(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】電界、接触力、及び時間に基づく不可逆的エレクトロポレーション(IRE)
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538963
(86)(22)【出願日】2020-01-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 IB2020050683
(87)【国際公開番号】W WO2021130542
(87)【国際公開日】2021-07-01
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン・アンドレス・クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴバリ・アサフ
(72)【発明者】
【氏名】グリナー・バディム
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK23
4C160KK63
(57)【要約】
方法は、プローブを使用して、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスをある期間にわたって組織に印加して、組織内に損傷を形成することを含む。プローブによって組織に印加される接触力が、その期間にわたって測定される。IRE係数は、測定された接触力及びIREパルスの電力レベルに基づいて計算される。IREパルスの組織への印加は、計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して、中止される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスを印加するためのシステムであって、前記システムは、
プローブであって、前記IREパルスをある期間にわたって前記組織に印加して、前記組織内に計画された深さを有する損傷を形成するように構成されている、プローブと、
プロセッサであって、
前記IREパルスによって前記組織内で生成される電界をシミュレートして、前記損傷の前記計画された深さを達成するであろう前記IREパルスの電力レベルを設定し、
前記期間にわたって前記プローブによって前記組織に印加される接触力を測定し、
前記測定された接触力及び前記IREパルスの前記電力レベルに基づいてIRE係数を計算し、
前記計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して、前記IREパルスの前記組織への印加を中止するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、第1の較正指数でべき乗された前記接触力と、第2の較正指数でべき乗された前記電力との積の前記期間にわたる積分を計算することによって、前記IRE係数を計算するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記IRE係数及び前記事前指定された標的IRE係数値をユーザに提示するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記IRE係数は、前記損傷の推定体積に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記IRE係数は、前記損傷の推定深さに対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記IRE係数は、前記損傷の推定直径に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記IREパルスのピーク電圧を測定することによって、前記電力レベルを測定するように更に構成されている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は全般に、心組織の不可逆的エレクトロポレーション(IRE)に関するものであり、特にIRE中に形成される損傷の大きさの推定に関するものである。
【背景技術】
【0002】
心高周波(RF)アブレーションパラメータの推定、及び推定に従ってRFアブレーションを制御することは、特許文献において以前に提案されている。例えば、米国特許出願公開第2017/0014181号は、ある期間にわたって組織をアブレーションすることと、この期間中に印加された接触力を測定することと、この期間中に使用された電力を測定することとからなる、方法を記載している。この方法は、組織内に生成された損傷が、この期間に対する、第1の1ではない指数でべき乗された接触力と第2の1ではない指数でべき乗された電力との積の積分を使用して推定した所望の大きさに達した場合に、組織のアブレーションを中止することを更に含む。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2016/0213282号は、力-時間積分を利用して、カテーテルベースのアブレーションシステムにおいて損傷の大きさを実時間で推定する方法及び装置を記載している。この装置は、接触アブレーションプローブによって標的組織にかけられた力を測定し、その力を接触アブレーションプローブの通電時間で積分する。力-時間積分を計算し、利用して、損傷の大きさ(深さ、体積及び/又は面積)の推定を実時間で提供することができる。力-時間積分はまた、標的組織に実時間で送達される電力変化の原因も説明し、病変部サイズの推定の一層の改善をもたらすことができる。一実施形態では、力の計量は、スチームポップを防止するためにプローブに送達される所望の電力レベルを設定するためのフィードバックとして使用することができる。更に他の実施形態では、制御システムは、通電を低下若しくは無効にすることに加えて、又はこれらの代わりに、灌注を増加させるように適応され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な実施形態は、プローブを使用して、ある期間にわたって不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスを組織に印加して、組織内に損傷を形成することを含む方法を提供する。プローブによって組織に印加される接触力が、その期間にわたって測定される。IRE係数は、測定された接触力及びIREパルスの電力レベルに基づいて計算される。IREパルスの組織への印加は、計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して中止される。
【0005】
いくつかの例示的な実施形態では、IRE係数を計算することは、第1の較正指数でべき乗された接触力と、第2の較正指数でべき乗された電力レベルとの積のその期間にわたる積分を計算することを含む。
【0006】
いくつかの例示的な実施形態では、この方法は、IRE係数及び事前指定された標的IRE係数値をユーザに提示することを更に含む。
【0007】
例示的な実施形態では、IRE係数は、損傷の推定体積に対応する。別の例示的な実施形態では、IRE係数は、損傷の推定深さに対応する。更なる例示的な実施形態では、IRE係数は、損傷の推定直径に対応する。
【0008】
いくつかの例示的な実施形態では、この方法は、IREパルスのピーク電圧を測定することによって電力レベルを測定することを更に含む。
【0009】
いくつかの例示的な実施形態では、この方法は、損傷の計画された深さを推定するために、IREパルスによって生成された電界をシミュレートすることを更に含む。
【0010】
本発明の別の例示的な実施形態によれば、プローブとプロセッサとを含むシステムが追加的に提供される。プローブは、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスをある期間にわたって組織に印加して、組織内に損傷を形成するように構成されている。プロセッサは、(a)その期間にわたってプローブによって組織に印加される接触力を測定し、(b)測定された接触力及びIREパルスの電力レベルに基づいてIRE係数を計算し、(c)計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して、IREパルスの組織への印加を中止するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、不可逆エレクトロポレーション(IRE)治療のためのカテーテルベースのシステムの概略描画図である。
【
図2A】本発明の例示的な実施形態による、力、電力、深さ及びIRE係数対時間のグラフである。
【
図2B】本発明の例示的な実施形態による、力、電力、深さ及びIRE係数対時間のグラフである。
【
図2C】本発明の例示的な実施形態による、力、電力、深さ及びIRE係数対時間のグラフである。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による、
図1のシステムを使用して実施される、IRE治療の方法を概略的に示すフロー図である。
【
図4】本発明の例示的な実施形態による、IREパルスで駆動されたときに
図1のカテーテルの電極によって生成される電界のシミュレーションを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概論
組織、典型的には心臓処置を受けている患者の心臓の一部である組織内の損傷は、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)を使用してカテーテルによって生成され得る。カテーテルは、組織に接触するように挿入され、カテーテル電極間で高電圧双極性パルスが組織に印加され、細胞破壊及び損傷生成を引き起こす。
【0013】
IRE治療を予測及び制御するために、損傷の大きさに対応する普遍的かつ線形のIREスケールを有することが望ましいと思われる。可能なスケールは、カテーテルによって組織に印加される力Fと、IRE処置中に散逸する電力Pと、処置の時間Tとの積に比例すると仮定される損傷の大きさSに対応し得る。可能なスケールは電力Pを伴うが、損傷の大きさとの関係は、式P=H・I2に基づいて、IREパルス発生器のRMS出力電流(I)に関係する。式中、Hは定数である。この式は、以下の議論すべてに適用される。
【0014】
したがって、この仮定による損傷の大きさSを推定するためのスケールは、式1のSを使用して得ることができる。
【0015】
S=K・F・P・T (式1)
式中、Kは、比例定数であり、
【0016】
【数1】
であり、式中、V
pは、IREパルス発生器のピーク出力電圧であり、組織内のピーク電界E
pは、V
pに比例する。比例定数は、電極間の間隔を含むカテーテルのタイプに依存する。
【0017】
式1から明らかなように、式によって得られる損傷の大きさの推定値がF、P、及びTに線形比例するのは、式中でこれらの変数のそれぞれが1でべき乗されているためである。すなわち、式1の大きさSは、F、P、及びTの一次関数である。
【0018】
実際には、損傷の大きさと、F、P、及びTとの関係は、非線形であることが証明されており、したがって、求められるIREスケールも非線形になるであろう。この観察に続いて、開示された発明の例示的な実施形態は、F、P、及びTの値から損傷の大きさのより正確な推定を提供し、損傷の大きさのより正確な推定は、F、P、及びTの非線形関数を含む式の時間に対する積分を求めることによって得られる。この推定は、組織内に生成される損傷の体積、損傷の深さ、及び/又は損傷の直径を推定することとは別に、所望の大きさに達したときにIREを停止するように、組織のIRE中に適用され得る。
【0019】
本発明の例示的な実施形態では、普遍的IRE線形スケール(以降「IRE係数」と呼ばれる)は、第1の較正された1ではない指数でべき乗された接触力と、第2の較正された1ではない指数でべき乗された電力との積の期間にわたる積分を計算することによって導出される。
【0020】
いくつかの例示的な実施形態では、印加された力とIREパルスによって散逸される電力との時間積分である、IRE係数が提供される。IRE係数の値(損傷の異なる大きさ/体積に対する)は実験的に決定され、較正される。所与のタイプの心構造、及び所与の組織特性について、IRE係数の値は、損傷の大きさの反復可能な予測因子であると予想される。更に、IRE係数の所与の値の損傷の大きさは、異なる構造及び組織特性によって異なり得る。
【0021】
いくつかの例示的な実施形態では、医師は、組織内に損傷を形成するために、ある期間にわたってカテーテルで組織を不可逆的にエレクトロポレート(電気穿孔)する。その期間中、測定は、カテーテルによって印加される接触力及び組織に使用される不可逆的エレクトロポレーション電力で行われる。測定された接触力及び不可逆的エレクトロポレーション電力に基づいて、IRE係数が導出され(例えば、計算され)、計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したときに、組織への不可逆的エレクトロポレーションが停止される。普遍的かつ線形のIRE係数を使用すると、推定される大きさが所望の大きさに達したときに、確実にIRE処理が停止され得る。
【0022】
本発明のいくつかの例示的な実施形態は、IREシステム内の電極によって生成される電界を更にシミュレートし、その電界の値をグラフで表示する。実際にIREパルスを生成する前に、医師は、表示されたグラフィックを使用して、組織を破壊するのに適切な電界が印加されるように電極を位置付ける。例示的な実施形態では、プロセッサは、IRE係数、又は電極のセルとの接触力、及び/又は電極へのセルの近接性を考慮に入れることによって、表示される理論上の電界を調整し得る。
【0023】
IRE係数を提供することによって、カテーテルベースのIRE治療は、より安全かつより効果的に行われ得る。
【0024】
発明を実施するための形態
図1は、本発明の例示的な実施形態による、不可逆エレクトロポレーション(IRE)治療のためのカテーテルベースのシステム12の概略描画図である。以下に説明するように、
図3のフロー図を参照すると、処置には、前述のIRE係数を使用して導出され得る損傷の大きさの推定値が使用される。
【0025】
このIRE処置は、医師14により実施され、一例として、本明細書の以下の説明における処置は、ヒトの患者18の心臓の心筋16の一部のIREを含むと仮定される。
【0026】
アブレーションを実施するために、医師14は、プローブの遠位端22が患者の心臓に入るように、プローブ20、例として、Lassoカテーテル(Biosense Webster(Irvine、California)製)を患者の内腔に挿入する。インセット25が示すように、遠位端22は、遠位端22の弓状部分40の外側に取り付けられた複数の電極24を含み、電極は、心筋の位置に接触する。遠位端22は、力センサ45も含む。プローブ20は、近位端28も含む。
【0027】
システム12は、システムの操作コンソール48内に位置するシステムプロセッサ46により制御される。コンソール48は、医師14がプロセッサと通信するために使用する制御装置49を備える。処置中、プロセッサ46は、典型的には、当技術分野で既知である任意の方法を使用して、プローブの遠位端22の位置及び配向を追跡する。例えば、プロセッサ46は、磁気的な追跡方法を使用することができ、その方法では、患者18の外部の磁気送信機が、遠位端に位置決めされたコイルで信号を発生させる。Biosense Websterにより製造されるCarto(登録商標)システムは、このような追跡方法を使用する。別の例として、遠位端22の位置及び配向は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,456,182号に記載されているBiosense Webster製のAdvanced Catheter Location(ACL)システムを使用して追跡されてもよい。ACLシステムでは、プロセッサは、複数の電極24のそれぞれと患者18の皮膚に連結されている複数の表面電極との間で測定されたインピーダンスに基づいて、複数の電極24のそれぞれの位置を推定する。
【0028】
プロセッサ46のためのソフトウェアは、例えば、ネットワークを経由して電子的形態でプロセッサにダウンロードすることができる。代替的に又は追加的に、ソフトウェアは、光学的、磁気的、又は電子的記憶媒体などの非一時的有形媒体上で提供され得る。遠位端22の行路は、典型的には、画面62上に、患者18の心臓の3次元表示60で表示される。システム12で実施されるIRE治療の進行は、典型的に、スクリーン62上にグラフィック64及び/又は英数字データ66としても表示される。
【0029】
システム12を操作するために、プロセッサ46は、システムを操作するためにプロセッサにより使用されるいくつかのモジュールを有するメモリ50と通信する。ゆえに、メモリ50は、電力制御モジュール54及び力モジュール56を含む。電力制御モジュール54は、IRE電力を電極24に送達し、また、典型的に、電極により送達された瞬間ピーク電圧Vp(t)を測定することによって、時間tにて送達された瞬間電力P(t)を測定する。波形が固定されている場合、Vp(t)は、瞬間RMS電圧VRMS(t)を測定することによって決定され得る。力モジュール56は、遠位端22の力センサ45からの信号を取り込んで評価することにより、時間tにおける瞬間接触力CF(t)を測定する。メモリ50は、他のモジュール、例えば温度測定モジュール及び灌注モジュールを備え得る。簡潔にするために、そのような他のモジュールは、本出願には詳細に記載されていない。メモリ50のモジュールは、ハードウェア並びにソフトウェア要素も備え得る。
【0030】
IRE係数の導出
組織のIREによって生成される損傷の体積の一般的な推定値は、以下のように書くことができる。
【0031】
【数2】
式中、
V(T)は、期間TにわたってIREによって生成された損傷の体積であり、
Cは、比例定数であり、
CF(t)は、アブレーション中に組織に印加された、時間tにおける瞬間接触力の値であり、
P(t)は、アブレーション中に散逸した、時間tにおける瞬間電力の値であり、
α、βは、1(unity)に等しくない値を有する数値指数である。
【0032】
上記のように、電力Pは、ピーク電圧Vpの流れに関して
【0033】
【数3】
として表すことができるため、式2は、以下のように書くこともできる。
【0034】
【数4】
式中、Hは定数であり、V
p(t)は、時間t印加された瞬間ピーク電圧の値である。
【0035】
以下の結果説明では、式2及び式2aの評価において変数のそれぞれに使用される単位は、例として、表Iのように仮定される。
【0036】
【0037】
式2及び式2aに対する代替式は、以下に示す式3及び式4である。
【0038】
【数5】
式中、項のそれぞれは、式2及び式2aに関して上記に定義されたとおりであり、Depthは、mm単位の損傷の深さであり、γは、1(unity)に等しくない数値指数である。
【0039】
【数6】
式中、項のそれぞれは、式2及び式2aに関して上記に定義されたとおりであり、Diamは、mm単位の損傷の直径であり、δは、1に等しくない数値指数である。
【0040】
式への近似式
式2、2a、3、及び4は、CF又はP又はIが期間Tにわたって変化しないものと仮定することによって近似され得る。以下の説明に、式3に関する近似式について記載するが、当業者は、式2及び式4に関する同様の近似式を適用することができよう。
【0041】
簡略化のために、以下の説明において、式3は、電流ではなく電力で使用される。
【0042】
【0043】
Pがアブレーションの期間Tにわたって固定値を有すると仮定する場合、式3’は、以下のように書き換えることができる。
【0044】
【0045】
CFがほぼ固定されているか、又は
【0046】
【0047】
【数10】
式中、ACFは、期間TにわたるCFの平均値である。
【0048】
式6を式5に代入すると、次式が得られる。
【0049】
【0050】
C、α、β、及びγの値
式7の両辺の対数を取ると、次式が得られる。
【0051】
【0052】
式8におけるC、α、β、及びγの値は、実験的に導出及び較正され得、これには、線形回帰分析を使用して、C、α、β、及びγを評価することが含まれる。
【0053】
積分
【0054】
【数13】
は、本明細書ではIRE係数と呼ばれ、I
FTP_IREと称される。ゆえに、次式のようになる。
【0055】
【0056】
図2A、
図2B、及び
図2Cは、本発明の一実施形態による、力、電力、深さ、及びFTP_IRE対時間の概略的なグラフである。グラフは、電力及び力の両方が変化したときに、推定された深さ及びIRE係数がどのように見え得るかを示す。IRE係数対時間のグラフは、推定IRE係数がIRE治療の期間とともに直線的に増加するように設計されていることを示す。
【0057】
所与のタイプの心構造、及び所与の組織特性について、IRE係数の値は、損傷の大きさの反復可能な予測因子であると予想される。更に、アブレーション係数の所与の値の損傷の大きさは、異なる構造及び組織特性によって異なり得る。
【0058】
図3は、本発明の例示的な実施形態による、
図1のシステム12を使用して実施される、IRE治療の方法を概略的に示すフロー図である。初期工程100では、医師は、計画された損傷を形成するために標的IRE係数値を選択する。例として、医師は、1mm~5mmの範囲の所望の深さをもたらす標的IRE係数値を選択し得る。加えて、医師は、使用される深さ推定式(本明細書では式3と仮定される)に用いるC、α、β、及びγの値を選択する。
【0059】
IRE治療の開始工程102では、医師は、制御手段49を使用して、電力制御モジュール54によって送達される公称電力がもたらす、所与のピーク電圧を有する電圧波形を選択する。典型的に、結果として生じる電力は数ミリワットの範囲内であるが、この範囲外の電力が生じることもある。ピーク公称電圧を選択した後、医師は制御手段49を使用して、IRE治療を開始する。
【0060】
測定工程104において、アブレーションが実施されているときに、電力制御モジュール54は、導出された公称電力とは異なり得る、電極24によって散逸される瞬間電力P(t)を測定する。加えて、力モジュール56は、遠位端22にて瞬間接触力CF(t)を測定する。
【0061】
計算工程106では、IRE治療が進行すると、プロセッサ46は、定期的に、式5で使用される積分の値、すなわち、アブレーション係数の値IFTP_IREを式9で計算する。IRE係数推定工程108では、プロセッサは、式9を使用して、推定IRE係数の値を計算する。
【0062】
判定工程110において、プロセッサは、推定IRE係数が標的IRE係数値に等しいか否かを確認する。最終工程112で正の判定が返されると、プロセッサはIRE治療を停止する。負の判定が返された場合、プロセッサは、アブレーション継続工程114において、IRE治療の適用を継続し、フロー図は測定工程104に戻る。
【0063】
IREパルスによって形成された損傷の計画された深さを更に推定するために、開示された技術は、IREパルスによって生成された電界をシミュレートすることを更に含む。
図4は、本発明の例示的な実施形態による、IREパルスで駆動されたときに
図1のカテーテルの24個の電極によって生成される電界のシミュレーションを概略的に示す図である。
図4は、ラッソー40カテーテル上の双極電極によって生成されたRMS値化された理論上の電界線60を示す。
【0064】
実際にIREパルスを生成する前に、医師14は、表示されたグラフィックを使用して、破壊することが望ましい組織細胞に適切な電界が印加されるように電極24を位置付ける。
【0065】
見られるように、シミュレートされた電界は、深さ70の空間を貫通し、深さ70は、例えば、式3bを使用して、IREパルス(例えば、ピーク電圧、VP)の強度を計画するために使用され得る。
【0066】
図4には示されていないが、いくつかの例示的な実施形態は、電極のセルとの接触力、及び/又は電極へのセルの近接性を考慮に入れることによって、表示される理論的電界を調整し得る。
【0067】
本明細書に記載される例示的な実施形態は、主に心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経学、腎除神経学、及び耳鼻咽喉科学などの他の医療用途で用いることもできる。
【0068】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0069】
〔実施の態様〕
(1) 組織に不可逆的エレクトロポレーションパルスを印加する方法であって、前記方法は、
プローブを使用して、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスをある期間にわたって組織に印加して、前記組織内に損傷を形成することと、
前記期間にわたって前記プローブによって前記組織に印加される接触力を測定することと、
前記測定された接触力及び前記IREパルスの電力レベルに基づいてIRE係数を計算することと、
前記計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して、前記IREパルスの前記組織への印加を中止することと、を含む、方法。
(2) 前記IRE係数を計算することは、第1の較正指数でべき乗された前記接触力と、第2の較正指数でべき乗された前記電力レベルとの積の前記期間にわたる積分を計算することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記IRE係数及び前記事前指定された標的IRE係数値をユーザに提示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記IRE係数は、前記損傷の推定体積に対応する、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記IRE係数は、前記損傷の推定深さに対応する、実施態様1に記載の方法。
【0070】
(6) 前記IRE係数は、前記損傷の推定直径に対応する、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記IREパルスのピーク電圧を測定することによって、前記電力レベルを測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記損傷の計画された深さを推定するために、前記IREパルスによって生成された電界をシミュレートすることを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 組織に不可逆的エレクトロポレーションパルスを印加するためのシステムであって、前記システムは、
プローブであって、不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスをある期間にわたって組織に印加して、前記組織内に損傷を形成するように構成されている、プローブと、
プロセッサであって、
前記期間にわたって前記プローブによって前記組織に印加される接触力を測定し、
前記測定された接触力及び前記IREパルスの電力レベルに基づいてIRE係数を計算し、
前記計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して、前記IREパルスの前記組織への印加を中止するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(10) 前記プロセッサは、第1の較正指数でべき乗された前記接触力と、第2の較正指数でべき乗された前記電力との積の前記期間にわたる積分を計算することによって、前記IRE係数を計算するように構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0071】
(11) 前記プロセッサは、前記IRE係数及び前記事前指定された標的IRE係数値をユーザに提示するように更に構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(12) 前記IRE係数は、前記損傷の推定体積に対応する、実施態様9に記載のシステム。
(13) 前記IRE係数は、前記損傷の推定深さに対応する、実施態様9に記載のシステム。
(14) 前記IRE係数は、前記損傷の推定直径に対応する、実施態様9に記載のシステム。
(15) 前記プロセッサは、前記IREパルスのピーク電圧を測定することによって、前記電力レベルを測定するように更に構成されている、実施態様9に記載のシステム。
【0072】
(16) 前記プロセッサは、前記損傷の計画された深さを推定するために、前記IREパルスによって生成された電界をシミュレートするように更に構成されている、実施態様9に記載のシステム。
(17) 組織に不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスを印加する方法であって、前記方法は、
前記IREパルスによって前記組織内に作られる損傷の計画された深さを定義することと、
前記IREパルスによって前記組織内に生成される電界をシミュレートし、前記損傷の前記計画された深さを達成する前記IREパルスの電力レベルを設定することと、
プローブを使用して、前記IREパルスをある期間にわたって前記組織に印加して、前記損傷を形成することと、
前記期間にわたって前記プローブによって前記組織に印加される接触力を測定することと、
前記測定された接触力及び前記IREパルスの前記電力レベルに基づいてIRE係数を計算することと、
前記計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して、前記IREパルスの前記組織への印加を中止することと、を含む、方法。
(18) 前記IRE係数を計算することは、第1の較正指数でべき乗された前記接触力と、第2の較正指数でべき乗された前記電力レベルとの積の前記期間にわたる積分を計算することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記IRE係数及び前記事前指定された標的IRE係数値をユーザに提示することを含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記IRE係数は、前記損傷の推定体積に対応する、実施態様17に記載の方法。
【0073】
(21) 前記IRE係数は、前記損傷の推定深さに対応する、実施態様17に記載の方法。
(22) 前記IRE係数は、前記損傷の推定直径に対応する、実施態様17に記載の方法。
(23) 前記IREパルスのピーク電圧を測定することによって、前記電力レベルを測定することを含む、実施態様17に記載の方法。
(24) 組織に不可逆的エレクトロポレーション(IRE)パルスを印加するためのシステムであって、前記システムは、
プローブであって、前記IREパルスをある期間にわたって前記組織に印加して、前記組織内に計画された深さを有する損傷を形成するように構成されている、プローブと、
プロセッサであって、
前記IREパルスによって前記組織内で生成される電界をシミュレートして、前記損傷の前記計画された深さを達成するであろう前記IREパルスの電力レベルを設定し、
前記期間にわたって前記プローブによって前記組織に印加される接触力を測定し、
前記測定された接触力及び前記IREパルスの前記電力レベルに基づいてIRE係数を計算し、
前記計算されたIRE係数が事前指定された標的IRE係数値に達したことに応答して、前記IREパルスの前記組織への印加を中止するように構成されている、プロセッサと、を備える、システム。
(25) 前記プロセッサは、第1の較正指数でべき乗された前記接触力と、第2の較正指数でべき乗された前記電力との積の前記期間にわたる積分を計算することによって、前記IRE係数を計算するように構成されている、実施態様24に記載のシステム。
【0074】
(26) 前記プロセッサは、前記IRE係数及び前記事前指定された標的IRE係数値をユーザに提示するように更に構成されている、実施態様24に記載のシステム。
(27) 前記IRE係数は、前記損傷の推定体積に対応する、実施態様24に記載のシステム。
(28) 前記IRE係数は、前記損傷の推定深さに対応する、実施態様24に記載のシステム。
(29) 前記IRE係数は、前記損傷の推定直径に対応する、実施態様24に記載のシステム。
(30) 前記プロセッサは、前記IREパルスのピーク電圧を測定することによって、前記電力レベルを測定するように更に構成されている、実施態様24に記載のシステム。
【国際調査報告】