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特表2023-511168気体と浮遊物質を検出するための光学検出器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】気体と浮遊物質を検出するための光学検出器
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20230309BHJP
【FI】
G01N21/27 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544362
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(85)【翻訳文提出日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 US2021014210
(87)【国際公開番号】W WO2021150624
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】62/963,411
(32)【優先日】2020-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522290411
【氏名又は名称】ケイリックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、ミン ユェン
(72)【発明者】
【氏名】ルー、チュン イ
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ベンソン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ、ポー ルイ
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB01
2G059CC01
2G059CC12
2G059EE01
2G059EE12
2G059JJ01
2G059KK01
2G059MM01
(57)【要約】
【課題】気体と浮遊物質を検出するための光学検出器を提供する。
【解決手段】本発明にかかる光学検出器(100,200,300)は、気体とその中の浮遊物質を検出するために用いて、測定室(111,113)と、少なくとも1つの光源(12)と、感知対象物(131,133)と、測定光学センサ(141)と、プロセッサ(19)とを備える。測定室(111,113)は、分析待ちの気体を収容する。少なくとも1つの光源(12)は、入射光を発して測定室(111,113)に進入する。感知対象物(131,133)は、測定室(111,113)内の気体に暴露し、入射光を受光すると共に、入射光の一部分を反射または伝送して測定光に形成する。測定光学センサ(141)は、測定光を受光すると共に、検出したスペクトル信号を生成する。プロセッサ(19)は、検出したスペクトル信号を受信すると共に、検出したスペクトル信号に基づいて、検出結果を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体室と、前記気体室に連結し、前記気体室に進入する入射光を発するように構成する光源と、前記気体室内の気体に暴露した感知対象物と、測定光学センサと、前記測定光学センサに連結するプロセッサとを備える光学検出器であって、
前記感知対象物は、前記気体の組成に依存する光学特性を有し、前記感知対象物は、前記入射光を受光するように構成し、前記光学特性によって前記入射光を測定光に変換し、
前記測定光学センサは、前記測定光を受光し、及び前記測定光から検出したスペクトル信号を生成するように構成し、
前記プロセッサは、前記検出したスペクトル信号を受信すると共に、前記検出したスペクトル信号に基づいて、検出結果を算出するように構成することを特徴とする、光学検出器。
【請求項2】
前記気体に暴露した参照対象物と、参照光学センサとをさらに備え、
前記参照対象物は、前記入射光を受光すると共に、参照光を生成するように構成し、
前記参照光学センサは、参照スペクトル信号を取得するために、前記参照光を受光・検出するように構成し、
前記プロセッサは、また、前記参照光学センサに連結し、前記プロセッサは、前記参照スペクトル信号を受信し、前記検出したスペクトル信号と前記参照スペクトル信号に基づいて、前記検出結果を算出するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の光学検出器。
【請求項3】
前記感知対象物に到達する前記入射光の経路長は、前記参照対象物に到達する前記入射光の経路長と同じであり、かつ前記測定光学センサに到達する前記測定光の経路長は、前記参照光学センサに到達する前記参照光の経路長と同じであることを特徴とする、請求項2に記載の光学検出器。
【請求項4】
前記感知対象物と前記測定光学センサとの間に、及び前記参照対象物と前記参照光学センサとの間に保護ガラスをさらに備え、前記保護ガラスは、前記測定光学センサ及び前記参照光学センサから前記気体室を隔離することを特徴とする、請求項2に記載の光学検出器。
【請求項5】
前記感知対象物は、DNA修飾ファージ及びDNA非修飾ファージの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学検出器。
【請求項6】
前記プロセッサに連結する温湿度検出器をさらに備え、前記温湿度検出器は、前記気体の温度と湿度を検出すると共に、温湿度結果を生成するように構成し、前記プロセッサは、前記検出したスペクトル信号、前記参照スペクトル信号、及び前記温湿度結果に基づいて、校正結果を算出するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の光学検出器。
【請求項7】
前記感知対象物は、前記気体に接触すると共に、少なくとも1つの気体成分の濃度に基づいて色を変えることで、前記感知対象物は、前記入射光を変換してスペクトル分布(spectral distribution)を有する前記測定光に形成し、前記スペクトル分布は、前記少なくとも1つの気体成分の濃度に対応することを特徴とする、請求項1に記載の光学検出器。
【請求項8】
前記感知対象物は、前記気体室内の前記気体の組成に依存する反射特性を有する反射感知対象物を含み、前記反射感知対象物は、前記入射光を受光すると共に、前記入射光を反射して測定光に形成するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の光学検出器。
【請求項9】
前記感知対象物は、前記気体室内の前記気体の組成に依存する透過(transmissive)特性を有する透過感知対象物を含み、前記透過感知対象物は、前記入射光を受光すると共に、前記入射光の一部分を伝送して前記測定光に形成するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の光学検出器。
【請求項10】
入射光を発するように構成する少なくとも1つの光源と、分析待ちの気体を収容するように構成すると共に、前記少なくとも1つの光源からの前記入射光の少なくとも一部分を受光するように連結する測定室と、前記測定室内の前記気体に暴露した反射感知対象物と、測定光学センサと、前記測定光学センサに連結するプロセッサとを備える光学検出器であって、
前記反射感知対象物は、前記気体の組成に依存する反射特性を有し、前記反射感知対象物は、前記測定室内の前記入射光を受光すると共に、前記入射光を反射して測定反射光に形成するように構成し、
前記測定光学センサは、前記測定反射光を受光して、検出したスペクトル信号を生成するように構成し、
前記プロセッサは、前記検出したスペクトル信号を受信すると共に、前記検出したスペクトル信号に基づいて、検出結果を算出するように構成することを特徴とする、光学検出器。
【請求項11】
分析待ちの前記気体を収容するように構成すると共に、前記少なくとも1つの光源からの前記入射光の一部分を受光するように連結する参照室と、前記参照室内に配置する参照対象物と、参照光学センサとをさらに備え、
前記参照対象物は、前記参照室内の前記入射光を受光すると共に、前記入射光を反射して参照反射光に形成するように構成し、
前記参照光学センサは、前記参照反射光を受光・検出して、参照スペクトル信号を生成するように構成し、
前記プロセッサは、さらに、前記参照光学センサに連結すると共に、前記検出したスペクトル信号と前記参照スペクトル信号を受信し、かつ前記検出したスペクトル信号と前記参照スペクトル信号に基づいて、校正結果を算出するように構成することを特徴とする、請求項10に記載の光学検出器。
【請求項12】
前記反射感知対象物に到達する前記入射光の経路長は、前記参照対象物に到達する前記入射光の経路長と同じであり、そして前記測定光学センサに到達する前記測定反射光の経路長は、前記参照光学センサに到達する前記参照反射光の経路長と同じであることを特徴とする、請求項11に記載の光学検出器。
【請求項13】
前記測定室、前記参照室と、少なくとも1つの光源の1つとの間に位置する少なくとも1つの分光レンズをさらに備え、前記少なくとも1つの分光レンズの各々は、前記少なくとも1つの光源から前記測定室及び前記参照室へ進入した前記入射光を分割するように構成することを特徴とする、請求項11に記載の光学検出器。
【請求項14】
前記参照対象物は、各種の温湿度条件下で低い変色性を維持するように構成することを特徴とする、請求項11に記載の光学検出器。
【請求項15】
前記参照対象物は、セラミック、酸化アルミニウムまたはジルコニアを含むことを特徴とする、請求項14に記載の光学検出器。
【請求項16】
前記測定室と前記測定光学センサとの間に介在する第1保護ガラスと、前記参照室と前記参照光学センサとの間に介在する第2保護ガラスとをさらに備え、
前記第1保護ガラスと前記第2保護ガラスは、前記測定室及び前記参照室から前記測定光学センサ及び前記参照光学センサを隔離することを特徴とする、請求項11に記載の光学検出器。
【請求項17】
前記プロセッサに連結する温湿度検出器をさらに備え、前記温湿度検出器は、分析待ちの前記気体の温度と湿度を検出すると共に、温湿度結果を生成するように構成し、前記プロセッサは、前記検出したスペクトル信号、前記参照スペクトル信号、及び前記温湿度結果に基づいて、校正結果を算出することを特徴とする、請求項11に記載の光学検出器。
【請求項18】
前記反射感知対象物が分析待ちの前記気体に接触する場合と共に、少なくとも1つの気体成分の濃度に基づいて色を変えることで、前記反射感知対象物は、前記入射光を反射してスペクトル分布を有する前記測定反射光に形成し、前記スペクトル分布は、前記少なくとも1つの気体成分の濃度に対応することを特徴とする、請求項10に記載の光学検出器。
【請求項19】
不透明な対象物である前記反射感知対象物は、DNA修飾ファージ及びDNA非修飾ファージの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項10に記載の光学検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学検出器に係り、特に、気体と浮遊物質を検出する光学検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気体検知器は、環境汚染を動的に監視するために用いられる。環境汚染は、日常生活、工業、学界及び研究サークルにおける共通の懸念事項である。現在、気体検知器中に用いられる3つの主要技術は、金属酸化物半導体(MOSと略称)、赤外線(IRと略称)及び電気化学を含む。MOSとは、金属半導体酸化物材料から作製される構成要素を指す。MOS技術を用いる気体検知器は、通常、MOSデバイスと気体との相互作用により生成された表面吸着または反応を検出する。MOSベースの気体検知器は、微小電気機械システム(MEMSと略称)プロセスを用いて大量生産が可能であると共に、空気品質検出のためにたびたび用いられている。赤外線検出を用いる気体検知器は、通常、赤外線光の特定波長で特定の気体の吸収特性に頼るものである。特に、赤外線気体検知器は、通常、赤外線光を吸収した気体の濃度に比例する赤外線の吸収量を計測する。赤外線検出を有する気体検知器は、食品識別または検知のための小型模型の分光計として用いてもよい。電気化学を用いる気体検知器は、通常、標的気体で具体的に発生する化学反応を促進させると共に、気体濃度に比例する発生電流を計測する電気化学を用いる気体検知器は、通常、健康と疾患測定のためにたびたび用いられている。
【0003】
赤外線検出を用いる気体検知器は、多くの場合、赤外線光の特定波長で気体サンプルの吸収特性を計測する必要がある。吸収量の増加と計測容易さを図るために、気体検知器は、大きな気体サンプルが必要となる場合があり、あるいは正確に計測待ちの気体により、十分な吸収量の赤外線光を提供するために、気体を介して赤外線光を複数回反射させる必要な場合がある。しかし、反射すると光を吸収する。そして赤外線検出器は、大きな気体サンプルと高品質の反射体が必要となる場合がある。その結果、反射材料のコスト、気体室の容積及び気体検知器中に用いられる検出時間を増大させてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/0312262号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検出結果に影響する可能性のある気体検知器に関係する付加的要因は、検出のための標的ではないその他の気体の存在、外部環境の湿度、外部環境の温度、気体検知器の温度、外部環境における空気流動、及び検出のために用いる時間を含む。これらの要因または関係は、気体検知器に下記の問題を引き起こす可能性がある。
(1)外部温度と湿度により、検出精度に多大な影響を及ぼす可能性がある。
(2)気体組成解像度(resolution)が乏しくなることがある。
(3)気体検知器は、始動後に正確な検出のために安定する長時間を要するおそれがある。
(4)気体検知器は、長時間使用のために大量の電力を消費することとなる。
そこで、従来の気体検知器中に発見された問題を解決するために、新しいタイプの気体検知器が待望されていた。
【0006】
気体とその中の浮遊物質を検出するためのかかる光学検出器は、反射体(あるいは、伝送体/吸収体)近傍の気体サンプルの成分または構造成分(constituent)に依存する光学特性を有する反射体(あるいは、伝送体/吸収体)からの(あるいは、それらを透過)単一反射を用いて安定な検出を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施例において、光学検出器は、測定室と、少なくとも1つの光源と、反射感知対象物と、測定光学センサと、プロセッサとを備える。測定室は、例えば、特定の気体や粒子などのような1つまたはそれ以上の検出待ちの標的成分を含有する気体サンプルを収容するように構成する。少なくとも1つの光源は、測定室に連結し、それは入射光を発して測定室に進入するように構成する。少なくとも1つの光源は、特定スペクトルを有する入射光を発するように構成してもよい。反射感知対象物は、測定室内の気体サンプル中に1つまたはそれ以上の標的成分が存在する場合に、その反射特性を変える反射体であってもよい。反射感知対象物は、測定室内に配置すると共に、測定反射光に形成するように、入射光を受光して入射光を反射するところに位置する。測定光学センサは、測定反射光を受光すると共に、検出したスペクトル信号を生成する。プロセッサは、測定光学センサに連結し、検出したスペクトル信号を受信すると共に、検出したスペクトル信号に基づいて、検出結果を算出する。
【0008】
光学検出器は、参照室、参照対象物及び参照光学センサをさらに備えてもよい。測定室、感知対象物及び測定光学センサとは対称的に配置するように構成する。少なくとも1つの光源は、また、参照室に連結し、かつ入射光を発して測定室及び参照室に進入するように構成する。参照室は、サンプリングしている同一の気体を収容し、そして参照対象物は、参照室内に配置し、入射光を受光すると共に、入射光を反射して参照反射光に形成する。参照光学センサは、参照反射光を受光・検出し、参照スペクトル信号を生成する。測定と参照要素の対称性は、感知対象物からの反射と参照対象物からの反射との間の差異に起因して、参照スペクトル信号と検出したスペクトル信号との間の差異をもたらす結果になる。プロセッサは、また、参照光学センサに連結し、検出したスペクトル信号と参照スペクトル信号を受信すると共に、検出したスペクトル信号と参照スペクトル信号に基づいて、校正結果を算出する。
【0009】
反射感知対象物に到達する入射光の経路長は、参照対象物に到達する入射光の経路長と同じであってもよく、そして測定光学センサに到達する測定反射光の経路長は、参照光学センサに到達する参照反射光の経路長と同じであってもよい。
【0010】
光学検出器は、少なくとも1つの分光レンズをさらに備えてもよく、その分光レンズは、測定室、参照室と、少なくとも1つの光源の1つとの間に位置する。少なくとも1つの分光レンズの各々は、少なくとも1つの光源の1つから測定室及び参照室へ進入した入射光を分割するように構成する。
【0011】
参照対象物は、各種の温湿度条件下で低い変色性を維持するように構成してもよく、かつ参照対象物は、セラミック、酸化アルミニウムまたはジルコニアを含んでもよい。
【0012】
光学検出器は、第1保護ガラスと、第2保護ガラスとをさらに備えてもよく、その第1保護ガラスは、測定室と測定光学センサとの間に介在し、その第2保護ガラスは、参照室と参照光学センサとの間に介在する。第1保護ガラスと第2保護ガラスは、測定室及び参照室から測定光学センサ及び参照光学センサを隔離して、測定光学センサ及び参照光学センサが気体サンプル中の汚染を受けることなく、あるいはその他の構造成分に影響を受けないように構成してもよい。
【0013】
光学検出器は、プロセッサに連結する温湿度検出器をさらに備えてもよく、それは、気体サンプルの温度と湿度を検出すると共に、温湿度結果を生成するように構成する。また、プロセッサは、検出したスペクトル信号、参照スペクトル信号、及び温湿度結果に基づいて、温湿度結果を算出する。
【0014】
反射感知対象物が気体サンプル(検出待ちの少なくとも1つの標的構造成分を含有)に接触する場合に、反射感知対象物は、少なくとも1つの標的構造成分の種類と少なくとも1つの標的気体の濃度に基づいてその構造を変える。例えば、反射感知対象物は、少なくとも1つの標的構造成分に反応するDNA修飾ファージ及びDNA非修飾ファージの少なくとも1つを含む不透明な対象物であってもよい。それゆえに、感知対象物は、入射光を反射して、気体サンプル中の少なくとも1つの標的構造成分の存在または濃度に対応するスペクトルを有する測定反射光を形成する。
【0015】
本開示の別の実施例において、気体とその中の浮遊物質を検出するための光学検出器は、気体室と、光源と、透過感知(transmissive sensing)対象物と、測定光学センサと、プロセッサとを備える。気体室は、分析待ちの気体サンプルを収容するように構成する。光源は、気体室に連結し、かつ気体室に進入する入射光を発するように構成する。透過感知対象物は、気体室内に配置し、そして透過感知対象物は、気体サンプルの1つまたはそれ以上の標的構造成分を感知して、例えば、不透明度などのような透過感知対象物の光透過または吸収特性を変える。透過感知対象物は、入射光を受光し、そして透過感知対象物には入射光を透過または通過させて測定透過光に形成するように構成する。測定光学センサは、測定透過光を受光・検出し、検出したスペクトル信号を生成するように構成する。プロセッサは、測定光学センサに連結し、かつプロセッサは、検出したスペクトル信号を受信し、検出したスペクトル信号に基づいて、検出結果を算出するように構成する。
【0016】
光学検出器は、参照対象物及び参照光学センサをさらに備えてもよく、それらは感知対象物及び測定光学センサとは対称的に配置してもよい。参照対象物は、光透過対象物を含んでもよく、気体室内に配置し、かつ入射光を受光すると共に、参照透過光に形成するように構成する。参照光学センサは、参照透過光を受光・検出して、参照スペクトル信号を取得するように構成する。プロセッサは、また、参照光学センサに連結し、参照スペクトル信号を受信すると共に、検出したスペクトル信号と参照スペクトル信号に基づいて、校正結果を算出するように構成する。
【0017】
透過感知対象物に到達する入射光の経路長は、参照対象物に到達する入射光の経路長と同じであってもよい。そして測定光学センサに到達する測定透過光の経路長は、参照光学センサに到達する参照透過光の経路長と同じであってもよい。
【0018】
光学検出器は、第1保護ガラスと、第2保護ガラスとをさらに備えてもよく、その第1保護ガラスは、透過感知対象物と測定光学センサとの間に介在し、その第2保護ガラスは、参照対象物と参照光学センサとの間に介在する。第1保護ガラスと第2保護ガラスは、測定光学センサ及び参照光学センサから気体室を隔離して、測定光学センサ及び参照光学センサが気体による汚染を受けないように保護することができる。
【0019】
光学検出器は、プロセッサに連結する温湿度検出器をさらに備えてもよい。温湿度検出器は、気体サンプルの温度と湿度を検出すると共に、温湿度結果を生成する。プロセッサは、検出したスペクトル信号、参照スペクトル信号、及び温湿度結果に基づいて、校正結果を算出する。
【0020】
透過感知対象物が気体サンプル(検出待ちの少なくとも1つの成分を含有)に接触する場合に、透過感知対象物は、少なくとも1つの気体成分(gas component)の種類と少なくとも1つの成分の濃度に基づいてその構造を変える。それゆえに、透過感知対象物には入射光を透過させて、少なくとも1つの成分の種類と濃度に対応するスペクトルを有する測定透過光に形成する。例えば、透過感知対象物は、DNA修飾ファージ及びDNA非修飾ファージの少なくとも1つを含む光透過対象物であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
従来技術と比較して、本願に開示の光学検出器の実施例は、下記の利点を有する。
(1)光学検出器は、さまざまな環境要因(例えば、温度と湿度)、光学検出器の温度及び光源からの放射に対応付けられている内蔵の校正基準を有する。
(2)内蔵の校正基準は、開始後に安定化または予熱時間を必要とせず、例えば、LEDなどのような光源の使用を許容する。
(3)光学検出器は、その他の検出しなかった気体の影響を回避する検出特異性を有するので、高い気体組成解像度を有する。
(4)光学検出器は、反射または透過構成を使用可能である。
(5)気体検知器は、多重反射のための十分な容積の気体室を必要としないから、光学検出器を小型化することが許容される。
(6)光学検出器は、多重反射なしに正確な検出結果を検出することができ、それによって検出時間を短縮し、消費電力を削減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】反射感知対象物を用いる本開示の実施例による光学検出器の斜視図である。
図2図1の光学検出器の分解図である。
図3図1の光学検出器の構成要素の他面を示す分解図である。
図4図1の光学検出器のA-A´断面線とB-B´断面線を示す模式図である。
図5A図4のA-A´断面線に沿う断面図である。
図5B図4のB-B´断面線に沿う断面図である。
図6】多重光源を用いる本開示の実施例による光学検出器を示す分解図である。
図7図6の光学検出器の他面を示す分解図である。
図8図6の光学検出器のC-C´断面線とD-D´断面線を示す模式図である。
図9A図8の光学検出器のC-C´断面線に沿う断面図である。
図9B図8の光学検出器のD-D´断面線に沿う断面図である。
図10】透過感知対象物を用いる本開示の実施例による光学検出器の斜視図である。
図11図10の光学検出器の分解図である。
図12図10の光学検出器の他面を示す分解図である。
図13図10の光学検出器のE-E´断面線とF-F´断面線を示す模式図である。
図14A図13の光学検出器のE-E´断面線に沿う断面図である。
図14B図13の光学検出器のF-F´断面線に沿う断面図である。
【0023】
添付図面は、本発明自体を制限するものではなく、実施例を図示して説明するためのものである。異なる図面において同じ参照符号を付したものは類似または同一のアイテムを意味するものとする。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明と議論を踏まえ、添付の図面を参照しながら、特定の実施例を記載する。これらの実施例は、単なる代表例であって、特定の方法、装置、条件、材料及び同類のものなどは、いずれも本発明を特定の実施例に限定することを意図するものではない。加えて、図面中の装置は、その相対位置を表現するために使用するに過ぎず、実際の寸法比率を描画したものではない。
【実施例1】
【0025】
図1には、本開示の第1実施例に従う光学検出器100が示されている。検出器100は、1つまたはそれ以上の標的気体、または気体サンプルの構造成分であってもよい浮遊物質を検出するために用いる。その原理と構造を明確に解釈するため、以下、主に標的気体または気体を検出する実施例を記載する。しかし、本願に開示の光学検出器は、例えば、気体サンプル中に浮遊する粒子のような浮遊物質を検出することも可能である。
【0026】
図1には、本開示の第1実施例による光学検出器100の斜視図が示されている。図2図3は、図1の光学検出器100の構成要素の異なる面を示す分解図である。図4は、図1の光学検出器100の断面線A-A´とB-B´を示す模式図であり、そして図5A図5Bには、それぞれ光学検出器100の断面線A-A´とB-B´に沿う断面図が示されている。図1図5Bに示すように、光学検出器100は、測定室111と、光源12と、反射感知対象物131と、測定光学センサ141と、プロセッサ19とを備える。測定室111は、気体サンプルを収容するように構成し、気体サンプルは、光学検出器100の周囲環境から抽出する。光源12は、測定室111に連結し、かつ入射光を発して測定室111に進入するように構成する。反射感知対象物131は、測定室111内または近傍に配置すると共に、測定室111内の気体サンプルに暴露する。反射感知対象物131は、時々標的気体と呼ばれる検出待ちの気体を検出し、標的気体が存在する場合に、反射感知対象物131は、反射感知対象物131の色を変えることで気体を感知する。一般的には、感知対象物は、多種の異なる標的気体に対して感応することができ、そして反射感知対象物131の反射特性における変化は、どの種類の標的気体の存在と標的気体の濃度に依存して異なるものである。反射感知対象物131は、さらに、測定反射光に形成するように、入射光を受光して入射光を反射するように位置・構成する。測定光学センサ141は、測定反射光を受光し、検出したスペクトル信号を生成するように構成する。プロセッサ19は、測定光学センサ141に連結し、検出したスペクトル信号を受信すると共に、検出したスペクトル信号に基づいて、検出結果を算出する。特に、プロセッサ19は、ソフトウェアまたはファームウェアを実行して検出したスペクトル信号(及び以下に記載のとおりのその他のデータ入力)を分析する。例えば、1つまたはそれ以上の標的気体、あるいは気体サンプル中の粒子の存在または濃度の指示のような検出結果を生成する。
【0027】
光学検出器100は、反射感知対象物131の既知または校正特性を用いる。例えば、特定の濃度で標的成分が存在する場合に、反射感知対象物131の反射性において所定の変更を予想し、検出結果を判定する。反射感知対象物131が気体サンプル(少なくとも1つの標的構造成分を含有)に接触する場合に、反射感知対象物131は、構造成分の種類と構造成分の濃度に基づいてその構造を変える。それゆえに、反射感知対象物131は、反射を行い、かつ入射光を変更して反射感知対象物131の反射特性における変化に依存するスペクトル分布を有する測定反射光に形成することができる。伝統的な赤外線検出を用いる気体検知器と比較して、光学検出器100では、多重反射を必要とせず、気体の構造成分を検出することができるので、光学検出器100は、反射材料のコスト、気体室の容積及び検出時間を低減できる。
【0028】
外部環境の特性(例えば、温度や湿度など)は、検出したスペクトル信号をシフトしたり作り替えたりする。そのため、検出結果における環境誤差を回避するための補正が必要となる。検出結果の環境誤差を回避するために、光学検出器100は、参照室112、参照対象物132及び参照光学センサ142とをさらに備えてもよく、それらは測定室111、反射感知対象物131及び測定光学センサ141とは対称的に配置してもよい。参照室112は、即ち、測定室111内の気体サンプルと同じ組成を有する気体である分析待ちの気体の一部を収容するように構成する。参照対象物132は、参照室112内または近傍に配置sる。そして参照対象物132は、入射光を受光すると共に、入射光を反射して参照反射光に形成するように構成する。参照光学センサ142は、参照反射光を受光・検出して、参照スペクトル信号を生成するように構成する。光源12は、測定室111及び参照室112に連結し、かつ入射光を発して測定室及び参照室のいずれにも進入してもよい。プロセッサ19は、さらに、参照光学センサ142に連結し、検出したスペクトル信号と参照スペクトル信号を受信すると共に、検出したスペクトル信号と参照スペクトル信号を用いて校正結果を算出する。
【0029】
参照対象物132は、各種の温湿度条件下で低い変色性を維持する材料を含有してもよい。そのため、参照対象物132の反射率は、環境の温度と湿度によってほとんど影響を受けていない。実際には、参照対象物132は、温度と湿度の変化に対して応答の低いセラミック、酸化アルミニウムまたはジルコニアを含んでもよい。入射光及び参照反射光が参照室112内の分析待ちの気体に接触した後に、参照光学センサ142は、参照スペクトル信号を受信・生成する。従って、参照スペクトル信号は、環境の現在の温度と湿度及び光学検出器100の温度で分析待ちの気体を通過させる作用(effect)の後に、光源12からの光の基準スペクトル分布を表現する。それゆえに、参照スペクトル信号は、反射体の特性に何も変更を加えず、ブランク校正信号を提供することにある。プロセッサ19が測定スペクトル信号及び参照スペクトル信号を一緒に用いて検出結果を算出する場合に、プロセッサ19は、温度と湿度の影響を入れた校正結果を算出する。
【0030】
上記の構成要素を固定するために、光学検出器100は、対象物ホルダ151と、センサホルダ152と、センサ保護カバー153とをさらに備える。図2図5Bに示すように、対象物ホルダ151は、反射感知対象物131及び参照対象物132を保持する。そしてセンサホルダ152は、光源12、測定光学センサ141及び参照光学センサ142を保持する。センサ保護カバー153は、対象物ホルダ151とセンサホルダ152との間にあると共に、それぞれこれらに連結する。対象物ホルダ151と、センサホルダ152と、センサ保護カバー153とを一緒に組み立てる場合に、対象物ホルダ151とセンサ保護カバー153との間に測定室111及び参照室112を形成する。空間162、163と164は、センサ保護カバー153とセンサホルダ152との間に形成し、かつそれぞれ測定光学センサ141、参照光学センサ142と光源12を保有している。図示された構成において、参照室112から測定室111を隔離し、かつ測定センサ収納空間162と、参照センサ収納空間163と、光源収納空間164とを相互に隔離する。加えて、センサ保護カバー153は、測定センサ収納空間162から測定室111を隔離するように構成する。また、参照センサ収納空間163から参照室112を隔離するように構成して、分析待ちの気体が測定センサ収納空間162及び参照センサ収納空間163に進入することを防止することができる。分析待ちの気体は、測定光学センサ141及び参照光学センサ142に影響・損傷を与える構造成分を含有してもよく、空間162と163の隔離は、感知精度に影響する可能性のある要因を回避することができる。
【0031】
図1図5Bに示すように、対象物ホルダ151は、2つの対象物ハウジングスロット155(一つは、反射感知対象物131を保持するもので、もう一つは、参照対象物132を保持するものである)を有する。反射感知対象物131及び参照対象物132が対象物ハウジングスロット155内に固定する場合に、反射感知対象物131と対象物ホルダ151との間に2つの開口161を形成すると共に、参照対象物132と対象物ホルダ151との間に2つの開口161を形成する(図1を参照)。開口161は、測定室111が外部環境と連通すると共に、参照室112が外部環境と連通するように構成することで、分析待ちの気体を光学検出器100に対して自由に出入りさせることが許容される。
【0032】
光源12から発して2つの室(測定室111及び参照室112)に進入する入射光を均等に分岐させるために、光学檢射器100は、分光レンズ17をさらに備える。分光レンズ17は、光ビームをフォーカスまたは視準分岐させる光学特性の有無にかかわらないビーム‐スプリッタ(beam splitter)などのような光学素子であってもよい。図2に示すように、センサ保護カバー153は、分光レンズ17を収納するレンズハウジングスロット156をさらに含む。図5Bに示すように、光学検出器100の組み立てが完了すると、分光レンズ17は、光源12の真上にあり、かつ測定室111と、参照室112と、光源収納空間164との間に位置する。分光レンズ17は、光源12から測定室111と参照室112とに進入する入射光を分岐させるように構成する。分光レンズ17は、対象物ホルダ151に隣接するセンサ保護カバー153のレンズハウジングスロット156内に収納する。そのため、測定室111と、参照室112と、光源収納空間164とを相互に隔離するが、光により相互に光通信を行うことができる。
【0033】
光により測定室111と測定センサ収納空間162とを連通するために、及び光により参照室112と参照センサ収納空間163とを連通するために、光学検出器100は、第1保護ガラス181と、第2保護ガラス182とをさらに備える。図2図5Bに示すように、センサ保護カバー153は、2つのガラスハウジングスロット157をさらに含む。そのうち、1つのガラスハウジングスロット157は、測定室111と測定センサ収納空間162との間にあり、かつ第1保護ガラス181を収納するように構成する。もう1つのガラスハウジングスロット157は、参照室112と参照センサ収納空間163との間にあり、かつ第2保護ガラス182を収納するように構成する。測定光学センサ141により測定反射光を円滑に受光するために、第1保護ガラス181は、測定反射光の光経路上にある。同様の理由から、参照光学センサ142により参照反射光を円滑に受光するために、第2保護ガラス182は、参照反射光の光経路上にある。従って、測定室111は、光により測定センサ収納空間162と連通することができ、かつ参照室112は、光により参照センサ収納空間163と連通することができる。第1保護ガラス181と第2保護ガラス182は、また、測定室111及び参照室112から測定光学センサ141及び参照光学センサ142を隔離して、測定光学センサ141及び参照光学センサ142が気体による汚染を受けないように保護することができる。
【0034】
実際には、光源12は、発光ダイオード(LED)であってもよく、かつ特定スペクトルを有する入射光を発するように構成する。例えば、広いスペクトルパワー分布またはスペクトルパワー分布は、反射感知対象物132がその光学特性を変える波長を有する光を含み、例えば、標的気体の濃度に依存する反射性を変える。赤外線ベースの気体検知器は、光源として赤外線を用い、そして赤外線光源は、予熱して安定する時間を必要とする。光学検出器100は、赤外線光を必要とせず、かつ光源12としてLEDを用いてもよい。そのため、光学検出器100は、起動後に安定化時間と予熱時間を取らずに用いることができる(参照光学センサ142は、また、光源12からの光のスペクトルに表示しているスペクトル分布を計測し、それは光源12を正確に安定させる必要性をさらに低減)。センサホルダ152は、プリント回路基板(PCB)であってもよく、そしてプロセッサ19は、中央処理ユニット、マイクロコントローラユニット、またはセンサホルダ152を介して測定光学センサ141及び参照光学センサ142に連結するコンピュータであってもよい。
【0035】
光学検出器100は、対象物ホルダ151と、センサホルダ152と、センサ保護カバー153とを通じて取り持ち・固定・据え付けして用いる。本願に開示の光学検出器100は、光源12に関連する参照構成要素を感知・対応する対象的な配置により、反射感知対象物131に到達する入射光の経路長は、参照対象物132に到達する入射光の経路長と同じであるという利点を有する。同様の理由から、測定光学センサ141に到達する測定反射光の経路長は、反射光学センサ142に到達する参照反射光の経路長と同じである。
【実施例2】
【0036】
1つの光源12のみを有する図2図5Bの光学検出器100の実施例の他に、代わりに1つ以上の光源を有する光学検出器であってもよい。図6図9Bには、多重光源12を有する光学検出器200の代替実施例を示している。光源12は、同じスペクトルパワー分布または異なるスペクトルパワー分布を有する光を発することができる。例えば、光学検出器200中の異なる光源12は、異なる波長でスペクトル分布のピークを有する光を発することができる。図6は、本開示の別の実施例による光学検出器200を示す分解図である。図7は、図6の光学検出器200の他面を示す分解図である。図8は、図6の光学検出器200の断面線C-C´とD-D´を示す模式図である。図9Aは、図8の断面線C-C´に沿う光学検出器200の断面図であり、そして図9Bは、図8の断面線D-D´に沿う光学検出器200の断面図である。光学検出器200中の大部分の構成要素は、光学検出器100のそれらの構成要素と同じであり、それらの構成要素についての議論は、以下では繰り返しの説明を省略する。図6図9Bに示すように、光学検出器200は、2つの光源12と、2つの分光レンズ17とを特に備える。センサ保護カバー153は、2つの光源ハウジングスロット154と、2つのレンズハウジングスロット156と、2つのガラスハウジングスロット157とを含む。レンズハウジングスロット156は、光源ハウジングスロット154の真上に位置し、そしてレンズハウジングスロット156を光源ハウジングスロット154より大きくして、台形構造に形成する。各分光レンズ17は、光源ハウジングスロット154と、測定室111と、参照室112との間に位置し、従って光源12から発する入射光を測定室111と参照室112とに円滑に分岐させることができる。実際には、センサ保護カバー153の周囲に近接する台形構造の一側は、レンズハウジングスロット156及び光源ハウジングスロット154(図9Aを参照)と垂直に交わる。
【0037】
光学検出器200において、測定光学センサ141と参照光学センサ142は、センサホルダ152上に固定し、かつセンサ保護カバー153とセンサホルダ152との間に形成するセンサ収納空間165内に収納する。この分野に熟知した当業者は、上記の教示に照らして多重光源12に対して変更を加えることができ、あるいは上記の機能の実行を妨げることなく、構成要素の位置を調整できることに留意すべきである。
【0038】
光学検出器100と200は、いずれも反射型感知対象物131を用いる。反射感知対象物131は、不透明で反射するDNA修飾ファージまたはDNA非修飾ファージの少なくとも1つを含むものであってもよい。米国特許出願公開第2016/0312262号明細書には、「生物模倣ウイルスベースの比色センサ(BIOMIMETIC VIRUS-BASED COLORIMETRIC SENSORS)」という発明の名称を与えたものであり、その全体の参照によりこの明細書に組み込まれるものであり、繊維束を有する比色検知層に、例えば、関心のある標的気体や粒子などのような分析物との相互作用に際して変色を受けるように構成する糸状ファージを含む繊維束を如何にして自己組織化するかが記載されている。とりわけ、繊維束の断片は、関心のある分析物との相互作用に際し、第1立体構造から第2立体構造への変化を受けることによってその変色を受けている。このような技術は、反射感知対象物131に用いることから、変色によって反射感知対象物131の反射特性を作り替えることに起因して、特に反射光のスペクトル分布が入射光のスペクトル分布と異なることになる。反射感知対象物131は、異なるDNA修飾ファージまたはDNA非修飾ファージに基づいて、あるいは同じDNA修飾ファージまたはDNA非修飾ファージに基づいて、異なる気体成分とそれらの濃度を検出することが可能となる。より一般的には、反射感知対象物131は、いかなる変色材料を用いてもよく、かつファージを用いる材料に限定されない。
【実施例3】
【0039】
光学検出器100と200の反射型構造の実施形態とは別に、本開示のその他の実施例に従う光学検出器は、感知対象物のために、透過または伝送型構造を用いてもよい。図10図14Bには、感知対象物のために、透過または伝送型構造を用いる光学検出器300が特に図示・例示される。より具体的には、図10には、光学検出器300の斜視図が示されている。図11図12は、図10の光学検出器300の構成要素の異なる面を示す分解図である。図13は、図10の光学検出器300の断面線E-E´とF-F´を示す模式図である。図14A図14Bは、それぞれ図13の断面線E-E´とF-F´に沿う光学検出器300の横断面図である。光学検出器300の大部分の構成要素は、光学検出器100または200の対応構成要素と同じであり、同一の構成要素についての完全な記述は、以下では繰り返しの説明を省略する。
【0040】
図10図14Bに示すように、光学検出器300は、気体室113と、光源12と、透過感知対象物133と、測定光学センサ141と、プロセッサ19とを備える。透過感知対象物133は、分析待ちの気体サンプルの標的構造成分を感知すると共に、透過感知対象物133の光透過特性を変える。透過感知対象物133は、入射光を受光するように位置しており、そして透過感知対象物133に入射光を透過させて測定透過光に形成する。とりわけ、透過感知対象物133は、気体サンプル中の1つまたはそれ以上の標的構造成分に依存する入射光の特定の波長を優先的に吸収して測定透過光を生成する。測定光学センサ141は、測定透過光を受光・検出して、検出したスペクトル信号を生成するように構成する。プロセッサ19は、測定光学センサ141に連結し、検出したスペクトル信号を受信すると共に、検出したスペクトル信号に基づいて、検出結果を算出する。
【0041】
透過感知対象物133が分析待ちの気体(少なくとも1つの検出待ちの標的構造成分を含有)に接触する場合に、透過感知対象物133は、標的気体構造成分の種類と濃度に基づいてその構造を変える。実際には、参照対象物132は、増加した変色構造を有するガラスなどのような光透過対象物または材料を含んでもよい。例えば、透過感知対象物133は、上記のようなDNA修飾ファージまたはDNA非修飾ファージのうちの少なくとも1つを含む光透過対象物であってもよい。それゆえに、透過感知対象物133に入射光を透過させ、透過感知対象物133の光学特性における変化に依存するスペクトルを有する測定透過光に形成することができる。透過感知対象物133は、異なるDNA修飾ファージまたはDNA非修飾ファージに基づいて、あるいは同じDNA修飾ファージまたはDNA非修飾ファージに基づいて、異なる気体成分とそれらの濃度を検出するが、これらに制限されるものではない。
【0042】
環境要因によって影響を受ける検出結果を校正するために、光学検出器300は、参照対象物132と、参照光学センサ142とをさらに備えてもよい。参照対象物132は、入射光を受光して参照透過光に形成するために、対称的に配置するように構成する。参照光学センサ142は、参照透過光を受光・検出して、参照スペクトル信号を取得するように構成する。プロセッサ19は、また、参照光学センサ142に連結すると共に、参照スペクトル信号を受信して、検出したスペクトル信号と参照スペクトル信号に基づいて、校正結果を算出するように構成する。
【0043】
上記の構成要素を固定するために、光学検出器300は、光源ホルダ150と、対象物ホルダ151と、センサ保護カバー153と、センサホルダ152とをさらに備えてもよい。図10図14Bに示すように、光源ホルダ150は、光源12を固定するように構成し、対象物ホルダ151は、透過感知対象物133及び参照対象物132を固定するように構成し、そしてセンサホルダ152は、測定光学センサ141及び参照光学センサ142を固定するように構成する。対象物ホルダ151は、光源ホルダ150とセンサホルダ152との間に介在すると共に、光源ホルダ150に連結する。センサ保護カバー153は、対象物ホルダ151とセンサホルダ152との間に介在すると共に、それぞれこれらに連結する。光源ホルダ150と、対象物ホルダ151と、センサ保護カバー153と、センサホルダ152とを一緒に組み立てる場合に、光源ホルダ150と対象物ホルダ151との間に気体室113を形成すると共に、センサ保護カバー153とセンサホルダ152との間にセンサ収納空間165を形成する。分析待ちの気体がセンサ収納空間165に進入することを回避するためのセンサ保護カバー153により、センサ収納空間165から気体室113を隔離してもよい。
【0044】
光源ホルダ150は、光源ハウジングスロット154と、2つの開口161とを有する。光源ハウジングスロット154には、光源12を収めるように構成し、そして開口161は、気体室113が外部環境と連通するように構成することで、分析待ちの気体を自由に出入りさせることが許容される。
【0045】
気体室113とセンサ収納空間165との間の光を伝達するために、光学検出器300は、第1保護ガラス181と、第2保護ガラス182とをさらに備える。図11図14Bに示すように、センサ保護カバー153は、2つのガラスハウジングスロット157をさらに含み、一つは、第1保護ガラス181を収めるように構成し、もう一つは、第2保護ガラス182を収めるように構成する。透過感知対象物133に入射光を円滑に透過させるために、第1保護ガラス181は、入射光の光経路にあり、かつ測定透過光の光経路にある。同様の理由から、参照対象物132に入射光を円滑に透過させるために、第2保護ガラス182は、入射光の光経路と参照透過光の光経路との間に位置する必要がある。加えて、測定光学センサ141により測定透過光を円滑に受光するために、測定光学センサ141は、測定透過光の光経路上に位置する必要がある。同様の理由から、参照光学センサ142により参照透過光を円滑に受光するために、参照光学センサ142は、参照透過光の光経路上に位置する必要がある。第1保護ガラス181と第2保護ガラス182は、また、測定光学センサ141及び参照光学センサ142から気体室113を隔離するように構成し、測定光学センサ141及び参照光学センサ142が気体による汚染を受けないように保護することができる。
【0046】
上記の説明によれば、光学検出器300は、光源ホルダ150、対象物ホルダ151、センサ保護カバー153及びセンサホルダ152によって固定し、対称的な配置を提供することにより、光源12からの透過感知対象物133に到達する入射光の経路長は、参照対象物132に到達する入射光の経路長と同じである。同様の理由から、測定光学センサ141に到達する測定透過光の経路長は、参照光学センサ142に到達する参照透過光の経路長と同じである。
【0047】
実際には、精度を良くするために、光学検出器300は、プロセッサ19に連結する温湿度検出器143をさらに備えてもよい。温湿度検出器143は、分析待ちの気体の温度と湿度を検出すると共に、温湿度結果を生成するように構成する。プロセッサ19は、また、温湿度結果に基づいて、校正結果を算出し、計測精度を向上させる。
【0048】
実際には、反射感知対象物131と透過感知対象物133は、アンモニア(NH)、及び炭化水素、ハロゲン化炭化水素、酸素炭化水素、窒素炭化水素などのような揮發性有機化合物を含む気体成分を感知することができる。詳細には、標的気体構造成分は、ベンゼン系、有機塩化物、フロン系、有機ケトン、アミン類、アルコール類、エーテル類、エステル類、酸類由来の化合物、及び石油炭化水素化合物を含んでもよい。検出待ちの気体成分に対応するDNA修飾ファージを含む反射感知対象物131または透過感知対象物133が、検出待ちの標的気体構造成分を含む分析待ちの気体に接触する場合に、DNA修飾ファージは構造を変える。それゆえに、入射光がDNA修飾ファージの構造に進入する場合に、DNA修飾ファージの構造は、入射光のスペクトルを変えると共に、測定反射光または測定透過光に形成する。
【0049】
加えて、反射感知対象物131または透過感知対象物133のファージは、気体を検出できるだけでなく、対応ファージによって検出することができる成分を含有する固体や液体などのような浮遊物質を検出することもできる。成分としては、有機化学物質、無機化学物質、ウイルスなどであってよい。ファージの液体中の検出メカニズムは、上記のとおりの気体中の検出メカニズムと類似であるため、ここではその説明を割愛する。
【0050】
従来技術と比較して、光学検出器100、200または300は、光源放出、温度や湿度などのようなさまざまな環境要因、及び光学検出器の温度の同時校正を提供する。光学検出器は、その他の検出しなかった気体の影響を回避する検出特異性を有するので、高い気体組成解像度を提供する。それは多重反射のための十分な容積の気体室を必要としないから、光学検出器を小型化することができる。加えて、赤外線を用いる気体検知器に比べると、光学検出器100、200または300は、検出時間をより短縮でき、消費電力を少なくする。
【0051】
以上、本発明については、実施例実装を開示したが、これらの実装はあくまでも例示であって、それらによって限定されるものと解釈されるべきではない。なお、開示された実施形態のさまざまな適応と特徴の組み合わせはすべて、以下の特許請求の範囲内に包含されることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
12:光源
17:分光レンズ
19:プロセッサ
100,200,300:光学検出器
111:測定室
112:参照室
113:気体室
131:反射感知対象物
132:参照対象物
133:透過感知対象物
141:測定光学センサ
142:参照光学センサ
143:温湿度検出器
150:光源ホルダ
151:対象物ホルダ
152:センサホルダ
153:センサ保護カバー
154:光源ハウジングスロット
155:対象物ハウジングスロット
156:レンズハウジングスロット
157:ガラスハウジングスロット
161:開口
162:測定センサ収納空間
163:参照センサ収納空間
164:光源収納空間
165:センサ収納空間
181:第1保護ガラス
182:第2保護ガラス
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
【国際調査報告】