(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】車両の自動運転操作中止方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20230309BHJP
B60W 30/08 20120101ALI20230309BHJP
B60W 40/02 20060101ALI20230309BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230309BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20230309BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20230309BHJP
【FI】
B62D6/00
B60W30/08
B60W40/02
G08G1/16 F
B62D119:00
B62D113:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544346
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(85)【翻訳文提出日】2022-07-21
(86)【国際出願番号】 EP2020085698
(87)【国際公開番号】W WO2021151570
(87)【国際公開日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】102020000524.1
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】シュトライター ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】レマン アルビン
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA88
3D232DB11
3D232DC12
3D232DC24
3D232DD02
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3D232EC34
3D232GG01
3D241BA31
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3D241CC17
3D241CE06
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DC25Z
3D241DD02Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC23
5H181LL09
5H181LL20
(57)【要約】
本発明は、車両(3)の自動運転操作中止方法であり、ステアリングシャフト(1)およびステアリングホイール(2)を有するステアリングシステムにおいて車両(3)のドライバーによるステアリング介入によって自動運転機能が無効化され、ステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)がステアリングシャフト(1)でステアリング介入を決定するために測定され、ステアリングホイール角(δ
LR)が更に測定され、ステアリングホイール(2)に作用する手動トルク(M
Hand)は測定されたステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)および測定されたステアリングホイール角(δ
LR)に基づいて推定され、当該推定はステアリングホイール(2)の慣性モーメント(Θ
LR)とステアリングシステム内の摩擦トルク(M
R)とを考慮したステアリングシステムのモデル方程式に基づく。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(3)の自動運転操作を中止するための方法であって、ステアリングシャフト(1)およびステアリングホイール(2)を有するステアリングシステムにおいて前記車両(3)のドライバーのステアリング介入によって自動運転機能が無効化され、前記ステアリング介入を決定するために前記ステアリングシャフト(1)でステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)が測定されるものであり、
ステアリングホイール角(δ
LR)が更に測定され、前記ステアリングホイール(2)に作用する手動トルク(M
Hand)は前記測定されたステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)および前記測定されたステアリングホイール角(δ
LR)に基づいて推定され、
当該推定は、前記ステアリングホイール(2)の慣性モーメント(Θ
LR)と前記ステアリングシステム内の摩擦トルク(M
R)とを考慮した前記ステアリングシステムのモデル方程式に基づいていることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記自動運転機能は、前記ステアリング介入が予め定義可能な無効化閾値を超えた場合に中止されることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、
前記無効化閾値は状況に応じて定義され、特に、前記ドライバーが少なくとも片手で前記ステアリングホイール(2)を握っているかどうか、前記ドライバーが前記車両(3)の前方の交通状況を観察しているかどうか、および/または、前記手動トルク(M
Hand)の作用方向において側面衝突リスクがあるかどうか、によって予め定義されることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
前記無効化閾値は、前記自動運転操作を中止するために、次のように予め定義される、すなわち、
‐前記ドライバーの少なくとも片手が前記ステアリングホイール(2)を握っている場合は、小さい手動トルクで十分であり、
‐前記ドライバーが前記ステアリングホイール(2)をいずれの手でも握っていない場合は、中程度の手動トルクが必要であり、
‐前記ドライバーが前記車両(3)の前方の交通状況を観察していないか、あるいは前記手動トルク(M
Hand)の前記作用方向において前記側面衝突リスクがある場合は、高い手動トルクが必要であることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項5】
請求項3または4のいずれかの一項に記載の方法であって、
前記ドライバーが少なくとも片手で前記ステアリングホイール(2)を握っているかどうかをセンサー、特に静電容量式のステアリングホイールによって検出し、および/または、前記ドライバーを観察するカメラによって、特に視線方向認識によって、前記ドライバーが前記交通状況を観察しているかどうかを検出し、および/または、前記側面衝突リスクが、少なくとも一つの環境センサー、特にレーダー、ライダー、および/または、カメラにより検出されることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかの一項に記載の方法であって、
前記手動トルク(M
Hand)は、前記慣性モーメント(Θ
LR)および前記ステアリングホイール角(δ
LR)の第2次導関数から形成される積と、前記摩擦トルク(M
R)および前記ステアリングホイール角(δ
LR)の第1次導関数(回転方向に依存する)の積とを、前記測定されたステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)から引くことで推定されることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
二つの前記導関数は、ローパスフィルタリング、特に3次ベッセルフィルターを介して計算されることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項8】
請求項6または7のいずれかの一項に記載の方法であって、
パラメーター化モードは、前記ドライバーによって手動トルク(M
Hand)が加えられない場合に提供され、ステアリングアクチュエーターは、シミュレートされたステアリングトルク(M
Sim)の予め定義されたパルスを前記ステアリングシャフト(1)に適用するように横方向コントローラーによって制御され、前記シミュレートされたステアリングトルク(M
Sim)は、前記測定されたステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)と比較され、慣性モーメント(Θ
LR)と摩擦トルク(M
R)とオプションでデッドタイム(T
t)とによって構成されるパラメーターは、前記シミュレートされたステアリングトルク(M
Sim)が前記測定されたステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)に一致するようにモデル化されることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれかの一項に記載の方法であって、
オフセットトルク(M
off)および/または測定フィルター(1/(T
Mess・s+1))が更に考慮されることを特徴とする、車両の自動運転操作中止方法。
【請求項10】
ステアリングシャフト(1)およびステアリングホイール(2)を有する車両(3)において、自動運転機能が前記車両(3)に実装されるとともに前記ステアリングシステムにおいて前記車両(3)のドライバーのステアリング介入によって無効化されるものであり、トルクセンサー(5)が前記ステアリングシャフト(1)でステアリングシャフトトルク(M
Mess_Lenkstange)を測定するために設けられ、
前記車両(3)に、ステアリングホイール角(δ
LR)を測定するためのステアリングホイール角センサー(6)および制御ユニット(4)が配置され、前記制御ユニット(4)は請求項1~9のいずれかの一項に記載の方法を実行するように構成される、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の自動運転操作、特に高度に自動化された運転操作の中止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DE 102016007187 A1から、自動運転操作は、車両のステアリングホイールに対し、ドライバーによって与えられる手動ステアリングトルクに応じて中止することが知られている。
DE 102006057842 A1から、状況に応じて予め定義可能な閾値をステアリングホイールの作動範囲の絶対値が超えた場合、車両の横方向制御機能が、ドライバーによるステアリングホイールへの作動によって中止されることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、手動(マニュアル)ステアリングトルクは、トルクセンサー、特にトーションバーセンサーによってステアリングシャフト上で測定される。ステアリングシャフトで測定されたステアリングトルクが実際に与えられた手動ステアリングトルクに対応すると推測される。但し、この推測は、特にシステムの迅速なステアリングへの介入の場合、正しくない。測定されたステアリングトルクが、実際に加えられた手動トルクからかなり逸脱する可能性がある。これは、実際に加えられた手動ステアリングトルクではなく、測定されたステアリングトルクによって中止基準が満たされた場合に、自動運転操作の望まない中止につながる可能性がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、車両の自動運転操作、特に、高度に自動化された運転操作を中止するための改善方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
目的は、本発明に従って、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明に係る車両の自動運転機能を中止するための方法では、自動運転機能は、ステアリングシャフトおよびステアリングホイールを有するステアリングシステムにおいて前記車両のドライバーのステアリング介入によって無効化される。前記ステアリング介入を決定するために、前記ステアリングシャフトでステアリングシャフトトルクが測定される。本発明の一態様によれば、ステアリングホイール角が更に測定され、前記ステアリングホイールに作用する手動トルクは前記測定されたステアリングシャフトトルクおよび前記測定されたステアリングホイール角に基づいて推定される。前記推定は、前記ステアリングホイールの慣性モーメントと前記ステアリングシステム内の摩擦トルクとを考慮した前記ステアリングシステムのモデル方程式に基づいている。
【0008】
本発明によれば、手動トルクは、測定されたステアリングシャフトステアリングシャフトトルクおよび測定されたステアリングホイール角から推定されるが、当該推定がステアリングホイールのイナーシャとステアリングシステム内の摩擦トルクとを考慮したステアリングシステムのモデル方程式に基づいている。
【0009】
本発明に係る方法は、先行技術で知られている方法よりも手動トルクのよりロバストな推定を提供し、意図しない中止に対してよりロバストである。
【0010】
本発明に係る方法は、ステアリングホイール上にトルクセンサーが設けられていない場合に、ステアリングホイール上でドライバーによって加えられた正確な手動トルクを推定するために使用される。自動運転中、推定された手動トルクは、ドライバーが車両の制御を引き継ぐか否かを検出するために継続的にモニタリングされる。
【0011】
本発明に係る方法は、ドライバーによりステアリングホイールに与えられた手動トルクのより正確な推定が可能になるよう、横方向コントローラーによって取り込まれたトルクを除外する。これは、ドライバーの制御を引き継ぐ意図の検出とオートパイロットの無効化が手動トルクに応じて実行されるため、自動運転操作中に特に有利である。
【0012】
ひとつの実施形態において、前記自動運転操作は前記ステアリング介入が予め定義可能な無効化閾値を超えた場合に中止される。
【0013】
ひとつの実施形態において、前記無効化閾値は状況に応じて定義され、特に、前記ドライバーが少なくとも片手で前記ステアリングホイールを握っているかどうか、前記ドライバーが前記車両の前方の交通状況を観察しているかどうか、および/または、前記手動トルクの作用方向において、側面衝突リスクがあるかどうか、によって定義される。
【0014】
ひとつの実施形態において、前記無効化閾値は、前記自動運転操作を中止するために、次のように予め定義されている。
‐前記ドライバーの少なくとも片手が前記ステアリングホイールを握っている場合は、小さな手動トルクで十分であり、
‐前記ドライバーが前記ステアリングホイールを手で握っていない場合は、中程度の手動トルクが必要であり、
‐前記ドライバーが前記車両の前方の前記交通状況を観察していないか、あるいは前記手動トルクの前記作用方向において前記側面衝突リスクがある場合は、高い手動トルクが必要である。
【0015】
特に、十分に小さい手動トルクは予め定義された第一閾値よりも絶対値が大きい手動トルクを意味し、必要な中程度の手動トルクは予め定義された第二閾値よりも絶対値が大きい手動トルクを意味し、必要な高い手動トルクは予め定義された第三閾値よりも絶対値が大きい手動トルクを意味することとしてここでは理解されるとともに、第一閾値は第二閾値よりも小さく、第二閾値は第三閾値よりも小さいことを意味することとして理解される。例えば、十分に小さい手動トルクが3Nmの値であり、必要な中程度の手動トルクが6Nmの値であり、必要な高い手動トルクが8Nmの値である。
【0016】
ひとつの実施形態において、センサーによって、特に静電容量式のステアリングホイールによって、前記ドライバーが少なくとも片手で前記ステアリングホイールを握っているかどうかを検出し、および/または、前記ドライバーを観察するカメラによって、特に視線方向認識の手段によって、前記ドライバーが前記交通状況を観察しているかどうかを検出し、および/または、前記側面衝突リスクが、少なくとも一つの環境センサー、特にレーダー、ライダー、および/または、カメラにより検出される。
【0017】
ひとつの実施形態において、前記手動トルクは、前記慣性モーメントおよび前記ステアリングホイール角の第2次導関数から形成される積と、前記摩擦トルクおよび前記ステアリングホイール角の第1次導関数(回転方向に依存)の積とを、前記測定されたステアリングシャフトトルクから引くことで推定される。
【0018】
ひとつの実施形態において、二つの前記導関数(時間微分)はローパスフィルタリング、特に、3次ベッセルフィルターを介して計算される。前記ステアリングホイール角は、計時方法で決まる離散時間変数である。そのような変数の導関数(時間微分)の決定は、離散化(不連続性)によってより高い騒音への寄与につながりうる。この問題はローパスフィルターによって軽減される。
【0019】
ひとつの実施形態において、パラメーター化モードは、前記ドライバーによって手動トルクが加えられない場合に提供され、ステアリングアクチュエーターは、シミュレートされたステアリングトルクの予め定義されたパルスを前記ステアリングシャフトに適用するように横方向コントローラーによって制御され、前記シミュレートされたステアリングトルクは、前記測定されたステアリングシャフトトルクと比較され、慣性モーメントと摩擦トルクとオプションでデッドタイム(例えば測定データのCAN送信)とによって構成されるパラメーターは、前記シミュレートされたステアリングトルクが前記測定されたステアリングシャフトトルクに一致するようにモデル化される。
【0020】
ひとつの実施形態において、オフセットトルクおよび/または測定フィルター(特に測定装置によるローパス効果)が更に考慮される。
【0021】
本発明の一態様によれば、車両は、ステアリングシャフトおよびステアリングホイールを備えたステアリングシステムを有し、自動運転機能が前記車両に実装されるとともに前記ステアリングシステムにおいて前記車両のドライバーのステアリング介入によって無効化されるものであり、トルクセンサーは、前記ステアリングシャフトでステアリングシャフトトルクを測定するために設けられ、ステアリングホイール角を測定するためのステアリングホイール角センサーおよび制御ユニットは前記車両に配置され、前記制御ユニットは上記の方法を実行するように構成される。
【0022】
本発明の例示的な実施形態は以下、図面を参照してより詳細に説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ステアリングホイール付きのステアリングシャフトの模式図を示す。
【
図2】シミュレートされたステアリングトルクおよび測定されたステアリングシャフトトルクの時間曲線を示す模式的なグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
互いに対応する部品には、全ての図の中で同じ参照符号が付けられている。
【0025】
図1は、車両3の、特に自動車用のステアリングホイール2を有するステアリングシャフト1の模式図を示す。
【0026】
本発明に係る方法では、ステアリングシャフト1においてステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeが、例えばトルクセンサー5によって測定される。更に、ステアリングホイール角δLRが、例えば回転角度センサー6によって測定される。ステアリングホイール2に作用する手動トルクMHandは測定されない。本方法は、ステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeから手動トルクMHandを決定するために使用される。
【0027】
車両3におけるステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeを測定することにより、手動トルクMHandを間接的に決められることが知られている。ステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeは、例えば、車両3のステアリングシステム上にあるステアリングシャフト1に配置されたひずみセンサーによって測定される。ステアリングホイール2の手動トルクMHandがステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeに等しいという仮定は、遅いステアリング動作での自動運転中に有効であるとみなせるが、迅速な自動ステアリング動作では、これらもトルクを導入するため、有効であるとはみなせない。
【0028】
本発明によれば、ステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeを、例えば、前記のひずみセンサーを使用して、あるいは、ステアリングホイール2上の回転角度センサー6を更に使用して、決定する方法が提案されている。本方法は、例えば、ステアリングシャフト1の摩擦モーメントMRおよびステアリングホイール2の慣性モーメントΘLRといったパラメーターによってモデル化され、それは車両3の測定データから得ることができる。本方法は、例えば摩擦トルクMRや慣性モーメントΘLRといった特定されたシステムパラメーターの認識と共に例えばセンサーのような2つの情報源を使用して、残りのトルクが少なくともステアリングホイールに実際に加えられる手動トルクと実質的に同等になるようこのトルクをフィルターで除外するため、迅速な自動ステアリング動作により導入されるトルクの推定が可能となる。
【0029】
ステアリングシステムの以下のモデル方程式をもとに手動ステアリングトルクMHandを算出する(複素周波数sによる周波数領域の方程式)。
【0030】
【0031】
【0032】
ステアリングホイール角δLRは時計回りに決定された不連続(離散)時間変数である。減算によるそのような変数の時間微分を決定することは、離散化によって大きいノイズにつながりうる。従って、時間微分は、3次ベッセルフィルターによるローパスフィルタリングを介して計算されることが好ましい。そして以下が妥当となる。
【0033】
【0034】
分母N3ter_O_Besselは、3次ベッセル多項式(N3ter_O_Bessel=s3+6s2+15s+15)を表す。ベッセルフィルタリングの利点は線形位相遅延、つまり、通過帯域での一定の群遅延にある。ベッセルフィルタリングは、位相遅延をもたらす。この位相遅延によるエラーを回避するためには、方程式の全ての要素が同じ位相遅延を発生していなければならない。したがって、方程式の全ての要素は、分母N3ter_O_Besselによって拡張される。
【0035】
【0036】
測定のために、この方程式のパラメーターを決定することが好ましい。このパラメーターの決定(パラメーター化)は以下のように実行される。
【0037】
自動運転操作中、つまり、通常の操作モードにおける横方向コントローラーは、ステアリングアクチュエーターを介してステアリングシステム上でステアリング介入を実行し、パラメーター化モードに切り替えられる。パラメーター化モードにおいて、ドライバーはMHand=0になるよう、ステアリングホイールから手を離していなくてはならない(ハンドオフモード)。好ましいのは、ドライバーがこれを行うように促されることである。パラメーター化モードにおいて、ステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeおよびステアリングホイール角δLRはいずれも測定され、ステアリングアクチュエーターは、シミュレートされたステアリングトルクMSimの予め定義されたパルスをステアリングシャフトに適用するように、横方向コントローラーによって制御される。これらのステアリングトルクパルスの結果として、車両3がポットホールの上を通過した場合に発生するステアリングトルクMSimがシミュレートされる。シミュレートされたステアリングトルクMSimは、測定されたステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeと比較される。慣性モーメントΘLR、摩擦トルクMRおよびデッドタイムTtで構成されるパラメーターは、シミュレートされたステアリングトルクMSimが測定されたステアリングシャフトトルクMMess_Lenkstangeに一致するようにモデル化される。
【0038】
図2には、シミュレートされたステアリングトルクM
Simおよび測定されたステアリングシャフトトルクM
Mess_Lenkstangeの時間曲線の模式的なグラフを示す。
このパラメーター化は、車両3の製造中、つまり、車両3を顧客に納車する前、あるいはサービス工場(作業場)への訪問中に有利に実行される。
手動トルクM
Handを決定するために、方程式4はM
Handについて解かれる。そして、以下が取得される。
【0039】
【0040】
右辺は、推定された手動トルクM
*
Handと同等に設定される。
【数6】
【0041】
推定された手動トルクM*
Handは、求められた手動トルクM*
Handから逸脱するが、偏差Δ=M*
Hand-MHandは非常に小さいため、M*
Handは、求められた手動トルクMHandの適切な推定値であり、したがって、自動運転操作を中止する決定のために使用できる。
【0042】
この方法の拡張では、パラメーターは、車両3の動作時間にわたってアップデートできる。アップデートは方程式1に基づいている。方法をより適切に表現するために、デッドタイムTtおよび測定フィルター(1/(TMess・s+1))の寄与を無視できる。但し、当業者は、デッドタイムTtおよび測定フィルター(1/(TMess・s+1))の寄与が引き続き考慮されるように、以下の方程式を簡単に修正することができる。更に、方程式1では、追加のオフセットトルクMoffも導入されている。方程式1から進むと、以下の結果になる。
【0043】
【0044】
方程式7の両辺は、多数のn個の測定値(M
Mess_Lenkstange, δ
LR)にわたって合計される。この目的ために、測定値は一時的に、例えばリングバッファー内に保存される。そして、以下を得る。
【数8】
【0045】
右辺の合計を定数係数で解くと、次のようになる。
【数9】
【0046】
オフセットトルクM
offは、例えば以下のように決められる。保存された多数の測定値から、以下の条件が当てはまる測定値が特定される。
【数10】
【0047】
より長く続く測定では、これはある時点で当てはまる。そして、方程式9から次のようになる。
【数11】
【0048】
そして、M
offは次のようにアップデートされる。
【数12】
【0049】
ステアリングホイールの慣性モーメントΘ
LRは、以下のように決められる。保存された多数の測定値から、以下の条件が当てはまる測定値が特定される。
【数13】
【0050】
より長く続く測定では、これはある時点で当てはまる。そして、方程式9から次のようになる。
【数14】
【0051】
そして、Θ
LRは次のようにアップデートされる。
【数15】
【0052】
摩擦トルクM
Rは、以下のように決められる。保存された多数の測定値から、以下の条件が当てはまる測定値が特定される。
【数16】
【0053】
より長く続く測定では、これはある時点で当てはまる。そして、方程式9から次のようになる。
【数17】
【0054】
そして、M
Rは次のようにアップデートされる。
【数18】
【0055】
このようにして、顧客における摩耗や経年劣化の兆候によって発生するパラメーターの変化も、運転中(操作中)に修正することが可能である。
【0056】
中止基準は、手動トルクMHandが予め定義可能な無効化閾値を超えた場合に満たされる。無効化閾値は、状況に応じて、特に、ドライバーが少なくともハンドル(ステアリングホイール)に片手を置いているか両手とも置いていないか(ハンズオン/ハンズオフ状況)、ドライバーが車両3の前方における交通状況を観察しているかどうか、および/または、手動トルクの作用方向において側面(横方向)からの衝突リスクがあるかどうかによって、予め定義される。
【0057】
特に、無効化閾値は、自動運転操作を中止するために、以下のように予め定義されている。
・ハンズオン状況である場合、小さい手動トルク(例えば3Nm)で十分である。
・ハンズオフ状況である場合、中程度の手動トルク(例えば6Nm)が必要である。
・ドライバーが車両3の前方の交通状況を観察していない場合、あるいは手動トルクの作用方向において側面衝突リスクがある場合は、高い手動トルク(例えば8Nm)が必要である。
【0058】
ハンズオンあるいはハンズオフの状況が存在するかどうかの検出は、センサーを使用して、例えば容量性ステアリングホイールを使用して実施可能である。ドライバーが交通状況を観察しているかどうかの検出は、例えば、視線方向の認識によって、ドライバーをモニタリングするカメラを使用して行うことができる。側面衝突リスクの検出は、例えば、レーダー、ライダー、カメラ等の従来の環境センサーによって行うことができる。
【0059】
本方法は、車両3に配置された制御ユニット4に実装することができる。
【国際調査報告】