(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】分岐ポリシロキサン及びそれらの調製のための方法、並びに熱移送流体としての使用方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20230310BHJP
C07F 7/18 20060101ALI20230310BHJP
F24S 23/71 20180101ALI20230310BHJP
F24S 23/74 20180101ALI20230310BHJP
F24S 20/20 20180101ALI20230310BHJP
【FI】
C09K5/10 E
C07F7/18 X
F24S23/71
F24S23/74
F24S20/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022539311
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021012026
(87)【国際公開番号】W WO2021141836
(87)【国際公開日】2021-07-15
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、シャオユアン
(72)【発明者】
【氏名】ジョフル、エリック
(72)【発明者】
【氏名】フェリット、マイク
(72)【発明者】
【氏名】リウ、ナンクオ
(72)【発明者】
【氏名】ラング、クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】カスバート、ジョン
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN01
4H049VP09
4H049VQ21
4H049VR21
4H049VR43
4H049VS79
4H049VW02
(57)【要約】
分岐ポリシロキサン化合物及びその調製のための方法が開示される。分岐ポリシロキサン化合物は、熱移送流体として使用され得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、式:(TM
2)
x(式中、Tは、式(RSiO
3/2)の単位を表し、Mは、式(R
3SiO
1/2)の単位を表し、各Rは、1~6個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字x≧3である)の部分を含む分岐ポリシロキサン化合物を含む熱移送流体を使用して、25℃~500℃の温度でシステムを動作させることを含む、方法。
【請求項2】
前記システムを動作させることが、300℃~500℃の温度で前記熱移送流体を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、
1)レシーバ上に太陽エネルギーを集中させることと、
2)前記レシーバ内の前記熱移送流体を加熱することと、
3)工程2)で加熱した後に、前記熱移送流体を使用して電気を発生させることと、を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記システムが、パラボラトラフシステム、線状フレネル反射器システム、発電タワーシステム、ディッシュ式エンジンシステム、及びそれらのうちの2つ以上からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各Rが、アルキル、アルケニル、及びアリールからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各Rが、メチル、ビニル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各Rが、メチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分岐ポリシロキサン化合物が、
【化1】
T
m(TM
2)
n(式中、下付き文字m>1であり、下付き文字n>3であり、n/mは1~1.5である)、並びに
T(TM
2)
3、Q(TM
2)
4、及びT
m(TM
2)
nのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2020年1月9日出願の米国仮特許出願第62/958889号の利益を主張する。米国仮特許出願第62/958889号は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分岐ポリシロキサン化合物は、熱移送流体(Heat Transfer Fluid、HTF)として有用である。
【背景技術】
【0003】
集光型太陽熱発電(Concentrated Solar Power、CSP)産業は、高温で長期間使用することができる熱移送流体(HTF)を必要としている。CSPプラントは、ミラー又はレンズを使用して、日光の大部分からレシーバ上に太陽エネルギーを集中させる。熱移送流体は、レシーバ内で加熱され、循環されて、熱エネルギーを輸送し、タービン内に蒸気を生成することができ、これによって、発電機に電力が供給されて、電気が生成され得る。CSPプラントは、線状フレネル反射器(Linear Fresnel Reflector、LFR)システム、発電タワーシステム、ディッシュ式エンジンシステム、及び/又はパラボラトラフシステムを用いて、太陽エネルギーをレシーバ上に集中させることができる。
【0004】
LFRは、湾曲ミラーの代わりに平らなミラーの長い平行な列を用いる。これらは、HTFが通って流れる管のシステムを有する、上昇したレシーバ(ミラーの上に位置する)上に太陽エネルギーを集束させる。
【0005】
発電タワーシステムは、中央レシーバシステムを使用する。コンピュータ制御ミラー(ヘリオスタットと呼ばれる)は、太陽を追跡し、タワーの上部のレシーバ上に太陽エネルギーを集束させる。集束されたエネルギーは、レシーバ内のHTFを加熱するために使用される。加熱されたHTFは、蒸気を生成し、中央発電機を動かすために使用され得る。
【0006】
ディッシュ式エンジンシステムでは、ミラーが、パラボラディッシュ表面上に分布して、焦点に固定されたレシーバ上に日光を集中させる。レシーバは、レシーバ内で加熱されるHTFを含む。このシステムは、加熱されたHTFを使用して、発電機又はオルタネータを動かす機械的動力を発生させて、電気を生成する。
【0007】
パラボラトラフシステムは、湾曲したミラーを使用して、トラフを通って延びるレシーバ管上に日光を集束させる。レシーバ管で、熱移送流体が、太陽エネルギーを吸収し、熱交換器を通過して、水を加熱し、蒸気を生成することができる。蒸気は、蒸気タービンを駆動して、電気を発生させることができる。DOWTHERM(商標)A(DTA)熱移送流体などの、73.5%のジフェニルオキシド(Diphenyl Oxide、DPO)と26.5%のビフェニル(Biphenyl、BP)との共晶混合物に基づくHTFは、1980年代以来パラボラトラフ(Parabolic Trough、PT)集光器技術を備えたCSPプラントで一般的に使用されている。これらのCSPプラントにおいて、HTFは、PT集光器で太陽から熱を吸収し、この熱を発電ブロックに移送し発電ブロックで、発電機を駆動するタービンにおいて蒸気を発生させ、膨張して、電気を生成する。
【0008】
CSPのコストを低減する1つの方法は、HTFの動作温度を増加させることである。60PT CSPプラントのほとんどで使用される現在のDPO/BP HTFは、293℃(560°F)~393℃(740°F)の温度で動作される。これによって、蒸気ランキンサイクルが水蒸気ランキンサイクルの効率を38.4%に制限する383℃(721°F)で動作することが可能になる。例えば、530℃(986°F)への最大HTF温度の増加は、ランキンサイクルの過熱蒸気温度を520℃(968°F)に増加させることができ、これによって、42.7%のサイクル効率が可能になる。
【0009】
ランキンサイクルのより高い効率は、資本コスト及びメンテナンスの節約を可能にするであろう太陽熱発電場のサイズの低減を可能にするであろう。動作温度がより高いと、蓄熱サイズを低減することができ、これによって、資本、動作コストのコスト削減がもたらされるため、蓄熱を有するCSPプラントも利益を得ることができる。
【0010】
393℃(739°F)のPT CSPプラントの最大動作温度は、その温度を超える加速した熱エージングに起因して、HTF供給者のDPO/BP HTFの最大動作温度の制限によって400℃(750°F)に設定される。
【0011】
CSP産業は、DOWTHERM(商標)A熱移送流体よりも高い熱安定性を有するが、周囲温度以下での凍結点、低い蒸気圧、及び優れた熱移送特性もまた有するHTFを必要としている。Syltherm(商標)800熱移送流体は、最大400℃の冷却及び加熱用途に広く使用されている。この生成物は、10mPa・sの粘度(20℃で測定)を有する線状ポリジメチルシロキサン(Polydimethylsiloxane、PDMS)である。しかしながら、それは、DPO/BPベースのHTFと比較して、より高いコストに起因して、市販のCSPプラントのためには選択されていない。Syltherm(商標)800熱移送流体などの線状PDMSが高温で長期間加熱される場合、蒸気圧が増加し、かつ/又は粘度が低下し得る。
【発明の概要】
【0012】
分岐ポリシロキサン化合物は、熱移送流体として使用され得る。最大500℃の温度でシステムを動作させる方法は、分岐ポリシロキサン化合物を含む熱移送流体を使用することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0013】
分岐ポリシロキサン化合物は、式:(TM2)xの部分を含み、式中、Tは、式(RSiO3/2)の単位を表し、Mは、式(R3SiO1/2)の単位を表し、各Rは、1~6個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字x≧3である。Rに好適な一価炭化水素基としては、アルキル、アルケニル、及びアリール基が挙げられる。例えば、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はイソ-プロピルを含む)、並びにブチル(n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、及び/又はイソ-ブチルを含む)であってもよい。アルケニル基は、ビニル、アリル、又はヘキセニルであってもよい。アリール基は、フェニルであってもよい。あるいは、各Rは、メチル、ビニル、又はフェニル、あるいはメチルであってもよい。
TM2は、式:
【0014】
【化1】
(式中、Rは、上述のとおりである)を有する。
【0015】
上述の式(TM2)xの部分を有する分岐ポリシロキサン化合物の例としては、(i)T(TM2)3、(ii)Q(TM2)4、及び(iii)Tm(TM2)nからなる群から選択される単位式を有する種が挙げられ、式中、T及びMは、上述のとおりであり、式(ii)において、Qは、式(SiO4/2)を有し、式(iii)において、下付き文字m及びnはそれぞれ、T単位の分子量及び(TM2)部分を表し、下付き文字m>1であり、下付き文字n>3であり、n/mは1~1.5である。
【0016】
【0017】
上述の分岐ポリシロキサン化合物は、
1)
A)式
【0018】
【化2】
(式中、Rは、上述のとおりである)の有機ヒドリドシロキサンオリゴマーと、
B)アルコキシ官能性有機ケイ素化合物と、
C)ホウ素含有ルイス酸触媒と、を含む出発物質を混ぜ合わせることを含む方法によって調製され得る。
【0019】
上述の方法では、出発物質A)は、反応器に入れてもよい。反応器は、不活性ガスブランケット又は反応器内の不活性雰囲気を維持するための他の手段を有し得る。出発物質C)のすべて又は一部は、反応器内で出発物質A)と混ぜ合わされ得る。出発物質B)と出発物質C)のすべて又は一部とを含む触媒した混合物は、反応器に添加され得る。反応器は、(例えば、ジャケット又は他の冷却装置を用いて)冷却され得る。本方法は、≦50℃、あるいは≦30℃、あるいは0℃~50℃、あるいは0℃~30℃、あるいはRT~30℃の温度で実施され得る。
【0020】
上述の方法は、任意選択的に、1つ以上の追加の工程を更に含み得る。本方法は、任意選択的に、分岐ポリシロキサン化合物を回収することを更に含み得る。回収することは、任意選択的に減圧下でのストリッピング又は蒸留などの任意の簡便な手段によって実施され得る。
【0021】
上述の方法では、例えば、工程1)において、出発物質A)及び出発物質B)は、出発物質B)に対する-ORのモルと比較して、モル過剰の出発物質A)が存在するような量で添加され得る。正確な量は、存在する水の量を含む様々な要因に依存するが、A)及びB)の量は、十分な出発物質A)が出発物質B)中の-ORの全モルに対して、少なくとも3mol%、あるいは少なくとも5mol%、あるいは少なくとも10mol%過剰を提供するように提供されるような量であってもよい。
【0022】
分岐ポリシロキサン化合物は、様々な適切な出発物質によって米国特許出願第62/699192号に開示されている方法に従って調製され得る。上述の方法で使用され得る出発物質は、A)有機ヒドリドシロキサンオリゴマー、B)アルコキシ官能性有機ケイ素化合物、及びC)触媒を含み、これらの出発物質は、以下に更に記載される。
【0023】
A)有機ヒドリドシロキサンオリゴマー
上述の方法で使用される有機ヒドリドシロキサンオリゴマーは、式
【0024】
【化3】
を有し、式中、Rは、上述のとおりである。好適な有機ヒドリドシロキサンオリゴマーの例としては、1,1,1,3,5,5,5-へプタメチルトリシロキサンが挙げられる。好適な有機ヒドリドシロキサンオリゴマーは、例えば、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。
【0025】
B)アルコキシ官能性有機ケイ素化合物
上述の方法で使用されるアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、式B-1)
【0026】
【化4】
を有し得、式中、Rは上述のとおりであり、各R’は独立してR及びORからなる群から選択され、下付き文字y≧0であり、あるいはyは0~12、あるいは0~5、あるいは1~12であってもよい。好適なアルコキシ官能性有機ケイ素化合物の例は、例えば、Dow Silicones Corporationから市販されている。例えば、y=0である場合、式B-1)は、アルコキシシランである。y-0かつR’がRである場合、出発物質B)は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、又はエチルトリメトキシシランであってもよい。あるいは、y=0であり、R’がORである場合、出発物質B)は、テトラエトキシシラン又はテトラメトキシシランであってもよい。
【0027】
あるいは、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、単位式B-2):[RSi(OR”)2O1/2]a[RSi(OR”)O2/2]b[RSiO3/2]c+[RSi(OR”)3]dを有し得、式中、Rは、上述のとおりであり、各R”は、独立して、H及び1~6個の炭素原子のアルキル基からなる群から選択され、下付き文字a、b、及びcは、括弧内の各単位のモル分率を表すが、但し、量(a+b+c)=1であることを条件とする。下付き文字aは、0.2~0.35、あるいは0.24~0.29であってもよい。下付き文字bは、0.45~0.60、あるいは0.49~0.56であってもよい。下付き文字cは、0.1~0.3、あるいは0.14~0.24であってもよい。下付き文字dは、0.5~1であってもよい。あるいは、式B-2)において、各Rは、独立して、アルキル、アルケニル、及びアリール、あるいは、メチル、ビニル、及びフェニルからなる群から選択され得る。あるいは、式B-2)において、各Rは、独立して、アルキル及びアリール、あるいは、メチル及びフェニルからなる群から選択され得る。あるいは、式B-2)において、各Rは、アルキル、あるいはメチルであってもよい。式B-2)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、300g/mol~1,200g/mol、あるいは325g/mol~400g/mol、あるいは350g/mol~400g/molの重量平均分子量(Weight Average Molecular Weight、Mw)を有し得る。式B-2)のアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、少なくとも200g/mol、あるいは200g/mol~500g/mol、あるいは250g/mol~500g/mol、あるいは250g/mol~400g/mol、あるいは300g/mol~350g/mol、あるいは300g/mol~400g/mol、あるいは310g/mol~350g/molの数平均分子量(Number Average Molecular Weight、Mn)を有し得る。Mw及びMnは、GPCによって測定される。式B-2)の好適なアルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)のDOWSIL(商標)CF-2403樹脂であってもよい。
【0028】
あるいは、アルコキシ官能性有機ケイ素化合物は、B-3)シルセスキオキサン樹脂、すなわち、式(R”SiO3/2)のT単位を含む樹脂を含み得、式中、R”は、上述のとおりである。本明細書での使用に好適なシルセスキオキサン樹脂は、当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、15のDP及び300g/mol~400g/molの重量平均分子量(Mw)を有するメチルメトキシシロキサンメチルシルセスキオキサン樹脂は、Dow Silicones CorporationからDOWSIL(商標)US-CF2403樹脂として市販されている。あるいは、シルセスキオキサン樹脂は、フェニルシルセスキオキサン単位、メチルシルセスキオキサン単位、又はこれらの組み合わせを有してもよい。あるいは、シルセスキオキサン樹脂は、式(R2SiO2/2)及び/又は(R”SiO2/2)のD単位、並びに式(RSiO3/2)及び/又は(R”SiO3/2)のT単位、すなわち、DT樹脂を更に含んでよく、式中、R及びR”は、上述のとおりであるが、但し、R”の少なくともいくつかの例は、ORであることを条件とする。DT樹脂は、当該技術分野において既知であり、市販されており、例えば、メトキシ官能性DT樹脂としては、DOWSIL(商標)3074及びDOWSIL(商標)3037樹脂が挙げられる。
【0029】
C)触媒
出発物質C)は、ホウ素含有ルイス酸である。あるいは、ホウ素含有ルイス酸は、少なくとも1つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に1~3つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に2~3つのペルフルオロアリール基、あるいは1分子中に3つのペルフルオロアリール基を有する三価ホウ素化合物であってもよい。ペルフルオロアリール基は、6~12個の炭素原子、あるいは6~10個、あるいは6個の炭素原子を有してもよい。例えば、ルイス酸触媒は、(C5F4)(C6F5)2B;(C5F4)3B;(C6F5)BF2;BF(C6F5)2;B(C6F5)3;BCl2(C6F5);BCl(C6F5)2;B(C6H5)(C6F5)2;B(C6H5)2(C6F5);[C6H4(mCF3)]3B;[C6H4(pOCF3)]3B;(C6F5)B(OH)2;(C6F5)2BOH;(C6F5)2BH;(C6F5)BH2;(C7H11)B(C6F5)2;(C8H14)B(C6F5);(C6F5)2B(OC2H5);又は(C6F5)2B-CH2CH2Si(CH3)からなる群から選択されてもよい。あるいは、出発物質C)は、式B(C6F5)3、すなわちトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのPiers-Rubinsztajn反応触媒であってもよい。そのようなホウ素含有ルイス酸は、例えば、Millipore Sigma(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。出発物質C)の量は、使用される他の出発物質の種類及び量に依存するが、出発物質A)は、出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて、50ppm~6000ppmの量で存在してもよい。あるいは、この量は、同じ基準で50ppm~600ppmであってもよい。あるいは、上述したように、出発物質C)の第1の部分は、出発物質A)の重量に基づいて、25ppm~100ppmの量で出発物質A)に添加され得、出発物質C)の第2の部分は、工程1)で出発物質を混ぜ合わせる前に、100ppm~300ppmの量で出発物質B)に添加され得る。
【0030】
D)有機溶媒
溶媒は、任意選択的に、本方法で使用され得る。溶媒によって、出発物質C)のホウ素含有ルイス酸などの特定の出発物質の導入を促進することができる。本明細書で使用される溶媒は、出発物質の流動化に役立つがこれらの出発物質のいずれとも本質的に反応しないものである。溶媒は、出発物質の溶解性及び溶媒の揮発性に基づいて選択されてもよい。「溶解性」は、溶媒が出発物質を溶解及び/又は分散させるのに十分であることを指す。「揮発性」は、溶媒の蒸気圧を指す。
【0031】
好適な溶媒は、炭化水素であってもよい。好適な炭化水素としては、芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、若しくはキシレン、及び/又は脂肪族炭化水素、例えばヘプタン、ヘキサン、若しくはオクタンが挙げられる。あるいは、溶媒は、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、又は塩化メチレンであってもよい。
【0032】
溶媒の量は、選択される溶媒の種類、並びに選択される他の出発物質の量及び種類など、様々な要因に応じて異なってもよい。しかし、溶媒の量は、出発物質A)、B)、及びC)の合計重量に基づいて、0.1重量%~99重量%、あるいは2重量%~50重量%の範囲であってもよい。
【0033】
出発物質E)中和剤
出発物質E)は、生成物が生成した後に、任意選択的に使用して、出発物質C)を中和することができる中和剤である。アルミナ、トリフェニルアミン、トリフェニルホスフィン、及びフェニルアセチレンは、好適な中和剤である。中和剤は当該技術分野において公知であり、例えばMillipore Sigma(St.Louis,Missouri,USA)から市販されている。中和剤の量は、出発物質A)の量を含む様々な要因に依存するが、出発物質E)は、1:1~1000:1の中和剤対ホウ素含有ルイス酸の重量比(E:A比)を提供するのに十分な量で存在してもよい。あるいは、中和剤は、アルミナであってもよい。中和剤がトリフェニルホスフィン又はフェニルアセチレンである場合、E:A比は、1:1~20:1であってもよい。あるいは、中和剤がアルミナである場合、E:A比は、100:1~1000:1であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、中和剤は、触媒と複合体を形成すると考えられる。複合体は、任意選択的に、分岐ポリシロキサン化合物が工程1)で上述したように調製された後に除去され得る。
【0034】
使用方法
上述したように調製された分岐ポリシロキサン化合物は、熱移送流体として使用され得る。例えば、分岐ポリシロキサン化合物は、米国特許公開第2018/0010027号に開示されているものなどの、そこに記載されている分岐ポリジオルガノシロキサンの代わりに、300℃~500℃の動作温度でシステムを動作させる方法で使用され得る。
【0035】
例えば、本明細書に記載の分岐ポリシロキサン化合物は、化学的又は薬学的処理、油及びガス処理、廃熱回収、食品及び飲料製造、並びに器材及び製品温度制御などの様々な加熱用途における熱移送流体として使用され得る。分岐ポリシロキサン化合物は、加熱又は冷却のための熱移送流体として使用され得る。分岐ポリシロキサン化合物は、25℃~500℃、あるいは>25℃~500℃、あるいは300℃~450℃、あるいは300℃~425℃、あるいは350℃~450℃、あるいは350℃~400℃、あるいは300℃~500℃で熱移送流体として使用され得る。
【0036】
あるいは、本明細書に記載の分岐ポリシロキサン化合物は、太陽熱デバイスにおける高温熱移送媒体として用いられ得る。あるいは、本明細書に記載の分岐ポリシロキサン化合物は、集光型太陽熱発電プラントにおける熱移送流体として使用され得る。
【0037】
CSPプラントを動作させるための方法は、1)レシーバ上に太陽エネルギーを集中させることと、2)レシーバ内の熱移送流体を加熱することであって、熱移送流体が、分岐ポリシロキサン化合物(上述のような)を含む、加熱することと、3)工程2)で加熱した後に、熱移送流体を循環させ、熱移送流体を使用して電気を発生させることと、を含む。CSPプラントは、パラボラトラフシステム、LFRシステム、発電タワーシステム、及び/又はディッシュ式エンジンシステムからなる群から選択されるシステムを含み得る。
【実施例】
【0038】
これらの実施例は、当業者に本発明を例示することを目的とするものであり、請求項に記載の本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0039】
この参考実施例1では、単位式T(TM2)3の分岐ポリメチルシロキサン化合物を、以下のように合成した。
【0040】
【0041】
164.4gの1,1,1,3,5,5,5-へプタメチルトリシロキサン(ビス-H)を、熱電対、機械的撹拌機、及びN2バブラーに合わせた水冷凝縮器を備えた500mLの4つ口フラスコに入れた。50ppmのトリス(ペルフルオロフェニル)ホウ素(Tris(perfluorophenyl)borane、BCF)を、フラスコに添加した。30gのメチルトリメトキシシラン及び150ppmのBCFを、添加漏斗で混合して、触媒した混合物を形成した。触媒した混合物を、フラスコにゆっくり35分以内に添加した。氷水浴を使用して、熱を除去し、フラスコの内容物の温度を30℃未満に制御した。RTで1.5時間撹拌した後、1H NMRは、メトキシ基が完全に反応していたことを示した。揮発性物質を、ロータリーエバポレーターを介して、120℃で30分間、次いで、150℃で60分間除去した。真空は、<1トールであった。生成物は無色透明の液体であった。
【0042】
この参考実施例2では、単位式Tm(TM2)nの分岐ポリメチルシロキサン化合物(n/mは1)を、以下のように合成した。132gの1,1,1,3,5,5,5-へプタメチルトリシロキサン(ビス-H)を、熱電対、機械的撹拌機、及びN2バブラーに合わせた水冷凝縮器を備えた500mLの4つ口フラスコに入れた。25ppmのトリス(ペルフルオロフェニル)ホウ素(BCF)を、フラスコに添加した。40.5gのDOWSIL(商標)CF-2403樹脂及び175ppmのBCFを、添加漏斗で混合して、触媒した混合物を形成した。触媒した混合物を、フラスコにゆっくり32分以内に添加した。氷水浴を使用して、熱を除去し、フラスコの内容物の温度を30℃未満に制御した。RTで1時間撹拌した後、1H NMRにより、DOWSIL(商標)CF-2403樹脂中のメトキシ基が完全に反応していたことが示された。揮発性物質を、ロータリーエバポレーターにより150℃で1.5時間かけて除去した。生成物は無色透明の液体であった。
【0043】
この参考実施例3では、単位式Q(TM2)4の分岐ポリメチルシロキサン化合物を、以下のように合成した。
【0044】
【0045】
157.3gの1,1,1,3,5,5,5-へプタメチルトリシロキサン(ビス-H)を、熱電対、機械的撹拌機、及びN2バブラーに合わせた水冷凝縮器を備えた500mLの4つ口フラスコに入れた。25ppmのトリス(ペルフルオロフェニル)ホウ素(BCF)を、フラスコに添加した。25.0gのテトラメトキシシラン(Tetramethoxysilane、TMOS)及び175ppmのBCFを、添加漏斗で混合して、触媒した混合物を形成した。触媒した混合物を、フラスコにゆっくり40分以内に添加した。氷水浴を使用して、熱を除去し、フラスコの内容物の温度を30℃未満に制御した。RTで1時間撹拌した後、1H NMRにより、Si-OMe残留含有量は0.3%であることが示された。撹拌をさらに1.5時間続けた。次いで、7.3gのアルミナをフラスコに添加し、RTで2時間撹拌した。0.45μmの濾過膜を通して濾過後、揮発性物質を、ロータリーエバポレーターにより150℃で50分かけて除去した。生成物は、80℃より高い融点を有する無色透明の軟質ゲル状物であった。
【0046】
この参考実施例4では、加速速度熱量測定(Accelerating Rate Calorimetry、ARC)試験による熱安定性評価を400℃で行った。ARC試験プロトコル:400℃での24時間等温ARC試験を実施して、上記の参考実施例1~3に記載されるように調製した分岐ポリメチルシロキサン化合物の熱安定性をスクリーニングした。これらの条件での発熱活性又は過剰な圧力発生は、不十分な熱安定性の指標である。比較のために、2つの線状PDMS材料及び2つの分岐ポリメチルシロキサンを使用した。第1の線状PDMS材料は、XIAMETER(商標)PMX-200の2mPa・s流体であり、第2は、XIAMETER(商標)PMX-200の10mPa・s流体であり、これらの両方は、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から市販されている。第1の分岐材料は、M4Qと略されるテトラ(トリメチルシロキシ)シランであり、Millipore Sigma(St.Louis,Missouri,USA)から購入した。第2の分岐材料は、M3Tと略されるトリス(トリメチルシロキシ)メチルシランであり、Gelest Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から購入した。参考実施例1からの式T(TM2)3の化合物及び参考実施例2からの式Tm(TM2)nの化合物は、透明な油であり、ARC試験で直接使用した。参考実施例3からの式Q(TM2)4の化合物は、ソフトゲルであり、ARC試験の前にDOWTHERM(商標)A熱移送流体及び/又はSYLTHERM(商標)800熱移送流体中に溶解した(90%のQ(TM2)4、及び10%のDOWTHERM(商標)A熱移送流体又はSYLTHERM(商標)800熱移送流体)。
【0047】
ARC試験結果:参考実施例1~3で調製された分岐ポリメチルシロキサン化合物は、ARC試験においていかなる発熱反応も示さず、圧力増加は、2mPa・sの粘度を有する線状PDMS及び10mPa・sの粘度を有する線状PDMSを試験したときに観察された圧力増加よりもこれらの化合物の各々ではるかに小さかった。加えて、代替的な分岐ポリメチルシロキサン化合物(式M4Q及びM3Tのものもまた、上述のARC試験に従って試験し、両方とも発熱を示した。
【0048】
参考実施例1~3に記載されるように調製した分岐ポリシロキサン化合物は、比較例1~4で試験した化合物よりも小さい圧力蓄積を示した(以下の表2の実施例5~8を参照されたい)。理論に拘束されることを望むものではないが、熱移送流体システム、特にパラボラトラフCSPプラントにおけるより低い圧力蓄積は、以下の理由で有益であると考えられる。
【0049】
CSPプラントは400℃以上の温度で動作するため、構築材料の選択は制限されるが、これは、標準的な炭素鋼などの低コスト構築材料が高温及び高圧の組み合わせに耐えることができない場合があるためである。より堅牢な構築材料を使用して、そのようなシステムを設計することができるが、コストがかなり高い。構造の材料に加えて、そのようなシステムにおけるより高い圧力及び温度のために器材の壁厚を増加させる必要があり、これもコストを大幅に増加させる場合がある。したがって、HTFシステムの最大許容作業圧力(Maximum Allowable Working Pressure、MAWP)の選択を可能にするより低い蒸気圧でのHTFを選択することが有益である。
【0050】
【0051】
ARC試験は、実施例5、6、7、及び8が、試験された条件下で、400℃で少なくとも1日間熱的に安定であることを示した。比較例1は、試験中の発熱挙動及び圧力増加を示し、これは、試験された条件下で、試料が400℃で熱的に安定しなかったことを示した。
【0052】
比較例4の線状PDMS(10mPa・s)を、400℃での24時間のエージングの前後にGCMSによって分析した。エージング後、試料の分子量分布が完全に変化し、エージングしていない試料と比較して低分子量範囲よりに移行し、エージング後にD4が主成分として検出された。D4、D5、及びD6などの環状ポリジメチルシロキサンは、望ましくない場合がある。
【0053】
比較例1のM4Q材料もまた、400℃での24時間のエージングの前後にGCMSによって分析した。著しい低分子量種(ヘキサメチルジシロキサンなど)が検出され、これは、試験された条件下で、材料が熱的に不安定であることを示した。
【0054】
2mPa・sの線状PDMSを、400℃での24時間のエージング前後にGCMSによって分析した。エージング後、試料の分子量分布が完全に変化し、著しい量の低分子量の線状及び環状化合物、並びに高分子量種が検出された。
【0055】
M3Tを、400℃での24時間のエージング前後にGCMSによって分析した。エージング後、GCMSは、M3Tの大部分がヘキサメチルジシロキサン及び2つの高分子量種に分解したことを示した。
【0056】
参考実施例1及び2(実施例7及び8)の分岐ポリシロキサン化合物もまた、400℃での24時間のエージング前後にGCMSによって分析した。これらの化合物は、改善された熱安定性を示した。各エージングされた試料の組成は、400℃で24時間エージングする前の組成と本質的に同じであった。
【0057】
実施例5及び6の試料を、400℃での24時間のエージング前後にLCMSによって分析した。これらの化合物は、改善された熱安定性を示した。各試料の組成は、400℃で24時間エージングする前の組成と本質的に同じであった。
【0058】
この実施例5では、試料を400℃で3日間エージングした。各試料の粘度及び重量を、エージングの前後に測定した。アルゴン不活性グローブボックス内で、試料(各々2.5~3.5g)を、1/4インチの口を有するチタン球体試料容器に入れ、次いでスワージロックフィッティングで蓋をした。オーブン試験を400℃で3日間行った。Q(TM2)4をT(TM2)3に溶解して、このオーブン試験のためのブレンドを形成したが、これは、T(TM2)3が熱安定剤としてジルコニウム化合物を含有する線状PDMSであるSyltherm(商標)800熱移送流体よりも良好な安定性を示したためである。エージングした材料を球体容器から排出した。材料の回収は良好であり、400℃でエージングした材料の粘度は、大幅に変化しなかった(表3)。その結果を、以下の表3に示す。
【0059】
【表3】
*ブレンドは、9重量部の参考実施例3のQ(TM
2)
4及び1重量部の参考実施例1のT(TM
2)
3を含有した。
【0060】
3日間400℃でエージングした試料をGC-MS及びLC-MSによって組成について分析した。GC-MS及びLC-MSによる実施例11のエージングしたT(TM2)3に対する研究は、ヘキサメチルジシロキサン(Hexamethyldisiloxane、MM)及びM3Tなどの少量の小さな分子とともに、T(TM2)3をエージングした試料中の主成分として特定したことを示した。エージングした試料中の主成分としてのT(TM2)3の特定は、この試料が良好な熱安定性を有し、CSP産業におけるHTFとして有用であることを更に示した。実施例12のエージングした試料のLC-MS研究は、著しい低分子量の分解種を示さず、これは、この試料が良好な熱安定性を有し、CSP産業におけるHTFとして有用であることを更に示した。実施例15のエージングしたブレンドに対するGC-MS及びLC-MS研究は、Q(TM2)4が主成分として観察されたことを示し、これは、この試料が良好な熱安定性を有し、CSP産業におけるHTFとして有用であることを更に示した。
【0061】
この実施例6では、425℃で3日間以外は、試料を実施例5の上述のようにエージングした。実施例5について上述したように、重量、粘度、及び組成を、エージング前後に分析した。
【0062】
【表4】
*ブレンドは、9重量部の参考実施例3のQ(TM
2)
4及び1重量部の参考実施例1のT(TM
2)
3を含有した。
【0063】
3日間425℃でエージングした試料をGC-MS及びLC-MSによって組成について分析した。GC-MS及びLC-MSによる実施例15のエージングしたT(TM2)3に対する研究は、ヘキサメチルジシロキサン(MM)及びM3Tなどの少量の小さな分子とともに、T(TM2)3をエージングした試料中の主成分として特定したことを示した。実施例16のエージングした試料のLC-MS研究は、著しい低分子量の分解種を示さず、これは、この試料が良好な熱安定性を有し、CSP産業におけるHTFとして有用であることを更に示した。実施例17のエージングしたブレンドに対するGC-MS及びLC-MS研究は、Q(TM2)4が主成分として観察されたことを示し、これは、この試料が良好な熱安定性を有し、CSP産業におけるHTFとして有用であることを更に示した。
【0064】
この実施例7では、低分子量の揮発性種を、実施例5及び6で上述したように調製及びエージングした試料中でGC-FIDによって分析した。結果は、以下の表5、6、及び7に示す。参考実施例1で調製したT(TM2)3は、最も少ない揮発性種を有した。
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
解決すべき問題
CSP産業において、以下の特性のうちの1つ以上を有するHTFが必要とされている:>400℃での熱安定性、RT以下の凍結点、比較的低い蒸気圧、及び良好な熱移送特性。
【0069】
産業上の利用可能性
上述の実施例は、本明細書に記載の分岐ポリシロキサン化合物が400℃以上の温度で熱移送流体として有用であり得ることを示す。理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載の分岐ポリシロキサン化合物が、Syltherm(商標)800熱移送流体の特性より優れた特性を有し得ると考えられる。
【0070】
用語の定義及び使用
全ての量、比率、及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。発明の概要及び要約書は、参照により本明細書に組み込まれる。「含むこと(comprising)」又は「含む(comprise)」という用語は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing) essentially of)」、及び「からなる(consist(ing) of)」)という観念を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.,)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記されている例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。本明細書で使用される略語は、表8における定義を有する。
【0071】
【0072】
本明細書で使用される試験方法は、以下に記載される。
【0073】
粘度-粘度をmPa・sで報告し、25℃でコーンスピンドルCPA-40Zを有するブルックフィールドDV-IIIウルトラレオメータを使用して測定した。
【0074】
GC-FID及びGC/MS調製及び実験:記載されたパラメータを使用して、同時GC-炎イオン化検出器(Flame Ionization Detection、FID)とともにEIモードの液体注入ガスクロマトグラフィー質量分析(Gas Chromatography Mass Spectrometry、GC/MS)を使用して、添加された既知量の内部標準物(オクタン)を有するアセトン中に試料を希釈して分析した。定量的結果は、内部標準に調整された重量パーセントに基づく。同じ試料での同時GC/MSデータと比較することによって、GC-FIDのピーク同定を作製した。理論的応答係数を使用して、内部標準に対する個々の成分応答を決定した。提供される定量的量は、推定値と見なされるべきである。このアプローチは、GCカラムから非揮発性物質又は非溶出性成分を調整する。成分のすべてが特定及び報告されたわけではなかった。注釈付きGC/MS総イオンクロマトグラムが分析された試料について含まれる。他の試料は、比較のための様々な条件でのこの材料に対する過去の結果であった。GC-FIDの結果を提供した。試料を二重検出GC/MS及びGC-FIDを用いて機器上に収集した。MS14機器の条件:
液体注入分析
機器条件(MS14):ヘリウムキャリアガス
●Agilent7890カラムプログラム:40℃(1分)~310℃(8分)@10℃/分
●カラム:HP5-MS UIキャピラリーカラム、29mx0.25mmx0.25μm
○定流量=1.2mL/分
○速度=28cm/秒
●インレット:分割、270℃
○50:1分割比
○1μLの注入
○アセトンシリンジリンス溶媒
●検出器:Agilent5977A MSD
○280℃
○MSスキャン範囲15~1050m/z
○閾値150
○1.5スキャン/秒
○EI(電子イオン化(Electron Ionization))
●検出器:Agilent7890FID
○300℃
○400mL/分の空気
○25mL/分のHe補給
○30mL/分の水素
○20Hz
○範囲=0
【0075】
GC/MSは、高極性化合物、非揮発性化合物、又は高分子量(>500g/mol)の化合物を検出しない場合がある。GC/MSは、同じ実験式を有する異性体と代表的な標準物を含まない質量とを区別することができない。一般に、分岐材料は、同じ実験式の線状材料の前に溶出する。質量較正は、分析日に正確であることが確認された。
【0076】
GC/MSデータは、単に定量的である。これは定量的な技術であるが、典型的には、この技術を使用して、5~100ppmの間に存在する分析物を観察することができる。この推定は、その日の分析物の構造及び特性、並びに検出器応答に依存する。存在する成分の数の推定は、GC/MSのみを使用して決定され得ない。成分の相対量は、通常、GC技術を使用して決定され得る。GC-FID精度及び精密性パラメータは、この試料タイプについて、又は分析に使用されるアプローチによって決定されていない。反復性は、±10%(相対的)であると推定されるが、個々の成分の濃度に依存する可能性が高い。
【0077】
ESI MS実験
試料調製
試料をエレクトロスプレーイオン化LC-MSによって分析して、450℃で熱エージングしたT(TM2)3試料中に存在する種を構造的に識別した。試料を、100ppm(vol/vol)の濃度でFisher HPLCグレードTHFに個別に希釈した。次いで、希釈した試料を、正イオンエレクトロスプレーイオン化(+ESI)を使用する流動注入分析によって分析した。
【0078】
UPLC-MS-MS機器
機器:Agilent 1200UPLCシステム
溶媒A:1g/LのNH4OAcを含む18メガオームの水
溶媒B:Fisher HPLCグレードTHF
流量:0.40mL/分
注入量:0.1μL
バイナリLC勾配:時間0.0=70%B
時間20.0=95%B
時間20.5=100.0%B
【0079】
MS条件:
機器:Agilent 6520四重極/飛行時間型(Q-TOF)タンデム質量スペクトル計
イオン源:デュアルエレクトロスプレーイオン化
モード:陽イオン-MS1
乾燥ガス温度:300℃
乾燥用ガス流量:5L/分
ネブライザー圧力:60psi
フラグメンター電圧:175V
スキマー電圧:75V
八重極1 RF電圧:750V
キャピラリー電圧:4000V
参照質量:121.0509、922.0098
取得モード:MS1
質量範囲:119~3200Da
走査速度:1スペクトル/秒
精度及び精密性の記述:FIA ESI-MSデータは、本質的に定量的ではない。定量的FIA ESI-MSの結果は、対象となる各分析物に対する高純度標準物の使用を必要とする。
【0080】
NMR-1H NMRを、5mmのガラスNMR管を備えたVarianの400MHz NMR分光計で記録した。すべての試料をCDCl3で採取した。
【0081】
Mn及びMwは、米国特許第9,593,209号、参考実施例1(第31欄)に記載の方法に従って、GPCによって測定され得る。
【0082】
本発明は例示的な様式で記載されており、使用されている用語は、限定というよりむしろ説明語の性質であるように意図されることを理解されたい。本明細書で個々の特徴又は態様の記述が依拠している任意のマーカッシュ群に関して、異なる、特殊な及び/又は不測の結果が、全ての他のマーカッシュ群の要素から独立して、それぞれのマーカッシュ群の各要素から得られる場合がある。マーカッシュ群の各要素は、個々に、及び、又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0083】
更に、本発明を説明する際に依拠される任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は部分の値が明記されていなくても、その中の全部及び/又は部分の値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分的範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分的範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、範囲「300~500」は、下から3分の1、すなわち300~366、中間の3分の1、すなわち367~433、及び上から3分の1、すなわち434~500と更に描かれることができ、これらは個別的かつ集合的に添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に個別的及び/又は集合的に依拠する場合があり、それらに適切な根拠を提供し得る。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、式:(TM
2)
x(式中、Tは、式(RSiO
3/2)の単位を表し、Mは、式(R
3SiO
1/2)の単位を表し、各Rは、1~6個の炭素原子の独立して選択された一価炭化水素基であり、下付き文字x≧3である)の部分を含む分岐ポリシロキサン化合物を含む熱移送流体を使用して、25℃~500℃の温度でシステムを動作させることを含み、前記分岐ポリシロキサン化合物が、
【化1】
Tm(TM
2)
n(式中、下付き文字m>1であり、下付き文字n>3であり、n/mは1~1.5である)、並びに
T(TM
2)
3、Q(TM
2)
4、及びT
m(TM
2)
nのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される種を含む、方法。
【請求項2】
前記システムを動作させることが、300℃~500℃の温度で前記熱移送流体を加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、
1)レシーバ上に太陽エネルギーを集中させること、
2)前記レシーバ内の前記熱移送流体を加熱することと、
3)工程2)で加熱した後に、前記熱移送流体を使用して電気を発生させることと、を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記システムが、パラボラトラフシステム、線状フレネル反射器システム、発電タワーシステム、ディッシュ式エンジンシステム、及びそれらのうちの2つ以上からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各Rが、アルキル、アルケニル、及びアリールからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
各Rが、メチル、ビニル、及びフェニルからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各Rが、メチルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記分岐ポリシロキサン化合物が、
【化2】
Tm(TM
2)n(式中、下付き文字m>1であり、下付き文字n>3であり、n/mは1~1.5である)、並びに
T(TM
2)
3及びT
m(TM
2)
nの組み合わせからなる群から選択される種を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】