513224434
【氏名又は名称】フロレオン-トランスフォーミング パッケージング リミテッド
【住所又は居所原語表記】AURA INNOVATION CENTRE,BRIDGEHEAD BUSINESS PARK,MEADOW ROAD HESSLE HU13 0GD UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ギル,アンドルー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB01X
4J002BP01X
4J002CF00X
4J002CF03X
4J002CF05X
4J002CF18X
4J002CF19W
4J002CF19X
4J002CF19Y
4J002CK02X
4J002CL00X
4J002CL01X
4J002CL03X
4J002CL09X
4J002DE076
4J002DE146
4J002DE186
4J002DE238
4J002DH036
4J002DJ047
4J002DJ048
4J002DL008
4J002EP027
4J002EW066
4J002EW156
4J002FD018
4J002FD136
4J002FD207
4J002FD20Y
4J002GM00
4J002GQ01
(57)【要約】
難燃剤に加えて、衝撃強度及び/又は流動性改質剤を有する、PLAを含有するブレンド。前記ブレンドは、UL94の耐燃性においてV0認証を達成することが出来る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸(PLA);
ブチレンアジパート・テレフタラートコポリマー(PBAT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ブチレンサクシナート・アジパートコポリマー(PBSA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及び熱可塑性エラストマーのいずれか1つ又は組み合わせから選択される衝撃強度及び/又は流動性改質剤;及び
難燃剤を含む耐燃性ブレンド。
【請求項2】
前記難燃剤が、
有機ハロゲン化合物;及び
有機リン化合物のいずれか1つ又は組み合わせを含む、請求項1記載のブレンド。
【請求項3】
前記難燃剤が、
無機質ベースの材料;
ポリリン酸アンモニウムのいずれか1つ又は組み合わせを含む、請求項1記載のブレンド。
【請求項4】
前記難燃剤が、
アルミニウムジエチレンホスホナート;
水酸化アルミニウム;
水酸化マグネシウム;
ポリリン酸メラミン;
ジヒドロオキサホスファフェナントレン;
スズ酸亜鉛;
ヒドロキシスズ酸亜鉛のいずれか1つ又は組み合わせを含む、請求項1記載のブレンド。
【請求項5】
前記難燃剤が、15から35;15から30;8から25;15から25;10から30又は18から22重量%で存在する、請求項1~4のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項6】
前記衝撃強度及び/又は流動性改質剤が、5から40;5から25;8から20又は8から18重量%で含まれる、請求項1~5のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項7】
前記衝撃強度及び/又は流動性改質剤が、PBAT、PCL、又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)を含む、請求項1~6のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項8】
核形成剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項9】
前記核形成剤が、
タルク;
ポリ-D-ラクチド;
エチレンビスステアリン酸アミド(EBS);
芳香族スルホン誘導体;
有機核剤;
無機質ベースの粒子のいずれか1つ又は組み合わせを含む、請求項8記載のブレンド。
【請求項10】
前記核形成剤が、0.1から25;0.1から20;0.1から10;0.1から5;0.5から10;2から8又は4から8重量%で含まれる、請求項8又は9記載のブレンド。
【請求項11】
溶融強度及び安定性改質剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項12】
前記溶融強度及び安定性改質剤が、オリゴマー鎖延長剤であるアクリルベースの材料を含む、請求項11記載のブレンド。
【請求項13】
前記溶融強度及び安定性改質剤が、0.1から5;0.1から3.5;1から4又は1.5から3.5重量%で含まれる、請求項11又は12記載のブレンド。
【請求項14】
補強用充填剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項15】
前記補強用充填剤が、
無機質ベースの充填剤、
炭酸カルシウム、
タルク、
ガラス繊維、
ケイ酸塩、
カルシウムイノケイ酸塩材料のいずれか1つ又は組み合わせを含む、請求項14記載のブレンド。
【請求項16】
前記補強用充填剤が、1から30重量%;2から25重量%;2から20重量%又は5重量%から20重量%の重量%で含まれる、請求項14又は15記載のブレンド。
【請求項17】
前記難燃剤が、APP及び/又はメラミン;封入されたAPPを含むか;ならびに/あるいは、前記衝撃強度及び/又は流動性改質剤が、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、PBAT又はPBAT及びPCLを含む、請求項1記載のブレンド。
【請求項18】
前記PLAが、
50重量%;55重量%;60重量%;65重量%;70重量%以上含まれるか;あるいは
前記PLAが、
40から80重量%;50から70重量%;55から65重量%;28から86重量%;43.5から73.5重量%又は45.5から71.5%重量%で含まれる、請求項1~17のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項19】
前記熱可塑性エラストマーが、
スチレン系ブロックコポリマー;
ポリオレフィンエラストマー;
加硫物;
ポリウレタン;
ポリエステルコポリマー;
ポリアミド;
ポリエーテルブロックアミド(PEBA);
ナイロンのいずれか1つ又は組み合わせである、請求項1~18のいずれか一項記載のブレンド。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項記載のブレンド;及び
充填剤
相溶化剤
加工助剤のいずれか1つ又は組合せを含む難燃剤組成物。
【請求項21】
前記充填剤が、
無機質ベースの充填剤、
炭酸カルシウム、
タルク、
ガラス繊維、
ケイ酸塩、
カルシウムイノケイ酸塩材料のいずれか1つ又は組合せを含む、請求項14記載の組成物。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか一項のブレンド又は組成物を含む物品。
【請求項23】
プラグ(栓);
瓶;
食品を入れる容器;
包装用品;
押出された異形材;
電子装置のための筐体;
ラップトップ、電子タブレット又はスマートフォンの筐体である、請求項22記載の物品。
【請求項24】
ポリ乳酸;
ブチレンアジパート・テレフタラートコポリマー(PBAT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ブチレンサクシナート・アジパートコポリマー(PBSA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及び熱可塑性エラストマーのいずれか1つ又は組み合わせから選択される、衝撃強度及び/又は流動性改質剤;及び
難燃剤を含む出発材料から、材料バッチを調製すること;
材料バッチを加熱して、加熱した溶融物を形成すること;
加熱した溶融物を冷却して、前記ブレンドを形成することを含む、ブレンドを製造する方法。
【請求項25】
前記加熱工程が、150℃から230℃の範囲の温度で加熱することを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記加熱工程が、材料バッチを押出機に通して、押出されたストランドを形成することを含み;及び
前記冷却工程が、押し出されたストランドを水浴中に通すことを含む、請求項24又は25記載の方法。
【請求項27】
前記材料を加熱する前に、前記材料バッチを混合することを更に含む、請求項24~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
請求項24又は27のいずれか一項記載の方法によって製造される耐燃性ブレンド。
【請求項29】
請求項1~19の前記ポリマーブレンド又はポリマー組成物を、
押出;
射出成形;
ブロー成形;
熱成形のいずれか1つ又は組み合わせによって加工する工程を含む、
プラスチック製品を製造するためのポリマー加工の方法。
【請求項30】
請求項24~27のいずれか一項記載の方法で得られた前記ブレンドを金型に入れること;
金型及び/又はブレンドを加熱すること;及び
前記ブレンドを冷却して前記物品を得ることを含む、物品を製造する方法。
【請求項31】
請求項24乃至27のいずれか一項の方法で得られた前記ブレンドを押出機に入れること;
ダイを通して前記ブレンドを押出して、異形材を形成すること;及び
前記ブレンドを冷却して、前記物品を得ることを含む、物品を製造する方法。
【請求項32】
前記形成、成形又は押出の工程の後に、前記プラスチック製品又は物品をアニーリングすることを更に含む、請求項29~31のいずれか一項記載のポリマー加工の方法。
【請求項33】
前記アニーリング工程が、結晶化を誘導するために、50℃から140℃又は60℃から130℃の範囲の温度で前記プラスチック製品又は物品を加熱することを含む、請求項32記載のポリマー加工の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐燃性ブレンドに関し、特に、限定的ではないが、難燃性成分を有するポリ乳酸をベースとするブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸(PLA)は、トウモロコシ及びサトウキビなどの毎年再生可能な資源から製造される、リサイクル可能で堆肥化可能な植物ベースのプラスチックである。PLAを製造するための最終的な供給原料は大気中の二酸化炭素であり、これは植物により吸収されて糖に変換される。これらは、発酵に付されて単量体である乳酸を生成し、多数の工程を経てポリマー化され、高分子量のポリ乳酸を生成し得る。したがって、PLAによる二酸化炭素の消費と大気からの分離は、通常化石燃料由来の炭素から製造される慣用のプラスチックのものと比較して、大幅に減少した総体的カーボンフットプリントを有する生産経路をもたらす。
【0003】
PLAが好都合なエコプロファイルを示し、一般に幅広い機械的特性(特に高い引張強度及び弾性率)を有する一方、望ましい製品、例えば電子部品及びケーシングを製造するためのその使用は、その耐燃焼特性により制限されてきた。したがって、加工可能且つ成形可能なプラスチックに要求される様々な他の物理的及び機械的特徴も満足させる一方で、燃焼に対する高い耐性を示すPLAをベースとする材料が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、プラスチック物品、デバイス、容器等の製造における押出、成形等による加工が可能な、耐燃特性を有するPLAをベースとする材料を提供することである。
【0005】
本発明の更なる具体的な目的は、難燃特性及び所望の衝撃強度を有するPLAをベースとする材料を提供することである。本発明の具体的な目的は、所望の溶融粘度を有する耐燃性のPLAをベースとする材料を提供することである。本発明の更なる具体的な目的は、UL94(デバイスおよび器具用プラスチック材料の燃焼テスト基準(Standard for tests for flammability of plastic materials for parts in devices and appliances)などのプラスチック材料のための標準的な燃焼性試験にしたがって試験したときV0等級を達成する、自己消火性であり、燃焼滴下を示さないPLAをベースとする材料を提供することである。本発明の具体的な目的は、従来の成形方法及び押出方法によって製造することができる耐燃性のPLAをベースとする材料を提供することである。
【0006】
したがって、本発明の1つの態様では、ポリ乳酸(PLA);ブチレンアジパート・テレフタラートコポリマー(PBAT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ブチレンサクシナート・アジパートコポリマー(PBSA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及び熱可塑性エラストマーのいずれか1つ又は組み合わせから選択される衝撃強度及び/又は流動性改質剤;及び難燃剤を含む耐燃性ブレンドが提供される。
【0007】
任意選択的に、前記ブレンドは、50重量%;55重量%;60重量%;65重量%;70重量%以上のPLAを含むか;又は、ここで、PLAは、40から80重量%;50から70重量%;55から65重量%;28から86重量%;43.5重量%から73.5重量%又は45.5重量%から71.5重量%で含まれる。
【0008】
任意選択的に、前記難燃剤は、有機ハロゲン化合物;及び/又は有機リン酸系化合物
を含み得る。任意選択的に、前記難燃剤は、無機質ベースの材料及び/又はポリリン酸アンモニウムを含み得る。任意選択的に、前記無機質ベースの材料は、ハイドロマグネサイトなどの炭酸マグネシウム無機質及び/又はハンタイトなどの炭酸塩無機質を含み得る。任意選択的に、前記無機質ベースの材料は、無水炭酸塩無機質又はドロマイト(ドロストーン)などの炭酸カルシウムマグネシウムを含み得る。
【0009】
任意選択的に、前記難燃剤は、アルミニウムジエチレンホスホナート;水酸化アルミニウム;水酸化マグネシウム;メラミンポリホスホナート;ジヒドロオキサホスファフェナントレン;スズ酸亜鉛;ヒドロキシスズ酸亜鉛のいずれか1つ又は組み合わせを含み得る。
【0010】
好ましくは、前記難燃性成分は、分解及び/又はポリ乳酸などの他の成分ブレンドとの反応が可能な膨張剤であって、火炎に暴露されると、絶縁層を形成し、更なる燃焼を防止する。好ましくは、前記難燃剤は、ポリリン酸アンモニウム(APP)を含む。PLAブレンド内への難燃剤の組み込みは、特定の実施形態において、PLAの分解(鎖切断としても知られる)を増加又は促進する可能性があることが確認されており、そのことは、衝撃強度及び溶融粘度を低下させ、加工の難しさの原因となりリサイクルを阻害し、そしてUL94の下での試験時に燃焼滴下の可能性を増加させる。したがって、前記ブレンドは、衝撃強度及び/又は流動性改質剤を含む。そのような改質剤は、UL94試験中の燃焼滴下に対する耐性を損なうことなく、衝撃強度を高めるのに有効である。したがって、本ブレンドは、(PLAブレンドの一部として)難燃剤と組み合わせた衝撃強度及び/又は流動性改質剤を含む。本ブレンドは、UL94-V0認証(燃焼滴下なし)を提供する自己消火性であり、従来の成形を介した加工(すなわち射出成形)及び/又は押出法による加工に好都合である。本ブレンドはまた、未改質又は未加工/原料PLAと同等又はそれ以上の衝撃特性に加えて、所望の溶融安定性も含む。
【0011】
任意選択的に、前記ブレンド内の難燃性成分は、重量%で15から35;15から30;8から35;15から25;10から30又は18から22で有り得る。
【0012】
任意選択的に、前記衝撃強度及び/又は流動性改質剤は、重量%で5から40;5から25;8から20又は8から18で含み得る。
【0013】
好ましくは、前記衝撃強度及び/又は流動性改質剤は、PBAT、PCL、又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)を含む。
【0014】
任意選択的に、前記ブレンドは、核形成剤を更に含み得る。任意選択的に、前記核形成剤は、タルク;ポリ-DL-ラクチドとも呼ばれるポリ(D-乳酸);エチレンビスステアリン酸アミド(EBS);芳香族スルホン誘導体;無機質ベースの粒子又は有機の核剤のいずれか1つ又は組み合わせを含み得る。有利には、前記核形成剤は、結晶化を介してブレンドの耐熱性を改善する一方、耐熱特性への寄与も証明される。任意選択的に、前記核形成剤は、重量%で0.1から25;0.1から20;0.1から10;0.1から5又は1から15で、又は1から9重量%;1.5から8.5重量%;2から8重量%又は4から8重量%で含有され得る。
【0015】
任意選択的に、前記ブレンドは、溶融強度及び安定性改質剤を更に含み得る。好ましくは、前記溶融強度及び安定性改質剤は、オリゴマー鎖延長剤であるアクリルベースの材料を含む。任意選択的に、前記溶融強度及び安定性改質剤は、重量%で0.1から5;0.1から3.5;1から4又は1.5から3.5で含有される。そのような改質剤は、特に押出成形及び射出成形を含む溶融加工中に有利である。前記改質剤はまた、水、腐食及び/又は化学的耐性を増加させることに加えて、前記ブレンドの湿潤及び乾燥での接着性を高めるのに有利であり得る。前記溶融強度及び安定性改質剤は、最終製品/物品の耐久性及び硬度を高めるためにも有益である。
【0016】
任意選択的に、前記ブレンドは、表面摩擦低減成分などの加工助剤を含み得る。そのような添加剤は、スカッフィング及びスクラッチングを低減し、最終物品の包装及び嵌め外しを改善するのに加えて、成形及び押出を介する加工を容易にするように構成される。加工助剤は、PLA又は他のプラスチックベースのブレンドと共に一般的に使用されるワックス、潤滑剤等を含み得る。加工助剤の一例としては、Incromax(商標)100(Croda International plc, Goole, UK)が挙げられる。任意選択的に、前記加工助剤は、0.1から1.0重量%で含有され得る。
【0017】
任意選択的に、前記ブレンドは、少なくとも1つの補強用充填剤を更に含み得る。任意選択的に、前記補強用充填剤は、無機質ベースの充填剤、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ケイ酸塩、カルシウムイノケイ酸塩材料のいずれか1つ又は組合せを含み得る。任意選択的に、前記補強用充填剤は、重量%で1から30重量%;2から25重量%;2から20重量%又は5から20重量%含有され得る。そのような補強用充填剤は、剛性及び耐クリープ性を提供し得る。更に、そのような添加剤は、高温による垂れに対して材料を強化し得る。任意選択的に、前記補強用充填剤は、珪灰石を含み得る。
【0018】
好ましくは、前記PLAブレンドは、APP及び/又はメラミン封入APP;及び/又はポリエーテルブロックアミド(PEBA)、PBAT又はPBAT及びPCLを含む。
【0019】
任意選択的に、前記熱可塑性エラストマーは、スチレン系ブロックコポリマー;ポリオレフィン系エラストマー;加硫物;ポリウレタン;エステルコポリマー;ポリアミド;ポリエーテルブロックアミド(PEBA);ナイロンのいずれか1つ又は組み合わせである。
【0020】
好ましくは、前記ブレンドは、ポリ-DL-ラクチド(PLA);好ましくはポリエーテルブロックアミド(PEBA)である熱可塑性エラストマー;好ましくはポリ-D-ラクチドである核剤;難燃剤及び任意選択的に鎖延長剤を含む。
【0021】
任意選択的に、前記ブレンドは、28から80重量%;43.5から73.5重量%又は45.5から71.5重量%で、ポリ-DL-ラクチドを含む。好ましくは、前記ブレンドは、5から25重量%;8から20重量%又は8から18重量%で前記熱可塑性エラストマー(ポリエーテルブロックアミド)を含む。好ましくは、前記ブレンドは、0.5から10重量%;2から8重量%又は4から8重量%で前記ポリ-D-ラクチドを含む。好ましくは、前記ブレンドは、8から32重量%;10から30重量%又は15から25重量%で、前記難燃剤を含む。任意選択的に、前記ブレンドは、0.5から5重量%;1から4重量%又は1.5から3.5重量%で、前記鎖延長剤を含む。
【0022】
任意選択的に、前記ブレンドは、残余の重量%のポリ-DL-ラクチド(PLA)に加えて、前記熱可塑性エラストマー、前記核剤、前記難燃剤、及び任意選択的に前記鎖延長剤を、本明細書で言及されるそれぞれの濃度で含む。好ましくは、前記残余の重量%は、58から88重量%の範囲、より好ましくは58から62重量%の範囲のいずれかに存在し得る。
【0023】
好ましくは、本ブレンドは、70%、80%又は90%を超える再生可能炭素の含有量及び/又は70%、80%又は90%を超える、バイオベース、再生可能若しくはリサイクル可能なものの含有量を有する前記熱可塑性エラストマーを含む。好ましくは、本ブレンドの大部分の重量%は、生分解性成分から形成されるか、又は生分解性成分を含む。任意選択的に、本ブレンドの少量の重量%成分は非分解性である。任意選択的に、非分解性である本ブレンドの唯一の成分は、熱可塑性エラストマーである。
【0024】
好ましくは、前記ポリ-DL-ラクチドは、前記ブレンド内の大部分の重量%成分である。大部分の重量%成分についての参照は、前記ブレンド内に存在する任意の他の成分の質量/重量の量と比較したポリ-DL-ラクチドの質量/重量の量を包含する。
【0025】
本発明の更なる態様によれば、請求項に記載され且つ本明細書に記載されるブレンド;及び充填剤、相溶化剤、加工助剤のいずれか1つ又は組み合わせを含む難燃性組成物が提供される。
【0026】
好ましくは、前記充填剤は、無機質ベースの充填剤、炭酸カルシウム、タルク、ガラス繊維、ケイ酸塩、カルシウムイノケイ酸塩材料のいずれか1つ又は組合せを含む。
【0027】
本発明の更なる態様によれば、請求項に記載され又は本明細書に記載されるブレンド又は組成物を含む物品が提供される。任意選択的に、前記物品は、プラグ(栓);瓶;食品を入れる容器;包装用品;押出された異形材;電子装置のための筐体;又はラップトップ、電子タブレット又はスマートフォンの筐体で有り得る。
【0028】
本発明の更なる態様によれば、ポリ乳酸;ブチレンアジパート・テレフタラートコポリマー(PBAT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリブチレンサクシナート(PBS)、ブチレンサクシナート・アジパートコポリマー(PBSA)、ポリヒドロキシアルカノアート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)及び熱可塑性エラストマーのいずれか1つ又は組み合わせから選択される衝撃強度及び/又は流動性改質剤;及び難燃剤を含む出発材料から材料バッチを調製すること;前記材料バッチを加熱して加熱した溶融物を形成すること;及び加熱した溶融物を冷却して、前記ブレンドを形成することを含む、製造方法が提供される。
【0029】
任意選択的に、前記加熱工程は、150℃から230℃の範囲の温度で加熱することを含む。任意選択的に、前記加熱工程は、押出機を通じて前記材料バッチを通し、押出ストランドを形成することを含む加熱工程;押出ストランドを水浴中に通すことを含む冷却工程を含む。
【0030】
好ましくは、前記方法は、前記材料を加熱する前に前記材料バッチを混合することを含む。
【0031】
本発明の更なる態様によれば、請求項に記載され且つ本明細書に記載される方法により製造される耐燃性ブレンドが提供される。
【0032】
本発明の更なる態様によれば、押出;射出成形;ブロー成形;熱成形のいずれか1つ又は組み合わせによって、請求項に記載され且つ本明細書に記載されるポリマーブレンド又はポリマー組成物を加工する工程を含む、プラスチック製品を製造するためのポリマー加工方法が提供される。
【0033】
本発明の更なる態様によれば、本明細書に記載され且つ請求項に記載される方法から得られたブレンドを金型に配置すること;金型及び/又は前記ブレンドを加熱すること;及び前記ブレンドを冷却して物品を得ることを含む、物品を製造する方法が提供される。
【0034】
本発明の更なる態様によれば、本明細書に記載され且つ請求項に記載される方法から得られた前記ブレンドを押出機に配置すること;前記ブレンドを、ダイを通して押出し、異形材を形成すること;及び前記ブレンドを冷却して物品を得ることを含む、物品の製造方法が提供される。
【0035】
本発明の更なる態様によれば、形成、成形又は押出の工程の後に、前記プラスチック製品又は物品をアニーリングすることを更に含む、請求項に記載され且つ本明細書に記載されたポリマー加工により物品を製造する方法が提供される。
【0036】
任意選択的に、前記アニーリング工程は、結晶化を誘導するために、50℃から140℃又は60℃から130℃の範囲の温度で、前記プラスチック製品又は物品を加熱することを含む。
【0037】
1つの好ましい実施形態では、本ブレンドは、55から59重量%のPLA;18から22重量%のPBAT及び20から24重量%のAPP又はメラミン封入APPなどのAPP誘導体(ここで、メラミンは分散を補助すると考えられる)を含み得る。1つの好ましい実施形態では、本ブレンドは、58から62重量%のPLA;10から14重量%のPEBA、18から22重量%の難燃剤、及び任意選択的に0.5から4重量%の鎖延長剤を含み得る。任意選択的に前記難燃剤は、APP又はメラミン封入APPなどのAPP誘導体であり、及び/又は前記鎖延長剤は、エポキシ化スチレン-アクリル共重合体(CESA-Extend(商標))(マスターバッチの形態でClariant Masterbatchesから入手)である。そのような実施形態では、任意の残余はPLAであり得る。任意選択的に本ブレンドは、58から62重量%のPLA;10から14重量%のPEBA、18から22重量%の難燃剤、及び任意選択的に0.5から4重量%の鎖延長剤からなる。任意選択的に、PLAは、Luminy(商標)L105(Total-Corbion(商標), Gorinchem, The Netherlandsにより供給される)で有り得る。PBATは、Kingfa(商標)A400(Guangzhou, Chinaにより供給される)、そしてAPPは、Exolit(商標)AP462(Clariant(商標), Muttenz, Switzerland)により供給される)で有り得る。
【0038】
任意選択的に、本ブレンドがPBT又はPBATを含む場合、これは1から40重量%の間で含まれる。任意選択的に、PBT又はPBATは、20から40重量%の間で含まれ得るが、60重量%までのより高いレベル、及び1重量%に近いより低いレベルで使用することが出来る。
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
【0039】
PLA、衝撃強度及び/又は流動性改質剤及び難燃剤を含むブレンドを調製した。UL94-デバイスおよび機器用プラスチック材料の燃焼テスト基準、にしたがって、様々な組成の可燃性及び耐火性を試験した。
【0040】
実施例
ブレンドの調製
種々のPLAをベースとするブレンドを、表1に示すように調製した。
【表1】
【0041】
高い光学純度を有する射出成形グレードPLA(Total-Corbion(商標)により供給されるLuminy(商標)L105)をベース材料として使用し、2つの異なる難燃剤(Clariant(商標)、Muttenz、Swissにより供給される、メラミン中に封入された微粉化APPベースの難燃剤であるExolit(商標)AP462、及びLKAB Minerals(商標)、Lutea、Swedenにより供給される、ハイドロマグネサイト及びハンタイトの微細粉砕混合物であるUltracarb(商標)LH15)を添加した。これらの混合物に、PBAT(Kingfa(商標)400-PBATの高分子量押出グレード)及びCapa(商標)6250(低分子量ポリカプロラクトン)(Perstorp, Malmo, Swedenにより供給される)を異なる量で添加して、物理的特性を制御し、溶融物中の材料の「濡れ」及び分散を補助した。PLA(Luminy(商標)L105)は、燃焼挙動及び機械特性の比較を提供するために、配合化されていないものを用いた。
【0042】
全ての試験材料(ブレンド1から6)を、二軸押出機を用いて製造した。L:D比が25:1のAPV19mm二軸スクリュー押出機を使用し、供給されたまま使用したPCL(使用時)を除いて、材料を真空下、60℃で24時間乾燥した。全ての材料を乾燥混合し、容積測定フィーダを用いて一定速度でホッパーに直接供給した。供給部で175℃及び後続の混合ゾーン及びダイで180℃の通常の温度プロファイルを使用し、スループット、トルク及びストランドの安定性に応じ、必要に応じて、特定の混合物に応じて若干の変更を加えた。ストランドを冷却水浴に通した後、エアナイフを通過するように通して、水切りを行い、更なる加工のためにペレット化した。
燃焼及び機械的試験
【0043】
材料の機械特性及び耐火性を比較するために、試験片を再び60℃で24時間乾燥し、次にFanuc s-200i 100A射出成形機を用い、表2に示す設定を用いて成形した。
【0044】
UL-94については、特に指示がない限り、限界酸素指数(LOI)及び80×4×10mmの寸法を有する機械的試験(標準引張試験)片をISO178にしたがってゲージ部に調製した。
【表2】
【0045】
可燃性と耐火性を比較するために、上記のように成形された試験片をUL94-V試験法を用いた等級分けのために試験した。要約すると、各材料の試験片を上端から垂直に懸架し、10mmのバーナー火炎を下端から5mm下の距離で45°で10秒間当てた。次にバーナーを取り外し、全ての燃焼持続時間を測定した。サンプルが自己消火したとき、直ちにバーナーを更に10秒間再び当てて除去し、燃焼持続時間を再度記録した。5つの反復サンプルを試験し、合計10回の暴露を用いて、複数の設定された基準、すなわちUL-94V0(任意の試験片の燃焼時間は10秒未満、全サンプルの総燃焼時間が50秒未満、燃焼滴下なし)、94V-1、94V-2及び最後に「分類不能」に対する等級を割り当てた。
【0046】
LOIは、被験物質の燃焼を維持するために必要な最小酸素濃度を測定する試験である。通常の大気中の酸素濃度(21%)を超えると、材料の耐火性の定量的比較を与える、材料の燃焼を維持することが難しくなる。方法の項に記載したバーの寸法をISO4589-2にしたがって試験した。試料を試験チャンバー内の標準ホルダーで支持し、燃焼が自立するまで試験ガス混合物の酸素含有量を徐々に増加させて点火し、点火を支持するために必要な最小酸素量を測定した。
【0047】
材料の引張及び衝撃特性を測定するために、試料を分析前に周辺温度及び湿度で7日間エージングした。最大負荷容量20kNを有するMessphysik BETA 20‐10/8×15引張試験機及びビデオ伸び計データ用のPixelinkモノクロカメラ(310万画素及び95fps)を用いて引張挙動を評価した。
【0048】
Instron Dynatup POE 2000振り子衝撃試験機をIZOD衝撃試験のために用い、ここで射出成形した試料はゲージ部の中央に切欠きを付けた。全ての機械的特性評価手法について、各ブレンド(1から6)につき、5つの試験片を試験した。
【0049】
性能結果
ブレンド1から6に関するUL94及びLOI試験の結果をそれぞれ表3及び表4に示す。提示された結果から、PLA、2成分混合物としてのPLA及びPBAT、ならびにLH15難燃剤を含有する混合物は分類不能であり、これらの材料は「不合格」となったことが分かる。逆に、Exolit(商標)を含有する両方のブレンドは、UL94-V0の等級及び高いレベルの耐火性を示す有意に高いLOI等級を達成した。LOI試験は、通常、試験した4mmの厚さではなく、1.6mmの厚さの試験片で実施されることに注意すべきである。これが試験結果に重大な影響を及ぼすことは予想されず、その結果の傾向はUL94試験の結果と一致して異なる材料間の有用な比較を提供する。
【表3】

【表4】
【0050】
表5に示す引張強度と衝撃強度の結果から、難燃剤を含む材料であっても、全ての材料の衝撃強度が、純粋なPLAと比較して高い衝撃強度を示すことが観察出来る。PLA/PBAT/APPブレンドの衝撃強度は、PCLの添加によって更に増加し、これは、これらのサンプルの燃焼時間の増加によって観察されるように、耐火性に対してわずかに有害であるように見える。しかしながら、その影響はUL94-V0の等級を損なうほど深刻ではない。引張データから、PBATは、特にPLAの引張又は弾性率及び強度を減少させる一方、一般に破断時の歪を増加させることが分かる。PLAは、高強度及び高弾性率を有する材料であるため、製造されたブレンドについては特に懸念されず、わずかに延性の高い製品であることを示している。また、APPの添加によりPLA/PBAT混合物の破断歪が減少することも観察出来る。これは恐らく、APPにより誘導されるPLAの僅かな分解又はAPPとPLAマトリックス間の低い適合性による。しかしながら、これは未だにバランスのとれた引張り強さ、弾性率、衝撃強さ、弾性率を有する材料であることを示す。
【表5】
【0051】
更なるブレンド
種々の更なるブレンドを調製し、ブレンド1から6に関する上記の調製及び方法と一致するように試験した。
【0052】
ブレンド7:高分子量及び光学純度の射出成形グレードのPLA(Ingeo 3260HP)を重量で45.5%の添加レベルで含み、Ultracarb(商標) LH15を30%、Capa(商標)6500(Ultracarb(商標)の靭性及び容易な分散を提供するためのポリカプロラクトンの高分子量グレード)を21%、及びBioPBS FZ91PD(延性を改善するために通常PLAに添加される高分子量押出グレードのポリブチレンサクシネート)を3.5%合わせた。市販の配合化ラインを用い、前記方法で示したものと同様のプロファイルを用いて調製した。
【0053】
ブレンド8:高分子量及び光学純度の射出成形グレードPLA(Ingeo 3260HP)を重量で42%の添加レベルで含み、Ultracarb(商標)LH15の40%、(Ultracarb(商標)の靭性及び容易な分散を提供するための)Capa(商標)6500(ポリカプロラクトンの高分子量グレード)の18%、及びBioPBS FZ91PD(延性を改善するために通常PLAに添加される高分子量押出グレードのポリブチレンサクシネート)の3%を合わせた。市販の配合化ラインを用い、前記方法で示したものと同様のプロファイルを用いて調製した。
【0054】
両方の材料を上記のように成形して、標準試験片を製造し、それらのUL94の等級及び衝撃強度を測定するために試験した。材料の衝撃強さは同等で、ブレンド1から6の範囲内であった。しかしながら、過度の燃焼時間(全燃焼時間17.0及び11.8)のため、UL94-V1等級しか達成できなかった。滴下はなかった。
【0055】
ブレンド9:難燃剤種としてUltracarb(商標)LH15の代わりにExolit(商標)を含有した。PCLは低融点のワックス状物質であり、燃焼を増加させる可能性があるため、PCLの含有量はブレンド7及び8と比較して減量した。チャー形成性を安定化し、樹脂希釈を提供するために、微細タルクも添加した。PCLの減少した量を補償するために、市販の衝撃改質剤(Biostrength 282)を配合に添加して衝撃強度を供給した。
【0056】
ブレンド9の特定の配合は、55%重量のIngeo 3260HP、20%重量のExolitTM AP462、5%重量のCapa(商標) 6500、5%重量のBioPBS FZ91PD、10%重量のBiostrength 282及び5%重量のFinntalc M05SLであった。
【0057】
ブレンド10:PCL含有量をわずかに減量した難燃剤としてUltracarb(商標)LH15を含有し、衝撃強度を維持しながら必要な燃焼時間をわずかに低減することを目的として、更にBiostrength 282及びタルクを添加した。最終配合は:Ingeo 3260HP(37.5重量%)、Ultracarb(商標)LH15(40重量%)、Capa(商標)6500(15重量%)、BioPBS(1重量%)、Biostrength 282(6重量%)及びFinntalc M05SL(0.5重量%)であった。
【0058】
PLAと一般的に使用される標準的アクリル系衝撃改質剤の添加により、両材料はブレンド1から6よりも有意に高い衝撃強度を示し、それぞれ3.43kJ/m及び3.08kJ/mであった。材料の燃焼時間は、それぞれ6.4秒及び35秒であり、単独では、ブレンド9がUL94-V0に対する認証を可能にした。しかしながら、両方のブレンドはUL94-V0の達成を妨げる強い燃焼滴下を示した。
【0059】
更なるブレンド
衝撃性能及び耐熱性を最大にするために、更に一連の配合物を調製した。第1ラウンドの試験では、主成分としてPLA(Ingeo 3260HP、特性及び性質がLuminy L105と同様のPLAの高光学純度射出グレード)を組み合わせて3つの化合物を製造し、衝撃改質剤として非分解性エラストマーを選択した。選択した非分解性エラストマー及び核形成剤(DPLA)を含む更なる化合物を製造した。次いで、この化合物を、選択した難燃剤の添加を通して更に改質して、難燃性生成物を得た。結果を表6に要約する。ブレンド11から14は、比較のためのものであり、難燃性成分を含まなかった。
【0060】
使用した材料
ブレンド11から15については、適切に加工すると結晶化するように設計されている射出成形用ポリ-L-乳酸の高光学純度グレードであるIngeo(商標)3260HP(NatureWorks LLCより入手)を用いて更なる開発を行った。核形成剤Luminy(商標)D070(Total Corbion PLA)として、99.5重量%の光学純度を有するグレードのポリ-D-乳酸を使用した。エラストマー分解性衝撃改質剤として、PBAT(ブチレンアジパート・テレフタラートコポリマー、グレードKingfa(商標)A400)を使用し、非分解性改質剤として、Arkema Inc.から入手可能なPEBAX(商標)2533 SA01(PEBAとも呼ばれるポリエーテルブロックアミド)を使用した。HEXPOL TPE GmbHから共に入手したDryflex Green(商標)OFB 52224 N(再生可能炭素含有量が81%の熱可塑性エラストマー)、Dryflex Green(商標)SC 52273 N(82%のバイオベース含有量を有する熱可塑性エラストマー)、又はGreenflex(商標)ML50(エチレン-酢酸ビニルコポリマー)(Versalis S.P.Aより入手)を、非分解性エラストマー改質剤として使用した。
【表6】
【0061】
非分解性ブレンドの性能結果
試験配合物の衝撃、弾性率及び耐火性を適宜測定し、以前の結果と比較した。結果を表7に示す。全ての場合においてPLAへの非分解性エラストマーの添加は耐衝撃性の増加をもたらし、特に核形成剤として用いたときにDPLAと組み合わせた場合に顕著であった。15%までの添加レベルでのDPLAのPLAとの組み合わせは理解されており、衝撃強度の有意な改善とは関連していない。したがって、本結果はPEBAXとDPLAの併用の驚くべき相乗作用の証拠を提供する。この材料に難燃剤を添加すると、衝撃性能と強度が低下する(Exolit粒子とPLAマトリックスの間の適合性の欠如の結果であると理解される)。しかしながら、以前のブレンド1から6(PBATと組み合わせる)と比較して高いレベルの耐衝撃性が依然として実現される。
【表7】
【0062】
更に最適化したブレンド
次いで、難燃剤の添加によって誘導されるポリマーの任意の分解を防止することを意図して、若干減少した量の難燃剤及び鎖延長剤を組み込んだ、更なる一連の配合物を調製した。試験した配合物(ブレンド16から19)を表8に詳述する。PLA、DPLA及びエラストマー材料(エチレンビニルアセタートコポリマーである、Greenflex ML50)を含む更なる配合も、衝撃性能を比較するために、難燃剤の有無で評価した。EVAを用いた配合化は、PLAの耐衝撃性を増加させる有効な方法として報告されている。PLA、DPLA及びPEBAXの組合せも、この材料がLuminyD070を包含するブレンドと同様の特性を有するかどうかを確認するために、高分子量グレードのDPLA(LuminyD120)を用いて製造した。
【表8】
【0063】
更なる最適化ブレンドの性能結果
難燃剤を22.5%から20%に減量すること、及び鎖延長剤のマスターバッチ(CESA-Extend(商標)を添加することで、UL94-V0の耐火性を維持し、より高いレベルの耐衝撃性を達成できることを見出した。また、EVAを用いた配合化は、難燃剤の有無にかかわらず非改質PLAよりも衝撃強度のわずかな増加を与えるが、これはPEBA及びDPLAを組み込んだブレンドで達成されたものに匹敵しないことを見出した。Luminy D120を組み込んだブレンドはLuminy D070を組み込んだ以前のブレンドと同様な性能を持つことも見出した。衝撃強度と耐火性の結果を表9に示す。
【表9】
【0064】
また、ブレンド19のサンプルを成形し、80℃の空気循環オーブン内の金属トレー上に2時間平らに置いた後、周囲で48時間馴化した後、再び耐衝撃性を試験した。この方法で材料を加熱すると、PLA中に結晶性を誘導することが知られており、PLAマトリックスの性能に基づいて、通常約150℃の熱変形温度の上昇をもたらす。ブレンド19の耐衝撃性を再試験したところ、耐衝撃性が20.45kJ/mに増加し、試験中にサンプルが完全に破壊することなく曲がり始めたことから、破壊機構の変化とより延性のある材料であることが示された。
【0065】
上記の調製及び試験によれば、良好な機械的特性及び好都合な耐燃性を有するPLAをベースとするブレンドが成功裏に達成された。本ブレンドは、電子ケーシング、(例えば、電話充電器のプラグ)、携帯用電力バンク及びバッテリーのプラスチックケーシング及び構成部品、電子歯ブラシ、ラップトップ及びコンピューターケーシング及びコンピューター構成部品、スピーカー、冷蔵庫、テレビ、コーヒーメーカーなどの家電装置のプラスチック構成部品、ならびに自動車内構成部品を含む広範な用途に、耐火性の熱可塑性材料(すなわち成形品)として、又はその内部で使用され得る。
【0066】
本ブレンドは、押出製品、特に家庭用家具、移動式キャラバン、窓枠、自動車パネル、エンドキャップ及びPVC壁部分の間の接合部分、押出PVC壁部分、装飾パネルに使用される異形押出物の製造に使用され得る。本ブレンドは、3D印刷製造及び付加製造に使用され得る。
【0067】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、現在記載されている主題が関係する当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0068】
特に明記しない限り、任意に参照される「wt%」は、結合した炭化物の総質量に対する成分の質量分率を指す。
【0069】
値の範囲、例えば、濃度範囲、パーセント範囲又は比率範囲が提供される場合、文脈が明確に指示しない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値は、その範囲の上限及び下限と、その範囲内の他の記載された又は介在する値との間で、記載された主題事項内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲に独立して含まれてもよく、そのような実施形態はまた、記載された範囲の任意の具体的に除外された制限に従うことを条件として、記載された主題内に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、含まれる限界の一方又は両方を除く範囲も記載された主題事項に含まれる。
【0070】
上記及び本明細書の他の箇所で使用される用語「a」及び「an」は、列挙された成分の「1つ又は複数」を指すことを理解されたい。特に明記しない限り、単数形の使用が複数形を含むことは当業者には明らかであろう。したがって、用語「a」、「an」及び「少なくとも1つ」は、本出願において交換可能に使用される。
【0071】
別段の記載がない限り、明細書及び特許請求の範囲において使用される成分の量、サイズ、重量、反応条件等の特性を表す全ての数は、全ての場合において用語「約」によって修正されるものと理解されるべきである。したがって、反対に示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。
【0072】
本出願を通じて、様々な実施形態の説明は、用語「含む」を使用する。しかしながら、いくつかの例において、実施形態は、代替的に、用語「実質的にからなる」又は「からなる」を使用して説明することができることを当業者は理解するであろう。
【0073】
このように記載されている本主題事項は、多くの方法で修正又は変更され得ることが明らかであろう。そのような修正及び変形は、本主題の精神及び範囲からの逸脱とみなされるべきではなく、そのような修正及び変形の全ては、以下の請求項の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】