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特表2023-511135神経損傷の治療及び/または創傷治癒の促進のための方法及び材料
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】神経損傷の治療及び/または創傷治癒の促進のための方法及び材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20230309BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 31/4406 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/00
A61P17/02
A61P21/00
A61K31/4406
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544182
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-08-19
(86)【国際出願番号】 US2021014442
(87)【国際公開番号】W WO2021150773
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/963,992
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/005,890
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】398071440
【氏名又は名称】ザ・ペン・ステイト・リサーチ・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】The Penn State Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マント,クリステン
(72)【発明者】
【氏名】エルファー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】グッダダランガイアー,ジャガディーシャプラサード マシャニパルヤ
(72)【発明者】
【氏名】ゴビンダッパ,プレム クマール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA16
4C076BB11
4C076BB13
4C076CC01
4C076CC19
4C076DD60
4C076EE23
4C076EE24
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA27
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZA22
(57)【要約】
本明細書は、神経損傷を治療するための方法及び材料に関する。例えば、4-アミノピリジン(4-AP)及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性組成物、ならびに(例えば、神経損傷を治療するために)このような熱応答性組成物を4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の送達システムとして使用するための方法を提供する。また、本明細書は、創傷(例えば、皮膚創傷)を治療するための方法及び材料も提供する。例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物は、創傷(例えば、皮膚創傷)を有する哺乳類に投与(例えば、全身投与)して、創傷を治療(例えば、創傷治癒を促進)することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)温度応答性ポリマーと、(b)4-アミノピリジン(4-AP)または1つ以上の4-APの誘導体とを含む、温度応答性組成物。
【請求項2】
前記熱応答性組成物が、哺乳類の生理学的温度未満のときに液体であり、前記哺乳類の前記生理学的温度以上のときにゲルである、請求項1に記載の熱応答性組成物。
【請求項3】
前記熱応答性組成物が約10℃~約32℃で液体である、請求項2に記載の熱応答性組成物。
【請求項4】
前記熱応答性組成物が約32℃~約37℃でゲルである、請求項2に記載の熱応答性組成物。
【請求項5】
前記熱応答性ポリマーがコポリマーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱応答性組成物。
【請求項6】
前記コポリマーが、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)及びポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項5に記載の熱応答性組成物。
【請求項7】
前記PLGAの分子量が約200~約1900である、請求項6に記載の熱応答性組成物。
【請求項8】
前記PEGの分子量が約1500~約3000である、請求項6に記載の熱応答性組成物。
【請求項9】
前記コポリマーが、約3:5のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEGを含む、請求項6に記載の熱応答性組成物。
【請求項10】
前記熱応答性組成物が4-APを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱応答性組成物。
【請求項11】
前記熱応答性組成物が4-APの誘導体を含み、前記4-APの誘導体が、3,4-ジアミノピリジン、3-ヒドロキシ-4-アミノピリジン、N-(4-ピリジル)-t-ブチルカルバメート、N-(4-ピリジル)エチルカルバメート、N-(4-ピリジル)メチルカルバメート、及びN-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメートからなる群より選択される、請求項1~9のいずれか1項に記載の熱応答性組成物。
【請求項12】
前記熱応答性組成物が、約10nM~約1μMの前記4-APまたは前記4-APの誘導体を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の熱応答性組成物。
【請求項13】
哺乳類内の神経損傷を治療するための方法であって、前記方法が、(a)温度応答性ポリマー及び(b)4-APまたは1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性組成物を、前記哺乳類内の前記神経損傷の上、中、周囲、及び/または近くに投与することを含む、前記方法。
【請求項14】
前記哺乳類がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記神経損傷が圧挫損傷である、請求項13~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記神経損傷が坐骨神経の損傷である、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記熱応答性組成物が、前記哺乳類の生理学的温度未満のときに液体であり、前記哺乳類の前記生理学的温度以上のときにゲルであり、その結果、前記熱応答性組成物が、ひとたび前記神経損傷の上、中、周囲、及び/または近くに投与されると、前記哺乳類内でin situでゲルを形成する、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記ゲルが、約0.5mg/kg~約10mg/kgの前記4-APまたは1つ以上の4-APの誘導体を放出する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ゲルが、前記4-APまたは1つ以上の4-APの誘導体を約60秒~約4週間放出する、請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
哺乳類内の神経損傷を評価するための方法であって、前記方法が、
(a)(i)温度応答性ポリマー及び(ii)4-APまたは1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性組成物を、前記哺乳類内の前記神経損傷の上、中、周囲、及び/または近くに投与することと、
(b)電気刺激を、前記哺乳類内の前記神経損傷の上、中、周囲、及び/または近くに投与することと、
(d)前記神経損傷の神経伝導の有無を検出することと、
(d)前記神経損傷を、少なくとも部分的に前記神経伝導の存在に基づき、軸索連続性を有するものとして分類することと、
(e)前記神経損傷を、少なくとも部分的に前記神経伝導の不在に基づき、軸索連続性を欠くものとして分類することとを含む、前記方法。
【請求項21】
前記哺乳類がヒトである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記神経損傷が運動神経の損傷である、請求項20~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
哺乳類内の創傷を治療するための方法であって、前記方法が、4-APまたは1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物を前記哺乳類に投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
前記哺乳類がヒトである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記創傷が皮膚創傷である、請求項23~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記創傷が、アフターシェーブ創傷、擦過創傷、糖尿病性創傷、褥瘡、手術創傷、吻合部漏出、腱ギャップ、筋肉欠損、多組織破壊、及び潰瘍からなる群より選択される、請求項23~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記投与が全身投与である、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記全身投与が静脈内注射を含む、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月21日に出願された米国特許出願第62/963,992号の利益を主張し、また、2020年4月6日に出願された米国特許出願第63/005,890号の利益を主張する。先行出願の開示内容は、本出願の開示内容の一部とみなされる(そして、参照により本出願の開示内容に組み込まれる)。
【0002】
連邦政府の資金提供に関する声明
本発明は、米国陸軍/MRMCの認可を受けた助成金番号W81XWH-16-1-0725の下、政府支援によって行われた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
1.技術分野
本明細書は、神経損傷の治療のための方法及び材料に関する。本明細書は、例えば、4-アミノピリジン(4-AP)及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性組成物、ならびに(例えば、神経損傷を治療するために)このような熱応答性組成物を4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の送達システムとして使用するための方法を提供する。また、本明細書は、創傷(例えば、皮膚創傷)を治療するための方法及び材料も提供する。例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物は、創傷を有する哺乳類に投与(例えば、全身投与)して、創傷を治療(例えば、創傷治癒を促進)することができる。
【0004】
2.背景情報
外傷性末梢神経損傷(TPNI)は、全外傷患者のおよそ3%に発生する大きな医学的問題である。TPNIは、運動機能及び/または知覚の喪失、疼痛などの一生に及ぶ障害をもたらす恐れがある。TPNIは、軍事的現場では、銃創及び爆風外傷などの戦闘時損傷のように極めて一般的である。TPNIは、神経の圧挫創、伸張、裂傷、及び急性神経圧迫の結果生じる場合もある。これまでのところ、一次手術による修復以外には有効な治療選択肢はなく、一次手術自体は、首尾よく介入するための期間が短い、完全に機能回復するという転帰が稀である、ならびに手術及び長期間の経過観察にコストがかかるといった様々な課題を抱えている。軸索連続性の有無は、TPNIの治療戦略を決定し、機能回復を改善する上で重要な役割を担う。裂傷のような神経損傷の場合は軸索連続性が完全に喪失するが、圧挫損傷の場合は軸索連続性が保持される。高度な電気診断及び画像診断が、軸索連続性を評価する主な方法として日常的に使用されている。しかし、電気診断及び画像診断は、損傷後数週間以内にはいかなる診断結果ももたらさず、そのため数週間または数か月の「監視的待機」が、TPNIによる機能回復不良及び急激な筋肉減少の可能性を高める。逆に、軸索連続性を判断するために早期に神経を外科的探索を用いると、神経が圧挫損傷していた場合に機能回復が不良になる恐れがある。したがって、神経の軸索連続性を識別するための早期診断検査/ツールの必要性が満たされていない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書は、神経損傷の評価及び/または治療のための方法及び材料を提供する。例えば、本明細書は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性組成物(例えば、温度応答性ポリマー組成物)を提供する。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、損傷した神経(例えば、哺乳類内の損傷した神経)の軸索連続性を評価するために使用することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、損傷した神経の軸索連続性を評価するために、哺乳類内の損傷した神経(例えば、神経損傷部位)の上、中、周囲、及び/または近くに送達することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の送達システムとして使用することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、神経損傷を治療するために、哺乳類内の損傷した神経(例えば、神経損傷部位)の上、中、周囲、及び/または近くに送達することができる。
【0006】
本明細書で実証するように、4-APは、ブロックポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)(例えば、ポリ乳酸(PLA)とポリグリコール酸(PGA)とのコポリマー、例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)-b-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ラクチド-co-グリコリド))とポリエチレングリコール(PEG)とを含む、室温では液体であり、相転移を経て体温(例えば、ヒトの場合約37℃)でゲルを形成する熱応答性組成物に製剤化することができる。このような熱応答性組成物は、損傷した神経の上、中、周囲、及び/または近くに液体として注入することができ、損傷部位で4-APを制御放出するためにヒドロゲルをin situで形成して、損傷した神経内で再ミエリン化を促進し、軸索面積を増加させ、及び/または神経伝導速度を高めることができる。また、本明細書で実証するように、熱応答性(4-AP)-PLGA-PEG組成物の局所投与は、神経の連続性がある場合、投与から30分以内に電気刺激に対する筋応答を回復することができる。
【0007】
神経内の軸索連続性の有無を判断することができれば、医師はより効率的及び/または正確に、TPNIを患う患者を評価及び/または治療することができる。例えば、損傷した神経の軸索連続性の有無を確認することで、直ちに治療を行うことができるため、患者の機能回復の可能性を最大限に高め、また、損害を及ぼし得る外科的手術を回避することができる。さらに、温度感受性の制御放出製剤を用いて4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を神経損傷部位に直接送達する能力を有することで、神経損傷を治療するための独自で実現されていない機会がもたらされる。4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を局所的に制御送達することで、ヒトにおける4-APの全身投与で見られ得る副作用(例えば、発作)が回避される。さらに、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を局所的に制御送達することで、不必要な外科的介入及び/または毎日の投与の必要性を回避できる非侵襲的な治療選択肢がもたらされる。
【0008】
概して、本明細書の1つの態様は、a)熱応答性ポリマーと、b)4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体とを含む熱応答性組成物を特徴とする。熱応答性組成物は、哺乳類の生理学的温度未満のときは液体であることができ、哺乳類の生理学的温度以上のときはゲルであることができる。熱応答性組成物は、約10℃~約32℃で液体であることができる。熱応答性組成物は、約32℃~約37℃でゲルであることができる。熱応答性ポリマーはコポリマーであってもよい。コポリマーはPLGA及びPEGを含むことができる。PLGAは、約200~約1900の分子量を有し得る。PEGは、約1500~約3000の分子量を有し得る。コポリマーは、約3:5のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEGを含むことができる。熱応答性組成物は4-APを含むことができる。熱応答性組成物は4-APの誘導体を含むことができる。4-APの誘導体は、3,4-ジアミノピリジン、3-ヒドロキシ-4-アミノピリジン、N-(4-ピリジル)-t-ブチルカルバメート、N-(4-ピリジル)エチルカルバメート、N-(4-ピリジル)メチルカルバメート、N-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメートであり得る。熱応答性組成物は、約10nM~約1μMの4-AP及び/または4-APの誘導体を含むことができる。
【0009】
別の態様において、本明細書は、哺乳類内の神経損傷を治療するための方法を特徴とする。この方法は、a)温度応答性ポリマーと、b)4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体とを含む温度応答性組成物を、哺乳類内の神経損傷の上、中、周囲及び/または近くに投与することを含むか、またはそれから本質的になることができる。哺乳類はヒトであり得る。神経損傷は圧挫損傷であり得る。神経損傷は坐骨神経内の損傷であり得る。熱応答性組成物は、哺乳類の生理学的温度未満のときは液体であることができ、哺乳類の生理学的温度以上のときにはゲルであることができ、その結果、熱応答性組成物は、ひとたび神経損傷の上、中、周囲、及び/または近くに投与されると、哺乳類内でin situでゲルを形成することができる。ゲルは、約0.5mg/kg~約10mg/kgの4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を放出することができる。ゲルは、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を約60秒~約4週間放出することができる。
【0010】
別の態様において、本明細書は、哺乳類内の神経損傷を評価するための方法を特徴とする。方法は、(a)温度応答性ポリマーと、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体とを含む温度応答性組成物を、哺乳類内の神経損傷の上、中、周囲、及び/または近くに投与することと、(b)電気刺激を、哺乳類内の神経損傷の上、中、周囲、及び/または近くに投与することと、(c)神経損傷の神経伝導の有無を検出することと、(d)神経損傷を、少なくとも部分的に神経伝導の存在に基づき、軸索連続性を有するものとして分類することと、(e)神経損傷を、少なくとも部分的に神経伝導の不在に基づき、軸索連続性を欠くものとして分類することとを含むか、またはそれらから本質的になることができる。哺乳類はヒトであり得る。神経損傷は、運動神経内の損傷であり得る。
【0011】
本明細書は、創傷(例えば、皮膚の創傷または内部の創傷)を治療するための方法及び材料も提供する。例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物は、創傷を有する哺乳類に投与(例えば、全身投与)して、創傷を治療(例えば、創傷治癒を促進)することができる。本明細書で実証するように、4-APの全身投与は、標準的な創傷治癒げっ歯類モデルにおいて創傷治癒を促進することができる。例えば、4-APを全身投与することにより、4-APを投与していない対照動物と比較して、3日後に創傷面積を少なくとも10パーセント(例えば、少なくとも20パーセント)低減し、7日までに創傷面積を少なくとも50パーセント(例えば、少なくとも60または70パーセント)の創傷面積の低減することができる。
【0012】
1つの態様において、本明細書は、哺乳類内の創傷を治療するための方法を特徴とする。方法は、4-APまたは1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物を、創傷を有する哺乳類に投与することを含むか、またはそれから本質的になることができる。哺乳類はヒトであり得る。創傷は、皮膚創傷であり得る。創傷は、アフターシェーブ創傷、擦過創傷、糖尿病性創傷、褥瘡、手術創傷、吻合部漏出、腱ギャップ、筋肉欠損、多組織破壊(multi-tissue disruption)、及び潰瘍であり得る。投与は全身投与とすることができる。全身投与は静脈内注入を含むことができる。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書で使用する全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法及び材料が、本発明の実施に使用することができるが、好適な方法及び材料について以下に説明する。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が援用される。矛盾が生じる場合、定義を含めて本明細書が優先されるものとする。加えて、材料、方法、及び実施例は、例示的なものに過ぎず、限定的であるようには意図されていない。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細が、添付の図面及び説明で示される。本発明の他の特性、目的、及び利点は、発明を実施するための形態及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】150μg/kgの4-APによる処置前後のラットの血清4-APレベルの時間依存的UPLC/MS/MS測定値を示すグラフが含まれる。赤色の点線は、血清4-APのヒトの許容限界値(100ng/ml)を示す。グラフは平均値±SEM、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001を示し、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行って求めた。
図2】in situ筋力測定のための例示的な実験セットアップを示す画像が含まれる。坐骨神経下にフォーストランスデューサー(FT10,Grass Instrument)を備えた刺激電極を設置し、坐骨神経を刺激することにより、下腿三頭筋の筋緊張を測定する。
図3A図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図3B図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図3C図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図3D図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図3E図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図3F図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図3G図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図3H図3A~3Hは、圧挫損傷前、及び圧挫損傷後の全身性4-AP(150μg/kg、腹腔内(i.p.))(図3A)及び局所4-APサーモゲル(図3B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図3C及び図3Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図3E及び図3F)ならびにピーク筋緊張(図3G及び図3H)を示す。図E及びGは全身4-AP処置のものであり、図F及びHは局所4-AP処置のものである。データは平均値±SEMとして示し、P<0.05、**P<0.01、***P<0.001は、一元配置分散分析の後にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図4】神経切断損傷させ4-AP(150μg/kg)を腹腔内処置した後の下腿三頭筋の代表的な筋緊張トレースを示すグラフ(A)及び筋緊張実験に由来するAUCを示すグラフ(B)、n=3が含まれる。データは、平均値±SEMで表し、***P<0.001は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5A図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5B図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5C図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5D図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5E図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5F図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5G図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図5H図5A図5Hは、圧挫損傷から3日後の4-AP全身投与(150μg/kg、腹腔内)(図5A)及び局所4-APサーモゲル(図5B)治療のありまたはなしの下腿三頭筋の代表的な筋緊張のトレースを示すグラフ、n=3が含まれる。図5C及び図5Dは、それぞれ全身4-AP処置後及び局所4-AP処置後の筋緊張を圧挫創時に対する増加%として示す。棒グラフは、全身4-AP処置の前後または局所4-AP処置の前後のそれぞれAUC(図5E図5F)ならびにピーク筋緊張(図5G図5H)を示す。図5E及び図5Gは全身4-AP処置のものであり、図5F及び図5Hは局所4-AP処置のものである。データは、平均値±SEMで表し、P<0.05は、一元配置分散分析の次にチューキーの多重比較事後検定を行った結果である。
図6】in vitroの熱ゲル化を示す画像が含まれる。25℃未満の周囲温度では、いずれのポリマーも溶液中に溶解し、溶液に薬物をローディングさせることができる。25℃未満から約30℃に加温すると、サーモゲルの外観が形成され始める。30℃超になると高粘性ゲルが形成される。
図7】4-APをPLGA-PEGに組み込むことができることを示すグラフが含まれる。
図8】様々な薬物濃度におけるPLGA-PEGサーモゲルからの4-APの累積放出量をプロットした折れ線グラフである。
図9】4-AP濃度と共にゲル化温度が上昇することを示すグラフが含まれる。
図10】4-AP濃度と共にゲル化時間が増加することを示すグラフが含まれる。
図11】溶液-ゲル転移が可逆的であることを示すグラフが含まれる。
図12】in vivoで(4-AP)-PLGA-PEGが損傷部位にとどまり、約21日間分解することを示す画像が含まれる。
図13】血清4-AP濃度がヒトの許容限界値を超えないことを示すグラフが含まれる。
図14】(4-AP)-PLGA-PEGが、中等度の坐骨神経圧挫損傷後の運動及び感覚機能を強化することを示すグラフが含まれる。全身4-AP処置を28日間毎日投与した。損傷直後にサーモゲルを圧挫創部位に設置した。
図15】A~Fには、全ての切除創傷手順の画像が含まれる。(A~D)機械式シェーブクリッパーを用いてマウスの背部皮膚毛を脱毛し、市販のNairクリームを塗布することによって毛を除去した。(E及びF)マウスの背部皮膚に生検パンチを使用することによって完全な直径5mmの切除創傷を作成した。
図16】A~Cには、食塩水(対照)または4-APの投与後3日目の創傷閉鎖の画像が含まれる。(A)0日目の直径5mm切除創傷。食塩水処置マウス(B)及び4-AP処置マウス(C)に対応する代表的な創傷閉鎖の写真を示す。3日目の創傷部の直径/幅は、食塩水処置マウスが5mm、4-AP処置マウスが4.0mmであった。
図17】A~Bには、食塩水(対照)または4-APの投与後7日目の創傷閉鎖の画像が含まれる。食塩水処置マウス(A)及び4-AP処置マウス(B)に対応する代表的な創傷閉鎖の写真を示す。7日目の創傷部の直径/幅は、食塩水処置マウスが2.7mm、4-AP処置マウスが1.5mmであった。
図18】A~Bには、食塩水(対照)または4-APの投与後10日目の創傷閉鎖の画像が含まれる。食塩水処置マウス及び4-AP処置マウスに対応する代表的な創傷閉鎖の写真を示す。10日目の創傷部の直径/幅は、食塩水処置マウスが1.0、4-AP処置マウスが0.3mmであった。
図19】4-APが創傷治癒を促進することを示している。マウス背部皮膚切除創に食塩水(対照)または4-APを投与してから3、7、10日後の創傷面積に対し、image J解析を用いて創傷閉鎖率を算出した。
図20】局所的な制御放出送達システムとしての(4-AP)ローディングサーモゲルの模式図。(A)4-AP及びPLGA-PEGのそれぞれの化学構造。(B)両親媒性のポリエステル-PEG-ポリエステルトリブロックコポリマーは、室温では水溶液中で自己集合してミセルとなり、高温では架橋を介して固体ゲルを形成する。(C)4-APは、室温でトリブロックコポリマーに組み込み、液相で動物に注入することができる。ひとたび製剤が体温に達すると、4-APの制御放出のためのヒドロゲルをin situで形成する。
図21】PLGA-PEG、4-AP、及び(4-AP)-PLGA-PEGのH NMRスペクトル。混合物の化学シフトは、PLGA-PEGと混合した場合に、4-APの双方の芳香族プロトンにおいてそれぞれδ8.02→δ7.94、δ6.69→δ6.83と顕著な変化を示した。加えて、PLGA-PEGの脂肪族領域は、混合後にδ1.31からδ1.29に変化した。
図22A】コポリマー水溶液のレオロジー的検討。PLGA-PEG及び2μg/μLの(4-AP)-PLGA-PEGのゲル化温度は、それぞれ31.3℃、32℃であった。
図22B】コポリマー水溶液のレオロジー的検討。ゲル化温度は、4-AP濃度の増加に伴って上昇した。
図22C】コポリマー水溶液のレオロジー的検討。溶液からゲル(ゾル-ゲル)への転移が19秒で生じた。
図22D】コポリマー水溶液のレオロジー的検討。ゾル-ゲル転移は完全に可逆的であり、1228秒で生じた。
図23】37℃のPBS(pH7.4)中PLGA-PEGからの4-APの累積in-vitro放出量。PLGA-PEG担体は、1日以内に4-APのバースト放出を示し、その後およそ28日間、低い維持用量の放出を示した。累積放出量は4-APの総ローディング量に比例した。
図24】(4-AP)-PLGA-PEG投与後のマウスにおける4-APの血清レベルの薬物動態試験。(A)4-AP血清レベルは投与の1時間後にピークに達し、ヒトの許容限界値である100ng/mLは超えなかった。(B)4-APの血清レベルは、21日目にはほぼ検出されなくなった。
図25】(4-AP)-PLGA-PEG注入がマウス坐骨神経に及ぼす影響について小動物超音波検査を用いて調べた。(A)Vevo 3100 40MHz超音波プローブを用いた坐骨神経の縦断的可視化。(B)20Gニードルと神経との識別。(C)注入前の坐骨神経に対するニードルの配置。(D)注入後の坐骨神経上の(4-AP)-PLGA-PEGの可視化。
図26】坐骨神経上の(4-AP)-PLGA-PEGのin vivo生分解性試験。坐骨神経に投与すると、(4-AP)-PLGA-PEGが不透明になり、これによりサーモゲル化が示される。ゲルは、ポリマー分解が制御されたため全体の質量は減少したものの、21日以上にわたり坐骨神経損傷部位に直接とどまった。
【0016】
図27A】(4-AP)-PLGA-PEGの運動及び感覚機能の転帰に及ぼす影響。図27Aは、(4-AP)-PLGA-PEGが、食塩水群、PLGA-PEG群、及び全身4-AP群と比較して、1、3、7、及び14日目に損傷後機能回復(SFI)を改善した(p<0.05)ことを示す。
図27B】(4-AP)-PLGA-PEGの運動及び感覚機能の転帰に及ぼす影響。図27Bは、(4-AP)-PLGA-PEGが、他の全ての処置群と比較して、損傷後3、7、14、21、及び28日目に握力を改善した(p<0.05)ことを示す。
図27C】(4-AP)-PLGA-PEGの運動及び感覚機能の転帰に及ぼす影響。図27Cは、(4-AP)-PLGA-PEGが、食塩水群と比較して、損傷後1、3、7、14、及び21日目に引っ込め反射(フィラメントに対する応答パーセント)を有意に改善した(p<0.05)ことを示す。
図28A】(4-AP)-PLGA-PEGは、外傷性坐骨神経圧挫損傷後の神経再ミエリン化を促進した。図28Aは、損傷後28日目の食塩水処置神経と比較しての(4-AP)-PLGA-PEG処置神経におけるNF-H及びMPZの免疫蛍光を示す。
図28B】(4-AP)-PLGA-PEGは、外傷性坐骨神経圧挫損傷後の神経再ミエリン化を促進した。図28Bは、(4-AP)-PLGA-PEG処置神経が、損傷後28日目の食塩水と比較して、2つの主要なミエリン化マーカーの一方であるNF-Hの蛍光強度が著しく大きくなったことを示す。
図28C】(4-AP)-PLGA-PEGは、外傷性坐骨神経圧挫損傷後の神経再ミエリン化を促進した。図28Cは、(4-AP)-PLGA-PEG処置神経が、損傷後28日目の食塩水と比較して、2つの主要なミエリン化マーカーの一方であるMPZの蛍光強度が著しく大きくなったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書は、神経損傷の評価及び/または治療のための方法及び材料を提供する。例えば、本明細書は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性組成物(例えば、温度応答性ポリマー組成物)を提供する。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の送達システムとして使用することができる。例えば、本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、哺乳類内の損傷した神経(例えば、神経損傷部位)の上、中、周囲、及び/または近くに送達して、損傷した神経の軸索連続性を評価することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、哺乳類内の損傷した神経(例えば、神経損傷部位)の上、中、周囲、及び/または近くに送達して、神経損傷を治療することができる。別の態様において、本明細書は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物、ならびにこのような組成物を使用するための方法を提供する。例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物は、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する哺乳類に投与(例えば、全身投与)して、創傷を治療(例えば、創傷治癒を促進)することができる。
【0018】
本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、温度変化に伴って(例えば、液相からゲル相またはその逆に)相変化することができるポリマー鎖の3次元ネットワークであり得る。いくつかの場合において、熱応答性組成物は、低い温度、例えば、周囲温度(例えば、約22℃などの室温)では液体であることができ、高い温度、例えば、生理学的温度(例えば、37℃などの体温)ではゲルに移行することができる。例えば、熱応答性組成物は、約10℃~約32℃の温度(例えば、約10℃~約30℃、約10℃~約25℃、約10℃~約20℃、約15℃~約32℃、約18℃~約32℃、約20℃~約32℃、約12℃~約30℃、約15℃~約25℃、または約20℃~約22℃)では液体であることができ、約32℃~約37℃の温度(例えば、約33℃~約37℃、約34℃~約37℃、約35℃~約37℃、約32℃~約36℃、約32℃~約35℃、約32℃~約34℃、または約33℃~約35℃)の温度でゲルであることができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物の相転移は可逆的であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物の相転移は不可逆的であり得る。熱応答性組成物が液相で維持され得る温度以下の温度は、下限臨界溶液温度(LCST)と称されることがある。本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、任意の適切なLCSTを有し得る。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物のLCSTは周囲温度(例えば、室温)であり得る。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物のLCSTは、約3℃~約32℃(例えば、約3℃~約28℃、約3℃~約25℃、約3℃~約22℃、約3℃~約20℃、約3℃~約15℃、約3℃~約10℃、約3℃~約5℃、約5℃~約32℃、約10℃~約32℃、約15℃~約32℃、約20℃~約32℃、約22℃~約32℃、約25℃~約32℃、約28℃~約32℃、約5℃~約25℃、約15℃~約20℃、約5℃~約10℃、約10℃~約15℃、約15℃~約20℃、約20℃~約25℃、または約25℃~約30℃)であり得る。熱応答性組成物が(例えば、液相からゲル相またはその逆に)相変化する温度は、転移温度と称されることがある。本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、任意の適切な転移温度を有し得る。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物の転移温度は、生理学的温度(例えば、哺乳類の体温)であり得る。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物の転移温度は、約32℃~約38℃(例えば、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃)であり得る。本明細書に記載の熱応答性組成物のLCST及び/または転移温度は、多くの熱応答性組成物の構造パラメーター、例えば、疎水性含量、熱応答性組成物のアーキテクチャー、熱応答性組成物のモル質量、熱応答性組成物中の疎水性構成要素:親水性構成要素の相対比、及びこれらの任意の組合せの影響を受け得る。
【0019】
いくつかの場合において、本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、生分解性であり得る。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、生物によって(例えば、生物学的プロセスによって)分解され得る。
【0020】
いくつかの場合において、本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、非生分解性であり得る。
【0021】
いくつかの場合において、本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、生体適合性であり得る。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、哺乳類(例えば、ヒト)に投与した場合、副作用(例えば、毒性、刺激、アレルギー、及び/または拒絶反応)はほとんど生じないと考えられる。
【0022】
本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)あるいは本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、4-AP及び/または任意の適切な4-APの誘導体(複数可)を含むことができる。本明細書に記載の熱応答性組成物が1つ以上の4-APの誘導体を含む場合、4-APの誘導体は、4-APの任意の4-AP誘導体であり得る。本明細書に記載の熱応答性組成物に含めることができる4-APの誘導体の例としては、限定されるものではないが、3,4-ジアミノピリジン、3-ヒドロキシ-4-アミノピリジン、N-(4-ピリジル)-t-ブチルカルバメート、N-(4-ピリジル)エチルカルバメート、N-(4-ピリジル)メチルカルバメート、及びN-(4-ピリジル)イソプロピルカルバメートが挙げられる。いくつかの場合において、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体は、以下の式Iに従う構造:
【化1】
を有することができ、式中、R1、R2、R3、R4及びR5はそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、アミン、ヒドロキシル、アルコキシ、カルボキシル、またはC1~C6 アルキルから選択される。例えば、R1、R2、R3、R4、及びR5は、いずれも水素であり得る。いくつかの場合において、4-APまたはその誘導体はカリウムチャネルブロッカーであり得る。いくつかの場合において、4-APまたはその誘導体はカルシウムチャネルアゴニストであり得る。いくつかの場合において、4-APまたはその誘導体は電気的に活性であり得る。いくつかの場合において、4-APまたはその誘導体は遊離塩基の形態をとることができる。いくつかの場合において、4-APまたはその誘導体は、塩(例えば、医薬的に許容される塩)の形態をとることができる。4-APまたはその誘導体が塩の形態をとる場合、その塩は任意の適切な酸(例えば、有機酸または無機酸)を含むことができる。4-APまたはその誘導体と共に塩を形成するために使用することができる酸の例としては、限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、及びマンデル酸が挙げられる。
【0023】
いくつかの場合において、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体は、本明細書の他の箇所に記載の通りであり得る(例えば、米国特許出願公開第2018/0271847号及び米国特許第9,993,429号を参照)。
【0024】
本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)あるいは本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、任意の適切な量の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含むことができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、約10nM(0.01μM)~約1μM(例えば、約0.01μM~約0.9μM、約0.01μM~約0.8μM、約0.01μM~約0.7μM、約0.01μM~約0.6μM、約0.01μM~約0.5μM、約0.01μM~約0.4μM、約0.01μM~約0.3μM、約0.01μM~約0.2μM、約0.01μM~約0.1μM、約0.1μM~約1μM、約0.2μM~約1μM、約0.3μM~約1μM、約0.4μM~約1μM、約0.5μM~約1μM、約0.6μM~約1μM、約0.7μM~約1μM、約0.8μM~約1μM、約0.9μM~約1μM、約0.1μM~約0.9μM、約0.2μM~約0.8μM、約0.3μM~約0.7μM、約0.4μM~約0.6μM、約0.1μM~約0.3μM、約0.3μM~約0.5μM、約0.5μM~約0.7 μM、または約0.7μM~約0.9 μM)の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含むことができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、約5mg~約100mg(例えば、約5mg~約90mg、約5mg~約80mg、約5mg~約70mg、約5mg~約60mg、約5mg~約50mg、約5mg~約40mg、約5mg~約30mg、約5mg~約20mg、約5mg~約10mg、約15mg~約100mg、約25mg~約100mg、約35mg~約100mg、約45mg~約100mg、約55mg~約100mg、約65mg~約100mg、約75mg~約100mg、約85mg~約100mg、約95mg~約100mg、約10mg~約90mg、約20mg~約80mg、約30mg~約70mg、約40mg~約60mg、約10mg~約30mg、約30mg~約50mg、約50mg~約70mg、または約70mg~約90mg)の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含むことができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、約0.01%~約99%(例えば、約0.01%~約90%、約0.01%~約80%、約0.01%~約70%、約0.01%~約60%、約0.01%~約50%、約0.01%~約40%、約0.01%~約30%、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約5%、約0.01%~約1%、約1%~約99%、約5%~約99%、約10%~約99%、約20%~約99%、約30%~約99%、約40%~約99%、約50%~約99%、約60%~約99%、約70%~約99%、約80%~約99%、約90%~約99%、約10%~約90%、約20%~約80%、約30%~約70%、約40%~約60%、約10%~約30%、約30%~約50%、約50%~約70%、または約70%~約90%)の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含むことができる。
【0025】
本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、任意の適切なポリマー(複数可)を含むことができる。ポリマーは、化学反応、すなわち重合によって形成される繰返し構造単位(例えば、モノマー)の分子である。本明細書に記載の熱応答性組成物に含めることができるポリマーの例としては、限定されるものではないが、PLGA、PEG、メトキシポリ(エチレングリコール)(mPEG)、ポリ(L-ラクチド-co-グリコリド)(PLLGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(ラクチドco-カプロラクトン)(PLCL)、ポリ-DL-ラクチド(PDLLA)、ポリ乳酸(PLA)、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。ポリマーは、任意の適切な分子量(MW;例えば、平均MW)を有することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物に含めることができるポリマーの分子量は、約200ダルトン(Da)~約3000Daとすることができる。例えば、ポリマーがPLGAである場合、PLGAのMW(例えば、平均MW)は、約200Da~約1900Da(例えば、約200Da~約1700Da、約200Da~約1500Da、約200Da~約1300Da、約200Da~約1000Da、約200Da~約700Da、約200Da~約500Da、約400Da~約1900Da、約750Da~約1900Da、約1000Da~約1900Da、約1200Da~約1900Da、約1500Da~約1900Da、約1700Da~約1900Da、約500Da~約1700Da、または約1000Da~約1500Da)とすることができる。いくつかの場合において、ポリマーがPLGAである場合、PLGAのMWは約1500Da(PLGA1500)とすることができる。いくつかの場合において、ポリマーがPLGAである場合、PLGAのMWは約1700Da(PLGA1700)とすることができる。例えば、ポリマーがPEGである場合、PEGのMW(例えば、平均MW)は、約1500Da~約3000Da(例えば、約1500Da~約2500Da、約1500Da~約2000Da、約1500Da~約1700Da、約1700Da~約3000Da、約2000Da~約3000Da、約2500Da~約3000Da、約1700Da~約2500Da、約1900Da~約2200Da、約1700Da~約1900Da、約1900Da~約2100Da、または約2100Da~約2500Da)とすることができる。いくつかの場合において、ポリマーがPEGである場合、PEGのMWは約1500Da(PEG1500)とすることができる。別段の指定がない限り、本明細書で提供するポリマーのMWは重量平均MWである。いくつかの場合において、ポリマーはコポリマー(例えば、2つ以上の異なるモノマーの重合から形成することができる)であり得る。ポリマーがコポリマーである場合、コポリマーは任意のタイプのコポリマー(例えば、直鎖状コポリマーまたは分枝状コポリマー)とすることができる。本明細書に記載のように使用することができるコポリマーのタイプの例としては、限定されるものではないが、交互コポリマー、統計コポリマー、グラジエントコポリマー、ブロックコポリマー、及びグラフト化コポリマーが挙げられる。ポリマーは、天然ポリマーであっても合成ポリマーであってもよい。いくつかの場合において、ポリマーは生分解性ポリマーであり得る。いくつかの場合において、ポリマーは生体適合性ポリマーであり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物に含まれるポリマーは、そのポリマー構造中に1つ以上の官能基(例えば、親水性官能基)を含むことができる。本明細書に記載の熱応答性組成物のポリマーに含めることができる官能基の例としては、限定されるものではないが、例えば、アミノ基(例えば、NH)、ヒドロキシル基(例えば、OH)、アミド基(例えば、CONH-及びCONH)、及び硫酸基(例えば、-SOH)が挙げられる。
【0026】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、コポリマーであり得る。コポリマーは、任意の適切な第1のポリマー:第2のポリマーの比を含むことができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物がPLGAコポリマーを含む場合、PLGAは、約1:1のLA:GA~約15:1のLA:GA(例えば、約1:1~約14:1、約1:1~約13:1、約1:1~約12:1、約1:1~約10:1、約1:1から約5:1、約1:1~約5:1、約5:1~約15:1、約8:1から約15:1、約10:1から約15:1、約13:1から約15:1、約3:1から約5:1、約5:1から約10:1、または約10:1~約13:1のLA:GA)を含むことができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物がPLGAコポリマーを含む場合、PLGAは約15:1のLA:GAを含むことができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物がPLGAコポリマーを含む場合、PLGAは、(例えば、重量パーセントで)約50%/50%のLA/GA~約94%/6%のLA/GAを含むことができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物がPLGAコポリマーを含む場合、PLGAは、(例えば、重量パーセントで)約94%/6%のLA/GAを含むことができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物がPLGA-PEGコポリマー(例えば、PLGA-PEGブロックコポリマー)を含む場合、本明細書に記載の熱応答性組成物は、約3:5のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG(例えば、約3:5のPLGA:PEG~約8:1のPLGA:PEG、約3:5のPLGA:PEG~約7:1のPLGA:PEG、約3:5のPLGA:PEG~約6:1のPLGA:PEG、約3:5のPLGA:PEG~約5:1のPLGA:PEG、約3:5のPLGA:PEG~約4:1のPLGA:PEG、約3:5のPLGA:PEG~約3:1のPLGA:PEG、約3:5のPLGA:PEG~約2:1のPLGA:PEG、約3:5のPLGA:PEG~約1:1のPLGA:PEG、約4:5のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約1:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約2:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約3:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約4:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約5:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約6:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約7:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約8:1のPLGA:PEG~約9:1のPLGA:PEG、約4:5のPLGA:PEG~約8:1のPLGA:PEG、約1:1のPLGA:PEG~約7:1のPLGA:PEG、約2:1のPLGA:PEG~約6:1のPLGA:PEG、約3:1のPLGA:PEG~約5:1のPLGA:PEG、約1:1のPLGA:PEG~約3:1のPLGA、約3:1のPLGA:PEG~約5:1のPLGA:PEG、または約5:1のPLGA:PEG~約7:1のPLGA:PEG)を含むことができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物がPLGA-PEGコポリマー(例えば、PLGA-PEGブロックコポリマー)を含む場合、本明細書に記載の熱応答性組成物は、(例えば、重量パーセントで)約37.5%/62.5%のPLGA/PEG~約90%/10%のPLGA/PEG(例えば、約37.5%/62.5%のPLGA/PEG~約80%/20%のPLGA/PEG、約37.5%/62.5%のPLGA/PEG~約70%/30%のPLGA/PEG、約37.5%/62.5%のPLGA/PEG~約60%/40%のPLGA/PEG、約37.5%/62.5%のPLGA/PEG~約50%/50%のPLGA/PEG、約37.5%/62.5%のPLGA/PEG~約40%/60%のPLGA/PEG、約40%/60%のPLGA/PEG~約50%/50%のPLGA/PEG、約60%/40%のPLGA/PEG~約90%/10%のPLGA/PEG、約70%/30%のPLGA/PEG~約90%/10%のPLGA/PEG、約80%/20%のPLGA/PEG~約90%/10%のPLGA/PEG、約40%/60%のPLGA/PEG~約80%/20%のPLGA/PEG、または約50%/50%のPLGA/PEG~約70%/30%のPLGA/PEG)を含むことができる。
【0027】
いくつかの場合において、本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)内のポリマーは、架橋しても、架橋されないようなものであってもよい。
【0028】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、4-AP及びPLGA-PEGコポリマー(例えば、PLGA-PEG-PLGA(例えば、PLGA-PEG-PLGA 1700-1500-1700Da)を含むPLGA-PEGブロックコポリマー)を含むことができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、約10nMの4-AP~約1μMの4-APを含むことができ、約37.5%~約90%のPLGAを含むことができ、約10%~約62.5%のPEGを含むことができる。
【0029】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)あるいは本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、1つ以上の医薬的に許容できる担体(添加物)、賦形剤、及び/または希釈剤を含むことができる。本明細書に記載の組成物で使用することができる医薬的に許容される担体、賦形剤、及び希釈剤の例としては、限定されるものではないが、リン酸緩衝食塩水、スクロース、ラクトース、デンプン(例えば、デンプングリコレート)、セルロース、セルロース誘導体(例えば、微結晶性セルロースなどの修飾セルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース(HPC)及びセルロースエーテルヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)のようなセルロースエーテル)、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ゼラチン、ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、及び架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム))、酸化チタン、アゾ色素、シリカゲル、ヒュームドシリカ、タルク、炭酸マグネシウム、植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸、酸化防止剤(例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、及びセレニウム)、クエン酸、クエン酸ナトリウム、パラベン(例えば、メチルパラベン及びプロピルパラベン)、ペトロラタム、ジメチルスルホキシド、鉱油、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、水、塩、または電解質(例えば、食塩水、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、及び亜鉛塩)、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリアクリレート、ロウ、羊脂、ならびにレシチンが挙げられる。
【0030】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の送達システムとして製剤化することができる(例えば、熱応答性組成物から4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を放出するように製剤化することができる)。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、熱応答性組成物がそのゲル相にあるときに、熱応答性組成物から4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を放出するように製剤化することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、熱応答性組成物からの4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の制御放出送達システムとして製剤化することができる。本明細書に記載の熱応答性組成物を製剤化することができる制御放出送達のタイプの例としては、限定されるものではないが、バースト放出、徐放、遅延放出、及び持続放出が挙げられる。熱応答性組成物を、熱応答性組成物のゲル相から4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体をバースト放出するように製剤化する場合、バースト放出は、熱応答性組成物を哺乳類に投与してから(例えば、熱応答性組成物がゲルを形成してから)約0.5時間~約24時間(例えば、約1時間)、熱応答性組成物中に存在する4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を放出することができる。熱応答性組成物を、熱応答性組成物のゲル相から4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を徐放するように製剤化する場合、徐放は、熱応答性組成物を哺乳類に投与してから(例えば、熱応答性組成物がゲルを形成してから)約60秒~約4週間(例えば、約60分~約3週間)、熱応答性組成物中に存在する4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を放出することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、ゲル相の熱応答性組成物から4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の2つ以上のタイプの制御放出をもたらすように製剤化することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、ゲル相の熱応答性組成物からの4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体のバースト放出をもたらし、続いてゲル相の熱応答性組成物からの任意の残存する4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の徐放をもたらすように製剤化することができる。
【0031】
本明細書は、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)または本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)を使用するための方法及び材料も提供する。
【0032】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物の有効量)は、損傷した神経(例えば、哺乳類内の損傷した神経)の軸索連続性の有無を評価するために使用することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、損傷した神経の軸索連続性を評価するために、哺乳類内の損傷した神経(例えば、神経損傷部位)の上、中、周囲、及び/または近くに送達することができる。任意の適切な方法を使用して、損傷した神経の軸索連続性を評価することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物を哺乳類内の神経損傷部位の上、中、周囲、及び/または近くに送達し、電気刺激を哺乳類内の神経損傷部位の上、中、周囲、及び/または近くに送達し、(例えば、損傷した神経からの)神経伝導を検出することができる。例えば、損傷した神経が運動神経である場合、電気刺激を哺乳類の神経損傷部位の上、中、周囲、及び/または近くに送達し、(例えば、損傷した運動神経からの)筋収縮を検出することができる。神経伝導が存在する場合、神経損傷は軸索連続性を有するものとして分類することができる。神経伝導が存在しない場合、神経損傷は軸索連続性が欠如するものとして分類することができる。
【0033】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物の有効量)は、治療を必要とする哺乳類(例えば、神経損傷を有するヒト)においてそれを行うために使用することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、神経損傷を有する哺乳類に投与してその哺乳類を治療することができる。
【0034】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、神経損傷を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、損傷した神経の機能(例えば、運動機能及び/または感覚機能)を改善することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、神経損傷を有する哺乳類に投与して、損傷した神経の機能を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上改善することができる。
【0035】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、神経損傷を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、神経損傷の1つ以上の症状(例えば、疼痛、敏感性、しびれ、ピリピリ感、刺痛、灼熱感、位置認識の問題、握力低下、及び/または歩行困難)を低減または除去することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、神経損傷を有する哺乳類に投与して、神経損傷の1つ以上の症状を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上低減または除去することができる。
【0036】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、神経損傷を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、損傷した神経のミエリン化を促進することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、神経損傷を有する哺乳類に投与して、損傷した神経のミエリンの量を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上増加させることができる。
【0037】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、神経損傷を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、1つ以上のミエリンポリペプチド(例えば、神経フィラメントH(NF-H)ポリペプチド及び/またはミエリンタンパク質ゼロ(MPZ)ポリペプチド)の発現を高めることができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物で治療した神経は、1つ以上のミエリンポリペプチドの発現を(例えば、4-APを投与しない神経と比較して)少なくとも2倍(例えば、少なくとも約2.5倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5.5倍、少なくとも約7.5倍、または少なくとも約10倍)多く有することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物で治療した神経は、1つ以上のミエリンポリペプチドの発現を(例えば、4-APを投与していない神経と比較して)約2倍~約10倍(例えば、約2倍~約9倍、約2倍~約8倍、約2倍~約7倍、約2倍~約6倍、約2倍~約5倍、約2倍~約4倍、約2倍~約3倍、約3倍~約10倍、約4倍~約10倍、約5倍~約10倍、約6倍~約10倍、約7倍~約10倍、約8倍~約10倍、約9倍~約10倍、約3倍~約9倍、約4倍~約8倍、約5倍~約7倍、約2倍~約4倍、約3倍~約5倍、約4倍~約6倍、約5倍~約7倍、約6倍~約8倍、または約7倍~約9倍)多く有することができる。
【0038】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、神経損傷を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、損傷した神経の面積(例えば、軸索面積)を増加させることができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、神経損傷を有する哺乳類に投与して、損傷した神経の面積を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上増加させることができる。
【0039】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、神経損傷を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、損傷した神経の伝導速度を高めることができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、本明細書に記載の神経損傷を有する哺乳類に投与して、損傷した神経の伝導速度を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上高めることができる。
【0040】
いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、神経損傷を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、損傷した神経の部位を神経再支配することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、神経損傷を有する哺乳類に投与して、損傷した神経の部位への神経分布を、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上改善することができる。
【0041】
いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、哺乳類内の創傷の治癒を促進することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を有する哺乳類に投与して、哺乳類内の創傷治癒を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上促進することができる。
【0042】
いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、哺乳類内の吻合の破壊を低減または除去することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を有する哺乳類に投与して、哺乳類内の吻合の破壊を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上低減することができる。
【0043】
いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、創傷治癒の炎症段階の発生を促進することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を有する哺乳類に投与して、哺乳類内の創傷治癒の炎症段階の発生を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上促進することができる。
【0044】
いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、創傷でのコラーゲン沈着を増加させることができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を有する哺乳類に投与して、哺乳類内の創傷でのコラーゲン沈着を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上増加させることができる。
【0045】
いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、創傷での再上皮化を高めることができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を有する哺乳類に投与して、創傷での再上皮化を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上高めることができる。
【0046】
いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する哺乳類(例えば、ヒト)に投与して、創傷での血管新生を増加させることができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を有する哺乳類に投与して、哺乳類内の創傷での血管新生を、例えば10、20、30、40、50、60、70、80、90、95パーセント、またはそれ以上増加させることができる。
【0047】
神経損傷及び/または創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有する任意の適切な哺乳類を、本明細書に記載のように(例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物を投与することにより)評価及び/または治療することができる。神経損傷及び/または創傷を有し得、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる哺乳類の例としては、限定されるものではないが、ヒト、非ヒト霊長類(例えば、サル)、ウマ、ウシ種、ブタ種、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、及びヤギが挙げられる。いくつかの場合において、神経損傷を有するヒトを、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる。いくつかの場合において、創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有するヒトを、本明細書に記載のように治療することができる。
【0048】
任意のタイプの神経損傷を有する哺乳類を、本明細書に記載のように(例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物を投与することにより)評価及び/または治療することができる。本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる神経損傷のタイプの例としては、限定されるものではないが、末梢神経損傷、外傷性神経損傷、圧挫損傷、伸展神経、圧迫神経(compressed nerve)、圧迫神経(pinched nerve)、創傷(例えば、皮膚創傷)、腸の体性神経損傷、脊髄神経根損傷、及び馬尾が挙げられる。いくつかの場合において、本明細書に記載のように治療することができる損傷した神経は、横断された神経ではない。いくつかの場合において、本明細書に記載のように治療することができる損傷した神経は、切断された神経ではない。いくつかの場合において、損傷した神経は、手根管症候群、坐骨神経痛、糖尿病性創傷、イレウス、または床ずれなどの疾患または障害に関連し得る。
【0049】
本明細書に記載のように(例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物を投与することにより)評価及び/または治療することができる神経損傷は、任意のタイプの神経に影響を及ぼし得る。いくつかの場合において、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる損傷した神経は、感覚ニューロンであり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる損傷した神経は、運動ニューロンであり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載のように評価及び/または治療され得る損傷した神経は、末梢神経(例えば、体性神経)であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる損傷した神経は、神経叢内の神経であり得る。損傷する可能性があり、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる神経のタイプの例としては、限定されるものではないが、坐骨神経、尺骨神経、橈骨神経、正中神経、大腿神経、腸の体性神経、皮膚の体性神経、及び脊髄神経根が挙げられる。
【0050】
本明細書に記載のように(例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物を投与することにより)評価及び/または治療することができる神経損傷は、哺乳類内の任意の位置の神経に影響を及ぼし得る。いくつかの場合において、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる損傷した神経は、哺乳類の脳内の神経であり得る。いくつかの場合において、本明細書に記載のように評価及び/または治療することができる損傷した神経は、哺乳類の脊髄内の神経であり得る。
【0051】
いくつかの場合において、本明細書に記載の方法は、哺乳類を神経損傷を有するものと同定することも含むことができる。哺乳類を神経損傷を有するものと同定するための方法の例としては、限定されるものではないが、理学的検査、電磁界、機能的神経電気刺激法、筋電図、神経伝導検査、及び磁気共鳴画像が挙げられる。ひとたび神経損傷を有するものと同定したら、哺乳類に、本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)を投与するか、または自己投与するように指示することができる。
【0052】
任意のタイプの創傷を有する哺乳類を、本明細書に記載のように(例えば、本明細書に記載の組成物を投与することにより)治療することができる。創傷は、哺乳類の任意の部分(例えば、哺乳類の体の任意の部分)に影響を及ぼし得る。いくつかの場合において、創傷は皮膚(cutaneous)創傷または皮膚(skin)創傷であり得る。いくつかの場合において、創傷は内部創傷(例えば、腹部、筋肉、及び/または血管に関する創傷)であり得る。いくつかの場合において、創傷は軟部組織創傷(例えば、軟部組織の破裂)であり得る。いくつかの場合において、創傷は、吻合部(例えば、腹部吻合部または血管吻合部)を含むことができる。いくつかの場合において、創傷は神経損傷を含むことができる。いくつかの場合において、創傷は、神経の損傷を含まない創傷であり得る。本明細書に記載のように治療することができる創傷の例としては、限定されるものではないが、アフターシェーブ皮膚創傷、擦過皮膚創傷、糖尿病性皮膚創傷、褥瘡、手術創傷、吻合部漏出、腱ギャップ、筋肉欠損、多組織破壊(例えば、異なる層を含む組織破壊)、及び潰瘍(例えば、内部及び外部の潰瘍)、例えば、陰嚢潰瘍、頬のびらん、及び胃腸管潰瘍が挙げられる。
【0053】
いくつかの場合において、本明細書に記載の方法は、哺乳類(例えば、ヒト)を創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を有するものと同定することを含むことができる。任意の適切な方法を使用して、哺乳類を創傷を有するものと同定することができる。例えば、目視検査、理学的検査(例えば、関節の圧痛、腫脹、発赤、及び柔軟性の検査)、及び/または画像検査(例えば、X線及び磁気共鳴画像(MRI)、超音波、コンピューター断層撮影(例えば、血管撮影ありもしくはなしのコンピューター断層撮影)、放射線血管撮影、及び/または磁気共鳴血管撮影)を使用して、哺乳類(例えば、ヒト)を創傷を有するものと同定することができる。
【0054】
本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、それを必要とする哺乳類(例えば、神経損傷を有する哺乳類)に、任意の適切な時期に投与することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、哺乳類が神経損傷を受けてから2週間以内に投与することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、哺乳類が神経損傷を受けてから約1時間~約2週間以内に投与することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物は、哺乳類が神経損傷を有するものと同定されてから2週間以内に投与することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、損傷直後~哺乳類が神経損傷を有するものと同定されてから約2週間以内に投与することができる。
【0055】
本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、それを必要とする哺乳類(例えば、皮膚創傷などの創傷を有する哺乳類)に、任意の適切な時期に投与することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物は、哺乳類が創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)を受けてから2週間以内に投与することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、哺乳類が創傷を受けてから約1時間~約10日以内に投与することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物は、哺乳類が創傷を有するものと同定されてから2週間以内に投与することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を受けた直後~哺乳類が創傷を有するものと同定されてから約2週間以内に投与することができる。
【0056】
本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、それを必要とする哺乳類(例えば、神経損傷を有する哺乳類)に、任意の適切な経路によって投与することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、(例えば、液相の)熱応答性組成物を、哺乳類(例えば、ヒト)内の損傷した神経(例えば、神経損傷部位)の上、中、周囲、及び/または近くに注入することによって投与することができる。いくつかの場合において、注入を開放損傷部位(例えば、開放創傷、及び外科的開口部)に直接適用して、熱応答性組成物が神経損傷部位でゲルを形成できるようにすることができる。いくつかの場合において、注入を、哺乳類(例えば、ヒト)内の損傷した神経を有する組織(例えば、神経損傷部位)の血管(例えば、動脈)供給内に行って、熱応答性組成物が液相で脈管系経由で神経損傷部位に移動し、神経損傷部位でゲルを形成できるようにすることができる。いくつかの場合において、注入を画像ガイド注入とし、イメージング技法を使用して1つ以上の注射針の配置を視覚化することができる。画像ガイド注入に使用することができるイメージング技法としては、限定されるものではないが、超音波、放射線撮影、X線、CT(例えば、単一光子放射型CT)、透視法、ポジトロン放出断層法、及びMRIが挙げられる。
【0057】
本明細書に記載の温度応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む温度応答性ポリマー組成物)は、それを必要とする哺乳類(例えば、神経損傷を有する哺乳類)に、局所投与または全身投与することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、注入により、哺乳類(例えば、ヒト)内の神経(例えば、損傷した神経)の上、中、周囲、及び/または近くに(例えば、液相で)局所的に投与することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、液体として、哺乳類内の損傷した神経の上、中、周囲、及び/または近くに注入することができ、(例えば、熱応答性組成物と神経損傷部位との間の近接性を維持するために)ゲルをin situで形成することができる。本明細書に記載の熱応答性組成物を損傷した神経の近くに注入する場合、熱応答性組成物は、神経損傷部位から約0cm(例えば、損傷した神経に直接隣接)~約200cm以内(例えば、約0cm~約175cm、約0cm~約150cm、約0cm~約125cm、約0cm~約100cm、約0cm~約75cm、約0cm~約50cm、約0cm~約40cm、約0cm~約30cm、約0cm~約20cm、約0cm~約10cm、約1cm~約200cm、約2cm~約200cm、約5cm~約200cm、約10cm~約200cm、約25cm~約200cm、約50cm~約200cm、約75cm~約200cm、約100cm~約200cm、約150cm~約200cm、約1cm~約150cm、約2cm~約125cm、約3cm~約100cm、約5cm~約75cm、約7cm~約50cm、約10cm~約40cm、約12cm~約30cm、約15cm~約20cm、約1cm~約3cm、約3cm~約5cm、約5cm~約8cm、約7cm~約10cm、約10cm~約20cm、約15cm~約50cm、約25cm~約75cm、約50cm~約100cm、約75cm~約125cm、または約100cm~約150cm)に注入することができる。
【0058】
本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)は、それを必要とする哺乳類(例えば、皮膚創傷または内部創傷などの創傷を有する哺乳類)に、局所投与または全身投与することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物は全身投与することができる。例えば、本明細書に記載の組成物は、創傷を有する哺乳類への経口投与または非経口投与(腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、及び皮内の投与を含む)用に設計することができる。経口投与に適した組成物としては、限定されるものではないが、液剤、錠剤、カプセル、丸薬、粉剤、ゲル、及び粒剤が挙げられる。非経口投与に適した組成物としては、限定されるものではないが、水性及び非水性の無菌注射液が挙げられ、このような注射液は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を予定レシピエントの血液と等張にする溶質を含むことができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物は、非経口投与(例えば、腹腔内注入または静脈内注入)用に製剤化することができる。
【0059】
本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)あるいは本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)における4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量(例えば、有効用量)は、神経損傷及び/または創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)の重症度、投与経路、対象の年齢及び一般的健康状態、賦形剤の使用、他の治療処置(例えば、他の薬剤の使用)との同時使用の可能性、及び/または治療担当医師の判断に応じて変化し得る。
【0060】
本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)または本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)における4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量は、哺乳類に著しい毒性をもたらすことなく哺乳類内の神経損傷及び/または創傷(例えば、皮膚創傷もしくは内部創傷)を治療できる任意の量とすることができる。本明細書に記載の熱応答性組成物中の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量は、任意の適切な量とすることができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物中の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量は、約0.5ミリグラム/kg体重(mg/kg)~約10mg/kg(例えば、約0.5mg/kg~約9mg/kg、約0.5mg/kg~約8mg/kg、約0.5mg/kg~約7mg/kg、約0.5mg/kg~約6mg/kg、約0.5mg/kg~約5mg/kg、約0.5mg/kg~約4mg/kg、約0.5mg/kg~約3mg/kg、約0.5mg/kg~約2mg/kg、約0.5mg/kg~約1mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、約3mg/kg~約10mg/kg、約4mg/kg~約10mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約6mg/kg~約10mg/kg、約7mg/kg~約10mg/kg、約8mg/kg~約10mg/kg、約9mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約9mg/kg、約2mg/kg~約8mg/kg、約3mg/kg~約7mg/kg、約4mg/kg~約6mg/kg、約0.5mg/kg~約1mg/kg、約1mg/kg~約3mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、約5mg/kg~約7mg/kg、または約7mg/kg~約9mg/kg)とすることができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物中の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量は、約0.01ナノグラム/ミリリットル血清(ng/mL)~約100ng/mL(例えば、約0.01ng/mL~約90ng/mL、約0.01ng/mL~約80ng/mL、約0.01ng/mL~約70ng/mL、約0.01ng/mL~約60ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約40ng/mL、約0.01ng/mL~約30ng/mL、約0.01ng/mL~約20ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約1ng/mL、約0.1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約10ng/mL~約100ng/mL、約20ng/mL~約100ng/mL、約30ng/mL~約100ng/mL、約40ng/mL~約100ng/mL、約50ng/mL~約100ng/mL、約60ng/mL~約100ng/mL、約70ng/mL~約100ng/mL、約80ng/mL~約100ng/mL、約90ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約90ng/mL、約10ng/mL~約80ng/mL、約20ng/mL~約70ng/mL、約30ng/mL~約60ng/mL、約40ng/mL~約50ng/mL、約1ng/mL~約20ng/mL、約20ng/mL~約40ng/mL、約40ng/mL~約60ng/mL、または約60ng/mL~約80ng/mL)とすることができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物中の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量は、約2mg/kg~約8mg/kg(例えば、約2mg/kg~約7mg/kg、約2mg/kg~約6mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約4mg/kg、約3mg/kg~約8mg/kg、約4mg/kg~約8mg/kg、約5mg/kg~約8mg/kg、約6mg/kg~約8mg/kg、約3mg/kg~約7mg/kg、約4mg/kg~約6mg/kg、約3mg/kg~約5mg/kg、または約5mg/kg~約7mg/kg)とすることができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物中の4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量は、約0.01ng/mL~約100ng/mL(例えば、約0.01ng/mL~約90ng/mL、約0.01ng/mL~約80ng/mL、約0.01ng/mL~約70ng/mL、約0.01ng/mL~約60ng/mL、約0.01ng/mL~約50ng/mL、約0.01ng/mL~約40ng/mL、約0.01ng/mL~約30ng/mL、約0.01ng/mL~約20ng/mL、約0.01ng/mL~約10ng/mL、約0.01ng/mL~約1ng/mL、約0.1ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約100ng/mL、約10ng/mL~約100ng/mL、約20ng/mL~約100ng/mL、約30ng/mL~約100ng/mL、約40ng/mL~約100ng/mL、約50ng/mL~約100ng/mL、約60ng/mL~約100ng/mL、約70ng/mL~約100ng/mL、約80ng/mL~約100ng/mL、約90ng/mL~約100ng/mL、約1ng/mL~約90ng/mL、約10ng/mL~約80ng/mL、約20ng/mL~約70ng/mL、約30ng/mL~約60ng/mL、約40ng/mL~約50ng/mL、約1ng/mL~約20ng/mL、約20ng/mL~約40ng/mL、約40ng/mL~約60ng/mL、または約60ng/mL~約80ng/mL)とすることができる。有効量は一定のままであっても、治療に対する哺乳類の応答に応じてスライディングスケールまたは可変の用量として調整してもよい。様々な因子が、特定の用途に使用する実際の有効量に影響を及ぼし得る。例えば、投与頻度、治療期間、複数の治療薬剤の使用、投与経路、及び損傷した神経の重症度により、投与する実際の有効量を増減する必要が生じ得る。
【0061】
本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)を、(例えば、熱応答性組成物がゲル相のときに)熱応答性組成物から4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を制御放出させるように製剤化する場合、本明細書に記載の熱応答性組成物は、任意の適切な長さの時間で(例えば、熱応答性組成物を哺乳類に投与した後、適切な長さの時間で)、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体の有効量を維持することができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、熱応答性組成物を哺乳類に投与してから(例えば、熱応答性組成物がゲルを形成してから)約1分~約4週間、約3分~約4週間、約5分~約4週間(例えば、約3週間)、哺乳類内で4-AP及び/または4-APの1つ以上の誘導体の有効量を維持することができる。
【0062】
本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)または本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)の投与頻度は、哺乳類に著しい毒性をもたらすことなく哺乳類内の神経損傷及び/または創傷(例えば、皮膚創傷もしくは内部創傷)を治療できる任意の頻度とすることができる。例えば、投与頻度は、約1週間に1回~約2か月に1回、約2週間に1回~約6週間に1回、または約3週間に1回~約1か月に1回(例えば、4週間に1回)とすることができる。投与頻度は、一定のままであっても、治療の持続期間中に可変であってもよい。本明細書に記載の熱応答性組成物を用いた治療期間は、休止期間を含むことができる。例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物は、1か月に1回、6か月間にわたって投与し、続いて休止期間(例えば、1か月または2か月の休止期間)を設けることができ、このようなレジメンを複数回繰り返すことができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)は、哺乳類(例えば、ヒト)内の神経損傷を治療するために1回のみ投与することができる。有効量と同様、様々な因子が、特定の用途に使用する実際の投与頻度に影響を及ぼし得る。例えば、有効量、治療の持続期間、複数の治療薬剤の使用、投与経路、ならびに損傷した神経及び/または創傷の重症度により、投与頻度を増減する必要が生じ得る。
【0063】
本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性ポリマー組成物)または本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物)を投与するための有効な持続期間は、哺乳類に著しい毒性をもたらすことなく哺乳類内の損傷した神経及び/または創傷(例えば、皮膚創傷もしくは内部創傷)を治療する任意の持続期間とすることができる。例えば、有効な持続期間は、数日から数週間、数か月、または数年まで変動し得る。いくつかの場合において、損傷した神経の治療のための有効な持続期間は、約1か月~約6か月の持続期間の範囲とすることができる。複数の因子が、特定の治療に使用する実際の有効な持続期間に影響を及ぼし得る。例えば、有効な持続期間は、投与頻度、有効量、複数の治療剤の使用、投与経路、ならびに治療中の損傷した神経及び/または創傷の重症度によって変動し得る。
【0064】
いくつかの場合において、本明細書に記載の方法は、哺乳類(例えば、神経損傷を有する哺乳類)に、神経損傷の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤(例えば、本明細書に記載の熱応答性組成物(例えば、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性組成物)に加えて1つ以上の薬剤)を投与することも含むことができる。損傷した神経の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤は、神経損傷の治療に使用される任意の適切な薬剤(複数可)を含むことができる。神経損傷の治療に使用することができる薬剤は抗痙攣剤であり得る。いくつかの場合において、神経損傷の治療に使用することができる薬剤は、ステロイド(例えば、コルチコステロイド及びグルココルチコイド)であり得る。いくつかの場合において、神経損傷の治療に使用することができる薬剤は、抗炎症剤(例えば、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID))であり得る。神経損傷の治療に使用することができる薬剤の例としては、限定されるものではないが、ラモトリギン、ガバペンチン、バルプロ酸、トピラメート、ファモトジン、フェノバルビタール、ジフェニルヒダントイン、フェニトイン、メフェニトイン、エトトイン、メホバルビタール、プリミドン、カルバマゼピン、エトスクシミド、メトスクシミド、フェンスクシミド、トリメタジオン。ベンゾジアゼピン、フェナセミド、アセタゾラミド、プロガビド、クロナゼパム、ジバルプロエクスナトリウム、硫酸マグネシウム注入、メタルビタール、パラメタジオン、フェニトインナトリウム、バルプロ酸ナトリウム、クロバザム、スルチアム、ジランチン、ジフェニルラン、L-5-ヒドロキシトリプトファン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、サリチル酸塩(例えば、アスピリン)、プロピオン酸誘導体(例えば、イブプロフェンまたはナプロキセン)、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン)、オキシカム誘導体(例えば、ピロキシカム)、及びフェナム酸(例えば、メフェナム酸(menafemic acid))が挙げられる。神経損傷を有する哺乳類を本明細書に記載の熱応答性組成物で治療し、かつ神経損傷の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤で治療する場合、神経損傷の治療に使用される追加の薬剤(複数可)は、同時にも独立にも投与することができる。例えば、神経損傷の治療に使用される追加の薬剤(複数可)は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む熱応答性組成物中で製剤化し、単一の組成物を形成することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の熱応答性組成物を最初に投与し、神経損傷の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤を2番目に投与することも、その逆に投与することもできる。
【0065】
いくつかの場合において、哺乳類内に存在する神経損傷の重症度及び/または治療中の神経損傷の1つ以上の症状の重症度をモニターすることができる。任意の適切な方法を使用して、哺乳類内に存在する神経損傷の重症度及び/または神経損傷の1つ以上の症状の重症度が低減するかしないかを判定することができる。例えば、理学的検査、電磁界、機能的神経電気刺激技法、筋電図、神経伝導検査、及び/または磁気共鳴画像法を使用して、哺乳類内に存在する神経損傷の重症度及び/または神経損傷の1つ以上の症状の重症度を評価することができる。
【0066】
いくつかの場合において、本明細書に記載の方法は、哺乳類(例えば、皮膚創傷を有する哺乳類)に、創傷の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤(例えば、本明細書に記載の組成物(例えば、4-AP及び/または4-APの1つ以上の誘導体を含む組成物)に加えて1つ以上の薬剤)を投与することを含むことができる。創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤は、創傷を治療するために使用される任意の適切な薬剤(複数可)を含むことができる。いくつかの場合において、創傷の治療に使用することができる薬剤は抗生物質であり得る。いくつかの場合において、創傷の治療に使用することができる薬剤は静菌性であり得る。いくつかの場合において、創傷の治療に使用することができる薬剤は防腐剤であり得る。いくつかの場合において、創傷の治療に使用することができる薬剤は抗真菌剤であり得る。創傷の治療に使用することができる薬剤の例としては、限定されるものではないが、ペニシリン、エリスロマイシン、アモキシシリン、メチシリン、グルコン酸クロルヘキシジン、クロロキシレノール、過酸化水素、ヨード、及び銀(例えば、ナノ結晶銀、スルファジアジン銀、コロイド状銀)が挙げられる。創傷を有する哺乳類を本明細書に記載の組成物で治療し、かつ創傷の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤で治療する場合、創傷の治療に使用される追加の薬剤(複数可)は、同時にも独立にも投与することができる。例えば、創傷の治療に使用される追加の薬剤(複数可)は、4-AP及び/または1つ以上の4-APの誘導体を含む組成物中で製剤化し、単一の組成物を形成することができる。いくつかの場合において、本明細書に記載の組成物を最初に投与し、創傷の治療に使用される1つ以上の追加の薬剤を2番目に投与することも、その逆に投与することもできる。
【0067】
いくつかの場合において、治療中の哺乳類内に存在する創傷(例えば、皮膚創傷または内部創傷)の治癒をモニターすることができる。任意の適切な方法を使用して、哺乳類内に存在する創傷の治癒を判定することができる。例えば、目視検査、理学的検査(例えば、関節の圧痛、腫脹、発赤、及び柔軟性の検査)、及び/または画像検査(例えば、X線、MRI、超音波、コンピューター断層撮影(例えば、血管撮影ありもしくはなしのコンピューター断層撮影)、放射線血管撮影、及び/または磁気共鳴血管撮影)を使用して、哺乳類内に存在する創傷の治癒を評価することができる。
【0068】
以下の実施例で本発明についてさらに説明するが、この実施例は、特許請求の範囲に記載される発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0069】
実施例1:軸索連続性に基づいて外傷性末梢神経損傷(TPNI)を識別する際の診断剤としての4-AP
材料及び方法:
4-APの腹腔内投与
4-アミノピリジンをSigma-Aldrichから入手した。4-APストックを食塩水で調製し、150μg/kgの腹腔内用量をラットに投与した。ラット血清試料のHPLC解析を異なる時点及び異なる4-AP用量について実施し、SDラットにおける150μg/kgの4-AP用量が血清中で許容される4-AP濃度であることが分かった(図1)。
【0070】
血清試料のHPLC解析
Penn State UniversityのCollege of Medicineの質量分析コア施設で、ABSciex 4000 Q Trap質量分析計をWaters Acquity UPLC分離(UPLC/MS/MS)システムと組み合わせたものを用いて、ラット血清試料中の4-APの循環レベルを評価した。
【0071】
4-AP-d4を内部標準物質として使用した。多重反応モニタリングモード(MRM)を使用して4-AP及び4-AP-d4の解析及び定量化を行い、4-APはm/z 95>78、4-AP-d4は99>82の転移を示した。4-APのピーク面積:4-AP-d4のピーク面積の比を4-AP濃度(0.01μM~20μM)に対しプロットすることによって構築した標準曲線を使用することにより、4-APを定量化した。全てのピークをABSciex Multiquan 2.1ソフトウェアによって積分及び定量化した。
【0072】
(4-AP)-PLGA-PEGの製剤化及び神経圧挫創部位への適用
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)-b-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ラクチド-co-グリコリド)1700-1500-1700Da(LA:GA 15:1(94%/6% LA/GA)をPolySciTechから入手した。
【0073】
全ての化学物質をさらに精製することなく使用した。1Xリン酸緩衝食塩水(PBS)及びPLGA-PEGブロックコポリマーを用いて20%重量/体積溶液を作製した。次いで既知量のゲル化溶液を、所望の濃度を達成するように4-APと共にボルテックスした。製剤を局所投与するために、(4-AP)-PLGA-PEGを坐骨神経圧挫創部位に直接ピペッティングした。
【0074】
動物
350~400グラムの雄スプラーグドーリー(SD)ラット(Charles river laboratories)を本試験に使用した。
【0075】
坐骨神経の圧挫損傷/切断損傷直後の筋緊張測定
坐骨神経は下腿三頭筋を神経支配するため、坐骨神経伝導は下腿三頭筋の収縮という観点から測定することができる。この実験セットアップ(図2)に示されているように、坐骨神経を圧挫創部位付近で電気的に刺激し、下腿三頭筋の筋緊張をフォーストランスデューサー(FT10;Grass Instruments)によって測定した。
【0076】
スプラーグドーリー(SD)ラットを3~4%イソフルランで麻酔し、気管にカニューレを挿入し、酸素で平衡させた気化2%イソフルランを用いて肺に機械的人工呼吸(Harvard Apparatus)を行った。坐骨神経及び下腿三頭筋を鈍的剥離によって露出させ、アキレス腱を切断し、編んだ釣糸でフォーストランスデューサーにつなげた。坐骨神経下にシールド付き刺激電極を設置し、刺激電極の遠位で損傷させた。坐骨神経を、圧迫鉗子(Miltex番号18-1107)及びジグによる標準化された圧挫損傷、または精密ハサミによる裂傷に供した。坐骨神経の圧挫損傷を三分岐の3mm近位で行った。下腿三頭筋を40Hz、0.1msパルス、及び運動閾値の2倍以上の電圧で10秒間収縮させた。筋緊張を、損傷前、圧挫創または裂傷の後に、食塩水、または150μg/kgの4-APの腹腔内注射、または(4-AP)-PLGA-PEG局所処置から30分後に測定した。
【0077】
坐骨神経圧挫損傷から3日後の筋緊張測定
誘導チャンバーで、酸素で平衡させた3~5%誘導用量を利用したイソフルランを用いてSDラットを麻酔した。外科的切開部位の周囲領域を機械式バリカンで剃毛した。次いで、滅菌ガーゼを用いて70%エタノール及びベタジンで皮膚を洗浄した。角膜擦過傷を防ぐため、眼科用潤滑剤を適用した。手順中の脱水を防ぐため、等張食塩水を皮下投与した。動物の体温を維持するため、ヒートランプを利用した。手術は、青色の滅菌手術用パッド上で行った。麻酔は、酸素で平衡させた1~2%のイソフルランをノーズコーン経由で供給することで維持した。手術は、ホットガラスビーズで滅菌した器具を用いて行った。
【0078】
大腿後縁に沿った大転子から膝までの2cmの縦方向切開により、坐骨神経を露出させた。大腿二頭筋を鈍的剥離によって切り離して、膝窩及び坐骨神経を露出させた。坐骨神経の圧挫損傷を三分岐の3mm近位で行った。圧迫鉗子(Miltex番号18-1107)及びジグを用いて圧挫損傷を5秒間行った。圧挫神経のセグメントは、Miltex鉗子の先端の2mmゾーンに対応する。手術後、筋肉を6-0モノフィラメントで、皮膚を2-0絹糸で縫合した。感染に対する予防としてその領域にトリプル抗生物質クリームを適用した。イソフルランを中止し、ただしラットが目覚めるまで引き続きノーズコーンによる酸素供給下に置いた。1mg/kgのブプレノルフィンを疼痛管理用に皮下投与した。
【0079】
これらの動物の筋緊張解析を手術から3日後に実施した。3日目に誘導チャンバーで、上記のようにイソフルランを用いてラットを麻酔した。気管にカニューレを挿入し、肺に機械的人工呼吸(Harvard Apparatus)を行った。麻酔を2%イソフルランで維持した。皮膚及び筋肉を連結する縫合部を切断することにより、坐骨神経を再露出させた。アキレス腱を切断し、編んだ釣糸でフォーストランスデューサー(FT10;Grass Instruments)につなげた。シールド付き刺激電極を圧潰損傷付近の坐骨神経下に設置した。下腿三頭筋を40Hz、0.1msパルス、及び最小刺激電圧(運動閾値に相当)で10秒間収縮させた。この最初に測定した筋緊張は圧挫創から3日後の筋緊張に相当し、この実験における基礎的な筋緊張の読取り値であった。ラットに食塩水(0.9%)を腹腔内投与し、30分後に筋緊張を測定した。次いでラットに150μg/kgの4-APを腹腔内投与し、4-AP投与から30分後に筋緊張を測定した。局所4-APの効果を評価するため、左坐骨神経の圧挫損傷部位に(Sal)-PLGA-PEGを適用し、右坐骨神経の圧挫損傷部位に(4-AP)-PLGA-PEGを適用した。
【0080】
データ解析
全ての棒グラフの結果は、平均値±SEMとして示されている。データは、GraphPad PRISM 7(GraphPad Software,San Diego,CA,USA)を用いて解析し、統計解析は、一元配置分散分析と多重比較のためのチューキーの事後検定を用いて実施した。P値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0081】
結果
外傷性神経損傷後の機能回復は、軸索連続性に依存する。TPNIにおいて軸索連続性を識別する上での4-APの効果を評価するため、試験用の2つの異なる神経損傷及び2つの異なる時点を使用した。2つの異なる神経損傷とは、軸索連続性が保持された神経圧挫損傷及び軸索連続性が喪失した神経切断である。臨床現場における外傷性神経損傷後の神経機能の評価は、損傷から数週間~数か月以内に行われ得る。そのため、損傷直後及び損傷から3日後という2つの異なる時点を使用した。
【0082】
神経圧挫損傷直後の4-APの効果について調べるうちに、坐骨神経圧挫損傷では電気刺激に対する応答が完全に消失することが分かった(損傷前は2100gの筋緊張、圧挫後は筋緊張なし)(図3A及びC)。4-AP 150μg/kgの腹腔内単回用量(900gの筋緊張)及び局所4-AP(1700gの筋緊張)は、いずれも電気刺激に対する筋応答を有意に回復させた(図3A及びC)。全身及び局所4-AP処置により、筋応答は圧挫創に対しそれぞれ800%及び1600%増加した(図3B及びD)。同様に、全身(図3E及びF)及び局所4-AP処置(図3G及びH)により、AUC及びピーク筋緊張が有意に増加した。
【0083】
また、神経切断の場合は4-AP処置によって神経伝導が回復しないことも分かった(図4A、B)。このことから、4-APは軸索連続性がある場合にのみ、神経の伝導を改善して電気刺激による筋応答を改善することが示唆される。
【0084】
TPNI後時間が経ってからの4-APの効果を評価するため、神経圧挫損傷から3日後に4-APの効果を調べた。これらの実験では、最大収縮に使用する電圧よりもはるかに低い刺激電圧を使用した。その結果、電気刺激に対する応答はほとんどなかった。そのため、損傷から3日後の筋緊張は最小であった(図5A及びC)。
【0085】
4-AP 150μg/kgの腹腔内単回用量(250gの筋緊張)及び局所4-AP(500gの筋緊張)は共に、低い刺激電圧を用いても電気刺激に対する筋応答を有意に増加させた(図5A及びC)。全身及び局所4-AP処置により、筋応答は圧挫創に対しそれぞれ80%及び250%増加した(図5B及びD)。同様に、全身(図5E及びF)及び局所4-AP処置(図5G及びH)により、AUC及びピーク筋緊張が有意に増加した。
【0086】
実施例2:急性末梢神経損傷に対する局所処置としての(4-AP)-PLGA-PEG
方法
(4-AP)-PLGA-PEGサーモゲル製剤
4-APを、以下の表に示すようにPLGA-PEGブロックコポリマーに組み込んだ。
【表1】
【0087】
(4-AP)-PLGA-PEGのサーモゲル特性
熱ゲル化をin vitroで確認し(図6)、製剤の構造をプロトン核磁気共鳴分光法(H-NMR)により検証した。全てのスペクトルは1×PBS及び5% DOの溶媒中、600mHzで実施した。1.6~2.7は通常、sp2炭素に隣接するHである。3.67のシグナルは通常、電気陰性原子(この場合はO)に隣接するHである。およそ4.7のシグナルは、DOクエンチ(HO/HODピークをもたらす)からのものである。
【0088】
(4-AP)-PLGA-PEGサーモゲルからの4-AP放出
既知量の製剤をチューブに入れ、1×PBSと共に37℃でインキュベートして放出媒体として使用した。放出培地を様々な時点で試料採取し、紫外可視分光光度計を用いて濃度を測定して、経時的な4-AP放出を調べた。
【0089】
神経圧挫損傷モデル
麻酔したマウス(10週齢の雄C57BL6)を、圧力計付き鉗子を用いて30秒間坐骨神経圧挫損傷に供した。圧挫損傷を誘導した直後に、(4-AP)-PLGA-PEGを1.4mg/kgの用量で圧挫創部位に設置した(図12)。ひとたび製剤を神経部位に設置したら直ちにin vivoでゲル化するように、4-APの濃度を最適化した。薬物動態試験では、様々な時点で血液を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いて血清4-APレベルを測定した。いくつかの実験では、(4-AP)-PLGA-PEGの代わりに全身性4-APを2mg/kgの用量で投与した。
【0090】
結果
(4-AP)-PLGA-PEG製剤が溶液-ゲル転移を経る能力についてin vitroで評価した。25℃未満の周囲温度では、いずれのポリマーも溶液中に溶解し、溶液に薬物をローディングすることができた(図6)。疎水性PLGAセグメントは会合性架橋を形成し、親水性PEGセグメントはコポリマー分子を溶液中にとどめた。低温では、親水性PEGセグメントと水分子との間の水素結合が水溶液を支配し、その結果水に溶解した。温度が上昇するに伴って水素結合は弱まり、PLGAセグメント間の疎水性は強化され、溶液-ゲル転移につながった。25~30℃に加温するとサーモゲル外観が形成され始め、30℃超では高粘性ゲルが形成された(図6)。PEG-PLGA-PEGゲルが分解する間、PEGに富む構成要素が優先的に質量減少し、残存するゲルは水性環境下でより疎水化され、その結果水分含量が減少した。
【0091】
H-NMRにより、4-APがPLGA-PEGに首尾よく組み込まれたことが検証された(図7)。4-アミノピリジン(4-AP)のNMRスペクトルはH NMR (DO): δ 8.02 (d, J=5.4 Hz), 6.69 (d, J=5.4 Hz)である。PLGA-PEGについては、H NMR (DO): 3.68 (s), 1.60-1.50 (m), 1.46-1.38 (m), 1.31 (d, J=7.0 Hz)である。しかし、4-APをPLGA-PEGと室温で混合した後は、H NMR (DO): δ 7.94 (d, J=6.4 Hz), 6.83 (d, J=6.4 Hz), 3.68 (s), 1.46-1.38 (m), 1.29 (dd, J=6.8 Hz, 0.8Hz)となった。これらのデータは、混合物の化学シフトが4-APの両方の芳香族プロトンにおいてそれぞれδ8.02→δ7.94、δ6.69→δ6.83になったことを明らかにするものである。また、PLGA-PEGの脂肪族領域が、混合後にδ1.31→δ1.29に変化したことも観察された。これらの化学シフトの変化は、PLGA-PEGと混合したときに4-APの化学環境が変化したことを示すものである。
【0092】
(4-AP)-PLGA-PEGサーモゲルから4-APが放出される能力を評価した(図8)。4-APのin vitro累積放出量は、第1日に治療量を上回る放出量を示し、その後も持続的に放出された(n=3)。累積放出量は4-APのローディング量に比例した。さらに、この製剤は、図8に見られるように、in vitroで3週間以上にわたり4-APを放出し続けた。
【0093】
(4-AP)-PLGA-PEGサーモゲルのさらなる特性についてもin vitroで評価した。10rad/s及び3%歪み、10~40℃、0.5℃/分の加熱率で動的温度掃引を実施して、4-AP濃度がゲル化温度に及ぼす影響を評価した。ゲル化温度は薬物濃度と共に上昇し、10μg/μLではゲル化は観察されなかった(図9A及び9B)。10rad/s及び3%歪み、25℃~37℃、0.5℃/分の加熱率で動的時間掃引を実施して、4-AP濃度がゲル化時間に及ぼす影響を評価した。ゲル化時間は薬物濃度と共に増加した(図10)。可逆性を試験するために37℃~25℃において10rad/s及び3%の歪みで動的時間掃引を実施して、溶液-ゲル転移が反転できるかを評価した。ゲル化が生じる溶液(例えば、10μg/μL未満の濃度)では、ゲル化が完全に可逆的であることが観察された(図11)。
【0094】
製剤を、神経圧挫損傷を有する10週齢のC57BL6マウスで製剤を試験した。(4-AP)-PLGA-PEGは、坐骨神経圧挫創部位に直接設置すると固体ゲルを形成する。図12に見られるように、ゲルは分解し始めたものの、1週間後には依然存在し、神経部位に直接付着していた。
【0095】
薬物動態試験も実施した。図13に示す。4-APの最初のバースト放出は第1日のうちに見られ、血清4-APレベルは1時間で約75.8ng/mLのピークに達した(図13)。局所(4-AP)-PLGA-PEGは、2週間以上にわたり4-APを血清中に放出し続け、血清レベルは1.5~3時間以内に約8.22ng/mLに低下し(図13)、4-APレベルは21日目にはほぼ検出されなくなった(n=9)(図13)。血清レベルはヒトの許容限界値である100ng/mLを通過しなかった。
【0096】
中等度の坐骨神経圧挫損傷に(4-AP)-PLGA-PEGを適用した後に、運動機能及び感覚機能を評価した。
【0097】
図14には、(4-AP)-PLGA-PEGが、中等度の坐骨神経圧挫損傷後の運動及び感覚機能を強化することを示すグラフが含まれる。4-AP-PLGA-PEGを投与したマウスは、損傷の3、5、7、及び14日後に坐骨機能が改善した。この処置は、4-APを最大用量で毎日全身投与する処置を上回った。同様に、5、7、14、21、及び28日目の握力も、サーモゲル群では食塩水対照と比較して有意に改善した。
【0098】
これらの結果は、(4-AP)-PLGA-PEGがin vitro及びin vivoで最大3週間4-APの制御放出を示すことを実証するものである。in vitro及びin vivoの両方で、(4-AP)-PLGA-PEGは第1日のうちに4-APのバースト放出を示し、4-APは1時間で血清中でピークに達した。4-APは、最初にバースト放出された後、およそ3週間、ヒトの許容限界値内の低い維持用量で放出された。このように、熱応答性組成物は、安全な4-APの全身量を送達しながら、治療量を上回る用量を損傷部位に局所的に送達することができる。
【0099】
実施例3:創傷治癒のための全身治療薬としての4-AP
7~8週齢の野生型C57BL/6マウスに背部皮膚切除創傷(直径5mm)を作製した(図15)。マウスに食塩水(対照)または80μgの4-APを毎日14日間全身投与した。全てのマウスを、0、3、7、10、及び14日目に機能的な創傷治癒及び組織再生の画像ベースアッセイに供した。各マウスの創傷のサイズを測定し、デジタル画像からゼロ日目の創傷の直径と比較した。以下の式を使用することにより、創傷閉鎖のパーセンテージを算出した。
【数1】
4-APの全身投与は、食塩水処置マウスと比較して創傷治癒を促進することが観察された(図16図17図18、及び図19)。
【0100】
これらの結果は、4-APが皮膚創傷の治療のための治療薬剤として使用できることを実証するものである。
【0101】
実施例4:急性末梢神経損傷に対する感熱性局所注入処置としての(4-アミノピリジン)-PLGA-PEG
本試験は、局所適用可能な4-AP送達システムの適用性、その薬物動態特性、及びマウスの坐骨神経圧挫損傷後の神経筋機能の回復に及ぼす効果について実証する。4-APを含むPLGA/PEGトリブロックコポリマーを合成し(図20)、その物理化学的特性及び熱ゲル化特性について検討した。
【0102】
材料及び方法
動物
体重25±3グラムの10週齢の雄C57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories,Bar Harbor,Maine)を使用した。
【0103】
ブロックコポリマーの合成
ポリ(ラクチド-co-グリコリド)-b-ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(1700-1500-1700Da、LA:GA 15:1、94%/6% LA/GA、PolySciTech)及び4-アミノピリジン(Sigma-Aldrich)をさらに精製することなく使用した。4-APをPLGA-PEG-PLGAトリブロックコポリマー溶液(PBS、pH7.4、ポリマー濃度:20wt%)に組み込み、完全に溶解するまで4℃で撹拌し、プロトン核磁気共鳴(HNMR)によって特性評価して組成を決定した。H NMR実験は、TCIクライオプローブを備えたBruker Avance II 600MHz装置を用いて実行した。Brukerパルスシークエンスライブラリーからの標準的な飽和前パルスプログラムを使用して、残留DO溶媒を抑制した。試料を室温で調製し、298°Kで実験を実施した。
【0104】
コポリマー水溶液のレオロジー特性評価
小振幅振動せん断実験をTA Instruments製Discovery Hybrid Rheometer(DHR-3)で実施した。レオメーターは直径60mmのステンレス製コーンを備え、切断ギャップは28μm、コーン角度は1°であった。コーンをレオメーターの上部に設置した。レオメーターはトルク及び垂直力両方のためのモーター及びトランスデューサーも収容する。底板は、±0.1℃の精度の温度制御に用いるペルチェ素子で構成されていた。
【0105】
1.2mLの溶液を典型的に底板に20℃で注いで蒸発を最小限にした。ローディングの後は、コーンを測定ギャップ(μm)に導く前に余分な試料を除去するトリミング段階とした。ひとたび測定位置に置いたら、溶液の周囲を有機非干渉性油で覆って水分の蒸発を回避した。油の粘性は水溶液よりはるかに低いため、この油の存在によってトルク信号が影響を受けることはほとんどなかった。室温で油を用いない迅速な実験を行うことで、油を用いて得られた結果を確証した。
【0106】
線形粘弾性限界値を、10rad/秒及び目的温度でのせん断歪み振幅掃引実験によって調べた。調べた温度範囲は10~40℃であった。0.03歪み単位のせん断歪みによって、全体の温度ウィンドウにおける線形粘弾性レジームを確保した。温度掃引試験は全て、10rad/秒及び0.03歪み単位、10℃~40℃、0.5℃/分の加熱率で実施した。測定システムの熱膨張及び得られたギャップの変化は、装置によって自動的に考慮された。これにより、実験に使用する温度に関係なく一定の測定ギャップが確保された。溶液のせん断応答の時間発展を、時間掃引実験によってモニターした。この場合においても、周波数は10rad/秒、せん断歪みは0.03歪み単位とした。周波数掃引実験を0.03歪み単位で、十分に線形粘弾性レジーム内とし、25℃、周波数範囲100~0.1rad/秒で実施した。
【0107】
モニターしたレオロジー関数は以下の通り:貯蔵弾性率G’(材料応答への弾性寄与)、損失弾性率G”(材料応答への粘性寄与)、及び比G”/G’(損失係数tan(δ)(δは、装置が発揮する正弦波入力と出力(材料応答)との間の位相差である))。tan(δ)をゲル化検出のパラメーターとして使用した。
【0108】
in vitro薬物放出
様々な濃度の4-AP(2μg/μL、5μg/μL、及び10μg/μL)を含むポリマー溶液を1.5mL試験管に移し、試料を37℃の水浴中でインキュベートして物理的ヒドロゲルに転換した。次に、各試験管にPBS(pH7.4、37℃)を放出媒体として加え、試料を37℃の水浴中に30日間放置した。指定された時点で試験管から放出媒体を抽出し、同じ量の新鮮なPBSで置き換えてシンク状態を維持した。培地中に放出された4-AP量を紫外可視分光光度計(Thermo Scientific NanoDrop One Spectrophotometer)で測定して、経時的な累積薬物放出量を定量した。
【0109】
マウスにおけるin vivo薬物放出
マウス(n=9)に(4-AP)-PLGA-PEGを1.4mg/kgの体重調整済み用量で投与した。血清を様々な時点で後眼窩から採取し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて血清4-AP濃度を測定し、マウスの血清レベルがヒトの許容限界値である100ng/mL以内であることを確認した。ABSciex 4000 Q Trap質量分析計をWaters Acquity超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)分離システム(UPLC/MS/MS)と組み合わせたものを用いて、マウス血清試料中の4-APの循環レベルを定量した。4-AP-d4を内部標準物質として使用した。多重反応モニタリングモードを使用して4-AP及び4-AP-d4の解析及び定量化を行い、4-APはm/z 95>78、4-AP-d4は99>82の転移を示した。4-APのピーク面積:4-AP-d4のピーク面積の比を4-AP濃度(0.01μM~20μM)に対しプロットすることによって構築した標準曲線を使用することにより、4-APを定量化した。全てのピークをABSciex Multiquan 2.1ソフトウェアによって積分及び定量化した。(4-AP)-PLGA-PEGのin vivo生分解性を評価するため、坐骨神経を週ごとの時点で外科的に露出させてゲルの位置及び質量を観察した。
【0110】
超音波ガイド下の(4-AP)-PLGA-PEG局所注入
(4-AP)-PLGA-PEGを標的神経損傷部位に局所的かつ非侵襲的に投与できるかどうかを検証するため、超音波ガイドを使用して(4-AP)-PLGA-PEGを局所注入した。誘導チャンバーで、5%イソフルランを用いてマウス(n=5)を麻酔し、後肢の毛を動物用バリカンで剃毛した。無菌様式で皮膚の準備処置を施し、マウスハンドリングステージにマウスを腹臥位で置いた。40MHzプローブを備えたVevo 3100(Visual Sonics,Canada)マイクロ超音波機器を使用して、後肢近位の縦断面を画像化した。プローブを手動で使用して後肢の近位及び遠位をスキャンして、坐骨神経を確実に識別した。20Gニードルを手動で後肢に挿入して、最初にその存在を確認し、次いで坐骨神経上に配置した。次いで、20μLの(4-AP)-PLGA-PEGを坐骨神経に注入した。注入後、坐骨神経を外科的に露出させ、ゲルの神経上の設置及び粘着性を確認し、マウスを屠殺した。
【0111】
坐骨神経圧挫損傷のマウスモデル
他の文献に記載されているように圧力計付き鉗子を用いて坐骨神経圧挫損傷を実施した(例えば、Elfar et al,J.Bone Joint Surg. Am.,90:1644-1653(2008)を参照)。簡潔に説明すると、腹腔内(IP)ケタミン(100mg/kg)/キシラジン(10mg/kg)で麻酔した後、右後肢を剃毛し、アルコールスワブ及びポビドンヨード(Betadine)で準備処置を施した。双眼顕微鏡(Model PZMIII,World Precision Instruments)下で、大腿骨の長さに沿って側面の皮膚切開(約2.5cm)を行い、腸脛靱帯を通じて坐骨神経(SN)を鈍的に露出させた。SN三分岐の約3mm近位で較正済み鉗子(先端幅5mm、18-1107、Miltex Instruments)を用いて、4.4MPaの圧力で30秒間圧挫損傷を実施した。皮膚を外科用ステープルで閉鎖し、術後徐放ブプレノルフィン(0.05mg/kg)を鎮痛剤として皮下投与した。実験動物(n=5/群)を、シャム群(生理食塩水、0.1mL/マウス)、食塩水を用いたSN圧挫損傷群(生理食塩水、0.1mL/マウス)、全身性4-APを用いたSN圧挫損傷群(4-AP、10mg/kg)、PLGA-PEGビヒクルを用いたSN圧挫損傷群(PLGA-PEG、坐骨神経損傷部位に約20μL)、及び(4-AP)-PLGA-PEGを用いたSN圧挫損傷群((4-AP)-PLGA-PEG、1.4mg/kg、坐骨神経損傷部位に約20μL)群に、ランダムに割り付けた。全身性4-APを1日1回、28日間腹腔内(IP)投与した。局所群には、圧挫損傷直後に(4-AP)-PLGA-PEGを投与した。損傷後の機能回復を、1、3、7、14、21、及び28日目の歩行軌跡解析(WTA)、感覚神経試験(SNT)、及び握力試験によって評価した。損傷から28日後に動物を安楽死させ、免疫組織化学解析用に坐骨神経を採取した(液体窒素中で瞬間凍結)。
【0112】
坐骨機能指数(SFI)
in vivoの全体的な運動機能の回復を評価するため、他の文献に記載されているように坐骨機能指数(SFI)をWTAによって定量した(例えば、Elfar et al,J.Bone Joint Surg. Am.,90:1644-1653(2008)を参照)。簡潔に説明すると、紙が敷かれた77cm×7cmの通路を自由に歩くようにマウスを訓練し、ベースラインとしての手術前ならびに手術から1、3、7、14、21、及び28日後の個々の後肢の足跡を取得した。各後肢について少なくとも3つの測定可能な足跡を取得した。2名の盲検下観察者がデジタルカリパスを用いて後肢ごとに3つの足跡を測定した。3つのパラメーター:(1)トウスプレッド(toe spread)(TS、第1~5指)、(2)足跡全長(PL)、及び(3)中間トウスプレッド(IT、第2~4指)と、以下の式とを用いてSFIを算出した。
【数2】
【0113】
後肢握力試験
握力計(BIO-GS3;Bioseb-In Vivo Research Instruments)を使用して、後肢の握力を測定した。簡潔に説明すると、マウスを、首筋及び尾の根元を保持することによって拘束した。マウスにグリッドを握らせ、握りを解くまでセンサーグリッドの長さに沿ってマウスを穏やかに引っ張った。力の値を動物ごとに5回記録して、平均握力を算出した。各試験中に足の損傷や癖の形成を最小限に抑えるように配慮した。
【0114】
Von Frey試験
マウスを、ベンチからおよそ25cm上方に金属メッシュの床がある透明なポリカーボネート製チャンバー(約10×10cm)に入れた。動物を試験前に馴化させた。Von Freyフィラメントユニット(NC12775-08,Touch Test(登録商標)Sensory Evaluators)を用いてSNTを実施した。簡潔に説明すると、後肢の足底面にメッシュ床を通してフィラメント圧(1gの力)を印加し、動物が足を引けば陽性応答とみなした。後肢の引っ込め反射を動物ごとに5回記録して、応答パーセントを算出した。
【0115】
坐骨神経処理及び免疫組織化学解析
坐骨神経処理及び免疫組織化学染色を実施した。損傷から28日後にマウスの同側後肢からSNを採取した。神経を4%パラホルムアルデヒド(PFA)溶液で一晩固定し、70%アルコールで洗浄し、パラフィンに包埋した。ミクロトーム(モデルRM2235、Leica)を使用して、パラフィンブロックから5μmの縦断面を連続的に切断した。組織切片を脱パラフィンし、キシレン及びエタノールで順次再水和し、10mMクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を用いて抗原賦活化を実施した。透過処理及び非特異的結合ブロッキングを、それぞれ1% Triton X-100及び5%ヤギ血清を用いて行った。抗NF-H(1:1000;NB300-135,Novus biologicals)及び抗MPZ(1:1000;PZ0,Aves Labs)を用いて一次抗体染色を実施し、続いてAlexa Fluor 488(1:1000;A11008,Invitrogen)及びAlexa Fluor 647(1:1000;A21449;Invitrogen)を用いて二次抗体をインキュベートした。一次抗体なしの染色は、非特異的蛍光の対照とした。DAPIを含むProLong(商標)Gold antifade reagent(P36935;Invitrogen)で核を対比染色し、切片を蛍光顕微鏡(ZEISS Apotome 2)下で観察した。染色した神経組織を解析し、NIH-ImageJソフトウェアを用いて免疫蛍光強度を定量化した。
【0116】
統計解析
全ての結果を平均値±標準誤差(SE)として表した。群間比較のため、平均値の統計的な差を最小有意差(LSD)t検定と、一元配置及び二元配置分散分析(ANOVA)とによって解析した。P値<0.05を有意とみなした。
【0117】
結果
4-APトリブロックコポリマーの特性評価
図21は4-APのNMRスペクトルを示す。H NMR (DO): δ 8.02 (d, J=5.4 Hz), 6.69 (d, J=5.4 Hz). PLGA-PEGについては、H NMR (DO): 3.68 (s), 1.60-1.50 (m), 1.46-1.38 (m), 1.31 (d, J=7.0 Hz)である。4-APをPLGA-PEGと室温で混合した後は、H NMR (DO): δ 7.94 (d, J=6.4 Hz), 6.83 (d, J=6.4 Hz), 3.68 (s), 1.46-1.38 (m), 1.29 (dd, J=6.8 Hz, 0.8Hz)となった。このスペクトルにより、混合物の化学シフトが、4-APの両方の芳香族プロトンにおいてそれぞれδ8.02→δ7.94、δ6.69→δ6.83と顕著な変化が明らかになった。加えて、PLGA-PEGの脂肪族領域は、混合後にδ1.31からδ1.29に変化した。これらの化学シフトの変化の発見は、PLGA-PEGと混合したときに4-APの化学環境が変化することを示すものである。
【0118】
コポリマー水溶液のサーモゲル化可能性
PLGA-PEG-PLGA及び4-APを含むPLGA-PEG-PLGAポリマーはいずれも室温でPBSに可溶であり、温度の上昇と共に溶液からゲルへの(ゾル-ゲル)転移を経た。図22Aは、PLGA-PEG-PLGA及び様々な濃度の4-APを含むPLGA-PEG-PLGAポリマーの弾性率の変化を温度の関数として示す。低温または室温では、損失弾性率G”は貯蔵弾性率G’より高く、溶液を含まない流動相が反映された。温度が上昇するにつれて物理的なヒドロゲルが形成されると共に、急激な弾性率の増加が観察された。PLGA-PEG及び2μg/μLの(4-AP)-PLGA-PEGのG”及びG’のクロスオーバーポイントであるゾル-ゲル転移温度(Tgel)は、それぞれ31.3℃及び32℃であった(図22A)。ポリマー系のゲルウィンドウは体温を網羅していた。このことは、このサーモゲルがバイオメディカル用途に適していることを示すものである。Tgelは、4-AP濃度の上昇に伴って増加した(図22A)。図22C及び22Dは、時間の関数としての弾性率の変化を示す。ゾル-ゲル転移は19秒で生じた(図22C)。そしてこの転移は完全に可逆的であり、1228秒で生じた(図22D)。
【0119】
4-APのin vitro放出
PLGA-PEG-PLGAからの4-APのin vitro放出プロファイルを様々な濃度(2μg/μL、5μg/μL、及び10μg/μL)で評価した。図23は、28日間にわたり放出された4-APの累積量を示す。PLGA-PEGからの4-APの放出は、第1日のうちにバースト放出を示し、その後28日目まで極めて低い維持用量を放出した。累積放出量は4-APの総ローディング量に比例した。
【0120】
4-APのin vivo放出
図24は、(4-AP)-PLGA-PEG投与後の血清4-AP濃度を示す。4-AP血清レベルは、投与の1時間後にピークに達し、ヒトに有害な副作用を引き起こすことが知られているヒトの許容限界値100ng/mLを超えなかった(図24A)。血清中の4-APレベルは、21日間の投与後にほぼ検出されなくなった(図24B)。これは、(4-AP)-PLGA-PEGが、検出可能な量の4-APをin vivoで約21日間、持続的割合で全身に放出したことを示すものである。
【0121】
(4-AP)-PLGA-PEGの超音波ガイド下注入及びin vivo生分解
超音波ガイド下で、坐骨神経の領域に(4-AP)-PLGA-PEGを局所的に注入することができた(図25)。局所組織に対する相対密度に基づき、(4-AP)-PLGA-PEGを注入後に坐骨神経上で可視化することができた(図25D)。ゲルが坐骨神経に正しく投与されたかを判断するため、マウス後肢を露出させて、注入後のゲルの位置及び完全性を観察した。図26に示すように、ゲルは、ポリマー分解が制御されたため全体の質量は減少したものの、21日以上にわたり坐骨神経損傷部位に直接とどまった。
【0122】
(4-AP)-PLGA-PEGのin vivo有効性
4-APの全身投与は、坐骨神経圧挫損傷後の運動機能回復を改善することができる(例えば、Tseng et al.,EMBO Mol.Med.,8:1409-1420(2016)を参照)が、新規の局所適用可能な4-APサーモゲルが損傷部位に及ぼす効果、そして坐骨神経損傷後の機能的転帰に及ぼす効果については不明であった。本明細書で提示した知見は、(4-AP)-PLGA-PEGが、食塩水、PLGA-PEG、及び全身性4-AP群と比較して、1、3、7、及び14日目の損傷後の機能回復(SFI)を改善し得る(図27Ap<0.05)ことを実証するものである。また、(4-AP)-PLGA-PEGは、損傷から3、7、14、21、及び28日後の握力についても、他の全ての治療群と比較して改善した(図27Bp<0.05)。握力によって神経筋機能が検証されるため、このことから、(4-AP)-PLGA-PEG処置が、圧挫損傷後のSFIによって示される全体的な運動機能の改善に比例して随意筋力を改善することが示唆される。
【0123】
運動機能の結果と同様に、(4-AP)-PLGA-PEG処置は、損傷から1、3、7、14、及び21日後に、引っ込め反射(フィラメントに対する応答パーセント)も食塩水群と比較して有意に改善した(図27CP<0.05)。これらの知見は、(4-AP)-PLGA-PEGが圧挫損傷後の感覚神経機能を改善し得ることを実証するものである。このように、全身用量をかなり下回る用量での局所投与は、坐骨神経損傷後の全身及び感覚機能の回復を再現可能で臨床的に意義のある改善をもたらした。
【0124】
(4-AP)-PLGA-PEGが末梢神経再ミエリン化に及ぼす効果
4-APサーモゲルが神経の再ミエリン化に及ぼす効果を判定するため、横断的に切断した神経の大きなミエリン化軸索の構造構成要素であるニューロフィラメントH(NF-H)及びミエリン中に最も豊富に含まれるタンパク質MPZ(ミエリンタンパク質ゼロ)を、免疫組織化学を用いて染色した。免疫蛍光法により、(4-AP)-PLGA-PEG処置した神経のNF-H及びMPZはいずれも、損傷から28日後に食塩水処置した神経と比較して有意な増加が観察された(図28B及び図28C)。(4-AP)-PLGA-PEGで処置した神経の病変部には、ビヒクル処置動物の神経に比べておよそ2.5倍のMPZ及び7.3倍のNF-Hタンパク質が含まれていた。
【0125】
まとめると、これらの結果は、4-APが局所治療薬剤として使用でき、軸索ミエリン化をより良好に保存することで四肢の運動及び感覚機能の回復を促進できることを実証するものである。これらの試験からは、(4-AP)-PLGA-PEGが外傷性末梢神経損傷に対する長時間作用性治療薬として使用され得ることが示唆される。
【0126】
その他の実施形態
本発明を発明を実施するための形態と併せて説明してきたが、上記の説明は例示を意図しており、本発明の範囲を限定することは意図しておらず、本発明の範囲は添付の特許請求によって定義されることを理解されたい。その他の態様、利点、及び変更は以下の特許請求の範囲内にある。
図1
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図27C
図28A
図28B
図28C
【国際調査報告】