(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(54)【発明の名称】組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法、システム及び組換えバクミド
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20230310BHJP
C12N 15/34 20060101ALI20230310BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/34 ZNA
C12N7/01
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022543143
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(85)【翻訳文提出日】2022-07-13
(86)【国際出願番号】 CN2020137461
(87)【国際公開番号】W WO2022116285
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202011393359.1
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522281981
【氏名又は名称】勁帆生物医薬科技(武漢)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Genevoyager (WUHAN) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】(Wuhan Area of Free Trade Zone) 311-22 Experimental Building, Nuclear Magentic Spectrometer lndustrial Base, No.128 Guanggu 7th Road, East Lake New Technology Development District Wuhan, Hubei 430000 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】梅 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】何 暁斌
(72)【発明者】
【氏名】潘 杏
(72)【発明者】
【氏名】張 勝
(72)【発明者】
【氏名】黄 剛
(72)【発明者】
【氏名】王 梦蝶
(72)【発明者】
【氏名】左 雲
(72)【発明者】
【氏名】杜 亮
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、遺伝子治療分野に属し、具体的には、組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法、システム及び組換えバクミドに関する。まず、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを構築する。少なくとも1つの前記必須機能エレメントは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。そして、得られる前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを宿主細胞系にトランスフェクションして培養し、組換えアデノ随伴ウイルスを作製する。従来のTn7組換えにより組換えバクミドを作製して得られる組換えバキュロウイルスと比較して、Cap、Rep及びITRコアエレメントをバキュロウイルスの必須遺伝子の両側に挿入して得られる組換えバキュロウイルスは、細胞中で連続継代してもrAAVの生産レベルはより安定し、rAAV収率はより高い。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ(1)、(2)を含む組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法であって、
ステップ(1):組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを構築し、前記組換えバキュロウイルスゲノムは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含み、前記必須機能エレメントは、Cap遺伝子、Rep遺伝子、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含み、
ステップ(2):ステップ(1)で得られた組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを宿主細胞系にトランスフェクションして培養し、
前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入されることを特徴とする、作製方法。
【請求項2】
前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つが前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入されることは、前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つが前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子発現カセットの3kb範囲内に位置することを意味することを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つが前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入されることは、前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つが前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子発現カセットの1.5kb範囲内に位置することを意味することを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、具体的には、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む相同組換えベクターを構築し、或いは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む相同組換えベクター及びシャトルプラスミドを構築し、相同組換えの方法により、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する3つの必須機能エレメントを組換えバキュロウイルスゲノムを含む同一の組換えバクミドに統合することで、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドが得られ、
前記相同組換えベクターは、バキュロウイルスを標的とする必須遺伝子を含み、かつこのベクターは、Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及びITR-GOIのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項5】
残りの必須機能エレメントは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの非必須遺伝子の遺伝子座に挿入されることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項6】
前記バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座は、Ac6、Ac9、Ac10、Ac17、Ac66、Ac109、Ac139、Ac135、Ac98、Ac147及びAc128から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項7】
ステップ(1)は、具体的に以下のサブステップを含み、
ステップ(1-1):Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び、外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含む1つ又は複数の相同組換えベクターを構築し、
ステップ(1-2):ステップ(1-1)で得られた1つ又は複数の相同組換えベクターによりCap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを統合して組換えバキュロウイルスゲノムの1つ又は複数の必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入することで、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する全ての必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドが得られることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項8】
ステップ(1)は、具体的に以下のステップを含み、
ステップ(1-1):前記必須機能エレメントのうちの1つ又は2つを含む相同組換えベクターを構築し、次にRed相同組換えによりこの相同組換えベクターにおけるAAV必須機能エレメントをバキュロウイルスゲノムの1つ又は2つの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入し、
ステップ(1-2):残りの必須機能エレメントを含むシャトルプラスミドを構築し、
ステップ(1-3):シャトルプラスミドに媒介されるTn7組換えによりCap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを1つのバキュロウイルスゲノムに統合することで、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する全ての必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドが得られることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項9】
組換えアデノ随伴ウイルスを作製するための組換えバクミドであって、
前記組換えバクミドは、組換えバキュロウイルスゲノムを含み、前記組換えバキュロウイルスゲノムは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含み、前記必須機能エレメントは、Cap遺伝子、Rep遺伝子、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含み、
前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入されることを特徴とする、組換えアデノ随伴ウイルスを作製するための組換えバクミド。
【請求項10】
請求項9に記載の組換えバクミドを含むことを特徴とする、組換えアデノ随伴ウイルスの作製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子治療分野に属し、より具体的には、組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法、システム及び組換えバクミドに関する。
【背景技術】
【0002】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、宿主の範囲が広く、免疫原性が低く、安全性が高く、動物体内での外来遺伝子の長期安定発現を媒介できるなどの特徴により、現在、遺伝子治療分野において最も有望なベクターの一つである。
【0003】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)に媒介される最初の遺伝子治療薬が承認されて以来、AAVベクターの大規模作製技術に対する需要が増えてきた(Yla-Herttuala,S.,Mol Ther.20,1831-1832,2012)。しかし、rAAVの大規模生産は、依然としてこのような治療法の開発を制限する要因である。そこで、この課題及び生物安全性の問題を克服するために、昆虫細胞に感染するバキュロウイルスの能力による生産システムが開発された。即ち、Rep、Cap及びITRコア発現エレメントを提供し、それぞれTn7により組換えして3種類の異なるバキュロウイルスゲノムに導入し、この3種の換えバキュロウイルスを昆虫細胞に共感染させてrAAVを作製する必要がある(Urabe et al. 2002,Hum.Gene Ther.13:1935-1943;US20030148506;US20040197895)。これをもとに、2種類のバキュロウイルスの生産システムに簡素化され、Rep及びCap発現カセット(expression cassette)を1つのバキュロウイルスに統合する(Smithet al.2009,Mol.Ther.17:1888-1896)。しかし、2つのバキュロウイルスを細胞に共感染させる効率は低く、それぞれの細胞のエネルギを十分に利用することができない。感染はランダムな過程であるため、核酸を含まないrAAV中空粒子が産生されやすく、作製プロセス条件の最適化は複雑で、異なるバッチで作製されたrAAVの品質は不安定である。
【0004】
そこで、それをもとに主に細胞系に依存するワンバックシステム、1つのシャトルプラスミドに基づくワンバックシステム及びDH10Bacに基づくワンバックシステムを含むワンバックシステム(One Bac system)がさらに開発された。パッケージング細胞系に依存するワンバックシステムは、まず、AAV Rep遺伝子及びCap遺伝子の発現を誘導するパッケージング細胞系を構築し、さらに、外来目的遺伝子(GOI)を持つITRコア発現エレメントを統合した組換えバキュロウイルスBEV-(ITR-GOI)に感染させた後、細胞系におけるRep及びCap遺伝子の発現を誘導することでrAAVを産生する(Aslanidi et al.2009,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,206:5059-5064)。1つのシャトルプラスミドに基づくワンバックシステムは、AAVのCap遺伝子、Rep遺伝子及びITRコア発現エレメントを一緒に1つのシャトルプラスミド上に構築し、Tn7トランスポゾンに媒介される組換えによりシャトルプラスミドが持つrAAVパッケージングエレメントを1つのバキュロウイルスゲノムに統合し、さらに、この組換えバキュロウイルスを宿主細胞に感染させることでrAAVを産生する(Yang et al.2018,Mol Ther Methods Clin Dev.2018Jul4;10:38-47.)。DH10Bacに基づくワンバックシステムは、AAVのCap遺伝子及びRep遺伝子をDH10Bacにおけるバキュロウイルスゲノム(Bacmid)に統合し、Tn7トランスポゾンに媒介される組換えによりITRコアエレメント、Cap遺伝子及びRep遺伝子を含む組換えBacmidが得られ、この組換えバキュロウイルス(BEV)を宿主細胞に感染させることでrAAVを産生する(呉陽ら、CN201811618542)。
【0005】
しかしながら、上述したバキュロウイルスシステムは、全てTn7組換えによりITRコアエレメントを非必須遺伝子であるPolh遺伝子の遺伝子座に挿入し、Rep及びCap発現カセットは、Tn7組換え又はRed組換えによりpolh遺伝子の遺伝子座又はいくつかの他の非必須遺伝子の遺伝子座に導入される。バキュロウイルスの継代過程において、Tn7配列又は非必須遺伝子が欠失しやすい問題により、産生したBEVの継代安定性が悪いため、安定性に対する要求が高い大規模なバッチ生産及び応用に適していない。そのため、遺伝子治療ベクター薬物の生産には、まだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の欠陥及び改善需要に対して、本発明によれば、組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法、システム及び組換えバクミドが提供される。組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメント(Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOI)のうちの少なくとも1種を組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子のN末端又はC末端に挿入することにより、従来技術ではこの必須機能エレメントを組換えバキュロウイルスゲノムの非必須遺伝子座に挿入した結果、バキュロウイルスの継代過程において外来遺伝子が欠失しやすいことからBEVの継代安定性が悪いという問題が解決される。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、以下のステップ(1)、(2)を含む組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法が提供される。
ステップ(1):組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを構築し、前記組換えバキュロウイルスゲノムは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含み、前記必須機能エレメントは、Cap遺伝子、Rep遺伝子、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含み、
ステップ(2):ステップ(1)で得られた組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを宿主細胞系にトランスフェクションして培養し、
前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。
【0008】
好ましくは、前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つが前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入されることは、前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つが前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子発現カセットの3kb範囲内に位置する。
【0009】
好ましくは、前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つは、必須遺伝子発現カセットの1.5kb範囲内に位置する。
【0010】
好ましくは、ステップ(1)において、具体的には、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む相同組換えベクターを構築し、或いは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む相同組換えベクター及びシャトルプラスミドを構築し、相同組換えの方法により、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する3つの必須機能エレメントを組換えバキュロウイルスゲノムを含む同一の組換えバクミドに統合することで、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドが得られ、
前記相同組換えベクターは、バキュロウイルスを標的とする必須遺伝子を含み、かつこのベクターは、Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及びITR-GOIのうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
好ましくは、残りの必須機能エレメントは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの非必須遺伝子の遺伝子座に挿入される。
【0012】
好ましくは、前記バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座は、Ac6、Ac9、Ac10、Ac17、Ac66、Ac109、Ac139、Ac135、Ac98、Ac147及びAc128から選択される。
【0013】
好ましくは、前記バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子的遺伝子座は、Ac135、Ac98(38K)、Ac147(IE1)及びAc128(GP64)から選択される。
【0014】
好ましくは、前記Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの1つの必須遺伝子の遺伝子座のC末端に挿入され、前記外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの1つの非必須遺伝子の遺伝子座に挿入される。
【0015】
好ましくは、前記Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの1つの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入され、前記外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIは、前記組換えバキュロウイルスゲノムのもう1つの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。
【0016】
好ましくは、前記Cap遺伝子の遺伝子配列は、リボソームリークスキャンによりコドン最適化した配列である。
【0017】
好ましくは、前記Cap遺伝子の遺伝子配列は、配列番号1に示される配列である。
【0018】
好ましくは、前記Rep遺伝子の遺伝子配列は、リボソームリークスキャンによりコドン最適化した配列である。
【0019】
好ましくは、前記Rep遺伝子の遺伝子配列は、配列番号2に示される配列である。
【0020】
好ましくは、前記コア発現エレメントITR遺伝子配列は、配列番号3に示される配列である。
【0021】
好ましくは、ステップ(1)は、具体的に以下のサブステップを含み、
ステップ(1-1):Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び、外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含む1つ又は複数の相同組換えベクターを構築し、
ステップ(1-2):ステップ(1-1)で得られた1つ又は複数の相同組換えベクターによりCap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを統合して組換えバキュロウイルスゲノムの1つ又は複数の必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入することで、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する全ての必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドが得られる。
【0022】
好ましくは、ステップ(1)は、具体的に以下のステップを含み、
ステップ(1-1):前記必須機能エレメントのうちの1つ又は2つを含む相同組換えベクターを構築し、次にRed相同組換えによりこの相同組換えベクターにおけるAAV必須機能エレメントをバキュロウイルスゲノムの1つ又は2つの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入し、
ステップ(1-2):残りの必須機能エレメントを含むシャトルプラスミドを構築し、
ステップ(1-3):シャトルプラスミドに媒介されるTn7組換えによりCap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを1つのバキュロウイルスゲノムに統合することで、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する全ての必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドが得られる。
【0023】
本発明の別の態様によれば、組換えアデノ随伴ウイルスを作製するための組換えバクミドであって、前記組換えバクミドは、組換えバキュロウイルスゲノムを含み、前記組換えバキュロウイルスゲノムは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含み、前記必須機能エレメントは、Cap遺伝子、Rep遺伝子、及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含み、前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される組換えアデノ随伴ウイルスを作製するための組換えバクミドが提供される。
【0024】
本発明の別の態様によれば、前記組換えバクミド組換えアデノ随伴ウイルス的作製システムが提供される。
【0025】
本発明は、上記の技術的手段によれば、従来技術に比べて以下の有益な効果を有する。
(1)本発明で提供されるrAAVの作製方法では、組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメント(Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOI)のうちの少なくとも1種を組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子のN末端又はC末端に挿入することにより、この必須遺伝子の発現に影響を与えることがなく、従来技術ではrAAV必須機能エレメントを組換えバキュロウイルスゲノムの非必須遺伝子座に挿入した結果、バキュロウイルスの継代過程において外来遺伝子が欠失しやすいことから産生したBEVの継代安定性が悪いという技術的問題が解決される。安定性は、バキュロウイルス作製AAVシステムの大規模生産(例えば、2000Lの規模)を制限する要因であり、BEVの継代安定の問題を解決して、AAVの大規模作製を可能にする。
【0026】
(2)本発明で提供されるrAAVを生産する必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドでは、ITR-GOI、Rep遺伝子及びCap遺伝子のうちの1つ又は複数が組換えバキュロウイルスゲノムの1つ又は複数の必須遺伝子のN末端又はC末端に位置することにより、前記rAAVを生産する全ての機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスの継代安定性及びrAAV収量が向上し、従来のrAAVのバキュロウイルス作製システムに対して適合性が良好で、作製される組換えバキュロウイルスBEV全体の安定性が顕著に向上する。
【0027】
(3)本発明の好ましい実施例において、組換えアデノ随伴ウイルスを生産する3つの必須遺伝子エレメントを全て組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子座の一端に挿入することにより、組換えバキュロウイルスの継代安定性及び組換えアデノ随伴ウイルスの収率が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る組換えアデノ随伴ウイルスの作製のフローチャートである。
【
図2】本発明に係る組換えアデノ随伴ウイルスの必須機能エレメント発現カセットの模式図である。
【
図3】実施例1で構築された AC20-313 BEVの各世代の安定性を示す。
【
図4】実施例1の9KC-142A BEVの異なる世代の安定性を示す。
【
図5】実施例1で構築されたAC20-313の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。
【
図6】実施例1の9KC-142Aの異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。
【
図7】実施例1で構築されたAC20-313のP2-P10世代のBEVパッケージングrAAVのSDS-PAGE銀染色図である。
【
図8】実施例2のAc-141-175 BEVの異なる世代の安定性を示す。
【
図9】実施例2の9KC-313 BEVの異なる世代の安定性を示す。
【
図10】実施例2のAc-141-175の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。
【
図11】実施例2の9KC-313異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。
【
図12】実施例2のAc-141-175のP2-P10世代のBEVパッケージングrAAVのSDS-PAGE銀染色図である。
【
図13】実施例3のAc-141-163 BEVの異なる世代の安定性を示す。
【
図14】実施例3のAc-141-163の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。
【
図15】実施例3のAc-141-163のP2-P10世代のBEVパッケージングrAAVのSDS-PAGE銀染色図である。
【
図16】実施例4のAc-141-162 BEVの異なる世代の安定性を示す。
【
図17】実施例4のAc-141-162の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。
【
図18】実施例4のAc-141-162vs9kc-313パッケージング率を示す。
【
図19】Ac-141-160及びAc-141-162 BEVが産生したrAAVのSDS-PAGE銀染色図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の目的、技術的手段及び利点をより明確にするために、以下、図面及び実施例により本発明をさらに詳しく説明する。以下の具体的な実施例は本発明を解釈するためのものであり、本発明を制限するものではないことが理解されるべきである。
【0030】
バキュロウイルスオートグラファカリフォルニカ(Autographa californica)核多角体病ウイルス(AcMNPV)ゲノムは、全長が約134kbであり、約156個のオープンリーディングフレームを有する。これらの遺伝子の中で、62個の遺伝子は(可能な)非必須遺伝子に分類される。既知のバキュロウイルスシステムでは、全てAAVのCap遺伝子、Rep遺伝子及びITRコア発現エレメントをそれぞれ又は一緒にPolh、Chia、Cath、egt、p10、ctxなどの非必須遺伝子座に挿入するため、バキュロウイルスの継代過程において外来遺伝子が欠失しやすいことで、産生したBEVの継代安定性が悪い。残りの94個は、細胞培養増殖の必須遺伝子であると考えられており、そのうちのいくつかは、バキュロウイルスヌクレオカプシドに関連するタンパク質、例えば、Ac100(P6.9)、Ac89(VP39 capsid)、Ac80(GP41 tegument)、Ac98(38K)、Ac142、Ac144、Ac92(P33)、Ac54(VP1054)、Ac77(VLF-1)、Ac104(VP80)、Ac9(PP78/83)であり、これらの遺伝子が欠失又は変異すると、バキュロウイルスは安定して存在できなくなる。いくつかは、バキュロウイルスのエンベロープタンパク質、例えば、Ac94(ODV-E25)、Ac109(ODV-EC43)、Ac143(ODV-E18)であり、これらの遺伝子が欠失すると、バキュロウイルスは安定して存在できなくなる。いくつかは、BVの収量に関連するタンパク質、例えば、Ac17、Ac34、Ac36、Ac38、Ac139、Ac153であり、これらの遺伝子が欠失すると、バキュロウイルスのBV力価は1/100~1/1000まで低下してしまう。これらの必須遺伝子は、バキュロウイルスの継代過程において比較的安定し、欠失しにくい。
【0031】
本発明で提供される組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法は、
図1に示すように、以下のステップを含む。
ステップ(1):組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを構築する。前記組換えバキュロウイルスゲノムは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを産生する必須機能エレメントを含み、前記必須機能エレメントは、Cap遺伝子、Rep遺伝子及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含む。
(2)ステップ(1)で得られた、組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを宿主細胞系にトランスフェクションして培養する。
【0032】
前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。本発明に記載の必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端とは、前記必須機能エレメントが組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子発現カセットの3kb範囲内、好ましくは、必須遺伝子発現カセットの1.5kb範囲内に位置することを指す。
【0033】
いくつかの実施例において、ステップ(1)では、具体的に、前記組換えアデノ随伴ウイルスを産生する必須機能エレメントを含む相同組換えベクターを構築し、又は前記組換えアデノ随伴ウイルスを産生する必須機能エレメントを含む相同組換えベクター及びシャトルプラスミドを構築し、相同組換え方法により前記組換えアデノ随伴ウイルスを産生する3つの必須機能エレメントを組換えバキュロウイルスゲノムを含む同一の組換えバクミドに統合し、前記組換えアデノ随伴ウイルスを産生する必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得る。前記相同組換えベクターは、バキュロウイルスを標的とする必須遺伝子を含み、このベクターは、Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及びITR-GOIのうちの少なくとも1種を持っている。
【0034】
いくつかの実施例において、前記相同組換えはRed組換え及び/又はTn7相同組換えである。
【0035】
Tn7トランスポゾンに媒介される組換えは、外来遺伝子を組換えバキュロウイルスゲノム上に高速かつ効率的で構築する方法である。組換えバキュロウイルスゲノムにTn7トランスポゾン認識配列を導入する必要がある。また、複数の異なる位置で同時に又は複数回で組換えすることに適していない。現在、組換えバキュロウイルスゲノムに対する効率的な改造は、依然として比較的複雑で煩雑な作業である。
【0036】
Red組換えは、細菌レベルの効率的な組換え方法であり、大腸菌(DH10Bac)での組換えバキュロウイルスゲノムに対する高速改造に適用できる。Red組換えは、λファージRed組換え酵素(Exo、Beta及びGamの3種類のタンパク質からなる)により将導入細胞におけるホモロジーアームを持つ線形DNA断片及びゲノムの特定の標的配列に対して相同組換えを行い、目的遺伝子の置換を実現する方法である(Doubletet al.2008,J Microbiol Methods.,75(2):359-61)。組換え体のスクリーニングを容易にするために、両側にFRT配列を有するクロラムフェニコール(Chol)耐性遺伝子発現カセット(配列番号1)又は両側にFRT配列を有するゲンタマイシン(Gen)耐性遺伝子発現カセット(配列番号2)を導入し、これによって、後でpCP20プラスミド(温度感受性プラスミド;Flp組換え酵素を発現する)によりこの耐性遺伝子を容易に除去することができ、バクミドゲノムにおいてこの耐性遺伝子により一連の遺伝子欠失又は挿入を数回続けて行うことに適用できる。
【0037】
本発明に係る組換えアデノ随伴ウイルスの作製方法において、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントのうちの1つ、2つ又は3つを前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入し、必須遺伝子の遺伝子座がバキュロウイルスの継代中で欠失しにくいという特性により、バキュロウイルスの継代安定性を向上させ、これによって、組換えアデノ随伴ウイルスの全体作製安定性及び作製収量を向上させることができる。必須機能エレメントが全部で前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座に挿入されない場合、残りの必須機能エレメントを前記組換えバキュロウイルスゲノムの非必須遺伝子の遺伝子座に挿入してもよい。好ましくは、3つの必須機能エレメントを全て組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入する。
【0038】
本発明に記載のバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子は、バキュロウイルスゲノムから不活性化又は除去されると、昆虫細胞培養物でのバキュロウイルスの増殖能力及び(又は)安定存在に大きく影響する遺伝子として定義される。いくつかの実施例において、前記バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座は、Ac6(3089..3721)、Ac17(13738..14232)、Ac9(5287..6918)、Ac66(55292..57718)、Ac109(94721..95893)、Ac98(85021..85983)、Ac139(121205..122554)、Ac135(116492..117391)、Ac10(6917..7735)、IE1(127198..128946)及びGP64(108179..109717)から選択される。IE1は、Ac147であり、GP64は、Ac128である。
【0039】
本発明の実施例において、AAVパッケージングエレメントをAc135、Ac98(38K)、Ac147(IE1)及びAc128(GP64)の4つの必須遺伝子のC末端に挿入する。従来のTn7組換えにより組換えバクミドを作製して得られた組換えバキュロウイルスと比較して、Cap、Rep及びITRコアエレメントをバキュロウイルスの必須遺伝子のC末端に挿入して得られた組換えバキュロウイルスは、細胞中で連続継代した後のrAAVの生産レベルはより安定し、rAAV収率はより高い。しかし、AAVパッケージングエレメントをバキュロウイルスの必須遺伝子Ac80(GP41)及びAc153のC末端に挿入して得られた組換えバキュロウイルスは、細胞中で連続継代した後のrAAVの生産レベルは急激に低下する。AAVパッケージングエレメントをバキュロウイルスの必須遺伝子Ac80(GP41)及びAc153のC末端に挿入することで、下流の必須遺伝子Ac79及びAc154遺伝子のプロモーター領域が破壊され、Ac79及びAc154遺伝子の発現に影響を与え、得られた組換えバキュロウイルスが細胞中で連続継代した後のrAAVの生産レベルは急激に低下するためであると推測されている。そのため、AAVパッケージングエレメントをバキュロウイルスの必須遺伝子のN末端又はC末端に挿入しても上下流の必須遺伝子の発現に影響を与えなければよいと推測されている。バキュロウイルスの必須遺伝子は、Ac6、Ac9、Ac10、Ac17、Ac66、Ac109及びAc139遺伝子座から選択されてもよい。
【0040】
本発明に記載の組換えバキュロウイルスゲノムの非必須遺伝子の遺伝子座は、Chia、Cath、Ac124、p10、p26、p74、ctx、egt、39k、orf51、gp37、iap2及びodv-e56から選択される1つ又は複数である。好ましくは、非必須遺伝子の遺伝子座はChia及び/又はCathである。
【0041】
いくつかの実施例において、前記Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの1つの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。前記外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの1つの非必須遺伝子の遺伝子座、又はこの非必須遺伝子の遺伝子座のN末端若しくはC末端に挿入される。
【0042】
別の実施例において、前記Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの1つの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。前記外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの別の必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。
【0043】
好ましい実施例において、前記rAAVの作製方法では、前記Cap遺伝子発現カセットにおけるCap遺伝子の配列は、リボソームリークスキャンに基づいてコドン最適化を行った配列であり、好ましくは、配列番号3に示される配列である。前記Rep遺伝子発現カセットにおけるRep遺伝子の配列は、リボソームリークスキャンに基づいてコドン最適化を行った配列であり、好ましくは、配列番号4に示される配列である。前記コア発現エレメントITR遺伝子の配列は、好ましくは配列番号5に示される配列である。
【0044】
本発明に記載の組換えバクミドは、バキュロウイルスAcMNPVのゲノムに由来し、rAAVの生産に必須なAAV Cap遺伝子及びRep遺伝子の発現カセットを含む。アデノ随伴ウイルスの生産に必須な機能タンパク質成分の発現カセットは、P10又はPHプロモーターによって制御されるようにその下流に位置する(
図2)。
【0045】
いくつかの実施例において、ステップ(1)は、具体的に以下のサブステップを含む。
(1-1)Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含む1つ又は複数の相同組換えベクターを構築する。
(1-2)ステップ(1-1)で得られた1つ又は複数の相同組換えベクターにより、Cap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを統合し、組換えバキュロウイルスゲノムの1つ又は複数の必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入し、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する全ての必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得る。
【0046】
いくつかの実施例において、ステップ(1-2)では、ステップ(1-1)で得られた1つ又は複数の相同組換えベクターにより、Red相同組換えによりCap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを前記組換えバキュロウイルスゲノムの1つ又は複数の必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入して統合する。
【0047】
各構造において、ベクターは、ウイルス、例えば、バキュロウイルスに由来の配列を含み、オートグラファカリフォルニカ核多角体病ウイルス(AcMNPV)が挙げられるが、これに限定されない。
【0048】
いくつかの実施例において、まず、rAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)及びRep遺伝子発現カセット(Rep)を含む相同組換えベクター、並びに外来目的遺伝子(GOI)を持つITRコアエレメント(ITR-GOI)を含む相同組換えベクターをそれぞれ構築する。そして、1回目の相同組換えによりCap、Rep発現カセットをバキュロウイルスゲノムの1つの必須遺伝子の遺伝子座発現カセットのN末端又はC末端に統合する。次に、2回目の相同組換えによりITR-GOIを前記バキュロウイルスゲノムの別の必須遺伝子座発現カセットのN末端又はC末端に統合し、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得る。
【0049】
いくつかの実施例において、Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットを含む相同組換えベクターをDH10Bac/pKD46エレクトロコンピテントセルにエレクトロポレーションすることにより、Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットを含むDH10Bac菌株が得られる。前記Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットをバキュロウイルスゲノムの1つの必須遺伝子発現カセットのN末端又はC末端に挿入する。そして外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含む相同組換えベクターを前記Cap遺伝子発現カセット及びRep遺伝子発現カセットを含むDH10Bac菌株にエレクトロポレーションすることにより、外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIをバキュロウイルスゲノムの別の必須遺伝子発現カセットのN末端又はC末端に挿入し、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドが得られる。
【0050】
別の実施例において、ステップ(1)は、具体的に以下のステップを含む。
(1-1)前記必須機能エレメントのうちの1つ又は2つを含む相同組換えベクターを構築し、そして、Red相同組換えにより大腸菌中でこの相同組換えベクターにおける必須機能エレメントをバキュロウイルスゲノムの1つ又は2つの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入する。
(1-2)残りの必須機能エレメントを含むシャトルプラスミドを構築する。
(1-3)シャトルプラスミドに媒介されるTn7組換えによりCap遺伝子発現カセット、Rep遺伝子発現カセット及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを1つのバキュロウイルスゲノムに統合し、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する全ての必須機能エレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得る。
【0051】
いくつかの実施例において、rAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)及びRep遺伝子発現カセット(Rep)を含む相同組換えベクター、並びに外来目的遺伝子(GOI)を持つITRコアエレメント(ITR-GOI)を含むシャトルベクターを構築し、そしてRed相同組換えによりCap、Rep発現カセットをバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入し、次にTn7組換えによりシャトルベクター中的ITR-GOIを前記バキュロウイルスゲノムにおけるattTn7部位に挿入し、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得る。
【0052】
いくつかの実施例において、まず、外来目的遺伝子(GOI)を持つITRコアエレメント(ITR-GOI)を含む相同組換えベクター、並びにrAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)及びRep遺伝子発現カセット(Rep)を含むシャトルベクターを構築し、そして、Red相同組換えによりITR-GOIをバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入し、次にTn7組換えによりシャトルベクターにおけるCap、Rep発現カセットを前記バキュロウイルスゲノムにおけるattTn7部位に挿入し、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得る。
【0053】
いくつかの実施例において、前記シャトルプラスミドは、pfast.Bac.Dualプラスミドに基づき、アデノ随伴ウイルスのRep遺伝子、Cap遺伝子の発現カセット及びITR-GOIコア発現エレメントの1つ又は2つの遺伝子を含む。
【0054】
いくつかの実施例において、前記組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドは、AcMNPV E2(ゲノム配列:Genbank accession No.KM667940.1)、AcMNPV Bacmid(bMON14272)の構造参考文献(Luckow et al.J Virol,1993.67(8):4566-79.)に由来する。
【0055】
rAAVのパッケージングには、主にrAAVのゲノム、即ち、ITRコア発現エレメント、AAVのRep機能遺伝子、及びAAVのCap機能遺伝子の3種類の必須機能エレメントが必要である。また、AAPなどの他の機能タンパク質成分をさらに含んでもよい。AAP遺伝子は、パッケージング効率の向上を促進する作用を有する。したがって、組換えアデノ随伴ウイルスのパッケージング効率をさらに向上させるために、必須機能エレメント以外の他の機能タンパク質成分、例えば、APPなどを組換えバクミドに統合し、具体的に組換えバクミドゲノムの非必須遺伝子の遺伝子座又は必須遺伝子の遺伝子座のN末端若しくはC末端に挿入することができる。
【0056】
既存のほとんどのrAAV作製バキュロウイルスシステムにおいて、外来遺伝子(AAVのRep遺伝子、Cap遺伝子又はITRコア発現エレメント)を持つ組換えバキュロウイルスは、いずれもバキュロウイルスの非必須遺伝子の多角体遺伝子(Polyhedron,polh)部位に挿入されたものを採用する。組換えバキュロウイルスの構築を容易にするために、通常、市販されているBac-to-Bacシステムを使用している。Bac-to-Bacシステムの原理は以下のとおりである。まず、外来遺伝子をシャトルプラスミド中に構築し、次に、組換えシャトルプラスミドを組換えバクミドを含む大腸菌に形質転換し、Tn7トランスポゾンに媒介される細菌レベルの組換えにより組換えシャトルプラスミドが持つ外来遺伝子を組換えバクミドに統合する。そして、前記大腸菌から抽出した組換えバクミドDNAを昆虫細胞にトランスフェクションした後、外来遺伝子を持つ組換えバキュロウイルスBEVをレスキューする。このシステムのように大腸菌中で複製増殖できるとともに昆虫細胞中で複製し、パッケージングにより組換えバキュロウイルスを産生できる高分子環状DNAは、バクミド(Bacmid)と呼ばれる。バクミドは、細菌の複製起点、抗生物質耐性遺伝子、組換えバキュロウイルスゲノム及びTn7組換えクローニング部位を持っている。このシステムの最初の開発者Luckowらは、多角体遺伝子(polh)部位をTn7組換えクローニング部位として選択した(Luckowet al.1993,J.Virol.67(8):4566-4579)。
【0057】
rAAVに必須な機能タンパク質成分の発現カセットであるRep遺伝子及びCap遺伝子の遺伝子発現カセットをctx、egt、39k、orf51、pg37、iap2、odv-e56(Noad等,2009 ,BMC Molecular Biology10:87)などの非必須遺伝子座に挿入することも提案されている(CN201811618542;CN201280046259)。バキュロウイルスゲノムには、複数の複製起点が存在する。バキュロウイルスの増殖過程において、そのゲノムは複数の起点で複製する形式により複製し、BEVは、複数回継代した後に一部の非必須遺伝子が欠失する。そのため、外来遺伝子を非必須遺伝子座に挿入して得られたBEVの継代安定性が悪く、目的遺伝子が欠失しやすい。また、現在、全てのバキュロウイルスシステムはいずれもTn7組換えによりITRコア発現エレメントを挿入する。そうすると、組換えバキュロウイルスゲノムに一対のTn7トランスポゾン認識配列を導入する必要がある。しかし、バキュロウイルスの継代過程において、Tn7は不安定で失われやすいことから、得られたBEVの継代安定性が悪いため、安定性に対する要求が高い大規模なバッチ生産及び応用に適していない。そのため、遺伝子治療ベクター薬物の生産には、まだ改善の余地がある。
【0058】
本発明で提供される前記rAAVを生産する組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドは、ITR-GOI、Rep遺伝子、Cap遺伝子のうちの少なくとも1つが必須遺伝子のN末端又はC末端に付加されるため、作製される組換えバキュロウイルスBEVの全体の安定性が顕著に向上する。
【0059】
本発明では、得られたrAAVの生産に必須な機能タンパク質成分及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを宿主細胞系にトランスフェクションして培養することにより組換えバキュロウイルスを得る。具体的には、得られた組換えバクミドを対応の宿主細胞系にトランスフェクションした後、前記rAAVを作製する。以下の方式を含むが、これらに限定されない。
抽出とトランスフェクション:キッチにより大腸菌から前記組換えバクミドDNAを抽出して精製し、さらに宿主細胞系にトランスフェクションする。
直接感染:前記組換えバクミドを宿主細胞系にトランスフェクションして組換えバキュロウイルスBEVを取得し、さらにBEVを対応の宿主細胞系に直接感染させる。
【0060】
本発明に記載のバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドは、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分の発現カセット及びITRコアエレメント発現カセットを含む。いくつかの実施例において、前記バキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドは、Chia遺伝子及びCath遺伝子(CCと略称)が欠失したバキュロウイルスである。前記rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分の発現カセット及びITR-GOI発現カセットは、前記組換えバクミドの必須遺伝子Ac135、Ac98(38K)、Ac147(IE1)、Ac128(GP64)、Ac6、Ac9、Ac10、Ac17、Ac66、Ac109及びAc139から選択される1つ又は複数の遺伝子座に挿入される。
【0061】
本発明によれば、組換えアデノ随伴ウイルスを作製するための組換えバクミドがさらに提供される。この組換えバクミドは、組換えバキュロウイルスゲノムを含む。この組換えバキュロウイルスゲノムは、前記組換えアデノ随伴ウイルスを生産する必須機能エレメントを含む。前記必須機能エレメントは、Cap遺伝子、Rep遺伝子及び外来目的遺伝子を持つコア発現エレメントITR-GOIを含む。前記必須機能エレメントのうちの少なくとも1つは、前記組換えバキュロウイルスゲノムの必須遺伝子の遺伝子座のN末端又はC末端に挿入される。
【0062】
本発明によれば、前記組換えバクミドを含む組換えアデノ随伴ウイルスの作製システムがさらに提供される。
【0063】
以下、実施例を挙げる。
実施例1
DH10Bac-Cap-Rep(Ac135)-Tn7(ITR-GOI)によりrAAVを作製した。
【0064】
本実施例は、1つの相同組換えベクター及びシャトルベクターを含む。相同組換えベクターは、必須遺伝子であるAc135遺伝子を標的とし、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分の発現カセット、Chol発現カセット及びETL-EGFP発現カセットを含む。Chol発現カセットは、Red相同組換え陽性クローンのスクリーニング標識であり、ETL-EGFP発現カセットは、BEVのTCID50力価測定に使用され、シャトルベクターは、rAAVのコア発現エレメントITR-GOI発現カセットを含む。
【0065】
本実施例で提供されるrAAV作製システムによりrAAVを作製する方法は、以下ステップを含む。
1.1 AAV前記必須機能エレメントCap及びRep遺伝子発現カセットを含む相同組換えベクターを構築し、そして、Red相同組換えにより大腸菌中でこの相同組換えベクターにおける必須機能エレメントをバキュロウイルスゲノムの1つ又は2つの必須遺伝子の遺伝子座のC末端に挿入する。具体的なステップは以下のとおりである。
【0066】
1.1.1 rAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)を含み、必須遺伝子であるAc135遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。まず、野生型AcMNPVバクミドDNAをテンプレートとしてプライマー(HAL(135)-F:agttattgtgccgtttgctca及びHAL(135)-R:ttatttaattgtgtttaatattaca)を用いて上流ホモロジーアーム断片HAL(Ac135)(配列番号6)を増幅し、プライマー(HAR(135)-F:tcatttgtttttaaaattga及びHAR(135)-R:ttgaaaaacaaatgacatcatct)を用いて下流ホモロジーアーム断片HAR(Ac135)(配列番号7)を増幅した。
【0067】
1.1.2 そして、上流ホモロジーアーム、下流ホモロジーアーム、クロラムフェニコール耐性遺伝子発現カセット(P1-FRT-Chlo-P2)、Cap9遺伝子発現カセット(P10-Cap9-PA)、Rep2遺伝子発現カセット(PH-Cap9-PA)これらのDNA断片を一緒にpUC57ベクター上にクローンし、Ac135遺伝子を標的とする相同組換えベクターpUC57-HAL(Ac135)-P1-FRT-Chol-P2-ETL-EGFP-PA-Cap9KC-Rep2-HAR(Ac135)を得た。
【0068】
1.1.3 ステップ1.1.2で得られた相同組換えベクターを制限酵素PmeI及びAvrIIにより二重消化し、線形DNA断片HAL(Ac135)-P1-FRT-Chol-P2-ETL-EGFP-PA-Cap9KC-Rep2-HAR(Ac135)を回収した。そして、このDNA断片をDH10Bac/pKD46コンピテントセルにエレクトロポレーションし、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールに耐性があるLBプレートに塗布した。逆さまにして37℃で48時間培養した後、青色コロニーを選択してシェイクした。バクミドDNAを少量抽出してPCR同定し、陽性クローンをスクリーニングし、シーケンシングして検証した。スクリーニングした陽性菌株をDH10Bac-P1-FRT-Chol-P2-ETL-EGFP-PA-Cap9KC-Rep2(Ac135)と命名した。この菌株のうち、Rep、Cap発現カセットは、バキュロウイルスの必須遺伝子であるAc135遺伝子のC末端の2625bpに位置する。
【0069】
1.2 ITRコアエレメント(ITR-GOI)を含むシャトルベクターを構築した。本実施例において、ITRコア発現エレメントは、赤色蛍光タンパク質(mcherry)発現カセットを用いた。即ち、miniEf1aプロモーターによりmcherryの発現を制御し、rAAVの活性の検出を容易にし、ITR及び赤色蛍光タンパク質発現カセット(GOI)をシャトルベクターpFastDual上に構築した。
【0070】
1.3 前記1.2ステップで構築されたシャトルベクターをDH10Bac-P1-FRT-Chol-P2-ETL-EGFP-PA-Cap9KC-Rep2(Ac135)コンピテントに転換し、Tn7組換えによりITR-GOIを前記ステップ2で得られた組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドにおけるTn7部位に挿入し、最終的に、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得た(番号AC20-313)。
【0071】
1.4 ステップ1.3で得られたrAAVの生産に必須な機能タンパク質成分及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドAC20-313を宿主細胞系にトランスフェクションして培養することで、組換えバキュロウイルスを得た。
【0072】
この組換えバクミドDNAを抽出して、Sf9昆虫細胞にトランスフェクションし、組換えバキュロウイルスBEV及びrAAVを作製した。トランスフェクションした後のSf9昆虫細胞はBEVを成功に生産し、大量で複製して増殖したBEVはさらに感染することでSf9細胞に顕著な病変現象(CPE)が発生した。蛍光顕微鏡により顕著な緑色蛍光タンパク質(GFP)及び赤色蛍光タンパク質の発現が観察された。CPEが発生したSf9細胞の培養上清液及び大量のrAAVを含むSf9細胞を収集した。この培養上清液には大量のBEV、即ち第0世代のBEV(P0)が含まれる。作製されたBEV-P0を感染多重度(MOI=3)で懸濁培養されているSf9細胞に感染させ、72時間感染させた後、細胞活性は50%以下まで低下した。細胞培養液を1000gで5min遠心分離し、培養上清及び細胞沈殿をそれぞれ収集し、上清液を第1世代BEV-P1として標識し、細胞をBEV-P0でパッケージングされたrAAVとして標識した。
【0073】
このシステムで産生された組換えバキュロウイルスの安定性及びAAV収率安定性測定
【0074】
まず、特許CN106544325Bに記載の方法に従って対応の組換えバキュロウイルスを対照(番号9KC-142A(PFD-ITR-CMV-EGFP-PA))として得た。9KC-142Aは、rAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap9)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)及びITR-GOIを一緒にシャトルベクター上に構築し、そしてTn7組換えにより非必須遺伝子のPolh遺伝子座に挿入して組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得た。最後に、Sf9細胞にトランスフェクションして組換えバキュロウイルスを得た。
【0075】
本実施例のシステムの安定性をさらに評価するために、本実施例及び後の実施例において、いずれもQ-PCR方法によりBEV及びAAVの力価を測定した。この方法は特許CN108699567Aに記載の方法である。本実施例で作製されたBEV-Cap-Rep(Ac135)-Tn7(ITR-GOI)を同じMOIで連続継代した後、Sf9細胞に感染させ、P2、P3、P4、P5......P10世代のBEVを取得し、組換えバキュロウイルスの継代安定性を測定した。蛍光定量PCR(qPCR)法により全ての世代BEVの力価を測定した。力価の単位はVG/ml(VG,virus genomes)である。gp64遺伝子に対応する一対のプライマー(Q-GP64-F:AACTTGGACATTACCCCGCC及びQ-GP64-R:CCGTTGTACGCATACGCCTG)により総バキュロウイルスの力価を測定し、Rep配列に対応する一対のqPCRプライマー(Q-Rep-F:GAACAAGGTGGTGGACGAGT及びQ-Rep-R:ATTCAAACAGGCGCTTAAAT)によりRep発現カセット及びCap発現カセットを含むバキュロウイルスの力価を測定し、Tn7配列に対応する一対のqPCRプライマー(Q-Tn7-F:tcgtattagcttacgacgctaca及びQ-Tn7-R:tagttgggaactgggagggg)によりITR-GOIを含むバキュロウイルスの力価を測定した。Tn7/GP64及びREP/GP64の比によりBEVにおける外来遺伝子断片:Rep/Cap発現カセット及びITR-GOI発現カセットの継代安定性を評価した。比が安定して変化しない場合、Rep/Cap発現カセット及びITR-GOI発現カセットの継代安定性が比較的高いことを示し、継世回数の増加に伴って比の値が顕著に低下する場合、挿入された外来断片の安定性が悪いことを示す。継代過程全体では、総BEV力価、即ちGP64のQ-PCR力価で感染多重度(MOI)を計算して継代した。
【0076】
組換えバキュロウイルスの継代安定性を評価する別の態様は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)のパッケージング率及び上清力価である。qPCR法により全ての世代のrAAVの力価を測定し、力価の単位はVG/ml(VG,virus genomes)である。rAAV力価の測定は、ITR配列を標的とする一対のプライマー(Q-ITR-F:GGAACCCCTAGTGATGGAGTT及びQ-ITR-R:CGGCCTCAGTGAGCGA)又はWPRE配列を標的とする一対のプライマー(Q-WPRE-F:CCGTTGTCAGGCAACGTG及びQ-WPRE-R:AGCTGACAGGTGGTGGCAAT)を使用した。測定結果を下図に示す。
【0077】
図3は、AC20-313 BEVの異なる世代の安定性を示す。rAAVのrep及びcap発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子Ac135のC端に置いた。バクミド番号はAC20-313である。Q-PCRによりP2-P10世代のBEV安定性を測定した。Tn/GP64の百分率はBEV上でのITR-GOI発現カセットの安定性を示し、REP/GP64の百分率はBEV上でのrep及びcap発現カセットの安定性を示す。柱状グラフに示される異なる世代のBEVの安定性結果を分析したら、安定性が良好であった。
【0078】
図4は、対照群9KC-142A BEVの異なる世代の安定性を示す。対照群9KC-142A BEVは、特許CN106544325Aに記載の方法により構築された組換えバクミドであり(番号9KC-142A)、対照ウイルスとして用いた。Q-PCRによりP2-P10世代のBEVの安定性を測定した。Tn/GP64の百分率はBEV上でのITR-GOI発現カセットの安定性を示し、REP/GP64の百分率はBEV上でのrep及びcap発現カセットの安定性を示す。柱状グラフに示される異なる世代のBEVの安定性結果を分析したら、対照ウイルスの安定性が悪かった。
【0079】
図5は、AC20-313の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。Q-PCRによりP2-P10世代のrAAVの細胞パッケージング率及び上清力価を測定した。同図から分かるように、P2-P4世代のBEVが産生したrAAVのパッケージング率及び上清力価が比較的高く、P5からパッケージング率が低下し始めたが、P9世代のパッケージング率は6.06E+4vg/細胞、上清力価は1.20E+10vg/mlであった。
【0080】
図6は、9KC-142Aの異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。Q-PCRによりP2-P10世代のrAAVの細胞パッケージング率及び上清力価を測定した。同図から分かるように、P2-P5世代からパッケージング率の低下が顕著であり、P5世代のパッケージング率は僅か7.02E+4vg/細胞であり、上清力価は僅か1.26E+9vg/mlであった。
【0081】
図7は、AC20-313のP2-P10世代のBEVパッケージングrAAVのSDS-PAGE銀染色図である。同図における3本のベルトはそれぞれAAVウイルスのVP1、VP2、VP3であり、サイズはそれぞれ87KDa、72KDa、62KDaであった。P2世代のBEV種ウイルスが生産したrAAVをP3として標識し、等々である。
【0082】
実験結果から分かるように、対照群9KC-142Aに比べ、本実施例では、rAAVのRep/Cap発現カセットを必須遺伝子であるAc135遺伝子のC末端2625bpに置いて得られたBEVは、継代安定性が顕著に向上した(
図3)。具体的には、Tn7/GP64の百分率は一定に維持して低下せず、REP/GP64の百分率はゆっくりと低下し、P10(26.72%)はP2(64.97%)よりも約2.4倍低下した。対照群9KC-142A Tn7/GP64及びREP/GP64の百分率は顕著に低下し、REP/GP64の百分率についてはP10(0.64%)はP2(37.78%)よりも59倍低下した。P4のREP/GP64の百分率は6.88%まで(5.5倍)低下した。また、異なる世代のBEVを宿主細胞sf9に感染させて生産したrAAVの上清力価及び細胞パッケージング率については、AC20-313は対照群9KC-142Aよりも顕著に優れた。AC20-313 P2/P3/P4のパッケージング率は基本的に1E+6VG/細胞であり、P5からゆっくりと低下し始めた(2.5倍低下、パッケージング率:3.72E+5VG/細胞)。P9のパッケージング率は依然として6.06E+4VG/細胞であり、rAAVの生産安定性は大幅に改善された。対照群9KC-142Aは、P2-P5世代からパッケージング率が顕著に低下し、P5世代のパッケージング率が僅か7.02E+4vg/細胞、上清力価が僅か1.26E+9vg/mlであった(
図6)。
【0083】
本実施例で作製されたP2、P3、P4、P5......P10世代のBEVを同じMOIでそれぞれ200mlのsf9細胞に感染させ、感染の3日後に細胞活性を監視した。活性が50%未満になった場合、それぞれ遠心分離して細胞沈殿及び上清を収集し、収集した細胞沈殿及び上清をそれぞれ精製し、細胞を3回繰り返して凍結融解して溶解し、5000rpmで10min遠心分離し、上清を収集し、上清にヌクレアーゼ(Benzonase)を加え、37℃の水浴で60min処理し、処理後に、5000rpmで10min遠心分離した。収集した細胞溶解液及び収集した上清液をPEGで沈殿させ、再懸濁させた後、イオジキサノールで密度勾配遠心分離して精製した(Aslanidi et al,2009,Proc.NatlAcad.Sci.USA,206:5059-5064)。最終的に精製した製品ウイルスを全て185ulのPBSで再懸濁させ、各世代の精製製品ウイルスを10ul取り、SDS-PAGEゲルを通し、銀染色した。結果を
図7に示す。
【0084】
同図に示されるP3、P4・・・P11は、前の世代の種ウイルスBEVで産生したrAAVを増幅することを示す。
図7から分かるように、異なる世代のBEV(P2-P10)でrAAVウイルスをパッケージングするときに、P2-P7のBEV種ウイルスの安定性が比較的高く、産生したrAAVの総量の低下は少なかった。
図3の結果と一致する。P3及びP4レーンでのrAAVウイルスの濃度が非常に高いため、レーンは比較的黒かった。P2及びP3の種ウイルスBEVでrAAVを増幅する場合、ウイルスのパッケージング率は非常に高いことを示している。
【0085】
したがって、rep及びcap発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子AC135の横に置き、ITR-GOI発現カセットをTn7組換えにより非必須遺伝子のPolh座に置くことにより、BEVの継代安定性及びrAAVを安定して生産する能力が向上した。
【0086】
実施例2
実施例1を鑑み、rAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)を、必須遺伝子であるAc135遺伝子を標的とするようにすることにより、BEV安定性及びrAAVパッケージング率がRep/Capを非必須遺伝子のPH遺伝子座に置いた場合よりも優れた組換えバキュロウイルスバクミドが得られた。そのため、次の実施例において、Rep/Capを必須遺伝子GP64の横に置き、rAAVのコア発現エレメントITR-GOI発現カセットをバキュロウイルスの異なる必須遺伝子のC末端に置き、BEVの安定性及びrAAVのパッケージング率を評価した。
【0087】
DH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(Ac135)によりrAAVを作製した。
【0088】
本実施例は、2つの相同組換えベクターを含む。一つは、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分であるCap及びRep発現カセット、Chol発現カセット並びにETL-EGFP発現カセットを含み、必須遺伝子GP64を標的とする相同組換えベクターである。Chol発現カセットは、Red相同組換え陽性クローンスクリーニング標識であり、ETL-EGFP発現カセットは、BEVのTCID50力価の測定に使用される。もう一つは、rAAVのコア発現エレメントであるITR-GOI発現カセット及びGen発現カセットを含み、必須遺伝子であるAc135遺伝子を標的とする相同組換えベクターである。Gen発現カセットは、Red相同組換え陽性クローンスクリーニング標識である。
【0089】
本実施例で提供されるrAAV作製システムによりrAAVを作製する方法は、以下のステップを含む。
2.1 それぞれrAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)を含み、必須遺伝子であるGP64遺伝子を標的とする相同組換えベクター、及びITR-GOIを含み、必須遺伝子であるAc135遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。
2.1.1 rAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)を含み、GP64遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。野生型AcMNPVゲノムにおけるChia、Cath及びGP64のこの3つの遺伝子は隣り合う。本実施例において、GP64のC端にrAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)が挿入されたとともに、Chia及びCath遺伝子が欠失した好ましいスキームを採用した。まず、野生型AcMNPVバクミドDNAをテンプレートとしてプライマー(HAL(GP64)-F:ggtaacggccaattcaacgt及びHAL(GP64)-R:aagcaatatattgagtatca)により上流ホモロジーアーム断片であるHAL(GP64)(配列番号8)を増幅し、プライマー(HAR(GP64)-F:tctcaacacactcgctatttgga及びHAR(GP64)-R:tggagaacaccaagtttggcggcgt)により下流ホモロジーアーム断片であるHAR(GP64)(配列番号9)を増幅した。
【0090】
そして、上流ホモロジーアーム、下流ホモロジーアーム、クロラムフェニコール耐性遺伝子発現カセット(P1-FRT-Chlo-P2)、Cap9遺伝子発現カセット(P10-Cap9-PA)、Rep2遺伝子発現カセット(PH-Cap9-PA)これらのDNA断片を一緒にpUC57ベクター上にクローンし、GP64遺伝子を標的とする相同組換えベクターpUC57-HAL(GP64)-P1-FRT-Chol-P2-ETL-EGFP-PA-Cap9KC-Rep2-HAR(GP64)を得た。
【0091】
2.1.2 ITRコア発現エレメント(ITR-GOI)を含み、Ac135遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。本実施例において、ITRのコア発現エレメントは、赤色蛍光タンパク質(mcherry)の発現カセットを採用し、miniEf1aプロモーターによってmcherryの発現を制御することにより、rAAVの活性の検出が容易になる。まず、野生型AcMNPVバクミドDNAをテンプレートとしてプライマー設計し、上流ホモロジーアーム断片であるHAL(Ac135)(配列番号6)及び下流ホモロジーアーム断片であるHAR(Ac135)(配列番号7)を増幅した。
【0092】
そして、上流ホモロジーアーム、下流ホモロジーアーム、ゲンタマイシン耐性遺伝子発現カセット(P1-FRT-Gen-P2)及びITRコアエレメント遺伝子発現カセット(ITR-GOI)を一緒にpUC57ベクター上にクローンし、Ac135遺伝子を標的とするとともにITR-GOIを持つ相同組換えベクターpUC57-HAL(Ac135)-P1-FRT-Gen-P2-Tn7L-ITR-miniEF1a-mcherry-WPRE-PA-ITR-HAR(Ac135)を得た。
【0093】
2.2 Red相同組換えによりrAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)及び外来目的遺伝子(GOI)を持つITRコアエレメント(ITR-GOI)をそれぞれバキュロウイルスゲノムにおける必須遺伝子であるGP64遺伝子のC末端及び必須遺伝子であるAc135遺伝子のC末端に挿入し、rAAVの生産に必須な機能タンパク質成分、ITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを得た。
2.2.1 実施例1のステップ1.1.4に従ってrAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)をバキュロウイルスゲノムにおける必須遺伝子であるGP64遺伝子のC末端に挿入し、スクリーニングした陽性菌株をDH10Bac-△CC-Cap9-Rep2(GP64)と命名した。
【0094】
2.2.2 そして、実施例1のステップ1.1.4に従って外来目的遺伝子(GOI)を持つITRコアエレメント(ITR-GOI)を2.2.1で得られた組換えバキュロウイルスゲノムにおける必須遺伝子であるAc135遺伝子のC末端に挿入し、スクリーニングした陽性モノクローナル菌株をDH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(Ac135)と命名した。バクミドを抽出し、rAAVを生産するカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミド(番号Ac-141-175)を得た。このバクミドにおいて、Rep、Cap発現カセットは、バキュロウイルスの必須遺伝子であるGP64遺伝子Cの末端の235bpに位置し、ITRコアエレメントは、バキュロウイルスの必須遺伝子であるAc135遺伝子のC末端の1503bpに位置する。
【0095】
2.3 ステップ2.2で得られたrAAVの生産に必須な機能タンパク質成分及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドAc-141-175を宿主細胞系にトランスフェクションして培養し、組換えバキュロウイルスを得た。
【0096】
この組換えバクミドDNAを抽出してSf9昆虫細胞にトランスフェクションし、組換えバキュロウイルスBEV及びrAAVを作製した。トランスフェクションした後のSf9昆虫細胞はBEVを成功に生産した。増殖したBEVが大量に複製し、さらに感染することでSf9細胞に顕著な病変現象(CPE)が発生した。蛍光顕微鏡により顕著な緑色蛍光タンパク質(GFP)及び赤色蛍光タンパク質の発現が観察された。CPEが発生したSf9細胞培養上清液(大量のBEV、即ち第0世代のBEV(P0)を含む)を収集した。また、大量のrAAVを含むSf9細胞を収集した。作製されたBEV-P0を感染多重度(MOI=3)で懸濁培養しているSf9細胞に感染させ、感染した72時間後、細胞活性は50%以下に低下した。細胞培養液を1000gで5min遠心分離し、培養上清及び細胞沈殿をそれぞれ収集し、上清液を第1世代BEV-P1として標識し、細胞をBEV-P0でパッケージングされたrAAVとして標識した。
【0097】
このシステムで産生した組換えバキュロウイルスの安定性及びAAV収率の安定性検出
【0098】
対照バキュロウイルスは、特許CN109609552Bに記載の方法により得られた組換えバキュロウイルス(番号9KC-313(ITR-miniEf1a-mcherry-WPRE-PA-ITR))である。9KC-313は、rAAVカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap9)及びRep遺伝子発現カセット(Rep)を非必須遺伝子(Cath及びChia)の遺伝子座に挿入した後、Tn7組換えによりITR-GOIを非必須遺伝子であるPolh座に挿入して組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミドを取得し、最後にSf9細胞にトランスフェクションして得られた組換えバキュロウイルスである。
【0099】
本実施例のシステムの安定性をさらに分析するために、本実施例で作製されたBEV- Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(Ac135)を同じMOIで連続継代した後、Sf9細胞に感染させ、P2、P3、P4、P5......P10世代のBEVを取得し、組換えバキュロウイルスの継代安定性を測定した。
【0100】
蛍光定量PCR(qPCR)法により全ての世代のBEVの力価を測定した。力価の単位はVG/ml(VG,virus genomes)である。gp64遺伝子に対応する一対のプライマー(Q-GP64-F:AACTTGGACATTACCCCGCC及びQ-GP64-R:CCGTTGTACGCATACGCCTG)により総バキュロウイルスの力価を測定し、Rep配列に対応する一対のqPCRプライマー(Q-Rep-F:GAACAAGGTGGTGGACGAGT及びQ-Rep-R:ATTCAAACAGGCGCTTAAAT)によりRep発現カセット及びCap発現カセットを含むバキュロウイルスの力価を測定し、Tn7配列に対応する一対のqPCRプライマー(Q-Tn7-F:tcgtattagcttacgacgctaca及びQ-Tn7-R:tagttgggaactgggagggg)によりITR-GOIを含むバキュロウイルスの力価を測定した。Tn7/GP64及びREP/GP64の比の値により、BEVにおける外来遺伝子断片:Rep/Cap発現カセット及びITR-GOI発現カセットの継代安定性を評価した。比の値が安定して変化しない場合、Rep/Cap発現カセット及びITR-GOI発現カセットの継代安定性が高いことを示し、継世回数の増加に伴って比の値が顕著に低下する場合、挿入された外来断片の安定性が悪いことを示す。継代過程全体は、総BEVの力価、つまりGP64のQ-PCRの力価により感染多重度(MOI)を計算して継代した。
【0101】
組換えバキュロウイルスの継代安定性を評価する別の態様は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)のパッケージング率及び上清力価である。qPCR法により全ての世代のrAAVの力価を測定し、力価の単位はVG/ml(VG,virus genomes)である。rAAVの力価の測定は、WPRE配列を標的とする一対のプライマー(Q-WPRE-F:CCGTTGTCAGGCAACGTG及びQ-WPRE-R:AGCTGACAGGTGGTGGCAAT)を使用した。測定結果を
図8から
図12に示す。
【0102】
図8は、Ac-141-175 BEVの異なる世代の安定性を示す図である。rAAVのrep及びcap発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子GP64のC端に置いた。rAAVのITR-GOI発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子Ac135のC端に置いた。バクミド番号はAc-141-175である。Q-PCRによりP2-P10世代のBEV安定性を測定した。柱状グラフに示される異なる世代のBEVの安定性結果を分析したら、安定性が良好であった。
【0103】
図9は、対照群9KC-313 BEVの異なる世代の安定性を示す。対照群9KC-313 BEVは、特許CN109609552Aに記載の方法に従って対照ウイルスとして得られた組換えバクミド(番号9KC-313)である。Q-PCRによりP2-P10世代のBEV安定性を測定した。柱状グラフに示される異なる世代のBEVの安定性結果を分析したら、Tn7/GP64の比の値が比較的低く、P4世代では27.66%に低下した。
【0104】
図10は、Ac-141-175の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。Q-PCRによりP2-P10世代のrAAVの細胞パッケージング率及び上清力価を測定した。同図から分かるように、パッケージング率及び上清力価はいずれも比較的安定し、P9世代では、パッケージング率は2.14E+5vg/細胞に維持され、上清力価は9.12E+10vg/mlに達した。
【0105】
図11は、対照群9KC-313の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。Q-PCRによりP2-P10世代のrAAVの細胞パッケージング率及び上清力価を測定した。同図から分かるように、対照ウイルスの異なる世代のBEVがrAAVを産生する安定性が悪く、パッケージング率の低下が非常に顕著であり、P5世代は僅か2.62E+4vg/細胞であった。
【0106】
図12は、Ac-141-175のP2-P10世代のBEVパッケージングrAAVのSDS-PAGEの銀染色図である。同図における3本のベルトはそれぞれAAVウイルスのVP1、VP2、VP3であり、サイズはそれぞれ87KDa、72KDa、62KDaであった。P2世代のBEV種ウイルスが生産したrAAVをP3として標識し、等々である。
【0107】
実験結果から分かるように、対照群9KC-313に比べ、本実施例では、rAAVのRep/Cap発現カセットを必須遺伝子であるGP64遺伝子のC末端の235bpに置き、ITR-GOI発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子であるAc135遺伝子のC末端の2625bpに置いて得られたBEVは、継代安定性が顕著に向上した(
図8)。具体的には、Tn7/GP64及びREP/GP64の百分率はP2-P7では一定に維持して低下しなかった。Tn7/GP64の百分率について、P10(33.00%)はP2(62.08%)よりも約1.9倍低下した。対照群9KC-313 Tn7/GP64の百分率は、P4ではP2の66.92%から27.66%に低下し、2.4倍低下した。Tn7/GP64の比の値はITR-GOIの安定性を示す。rAAVのパッケージング率結果(
図9、
図10)は、Ac-141-175のP2-P9世代のBEVがいずれも1E+5vg/細胞のパッケージング率を有することをさらに証明している。対照9KC-313の異なる世代のBEVの細胞パッケージング率は迅速に低下し、P3の4.94E+5vg/細胞からP4の1.73E+5vg/細胞、P5の2.62E+4vg/細胞に低下した。
【0108】
本実施例で作製されたP2、P3、P4、P5......P10世代のBEVを同じMOIでそれぞれ200mlのsf9細胞に感染させ、感染の3日後に細胞活性を監視した。活性が50%未満になった場合、それぞれ遠心分離して細胞沈殿及び上清を収集し、収集した細胞沈殿及び上清をそれぞれ精製し、細胞を3回繰り返して凍結融解して溶解し、5000rpmで10min遠心分離し、上清を収集し、上清にヌクレアーゼ(Benzonase)を加え、37℃の水浴で60min処理し、処理後に、5000rpmで10min遠心分離した。収集した細胞溶解液及び収集した上清液をPEGで沈殿させ、再懸濁させた後、イオジキサノール密度勾配遠心分離により精製した(Aslanidi et al,2009,Proc.NatlAcad.Sci.USA,206:5059-5064)。最終的に精製した製品ウイルスを全て185ulのPBSで再懸濁させ、各世代の精製製品ウイルスを10ul取り、SDS-PAGEゲルを通し、銀染色した。結果を
図12に示す。
【0109】
図12から分かるように、異なる世代のBEV(P2-P10)でrAAVウイルスをパッケージングする際に、P2-P9のBEV種ウイルスは安定性が高く、産生したrAAV総量の低下が小さかった。
図10の結果と一致した。
【0110】
したがって、ITR-GOIをバキュロウイルスの必須遺伝子AC135の横に置くことにより、BEVの継代安定性及びrAAVを安定して生産する能力が向上し、rAAVの大規模生産に重要な意義を有する。
【0111】
実施例3
rAAVのRep/Cap発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子であるGP64遺伝子のC末端235bpに固定し、引き続き他のバキュロウイルス必須遺伝子座を測定し、DH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(38K)によりrAAVを作製した。
【0112】
実施例2のステップ2.1に従って、プライマー(HAL(38K)-F:tcggcgaacgtgttttgtcccaa及びHAL(38K)-R:ctattcattgtcgctgtcttct)により上流ホモロジーアームHAL(38K)(配列番号10)を増幅し、プライマー(HAR(38K)-F:agtttatatttttatttaata及びHAR(38K)-R:gatcatgtagcacactcgatgcga)により下流ホモロジーアームHAR(38K)(配列番号11)を増幅し、ITRコア発現エレメント(ITR-GOI)を含み、バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子38Kである遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。そして、実施例1のステップ1.1.4に従ってITR-GOIを2.2.1で得られた組換えバキュロウイルスゲノムにおける必須遺伝子である38K遺伝子のC末端の126bpに挿入した。スクリーニングした陽性モノクローナル菌株をDH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(38K)と命名した。バクミドを抽出し、rAAVを生産するカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミド(番号Ac-141-163)を得た。
【0113】
実施例2の方法によりBEV継代安定性を測定した。測定データを
図13、
図14及び
図15に示す。
【0114】
図13は、Ac-141-163 BEVの異なる世代の安定性を示す。rAAVのITR-GOI発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子38KのC端の126bpに置いた(バクミド番号Ac-141-163)。Q-PCRによりP2-P10世代のBEV安定性を測定した。柱状グラフに示される異なる世代のBEVの安定性結果を分析したら、安定性が良好であった。
【0115】
図14は、Ac-141-163異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。Q-PCRによりP2-P10世代のrAAVの細胞パッケージング率及び上清力価を測定した。同図から分かるように、P5世代ではパッケージング率は低下し始めたが、P10世代のパッケージング率は高いレベル1.21E+5vg/細胞に維持され、上清力価は1.84E+11vg/mlに達した。
【0116】
図15は、Ac-141-163 P2-P10世代のBEVパッケージングrAAVのSDS-PAGE銀染色図である。同図における3本のベルトはそれぞれAAVウイルスのVP1、VP2、VP3であり、サイズはそれぞれ87KDa、72KDa、62KDaである。P2世代のBEV種ウイルスが生産したrAAVをP3として標識し、等々である。
【0117】
以上の結果から分かるように、実施例2の対照ウイルス9KC-313に比べ、Ac-141-163の異なる世代のBEVのTn7/GP64及びRep/GP64の百分率はいずれも非常に安定した。そのrAAVのパッケージング率及び上清力価はいずれも比較的高いレベルに維持された。P2-P4のパッケージング率保持は、1.00E+6vg/細胞に維持された。P5ではパッケージング率がP4の9.06E+5vg/細胞から1.77E+5vg/細胞に低下したが、その後、パッケージング率はP10まで1.21E+5vg/細胞に維持された。これに対し、対照群9KC-313では、P5のパッケージング率は2.62E+4vg/細胞に低下した。rAAVの上清力価も比較的高いレベルに維持され、最大5.86E+11vg/mLにも達し(P6)、総rAAVの量が大幅に増加した。
【0118】
本実施例で作製されたP2、P3、P4、P5......P10世代のBEVを同じMOIでそれぞれ200mlのsf9細胞に感染させ、感染の3日後に細胞活性を監視した。活性が50%未満になった場合、それぞれ遠心分離して細胞沈殿及び上清を収集し、収集した細胞沈殿及び上清をそれぞれ精製し、細胞を3回繰り返して凍結融解して溶解し、5000rpmで10min遠心分離し、上清を収集し、上清にヌクレアーゼ(Benzonase)を加え、37℃の水浴で60min処理し、処理後に、5000rpmで10min遠心分離した。収集した細胞溶解液及び収集した上清液をPEGで沈殿させ、再懸濁させた後、イオジキサノールで密度勾配遠心分離して精製した(Aslanidi et al,2009,Proc.NatlAcad.Sci.USA,206:5059-5064)。最終的に精製した製品ウイルスを全て185ulのPBSで再懸濁させた。P10の体積は185ul*1.5=277.5ulであった。P9は、精製過程においてサンプルにトラブルがあった。最終的な総ウイルス量は減少した。各世代の精製製品ウイルスを10ul取り、SDS-PAGEゲルを通し、銀染色した。結果を
図15に示す。
【0119】
図15から分かるように、精製過程でトラブルがあるP9及び実際体積が他のウイルスの1.5倍のP10を除き、異なる世代のBEV(P2-P10)でrAAVウイルスをパッケージングする際に、BEVの各世代の種ウイルスは安定性が高く、産生したrAAVの総量の低下は少なかった。これによって、Rep及びcap発現カセットをBEVの必須遺伝子GP64のC端に置き、ITR-GOIをBEVの必須遺伝子38KのC端に置くことにより、rAAVの生産を大幅に安定化できることがさらに実証された。
【0120】
実施例4
rAAVのRep/Cap発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子であるGP64遺伝子のC末端の235bpに固定し、引き続き他のバキュロウイルスの必須遺伝子座を測定し、DH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(IE1)によりrAAVを作製した。
【0121】
実施例2のステップ2.1に従って、プライマー(HAL(IE1)-F:atcatgacaatattgcgagt及びHAL(IE1)-R:ttaattaaattcgaatt)により上流ホモロジーアームHAL(IE1)(配列番号12)を増幅し、プライマー(HAR(IE1)-F:ttatacatatattttgaat及びHAR(IE1)-R:ccgacccagattcgcctcaat)により下流ホモロジーアームHAR(IE1)(配列番号13)を増幅し、ITRコア発現エレメント(ITR-GOI)を含み、バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子であるIE1遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。そして、実施例1のステップ1.1.4に従ってITR-GOIを2.2.1で得られた組換えバキュロウイルスゲノムにおける必須遺伝子であるIE1遺伝子のC末端の1237bpに挿入し、スクリーニングした陽性モノクローナル菌株をDH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(IE1)と命名した。バクミドを抽出し、rAAVを生産するカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミド(番号Ac-141-162)を得た。
【0122】
実施例2の方法によりBEV継代安定性を測定した。測定データを
図16、
図17及び
図18に示す。
【0123】
図16は、Ac-141-162 BEVの異なる世代の安定性を示す。rAAVのITR-GOI発現カセットはバキュロウイルスの必須遺伝子IE1のC末端の1237bpに置かれ、バクミド番号はAc-141-162であった。Q-PCRによりP2-P10世代のBEV安定性を測定した。柱状グラフに示される異なる世代のBEVの安定性結果を分析したら、安定性は対照ウイルス9KC-313と同じであった。
図17は、Ac-141-162の異なる世代のBEVパッケージングrAAVの収率を示す。Q-PCRによりP2-P10世代のrAAVの細胞パッケージング率及び上清力価を測定した。同図から分かるように、パッケージング率は継代に伴って低下し、安定性が悪かった。
【0124】
以上の結果から分かるように、実施例1の対照ウイルス9KC-142Aに比べ、Ac-141-162の異なる世代のBEVのRep/GP64の百分率はより安定した。対照ウイルス9KC-313と同様に、Ac-141-162の異なる世代のBEVのTn7/GP64百分率の低下が比較的速く、安定性は実施例1、2、3のAC20-313、Ac-141-175、Ac-141-163のほど高くなかった。Tn/GP64は、P2の165.52%からP5の25.18%に低下し、そのrAAVのパッケージング率及び上清力価も徐々に低下する傾向にあった。その細胞パッケージング率及び上清力価のレベルは、対照ウイルス9KC-313とほぼ一致し、やや高かった(
図18)。
図18は、Ac-141-162vs9kc-313パッケージング率を示す。同図から分かるように、Ac-141-162各世代のパッケージング率は、対照ウイルス9kc-313よりもやや高かった。
【0125】
比較例1
rAAVのRep/Cap発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子であるGP64遺伝子のC末端の235bpに置き、引き続き他のバキュロウイルスの必須遺伝子座を測定した。DH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(GP41)によりrAAVを作製した。
【0126】
実施例2のステップ2.1に従って、プライマー(HAL(GP41)-F:ttttgtgaacgggctcgcta及びHAL(GP41)-R:tcatggcgacgactctgtaca)により上流ホモロジーアームHAL(GP41)(配列番号14)を増幅し、プライマー(HAR(GP41)-F:ttatgcagtgcgccctttcgt及びHAR(GP41)-R:tgccggcggcggcgattacta)により下流ホモロジーアームHAR(GP41)(配列番号15)を増幅し、ITRコア発現エレメント(ITR-GOI)を含み、バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子であるGP41遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。そして、実施例1のステップ1.1.4に従ってITR-GOIを2.2.1で得られた組換えバキュロウイルスゲノムにおける必須遺伝子であるGP41遺伝子のC末端115bpに挿入した。スクリーニングした陽性モノクローナル菌株をDH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(GP41)と命名した。バクミドを抽出し、rAAVを生産するカプシドタンパク質の遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミド(番号Ac-141-160)を得た。
【0127】
本実施例において、実施例2の方法を参照しながらBEVのレスキュー及び継代を行った。一緒にレスキュー及び継代したのは番号Ac-141-160及びAc-141-162である。この2つのウイルスを同時にP2世代に拡大培養した後、P2のBEV種ウイルスを250mLのsf9細胞に接種し、感染した3日後、細胞活性を測定した。活性が50%未満である場合、上清及び細胞をそれぞれ収集した。細胞を繰り返して凍結融解して溶解し、イオジキサノール密度勾配遠心分離法により精製品AAVとなるように精製した。収集した上清及び細胞におけるrAAVウイルスの力価、並びに最終的に精製したrAAVの力価及び純度を測定した。純度はSDS-PAGE銀染色の方法により測定された。
【0128】
図19は、Ac-141-160(rAAVのITR-GOI発現カセットがバキュロウイルスの必須遺伝子GP41のC端に位置する)及びAc-141-162 BEVが生産したrAAVのSDS-PAGE銀染色図である。Q-PCRにより2種類のウイルスの力価が一致すると検出された場合、Ac-141-160のVP3は比較的太く、中空率が比較的高いことを示している。表1及び
図19の結果から分かるように、Ac-141-162 P3が生産した製品ウイルスの力価は3.15E+13vg/mLであり、Ac-141-160 P3が産生した製品ウイルスの力価は2.21E+13vg/mLであった。しかし、SDS-PAGEにおいて、Ac-141-160のVP3のベルトは明らかにより太く、Ac-141-160が生産したrAAVの中空率はAc-141-162よりも高いことを示している。原因を分析したら、ITR-GOIを必須遺伝子であるGP41遺伝子のC末端(Ac79遺伝子のN端の開始コドンの前に相当)に置くと、Ac79遺伝子の発現に影響を与えることで、バキュロウイルスの増力に影響を与えると考えられている。そのため、ITR-GOI発現カセットを必須遺伝子GP41のC端に置くのは最適な選択ではない可能性がある。
【0129】
比較例2
rAAVのRep/Cap発現カセットをバキュロウイルスの必須遺伝子であるGP64遺伝子のC末端の235bpに固定し、引き続き他のバキュロウイルスの必須遺伝子座を測定した。DH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(Ac153)によりrAAVを作製した。
【0130】
実施例2のステップ2.1に従って、プライマー(HAL(Ac153)-F:tgacataaatatggagaatcaggca及びHAL(Ac153)-R:ttaattttcaaacccaaaattaacagt)により上流ホモロジーアームHAL(Ac153)(配列番号16)を増幅し、プライマー(HAR(Ac153)-F:tgtgatatgaaatgtatata及びHAR(Ac153)-R:atgcaagaattgtatgttgct)により下流ホモロジーアームHAR(Ac153)(配列番号17)を増幅し、ITRコア発現エレメント(ITR-GOI)を含み、バキュロウイルスゲノムの必須遺伝子であるAc153遺伝子を標的とする相同組換えベクターを構築した。そして、実施例1のステップ1.1.4によりITR-GOIを2.2.1で得られた組換えバキュロウイルスゲノムにおける必須遺伝子であるAc153遺伝子のC末端の1368bpに挿入した。スクリーニングした陽性モノクローナル菌株をDH10Bac-△CC-Cap-Rep(GP64)-ITR-GOI(Ac153)と命名した。バクミドを抽出し、rAAVを生産するカプシドタンパクの質遺伝子発現カセット(Cap)、Rep遺伝子発現カセット(Rep)及びITRコアエレメントを含む組換えバキュロウイルスゲノムを含む組換えバクミド(番号Ac-141-174)を得た。
【0131】
実施例2の方法に従ってBEVの継代安定性を測定した。P1-P3のみについて測定した。測定データは以下の通りである。
【0132】
実施例6と同様に、Ac-141-174ウイルスの細胞パッケージング率は比較的低く、Tn7/GP64の百分率は非常に低く、ITR-GOI発現カセットを必須遺伝子Ac153の横に置くのが好適ではないことを示している。原因を分析したら、ITR-GOIを必須遺伝子であるAc153遺伝子のC末端(Ac154遺伝子のN端の開始コドンの前に相当)に置くと、Ac154遺伝子の発現に影響与えることで、バキュロウイルスの増殖に影響を与えると考えられている。そのため、ITR-GOI発現カセットを必須遺伝子であるAc154遺伝子のC端に置くのは最適な選択ではない可能性がある。
【0133】
当業者に理解され得るように、以上の説明は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではない。本発明の思想及び原則内になされるすべての修正、同等置換及び変更などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【配列表】
【国際調査報告】