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特表2023-510956圧力センサを識別する方法及び当該方法を実施する装置
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  • 特表-圧力センサを識別する方法及び当該方法を実施する装置 図1
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  • 特表-圧力センサを識別する方法及び当該方法を実施する装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】圧力センサを識別する方法及び当該方法を実施する装置
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
B60C23/04 140E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544056
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2020086808
(87)【国際公開番号】W WO2021148206
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】2000572
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518046602
【氏名又は名称】アテック
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(72)【発明者】
【氏名】ブー,ミシェル
(57)【要約】
本発明は、圧力センサ、特に、自動車の電子タイヤ圧力監視システムの圧力センサを識別する方法であって、上記センサ9、C1、C2、C3、C4は、データを発信及び受信する少なくとも1つのモジュールを備え、該方法は、センサ起動信号を発信すること(S1)と、起動された後の少なくとも2つの異なるセンサから到来する信号を受信すること(S2)と、受信した信号を減衰及び増幅すること(S3)と、受信した信号のそれぞれの信号の電力を示す値を決定すること(S4)と、受信した上記信号の電力を示す値に基づいて、少なくとも1つのセンサの空間位置を識別すること(S5)と、を含む方法に関する。本発明はまた、この方法を実施する装置に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力センサ、特に、自動車の電子タイヤ圧力監視システムの圧力センサを識別する方法であって、前記センサ(9、C1、C2、C3、C4)はデータを発信及び受信する少なくとも1つのモジュールを備え、
センサ起動信号を発信すること(S1)と、
起動された後の少なくとも2つの異なるセンサから到来する信号を受信すること(S2)と、
受信した前記信号を減衰及び増幅すること(S3)と、
受信した前記信号のそれぞれについて、前記信号の電力を示す値を決定すること(S4)と、
受信した前記信号の電力を示す値に基づいて、少なくとも1つのセンサの空間位置を識別すること(S5)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記信号の電力を示す値は、前記信号の利得値(G)及び適合値の少なくともいずれか一方であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記センサ(9、C1、C2、C3、C4)を起動する前記信号が一定電力で送信されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記信号は同一の減衰を受けることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
同じ前記センサ(9、C1、C2、C3、C4)から到来する複数の信号を受信することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記識別のために、前記センサ(9、C1、C2、C3、C4)のそれぞれについて最も高い電力を示す値を有する前記信号を選択することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも第1のセンサ(9、C1)及び第2のセンサ(9、C2)から到来する、受信した複数の前記信号の電力を示す値を比較し、
前記センサ(9、C1、C2)のうちの一方の前記信号の電力を示す全ての値が、他方の前記センサ(9、C1、C2)の前記信号の電力を示す全ての値よりも常に小さい又は大きい場合、前記センサ(9、C1、C2)のうちの少なくとも一方の空間位置を識別することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記信号に適用される減衰レベルは可変である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
センサ、特に、自動車の電子タイヤ圧力監視システムの圧力センサ(9、C1、C2、C3、C4)を起動する装置(1)であって、
少なくとも1つのセンサ起動手段(31)と、
前記センサから到来する信号を受信する手段(33)と、
前記センサ(9)によって送信された前記信号によって搬送される情報を記憶すること及び処理することの少なくともいずれか一方を行うように構成される電子エンティティ(35)と、
受信した前記信号から到来する前記情報を送信するために、自動車のオンボードコンピュータ(11)のようなリモート電子エンティティと通信する手段(37)と
を備え、
前記受信手段(33)は、
前記センサ(9、C1、C2、C3、C4)から到来する前記信号を受信するアンテナ(33a)と、
受信した前記信号を減衰させるように構成される減衰器(33b)と、
受信した前記減衰済み信号を増幅するように構成される増幅器(33c)と
を備えることを特徴とし、
前記信号のそれぞれは、電力(G)を示す値によって特徴付けられ、
前記電子エンティティ(35)は、受信した前記信号の電力を示す値に基づいて、少なくとも1つのセンサ(9、C1、C2、C3、C4)の空間位置を識別するように構成される装置。
【請求項10】
前記信号のそれぞれは、該信号の前記減衰及び前記増幅に続いて該信号のそれぞれが受けた適合を示す値によって特徴付けられ、前記信号の電力を示す値は、前記信号の適合値であることを特徴とする、請求項9に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの分野に関し、特に、これらのセンサの区別及び位置特定を可能にする、センサを識別する方法と、当該方法を実施する装置とに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、自動車のタイヤに収容される圧力センサに有利に適用され、センサは、概して、当該センサがデータを送信する自動車のコンピュータに関連付けられる。
【背景技術】
【0003】
したがって、センサ/オンボードコンピュータアセンブリは、電子「タイヤ圧力監視システム」(関連する略語は「TPMS」である)という用語によって表記される。
【0004】
各圧力センサは、従来では、データをオンボードコンピュータに送信する無線周波数送信器を備える。データをセンサから受信するオンボードコンピュータは、したがって、タイヤのうちの1つが破裂し又は空気が抜け、安全性のリスクが生じた場合に車両の使用者にアラートすることができる。
【0005】
しかしながら、ホイールに収容される圧力センサは、通常取り外し可能ではないため、ホイールの交換にはセンサの交換を伴い、その後、新たなセンサは車両のオンボードコンピュータによって検出されなくなる。
【0006】
したがって、タイヤを交換する際、新たなタイヤに収容されるセンサを車両のオンボードコンピュータとペアリングする(又は関連付ける)必要がある。
【0007】
このペアリングは、専用学習装置(英語では概して「TPMSツール」という用語によって表記される)によって行われ、この装置は、センサを起動することと、センサの識別子等、センサによって送信される関連データを回収及び記録することと、上記タイヤのうちの1つにおける圧力降下が発生した際に使用者に警告するために、オンボードコンピュータが、新たに設置したタイヤに収容されたセンサを検出及び位置特定し、そのセンサから信号を取得することができるように、上記関連データをオンボードコンピュータに送信することとを行うように構成される。
【0008】
しかしながら、重量積載物車両又はバス等の幾つかの車両においては、ホイールが車軸の各端部にペアになって装着されており、したがって、ホイールは対をなすと言える。
【0009】
ツインホイールにおいて、2つの関連するセンサが共に非常に近接していることがあり、特に複雑で高価な符号化及び識別技法を使用することなしに、(車両の静止時及び動作時の双方で)センサから到来する発信の間で区別することが困難になる。
【0010】
例えば、学習時、すなわち、センサの識別子を回収して車両のオンボードコンピュータに通信する段階において、オンボードコンピュータがセンサを識別し、車両のホイールのそれぞれに関連付けるように、センサは所定の順序で順次起動される。しかしながら、操作者が自身のセンサ起動装置(例えば、学習装置)を用いてセンサに問い合わせしたときに、幾つかのセンサの同時起動が意図せず行われる場合がある。その場合、操作者は、外側ホイールに収容されたセンサが起動されたのか又は内側ホイールに収容されたセンサが起動されたのかを決定することができない。
【0011】
幾つかのセンサの同時起動という問題は、タイヤ製造工場又は自動車製造工場等の工場においても発生するものであり、そこでは、センサを起動して試験し、センサを識別すること及び車両のオンボードコンピュータにペアリングすることの少なくともいずれか一方を行う必要がある。しかしながら、工場内の製造ラインは互いに非常に近接していることが多く、適合された装置によって送信される起動信号により、複数のセンサの起動が生じる場合があり、したがって、起動されたセンサを識別又は区別することができる必要が生じ得る。
【0012】
上記に開示した問題は、ツインホイールに収容されるセンサだけでなく、別個のホイールに収容されるセンサを識別する方法の設計と、自動車の電子タイヤ圧力監視システムの装置等、この方法を実施することができる装置の設計とを導いた。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、したがって、圧力センサ、特に、自動車の電子タイヤ圧力監視システムの圧力センサを識別する新規の方法であって、上記センサは、データを発信及び受信する少なくとも1つのモジュールを備え、
センサ起動信号を発信することと、
起動された後の少なくとも2つの異なるセンサから到来する信号を受信することと、
受信した信号を減衰及び増幅することと、
受信した信号のそれぞれについて、信号の電力を示す値を決定することと、
受信した上記信号の電力を示す値に基づいて、少なくとも1つのセンサの空間位置を識別することと
を含む方法である。
【0014】
上記で説明したように、本発明に係る方法により、ツインホイールに収容されるセンサ、又は複数のセンサを含む環境におけるセンサを識別又は区別することが可能になり、これには、多種多様な状況に適用可能でありつつも実施が簡単であるという利点がある。
【0015】
この理由としては、増幅に先行して減衰させることにより、寄生信号のうちの幾つかを「フィルタリング」することが可能になり、具体的には、互いに非常に近接しているセンサをより容易に区別することが可能になるからである。
【0016】
1つのあり得る特徴によれば、信号の電力を示す値は、上記信号の利得値及び適合値の少なくともいずれか一方である。信号のそれぞれは、例えば、信号の減衰及び増幅に続いて信号のそれぞれが受けた適合及び利得の少なくともいずれか一方を示す値によって特徴付けられる。
【0017】
電力を示す値は、信号を特徴付けることを可能にする指標であり、この値は、利得、適合値、又はこれらのパラメータの組み合わせ及び関数の少なくともいずれか一方とすることができ、これは、センサの状況(不動又は移動)、及びその環境(寄生信号、共振、信号の多重反射等)に基づく。適合値等の指標値は、例えば、受信器が使用する設定に依存し、これらの設定は、したがって、信号の電力の指標である。
【0018】
別のあり得る特徴によれば、センサを起動する信号は一定電力で送信される。
【0019】
したがって、センサを起動する信号の発信電力を変更する構成要素を提供し、それに応じたサイズの電源を有する必要がない。これは結果として、上記方法を実施する装置の設計を単純化し、そのコストを削減する。
【0020】
別のあり得る特徴によれば、受信した信号は同一の減衰を受ける。
【0021】
別のあり得る特徴によれば、同じセンサから到来する複数の信号を受信する。
【0022】
同じセンサから到来する複数の信号を受信することにより、収集したサンプルに統計処理を適用する可能性が拓けることによって、センサ識別処理をより堅牢にすることが可能になる。複数の信号を受信することにより、センサのそれぞれについて電力が最大である(又は指標値が最大である)信号を選択することも可能になる。
【0023】
概して、センサから到来する信号は、同じセンサから複数の信号を受信するために、所定の期間中に受信される。
【0024】
センサによって送信される各信号は、そのセンサに固有の識別子を含み、受信した信号の分類を可能にする。別のあり得る特徴によれば、上記識別のために、センサのそれぞれについて最も高い電力を示す値を有する信号を選択する。
【0025】
別のあり得る特徴によれば、少なくとも第1のセンサ及び第2のセンサから到来する、受信した複数の信号の電力を示す値を比較し、センサのうちの一方の信号の電力を示す全ての値が、他方のセンサの信号の電力を示す全ての値よりも常に小さい又は大きい場合、信号の電力を示す上記値の比較に基づいて、センサのうちの少なくとも一方の空間位置を識別する。
【0026】
別のあり得る特徴によれば、受信した信号及び同じセンサから到来する信号の少なくともいずれか一方の電力を示す値は、センサのうちの少なくとも一方の空間位置を識別するために、平均化され互いに比較される。
【0027】
別のあり得る特徴によれば、受信した信号の電力を示す値の分布は、センサのそれぞれについて可能な限り最も特徴的な電力を示す値を決定するために、センサのそれぞれについて分析される。
【0028】
別のあり得る特徴によれば、電力を示す極値は、センサのそれぞれについて可能な限り最も特徴的な電力を示す値を決定するために、排除される。
【0029】
別のあり得る特徴によれば、信号に適用される減衰レベルは可変であり、例えば、このレベルは、経時的及び複数の信号を受信する所定の期間中の少なくともいずれか一方において線形に変化する。
【0030】
本発明はまた、センサ、特に、自動車の電子タイヤ圧力監視システムの圧力センサを起動する装置であって、
少なくとも1つのセンサ起動手段と、
センサから到来する信号を受信する手段と、
上記センサによって送られた信号によって搬送される情報を記憶すること及び処理することの少なくともいずれか一方を行うように構成される電子エンティティと、
受信した信号から到来する情報を送信するために、自動車のオンボードコンピュータのようなリモート電子エンティティと通信する手段と、
を備え、
受信手段は、センサから到来する信号を受信するアンテナと、
受信した信号を減衰させるように構成される減衰器と、
受信した減衰済み信号を増幅するように構成される増幅器と
を備えることを特徴とし、
信号のそれぞれは、電力を示す値によって特徴付けられ、上記電子エンティティは、受信した信号の電力を示す値に基づいて、少なくとも1つのセンサの空間位置を識別するように構成される装置に関する。
【0031】
あり得る特徴によれば、センサ起動装置は、自動車の電子タイヤ圧力監視システムの学習装置である。
【0032】
別のあり得る特徴によれば、上記センサは、自動車のタイヤに収容される圧力センサ及び温度センサの少なくともいずれか一方である。
【0033】
別のあり得る特徴によれば、信号のそれぞれは、該信号の減衰及び増幅に続いて該信号のそれぞれが受けた適合を示す値によって特徴付けられ、信号の電力を示す値は、上記信号の適合値である。
【0034】
この方法及びこの装置は、非常に安価であり、特に実施が容易である。この方法及びこの装置には、学習装置及び起動装置の少なくともいずれか一方とセンサとの間の通信用の既存の技術に変更を加える必要もない。
【0035】
添付の図面を参照しながら、非限定的な例示としてのみ与える本発明の特定の実施形態の以下の説明を読む過程の中で、本発明はより良く理解され、本発明の他の目的、詳細、特徴及び利点はより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明に係るセンサ起動装置を示す概略図である。
図2図1の装置の拡大図である。
図3】ツインホイールのうちの一方とともに使用する際の図1の装置の大まかな概略図である。
図4】本発明に係るセンサ識別方法のステップを詳述する論理図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、センサ9を起動する装置1、より具体的には、本例において、自動車5の電子タイヤ圧力監視システム3の学習装置1(この装置1は、「バルブアクティベータ」又は「バルブフォーサ(valve forcer)」という用語によって表記することができる)の大まかな概略図である。
【0038】
自動車5は、第一に、圧力センサ等のセンサ9が収容されるタイヤ7を備え、第二に、オンボードコンピュータ11(電子制御ユニットとも称し、概して「ECU」という略語によって表記される)を備える。
【0039】
装置1は、例えばプラスチック材料製のケース13と、ディスプレイ装置15と、キーパッド17と、センサ起動信号を送信するアンテナ19と、OBD(英語では「オンボード診断(onboard diagnostic)」と表記される)ソケットとを備える。このOBDソケット21は、例えば、特にOBDケーブルによって、装置1を車両のオンボードコンピュータ11に接続することを可能にするように構成される。
【0040】
図2に関して、これは図1の装置の拡大詳細図である。
【0041】
したがって、上記装置1は、以下を備える。
センサ起動信号(連続及び被変調の少なくともいずれか一方)を生成する手段等の少なくとも1つのセンサ起動手段31であって、特に、生成した上記信号をセンサ9に最も良く伝播することを可能にするアンテナ19を備える、少なくとも1つのセンサ起動手段31、
センサから到来する信号を受信する手段33、ここで、当該手段33は、概してケース13に収容され、例えば300MHz~500MHzの周波数帯の信号を受信する(センサは、上記起動手段31によって起動された後に信号を送信する)ように構成される別のアンテナである、
上記センサ9によって送信された信号によって搬送される情報(受信手段33によって受信される)を記憶すること及び処理することの少なくともいずれか一方を行うように構成される電子エンティティ35、
センサ9のうちの少なくとも1つから情報を送信するために、自動車のオンボードコンピュータ11と通信する手段37、ここで、情報は上記センサ9から到来する信号によって受信される。
【0042】
通信手段37は、例えば、OBD通信を管理する回路38と前述したOBDソケット21とを備えるOBDモジュールである。管理回路38は、電子エンティティ35に統合してもよいことに留意すべきである。装置1は、様々な要素に電力供給するように構成されるバッテリ41も備える。
【0043】
さらに、上記起動信号は、起動手段31によって送信される、例えば、125kHzの周波数を有する電磁信号(連続又は被変調)であることに留意すべきである。
【0044】
また、図3に示すように、上記装置1は、ツインホイールを備える貨物自動車とともに使用可能でなければならず、上記装置1は、したがって、互いに近くに配設されたこれらのタイヤに収容されるセンサを識別又は区別することができなければならない。図3に示す例において、貨物自動車6は、複数のホイールを備え、ホイールの車軸6aは、端部において、センサC1及びC2がそれぞれ収容されるツインホイール7a及び7bを備える。貨物自動車は、この図3に示すように他の2つのセンサC3及びC4も備えることができる。
【0045】
より詳細には、装置1の受信手段33(センサから到来する信号を受信する手段)は、以下の少なくとも3つの要素を備える。
上記センサの発信周波数の信号を受信し、上記電磁信号を電気信号に変換するように構成される受信アンテナ33a、
例えば、受信した信号、すなわち、この場合、アンテナ33aによって送達される電気信号の振幅を低減する電子回路又は構成要素である減衰器33b、
例えば、電気信号、本事例において、減衰器33bによって減衰された電気信号の電圧及び強度の少なくともいずれか一方を増大する電子回路又は構成要素である、増幅器33c。
【0046】
連続的な減衰及び増幅によって得られる電気信号は、次に電子エンティティ35によって処理(読み取り、復号、特徴付け等)される。
【0047】
さらに、減衰器33bは、例えば、0dB、-6dB、-12dB及び-18dB等のレベルに調整可能であるか、又は0dB~-18dBの間で線形に可変であることに留意すべきである。
【0048】
増幅器33cに関して、これは、増幅器の出力に位置する構成要素(ここでは電子エンティティ35)が増幅した信号を処理することができるように、入力として受信した信号を必要なレベルに自動的に増幅するように構成される。この理由としては、電子エンティティ35(ここでは信号の受信器)は、最小の振幅と或る特定の閾値を有する信号対雑音比とを有する信号のみを検出及び処理するからである。
【0049】
増幅器33c又は第3の回路は、したがって、利得の自動制御(「自動利得制御(automatic gain control)」を表す「AGC」という頭字語によっても表記される)を実施し、増幅器の振幅の自動管理をもたらし、出力の飽和を回避すること及び出力レベルを一定に維持することの少なくともいずれか一方を行う。
【0050】
したがって、上記装置1は、例えば、貨物自動車6のツインホイール7a及び7bに収容されるセンサC1及びC2の方向に起動信号を送信する。
【0051】
センサC1及びC2は、起動信号の受信によって起動され、その後、上記センサC1及びC2は、これに応答して1つ以上の信号を送信する。
【0052】
残念ながら、装置1によって送信される起動信号は、1つ以上の周囲センサ、すなわち、貨物自動車上の他のセンサ、又は近辺に位置する自動車のタイヤに収容されるセンサのいずれかも起動する場合がある。
【0053】
さらに、センサは、概して、上記センサによって送信される信号の衝突を制限する通信プロトコルを有し、この結果として、特に、最も近くにあるセンサ(起動信号を理論的に最初に受信するセンサ)が必ずしも最初に送信するわけでないことになる。
【0054】
加えて、ツインホイールに収容されるセンサは、互いに非常に近接しているとともに、多重反射を生じ得る障害物を含む環境にあり、これは結果として、センサによって送信される信号の電力を変化させる場合がある。
【0055】
その後、装置1は、センサC1及びC2によって送信される様々な信号を受信し、装置1は、所定の期間中にセンサによって送信される全ての信号を受信するように構成されることが好ましい。この所定の期間は可変であるが、装置がセンサC1及びC2のそれぞれから到来する少なくとも2つの信号を受信するようなサイズであることが有利である。
【0056】
減衰器33bは、アンテナ33aによって受信された信号を「強く」減衰させるように構成され、この減衰は、例えば、信号を-12dB又は-18dB(それぞれ、受信した信号の電力を32及び64で除算した値)だけ減衰させるように調整される。
【0057】
これにより、任意の寄生信号、すなわち、センサC1及びC2から到来しない信号又は多重反射(エコー現象)から到来する信号をフィルタリングすることが可能になる。
【0058】
次に、減衰された信号は増幅器33cによって増幅される。
【0059】
増幅器33cは、入力信号を或る特定の振幅(又は電力)レベルに増幅し、増幅器33cは、したがって、信号が同じ出力振幅及び同じ電力の少なくともいずれか一方を有するように信号を自動的に増幅する。上記信号の出力特性は、特に、増幅器33cの下流にある電子構成要素(センサ等)と、それらの構成要素(すなわち、信号が有しなければならない、上記電子構成要素によって処理される特性)とに依存する。
【0060】
したがって、センサC1及びC2によって送信され、可変の電力を有する信号は、同一の減衰を受け、固定レベルで増幅される(例えば、所与の信号対雑音比を得るために)。
【0061】
増幅された信号のそれぞれは、したがって、受信された信号の電力及び減衰器33bによって適用される減衰に比例する利得Gによって特徴付けられる。利得Gの値は、したがって、信号の電力を表す値である。この連続的な減衰及び増幅により、2つの近接したセンサの区別がより容易に可能になる。
【0062】
この理由としては、2つの近接したセンサがそれぞれ信号A1及びB1を送信し、信号の電力差が20%でしかない(A1の電力=1かつB1の電力=0.8)場合、先行する減衰なしで増幅すると、信号のそれぞれについての利得値が小さくなり、信号のそれぞれの利得間の差は、センサの互いに対する相対的空間位置を識別する際に使用可能である程には必ずしも十分に大きくないからである。
【0063】
例えば、信号のそれぞれの電力が1.25の値に達しなければならない場合、A1に適用される利得GA1は1.25であり、B1に適用される利得GB1はおよそ1.56である。一方、信号のそれぞれが-12dBの先行する減衰を受ける場合、減衰された信号A1及びB1の電力は、それぞれ、およそ0.0625及び0.05であり、信号の利得はそれぞれ20及び25である。したがって、増幅の前に強力な減衰を行うことにより、上記係数によって送信される信号の電力が信号の距離に比例することに基づいて、センサの識別に有利に働き、信号の利得の値により、最も近くにあるセンサ(又は最も遠くにあるセンサ)を決定することが可能になることが分かっている。
【0064】
以下の例において、信号の電力を表す値は、信号に適用される利得の値であるが、これは、他の特徴的な量又は幾つかのパラメータ(例えば減衰、利得等)に依存する関数としてもよいことに留意すべきである。
【0065】
したがって、装置1によって使用される、図4により詳細に示す識別方法は、少なくとも以下のステップを含む。
センサを起動する信号を発信するステップ(S1)、
起動された後の少なくとも2つの異なるセンサから到来する信号を受信するステップ(S2)、
上記2つのセンサから到来する受信した信号を減衰及び増幅するステップ(S3)、
受信した信号のそれぞれの利得値G等の、信号の電力を示す値を決定するステップ(S4)、
上記受信した信号の電力を示す値に基づいて、少なくとも1つのセンサの空間位置を識別するステップ(S5)。
【0066】
以下のことに留意すべきである。
センサを起動する信号は、好ましくは一定電力で送信されること、及び狭い放射コーン(emission cone)を有することの少なくともいずれか一方の特徴を有し、
受信した信号は同一の減衰を受ける。
【0067】
さらに、電子エンティティ35は、同じセンサから到来する複数の信号を受信するために、受信の持続時間を管理するように構成される。
【0068】
加えて、センサによって送信される各信号がセンサに固有の識別子を有するため、電子エンティティ35は、信号の発信源に基づいて(すなわち、上記信号を送信したセンサから)受信した信号を分類することができる。同じセンサの複数の信号を受信することにより、例えば、最大の利得値G(又は電力を示す値)を有する信号を選択し、次に、比較に進み、2つのセンサ間の相対空間位置を識別することが可能になる。
【0069】
したがって、上記信号の受信と並行して、電子エンティティ35は、受信した信号の電力を示す値をペアにして比較し、センサによって送信される信号の電力を示す値が、他のセンサによって送信される信号よりも常に小さい又は大きいことを確認することを可能にする。これが当てはまる場合、信号を送信したセンサのうちの少なくとも一方の相対空間位置を識別する。
【0070】
この補足的な動作により、センサの空間位置を正確に識別する可能性が高まる。
【0071】
しかしながら、センサの識別を更に改善するために、例えば、センサのそれぞれの信号の可能な限り最も指標的な電力値を決定するために、受信した信号の電力を示す値の分布をセンサによって分析することも可能である。
【0072】
センサによる信号の値は、例えば、値の区間(数学ではクラスという用語によっても表記される)によってカテゴリー分けされ、すなわち極値により、値が分布するクラスの境界を区切ることが可能になる。同じ振幅(振幅は、各クラスを定義する値の区間である)を有する又は有しないクラスを定義することが可能であることに留意すべきである。
【0073】
次に、クラスごとの値の数を決定し、最も多数の値を含むクラス(これは「モーダルクラス」という用語によっても表記される)を選択する。
【0074】
その場合、最も多数の値を含む区間が最も確からしいとみなし、この区間に含まれる値の平均を取って、センサのそれぞれの可能な限り最も特徴的な信号の電力を示す値を決定することが可能であり、次に、センサごとの特性値を互いに比較して、受信手段33に最も近くにある(又は最も遠くにある)センサを決定する。
【0075】
使用される方法を問わず、これは、n個のセンサに一般化することができ、電力を示す値の比較及び分類により、信号が受信されたセンサの互いに対する相対空間位置を決定することが可能になることに留意すべきである。
【0076】
図示しない一実施形態において、減衰器33bによって生成され、信号に適用される減衰レベルは、線形に、例えば経時的に変化する。その場合、信号の電力を示す値は、むしろ、信号適合値等、利得と減衰とに関する関数である値である。
【0077】
さらに、減衰における線形変化により、センサの識別を改善するために、受信した信号に影響し得る過渡現象を明らかにして排除することが可能になる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】