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特表2023-511056光電デバイスに適用可能で、デュアル捕獲機構と超短減衰時間を備えた超蛍光セリウム(III)含有キレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】光電デバイスに適用可能で、デュアル捕獲機構と超短減衰時間を備えた超蛍光セリウム(III)含有キレート
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/00 20060101AFI20230309BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230309BHJP
   C07D 235/14 20060101ALI20230309BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20230309BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
C07F5/00 D
H05B33/14 B
C07D235/14
C07D307/91 CSP
C09K11/06 660
C09K11/06 690
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542356
(86)(22)【出願日】2021-01-16
(85)【翻訳文提出日】2022-07-11
(86)【国際出願番号】 CN2021072344
(87)【国際公開番号】W WO2021159918
(87)【国際公開日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】102020103268.4
(32)【優先日】2020-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518032281
【氏名又は名称】四川知本快車創新科技研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】SICHUAN KNOWLEDGE EXPRESS INSTITUTE FOR INNOVATIVE TECHNOLOGIES CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.3, Tengfei Road Shigao Renshou, Tianfuxinqu Meishan, Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】イェルサン、ハルトムート
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107AA02
3K107AA03
3K107BB01
3K107BB02
3K107BB05
3K107CC04
3K107CC07
3K107DD53
3K107DD54
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD69
3K107FF06
3K107FF11
3K107FF12
3K107FF13
3K107FF14
3K107FF20
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB92
4H048VA32
4H048VA75
4H048VB10
(57)【要約】
【要約】
本発明は、励起状態デュアル捕獲機構を用いて、非常に短い減衰時間を有する超蛍光セリウム(III)含有キレートの組成物、特にOLED用途に用いる分子組成物に関する。この組成物は、Ce(III)キレート形態の中性ドナーと中性蛍光アクセプター分子を有する。本発明による組成物を使用して、特に深青色発光領域に対し、非常に短い発光減衰時間で純粋な色の発光を生成することができる。前記組成物は、励起状態デュアル捕獲機構を使用する。この新たな励起子捕獲機構は、第5世代の有機発光ダイオード(OLED)及びその他の光電デバイスに分類できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子であって、以下の式I若しくは式IIで表される構造を有するか、又は以下の式I若しくは式IIで表される構造で構成され、
式中、
は、 置換若しくは未置換のピラゾリル基、トリアゾリル基、ヘテロアリール基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フェノール基、アミノ基及びアミド基のうちから選択され、Rは、 Rと同一又はHであり、
、R、R、R及びR は、それぞれ H、ハロゲン、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基であり、特にアルキル、アリール、ヘテロアリール、好ましくは、R~Rは、互いに独立してフッ素化され、即ち、特に少なくとも1つのFを有する、ことを特徴とする分子。
【請求項2】
以下の式で表される構造を有するか、又は以下の式で表される構造で構成され、
Ce[pzB(Cz)]
式中、Czは、カルバゾリル基で、pzは、ピラゾリル基であり、
Czは、互いに独立して、任意の位置で1つ又は2つのtert-ブチルによって置換される、ことを特徴とする請求項1に記載の分子。
【請求項3】
Ce[pzB(2,7-t-Bu-Cz)]、Ce[pzB(3,6-t-Bu-Cz)]又はCe[pzB(4,5-t-Bu-Cz)]で表される構造を有するか、前記構造で構成され、
式中、t-Buは、tert-ブチルである、ことを特徴とする請求項2に記載の分子。
【請求項4】
以下の式III若しくは式IVで表される構造を有するか、又は以下の式III若しくは式IVで表される構造で構成され、
式中の配位子は、テトラシス(ピラゾリル)ボレート又はテトラシス(トリアゾリル)ボレート配位子である、ことを特徴とする請求項1に記載の分子。
【請求項5】
、R、R、R及びRはそれぞれ、互いに独立して、水素、ハロゲン、又はヘテロ原子含有及び/又は置換若しくは未置換の炭化水素基から選択され、ヘテロ原子は、O、S、N、P、Si、Se、F、Cl、Br及び/又はIから選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の分子。
【請求項6】
、R、R、R及びRは、水素又はハロゲンである、ことを特徴とする請求項5に記載の分子。
【請求項7】
分子であって、以下の式V若しくは式VIで表される構造を有するか、又は以下の式V若しくは式VIで表される構造で構成され、
式中、Rは、CHCH,CHCHCH又はCH-CH-CHである、ことを特徴とする分子。
【請求項8】
少なくとも1つの重水素を有する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の分子。
【請求項9】
蛍光アクセプター分子の組成物における中性ドナー分子としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の分子の使用。
【請求項10】
組成物であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の分子をCe(III)キレート形態とする中性ドナー分子と、
式VII~IXのいずれかで表される化合物である蛍光アクセプター分子と、を含む、ことを特徴とする組成物。
【請求項11】
前記中性ドナー分子は、有機配位子と配位する8~12配位のCe(III)中心イオンを有する、ことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記有機配位子は、2配位又は3配位のキレート配位子であり、且つ/又は前記有機配位子の最低の三重項状態は、エネルギーが最低のCe(III)キレートの励起状態よりもエネルギー的に高い、ことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記有機配位子は、一重項励起子と三重項励起子を捕獲するための、1つ又は2つの環を有する芳香族又はヘテロ芳香族環系を有し、最低の配位子励起一重項状態S(L)及び最低の配位子励起三重項状態T(L)はいずれも占有され、S(L)からT(L)への高速の項間交差が発生し、続いて分子内エネルギーを介してCe(III)中心に迅速に移動する、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記蛍光アクセプター分子は、
前記アクセプターの十進モル吸光係数が20,000 Lmol-1cm-1を超え、
半値全幅(FWHM)< 0.25eV、特に< 0.2eVであり、
発光量子収率φPL >70%、特に>90%の発光を有し、
発光減衰時間τ<10ns、特に<2ns、かつ/又は
発光ピークの最大値が、深青色スペクトル領域に対し、420nm~480nmの領域内にある、ことを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEEC)、OLEDセンサ、有機発光トランジスタ及び有機レーザーから選択される光電デバイスを製造するための請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の分子又は請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物を有する光電デバイス。
【請求項17】
基板と、陽極と、陰極と、少なくとも1つの発光層とを含み、
前記陽極又は前記陰極は前記基板上に設けられ、前記少なくとも1つの発光層は、前記陽極と前記陰極との間に配置され、請求項1~9のいずれか一項に記載の分子又は請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物を有する、ことを特徴とする請求項16に記載の光電デバイス。
【請求項18】
発光層における前記Ce(III)キレートドナー分子の質量ドーピング率は、発光層の99%~10%、特に18%~12%である、ことを特徴とする請求項17に記載の光電デバイス。
【請求項19】
前記蛍光アクセプター分子の質量ドーピング率は、発光層の0.5%~5%、特に1%である、ことを特徴とする請求項18に記載の光電デバイス。
【請求項20】
請求項16~19に記載の光電デバイスを製造する方法であって、請求項1~9に記載の分子又は請求項10~14に記載の組成物を使用する、ことを特徴とする方法。
【請求項21】
光電子デバイスにおけるすべての一重項と三重項励起子を完全に捕獲する方法であって、請求項1~9に記載の分子をCe(III)キレートドナーとして蛍光アクセプターへの非放射エネルギー移動に使用する、ことを特徴とする方法。
【請求項22】
緑色又は赤色光を発光する蛍光アクセプター分子を使用することにより、寿命が短く、<10ns又は >2nsで、対応するスペクトル領域に対して色純度が高い超蛍光を生成する、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小さな半値全幅及び短い減衰時間で超蛍光を生成するために、特に深青色発光を生成するために、非放射性エネルギー移動を行う、ドナーとしてのセリウム(III)キレート分子及びアクセプターとしての蛍光分子を有する組成物に関する。
【0002】
青色、緑色又は赤色発光の蛍光アクセプター材料は、セリウム(III)キレート分子と結合した後、それに対応するスペクトル範囲内で、高い色純度と短い寿命の超蛍光発光を生成する。
【背景技術】
【0003】
OLEDは、スクリーン技術、さらには一部の照明技術にまで、深く形を整えたり、少なくとも影響を与えたりしてきた。例えば、Yersin, H. (Ed.). (2008). Highly efficient OLEDs with phosphorescent materials(リン光に基づく高効率OLED). John Wiley & Sons. 及びYersin, H. (Ed.). (2019). Highly efficient OLEDs: Materials based on thermally activated delayed fluorescence(高効率OLED:熱活性化遅延蛍光に基づく材料). John Wiley & Sons.には、従来技術に関する概要が記載されている。
【0004】
しかしながら、特に発光層の材料には、まだ欠陥がある。特に、青色光発光材料は、これまでのところ、高効率OLEDデバイスに必要な色純度と十分な安定性を満たすことができない。また、緑色光エミッターと赤色光エミッターの色純度要件は完全に満たされていない。
【0005】
この問題を解決する方法は、OLED発光層で生成された一重項又は三重項励起子の全て、つまり100%が、熱活性化遅延蛍光に基づくエミッター、いわゆるTADFエミッターによって捕獲されることを確実にすることである。Yersin, H. (Ed.). (2019). Highly efficient OLEDs: Materials based on thermally activated delayed fluorescence(高効率OLED:熱活性化遅延蛍光に基づく材料). John Wiley & Sons., H.Yersin, U. Monkowius, DE 10 2008 033563,2008年7月17日に登録された,Uoyama, H., Goushi, K., Shizu, K., Nomura, H., & Adachi, C. (2012). Highly efficient organic light-emitting diodes from delayed fluorescence(遅延蛍光による高效有機発光ダイオード). Nature, 492(7428), 234-238。しかしながら、これらの材料は、通常、比較的広い半値全幅4000 cm-1 (FWHM,0.5eV)の発光バンドを示す。そのため、例えば、最大発光ピークが深青領域にある発光材料は、緑色光領域でも同等の強度を有し、深青色ではなく空色発光をもたらす。そのため、色純度の改善が期待されている。
【0006】
この色純度の問題を解決する方法は、OLED発光層に大きな半値全幅のTADFエミッターを使用することに加えて、追加の成分、つまり純粋な有機蛍光分子Fを導入することである。この分子の蛍光スペクトルは、TADFエミッターよりも明らかに狭い半値全幅(例えば、0.25eV未満)を持っている。さらに重要なことに、前記蛍光分子Fは、Foersterエネルギー移動機構(双極子間のエネルギー移動)による非放射エネルギー移動に適し、TADF発光(ドナー)を効果的に排除し、自発的に蛍光(アクセプター)を効果的に生成する(Forsterエネルギー移動メカニズムは、当業者によく知られている)。例えば、参考文献[Turro, N. (1978). Modern Molecular Photochemistry. Menlo Park, California: The Benjamin/Cummings Publishing Co.;Barltrop, J. A., & Coyle, J. D. (1975). Excited states in organic chemistry. Wiley.;Baumann, T., Budzynski, M., & Kasparek, C. (2019, June). 33‐3: TADF Emitter Selection for Deep‐Blue Hyper‐Fluorescent OLEDs. In SID Symposium Digest of Technical Papers (Vol. 50, No. 1, pp. 466-469).]では、対応する条件が議論されている。このメカニズムにとって重要なのは、ドナー発光(ここで:TADF放出)及びアクセプター吸収(ここで:蛍光分子F)のスペクトルが良好に重なり、蛍光分子Fが重なり吸収帯で高い十進モル吸光係数ε(ε > 25000 Lmol-1cm-1)を有することである。TADFエミッターと蛍光分子Fとの間の平均距離は一般に3~4nmを超えないが、TADFエミッターと蛍光分子Fとの平均距離が1nm未満の場合は除外する必要があり、具体的な理由については後で説明する。この概念によれば、適切な色純度(CIE y成分<0.15)と良好なデバイス効率(20%に近いEQE)を有する深青色発光のOLEDを得ることができることがわかる。前記方法は、一般に、超蛍光メカニズムと呼ばれる。[Adachi, C. (2013, June). 37.1: Invited Paper: Third Generation OLED by Hyperfluorescence. In SID Symposium Digest of Technical Papers (Vol. 44, No. 1, pp. 513-514). Oxford, UK: Blackwell Publishing Ltd.;Nakanotani, H., Higuchi, T., Furukawa, T., Masui, K., Morimoto, K., Numata, M., ... & Adachi, C. (2014). High-efficiency organic light-emitting diodes with fluorescent emitters. Nature communications, 5(1), 1-7.;Han, S. H., & Lee, J. Y. (2018). Spatial separation of sensitizer and fluorescent emitter for high quantum efficiency in hyperfluorescent organic light-emitting diodes. Journal of Materials Chemistry C, 6(6), 1504-1508.;Jang, J. S., Han, S. H., Choi, H. W., Yook, K. S., & Lee, J. Y. (2018). Molecular design of sensitizer to suppress efficiency loss mechanism in hyper-fluorescent organic light-emitting diodes. Organic Electronics, 59, 236-242.;Byeon, S. Y., Lee, D. R., Yook, K. S., & Lee, J. Y. (2019). Recent Progress of Singlet‐Exciton‐Harvesting Fluorescent Organic Light‐Emitting Diodes by Energy Transfer Processes. Advanced Materials, 31(34), 1803714.;Baumann, T., Budzynski, M., & Kasparek, C. (2019, June). 33‐3: TADF Emitter Selection for Deep‐Blue Hyper‐Fluorescent OLEDs. In SID Symposium Digest of Technical Papers (Vol. 50, No. 1, pp. 466-469).]ただし、これまでのところ、TADFドナー分子と適切なアクセプター分子を使用して達成されたデバイスの寿命は限られている。[Baumann, T., Budzynski, M., & Kasparek, C. (2019, June). 33‐3: TADF Emitter Selection for Deep‐Blue Hyper‐Fluorescent OLEDs. In SID Symposium Digest of Technical Papers (Vol. 50, No. 1, pp. 466-469).]
【0007】
エミッターの発光減衰時間を短縮ことによって、OLEDデバイスの安定性を明らかに改善することができる。[Noda, H., Nakanotani, H., & Adachi, C. (2018). Excited state engineering for efficient reverse intersystem crossing. Science advances, 4(6), eaao6910.]。その理由は、エミッターの発光減衰時間を短縮することによって、励起状態での化学反応又は分解を明らかに減少するためである。また、発光減衰時間を短縮することによって、デバイスのロールオフ行為(電流密度又は輝度の増加に伴うデバイスの効率低下)も大幅に改善される。これまでに知られているTADFエミッターの発光減衰時間は比較的長く、数マイクロ秒程度である。そのため、従来技術に対し、ドナー分子の発光減衰時間を明らかに短縮する必要があり、これが本発明の課題である。当然のことながら、TADFエミッターと同様に、発光層で生成された励起子はすべて捕獲される必要がある。
【発明の概要】
【0008】
上記の欠点は、本発明によって改善することができる。
【0009】
意外にも、Ce(III)キレート(ドナー)と蛍光アクセプター分子Fの組成物は、(放射性)Ce(III)キレートの減衰時間が100nsよりも短く、これまで使用されているTADFエミッターの50分以下短いため、TADF減衰時間が数マイクロ秒であるという欠点を解消する。アクセプター分子Fとの組み合わせにより、効率的な非放射エネルギー移動(Foersterメカニズムによる)の後に狭帯域蛍光、つまり超蛍光が生成される(図1)。
【0010】
ドナー
本発明による蛍光分子Fとの組成物に使用される中性Ceドナーキレートは、Ce(III)中心イオンにより構成される。Ce(III)中心イオンは、8配位、好ましくは9配位又は最大12配位であり、主に有機キレート配位子により配位される。
【0011】
Ceドナーキレートの配位子は、好ましくは2配位、又は特に好ましくは3配位のキレート配位子である。前記配位子は、例えば、一重項又は三重項励起子を捕獲するのに適した、好ましくは単環又は二環系などの小さな有機芳香環又はヘテロ芳香環系を含む。これは、最低の配位子励起一重項状態S(L)及び最低の配位子励起三重項状態T(L)の両方が占有されていることを意味する。配位子は、最低の三重項状態がCe(III)の発光状態よりもエネルギー的に高くなるように選択される。属するエネルギー状態は、現在のスペクトル測定方法によって便利に確定することができる。対応するエネルギーの確定も、量子科学方法によって(例えば、TD-DFT法によって)取得することができる。
【0012】
Ce(690cm-1)の高スピン軌道カップリング定数に基づいて、配位状態間の高速なS(L)→T(L)項間交差及び振動緩和が実現される。次に、分子内でT(L)状態からCe(III)中心の最低励起状態への高速な非放射エネルギー移動が同様に行われる。ここでは、スピンとパリティが許容された2/3(5d*)状態が含まれ、効率的で高速な5d→4f放出は、そのエネルギーに近い5/2及び7/2状態(間隔 ≒ 2000cm-1)で発生し、50~100nsの減衰時間(アクセプター分子は関与しない)が伴う。(図1)Ce(III)中心での遷移は、蛍光放射過程である。関与するCe(III)キレートは、純粋なTADFタイプの一重項状態捕獲機構でも純粋な三重項状態捕獲機構でもなく、デュアル捕獲に関与する新たな励起子捕獲機構であり、第5世代OLEDの捕獲機構に帰属できる。(Yersin, H., Mataranga-Popa, L., Czerwieniec, R., & Dovbii, Y. (2019). Design of a New Mechanism beyond Thermally Activated Delayed Fluorescence toward Fourth Generation Organic Light Emitting Diodes. Chemistry of Materials, 31(16), 6110-6116.)では、第4世代OLEDの捕獲機構が説明されている)。
【0013】
好ましい実施形態では、ドナーキレートは、例えば、式I又はIIの分子である。
ここで、
= ピラゾリル、トリアゾリル、ヘテロアリール、アルキル、アリール、アルコキシ、フェノール基、アミノ基、アミド基、これらの基は、置換又は非置換であり、あるいは、特にカルバゾール(Cz)-基、又は1つ若しくは2つのtert-ブチルで置換されたカルバゾール基である。
【0014】
= R 又は H、
, R, R, R, R = H, ハロゲン、又はヘテロ原子を含み得る炭化水素基、特にアルキル、アリール、ヘテロアリール。化合物の揮発性を高めるために、R-Rは互いに独立にフッ素化することができ、即ち特に少なくとも1つのFを有する。
【0015】
好ましい実施形態では、ドナーキレートは、Ce[pzB(2,7-t-Bu-Cz)]、Ce[pzB(3,6-t-Bu-Cz)] 又は Ce[pzB(4,5-t-Bu-Cz)]、及びカルバゾリルが任意の位置に1つのtert-ブチルのみを有する化合物である。1つのカルバゾリル又は2つのカルバゾリルに1つ又は2つのtert-ブチル置換を有する物質が同様に好ましい。実施形態では、tert-ブチルがないキレート、即ち、以下の分子式Ce[pzB(Cz)]に従うものも好ましい。
【0016】
驚くべきことに、発光層に本発明によって式I又はIIのキレートを使用して、優れた性能を有する発光デバイスを取得することができる。水素基とは異なるR1基により、空気安定性で可溶性のCeキレート(式Iの物質)が得られる。同時に、ピラゾリル基の代わりにトリアゾリルを使用すると(式IIの化合物)、所望の性能が得られる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、本発明による組成物に使用されるドナーキレートは、例えば、化合物を合成して得るのが最も容易であるため、ホウ素原子にすべて置換パターンを有する化合物である。この場合、前記化合物は、好ましくい式III又はIVを有する。
【0018】
ここでは、テトラキス(ピラゾリル)ボレート又はテトラキス(トリアゾリル)ボレート配位子である。
【0019】
前記化合物の主な利点は、例えばHO、MeOH、EtOH、MeCN、CHCl、CHClなどほとんどすべての極性溶媒への良好な溶解性と、水及び酸素に対する良好な安定性を有することである。従って、前記化合物は、スピンコーティング、印刷及び/又はインクジエツト印刷プロセスに非常に適している。前記化合物は、真空昇華法又は気相蒸着法を使用して塗布することもできる。もう1つの主な利点は、保護雰囲気及び無水溶媒で合成を行うことなく、Ceキレートの合成を簡素化することである。前記キレートは、配位子の置換又は変更によって変化でき、その結果、発光特性(例えば遷移エネルギー、色、量子収率、減衰時間など)を変更又は制御する多くの可能性がある。
【0020】
これらのドナーキレート中のCe中心は、少なくとも9配位を有することが好ましい。これで、分解を防止することができる。ホウ素原子での置換基R又はRはキレート中心から離れているため、配位を妨害しない。これらの置換基は、溶解性を調整することができる。R=Hの場合、従来技術に記載されているように、難溶性のキレートが得られる。R置換基については、本発明によれば、例えばR=ピラゾリル、可溶性の化合物が得られる。これにより、湿式化学処理に非常に適した物質が得られ、これは重要な技術的利点である。
【0021】
は、好ましくは、ピラゾリルである。Rは、Hであり得る。好ましくは、Rは、H以外の残基である。特に好ましくは、Rはトリアゾリルである。
【0022】
残基R,R,R,R及びR(式IIIとIVに)はそれぞれ、水素,ハロゲン、あるいは任意選択でヘテロ原子を含み、及び/又は置換され得る炭化水素基から互いに独立して選択される。
【0023】
ヘテロ原子は、特にO,S,N,P,Si,Se,F,Cl,Br及び/又はIから選択される。残基R~Rは、0~10個、好ましくは0~5個のヘテロ原子を含み得る。残基(例えばR)がHである場合、Rはヘテロ原子を有していない。幾つかの実施形態では、残基R~Rはそれぞれ、少なくとも1つ、特に少なくとも2つのヘテロ原子を有する。前記ヘテロ原子はまた、置換基の骨格に、又は置換基の一部として存在し得る。一実施形態では、残基R~Rは炭化水素基であり、この炭化水素基は、1つ又は複数の置換基(官能基)を有する。適切な置換基又は官能基は、例えば、ハロゲン(即ち、F、Cl、Br又はI)、アルキル(特にC~C20、好ましくはC~Cアルキル)、アリール、O-アルキル、O-アリール、S-アリール、S-アルキル、P-アルキル、P-アリール、N-アルキル又はN-アリールである。多くの場合、キレートの揮発性を高めるために、残基R~Rのうちの少なくとも1つの残基は少なくとも1つのフッ素を含むことが好ましい。
【0024】
炭化水素基は、好ましくは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリールであり、特にアルキル、アリール又はヘテロアリールである。
【0025】
特に明記しない限り、本明細書で使用されるアルキル(Alkyl-)又はアルキル(Alk-)という用語は、それぞれ独立して、好ましくは、C-C20、特にC-Cの炭化水素基を表す。アリールという用語は、例えば5~12個の炭素原子を含む芳香環などの芳香族系を表し、炭素原子は、ヘテロ原子(例えばN、S又はOによって)によって置換され得る。
【0026】
すべての置換基R、R、R、R及びRは、好ましくは、水素又はハロゲン、即ち、空間的要求の少ない置換基である。空間的要求の少ない置換基の他の例は、例えば、式IとIIに示される。
【0027】
本発明による深青色超蛍光を生成するための前記ドナーキレートの適用に対し、有機配位子に使用される芳香族又はヘテロ芳香族基のサイズは単環又は二環系に限定されることが好ましい。
【0028】
ドナー分子の他の好ましい実施形態は、式Vで示される。
Rは、例えば、CHCH,CH CHCH又はCH-CH-CHである。
【0029】
Ce(III)ドナーキレートの別の好ましい実施形態は、式VIである。
【0030】
前記Ce(III)ドナーキレートの発光は、最高発光ピークが440nmであり、半値全幅(FWHM)が約4000cm-1(0.5eV)であり、減衰時間が約50nsと確定されている。光致発光量子収率φPL が約60%~85%の間である。キレートは、溶液(エタノール)と粉末状態下での最高発光ピークがほぼ同じ値を有する。Ce(III)キレートの配位子の部分又は完全な重水素化により、φPL値の増加、従ってOLED効率の増加が実現される。

アクセプター
【0031】
本発明によるCe(III)ドナーキレートと一緒に組成物として使用される蛍光アクセプター分子は、純粋な有機化合物であり、発光減衰時間が10ns未満であり、又は好ましくは2ns未満である。前記アクセプターの吸収帯は、Ce(III)ドナーキレートの発光領域にある必要があるため、ドナー発光とアクセプター吸収の明らかなスペクトル重なりを示す。目的は、フェルスター(Forster)機構による効率的な非放射エネルギー移動を実現することである。また、アクセプターの十進モル吸光係数εは20,000を超え、又は好ましくは40,000 Lmol-1cm-1を超える必要がある。発光が青色の条件下で、フェルスター(Forster)エネルギー移動半径は3~4nmである。高効率の非放射エネルギー移動の条件は、当業者に知られており、例えば、以下の参考文献に見出すことができる[Turro, N. J., & Photochemistry, M. M. (1978). Benjamin/Cummings. Menlo Park, CA, 317-319.; Barltrop, J. A., & Coyle, J. D. (1975). Excited states in organic chemistry. Wiley.;Baumann, T., Budzynski, M., & Kasparek, C. (2019, June). 33‐3: TADF Emitter Selection for Deep‐Blue Hyper‐Fluorescent OLEDs. In SID Symposium Digest of Technical Papers (Vol. 50, No. 1, pp. 466-469).] 。深青色超蛍光に使用されるアクセプター蛍光分子は、次のような発光を発生する必要がある。発光最大値は約420~480nmの範囲内、又は特に好ましくは450~470nmの範囲内にあり、半値全幅(FWHM)は0.25よりも狭く、あるいはより好ましくは0.2よりも狭く、又は0.18eVよりも狭い。また、発光量子収率φPL(ドナー分子なし)は70%よりも高く、又はより好ましくは90%よりよい。
【0032】
十進モル吸光係数εは、現在の吸収光度計で容易に確定することができる。
【0033】
深青色発光の一実施形態では、蛍光アクセプターは分子TBPe(式VII)である。
この化合物は、4つのtert-ブチルを特徴とする。それらは、ドナーとそのアクセプターとの間の空間距離を拡大するために使用され、Deter機構によるアクセプターのT状態への約1nmの移動半径の短距離エネルギー移動過程を大きく回避する。通常の蛍光分子(TADF分子を除く)の場合、T状態が放射ではなく遷移禁制により不活化されるため、T状態を占有すると励起子が失われるので、これは非常に重要である。
【0034】
深青色アクセプター発光の別の実施形態では、λmax=458nmとφPL=98%のBPPyA分子(式VIII)が選択される。
【0035】
深青色発光蛍光アクセプターの別の実施形態では、発光データλmax=456nm、FWHM=0.18eV及びCIE-y=0.09を有する式IXによる化合物が選択される。
【0036】
他の実施形態では、青色、緑色及び赤色で発光するデバイスに使用される他の蛍光アクセプター分子が選択される。例は以下に示される。
【0037】
青色光エミッター(アクセプター)の他の例:
【0038】
緑色光エミッターの例(アクセプター):
【0039】
赤色光エミッターの例(アクセプター):
【0040】
他の適切な蛍光アクセプター分子の例:
【0041】
言及したCe(III)ドナーキレートの合成及び蛍光アクセプター分子の合成はいずれも既知である。
【0042】
Ce(III)ドナー成分及び蛍光アクセプター成分、又はCe(III)ドナー成分及び蛍光アクセプター成分によりより構成される超蛍光を生成する組成物は、以下のデバイスに使用することができ、好ましくは、有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEEC)、OLEDセンサ(特に、非密閉型の蒸気又はガスセンサ)、有機発光トランジスタ又は有機レーザーに使用することができる。
【0043】
OLEDにCe(III)ドナー成分及び蛍光アクセプター成分、又はCe(III)ドナー成分及び蛍光アクセプター成分により構成される組成物を適用することが特に好ましい。前記OLEDデバイスは、複数のマッチング良好な薄層より構成される。対応する実施例は何度も開示されているため、当業者には知られている。
【0044】
本発明によれば、OLEDの発光層における様々な成分のドーピングに注意する必要がある。前記発光層は、ドナーとアクセプター成分を含み、真空昇華又は気相蒸着法によって溶液方式の加工(例えば、浸漬塗布、インクジェット印刷)によって実現することができる。前記発光層にはホスト材料があり、その最低の三重項状態はエネルギー的にCe(III)イオンの3/2状態よりも高く、又はより好ましくはCe(III)キレートの配位子のS(L)とT(L)状態より高い。対応するホスト材料及びそのT(ホスト)とS(ホスト)エネルギーはいずれも当業者に知られている。Ce(III)成分のドーピングは99%~10%であり、好ましくは12~18%(重量パーセント)である。アクセプター成分のドーピングは5%と0.5%の間であり、好ましくは1%である。このような低濃度が必要とされるのは、直接電荷捕獲又はアクセプター上の励起子の直接形成による効率損失を最小化するためであり、また、アクセプターのT状態への短距離dexterエネルギー移動を大きく回避するためである。これらの理由に基づいて、好ましいドナー及び/又はアクセプター成分、例えば、距離を増加させるtert-ブチルで置換される(例えば、ドナーの場合:tert-ブチルで置換されたカルバゾリルRを有する式I、及び、例えば、アクセプターの場合:式VII)。
【0045】
本発明の組成物を使用する利点は従来技術を超えて、特に生成する超蛍光の発光減衰時間を1から3桁短縮する。従来技術と比較して、特に深青色発光について、デバイスの使用寿命を大幅に延長する。また、従来技術と比較して、発光減衰時間を短縮することにより、デバイスのロールオフ性能を著しく下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】デュアル捕獲機構により、例えば、深青色超蛍光発光を実現する光物理的プロセスである。
【0047】
OLED発光層に生成された一重項と三重項励起子はすべてCe(III)キレート配位子のS(L)状態とT(L)状態によって捕獲される。高速の分子内エネルギー移動により、最低励起状態はCe(III)キレートにおける3/2状態によって占有される。5/27/2状態への蛍光放射遷移(アクセプターなし)の減衰時間は、50~100nsである。このようなCe(III)キレートはドナーとして、高速蛍光共鳴のForster-エネルギー移動機構(FRET)によって、例えば深青色蛍光の有機アクセプター分子のS状態にエネルギーを伝達し、最終的に蛍光発光を生成する。有機アクセプター分子は、半値全幅が狭く(FWHM:例えば<0.2eV)、フォトルミネセンス量子収率φPLが比較的高く(例えば90%)、発光減衰時間が非常に短い(例えば2ns)ように選択される。Dexter機構による3/2状態からアクセプターT状態への非放射短距離エネルギー移動は、大幅に抑制される。この方法に従って、緑色又は赤色超蛍光を生成することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明する。
実施例 1
【0049】
OLED発光層の構造:層の厚さ 20nm、ホスト:15%Ce[B(pz)、pz=ピラゾリル及び1%BPPyA(式VIII)をドープした2,8-ビス(ジフェニルホスフィノオキシド)ジベンゾフラン(2,8-Bis(diphenylphosphino oxid)dibenzofuran)(DBFPO)。
実施例2
【0050】
OLED発光層の構造:層の厚さ 20nm、ホスト:15%Ce[B(pz)、pz=ピラゾリル及び1%の式IXによる化合物をドープした2,8-ビス(ジフェニルホスフィノオキシド)ジベンゾフラン(DBFPO)。
実施例3
【0051】
OLED発光層の構造:層の厚さ 20nm、ホスト:15%Ce[B(pz)(Cz-tert-Butyl)]、pz=ピラゾリルとCz-tert-Butyl=tert-ブチルで置換されたカルバゾリル、及び1%の式VIIIによる化合物をドープした2,8-ビス(ジフェニルホスフィノオキシド)ジベンゾフラン(DBFPO)。
実施例4
【0052】
OLED発光層の構造:層の厚さ 20nm、ホスト:18%式VIによる化合物及び1%の式VIIによる化合物をドープした2,8-ビス(ジフェニルホスフィノオキシド)ジベンゾフラン(DBFPO)。
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子であって、以下の式I若しくは式IIで表される構造を有するか、又は以下の式I若しくは式IIで表される構造で構成され、
式中、
は、置換若しくは未置換のピラゾリル基、トリアゾリル基、ヘテロアリール基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、フェノール基、アミノ基及びアミド基のうちから選択され、Rは、Rと同一又はHであり、
、R、R、R及びRは、それぞれ H、ハロゲン、炭化水素基又はヘテロ原子含有炭化水素基である、ことを特徴とする分子。
【請求項2】
以下の式で表される構造を有するか、又は以下の式で表される構造で構成され、
Ce[pzB(Cz)]
式中、Czは、カルバゾリル基で、pzは、ピラゾリル基であり、
Czは、互いに独立して、任意の位置で1つ又は2つのtert-ブチルによって置換される、ことを特徴とする請求項1に記載の分子。
【請求項3】
Ce[pzB(2,7-t-Bu-Cz)]、Ce[pzB(3,6-t-Bu-Cz)]又はCe[pzB(4,5-t-Bu-Cz)]で表される構造を有するか、前記構造で構成され、
式中、t-Buは、tert-ブチルである、ことを特徴とする請求項2に記載の分子。
【請求項4】
以下の式III若しくは式IVで表される構造を有するか、又は以下の式III若しくは式IVで表される構造で構成され、
式中の配位子は、テトラシス(ピラゾリル)ボレート又はテトラシス(トリアゾリル)ボレート配位子である、ことを特徴とする請求項1に記載の分子。
【請求項5】
、R、R、R及びRはそれぞれ互いに独立して、水素、ハロゲン、又はヘテロ原子含有及び/又は置換若しくは未置換の炭化水素基から選択され、ヘテロ原子は、O、S、N、P、Si、Se、F、Cl、Br及びIのうちから選択される、ことを特徴とする請求項4に記載の分子。
【請求項6】
、R、R、R及びRは、水素又はハロゲンである、ことを特徴とする請求項5に記載の分子。
【請求項7】
分子であって、以下の式V若しくは式VIで表される構造を有するか、又は以下の式V若しくは式VIで表される構造で構成され、
式中、Rは、CHCH,CHCHCH又はCH-CH-CHである、ことを特徴とする分子。
【請求項8】
少なくとも1つの重水素を有する、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の分子。
【請求項9】
蛍光アクセプター分子の組成物における中性ドナー分子としての、請求項1~7のいずれか一項に記載の分子の使用。
【請求項10】
組成物であって、
請求項1~8のいずれか一項に記載の分子をCe(III)キレート形態とする中性ドナー分子と、
式VII~IXのいずれかで表される化合物である蛍光アクセプター分子と、を含む、ことを特徴とする組成物。
【請求項11】
前記中性ドナー分子は、有機配位子と配位する8~12配位のCe(III)中心イオンを有する、ことを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記有機配位子は、2配位又は3配位のキレート配位子であり、且つ/又は前記有機配位子の最低の三重項状態は、エネルギーが最低のCe(III)キレートの励起状態よりもエネルギー的に高い、ことを特徴とする請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記有機配位子は、一重項励起子と三重項励起子を捕獲するための、1つ又は2つの環を有する芳香族又はヘテロ芳香族環系を有し、最低の配位子励起一重項状態S(L)及び最低の配位子励起三重項状態T(L)はいずれも占有され、S(L)からT(L)への間交差が発生し、続いて分子内エネルギーを介してCe(III)中心に動する、ことを特徴とする請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
前記蛍光アクセプター分子は、
前記アクセプターの十進モル吸光係数が20,000 Lmol-1cm-1を超え、
半値全幅(FWHM)< 0.25eVあり、
発光量子収率φPL >70%発光を有し、
発光減衰時間は、τ<10nsで、かつ/又は
発光ピークの最大値は、深青色スペクトル領域に対し、420nm~480nmの領域内にある、ことを特徴とする請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
有機発光ダイオード(OLED)、発光電気化学セル(LEEC)、OLEDセンサ、有機発光トランジスタ及び有機レーザーから選択される光電デバイスを製造するための請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の分子又は請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物を有する光電デバイス。
【請求項17】
基板と、陽極と、陰極と、少なくとも1つの発光層とを含み、
前記陽極又は前記陰極は前記基板上に設けられ、前記少なくとも1つの発光層は、前記陽極と前記陰極との間に配置され、請求項1~9のいずれか一項に記載の分子又は請求項10~14のいずれか一項に記載の組成物を有する、ことを特徴とする請求項16に記載の光電デバイス。
【請求項18】
発光層におけるCe(III)キレートドナー分子の質量ドーピング率は、発光層の99%~10%ある、ことを特徴とする請求項17に記載の光電デバイス。
【請求項19】
蛍光アクセプター分子の質量ドーピング率は、発光層の0.5%~5%ある、ことを特徴とする請求項18に記載の光電デバイス。
【請求項20】
請求項16~19に記載の光電デバイスを製造する方法であって、請求項1~9に記載の分子又は請求項10~14に記載の組成物を使用する、ことを特徴とする方法。
【請求項21】
光電子デバイスにおけるすべての一重項と三重項励起子を完全に捕獲する方法であって、請求項1~9に記載の分子をCe(III)キレートドナーとして蛍光アクセプターへの非放射エネルギー移動に使用する、ことを特徴とする方法。
【請求項22】
緑色又は赤色光を発光する蛍光アクセプター分子を使用することにより、10ns又は>2nsで、対応するスペクトル領域に対して蛍光を生成する、ことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【国際調査報告】