(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】細胞様較正粒子のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/14 20060101AFI20230309BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01N15/14 C
G01N21/64 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544099
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(85)【翻訳文提出日】2022-09-14
(86)【国際出願番号】 US2021014538
(87)【国際公開番号】W WO2021150838
(87)【国際公開日】2021-07-29
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517277498
【氏名又は名称】スリングショット バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】グエン, アン トゥアン
(72)【発明者】
【氏名】ミラー, ブランドン
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043CA03
2G043DA02
2G043DA05
2G043EA01
2G043EA13
2G043EA14
(57)【要約】
方法は、ヒドロゲル粒子をサイトメトリーデバイスに挿入することによって、標的細胞の分析のためにサイトメトリーデバイスを較正することを含む。ヒドロゲル粒子は、標的細胞のバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似するバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つを有する。方法はまた、サイトメトリーデバイスを使用してヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性を測定することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞の分析のためにサイトメトリーデバイスを較正することであって、以下:
前記サイトメトリーデバイスに、前記標的細胞のバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似するバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つを有するヒドロゲル粒子を挿入することと、
前記サイトメトリーデバイスを使用して前記ヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性を測定することと
によって、較正すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記ヒドロゲル粒子を前記サイトメトリーデバイスに挿入することの前に、
フルオロフォアを含有する試薬を前記ヒドロゲル粒子に結合させて複合体を形成することと、
前記複合体の少なくとも1つの特性を測定することと、
前記少なくとも1つの測定された特性に基づいて蛍光補正またはスペクトルアンミキシングを計算することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヒドロゲル粒子が、コンジュゲート化フルオロフォアに結合する抗体に結合するように修飾されている、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コンジュゲート化フルオロフォアが蛍光色素である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒドロゲル粒子が、挿入核酸標識試薬またはアミン反応性核酸標識試薬の少なくとも1つに結合するように修飾された修飾ヒドロゲル粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記修飾ヒドロゲル粒子を使用して前記標的細胞の生存率を評価することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヒドロゲル粒子が約1.15超の屈折率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロゲル粒子が約1.3超の屈折率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲル粒子が約1.7超の屈折率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロゲル粒子が約100μm未満の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒドロゲル粒子が約10μm未満の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒドロゲル粒子が約1μm未満の直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ヒドロゲル粒子がポリマーナノ粒子添加剤を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ヒドロゲル粒子が化学的に官能化されたヒドロゲル粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒドロゲル粒子が遊離アミン基を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記ヒドロゲル粒子がアリルアミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記標的細胞が免疫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
液滴を重合して前記ヒドロゲル粒子を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記ヒドロゲル粒子が、フルオロフォアまたは蛍光色素の1つをコンジュゲート化または結合させることによって修飾されたヒドロゲル粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記修飾ヒドロゲル粒子が、細胞の蛍光またはスペクトルプロファイルと一致する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの特性が、レーザ間遅延、蛍光応答、ソートタイミング、または蛍光補正のうちの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
標的細胞のサイトメトリー測定のための複数の調整値を計算することであって、以下:
サイトメトリーデバイスに、第1のヒドロゲル粒子および第2のヒドロゲル粒子を挿入することであって、前記第1のヒドロゲル粒子は、前記標的細胞のバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似するバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の前記少なくとも1つを有し、前記第2のヒドロゲル粒子は、試薬に結合するように構成されているかまたは前記試薬に予め結合されているかのいずれかであり、前記試薬は、前記バックグラウンド蛍光特性とは異なる蛍光シグナルまたは前記スペクトル特性とは異なるスペクトルシグナルの少なくとも1つを生成する試薬である、挿入することと、
前記サイトメトリーデバイスを使用して、前記第1のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性および前記第2のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性を測定することと、
前記第1のヒドロゲル粒子の前記測定された少なくとも1つの特性と前記第2のヒドロゲル粒子の前記測定された少なくとも1つの特性とを比較して、少なくとも1つの追加の試薬との蛍光の重なりおよび前記少なくとも1つの追加の試薬とのスペクトルの重なりを決定することと
によって、計算すること、および、
前記複数の調整値に基づいて前記標的細胞の前記サイトメトリー測定を修正すること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月24日に出願された「細胞様較正粒子のための組成物および方法(Compositions and Methods for Cell-Like Calibration Particles)」と題する米国仮出願第62/965,494号の優先権および利益を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、2018年3月13日に発行され、「調整可能な光学特性を有するヒドロゲル粒子(Hydrogel Particles with Tunable Optical Properties)」と題する米国特許第9,915,598号に関連し、2017年7月25日に発行され、「調整可能な光学特性を有するヒドロゲル粒子およびその使用方法(Hydrogel Particles with Tunable Optical Properties and Methods for Using the Same)」と題する米国特許第9,714,897号に関連し、これらの各々の開示全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、フローサイトメトリーに関し、より具体的には、より正確な蛍光ならびにスペクトル較正および補正を可能にする、細胞様自家蛍光を示すヒドロゲルビーズ基材に関する。
【背景技術】
【0004】
背景
フローサイトメトリーおよび血液学的分析は、個々の細胞の迅速な分離、計数、および特性評価を可能にする技術であり、臨床および実験室環境において、様々な用途のために日常的に使用されている。この技術は、集束された液体の流れに光のビームを向けることに基づいている。いくつかの構成形態では、次いで、流れが光ビームを通過する点に多数の検出器、すなわち、光ビームに沿った1つの検出器(前方散乱、もしくは「FSC」)および光ビームに垂直ないくつかの検出器(側方散乱、もしくは「SSC」)を向けている。FSCは一般に細胞体積と相関し、SSCは粒子の内部複雑性または粒度に依存する(すなわち、核の形状、細胞質顆粒の量および種類、または膜粗さ)。これらの相関の結果として、異なる特定の細胞型は異なるFSCおよびSSCを示し、フローサイトメトリーにおいて細胞型を識別可能にする。これらの測定は、サイトメトリー分析の基礎を形成する。サイトメトリーの他の形態では、細胞が画像化され、サイズ/形状/体積および場合によっては生化学的特徴などの細胞の記述的特徴が記録される。これらの測定に加えて、細胞は、多くの場合、多数の蛍光チャネルまたはスペクトル分析装置で分析される。これらの検出モードは、異なる細胞集団間でバイオマーカープロファイルおよび他の生物学的特徴を識別するために使用される。
【0005】
細胞分析に使用されるほとんどの合成またはポリマー製品は、一般に粒子の直径に基づいて固定された前方および側方散乱プロファイルを有する不透明なポリマーであるポリスチレン(ラテックス)などのプラスチック材料で作られている。さらに、ポリスチレンは、フルオロフォアまたは関連バイオマーカーが存在しない場合でも、重要な検出チャネルにおいて高い自家蛍光を有し、これは、バックグラウンド蛍光シグナルをもたらす。他の場合では、ポリスチレンは、細胞材料よりもはるかに低い自家蛍光を有し、不正確な補正およびスペクトルアンミキシングをもたらす。全体として、ポリスチレンの固有の自家蛍光は、多くの場合、蛍光の較正および補正に適していない。具体的には、希少または低発現バイオマーカーは、ポリスチレン粒子と適切に識別することができず、対照/標準としてのそれらの使用を妨げる。さらに、ポリスチレン粒子からの自家蛍光は、偽蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)をもたらす可能性があり、これは、機能性をFRETに依拠する染料(例えば、タンデム染料)では不十分なシグナル対ノイズの一因となる。スペクトル分析では、ポリスチレンによって引き起こされる自家蛍光干渉が悪化し、これは、分離した蛍光チャネルに対する所与の標的の完全なスペクトルプロファイルを変形させる。合わせて、ポリスチレンのこれらの固有の限界により、ある範囲の蛍光色素、特に紫および紫外範囲の励起または発光プロファイルを示す蛍光色素を用いて較正および補正を行う場合、基材として最適ではなくなる。
【0006】
いくつかの重要なサイトメトリー機器の設定手順は、較正粒子が細胞を可能な限り厳密に模倣する能力に基づいている。サイトメトリーでは、補正は、異なる蛍光色素の発光スペクトルのチャネル間のシグナル重複の数学的補正である。複数の固有のフルオロフォアを使用して多様な生化学標的をアッセイする場合、真のシグナル応答を、「スピルオーバー」シグナルから識別する、または異なる蛍光チャネルからの干渉と識別することが重要であるため、補正が重要である。いくつかの既知の構成形態では、蛍光補正は、ポリスチレンベースの対照を使用して、抗体/フルオロフォアの所与のパネルの蛍光分解能を実証する。しかしながら、ポリスチレンの自家蛍光のために、全クラスのフルオロフォア(例えば、タンデム染料、UV/バイオレット応答性染料)が存在し、その多くは既存のビーズベースのポリスチレン製品を効果的に補正することができない。ポリスチレンの自家蛍光および不十分な性能は、細胞分析中に使用されるフルオロフォアの複雑性および多様性を根本的に制限している。
【0007】
したがって、実在細胞の自家蛍光をより厳密に模倣する基材が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
概要
いくつかの実施形態では、方法は、ヒドロゲル粒子をサイトメトリーデバイスに挿入することによって、標的細胞の分析のためにサイトメトリーデバイスを較正することを含む。ヒドロゲル粒子は、標的細胞の自家蛍光特性およびスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似する自家蛍光特性およびスペクトル特性の少なくとも1つを有する。方法はまた、サイトメトリーデバイスを使用してヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性を測定することを含む。
【0009】
本開示のいくつかの実施形態では、組成物は、サイトメトリーデバイスによって測定されるポリスチレン(例えば、ラテックス)の自家蛍光プロファイルまたはスペクトルプロファイルと比較して、細胞により類似した自家蛍光プロファイルまたはスペクトルプロファイルを有するヒドロゲル粒子を含む。
【0010】
他の実施形態では、本開示は、標的細胞の対応する自家蛍光特性またはスペクトル特性に実質的に類似する自家蛍光特性またはスペクトル特性を有するヒドロゲル粒子を生成する方法を提供する。本開示はまた、所定の自家蛍光特性および/またはスペクトル特性を有するヒドロゲル粒子を生成する方法を記載する。本開示はまた、標的細胞の分析のためにサイトメトリーデバイスを較正する方法であって、当該方法は、a)標的細胞の対応する自家蛍光特性および/またはスペクトル特性に実質的に類似する自家蛍光特性および/またはスペクトル特性を有するヒドロゲル粒子をサイトメトリーデバイスに挿入することと、b)サイトメトリーデバイスを使用してヒドロゲル粒子の蛍光特性および/またはスペクトル特性を測定し、それによって標的細胞の分析のためにサイトメトリーデバイスを較正することとを含む方法を記載する。
【0011】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞のサイトメトリー測定のための補正値を計算することと、補正値に基づいて標的細胞のサイトメトリー測定を修正することとを含む。標的細胞のサイトメトリー測定のための補正値を計算することは、サイトメトリーデバイスに第1のヒドロゲル粒子を第1の時間に挿入することを含む。第1のヒドロゲル粒子は、標的細胞のバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似するバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つを有する。第1のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性は、サイトメトリーデバイスを使用して測定される。計算することはまた、サイトメトリーデバイスに、第1の時間とは異なる第2の時間に第2のヒドロゲル粒子を挿入することと、サイトメトリーデバイスを使用して第2のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性を測定することとを含む。計算することはまた、補正値を決定するために、第1のヒドロゲル粒子の測定された少なくとも1つの特性と第2のヒドロゲル粒子の測定された少なくとも1つの特性とを比較することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1-1】
図1Aは、いくつかの実施形態による、(A)本開示のヒドロゲル粒子、(B)ポリスチレンビーズの例示的な光学特性を示す。
【0013】
【
図1-2】
図1Bは、
図1A(A)のヒドロゲル粒子の光学特性とは対照的に、ポリスチレンビーズの光学特性を示す。
【0014】
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態による、ポリスチレンと本開示の実在/標的細胞またはヒドロゲル粒子との散乱プロファイルの差を示す。
【0015】
【
図3】
図3は、いくつかの実施形態による、ヒドロゲルの自家蛍光特性またはスペクトル特性を、標的細胞集団の自家蛍光特性またはスペクトル特性に一致するように操作され得る方法を示す。
【0016】
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態による、任意の標的細胞の受動的光散乱、自家蛍光、バイオマーカーおよび蛍光特性に一致するように操作されたヒドロゲルの特性の各々を独立して調整する能力を示す。
【0017】
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態による、ヒドロゲル粒子を生成する例示的な方法を示す。
【0018】
【
図6】
図6は、蛍光補正の原理を実証する、強度対波長/チャネルのプロットである。
【0019】
【
図7-1】
図7A-7Cは、いくつかの実施形態による、蛍光およびスペクトル検出器の範囲にわたる、ポリスチレン粒子およびヒドロゲル粒子に対するヒト細胞の比較を示すデータのプロットを含む。
【0020】
【
図8-1】
図8Aは、いくつかの実施形態による、Alexa 700修飾抗体(「Ab」)で染色されたリンパ球のスペクトルプロファイルであり、
図8Bは、いくつかの実施形態による、本開示のヒドロゲル粒子のスペクトルプロファイルであり、
図8Aのリンパ球(pymphocyte)のスペクトルプロファイルとのそれらのアライメントを示す。
【0021】
【
図9】
図9は、いくつかの実施形態に従った、標的細胞の分析のためのサイトメトリーデバイスを較正するための方法を示すフロー図である。
【0022】
【
図10】
図10は、いくつかの実施形態に従った、本開示のヒドロゲルを使用した蛍光補正および/またはスペクトルアンミキシングの較正および計算のためのプロセスを示すフロー図である。
【0023】
【
図11-1】
図11A-11Dは、いくつかの実施形態による、細胞染色と、ヒドロゲル補正ビーズと、既知の(ポリスチレン系)製品との間の比較を示す棒グラフである。
【0024】
【
図12】
図12は、いくつかの実施形態による、ポリスチレンおよび細胞対照の自家蛍光と、様々な組成および特性を有する本開示の例示的なヒドロゲルの自家蛍光とを比較するチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
レーザ間遅延、蛍光応答、ソートタイミング、および蛍光補正などのフローサイトメーターのためのいくつかの既知の較正測定は、ポリスチレンビーズを使用する。これらの較正測定は、サイトメーターの正確な動作のため、および細胞集団のいずれかの下流の分析またはソートのために極めて重要であり得る。ポリスチレンは、細胞対照の使用と比較して堅牢で低コストであるが、細胞と比較して本質的に異なる光学的および蛍光的挙動を示す。結果として、ポリスチレンビーズは、最も基本的な較正プロセスを除く、すべてにおいて細胞対照の代用品としては不十分である。
【0026】
ポリスチレンの限界を克服するために、機器の設定および較正中に細胞が使用されることがあるが、そのようなアプローチは、バッチ間の変動性、高コスト、低い貯蔵寿命、および生物学的に危険な輸送/取り扱いの制限を被る。細胞サイズの変動およびユーザが調製した細胞間の違いにより、それらは特定の機器較正制御に適さなくなる。さらに、細胞対照材料は、希少疾患を検査するときに入手することが困難な場合が多い。
【0027】
本開示の粒子は、ポリスチレンとは対照的に、細胞様の自家蛍光およびスペクトルプロファイルを示し、機器のより高感度の較正、より良好な蛍光補正、およびより良好な全体的な実験データ分析を可能にする。粒子はまた、合成的に製造され、細胞対照を使用する欠点のいずれもなく、高いバッチ間精度を可能にする。
【0028】
図1A~
図1Bおよび
図2に示すように、ポリスチレン粒子は、それらが有し得る光学特性、例えば前方散乱および側方散乱に関して基本的に限界がある。これは、主に、当該粒子が細胞とは対照的に不透明であり、そのため側方散乱が細胞内部の複雑性とは対照的に、粒子のサイズの直接的な関数であるという事実に起因する。例えば、
図1A(A)は、本開示の操作されたヒドロゲル粒子の例示的な光学特性を示し、励起光源からの光は、操作されたヒドロゲル粒子の内部構造と相互作用して、その内部構造に関する側方散乱情報を生成することができる。対照的に、
図1A(B)および
図1Bは、ポリスチレンビーズの例示的な光学特性を示し、励起光源からの光はポリスチレンビーズの内部構造と相互作用せず、したがって、得られる側方散乱情報は限られている。さらに、
図2に示すように、ポリスチレンビーズは、実在細胞(例えば、標的生物学的細胞)と比較して、側方散乱プロファイルに3~4桁の差がある。さらに、ポリスチレンは、フルオロフォアが存在しない場合であっても、多くのチャネルにおいて高い自家蛍光を有し、検出器分解能の低下をもたらす(例えば、以下でさらに考察する
図7A~
図7Cを参照されたい)。他の例では、ポリスチレンは、細胞材料と比較した場合、自家蛍光が低く、不正確な染色指数計算、補正またはスペクトルアンミキシングをもたらす。この現象は、サンプル中の希少または発現が不十分なバイオマーカーを正確に測定することを非常に困難または不可能にする。これはまた、ポリスチレンが自家蛍光を発するチャネルにおいて不十分な補正性能をもたらす。ポリスチレンのこれらの制限のために、ユーザは、免疫表現型解析実験のために蛍光強度、蛍光補正、レーザ間遅延、ソート遅延、サイズおよび細胞複雑性を較正するために精製細胞株に依拠しなければならないことが多い。これは、フローサイトメトリー検証および研究パイプラインのコストを大幅に増加させる、長時間の労働集約的なプロセスである。より重要なことに、これらの較正細胞株は生物学的変化をもたらし、免疫表現型解析データの解釈にばらつきを引き起こす。
【0029】
所与のバイオマーカー表現型解析実験用に複数のフルオロフォアを利用するために、フルオロフォアはサイトメトリー機器上で識別可能でなければならない。所与の抗体の蛍光プロファイルは、同種のバイオマーカー/抗原を含む細胞に結合した場合、同じ試薬の「パネル」で使用される他の抗体-フルオロフォアの組み合わせと比較するために使用することができる。蛍光補正のために細胞を使用することは困難であるため、ポリスチレンビーズが蛍光補正設定中に代用物として使用されることが多い。しかしながら、ポリスチレンのバックグラウンド自家蛍光は、不十分な検出器分解能、不正確な補正マトリックス計算、バックグラウンド自家蛍光、および不十分な検出閾値下限をもたらす。
【0030】
本開示の実施形態は、標的細胞(例えば、ヒト細胞)のバックグラウンド蛍光特性と実質的に類似し、上で考察したポリスチレンの様々な欠点を克服するバックグラウンド蛍光特性(例えば、自家蛍光)を有するヒドロゲル粒子を含む組成物を提供する。本明細書に記載のヒドロゲル粒子は、標的細胞のバックグラウンドスペクトルプロファイルと実質的に類似するバックグラウンドスペクトルプロファイルを有し得る。本発明者らは、ヒドロゲル粒子の蛍光特性が、ヒドロゲル粒子の組成を変化させることによって独立してモジュレートされ得ることを予想外にも発見した。さらに、著者らは、ヒドロゲル粒子のバックグラウンド蛍光特性が、粒子のベースライン光学特性に影響を与えることなくモジュレートされ得る(すなわち、自家蛍光は、前方散乱(FSC)および側方散乱(SSC)とは無関係にモジュレートされ得る)ことを見出した。この特性により、ヒドロゲルは、サイトメトリーデバイスによって測定される標的細胞の光学特性および自家蛍光特性の両方を正確に模倣することが可能になる。
【0031】
本開示はまた、ヒドロゲル粒子を生成する方法であって、ヒドロゲル粒子が標的細胞の蛍光特性と実質的に類似する蛍光特性を有する方法を提供する。本開示はまた、ヒドロゲル粒子を生成する方法であって、ヒドロゲル粒子が所定の光学特性または蛍光特性を有する方法を提供する。標的細胞の分析のためのサイトメトリーデバイスを較正する方法も提供され、当該方法は、a)標的細胞の蛍光特性と実質的に類似する蛍光特性を有するヒドロゲル粒子をデバイスに挿入することと、b)サイトメトリーデバイスを使用してヒドロゲル粒子の蛍光特性を測定し、それによって標的細胞の分析のためにサイトメトリーデバイスを較正することとを含む。既知のサイトメトリーデバイスには、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、血液学およびハイコンテントイメージングを行うための市販のデバイスが含まれる。
ヒドロゲル
【0032】
本開示のヒドロゲル粒子はヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、水の存在下にあるときは膨潤し、水の非存在下では(または水の量の減少によって)収縮することを可能にするが、水に溶解しない高分子3次元ネットワークを含む材料である。膨潤、すなわち水の吸収は、高分子ネットワークに結合したまたは高分子ネットワーク内に分散した親水性官能基の存在の結果である。隣接する高分子間の架橋は、これらのヒドロゲルの水不溶性をもたらす。架橋は、化学的(例えば、共有結合性)または物理的(例えば、ファンデルワールス力、水素結合、イオン力など)な結合に起因し得る。ポリマー業界の一部では、本明細書に記載される高分子材料の1つまたはそれを超えるものを、乾燥状態では「キセロゲル」、水和状態では「ヒドロゲル」と呼ぶことがあるが、本開示の目的のために、「ヒドロゲル」という用語は、脱水されているか水和されているかを問わず、高分子材料を指す。特に価値のあるヒドロゲルの特徴は、その材料が、脱水されても水和されても、その一般的な形状を保持することである。したがって、ヒドロゲルが脱水された状態でほぼ球形の形状を有する場合、ヒドロゲルは水和された状態では球形である。
【0033】
本開示の開示されたヒドロゲルは、いくつかの実施形態によれば、例として、約30%超の水、約40%超の水、約50%超の水、約55%超の水、約60%超の水、約65%超の水、約70%超の水、約75%超の水、約80%超の水または約85%超の水を含み得る。
【0034】
合成的に調製されたヒドロゲルは、モノマー材料を重合して骨格を形成し、その骨格を架橋剤で架橋することによって調製され得る。一般的なヒドロゲルモノマーとしては、乳酸、グリコール酸、アクリル酸、1-ヒドロキシエチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピレングリコールメタクリレート、アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、グリコールメタクリレート、エチレングリコール、フマル酸などが挙げられる。一般的な架橋剤としては、テトラエチレングリコールジメタクリレートおよびN,N’-15メチレンビスアクリルアミドが含まれる。いくつかの実施形態では、本開示のヒドロゲル粒子は、アクリルアミドの重合によって生成される。
【0035】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、少なくとも1つの単官能性モノマーと少なくとも1つの二官能性モノマーとの混合物を含む。
【0036】
単官能性モノマーは、単官能性アクリルモノマーであり得る。単官能性アクリルモノマーの非限定的な例は、アクリルアミド;メタクリルアミド;N-アルキルアクリルアミド、例えばN-エチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミドまたはN-tert-ブチルアクリルアミド;N-アルキルメタクリルアミド、例えばN-エチルメタクリルアミドまたはN-イソプロピルメタクリルアミド;N,N-ジアルキルアクリルアミド、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、およびN,N-ジエチルアクリルアミド;N-[(ジアルキルアミノ)アルキル]アクリルアミド、例えばN-[3-ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミドまたはN-[3-(ジエチルアミノ)プロピル]アクリルアミド;N-[(ジアルキルアミノ)アルキル]メタクリルアミド、例えばN-[3-ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミドまたはN-[3-(ジエチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド;(ジアルキルアミノ)アルキルアクリレート、例えば2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート、または2-(ジエチルアミノ)エチルアクリレート;および(ジアルキルアミノ)アルキルメタクリレート、例えば2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートである。
【0037】
二官能性モノマーは、本開示の単官能性モノマーと重合して、第2の反応、例えばフルオロフォアのコンジュゲーションに関与し得る第2の官能基をさらに含む本明細書に記載のヒドロゲルを形成し得る任意のモノマーである。
【0038】
いくつかの実施形態では、二官能性モノマーは、アリルアルコール、アリルイソチオシアネート、塩化アリル、およびアリルマレイミドからなる群から選択される。
【0039】
二官能性モノマーは、二官能性アクリルモノマーであり得る。二官能性アクリルモノマーの非限定的な例は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビスメタクリルアミド、N,N’-プロピレンビスアクリルアミドおよびN,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミドである。
【0040】
その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,657,030号に記載されているように、高次の分岐鎖および直鎖コモノマーをポリマー混合物中で置換して、ポリマー密度を維持しながら屈折率を調整することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲルは、ヒドロゲルの光学特性をモジュレートする分子を含む。ヒドロゲルの光学特性を変化させることができる分子が以下でさらに論じられる。
【0042】
本発明で有用な天然に存在するヒドロゲルとしては、植物、藻類、真菌、酵母、海洋無脊椎動物および節足動物などの天然源から入手可能な様々な多糖類が挙げられる。非限定的な例としては、アガロース、デキストラン、キチン、セルロース系化合物、デンプン、誘導体化デンプンなどが挙げられる。これらは一般に、多糖骨格の大部分としてグルコースの繰り返し単位を有する。
【0043】
ヒドロゲルの重合は、過硫酸塩によって開始され得る。過硫酸塩は、任意の水溶性過硫酸塩であり得る。水溶性過硫酸塩の非限定的な例は、過硫酸アンモニウムおよびアルカリ金属過硫酸塩である。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、過硫酸塩は過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムであり、より好ましくは過硫酸アンモニウムである。
【0044】
ヒドロゲルの重合は、促進剤によって促進され得る。促進剤は、第三級アミンであり得る。第三級アミンは、任意の水溶性第三級アミンであり得る。好ましくは、第三級アミンは、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンまたは3-ジメチルアミノ)プロピオニトリルであり、より好ましくはN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)である。
ヒドロゲル粒子
【0045】
一態様では、本開示のヒドロゲル粒子はヒドロゲルを含み、液滴(
図5を参照されたい)を重合することによって生成される。流体液滴および剛性化液滴を含む複数の液滴を生成するマイクロ流体法が知られており、米国特許出願公開第2011/0218123号および米国特許第7,294,503号に記載されており、各々の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような方法は、第1の流体を含みかつ第2の流体によって実質的に取り囲まれている複数の液滴を提供し、ここで、第1の流体および第2の流体は実質的に不混和性である(例えば、水性液体を含有する液滴は、油系液体によって実質的に取り囲まれている)。別の形態では、ヒドロゲル粒子は、沈殿または化学重合によって生成される。別の形態では、ヒドロゲル粒子は、膜乳化によって生成される。別の形態では、圧電分散を介してヒドロゲル粒子が形成される。
【0046】
複数の流体液滴(例えば、マイクロ流体デバイスを使用して調製される)は、多分散(例えば、異なるサイズの範囲を有する)であってもよく、または場合によっては、流体液滴は、単分散もしくは実質的に単分散であってもよく、例えば、直径の均一な分布を有し、例えば、液滴の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%、もしくは約0.01%以下が、平均直径の約10%、約5%、約3%、約1%、約0.03%、もしくは約0.01%を超える平均直径を有するようなものである。本明細書で使用される液滴の集団の平均直径は、液滴の直径の算術平均を指す。
【0047】
したがって、本開示は、複数のヒドロゲル粒子を含むヒドロゲル粒子の集団を提供し、ここで、ヒドロゲル粒子の集団は実質的に単分散である。
【0048】
マイクロ流体という用語は、1mm未満の横断面寸法、および少なくとも約3:1のチャネルに垂直な最大横断面寸法に対する長さの比を有する少なくとも1つの流体チャネルを含むデバイス、装置、またはシステムを指す。マイクロ流体チャネルを含むマイクロ流体デバイスは、複数の単分散液滴の調製に特によく適している。
【0049】
本発明と共に使用され得るマイクロ流体システムの非限定的な例としては、米国特許出願公開第2006/0163385号(「流体種の形成および制御(Forming and Control of Fluidic Species)」)、米国特許出願公開第2005/0172476号(「流体分散のための方法および装置(Method and Apparatus for Fluid Dispersion)」)、米国特許出願公開第2007/000342号(「流体種の電子制御(Electronic Control of Fluidic Species)」)、国際特許出願公開第2006/096571号(「複数のエマルジョンを形成するための方法および装置(Method and Apparatus for Forming Multiple Emulsions)」)、米国特許出願公開第2007/0054119号(「粒子を形成するシステムおよび方法(Systems and Methods of Forming Particles)」)、国際特許出願公開第2008/121342号(「形成のためのエマルジョンおよび技術(Emulsions and Techniques for Formation)」)、および国際特許出願公開第2006/078841号(「コロイド粒子などの粒子に封入された流体液滴を形成するためのシステムおよび方法(Systems and Methods for Forming Fluidic Droplets Encapsulated in Particles Such as Colloidal Particles)」)に開示されているものが挙げられ、その各々の内容全体が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0050】
液滴サイズは、マイクロ流体チャネルサイズに関連する。マイクロ流体チャネルは、任意のサイズ、例えば、流体の流れに対して垂直な最大寸法が約5mm未満または2mm未満、または約1mm未満、または約500μm未満、約200μm未満、約100μm未満、約60μm未満、約50μm未満、約40μm未満、約30μm未満、約25μm未満、約10μm未満、約3μm未満、約1μm未満、約300nm未満、約100nm未満、約30nm未満、または約10nm未満であってもよい。
【0051】
液滴サイズは、相対流量を調整することによって調整され得る。いくつかの実施形態では、液滴直径は、チャネルの幅と同等、またはチャネルの幅の約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは100%以内である。
【0052】
本開示のヒドロゲル粒子の寸法は、それが形成された液滴と実質的に同様である。したがって、いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、直径が約1μm、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、150、200、250、300、350、400、450、500、600、800μm未満、または1000μm未満の直径を有する。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、直径が約1μm、2、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、120、150、200、250、300、350、400、450、500、600、800μm超または1000μm超の直径を有する。典型的な実施形態では、ヒドロゲル粒子は5μm~100μmの範囲の直径を有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、本開示のヒドロゲル粒子は球形である。
【0054】
いくつかの実施形態では、本開示のヒドロゲル粒子は、同じ直径のポリスチレンビーズと比較して、標的細胞のものにより近い材料弾性率特性(例えば、弾性)を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、本開示のヒドロゲル粒子はアガロースを含まない。
光学特性
受動的光学特性および非受動的光学特性(例えば、蛍光特性)
【0056】
フローサイトメトリーのためのデコンボリューションの3つの主なモードは、粒子(屈折率に対応する前方散乱(FSC)、またはRI;および側方散乱(SSC))ならびに蛍光の2つの受動光学特性であり、これは非受動的光学特性(すなわち、フルオロフォア、蛍光色素または量子ドットなどのベースポリマーの成分ではない分子によって付与される特徴)であり、典型的にはコンジュゲート化されたフルオロフォアを有する抗体を使用して測定される所与の細胞型の表面に存在するバイオマーカーの代表例である。したがって、本開示のヒドロゲル粒子がこれらの3つのモードに関して特定の細胞型を模倣することを可能にする組成物が、フローサイトメトリーのための合成の堅牢な較正物質を提供するために有用である。
【0057】
いくつかの実施形態では、開示されたヒドロゲル粒子の屈折率(RI)は、約1.10超、約1.15超、約1.20超、約1.25超、約1.30超、約1.35超、約1.40超、約1.45超、約1.50超、約1.55超、約1.60超、約1.65超、約1.70超、約1.75超、約1.80超、約1.85超、約1.90超、約1.95超、約2.00超、約2.10超、約2.20超、約2.30超、約2.40超、約2.50超、約2.60超、約2.70超、約2.80超、または約2.90超である。
【0058】
いくつかの実施形態では、開示されるヒドロゲル粒子の屈折率(RI)は、約1.10未満、約1.15未満、約1.20未満、約1.25未満、約1.30未満、約1.35未満、約1.40未満、約1.45未満、約1.50未満、約1.55未満、約1.60未満、約1.65未満、約1.70未満、約1.75未満、約1.80未満、約1.85未満、約1.90未満、約1.95未満、約2.00未満、約2.10未満、約2.20未満、約2.30未満、約2.40未満、約2.50未満、約2.60未満、約2.70未満、約2.80未満、または約2.90未満である。
【0059】
開示されるヒドロゲル粒子のSSCは、標的細胞のSSCと比較して測定することが最も有意義である。いくつかの実施形態では、開示されるヒドロゲル粒子は、サイトメトリーデバイスによって測定される場合、標的細胞のSSCの30%以内、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内、5%以内、または1%以内のSSCを有する。
【0060】
開示されるヒドロゲル粒子のFSCは、標的細胞のFSCと比較して測定することが最も有意義である。いくつかの実施形態では、開示されるヒドロゲル粒子は、サイトメトリーデバイスによって測定される場合、標的細胞のFSCの30%以内、25%以内、20%以内、15%以内、10%以内、5%以内、または1%以内のFSCを有する。
【0061】
FSCは、ヒドロゲルに高屈折率分子を組み込むことによってヒドロゲルについて調整することができる。好ましい高屈折率分子としては、コロイダルシリカ、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートが挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のヒドロゲル粒子は、アルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレートを含む。
【0062】
アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチル、2-エチルヘキシル、ヘプチルまたはオクチル基などのアルキル基中に1~18個、1~8個または2~8個の炭素原子を含み得る。アルキル基は、分枝状であっても直鎖状であってもよい。
【0063】
高屈折率分子はまた、メチル、エチルもしくはtert-ブチルなどのアルキル基で、またはクロロスチレンなどのハロゲンで芳香族環上で必要に応じて置換されるスチレンおよびメチルスチレンなどのビニルアレーンを含み得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、FSCは、ヒドロゲル形成中に存在する含水量を調整することによってモジュレートされる。
【0065】
FSCは、粒子体積に関連しており、したがって、本明細書中に記載されるように、粒子直径を変化させることによって調節され得る。
【0066】
SSCは、標的細胞内の細胞小器官を模倣するためにヒドロゲル内にナノ粒子を封入することによって操作され得る。いくつかの実施形態では、本開示のヒドロゲル粒子は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)ナノ粒子、ポリスチレン(PS)ナノ粒子、およびシリカナノ粒子からなる群から選択される1つまたはそれを超える種類のナノ粒子を含む。
ヒドロゲル粒子の官能化
【0067】
ヒドロゲル粒子は官能化することができ、標識細胞の光学特性および蛍光特性を模倣することが可能である。いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は二官能性モノマーを含み、ヒドロゲル粒子の官能化は二官能性モノマーを介して起こる。典型的な実施形態では、官能化ヒドロゲル粒子は遊離アミン基を含む。
【0068】
ヒドロゲル粒子は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるThe MolecularProbes(登録商標)Handbook-A Guide to Fluorescent Probes and LabelingTechnologiesに列挙されている蛍光染料を含む、当該技術分野で既知の蛍光色素の任意の蛍光染料で官能化することができる。官能化は、形成プロセス中にヒドロゲル粒子に組み込むことができる遊離アミン基、例えばアリルアミンを含む化合物によって媒介することができる。
【0069】
既知の蛍光染料の非限定的な例としては、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセインスクシンイミジルエステル、5-(および-6)-カルボキシエオシン;5-カルボキシフルオレセイン;6-カルボキシフルオレセイン;5-(および-6)-カルボキシフルオレセイン;5-カルボキシフルオレセインービス-(5-カルボキシメトキシ-2-ニトロベンジル)エーテル、-アラニン-カルボキサミド、またはスクシンイミジルエステル;5-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル;6-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル;5-(および-6)-カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル;5-(4,6-ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン;2’,7’-ジフルオロフルオレセイン;エオシン-5-イソチオシアネート;エリスロシン5-イソチオシアネート;6-(フルオレセイン-5-カルボキサミド)ヘキサン酸またはスクシンイミジルエステル;6-(フルオレセイン-5-(および-6)-カルボキサミド)ヘキサン酸またはスクシンイミジルエステル;フルオレセイン-5-EXスクシンイミジルエステル;フルオレセイン-5-イソチオシアネート;フルオレセイン-6-イソチオシアネート;OregonGreen(登録商標)488カルボン酸、またはスクシンイミジルエステル;OregonGreen(登録商標)488イソチオシアネート;OregonGreen(登録商標)488-Xスクシンイミジルエステル;OregonGreen(登録商標)500カルボン酸;OregonGreen(登録商標)500カルボン酸、スクシンイミジルエステルまたはトリエチルアンモニウム塩;OregonGreen(登録商標)514カルボン酸;OregonGreen(登録商標)514カルボン酸またはスクシンイミジルエステル;ローダミングリーン(商標)カルボン酸、スクシンイミジルエステルまたは塩酸塩;ローダミングリーン(商標)カルボン酸、トリフルオロアセトアミドまたはスクシンイミジルエステル;ローダミングリーン(商標)-Xスクシンイミジルエステルまたは塩酸塩;RhodolGreen(商標)カルボン酸、N,0-ビス-(トリフルオロアセチル)またはスクシンイミジルエステル;ビス-(4-カルボキシピペリジニル)スルホンローダミンまたはジ(スクシンイミジルエステル);5-(および-6)カルボキシナフトフルオレセイン、5-(および-6)カルボキシナフトフルオレセインスクシンイミジルエステル;5-カルボキシローダミン6G塩酸塩;6-カルボキシローダミン6G塩酸塩、5-カルボキシローダミン6Gスクシンイミジルエステル;6-カルボキシローダミン6Gスクシンイミジルエステル;5-(および-6)-カルボキシローダミン6Gスクシンイミジルエステル;5-カルボキシ-2’,4’,5’,7’-テトラブロモスルホンフルオレセインスクシンイミジルエステルまたはビス-(ジイソプロピルエチルアンモニウム)塩;5-カルボキシテトラメチルローダミン;6-カルボキシテトラメチルローダミン;5-(および-6)-カルボキシテトラメチルローダミン;5-カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル;6-カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル;5-(および-6)-カルボキシテトラメチルローダミンスクシンイミジルエステル;6-カルボキシ-X-ローダミン;5-カルボキシ-X-ローダミンスクシンイミジルエステル;6-カルボキシ-Xローダミンスクシンイミジルエステル;5-(および-6)-カルボキシ-Xローダミンスクシンイミジルエステル;5-カルボキシ-X-ローダミントリエチルアンモニウム塩;Lissamine(商標)ローダミンBスルホニルクロリド;マラカイトグリーン;イソチオシアネート;NANOGOLD(登録商標)モノ(スルホスクシンイミジルエステル);QSY(登録商標)21カルボン酸またはスクシンイミジルエステル;QSY(登録商標)7カルボン酸またはスクシンイミジルエステル;ローダミンRed(商標)-Xスクシンイミジルエステル;6-(テトラメチルローダミン-5-(および-6)-カルボキサミド)ヘキサン酸;スクシンイミジルエステル;テトラメチルローダミン-5-イソチオシアネート;テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート;テトラメチルローダミン-5-(および-6)-イソチオシアネート;Texas Red(登録商標)スルホニル;Texas Red(登録商標)スルホニルクロリド;Texas Red(登録商標)-X STPエステルまたはナトリウム塩;Texas Red(登録商標)-Xスクシンイミジルエステル;Texas Red(登録商標)-Xスクシンイミジルエステル;およびX-ローダミン-5-(および-6)-イソチオシアネートが挙げられる。
【0070】
蛍光染料の他の例としては、Invitrogen社から市販されているBODIPY(登録商標)染料が挙げられ、これらには、限定されないが、BODIPY(登録商標)FL;BODIPY(登録商標)TMR STPエステル;BODIPY(登録商標)TR-X STPエステル;BODIPY(登録商標)630/650-X STPエステル;BODIPY(登録商標)650/665-X STPエステル;6-ジブロモ-4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3,5-ジプロピオン酸;4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ペンタン酸;4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-ペンタン酸スクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3プロピオン酸;4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸;スルホスクシンイミジルエステルまたはナトリウム塩;6-((4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオニル)アミノ)ヘキサン酸;6-((4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオニル)アミノ)ヘキサン酸またはスクシンイミジルエステル;N-(4,4-ジフルオロ-5,7-ジメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオニル)システイン酸、スクシンイミジルエステルまたはトリエチルアンモニウム塩;6-4,4-ジフルオロ-1,3-ジメチル-5-(4-メトキシフェニル)-4-ボラ3a,4a 4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸;4,4-ジフルオロ-5,7-ジフェニル-4-ボラ3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-5-フェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸;スクシンイミジルエステル;6-((4,4-ジフルオロ-5-フェニル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオニル)アミノ)ヘキサン酸またはスクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-5-(4-フェニル-1,3-ブタジエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-5-(2-ピロリル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル;6-(((4,4-ジフルオロ-5-(2-ピロリル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-イル)スチリルオキシ)アセチル)アミノヘキサン酸またはスクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸;4,4-ジフルオロ-5-スチリル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸;スクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-1,3,5,7テトラメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-8-プロピオン酸;4,4-ジフルオロ-1,3,5,7テトラメチル-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-8-プロピオン酸スクシンイミジルエステル;4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-プロピオン酸スクシンイミジルエステル;6-(((4-(4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-インダセン-3-イル)フェノキシ)アセチル)アミノ)ヘキサン酸またはスクシンイミジルエステル;および6-(((4,4-ジフルオロ-5-(2-チエニル)-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン-3-イル)スチリルオキシ)アセチル)アミノヘキサン酸またはスクシンイミジルエステルが含まれる。
【0071】
蛍光染料としては、Invitrogen社から市販されているAlexa fluor染料も挙げることができ、これらには、限定されないが、Alexa Fluor(登録商標)350カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)430カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)488カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)532カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)546カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)555カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)568カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)594カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)633カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)647カルボン酸;Alexa Fluor(登録商標)660カルボン酸;およびAlexa Fluor(登録商標)680カルボン酸が含まれる。本発明の蛍光染料は、例えば、Amersham-Pharmacia Biotech社から市販されているシアニン染料であってもよく、これらには、例えば限定されないが、Cy3 NHSエステル;Cy5 NHSエステル;Cy5.5 NHSエステル;およびCy7 NHSエステルが含まれる。
【0072】
タンデム染料、例えばPE-Cy5または他の組み合わせを含むものも、自家蛍光が低いために本開示において有効に利用することができる。典型的には、ポリスチレン自家蛍光は、タンデムまたはポリマー染料を利用するために必要な蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)シグナルを妨害する。
標的細胞
【0073】
本開示のヒドロゲル粒子は、染色およびフローサイトメトリーまたはFACSによる分析などの手順において標的細胞と同様に挙動する。
【0074】
いくつかの実施形態では、標的細胞は免疫細胞である。免疫細胞の非限定的な例としては、B細胞とも呼ばれるBリンパ球、T細胞とも呼ばれるTリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞、単球、マクロファージ、好中球、顆粒球、肥満細胞、血小板、ランゲルハンス細胞、幹細胞、樹状細胞、末梢血単核細胞、腫瘍浸潤(TIL)細胞、ハイブリドーマを含む遺伝子改変免疫細胞、薬物改変免疫細胞、および本明細書に列挙される細胞型のいずれかの誘導体、前駆体または前駆細胞が挙げられる。
【0075】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、共通の特性を有する特定のクラスの細胞のすべての細胞を包含する。例えば、標的細胞は、NK細胞、T細胞、およびB細胞を含むリンパ球であり得る。標的細胞は、活性化リンパ球であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、標的細胞は、初代細胞、培養細胞、株化細胞、正常細胞、形質転換細胞、感染細胞、安定にトランスフェクトされた細胞、一過性にトランスフェクトされた細胞、増殖細胞、または最終分化細胞である。
【0077】
一実施形態では、標的細胞は初代ニューロン細胞である。様々なニューロンが標的細胞であり得る。非限定的な例として、標的細胞は、一次ニューロン、株化ニューロン;形質転換ニューロン;安定にトランスフェクトされたニューロン;または運動もしくは感覚ニューロンであり得る。
【0078】
他の実施形態では、標的細胞は、初代リンパ球、単球、および顆粒球からなる群から選択される。
【0079】
標的細胞は、原核細胞および真核細胞を含む実質的に任意の種類の細胞であり得る。
【0080】
適切な原核標的細胞としては、限定されないが、大腸菌などの細菌、様々なバチルス(Bacillus)種、および好熱性細菌などの極値環境細菌が挙げられる。
【0081】
適切な真核標的細胞としては、限定されないが、Saccharomyces、Aspergillus、TrichodermaおよびNeurosporaの種を含む酵母および糸状菌などの真菌;トウモロコシ、ソルガム、タバコ、セイヨウアブラナ、ダイズ、綿、トマト、ジャガイモ、アルファルファ、ヒマワリなどの植物細胞を含む植物細胞;ならびに魚類、鳥類および哺乳動物を含む動物細胞が挙げられる。適切な魚細胞としては、限定されないが、サケ、マス、ティラピア、マグロ、コイ、ヒラメ、オヒョウ、メカジキ、タラおよびゼブラフィッシュの種に由来するものが挙げられる。適切な鳥細胞としては、限定されないが、ニワトリ、アヒル、ウズラ、キジおよびシチメンチョウ、ならびに他の野鶏(jungle foul)または猟鳥のものが挙げられる。適切な哺乳動物細胞としては、限定されないが、ウマ、ウシ、バッファロー、シカ、ヒツジ、ウサギ、げっ歯類、例えばマウス、ラット、ハムスターおよびモルモット、ヤギ、ブタ、霊長類、イルカおよびクジラを含む海洋哺乳類、ならびに細胞株、例えば任意の組織または幹細胞型のヒト細胞株、および多能性および非多能性、および非ヒト接合体を含む幹細胞からの細胞が挙げられる。
【0082】
適切な細胞としては、非疾患状態であっても、多種多様な疾患状態に関与する細胞型も挙げられる。したがって、適切な真核細胞の種類としては、限定されないが、すべての種類の腫瘍細胞(例えば、黒色腫、骨髄性白血病、肺、乳房、卵巣、結腸、腎臓、前立腺、膵臓および精巣の癌)、心筋細胞、樹状細胞、内皮細胞、上皮細胞、リンパ球(T細胞およびB細胞)、肥満細胞、好酸球、血管内膜細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、赤血球、肝細胞、単核白血球を含む白血球、造血幹細胞、神経幹細胞、皮膚幹細胞、肺幹細胞、腎臓幹細胞、肝臓幹細胞および筋細胞幹細胞などの幹細胞(分化および脱分化因子のためのスクリーニングに使用するため)、破骨細胞、軟骨細胞および他の結合組織細胞、ケラチノサイト、メラノサイト、肝細胞、腎臓細胞、および脂肪細胞が挙げられる。特定の実施形態では、細胞は、原発性腫瘍細胞などの原発性疾患状態細胞である。適切な細胞としては、Jurkat T細胞、NIH3T3細胞、CHO、COSなどを含むがこれらに限定されない既知の研究用細胞も含まれる。参照により本明細書に明示的に組み込まれるATCC細胞株カタログを参照されたい。
【0083】
いくつかの実施形態では、標的細胞は腫瘍微小胞または腫瘍巨大小胞である。腫瘍分泌微小胞または腫瘍分泌エキソソームとしても知られている腫瘍微小胞は、循環血液中に見出すことができ、免疫抑制活性を有し得る。腫瘍微小胞は、典型的には、直径30~200nmのサイズの範囲である。より大きな腫瘍微小胞は腫瘍巨大小胞と呼ばれることもあり、直径3~10μmのサイズの範囲であり得る。
【実施例】
【0084】
実施例1:ヒドロゲル粒子の生成
UVリソグラフィー用フォトマスクを、CADart Services Inc.社から調達し、AutoCad(AutoDesk,Inc.社)を使用して設計した。SU-8フォトレジスト(Microchem,Inc.社)を、コリメートUV光源(OAI,Inc.社)を使用して4インチのシリコンウェハ上で光架橋して、マイクロ流体デバイス製造用のマスターを作製した。PDMS(ポリジメチルシロキサン、Sigma Aldrich,Inc.社)を、ソフトリソグラフィーおよびマイクロ流体デバイス製造のための標準的な公開された方法を使用して調製および形成した(McDonald JCら、2000,Electrophoresis 21:27-40を参照)。
【0085】
液滴を、2つの油チャネルが水性モノマー溶液の中心の流れを集束し、油中水型エマルジョン中の液滴を分離するflow-focusing形状を使用して形成した。フルオロカーボンオイル(Novec 7500 3M,Inc.社)を、液滴形成用の外側の連続相液体として使用した。重合前に液滴を安定化させるために、界面活性剤を油相に0.5%(w/w)で添加した(Krytox 157 FSHのカルボン酸アンモニウム塩、Dupont社)。塩基性ポリアクリルアミドゲル粒子の作製には、N-アクリルアミド(1~20%(w/v))、架橋剤(N,N’-ビスアクリルアミド、0.05~1%(w/v))、促進剤および過硫酸アンモニウム(1%(w/v))を含む水性モノマー溶液の中心相を用いた。液滴形成後にヒドロゲル粒子重合を引き起こすために、促進剤(N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン2%(体積%))を油相に添加した。
【0086】
いくつかのコモノマーを塩基性ゲル調合物に添加して機能性を付加した。一例では、アリールアクリレートを添加して、粒子の自家蛍光特性をモジュレートした。他の例では、ポリスチレンナノ粒子を低濃度でヒドロゲルマトリックスに添加して、粒子の自家蛍光特性をモジュレートした。蛍光特性はまた、粒子の架橋密度を調整し、架橋および硬化プロセスの反応速度を操作する(例えば、1つもしくはそれを超える促進剤の温度、時間、および/または濃度のうちの1つを変化させる)ことによってもモジュレートされた。塩基性ゲル調合物のコモノマー、ナノ粒子添加剤、および架橋密度をモジュレートして、粒子の蛍光およびスペクトル特性に影響を与え、細胞様バックグラウンド光学応答を模倣する調合物モデルを作製した。具体的には、ゲルマトリックスに組み込まれた様々なコモノマー上に存在する化学側基の種類は、コモノマーの濃度、添加剤、およびコアポリマーの架橋密度と同様に、粒子の蛍光およびスペクトル特性に影響を与える。
【0087】
ヒドロゲル粒子の化学量論的多重化は、化学的に直交する側基(アミン、カルボキシル、マレイミド、エポキシド、アルキンなど)を含むコモノマーを二次標識に利用することによって達成された。
【0088】
本発明者らは、5kHzの平均速度で液滴を形成し、それらをフルオロカーボン油相に回収した。50℃で30分間の重合を完了した後、得られたヒドロゲル粒子を油から水溶液へと洗浄した。
実施例2:ヒドロゲル粒子光学特性の多次元調整
【0089】
図3に示すように、ヒドロゲル粒子の自家蛍光特性は、(ポリスチレンビーズとは異なり)特定の細胞型の細胞様バックグラウンド自家蛍光/スペクトルプロファイルに一致するように多次元で調整することができる。自家蛍光および前方散乱の独立した調整は、コモノマー組成、ナノ粒子添加剤の組成、および/またはヒドロゲル粒子の架橋密度をモジュレートすること/選択的に修正することによって達成することができる。細胞は、光学パラメーター、例えばFSCおよびSSCまたは二次マーカーの組み合わせを使用してデコンボリューションされる。ヒドロゲル粒子は、サイズおよび側方散乱が制限されているポリスチレンビーズとは異なり(
図1A(B)および
図1Bに示される)、特定の細胞型のSSCおよびFSCと正確に一致するように調整される。
図1A(A)は、本明細書に記載の細胞および操作されたヒドロゲルが半透明であり、側方散乱(SSC)を介して内部特徴を解明できることを示す。対照的に、
図1A(B)に示すように、ポリスチレンビーズは不透明であり、直径によって決定される規定の側方散乱を有する。ヒドロゲル粒子は、特定の化学側鎖基および二次標識の化学量論的に調整された比でさらに官能化することができ、固定細胞株のように生物ノイズを受けることなく、任意の細胞型を正確に一致させることができる(
図4を参照されたい)。具体的には、
図4に示すように、官能化ヒドロゲルの多重化能力は、抗原および他のバイオマーカーをヒドロゲルベースポリマーに添加することを可能にし、生成物に更なる「細胞様」次元を付加する。
実施例3:操作されたヒドロゲル粒子とポリスチレン粒子および細胞との比較
【0090】
上記の方法を用いてヒドロゲル粒子を形成し、Beckman Coulter Cytoflex機器のすべての蛍光チャネルで測定した。5umポリスチレンビーズ(BD Biosciences社)を並行して測定した。商業的供給業者から得られた細胞をリン酸緩衝食塩水で泳動させ、Beckman Coulter Cytoflex機器で測定した。
図6は、蛍光補正の原理を実証する、強度対波長/チャネルのプロットである。具体的には、
図6は、蛍光スピルオーバーおよび補正の概念を示す。
図6に示すように、一次検出チャネル(A)は、モデルフルオロフォアについて最も高い強度を示し、一方、チャネルBおよびCは、単一のフルオロフォアからのスピルオーバーまたは残留発光シグナルを示す。そのような値は、より正確な、すなわち「真の」蛍光シグナル強度を計算するために、これらのチャネルで発光する他のフルオロフォアと組み合わせたときに、測定された蛍光シグナルから差し引くことができる。
【0091】
図7A~7Cは、リンパ球細胞と、ポリスチレンビーズと、本開示の操作されたヒドロゲル自家蛍光ヒドロゲル(「フローサイト(FlowCytes)」)との間の蛍光シグネチャーの比較を容易にする。各プロットは、標準的な蛍光検出チャネルと、共通の実験中にその検出チャネルで命名された例示的な抗原標的または生物学的標的とを表す。チャネルは以下の通りである:
・ チャネルFL1-A-チアゾールオレンジ(ThiozolOrange)-A(DNA結合光増感剤)
・ チャネルFL2-A-PerCP-A(PerCPがペリジニン-クロロフィル-タンパク質、すなわち蛍光複合体である、PerCPコンジュゲート化抗体)
・ チャネルFL3-A-CD4 APC-A(分化クラスター(CD)4アロフィコシアニン(APC)抗体)
・ チャネルFL4-A-APC-A700-A(コンジュゲート化抗体)
・ チャネルFL5-A-APC-A750-A(コンジュゲート化抗体)
・ チャネルFL6-A-BV421-1(brilliant violet 421抗体コンジュゲート)
・ チャネルFL7-A-BV510-A(brilliant violet 421抗体コンジュゲート)
・ チャネルFL8-A-Violet610-A蛍光ノナ粒子染料
・ チャネルFL9-A-Violet660-A蛍光ノナ粒子染料
・ チャネルFL10-A-PE-A(フィコエリスリン抗体)
・ チャネルFL11-A-ECO-A
・ チャネルFL12-A-7AAO-A(7-アミノアクチノマイシンD)
【0092】
図7A~7Cに示されるように、フローサイトは、ポリスチレンビーズと比較して、より細胞様の自家蛍光(すなわち、それらの関連する自家蛍光シグネチャーは、リンパ球細胞のものにより近い)を示す。これにより、同じ機器でより大きなダイナミックレンジを測定して、より正確な蛍光補正が可能になる。例えば、
図7Cは、フローサイトが紫外および紫色スペクトルにおいてより低い自家蛍光を有し、より細胞様である(すなわち、ポリスチレンビーズよりもリンパ球細胞に類似している)ことを示す。さらに、フローサイトは、ノイズフロアを減少させ、所与の検出器のダイナミックレンジを増加させることによって、発現が不十分なまたは「弱い(dim)」バイオマーカーのより良好な検出を容易にする比較的高いシグナル対ノイズ比を有する。本明細書に記載のヒドロゲルはまた、合成ビーズ製品を、紫色および紫外範囲で励起または発光する蛍光色素(現在のポリスチレン系製品によって一致させることができない特性)と共に使用することを可能にする。
【0093】
図8Aは、一実施形態による、Alexa 700修飾Abで染色したリンパ球のスペクトルプロファイルであり、
図8Bは、Alexa 700修飾Abで染色した本開示のヒドロゲル粒子(フローサイト)のスペクトルプロファイルである。
図8A~8Bに示されるように、染色されたフローサイトは、r
2=1のピークツーピークマッチを有する細胞様スペクトルシグネチャーを有する。
【0094】
図9は、いくつかの実施形態による、標的細胞の分析のためのサイトメトリーデバイスを較正するための方法を示すフロー図である。
図9に示すように、方法900は、902において、標的細胞(例えば、ヒト細胞)の対応する少なくとも1つの蛍光特性および/または少なくとも1つのスペクトル特性に実質的に類似する(例えば、10%以内)少なくとも1つのバックグラウンド蛍光特性および/または少なくとも1つのスペクトル特性を有するヒドロゲル粒子を得るかまたは生成することを必要に応じて含む。904において、方法900は、サイトメトリーデバイスに少なくとも1つのヒドロゲル粒子(例えば、必要に応じて水性媒体または水溶液中の複数のヒドロゲル粒子)を挿入することを含む。この方法はまた、906において、サイトメトリーデバイスを使用してヒドロゲル粒子の蛍光特性を測定することを含む。
【0095】
図10は、本開示のヒドロゲルを使用した較正ならびに蛍光補正およびスペクトルアンミキシングの計算のためのプロセスを示すフロー図である。
図10に示すように、プロセス1000は、1008において、抗体-フルオロフォアコンジュゲートまたはDNA結合染料(例えば、抗カッパ軽鎖抗体)をヒドロゲル粒子に結合させるためにヒドロゲル粒子を修飾することを含む。1010において、個々の試薬を結合させ、ヒドロゲル粒子をサイトメトリーデバイスに挿入し、その蛍光および/またはスペクトル特性を測定する。次いで、1012において、複数の個々のフルオロフォアについて、蛍光補正マトリックスおよび/またはスペクトルアンミキシングテーブルを計算する。
【0096】
図11A~
図11Dは、いくつかの実施形態による、細胞染色と、ヒドロゲル補正ビーズと、既知の(ポリスチレン系)ビーズ製品との比較を示す棒グラフである。示されているすべての場合において、本開示のヒドロゲルビーズは、より細胞様の特性を示し、優れた補正およびスペクトルアンミキシング性能をもたらす。
図11Aは、既知の製品と比較して、ヒドロゲル補正ビーズの染色指数および分解性能を記載している。
図11Aから分かるように、本開示のヒドロゲル補正ビーズの染色指数は、既知の補正ビーズ製品よりも細胞様である。
図11Bは、既知の補正製品と比較して、染色されたヒドロゲルの平均蛍光強度(MFI)を記載している。
図11Bから分かるように、染色されたヒドロゲル補正ビーズは、既知の補正ビーズ製品と比較してより細胞様のMFIを有する。
図11Cは、既知の補正製品と比較したヒドロゲルのバックグラウンド自家蛍光を記載している。
図11Cから分かるるように、染色されていないヒドロゲル補正ビーズは、広範囲のチャネルにわたって、既知の補正ビーズ製品と比較してより細胞様のバックグラウンド自家蛍光を有する。
図11Dは、既知の補正製品と比較したヒドロゲルのスピルオーバー性能を記載している。
図11Dは、蛍光チャネルのスピルオーバーが、既知の補正ビーズ製品と比較して、本開示のヒドロゲル補正ビーズについて優れていることを示す。
【0097】
図12は、ヒドロゲル粒子の自家蛍光を調整する2つの例示的な方法を示すチャートである:いくつかの実施形態によれば、(1)共鳴コモノマー添加剤のパーセンテージをモジュレートする方法、または(2)ヒドロゲルの架橋密度を変化させる方法。
図12は、ポリスチレンおよび細胞対照の自家蛍光を、これらの例示的なヒドロゲル粒子の自家蛍光と比較する。
図12の左側の表から分かるように、5%の共鳴コモノマー添加剤を用いて調製されたヒドロゲル粒子は細胞様自家蛍光を有する(1050)が、ポリスチレン対照は望ましくないほど高い自家蛍光を有する(9781)。
図12の右側の表から分かるように、10%の架橋密度で調製されたヒドロゲル粒子は細胞様の自家蛍光を有する(1104)が、ポリスチレン対照は望ましくないほど高い自家蛍光を有する(9781)。
【0098】
いくつかの実施形態では、組成物は、水溶液と、水溶液に懸濁されたヒドロゲル粒子とを含む。ヒドロゲル粒子は、標的細胞のバックグラウンド自家蛍光と実質的に類似するバックグラウンド自家蛍光、または標的細胞のスペクトルプロファイルと実質的に類似するスペクトルプロファイルの少なくとも1つを有する。これらの特定の特性は、コモノマー添加剤、調整された硬化反応速度(これらは、時間、温度、および化学的促進剤によって影響を受け、したがって、これらを改変することによって調整することができる)、ならびに低濃度ナノ粒子添加剤の組み合わせを使用して操作されている。これらの特性(自家蛍光およびスペクトルプロファイル)は、非受動的光励起チャネルを使用して特徴付けられ、受動的光学特徴(SSCおよびFSCなど)と区別される。
【0099】
ヒドロゲル粒子はまた、サイトメトリーデバイスによって測定される場合、標的細胞のSSCの10%以内のSSCを有することができる。ヒドロゲル粒子はまた、サイトメトリーデバイスによって測定される場合、標的細胞のFSCの10%以内のFSCを有することができる。
【0100】
ヒドロゲル粒子はまた、約1.15超、または約1.3超、または約1.7超の屈折率を有することができる。
【0101】
ヒドロゲル粒子はまた、約100μm未満、または約10μm未満、または約1μm未満の直径を有することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子はポリマーナノ粒子添加剤を含有する。
【0103】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は化学的に官能化されている。例えば、ヒドロゲル粒子は、遊離アミン基を含むことができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子はアリルアミンを含む。
【0105】
いくつかの実施形態では、標的細胞は免疫細胞である。
【0106】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、液滴を重合することによって生成される。
【0107】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、液滴を重合することによって生成され、ヒドロゲル粒子は、その後、フルオロフォア/蛍光色素をコンジュゲート化または結合させることによって修飾される。修飾ヒドロゲル粒子は、標的細胞の蛍光プロファイルと一致する(例えば、実質的に類似しているか、またはその10%以内である)蛍光プロファイルを有することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子の集団は、複数のヒドロゲル粒子を含み、複数のヒドロゲル粒子からの各ヒドロゲル粒子は、標的細胞のバックグラウンド自家蛍光もしくはスペクトルプロファイルに実質的に類似するバックグラウンド自家蛍光またはスペクトルプロファイルの少なくとも1つを有する。ヒドロゲル粒子の集団は、実質的に単分散であり得る。いくつかのこのような実施形態では、ヒドロゲル粒子の10%以下が、ヒドロゲル粒子の集団の平均直径の約10%を超える平均直径を有する。
【0109】
いくつかの実施形態では、方法は、少なくとも1つのヒドロゲル粒子(例えば、必要に応じて水性媒体または水溶液中の複数のヒドロゲル粒子)をサイトメトリーデバイスに挿入することによって、標的細胞の分析のためにサイトメトリーデバイスを較正することを含む。少なくとも1つのヒドロゲル粒子は、標的細胞のバックグラウンド蛍光特性(例えば、自家蛍光)またはスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似するバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つを有する。この方法はまた、サイトメトリーデバイスを使用してヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性(例えば、較正に関連した特性)を測定することを含む。少なくとも1つの特性は、レーザ間遅延、蛍光応答、ソートタイミング、または蛍光補正のうちの1つまたはそれを超えるものを含むことができる。この方法はまた、必要に応じて、測定された特性に基づいて蛍光補正またはスペクトルアンミキシングの一方を調整することを含む。スペクトルアンミキシングは、混合ピクセルのスペクトルシグネチャーをエンドメンバーのセットおよびそれらの対応する存在量に分解するプロセスである。記載される細胞様試薬を使用した補正およびスペクトルアンミキシングの計算は、ノイズを低減し、所与のフルオロフォアの細胞様精度を高めることによって、広範囲のフルオロフォアを多重化することを可能にする。いくつかの実施形態では、方法はまた、ヒドロゲル粒子をサイトメトリーデバイスに挿入する前に、フルオロフォアを含有する試薬をヒドロゲル粒子に結合させて複合体を形成することと、複合体の少なくとも1つの特性を測定することと、少なくとも1つの測定された特性に基づいて蛍光補正またはスペクトルアンミキシングを計算することとを含む。必要に応じて、この方法はまた、標的細胞の生存率を評価するために修飾ヒドロゲル粒子を使用することを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、コンジュゲート化フルオロフォア(例えば、蛍光色素)に結合する抗体に結合するように修飾されている。
【0111】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、挿入核酸標識試薬またはアミン反応性核酸標識試薬の少なくとも1つに結合するように修飾された修飾ヒドロゲル粒子である。
【0112】
ヒドロゲル粒子は、サイトメトリーデバイスによって測定される場合、標的細胞のSSCの10%以内のSSCを有することができる。代替的または追加的に、ヒドロゲル粒子は、サイトメトリーデバイスによって測定される場合、標的細胞のFSCの10%以内のFSCを有することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、約1.15超、または約1.3超、または約1.7超の屈折率を有することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、約100μm未満の直径、または約10μm未満の直径、または約1μm未満の直径を有することができる。
【0115】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子はポリマーナノ粒子添加剤を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、化学的に官能化されたヒドロゲル粒子である。
【0117】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は遊離アミン基を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子はアリルアミンを含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、標的細胞は免疫細胞である。
【0120】
いくつかの実施形態では、この方法はまた、液滴を重合してヒドロゲル粒子を生成することを含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、ヒドロゲル粒子は、フルオロフォアまたは蛍光色素の1つをコンジュゲート化または結合させることによって修飾されたヒドロゲル粒子であり、修飾されたヒドロゲル粒子は、細胞の蛍光またはスペクトルプロファイルと一致する。
【0122】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞のサイトメトリー測定のための補正値を計算することと、補正値に基づいて標的細胞のサイトメトリー測定を修正することとを含む。標的細胞のサイトメトリー測定のための補正値を計算することは、サイトメトリーデバイスに第1のヒドロゲル粒子を第1の時間に挿入することを含む。第1のヒドロゲル粒子は、標的細胞のバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似するバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つを有する。第1のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性は、サイトメトリーデバイスを使用して測定される。計算することはまた、サイトメトリーデバイスに、第1の時間とは異なる第2の時間に第2のヒドロゲル粒子を挿入することと、サイトメトリーデバイスを使用して第2のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性を測定することとを含む。計算することはまた、補正値を決定するために、第1のヒドロゲル粒子の測定された少なくとも1つの特性と第2のヒドロゲル粒子の測定された少なくとも1つの特性とを比較することを含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、方法は、標的細胞のサイトメトリー測定のための複数の調整値を計算することと、複数の調整値に基づいて標的細胞のサイトメトリー測定を修正することとを含む。標的細胞のサイトメトリー測定のための複数の調整値を計算することは、2つのヒドロゲル粒子であって、標的細胞のバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つと実質的に類似するバックグラウンド蛍光特性またはスペクトル特性の少なくとも1つを有するヒドロゲル粒子からの第1のヒドロゲル粒子と、試薬に結合するように構成されているかまたは試薬に予め結合されているかの一方であるヒドロゲル粒子からの第2のヒドロゲル粒子であって、試薬が、バックグラウンド蛍光特性とは異なる蛍光シグナルおよびスペクトル特性とは異なるスペクトルシグナルの少なくとも一方を生成する試薬である第2のヒドロゲル粒子とをサイトメトリーデバイスに挿入することを含む。標的細胞のサイトメトリー測定のための複数の調整値を計算することはまた、サイトメトリーデバイスを使用して第1のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性および第2のヒドロゲル粒子の少なくとも1つの特性を測定することと、第1のヒドロゲル粒子の測定された少なくとも1つの特性と第2のヒドロゲル粒子の測定された少なくとも1つの特性とを比較して、少なくとも1つの追加の試薬との蛍光の重なりおよび少なくとも1つの追加の試薬とのスペクトルの重なりを決定することとを含む。次いで、標的細胞のサイトメトリー測定は、複数の調整値に基づいて修正される(例えば、少なくとも1つの追加の試薬との蛍光の重なりおよび/または少なくとも1つの追加の試薬とのスペクトルの重なりを含むかもしくはそれに基づく)。
【0124】
サイトメトリーデバイス較正およびサイトメトリー測定補正の文脈で使用されるものとして本明細書に示され記載されているが、本明細書に記載の細胞様ヒドロゲル粒子は、それらの性能および/または精度を改善するために他の用途にも使用することができる。例えば、本開示の細胞様ヒドロゲル粒子と適合する追加の用途として、限定されないが、以下のものが挙げられる:(1)弱いまたは発現が不十分なバイオマーカーについての真のシグナル対ノイズ比を決定するための、機器(その例としては、フローサイトメーター、血液分析計、細胞分析計、または画像ベースのサイトメーターが挙げられる、これらに限定されない)の検出下限(「LLOD」)の設定;(2)細胞様蛍光線形性を捕捉するための光電子増倍管(「PMT」)のゲイン調整;(3)平均蛍光強度(「MFI」)の計算、および(4)蛍光検出(受動的光学特性とは対照的に、能動的光学特性)のための機器の設定および品質管理(「QC」)。
【0125】
様々な特定の実施形態を図示および記載してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができることが理解されよう。
【0126】
本明細書全体および添付の特許請求の範囲で使用される場合、以下の用語および表現は、以下の意味を有することが意図される:
【0127】
不定冠詞「a」および「an」ならびに定冠詞「the」は、文脈上明らかにそうでない場合を除き、単数形および複数形の両方を含むことを意図している。
【0128】
「少なくとも1つ」および「1つまたはそれを超える」とは、物品が列挙された要素の1つまたは1つより多くを含み得ることを意味するために互換的に使用される。
【0129】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分、反応条件などの量、比、および数値特性を表すすべての値は、すべての場合において「約」という用語によって修飾され得ることが企図されていると理解されたい。
【0130】
本明細書で使用される場合、「約」および「およそ」という用語は、一般に、記載された値のプラスまたはマイナス10%を意味し、例えば、約250μmは、225μm~275μmを含み、約1,000μmは、900μm~1,100μmを含むであろう。
【0131】
本開示では、単数形の項目への言及は、特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、複数形の項目を含むと理解されるべきであり、その逆も同様である。文法的な接続詞は、特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、結合された節、文、単語などのありとあらゆる選言的および連言的な組み合わせを表すことを意図している。したがって、「または」という用語は、一般に、「および/または」などを意味すると理解されるべきである。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的な言語(「例えば」、「など」、「含む」など)の使用は、単に実施形態をより明らかにすることを意図しており、実施形態または特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。
【国際調査報告】