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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】ウルソデオキシコール酸の投与方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/575 20060101AFI20230309BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P1/16
A61P1/16 105
A61P1/16 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538477
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-07-07
(86)【国際出願番号】 IB2021050448
(87)【国際公開番号】W WO2021152430
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】202041003726
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522186952
【氏名又は名称】シルパ メディケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145241
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康裕
(72)【発明者】
【氏名】パルミエリ、ベニャミーノ
(72)【発明者】
【氏名】プラディープ、シバクマール
(72)【発明者】
【氏名】トッパラドッディ、クリシュナムルシー
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA11
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZA76
4C086ZA77
(57)【要約】
本発明は、肝疾患、好ましくは慢性肝疾患の治療および/または予防のために、治療有効量のウルソデオキシコール酸(UDCA)を静脈内に投与するための方法および/または組成物を提供するものである。本発明はまた、約15mg/kg~約200mg/kgの用量でUDCAを、12時間に1回~72時間に1回の投与間隔で静脈内投与する方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)の投与方法であって、それを必要とするヒト患者にウルソデオキシコール酸(UDCA)を約15mg/kg~約200mg/kgの用量で治療有効量のウルソデオキシコール酸(UDCA)を静脈内に投与する工程を含み、ウルソデオキシコール酸(UDCA)一回分は、12時間ごとに1回から72時間ごとに1回の投与間隔で繰り返し投与される、方法。
【請求項2】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)の用量が約30mg/kg~約100mg/kgである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)を約5日~約6ヶ月間投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ヒト患者における非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療方法であって、ウルソデオキシコール酸(UDCA)を約15mg/kg~約200mg/kgの用量で治療有効量のウルソデオキシコール酸(UDCA)を静脈内に投与する工程を含み、ウルソデオキシコール酸(UDCA)一回分は、12時間ごとに1回から48時間ごとに1回の投与間隔で繰り返し投与される、方法。
【請求項5】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)を約5日間~約6ヶ月間投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ヒト患者における胆汁うっ滞性肝疾患の治療および/または予防方法であって、ウルソデオキシコール酸(UDCA)を約15mg/kg~約200mg/kgの用量で治療有効量のウルソデオキシコール酸(UDCA)を静脈内に投与する工程を含み、ウルソデオキシコール酸一回分(UDCA)は、12時間ごとに1回から72時間ごとに1回の投与間隔で繰り返し投与される、方法。
【請求項7】
胆汁うっ滞性肝疾患は、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)及び胆石の溶解からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)を約5日間~約6ヶ月間投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)および胆石の溶解からなる群より選択される胆汁うっ滞性肝疾患を有する患者を治療するためのキットであって、静脈内投与用に、ウルソデオキシコール酸(UDCA)を約15mg/kg~約200mg/kgの用量でウルソデオキシコール酸(UDCA)を含む治療有効量の組成物を含む、キット。
【請求項10】
非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を有する患者を治療するためのキットであって、静脈内投与用に、ウルソデオキシコール酸(UDCA)を約15mg/kg~約200mg/kgの用量でウルソデオキシコール酸(UDCA)含む治療有効量の組成物を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
【0002】
本発明は、肝疾患、好ましくは慢性肝疾患の治療および/または予防のために、治療有効量のウルソデオキシコール酸(UDCA)を静脈内に投与する方法に関するものである。本発明はまた、約15mg/kg~約200mg/kgの用量でUDCAを、12時間に1回~72時間に1回の投与間隔で静脈内投与する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
【0004】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)は、ヒトの胆汁および血液中に少量含まれる天然由来の胆汁酸で、肝疾患の治療に広く用いられており、UDCAの最も重要な適応の1つは胆石の溶解と原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療である。PBCには、UDCAとして13~15 mg/kg/日を2~4回に分けて経口投与し、食事とともに摂取する。胆石の溶解には、UDCAとして8~10 mg/kg/日を2~3回に分けて経口投与する。
【0005】
UDCAを経口投与すると、腹部不快感、腹痛、便秘、下痢、消化不良、吐き気、嘔吐などの胃腸障害が発生する。UDCAの経口投与による胃腸障害は、化学療法を受けているより多くの癌患者においてより重大である。
【0006】
UDCAの経口投与による上記の欠点を克服するために、肝疾患、好ましくは慢性肝疾患の治療および/または予防のために、治療有効量のUDCAおよび/またはその薬学的に許容できる塩もしくは溶媒和物もしくはエステルを静脈内に投与するための医薬組成物および/または方法への必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
発明の概要
【0008】
本発明は、肝疾患、好ましくは慢性肝疾患の治療および/または予防のために、治療有効量のウルソデオキシコール酸(UDCA)および/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルを静脈内に投与するための方法を提供するものである。
【0009】
本発明の実施形態において、UDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与によって治療される肝疾患は、脂肪性および胆汁うっ滞性肝疾患である。
【0010】
本発明の実施形態において、UDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与によって治療される脂肪性肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪肝炎(NASH)およびアルコール性脂肪性肝疾患(アルコール性脂肪性肝炎)である。
【0011】
本発明のさらなる実施形態において、UDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与によって治療される胆汁うっ滞性肝疾患は、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、胆石の溶解、進行性家族性肝内胆汁うっ滞、または薬剤性胆汁うっ滞である。
【0012】
本発明の一実施形態において、本発明は、約15mg/kg~約200mg/kgの用量でUDCA及び/又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物若しくはエステルを、12時間に1回~72時間に1回の投与間隔で静脈内投与する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図面略図
【0014】
図1図1は、UDCAを静脈内投与したNAFLD患者のT0(治療前)とT1(2カ月目の終わりにおけるUDCAを24回静脈内点滴後)の症状を示す。
【0015】
図2図2は、UDCAを経口投与したNAFLD患者のT0(治療前)とT1(2ヶ月の終わりにおけるUDCA経口投与後)の症状を示す。
【0016】
図3図3は、がん化学療法患者または肝不全患者のT0(治療前)とT1(3週間×10回のUDCA点滴治療後)の肝臓パラメータを示す。
【0017】
図4図4は、がん化学療法患者または肝不全患者のT0(治療前)とT1(3週間×10回のUDCA点滴治療後)のビリルビンとアルブミンを示す。
【0018】
図5図5は、がん化学療法患者または肝不全患者のT0(治療前)とT1(3週間10回の静脈内UDCA治療終了後)のRSCL症状比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
【0020】
本発明は、肝疾患、好ましくは慢性肝疾患の治療および/または予防のために、治療有効量のUDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルを静脈内に投与するための方法を提供するものである。
【0021】
本発明によるUDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与で治療すべき肝疾患は、胆汁うっ滞性肝疾患、好ましくは原発性胆道胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変(PSC)または胆石の溶解または進行性家族性肝内胆汁うっ滞タイプ1,2および3、嚢胞性線維症、薬剤性胆汁うっ滞、または慢性ウイルス性肝炎(B、C、D)などの非胆汁うっ滞性肝疾患、脂肪性肝疾患好ましくは非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪肝炎(NASH)およびアルコール性脂肪性肝疾患(アルコール性脂肪性肝炎)、血色素症、ウイルソン病およびα1アンチトリプシン欠乏症などの肝疾患である。さらに、UDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与は、肝癌、好ましくは肝細胞癌および胆管癌の予防/化学的予防に使用することができる。さらに、UDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与は、肝機能障害および寄生虫感染(シストソーマおよびリーシュマニアなど)を伴う癌または肝多発性転移病変の化学療法による慢性肝損傷、また酵素機能障害に対しても使用することが可能である。
【0022】
別の実施形態では、UDCAを静脈内投与して治療する肝疾患は、中毒(化学物質および食餌性キノコ)に起因する急性肝不全である。UDCAによる急性肝不全の治療は、特に肝移植が不可能な重篤な状態の患者に使用されるものとする。
【0023】
さらなる実施形態では、UDCAは、臓器の輸送中にドナー移植肝臓の冷却灌流液に投与される。さらにUDCAは、最適な肝臓ドナー/レセプトの機能統合をサポートし、急性拒絶反応の炎症を軽減し、一般的な機能および胆汁の流れを改善するために使用される。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、UDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与により治療される肝疾患は、原発性胆道胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、胆のう結石および胆管結石の溶解作用である。胆のう結石および胆管結石の溶解作用は、胆石(コレステロール結石)を溶解し、直接胆管流に移行させることにより疝痛を和らげる。
【0025】
本発明のさらに好ましい実施形態において、UDCAおよび/またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくはエステルの静脈内投与で治療される肝疾患は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪肝炎(NASH)およびアルコール性脂肪性肝疾患(アルコール性脂肪性肝炎)である。
【0026】
本発明の実施形態において、本発明は、治療有効量のUDCAを約15mg/kg~約200mg/kgの用量でそれを必要とするヒト患者に静脈内に投与する工程を含むUDCAの投与方法であって、UDCA一回分が12時間ごとに1回~72時間ごとに1回の投与間隔で繰り返し投与される方法を提供する。
【0027】
即ち、本発明の1つの実施形態では、用量は、約15mg/kg~約200mg/kgのUDCAである。好ましい実施形態では、用量は、約25mg/kg~約150mg/kgのものである。より好ましい実施形態では、ヒト患者に対する用量は、約30mg/kg~約100mg/kgのものである。含まれ得る用量は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63.64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100mg/kgでもよい。その他の用量は、これらの用量より多いか、中間か、少ないかを判断して静脈内に投与する。
【0028】
本発明のさらなる実施形態では、約15mg/kg~約200mg/kgの用量のUDCAは、腸肝循環が損なわれ、部分的または完全に妨げられている患者、または肝不全の患者に対して、肝疾患の治療に使用される。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態では、UDCAは、強烈な置換を伴う腸肝循環機能障害またはブロックを有する患者、腸の一部または全部を閉塞する癌、膵炎、潰瘍性大腸炎およびクロノ病を有する患者との肝疾患の治療のために静脈内に投与される。
【0030】
即ち、本発明の一実施形態では、投与間隔は、12時間~週1回である。好ましい実施形態では、UDCAは、12時間に1回、24時間に1回、48時間に1回、60時間に1回、68時間に1回、72時間に1回、84時間に1回及び96時間に1回、又は週に1回の投与間隔で投与される。
【0031】
本発明の実施形態において、UDCAは、肝疾患が根絶または軽減されるまで、上記に従って投与され得る。一実施形態では、UDCAは、約3日~約12ヶ月の期間投与される。好ましい実施形態では、UDCAは、約5日間~約6ヶ月間投与される。UDCAは、所望により、より長い期間またはより短い期間投与されてもよい。
【0032】
本発明の別の実施形態では、本発明は、それを必要とするヒト患者に、約15mg/kg~約200mg/kgの用量で治療有効量のUDCAを静脈内に投与するUDCAを含む医薬組成物を提供し、UDCA一回分は、12時間に1回~72時間に1回の投与間隔で反復投与されることを特徴とする医薬組成物を提供する。
【0033】
本発明の別の実施形態では、本発明の使用は、UDCAを含む医薬組成物の製造を特徴とし、それを必要とするヒト患者に治療有効量のUDCAを約15mg/kg~約200mg/kgの用量で静脈内に投与し、UDCA一回分は、12時間に1回~72時間に1回の投与間隔で反復投与される。
【0034】
別の実施形態では、本発明は、それを必要とするヒト患者の治療のための医薬品の製造のためのUDCAの使用に提供され、前記治療のための用量は、UDCA約15mg/kg~約200mg/kgであり、前記用量は12時間に1回~72時間に1回の投与間隔で繰り返し投与される。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とするヒト患者における非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療方法であって、治療有効量のUDCAを約15mg/kg~約200mg/kgの用量で静脈内に投与する工程を含み、UDCA一回分は12時間ごとに1回~48時間ごとに1回の投与間隔で繰り返し投与される方法を提供する。
【0036】
さらなる実施形態では、本発明は、それを必要とするヒト患者における胆汁うっ滞性肝疾患の治療および/または予防のための方法を提供し、UDCAの約15mg/kg~約200mg/kgの用量で治療有効量のUDCAを静脈内に投与する工程を含み、UDCAは12時間に1回~72時間に1回の投与間隔で反復投与される。
【0037】
さらなる実施形態では、本発明は、原発性硬化性胆管炎(PSC)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)および胆石の溶解からなる群から選択される胆汁うっ滞性肝疾患を有する患者を治療するためのキットであり、ウルソデオキシコール酸(UDCA)の約15mg/kg~約200mg/kgの用量で静脈内に投与するウルソデオキシコール酸(UDCA)を含む治療有効量の組成物を含むキットに関するものである。より好ましい実施形態では、キットは、ヒト患者に対する約30mg/kg~約100mg/kgの用量を含む。用量は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64,65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100mg/kgを含む。その他の用量は、これらの用量より多い、中間、または少ない量を静脈内に投与するために使用するものとする。さらに、UDCAを含むキットが投与される投与間隔は、12時間~週1回である。好ましい実施形態では、UDCAは、12時間に1回、24時間に1回、48時間に1回、60時間に1回、68時間に1回、72時間に1回、84時間に1回、96時間に1回の投与間隔で投与されるか、または週に1回、投与される。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を有する患者を治療するためのキットであって、ウルソデオキシコール酸(UDCA)を含む治療有効量の組成物を、約15mg/kg~約200mg/kgの用量で静脈内に投与するためのキットに関するものである。より好ましい実施形態では、キットは、ヒトの患者に対する約30mg/kg~約100mg/kgの用量を含む。用量は、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64,65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99又は100mg/kgを含む。その他の用量は、これらの用量より多い、中間、または少ない量を静脈内に投与するのに使用するものとする。さらに、UDCAを含むキットが投与される投与間隔は、12時間~週1回である。好ましい実施形態では、UDCAは、12時間に1回、24時間に1回、48時間に1回、60時間に1回、68時間に1回、72時間に1回、84時間に1回、96時間に1回の投与間隔で投与されるか、または週に1回、投与される。
【0039】
以下の実施例は、本発明を説明するために提供される。しかしながら、本発明は、以下の実施例に記載された特定の条件または詳細に限定されるものではないことが理解される。実施例は、単に本発明及びその様々な態様の理解及び実施に有用な特定の方法論を提供するものであるため、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。本発明を開示する目的で、本発明の特定の好ましい実施形態及び代替的な実施形態を示したが、開示された実施形態に対する修正は、当業者には起こり得るものである。
【0040】
実施例1:非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療におけるUDCAの静脈内投与
【0041】
非アルコール性脂肪性肝疾患の患者2群(表-1に開示したように各群50人N=50で構成)を選び、1300カロリー/日(タンパク質30%、炭水化物30%、脂肪40%)の食事で標準化した。
【表1】
【0042】
第1のグループの患者は、最初の2ヶ月間、50mg/kg/日のUDCAで経口で治療された(500mgカプセルを朝食後平均2-3カプセル、昼食後3-4カプセル、夕食後3-4カプセルを食後に嚥下した)。第2のグループの患者は、UDCAを3500mgの用量で隔日(48時間ごと)、合計24回静脈内スケジュールで治療された。臨床検査は、T0時(試験開始時)およびT1時(2ヶ月目の治療終了時)に実施された。2群の各患者は、以下のように標準的なエコーグラフィック分類に供された。
グレード0: 脂肪肝がない
グレード1(軽度): 肝実質の軽度のびまん性エコー輝度増大、または正常な横隔膜と肝内血管の境界で肝腎のコントラスト増加。
グレード2(中等度): 肝実質の中程度のびまん性エコー輝度増加、および横隔膜と肝内血管の境界がわずかに損なわれた肝腎のコントラスト増加。
グレード3(重度): 中等度の脂肪症に加え、肝右葉の後方部分、肝内血管境界、横隔膜が確認できない。
【0043】
数値は、量的変数については平均値±標準偏差で、カテゴリー変数についてはパーセントで示した。2群の比較は、量的変数についてはスチューデントt検定、カテゴリー変数についてはカイ二乗検定で行った。ベースラインから12週目までの変化は、各群内で対応ありt検定により比較した。各群における治療前後の評価変数の比較には、ウィルコクソン検定を用いた。
【0044】
治療前(T0)と治療後(T1)の症状の変化を評価するために、症状の種類、頻度、強度、時間からなる自記式質問票を患者に配布し、回答してもらった。0(軽微な症状)から5(重篤な症状)までの尺度で評価した。
【0045】
A. 組織学的検査: 静脈内UDCAおよび経口UDCAによる治療前後に、各群4名の患者のみが肝生検(LB)を受けた。静脈内治療群では、経口治療群に比べ、脂肪肝の退縮、門脈細胞への白血球の浸潤が顕著であった(表-2)。
【表2】
【0046】
B. 肝臓におけるエラストグラフィ: 超音波画像は、慢性肝疾患の診断、モニタリング、治療の決定において重要な役割を担う。それは、肝実質の形態学的検査、異形症や門脈圧亢進症の兆候を調べることによる慢性肝疾患のリスク評価、肝病変の検出と特徴づけ、局所治療のモニタリングと治療効果の評価など、多くの臨床的適応を有する。線維化の異なるレベルは、組織学的なスコアを用いて評価される。最も広く用いられているのはMETAVIRスコアであり、5段階の線維化が組み込まれている。
F0(線維化なし)
F1(隔壁のない門脈線維症:最小限の線維化)
F2(数個の隔壁を有する門脈線維症:中等度の線維症または臨床的に有意な線維症)
F3(多くの隔壁がある隔壁線維症だが肝硬変はない:重度の線維化)および
F4(肝硬変)
慢性肝疾患の患者における肝線維化の病期分類は、患者の管理を行う上で不可欠であり、以下を可能にする。
1) 肝障害の重症度を把握し、線維化が顕著になったとき(≧F2)、肝硬変への移行を回避するための治療を開始(慢性ウイルス性肝疾患)するかどうかを判断すること。
2) 治療中の肝線維化の進行または退縮を評価すること。
3) 肝硬変、さらには重度の線維症(≧F3)の患者において、合併症(肝細胞癌、食道静脈瘤)のスクリーニングと治療のための特別なモニタリングを確立すること。
【0047】
従来の超音波検査では、異なる肝線維化の段階を正確に鑑別することはできなかった。肝線維化を評価する既存のツールには、侵襲的な肝生検(LB)と、その他の非侵襲的な方法がある。肝線維化を評価する非侵襲的な方法としては、主に組織の弾力性を測定する物理的パラメータに基づくものがあり、エラストグラフィと呼ばれている。これは主観的な触診に代わるもので、組織の力学的特性、特にその硬さを画像化することを目的としている。エラストグラフィの手法は、力によって組織に生じる変形を測定するという共通のアプローチに基づいている。この手法は、外部機械装置または内部音響放射力(ARFIおよびSWE)を用いて、探査対象の組織内にせん断波を誘発するものである。診断作用のメカニズムは、外部の機械的な衝撃によって発生するせん断波を、超音波一次元プローブでその速度を測定することにある。一次元プローブ(3.5MHz)は、電気力学的変換器(振動子)の軸に沿って取り付けられている。このようにして、機械的衝撃によって発生する肝実質内の弾性せん断波の速度を測定することによって、肝硬度を定義することが可能である。伝播速度は、ヤング率で定義される媒質の硬さに直接関係する。硬い組織は軟らかい組織よりも高いせん断波速度を示す。弾性率はkPa(キロパスカル)で表され、1×4cmの領域に25~65mmの深さで測定される。したがって、評価される肝臓の体積は肝生検(LB)で調べられる体積の200倍である。得られる値は、2.5kPaから75kPaの範囲である。健常者の平均的な肝弾性は、男性で5.81±1.54kPa、女性で5.23±1.59kPaとされている。測定は痛みもなく、5~10分もかからない。生検を受け入れた4人の患者のT0とT1の結果を表-3に示す。
【表3】
【0048】
C. 経口UDCA治療と静脈内UDCA治療の消化器系副作用の比較
【0049】
UDCA経口投与(経口胆汁酸塩療法)は、38%の患者に下痢、15%の吐き気、20%の腹部膨満感、中等度の疝痛、食欲減退(10%)を起こしたが、UDCA静脈内投与(静脈内胆汁酸塩療法)は、カプセルを飲み込むのに比べ忍容性が高くコンプライアンスの面でも好ましいものであった。UDCA静脈内投与中および投与後の局所的および全身的な副作用は認められなかった。
【0050】
D. 脱力感、発汗、頻脈、めまい、消化不良、発作性睡眠、不眠、逆流症状の経口および静脈内UDCA治療での比較
【0051】
[1] 静脈内UDCA治療群では、アンケートによると、全例で発作性睡眠(ナルコレプシー)、脱力感、発汗、頻脈、めまい、消化不良、不眠、逆流などの症状の改善が見られ、治療開始1ヶ月目からより迅速かつ効率的に症状がコントロールされたのに対し、経口UDCA治療群では、症状の改善は遅く、顕著さも少なかった。静脈内UDCA治療と経口UDCA治療の症状をそれぞれ図1図2に示す。
【0052】
E. 静脈内UDCA群と経口UDCA群における肝臓パラメータ(GGT、AST、ALT)の比較
【0053】
静脈内UDCAで投与した患者では、GGT(γ-Glutamyl Transpeptidase)、AST(Aspartate Aminotransferase)、ALT(Alanine Aminotransferase)の肝臓パラメータが経口UDCAと比較して著しく減少していることが確認された。その結果を表-4に示す。
【表4】
【0054】
実施例2:がん化学療法中および肝疾患患者におけるUDCA静脈内投与
【0055】
癌化学療法中の同期異時性肝転移と肝酵素・ビリルビン障害と肝不全を併発した患者100名を対象に、UDCA3500mgを3週間で計10回(68時間に1回)静脈内に注射し、標準化した。吐き気と嘔吐は毎日日記カードに記録し、生活の質(QOL)は治療前と終了時に、ロッテルダム症状チェックリスト(RSCL)質問票を用いて評価した。無気力、脱力感、重苦しさ、右季肋部痛、食後傾眠、夜間不眠、逆流、膨満と腹鳴、便秘症状痔疾、痒み、皮膚発疹、ダーモグラフイを評価し、RSCL症状チェックリストで1(全くない)、2(少し)、3(かなり)、4(非常に多い)のスコアを与えた。点数が高いほど、症状が強く、生活の質が悪いことを意味する。
【0056】
その結果、静脈内UDCAにより肝不全症状は全体的に良好な反応を示し、機能検査値もトランスアミナーゼ、ビリルビンを中心に著明に改善されたことが確認された。UDCA投与前(T0)とUDCA投与3週間後(T1)に測定したGGT、ALP(アルカリフォスファターゼ)、ALT、ASPパラメータを図3に示す。図4に示すように、UDCA静脈内投与(T1)後、ビリルビンは多様に減少し、アルブミン合成は多様に増加した。静脈内UDCAデリバリーによる効果は、化学物質中毒患者、多発性肝転移患者(multi metastatic liver colonization)のいずれにも認められ、肝実質への未侵襲量に大きく依存した。T0(治療前)とT1(3週間経った静脈内UDCA治療終了後)のRSCL症状比較により評価された生活の質を図5に示す。化学療法の毒性、肝転移、腫瘍随伴性などによる消化管機能障害や肝機能障害を持つがん患者は、経口デリバリーでは十分な吸収率が得られず、副作用の可能性があるため、UDCAを非経口(静脈内)投与することにより効果的に改善することができる非常に貧しい生活の質を有することがわかる。
【0057】
実施例3:胆嚢透明結石の溶解と疝痛に対するUDCAの静脈内投与
【0058】
35歳から65歳で、直径0.3mmから0.9mmの放射状胆石と肝酵素の変化により、突発性胆道結石性疝痛が出現した患者20名を対象とした。中には、発熱はないが、吐き気や嘔吐を伴う強い痛みを訴え、炎症マーカー(ESR、CRP)が陰性で白血球がわずかに増加し、胆嚢徒手検査で反跳性圧痛がない黄疸の患者も含まれる。
【0059】
最初20名の患者は6日間12時間ごとに肘静脈からUDCA3500mgを投与された。入院時の最初の点滴は、患者が耐え難い痛みに苦しんでいるため、ヒオスチンNブチルブロマイド20mgとジクロフェナク75mgを追加した。最初の週の終わりに疝痛が完全に治まったので、患者を10人ずつ2つのグループに分け(表-5)、第1グループには3500mg(平均70kgの体重の患者に対して50mg/kg)のUDCAを週2回(84時間に1回)3ヶ月間静脈内に投与し(合計24回)、第2グループにはUDCA 0.7 g/kgを3ヶ月間経口投与した。
【表5】
【0060】
20名の患者に対してUDCAを静脈内投与し、鎮痙剤のヒオスチンNブチルブロマイド(20mg)の1アンプルとジクロフェナク(75mg)を加えた対症療法で、最初の1週間は疝痛が再発することはなく、患者は治療開始2日目から気分が良くなり経口栄養を再開したが、非経口治療の副作用は記録されなかった。
【0061】
最初の1週間後、経口UDCAと静脈内UDCA療法の2群に分けたところ、経口投与群では最初の40日間に10例中4例に疝痛が再発したが、静脈内投与群では再発しなかった。胆石のエコー検査では、静脈内投与群では7例、経口投与群では3例で胆石の溶解が確認された。非経口群では、残りの3名が治療前の画像と比較して、スラッジ(血泥)結石と全体の結石量が50%以上減少していることが確認された。経口UDCA群では、残りの患者の結石体積の減少は平均30%未満であった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】