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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-16
(54)【発明の名称】SEMG2抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230309BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230309BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230309BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230309BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230309BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230309BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230309BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20230309BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230309BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230309BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230309BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230309BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20230309BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230309BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18
C12N15/63 Z
C12N1/19
C12N1/21
C12N1/15
C12N5/10
C07K14/47
C12N15/12
A61P35/00
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K48/00
A61K47/68
A61P37/04
A61K39/00 H
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
G01N33/53 D
G01N33/574 A
C12P21/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022544425
(86)(22)【出願日】2021-01-21
(85)【翻訳文提出日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 CN2021073100
(87)【国際公開番号】W WO2021147954
(87)【国際公開日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】202010072952.X
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.トライトン
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522290617
【氏名又は名称】上海柏全生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Biotroy Biotechnique Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Building 10, No. 860 Xinyang Road, China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone, Lin-gang Special Area, Shanghai 200131, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】李 兆利
【テーマコード(参考)】
2G045
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB01
2G045DA36
2G045DA37
2G045FB01
2G045FB03
4B064AG01
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085BB41
4C085EE01
4H045AA11
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA41
4H045BA55
4H045BA70
4H045BA71
4H045BA72
4H045DA76
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA31
4H045FA10
4H045FA71
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、低分子阻害剤、ポリペプチド、抗体または抗原結合フラグメントを含む、SEMG2とCD27との相互作用をアゴナイズまたはアンタゴナイズする化合物を提供する。本発明はさらに、ポリペプチドを免疫原として用いて、SEMG2とCD27との結合を高効率で阻害するための抗体を調製する方法を開示する。本発明は、腫瘍細胞が発現するSEMG2と免疫細胞が発現するCD27との接触を遮断することにより、抗腫瘍免疫を促進する方法を開示し、また、SEMG2とCD27との結合を阻止することにより治療薬をスクリーニングする方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEMG2とCD27との相互作用をアゴナイズまたはアンタゴナイズする化合物。
【請求項2】
SEMG2とCD27との相互作用が、SEMG2の497位、498位、499位、500位、501位、502位、503位、504位、505位、506位および508位のアミノ酸部位に位置し、SEMG2タンパク質のアミノ酸配列が配列番号1に示される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
化合物が低分子阻害剤、ポリペプチド、抗体または抗原結合フラグメントである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
ポリペプチドが、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号86(QIEKLVEGKS(x)I(x))、配列番号87(QIEKLVEGKS(x)I)、または配列番号88(QIEKLVEGKS(x))のアミノ酸配列を含み;好ましくは、ポリペプチドが、配列番号2、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)もしくは配列番号5(QIEKLVEGKSQI)のアミノ酸配列、または配列番号2-5のアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、ここでxは何れかのアミノ酸から選択される、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
抗体が天然または変異SEMG2タンパク質に特異的に結合し、抗体がSEMG2タンパク質由来の抗原性エピトープペプチドに結合し、抗原性エピトープペプチドが、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)または配列番号5(QIEKLVEGKSQI)の何れかのアミノ酸配列を含む、請求項3記載の化合物。
【請求項6】
抗体が天然または変異SEMG2タンパク質に特異的に結合し、抗体が天然SEMG2タンパク質の497位、498位、499位、500位、501位、502位、503位、504位、505位、506位および508位の少なくとも1つのアミノ酸残基を認識するか、または変異SEMG2タンパク質の対応する位置のアミノ酸残基を認識し、天然SEMG2タンパク質のアミノ酸配列が配列番号1で示される、請求項3記載の化合物。
【請求項7】
抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域はIMGTによって定義されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;そして、軽鎖可変領域はIMGTによって定義されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、ここで、
前記HCDR1は、配列番号6-11、配列番号60-61および配列番号76からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記HCDR2は、配列番号12-16および配列番号62-64からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記HCDR3は、配列番号17-20、配列番号65-67および配列番号77-81からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記LCDR1は、配列番号21-25、配列番号68-70および配列番号82からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記LCDR2は、配列番号26-29、配列番号71-72、配列番号83-84および配列番号28からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記LCDR3は、配列番号30-34、配列番号73-75、配列番号85および配列番号95からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含む、
請求項3記載の化合物。
【請求項8】
抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域がIMGTによって定義されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み;そして、軽鎖可変領域がIMGTによって定義されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、抗体のCDR配列が(a)~(k)のいずれか1つの組み合わせから選択される、請求項7記載の化合物であって、
(a) HCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号12のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号17のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号21のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号26のアミノ酸配列を含み;LCDR3は配列番号30のアミノ酸配列を含む、
(b) HCDR1は配列番号7のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号13のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号18のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号22のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号27のアミノ酸配列を含み;LCDR3は配列番号31もしくは配列番号95のアミノ酸配列を含む、
(c) HCDR1は配列番号6のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号16のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号17のアミノ酸配列を含み;LCDR1は配列番号21のアミノ酸配列を含み;LCDR2は配列番号26のアミノ酸配列を含み;LCDR3は配列番号30のアミノ酸配列を含む、
(d) HCDR1は、配列番号8のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号13のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号23のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号32のアミノ酸配列を含む、
(e) HCDR1は、配列番号9のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号24のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号28のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号33のアミノ酸配列を含む、
(f)HCDR1は、配列番号10のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号20のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号25のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号29のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含む、
(g)HCDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号20のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号25のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号29のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含む、
(h)HCDR1は、配列番号60のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号65のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号71のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号73のアミノ酸配列を含む、
(i) HCDR1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号63のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号66のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号72のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号74のアミノ酸配列を含む、
(j) HCDR1は、配列番号60のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号64のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号70のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号28のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号75のアミノ酸配列を含む、
(k) HCDR1は配列番号60または76のアミノ酸配列を含み;HCDR2は配列番号64または62のアミノ酸配列を含み;HCDR3は配列番号77、78または79のアミノ酸配列を含み、および/またはLCDR1は、配列番号70または82のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号28、83または84のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号75または85のアミノ酸配列を含む、
化合物。
【請求項9】
抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、請求項3記載の化合物であって、
重鎖可変領域が、配列番号35-41、48-51、54-56および96-100からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号35-41、48-51、54-56および96-100の何れの配列と少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、
軽鎖可変領域が、配列番号42-47、52-53、57-69および101-103からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号42-47、52-53、57-69および101-103の何れかの配列と少なくとも70%、80%、90%、95%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、化合物。
【請求項10】
抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域および軽鎖可変領域が(a)~(o)の組み合わせの何れか1つから選択される、請求項9記載の化合物であって、
(a) 重鎖可変領域は、配列番号35または配列番号35と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号42または配列番号42と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(b) 重鎖可変領域は、配列番号36または配列番号36と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号43または配列番号43と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(c) 重鎖可変領域は、配列番号37または配列番号37と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号44または配列番号44と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(d) 重鎖可変領域は、配列番号38または配列番号38に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号45または配列番号45に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(e) 重鎖可変領域は、配列番号39または配列番号39に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号46または配列番号46に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(f) 重鎖可変領域は、配列番号40または配列番号40に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号47または配列番号47に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(g) 重鎖可変領域は、配列番号41または配列番号41と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号47または配列番号47と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(h)重鎖可変領域は、配列番号48、49、50もしくは51または配列番号48、49、50もしくは51と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号52もしくは53または配列番号52もしくは53と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(i) 重鎖可変領域は、配列番号54または配列番号54と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号57または配列番号57と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(j) 重鎖可変領域は、配列番号55または配列番号55と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号58または配列番号58と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(k)重鎖可変領域は、配列番号56または配列番号56と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号59または配列番号59に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(l)重鎖可変領域は、配列番号96または配列番号96と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号59、101、102もしくは103または配列番号59、101、102もしくは103と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(m) 重鎖可変領域は、配列番号97または配列番号97と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号59または配列番号59と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(n)重鎖可変領域は、配列番号98または配列番号98と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号103または配列番号103と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(o)重鎖可変領域は、配列番号99もしくは100、または配列番号99もしくは100と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号57または配列番号57と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
化合物。
【請求項11】
抗体が、ポリペプチドに連結されたカップリング部位をさらに含み、カップリング部位が、放射性核種、薬剤、毒素、サイトカイン、酵素、フルオレセイン、担体タンパク質、脂質およびビオチンからなる群より1つ以上選択され、ここで、ポリペプチドまたは抗体が、リンカーによってカップリング部位に選択的に連結され、好ましくはリンカーがペプチドまたはポリペプチドである、請求項5から10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項12】
抗体が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体から選択される、請求項5から10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項13】
抗体が、多重特異性抗体、単鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv)および細胞内抗体から選択される、請求項5から10のいずれか一項記載の化合物。
【請求項14】
SEMG2タンパク質に由来する抗原性エピトープペプチドであって、抗原性エピトープペプチドのアミノ酸が、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)および配列番号5(QIEKLVEGKSQI)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、抗原性エピトープペプチド。
【請求項15】
請求項14記載の抗原性エピトープペプチドおよびN末端またはC末端に選択的に連結可能なタグ配列を含む、タンパク質。
【請求項16】
タンパク質が、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号86(QIEKLVEGKS(x)I(x))、配列番号87(QIEKLVEGKS(x))I)または配列番号88(QIEKLVEGKS(x))のアミノ酸配列を含み、好ましくは、ポリペプチドは配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)もしくは配列番号5(QIEKLVEGKSQI)のアミノ酸配列または配列番号2-5のいずれかと少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、より好ましくは配列番号89~94および配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項15記載のタンパク質。
【請求項17】
請求項14記載の抗原性エピトープペプチドまたは請求項15もしくは16記載のタンパク質を免疫原として用いて哺乳動物を免疫化すること、または天然抗体ライブラリーでのスクリーニングにより得られることを含む、抗体の調製方法。
【請求項18】
請求項3から13のいずれか記載の化合物、請求項14記載の抗原性ペプチド、または請求項15もしくは16記載のタンパク質をコードする、単離ポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項18記載のポリヌクレオチドおよび任意の調節配列を含む組換えベクターであって、好ましくは、クローニングベクターまたは発現ベクターである、組換えベクター。
【請求項20】
調節配列が、リーディング配列、ポリアデニル化配列、リーダーペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、転写ターミネーター、またはそれらの何れかの組合せから選択される、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項19または20記載の組換えベクターを含む宿主細胞。
【請求項22】
原核細胞または真核細胞である、請求項21記載の宿主細胞。
【請求項23】
請求項1から13のいずれか一項記載の化合物、請求項14に記載の抗原ペプチド、請求項15もしくは16に記載のタンパク質、請求項18記載のポリヌクレオチド、請求項19もしくは20記載の組換えベクター、および請求項21もしくは22記載の宿主細胞のうち、1以上を含む、医薬組成物。
【請求項24】
薬学的に許容される担体またはアジュバントをさらに含む、請求項23記載の医薬組成物。
【請求項25】
SEMG2とCD27との相互作用をアゴナイズまたはアンタゴナイズするための製品の調製における、請求項1から13のいずれか一項記載の化合物、請求項14記載の抗原性ペプチド、請求項15もしくは16記載のタンパク質、請求項18記載のポリヌクレオチド、請求項19もしくは20記載の組み換えベクターまたは請求項21もしくは22記載の宿主細胞の使用であって、好ましくはSEMG2が腫瘍細胞であり、CD27が免疫細胞で発現させられる、使用。
【請求項26】
腫瘍を予防または処置するための薬剤の調製における、請求項1から13のいずれか一項記載の化合物、請求項14記載の抗原性ペプチド、請求項15もしくは16記載のタンパク質、請求項18記載のポリヌクレオチド、請求項19もしくは20記載の組換えベクター、または請求項21もしくは22記載の宿主細胞の使用。
【請求項27】
腫瘍に対して惹起される免疫応答を調節するための薬剤の調製における、請求項1から13のいずれか一項記載の化合物、請求項14記載の抗原性ペプチド、請求項15もしくは16記載のタンパク質、請求項18記載のポリヌクレオチド、請求項19もしくは20記載の組換えベクター、または請求項21もしくは22記載の宿主細胞の使用。
【請求項28】
腫瘍が、結腸直腸癌、肺癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、乳癌および卵巣癌の1以上から選択される、請求項26または27記載の使用。
【請求項29】
SEMG2とCD27との相互作用を阻害する阻害剤または抗体をスクリーニングして候補となる薬剤または試薬を得ることを含む、腫瘍を予防または処置するための薬剤または試薬をスクリーニングする方法。
【請求項30】
腫瘍を予防または処置する方法であって、
対象のリンパ球などの免疫細胞および/または腫瘍細胞と、請求項1から13のいずれか一項記載の化合物の有効量とを接触させること
を含む、方法。
【請求項31】
腫瘍細胞におけるSEMG2の発現が、対象のリンパ球および/または腫瘍細胞などの免疫細胞と有効量の化合物とを接触させる前に検出される、請求項30記載の方法。
【請求項32】
対象が、追加の抗癌剤療法を受けていたか、受けているか、または受ける予定である、請求項30記載の方法。
【請求項33】
追加の抗癌剤療法が、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法またはホルモン療法を含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
請求項1から13のいずれか一項記載の化合物、請求項14記載の抗原性ペプチド、請求項15もしくは16記載のタンパク質、請求項18記載のポリヌクレオチド、請求項19もしくは20記載の組換えベクター、および請求項21もしくは22記載の宿主細胞の1以上を含み、かつ上記構成要素が適切な容器に包含されている、キット。
【請求項35】
生物学的サンプル中のSEMG2の有無をインビトロで検出する方法であって、生物学的サンプルを請求項1から13のいずれか一項記載の化合物と接触させることを含む、方法。
【請求項36】
腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、A)腫瘍細胞におけるSEMG2の発現を分析する工程;B)腫瘍細胞をSEMG2を認識する抗体と接触させ、該抗体のSEMG2への結合がKD<2×10-8である工程;C)Tリンパ球を該抗体および腫瘍細胞と接触させる工程;を含む、腫瘍細胞の増殖を阻害する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、生物医学の分野に関し、特に、SEMG2抗原性エピトープペプチドおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
CD27分子は、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属し、分子量約55kDaのI型膜タンパク質であり、2つの単量体がジスルフィド結合で連結した二量体として存在する。CD27は主にリンパ球で発現している。CD27ノックアウトマウスを用いた最近の研究から、CD27シグナル伝達経路の活性化が固形腫瘍におけるサプレッサーT細胞(Treg)の浸潤を増加させ、抗腫瘍免疫を低下させることが示されている(Claus C, Riether C, Schuerch C, Matter MS, Hilmenyuk T, Ochsenbein AF. Cancer Res. 2012 Jul 15; 72(14):3664-76)。また、一貫して、この研究は、皮膚組織のTreg細胞が、CD27の発現を失った後、正常な免疫調節機能を果たせなくなることを見出した(Remedios KA, Zirak B, Sandoval PM, Lowe MM, Boda D, Henley E et al., Sci Immunol. 2018. Dec 21;3(30).pii:eaau2042)。さらに、CD27の活性化は、高脂血症マウスのTreg数を増加させ、アテローム性動脈硬化症を軽減させる(Winkels H, Meiler S, Lievens D, Engel D, Spitz C, Buerger C, et al., Eur Heart J. 2017; 38(48):3590-3599)。最近の研究では、CD27が特定のTreg細胞(腫瘍浸潤Tregを含む)の機能的活性化に重要な役割を果たすことが一貫して示されており、したがって腫瘍浸潤Treg細胞が発現するCD27の活性化を回避することは、がん治療戦略として期待されている。
【0003】
CD27はリガンドと結合することでその下流のシグナル伝達が活性化されるが、現在知られているCD27のリガンド分子はCD70である。CD70は、20アミノ酸の親水性N末端ドメインおよび2つの潜在的N結合型グリコシル化部位を含むC末端ドメインを有する193アミノ酸のポリペプチドであり、TNFファミリーに属している(Goodwin,R. G. et al.(1993)Cell 73:447-56; Bowman et al. (1994)Immunol 152:1756-61)。これらの特性から、CD70は細胞外C末端部分を有するII型膜貫通タンパク質であることが示唆される。CD70は、活性化Tリンパ球およびBリンパ球ならびに樹状細胞上に一過性に存在する(Hintzen et al, (1994) J.Immunol. 152:1762-1773; Oshima et al, (1998) Int. Immunol. 10:517-26;Tesselaar et al, (2003)J.Immunol. 170:33-40)。正常細胞に加えて、CD70発現は、腎細胞癌、転移性乳癌、脳腫瘍、白血病、リンパ腫および鼻咽頭癌を含む、異なるタイプの癌において報告されている(Junker et al, J. Urol. 2005; 173: 2150-3; Sloan et al., Am J Pathol. 2004; 164:315-23; Held-Feindt and Mentlein et al, Int J Cancer 2002; 98:352-6)。現在、CD70とCD27との結合を阻止することは、腫瘍免疫療法のために研究されている戦略である。
【0004】
これまでの研究では、CD27がCD70以外のリガンドを有することは示唆されていない。しかしながら、免疫チェックポイント経路の受容体の新規リガンド(特に、腫瘍細胞が発現する比較的特異性の高い新規リガンド)は、より有効な抗腫瘍治療薬の開発にとって大きな意義がある。本発明は、新規な抗腫瘍治療薬および薬剤を開発することを目的とする。
【発明の概要】
【0005】
発明の概要
一面において、本発明は、SEMG2とCD27との相互作用をアゴナイズまたはアンタゴナイズする化合物を開示している。ここで、SEMG2とCD27との相互作用は、SEMG2の497位、498位、499位、500位、501位、502位、503位、504位、505位、506位および508位のアミノ酸部位にあり、SEMG2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。ここで、化合物は、低分子阻害剤、ポリペプチド、抗体または抗原結合フラグメントである。
【0006】
一態様において、本発明はポリペプチドを開示し、該ポリペプチドは、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号86(QIEKLVEGKS(x)I(x))、配列番号87(QIEKLVEGKS(x)I)または配列番号88(QIEKLVEGKS(x))のアミノ酸配列を含み;好ましくは、ポリペプチドは、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)または配列番号5(QIEKLVEGKSQI)のアミノ酸配列、または配列番号2から5に供されるアミノ酸配列と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。ここで、該ポリペプチドは、SEMG2とCD27との相互作用をアゴナイズする。ここで、SEMG2とCD27との相互作用のアミノ酸部位は、SEMG2の497位、498位、499位、500位、501位、502位、503位、504位、505位、506位および508位にあり、SEMG2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。
【0007】
一態様において、本発明は、天然または変異SEMG2タンパク質に特異的に結合する抗体を開示し、該抗体は、SEMG2タンパク質由来の抗原性エピトープペプチドに結合し、該抗原性エピトープペプチドは、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)、または配列番号5(QIEKLVEGKSQI)のアミノ酸配列を含み、ここで、抗体は、SEMG2とCD27との相互作用をアンタゴナイズする。
【0008】
一態様において、本発明は、天然または変異SEMG2タンパク質に特異的に結合する抗体を開示し、該抗体は、天然SEMG2タンパク質の497位、498位、499位、500位、501位、502位、503位、504位、505位、506位および508位における少なくとも1つのアミノ酸残基を認識し、または変異SEMG2タンパク質の対応する位置のアミノ酸残基を認識し、天然SEMG2タンパク質のアミノ酸配列は配列番号1に示される。ここで、抗体は、SEMG2とCD27との相互作用をアンタゴナイズする。
【0009】
一態様において、本発明は、天然または変異SEMG2タンパク質と特異的に結合する抗体を開示し、ここで、該抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、IMGTによって定義されるHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含み、かつ軽鎖可変領域は、IMGTによって定義されるLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含み、
前記HCDR1は、配列番号6-11、配列番号60-61および配列番号76からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記HCDR2は、配列番号12-16および配列番号62-64からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記HCDR3は、配列番号17-20、配列番号65-67および配列番号77-81からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記LCDR1は、配列番号21-25、配列番号68-70および配列番号82からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記LCDR2は、配列番号26-29、配列番号71-72、配列番号83-84および配列番号28からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含み、
前記LCDR3は、配列番号30-34、配列番号73-75、配列番号85および配列番号99からなる群より選択されるアミノ酸配列からなるか、またはそれらを含む。
【0010】
1つの特定の態様において、抗体のCDR配列は、(a)-(k)の組合せの何れか1つから選択される:
(a) HCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号12のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号17のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号26のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(b) HCDR1は、配列番号7のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号13のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号22のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号31または配列番号99のアミノ酸配列を含む;
(c) HCDR1は、配列番号6のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号16のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号17のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号21のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号26のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号30のアミノ酸配列を含む;
(d) HCDR1は、配列番号8のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号13のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号18のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号23のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号27のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号32のアミノ酸配列を含む;
(e) HCDR1は、配列番号9のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号19のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号24のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号28のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号33のアミノ酸配列を含む;
(f) HCDR1は、配列番号10のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号20のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号25のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号29のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含む;
(g) HCDR1は、配列番号11のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号15のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号20のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号25のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号29のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号34のアミノ酸配列を含む;
(h)HCDR1は、配列番号60のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号62のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号65のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号68のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号71のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号73のアミノ酸配列を含む;
(i)HCDR1は、配列番号61のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号63のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号66のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号69のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号72のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号74のアミノ酸配列を含む;
(j)HCDR1は、配列番号60のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号64のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号67のアミノ酸配列を含み;LCDR1は、配列番号70のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号28のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号75のアミノ酸配列を含む;
(k)HCDR1は、配列番号60または76のアミノ酸配列を含み;HCDR2は、配列番号64または62のアミノ酸配列を含み;HCDR3は、配列番号77、78または79のアミノ酸配列を含み;かつ/あるいは
LCDR1は、配列番号70または82のアミノ酸配列を含み;LCDR2は、配列番号28、83または84のアミノ酸配列を含み;LCDR3は、配列番号75または85のアミノ酸配列を含む。
【0011】
一態様において、本発明は、天然または変異SEMG2タンパク質に特異的に結合する抗体を開示し、ここで、該抗体は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、
重鎖可変領域は、配列番号35-41、48-51、54-56および96-100からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号35-41、48-51、54-56および96-100の何れかの配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%同一性のアミノ酸配列を含み;
軽鎖可変領域は、配列番号42-47、52-53、57-69および101-103からなる群より選択されるアミノ酸配列、または配列番号42-47、52-53、57-69および101-103の何れかの配列に対して少なくとも70%、80%、90%、95%または99%同一性のアミノ酸配列を含む。
【0012】
ある特定の態様において、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、(a)-(o)の組合せの何れか1つから選択される:
(a) 重鎖可変領域は、配列番号35または配列番号35と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号42または配列番号42と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(b) 重鎖可変領域は、配列番号36または配列番号36と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号43または配列番号43と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(c) 重鎖可変領域は、配列番号37または配列番号37と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号44または配列番号44と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(d) 重鎖可変領域は、配列番号38または配列番号38に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号45または配列番号45に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(e) 重鎖可変領域は、配列番号39または配列番号39に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号46または配列番号46に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(f) 重鎖可変領域は、配列番号40または配列番号40に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号47または配列番号47に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(g) 重鎖可変領域は、配列番号41または配列番号41と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号47または配列番号47と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(h)重鎖可変領域は、配列番号48、49、50もしくは51または配列番号48、49、50もしくは51と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号52もしくは53または配列番号52もしくは53と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(i) 重鎖可変領域は、配列番号54または配列番号54と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号57または配列番号57と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(j) 重鎖可変領域は、配列番号55または配列番号55と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号58または配列番号58と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(k)重鎖可変領域は、配列番号56または配列番号56と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号59または配列番号59に対して少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(l)重鎖可変領域は、配列番号96または配列番号96と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号59、101、102もしくは103または配列番号59、101、102もしくは103と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(m) 重鎖可変領域は、配列番号97または配列番号97と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号59または配列番号59と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(n)重鎖可変領域は、配列番号98または配列番号98と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号103または配列番号103と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
(o)重鎖可変領域は、配列番号99もしくは100、または配列番号99もしくは100と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み;軽鎖可変領域は、配列番号57または配列番号57と少なくとも70%、80%、90%、95%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0013】
本発明の抗体は、ポリペプチドに連結されたカップリング部位をさらに含み、カップリング部位は、放射性核種、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、フルオレセイン、担体タンパク質、脂質およびビオチンの1以上からなる群より選択され、ここで、ポリペプチドまたは抗体はリンカーによってカップリング部位に選択的に連結されており、好ましくはリンカーはペプチドまたはポリペプチドである。
ここで、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗血清、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体から選択される。
ここで、抗体は、多重特異性抗体、単鎖可変フラグメント(scFv)、単鎖抗体、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、二重特異性抗体、ミニボディ、ナノボディ、単一ドメイン抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、ジスルフィド結合二重特異性Fv(sdFv)および細胞内抗体から選択される。
【0014】
別の面において、本発明は、抗原性エピトープペプチドを開示し、ここで、抗原性エピトープペプチドは、SEMG2タンパク質に由来し、抗原性エピトープペプチドのアミノ酸は、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)および配列番号5(QIEKLVEGKSQI)からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0015】
本発明は、タンパク質を開示し、該タンパク質は、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号86(QIEKLVEGKS(x)I(x))、配列番号87(QIEKLVEGKS(x))I)または配列番号88(QIEKLVEGKS(x))に示すアミノ酸配列を含み、好ましく、該ポリペプチドは、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)もしくは配列番号5(QIEKLVEGKSQI)のアミノ酸配列または配列番号2-5の何れか1つと少なくとも90%の同一性のアミノ酸配列、より好ましくは配列番号89-94および配列番号3(P1-P6、およびP7それぞれに対応);およびN末端またはC末端に選択的に連結できるタグ配列を含む。当業者は、タンパク質タグの付加が、調製された抗体のSEMG2とCD27との結合への参加に影響を与えないことを理解すべきであるが、タンパク質タグとしては、C-Myc、His、GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ)、HA、MBP(マルトース結合タンパク質)、フラグ、SUMO、eGFP/eCFP/eYFP/mCherry等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0016】
ある特定の態様において、ポリペプチドは、配列番号3(P7:QIEKLVEGKSQIQ)または配列番号93(P5)のアミノ酸配列を有する。
【0017】
本発明はまた、抗体またはその抗原結合フラグメントを調製する方法であって、ここで、タンパク質を免疫原として用いてマウスなどの対象に注射するか、または天然ライブラリーをスクリーニングして抗体を調製し、抗体のアミノ酸配列が、配列番号2(QIEKLVEGKS)、配列番号86(QIEKLVEGKS(x)I(x))、配列番号87(QIEKLVEGKS(x)I)、または配列番号88(QIEKLVEGKS(x))のアミノ酸配列を含み、好ましくはポリペプチドは、配列番号3(QIEKLVEGKSQIQ)、配列番号4(QIEKLVEGKSQ)もしくは配列番号5(QIEKLVEGKSQI)のアミノ酸配列または配列番号2-5の何れか1つと少なくとも90%同一性のアミノ酸配列、より好ましくは、配列番号93(P5)または配列番号3(P7)を含む、方法を開示する。
【0018】
好ましい態様において、SEMG2とCD27との結合の重要なエピトープポリペプチドを免疫原として用い、ヒトおよびラクダの天然ライブラリーにおいてマウスハイブリドーマおよびファージディスプレイでスクリーニングする、単離抗体を得る方法が開示される。
【0019】
別の面において、本発明は、化合物、抗原性ペプチド、またはタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドを開示する。
【0020】
本発明は、ポリヌクレオチドおよび任意の調節配列を含む組換えベクターを開示する;好ましくは、組換えベクターは、クローニングベクターまたは発現ベクターである。
ここで、調節配列は、リーディング配列、ポリアデニル化配列、ポリペプチド配列、プロモーター、シグナル配列、転写ターミネーター、またはそれらの何れかの組合せから選択される。
【0021】
本発明は、組換えベクターを含む宿主細胞を開示する。
ここで、宿主細胞は、原核細胞または真核細胞である。
【0022】
本発明は、化合物、抗原ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、および上記の宿主細胞の1種以上を含む医薬組成物を開示する:
ここで、組成物は、薬学的に許容される担体またはアジュバントをさらに含む。
【0023】
本発明はまた、SEMG2とCD27との相互作用をアゴナイズまたはアンタゴナイズするための生成物の調製における化合物、抗原性ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、組換えベクターまたは宿主細胞の使用を開示し、好ましくはSEMG2は腫瘍細胞で発現され、CD27は免疫細胞で発現される。
【0024】
本発明はまた、腫瘍を予防または処置するための薬剤、または腫瘍に対して誘発される免疫応答を調節するための薬剤の調製における、化合物、抗原性ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、組換えベクターまたは宿主細胞の使用を開示する。
【0025】
ある特定の態様において、腫瘍は、結腸直腸癌、肺癌、黒色腫、リンパ腫、肝臓癌、頭頸部癌、胃癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮内膜癌、乳癌および卵巣癌の1以上から選択される。
【0026】
また、本発明は、SEMG2とCD27との相互作用を阻害する阻害剤または抗体をスクリーニングして候補となる薬剤または試薬を得ることを含む、腫瘍を予防または処置する薬剤または試薬のスクリーニング方法を開示する。
【0027】
本発明はまた、以下を含む、腫瘍を予防または処置する方法を開示する:
対象のリンパ球(Tリンパ球)などの免疫細胞または腫瘍細胞を、有効量の何れか1つの化合物と接触させること;ここで、腫瘍細胞におけるSEMG2の発現は、対象のリンパ球および/または腫瘍細胞などの免疫細胞を有効量の化合物と接触させる前に選択的に検出することができる;
ここで、対象が、さらなる抗癌療法を受けたか、受けているか、または受ける予定であり、
ここで、さらなる抗癌療法は、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法、またはホルモン療法を含む。
【0028】
本発明はまた、化合物、抗原性ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、および1種以上の宿主細胞を含み、上記構成要素が適切な容器に収容されるキットを開示する。
【0029】
本発明はまた、生物学的サンプル中のSEMG2の有無をインビトロで検出する方法であって、該生物学的サンプルを化合物と接触させることを含む方法を開示する。
【0030】
A)腫瘍細胞におけるSEMG2の発現を分析する工程;B)腫瘍細胞をSEMG2を認識する抗体と接触させ、抗体のSEMG2への結合は、KD<2×10-8である工程;C)Tリンパ球を、抗体および腫瘍細胞と接触させる工程、ここで、KD<2×10-8、<1×10-8、<9×10-9、<8×10-9、<7×10-9、<6×10-9、<5×10-9、<4×10-9、<3×10-9、<2×10-9、<1×10-9、<1×10-10である工程
を含む、腫瘍細胞の腫瘍細胞増殖を阻害する方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、共免疫沈降アッセイの結果を示し、上段パネルと下段パネルに分かれている。上パネルは、ヒトCD27とSEMG2(Flag)の間に物理的相互作用が存在することを示す。下パネルは、マウスCD27とSEMG2(Flag)の間の物理的相互作用の存在を示す。
図2図2は、免疫蛍光染色およびELISAの結果を示す。図2(A)は、腫瘍細胞で過剰発現させた後のCD27およびSEMGの有意な共局在化を示す。図2(B)は、ELISAの結果を示し、CD27が陰性対照タンパク質に結合せず、濃度効果がない一方で、マイクロプレート中のSEMG2との結合に対するCD27の濃度依存性の効果を証明する。
図3図3は、SEMG2フラグメント(すなわち、P1~P6)がCD27に結合するかどうかを調べるための共免疫沈降アッセイの結果を示す。P5フラグメントは、CD27と有意に結合していることが検出された。
図4図4は、SEMG2フラグメント(すなわち、P4、P5、P6、P7)がCD27に結合するかどうかを調べるための共免疫沈降アッセイの結果を示す。P7配列はP5の一部である“QIEKLVEGKSQIQ”の配列に由来する。結果は、左パネルおよび右パネルを含む。左パネルは、SEMG2フラグメントとヒトCD27との結合を示し、右パネルは、SEMG2フラグメントとマウスCD27との結合を示す。この結果から、ヒトおよびマウスCD27の両方が、P5およびP7フラグメントに結合し得ることが示された。
図5図5は、アラニンスキャニング法によって正確に示された、CD27タンパク質との結合に対するP7の各アミノ酸の寄与を、パネルAおよびパネルBを含めて示す。パネルAは、P7の各アミノ酸を一つずつグリシンに置換して生じた配列、すなわち、1~13番の変異したアミノ酸配列を示す。パネルBは共免疫沈降実験の結果であり、変異体1-13ポリペプチドのGFP融合タンパク質がCD27に結合する程度を示す;ここで、変異体5および9はCD27との結合を完全に失い、変異体11および13はSEMG2 (497-509)およびCD27の結合に影響を与えず、他の部位 (1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 10, 12)の変異体もSEMG2 (497-509)およびCD27の結合を多少弱めていることが示される。SEMG2の497位、498位、499位、500位、501位、502位、503位、504位、505位、506位および508位に位置するアミノ酸は、CD27との結合に明らかな影響を及ぼす。
【0032】
図6図6は、SEMG2エピトープポリペプチドとCD27との結合、および完全長SEMG2のCD27への結合の競合的阻害を示す。(A)図6Aは、BSA結合ヒトSEMG2(497-509)ポリペプチドおよびサルSEMG2ポリペプチドがそれぞれマイクロプレート上のCD27タンパク質に結合できることを示し、これは陰性BSA対照のそれよりも有意に高く、したがってCD27がヒトおよびサルSEMG2(497-509)フラグメントの両方に結合できることを示す。(B)図6Bは、全長SEMG2とCD27との結合に対するSEMG2由来ポリペプチドおよび誘導体QIEKLVEGKSQIQ、QIEKLVEGKSQI、QIEKLVEGKSQおよびQIAKLVEGKSQの阻害効果を示す。図に示すように、異なる濃度のペプチドをまずCD27-Fcと共インキュベートして結合させ、次にSEMG2タンパク質で予コートしたマイクロ反応プレートに添加する。共インキュベーション後、未結合の分子をウォッシュアウトし、次いで抗Fc二次抗体-HRPを用いて検出および現像を行う。その結果、このポリペプチド分子は、全長SEMG2とCD27との結合を阻害することができることが示された。
図7図7は、SEMG2または対照空ベクターを用いて安定的にトランスフェクトし、活性化ヒト末梢血単核細胞と共培養したHCT116細胞のアポトーシスアッセイを示す。(A)図7Aは、アポトーシス解析の代表的な画像であり、緑色フィールドは、アポトーシス細胞を示す。(B)図7Bは、3つの独立した生物学的実験の統計に基づく(エラーバーは標準偏差を表す)。
図8図8は、異なる腫瘍細胞におけるSEMG2タンパク質の発現を示すためのイムノブロッティングアッセイを示す。腫瘍細胞の名称は、上に示されている(フォントは45度傾いている)。試験した細胞株の約半分は、検出可能なSEMG2タンパク質の発現を有する。
図9図9は、異なる腫瘍組織におけるSEMG2タンパク質の発現を明らかにする免疫組織化学(IHC)アッセイの結果を示す。(A)図9Aは、正常大腸組織を対照として、異なる結腸直腸癌腫瘍組織におけるSEMG2の発現を示す;(B)図9Bは、正常肺組織を対照として、異なる肺癌組織におけるSEMG2の発現を示す;(C)図9Cは、前立腺癌、黒色腫および胃癌におけるSEMG2陽性発現の代表画像を示す。スペースの制限のため、全ての腫瘍タイプの検出結果をここでは詳細に記載していない;(D)図9Dは、異なるタイプの腫瘍間のSEMG2陽性発現比率である。陽性発現は、免疫組織化学的染色による中程度または強い陽性発現と定義される。組織チップ(各チップは50以上の組織サンプルを含む)に基づく統計結果は、SEMG2の陽性発現率を示すためにパーセンテージでプロットされる。
【0033】
図10図10は、カプラン・マイヤー因子生存解析の統計結果を示し、SEMG2の高発現(SEMG2免疫組織化学染色による中程度、強陽性と定義)は、結腸直腸癌患者における全生存期間の短縮と有意に関連していることが示唆される。0.001以下のP値は、高度に有意な関連を示す。
図11図11は、免疫組織化学的アッセイの結果を示す。上パネルは、肺癌における制御性Tリンパ球、すなわちTregの染色およびSEMG2の染色の相関の統計的結果を示す。SEMG2免疫組織化学的染色の強度をレベル分けし、各視野のTreg(Foxp3抗体で標識)の数を個別にカウントして比較した。下パネルは、SEMG2陽性発現および陰性発現のそれぞれについて、Tregを標識した代表画像である。
図12図12は、ELISAの結果を示す。縦軸は、ELISAの読み取り値として正規化したA405吸光値を示し、SEMG2とCD27との結合の程度を示し、横軸は、添加した抗体の濃度を示す。実線はSEMG2(497-509)を抗原として作製したポリクローナル抗体のブロッキング効果を示し、点線はSEMG2の全長タンパク質を免疫原として作製したポリクローナル抗体のブロッキング効果を示す。SEMG2(497-509)によって生成されたポリクローナル抗体は、ブロッキング効果を発揮するために低い濃度を必要とし、すなわちSEMG2(497-509)によって生成された抗体のブロッキング力価は、SEMG2全長タンパク質よりも高いことを示す。これは、重要な役割のエピトープであるSEMG2(497-509)の認識により、ブロッキング抗体の開発がより容易になることを示唆している。
図13図13は、SEMG2(497-509)エピトープペプチドおよび全長SEMG2タンパク質を免疫原としてマウスに注射した後に得られたブロッキングモノクローナル抗体の数および抗体の総数を示す。ハイブリドーマ融合により得られたマウスモノクローナル抗体のうち、SEMG2とCD27との結合を阻害できることがELISAにより確認された抗体を数え、黒棒で表示した。SEMG2(497-509)エピトープフラグメントを免疫原として調製した抗体の多くは、SEMG2とCD27との結合を阻害することができ、その陽性率は、全長SEMG2を免疫原として調製した抗体よりも著しく高い。
【0034】
図14図14は、マウスモノクローナル抗体およびヒト化マウスモノクローナル抗体のSEMG2タンパク質に対する結合能を示す。ELISAの読み取り値であるOD450吸光度を縦軸とし、横軸は添加した抗体濃度の違いを示す。ELISAシステム内の抗体の濃度が高くなるにつれて、OD450値は徐々に増加し、マウスモノクローナル抗体(図14A)またはヒト化モノクローナル抗体(図14B)へのSEMG2の結合が徐々に増加することが示される。適合曲線は、3つの独立した生物学的実験からの統計に基づく代表的な結果である。
図15図15は、BSA-SEMG2(497-509)に結合し、SEMG2と受容体タンパク質との結合を阻止するマウスモノクローナル抗体の能力を示す。(A)パネルAは、ELISA、OD450吸光度の読み取りを縦軸として用い、横軸は、異なる濃度で添加した抗体を示し、これは、SEMG2(497-509)とマウスモノクローナル抗体との結合が徐々に増加することを示す。(B)パネルBは、マウスモノクローナル抗体がSEMG2とCD27との結合を阻止し、そのブロッキング効果は濃度の上昇に伴って増加することを示す。対照マウスIgG抗体はブロッキング機能を示さない。縦軸は正規化したブロッキング比であり、横軸は添加した抗体の濃度の違いを示す。ELISAシステムにおいて、抗体濃度の上昇に伴い、SEMG2とCD27の結合は徐々に減少している。適合曲線は、3つの独立した生物学的実験の統計に基づく(エラーバーは標準偏差を表す)。
図16図16は、ELISAの結果を示す。縦軸は、SEMG2(ELISAプレートの表面上に固定)と添加したCD27-Fcとの結合の程度を示す、ELISAの読み取りとしての正規化OD450吸光度を示し、横軸は、異なる実験条件、すなわち、異なる抗体を共インキュベート(濃度は10μg/mLである)することを示す。HPA042767およびHPA042835はそれぞれ、SEMG2(354-403)およびSEMG2(563-574)に対するウサギポリクローナル抗体である;MM02、MM05、MM07、MM08、MM13、MM14はSEMG2(497-509)エピトープに対するマウスモノクローナル抗体である。その結果、SEMG2(497-509)エピトープに対するマウスモノクローナル抗体は、他のエピトープに対する抗体ではなく、SEMG2とCD27との結合を阻止することが示された。この実験は、SEMG2(497-509)エピトープに対するマウスモノクローナル抗体が機能的に同じタイプの抗体に属することを実証している。
図17図17は、T細胞による腫瘍細胞殺傷効果に対する異なるタイプの抗体の効果を示す。活性化したヒト末梢血単球(PBMC)を、SEMG2を高発現するヒト黒色腫細胞A375または結腸直腸癌細胞LOVOそれぞれと共培養し、一方で異なる抗体:無関係のマウスIgG、HPA042767、HPA042835、MM02、MM05、MM07、MM08、MM13またはMM14を添加する。縦軸はアポトーシス腫瘍細胞の割合を示し、横軸は実験における異なる処置条件、すなわち添加された異なる抗体を示す。SEMG2(497-509)エピトープに対するマウスモノクローナル抗体(MM02、MM05、MM07、MM08、MM13またはMM14)は、T細胞による殺腫瘍効果を著しく促進し、一方、対照の無関係なIgGまたはSEMG2(354-403)およびSEMG2(563-574)抗原性エピトープに対するHPA042767抗体およびHPA042835抗体は、このような機能を示さない。これは、SEMG2(497-509)エピトープが腫瘍細胞により発現されるSEMG2の免疫逃避機能における重要部位であり、このエピトープに対する抗体は、抗腫瘍免疫調節機能において同じタイプに属することを示す。
【0035】
図18図18は、SEMG2ブロッキング抗体存在下で、異なる腫瘍細胞に対するT細胞殺傷実験の結果を示す。ここで、A375およびLOVOはSEMG2タンパク質を高発現している腫瘍細胞であるが、DLD1、NCM460およびNCI-H1975はSEMG2陰性細胞である。腫瘍細胞に対するT細胞殺傷実験では、異なる抗体、すなわち、無関係なマウスIgG抗体、MM02またはMM05マウスモノクローナル抗体を添加する。横軸は異なる腫瘍細胞株を表し、縦軸はアポトーシス腫瘍細胞の割合を表す。SEMG2の発現が高い腫瘍細胞(A375およびLOVO)は、抗体処理後にT細胞によってより効果的に死滅させることができるが、SEMG2発現のない腫瘍細胞(DLD1、NCM460およびNCI-H1975)では、SEMG2ブロッキング抗体MM02およびMM05を投与してもアポトーシスレベルに明らかな増大は見られない。このことは、SEMG2の陽性発現が、SEMG2ブロッキング抗体投与の選択的マーカーとして使用できることを示す。SEMG2ブロッキング抗体を抗腫瘍免疫薬として用いるとき、SEMG2の発現は、適切な患者を選択するための指針的な意味を有する。
図19図19は、異なる抗体に対するSEMG2の結合の程度を検出するためのELISAにおける読み取り値として、A450吸光度を示す。SEMG2からの異なる抗原(左側に示す)をELISAプレート上にコーティングし、HPA04276、HPA042835、MM02、MM05、MM07、MM08、MM13、MM14と結合させ、その後、抗マウス二次抗体(HPA04276、HPA042835、MM02、MM05、MM07、MM08に対して)または抗ウサギ二次抗体(HPA04276、HPA042835に対して)を用いて結合抗体を検出した。MM02、MM05、MM07、MM08、MM13およびMM14はいずれもSEMG2(497-509)エピトープに結合し、同一タイプに属する。HPA04276はSEMG2(354-403)エピトープに結合し、HPA042835はSEMG2(563-574)エピトープに結合する。
図20図20は、ELISAで検出された値、すなわちOD450吸光度を表す。この実験では、SEMG2(497-509)エピトープペプチドおよびそのグリシンスキャン変異体(すなわち、アミノ酸を一つずつグリシンに置換した変異体)ポリペプチドをELISAプレート上に固定化し、さらに図に示すように異なる抗体に結合させる。この実験により、異なるモノクローナル抗体が結合する正確なアミノ酸エピトープ、および結合抗体に対する各アミノ酸の相対的重要度を決定する。対照抗体HPA04276およびHPA042835はエピトープおよび変異体に結合しないこと、異なる部位のアミノ酸が抗体の結合に異なる寄与をしていること、そしてSEMG2とCD27との結合を阻止する各抗体(MM02、MM05、MM07、MM08、MM13、MM14)の結合する重要なアミノ酸は類似していることが分かった。このことは、ブロッキング機能を有する抗体は、結合エピトープの点で同じタイプに属することを示唆する。
図21図21は、全長ヒト抗体H88-67、H88-93、H88-96および親和性成熟全長ヒト抗体の、SEMG2およびBSA-SEMG2(497-509)ポリペプチドへの結合に対する濃度依存性の効果を示すELISAの結果を示す。ELISAの読み取り値であるOD450吸光度を縦軸として用い、横軸は添加した抗体の種々の濃度を示す。
図22図22は、全長ヒト抗体およびマウスモノクローナル抗体の、SEMG2への競合的結合に対する濃度依存性の効果を示すELISA結果を示す。縦軸は、SEMG2とマウス抗体との結合を阻止する全長ヒト抗体の比率を示す。全長ヒト抗体の濃度が高くなるにつれて、SEMG2に結合するマウス抗体の検出シグナルが徐々に減少している。
【0036】
図23図23は、異なるヒト抗体H88-93、H88-96およびH88-67がSEMG2とCD27との結合を阻止する効果を示す、ELISA結果を示す。すべての抗体濃度は10μg/mLである。抗体クローンH88-93、H88-96およびH88-67はすべて、SEMG2(497-509)エピトープを用いて天然ファージライブラリーでスクリーニングされた全長ヒト抗体である。
図24図24は、共培養したA375およびLOVO腫瘍細胞のT細胞による殺傷程度、ならびに殺傷効果に対するヒト抗体H88-93、H88-96およびH88-67の影響を示す。結果は、SEMG2(497-509)エピトープに対する3つの抗体は、T細胞によるSEMG2発現腫瘍細胞の殺傷を有意に促進することを実証する。
図25図25は、バイオレイヤー干渉法によって決定されたSEMG2と全長ヒト抗体分子との結合を示し、バイオセンサー上に固定化されたSEMG2タンパク質分子に対する溶液中の全長ヒト抗体の結合および解離の変化を示し、それに基づいて、全長ヒト抗体とSEMG2との親和定数が算出される。
図26図26は、SEMG2抗体が、A375黒色腫マウスインビボモデルにおいて腫瘍増殖を有意に阻害することを示す。
図27図27は、ヒトSEMG2に対応するマウス遺伝子Svs3aのホモ接合体ノックアウトの、野生型マウスと比較した表現型分析結果を示し、これには、全体形態(gross morphology)、種々の組織および器官の生検検査、異なるサブタイプのTリンパ球の比率分析、血液生化学、肝機能および常套の血液検査の特定の結果が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
以下、詳細な説明により本発明をさらに説明する。
【0038】
異なる定義がされていない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0039】
本願において、単数形“a”、“an”および“the”は、文脈が明らかに異なる指示をする場合を除き、複数形の参照を含む。
【0040】
本明細書で用いる用語“対象”としては、何れかのヒトまたは非ヒト動物が挙げられる。用語“非ヒト霊長動物”には、哺乳動物または非哺乳動物、例えば非ヒト霊長動物、羊、イヌ、ネコ、ウシ、ニワトリ、ラット、マウス、両生類、爬虫類等の全ての脊椎動物が含まれる。特記されない限り、用語“患者”および“対象”は互換的に用いられ得る。本発明において、対象は、好ましくはヒトである。
【0041】
本明細書で用いる用語“SEMG2”は、ヒトセメノジェリン(human semenogelin)2であり、ヒト精液中の主要成分の1つで、精嚢腺から分泌され、コロイド状物質を形成して精子細胞を被覆し、その動きを制限するものである。精液中の前立腺から分泌されるタンパク質分解酵素および線維素溶解(fibrinolytic)酵素は、セメノジェリンを分解して、精液の液化を促進し、精子がより自由に動けるようにすることができる。Yoshida K, Karzai ZT, Krishna Z, Yoshika M, Kawano N, Yoshida M, et al., Cell Motil Cytoskeleton. 2009;66(2):99-108を参照のこと。SEMG2タンパク質から単離された“SgII A”ポリペプチドは抗菌活性を有し、その配列はH-KQEGRDHDKSKGHFHMIVIHHKGGQAHHG-OHである。なお、本発明で述べたSEMG2とCD27との結合の鍵となるアミノ酸配列とは異なり、抗菌ペプチド配列はSEMG2の全く異なる領域に存在することが特記される。Edstroem AM, Malm J, Frohm B, Martellini JA, Giwercman A, Moergelin M, et al., J Immunol. 2008;181(5):3413-21を参照のこと。さらに、SEMG2は亜鉛イオンと結合し、前立腺タンパク質分解酵素PSAの活性に影響を与えることも報告されている。Jonsson M, Linse S, Frohm B, Lundwall A, Malm J. Biochem J. 2005;387(Pt 2):447-53を参照のこと。
【0042】
本明細書で用いる用語“抗体”は、無傷の抗体および何れかの抗原結合フラグメント(すなわち、“抗原結合部分”)またはその一本鎖を含む。“抗体”とは、少なくとも2本の重(H)鎖および2本の軽(L)鎖がジスルフィド結合で連結されたタンパク質、またはその抗原結合部分を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中、VHと略記)および重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2およびCH3の3つのドメインからなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中、VLと略記)および軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域はCLドメインからなる。VH領域およびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域に散在する、相補性決定領域(CDR)と称される高可変領域にさらに細分化され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成されている:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域には、抗原相互作用のための結合ドメインが含まれる。
【0043】
用語“抗体”は、免疫グロブリンまたはそのフラグメントもしくは誘導体を意味し、インビトロまたはインビボで産生されたかどうかにかかわらず、抗原結合部位を含むあらゆるポリペプチドを含む。この用語には、マルチクローナル抗体(multi-clone)、モノクローナル抗体、一重特異性抗体、多重特異性抗体、非特異性抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド化抗体、突然変異抗体(mutation)および移植抗体が含まれるが、これらに限定されない。用語“抗体”はまた、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAbなどの抗体フラグメント、および抗原結合機能を保持する、すなわちPD-1に特異的に結合し得る、他の抗体フラグメントも含まれる。一般的に、かかるフラグメントは、抗原結合フラグメントを含み得る。
【0044】
用語“抗原結合フラグメント”、“抗原結合ドメイン”および“結合フラグメント”とは、特定の抗体と抗原との結合を担うアミノ酸を含む抗体分子を意味する。例えば、抗原が大きく、抗原結合フラグメントが抗原の一部のみと結合する。つまり、抗原結合フラグメントと特異的な相互作用を担う抗原分子の部分を“エピトープ”または“抗原決定基”と称する。
【0045】
抗原結合フラグメントは、一般的に、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むが、必ずしも両方を含む必要はない。例えば、いわゆるFd抗体フラグメントは、VHドメインのみから構成されるが、無傷の抗体の抗原結合機能の一部を依然として保持している。
【0046】
用語“エピトープ”とは、結合フラグメントと特異的に結合する/結合フラグメントを認識する抗原決定基と定義される。結合フラグメントは、標的構造に固有のコンフォメーションまたは連続エピトープと特異的に結合/反応することができ、該コンフォメーションまたは不連続エピトープは、ポリペプチド抗原が一次配列において2以上の離れた離散アミノ酸残基であるが、ポリペプチドが天然タンパク質/抗原に折り畳まれるときに分子表面上で一体となって凝集することを特徴としている。エピトープの2以上の離散アミノ酸残基は、1以上のポリペプチド鎖の別個の部分に存在する。ポリペプチド鎖が三次元構造に折り畳まれると、これらのアミノ酸残基は分子表面に集まり、エピトープを形成する。これに対して、2以上の離散アミノ酸残基からなる連続エピトープまたは線状エピトープは、ポリペプチド鎖の単一の線状セグメント内に存在する。
【0047】
用語“処置する”または“処置”は、治療的処置および予防的/防止的措置の両方を意味する。処置を必要とする者には、特定の病状を既に有している個体、およびいずれその病状を獲得する可能性がある個体が含まれる。
【0048】
本明細書で用いる用語“ベクター”は、目的の含有外来遺伝子(例えば、本発明のポリヌクレオチド)の標的細胞における輸送、形質導入および発現のための分子ツールを意味する。このツールは、転写を開始する適切なヌクレオチド配列、すなわちプロモーターを提供する。
【0049】
本発明における用語“タグタンパク質”および“タンパク質タグ”は互換的であり、タンパク質の発現、検出、追跡および精製を容易にするために、DNAインビトロ組換え技術を用いて標的タンパク質と融合し発現させたポリペプチドまたはタンパク質を意味する。タグタンパク質としては、His6、Flag、GST、MBP、HA、GFPおよびMycなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例
【0050】
実施例
特に具体的に説明しない限り、以下の実施例における実施方法は、すべて常套法である。本発明は、以下の非限定的実験例を考慮することにより、さらに理解され得る。
【0051】
実施例1:SEMG2とCD27との結合の検出
ヒトHEK293細胞を直径10cmの培養皿で共トランスフェクションした。pcDNA3-Flag-SEMG2プラスミドおよびpcDNA3-HA-CD2プラスミドを含む複合体を共トランスフェクションして48時間後に細胞を回収および溶解し、溶解液中のCD27を標準的な免疫沈降法により濃縮した。免疫沈降に用いた抗体はFlag抗体であり、対照グループにはIgG非特異的抗体を用いた。その後、HA抗体を用いて共沈したCD27の量を検出し、Flag抗体を用いて免疫沈降したSEMG2の量を検出するイムノブロッティング(ウェスタンブロット)実験を行った。イムノブロッティングアッセイでは、細胞を1%トライトン X-100中のRoche Complete プロテアーゼ阻害剤(TBS pH7.6)により30分間氷上で溶解させ、不溶物を遠心分離でペレット化した。50mM DTTを含むSDSサンプルバッファー中の溶解物を100℃で10分間加熱し、SDS-PAGEで分離し、PVDF膜(Millipore)に移した。細胞膜を5%ウシ血清アルブミン(BSA)添加TBSでブロッキングし、上記抗体でプローブ化した。バンドはWest Pico (Thermo Fisher Scientific)で可視化した。
【0052】
共免疫沈降実験では、細胞をIPバッファー(Thermo Scientific)およびRoche complete プロテアーゼ阻害剤で10分間溶解させ、その後ベンゾナーゼ(sigma)を加えて室温にて25分間溶解させた。その後、溶解物を15,000rpm、4℃にて遠心分離し、沈殿物を除去した。上清を一次抗体とともに4℃にて一晩ゆっくり撹拌した後、プロテインAまたはプロテインGダイナビーズを加えて4℃にて2時間インキュベートし、PBST(0.01% トゥイーン20を含むPBS)で4回洗浄し、SDSサンプルバッファー中50mM DTTで100℃にて10分間溶出し、SDSで分離し、そして上記のように免疫ブロットした。
【0053】
その結果、Flag抗体を用いて沈殿させると、沈殿した複合体はSEMG2およびCD27の両方を含むが、対照グループではSEMG2もCD27も含まれないことがわかった。実験結果については、図1を参照のこと。この実験から、SEMG2とヒトCD27の間に物理的な相互作用があることがわかった。さらに、上記と同様の方法で、SEMG2とマウスCD27との相互作用を検出した。この実験では、HEK293細胞のトランスフェクションにヒトCD27の代わりにマウスCD27を用いて、他の実験条件は変更しなかった。実験結果を図1に示す。この実験から、SEMG2とマウスCD27の間に物理的な相互作用があることがわかる。
【0054】
上記の共トランスフェクション実験条件下で、10cm培養皿に予め配置した細胞スライドを固定、透過、ブロッキングし、さらにCD27およびSEMG2について同時にHAタグ(マウス抗)およびFlagタグ(ウサギ抗)を含む抗体で免疫標識し、二次抗体でそれぞれ赤色および緑色に標識された。細胞内のSEMG2およびCD27の共局在化を蛍光共焦点顕微鏡で観察した。その結果を図2に示す。共発現したSEMG2タンパク質およびCD27タンパク質は、細胞内で明らかな共局在を示し、その局在パターンはほぼ同一であったとさえ言える。このことは、SEMG2とCD27タンパク質との結合が確認されたことと一致する。
【0055】
実施例2:SEMG2(497-509)フラグメントとCD27タンパク質との結合
SEMG2のどの部分がCD27に結合するのかをさらに確認するために、SEMG2タンパク質のフラグメントを設計した。全長SEMG2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号1)を6つの配列セグメントに分け、GFPと融合させ、SEMG2-P1、SEMG2-P2、SEMG2-P3、SEMG2-P4、SEMG2-P5およびSEMG2-P6と名付けた(具体的配列は表1参照のこと、それぞれP1~P6と対応する略号を用いた)。これらのアミノ酸配列を発現するプラスミドをCD27と共トランスフェクトしてHEK293細胞に導入し、CD27と結合するSEMG2の主要なフラグメントを同定するために共免疫沈降実験を行った。共免疫沈降の結果を図3に示す。SEMG2-P5のみがCD27と有意に結合し、SEMG2-P1、SEMG2-P2、SEMG2-P3、SEMG2-P4およびSEMG2-P6はCD27に結合しなかった。以上の結果から、SEMG2-P5フラグメントがCD27に結合する主要な部分であることが示された。
【0056】
配列番号1(ヒトSEMG2):
MKSIILFVLSLLLILEKQAAVMGQKGGSKGQLPSGSSQFPHGQKGQHYFGQKDQQHTKSKGSFSIQHTYHVDINDHDWTRKSQQYDLNALHKATKSKQHLGGSQQLLNYKQEGRDHDKSKGHFHMIVIHHKGGQAHHGTQNPSQDQGNSPSGKGLSSQCSNTEKRLWVHGLSKEQASASGAQKGRTQGGSQSSYVLQTEELVVNKQQRETKNSHQNKGHYQNVVDVREEHSSKLQTSLHPAHQDRLQHGPKDIFTTQDELLVYNKNQHQTKNLSQDQEHGRKAHKISYPSSRTEERQLHHGEKSVQKDVSKGSISIQTEEKIHGKSQNQVTIHSQDQEHGHKENKISYQSSSTEERHLNCGEKGIQKGVSKGSISIQTEEQIHGKSQNQVRIPSQAQEYGHKENKISYQSSSTEERRLNSGEKDVQKGVSKGSISIQTEEKIHGKSQNQVTIPSQDQEHGHKENKMSYQSSSTEERRLNYGGKSTQKDVSQSSISFQIEKLVEGKSQIQTPNPNQDQWSGQNAKGKSGQSADSKQDLLSHEQKGRYKQESSESHNIVITEHEVAQDDHLTQQYNEDRNPIST
【0057】
【表1】

【0058】
SEMG2-P5配列とCD27との結合における重要なアミノ酸をさらに確認するために、SEMG2(497-509)フラグメントを選択し、SEMG2-P7と名付けた(具体的配列はQIEKLVEGKSQIQであり、P7またはSP7と略記する)。SEMG2-P7(497-509)、SEMG2-P5(陽性対照)、SEMG2-P4(陰性対照)またはSEMG2-P6(陰性対照)をそれぞれCD27と共トランスフェクトし、ヒトCD27およびマウスCD27を含むHEK293細胞へ導入した。その後行った共免疫沈降実験の結果、SEMG2-P7およびSEMG2-P5は共にCD27に結合し、ヒトCD27およびマウスCD27の結果は同じであった。この実験結果を図4に示す。この共免疫沈降実験により、SEMG2(497-509)がヒトおよびマウスCD27に結合する主要構造であることが確認された。
【0059】
実施例3:グリシンスキャン(glycine scanning)法を用いたCD27に結合するSEMG2の主要なアミノ酸の正確な特性評価
CD27に結合するSEMG2のエピトープをより高い解像度で特性評価し、CD27タンパク質との結合に対するSEMG2(497-509)の各アミノ酸の寄与をより正確に示すために、SEMG2(497-509)の各アミノ酸を1つずつグリシンに置換し、得られた配列を番号1~13の変異アミノ酸配列とした(図5参照)。これらの変異体プラスミドおよびCD27発現ベクターをHEK293細胞に共トランスフェクトし、GFP融合1-13ポリペプチド変異体のCD27への結合の程度を共免疫沈降アッセイにより検出した。実験結果は図5に示すとおりであり、ここで、変異体5および9はCD27との結合を完全に失い、変異体11および13はSEMG2(497-509)のCD27への結合に影響を与えず、他の部位(1、2、3、4、6、7、8、10、12)の変異体はSEMG2(497-509)とCD27との結合をある程度弱めることが確認された。したがって、SEMG2の497位、498位、499位、500位、501位、502位、503位、504位、505位、506位および508位のアミノ酸は、CD27との結合に明らかな影響を与えることが分かる。ペプチド配列497-509をBSAに結合させ、96ウェルマイクロプレートにコーティングした。種々の濃度のCD27-hFcを一次抗体として用いて、CD27のペプチド配列への結合能力を検出した。この結果は、CD27濃度がSEMG2への結合に及ぼす影響が存在することを示している。
【0060】
実施例4:腫瘍細胞によって発現されたSEMG2は、免疫細胞によって腫瘍を殺す効果を阻害する
腫瘍細胞のT細胞介在細胞死アッセイ。HCT116ヒト結腸直腸癌細胞を、SEMG2発現ベクターまたは対照の空ベクターで安定的にトランスフェクトし、活性化PBMCと共培養した後のアポトーシス細胞の割合をカスパーゼ3/7溶解アッセイ(緑色蛍光アッセイ)により決定した。具体的には、SEMG2を安定的に発現しているHCT116細胞を96ウェルプレートに播種した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC;#70025、Stem Cell)を100ng/mLのCD3抗体、100ng/mLのCD28抗体および10ng/mLのIL2(#317303;#302913;#589102、BioLegend)でそれぞれ活性化して、蛍光カスパーゼ3/7基質の存在下で結腸直腸癌細胞(#4440、Essen Bioscience)と共に10:1で共培養を行った。10時間後、細胞を蛍光顕微鏡で観察した。その結果を図7に示す。対照細胞と比較して、SEMG2を過剰発現する腫瘍細胞は、活性化PBMCとの共培養後に、有意に減少したアポトーシスを示した。この実験結果は、SEMG2が免疫細胞機能を抑制する役割を有することを裏付けるものである。
【0061】
実施例5:種々の腫瘍細胞におけるSEMG2発現の検出
LOVO結腸直腸癌、RKO結腸直腸癌、PC3前立腺癌、A375悪性黒色腫、SW1116結腸直腸癌、DLD1結腸直腸癌、HEK293ヒト腎臓上皮細胞株、HepG2肝細胞癌、NCM460ヒト正常結腸上皮細胞、NCI-H1975ヒト非小細胞肺腺癌、CaCo2大腸腺癌、HT29結腸直腸腺癌、SW1990ヒト膵臓腺癌、AGSヒト胃腺癌、SW480結腸直腸癌、SaOS2骨肉腫、GES-1ヒト胃粘膜細胞等の異なる種類のヒト腫瘍細胞を、10%仔牛血清含有DMEM培地を用いて37℃にて5%二酸化炭素の細胞インキュベーター中で培養した。
【0062】
イムノブロッティングアッセイでは、細胞を1%トライトン X-100 (TBS pH7.6)中の Roche complete プロテアーゼ阻害剤と共に30分間氷上で溶解させ、不溶性物質を遠心分離によりペレット化した。50mM DTTを含むSDSサンプルバッファーに溶解した溶解物を100℃にて10分間加熱し、SDS-PAGEで分離し、PVDF膜(Millipore)に移した。細胞膜を5%ウシ血清アルブミン(BSA)含有TBSでブロッキングし、SEMG2および内部対照のGAPDHに対してそれぞれ特異的に一次抗体でプローブ化した。一次抗体は、HRP結合二次抗体で標識した。バンドはWest Pico (Thermo Fisher Scientific)で可視化した。結果を図8に示すが、SEMG2は、GES-1ヒト胃粘膜細胞およびNCM460ヒト正常大腸上皮細胞では発現されないが、LOVO結腸直腸癌、RKO結腸直腸癌、PC3前立腺癌、A375悪性黒色腫、SW1116結腸直腸癌、HEK293ヒト腎臓上皮細胞株、HepG2肝細胞癌、CaCo2大腸腺癌、HT29結腸直腸腺癌、AGSヒト胃腺癌、SW480結腸直腸癌およびSaOS2骨肉腫などを含む複数の種類の悪性腫瘍細胞で発現が観察された。この結果は、SEMG2が腫瘍においてユビキタスに発現しているタンパク質であることを示している。
【0063】
実施例6:免疫組織化学(IHC)を用いた異なる腫瘍細胞におけるSEMG2発現の検出
免疫組織化学的染色のために、Shanghai Xinchao Biotechnology Companyから様々な腫瘍の組織チップを入手した。要約すれば、組織標本を抗SEMG2抗体(HPA042767、Sigma Aldrichから購入、1:100希釈)およびビオチン結合二次抗体と共にインキュベートし、その後、抗ビオチン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体と共にインキュベートし、発色試薬アミノエチルカルバゾールを用いて観察した。組織学的スコアとして、染色強度を高(3)、中(2)、低(1)、陰性(0)の4群に分けた。
【0064】
まず、結腸直腸癌腫瘍の組織チップにおけるSEMG2の発現を染色し、正常結腸直腸組織を対照として用いた。その結果、結腸直腸癌組織においてSEMG2の発現が広範囲にわたって高いことが見いだされた。結果を図9に示す。
【0065】
次に、異なる肺癌組織におけるSEMG2の発現を染色し、正常肺組織を対照として用いた;肺癌組織においてSEMG2の発現が広範囲に亘り高いことが見出された。結果を図9に示す。
【0066】
再度、前立腺癌、黒色腫および胃癌におけるSEMG2の陽性発現を染色し、その結果を図9に示す。
【0067】
最後に、組織チップの染色に基づき、示された異なる腫瘍タイプにおけるSEMG2発現の陽性率を算出した。陽性発現を、免疫組織化学的染色において中等度または強度の陽性発現と定義した。組織チップ(各チップは50以上の組織サンプルを含む)に基づく統計結果を、図9にパーセンテージで示す。
【0068】
実施例7:SEMG2高発現と腫瘍予後不良との関連性の証明
免疫組織化学染色において、Shanghai Xinchao Biotechnology Co., Ltd.から様々な腫瘍の組織チップを入手し、全て生存期間情報の経過観察データを含んだ。免疫組織化学的検出を実施例6に記載の方法によって行った。結腸直腸癌を一例として、SEMG2の発現により患者を分類し、高SEMG2(免疫組織化学スコア2、3)および低SEMG2(免疫組織化学スコア0、1)の2群に分けた。カプラン・マイヤー法を用いて、2つの患者群の全生存期間を比較した。結果を図10に示す。SEMG2が高発現している患者の生存期間は、SEMG2が低発現している腫瘍患者の生存期間より有意に短いことが分かった。また、肺癌(P<0.05)および胃癌(P<0.05)など他の腫瘍についても、このような有意な相関が見られた。以上の結果から、SEMG2は腫瘍の免疫回避に重要な分子であり、新たな抗腫瘍標的となり得ることが示唆された。
【0069】
実施例8:SEMG2高発現と免疫抑制機能を有する制御性T細胞(Treg)の浸潤との相関性の確認
腫瘍組織におけるSEMG2発現と免疫抑制機能を有する制御性T細胞(Treg)の浸潤との相関を分析するために、Shanghai Xinchao Biotechnology Co., Ltdから購入した種々の腫瘍組織チップを免疫組織化学分析法により検討した。肺癌を例として、腫瘍組織(Foxp3抗体で標識)中のTregの浸潤度をSEMG2の発現量によって比較した。その結果、SEMG2の発現が高いほど、より多くのTregが浸潤していることがわかった(組織間で統計的に有意な差があった、P<0.05)(図11参照)。この結果は、SEMG2の発現が腫瘍の局所的な免疫微小環境と有意に相関することを示しており、SEMG2の発現は、免疫抑制状態のバイオマーカーおよび腫瘍免疫モジュレーターのコンパニオン診断マーカーとして用いることが可能であることを示している。
【0070】
実施例9:SEMG2(497-509)フラグメントを免疫原とする抗体の作製
具体的には、以下の工程を含む:(1)抗原調製、SEMG2(497-509)、すなわち“QIEKLVEGKSQIQ”配列に従ってポリペプチドを合成し、免疫化のためにVLP担体に結合させる;別のグループの免疫原として完全長SEMG2タンパク質(Cusabioから購入、カタログ番号CSB-YP021002HU)を使用。(2)初回免疫化:ウサギの両後肢の毛の一部をハサミで取り除き、アルコールおよびヨウ素で皮膚を消毒する。フロイントの完全型アジュバント(FCA)で乳化した抗原液1mLを2mLシリンジで吸引し、そのうちの0.5mLを両足裏の皮下に注射する。(3)2回目の免疫化:10~14日後に両側窩部および鼠径部の腫脹したリンパ節に抗原液を、各リンパ節に0.1mL、残り1mLをリンパ節付近の皮下に注射する。リンパ節が腫脹していない場合、または腫脹が明らかでない場合は、両側窩部および鼠径部皮下に直接注射する。(4)7-10日後に耳介静脈から0.5-1.0mL採血し、血清を分離し、抗原10μg/mLでコーティングした間接ELISAを用いて血清力価を測定する。力価が1:64,000以上の場合は採血する。(5)力価が基準に満たない場合は、アジュバント無添加の抗原液を耳介に注射して免疫する。すなわち、1週間以内に3回、それぞれ0.1、0.3、0.5mLずつ注射する。1週間後に再度血液検査を行う。力価が条件を満たせば、直ちに採血し、抗血清をすべて回収する。
【0071】
ポリクローナル抗体精製の具体的な実験手順は、以下の通りである:(1)プロテインA セファロース CL-4B 親和性カラムの調製。プロテインAセファロースCL-4B充填剤(packing)10mLを調製するために、等量の充填剤およびTBS緩衝液を真空フラスコ内で混合し、撹拌して15分間真空引きして充填剤中の気泡を除去する。ポンプを用いて充填速度を1mL/分-2mL/分に制御しながら、プロテインA セファロース CL-4B充填剤をガラスカラムにゆっくりと添加し、カラムの乾燥を防ぎ、ベッド容量の10倍の予冷TBS緩衝液でカラムを平衡化させる。(2)抗血清の調製。抗血清は、タンパク質の凝集を避けるため、氷水または4℃の冷凍庫でゆっくりと融解する。解凍中に生じた凝集体は、37℃にて予加熱することにより溶解させることができる。固体のアジ化ナトリウムを0.05%の濃度で添加し、15,000×gで4℃にて5分間遠心分離し、清澄化した抗血清を取り出し、フィルターでろ過して過剰な脂質を除去する。(3)親和性クロマトグラフィー。抗体をTBS緩衝液で1:5に希釈し、フィルターで濾過する。抗血清を0.5mL/分の速度でカラムに添加する。抗血清が充填剤に確実に結合するよう、カラムへの添加は2回連続で行い、添加時の廃液を保存しておく。TBS緩衝液を用いてAλ280nm<0.008まで洗浄し、pH2.7の溶出緩衝液を添加し、0.5mL/分の速度ですべてのタンパク質が流下するまで溶出する。中和緩衝液100μLを加えた1.5mL EPチューブを用いて、溶出液を別々のチューブに回収する。撹拌後、溶出液のpHをpH試験紙で確認する。pHが7より低い場合は、抗体の変性を防ぐために中和緩衝液でpH7.4程度に調整する。pH1.9の溶出緩衝液10mLをカラムに添加し、Aλ280nm<0.008になるまで溶出液を上記方法により集める。各チューブ中のタンパク質含有量を分光光度計で測定した。
【0072】
実施例10:抗体作製における免疫原としてのSEMG2(497-509)と全長SEMG2とのブロッキング効果の比較
SEMG2(497-509)配列フラグメントは、SEMG2がCD27に結合する際の重要なエピトープであり、比較的短い配列を有するため、SEMG2(497-509)を免疫原として用いて抗体を調製した方が、全長SEMG2を用いて抗体を調製するよりも、理論上SEMG2とCD27との結合を阻害する機能を有する抗体分子を得ることが容易である。直接比較のため、実施例において、2つの方法による抗体産生の有効濃度の違いをELISA法を用いて検証した。SEMG2(497-509)を免疫原として作製した抗体および全長SEMG2を用いて作製した抗体を、異なる濃度(10-2、10-1、10、10、10、10、10μg/ml)で酵素免疫測定法(ELISA)反応系に添加し、ELISA法による結合値を測定した。酵素免疫測定法の具体的な工程は以下の通りである:(1)SEMG2タンパク質抗原を50mM 炭酸コーティングバッファ(pH9.6)で溶解させて抗原濃度を10μg/mLとし、96ウェル ELISAプレート (Corning 社製)に、100μL/ウェルで添加し、4℃にて一晩静置する。(2)翌日、コーティング液を捨てた後、PBSTで3回洗浄し、1%BSAを各ウェルに150μL添加し、37℃にて2時間ブロッキングする。(3)PBSTで3回洗浄後、図12に示すように異なる終濃度となるように、各ウェルに表示抗体(SEMG2(497-509)を免疫原として作製したポリクローナル抗体、SEMG2全長を免疫原として作製したポリクローナル抗体)を添加し、10μg/mのCD27-Fc融合タンパク質(すなわち、ヒトCD27タンパク質の細胞外領域とヒト抗体のFcフラグメントを融合したもの)を添加し、37℃にて2時間インキュベートする。(4) PBSTで5回洗浄後、希釈したHRP標識抗ヒトFc二次抗体100μlを添加し、37℃にて1時間インキュベートする。(5)PBSTで5回洗浄後、発色剤で現像し、20分後にマイクロプレートリーダーでA450吸収量を読み取った。
【0073】
実験結果を図10に示す。SEMG2(497-509)を抗原として産生された抗体は、ELISA法で検出されるSEMG2とCD27との結合を低濃度で50%減少させたが、SEMG2の全長タンパク質を免疫原として産生されたポリクローナル抗体は高濃度でのみその効果を発揮した(必要量は前者の300倍強である)。すなわち、SEMG2(497-509)産生抗体のブロッキング力価は、SEMG2全長タンパク質産生抗体のブロッキング力価の300倍以上であった。このことは、重要なエピトープであるSEMG2(497-509)を認識することにより、ブロッキング抗体の開発が容易になり、当業者はより容易にSEMG2とCD27との結合を阻止できる抗体を取得できることを示す。
【0074】
実施例11:SEMG2(497-509)エピトープペプチドおよびSEMG2全長タンパク質を用いたマウスモノクローナル抗体の作製
SEMG2(497-509)配列を用いてポリペプチドを合成し、免疫化用VLP担体に結合させた。HEK293細胞を用いて全長SEMG2タンパク質を発現させ、純度が92%になるように試験し、SEMG2タンパク質のCD27への結合活性をELISAで確認した。このタンパク質抗原およびポリペプチド抗原を用いて、それぞれ10匹のマウスに免疫し、効果を高めるために複数回の免疫を行った:(1)1回目の免疫:抗原50μg/マウス、フロイントの完全型アジュバントとともに皮下注射を複数回、3週間の間隔をおいて行う;(2)2回目の免疫:上記と同じ用量および経路、不完全型フロイントアジュバントとともに、3週間の間隔をおいて行う;(3)3回目の免疫:上記と同用量、アジュバントなし、腹腔内注射、3週間の間隔で行う;(4)ブースター免疫:用量50μgを腹腔内注射する。最後の注射から3日後に採血し、その力価および免疫効果を測定し、力価の高いマウスをハイブリドーマ融合スクリーニングのために選択した。サブクローニング後、モノクローナル抗体の標的抗原への結合をELISAで検出し、SEMG2とCD27との結合を阻止する異なるモノクローナル抗体の機能をELISAで測定した。
【0075】
ハイブリドーマが産生するモノクローナル抗体をELISAでスクリーニングした。SEMG2(497-509)を免疫原として調製したモノクローナル抗体のうち、図13に示すように、27株の第1バッチで19株がブロッキング機能(SEMG2とCD27との結合を阻害する)を有していた。SEMG2の全長タンパク質を免疫原として調製したモノクローナル抗体のうち、図13に示すように、バッチで検証した結果、合計108株の抗体のうち、ブロッキング機能を有するものは1株のみであった。
【0076】
したがって、SEMG2(497-509)エピトープペプチドを免疫原として用いてモノクローナル抗体を調製することにより、ブロッキング抗体の探索効率が著しく向上した。マウスモノクローナル抗体のサブタイプ(表2)および配列(表3)を以下の表に示す。
【0077】
【表2】


【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
ELISAプレートにSEMG2タンパク質をコーティングし、一次抗体として連続希釈したマウスモノクローナル抗体を用い、SEMG2に対するマウスモノクローナル抗体の結合能を検出するために抗マウス二次抗体を用いた。結果を図14Aに示す。マウスモノクローナル抗体が、SEMG2タンパク質に対して優れた親和性を有することが示される。
【0081】
実施例12:抗SEMG2 mAbのヒト化
マウス抗SEMG2モノクローナル抗体MM05を、ヒト患者に用いるとき、免疫原性を低減するためにヒト化した。重鎖および軽鎖可変領域(VHおよびVL)の配列を、Protein Data Bank(PDB)のヒト抗体配列と比較し、ホモロジーモデルを確立した。マウスmAbの重鎖および軽鎖のCDRは、抗原結合に必要な適切な構造を維持している可能性が最も高いヒトフレーム領域に移植した。必要に応じて、ヒト残基からマウス残基への逆変異または他の変異を設計した。例えば、ヒト化軽鎖VL-V2の95位のアミノ酸をKからQに変異させ、IMGT分析に従って軽鎖の対応するCDR3配列をQQSYSLPWT(配列番号95)に変換した。ヒト化VHおよびVL領域は、それぞれヒトIgGlの重鎖およびκ軽鎖の定常領域に融合させた。mAb配列に対応する構築ベクターを用いて293E細胞で一過性トランスフェクションを行い、精製したmAbのSEMG2タンパク質への結合能をELISAを用いて分析した。結果は吸光度で示しており、吸光度が高いほどヒト化抗体およびSEMG2の相互作用が高いことを示す。本発明で得られた8種のヒト化抗体のCDR、軽鎖可変領域および重鎖可変領域、軽鎖および重鎖のアミノ酸配列を、以下の表4および表5に示す。図14Bは、連続希釈したヒト化モノクローナル抗体のSEMG2タンパク質への結合の適合カーブであり、その結果、ヒト化抗体は、マウスモノクローナル抗体のSEMG2タンパク質への結合能を維持していることが示された。
【0082】
【表5】

【0083】
実施例13:SEMG2(497-509)エピトープ特異的抗体および他のエピトープ特異的抗体との、SEMG2およびCD27の結合を阻止する際の機能的比較
ブロッキング抗体の調製におけるSEMG2(497-509)エピトープの重要性を示すために、SEMG2とCD27との結合を阻止する際の異なるSEMG2エピトープに対する抗体の機能を更に比較した。既存の市販抗体であるHPA042767およびHPA042835(いずれもSigma Aldrich Companyより購入)は、それぞれSEMG2(354-403)およびSEMG2(563-574)のエピトープに対するウサギポリクローナル抗体であることが知られている。
【0084】
まず、SEMG2(497-509)エピトープ特異的抗体(例えば、MM02、MM05)と他のエピトープ特異的抗体(例えば、HPA042767)について、異なる濃度範囲でのSEMG2とCD27との結合を阻害する機能を比較した。SEMG2(497-509)エピトープに対する上記抗体の結合をELISAにより確認した:MM02およびMM05は、SEMG2(497-509)に結合できたが、HPA042767は図15Aに示すように、広範囲の濃度でこのエピトープに結合することができなかった。SEMG2とCD27との結合に対する異なる抗体(無関係なマウスIgG、MM02、MM05、HPA042767)のブロッキング機能を、実施例11に記載のELISA実験によって分析した。図15Bに示すように、MM02およびMM05の濃度が高くなるにつれて、SEMG2およびCD27の結合は徐々に減少し、この現象は無関係なマウスIgGおよびHPA042767抗体の両者について認められ、後者は広い濃度範囲においてSEMG2とCD27との結合を阻害する機能を有さないことが示される。これらの結果は、SEMG2(497-509)エピトープがブロッキング抗体の作製において重要であることを支持する。
【0085】
さらに、SEMG2とCD27との結合に対する異なる抗体の効果を、同じ抗体濃度の条件下で比較した。ELISAでは、同一濃度(10μg/mL)の抗体を用い、SEMG2とCD27との結合の強さを測定した。結果を図16に示す。SEMG2(497-509)エピトープに対するMM02、MM05、MM07、MM08、MM13およびMM14抗体は、SEMG2とCD27との結合を有意に減少させるが、SEMG2の他のエピトープに対するHPA042767抗体およびHPA042835抗体はいずれもSEMG2とCD27との結合を減少させないことが示された。
【0086】
実施例14:活性化PBMCによる腫瘍細胞の殺傷におけるSEMG2(497-509)エピトープ特異的抗体および他のエピトープ特異的抗体の効果の比較
この実施例では、SEMG2は活性化PBMCによる腫瘍細胞の殺傷を阻害する機能を発揮している。SEMG2はCD27と結合することにより上記の役割を果たすと考えられ、SEMG2(497-509)エピトープはCD27との結合の鍵となる部位であることから、SEMG2(497-509)エピトープ特異的抗体は、SEMG2によるPBMCの腫瘍細胞死への影響を中和し得ると考えられる。
【0087】
上記の仮説を検証するために、活性化PBMCによる腫瘍細胞の殺傷に対する種々のエピトープ特異的抗体の効果を比較した。具体的には、SEMG2を高発現しているA375ヒト黒色腫細胞およびLOVOヒト結腸直腸癌細胞を96ウェルプレートに播種した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC;#70025、Stem Cell)をCD3抗体100ng/mL、CD28抗体100ng/mL、IL2(#317303;#302913;#589102, BioLegend)でそれぞれ活性化して、蛍光カスパーゼ-3/7基質(#4440, Essen Bioscience)存在下で上記の腫瘍細胞と10:1の比で共培養した。10時間後、細胞を蛍光顕微鏡で観察した。結果を図17に示す。HPA042767抗体もHPA042835抗体も活性化PBMCに影響を与えず、腫瘍細胞を殺すことはできなかったが、SEMG2(497-509)エピトープに対するMM02、MM05、MM07、MM08、MM13およびMM14抗体はアポトーシス腫瘍細胞比率を顕著に増加させることがわかった。以上の結果から、SEMG2(497-509)エピトープ特異的抗体は、SEMG2の活性を中和する(すなわち、PBMCによる腫瘍細胞死に対するSEMG2の阻害効果を消失させる)ことができることが明らかとなった。
【0088】
実施例15:SEMG2の発現量およびブロッキング抗体のPBMCによる腫瘍細胞殺傷促進機能の相関性の検証
SEMG2の発現は、その腫瘍特異的免疫の阻害の前提条件であることから、SEMG2の発現は、SEMG2ブロッキング抗体投与の適否の条件にもなり得るものである。理論的には、SEMG2が高発現している腫瘍細胞は、SEMG2活性の中和後にPBMCによる腫瘍細胞死が相対的に増加する。SEMG2を発現しない腫瘍細胞は、SEMG2による免疫逃避機能に依存していないため、SEMG2活性の中和後にPBMCによる腫瘍細胞死は大きな変化を生じないと考えられる。
【0089】
上記の仮説を検証するために、SEMG2高発現腫瘍細胞(A375、LOVO)およびSEMG2陰性腫瘍細胞(DLD1、NCM460およびNCI-H1975)を選択した。腫瘍細胞に対するPBMC殺傷実験中に、種々の抗体(無関係なマウスIgG抗体、MM02またはMM05抗体)を添加した。結果を図18に示す。MM02およびMM05抗体は、活性化PBMCによるSEMG2陽性腫瘍細胞(A375、LOVO)の殺傷を有意に増加させたが、SEMG2陰性腫瘍細胞(DLD1、NCM460およびNCI-H1975)の細胞死には明白な影響を与えなかった。したがって、上記の実験結果は、SEMG2の陽性発現が、SEMG2およびCD27ブロッキング抗体の投与のためのスクリーニング条件、すなわち、対応するバイオマーカーであることを示す。
【0090】
実施例16:SEMG2とCD27との結合を阻止するための抗体の関連エピトープの正確な定義付け
ブロッキング抗体(すなわち、SEMG2とCD27との結合を阻害できる抗体)および非ブロッキング抗体の結合エピトープを明確に区別するために、対応するELISA分析法を確立した。具体的には、SEMG2全長タンパク質(1-582)、SEMG2(354-403)フラグメント、SEMG2(442-453)フラグメント、SEMG2(497-509)フラグメントおよびSEMG2(563-574)フラグメントをELISAプレート上に固定化し、同じ濃度の抗体(MM02、MM05、MM07、MM08、MM13、MM14、HPA042767およびHPA042835)を添加した。その後、抗マウス二次抗体または抗ウサギ二次抗体を用いて、対応する結合抗体を検出した。結果を図19に示す。MM02、MM05、MM07、MM08、MM13およびMM14は全て、SEMG2(497-509)エピトープに結合し、HPA042767はSEMG2(354-403)エピトープに結合し、HPA042835はSEMG2(497-509)エピトープに結合したが、いずれの抗体もSEMG2(442-453)対照フラグメントには結合しなかった。これらの結果は、抗体の標識特異性を支持する。
【0091】
ブロッキング抗体MM02、MM05、MM07、MM08、MM13、MM14が結合する正確なエピトープ(単一アミノ酸のレベルで特異的)をさらに正確に定義するために、対応するELISA分析法を確立した。図20に示すように、SEMG2(497-509)ポリペプチドおよびグリシンで1つずつ置換したポリペプチド配列群(グリシン変異スキャン配列群)をELISAプレート上に固定化し、それぞれ同じ濃度の抗体(MM02、MM05、MM07、MM08、MM13、MM14、HPA042767およびHPA042835)を添加した。その後、抗マウス二次抗体または抗ウサギ二次抗体を用いて、対応する結合した抗体を検出した。結果を図20に示す。HPA042767およびHPA042835抗体は、該配列に結合せず、実験の特異性および2種類の抗体の異なるエピトープクラスが示された。一方、SEMG2(497-509)配列の異なるアミノ酸は、グリシンによる置換後、同様のブロッキング抗体(MM02、MM05、MM07、MM08、MM13、MM14)の結合に対して異なる程度の影響を及ぼした。例えば、507位および509位のアミノ酸の置換は、MM02および類似の抗体の結合に大きな影響を与えなかった。501位および506位のアミノ酸の置換は、MM02および類似の抗体の結合に大きな影響を与えた(70%以上の減少)。他の部位のアミノ酸はグリシン置換後にMM02および類似の抗体の結合にある程度影響を与えた。この結果は、MM02および類似の抗体(すなわち、SEMG2とCD27との結合を阻害する抗体)に関連するエピトープアミノ酸、および各アミノ酸の結合への寄与を正確に定義する。また、ブロッキング抗体との結合に参加するSEMG2の主要なアミノ酸は、CD27との結合に参加するアミノ酸と高い整合性があり、MM02およびその類似の抗体がCD27と競合してSEMG2に結合することが示され、抗体機能の分子機構を検証することができた。
【0092】
実施例17:SEMG2とCD27との結合を阻害し、PBMCによる腫瘍細胞の殺傷を促進するSEMG2(497-509)エピトープを用いた全長ヒト抗体の調製およびスクリーニング
実施例の結果は、ブロッキング抗体の調製においてSEMG2(497-509)エピトープの重要性を示し、このエピトープを全長ヒト抗体のスクリーニングに適用した。具体的には、まず、ポリペプチド抗原の調製およびヒト天然抗体ライブラリーのスクリーニングを行った。SEMG2(497-509)ポリペプチドを合成し、それぞれBSAおよびKLHに結合させ、完全ヒトファージディスプレイ抗体ライブラリーでスクリーニングを行った。ELISAを用いて、抗原性エピトープに結合するクローンを選択し予備スクリーニングに用いた。単一コロニーの配列決定後に異なるユニークな配列が得られ、親和性ソーティングに従って選別し、比較的高い親和性を有する抗原結合フラグメント(Fab)から完全長の抗体を構築した。精製後、結合能およびブロッキング機能試験を行った。すなわち、SEMG2とCD27との結合に対する抗体の効果をELISA実験により決定した。
【0093】
同じバッチのスクリーニングで、SEMG2(497-509)エピトープに結合し、SEMG2とCD27との結合を阻害する抗体のユニークな配列が合計3つ得られた。この3つのクローンをそれぞれH88-93、H88-96およびH88-67と命名した。対応する全長抗体の濃度がSEMG2との結合に及ぼす影響を図22Aに示す。3つの全長ヒト抗体に対応するVHおよびVLのアミノ酸配列、ならびに対応するCDR配列を、表6および表7に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
【表7】

【0096】
全長ヒト抗体およびマウス抗体のSEMG2への結合能を試験した。すなわち、マウス抗体MM02およびMM05ならびに濃度勾配希釈した全長ヒト抗体H88-93を混合し、SEMG2でコーティングした96ウェルマイクロプレートに一次抗体として添加した。SEMG2に結合したマウスモノクローナル抗体は、抗マウスHRP二次抗体を用いて測定した。ブロッキング率は、以下の式に従って算出する:
ブロッキング率=[1-(試験抗体群のA450-ブランク対照)/(陽性対照抗体のA450-空対照のA450)]×100%。
【0097】
その結果、図22に示すように、H88-93はMM02およびMM05とSEMG2への結合について競合することがわかった。これは、全長ヒト抗体およびマウスモノクローナル抗体がSEMG2に結合する同じタイプの抗体であり、MM02、MM05およびH88-93は全て、短いペプチドSEMG2(497-509)に結合するので、このタイプの抗体はSEMG2(497-509)結合抗体クラスとして定義できることが示された。
【0098】
さらに、ヒト抗体H88-93、H88-96およびH88-67のSEMG2とCD27との結合を阻止する効果をELISAで検出した。図23に示すように、全ての抗体が10μg/mLの濃度で、程度の差はあるがSEMG2とCD27との結合を阻害した。
【0099】
活性化PBMCの腫瘍細胞死機能に対するヒト抗体の効果を確認するために、A375細胞およびLOVO細胞を活性化PBMCと共培養し、H88-93、H88-96またはH88-67抗体を同時に添加し、腫瘍細胞のアポトーシス比率を検出して比較した。結果を図24に示す。SEMG2(497-509)エピトープに対する3つの全長ヒト抗体は、PBMC細胞によるSEMG2発現腫瘍細胞の殺傷を顕著に促進できることが分かる。
【0100】
実施例17:生体光干渉法による本発明のモノクローナル抗体の抗原に対する結合速度測定
ヒトSEMG2に結合する本発明の抗体の平衡解離定数(KD)を生体光干渉法(ForteBio BltzまたはGator装置)により決定した。例えば、ForteBio親和性アッセイを既存の方法に従って行った。すなわち、開始30分前に、適量のAMQ(Pall、1506091)(サンプル検出用)またはAHQ(Pall、1502051)(陽性対照検出用)センサーを取り、SDバッファー(PBS 1×、BSA 0.1%、Tween-20 0.05%)に浸漬させた。96ウェルの黒色ポリスチレンハーフエリアマイクロプレートにSDバッファー、抗体およびSEMG2をそれぞれ100μl添加した。サンプル位置のレイアウトをもとにセンサー位置を選択した。分子間相互作用解析ソフトウェアを用いてKD値を解析した。アッセイの実験において、マウスモノクローナル抗体およびヒト抗体H88-67、H88-93およびH88-96の親和定数を表8に、SEMG2および対応するタンパク質の親和曲線および解離曲線を図25に示す。
【0101】
【表8】


【0102】
実施例18:全長ヒトモノクローナル抗体の親和性成熟
全長ヒト抗体H88-96およびH88-67のVHおよびVLコーディング配列をテンプレートとして、遺伝子合成によりプラスミドを得た後、一点飽和変異および二点飽和変異をさせた。次に、抗体遺伝子を組み換えるために、インビトロライゲーション法を行った。最後に、組換え抗体のFab遺伝子配列をベクターに挿入し、形質転換して10CFU以上の力価を有する4つのファージ親和性成熟抗体ライブラリーを得た。この抗体変異体ライブラリーをイムノチューブ勾配スクリーニングアッセイでスクリーニングし、野生型と比較して親和性が微細に改善された変異体を取得した。次に、検出されたFab配列、あるいはFab配列中のVHおよびVL配列の組み換えに従って、全長親和性成熟ヒト抗体を構築した。H88-67由来のVH配列およびVL配列、ならびに親和性成熟後のH88-96のVH配列のCDR領域を表9に示し、抗体の軽鎖および重鎖のCDR領域を表9に示す。
【0103】
【表9】


【0104】
【表10】

【0105】
上記の親和性成熟化処理により、親和性が向上した抗ヒトSEMG2モノクローナル抗体、例えば、親和性成熟化した重鎖番号67-3および親和性成熟化した軽鎖番号67-3、67-4、67-5および67-6の組み合わせからなる67-3-67-3、67-3-67-4、67-3-67-5および67-3-67-6を得た。抗体67-9-67-3は、重鎖番号67-9および軽鎖番号67-3の組み合わせからなり、抗体67-6-67-6は、軽鎖および重鎖番号67-6の組み合わせからなり、重鎖番号96-10Rおよび96-10Vならびに軽鎖番号H88-96Lにより抗体96-10R-10および96-10V-10が再構成された。これらの軽鎖および重鎖からなる組換えモノクローナル抗体は、SEMG2およびBSA-S2(497-509)(すなわち、BSA-SP7)に対して親抗体の10倍以上高い親和性を有する(図21B-Dを参照のこと)。
【0106】
実施例19:ヒト悪性黒色腫A375細胞のPBMC-HISモデルの異種移植モデルにおけるSEMG2抗体の抗腫瘍効果の検証
6-8週齢の雄NPSGマウスモデル30匹を計量した。A375細胞(SEMG2の内因性発現が確認されている)をインビトロで培養し、1.8×10個の細胞を取得した。30匹のマウスにPBMCを接種した後、3日目にA375腫瘍細胞を接種した。その後、週1回、マウス血液中のhCD45+細胞の割合および体重を測定した。接種後、週1回腫瘍量を測定し、平均腫瘍量が約40-80mmになった時点でマウス血液中のhCD45+細胞の割合を測定した。腫瘍体積および血中hCD45+細胞の割合に基づいてマウスを無作為にグループ分けし、直ちに投与を開始した。投与開始日を0日目とした。投与レジメン:SEMG2抗体(MM05クローン)を5mg/kgで週3回腹腔内注射した。投与開始後、1週間毎にマウスの腫瘍増殖状況を観察した。腫瘍増殖後、週3回、体重および腫瘍体積を測定し、週3回、マウス血液中のhCD45+細胞の相対数をフローサイトメトリーで観察した。腫瘍体積が終点に達した時点で採血を行い、同指標を検出し、実験を終了した。マウスの観察には、毎日の観察、接種後毎実験日の動物の罹病率および死亡の観察が含まれる。腫瘍体積の測定:接種後、グループ分けする前に、腫瘍が見えたら、週1回、実験動物の腫瘍体積を測定した。接種後、グループ分けを行った後、実験動物の腫瘍体積を週2回測定した。腫瘍体積は、双方向測定法により測定した。まず、腫瘍の長径および短径をノギスで測定し、式TV=0.5*a*b2で腫瘍体積を算出した(式中、aを腫瘍の長径、bを腫瘍の短径とした)。実験結果を図26に示す。SEMG2抗体は、マウスの腫瘍の増殖を顕著に阻害した。この結果は、SEMG2が有効な抗腫瘍標的であることを示す。
【0107】
実施例20:マウスにおける対応遺伝子Svs3aのノックアウトにより、SEMG2の機能阻害後に有意な副作用がないことが証明された。
薬剤標的としてのSEMG2の機能阻害後に起こり得る毒性および副作用を証明するために、マウスの対応する遺伝子Svs3aを全身的にノックアウトした。具体的なスキームは以下の通りである:プロジェクトではCRISPR/cas9技術を採用し、非相同組換えにより変異を導入し、Svs3a遺伝子のリーディングフレームをシフトさせ、機能を喪失させる。その概略は以下の通りである:インビトロ転写によりCas9 mRNAおよびgRNAを取得し、C57BL/6Jマウスの受精卵にCas9 mRNAおよびgRNAをマイクロインジェクションし、F0世代マウスを得た。PCR増幅およびシークエンシングにより確認された陽性F0マウスをC57BL/6Jマウスと交配させ、陽性F1マウスを得た。
【0108】
gRNA配列 (5’-3’):
gRNA1,CAGCCGCAGAGAGGCACTCAGGG;
gRNA2,ATGCACCACCAAGAAACACTGGG。
ノックアウト前後の配列アライメント:
野生型: TGAGTTCAGGGAGCAGCCGCAGAGAGGCACTCAGGGAGAATGTCCATAAGGATGCCATGGCAGTGAGAG……AGTGTCTTAGCAAACGGGAGAGCTGTCTGCCCCAGTGTTTCTTGGTGGTGCATGGTGGGCTCCCTGTGCCCGCAGTGC;
変異体:
TGAGTTCAGGGAGCAGCCGCAAGAGAGG…(-1006bp)…GAGGTGCATGGTGGGCTCCCTGTGCCCGCAGTGC。
【0109】
その後の繁殖:得られた遺伝子ノックアウトヘテロ接合体マウス(gene+/-)を2つに分け、ヘテロ接合体マウスの一部は野生型マウスと交配してより多くのヘテロ接合体マウスを増やし、ヘテロ接合体マウスの一部は自殖して遺伝子ノックアウトホモ接合体マウス(gene-/-)を得て、遺伝子ノックアウト効果検証およびその後の表現型分析を行った。
【0110】
表現型分析:フローサイトメトリー用にマウスから抗凝固全血を採取し、血液中のCD8+、CD4+、CD3+、CD27+陽性細胞の割合を解析した。マウスを2日間休ませた後、内眼角から抗凝固処理した全血を採血し、分子部門が血液ルーチン検査を実施した。3日間休ませた後、マウスの体重を測定し、麻酔をかけ、マウスの身体を撮影し、マウスの眼球を摘出し、血液を採血し、血清を分離した。分子部門は血清の生化学的パラメーターを測定した。眼球を摘出し、血液を採血した後、マウスを安楽死させて材料採取を行った:脳:脳全体を摘出して矢状面で分割し、左側を固定、右側を急速凍結した;肝臓:肝臓全体を摘出して矢状面で分割し、左側を固定し、右側を急速凍結した;肝臓:肝臓全体を摘出し、2つに分け、左葉を固定し、残りを急速凍結した;脾臓:脾臓全体を摘出し、2つに分け、半分を固定し、半分を急速凍結した;腎臓:左腎臓を固定用に摘出し、右腎臓を摘出し、急速凍結した;胃:胃全体を摘出し、2つに分け、左葉を固定し、残りを急速凍結した;大腸:無傷の大腸を取り出し、腸管ロール(Swiss roll)を固定した;小腸:小腸全体を取り出し、3分割(十二指腸、回腸、空腸)して、腸管ロールを固定した;肺:左肺を取り出して固定し、右肺を取り出して急速凍結した。固定したサンプルを全て病理に送り、パラフィン包埋を行い、KOマウス1匹(#98)の11種の臓器(脳、心臓、肺、腎臓、脾臓、肝臓、胃、十二指腸、空腸、回腸、結腸)を切除し、HE染色して、分析用に読み出した。
【0111】
野生型(WT)およびホモ接合体ノックアウトマウス(KO)の表現型分析結果を図27に示す。この結果から、Svs3aホモ接合体ノックアウトマウスを交配しても子孫は生まれなかったが、ヘテロ接合体ノックアウトの状況では生殖機能への影響は見られなかった。その他の解析でも異常は認められなかった。したがって、Svs3aの機能の完全な喪失または遮断は、他の系統器官に大きな毒性影響を与えることなく生殖機能に影響を与える可能性がある。このことは、SEMG2標的遮断の起こり得る毒性または副作用は限定的であり、高い安全性を有することを示唆する。
【0112】
以上、本発明者らにより本発明の態様が説明されたが、本発明はこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の目的の範囲内で修正および変更が可能であることを理解し得る。修正および変更の態様は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
図1
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【配列表】
2023511189000001.app
【国際調査報告】