(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】操作された免疫細胞
(51)【国際特許分類】
C12N 5/078 20100101AFI20230308BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230308BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20230308BHJP
C12N 5/0787 20100101ALI20230308BHJP
C12N 5/0786 20100101ALI20230308BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230308BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230308BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C12N5/078
C12N5/10
C12N5/0783
C12N5/0787
C12N5/0786
C12N15/12
C12N15/63 Z
A61K35/17 Z
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544061
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-09
(86)【国際出願番号】 GB2021050128
(87)【国際公開番号】W WO2021148788
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505367464
【氏名又は名称】ユーシーエル ビジネス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】チェスター,ケリー
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ロタ,エンリケ ミランダ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA44
4C087AA01
4C087BB37
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、抗体依存性細胞傷害が可能であり、分泌される抗原結合分子をコードする核酸配列を含む免疫細胞に関する。本発明はまた、免疫細胞を生成する方法及び免疫細胞の医療用途に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)が可能であり、抗原結合領域を含む抗原結合分子をコードする核酸配列を含む免疫細胞。
【請求項2】
抗原結合領域が、scFv、Fab、修飾されたFab、Fab'、修飾されたFab'、F(ab')2、Fv、dAb、Fd、dsFv、ds-scFv、scFv2、二重特異性T細胞エンゲージャー、ナノボディ、DARPin、抗体模倣体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又は免疫細胞によって標的化される細胞の表面に発現する受容体のポリペプチドリガンドを含む、請求項1に記載の免疫細胞。
【請求項3】
抗原結合分子がFc受容体に結合することができる、請求項1又は2に記載の免疫細胞。
【請求項4】
抗原結合分子がFc領域又は修飾されたFc領域を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項5】
抗原結合分子が、抗体、scFv-Fc、dAb-Fc、重鎖抗体、IgNAR又はラクダ抗体である、請求項1から4のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項6】
免疫細胞がアルファベータT細胞ではない、請求項1から5のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項7】
免疫細胞がガンマデルタT細胞又はNK細胞である、請求項1から6のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項8】
ガンマデルタT細胞がVδ1+ガンマデルタT細胞、Vδ2+ガンマデルタT細胞、又はVδ1-/Vδ2-ガンマデルタT細胞である、請求項7に記載の免疫細胞。
【請求項9】
ガンマデルタT細胞がVδ2+ガンマデルタT細胞である、請求項8に記載の免疫細胞。
【請求項10】
免疫細胞が骨髄細胞である、請求項1から6のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項11】
骨髄細胞が、マクロファージ、好塩基球、好酸球又は好中球である、請求項10に記載の免疫細胞。
【請求項12】
免疫細胞がキメラ抗原受容体(CAR)を発現しない、請求項1から11のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項13】
抗原結合領域が、腫瘍微小環境において発現される抗原に結合することができる、請求項1から12のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項14】
抗原結合領域が、腫瘍抗原、内皮抗原又は免疫細胞抗原に結合することができる、請求項1から13のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項15】
抗原結合領域が、CEA、B7-H3、TSHR、CD3、CD16、CD32、CD64、CD19、CD123、CD22、CD20、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、Tn Ag、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、EPCAM、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-llRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、CD20、葉酸受容体アルファ、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gplOO、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGMl、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、ETV6-AML、精子タンパク質17、XAGE1、Tie 2、MAD-CT-1、MAD-CT-2、Fos関連抗原1、p53、p53突然変異体、プロステイン、サバイビン及びテロメラーゼ、PCTA-l/ガレクチン8、MelanA/MARTl、Ras突然変異体、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンBl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OYTES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸管カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、LINGO1、CD70、IL13Rα2、MUC-16、PSCA、ROR1、及びIGLL1からなる群から選択される抗原に結合することができる、請求項1から14のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項16】
腫瘍抗原が、CEA、B7-H3、CD20又はGD2である、請求項15に記載の免疫細胞。
【請求項17】
抗原結合分子がオプソニンである、請求項1から16のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項18】
免疫細胞が抗原結合分子を発現する、請求項1から17のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項19】
抗原結合分子が、配列番号1によってコードされるV
Hドメイン及び/又は配列番号2によってコードされるV
Lドメインを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項20】
抗原結合分子が配列番号3によってコードされる、請求項19に記載の免疫細胞。
【請求項21】
抗原結合分子が、配列番号4によってコードされるV
Hドメイン及び/又は配列番号5によってコードされるV
Lドメインを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項22】
抗原結合分子が配列番号6によってコードされる、請求項21に記載の免疫細胞。
【請求項23】
抗原結合分子が、配列番号20によってコードされる重鎖及び/又は配列番号18によってコードされる軽鎖を含む、請求項1から18及び21のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項24】
抗原結合分子が配列番号17によってコードされる、請求項23に記載の免疫細胞。
【請求項25】
核酸配列が2つ以上の異なる抗原結合分子をコードする、請求項1から24のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項26】
免疫細胞が、各々が異なる抗原結合分子をコードする2つ以上の核酸配列を含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の免疫細胞。
【請求項27】
抗原結合分子をコードする核酸配列を免疫細胞に導入することを含む、請求項1から26のいずれか一項に記載の免疫細胞を生成する方法。
【請求項28】
核酸配列が、ベクター、場合によりウイルスベクターに含まれる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1から26のいずれか一項に記載の治療上有効な数の免疫細胞を個体に投与することを含む、個体における疾患を処置する方法。
【請求項30】
個体における疾患を処置する方法において使用するための請求項1から26のいずれか一項に記載の免疫細胞であって、該方法が治療上有効な数の免疫細胞を個体に投与することを含む、免疫細胞。
【請求項31】
疾患ががんである、請求項29に記載の方法又は請求項30に記載の使用するための免疫細胞。
【請求項32】
がんが固形腫瘍である、請求項31に記載の方法又は使用するための免疫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体依存性細胞傷害が可能であり、抗原結合分子をコードする核酸配列を含む免疫細胞に関する。本発明はまた、免疫細胞を生成する方法及び免疫細胞の医療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
キメラ抗原受容体(CAR)を発現するアルファベータ(ab)T細胞は、免疫治療ツールキットの重要な部分を形成する。abT細胞にCARを発現させることにより、abT細胞の抗原特異性を変化させることができる。このようにして、対象の適応免疫系を、対象において特に関心のある抗原、例えば、腫瘍抗原を標的とするように再プログラムすることができる。
【0003】
最近、CAR abT細胞の治療可能性を改善する戦略が開発されている。特に、「武装した(armoured)」CAR abT細胞が生成されている。武装したCAR abT細胞には、機能増強分子を分泌する能力が備わっている。例えば、CAR abT細胞は、その治療効果を増強するサイトカインを分泌し得る。CAR abT細胞は、プロテインキナーゼAを阻害するペプチドを分泌し得る(Newickら、Cancer Immunol Res、June 2016年、4巻(6号):541~551頁)。CAR abT細胞はまた、免疫チェックポイントを克服する分子を分泌することができる。例えば、Rafiqら(Nature Biotechnology、2018年8月13日、36巻(9号):847~856頁)は、抗PDL1抗体を分泌する能力をCAR abT細胞に装備し、Liら(Clinical Cancer Research、2017年11月、23巻(22号):6982~6992頁)は、エフェクター細胞表面上でPD-1に特異的なscFvを分泌するようにCAR abT細胞を操作した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
abT細胞とは対照的に、ガンマデルタ(gd)T細胞は比較的見過ごされた自然免疫様免疫細胞サブセットである。abT細胞とは異なり、gdT細胞(特にVδ2+gdT細胞)は、抗体標識腫瘍細胞に対する強力な抗体依存性細胞傷害(ADCC)が可能である。したがって、腫瘍内へのgdT細胞浸潤は良好な臨床転帰と相関し、gdT細胞はがん免疫療法において可能性を有する。骨髄細胞はまたADCCが可能であり、がん免疫療法に用いることができる。それらの治療可能性を最適化するために、gdT細胞及び骨髄細胞を操作して、それらの抗がん作用を増強する分子を分泌することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ADCCが可能な免疫細胞を、腫瘍微小環境において発現される抗原を標的とする抗原結合分子(例えば、抗体又は抗体様タンパク質、例えば、scFv-Fc)を分泌するように操作することができることを実証した。抗原結合分子の分泌は、免疫細胞の抗がん作用を増強し得る。例えば、分泌された抗原結合分子は、例えば、ADCCによる標的細胞死滅を増加させ得る。この例示的なメカニズムは、
図1に示されており、操作された免疫細胞(例えば、gdT細胞)によって分泌されたscFv-Fcが、ADCCに対する同族抗原を発現する標的細胞をマークする。これは、操作された免疫細胞が、ADCCによって標的細胞を死滅させることを可能にする。バイスタンダー、操作されていない免疫細胞はまた、標的細胞に対してADCCを発揮することができる。このようにして、操作されたバイスタンダー免疫細胞の抗原特異的細胞傷害性が改善される。したがって、対象への操作された免疫細胞の投与は、改善された抗がん療法を提供する。
【0006】
したがって、本発明は、以下を提供する:
- ADCCが可能であり、抗原結合領域を含む抗原結合分子をコードする核酸配列を含む免疫細胞;
- 抗原結合分子をコードする核酸配列を免疫細胞に導入することを含む、本発明の免疫細胞を生成する方法;
- 個体における疾患を処置する方法であって、本発明の治療上有効な数の免疫細胞を個体に投与することを含む方法;及び
- 個体における疾患を処置する方法において使用するための本発明の免疫細胞であって、該方法が治療上有効な数の免疫細胞を個体に投与することを含む、免疫細胞。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】γδT細胞によって分泌されるscFv-Fcが、腫瘍微小環境においてADCCコンピテント細胞上のFc受容体と係合する、提唱されているメカニズムの例を示す図である。
【
図2】フローサイトメトリーを用いて検出された標的抗原を発現する細胞へのscFv-Fcの結合を示す図である。CEA
+ CAPAN-1細胞又はCEA
- HELA細胞を、抗CEA scFv-Fc融合タンパク質を分泌するVδ2細胞又はJurkat細胞由来の上清とインキュベートした。抗ヒトFcを用いて、scFv-Fc融合タンパク質の結合を検出した。精製scFv融合タンパク質を陽性対照として使用した。同様の試験を、GD2
+/- SupT1細胞及び抗GD2 scFv-Fc融合タンパク質を分泌するVδ2細胞由来の上清を用いて行った。この場合、臨床グレードのジヌツキシマブ(抗GD2)を陽性対照として使用した。
【
図3】scFv-Fc融合タンパク質発現の直接的及び間接的な細胞傷害利点を試験するための細胞傷害アッセイにおいて使用される条件を示す実験設定を示す図である。
【
図4A-C】細胞接触依存性及び独立した設定における細胞傷害性を示す図である。すべての細胞傷害性実験は、18時間の共培養を用いて、1:1のエフェクター:標的比で行われた。標的細胞をCellTrace Violet(商標)で標識し、GhostRed固定可能性生存性色素で染色することにより死滅を検出した。標的細胞死は、すべての値からバックグラウンド死(background death)(エフェクターの非存在下)を差し引いたもので示される。 A)抗CEA scFv-Fcを分泌するVδ2細胞又は形質導入されていないVδ2細胞によるCEA
+ CAPAN-1又はCEA
- HELA細胞の死滅。 B)抗CEA-scFv-Fcを分泌するVδ2細胞由来の上清の存在下又は不在下における、形質導入されていないVδ2細胞によるCEA
+ CAPAN-1細胞又はCEA
- HELA細胞の死滅。 C)抗CEA scFv-Fcを分泌するVδ2細胞又は形質導入されていない対照を半透膜の後ろに隔離した形質導入されていないVδ2細胞によるCEA
+ CAPAN-1細胞又はCEA
- HELA細胞の死滅。
【
図4D-F】細胞接触依存性及び独立した設定における細胞傷害性を示す図である。 D)抗GD2 scFv-Fcを分泌するか又は形質導入されていないVδ2細胞によるGD2
+ SupT1又はGD2
-野生型SupT1細胞の死滅。 E)抗GD2-scFv-Fcを分泌するVδ2細胞由来の上清の存在下又は不在下における、形質導入されていないVδ2細胞によるGD2
+ SupT1又はGD2-野生型SupT1細胞の死滅。 F)抗GD2 scFv-Fcを分泌するVδ2細胞又は形質導入されていない対照を半透膜の後ろに隔離した形質導入されていないVδ2細胞によるGD2
+ SupT1又はGD2
-野生型SupT1細胞の死滅。
【
図5】CEA
+ CAPAN-1又はCEA
- HELA細胞と形質導入されていないVδ2細胞の18時間の共培養後の上清中のIFNγ濃度を示す図であり、抗CEA scFv-Fcを分泌するVδ2細胞又は形質導入されていない対照を半透膜の後ろに隔離した。
【
図6】293T細胞により産生された抗GD2抗体(配列番号17)の、フローサイトメトリーにより検出されたGD2
+/-標的細胞への結合を示す図である。293T細胞を、全抗GD2抗体14G2aをコードするレンチウイルスの低減した量(volume)で処理した。同質(isogenic)SupT1_wt(GD2
-)又はSup T1_GD2(GD2
+)を、形質導入された293T細胞由来の上清とともにインキュベートした。抗体結合は、PEにコンジュゲートした抗ヒトFc抗体を用いて検出された。純粋な抗GD2抗体(ジヌツキシマブ、ch14.18、クローン14G2a)を陽性対照として使用した。抗体は、導入された293T細胞の上清において、適用されたウイルス量に依存するレベルで検出された。
【
図7】γδT細胞によって産生される抗体の、標的抗原を発現する細胞への結合を示す図である。同質SupT1_wt(GD2
-)又はSup T1_GD2(GD2
+)を、形質導入されたVδ2由来の上清とともにインキュベートして、全抗Gd2抗体(クローン14G2a)を発現させた。抗体結合は抗ヒトIgG二次抗体を用いて検出され、純粋な抗GD2(ジヌツキシマブ、ch14.18、クローン14G2a)を陽性対照として用いた。
【
図8A】細胞接触依存性及び独立した設定における細胞傷害性を示す図である。すべての細胞傷害性実験は、18時間の共培養を用いて、1:1のエフェクター:標的比で行われた。標的細胞をCellTrace Violet(商標)で標識し、生/死青色固定可能な生存色素(DAPIチャネル上で検出される)で染色することにより死を検出した。標的細胞の生/死青色染色が示され、死細胞のパーセンテージが示される。 A)直接のバイスタンダー細胞傷害性がどのように決定されたかを示す実験設定。
【
図8B】細胞接触依存性及び独立した設定における細胞傷害性を示す図である。 B)GD2
+ SupT1又はGD2
-野生型SupT1細胞の、抗GD2抗体を分泌する細胞又は形質導入されていないVδ2細胞による死滅。
【
図8C】細胞接触依存性及び独立した設定における細胞傷害性を示す図である。 C)抗GD2抗体を分泌するVδ2細胞由来の上清の存在下又は不在下における、形質導入されていないVδ2細胞によるGD2
+ SupT1又はGD2
-野生型SupT1細胞の死滅。
【発明を実施するための形態】
【0008】
配列表の説明
配列番号1は、実施例において使用されるCEA特異的scFvのVHドメインの配列を提供する。
配列番号2は、実施例において使用されるCEA特異的scFvのVLドメインの配列を提供する。
配列番号3は、実施例において使用されるCEA特異的scFv-Fcの配列を提供する。
配列番号4は、実施例において使用されるGD2特異的scFvのVHドメインの配列を提供する。
配列番号5は、実施例において使用されるGD2特異的scFvのVLドメインの配列を提供する。
配列番号6は、実施例において使用されるGD2特異的scFv-Fcの配列を提供する。
配列番号7は、実施例において使用されるCEA特異的scFvの配列を提供する。
配列番号8は、実施例において使用されるGD2特異的scFvの配列を提供する。
配列番号9は、B7H3特異的scFvのVHドメインの配列を提供する。
配列番号10は、B7H3特異的scFvのVLドメインの配列を提供する。
配列番号11は、B7H3特異的scFv-Fcの配列を提供する。
配列番号12は、B7H3特異的scFvの配列を提供する。
配列番号13は、CD20特異的scFvのVHドメインの配列を提供する。
配列番号14は、CD20特異的scFvのVLドメインの配列を提供する。
配列番号15は、CD20特異的scFv-Fcの配列を提供する。
配列番号16は、CD20特異的scFvの配列を提供する。
配列番号17は、軽鎖と重鎖の間の切断部位を有する、実施例において使用されるGD2特異的IgG1の配列を提供する。
配列番号18は、配列番号17のGD2 IgG1の軽鎖の配列を提供する。
配列番号19は、配列番号17のGD2 IgG1の切断配列(Furin-V5-SG-P2A)の配列を提供する。
配列番号20は、配列番号17のGD2 IgG1の重鎖の配列を提供する。
【0009】
発明の詳細な説明
開示される製品及び方法の異なる用途は、当該技術分野における特定の必要性に合わせて調整され得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、限定することを意図しないことを理解されるべきである。
【0010】
さらに、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、内容が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「核酸(a nucleic acid)」への言及は「複数の核酸」を含み、「scFv-Fc」への言及は、2つ以上のこのようなscFv-Fcを含み、「T細胞(a T cell)」への言及は、2つ以上のこのようなT細胞などを含む。
【0011】
本明細書において引用されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、上記又は下記のいずれであるかどうかに関わらず、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
免疫細胞
本発明は、ADCCが可能であり、抗原結合分子をコードする核酸配列を含む免疫細胞を提供する。免疫細胞は、ADCCが可能である任意の免疫細胞であり得る。ADCCが可能である免疫細胞は、当該技術分野において公知である。
【0013】
ADCCは、適応細胞性免疫の周知のメカニズムである。ADCCの間、免疫エフェクター細胞は、表面抗原が特異的抗体に結合した標的細胞を能動的に溶解する。具体的には、抗体は、標的細胞の表面上でそれらの同族抗原と結合する。免疫エフェクター細胞の表面に存在するFc受容体は、結合した抗体のFc領域を認識する。Fc受容体の架橋は、免疫エフェクター細胞と標的細胞の間に溶解性シナプスの形成を誘発し、免疫エフェクター細胞が溶解性顆粒を脱顆粒する。したがって、標的細胞のアポトーシスが誘発される。ADCCが可能である免疫エフェクター細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球及び好酸球を含むことが公知である。gdT細胞はまたADCCが可能である。
【0014】
免疫細胞は、任意の種、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、ウシ、ヤギ又はウマ由来であり得る。免疫細胞は、典型的にはヒト免疫細胞である。免疫細胞は、イヌ、ネコ、マウス、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ又はウマの免疫細胞であり得る。
【0015】
好ましくは、免疫細胞はabT細胞ではない。abT細胞は、アルファ鎖及びベータ鎖を含むT細胞受容体(TCR)を有するT細胞である。それらは、通常、MHC依存的に活性化される。abT細胞に関するADCCの報告はない。abT細胞はしばしば「従来型」T細胞と考えられている。
【0016】
免疫細胞はgdT細胞であり得る。gdT細胞は、それらの表面にgdT細胞受容体(TCR)を有するT細胞である。すなわち、gdT細胞は、ガンマ鎖及びデルタ鎖を含むTCRを有する。したがって、gdT細胞は、abT細胞とは構造的に異なる。gdT細胞はまた、abT細胞とは機能的に異なる。特に、gdT細胞はADCCが可能である。gdT細胞は、通常、MHC非依存的に活性化される。gdT細胞はしばしば「非従来型」T細胞と考えられている。
【0017】
gdT細胞のいくつかのサブセットが存在する。例えば、gdT細胞は、Vδ2+gdT細胞、Vδ1+gdT細胞、又はVδ1-/Vδ2-gdT細胞であり得る。好ましくは、gdT細胞はVδ2+gdT細胞である。Vδ2+gdT細胞、Vδ1+gdT細胞、Vδ1-/Vδ2-T細胞はいずれもADCCに対して優れた能力を有し、良好な抗腫瘍傷害性を示す。
【0018】
gdT細胞を拡大する方法は、当技術分野において公知である。例えば、gdT細胞は、IL-2及びゾレドロン酸の存在下で培養することによって拡大させることができる(Fisher Jら、Effective combination treatment using anti-GD2 ch14.18/CHO antibody with Vδ2+ γδT cells in Ewing sarcoma and neuroblastoma. Oncoimmunology 2015年4月27日;5巻(1号):e1025194)。したがって、gdT細胞は、本発明において使用するために容易に利用可能である。
【0019】
免疫細胞は骨髄細胞であり得る。骨髄細胞は、一般的な骨髄系前駆細胞、例えば、血小板、赤血球、肥満細胞、マクロファージ、好塩基球、好中球、及び好酸球から生じる細胞である。ADCCは、マクロファージ、好塩基球、好中球、及び好酸球について報告されている。したがって、好ましくは、骨髄細胞は、マクロファージ、好塩基球、好中球又は好酸球である。骨髄細胞を単離し、拡大する方法は、当技術分野において公知である。
【0020】
ナチュラルキラー(NK)細胞もまたADCCが可能である。免疫細胞はNK細胞であり得る。NK細胞は、様々な疾患に対する免疫において役割を果たす自然免疫リンパ球のクラスである。例えば、NK細胞は、がんの検出及び制御、並びにウイルス感染細胞の死滅において役割を有する。NK細胞を単離及び拡大する方法は、当技術分野において公知である。
【0021】
好ましくは、免疫細胞はキメラ抗原受容体(CAR)を発現しない。したがって、好ましくは、免疫細胞はCAR T細胞ではない。
【0022】
核酸配列
本発明の免疫細胞は、抗原結合分子をコードする核酸配列を含む。核酸配列はDNAを含み得る。核酸配列はRNAを含み得る。核酸配列は、DNA及びRNAを含み得る。
【0023】
免疫細胞は、各々が抗原結合分子をコードする1つ以上の核酸配列を含み得る。例えば、免疫細胞は、各々が抗原結合分子をコードする2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、又は20以上の核酸配列を含み得る。免疫細胞が、各々が抗原結合分子をコードする複数の核酸配列を含む場合、各核酸配列によってコードされる抗原結合分子は、同一であるか又は異なる場合がある。好ましくは、抗原結合分子の各々は異なる。好ましくは、抗原結合分子の各々は、異なる抗原に対して特異的である。好ましくは、抗原は腫瘍抗原である。抗原は、がん細胞上に又はがん細胞によって発現され得る。抗原は、腫瘍微小環境において、非がん細胞上に又はそれによって発現され得る。抗原は腫瘍微小環境に分泌され得る。
【0024】
各核酸配列は、1つ以上の抗原結合分子をコードし得る。例えば、核酸配列は、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、15以上、又は20以上の抗原結合分子をコードし得る。核酸配列が複数の抗原結合分子をコードする場合、抗原結合分子の各々は同じであるか又は異なることができる。好ましくは、抗原結合分子の各々は異なる。好ましくは、抗原結合分子の各々は、異なる抗原に対して特異的である。好ましくは、抗原は腫瘍抗原である。抗原は、がん細胞上に又はがん細胞によって発現され得る。抗原は、腫瘍微小環境において、非がん細胞上に又はそれによって発現され得る。抗原は腫瘍微小環境に分泌され得る。
【0025】
核酸配列は、抗原結合分子をコードする配列が操作可能に連結される外因性プロモーター配列を含み得る。外因性プロモーターは、誘導性プロモーターであり得る。あるいは、核酸配列は、外因性プロモーター配列を欠損し得る。この場合、核酸配列は、抗原結合分子の発現がゲノム中の内因性プロモーターによって制御されるように、免疫細胞のゲノムに組み込み得る。外因性又は内因性プロモーターの活性化は、誘導性シグナル伝達経路によって制御され得る。例えば、外因性又は内因性プロモーターは、synNotch受容体と同族抗原との係合後に活性化され得る。
【0026】
核酸配列は、免疫細胞のゲノムに組み込まれ得る。あるいは、核酸配列を免疫細胞のゲノムに組み込むことができない。核酸配列が免疫細胞のゲノムに組み込まれない場合、それはプラスミド、ベクター、又は人工染色体に含まれ得る。ベクターは、ウイルスベクターであるか又は非ウイルスベクターであり得る。人工染色体は、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はヒト人工染色体(HAC)であり得る。好ましくは、人工染色体はHACである。
【0027】
抗原結合分子
本発明の免疫細胞は、抗原結合分子をコードする核酸配列を含む。
【0028】
抗原結合分子は、抗原結合領域を含む。抗原結合領域は、1つ以上の抗原に特異的に結合することができる抗原結合分子の領域である。例えば、抗原結合領域は、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上又は10以上の異なる抗原に特異的に結合することができる場合がある。例示的な抗原結合領域は当該技術分野において公知であり、少なくともscFv(一本鎖可変断片)、Fab、修飾されたFab、Fab'、修飾されたFab'、F(ab')2、Fv、dAb、Fd、dsFv、ds-scFv、scFv2、二重特異性T細胞エンゲージャー、ナノボディ、DARPin、抗体模倣体、ダイアボディ、トリアボディ及びテトラボディを含む。したがって、抗体結合領域は、scFv、Fab、修飾されたFab、Fab'、修飾されたFab'、F(ab')2、Fv、dAb、Fd、dsFv、ds-scFv、scFv2、二重特異性T細胞エンゲージャー、ナノボディ、DARPin、抗体模倣体、ダイアボディ、トリアボディ又はテトラボディを単独で又は任意の組み合わせで含むことができる。抗原結合分子は、scFv、Fab、修飾されたFab、Fab'、修飾されたFab'、F(ab')2、Fv、dAb、Fd、dsFv、ds-scFv、scFv2、二重特異性T細胞エンゲージャー、ナノボディ、DARPin、抗体模倣体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又は免疫細胞によって標的化される細胞の表面に発現する受容体のポリペプチドリガンドを単独又は任意の組み合わせで含むことができる。
【0029】
好ましくは、抗原結合分子は、scFvを含む抗原結合領域を含む。抗原結合領域は、2以上、例えば、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上又は10以上のscFvsを含み得る。scFvsは、当該技術分野において公知である。scFvは、抗体の軽鎖の可変領域(VL)に繋がれた重鎖の可変領域(VH)を含む融合タンパク質である。典型的には、VH及びVLは、リンカーペプチドによって繋がれる。リンカーペプチドは、長さが約5~約30アミノ酸であり得る。例えば、リンカーペプチドは、長さが約6~約29、約7~約28、約8~約27、約9~約26、約10~約25、約11~約24、約12~約23、約13~約22、約14~約21、約15~約20、約16~約19、約17又は約18アミノ酸である。
【0030】
抗原結合分子は、Fc受容体に結合することができる。例えば、抗原結合分子は、Fc(断片結晶化可能)領域を含み得る。Fc領域は、当該技術分野において公知である。Fc領域は、Fc受容体、及び補体系のいくつかのタンパク質と相互作用する抗体の尾部領域である。この特性は、抗体が免疫系を活性化することを可能にする。Fc領域は、少なくとも2つの重鎖定常(CH)ドメインを含む。具体的には、IgG、IgA又はIgD抗体に由来するFcドメインにおいて、Fc領域は、抗体のCH2及びCH3ドメインを含む。IgM又はIgE抗体に由来するFc領域において、Fc領域は、抗体のCH2、CH3及びCH4領域を含む。Fc領域は、修飾されたFc領域であり得る。例えば、Fc領域は、FcRに結合するその能力を最適化するように修飾されたFc領域であり得る。このような最適化は、当該技術分野において公知であり、例えば、(i)Mossner Eら、Increasing the efficacy of CD20 antibody therapy through the engineering of a new type II anti-CD20 antibody with enhanced direct and immune effector cell- mediated B-cell cytotoxicity. Blood. 2010年;115巻(22号):4393~4402頁;及び(ii)Wangら、2018年 IgG Fc engineering to modulate antibody effector functions. Protein Cell. 2018年1月;9巻(1号):63~73頁. doi:10.1007/s13238-017-0473-8(そこに含まれる参考文献)に記載される。
【0031】
抗原結合分子は、Fc領域以外の領域を介してFc受容体に結合することができる場合がある。すなわち、抗原結合分子は、Fc受容体に結合することができるようにするために、Fc領域を含む必要はない。例えば、抗原結合分子は、Fc受容体に結合することができる抗原結合領域(scFv、Fab、修飾されたFab、Fab'、修飾されたFab'、F(ab')2、Fv、dAb、Fd、dsFv、ds-scFv、scFv2、二重特異性T細胞エンゲージャー、ナノボディ、DARPin、抗体模倣体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、又は免疫細胞によって標的化される細胞の表面に発現する受容体のポリペプチドリガンド)を含有することができる。抗原結合分子は、Fc受容体に結合することができる抗原結合領域、及び異なる抗原、例えば、腫瘍微小環境において発現される抗原に結合することができる抗原結合領域を含み得る。例えば、抗原結合分子は、Fc受容体に結合することができるscFv、及び異なる抗原、例えば、腫瘍微小環境において発現される抗原に結合することができるscFvを含み得る。抗原結合分子は、CD3に結合することができるscFv、及び異なる抗原、例えば、腫瘍微小環境において発現される抗原に結合することができるscFvを含む二特異的T細胞エンゲージャーを含み得る。
【0032】
抗原結合分子は、抗原結合領域及びFc領域を含み得る。抗原結合分子は、抗体、scFv-Fc、dAb-Fc、又は重鎖抗体であり得る。例示的な重鎖抗体は、IgNAR及びラクダ抗体を含む。抗体は、例えば、(a)配列番号18によってコードされる軽鎖、(b)配列番号20によってコードされる重鎖、及び/又は(c)配列番号19によってコードされる切断配列を含み得る。抗体分子は、例えば、(a);(b);(c);(a)及び(b);(a)及び(c);(b)及び(c);又は(a)、(b)及び(c)を含み得る。抗体は、配列番号17によってコードされ得る。配列番号18によってコードされる軽鎖は、配列番号5によってコードされるVLを含む。配列番号20によってコードされる重鎖は、配列番号4によってコードされるVHを含む。
【0033】
好ましくは、抗原結合分子はscFv-Fcである。scFv-Fcは、Fc領域に融合されたscFvを含む融合タンパク質である。scFvs及びFc領域の構造は、当該技術分野において公知であり、上述される。これらの構造に従って、scFv-Fcは、VH及びVL(共にscFvを形成する)、並びにCH2ドメイン及びCH3ドメイン(共にFc領域を形成する)を含み得る。scFv-Fcは、VH及びVL(共にscFvを形成する)、並びにCH2ドメイン、CH3ドメイン及びCH4ドメイン(共にFc領域を形成する)を含み得る。scFv-Fcにおいて、scFvはFc領域に連結する。好ましくは、scFv中のVL又はVHは、scFvをFc領域に連結するために、Fc領域中のCH2に連結される。scFvは、Fc領域に直接、すなわち、リンカーの非存在下で連結され得る。scFvは、リンカーによってFc領域に連結され得る。リンカーは、(Ser(Gly)4)、(Ser(Gly)4)2、(Ser(Gly)4)3、(Ser(Gly)4)4、又は(Ser(Gly)4)5であり得る。リンカーは、約2個のアミノ酸からなるアミノ酸、又は短いオリゴペプチドであり得る。リンカーはヒンジ領域を形成し得る。scFv-Fcは、二価scFv-Fcであり得る。二価scFv-Fcは、各々がFc領域に連結された2つの異なるscFvを含む。本質的に、二価scFv-Fcは、各々がFc領域に連結されたscFvを含む2つのアームを含む。scFvs、Fc領域及び連結は、上記で検討された。2つのアームは、好ましくは連結される。2つのアーム間の連結は、好ましくは、一方のアームにおけるscFv領域とFc領域の間のリンカーを、他方のアームにおけるscFv領域とFc領域の間のリンカーと接続する。2つのアームは、好ましくは、各アームにおけるscFvとFc領域の間の点で接続される。
【0034】
抗原結合分子は、標的細胞の細胞傷害性を増大するように機能し得る。すなわち、抗原結合分子は、抗原結合領域の同族抗原を発現する細胞の死滅を増加させ得る。例えば、抗原結合分子は、腫瘍細胞、内皮細胞、及び/又は免疫細胞の死滅を増加させ得る。増加した死滅は、操作された免疫細胞(すなわち、抗原結合分子をコードする核酸配列を含む免疫細胞)によって媒介され得る。増加した死滅は、操作されていない(「バイスタンダー」)免疫細胞(すなわち、抗原結合分子をコードする核酸配列を含まない免疫細胞)によって媒介され得る。増加した死滅は、操作された免疫細胞と操作されていない免疫細胞の両方によって媒介され得る。死滅の増加は、当該技術分野において公知である任意のメカニズムにより可能である。好ましくは、増加した死滅は、増加したADCCによって媒介される。死滅の増加は、ab T細胞の係合の増加によって媒介され得る。
【0035】
抗原結合分子は、好ましくはオプソニンである。オプソニンは、抗原に結合して食作用を増強する分子である。抗原へのオプソニンの結合は、抗原と免疫細胞上の細胞表面受容体との相互作用を促進し、それによって食作用の動力学が促進される。したがって、抗原結合分子は、食作用を増強し得る。特に、抗原結合分子は、抗原結合領域が特異的である抗原の食作用を増強し得る。換言すると、抗原結合分子は、抗原結合領域(したがって、抗原結合分子)に結合した抗原の食作用を増強することができる。
【0036】
抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、任意の抗原に結合することができる場合がある。すなわち、いずれの抗原も、抗原結合領域(及び抗原結合分子)に結合され得る。好ましくは、抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、腫瘍微小環境中の細胞上に又は細胞によって発現される抗原に結合することができる。抗原は、腫瘍微小環境中に存在する任意のタイプの細胞によって発現される場合、腫瘍微小環境中で発現される。例えば、抗原は、腫瘍微小環境において、腫瘍細胞、内皮細胞、又は免疫細胞によって発現され得る。したがって、抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、腫瘍抗原、内皮抗原、又は免疫細胞抗原に結合することができる。免疫細胞は、例えば、CD4+ T細胞、CD8+ T細胞、gdT細胞、B細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、単球、好塩基球、好酸球又は好中球であり得る。
【0037】
抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、TSHR、CD19、CD123、CD22、CD20、CD30、CD171、CS-1、CLL-1、CD33、EGFRvIII、GD2、GD3、BCMA、Tn Ag、PSMA、ROR1、FLT3、FAP、TAG72、CD38、CD44v6、CEA、EPCAM、B7-H3、KIT、IL-13Ra2、メソテリン、IL-IIRa、PSCA、PRSS21、VEGFR2、ルイスY、CD24、PDGFR-ベータ、SSEA-4、CD20、葉酸受容体アルファ、ERBB2(Her2/neu)、MUC1、EGFR、NCAM、プロスターゼ、PAP、ELF2M、エフリンB2、IGF-I受容体、CAIX、LMP2、gp100、bcr-abl、チロシナーゼ、EphA2、フコシルGM1、sLe、GM3、TGS5、HMWMAA、o-アセチル-GD2、葉酸受容体ベータ、TEM1/CD248、TEM7R、CLDN6、GPRC5D、CXORF61、CD97、CD179a、ALK、ポリシアル酸、PLAC1、GloboH、NY-BR-1、UPK2、HAVCR1、ADRB3、PANX3、GPR20、LY6K、OR51E2、TARP、WT1、NY-ESO-1、LAGE-la、MAGE-A1、レグマイン、HPV E6、E7、MAGE Al、p53、p53突然変異体、プロステイン、サバイビン及びテロメラーゼ、PCTA-1/ガレクチン8、MelanA/MART1、Ras 突然変異体、hTERT、肉腫転座ブレークポイント、ML-IAP、ERG(TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、NA17、PAX3、アンドロゲン受容体、サイクリンBl、MYCN、RhoC、TRP-2、CYP1B1、BORIS、SART3、PAX5、OYTES1、LCK、AKAP-4、SSX2、RAGE-1、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2、腸内カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、CD79a、CD79b、CD72、LAIR1、FCAR、LILRA2、CD300LF、CLEC12A、BST2、EMR2、LY75、GPC3、FCRL5、CEA、LINGO1、CD70、IL13Rα2、MUC-16、PSCA、ROR1、及びIGLL1からなる群から選択される抗原に結合することができる場合がある。
【0038】
抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、がん胎児性抗原(CEA)に結合することができる場合がある。CEAは、CEA-CAM5であり得る。CEAは、結腸及び/又は直腸のがん、胃がん、乳がん、膵臓がん、肺がん、甲状腺がん、子宮頸がん、又は卵巣がんなど、多数のがんにおいて発現され得る。
【0039】
CEA特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号1によってコードされるVHドメインを含み得る。CEA特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号2によってコードされるVLドメインを含み得る。CEA特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号1によってコードされるVHドメイン及び配列番号2によってコードされるVLドメインを含み得る。CEA特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号1によってコードされるVHドメイン及び/又は配列番号2によってコードされるVLドメイン由来の相補性決定領域(CDR)を含み得る。すなわち、CEA特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号1によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。CEA特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号2によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。CEA特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号1によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3、並びに配列番号2によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。CEA特異的抗原結合分子は、配列番号3によってコードされるscFv-Fcであり得る。scFvは、配列番号7のアミノ酸配列を有し得る。
【0040】
抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、GD2に結合することができる。GD2は、神経外胚葉由来のがん、例えば、神経芽細胞腫及び黒色腫によって発現され得る。
【0041】
GD2特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号4によってコードされるVHドメインを含み得る。GD2特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号5によってコードされるVLドメインを含み得る。GD2特異的scFv-Fc抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号4によってコードされるVHドメイン及び配列番号5によってコードされるVLドメインを含み得る。GD2特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号4によってコードされるVHドメイン由来のCDR及び/又は配列番号5によってコードされるVLドメイン由来のCDRを含み得る。すなわち、GD2抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号4によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。GD2特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号5によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。GD2特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号4によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3、並びに配列番号5によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。GD2特異的抗原結合分子は、配列番号6によってコードされるscFv-Fcであり得る。scFvは、配列番号8のアミノ酸配列を有し得る。
【0042】
GD2特異的抗原結合分子は、(a)配列番号18によってコードされる軽鎖、(b)配列番号20によってコードされる重鎖、及び/又は(c)切断配列を含み得る。GD2特異的抗原結合分子は、例えば、(a);(b);(c);(a)及び(b);(a)及び(c);(b)及び(c);又は(a)、(b)及び(c)を含み得る。好ましくは、GD2特異的抗原結合分子は、その順序で(a)、(b)及び(c)を含む。本明細書に記載される態様のいずれかでは、切断配列(c)は、例えば、Furin-V5-SG-P2Aであり得る。切断配列は、例えば、配列番号19によってコードされ得る。他の切断配列はまた当該技術分野において公知であり、切断配列(c)として使用することができる。例えば、切断配列(c)は、P2A、E2A、F2A又はT2Aを含み得るか又はそれらからなる。IRES又はIRES2配列は、本明細書に記載される任意の態様において、切断配列(c)の代わりに使用され得る。GD2特異的抗原結合分子は、配列番号17によってコードされる抗体であり得る。
【0043】
抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、B7-H3に結合することができる。B7-H3は、神経外胚葉由来のがん、例えば、神経芽腫及び黒色腫によって発現され得る。
【0044】
B7-H3特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号9によってコードされるVHドメインを含み得る。B7-H3特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号10によってコードされるVLドメインを含み得る。B7-H3特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号9によってコードされるVHドメイン及び配列番号10によってコードされるVLドメインを含み得る。B7-H3特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号9によってコードされるVHドメイン由来のCDR、及び/又は配列番号10によってコードされるVLドメイン由来のCDRを含み得る。すなわち、B7-H3特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号9によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。B7-H3特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号10によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。B7-H3特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号9によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3、並びに配列番号10によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。B7-H3特異的抗原結合分子は、配列番号11によってコードされるscFv-Fcであり得る。scFvは、配列番号12のアミノ酸配列を有し得る。
【0045】
抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、CD20に結合することができる場合がある。CD20は、記憶細胞を介して後期プロB細胞期であるB細胞の発生中に発現される(ただし、初期プロB細胞又は形質芽球及び形質細胞には発現しない)。CD20はまた、B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、及び黒色腫がん幹細胞において発現される。
【0046】
CD20特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号13によってコードされるVHドメインを含み得る。CD20特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号14によってコードされるVLドメインを含み得る。CD20特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号13によってコードされるVHドメイン及び配列番号14によってコードされるVLドメインを含み得る。CD20特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号13によってコードされるVHドメイン由来のCDR及び/又は配列番号14によってコードされるVLドメイン由来のCDRを含み得る。すなわち、CD20特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号13によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。CD20特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号14によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。CD20特異的抗原結合領域(及び抗原結合分子)は、配列番号13によってコードされるVHドメイン由来の重鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3、並びに配列番号14によってコードされるVLドメイン由来の軽鎖CDR1、CDR2及び/又はCDR3を含み得る。CD20特異的抗原結合分子は、配列番号15によってコードされるscFv-Fcであり得る。scFvは、配列番号16のアミノ酸配列を有し得る。
【0047】
抗原結合分子は、好ましくは、抗原結合分子をコードする核酸配列を含む免疫細胞によって発現される。抗原結合分子の発現は、免疫細胞中の抗原結合分子をコードするmRNAの存在に基づいて決定することができる。好ましくは、抗原結合分子の発現は、免疫細胞における抗原結合分子自体の存在に基づいて決定される。細胞中のmRNA又はタンパク質の存在を決定する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、逆転写酵素PCR又はノザンブロッティングを用いて、細胞中のmRNAの存在を決定することができる。フローサイトメトリー、免疫蛍光イメージング又はウエスタンブロットを用いて、細胞中のタンパク質の存在を決定することができる。
【0048】
免疫細胞を生成する方法
本発明は、本発明の免疫細胞を生成する方法を提供する。本方法は、抗原結合分子をコードする核酸配列を免疫細胞に導入することを含む。抗原結合分子は、上記で詳細に記載されている。核酸配列は、例えば、形質導入又はトランスフェクションによって免疫細胞に導入することができる。例えば、当技該術分野において公知であるT細胞形質導入方法を用いて、gdT細胞を核酸配列で形質導入することができる。gdT細胞は、このような形質導入の前に、例えば、約5日間(例えば、約3日間、約4日間、約6日間、又は約7日間)、IL-2及びゾレドロン酸の存在下で培養することによって拡大させることができる。
【0049】
用語「形質導入」は、ウイルス媒介核酸移入を記載するために使用され得る。ウイルスベクターを用いて、核酸配列で細胞を形質導入することができる。したがって、核酸配列は、ウイルスベクター中に含まれ得る。ウイルスベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴(AAV)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターであり得る。好ましくは、ウイルスベクターはレトロウイルスベクターである。このようなベクターを生成及び精製する方法は、当該技術分野において公知である。免疫細胞は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いて形質導入することができる。形質導入は、インビトロ又はエクスビボであり得る。
【0050】
用語「トランスフェクション」は、非ウイルス媒介核酸移入を記載するために使用され得る。免疫細胞は、当該技術分野において公知である任意の方法を用いてトランスフェクトすることができる。トランスフェクションは、インビトロ又はエクスビボであり得る。免疫細胞をトランスフェクションすることができる任意のベクター、例えば、従来のプラスミドDNA又はRNAトランスフェクションを使用することができる。ヒト人工染色体及び/又は裸のRNA及び/又はsiRNAを用いて、細胞を核酸配列でトランスフェクトすることができる。ヒト人工染色体は、例えば、Mol. Ther. 19巻(9号):1591~1601頁(2011年)、及びKouprinaら、Expert Opinion on Drug Delivery 11巻(4号):517~535頁(2014年)に記載されている。代替の非ウイルス送達系には、DNAプラスミド、裸の核酸、及び送達ビヒクル、例えばリポソームと複合体化された核酸が含まれる。核酸の非ウイルス送達方法には、リポフェクション、マイクロインジェクション、バイオリスティック、ビロソーム、リポソーム、イムノリポソーム、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、及びDNAの薬剤増強取り込みが含まれる。リポフェクションは、例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号、及び同第4,897,355号に記載され、リポフェクション試薬は市販されている(例えば、Transfectam(商標)及びLipofectin(商標))。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性及び中性脂質には、Felgner、WO91/17424;WO91/16024のものが含まれる。標的化リポソーム、例えば、免疫脂質複合体を含む脂質:核酸複合体の調製は、当業者に周知である(例えば、Crystal、Science 270巻:404~410頁(1995年);Blaeseら、Cancer Gene Ther. 2巻:291~297頁(1995年);Behrら、Bioconjugate Chem. 5巻:382~389頁(1994年);Remyら、Bioconjugate Chem. 5巻:647~654頁(1994年);Gaoら、Gene Therapy 2巻:710~722頁(1995年);Ahmadら、Cancer Res. 52巻:4817~4820頁(1992年);米国特許第4,186,183号、同第4,217,344号、同第4,235,871号、同第4,261,975号、同第4,485,054号、同第4,501,728号、同第4,774,085号、同第4,837,028号、及び同第4,946,787を参照されたい)。
【0051】
ナノ粒子送達系を用いて、細胞を核酸配列又は核酸構築物でトランスフェクトすることができる。このような送達系には、限定されないが、脂質ベース系、リポソーム、ミセル、マイクロベシクル及びエキソソームが含まれる。RNAを送達することができるナノ粒子に関しては、例えば、Alabiら、Proc Natl Acad Sci U S A. 2013年8月6日;110巻(32号):12881~6頁;Zhangら、Adv Mater. 2013年9月6日;25巻(33号):4641~5頁;Jiangら、Nano Lett. 2013年3月13日;13巻(3号):1059~64頁;Karagiannisら、ACS Nano. 2012年10月23日;6巻(10号):8484~7頁;Whiteheadら、ACS Nano. 2012年8月28日;6巻(8号):6922~9頁、及びLeeら、Nat Nanotechnol. 2012年6月3日;7巻(6号):389~93頁を参照されたい。脂質ナノ粒子、球状核酸(SNA(商標))構築物、ナノプレックス及び他のナノ粒子(特に金ナノ粒子)はまた、本発明において構築物又はベクターの送達手段として企図される。
【0052】
核酸構築物の取り込みは、いくつかの公知のトランスフェクション技術、例えば、トランスフェクション剤の使用を含むものによって増強され得る。これらの薬剤の例には、陽イオン性薬剤、例えば、リン酸カルシウム及びDEAE-デキストラン及びリポフェクタント、例えば、リポフェクトアミン、fugene及びトランスフェクタムが含まれる。
【0053】
免疫細胞は、適切な条件下でトランスフェクトされ得る。免疫細胞及び薬剤又はベクターは、例えば、5分間~10日間、好ましくは1時間~5日間、より好ましくは5時間~2日間、さらにより好ましくは12時間~1日間接触させることができる。
【0054】
免疫細胞に形質導入又はトランスフェクトされた核酸配列は、免疫細胞において抗原結合分子の発現を引き起こす。核酸配列は、好ましくは、抗原結合分子をコードする配列に操作可能に連結されるプロモーターを含む。プロモーターは、免疫細胞において恒常的に活性であり得る。プロモーターは、免疫細胞において誘導性であり得る。
【0055】
薬剤、方法及び治療的使用
本発明の免疫細胞は、ヒト又は動物の身体の治療方法において使用することができる。したがって、本発明は、個体において疾患を処置する方法を提供し、本方法は、治療数の本発明の免疫細胞を個体に投与することを含む。本発明は、さらに、個体における疾患を処置する方法において使用するための本発明の免疫細胞を提供し、本方法は、治療量の免疫細胞を個体に投与することを含む。
【0056】
個体は種であり得る。例えば、個体は、ヒト、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ブタ、ヒツジ、ウシ、ヤギ又はウマであり得る。好ましくは、個体はヒトである。好ましくは、免疫細胞は個体と同じ種である。免疫細胞は、個体に関して自己であり得る。免疫細胞は、個体に対して同種であり得る。個体は、乳児、幼児又は成人であり得る。患者は、疾患を有しているか、疾患に感受性であるか、又は疾患のリスクがあり得る。
【0057】
本発明は、治療上有効な数の本発明の免疫細胞を個体に投与することに関する。治療上有効な数は、疾患の1つ以上の症状を改善する数である。治療上有効な数は、好ましくは、疾患を処置する数である。任意の適切な数の免疫細胞を個体に投与することができる。指針として、投与される免疫細胞の数は、典型的には、105~109個、好ましくは106~108個である。例えば、個体1kgあたり少なくとも、又は約、0.2×106、0.25×106、0.5×106、1.5×106、4.0×106若しくは5.0×106個の免疫細胞を投与することができる。例えば、少なくとも、又は約、105、106、107、108、又は109個の免疫疫細胞を投与することができる。少なくとも約1×106、少なくとも約2×106、少なくとも約2.5×106、少なくとも約5×106、少なくとも約1×107、少なくとも約2×107、少なくとも約5×107、少なくとも約1×108、又は少なくとも約2×108個の免疫細胞を投与することができる。
【0058】
免疫細胞は、疾患を処置するための他の手段、及び物質と組み合わせて使用され得る。例えば、免疫細胞は、1つ以上のがん治療と組み合わせて使用され得る。例えば、免疫細胞は、1つ以上の化学療法剤と組み合わせて使用され得る。免疫細胞は、1つ以上のCARを発現するab T細胞と組み合わせて使用され得る。免疫細胞は、放射線療法と組み合わせて使用され得る。免疫細胞は、手術、例えば、腫瘍を切除又は除去する手術と組み合わせて使用され得る。
【0059】
免疫細胞は、感染症、例えば、ウイルス感染又は細菌感染を処置するための1つ以上の治療と組み合わせて使用され得る。例えば、免疫細胞は、1つ以上の抗ウイルス薬と組み合わせて使用され得る。免疫細胞は、1つ以上の抗生物質と組み合わせて使用され得る。
【0060】
免疫細胞は、免疫細胞機能を支持する物質と組み合わせて使用され得る。例えば、免疫細胞は、アミノビスホスホネート、例えば、ゾレドロン酸と組み合わせて使用され得る。免疫細胞は、例えば、免疫細胞がVδ2+gdT細胞である場合、アミノビスホスホネートと組み合わせて使用され得る。免疫細胞は、1つ以上の免疫刺激サイトカイン、例えば、IL-2、GM-CSF又はG-CSFと組み合わせて使用され得る。IL-2、GM-CSF又はG-CSFは、互いに、ADCC-コンピテント細胞の他の集団を増強し得る。
【0061】
免疫細胞を1つ以上の他の物質と組み合わせて使用する場合、免疫細胞は、他の物質(複数可)と同時に、連続的に、又は別々に投与され得る。免疫細胞は、疾患を治療するための既存の処置と組み合わせて使用され得、例えば、このような処置と単純に混合され得る。したがって、免疫細胞は、疾患に対する既存の処置の効力を増加させるために使用され得る。
【0062】
免疫細胞は、任意の適切な方法を用いて投与のために製剤化することができる。標準的な薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いた細胞の製剤化は、薬学の分野における通常の方法を用いて行うことができる。製剤の正確な性質は、投与される細胞及び所望の投与経路を含むいくつかの因子に依存する。適切なタイプの製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Company、Eastern Pennsylvania、USAに十分に記載される。
【0063】
免疫細胞は、生理学的に許容される担体又は希釈剤とともに製剤化することができる。典型的には、このような製剤は、細胞の液体懸濁液として調製される。細胞は、薬学的に許容され、活性成分と適合性である賦形剤と混合され得る。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロールなど、及びそれらの組み合わせである。さらに、所望であれば、本発明の医薬組成物は、少量の補助物質、例えば、湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又は有効性を高めるアジュバントを含有し得る。
【0064】
免疫細胞は、任意の経路によって投与され得る。適切な経路には、限定されないが、静脈内、筋肉内、腹腔内又は他の適切な投与経路が含まれる。免疫細胞は、好ましくは静脈内投与される。
【0065】
疾患は、患者が標的ADCCから利益を得ることができる任意の疾患であり得る。疾患は、患者が標的化T細胞応答から利益を得ることができる任意の疾患であり得る。例えば、疾患は、対象が望ましくない細胞の死滅から利益を得ることができる疾患であり得る。望ましくない細胞は、例えば、がん細胞であり得る。望ましくない細胞は、細菌、ウイルス、真菌、原虫又は寄生虫に感染した細胞であり得る。望ましくない細胞は、異常な免疫細胞、すなわち、有害な免疫応答を引き起こす免疫細胞であり得る。例えば、異常な免疫細胞は自己免疫細胞であり得る。したがって、疾患は、感染症(例えば、細菌、ウイルス、真菌、原虫又は他の寄生性感染症)又は自己免疫疾患であり得る。好ましくは、疾患はがんである。がんは、造血組織及び/又はリンパ組織のがんであり得る。好ましくは、がんは固形腫瘍である。
【0066】
がんは、原発性がんと二次がんであり得る。がんは、肛門がん、胆管がん(胆管癌腫)、膀胱がん、血液がん、骨がん、腸がん、脳がん、乳がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、内分泌腫瘍、眼がん(眼黒色腫など)、卵管がん、胆嚢がん、頭部及び/頸部がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、白血病、肝臓がん、肺がん、リンパ節がん、リンパ腫、黒色腫、中皮腫、骨髄腫、神経内分泌腫瘍、卵巣がん、食道がん、膵臓がん、陰茎がん、原発性腹膜がん、前立腺がん、皮膚がん、小腸がん、軟部肉腫、脊髄腫瘍、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、気管がん、原発不明がん、膣がん、外陰がん又は子宮内膜がんであり得る。白血病は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病又は慢性骨髄性白血病であり得る。リンパ腫は、ホジキンリンパ腫又は非ホジキンリンパ腫であり得る。がんは、神経芽細胞腫又は黒色腫であり得る。がんには、結腸がん、直腸がん、胃がん、乳がん、肺がん、甲状腺がん又は卵巣がんであり得る。がんは癌腫であり得る。好ましくは、がんは大腸がん又は神経内分泌腫瘍である。
【0067】
[実施例]
Vδ2+γδT細胞は標的細胞上の抗原に特異的に結合するタンパク質を分泌するように形質導入され得る
Vδ2+γδT細胞は、腫瘍関連抗原CEA及びGD2を標的とするscFv融合ペプチドを分泌するように形質導入された。形質導入された細胞由来の上清を回収し、CEA+ CAPAN-1細胞及びCEA-HELA細胞、又はGD2+/- SupT1細胞に適用した。フィコエリトリンをコンジュゲートした抗ヒトFc抗体を用いて、scFv-Fc融合タンパク質の結合を検出した。細胞株において産生された精製抗CEA scFv-Fc融合タンパク質又は精製抗GD2抗体を陽性対照として使用した。
【0068】
図2に示されるように、形質導入された細胞株及び形質導入されたVδ2γδT細胞由来の上清の構成要素は、抗原陽性細胞に特異的に結合することができ、それらの表面上のヒトFcの検出をもたらした。
【0069】
scFv-Fcタンパク質を分泌するVδ2との直接的及び間接的接触の効果を示す細胞傷害性実験
操作されたT細胞は、バイスタンダー、操作されていない細胞の細胞傷害性に影響を及ぼす可能性のあるタンパク質を分泌するため、これを実証するために一連の実験条件が開発された。実験設定を
図3に示す。簡単に説明すると、標的細胞と直接共培養した場合の形質導入されたVδ2及び形質導入されていないVδ2の細胞傷害性を比較することに加えて、2つの条件を加えて、細胞接触自律的効果を実証した。第1に、形質導入されたVδ2由来の上清を、形質導入されていないVδ2及び標的細胞の共培養物に添加した。第2に、形質導入されていない細胞は、細胞の通過を遮断するが、分泌された分子を遮断しない半透膜の後ろに隔離された形質導入された細胞の存在下で標的と共培養した。すべての共培養は18時間であり、エフェクター:標的比は1:1であった。抗CEA scFv-Fc融合タンパク質の作用を示すために、CEA+CAPAN-1及びCEA-HELA細胞を使用した。抗GD2 scFv-Fc融合タンパク質の作用を証明するために、GD2又は同質(isogenic)GD2
-野生型SupT1を発現するように操作されたSupT1を使用した。
【0070】
抗CEA scFv-Fc融合タンパク質を分泌するために形質導入されたVδ2細胞は、NT Vδ2と比較してCEA
+標的の有意に高い死亡をもたらした(p<0.0001、
図4A)。抗CEA scFv-Fc融合タンパク質を発現するよう形質導入されたVδ2
+細胞由来の上清は、形質導入されていないVδ2によるCEA
+標的の死滅を増強し(p<0.0001)、CEA
-標的の死滅もわずかに増加させた(p=0.031、
図4B)。抗CEA scFv-Fc融合タンパク質を分泌するVδ2を半透膜の後ろに隔離した場合、形質導入されていない細胞の隔離と比較すると、形質導入されていないVδ2がCEA
+標的を死滅させる能力を増強することもできた(p=0.012、
図4C)。
【0071】
同様のデータは、抗GD2 scFv-Fc融合タンパク質を分泌するように形質導入されたVδ2について観察された。形質導入されたVδ2は、形質導入されていないもの(p=0.03)よりも良好なGD2
+標的を死滅させ、同質のGD2
-対照よりも大きなGD2
+標的に対する細胞傷害性を示した(p=0.0049、
図4D)。Vδ2を発現する抗GD2-scFv-Fc融合タンパク質由来の上清は、形質導入されていない対照(p=0.0025)又は同質GD2
-標的(p=0.0002、
図4E)と比較した場合、形質導入されていないVδ2のGD2
+標的を死滅させる能力を有意に増強した。抗GD2 scFv-Fc融合タンパク質を分泌するVδ2を半透膜の後ろに隔離した場合、形質導入されていない細胞の隔離(p=0.0158)又はGD2
-標的の死滅(p=0.0003、
図4F)と比較すると、形質導入されていないVδ2がGD2
+標的を死滅させる能力を増強することもできた。
【0072】
形質導入されていないVδ2をCEA
±標的と、半透膜の後ろに隔離された抗CEA scFv-Fc融合タンパク質を分泌するVδ2又は形質導入されていない対照の存在下で共培養した場合、抗CEA scFv-Fc融合タンパク質を分泌する細胞を隔離した場合にのみ、IFNγ産生の有意な増加が観察され(隔離されたNT Vδ2と比較してp=0.0014)、CEA
+標的が使用された(CEA
-標的と比較してp=0.012、
図5)。
【0073】
Vδ2
+γδT細胞は標的細胞上の抗原に特異的に結合する全抗体を分泌するように形質導入され得る。
HEK293T及びVδ2
+γδT細胞を形質導入して、腫瘍関連抗原GD2(配列番号17)を標的とするIgG1抗体を分泌させた。低減量(volume)のウイルスで形質導入されたHEK293T細胞由来の上清を回収し、GD2
+/- SupT1細胞に適用した。フィコエリトリンをコンジュゲートした抗ヒトFc抗体を用いて、scFv-Fc融合タンパク質の結合を検出した(
図6)。形質導入されたVδ2
+γδT細胞由来の上清もまた回収し、GD2
+/- SupT1細胞に適用し、AlexaFluor 647をコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体を用いて抗体結合を検出した(
図7)。細胞株において産生された精製抗GD2抗体を陽性対照として用いた。
【0074】
図6及び7に示されるように、形質導入された細胞株及び形質導入されたVδ2
+γδT細胞由来の上清の構成要素は、抗原陽性細胞に特異的に結合することができ、それらの表面上のヒトFc又はIgGの検出をもたらした。
【0075】
抗体を分泌するVδ2との直接的及び間接的接触の効果を示す細胞傷害性実験
細胞接触依存性及び細胞接触自律性効果を示すために、2つの実験系を用いた(
図8A)。簡単に説明すると、形質導入されていないVδ2
+γδT細胞又は抗GD2 IgG1を発現するよう形質導入されたVδ2+γδT細胞を、GD2
+/- SupT1と1:1のエフェクター:標的比で共培養した。第2の実験では、形質導入されていないVδ2
+γδT細胞由来の上清、又は抗GD2 IgG1を発現するよう形質導入されたVδ2+γδT細胞由来の上清を、形質導入されていないVδ2+γδT細胞及びGD2
+/- SupT1の1:1の共培養物に添加した。標的細胞死はフローサイトメトリーを用いて決定され、
図8B及び8Cは、3つの複製からの代表的なデータを示す。抗GD2 IgG1を発現するよう形質導入されたVδ2
+γδT細胞は、SupT1-GD2に対する細胞傷害性を増強したが、SupT1-wtに対するものは増強しなかった(
図8B)。抗GD2 IgG1を発現するよう形質導入されたVδ2
+γδT細胞由来の上清は、SupT1-GD2に対する形質導入されていないVδ2
+γδT細胞の細胞傷害性を増強したが、SupT1-wtに対するものは増強しなかった(
図8C)。
【0076】
材料及び方法
細胞株
CAPAN-1、HELA及びSupT1細胞株をATCCから得た。SupT1-GD2は、GD2/GD3シンターゼをコードするベクターを用いて野生型SupT1を形質導入し、成功裏に形質導入された細胞のクローンを単離することによって生成された。
【0077】
PBMCのためのドナー選択
20~36歳の健常ドナーの血液からPBMCを単離した。ドナーは、含める前に、SFP構築物と拡大Vδ2細胞の間の交差反応性についてスクリーニングされた。交差反応性の証拠が認められたドナーは、細胞傷害性試験には用いられなかった。
【0078】
新鮮なPBMCの単離及び刺激前処理
20mlの全血を、10mlのPBS+500μlの100mM EDTAで希釈し、20mlのPercoll上に層状化した。界面PBMC(20分、300×g、RT)をPBS中で洗浄し、ペニシリン/ストレプトマイシン(100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(Sigma-Aldrich、Missouri、USA))を添加した25mlのT細胞培地(X-VIVO 15(Lonza BioWhittaker、Maryland、USA))中に再懸濁し、使用前に一晩、培養した。
【0079】
Vδ2+T細胞拡大
特異的Vδ2+γδT細胞増拡大のために、PBMCを上記のように単離した。それらをL-グルタミン(2mM、Sigma-Aldrich)、ペニシリン/ストレプトマイシン(100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(Sigma-Aldrich))及び10%FCS(v/v、(Gibco、Massachusetts、USA))を添加したRPMI-1640培地中で培養した。Vδ2+γδT細胞拡大を、5μMゾレドロン酸(Actavis、New Jersey、USA)及び100IU/mlのIL-2(Aldesleukin Novartis、Frimley、UK)を用いて刺激し、PBMC単離後にPBMC懸濁液に添加された(1日目)。IL-2は、ウェルから培地の半分を取り出し、200IU/mlのIL-2を含有する新鮮な培地に置き換えることにより、2~3日ごとに補充された。
【0080】
レトロウイルス構築物の構築
すべての構築物において使用されたガムマレトロウイルスベクターはSFG(Riviereら、1995年)であり、RD114エンベロープを用いてシュードタイプ化した。DNA断片は、製造業者の指示(Thermo Scientific、Massachusetts、USA)に従って、Phusion HT IIポリメラーゼを用いて増幅された。PCRは、PTC-200 DNA Engine(MJ Research、Massachusetts、USA)において行われた。PCR産物は、Wizard SVゲル&PCRクリーンアップキット(Promega、Wisconsin、USA)を用いて1%アガロースゲルから抽出された。試料濃度は、NanoDrop ND-1000分光光度計(Thermo Scientific、Massachusetts、USA)を用いて決定された。構築物は、ヒトIgG1のFc部分に連結されたヒトGD2(クローン14G2A)又はヒトCEA(クローンSM3EL)を含む標的のパネルに対する一連のscFvのうちの1つを含む。
【0081】
scFv-Fc融合タンパク質構築物に加えて、CD34エピトープを有するマーカーであるRQR8(Philipら、2014年)を含め、切断可能な2AペプチドによってscFv-Fc融合タンパク質から分離した。これは、抗CD34抗体クローンQBend10を用いて染色することにより、フローサイトメトリーによって、scFv-Fc融合タンパク質を発現する細胞の検出を可能にする。
【0082】
レンチウイルス構築物の構築
全抗体形質導入に使用されたレンチウイルスベクターは、pCCL(Dullら、1998年)であり、RDProエンベロープを用いてシュードタイプ化された(Cossetら、1995年)。DNA断片は、製造業者の指示(Thermo Scientific、Massachusetts、USA)に従って、Phusion HT IIポリメラーゼを用いて増幅された。PCRをPTC-200 DNA Engine(MJ Research、Massachusetts、USA)で行った。PCR産物は、Wizard SVゲル&PCRクリーンアップキット(Promega、Wisconsin、USA)を用いて1%アガロースゲルから抽出された。試料濃度は、NanoDrop ND-1000分光光度計(Thermo Scientific、Massachusetts、USA)を用いて決定された。構築物は、抗GD2 IgG1(クローン14G2A)を含んでいた。
【0083】
IgG1構築物に加えて、eGFPが含まれ、切断可能な2AペプチドによりIgG1タンパク質から分離された。これは、フローサイトメトリーによって、IgG1発現細胞の検出を可能にする。
【0084】
トランスフェクションによるウイルス粒子の産生
1.5×106 293T細胞/100mm2ディッシュ(Nucleon Delta Surface、Thermo Fisher)を、1日目に293T培地(D-MEM、10%FCS(v/v))に播種した。γ-レトロウイルス粒子又はレンチウイルス粒子は、製造業者の指示に従って、Gene Juiceトランスフェクション試薬(Novagen/Millipore、Massachusetts、USA)を用いて、2日目に293T細胞を同時トランスフェクションすることにより生成された。ウイルス粒子を含有する上清を4日目に回収し、培地を添加し、5日目に回収した。γ-レトロウイルス上清をプールし、濾過し(0.45μmフィルター、Millipore)、使用前に形質導入に直接使用するか、又は4℃で一晩保存した。レンチウイルス上清を超遠心分離により濃縮し、後に使用するために凍結した。
【0085】
T細胞のγレトロウイルス形質導入
レトロネクチン(Takara Bio、Tokyo、Japan)で被覆された24ウェルプレートにウイルス上清を予め負荷し、T細胞の形質導入を行った。0.5mlのT細胞培地+400IUのIL-2に懸濁された0.5×106 T細胞を1.5mlウイルス上清と混合し、40分間、1000×gで室温にて遠心分離した。典型的には、ドナーあたり12×106 T細胞を形質導入のために播種した。
【0086】
γδT細胞拡大を、5μMゾレドロン酸(Actavis、New Jersey、USA)及び100IU/mlのIL-2(Aldesleukin)を用いて刺激し、5日目に形質導入を行った。培養8日目(形質導入後の3日目)に、細胞をプールし、洗浄し、T細胞培地+100IUのIL-2/ml(24ウェルプレート、Nucleon Delta Surface、Thermo Scientific、Massachusetts、USA)中、2×106細胞/mlで播種した。形質導入効率は、10日目(形質導入後の5日目)にフローサイトメトリーにより決定した。
【0087】
T細胞のレンチウイルス形質導入
T細胞の形質導入は、96ウェルプレート中で行われ、各ウェルは0.3mlのT細胞培地中に懸濁させた0.3×106 T細胞を含有した。濃縮されたレンチウイルスを添加し、プレートを40分間、1000×gで室温にて遠心分離した。
【0088】
γδT細胞の拡大を、5μMゾレドロン酸(Actavis、New Jersey、USA)及び100IU/mlのIL-2(Aldesleukin)を用いて刺激し、2日目に形質導入を行った。培養5日目(形質導入後の3日目)に、細胞をプールし、洗浄し、T細胞培地+100IU IL-2/ml中の1×106細胞/cm2で播種した。形質導入効率は、7日目(形質導入後の5日目)にフローサイトメトリーにより決定された。
【0089】
細胞傷害アッセイ
標的細胞株をCellTrace Violet(Thermo Fisher)で標識した後、エフェクター:標的比1:1でエフェクター細胞と共培養した。培地は、100u/mlのIL-2を添加したRPMI1640+10%FCS+1%Pen/Step+1%L-グルタミン、又は同じ培地中で培養した、scFv-Fc融合タンパク質を分泌するVδ2由来の上清のいずれかであった。
【0090】
半透膜の後ろに隔離されたエフェクター細胞を伴うアッセイでは、孔径0.4μmのTransWells(Thermo Fisher)を用いて細胞を分離した。同数のエフェクターをトランスウェル及びメインウェルに置いた。標的細胞をメインウェルに置き、エフェクター:標的比1:1をメインウェルの細胞上で計算した。
【0091】
18時間の共培養後、細胞を回収し、フローサイトメトリーにより分析した。細胞死は、バイオレット標識された細胞上でのGhost Red固定可能生存色素(Tonbo Biosciences、San Diego、CA)を用いた染色により同定された。
【0092】
材料及び方法に関する参考文献
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【配列表】
【国際調査報告】