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  • 特表-アニオン溶媒和ポリマー膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】アニオン溶媒和ポリマー膜
(51)【国際特許分類】
   C08G 10/00 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
C08G10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022542716
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-08
(86)【国際出願番号】 US2021014759
(87)【国際公開番号】W WO2021150994
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/964,478
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508252206
【氏名又は名称】レンセラー ポリテクニック インスティチュート
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベ、チュルスン
(72)【発明者】
【氏名】クライン、グレゴリー
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033DA05
4J033DA11
4J033DA12
4J033DA13
4J033HA02
4J033HA07
4J033HA14
4J033HB01
(57)【要約】
本開示は、部分的には、グラフト鎖および/または環状アミノ基を有するポリマーに関する。特定の例では、グラフト鎖および/または環状アミノ基は、増強した親水性、アルカリ安定性、および/またはアニオン溶媒和を提供する。化合物、組成物、および方法が本明細書に記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化55】
(I)
の構造またはその塩を有する化合物であって、
各Arは、独立に、置換されていてもよい芳香族または置換されていてもよいアリーレンを含み、
各Yは独立にEWであり、各Yは独立にAkであるか;またはYとYとは、一緒になって、置換されていてもよい複素環アミノを含み、
各Zは、-O-、-S-、-NRN1-、-NRN1N2-、および-CRC2C3-からなる群から独立に選択され、RN1、RN2、RC2、およびRC3のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、少なくとも1つのZは-CRC2C3-ではないか、または少なくとも1つのZは-N(CH-ではなく、
各Akは、独立に、置換されていてもよいアルキレンであり、
xは1~20であり、
各FGは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、ヒドロキシ、アミノ、アンモニウムカチオン、スルホ、スルホン酸アニオン、ホスホノ、ホスホン酸アニオン、カルボキシル、カルボン酸アニオン、複素環カチオン、またはそれらの塩形態からなる群から独立に選択され、
各EWは、ハロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、アミノ、アミド、ニトリル、および-C(=O)RC1からなる群から独立に選択され、RC1は、H、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、または酸素アニオン(O)であり、
各Rは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、
mおよびnのそれぞれは独立に1~1,000,000である、
化合物。
【請求項2】
式(II):
【化56】
(II)
の構造またはその塩を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(IIa):
【化57】
(IIa)
の構造またはその塩を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(IIb):
【化58】
(IIb)
の構造またはその塩を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
式(IIc):
【化59】
(IIc)
の構造またはその塩を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
式(IId):
【化60】
(IId)
の構造またはその塩を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式(IIe):
【化61】
(IIe)
の構造またはその塩を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
式(IIIa)、(IIIb)、または(IIIc):
【化62】
(IIIa)、
【化63】
(IIIb)、
【化64】
(IIIc)
の構造またはその塩を有し、各Rが、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
式(IVa)、(IVb)、または(IVc):
【化65】
(IVa)、
【化66】
(IVb)、
【化67】
(IVc)
の構造またはその塩を有し、各Rが、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Arが
【化68】

【化69】

【化70】

【化71】

【化72】

【化73】

【化74】
、および
【化75】
からなる群から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
各EWが、CF、ピリジン、複素環アミノ、-C(=O)OH、アミド、およびニトリルからなる群から独立に選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
各Akが、独立に、C1~6アルキレンである、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Zが、-O-、-S-、-NH-、および-CH-からなる群から選択される、ならびに/または
FGが、CH、CHCH、アルキル、アリール、OH、NRN1N2N3、SOH、P(=O)(OH)、COH、NRN1N2N3 Cl、およびNRN1N2N3 Brからなる群から選択され、RN1、RN2、およびRN3のそれぞれが、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールである、
請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
が、アルキル、ハロアルキル、または置換アリールである、請求項1から13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
FGの前記塩形態がアニオンを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
式(Va)または(Vb):
【化76】
(Va)、
【化77】
(Vb)
の構造またはその塩を有する化合物であって、
各Arは、独立に、置換されていてもよい芳香族または置換されていてもよいアリーレンを含み、
各EWは、ハロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、アミノ、アミド、ニトリル、および-C(=O)RC1からなる群から独立に選択され、RC1は、H、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、または酸素アニオン(O)であり、
、R、およびRのそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、少なくとも1つのRは非置換フェニルではなく、任意選択で、RとRとは、一緒になって、置換されていてもよいアルキレンまたは置換されていてもよいヘテロアルキレンを形成し、
mおよびnのそれぞれは独立に1~1,000,000である、
化合物。
【請求項17】
Arが
【化78】
【化79】
【化80】
【化81】
【化82】
【化83】
【化84】
【化85】
【化86】
を有する、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
各EWが、CF、ピリジン、複素環アミン、-C(=O)OH、アミド、およびニトリルからなる群から選択される、請求項16または17に記載の化合物。
【請求項19】
前記化合物がエーテル連結を有しない、請求項1から18のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載の化合物を備える組成物。
【請求項21】
前記組成物が、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、またはそれらの組合せを備える、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記組成物がフィルムまたは膜を備える、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、40%もしくはそれよりも大きい電解質吸収率を有する;前記組成物が、120℃の6M KOHに7日間浸漬した場合に安定である;前記組成物が、120℃の6M KOHに7日間曝露する前に少なくとも30MPaの応力および/もしくは少なくとも40%のひずみを有する;ならびに/または前記組成物が、120℃の6M KOHに7日間曝露した後に少なくとも40MPaの応力および/もしくは少なくとも5%のひずみを有する、請求項20から22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物を作製する方法であって、
芳香族化合物と、第1のカルボニル剤と、電子求引基を有する第2のカルボニル剤とを強酸の存在下で反応させて、前駆体ポリマーを形成する段階と、
前記前駆体ポリマーをグラフト剤の存在下で反応させて、親水性グラフト鎖を有するポリアリーレン化合物を形成する段階と
を備える、方法。
【請求項25】
前記第1のカルボニル剤が置換されていてもよいハロアルキルケトンまたは置換されていてもよいピペリジノンを有し、前記グラフト剤が-(Z-Ak)-部分を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項16から19のいずれか一項に記載の化合物を作製する方法であって、
芳香族化合物と、R置換ケトンを有する第1のカルボニル剤と、電子求引基を有する第2のカルボニル剤とを強酸の存在下で反応させて、ポリアリーレン化合物を形成する段階
を備える、方法。
【請求項27】
前記第1のカルボニル剤がN-置換ピペリジノンを有し、前記N-置換ピペリジノンの窒素原子がR基で置換されている、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記前駆体ポリマーまたは前記ポリアリーレン化合物の第1のアニオンを第2のアニオンと交換する段階であって、前記第1のアニオンと前記第2のアニオンとが異なる、段階
を更に備える、請求項24または25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する記載
本発明は、エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)によって授与された契約番号DE-AR0000769の下、政府支援を受けて行われた。政府は本発明に一定の権利を有する。関連出願の相互参照
【0002】
本出願は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる2020年1月22日に出願された米国仮出願第62/964,478号の利益を主張する。
【0003】
本開示は、部分的には、グラフト鎖および/または環状アミノ基を有するポリマーに関する。特定の例では、グラフト鎖および/または環状アミノ基は、増強した親水性、アルカリ安定性、および/またはアニオン溶媒和を提供する。化合物、組成物、および方法が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0004】
現在、アルカリ水電解装置は、(COを排出するメタン分解または石炭ガス化に加えて)「クリーン」な水素の大規模生成のための最も成熟した技術である。これは、アルカリ水電解装置が強固であり、比較的「低コスト」の技術であることに起因する。アルカリ電解装置は、酸性プロトン交換膜(PEM)電解装置における白金族金属触媒(例えば、Pt、Ir)と対照的に、より低コストの非貴金属触媒(例えば、Ni、Fe)をその電極に使用することができる。更に、アルカリ電解の現在の資本コストと予想される将来の資本コストとは、PEM電解のものよりも少ない。最新技術のアルカリ電解装置のスタックおよびシステムの耐用期間はPEM電解装置のものより有意に長いことも報告されている。
【0005】
アルカリ電解セルは、電解質(例えば濃縮KOH溶液)と、2つの電極、すなわちカソードおよびアノードと、2つの電極を互いから隔離するセパレータとを備えることができる。アルカリ電解装置の典型的な運転条件には、20~30%KOH水溶液の通常約80℃またはそれ未満の運転温度での使用が含まれる。加えて、大きな圧力差が隔膜を挟んで存在し得る。アルカリ電解装置の隔膜、すなわちセパレータは、以下の4つの主要な特性を含むことができる:(1)潜在的な過酷な運転条件のために、それは、(高pH条件に耐えるための)高い化学的安定性と高い機械的安定性とを有することができる。(2)セパレータはまた、アニオン導電率を高めるがガスクロスオーバを限定するための高い気孔率と小さい孔径とを呈することができる。(3)セパレータは、高アニオン輸送とより少ないガス混合とを可能にする良好な「濡れ性」を有することができる。(4)セパレータは、ガスクロスオーバを限定するための低いガス透過性を有することができる。
【0006】
アルカリ電解装置の従来の隔膜材料は、かつてはアスベストであった。しかしながら、その高温での限定的な化学的安定性およびその毒性のために、アスベスト膜はもはや使用されていない。現在は、商業的な隔膜材料のZirfon(登録商標)がアスベストの一般的な代替品である。Zirfon(登録商標)は、親水性ZrO粒子が埋め込まれたポリスルホンポリマーマトリックスを備える。ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ポリプロピレン、および様々なポリ(アリーレンエーテル)などの他の材料もまた、アスベストの代替品とするために調査されている。残念なことに、これらの商業的な膜材料に対するアルカリ安定性研究は、100℃未満の(通例80℃またはそれよりも低い)温度で試験されている。商業的な可能性という観点から見ると、アルカリ電解装置を80℃よりも有意に高い温度で運転することは非常に有利である。例えば、より高温での運転は、両電極反応の実質的により速い速度を促進すると同時に、電解質の導電率も高める。更に、オーム抵抗は温度上昇と共に減少し、これは有利である。しかしながら、大きな問題点も複数存在し、より高温での運転は、化学分解の加速および隔膜の機械的特性の潜在的な低下を引き起こす。加えて、電解質の濃度が増加する(例えば、KOHが最大50%まで増加する)場合、化学分解は加速する可能性がある。
【0007】
アルカリ電解装置を過酷な条件下(例えば、90~140℃の温度の6~12M KOH)で運転させるために、より機械的に強固かつ化学的に安定なポリマー材料が隔膜として使用するために検討され得る。少数の研究が高pH条件下でのスルホン化ポリ(エーテルエーテルケトン)またはポリスルホンの高い化学的安定性を報告している。しかしながら、これらの研究のいずれも90℃超の温度では行われなかった。更に、その骨格にアリールエーテル結合を有するポリマーは、KOH溶液中で不十分な化学的安定性を示している(図1)。例えば、ポリスルホンを溶媒に溶解する(かまたは好ましい濡れによって膨潤させる)場合、それはKOH攻撃による有意なポリマー骨格分解を示した。対照的に、骨格にアリールエーテル結合を有しないポリマーは、同一条件下で安定なままであった。そのため、アルカリ条件での膜応用のために代替的な種類のポリマー材料を用いることが近年関心を集めている。
【0008】
水酸化物溶媒和膜は、アルカリポリマー電解質の分野の新たな方向を示す(図2C)。この種類の材料は、アルカリ塩溶液の導電特性とポリマー膜の機械的強固性とを兼ね備える。膜は依然として高密度かつ気密性であり、結果として、膜の更なる薄化、したがって内部抵抗の低下が可能となる。この革新的発想と膜を中心に構築したセルとを使用して、最新技術のPEM電解装置のものに匹敵するアルカリセル性能が貴金属を完全に含まないシステムにおいて達成された。しかしながら、技術的および経済的に妥当な耐用期間に関するポリマー化学の必要性は依然として存在する。
【発明の概要】
【0009】
本開示はポリマーおよびその膜に関する。第1の態様では、本開示は、式(I):
【化1】
(I)
の構造またはその塩を有する化合物であって、
各Arは、独立に、置換されていてもよい芳香族または置換されていてもよいアリーレンを含み、
各Yは独立に電子求引性部分(例えばEW)であり、各Yは、独立に、置換されていてもよいアルキレン(例えばAk)であるか;またはYとYとは、一緒になって、置換されていてもよい複素環アミノを含み、
各Zは、-O-、-S-、-NRN1-、-NRN1N2-、および-CRC2C3-からなる群から独立に選択され、RN1、RN2、RC2、およびRC3のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、
各Akは、独立に、置換されていてもよいアルキレンであり、
xは1~20であり、
各FGは独立に官能基(例えば、本明細書に記載されるいずれか)であり、
各EWは独立に電子求引基(例えば、本明細書に記載されるいずれか)であり、
各Rは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、
mおよびnのそれぞれは独立に1~1,000,000である、
化合物を含む。
【0010】
一部の実施形態では、Z(例えば少なくとも1つのZまたは全てのZ)は-CRC2C3-ではない。他の実施形態では、Z(例えば少なくとも1つのZまたは全てのZ)は-CH-ではない。一部の実施形態では、Z(例えば少なくとも1つのZまたは全てのZ)は-NRN1N2-ではない。他の実施形態では、Z(例えば少なくとも1つのZまたは全てのZ)は-N(CH-ではない。
【0011】
一部の実施形態では、各FGは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、ヒドロキシ、アミノ、アンモニウムカチオン、スルホ、スルホン酸アニオン、ホスホノ、ホスホン酸アニオン、カルボキシル、カルボン酸アニオン、複素環カチオン、またはそれらの塩形態からなる群から独立に選択される。他の実施形態では、各EWは、ハロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、アミノ、アミド、ニトリル、および-C(=O)RC1からなる群から独立に選択され、RC1は、H、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、または酸素アニオン(O)である。
【0012】
一部の実施形態では、化合物は、式(II):
【化2】
(II)
の構造またはその塩を有する。特定の実施形態では、-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-(Z-Ak)-FG)は-(N(CH-(CH-N(CHでも-N(CH-(CH-N(CHでもない。他の実施形態では、-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-(Z-Ak)-FG)は-(N(CH-(CH-N(CHでも-N(CH-(CH-N(CHでもない。一部の実施形態では、-Ak-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-Ak-(Z-Ak)-FG)は-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。他の実施形態では、-Ak-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-Ak-(Z-Ak)-FG)は-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。更に他の実施形態では、-Ak-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-Ak-(Z-Ak)-FG)は-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。
【0013】
他の実施形態では、化合物は、式(IIa):
【化3】
(IIa)
の構造またはその塩を有する。(例えば式(IIa)の)一部の実施形態では、各EWは、CF、ピリジン、複素環アミノ、-C(=O)OH、アミド、およびニトリルからなる群から独立に選択される;ならびに/または各Zは、-O-、-S-、-NH-、および-CH-からなる群から選択される;ならびに/または各FGは、CH、CHCH、アルキル、アリール、OH、NRN1N2N3、SOH、P(=O)(OH)、COH、NRN1N2N3 Cl、およびNRN1N2N3 Brからなる群から選択され、RN1、RN2、およびRN3のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールである。他の実施形態では、RN1、RN2、およびRN3のそれぞれは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。
【0014】
一部の実施形態では、化合物は、式(IIb)~(IIe):
【化4】
(IIb)、
【化5】
(IIc)、
【化6】
(IId)、
【化7】
(IIe)
の構造またはその塩を有する。特定の実施形態では、-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-(Z-Ak)-FG)は-(N(CH-(CH-N(CHでも-N(CH-(CH-N(CHでもない。他の実施形態では、-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-(Z-Ak)-FG)は-(N(CH-(CH-N(CHでも-N(CH-(CH-N(CHでもない。一部の実施形態では、-Ak-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-Ak-(Z-Ak)-FG)は-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。他の実施形態では、-Ak-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-Ak-(Z-Ak)-FG)は-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。更に他の実施形態では、-Ak-(Z-Ak)-FG(例えば少なくとも1つまたは全ての-Ak-(Z-Ak)-FG)は-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。一部の実施形態では、-NRN1N2-(例えば少なくとも1つまたは全ての-NRN1N2-)は-N(CH-ではない。
【0015】
一部の実施形態では、化合物は、式(IIIa)~(IIIc):
【化8】
(IIIa)、
【化9】
(IIIb)、
【化10】
(IIIc)
の構造またはその塩を有する。一部の実施形態では、各Rは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールである。他の実施形態では、Rが非置換フェニルである場合、Rは-CHではない。特定の実施形態では、Rは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。
【0016】
他の実施形態では、化合物は、式(IVa)~(IVc):
【化11】
(IVa)、
【化12】
(IVb)、
【化13】
(IVc)
の構造またはその塩を有する。一部の実施形態では、各Rは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールである。他の実施形態では、Rが非置換フェニルである場合、Rは-CHではない。特定の実施形態では、Rは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。
【0017】
第2の態様では、本開示は、式(Va)または(Vb):
【化14】
(Va)、
【化15】
(Vb)
の構造またはその塩を有する化合物であって、
各Arは、独立に、置換されていてもよい芳香族または置換されていてもよいアリーレンを含み、
各EWは独立に電子求引性部分であり、
、R、およびRのそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであるか、または任意選択で、RとRとは、一緒になって、置換されていてもよいアルキレンもしくは置換されていてもよいヘテロアルキレンを形成し、
mおよびnのそれぞれは独立に1~1,000,000である、
化合物を含む。
【0018】
一部の実施形態では、EWは、ハロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、アミノ、アミド、ニトリル、および-C(=O)RC1からなる群から選択され、RC1は、H、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、または酸素アニオン(O)である。
【0019】
特定の実施形態では、少なくとも1つのRは非置換フェニルではない。一部の実施形態では、R、R、およびRのそれぞれは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。他の実施形態では、Rが非置換フェニルである場合、Rは-CHではない。更に他の実施形態では、Rは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。特定の実施形態では、RおよびRのそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、Rのそれぞれは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。
【0020】
第3の態様では、本開示は、本明細書に記載されるいずれかの化合物(例えば、式(I)、(II)、(IIa)~(IIe)、(IIIa)~(IIIc)、(IVa)~(IVc)、(Va)~(Vb)の構造またはその塩を有する化合物)を含む。一部の実施形態では、組成物は、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、またはそれらの組合せを備える。他の実施形態では、前記組成物はフィルムまたは膜を備える。
【0021】
一部の実施形態では、前記組成物は、40%もしくはそれよりも大きい電解質吸収率を有する;前記組成物は、120℃の6M KOHに7日間浸漬した場合に安定である;前記組成物は、120℃の6M KOHに7日間曝露する前に少なくとも30MPaの応力および/もしくは少なくとも40%のひずみを有する;ならびに/または前記組成物は、120℃の6M KOHに7日間曝露した後に少なくとも40MPaの応力および/もしくは少なくとも5%のひずみを有する。
【0022】
第4の態様では、本開示は、本明細書に記載されるいずれかの化合物(例えば、式(I)、(II)、(IIa)~(IIe)、(IIIa)~(IIIc)、(IVa)~(IVc)の構造またはその塩を有する化合物)を作製する方法を含む。一部の実施形態では、方法は、芳香族化合物と、第1のカルボニル剤と、電子求引基を有する第2のカルボニル剤とを強酸の存在下で反応させて、前駆体ポリマーを形成する段階と、前記前駆体ポリマーをグラフト剤の存在下で反応させて、親水性グラフト鎖を有するポリアリーレン化合物を形成する段階とを備える。
【0023】
一部の実施形態では、前記第1のカルボニル剤は置換されていてもよいハロアルキルケトンまたは置換されていてもよいピペリジノンを有し、前記グラフト剤は-(Z-Ak)-部分を有する。
【0024】
第5の態様では、本開示は、本明細書に記載されるいずれかの化合物(例えば、式(Va)~(Vb)の構造またはその塩を有する化合物)を作製する方法を含む。一部の実施形態では、方法は、芳香族化合物と、R置換ケトンを有する第1のカルボニル剤と、電子求引基を有する第2のカルボニル剤とを強酸の存在下で反応させて、ポリアリーレン化合物を形成する段階を備える。
【0025】
一部の実施形態では、前記第1のカルボニル剤はN-置換ピペリジノンを有し、前記ピペリジノンの窒素原子はR基で置換されている。
【0026】
本明細書のいずれかの方法において、方法は、(例えば、上記反応させる段階の後に)前記前駆体ポリマーまたは前記ポリアリーレン化合物の第1のアニオンを第2のアニオンと交換する段階であって、前記第1のアニオンと前記第2のアニオンとが異なる、段階を更に備える。
【0027】
本明細書のいずれかの実施形態では、各Arは、置換されていなくても、1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい
【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】
、および
【化23】
からなる群から独立に選択される。
【0028】
本明細書のいずれかの実施形態では、各EWは、CF、ピリジン、複素環アミノ、-C(=O)OH、アミド、およびニトリルからなる群から独立に選択される。
【0029】
本明細書のいずれかの実施形態では、各Akは、独立に、置換されていてもよいC1~6アルキレン(例えば、置換もしくは非置換C1~6アルキレン)、置換されていてもよいC1~5アルキレン(例えば、置換もしくは非置換C1~5アルキレン)、または置換されていてもよいC1~4アルキレン(例えば、置換もしくは非置換C1~4アルキレン)である。
【0030】
本明細書のいずれかの実施形態では、Zは、-O-、-S-、-NH-、および-CH-からなる群から選択される;ならびに/またはFGは、CH、CHCH、アルキル、アリール、OH、NRN1N2N3、SOH、P(=O)(OH)、COH、NRN1N2N3 Cl、およびNRN1N2N3 Brからなる群から選択され、RN1、RN2、およびRN3のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールである。
【0031】
本明細書のいずれかの実施形態では、Rは、アルキル、ハロアルキル、または置換アリールである。
【0032】
本明細書のいずれかの実施形態では、FGの前記塩形態はアニオン(例えば、ハロゲン化物、水酸化物、ホウ酸、炭酸、または硫酸)を含む。
【0033】
本明細書のいずれかの実施形態では、前記化合物はエーテル連結を有しない。
(定義)
【0034】
「アルコキシ」とは、-OR(式中、Rは本明細書に記載される置換されていてもよいアルキル基である)を意味する。例示的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、ブトキシ、トリフルオロメトキシなどのトリハロアルコキシなどが挙げられる。アルコキシ基は、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。例示的な非置換アルコキシ基としては、C1~3、C1~4、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20、またはC1~24アルコキシ基が挙げられる。
【0035】
「アルキル」とは、1~24個の炭素原子の分岐または非分岐状炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどを意味する。アルキル基は環状(例えばC3~24シクロアルキル)であっても非環状であってもよい。アルキル基は分岐していても分岐していなくてもよい。アルキル基はまた、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。一部の実施形態では、非置換アルキル基は、C1~3、C1~4、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20、またはC1~24アルキル基である。特定の事例では、アルキル基は飽和炭化水素基である。他の事例では、アルキルという用語には「アルケニル」も含まれ、これは、例えば、エテニル(またはビニル)、1-プロペニル、2-プロペニルなどの2~24個の炭素原子の分岐または非分岐状不飽和炭化水素基として定義される。
【0036】
「アルキレン」とは、本明細書に記載されるアルキル基の多価(例えば、二価、三価、四価など)形態を意味する。例示的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンなどが挙げられる。一部の実施形態では、アルキレン基は、C1~3、C1~4、C1~6、C1~12、C1~16、C1~18、C1~20、C1~24、C2~3、C2~6、C2~12、C2~16、C2~18、C2~20、またはC2~24アルキレン基である。アルキレン基は分岐していても分岐していなくてもよい。アルキレン基はまた、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0037】
「アミド」とは、-C(O)NRN1N2、-C(O)NRN1-、または-NRN1C(O)-(式中、RN1およびRN2のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであるか;またはRN1とRN2とは、それぞれが付着する窒素原子と一緒になって、本明細書に定義されるヘテロシクリル基を形成する)を含む基を意味する。
【0038】
「アミノ」とは、-NRN1N2または-NRN1-(式中、RN1およびRN2のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであるか;またはRN1とRN2とは、それぞれが付着する窒素原子と一緒になって、本明細書に定義される置換されていてもよいヘテロシクリル基を形成するか;またはRN1とRN2とは、一緒になって、本明細書に記載される置換されていてもよいアルキレンもしくはヘテロアルキレンを形成する)を含む基を意味する。
【0039】
「アンモニウム」とは、プロトン化窒素原子Nを含む基を意味する。例示的なアンモニウム基としては、-NN1N2N3(式中、RN1、RN2、およびRN3のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであるか;またはRN1とRN2とは、それぞれが付着する窒素原子と一緒になって、本明細書に定義される置換されていてもよいヘテロシクリル基を形成するか;またはRN1とRN2とは、一緒になって、(例えば本明細書に記載される)置換されていてもよいアルキレンもしくはヘテロアルキレンを形成するか;またはRN1とRN2とRN3とは、それぞれが付着する窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいヘテロシクリル基、例えば複素環カチオンを形成する)が挙げられる。非限定的なアンモニウム基としては、トリアルキルアンモニウム(例えば、-NN1N2N3(式中、RN1、RN2、およびRN3のそれぞれは、独立に、置換されていてもよいアルキルである))、ピペリジニウム(例えば、-NN1N2N3(式中、RN3は、独立に、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいアリールであり、RN1とRN2とは、それぞれが付着する窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいピペリジニウム基を形成する))、またはピロリジニウム(例えば、-NN1N2N3(式中、RN3は、独立に、置換されていてもよいアルキルもしくは置換されていてもよいアリールであり、RN1とRN2とは、それぞれが付着する窒素原子と一緒になって、置換されていてもよいピロリジニウム基を形成する))を挙げることができる。
【0040】
「芳香族」とは、別段の定めのない限り、単環(例えばフェニル)または少なくとも1つの環が芳香族である多環式縮合環(multiple condensed ring)(例えば、ナフチル、インドリル、もしくはピラゾロピリジニル)を有する、5~15個の環原子の環状の共役基または部分、すなわち、少なくとも1つの環、および任意選択で多環式縮合環が連続した非局在化π電子系を有することを意味する。典型的には、面外π電子の数はヒュッケル則(4n+2)に対応する。親構造への結合点は、典型的には縮合環系の芳香族部分である。そのような芳香族は、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0041】
「アリール」とは、例えばインダニル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルなどのような(例えば本明細書に定義される)縮合ベンゾC4~8シクロアルキルラジカルを含む、フェニル、ベンジル、アントラセニル、アントリル、ベンゾシクロブテニル、ベンゾシクロオクテニル、ビフェニリル、クリセニル、ジヒドロインデニル、フルオランテニル、インダセニル、インデニル、ナフチル、フェナントリル、フェノキシベンジル、ピセニル、ピレニル、テルフェニルなどを含むがこれらに限定されない任意の炭素系芳香族基を含有する基を意味する。アリールという用語には「ヘテロアリール」も含まれ、これは、少なくとも1個のヘテロ原子が芳香族基の環に組み込まれている芳香族基を含有する基として定義される。ヘテロ原子の例としては、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。同様に、非ヘテロアリールという用語もまたアリールという用語に含まれ、ヘテロ原子を含有しない芳香族基を含有する基を定義する。アリール基は、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0042】
「アリーレン」とは、本明細書に記載されるアリール基の多価(例えば、二価、三価、四価など)形態を意味する。例示的なアリーレン基としては、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン、トリフェニレン、ジフェニルエーテル、アセナフテニレン、アントリレン、またはフェナントリレンが挙げられる。一部の実施形態では、アリーレン基は、C4~18、C4~14、C4~12、C4~10、C6~18、C6~14、C6~12、またはC6~10アリーレン基である。アリーレン基は分岐していても分岐していなくてもよい。アリーレン基はまた、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0043】
「シクロアルキル」とは、別段の指定がない限り、3~10個の炭素(例えば、C3~8またはC3~10)の一価飽和または不飽和非芳香族環状炭化水素基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロ[2.2.1.]ヘプチルなどによって例示される。シクロアルキルという用語には「シクロアルケニル」も含まれ、これは、3~10個の炭素原子から構成され、少なくとも1つの二重結合、すなわちC=Cを含有する非芳香族炭素系環として定義される。シクロアルケニル基の例としては、これらに限定されないが、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニルなどが挙げられる。シクロアルキル基はまた、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0044】
「ハロ」とは、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0045】
「ハロアルキル」とは、1つまたは複数のハロで置換されている、本明細書に定義されるアルキル基を意味する。
【0046】
「ヘテロアルキル」とは、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、または硫黄からなる群から独立に選択される)を含有する、本明細書に定義されるアルキル基を意味する。
【0047】
「ヘテロアルキレン」とは、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、または硫黄からなる群から独立に選択される)を含有する、本明細書に定義されるアルキレン基の二価形態を意味する。ヘテロアルキレン基は、置換されていなくても、本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0048】
「ヘテロアリール」とは、芳香族である、本明細書に定義されるヘテロシクリル基のサブセットを意味する、すなわち、それらは4n+2個のパイ電子を単または多環式環系に含有する。
【0049】
「複素環アミノ」とは、1、2、3、または4個の窒素原子を有する、本明細書に定義されるヘテロシクリル基を意味する。窒素原子は帯電していても(例えばカチオン電荷を有する)、帯電していなくてもよい。非限定的な複素環アミノ基としては、ピペリジニル(例えば、ピペリジン-1-イル、ピペリジン-4-イル、N-アルキル-ピペリジン-4-イル、ピペリジン-4,4'-ジイル、N-アルキル-ピペリジン-4,4'-ジイルなど)、ピペリジニウム(例えば、N-アルキル-ピペリジニウム-1-イル、N,N'-ジアルキル-ピペリジニウム-4-イル、N,N'-ジアルキル-ピペリジニウム-4,4'-ジイルなど)、ピロリジニル(例えば、ピロリジン-1-イル、ピロリジン-3-イル、N-アルキル-ピロリジン-3-イル、ピロリジン-3,3'-ジイル、N-アルキル-ピロリジン-3,3'-ジイルなど)、ピロリジニウム(例えば、N-アルキル-ピロリジニウム-1-イル、N,N'-ジアルキル-ピロリジニウム-3-イル、N,N'-ジアルキル-ピロリジニウム-3,3'-ジイルなど)、およびスピロ環状アミノ基(例えば、6-アゾニアスピロ[5.5]ウンデカ-3-イル、6-アゾニアスピロ[5.5]ウンデカン-3,3'-ジイル、6-アゾニアスピロ[5.6]ドデカ-3-イル、6-アゾニアスピロ[5.6]ドデカン-3,3'-ジイルなど)が挙げられる。複素環アミノ基は、置換されていなくても、本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0050】
「ヘテロシクリル」とは、別段の指定がない限り、1、2、3、または4個の非炭素ヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、リン、または硫黄からなる群から独立に選択される)を含有する3、4、5、6、または7員環(例えば、5、6、または7員環)を意味する。3員環は0~1つの二重結合を有し、4および5員環は0~2つの二重結合を有し、6および7員環は0~3つの二重結合を有する。ヘテロシクリル基は帯電していなくても(中性)、帯電していても(例えば、カチオンまたはアニオン)よい。「ヘテロシクリル」という用語には、上記複素環式環のいずれかが1、2、または3つの環に縮合している二環式、三環式、および四環式基も含まれる。複素環としては、ベンゾフリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチエニル、フリル、イミダゾリル、インドリル(例えば、1H-インドリルまたは3H-インドリル)、イソオキサゾリジニイル、イソオキサゾリル、イソキノリニル、イソキノリニル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、モルホリニル、ナフチンダゾリル、ナフチンドリル、ナフチリジニル(naphthiridinyl)、ナフトピラニル、ナフトチアゾリル、ナフトチオキソリル、ナフトトリアゾリル、ナフトキシインドリル、ナフチリジニル(naphthyridinyl)、オクタヒドロイソキノリニル、オキサビシクロヘプチル、オキサウラシル、オキサジアゾリル、オキサジニル、オキサジリジニル、オキサゾリジニル、オキサゾリドニル、オキサゾリニル、オキサゾロニル、オキサゾリル、オキセパニル、オキセタノニル、オキセタニル、オキセチル、オキステナイル(oxtenayl)、オキシンドリル、オキシラニル、オキソベンゾイソチアゾリル、オキソクロメニル、オキソイソキノリニル、オキソキノリニル、オキソチオラニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノチエニル(ベンゾチオフラニル)、フェノキサチイニル、フェノキサジニル、フタラジニル、フタラゾニル、フタリジル、フタリミジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル(例えば、4-ピペリドニル)、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリドニル(例えば、2-ピロリドニル)、ピロリニル、ピロリジジニル、ピロリル(例えば、2H-ピロリル)、ピリリウム、キナゾリニル、キノリニル、キノリジニル(例えば、4H-キノリジニル)、キノリル、キノキサリニル、スクシンイミジル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピロニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラジニル、テトラゾリル、チアジアジニル(例えば、6H-1,2,5-チアジアジニルまたは2H,6H-1,5,2-ジチアジニル)、チアジアゾリル、チアントレニル、チアニル、チアナフテニル、チアゼピニル、チアジニル、チアゾリジンジオニル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チエパニル、チエピニル、チエタニル、チエチル、チオフェニル、チオピラニル、チオピロニル、チオトリアゾリル、チオウラゾリル、チオキサニル、チオキソリル、チミジニル、トリアゾリル、トリチアニル、ウラジニル、ウラゾリル、ウレチジニル、ウレチニル、ウリシル、ウリジニル、キサンテニル、キサンチニル、キサンチオニルなど、ならびにそれらの修飾形態(例えば、1つまたは複数のオキソおよび/またはアミノを含む)ならびにそれらの塩が挙げられる。ヘテロシクリル基は、置換されていなくても、本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい。
【0051】
「ニトリル」とは-CN基を意味する。
【0052】
非限定的な好適な置換基としては、これらに限定されないが、脂肪族またはハロ脂肪族基、ハロ基、硝酸基、シアノ基、スルホン酸基、スルホニル基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルコキシ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、オキソ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルコキシ基、アリールまたはヘテロアリール基、アリールオキシまたはヘテロアリールオキシ基、アラルキルまたはヘテロアラルキル基、アラルコキシまたはヘテロアラルコキシ基、HO-(C=O)-基、複素環基、シクロアルキル基、アミノ基、アルキルアミノおよびジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、ならびにアリールスルホニル基が挙げられる。当業者は、多くの置換基が更なる置換基によって置換可能であることを理解するだろう。
【0053】
「塩」とは、電気的に中性の化合物または構造を形成するためのカチオンまたはアニオン化合物を含む、化合物または構造(例えば、本明細書に記載されるいずれかの式、化合物、または組成物)のイオン形態を意味する。塩は当技術分野で周知である。例えば、非毒性塩は、Berge S M et al.,"Pharmaceutical salts," J.Pharm.Sci.1977 January;66(1):1-19;および"Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties,Selection,and Use," Wiley-VCH,April 2011(2nd rev.ed.,eds.P.H.Stahl and C.G.Wermuthに記載されている。塩は、遊離塩基性基を好適な有機酸と反応させることによって(それによってアニオン塩が生成される)、または酸性基を好適な金属もしくは有機塩と反応させることによって(それによってカチオン塩が生成される)、本発明の化合物の最終単離および精製中にその場で、または別々に調製することができる。代表的なアニオン塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、二塩酸塩、二リン酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、水酸化物、ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、臭化メチル、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオフィリン酸塩、チオシアン酸塩、三ヨウ化エチル塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩などが挙げられる。代表的なカチオン塩としては、アルカリまたはアルカリ土類塩などの金属塩、例えば、バリウム、カルシウム(例えば、エデト酸カルシウム)、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムなど;他の金属塩、例えば、アルミニウム、ビスマス、鉄、および亜鉛;ならびに非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、およびアミンカチオン、例えば、これらに限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン、ピリジニウムなどが挙げられる。他のカチオン塩としては、有機塩、例えば、クロロプロカイン、コリン、ジベンジルエチレンジアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メチルグルカミン、およびプロカインが挙げられる。更に他の塩としては、アンモニウム、スルホニウム、スルホキソニウム、ホスホニウム、イミニウム、イミダゾリウム、ベンゾイミダゾリウム、アミジニウム、グアニジニウム、ホスファジニウム、ホスファゼニウム、ピリジニウムなど、ならびに本明細書に記載される他のカチオン基(例えば、置換されていてもよいイソオキサゾリウム、置換されていてもよいオキサゾリウム、置換されていてもよいチアゾリウム、置換されていてもよいピロリウム、置換されていてもよいフラニウム、置換されていてもよいチオフェニウム、置換されていてもよいイミダゾリウム、置換されていてもよいピラゾリウム、置換されていてもよいイソチアゾリウム、置換されていてもよいトリアゾリウム、置換されていてもよいテトラゾリウム、置換されていてもよいフラザニウム、置換されていてもよいピリジニウム、置換されていてもよいピリミジニウム、置換されていてもよいピラジニウム、置換されていてもよいトリアジニウム、置換されていてもよいテトラジニウム、置換されていてもよいピリダジニウム、置換されていてもよいオキサジニウム、置換されていてもよいピロリジニウム、置換されていてもよいピラゾリジニウム、置換されていてもよいイミダゾリニウム、置換されていてもよいイソオキサゾリジニウム、置換されていてもよいオキサゾリジニウム、置換されていてもよいピペラジニウム、置換されていてもよいピペリジニウム、置換されていてもよいモルホリニウム、置換されていてもよいアゼパニウム、置換されていてもよいアゼピニウム、置換されていてもよいインドリウム、置換されていてもよいイソインドリウム、置換されていてもよいインドリジニウム、置換されていてもよいインダゾリウム、置換されていてもよいベンゾイミダゾリウム、置換されていてもよいイソキノリニウム、置換されていてもよいキノリジニウム、置換されていてもよいデヒドロキノリジニウム、置換されていてもよいキノリニウム、置換されていてもよいイソインドリニウム、置換されていてもよいベンゾイミダゾリニウム、および置換されていてもよいプリニウム)が挙げられる。更に他の塩としては、アニオン、例えば、ハロゲン化物(例えば、F、Cl、Br、もしくはI)、水酸化物(例えば、OH)、ホウ酸(例えば、テトラフルオロホウ酸(BF )、炭酸(例えば、CO 2-もしくはHCO )、または硫酸(例えば、SO 2-)を挙げることができる。
【0054】
「脱離基」とは、電子求引能を有し、それによって結合電子を取得して安定種として離れることができる原子(もしくは原子団)、または置換反応によって置き換えることができる原子(もしくは原子団)を意味する。好適な脱離基の例としては、H、ハロゲン化物、およびスルホン酸エステル、例えば、これらに限定されないが、トリフラート(-OTf)、メシラート(-OMs)、トシラート(-OTs)、ブロシラート(-OBs)、酢酸エステル、Cl、Br、およびIが挙げられる。
【0055】
「付着すること」、「付着」、または関連する語形は、2つの成分間の任意の共有結合性または非共有結合性相互作用を意味する。非共有結合性相互作用としては、限定されないが、水素結合、イオン相互作用、ハロゲン結合、静電相互作用、π結合相互作用、疎水性相互作用、包接錯体、包接化、ファンデルワールス相互作用、およびそれらの組合せが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】ポリ(スルホン)ポリマーの骨格におけるアリールエーテル結合の非限定的な分解機構の概略図を示す。
【0057】
図2A】非限定的な膜の概略図を示す。
図2B】非限定的な膜の概略図を示す。
図2C】非限定的な膜の概略図を示す。 (A)隔膜材料、(B)アニオン交換膜(AEM)、および(C)アニオン溶媒和ポリマー膜が提供される。そのような膜には、固相(波線によって示される)、水相(白色の領域によって示される)、アニオン(円内の-によって示される)、およびカチオン(円内の+によって示される)が含まれ得る。非限定的な事例では、アニオンとしては水酸化物を挙げることができ、カチオンとしてはカリウムを挙げることができる。
【0058】
図3】本明細書に記載されるポリマーの非限定的な構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本技術の実施形態は、アルカリ水電解装置のための、昇温(例えば80℃超)であっても強アルカリ条件(例えば6M超のKOH溶液)において安定な一連のアニオン溶媒和(例えば水酸化物溶媒和)ポリマー膜に関する。
【0060】
一実施形態では、化合物は、式(I):
【化24】
(I)
の構造またはその塩を有し、
各Arは、独立に、置換されていてもよい芳香族または置換されていてもよいアリーレンを含み、
各Yは独立にEWであり、各Yは独立にAkであるか;またはYとYとは、一緒になって、置換されていてもよい複素環アミノを含み、
各Zは、-O-、-S-、-NRN1-、-NRN1N2-、および-CRC2C3-からなる群から独立に選択され、RN1、RN2、RC2、およびRC3のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、少なくとも1つのZは-CRC2C3-ではないか、または少なくとも1つのZは-N(CH-ではなく、
各Akは、独立に、置換されていてもよいアルキレンであり、
xは1~20であり、
各FGは、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、ヒドロキシ、アミノ、アンモニウムカチオン、スルホ、スルホン酸アニオン、ホスホノ、ホスホン酸アニオン、カルボキシル、カルボン酸アニオン、複素環カチオン、またはそれらの塩形態からなる群から独立に選択され、
各EWは、ハロアルキル、置換されていてもよいヘテロアリール、アミノ、アミド、ニトリル、および-C(=O)RC1からなる群から独立に選択され、RC1は、H、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、または酸素アニオン(O)であり、
各Rは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールであり、
mおよびnのそれぞれは独立に1~1,000,000である。
【0061】
一部の実施形態では、化合物は、式(Ia)または(Ib):
【化25】
(Ia)、
【化26】
(Ib)
の構造またはその塩を有する。特定の実施形態では、環Ar1、Ar2、および/またはAr3のそれぞれは、(例えば好適な置換基、例えば本明細書に記載されるいずれかで)置換されていてもよい。他の実施形態では、Arは、テルフェニレン(例えば、メタ-テルフェニレン、オルト-テルフェニレン、もしくはパラ-テルフェニレン)またはビフェニレンを含む。
【0062】
特定の実施形態では、Z(例えば少なくとも1つのZまたは各Z)は-CRC2C3-ではない。他の実施形態では、少なくとも1つの-Z-Ak-は1個または複数個のヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、硫黄、またはリンなどの非炭素原子)を含む。更に他の実施形態では、Z(例えば少なくとも1つのZまたは各Z)は-N(CH-ではない。
【0063】
特定の実施形態では、-Z-Ak-基はグラフト鎖に含まれ得る。このグラフト鎖は-(Z-Ak)-のように繰り返すことができる。ポリマーに存在するグラフト鎖の種類および数は変更可能である。機構によって限定されることを望むものではないが、グラフト鎖は親水性部分をポリマーに付与することができ、それによって十分なアニオン溶媒和を可能にする。
【0064】
本明細書の化合物は1つまたは複数のグラフト鎖を有することができる。一部の実施形態では、グラフト鎖は-(Z-Ak)-基と官能基(FG)とを含み、Akは置換されていてもよいアルキレンであり、少なくとも1つのZはヘテロ原子(例えば非炭素原子)を含み、xは1~20である。他の実施形態では、グラフト鎖は-Ak-(Z-Ak)-基とFGとを含み、Akは置換されていてもよいアルキレンであり、少なくとも1つのZはヘテロ原子(例えば非炭素原子)を含み、xは1~20である。
【0065】
非限定的なAkとしては、置換されていてもよいC1~24、C2~24、C4~24、C6~24、C1~12、C2~12、C4~12、C6~12、C1~6、C1~5、またはC1~4アルキレンを挙げることができる。Zは1個または複数個のヘテロ原子、例えば、窒素、酸素、リン、または硫黄を含むことができる。特定の実施形態では、Zは、-O-、-S-、-NRN1-、-NRN1N2-、および-CRC2C3-を含み、RN1、RN2、RC2、およびRC3のそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールである。
【0066】
FGは任意の有用な基を含むことができる。特定の実施形態では、FGは、置換されていてもよいアルキル(例えば、置換されていてもよいC1~24、C2~24、C4~24、C6~24、C1~12、C2~12、C4~12、C6~12、もしくはC1~6アルキル)、置換されていてもよいアリール(例えば、置換されていてもよいフェニル)、ヒドロキシ(-OH)、アミノ(例えば、本明細書に記載される-NRN1N2)、アンモニウムカチオン(例えば、本明細書に記載される-NN1N2N3もしくは-NN1N2-)、スルホ(-SOOH)、スルホン酸アニオン(-SO)、ホスホノ(例えば、-P(=O)(OH))、ホスホン酸アニオン(例えば、-P(=O)(Oもしくは-P(=O)(OH)(O)、カルボキシル(-COH)、カルボン酸アニオン(-CO )、複素環カチオン、またはそれらの塩形態であり得る。複素環カチオンの非限定的な例としては、置換されていてもよいピペリジニウム、置換されていてもよいピロリジニウム、置換されていてもよいアゼパニウム、またはカチオン性窒素原子を有する置換されていてもよいスピロ環状アミノ基(例えば、本明細書に記載されるいずれか)が挙げられる。
【0067】
本明細書の化合物は、Arとして示され得る1つまたは複数のアリーレンリンカーを有することができる。Arとしては置換されていてもよいアリーレンを挙げることができる。そのようなアリーレン基としては、ヘテロ芳香族基を含むことができる1つまたは複数の芳香族基を有する任意の多価(例えば、オルト、パラ、またはメタ位における二価、三価、四価など)基が挙げられる。非限定的な芳香族基としては、
【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】
のいずれかを挙げることができ、環a~iのそれぞれは、(例えば、本明細書に記載されるいずれかの任意選択の置換基、または本明細書に記載されるいずれかのイオン部分で)置換されていてもよく;L'は連結部分(例えば、本明細書に記載されるいずれか、例えば共有結合またはC1~6アルキレン)であり;R'およびR"のそれぞれは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。環a~iの非限定的な置換基としては、本明細書に記載される1つまたは複数(例えば、好適な置換基など)が挙げられ、これらに限定されないが、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アミノ、アミノアルキル、アリール、アリールアルキレン、アリーロイル、アリールオキシ、アリールアルコキシ、シアノ(またはニトリル)、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ニトロ、ハロ、およびハロアルキルが挙げられる。一部の実施形態では、L'は、共有結合、-O-、-NRN1-(式中、RN1は、H、置換されていてもよいアルキル、もしくは置換されていてもよいアリールであり得る)、-C(O)-、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいヘテロアルキレン、または置換されていてもよいアリーレンである。
【0068】
更に他の非限定的なアリーレンとしては、フェニレン(例えば、1,4-フェニレン、1,3-フェニレンなど)、ビフェニレン(例えば、4,4'-ビフェニレン、3,3'-ビフェニレン、3,4'-ビフェニレンなど)、テルフェニレン(例えば、4,4'-テルフェニレン、4,4'-メタ-テルフェニレン、4,4'-パラ-テルフェニレン、または4,4'-オルト-テルフェニレン)、9,10-アントラセン、ナフタレン(例えば、1,5-ナフタレン、1,4-ナフタレン、2,6-ナフタレン、2,7-ナフタレンなど)、テトラフルオロフェニレン(例えば、1,4-テトラフルオロフェニレン、1,3-テトラフルオロフェニレン)などを挙げることができる。アリーレンの他の例としては、置換されていなくても、例えば本明細書に記載される1つまたは複数の好適な置換基で置換されていてもよい
【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】
、および
【化43】
が挙げられる。
【0069】
一部の実施形態では、各アリーレンリンカーは置換アルファ炭素に付着する。結果として、このアルファ炭素は電子求引性部分に近接することができる。そのため、一事例では、アルファ炭素は、
【化44】
であり得るかまたはそれを含み得、EWは本明細書に記載される電子求引基であり;結合iおよびiiのそれぞれはAr基に付着し;結合iiiは-Z-Ak-基に直接または間接的に(例えば、アルキレンリンカーなどのリンカーを介して)付着する。別の事例では、アルファ炭素は、
【化45】
であり得るかまたはそれを含み得、結合iおよびiiのそれぞれはAr基に付着し;結合iiiは-Z-Ak-基に直接または間接的に付着する。
【0070】
更に別の事例では、アルファ炭素は、
【化46】
もしくは
【化47】
であり得るかまたはそれを含み得、結合iおよびiiのそれぞれはAr基に付着し;結合iiiおよびivのそれぞれは、本明細書に記載される-Z-Ak-基、R基、またはR基に直接または間接的に(例えば、アルキレンリンカーなどのリンカーを介して)付着する。特定の実施形態では、Rは-CHではない。他の実施形態では、Rは-CHではない。更に他の実施形態では、RもRも-CHではない。
【0071】
電子求引基はポリマー内に存在し得る。機構によって限定されることを望むものではないが、そのような基の存在はモノマー間の重縮合反応を促進することができる。非限定的な反応としては、以下に更に記載される酸触媒フリーデル・クラフツ反応を挙げることができる。一部の実施形態では、電子求引基はEWによって示される。非限定的なEW基としては、例えば、置換されていてもよいハロアルキル(例えば、パーフルオロアルキル)、置換されていてもよいヘテロアリール(例えば、置換されていてもよいピペリジニウムまたは置換されていてもよいピリジン)、アミノ(例えば、置換されていてもよいピペリジニルなどの複素環アミノ;-NRN1N2または-NRN1-を含む基;および本明細書に記載される他のもの)、アミド(例えば、本明細書に記載される-C(O)NRN1N2、-C(O)NRN1-、または-NRN1C(O)-を含む基)、ニトリル(-CN)、ならびにカルボニル含有基、例えば-C(=O)RC1(式中、RC1は、H、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキル、もしくは酸素アニオン(O)、または-C(O)-を含む基である)が挙げられる。特定の実施形態では、EWは、ハロアルキル(例えば、C1~12、C1~6、もしくはC1~3ハロアルキル)またはパーフルオロアルキル(例えば、C1~12、C1~6、もしくはC1~3パーフルオロアルキル)である。
【0072】
更に他の化合物は、式(II)、(IIa)~(IIe)、(III)、(IIIa)~(IIIc)、(IVa)~(IVb)、(Va)、(Vb)、またはその塩を有することができる。これらの式のいずれかにおいて、各Rは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。他の実施形態では、R(例えば少なくとも1つのRまたは各R)は非置換フェニルではない。更に他の実施形態では、R(例えば少なくとも1つのRまたは各R)は置換されていてもよいフェニルでも置換されていてもよいアリールでもない。
【0073】
式(II)、(IIa)~(IIe)、(III)、(IIIa)~(IIIc)、および(IVa)~(IVb)のそれぞれは、-(Z-Ak)-FG、-Ak-(Z-Ak)-FG、または-Cアルキレン-(Z-Cアルキレン)-FGなどの少なくとも1つのグラフト鎖を有する。これらの式に関して、各Yは独立にEWであり得、各Yは独立にAkであり得る(例えば、式(II)および(IIa)~(IIe)と同様)。
【0074】
他の式では、YとYとは、一緒になって、置換されていてもよい複素環アミノ(例えば、置換されていてもよいピペリジニル、置換されていてもよいピペリジニウム、置換されていてもよいピロリジニル、置換されていてもよいピロリジニウム、およびそれらのスピロ環形態)を含み得る。置換されていてもよい複素環アミノを有する非限定的な式としては、式(IIIa)~(IIIc)および(IVa)~(IVc)のものが挙げられる。
【0075】
式(Va)および(Vb)はRまたはRを有し、これらは、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり得る。(例えば、式(Va)および(Vb)の)特定の実施形態では、(例えば、Rが非置換フェニルである場合)Rおよび/またはRは-CHではない。(例えば、式(IIIb)、(IVb)、(Va)、および(Vb)の)他の実施形態では、(例えば、Rが非置換フェニルである場合)Rは-CHではない。(例えば、式(IIIb)、(IVb)、(Va)、および(Vb)の)更に他の実施形態では、RおよびRのそれぞれは、独立に、H、置換されていてもよいアルキル、または置換されていてもよいアリールであり、各Rは、独立に、Hまたは置換されていてもよいアルキルである。
【0076】
図3は、ポリマーの更なる非限定的な一般的構造を示す。一部の実施形態では、ポリマー骨格は炭素-炭素結合のみから構成され、それは不安定ヘテロ原子を含まず、アルカリ条件下で高い化学的安定性を提供する。また、それらの芳香族骨格ポリマーのガラス転移温度(T)は200℃より高い。高いアルカリ安定性および良好な熱特性は、80~140℃の温度のアルカリ水電解装置における高pHかつ高温条件下で望ましい化学的安定性を提供する。
【0077】
一部の実施形態では、KOHにおいて安定なポリマーは、一般に疎水性であり、KOHをドープすることができない。そのため、一部の実施形態では、電解質吸収率の増加を促進するために親水性部分を側鎖に付着させる。この種類の化学修飾によって、10~30%KOH(水溶液)の電解質濃度および50%の吸収率が可能となり、高イオン導電率が得られる。表1に示すように、それぞれスルホン酸基および水酸化物基を含むmTPSAおよびmTPOHは、120~140℃の6M KOH溶液において優れたアルカリ安定性を示す。アルカリ安定性は、IECに対する最小変化(例えば、アルカリ安定性試験後の約1%、1.5%、2%、3%、または5%未満の減少)によって決定することができる。表1:水酸化物溶媒和ポリマー膜の代表的なアルカリ安定性
【表1】
【0078】
一部の実施形態では、化合物は
【化48】
を有しない。他の実施形態では、少なくとも1つのZは-N(CH-ではない。更に他の実施形態では、全てのZは-N(CH-ではない。一部の実施形態では、化合物は、
【化49】
を有しない。
【0079】
一部の実施形態では、-(Z-Ak)-FGにおける少なくとも1つのZは-N(CH-ではない。他の実施形態では、-(Z-Ak)-FGにおけるZは-N(CH-ではない。一部の実施形態では、-(Z-Ak)-FGにおける少なくとも1つのAkは、非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない、および/または非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない。他の実施形態では、-(Z-Ak)-FGにおけるAkは、非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない、および/または非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない。一部の実施形態では、-(Z-Ak)-FGにおける少なくとも1つのFGは-N(CHではない。他の実施形態では、-(Z-Ak)-FGにおけるFGは-N(CHではない。一部の実施形態では、-(Z-Ak)-FGを親分子基に付着させる少なくとも1つのAk(例えば、式(I)のアルファ炭素と-(Z-Ak)-FG鎖との間に位置する少なくとも1つの-Ak-)は、非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない、および/または非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない。他の実施形態では、-(Z-Ak)-FGを親分子基に付着させるAkは、非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない、および/または非置換Cアルキレン(例えば、-(CH-)ではない。
【0080】
特定の実施形態では、少なくとも1つの-(Z-Ak)-FGは-(N(CH-(CH-N(CHでも-N(CH-(CH-N(CHでもない。他の実施形態では、少なくとも1つの-(Z-Ak)-FGは-(N(CH-(CH-N(CHでも-N(CH-(CH-N(CHでもない。
【0081】
一部の実施形態では、少なくとも1つの-Ak-(Z-Ak)-FGは-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。他の実施形態では、少なくとも1つの-Ak-(Z-Ak)-FGは-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。更に他の実施形態では、少なくとも1つの-Ak-(Z-Ak)-FGは-(CH-(N(CH-(CH-N(CHでも-(CH-N(CH-(CH-N(CHでもない。
【0082】
ポリフェニレン型材料が図3に代表的な実施形態として示されるが、他の実施形態はそのような親水性部分をスチレン/エチレン/ブチレンコポリマーに組み込む。更に、他の実施形態では、親水性および電解質吸収率を増強するために、セラミックス(例えば、ZrO)または親水性ポリマー(例えば、ポリエチレンオキシド)などの親水性添加剤がポリマー膜に挿入される。
【0083】
特定の実施形態では、化合物または組成物は、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、もしくはそれらの組合せであるか、またはそれらを備える。フィルムまたは膜などの任意の有用な形態が用いられ得る。
【0084】
本明細書の化合物または組成物は任意の有用な方法で特徴付けることができる。一事例では、骨格はエーテル連結を含まない。別の事例では、組成物は、30%、40%、50%、またはそれよりも大きい電解質吸収率を有する。更に別の事例では、組成物は、120℃の6M KOHに7日間浸漬した場合に安定である(H NMRスペクトルの変化がないことおよび/またはイオン交換容量、すなわちIECの最小変化によって証明される)。他の事例では、組成物は、120℃の6M KOHに7日間曝露する前に少なくとも30MPaの応力および/もしくは少なくとも40%のひずみを有する;ならびに/または組成物は、120℃の6M KOHに7日間曝露した後に少なくとも40MPaの応力および/もしくは少なくとも5%のひずみを有する。一部の事例では、化合物または組成物は、約20%~60%の吸水率(例えば25℃)、水による約5%~35%の膨潤(25℃、ここで水はヒドロキシル形態を含み得る)、80℃で約100~200mS/cmの水酸化物導電率、および/またはアルカリ安定性試験(例えば、80℃の1M KOHで1000時間)後の約0.5%~3%のIEC減少によって特徴付けられる。
【0085】
本発明をその例示的な実施形態に関して記載および例示したが、前述のおよび様々な他の変更、省略、および追加を、そこにおいておよびそれに対して、本発明の趣旨および範囲から外れることなく行ってもよいことは、当業者によって理解されるべきである。
(作製方法)
【0086】
本開示はまた、ポリマーを作製する方法を包含する。非限定的な方法は、芳香族化合物と、第1のカルボニル剤と、第2のカルボニル剤とを強酸の存在下で反応させて、前駆体ポリマーを形成する段階と、前駆体ポリマーをグラフト剤の存在下で反応させて、グラフト鎖(例えば親水性グラフト鎖)を有するポリアリーレン化合物を形成する段階とを備える。更なる段階には、ポリマーに存在する第1のアニオンを第2のアニオンと交換する(例えば、ハロゲン化物アニオンを水酸化物アニオンに交換する)段階が含まれ得る。
【0087】
特定の実施形態では、方法は、芳香族化合物、第1のカルボニル剤、および第2のカルボニル剤などのモノマー間の酸触媒フリーデル・クラフツ重縮合反応の使用を備える。特定の実施形態では、第2のカルボニル剤は電子求引基(例えば、本明細書に記載されるハロアルキル基など)を有する。更に他の実施形態では、第1のカルボニル剤もまた電子求引基を有することができ、これは第2のカルボニル剤のものと同じであっても異なっていてもよい。
(スキームI)
【化50】
【0088】
スキームIはポリマーを作製するための非限定的な反応スキームを提供する。反応は、置換されていてもよいアリーレン(-Ar-)と脱離基(LG、例えばH)とを有する芳香族剤(1)を提供することによって進めることができる。カルボニル基のアルファ炭素に付着したYおよびY2*基を有する第1のカルボニル剤(2)が提供される。Y2*基は、反応後にY基を提供する任意の官能基を含むことができる。電子求引基(EW)と別の基(R、これは、H、置換されていなくても置換されていてもよい,アルキル、アリール、またはヘテロアリールであり得る)とを有する第2のカルボニル剤(3)もまた提供される。
【0089】
フリーデル・クラフツ重縮合反応を、これらのモノマー、すなわち試剤(1)と、(2)と、(3)との間で、酸(例えば強酸)および溶媒の存在下で実施して、非限定的な前駆体ポリマー(4)を形成する。非限定的な酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロ-1-プロパンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロプロピオン酸、ヘプタフルオロ酪酸、またはそれらの組合せが挙げられ、非限定的な溶媒としては、極性非プロトン性溶媒(例えば、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピロリドン、もしくはジメチルホルムアミド)、または塩化メチレン、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロロホルム、1,1,2,2-テトラクロロエタン、ジメチルアセトアミド、もしくはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない他の好適な有機溶媒が挙げられる。
【0090】
確認されるように、第1および第2のカルボニル剤(2、3)に存在するアルファ炭素は、前駆体ポリマー(4)の骨格の一部を形成する。特定の非限定的な実施形態では、ポリマーの骨格は炭素原子のみを含む。他の実施形態では、骨格は、各Arに存在するアリール基と第1および第2のカルボニル剤のアルファ炭素とから形成され、それによって全ての炭素原子を含む骨格を提供する。Arにおける基およびカルボニル剤のアルファ炭素を置換するために使用される任意選択の好適な置換基は、ヘテロ原子を含むことができるが、依然として全ての炭素原子を含む骨格を維持する。
【0091】
グラフト剤は、グラフト鎖を前駆体ポリマーに導入するために使用することができる。スキームIに見られるように、グラフト剤は、Y2*基と反応することができるグラフト鎖基(5)を有することができる。一事例では、Y2*基は求核剤(例えばアミノ)を含むことができ、グラフト剤は脱離基(例えばハロ)を有することができる。そのような非限定的なグラフト剤としては、LG-(Z-Ak)-FG(式中、LGは脱離基である)を挙げることができる。別の事例では、Y2*基は脱離基(例えばハロ)を含むことができ、グラフト剤は求核剤(例えばアミノ)を有することができる。そのような非限定的なグラフト剤としては、Z*-Ak-(Z-Ak)x-1-FG(式中、Z*は、反応後に-Z-基を提供する求核基を含む)を挙げることができる。この非限定的な例におけるFGはグラフト剤の一部として提供されるが、グラフト剤はFG部分に変換することができる基を有することもできる。例えば、所望のFGがアンモニウムカチオンである場合、グラフト剤は、(例えば、N-アルキル化剤の使用によって)所望のアンモニウムカチオンとなるように修飾させることができるアミノ部分を有することができる。別の事例では、所望のFGがカルボン酸アニオンである場合、グラフト剤は、(例えば、脱プロトン化剤の使用によって)所望のカルボン酸アニオンとなるように修飾させることができるカルボキシル部分を有することができる。当業者であれば、そのような修飾を実施および設計する方法を理解するだろう。
【0092】
グラフト重合後、得られるポリアリーレン化合物は、式(I)の化合物またはその塩を有することができる。更なる反応は、前駆体ポリマーまたはポリアリーレン化合物の第1のアニオンを第2のアニオンと交換する段階であって、第1のアニオンと第2のアニオンとが異なる、段階を含むことができる。
(スキームII)
【化51】
【0093】
一部の事例では、スキームIIに見られるように、第1のカルボニル剤と第2のカルボニル剤の両方が電子求引基を含み得る。反応は、スキームIを参照して上に記載したように、芳香族剤(1)と第2のカルボニル剤(3)とを提供することによって進めることができる。ここで、第1のカルボニル剤(6)は、EW基とハロアルキル基(例えば、-Ak-X(式中、Akは置換されていてもよいアルキレンであり、XはBrなどのハロである))とを含むハロアルキルケトンを有する。このケトンでは、カルボニル基における炭素はポリマーのアルファ炭素として機能する。第1および第2のカルボニル剤(6、3)において、EW基は同じであっても異なっていてもよい。
【0094】
フリーデル・クラフツ重縮合反応を、これらのモノマー、すなわち試剤(1)と、(6)と、(3)との間で、酸(例えば、本明細書に記載されるいずれかの強酸)および溶媒(例えば、本明細書に記載されるいずれか)の存在下で実施して、非限定的な前駆体ポリマー(7)を形成する。確認されるように、第1および第2のカルボニル剤(6、3)に存在するアルファ炭素は、前駆体ポリマー(7)の骨格の一部を形成する。
【0095】
グラフト剤は、グラフト鎖を前駆体ポリマーに導入するために使用することができる。スキームIIに見られるように、前駆体ポリマーは、求核剤を有するグラフト剤と反応することができる脱離基(X)を有する。そのような非限定的なグラフト剤(8)としては、Z*-Ak-(Z-Ak)x-1-FG(式中、Z*は、反応後に-Z-基を提供する求核基を含む)を挙げることができる。グラフト重合後、得られるポリアリーレン化合物は、式(II)の化合物またはその塩を有することができる。更なる反応は、前駆体ポリマーまたはポリアリーレン化合物の第1のアニオンを第2のアニオンと交換する段階であって、第1のアニオンと第2のアニオンとが異なる、段階を含むことができる。
(スキームIII)
【化52】
【0096】
一部の事例では、スキームIIIに見られるように、第1のカルボニル剤は環状アミンであり得る。反応は、スキームIを参照して上に記載したように、芳香族剤(1)と第2のカルボニル剤(3)とを提供することによって進めることができる。ここで、第1のカルボニル剤(9)は、カルボニル基における炭素がポリマーのアルファ炭素として機能するピペリジノン(例えば4-ピペリジノン)を有する。
【0097】
フリーデル・クラフツ重縮合反応を、これらのモノマー、すなわち試剤(1)と、(9)と、(3)との間で、酸(例えば、本明細書に記載されるいずれかの強酸)および溶媒(例えば、本明細書に記載されるいずれか)の存在下で実施して、非限定的な前駆体ポリマー(10)を形成する。確認されるように、第1のカルボニル剤(9)および第2のカルボニル剤(3)に存在するアルファ炭素は、前駆体ポリマー(10)の骨格の一部を形成する。
【0098】
グラフト剤は、グラフト鎖を前駆体ポリマーに導入するために使用することができる。スキームIIIに見られるように、前駆体ポリマーは、脱離基を有するグラフト剤と反応することができる求核基(-NH-)を有する。そのような非限定的なグラフト剤(11)としては、LG-(Z-Ak)-FG(式中、LGは脱離基である)を挙げることができる。グラフト重合後、得られるポリアリーレン化合物は、式(IIIa)の化合物またはその塩を有することができる。更なる反応は、前駆体ポリマーまたはポリアリーレン化合物の第1のアニオンを第2のアニオンと交換する段階であって、第1のアニオンと第2のアニオンとが異なる、段階を含むことができる。
【0099】
他の第1のカルボニル剤、例えば、N-置換ピペリジノンであって、ピペリジノンの窒素原子がR基で置換されている、N-置換ピペリジノンが用いられてもよい。この事例では、R置換ピペリジノンとの反応は、式(IIIb)(式中、複素環アミンは複素環カチオンアミンである)の構造を有する化合物をもたらすことができる。別の事例では、スキームIIIの反応を行って、2つの親水性グラフト鎖を窒素に提供し、それによって式(IIIc)(式中、複素環アミンは複素環カチオンアミンである)の構造を有する化合物をもたらすことができる。
(スキームIV)
【化53】
【0100】
スキームIVは置換ピペリジノンの使用を提供する。反応は、スキームIを参照して上に記載したように、芳香族剤(1)と第2のカルボニル剤(3)とを提供することによって進めることができる。ここで、第1のカルボニル剤(12)は、カルボニル基における炭素原子がポリマーのアルファ炭素として機能し、窒素原子がハロアルキル基(例えば-Ak-X(式中、Akは置換されていてもよいアルキレンであり、Xはハロである))で置換されている置換ピペリジノン(例えばN-置換4-ピペリジノン)を有する。
【0101】
フリーデル・クラフツ重縮合反応を、これらのモノマー、すなわち試剤(1)と、(12)と、(3)との間で、酸(例えば、本明細書に記載されるいずれかの強酸)および溶媒(例えば、本明細書に記載されるいずれか)の存在下で実施して、非限定的な前駆体ポリマー(13)を形成する。確認されるように、第1のカルボニル剤(12)および第2のカルボニル剤(3)に存在するアルファ炭素は、前駆体ポリマー(13)の骨格の一部を形成する。
【0102】
グラフト剤は、グラフト鎖を前駆体ポリマーに導入するために使用することができる。スキームIVに見られるように、前駆体ポリマーは、求核剤を有するグラフト剤と反応することができる脱離基(X)を有する。そのような非限定的なグラフト剤(8)としては、上に記載したZ*-Ak-(Z-Ak)x-1-FGを挙げることができる。グラフト重合後、得られるポリアリーレン化合物は、式(IVa)の化合物またはその塩を有することができる。更なる反応は、前駆体ポリマーまたはポリアリーレン化合物の第1のアニオンを第2のアニオンと交換する段階であって、第1のアニオンと第2のアニオンとが異なる、段階を含むことができる。
【0103】
スキームIVに関して、他の第1のカルボニル剤、例えば、N-置換ピペリジノンであって、ピペリジノンの窒素原子がR基で置換されている、N-置換ピペリジノンが用いられてもよい。この事例では、R置換ピペリジノンとの反応は、式(IVb)(式中、複素環アミンは複素環カチオンアミンである)の構造を有する化合物をもたらすことができる。別の事例では、窒素原子が2つの-Ak-X基で置換されているピペリジノン化合物を用いてスキームIVの反応を行うことができる。反応において、2つの-Ak-X基がそれぞれ反応して、2つの親水性グラフト鎖を窒素に提供し、それによって式(IVc)(式中、複素環アミンは複素環カチオンアミンである)の構造を有する化合物をもたらすことができる。
(スキームV)
【化54】
【0104】
スキームVは置換ピペリジノンの別の使用を提供する。反応は、スキームIを参照して上に記載したように、芳香族剤(1)と第2のカルボニル剤(3)とを提供することによって進めることができる。ここで、第1のカルボニル剤(14)は、カルボニル基における炭素原子がポリマーのアルファ炭素として機能し、窒素原子がR基(例えば、RはHまたは置換されていてもよいアルキルであり得る)で置換されている置換ピペリジノン(例えばN-置換4-ピペリジノン)を有する。
【0105】
フリーデル・クラフツ重縮合反応を、これらのモノマー、すなわち試剤(1)と、(14)と、(3)との間で、酸(例えば、本明細書に記載されるいずれかの強酸)および溶媒(例えば、本明細書に記載されるいずれか)の存在下で実施して、式(V)の非限定的なポリアリーレン化合物を形成する。確認されるように、第1のカルボニル剤(14)および第2のカルボニル剤(3)に存在するアルファ炭素は、式(Va)のポリアリーレン化合物の骨格の一部を形成する。更なる反応は、ポリアリーレン化合物の第1のアニオンを第2のアニオンと交換する段階であって、第1のアニオンと第2のアニオンとが異なる、段階を含むことができる。任意選択で、式(Va)のポリアリーレン化合物を、アルキル化またはアリール化剤(15)を用いて更に処理して、式(Vb)のポリアリーレン化合物をもたらしてもよい。あるいは、第1のカルボニル剤は、窒素原子にR置換基とR置換基の両方を有し、それによって式(Vb)に存在する複素環カチオンアミンを提供することができる。
【0106】
本明細書のポリマーは任意の有用な組成物に使用することができる。そのような組成物は、層または膜、および補強膜を備えることができる。層または膜は、任意の有用な方法で形成することができる。一実施形態では、(例えば、式(I)または本明細書に記載されるいずれかの)化合物を溶媒に溶解して、キャスト溶液を形成することができる。キャスト溶液を任意選択で濾過し、基板に塗布し、次いで乾燥させて、フィルムを形成することができる。基板への塗布としては、ドクターブレードコーティング法、溶媒キャスト法、噴霧法、ディップコーティング法、スピンコート法、押出成形法、溶融キャスト法、または任意の技術の組合せを挙げることができる。フィルムは、任意選択で、例えば本明細書の任意の試薬(例えば、アニオン、対イオン、溶媒など、およびそれらの組合せ)への浸漬によって更に処理してもよい。
【0107】
補強膜を形成するための方法は、液体において多孔質基板を濡らして、濡れた基板を形成する段階と、(例えば、式(I)または本明細書に記載されるいずれかの)化合物を溶媒に溶解して、キャスト溶液を形成する段階と、キャスト溶液を濡れた基板に塗布して、補強膜を形成する段階と、補強膜を乾燥させる段階と、任意選択で、補強膜のアニオンをアニオン(例えば、水酸化物イオン)と交換して、補強膜を形成する段階とを備えることができる。得られる補強膜は、補強膜を再び濡らし、溶解、塗布、および乾燥段階を繰り返すことによって、化合物を数回浸透させることが可能である。
(使用)
【0108】
本明細書の組成物は、フィルムまたは膜(例えばイオン交換膜)などの材料を形成するために用いることができる。組成物およびその材料は、電気化学セルまたは電解セルなどのデバイスまたは装置内において用いることができる。一実施形態では、セルは、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に配置された膜を備える。膜は、本明細書に記載される任意の組成物または材料を有することができる。一部の実施形態では、膜は補強膜であり得る。特定の実施形態では、セルは電解質を備える。非限定的な実施形態では、電解質は水酸化物を有する。
【0109】
これまでの詳細な説明、ならびに図面および特許請求の範囲から当業者が認識し得るように、本開示の開示される実施形態に対する修正および変更は、以下の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3
【国際調査報告】