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特表2023-511127固体-固体界面での電気活性種の電着の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】固体-固体界面での電気活性種の電着の方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20230309BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230309BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230309BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20230309BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20230309BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20230309BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20230309BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230309BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230309BHJP
   H01M 4/70 20060101ALI20230309BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230309BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M10/052
H01M10/054
H01M4/133
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/62 Z
H01M4/66 A
H01M4/70 A
H01M4/139
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544083
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-12
(86)【国際出願番号】 US2021014319
(87)【国際公開番号】W WO2021150683
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/963,700
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/988,986
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】サカモト ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ワン マイケル
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA04
5H017AS02
5H017CC01
5H017DD03
5H017EE01
5H017EE04
5H017EE05
5H017HH02
5H017HH03
5H017HH07
5H017HH10
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK07
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ03
5H029CJ16
5H029CJ28
5H029DJ07
5H029DJ12
5H029EJ01
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ09
5H029HJ15
5H029HJ17
5H029HJ20
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA15
5H050CB12
5H050DA04
5H050DA06
5H050DA07
5H050DA08
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050FA12
5H050GA03
5H050GA18
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA09
5H050HA15
5H050HA17
(57)【要約】
本願開示は、固体-固体界面における電着物の均一性を向上させるためにパルス電流を用いた電着方法に関する。固体電解質に損傷を与えることなく、固体-固体界面に強固に電着金属膜を析出させることができることが実証された。更に、電流密度、パルス幅、及びデューティサイクルを含むパルスパラメータの影響が、電着金属の空間分布に大きな影響を及ぼすことが示された。この方法論は、高度な機能性材料や電気化学デバイスに応用するための薄膜や微細構造の製造を支援することができる。一実施形態では、本方法は、従来のアノードを裸の集電体で置き換えて放電状態で電池を製造し、次いで、カソード内に含まれる金属を電気めっきすることにより、最初の充電サイクルで金属アノードを電気化学的に形成する、アノードフリー製造を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学デバイスを製造する方法であって、
(a)固体電解質材料で被覆された集電体を準備するステップと、
(b)前記固体電解質材料を電気活性種を含む電極と接触させて層状構造を形成するステップと、
(c)前記層状構造に0MPaより大きい圧力を加えるステップと、
(d)一連のパルスサイクルを用いて前記層状構造に電流を流して、前記固体電解質材料と前記集電体との間に前記電気活性種を含む界面層を形成するステップと
を含み、
前記界面層が前記電気化学デバイスのアノードとして機能し、前記電極が前記電気化学デバイスのカソードとして機能する方法。
【請求項2】
ステップ(c)は、前記層状構造に0.1MPa~100MPaの圧力を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)は、前記層状構造に1MPa~10MPaの圧力を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
各パルスサイクルは、(i)所与のパルス幅の間、オン電流を供給することと、(ii)デューティサイクル及び前記パルス幅に基づいた一定の長さの時間の間、オフ電流を供給することとを含み、
前記オフ電流は、前記オン電流の第2の電流密度値よりも小さい第1の電流密度値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オン電流は、1μA/cm~1A/cmの範囲の直流である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記オン電流は、0.01mA/cm~1mA/cmの範囲の直流である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記電流は、1μA/cm~1mA/cmの範囲の直流である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パルス幅は、1μ秒~100秒である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記パルス幅は1秒~10秒である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記オフ電流は、-1A/cm~0.9μA/cmの範囲の直流である、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記デューティサイクルは、0.1%~99%である、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記デューティサイクルは、50%~99%である、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記デューティサイクルは、70%~99%である、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記デューティサイクルは、80%~99%である、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(d)は、前記一連のパルスサイクルを用いて前記電流を前記層状構造に流す間、前記アノードから前記固体電解質への前記電気活性種の伝播を監視することを更に含み、
各パルスサイクルは、(i)所与のパルス幅の間、オン電流を供給することと、(ii)デューティサイクル及び前記パルス幅に基づいた一定の長さの時間の間、オフ電流を供給することとを含み、
ステップ(d)は、前記アノードから前記固体電解質への前記電気活性種の伝播の予測が前記監視で行われる場合に、(i)前記パルス幅、(ii)前記一定の長さの時間、(iii)前記デューティサイクル、(iv)前記オフ電流の第1の電流密度値、及び(iv)前記オン電流の第2の電流密度値のうちの少なくとも1つを変化させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記集電体は、金属又は金属合金を含む単一材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、鉄、又はこれらの混合物から成る群から選択される材料を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記集電体は、1nm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープされたLLZO、ガリウムドープされたLLZO、ニオブドープされたLLZO、タンタルドープされたLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、アルカリ金属カチオンアルミナ、金属ハロゲン化物、又はこれらの混合物から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記固体電解質材料は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
Aは、B、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組合せから選択され、
xは0~2であり、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組合せから選択され、
Reは、ランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組合せから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
前記セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
MはZrとTaとの組合せである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
MはZrであり、AはAlであり、xは0ではない、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
MはZrであり、AはGaであり、xは0ではない、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記固体電解質材料は、ナトリウムβアルミナ及びナトリウムβ’’アルミナである、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記固体電解質材料は、拡散結合法、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティング焼結法、スラリーキャスティング熱間プレス法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、無電解化学堆積法、又はこれらの組合せのうちの少なくとも1つを用いて、前記集電体上に被覆される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記界面層は、1nm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記集電体は、前記電気活性種を電気化学的にブロックする、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記集電体は、第1の金属材料から成る第1の層と、第2の金属材料から成る第2の層とを有するバイメタルを含み、前記第1の層は、ステップ(d)の前に前記固体電解質材料と少なくとも部分的に接触し、前記第2の層は、前記第1の層と接触している、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の金属材料は、前記電気活性種を電気化学的にブロックする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の金属材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択され、
前記第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択される、
請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の金属材料はニッケルを含み、
前記第2の材料はステンレス鋼を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の層は1nm~100μmの厚さを有し、前記第2の層は1nm~100μmの厚さを有する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記電極は、金属又は金属合金から成る単一材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
前記電極は、リチウム、ナトリウム、銀、マグネシウム、カルシウム、コバルト、鉄、カリウム、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記電極は、リチウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記電極は、(i)LiC、(ii)金属がアルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムのうち1つ又は複数であるリチウム金属酸化物、及び(iii)LiMPOの一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩から成る群から選択されるリチウムホスト材料を含み、式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
前記電極は、結合剤と導電性添加剤とを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記結合剤はポリマー材料を含み、前記導電性添加剤は炭素化合物を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記電極は、前記電気活性種を含む導電性複合材である、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(b)は、前記固体電解質材料上のリチウムの第1の層を蒸発させ、その後、前記電極が前記リチウムの第1の層とリチウム箔とから成るように前記リチウム箔を前記第1の層に押し付けることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(c)は、25℃~180℃の温度で前記層状構造に前記圧力を加えることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
ステップ(d)の間、前記固体電解質材料への損傷は生じない、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
ステップ(d)の間、前記固体電解質材料への樹枝状結晶の貫通は生じない、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
前記界面層は、ステップ(d)の後に均一な厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
前記界面層は、ステップ(d)の後に前記固体電解質に対し5%以上の表面被覆率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記界面層は、ステップ(d)の後に前記固体電解質に対し70%以上の表面被覆率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項50】
前記界面層は、ステップ(d)の後に前記固体電解質材料と完全に表面接触する、請求項1に記載の方法。
【請求項51】
ステップ(a)で準備された前記固体電解質材料で被覆された前記集電体は、前記集電体と前記固体電解質材料との間の界面において0.1%~99%の気孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項52】
ステップ(a)で準備された前記固体電解質材料で被覆された前記集電体は、前記集電体と前記固体電解質材料との間の界面において0.1%~10%の気孔率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項53】
ステップ(a)で準備される前記集電体と前記固体電解質材料との間の界面抵抗は10000Ωcm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項54】
ステップ(a)で準備される前記集電体と前記固体電解質材料との間の界面抵抗は1000Ωcm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項55】
ステップ(d)の後の前記界面層と前記固体電解質との間の界面抵抗は100Ωcm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項56】
ステップ(d)の後の前記界面層と前記固体電解質との間の界面抵抗は25Ωcm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記集電体で被覆された前記固体電解質材料の表面のRMS表面粗さは5μm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記集電体で被覆された前記固体電解質材料の表面のRMS表面粗さは500nm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項59】
前記界面層は、前記アノードが前記電気活性種に対してノンブロッキング挙動を示す密度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項60】
前記界面層は、ステップ(d)の後に樹枝状結晶の前記形成を示さない、請求項1に記載の方法。
【請求項61】
電気化学デバイスを製造する方法であって、
(a)ドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物を含む固体電解質材料で被覆された集電体を準備するステップと、
(b)前記固体電解質材料を、電気活性種を含む電極と接触させて層状構造を形成するステップと、
(c)一連のパルスサイクルを用いて前記層状構造に電流を流して、前記固体電解質材料と前記集電体との間に前記電気活性種を含む界面層を形成するステップと
を含み、
前記界面層は前記電気化学デバイスのアノードとして機能し、前記電極は前記電気化学デバイスのカソードとして機能する、電気化学デバイスを製造する方法。
【請求項62】
前記固体電解質材料は、アルミニウムドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物、又はガリウムドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物、又はニオブドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物、又はタンタルドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記固体電解質材料は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
Aは、B、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組合せから選択され、
xは0~2であり、
MはZr又はZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組合せから選択され、
Reはランタンであり、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
前記セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する、
請求項61に記載の方法。
【請求項64】
MはZrとTaとの組合せである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
MはZrであり、AはAlであり、xは0ではない、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
MはZrであり、AはGaであり、xは0ではない、請求項63に記載の方法。
【請求項67】
ステップ(c)は、前記層状構造に0MPaより大きい圧力を加えることを更に含む、請求項63に記載の方法。
【請求項68】
電気化学デバイスを製造する方法であって、
(a)固体電解質材料で被覆された集電体を準備するステップと、
(b)前記固体電解質材料を、電気活性種を含む電極と接触させて層状構造を形成するステップと、
(c)一連のパルスサイクルを用いて前記層状構造に電流を流して、前記固体電解質材料と前記集電体との間に前記電気活性種を含む界面層を形成するステップと
を含み、
前記界面層は前記電気化学デバイスのアノードとして機能し、前記電極は前記電気化学デバイスのカソードとして機能し、
前記固体電解質材料は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
AはB、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組合せから選択され、
xは0~2であり、
MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組合せから選択され、
Reはランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組合せから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
前記セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有し、
xが0の場合、MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、及びTeのうちの2種以上である、方法。
【請求項69】
Reはランタンである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
MはZrとTaとの組合せである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
MはZrであり、AはAlであり、xは0ではない、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
MはZrであり、AはGaであり、xは0ではない、請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記固体電解質はLi6.5LaZr1.5Ta0.512を含む、請求項68に記載の方法。
【請求項74】
ステップ(c)は、前記層状構造に0MPaより大きい圧力を加えることを更に含む、請求項62に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2020年1月21日に出願された米国特許出願第62/963,700号及び2020年3月13日に出願された米国特許出願第62/988,986号に基づいており、これらに対する優先権を主張し、これらは、あらゆる目的のためにその全体が参照により本願明細書に組み込まれる。
【0002】
<連邦政府の支援による研究に関する言明>
本発明は、米国エネルギー省により裁定されたDE-AR0000653の政府支援によりなされたものである。政府は本発明において所定の権利を有する。
【0003】
本発明は、パルス電流電着プロセスを用いて電着物の均一な膜を実現するための固体上への電気活性種の電着方法に関する。より詳細には、本発明は、従来のアノードを裸の集電体に置き換えて放電状態で電池を製造し、次いで、カソード内に含まれる金属を電気めっきすることにより、最初の充電サイクルで金属アノードを電気化学的に形成する、アノードフリー製造に関する。
【背景技術】
【0004】
電気活性種を基板上に電気化学的に析出させる方法は、微細構造の制御製造や表面工学に広く用いられている。従来の電着では、電気活性種、一般的には金属カチオンが、液体電解質内に含まれ、作用電極及び対電極と結合している。電極に電位が供給されると、作用電極/電解質の界面で電気化学反応が生じ、金属カチオンが純金属として作用電極上に析出する。この技術は、金属の薄膜や微細構造を表面に貼り付けるために用いることができるので、電着金属の形態をより正確に制御するために、様々な方法が開発されてきた。これらの技術は、電解質組成、表面化学、及び電気化学反応速度などの要因を調節して、目的の微細構造を持つ金属を析出させるのが一般的である[参考文献1~5]。しかしながら、固体電解質と液体電解質の性質が本質的に異なることを考慮すると、電着のメカニズムは固体-固体界面で大きく異なる[参考文献6~10]。電気活性種が作用電極/電解質の界面で析出し核生成し始めると、作用電極と電解質は強制的に剥離され、両者の間に新しい固相が成長する。酸化還元反応が発生するには電子を供給するために接触を維持する必要があるため、電着物の均一な膜を実現するには、核の成長速度、複数の界面の表面張力や拡散性、及び様々な構成要素の機械的特性等が複雑に入り組んだバランスが必要である。電池や燃料電池への応用を目指した固体電解質開発の進展に伴い、固体-固体界面での電着はますます重要になってきており、したがって、固体-固体界面での電着膜の微細構造を制御するためには、この界面での電着速度及び力学を調節する方法が必要である。固体メモリ記憶装置のようないくつかの用途では、鋭い樹枝状構造が必要であるが、エネルギー貯蔵のような他の用途では、緻密でコンフォーマルな膜が必要である。
【発明の概要】
【0005】
したがって、固体基板や固体電解質上に電気活性材料を電着させ、望ましい形態を実現するための改良された方法が必要とされている。
【0006】
電着物の、一般的には金属の微細構造は、電解質中の濃度勾配、表面化学及び形態、ならびに電気化学反応速度などの要因に影響される。液体電解質を用いる従来の電気化学システムには、これらの要因を調整し、析出物の微細構造の精密な制御を可能にするために用いることができる様々な技術がある。しかしながら、固体電解質では、電極/電解質の界面を取り囲む機械的及び化学的環境は本質的に異なり、したがって、電気めっき材料の微細構造を支配するメカニズムは大きく異なる可能性がある。したがって、電解質が液体ではなく固体である場合、電気めっき材料の微細構造を制御するための方法は異なる。多くの用途では、均一な電着物の膜が非常に望ましい形態である。本願開示は、パルス電流電着プロセスを用いて、固体電極と固体電解質との界面で均一な電着物の膜を実現するための方法論を開示する。
【0007】
金属基板と固体電解質が界面での電着に伴う体積膨張に適応できるかどうかは、固体電解質、電気活性種、金属基板等の個々の構成要素の機械的特性、及び微細構造、接着性、及び電気化学反応速度等の界面特性に依存する。本願開示は、固体電解質材料を電極に接触させて層状構造を形成し、層状構造に電流を流すことによって、固体電解質で被覆された固体集電体上に電気活性種を電着させる方法を提供する。集電体は、電気活性種と非反応性であり、拡散結合、蒸着プロセス、焼結、又は機械的圧力によって固体電解質に結合され、100nm~1ミリメートルの厚さを有することができる金属、金属合金、又は導電性複合材(例えば、ポリマー金属複合材又は金属金属酸化物複合材)であり得る。電極は、金属、金属合金、又は電気活性種を含む任意の化合物を含むことができる。電着プロセスは、電極から電気活性種を枯渇させ、1μA/cm~1mA/cmの電流で集電体上に析出させるように行われる。
【0008】
一側面では、本願開示は、電気化学デバイスを製造する方法を提供する。本方法は、(a)固体電解質材料で被覆された集電体を準備するステップと、(b)固体電解質材料を電気活性種を含む電極と接触させて層状構造を形成するステップと、(c)層状構造に0MPaより大きい圧力を加えるステップと、(d)一連のパルスサイクルを用いて層状構造に電流を流して、固体電解質材料と集電体との間に電気活性種を含む界面層を形成するステップであって、界面層が電気化学デバイスのアノードとして機能し、電極が電気化学デバイスのカソードとして機能するステップとを含む。本方法の一実施形態では、ステップ(c)は、0.1MPa~100MPaの圧力を層状構造に加えることを含む。本方法の一実施形態では、ステップ(c)は、1MPa~10MPaの圧力を層状構造に加えることを含む。
【0009】
本方法では、各パルスサイクルは、(i)所与のパルス幅の間、オン電流を供給するステップと、(ii)デューティサイクル及びパルス幅に基づいた一定の長さの時間の間、オフ電流を供給するステップとを含んでもよく、オフ電流は、オン電流の第2の電流密度値よりも小さい第1の電流密度値を有する。オン電流は、1μA/cm~1A/cmの範囲の直流とすることができる。オン電流は、0.01mA/cm~1mA/cmの範囲の直流とすることができる。電流は、1μA/cm~1mA/cmの範囲の直流とすることができる。パルス幅は、1μ秒~100秒とすることができる。パルス幅は、1秒~10秒とすることができる。オフ電流は、-1A/cm~0.9μA/cmの範囲の直流とすることができる。デューティサイクルは0.1%~99%とすることができる。デューティサイクルは50%~99%とすることができる。デューティサイクルは70%~99%とすることができる。デューティサイクルは80%~99%とすることができる。
【0010】
本方法の一実施形態では、ステップ(d)は、一連のパルスサイクルを用いて層状構造に電流を流す間、アノードから固体電解質への電気活性種の伝播を監視することを更に含み、ここで、各パルスサイクルは、(i)所与のパルス幅の間、オン電流を供給することと、(ii)デューティサイクル及びパルス幅に基づいた一定の長さの時間の間、オフ電流を供給することとを含み、ステップ(d)は、アノードから固体電解質への電気活性種の伝播の予測が監視で行われる場合に、(i)パルス幅、(ii)一定の長さの時間、(iii)デューティサイクル、(iv)オフ電流の第1の電流密度値、及び(iv)オン電流の第2の電流密度値のうちの少なくとも1つを変化させることを更に含む。
【0011】
本方法の一実施形態では、集電体は、金属又は金属合金から成る単一材料を含む。集電体は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、鉄、又はこれらの混合物から成る群から選択される材料を含んでもよい。集電体は、1nm~100μmの厚さを有することができる。
【0012】
本方法の一実施形態では、固体電解質材料は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)、酸化物系ガーネット、ナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)、チオLiSICON、硫化物ガラス、ポリマー、又はこれらの混合物から成る群から選択された材料を含む。本方法の一実施形態では、固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープされたLLZO、ガリウムドープされたLLZO、ニオブドープされたLLZO、タンタルドープされたLLZO、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)、リチウム・リン硫化物(LPS)、ポリ(酸化エチレン)(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー、アルカリ金属カチオンアルミナ、金属ハロゲン化物、又はこれらの混合物から成る群から選択されている。固体電解質材料は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)又はその誘導体を含むことができる。本方法の一実施形態では、固体電解質材料は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
Aは、B、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組合せから選択され、
xは0~2であり、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組合せから選択され、
Reは、ランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組合せから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する。
セラミック材料の一実施形態では、MはZrとTaとの組合せである。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはAlであり、xは0ではない。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはGaであり、xは0ではない。本方法の一実施形態では、固体電解質材料は、ナトリウムβアルミナ及び/又はナトリウムβ’’アルミナを含む。
【0013】
本方法の一実施形態では、固体電解質材料は、拡散結合法、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティング焼結法、スラリーキャスティング熱間プレス法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、無電解化学堆積法、又はこれらの組合せのうちの少なくとも1つを用いて、集電体上に被覆される。固体電解質材料は、1nm~100μmの厚さを有することができる。
【0014】
本方法の一実施形態では、界面層は、1nm~100μmの厚さを有する。
【0015】
本方法の一実施形態では、集電体は電気活性種を電気化学的にブロックしている。本方法の一実施形態では、集電体は、第1の金属材料から成る第1の層と、第2の金属材料から成る第2の層とを有するバイメタルを備え、第1の層は、ステップ(d)の前に固体電解質材料と少なくとも部分的に接触し、第2の層は、第1の層と接触している。第1の金属材料は、電気活性種を電気化学的にブロックすることができる。第1の金属材料は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、ニッケル系超合金、コバルト系超合金、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択することができ、第2の材料は、アルミニウム、ニッケル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル系超合金、又はこれらの混合物から成る群から選択することができる。第1の金属材料はニッケルから成り、第2の材料はステンレス鋼から成ることができる。第1の層は、1nm~100μmの厚さを有することができ、第2の層は、1nm~100μmの厚さを有することができる。
【0016】
本方法の一実施形態では、電極は、金属又は金属合金から成る単一材料を含む。電極は、リチウム、ナトリウム、銀、マグネシウム、カルシウム、コバルト、鉄、カリウム、銅、又はこれらの混合物から成る群から選択される材料を含むことができる。電極はリチウムを含むことができる。
【0017】
本方法の一実施形態では、電極は、(i)LiC、(ii)金属が1つ又は複数のアルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムであるリチウム金属酸化物、及び(iii)LiMPOの一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩から成る群から選択されるリチウムホスト材料を含み、式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である。電極は、結合剤と導電性添加剤とを更に含むことができる。結合剤はポリマー材料を含むことができ、導電性添加剤は炭素化合物を含むことができる。電極は、電気活性種を含む導電性複合材であり得る。
【0018】
本方法の一実施形態では、ステップ(b)は、固体電解質材料上のリチウムの第1の層を蒸発させ、その後、電極がリチウムの第1の層とリチウム箔とから成るようにリチウム箔を第1の層に押し付けることを含む。
【0019】
本方法の一実施形態では、ステップ(c)は、25℃~180℃の温度で層状構造に圧力を加えることを含む。
【0020】
本方法の一実施形態では、ステップ(d)の間、固体電解質材料への損傷は生じない。本方法の一実施形態では、ステップ(d)の間、固体電解質材料への樹枝状結晶の貫通は発生しない。
【0021】
本方法の一実施形態では、界面層は、ステップ(d)の後に均一な厚さを有する。本方法の一実施形態では、界面層は、ステップ(d)の後に固体電解質と5%以上の表面被覆率を有する。界面層は、ステップ(d)の後に固体電解質と70%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、ステップ(d)の後に固体電解質材料と完全に表面接触することができる。
【0022】
本方法の一実施形態では、ステップ(a)で準備される固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~99%の気孔率を有する。本方法の一実施形態では、ステップ(a)で準備される固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~10%の気孔率を有する。
【0023】
本方法の一実施形態では、集電体とステップ(a)で準備される固体電解質材料との間の界面抵抗は、10000Ωcm未満である。集電体とステップ(a)で準備される固体電解質材料との間の界面抵抗は、1000Ωcm未満であり得る。
【0024】
本方法の一実施形態では、ステップ(d)後の界面層と固体電解質との間の界面抵抗は、100Ωcm未満である。ステップ(d)後の界面層と固体電解質との間の界面抵抗は、25Ωcm未満であり得る。
【0025】
本方法の一実施形態では、集電体で被覆された固体電解質材料の表面のRMS表面粗さは、5μm以下である。集電体で被覆された固体電解質材料の表面のRMS表面粗さは、500nm以下であり得る。
【0026】
本方法の一実施形態では、界面層は、アノードが電気活性種に対してノンブロッキング挙動を示すような密度を有する。本方法の一実施形態では、ステップ(d)の後、界面層は、樹枝状結晶の形成を示さない。
【0027】
別の側面では、本願開示は、電気化学デバイスを製造する方法を提供する。本方法は、(a)ドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物を含む固体電解質材料で被覆された集電体を準備するステップと、(b)固体電解質材料を、電気活性種を含む電極と接触させて層状構造を形成するステップと、(c)一連のパルスサイクルを用いて層状構造に電流を流して、固体電解質材料と集電体との間に電気活性種を含む界面層を形成するステップであって、界面層は電気化学デバイスのアノードとして機能し、電極は電気化学デバイスのカソードとして機能するステップとを含むことができる。
【0028】
本方法の一実施形態では、固体電解質材料は、アルミニウムドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物、又はガリウムドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物、又はニオブドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物、又はタンタルドープされたリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物を含む。本方法の一実施形態では、固体電解質材料は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
Aは、B、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組合せから選択され、
xは0~2であり、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組合せから選択され、
Reは、ランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組合せから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する。
セラミック材料の一実施形態では、MはZrとTaとの組合せである。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはAlであり、xは0ではない。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはGaであり、xは0ではない。
【0029】
本方法の一実施形態では、ステップ(c)は、層状構造に0MPaより大きい圧力を加えることを更に含む。本方法の一実施形態では、圧力は0.1MPa~100MPaである。本方法の一実施形態では、圧力は1MPa~10MPaである。
【0030】
別の側面では、本願開示は、電気化学デバイスを製造する方法を提供する。本方法は、(a)固体電解質材料で被覆された集電体を準備するステップと、(b)固体電解質材料を、電気活性種を含む電極と接触させて層状構造を形成するステップと、(c)一連のパルスサイクルを用いて層状構造に電流を流して、固体電解質材料と集電体との間に電気活性種を含む界面層を形成するステップとを含むことができ、界面層は電気化学デバイスのアノードとして機能し、電極は電気化学デバイスのカソードとして機能し、固体電解質材料は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
AはB、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組合せから選択され、
xは0~2であり、
MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組合せから選択され、
Reはランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組合せから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
ここで、セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有し、
xが0の場合、MはZr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、及びTeのうちの2種以上である。
セラミック材料の一実施形態では、Reはランタンである。セラミック材料の一実施形態では、MはZrとTaとの組合せである。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはAlであり、xは0ではない。セラミック材料の一実施形態では、MはZrであり、AはGaであり、xは0ではない。固体電解質は、Li6.5LaZr1.5Ta0.512を含むことができる。
【0031】
本方法の一実施形態では、ステップ(c)は、層状構造に0MPaより大きい圧力を加えることを更に含む。本方法の一実施形態では、圧力は0.1MPa~100MPaである。本方法の一実施形態では、圧力は1MPa~10MPaである。
【0032】
本願開示の上記及び他のフィーチャ、側面及び利点は、以下の詳細な説明、図面及び添付の特許請求の範囲を考慮すれば、より良く理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】リチウム金属電池の概略図を示す。
図1A】パルス電流電気めっきプロファイル及びパルスパラメータの例示的な概略図である。
図2A】本願開示の一実施形態による、リチウム電着中のDC電位応答の例示的な電気化学特性評価である。
図2B】本願開示の一実施形態による、リチウム電着前後の電気化学セルのACインピーダンスの例示的な電気化学特性評価である。
図3】パネルa)において、ニッケル基板を除去した後のLLZO上に電着したリチウムの画像であり、リチウムの不均一な析出の結果、金属領域(リチウム)と非金属領域(LLZO)が明瞭に生じている、パネルb)において、本願開示の一実施形態による100%デューティサイクル(DC電流)に対する例示的な電着リチウム形態であり、パネルc)において、本願開示の一実施形態による80%デューティサイクル及び低電流密度に対する例示的な電着リチウム形態であり、パネルd)において、本願開示の一実施形態による80%デューティサイクル及び高電流密度に対する例示的な電着リチウム形態であり、パネルe)では、本願開示の一実施形態によるニッケル基板の厚さを超える、かなりの量のリチウムが析出している例示的な電着リチウム形態である。
図4A】LLZOと集電体の界面のSEM-FIB断面解析を示し、組立て時のSEMである。
図4B】LLZOと集電体の界面のSEM-FIB断面解析を示し、5mAh/cmでLiめっきした後のSEMである。CuとLLZO層の間に金属Liが二次電子では観察されるが、特性X線のエネルギーがEDSの検出範囲外であるため検出できない。
図4C】LLZOと集電体の界面のSEM-FIB断面解析を示し、5mAh/cmでLiめっきした後に剥離した後のSEMである。
図4D】LLZOと集電体の界面のSEM-FIB断面解析を示し、組立時の界面におけるCuとZrの元素マップである。
図4E】LLZOと集電体の界面のSEM-FIB断面解析を示し、めっき後の界面におけるCuとZrの元素マップである。
図4F】LLZOと集電体の界面のSEM-FIB断面解析を示し、めっき及び剥離後の界面におけるCuとZrの元素マップである。
図5図4からのFIBミリング加工された断面の低倍率SEMを示す。パネル(a)はLLZO上に積層した銅集電体、パネル(b)は5mAh/cmでLiめっきした後、パネル(c)は5mAh/cmでLiめっきして剥離した後である。パネル(b)のCuとLLZOとの間の中間Li層は、低倍率でよりはっきりとした構造的な特徴を示し、高いカラーコントラストにもかかわらず、空隙ではなく中間相の存在を示している。5mAh/cmでLiめっきを剥離した後の界面では、パネル(c)で観察されるように、全ての領域でCuとLLZOとが顕著に分離するわけではない。このような分離があまり顕著でない領域の1つをパネル(d)に示す。これはCuとLLZOとの間のギャップが小さいことを示すが、パネル(a)よりもまだ顕著であり、パネル(c)でも観察されたCuとLLZOとの間の同様の残留物が見られる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明を詳細に説明する前に、本発明はここで説明する特定の実施形態に限定されないと解すべきである。また、ここで用いられている用語用法は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図したものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。ここで用いられている単数形「1つ(a、an)」及び「前記1つ(the)」は、文脈から特段の事情が明らかでない限り、複数の実施形態も含む。
【0035】
当業者であれば、既に記載された側面の他、本発明の多くの他の改良形態も、本発明の思想から逸脱することなく可能であることが明らかである。本願開示の解釈にあたっては、全ての用語は、文脈に即した最も広い可能な意味に解釈すべきである。「備える」、「含む」又は「有する」との用語の変形は、要素、部品又はステップについて非排他的に言及していると解釈すべきであるから、言及対象の要素、部品又はステップは、明示的に言及されていない他の要素、部品又はステップと組み合わせてもよい。特定の要素を「備える」、「含む」又は「有する」と記載されている実施形態は、文脈から特段の事情が明らかでない限り、当該要素から「実質的に成る」という意味と、当該要素から「成る」という意味とを更に含む。文脈から特段の事情が明らかでない限り、システムに関して記載されている本願開示の側面は方法にも適用することができ、またその逆も成り立つと解すべきである。
【0036】
ここでいう「セル」又は「電気化学セル」とは、電極と電解質とを備えた基本単位の電気化学ユニットである。ここでいう「電気化学セル」とは、文脈から特段の事情が明らかでない限り、「二次電池」とも称される再充電可能なセルを想定している。電気化学セル又は電気化学デバイスでは、「アノード」とは、放電時に酸化することにより電子を失う電極として定義される。「カソード」とは、放電時に還元することにより電子を獲得する電極として定義される。これらの電気化学的役割は、電気化学セル又は電気化学デバイスにおいて充電過程時には逆になるが、「アノード」及び「カソード」との電極名称は変わらない。
【0037】
ここで、「均一な厚さ」とは、要素(例えば、層)の一端から他端までの厚みの不均一性が±25%以下であることを意味する。例えば、層の一端から他端まで、最小厚さが100-25で最大厚さが100+25の厚さの不均一性は、±25%である。
【0038】
ここで開示されている数値範囲は、その両端を含む。例えば、1~10の数値範囲は、値1及び10を含む。特定の値について複数の連続した数値範囲が開示されている場合、本願開示は、これら複数の各数値範囲の上限及び下限の全ての組合せを含む範囲を明示的に想定している。例えば、1~10の数値範囲又は2~9の数値範囲は、1~9の数値範囲と2~10の数値範囲とを含むことを意図している。
【0039】
本発明の方法の一実施形態は、従来のアノードを裸の集電体で置き換えて放電状態で電池を製造し、次いで、カソード内に含まれる金属を電気めっきすることにより、最初の充電サイクルで金属アノードを電気化学的に形成する、アノードフリー製造を可能にする。図1は、本願開示の実施形態を用いて製造することができるリチウム金属電池110の非限定的な例を示す。図1のリチウム金属電池110は、カソード114と接触する第1の集電体112(すなわち、アルミニウム)を含む。固体電解質116は、カソード114とアノード120との間に配置され、アノードは第2の集電体122(すなわち、銅)と接触している。リチウム金属電池110の第1の集電体112と第2の集電体122は、電気部品124と電気的に連通してもよい。電気部品124は、リチウム金属電池110を、電池を放電する電気負荷又は電池を充電する充電器と電気的に連通させることができる。
【0040】
第1の集電体112と第2の集電体122は、導電性金属又は任意の適切な導電性材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の集電体112と第2の集電体122は、金属又は金属合金から成る単一材料であってもよい。単一材料の場合、第1の集電体112と第2の集電体122は、ニッケル、モリブデン、チタン、ジルコニウム、タンタル、合金鋼、ステンレス鋼、ニッケル基超合金(例えば、インコネル)、コバルト基超合金、銅、アルミニウム、又はこれらの混合物、組合せ及び合金から成る群から選択される材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、第1の集電体112と第2の集電体122は、1nm~100μm、10nm~60μm、又は900nm~25μmの厚さを有する。図1に示す厚さは縮尺通りに描かれていないことを理解されたい。更に、第1の集電体112と第2の集電体122の厚さは異なってもよいことを理解されたい。
【0041】
いくつかの実施形態では、リチウム金属電池110の適切なカソード114は、リチウムイオンを貯蔵し、続いて放出することができるリチウムホスト材料である。例示的なカソード活物質は、リチウム金属酸化物であり、この金属とは1つ又は複数のアルミニウム、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びバナジウムである。リチウム金属酸化物の非限定的な例は、LiCoO(LCO)、LiFeO、LiMnO(LMO)、LiMn、LiNiO(LNO)、LiNiCo、LiMnCo、LiMnNi、LiMnNi、LiNiCoAl(NCA)、LiNi1/3Mn1/3Co1/3などである。別の例示的なカソード活物質は、リン酸鉄リチウム(LFP)及びフルオロリン酸鉄リチウムなどの、LiMPOの一般化学式を有するリチウム含有リン酸塩であり、式中、Mはコバルト、鉄、マンガン及びニッケルのうちの1つ又は複数である。別の例示的なカソード活物質は、LiNiMnCoの化学式を有するカソード活物質であり、ここで、x+y+z=1及びx:y:z=1:1:1(NMC111)、x:y:z=4:3:3(NMC433)、x:y:z=5:2:2(NMC522)、x:y:z=5:3:2(NMC532)、x:y:z=6:2:2(NMC622)、又はx:y:z=8:1:1(NMC811)である。カソード材料の電子伝導率、層の秩序性、脱リチウム化に対する安定性、及びサイクル性能に影響を及ぼすために、多くの異なる元素、例えば、Co、Mn、Ni、Cr、Al、又はLiを置換したり、又は構造内に追加して添加したりしてもよい。カソード活物質は、これらのカソード活物質の任意の数の混合物であり得る。別の例示的なカソード活物質はLiCである。他の実施形態では、リチウム金属電池110のカソード114に適した材料は、多孔質炭素(リチウム空気電池用)又は硫黄含有材料(リチウム硫黄電池用)である。カソード114は、1nm~100μm、10nm~50μm、又は100nm~10μmの厚さを有してもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、リチウム金属電池110の適切なアノード120は、インシチュ(その場で)形成された(例えば、電気めっき)リチウム金属から成る。別の例示的なアノード120の材料は、本質的にインシチュ形成されたリチウム金属から成る。他の実施形態では、適切なアノード120は、インシチュ形成されたマグネシウム、ナトリウム、又は亜鉛金属から成る。他の実施形態では、適切なアノード120は、本質的にインシチュ形成されたマグネシウム、ナトリウム、又は亜鉛金属から成る。
【0043】
リチウム金属電池110用の例示的な固体電解質116の材料は、金属イオンを伝導することができる任意の適切な固体電解質を含むことができる。例えば、固体電解質は、オキシ窒化リン酸リチウム(LiPON)であってもよい。固体電解質は、リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)、アルミニウムドープされたLLZO、ガリウムドープされたLLZO、ニオブドープされたLLZO、又はタンタルドープされたLLZOなどの酸化物系ガーネットであってもよい。固体電解質は、リチウム・アルミニウム・チタン・リン酸塩(LATP)などのナトリウム超イオン伝導体(NaSICON)であってもよい。固体電解質は、リチウム超イオン伝導体(LiSICON)であってもよい。固体電解質は、チオLISICONであってもよい。固体電解質は、リチウム・アルミニウム・ゲルマニウム・リン酸塩(LAGP)であってもよい。固体電解質は、リチウム・リン硫化物(LPS)などの硫化物ガラスであってもよい。固体電解質は、ナトリウムβアルミナ又はナトリウムβ’’アルミナであってもよい。固体電解質は、酸化ポリエチレン(PEO)、ポリアクリロニトリル(PAN)、結晶熱可塑性ポリマー等のポリマーであってもよい。固体電解質は、上記の電解質のいずれかの混合物を含んでもよい。固体電解質は、1nm~100μm、100nm~50μm、又は1μm~25μmの厚さであってもよい。
【0044】
リチウム金属電池110の別の実施形態では、リチウム金属電池110用の固体電解質116は、LiRe3-yの化学式を有するセラミック材料を含み、式中、
wは5~7.5であり、
Aは、B、Al、Ga、In、Zn、Cd、Y、Sc、Mg、Ca、Sr、Ba、及びこれらの任意の組合せから選択され、
xは0~2であり、
Mは、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Sn、Ge、Si、Sb、Se、Te、及びこれらの任意の組合せから選択され、
Reは、ランタニド元素、アクチニド元素、及びこれらの任意の組合せから選択され、
yは0~0.75であり、
zは10.875~13.125であり、
セラミック材料はガーネット型又はガーネット状結晶構造を有する。
固体電解質116のいくつかの実施形態では、MはZrであり、AはAlであり、xは0ではなく、又はMはZrであり、AはGaであり、xは0ではなく、又はMはZrとTaの組合せである。一実施形態では、固体電解質は、Li6.5LaZr1.5Ta0.512から成る。
【0045】
リチウム金属電池110のアノードフリー製造方法の一環として、電気活性種を含む電極と接触する固体電解質材料で被覆された集電体を備える層状構造において、固体基板/固体電解質の界面に均一な膜を形成するために、パルス電流方式を利用した固体電解質から電気活性種を電着させる方法を開示する。固体基板は、リチウム金属電池110の集電体122であり得る。集電体122は、電気活性種を電気化学的にブロックすることができる。ここで用いる「ブロッキング」という用語は、熱力学的相図によって決定される電気活性種の溶解度が十分に低く、電気活性種と非反応性であるとみなすことができる材料から成る集電体を指すことができる。固体電解質は、リチウム金属電池110の固体電解質116であり得る。電極は、リチウム金属電池110のリチウム化カソード114であり得る。電気活性種はリチウムであり得る。固体電解質材料を任意の適切な貼付け方法を用いて集電体上に被覆してもよい。例えば、集電体への固体電解質の被覆は、拡散結合法、化学蒸着法、物理蒸着法、原子層堆積法、スラリーキャスティング焼結法、スラリーキャスティング熱間プレス法、塗装、粉末コーティング、溶射法、低温溶射法、エアロゾル堆積法、フラックス堆積法、電着法、無電解化学堆積法、又はこれらの組合せを用いて達成してもよい。
【0046】
電着は、層状構造に対して周期的なパルス電流方式で行われ、所与のパルス幅の間、ゼロでないDCオン電流を供給することを含む。オンパルスの後には、デューティサイクルによって決定される一定の長さの時間の間、より低い電流密度でオフパルスが続く。その後、適切な質量の材料が界面層、例えば、アノード120として電気めっきされるまで、一連のオンパルスとオフパルスが周期的に繰り返される。電着の支配メカニズムは、固体電解質と液体電解質とで根本的に異なるため、本願開示の固体系では、所望の微細構造を実現するための制御方式が異なる。固体基板固体電解質の界面の場合、電流密度、パルス幅、及びデューティサイクルは、安定核の分布及び数密度、セル内の内部応力の緩和、ならびに基板及び電解質の剥離の制御などにおいて重要な役割を果たす。したがって、これらのパラメータを最適化することにより、集電体122と固体電解質116との間の界面層(アノード120)を構成する電気めっき材料の所望の均一性を達成することができる。二つの固体間の固い拘束状態を考慮すると、パルス電流は、周囲の構成要素、例えば、固体電解質116の破壊をもたらす可能性のある過度に大きな機械的変形を発生させずに、固体基板/固体電解質の界面に材料を析出させる上でも有利である。
【0047】
理論に拘束されることを意図するものではないが、本発明の方法の周期的パルス電流方式の間、アノード120を構成する界面層を形成するインシチュめっき金属は、界面層にギャップが存在するように集電体122と固体電解質116との間に複数の孤立した金属パッチの形成から、これら金属パッチの融着、そして集電体122と固体電解質116との間に厚さが均一な金属界面層の形成へと進展し、界面層は固体電解質116で完全に表面を覆うことができると考えられる。
【0048】
界面層の一端から他端まで、界面層の厚さは、±25%の不均一性を有することができる。界面層の一端から他端まで、界面層の厚さは、±20%の不均一性を有することができる。界面層の一端から他端まで、界面層の厚さは、±15%の不均一性を有することができる。界面層の一端から他端まで、界面層の厚さは、±10%の不均一性を有することができる。界面層の一端から他端まで、界面層の厚さは、±5%の不均一性を有することができる。界面層の一端から他端まで、界面層の厚さは、±2%の不均一性を有することができる。
【0049】
界面層は、固体電解質を用いて5%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて70%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて80%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて85%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて90%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて95%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて97%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて98%以上の表面被覆率を有することができる。界面層は、固体電解質を用いて99%以上の表面被覆率を有することができる。
【0050】
本方法の一実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~99%の気孔率を有することができる。本方法の別の実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~90%の気孔率を有することができる。本方法の別の実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~70%の気孔率を有することができる。本方法の別の実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~50%の気孔率を有することができる。本方法の別の実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~30%の気孔率を有することができる。本方法の別の実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~10%の気孔率を有することができる。本方法の別の実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~5%の気孔率を有することができる。本方法の別の実施形態では、固体電解質材料で被覆された集電体は、集電体と固体電解質材料との界面において0.1%~2%の気孔率を有することができる。
【0051】
本方法において、集電体と固体電解質材料との間の界面抵抗は、10000Ωcm未満、又は1000Ωcm未満、又は500Ωcm未満、又は450Ωcm未満、又は400Ωcm未満、又は350Ωcm未満、又は300Ωcm未満、又は250Ωcm未満、又は200Ωcm未満、又は150Ωcm未満、又は100Ωcm未満、又は75Ωcm未満、又は50Ωcm未満、又は25Ωcm未満、又は10Ωcm未満であり得る。
【0052】
本方法は、固体電解質材料との0.1%~99%の表面接触、又は固体電解質材料との10%~99%の表面接触、又は固体電解質材料との50%~99%の表面接触、又は固体電解質材料との70%~99%の表面接触、又は固体電解質材料との80%~99%の表面接触、又は固体電解質材料との90%~99%の表面接触、又は固体電解質材料との95%~99%の表面接触を有する界面層を生成することができる。
【0053】
本方法では、界面層と固体電解質との間に得られる界面抵抗は、1000Ωcm未満、又は500Ωcm未満、又は450Ωcm未満、又は400Ωcm未満、又は350Ωcm未満、又は300Ωcm未満、又は250Ωcm未満、又は200Ωcm未満、又は150Ωcm未満、又は100Ωcm未満、又は75Ωcm未満、又は50Ωcm未満、又は25Ωcm未満、又は10Ωcm未満であり得る。
【0054】
本方法において、固体電解質材料の表面のRMS表面粗さは、5μm以下、又は1μm以下、又は500nm以下、又は250nm以下、又は100nm以下、又は50nm以下であり得る。
【0055】
上述のように、一側面では、本願開示は、電気化学デバイスを製造する方法を提供する。本方法は、(a)固体電解質材料で被覆された集電体を準備するステップと、(b)固体電解質材料を、電気活性種を含む電極と接触させて層状構造を形成するステップと、(c)層状構造に0MPaより大きい圧力を加えるステップと、(d)一連のパルスサイクルを用いて層状構造に電流を流して、固体電解質材料と集電体との間に電気活性種を含む界面層を形成するステップとを含むことができる。界面層は電気化学デバイスのアノードとして機能し、電極は電気化学デバイスのカソードとして機能する。ステップ(d)の後、界面層は均一な厚さを有することができる。電気活性種を固体上に電着させる方法では、ステップ(d)を数回繰り返して複数の層状構造を作成することができる。電気活性種は、制御された酸化還元反応に関与することができる任意の化学種であってもよい。
【0056】
一側面では、0.1~100MPa、又は0.2~100MPa、又は0.4~100MPa、又は0.6~100MPa、又は0.8~100MPa、又は1~100MPa、又は1.2~100MPa、又は1.4~100MPa、又は1.6~100MPa、又は1.8~100MPa、又は2~100MPa、又は10~100MPa、又は50~100MPaの圧力で、層状構造に圧力を加えることができる。別の側面では、圧力は、0.1~100MPa、又は0.1~50MPa、又は0.1~10MPa、又は0.1~5MPa、又は0.1~2MPa、又は0.1~1.8MPa、又は0.1~1.6MPa、又は0.1~1.4MPa、又は0.1~1.2MPa、又は0.1~1MPa、又は層状構造を加圧するのに適した別の範囲とすることができる。
【0057】
一側面では、層状構造を、25℃~180℃、又は50℃~180℃、又は100℃~180℃、又は125℃~180℃、又は140℃~180℃、又は145℃~180℃、又は150℃~180℃、又は155℃~180℃、又は160℃~180℃の温度で加圧することができる。別の側面では、温度は、25℃~180℃、又は25℃~175℃、又は25℃~170℃、又は25℃~165℃、又は25℃~160℃、又は層状構造を加圧するのに適した別の範囲とすることができる。
【0058】
一実施形態では、本方法のステップ(d)は、一連のパルスサイクルを用いて電流を流すステップを更に含んでもよく、各パルスサイクルは、(i)所与のパルス幅の間、オン電流を供給することと、(ii)デューティサイクル及びパルス幅に基づいた一定の長さの時間の間、オフ電流を供給することとを含む。電気活性種(例えば、リチウム)は、オン電流中に核生成して成長し、オフ電流中に圧力を受けて流動して平坦化される。図1Aは、本願開示の一実施形態による、パルス電流電気めっきプロファイル及びパルスパラメータの例示的な概略図である。各パルスサイクルは、オン電流密度値jon、パルス幅ton、オフ電流密度joff、及びオフ電流時間toffを含み、オフ電流密度値joffはオン電流密度値jonよりも小さく、オフ電流時間toffはパルス幅tonよりも短い。パルス幅tonと呼ばれる時間だけオン電流が流れ、続いて時間toffだけオフ電流が流れる。
【0059】
一実施形態では、ステップ(d)のオン電流は、非ゼロの電流密度値jonを有してもよく、電着の大部分を担っている。一側面では、オン電流は、1μA/cm~1A/cm、又は0.01mA/cm~1A/cm、又は0.1mA/cm~1A/cm、又は0.2mA/cm~1A/cm、又は0.4mA/cm~1A/cm、又は0.6mA/cm~1A/cmの密度値jonを有する。別の側面では、オン電流は、1μA/cm~1A/cm、又は1μA/cm~0.1A/cm、又は1μA/cm~100mA/cm、又は1μA/cm~1mA/cm、又は1μA/cm~0.8mA/cm、又は1μA/cm~0.6mA/cm、又は電着に適した別の範囲の密度値jonを有する。
【0060】
一実施形態では、ステップ(d)のオン電流はパルス幅tonを有してもよい。パルス幅tonは、オン電流が供給される時間の長さであり、1μ秒~100秒、又は100μ秒~100秒、又は1m秒~100秒、又は100m秒~100秒、又は1秒~100秒、又は10秒~100秒、又は1μ秒~10秒、又は1μ秒~1秒、又は1μ秒~100m秒、又は1μ秒~1m秒、又は1μ秒~10μ秒、又は電着に適した別の範囲の値を有してもよい。一実施形態では、ステップ(c)のオン電流は、1秒~10秒のパルス幅tonを有してもよい。
【0061】
一実施形態では、ステップ(d)のオフ電流は、オン電流jonの密度値よりも小さい密度値joffを有し、ゼロ電着、一部が電着、又は電着物の剥離の原因となる場合がある。一側面では、オフ電流は、-1A/cm~0.9μA/cm、又は-0.5A/cm~0.9μA/cm、又は-0.1A/cm~0.9μA/cmの密度値joffを有してもよい。別の側面では、オフ電流は、-1A/cm~0.9μA/cm、又は-1A/cm~0.5μA/cm、又は-1A/cm~0.2μA/cm、又は-1A/cm~0.1μA/cm、又は電着に適した別の範囲の密度値を有してもよい。
【0062】
一実施形態では、ステップ(d)のデューティサイクルは、1回のオン/オフでオン電流が供給される時間の割合であり、以下の式によって計算される。
【数1】
一側面では、デューティサイクルは、0.1%~99%、又は50%~99%、又は70%~99%、又は75%~99%であってもよい。別の側面では、デューティサイクルは、0.1%~99%、又は0.1%~90%、又は0.1%~85%であってもよい。
【0063】
別の実施形態では、本方法は、一連のパルスサイクルを用いて層状構造に電流を流す間に、アノードから固体電解質への電気活性種の伝播を監視することを更に含んでもよい。ビデオ顕微鏡法は、アノードから固体電解質への電気活性種の伝播を監視するための非限定的な例示的な技術である。各パルスサイクルは、(i)所与のパルス幅の間、オン電流を供給することと、(ii)デューティサイクル及びパルス幅に基づいた一定の長さの時間の間、オフ電流を供給することとを含んでもよい。本方法のこの実施形態は、アノードから固体電解質への電気活性種の伝播の予測が監視で行われる場合に、(i)パルス幅、(ii)一定の長さの時間、(iii)デューティサイクル、(iv)オフ電流の第1の電流密度値、及び(iv)オン電流の第2の電流密度値のうちの少なくとも1つを変化させることを含む。
【0064】
別の実施形態では、本方法のステップ(b)は、固体電解質材料上の金属の第1の層を蒸発させ、その後、電極が金属の第1の層と金属箔とから成るように金属箔を第1の層に押し付けることを更に含んでもよい。一実施形態では、金属はリチウムであってもよい。一実施形態では、金属箔は、リチウム箔であってもよい。オングストロームエンジニアリング社のリチウム蒸発器を用いて、固体材料の両面にリチウム金属を初期層として析出させてもよい。次いで、最初に蒸発したリチウム層の上に、上記のいずれかの圧力でリチウム箔を加圧してもよい。
【0065】
より一般的には、本願開示は、固体基板上への電気活性種の電着方法を提供する。一実施形態では、この方法は、電気活性種を含む電極と接触している固体電解質材料を被覆した基板を含む層状構造にパルス電流を流すことを含んでもよく、パルス電流を流すことにより、固体電解質材料と基板との間に界面層を生成(例えば、電気めっき)することができる。パルス電流は、所与のパルス幅に対して非ゼロのDCオン電流を供給することを含む。オン電流は、1μA/cm~1A/cm、又は0.01mA/cm~10mA/cm、又は0.1mA/cm~1mA/cm、又は0.1mA/cm~0.6mA/cmであってもよい。パルス幅は、1秒~10秒、又は2秒~8秒、又は4秒~6秒であってもよい。オン電流の後には、デューティサイクルによって決定される一定の長さの時間の間、より低い電流密度でオフ電流が続く。オフ電流は、-1A/cm~0.9μA/cm、又は-0.1μA/cm~0.1μA/cmであってもよい。デューティサイクルは、0.1%~99%、又は50%~99%、又は70%~99%であってもよい。次いで、適切な質量の材料が電気めっきされるまで、一連のオンパルスとオフパルスが周期的に繰り返される。界面層は均一な厚さを有してもよい。電極はリチウム金属を含んでもよい。電極は本質的にリチウム金属で構成されてもよい。電流は、1~300、5~60、10~30、又は2~12個の界面層とこれらに対応する電気化学セルとを1つの電気化学デバイス内に生成する可能性がある。電極は、1nm~100μm、10nm~50μm、又は100nm~10μmの厚さを有してもよい。パルス電流は、0.01時間、0.1時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、18時間、24時間、又は48時間以上にわたって供給してもよい。形成電流は、一度に全部供給してもよいし、複数回の充電に分けて供給してもよい。
【実施例
【0066】
下記の実施例は、本発明の特定の実施形態及び側面を示し、詳細を例示するために提示されており、本発明の範囲を限定するものと解すべきものではない。
【実施例1】
【0067】
セルアセンブリ
ガーネット構造を持つリチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)を固体Liイオン伝導体として用い、金属Li膜の電着を行った。Li析出のための基板は35μmのNi箔(Targray)であり、Li源は200μmのLi箔(Alfa Aesar)であった。電気化学セルを組み立てるために、Rangasamyら[参考文献12]の記述に従って、Li6.5LaZr1.5Ta0.512の組成のTa安定化LLZO粉末を合成し、次いで、急速誘導熱間プレスによって緻密化と拡散結合を同時に行いNi基板と結合させた。その後、LLZO表面をAr中で熱処理して表面汚染物質を除去し、Li源を先に述べた手順を用いて貼り付けた[参考文献13]。
【0068】
Li金属電着
Li箔を貼り付けた後、セルを、Ar充填のグローブボックス内で、カスタムセルフィクスチャー(custom cell fixture)を用いて、圧力約1MPa、温度160℃で加熱した。次いで、160℃で、Li電極に対する電位が開回路電位から0Vに低下するまで0.05mA/cmの定電流を供給してLi金属の析出を行う。電位が0Vに達すると、プログラムをパルス電流方式に切り替え、オン電流パルスの間に、Li金属がNi基板上に析出する。電気化学インピーダンス分光法(EIS)をめっきの前後に実施し、電気めっきされたLiの存在を確認し、セルの健全性状態を確認した。500mHz~7MHzの周波数で1mVの摂動電圧でEISを実施した。
【0069】
電気化学的解析
図2Aは、Li金属源を対極及び参照電極として作用させた場合の電位応答を示す。イオン電流がNi基板に向かって流れると、電位は開回路電位から0Vに低下し、Li電極に対して0V未満でLiが電着し始めることが分かる。電位が0Vに達すると、電流はDC定電流から電流パルスプログラムに切り替えられ、オン電流は0.1mA/cm~0.6mA/cm、オフ電流は0mA/cm、パルス幅は5秒、デューティサイクルは80%~100%(DC電流)である。オン電流パルス時の電位は、パルスプログラムの開始付近で最小値を示し、これは基板上へのLi核生成を示すが、それ以降の時間での定常状態電位は、定常状態でのLi析出を示す。オフ電流パルス時の電位は0Vに近く、これはLi/LLZO/Liセルの開回路電位を表す。図2Bは、Li電着前後のセルのEISスペクトルを示す。組み立てられたとき、EISスペクトルは、Liに対するNiのブロッキング性により、低周波の容量性テールを示す[参考文献14]。しかしながら、電着後は、容量性テールがほぼ完全に消失し、これはノンブロッキングLi電極を用いたセルにより近い状態になった。これは、Li金属が界面に良好に析出したことを示唆している。めっきされたLiの明確な特徴は、非常に緻密であることである。EISにおける痕跡は、ブロッキング挙動からノンブロッキング挙動への移行であり(図2Bを参照)、ノンブロッキングとは、電極がリチウム電気活性種と反応するとみなすことができることを意味する。Re(Z)軸の切片が左方向にシフトしている場合は、樹枝状結晶の形成が始まっていることを示すと思われる。図2Bは、樹枝状結晶の形成が見られないプロットを示しており、左方向へのシフトがないため、セルは内部で短絡しておらず、したがってセルは機能していることを示している。更に、より高い周波数でのスペクトルに変化がないことから、析出プロセス中に固体電解質への損傷は生じなかったことを示唆している。損傷とは固体電解質へのLi樹枝状結晶の貫通を指す。樹枝状結晶が形成されると、クラック、すなわち痕跡が形成される。本実施例の方法は、樹枝状結晶が発生しないため、固体電解質にクラックという形での痕跡がない。
【0070】
目視検査
図3のパネルa)~e)において、Li電着後にNi基板を除去した後のLLZO表面を示す。LiのLLZO上での付着強度がNi上でのそれよりもはるかに大きいことから[参考文献15]、Ni箔を除去してもLiの大部分は、LLZOに付着したままである。Ni基板の厚さに匹敵するかなりの量のLiをめっきすることができることが分かる。金属Liの存在は、ACインピーダンス及びDC電位の応答と一致する。図3のパネルa)~e)は、LLZO表面に電着したLiの分布をパルスパラメータを変えて示しており、パラメータを変化させることで大きな違いがあることが分かる。デューティサイクルが100%(DC電流)と83%の比較から、均一な層の電着Liを達成する際の電流パルスの有効性が実証された。更に、オン電流密度の高低の比較から、電流密度が初期核生成挙動及び核の成長に及ぼす影響を実証する。図3のパネルb)は、本願開示の一実施形態による、100%デューティサイクル(DC電流)の例示的な電着リチウムの形態である。図3のパネルc)は、本願開示の一実施形態による、80%デューティサイクル及び低電流密度の例示的な電着リチウムの形態である。図3のパネルd)は、本願開示の一実施形態による、80%デューティサイクル及び高電流密度の例示的な電着リチウムの形態である。図3のパネルe)は、本願開示の一実施形態による、ニッケル基板の厚さを超えて、かなりの量のリチウムが析出している例示的な電着リチウムの形態である。パルスなしの場合(図3のパネルb)を参照)では、LLZO表面のLiによる被覆率は約60%しかない。パルスありの場合(図3のパネルd)、e)を参照)では、表面被覆率は95%を超え非常に良好である。
【0071】
したがって、固体-固体界面における電着金属の均一性を向上させるために、パルスパラメータの最適化が可能であることは明らかである。代替的に、パルスパラメータを最適化することで、局所的に厚い電着膜を作成することもできる。
【実施例2】
【0072】
概要
実施例2は、固体-固体界面での電気活性種の電着方法に関する。中間金属層が固体電解質と金属箔との界面に非破壊的に電気化学的に析出させることができることが実証されている。固体電解質/金属の界面の必要な形態を特徴付け、特定する。以下の方法は、高度な機能性材料や電気化学デバイスに応用するための薄膜の製造を支援することができる。
【0073】
序論
電気化学析出法は、微細構造の制御された製造や表面の精密工学に広く有用な方法である。一般的な電着プロセスでは、電気活性種、一般的には金属カチオンは、液体電解質から金属基板上に電気化学的に析出される。電解質が液体状態であるため、電気活性種の析出に関連する体積膨張に容易に適応する。しかしながら、固体電解質が金属基板に結合している場合、この体積膨張に対応することは容易ではなく、中間相の成長に対応するために電解質と金属基板を強制的に剥離させる必要がある。電解質と金属基板の両方の機械的特性や幾何学的形状に基づいて、電気活性種を電着するために必要な強制的な剥離により、いずれかの構成要素が不可逆的に破壊される可能性がある[参考文献16~19]。更に、電着プロセスによって生じる応力は、界面抵抗や電着電流を含む電気化学的条件と直接的な相関がある。電池や燃料電池への応用を目指した開発に伴い、固体-固体界面で活性金属膜を正確に製造するために、固体-固体界面での電着がますます必要になってきている。したがって、固体-固体界面における電気活性材料の電着には、堅牢で非破壊的な方法が必要である。
【0074】
セルアセンブリ
リチウム・ランタン・ジルコニウム酸化物(LLZO)を固体Liイオン伝導体として用い、金属Li膜の電着を行った。Li析出のための基板は10μmのCu箔(Targray)であり、Li源は500μmのLi箔(Alfa Aesar)であった。電気化学セルは、まずTaylor等の記述に従ってTa安定化LLZOを合成し緻密化することによって組み立てられる[参考文献20]。次いで、LLZOを2mmの円盤状に切断し、1200グリットのサンドペーパーで研磨し、900℃で5分間の急速誘導熱間プレスによりCu基板に拡散結合させた。その後、この構造体をAr中で熱処理し、先に述べたように、温度170℃、圧力約1MPaでLi箔を貼り付ける[参考文献21]。
【0075】
Li金属電着
室温で4MPaの圧力下、Cu基板上に所望量のLi金属が析出するまで、0.05mA/cmの定電流を供給し、Li金属の析出を行う。電気化学インピーダンス分光法をめっきの前後に実施し、電気めっきされたLiの有無を確認し、セルの健全性状態を確認する。EISは、500mHz~7MHzの周波数で5mVの摂動電圧で実施される。
【0076】
材料特性評価
集束イオンビーム(FIB)ミリング加工を用いて断面を切り出し、画像化し、Thermo Fisher Helios G4 Plasma FIB UXeを用いた走査電子顕微鏡(SEM)とエネルギー分散型X線分光法(EDS)で解析した。図4は、セルアセンブリの断面SEMを示す。図4Aは、組立て後の初期状態のセルを示し、Cu層とLLZO層との間のギャップがほとんどないことを示す。図4Bは、5mAh/cmでLi金属めっき後の界面を示し、中間相の外観を示す。中間相はEDSでは同定できず、Li金属は本技術の検出可能範囲外であるため、実体はLi金属であることを示唆している。図4Cは、極性を逆にして電流5mAh/cmでLiを剥離した後の界面を示す。中間相が消失し、5~10μmのギャップに置き換わっていることが分かり、中間相の実体がLi金属であることを更に示唆している。図5のパネルa~cは、同一断面をより低倍率で示したもので、観察された界面の形態の均一性をより詳細に示している。図5のパネルdは、Li剥離後の界面の代替の形態も示しており、図5のパネルcよりもギャップが目立たないが、図5のパネルaに示した初期状態の界面よりも目立っている。
【0077】
したがって、本発明は、固体-固体界面における電着物の均一性を向上させるためにパルス電流を用いる電着方法を提供する。一実施形態では、本方法は、従来のアノードを裸の集電体で置き換えて放電状態で電池を製造し、次いで、カソード内に含まれる金属を電気めっきすることにより、最初の充電サイクルで金属アノードを電気化学的に形成する、アノードフリー製造を可能にする。
【0078】
ここに記載及び図示された原理及び例示的な実施形態に照らして、例示的な実施形態は、このような原理から逸脱することなく配置及び詳細を改良することができることが認識されるであろう。また、上記の説明は特定の実施形態に焦点を当てているが、他の構成も想定している。特に、本願明細書では「一実施形態では」、「別の実施形態では」などの表現が用いられていても、これらの語句は、一般的に、実施形態の可能性に言及することを意味し、本発明を特定の実施形態の構成に限定することを意図するものではない。本願明細書で用いる場合、これらの用語は、他の実施形態に組み合わせることができる同一又は異なる実施形態を指す場合がある。原則として、本願明細書で言及される任意の実施形態は、本願明細書で言及される他の実施形態のうちの任意の1つ又は複数と自由に組み合わせることができ、異なる実施形態の任意の数のフィーチャは、特に指示されない限り、互いに組み合わせることができる。
【0079】
特定の実施形態を参照して本発明をかなり詳細に説明したが、当業者であれば、ここで記載されている実施形態に代わる代替的な実施形態でも本発明を実施できることが明らかであり、ここで記載されている実施形態は例示目的で提示されたものであり、本発明を限定するものではない。よって、添付の特許請求の範囲は、本願明細書に含まれる実施形態の説明に限定されるべきものではない。
【0080】
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いかなる文献の引用も、本発明の従来技術であると認めたと解すべきものではない。
図1
図1A
図2A
図2B
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
【国際調査報告】