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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】凍結バッグ解凍方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/04 20060101AFI20230309BHJP
   C12M 1/36 20060101ALI20230309BHJP
   C12M 1/00 20060101ALN20230309BHJP
【FI】
C12N1/04
C12M1/36
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543422
(86)(22)【出願日】2021-01-16
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2021013777
(87)【国際公開番号】W WO2021146660
(87)【国際公開日】2021-07-22
(31)【優先権主張番号】62/962,733
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.SWIFT
3.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】519421983
【氏名又は名称】バイオライフ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BioLife Solutions, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ブラウンスタイン,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー,ブライアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB01
4B029GA06
4B029GA08
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA44
(57)【要約】
本明細書では、バッグ型保存容器内の凍結サンプルの一貫した再現性のある解凍方法について説明する。方法及びシステムは、複数のバッグ型保存容器のサイズを同じ装置で使用することを可能にし得る。複数のセンサのサブセットは、解凍方法に対して適格であってもよい。方法は、第1ヒータバンク及び第2ヒータバンクを使用して凍結サンプルを加熱することをさらに含んでもよい。さらに、方法は、バッグ型容器の複数の第2温度を測定することを含んでもよい。第2閾値温度で、または第2閾値温度の少し後で、方法は、第1ヒータバンクを使用して加熱すること、及び第2ヒータバンクを使用した加熱を終了することを含んでもよい。方法は、部分的に解凍されたサンプルが、第1ヒータバンクを使用して一定時間加熱された後に、第1ヒータバンクを使用して部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することを含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッグ型容器における凍結サンプルを解凍する方法であって、前記方法は、
第1表面と第2表面と接触する前記バッグ型容器の複数の第1温度を測定することであって、前記複数の第1温度のそれぞれの第1温度は、複数のセンサの異なるセンサによって測定され、前記複数のセンサのそれぞれのセンサは、前記バッグ型容器の異なる位置において温度を測定するように構成される、前記バッグ型容器の複数の第1温度を測定することと、
前記複数の第1温度のそれぞれの第1温度を第1閾値と比較することと、
前記比較を用いて、前記複数のセンサのサブセットを特定することであって、前記複数のセンサの前記サブセットのそれぞれのセンサは、前記第1閾値以下の第1温度を測定する、前記複数のセンサのサブセットを特定することと、
第1ヒータバンクを用いて前記凍結サンプルを加熱し、同時に第2ヒータバンクを用いて前記凍結サンプルを加熱することと、
前記複数のセンサの前記サブセットを用いて前記バッグ型容器の複数の第2温度を測定することと、
前記複数の第2温度の第2温度が、前記バッグ型容器内に部分的に解凍されたサンプルが存在することを示す第2閾値を超えると、
前記第1ヒータバンクを用いて前記部分的に解凍されたサンプルを加熱することと、
前記第2ヒータバンクを用いた前記部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することと、
前記部分的に解凍されたサンプルが、所定期間の間、前記第1ヒータバンクを用いて加熱された後に、前記第1ヒータバンクを用いた前記部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1ヒータバンクを用いた前記部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了するとき、前記部分的に解凍されたサンプルの大半は水溶液であって、前記部分的に解凍されたサンプルにおいて固相が残る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することは、既定時間において起こり、
前記既定時間は、経験に基づく相変化期間を用いて計算される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数のセンサの前記サブセットを用いて前記バッグ型容器の複数の第3温度を測定すること、をさらに含み、
前記第1ヒータバンクを用いた前記部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了するのは、前記複数の第3温度の第3温度が第3閾値を超えるときである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記第3閾値は、経験的に特定される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複数のセンサの前記サブセットを用いて前記バッグ型容器の複数の第3温度を測定することと、
前記複数の第3温度を参照温度プロファイルと比較することと、をさらに含み、
前記第1ヒータバンクを用いた前記部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了するのは、前記複数の第3温度の第3温度が前記参照温度プロファイルから大幅に逸脱するときである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記バッグ型容器を前記第1表面と前記第2表面と接触して配置すること、をさらに含み、
前記バッグ型容器のポートは、前記第1表面の第1端と、前記第2表面の第1端とに近位であって、
前記バッグ型容器のポートは、前記第2ヒータバンクより、前記第1ヒータバンクの近くに配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記バッグ型容器を配置すること、をさらに含み、
前記バッグ型容器は、前記第1表面の第1部分において前記第1表面と重なり、前記第1表面の第2部分において前記第1表面と重ならず、
前記バッグ型容器は、前記第2表面の第1部分において前記第2表面と重なり、前記第2表面の第2部分において前記第2表面と重ならず、
前記第1ヒータバンクは、前記第1表面の前記第2部分と、前記第2表面の前記第2部分とより、前記第1表面の前記第1部分と、前記第2表面の前記第1部分との近くに配置され、
前記第2ヒータバンクは、前記第1表面の前記第1部分と、前記第1表面の前記第1部分とより、前記第1表面の前記第2部分と、前記第2表面の前記第2部分との近くに配置され、
前記バッグ型容器は、前記第1表面の表面積より小さい表面積を有し、
前記バッグ型容器は、前記第2表面の表面積より小さい表面積を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バッグ型容器の表面積は、前記第1表面の表面積の30%以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記バッグ型容器を配置すること、をさらに含み、
前記第1表面に直交する線は、前記第2ヒータバンクを通じて延びて、前記バッグ型容器を通じて延びない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バッグ型容器の大きさを特定するユーザ入力を受信することと、
前記バッグ型容器の前記大きさに基づいて、前記複数のセンサの前記サブセットからセンサを除外することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記バッグ型容器内の媒体の種類を特定するユーザ入力を受信すること、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1表面と前記第2表面と接触する前記バッグ型容器の前記複数の第1温度を測定することは、前記第1表面と前記第2表面とにわたって不均一に分布した5つの位置における前記複数の第1温度を測定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のセンサの前記サブセットは、前記複数のセンサより少ないセンサを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記凍結サンプルは、第1凍結サンプルであって、
前記バッグ型容器は、第1大きさによって特徴付けられる第1バッグ型容器であって、
前記方法は、
前記第1表面と前記第2表面と接触する第2バッグ型容器における第2凍結サンプルを解凍することを、さらに含み、
前記第2バッグ型容器は、前記第1大きさと異なる第2大きさによって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1閾値は、前記バッグ型容器が前記第1表面と前記第2表面と最初に接触するときに測定される前記バッグ型容器の温度より低い、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1ヒータバンクを用いて前記凍結サンプルを加熱することは、前記第1ヒータバンクのための37℃から45℃の範囲における温度設定点を目標とすることを有し、
前記第2ヒータバンクを用いて前記凍結サンプルを加熱することは、前記第2ヒータバンクのための温度設定点を目標とすることを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第1ヒータバンクを用いて前記部分的に解凍されたサンプルを加熱することは、前記第1ヒータバンクのための37℃から45℃の範囲における温度設定点を目標とすることを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記バッグ型容器を前記第1表面と接触させることと、
前記バッグ型容器を前記第2表面と接触させることと、
前記バッグ型容器を前記第1表面と前記第2表面との間にクランプすることと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
装置の引き出しに前記バッグ型容器をロードすることと、
前記第1ヒータバンクを用いた前記部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了した後、前記装置から前記バッグ型容器を除去することと、をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
解凍システムであって、
第1表面と、
第2表面と、
複数のセンサと、
第1ヒータバンクと、
第2ヒータバンクと、
を有する解凍装置と、
実行されると、請求項1に記載の方法を実行するように解凍装置を制御する指示を有するコンピュータシステムと、を備える、解凍システム。
【請求項22】
前記第1表面は第1プレートであって、前記第2表面は第2プレートである、請求項21に記載の解凍システム。
【請求項23】
前記複数のセンサは、前記第1表面と前記第2表面とにわたって不均一に分布する、請求項21に記載の解凍システム。
【請求項24】
前記第1ヒータバンクは、前記第2ヒータバンクが、前記第1表面の第1端と、前記第2表面の第1端とに配置されるより、前記第1表面の前記第1端と、前記第2表面の前記第1端との近くに配置される、請求項21に記載の解凍システム。
【請求項25】
凍結サンプルを収容するバッグ型容器は、解凍のために、前記第1表面と前記第2表面との間に配置され、
前記第1表面に直交する線は、前記第2ヒータバンクを通じて延びて、前記バッグ型容器を通じて延びない、請求項21に記載の解凍システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年1月17日に出願された米国仮出願第62/962,733号に基づく優先権を主張し、その開示の全体は、全ての目的のためにその全体において参照によって本明細書に含まれる。
【背景技術】
【0002】
懸濁液中の細胞の凍結保存は、生細胞の長期保存と回復のために確立され、受け入れられている技術である。一般的な方法としては、塩溶液、緩衝液、栄養剤、成長因子、タンパク質、及び凍結保存剤などを含む凍結保存用培地に細胞を懸濁させる。その後、細胞は所望のサイズと容量の保存容器に分配され、容器の内容物が凍結するまで容器の温度を減少させる。典型的な長期保存条件は、温度が通常-196℃から-150℃の間である液体窒素蒸気保存を含む。バイアルやバッグ型保存容器は、凍結保存されたサンプルの特定の体積または用途に応じて、このようなサンプル液の保存に使用されてもよい。
【0003】
このような方法で保存された生細胞の回収を成功させるには、凍結と解凍との両方の工程において、細胞内領域での有害な氷結晶の成長を最小限に抑えることが重要である。凍結保存状態からサンプルを戻すことは、サンプルを完全な液体状態に解凍することに関する。解凍工程の際に、温度変化の速度は、凍結保存された細胞の生存率に影響を与える可能性がある。サンプル保存容器の固体内容物は、結晶化した大きな水の島を含み、その間には、氷の結晶の小さな核と混在しているガラス状の水溶性物質のチャネルが配置される。凍結保存温度から完全な液体状態への相変化が完了するまでの移行の間、細胞内において小さな氷の核の熱力学的に有利な伸張を含む、サンプル内の水分子の再配列の機会がある。細胞内の氷の結晶の成長は細胞損傷の可能性があり、結晶成長の程度は時間依存の現象であるため、相変化を通じた移行の時間間隔を最小にすることが望ましい。
【0004】
サンプル容器の温度における急速な変化は、通常、約37℃に設定された水槽へ容器を部分的に浸すことによって実現される。水槽の温度を上げることによってより速い解凍速度が得られるが、水槽に容器を浸すことは、容器内に温度勾配を生じさせ、最も高い温度が容器壁面に位置する。その結果、過渡的な熱力学的状態が発生し、凍結した物質が近くに存在しても、液体-固体の混合物の温度は融解温度を超える。したがって、容器内の温度勾配は、水槽の温度に上限を課す。さらに、一般的な凍結保護剤は細胞に対して毒性があるため、時間及び温度に対して液体状態における細胞の異なる曝露は、解凍工程の完了において、細胞の生存率におけるばらつきを生じさせるおそれがある。凍結保護剤の毒性は高温で強まるため、低い液体温度が望ましい。そのため、いくつかの解凍プロトコルは、通常、サンプル容器内に少量の固体物質が残っているときに終了する急速解凍フェーズを含む。水槽から取り出した後、サンプル温度は相変化温度付近の温度に急速に平衡化する。解凍プロトコルは、通常、凍結保護剤が濃縮された状態で解凍したサンプルを保持する時間を最小限にすることを目的としており、サンプルを希釈し、または凍結保存液を培養液と交換する後のステップは、通常、可能な限り短い間隔で適用される。
【0005】
サンプルの解凍を自動化する方法がいくつか提案されているが、特にバッグ型凍結保存容器(「凍結バッグ(cryobag)」と呼ばれる)に保存されたサンプルについては、さらなる改善が可能である。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、一般的に、バッグ型保存容器内の凍結サンプルを解凍するためのシステム及び方法に関するものである。様々な態様において、本開示は、細胞、組織、及び流体の凍結保存、並びに凍結保存された細胞、組織、及び流体の回収のシステム、装置、及び方法に関する。
【0007】
本発明の実施形態は、バッグ型保存容器内の凍結サンプルの一貫した再現性のある解凍を可能にし得る。解凍は、液相中に一部の固相が残存している程度であってもよい。実施の形態は、複数のバッグ型保存容器のサイズを同一の装置で使用することを可能にしてもよい。
【0008】
本発明の実施の形態は、バッグ型容器内の凍結サンプルを解凍する方法を含んでもよい。方法は、第1表面及び第2表面に接触しているバッグ型容器の複数の第1温度を測定することを含んでもよい。複数の第1温度のそれぞれの第1温度は、複数のセンサのうちの異なるセンサによって測定されてもよい。複数のセンサのそれぞれのセンサは、バッグ型容器の異なる位置における温度を測定するように構成されてもよい。方法は、複数の第1温度のそれぞれ第1温度を第1閾値と比較することを含んでもよい。方法は、比較を用いて複数のセンサのサブセットを特定することを含んでもよく、複数のセンサのサブセットのそれぞれのセンサは、第1閾値以下の第1温度を測定した。方法は、第1ヒータバンクを使用して凍結サンプルを加熱し、同時に第2ヒータバンクを使用して凍結サンプルを加熱することをさらに含んでもよい。加えて、方法は、複数のセンサのサブセットを用いて、バッグ型容器の複数の第2温度を測定することを含んでもよい。複数の第2温度のうち第2閾値を超える第2温度は、バッグ型容器内に部分的に解凍されたサンプルがあることを示してもよい。その時点またはそのわずか後に、方法は、第1ヒータバンクを使用して部分的に解凍されたサンプルを加熱することと、第2ヒータバンクを使用して部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することとを含んでもよい。方法は、部分的に解凍されたサンプルが、第1ヒータバンクを使用して一定時間加熱された後に、第1ヒータバンクを使用して部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することを含んでもよい。
【0009】
また、実施の形態は、解凍システムを含んでもよい。解凍システムは、解凍装置を含んでもよい。解凍装置は、第1表面、第2表面、複数のセンサ、第1ヒータバンク、及び第2ヒータバンクを含んでもよい。解凍システムはまた、コンピュータシステムを含んでもよい。コンピュータシステムは、実行されたときに解凍装置が解凍方法を実行するように制御する指示を含んでもよい。
【0010】
本発明の実施の形態の性質および利点のより良い理解は、後続の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明の実施の形態による例示的解凍装置の図であって、プレート、ヒータ、及びセンサを詳細に示す。
図1B】本発明の実施の形態による例示的解凍装置の図であって、プレート、ヒータ、及びセンサを詳細に示す。
図1C】本発明の実施の形態による例示的解凍装置の分解図であって、プレート、ヒータ、及びセンサを詳細に示す。
図2】本発明の実施の形態によるバッグ型容器内の凍結サンプルを解凍する方法を示す。
図3】シェル外部の上部が除去されている、本発明の実施の形態による例示的解凍装置の図を示す。
図4】本発明の実施の形態による装置の上正面右図であって、ヒータプレートにおける温度センサを詳細に示すように装置の追加部分が選択的に除去されている。
図5】本発明の実施の形態による熱センサの断面図を示す。
図6】本発明の実施の形態によるコンピュータシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
凍結バッグに保存された細胞の解凍のためには、従来の方法では、(例えば37℃の)温水槽で、最後の氷が溶けそうな時点まで細胞を素早く温めて、細胞を培地にゆっくり希釈する。サンプルを温めすぎると、細胞が代謝を始める可能性があり、凍結工程でよく使われるジメチルスルホキシド(DMSO)により中毒を起こす可能性がある。一般的に、凍結保存された細胞及び組織の解凍は、研究室の技術者によって行われ、適用されるプロトコルは、研究室の技術者によって異なるだけでなく、方法に依存する可能性もある。サンプル解凍の完了は、一般的に、それぞれ個別の技術者によって主観的に判断され、解凍速度または温めすぎたサンプルにおいて違いが生じることをもたらす可能性がある。水槽と、凍結バッグの挿入の手動制御によって、再現性のある解凍プロファイルを実現することは理論的には可能であるが、技術やプロトコルの順守の程度において予想されるばらつきは、特に解凍状態を監視するために水槽から凍結バッグを頻繁に取り出す必要性と組み合わせて、標準プロファイルからのずれをほぼ確実なものとする。水槽からの凍結バッグの除去は、水槽水から凍結バッグへの熱エネルギ伝達を中断し、解凍状態の目視評価は困難であることが多く、凍結バッグ製品の一体化した特徴として提供されるラベルや印刷された書き込み面の存在によってより複雑になっている可能性がある。さらに、水槽も汚染源であり、凍結バッグの密封接合部を意図しないで沈めることは、凍結バッグの密封接合部の開放または除去において、水槽の液体を凍結バッグの内容物へ導入することをもたらす可能性がある。
【0013】
本発明の実施の形態は、凍結バッグ内の凍結サンプルの一貫した再現性のある解凍を可能にし得る。複数の凍結バッグのサイズは、同じ装置において解凍されてもよい。ある凍結バッグは、解凍に使用される加熱プレートよりも実質的に小さいサイズを有してもよい。本発明の実施の形態では、加熱プレートよりかなり小さい凍結バッグから離れて配置されたヒータをランプダウン(ramping down)または停止させることによって、過度の解凍及びサンプルの損傷を回避することができる。加熱プレートの潜熱は、凍結バッグの一部を解凍するために十分であってもよい。他のヒータは、ヒータに接触または接近して配置された凍結バッグの別の部分の解凍を継続してもよい。
【0014】
(I. 概要)
解凍システムは、バッグ型容器のタイプである標準凍結バッグの凍結内容物を解凍するように設計されてもよい。凍結バッグは、25mlから1000ml以上の公称容積の範囲でされているが、ほとんどの場合、公称サイズの一部の容積を収容することを意図しているため、バッグが平らな向きで凍結されたとき、バッグの最大断面厚さは約0.4インチである。凍結バッグは通常、外形において長方形で、バッグに充填するためのチューブのシステムが設けられている。充填の後で、凍結の前において、充填チューブは、ヒートシールされ、チューブが袋から約1インチ以下突出しないように切り揃える。チューブに加えて、凍結バッグの同じ端部領域は、通常、2つまたは3つ以上のポート特徴を有し、ポート特徴は、コネクタチューブ結合によって貫通されるまでシールされる。コネクタチューブ結合を通じて、バッグの内容物が取り出し可能である。ポートが配置される凍結バッグの領域は、凍結バッグのネックまたは近位端部と称される。解凍システムは、凍結バッグ及び内容物を約-70℃から-196℃の初期温度を有する凍結状態で受けて、相変化温度を超えてバッグの内容物が主に液体状態であるまでバッグ及び内容物の温度を速く上昇させる。容器の解凍された内容物が許容できない高温にさらされていないことを視覚的に示すため、凍結保存業界では、解凍プロセスの完了時に何らかの固相残部が存在することを期待するという慣習を採用しています。
【0015】
解凍システムは、冷凍された凍結バッグのサイズの範囲を受け入れてもよく、それぞれの凍結バッグのサイズについて、充填量の範囲が適用され得る。機器は、凍結バッグが約37℃の温度である水槽に浸漬されたときに経験する解凍速度に近似する速度で、バッグの内容物を解凍してもよい。解凍システムは、均一な温度分布を維持するために解凍プロセス中にバッグの内容物を攪拌してもよく、バッグ内にいくつかの固相が残っているときに、解凍プロセスを自動的に終了させてもよい。
【0016】
図1A図1B及び図1Cは、解凍ユニット100のプレート、ヒータ、及びセンサを示す。解凍ユニット100は、プレートとバッグとの最適な接触を保証するために、凍結バッグの上部及び下部の主要面に軽いクランプ圧で接触する2つのアルミニウムプレート(例えば、下部プレート104及び上部プレート108)を含んでもよい。下部プレート104は、伸縮可能な引き出しとして構成されてもよく、そのため、最大のバッグサイズ(例えば、1000ml)を収容する領域を構成している。凍結バッグは、下部プレート104と上部プレート108の間に配置されてもよく、凍結バッグのポートは、図面においては、プレートに対して左側に配置されてもよい。上部プレート108は、凍結バッグの長手方向に平行な軸にヒンジで固定されてもよく、よって、解凍プロセス中にバッグの内容物を混合するようにプレートは揺動されてもよい。加えて、上部プレート108は、ポート特徴が存在しない凍結バッグの領域に制限されてもよく、よって、ポートが、内容物が位置する凍結バッグの部分に対する上部プレートのクランプ圧を制限しない。このように、全てのバッグサイズのポートは、下部プレートの同じ領域に意図的に配置されてもよく、よって、バッグのサイズと容量が増加するにつれて、バッグがポート領域から遠位のプレートの領域に延びる。「上部」、「下部」、「底部」、及び「上部」は、バッグ又はプレートの向きを説明するために便宜上使用される。しかしながら、凍結バッグ及びプレートは、縦方向に、または横方向と縦方向との間の任意の角度で配置されてもよい。
【0017】
下部プレート104は、絶縁媒体に埋め込まれた熱センサのセット112(センサ112a~e)を含んでもよく、よって、凍結バッグが下部プレート104上に静止しているとき、センサ112a~eが下部プレート104ではなくバッグと熱的に結合する。センサ112a~eは、バッグ表面の温度を報告してもよく、バッグ表面は、センサと反対側の内壁にある凍結バッグの内容物から数度だけオフセットされている。プレートセンサがバッグ内容物について近い代理温度を報告し、混合システムが凍結バッグ内容物において均一な温度を促進するため、バッグ溶液中において低い割合の固相が残る相変化遷移状態に関連すると予め決定されている事前設定温度閾値を達成することによって、解凍プロセスの終了がトリガされる場合がある。熱センサのセット112は、下部プレート104におけるある線に沿って分布してもよい。熱センサのセット112は、所定のサイズの凍結バッグが通常2つ以上のセンサと接触するように分布してもよい。異なる凍結バッグのジオメトリの結果として、センサ112a~eは、プレートにわたって均等に分配されなくてもよい。解凍終了温度閾値は、参加するすべての温度センサが、解凍を終了させるために閾値を超えなければならないように構成されてもよい。安全機構として、閾値を超えたセンサからの温度測定値は、過温のための二次温度閾値を監視し、凍結バッグ溶液内の生体懸濁液の生存率に潜在的に有害である温度範囲への上昇を防ぐために解凍プロセスの終了をトリガするように使用されてもよい。
【0018】
解凍制御変数のセットは、所定のバッグ温度センサが解凍制御プロセスに参加する資格を有するために到達しなければならない閾値を定義する温度値を含んでもよい。例示として、下部プレート104は、中央線に沿って凍結バッグとも接触するように、下部プレート104の中央線に沿って戦略的に分布する5つの別個の温度センサ(例えば、センサ112a、112b、112c、112d、及び112e)を含んでもよい。凍結バッグの公称容量に応じてバッグの長さが変化するため、低容量のバッグの場合、センサ112a~eの一部がバッグに結合されない。所定の容量の凍結バッグと結合する位置による能力を有するセンサの識別は、可変テーブルで識別されてもよく、または解凍サイクルの開始時の温度降下がないことによって動的に識別されてもよい。しかしながら、凍結バッグの下面が平面でない場合、またはガスポケットまたは凹みを有する場合、凍結バッグの温度を報告するセンサがアーチファクト的な情報を提供してもよい。そのため、それぞれのセンサが、解凍プロセス制御アルゴリズムにおいて資格を有するためには、充分な値の温度降下を報告することが求められてもよい。ある制限時間後に温度降下の閾値に該当するセンサがない場合、このエラー状態を、ディスプレイ画面を通じてユーザに知らせることができる。解凍プロセスの開始後の数秒のこの時間制限値は、制御変数セットにおいて格納されてもよい。資格障害イベントは、解凍プロセスを終了させ、装置から凍結バッグを排出させるアルゴリズムシーケンスに結合されてもよい。
【0019】
凍結バッグ温度センサのデータストリームは、グラフィックディスプレイによって保存及び監視されてもよく、またはレビューのためのアーカイブ保存のために特定の解凍ファイルのメタデータとともにポータブルメディアに転送されてもよい。
【0020】
[A. 解凍ステージ]
凍結バッグ解凍プロセスは、2つのステージに分割されてもよい。第1ステージは、バッグ及びその内容物への熱エネルギの流入が、主に、凍結開始温度から凍結バッグの内容物の相変化の開始まで、温度を推移させる役割を果たす温度推移ステージであってよい。相変化の開始は、凍結バッグにおける液相の初期形成によって特徴づけられてもよい。凍結バッグの中身は通常、複雑な水性製剤を含むため、相変化は、急激な変化ではなく、むしろ温度範囲にわたって広がっている。解凍プロセスの間に相変化が開始すると、液相は、凍結バッグの内面にわたって広がってもよく、よって、バッグはプレート表面に適合して、バッグと加熱プレートとの熱的接触を増加させる。相変化の開始から解凍プロセスの終了までの間隔は、第2ステージとして定義されてもよい。
【0021】
上部プレート108と下部プレート104は、平坦な抵抗マットヒータの2つのバンクをそれぞれ含んでもよい。下部プレート104において、ヒータの第1バンク116は、バッグの近位領域またはネック領域に配置されてもよく、より大きいワット数を有するヒータの第2バンク120は、凍結バッグのネック及びポート領域に対して、第1バンク116から遠位に配置されてもよい。上部プレート108において、ヒータの第3バンク124は、バッグの近位領域またはネック領域に配置されてもよく、より大きいワット数を有するヒータの第4バンク128は、第3バンク124に対して遠位に配置されてもよい。それぞれのバンクは、2つの同一のヒータを含むものとして示されているが、実施の形態において、ヒータの数がより小さくまたはより大きくてもよい。プレート毎に1つのみのヒータバンクを用いることは、バッグの遠位部分の過度の解凍をもたらす可能性がある。プレート毎に過剰な数のヒータバンクを用いることは、不必要なプロセスの複雑さ及び増加したコストをもたらす可能性がある。しかしながら、ある実施の形態において、追加のヒータバンクが使用されてもよい(例えば、3,4,5,6,7,8または9以上の合計)。遠位のヒータバンクのさらなる分割は、セグメント化されたバッグまたはセプタム境界を有するバッグに使用されてもよい。
【0022】
マットヒータは、単位面積当たりのエネルギ出力において一様であってもよく、より大きいワット数を有するヒータは、小さいワット数を有するネックヒータより広い面積を覆う。凍結バックの大きさの範囲において、凍結バッグの大きさが減少すると、上部及び下部プレートの両方のより大きい面積が、熱シンクを有しなくなり、よって、凍結バックと接触しているプレートの面積より大きい速度で温度が上昇する。プレートにおける温度差の正味の結果は、凍結バックの遠位端への熱流入の増加であってもよく、よって、ネック領域より大きい速度における相変化を通じた移行を課してもよい。解凍アルゴリズムが遠位領域における高いセンサ読み取り値に基づいて解凍を終了させると、ネック領域は固相のままであってもよく、したがって、終了時の解凍プロセスは不均一である。
【0023】
[B. ステージ移行制御]
異なる凍結バックの大きさのためにバランスが取れた解凍終点を確立するためには、システムが凍結バックの大きさを特定することが求められてもよい。凍結バックの大きさは、センサまたはユーザ入力を通じて動的に特定されてもよい。大きさの特定は、特定のバッグの大きさのための解凍プロセスを制御する変数のセットのための表入力を特定してもよい。変数表には、第1解凍ステージから第2解凍ステージへの移行をトリガするように使用されてもよいタイムポイント値が含まれてもよい。ステージ移行は、資格を有する凍結バッグの温度センサデータストリームのいずれかの組み合わせによってトリガされてもよい温度設定点によって制御されてもよい。上部及び下部プレート上のネック及び遠位ヒータバンクは、設定点温度を達成し、維持するように、PIDアルゴリズムを通じて局所的温度センサフィードバックループによって個別的に制御されてもよい。初期または第1ステージ温度設定は、相変化の開始への急速な凍結バッグ温度移行を達成するように全てのヒータバンクに適用されてもよい。
【0024】
相変化の開始後、凍結バッグの長さにわたって凍結バッグ内容物の相変化プロセスのバランスをとるために、温度設定の第2グループが、ネックヒータバンク(例えば、第1バンク116及び第3バンク124)及び遠位ヒータバンク(例えば、第2バンク120及び第4バンク128)に適用されてもよい。中型及び小型バッグのためのヒータ設定移行は、変数表において保存されてもよい。変数表は経験的データに基づき、制御変数を入力するために使用されてもよい。制御変数は、解凍プロセスの結果を最適化するように調整されてもよい。例示として、250mlの公称サイズの凍結バッグは、30mlから70mlの生物学的材料の内容物を含んでもよく、凍結バッグは、プレート面積の約半分を占めてもよい。解凍プロセスの第1ステージにおいて、プレートの遠位部分とともに、近位またはネック部分の温度は、第1ステージ設定点まで制御される。しかしながら、熱シンクロード下で、両方のプレートは、温度降下を経験する可能性がある。温度降下の結果として、ヒータバンクは、温度設定点にプレートを戻すことを試みるように、温度降下に応答するように活性化してもよい。
【0025】
解凍の第2ステージでは、凍結バッグの温度が既定の温度終点に近づくと、プレート温度を設定点に戻すように、加熱システムへの要求が少なくなってもよい。しかしながら、凍結バッグと接触していないプレートの遠位部分は、プレートの近位端に向かって、凍結バッグヒートシンクに向かって移動し得る実質的な残留熱エネルギを含む場合がある。埋め合わせされないまま放置されると、追加的遠位領域プレート熱レザーバは、凍結バッグの近位領域に先立って、凍結バッグの遠位領域が解凍することをもたらす可能性がある。したがって、第2ステージヒータ設定は、遠位ヒータがより低い温度設定に移行するようにこの点において結合されてもよく、よってプレートにわたった熱エネルギの分布が均一である。ある状況において、近位ヒータバンクは、より高い温度設定に移行してもよく、よって、PID制御ループはより大きい量のエネルギ流入を適用する。全てのバッグの大きさのための温度設定点は、特定のバッグ溶液において、事前の試験によって最適化されてもよい。ステージプレート温度設定に加えて、アイドルプレート温度設定も、解凍手順の前とその間の保持温度として選択されてもよい。第1ステージから第2ステージへのプレート温度設定の移行は、凍結バッグ温度センサから提供される温度データ、解凍開始設定後の時間、または両方の制御の組み合わせによってトリガされてもよい。
【0026】
解凍ステージとアイドルプレートの温度設定、ステージ移行信号設定、資格のためのセンサ閾値、解凍完了温度、及び高温限界は、特定の解凍アプリケーションのプロファイルとして保存されてもよい。プロファイルは、プレートクランプ圧の目標値、及び絶対解凍時間値などの装置の操作に関する他の制御値を含んでもよく、絶対解凍時間値は、予期せぬ故障状態が過剰な解凍または過温状態を発生させることを抑制するように、安全なバックストップを提供する。プロファイルは、任意に呼び出せるようにデータベースに保存され、所望の解凍条件を実行するように、解凍制御変数にロードされてもよい。解凍プロファイルは、携帯用記憶媒体またはクラウドストレージに転送されてもよく、加えて、外部の解凍プロファイルは、携帯用記憶媒体またはクラウドストレージから機器プロファイル記憶データベースに転送されてもよい。
【0027】
(II. 例示方法)
図2は、バッグ型容器における凍結サンプルを解凍する例示的な方法2000を示す。バッグ型容器は、本明細書にて説明されるいずれかの凍結バッグであってもよい。凍結バッグは、25、50、250、500、750、または1,000mlの公称サイズを有していてもよい。方法2000は、本明細書にて説明されるいずれかのシステムを使用することを含んでもよい。方法2000は、上述の解凍プロセスの詳細をさらに含んでもよい。
【0028】
バッグ型容器はポートを含んでもよい。バッグ型容器のポートは、第1表面の第1端と第2表面の第1端とに近位に配置されてもよい。バッグ型容器は、第1表面の表面積より小さい表面積を有してもよく、第2表面の表面積より小さい表面積を有してもよい。第1表面の表面積は、第2表面の表面積と同じであってもよい。バッグ型容器の表面積は、第1面の表面積または第2面の表面積の10%から20%、20%から30%、30%から40%、40%から50%、50%から60%、60%から70%、70%から80%、80%から90%、または90%から95%であってもよい。ポートを除いたバッグ型容器の長さは、1から2インチ、2から3インチ、3から6インチ、6から8インチ、8から12インチ、または12インチ以上の範囲で変化してもよい。表面は、解凍用の最も長いバッグ型容器の長さより長くてもよいが、内容物を過剰に解凍することなく、はるかに小さいバッグ型容器を収容してもよい。
【0029】
第1表面と第2表面とは、一方の表面が下面であって、他の表面が上面であるように横方向に配向されてもよい。第1表面と第2表面とは、縦方向にまたは横方向と縦方向との間の角度において配向されてもよい。一方のプレートは、他方のプレートより大きくてもよい。ある実施の形態において、第1表面の表面積は、第2表面の表面積より、0%から10%、10%から20%、20%から30%、30%から40%、40%から50%、50%から100%大きくてもよい。表面は、本明細書において説明されるいずれかの表面またはプレートであってもよい。ゲル、液体、織布、不織布、またはスクリーンであってもよくまたはこれらを含んでもよい柔軟な材料を含むいずれかの熱伝導表面が使用されてよい。
【0030】
バッグ型容器は、第1表面の第1部分において第1表面に重なってもよく、第1表面の第2部分において第1表面と重ならなくてもよい。バッグ型容器は、第2表面の第1部分において第2表面に重なってもよく、第2表面の第2部分において第2表面と重ならなくてもよい。第1ヒータバンクは、第1表面の第1部分及び第2表面の第1部分に、第1表面の第2部分及び第2表面の第2部分より近くに配置されてもよい。第2ヒータバンクは、第1表面の第2部分及び第2表面の第2部分に、第1表面の第1部分及び第1表面の第1部分より近くに配置されてもよい。
【0031】
実施の形態において、第1ヒータバンクは、第1表面の第1端及び第2表面の第1端に、第2ヒータバンクが第1表面の第1端及び第2プレートの第1端に配置されるより近くに配置されてもよい。実施の形態において、第1ヒータバンク及び第2ヒータバンクは、両方第1表面内にあってもよく、第1表面と接触しているバッグ型容器の温度の読み取り値を提供するように構成されてもよい。これら及び他の実施の形態において、第2表面は、第3ヒータバンク及び第4ヒータバンクを含んでもよい。第3ヒータバンクは、第1ヒータバンクと位置合わせされてもよく、第4ヒータバンクは、第2ヒータバンクと位置合わせされてもよい。第1ヒータバンクは、第3ヒータバンクと同一であってもよい。第2ヒータバンクは、第4ヒータバンクと同一であってもよい。それぞれのヒータバンクは、1,2,3,4または5以上のヒータを含んでもよい。
【0032】
実施の形態において、第1表面(例えば、プレート)の主要面に直交する線は、第2ヒータバンクを通じて延び、バッグ型容器を通じて延びない。第1表面は、第2表面に平行であってもよい。ある実施の形態において、第1表面(例えば、プレート)の主要面に直交する線は、第2ヒータバンクを通じて、及びバッグ型容器を通じて延びる。
【0033】
方法2000は、バッグ型容器の大きさを特定するユーザ入力を受信することを含んでもよい。ある実施の形態において、ユーザから受信する唯一の入力は、バッグ型容器の大きさである。方法2000は、バッグ型容器における媒体の種類を特定するユーザ入力を受信することを含んでもよい。ある実施の形態において、方法2000は、装置の引き出しにバッグ型容器をロードすることを含んでもよい。方法2000は、サンプル解凍装置の第1表面にバッグ型容器を接触させることを含んでもよい。加えて、方法2000は、第2表面にバッグ型容器を接触させることを含んでもよい。方法2000は、第1表面と第2表面との間にバッグ型容器をクランプすることをさらに含んでもよい。
【0034】
ブロック2002において、方法2000は、第1表面と第2表面と接触するバッグ型容器の複数の第1温度を測定することを含んでもよい。複数の第1温度のそれぞれの第1温度は、複数のセンサのうち、異なるセンサによって測定されてもよい。複数のセンサのそれぞれのセンサは、バッグ型容器の異なる位置において温度を測定するように構成されてもよい。複数のセンサは、5センサ、2から5センサ、5から8センサ、8から10センサ、または10より多くのセンサを含んでもよい。複数のセンサは、第1表面及び第2表面にわたって均一に分布していなくてもよい。バッグ型容器は、少なくとも2,3,4または5以上のセンサと接触してもよい。一方の表面がセンサを含んでもよく、一方で他方の表面はセンサを有しなくてもよい。ある実施の形態において、センサは両方の表面にあってもよい。
【0035】
ブロック2004において、方法2000は、第1閾値に対して複数の第1温度のそれぞれの第1温度を比較することを含んでもよい。第1閾値は、バッグ型容器が最初に第1表面及び第2表面と接触するときに測定されるバッグ型容器の温度より低くてもよい。第1閾値は、バッグ型容器の大きさ及び/または媒体に依存してもよい。例えば、第1閾値は、-10℃、-30℃から-20℃、-20℃から-10℃、または-10℃から0℃であってもよい。実施の形態において、第1閾値は、温度差であってもよく、測定された第1温度も温度差であってもよい。例示として、第1閾値は、-15℃の温度差であってもよい。第1閾値は、特定の期間に特化したものであってもよい。例えば、期間は、凍結バッグが両方の表面にクランプされた後、30から45秒、45から60秒または1から2分であってもよく、その後またはその前であってもよい。
【0036】
ブロック2006において、方法2000は、比較を用いて、複数のセンサのサブセットを特定することを含んでもよい。複数のセンサのサブセットは、解凍プロセスの資格を有しているとみなしてもよい。複数のセンサのサブセットのそれぞれのセンサは、第1閾値より低い第1温度を測定してもよい。複数のセンサのサブセットは、複数のセンサのより少ないセンサを含んでもよい。ある実施の形態において、複数のセンサのサブセットは、複数のセンサであってもよい。
【0037】
サブセットは、バッグ型容器の大きさを用いて特定されてもよい。バッグ型容器の大きさは、ユーザ入力を通じて受信されてもよく、またはセンサによって特定されてもよい。バッグ型容器の領域の外側にあると特定されたセンサは、複数のセンサのサブセットから除外されてもよい。
【0038】
ブロック2008において、方法2000は、第1ヒータバンクを用いて凍結サンプルを加熱することと、同時に、第2ヒータバンクを用いて凍結サンプルを加熱することを含んでもよい。凍結サンプルの加熱は、複数の第1温度を測定することより前、それと同時に、またはその後に起こってもよい。第1ヒータバンクを用いて凍結サンプルを加熱することとは、第1ヒータバンク及び第2ヒータバンクのために37℃から45℃、37℃から40℃、40℃から42℃、42℃から45℃、45℃から50℃、または50℃より高い範囲における表面温度設定点を目標とすることを含んでもよい。この温度は、バッグ型容器の温度を測定する複数のセンサとは別に測定される表面の温度であってもよい。第1ヒータバンク及び第2ヒータバンクは、同じ温度設定点を有してもよい。加熱は、PIDループまたはいずれかの適切な制御ループによって制御されてもよい。加熱は、第3ヒータバンク及び第4ヒータバンクを含んでもよい。方法2000は、加熱において、表面及びバッグ型容器を撹拌することを含んでもよい。
【0039】
ブロック2010において、方法2000は、複数のセンサのサブセットを用いて、バッグ型容器の複数の第2温度を測定することを含んでもよい。複数の第2温度は、解凍の時間または期間に関連してもよい。温度プロファイルは、測定温度及び時間から特定されてもよい。
【0040】
ブロック2012において、方法2000は、複数の第2温度の第2温度が第2閾値を超えると、第2ヒータバンクを用いた部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了する一方で、第1ヒータバンクを用いて、部分的に解凍されたサンプルを加熱することを含んでもよい。第2閾値は、0℃から4℃を含む0℃から8℃の範囲にあってもよい。ある実施の形態において、第2閾値は温度差であって、測定された第2温度は温度差であってもよい。温度差は、第1閾値に対する差であってもよい。ある実施の形態において、複数の第2温度の1つのみの第2温度が閾値を超えることが求められる。1つの第2温度は、閾値を超える時系列的に最初または最後の第2温度であってもよい。ある実施の形態において、2つの第2温度、多数の第2温度、または全ての第2温度が閾値を超えることが求められる。ある実施の形態において、第2閾値は、温度のアレイであってもよい。例えば、第2閾値は、最高の第2温度のための値と、最低の第2温度のための値とを含んでもよい。ある実施の形態において、複数の第2温度の平均、または中央値が閾値を超えることが求められる。さらに、第2閾値は温度のアレイであってもよい。例えば、第2閾値は、最高の第2温度のための値と、最低の第2温度のための値とを含んでもよい。アレイのいずれか、全てまたは一部の値を超えると、第2閾値を超えたとみなしてもよい。第2閾値は、経験的に特定されてもよく、バッグ型容器の大きさ及び/または媒体を用いて特定されてもよい。
【0041】
第2ヒータバンクを用いた部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することは、第2ヒータバンクの温度設定点を低くすることを含んでもよい。温度設定点をヒータバンクの温度より低くすることは、ヒータバンクによる加熱を効果的に終了させてもよい。しかしながら、表面温度が、温度設定点より低くなると、第2ヒータバンクが再度活性化してもよい。
【0042】
ブロック2014において、方法2000は、ある期間において第1ヒータバンクを用いて部分的に解凍されたサンプルが加熱された後に、第1ヒータバンクを用いた部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することを含んでもよい。ある実施の形態において、第1ヒータバンクを用いた部分的に解凍されたサンプルの加熱が終了されると、部分的に解凍されたサンプルの大半は水溶液であって、固相が部分的に解凍されたサンプルに残る。例えば、内容物の質量または体積の70%から80%、80%から90%、90%から95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%、または99.99%が液相であって、残りが固相である。残っている固相は粒状であってもよい。固相は、バッグ型容器を通じて実質的に一様に分布した細かい粒であってもよい。部分的に解凍されたサンプルは、細かいスラッシュのような状態になってもよい。
【0043】
ある実施の形態において、部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了することは、既定時間で起こってもよい。既定時間は、経験に基づく相変化期間を用いて計算されてもよい。既定時間は、第1閾値が達成された時の後、30秒から1分、1から3分、3から5分、5から7分、7から10分、10から15分、または15分以上であってもよい。ある実施の形態において、既定時間は、故障や異常が発生した場合に過熱を防止するための安全バックストップであってもよい。
【0044】
ある実施の形態において、方法2000は、複数のセンサのサブセットを用いてバッグ型容器の複数の第3温度を測定することをさらに含んでもよい。複数の第3温度の第3温度が第3閾値を超えると、第1ヒータバンクを用いた部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了してもよい。第3閾値は4℃から25℃の範囲であってもよい。第3閾値は、経験的に特定されてもよく、バッグ型容器の大きさ及び/または媒体に基づいて異なってもよい。第2閾値のように、第3閾値は、温度差であってもよい。第3温度は温度差であってもよい。加えて、第2閾値と同様に、第3閾値は、第3温度のみに基づいたものでなくてもよく、複数の第3温度または複数の第3温度の統計的値を含んでもよい。さらに、第2閾値と同様に、第3閾値は、温度のアレイであってもよい。例えば、第3閾値は、最高の第3温度の値と最低の第3温度の値とを含んでもよい。アレイのいずれか、全てまたは一部の値を超えると、第3閾値を超えたとみなしてもよい。例えば、最低の第3温度が4℃より高く、または最高の第3温度が12℃より高いと、第3閾値を超えたとみなしてもよい。
【0045】
ある実施の形態において、複数の第3温度は、参照温度プロファイルと比較されてもよい。複数の第3温度の第3温度が参照温度プロファイルから大幅に逸脱すると、第1ヒータバンクを用いて部分的に解凍されたサンプルを加熱する。参照温度プロファイルからの逸脱は、リーク、過充填、過少充填、またはバッグ型容器または装置の異常を示すこともある。加熱は、他の閾値において説明したと同様に、第3温度のみではなく、複数の第3温度、または複数の第3温度の統計的値を含んでもよい。
【0046】
方法2000は、第1ヒータバンクを用いた部分的に解凍されたサンプルの加熱を終了した後、装置からバッグ型容器を除去することを含んでもよい。ある実施の形態において、加熱を終了した後に、第1表面を含む引き出しが自動的に開放されてもよい。バッグ型容器における固相は、第1表面から除去された後、10から20秒、20から30秒、または30から60秒の間で液相となってもよい。
【0047】
ある実施の形態において、方法2000は、第1表面及び第2表面と接触した第2バッグ型容器における第2凍結サンプルを解凍することを含んでもよい。第2バッグ型容器は、第1バッグ型容器と異なる大きさを有してもよい。第2バッグ型容器のための解凍プロセスは、バッグ型容器を解凍するために説明されたいずれかの方法を含んでもよい。
【0048】
(III. 例示システム)
本明細書にて説明する方法とともに使用できる例示的システムは、BioLife Solutions ThawSTAR(登録商標) CB及び2018年8月3日に出願した米国出願第16/054,454号において説明されるシステムを含んでもよく、これらの全内容は、全ての目的において参照によって本明細書に含まれる。例示的なシステムは、図1A図1B、及び図1Cに示された装置の態様と組み合わせられてもよく、これらを含んでもよい。
【0049】
図3は、解凍ユニット100の内部部品を示し、特に、上部シェル、タッチスクリーンカウル(cowl)、タッチスクリーンインタフェース、及び前面パネルが除去された解凍ユニット200の一部を示す。背面パネル135は示されている。上部ヒータプレート240は、示されており、これらに限定しないが、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼、カーボンファイバ、グラフェン材料等の一般的に高い熱伝導率を有する材料から形成されてもよい。このような態様において、上部ヒータプレート240は、12から400ワット毎メートル、毎ケルビン(κ=12~400W/(m・K))の熱伝導率を有してもよく、またはその範囲内の伝導率の増分または勾配で有してもよい。上部ヒータプレート240の上面に結合された2つまたは3つ以上のヒータ255がある。ある態様において、ヒータ255は、可撓性を有するシリコーンマットヒータ等の抵抗ヒータであってもよい。他の態様において、ヒータ255は、上部ヒータプレート240の上面の表面積の大半を覆ってもよい。ある実施の形態において、2つのヒータ255は、その間に、1つまたは複数のサーミスタ257の通過または配置を可能にする隙間256によって分離される。1つまたは複数のサーミスタ257は、上部ヒータプレート240の温度を監視するように上部ヒータプレート240に埋め込まれてもよく、制御ユニットに熱的測定情報を提供してもよく、よって、温度は、2つのヒータ255に適用されるエネルギを規制する制御ユニットのフィードバック回路によって制御されてもよい。ある実施の形態において、上部ヒータプレート240の上またはその内部のヒータ255は、独立した制御回路上に操作できて、よって、ヒータプレートの熱的入力は能動的に(操作者入力によって手動でまたはアルゴリズムによって自動的に)規制されてもよく、上部ヒータプレート240と接触し得る不均一な熱シンクに応じて、上部ヒータプレート240の局所的な温度をバランスする。ある実施の形態において、上部プレートにおける個別のヒータ255の数は、上部ヒータプレート240の温度のより大きい領域的制御を適用するように、3以上であってもよく、プレートへの熱入力のより正確な制御及び動的バランスを提供し、よって、解凍ユニットが、幅広い大きさ及び体積にわたってバッグ型容器を受けて、均一に解凍できる。
【0050】
ある態様において、ヒータ255は、上部ヒータプレート240の上面におけるヒータ255の位置に基づいてサブセットとして個別的に制御されてもよい。例えば、上部ヒータプレート240の前面に配置されるヒータ255は、上部ヒータプレート240の背面に配置されるヒータに対して、異なる温度で規制されてもよい。代わってまたは組み合わせて、上部ヒータプレート240の左側に配置されるヒータ255は、上部ヒータプレート240の右側に配置されるヒータに対して異なる温度において規制されてもよい。さらなる態様において、ヒータ255は、上部ヒータプレート240の表面上で互いから、及び/または解凍装置の残りから、熱的に絶縁されてもよい。
【0051】
上部ヒータプレート240は、2つの片持ち梁アーム205のそれぞれに埋め込まれたシャフト上で回転する3つのフランジ付きドライベアリング250とインタフェースを形成するように2つの同心リング表面ベアリングによって片持ち梁アセンブリ202に取り付けられる。片持ち梁アセンブリ202は、2つの片持ち梁アーム205、クロスプレート210、及びプッシュバー215によって形成される片持ちクランプ機構とみなしてもよい。円形のベアリングレース245は、上部ヒータプレート240の動きを、凍結バッグの中央を通る水平面と凍結バッグの中央線を通る前部垂直面との交点に一致する軸の周りの回転に制限している。2つの片持ち梁アーム205は、片持ち梁アセンブリを補強し、不均一なクランプ荷重下でのアセンブリの歪みを防止する2つのクロスプレート210によって接合されている。片持ち梁アーム205は、同じくベースプレート285に取り付けられている2つのベアリングブロック(下の図4に見られる)と結合する2つのピボット225上で回転する。片持ち梁アセンブリ202は、全体として、2つのピボットベアリング220を介して両方の片持ち梁アーム205に取り付けられるプッシュバー215によって関節運動する。プッシュバー215は、スクリュージャック機構290によって生じる力によって関節運動する。
【0052】
標準的な凍結保存バッグのモデルは、上部ヒータプレート240と下部ヒータプレート230との間にクランプされた容器260として示されている。下部ヒータプレート230は、フレーム受け235に配置され、フレーム受け235は、引き延ばし可能な引き出し265の一部であって、それとともに可動である。下部ヒータプレート230は、上部ヒータプレート240に関して説明されるように、対応する熱伝導率を有する同一または異なる材料によって形成される。スクリュージャック機構290によって生成されるクランプ圧の開放と、片持ち梁アセンブリ202及び取り付けられた上部ヒータプレート240を挙げることによって、引き出し265(及びその内部に配置された容器260)は、ローラベアリングスライド上で装置の残りから前側に延びることができる。引き出し265の前進及び格納は、装置に、いずれかの適切な保存バッグ(ここでは容器260によって示されている)が導入され、除去されることを可能にする。
【0053】
上部シェルに取り付けられ、別個の非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体を含み、タッチスクリーンインタフェース140及び/またはアクセスポート145に電子的に接続可能なグラフィック制御回路基板280をさらに示す。周辺回路基板295は、別個の非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を含み、機器の機械的及び電気的なパワーコンポーネントを制御するマイクロコントローラを含む。解凍ユニット200は、パワーコード、パワースイッチインタフェースモジュール270、冷却ファン292及び(体積充填基本要素として示されている)ワイヤリンク-チェーンハーネス267をさらに含んでもよい。
【0054】
図4は、下部ヒータプレート230の構造に組み込まれた温度センサに注目して、解凍ユニット200の内部部品を示す。特に、複数の容器温度センサアイランド675は、下部ヒータプレート230の本体において存在し、そこを通過し、よって、温度センサアイランド675は、下部ヒータプレート230の表面上に配置され、またはそこにクランプされた凍結保存容器の表面温度を監視することができる。複数の温度センサアイランド675は、下部ヒータプレート230の横方向の中心線によって分布する。温度センサアイランド675の間の間隔は、商業的に入手可能なバッグ容器製品の大半を代表する標準的な凍結保存バッグ容器と、2つまたは3つ以上の温度センサアイランド675との接触を一般的に提供する配置である。ある態様において、例えば、比較的小さい表面積を有する25ミリメートルの保存容器において、1つの温度センサアイランド675のみが保存容器と接触してもよい。ある実施の形態において、2つの温度センサアイランド675は、25ミリメートルの保存容器と接触するような分布及び大きさを有してもよい。上部ヒータプレート240とは対照的に、下部ヒータプレート230内の温度センサアイランド675の位置は、重力により、液相に達した時の容器内容物が容器の底部側の容器内部に存在するいずれかのガスポケットを置換し、よって内容物と温度センサアイランド675との間に最適な熱経路を提供するという利点を有している。言い換えれば、凍結バッグ内のいずれかの気泡はバッグの上部に上昇し、バッグの底部は下部ヒータプレート230の表面上で実質的に平らになり、利用可能な熱センサとの接触を最大化する。下部ヒータプレート230にセンサを設置する別の利点は、下部ヒータプレート230の位置が静止していることであり、一方で、上部ヒータプレート240に設置したセンサは、解凍プロセスの一部で振動を受けることになる。当然、ある実施の形態において、上部ヒータプレート240に配置された熱センサが、特定の容器における熱測定のための特定の位置を目標とする等、代替的な利点を提供し得ることは認識される。さらなる実施の形態において、熱センサは、熱電対、サーミスタ、IRセンサ、またはRTDセンサであってもよい。
【0055】
サンプル解凍装置の全体のさらなる態様は、非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体によって形成され、解凍装置によって保持されるサンプル容器に関する熱データを含む他の装置のサンプルデータを送信するように構成された通信モジュールを含んでもよい。通信モジュールは、例えば、温度センサアイランド675等、サンプル解凍装置の温度センサと直接係合できる。通信モジュールは、グラフィック制御回路基板280、周辺回路基板295、及びタッチスクリーンインタフェース140と電子的に結合してもよく、装置の全ての側面の制御を可能にする。通信モジュールは、データをソートし、表示するように遠隔のマイクロプロセッサ(例えば、クラウドに基づくサーバまたはコンピュータ)と通信するようにさらに構成されてもよい。通信モジュールは、指示データまたはサンプルバイアル識別データを受信するように、及びサンプルバイアルの加熱を適切に制御するように構成されてもよい。
【0056】
図5は、センサアイランドのサブ部品を示す下部ヒータプレートセンサ800(代替的に「熱センサ」と称される)の断面を模式的に示す。下部ヒータプレート230における円柱状の凹部には、下部ヒータプレート230に統合された構造であってもよいリングフランジ805によって支持される絶縁ディスク810が配置される。ある態様において、絶縁ディスクは、熱電対または他の温度センサ構造に取り付けられる熱伝導性を有する材料に固定されてもよい。ある実施の形態において、絶縁ディスク810は、下向きの力に対してバネのような抵抗を提供する半剛性フォーム材料に限定されないが、これから構成されてもよく、0.02から0.15W/(m・K)の範囲における熱伝導率(κ)を有してもよい。様々な実施の形態において、半剛性フォーム材料は、ポリエチレンフォームブレンド、代替的にはポリマーフォーム、またはフォーム材料のラミネートであってもよい。絶縁ディスク810は、熱伝導性材料の接触ディスク815を受ける上側表面における凹部812が含まれる。ある実施の形態において、接触ディスク815は、銅、銅合金、銀、銀合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金から構成されてもよいが、これに限定されない。ある態様において、接触ディスク815は、百五十ワット毎メートル毎ケルビン以上の熱伝導率(κ>150W/(m・K))を有する。ある実施の形態において、接触ディスク815は、接触ディスク815の腐食を抑制するように、ニッケルまたは金等のコーティングによってめっきされてもよい。熱電対接合部820は、接触ディスク815の下面に、一般的に接触ディスク815の中心に固定される。ある態様において、熱電対接合部820は、はんだ接合825によって接触ディスク815に取り付けられてもよい。ある実施の形態において、抵抗温度検出部は、熱電対接合部の代わりに使用されてもよい。熱電対ワイヤリード830は、チャネル835を通じて、絶縁ディスク810の下面から出る。ある態様において、接触ディスク815は、接着接合によって絶縁ディスク810に結合されてもよい。
【0057】
操作において、凍結された凍結バッグまたはサンプル容器は、サーマルシンクロードとしてみなされてもよい。サーマルシンクロードは、下部ヒータプレート230の上に配置され、接触ディスク815と接触し、よって、下部ヒータプレート230、絶縁ディスク810、接触ディスク815及び凍結バッグ容器を含むセンサシステムを通じる動的熱フラックスを形成する。下部ヒータプレート230における1つまたは複数の熱センサ(例えば、温度センサアイランド674)のそれぞれが、図4に示すようにこのようなセンサシステムを形成してもよく、測定されたセンサデータの蓄積に基づいて個別にまたは組み合わせにおいて制御されてもよいと理解されよう。絶縁ディスク810は、センサシステムの最低熱伝導率を有するように選択された材料から形成されてもよく、よって、下部ヒータプレート230と凍結バッグ容器との間の確立された温度フラックスの条件下で、熱経路における最大の温度降下は絶縁ディスク810にわたって生じる。その結果、接触ディスク815の温度は、凍結バッグの温度に密に結合される。言い換えれば、温度の測定は、下部ヒータプレート230におけるそれぞれの熱センサにおける凍結バッグの部分において比較的より特化している。
【0058】
下部ヒータプレート230と接触するように配置された凍結バッグ容器の温度が、急速に上昇すると、下部ヒータプレート230と凍結バッグ容器との間の温度差が減少し、それぞれのセンサシステムを通じた熱フラックスの大きさは常に変化し、下部ヒータプレート230におけるそれぞれの熱センサで測定されるように局所的な変動を有する可能性がある。その結果、接触ディスク815の温度は、凍結バッグ容器と必ずしも平衡にならず、接触ディスク815の温度は、バッグと接触ディスク815とのインタフェースの接触の領域において、凍結バッグ容器の温度の相対代理となる。凍結バッグ容器が温度において上昇し、下部ヒータプレート230と凍結バッグ容器との間の温度差が減少するため、センサ接触ディスク815の温度は、凍結容器内容物の相変化がほぼ終了する点において、凍結バッグ容器の温度をより密に代表し、接触ディスク815の温度は、±10%の精度でバッグの内壁に取り付けられたセンサによって記録された温度と相関を有する。
【0059】
したがって、センサ接触ディスク815の温度は、凍結バッグ容器の内容物の相変化の終了の状態のための正確で再現性を有する指標(metric)として使用されてもよい。そのため、センサ接触ディスク815に由来する温度プロファイルの解釈は、装置における解凍シーケンスを制御する解凍アルゴリズムの終了のための主要なまたは独占的なデータストリームとして使用されてもよい。凍結バッグ容器への複数のセンサコンタクトの適用は(図6に示すように)、凍結バッグ容器の温度プロファイルを、容器における異なる位置において測定可能として、容器内またはヒータプレート内における温度勾配を埋め合わせしてもよいより複雑なデータ処理アルゴリズムに統合可能となり、加えて、1つのセンサの故障の場合において機能性の保証として余剰センサを提供できる。
【0060】
解凍装置の様々な用途は、上記の図面より理解可能であり、本明細書にて説明される操作の例示的なシーケンスを含むが、これに限定されない。追従する出来事の説明されたシーケンスは、本発明の実施の形態に適用されてもよい多数の可能な特定の出来事のシーケンスの1つであって、機器の使用に関連してもよい状態、ステージまたは出来事のシーケンスをいずれかの方法によって限定することを意図していない。
【0061】
(IV. コンピュータシステム)
本技術の実施の形態は、解凍システムを含んでもよい。解凍システムは、本明細書にて説明されるいずれかの解凍装置であってもよい解凍装置を含んでもよい。解凍システムは、指示を含むコンピュータシステムを含んでもよく、指示が実行されると、解凍の方法を実行するように解凍装置を制御する。
【0062】
本明細書にて説明されるいずれかのコンピュータシステムは、いずれかの適切な数のサブシステムを使用してもよい。このようなサブシステムの例は、コンピュータシステム10によって図6に示されている。ある実施の形態において、コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含み、サブシステムはコンピュータ装置の部品であってもよい。他の実施の形態において、コンピュータシステムは、それぞれが内部部品を有するサブシステムである複数のコンピュータ装置を含んでもよい。コンピュータシステムは、デスクトップ及びラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話、他のモバイル装置、及びクラウドに基づくシステムを含んでもよい。
【0063】
図6に示されているサブシステムは、システムバス75を通じて相互接続されている。プリンタ74、キーボード78、記憶装置79、ディスプレイアダプタ82に結合されるモニタ76(例えば、LED等のディスプレイスクリーン)等の追加のサブシステムが、示されている。I/Oコントローラ71に結合する周囲及び入力/出力(I/O)装置は、入力/出力(I/O)ポート77(例えば、USB)等、先行技術において知られているいずれかの数の手段によってコンピュータシステムに接続されてもよい。例えば、I/Oポート77または外部インタフェース81(例えば、イーサネット、Wifi等)は、インターネット、マウス入力装置、またはスキャナ等のワイドエリアネットワークにコンピュータシステム10を接続するように使用されてもよい。システムバス75を通じた相互接続は、セントラルプロセッサ73が、それぞれのサブシステムと通信し、システムメモリ72または記憶装置79(例えば、ハードディスクまたは光ディスク等の固定ディスク)からの複数の指示の実行を制御し、サブシステム間の情報の交換を可能にする。システムメモリ72及び/または記憶装置79は、コンピュータ読み取り可能な媒体の形態であってもよい。他のサブシステムは、カメラ、マイクロフォン、加速度計等のデータ収集装置85である。本明細書にて説明されたいずれかのデータは、1つの部品から他の部品へ出力されてもよく、ユーザへ出力されてもよい。
【0064】
コンピュータシステムは、例えば、外部インタフェース81、内部インタフェースまたは1つの部品から他の部品に接続及び除去できる除去可能な記憶装置によって互いに接続される複数の同一の部品またはサブシステムを含んでもよい。ある実施の形態において、コンピュータシステム、サブシステム、または装置は、ネットワーク上で通信できる。この場合において、1つのコンピュータがクライアントとみなされてもよく、他のコンピュータがサーバとみなされてもよく、それぞれは同一のコンピュータシステムの一部であってもよい。クライアント及びサーバは、それぞれ複数のシステム、サブシステムまたは部品を含んでもよい。
【0065】
実施の形態の態様は、ハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路またはフィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて、及び/またはモジュール式または統合式において一般的にプログラム可能なプロセッサを有するコンピュータ・ソフトウェアを用いて、制御理論の形態において実施されてもよい。本明細書にて使用されるように、プロセッサは、同一の集積チップ上の単一コアプロセッサ、マルチコアプロセッサ、または専用ハードウェアとともに単一回路板またはネットワーク上の複数の処理装置を含んでもよい。本明細書にて提供される開示及び教示に基づいて、当業者は、ハードウェア及びハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを用いて、本発明の実施の形態を実施する他の手段及び/または方法を知って、認識する。
【0066】
本出願において説明されるいずれかのソフトウェアの部品または機能は、例えば、Java、C、C++、C#、Objective-C、Swift等のいずれかの適切なコンピュータ言語を用いて、またはPerlやPython等のスクリプト言語で、例えば、従来の技術やオブジェクト指向の技術を用いて、プロセッサによって実行されるソフトウェアコードとして実施されてもよい。ソフトウェアコードは、保存及び/または送信のためにコンピュータ読み取り可能な媒体上の指示またはコマンドのシリーズとして保存されてもよい。適切な非一時的コンピュータ読み取り可能な媒体は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、ハードディスクやフロッピーディスクなどの磁気媒体、コンパクトディスク(CD)やDVD(デジタル多用途ディスク)、ブルーレイディスクなどの光媒体、フラッシュメモリなどを含んでもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、このような記憶または送信装置のいずれかの組み合わせであってもよい。
【0067】
このようなプログラムは、インターネットを含む様々なプロトコルに準拠する有線、光学及び/または無線ネットワークを通じた送信に適合されたキャリア信号を用いて、符号化及び送信されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な媒体は、このようなプログラムによってエンコード化されるデータ信号を用いて形成されてもよい。プログラムコードを符号化したコンピュータ可読媒体は、互換性のある装置とパッケージ化されてもよく、他の装置とは別に(例えば、インターネットダウンロードによって)提供されてもよい。このようないずれかのコンピュータ可読媒体は、単一のコンピュータ製品(例えば、ハードドライブ、CD、またはコンピュータシステム全体)上またはその中に存在してもよく、システムまたはネットワーク内の異なるコンピュータ製品上またはその中に存在してもよい。コンピュータシステムは、モニタ、プリンタ、またはユーザに本明細書に記載されたいずれかの結果を提供するための他の適切なディスプレイを含んでもよい。
【0068】
本明細書にて説明されるいずれかの方法は、ステップを実行するように構成されてもよい1つまたは複数のプロセッサを含むコンピュータシステムによって、完全にまたは部分的に実行されてもよい。したがって、実施の形態は、本明細書にて説明されるいずれかの方法のステップを実行するように構成されたコンピュータシステムに関し、異なる部品がそれぞれのステップまたはそれぞれのステップのグループを実行してもよい。番号が付されたステップとして示されているが、本明細書における方法のステップは、同時に、または異なる時に、または異なる順番で実行されてもよい。加えて、これらのステップの部分は、他の方法の他のステップの部分とともに使用されてもよい。ステップの全てまたは一部は任意であってもよい。加えて、いずれかの方法のいずれかのステップは、これらのステップを実行するためのモジュール、ユニット、回路またはシステムの他の手段を用いて実行されてもよい。
【0069】
特定の実施の形態の特定の詳細は、本発明の実施の形態の精神及び範囲から逸脱することなくいずれかの適切な方法で組み合わせられてもよい。しかしながら、本発明の他の実施の形態は、それぞれの個別態様またはこれらの個別態様の特定の組み合わせに関する特定の実施の形態に向けられてもよい。
【0070】
本開示の例示的な実施の形態の上記説明は、例示及び説明のために示されている。網羅的であるまたは説明された厳密な形態に開示を限定することを意図しておらず、上記の教示を踏まえて、多数の改造または変形が可能である。
【0071】
「ある」または「1つ」の記載が、特に断りのない限り、「1つまたは複数」の意味を有することを意図している。「または」の使用が、特に断りのない限り、「包括的なまたは」の意味を有することを意図し、「排他的なまたは」の意味を有することを意図していない。「第1」部品への参照は、必ずしも第2部品が設けられていることを要しない。さらに、「第1」または「第2」部品への参照は、明記されていない限り、参照された部品を特定の位置に限定しない。用語「基づく」が、「少なくとも部分的に基づく」との意味を有することを意図している。
【0072】
特定の実施の形態の特定の詳細は、本発明の実施の形態の精神及び範囲から逸脱することなくいずれかの適切な方法で組み合わせられてもよい。しかしながら、本発明の他の実施の形態は、それぞれの個別態様またはこれらの個別態様の特定の組み合わせに関する特定の実施の形態に向けられてもよい。
【0073】
本発明の例示的な実施の形態の上記説明は、例示及び説明のために示されている。網羅的であるまたは説明された厳密な形態に開示を限定することを意図しておらず、上記の教示を踏まえて、多数の改造または変形が可能である。
【0074】
前の説明において、説明のために、本技術の様々な実施の形態の理解を提供するように複数の詳細が記載されている。しかしながら、特定の実施の形態が、いくつかの詳細無しでまたは追加の詳細とともに実施されてもよいことは、当業者にとって明らかである。
【0075】
様々な実施の形態を説明して、本発明の精神から逸脱することなく、様々な改造、代替的な構造、及び同等品は使用されてもよいと当業者によって認識される。加えて、本発明を不必要に不明確にすることを回避するように、よく知られている複数の方法及び要素は説明されていない。加えて、いずれかの特定の実施の形態の詳細は、当該実施の形態の変形において常に存在しなくてもよく、または他の実施の形態に追加されてもよい。
【0076】
値の範囲が提供されている箇所において、それぞれの介入する値は、特に断りがない限り、下限の単位の10分の1まで、範囲の上限と下限との間は特に開示されていると理解される。記載された範囲において、いずれかの記載された値または介入値との間のそれぞれの小さい範囲、及び記載された範囲におけるいずれかの他の記載されたまたは介入する値は包含される。これらのより小さい範囲の上限及び下限値は、独立的に、範囲に含まれてもよく、または範囲から除外されてもよく、より小さい範囲に一方の限界が含まれている、両方の限界が含まれていない、または両方の限界が含まれているそれぞれの範囲は、本発明に含まれており、記載された範囲におけるいずれかの特に除外された限界に依る。記載された範囲が一方または両方の限界を含むと、一方または両方の含まれた限界を除外する範囲も含まれる。
【0077】
本明細書及び添付の請求項において使用されるように、単数形「ある」及び「1つ」は、文脈上明らかにそうでない場合は除き、複数形を含む。したがって、例えば、「方法」への参照は、複数のこれらの方法を含み、「ヒータ」への参照は、1つまたは複数のヒータ及び当業者に知られている同等品への参照を含む。本発明は、明確性及び理解のために詳細に説明されている。しかしながら、特定の変化及び改造は、添付の請求項の範囲内で実施できると認識される。
【0078】
本明細書にて説明される全ての特許、特許出願、刊行物、及び説明は、全ての目的において、その全体において参照によって含まれる。いずれも先行技術とは認められない。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】