(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(54)【発明の名称】疾患の治療に使用するための多重特異性抗体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230308BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230308BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20230308BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230308BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230308BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20230308BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230308BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230308BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230308BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230308BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230308BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230308BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12P21/08
C12N15/63 Z
C12N15/62 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544197
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-16
(86)【国際出願番号】 IL2021050064
(87)【国際公開番号】W WO2021149053
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502379147
【氏名又は名称】イェダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダーン ロニー
(72)【発明者】
【氏名】サロモン ラン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE06
4B064CE10
4B064DA01
4B065AA91X
4B065AA91Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BD14
4B065BD17
4B065BD18
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC02
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA10
4H045GA21
(57)【要約】
多重特異性抗体が提供される。CD40に結合し、活性化する第1の部分と、樹状細胞(DC)に特異的に結合する第2の部分と、FcyRIIbに対する結合の特異性及び親和性を高めるための多重特異性抗体の改変されたFc領域を含む第3の部分と、を含む抗体及びその使用。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重特異性抗体であって、CD40に結合して活性化する第1の部分と、樹状細胞(DC)に特異的に結合する第2の部分と、FcyRIIbに対する結合の特異性及び親和性を高めるための、前記多重特異性抗体の改変されたFc領域を含む第3の部分と、を含む、抗体。
【請求項2】
三機能性抗体である、請求項1に記載の多重特異性抗体。
【請求項3】
前記第2の部分が、CD11c、CD11b、DEC-205、BDCA-1、CD8、CD8α、CD103及びMHC-ClassII(例えば、HLA-DR)、CD141、FLT3、CD13、CD1c、Clec9a、PD-L1、及びXCR1からなる群から選択されるDCマーカーに結合する、請求項1又は2に記載の多重特異性抗体。
【請求項4】
前記第2の部分が、CD11cに結合する、請求項1又は2に記載の多重特異性抗体。
【請求項5】
前記第2の部分が、DEC-205に結合する、請求項1又は2に記載の多重特異性抗体。
【請求項6】
前記第2の部分が、Clec9aに結合する、請求項1又は2に記載の多重特異性抗体。
【請求項7】
前記第2の部分が、XCR1に結合する、請求項1又は2に記載の多重特異性抗体。
【請求項8】
重鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号19~配列番号21に示す相補性決定領域を含み、かつ軽鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号22~配列番号24に記載の相補性決定領域を含む第1の部分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項9】
前記改変されたFc領域が、配列番号2と同様の変異を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項10】
ノブ・イントゥ・ホール変異を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項11】
前記変異が、前記二重特異性抗体のY349C/T366S/L368A/Y407Vを含む第1の抗体のCH3ドメインと、前記多重特異性抗体のS354C/T366Wを含む第2の抗体のCH3ドメインとにある、請求項10に記載の多重特異性抗体。
【請求項12】
配列番号5及び配列番号6と、配列番号37及び配列番号38、配列番号39及び配列番号40、配列番号15及び配列番号16、又は配列番号17及び配列番号18のうちのいずれかとを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の多重特異性抗体。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の多重特異性抗体を含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか一項に記載の多重特異性抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする、核酸配列。
【請求項15】
請求項14に記載の核酸を含む、発現ベクター。
【請求項16】
請求項15に記載の発現ベクターで形質転換された、細胞。
【請求項17】
多重特異性抗体を調製する方法であって、
(a)前記多重特異性抗体を発現させる条件下で、請求項16に記載の細胞を培養することと、
(b)前記多重特異性抗体を前記細胞から単離することと、
を含む、方法。
【請求項18】
免疫応答を刺激する必要がある対象において、免疫応答を刺激する方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項13に記載の医薬組成物を前記対象に投与して、前記対象における前記免疫応答を刺激することを含む、方法。
【請求項19】
前記対象が腫瘍を有しており、前記腫瘍に対する免疫応答が刺激される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象が、慢性ウイルス感染症を有しており、前記ウイルス感染症に対する免疫応答が刺激される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
がんの治療が必要な対象において、がんを治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項13に記載の医薬組成物を前記対象に投与して、前記対象におけるがんを治療することを含む、方法。
【請求項22】
前記がんが、膀胱がん、乳がん、子宮がん/子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、食道がん、胃腸がん、膵臓がん、大腸がん、結腸がん、腎臓がん、頭頸部がん、肺がん、胃がん、胚細胞がん、骨がん、肝臓がん、甲状腺がん、皮膚がん、中枢神経系腫瘍、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、及びウイルス関連のがんからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
慢性ウイルス感染症の治療が必要な対象において、慢性ウイルス感染症を治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項13に記載の医薬組成物を前記対象に投与して、前記対象における前記慢性ウイルス感染症を治療することを含む、方法。
【請求項24】
がん及び/又は慢性ウイルス感染症の治療に使用するための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項25】
チェックポイント調節剤の使用又は投与を更に含む、請求項23又は24に記載の使用の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年1月22日に出願されたイスラエル特許出願第272194号からの優先権を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表に関する陳述
本出願の出願と同時に提出された、2021年1月21日に作成され、「85611 Sequence Listing.txt」と題された57,172バイトのASCIIファイルは、参照により本明細書に援用される。
【0003】
技術分野
本発明は、そのいくつかの実施形態において、疾患の治療に使用するための多重特異性抗体に関する。
【背景技術】
【0004】
腫瘍細胞を排除する免疫系の活性化は、PD-1のような抑制作用を持つチェックポイント分子を遮断するか、又はCD40のような刺激分子を活性化するかのいずれかによって達成することができる[1][2]。腫瘍壊死因子受容体(TNFR)ファミリーのメンバーであるCD40は、天然のリガンドのCD40Lによって架橋されると、細胞傷害性T細胞の産生などの免疫応答を刺激する[3][4]。CD40Lを模倣する抗CD40アゴニストAbは、CD40を架橋してDCの成熟及びその後の腫瘍抗原特異的な細胞傷害性T細胞の産生を促進するための効率的なアプローチとして提案されている。機序として、CD40の活性化は、T細胞プライミングにおいて近接したイベントであり、したがって抗CD40 Abは、非炎症性腫瘍を炎症性腫瘍に変換し、有効なT細胞免疫を生じさせる際に重要であり得る[3]。実際に、抗CD40アゴニストAbの抗腫瘍活性は、様々な腫瘍の数多くの動物モデルにおいて有効であることが実証されている[5]。
【0005】
いくつかの既報の刊行物は、抑制作用を持つFcγRIIBの結合が、マウスCD40、並びにTNFRファミリーの他のメンバーを標的とするアゴニストAbの、インビボでの抗腫瘍活性の絶対的な要件であることを示している。この要件は、隣接する細胞上に発現するFcγRIIBによってCD40抗体が高度に架橋されることによるものである。このような架橋は、細胞表面上でのCD40のクラスター形成を増強し、その結果CD40のシグナル伝達が増強される[6][7]。しかしながら、ヒトAbに対する同様の要件は、最新の複数の研究において疑問視されている。これらの研究では、インビトロでの実験システムが使用されたことが制限となっている。あるいは、これらのヒトAbを野生型マウスにおいて評価することで、ヒトFcγRの複雑でユニークな細胞分布、結合親和性、及び機能性を模倣するそれらの能力が制限されている。
【0006】
CP-870,893は、現在臨床評価下にあるヒト抗CD40Abであり、ヒトIgG2アイソタイプと抗CD40クローン2141とから構成されている。この抗体は強力な抗ヒトCD40アゴニストAbであるだけでなく、更には驚くべきことに膵管腺がん(PDA)患者又はその他の固形腫瘍の患者において適度な抗腫瘍活性のみを示す[8][9]。CP-870,893のインビボでの適度な活性は、そのFcドメインがヒトIgG2サブタイプのものあり、ヒトFcγRIIBとの相互作用が非常に弱いことに起因し得ることが判明している[10]。特に重要なことに、抗CD40アゴニストAbの抗腫瘍活性は、FcγRIIBを標的としたFc改変を介して増強され得ることが観察されている。これまでの研究では、CD40及びFcγRについて完全にヒト化させ、これらの受容体のマウスホモログを完全に欠失させたアイソジェニックマウスにおいて、Fcを改変した2141バリアントが数多く試験されており、FcγRIIB結合を選択的に増強する「V11」Fcバリアントが最適な臨床候補として選択されている。2141のFcを改変したV11は、いくつかの種類のマウス腫瘍モデルにおいて、元々のIgG2サブクラスのものと比較して優れた抗腫瘍効果(anti-tumor potency)として示される有意に増強された免疫刺激活性をインビボで有していた[10]。患者にそれらのそれぞれの最大耐用量(MTD)で使用した場合、Fc改変した2141-V11では、治療のための抗腫瘍免疫を親IgGと比較して増加させることができるものの、ヒトでは、いずれのサブクラスに関してもそれぞれのMTDで使用した場合に最適用量には満たない可能性がある。Fc改変した2141抗体を臨床研究用に調製するにあたり、最適な抗腫瘍活性をもたせ、かつ毒性は最小限に抑えるために、投与及び送達レジメンが最適化された。Fc改変した2141の腫瘍内投与によって、親2141 Ab投与及びAb全身投与と比較して、最大治療濃度域が得られた[11]。これらの研究に基づいて、第2世代のFc改変型2141(Fc改変型「F11」)が開発され、固形腫瘍を有する患者に腫瘍内注射により投与された(ClinicalTtrials.gov識別子NCT04059588)。腫瘍内投与は一部の患者には有望であるものの、全ての患者に好適なものではなく、局所的な固形腫瘍の患者又は皮膚への転移性固形腫瘍の患者並びにX線照射療法(radiographically directed therapy)が実施可能な腫瘍の患者に限定され得る。
【0007】
追加の背景技術:
米国特許第20160376371号明細書、
米国特許第20170253659号明細書、
国際公開第2017004016号、
国際公開第2018213747号、
Mazor, Yariv, et al. "Improving target cell specificity using a novel monovalent bispecific IgG design." MAbs. Vol. 7. No. 2. Taylor & Francis, 2015。
【発明の概要】
【0008】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、CD40に結合して活性化する第1の部分と、樹状細胞(DC)に特異的に結合する第2の部分と、を含む多重特異性抗体が提供される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の部分は、CD11c、CD11b、DEC-205、BDCA-1、CD8、CD8α、CD103、及びMHC-ClassII(例えば、HLA-DR)、CD141、FLT3、CD13、CD1c、Clec9a、及びXCR1からなる群から選択されるDCマーカーに結合する。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の部分はCD11cに結合する。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の部分はDEC-205に結合する。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の部分はClec9aに結合する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、第2の部分はXCR1に結合する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多重特異性抗体は、重鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号19~配列番号21に示す相補性決定領域を含み、かつ軽鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号22~配列番号24に記載の相補性決定領域を含む、第1の部分を含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多重特異性抗体は、三機能性抗体である。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多重特異性抗体は、FcyRIIbに対する結合の特異性及び親和性を高めるための多重特異性抗体の改変されたFc領域を含む第3の部分を含む。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、改変されたFc領域は、配列番号2と同様の変異を含む。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多重特異性抗体は、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)変異を含む。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、変異は、二重特異性抗体のY349C/T366S/L368A/Y407Vを含む第1の抗体のCH3ドメインと、多重特異性抗体のS354C/T366Wを含む第2の抗体のCH3ドメインとを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態によれば、多重特異性抗体は、配列番号5及び配列番号6、並びに配列番号37及び配列番号38、配列番号39及び配列番号40、配列番号15及び配列番号16、又は配列番号17及び配列番号18のうちのいずれかを含む。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、多重特異性抗体を含む医薬組成物が提供される。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、多重特異性抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする核酸配列が提供される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、核酸配列を含む発現ベクターが提供される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、発現ベクターで形質転換された細胞が提供される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、多重特異性抗体を調製する方法であって、
(a)多重特異性抗体を発現させる条件下で、細胞を培養することと、
(b)多重特異性抗体を細胞から単離することと、
を含む、方法が提供される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、免疫応答を刺激する必要がある対象において、免疫応答を刺激する方法であって、治療有効量の医薬組成物を対象に投与して、対象における免疫応答を刺激することを含む、方法が提供される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象は腫瘍を有しており、腫瘍に対する免疫応答が刺激される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、対象は、慢性ウイルス感染症を有し、ウイルス感染症に対する免疫応答が刺激される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、がんを治療する必要がある対象において、がんを治療する方法であって、治療有効量の医薬組成物を対象に投与して、対象におけるがんを治療することを含む、方法が提供される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、がんは、膀胱がん、乳がん、子宮/子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、食道がん、胃腸がん、膵臓がん、大腸がん、結腸がん、腎臓がん、頭頸部がん、肺がん、胃がん、胚細胞がん、骨がん、肝臓がん、甲状腺がん、皮膚がん、中枢神経系腫瘍、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、及びウイルス関連のがんからなる群から選択される。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、慢性ウイルス感染症を治療する必要がある対象において、慢性ウイルス感染症を治療する方法であって、治療有効量の医薬組成物を対象に投与して、対象における慢性ウイルス感染症を治療することを含む、方法が提供される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態の一態様によれば、がん及び/又は慢性ウイルス感染症の治療に使用するための医薬組成物が提供される。
【0034】
特に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術及び/又は科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様の又は等価な方法及び材料を、本発明の実施形態の実践又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び/又は材料を下記に記載する。矛盾する場合、定義を含め、本願特許明細書が優先する。更に、材料、方法、及び実施例は単なる例示であり、必ずしも限定を意図するものではない。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態について、その例示のみを目的として添付の図面を参照して本明細書に記載する。以下、特に図面に詳細に言及するが、示される詳細は、例示を目的とし、また本発明の実施形態の例証的説明を目的とすることを強調する。この点に関して、図面を用いて説明することで、当業者には、本発明の実施形態をどのように実践し得るかが明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A-1】
図1Aは、本発明のいくつかの実施形態に従って多重特異性抗体の構成に使用される、抗体(Ab)の可変ドメインの配列を示す。N418Ab及びHD-109Abの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変ドメインの配列を、cDNA末端の増幅法(「アンカード」PCR)によって、それぞれのハイブリドーマのRNAからシーケンシングした。2141の配列は、このAbに関する特許出願において以前に特定された。CDRの配列には下線を付している。配列表では、2141は配列番号78及び配列番号38、N418は配列番号7及び配列番号8、HD109は配列番号39及び配列番号40、10B4は配列番号15及び配列番号16で特定される。
【
図1B-1】
図1Bは、本発明のいくつかの実施形態に従って使用することができる抗体又はその断片の配列を示す。
【
図2-1】
図2は、単一特異性及び二重特異性Abの産生のために作製した構築物を示す。可変ドメインは、ハイブリドーマのcDNAから増幅(N418及びHD-109)、又はデノボ合成(2141)し、図示するように発現ベクター内のIgG1定常ドメインにインフレームでクローニングした。VH:重鎖可変ドメイン、VL:軽鎖可変ドメイン、CH1~3:重鎖定常ドメイン1~3、CL:軽鎖定常ドメイン、KiH:ノブ・イントゥ・ホール変異。
【
図3A】
図3A~
図3Bは、単一特異性及び二重特異性AbのSDS-PAGE及びサイズ排除クロマトグラム解析を示す。(
図3A)5種類のAbのSDS-PAGE解析である。非還元試料の均質なバンドから、N418及びHD-109と、2141 Abとが1種類のヘテロ二量体を形成することが確認される。試料の還元からは、二重特異性のヘテロ二量体が4種類のAb鎖から構成されており、そのうち2種類が各パートナーAbに由来することが確認される。
【
図3B】(
図3B)単一特異性及び二重特異性Abのサイズ排除クロマトグラム解析であり、数字はAbの分子量を示す。
【
図4-1】
図4の(A)~
図4(D)は、二重特異性Abの二重の抗原結合特性を示す。(
図4の(A))hCD40に結合させるELISAである。組換えhuCD40タンパク質に対する抗CD40(赤色)単一特異性Ab及び抗CD40/CD11c(黒色)-CD40/DEC-205(青色)二重特異性Abの、標準的な結合(Standard binding)でのELISA定量アッセイ。抗CD40/CD11c-CD40/DEC-205二重特異性Abは、単一特異性抗CD40親Abと同様にhuCD40を認識する。
【
図4-2】(
図4の(B))DEC-205又はCD11cに結合させるELISAである。組換えDEC-205又はCD11cタンパク質に対する抗CD40(赤色)-DEC-205、又はCD11c(黒色)単一特異性Ab、及び抗CD40/DEC-205又はCD40/CD11c(青色)二重特異性Abの、標準的な結合でのELISA定量アッセイ。抗CD40/DEC-205又はCD40/CD11c二重特異性Ab、及び単一特異性抗DEC-205又はCD11c親Abは、それぞれいずれもDEC-205又はCD11cを認識するが、単一特異性抗CD40 Abは認識しない。(
図4の(C))DEC-205又はCD11c及びhuCD40に結合させる同時ELISAである。組換えDEC-205又はCD11c及びhuCD40タンパク質への抗CD40(赤色)-DEC-205、又はCD11c(黒色)単一特異性Ab、及び抗CD40/DEC-205又はCD40/CD11c(青色)二重特異性Abの同時結合でのサンドイッチELISA定量アッセイ。抗CD40/DEC-205及びCD40/CD11c二重特異性Abだけが、それぞれ両方のタンパク質に同時に結合する。
【
図4-3】(
図4の(D))CD40/CD11c(2141/N418)bsAb及び2141を使用して、ヒト化CD40/FcgRマウスからの脾細胞を染色した。CD19ゲーティングによって測定されるように、bsAbは、CD40親mAbと比較してDCに優先的に結合し、かつB細胞に対する結合が減少している。
【
図5】
図5は、抗ヒトCD40二重特異性Abを用いた、インビトロでのDCの刺激を示す。ヒトDCは、CD40/DEC-205 bsAbによって活性化した。活性化は、記載のbsAbの存在下で培養した未成熟なヒトDCの活性化のアップレギュレーションによって検出した。活性化は、異なる表面活性化マーカー(CD86及びCD54が示されている)のアップレギュレーションによって決定した。4匹のドナーの代表的なデータである。
【
図6A】
図6A~
図6Bは、CD40/DC bsAb活性には、FcγRにより介在される架橋が必要であることを示す。(
図6A)記載の抗ヒトCD40/DEC-205又はCD40/CD11c bsAbのFcバリアントの用量を増加させて、未成熟なヒトDCと共にインキュベートした。CD86及びCD54活性化マーカーのアップレギュレーションを、フローサイトメトリーにより解析した。4匹のドナーのうち1匹の代表的なデータを示す。
【
図6B】(
図6B)記載のCD40/DC bsAbのFcバリアントの存在下、OVAで免疫したhCD40/FcγRマウスの血液中のOVA特異的CD8
+T細胞のフローサイトメトリー解析によりT細胞の活性化を測定した。各点は、個々のマウスを表す。データは平均±SEMとして表示する。
*p≦0.05、
**p≦0.01。
【
図7-1】
図7の(A)~
図7の(D)は、bsAbを使用して肝毒性を低減させ、活性を増加させることにより改善された、治療濃度域を示す。(
図7の(A))用量依存的なT細胞活性化アッセイは、記載の抗CD40 mAb又はbsAbの存在下、OVAで免疫したヒト化CD40/FcgRマウスの血液中のOVA特異的CD8+T細胞のフローサイトメトリー解析により測定した。各点は、個々のマウスを表す。
【
図7-2】(
図7の(B))抗CD40抗体の量の増加に応答した肝トランスアミナーゼの用量依存性毒性を示す。用量を増加させて抗CD40 mAb又はbsAbでマウスを処置し、肝トランスアミナーゼ(AST及びALT)を測定した。各点は、個々のマウスを表す。(
図7の(C))CD40/DC bsAbは、単一特異性2141 CD40 Abのものと比較して、改善された肝毒性プロファイルを有する。横軸(有効性)は、パネルAに示すヒト化CD40/FcgRマウスの血液中のOVA特異的CD8+T細胞の平均を表す。縦軸(肝臓毒性)は、パネルBに示すAST、ALT肝トランスアミナーゼの平均を表す。
【
図7-3】(
図7の(D))ヒト化マウスにおける肝臓毒性についてのMTDを決定することで、CD40/CD11c bsAbの毒性を単一特異性CD40 mAbと比較して超えさせることなく、T細胞の活性を有意に改善することが可能である。T細胞活性化アッセイは、記載の抗CD40 mAb又はbsAbの存在下、OVAで免疫したヒト化CD40/FcgRマウスの血液中のOVA特異的CD8+T細胞のフローサイトメトリー解析によって測定した。(上部パネル)。抗CD40抗体に応答した肝トランスアミナーゼである。マウスを抗CD40 mAb又はbsAbで処置し、肝トランスアミナーゼ(AST及びALT)を測定した。各点は、個々のマウスを表す。(下部パネル)。
【
図8-1】
図8の(A)~
図8の(H)は、CD40 mAbの有効性及び毒性を仲介する細胞集団を示す。(
図8の(A)、
図8の(B))OVAで免疫した(
図8の(A))、又はB16-OVA腫瘍を接種した(
図8の(B))、C57BL/6(緑色)及びBatf3
-/-(青色)マウスのOVA-特異的CD8
+血液T細胞のフローサイトメトリーによって、CD40 mAb処置後のT細胞の活性化を測定した。左側:平均±SEMを示す、CD8
+細胞に対してゲーティングされた代表的なフロープロットである。右側:ゲーティングされた細胞の割合、各点は個々のマウスを表す。(
図8の(C))MC38又はMCA-205腫瘍細胞を接種し、CD40 mAbで処置したC57BL/6及びBatf3
-/-マウスを示す。結果は、平均±SEM(群あたりn=8~13)として提示される。
【
図8-2】(
図8の(D))記載の系統におけるCD40 mAb注射後の血中肝トランスアミナーゼ値である。(
図8の(E)+
図8の(F))CD40 mAb注射の24時間前に、hCD40/FcγRマウスにクロドロン酸リポソーム(
図8E)又は抗CD42b(
図8の(F))を注射した。血中AST値及びALT値を測定し(左側)、肝臓を摘出し、解析した(右側、代表的な肝臓H&E切片;スケールバー=200μm)。(
図8の(G))CD40 mAb注射の24時間前に、hCD40/FcγRマウスにクロドロン酸リポソームを注射した。24時間後の血小板数である。(
図8の(H))hCD40/FcγRマウスにCD40 mAbを注射し、2.5時間後にLN及び脾臓を摘出し、細胞内IL-6発現について単個細胞懸濁液をフローサイトメトリーにより解析した。上部:代表的なセルソータープロットである。底部:グループ化したIL-6染色強度である。データは平均±SEMを表す。
*P≦0.05、
**p≦0.01、
***P≦0.001、
****P≦0.0001、ns:有意性なし。
【
図8-4】
図8の(I)は、MC38腫瘍を保有するマウスにおいて示された細胞上CD40の発現を示す。腫瘍、排出リンパ節(LN)、脾臓、及び肝臓を、フローサイトメトリー解析用に摘出した。クッパー細胞(KC)、マクロファージ(MF)、樹状細胞(DC)、古典的1型DC(cDC1)、古典的2型DC(cDC2)。デルタ幾何平均蛍光強度(ΔMFI)を示す。
図8の(J)~
図8の(K)は、bsAbの標的選択を示す。腫瘍を保有するマウスのMC38腫瘍、排出リンパ節(LN)、脾臓及び肝臓において示された細胞型に対する、及びナイーブマウスの血小板(K)に対するCD11c及びDEC-205の発現を示す。CD41は、血小板の陽性対照マーカーとして機能した。DEC-205の幾何平均蛍光強度(MFI)及びCD11cデルタの幾何平均蛍光強度(ΔMFI)を示す。各点は、個々のマウスを表す(
図8の(J))。代表的なマウスのFACS解析を(
図8の(K))に示す。
【
図8-5】
図8の(L)~
図8の(R)は、CD40 mAbの有効性及び毒性を介在する細胞集団を示す。(
図8の(L))C57BL/6(緑色)又はBatf3
-/-(青色)マウスの肝臓におけるクッパー細胞の量を、フローサイトメトリーによって解析した。(
図8の(M))C57BL/6マウスに、クロドロン酸リポソームを注射した。24時間後、肝臓を摘出し、記載の細胞集団の頻度について単個細胞懸濁液をフローサイトメトリーによって解析した。(
図8の(N))CD40 mAb注射の24時間前に、C57BL/6マウスにクロドロン酸リポソームを注射した。24時間後、血中AST値及びALT値を測定した。(
図8の(O)~
図8の(P))CD40 mAb注射の24時間前に、hCD40/FcγRマウスに抗CD42bを注射した。血小板を24時間後に測定し(
図8の(O))、肝臓を摘出し、解析した(
図8の(P))。代表的な肝臓H&E切片;スケールバー=100μm。(
図8の(Q))CD40 mAb注射後の血清IL-6値及びTNF-α値である。hCD40/FcγRマウスに、2141 CD40 mAbを注射し、3時間後に血清を採取した。ELISAによってサイトカイン量を測定した。(
図8の(R))CD40 mAb注射後の細胞内IL-6発現である。hCD40/FcγRマウスに、2141 CD40 mAbを注射した。2.5時間後、血液をフローサイトメトリーによって解析した。クッパー細胞(KC)、マクロファージ(MF)、樹状細胞(DC)、古典的1型DC(cDC1)、古典的2型DC(cDC2)。各点は個々のマウスを表し、データは平均±SEMとして表示される。*P<0.05、**p≦0.01、***P≦0.001、****P≦0.0001、ns:有意性なし。
【
図9】
図9の(A)~
図9の(B)は、CD40/DC bsAb活性にはFcγRにより介在される架橋が必要であることを示す。(
図9の(A)記載のCD40/DC bsAbのFcバリアントの存在下、OVAで免疫したhCD40/FcγRマウスの血液中のOVA特異的CD8
+T細胞のフローサイトメトリー解析によりT細胞の活性化を測定した。各点は、個々のマウスを表す。データは平均±SEMとして表示される。
*p≦0.05、
**p≦0.01。(
図9の(B))ヒトbsAb FcバリアントのヒトFcγRIIBに対する結合を示す。記載の抗CD40/DC bsAbのFcバリアントの、組換えhFcγRIIBに対する結合を、ELISAによって評価した。
【
図10-1】
図10の(A)~
図10の(E)は、安全な用量で投与されたときに、CD40/CD11c bsAbによる抗腫瘍応答がCD40 mAbよりも優れていることを示す。(
図10の(A))記載の用量のCD40 mAb又はCD40/CD11c bsAbで処置したhCD40/FcγRマウスの肝臓の代表的なH&E染色を示す(1群当たりn=4匹)。(
図10の(B))CD40 mAb又はCD40/CD11c bsAb処置後のIL-6及びTNF-αの分泌である。(
図10の(C))記載のmAb又はbsAbの存在下、OVAで免疫したヒト化CD40/FcγRマウスの血液中のOVA特異的CD8+T細胞のフローサイトメトリー解析によりT細胞の活性化を測定した。
【
図10-2】(
図10の(D))hCD40/FcγRマウスに、MC38又はB16-F10腫瘍細胞を接種した。腫瘍が確立され、50mm3の平均体積に達したら、マウスを、それらの所定のMTDでCD40 mAb又はCD40/CD11c bsAbで処置した。3日~4日ごとに腫瘍体積をキャリパーで測定した(1群当たりn=9匹~11匹)。(
図10の(E))hCD40/FcγRマウスに、B16-F10腫瘍細胞を接種した。確立された腫瘍を有するマウスを、示されたmAb/bsAbで処置した。3日~4日ごとに腫瘍体積をキャリパーで測定した(1群当たりn=9匹~10匹)。各点は個々のマウスを表し、データは平均±SEMとして表示される。
*P<0.05、
**p≦0.01、
***P≦0.001、
****P≦0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、疾患の治療に使用するための多重特異性抗体に関する。
【0038】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の用途は、以下の発明を実施するための形態に示される詳細又は実施例によって例示される詳細に必ずしも限定されないことを理解されたい。本発明は他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実施若しくは実現することが可能である。
【0039】
抗CD40モノクローナルアゴニスト抗体(mAb)の治療における使用は、免疫応答が腫瘍を排除するという能力を利用することを目的としたアプローチである。このアプローチは、様々な腫瘍の数多くの動物モデルにおいて有効であることが実証されている。しかしながら、ヒト抗CD40 mAbは、固形腫瘍を有する患者ではわずかな抗腫瘍活性のみを示している。
【0040】
本発明の実施形態を考慮しながら、本発明者らは、樹状細胞特異的な様式でCD40を標的とする多重特異性分子を考案した。FcγRIIbの結合を選好する抗体も考案されている。
【0041】
以下に示すように、及び以下の実施例のセクションでは、本発明者らは、抗CD40抗体の有効性及び毒性を仲介する細胞経路を確立した。本発明者らは、用量制限性の毒性を低減させることによって、最大の抗腫瘍活性を有するCD40アゴニストmAbを設計した。本発明者らは、CD40及び樹状細胞マーカーの両方を標的とする、Fc改変された多重特異性(二重特異性)抗体の形態である、新しい種類の分子を設計した。具体的には、2141-V11バリアント(FcγRIIbに対する特異性が増強されている)は、その抗腫瘍活性を仲介する細胞集団であるDCに特異的であると同時に、他の細胞集団ではCD40に対する結合を低減する。この特異的な送達を達成するために、本発明者らは、IgGスキャフォールド全体として二重特異性Ab形式を利用する新規戦略を設計した。そのような設計は、適切なFcγR経路に関与する能力を維持したままで、規定の細胞集団に対する特異性が増加するという利点を有する。本抗体は、(i)二重ヒトFab認識によって仲介される、定義された細胞特異性、及び(ii)Fc改変によって仲介される、FcγRIIBの結合の増強を含む、多くの有益な特性を備え持っている。所望の二重特異性Abの組み合わせを作製するために、2種類の既存のAbの2つの重鎖及び2つの軽鎖を正しく組み立てる必要がある。そのため、本発明者らは、各bsAbを形成する4つの鎖を合成した。ノブ・イントゥ・ホール技術(重鎖のCH3ドメインにおける特定された点変異)を利用して、所望の重鎖のヘテロ二量体形成を可能にした[12]。CrossMab技術(bsAbを構成する2種類のAbのうちの1つの重鎖CH1及び軽鎖CL1ドメインの交換)を適用して、軽鎖とそれらの同族重鎖とを確実に正しく会合させた。2141の可変ドメインを、以前に作製された単一特異性2141 Abから二重特異性Ab構築物にクローニングした。抗DEC-205(HD-109)、CD11c(N418)、Clec9a、及びXRC1(MARX10)Abの可変ドメインをシーケンシングし、HD-109[13]及びN418[14]ハイブリドーマのそれぞれからクローニングした。Clec9a(10B4)、及びXRC1(MARX10)の可変ドメインを、それぞれ米国特許出願第20130273150(A)号明細書、及び欧州特許第2641915(A1)号明細書に記載されているそれらの配列に基づいて合成した。二重特異性Abを、野生型(WT)IgG及び「V11」Fcスキャフォールドで構築し(PCRによる部位特異的変異導入を使用して、点変異を導入した)、インビボでのCD40の活性化に必要とされる、FcγRIIBによる最適な高度の架橋を保存した。
【0042】
本発明者らは、インビボでのCD40結合部分と、DCの標的化と、FcγRIIBの結合との間の相乗効果を確立した。この相乗作用は、最適な抗腫瘍活性及び最小の毒性を示し、チェックポイント調節(例えば、抗PD-L1)による改善された治療を示している。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態の抗体は、改善された特異性及びしたがって治療効果を有しており、そのため、診療所で首尾よく使用され得ると考えられている。
【0044】
したがって、本発明の一態様によれば、CD40に結合して活性化する第1の部分と、樹状細胞(DC)に特異的に結合する第2の部分と、を含む多重特異性抗体が提供される。
【0045】
本発明の一態様によれば、CD40に結合して活性化する第1の部分と、樹状細胞(DC)に特異的に結合する第2の部分と、FcyRIIbに対する結合の特異性及び親和性を高めるための多重特異性抗体の改変されたFc領域を含む第3の部分と、を含む多重特異性抗体が提供される。
【0046】
本明細書で使用する場合、「CD40」は、「TNF受容体スーパーファミリーメンバー5」(TNFRSF5)を指す。
【0047】
20個のアミノ酸シグナル配列を含む、ヒトCD40(NP_001241.1)の配列が、配列番号41に提供される。
【0048】
CD40はCD40リガンド(CD40L)と相互作用し、これはTNFSF5、gp39、及びCD154とも呼ばれる。別途記載のない限り、又は文脈から明らかでない限り、本明細書におけるCD40Lへの言及は、ヒトCD40L(「huCD40L」)を指す。ヒトCD40Lは、MIM:300386に更に記載されている。ヒトCD40L(NP_000065.1)の配列は、配列番号42で提供される。
【0049】
CD40に対する抗体は、ヒトCD40及び/又はマウスCD40に結合することが理解されよう。ヒト及びマウスの両方に結合する抗体は、典型的には、「汎特異的抗体(pan-specific antibodies)」と呼ばれる。
【0050】
述べたように、第1の部分はCD40(CD40Lを模倣)に結合し、活性化するため、「アゴニスト性」と呼ばれる。アゴニスト活性は、ヒト樹状細胞におけるCD54又はCD86のアップレギュレーションを試験することによって、及び/又はインビボでのT細胞活性化アッセイを試験することによって(例えば、CD40に対する結合がELISAによって確認される)アッセイすることができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態による、多重特異性抗体に使用することができる第1の部分の相補性決定配列(CDR)は、以下に列挙される抗体に見出すことができる。
・抗CD40 2141(CP870,893としても知られる)は、配列番号5、配列番号6、配列番号11及び配列番号12で示される。
【0052】
したがって、本発明の実施形態によれば、重鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号19~配列番号21に示す相補性決定領域を含み、かつ軽鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号22~配列番号24に記載の相補性決定領域を含む、第1の部分を含む、多重特異性抗体が提供される。FcγRIIBの結合を最適化するための変異を含むCD40 V11及び二重特異性アセンブリは、配列番号5及び配列番号6(それぞれVH及びVL)で提供される。
・抗CD40抗体:12D6及び5F11は、参照によりその全体が本明細書に援用される国際公開第2017/0253659号に記載されている。
・APX005M(Apexigen):Johnson M, Fakih M, Bendell J, et al. 2017。固形腫瘍を有する対象においてCD40モノクローナルアゴニスト抗体APX005Mを用いた最初のヒト研究。J. ImmunoTher. Cancer 5(Suppl. 3):89 (Abstr.)
・SGN-40:C.-L. Law et al., “Preclinical antilymphoma activity of a humanized anti-CD40 monoclonal antibody, SGN-40.,” Cancer Res., vol. 65, no. 18, pp. 8331-8338, Sep. 2005。
・ SEA-CD40-DOI:10.1200/JCO.2018.36.15_suppl.3093 Journal of Clinical Oncology 36, no. 15_suppl (May 20, 2018) 3093-3093。
【0053】
他のCD40アゴニスト抗体も、当該技術分野において利用可能である。
【0054】
前述のように、多重特異性抗体は、樹状細胞(DC)に特異的に結合する第2の部分を含む。
【0055】
本明細書で使用する場合、「特異的」は、末梢血の細胞などの他の細胞又は血小板と比較した、DCに対する結合選好を指す。いくつかの実施形態によれば、「特異的」は、フローサイトメトリー解析によって測定されるように、標的が発現されないか、又はDCと比較してより低い密度で発現されるために、マクロファージ(クッパー又は非クッパー)及び血小板に対する結合がないことを意味する。
【0056】
本明細書で使用する場合、「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」、及び「特異的に結合する」という用語は、所定の抗原上のエピトープには結合するが他の抗原には結合しない抗体を指す。典型的には、抗体は、(i)例えば、所定の抗原(例えば、組換えDCマーカー)を分析物とし、抗体をリガンドとして使用して、BIACORE(登録商標).2000表面プラズモン共鳴機器における表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって、又は抗原陽性細胞への抗体の結合のScatchard解析によって測定されたとき、約10-7M未満、例えば、約10-8M未満、10-9M未満又は更には10-10M以下である平衡解離定数(KD)で結合し、(ii)所定の抗原又は密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合する際の親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性で所定の抗原に結合する。したがって、「ヒトCD40若しくはDCマーカーに特異的に結合する」抗体は、10-6M以下、例えば、約10-7M未満、約10-8M未満、10-9M未満又は更には10-10M以下のKDで可溶性又は細胞に結合したヒトCD40若しくはDCマーカーに結合する抗体を指す。
【0057】
本明細書で使用する場合、「樹状細胞」(DC)又は複数形の「樹状細胞」(DC)は、プロフェッショナル抗原提示細胞(APC)と呼ばれる細胞集団に属する細胞を指す。DCは、樹状細胞本体から複数の方向に延びる薄い膜状の構造(ラメリポディア)を有する特徴的な形態を有する。いくつかの表現型の基準も典型的であるが、樹状細胞の供給源に応じて様々であり得る。これらには、高レベルのMHC分子(例えば、クラスI及びクラスII MHC)並びに共刺激分子(例えば、B7-1及びB7-2)、及び顆粒球、NK細胞、B細胞、並びにT細胞に特異的なマーカーが存在しないことが含まれる。多くの樹状細胞は、以下に列挙されるような特定のマーカーを発現する。樹状細胞は、インビトロ及びインビボで初代T細胞の応答を開始することができる。これらの応答は、抗原特異的である。樹状細胞は、末梢血白血球、脾細胞、B細胞、及び単球と比較して、強い混合白血球反応(mixed leukocyte reaction、MLR)を直接導く。樹状細胞は、細胞によるサイトカインの発現パターンによって場合により評価される(Zhou and Tedder (1995) Blood 3295-3301)。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体は未成熟なDCに結合し、それらの成熟及び活性化を仲介する可能性がある。
【0058】
特定の実施形態によれば、樹状細胞は、cDC1又はcDC2である。
【0059】
特定の実施形態によれば、樹状細胞は、cDC1及びcDC2である。
【0060】
特定の実施形態によれば、樹状細胞は、第2の部分が、CD11c、CD11b、Clec9a、XCR1、DEC-205、BDCA-1、CD8、CD8α、CD103、及びMHC-クラスII(例えば、HLA-DR)、CD141、FLT3、CD13、及びCD1cからなる群から選択されるDCマーカーに結合する、マーカー発現を特徴とする。
【0061】
特定の実施形態によれば、DCはヒトDCである。
【0062】
特定の実施形態によれば、第2の部分は、CD141、FLT3、CD13、CD1c、及びHLA-DR(MHCII)からなる群から選択されるDCマーカーに結合する。
【0063】
特定の実施形態によれば、第2の部分は、CD11c、CD11b、Clec9a、XCR1、DEC-205、BDCA-1、CD8、CD8α、CD103、MHC-クラスII(例えば、HLA-DR)、CD141、CD13、及びCD1c、LILRA4、LAMP5、CLEC4C、IL3RA、及びSIGLEC6からなる群から選択されるDCマーカーに結合する。
【0064】
特定の実施形態によれば、DCマーカーは、LILRA4、LAMP5、CLEC4C、IL3RA、CLEC9A、XCR1、FLT3、又はSIGLEC6ではない。
【0065】
特定の実施形態によれば、第2の部分は、CD11c又はDEC-205に結合する。
【0066】
特定の実施形態によれば、第2の部分は、CD11cに結合する。
【0067】
したがって、本発明の実施形態によれば、重鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号25~配列番号27に示す相補性決定領域を含み、かつ軽鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号28~配列番号30に記載の相補性決定領域を含む、第2の部分を含む、多重特異性抗体が提供される。
【0068】
特定の実施形態によれば、第2の部分は、DEC-205に結合する。
【0069】
したがって、本発明の実施形態によれば、重鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号31~配列番号33に示す相補性決定領域を含み、かつ軽鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号34~配列番号36に記載の相補性決定領域を含む、第2の部分を含む、多重特異性抗体が提供される。
【0070】
特定の実施形態によれば、第2の部分は、Clec9aに結合する。
【0071】
したがって、本発明の実施形態によれば、重鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号52~54に記載される相補性決定領域と、軽鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号55~57に記載の相補性決定領域と、を含む、第2の部分を含む、多重特異性抗体が提供される。(10B4のCDR)。
【0072】
特定の実施形態によれば、第2の部分は、XCR1に結合する。
【0073】
したがって、本発明の実施形態によれば、重鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号58~60に記載される相補性決定領域と、軽鎖中にN末端からC末端に向けて配列番号61~63に記載の相補性決定領域と、を含む、第2の部分を含む、多重特異性抗体が提供される。(MARX10のCDR)。
【0074】
CD11cに結合することができる抗体は、当該技術分野において周知である。N418は、ATCCから入手可能である[14]。
【0075】
DEC-205に結合することができる抗体は、当該技術分野において周知である。HD-109としては、ロックフェラー大学からから入手可能である[13]、HD-20、HD-24、HD-71、HD-73、HD-77、及びHD-83がある。
【0076】
Clec9aに結合することができる抗体は、当該技術分野において周知である。10B4及びその他のものは、米国特許出願第20130273150(A)号明細書[15]に記載されている(例えば、1F6、397、及び7H11は、[16]に記載されている)。
【0077】
XCR1に結合することができる抗体は、当該技術分野において周知である。MARX10は、欧州特許第2641915(A1)号明細書[17]に記載されている。
【0078】
部分のいずれかは、FcγRIIBに対する結合を増加させるFc改変、例えば、これらに限定されないが、V11変異(配列番号2)、S267E(「SE」)、S267E/L382F(「SELF」)、G237D/P238D/P271G/A330R(「V9」)、及び/又はヒトIgG配列に対応する(配列番号1に対応する位置)E233D/G237D/P238D/H268D/P271G/A330R(「V12」)を含み得ることが理解されよう。
【0079】
特定の実施形態によれば、多重特異性抗体は、配列番号5及び配列番号6並びに配列番号37及び配列番号38を含む。
【0080】
特定の実施形態によれば、多重特異性抗体は、配列番号5及び配列番号6並びに配列番号39及び配列番号40を含む。
【0081】
特定の実施形態によれば、多重特異性抗体は、配列番号5及び配列番号6並びに配列番号15及び配列番号16を含む。
【0082】
特定の実施形態によれば、多重特異性抗体は、配列番号5及び配列番号6並びに配列番号17及び配列番号18を含む。
【0083】
本発明で使用される「抗体」という用語は、未改変の分子並びに(抗原のエピトープに結合することができる)その機能的断片を含む。
【0084】
本明細書で使用する場合、「エピトープ」という用語は、抗体のパラトープが結合する抗原上の任意の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸又は炭水化物側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。
【0085】
特定の実施形態によれば、抗体断片としては、単鎖、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片、Fd、Fcab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、ミニボディ、ナノボディ、Fab発現ライブラリ、又はHLA制限様式で抗原のエピトープに結合することができるVH及びVLなどの単一ドメイン分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を実施するための好適な抗体断片としては、免疫グロブリン軽鎖(本明細書では「軽鎖」と呼ばれる)の相補性決定領域(CDR)、免疫グロブリン重鎖(本明細書では「重鎖」と呼ばれる)の相補性決定領域、軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域、軽鎖、重鎖、Fd断片、並びにFv、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、Fab、Fab’、及びF(ab’)2などの軽鎖及び重鎖の両方の可変領域全体を本質的に含む抗体断片、又は抗体のFc領域を含む抗体断片が挙げられる。
【0087】
本明細書で使用する場合、「相補性決定領域」又は「CDR」という用語は、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの可変領域内に見られる抗原結合領域を指すために互換的に使用される。一般に、抗体は、VHの各々に3つのCDRを含み(CDR HI若しくはHI、CDR H2若しくはH2、及びCDR H3若しくはH3)、VLの各々に3つのCDRを含む(CDR LI若しくはLI、CDR L2若しくはL2、及びCDR L3若しくはL3)。
【0088】
可変領域又はCDRを構成する特定の抗体中のアミノ酸残基の同一性は、当該技術分野において周知の方法を使用して決定することができ、Kabatらによって定義された配列多様性(例えば、Kabat et al., 1992, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, NIH, Washington D.C.を参照)、Chothiaらによって定義された構造ループ領域の位置(例えば、Chothia et al., Nature 342:877-883, 1989を参照)、OxfordMolecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアを使用するKabatとChothiaとの間での調整(compromise)(ここでは、Accelrys(登録商標)、Martin et al., 1989, Proc. Natl Acad Sci USA. 86:9268、及びワールドワイドウェブサイトwww(dot)bioinf-org(dot)uk/absを参照)、接触の画定(definition)によって定義されるような利用可能な複雑な結晶構造(MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262:732-745, 1996を参照)及び「立体配座の画定(conformational definition)」(例えば、Makabe et al., Journal of Biological Chemistry, 283:1156-1166, 2008を参照)が挙げられる。
【0089】
本明細書で使用する場合、「可変領域」及び「CDR」は、アプローチの組み合わせを含む、当該技術分野において既知の任意のアプローチによって定義される可変領域及びCDRを指し得る。
【0090】
軽鎖及び重鎖の両方の可変領域の全体又は本質的に全体的を含む機能的抗体断片は、以下のように定義される。
(i)2つの鎖として発現される軽鎖(VL)の可変領域及び重鎖(VH)の可変領域からなる遺伝子改変された断片として定義されるFv、
(ii)一本鎖分子Fv(「scFv」)、遺伝子により融合された一本鎖分子である好適なポリペプチドリンカーによって連結された、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域を含む、遺伝子改変された一本鎖分子。
(iii)ジスルフィド結合により安定化されたFv(「dsFv」、遺伝子改変したジスルフィド結合によって連結された軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む、遺伝子改変された抗体。
(iv)Fab、抗体全体を酵素パパインで処理して、未改変の軽鎖と、その可変ドメイン及びCH1ドメインからなる重鎖のFd断片とを生成することによって得ることができる、抗体分子の一価抗原結合部分を含有する抗体分子の断片、
(v)Fab’、抗体全体を酵素ペプシンで処理し、続いて還元(抗体分子当たり2つのFab’断片が得られる)することによって得ることができる抗体分子の一価抗原結合部分を含有する抗体分子の断片、
(vi)F(ab’)2、抗体全体を酵素ペプシンで処理することによって得ることができる、抗体分子の一価抗原結合部分を含有する抗体分子の断片(すなわち、2つのジスルフィド結合によって一緒に保持されたFab’断片の二量体)、
(vii)単一ドメイン抗体又はナノボディ、抗原に対して十分な親和性を示す単一のVH又はVLドメインから構成される、
(viii)Fcab、抗原結合能力を抗体のFc領域に導入することによって、抗原結合ドメインとして開発された抗体のFc部分を含有する抗体分子の断片。
【0091】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びにその断片を産生する方法は、当該技術分野において周知である(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1988を参照)。
【0092】
抗体を作製するための例示的な方法は、抗体分子のインビボ産生の誘導、免疫グロブリンライブラリのスクリーニング(Orlandi D.R. et al., 1989. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 86:3833-3837、Winter G. et al., 1991. Nature 349:293-299)又は培養下の連続継代細胞株によるモノクローナル抗体分子の産生を利用する。これらの方法としては、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、及びエプスタイン-バーウイルス(EBV)-ハイブリドーマ技術が挙げられるが、これらに限定されない(Kohler G. et al., 1975. Nature 256:495-497、Kozbor D. et al., 1985. J. Immunol. Methods 81:31-42、Cote RJ. et al., 1983. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 80:2026-2030、Cole SP. et al., 1984. Mol. Cell. Biol. 62:109-120)。
【0093】
インビボで抗体を作製するときに適切な免疫原性応答を誘発するのに標的抗原が小さすぎる場合、そのような抗原(ハプテン)は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又は血清アルブミン[例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)]担体などの、抗原性がない(antigenically neutral)担体に結合させることができる(例えば、米国特許第5,189,178号明細書及び同第5,239,078号明細書を参照]。ハプテンを担体に結合することは、当該技術分野において周知の方法を使用して行うことができる。例えば、アミノ基への直接結合を行い、任意選択的に、続いて、形成されるイミノ結合の還元を行うことができる。あるいは、担体は、ジシクロヘキシルカルボジイミド又は他のカルボジイミド脱水剤などの縮合剤を使用して結合させることができる。リンカー化合物を使用して結合をもたらすことができ、ホモ二官能性リンカー及びヘテロ二官能性リンカーはいずれも、イリノイ州、ロックフォード、Pierce Chemical Companyから入手可能である。得られた免疫原性複合体は、次いで、マウス、ウサギなどの適切な哺乳動物対象に注入することができる。好適なプロトコルは、血清中の抗体の産生を促進するスケジュールに従って、アジュバントの存在下で免疫原を繰り返し注射することを伴う。免疫血清の力価は、当技術分野において周知であるイムノアッセイ手順を使用して容易に測定することができる。
【0094】
得られた抗血清は、直接使用することができ、又は上記のようにモノクローナル抗体が得られ得る。
【0095】
本発明のいくつかの実施形態による抗体断片は、抗体をタンパク質加水分解することによって、又は断片をコードするDNAのE.coli若しくは哺乳動物細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞培養物、又は他のタンパク質発現系)における発現によって調製することができる。
【0096】
抗体断片は、全抗体を従来の方法によりペプシン又はパパイン消化することによって得ることができる。例えば、抗体断片は、ペプシンによる抗体の切断によって生じ、F(ab’)2と表される5S断片を提供することができる。この断片は、チオール還元剤、及び任意選択的にジスルフィド結合の切断から生じるスルフヒドリル基の遮断基を使用して更に切断され、3.5S Fab’一価断片を生成し得る。あるいは、ペプシンを使用する切断は、2つの一価のFab’断片とFc断片とを直接生成する。これらの方法は、例えば、Goldenbergによる米国特許第4,036,945号明細書及び同第4,331,647号明細書、及びそれらの中に含まれる参考文献に記載されており、これらの特許はその全体が参照により本明細書に援用される。また、Porter, R. R.[Biochem. J. 73: 119-126 (1959)]も参照されたい。未改変な抗体によって認識される抗原に断片が結合するのであれば、重鎖を分離して一価の軽鎖-重鎖断片を形成すること、更に断片を分解すること、又はその他の酵素的、化学的、若しくは遺伝的技術も使用することができる。
【0097】
上記のように、Fv断片は、VH鎖及びVL鎖の会合を含む。この会合は、Inbar et al. [Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 69:2659-62 (19720]に記載されているように非共有結合によるものである。あるいは、可変鎖は、分子間ジスルフィド結合によって結合される場合があり、又はグルタルアルデヒドなどの化学物質によって架橋される場合もある。好ましくは、Fv断片は、ペプチドリンカーによって接続されたVH鎖及びVL鎖を含む。これらの一本鎖の抗原結合タンパク質(sFv)は、オリゴヌクレオチドによって接続されたVHドメイン及びVLドメインをコードするDNA配列を含む構造遺伝子を構築することによって調製される。構造遺伝子は、発現ベクターに挿入され、その後、E.coliなどの宿主細胞に導入される。組換え宿主細胞は、2つのVドメインをリンカーペプチドが架橋する単鎖ポリペプチド鎖を合成する。sFvを産生するための方法は、例えば、[Whitlow and Filpula, Methods 2: 97-105 (1991)、Bird et al., Science 242:423-426 (1988)、Pack et al., Bio/Technology 11:1271-77 (1993)、及びその全体が参照により本明細書に援用される、米国特許第4,946,778号明細書]によって記載されている。
【0098】
抗体断片の別の形態としては、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドがある。CDRペプチド(「認識の最小単位」)は、目的とする抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することによって得ることができる。そのような遺伝子は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して、抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成することによって作製される。例えば、Larrick and Fry[Methods, 2: 106-10 (1991)]を参照されたい。
【0099】
前述のように、抗体断片は、「Fcab」と呼ばれる抗体のFc領域を含み得る。このような抗体断片は、典型的には、抗体のCH2-CH3ドメインを含む。Fcabは、抗体のループ構造をとる領域、すなわち重鎖のCH3領域において、少なくとも1つの改変を含むように設計される。そのような抗体断片は、例えば、以下のように作製することができる。ループ構造をとる少なくとも1つの領域(例えば、Fc領域)を含む抗体をコードする核酸を準備し、ループ構造をとる少なくとも1つの領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基を改変し、改変した核酸を発現系に移し、改変抗体を発現させ、発現させた改変抗体をエピトープと接触させ、改変抗体がエピトープと結合するかどうかを判定する。例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される米国特許第9,045,528号明細書及び同第9,133,274号明細書を参照されたい。
【0100】
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体のヒト化抗体は、含有している非ヒト免疫グロブリン由来の配列が最小限のものである、免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’).sub.2、又は抗体の他の抗原結合配列)のキメラ分子である。ヒト化抗体としては、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、当該レシピエントの相補性決定領域(CDR)を形成する残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種のCDR(ドナー抗体)の残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリンが挙げられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体中にも、インポートされたCDR配列若しくはフレームワーク配列にも見られない残基を含み得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、そのCDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリンのコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの一部を含む[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature, 332:323-329 (1988)、及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596 (1992)]。
【0101】
非ヒト抗体をヒト化する方法は、当該技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト材料より組み込まれたアミノ酸残基を1つ以上有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、インポート残基と呼ばれ、典型的にはインポート可変ドメイン(import variable domain)から持ち込まれる。ヒト化は、Winter及び共同研究者の方法に倣い、齧歯類のCDR又はCDR配列を、対応するヒト抗体の配列で置き換えることによって本質的に実施することができる[Jones et al., Nature, 321:522-525 (1986)、Riechmann et al., Nature 332:323-327 (1988)、Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536 (1988)]。したがって、このようなヒト化抗体はキメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号明細書)、対応する非ヒト配列によって置換されている元(intact)のヒト可変ドメインが実質的に少ない。実際には、ヒト化抗体は、典型的にはいくつかのCDR残基及び場合によってはいくつかのFR残基が齧歯類抗体中の類似の部位の残基によって置換されているヒト抗体である。
【0102】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリなどの、当該技術分野において既知の様々な技術を使用して産生することができる[Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991)、Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)]。Coleら及びBoernerらの技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の作製に利用可能である[Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985) 及びBoerner et al., J. Immunol., 147(1):86-95 (1991)]。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を、トランスジェニック動物、例えば、免疫グロブリンの内在性遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウスに導入することによって作製することができる。抗原負荷により、遺伝子再構成、アセンブリ、及び抗体レパートリーを含む全ての点でヒトで見られるものと非常によく似た、ヒト抗体の産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許第5,545,807号明細書、同第5,545,806号明細書、同第5,569,825号明細書、同第5,625,126号明細書、同第5,633,425号明細書、同第5,661,016号明細書、及び以下の科学出版物:Marks et al., Bio/Technology 10,: 779-783 (1992)、Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994)、Morrison, Nature 368 812-13 (1994)、Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996)、Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996)、及びLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13, 65-93 (1995)に記載されている。
【0103】
特に記載がない限り、免疫グロブリンとしては、IgA、分泌型IgA、IgG、及びIgMが挙げられるが、これらに限定されない、一般的に知られているアイソタイプのいずれかからのものであり得る。IgGアイソタイプは、特定の種類のサブクラス:ヒトではIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、並びにマウスではIgG1、IgG2a、IgG2b、及びIgG3に分けられる。免疫グロブリン、例えばヒトIgG1は、ほとんどの場合にごくわずかなアミノ酸が互いに異なっているいくつかのアロタイプで存在する。
【0104】
特定の実施形態によれば、抗体は、IgG1アイソタイプのものである。抗体が得られたら、例えば、ELISA、ウエスタンブロット、FACS、ドットブロット、及び抗体の評価のための任意の他の方法により活性を試験することもできる。
【0105】
特定の実施形態によれば、抗体は、Fcγ、CD40、及びDCに結合するという点で三機能性である。
【0106】
本明細書で使用する場合、「多重特異性抗体」は、前述のように少なくとも2つの標的、すなわち異なる構造、2種類の異なる抗原、又は1つはCD40上にあり、別の少なくとも1つはDC上にある2つの異なるエピトープ、に同時に結合することができる、抗体である。
【0107】
特異性は、抗体が結合することができる抗原又はエピトープの数を示し、すなわち、二重特異性、三重特異性、四重特異性を示す。特定の実施形態によれば、抗体は、二重特異性抗体である。
【0108】
これらの定義を用いると、天然抗体、例えばIgGは、2つの結合アームを有するために二価であるが、1種類のエピトープに結合することから単一特異性である。
【0109】
「二重特異性抗体」は、1つがCD40上にあり、別の少なくとも1つがDC上にある、異なる構造の2つの標的に同時に結合することができる抗体である。
【0110】
結合価は、抗体が単一抗原又はエピトープに対して有する結合アーム又は部位の数を示し、すなわち、一価、二価、三価、又は多価を示す。抗体が多価であることは、抗原の結合において複数の相互作用を利用することができ、したがって抗原に対する結合親和性を増加させることができることを意味する。
【0111】
多重特異性の多価抗体は、特異性の異なる2つ以上の結合部位を有する構築物である。例えば、ダイアボディでは、1つの結合部位が1つの抗原と反応し、他方の結合部位が別の抗原と反応する。
【0112】
本明細書で使用する場合、「部分」は、示された標的に結合することができる多重特異性(例えば、二重特異性)抗体の抗体成分を指す。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態の多重特異性抗体を産生するために、本発明の部分は、当該技術分野において周知であるように、Fc領域、例えば、CH3ドメイン(kabatによる)が改変され得る。このような改変は、多重特異性抗体の重鎖を介した正しいアセンブリを確実なものにする。
【0114】
したがって、1つの重鎖のCH3ドメインの元々の境界領域が多重特異性抗体の他の重鎖のCH3ドメインの元々の境界領域と合致するよう、当該1つの重鎖のCH3ドメインを変更する。このとき、アミノ酸残基をよりかさ高い側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えることで、当該1つの重鎖のCH3ドメインの境界領域において、他の重鎖のCH3ドメインの境界領域内の空洞部に配置され得る突出部を生成する。さらに、第2のCH3ドメインの元々の境界領域が、3価の二重特異性抗体内の第1のCH3ドメインの元々の境界領域と合致するよう、アミノ酸残基を、よりかさ高くない側鎖を有するアミノ酸残基で置き換える。こうすることで、第1のCH3ドメインの境界領域における突出部を配置可能な空洞を、第2のCH3ドメインの境界領域内に生成する(この手法はGenentech社による「ノブ・イントゥ・ホール」アプローチとしても知られる)。
【0115】
特定の実施形態によれば、側鎖がよりかさ高いアミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)からなる群から選択される。
【0116】
特定の実施形態によれば、側鎖がよりかさ高くないアミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)からなる群から選択される。
【0117】
特定の実施形態によれば、CH3ドメイン同士の間にジスルフィド架橋が形成され得るように、各CH3ドメインの対応する位置にアミノ酸としてシステイン(C)を導入することで、いずれのCH3ドメインにも更に変更が加えられる。
【0118】
特定の実施形態では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366Wの変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368A、Y407Vの変異を含む。例えば、Y349C変異を「ノブ鎖」のCH3ドメインに導入し、かつE356C変異又はS354C変異を「ホール鎖」のCH3ドメインに導入することによって、CH3ドメイン間に鎖間ジスルフィド架橋を追加することもできる(Merchant, A. M., et al., Nature Biotech 16 (1998) 677-681)。したがって、別の好ましい実施形態では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C、T366Wの変異を含み、2つのCH3ドメインの他方にE356C、T366S、L368A、Y407Vの変異を含む、又は二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方にY349C、T366Wの変異を含み、2つのCH3ドメインの他方にS354C、T366S、L368A、Y407Vの変異を含む(一方のCH3ドメインにおける追加のY349C変異、及び他方のCH3ドメインにおける追加のE356C又はS354Cの変異は、鎖間ジスルフィド架橋を形成する)(付番は、常にKabatのEUインデックスに従う)。しかし、欧州特許第1870459A1号明細書によって記載されるような他のノブ・イン・ホール技術も、代替的又は追加的に使用され得る。二重特異性抗体の具体例には、R409D;「ノブ鎖」のCH3ドメイン内のK370E変異、及びD399K;「ホール鎖」のCH3ドメイン内のE357K変異がある(付番は、常にKabatのEUインデックスに従う)。
【0119】
別の実施形態では、二重特異性抗体は、「ノブ鎖」のCH3ドメイン内のT366W変異、及び「ホール鎖」のCH3ドメイン内のT366S、L368A、Y407V変異、更にR409D;「ノブ鎖」のCH3ドメイン内のK370E変異とD399K;及び「ホール鎖」のCH3ドメイン内のE357K変異を含む。
【0120】
別の実施形態では、二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインのうちの一方におけるY349C、T366Wの変異、及び2つのCH3ドメインの他方におけるS354C、T366S、L368A、Y407Vの変異を含む、又は二重特異性抗体は、2つのCH3ドメインの一方におけるY349C、T366Wの変異、及び2つのCH3ドメインの他方におけるS354C、T366S、L368A、Y407Vの変異を含み、加えてR409Dを含む。さらに「ノブ鎖」のCH3ドメイン内のK370E変異及びD399K、及び「ホール鎖」のCH3ドメイン内のE357K変異を含む。
【0121】
特定の実施形態によれば、第1のmAb(例えば、抗DC)ではY349C/T366S/L368A/Y407Vの変異が導入され、第2のmAb(例えば、抗CD40)ではS354C/T366Wが導入される(Merchant et al., 1998、Ridgway et al., 1996)。
【0122】
代替的に又は追加的に、正しい重鎖-軽鎖対の形成のために、部分のうちの少なくとも1つをCrossMab形式(CH1-CLスワッピング)で発現させることができる。
【0123】
CrossMab技術の基礎は、二重特異性IgG抗体の1つのアーム中の抗体ドメインをクロスオーバーさせるというものであり、一方で重鎖の正しいヘテロ二量体形成は、上記のノブ・イントゥ・ホール技術又は電荷相互作用により達成され得る。この形式は、Fab断片内の異なるドメインを交換することによって達成することができる。Fab断片内のFabドメイン(CrossMabFab形式で)、又は可変VH-VLドメイン(CrossMabVH-VL形式)、又は定常CH1-CLドメイン(CrossMabCH1-CL形式)のいずれかを、この目的のために交換することができる。実際、CrossMabCH1-CL形式では、元の軽鎖及び新規VL-CH1軽鎖のそれぞれは、元の重鎖及びVH-CL含有重鎖のそれぞれとの望ましくない相互作用をもたらさず、理論上の副産物は形成され得ない。対照的に、CrossMabFab形式の場合、非機能性の一価抗体(MoAb)、並びに非機能性のFab断片を形成し得る。これらの副産物は、クロマトグラフィー技術によって除去することができる。CrossMabVH-VL形式の場合、VL-CH1を含む重鎖と、元の未改変のVL-CL軽鎖との間で、VL-CH1/VL-CLドメインの会合(ベンス・ジョーンズタンパクにおいて知られている)を有する望ましくない副産物が生じ得る。野生型抗体のフレームワーク中に存在する保存されている電荷対に基づき、反発する電荷対を野生型の非交差Fab断片の定常CH1ドメイン及びCLドメインに導入することで、CrossMabVH-VL+/-形式でのベンス・ジョーンズ様副産物の形成を克服することができる。CrossMab技術に関する詳細は、Klein et al. Methods 154, 1 February 2019, Pages 21-31cに見出すことができる。
【0124】
あるいは、本明細書に記載の多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体は、当該技術分野において既知の方法を使用して、複数の部分を結合することによって調製することができる。例えば、多重特異性抗体の各部分を別々に作製し、次いで互いに結合させることができる。様々なカップリング剤又は架橋剤を共有結合による結合のために使用することができる。架橋剤の例としては、プロテインA、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が挙げられる(例えば、Karpovsky et al. (1984) J. Exp. Med. 160:1686; Liu, M A et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 82:8648を参照)。他の方法としては、Paulus (1985) Behring Ins. Mitt. No. 78, 118-132、Brennan et al. (1985) Science 229:81-83)、及びGlennie et al. (1987) J. Immunol. 139: 2367-2375)に記載されるものが挙げられる。好ましい架橋剤は、SATA及びスルホ-SMCCであり、いずれもPierce Chemical Co.(イリノイ州、ロックフォード)から入手可能である。
【0125】
代替的に又は追加的に、多重特異性抗体の各部分の架橋は、2つの重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合を介して行うことができる。特定の実施形態では、ヒンジ領域は、架橋前に奇数個のスルフヒドリル基、好ましくは1個のスルフヒドリル基を含有するように改変される。
【0126】
特定の実施形態によれば、第3の部分は、FcγRIIb受容体に対する特異性を増強する。
【0127】
「Fc受容体」又は「FcR」は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRは、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び代替的にスプライシングされた形態を含む、FcγRファミリーの受容体を含む。FcγRファミリーは、3つの活性化受容体(マウスではFcγRI、FcγRIII、及びFcγRIV、ヒトではFcγRIA、FcγRIIA、及びFcγRIIIA)、及び1つの抑制性受容体(FcγRIIb、又は同等にRcγRIIB)からなる。ヒトFcγRの様々な特性は、米国特許出願第2017/0253659号明細書(及びその中の表1)に要約されている。
【0128】
生得的なエフェクター細胞型の大部分は1つ以上の活性化FcγR及び抑制性FcγRIIbを共発現する一方で、ナチュラルキラー(NK)細胞は、マウス及びヒトにおいて、1つの活性化Fc受容体(マウスではFcγRIII及びヒトではFcγRIIIA)を選択的に発現するものの、抑制性FcγRIIbは発現しない。ヒトIgG1は、ほとんどのヒトFc受容体に結合し、結合する活性化Fc受容体のタイプに関してマウスIgG2aと同等であると考えられる。
【0129】
ヒトFcγRIIBは、ヒトIgGに対する親和性が低い。上述のように、いくつかの既報の刊行物は、マウスCD40並びにTNFRファミリーの他のメンバーを標的とするアゴニスト抗体の、インビボでの抗腫瘍活性には、抑制性FcγRIIBの結合が絶対的な要件であることを示している。この結合は、隣接する細胞上で発現されたFcγRIIBによって、CD40抗体が高度(high-order)に架橋されることによるものである。この架橋は、細胞表面上のCD40のクラスタリングを増強し、その結果CD40シグナル伝達の増強をもたらす[6][7]。
【0130】
したがって、本発明の実施形態によれば、多重特異性抗体は、FcyRIIbに対する結合の特異性及び親和性を高めるために、多重特異性抗体の改変Fc領域を含む、第3の部分を含む。
【0131】
改変された(変異型)Fc領域は、N297A、S267E(「SE」)、S267E/L382F(「SELF」)、G237D/P238D/P271G/A330R(「V9」)、又はG237D/P238D/H268D/P271G/A330R(「V11」)(配列番号2)、又は(「V12」)からなる群から選択されるヒトIgG重鎖(配列番号1)中の1つ以上の変異に対応する1つ以上の変異を有する。
【0132】
特定の実施形態によれば、改変されたFcは、V11変異体のものである。以下の実施例のセクションに示すように、インビトロ及びインビボの実験は、多重特異性抗体が、FcγRIIBの結合からDC及びT細胞を効果的に活性化する恩恵を受けることを示した(
図6)。
【0133】
本明細書に記載の別の態様は、本明細書に記載の抗体をコードする核酸分子に関する。当該核酸は、全細胞中に、細胞溶解物中に、又は部分的に精製された、若しくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsClバンディング、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、アガロースゲル電気泳動、及び当該技術分野において周知の他のものを含む、標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば、本質的に分離されたDNAに結合した染色体DNA)、又はタンパク質から精製されたときに、「分離される」又は「実質的に純粋にされる」。F. Ausubel, et al, ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New Yorkを参照されたい。本明細書に記載の核酸は、例えば、DNA又はRNAであってよく、イントロン配列を含有しても又は含有しなくてもよい。ある特定の実施形態では、核酸はcDNA分子である。
【0134】
本明細書に記載の核酸は、標準的な分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマによって発現させる抗体(例えば、以下で更に説明する、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)については、ハイブリドーマによって作製させる抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリンの遺伝子ライブラリ(例えば、ファージディスプレイ技術を使用する)から得られる抗体については、抗体をコードする核酸は、ライブラリから回収することができる。
【0135】
VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断片は、例えば、可変領域の遺伝子を完全長抗体鎖の遺伝子に、Fab断片の遺伝子に、又はscFvの遺伝子に変換する、標準的な組換えDNA技術によって更に改変され得る。これらの操作では、VLをコードするDNA断片又はVHをコードするDNA断片が、抗体の定常領域又はフレキシブルリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作動可能に連結される。この文脈で使用される「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNA断片によってコードされるアミノ酸配列がインフレームを維持するよう、当該2つのDNA断片が連結されること、を意味することを意図している。
【0136】
VH領域をコードする分離DNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(ヒンジ、CHI、CH2、及び/又はCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長の重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域の遺伝子の配列は、当該技術分野において既知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。
【0137】
重鎖定常領域は、定常領域のIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、又はIgDであり、例えば、IgG1領域であり得る。Fab断片の重鎖遺伝子については、VHをコードするDNAを、重鎖CHIの定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することができる。
【0138】
VL領域をコードする分離DNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長の軽鎖遺伝子(並びに、Fab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域の遺伝子の配列は、当該技術分野において既知であり(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242を参照)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパ定常領域又はラムダ定常領域とすることができる。
【0139】
様々な原核細胞又は真核細胞を宿主発現系として使用して、本発明のいくつかの実施形態の抗体を発現させることができる。このような発現系としては、微生物、例えば、コード配列を含む、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNAの発現ベクターで形質転換させた細菌;コード配列を含む、組換え酵母発現ベクターで形質転換させた酵母;コード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)を感染させた、又は、コード配列を含むTiプラスミドなどの組換えプラスミド発現ベクターで形質転換させた、植物細胞系が挙げられるが、これらに限定されない。哺乳動物発現系も、本発明のいくつかの実施形態の抗体を発現するために使用することができる。培養中の発現の条件は、使用する発現系によって異なる。
【0140】
培養物からの抗体の回収は、適切な時間にわたり培養した後で行われる。「組換え抗体を回収する」という語句は、抗体を含有する培養培地を全て収集することを指し、分離又は精製に関する追加のステップを意味する必要はない。上記に規定にもかかわらず、本発明のいくつかの実施形態の抗体は、アフィニティクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、濾過、電気泳動、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、コンカナバリンAクロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、及び示差可溶化(differential solubilization)などの、限定されない様々な標準的なタンパク質精製技術を使用して精製することができる。
【0141】
本明細書に記載の抗体、抗体組成物、及び方法は、例えば、CD40シグナル伝達を刺激することによる免疫応答の増強を伴い、インビトロ及びインビボでの数多くの有用性を有する。好ましい実施形態では、本明細書に記載の抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。例えば、本明細書に記載の多重特異性抗体は、様々な疾患において免疫を増強するために、培養細胞に投与することができ、インビトロ若しくはエクスビボで投与することができ、又はヒト対象に、例えばインビボで投与することができる。
【0142】
したがって本明細書では、対象における免疫応答が増強され、刺激され、又はアップレギュレートされるよう、本明細書に記載される多重特異性抗体を対象に投与することを含む、対象において免疫応答を修正する方法が提供される。
【0143】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、障害、例えば、がん、慢性ウイルス感染症に罹患している、任意の年齢のヒトなどの哺乳動物を含む。特定の実施形態によれば、この用語は、障害を発症するリスクがある個体を包含する。
【0144】
特定の実施形態によれば、対象としては、免疫応答の増強が望ましいヒト患者が挙げられる。本方法は、免疫応答(例えば、T細胞により仲介される免疫応答)を増強することによって治療され得る障害を有するヒト患者の治療に特に好適である。特定の実施形態では、本方法は、がんの治療に特に好適である。免疫の抗原特異的増強を達成するために、本明細書に記載の多重特異性抗体は、目的の抗原と共に投与することができ、又は抗原は、治療される対象(例えば、担がん対象又はウイルスを保有している対象)に既に存在する場合もある。抗CD40抗体が別の薬剤と一緒に投与される場合、これらは別々に又は同時に投与することができる。
【0145】
対象における免疫応答が増強されるよう本明細書に記載の多重特性抗体を対象に投与することを含む、対象における免疫応答(例えば、T細胞により仲介される抗腫瘍免疫)を増強する方法が、更に包含される。好ましい実施形態では、対象は担がん対象であり、腫瘍に対する免疫応答が増強される。腫瘍は、固形腫瘍又は液状腫瘍(liquid tumor)、例えば、血液悪性腫瘍であり得る。ある特定の実施形態では、腫瘍は免疫原性腫瘍である。ある特定の実施形態では、腫瘍は非免疫原性である。ある特定の実施形態では、腫瘍はPD-L1陽性である。ある特定の実施形態では、腫瘍はPD-L1陰性である。対象はまた、ウイルスを保有している対象であってもよく、ウイルスに対する免疫応答が増強される。
【0146】
対象における腫瘍の増殖を阻害するために、本明細書に記載の多重特異性抗体を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法が更に提供される。また、対象における慢性ウイルス感染症を治療するために、本明細書に記載の多重特異性抗体を対象に投与することを含む、対象における慢性ウイルス感染症を治療する方法が提供される。
【0147】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載の多重特異性抗体は、補助療法として対象に与えられる。本明細書に記載の多重特異性抗体を用いてがんを有する対象を治療することは、現在の標準治療と比較して長期の持続的応答、少なくとも1年、2年、3年、4年、5年、又は10年以上の長期の生存期間、少なくとも1年、2年、3年、4年、5年、又は10年以上の無再発生存期間をもたらし得る。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の多重特異性抗体による、がんを有する対象の治療は、例えば、1年、2年、3年、4年、5年、又は10年以上がんの再発を予防し、又はがんの再発を遅延させる。抗CD40治療は、第一選択療法又は第二選択療法として使用することができる。
【0148】
対象が治療され、例えば、がん性腫瘍の増殖が阻害、若しくは低減され、及び/又は腫瘍が退縮するよう、本明細書に記載の多重特異性抗体を対象に投与することを含む、がんを有する対象を治療する方法が本願によって提供される。本明細書に記載の多重特異性抗体は、がん性腫瘍の増殖を阻害するために単独で使用することができる。あるいは、本明細書に記載の多重特異性抗体は、以下に記載されるように、別の薬剤、例えば、他の免疫原性薬剤、標準的がん治療、又は他の抗体と併せて使用することができる。
【0149】
したがって、治療有効量の本明細書に記載の多重特異性抗体を対象に投与することを含む、がんを治療する方法、例えば、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害することによってがんを治療する方法、が本願によって提供される。
【0150】
本発明の抗体を使用して増殖を阻害することができるがんとしては、典型的には、免疫療法に応答するがんが挙げられる。治療するためのがんの非限定的な例としては、扁平上皮がん腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)、非NSCLC、グリオーマ、胃腸がん、腎がん(例えば、明細胞がん)、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(例えば、腎細胞がん(RCC))、前立腺がん(例えば、ホルモン不応性前立腺がん)、甲状腺がん、神経芽腫、膵臓がん、膠芽腫(多形膠芽腫)、子宮頸がん、胃がん(stomach cancer)、膀胱がん、肝細胞がん、乳がん、結腸がん、及び頭頚部がん(又はがん腫)、胃がん(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、小児肉腫、鼻腔壊死性病変、黒色腫(例えば、皮膚又はがん内悪性黒色腫などの転移性悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門管がん、精巣がん、卵管がん、子宮内膜のがん腫、子宮頸部がん、膣がん、外陰がん、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児期固形腫瘍、尿管のがん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)新生物、中枢神経系(CNS)原発悪性リンパ腫、腫瘍血管新生、脊椎腫瘍、脳幹部グリオーマ、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮がん、T細胞リンパ腫、アスベストによって誘発されるものを含む環境誘発がん、ウイルス関連のがん(例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)関連腫瘍)、並びに2つの主要な血液細胞系統、すなわち骨髄細胞系(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージ及びマスト細胞を産生する)又はリンパ細胞系(B、T、NK及び結晶細胞を産生する)のいずれかに由来する血液悪性腫瘍、例えば、全てのタイプの白血病、リンパ腫及び骨髄腫、例えば、急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)、未分化型AML(MO)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3若しくはM3バリアント[M3V])、骨髄単球性白血病(M4若しくは好酸球増加症を伴うM4バリアント[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、孤立性顆粒球肉腫、及び緑色腫などの急性、慢性、リンパ性及び/又は骨髄性白血病、ホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えば、Ki 1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽球型T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞性リンパ腫、原発性縦隔B細胞型リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、組織球性リンパ芽球性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系の造血器腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大B細胞型リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTLC)(菌状息肉腫又はセザリー症候群とも呼ばれる)、及びワルデンストレームマクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫などのリンパ球、IgG骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無症候性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫、及び多発性骨髄腫などの骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞リンパ腫、骨髄細胞系の造血器腫瘍、線維肉腫及び横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍、精上皮腫、悪性奇形腫、星細胞腫、神経鞘腫を含む中枢神経並びに末梢神経の腫瘍、及び骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍、並びに黒色腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、精上皮腫、甲状腺濾胞がん、及び悪性奇形腫種を含む他の腫瘍、リンパ系の造血器腫瘍、例えば、T細胞及びB細胞腫瘍(限定されないが、小細胞型及び脳状細胞型を含むT細胞性前リンパ球性白血病(T-PLL)、好ましくはT細胞型の大顆粒リンパ球性白血病(LGL)、a/d T-NHL肝脾リンパ球、末梢性/成熟T細胞リンパ腫(多形性及び免疫芽球性サブタイプ)、血管中心性(鼻)T細胞リンパ腫などのT細胞障害が含まれる)、頭頚部のがん、腎がん、直腸がん、甲状腺がん、急性骨髄性リンパ腫、並びにこれらのがんの任意の組み合わせが挙げられる。本明細書に記載の方法はまた、転移性がん、難治性がん(例えば、以前の免疫療法、例えば、CTLA-4抗体又はPD-1抗体の遮断を伴う免疫療法に対して難治性のがん)、及び再発性がんの治療に使用され得る。
【0151】
特定の実施形態によれば、がんは、膀胱がん、乳がん、子宮/子宮頸がん、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、食道がん、胃腸がん、膵臓がん、大腸がん、結腸がん、腎がん、頭頸部がん、肺がん、胃がん、胚細胞がん、骨がん、肝臓がん、甲状腺がん、皮膚がん、中枢神経系腫瘍、リンパ腫、白血病、骨髄腫、肉腫、及びウイルス関連のがんからなる群から選択される。
【0152】
本明細書に記載の多重特異性抗体は、単剤療法として、又は唯一の免疫刺激療法として投与することができ、又は、がん性細胞、精製腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチド、及び炭水化物分子を含む)、細胞、及び免疫を刺激するサイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞などの、がんワクチン戦略における免疫原性製剤と組み合わせることができる(He et al. (2004) J. Immunol. 173:4919-28)。使用され得る腫瘍ワクチンの非限定的な例としては、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1及び/又はチロシナーゼのペプチドなどのメラノーマ抗原のペプチド、又はサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞が挙げられる。腫瘍に対するワクチン接種のための多くの実験戦略が考案されている(Rosenberg, S., 2000, Development of Cancer Vaccines, ASCO Educational Book Spring: 60-62、Logothetis, C., 2000, ASCO Educational Book Spring: 300-302、Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring: 414-428、Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring: 730-738を参照、さらにDeVita et al. (eds.), 1997, Cancer: Principles and Practice of Oncology, Fifth Edition内のRestifo, N. and Sznol, M., Cancer Vaccines, Ch. 61, pp. 3023-3043を参照)。これらの戦略のうちの1つにおいて、ワクチンは、自己又は同種異系の腫瘍細胞を使用して調製される。これらの細胞ワクチンは、腫瘍細胞がGM-CSFを発現するように形質導入されるときに最も効果的であることが示されている。GM-CSFは、腫瘍ワクチン接種のための抗原提示の強力な活性化因子であることが示されている。Dranoff et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 90: 3539-43。
【0153】
他の腫瘍ワクチンとしては、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBV及びHCV)、並びにカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)などのヒトのがんに関与するウイルス由来のタンパク質を挙げることができる。CD40活性化と併せて使用することができる腫瘍特異的抗原の別の形態には、その腫瘍組織自体から単離され精製された熱ショックタンパク質(HSP)がある。これらの熱ショックタンパク質は、腫瘍細胞に由来するタンパク質の断片を含み、これらのHSPは、腫瘍免疫を誘発するための抗原提示細胞への送達において非常に効率的である(Suot & Srivastava (1995) Science 269:1585-1588、Tamura et al. (1997) Science 278:117-120)。
【0154】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答をプライミングするために使用され得る強力な抗原提示細胞である。DCは、エクスビボで産生して、様々なタンパク質抗原及びペプチド抗原、並びに腫瘍細胞抽出物をロード(load)することができる(Nestle et al. (1998) Nature Medicine 4: 328-332)。DCはまた、これらの腫瘍抗原を発現する遺伝学的方法によっても形質導入され得る。DCはまた、免疫の目的で腫瘍細胞に直接融合されてもいる(Kugler et al. (2000) Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン接種の方法として、DC免疫をCD40によるアゴニズムと効果的に組み合わせて、より強力な抗腫瘍応答を活性化する(引き出す)ことができる。本明細書に記載の多重特異性抗体はまた、標準的ながん治療(例えば、手術、放射線照射、及び化学療法)と組み合わせることができる。CD40のアゴニスト作用は、化学療法剤レジメンと効果的に組み合わせることができる。これらの例では、投与する化学療法薬の用量を低減することが可能であり得る(Mokyr et al. (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。そのような組み合わせの一例には、黒色腫の治療のためのデカルバジン(decarbazine)と抗huCD40抗体との組み合わせがある。そのような組み合わせの別の例には、黒色腫の治療のためのインターロイキン-2(IL-2)と本明細書に記載の多重特異性抗体との組み合わせがある。CD40アゴニスト及び化学療法の併用の裏付けとなる科学的根拠は、ほとんどの化学療法用化合物の細胞傷害性作用により生じる細胞死は、抗原提示経路において腫瘍抗原のレベルを増加させることになるというものである。細胞死を通して、CD40によるアゴニズムとの相乗効果をもたらし得る他の併用療法は、放射線照射、手術、及びホルモン除去である。これらのプロトコルの各々は、宿主において腫瘍抗原の供給源を作り出す。血管新生阻害剤もまた、CD40アゴニストと組み合わせることができる。血管新生の阻害は、腫瘍抗原を宿主の抗原提示経路に供給し得る、腫瘍細胞死をもたらす。
【0155】
腫瘍は、宿主免疫による監視を多種多様な機構によって回避する。これらの機構の多くは、腫瘍によって発現される免疫抑制タンパク質を不活性化することによって克服され得る。そのようなものとしては、とりわけ、TGF-ベータ(Kehrl et al. (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050)、IL-10(Howard & O'Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)、及びFasリガンド(Hahne et al. (1996) Science 274: 1363-1365)が挙げられる。これらのタンパク質の各々に対する抗体を、抗huCD40抗体と組み合わせて使用して、免疫抑制剤の効果を中和させ、宿主による腫瘍免疫応答を支援することができる。
【0156】
本明細書に記載の多重特異性抗体は、T細胞のヘルパー活性を効果的に代替することができる。Ridge et al. (1998) Nature 393: 474-478。CTLA-4(例えば、米国特許第5,811,097号明細書)、OX-40(Weinberg et al. (2000) Immunol 164: 2160-2169)、CD137/4-1BB(Melero et al. (1997) Nature Medicine 3: 682-685 (1997)、及びICOS(Hutloff et al. (1999) Nature 397: 262-266)などのT細胞の共刺激分子に対する活性化抗体もまた、T細胞の活性化レベルを向上させ得る。本明細書に記載の多重特異性抗体と併せてPD1又はPD-L1の阻害剤を使用してもよい。
【0157】
腫瘍抗原に特異的なT細胞を刺激することを目的とした、抗原特異的T細胞のエクスビボでの活性化及び増殖、並びに、これらの養子細胞のレシピエントへの移入を伴ういくつかの実験的治療プロトコルも存在する(Greenberg & Riddell (1999) Science 285: 546-51)。これらの方法はまた、CMVなどの感染体に対するT細胞の応答を活性化するために使用することもできる。本明細書に記載の多重特異性抗体の存在下、エクスビボでの活性化は、養子移入されるT細胞の頻度及び活性を増加させることができる。
【0158】
別の態様では、本明細書に記載の本発明は、本明細書に記載の多重特異性抗体を対象に投与して、対象の感染性疾患を治療することを含む、対象において感染性疾患を治療する方法を提供する。
【0159】
上記の腫瘍への適用と同様に、抗体の仲介するCD40アゴニスト作用は、単独で用いることができ、又は、ワクチンと組み合わせて、病原体、毒素、及び自己抗原に対する免疫応答を増強するためのアジュバントとして用いることができる。この治療アプローチが特に有用であり得る病原体の例としては、現在有効なワクチンが存在しない病原体、又は従来のワクチンでは十分な効果が得られない病原体が含まれる。このような病原体としては、HIV、肝炎(A型、B型、及びC型)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア症、マラリア、リーシュマニア症、黄色ブドウ球菌、緑膿菌が挙げられるが、これらに限定されない。CD40アゴニスト作用は、感染症の過程にわたり改変抗原を提示するHIVなどの病原体により確立された感染に対して、特に有用である。これらの新規エピトープは、抗ヒトCD40抗体の投与の時点で異物として認識され、したがって、強いT細胞応答を誘発する。
【0160】
本明細書に記載の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスのいくつかの例としては、HIV、肝炎(A型、B型、又はC型)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-II、及びCMV、エプスタイン-バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コロナウイルス、呼吸器多核体ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デング熱ウイルス、パピローマウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルス及びアルボウイルス脳炎ウイルスが挙げられる。
【0161】
本明細書に記載される方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性細菌のいくつかの例としては、クラミジア、リケッチア菌、マイコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、髄膜炎菌及び淋菌、クレブシエラ菌、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、バチルス、コレラ、破傷風菌、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト菌、レプトスピラ菌、及びライム病原因菌が挙げられる。
【0162】
本明細書に記載の方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性真菌のいくつかの例としては、Candida(albicans、krusei、glabrata、tropicalisなど)、Cryptococcus neoformans、Aspergillus(fumigatus、nigerなど)、ケカビ目(mucor属、absidia属、rhizopus属)、Sporothrix schenkii、Blastomyces dermatitidis、Paracoccidioides brasiliensis、Coccidioides immitis及びHistoplasma capsulatumが挙げられる。
【0163】
本明細書に記載される方法によって治療可能な感染症を引き起こす病原性寄生虫のいくつかの例としては、Entamoeba histolytica、Balantidium coli、Naegleriafowleri、Acanthamoeba sp.、Giardia Zambia、Cryptosporidium sp.、Pneumocystis carinii、Plasmodium vivax、Babesia microti、Trypanosoma brucei、Trypanosoma cruzi、Leishmania donovani、Toxoplasma gondii、Nippostrongylus brasiliensisが挙げられる。
【0164】
上記の方法の全てにおいて、CD40のアゴニスト作用は、サイトカイン療法(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)、又は腫瘍抗原の提示を増強させる二重特異性抗体療法などの、他の形態の免疫療法と組み合わせることができる。例えば、Holliger (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 90:6444-6448、Poljak (1994) Structure 2:1121-1123を参照。
【0165】
本明細書に記載の多重特異性抗体は、本明細書に記載の多重特異性抗体を目的の抗原(例えば、ワクチン)と同時投与することによって、抗原特異的免疫応答を増強するために使用することができる。したがって、(i)抗原と、(ii)本明細書に記載の多重特異性抗体とを対象に投与して、対象において抗原に対する免疫応答を増強させることを含む、対象において抗原に対する免疫応答を増強させる方法が、本願によって提供される。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、又は病原体由来の抗原であり得る。そのような抗原の非限定的な例としては、上述した腫瘍抗原(又は腫瘍ワクチン)、若しくは上記のウイルス、細菌、又は他の病原体からの抗原などの、上記セクションで説明されたものが挙げられる。
【0166】
前述のように、本明細書に記載の多重特異性抗体は、1種以上の治療薬、例えば、細胞傷害剤、放射性毒性剤と同時投与することができる。抗体は、(免疫複合体として)薬剤に連結することができ、又は薬剤とは別個に投与することができる。後者の場合(別個の投与)、抗体は、薬剤の前、後、若しくは同時に投与され得るか、又は他の既知の療法、例えば、抗がん療法(例えば放射線照射)と併用投与され得る。このような治療剤としては、とりわけ、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチンブレオマイシン硫酸塩、カルムスチン、クロラムブシル、ダカルバジン、及びシクロホスファミドヒドロキシ尿素などの抗新生物剤が挙げられ、これら自体は、患者に対して毒性又は準毒性であるレベルでのみ有効である。シスプラチンは、4週間ごとに1回100mg/mLの用量で静脈内投与され、アドリアマイシンは、21日ごとに1回60mg/mL~75mg/mLの用量で静脈内投与される。本明細書に記載の多重特異性抗体と化学療法剤との併用投与では、2種類の抗がん剤が異なる機序で働き、ヒト腫瘍細胞に対する細胞傷害効果をもたらす。このような併用投与は、薬物耐性の獲得、又は腫瘍細胞を抗体が反応しないものにしてしまう腫瘍細胞の抗原性の変化、に起因する問題を解決することができる。
【0167】
多重特異性抗体(複数形で「多重特異性抗体」とも呼ばれる)は、そのものが、又は適切な担体若しくは添加物と混合された医薬組成物として、対象に提供され得る。
【0168】
本明細書で使用する場合、「医薬組成物」は、生理学的に好適な担体及び添加物などの他の化学成分を含む、本明細書に記載の有効成分のうちの1種以上の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0169】
本明細書において「有効成分」という用語は、生物学的効果を担う多重特異性抗体を指す。
【0170】
以下、互換的に使用され得る「生理学的に許容される担体」及び「薬学的に許容される担体」という語句は、生物に著しい刺激をもたらさず、投与する化合物の生物学的活性及び特性を無効にしない担体又は希釈剤を指す。これらの語句にはアジュバントが含まれる。
【0171】
本明細書において「添加物」という用語は、有効成分の投与を更に容易にするために医薬組成物に添加する不活性な物質を指す。限定するものではないが、添加物の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖及び様々なタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油、及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0172】
薬物の処方及び投与のための技術は、参照により本明細書に組み込まれる、“Remington’s Pharmaceutical Sciences,” Mack Publishing Co., Easton, PAの最新版に見出すことができる。
【0173】
好適な投与経路としては、例えば、筋肉内注射、皮下注射及び髄内注射並びに髄腔内注射、直接脳室内注射、心臓内注射、例えば右心室腔又は左心室腔注射、総冠動脈注射、静脈内注射、腹腔内注射、鼻腔内注射、又は眼内注射などの、経口、直腸、経粘膜、特に経鼻、腸、又は非経口での送達を挙げることができる。
【0174】
中枢神経系(CNS)への薬物送達のための従来のアプローチとしては、神経外科的戦略(例えば、脳内注射又は脳室内注入)、BBBの内因性輸送経路のうちの1つを利用しようとする試みでの薬剤の分子操作(例えば、それ自体ではBBBを横断することができない薬剤と組み合わせた、内皮細胞表面分子に対して親和性を有する輸送ペプチドを含むキメラ融合タンパク質の産生)、薬剤の脂質溶解度を増加させるように設計された薬理学的戦略(例えば、脂質又はコレステロール担体への水溶性薬剤の結合)、並びに超浸透破壊によるBBBの完全性の一時的な破壊(マンニトール溶液の頸動脈への注入から得られるか又はアンジオテンシンペプチドなどの生物学的活性剤の使用から)が挙げられる。しかしながら、これらの戦略の各々は、これらの戦略を最適には及ばない送達法にしてしまう、侵襲的な外科処置に伴う固有のリスク、内在する輸送システムに固有の制限によって課せられるサイズ制限、CNSの外側で活性であり得る担体モチーフから構成されるキメラ分子の全身投与に伴う潜在的に望ましくない生物学的副作用、及び脳領域内におけるBBBを損なう恐れがある脳損傷のリスクの可能性などの制限を有している。
【0175】
あるいは、例えば、医薬組成物を患者の組織領域に直接注射することによって、全身的な様式ではなく局所的に医薬組成物を投与することもできる。
【0176】
本発明のいくつかの実施形態の薬学組成物は、当該技術分野において周知のプロセスにより、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、浸出、乳化、カプセル化、封入、又は凍結乾燥のプロセスにより、製造され得る。
【0177】
したがって、本発明のいくつかの実施形態で使用する医薬組成物は、有効成分の製剤への加工を容易にする、薬学的に使用可能である添加物及び助剤を含む、1種以上の生理学的に許容される担体を使用して、従来の方法で処方され得る。適切な処方は選択される投与経路によって異なる。
【0178】
注射の場合、医薬組成物の有効成分は、水溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル液、又は生理的塩類緩衝液などの生理学的に適合する緩衝液として処方され得る。経粘膜投与の場合、浸透させるバリアに適した浸透剤が処方に使用される。そのような浸透剤は、当該技術分野において一般的に既知である。
【0179】
経口投与の場合、医薬組成物は、活性化合物を、当該技術分野において周知の薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に処方することができる。このような担体は、患者による経口摂取のために、医薬組成物を錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液体、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁液などとして処方することを可能にする。経口使用のための医薬調製物は、固体添加物を使用して作製することができ、任意選択で得られた混合物を粉砕し、必要に応じて好適な助剤を添加した後にかかる顆粒混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることができる。好適な添加物は、特に、充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールなどの糖)、セルロース調製物(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースなど)、並びに/又は生理学的に許容されるポリマー(ポリビニルピロリドン(PVP)など)である。所望であれば、架橋ポリビニルピロリドン、アガー、又はアルギン酸、若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加してもよい。
【0180】
糖衣錠のコアには好適なコーティングが施される。この目的のために、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒又は溶媒混合物を任意選択的に含有し得る濃縮糖溶液を使用することもできる。識別のために、又は活性化合物の様々な用量の組み合わせを示すために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加してもよい。
【0181】
経口使用することができる医薬組成物としては、ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチンとグリセロール若しくはソルビトールなどの可塑剤とで作製された軟質密封カプセルが挙げられる。プッシュフィットカプセルは、ラクトースなどの充填剤、デンプンなどの結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意選択的に安定剤と混合した、有効成分を含有し得る。軟質カプセルでは、有効成分は、脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの好適な液体中に溶解又は懸濁されてもよい。更に、安定剤が添加されてもよい。経口投与用の全ての処方は、選択された投与経路に適した投与量にするべきである。
【0182】
バッカル投与の場合、組成物は、従来の様式で処方した錠剤又はトローチ剤の形態をとり得る。
【0183】
経鼻吸入による投与の場合、本発明のいくつかの実施形態による使用のための有効成分は、好適な推進剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ-テトラフルオロエタン又は二酸化炭素を使用して、加圧パック又はネブライザーからエアロゾルスプレー剤(presentation)の形態で便利に送達される。加圧エアロゾルの場合、投与単位は、定量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。ディスペンサーに使用するための、例えば、ゼラチン製のカプセル及びカートリッジは、化合物と、ラクトース、又はデンプンなどの好適な粉末基剤との粉末混合物を含有させて処方することができる。
【0184】
本明細書に記載の医薬組成物は、非経口投与用に、例えば、ボーラス注射又は連続注入による非経口投与用に処方され得る。注射用の処方は、単位剤形、例えば、アンプル、又は任意選択で防腐剤を添加された複数回投与用の容器で提供され得る。組成物は、油性又は水性賦形剤の懸濁液、溶液、若しくはエマルジョンであってもよく、懸濁剤、安定剤及び/又は分散剤などの処方剤(formulatory agents)を含有し得る。
【0185】
非経口投与用の医薬組成物は、水溶性形態の活性調製物の水溶液を含む。更に、有効成分の懸濁液は、適切な油性又は水性の注射懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒又は賦形剤としては、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル、トリグリセリド若しくはリポソームなどの合成脂肪酸エステルが挙げられる。水性注射懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストランなどの、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有し得る。任意選択的に、懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にするために、有効成分の溶解度を高める好適な安定剤又は薬剤を含有し得る。
【0186】
あるいは、有効成分は、使用前に、好適な賦形剤、例えば、無菌のパイロジェンフリーの水性溶液で構成する粉末の形態であり得る。
【0187】
本発明のいくつかの実施形態の医薬組成物はまた、例えば、カカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を使用して、坐剤又は停留浣腸などの直腸用組成物として処方され得る。
【0188】
本発明のいくつかの実施形態に関連して使用するのに好適な医薬組成物としては、意図された目的を達成するのに有効な量で有効成分を含有する組成物を含む。より具体的には、治療有効量は、障害(例えば、がん)の症状を予防、緩和、又は改善するのに有効であるか、又は治療される対象の生存期間を延長するのに有効である、有効成分(多重特異性抗体)の量を意味する。
【0189】
治療有効量の決定は、特に本願によって提供される詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内である。
【0190】
本発明の方法で使用される任意の調製物について、治療有効量又は治療有効用量は、最初にインビトロ及び細胞培養アッセイから推定することができる。例えば、用量は、所望の濃度又は力価を達成するよう動物モデルで処方され得る。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。
【0191】
本明細書に記載の有効成分の毒性及び治療効果は、インビトロ、細胞培養、又は実験動物において、標準的な医学的な手順によって評価することができる。これらのインビトロ及び細胞培養アッセイ並びに動物実験より得られたデータは、ヒトで使用するための投与量範囲を公式化(formulating)する際に使用され得る。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じて様々であり得る。正確な処方、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して各医師によって選択することができる。(例えば、"The Pharmacological Basis of Therapeutics", Ch. 1 p.1内のFingl, et al., 1975を参照)。
【0192】
投与量及び投与間隔は、有効成分の組織中濃度が生物学的効果を誘導又は抑制するのに十分なものになるよう(最小有効濃度、MEC)、個別に調整されてもよい。MECは調製物ごとに異なるが、インビトロデータから推定することができる。MECを達成するために必要な投与量は、個々の特性及び投与経路によって異なる。検出アッセイを使用して、血漿濃度を測定することができる。
【0193】
目標とされる特異性により、単一特異性CD40 Abで使用されるものよりも高用量の多重特異性抗体を使用することができる(
図7の(A)~
図7の(D)を参照)。
【0194】
特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~100mg/kgであり得る。
【0195】
特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~80mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~60mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~50mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~40mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~30mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、0.1mg/kg~10mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、1mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、10mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、20mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、30mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、40mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、50mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、60mg/kg~100mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、70mg/kg~100mg/kgであり得る。
【0196】
特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、1mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、1mg/kg~15mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、1mg/kg~10mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、1mg/kg~5mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、2mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、4mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、6mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、8mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、10mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、12mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、15mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、18mg/kg~20mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、1mg/kg~5mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、2mg/kg~10mg/kgであり得る。特定の実施形態によれば、多重特異性抗体の投与量は、5mg/kg~10mg/kgであり得る。
【0197】
特定の実施形態によれば、多重特異性の用量は、抗CD40単一特異性抗体によって許容されるものよりも少なくとも5倍、10倍、15倍、20倍、又はそれ以上である。
【0198】
治療する状態の重症度及び応答性に応じて、投与は、単回投与又は複数回投与とすることができ、治療の工程は、数日から数週間まで、又は治癒がもたらされるまで、又は疾患状態の減縮が達成されるまで持続される。
【0199】
投与する組成物の量は、当然、治療を受ける対象、苦痛の程度、投与方法、処方した医師の判断などによって異なる。
【0200】
本発明のいくつかの実施形態の組成物は、所望される場合、有効成分を含有する1つ以上の単位剤形を含み得る、FDA承認キットなどのパック又はディスペンサーデバイスで提供されてもよい。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属箔又はプラスチック箔を含み得る。パック又はディスペンサーデバイスには、投与についての説明書が添付されていてもよい。パック又はディスペンサーはまた、医薬品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器と関連のある通知を提供してもよく、この通知は、組成物又はヒト又は獣医学的投与の形態に関する機関による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局によって承認されたラベル、又は製品添付文書であり得る。適合性のある医薬担体で処方された本発明の調製物を含む組成物はまた、上記で更に詳述されるように、調製され、適切な容器中に配置され、指定の状態の治療用にラベルが付される。
【0201】
本教示の多重特異性抗体は、薬物の併用、例えば、抗CTLA4、抗CD40、抗41BB、抗OX40、抗PD1、又は抗PDL1などの免疫チェックポイント調節剤との併用も企図される。特定の実施形態によれば、免疫チェックポイント調節剤は、抗PD1又は抗PDL1である。
【0202】
本出願から特許権の満了までの間に、多くの関連するCD40アゴニスト抗体が開発されることが予想されるが、抗CD40抗体という用語の範囲は、先験的にそのような新しい技術を全て含むことが意図される。
【0203】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0204】
「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びその活用形は、「限定されるものではないが、含む(including but not limited to)」ことを意味する。
【0205】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
【0206】
「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、工程、及び/又は部分を含み得るが、当該追加の成分、工程、及び/又は部分が、特許請求の範囲に記載された組成物、方法、又は構造の基本的及び新規な特徴を大きく変化させない場合に限られることを意味する。
【0207】
本明細書で使用する場合、単数形を表す「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数も対象とする。例えば、「化合物(a compound)」又は「少なくとも1種の化合物」は、複数の化合物を含み、それらの混合物も含み得る。
【0208】
本願全体を通して、本発明の様々な実施形態は、範囲形式にて示され得る。範囲形式での記載は、単に利便性及び簡潔さのためであり、本発明の範囲の柔軟性を欠く制限すると解釈するべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、可能な部分範囲の全部、及びその範囲内の個々の数値を具体的に開示しているとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲のみならず、その範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5及び6も具体的に開示するとみなされるべきである。これは、範囲の大きさに関わらず適用される。
【0209】
本明細書において数値範囲を示す場合は常に、示された範囲内の任意の記載された数(分数又は整数)を含むことを意図する。第1の指示数と第2の指示数と「の間の範囲」という語句と、第1の指示数「から」第2の指示数「までの範囲」という語句とは、本明細書で互換的に使用され、第1の指示数及び第2の指示数と、第1の指示数と第2の指示数との間の分数及び整数の全部とを含むことを意図する。
【0210】
本明細書で使用する場合、「方法」という用語は、所定の課題を達成するための様式、手段、技術及び手順を意味し、化学、薬理学、生物学、生化学及び医学の分野の従事者に既知のもの、又は既知の様式、手段、技術及び手順から従事者が容易に開発できるものを含むが、これらに限定されない。
【0211】
本明細書で使用する場合、「治療すること」という用語は、状態の進行を抑制し、実質的に阻害し、遅延、又は逆転させ、状態の臨床的若しくは審美的な症状を実質的に改善するか、又は状態の臨床的若しくは審美的な症状の出現を実質的に予防することを含む。
【0212】
特定の配列表を参照する場合、このような参照は、微小な配列の変異を含む、相補配列に実質的に対応する配列をも包含するものと理解されたい。配列の変動は、例えばシーケンシングエラー、クローニングエラー、又は塩基置換、塩基欠失若しくは塩基付加を生じる他の変化の結果であるが、但し、このような変動の頻度は50塩基中に1未満、又は100塩基中に1未満、又は200塩基中に1未満、又は500塩基中に1未満、又は1000塩基中に1未満、又は5,000塩基中に1未満、又は10,000塩基中に1未満である。
【0213】
明確さのために別個の実施形態に関連して記載した本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連して記載した本発明の複数の特徴はまた、別々に、又は任意の好適な部分的な組み合わせ、又は適宜、本発明の他の任意の記載された実施形態に対しても提供され得る。様々な実施形態に関連して記載される特定の特徴は、その要素なしでは実施形態が動作不能でない限り、その実施形態の必須の特徴であるとみなすべきではない。
【0214】
本明細書に上記記載され、特許請求の範囲に特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けが見出される。
【実施例】
【0215】
以下では実施例を参照する。本実施例は、上記の説明と共に本発明のいくつかの実施形態を非限定的な様式で例示するものである。
【0216】
全般的に、本明細書で使用される命名法及び本発明で利用される実験手順には、分子、生化学、微生物学、顕微鏡、及び組換えDNAの技術が含まれる。このような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、“Molecular Cloning: A laboratory Manual” Sambrook et al., (1989)、“Current Protocols in Molecular Biology” Volumes I-III Ausubel, R. M., ed. (1994)、Ausubel et al., “Current Protocols in Molecular Biology”, John Wiley and Sons, Baltimore, Maryland (1989)、Perbal, “A Practical Guide to Molecular Cloning”, John Wiley & Sons, New York (1988)、Watson et al., “Recombinant DNA”, Scientific American Books, New York、Birren et al. (eds) “Genome Analysis: A Laboratory Manual Series”, Vols. 1-4, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York (1998)、米国特許第4,666,828号明細書、同第4,683,202号明細書、同第4,801,531号明細書、同第5,192,659号明細書、及び同第5,272,057号明細書に記載のような方法論、“Cell Biology: A Laboratory Handbook”, Volumes I-III Cellis, J. E., ed. (1994)、“Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique” by Freshney, Wiley-Liss, N. Y. (1994), Third Edition、“Current Protocols in Immunology” Volumes I-III Coligan J. E., ed. (1994)、Stites et al. (eds), “Basic and Clinical Immunology" (8th Edition), Appleton & Lange, Norwalk, CT (1994)、Mishell and Shiigi (eds), “Selected Methods in Cellular Immunology", W. H. Freeman and Co., New York (1980)、を参照されたく、利用可能なイムノアッセイは、特許文献及び科学文献に詳細に記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号明細書、同第3,839,153号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,850,578号明細書、同第3,853,987号明細書、同第3,867,517号明細書、同第3,879,262号明細書、同第3,901,654号明細書、同第3,935,074号明細書、同第3,984,533号明細書、同第3,996,345号明細書、同第4,034,074号明細書、同第4,098,876号明細書、同第4,879,219号明細書、同第5,011,771号明細書、及び同第5,281,521号明細書、“Oligonucleotide Synthesis” Gait, M. J., ed. (1984)、“Nucleic Acid Hybridization” Hames, B. D., and Higgins S. J., eds. (1985)、“Transcription and Translation” Hames, B. D., and Higgins S. J., Eds. (1984)、“Animal Cell Culture” Freshney, R. I., ed. (1986)、“Immobilized Cells and Enzymes” IRL Press, (1986)、“A Practical Guide to Molecular Cloning” Perbal, B., (1984)、並びに“Methods in Enzymology” Vol. 1-317, Academic Press、“PCR Protocols: A Guide To Methods And Applications”, Academic Press, San Diego, CA (1990)、Marshak et al., “Strategies for Protein Purification and Characterization - A Laboratory Course Manual” CSHL Press (1996)を参照されたい。これらの全ては、参照により、本明細書中に全て記載されているかのように援用される。他の全般的な参考文献は、本明細書全体にわたって提供されている。これらの文献中の手順は当該技術分野で周知であると考えられるが、読者の便宜のために提供されている。上記文献に含まれる全ての情報は、参照により本明細書に援用される。
【0217】
実施例1
材料及び方法
マウス
ヒトFc受容体(FcγRanull、hFcγRI+、FcγRIIaR131+、FcγRIIb+、FcγRIIIaF158+、及びFcγRIIIb+)並びにヒトCD40を含むヒト化マウスを作製し、既報のように評価した[10][15]。全ての実験で8週齢~10週齢のマウスを使用した。全てのマウスを、Weizmann科学研究所動物施設センターで維持した。
【0218】
抗CD40/DC単一特異性又は二重特異性Ab Fcバリアントの作製
抗ヒトCD40抗体2141は、米国特許第7,338,660号で言及されたクローン21.4.1(ATCC受託番号PTA-3605、ネイティブFc)である。2141の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を合成した(Genewiz社)。マウスIgG1抗ヒト/マウスDEC-205親抗体、クローンHD-109、及びアルメニアンハムスターIgG抗マウスCD11c親抗体、クローンN418産生ハイブリドーマは、それぞれロックフェラー大学及びATCCから提供された。RLM-RACE(ThermoFisher社)を製造元の指示に従って使用して、cDNA末端の増幅法(「アンカード」PCR)によって、ハイブリドーマRNAからHD-109及びN418の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列をシーケンシングした。PCRを以下の外側及び内側オリゴヌクレオチドを使用して実施した:クローンHD-109重鎖については、外側マウスIgG1重鎖5’-TCATTTACCAGGAGAGTGG(配列番号43)及び内側マウスIgG1重鎖5’-AGAGGCTCTTCTCAGTATGGTGGTTGTGC(配列番号44);クローンN418重鎖については、外側ハムスターIgG重鎖5’-GCTCACGTCCACCACCACACATGT(配列番号45)及び内側ハムスターIgG重鎖5’-GAAATAGCCCTTGACCAGGCATCC(配列番号46);クローンHD-109軽鎖については、外側マウスIgG1カッパ軽鎖5’-AACACTCATTCCTGTTGAAG(配列番号47)及び内側マウスIgG1カッパ軽鎖5’-GCTCTTGACAATGGGTGAAGTTGATGTC(配列番号48);クローンN418軽鎖については、外側ハムスターIgG軽鎖5’-CTAACACTCATTCCTGTTCAGGGTCTTG(配列番号49)及び内側ハムスターIgG軽鎖5’-GCTGCTCAGGCTGTAGGTGCTGTC(配列番号50)。親Abの可変領域配列をハイブリドーマからクローニングし、モノヒトIgG1若しくはヒトカッパFc骨格を有する哺乳動物発現ベクターに、又は前述の二重特異性ベクターに挿入した(Merchant et al., 1998、Ridgway et al., 1996、Schaefer et al., 2011)。正確な重鎖-軽鎖対合のために、親mAbのうちの一方をCrossMab形式(CH1-CLスワッピング)で発現させ、他方のmAbについては、野生型のドメイン構造を維持した(Schaefer et al., 2011)。重鎖のヘテロ二量体形成では、第1のmAb(抗DCマーカーab)のCH3ドメイン内に点変異Y349C/T366S/L368A/Y407Vを導入し、第2のmAb(抗CD40)にはS354C/T366Wを導入した(Merchant et al., 1998、Ridgway et al., 1996)。ヒトIgG1のFcドメインバリアント(N297A、G237D/P238D/H268D/P271G/A330R(V11)N297(受容体を動員しない)の作製では、製造元の指示に従ったPCRによる部位特異的変異導入(Agilent Technologies社)をベースに、特異的なプライマーを使用する部位特異的変異導入を実施した。変異導入したプラスミド配列を、直接シーケンシング(ライフサイエンスコアファシリティ、ワイツマン科学研究所)によって確認した。抗体を産生するために、抗体重鎖及び軽鎖の発現ベクターをExpi293細胞(ThermoFisher社)に一過性にトランスフェクトした。上清中の分泌抗体を、protein G Sepharose 4 Fast Flow (GE Healthcare社)によって精製した。精製抗体をPBS中で透析し、濾過滅菌(0.22μm)した。純度をSDS-PAGE及びクマシー染色によって評価し、>90%であると推定した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、Akta Pure25 FPLCシステムでSuperose 6 Increase 10/300GL column(GE Healthcare社)を使用して実施した。
【0219】
CD40、DEC-205及びCD11c結合ELISA
単一特異性並びに二重特異性Abの結合特異性及び親和性を、組換えヒトCD40(SINO BIOLOGICAL社)、ヒトDEC-205(Sino Biological社)及びマウスCD11c(R&D Systems社)を使用したELISAによって決定した。ELISAプレート(Nunc社)を、ヒトCD40若しくはヒトDEC-205(1μg/mL/ウェル)又はマウスCD11c(5μg/mL/ウェル)の組換え細胞外ドメインにより、4℃で一晩コーティングした。一連の全てのステップを室温で行った。洗浄後、2%ウシ血清アルブミンを含む1×PBSでプレートを1時間ブロックし、続いて段階希釈したIgG(2%ウシ血清アルブミンを含む1×PBSで5倍段階希釈)を入れて1時間インキュベートした。二重に結合させるELISA(dual binding ELISA)アッセイのため、プレートにビオチン化ヒトCD40(Acrobiosystems社)を入れて1時間インキュベートした。洗浄後、プレートに、ホースラディッシュペルオキシダーゼ標識した抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch社)又はホースラディッシュペルオキシダーゼ標識したストレプトアビジン(Biolegend社)を入れて1時間インキュベートした。1成分基質溶液(TMB)を使用して検出を行い、0.18Mの硫酸を添加して反応を停止させた。SpectraMax Plus分光光度計(Molecular Devices社)を使用して、450nmでの吸光度を直ちに記録し、陰性対照試料のバックグラウンド吸光度を差し引いた。
【0220】
フローサイトメトリー
単個細胞の懸濁液を上記のように調製した。表面染色のため、100μLのPBS中、0.2~1×106個の細胞濃度でU底96ウェルプレート(ThermoFisher社)に細胞を播種した。細胞を最初にLIVE/DEAD(商標)Fixable blue dead cell stain(ThermoFisher社)で染色し、続いてPBSで2回洗浄し、ヒト又はマウスTruStain Fc block(BioLegened社)を添加した25μLのFACS緩衝液中に再懸濁し、室温で15分間インキュベートした。氷上、FACS緩衝液中で、表面抗原を30分間染色した。次いで、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、150μLのFACS緩衝液に再懸濁し、フローサイトメトリーによって分析した。細胞内IL-6染色の場合、True-Nuclear(商標)transcription factor buffer Set Kit(BioLegened社)及び抗IL-6(MP5-20F3)(BioLegened社)を使用して、製造業者の指示に従って追加の染色ステップを実施した。全ての試料をCytoFLEX LX(Beckman Coulter社)で分析した。特に明記しない限り、細胞集団は、以下のマーカー(BioLegened社)によって区別した。DC:CD45+(30F11)、CD11c+(N418)、MHCII+(M5/11415.2)、F4/80-(BM8)。マクロファージ:CD45+、CD11b+(M1/70)、MHCII+、F4/80+、Ly6C-(HK1.4)、Ly6G-(1A8)。単球:CD45+、CD11b+、Ly6C+、F4/80-、CD11c-。B細胞:CD45+、CD19+(1D3)。cDC1:CD45+、MHCII+、CD11c+、XCR1+(ZET)、CD19-、CD64-(10.1)、F4/80-、SIRPα-(P84)。cDC2:CD45+、MHCII+、CD11c+、SIRPα+、CD19-、CD64-、F4/80-、XCR1-。以下の表面マーカーを使用して、肝臓CDC1、CDC2、クッパー細胞、及び非クッパー細胞マクロファージを、既報(Sierro et al., 2017)のようにゲーティングした。CD45、MHCII、CD11b、CD11c、CD64(X54-5/7.1)、F4/80、Ly6C、Tim4(RMT4-54)、CX3CR1(SA011F11)。CD40、CD86、CD80及びDEC-205発現については、以下のクローンを使用した:CD40(3/23)、CD86(GL-1)、CD80(16-10A1)及びDEC-205(NLDC-145)。
【0221】
DC優先結合アッセイ
ヒト化CD40/FcγRマウスから脾臓を摘出し、上記のように単個細胞懸濁液を調製した。表面CD19又はCD11bマーカーを使用して、CD40 mAb又はCD40/CD11c bsAbにより脾細胞を染色した。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリーによる分析の前に、氷上でFACS緩衝液中のPE結合抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch社)で染色した。
【0222】
ヒトDC活性化アッセイ
健康なドナーの新鮮な全血から、Ficoll分離(GE Healthcare社)によってPBMCを単離した。CD14マイクロビーズのポジティブセレクションを、製造業者の指示(Miltenyi Biotec社)に従って使用して、ヒト単球(CD14
+)を単離した。単球を、6ウェルプレートの各ウェルで、10%の熱不活性化FBS、1%のPen Strep、100ng/mLのGM-CSF(Peprotech社)及び100ng/mLのIL-4(Peprotech社)を添加したRPMI培地で4×10
6個で培養した。培地を2日目及び5日目に補充した。単球由来の未成熟なDCを7日目に回収した。CD54及びCD86のアップレギュレーション分析のため、単球由来の未成熟なDCを、U底96ウェル組織培養プレート(ThermoFisher社)に1×10
5個細胞/ウェルで播種した。
図3A及び
図4の(B)に示す抗体をウェルに添加し、37℃で一晩インキュベートした。細胞を回収し、以下のマーカーについて染色した:CD86(BU63)、CD54(HA58)。試料をフローサイトメトリーによって解析した。
【0223】
OVA特異的なT細胞応答
マウス(
図8の(A)及び
図8の(B)ではWT又はBATF3
-/-、他の全ての図ではhCD40/FcγR)に、5mg/kgのラット抗マウスCD40 mAb(FGK4.5)(BioXCell社)の存在下若しくは非存在下で、又は0.1mg/kg~10mg/kgの抗ヒトCD40単一特異性若しくは二重特異性Abの存在下で、50mg/kgのオボアルブミン(Sigma社)を腹腔内注射し、免疫した。7日後、末梢血を採取し、APC標識した抗CD8α(53-6.7)(BioLegened社)、及びPE標識したOVAペプチドSIINFEKL H-2b三量体(Tet-OVA、MBL International Corporation)で染色し、フローサイトメトリーによって解析した。OVAを発現するB16腫瘍モデル(B16-OVA)における特異的なT細胞応答のため、マウスに2×10
5個のB16-OVA細胞を皮下移植した。腫瘍が確立された(腫瘍の長さ及び幅の合計が、約50mm
3に達した)とき、マウスを5mg/kgのラット抗マウスCD40 mAbで処置し、3日後に処置を繰り返した。7日目に末梢血を採取し、上記のように処理した。
【0224】
血清中のトランスアミナーゼ及びH&E染色
マウス(WT、BATF3-/-、CD11c-DTR又はhCD40/FcγR)に、5mg/kgのラット抗マウスCD40 mAb又は0.1mg/kg~10mg/kgの抗ヒトCD40単一特異性若しくは二重特異性Abを腹腔内注射して処置した。24時間後、末梢血を凝固因子血清チューブ(Becton Dickinson社)に採取した。血液を室温で30分間凝固させ、次いで3500rpmで10分間遠心分離し、民間試験所(イスラエル国、アメリカ医学研究所(AML))により、血清中肝トランスアミナーゼ(ALT/AST)値を測定した。処置したマウスから肝臓を摘出し、4%のパラホルムアルデヒド(PFA)中に一晩置き、次いでパラフィン処理し、ワイツマン科学研究所の組織学及び病理学ユニットでヘマトキシリン・エオシン(H&E)で染色した。Pannoramic scan IIスキャナ(3DHISTECH社)を使用してスライドをスキャンし、画像をCaseViewerソフトウェアで取得した。
【0225】
血清及び細胞内サイトカイン分析
hCD40/FcγRマウスに、0.1mg/kg~10mg/kgの抗ヒトCD40単一特異性若しくは二重特異性Abを腹腔内注射により投与し、3時間後に採血して血清を回収した。製造元の指示(BioLegend社)に従ってELISA MAX(商標)Deluxeセットキットを使用して、IL-6及びTNF-αの値を定量した。細胞内IL-6の検出のため、マウスに、2.5mg/kg又は0.5mg/kgの抗ヒトCD40 mAbを投与し、2.5時間後に、細胞内IL-6の染色のために採血した。試料を、上記のようにフローサイトメトリーによって評価した。
【0226】
腫瘍チャレンジ及び治療
腫瘍細胞株を、37℃及び5%のCO2の加湿インキュベーター内で維持し、25mMのHEPES、1%のL-グルタミン、10%のFBS、1%のPen Strep、1%の非必須アミノ酸、及び1%のピルビン酸を含有する完全RPMI培地中で培養した。MC38(2×106)、B16-F10(4×105)、B16-OVA(2×105)、及びMCA-205(5×105)をマウスの右脇腹に皮下移植し、電子キャリパーで2日~3日ごとに腫瘍体積を盲検的に測定した。体積は、式(L22*L1)/2を使用して報告する。式中、L1は最長直径であり、L2は最短直径である。腫瘍接種の7日~10日後、腫瘍の長さと幅の合計が約50mm3に達したとき、腫瘍サイズ(0日目)をもとにマウスを無作為化し、各実験について説明したように腹腔内注射により処置した。WT及びBATF3-/-を、0日、3日及び6日目に100μgのラット抗マウスCD40 mAb又は対照PBSで処置した。0日、2日、4日、及び6日目に、hCD40/FcγRマウスをCD40 mAb又はCD40/CD11c bsAbによりそれぞれのMTD(それぞれ0.175mg/kg及び2.5mg/kg)で処置し、及び/又は0日、3日、及び6日目に、10mg/kgのPD-1 IgG1-N297A mAb(RMP-1-14クローン)、又は対照PBSで処置した。治療開始後8日~20日間、又はワイツマン科学研究所のIACUCによる腫瘍サイズに関する制限のために未処置の対照群のほとんどを殺処分せざるを得なくなるまで、マウスを監視した。
【0227】
血小板数
K2E EDTAチューブ(Becton Dickinson社)に回収したマウス末梢血に対して血小板分析を行った。Sysmex XP-300(商標)自動血液分析装置(Sysmex社)を使用して試料を分析した。
【0228】
細胞枯渇研究
CD40処置の24時間前に、マクロファージの枯渇のためには体重1g当たり10μLのクロドロン酸リポソーム(又は対照PBSリポソーム)(Liposoma BV社)、又は血小板の枯渇のためには体重1g当たり2μgの抗CD42b Ab(R300)(EMFRET Analytics社)を、横尾静脈を通してマウスに静脈内注射した。CD11c-DTRマウスからCD11c+DCを枯渇させるために、CD40処置の4日前及び2日前に、4μg/kgの用量でジフテリア毒素(DT)(Sigma社)を腹腔内注射した。枯渇効率を、フローサイトメトリー解析又は血小板数のいずれかによって評価した。
【0229】
実施例2
結果
1型の古典的樹状細胞(cDC1)は、腫瘍特異的CD8
+T細胞をプライミングするよう専門化しており、腫瘍におけるそれらの頻度及び機能の状態は、がん患者の生存率の上昇と、チェックポイントの遮断に対する応答とに関連している。CD40経路は、cDC1によるT細胞プライミングにおいて重要な役割を果たし、またcDC1はCD40 mAbの主要な標的であることが示唆されていることから、本発明者らは、cDC1欠損Batf3
-/-マウスを使用して、CD40アゴニストmAbの様々なインビボ活性におけるcDC1の役割を評価した。オボアルブミン(OVA)とCD40 mAbとが共同しての野生型マウスの免疫付与により、OVA抗原に由来するペプチドに特異的なCD8
+T細胞の強力な活性化及び全身的な増殖がもたらされる。Batf3
-/-マウスでは、OVA特異的T細胞の増殖が有意に損なわれることから、CD40アゴニスト mAbのアジュバントの、インビボでのT細胞プライミング活性において、cDC1が主要な役割を有していることが示唆される(
図8の(A))。腫瘍抗原に対する応答をモデル化するために、OVAを発現するB16黒色腫細胞をマウスに接種し、CD40 mAbで処置した(
図8の(B))。処置開始から7日後に検査したとき、本発明者らは、野生型の血液中にはOVA特異的CD8
+T細胞を観察したものの、Batf3
-/-マウスでは観察されなかったことから、CD40 mAb処置による腫瘍特異的CD8
+T細胞のプライミングには、cDC1が必要とされることが示唆される。TMEのDCは、末梢組織中のDCと比較して、及びマクロファージ及び単球などのTMEの他の細胞型(
図8の(I))と比較して、CD40の表面発現をアップレギュレートすることから、腫瘍のcDC1は、CD40 mAb処置のための主要な標的であるとして更に関係付けられる。CD40 mAb処置の総合的な抗腫瘍効果に対するcDC1の影響を評価するために、抗CD40単剤療法によく応答する2種類の腫瘍モデルを利用した。MC38結腸腺がん又はMCA-205線維肉腫を保有するマウスをCD40 mAbで処置し、その後、それらの腫瘍の成長を経時的に追跡した。野生型マウスでは、治療により腫瘍体積の有意な減縮が得られたが、Batf3
-/-マウスではこのような減縮は得られなかった(
図8の(C))。したがって、cDC1は、腫瘍特異的CD8+T細胞によるプライミング及びCD40を標的とする免疫療法の総合的な抗腫瘍効果を仲介するために必要とされる、必須細胞集団であることが特定された。
【0230】
次いで、本発明者らは、CD40 mAb処置に関連する肝毒性におけるDCの役割を評価した。CD40 mAb注射後の肝臓の損傷が、野生型、cDC1欠損Batf3
-/-、並びに更にはCD40 mAb注射前にCD11c
+細胞を枯渇させたマウス(汎DC欠損CD11c-DTRマウス)において、肝トランスアミナーゼの血中濃度の有意な上昇によって検出された(
図8の(D))。したがって、DCは、CD40 mAb療法に関連する肝毒性を助長させる細胞集団ではない。したがって、CD40を発現する他の肝固有の細胞集団が、CD40 mAbにより誘発される肝毒性を仲介する可能性が高い。クッパー細胞及び非クッパー肝臓マクロファージがCD11cを発現しないこと(
図8の(J))、CD11c-DTRマウスでは枯渇していないこと、並びにクッパー細胞はBatf3
-/-マウスで枯渇していないこと(
図8の(L))から、それらはこれらの全てのマウスモデルに存在しており、観察された毒性の原因である可能性がある。したがって、肝臓毒性におけるこれらのマクロファージの役割を更に探査することとした。
【0231】
CD40免疫療法に関連する毒性を仲介するCD40
+細胞集団を特定するために、CD40及び全てのFcγ受容体(hCD40/FcγR)が完全にヒト化されたマウスモデルを利用した。この系統は、臨床現場で報告されたヒトCD40 mAbの用量制限性の毒性及び追加の生物学的活性を再現する。γCD40仲介性肝毒性を評価するために、hCD40/FcγRマウスに、完全ヒト化Fc改変CD40アゴニスト(2141-V11)、すなわちヒトIgG1 Fcが変異してヒトの抑制性FcγR、FcγRIIBに対する結合を選択的に増強することで最適なCD40アゴニスト作用に必要な架橋を提供する、セリクレルマブ(Selicrelumab)の第2世代のFcを最適化させたものを注射した。この分子は現在、前期臨床試験で評価されている(ClinicalTrials.gov識別番号NCT04059588、NCT04547777)。CD40 mAbの単回注射は、既報のように、血清の肝トランスアミナーゼ値の急速な上昇をもたらし、肝細胞凝固性壊死、及び類洞血栓症を特徴とする肝臓損傷を示す(
図8の(E))。CD40 mAb注射の前にクロドロン酸リポソームを使用して、肝臓マクロファージ及びクッパー細胞を含むが、DCは含まない、マクロファージ及び貪食細胞の全身的な枯渇を誘導した場合(
図8の(M))、肝臓毒性は無効化した(
図8の(E)及び
図8の(N))。本発明者らは、肝毒性の仲介におけるマクロファージの中心的な役割は、CD40 mAbの局所的な架橋及びその後の肝類洞における血小板活性化につながるクッパー細胞によるFcγRIIB発現、及び/又は、肝臓マクロファージによるCD40経路の直接活性化、のいずれかによるものであると仮定した。
【0232】
これらの可能性を明確にするために、CD40 mAb注射の前に循環血小板を排除するための抗CD42b mAbを使用した(
図8の(O))。血小板の非存在下では、肝臓毒性の有意な減少が観察された(
図8の(F))。AST及びALTの値はこれらの設定ではいくらか上昇したが、それらの値は、血小板クリアランスをしなかった場合のCD40 mAb注入と比較して有意に低かった。これらのマウスの肝臓の組織病理学的分析では、血小板枯渇マウスにおいて、非常に稀でかつ比較的マイナーな、実質の壊死事象が明らかになった。かかる事象は、有意に低下したAST値及びALT値、並びに非常に少数かつ小さなフィブリン血栓病巣と相関しており、おそらく、抗CD42bの注射後に循環血液中に残存している残留血小板(約2%)に起因するものである(
図8の(O))。これらの病巣は、壊死した実質の近く又はそれに囲まれた小胞に見られることが多く(
図8の(P))、血栓と壊死との間の因果関係が示唆される。したがって本発明者らのデータは、CD40 mAbにより誘発される肝毒性における血小板の重要な役割を裏付け、血小板の頻度と肝臓損傷の度合いとを相関させる。これらの結果は、クッパー細胞及び肝臓マクロファージが、FcγRIIBの発現を介して、抗CD40 mAbによるCD40の血小板架橋を仲介するというモデルを裏付ける。
【0233】
次に、本発明者らは、抗CD40により仲介される血小板減少症におけるマクロファージの役割を評価することとした。CD40 mAb注射の24時間後に、血小板数の大量の減少が観察され、この表現型は、CD40 mAb注射の前にマクロファージが枯渇した場合には無効化した(
図8の(G))。これらの結果は、マクロファージが、抗CD40に関連する血小板減少症を仲介する役割を有していることを示し、血小板及びマクロファージの両方によって誘導される、肝毒性と血小板減少症との間の因果関係を示唆する。
【0234】
最後に、本発明者らは、CRSに寄与する細胞の同一性、診療所で観察された第3のタイプのCD40 mAb誘発性毒性の同一性を評価することとした。CD40 2141-V11 mAbを単回注射すると、セリクレルマブ及び他のCD40 mAbについて報告されたものと同様に、血清インターロイキン-6(IL-6)及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)(
図8の(Q))の急速な上昇がもたらされた。細胞内IL-6の染色は、CD40 mAb注射後にIL-6の発現を急速にアップレギュレートする細胞として、LNマクロファージの希少集団とともに、血液中の単球、リンパ節(LN)、及び脾臓を特定したことから(
図8の(H)、8の(R))、CD40 mAbにより誘発されるCRSの仲介において、単球は主要な役割を有していることが示唆される。まとめると、これらの実験は、CD40アゴニストに関連する用量制限性の毒性に寄与する主要な細胞集団を特定する。本データは、肝臓毒性及び血小板減少症の仲介におけるマクロファージ及び血小板の主要な役割、並びにIL-6に関連するCRSの仲介における単球の主要な役割を示唆する。
【0235】
抗CD40ヒトAb2141と、DCのマーカーを標的化するAbとを組み合わせることにより、樹状細胞(DC)上のCD40を選択的に標的とする二重特異性抗体(Ab)を作製した。所望のAbをクローン化するために、これらのハイブリドーマクローンから得られたRNAから、Abの可変領域をシーケンシングした。Abの可変ドメインの配列が特定されたら(
図1A)、上記のように、単一特異性並びに二重特異性Abの重鎖及び軽鎖のために予め作製したベクターで、それらを所望のIgG定常領域に対してインフレームでクローニングした。抗CD40(2141)、抗CD11c(N418)、抗DEC-205(HD109)の単一特異性抗体、抗CD40/CD11c及び抗CD40/DEC-205の二重特異性抗体の翻訳された配列を含有するDNA構築物を作製した(
図2)。DNAベクターを組み合わせてHEK293細胞をトランスフェクトし、単一特異性Ab及び二重特異性Abを作製した。これら5通りのAbを産生し、精製した。CD40/CD11c及びCD40/DEC-205 bsAbを形成するために必要な正しいヘテロ二量体組み合わせの形成を、SDS-PAGE及び分析サイズ排除クロマトグラムによって検証した(
図3)。これらのbsAbのCD40及びCD11c/DEC205の両方への同時の結合を検証し、並びにDCに対する、DEC-205/CD11cについて陰性の他の細胞型と比較しての優先的結合を検証した(
図4)。次に、本発明者らは、インビトロでのこれらのbsAbのアゴニスト活性及びヒトDCの活性化(
図5)、並びにインビボでのマウスT細胞(
図7)を評価した。WT IgG1、IgG1-V11(FcγRIIBに対する結合が選択的に増強)、又はIgG1-N297A(FcγRに結合しない脱グリコシル化Fc)を含むいくつかのFcスキャフォールドを発現させて、各bsAbの活性を比較することによって、bsAb活性のためのFcγRIIBの要件を決定した。インビトロ及びインビボでの実験により、DC及びT細胞を効果的に活性化するためには、これらのbsAbがFcγRIIBの会合を必要とすることが示された(
図6A~
図6B)。具体的には、野生型IgG1は、DCの穏やかな活性化を仲介し、IgG1-V11と比較して強度が有意に低下した(
図6A)。同様に、hCD40/FcγRマウスにおいてCD40/CD11c-V11及びCD40/DEC-205-V11によって誘導されるインビボでのT細胞活性化は、それぞれ、これらのbsAbのIgG1又はN297AのFcサイレントバージョンによって有意に低減又は完全に無効化された(
図6B)。総じて、本結果は、CD40/DC bsAbの活性がFcに依存するものであることを示唆し、増強されたFcγRIIB結合を有し、Fcを操作されたbsAbによって、活性が増加されることを実証している。したがって、hIgG1-V11を、CD40/DC bsAbのための最良のIgGスキャフォールドとして選択し、このFcバリアントを使用する、Fc改変されたCD40/DC bsAsのインビボ特性を更に評価した。最後に、これらのbsAbは、単一特異性2141 CD40 Abの毒性プロファイルと比較して改善された毒性プロファイルを有しているため、最適な抗腫瘍活性に必要な高用量で使用できることが示された。上記の有効性実験には様々な用量のbsAbを使用した。活性をもたらす用量でbsAbを投与し、肝毒性の誘導について評価することで、それらの安全性プロファイルを評価した。各bsAbの治療指数を、単量体2141-V11親Abの治療指数と比較した。本発明者らは、最適なCD40/DC bsAbの最大安全用量を決定し、この安全な用量の治療有効性を、単一特異性親2141-V11の所定のMTDと比較した(
図7の(A)~
図7の(D))。この研究から、2141の、DCを標的とするbsAbの形式が、少なくとも肝毒性の問題という点で、治療濃度域を拡大可能であると結論付けることができる。
【0236】
本発明者らは、ヒトFcγRに対して異なる結合特性を示す3種類の異なるFcスキャフォールド、野生型hIgG1、hIgG1-N297A(FcγRに結合しない脱グリコシル化Fc)、及びhIgG1-V11(抑制性hFcγRIIBに対する結合を増強するFc点変異)に基づいて、各bsAbのバリアントを作製した(
図9の(A)~
図9の(B))。
【0237】
非毒性用量で投与されたときに、CD40/CD11c bsAbにより仲介される治療有効性が、CD40 mAbと比較して向上され得るかどうかを決定するために、本発明者らは、それらのMTDをそれらの肝毒性の程度に基づいて評価した。かかる評価により、CD40 mAb及びCD40/CD11c bsAbに関して、肝臓壊死及び血栓の兆候を伴わず(
図10の(A))、血清ALT/ASTの標準的な恒常値(homeostatic values)を超えた上昇を引き起こさない最大用量(
図7の(B))として、それぞれ0.175mg/kg及び2.5mg/kgを特定した。その次のより高い試験用量では、ALT/AS値の上昇から明らかであるように、いずれの抗体も有意な毒性を誘発し、肝臓組織からは、処置マウスにおける広範な肝細胞壊死及びフィブリン血栓が明らかになった。本発明者らは、これらのMTDで血清IL-6及びTNF-αの値を評価したところ、CD40/CD11c bsAbの注射後のこれらのCRS関連サイトカインの上昇は、CD40 mAbと比較して有意に低いことを見出した(
図10の(B))。MTDでは、CD40/CD11c bsAbは、CD40親mAb(
図10の(C))と比較して有意に増強されたT細胞活性化を誘発しており、かかる設計のbsAbについて治療指数が増加していることを裏付けている。
【0238】
次に、本発明者らは、T細胞プライミングのこの改善が、治療的な抗腫瘍活性の増加につながるかどうかを決定することとした。この目的のために、腫瘍を保有するマウスを、CD40/CD11c bsAb及びCD40 mAbによりそれぞれのMTDで処置した(
図10の(D))。MC38結腸腫瘍モデル及びB16-F10黒色腫の腫瘍モデルの両方において、CD40/CD11c bsAb処置は、CD40 mAb処置と比較して腫瘍成長の有意に改善された制御をもたらした。治療過程の終了時に、処置群のマウスでは肝臓毒性の兆候が検出されず、これらの治療レジメンの安全性プロファイルが実証された。これらの結果は、CD40/CD11c bsAbが最大安全用量で投与されたときに、CD40 mAbを超える改善された抗腫瘍効果を有することを示唆している。
【0239】
CD40アゴニストmAbは、いくつかの前臨床モデルにおいてPD-1遮断と相乗作用することが示されており[20][21]、この組み合わせは、前期臨床試験において転移性膵管腺(PDAC)患者で臨床活性を示し[22]、更なる臨床的適応症について評価されている。そのため、CD40/DC11c bsAbがそのような相乗的活性を保持するかどうかを評価した。B16黒色腫腫瘍を保有するhFcγR/CD40マウスを、PD-1 mAb、CD40/CD11c bsAb又はそれらの組み合わせのいずれかで処置した(
図10の(E))。併用療法では、それぞれの単剤療法と比較して増加した抗腫瘍活性が誘導されたことから、治療効果を高めるためにCD40/DC bsAbと抗PD1/L1とを組み合わせることの有望性が裏付けられた。
【0240】
本発明をその具体的な実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替、改変、及び変形が当業者に明らかであることは明白である。したがって、このような代替、改変、及び変形は全て、添付の特許請求の範囲の趣旨及び広い範囲に含まれるものとする。
【0241】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許、又は特許出願が参照により本明細書に援用されることが具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が本明細書に援用される。加えて、本出願における任意の参考文献の引用又は特定は、このような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めるものとして解釈されるべきではない。章の見出しが使用される範囲において、当該見出しは必ずしも限定を加えるものと解釈されるべきではない。更に、本出願の任意の優先権書類は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0242】
参考文献
(他の文献は明細書中で引用されている。)
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【配列表フリーテキスト】
【0243】
配列番号2: ヒトigg1 v11アミノ酸配列
配列番号3: ノブ変異(S354C/T366W)を有するヒトIgG1アミノ酸配列
配列番号4: ホール変異(Y349C/T366S/L368A/Y407V)を有するヒトIgG1アミノ酸配列
配列番号5: 2141(抗CD40)重鎖アミノ酸配列
配列番号6: 2141(抗CD40)軽鎖アミノ酸配列
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配列番号43: 一本鎖DNAオリゴヌクレオチド
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配列番号51: 短い合成ペプチド
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【配列表】
【国際調査報告】