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特表2023-511006伝達されたエネルギーに応じて不可逆的エレクトロポレーションパルスの送達を調整する
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】伝達されたエネルギーに応じて不可逆的エレクトロポレーションパルスの送達を調整する
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022535606
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2020050682
(87)【国際公開番号】W WO2021116775
(87)【国際公開日】2021-06-17
(31)【優先権主張番号】16/710,062
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス・クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK13
4C160KK24
4C160KK38
4C160KK63
4C160KK64
4C160MM33
(57)【要約】
医療装置が、患者の身体内部に挿入されるように構成されており、かつ身体内部の組織と接触するように構成された複数の電極を含むプローブを含む。電気信号発生器が、少なくとも200Vの電圧振幅を有し、20μs未満の双極性パルスの各々の持続時間を有する双極性パルス列を、組織と接触している少なくとも一対の電極間に印加し、それによって少なくとも一対の電極間に組織の不可逆的エレクトロポレーションを引き起こす。1つ以上の電気センサが、パルスの列の間に少なくとも一対の電極間で散逸したエネルギーを感知する。コントローラは、散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、1つ以上の電気センサに応答して、電気信号発生器によって印加されたパルスの列の電気的パラメータ及び時間的パラメータを制御する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆的エレクトロポレーションパルスの送達を調節するための医療装置であって、
患者の身体内部に挿入されるように構成されており、前記身体内部の組織と接触するように構成された複数の電極を備える、プローブと、
少なくとも200Vの電圧振幅を有し、20μs未満の双極性パルスの各々の持続時間を有する双極性パルスの列を、前記組織と接触している少なくとも一対の前記電極間に印加し、それによって前記少なくとも一対の前記電極間に前記組織の不可逆的エレクトロポレーションを引き起こすように結合された、電気信号発生器と、
前記電気信号発生器の出力に結合され、前記パルスの前記列の間に各対の前記電極間で散逸した累積エネルギーを感知するように構成された、1つ以上の電気センサと、
各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、前記1つ以上の電気センサに応答して、前記電気信号発生器によって印加された前記パルスの前記列の電気的パラメータ及び時間的パラメータを制御するように結合された、コントローラと、を備える、医療装置。
【請求項2】
前記コントローラによって制御された前記電気的パラメータは電圧を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記コントローラによって制御された前記電気的パラメータは電流を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項4】
前記コントローラは、各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記電気的パラメータを制御するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項5】
前記コントローラは、各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスのピーク振幅を調整するように構成されている、請求項4に記載の医療装置。
【請求項6】
前記1つ以上の電気センサは、一連の時間間隔で前記少なくとも一対の前記電極間に流れる電圧及び電流を測定するように構成され、前記コントローラは、前記一連の前記時間間隔にわたる前記電圧及び前記電流の積の合計を計算することによって前記累積散逸エネルギーを測定するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項7】
前記コントローラは、各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記時間的パラメータを制御するように構成されている、請求項1に記載の医療装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記累積散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの数を調整するように構成されている、請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記コントローラは、前記累積散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの持続時間を調整するように構成されている、請求項7に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療機器に関し、特に不可逆的エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)処置で注入される総電気エネルギーを監視するための方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
不可逆的エレクトロポレーション(IRE)は、強い電界の短パルスを印加して細胞膜内に永久的、それゆえ致死的なナノ細孔を形成し、それにより細胞恒常性(内部の物理的条件及び化学的条件)を崩壊させる軟組織アブレーション技術である。IRE後の細胞死は、アポトーシス(プログラムされた細胞死)に起因し、全ての他の熱又は放射線ベースのアブレーション技術におけるような壊死(細胞自体の酵素の作用を通じて細胞の破壊をもたらす細胞傷害)に起因しない。IREは普通、正確さ、並びに細胞外マトリックス、血流、及び神経の保全が重要な領域における腫瘍のアブレーションで使用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
下記に記載される本発明の例示的な実施形態は、IRE処置を実施するための改良された方法及びデバイスを提供する。
【0004】
したがって、本発明の例示的な実施形態によれば、患者の身体内部に挿入されるように構成されており、身体内部の組織と接触するように構成された複数の電極を含んだプローブを含む医療装置が提供される。少なくとも200Vの電圧振幅を有し、20μs未満の双極性パルスの各々の持続時間を有する双極性パルスの列を、組織と接触している少なくとも一対の電極間に印加し、それによって少なくとも一対の電極間に組織の不可逆的エレクトロポレーションを引き起こすように電気信号発生器が結合される。1つ又は2つ以上の電気センサが、電気信号発生器の出力に結合され、パルスの列の間に少なくとも一対の電極間で散逸したエネルギーを感知するように構成される。コントローラは、散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、1つ又は2つ以上の電気センサに応答して、電気信号発生器によって印加されたパルスの列の電気的パラメータ及び時間的パラメータを制御するように結合される。
【0005】
例示的な一実施形態では、コントローラによって制御された電気的パラメータは電圧を含む。代替的に又は追加的に、コントローラによって制御された電気的パラメータは電流を含む。
【0006】
いくつかの例示的な実施形態では、コントローラは、各対の電極間の散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、電気的パラメータを制御するように構成される。例示的な一実施形態では、コントローラは、散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、少なくとも一対の電極間に印加されるパルスのピーク振幅を調整するように構成される。
【0007】
典型的には、1つ又は2つ以上の電気センサは、一連の時間間隔で少なくとも一対の電極間に流れる電圧及び電流を測定するように構成され、コントローラは、一連の時間間隔にわたる電圧及び電流の積の合計を計算することによって散逸エネルギーを測定するように構成される。
【0008】
更なる例示的な実施形態では、コントローラは、各対の電極間の散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、時間的パラメータを制御するように構成される。例示的な一実施形態では、コントローラは、散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、少なくとも一対の電極間に印加されるパルスの数を調整するように構成される。代替的に又は追加的に、コントローラは、散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、少なくとも一対の電極間に印加されるパルスの持続時間を調整するように構成される。
【0009】
本発明の例示的な実施形態によれば、患者の身体内の組織をアブレーションするための方法も提供される。本方法は、プローブを身体内に挿入することを含み、プローブは、組織に接触するように構成された複数の電極を含む。少なくとも200Vの電圧振幅を有し、かつ20μs未満の双極性パルスの各々の持続時間を有する双極性パルスの列が、組織と接触している少なくとも一対の電極間に印加され、それによって、少なくとも一対の電極間で組織の不可逆的エレクトロポレーションが引き起こされる。パルスの列の間に少なくとも一対の電極間で散逸したエネルギーが測定され、電気信号発生器によって印加されたパルスの列の電気的パラメータ及び時間的パラメータは、散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、測定されたエネルギーに応答して制御される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
図1】本発明の例示的な実施形態による、IREアブレーション処置で使用されるマルチチャネルIREシステムの概略的な絵図である。
図2】本発明の例示的な実施形態による、双極性IREパルスの概略図である。
図3】本発明の例示的な実施形態による、双極性パルスのバーストの概略図である。
図4A】本発明の例示的な実施形態による、RF信号が組み込まれたIRE信号の概略図である。
図4B】本発明の例示的な実施形態による、RF信号が組み込まれたIRE信号の概略図である。
図5】本発明の例示的な実施形態による、IREモジュール、及びIREモジュールと他のモジュールとの接続を概略的に示すブロック図である。
図6】本説明の例示的な実施形態による、図5のIREモジュール内のパルスルーティング及び計測アセンブリの電気概略図である。
図7】本発明の例示的な実施形態による、図6のパルスルーティング及び計測アセンブリ内の2つの隣接するモジュールの電気概略図である。
図8】本発明の例示的な実施形態による、パルス発生回路、変圧器、及び高電圧電源の電気概略図である。
図9】本発明の例示的な実施形態による、スイッチの電気概略図である。
図10】本発明の例示的実施形態による、IRE処置を制御するための方法を概略的に例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概論
IREは、主に非熱プロセスであり、組織温度を数ミリ秒間、高くても数度上昇させる。したがって、IREは、組織温度を20~70℃上昇させ、加熱により細胞を破壊するRF(高周波)アブレーションとは異なる。IREは、DC電圧による筋収縮を回避するために、双極性パルス、すなわち、正のパルス及び負のパルスの組み合わせを利用する。パルスは、例えば、カテーテルの2つの双極電極間に印加される。
【0012】
IREパルスが組織内に必要なナノ細孔を生成するためには、パルスの電界強度Eが、組織依存閾値Ethを超えなければならない。したがって、例えば、心臓細胞については閾値が約500V/cmであり、骨については3000V/cmである。閾値電界強度のこの差が、IREが異なる組織に選択的に適用されることを可能にする。必要な電界強度を達成するために、一対の電極に印加される電圧は、標的組織及び電極間の分離の両方に依存する。印加された電圧は最大2000Vに達することがあり、これは、熱RFアブレーションにおける10~200Vの典型的な電圧よりもはるかに高い。
【0013】
双極性IREパルスは、0.5~5μsのパルス幅、及び0.1~5μsの正のパルスと負のパルスとの間の分離を有する、2つの電極間に印加された正パルス及び負パルスを含む。(本明細書において、「正」及び「負」という用語は、2つの電極間の任意選択的に選択された極性を指す。)双極性パルスはパルス列にまとめられ、各列は、1~20μsのパルス間周期を有する、1~100個の双極性パルスを含む。所与の位置でIREアブレーションを実施するために、1~100個のパルス列が、その位置における一対の電極間に、0.3~1000msの連続するパルス列間の間隔をおいて印加される。1つのIREアブレーションで送達されるチャネル(電極対)当たりの総エネルギーは、典型的には60J未満であり、アブレーションは、最大10秒持続し得る。
【0014】
多電極カテーテルがIRE処置で使用される場合、電極の連続する対は、処置の間を通じて循環され得る。10電極カテーテルを例に挙げると、電極対は、隣接する様式(1-2、2-3、...9-10)、又はインターリーブ様式(1-3、2-4、...8-10)で通電され得る。例えば、隣接する対の通電は2段階で行われ、最初に奇数-偶数の電極1-2、3-4、5-6、7-8、及び9-10に通電し、次いで偶数-奇数の電極2-3、4-5、6-7、及び8-9に通電する。
【0015】
IRE処置を開始する前に、医師は、例えば、アブレーションされる組織の体積、組織内の必要な場の強度、カテーテル構成、及び処置の間に送達されるエネルギーに基づいて、処置のパラメータを設定する。
【0016】
処置が開始されると、IREアブレーションパルスは、エレクトロポレーション自体の所望の効果に加えて、組織のインピーダンス及び/又は電極と組織との間の接触インピーダンスにも影響を及ぼし得る。パルスの一定の持続時間及び振幅に対し、これらのインピーダンスのいずれかの変化は、パルスによって送達される電流に影響を与え、したがって、各パルスから組織に伝達されるエネルギーに影響を与える。これは、次に、処置中に組織内で散逸した総エネルギーが、医師によって事前に設定されたエネルギーの量から逸脱することを引き起こす。その結果、IREアブレーションの効果は、予想とは異なり得る。更に、IREアブレーションに対して同じエネルギー設定を有する2つの処置が、実際には、異なる量のエネルギーが組織に伝達されることになり、したがって、これらの種類の処置の再現性に影響を与える可能性がある。具体的には、事前設定されたレベルのエネルギーを超えると、電極の周りの気泡の形成又は組織の炭化などの望ましくない熱効果がもたらされ得る。
【0017】
本明細書に記載される本発明の例示的な実施形態は、電極間のエネルギーの実際の散逸を測定することによって、IRE処置において組織に送達されるエネルギーの量を制御する問題に対処する。この測定に基づいて、カテーテルによって組織に送達されるパルスは、散逸エネルギーの量が事前定義された基準を満たすように制御される。例えば、基準は、散逸エネルギーの量が特定の目標値を満たす(すなわち、組織内の各位置で散逸した累積エネルギーが、±5パーセント又は±10パーセントなどの特定のエラー限界内の目標値に等しい)ことを指定するものであってもよい。代替的に又は追加的に、他の基準が定義されてもよい。
【0018】
これらの目的のために、本明細書に記載される例示的な実施形態は、電気信号発生器とコントローラとを備える医療装置を提供する。本医療装置はプローブを更に備え、プローブは、患者の身体に挿入されるものであり、かつ複数の電極を備え、電極は、体内の組織に接触し、IRE処置のための電気信号を組織に印加する際に使用される。コントローラは、IREアブレーションプロトコルを実装するためのセットアップパラメータを受信する。パラメータは、事前設定されてもよく、又は医師などの装置のオペレータによって調整されてもよい。コントローラは、信号発生器に命令を伝送して、プローブ上の選択された電極間に双極性パルスの列を印加する。IREの場合、これらのパルスは、典型的には、選択された電極間で組織の不可逆的エレクトロポレーションを引き起こすように、少なくとも200Vの電圧振幅及び20μs未満の各双極性パルス対の持続時間を有する。それに代わって、この目的のために他の好適なパルスパラメータが選定されてもよい。
【0019】
組織内で散逸するパルスエネルギーを測定するために、電気センサが、電気信号発生器の出力に結合される。これらのセンサは、双極対の電極間で散逸したエネルギーを連続的に感知し、測定された結果をコントローラに伝達する。コントローラは、散逸エネルギーが目標値を満たすか、又はいくつかの他の基準を満たすように、散逸エネルギーを計算し、電気信号発生器によって印加されたパルスの列の電気的パラメータ及び時間的パラメータを制御する。電気信号発生器は、電圧源又は電流源として構成され得る。前者の場合、コントローラによって制御された電気的パラメータは主にパルスの電圧であり、後者の場合、電気パラメータは主にパルスの電流である。
【0020】
散逸エネルギーを測定するために、コントローラは、アブレーション処置中に連続間隔で電極間の電圧、並びに電極を通過する電流の測定を受信する。これらの測定値から、コントローラは、組織に送達される瞬時電力を推定し、したがって、IRE処置中に組織内で散逸した累積エネルギーを見つける。コントローラは、処置で散逸した総エネルギーが適用可能な基準を満たすように、双極性パルスの列に必要な可能な調整を計算する。この目的のために、コントローラは、典型的には、以下のパラメータ、すなわち、パルス振幅(信号発生器が電圧源か又は電流源のどちらであるかどうかに応じて、電圧振幅又は電流振幅のいずれか)、パルス幅(持続時間)、パルス列当たりのパルス数、及び処置中のパルス列の数、のうちの1つ又は2つ以上を調整する。代替的に又は追加的に、コントローラは、個々のパルス又はパルス列が組織内の事前設定されたエネルギー量を散逸させるように、個々の双極性パルス又はパルス列の調整を計算し得る。
【0021】
いくつかの例示的な実施形態では、IRE処置に使用される電気信号発生器は、IREアブレーションのための双極性パルスに加えて、組織の熱RFアブレーションのための(radio-frequency、RF)信号を印加することが可能である。電気センサによるエネルギー散逸の測定はまた、熱RFアブレーションプロセスを監視及びコントローラする際にも用いられ得る。
【0022】
IREアブレーションシステム及びIREパルス
図1は、本発明の例示的な実施形態による、IREアブレーション処置で使用されるマルチチャネルIREシステム20の概略的な絵図である。以下の説明では、IREアブレーション処置は、「IREアブレーション」又は「IRE処置」とも呼ばれる。示された例示的な実施形態では、医師22は、IREシステム20を使用して、マルチチャネルIREアブレーション処置を実施している。医師22は、遠位端28が、カテーテル26の長さに沿って配列された複数のアブレーション電極30を含むアブレーションカテーテル26を使用して、被験者24に対して処置を実施している。
【0023】
IREシステム20は、プロセッサ32及びIREモジュール34を含み、IREモジュールは、IRE発生器36及びIREコントローラ38を含む。以下で更に詳述するように、IRE発生器36は、IRE処置を実行するための選択された電極30に指向された電気パルスの列を発生させる。電気パルスの列の波形(タイミング及び振幅)は、IREコントローラ38によって制御される。プロセッサ32は、以下に詳述するように、IREシステム20と医師22との間の入力及び出力インターフェースを処理する。
【0024】
プロセッサ32及びIREコントローラ38はそれぞれ、典型的には、プログラマブルプロセッサを含み、プログラマブルプロセッサは、本明細書に記載される機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はファームウェアでプログラムされている。代替的に又は追加的に、それらのそれぞれ、これらの機能の少なくとも一部を実行する、ハードワイヤード及び/又はプログラム可能なハードウェア論理回路を含んでもよい。プロセッサ32及びIREコントローラ38は、単純化のために、別個のモノリシックな機能ブロックとして図に示されているが、実際には、これらの機能の一部は、図に示され、テキストに記載されている信号を受信及び出力するための好適なインターフェースを有する単一の処理及び制御ユニット内で組み合わされてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、IREコントローラ38は、高速制御信号がIREコントローラからIRE発生器36に伝送されるので、IREモジュール34内に常駐する。しかしながら、十分に高速の信号がプロセッサ32からIRE発生器36に伝送され得るならば、IREコントローラ38は、プロセッサ内に常駐してもよい。
【0025】
プロセッサ32及びIREモジュール34は典型的には、コンソール40内に常駐する。コンソール40は、キーボード及びマウスなどの入力デバイス42を含む。ディスプレイスクリーン44は、コンソール40に近接して(又はそれと一体で)位置する。ディスプレイスクリーン44は、任意選択的にタッチスクリーンを含んでもよく、それにより別の入力デバイスを提供することができる。
【0026】
IREシステム20は、システム20内の好適なインターフェース及びデバイスに接続された、以下のモジュール(典型的には、コンソール40内に常駐する)のうちの1つ又は2つ以上を更に含んでもよい。
・心電図(electrocardiogram、ECG)モジュール46は、被験者24に取り付けられたECG電極50に、ケーブル48を介して結合されている。ECGモジュール46は、被験者24の心臓52の電気活動を測定するように構成されている。
・温度モジュール54は、カテーテル26の遠位端28上の各電極30に隣接して位置する、熱電対56などの任意の温度センサに結合され、隣接する組織58の温度を測定するように構成されている。
・追跡モジュール60は、遠位端28内の1つ又は2つ以上の電磁位置センサ(図示せず)に結合されている。1つ又は2つ以上の磁場発生器62によって発生された外部磁場の存在下で、電磁位置センサは、センサの位置と共に変化する信号を出力する。これらの信号に基づいて、追跡モジュール60は、心臓52内の電極30の位置を確認し得る。
【0027】
上記のモジュール46、54、及び60は、典型的には、アナログ構成要素及びデジタル構成要素の両方を含み、アナログ信号を受信し、デジタル信号を伝送するように構成されている。各モジュールは、モジュールの機能の少なくとも一部を実行する、ハードワイヤード及び/又はプログラム可能なハードウェア論理回路を更に含んでもよい。
【0028】
カテーテル26は、ポート又はソケットなどの電気的インターフェース64を介してコンソール40に連結されている。したがって、IRE信号は、インターフェース64を介して遠位端28に搬送される。同様に、遠位端28の位置を追跡するための信号、及び/又は組織58の温度を追跡するための信号は、インターフェース64を介してプロセッサ32によって受信され、IRE発生器36によって発生されたパルスを制御する際に、IREコントローラ38によって印加され得る。
【0029】
外部電極65、すなわち「リターンパッチ」は、被験者24、典型的には被験者の胴体の皮膚上と、IRE発生器36との間の外部に追加的に結合されてもよい。
【0030】
プロセッサ32は、IRE処置の前、及び/又は処置中に、医師22から(又は他のユーザーから)、処置のためのセットアップパラメータ66を受信する。1つ又は2つ以上の好適な入力デバイス42を使用して、図2図4及び表1を参照して以下に説明するように、医師22は、IREパルス列のパラメータを設定する。医師22は更に、(IREパルス列を受信するために)活性化させるアブレーション電極30の対、及びそれらが活性化される順序を選択する。
【0031】
IREアブレーションをセットアップする際、医師22はまた、心臓52のサイクルに対するIREパルスのバーストの同期のモードを選択することができる。「同期モード」と呼ばれる第1のオプションは、心臓が再充電しており、外部電気パルスに応答しない場合に、IREパルスバーストを、心臓52の不応状態の間に起こるように同期させることである。バーストは、心臓52のQRS群後に起こるように時間が合わせられるが、この遅延は、P波の前に、心臓52のT波の間にバーストが起こるように、心臓のサイクル時間の約50%である。同期モードを実施するために、IREコントローラ38は、以下の図5に示すECGモジュール46からのECG信号414に基づいて、IREパルスのバースト(単数)又はバースト(複数)の時間を合わせる。
【0032】
第2の同期のオプションは非同期モードであり、IREパルスのバーストは、心臓52のタイミングとは独立して発射される。最大長さ500msを有し、典型的には200msの長さのIREバーストは、心臓が反応しない1つの短パルスとして心臓によって感じられるため、このオプションは可能である。この種の非同期的な動作は、IRE処置の簡略化及び合理化に有用であり得る。
【0033】
セットアップパラメータ66を受信したことに応答して、プロセッサ32は、IREコントローラ38にこれらのパラメータを伝達し、IREコントローラ38は、医師22によって要求されたセットアップに従ってIRE信号を発生させるよう、IRE発生器36に命ずる。更に、プロセッサ32は、ディスプレイスクリーン44上にセットアップパラメータ66を表示することができる。
【0034】
いくつかの例示的な実施形態では、プロセッサ32は、追跡モジュール60から受信された信号に基づいて、例えば、遠位端28の現在の位置及び向きを示すように注釈付けされた、被験者の解剖学的構造の関連画像68をディスプレイ44上に表示する。代替的に又は追加的に、温度モジュール54及びECGモジュール46から受信した信号に基づいて、プロセッサ32は、各電極30における組織58の温度及び心臓52の電気活動をディスプレイスクリーン44に表示してもよい。
【0035】
処置を開始するために、医師22は、カテーテル26を被験者24に挿入し、次いで、カテーテルを、制御ハンドル70を用いて、心臓52の内部又は外部の適切な部位までナビゲートする。続いて、医師22は、遠位端28を、心臓52の心筋又は心外膜組織などの組織58と接触させる。次に、IRE発生器36は、図3を参照して以下に説明されるように、複数のIRE信号を発生させる。IRE信号は、IREパルスによって発生された電流72が、各対の電極の間を流れ(双極アブレーション)、要求された不可逆的エレクトロポレーションを組織58上で実行するように、異なるそれぞれのチャネルを介して、アブレーション電極30の対までカテーテル26を通して搬送される。
【0036】
図2は、本発明の例示的な実施形態による、双極性IREパルス100の概略図である。
【0037】
曲線102は、IREアブレーション処置における時間tの関数としての双極性IREパルス100の電圧Vを示す。本例示的な実施形態は、電圧源として構成されたIRE発生器36に関するものである。したがって、IRE信号は、ここではそれらの電圧に関して説明される。以下に記載されるように、IRE発生器36は、代替的に、電流源として構成され得るが、その場合、IREパルスは、それらの電流に関して説明される。双極性IREパルスは、正のパルス104及び負のパルス106を含むが、用語「正」及び「負」は、双極性パルスが印加される2つの電極30の任意に選択された極性を指す。正のパルス104の振幅はV+と表記され、パルスの時間幅は、t+と表記される。同様に、負のパルス106の振幅はV-と表記され、パルスの時間幅は、t-と表記される。正のパルス104と負のパルス106との間の時間幅は、t間隔と表記される。双極性パルス100のパラメータの典型的な値を、以下の表1に示す。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による、双極性パルスのバースト200の概略図である。
【0039】
IRE処置において、IRE信号は、曲線202によって示される1つ又は2つ以上のバースト200として電極30に送達される。バースト200は、各列がN個の双極性パルス100を含む、N個のパルス列204を含む。パルス列204の長さはtと表記される。パルス列204内の双極性パルス100の周期はtPPと表記され、連続する列間の間隔はΔと表記され、その間、信号は印加されない。バースト200のパラメータの典型的な値を、以下の表1に示す。
【0040】
図4A及び図4Bは、本発明の例示的な実施形態による、組み込まれたRF信号を有するIRE信号302及び304の概略図である。図4A及び図4Bに示される例示的な実施形態では、これらのアブレーションモダリティの両方から利益を得るために、RFアブレーションがIREアブレーションと組み合わされる。
【0041】
図4Aでは、曲線306は、図2の双極性パルス100と同様に、2つの双極性パルス310と312との間のRF信号308の、時間tの関数としての電圧Vを示す。RF信号308の振幅はVRFと表記され、その周波数はfRFと表記され、双極性パルス310と312との間の分離はΔRFと表記される。典型的には、周波数fRFは350~500kHzであり、振幅VRFは10~200Vであるが、より高い又はより低い周波数及び振幅が代替的に使用されてもよい。
【0042】
図4Bでは、曲線314は、正のIREパルス318と負のIREパルス320との間のRF信号316の、時間tの関数としての電圧Vを示す。IREパルス318及び320は、図2のパルス104及び106と同様である。この例示的な実施形態では、正のパルス318と負のパルス320との間隔t間隔は、表1に示されるように伸張されている。
【0043】
RF信号308及び316の振幅及び周波数の典型的な値を表1に示す。RF信号がIRE信号に挿入されると、図4A又は図4Bのいずれかに示されるように、2つの信号の組み合わせがアブレーション処置の終了まで繰り返される。
【0044】
【表1】
【0045】
IREモジュール
図5は、本発明の例示的な一実施形態による、IREモジュール34、及びIREモジュール34とシステム20内の他のモジュールとの接続の詳細を概略的に示すブロック図である。
【0046】
図1を参照すると、IREモジュール34は、IRE発生器36及びIREコントローラ38を含む。図5では、IREモジュール34は、外側の破線のフレーム402によって描かれている。フレーム402内で、IRE発生器36は、内側の破線のフレーム404によって描かれている。IRE発生器36は、パルス発生アセンブリ406と、パルスルーティング及び計測アセンブリ408と、を含み、これらは両方とも以下の図6図9に更に詳述される。
【0047】
IRE発生器36は、電圧源又は電流源のいずれかとして構成され得る。IREパルスの典型的な電圧は、パルスのオーム負荷が75Ω~200Ωに変化すると、200V~2000Vに変化し、その結果、電流は1A~26Aに変化する。この例示的な実施形態では、IRE発生器36は、電圧源として構成されている。IRE発生器36を電流源として構成することは、本明細書を読んだ後、当業者には明らかであろう。
【0048】
IREコントローラ38は、双方向信号410を介してプロセッサ32と通信し、プロセッサは、セットアップパラメータ66を反映するコマンドをIREコントローラに伝達する。IREコントローラ38は、パルスルーティング及び計測アセンブリ408からデジタル電圧及び電流信号412を更に受信する。コントローラは、とりわけ、組織58内で散逸したエネルギーの流れを計算する際にこれらの信号を利用する。それに加えて、IREコントローラ38は、ECGモジュール46からデジタルECG信号414を、温度モジュール54からデジタル温度信号416を受信し、これらの信号を双方向信号410を通じてプロセッサ32に通信する。
【0049】
IREコントローラ38は、セットアップパラメータ66並びに計算されたエネルギーの散逸から導出されたデジタルコマンド信号418をパルス発生アセンブリ406に通信する。コマンド信号418は、図3図5に示されるものなどのIREパルスをIRE発生器36に発生させる一方で、IREコントローラ38は、計算されたエネルギー散逸及び必要な散逸エネルギーに基づいてIREパルスの特性を調整する。(その制御プロセスの更なる詳細が図10に示されている。)これらのIREパルスは、アナログパルス信号420として、パルスルーティング及び計測アセンブリ408に送信される。パルスルーティング及び計測アセンブリ408は、出力チャネル422を介して電極30に結合されるだけでなく、接続部424を介してリターンパッチ65に結合される。図5は、CH1~CH10と表記された10個の出力チャネル422を示している。以下の説明において、特定の電極は、それに結合された特定のチャネルの名前で呼ばれる。例えば、電極CH5は、チャネル422のCH5に結合された電極を指す。図5は、10個のチャネル422を示しているが、IRE発生器36は代替的に、例えば、8個、16個、若しくは20個のチャネル、又は任意の他の好適な数のチャネルなど、異なる数のチャネルを含んでもよい。
【0050】
図6は、本発明の例示的な一実施形態による、図5のパルスルーティング及び計測アセンブリ408の電気概略図である。分かりやすくするために、電流及び電圧の測定に関与する回路は省略されている。これらの回路は、以下の図7で詳述される。出力チャネル422及び接続部424は、図6において、図5と同じ表記を使用して示されている。
【0051】
パルスルーティング及び計測アセンブリ408は、各出力チャネル422のための1つのモジュールを有するモジュール502を含む。隣接するモジュール502の対504が、以下の図7に詳細に示されている。
【0052】
各モジュール502は、i番目のモジュールについてFO、SO、N、及びBPと表記されたスイッチを含む。スイッチFOは全て、IREアブレーションをチャネル間で切り替えるための高速スイッチである一方、スイッチSO、N、及びBPは、より低速のリレーであり、所与のモードのIREアブレーションのためにパルスルーティング及び計測アセンブリ408をセットアップするのに使用される。高速スイッチFOの典型的な切替時間は、0.3μsよりも短い一方、低速リレーSO、N、及びBPは、単に3msの切替時間を要する。以下に示す実施例は、スイッチ及びリレーの使用を示す。
【0053】
実施例1は、奇数-偶数スキームCH1-CH2、CH3-CH4、CH5-CH6、CH7-CH8、及びCH9-CH10に従った、電極の対の間のIREアブレーションのためのスイッチ及びリレーの使用を示す。(ここで、双極性パルスは、各電極と第1の隣接部との間に印加される。)スイッチ及びリレーの設定を以下の表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2は、偶数-奇数スキームCH2-CH3、CH4-CH5、CH6-CH7、及びCH8-CH9に従った、電極の対の間のIREアブレーションのためのスイッチ及びリレーの使用を示す(ここで、双極性パルスは、各電極とその第2の隣接電極との間に印加される)。第1の電極と最後の電極とが隣り合って位置する円形カテーテル26では、対CH10-CH1が偶数-奇数の対に追加されてもよい。スイッチ及びリレーの設定を以下の表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1及び実施例2を組み合わせると、実施例1の奇数-偶数スキームで最初にアブレーションを行い、次いで各高速スイッチFOを反対の状態に(オンからオフ、及びオフからオンへ)切り替え、その後、実施例2の奇数-偶数スキームでアブレーションを行うことによって、電極30の全ての対間の高速IREアブレーションが遂行され得る。低速リレーSO、N、及びBPは、それらの状態を切り替える必要がないため、切り替えはFOスイッチの速度で起こる。
【0058】
実施例3は、非隣接電極30間、この実施例ではCH1-CH3、CH4-CH6、及びCH7-CH9間のIREアブレーションを示す。このような構成は、組織58内により深い損傷を引き起こすために利用され得る。スイッチ及びリレーの設定を以下の表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
更に、スイッチFOを再構成することによって、電極の他の対を迅速に選択することができる。
【0061】
実施例4は、チャネルCH1とCH3との間でアブレーションを行うための代替的な方法を示す。この実施例では、アブレーション回路を閉じるためにBPライン506が利用される。スイッチ及びリレーの設定を以下の表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
実施例4では、パルスルーティング及び計測アセンブリ408内の電気経路は、変圧器二次側508及び510を直列に結合する。電極CH1とCH3との間の距離は、隣接する電極(例えば、CH1とCH2との)間の距離の2倍であるため、それぞれの電極間に同じ電界強度を有するためには、CH1とCH3との間の電圧は、隣接する電極間の電圧の2倍でなければならない。これは、これら2つの二次側に対する一次側を反対の相で駆動することによって達成される。低速スイッチSOは全て、電極の別の対の間、例えば、CH2とCH4との間の次のアブレーションの準備の間、オン状態のままとされる。
【0064】
上記の実施例に示されるように、リレー及び高速スイッチを使用するパルスルーティング及び計測アセンブリ408の実装により、電極30へのIREパルスのフレキシブルで高速の分配、並びに印加されたIREパルス振幅のフレキシブルな再構成が可能になる。
【0065】
図7は、本発明の例示的な実施形態による、パルスルーティング及び計測アセンブリ408の2つの隣接するモジュール601及びモジュール602の電気概略図である。
【0066】
モジュール601及びモジュール602が、図6のペア504を、同じ表記(504)を有する一点鎖線の枠によって示されるように構成する。モジュール601及びモジュール602はそれぞれ、図5に関するパルス発生アセンブリ406の一部分を含むパルス発生回路603及びパルス発生回路604によって供給される。次いで、モジュール601及びモジュール602は、図6のペア504のモジュール502と同様に、それぞれチャネルCH1及びチャネルCH2に供給する。図7には、モジュール間の接続605を示すために、2つのモジュール601及びモジュール602が示されている。2つのモジュールは同一である(並びにパルスルーティング及び計測アセンブリ408内の追加のモジュールと同一である)ため、モジュール601についてのみ以下に詳細に説明する。
【0067】
パルス発生回路603及びパルス発生回路604の更なる詳細を以下の図8及び図9に示す。パルス発生アセンブリ406は、IRE発生器36の各チャネルのための回路603及び回路604と同様の1つのパルス発生回路を含む。パルス発生アセンブリ406は、図8に詳述される高電圧電源607を更に含む。
【0068】
パルス発生回路603は、変圧器606によってモジュール601に結合される。高速スイッチFO並びに低速リレーSO、N、及びBPは、図6と同様に表記される。低域フィルタ608は、パルス発生回路603によって伝送されたパルス列を、変圧器606及びスイッチFOを介して正弦波信号に変換し、CH1をRFアブレーションに使用することを可能にする。同様に、IRE発生器36の各チャネルは、RFアブレーションに独立して使用され得る。フィルタ608の係合はリレー610によって制御される。所与の周波数fRF及び振幅VRFを有するRF信号は、双極性パルスの列を周波数fRFで低域フィルタ608を介して放出するパルス発生回路603によって生成され、低域フィルタ608がこのパルス列を、周波数fRFを有する正弦波信号に変換する。双極性パルスの列の振幅は、正弦波信号の振幅がVRFとなるように調整される。
【0069】
CH1に結合された電圧V及び電流Iは、チャネルCH1とCH2との間の電圧、及びCH1へと流れてCH2から戻る電流として、図7に示されている。
【0070】
及びIは、電圧を測定するための演算増幅器614と、電流検知抵抗器618にわたる電流を測定する差動増幅器616と、を含む計測モジュール612によって測定される。電圧Vは、抵抗器R、R、及びR並びにアナログマルチプレクサ622を含む分圧器620から測定される。アナログマルチプレクサ622は、抵抗器R又はRのいずれかに結合するため、その結果、分圧器620の電圧分割比は、R/R又はR/Rのいずれか一方である。計測モジュール612は、測定されたアナログ電圧V及び電流Iをデジタル信号DV及びDIに変換するためのアナログデジタル変換器(analog-to-digital converter、ADC)624を更に含む。これらのデジタル信号は、デジタルアイソレータ626を介して、信号412(図5)としてIREコントローラ38に送信される。図10に更に詳述されるように、IREコントローラ38は、デジタル信号DV及びDI、並びに他のモジュールからの対応するデジタル信号を利用して、組織58内で散逸したエネルギーを計算する。デジタルアイソレータ626は、被験者24(図1)を不必要な電圧及び電流から保護する。
【0071】
スイッチFO、リレーSO、BP、N及び610、並びにアナログマルチプレクサ622は、IREコントローラ38によって駆動される。単純化のために、それぞれの制御線は、図7には示されていない。
【0072】
図8は、本発明の例示的な実施形態による、パルス発生回路603、変圧器606、及び高電圧電源607の電気概略図である。
【0073】
パルス発生回路603(図7)は、内部の詳細が以下の図9に更に示される2つのスイッチ702及びスイッチ704を含む。スイッチ702は、コマンド入力706、ソース708、及びドレイン710を含む。スイッチ704は、コマンド入力712、ソース714、及びドレイン716を含む。スイッチ702及びスイッチ704は共にHブリッジの半分を形成し(当該技術分野において既知であるように)、「ハーフブリッジ」とも呼ばれる。
【0074】
高電圧電源607は、IREコントローラ38からの高電圧コマンド入力724によって受信された信号に応答して、±(10~2000)Vのそれぞれ正及び負の範囲内で調整可能な正電圧V+及び負電圧V-を、それぞれの出力720及び722に供給する。高電圧電源607は、接地接続723も提供する。単一の高電圧電源607が、パルス発生アセンブリ406の全てのパルス発生回路に結合されている。代替的に、各パルス発生回路が、別個の高電圧電源に結合されてもよい。
【0075】
スイッチ702のドレイン710は正電圧出力720に結合され、スイッチのソース708は、変圧器606の入力726に結合される。コマンド入力706がコマンド信号CMD+を受信すると、正電圧V+が、正電圧出力720からスイッチ702を介して変圧器入力726に結合される。スイッチ704のソース714は、負電圧出力722に結合され、スイッチのドレイン716は、変圧器入力726に結合される。コマンド入力712がコマンド信号CMD-を受信すると、負電圧V-が、負電圧出力722からスイッチ704を介して変圧器入力726に結合される。したがって、2つのコマンド信号CMD+及びCMD-を交互にアクティブ化することにより、正及び負のパルスが、それぞれ変圧器入力726に結合され、次いで変圧器606によってその出力728に伝送される。パルスのタイミング(パルスの幅及び分離)は、コマンド信号CMD+及びCMD-によって制御され、パルスの振幅は、高電圧コマンド入力724への高電圧コマンド信号CMDHVによって制御される。3つのコマンド信号CMD+、CMD-、及びCMDHVは全て、IREコントローラ38から受信され、IREコントローラ38は、これにより、パルスルーティング及び計測アセンブリ408のそれぞれのチャネルに供給されるパルスを制御する。
【0076】
代替の例示的な一実施形態(図示せず)では、フルHブリッジが、単極性高電圧電源を用いて使用される。この構成はまた、フルHブリッジを制御する信号に応答して、単極性源から正のパルス及び負のパルスの両方を発生させるために使用することができる。この例示的な実施形態の利点は、より単純な高電圧電源を使用することができることである一方、ハーフブリッジ及びデュアル高電圧電源の利点は、固定された接地電位、並びに独立して調整可能な正電圧及び負電圧を提供することである。
【0077】
図9は、本発明の一実施形態による、スイッチ702の電気概略図である。スイッチ704は、スイッチ702と同様の様式で実装される。
【0078】
スイッチ702の切り替え機能は、ゲート804、ソース708、及びドレイン710を含む電界効果トランジスタ(field-effect transistor、FET)802によって実装される。コマンド入力706は、図8に示すように結合されたソース708及びドレイン710を有するゲート804に結合される。ツェナーダイオード、ダイオード、抵抗器、及びコンデンサを含む追加の構成要素806は、回路保護器として機能する。
【0079】
図10は、本発明の例示的な実施形態による、IRE処置を制御するための方法を概略的に示すフローチャート900である。フローチャート900では、点線フレーム902は、IRE発生器36内で行われるプロセスの各工程を概略的に示し、点線フレーム904は、IREコントローラ38内で行われるプロセスの各工程を概略的に示す。この特定の機能的分割は、本明細書においては単に例として説明されているが、本発明の方法の原理は、本発明の説明を読んだ後に当業者には明らかであるように、代替的に、他の種類のIREモジュール構成、並びにIREの他のシステムに適用され得る。
【0080】
IRE処置は、開始工程906で開始する。セットアップ定義工程908において、医師22は、入力デバイス42を通じて、処置のためのセットアップパラメータを定義する。これらのセットアップパラメータは、例えば、必要な組織体積、組織内の場の強度、カテーテル構成、及び処置中に組織内に送達されるエネルギーに基づくものである。プロセッサ32は、パラメータ伝送工程910において、これらのセットアップパラメータをIREコントローラ38に伝送する。IREコントローラ38は、要求エネルギー工程911において、要求された総散逸エネルギーを設定パラメータから抽出又は計算する。この工程は、アブレーションが行われる各位置でIREパルスから組織へと散逸するエネルギーの目標値を(例えば、ジュールで)定義する。
【0081】
セットアップ工程912では、IREコントローラ38は、IRE発生器36のIREアブレーションパラメータをセットアップし、変更/伝送工程914でそれらを発生器に伝送する。アブレーションパラメータがIRE発生器36にセットアップされると、IREコントローラ38は、アブレーション開始/継続工程916でIRE発生器36に適切なコマンドを送信することによってアブレーションを開始する。コマンドに応答して、IRE発生器36は、IREパルス工程918において電極30にIREパルスを印加する。同時に、IRE発生器36内の計測モジュール612(図7)は、V/I測定工程920において各チャネル内で電圧V及び電流Iを測定し、それらの値をIREコントローラ38に伝送する。
【0082】
及びIの受信値に基づいて、IREコントローラ38は、散逸エネルギー工程922において、組織58内で散逸したエネルギーを連続的に計算する。散逸エネルギーの計算は、一連の時間間隔の各々における受信値V及びIの乗算、並びにそれらの積の累積和に基づく。第1の比較工程924では、IREコントローラ38は、散逸エネルギー工程922で計算された、処置の開始からの累積散逸エネルギーが、要求エネルギー工程911において記録された要求総散逸エネルギーにすでに等しいか(又は場合によっては超えているか)どうかをチェックする。結果が肯定である場合、IREアブレーションは終了工程926において終了する。
【0083】
要求総散逸エネルギーが工程924でまだ到達されていない場合、IREコントローラ38は、予測工程928において、IRE発生器36の現在のパラメータ(双極性パルス振幅、パルス幅、及び残存パルスの数など)を使用してアブレーションが継続されると仮定して予測総散逸エネルギーを計算する。第2の比較工程930において、IREコントローラ38は、予測総散逸エネルギー(工程928から)を要求総散逸エネルギー(工程911から)と比較する。これらの2つが等しい場合、アブレーションは、現在のアブレーションパラメータを使用して継続し、アブレーションは工程916を通して継続する。
【0084】
工程930において、予測総散逸エネルギーが要求総散逸エネルギーから逸脱していると、IREコントローラ38は、変更/伝送工程914においてIREアブレーションパラメータを変更し、図10のサイクルを継続する。したがって、アブレーション電圧V及び電流Iの測定によって計測モジュール612からIREコントローラ38に提供されるフィードバックは、アブレーション処置に対する要求総散逸エネルギーを達成するように、コントローラがIRE発生器36のアブレーションパラメータを調整することを可能にする。
【0085】
代替的に又は追加的に、セットアップパラメータがパルス又はパルス列当たりのエネルギーを指定する場合、フローチャート900によって説明されるプロセスフローは、それに応じて変更される。
【0086】
上に記載される実施形態は例として挙げたものであり、本発明は本明細書の上記で具体的に図示及び説明されるものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、前述の本明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の記載を読むと当業者に着想されるであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。
【0087】
〔実施の態様〕
(1) 不可逆的エレクトロポレーションパルスの送達を調節するための医療装置であって、
患者の身体内部に挿入されるように構成されており、前記身体内部の組織と接触するように構成された複数の電極を備える、プローブと、
少なくとも200Vの電圧振幅を有し、20μs未満の双極性パルスの各々の持続時間を有する双極性パルスの列を、前記組織と接触している少なくとも一対の前記電極間に印加し、それによって前記少なくとも一対の前記電極間に前記組織の不可逆的エレクトロポレーションを引き起こすように結合された、電気信号発生器と、
前記電気信号発生器の出力に結合され、前記パルスの前記列の間に前記少なくとも一対の前記電極間で散逸したエネルギーを感知するように構成された、1つ以上の電気センサと、
前記散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、前記1つ以上の電気センサに応答して、前記電気信号発生器によって印加された前記パルスの前記列の電気的パラメータ及び時間的パラメータを制御するように結合された、コントローラと、を備える、医療装置。
(2) 前記コントローラによって制御された前記電気的パラメータは電圧を含む、実施態様1に記載の医療装置。
(3) 前記コントローラによって制御された前記電気的パラメータは電流を含む、実施態様1に記載の医療装置。
(4) 前記コントローラは、各対の前記電極間の前記散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記電気的パラメータを制御するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(5) 前記コントローラは、前記散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスのピーク振幅を調整するように構成されている、実施態様4に記載の医療装置。
【0088】
(6) 前記1つ以上の電気センサは、一連の時間間隔で前記少なくとも一対の前記電極間に流れる電圧及び電流を測定するように構成され、前記コントローラは、前記一連の前記時間間隔にわたる前記電圧及び前記電流の積の合計を計算することによって前記散逸エネルギーを測定するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(7) 前記コントローラは、各対の前記電極間の前記散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記時間的パラメータを制御するように構成されている、実施態様1に記載の医療装置。
(8) 前記コントローラは、前記散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの数を調整するように構成されている、実施態様7に記載の医療装置。
(9) 前記コントローラは、前記散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの持続時間を調整するように構成されている、実施態様7に記載の医療装置。
(10) 患者の身体内の組織をアブレーションするための方法であって、前記方法は、
プローブを前記身体内に挿入することであって、前記プローブは、前記組織に接触するように構成された複数の電極を備える、挿入することと、
少なくとも200Vの電圧振幅を有し、20μs未満の双極性パルスの各々の持続時間を有する双極性パルスの列を前記組織と接触している少なくとも一対の前記電極間に印加することであって、それによって前記少なくとも一対の前記電極間に前記組織の不可逆的エレクトロポレーションを引き起こす、印加することと、
前記パルスの前記列の間に前記少なくとも一対の前記電極間で散逸したエネルギーを測定することと、
前記散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、前記測定されたエネルギーに応答して、電気信号発生器によって印加された前記パルスの前記列の電気的パラメータ及び時間的パラメータを制御することと、を含む、方法。
【0089】
(11) 前記電気的パラメータを制御することは電圧を制御することを含む、実施態様10に記載の方法。
(12) 前記電気的パラメータを制御することは電流を制御することを含む、実施態様10に記載の方法。
(13) 前記電気的パラメータを制御することは、各対の前記電極間の前記散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記電気的パラメータを設定することを含む、実施態様10に記載の方法。
(14) 前記電気的パラメータを制御することは、前記散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスのピーク振幅を調整することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記エネルギーを測定することは、一連の時間間隔で前記少なくとも一対の前記電極間に流れる電圧及び電流を測定することと、前記一連の前記時間間隔にわたる前記電圧及び前記電流の積の合計を計算することと、を含む、実施態様10に記載の方法。
【0090】
(16) 前記時間的パラメータを制御することは、各対の前記電極間の前記散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記時間的パラメータを設定することを含む、実施態様10に記載の方法。
(17) 前記時間的パラメータを制御することは、前記散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの数を調整することを含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記時間的パラメータを制御することは、前記散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの持続時間を調整することを含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 不可逆的エレクトロポレーションパルスの送達を調節するための医療装置であって、
患者の身体内部に挿入されるように構成されており、前記身体内部の組織と接触するように構成された複数の電極を備える、プローブと、
少なくとも200Vの電圧振幅を有し、20μs未満の双極性パルスの各々の持続時間を有する双極性パルスの列を、前記組織と接触している少なくとも一対の前記電極間に印加し、それによって前記少なくとも一対の前記電極間に前記組織の不可逆的エレクトロポレーションを引き起こすように結合された、電気信号発生器と、
前記電気信号発生器の出力に結合され、前記パルスの前記列の間に各対の前記電極間で散逸した累積エネルギーを感知するように構成された、1つ以上の電気センサと、
各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが事前定義された基準を満たすように、前記1つ以上の電気センサに応答して、前記電気信号発生器によって印加された前記パルスの前記列の電気的パラメータ及び時間的パラメータを制御するように結合された、コントローラと、を備える、医療装置。
(20) 前記コントローラによって制御された前記電気的パラメータは電圧を含む、実施態様19に記載の医療装置。
【0091】
(21) 前記コントローラによって制御された前記電気的パラメータは電流を含む、実施態様19に記載の医療装置。
(22) 前記コントローラは、各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記電気的パラメータを制御するように構成されている、実施態様19に記載の医療装置。
(23) 前記コントローラは、各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスのピーク振幅を調整するように構成されている、実施態様22に記載の医療装置。
(24) 前記1つ以上の電気センサは、一連の時間間隔で前記少なくとも一対の前記電極間に流れる電圧及び電流を測定するように構成され、前記コントローラは、前記一連の前記時間間隔にわたる前記電圧及び前記電流の積の合計を計算することによって前記累積散逸エネルギーを測定するように構成されている、実施態様19に記載の医療装置。
(25) 前記コントローラは、各対の前記電極間の前記累積散逸エネルギーが指定された目標値を満たすように、前記時間的パラメータを制御するように構成されている、実施態様19に記載の医療装置。
【0092】
(26) 前記コントローラは、前記累積散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの数を調整するように構成されている、実施態様25に記載の医療装置。
(27) 前記コントローラは、前記累積散逸エネルギーが前記事前定義された基準を満たすように、前記少なくとも一対の前記電極間に印加される前記パルスの持続時間を調整するように構成されている、実施態様25に記載の医療装置。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】