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特表2023-5111052-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態
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  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図1
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図2
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図3
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図4A
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図4B
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図5A
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図5B
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図6A
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図6B
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図7
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図8
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図9
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図10
  • 特表-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)-1H-ピラゾロ[3,4-D]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの結晶形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20230309BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
C07D487/04 143
C07D487/04 CSP
A61K31/519
A61P7/04
A61P17/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543667
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 US2021014371
(87)【国際公開番号】W WO2021150723
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/964,378
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
3.WINDOWS
(71)【出願人】
【識別番号】513288724
【氏名又は名称】プリンシピア バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】パシット・フィアシヴォンサ
(72)【発明者】
【氏名】コルボット・バイ
(72)【発明者】
【氏名】ジーン・バウム
【テーマコード(参考)】
4C050
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB05
4C050CC08
4C050EE04
4C050FF05
4C050GG04
4C050HH04
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB06
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA03
4C086ZA51
4C086ZA89
4C086ZB07
4C086ZC20
(57)【要約】
化合物(I)の結晶形態が開示される。これを含む医薬組成物、これを使用してBTK活性により媒介される障害および状態を処置する方法、ならびに化合物(I)およびその結晶形態を作製するための方法もまた開示される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(I)の結晶形態A:
【化1】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
【請求項2】
5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる、請求項1に記載の結晶形態A。
【請求項3】
図1のものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、請求項1または2に記載の結晶形態A。
【請求項4】
約146℃~約147℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の結晶形態A。
【請求項5】
約140.6℃~約141.2℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の結晶形態A。
【請求項6】
熱重量分析による25℃~200℃の間での1.0wt.%未満の質量損失で特徴付けられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の結晶形態A。
【請求項7】
95%の相対湿度(RH)での貯蔵の際、1%未満の含水量で特徴付けられる、請求項1~6のいずれか1項に記載の結晶形態A。
【請求項8】
化合物(I)の少なくとも95%は、(E)異性体である、請求項1~7のいずれか1項に記載の結晶形態A。
【請求項9】
化合物(I)の結晶形態Aであって、
酢酸イソプロピルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成すること;
溶液を撹拌して、沈殿物を形成すること;および
濾過により結晶形態Aを単離すること
を含む方法により製造される結晶形態A。
【請求項10】
化合物(I)の結晶形態B:
【化2】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
【請求項11】
10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.0±0.2、および22.9±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる、請求項10に記載の結晶形態B。
【請求項12】
化合物(I)の少なくとも99%超は、(E)異性体である、請求項10または11に記載の結晶形態B。
【請求項13】
化合物(I)の95%~99%は、(E)異性体である、請求項10または11に記載の結晶形態B。
【請求項14】
図4Bのものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、請求項10~12のいずれか1項に記載の結晶形態B。
【請求項15】
図4Aのものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、請求項10、11、または13のいずれか1項に記載の結晶形態B。
【請求項16】
約144℃~約146℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる、請求項10~12、または14のいずれか1項に記載の結晶形態B。
【請求項17】
約139.3℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる、請求項10~12、14、または16のいずれか1項に記載の結晶形態B。
【請求項18】
約141℃~約142℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる、請求項10、11、13、または15のいずれか1項に記載の結晶形態B。
【請求項19】
約131.8℃~約132.4℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる、請求項10、11、13、15、または18のいずれか1項に記載の結晶形態B。
【請求項20】
95%の相対湿度(RH)での貯蔵の際、1.3%未満の含水量で特徴付けられる、請求項10~19のいずれか1項に記載の結晶形態B。
【請求項21】
化合物(I)の結晶形態Bであって、
酢酸エチルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成すること;
溶液に塩化ナトリウムを種として加え、溶液を撹拌して、懸濁液を得ること;
懸濁液の濾過により結晶形態Bを単離すること
を含む方法により製造される結晶形態B。
【請求項22】
化合物(I)の結晶形態Bであって、
エタノールを(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの形態Cに添加して、溶液またはスラリーを形成すること;
溶液またはスラリーに化合物(I)の形態Bの種結晶を加えること;および
濾過により化合物(I)の結晶形態Bを単離すること
を含む方法により製造される結晶形態B。
【請求項23】
化合物(I)の結晶形態C:
【化3】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
【請求項24】
9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる、請求項23に記載の結晶形態C。
【請求項25】
図7のものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、請求項23または24に記載の結晶形態C。
【請求項26】
約118.5℃~約119℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は15℃/分である、請求項23~25のいずれか1項に記載の結晶形態C。
【請求項27】
約115.6℃~約116℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は15℃/分である、請求項23~26のいずれか1項に記載の結晶形態C。
【請求項28】
約120.5℃~約121℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は10℃/分である、請求項23~27のいずれか1項に記載の結晶形態C。
【請求項29】
約118℃~約118.5℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は10℃/分である、請求項23~28のいずれか1項に記載の結晶形態C。
【請求項30】
化合物(I)の少なくとも95%は、(E)異性体である、請求項23~29のいずれか1項に記載の結晶形態C。
【請求項31】
P-1空間群で特徴付けられる、請求項23~30のいずれか1項に記載の結晶形態C。
【請求項32】
200(2)Kでの以下の単位格子の寸法:
a=10.6741Å α=93.654°
b=12.7684Å β=104.400°
c=14.5287Å γ=105.476°
で特徴付けられる、請求項23~31のいずれか1項に記載の結晶形態C。
【請求項33】
化合物(I)の結晶形態Cであって、
アセトニトリルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成すること;
溶液に化合物(I)の結晶形態Bを種として加えて、混合物を形成し、混合物を撹拌してスラリーを得ること;および
スラリーを濾過することにより結晶形態Cを単離すること
を含む方法により製造される結晶形態C。
【請求項34】
医薬組成物であって、
請求項1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる化合物(I)の少なくとも1つの結晶形態;および
少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤
を含む医薬組成物。
【請求項35】
固体の経口組成物の形態である、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
錠剤またはカプセル剤の形態である、請求項34または35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
哺乳動物においてブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を阻害する方法であって、前記BTK阻害を必要とする哺乳動物に、請求項1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
【請求項38】
それを必要とする哺乳動物のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)により媒介される疾患を処置する方法であって、哺乳動物に、請求項1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
【請求項39】
それを必要とする哺乳動物の尋常性天疱瘡または落葉状天疱瘡を処置する方法であって、哺乳動物に、請求項1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
【請求項40】
それを必要とする哺乳動物の免疫性血小板減少症を処置する方法であって、哺乳動物に、請求項1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
【請求項41】
哺乳動物は、ヒトである、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年1月22日に出願された米国仮特許出願第62/964,378号の優先権の利益を主張し、その内容は、その全体を参照によって本明細書に組み入れる。
【0002】
2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル(化合物(I))の結晶形態、これを使用する方法、および、その様々な結晶形態を含む化合物(I)を作製するための方法が本明細書に開示される。化合物(I)の結晶形態は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)の阻害剤である。酵素BTKは、非受容体チロシンキナーゼのTecファミリーのメンバーである。
【背景技術】
【0003】
BTKは、B細胞、マスト細胞、およびマクロファージを含む大部分の造血細胞において発現している。BTKは、B細胞の発生および活性化に役割を担い、広範な免疫媒介性疾患にわたって多数のシグナル伝達経路に関連している。BTK活性は、B細胞関連の血液がん(例えば、非ホジキンリンパ腫およびB細胞慢性リンパ性白血病)、ならびに自己免疫疾患(例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、天疱瘡、炎症性腸疾患、狼瘡、および喘息)のような、いくつかの障害および状態の病因に関連している。
【0004】
化合物(I)は、BTKを阻害することができ、BTK活性により媒介される障害および状態の処置に有用であり得る。化合物(I)は、特許文献1の実施例31に開示され、以下の構造を有する:
【化1】
(式中、Cは、立体化学中心である)。化合物(I)を製造するための代替的な手順は、特許文献2の実施例1に開示される。
【0005】
化合物(I)のような生物活性化合物の固体形態(例えば、結晶形態)は、製薬産業で関心がもたれており、溶解性、解離、真密度、溶解、融点、形態、圧縮挙動、粒度、流動性、または固体状態安定性のような特定の物理的、化学的、または薬学的な特性を伴う固体形態は、製薬開発において望ましい、または必要とされ得る。結晶形態は、物質の同じ組成物が異なる格子配置で結晶化する場合に起こり、異なる熱力学的な特性および各結晶形態に特異的な安定性をもたらす。各々独特な結晶形態は、「多形体」として知られている。
【0006】
所与の物質の多形体が、同じ化学的組成を有する一方、これらは、溶解性、解離、真密度、溶解、融点、晶癖もしくは形態、圧縮挙動、粒度、流動性、および/または固体状態安定性のような、少なくとも1つの物理的、化学的、および/または薬学的な特性に関して互いに異なり得る。生物活性化合物の固体状態の形態は、多くの場合、その製造の容易さ、単離の容易さ、吸湿性、安定性、溶解性、貯蔵安定性、製剤化の容易さ、胃腸液における溶解速度、およびin vivoでの生物学的利用能を決定する。
【0007】
化合物の可能な固体形態(例えば、結晶形態)、任意のこのような形態が医薬組成物での商業的な使用に好適であるか否か、またはどの形態もしくは複数の形態が所望の特性を示すかを予測することは、未だに可能ではない。異なる固体形態(例えば、結晶形態)が異なる特性を有するので、実質的に純粋な固体形態を産生するための再現可能な方法もまた、医薬品としての使用を意図している生物活性化合物にとって望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2014/039899号
【特許文献2】WO2015/127310号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、BTK活性により媒介される障害および状態を処置するのに有用である、新規のその結晶形態を含む新規の固体形態、例えば化合物(I)、ならびにこれを作製する再現可能で拡張可能な方法に対する必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
化合物(I)の新規の結晶形態、これを含む組成物、およびこれを使用し、作製する方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される新規の結晶形態は、大規模な製造、医薬製剤、および/または貯蔵に有用である特性を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される新規の結晶形態は、1つの結晶形態からなる。いくつかの実施形態において、結晶形態は、実質的に純粋である。
【0011】
本開示のいくつかの実施形態は、薬学的に許容される添加剤;および、化合物(I)の結晶形態から選ばれる少なくとも1つの結晶形態を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Bである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Cである。
【0012】
本開示のいくつかの実施形態は、前記BTK阻害を必要とする哺乳動物に、化合物(I)の結晶形態から選ばれる治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することにより、哺乳動物においてBTKを阻害する方法に関する。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Bである。いくつかの実施形態において、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Cである。
【0013】
いくつかの実施形態において、BTK阻害を必要とする哺乳動物は、BTKにより媒介される疾患に罹患している。いくつかの実施形態において、BTKにより媒介される疾患は、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、免疫性血小板減少症、皮膚ループス、皮膚エリテマトーデス、皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑、壊疽性膿皮症、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、スティーブンスジョンソン症候群、TEN(中毒性表皮壊死融解症)、薬疹、禿髪性毛包炎、須毛偽毛包炎、白血球破砕性血管炎(leucoclastic vasculitis)、化膿性汗腺炎(hidradenitis supprativa)、掌蹠膿疱症(palmar platar pustulosis)、苔癬様皮膚炎、ざ瘡、菌状息肉症、スイート症候群、炎症性腸疾患、関節炎、狼瘡、ループス腎炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、強直性脊椎炎、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、喘息、結腸炎、結膜炎、皮膚炎、ブドウ膜炎、湿疹、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞性前リンパ性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストロームマクログロブリン血症、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、およびリンパ腫様肉芽腫症から選ばれる。
【0014】
いくつかの実施形態において、BTKにより媒介される疾患は、尋常性天疱瘡である。いくつかの実施形態において、BTKにより媒介される疾患は、落葉状天疱瘡である。いくつかの実施形態において、BTKにより媒介される疾患は、免疫性血小板減少症である。いくつかの実施形態において、BTKにより媒介される疾患は、ループス腎炎である。
【0015】
いくつかの実施形態において、BTK阻害を必要とする哺乳動物は、ヒトである。いくつかの実施形態において、BTKの阻害を必要とする哺乳動物は、イヌである。
【0016】
化合物(I)の結晶形態から選ばれる少なくとも1つの結晶形態を製造する方法も本明細書に開示される。本開示のいくつかの実施形態は、前記方法を対象とし、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Aである。本開示のいくつかの実施形態は、前記方法を対象とし、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Bである。本開示のいくつかの実施形態は、前記方法を対象とし、少なくとも1つの結晶形態は、化合物(I)の結晶形態Cである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本明細書で結晶形態Aと呼ばれる、化合物(I)の結晶形態Aに対するX線粉末回折図を示し、X軸に角度2θ(2シータ)、Y軸に相対強度を示す。
図2】化合物(I)の結晶形態Aに対する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
図3】化合物(I)の結晶形態Aに対する熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(thermogravimetry coupled to Fourier transform infrared spectroscopy)(TG-FTIR)熱曲線を示す。
図4A】95%~99%の(E)異性体を含む、本明細書で結晶形態Bと呼ばれる、化合物(I)の結晶形態Bに対するX線粉末回折図を示し、X軸に角度2θ(2シータ)、Y軸に相対強度を示す。
図4B】99%超の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態Bに対するX線粉末回折図を示し、X軸に角度2θ(2シータ)、Y軸に相対強度を示す。
図5A】95%~99%の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態Bに対する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
図5B】99%超の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態Bに対する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
図6A】95%~99%の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態Bに対する熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線を示す。
図6B】99%超の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態Bに対する熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線を示す。
図7】本明細書で結晶形態Cと呼ばれる、化合物(I)の結晶形態Cに対するX線粉末回折図を示し、X軸に角度2θ(2シータ)、Y軸に相対強度を示す。
図8】結晶形態Cに対する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムおよび熱重量分析(TGA)熱曲線を示し、走査速度は15℃/分である。
図9】結晶形態Cに対する示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムおよび熱重量分析(TGA)熱曲線を示し、走査速度は10℃/分である。
図10】結晶形態Cに対する熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線を示す。
図11】結晶形態Cに対する単結晶構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
定義:
本明細書で使用した場合、実在物に付く1つ(「a」または「an」)は、その実在物の1つまたはそれ以上を指し、例えば、「1つ(「a」)の化合物」とは、別段記述されない限り、1つもしくはそれ以上の化合物、または少なくとも1つの化合物を指す。そのため、用語「1つ」(「a」または「an」)、「1つまたはそれ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書で互換的に使用される。
【0019】
本明細書で使用した場合、用語「約」とは、およそ(approximately)、ほぼ(in the region of)、概して(roughly)、または~の周囲(around)を意味する。用語「約」を数値範囲に関して使用する場合、記載される数値の上下に境界を拡張することによりその範囲を修飾する。一般に、用語「約」は、本明細書で、記述される値の上下に5%変動するように数値を修飾するのに使用される。
【0020】
本明細書で使用した場合、「化合物(I)」とは、(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの(E)異性体、(Z)異性体、もしくは(E)および(Z)異性体の混合物、(S)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル、または、2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの(R)および(S)鏡像異性体の混合物を指し、これは、以下の構造を有する:
【化2】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
【0021】
化合物(I)が、(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルとして表される場合、1重量%未満の不純物として対応する(S)鏡像異性体を含有し得る。したがって、化合物(I)が、2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの(R)および(S)鏡像異性体の混合物として表される場合、混合物中の(R)または(S)鏡像異性体の量は、1重量%超である。同様に、化合物(I)が、(E)異性体として表される場合、1重量%未満の不純物として対応する(Z)異性体を含有し得る。したがって、化合物(I)が、2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの(E)および(Z)異性体の混合物として表される場合、混合物中の(E)または(Z)異性体の量は、1重量%超である。
【0022】
本明細書で使用した場合、「[Y]%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態[X]」とは、結晶形態での化合物(I)の[Y]%が(E)異性体であることを意味する。
【0023】
本明細書で、化合物(I)は、「薬物」、「活性薬剤」、「治療活性薬剤」、または「API」と呼ぶことができる。
【0024】
本明細書で使用した場合、幾何異性体の形態に関する「実質的に純粋」とは、化合物の70重量%超が所与の異性体形態として存在する、化合物(I)のような化合物を指す。例えば、成句「化合物(I)の結晶形態Aは、化合物(I)の実質的に純粋な(E)異性体である」とは、(E)異性体形態である化合物(I)の結晶形態Aを少なくとも70重量%有する化合物(I)の結晶形態Aを指し、成句「化合物(I)の結晶形態Aは、化合物(I)の実質的に純粋な(Z)異性体である」とは、(Z)異性体形態である化合物(I)の結晶形態Aを少なくとも70重量%有する化合物(I)の結晶形態Aを指す。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態の少なくとも80重量%は(E)形態である、または化合物(I)の結晶形態の少なくとも80重量%は(Z)形態である。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態の少なくとも85重量%は(E)形態である、または化合物(I)の結晶形態の少なくとも85重量%は(Z)形態である。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態の少なくとも90重量%は(E)形態である、または化合物(I)の結晶形態の少なくとも90重量%は(Z)形態である。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態の少なくとも95重量%は(E)形態である、または化合物(I)の結晶形態の少なくとも95重量%は(Z)形態である。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態の少なくとも97重量%もしくは少なくとも98重量%は(E)形態である、または化合物(I)の結晶形態の少なくとも97重量%もしくは少なくとも98重量%は(Z)形態である。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態の少なくとも99重量%は(E)形態である、または化合物(I)の結晶形態の少なくとも99重量%は(Z)形態である。固体混合物中の(E)および(Z)異性体の相対量は、当該技術分野で知られている標準的な方法および技術にしたがって決定することができる。
【0025】
本明細書で使用した場合、「薬学的に許容される添加剤」とは、医薬組成物を製造するのに有用である担体または添加剤を指す。例えば、薬学的に許容される添加剤は、一般に安全であり、哺乳動物の薬学的使用に許容されると一般にみなされる担体および添加剤を含む。
【0026】
本明細書で使用した場合、用語「多形体」、「結晶形態(crystal form)」、「結晶形態(crystalline form)」、および「形態」とは、結晶格子における特定の分子充填配置を有する固体を互換的に指す。結晶形態は、例えば、X線粉末回折(XRPD)、単結晶X線回折、示差走査熱量測定(DSC)、動的水蒸気吸着(DVS)、および/または熱重量分析(TGA)を含む少なくとも1つの特徴化技術により同定し、互いに区別することができる。したがって、本明細書で使用した場合、用語「化合物(I)の結晶形態[X]」とは、例えば、X線粉末回折(XRPD)、単結晶X線回折、示差走査熱量測定(DSC)、動的水蒸気吸着(DVS)、および/または熱重量分析(TGA)を含む少なくとも1つの特徴化技術により同定し、他の形態と区別することができる独特な結晶形態を指す。いくつかの実施形態において、本開示の新規の結晶形態は、少なくとも1つの指定された2シータ値(°2θ)での少なくとも1つのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0027】
本明細書で使用した場合、本明細書に開示される化合物の「治療有効量」とは、対象において生物学的または医学的応答を誘発する化合物の量を指す。治療有効量は、処置の目的に依存し、当業者により確かめられる(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照)。
【0028】
本明細書で使用した場合、用語「阻害する」、「阻害」、または「阻害すること」とは、所与の状態、症状、もしくは障害、もしくは疾患の軽減もしくは抑制、または、生物学的な活性もしくはプロセスのベースライン活性における著しい低下を指す。
【0029】
本明細書で使用した場合、用語「処置する」、「処置すること」、または「処置」は、障害または状態に関して使用する場合、障害または状態の改善をもたらす任意の効果、例えば軽減、低減、調節、改善、または解消を含む。障害または状態の任意の症状の重症度の改善または軽減は、当該技術分野で知られている標準的な方法および技術にしたがって容易に評価することができる。
【0030】
本明細書で使用した場合、「哺乳動物」とは、家畜動物(例えば、イヌ、ネコ、およびウマ)、ならびにヒトを指す。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態において、哺乳動物はイヌである。
【0031】
本明細書で使用した場合、用語「DSC」とは、示差走査熱量測定の分析方法を指す。
【0032】
本明細書で使用した場合、用語「TGA」とは、熱重量(thermo gravimetric。thermogravimetricとも呼ばれる)分析の分析方法を指す。
【0033】
本明細書で使用した場合、用語「TG-FTIR」とは、熱重量分析-フーリエ変換赤外分光の分析方法を指す。
【0034】
本明細書で使用した場合、用語「XRPD」とは、X線粉末回折の分析的特徴化方法を指す。XRPDパターンは、回折装置を使用して透過型構成または反射型構成において周囲条件で記録することができる。
【0035】
本明細書で使用した場合、用語「X線粉末回折図」、「X線粉末回折パターン」、および「XRPDパターン」とは、実験的に得られるパターン描画シグナル位置(横座標)対シグナル強度(縦座標)を指す。結晶性材料に対して、X線粉末回折図は、X線粉末回折図の横座標に示す角度2θ(°2θ)で測定されたその角度値により各々が同定された、少なくとも1つのシグナルを含み得、これは、「・・・°2シータでのシグナル」、「・・・の[1つの]2シータ値でのシグナル」、および/または、「・・・から選ばれる少なくとも・・・の2シータ値でのシグナル」として表すことができる。
【0036】
本明細書で使用した場合、用語「・・・の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図」とは、X線粉末回折実験で測定され、観測されたX線反射位置を含有するXRPDパターン(°2θ)を指す。
【0037】
本明細書で使用した場合、用語「シグナル」とは、カウント数で測定された強度が極大値であるXRPDパターンの点を指す。当業者は、XRPDパターンの少なくとも1つのシグナルが重複し得、例えば、裸眼では明らかではない可能性があることは認識する。当業者は、いくつかの当該技術分野で認められた方法が、例えばリートベルト精密化のような、シグナルがパターンに存在するか否かを決定することが可能であり、決定するのに好適であることは認識する。
【0038】
本明細書で使用した場合、用語「・・・°2シータでのシグナル」、「・・・の[1つの]2シータ値[]でのシグナル」、および、「・・・から選ばれる少なくとも・・・の2シータ値でのシグナル」とは、X線粉末回折実験で測定され、観測されたX線反射位置(°2θ)を指す。いくつかの実施形態において、角度値の反復性は、±0.2°2θの範囲であり、すなわち、角度値は、記載された角度値+0.2°2シータ、角度値-0.2°2シータ、またはこれら2つの端点(角度値+0.2°2シータおよび角度値-0.2°2シータ)の間の任意の値であり得る。X線粉末回折のシグナル値の測定において変動性が存在し得ることは、当業者に周知されている。そのため、当業者は、異なるサンプルにおいて同じシグナルに対するシグナル値で最大で±0.2°2θの変動性が存在し得ることは理解する。加えて、X線粉末回折実験において相対シグナル強度の測定において変動性が存在し得ることは、当業者に周知されている。例として、相対シグナル強度に影響を及ぼし得る非限定的な因子として、サンプル厚および好ましい配向(例えば、結晶粒子がランダムに分布していない)が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用した場合、X線粉末回折図は、2つの回折図のシグナルの少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%が同値±0.2°2θである場合、「[特定の]図のものと実質的に類似」している。「実質的に類似」を決定するのに、当業者は、同じ結晶形態であってもXRPD回折図において強度および/またはシグナル位置で変動性が存在し得ることは理解する。ゆえに、当業者は、XRPD回折図でのシグナルの最大値(本明細書で言及する角度2θ(°2θ))が、上記で考察した当該技術分野で認められた変動性である記録した値の±0.2°2θを値が記録したことを一般に意味することは理解する。
【0040】
上述の通り、本明細書に記載されるのは、化合物(I)の新規の結晶形態である。これら新規の結晶形態は、BTKの阻害剤であり得る。BTK阻害剤は、例えば、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、および免疫性血小板減少症のような、BTKにより媒介される疾患の処置に有用である。
【0041】
実施形態:
本開示の非限定的な実施形態は、以下を含む:
【0042】
1. 化合物(I)の結晶形態A:
【化3】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
2. 5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる、実施形態1に記載の結晶形態A。
3. 図1のものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、実施形態1または2に記載の結晶形態A。
4. 約146℃~約147℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる、実施形態1~3のいずれか1項に記載の結晶形態A。
5. 約140.6℃~約141.2℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる、実施形態1~4のいずれか1項に記載の結晶形態A。
6. 熱重量分析による25℃~200℃の間での1.0wt.%未満の質量損失で特徴付けられる、実施形態1~5のいずれか1項に記載の結晶形態A。
7. 95%の相対湿度(RH)での貯蔵の際、1%未満の含水量で特徴付けられる、実施形態1~6のいずれか1項に記載の結晶形態A。
8. 化合物(I)の少なくとも95%は、(E)異性体である、実施形態1~7のいずれか1項に記載の結晶形態A。
9. 酢酸イソプロピルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成すること;
溶液を撹拌して、沈殿物を形成すること;および
濾過により結晶形態Aを単離すること
を含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態A。
【0043】
10. 化合物(I)の結晶形態B:
【化4】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
11. 10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.0±0.2、および22.9±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる、実施形態10に記載の結晶形態B。
12. 化合物(I)の少なくとも99%超は、(E)異性体である、実施形態10または11に記載の結晶形態B。
13. 化合物(I)の95%~99%は、(E)異性体である、実施形態10または11に記載の結晶形態B。
14. 図4Bのものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、実施形態10~12のいずれか1項に記載の結晶形態B。
15. 図4Aのものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、実施形態10、11、または13のいずれか1項に記載の結晶形態B。
16. 約144℃~約146℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる、実施形態10~12、または14のいずれか1項に記載の結晶形態B。
17. 約139.3℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる、実施形態10~12、14、または16のいずれか1項に記載の結晶形態B。
18. 約141℃~約142℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる、実施形態10、11、13、または15のいずれか1項に記載の結晶形態B。
19. 約131.8℃~約132.4℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる、実施形態10、11、13、15、または18のいずれか1項に記載の結晶形態B。
20. 95%の相対湿度(RH)での貯蔵の際、1.3%未満の含水量で特徴付けられる、実施形態10~19のいずれか1項に記載の結晶形態B。
21. 酢酸エチルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成すること;
溶液に塩化ナトリウムを種として加え、溶液を撹拌して、懸濁液を得ること;
懸濁液の濾過により結晶形態Bを単離すること
を含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態B。
22. エタノールを(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルの形態Cに添加して、溶液またはスラリーを形成すること;
溶液またはスラリーに化合物(I)の形態Bの種結晶を加えること;および
濾過により化合物(I)の結晶形態Bを単離すること
を含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態B。
【0044】
23. 化合物(I)の結晶形態C:
【化5】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
24. 9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる、実施形態23に記載の結晶形態C。
25. 図7のものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる、実施形態23または24に記載の結晶形態C。
26. 約118.5℃~約119℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は15℃/分である、実施形態23~25のいずれか1項に記載の結晶形態C。
27. 約115.6℃~約116℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は15℃/分である、実施形態23~26のいずれか1項に記載の結晶形態C。
28. 約120.5℃~約121℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は10℃/分である、実施形態23~27のいずれか1項に記載の結晶形態C。
29. 約118℃~約118.5℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられ、DSC走査速度は10℃/分である、実施形態23~28のいずれか1項に記載の結晶形態C。
30. 化合物(I)の少なくとも95%は、(E)異性体である、実施形態23~29のいずれか1項に記載の結晶形態C。
31. P-1空間群で特徴付けられる、実施形態23~30のいずれか1項に記載の結晶形態C。
32. 200(2)Kでの以下の単位格子の寸法:
a=10.6741Å α=93.654°
b=12.7684Å β=104.400°
c=14.5287Å γ=105.476°
で特徴付けられる、実施形態23~31のいずれか1項に記載の結晶形態C。
33. アセトニトリルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成すること;
溶液に化合物(I)の結晶形態Bを種として加えて、混合物を形成し、混合物を撹拌してスラリーを得ること;および
スラリーを濾過することにより結晶形態Cを単離すること
を含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態C。
34. 実施形態1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる化合物(I)の少なくとも1つの結晶形態;および
少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤
を含む医薬組成物。
35. 固体の経口組成物の形態である、実施形態34に記載の医薬組成物。
36. 錠剤またはカプセル剤の形態である、実施形態34または35に記載の医薬組成物。
37. 哺乳動物においてブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)を阻害する方法であって、前記BTK阻害を必要とする哺乳動物に、実施形態1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
38. それを必要とする哺乳動物のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)により媒介される疾患を処置する方法であって、哺乳動物に、実施形態1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
39. それを必要とする哺乳動物の尋常性天疱瘡または落葉状天疱瘡を処置する方法であって、哺乳動物に、実施形態1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
40. それを必要とする哺乳動物の免疫性血小板減少症を処置する方法であって、哺乳動物に、実施形態1~33のいずれか1項に記載の結晶形態から選ばれる、治療有効量の少なくとも1つの結晶形態を投与することを含む方法。
41. 哺乳動物は、ヒトである、実施形態37~40のいずれか1項に記載の方法。
【0045】
化合物(I)の結晶形態A
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(I)の結晶形態Aを提供する:
【化6】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
【0046】
図1は、化合物(I)の結晶形態Aに対するX線粉末回折図を示す。図1において、XRPDパターンは、少量の結晶形態Bを含む結晶形態Aに相当し、以下にさらに記載している。
【0047】
図2は、化合物(I)の結晶形態AのDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、約146℃~約147℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、約140.6℃~約141.2℃で融解/分解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、約140.6℃~約141.2℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、関連するエンタルピーは、約52J/g(ΔH=52J/g)である。
【0048】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、図2のものと実質的に類似したDSCサーモグラムで特徴付けられる。
【0049】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、図3のものと実質的に類似した熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、熱重量分析による25℃~200℃の間での1.0wt.%未満の質量損失で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、この質量損失は、酢酸イソプロピルの損失に相当するが、これは、融解温度の周囲で放出される。いくつかの実施形態において、分解は、例えば実質的に図3に示す通り、より高温で観測される(約220℃~約230℃で開始)。
【0050】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、85%の相対湿度(RH)での貯蔵の際、1%未満の含水量を有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、表1に記載したものと実質的に類似するシグナルを有するCu-Kα放射線の入射ビームでのX線粉末回折分析により作成されるX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0052】
【表1】
【0053】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、12.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、16.5±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、17.0±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、17.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、18.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、19.2±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、20.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、22.2±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、24.4±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0054】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも9つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも8つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも7つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも6つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも5つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも4つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも2つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、5.6±0.2、12.7±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、20.7±0.2、22.2±0.2、および24.4±0.2から選ばれる少なくとも1つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Aは、図1のものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0056】
いくつかの実施形態において、本開示は、酢酸イソプロピルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む、化合物(I)の結晶形態Aを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液を撹拌して、沈殿物を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、濾過により結晶形態Aを単離することをさらに含む。
【0057】
いくつかの実施形態において、本開示は、酢酸イソプロピルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態Aを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液を撹拌して、沈殿物を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、濾過により結晶形態Aを単離することをさらに含む。
【0058】
化合物(I)の結晶形態B
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(I)の結晶形態Bを提供する:
【化7】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
【0059】
図4Aは、95%~99%の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態Bに対するX線粉末回折図を示す。図4Aにおいて、XRPDパターンは、非晶質の化合物(I)の酢酸エチル中の撹拌溶液に添加し、続いて終夜撹拌した結晶形態AおよびBの種結晶を使用して、NaCl種晶を含まずに得られた結晶形態Bに相当するが、これにより、結晶形態Bの結晶化および産生が生じた。
【0060】
図4Bは、99%超の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態Bに対するX線粉末回折図を示す。図4Bにおいて、XRPDパターンは、化合物(I)の形態Cのエタノール中の撹拌したスラリーに添加し、続いて終夜撹拌した結晶形態Bの種結晶を使用して、NaCl種晶を含まずに得られた結晶形態Bに相当するが、これにより、99%超の(E)異性体を含む結晶形態Bの結晶化および産生が生じた。
【0061】
結晶形態Aは、経時的に結晶形態Bに変換することができる。ゆえに、結晶形態Bは、室温で結晶形態Aより熱力学的に安定であり得る。
【0062】
結晶形態Cは、経時的に結晶形態Bに変換することができる。ゆえに、結晶形態Bは、室温で結晶形態Cより、より熱力学的により安定であり得る。
【0063】
図5Aは、95%~99%の(E)異性体を含む、化合物(I)の結晶形態BのDSCサーモグラムを示す。
【0064】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、約141℃~約142℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、約131.8℃~約132.4℃で融解/分解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、約131.8℃~約132.4℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、関連するエンタルピーは、約54.9J/g(ΔH=54.9J/g)である。
【0065】
いくつかの実施形態において、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、約141℃~約142℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、約131.8℃~約132.4℃で融解/分解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、約131.8℃~約132.4℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、関連するエンタルピーは、約54.9J/g(ΔH=54.9J/g)である。
【0066】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、図5Aのものと実質的に類似したDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、図5Aのものと実質的に類似したDSCサーモグラムで特徴付けられる。
【0067】
図5Bは、99%超の(E)異性体を含む結晶形態BのDSCサーモグラムを示す。
【0068】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態は、約144℃~約146℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、約139.3℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、関連するエンタルピーは、約65.5J/g(ΔH=65.5J/g)である。
【0069】
いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態は、約144℃~約146℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、約139.3℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、関連するエンタルピーは、約65.5J/g(ΔH=65.5J/g)である。
【0070】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、図5Bのものと実質的に類似したDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、図5Bのものと実質的に類似したDSCサーモグラムで特徴付けられる。
【0071】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、図6Aのものと実質的に類似した熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、図6Aのものと実質的に類似した熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線で特徴付けられる。
【0072】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、熱重量分析による25℃~162℃の間での0.8wt.%未満の質量損失で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記の質量損失に加えて、熱重量分析による162℃~250℃の間での0.8wt.%未満のさらなる質量損失が存在する。いくつかの実施形態において、このさらなる質量損失は、酢酸エチルの除去に相当する。いくつかの実施形態において、分解は、例えば実質的に図6Aに示す通り、より高温で観測される(約250℃~約253℃で開始)。
【0073】
いくつかの実施形態において、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、熱重量分析による25℃~162℃の間での0.8wt.%未満の質量損失で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記の質量損失に加えて、熱重量分析による162℃~250℃の間での0.8wt.%未満のさらなる質量損失が存在する。いくつかの実施形態において、このさらなる質量損失は、酢酸エチルの除去に相当する。いくつかの実施形態において、分解は、例えば実質的に図6Aに示す通り、より高温で観測される(約250℃~約253℃で開始)。
【0074】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、図6Bのものと実質的に類似した熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、図6Bのものと実質的に類似した熱重量分析-フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)熱曲線で特徴付けられる。
【0075】
いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、熱重量分析による25℃~162℃の間での0.7wt.%未満の質量損失で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記の質量損失に加えて、熱重量分析による162℃~250℃の間での0.7wt.%未満のさらなる質量損失が存在する。いくつかの実施形態において、このさらなる質量損失は、エタノールの除去に相当する。いくつかの実施形態において、分解は、例えば実質的に図6Aに示す通り、より高温で観測される(約250℃~約253℃で開始)。
【0076】
いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、熱重量分析による25℃~162℃の間での0.5wt.%未満の質量損失で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、上記の質量損失に加えて、熱重量分析による162℃~250℃の間での0.5wt.%未満のさらなる質量損失が存在する。いくつかの実施形態において、このさらなる質量損失は、エタノールの除去に相当する。いくつかの実施形態において、分解は、例えば実質的に図6Bに示す通り、より高温で観測される(約250℃~約253℃で開始)。
【0077】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、95%の相対湿度(RH)での貯蔵の際、1.3%未満の含水量で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、95%の相対湿度(RH)での貯蔵の際、1.3%未満の含水量で特徴付けられる。
【0078】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、表2Aに記載したものと実質的に類似するシグナルを有するCu-Kα放射線の入射ビームでのX線粉末回折分析により作成されるX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、表2Aに記載したものと実質的に類似するシグナルを有するCu-Kα放射線の入射ビームでのX線粉末回折分析により作成されるX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0079】
【表2-1】
【表2-2】
【0080】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、15.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、16.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、17.9±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、18.4±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、18.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、22.9±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、23.1±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0081】
いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、15.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、16.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、17.9±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、18.4±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、18.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、22.9±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、23.1±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0082】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも7つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも6つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも5つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも4つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも2つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも1つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0083】
いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも7つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも6つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも5つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも4つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも2つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、22.9±0.2、および23.1±0.2から選ばれる少なくとも1つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0084】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、図4Aのものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、図4Aのものと実質的に類似したX線粉末回折で特徴付けられる。
【0085】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、表2Bに記載したものと実質的に類似するシグナルを有するCu-Kα放射線の入射ビームでのX線粉末回折分析により作成されるX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、表2Bに記載したものと実質的に類似するシグナルを有するCu-Kα放射線の入射ビームでのX線粉末回折分析により作成されるX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0086】
【表3-1】
【表3-2】
【0087】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2°2シータでのX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、5.1±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、15.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、16.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、17.9±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、18.4±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、18.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、19.2±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、21.2±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、22.0±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0088】
いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)結晶形態Bは、4.2±0.2°2シータでのX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、5.1±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、10.8±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、15.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、16.3±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、17.9±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、18.4±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、18.7±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、19.2±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、21.2±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、22.0±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0089】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも10個の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも9つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも8つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも7つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも6つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも5つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも4つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも2つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも1つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0090】
いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも10個の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも9つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも8つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも7つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも6つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも5つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも4つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも2つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、4.2±0.2、5.1±0.2、10.8±0.2、15.3±0.2、16.3±0.2、17.9±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、19.2±0.2、21.2±0.2、および22.0±0.2から選ばれる少なくとも1つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0091】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Bは、図4Bのものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bは、図4Bのものと実質的に類似したX線粉末回折で特徴付けられる。
【0092】
いくつかの実施形態において、本開示は、酢酸エチルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態Bを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に塩化ナトリウムを種として加え、撹拌して、懸濁液を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、懸濁液の濾過により結晶形態Bを単離することをさらに含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、本開示は、非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを酢酸エチルに溶解して、溶液を形成することを含む、化合物(I)の結晶形態Bを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態A、ならびに化合物(I)の結晶形態AおよびBの混合物を種として加えて、スラリーを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ヘプタンをスラリーに添加し、スラリーを濾過して、化合物(I)の結晶形態Bを得ることをさらに含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、本開示は、非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを酢酸エチルに溶解して、溶液を形成することを含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態Bを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態A、ならびに化合物(I)の結晶形態AおよびBの混合物を種として加えて、スラリーを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ヘプタンをスラリーに添加し、スラリーを濾過して、化合物(I)の結晶形態Bを得ることをさらに含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、本開示は、酢酸エチルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む方法により製造される、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に塩化ナトリウムを種として加え、撹拌して、懸濁液を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、懸濁液の濾過により95%~99%の(E)異性体を含む結晶形態Bを単離することをさらに含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、本開示は、非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを酢酸エチルに溶解して、溶液を形成することを含む、化合物(I)の95%~99%の(E)異性体を含む結晶形態Bを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態A、ならびに化合物(I)の結晶形態AおよびBの混合物を種として加えて、スラリーを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ヘプタンをスラリーに添加し、スラリーを濾過して、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bを得ることをさらに含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、本開示は、非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを酢酸エチルに溶解して、溶液を形成することを含む方法により製造される、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態A、ならびに化合物(I)の結晶形態AおよびBの混合物を種として加えて、スラリーを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、ヘプタンをスラリーに添加し、スラリーを濾過して、95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bを得ることをさらに含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(I)の結晶形態Cをエタノールに溶解して、溶液またはスラリーを形成することを含む、化合物(I)の結晶形態Bを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液またはスラリーに化合物(I)の結晶形態Bを種として加えることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、濾過により沈殿物を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、沈殿物を真空下で乾燥して、化合物(I)の結晶形態Bを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、沈殿物を真空下で乾燥することは、熱を加えることを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、結晶形態Cは、約15℃で溶解する。いくつかの実施形態において、結晶形態Bを種として加えた溶液またはスラリーは、一定期間、室温で撹拌する。いくつかの実施形態において、一定時間は約48時間である。
【0100】
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(I)の結晶形態Cをエタノールに溶解して、溶液またはスラリーを形成することを含む、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液またはスラリーに化合物(I)の結晶形態Bを種として加えることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、濾過により沈殿物を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、沈殿物を真空下で乾燥して、99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、沈殿物を真空下で乾燥することは、熱を加えることを含む。
【0101】
いくつかの実施形態において、結晶形態Cは、約15℃で溶解する。いくつかの実施形態において、結晶形態Bを種として加えた溶液またはスラリーは、一定期間、室温で撹拌する。いくつかの実施形態において、一定時間は約48時間である。
【0102】
化合物(I)の結晶形態C
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(I)の結晶形態Cを提供する:
【化8】
(式中、Cは、立体化学中心である)。
【0103】
結晶形態Cは、化合物(I)のアセトニトリル溶媒和物である。
【0104】
図7は、化合物(I)の結晶形態Cに対するX線粉末回折図を示す。
【0105】
図8は、化合物(I)の結晶形態CのDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、約118.5℃~約119℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、約115.6℃~約116.0℃で融解/分解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、約115.6℃~約116.0℃で融解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。
【0106】
図8はまた、化合物(I)の結晶形態CのTGA熱曲線を示す。いくつかの実施形態において、結晶形態Cは、25℃~150℃の間での5%未満の質量損失で特徴付けられる。
【0107】
図8のDSCサーモグラムは、40mL/分、Nパージ下で、オートサンプラーおよび冷凍冷却システムを備えたTA Instruments Q100またはQ2000示差走査熱量計を使用して得られた。スクリーニングサンプルのDSCサーモグラムは、クリンプ付きのAlパンにおいて15℃/分で得られた。TGAサーモグラムは、40mL/分、Nパージ下で、PtまたはAlパンにおいてTA Instruments Q50熱重量分析装置で得られた。スクリーニングサンプルのTGAサーモグラムは、別段言及されない限り、15℃/分で得られた。
【0108】
図9は、化合物(I)の結晶形態Cの異なるDSCサーモグラムを示す。温度走査速度が10℃/分であったことを除いて、DSCの条件は、図8と同様であった。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、約120.5℃~約121℃での吸熱ピーク(融解温度)を有するDSCサーモグラムで特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、約118.0℃~約118.5℃で融解/分解の開始を示すDSCサーモグラムで特徴付けられる。
【0109】
図9はまた、化合物(I)の結晶形態CのTGA熱曲線を示す。温度走査速度が10℃/分であったことを除いて、TGA条件は、図8と同様であった。いくつかの実施形態において、結晶形態Cは、25℃~145℃の間での5wt.%未満の質量損失で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、質量損失は、アセトニトリルの除去による。
【0110】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の形態Cは、例えば図10に示す通り、より高温(250℃より高い温度)で分解されるが、図10は、結晶形態CのTG-FTIRサーモグラムである。図10はまた、100℃~200℃の間での5.5%未満の質量損失が存在することも示す。いくつかの実施形態において、質量損失は、アセトニトリルの損失に起因する。
【0111】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、表3に記載したものと実質的に類似するシグナルを有するCu-Kα放射線の入射ビームでのX線粉末回折分析により作成されるX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0112】
【表4-1】
【表4-2】
【0113】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、10.2±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、15.6±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、16.6±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、18.6±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、18.9±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、19.6±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、21.6±0.2°2シータでのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0114】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2の2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも7つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも6つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも5つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも4つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも3つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも2つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、9.8±0.2、10.2±0.2、15.6±0.2、16.6±0.2、18.6±0.2、18.9±0.2、19.6±0.2、および21.6±0.2から選ばれる少なくとも1つの2シータ値でのシグナルを有するX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0115】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、図7のものと実質的に類似したX線粉末回折図で特徴付けられる。
【0116】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、図11のものと実質的に類似した単結晶構造で特徴付けられる。
【0117】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群で特徴付けられる。
【0118】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.67Å α=93.65°
b=12.77Å β=104.40°
c=14.53Å γ=105.48°
【0119】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.674Å α=93.654°
b=12.768Å β=104.400°
c=14.529Å γ=105.476°
【0120】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.6741Å α=93.6543°
b=12.7684Å β=104.4003°
c=14.5287Å γ=105.4764°
【0121】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.67411Å α=93.6543°
b=12.76842Å β=104.4003°
c=14.52872Å γ=105.4764°
【0122】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.674113Å α=93.6543°
b=12.768416Å β=104.4003°
c=14.528715Å γ=105.4764°
【0123】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および200(2)Kでの以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.67Å α=93.65°
b=12.77Å β=104.40°
c=14.53Å γ=105.48°
【0124】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および200(2)Kでの以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.674Å α=93.654°
b=12.768Å β=104.400°
c=14.529Å γ=105.476°
【0125】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および200(2)Kでの以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.6741Å α=93.6543°
b=12.7684Å β=104.4003°
c=14.5287Å γ=105.4764°
【0126】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および200(2)Kでの以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.67411Å α=93.6543°
b=12.76842Å β=104.4003°
c=14.52872Å γ=105.4764°
【0127】
いくつかの実施形態において、化合物(I)の結晶形態Cは、P-1空間群および200(2)Kでの以下の単位格子の寸法で特徴付けられる。
a=10.674113Å α=93.6543°
b=12.768416Å β=104.4003°
c=14.528715Å γ=105.4764°
【0128】
いくつかの実施形態において、本開示は、アセトニトリルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む、化合物(I)の結晶形態Cを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態Bを種として加えて、混合物を形成し、混合物を撹拌してスラリーを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、スラリーを濾過することにより結晶形態Cを単離することをさらに含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、本開示は、アセトニトリルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態Cを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態Bを種として加えて、混合物を形成し、混合物を撹拌してスラリーを得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、スラリーを濾過することにより結晶形態Cを単離することをさらに含む。
【0130】
いくつかの実施形態において、本開示は、アセトニトリルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む、化合物(I)の結晶形態Cを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態Cを種として加え、撹拌して、沈殿物を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、沈殿物を濾過することにより結晶形態Cを単離することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、沈殿物を真空下で乾燥して、化合物(I)の結晶形態Cを得ることをさらに含む。
【0131】
いくつかの実施形態において、本開示は、アセトニトリルを非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルに添加して、溶液を形成することを含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態Cを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、溶液に化合物(I)の結晶形態Cを種として加え、撹拌して、沈殿物を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、沈殿物を濾過することにより結晶形態Cを単離することをさらに含む。いくつかの実施形態において、方法は、沈殿物を真空下で乾燥して、化合物(I)の結晶形態Cを得ることをさらに含む。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示は、非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル、および化合物(I)の結晶形態AとBとの混合物の、アセトニトリル/t-ブチルメチルエーテル混合物中の混合物を撹拌することを含む、化合物(I)の結晶形態Cを製造するための方法を提供する。いくつかの実施形態において、方法は、混合物に結晶形態Aを種として加え、場合により追加量のアセトニトリル/t-ブチルメチルエーテル混合物をさらに添加して、懸濁液を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、懸濁液は濃厚な懸濁液である。いくつかの実施形態において、方法は、懸濁液を濾過することにより化合物(I)の結晶形態Cを単離することをさらに含む。
【0133】
いくつかの実施形態において、本開示は、非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル、および化合物(I)の結晶形態AとBとの混合物の、アセトニトリル/t-ブチルメチルエーテル混合物中の混合物を撹拌することを含む方法により製造される、化合物(I)の結晶形態Cを提供する。いくつかの実施形態において、方法は、混合物に結晶形態Aを種として加え、場合により追加量のアセトニトリル/t-ブチルメチルエーテル混合物をさらに添加して、懸濁液を得ることをさらに含む。いくつかの実施形態において、懸濁液は濃厚な懸濁液である。いくつかの実施形態において、方法は、懸濁液を濾過することにより化合物(I)の結晶形態Cを単離することをさらに含む。
【0134】
適応
本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態は、哺乳動物のBTK活性により媒介される状態を処置するのに有用であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態は、ヒトまたは非ヒトを処置するのに使用することができる。
【0135】
本明細書に記載される化合物(I)の結晶形態は、例えば、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、免疫性血小板減少症、皮膚ループス、皮膚エリテマトーデス、皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑、壊疽性膿皮症、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症、スティーブンスジョンソン症候群、TEN(中毒性表皮壊死融解症)、薬疹、禿髪性毛包炎、須毛偽毛包炎、白血球破砕性血管炎、化膿性汗腺炎、掌蹠膿疱症、苔癬様皮膚炎、ざ瘡、菌状息肉症、スイート症候群、炎症性腸疾患、関節炎、狼瘡、ループス腎炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、シェーグレン症候群、多発性硬化症、強直性脊椎炎(ankylosing spondylitisis)、強皮症、ウェゲナー肉芽腫症、乾癬、喘息、結腸炎、結膜炎、皮膚炎、ブドウ膜炎、湿疹、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性リンパ腫、慢性リンパ性白血病、B細胞性前リンパ性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(lymphoplamascytic lymphoma)/ワルデンストロームマクログロブリン血症、脾臓辺縁帯リンパ腫、形質細胞性骨髄腫、形質細胞腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、原発性体腔性リンパ腫、バーキットリンパ腫/白血病、およびリンパ腫様肉芽腫症のような、様々な状態または疾患を処置するのに有用であり得る。
【0136】
天疱瘡は、皮膚および/または粘膜において消耗性の上皮内水疱およびびらんを引き起こす、稀なB細胞媒介性自己免疫疾患である。天疱瘡は、一般に障害が生じた組織で起こる感染および処置の副作用による10%の死亡率を有し、毎年100,000人当たりおよそ0.1~0.5人に影響を及ぼす(Scullyら、2002年;Scullyら、1999年)。天疱瘡患者で観察される特徴的な表皮内水疱は、IgG自己抗体が、ある特定のケラチノサイトデスモソーム型接着タンパク質であるデスモグレイン1および3(Dsg1およびDsg3)に結合することにより引き起こされ、細胞接着の損失をもたらす(Amagai Mら、2012年;Diaz LAら、2000年)。B細胞は、これらの自己抗体の産生および細胞の許容量耐性機構において重要な役割を担う。
【0137】
免疫性血小板減少症(通常ITPと呼ばれる)は、血小板の自己抗体を介する破壊および血小板産生障害で特徴付けられ、血小板減少症、ならびに罹患率および死亡率に関連する出血の素因をもたらす。重度の自己免疫性溶血性貧血およびITPの連続したエピソードが、慢性リンパ性白血病(CLL)患者においてBTK/EGFR/ITK阻害剤であるイブルチニブの処置の開始後に終了した場合、自己免疫性血球減少症患者におけるBTK阻害の役割を支持する予備的な証拠が存在する(Rogers、2016年、Montillo、2017年)。
【0138】
医薬組成物
本明細書に記載される結晶形態は、医薬品有効成分(API)として、ならびに1つまたはそれ以上の薬学的に許容される添加剤を組み入れ、ヒト対象への投与に好適である医薬組成物を製造するための材料として有用である。いくつかの実施形態において、これらの医薬組成物は、例えば、錠剤および/またはカプセル剤などの固体の経口剤形のような医薬製品である。
【0139】
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(I)の少なくとも1つの結晶形態を含む医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、化合物(I)の少なくとも1つの結晶形態および少なくとも1つの追加的な薬学的に許容される添加剤を含む医薬組成物を提供する。各添加剤は、対象組成物と相溶性があり、その成分が患者に有害ではないという意味において、「薬学的に許容され」なければならない。例えば、任意の望ましくない生物学的効果をもたらすこと、あるいは薬学的に許容される組成物の任意の他の成分と有害な様式で相互作用することなどにより、任意の従来の薬学的に許容される添加剤が化合物(I)に相溶性がない場合を除いて、その使用は、本開示の範囲内にあると考えられる。
【0140】
薬学的に許容される添加剤として役立つことができる材料のいくつかの非限定例として、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースのような、糖類;(2)トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンのような、デンプン;(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースのような、セルロースおよびその誘導体;(4)トラガント末;(5)モルト;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバターおよび坐剤用ワックスのような、添加剤;(9)ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油のような、油;(10)プロピレングリコールのような、グリコール;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールのような、ポリオール;(12)オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルのような、エステル;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムのような、緩衝化剤;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張性生理食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;ならびに(21)医薬製剤で利用される他の非毒性の相溶性物質が挙げられる。
【0141】
Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、2005年、D.B.Troy編、Lippincott Williams&Wilkins、Philadelphia、ならびにEncyclopedia of Pharmaceutical Technology、J.SwarbrickおよびJ.C.Boylan編、1988~1999、Marcel Dekker、New Yorkは、これらの各々の内容が本明細書に参照によって組み入れるが、薬学的に許容される添加剤の追加の非限定例、ならびにこれらを製造し、使用するための公知の技術も開示する。
【0142】
本明細書に開示される医薬組成物は、経口で、非経口で、吸入噴霧により、局所で、直腸で、経鼻で、バッカルで、経膣で、または埋没リザーバーを介して投与し得る。用語「非経口」とは、本明細書で使用した場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、鞘内、肝内、病変内、および頭蓋内の注射または注入技術を含む。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、経口、腹腔内、または静脈内投与される。本開示の医薬組成物の滅菌注射可能形態は、水性または油性懸濁液であり得る。これらの懸濁液は、好適な分散化剤または湿潤化剤、および懸濁化剤を使用して、当該技術分野で知られている技術にしたがって製剤化することができる。滅菌注射可能調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤のような、非毒性の非経口的に許容される賦形剤または溶媒中の滅菌注射可能な液剤または懸濁剤であり得る。利用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌不揮発性油は、従来、溶媒または懸濁媒体として利用される。
【0143】
この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性不揮発油を利用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、注射可能なものの製造に有用であり、オリーブ油、またはヒマシ油、とりわけそれらのポリオキシエチル化型のような薬学的に許容される天然油も同様である。これらの油性液剤または懸濁剤はまた、カルボキシメチルセルロースのような長鎖アルコール賦形剤もしくは分散剤、または、乳剤および懸濁剤を含む薬学的に許容される剤形の製剤で通常使用される類似の分散化剤も含有し得る。他の通常使用される界面活性剤、例えばTween、Spans、および、薬学的に許容される固体、液体、または他の剤形の製造で通常使用される他の乳化剤または生物学的利用能向上剤もまた、製剤化の目的で使用することができる。
【0144】
本明細書に開示される医薬組成物はまた、限定されないが、カプセル剤、錠剤、水性懸濁剤、または液剤を含む、任意の経口的に許容される剤形で経口投与することができる。水性懸濁剤が経口使用に必要な場合、有効成分は、乳化剤および懸濁化剤と典型的に合わせる。所望により、ある特定の甘味剤、着香剤、または着色化剤もまた添加することができる。
【0145】
あるいは、本明細書に開示される医薬組成物は、直腸投与用の坐剤の形態で投与することができる。坐剤は、薬剤を、室温で固体であるが、直腸温度では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する好適な非刺激性添加剤と混合することにより製造することができる。このような材料として、限定されないが、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0146】
本開示の医薬組成物はまた、とりわけ処置の標的が、眼、皮膚、または下部腸管の疾患を含む、局所塗布により容易に接触可能な領域または臓器を含む場合、局所投与することもできる。好適な局所製剤は、これらの領域または臓器の各々用に容易に製造される。下部腸管に対する局所塗布は、直腸坐剤製剤または好適な浣腸製剤で行うことができる。局所用経皮パッチもまた使用することができる。
【0147】
局所塗布に対して、医薬組成物は、少なくとも1つの添加剤において懸濁または溶解している有効成分を含有する、好適な軟膏剤で製剤化することができる。本開示の化合物の局所投与用の添加剤として、限定されないが、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックス、および水が挙げられる。あるいは、本明細書に開示される医薬組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤において懸濁または溶解している有効成分を含有する、好適なローション剤またはクリーム剤で製剤化することができる。好適な添加剤として、限定されないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水が挙げられる。
【0148】
本開示の医薬組成物はまた、鼻腔エアゾール剤または吸入剤により投与することができる。このような組成物は、医薬製剤の分野で周知されている技術にしたがって製造され、ベンジルアルコールもしくは他の好適な保存剤、生物学的利用能を向上させる吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散化剤を利用して、生理食塩水中の液剤として製造することができる。
【0149】
投薬
一般に、化合物(I)の結晶形態は、類似の有用性を担う薬剤に対する投与の適用された方式のいずれかにより治療有効量で投与される。任意の特定の哺乳動物(例えば、任意の特定のヒト)に対する有効用量は、処置している障害および障害の重症度;利用している特定の医薬組成物;哺乳動物の年齢、体重、全身の健康、性別、および食餌;投与の時間、投与 の経路、処置の期間;ならびに、医学分野で周知されている同様の因子を含む、様々な因子に依存する。いくつかの実施形態において、治療有効量の化合物(I)の少なくとも1つの結晶形態は、それを必要とする哺乳動物に投与される。本明細書に開示される結晶形態の治療有効量は、例えば、1日に患者の体重1kg当たり0.01~500mgの範囲であり得、これを単回または複数回の用量で投与することができる。好適な投与量レベルは、1日に0.01~250mg/kg、1日に0.05~100mg/kg、または1日に0.1~50mg/kgであり得る。この範囲内で、いくつかの実施形態において、投与量は、1日に0.05~0.5、0.5~5、または5~50mg/kgであり得る。経口投与に対して、いくつかの実施形態において、組成物は、1.0~1000ミリグラムの有効成分、例えば1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900、および1000ミリグラムの有効成分を含有する錠剤の形態で提供することができる。
【0150】
一般に、本開示の結晶形態は、以下の経路:経口;全身性(例えば、経皮、鼻腔内、または坐剤による);局所;または非経口(例えば、筋肉内、静脈内、もしくは皮下)投与のいずれか1つにより、医薬組成物として投与される。例として、組成物は、錠剤、カプセル剤、半固形剤、散剤、持続放出性製剤、腸溶性もしくは遅延放出性製剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、エアゾール剤、または任意の他の適切な組成物の形態を取り得る。
【0151】
本明細書で言及される全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が参照によって組み入れるものと具体的かつ個別に指示されたかのように、その全体を本明細書に参照によって組み入れる。
【0152】
群の少なくとも1つのメンバー間に「または」または「および/または」を含む特許請求の範囲または説明は、そうでないことが示されるか、または代わりに文脈から明らかでない限り、群メンバーの1つ、2つ以上、または全てが、所与の生成物またはプロセスに存在する、これらで利用される、あるいはこれらに関連している場合に満たされているとみなされる。本開示は、正確に群の1メンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在する、これらで利用される、あるいはこれらに関連している実施形態を含む。本開示は、2つ以上または全ての群メンバーが、所与の生成物またはプロセスに存在する、これらで利用される、あるいはこれらに関連している実施形態を含む。
【0153】
さらに、本開示は、列挙された請求項の少なくとも1つ由来の少なくとも1つの限定、要素、条項、および記述用語が別の請求項に導入される、全ての変形性、組合せ、および並び替えを包含する。例えば、別の請求項に従属する任意の請求項は、同じ基本的な請求項に従属する任意の他の請求項で見出される少なくとも1つの限定を含むように修正することができる。要素が、例えばマーカッシュ群形式において一覧として表される場合、要素の各サブグループもまた開示され、任意の要素は、群から除去することができる。一般に、本開示または本開示の態様が、特定の要素および/または特徴を含むものとして言及される場合、本開示の実施形態または本開示の態様は、このような要素および/または特徴からなる、またはこのような要素および/または特徴から本質的になることは理解すべきである。簡略化するために、これらの実施形態は、本明細書にこれらの言葉で具体的に記載していない。範囲が示される場合、端点は含まれる。さらに、そうでないことが示されるか、あるいはそうでないことが文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈からそうでないことが明らかに規定されない限り、範囲の下限の単位の10分の1の精度で、本開示の異なる実施形態において記述された範囲内の任意の具体的な値またはサブ範囲を取ることができる。
【0154】
当業者は、ルーチンの実験を使用して、本明細書に記載される開示の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識する、または確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲により包含されることが意図されている。
【実施例
【0155】
以下の実施例は、例示であることを意図し、本開示の範囲を決して限定することを意味しない。
【0156】
分析方法1:X線粉末回折
X線粉末回折を、Cu-Kα1放射線で動作するMythen1K検出器を備えたStoe Stadi P回折装置で実行することができる。本機器での測定は、40kVの管電圧および40mAの管電源での伝送で実施することができる。曲がったGeモノクロメーターは、Cu-Kα1放射線で試験するのに使用することができる。以下のパラメータを設定する:0.02°2θのステップサイズ、12秒のステップ時間、1.5~50.5°2θの走査範囲、および1°2θの検出器ステップ(ステップ走査における検出器のモード)。典型的なサンプル製造に対して、約10mgのサンプルを2つの酢酸塩膜間に置き、Stoe透過型サンプルホルダーにマウントした。サンプルを測定の間、回転させる。全てのサンプルの製造および測定は、周囲空気雰囲気下で行うことができる。
【0157】
分析方法2:X線粉末回折(PXRD)PANalytical
PXRD回折図は、Niフィルター付きCu-Ka(45kV/40mA)放射線および0.03°2qのステップサイズを使用するPANalytical X’Pert Pro回折装置、ならびにX’celerator(商標)RTMS(Real Time Multi-Strip)検出器で得ることができる。入射ビーム側の構成は、可変性発散スリット(10mmの照射長)、0.04radのSollerスリット、固定散乱線除去スリット(0.50°)、および10mmのビームマスクであり得る。回折ビーム側の構成は、可変性散乱線除去スリット(10mmの観測長)および0.04radのSollerスリットであり得る。サンプルをゼロバックグラウンドSiウエハ上に平坦になるようにマウントする。
【0158】
分析方法3:示差走査熱量測定(DSC)
DSCは、40mL/分、Nパージ下で、オートサンプラーおよび冷凍冷却システムを備えたTA Instruments Q100またはQ2000示差走査熱量計で行うことができる。スクリーニングサンプルのDSCサーモグラムは、クリンプ付きのAlパンにおいて15℃/分で得ることができる。
【0159】
分析方法4:熱重量分析(TGA)
TGAサーモグラムは、40mL/分、Nパージ下で、PtまたはAlパンにおいてTA Instruments Q50熱重量分析装置で得ることができる。スクリーニングサンプルのTGAサーモグラムは、15℃/分で得ることができる。
【0160】
分析方法5:IRオフガス検出を伴う熱重量分析(TGA-IR)
TGA-IRは、ガス流通セルおよびDTGS検出器を伴う外部TGA-IRモジュールを備えたNicolet 6700 FT-IR分光計(Thermo Electron)に接続させたTA Instruments Q5000熱重量分析装置で行うことができる。TGAは、PtまたはAlパンにおいて25mL/分のN流および15℃/分の加熱速度で行うことができる。IRスペクトルは、各時点で、4cm-1の解像度および32の走査で収集することができる。
【0161】
分析方法6:フーリエ変換赤外分光(TG-FTIR)
熱重量の測定は、Bruker FTIR Spectrometer Vector 22に連結したNetzsch Thermo-Microbalance TG 209で実行することができる(ピンホール付きサンプルパン、N雰囲気、加熱速度10℃/分)。
【0162】
一般的な方法:
いくつかの結晶化実験は、化合物(I)に対する多形体試験の一部として行った。実験は、懸濁平衡の実験、沈殿、冷却結晶化、および蒸気拡散の実験のような異なる結晶化技術を含んだ。
【実施例1】
【0163】
化合物(I)の結晶形態Aの製造
98mgの非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを、400μLの酢酸イソプロピルに室温で溶解した。1日撹拌した後、非常に濃厚な懸濁液を得た。さらに700μLの酢酸イソプロピルを添加し、2時間撹拌した後、懸濁液を濾過して(遠心ユニットフィルター、PTFE、0.22μm)、結晶形態Aを得た。
【実施例2】
【0164】
95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bの製造
96mgの非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを、0.3mLの酢酸エチルに溶解した。得られた溶液に、NaClを種として加え、室温で撹拌した。終夜撹拌した後、濁った溶液を得、5分間超音波処理した。さらに2日撹拌した後、懸濁液を得、濾過して(遠心ユニットフィルター、PTFE、0.22μm)、結晶形態Bを得た。
【実施例3】
【0165】
95%~99%の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bの代替的な製造
3.64gの非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを、酢酸エチル(EtOAc)(11mL)に室温(RT)で溶解し、結晶形態A(20mg)ならびに結晶形態AおよびBの混合物(60mg)を種として加えた。種晶は保持した。得られたスラリーをRTで3日間撹拌した。ヘプタン(33mL)を(連続して)滴下し、スラリーをRTで4時間撹拌した。スラリーを濾過し、真空下、30℃で16時間乾燥して、3.5gの結晶形態Bを得た(94%の収率)。
【実施例4】
【0166】
99%超の(E)異性体を含む化合物(I)の結晶形態Bの代替的な製造
430gの(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリル(化合物(I))の形態Cを、エタノール(4.1L)とおよそ15℃で合わせて、スラリーを形成した。次いで、形態Bの種結晶を(およそ5wt.%まで)添加し、スラリーをおよそ2日間撹拌した。スラリーを濾過し、加熱しながら真空下で乾燥して、およそ300gの化合物(I)の結晶形態Bを得た(74%の収率)。
【実施例5】
【0167】
化合物(I)の結晶形態Cの製造
100mgの非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを、アセトニトリル(MeCN)(0.5mL;5vol)と合わせた。溶液に化合物(I)の結晶形態Bを種として加え、室温で48時間撹拌した。約48時間の時点で、濃厚で白色の易流動性スラリーを得、結晶形態Cであることが判定した。推定収率:50%超。
【実施例6】
【0168】
化合物(I)の結晶形態Cの代替的な製造1
61.2mgの非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルならびに49.8mgの結晶形態AおよびBの混合物を、400μLのアセトニトリル/t-ブチルメチルエーテル(TBME)(1:1)混合物に室温で懸濁させた。10分間撹拌した後、懸濁液に結晶形態Aを種として加えた。室温で終夜撹拌した後、さらに400μLのアセトニトリル/TBME(1:1)混合物を添加した。室温で5日間撹拌した後、非常に濃厚な懸濁液を得、600μLのアセトニトリル/TBME(1:1)混合液を添加した。合計で2週間撹拌した後、懸濁液を濾過し(遠心ユニットフィルター、PTFE、0.22μm)、回収した固体をおよそ1時間空気乾燥して、結晶形態Cを得た。
【実施例7】
【0169】
化合物(I)の結晶形態Cの代替的な製造2
9.3gの非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを、MeCN(93mL;10vol)と合わせた。溶液に結晶形態Cの種結晶(35mg)を加え、室温で72時間撹拌した。沈殿物を2時間後に観察した。固体を、濾過を介して単離し、真空下、30℃で1時間乾燥して、結晶形態Cを得た。収率:76%。
【実施例8】
【0170】
化合物(I)の結晶形態Cの代替的な製造3
100mgの非晶質(R)-2-[3-[4-アミノ-3-(2-フルオロ-4-フェノキシ-フェニル)ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-1-イル]ピペリジン-1-カルボニル]-4-メチル-4-[4-(オキセタン-3-イル)ピペラジン-1-イル]ペンタ-2-エンニトリルを、MeCN/MTBE(1:1;1.4mL)と合わせた。溶液に結晶形態Bの種結晶を加えた。種晶は溶解した。次いで、溶液を結晶形態AおよびBの種結晶の混合物を加え、48時間撹拌した。著しい沈殿物は観察されなかった。次いで、溶液に結晶形態Cの種結晶を加えた。いくらかの増粘が観察された。溶液を5日間撹拌し、濾過により得られた沈殿物は結晶形態Cであった。収率:42%。
【実施例9】
【0171】
単結晶X線回折
化合物(I)(10.2mg)を、小瓶内で内部溶媒(アセトニトリル)に溶解し、次いで、小瓶を外部溶媒(イソプロピルエーテル)を含むより大きな瓶に置き、4℃で15日間静置して、単結晶を成長させた。単結晶X線回折のデータを、グラファイトモノクロムMoKα(λ=0.71073Å)放射線を使用するBruker D8 Venture DUO回折装置で収集した。結晶をMiTeGen MicroMountにマウントし、Oxford Cryosystems 800低温デバイスを使用して200(2)Kで収集した。データをオメガおよびファイスキャンを使用して収集し、APEX3ソフトウェア一式およびWinGXの発表ルーチン(Farrugia、2005年)を使用することによりローレンツおよび偏光の影響を補正した。全ての画像を、Windows用のOrtep-3を使用することにより生成した。
【0172】
単結晶は、三斜晶系結晶を含むP-1空間群を呈した。以下の単位格子の寸法を測定した。
a=10.6741(13)Å α=93.654(3)°
b=12.7684(16)Å β=104.400(3)°
c=14.5287(15)Å γ=105.476(4)°
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】