(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】尤度ベースの音響測位
(51)【国際特許分類】
G01S 5/30 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
G01S5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544059
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021051213
(87)【国際公開番号】W WO2021148473
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522078370
【氏名又は名称】フォークビアード テクノロジーズ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブーイ, ウィルフレッド エドウィン
(72)【発明者】
【氏名】アンティール, シリル
(72)【発明者】
【氏名】シャブタイ, エラッド
(72)【発明者】
【氏名】テン フェルドハウス, マテウス フランシスクス アルベルトゥス
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA01
5J083AC28
5J083AD01
5J083AD04
5J083AE08
5J083AF01
5J083AF04
5J083BA02
5J083BB04
5J083BB07
5J083BE01
5J083BE58
5J083DA01
(57)【要約】
モバイルデバイス(7)の第1の位置推定値を受信し、複数の音響送信機ユニット(2、3、4、5)のうちの1つから、モバイルデバイス(7)によって受信された音響信号を表すデータを受信するように構成された処理システム(7;9)を備える、測位システム。音響送信機ユニット(2、3、4、5)の各々について、処理システム(7;9)は、それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、受信した音響信号の尤度を表す空間尤度データを、飛行時間範囲値と、音響送信機ユニットと第1の位置推定値との間の距離を表す、幾何学的距離値とを比較することによって、判定する。処理システム(7;9)は、空間尤度データを処理して、音響送信機ユニットのサブセットを識別し、識別されたサブセット内の音響送信機ユニットの位置に関連する情報、および/または識別されたサブセット内の音響送信機ユニットによって送信された音響信号に関連する情報を処理して、モバイルデバイス(7)の第2の位置推定値を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルデバイスの位置推定値を判定する方法であって、前記方法が、
モバイルデバイスの第1の位置推定値を受信することと、
前記モバイルデバイスにおいて音響信号を受信することであって、前記音響信号は、各々が間隔を置いてそれぞれの音響信号を送信する複数の音響送信機ユニットのうちの1つによって送信される、受信することと、
前記複数の音響送信機ユニットの各々について、前記それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、前記受信した音響信号の尤度を表す空間尤度データを、i)前記モバイルデバイスにおいて前記受信した音響信号の到着時刻、および前記それぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータから判定される飛行時間範囲値と、ii)前記それぞれの音響送信機ユニットと前記第1の位置推定値との間の距離を表す、幾何学的距離値とを比較することによって、判定することと、
前記空間尤度データを使用して、前記複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別することと、
前記モバイルデバイスの第2の位置推定値を判定するときに、前記識別されたサブセット内の前記音響送信機ユニットの位置に関連する情報、および/または前記識別されたサブセット内の前記音響送信機ユニットによって送信された前記音響信号に関連する情報を使用することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記識別されたサブセット内の各音響送信機ユニットが、前記識別されたサブセットに含まれていない前記複数の音響送信機ユニットのうちの、少なくとも1つの音響送信機ユニットよりも、前記モバイルデバイスによって受信された前記音響信号を送信している尤度がより高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サブセットが識別された後、前記識別されたサブセットに含まれていない前記音響送信機ユニットのうちのいずれかの位置に関連する情報を使用せずに、かつ、前記識別されたサブセットに含まれていない前記音響送信機ユニットのうちのいずれかによって送信された前記音響信号に関連する情報を使用せずに、前記第2の位置推定値が判定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記それぞれの飛行時間範囲値を、前記それぞれの音響送信機ユニットについての前記幾何学的距離値に等しい予想値を有する範囲に対する尤度を表す、それぞれの統計的分布と比較することによって、各音響送信機ユニットの前記空間尤度データを判定することを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の位置推定値が、前記モバイルデバイスによって受信または送信された1つ以上の電磁信号または磁気信号を少なくとも部分的に使用して判定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の音響送信機ユニットが、建物に締着されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
処理システムを備える測位システムであって、前記処理システムが、
モバイルデバイスの第1の位置推定値を受信することと、
間隔を置いてそれぞれの音響信号を送信するように構成されている複数の音響送信機ユニットのうちの1つから、前記モバイルデバイスによって受信された音響信号を表すデータを受信することと、
前記複数の音響送信機ユニットの各々について、前記それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、前記受信した音響信号の尤度を表す空間尤度データを、i)前記モバイルデバイスにおいて前記受信した音響信号の到着時刻、および前記それぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータから判定される飛行時間範囲値と、ii)前記それぞれの音響送信機ユニットと前記第1の位置推定値との間の距離を表す、幾何学的距離値とを比較することによって、判定することと、
前記空間尤度データを処理して、前記複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別することと、
前記識別されたサブセット内の前記音響送信機ユニットの位置に関連する情報、および/または前記識別されたサブセット内の前記音響送信機ユニットによって送信された前記音響信号に関連する情報を処理して、前記モバイルデバイスの第2の位置推定値を判定することと、を行うように構成されている、測位システム。
【請求項8】
前記複数の音響送信機ユニットと、
モバイルユニットと、をさらに備える、請求項7に記載の測位システム。
【請求項9】
前記モバイルユニットが、前記処理システムを備える、請求項7または8に記載の測位システム。
【請求項10】
前記処理システムは、前記識別されたサブセット内の各音響送信機ユニットが、前記識別されたサブセットに含まれていない前記複数の音響送信機ユニットのうちの、少なくとも1つの音響送信機ユニットよりも、前記モバイルデバイスによって受信された前記音響信号を送信している尤度がより高くなるように、前記厳密なサブセットを識別するように構成されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項11】
前記処理システムは、1つ以上の音響送信機ユニットの前記サブセットが識別された後、前記識別されたサブセットに含まれていない前記音響送信機ユニットのうちのいずれかの位置に関連する情報を使用せずに、かつ、前記識別されたサブセットに含まれていない前記音響送信機ユニットのうちのいずれかによって送信された前記音響信号に関連する情報を使用せずに、前記第2の位置推定値を判定するように構成されている、請求項7~10のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項12】
前記処理システムが、前記それぞれの飛行時間範囲値を、前記それぞれの音響送信機ユニットについての前記幾何学的距離値に等しい予想値を有する範囲に対する尤度を表す、それぞれの統計的分布と比較することによって、各音響送信機ユニットについて前記空間尤度データを判定するように構成されている、請求項7~11に記載の測位システム。
【請求項13】
前記それぞれの統計的分布が、それぞれのガウス関数によって定義されている、請求項12に記載の測位システム。
【請求項14】
前記処理システムが、前記統計的分布の分散を制御するように構成されており、前記制御が、
前記飛行時間範囲値、
前記第1の位置推定値の不確実性を表すデータ、および
音響信号を使用せずに前記第1の位置推定値が判定されているときの前記第1の位置推定値と、前記モバイルデバイスによって受信された1つ以上の音響信号を使用して判定された位置推定値との間の差を表すデータ、のうちのいずれか1つ以上に依存する、請求項12または13に記載の測位システム。
【請求項15】
前記処理システムが、それぞれの音響信号を、間隔を置いて送信するように構成されている第2の複数の前記音響送信機ユニットの各々の時間尤度データを判定するように構成されており、前記時間尤度データが、i)前記モバイルデバイスにおいて前記受信した音響信号の到着時刻、およびii)前記それぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータに依存するが、前記モバイルデバイスの位置推定値には依存せず、前記時間尤度データが、それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、前記受信した音響信号の尤度を表す、請求項7~14のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項16】
前記処理システムが、前記時間尤度データおよび前記空間尤度データに乗算演算を適用して、複合尤度データを判定するように構成されており、かつ前記複合尤度データを使用して、前記複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別するように構成されている、請求項15に記載の測位システム。
【請求項17】
前記複数の音響送信機ユニットによって送信された前記音響信号が、前記それぞれの音響送信機ユニットのそれぞれの識別データを符号化し、前記処理システムが、前記識別されたサブセット内の前記音響送信機ユニットの各々と関連付けられたそれぞれの識別データを使用して、前記受信された音響信号を復号化するように構成されている、請求項7~16のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項18】
前記処理システムが、前記複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の位置を含む幾何学的最適化問題を解くことによって、前記第2の位置推定値を判定するように構成されている、請求項7~17のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項19】
電磁信号または磁気信号を送信または受信するように構成された、電磁または磁気送信機または受信機ユニットを備え、前記モバイルデバイスが、前記電磁信号または磁気信号を受信または送信するように構成されており、前記処理システムが、前記電磁送信機または磁気送信機もしくは受信機ユニットと前記モバイルデバイスとの間で送信された1つ以上の電磁信号または磁気信号を少なくとも部分的に使用して、前記第1の位置推定値を判定するように構成されている、請求項7~18のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項20】
前記複数の音響送信機ユニットを備え、前記複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上が、前記モバイルデバイスの前記第1の位置推定値を判定するための電磁信号または磁気信号を送信または受信するように構成された、それぞれの電磁または磁気送信機または受信機ユニットを備える、請求項19に記載の測位システム。
【請求項21】
前記処理システムが、複数の電磁送信機または受信機ユニットの位置に関連する位置データを使用して前記第1の位置推定値を計算して、前記複数の電磁トランシーバユニットの加重重心を判定するように構成されており、前記電磁送信機または受信機ユニットの各々が、前記モバイルデバイスと前記それぞれの送信機または受信機ユニットとの間で送信された1つ以上の信号から判定される受信信号強度情報に応じて重み付けされる、請求項19または20に記載の測位システム。
【請求項22】
前記処理システムが、前記モバイルデバイスによって受信された音響信号を処理することによって、経時的に2つ以上の位置推定値の連続を判定するように構成されており、それぞれの飛行時間範囲値と、それぞれの音響送信機ユニットと2つ以上の位置推定値の前記連続内の直前の位置推定値との間の距離を表すそれぞれの幾何学的距離値とを比較することによって、各連続する位置推定値を判定するときに、空間尤度データを判定するように構成されている、請求項5~21のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項23】
前記モバイルユニットまたは前記複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上を備え、前記音響信号が、超音波信号である、請求項5~22のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項24】
前記モバイルユニットを備え、前記モバイルユニットが、プロセッサおよびディスプレイを備え、かつ前記第2の位置推定値から導出された情報を前記ディスプレイ上に出力するように構成されている、請求項5~23のいずれか一項に記載の測位システム。
【請求項25】
命令を含むコンピュータプログラムであって、前記命令が、処理システムによって実行されると、前記処理システムに、
モバイルデバイスの第1の位置推定値を受信することと、
間隔を置いてそれぞれの音響信号を送信するように構成されている複数の音響送信機ユニットのうちの1つから、前記モバイルデバイスによって受信された音響信号を表すデータを受信することと、
前記複数の音響送信機ユニットの各々について、前記それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、前記受信した音響信号の尤度を表す空間尤度データを、i)前記モバイルデバイスにおいて前記受信した音響信号の到着時刻、および前記それぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータから判定される飛行時間範囲値と、ii)前記それぞれの音響送信機ユニットと前記第1の位置推定値との間の距離を表す、幾何学的距離値とを比較することによって、判定することと、
前記空間尤度データを処理して、前記複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別することと、
前記識別されたサブセット内の前記音響送信機ユニットの位置に関連する情報、および/または前記識別されたサブセット内の前記音響送信機ユニットによって送信された前記音響信号に関連する情報を処理して、前記モバイルデバイスの第2の位置推定値を判定することと、を行わせる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイルデバイスの位置を判定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波信号などの信号を使用して、建物の壁または天井に固定され得る複数の音響送信機ユニットから音響信号を送信することによって、二次元または三次元でモバイルユニットまたはタグの位置を判定することが知られている。信号は、それぞれの送信機ユニットの識別子を符合化する。これらの信号は、人または機器などのオブジェクトに取り付けられ得るモバイルデバイスによって受信される。音響送信機ユニットの位置が分かっている場合、モバイルデバイスがそれぞれの送信機ユニットによって送信された信号を受信する時間(すなわち、到着時刻)を使用して、信号の伝搬に関連する幾何学的原理を使用することによって-例えば、円、球、または双曲面の交差に関連する方程式を解くことによって、環境内のモバイルデバイスの位置を推定することができる。
【0003】
例えば、特許文献1は、複数の静的送信機ユニットが規則的な間隔で位相変調された超音波シグネチャを送信する音響測位システムを開示している。シグネチャは、モバイルデバイス、および幾何学的マルチラテレーションプロセスを使用して、デバイスの位置を推定するために使用される、その到着時刻によって受信することができる。モバイルデバイスの位置は、環境の地図または計画書に表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
音響信号を使用する測位は、無線または赤外線などの光速信号を使用する場合と比較して有益になり得、これは、音速の飛行時間ははるかに長く、そのため、飛行時間(time-of-flight:ToF)範囲を所望の空間分解能で測定するために必要なタイミング精度ははるかに低くなるためである。しかしながら、音響信号は、帯域幅が制限され、信号対雑音比(SNR)が低いという点で課題があり、特に、音波に対して高反射性の多くの表面が典型的には含まれるであろう屋内環境では顕著である。これらの課題は、受信した音響測位信号から識別子を正確に復号化することが可能とは限らないことを意味し、音響信号のソースに関して-すなわち、受信した音響信号を送信した音響送信機ユニットのアイデンティティに不確実性をもたらす。送信機ユニットのアイデンティティに不確実性がある場合、幾何学的測位アルゴリズムはモバイルデバイスによって受信された各音響信号のそれぞれのソース位置を知ることに基づいているため、モバイルデバイスの最終的な位置推定値において、対応する不確実性があることとなる。
【0006】
本発明は、音響信号を使用してモバイルデバイスの正確な測位を提供しようとする新しいアプローチを提供する。
【0007】
第1の態様から、本発明は、モバイルデバイスの位置推定値を判定する方法を提供し、この方法は、
モバイルデバイスの第1の位置推定値を受信することと、
モバイルデバイスにおいて音響信号を受信することであって、音響信号は、各々が間隔を置いてそれぞれの音響信号を送信する複数の音響送信機ユニットのうちの1つによって送信される、受信することと、
複数の音響送信機ユニットの各々について、それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、受信した音響信号の尤度を表す空間尤度データを、i)モバイルデバイスにおいて受信した音響信号の到着時刻、およびそれぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータから判定される飛行時間範囲値と、ii)それぞれの音響送信機ユニットと第1の位置推定値との間の距離を表す、幾何学的距離値とを比較することによって、判定することと、
空間尤度データを使用して、複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別することと、
モバイルデバイスの第2の位置推定値を判定するときに、識別されたサブセット内の音響送信機ユニットの位置に関連する情報、および/または識別されたサブセット内の音響送信機ユニットによって送信された音響信号に関連する情報を使用することと、を含む。
【0008】
第2の態様から、本発明は、処理システムを備える測位システムを提供し、この処理システムは、
モバイルデバイスの第1の位置推定値を受信することと、
間隔を置いてそれぞれの音響信号を送信するように構成されている複数の音響送信機ユニットのうちの1つから、モバイルデバイスによって受信された音響信号を表すデータを受信することと、
複数の音響送信機ユニットの各々について、それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、受信した音響信号の尤度を表す空間尤度データを、i)モバイルデバイスにおいて受信した音響信号の到着時刻、およびそれぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータから判定される飛行時間範囲値と、ii)それぞれの音響送信機ユニットと第1の位置推定値との間の距離を表す、幾何学的距離値とを比較することによって、判定することと、
空間尤度データを処理して、複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別することと、
識別されたサブセット内の音響送信機ユニットの位置に関連する情報、および/または識別されたサブセット内の音響送信機ユニットによって送信された音響信号に関連する情報を処理して、モバイルデバイスの第2の位置推定値を判定することと、を行うように構成されている。
【0009】
測位システムのいくつかの実施形態は、複数の音響送信機ユニットをさらに備え得る。測位システムのいくつかの実施形態は、モバイルデバイスをさらに備え得る。
【0010】
さらなる態様から、本発明は、命令を含む、コンピュータプログラムおよびコンピュータプログラムを記憶する一時的または非一時的なコンピュータ可読媒体を提供し、命令が、処理システムによって実行されると、コンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムを記憶する一時的または非一時的なコンピュータ可読媒体は、処理システムに、
モバイルデバイスの第1の位置推定値を受信することと、
間隔を置いてそれぞれの音響信号を送信するように構成されている複数の音響送信機ユニットのうちの1つから、モバイルデバイスによって受信された音響信号を表すデータを受信することと、
複数の音響送信機ユニットの各々について、それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、受信した音響信号の尤度を表す空間尤度データを、i)モバイルデバイスにおいて受信した音響信号の到着時刻、およびそれぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータから判定される飛行時間範囲値と、ii)それぞれの音響送信機ユニットと第1の位置推定値との間の距離を表す、幾何学的距離値とを比較することによって、判定することと、
空間尤度データを処理して、複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別することと、
識別されたサブセット内の音響送信機ユニットの位置に関連する情報、および/または識別されたサブセット内の音響送信機ユニットによって送信された音響信号に関連する情報を処理して、モバイルデバイスの第2の位置推定値を判定することと、を行わせる。
【0011】
モバイルデバイスは、処理システムを備え得るか、または処理システムは、例えば、遠隔サーバを備える、モバイルデバイスと少なくとも部分的に別個であり得る。
【0012】
したがって、本発明の実施形態によれば、モバイルデバイスの更新された位置推定値は、初期位置推定値から開始して、初期位置推定値を使用し、候補送信機ユニットのサブセット(すなわち、候補リスト)を識別することによって、かつ位置推定値を計算するときにこれらの候補送信機ユニットの各々に関連する情報を考慮することによって、判定されることが分かるであろう。送信機ユニットのサブセットは、すべての送信機ユニットにわたって、受信された音響信号が送信機ユニットのうちのそれぞれの1つから来たという仮説を空間的一貫性に対して評価することによって識別され得る。事実上、これは、複数の送信機ユニットに関連するデータに「空間フィルタ」を適用するものとみなすことができる。送信機ユニットのうちの1つ以上をさらなる検討から除外することにより、新しい位置推定値を判定するときの不確実性のレベルを低減することができ、したがって、より正確な位置推定値をもたらし得る。
【0013】
好ましくは、識別されたサブセット内の各音響送信機ユニットは、識別されたサブセットに含まれていない複数の音響送信機ユニットのうちの、少なくとも1つの音響送信機ユニットよりも、モバイルデバイスによって受信された音響信号を送信している尤度がより高い。このより高い尤度は、空間尤度データのみに従って、または以下でより詳細に説明するように、空間尤度データおよび他の尤度データ、例えば時間尤度データとの組み合わせに従って判定され得る。
【0014】
処理システムは、好ましくは、サブセットが識別された後、識別されたサブセットに含まれていない音響送信機ユニットのうちのいずれかの位置に関連する情報をさらに処理せずに、かつ、識別されたサブセットに含まれていない音響送信機ユニットのうちのいずれかによって送信された音響信号に関連する情報をさらに処理せずに、モバイルデバイスの第2の位置推定値を判定するように構成されている。このようにして、測位プロセスは、特に効率的であり得る。
【0015】
第1の位置推定値は、モバイルデバイスによって受信された1つ以上の音響信号を使用して判定された以前の位置推定値であり得るか、またはモバイルデバイスによって受信または送信された1つ以上の電磁信号または磁気信号を判定された位置推定値であり得るか(例えば、1つ以上のBluetooth Low Energy(商標)、WiFi(商標)、またはGPS信号)、またはモバイルデバイスによって受信または送信された1つ以上のさらなる音響信号を少なくとも部分的に使用して判定された位置推定値であり得る(例えば、別個の音響測位システムからおよび/または、前述の音響信号を含む周波数帯域とは異なる周波数帯域で)。音響信号以外の信号を使用して第1の位置推定値が判定される場合、第1の位置推定値は、第2の位置推定値と比較して比較的不正確であり得る(例えば、より大きい誤差マージンを有する)。
【0016】
各飛行時間範囲値と幾何学的距離値との比較は、任意の適切な方式において行われ得る。これは、直接比較であり得、例えば、減算演算を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、空間尤度データは、各飛行時間範囲値を、それぞれの音響送信機ユニットについての幾何学的距離値に等しい予想値を有し得る範囲に対する尤度を表す、それぞれの統計的分布と比較することによって生成される。各飛行時間範囲は、一般的な形式の統計的分布(異なる平均および/または分散を潜在的に有する)-すなわち、平均値および/または分散値によってパラメータ化され得る一般的な方程式によって定義された分布-に対して比較され得る。各統計的分布は、歪んでいるか、または対称であり得る。各統計的分布は、釣鐘曲線であり得る。これは、少なくとも部分的にガウス関数によって定義され得る。これは、正規分布であり得るか、または正規分布に比例し得る。統計的分布の標準偏差は、0~10メートルであり得る。処理システムは、統計的分布の分散パラメータを制御するように構成され得、以下のいずれか1つ以上に依存して分散パラメータを設定し得る:飛行時間範囲値;第1の位置推定値の不確実性を表すデータ;および音響信号を使用せずに(例えば、無線信号を使用して判定された)第1の位置推定値が判定されたときの第1の位置推定値と、モバイルデバイスによって受信された1つ以上の音響信号を使用して判定された以前の位置推定値との間の差を表すデータ。いくつかの実施形態では、分散パラメータは、4メートルを超える値であり得、かつ50メートル未満であり得る。このような値は、特に音響信号と超音波信号の場合、およびBLE(商標)ビーコンを使用して第1の位置推定値が判定される場合に、典型的な屋内環境で良好なパフォーマンスを提供することが分かっている。統計的分布は、すべての距離にわたって1の積分を持つ場合があるが、これは必須ではない。これは、確率密度関数の場合もあれば、または確率密度関数に比例する場合もある。
【0017】
したがって、水平面で位置推定を実行する場合、いくつかの実施形態は、各候補送信機ユニットの周りに環状ガウス空間フィルタを効果的に集中させ、候補送信機ユニットから測定された飛行時間範囲が、空間フィルタの平均リングに近い位置と一致している送信機ユニットに、より高い空間尤度を割り当て得る。位置推定が三次元で実行される場合、対応するガウス空間フィルタは、球形とみなすことができる。
【0018】
複数の音響送信機ユニットはすべて、同じ部屋、または同じ建物、または建物の同じフロアもしくはゾーンにあってもよい。選択プロセスは、空間尤度データを判定する前に、音響送信機ユニットのより大きいセットから複数の音響送信機ユニットを識別するために使用され得る。モバイルデバイスが建物の特定のフロア、セクション、または部屋にあると既に判定されている場合、空間尤度データは、そのフロア、セクション、または部屋の送信機ユニットについてのみ判定し得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、時間尤度データは、音響信号を、間隔を置いて送信するように構成されている第2の複数の音響送信機ユニットの各々について判定される。第2の複数は、第1の複数の音響送信機ユニットと同じであるか、または重複しているか、または別個であり得る。時間尤度データは、モバイルデバイスにおいて受信した音響信号の到着時刻、およびそれぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータに基づいて、それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、受信した音響信号の尤度を表し得る。これにより、音響信号は典型的には、経時的に急速に減衰するため、それらが送信された後、短時間のみ検出可能となるという洞察に基づいて、時間フィルタを提供することができる。空間尤度フィルタとは異なり、この時間尤度フィルタは初期位置推定値を必要としない。時間尤度データは、各音響送信機ユニットについて、到着時刻をそれぞれの統計的分布と比較することによって生成することができ、これは、それぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻から開始して、所定の持続時間の時間窓にわたって均一な値を有することができる。同じ所定の持続時間は、第2の複数の音響送信機ユニットのすべてに使用され得る。統計的分布は、時間窓の終了後、例えば、線形またはガウスの減少による、ゼロに向かってさらに減少し得る。統計的分布は、それぞれの送信機ユニットのスケジュールされた送信時刻より前のすべての時間でゼロであり得る。しかしながら、システム全体での不完全な時刻同期の可能性を考慮して、統計的分布は、代わりに、それぞれの送信機ユニットのスケジュールされた送信時刻の前に、例えば、線形またはガウス減少により、時間的にゼロに向かって減少し得る。統計的分布は、常に1の積分を有し得、したがって、確率密度関数として使用され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の複数の音響送信機ユニットは、空間尤度データが計算される第1の複数の音響送信機ユニットを含み得る。第2の複数は、より大きいセットであり得る。いくつかの実施形態では、時間尤度データが最初に判定され得、第2の複数のサブセット(例えば、厳密なサブセット)として第1の複数の送信機ユニットを選択するために使用され得る。これは、時間尤度データが判定するのに必要な処理リソースが空間尤度データよりも少ない実施形態において、効率的なフィルタリングプロセスを提供し得る。処理システムは、時間尤度データを処理して、第1の複数を第2の複数の音響送信機ユニットのサブセットとして識別することができ、識別された第1の複数の各音響送信機ユニットは、(時間尤度データに従って)識別された第1の複数にない少なくとも1つの音響送信機ユニットよりもモバイルデバイスによって受信された音響信号を送信している尤度がより高い。
【0021】
いくつかの実施形態では、時間尤度データは、空間尤度データが判定された後に判定され得る。それは、空間尤度データを使用して識別される第1の複数の音響送信機ユニットの厳密なサブセットの各々について判定され得る。処理システムは、時間尤度データを処理して、音響送信機ユニットのさらなるサブセット(厳密なサブセットであり得る)を識別し得、識別されたさらなるサブセット内の各音響送信機ユニットは、識別されたさらなるサブセットに含まれていない少なくとも1つの音響送信機ユニットよりも、モバイルデバイスによって受信された音響信号を送信している(時間尤度データによる)尤度がより高い。第2の位置推定値は、このさらなるサブセット内の音響送信機ユニットによって送信され、かつ/または音響送信機ユニットの位置に送信された音響信号に関連する情報を処理することによって判定され得る。
【0022】
別のセットの実施形態では、時間尤度データおよび空間尤度データを一緒に使用して、複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別し得る。いくつかの実施形態では、時間尤度データおよび空間尤度データに乗算演算を適用して、複数の音響送信機ユニットのうちの1つ以上の厳密なサブセットを識別するために使用され得る、複合尤度データを判定し得る。
【0023】
これらの実施形態のいずれかにおいて、送信機ユニットのサブセットは、関連する尤度データ(例えば、空間尤度データまたは複合尤度データ)に閾値を適用することによって判定され得る。閾値より高い尤度を有する送信機ユニットは、サブセット内に含めるために選択され得るが、閾値より低いものは除外され得る。代替的に、サブセットは、送信機ユニット全体にわたって関連する尤度データを比較することによって識別され、例えば、最も高い尤度から下に向かって、サブセットに含めるための送信機ユニットの所定の数または割合を選択し得る。
【0024】
各音響送信機ユニットは、音響信号を、間隔を置いて送信することができ、それは、例えば、1秒ごとに1回など規則的であり得る。可聴範囲にある送信機ユニットは、異なるタイムスロットで送信するように構成され得る。これにより、モバイルデバイスが異なる送信機ユニットから複数の信号を同時に受信する可能性を低減することによって、信号対雑音比(SNR)を改善させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、各音響送信機ユニットによって送信された音響信号は、それぞれの音響送信機ユニットの識別データを符号化する。識別データは、配備全体にわたって送信機ユニットを必ずしも一意に識別しない。これは、音響信号の帯域幅が非常に低いためであり、したがって、測位システムの更新レートを許容可能に高くする場合、特にそれが望ましい場合があり得るため、識別子を比較的短くする必要がある。これは、超音波に近い周波数範囲で動作するスマートフォンで信号を受信する場合に特に当てはまり、ここでは、わずか1kHzの帯域幅が、使用のために使用可能であり得る。いくつかの実施形態では、使用中の約10~100の異なるコードがあり得るが、潜在的に数千の送信機ユニットがあり得る。送信機ユニットによる識別データ送信機は、それが送信するすべての音響信号にわたって一定であり得、これにより、復号化プロセスを簡素化することができる。
【0026】
第2の位置推定値を判定するための、音響送信機ユニットの識別されたサブセットによって送信された音響信号に関連する情報の処理は、受信された音響信号を復号化するときに、識別されたサブセットの各々と関連付けられたそれぞれの識別データを使用することを含み得る。復号化は、識別されたサブセット内に含まれない音響送信機ユニットのうちのいずれかと関連付けられたそれぞれの識別データを使用せずに実行され得る。処理システムは、相互相関を使用して受信信号を復号化するように構成され得る、ハードウェアまたはソフトウェア復号化器を備え得る。復号化器は、受信された音響信号を表すデータを、識別されたサブセットの各々と関連付けられた識別データと相互相関させることによって、それぞれの相関係数データを判定することができる(ただし、識別されたサブセット内にない1つ以上の送信機ユニットと関連付けられた識別データに対して相関させることなく)。このように、復号化プロセスは、受信信号がすべての可能な識別データと相互相関された場合よりも効率的であり得る。復号化演算は、空間的および時間的フィルタリングステップよりもはるかに多くのリソースを消費する可能性が高いため、空間的および/または時間的フィルタリングを使用して必要な復号化作業の量を低減すると、位置判定プロセス全体の効率を大幅に改善させることができる。
【0027】
測位システムは、受信された音響信号のソースとして音響送信機ユニットのうちの1つを正確に識別するように構成された復号化器を備え得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、復号化器は、それぞれの音響送信機ユニットによって送信されている、受信された音響信号の尤度を表す、複数の音響送信機ユニットの各々について(例えば、送信機ユニットの識別されたサブセットのすべてについて)復号化尤度データを生成し得る。この尤度データは、相関器によって出力された相関係数データから判定することができる。
【0028】
第2の位置推定値は、音響送信機ユニットのうちの1つ以上の位置を含む幾何学的最適化問題-例えば、過剰に指定された球形または双曲線の交差の最小化問題を解くことによって、判定され得る。最適化問題は、空間尤度データ、時間尤度データ、および/または復号化尤度データを使用して重み付けされ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、モバイルデバイスによって受信された各新しい音響信号ごとに、新しい位置推定値が判定される。最適化問題を解く際には、以前に受信した音響信号から取得したデータ(例えば、飛行時間範囲データ)が使用され得る。処理システムは、複数の音響送信機ユニットについて、それぞれの音響送信機ユニットから受信した最新の飛行時間範囲値を記憶し得る。処理システムは、第2の位置推定値を判定するときに、これらの値を、最新の受信された音響信号に関連する情報とともに使用することができる。復号化器が受信した音響信号ごとに単一のソース送信機を識別する場合、それぞれのソース送信機ユニットの位置を使用して、第2の位置推定値を判定することができる。復号化器が複数の候補送信機ユニットの復号化尤度データを生成する場合、復号化尤度データは、第2の位置推定値を判定するときに使用され得る。
【0030】
スケジューリングデータは、モバイルデバイスで事前にプログラムされ得るか、または遠隔デバイスから、モバイルデバイスによって、例えば、無線通信チャネルを介して、受信され得る。音響送信機ユニットのスケジューリングデータは、それぞれの音響送信機ユニットによって送信された最新の音響信号の送信時刻を表し得る。各送信機ユニットによって送信された音響信号は、時間的に離間されていてもよく、かつ/または同じ送信機ユニットによって後の信号が送信された後にモバイルデバイスが以前の信号を検出することができないような振幅であってもよい。例えば、信号は、1秒に1回送信され得るが、約80ms後に聞こえないレベルに減衰し得る。したがって、そのような実施形態では、飛行時間範囲値を判定するときに、例えば、最新の送信時刻から到着時刻を減算することによって、任意の特定の送信機ユニットからの最新の信号のみを考慮する必要がある。
【0031】
音響送信機ユニットおよびモバイルデバイスは、各々、それぞれのクロックを備え得る。クロックは、モバイルデバイスのクロックによって測定された、音響信号の到着時刻から、関連する音響送信機ユニットのクロックに従って、音響信号のスケジュールされた送信時刻を減算することによって正確な飛行時間範囲値を判定され得るように同期され得る。
【0032】
幾何学的距離値は、音響送信機ユニットの位置(処理システムにアクセス可能な位置データとして記憶される)と第1の位置推定値との間の直線距離として判定され得る。これは、一次元(例えば、X軸のみに沿って)、二次元(例えば、水平X-Y平面座標のみを考慮して)、または三次元で判定され得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の位置推定値は、少なくとも部分的に、1つ以上の電磁信号(例えば、無線または赤外線信号)、または1つ以上のさらなる音響信号(例えば、空間尤度データを判定するために使用される第1の音響信号とは異なる周波数範囲にある)を使用して-例えば、モバイルデバイスによって受信または送信された電磁信号の振幅および/または到着時刻に関連するデータを使用して、判定される。電磁信号は、1つ以上の電磁送信機または受信機ユニット-例えば、Bluetooth(商標)ノードまたはビーコンによって送信または受信され得る。いくつかの実施形態では、音響送信機ユニットのうちの1つ以上、および任意選択的にすべてが、電磁送信機または受信機ユニットでもある。これにより、設置がより便利になり得る。
【0034】
処理システムは、各電磁送信機または受信機ユニットについて、送信機または受信機ユニットとモバイルデバイスとの間で送信された1つ以上の電磁信号のそれぞれの受信信号強度(RSS)情報に基づいて範囲推定値を判定するように構成され得る。時間窓にわたって間隔を置いて受信され得る、複数のそのような信号を使用する場合、処理システムは、より古いかつ/またはより弱いRSS値よりも加重された、より新しいかつ/またはより強いRSS値によって、受信信号強度情報の加重平均を判定し得る。
【0035】
第1の位置推定値は、処理システムの外部から-例えば、別個の処理システムからのネットワーク接続を介して、受信され得、または処理システムによって生成され得る(すなわち、処理システムの内部で受信されるように)。処理システムは、1つ以上の電磁送信機または受信機ユニットの位置に関連する位置データを使用して、-例えば、一次元、二次元、または三次元の座標において、第1の位置推定値を計算することができる。処理システムは、モバイルデバイスが電磁信号を交換した、電磁送信機または受信機ユニットのセットの加重重心として第1の位置推定値を判定することができ、電磁送信機または受信機ユニットの各々は、その送信機または受信機ユニットの、受信信号強度情報に対応する重み-例えば、送信機または受信機ユニットの受信信号強度情報の加重平均に等しい重みが割り当てられ得る。
【0036】
処理システムは、モバイルデバイスによって受信された音響信号を処理することによって、経時的に一連の2つ以上の位置推定値を判定するように構成され得る。位置推定値は、規則的な間隔で、例えば、1秒ごとに判定され得る。各位置推定値は、音響信号のそれぞれのセットから判定され得、これらのセットは、例えば、各送信機ユニットから受信した最新の音響信号のみに関連する情報を使用して計算することにより、重複しない場合がある。空間尤度データは、連続する位置推定ごとに判定され得る。連続する各位置推定値は、それぞれの音響送信機ユニットと一連の位置推定値内の直前の位置推定値との間の距離を表す幾何学的距離値を使用して判定され得る。しかしながら、処理システムは、間隔を置いて、音響信号を使用して判定された位置推定値を、電磁信号(例えば、より最近の、BLEから導出された信号)を使用して判定された1つ以上の位置推定値と比較するように構成され得る。例えば、音響ベースの位置推定値が、最新の電磁ベースの位置推定値の周囲に定義された誤差楕円の外側にある場合、不整合が発生したかどうかを検出する場合がある。
【0037】
したがって、処理システムは、モバイルデバイスによって送信または受信された電磁信号または磁気信号に関連する情報を使用して-例えば、モバイルデバイスによって受信されたBLE(商標)ビーコン信号から、経時的に一連の位置推定を判定することもできる。前述の「第1の位置推定値」は、そのような一連の最新の位置推定値であり得る。これらの電磁ベースの位置推定値は、間隔を置いて-例えば、5秒ごとに1回、2回、または3回、判定され得る。それらは、音響ベースの位置推定値を判定することと並行して、すなわち、共通の期間にわたって判定され得る。それらは、本明細書に開示されるような空間尤度データの計算によって、音響ベースの位置推定値を検証するために使用され得る。
【0038】
音響送信機ユニットおよび/またはモバイルデバイスは、電池給電され得る。これにより、設置を簡素化することができる。
【0039】
各位置推定値は、一次元、二次元、または三次元で判定され得る。第2の位置推定値は、記憶、または出力、またはさらに処理され得る。位置推定値は、カルマンフィルタに入力され得る。
【0040】
本明細書における距離および範囲への言及は、見通し距離を指す場合があり、またはそれらは、例えば反射もしくは回折がある状況において、総経路長を指す場合がある。
【0041】
処理システムは、処理回路および/または1つ以上のプロセッサと、1つ以上のプロセッサによって実行するためのソフトウェアを記憶しているメモリと、を備え得る。処理回路および/またはソフトウェアは、本明細書に開示される特徴のうちのいずれかを実装し得る。
【0042】
モバイルユニットは、処理システムの一部または全部を含み得る。これは、モバイルユニットにディスプレイ画面および強力なプロセッサがある場合、例えばスマートフォンの場合に、特に適切である。そのような実施形態では、モバイルユニットは、それ自体の位置推定値または推定値を計算かつ記憶するように構成され得る。これにより、モバイルユニットからデータを通信して他の場所-例えば、遠隔サーバなどで処理する必要がなくなる場合がある。
【0043】
しかしながら、一セットの実施形態では、1つ以上の送信機ユニットは、処理システムの一部または全部を含み得、一方、別のセットの実施形態では、処理システムの一部または全部は、モバイルユニットおよび送信機ユニットの両方-例えば、1つ以上の外部サーバで構成される-の外部にあり得る。これは、モバイルユニットから(例えば、無線で)データを送信する必要性を考慮した後でも、モバイルユニットの処理要件を低減するのに有利であり得、そのコストおよび電力消費を低減することができる。これは、モバイルユニットが電池給電される場合、例えば、アセットタグの場合に役立ち得る。処理システムは、複数のプロセッサまたは複数の位置、あるいは両方にわたって分割され得る。モバイルユニットは、受信された位置特定信号を表すデータ、またはそこから導出された情報を遠隔処理ユニットに送信するように構成され得る。モバイルユニットおよび/または送信機ユニットは、受信または送信された信号に関連する情報を送信するための、無線送信機などの有線または無線送信機を備え得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、モバイルユニットは、処理システムの一部の部分のみ含むか、または含まない場合があり、一方、処理システムの他の部分-例えば、到着時刻および復号化された送信機ユニット識別子を使用して、モバイルユニットまでの距離を表す範囲データを判定するように構成された要素など-が、遠隔コンピュータまたはサーバなどの、1つ以上の他のユニット内に存在する場合がある。モバイルユニットは、無線、光、または他の送信機-例えば、Bluetooth(商標)、WiFi(商標)、またはセルラーネットワーク送信機を含み得る。送信機を使用して、オーディオファイル、デジタルサンプル、または処理されたデータなどの受信信号に関連するデータを遠隔処理ユニットに送信することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、モバイルユニットは、プロセッサおよびディスプレイを含む。これは、モバイル電話(携帯電話)またはスマートフォンまたはタブレットまたは他のポータブルコンピューティングデバイスであり得る。代替的に、モバイルユニットは、いかなる複合グラフィカルユーザインターフェースも伴わないアセットタグであり得る。
【0046】
各音響送信機ユニットは、無線アンテナ、発光素子(赤外線または可視光を放射し得る)、音響トランスデューサ、または位置特定信号を送信する他の適切な手段を備え得る。各音響送信機ユニットは、DAC、増幅器などの、送信を駆動または制御するための適切な回路を含み得る。好ましい一セットの実施形態では、各音響送信機ユニットは、超音波信号を生成するための少なくとも1つの超音波トランスデューサを備える。送信機ユニットは、規則的な間隔で、例えば毎秒1回、位置特定信号を発し得る。送信機ユニットは、可動式であり得るが、いくつかの実施形態では、それらは、例えば、壁または天井に静的に締着されている。それらは、ビーコンであり得る。
【0047】
モバイルユニットは、無線アンテナ、(赤外線または可視光を受信するための)受光素子、音響マイクロフォン、または位置特定信号を受信する他の適切な手段を備え得る。モバイルユニットは、増幅器、ADCなどの、受信を制御するための適切な回路を備え得る。モバイルユニットは、受信された音響信号をサンプリングし得る。好ましい一セットの実施形態では、モバイル受信機は、超音波信号を受信するための少なくとも1つの超音波トランスデューサを備える。
【0048】
処理システムおよび/または各音響送信機ユニットおよび/または各電磁送信機もしくは受信機ユニットおよび/またはモバイルユニットは、記載されたステップを実行するためのプロセッサ、DSP、ASIC、FPGAのうちの任意の1つ以上を備え得る。これは、データを記憶するための、および/またはプロセッサ、DSPまたはFPGAによって実行されるソフトウェア命令を記憶するためのメモリを備え得る。これは、電力供給源、発振器、ADC、DAC、RAM、フラッシュメモリ、ネットワークインターフェース、ユーザインターフェースなどを含む、任意の他の適切なアナログまたはデジタル構成要素を備え得る。これは、1つ以上の有線または無線リンクによって通信するように配置され得る、単一のユニットであり得るか、または複数の処理ユニットを備え得る。
【0049】
処理システムは、データストレージおよび/またはディスプレイおよび/またはデータ接続をさらに含み得、モバイルユニットの推定位置に関連する情報を記憶かつ/または表示かつ/または電子的に通信するように構成され得る。システムは、例えば、建物または環境の地図または計画上のモバイルユニットの位置を示すように構成され得る。
【0050】
システムは、タイミング情報を音響送信機ユニットおよび/またはモバイルユニットに送信するように構成された無線送信機を備え得る。送信機ユニットおよびモバイルユニットは、到着時刻差の代わりに到着時刻情報を測位に使用することができるように、同期され得る。これにより、正確な測位のために、モバイルユニットの範囲内にある送信機ユニットの数を減らす必要があり得る。
【0051】
本明細書で説明される任意の態様または実施形態の特徴は、適切な場合には、本明細書で説明される任意の他の態様または実施形態に適用され得る。異なる実施形態または実施形態のセットを参照する場合、これらは必ずしも明確ではないが、重複し得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
ここで、特定の本発明の好適な実施形態を、添付図面を参照しながら、ほんの一例として説明する。
【0053】
【
図1】本発明を具体化する測位システムの斜視図である。
【
図2】測位システムで使用するための静的送信機ユニットおよびモバイルデバイスの概略図である。
【
図3】モバイルデバイスの位置を推定するためにモバイルデバイスおよび/またはサーバによって実行される演算のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1は、例えば、ショッピングモール内の買い物客の位置を判定するためにショッピングモール内で使用され得る測位システムの要素を示している。当然ながら、これは単なる1つの例示的な環境であり、測位システムはまた、倉庫、病院、家庭用住居、車両などでも使用され得る。
【0055】
図1は、水平床1a、後壁1b、左端壁1c、右端壁1d、および前壁1eによって画定された部屋1を示している。ドア、家具などの他の詳細は、簡略化するために省略されている。4つの静的送信機ユニット2、3、4、5は、部屋の壁1b、1c、1d、1eに締着されている。
【0056】
部屋にいる人物6は、スマートフォンなどのモバイルデバイス7を携行している。ネットワークケーブル8は、各送信機ユニット2~5をサーバ9に接続しており、サーバ9は、典型的には、別の部屋、もしくは別の建物、または現場から離れた場所に置かれている。代替的に、送信機ユニット2~5は、例えば、WiFiネットワークを介して無線で接続され得る。これらの構成要素は、協働して、部屋1内の最大三次元-例えば、(x、y、z)座標-でモバイルデバイス7の位置を推定することができる測位システムを提供する。実際には、システムは、建物または一連の部屋全体に設置されたさらに類似の送信機ユニット、および人、動物、車両、ロボット、貯蔵品、機器などに取り付けられ、携行され、または組み込まれた複数のモバイルデバイスを有し得る。
【0057】
図2は、送信機ユニットの代表的な1つの2、およびモバイルデバイス7を示している。送信機ユニット2は、超音波音響器201と、超音波トランスデューサ201に超音波信号を送信させるためのコントローラ202と、送信機ユニットに電力を供給するための電池203と、を有する。送信機ユニット2はまた、Bluetooth Low Energy(商標)(BLE)無線信号を送信する(および任意選択的に受信する)ための、無線アンテナ208およびコントローラ202内の回路も含む。他の送信機ユニット3、4、5は、同様に構成されている。モバイルデバイス7は、送信機ユニット2~5から超音波信号を受信することができるマイクロフォン204と、受信した超音波信号をサンプリングしかつ処理するためのコントローラ205と、BLE信号を送受信するための無線アンテナ209と、モバイルデバイス7に電力を供給するための電池207と、を有する。送信機ユニット2~5およびモバイルデバイス7は、さらなる無線トランシーバ、有線ネットワークインターフェース、ディスプレイ画面、電池、ボタンなどのさらなる標準的な電子部品を有し得る。いくつかの実施形態では、モバイルデバイス7は、Apple(商標)またはAndroid(商標)スマートフォンなどの、タブレットまたはモバイル電話(携帯電話)である。
【0058】
本明細書は、超音波信号の飛行時間の測定に関するものであるが、超音波の使用は、必須ではなく、他の実施形態では、代わりに、可聴音響信号である、または赤外線信号もしくは無線信号などの電磁信号である位置特定信号を送信し得ることを理解されたい。
【0059】
コントローラ202、205は、1つ以上のプロセッサ、DSP、ASIC、および/またはFPGAを含み得る。コントローラ202、205は、データを記憶するための、かつ/またはプロセッサもしくはDSPによって実行されるソフトウェア命令を記憶するためのメモリを含み得る。コントローラ202、205は、増幅器、発振器、フィルタ、ADC、DAC、RAM、フラッシュメモリなどを含む、他の適切なアナログまたはデジタル構成要素を含み得る。
【0060】
送信機ユニット2~5は、本明細書では環境1に対して静的であるとして示されているが、他の実施形態では、それらは移動式、例えば、送信機ユニットのうちの1つ以上は、それぞれのユーザが所有するそれぞれのモバイル電話またはデバイスであり得ることが理解されよう。
【0061】
使用中、各送信機ユニット2~5は、間隔を置いて(例えば、1秒ごとに)、その送信機ユニットと関連付けられたシグネチャを含む超音波位置特定信号を送信する。送信は、近くの送信機ユニット間の干渉を低減するのを助けるために、例えば、サーバ9によって調整され得る。各送信機ユニット2~5の送信スケジュールは、サーバ9によって発行され、それにより、モバイルデバイス7などの処理システムは、各送信機ユニット2~5による超音波信号の送信時刻を判定することができる。各送信機ユニット2~5が規則的な間隔で送信する場合、スケジュールは各送信機ユニット2~5のオフセット値を含み得る。これは、タイムスロット識別子として符合化され得る。いくつかの実施形態では、各送信機ユニット2~5は、各々が約60msの持続時間である、16個の重複しないタイムスロットのうちの割り当てられた1つにおいて、1,000msごとに12msの長さの超音波信号を送信し得る。送信機ユニット2~5が4つしかない部屋1では、各ユニットに一意のタイムスロットを割り当てることができるが、より大きい部屋またはより広いエリアでは、同じタイムスロットを複数の送信機ユニットに割り当てる必要があることとなる。観念的には、タイムスロットは遠く離れた送信機ユニット間でのみ共有されるため、モバイルユニット7が同時に両方の可聴範囲に入る可能性は低い。
【0062】
一般に、送信機ユニット2~5からの超音波信号は、送信から約80ms後(27メートルの距離に相当)に、モバイルユニット7によって実質的に検出されないように、減衰することとなる。したがって、以下でより詳細に説明するように、予想された送信タイムスロットに対する信号の到着時刻を使用して、信号に対するソース送信機ユニットを識別するのに役立てることができる。
【0063】
各シグネチャは、超音波キャリア-例えば20kHzまたは40kHzのキャリア-に符合化される。シグネチャは、任意の適切な周波数偏移符号化または位相偏移符号化を使用して符合化され得るが、一セットの実施形態では、各送信機ユニット2~5のシグネチャは、周波数偏移変調(FSK)変調を使用して符合化されたそれぞれのバイナリ識別子を含む。シグネチャは、シグネチャと同じ超音波キャリア帯域で符合化され得る、固定プリアンブルおよび/または可変データ部分などの1つ以上の追加要素を含むより長い送信に含まれ得る。
【0064】
超音波通信の低帯域幅は、許容可能な更新レート(例えば、1秒に1回)を提供しながら、シグネチャで使用することができる最大ビット長を制限する。したがって、大規模な展開では、超音波シグネチャは地域内でのみ一意であり得、同じシグネチャが、システム全体の複数の送信機ユニットに割り当てられる。タイムスロットと同様に、観念的には、シグネチャは遠く離れた送信機ユニット間でのみ共有されるため、モバイルユニット7が同時に両方の可聴範囲に入る可能性は低い。
【0065】
モバイルデバイス7は、超音波信号を受信して復調し、デバイス7の可聴範囲内で送信機ユニット2~5によって送信されたシグネチャを識別する。しかしながら、ノイズおよび干渉のため、この復号化は常に信頼できるとは限らない。
【0066】
モバイルデバイス7は、内部クロックを使用して、受信したシグネチャに各信号の到着時刻を表すタイムスタンプを付ける。モバイルデバイス7は、送信機ユニット2~5の各々と(および任意選択的にサーバ9と)同期することができ、したがって、それぞれの音響送信機ユニットによる音響信号の送信時刻を表すスケジューリングデータにアクセスし、送信時刻から到着時刻を減算することによって、モバイルデバイス7が受信する各シグネチャについて少なくとも1つの飛行時間(ToF)値を計算する。スケジューリングデータは、例えば無線通信リンクを介して、サーバ9によってモバイルデバイス7に提供され得る。既知の送信機位置からの3つ以上のTOF測定値を組み合わせることにより、モバイルデバイス7の位置は、三辺測量(マルチラテレーションとも称される)の幾何学的原理を使用して判定することができる。クロック同期は、Bluetooth Low Energy(商標)接続などの無線チャネルを使用して、または他の好適な方式で実行され得る。
【0067】
他の実施形態では、モバイルデバイス7は、送信機2~5と同期されておらず、代わりに、飛行時間差(TDoF)法を使用して、デバイス7の位置を判定し得る。この場合、正確な位置推定値を判定するために、より多くの送信機ユニットがモバイルデバイス7の範囲内になければならない可能性がある。
【0068】
デバイス7の位置は、三次元(例えば、部屋1または建物の参照フレームに対する<x,y,z>デカルト座標として)、または二次元(例えば、水平面のみにおける<x,y>)、または一次元(例えば、通路に沿った距離、xとして)で、推定され得る。位置判定計算は、モバイルデバイス7上で実行され得るか、またはデバイス7は、タイミングおよび/または範囲データなどの受信信号に関する情報をサーバ9に送信し得、サーバ9は、本明細書に記載の計算の一部または全部を実行し得る。
【0069】
モバイルデバイス7は、典型的には、送信機ユニット2~5から、直接経路に沿って(明確な見通し線があると仮定して)、また、環境内の1つ以上の表面で反射した後、1つ以上の間接経路に沿って、同じ音響信号を受信することとなる。同じ送信信号のこれらの複数のインスタンスは、時間的に重複して到着し得る。これは、シグネチャを正確に復号化するときに課題となる可能性がある。間接(反射)信号に沿って受信されたインスタンスの強度は、典型的には、必ずしもそうであるとは限らないが、直接経路信号の強度よりも低くなることとなる(例えば、デバイス7のマイクロフォンが、ガラス窓ペインなどのより高い反射率の表面に向かって角度が付けられている場合)。デバイス7は、位置判定アルゴリズムで使用するために、信号強度を使用して直接経路信号を識別するのを助け得る。
【0070】
受信した直接経路信号の飛行時間は、マルチラテレーション測位アルゴリズムに入力することができる。いくつかの実施形態では、任意の反射(エコー)の飛行時間は、幾何学的適合プロセスでは無視されるが、いくつかの実施形態では、反射信号を使用して、受信した直接経路シグネチャの復号化を支援し得る。しかしながら、他の実施形態では、反射の到着時刻はまた、デバイス7の位置に関する幾何学的情報を判定するときに使用され得る。そのような実施形態は、環境内の主反射表面の既知の位置を利用し得る。そのような実施形態で採用され得る実際のおよび仮想の送信機位置に関係する技術は、2018年3月5日に出願されたWO2018/162885で開示されており、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。モバイルデバイス7の位置は、いくつかの実施形態では、複数の経路に沿って受信され、各インスタンスが異なるそれぞれの時間に到着する、1つの位置特定信号の複数のインスタンスからインパルス応答関数を推定することによって、少なくとも部分的に推定され得る。
【0071】
ドップラーシフトは、モバイルデバイス7が1つ以上の送信機ユニット2~5に近づくまたは遠ざかるときはいつでも発生する。したがって、測位システムは、送信シグネチャの正確な復号化を可能にするためのドップラーシフト補償機構を含み得る。
【0072】
処理ステップは、簡略化するために、本明細書ではモバイルデバイス7によって実行されるものとして説明されているが、いくつかの実施形態では、これらのステップのうちのいくつかまたはすべては、適切な場合、代わりにサーバ9によって実行され得ることを理解されたい。中間結果を含むデータは、好適なローカルゲートウェイまたは遠隔基地局を使用して、Bluetooth(商標)、WiFi(商標)、IEEE 802.15.4、またはセルラー無線リンクなどの適切な手段によって、デバイス7とサーバ9との間で通信され得る。サーバ9は、単一の物理的デバイスであり得るか、または分散型の(例えば、クラウド)サーバシステムであり得る。サーバ9は、部屋1と同じ建物内、もしくは同じ場所にあるか、または例えば、インターネット経由でアクセスされる遠隔データセンターなど、部屋1から離れている可能性がある。
【0073】
ソース送信機ユニット2~5を識別するための受信されたシグネチャの復号化は常に信頼できるとは限らないため、モバイルデバイス7によって受信された信号のソースのアイデンティティに関してかなりの曖昧さが存在し得る。同じタイムスロットおよび/または音響シグネチャをシステム全体の2つ以上の送信機ユニットに割り当てる必要がある場合、さらに曖昧さが生じる。
【0074】
しかしながら、モバイルデバイス7は、モバイルデバイス7が受信信号から判定されたタイミングまたは範囲情報を測位アルゴリズムに入力する前に、この曖昧さを軽減するための動作を実行する。このフィルタリングは、受信信号ごとに単一の最も可能性の高いソース送信機ユニット2~5を識別し得る。代替的に、フィルタリングは、システム内のすべての送信機ユニットの厳密なサブセットを識別し得、送信機ユニットのこのサブセットに関連するデータを、モバイルデバイス7の測位推定値を計算するときに、使用される測位アルゴリズムに渡し得る。
【0075】
フィルタリングでは、次のような様々な要因が考慮される。
-信号減衰モデル(本明細書では「時間的フィルタリング」と称される)に基づく、信号の到着時刻とそれぞれの送信機ユニットの最新の送信時刻との間の一貫性。
-それぞれの送信機ユニットまでの飛行時間範囲と、以前の位置推定値を使用して計算された(本明細書では「空間的フィルタリング」と称される)、それぞれの送信機ユニットまでの幾何学的距離との間の一貫性。
-それぞれの送信機ユニットのシグネチャに等しい復号化された(本明細書では「復号化フィルタリング」と称される)シグネチャの信頼度。
【0076】
この以前の位置推定値は、送信機ユニット2~5から受信した超音波信号のセットから判定された以前の推定値である場合もあれば、または異なる機構によって判定された位置推定値である場合もある。したがって、いくつかの実施形態では、送信機ユニット2~5の各々はまた、規則的な間隔でBluetooth Low Energy(商標)(BLE)無線ビーコン信号を送信する。モバイルデバイス7は、送信機ユニット2~5からのBluetooth(商標)無線信号を使用して、受信信号強度インジケータ(RSSI)を測定することによってなどの好適な処理を使用し、任意選択的にRF飛行時間測定値も考慮して、モバイルデバイス7の初期位置推定値を判定することができる。
【0077】
他の実施形態では、BLEビーコン送信機は、送信機ユニット2~5から物理的に別個であり得、または初期位置推定値は、WiFi、NFC、UWB、GPS、セルラー、もしくは赤外線測位、または任意の他の位置特定技術を使用して判定され得る。
【0078】
無線測位システムは、約10~15メートルの精度(少なくとも2つの水平寸法)、および10~15秒以下の遅延(約1m/秒の、典型的な人間の歩行速度に対応する)で、位置推定値を判定し得る。BLEビーコンを使用する場合、これらは25~150m2当たり約1ビーコンの密度で配備され得る。ビーコン間の典型的な距離が5~12mと仮定すると、これにより、約3~15mの測位精度、および10秒未満の比較的低い遅延が得られる。無線測位アルゴリズムの重要な要件は、必ずしも高精度である必要はなく、むしろ超音波送信機ユニット2~5で囲まれたエリア内にはっきりとあるモバイルデバイス7の位置の堅牢かつ保守的な初期推定値を提供することである。
【0079】
他の実施形態では、モバイルデバイス7は、インフラストラクチャから測位信号を受信するのではなく、静的受信機ユニット(同じユニット2~5であり得る)によって受信される、例えば無線信号などの測位信号を送信し得る。初期位置推定値は、例えば、ユーザが、地図上で自分の位置を識別することを可能にするモバイルデバイス7上のグラフィカルユーザインターフェースを介して、人間のユーザからでさえ受信され得る。
【0080】
大規模な空間位置(建物、フロアなど)は、同じ信号を使用して判定され得、または屋外から屋内への移行中にGPS信号を使用して、もしくは任意の他の適切な方式で到達され得る。モバイルデバイス7が特定のフロアにあることが既に知られている場合、2つの水平寸法のみで後続の位置推定値を判定することで十分である場合がある。また、本明細書におけるシステム内のすべての送信機ユニットへの言及は、モバイルデバイス7が既にこのゾーンにローカライズされている場合、特定の建物またはフロアなどの特定のゾーンにあるすべてのこれらの送信機ユニットを指し得る。
【0081】
全く最初の位置推定値は、例えば、無線ビーコンを使用して判定し得、その後、直前の超音波判定位置推定値を使用して、各後続の超音波判定位置推定値の空間的フィルタリングを行うことにより、2つ以上の位置推定値の時系列を、超音波信号を使用して判定し得る。
【0082】
しかしながら、デバイスは、空間的フィルタリングが先行する超音波ベースの位置推定値に基づく超音波ベースの追跡を実行している場合でも、間隔を置いて(例えば、5秒ごとに2回または3回)更新されたBLEベースの位置推定値を取得し続ける場合がある(例えば、1秒ごとに1つの新しい位置推定値が計算される)。このように、BLE位置推定値を使用して、各超音波ベースの位置推定値の精度を確認することができ、位置推定が不正確になった場合は、空間的フィルタリングを再初期化するために、最近のBLE位置推定値が使用可能となる。
【0083】
フィルタリングは、単一のステップとして、または複数の段階で実行され得、各段階は、特定の受信信号のソース送信機ユニットの候補セット内の送信機ユニットの数を潜在的に低減する。特に、シグネチャの復号化は、時間的フィルタリングおよび/または空間的フィルタリングが実行された後に実行され得、これは、相対的にリソースを消費し得る復号化プロセスに必要な時間および/またはエネルギーを効率的に低減することができるからである。
【0084】
図3は、時系列の位置推定値を生成するときに、モバイルデバイス7によって実行される主要な演算の概要を提供するフローチャートである。他の実施形態では、これらの演算のうちのいくつかまたはすべてがサーバ9で行われ得る。
【0085】
ここでは、モバイルデバイス7は、部屋1の送信機ユニット2~5を含む、システム内のすべての送信機ユニットの送信スケジュールが既に提供されており、例えば、1つ以上の無線中継局を介して(例えば、送信機ユニット2~5に内蔵されたBLEトランシーバを介して)、サーバ9とタイムスタンプを交換することによって、送信機ユニットと同期されていると想定される。時間を交換することによって送信機ユニットと同期されていると想定される。それはまた、二次元または三次元において、システム内の各送信機ユニットの位置座標へのアクセスを有する。
【0086】
最初に、BLEビーコン信号(例えば、送信機ユニット2~5によって送信される)を使用して、初期位置推定値を判定300する。これは、数メートル程度の精度のみを有し得るが、システムは、数センチメートル程度以上の精度でモバイルデバイス7を追跡することを目的としている。モバイルデバイス7が最初にオンにされたとき、またはそれがしばらくの間いかなる超音波信号も受信しなくなったとき、または一連の位置推定値の信頼度が最小閾値を下回ったときはいつでも、新しいBLE位置推定値が計算され得る。
【0087】
初期のBLEベースの位置推定値を生成するための1つのアプローチは、各BLEビーコン(送信機ユニット2~5であり得るか、またはそれらから別個であり得る)に、衝突を避けるために、その送信のランダムなタイミングで、アドバタイジング・チャネル上で毎秒3つのBLE信号を送信させることである。RFビーコン信号は、モバイルデバイス7のコントローラ205が、RFビーコン信号の送信元であるビーコンを識別するために使用することができる、グローバルに一意のビーコンの識別子を含む。モバイルデバイス7は、電力を節約するために、約50%または60%のデューティサイクルでこれらの信号をスキャンし、オン/オフの周期性は10秒以下である。
【0088】
しかしながら、例えば、スマートフォン7などの測位セッションの開始時には、比較的信頼性の高い(必ずしも高分解能である必要はないが)位置推定値r_mobileが必要である。このため、セッションの最初の60秒間は、BLE受信のデューティサイクルが無効になる場合がある。信頼できる初期位置推定値r_mobile_BLEは、典型的には、数秒後(すなわち、5個超~10個のBLEビーコンが受信された後)に受信されたBLE信号から判定される。
【0089】
これを行うために、モバイルデバイス7は、各受信したBLE信号を以下の方式で処理する。
-受信時に、モバイルデバイス7は、受信のタイムスタンプおよび範囲内の各ビーコンからの信号の受信信号強度(RSS)を登録する。
-一意のビーコンIDごとに、コントローラ205は、オン/オフの周期性(<10秒)の程度である長さを有する時間窓を有するバッファを維持する。
-典型的には、コントローラ205は、毎秒、BLEビーコンとモバイルデバイス7との間の加重平均「範囲」推定値を以下によって計算する。
○最初に、屋内環境でのRSSの典型的なチャネルモデルからインスピレーションを得たRSS_derived_range値を計算する:RSS_derived_range=(RSS/RSS_0)-p、式中、RSS_0は1メートルで送信される信号のRSSであり、(この値は以下の方法で正規化される)、電力pは環境に依存し、観測から見つけることができ、典型的には1~3の範囲である。
○バッファ内の各RSS_derived_rangeの重み付けは、時間窓の長さに対して有効期限がどれだけ近いかに応じて1~0まで直線的に減少する重みで重み付けされ、バッファ内の測定ごとに、(RSS)-2でスケーリングされる重みでも重み付けされ、高RSS観測によって支配される各BLEビーコンの加重average_RSS_derived_range値に到達し、これにより、破壊的な干渉効果が範囲推定値にほとんど影響を与えないことが保証される。
【0090】
average_RSS_derived_range値は、実際にはBLEビーコン2~5とモバイルデバイス7との間の真の幾何学的範囲の正確な推定値ではない可能性があることに注意されたい。それでもなお、RSS測定に基づいてモバイルデバイス7の位置を大まかに推定するのに役立つ。
【0091】
モバイルデバイス位置のBLEベースの推定値を計算するために、コントローラ205は、ビーコン位置ベクトルr_BLE
i、および重み(average_RSS_derived_range
i)
-1を使用して、加重平均ビーコン位置ベクトル、r_mobile_BLEを計算し、式中、iは以下のようにBLEビーコンにインデックスを付ける。
【数1】
式中、Nは、モバイルデバイス7が時間窓の間にBLE信号をそこから受信したBLEビーコンの総数である。
【0092】
BLE位置の拡散の測定値も、各次元で計算される(例えば、三次元で作業する場合は、直交するx、y、z軸に沿って)。
【数2】
式中、kは次元をインデックス付けし(例えば、三次元の場合、k=1、2、3、)、e
kは標準ユークリッド基底である。
【0093】
新しいBLE位置推定値および拡散は、音響信号が処理されている場合でも、規則的または不規則的な間隔、例えば1~5秒ごとに判定され得る。
【0094】
マイクロフォン204で受信された着信オーディオは、送信機ユニットのうちの1つからの着信超音波位置特定信号を検出301するためにサンプリングおよび分析される。これは、複雑なIQベースバンドサンプルのストリームを生成するための、アナログおよび/またはデジタルミキシング技術を使用してダウンミキシングプロセスを含み得る。受信信号は、クリティカルに-すなわち、送信シグネチャのナイキスト周波数に近いサンプルレートで-サンプリングされ得る。受信したシグネチャは、適切な手法で検出され、これには、テンプレートデータに対する相互相関、またはデコンボリューションプロセスの使用が含まれる場合があるが、いくつかの実施形態では、(符合化されたコンテンツに関係なく)キャリア周波数付近で持続時間12msのエネルギーのバーストを検出するスライディングエネルギー検出器を使用する。
【0095】
受信したシグネチャの到着時刻が判定される302。タイミングは、検出されたエネルギー窓信号の開始を基準にして判定され得る。いくつかの実施形態では、これは最初の到着時刻の推定であり得、より正確な到着時刻は、例えば、シグネチャが復号化された後に相関器を使用して、プロセスの後半で判定され得る。
【0096】
次に、時間的フィルタリングステップ303が実行され、システム内のすべての送信機ユニットの到着時刻および既知の送信スケジュールに基づいて、受信信号の候補送信機ユニットの第1の候補リストを識別する。
【0097】
一実施形態では、毎秒が16のタイムスロットに分割され、送信する各送信機ユニットは、16のタイムスロットのうちの1つに割り当てられ、その開始時に、その12msの長さの位置シグネチャを送信し、そのそれぞれの送信機ユニット識別子を符号化して、毎秒繰り返す。送信電力、受信機の感度、および環境音響は、各信号が送信されてから2つのタイムスロット内で検出不可能なレベルまでフェードするようなものであり得る。したがって、時間的フィルタリングは、到着時刻の前の2つのタイムスロットのうちの1つ内において、送信がスケジュールされていなかったシステム内のすべての送信機ユニットを単純に除外することができる。しかし、別の方式では、コントローラ205は、第1の候補リストに含めるために、前の2つのタイムスロット内(すなわち、タイムスロットに対する到着時刻の位置に応じて、到着時刻の最大120ms前)に送信するようにスケジュールされたシステム全体のすべての送信機ユニットを選択する。代替的または追加的に、このステップにおいて、より複雑な尤度値が計算および使用され得、例えば、以下に示すP_timei値に、閾値が適用されて、例えば、5~90%の範囲の閾値である、可能性が低い送信機ユニットを除外し得る。
【0098】
次に、空間的フィルタリングステップ304が送信機ユニットの第1の候補リストに適用されて、低減された候補リストが得られる。このステップでは、初期位置推定値を使用し、これは、必ずしも正確ではないが(BLEビーコンなどの本質的に精度の低い測位方法を使用して判定されたため、またはモバイルデバイス7が移動した可能性がある間に計算されてからしばらく時間が経過したため)、それにもかかわらず、モバイルデバイス7によって受信された測位信号の起源である可能性のある送信機ユニットのプールを有用に制限するのに十分な情報を提供することができる。
【0099】
コントローラ205は、各送信機ユニットiを第1の候補リストに順番に考慮する。候補となる送信機ユニットごとに、その送信機ユニットによる最新の送信を到着時刻から減算して、飛行時間を判定する。(同じユニットによる以前の送信は、送信が1秒サイクルで行われると仮定すると、減衰してから長い時間がかかる。)このことから、飛行時間範囲の値、R_tof
iは、空気を通る音速を掛けることによって計算することができる。周囲温度に基づいてデフォルトの速度値を調節するために、温度計が使用され得る。さらに、コントローラ205は、それぞれの送信機ユニットの既知の位置と初期位置推定値との間の直線距離R_geo
i(必要に応じて、一、二または三次元において)を計算し、
【数3】
式中、r_mobileは初期位置推定値であり、最新のBLE導出位置推定値r_mobile_BLE、または最新の超音波導出位置推定値r_mobile_USであり、r_tx
iはそれぞれの送信機ユニット、iの位置ベクトルである。
【0100】
コントローラ205は、これらの値を使用して、予想される分散によって正規化された誤差に基づいて、候補送信機ユニットの各々について、空間尤度値P_spatial
iを計算する。
【数4】
式中、var_effは、幾何学的距離R_geoとToF導出距離R_tofとの間の誤差の分散の推定値を表す値である。
【0101】
このvar_eff値は、任意の適切な方式で計算し得る。それは単に固定定数値(例えば、4m2)である場合もあれば、次のいずれかなどの1つ以上の要因に依存する場合もある。
-R_tofi、
-r_mobile位置推定値の拡散(例えば、r_mobileがBLEベースの推定値のr_mobile_BLEである場合、上記で定義された、rk_mobile_BLE_spread)、
-以前の超音波ベースの位置推定値も利用可能な場合、以前の超音波ベースの位置推定値と最新のBLEベースの位置推定値との間の誤差。
【0102】
一般に、標準偏差は0~10メートルの間で変化するため(典型的には1m~10mの間)、var_effは0~100m2の間で変化し得る。
【0103】
一例では、分散パラメータvar_effは、r_mobileが、3秒未満である、超音波から導出された位置推定値r_mobile_USである場合、およびr_mobileが、各次元においてr_mobile_BLE_spreadの3倍で定義されるr_mobile_BLEの周りの誤差楕円内にある場合、4m2に等しく設定され、他の場合は、49m2以下および0.7×(r_mobile_US-r_mobile_BLE)2に等しく設定される。
【0104】
P_spatialはガウス関数である。指数および/または指数項は、任意選択的にさらにスケーリングして、P_spatialを正規分布として定義し、真の確率密度関数にすることができる。しかしながら、送信機ユニットのP_spatial尤度値は、合計が1にならない場合でも、相対尤度を依然として示すことができるため、いくつかの実施形態では、これは必要ない場合がある。
【0105】
次に、第1の候補リストの各送信機ユニットiのP_spatialiの値が閾値と比較され、閾値を下回るP_spatial値を持つこれらの送信機ユニットが除外されて、候補送信機ユニットの候補リストを潜在的に低減する。いくつかの実施形態では、より複雑な選択基準を使用され得、例えば、最低のP_spatial値を有する送信機ユニットの少なくとも最小パーセンテージをさらに除外し得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、時間的ファイリング303および空間的フィルタリング304は、任意選択的に個々のフィルタリングに加えて、またはその代わりに、組み合わされたフィルタリングステップを含み得る。この組み合わされたフィルタリングは、到着時刻およびその送信機ユニットからの最新のスケジュールされた送信に基づいて、システム内の各送信機ユニットiがソース送信機ユニットである尤度を表す時間的尤度値P_timeiを計算することを含み得、次に、最小閾値を積P_timei×P_spatialiに適用して、候補送信機ユニットの候補リストを識別する。
【0107】
値P_timeiは、両端に対称のガウステイルを追加した、持続時間が60msの長方形窓を使用して計算し得、長方形の始点は、送信機ユニットiのスケジュール送信開始時刻に位置付けされ得、値P_timeiは、到着時の窓関数の値と同じである。このように、P_timeiは、信号がスケジュールされた送信から60ms以内に受信された場合に最大になり、信号が早期に受信された場合に低くなるか(クロック同期誤差がある場合に起こり得る)、またはこれより遅くなる。当然ながら、60ms以外の値が使用され得るか、またはP_time関数が、任意の他の適切な方式で定義され得る。これは必要ではない場合もあり得るが、確率密度関数になるようにスケーリングされ得る(すなわち、1つに統合)。
【0108】
時間的および空間的フィルタリングは、単一の最も可能性の高い送信機ユニットを識別するように常に構成され得るか、または2つ以上の送信機ユニットを含み得る、可能性の高い送信機ユニットのセットを出力するように構成され得る。
【0109】
次に、モバイルデバイス7のコントローラ205は、候補送信機ユニットの低減された候補リストのデータを復号化器アルゴリズムに渡し、復号化フィルタリング305を適用して、ソース送信機ユニット(または潜在的に2つ以上の可能性のある送信機ユニット)を識別する。復号化器は、低減された候補リスト内の送信機ユニットのシグネチャを表す記憶されたテンプレートデータに対して相関する、受信信号サンプルに対して相互相関演算を実行する。これは、低減された候補リストの送信機ユニットごとに実行され得る。これは比較的処理集約的なステップであるため、以前の時間的フィルタリング303および空間的フィルタリング304は、復号化ステップ305の時間および電力を低減するのに役立つ。それぞれの相関係数は、復号化の信頼性に基づいて、それぞれの送信機ユニットが受信信号のソースである尤度を表す復号化尤度値である、低減された候補リスト内の各送信機ユニットについて判定され得る。
【0110】
復号化フィルタリングは、尤度値が最小閾値を超える限り、任意選択的に、識別されたソース送信機ユニットとして、最も高い復号化尤度値を有する1つの送信機ユニットを常に選択し得、または復号化フィルタリングは、閾値を超える復号化尤度を有する1つ以上の送信機ユニットのセットを潜在的に選択し得る。
【0111】
いくつかの実施形態は、時間的、空間的および復号化フィルタリングを単一のステップに組み合わせ得るが(例えば、システム内の送信機ユニットごとに、3つのステップすべてによって生成された尤度値を一緒に乗算することによって)、復号化ステップ305を開始する前に時間的および空間的フィルタリングを適用することにより、計算上の利点を提供することができる。
【0112】
送信機ユニットのうちのいずれも満たさない、時間的、空間的、および復号化フィルタリングステップ303~305のいずれかで最小尤度閾値が適用される場合、その信号の復号化は中止され、プロセスは次の着信信号を検出301するために循環する。
【0113】
1つの送信機ユニットが3つのフィルタリングステップ303~305のすべてを通過すると仮定すると、信号のソースであるこの送信機ユニットに基づく信号の飛行時間範囲値が、送信機ユニットのアイデンティティまたは座標に沿って、範囲値のバッファに追加される306。2つ以上の送信機ユニットがフィルタリングを通過する場合、各送信機ユニットがソースであると仮定して、複数の範囲値がバッファに追加され得る306。関連する信頼水準は、各範囲値-例えば、時間的、空間的、および復号化尤度値の積である-とともに記憶され得る。タイムスタンプも記憶され得る-例えば、信号の到着時刻である。復号化器は、例えば、相互相関演算のピーク位置に基づいて、ステップ302のエネルギー検出器よりも正確な到着時刻を判定するように構成され得、これは、後続の測位アルゴリズムで使用するための更新されたToF範囲値を計算するために使用され得る。
【0114】
次に、モバイルデバイス7の新しい位置推定は、幾何学的最小化問題を解くことによって計算される307(バッファが最小数の範囲値を含む限り-例えば、少なくとも3つの異なる送信機ユニット2~5の値を含む限り)。
【0115】
非同期システムでは、ToF範囲値を計算することはできないが、代わりに、異なる送信機ユニット2~5からのシグネチャの到着時刻をバッファリングして、到着時刻差TDoA測位に基づく最小化問題を解くために使用され得る。
【0116】
バッファリングされた各範囲値の信頼水準および経過時間を使用して、測位アルゴリズムで値に異なる重みを付けることができる-例えば、より新しい、かつ/またはより信頼できる範囲値により多くの重みを与えることができる。古い範囲データは、バッファから破棄されるか、またはその経過時間に基づいて低い重みが与えられる場合がある。同様に、アルゴリズムは、尤度情報を使用して、特定の送信機ユニットへの範囲の割り当ての精度の信頼性に従って、範囲データに重みを付けることができる。
【0117】
位置推定アルゴリズムは、球(またはTDOA測位を使用している場合は双曲面)の交差に関連する線形最適化問題(例えば、加重最小二乗法回帰)を解く。位置推定アルゴリズムは、最適化問題を解いて、新しい位置推定値を判定する。これは、コスト関数(すなわち、目的関数)を最小化する位置を見つけることによって行われる。
【0118】
コスト関数Jは、次の形式を取る。
【数5】
式中、
rは、(二次元または三次元空間での)新しい位置推定値であり、
r_tx
iは、送信機ユニットiの2Dまたは3D位置であり、
R_tof
iは、モバイルデバイスと特定の送信機ユニットiとの間で測定された最新の飛行時間範囲である。
【0119】
各送信機ユニットiには重みwiが与えられる。重みwiには、絶対成分が含まれる場合があり、例えば、これは、単一の送信機ユニットiの測定値の分散に依存する。また、相対成分rel_wiが含まれる場合もあり、これは、他の送信機ユニットに対する送信機ユニットiの範囲値の信頼性を表し得る。この信頼性は、フィルタリング尤度、およびその送信機ユニットのバッファ内の最新の範囲値の経過時間に基づき得る。コスト関数は、相対的な重みrel_wiに対して正規化されるが、絶対的な重み成分に対しては正規化されない。これは、絶対成分(例えば、測定値の分散)が各送信機ユニットの信頼性を示すため、コスト関数でグローバルに考慮する必要があるが、相対的な重みは、他の送信機ユニットと比較してどの送信機ユニットがより信頼できるかを示すだけであり、絶対的な意味での測定値の信頼性は示さない。いくつかの実施形態では、同じ送信機ユニットのより古い範囲値を含めることができるが、経過時間による重み付けはより低い。
【0120】
次に、新しい位置推定値が、所望に応じて処理される308。これは、モバイルデバイス7の機能を制御するために使用され得る。これは、例えば、BLEリンクを介して、サーバ9に通信され得る。
【0121】
新しい位置推定値は、速度データまたは他の位置推定値など、慣性計測ユニット(IMU)または他のセンサからのデータと組み合わされ得る。それは、以前に判定された位置推定値を使用して、平滑化され得る。それは、カルマンフィルタモジュールに入力されて、改善された位置データを生成し得る。このカルマンフィルタモジュールは、音響ベースの位置推定値を加速度計などの他のセンサからのデータと組み合わせて、精度をさらに改善し得る。
【0122】
新しい位置推定値(任意選択的にそのような後処理後)は、地図上に表示すること304ができ、これは、デバイス7または遠隔デバイス、例えば、サーバ9に接続されたクライアントコンピュータの画面に表示され得る。当然ながら、この表示ステップは必ずしも必要ではなく、代わりに位置推定値が、他の方式で使用され得、例えば、単に将来の潜在的な使用のためにメモリに記憶されるか、または事前構成されたジオフェンスを越えたかどうかを確認するために処理されるか、ユーザ6に可聴ナビゲーションの合図を与えるか、またはモバイルデバイス7に位置依存性の広告を表示する。
【0123】
位置推定値の時系列rnは、プロセスを受信ステップ301にループバックすることにより、継続的に生成され得、今回は、初期BLEベースの推定値ではなく、空間的フィルタリング304で最新の超音波ベースの位置推定値を使用し(すなわち、反復nごとにr_mobilen=r(n-1)を設定する)、他の情報のソースと組み合わされる可能性がある。連続する位置推定値の拡散rnは、初期BLEベースの推定よりも低くなければならないため、空間分布分散var_effがより低く設定され得、その結果、潜在的に、最終候補のソース送信機ユニットの数が動的に低減する。最新の超音波ベースの位置推定値の誤差推定(または信頼値)が利用可能な場合、これは後続の空間的フィルタリング304ステップで使用され得る。
【0124】
連続する各空間フィルタを以前の超音波から導出された位置推定値に集中させると、追跡において、重大な誤差が発生する可能性のある正の確認サイクルが発生するリスクがある。これを回避するために、コントローラ205は、最新の超音波ベースの位置推定値r_mobile_USが最近得られたBLEベースの位置推定値r_mobile_BLE-と一致する場合-例えば、各次元kにおいてspread_constantxrk_mobile_BLE_spreadのサイズでr_mobile_BLEを中心とする誤差楕円内にある場合、各空間フィルタに最新の超音波ベースの位置推定値をシードするようにのみ構成され得、ここで、拡散定数は典型的には1~4の範囲のスカラー値であり、rk_mobile_BLE_spreadは、次元kにおけるr_mobile_BLEの不確実性を表すベクトルである。この確認が実行されることを可能にするために、モバイルデバイス7は、主に受信した超音波信号を使用してモバイルデバイス7の位置を追跡するのと並行して、間隔を置いて新しいBLEベースの位置推定値を生成し続けることができる。超音波から導出された位置推定値がBLEベースの推定値から離れすぎている場合、測位プロセスは、r_mobileを、次のサイクルの最新のBLEベースの推定値と等しく設定し得る。
【0125】
屋内BLE RSS信号からのz分解能は典型的には不十分であるため、上記のアルゴリズムでは、z高さ座標が無視される場合があることに注意されたい。
【0126】
ステップは本明細書に順番に示されているが、例えば、位置推定アルゴリズムが更新された位置推定値を生成しているときでさえ、マイクロフォン204の出力が連続的にサンプリングされて新しい位置特定信号を検出することで、それらのうちの少なくともいくつかが並列に実行され得ることが理解されよう。
【0127】
既に述べたように、特に、ソース超音波送信機ユニットのアイデンティティの曖昧さを解決するためにBLEを使用することは必須ではなく、他の無線測位技術、または光学測位、またはユーザ入力、または磁気センサおよび/もしくはジャイロスコープなどを含む複数のセンサへのアクセスを有するIMUなど、他の測位技術を代わりに使用して初期位置推定値を判定することができる。
【0128】
当業者には、本発明が、その1つ以上の特定の実施形態を説明することによって示されているが、これらの実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲内で多数の変形および修正が可能であることが理解されるであろう。
【国際調査報告】